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迷宮災厄戦⑱-17〜LIVE or EVIL

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン #鏡写しの私

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●鏡のラビリンス
「鏡よ鏡なんて、わたしが言うとでも? 鏡はわたし自身。わたしが鏡であり、鏡がわたし。わたしが映すのは邪悪なる、あなた」
 オウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードが輝く。
 それはオウガ・オリジンの体を不思議の国ひとつぶんはあろうかという広大なる『鏡のラビリンス』へと変貌させる。
 あまりにも広大なる不思議の国。
 全てが鏡で出来ており、そこへ足を踏み入れた者はまるでミラーハウスのように己の姿ばかりしか見えなくなってしまう。

「うふふ、うふふ、鏡写しはそっくりさん。けれど、ひとりでに動いてしまったのならばきをつけなさい。鏡は鏡。けれど、鏡はわたし。悪意には悪意を、敵意には敵意を。猟兵には死を」
 歌うようなオウガ・オリジンの声が響き渡る。
 それはこれから繰り広げられる猟兵同士の殺戮を観戦するかのような気安さでもって、紡がれる。何もオウガ・オリジンが猟兵と戦う必要はなかったのだと、現実改変ユーベルコードによって生み出されたのは、この地に足を踏み入れた猟兵の『鏡写しの私』を召喚し、共倒れさせればよかったのだから。

「ああ、楽しみ。わたしは見ているだけ。ポップコーンでも抱えて観戦しよう。猟兵達が己の姿に負けるのを。醜く、惨たらしく死ぬのを観戦しましょう、そうしましょう」
 オウガ・オリジンの歌うような声がご機嫌に『鏡のラビリンス』に響き渡る―――。

●迷宮災厄戦
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回は『鏡のラビリンス』と呼ばれる、オブリビオン・フォーミュラ……オウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードによって変身した不思議の国ほどもある大きさの鏡の世界を打ち砕かねばなりません」
 現実改変ユーベルコード。
 それはオウガ・オリジンが持つ凄まじき力を持つユーベルコードである。その力は様々な効果を持ってオウガ・オリジンをオブリビオン・フォーミュラ足らしめている。
 猟書家との戦いで徐々に本来の力を取り戻しつつあるオウガ・オリジンが取り戻した力の一端が、この『鏡のラビリンス』へと変身する力であるというのだ。

「この『鏡のラビリンス』そのものが、オウガ・オリジンが変身したものであり、この地に足を踏み入れた猟兵のそっくりさん……つまり召喚された『鏡写しの私』を倒し続けることによって『鏡のラビリンス』も崩壊し、それによってオウガ・オリジンも倒すことができるのです」
 今回、オウガ・オリジン本体と戦うことはないが、召喚される『鏡写しの私』と呼ばれる猟兵そっくりの敵を倒し続けると、『鏡のラビリンス』事態を砕く事ができるのだ。
 そうなれば話早い。
 だが、ナイアルテはすぐに転移しようとする猟兵たちを引き止める。

「お待ち下さい。『鏡写しの私』と呼ばれる皆さんのそっくりさんなのですが……彼等は皆、足を踏み入れたみなさんと全く同じ能力を持っていますが、姿が左右対称で性格が正反対なのです」
 『鏡写しの私』はつまるところ、見分けるためには左右対称な姿をしている自分を見つければ良いということだ。
 さらに性格が正反対とは……いうなれば、臆病な者は勇猛果敢になる。また逆も然りということだろう。
 この能力はまったく同じ、姿は左右対称。けれど性格は正反対というなんとも、嫌味に満ちた嫌がらせのような能力をもたせる所がオウガ・オリジンの性格の悪さを現しているようだった。

「確かに……オウガ・オリジンの性格は悪辣そのものですが、能力自体は凄まじきものばかりです。今回の『鏡写しの私』も、皆さんにしかわからない攻略法があると思われます。それを留意しつつ、打倒を心がけて頂くことが、勝利への第一歩かと……」
 自分の性格が正反対の存在。
 それは如何なるものであろうか。また、それに対して自身がどのような攻略法を見出すか……それはナイアルテにとっては及びもつかないものであった。

「私の性格が正反対でしたら……皆さんに意地悪なことばかりする者になっていると思いますね。転移する場所をずらしたりだとか……ふふ、そんなことはしませんよ。ですから、安心して転移してくださいね」
 少しだけイタズラっぽい表情を浮かべてナイアルテは猟兵たちを送り出す。
 自分自身との戦い……いや、性格が正反対であるからこそ、さらなる強敵になる者だっているだろう。
 それを思えば少しだけ意地の悪い冗談を告げてしまったと、ナイアルテは一人反省しながら、猟兵たちを転移させるのだった―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。

 鏡のラビリンスに存在する『鏡写しの私』を打倒しましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……「鏡写しの私」を攻略する。

 それでは、迷宮災厄戦を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『「鏡写しの私」と戦う』

POW   :    「姿が左右対称」「性格が正反対」だけならば、戦闘力は同じ筈。真正面から戦う

SPD   :    「姿が左右対称」である事を利用して、攻略の糸口を見つけ出す

WIZ   :    「性格が正反対」である事を利用して、攻略の糸口を見つけ出す

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メンカル・プルモーサ
正反対の自分、ねぇ…
…こっちに向けて雑に【精霊の騒乱】をぶっ放してこれでは自分といえどひとたまりもあるまいとか言いながらふはは笑いしているのがそれかな…そっくりだし…
…正反対って言ったらそうなるよなぁ…なんかもうこっちを倒したようなテンションだし……あの性格…私の能力と相性悪すぎるのでは?
とは言え、雑に制御しないでぶっぱしてる分、暴走しかけて威力上がってるんだよな…地面に扉型魔法陣を描いて【旅人招く御伽宿】の中に一旦退避してしまおう…
…発動時間は把握してるし…終わったら外に出て勝った気で居る正反対の私に術式装填銃【アヌエヌエ】で射撃、仕留めてしまおう…
…昨日の私の方がまだ強かったような…



 鏡のラビリンス。
 それは現実改変ユーベルコードによって、オウガ・オリジンが変身した不思議の国ひとつぶんほどもある巨大なる鏡の国。
 その地に足を踏み入れたものは例外なく『性格が正反対』でありなおかつ、『左右対称』の姿をした自分自身―――『鏡写しの私』と相対する。
 それは自分自身であるが、性格がまったく異なる正反対の自分。
 己がどのように自身を定義しているのか、己自身もまた完全に理解しているところではないだろう。

「……正反対の自分、ねぇ……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)にとって、それは想像しにくい代物であったのかも知れない。
 自分と正反対の性格。自分の知識への欲求と好奇心はよく知るところである。
 この逆……となると知識への欲求はなく、好奇心のない存在ということになる。そして、意外と行動派なのだが、それが消極的になった、という『鏡写しの私』が現れるのではないかと、メンカルは密かに分析していたのだが……。

「世の理よ、騒げ、暴れろ。汝はえーと、なんだっけか。ともかく、ばーんとやってどーんってやって」
 それはメンカルの知る所のユーベルコード、精霊の騒乱(エレメンタル・ウォー)。その威力は凄まじく、属性と自然現象を合成した現象を発動させていた。炎の竜巻は暴走仕掛けているのではないかと言うほどに威力の上がりきった一撃であった。
 その炎の竜巻がメンカル目掛けて放たれる。
「ふはは、これでは自分と言えど、ひとたまりもあるまい。ふはは!」
 アレは間違いない。どう見ても『鏡写しの私』たるメンカル。ただ、にわかには信じ難い。というか信じたくない。
 それに、なんだその雑な詠唱は、と思いながら、メンカルもまたユーベルコードを発動させる。
「憩いの場よ、開け、招け。汝は旅籠、汝は客亭。魔女が望むは困憊癒やす隠れ宿」
 旅人招く御伽宿(スパロウズ・ホテル)。それは小さな扉型魔法陣に触れることによってメンカル自身を吸い込み、炎の竜巻から身を躱す緊急避難用のユーベルコードである。

 中はガジェットが歓待し、傷と疲労を癒やしてくれる宿屋になっているのだがその中でメンカルは指を顎につけて首をひねる。
「なんか雑にユーベルコードをぶっ放してたけど……そっくりだし、あれなのかな……嫌だな。でも、正反対って言ったらそうなるよなぁ……なんかもうこっちを倒したようなテンションだし……あの性格……私の能力と相性悪すぎるのでは?」
 ユーベルコード内の宿屋の中でふむふむと考察に耽るメンカル。
 色々考えたが、あの理詰めではない、大雑把な感じは言われてみれば確かに自分の性格の反対だ。
 きちっと理路整然に理論を固めていき、橋を叩いて渡るような自身と比べると、暴走しかけながらもなんとなくでユーベルコードを制御しているのが、ある意味そうであると言えばうなずけるのだ。

