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星宙に駆ける風となれ

#スペースシップワールド #戦後

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●第XXX回カバリアフォーミュラ開幕!
 かつて……この宇宙にまだ惑星の輝きが満ちていた頃、銀河を焼き尽くすほどの戦争がありました。
 銀河帝国の侵略とそれに立ち向かうべくして立ち上がった多くの人々――後の解放軍との戦いは多くの悲劇を生み、そしてそれに劣らぬ数の英雄譚をも私達に遺してくれました。
 そんな英雄譚のひとつに、ある伝令鎧装騎兵の物語があります。
 帝国の罠にかかり壊滅した解放軍艦隊から一人落ち延び、無数に迫る帝国軍の追手のことごとくを躱して後続の友軍に罠の存在を伝え、幾万の将兵の命を救ったと言われる名も無き彼、あるいは彼女に捧ぐべく、当時その鎧装騎兵に救われ戦いを生き延びた有志達によってこのカバリアフォーミュラは企画されました。
 その後銀河帝国の復活によって長らく開催中止となっていましたが、今!
 ようやく長い眠りから目覚め、銀河最速の名を掴み取るべく多くの勇敢な鎧装騎兵達が再びこの宙域に集まったのです!!

 マイクを握りしめ熱く語る司会の男が拳を突き上げると、観客席から船を揺らすほどの歓声が上がる。
 銀河帝国との二度目の戦争終結から一年半。もはやそれそのものが伝説になりつつあった騎航競技――アームドレースの頂点を極める戦いが此処に蘇ったのである。
「そして今回は解放軍の完全協力のもと、復活第一回にふさわしいスペシャルな内容で皆さんに蘇ったカバリアフォーミュラの魅力が色褪せてなど居ないことをお伝えいたしましょう!」
 コースは大きく二部構成となる。
 前半はこの巨大サーキット船ヘルメスF19の艦内に誂えられたシンプルな周回コースを三周。ここで騎兵達は十分な加速を得る。その間にヘルメスF19とその随伴艦隊もワープ航法で移動し、後半の舞台となる――伝説の名もなき騎兵が駆け抜けた古戦場宙域へと向かうのだ。
 そう、第二部は旧大戦のデブリ漂う古戦場での障害物レース。前半で得た加速のままにヘルメスを飛び出し、英雄の足跡を遡るように暗礁宙域を駆け抜けたその先に、銀河最速の称号が待っている。
 我こそはという猛者達が集う中、大会の開幕に向けて人々の熱気はどこまでも高まってゆく――!!

●図らずも伝説の再現と
「いいですよね、騎航競技……僕は娯楽をあまり嗜みませんけど、あれはとてもよいものだと思います。ああ、スケジュールさえ合えば僕も愛機で参加したかったです」
 部隊章を象ったグリモアをくるくると回しながら、パルは集まった猟兵達に開会式典の映像を披露した。至極羨ましそうに。
 ここが何処かの旅団であったならばこのまま中継観戦となるのだろうが、ここはグリモアベース。つまりはそういうことで、パルも其処からは仕事モードに切り替えて猟兵達に向き直る。
「今回のレースなんですが、先程解説のあった後半の部……宇宙船外でのレースで銀河帝国残党部隊の妨害が入ります」
 実際のところ、解放軍協力で主催されているレースなのだ。このレース自体を餌として、暗礁宙域に潜む残党を釣り出し掃討するのが裏の目的であり、そのためにスタッフは重武装の解放軍部隊で固められ、参加者には武装が許可された上で解放軍からもいくつかのチームが参戦している。
「基本戦術として、スタッフ側の解放軍部隊がレースにおびき寄せられた残党を待ち伏せ撃滅、仮に突破されても選手に紛れた軍の騎兵がレースの演出としてこれを掃討する。そういう手筈になっています」
 ただ、とパルは微かに声音を曇らせた。
「盤石の体制の筈なのですが、グリモアの予測では参加者、軍部隊ともに少なくない被害が発生しレースは中断してしまうんです。詳細は不明ですが間違いなく銀河帝国軍の仕業でしょう」
 レース仕様のアームドフォートともなれば、最新技術や高価なパーツが惜しげもなく注ぎ込まれた一級品。そしてそれを運用するスタッフや動かすための資材もまた、物資欠乏に喘ぐ帝国残党には喉から手が出るほど欲しいものに違いない。
 それを守るためにも、そして平和の祭典を壊させないためにも、ついでに言えば銀河最速の冠もちょっと狙いつつ、猟兵達は駆け抜けて欲しい。
「ところで皆さんの参加者登録は先に済ませておきました。アームドフォートをお持ちでない人もいると思いますが、そこは僕がカスタム用のプレーンな騎体を調達しておいたので自由にカスタマイズしつつ宜しくお願いしますね!」
 転送ゲートを展開しつつ猟兵を送り出すパル。だがいつもの敬礼はなく、彼女は届いたばかりの新品の高品質記録メディアの包装をべりべり剥いていた。
 ――仕事をよそに録画する気満々であった。


紅星ざーりゃ
 暑い! とても暑い!
 熱中症にはお気をつけください、紅星ざーりゃです。
 戦争中なのに今更スペワで残党狩りシナリオ? いいじゃないですか別に!

 そんなわけで残党狩りです。レースしながら残党狩りです。
 一章ではワープ航行中の宇宙船内サーキットで速度勝負。
 二章以後は銀河帝国残党の介入を躱しつつ、技量と度胸の比べ合い!
 もちろん猟兵的には残党討伐が主目的ですから、レースをリタイアして戦闘にすべてを傾けるも自由!
 そんな感じでどうぞ、よろしくお願いします!
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第1章 日常 『レースシップで熱いバトルを』

POW   :    直線部分で他の参加者との差をつける

SPD   :    コーナリングで他の参加者との差をつける

WIZ   :    斬新な作戦により他の参加者との差をつける

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ヘルメスのサーキットは、艦内空調によって完璧な適温に保たれている筈だというのに汗ばむほどの熱気に満ちていた。
 数キロほどの巨大なコロニー型居住宇宙船を改造して誂えられたレースの舞台を取り囲むように設置された観客席に定員数を超えるほど集まった老若男女あらゆる種族の観客たちの熱意と、レースに参加する腕利きの鎧装騎兵たちの焼け付くような闘争心がそうさせるのだろう。
 サーキットはひたすらに巨大だが、構造自体はシンプルな直線と曲線を組み合わせた楕円。そして直線の一端がそのままヘルメスF19の宇宙港カタパルトに直結し、三度の周回を終えたものからカタパルトに飛び込み宇宙空間へと飛び出してゆく手筈になっている。
 そんなコース説明とともに船内を縦横に飛び回るドローンが撮影した映像が観客席前に設置された巨大なスクリーンに映し出される。
 このヘルメスでのレース自体も激しい戦いが予想されるものだが、それすら前哨戦に過ぎないという事実に観客たちは拳を握りしめ、固唾を呑んでその激闘に期待せざるを得なかった。
 そんな時、アスファルトで固められたコースを映していたスクリーンの映像が司会の男に切り替わる。
 いよいよだ。遂にレースが始まろうとしている。

「紳士淑女の皆さん! お待たせいたしましたッ!! 全参加者が揃いましたのでこれより選手入場ですッッッ!!」
 映像が再びコースに切り替わる。舐めるように路面を滑るドローンが、コースをなぞって選手たちが控えるハンガーのシャッターを捉えた。
 ゆっくりと上っていくシャッター。眩いストロボの光がその向こうから漏れ出し、それを逆行にいくつかの影が姿を現す。

「まずは本大会最大のスポンサー、解放軍からの参加チームが登場です!!」
 観客席の一部が沸いた。今次大戦の英雄、立ち上がり勝利した自由の戦士達。
 解放軍の人気は根強い。そして戦場を潜り抜けた精兵と信頼性に長けた軍用騎の組み合わせもまた、シンプルに強いというものだ。
「No.01! 海兵隊アイアンズ大隊から出場、アイアンズ中佐! 騎体は重装甲の軍用パワータイプ、Model85M2! 漂うデブリを物ともしない、戦闘の為に生み出された軍用騎らしい性能は後半戦で輝くか!?」
 ウォーマシン軍人が駆る肩部にランチャーを、そして大型の実体弾ライフルを小脇に抱えたオリーブドラブの重アームドフォートが拳を掲げ、そしてドローンに向けて砕けた敬礼を送る。
「No.02! 機体のルーキー、ハウメア艦隊ワイルドハント中隊より参加、ルシアナ・リンゼイ准尉! 騎体は全環境対応の密閉装甲型リベレーターMk-ⅳ、まだ十代の若きエースは猛者揃いの今大会でどんな記録を残してくれるのでしょうか!」
 肩にリディア・スターゲイザーを象ったノーズアートを頂き、腕にサイケデリックな幾何学模様の布を巻き付けたまるでロボットのような白い密閉装甲型アームドフォートは先行するアイアンズ騎と違い生真面目に敬礼でドローンにアピールを送ると、教本通りに突撃銃を担いで規律正しく行進する。
 そのヘルメットが開けば、それを着込むのはまだあどけないティーンエイジャーの少女であった。
「続いては民間チームのエントリーです! No.03! フェニックス水産よりケイコ・イグチ選手! スペース漁業で培った繊細かつ大胆な騎体制御が売りだそうです! 騎体はエクスレイ2000、民生用の漁業カスタムモデルでアンドロメダバショウカジキに並ぶ直線加速を誇るハイパワーモデルだ!」
 ド派手なコバルトブルーに料亭や寿司屋の看板ステッカーをベタベタと貼り付けたアームドフォートを駆るよく焼けた肌が健康的な女漁師が、サングラスを額にずらして観客席に投げキッスをすれば歓声が上がる。
「そして忘れちゃいけません! アームドフォートの名門、アトランタ重鉄鋼から参加は警備主任ロバート・ヘルベルト! アトランタは帝国の襲撃から不死鳥のように蘇り、レース特化の最新鋭騎"瞬光”を携え最速の称号を獲りに来た!!」
 いかにも速そうな流線型の鮮烈なクリムゾンレッドの機体を操るのは若い男だ。
 隣を歩く女漁師のように砕けた振る舞いもせず、先を往く軍人たちほど肩肘も張っていない自然体は強者の風格を感じずにはいられない。
「更には……おおっと、これは思わぬ参加者です! リゾート船エイハブⅨより無人試験騎プロト・ネモが参戦だ! コントロールはエイハブⅨ管理AI、くじらさんが遠隔で行なっているそうです! 人体の限界を超えた機動が見られるのか――!?」
 骨組みだけのように見える、塗装もなく地金の色を剥き出しにした細いアームドフォートは操る人間の姿もないままひょこひょこと漁師と警備主任の隣を行く。
「そしてこちらは詳細不明、今大会のダークホース……ライヒ・ユーバーレーベンサイエンスより密閉装甲型アームドフォート、ポラリス! こちらは騎手が明かされていません! 軍の実験機というウワサもありますが解放軍からのコメントも一切無し! 何者なんだポラリス!!」
 こちらも純白の――先行く少女軍人の機体より幾分か大柄な騎体が、ドローンや観客には目もくれずにスタート位置へと進み出る。
 ――そして。
「最後はもちろん我らがヒーロー、銀河を救った立役者!! 猟兵たちのエントリーだッ!! 英雄はレースにおいてもその強さを見せつけるのか!?」
 さあ、君たちの出番だ! スタッフに促され、猟兵達はハンガーと戦場を隔てるシャッターを潜り抜けてゆく!
アリシア・マクリントック
なるほど面白そうですが、参加できそうな機体を持ってないんですよね。せっかくなら自前のもので参加したいですし。……閃きました!

背面には改造したプラウドウルフ3世改め4世をブースターとしてドッキング。ティターニアアーマー本体の作業用の機体由来の安定性を重視したシステムと滞空・姿勢制御用ブースター。プラウドウルフの旋回性を重視したシステムと戦闘用に改造したときに強化した高出力。これらが合わさればレースにも十分耐えられるでしょう。
名付けてスペースティターニア!

改造は突貫ですから無理はしないでいきましょう。ですが、負けるつもりもありません。まずは機体の癖を把握しつつ……直線で一気に仕掛けます!出力全開!


アイ・リスパー
「レースならば、この夏仕入れた私の新装備の出番ですね!」

【高機動型強化外装】を装着して、レースに出場です!(外見は水着2020)

この高機動型のパワードスーツは、オベイロンの欠点であった機動力を重視したもの。
最低限まで削った装甲の代償に高機動性を備えたパワードスーツです!

「これなら銀河最速の称号はいただきですね!
全宇宙に私のパワードスーツの素晴らしさを知らしめましょう!」(メカオタク感

レースは、序盤はパワードスーツの欠点である排熱を気にして、オーバーヒートしない程度で周回。
最後の周でフルスピードを発揮して、一気にレース相手を抜き去りましょう!

「銀河を駆ける赤きパワードスーツ、見てくださいっ!」


ジャック・スペード
レースは見るのも好きだが
参加するのも愉しそうだ

斯ういうのは見た目も大事だな
機体は黒く塗り、スペードの意匠を刻んで
入場時は観客に軽く手を挙げ挨拶を

カスタマイズは、スピード重視で
機械の躰に機械を重ねるのは重苦しい
アームドフォートは躰に
パーツを携行するタイプだと好もしいな
ああ、装甲は薄くても構わない

片腕にビームライフル組み込んで
もう片腕にはミサイルを組み込もう
レーザー射出機能付きの機翼も在ると良い

開始と同時に機翼を羽搏かせ
勢いよくスタートダッシュを
兎に角飛ばして行こう

機翼を活かすことで小回り利かせつつ
コーナリングもスマートに熟して見せる

任務の一環と云え、勝負事だからな
負けず嫌いの血が騒ぐ――


キリエ・ニール
アドリブ絡み歓迎
ん~どっかで見たことあるような人がちらほら…あ、あれくじらさんだ。

さて困ったな、アームドフォートは慣れてないんだよねぇ
……久しぶりに【メカニック】の物まねでもしますか

アームズフォートの外装を引っぺがして、ストームダイバー(宇宙バイク)に溶接してレギュレーションを突破

レース参加前にコード使用
山高帽のお爺さんを召喚し、ピットでアドバイザーをやってもらうよ
ねぇお爺さん、伝説を超えられるか興味ない?
このサーキットを見通しておくれよ

僕自身はお爺さんからの情報と【第六感】を頼りに、壁も天井でも、どこでも走れそうなルートを見つけてバイクを走らせる
やっぱり僕の【騎乗】はバイクだなぁ


テリブル・カトラリー
【POW】(世界知識)
壊滅した解放軍艦隊、生き延びた鎧装騎兵か……どうだったかな………

自身のバイク型アームドフォートで参加する。
使い慣れた物の方が走りやすい、何より……私の目的は帝国残党。
こいつの方が戦いやすい。武器改造・ブースター(吹き飛ばし力の強化)を増設。

アームドフォートを操縦し、増設ブースターでダッシュ。
直線部分で加速し、戦闘知識、旋回のタイミングを予測(見切り)し、怪力で地面を踏みつけ、早業、足を軸に向きを逸らして、クイックブースト

元帝国兵の私が、形だけでも参加していいものか、とも思ったが…
祭りなんだ。ダラダラ走っていては、それこそ誰に対しても失礼だろう。


ダビング・レコーズ
このタイミングで発生する銀河帝国軍残党の襲撃
プリンセス・エメラルドとの合流を画策する上での事前準備でしょうか

【POW・アドリブ連携歓迎】

任務要綱に従いレースに参加
当機の競技での運用は想定外ですが元来高機動戦闘を前提とした設計なので問題は無いでしょう
スタートと同時にSSDを起動
最高速度の確保は無論フィールドを展開し空気抵抗を軽減させます
第一競技会場は整備されたシンプルなサーキットとの事なので、基本形態を直線加速に優れたソリッドステートとします
カーブ直前ではウォーマシン形態に変形
エアブレーキによる急激な減速をかけつつドリフトの要領で横方向へスライドブースト
再度ストレートへ戻る前に十分な加速を得ます


トリテレイア・ゼロナイン
この平和の祭典に残党の手が及ぶのであれば騎士としてこれを防がねばなりません
なので個人的にはレースの結果は周回遅れの最下位でも良いのですが…

自前のアームドフォート(UC・白に紫のラインの大型ウォーマシン用)を用意してくれた開発元の後援企業の意向や宣伝を考えるとそのような訳にもいきませんね…
兎に角、全力を尽くしましょう

レース開始前にアイアンズ様にご挨拶
そして解放軍の迎撃プラン等の概要も今後の連携の為に教えて頂いて…

分かってはいましたが、やはり直線では置いて行かれますね…!

(大気圏や水中の使用も想定した汎用性、装甲と運動性重視の設計が原因)

慣性を完全に殺さず適度に制御
コーナリングで少しでも挽回です!


ヘスティア・イクテュス
まさか、かのカバリアフォーミュラが復活
参加できるとはね…

鎧装騎兵ではないけど、普段やってることはほぼ鎧装騎兵みたいなものだし
えぇ、銀河帝国との戦いで更に上がった『空中戦』技術をお見せするわ
目指すは当然、銀河最速ね!



可能ならティターニアの使用を
ダメならまぁ、スラスターが多くて小回り制御の効くのをお願いするわ

前半戦は引き離されすぎないよう注意しつつ
後半のデブリ帯で引き離す作戦よ

小回りを活かし、コーナリングギリギリを攻めることで優位に
まぁ前半戦なら真ん中辺りを維持できたなら上々かしらね?


※入場時は髪をふぁさーっとクールな感じで


ジル・クリスティ
アームドフォートでのレース!
ならば本職の鎧装騎兵の私も黙っちゃいられない!
最新技術てんこ盛りのレース用アームドフォートのメカマンなら、私サイズの鎧装の強化改造だってきっと!
こういう所で職人とのコネを作らないとね
…って、私は見世物でもフィギュアでもないからーっ!?

レースは全力!
サイズが小さいから不利?
ノンノン、この大きさでも人間サイズと出力変わらないんだよ?
つまり、軽い分むしろ有利ってもんさ!
行くよ!全速全開!なんぴとたりとも私の前は飛ばさないっ!

私の最大の武器は、軽さと出力をいかした加速性能
コーナリングからの脱出速度でぶっちぎってあげる!
小さいからこそできるレーステクニックご覧あれっ!


ビードット・ワイワイ
【SPD】
頭がおかしいわけではなく時代が追いついておらんだけ

ウォーマシンならばその体躯の全てが実質アームドフォート
故に我の新たな体、モノホイール型で参加しても問題ない、きっと(ブオンブオン)
地上走行用だがスペーススカイフィッシュをエンジン、姿勢制御にスカイフィッシュを用いることで速さと安定性を兼ね備えた飛行機能を獲得
双方合意の上、協力しておるので心配はせぬように

走ることにのみ特化した機能、
体と機体が一体となったことで生まれる精密な動作でコーナーで差を詰めろ

牽制用に弾をばらまき妨害しつつレースを楽しもう


アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
うう、派遣センターさんのPRのお手伝いしたらクーポンいっぱい貰えるって聞いたから来たけど……レースなんて聞いてないよぅ……
アクセルとブレーキだけやればいいって言われても……!?

エントリーナンバーXX番『ギャラクシーエクスヘルプ999』
小型ウォーマシン達が連結し、エンジンを直列起動させることで超新星爆発的な加速を実現する……かもしれない機体。
その外見は天の川銀河太陽系第三惑星でかつて使用されたという蒸気機関式連結型陸上走行車両に偶然にも酷似している。

※余った資材を用いて突貫工事で作られたコクピットにクーポンに釣られた聖者の少女が乗り込んでいる。強力なサイコキネシスによる慣性制御が勝利の鍵だ


木霊・ウタ
心情
伝令鎧装騎兵の想いは
今も受け継がれているんだな

俺たちがレースしてる姿は
観客皆の希望になるだろうし(こそばゆいけど
精一杯頑張ろうぜ
そして残党をぶっ飛ばす

カスタマイズ
スピーカー&アンカー
歌や音楽を聞かせる為の奴な
実際に使う機会があるかは分かんないけど

獄炎接続
地獄の炎を
加速燃料として
直接、バーニアとして
熱線として
種々に使えるようにする便利機構
流石スペワテクノロジー!
欠点は多分腹が減る

レース
獄炎燃料の量とかバーニアのタイミングとか
試しながら慣れてく

で解放軍チームの動きや特徴を
出来るだけ頭に入れとく
…こん中に残党に与する奴がいるかも、な

カタパルトに乗ったら獄炎全開でGO!
「俺の歌を聴けー!!!」


ギヨーム・エペー
SPD

バイクできた。いいよね、宇宙。走りがいがあるもの
おれのバイクは耐久性はあれどスピード重視ではないからなー
直線よりは曲線で勝負かな。加速は曲がる際に行おう
あと、タイヤは宇宙仕様のやつに変えておく。そのくらいかな、できることは

出るからには手を抜くことなく、前を目指さないとなー!
だが、楽しくいこう。いいレースになるといいな


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携・レースバトル大歓迎!】

おいおい、レースだって?
しかもスペースシップワールドで、って野暮だねぇ。
スターライダーたるアタシが出ない訳にゃいかねぇだろ!
一も二もなくエントリーさ、搭乗機体はもちろん宇宙カブに『騎乗』!!
色んな所でチューンと修理を繰り返してきたんだ、
甘く見るなよー?
そうしてスタートと同時に……まあちょいと後方かな?

さすがに最高速は他に譲るよ。
そこまでうぬぼれちゃいないからね。
ただ、カーブとなれば話は別さ!
小回りの良さと加速力に物を言わせて、
『操縦』テクを駆使して追い抜きにかかるよ!
さあ、銀河最速のドライバーの面だけでも拝ませてもらおうかねぇ!


チトセ・シロガネ
今回は残党狩りがメインだケド、こういうレースだものちょっとくらいサービスしなくちゃね!

コーナーでEWストームブリンガーの性能をちょこっとアピールするネ。
UC【雷光ノ極】を発動!
通常ならスピードを落とすところを急加速、コースアウト寸前のところで念動力で作った磁力の力場を蹴り上げてさらに加速、颯爽とコーナーを抜けていくネ。見事な早業デショ? 名付けてチトセ・スペシャル!

普通の人間ならコワれるマニューバだけどボクならこんなの余裕のヨッチャン!同じく限界を超えたマニューバを見せるプロト・ネモにウインクでアイサツして追い抜くヨ。

あとはその様子を大型ビジョンに移されたら投げキッスでアピールするヨ。


トルメンタ・アンゲルス
へぇ、これは面白い。
戦争以降、開発が活発になっているのは良いですねぇ!

機体同士のレースなら、自分の足ではなく、相棒と共に征きましょう!

