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迷宮災厄戦⑱-15〜完全模倣・叡智の氷王

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●???の国 → 絶対零度の凍結世界の国
 ぐにゃりと空間が歪み、世界が書き換わる。
 氷霧に覆われた空、一面に広がる永久凍土、ときおり寒風が吹くほかは分子運動すら起こらないような万物が凍てついた荒野に、”彼”は独りきりで佇んでいた。
 学生風のネクタイ姿に、不可思議な文字で埋め尽くされた外套、そして魔術師然とした尖り帽子。
 何処からどう見ても、おそらくはユーベールコードを用いて観察しても疑いの余地がないほどに完璧な、書架の王『ブックドミネーター』がそこにいた。
『……ああ、なるほど。”私”はそういう風に考えていたのか。ならば致し方ない。”あれ”は使わずにおくとしよう』
 まるで他人事のように、ブックドミネーターは合点がいったと何度も頷いて、そして虚空を仰ぎ見て言った。
『六番目の猟兵よ、視えているのならば先に謝罪しておこう。今回の戦闘において、私は素手のままで戦う。……ゆえに、楽には死なせてやれそうにない』

●グリモアベース
「……もう一度言っておくけど、今回の討伐対象はオブリビオンフォーミュラ『オウガ・オリジン』よ」
 念のため再確認してから、グリモア猟兵の田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)は説明に入った。
「オリジンは現実改編のユーベールコードによって、自分自身を含めた『不思議の国』すべてを変化させて、猟兵を待ち受けているわ。皆に向かってもらう先は、時間すら凍結させる極寒の国、書架の王『ブックドミネーター』が君臨する地よ」
 と、映写機を操作して投影した資料映像は、一言一句ブックドミネーターに関するものと同じだった。
 外見から中身まで、果ては周囲の環境すらも完璧に模写した変身。その意味を改めて理解した猟兵は、空恐ろしいものを感じる。
「そんなわけで、対策もブックドミネーターに対するのと同じになるわ。能力値も技能レベルも猟兵の最高位を軽く凌駕する相手。戦闘におけるイニシアチブは常に敵が握るものと考えて、作戦を練ってちょうだい。ヒントになりそうな情報は、できる限りまとめたわるわ」
 そう言って、ユウナは映写機のリモコンを片手に、次々と映像を切り替えていく。

「まずは大まかな戦闘スタイル。《戦闘知識》を主軸とした《技能》による先制攻撃が基本みたいね。徒手空拳だけど、それが付け入る隙になるかは疑問かな。……で、ユーベルコードは、以下の3種から猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値・回数だけ選択してくるわ。
 一つ目は、時間を凍結させた氷を全身に覆う自己強化ね。各種戦闘能力値が上昇して、超高速で飛行することも可能になる。
 そして二つ目は、猟兵が使用したユーベルコードに対して有利を取れる能力を持つオブリビオンを召喚する技。こいつは一点特化の能力でしかないから、どんな奴を召喚するか予想して対策を立てれば何とかなると思う。ただ、オブリビオンの相手に気を取られてブックドミネーター本体のことを忘れないよう注意してね。
 最後の三つめは、『ゼロ時間詠唱』による治癒。任意のタイミングで発動し、時間が止まった中で自分ひとりだけ回復するって技よ。その性質上、ユーベルコード発動は後攻になることが多いと思う」

 自己強化、敵妨害、ゼロ時間回復。それらを駆使したうえで通常攻撃を行ってくる。と、簡単に言ってしまえばこうなるだろうか。
「対処の方法については、個々人の判断に任せるわ。ユーベルコード、技能、装備アイテム、その他諸々、どんな手段でも構わないけれど、数や性能をそろえただけで通用するような相手ではない。重要なのは、過剰も不足もなく適切な作戦を立てることができるか、よ」
 伝えられることは以上、と締めくくり、ユウナは猟兵たちをテレポートさせるため、グリモアの準備に取り掛かる。


黒姫小旅
 どうも、黒姫小旅でございます。
 此度は圧倒的な格上が相手となりますので、プレイングや成功度判定の結果によってはヒドイ目に会う可能性が多分にあります。ご注意ください。
 また、敵が使用するユーベルコードやプレイングボーナスの判定基準など、他のシナリオと解釈が異なる場合があります。なるべくオープニングで補足しているつもりですが、こちらもご注意お願いします。