「……あのユーベルコードの発動時間は把握しているし……」
 もうそろそろだろう。
 こん、と地面に描いた魔法陣が起動し、ユーベルコードからメンカルは外へと飛び出す。
 といっても、バカ正直にユーベルコードが展開した正面に飛び出すことはしない。
 もうすでに勝った気でいる『鏡写しの私』の正反対……つまりは、背中を向けた『鏡写しの私』のいるほうへと魔法陣が出現し、メンカルの姿が飛び出す。

 術式装填銃、アヌエヌエを構え、背後からの一射で容易く『鏡写しの私』が砕け散る。想った以上にあっさりとした幕引きにメンカルはなんだかがっかりしてしまう。
 彼女の考察通り、彼女の能力は彼女の性格ゆえに本来の力を発揮する。大雑把過ぎる、雑な処理の仕方をしていては宝の持ち腐れというやつなのだろう。

「……昨日の私のほうがまだ強かったような……」
『過ぎ去りし日の闘技場』で対峙した『昨日の自分』は、正しく自分自身。
 それを考えると、この『鏡写しの私』は数段落ちる。合わせ鏡の自分と言えど、それはそれでなんともやるせない気持ちになってしまう。
 すっきりしない心持ちではあるが、勝ちは勝ちである。冷静に、それでいて論理的。メンカルの反対の性格では、彼女自身の力は、あまり意味を為さない。
 それだけでもわかったことが、彼女にとっての収穫であったのかもしれない―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイリ・タチバナ
アドリブ歓迎。

あー、俺様と正反対?ヤンキーな俺様と?
つまり、品行方正ってことか!!
(鏡写しの口調は『演技時は』)
あとたぶん、戦闘方面で致命的な正反対になるはずだぜ…?

指定UCで強化後、正面からいく!
左右対称っていうが、両利きならあんま関係ないな!

戦闘で致命的な正反対。それは、『鏡写しの俺様』は負傷を嫌って後退しちまうんだ。
俺様、負傷上等での前のめりだからな!その銛ごと、【神罰】つきで叩き潰して折ってやる!
…戦いで負傷を嫌ってどうするんだよ。

あーあ、本当に性格悪いな、オリジン。
自分叩き斬るの、気分いいもんじゃねぇよ…。



 性格が正反対であるということは、裏を返せば到底自分とは認識できない存在であるということでもあるだろう。
 例えば―――。
「あー、俺様と正反対? ヤンキーな俺様と?」
 カイリ・タチバナ(銛に宿りし守神・f27462)にとって、それは意外なほどにすんなりと思いつくものであったのかも知れない。
 自分自身をヤンキー、と言いはるくらいには素行不良であるというこに自覚があるのだろう。俺様、と自称するのだから、そこに一切の抵抗感はない。
「つまり、品行方正ってことか!!」
 あまりにも自分から縁遠いもの。そんなものはあり得ないと斬って捨てるほどにカイリにとっては、それは得体の知れないものであったのかも知れない。

 斯くして、カイリはオウガ・オリジンが変貌した鏡のラビリンスへと足を踏み入れる。
 一面が鏡、鏡に覆われた不思議の国ほどもある鏡のラビリンス。どこを見ても自分の姿が映し出され、なんとなく居心地が悪い。
 そこに現れたのは左右対称な髪型をした……おそらくアレが『鏡写しの私』としてのカイリなのだろう。
 物腰穏やかであり、カイリが想像した通りの品行方正さ。
「おや、これはこれは。どうも遠いところからわざわざありがとうございます……ですが、どうやらここでは私達は戦わねばならない運命。手加減はできませんが―――」
 ぞわりと肌が泡立つ。
 左右対称の姿をした自分自身と言えど、声色までそっくりな自分の顔をした存在が、演技をする時に……それも、本気の演技をするときにしか使わない口調を使ってくるのだから、心理的になんとも言い難い感情がこみ上げてくる。

「ったく、一々癇に障るぜ―――俺様を舐めんじゃねぇよ!」
 互いに構えるは、巨大クジラや海竜さえも仕留める、鍛え抜かれた銛。その銛をさらなる力が覆う。
 ユーベルコード、蒼輝紫電増幅(アオキセンコウ・カガヤキマセ)。それは構えた銛の威力、射程を三倍にも増幅する凄まじき力。
 互いに能力まで同じと来るのであれば、その力がぶつかり合うのは矛盾そのもの。互いに砕けるか、それとも……。

 真正面から互いに突っ込む。
 手にした銛が突き出され、その切っ先がぶつかりあい、紫電が迸る。互いに両利きであるから、左右対称である意味はあまりない。
 だが、本当に致命的な違いは、その性格にある。
 品行方正であるがゆえに、『鏡写しの私』たるカイリは負傷を嫌う。礼儀正しく、誰にでも優しいからこそ、大概に負傷するとわかった瞬間、銛を引いてしまう。
 さらに後退までしてしまうところまでわかってしまう。後ずさるのをカイリは見逃さない。

「ったく―――、俺様、不症状等での前のめり! 男ならよぉ! 死ぬときでも前のめりに進んで死ぬのが、花道ってもんだろうが! その銛は、テメェにはもったいねぇ!」
 カイリの腕が突き出される。
 それは傷を恐れないカイリだからこそ出来た芸当であろう。ほとばしり紫電が頬をかすめても、瞳を閉じない。
 まぶたを閉じれば痛みによる恐怖が襲ってくる。それだけで人は前に進めなくなってしまう。

「……戦いで負傷を嫌ってどうするんだよ」
 だが、その恐怖すらも踏み越えた先にこそ勝利がある。
 それを知るカイリにとって、傷など勲章以外の何者でもない。それが例え、自分と合わせ鏡の存在であったとしても、足を止めない。
 放たれた銛の一撃は、『鏡写しの私』であるカイリの銛を叩き折り、その身を砕く。
 鏡が割れたような音がして、ガラガラと崩れ去っていく『鏡写しの私』。
 それはカイリのたゆまぬ前進と努力がもたらした勝利であった。

「あーあ、本当に性格悪いな、オリジン。自分を叩き斬るの、気分いいもんじゃねぇよ……」
 例え、それが鏡によって作り出されたまがい物であったとしても、自分と同じものを斬る感触は心地よいものではない。
 オウガ・オリジンの悪辣たる性格の一片を垣間見た気持ちになりながら、カイリは手に残る感触を振り払うようにして前を向く。

 これもまた前のめりに進むことである。
 立ちふさがったのが己自身であったとしても、それが如何なる困難な道であったとしても、戦いである以上傷を恐れない。
 それがカイリという猟兵のあるべき姿なのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アハト・アリスズナンバー
全てが正反対の私……すげえ真面目そう。量産型の名に恥じない働きですね。
でも、それ故に個性がない。

データが私であるならば、これ以上ない代償です。
UCを発動。私に最も効果的な装備を持った個体を呼び出します。
呼び出した私を援護するようにレーザーライフルで【援護射撃】します。
更に、どぶろくの中身を浴びせて【毒使い】の要領で酔っぱらせます。
真面目な私にはさぞ効くでしょう。戦闘中に酒など飲まない偉い子でしょうからね。
敵の攻撃には【読心術】で対応。個性なき量産型個体ならば、基本通りの戦闘パターンでしょうから。
そのまま【カウンター】を叩き込みましょう。



 個性。
 それは世界でたった一つのものであるかもしれない。同一の個性はなく、類似するものはあれど、そのどれもがオンリーワンである。
 だからこそ、同じ存在、同じデータから生み出される者であったとしても、僅かな違い……ゆらぎが生じ、それを個性と呼び尊ぶのかもしれない。
 アハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)にとって、個性とはそういうものであったのかもしれない。
 アリスズナンバーと呼ばれる量産型のフラスコチャイルド。同じ形をしたフラスコチャイルドが故郷の製造工場に存在し、全員が同一の記憶を保持している。

 例え、一つが破壊されたとしてもオリジナルの存在さえあれば、再び今までの記憶を持った個体が現出する。
 その個体の外見、抱える記憶はまったく同じものである。だが、僅かにゆらぎは存在するのかも知れない。
 今まさに、この『鏡のラビリンス』において、性格の正反対の自分自身……『鏡写しの自分』と戦わなければならないということは、ある意味で自分という可能性から最も遠い存在、対極に位置する存在との戦いになるであろうことを、アハトは感じていた。
「全てが正反対の私……すげえ真面目そう。量産型の名に恥じない働きですね」
 でも、それ故に個性がない。
 そうアハトは断じた。鏡のラビリンスの中で、対峙する『鏡写しの私』はまさに、そういう個体であった。