さあ、楽しく走りましょうか、相棒!
C’mon! NoChaser!
俺たちの速さ、見せてやろうぜ!
マキシマム!
グッドスピィィィィィド!!

最初からトップスピードと操縦技術をお見せしましょう!
スタジアムの耐久性ギリギリの衝撃波を生み出す、極超音速位のダッシュで疾駆!
コースや他の走者の動きは第六感で見切り、速度を落とさないままカーブへ!
インベタからアウトに流れ、そこから鋭角に曲がる走りでまたインを抉る!


もし誰かが音の先を見るなら、こちらは光の先をお見せしましょう!




「これは……」
 司会者は続く言葉をうまく吐き出せない。
 スタートラインにずらりと並ぶ鎧装騎兵たち。その姿は壮観である。が――
 まさかその1/4にもあたる四騎が伝統的な人型ならざる姿をしていようとは。それでも四騎のうちの一騎は辛うじてアームドフォート――機動砲台としての役割を果たしている。だが残る三騎のうち二騎はどう見ても宇宙バイクで、最後の一騎に至ってはなんというか……円環の内側にその上半身を接合したようななんともいい難い異形の姿。
「レギュレーション的にどうなのでしょう。バイクに関してはステラ・モトの管轄のような気がしますが……少々お待ち下さい、大会運営が協議に入ります」
 スタートライン脇に集まった運営スタッフたちが円陣を組んでひそひそとどう対応するべきかの協議を開始する。
 それを横目に多喜はしまったねぇと目頭を揉んで俯いた。
「スペースシップワールドでレースだってんでテンション上げ過ぎちまったね……看板にも鎧装騎兵レースだって書いてあるじゃないか」
 長年連れ添って手ずからに修理やチューンナップを繰り返した愛車の性能と、一緒に磨き上げた技量を披露するまたとないチャンス。多喜は「スペースシップワールド」「レース」のワードで反射的に参加申込みし、大会運営も猟兵の紹介枠での参戦だからと確認無しでパスしてしまった。
 が故に、二十騎近い騎兵が並ぶスタートラインで数少ないライダーとして、運営の裁可が下るまでどうにも肩身の狭い思いをしてしまう。
「きっと大丈夫。今は参加の心配するより本番で本気出せるようにしよう」
 多喜が微妙な表情をしているのを、ギヨームはあっけらかんと笑い飛ばした。心配していてもそれで参加が許可されるわけではない。許可されると信じて堂々としていることこそ寛容であり、多少場違いであったとしてもその走りが本物であれば観客たちも認めてくれるだろう。
「いいよね、宇宙。走りがいがあるもの。多喜ちゃんも楽しもう?」
 ゆったりのんびりとした語り口におおらかで柔らかな笑顔。だがギヨームの目に宿る闘志は本物だ。やるからには本気で優勝を獲る。そこにそも参加出来ぬのでは、などという余計な心配が介入する隙間などありはしないのである。
「……はは、そうだね。アタシもそのつもりで来たんだ、やってやるさ!」

「おい……なんだアレ」
「…………なんなんだアレ?」
「いやアレは……やっぱわからん、アレとしか言えない……」
 バイク乗りの参戦でざわつく観客席だが、そんな中で一際の視線を集めているのがビードットだ。マシンが己自身、というのはまあ、ウォーマシンの鎧装騎兵にはままあることなのでいいだろう。ビードットは厳密には鎧装騎兵ではないが。
 しかし人々の理解を寄せ付けないその形状は、観客たちをして困惑せずにはいられなかった。
 だってデカいタイヤだもの。
 一輪車とかそんな理解しやすい存在ではない。タイヤだ。タイヤの内側にビードットの上半身が生えている。
「鎧装騎兵……か?」「いやバイクだろ……」「一輪だし"バイ"ではないよな……」
「じゃあなんだよアレ……」「ぜんぜんわからん……」「ライドキャリ……いや、うーん……」
 混乱する観客席。ぶっちゃけ運営委員会の「ライダー参加の是非を問う会議」は早々に「まあ猟兵だし記念すべき復活第一回だし今後のステラ・モトレースとのつながりを作る意味でも特例で許可」と結論が出ている。が、これを何枠で出場させるのかという一点で会議は踊り続けている。
「一つだけ言っておこう」
 そんな運営委員たちに、ビードットは重々しい雰囲気で語りかけた。
「我を理解できぬのは汝らの頭がおかしいわけじゃない。時代が追いついておらぬだけだ」
 ――なんだそっかぁ。
 運営委員は思考を放棄した。はい、参加者にタイヤ入りまーす。

「さて……どう、だったかな」
 アームドフォートとしては異質な、身に纏うのではなく騎乗するタイプのそれに寄りかかって、テリブルは運営の沙汰を待つ間瞑目していた。
 テリブル・カトラリーは銀河帝国で製造された戦闘用ウォーマシンである。
 現役として稼働していた頃は多くの戦いに出撃し、旧解放軍とも幾度となく砲火を交えてきた。
「壊滅した艦隊、生き延びた鎧装騎兵か……」
 仮にその戦いに己が関わっていたとして、今更そこに何かを思うことはない。戦争だったのだ、己は己の役割を果たしたまで。取り逃したかもしれない誰かの戦いが今こうして祭典になっているならば、それもまた時代ということだろう。
「何にせよ私は礼を尽くして目的を果たすまでだ」
 たとえ参加を許可されずとも、あの戦争で戦い抜いた名も知れぬ誰かに敬意を払ってかつての同胞を討ち果たす戦いに全力を尽くす、それだけだ。

「運営委員会からの判定が出ました! ――テリブル・カトラリー、ビードット・ワイワイ、数宮多喜、ギヨーム・エペ―、以上四名の選手の出場を許可するとのこと! 皆さん、盛大な拍手で歓迎を!!」
 観客席が沸いた。新時代のレースの幕開けに相応しい、新たなる風を感じたのだ。伝統的な鎧装騎兵だけのレースは素晴らしい。守り受け継いでいくべき、カバリアフォーミュラの歴史である。だが今日この日を節目に、カバリアフォーミュラから枝分かれした新たな競技が生まれるかもしれない。
 そんな予感に、観客たちは惜しみのない拍手でもって四人を受け入れたのだ。

「伝令騎兵の想いは今も受け継がれているんだな……」
 歓声に沸く観客席を見上げて、ウタはほうと嘆息した。彼、あるいは彼女が救った将兵。その将兵が帝国を打破し、そこから受け継がれた想いは二度目の危機を乗り越える原動力となった。それに肖ったレースで、今度は自分たちが宇宙の人々の希望となるのだ。
「そう考えるとこそばゆいな……でも精一杯頑張るぜ」
 銀河を往く人々の閉塞感を吹き飛ばすために、半身に宿る炎を滾らせ少年は闘志を燃やす。
 だが心は熱くとも頭は冷静にあらねばならない。解放軍の警備網が突破されるという予測を信じるならば、敵は既に内側に罠を仕込んでいる可能性もあるのだ。いかにも怪しげなポラリスという騎体もそうだが、解放軍から出場しているというアイアンズとリンゼイの二人が内通者として警備情報を漏らしているという可能性もある。それを言えば運営委員ですら怪しいが――
「事が起これば白黒はハッキリするだろ。もし黒ならその時は……」
 躊躇わない。罪には罰があって然るべきなのだから。

「アイアンズ様、三度目ですね。御壮健のようで何よりです」
 企業のロゴがでかでかとプリントされた大型の重装アームドフォートを身に纏ったトリテレイアは、同じく重装型の軍用アームドフォートに身を包むアイアンズに一礼する。
 思えば長い付き合いになるこの海兵とトリテレイアは、もう戦友と言ってもいい仲であろうか。
「おう、トリテレイア! お前さんも参加か、こりゃ手強いヤツが来ちまったみたいだな」
 がはは、といつものように豪快に笑う鋼鉄の海兵はトリテレイアに砕けた敬礼で返し、それからカメラアイに宿る眼光鋭く声音を潜めて――ウォーマシン同士の短距離秘匿通信の比喩表現だ――トリテレイアに話しかけた。
「確かにこの規模のイベントだ、猟兵が呼ばれててもおかしな話じゃあねえ。だが人数が些か多すぎるな、どういうことだ?」
「私もそれを伝えようと思っていました。――この大会は襲撃され、警備隊や参加者にも少なくない損害が出ます」
 なんだと、と思わず音声で叫びそうになるのを飲み込んで、アイアンズは頷いた。
「事情は把握した。だが俺たちもそのつもりで準備してるんだぜ。罠を張ってるのは俺たち解放軍だ。それがやられるってのか……お前さんを今更疑うわけじゃねえが信じがたいな」
「ですから私達が迎撃をお手伝いいたします。ついてはアイアンズ様、連携のために解放軍の迎撃プランを共有していただけると助かるのですが」
 アイアンズは悩むように唸って、頷いた。
「背に腹は変えられん。部外秘だが他ならぬお前さんなら信用できる。俺の権限で作戦概要にアクセスする許可を出しておく」
 かくて機兵同士の密談は終わり、何事もなかったかのように二人は前を見据える。
 このレースの先に待つ罠は果たして帝国と解放軍、どちらの仕組んだものなのか。

「んー、どっかで見たことあるような人がちらほらいるなあ。エイハブってたしか……くじらさんじゃん」
 骨組みのアームドフォートを動かしているのは、あのバーチャル海洋リゾート船のすべてを操る電子のくじらだという。
 その多芸ぶりに舌を巻きつつも、キリエは愛機に跨った。――跨った。
 アームドフォートは一部の例外を除いて人型である。人型でないイレギュラーな機体を持ち込んだテリブルはその点で運営委員による審議対象になったが、キリエは逆にアームドフォートの装甲を宇宙バイクに溶接し、"人型にする"ことで直前まで運営の目を欺いたのだ。
「正直ズルい気もするけど、宇宙バイクの参加も許可されるんなら余計な真似だったかなあ。でも許可されるかは直前までわからなかったし」
 自分に言い訳しつつキリエはピットで待つ山高帽の老紳士に目配せする。
 伝説の騎兵を越え最速の称号を得るために、多少ずるい気もするが紳士の持つ神眼が頼りだ。
 技量勝負ならば参加者はみな一級品。機体性能ならむしろ余計な重石のない分他者のほうが有利。
 であればその他の面で勝ち抜くまで。
「これも勝負だしね、ごめんよ皆、僕は勝ちを狙っていく」

「うう。派遣センターさんのPRのお手伝いだって聞いてたのに」
 スタートラインに立つ――立つ? アームドフォートは、申し訳程度の手足を生やした前後に異様に長い異形の騎体であった。
 銀河鉄道や遙か異世界、アースで運用されていた蒸気機関車によく似たその騎体側面には、でかでかと「SSWヘルパー派遣センター」の看板が掲げられている。
「レースなんて聞いてないよぅ……アクセルとブレーキだけやればいいって言われても……」
 そんな騎体のコックピットで三角帽子の鍔をぎゅっと握り蹲るアヴァロマリア。彼女の乗り込むアームドフォートは、厳密には無数の小型ウォーマシンによって構成された騎体であった。故にコース選定やハンドリングは彼らの並列化された集合意識による判断で行われ、アヴァロマリアの干渉する余地はほとんどありえない。彼女をこの騎体に載せたSSWヘルパー派遣センターの広報担当の言う通り、緊急事態に備えて前進と停止の判断を下すだけでよいのだ。
 ギャラクシーエクスヘルプ999と名付けられたその騎体は、自動化という面ではくじらさんの駆るプロト・ネモに匹敵する先駆者となりうるだろう。
 が、山程のクーポン券に釣られて引き受けたお手伝いでまさかこんな大舞台に引きずり出されることになろうとは思っても見なかった少女には関係のないこと。
 スタートの合図が下るその瞬間まで、アヴァロマリアはコックピットで唸っていた。

「どうせなら自前の騎体で参加したいと思っていたんですよ」
 アリシアは重装甲を誇るティターニアアーマーを纏い歴戦の選手たちに並んだ。
 それだけであればレース仕様騎はおろか軍用騎に匹敵する推力など望むべくもないティターニアアーマーだが、アリシアには秘策があった。
 そも巨大なこの騎体。ならば有り余るペイロードを活かさない手はなかった。
 自家用宇宙船プラウドウルフ4世を改修したブースターユニットを接続したティターニアアーマーは、持ち前の姿勢制御能力とプラウドウルフから得た推力・機動力を得てレース騎とも戦えるだけの性能を得た。
「これなら負けません、一位は頂きます!」
「いえ、一位をもらうのは私です!」
 アリシアの声に対抗するように気合を入れたのはアイだ。
「このレース、相手がアリシアさんだろうと負けるわけにはいきません! なにしろこの夏仕入れた新装備、この高機動型強化外装を使うのですから! これはオベイロンの欠点であった機動力を確保することに主眼を据えた騎体で装甲部分は極限まで削りましたがその分軽量化に成功ししかも出力はほぼオベイロンと同等どころか数%の増強すら果たし各部に内蔵したアポジモーターで旋回性能を確保し高速機特有の速すぎて騎体を制御出来ない問題を解決した自信作、その他にもたくさんの思いつ……いえ、新技術の概念実証のために機能を盛り込んだこの騎体なら銀河最速はいただきですね! 全宇宙に私のパワードスーツの性能と素晴らしさを知らしめましょう!」
 メカオタク特有の超絶早口でまくし立て、鼻息荒く胸を張るアイ。
 アリシアはそんな彼女の入りすぎという位に入りきっている気合を前に、ティターニアアーマーの中で苦笑するしかなかった。

「レースは見るのも好きだが」
 ジャックがぽつりと漏らせば、長い髪をかき上げスタートラインに現れたヘスティアが頷きそれに続く。
「参加できるならその機会を逃す手は無いわ。それにかのカバリアフォーミュラの復活第一回だもの」
 舞台として不足なし。黒と白の二人は、銀河最速を競う戦いに向けて闘志を燃やす。
 帝国残党の迎撃も重要な任務であろう。だがその瞬間まではこちらの戦いに全力を傾ける。まして帝国との戦争を生き抜いた強者として、その戦いの中で研ぎ澄まされた機動制御を見せつけるまたとない好機なのだ。
 ヘスティアは宇宙服のほかは細身のジェットパック、ティターニアをのみ身に纏い、己の可憐な容貌をして観客の熱狂を誘う。狙ってのことではないが、せっかくレースに挑むのだ。応援する声があればなおやる気も出ようというもの。
「そう、だな。俺もやるからには負けるつもりはない。――あらゆる面で、な」
 対するジャックは軍用騎に似たシルエット。ウォーマシンだからこそ己を騎体のメインフレームと見做し、最小限のパーツでアームドフォートとして成立させた精悍な姿だ。
 ビームライフルとミサイルランチャーという機動戦においてベーシックな火器を装備した姿は、いかにも競技用然とした猟兵たちの騎体において戦闘用らしい威圧感を醸し出す。
 そして背負う翼には白く染め抜かれたスペードのマーク。パーソナルマークを備え現れた洗練された黒い騎兵に、観客たちの感嘆の声が聞こえてくる。
 それに片手を軽く挙げて応じ、ジャックもまたスタート位置に付く。

「このタイミングでの帝国残党の蠢動……まさかとは思いますが、猟書家プリンセス・エメラルドとの合流を画策しての事前準備でしょうか……」
 考えすぎだというのは分かっている。それでもダビングは出来すぎたタイミングでの帝国軍残党の活動再開に疑念を抱かずにはいられなかった。
 もしそうであるならば、いや、これがただの杞憂であったとしても彼らが再び闘争の炎を灯そうというならば、それを阻止するのは猟兵の使命だ。
 戦闘機に似た可変形態でコースに進出したダビングは、兎にも角にも猟書家などという新たな脅威がこの宇宙に本格的に侵攻を開始する前に脅威の芽を摘まねばならぬと決意する。
 この先に待つものがどんな戦いであれ――最速を証明した上で、それを打ち砕くことが己の役割である、と。

「案外本職の鎧装騎兵は少ないのね」
 ジルはスタートラインに次々集う猟兵達をきょろきょろと見回してつぶやいた。
「そう、なら本職の鎧装騎兵の私は黙っちゃいられないわ」
 鎧装騎兵としての意地を見せる。それが今の彼女の第一の目標だ。そのために騎体のカスタマイズも十全、フェアリーである自身の小柄さを差し引いても他に見劣りしないスピードを得たといっても過言ではないはずだ。
 カスタマイズにあたってアトランタ重鉄鋼ワークスチームには少なくない協力を仰ぐことになったが、だからといって瞬光を纏う同チームのレーサー、ヘルベルトに前を譲るつもりはない。いや、だからこそアトランタのメカニックたちもジルに手を貸したのだろう。最速を追い求める騎兵同士の激突に、己の技量の限界を試したい。それはレーサーであってもメカマンであっても変わらぬ想いだ。
「ま、調整のためって人形みたいに弄り回されたのはもう御免だけど」
 それでもその甲斐あって騎体の調整は過去最高だ。しっくりと身に馴染むレース仕様カスタムの騎体を軽く撫で、小さな妖精は線上に立つ。

「フフン、今回は残党狩りがメインだケド、こういうレースだものちょっとくらいサービスしなくちゃネ!」
 レースクイーンもかくやという大胆な衣装で客席にアピールを送るチトセ。携えたアームドフォートはこの日のために新調した新装備だ。
 傍目にはほとんどそれとわからないが、チトセの纏うプラズマフィールドを走攻守の全てで高度に制御する機構は新鋭機にも負けないスペックを叩き出す。
 そもそもが速度に自信のあるチトセなのだ。この新たな力を携えた今、どんな相手であろうと――

 観客席がそれまで以上の歓声で満ちた。
 来る。
 最速が。愚直なまでに速さを追い求めた者が。
 ああ。彼女を知る者たちはその速度を知っている。
「へぇ、これは面白い」
 アトランタの新鋭騎、瞬光。そして民間の作業用マシンであるエクスレイ2000をレース仕様にカスタマイズした騎体。いずれも戦争以前であれば想像も出来なかった騎体だ。
 戦闘兵器であるアームドフォートがこのような目的のために新造される時代がやってきたのだ。
「良いですねぇ! 楽しくなってきましたよ!」
 さあ。そんな猛者たちに負けず劣らず、あの戦いで閃光たりえた己が力を示す時がやってきた。
「今日は目一杯楽しんで、俺たちの速さを見せつけてやろうぜ!」
『MaximumEngine――』
 ベルトが機械音声を発し、彼女――トルメンタを蒼の装甲で包み込む。

「全選手の入場を確認いたしました」
「第XXX回カバリアフォーミュラ、カウントダウン――!」
 赤のランプが消灯し、そして緑の輝きがレースの開始を告げる。
 ――ついに最速を決める戦いが始まった。


「おいおい俺と競ってるようじゃまだまだだぜ?」
 瞬間加速して駆け抜けていった各騎を見送り、後方集団についたアイアンズとModel85M2。
 それと競うように重いながらもパワーに満ちた走りを見せるのはトリテレイア、ビードット、アリシアの三騎だ。
 いずれも重装甲を売りとした騎体だが、トリテレイアの場合は全領域汎用性を追求した設計が却って特化型に譲る結果になってしまったこと、ビードットは路面を噛み締めて走る装輪仕様のうえに騎体自体も大型であったこと、アリシアに至っては無茶な接合を施した騎体を慣らしもなくぶっつけで投入したことでそれぞれのポテンシャルを最大限引き出すに至らないのだ。
 サーキットを飛び出し、宇宙空間に出てからが本番。それまでは先頭集団に引き離され過ぎぬよう、しかし無理な追い抜きを図って消耗しないようにと四騎は駆ける。
「それに私は任務もありますからね。後方から皆様の背中を守るくらいが丁度やりやすいでしょう」
 悔しくないと言えば嘘になる。トリテレイアとてこれが競技である以上は結果を残したいという意志を抑えることはできない。
 だが、それを置いても第一にやるべきことは帝国残党の齎す災禍を最小限に食い止めること。
「アイアンズ様もそのためにこの位置に居るのでしょう?」
「違いねえ! ……他の連中は先に行っちまったし迎撃計画の話だが――」
 秘匿回線の処理に演算能力を回せばすなわち即クラッシュだ。最下位付近と言えどそれだけの速度を出して疾駆する二騎が音声でやり取りをしていると、騎体特性の把握に努めていたアリシアがその間に割り込んだ。
「そのお話、私も混ぜていただけますか?」
 ティターニアアーマー改のクセを把握するには今しばらくの時間がかかる。その間に解放軍の計画を知ることができればそれは有意義なものとなるだろう。
「おう、つってもこの会場内の警備は通常装備の警務隊の管轄だ。客席は武器の持ち込みどころかサイキックジャマーも掛けてある、クリスタリアンだろうがあそこで暴れられやせんさ。連中が仕掛けてくるなら外だな」
 その意見に同意したトリテレイアとアリシアに、アイアンズは続ける。
「外は快速の巡洋艦群と艦載騎兵で防衛網を敷いてる。コースの確保に一個大隊、選手と並走で護衛に交代で二個中隊の騎兵が付く。敵が仕掛けてくるとすれば護衛中隊の交代タイミングだな、先発は補給が必要で、後発は選手の捕捉に意識が削がれる」
「であればその時までに先行集団との距離を詰めねばならぬ」
 タイヤが浮きながら猛然と迫ってきた。否、ビードットだ。タイヤをギュリギュリと高速回転させながら路面から浮遊し、凄まじい加速で後方集団をゴボウ抜きにしたのである。
「スペーススカイフィッシュエンジンの出力は良好。スカイフィッシュアクチュエータも異常なし。飛行能力の安定性は良好である。ちなみにこれは双方合意の上での協力であるので心配はせぬように」
 二匹のスカイフィッシュを機構に組み込んだビードットのタイヤがカーブを凄まじい速度でありながら緻密な姿勢制御で駆け抜ける。
 遅れてアリシアがカーブを抜け――
「解放軍の作戦は承知しました。それでは私もこれで! 勝負ですから!」
 騎体特性は概ね掌握した。プラウドウルフ・ブースターのエンジンがアフターバーナーを噴かしてティターニアアーマー改を急加速させる。
 先往くビードットに追いすがる速度で離れてゆくその背中を見送って、アイアンズは肩を竦めた。
「トリテレイア、お前さんはどうするよ。行ってもいいんだぜ?」
「いえ、私は……ですが貴方には勝ちたいですね」
「よく言った、職務上前の連中を追い越してぶっちぎるわけにゃ行かねえが……俺とお前さんの勝負にゃ順位は関係ねえ!」
 白と暗緑の重騎兵が火花を散らして激突する――!

