迷宮災厄戦⑱-21〜あたらしいおともだち
「お友達でしょう?」
どこまでも平坦な闇の中。かぼそい少女の声が響く。
「友達なら、いつでも一緒よ」
少女は、その闇の中央の、小山の上に座っていた。
「その目を頂戴。友達でしょう?」
少女がナイフを小山に突き立てた。小山からどす黒いものがどろりと溢れ出す。
「あなたの爪を頂戴」
少女がナイフを小山の輪郭に合わせて滑らせた。
ぐちゃっ、ぐちゃっ、ごりっ……。
それからしばらく。小山の上からそんな音が聞こえてきた。
「ねぇ、あなたもお友達になって」
少女の名はオウガ・オリジン。彼女が座る小山は、無造作に積まれた少年少女達のなれのはてであった。
●おともだち
「皆様、迷宮災厄戦、お疲れ様ですわ!」
エリル・メアリアル(孤城の女王・f03064)が猟兵達に声をかける。
「これまでの戦いの中で、オウガ・オリジンに何か不思議な現象が起きているようですわ」
それはオウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードの暴走というべきか。最近、突如光の輪が現れ、猟兵達をとある国へと送る事件が起こっているというのだ。
「送られた世界は、言うなれば平坦な闇のような国。その中央にオウガ・オリジンがいますわ……けれど」
エリルが口元を抑え、振り絞るように言う。
「その中央にはもう一つ……少年少女のバラバラ死体が……」
一体何人分なのか、もはやはっきりとはわからない。現実改変ユーベルコードであれば、この少年少女達は現実には犠牲者がいないのかもしれない。
それでも、その光景は紛れもなく本物だ。エリルは吐き気を堪えながら言葉を続ける。
「そして、オウガ・オリジンはそれらの死体を切り刻み、自分に似た部位を貪っているようですわ」
理由はわからない。だが、それにも理由があるようだ。
「これはオウガ・オリジンの『無意識の悪夢』……この世界ではオウガ・オリジンすらその悪夢によって正気を失っている状態なんですの」
正気を失ったオウガ・オリジンは、目の前に現れた者を友達候補を殺し、自分に似た部位を喰らうことで『友達と一つ』になった気になるというのだ。
「ですから、皆様もこの世界に紛れ込んでしまえば、お友達候補としてオウガ・オリジンに認識され、襲われるはず。けれど、彼女は自分に似ている部分があれば、その部位が傷つくことを嫌って、攻撃の手が鈍るようですわ」
つまり、オウガ・オリジンに似た姿で戦えば、比較的戦いやすいと言えるだろう。
説明を終え、エリルが言う。
「この世界のオウガ・オリジンは今までの傲慢な態度とは違い、まるで純真な少女のよう……けれど、残忍さはむしろこちらの方が上。ゆめゆめ油断なさらないようにお願いしますわ」
そう言って、グリモアが輝く。
「オウガ・オリジンの領域に入って間もなく、光の輪が皆様を闇の世界に落としてきますわ。そうなれば、もうそこは悪夢の世界。……生きて帰ってきてくださいまし」
エリルは願うように、猟兵達を送り出すのであった。
G.Y.
こんにちは。G.Y.です。
オウガ・オリジンの新たな戦闘スタイルが登場いたしました。
しかし、どうやらオウガ・オリジン本体も苦しむ類の世界のようです。
悪夢にうかされたように死体を切り刻むオウガ・オリジンと戦い、この世界から脱出してください。
オウガ・オリジンの精神は狂気で満ち、『自分に似た友達』を探しています。
最終的には殺して食べることが目的ですが、自分に似た部位を傷つけることを嫌う傾向があるため、似ていれば似ているほど、攻撃の手は緩むでしょう。
どの部位が似ていると思うか、あるいはオウガ・オリジンに似せる手段をプレイングに記載してください。
プレイングボーナスは『オウガ・オリジンに似た姿で戦う。』となります。
今回のシナリオでは、上記プレイングボーナスを最重要視いたします。
プレイングボーナス発生に満たない場合は友達ともみなされず、かなり苛烈な攻撃をしてきますのでご注意ください。
それでは、皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしております!