●補足:【蒼氷復活】
 召喚されるオブリビオンは、すべて当シナリオ限定のオリジナルとします。外見や能力については自由に指定していただいて構いませんが、実在する宿敵を参照することはありませんので、ご了承ください。

●特殊ルール
『どれだけ下記の条件に適しているか』に応じて成功度判定のサイコロ振り直しの回数が増加します。

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プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
=============================
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』ブックドミネーター』

POW   :    「……あれは使わない。素手でお相手しよう」
全身を【時間凍結氷結晶】で覆い、自身の【所有する知識】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    蒼氷復活
いま戦っている対象に有効な【オブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    時間凍結
【自分以外には聞き取れない「零時間詠唱」】を聞いて共感した対象全てを治療する。

イラスト:108

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヤニ・デミトリ
能力に意識すらもとは全く破格っス
完全模倣、ご教授願いたいもんスねえ

にしても強化が規格外すぎるんスよ!
鈍色の眼、音と空気の流れから攻撃を見切るが、全て見ていては遅い
経験と兵器の頃の勘(第六感)を頼りに体を崩し回避
掠める部分は泥刃で武器受け
…するが、俺の体は可変
化け術で被弾具合の外見を偽る
狙いは相手の見積りを狂わせ
目立たず相手に付着した泥から生命力吸収する事

知略に長けるからこそ
手数を見誤るのは大きい筈
そして力を吸う事で弱体を謀ると共に
その結晶を破るだけの力を得る
凌いだ一瞬に反撃
尾からUCを放ち焼き融かす

停滞した時の中も暴虐の頂も孤独
愉しかないでしょう
その結晶くらいは引っ剥がせりゃいいんスけどね!




『時よ凍結せよ。我が身を覆う鎧となれ』
 途端、絶対零度の魔力が噴き上がった。凍り付いた時間は蒼き結晶となり、ブックドミネーターの全身を包み込んでいく。
「いや、本当はオウガ・オリジンなんでしたっけ? 完全模倣とはよく言ったもんスね。ひとつ、ご教授願いたいもんだ」
 本気半分軽口半分、ヤニ・デミトリ(笑う泥・f13124)は苦笑気味に口の端を歪めて、演算デバイス『鈍色の眼』を光らせた。視覚情報分析、敵の戦力評価と、地形環境も含めたあらゆる要素から攻撃線を予測――――来る!
「ッ…………!?」
 鋼が砕けるような音が響いて、防御のため刃に変形させた右腕が吹き飛んだ。衝撃で、ヒト型だった体が、ブラックタール特有の泥のような流体になって崩れ落ちる
 ……速い! 目で追えるような相手などとは端から思っていなかったが、規格外どころでは言い表せない超加速だ。
『致命傷は避けたか、いい勘をしている。だがブラックタールよ、今のでかなりの体積を失ったようだな。ざっと見積もって、身体能力24%低下といったところか?』
 懸命に体を再構築しようとするヤニを、ブックドミネーターは深遠なる瞳で見下ろして、腕に付着した泥汚れを振り落とすと突撃の構えを取った。
 一瞬のタメを経て、発進。神速にして怪力の一撃が、真正面から襲いかかる。
 ゴオオオウウウウゥゥ!!
 激突によって地面が爆ぜた。雪塵が舞い上がり、二人の姿を覆い隠す。ヤニの安否は、戦いの結末は、徐々に晴れゆく煙幕の向こうに……
『――――馬鹿な』
 書架の王は瞠目した。振り抜いた拳の先には何もなく、ヤニは体一つ分だけズレた位置に立っている。回避性能は確実に把握していたはずなのに、何故躱すことができたのか。
『目算よりも速かった? 損傷具合をごまかして……いや、それよりもむしろ私の方だ。何故トップスピードに乗れなかった……?』
 刹那の思考、ブックドミネーターは視線を巡らせ、そして答えを見つけた。
 拳を包む氷結晶に、黒くこびりついた泥のようなもの。それは、最初の交錯でもぎ取ったヤニの右腕から付着したものだ。結晶と結晶の隙間に入り込んだ泥が寄生虫のごとく生命力を吸い上げていたことに、ブックドミネーターはようやく気付いた。
『なるほど。そして吸収したエネルギーは……』
「俺が反撃に使わせてもらう、ってな寸法っス!」
 一撃必殺を期した攻撃が空振りして生じた、千載一遇の勝機をヤニは逃さなかった。
 魚のそれを思わせる金属製の尻尾を伸ばしながら、ユーベルコード【屑鉄達の灼息】によって銃身生成。超至近距離から放つ熱光線が、結晶化した時間の鎧を貫いて胸板に風穴を開けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・零
【戦闘知識+世界知識+情報収集+追跡】をし、戦況、地形、弱点死角を把握し、敵の行動を予測し柔軟に対応