「――」
 鎧装騎兵とはスラスターによって推進し、かつての大戦期には光速にすら至ったとされる兵種である。
 であるからしてその直系の子孫である現代の鎧装騎兵とそのアームドフォートもまた、飛翔に近いスタイルで駆け抜けるのが常であろう。
 だが、しかし。それは二本の脚で駆けるのが楽しいとばかりにしゃかしゃかと"走って"いた。
 マラソン選手のように整ったフォームでサーキットを踏みしめるのはプロト・ネモの細身である。
「それでこのスピードはちょっとずるくないかなあ!?」
 キリエは叫んだ。いくら愛機にゴテゴテと重石がついているとはいえだ。推進機を使って加速している己に対して、二本の脚だけで並走するくじらの無人騎はどこぞの未来から来た殺人アンドロイドのようで不気味ですらある。
 あれを動かしているのがあの穏やかなリゾート船を管理するAIであると知らなければトラウマになりかねない。ましてレースで後ろから追われるようなことになれば。
「ひぇぅ、何!? 何ぃ!?」
 そう――そして此処にはリゾート船エイハブⅨのことを知らず、そしてプロト・ネモに追いかけられる形になってしまった少女がひとり。
 アヴァロマリアは必死にアクセルをベタ踏みすることでネモから逃れようとするが、その無茶な操作がギャラクシーエクスヘルプ999の強みである直列多連エンジンの同調を妨げ本来の速度を出せずにいる。
「クーポン券もらいに来ただけなのに割にあわないよぅ…………!!」
 縮こまってアクセルを踏み続けるアヴァロマリアにいよいよネモが追いついた。
 そうしてコックピットを覗き込める位置関係になれば、ネモを操作するくじらはその中で小さくなって震える少女に気がついて。
 彼女がどうやらクーポンを目当てにエントリーしたらしいことを聞きとがめたくじらは流石に哀れに思ったのか、ギャラクシーエクスヘルプ999のコックピットコンソールを構成するウォーマシンに回線をつないでちょっとしたプレゼントを送り込む。
 無論非武装の実験機で、しかも善良な行楽宇宙船の所属騎だ。悪意などない。
 ギャラクシーエクスヘルプ999もそれをスキャニングして確認すると、アヴァロマリアにも目を通すよう促した。
「へぅ……? なに、これ……シーリゾート船への優待券? バーチャルサンゴ礁ダイビングツアーと失われたシーフード疑似体験二泊三日……?」
 それはくじらからの誘い。現実の水に満ちた海ではないけれど、傷ついた心を癒やすにはこれが一番だとくじらは知っている。
 そうしてデータのやり取りをしている間に追いついてきたキリエに抜かれ――負けじと再び加速して。
「嘘でしょお爺さんから最短ルート聞いてるんだよ!?」
 そんなキリエを猛追し、観客席とコースを隔てる壁を蹴飛ばしてその前に跳び出すネモ。
 そこに立ちはだかるのは――
「ユーもなかなかおもしろいマニューバするじゃなイ! ちょっとボクと踊って行かないかナ?」
 ネモにウィンクを投げ掛けたチトセだ。無人試験機、人智を超えた機動。そんな謳い文句のネモに興味を惹かれた彼女は、敢えてくじらと競うためにこの順位にいる。
 ふたたびコーナーに差し掛かれば、チトセはむしろ急加速。カーブを突き抜け空中に躍り出れば念動力で空中に足場を生み出し、それを蹴飛ばした反動で速度を全く殺すこと無くカーブを突破する。
 そんな超人技にドローンの視線が集中し、それに気づいたチトセは投げキッスをひとつ。
「名付けてチトセ・スペシャルってネ!」
 観客席が沸いた。ひとつはチトセのファンサービスに対して。
 もうひとつは――
「ちょっ! ええい、キミはさあ!」
 ギャラクシーエクスヘルプを抜き、チトセとネモに追いすがるキリエ。彼がカーブに差し掛かり、紳士からの助言に従いインコースに寄ったその瞬間、ネモがキリエの前に飛び込んだ。
 そのまま彼の騎体を蹴飛ばし、押し出されるようにしてカーブ外壁に直進するネモ。
 そしてそのまま垂直に壁面を疾走し跳躍、チトセの離れ業を撮影するため接近していたドローンを踏み台に空中を跳ねてチトセのわずか前に飛び降りたのである。
「へェ……いいネ、やるじゃなイ」
「僕を踏み台にしていくなんてキミそういうヤツだったっけか!? この借りは返すよ絶対に……!」
「えへへ……リゾート……これ終わったらリゾート行けるの……?」
 三者三様――否、四者四様の闘志を滾らせ、この集団の順位争いは激しく流転する。

「赤ねえ。アタイはその色気に入らないね! 絶ッッ対負けらんないよ!」
 抜けるような海の青に塗られた民生騎エクスレイ2000。軍用のパワーには劣り、競技用のスピードには負けるが素直さと直線加速ならば上位に位置する宇宙の漁師御用達のハイパワーモデル。
 それを駆るケイコは、サングラス越しに鋭い視線をアイとジル、そしてウタに向けた。
 アイのアームドフォートの赤、ウタのコートの赤。ジルに至っては眼と額パーツだけという半ば言いがかりに近い赤色指摘だが、それでも彼女の戦意を高揚させるには十分である。
「俺も負けるつもりはないぜ! だけどな、まずは――」
 俺の歌を聴け!
 ウタが叫ぶ。そのために増設されたアームドフォートのスピーカーユニットが鳴動し、前もって録音されていた伴奏をサーキットに掻き鳴らす。
 マシンの立てる騒音すら取り込んで、熱気と闘志を掻き立てる音響を伴いウタは歌う。本来であればサーキット最終盤、カタパルトに乗ってからのつもりだったが各集団がこれほど近距離で鎬を削るタイミングはこれが最初で最後かもしれない。
 その歌で燃え上がる闘志がウタの地獄の炎の勢いを強め、それをバーニアのように噴射して少年はさらに加速しエクスレイに並ぶ。
「腹が減るのが難点だけどな、これならあんたにも負けないぜ」
「へぇ、赤色のくせにやるじゃないさ坊主! いいね、気に入ったよ。レースが終わったらアタイの船に来な、美味い魚を腹いっぱい喰わしてやるよ!」
「……私を」
「忘れないでもらおうかしら!!」
 ウタとケイコがいい感じのライバル関係を結ぼうとしていたそこへ割り込む二騎の騎兵。片や紅、アイ・リスパー。かたや小妖精、ジル・クリスティ。
「ケイコさん、あなたはもちろん……ウタさんにも、ましてジルさんにも負けませんから!」
 銀河最速を獲りにきたのだ。先頭集団に追いつくまでは通過点にすぎない。
 だが、アイの騎体には早々に本気を出せない弱点もある。
「そうは言うけどアイ、その騎体排熱関係の調整は後回しにしたでしょ」
 然り。ジルの指摘どおり、アイの騎体は瞬間的に爆発的な加速力を有する反面排熱性能は並かそれ以下なのだ。
 序盤から最高速で飛ばせばアッという間にエンジンユニットが焼け付き再起不能になってしまうだろう。
 だから抑えて、最後の直線で一気に加速するつもりだった。のに。
「そこの人! ウタさん! あなたのせいですっ!」
「えっ俺!?」
「そんな火を吹いて走るから輻射熱でこっちまでオーバーヒート寸前なんですよぉ! もう少し温度下げてもらえますかっ!」
 半泣きで噛み付くアイ。思わずごめんと謝ってしまうウタ。
「そしてそんな争いをよそに私は先に行かせてもらうね~!」
 小ささを生かした隙間を縫うようなコーナリングでアイとウタの間を抜け、ケイコをも抜いて前に出るジルの小さな騎影。
「小さいから不利? ノンノン、この大きさで人間サイズと同じ出力ってことはむしろ推力比で有利ってもんさ! アトランタの皆に感謝だね!」
「あっ、ジルさんずるいですっ!」
「漁夫の利はさせねえぜ!」
「アトランタって言ったかいアンタ! あの男と同じチームだってんならなおさら負けらんないね!」
 それを猛追する三騎は、もはや仲違いの気配などない。先ゆくものを追い抜くための本能に従って、騎兵たちはジルを追う。

「お前は……」
 テリブルは隣を往く白い騎兵に視線を向けて呟いた。
 見覚えのある機動。見覚えのない騎影。記憶のどこかにあるようで、記憶のどこにもありはしない既視感の主は、ユーバーレーベンサイエンス社の実験機という触れ込みで参戦したブギーマン、ポラリスであった。
「…………」
 ポラリスは応えない。ただ前を見据え、先行する騎体を如何に抜き去るかのみを考えているように見える。
「お前が元同胞だったとしても、私と似たような理由でここを駆けているならば口は出すまい」
 あるいはかつて交戦した古株の解放軍ウォーマシンの誰かなのかもしれない。
 その正体が誰であろうと、このサーキットに居る以上はレースに全力を傾ける姿勢は間違いではない。
「考え事をしながらダラダラ走っていてはそれこそ誰に対しても失礼、だな」
「そうだ」
 幾度目かのカーブに差し掛かり、ジャックは機翼を大きく広げて二騎に競う。
 スタートと同時の加速で先行集団に飛び込んだジャックだが、その重武装が故に速度特化の最先行にはあと一歩届かない。だが、だがしかしである。任務に必要な装備のせいだとて、それを理由に引き下がるような男ではない。
「やるからには勝つ。勝負事だからな。俺は負けず嫌いなんだ――」
 その台詞にテリブルも頷きアクセルを回し、ポラリスもまたごく小さく騎体を揺らす。それが二人には笑ったように見えた。
「前を行く連中に一泡吹かせてやる。その前にこのグループのトップは俺が持っていくが」
 無駄なくスマートに曲線を描くジャック。片やパワフルな馬力でサーキットをえぐるように曲がるテリブル。そして両者の間を難なく曲がり切るポラリス。
 三騎の争いは一進一退、激闘のままに前方の集団へとなだれ込む――

「抜かれっ……! いえ、まだ許容範囲です」
 リベレーターMk-ⅳ、解放軍の投じた二騎目の騎兵を駆るルシアナは、白と黒、そして赤銅色の三騎が猛然と追い上げ追い抜いていったことに驚愕する。
 軍用騎としては機動性重視の部類に分類されるリベレーターをして一位になれないことは当然理解していた。最速はレース仕様で設計された専用騎であり、それを覆すほどの技量も練度も少女は持ち合わせていないと。
 ただ、それでも民間騎カスタムや重装の軍用騎に負けることはない、と。それは慢心だろうか。
「あら、もう諦めるのかしら?」
 順位を落としたことに動揺するルシアナを現実に引き戻したのは、挑発するようなヘスティアの声。
「抜くのも抜かれるのもレースの醍醐味ってやつさー! 楽しく行こうよ、やるからにはなー」
 そして励ますようにギヨームが並べば、少女軍人は前を向く。
「ありがとうございます、そうだ……私は隊の皆や隊長のためにも負けられないんだ」
「あら、焚きつけはしたけど前は譲らないわよ?」
 再び加速したリベレーター。その進路を巧みなマニューバで封じつつ翔ぶヘスティア。
「おっかないなー、けど、まあ」
 その意見には同意だな。ギヨームは笑顔でそう言ってのけ、ヘスティアの脇を強引に突破する。
 マシンと操縦者の肉体がある程度離れているがゆえに強引な操縦が許される。バイク型の強みと、軽装鎧装騎兵の脆さを突いたハンドリングはギヨームを一歩先んじらせることに成功した。
「お二人には恩があります。でも――このレースの勝利と任務に比べれば申し訳ないですけどその恩はとても軽い!」
 ――ギヨームの、バイクの強みがそうであるなら、軍用マシンであるリベレーターは更にそのタフネスにおいて両者を圧倒する。
 バーナーを噴かして加速した白い軍用騎が無理やりに二人を切り分け前に押し進めば、それを止められる重量級は此処に居ない。
 速度に勝るギヨーム、機動の繊細さで追い縋るヘスティア、そして騎体特性を生かして二人と争うルシアナ。
 この集団もまた、激しく順位を入れ替えながら突き進む。

「さすがレース専用騎、速いなんてもんじゃ無いねえ!」
 多喜のマシンはもとよりレースなどの特別な場面での速度より日常の小回り、使いやすさを重視した軽量級だ。
 初動こそ重量級マシンに先んじたものの、総じて加速力に長けるそれらが直線で本領を発揮すれば抜きつ抜かれつ、後方集団に流れ着く。
 そんな多喜を後方から猛追し抜き去っていったのは紅の鎧装騎兵。
 アトランタ重鉄鋼所属、瞬光。レースのために、今日この日のためだけに産み落とされた最速の象徴は既に周回を終え、多喜ら最後尾付近を行く者たちを一周遅れの世界に置き去りにしていったのだ。
「ありゃ正気のチューンじゃないね……!」
 ほんの一瞬でも集中力を欠けば、あの速度はそのまま自らを殺す凶器に変貌するだろう。
 サーキットですらその狂気のスピードを見て怖気が走ったのだ、これがデブリベルトにあるという後半戦のコースでどうなるかなど、想像すらできない。
 しかしそんな正気の埒外にある瞬光を駆る騎兵がどんな顔をしているのか。多喜は見てみたいと思わずにはいられない。
「追いつくのは厳しそうだけどねえ。次のカーブでチャンスがあるかねえ?」
 カーブに差し掛かれば、彼女のマシンの小回りの良さはそのまま順位に結びつく。
 瞬光は逆にあまりにも速すぎるが故に速度を落とさねば曲がりきれない。そこに追いつくための一瞬の好機が存在するだろう。
 追いついたとて周回遅れ、一位に躍り出られるわけではない。
 ただ、その騎兵の面を拝むためだけに多喜は命を懸ける。
 そこへ後方から次々追いついてきたのが最先頭をゆく者たちだ。
 戦闘機が現れたと思えばカーブで空中分解――否、変形である――白い人型へ可変し、五体がバラバラになりそうな強烈な負荷を噛み殺してエアブレーキを掛けて制動し曲がり切る。
 それは瞬光以上に速度を落としてしまうが、ドリフトめいて姿勢を立て直しつつ真横へブーストして加速を付け直し再度変形して飛び去ってゆく――ダビングの人外だからこその機動に観客席が熱狂する。
 そして瞬光と唯一真っ向渡り合えるもう一騎の蒼――トルメンタもまた、瞬光を駆るヘルベルト以上の命知らずであった。
 スタート直後からソニックブーム上等の最高加速で突っ走る彼女は、瞬光が居なければこのレースという催し自体をぶっ壊していたに違いない。
 瞬光がいるからこそトルメンタの走りはレースという形に収まり、またトルメンタが居るからこそ瞬光も競技を潰す暴君にならないでいられる。
 音を越え、まさに瞬間の光を目指す戦いだ。重力下、大気を有するこのヘルメスの艦内でなければ両者は光速をすら突き抜けたに違いない。
「俺に並ぶ選手がいるとは思いませんでしたよ!」
「……僕も同意見だ。まさか瞬光と戦える騎兵が居るなんてね」
 両者ともに熾烈なインコース争いのままにカーブを曲がり切り、そして再び加速して遅いものから周回遅れへと飲み込み喰らってゆく。
 多喜が彼らの横顔を覗き込むことに成功したのは、彼らが宇宙に跳び出すほんの一瞬前だ。
 ようやく見えたその横顔は防護カウルに覆われ表情は伺えないが、多喜にはわかる。
「とんでもない顔して走るもんだね……命知らずってのはああいう顔になるのかい」
 ――笑顔であった。孤高の絶対王者たれとして光の世界に至った者が、好敵手を見定めた獰猛な笑み。
 かくてヘルメスはカタパルトの扉を開き、レースは解放軍、帝国軍双方の仕掛けた罠が相食み待ち受ける後半戦にもつれ込む。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『クローンライダー』

POW   :    スペーススタンピード
単純で重い【宇宙バイクによる超加速突撃】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    インペリアルライド
自身が装備する【帝国製宇宙バイク】を変形させ騎乗する事で、自身の移動速度と戦闘力を増強する。
WIZ   :    サイキックバリアモード
対象の攻撃を軽減する【サイキックバリアモード】に変身しつつ、【宇宙バイク搭載の機銃】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑7
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 レース後半宙域。
 かつてこの宙域において、進撃する解放軍艦隊を阻止せんと伏撃の陣を敷いた帝国軍の宇宙艦隊があった。
 彼らの悪辣にして周到な罠は、それを知らずして踏み込んだ多くの解放軍部隊を漂う宇宙ゴミに仲間入りさせ、魔の宙域として彼らの心胆を震え上がらせたという。
 それでも戦略的な価値から此処を通過しようとする艦隊は絶えず、そのたびに多くの血が流れた此処が今日の平穏を得られたのは、ある一人の鎧装騎兵の命を懸けた戦いの結果だ。
 艦隊が壊滅し、同胞を失ってなお諦めること無く帝国軍の待ち伏せ部隊の配置を友軍に届けるべく包囲を突破せしめた名もなき英雄。
 その騎兵に肖ったレースのため、数十年、数百年の時を経てこの死せる船の墓場に多くの艦が訪れていた。
 ひとつはヘルメスF19を始めとする、レース観戦目的の観光客とそれを相手に商売を行なうために集った民間船団。
 ひとつはレースの安全を確保するべく宙域確保に務める、騎兵母艦ロティシエラを旗艦とする解放軍艦隊。
 そして残るひとつがレースに参戦した選手のバックアップのために待機する参加各企業のピット艦群である。
 そのうちのひとつ――ライヒ・ユーバーレーベンサイエンスの所有する輸送艦ウェルキンスの艦長は、全銀河中継のレース実況をちらりと見遣り、騎兵達がヘルメスを飛び出したことを確認して腕時計に視線を落とす。
 それから彼は艦長席の脇に引っ掛けてあった"制帽"を被り、艦内放送のマイクを手に口を開く。
『作戦第一段階を発動する。艦載各騎は順次に出撃、ピット艦およびヘルメス艦隊を制圧せよ』
 本来であればこのチームから出場しているポラリスを受け入れ、補給を行なうために開くはずのカーゴハッチがゆっくりとその蓋を開いてゆく。
 その中で息を潜めていたのは、ポラリスを待つ整備スタッフではない。
 鋼鉄の愛馬に跨り、その瞬間を今か今かと息を殺して待ち続けていた雌伏の獣達である。
『宙域に潜伏中の同志にも同調を促す。信号弾打ち上げ、赤、赤、赤。同法の弔い合戦を以て銀河帝国宇宙軍がまだ死んでいないことを宇宙に示せ』
『――第一中隊、出撃する! 戦友よ、作戦成功の暁にはヴァルハラで逢おう』
『――第二中隊全騎発艦! 艦長、クルーの皆にも感謝を。貴殿らのお蔭で我らは本懐を遂げられるのだ』
『――同じく。ユーバーレーベン・サイエンスに潜伏する友をよろしく頼む。第三中隊出るぞ!』
 白黒の装甲服に固めたライダーたちがウェルキンスを飛び出せば、艦長は帽子のつばを引き下げ騎兵たちの背中に小さくすまないと呟いた。
 それから帽子を畳みポケットに押し込み、クルーたちに告げる。
『各中隊の戦闘開始を確認次第解放軍に通信開け。本艦は帝国残党によって不当に占拠、運用されていたが現在解放軍に敵対の意志はないと伝えろ。後、戦闘から自社の資産を保護するという名目で宙域を全速離脱する!』


 レース参加チームのサポートスタッフが詰めるはずの艦から突如銀河帝国軍が出現したことで、警備部隊は混乱に叩き落されつつあった。
 罠を張り待ち伏せるという圧倒的な優越の上で敵は補給すら十分ではない残党勢力という前提のもとに立てられた掃討作戦は、それ故に戦闘経験に不足する新編部隊の実戦演習という側面もあった。
 それが悪い方向に出てしまった。警戒していたレースの外からの襲撃ではなく、レースの内部からの奇襲攻撃に、警備部隊の実に半数以上が対応出来なかったのだ。
「アトランタ重鉄鋼所属、アトランタ号より警備隊の出撃許可を求める通信が!」
「フェニックス6A-1、敵の攻撃を受けています! 護衛の第806騎兵中隊より援護要請!」
「え、ええい……賊軍め! レースは全銀河に中継されているのだぞ! 失態を犯せば帝国の残党共がまた勢いづいてしまう! 警備部隊は何をやっているか、早急に敵を掃討せよともう一度伝えよ!」
 旗艦ロティシエラの艦橋で、いかにも文官然とした神経質そうな将校が額に青筋を立てて怒鳴り散らす。
 既にレース参加者たちはこの宙域に迫りつつある。多少の戦闘は演出として許容範囲であり、そのためにリンゼイ准尉とアイアンズ中佐というトップガンとベテランの二人を参加させたのだ。しかしあまりにも敵の数が多ければ不測の事態に陥るリスクは高まる。万に一つも参加者に死亡事故など起きてしまえば解放軍の権威は失墜し、帝国残党のテロは過激化の一途を辿るだろう。
「ユーバーレーベンサイエンスめ……帝国資本をうまく吸収して見せたと思ったが、帝国に与していたのか……」
 既に同社の母艦からはスペースジャックによる不当な占拠を受けていた旨を受け取っているが、指揮官にとってそれはもはや瑣末事であった。この失態を誰か他人のせいにせねば、彼の輝かしいキャリアは翳ってしまうことだろう。
 ――もっとも、その心配は永遠に無用のものとなる。
「――か、艦載鎧装騎兵第303連隊より入電! コース方向より高熱源が本艦に急速に近づくのを確認……荷電粒子ビームです!」
 オペレーターの悲鳴じみた報告より二秒後、ロティシエラは人知れず静かに爆沈していった。


「敵は外から来るって話じゃなかったのか!?」
「わからないわよ! でも現実に後ろから来てるんじゃない!」
「司令部は! 司令部はなんて言ってる!」
「さっきから呼びかけにも応答しない! 指揮系統が混乱してるんだ! くそ、俺達より混乱してるってそれでも職業軍人なのかよ!!」
 参加者と並走する護衛部隊のうち、前半を担当するはずだった解放軍ワイルドハント中隊の騎兵たちは突如コース内に出現した帝国軍と激しい砲火を交えていた。
 戦争の最前線を経験し、未熟な少年兵たちは優れた兵士へと成長していた。そんな彼らであったから、経験未熟な他部隊と違い組織だって帝国軍の奇襲に抵抗できている。
「一個小隊は先行して後半担当の海兵隊と合流するんだ! 残りニ個小隊でリンゼイのところに行くぞ、参加者を守るんだ!」
「「了解!」」
 少年兵たちはアームドフォートを巧みに操り、帝国の追撃を躱しながら各々の目的地へと飛び立つ。――だが。
「待って、コース外縁方向から熱源複数……IFFアンノウン!」
 ――最悪に最悪が重なってゆく。宙域に潜伏していた帝国残党が同志の決起に呼応し、混乱する解放軍騎兵部隊の間隙を縫うようにサーキットへと雪崩込んできたのだ。