第1章 ボス戦
『『オウガ・オリジン』と友達探し』
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POW : 友達ならいつでもいっしょ
戦闘中に食べた【相手の肉体】の量と質に応じて【全身が相手に似た姿に変わり】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : あなたもお友達になって
自身が装備する【解体ナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 誰とだってお友達になれるわ
自身の装備武器に【切り裂いたものを美味しく食べる魔法】を搭載し、破壊力を増加する。
イラスト:飴茶屋
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ロバート・ブレイズ
――お友達
――あなたもあなたもお友達
自身の『存在』を代償に、外見を完全に『オウガ・オリジン』に変える
――いつでも一緒。どこでも一緒。いつだって一緒
ナイフの代わりに栞を使って、小山をぐちゅりと突いて魅せる
――ぜんぶ。ぜんぶ。欲しいでしょう。お友達になりましょう
自絶願望に憑かれたお友達。お腹が空いたら捌いてみましょう
確かに貴様は貴様のお友達を捕食したのだ
同時に、貴様自身を消化したのだよ
――Tru'nembra
恐怖を与える。自分で自分を食べていると認識させる
それをお友達だと想うのならば永遠に自己を啜るが好い
かわいらしい貌ね、お友達(あなた)
平坦な闇の中、突如現れた光の輪が一際輝いて世界を照らす。
輪がどれだけ輝こうと、闇にあっという間に吸い込まれ、かえって深さを増すばかり。
この世界で唯一光が灯るのはこの国の中央。スポットライトを当てるように、暗い昏い光が、その赤黒い小山と、その上で踊るそれを照らしていた。
「――お友達」
その言葉に、小山の上の少女が振り返る。
「――あなたもあなたもお友達」
小山の下には少女がいた。小山の少女にとても似ている。そっくりだ。
「いつでも一緒。どこでも一緒。いつだって一緒」
少女が栞を取り出して、小山に突き立てる。ぐじゅりとくぐもった音とともに、赤黒いものがどろりと滴る。
「ぜんぶ。ぜんぶ。欲しいでしょう。お友達になりましょう」
その言葉に、小山の上の少女は手を止めて、小山を降りる。
ごろりと山が崩れても気にしない。ぐしゃりと柔らかいものを踏みつぶしても何とも思わない。
「えぇ! お友達になりましょう! ね?」
だって、目の前には最高のお友達がいるのだから。
「確かに、貴様は貴様のお友達を捕食したのだ」
栞を持った少女が言った。
「え……?」
違和感に、少女――オウガ・オリジンが目を落とす。
オウガ・オリジンは栞の少女に馬乗りになり、心臓をひと突きしていた。
全てが一緒の彼女を極力壊さず、すべて食べつくして友達になろうとしていたのに。
腕をもぐと腕が痛い。足を千切ると足が痺れる。
「何故、何故……」
オウガ・オリジンは混乱し、戸惑い、手を止める。どうして、私は私を食べているのだ。
栞の少女――いいや、ロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)が嗤った。彼は今、自らの存在を代償に、オウガ・オリジンと瓜二つになっていた。
そしてその力で、オウガ・オリジンに『自分で自分を食べている』と認識させたのだ。
「かわいらしい貌ね、お友達<あなた>」
ロバートが手で、オウガ・オリジンの頬に触れる。オウガ・オリジンの黒く塗りつぶされたその貌から血が零れた。
「それをお友達だと想うのならば永遠に自己を啜るが好い」
「い、いや、いやよ!!」
その言葉と共に手を止めたオウガ・オリジンから離れ、ロバートは元の姿へと戻り、その場を離れる。
「いや、いや……こんなの嫌よ……!!」
オウガ・オリジンは小山の下で崩れ落ち、慟哭した。
「誰か、わたしのお友達になって……!」
大成功
🔵🔵🔵
鈴桜・雪風
彼女自身に似た姿、ですか
なかなか難しい注文を受けたものです
では、【影絵眼鏡】でわたくしの姿の上にオウガ・オリジンの姿を投影しましょう
派手な動きは難しくなりますが……ならば、一歩も動かずに対敵を屠れば良いだけのこと
【ソノ花咲カスベカラズ】で地面から桜の木の根を召喚してオリジンに向かわせますわ
オウガ・オリジンは始まりのオウガにして始まりのアリス
即ち、元はヒト
「この根は桜の木の下の伝承に基づき、『人食い』の概念を帯びていますので。貴女には良く効くでしょう?」
一度根に捕まり食らいつかれたら、逃れる術は有りませんのよ?