※防御は【オーラ防御】で霊力の壁を作って威力軽減、防御

先制は上記技能を駆使しいつ使われてもいい様に把握しておき、十の死の感電死、毒死、凍死の骸などで落雷、毒の霧、氷の刃や吹雪など状態異常攻撃を狙う(アレンジ可)
万が一の為【第六感】も働かせる

遠距離は十の死とグレイヴ・ロウで戦況により対応
近接はØ

『とある夜に霧に包まれた街のお話です。ふふ、あくまでも噂話ですが』

指定UCを発動し強化、回復効果のプラス効果を反転する霧を戦場全体に
零時間を使ってもダメージ、POWの効果が残っていれば弱体効果にもなる




「――グレイヴ・ロウ!」
 天星・零(零と夢幻、真実と虚構・f02413)が掌で地面を打つと、凍てついた大地から十字の墓石がせりあがった。
 同時に生成した霊力場と合わせて二重の防壁を張り、守りを固めたうえで十通りの死因を司る骸たち『十の死』をけしかける。
 落雷による『感電死』、毒性の霧に巻かれて『毒死』、吹雪に飲まれて『凍死』。多種多様な『死』が雨あられと降り注ぐのを、ブックドミネーターは静かな面持ちで見上げて、
『ふむ』
 と、頷き――殴った。
 稲妻を素手で打ち返し、焼けた肌が毒に爛れたところへ、氷結が獣牙のように喰らいつく。満身創痍になりながら、ブックドミネーターは顔色一つ変えることなくそのままの勢いで一直線に突っ込んでくる。
 爆音。
 破城槌でも打ち込まれたような衝撃が走り、石と霊力による二重の壁はいとも容易く砕け散った。
『なかなか多様性に富んでいるな。こういうタイプは得てして、力任せに押し切るやり方が一番効く』
「ぐっ……」
 壁の残骸を乗り越えて現れた赤い双眸に射貫かれて、零はたじろぎながらも虚空より『Φ』を引き抜いた。
 ……ユーベルコードも使わず、拳一つでコレですか!
 化け物じみた突破力に、背筋を冷たいものが走る。持ち込んだ武器類はすでに使い切っており、残っているのは短剣一振りだけだ。敵もボロボロになっているとはいえ、地力は遥かに勝っている相手と差し向かいで渡り合うことができるか……
『さあ、決着といこうか!』
 凄まじい殺気が迸った。
 目が眩むようなプレッシャーにさらされながら、零は必死に頭脳を巡らせる。互いの位置関係、足場や風向きなど地形環境、敵の言動などあらゆる情報から、次の一手を予測し、対応策を組み立てる。
「来るのは、真正面からの拳打。避け……いや防御!」
 瞬時の判断で、選択したのは真っ向勝負。短剣を構えて拳を受け止めようとする零に、ブックドミネーターは赤眼に嘲弄を浮かべて――
『――ゴホッ!?』
 唐突に、全身から血を噴いて倒れ伏した。
『い、いったい何が……』
「どうにか間に合いましたか。……これは、とある夜に霧に包まれた街のお話」
 膝をつく書架の王を見下ろして、零が朗々と諳んじるのは【噂綴・壱「永眠街」】。回復や強化といった効能を逆転させる、呪いの霧にまつわる噂話だ。
「ダメージ覚悟で突っ込んで、攻撃の直前に回復して全力のラストアタック、といった算段でしたか? それが成功していたら僕などひとたまりもなかったでしょうが、残念ながら僕のユーベルコードとは相性が悪すぎましたね」
『……なるほど、最後の最後で詰め損じたか。せめてもう少し、賽の目がこちらを向いていたなら、一矢報いることができたものを』
 一度展開してしまえばゼロ時間詠唱であろうと関係なく、むしろ途中で気付く暇もないため中断することもできずに、逆回復のダメージをを余すことなく受けたブックドミネーターは悔しげに頭を垂れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