「――全員そのままで聞け!」
 猟兵含む参加者たちは、最後尾を走るアイアンズと、彼の声を再先頭まで中継するリンゼイ准尉によって強制的に意識をそちらへと向けられた。
 あくまでレースは続行しながらも、解放軍の緊急回線で接続された通信に全員が嫌な予感を感じ取る。
「たった今、サーキット宙域で解放軍と帝国軍の交戦が開始された。情報が錯綜しているが既にコース内にも連中の侵入を許しちまったらしい」
 つまりはこの先、サーキットは真の意味での戦場となる。そういうことだ。
「軍人としてはレースは即時中断、撤退しろ……と言いたいところだが、お前さんたちはそれで聞くようなお利口さんじゃねえよな」
「当然だ。僕らは今日の為に生きてきた。帝国軍に追いつかれなければ敵なんて居ないも同然だろう?」
「言うじゃないさ、珍しくアタイも同意見だね。なぁに、宇宙ゾウアザラシに比べれば帝国軍なんてペンギンみたいなもんだよ」
 ロバートが緊急時にも関わらず平然と言ってのければ、ケイコもそれに同調する。
「中佐……どうしましょう」
 困ったようにルシアナがアイアンズに問えば、鋼鉄仕掛けの巨漢は仕方なしと肩を竦めて。
「というわけだ。猟兵、レースに水を差して悪いがこのスピードバカどもに付き合ってやってほしい。それから余裕があればでいいんだが……」
 想定外の戦況で孤立、あるいは混乱している友軍をもし見かけることがあれば助けてやってくれ。
 アイアンズが頭を下げれば、なぜか猟兵に混じってくじらのネモが鷹揚に右手を掲げて頷くのだった。
 ――レースは続く。奇しくもかつての英雄がそうであったように、帝国軍の猛攻を受けながら。
 果たしてこの先、誰かが現代の英雄として讃えられるのか。あるいは帝国が死なず、健在であることを全銀河に知らしめることになるのか。
 その行く末は猟兵たちの手に委ねられた。
月代・十六夜
【連携・アドリブ自由】
レースは興味無いからとりあえずゴールまでの自動操縦機能だけ搭載してもらって後ろで適当に走らせるくらいならいけるだろ。
待ち伏せ帯に着く頃になったら機体は自動操縦に任せて宇宙服着込んで【韋駄天足】での【ジャンプ】で操縦席から離脱!
周辺のデブリやら小惑星を蹴って加速しながら【視力】と【野生の勘】で相手の攻撃を【見切って】避けて【時間稼ぎ】。
なんなら相手や味方の車体もいい足場になるな。無音でバーナーも無しの高速移動とかSSWじゃ珍しかろ?
こちらを無視するようなら【韋駄天蹴】で周囲のデブリやら飛んでる砲撃とかを【見切って】蹴っ飛ばしてぶつけてやろう。
さーて、うちの機体無事かなぁ…


ミレア・ソリティス
レギュレーションから参加は見合わせましたが……
やはり、私にはこちらの方が向いているのでしょう
ミレア・ソリティス、「戦闘」を開始します

UCにより空戦・宙間戦用サブユニット「ヴィントシュトス」と合体変形し、戦闘機形態となって出撃します

遠隔攻撃端末(ビット)を展開しつつ周辺宙域の「情報収集」を行い
敵発見後は戦場へ「敵クローンライダーを対象とした認識阻害ジャミング」を展開し時間稼ぎ、ビットでの援護射撃と
ハッキングでの干渉で挑発し友軍支援と敵の各個撃破を狙います

敵UCへは機体下部にランスを搭載し先手で加速突撃、
オーラ防御を展開しランスチャージで打ち貫き破壊します

※アドリブ等歓迎です。よろしくお願いします




 既に奇襲攻撃を実行した帝国軍部隊だけでなく、これに呼応した残党たちも次々と解放軍の警備部隊に襲いかかっていた。経験未熟の若い兵士では想定外の事態に対応することもできず、辛うじて戦争経験者で構成された、あるいは戦争経験者が指導役として指揮官や先任下士官に配された部隊だけがどうにか戦闘集団としての機能を維持して帝国軍の跳梁を阻止している。
 だが総司令部が黙して指示を下さぬ今、彼らをして混乱する友軍を統制しつつすべての敵部隊を撃破することは不可能であった。
 防衛網は寸断され、数で劣るはずの帝国軍残党によって各個に包囲殲滅されかねない窮地にある。
 万事休す。戦争を知る者たちは既にこれが尋常の戦闘としての体裁を取り戻すことが至難を極めることを理解し、されど打開に至るには抱えた新兵を危険に晒さねばならぬことを避けられないこともまた経験から識っている。
 ならば。古参の中尉は意を決する。新兵に実戦経験を積ませることよりも、まずこの場は彼らを生還させることこそ肝要。救援部隊を請い戦線からの離脱を図ろうにも、旗艦との通信が途絶え部隊間の連絡も途絶した今その手段も限られている。
「新兵! 貴様たちはあそこの廃艦で身を潜めていろ。バリケードを構築すればスターライダーでは容易に侵入できん。防戦に徹して増援の到着を待て」
「ち、中尉殿はどうされるのですか!?」
 頼ってきた上官がまるで別れるようなことを言い出したので、新兵たちは狼狽える。
「何、私は敵を引きつけながら救難信号を出す。貴様らが救援を請えば真っ先に狙われるが、私が信号を出してから単独で動き回れば敵はこちらに食いつくはずだ」
 あとは私が呼んだ救援部隊に助けを求めろ。そう言い残し、中尉のアームドフォートは宇宙の闇へ飛び出してゆく。
 鮮やかな白の信号弾が輝けば、新兵たちはせめて上官の命令を果たすべく守りを固め、そして帝国の餓狼は単騎のこのこと頭を出した獲物に喰らいつくべくその鼻先を中尉の騎体へと向けた。

「レースには興味ないからな、コースを辿って適当に後ろをのんびり追いかけるつもりだったが」
 思いのほか速い帝国残党軍の展開速度。そして経験不足の兵を多く抱えたところに挟撃を受けたがために瞬く間に瓦解した解放軍の警備隊。
 状況はすでに適当にのんびりなどと言っていられるものではない。それを把握した十六夜は、乗騎の自動航法装置に制御を委ね宇宙服ひとつで外へと身を躍らせた。
 目指すは戦闘の光芒が煌めく宙域。コースからは外れるエリアになるが、レースに興味がない彼にすればそれは問題にもならない。
 跳躍し、漂う残骸を蹴飛ばして進む十六夜。慣性のみで静かに、されど推進器に頼る者たちにも負けぬ速度で戦場へ急行する彼の隣に、もう一機が並走するように現れた。
「やはり私達にはこちらのほうが向いているのでしょう」
 それは戦闘機のごとき姿で、されど乙女の声音で呟いた。
「誘導攻撃端末からの観測情報を受信。前方距離400で解放軍騎と所属不明部隊が交戦中です」
 戦っている友軍の救援。そして帝国軍残党の掃滅。レースで勝敗を競うためではなく、自分はそのためにこの宙域にやってきたのだ。
 ミレアもまた十六夜と同じ志を持って暗礁宙域を駆ける。
 片や光すら発すること無く。
 片や眩い噴射光を引き連れて。
「戦闘宙域まで距離200、ECM及びPCM起動。電子探査および念動探査への認識阻害を展開。ミレア・ソリティス、「戦闘」を開始します」
「へぇ、目くらましか。助かるぜ。俺も突っ込むとするか!」
 電子的にも、そしてクローン兵士が其処までの性能を有するかはさておき念の為にサイキック的にもこちらを認識し難くなるよう妨害を発したミリアが増速すれば、十六夜がその翼を軽く蹴飛ばしさらに前を行く。
 顔は見えずとも足蹴にされたミレアが不快そうに呻けば、十六夜は振り返り軽く拝んで謝意を伝え――そのまま、単騎クローンライダー部隊と戦っていた解放軍騎兵へと襲いかかる帝国騎に体当りするように突っ込み、その車体を蹴飛ばした。
 ミレアの欺瞞工作で完全に隠匿されていた二人の猟兵の接近は、十六夜の奇襲攻撃に最大級の威力を齎す。意識の外、完全に虚を突かれる形で横合いから衝撃を受けた宇宙バイクは、騎手もろともに錐揉みに回転しながら僚機に激突し爆発炎上。
「よっしゃあ二枚抜き! どうだ、無音でバーナーもなしの高速移動は珍しかろ?」
『なっ……一体何処から! ロケットパックも無しの慣性移動だけでこの速度だと、あいつは正気か!?』
 奇襲を仕掛けた側であるはずの帝国残党が奇襲を受ける。再びの攻守交代に狼狽え、足並みを乱したところへミレアの従える自律兵器が襲いかかり、さらに数騎を火球へ変えた。
「敵機エンジンブロックに命中、航行能力喪失を確認しました。――が、蜂起に与した帝国軍残党にかける情けはありませんね」
 もとより情けなど抱く身ではないが。ミレアの言葉はすなわち捕虜など取らぬという挑発である。そしてその言の通り、暗黒の宇宙で移動方法を失った騎兵を機体下部の突撃槍で串刺しにする。
「――インパクト」
 直後、貫かれたバイクごと騎兵が爆ぜた。
 槍に仕込まれた砲によるゼロレンジ接射。内部に砲撃を打ち込まれれば、装甲兵器ですらないバイクは、ましてそれに跨るクローン騎兵の肉体は耐えられぬ。
「うわ、おっかねぇ……ゾッとしない死に方だなあれ」
 その効率的に敵を完全無力化せしめる冷酷なまでの戦術に十六夜は思わず渋面を作るが、敵はオブリビオン。既に死者で、彼らによって追い詰められていた解放軍騎兵は今を生きる生者だ。その生命を救い、テロを鎮圧することこそ重要で、敵を如何にして討つかなど気に留めてやるほどの余裕もなければそうしてやる理由がある相手でもない。
「ま、連中の視線があっちに集まってくれたならこっちとしてもやりやすいし……なッ!」
 撃墜された帝国騎兵の残骸を蹴飛ばし、あるいは漂うデブリをそうして砲弾のように撃ち出して一機ずつ丁寧に仕留めてゆく十六夜。
 そして彼の的確な砲撃で反撃を封じられたライダーを次々に遠隔攻撃端末で追い立て進路上に誘き出し、槍で貫いてゆくミレア。
「救援部隊……猟兵か! 助かった、私は解放軍第661騎兵中隊――」
 二人の猟兵に合流し、消耗した騎体でその戦いを援護した解放軍の騎兵に導かれ、十六夜とミレアは新兵たちを無事に救い出した。
「これにてこの宙域の安全確保は完了だよな。さーて、うちの機体は無事かなぁ……」
「レースに復帰するおつもりですか。お言葉ながら途中復帰での勝率はそう高くありませんが」
 嗜めるようなミレアの言葉に、十六夜は宇宙服の頭部を覆う分厚いガラス越しに笑った。
「トップ連中に勝てるとは最初から思わねえよ。記念に走ってくるだけさ。それにまだ戦ってる連中も居るだろうしな」
 新兵たちが無事撤退してゆくのを見届けて、十六夜はデブリを蹴って軽快に進んでゆく。
 その背中を追うように、さらなる戦果拡充を望むべくミレアも星屑の海へ再び飛び立った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木霊・ウタ
心情
参加・観戦してる皆の想いを守る事が
猟兵の役目だ

皆の想いに応える為にも
戦い理由にレース棄権はしない
どっちも全力だ

レース
そんな思いを歌に込めて:UC
回線通して参加者へ

共感に乏しそうな動きの奴には
注意しとく

障害物を獄炎接続の熱線砲で破壊し
デブリを回避&破壊しながら
そのまま突っ切り獄炎全開

戦闘
迎撃を最優先に

レースと同じ要領だ
炎のバーニア機動で回避しながら歌う:UC

バーニアをちょいと工夫すれば
炎のエネルギー盾にもなるぜ

バリアモードにはアンカー放ち
強制的に歌を聞いてもらいながら
ぶん回して搭乗者を放り出させたり
熱線で機銃を爆破したり
バリアへ負荷をかけて破壊

事後
クローンへの鎮魂を歌いつつ
レースへ復帰


アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
リゾート、リゾート……!
えへへ、ダイビングなんて初めて……♪

ウキウキなテンションでレースにも積極的に。落ち着いてヘルパーAIのアドバイスに従えば、他の参加者と比べ圧倒的に劣るドライビングテクニックや経験の差も決して埋められぬものではなく、銀河帝国残党という大きなハプニングはむしろ絶好のチャンス
ドライバーは膨大なサイキックエナジーを用い騎体にも走行にも悪影響を与えること無く迎撃可能、騎体はその間もAI制御により自動で走り続ける、という大きなアドバンテージが存在する

とはいえそこは聖者とヘルパーの組み合わせ
レースの勝利以上に他参加者や観客に降りかかる危険を防ぐ為に駆け抜けることになるだろう


ビードット・ワイワイ
アドリブアレンジ歓迎
見たり見たり見たり、汝らの破滅を見たり。レースを乱す無粋な輩
未だ猟犬名乗るつもりか。牙も獲物を失いて矢鱈と噛み付く狂犬よ
飼い主無くして吠えるならば、ここに死に場所与えよう。ここが汝の破滅なり

ではこれより我の周囲に近づかぬ様に。レースも露払いも全て制して薙ぎ払おう
破壊破滅は我が得意分野。たかが騎兵で要塞を落とせると思わぬ事よ
砲撃貫通鎧砕き騎馬も乗り手も諸共潰す。弾丸は自在に動きて貫き壊す
速さも障害も関係あらぬ。姿を隠して加速し砲撃。未だ要塞は不落なり

撃滅後にUCの能力で先頭まで追従、2位に追いついた後に武装をパージしレースに復帰
さあ正々堂々と行こうではないか


アリシア・マクリントック
来ましたね!マリア、火器管制は任せました!マリアクロスを直結してますから、いつもの感覚でいけるはずです!
両肩部に配置されたガトリング二門とプラウドウルフのコクピット周りの機銃だけでは少々火力が心もとないですね……マリアに文字通り背中を預けているという安心感はありますが。

いくら強化したといえど戦闘機動ではこちらが劣る以上ドッグファイトは無理、となれば迎撃です。手頃な敵の軌道を予測し、進路上に飛び出してやります。質量差の大きい相手にぶつかるか、あるいは速度を落として回避するか……どちらを選ぼうとこちらの有利になるでしょう。
それから近くに解放軍がいれば離脱を手伝うなり機体を盾に防衛します。


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

へっ、おいでなすったか……
みなまで言うんじゃないよ、コイツは駆け抜けるだけが能じゃないさ。
なにせ遍歴は謎だらけ。
もしかして伝令騎兵サンの伝説にコイツが呼び寄せられたかねぇ?
……ま、詮索は後だ。
可変騎がアームドフォートだけの特権と思うなよ……
いくぜ、【人機一体】だ!

宇宙バイク形態に変形し、『ダッシュ』一番戦場を駆け抜けて、
まず目指すのは混戦状態の友軍さ。
無人の暴走バイクとして誤認させながら、
すれ違いざまに残党共にメーザーの『属性攻撃』で『範囲攻撃』を仕掛けていく。
注目を集めたらアーマード形態に変形し、
『グラップル』で制圧しながらオープン回線で友軍を『鼓舞』するよ!


ヘスティア・イクテュス
レースの中止、間違いなく帝国残党の士気を上げることになるわね…
ならば取れる手段は完膚なきまでに残党を叩き潰すことで逆に士気を下げる!

それに……
こう見えてここ数日、あのエメラルドもあって機嫌が悪かったのよね!


電脳魔術で電脳空間に収納してたミスティルテインを取り出す
重量分速度は少し速度は落ちるでしょうけど…これで飛びながら【空中戦・ダッシュ】友軍の『援護射撃』【&クィックドロウ】
細かい友軍位置とか識別はアベル、よろしく!【情報収集】

敵集団を見つけたらマイクロミサイルの『一斉発射』!
重量を減らしレース開始時よりスピードアップよ


わたし達を止めたければ帝国製ウォーマシンでも連れてくるべきだったわね!


チトセ・シロガネ
残党みーッけたッ!
ユーの相手はボクたちネ。

プロト・ネモに迫るクローンライダーたちを早業と空中浮遊で接近しながら乱れ撃ちで奇襲。ボクの間合いに入ると同時にUC【鳴神乃型】を発動、武装制限のリミッター解除、戦闘モードに突入ネ!
そのままスピードに任せてライダーの一体を蹴ってデブリに叩きこむネ。

ここから先はスピードがルールのレース大会、そんな無粋な物を持ち込むヤカラはボクと場外で楽しいコトしまショ!
プラズマの刃(属性攻撃)が迸るEZファントムの切っ先を向けて挑発、迫るヤツらをカウンターで返り討ちにしていくヨ。


トリテレイア・ゼロナイン
民間船は言うに及ばず、一人でも多くの友軍を救う為
アイアンズ様、申し訳ございませんが勝ちをお譲りすることになりそうです

私はレーサーでなく騎士ですので

乗騎を(UC)をハッキングし限界突破
慣性制御をフルに活かした切り替えし機動でデブリ躱しコースを全速で駆け抜け
対艦砲で消し飛ばし友軍を盾受けでかばいシールドバッシュで反撃
部隊立て直し猶予確保

残骸等をワイヤーアンカーで有線ハッキング
作戦プラン情報収集

敵は一体何処から…
進行方向逆算…ピット船!

友軍との情報共有と立て直しに奔走しましたが…機体が限界ですね

他のピット艦で待機中の機械馬を遠隔自動操縦で呼び寄せ

乗騎故障による失格…ですが私はこちらが性に合いますね!


ギヨーム・エペー
おー、あれかな? 銀河帝国残党、だっけ。良いバイク乗ってるなー!
でも、レースの邪魔は良くないなー。アクシデントやトラブルで機体がリタイアするのはやるせないけども、それが人の手によるものだったら絶対に阻止しないといけない

そうだなー……おれは残党狩りを最優先に動くよ
レースはリタイアしないが、できる限りはここで数を減らしておきたい

バリアを張るようだが、生命力の維持に問題があると見た。弾幕は騎乗しているバイクを運転して、宇宙の波をサーフィンして回避しよう
襲撃するなら後方からかな。でも、タイヤとかを狙って進行不可にすることを狙った方がいいかもしれないね


ジャック・スペード
中継にはトラブルが付き物だ
此の危機すら盛り上げて見せよう

俺は負けず嫌いだが――
任務と来れば話は別だな
最後方を走ってスピード狂たちが
死角から撃墜されぬように護ろう
なに、直ぐに追いつくさ

スピードを落としている以上
孤立している友軍も見逃せないな
見かけたら急ぎ助太刀に入るとしよう

さあ、屑鉄の王と合体だ
廃獄より蘇り、其の威光を見せつけろ

此の身をモノアイの異形に変え
蒼い稲妻を纏った銃弾で敵のバイクを銃撃
動きを狂わせられたら其の隙に肉薄して
騎乗者の急所に零距離射撃

総てが終わった後
俺のシステムはシャットダウンされるが
予備電力で再起動できる迄は
翼のアームドフォートがきっと
何処へなりと運んでくれるだろう


キリエ・ニール
アドリブ絡み歓迎
やぁひどい目にあったというべきか楽しかったというべきか…
まぁなんだね、割と楽しんでいる僕がいる
だから今回は…柄にもなく、勝ちを取りに行こう
君らの都合も信念も宇宙の平和も知ったこっちゃない
邪魔だぜお邪魔虫!!


数打で一部外装を切断し軽量化
【第六感】を働かせて敵ライダーの加速に合わせ此方もアクセル全開、宇宙バイクをフルスロットル
真っ向から突っ込み…最適なタイミングでバイクから【ジャンプ】
コード使用
加速、ジャンプ、相手の超加速の勢い
全てを乗せた【カウンター】
魔方陣を経て召喚された勇者の拳で宇宙バイク諸共敵ライダーを粉砕するよ
殴っては加速を殺さず自分のバイクへ着地し疾走
勝つのは…僕だ!