 生真面目そうな性格……能面のような顔。与えられた使命だけを淡々とこなすような、機会のような正確さ。

「戦う相手が私自身であるというのなら、このデータこそ、これ以上無い代償です」
 ユーベルコード、アリスオブディヴィジョンが発動する。それは相手のデータを代償に、相手に有効な装備をした別個体であるアハトを呼び出す力である。
 それはもちろん言うまでもなく、アハト自身にも有効なる戦術であった。
 アハト自身は援護するようにレーザーライフルで後方より狙撃、それを躱す『鏡写しの私』。その動き、その俊敏さ、その回避パターン。
 そのどれもがデータにあるものであり、自分のデータながらになんとも言い難い感情がこみ上げてくるかも知れない。

「どぶろく……ああ、これも有効な手段です、ね!」
 手にしたどぶろくの容器を掴んで、その口を肉薄した『鏡写しの私』の口へと突っ込む。どくり、どくりと容器の中の液体と口の中の空気が置換される音が響く。
 喉が鳴る。
「真面目な私にはさぞ効くでしょう。任務中、それも戦闘中にお酒を飲むなんて信じられないような、偉い子でしょうからね」 
 それは逆を返せば、アハトは飲んだくれているということであるのだが、それは棚の上に上げておく。

 ふらりと揺らめく『鏡写しの私』の顔が真っ赤になっていく。
 足取りがおぼつかない。ああ、なんていう醜態であろうかと思うが、あれもまた性格が正反対なだけの自分自身であるということを自覚すれば、なんとも言い難い。
「ひっくっ、う~……あんで、おさけなんて……ひっ、く」
 こうなってしまえば、槍も射撃も意味を為さない。
 狙いは定まらず、腰は砕けたようにへたり込んでしまう。そこには個性無き量産型のセオリーである戦闘パターンもなにもあったものではない。

 ここまでアルコールに弱いというのは、初めて酒を飲むからであろうか。
 さすが真面目な性格の自分、と何故か得意な気分になりながらも、ふらつきながらも槍を突き出す『鏡写しの私』にカウンターの一撃を叩き込む。
 鏡が割れるような音がして、『鏡写しの私』の身体が砕けて霧散していく。
「……個性無き量産型個体……真面目であることが取り柄であるのかもしれませんが、私は違います。仕事はきっちりやりますけどね」
 でも、と腰に下げたどぶろくの瓶を掲げる。

「―――これだけはやめられないのです」
 それは酒飲みとしての本能。
 やめろと言われてやめられるものではないのだというように、アハトは勝利の祝杯をあげるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソナタ・アーティライエ
正反対な『わたし』……
物怖じしない、なんでも率先して自信を持って行動する
それはなんだか憧れます
でも争うことが好きで、人を傷つけ殺すことが好き
そんな『わたし』を目の当たりにしたら、悲しくなってしまいます

そんな性格なのに能力はわたしと同じ
それはなんてアンバランスなんでしょう
誰かを傷つけるためだけの能力なんて持っていない
争うための腕力も技術もない
あまりにも歪で、矛盾の塊
心と体が軋み、悲鳴を上げているのが聞こえます

オウガ・オリジンに生み出された可哀そうな『わたし』
どうか思い出してください
ただの人形に心が宿った奇蹟の意味を……



 憧れるということは、自分には無いものを持っているからこそ湧き上がる感情であったのかも知れない。
 オウガ・オリジンが変貌した『鏡のラビリンス』において、その地に足を踏み入れた者が対峙するのは『鏡写しの私』。
 左右対称の姿、正反対な性格。けれど、持ち得る能力は全て同じ。
「本当にあなたってびくびくおどおどしちゃって。言いたいことが言えないのであれば、その口縫い上げてあげましょうか」
 その言葉を聞いて、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は肩を震わせる。
 目の前にいるのは『鏡写しの私』。
 左右対称の姿、正反対の性悪。
 それは物怖じしない、何でも率先して自信を持って行動する自分。その姿は眩いばかりに自信に満ち溢れていて、ソナタは不思議と憧れてしまう。

 ああであったのならいいのに。あんなふうにできたらいいのに。そんなふうにソナタが考える自分自身そのままだった。
 けれど、彼女の言葉はどこもかしこも刺々しい。
 人に投げかける言葉はいつだって優しいものであるからこそ、人と人とは言葉を躱すことができる。
 なのに、目の前の『鏡写しの私』は人を傷つけることばかり考えている。
 何か言い返したい。けれど気弱なソナタにとって、それは難しいことばかりであり、悲しいばかりであった。
「どちらが本物のわたしであるか決めましょう。二人もソナタはいらないから。どちらかが偽物で、どちらかが消えるべきなのよ、そうしましょう。戦って決めましょう」
 そういって『鏡写しの私』がソナタに掴みかかる。けれど、その力は弱々しい。
 性格は自分とは正反対。人を傷つけ殺すことが好きなのに、争うことが好きでたまらないのに、それでも持ち得た能力は人を害するには至らない。

「なんてアンバランスなんでしょう……誰かを傷つけるためだけの能力なんて持っていない……」
 争うための腕力も技術もソナタは持っていないのだから。
 それはあまりにも惨めな姿であった。どれだけ自分が憧れた自信あふれる性格を持ち得たとしても、それを活かすだけの能力がないのだ。
 あまりにも歪で、矛盾の塊。

 そっとソナタは『鏡写しの私』が掴みかかる手に自身の手を重ねた。その肌から伝わるのは、好戦的な性格と弱々しい戦う力を持たない身体が軋み、悲鳴を上げていること。
 ああ、なんて。
「なんて―――可哀そうな『わたし』……どうか思い出してください」
 それは天から溢れた吐息のような声であった。
 能力が同じであるのならば、目の前の『鏡写しの私』も持っているであろう歌声。けれど、その好戦的な性格ゆえに紡ぐことも出来ない歌声だった。
 世界すら聞き惚れる死に神域の歌声が紡ぐのは、天臨聖歌『天の階』(ソレハスベテノハジマリノウタ)。

「ただの人形に心が宿った奇跡の意味を……」
 それは問いかけではなかった。
 歌声は汚れや邪念を露と消す。聞く者が在れば、感動と恍惚によってあらゆる邪念が削ぎ落とされる神域にまで高められた歌だった。
 自分に掴みかかる『鏡写しの私』の手が震える。ああ、とソナタは微笑む。どれだけ自信にあふれていたとしても、性格が正反対だとしても、その身に宿った能力は同じ。

 ならば、自身の言葉、歌声を感受するものもまた同じである。
 自分が存在する意味を。
 自分が何故戦う力を持ち得ないのかを。あるのは歌声だけであるという意味を。
「わた、しは―――……きっと」
 愛することは出来ない。『鏡写しの私』が嘆くように微笑む。くしゃりと崩れるように微笑む傍からひび割れ、消えていく。
 悲しいという感情すら、そこには介在してはいけないような、そんな気がして、ソナタは『鏡写しの私』の掴みかかっていた手を握りしめる。
 哀しみとともに見送るのではない。いつかきっと、そんな願いを籠めて微笑みとともに見送る。

 たしかにここに存在した奇跡を、忘れないために―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

安寧・肆号
まあ、まあ!
困っちゃうわ。困っちゃう。
あたしはアナタでアナタはあたし?
あたしはお歌が好きだけど。アナタはお歌が嫌いなの?