カシム・ディーン
…判りますよ
ええ…判ります
お前…帝竜ですね?
帝竜ですよね?
帝竜眼が示しています
その竜の気配を(狂った笑顔

対POW
【視力・情報収集・医術】でその動きと肉体構造と増加した戦闘力の変化を冷徹に観察

【属性攻撃】
光属性を全身に付与

可能な限りダメージの軽減を図り
勢いよく吹っ飛んでのたうち回り消える

光学迷彩で姿を隠し
【迷彩】で更に精度を強化

中々の反則ぶりですが
手が全くないわけじゃないですね

僕はお前より知識はないかもしれませんが
それでもやれる事はありますよ

UC発動!
強奪を狙うのはその時計!
そして真の狙いは
眼球!
【盗み攻撃・盗み・二回攻撃・力溜め】で威力と精度を増強!

お前の眼球…寄越せぇええ!!!!




「お前……帝竜ですね」
『はて、何のことかな?』
 とぼけているのか、本当に心当たりがないのか、どちらともつかない表情で首を傾げるブックドミネーターの声は、しかしカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)には届いていないようだった。
「判りますよ。ええ、判ります。帝竜ですよね?」
『……妖怪の類でもなかろうに』
 狂的な笑みを浮かべて詰め寄るカシムに、ブックドミネーターは処置なしとばかりに首を振ってユーベルコードを発動。時間を凍結させた蒼き結晶をその身に纏う。
『早々に去ね!』
 ボッ、と空気の爆ぜる音がして、気付いたときにはカシムの体は宙を待っていた。
 なんとすばやく、そして重い衝撃。それこそ巨竜の突進でも受けたような、凄まじい威力だ。
「が……ァッ!?」
 血だるまとなったカシムは激痛にのたうちながら、凍った土の上に落下して――溶けるように消失した。
『消えた? 光学迷彩か。……上手く受け身を取ったようだし、見かけによらず冷静らしいな』
 感触を確かめるように手を開閉し、ブックドミネーターは叡知をたたえた赤瞳で周囲を見回して、姿を消したカシムの気配を探る。
 ……さすがに、油断はしてくれませんね。
 鶉のように息を潜めながら、カシムは胸の内で呟いた。
 パワーでもスピードでも圧倒的な格上で、しかも心理的な隙まで見当たらないとは破格がすぎるが、だからといって諦める気は毛頭ない。わずかでも注意が逸れるタイミングをうかがい、一か八かに賭けて飛び出す。狙うは敵の懐で淡々と時を刻む懐中時計。勝負は一瞬、気付かれる前に、届け――
『そこかっ!』
 氷結晶の籠手に包まれた五指が、視界を塞いだ。顔面を鷲掴みにされて、ガクンと首に衝撃。光学迷彩がノイズとともに解除されて、全身の姿が露になる。
「う……ぁぐ……」
 万力のごとき握力で頭蓋を掴まれ、カシムは苦しげに呻いた。宙吊りにされて、伸ばした手は何を掴むこともできず、指先に鎖の滑らかな感触だけを残して空しく垂れ下がって……さあ、ここからだ。
『ぬ……!?』
 書架の王をしてたじろがせるほどの、狂おしい執念が燃え上がる。
 もとより懐中時計などに興味はない。重要なのは成否ではなく、盗人の指が命中したという事実そのもの。前提条件を満たしたことで、ユーベルコードが発動する。
 ――万物の根源よ。我が手に全てを奪う力を示せ。【わたぬき】!
「お前の眼球……寄越せぇええ!!!!」
 再び伸ばされる左手。それは翳された防御も結晶の装甲もすり抜けて、顔の骨を握り潰されそうになっても構わずに、万書を司どる王の眼を抉り盗る。
『ぐおおおぉぉぉ!?』
 悲鳴が上がり、乱暴に放り投げられた。
 カシムは二度目となる浮遊感の中で、右目を押さえて悶え苦しむブックドミネーターの姿を見た。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