「レースの中止、間違いなく帝国残党の士気を上げることになるわね……」
 ヘスティアはこの帝国軍の決起が齎すであろう影響を想い、渋面をつくる。
 解放軍が盤石の体勢を謳って設えた平和の祭典を、銀河帝国の遺志を継ぐ者たちが襲撃し、その本懐を遂げたならば。
 それは間違いなく解放軍の権威の失墜を招き、帝国の脅威を人々の胸に呼び起こすことになろう。
 それを許すわけにはいかない。平和を勝ち得てまだ一年半、再び帝国を打破するにもあまりに短すぎるその日々は人々の心に消えない不安を刻むだろう。
「なら完膚なきまでに残党を叩き潰すわ。銀河生中継でその様子を見せて士気を下げてやる!」
 速度勝負の邪魔になると電脳空間に収めていたビームライフル、ミストルティンを呼び出し、ティターニアに接続。戦闘態勢を整えたヘスティアは、コースをなぞるように戦場へと飛翔する。
「そうだよな。それに参加している皆の、観ている皆の想いを守る、それも猟兵の役目だ!」
 帝国を勢いづかせない。それも重要だが、なにより平和式典としてのレースを遂げることで人々を勇気づけることもまた重要。
 ヘスティアに並び翔ぶウタは、あくまで競うことを第一に、されども帝国が牙を剥くならばそれを迎え撃つべく注意を巡らせて炎を燃やす。
「だからさ――歌うよ、俺。全力で!」
 歌声はウタの魂を燃やすような炎を勢いづかせ、アイアンズら軍の面々が緊急用で繋いだ回線を通じてサーキットを駆ける者たちの耳を打ち魂に呼びかける。
 諦めない。負けない。駆け抜けることで人は脅威に屈さないことを示してみせる。
 ――レースは、戦いは加熱する。

『歌をやめさせろ!』
『解放軍の有象無象は後に回せ、猟兵から叩く!!』
 ウタの声は味方の闘志を震わせるばかりではなく、敵にその身を晒す意味でも宙域によく通った。
 熱くたぎる歌声の発信源を潰すべく急行した帝国軍のライダーたちが、サイキックの防護膜で細かなデブリを弾き飛ばしながら襲来したのだ。
 ――迎撃のためにライフルを構えたヘスティアは見た。
 帝国軍のバイクが弾き飛ばす残骸は、それは解放軍のアームドフォートの破片である。
 敵は今ここに到達したのではない。既にこの宙域での戦闘は終わっていて、立ち去った連中が取って返してきたのだ。おそらく決着は予想しうる最悪の形で付いたのだろう。
「……ならなおさら、彼らの無念に報いるために!」
 奇襲攻撃を受け抵抗もできずに散ったのだろう、背部のスラスターパックにいくつも大穴を開けて漂う残骸を煩わしそうに轢き潰して迫るバイク。
 帝国残党にとって、解放軍将兵の躯など炉端の石ころにも劣る扱いなのか。
 ヘスティアの怒りを感じ取り、目を凝らしたウタもまた言葉にし難い怒りと悲しみを覚えた。
「いや……あんたらはそれしか知らないんだな」
『何を! 迎撃くるぞ、全騎散開!』
 兵士として生まれ死にゆくクローンだから、彼らは敵兵へ何かを想う思想の自由すら持ち得ない。ただ只管に滅んだ祖国のために戦うことしかできない。
 哀れだった。だから、彼らがただひとつ許された自由――戦いの中で終わらせてやらねばならない。
「アベル、IFF識別はそっちで全部よろしく!」
「かしこまりました。照準は?」
「こっちでやるわ!」
 ヘスティアが叫び、同時に小型ミサイルの群れが一斉に帝国軍へ向けて飛翔する。
『防御姿勢、バリア出力上げェ!』
 炎の華がいくつも咲いて、それを貫き襲来するバイクの数は三分のニほどに減じている。
 バリアの出力強化の間に合わなかった者はミサイルに喰われたのだろう。
 それでも歴戦の残党は振り返らずに敵を喰らうべく襲い来る。
「あんたらも戦い以外のことを知ってれば、こうはならなかったのかもしれない」
 ウタの放ったアンカーが数騎のライダーを絡めバリアの表面を引っ掛ける。ワイヤーロープで結ばれた双方、馬力に勝るバイクがウタを引きずり回すべく加速する。
『馬鹿が! このままデブリに叩きつけて――』
『待て、なんだこの歌は……』
 ウタは戦いの中で彼らを兵器ではなくせめて兵士として、人として終わらせてやるために歌う。その歌声にアクセルがわずか緩んだその瞬間、ウタはアンカーを手繰ってバイクを振り回す。
 勢いづいて強制的に旋回させられるバイクからライダーが放り出されれば、それをヘスティアの放ったビームが射抜いた。
「わたし達を止めたければウォーマシンでも連れてくるべきだったわね!」
 猟兵を阻止するには戦力不足。ヘスティアはライダーたちをそう断じて先へ行く。
 その背を追い越すべくウタも加速をすれば、二人の猟兵は競ってレースへと戻っていった。

「へっ、おいでなすったか!」
『民生用の小型機風情が!! 軍用機を相手に――』
「おっと皆まで言うんじゃないよ」
 多喜とケイコを襲撃したクローンライダーたちは、軍用の武装バイクに比べれば遥かに小さな多喜の機体と武器など装備していないケイコのアームドフォートを嘲笑い執拗に、されど速力差を敢えて殺して追い立てるように後ろに取り付いた。
 統制と戦意に満ちた奇襲部隊ではなく、憎悪と復讐心の為に敵を嬲ることを良しとするのは満足な補給も得られずただ耐え忍ぶしかなかった者たちであれば、意趣返しに執着するのも宜なるかな。
 されど。
「こいつは駆け抜けるだけが能じゃないさ」
「言うじゃないさ。アタイのエクスレイだってそうだとも」
 二人の女傑は獰猛に笑って加速する。馬力が全てと嘲笑するならすればいい。
 だが速度とはそれだけにあらず。非力であっても、競うための機体でなくとも、それが最速になり得ないものだと誰が決めた。
「とは言うものの……タキ、頼めるかい」
 ケイコが問う。見据えた前方では解放軍の駆逐艦がライダーたちに取り囲まれ防戦に苦心しているのが見えた。自分たちが襲撃を切り抜けるためにあれを放置するのも後味が悪い。
「うん? だけどケイコ、アンタは……」
「なぁに、タキに押し付けて抜け駆けする気はないよ。アタイだって宇宙の女、品のない野郎どもの相手くらいできらぁさ!」
 そういうことなら任せろと、多喜はケイコを信じて突き進む。
「随分好き放題にやってくれてるじゃないか。だけどね、可変騎がアームドフォートだけの特権だと思うなよ……!」
 追撃はない。ケイコがどうやらうまく引きつけてくれている。後顧の憂いが消えたならば、あとは全力を尽くして味方を救うのみ。
「行くよ、人機一体だ!」
 ――瞬間、多喜の姿が掻き消えた。
 小型の宇宙バイクが一回り大きくなり、代わりに騎手の姿が消失する。人機一体、まさしく言葉の通りバイクと合一した多喜は、駆逐艦の対空防御をすり抜け手にしたハンドブラスターで銃座を潰してゆくバイク部隊に接近してはすれ違いざまのメーザーで一機ずつ仕留めてゆく。
『どこの機体だ! 自律型だと!?』
『騎手も無しで我々の機動に付いてくるだと!! 何なんだコイツ、クソッ!!』
 混乱する帝国兵の注意が自信に向いたことを察知して、多喜は人型に変形する。
「コイツが何なのかはアタシも知らないよ。遍歴は謎だらけ、どこの誰が作ったものかもわかりゃしない。もしかしたら伝令騎兵さんの伝説に呼び寄せられるような縁があったのかもしれないねえ」
 そんな詮索ももはや無用だ。此処に至って多喜の為すべきは味方を救い、敵を倒してゴールを目指すのみ。
「さぁ来な、アタシが相手してやるよ」
『舐めるな、反乱軍の尖兵が!』
 勢いよく飛びかかってきたバイクを蹴飛ばしライダーをねじ伏せ、多喜は叫ぶ。
「狼狽えるんじゃないよ、すぐにアタシ達が助けに行く! 解放軍だってんならそれまで持ちこたえな!」
 その声が届いたのはごく近くの者たちだけだったろう。けれど、多喜の戦いは将兵を勇気づけた。
「それに漁師があんだけ頑張ってるんだ、軍人ならもっといいところ見せなきゃあね」
 多喜が駆逐艦のブリッジに振り返るその後ろでは、帝国のライダーたちを投網で一網打尽に捕らえてデブリに縛り付け、悠々とコースに帰還するエクスレイの騎影が青く輝いていた。

競うことを諦めず、それでいて救い、倒すことにも全力を傾ける者がいる一方で、この有事にあってレースではなく平和維持を最優先に動くものもいる。
 トリテレイアとギヨーム、そしてアイアンズだ。
「民間の船団は言うに及ばず、一人でも多くの友軍将兵を救うため――アイアンズ様、申し訳ございませんが勝ちはお譲りすることになりそうです」
「うん、レースの邪魔は良くないからなー。アクシデントやトラブルでリタイアするのはやるせないけど仕方がないことだけれども、それが人の手によるものなら絶対に阻止しないといけない」
 減速し、コースを外れてゆく二人。目指す先は戦闘光の瞬く宙域だ。
「おいおい、二人してカッコいいこと言ってんなよ。もともと俺もそのために居るんだぜ、一丁派手にやるならまず海兵に仕事をさせてくれや」
 それを追ってアイアンズも続く。三騎がコースを離脱して赴く先は戦場であった。
 艦隊――といっても巡洋艦一隻に駆逐艦が二隻、小型の哨戒艇がいくらかという小規模な部隊だ――と艦載騎兵たちが防衛線を敷き、参加者に補給をするべく待機していたピット艦を守るべく奮戦している。
 とはいえ既に駆逐艦の一隻は満身創痍、武装の殆どを失い散発的に機銃座からの迎撃を放ちつつもさしたる戦力にはなっていない。
 そのうえでこの戦線を維持している楔、指揮艦たる巡洋艦を狙い襲撃を繰り返す敵のライダーたち。解放軍の騎兵もこれを迎え撃つが、単純な加速力の差で振り切られてはこれを阻止する術を軽武装の彼らは持っていない。
「トリテレイア、ギヨーム、俺の騎体も脚が遅い。牽制に集中するからお前らでやってくれ、できるか?」
 言うやいなや、巡洋艦に攻撃を加えんとした帝国ライダーへ向けてアイアンズがミサイルを一斉射する。対戦車仕様のミサイルは一度高く舞い上がり、それから敵の頭上方向に進路を変えて降り注ぐ。
 それで決着、とはならなかった。敵はサイキックバリアでこれに対応してのけたのだ。
 だがそれでいい。殲滅が目的ではないのだから。巡洋艦攻撃の気勢を削がれた帝国兵達が僅かに減速すれば、其処にトリテレイアが滑り込み盾を構えた突撃で先鋒を弾き飛ばす。
『こいつ……何処からッ!!』
 敵がどよめく。ミサイルの急襲と続く戦闘用ウォーマシンによる突撃。想定外の大型戦力による攻撃を受け、敵は攻めるか退くかの判断を迫られる。その一瞬、動きに迷いが生じた敵兵をギヨームの投じた氷のジャベリンが貫いた。
『もう一騎!? 畜生、エンジンが凍結した! 推力が維持できない、ああっ!!』
 凍りついたエンジンか漏れる推進の炎は、氷を溶かすこともできず今まで通りにまっすぐバイクを進ませることもできずに騎手を振り回しながら荒れ狂う。
 暴れ馬に引きずられる騎兵はそのまま巡洋艦の砲撃に飛び込み爆散した。
『怯むな、増援と言えどたった三騎! このまま攻めきる!』
「退くつもりは無し、か。やれやれレース復帰は難しそうだな?」
「リタイアするつもりはないよー。でもできるだけここで数を減らしてから戻りたいね」
 ギヨームが次の槍を携え、アイアンズが実弾キャノンを抱えて敵味方入り乱れた白兵戦を繰り広げる中で、単騎突撃したトリテレイアも敵に包囲された状況で奮戦していた。
「これほどの敵が何処から……戦闘の痕跡と残骸からハックした航跡を逆算すると……」
 なるほど敵はピット艦に潜んでサーキットに侵入したらしい。だが、いつからだ?
 トリテレイアがひとつの疑問を抱いたその時、彼を取り囲むライダー達は自身の武装では傷を与えられぬと見て白銀の騎士に体当りを敢行した。
『貴様らさえ居なければッ――!!』
 憎悪と怨念の籠もった呪詛を吐き捨て、共にバイクの誘爆に消えゆくクローン兵士。
「トリテレイア!!」
 あらかたの敵を仕留めたアイアンズとギヨームが目を見開いて叫ぶ。
 数騎ものバイクの自爆特攻を受けてはさしものトリテレイアとて――
「…………いえ、私は大丈夫です」
 満身創痍、レース用の追加装備のことごとくを破壊された姿で爆炎から跳び出す白騎士。
 すぐさま自身のピット艦から機械馬を呼び寄せ、次の戦闘に備えながら彼は言う。
「不味いかもしれません。敵は私達が予想している戦力だけではないかもしれない」
 乗機大破。レースへの復帰は絶望的。だがこの状況でトリテレイアはレースに戻るつもりはない。
「まずいってどういうことだい? 他に何が居るって……」
 ギヨームが首をかしげれば、トリテレイアはその"最悪の予想"を告げる。

 プロト・ネモは漂うデブリを蹴飛ばし、あいも変わらず宇宙を疾走していた。
 ネモを駆るくじらはAIである。VRリゾート船の管理統括が使命の、戦闘などとは縁遠い個体だ。
 名の通り人型ですら無い電脳の海の賢者は、それでも人を守るべく駆け抜け、戦闘で負傷したり装備を破壊され漂流していた解放軍の将兵を抱えて健在の解放軍部隊を探している。
 それが面白くないのが帝国軍残党だ。せっかく仕留め、あとは死に怯えながら朽ちゆくはずだった敵兵を救助して回る騎体。そんなものが存在することが不愉快極まる。
 だからそれを破壊するべく進路を切り返した宇宙バイクの編隊へ、青白い稲妻が割り込んだ。
「残党みーつけタ!」
 降り注ぐプラズマの刃が推進剤タンクを蜂の巣に貫き、爆散するバイク。
 混乱するライダー部隊に飛び込んだその稲妻――女の形をしている――は、ぶぅんと唸る蒼炎の刃を振り抜きライダーの一人を両断。その剣戟の勢いに任せた回し蹴りでもう一騎をデブリにぶち込んで、にっこり笑って残る敵兵に声を掛ける。
「此処から先はスピードがルールのレース大会、そんな無粋な物を持ち込むヤカラはボクと場外で楽しいことしまショ!」
 これ以上の侵入は許さない。そして人命救助に全力を尽くす奇妙な戦友を襲うこともまた、絶対に許さない。
 剣を向けて挑発するチトセに、ライダーたちは下卑た笑い声を噛み殺してハンドブラスターの銃口を向ける。
『美人にそうまで言われちゃなあ。死んだ同志の分も遊んでやるよ、ククッ……俺たちのルールでなぁ!』
 突っ込んできた一騎が乱射するブラスターの熱線を剣で切り払い、カウンターで一閃。
『一度振ったらすぐには次を振るえまい!』
 チンピラのような態度が一転、自らの死を以てチトセの一撃を消費させたライダーが嗤う。
 続けざまに襲来する後続を、チトセの刃であってもすべて斬ることは至難――
なれどそれは一人では、だ。
「もう重石は必要ないよね。ゴメンよストームダイバー」
 しゃらりと抜いた数打ち刀、決して業物なり得ぬそれで愛機に取り付けた偽装ユニットを斬り落とし、軽量化を果たしたキリエが割り込んだ。
 愛機の背を蹴り更に加速、単身飛び出した少年は仲間を襲う帝国兵へ真っ向突撃、
「君等の都合も信念も宇宙の平和も知ったこっちゃない。レースの邪魔だぜお邪魔虫!」
 瞬間、展開した魔法陣から巨拳が兵士たちをなぎ倒し――
「ヒューッ! やるじゃなイ! ボクも負けていられないヨネ!」
 隊列の乱れたライダーたちを襲うは、青白く煌めく刃。おおよそ常人の振るう剣の姿から逸脱した異様なほど長い刀身のそれがライダーたちを切り裂いた。
「そっちもやるじゃん!」
 拳の上を走り抜け、並走する愛機に飛び乗ったキリエが親指を立てれば
「まあネ! さてト――」
「うん、そうだね――」
 レースはまだ終わっていない。なんでもありの場外乱闘まで始まってしまったが、それもまた楽しいと思ってしまう自分に気がついて、二人の猟兵は笑い合う。
「「勝負だ!!」」
 先ゆくくじらに追いつけ、追い越せ。帝国軍の妨害も何のその、宇宙を貫く疾風を止めることは能わない。

「リゾート、リゾート……! えへへ、ダイビングなんて初めて……♪」
 受け取った優待券を眺めながら、にへらと幸せそうに笑うアヴァロマリア。
 そんな彼女の耳に帝国残党が襲撃を掛けてきたなんて急報が届いていたかはやや怪しいところであり、事実アヴァロマリア自身は戦闘に気づいていなかった。
 だというのに。
『なんなのだアレは! くっ、損傷騎は深追いするな、下がれ!!』
 ギャラクシーエクスヘルプ999と並走する帝国軍部隊は満身創痍。近寄ることすら許されず、少女の駆る銀河鉄道を害さんと迫ったものは見えざるサイキックエナジーでバリアごと握りつぶされ脱落してゆく。
 非武装のアームドフォートもどきと侮り、彼ら彼女らを守るべき解放軍の無能を知らしめるべく襲撃を仕掛けたはずの帝国軍部隊は、こちらを敵として認識してすら居ない少女を相手に一方的な損害を被っていたのである。
 こちらから攻めねば反撃も無いとはいえ、みすみす行かせるは決起軍の恥。
 されど射撃は高出力のサイキックバリアに弾かれダメージになりえず、近づけばサイコキネシスでバラバラにされる末路が待っている。
『くぅ……ッ。打つ手なし、か。ならばやむを得ん……あれを狙うぞ』
 指揮官が指差したその先には、戦闘宙域から離脱しようとしている解放軍の病院船の姿がある。
 初撃の奇襲で負傷した兵士たちを収容し、防備の厚いヘルメス艦隊に合流するべくデブリに身を隠して進むその船を帝国の襲撃者たちは見逃さなかったのだ。
『戦闘から逃げ出す腰抜け兵が!』
 アヴァロマリアの周囲から旋回して病院船に躍りかかるライダーたち。圧倒的速度で迫り、機首の機関砲を向けるそれに病院船のクルーは、負傷兵たちは戦慄する。
 逃げ切れない。撃ち落とされ、今度こそ死んでしまう――
 その恐怖に満ちた思念をアヴァロマリアは見逃さない。聞き逃さない。
 たとえ浮かれていようとも、その身その心は聖者。
「だめだよ」
 主の意を汲んで、騎体が帝国軍と病院船の間に滑り込む。
 機関銃の斉射をその装甲と思念障壁で弾き飛ばし、ただの一発とて守るべき人のもとへ届かせぬ。
 祈りをもって人を守る聖者は、みごとその意志を示してみせた。
 ならば傷ついたものを害そうとした者には報いがあるべきである。
「――見たり見たり見たり」
 それを齎すのは幼き聖者にあらず。
 其は破滅の徒である。
「汝らの破滅を見たり。レースを乱し無力な弱者を脅かす無粋な輩」
 一輪のタイヤが宇宙空間を疾走し――一瞬のうちに深緑の二輪戦車へと変形する。
「未だ猟犬名乗るつもりか。牙も獲物も失いて、矢鱈と噛み付く狂犬よ――」
 砲が吼え、それだけで宇宙バイクが数騎まとめて粉々に砕け散った。
 病院船にさえ被害が及びかねない大出力の砲撃は、しかし正確な照準と聖者の加護によって罰されるべきものだけを焼き払った。
『何だというんだ……あんなものを投入して…………我らは未だ本懐を遂げていない、だというのに――』
「飼い主無きまま吠えるならば、ここに死に場所与えよう。ここが汝の破滅なり

 第二射を前に散開しようとした帝国兵たちは、されどそれを叶えられずに消滅した。
 破滅を齎す重戦車の――ビードットの放ったあらゆる火器兵装の弾幕がそれを許さなかったが故に。
「ロードルーイン、これにて進路の露払いは完了なり。さあ正々堂々と行こうではないか」
 必要のなくなった武装を強制排除し身軽になった戦車は駆ける。
「あっ、待ってー! マリアもいくー!」
 それを追うように聖者も駆ける。守り抜いた病院船が無事に退却してゆくのを満足気に振り返りながら。

「俺は負けず嫌いだ」
 全銀河中継のレースに乱入した帝国軍残党。
 それを防ぎ堰き止めるべき解放軍は予想外の方向からの奇襲攻撃で混乱し、防衛線はもはや猟兵に委ねられたと言っても間違いではないほどに混迷している。
 その上でレースは終わっていない。最速を決める争いは続いている。ならばジャックとて止まる選択肢は選ばない。選べない。だが。
「――それが任務なら話は別だな」
 踵を返しコースを逆走する黒鉄の騎兵。擦れ違うのはレース参加者たちと彼らに救われ、彼らを守るべく――あるいは彼らの庇護を求めて続く解放軍の残存部隊。
 けれどそれが全てではあるまい。猟兵と出会えぬまま孤立無援の窮地にある友軍が居るはずだ。
 センサーを最大限に開き、僅かな反応すら逃さぬよう注意を払うジャックは、果たして解放軍の新兵たちを守るようにその身を盾とする騎体を捉えた。
「私がここを守っているうちに離脱してください!」
 アリシアが叫ぶ。プラウドウルフに搭載された機銃と、マリアの担ぐ二門のガトリングで弾幕を張って帝国軍を寄せ付けないスペースティターニア。
 だがその鉄壁を以て解放軍を庇う彼女は、己の火力不足を熟知していた。
 死角をマリアが見張ってくれているが故に、不意に急所に致命傷を受ける可能性がほぼ無いのは救いだが機動性で劣り、火力も十分とはいえないティターニアアーマーでは反撃は至難。
 そのうえ背に解放軍の若者たちを庇っていては、いいように嬲られるばかりだ。
「せめてこの人達が離脱できれば……」
 守るべきものを守り抜いてしまえば、騎体ごと体当たりするなりで攻め手も増やせるだろう。
 しかしそうしようにも解放軍兵士たちはすっかり萎縮し、頼もしきアリシアの背中からその身を危険な宇宙に晒す勇気を今すぐ取り戻せというのは酷なように見えた。
「ならば連中は俺が引き受けよう」
 ――来い。骸の海に眠る荒魂よ。屑鉄の王よ。廃獄より蘇り、その威光を知らしめよ。
 銀河に轟くは帝国が死に絶えておらぬという叫びでも、解放軍が脅威を完全に制したという勝鬨でもない。
 異形の王が成し遂げる、解放軍部隊を見事救ってのけたという偉業。
 単眼がぎろりと輝いて、アリシアを襲う敵兵共を睨みつける。
「貴方は……」
 アリシアの誰何に応えること無く、屑鉄の王は蒼雷纏った弾丸でライダー共を銃撃する。
 いくつかがそのまま騎手を貫き落馬を強いるが、回避した者たちは機動を乱しながらも新たな襲撃者に対してハンドブラスターを――
『ええい、一騎増えたところで……ッ!?』
 一瞬だ。一瞬だったはずだ。
 だというのに、黒鉄の異形は彼我の距離を零に縮めていた。
 帝国の指揮官は息を呑んだ。ありえない、と。
 彼は選択を誤った。ありえぬと現実を拒むより先に、銃を向け引金を引くべきだったのだ。
 されどその指摘ももう遅い。なぜなら彼は、異形の王によって額を撃ち抜かれ物言わぬ肉塊となって宇宙に投げ出された後だったから。
「敵陣が乱れた……今です、皆さんあっちにまっすぐ翔んでください!」
 ジャックの強襲で惑乱した帝国軍に好機をみたアリシアが、解放軍の残存戦力を逃がすべく動き出す。
 兵士たちは動けるものが傷ついたものを支えながら退却を始めるが、ジャックの強攻を抜け出した者が――ジャックは敵兵の殆どを単騎で殲滅する偉業と引き換えに、体内の全電力を使い果たして昏睡しているようだった――勝ち目のない異形をつついて起こすリスクを避け、アリシア達を追撃し始めたのだ。
「卑怯な……マリア、しっかり踏ん張ってくださいね! ティターニアをぶつけます!」
 対するアリシアは再び我が身を盾として――しかし背後の味方を庇うのではなく、積極的にライダーどもの射線に飛び込むことでその追撃を封じ込める。
「機動性で劣っていようと、騎体の扱い方次第で!」
 そのまま撥ね飛ばしてやると息巻いて激突した機体が逆に粉々にクラッシュさせられたのを見て、一斉に回避に入る帝国兵達。
 だが――その僅かに速度を緩めた一瞬を、マリアは獣の動体視力で決して見逃すこと無く撃ち落とす。
「これで全員、でしょうか。……どうにか守りきりましたね」
 コースに復帰するべく、自身を守ってくれたジャックの姿を探すアリシア。
 果たして彼は自身の機翼に導かれ、漂うようにコースへ向けて飛んでいた。
「まだ目覚めませんか。起きたら一言お礼を言わないとですね」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジル・クリスティ
レースもやる
帝国残党も倒す
両方やるのが猟兵ってものだよ!