あたしがあたしを見るなんておかしいの。
あらアナタ、リボンが逆ね?
アナタとあたしどちらが鏡なのかしら。
距離をとってお話。
手に馴染む武器が、今日は不穏に感じるわね。

あたしは甘々タルトが大好きだけど、いじわるアナタにはタルトはあげない!
こんなに美味しいタルトなのに可哀想。
のろのろなアタシはまるでなめくじ。
可愛い鋏を用意して、コアを部位破壊してあげる!
可哀想な安寧は、鏡に返っておしまいね。



「まあ、まあ! 困っちゃうわ。困っちゃう」
「いいえ、いいえ! まったくもって喜ばしいことだわ。喜んでいるの」
 その言葉はまるで二重奏のように『鏡のラビリンス』に響き渡る。
 オウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードによって変貌した不思議の国ひとつぶんもあるほどの『鏡のラビリンス』において、その地に足を踏み入れた安寧・肆号(4番目の人形・f18025)は『鏡写しの私』と呼ばれる左右対称の、しかし性格は正反対とい存在と対峙していた。

「あたしはアナタでアナタはあたし?」
「アナタがあたしであたしがアナタ?」
 互いに互いが首をかしげる。まるで鏡合わせのように仕草はそっくりなのに、あらゆる行動が真逆になってしまっている。
 ぷっくりと頬が膨らんだ様子すら、双子のようにそっくりは二人は、はじめて鏡を見つめる赤子のように手を掲げてみたり、手のひらで触れてみたり。
 そうすると今度は互いに互いのことを知ろうとする。
「あたしはお歌が好きだけど」
「あたしはお歌は嫌いだけど」
 なにかもが鏡写し。性格が違えば、趣味趣向すらも変わっていく。歌が嫌いだなんて信じられないと、安寧は頬をふくらませる。

 この『鏡のラビリンス』にといて『鏡写しの私』とはそういう存在である。自分が好きなものは嫌い。自分が嫌だと思うものは好き。
 それはなまじ自分と同じ顔をしているせいで、受け入れられない生理的拒否がこみ上げてくる。
「あたしがあたしを見るなんておかしいの……あら、アナタ、リボンが逆ね?」
 自身と『鏡写しの私』とどちらが鏡でどちらが本物かわからなくなってきた彼女にとって、リボンが正反対についていることは、良い目印であった。
 距離をとって、互いに小さな可愛らしい鋏を手にする。
 いつもならば手に馴染む鋏の指環が、今日に限っては不穏に感じる。それを持って何を為さなければならないのか、本能的に悟ってしまっていた。

「あたしは塩っ辛いものが大好き。塩さえ在れば大丈夫。だいたいのことはなんだって解決できてしまうもの。甘いものは嫌いよ。子供っぽいもの」
「あたしは甘々タルトが大好きだけど、いじわるアナタにはタルトはあげない!」
 せっかく仲良く慣れるかもしれないと想って期待していたけれど、それはあり得ないことであったのかもしれない。
 「女王のタルト」(ザ・クイーン・オブ・ハート)を給仕してあげたというのに、お茶会は御破算となる。
 互いに互いの嗜好が正反対であるというのならば、それも当然であろう。手にした鋏の不穏なる気配は、結局のところそういうことであった。

「こんなに美味しいタルトなのに可哀想。のろのろなあたしは、まるでなめくじ」
 ユーベルコードによって減速した『鏡写しの私』の前に立つ安寧。
 見下ろすのは同じ姿をした自分。
「だいじょうぶ、なにをどうすればいいかわかっているもの。だってこんなにそっくりさんなのだから。どこに何があって、どうすれば―――」
 手にした可愛い鋏が巨大化する。

 突き刺し、コアを挟む。
 たったそれだけでいい。できれば痛みを伴わないように。ユーベルコードによって行動速度が減速した自身にこれに抵抗する術はない。
 ばちん、と音がしてコアが砕ける。
 それは鏡が砕けるような音を立てて、目の前の自分と同じ姿をした『鏡写しの私』が砕けるように霧散していく。
「可哀そうな安寧は、鏡に還っておしまいね」
 もう少し違う形で出会うことができたのなら、と一瞬思うもすぐに考え直す。
 甘い甘いタルトが嫌いな子とは仲良くなんてできない。

 そんなふうに思いながら、安寧は鏡のラビリンスの中で、甘々タルトの美味しさを理解できない安寧を見送るのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シエナ・リーレイ
■アドリブ可
逃げないでよジュリエッタ!とシエナは追いかけます。

天真爛漫なシエナその本質は狂い切っています

シエナはどれ程悍ましく邪悪な存在でも親愛と好意を向け仲良くなろうとします
だけど気分が高揚とすると無意識の内にオーガも戦慄する凶行に及びます

シエナは相手が向けてくるどんな感情でも好意的な反応として受け止めます
同時に対象が凄惨な姿で息絶えていても遊び疲れ寝ているだけと認識します

シエナは最初のお友達、ジュリエッタの亡骸で出来た人形を仮初としています
それ故に自身の偽物をジュリエッタと認識し全力で求めます

そんなシエナから生まれた真っ当な精神な鏡写しのシエナがシエナとまともに相対し戦えるのでしょうか?



 認識とは、その瞳に映るものだけが真実ではないと知らしめるものであったのかもしれない。
 人は自身の聞きたいことだけを数多に降り注ぐシャワーのような雑然とした人混みから聞き分けられる力を皆、備えているという。
 それと同じように猟兵という生命体の埒外の存在であるシエナ・リーレイ(取り扱い注意の年代物呪殺人形・f04107)にとって、目の前に存在する『鏡写しの私』という存在は、正しく自分自身ではない以上、その姿を亡きかつての主であり、友達でもあったジュリエッタと認識していた。

 そのせいか、彼女の心はひどく高揚していた。
 心臓は高鳴り、身体のあちこちがぽかぽかと熱くなるような気分になってしまう。
「逃げないでよジュリエッタ!」
 笑いながら、天真爛漫なる笑顔をいっぱいに浮かべながら、鏡のラビリンスを走るシエナ。彼女が追いかけているのは『鏡写しの私』だった。
 必至の形相で逃げる『鏡写しの私』にとって、本質的に狂いきっているシナエの行動は、感情は恐怖でしかなかった。
 シエナの本質、それはどれほど悍ましい邪悪な存在であっても、まず親愛と好意を向ける。

 それは嘗ての主であり、友達のジュリエッタの言葉を受けての、彼女にとって当然そのものの行為であった。
 どんなものであろうと友人になる。仲良くなりたいという気持ちをぶつける。
 それはある意味で邪悪よりも悍ましい何かであったのかもしれない。言葉面は綺麗なものであったとしても、どんなものとも仲良くなろうとする狂気は、誰からも理解されることはないのかもしれない。

「いや! いや! 来ないで! 来ないでよぉ! あなたなんかと仲良くなんてなりたくない!」
 それは『鏡写しの私』の言葉。
 シエナが本質的に狂気にさらされているのであれば、正反対の『鏡写しの私』は正気そのもの。当たり前に狂気に拒絶を見せる。
 だが、シエナには関係がない。どんな感情でも、言葉でも、それを己に向ける以上、好意的なものであると受け止めてしまうのだ。
「そんなジュリエッタ。わたし、あなたの友達よ? 逃げないで? 逃げないで? 逃げるなんて、そんな追いかけ……ああ、そうなのね。わかっているわ、一番の友だちだもの。あなたのことはなんでもかんでもお見通しなんだから。わたしがきっと喜ぶと想っておいかけっこをしてくれているのでしょう?きっとそうなんだわ、いいえ、最初からわかっていたもの。意地悪ね、でも、そんな意地悪なところも愛おしいわ。だって友達だもの。ずっとずっとおいかけっこしましょうそうしましょう」

 それは、ジュリエッタ・リーレイの願い(カコノショユウシャノオンネンタチノヨウキュウ)故に。
 追いかける。追いかける。自分の姿をした『鏡写しの私』は思い焦がれたジュリエッタそのもの。
 それは全力なる求め。それに対する『鏡写しの私』は全力で逃げ回る。どれだけの悲鳴が上がろうが、凄惨なる状態になろうが、それは終わらない。
 狂気に対抗できるのは正気ではない。
「仲良くしましょうねぇ。だいじょうぶよ、ああ、そう、きっと疲れてしまったのね。だいじょうぶ子守唄を謳いましょう。ぐっすり眠れるように。あなたが目覚めたらまた遊べるように」
 微笑む姿は聖母そのものであったかもしれない。
 けれど、その腕に抱く『鏡写しの私』はすでに息絶えていた。
 恐怖と狂気に当てられて、憔悴しきった顔のまま、身体が砕けていく。それが『鏡写しの私』の最後たる瞬間。

 鏡のラビリンスに狂気の惨禍は子守唄となって、手の内の『鏡の中の私』が消え失せるまで続くのだった―――。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャム・ジアム
アドリブ歓迎

逆の?せい、かく……
私は食いしん坊で、いつも誰かの助けを借りてるわ
あと動物や植物が好き。な性格?難しいわね

なら戦術も変わる
生き物と助けを嫌うなら
体を変化、念動力、薬を使う……けっこう面倒ね。
毒耐性は互いにあるし……
反対なら、そうね。思い切りが早いかも。だったらーー

私も速攻のフリで『猛る毒蔦』!
で『謎のレモン』で怪力を込めて対抗
念には念で返すわ
緑はイヤ?そう簡単にその子たちは刈れ……
あ、ひどい、何をするの。針も自分だからOK?そうなの?
ジアム、あなたが嫌いみたい