「ねぇ、あなたはお友達になってくれる?」
オウガ・オリジンが言った。目の前には彼女と瓜二つの少女の姿。
猟兵達の攻撃を受けても、狂気に突き動かされた少女は友達だけを求める。
それが、例え幻影だったとしても。
「彼女自身に似た姿、ですか……なかなか難しい注文を受けたものです」
鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)は呟いた。雪風の容姿はオウガ・オリジンと似ているとは言い難い。それならばどうするか?
今オウガ・オリジンの前に立つ幻影の少女が、答えであった。
雪風はスライド式幻灯機『影絵眼鏡』でオウガ・オリジンの姿を映し出し、雪風に重ねたのだ。
「ねぇ、お友達になりましょう? 大丈夫、誰とだってお友達になれるわ」
オウガ・オリジンがナイフを構える。雪風は身構えることなく、ぴくりとも動かない。
いいや、動けないのだ。派手な動きをしては、投影した像から外れてしまう。
「ならば、一歩も動かずに対敵を屠ればいいだけのこと」
不意に大地が揺れ、ひび割れて隆起した。その亀裂から桜の木の根が這い出し、オウガ・オリジンへと襲い掛かる。
「……これは、お友達じゃないわ」
ナイフを振い、木の根を斬り裂くオウガ・オリジン。だが、400本にも及ぶ根のすべてを払うことは出来ず、次第にオウガ・オリジンを包囲してゆく。
「この根は桜の木の下の伝承に基づき、『人食い』の概念を帯びていますので」
雪風が言う。オウガ・オリジンは『始まりのオウガにして始まりのアリス』。つまり、元は人なのだ。ならば、と、雪風が言葉を続ける。
「貴女には良く効くでしょう?」
「いやよ! わたしはあの子と、あの子と友達になるの!」
根を千切り、引き裂き、喰らいながらオウガ・オリジンは雪風の元へと向かう。
だが、幻影の少女……雪風は首を振う。
「一度根に捕まり食らいつかれたら、逃れる術はありませんのよ?」
オウガ・オリジンの脚に、根が絡みつく。オウガ・オリジンは力づくでそれを引きちぎり、がむしゃらに向かうが、それにも限界があった。
「いや、いやぁぁあっ……!!」
闇の中、木の根に飲まれてゆくオウガ・オリジンの悲鳴が響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
事前にUCを発動しオリジンの姿や動作を暗視して●盗み、
彼女の残像を身に纏う●防具改造を施すわ
こんにちは!こんな場所で何をしているの?
貴女はだあれ?私と良く似ているけど?
●演技をしつつ●ダンスを踊るように攻撃を避け、
"写し身の呪詛"を使い殺気を放つ分身を召喚
お友達がほしいのね!それなら向こうに美味しそうな人がいたわ!