レースは相変わらず、小柄な体で隙間を縫うようなコーナーリングと軽さを活かした加速を武器に、トップ集団に喰らい付いて、隙あらば抜いていくよ

同時に【アサルト・ビット・ドラグーン】召喚
私同様の超高速で飛び回るビットを展開し、レースしながら妨害に襲ってくるライダーを迎え撃つ!
私の正面は、愛用のロングレンジライフルで撃ち抜き
レーサーの進路を塞ぐ敵ライダーに向けてはアサルトビットからのオールレンジ一斉砲撃を
ビットは後方にも展開、後ろから襲うものにも容赦なく
…レーサーへの誤射はしないからね?

当然ビット展開中もレースの手は抜かない
最後の勝利は譲らないよ!


アイ・リスパー
「宇宙空間に出ましたね!
ここからが、私のパワードスーツの本領発揮ですっ!」

宇宙空間に待機させていた『小型宇宙戦艦ティターニア』と【強化外装】でドッキング!
【高機動型強化外装】の上から全身を覆う形態のパワードスーツを装着し、ティターニアのブースターで一気に加速です!
無重力空間なら質量の増加は問題になりません!

「ティターニアの冷却ユニットと追加ブースターがあれば、速度では負けません!」

襲ってくる帝国軍は、ティターニアに装着していたミサイルとレーザーガトリングで迎撃。
敵の機銃程度、全身を覆うパワードスーツならば問題ありません!

「一気に蹴散らしますっ!
ティターニア、一発なら味方に当たっても誤射です!」


ダビング・レコーズ
任務内容の更新を確認
出現した銀河帝国軍を殲滅します
元より交戦は想定内の事態ですので問題ありません

大気も領域限定も存在しない宇宙空間ならば速力を最大限発揮可能です
機動力における優位性を活用し襲撃を受けている友軍艦の救援に向かいます
ソリッドステート形態で最大戦速で急行
機体下部にガンポッドとして懸架したセントルイスによる速射攻撃で牽制
目標との相対距離が接近戦の範囲に入る直前に合わせウォーマシン形態に変型
全ての推進装置から生じる噴射炎を切断翼化し展開
速度は維持したまま両肩部のブースターを其々逆方向へ噴射
機体を縦軸に高速回転させ目標と交差し連続切断します

銀河帝国軍は抹殺する
状況による例外は存在しない


トルメンタ・アンゲルス
やっぱり向こうさんも仕込んできていましたか。
まぁ、曲がりなりにも帝国軍と言ったところでしょうか?

ではロバートさん、実に名残惜しいですが、暫しレースはお預けですね。
貴方はレース専用機。
無理せずレースを続行し、道行を示す光になっててくださいよ。

なぁに、ホームストレートには間に合わせます。
ちょっとばかり――
『FullThrottle――』


 光を超える
――先に行くだけですから
『――HyperDrive』


リミッター解除!
超光速戦闘モードへ移行!
通信や第六感、見切りで敵の大体の方向を察知し、片っ端から蹴り穿つ!
サーキットを狙う奴も!
中小隊に新兵を狙って突っ込むやつも!
後ろの方の親玉も屠ってやりますよォ!




「此処は私が引き受けます! あなた達は先に!!」
 サーキットを駆け抜ける選手達。それを猛追する帝国軍の中隊を背に、減速して引き返してゆくルシアナのリベレーター。
 若くとも解放軍の士官であり、そして軍用騎を駆る鎧装騎兵である。その矜持を胸に、かつて戦場のいろはを導いてくれた中隊長――あの猟兵に恥じぬ行いを。
 敬礼を残して編隊を離脱してゆくその白い機影を、猟兵たちは引き留めることができなかった。
 さも自然に、あたりまえの事のように彼女が死地に飛び込んでいったから。十代も半ばほどの少女は覚悟や気負いを感じさせることもなく、ちょっとした日常の反復行動を為すように単身戦場に舞い戻る。
 アサルトライフルがクローンライダーの進路を妨げるようにビームの弾幕を張り、反撃する帝国兵のハンドブラスターの火線がリベレーターを追う。
 機動性に長けた軍用アームドフォートと加速性に特化した軍用バイクの高速戦闘は、双方にかすり傷を増やしつつも決定打を与えることのできぬまま、それでも猟兵達を追う敵兵の数を大きく減じさせて見せた。
 だが、たった一人少女を戦場に残して走り抜けて――それで本当に良いのだろうか?
 ルシアナの戦いを背に受けて、ジルは己の行いに疑念を抱いた。
 断じて否である。残していくのが少女だろうが老人だろうが、ただの一人も取りこぼすこと無く救ってのける。それが猟兵ではなかったのか。
 そうだ。猟兵とはその強欲をもって世界を救ってきた、銀河一欲張りな英雄だったはずだ。
「……レースもやる、帝国残党も倒す。大変だけどどっちもやるのが猟兵ってものだよ!」
 決心を固めたジルも先頭集団から離脱してゆく。大丈夫、早々に追手を片付けて戻れば勝てない相手ではない。
 ロバートもトルメンタもダビングも、誰も彼もスピードの化身のような強敵だけれどそれに打ち勝ってこその銀河最速であろう。
「ユニット展開! ルシアナの援護に集中して……オールレンジ、いっけーっ!!」
 小さなジルのアームドフォートから分離した自律攻撃端末がデブリの隙間を縫うように飛翔し、ルシアナの騎体を追う宇宙バイクの進路に網を張るようにビームを照射し次々突っ込んでくる敵機を撃ち落とす。
『何処からの攻撃だ!?』
『気をつけろ、小さいのが居るぞ! 熱源探査に切り替えろ!』
 熟練兵がジルの奇襲をすぐさま見破り、探査方法を切り替えることで迅速に射手を探し出す。
 さすがのベテラン相手ではジルもすぐに捕捉されてしまう。尤も、逃げも隠れもしていなかったのだから単にサイズ差によるステルスが用を成さなくなっただけ。
『見つけたぞ、そんな小さいなりで我らの大義を邪魔立てしようなどと!』
「さっきから小さい小さいって失礼ね!」
 戦車すら射抜く長射程ライフルでライダーを撃ち落とさんとするジルに対し、ベテランの駆るバイクはサイキックバリアの出力を一点集中してこれを耐えしのぐ。
『そのサイズではどれほど出力が高かろうとォ!』
「この高機動戦闘でバリアのピンポイント集中展開……!? こいつら並の残党じゃ――」
 必殺の一撃を弾かれたジルの表情が驚愕に染まり、対して帝国兵は憎き怨敵を討ち滅ぼすべくハンドブラスターをその華奢な妖精の体に突きつける。
 万事休す――
「――やらせない!!」
 ジルの窮地を救ったのは白い騎影。ルシアナの騎体がフォースセイバーを抜き放ち、敵兵の片腕を斬り落とす。
『弱兵風情が邪魔をしようとッ!』
 ならばと隻腕となった帝国兵もバイクに搭載されたビーム鉄パイプでルシアナを強かに一撃、振り払うと慣性任せにジルへ突撃を敢行する。
 ぶつかればそのまま帝国兵と二人、暗黒の宇宙に何処までも流されることになろう。
 ジルの推力ではバイクの質量に抗うほどの力は出せず、自由に動けるようになったときにはどれほど遠くまで押し出されていることかわからない。
 ぶつかるわけには行かない。けれど、回避するほどの相対距離ももはやない。
 帝国兵決死の特攻を妨害できる唯一の存在であったルシアナは反撃をもろに受けてすぐには動けない。
『このままあの世まで連れて行く!!』
「粘着質なのよ、怨念が!!」
 ジルの応射を浴びて満身創痍になりながら減速だけはしないバイクに、誰もがもはやこれを止めることは不可能だと諦めかけたその時――
「全艦、全騎一斉射撃! 味方撃ちにだけは注意してくださいっ!!」
『なっ……解放軍艦隊――!?』
 圧倒的な質量の砲撃が降り注ぎ、デブリもろとも帝国兵を破砕してゆく。
「宇宙空間での対多数戦闘……ここからが私の機体の本領発揮ですっ!」
果たして現れたのは、多数のリベレーター型アームドフォートを伴った白銀の戦艦であった。
「ティターニア、推進器ブロックと火器ブロックを除いて再電子化、残存ブロックとのドッキングフェーズを開始しますっ!」
 赤いアームドフォートを纏い、戦艦の上に立ったアイは必要最低限のパーツだけを自騎に合体させて高機動重武装形態へと変貌する。
「ワイルドハント中隊の皆さんはジルさんとルシアナさんの援護に! 帝国軍は私が相手をしますっ!」
「ごめん、任せた!」
 解放軍の鎧装騎兵部隊が損傷したルシアナ騎を守るように突入し、ジルの退路を切り開く。
「――一気に蹴散らしてレースに戻ります! ティターニア全砲門照準! 一発までなら誤射です、目標敵まとめて全部! 撃てーッ!!」
 ――待って今なんつったぁ!!
 ジルの声ならぬ叫びは宙域を色とりどりに満たすミサイルの爆発とレーザーガトリングの光条によってかき消された。
 ついでに大慌てで手繰り寄せたビットにレーザーがジュッて。ジュッて!!
 解放軍の騎兵たちも必死で逃げ惑う阿鼻叫喚。なまじ反撃しようなどと考えた帝国軍は、反撃のために機首を転回するその僅かな隙を突かれて撃ち落とされる。
「敵部隊の殲滅を確認! ……思ったより誤射率が高かったですね。でも、これも真剣勝負なんです! 許してくださいっ」
 レースの要項に火器兵装を用いた妨害に関して記載はなかったはずだ。
 良いはずもないがダメとも明記されていない。つまりこれはルール的にはグレーゾーンの行為であり解釈としてはジルに対して優位に順位を確保するための牽制射撃――!
「そんな言い訳通じるわけないよね!?」
「ごっ、ごめんなさーいっ!!」
 小さな妖精に追い立てられて、巨大な重装騎兵が駆けてゆく――


『あれが先頭集団か。反乱軍の海兵隊が到達する前に撃破する。続け』
『了解。全機前へ、正面から敵の進路を制する!』
 最先頭を駆けるロバート、トルメンタ、ダビングの三騎。
 それを迎え撃つように正面からコースを逆走して現れたのは帝国残党においても最精鋭、今回の奇襲攻撃を成した襲撃部隊のライダーたち。
 レースの破壊、それによる解放軍権威の失墜を狙う彼らにとって、暫定的にッ現状最速である三人を仕留めることができれば目標達成への大きな一歩となるだろう。
 だが相対する猟兵とて、速度ばかりの素人ではない。
 両者ともに先頭経験豊富な古参兵、帝国の精鋭相手であろうと僅かにも減速すること無く両者は突破を図る。
「任務内容を更新、正面銀河帝国軍を殲滅します」
「おや、真正面から待ち伏せされた割に平然としてますね?」
「元より交戦は想定内の事態ですので。それに我々と戦闘に入るのならば――」
 ダビングの言葉にトルメンタはあぁ、と頷いた。
 少なくとも後続が一度なりとも戦闘に専念し、速度を緩めた中、愚直に最速を求め駆け抜ける瞬光に並び続けることを意識した我らへの攻撃を成功せしめる帝国軍部隊があるとすれば、それはコース上で網を張った者たちだけだろう。
 追うものは後ろを駆ける猟兵にぶつかり、撃破されているだろうから。
 なにより我らに追いつけるものなど、精鋭とはいえ規格品、量産型のクローンライダーたちの中にはありはしないだろう。
「なるほど。それを理解して攻めてくるあたり、曲がりなりにも帝国軍と言ったところでしょうか?」
 放たれた機関砲の弾幕をひょいと躱してトルメンタは頷いた。
「ではロバートさん、ダビングさん。実に名残惜しいですが暫しレースはお預けですね」
 瞬光はレース専用機。戦闘を切り抜けるにはあまりに非力な騎体だ。
 だからその往くべき道を切り開くのは、猟兵たる自分たちの役割。
 レースの勝者が人々に平和を示す、その道へ誘う標の光となるなら、それを届けるために戦うのが猟兵の、英雄の使命であろう。
「自分の使命は銀河帝国軍の抹殺。状況による例外は存在しない」
「頼もしい。それじゃあ、行きますよッ!!」
 白と蒼が加速してゆく。片や閃光の、片や稲妻の如く。
『敵影2、急速に近づく! 隊長!』
『狼狽えるな。速度を維持して機動戦に入る。敵はこちらに食い付いた。自分たちが何を噛んだのかも知らずにな』
 散開する帝国軍。全体で見れば解放軍部隊に数で圧倒的に劣る残党であっても、この戦場に於いてのみニ対多の状況を生み出せる。
 数の優位は速度の優位を殺す。それが宙間機動戦闘のセオリーである。一騎が囮に、もう一騎がそれを襲う敵騎を撃ち落とす。
 あるいは追い込んで挟撃。あるいは数を頼みに弾幕で回避を制限する。数とは力であり、群れの力は個人の武勇をたやすく磨り潰す。
 帝国兵たちは長い戦いの中でそれを知っていた。故に勝算を見出し猟兵に襲いかかる。
「敵機ロック、セントルイス速射モード、ファイア」
『そうだ食いつけ、食いつけ――後は頼んだッ』
 ダビングの放った荷電粒子ビームの直撃を浴びて蒸発した兵士が叫べば、其れに呼応した敵がダビングの後方から一気に増速してハンドブラスターの銃撃を浴びせ撃つ。
 一発一発はダビングの装甲にさしてダメージを与えられずとも、何発も撃ち込まれれば蓄積した熱で機体に異常をきたすことだろう。
「近接白兵戦へ移行」
『何ィ!?』
 だが帝国兵たちは知らなかった。ダビングは決して小型の宇宙戦闘機ではなく、可変能力を持つ鎧装騎兵なのだということを。
 突如として装甲を展開し、人型に転じたそれにわずかに動揺した兵士たちを、青白い炎の刃が焼き切った。
 ――ダビングの全身に備わったスラスターから噴出する高熱の、もはやプラズマと化した燃える推進剤がバイクもろとも軟弱なクローンの肉の身体を瞬時に焼き払い、血液を沸騰させて破壊する。
「敵騎2、撃破。残存戦力を殲滅」
 勢いのままに推進器を繰り、回転するように機体を回して帝国軍を薙ぎ払うダビング。
『舐めるな――』
 それはどの肉塊が発した声だったか。ダビングの炎が触れる直前で自爆したバイクは、同胞の遺した機体を巻き込み連鎖爆発して道連れを引きずり込もうとする。
 その赤黒い炎を切り裂いて、わずかに焼け焦げたダビングは星の宇宙に舞い戻る。
「あっちはド派手にやってますねえ。俺も負けないように」
 けれど、ホームストレートまでにはロバートと再び競えるように。
「ちょっとばかり――」
《FullThrottle――》
 トルメンタは蒼となった。
 模範的兵士の肉体をサイバネティクスで強化したクローンライダーたちの目をもってしても、そうとしか表現のできない事象がそこにある。
 蒼い装甲を纏った鎧装騎兵はその時、蒼色そのものへと変貌したのだ。
 光を超えた速度に至ったそれを人の目ではヒトだと認識することができない。
 蒼い光が瞬けば、同志が一人蹴り砕かれて宇宙に散る。
『これが――』
 帝国への忠誠を唱える暇すら与えられず。
『こんなものが――』
 解放軍や猟兵への呪詛を吐き散らすことさえ許されず。
『我らの大義、大願を――』
 何一つとしてこの宇宙に残すことを認めない。
「――先に行くだけですから」
《HiperDrive》
 視界いっぱいの蒼。それをそれと認識するより先に、その兵士の意識は永遠に暗黒へと撒き散らされた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ノーザンライト』

POW   :    ギガボルトキャノン
単純で重い【超高出力レーザーキャノン】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ダブルレーザーキャノン
レベル分の1秒で【2丁のレーザーキャノン】を発射できる。
WIZ   :    超過駆動NL
【超過駆動モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はウォーヘッド・ラムダです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「海兵隊だ! 司令部沈黙に伴い現場指揮権は我々が掌握する!」
「ヒヨッコ共、ヘルメス方面まで後退しつつ戦線を立て直せ! 守る物さえ守りきりゃあいい! 残りは俺たちが受け持つ!!」
 帝国軍襲撃の報を受け急行した解放軍海兵隊の熟練兵士たちが戦線に加わったことで、混沌の戦況は急速に建て直されていった。
 未熟な兵と負傷した兵は後方に下げられ、抜けた穴を塞ぐように海兵と彼らが選抜した見込みのある兵で再編された部隊が塞ぎ、猟兵によって駆逐された残党の残党をたちまちに駆除してゆく。
「またお前さんらには助けられちまったぜ。悪いが俺ぁここでレースリタイアだ。部隊の指揮に専念するからな。お前らは最後まで悔いなく走りきれよ!」
 豪快に笑いながら戦場に取って返すアイアンズ。ベテラン兵士と指揮官が揃ったことで、後顧の憂い無く猟兵たちはレースに復帰できることだろう。
 平和の祭典はじきに取り戻される。帝国軍の乱入は混乱をもたらしこそしたものの、致命的な破局に至る前に処理されたのだから。
 残党に対してプロパガンダ的な大戦果を示されることもなく、とはいえテロリストを駆除する強い解放軍の姿を見せることも叶わなかった――結論として銀河の政情は、再びなにかが起こるまでは現状維持という結末を迎えるであろう。

 ――けれど。
「敵の第一波はユーバーレーベンの艦をジャックして現れた……」
 ルシアナが抱いた疑念。ユーバーレーベンサイエンス社が帝国に与するテロ支援企業なのかどうかはこの先の総司令部による調査がはっきりさせるだろう。
 それを考えるのは現場の、それも経験未熟な若い士官のするべきことではない。だが彼らがクロだったとして。あるいはシロで、彼らの言う通り帝国軍の不当な武力行使によって協力を強いられていたとして。
 いつから帝国の支配下にあった――?
「ポラリス、あの騎体はどっちの……」

 ルシアナの懸念は今まさに現実の物として選手を襲っていた。
「――!!」
『どうやら気づいていたか、電子生命体!』
 コースアウトから一直線に接近してきたかと思えば、デブリを蹴飛ばし強烈な無重力踵落としを放つネモを片腕で受け止め、弾き返して瞬く光の嵐を浴びせ撃ちその両の脚を吹き飛ばす白い騎影。
『フン、非武装のゴミで私に抵抗できるものかよ。そこでクズどもが全滅するのを指を加えて見ているがいい』
 受け止めたとはいえ殺しきれなかった衝撃が騎体各部からの火花となって散れば、それを煩わしそうに強制排除してそれは現れた。
『それにしてもカスどもが。死にかけの複製体を拾って最期に帝国の役に立つチャンスを与えてやったというのに』
 死したクローンライダーたちを嘲り、それは廃棄した装甲の内側に隠されていたレーザーキャノンを掴み取る。
『反乱軍のクズを皆殺しにする、こんな簡単な仕事すら出来ないから辺境部隊で燻ることになる。陛下のお役に立てぬどころか拾ってやった私の役にすら立たないとは恩知らずどもめ』
 心底疎ましそうに同志を貶すポラリス――あるいは帝国軍高機動重砲撃型ウォーマシン、ノーザンライトはゴールのある宙域に視線を向ける。
『だが……まぁいい。カスがカスらしく死ぬならば、クズどもがアレに食い付いている間に私は本来の作戦を果たすまでだ』
 参加者を一騎ずつ撃ち落とし、銀河最速を帝国の臣たる己が奪う。
 その姿が全銀河に中継され、反乱軍に与するクズが絶望したところでヘルメス艦隊を焼き払ってやろう。
 瞬光とそれを追う選手たちの放つ残光を追って、ポラリスだった頃の数倍の速度で飛翔するノーザンライト。
 後方から、全てを飲み込む極光が迫る。
ビードット・ワイワイ
アドリブアレンジ歓迎
レースを乱す無粋な輩よ。先見通せずして徒に兵を散らして散らすその采配
将の力量、戦わずして察せよう。つまらぬ手しか使えぬ輩よ
誰の役にも立てぬ将よ、栄光夢見て破滅せよ。ここが汝の破滅なり

更に速くもっと速く己を身すらも顧みず
胴体をふわりモフりとした可愛らしい物に変え
走るタイヤからタイヤに乗ったゆるキャラへとジョブチェンジ
モフりふわりとしたこのボディ愛くるしさと破壊力
重量×速さ×愛くるしさの破壊力とインパクト
兼ね備えし行うは純粋なりし体当たり
一撃離脱のひき逃げ戦法
雑兵に構う暇はないが半身ぐらいは砕いておこう

終わればUCの発動時間を活かし更に加速
なるべくレースを盛り上げよう


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……テメェ。
聞こえたよ、その思念(こえ)が。
別にこいつらを庇うつもりもないさ。
ただな、今のは見過ごせねぇ。
アタシらスターライダーを虚仮にするその性根、
骸の海で叩き直されな!

兵站の事情か、デッドウェイトを嫌ったかは分からないけどねぇ。
実体弾を使わないんなら、アタシにゃいいカモだよ!

スロットルを全開、全力で『ダッシュ』しながら、
片手を前に突き出すよ。
そこに発生させた【災い拒む掌】が、
周囲に乱射されたレーザーを悉く吸い込むからね!

そうして吸収したレーザーで逆に『弾幕』を張り、
『制圧射撃』の『援護射撃』さ。
速さに笑って殉じれない以上、
アンタはどうやっても勝てないんだよ!


トルメンタ・アンゲルス
ハ、やっと馬脚を露しましたか。
なるほど、速さに自信があるようで!

――が、
他者を蹴落として自分が最速になる?
愚の骨頂!
だから貴様は負けたんだ!
『FullThrottle――』

リミッター解除、HyperDrive始動!
超光速戦闘モードへ!
加減は無しだ、全力で潰す!

全てを置き去りにするダッシュ・早業で征きます!
第六感で敵機の動きを見切り、物理法則を無視した動きで、残像すら捉えさせません!

貴様の速さの程度は覚えた!
解撃のブリッツヴィントで、反撃も許さず幾重にも蹴り穿つ!

貴様には足りないものが多い!
情熱思想理念頭脳信念愚直さ勤勉さ!
そして何よりもォ!
速さが足りない!