じゃあ、私も針をあげる。ええ、まっすぐね、素直だわ
私がいつもと違うのに気づかない?
『護り現』よ【捕縛】して。全力で締め上げて



 オウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードによって変貌した『鏡のラビリンス』における『鏡写しの私』の特性。
 それは左右対称の姿に、正反対の性格。そして、まったく同じ能力を持つということ。それがこの地に足を踏み入れた猟兵に課せられた戦いである。
 だが、自身の性格を正しく理解している者は多くはないだろう。
 自分自身の手足の長さ、太さなどを正確に把握しているものが少ないのと同じように、自分の性格を正しく理解しているものもまた数少ないものである。
 ならば、正反対の性格をした自分、というものにイメージがわかないのまた真理であろう。
「逆の? せい、かく……」
 ジャム・ジアム(はりの子・f26053)にとって、自分の性格を顧みてみると、思いの外イメージしづらいものであったのだろう。
 思いつくのは、食いしん坊であるということ。いつも誰かに助けを借りているということ、後は動物や植物が好きであるということ。
 それはつまり性格であるということなのだが、ここから導き出される正反対の性格をイメージしろと言われても難しいと感じてしまうのは致し方ないことであった。

 ただ、使う能力はまったくの同一であるというのならば、戦い方が変わってくるだろう。
 自分が好きな動物や植物を嫌うというのならば、自身の身体、バイオモンスターとしての力を使ってくるであろう。
 そうなると結構面倒だな、と感じてしまうのがジアムらしかった。それに互いに毒への耐性も高く持っているが故に搦手は難しいだろう。
「反対なら、そうね。思い切りが早いかも。だったら―――」

「そうね! ジアムだったらそうするものね!」
 飛び込んでくる左右対称の姿の『鏡写しの私』たるジアムの姿が彼女の瞳に映る。自分の姿を自分の瞳で見るというのは、鏡を視る以外無かったがゆえに、この経験は描いものであったかも知れないが、今はそれに気をかけている余裕はない。
 構える黒褐色の精霊銃の銃口が自分を狙っている。
「さあ、締め上げて」
 放たれるは、猛る毒蔦(タランテラ)。念動の蔦が伸びて、『鏡写しの私』を締め付ける。ぎりぎりと自分自身の姿をした者を締め上げるのは気が引けたが、能力が同じであるというのならば、同じ怪力で持って引きちぎられるかも知れない。
 謎のレモンから伸びる木の枝でさらなる締め上げて拘束するのだが―――。

「この―――こんなうねうね得体のしれないものでなんて―――!」
 同じく怪力でもって絡まる蔦から逃れようとする『鏡写しの私』の姿を見上げ、一気に勝負を決めようとしたジアム。
 けれど、次に飛び出してきた『鏡写しの私』の言葉に憤慨してしまう。
「緑がイヤだなんて。得体が知れないなんて言わないで、そう簡単にその子たちは刈れ……あ、ひどい、何するの」
 拘束していた蔦たちが一斉に針に貫かれてちぎれていく。
 それは燦然と輝く針。一斉に放たれたそれが複雑な幾何学模様を描き空を舞う。確かに自分と同じ能力を持っていると言われるのが納得できるほどに、ジアム自身がよく知る針達の姿であった。

「……私、あなたが嫌いみたい」
「ジアムもそうなの。あなたが嫌いなの」
 それは正反対の性格でありながら、共通の見解であった。こんなにも正反対の性格の存在が気の合わない者であるとは思いもしなかった。
 互いの針が共振するように震える。
「じゃあ、私も針を上げる。ええ、まっすぐね、素直だわ」
 放たれるジアムの針が燦然と輝く針とぶつかり合う。それはキラキラと鏡のラビリンスで煌めいて弾けて砕けていく。
 その煌きは、まるで水中を泳ぐ水蜘蛛の纏う泡のような。そして、ジアムが微笑む。

「ジアムがいつもと違うのに気が付かない?」
 それは彼女の纏うオーラ。護り現。他者を包み込み護るオーラは、今攻撃の手段として『鏡写しの私』へと巻き付き、締め付ける。
 全力で締め上げられた『鏡写しの私』の身体がひび割れる。それはまるで、鏡が砕けるような音を立てて、護り現が包み込むオーラの中で霧散し消えていく。

「性格が違うと、好き嫌いも逆転するのね……いつもジアムは、みんなに助けられているから……きっとなんでも自分できるって想ってしまったのね」
 それは性格が逆転であるからこそ、他者に助けを求めない自立した姿であったのかもしれない。
 けれど、誰にも頼らずに人は生きていけない。
 それをもうジアムは知っているからこそ、誰かの助けを借りれば、ありがというと感謝を伝える。
 それだけでいいのだ。そこから何もかも始まっていく。他者との関係も、築き上げていけることができるのだから。

 その強さを知っているジアムに、例え鏡写しで同じ能力を持っている者がいたのだとしても、彼女にはきっと敵わない―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千頭・定
私じゃない私…どういうことでしょうか。
でもまずは挨拶ですね。第一印象は大事です。
こんにちは、千頭定です!
今からあなたを殺します!

泣かれちゃいました。えーん、可哀想!
うんうん、殺人鬼じゃない私なんですね。
正反対の私って、めちゃくちゃ可愛いですよう。
今ならミスコンもかくや、大和撫子な女子アナ間違いなし。
手をつなぐで握手!怪力を込めてグラップル!
殺します。

私の家では、それは役に立たない。
生まれた意味すらありません。
そんな性格ではお仕事すら全うできませんよう。

苛苛しちゃいます!ぷんぷん!
せめて跡形も残らないよう解体します!
黒歴史ですよう!



 現実改変ユーベルコードの力は、その名のとおり現実を改変する。
 それはオウガ・オリジンの姿形、性質すらも変貌させ『鏡のラビリンス』―――不思議の国ひとつぶんほどもある迷宮を作り出す。
 その鏡だらけの国において、足を踏み入れたものは左右対称の姿であり、正反対の性格を持つ『鏡写しの私』との対峙を余儀なくされる。
 同じ能力を持つがゆえに、時に予想もしないような力を発揮するものだっているかも知れない。
 それに正反対の性格。
 そう一言に言われても、自分の性格がどんなものであるかわからないものだっている。

「私じゃない私……どういうことでしょうか」
 千頭・定(惹かれ者の小唄・f06581)にとって、それは理解し難いものであった。自分自身のことはよくわかっている。
 けれど、自分ではない自分。正反対の性格と言われてもピンとこないのだ。自分であるのに自分とは正反対。よくわからない。
 だが、鏡のラビリンスへと足を踏み入れた瞬間、理解する。
 目の前に存在するおどおどしたような女の子。左右対称の姿をしているが、間違いなく自分と同じ顔。

 どのように対処しようかとぐるぐると考えていた定であったが、まずは第一印象から、と朗らかに声をかける。
「こんにちは、千頭定です! 今からあなたを殺します!」
 ひっ、とか弱く無く声が『鏡のラビリンス』に響く。それはあまりにも場違いであり、蚊の鳴くような声であった。
 一層、自分がなにかひどいことをしているような気さえ覚えるほどに、目の前の『鏡写しの私』は怯えきっていた。
 じわりと涙が瞳の中に溜まっていく。その様子に朗らかに声をかけた方である定が、逆に慌てふためいてしまう。
 あ、泣いてしまう、と想った瞬間には、大泣きされてしまったのだ。

「泣かれちゃいました。えーん、可哀想!」
 可哀想なんて言いながらも、彼女の思考はクリアだった。なるほど、とも想っていたかも知れない。
 性格が正反対である自分とはどうにもイメージし難いものであったが、実際に目の前に出されると納得してしまうものである。
「うんうん、殺人鬼じゃない私なんですね」
 なら仕方ない。仕方ない。それにしたって、正反対の自分の姿に湧き上がる勘定がある。正直に言うと、めちゃくちゃ可愛いと想ってしまったのだ。
 今ならミスコンもかくや、大和撫子な女子アナ間違いなし。
 そんなふうに力説してしまいそうになる。それほどまでに正反対の性格の自分は可愛い。可愛いは正義。

 ごめんね、と仲直りするように泣きべそをかく『鏡写しの私』の手を握る。

 だが、それは仲直りでもなければ慰めのための握手ではなかった。ぎりぎりとその手を握る力が凄まじき怪力によって引き上げられる。
「私の家では、それは役に立たない」
 ぎ、ぎ、と握り締めた手の内で骨が軋みをあげる。また『鏡写しの私』が泣く。
「生まれた意味すらありません。そんな性格ではお仕事すら真っ当できませんよう」
 苛々が募る。
 これが自分の顔をしているというのが、なまじ余計に苛立ちを加速させるのだ。もしも、これが他人であったのならばよかったのだろう。
 どうあがいても他人であったのだから、許容も出来たであろうし、そもそも視界に入れることもなかっただろう。