敵が分身に●誘惑されて攻撃している隙に●力を溜め、
分身が傷ついたら爆発を起こす●破壊工作で隙を作り、
敵の死角から●ダッシュで切り込み●暗殺を試みる
…この悪夢にどんな意味があり、どんな過去があるにせよ、
猟兵としてこの地にいる私の為すべき事に変わりはない
…無明の世界に消え去るがいい
猟兵達の攻撃から逃れ、オウガ・オリジンが呟く。
「お友達……お友達……」
傷ついた身体を癒そうというのか、少年少女の骸にナイフを突き立て、肉を喰らう。
「これでまた……一つよ……」
うわごとの様に呟くオウガ・オリジン。正気を失った少女は残忍でどこか悲哀を漂わせていた。
「こんにちは! こんな場所で何をしているの?」
そんな彼女に、背後から呼びかける声があった。
振り向くと、そこには彼女とよく似た少女の姿があった。
エプロンドレスに大きなリボン。金髪の髪で、暗闇に包まれた顔は表情が伺えない。
まるで、オウガ・オリジンそのものだ。
「貴女はだあれ? 私とよく似ているけど?」
少女が問う。オウガ・オリジンは嬉しそうに答える。
「わたしはわたし。ねぇ、貴女、わたしによく似てるわ。お友達になって?」
表情があれば、無邪気な笑顔を向けていただろう。だがその顔面は闇の中で、周囲を漂うナイフの鋭さがオウガ・オリジンの狂気を剥き出しにしている。
「お友達がほしいのね! それなら……」
少女が指をさす。
「向こうに美味しそうな人がいたわ!」
指をさした先に、もう一人の少女がいたやはり同じような姿で佇んでいた。
「まぁ、素敵! 友達がいっぱいよ!」
オウガ・オリジンの注目は、指をさされた少女に向いたようだ。オウガ・オリジンはナイフを操り、少女を包囲する。
「全部、全部一緒になりましょう、ね?」
オウガ・オリジンは自分によく似たその少女を極力傷つけまいと、頸動脈にナイフの切っ先を押し付ける。鮮血が噴水の様に噴き出たその瞬間。
「……えっ?」
少女が大爆発を引き起こしたのだ。
指をさした少女の姿が変ってゆく。今までオウガ・オリジンが見ていた少女は、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が作り上げた残像であり、爆発を引き起こした少女はその分身。
オウガ・オリジンが状況を飲み込むよりも早く、リーヴァルディが駆ける。
「……この悪夢にどんな意味があり、どんな過去があるにせよ、猟兵としてこの地にいる私の為すべき事に変わりはない」
リーヴァルディが鎌を振いあげる。
「……無明の世界に消え去るがいい」
「いやああああっ!!?」
リーヴァルディの鎌がオウガ・オリジンを斬り裂いた。
「どうして、どうして……?」
オウガ・オリジンが膝をつき、嗚咽を漏らす。傷は浅くない。決着はもうすぐだ。
成功
🔵🔵🔴
ナイ・デス
友達……
一人は、寂しいですもの、ね
食べて、友達といつでもいっしょ、ですか……
では、どうぞ?
髪を切り、服を同じにして
中性的であるから、それなりには、似ているか
それなり程度、だけれど
食べようとするオリジンさんに、自ら仮初の肉体を差し出す
再生するから、弱かったから
【覚悟、激痛耐性、継戦能力】生きたまま食べられるという経験も、ある
そういう痛みに、慣れてしまっているから
差し出せる
食べさせて
『未だわたしは此処にいる』
私を食べて、オリジンさんが私に似た姿に変わったことで、ほぼ同じ
鈍ったところへ、攻撃を
【生命力吸収】する光で飲み込み喰らう【範囲攻撃】
今度は私が食べましょう
これで、いつでもいっしょ、ですね……?
「一人は嫌、誰か、友達になって……」
しきりにそう呟くオウガ・オリジンを憐れむような眼で、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は見つめていた。
「友達……一人は、寂しいですもの、ね」
それはナイ自身の経験もあるのだろう。寂し気に呟いたナイはゆっくりとオウガ・オリジンへと向かってゆく。
髪はばっさりと切って、オウガ・オリジンの長さに揃えた。服装もおそろいにして、エプロンドレスを身に纏った。ナイは男性だが、中性的な顔、身体つきのおかげでスカートが良く似合う。これならば、ある程度はオウガ・オリジンに近付いたと言えるだろう。
「あなた、友達?」