そのまま過去に置き去りにされていろ!!


月代・十六夜
【連携・アドリブ自由】
通信聞く限り最後尾走ってたら本命来てるか。
それじゃまぁ出力リミッター切って、自動操縦の目標を敵に設定して。
行けぃ借り物アームドフォート!流石にこの状況で損害賠償はないといいな!
自分はさっきと同じように離脱してデブリと突っ込んでいく機体を囮に【韋駄天足】の【ジャンプ】で接近。
他の機体と戦ってる最中に人型大の慣性飛行を気にしている暇は無いだろ。
あとは相手の攻撃モーションを【五感】で【見切っ】て【韋駄天蹴】で周辺のデブリやらを蹴っ飛ばしていやがらせの【時間稼ぎ】に徹するぜ。
なんなら撃墜されずに避けられてたら自分の機体も蹴っ飛ばすか。燃料もまだまあるしいい花火になるじゃろ。


キリエ・ニール
アドリブ絡み歓迎
第六感であいつがクローンライダーに向けていた意志を感じ取り
Uターン、ストームダイバーを自動運転に変え離脱
全身全霊でレースに挑んでいたけど、予定変更
恩知らず?
だったらあんたは…恥知らずだ!!
コード発動、魔眼【メビウスゲイザー】による予測をフル稼働させレーザーの軌道、ノーザンライトの視線、こちらへの殺意、全てを見切る
エゴ・フォースエフェクトの光を全身に纏い念動力で自身を押して奴へ迫る
推して避けて曲がって推して…最後はトリップホールによるワームホールで奴の目の前へ出現
これが僕のダッシュ&ジャンプだ!

フォースエフェクトの光を束ねて刃に
鎧無視攻撃…御大層なそのアーマーを、串刺しだ!!


アリシア・マクリントック
言うだけはありますね……被弾面積などを考慮すれば先程の宇宙バイクよりは与し易いはずなのに。
「マリアは離脱してください。アレを使います!」
とても追いつけないならば……いや、追いつけないからこそ!いつもどおり、ただまっすぐに目標へ。
バランサーを除いてティターニアへのエネルギー供給を全カット。余剰分をプラウドウルフへ。分離時にあのプログラムが起動するよう設定……
あとはタイミング次第。これは偉大な勇者の技ですが、私にもできるはず!こちらと目標の進行方向が一致する一瞬を狙って……一番無駄な重量である『ティターニア本体』を分離。セットされたプログラムによりプラウドウルフは限界を超えてブースター全開!突撃!


アイ・リスパー
「きゃああっ、この攻撃はどこからっ!?」

身体に纏ったティターニアにレーザーキャノンが着弾。
機体がアラートを上げます。

「まだ帝国の機体が残っていましたか……」

ですが、今の攻撃で機体が損傷して……
このままでは……

「仕方ありません、実戦使用は初めてですが、出し惜しみは無しです!
来てください、シェイクスピア!」

電脳空間から『機動戦艦シェイクスピア』を実体化!
格納庫からオベイロンを出撃させてティターニアと合体。
さらにシェイクスピアとも電脳合体し、巨大人型ロボット【電脳機神】に変形です!

「敵味方の区別なしで本気で行きます!
全武装、完全開放!」

シェイクスピアに搭載した全武装を通常の3倍の勢いで放ちます!




 ――極光迫る。
 最悪のタイミングであった。旗艦を早期に撃沈さる解放軍にとって、事実上の司令部にして主力本隊となった海兵大隊が帝国軍残党部隊の処理に戦力を集中したその直後、安全であるはずの/敵部隊は掃討されたはずのコースに現れた敵機の反応。
 それはレース参加の民間機の識別信号と、それと偽装するための追加パーツを煩わしそうに脱ぎ捨て、その悪意に気付き阻止を試みた電脳生命の駆るアームドフォートを一蹴してレース参加者に牙を剥く。
 最初にそれに追いつかれたのは、重装備の砲戦ユニットを装備したアイのティターニアであった。
 妖精女王の名を冠する騎体は数あれど、その中で最も重く戦闘に特化した彼女を狙い、ノーザンライトは次々と両の腕に構えたレーザーキャノンを速射する。
『……物資不足などと言い訳を並べ立てるばかりの無能どもめ。対艦荷電粒子ランチャーさえ使用できていればこうも煩わしい真似をせずに済んだというのに』
 忌々しげに吐き捨てるノーザンライトの脳裏に浮かぶのは、デブリ帯の何処かに投げ捨ててきた大型のビームキャノンの姿。
 ユーバーレーベンサイエンスに潜伏した同志たちが間に合せの資材ででっち上げたそれはただの一射で解放軍警備艦隊旗艦を撃沈する大戦果を挙げたが、同時にただの一射で機関部が溶解して使い物にならなくなってしまった。
 ノーザンライトは同志の苦心の末の戦果を褒めることをしない。彼にとって帝国の兵器が解放軍の兵器を鎧袖一触に屠ることは当然であり、むしろ一撃しか放てぬことは致命的な欠陥、そんな物を実戦投入した同志技術士官たちはとんでもない怠慢に甘んじるクズである。
 クズがまともに仕事をしていたならば、コースに沿って荷電粒子ビームを薙ぎ払うだけで後の手間は片付いていた。そうならなかった事実に白銀のエースは苛立ち、そのために得た鬱憤を引金に乗せてティターニアを嬲るようにレーザーで執拗に炙る。
「きゃああっ! この攻撃、どこから……っ!」
 それを受けて溜まったものではないのがティターニアを操るアイだ。
 VLSのハッチがレーザーで焼かれ融解して癒着し、ミサイルが使用不能になる。誘爆しなかっただけまだいい――などと安心する間もなく、次々に飛来した破壊力を持つ光が砲を、推進器を焼いてその権能を封じてゆく。
 みるみるうちに真っ赤に染まってゆく騎体ステータスに、アイは冷や汗を流さずには居られなかった。
「と、とにかく迎撃を……まだ帝国の機体が残っていたなんて……」
 耳朶を痛いほどに打つアラートを無視してスラスター噴射で反転迎撃の構えを取ったアイ。だがその噴射光をすら狙い撃つようにレーザーが降り注ぎ、小規模な誘爆とそれによる衝撃がアイを襲う。
「くっ、今の攻撃で機体が損傷して……このままではっ…………!」
 満足に姿勢制御すら出来ない窮地。対してアウトレンジから狙撃を浴びせ撃つ敵機は攻撃を止める様子もなく、このままでは嬲り殺しにされる他に道はない。
 否、一つだけ、たった一つだけの冴えたやり方が無いわけではない。
 しかしそれをぶっつけ本番で、しかも超長距離から執拗に攻撃することで戦闘力を削ぎ落とすなどと明らかに戦争慣れした戦い方をする敵を前にして完遂できるかは勝率の低い賭けになるだろう。
「やらずにこのまま落とされるか、やって万に一つの勝機に賭けるか……わたしだったら、後者を選びますっ!」
 諦めないからこそ勝ってきた。それが猟兵というもの。だから――
「追ってこないと思ったら……アイさん、無事ですか?」
「……アリシアさん!!」
 アイが此処で粘ることで、引き返して来た猟兵たちが間に合った。
「アイツは嫌な感じがする。許しちゃおけない奴だって僕の予感がそう言ってるんだ」
「ああ。アンタにも聞こえたかい、アイツの思念が。見過ごせねぇよな、アタシらスターライダーを虚仮にするその性根――」
「「叩き直してやる!!」」
 怒りにサイキックエナジーを燃え上がらせるキリエと多喜が先陣を切ってレーザーの照射源へと舵を取る。
『来るかよカスども! 劣等種族は力の差という概念を知らんようだな!』
 対するノーザンライトは機械だからこその冷酷なまでの正確さで銃口を二騎にひたりと向けたまま、必中必殺のレーザーを照射する。
 並のスターライダーでは、いや並以上の腕前であっても回避困難、まさに光速にしてその領域にて戦う在りし日の鎧装騎兵にのみ戦闘という土俵に立つことを許される圧倒的な戦闘性能。
 軍事超大国である銀河帝国が生み出した一つの結論を前に、二人は決して退かない。
「アタシだってアイツらを庇うつもりも無いさ。やっちゃいけないことをやっちまったテロリストに味方はしてやれねぇ。でもさ――」
「――あんたと同じ正義を仰いだ仲間なんだろ! それを恩知らずだって? だったらあんたは……恥知らずだッ!!」
 一歩先を往くキリエの魔眼が金色に輝き、ほんの数秒先の未来を見通した。
 ノーザンライトの殺意が滑らせた銃口、照準を先んじて見抜いたキリエの回避行動は、コンマ数秒の世界でそれを成立させる。
 掠めて流れる光条がチリチリと肌を焼くような感覚。だが怯めばそれは肌どころか脳髄心臓に至るまでを焼き尽くすだろう。止まるな、目を見開いて進め。
「そうだ、後ろの事ァ気にしないでいい。アタシはアタシで勝手にやるからね!」
 対してキリエの如き人智の外にある回避行動を実現できぬ多喜は、それでありながら勝機を見ていた。
 敵は実体弾を使用していない。弾薬が有限である実弾兵装を使用できぬのか、あるいは敢えてそれを使わないのか。多喜がスターライダーであることに強い誇りを感じるように、ノーザンライトにもレーザー特化機体という誇りがあるのかもしれない。だがその意図が何処にあるにせよ、光学兵器は多喜にとっては御しやすい部類にある。
 ハンドルを握る手を離し、掌を前に突き出して。五指で握りしめるように空を掴めば、そこに次元の穴が空く。
 多喜の持つ異能、災いを拒むそれが光を捻じ曲げブラックホールのごとくレーザーを吸い寄せていった。
「アンタはレースに勝って何かを成し遂げたいんだろうけどさ――」
 キリエを狙い外れたもの。多喜を狙い飛び込んだもの。レーザーの渦が次元の彼方に消えてゆき、そして還ってくる。
「速さに笑って殉じれないヤツが、どうやってアタシ達に勝つっていうのさ!」
 光が爆ぜた。ノーザンライトの放った幾条もの光線が特異点から飛び出すなり一挙に光の檻を形成し、極星を天に固定する。
『動きを封じた程度で勝てるつもりか、タンパク質の塊は流石想像力だけは立派だな!!』
 だがそれは逆に、彼我の道筋を一つに絞るということ。
 その道を逆走するキリエにも、もはや逃げる隙間はない。
『たまたま知性を持った炭素のカス如きが私を定義し断罪しようなど烏滸がましいんだよッ!!』
 レーザーがいよいよキリエに迫る。
 ――いいや。発射と同時、即ち着弾の刹那、キリエもまた次元の彼方へその身を滑り込ませた。
 キリエが居た空間を貫き、多喜の特異点に吸い込まれてゆくレーザー。
「想像力だけは立派だって? 相手のことを想えない、想像力の欠片もないアンタよりよっぽどマシだね!」
 直後――ノーザンライトの眼前、事象の彼方より帰還したキリエの振るうフォースの刃がノーザンライトの左肩装甲に深く突き刺さる。
『――ッ、カス風情が舐めるな!!』
 ゼロレンジ。ノーザンライトにダメージを与えたキリエは、しかし光速のレーザーにとって発射と命中が等しく同時となるその間合いまで踏み込んでしまった。
 輝く銃口が視界を埋め尽くす――
「行けぃ借り物アームドフォート!」
 その窮地を救ったのは、ノーザンライトの背後から猛烈な速度で衝突し爆散した一騎のアームドフォートだ。
 激突の衝撃で逸れた銃口は明後日の方向を照らし、投げ出されたキリエを多喜が受け止め離脱する。
『特攻だと!? 後先を考える頭すら無いのか、カスどもは!!』
「最後尾から追撃だって思ったか? 残念だったな、俺がドベだ!」
 怒りに震えながらその出処を辿ったノーザンライトの前に現れたのは、スラスターのすべてを――というか参加資格であるアームドフォートすら失い、デブリを蹴飛ばし慣性航行で肉薄する十六夜の足裏であった。
『カス如きが私の装甲に汚い靴跡をッ!!』
 蹴飛ばされ踏みつけられ、ノーザンライトのプライドを徹底的に傷つけるような十六夜の動き。
 デブリを蹴って飛び回る直線的な動きだが、時折飛来するデブリ――これも十六夜が蹴飛ばし押し流したものだ――がレーザーの射線を遮りうまく照準できぬノーザンライトはその思考回路に苛立ちをつのらせてゆく。
 そうだ、それでいい――十六夜は自身の攻撃が決定打に欠けることを理解している。キリエの攻撃ですら肩装甲を貫くに留まった。推進剤にゆとりのある自身のアームドフォートの自爆特攻に至っては装甲に焦げ跡を増やした程度に過ぎない。そんな防御性能を相手に、蹴り足でどこまで戦えるものかなんて自分が一番わかっている。
 だからこその挑発、だからこその時間稼ぎだ。そのためにできることはすべてやったし、使えるものは全て使った。一つ懸念があるならば、レンタルのアームドフォートが弁償にならないか――もし弁償しなければならないなら、幾らぐらいするのか――そのくらいだ。
『ええい! 煩わしい小蝿が――いいや、煩わしいだけだな。貴様には所詮なにも出来はしない!』
「げぇっ、気付きやがった……!」
 しかしノーザンライトは気づいてしまった。十六夜の攻撃力では己が装甲を貫くことはできぬと。
 ならば無視だ。徹底した無視に限る。そうして小虫が疲弊したところで仕留めればいい。
「戦闘中に敵から意識を逸らすとは。徒に兵を散らすその差配、将の力量戦わずして察せよう。その上この慢心、兵の力量もまた然り」
 ――ノーザンライトが十六夜を無視すると決め込んだそのタイミングを狙いすましたようにそれはやってきた。
「つまらぬ手しか使えぬ輩よ。誰の役にも立てぬ将よ。栄光夢見て破滅せよ」
 二輪の走行バイクが変形し、一輪のタイヤに戻る。その内側に収まる機甲の上体が徐々に赤い毛に覆われ、頭上になにかの葉っぱかヘタのようなものがちょこんと現れた。
 それは遠目にはサツマイモであった。本人の曰くゆるきゃら、雪男やトロールや巨大ひよこの系譜に連なる――それは妖怪と言うのではないか。本人は否定して憚らないが――何かであった。何かなど本人以外の誰も知らないし知る術もない。
「これなるは重量×速さ×愛くるしさの破壊力とインパクト。此処が汝の破滅なり」
 こんな訳のわからない毛玉がわけのわからないことを言ってくるのだ。たまたま知性を持った炭素のカスでなくても困惑ぐらい、する。
 ノーザンライトもまた、冷徹で異常な思考の持ち主ではあったが怪奇の領域までは至っていない、ある意味での常識に縛られた存在であったからには困惑を避けることは出来なかった。
 快音と共に毛玉の駆るタイヤが白銀の装甲に激突し左肩の関節部分に異様な負荷を与え、火花を散らしてその表面を削り落とし地金の銀を暴いて走り去ってゆく。
『ふざけるな……ふざけるなよ、劣等種ども!! 訳のわからん理屈で私を虚仮にしやがって――』
「ですが、お蔭で時間は十分に稼げました」
 十六夜と謎の毛玉――識別信号とその奇行からして多分ビードットだ――の乱入は十分な時間を猟兵達に齎した。
「機動戦艦シェイクスピア、機動戦車オベイロン、電脳合体です!」
 ――シーケンスはもはや阻止し得ぬ最終局面。戦車と合体したアイをさらに巨大な戦艦が追加ユニットとして覆い隠し、巨体の電脳機神が降臨する。
「あなたはまず私を仕留めるべきでした。それをさせなかった皆さんのおかげでもありますが――間に合ったようですね」
 破壊した以上の数の、大きさの、あらゆる兵装がノーザンライトを捉える。
「敵味方の区別なしで本気で行きます! 全武装完全開放! 撃てーっ!!」
 ミサイルが、粒子砲が、機関砲が、ありとあらゆる火器兵装の渦がノーザンライトを襲う。
 その隙間を縫うように飛び、直撃コースの砲弾はレーザーで焼却して致命傷を避けるのは帝国軍のエースの力量か。
 だが、その渦の中に一人、我が身を惜しまず正義を為す者が居たならば。
「マリアは離脱してください。アレを使います!」
 砲弾の雨を掻い潜る極星を追う銀狼。
 直線で速度が出ているわけでもないのに、ノーザンライトの機動性と速力は圧倒的だ。ここからアリシアの攻撃が加わったとて、それが敵を捉えることは至難であろう。
 けれど。それでもやらねばならない。銀河に戦乱の種を蒔かせないために。
 レースを心待ちにし、熱狂と歓喜に打ち震えていた観客たちの、ああいう顔をできる日々を二度と奪わせないために。
「ティターニアアーマーへのエネルギー供給はバランサー以外すべてカット、余剰出力はプラウドウルフへ。分離時に規定のプログラムを起動……」
 推力が増す。とても操りきれないじゃじゃ馬のような状態で、アイの怒涛の砲撃に飛び込むなど自殺行為。ティターニアアーマーの装甲がなければアリシアは一足早く宇宙の塵屑の仲間入りを果たしていたことだろう。
 だが、彼女は駆け抜けた。駆け抜けきって、ノーザンライトの背中を真っ直ぐ捉えたのだ。
「ティターニアアーマー強制分離! 銀河を駆ける狼の勇姿、お見せしましょう! 必殺! プラウドブースター!!」
『二度同じ手が通用するなど――』
 ティターニアアーマーとパイロットというデッドウェイトを排し、余剰なエネルギーを十分に蓄えたプラウドウルフが猛然と加速してノーザンライトに激突する。
 十六夜の一撃でわかっていた攻撃だが、アームドフォートと小型とはいえ宇宙艇では質量が違う。この至近距離では撃墜至難、回避もまたアイの弾幕によって至難。
 そして白銀の極星は爆炎に飲み込まれる――いいや、しかし星は墜ちない。
 炎を尾のように靡かせて、左肩に火花を散らして、焦げ付いた黒銀はしかし其処に在る。
『カスどもがおとなしく撃ち落とされていれば良いものを……ッ! まあいい、ゴールラインのその先で貴様らを殺す! 全銀河の蒙昧なゴミどもが観ているその前でな!!』
 背を向け、戦闘に付き合って居られぬと先を目指す銀の星。それをインターセプトするように、蒼の光が最先頭から舞い戻る。
「ハ! やっと馬脚を露わしましたか!」
『もう遅い! 解放軍は役にも立たん無能共だと証明される! 猟兵、貴様らの死によってだ!』
 白を迎え撃つ蒼。蒼を迎え撃つ白の光。
 光の速さで迫りくるレーザーを、しかし蒼は速度によって"追い抜いた"。
「最速を目指す理由はまあどうでも良いんですけどね。――が、他者を蹴落として自分が最速になる? 愚の骨頂! だから貴様は負けたんだ!!」
《FullThrottle――HyperDrive!》
 たとえ始まりの理由が相容れなくとも、最速を目指すというただ一点に於いて自身と彼には理解の余地があった。
 彼がオブリビオンであっても、帝国に忠誠を誓う軍人であっても、競技に則り最速を目指し切磋琢磨した結果ならばどうあろうとも受け入れられた。
 そう、そのはずだった。だがそうはならなかった。彼は競技を、速さを裏切ったのだ。
『貴様の大好きな仲――』
 トルメンタは時すら置き去りにする極大の加速の中で、停止したノーザンライトの火花を散らす左肩に幾重もの蹴撃を叩き込む。
「貴様には足りないものが多い! 情熱思想理念頭脳信念愚直さ勤勉さ、そして何よりもォ――」
『――良しこよしの競技など所詮はカスどもの傷の舐め合いに過ぎ――!?』
 トルメンタにとって数十秒の後。ノーザンライトにとってはただの一瞬にも満たぬ時の狭間の終局。
 白銀極星の左腕が根本より砕け落ち、隻腕となったそれが蒼い光と擦れ違う。
「速さが足りない! そのまま過去に置き去りにされていろ!」
 トドメとばかりに背中を襲う蹴脚の衝撃は幾度もの被弾を受けたスラスターを遂に砕き、ノーザンライト弾き飛ばされてゆく。
 結果としてノーザンライトを加速させる一撃となったが、それでいい。コースの先にはまだ猟兵達がいる。彼らが悪意を通すことなどあり得ない。
「俺たちもレースに復帰しましょう。あんなヤツのためにこの戦いを不完全燃焼では終われない!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャック・スペード
――随分と遅れて仕舞ったが
どうにか再起動は間に合ったらしいな

ライバルを蹴落とすなんて汚い真似
みすみす見逃せはしないな
俺も勝負を棄てた心算はない
全力で抗わせて貰おうか

機翼を展開したまま宙を駆ける
ノーザンライトに追い付けたら
粒子を振り撒いて気を惹いたり
リボルバーからマヒの弾丸を放ち、足止めを試みたい

動きを一瞬でも止められたなら
涙淵を抜き放ち電気を纏った斬撃を贈ろう
随分と丈夫そうなので
鎧を砕くような勢いで打ち据えてやりたい所だな

反撃はジェットを活かして素早く回避
またはシールドを展開して防ぐとしよう
敵が変形してもスピードは緩めず行こうか
そうすれば、一般の参加者は狙われないだろう
損傷は激痛耐性で堪えよう


ギヨーム・エペー
口が悪いやつだったかー。そうかー、残念だ
誰に躾けられたんだ? 独学の線もあり得るけども

……燃やすにしても、装甲硬くなっているし火力も上がってるか。それなら、それを上回る火で焼き尽くすだけか。でも野生に帰ってるねー

なるほど、動いた物体に夢中になるのか。じゃあ動き回って釣ってみるかなー!! 釣っている間は逃げに徹する。おれの運転技術でどうにかなる弾幕だといいが!!
演算って行うの頭部だよな? 其処を狙って火を放つ。熱を帯びた脳みそとか冷却されちゃ困るからなー


アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
ヘルパーさん達、派遣センター本部にメールお願い。
災害派遣の申請と、この積極的自衛及び要救助者確保の為の戦闘権行使っていうのも。
負荷はマリアが抑えるから、全力でポラリスを追いかけて。


※リミッター解除による高排熱を念動力で抑制し超過駆動で敵の元へ。追い付き次第、小型マシンの連結状態を対災害対応型に移行(本当にカバリエっぽくなる)
周囲のデブリや残骸をUCで『海』へ変換、寄り集めた巨大な塊でポラリスを水中に閉じ込め、生み出されたくじらその他の突撃を叩き込み、更に深海クラスの高圧で押し潰す


宇宙空間や人工重力下しか知らないなら、水中戦闘なんてできないでしょ。
くじらさんの分まで、お仕置きするんだから……!