 けれど、これが正反対の性格をした自分であると言われるのがあまりに、そうあまりにも。
「黒歴史ですよう!」
 目にも留まらぬ速度で放たれた異図(ジグザグ・シグナル)……鋼糸が持ち上げた『鏡写しの私』の身体を細断する。
 鏡が砕けるような音を立てて、ガラガラと崩れ霧散していく『鏡写しの私』。
「ああもうはずかしいですよう! こんなの誰かに見られなくってよかったです!」
 跡形も残らぬようにと鋼糸によって解体された残骸を見下ろして、ほっと胸を撫で下ろす。

 あんな自分を可愛いと思ってしまったのは事実であるが、あれを誰かに見られてしまったらということのほうが重大だ。
 よかったよかった、とあっけらかんと笑いながら定は鏡のラビリンスを抜けていく。それこそ口笛吹くように、爽やかさすら感じさせるほほ笑みを浮かべて―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルカ・メグロ
今回の敵は俺自身、か。
もちろんギータの力も使うんだろうけど……へへ、俺達がオリジナルだって、はっきりわからせてやるよ!

で、体も左右反対なら性格も反対か。
っていうことは、弱気で男とはまともに相対せないくらい苦手……。
しかもギータとは連携取れないってことか。
やっぱり偽物は偽物ってことだな。
そんな俺を見るのは嫌だ、とっとと倒すぜ!

男が苦手でギータと連携が取れないなら、こっちは正面から全力で左腕を叩きつけるだけさ。
ギータと呼吸を合わせ、相手の右腕をいなしながら接近、【竜の抱擁】でまとめて叩き潰してやるよ!



 自分自身との戦い。
 それは時として、強大なる敵と戦う以上に得るものがある戦いであるのかもしれない。己自身との戦いとは即ち克己する……精神面での戦いが主なものであり、大概の場合、そのような精神論のぶつかりあいとなる。
 だが、オウガ・オリジンの持つ現実改変ユーベルコードによって『鏡のラビリンス』とへと変貌した地に足を踏み入れるものは、例外なく『鏡写しの私』と呼ばれる正反対の性格を持つ自分自身と戦うことになる。
 しかも、同じ能力を使うということは、自分を乗り越えるという意味でも確かな意味を齎すはずだった。

「今回の敵は俺自身、か。もちろんギータの力も使うんだろうけど……」
 ルカ・メグロ(ヴァージャ・コン・ギータ・f22085)は左腕に宿りしドラゴンのオウガ、ギータに語りかける。
 常に左腕にやどりしオウガであるギータと戦いをともにしてきたルカにとって、その存在は相棒以上のものであった。
「へへ、俺達がオリジナルだって、はっきりわからせてやるよ!」
 意気揚々と駆け出すルカ。
 その瞳が僅かに楽しげであるのは、如何に己とギータが一心同体の存在であるかを誇るようなものであった。
 だが、一つ懸念があった。

 そう、正反対の性格。
 それはつまるところ、自分の性格を考える上で避けては通れぬもの。
 強気である自分とは逆。即ち、弱気。また女性とまったくまともに話せないということは、男とまったくまともに離せないという位苦手……しかも、最大の難点として、ギータとの連携が取れないということだ。
 性格が正反対になるだけで、同じ能力を持っていたとしてもまともに戦えるとは思えない。
「やっぱり偽物は偽物ってことだな。そんな俺を見るのは嫌だ、とっとと倒すぜ!」
 鏡のラビリンスを駆け抜けるルカの前に現れたのは『鏡写しの私』であるルカ。
 彼自身が予想したとおり、どこか弱気でビクビクしていて、それでいてルカの姿を見やると恥ずかしげに身悶えするのだ。

「……」
 これはなんとも言い難い感情がこみ上げてくる。
 ギータと連携が取れないだけではない。男らしくない。なよなよしているといってもいいだろう。
 予想通りであるのだが、嫌過ぎる。生理的嫌悪感すら覚える『鏡写しの私』の姿にルカは、一気に龍の呼吸による息吹を響かせる。
「コォォォ……やっぱり、そんな俺なんて見るもんじゃなかった!」
 放たれるは竜の抱擁(アブラッソ・デ・ギータ)。そのユーベルコードの一撃は竜の左腕を叩きつける絶大なる破壊力を持った一撃であった。
 真正面から叩きつけた拳は、絶妙なるギータとのコンビネーションによって防ごうとする腕すらいなして顔面に叩きつけられる。

「纏めて叩き潰してやるよ!」
 放たれた拳は『鏡のラビリンス』の周囲の地形すらも巻き込んで、『鏡写しの私』の身体を砕く。
 キラキラと鏡の破片が舞い散る中、目の前で己の姿をした『鏡写しの私』が霧散していく。あの姿は一刻も早く無に帰さなければ、おぞましくて見ていられなかったのだ。
 あんな姿の自分を誰かに見られていないことが、不幸中の幸いであったことだろう
 あれは乗り越えるとか、そんなものじゃなく、見たことを忘れるほうが自分のためである。
 そんなことを思いながら、ルカは鏡のラビリンスを後にするのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
性格が正反対となると…相手は全体的に積極性に富む傾向があるでしょうね
あとは自信に満ちた態度ですとか、若しくは直情的な思考でしょうか
先ずは捕捉して…

(礼儀作法など頭から抜けおちた振舞いに、罵詈雑言の嵐…
『賊』そのものではありませんか…
SSWの同型機のオブリビオンの方が余程騎士らしいですね)

罵倒を聞き流しつつ…

そこまでご自身のお力に自信が御有りであれば、口ではなく性能で示されては如何でしょうか

攻撃を仕掛ける自分の動きを見切りって回避し反撃
腕を斬り飛ばし、脚を盾で砕き、胴を潰し制圧

私達が今行った戦闘パターンは守勢からの反撃に重点を置いたもの
攻撃一片倒れで堪え性が無い貴方に使いこなせる道理はありません



 自身の活動傾向を分析した結果、導き出された答えはシンプルなものであったが、なんとも名状しがたきものがあると、己の―――トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の電脳は告げていた。
 此処はオウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードによって変貌した地、『鏡のラビリンス』。不思議の国ひとつぶんはあろうかという鏡の迷宮に足を踏み入れた者は、『鏡写しの私』と呼ばれる自分とは正反対の性格をした者と対峙することになる。
 ただし、能力がまったく同一であるがゆえに油断は禁物であったのだが、トリテレイアにとってみれば、性格が正反対ということは、全体的に積極性に富む傾向……言い換えれば、うかつな行動が目立つ存在ということだ。
「謙虚さながない……自信に満ちた態度ですとか、もしくは直情的な思考……ともあれ、先ずは補足しなければ」

 トリテレイアの足が鏡のラビリンスへと足を踏み入れいた瞬間、『鏡写しの私』たるトリテレイアの姿が現れる。
 積極性に富む。
 それは良く言い換えた言葉だ。だが、この場合、うかつにも敵である己自身の前に姿を表したことは、練度評価としてはどうなのだろうか。
「おっと、これはなんともぶっ恰好な。そちらのメンテナンスはよほど劣悪なる環境にあるわけだな!」
 のっけから飛び出すは皮肉。それにこれが自分と同じ型番の機体から発せられるとはにわかに信じがたい言葉。
 これではまるで『賊』ではないか、とトリテレイアは戦慄する。いくら性格が正反対だからと言って、ここまで落ちぶれてしまうのか。

 そんな衝撃は最早どうでもよかった。
 その雑言は意味がない。さらりと聞き流しつつ、機械騎士の戦闘舞踏(マシンナイツ・バトルワルツ)が始まる。
 それは同一の機体であるがゆえに、華麗なる輪舞であったのかもしれない。否、それは一方的なものであった。
 戦術モードを戦場全域の連続予測に最適なものへと移行し、敵である『鏡写しの私』の行動を緩やかな挙動で誘導する。
 直情的な性格であれば、たったそれだけで追いすがる。
「そこまでご自身のお力に自信が御有りであれば、口ではなく性能で示されては如何でしょうか」
 それは慇懃無礼極まる物言いであった。
 その言葉に激高した『鏡写しの私』の言葉は罵詈雑言そのものであり、到底記録データに残せるようなものではかった。