オウガ・オリジンがナイに聞く。ナイは無言で頷くと、オウガ・オリジンはナイフを抜いた。
「友達なら、いつも一緒よね?」
オウガ・オリジンがナイへ向かって言葉をかけ、それと同時に地を駆ける。
「いつでもいっしょ……ですか……」
ナイは身構えない。それどころか、オウガ・オリジンを迎え入れるように手を広げた。
「では、どうぞ?」
次の瞬間。ナイはざっくりと喉元を抉られていた。
「かはっ……」
言葉が出ない。激痛が走る。それでもナイは抵抗をしない。
「その手が素敵。わたしに頂戴」
喉にナイフを突き立てたまま、別のナイフで腕を斬り裂く。
「うふふ、一緒になりましょう」
オウガ・オリジンの黒く塗りつぶされた顔にナイの腕が触れる。
「…………!!!」
噛み千切られたような痛みが走る。ナイの腕から鮮血が迸る。
だが、それでも、ナイは抵抗をしない。
「……がっ、は、……!!」
ナイはヤドリガミだ。本体さえ壊れなければ再生する。
だからこそ、生きたまま食べられた経験もある。痛みには慣れていた。
以前は弱かった。だから、その時に比べればまだマシだ。
『未だわたしは此処にいる』
今は、戦う力があるのだから。
「ほら、わたしと同じ……同じよ……」
ナイを食べ続けるオウガ・オリジンの髪が白く染まる。どことなくナイに似た姿だ。
もはや、ナイは動かない。オウガ・オリジンはそんなナイをただ切り裂いて、好きなように喰らう。
そんな時、闇の中で一瞬光が輝いた。ふと顔を上げると、そこにはまた新たな『お友達候補』の姿があった。
髪は白く、今のオウガ・オリジンと同じだ。オウガ・オリジンは嬉しそうに、ナイフを構える。
「あなたも、同じね。お友達になりましょう?」
オウガ・オリジンがナイフを振り上げたその時。
「今度は私が食べましょう」
「えっ……?」
聞き覚えのある声。それは、その『お友達候補』は、今喰らったはずのナイであった。
ナイは再生が出来る。だからあえて食われたのだ。
そのナイフの切っ先が鈍るその瞬間の為に。
「あぁっ!!?」
ナイの身体が発光する。その光に飲まれ、オウガ・オリジンの身体が崩れてゆく。
「これで、いつまでもいっしょ、ですね……?」
「違う、違うわ、だってこんなに……!!」
オウガ・オリジンが痛みに身を捩る。身体の多くを奪われつつも脱出するが、もはやオウガ・オリジンは満身創痍であった。
決着の時は近い。
大成功
🔵🔵🔵
ユーノ・エスメラルダ
服装と、手袋と、髪型を変えれたなら似せることが出来るでしょうか…?
こういうやり方しか知らないというのは、悲しすぎます…
せめて一瞬だけでも、孤独から逃れられることを【祈り】、願わずにはいられません…
切り裂かれるのも【覚悟】の上で【手をつなぐ】ことで【慰め】ることが出来ないでしょうか
ユーノは猟兵ですので簡単には死なず【激痛耐性】もあります
許されるのなら、一度くらいは
●
攻撃は、UCで強化した『電脳ゴーグル』による電脳魔術の、プログラムの具現化を用います
AIで動く人形をできるだけ多く具現化し、可能なら武器を取り上げたいところ
彼女がオブリビオンである以上は倒さなければなりません
最後はごめんなさいと攻撃
ネーヴェ・ノアイユ
ここまで多様なオリジン様にお会いしてきましたが……。このオリジン様は……。
事前に着用してきたオリジン様とまったく同じ服装(頭のリボン以外)同じ長髪系であることなどを活かせないか試してみます。
それと此度は猟兵としてだけでなくアリスとしても戦いましょう。彼女もかつてそうであったアリスとして。
リボンへと飛んでくる攻撃のみ氷壁の盾受けにて確実に護りつつ魔力溜めしていた魔力を使用し、全力魔法にて殺傷力を高めたナイフを右手へと作り出します。
ナイフ制作後はオリジン様のナイフが体へと刺さる痛みに耐えながらオリジン様の心臓を目掛けて突撃を。一刺しにて決着を狙いにいきますね。
さようなら……。はじまりのアリス……。
「どうしていじわるをするの? わたしはお友達が欲しいだけなのに……」
傷を受けたオウガ・オリジンがまるでか弱い少女のように泣き崩れる。
だが、その背後にはそのか弱いはずの少女が作り上げた骸の小山。赤黒く、むせかえるような臭いが鼻を突く。
「こういうやり方しか知らないというのは、悲しすぎます……」