卜二一・クロノ
オウガ・オリジンとブックドミネーターが同じ判断か
つまり“あれ”とはアレの事で間違いなさそうだな
天界に固執するなら、確かにそれは必要だ
だが、ここでソレを温存することは正解かどうか、己の身で確かめるがいい

奴は我を害するために、奴は必ず我に近づくことになる
その一撃は【激痛耐性】【オーラ防御】【武器受け】で耐え凌ぐしかあるまい
我が糸あるいは髪より繰り出される【カウンター】および【捨て身の一撃】にユーベルコード【神罰・時間操作の代償】を載せる
ただの一撃、それだけで【神罰】は執行される

頼りとする時間操作が容易に使えなくなる中、どれほどの事ができるのか、見定めさせてもらおうぞ




「やはりアレは使わないか。この局面に至ってもその判断を崩さないということは、我が予測に誤りなしとみて良さそうだな」
 意味深なことを呟きながら戦場に現れた卜二一・クロノ(時の守り手・f27842)を、満身創痍のブックドミネーターは無言で見返して、
 ――――!
 一瞬とか、あっという間とか、そんな次元ではない。
 何の予兆もなく、気付いたときにはボロボロになっていたブックドミネーターの体は元通りになっていた。
 時間凍結によるゼロ時間回復。すべての傷を、一切の時間経過もなしに治癒せしめたユーベルコードに、トニーは称賛の念すら覚える。
「大した回復能力だな。しかし、劣勢であることに変わりはあるまい。必要だからとはいえ、アレを温存することにしたのは、果たして正解だったかな?」
『知ったような口を利くのだな。何か掴んでいるのか、それともブラフか、あるいは単なる妄言か……まあ何でもいい。どうであれ、長々と歓談する時ではない』
 肩をすくめてそれっきり、ブックドミネーターは口をつぐむと、代わりに強烈な殺気が立ち上る。
 お喋りはここまでか、とトニーは戦闘態勢を取り……激突。
「ぐっ……つ、強い!?」
 自在に動く黒髪を盾のように展開して攻撃を受け止めたトニーは、あまりの威力に踏みとどまることもできず吹っ飛ばされた。
 敵が行ったことといえば、彼我の距離10mばかりを助走なしに跳躍して蹴っただけ。ユーベルコードですらないただの跳び蹴りで、惜しみなく神気を流し込んだ自慢の髪は散り散りに引き裂かれ、トニーは干草の塊みたいに地面を転がった。
「ぬう、おのれ!」
 靴裏で土を踏みつけ、立ち上がりざまに残された髪を伸ばして四肢を縛り上げるが、ブックドミネーターはひたすら冷たい表情で、
『軽いわ!』
 その一声だけで千切り捨てる。
『それで、もうお仕舞いか?』
「……ああ、そうだな」
 力尽きたように、トニーは項垂れた。
 持てる神気のすべてを出し尽くし、もはや髪を操ることもままならない。出来る限りのことをやった結果が現状で……目論見通りと言って差し支えない出来栄えだ。
『ッ!? これは……』
 異変に気付いたブックドミネーターは、目を剥いた。
 髪が巻き付いた手首足首に神々しいオーラがこびりついており、瞬く間に全身へと広がっていく。
 新品同様だった衣服が朽ちていき、癒したはずの傷口が開いて、再生した右眼球が消失、時の氷結晶が融解し高温蒸気となって肌を焼いた。
「……ユーベルコード【神罰・時間操作の代償】。ただの一瞬でも、触れさえすれば執行される。頼りの時間操作を禁じられて、どれほどの事ができるのか、見定めさせてもらおうぞ」
 トニーは傷ついた体を押して不敵な笑みを浮かべ、思うがままに時間を弄んだ罰に苛まれるブックドミネーターを見下ろした。

成功 🔵​🔵​🔴​

バーン・マーディ
……別の物に変ずるか…
東方の妖怪にも通じるか

対素手
【オーラ防御】展開
相手の知識で動きを読まれるのは覚悟
車輪剣と魔剣を構え
【二回攻撃・怪力】で接近時に猛攻による切りかかり
避けられ防がれようとも
【武器受け】でダメージを抑えながら
回避が苦手と言う事を理解させる
故に防御を砕くだろう苛烈なる一撃を誘い

その上で魔剣と車輪剣を以てそれが弾かれ犠牲となろうとも致命だけは避け切る!