 振り下ろされる剣を躱し、見切る。
 それは可動範囲が同じ機体であるからこそ、最小限の動きで躱すことができる。同一機体との戦いに恵まれていたわけではないが、これはこれで良いデータになるのでは、とトリテレイアは期待していた。

 だが、蓋を開けてみれば、その期待は見事に裏切られることになる。
 一撃をかわした瞬間に腕を切り飛ばす。自分であれば、片腕を犠牲にしてでも武器を撮る腕をかばったことだろう。だが、それもない。
 さらなる追撃によって盾が、その脚部の関節部を砕く。真っ先に狙われる装甲の薄い関節部を護るのは定石であろうに、それもない。
「呆れ果てますね―――これが同一機体……嘆かわしいことです」
 続くシールドが叩きつけられ胴が拉げる。
 ここまで来れば最早、勝負は決したも同然であった。いや、始まる前からこの結果は見えていた。戦う必要すらなかったと言ってもいいだろう。

「な、なぜ……」
 驚愕に揺れるアイセンサーを見やり、トリテレイアは練度評価を下す。
「私達が今行った戦闘パターンは守勢からの反撃に重点をおいたもの。攻撃一辺倒で堪え性がない貴方に使いこなせる道理はありません」
 言うなれば、とトリテレイアが掲げた剣が煌めく。鏡のラビリンスにおいて、その剣は万華鏡のように様々の角度から、その姿を映し出す。
 振るわれた一撃は、過たず『鏡写しの私』を直上から唐竹割りのように一刀の元に猟団せしめる。

「宝の持ち腐れです。練度評価Eマイナス……下したくはありませんが、同一機体とは思いたくはないものです」 
 性格が違うだけで、ここまで性能が落ちるというのは、ウォーマシンとしてどうなのだと思わなくもないトリテレイアであったが、これもまたオウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードによって生み出された脅威。
 それを未然に防げたと思えば安いものである。そう、思い込むようにトリテレイアは、役に立ちそうもない戦闘データを凍結パッケージングして電脳データの奥底に鎮めるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
えらくテンション高いのが出てきたなぁ
割と淡白なとこがあるからかな

撃ち合いはお互い停めて意味が無いし
使い魔の状態異常もこの状況だと効果は薄いね

後はお互いを固定しあう千日手なんだけど
わざと押し負けてるふりをしよう

段々と体がマネキンの様になっていくのを
必死で抵抗して押し留めてる雰囲気を出したら
あの性格ならもっと力を出そうとするよね

でも力を使い過ぎると石化が進行する訳で
こちらが完全に固定される前に向こうが完全な石像になるよ
力を抜けばこちらが固定するから途中で辞める事もできないからね

さて、勝ったけどどうしよう

私が持って帰って差し上げますの
少し眠っておくといいですの

晶を完全に固定し聖域に仕舞って帰りますの



「アハハハッ! どうしちゃったんだよ、そんな顔してさぁ!」
 その声はひどく耳に障る声であった。
 もちろん、自分自身の声であるという自覚はあったのだけれど、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)にとって、それは別の生き物の声を聞くようなものだった。
 えらくテンションの高いのが出てきたなぁ、というのが、このオウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードによって変貌した『鏡のラビリンス』に立ち入った者が対峙する『鏡写しの私』に対する率直な感想であった。

 放たれ続ける傾向型ガトリングガンの銃撃の嵐をかいくぐりながら、次々と割れていく鏡のラビリンスの鏡たちの破片。
 その破片をかいくぐりながら晶は、どうやって勝利をつかもうかと考えあぐねていた。
 それもそのはずである。『鏡写しの私』とは性格が正反対であったとしても、その能力はまったくの同じ。
 ガトリングガンの打ち合いはお互いが弾丸を停めて意味がないし、決定打にはなりえない。
 使い魔に寄る攻撃を行ったとしても、状態異常を引き起こしたとしても、この状況ではお互いに効果は薄い。
「これじゃ、後はお互い固定し合う千日手だよなぁ……」
 有効的な手段が互いの身に秘めたる邪神の持つ権能、固定と停滞のちからを持って決するほか無い。

 だが、それもまた同じであるがゆえに互いが固定されて終わりである。
「面倒だけど―――頼んだよ!」
 互いに姿を表す。
 邪神の領域(スタグナント・フィールド)。それは周囲の存在を停滞・固定させる神気で覆い、自身の身体が封印により石化する速度に比例した戦闘力を得るユーベルコード。
 決定打になり得る力であるが、諸刃の剣でもあるのだ。
「ぐっ―――! 押し負けるっ!」
 晶は内心で名演技だな、と思いながら身体がマネキン化していくことに焦りと動揺を顔に出してしまう。それは戦いの場において、やってはならないことだ。焦りは行動の精度を、動揺は力の制御を乱す。
 それは敵にとっては付け入る隙であり、両者との明暗を分ける決定的な鍵だった。
「アハハッ! おんなじなのに力の制御が下手だね! ほらほら、もっともっと!」

『鏡写しの私』が嘲るように力を込める。
 我ながら単純なことだと、晶は想ったかも知れない。いや、性格が正反対であるのだから、自分のことではない。厳密には。
 互いに同じユーベルコードを使う以上、そのデメリットもまた同じである。戦闘力を増強させるためには、己の身体が石化する速度を上げる必要がある。
 短期決戦を挑んだほうが、事を急いだほうが負ける勝負なのだ、これは。

「―――テンション高すぎて、見落としたのが間違いだったね。デメリット。それじゃあ、君のほうが先に石像封印されてしまうよ」
 それは晶の言うとおりだった。
 一気に石化し、空中から石像が落ちて砕ける。演技とは言え、あんなに引っかかるのも問題ではあるが、此の手しかないのもまた事実。
「……さて、勝ったけどどうしよう」
 それはユーベルコードの副作用である。徐々に石化していたのだが、相手の自滅を狙うため、こちらも力を行使しすぎた。
 そこにひょっこり顔を出す邪神。にっこりと笑っているのが、なんとも言い難い。
「私が持って帰って差し上げますの。戦いも佳境ですから、少し眠っておくと良いですの」

 その言葉に礼を告げる間もなく晶の体は固定化されてしまう。
 デメリットから開放されるのも僅かな時間であろうが、ある意味で僅かながら休息できると考えればいいものだろう。
「おつかれさまでした♪」
 邪神の聖域に固定化された晶をしまい込んで、邪神が鏡のラビリンスを後にする。
 もしも、晶があんなにハイテンションであったのなら、と邪神は少し考えるが、それは意味のない思索だ。

 こっちのほうがいいですの、という言葉が聞こえたか聞こえなかったかは、固定化された晶のみが知る事実であった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
え、正反対の私とか何それ
めっちょ真面目じゃん!
何だと、私が真面目じゃないとでも言うのか!
聞いているのか!ラキア・ヨキツ君!
え、名前は正反対じゃないの?
そう…


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
いやもう、くっそ真面目な戦い方だなあ
もっとこう、ユーモアを入れながら戦おうよ
【神器複製】を起動
複製剣を生成し、2本程足場にして『念動力』で浮かせて私は高見の見物してよ

はい…玲浮きます…

残りの複製剣で偽物を小突いたり、突っ込みみたいに剣で叩いたりして弄ってあげよ
私は自分の元に来る攻撃を『オーラ防御』でガードしたり『武器受け』したり

適度に偽物がイライラして来たら一斉攻撃でフィニッシュだよ



 自由気ままな生き方に憧れる者は多いだろう。
 けれど、完全に自由とは何者にも束縛されない代わりに、あらゆる責任が自分に降りかかることである。そこに泣き言の一切は認められない。
 それ故に自由に生きるものは、真に強きものであったのかも知れない。
 オウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードによって変じた『鏡のラビリンス』は、その地に足を踏み入れた者の『鏡写しの私』を敵として差し向ける。
 その姿は左右対称の姿であり、正反対の性格を持つ。能力は同等であり、その勝負の明暗を分けるのは、おそらく能力と性格の相性であろう。

 故に、月夜・玲(頂の探究者・f01605)にとっての正反対の性格を持つ『鏡写しの私』とは、即ち―――。
「え、正反対の私とかなにそれ、めっちゃ真面目じゃん!」
 背後にガビーン! と効果音が聞こえてきそうなほどに驚愕した表情を作り、大げさな仕草でもって『鏡写しの私』を出迎える玲。
 その姿を見据える『鏡写しの私』の視線は冷ややかな物だった。何言ってるんだろう、この人。そんな冷めた視線であった。
「なんだと、私が真面目じゃないとでも言うのか! 聞いているのか! ラキア・ヨキツ君! え、名前は正反対じゃないの?」
「……一人芝居もいい加減にしてくれない?」
 言葉の刃が玲の心を抉る。そう……とシュンとなった玲へと踏み込んでくる『鏡写しの私』の模造神器の一撃。