ユーノ・エスメラルダ(深窓のお日様・f10751)は痛ましい表情で、オウガ・オリジンを見た。
「ここまで多様なオリジン様にお会いしてきましたが……、このオリジン様は……」
ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)も言葉に詰まる。これまでの傲慢な様子とは違う。それが異質であり、異常でもあった。
服装は2人ともオウガ・オリジンと同じエプロンドレス。黒い長手袋をはめてそれらしくみせる。ユーノは髪を下ろし頭にリボンを結んだが、ネーヴェの頭のリボンだけは愛用のものから変えていない。それでも、それぞれオウガ・オリジンの姿に近付けることは出来たと言えよう。
オウガ・オリジンはそんな2人の姿を見て、ゆっくりと顔を上げる。
「あぁ……あなた達はお友達になってくれるの?」
黒く塗りつぶされた顔が、笑ったように見えた。ぞくりと背筋に悪寒が走ると同時に、無数のナイフが宙に浮かび、刃を2人へ向けた。
「ねぇ、あなた達も友達になって?」
ナイフが2人目掛けて放たれた。念動力で動くナイフは自由自在に宙を舞い、2人を切り刻もうと迫りくる。
「此度は……猟兵としてだけでなく、アリスとしても戦いましょう」
ネーヴェに向かうナイフが弾け飛んだ。氷の魔力で生み出した壁が、直撃を阻んだのだ。
「彼女もかつてそうであった……アリスとして」
ネーヴェが魔力を放つ。氷の壁は頭部……主にリボンを護るように展開し、残った魔力を右腕に集中させた。
ユーノは電脳ゴーグルを介してオウガ・オリジンを見る。
電脳魔術を具現化し、いくつもの自立人形を生み出すと、飛び交うナイフへと向けた。
自立人形たちがナイフを取り上げ、攻撃手段を挫く。だが、次々と生まれるナイフに、全てを止めるのは不可能だと知る。それでも生まれた隙をつき、ユーノが駆けた。
(許されるのなら、一度くらいは)
ユーノは猟兵だ。世界の崩壊を目論むオブリビオン、ましてやその首魁を倒さずにはいられない。
それでも、目の前の少女はあまりに哀れで、小さかった。
飛び交うナイフが肌を裂く。痛みに耐えながら、ユーノは一歩、また一歩と距離を詰める。
「どうして悲しそうな目をするの? 大丈夫、誰とだってお友達になれるわ」
「……!」
オウガ・オリジンの質問に歯がゆさを覚える。
この歪み、この悪夢を正すことは出来ないのかもしれない。
(せめて一瞬だけでも、孤独から逃げられる事を……)
ユーノの手が、オウガ・オリジンの手を握った。
「……なぁに?」
それは祈り。それは願い。彼女が安らぎを得られるように。安らかに眠ることが出来るように。
「あたたかいわ。ねぇ、はやくお友達になりましょう」
オウガ・オリジンの黒塗りの顔がユーノの腕に触れた。
「ああああぁぁっ!!!」
噛み付かれたような激痛にユーノが悲鳴を上げた。だが、歯を食いしばり、オウガ・オリジンを抱きしめる。
「ユーノは……猟兵です! 簡単には死にません!」
「……どうして?」
それ以上、オウガ・オリジンは語らない。言葉の意図は読み取れない。だが、確実に猟兵達を襲うナイフの動きは鈍っていた。
「今、です!」
「え?」
ユーノが身体を離す。その背後に、突撃してくるネーヴェの姿があった。
ネーヴェは全身傷だらけだ。無数のナイフは受け流しきれず、しかしユーノのサポートがあったおかげでこの程度で済んだ。
その右腕には鋭くとがった氷のナイフが握られ、一直線にオウガ・オリジンへと刃を向ける。
「うっ……」
その刃が、不意をつかれたオウガ・オリジンの心臓に深々と突き刺さった。
オウガ・オリジンが膝をつき、まるで人形のように力なく倒れた。
「お友達……おとも、だち……」
うわごとのように呟きながら、オウガ・オリジンがユーノに手を伸ばす。
「ごめんなさい……」
手を握り返し、うずくまる。握った手は急速に体温を失ってゆき、力を失い床に落ちた。
闇の世界が崩れる。間もなく猟兵達は元の世界へと帰ることが出来るであろう。
ネーヴェは振り返り、オウガ・オリジンの骸を見やる。
「さようなら……。はじまりのアリス……」
この世界と共に消えてゆくオウガ・オリジンに、ネーヴェも祈りを捧げるのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