凄まじい力だ
時を統べる恐るべき力だ
故に…我はその絶対たる蹂躙に…叛逆する

大いなる叛逆発動
【カウンター・二回攻撃・怪力・吸血・生命力吸収】
そして書架の王の打ち込んだ力も込めて
我が拳を以てその結晶毎粉砕せん!
この身砕けようと拳は届かせる!




 ギャリギャリギャリギャリギャリ!!
 けたたましい爆音を奏でながら、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)の車輪剣が高速で回転する。
 先端に取り付けられたトゲ付きタイヤで地面を削りながら、駆け寄りざまの逆袈裟斬りに、ブックドミネーターは即応した。飛猿のごとく跳躍して、車輪剣のメカニカルな長柄を掴む。
「ぬんっ!」
 すかさず、バーンはもう片方の刃を振るう。聖と悪、相反する相をあわせもつ金柄の魔剣による斬撃を、なんと相手は靴底で受け止めた。
 車輪剣の上に逆立ちしたまま、曲芸じみた妙技でバーンの二刀流を防いだブックドミネーターは、時間を凍らせた蒼氷の鎧で体を覆いながら、全身に力を込める。
 怪力が拮抗。ギ、ギギギギギ…………グワァン! 限界寸前まで曲げたバネが弾けるようだった。ブックドミネーターの発力がバーンの耐久を上回り、両手の剣を吹っ飛ばす。
 凄まじい力だ! 偉丈夫のバーンと比べれば半分程しかなさそうな痩躯からは想像もできない、爆発的な筋力。時間を統べる異能だけではなく、基礎能力だけで評価しても恐怖を覚えるレベルである。
「絶対的……絶望的な、力…………だが、故にこそ!」
 男の双眸が暗黒に燃えた。ドン! と踵を地面に打ち込んで突進姿勢。武器もろとも飛びそうだった意識を繋ぎとめ、空になった拳を硬く握りしめる。
「我は貴様に叛逆する!」
『いいだろう、叩き潰してくれる』
 双方、同時に地を蹴った。
 蒼き結晶に包まれた剛腕と、叛逆の意志を宿した漆黒の拳が交差して、互いを削りあいながら殴りにいく。黒鎧の破片が飛び散り、砕けた氷が雪のように舞う、その先にある強敵の命を破壊せんと……――――
「己が咎を味わえ、【大いなる叛逆】!!」
 バーンの拳が唸りを上げた。全身全霊に相手の力まで上乗せしたクロスカウンターが、闇夜を切り裂く流星のごとく赤熱し、ブックドミネーターの胸をぶん殴る。
『ごっ……!?』
 背中を抜けて後方の空まで届くような強烈な衝撃が、ブックドミネーターの心臓を貫いた。
 左胸の一点が陥没し、そこからヒビ割れが全身へと伝播。崩れゆく時間結晶に埋もれるようにして、ついに書架の王は倒れ伏す。
『……お……おの、れ』
 身を起こそうとするブックドミネーターに、バーンは再び戦闘態勢を取ろうとしたが、すぐにその必要がないと気付いて構えを解いた。
 もはや、相手に戦う力がないことは明らかだ。
 無限にも思えた魔力が急速に衰えていき、青髪赤眼の端正な顔立ちがドロリと溶けて、顔のない少女へと変貌する。
『おのれ……おのれ、おのれ、おのれぇぇぇぇ!! 猟兵どもが、汚らわしい塵芥の分際で、このわたしを殺すなんて、絶対に許さない! 後悔させてやる。必ず蘇って、貴様らもこの世界も、全部まとめて滅ぼしてやるからな!』
 さながら、昔話に出てくる人に化ける妖怪のように、死の間際に正体を現したオウガ・オリジンは、これまでブックドミネーターに成りきっていたのが嘘みたいに口汚く呪詛を吐き散らしながら消滅していった。
【END】

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月26日


挿絵イラスト