 その一撃を同じく抜刀された《RE》IncarnationとBlue Birdが受け止める。
 さすがは自分が作り上げた模造神器であると、なぜだか嬉しい気分になりつつ、その直線的な攻撃に呆れる。
「いやもう、くっそ真面目な戦い方だなあ……もっとこう、ユーモアを入れながら戦おうよ。例えばさ」
 その瞳がユーベルコードの輝きを放つ。
 神器複製(コード・デュプリケート)。それは彼女が造り出したガジェット……模造神器を複製する力。複製たる剣が中に浮かぶ。念力で全てバラバラにコントロールすることができるのが、彼女の力の所以。

「さあ、私の研究成果のお披露目だよ!―――って、これくらい華やかに自分の研究成果を誇らないと」
 造った意味がないじゃない、と玲は微笑み二本の複製剣を足場にして浮遊していく。
「馬鹿なのですか。目立ちたがり屋なのもいい加減にしてほしいです。貴方のやっていることは非合理に過ぎる」
 ぐっさりとまた言葉のナイフが突き立てられる。舌戦であったら確実に負けていたやもしれぬ。はい……と玲は諦めたようにふよふよと宙に浮かぶ。
 残りの複製剣たちが一斉に『鏡写しの私』へと襲いかかるが、その尽くを生真面目な玲……『鏡写しの私』が切り払っていく。

 うわー私強い。
 そんな冗談めかしたことを考えながら、冷静に見つめる。
 能力が同じなら自分のユーベルコードはあちらも使えるということだ。生真面目であるということは、つまり自分を真正面から打ち倒そうとしてくるだろう。
 ならば、次なる手は。
「はい、正面からの物量作戦ね。でもさ、これって手が見え透いてるよ。通じるのは三下位じゃないかな? こんな感じ―――」
 正面から飛来する複製権の全てをオーラと複製した剣が網目のように展開し、その尽くを絡め取って、失墜させる。
 それは奇しくも、真面目な『鏡写しの私』への意趣返しだった。正面からの突撃を正面から打ち破る。
 能力が同じであっても、使い方次第……言わば、あんた頭固いのよと言っているのも同じであった。

 真っ赤な顔をして何事かを叫んでいるが、玲は耳に指で栓をしていた。
「あーイライラしてる。それじゃ、頃合いかな。真面目なだけじゃ勝てない敵だっているってこと」
 掲げる手に集まるは複製剣の群れ。
 それは全てがバラバラに動かすことができるがゆえに、その制御を同一にすることによってさらなる勢いをまして放つ。
 一斉に放たれた複製剣は、こちらの全力の攻撃を放った直後であれば防ぐことも出来ない。

 放たれた一斉攻撃は、過たず『鏡写しの私』を穿ち、鏡が砕けたような音を立てて霧散していく。
 自分自身と戦うということであったが、性格が正反対なだけで強みはほとんど失われているようなものだった。
「だから言ったじゃん。もっとユーモアが必要だよって。やっぱり私は間違ってないね!」
 そう、あっけらかんと笑って玲は鏡のラビリンスを後にするのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
自分で言うのも何だが、俺はかなり複雑な人格だ。
細かくて、知りたがりで、何故かアレンジ大好き。
此れの逆は……ふむむ、更に複雑そう。
■闘
【WIZ】
鏡の俺はアレンジが嫌い……となると此れまで学んだ
【戦闘知識】に基づいた行動が目立つかもな。
相手の動きを観察しつつ、腕や脚の動きから『どこから
仕掛けてくるか』を特定しよう。
仕掛けられらすっと身構え、【武器受け】で受け止める。

して、此方はアレンジを重ねた技を御披露目しよう。
相手の守りが薄い部分を【見切り】つつ、フェンシング
気味の【真爪・剛】で一差しだ。
細かい所に気を配っていない故、隙はある筈。

改めて思ったが、我ながら複雑だなぁ……

※アドリブ歓迎・不採用可



 己の性格を正確に理解するのは難しい。
 自分ではこうであると思っていても、第三者からの視点で見れば、そういうわけでもないということは多々あることだろう。
 故に愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は頭を悩ませるのだ。
「自分で言うのも何だが、俺はかなり複雑な人格だ。細かくて、知りたがりで、何故かアレンジ大好き」
 言葉にしてみても、なんともとっちらからっているような気がして、複雑な、と自分での評価も案外当たらずとも遠からずというわけでもないほどに真に迫った評価であるように思えてきた。

 オウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードによって変貌した『鏡のラビリンス』。そこは鏡に覆われ、『鏡写しの私』と呼ばれる、この地に足を踏み入れた者の姿を左右対称に。性格を正反対にした能力の全く同じなる敵を差し向けてくる。
 その対策のために自分の性格と正反対の者をイメージしようとしていたのだが、清綱にとって、それは難しいものであった。
「此れの逆は……ふむむ、更に複雑そう。なんとも面倒な」
 足を踏み入れ、それでも尚、結論が出ないままだ。
「逆に考えれば、鏡写しの私たる俺はアレンジ大嫌い……となると此れまで学んだ先頭知識に基づいた堅実なる行動が目立つかも知れぬ」

 その彼の目の前に立つのは清綱の姿をした『鏡写しの私』である。
 手にした刃を手に真正面から向かってくるのはセオリー通りであるとも言えるし、必勝のパターンであったかもしれない。
 裂帛の気合も申し分なし。まさにお手本通り、教本に記載されていてもおかしくないほどに美しい太刀筋であった。
「なるほど、たしかにアレンジ嫌い、即ち、定石通りの型通り……ならば」
 そう、アレンジを嫌い基本に忠実であるというのならば、その剣閃の太刀筋は読みやすいものである。
 同じく構えた太刀によって、その剣閃の行く先は容易に知れる。刃と刃がぶつかり、火花が散る。

「俺の太刀を受けるとは―――敵ながら見事である。だが!」
 さらに放たれう剣閃。その尽くを剣戟の音を響かせて、清綱は受け止め続ける。防がれたと見れば、即座に業を変える。
 その基本に忠実なる型通りであるが、勝つためのパターンを熟知した動きは見習ってもいいかもしれないと思いつつ、自身も負けてはいられぬと奮起する。

「ならば、此方はアレンジを重ねた技をご披露しよう!」
 すでに『鏡写しの私』の放つ太刀筋は読みきった。そして、その防御の薄い場所も。すでの此の身は猟兵である。数多の世界を渡り歩けば、その世界独自の剣術がある。それを学び、己の剣と融合させてきた清綱にとって、アレンジされた剣術は最早基本より逸脱したものであったことだろう。

 フェンシング。
 それは突き技主体の剣術であり、鎧の隙間を的確に攻撃するための必殺の剣である。
 つまるところ、それはユーベルコードにまで昇華された一撃。
 名を、真爪・剛(シンソウ)。
 放たれた刺突の一撃は、過たずその肩を穿つ。刃の範囲を決める肩。
「細かいところに気を配っていないのが、丸わかりである。それが隙。基本に忠実であるがゆえに、隙が少ないのが利点であるが、その隙を巧妙に隠すことを覚えていない剣技に、数多の世界を渡り歩いた俺の一撃は防げはしまいよ」
 振るわれた一撃。
 そこからひび割れるように『鏡写しの私』が砕けて霧散していく。
 もしも、逆の立場の自分であったのならば、なんと言うだろうか。口惜しいと思うだろうか、それとも―――。

 何か言葉を告げようとする『鏡写しの私』。
 だが、その声は清綱にまでは届かなかった。オウガ・オリジンが変じた『鏡のラビリンス』。それは幾体もの『鏡写しの私』が倒されたことによって崩壊し、『鏡のラビリンス』そのものであるオウガ・オリジンもまた灰燼に帰すのだ。
 そのちょうど最後の一体であったのだろう。崩壊する音に紛れて、清綱に届かなかった『鏡写しの私』の最後の言葉。

「……改めて思ったが、我ながら複雑だなぁ……」
 知りたいと思った。
 もう知り得ないことであるが、それでも、『鏡写しの私』がなんと言ったのかを。それは気まぐれのような好奇心であったのかも知れない。
 けれど、それでも。
 失ってからでも知りたいと思う欲求があることに清綱は驚きつつも、崩壊するオウガ・オリジンの変貌した鏡のラビリンスを見下ろし、その猛禽の翼で次なる戦場へと飛び去っていくのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月20日


挿絵イラスト