「ポラリス! 貴方はやはり――」
『やはりだろうが何だろうが、私の参加を許した貴様らの無能は覆りはしない! その無様を全銀河に晒して死ね!!』
 片腕を失ったノーザンライトの前に、解放軍の白いアームドフォートが立ち塞がる。
 白いアームドフォートが抱えた突撃銃の展開した弾幕を回避したポラリス/ノーザンライトは、お返しとばかりにレーザーキャノンの一撃を撃ち込んだ。
「くっ、実戦経験ではやっぱり帝国軍のほうが……!」
 白いアームドフォート、リベレーター/ルシアナは直撃をこそシールドで防ぐが、そこまでだった。
 防御のために盾を掲げた一瞬、それが視界を遮りノーザンライトを見失う。その一瞬でノーザンライトはリベレーターに肉薄し、スラスターを巧みに操り旋回しながらの蹴脚で盾を跳ね上げる。咄嗟銃を手放しフォースセイバーを抜くリベレーターだが、それより速くノーザンライトがレーザーを至近距離で解放軍騎に叩き込んだ。
「くぅぅぅっ!! やっぱり私では勝てない……経験が、実力が違いすぎる……ッ」
 トップガンなどと持て囃されても、実戦経験には乏しい若者だ。演習やシミュレーターでいくら鍛えても海千山千の古参兵を相手に立ち回れるほどの力を身につけるには時間があまりにも足りなかった。
『実力差を理解したか、カスの割には賢いようだな。だがだとしてもカスはカス、貴様の生きる余地はこの銀河にありはせん!』
 トドメの一撃を放たんとするノーザンライト。死を覚悟して固く目を閉じるルシアナ。
 だが待てども死の瞬間は訪れない。恐る恐るに少女が目を開けば、長柄の銛がレーザーキャノンの銃身を跳ね上げるようにしてリベレーターから逸していた。
「寡黙なやつだと思ってたけど、口が悪いやつだったかー。そうかー、残念だ。誰に躾けられたんだ?」
 あるいはポラリスとならばライバルたり得たかもしれない。寡黙なレーサーがしかし帝国の士官であり、そして他者への敬意などというものを持ち合わせない殺戮人形であったことはギヨームにとって残念であった。
 北極星あらため極光。ノーザンライトをもはや競い合う仲間だとは思えない。ギヨームは変わらぬ笑顔のまま、感情を悟らせぬままノーザンライトを定義し直した。
 そしてノーザンライトの殺意から少女を庇ったのはギヨームだけではない。
「ヘルパーさんたち、派遣センター本部にメールお願い」
 リベレーターを抱き留め、ノーザンライトの銃口から逃したのはまさに騎兵の如き勇姿。
「災害派遣の申請と、この積極的自衛及び要救助者確保の為の戦闘権行使っていうのも」
 幼い少女の意を汲んで、騎兵を構成する小さき機械の友たちは規則の軛を一つずつ丁寧に取り払い、そして少女の抱く後顧の憂いも心配無用と受け止めた。
 本当ならばリベレーターを、ルシアナを助けるための超過駆動は戦闘機動に等しい。その権利を申請し承認されたのがたった今なのだから、ルール違反である。
 けれどそれは無粋。人を救いたいという少女の純真な願い、目の前で人が害されようとしていることへの純粋な怒りに応えたことに恥じることも後ろめたいこともありはしない。
 リベレーターをそっとデブリの影に降ろし、ルシアナにそこで救援を待つよう言い含めて、すべての準備が整ったギャラクシーエクスヘルプはすっとノーザンライトに向き直る。
「ありがとう。負荷はマリアが抑えるから、全力でポラリスを止めて」
 承ったと、機械の友人が気炎を上げる。
「さあて、おれもやるかー。悪いけど先には行かせられないからなー」
 ギヨームとアヴァロマリア、二人の猟兵がノーザンライトの行く手を阻む。
『行かせない、だと? 私を止める、だと? 何様のつもりで言っているんだ、下等生物! ゴミが群れたところでゴミの山以外の何物でもありはしないとなぜ理解できない?』
 ノーザンライトは心底理解できぬと、さりとてこれらを相手にこれ以上自身の足を止められるのも不愉快千万であると――その理性の箍を解き放った。
 ――超過駆動はそも帝国軍の技術である。劣等の解放軍が如何にそれを真似たところで及びもしないということを示すのだ。
『やはりゴミはゴミとして生まれたこと自体が罪だな。せめて速やかに死んで償うが良い!』
 全身から極光の如き蒼白の光を漏れさせながら、ノーザンライトは人智を超えた機動で二人の猟兵を圧倒する。
 僅かにも動けばその機先を制してレーザーの熱が、あるいは分厚い金属の四肢が襲いかかる。
 アヴァロマリアとギヨームは全く身動きが取れないほどに、ノーザンライトの神速に釘付けにされてしまう。
「燃やして止めようにも装甲も硬くなってるし火力も上がってるか」
 高速で漂うデブリを一撃で焼却せしめる威力たるや、先程ルシアナのアームドフォートにダメージを与えたそれと同一の兵装であるか疑わしいほど。そうして破壊したデブリの破片に激突してもなお止まらぬ防御力は、あの極光――サイキックバリアに似た防護フィールドが機体を保護していることの証左に他ならない。
「それならそれを上回る火で焼き尽くすだけ、でも捉えきれるかが問題だねー」
「デブリが端から撃ち落とされてなかったらマリアに考えがあるのに……」
 アヴァロマリアの策はデブリの質量ありきのもの。それが撃ち落とされてしまっては手出しできぬ。
「仕方ないかー。おれ気づいたんだ、あいつは動く物体に夢中になるんだ」
 それはギヨームの観察眼が至った結論だ。
 ノーザンライトのあまりの高速機動と高火力に目を奪われるが、彼は必ずしも自身の進路の邪魔になるデブリだけを撃ち落としているわけではない。
 むしろ自身らが身を潜め立ち止まっている今、遮蔽ごと二人を焼き払うなど容易なことのはずなのにそれすらもせず自らの力を誇示するように漂流するデブリを撃ち落としているのは、それが動いているからではないだろうか。
 で、あるならば。デブリ以上に激しく動く物体があれば、アヴァロマリアの策を為すに必要な数のデブリが撃ち落とされず集まるまでの時間を稼ぐこともできるだろう。
「でも、そんなものどこにもないよぅ……」
「あるさー、おれに任せてみな」
 ギヨームは何でも無いことのように笑って、バイクに跨りデブリの影から飛び出した。
 自殺行為だと、きっと誰もがそう思うような捨て身の行い。
「おれの運転技術でどうにかできるといいが!!」
 いつもののんびりとした空気を流石に脱ぎ捨て、ギヨームはアクセルをベタ踏み一切の減速を許さず最大速度でデブリ帯に飛び込んだ。
『見つけたぞ下等! 逃げ切れるものかよタンパク質の血袋の身体で!』
 加速すればするだけ負担のかかるギヨームの生身に対し、ノーザンライトの機械の身体はどれほど加速しようと限界を迎えるその瞬間まで負荷など無視できてしまう。片腕を失ってもなお褪せない極光はまたたく間にギヨームに食い付き、その距離を縮めていく。
「よし、釣れたな。逃げに徹する!」
 どこまで逃げ切れるかは賭け。アヴァロマリアが策を成立させるか、自分が追いつかれて落とされるか。どちらが早いか、これは競争の延長にある戦いだ。
 後方から飛来する光条をひらりひらり間一髪で躱し、躱して、そして――
「マズったかもしれないなー」
 漂うデブリが不意に回避コースを塞いだ。ノーザンライトのように防御性能任せにデブリに突っ込み強行突破することもできない。
 万事休す――いいや、違う。
「随分と遅れてしまったが。どうにか再起動は間に合ったらしいな」
 残骸の中で目覚める金色の眼光。黒鉄の装甲を極光の反射で照らしながら、彼は再びコースに舞い戻りギヨームを狙う光をその機翼で受け止め防ぐ。
「ライバルを蹴落とすなんて汚い真似をみすみす見逃せはしないな」
 無事か、と背中で問う黒い機体――ジャック。
 おかげさまで、と笑うギヨーム。
 二人はそれ以上言葉を交わすこともなく共に反転、ノーザンライトに向かって飛翔する。
「お前の相手は」
「おれだ!」
 片や黒の機兵は粒子を靡かせて。片や陽色の騎兵は炎を揺らめかせて。
 二人は共にノーザンライトと何度も交錯しながら駆け抜ける。
 ジャックの放つ麻痺弾がノーザンライトの装甲を叩く。貫通は出来ない、即ち弾丸はノックして気を引く以上のことを出来ない。
 けれどそれだけできれば十分。
「演算を行うのって頭だよな? じゃあ――」
 超過駆動でヒートアップする思考ユニットは、ギリギリのラインで冷却と加熱のバランスを取っている。それは同じく超過駆動を有する騎体を操るアヴァロマリアからも聞いていたこと。ならばギヨームの狙うべきは思考ユニットの無力化。即ち頭部へのさらなる加熱――!
「熱を帯びた脳みそが冷めなくなれば困るだろう!」
 果たしてギヨームの起死回生の一手は有効であった。頭部を加熱されたノーザンライトはデブリ帯の真ん中で一瞬減速し、そしてそれはアヴァロマリアにとってこれ以上無い好機であった。
「ここなら! 海たる水に満ちよ――」
『なにをするかしらないが――ッ!?』
 アヴァロマリアの圧倒的なサイキックエナジーを感じ取り、熱に狂いかけながらも離脱を試みるノーザンライトを雷撃を纏う白縹の刃が貫き押し戻す。
「逃さん。お前は……!」
『バカが、きさまもまきこまれるだろうに! けっかんきはそこまでおろかか!』
 抵抗し暴れるノーザンライトの反撃を盾で受け止め、速度を緩めずアヴァロマリアのサイキックエナジーが渦巻くその中心まで共に突き進むジャック。
 これ以上他に注意を向けさせるわけにも、ここで取り逃がして他の参加者を襲わせるわけにもいかない。
 盾をレーザーが灼き溶かし、掠めた光が装甲を焦がす痛みを堪え、ジャックはその役割を貫き通した。
「――此処までくれば逃げられんだろう」
『心中するつもりか――』
 いいや、とジャックはノーザンライトを蹴飛ばした。
「俺は勝負を棄てた心算はない」
 ジャックとノーザンライトが離れたその瞬間、金属や石塊のデブリが融けた。どこまでも澄んだ生命の青が広がってゆく。
 それが何であるか、宇宙の民で知るものは多くない。かつての惑星時代を知る長寿のクリスタリアンや古参のウォーマシン、あるいは偶然それを模した施設やその記録を収めた船に生まれたものであれば、その光景を正しく呼称できたろう。
 それは海であった。数多生命の原初の泉。母にして偉大なる水の園。
「宇宙空間や人工重力下しか知らないあなたには水中戦闘なんてできないでしょ」
 急速にクールダウンしていく思考ユニットが秩序立った意識を取り戻していく中で、ノーザンライトは自らの動きを戒める巨大な水の球体に囚われていることに気づいた。
 スラスターは泡を吐くばかりで用を成さず、四肢を動かそうにもあまりに重たい水がその動きを許さない。
『巫山戯るな、たかが水ごときでこの私を……!』
「ううん、たかが水じゃない。どこまでも深い海の底で、骸の海まで沈めてあげる」
 四肢を戒める圧が強まっていく。押しつぶされそうな重圧に装甲が悲鳴を上げて軋み始める。
 全領域対応――あくまで惑星無き世界において――であるはずのノーザンライトは、初めて経験する深海の強烈な水圧に抗う術を知り得ない。
「あなたにやられたくじらさんとリンゼイさんのぶんまで、お仕置きするんだから……!」
 水圧に藻掻く極星を打つのは巨大な鯨の一撃。
 深海球から押し出されるように通常空間に復帰したノーザンライトの装甲はあちこちが潰れ、その防御性能は大きく損なわれている。
「皆も来たみたいだし、あとは任せてレースに戻ろうかー」
「異論はない。これ以上時間を掛けてはレースの決着が付いてしまう」
「――そうだった! クーポンがもらえなくなっちゃうよ。ヘルパーさん急いで!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジル・クリスティ
さっさと倒してレースに戻るよ!
まだまだレースの優勝だって諦めてないんだからね!

ここからは、火力も速度も全力全開!
こい!アームドベース・リベリオン!

アームドベースと合体して、今まで以上の超高速で弾丸のようにぶっ飛びつつ、バズーカを連射しながらノーザンライトに接近して、マイクロミサイルを全弾乱射
更にメガビームを叩きこんであげる
私の最大火力!小さいからって甘く見るなよーっ!

1回の交叉で倒しきれないなら、そのまま速度を落とさず急旋回ターン
更にメガビームをたたき込みながらのヒット&アウェイ

倒したら弾薬使って軽くなったアームドベースの推力を活かし、レースに復帰
そのまま全速で突っ走って1位を狙うんだからねっ


トリテレイア・ゼロナイン
あの機影は…
(●騎乗した機械馬で接近)

他を圧倒する実力とそれ故に敵も味方も見下すその気質…
お変わりないようですね、ノーザンライト

この祭典と選手にこれ以上の狼藉…
騎士として許しはしません

格納銃器での●乱れ撃ちスナイパーで射撃戦
センサーでの●情報収集で隕石やデブリ配置把握
それを●踏みつけ加速したり方向転換することで攻撃回避しつつ追い越し反転
デブリの陰からランス構え突撃●だまし討ち

レースよりも…私はジョストが得意でして!

真っ直ぐ来る標的…狙いは付けやすいでしょう
『突き出される穂先』を狙わざるを得ないことを除けば

発射を●見切り穂先にUC一点集中
極大レーザーを●盾受け●武器受け
反射レーザーを槍として攻撃




『カスどもが……! クソッ、数に頼まねば何も為せない下等生物どもが!』
 圧壊した装甲を脱ぎ捨て悪態を吐く白銀に、白い騎士が近寄ってゆく。
 憐れむようにそれを見る白騎士の視線に気付き、白銀はレーザーキャノンの銃口を突きつけた。
「他を圧倒する実力を持ちながら、それ故に敵も味方も見下すその気質……お変わりないようですね、ノーザンライト」
『ふん、他の私を知るのだろうが、生憎私は貴様など知らんぞ儀典機。大人しく総旗艦の飾りでもしていればいいものを!』
 猟兵ごときに良いように手傷を負わされた身を嗤いに来たかとノーザンライトは怒気も露わにトリテレイアを威嚇する。
「私のことはなんとでも仰っしゃればよろしいでしょう。ですが――」
 すっとトリテレイアは騎槍の鋒をノーザンライトに突き付けた。
「この祭典と選手へのこれ以上の狼藉、騎士として許しはしません」
『騎士? 騎士だと? 式典を飾ることしか出来ない人形風情がよくもまあ立派になったものだなあ!』
 トリテレイアが手綱を引いて機械馬を操り、その直後に極大出力のレーザー照射があたりを薙ぎ払う。
「だからこそ、この祭典を貴方の悪意で壊させるわけにはいかないのです!」
『吼えろよ、本当の最前線を知らぬ機体で!』
 連射が効かぬ最大出力とはいえ、それは掠めただけでも致命傷に至りかねない超高出力。難なく回避しているように見えるトリテレイアであっても、一歩間違えば光の渦に巻き込まれ誘爆してもおかしくないほどの危険な砲撃を躱しながら、その身に隠した銃器で中距離戦を挑む白騎士を極星は嗤う。
『それが騎士の戦い方だと? そうか、私が前線で戦っている間に騎士というものは言葉の意味が変わったようだな! へっぴり腰で豆鉄砲をばらまくのが今の時代の騎士か、覚えておくよ!』
 トリテレイアの応射を損傷した機体で回避しながら、射程の有利を活かし悠々と追撃しレーザー照射で追い詰めるノーザンライト。
 トリテレイア側に決め手となる攻撃は無く、ノーザンライトの一撃がトリテレイアを捉えればその時点で終局。これはそういう戦いにもならない狩りだと、傍目にはそうも見えた。事実としてノーザンライトはそのつもりで状況を認識し、白騎士を甚振るために駆り立てていたのだ。
 けれど、トリテレイアはいい意味でノーザンライトの知る騎士ではなく、そしてノーザンライトによって貶められた騎士ほど臆病な存在ではなかった。
 それと同時に、ノーザンライトがその視野に捉えきれなかった小さな存在が虎視眈々と機を伺っていた。
「あいつ、ポラリス……ううん、ノーザンライトか。よし、さっさと倒してレースに戻るよ! まだまだ優勝だって諦めてないんだからね!」
 大柄なノーザンライトのおよそ1/10。小さな体躯に闘志と勇気を携えたジルは、しかし手持ちの兵装ではノーザンライトに有効打を与え得ぬことを見過ごすほど迂闊ではない。
「ここからは火力も速度も全力全開! 来い! アームドベース・リベリオン!」
 反逆者の名を冠する追加武装システムが、小柄なジルに不足する相対的な速力と火力を補完してゆく。
 それまででもサイズの割には十分以上に速かったジルを更なる高みに導くそのスラスター複合武装コンテナは、まず速度で以て主の意向を叶えた。
「このスピードなら追いつける、追い越せる! いくよ、全弾一斉射!」
 コンテナハッチが弾け飛び、内側から多弾頭ミサイル――歩兵の携行ミサイルより一回り小型だ――が飛び出した。
 それはノーザンライトの全くの死角からその進路に飛び出し、内包した無数の子弾をその眼前にぶちまけた。
『なんだと!? クソが、何処からの攻撃だ!!』
 戸惑う極星を次に襲ったのは、連続爆発した子弾よりやや強力な小型榴弾の爆発。
 ジルがコンテナから引き抜いた無反動砲ロケット砲が放った弾頭はノーザンライトの横っ面を強かにぶん殴った。と同時、ノーザンライトの青白の眼光がついにジルを捉える。
『貴様か! カトンボ風情がァ!!』
 構えられたレーザーキャノンは既に臨界の光を蓄えて、しかしジルは回避行動を選ばない。ジルの体躯では今から回避したとてレーザーの効果範囲から逃げることは至難を極めるのだから、生き残る道は正面にのみあり。
 即ち超高速でノーザンライトとすれ違い、後方安全圏に逃れる他に選ぶ道はない。
「小さいからって甘く見るなよーっ! 私の最大火力、メガビームを叩き込んであげる!!」
『見た目通り脳も小さいようだな! メガビームだと? ギガがメガの何倍かも知らんのか!!』
 ノーザンライトの構えるはギガボルトキャノン。確かに出力比はメガとギガの差ほども在るだろう。
 だけれど、だれがこの一撃で決めると言った。
「ヒット・アンド・アウェイ! 一発で仕留めきれなくったって良いんだよ!」
 ジルの放ったビームがノーザンライトの装甲に焼け落ちた傷跡を刻みつけ、そのまま間一髪でギガボルトキャノンの銃口を飛び越えレーザーから逃れ出る。
 時間にしてほんの僅かな交錯。だが、それで十二分の戦果は得られた。ジルは振り返りそれを確認すると、そのままレースに戻っていく。
 あくまで狙いは競技の優勝。邪魔者排除はついでに過ぎないと言わんばかりの一撃離脱。
 彼女が齎した一瞬の陽動は、トリテレイアにとって千金に値する数秒を与えてくれた。
 あの攻防の間にトリテレイアはノーザンライトの視界を脱し、デブリに隠れて方向転換。ノーザンライトの視線が離脱してゆくジルを追ってゆくならば、ジルと同じ突入コースでその意識の外から強襲をかける。
 さりとてもノーザンライトとてそれに気づかぬ迂闊は犯さない。すぐさまトリテレイアを捕捉、振り返りざまに銃口を突き付けチャージを開始。
『結局最後の最後にやることがそれか、騎士人形!』
「ええ。レースよりも……私はジョストが得意でして!」
 これは背を追うドッグファイトにあらず。騎士同士が正々堂々槍を突き合わせる馬上試合の如く、真っ向正面から騎槍を構えて突撃するトリテレイアをノーザンライトは逃さない。
「まっすぐ来る標的ならばさぞ狙いは付けやすいことでしょう!」
『イカれ鉄クズの自殺行為に付き合ってやる義理は無いんだがな!』
 銃口が輝き、如何なるものも焼き滅ぼす帝国の光がトリテレイアの掲げた槍を正面から飲み込んだ。
 ――いいや。それは槍の鋒に切り裂かれ、その表面を渦巻くように覆い、そしてトリテレイアの槍をレーザーランスへと変質させる。
 騎士を焼くはずの光が騎士の刃となって、照射されればされるほどその威力を増して、ノーザンライトへ迫る。
「貴方の狼藉はここで終わりです!」
『巫山戯るなよ、巫山戯るなよ鉄クズが! 貴様如きが私の――』
 閃光の槍が傍若無人なる極光の右足を貫き、焼き切り、削ぎ落とす。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
皆の未来を守るぜ
過去の亡霊を海へ還してやろう

戦闘
味方を庇う
特に非武装参加者を優先

レーザーは獄炎のシールドで受け
炎で空間を歪め軌道も逸らす

迦楼羅を炎の翼として顕現
獄炎ブーストと相乗し瞬間速度や機動力up
炎の残像描き
獄炎接続から熱線を連射しながら突撃

地形破壊のデブリ?は
獄炎で焼却破壊

敵は歴戦の兵士で高機動で
空間戦闘の専門家だ
ちょいと歩が悪いかもな
けど…

獄炎が
デブリや熱線から空間そのものへ延焼
気付いた時には炎の渦に囲まれてるぜ?

で獄炎纏う焔摩天で一閃

ノーザン
いくら強くても
兵士一人じゃ帝国再興なんて無理に決まってるだろ
そんな事も判らない位絶望に呑まれたか
可哀そうに

事後
鎮魂曲を歌いつつ
レースへ復帰


ミレア・ソリティス
コース上に敵残存戦力を確認……交戦、開始します

引き続き【コード・テンペスト】の戦闘機形態で後方より追走、
下部武装を対大型目標・要塞砲「ノヴァ・バスター」へと換装し、射程に捉え後「闇・重力属性」の鎧無視攻撃・砲撃・範囲攻撃…「ブラックホール弾」による砲撃を行い、同時に発生させた重力場での捕縛及び移動阻害を実行します

同時に攻撃端末で敵の推進機構や所持火器への部位破壊を狙い、
敵攻撃へは射線を見切り、残像と認識妨害、機体を覆うオーラ防御で対応

……本命は時間稼ぎと敵戦力削減です
私に時間を取られればその分「レースでの勝利」が、
戦力を削られればその分「戦闘での勝利」が遠のきますから

※アドリブ連携他歓迎です




『クズどもが! 惰弱で愚昧な原子生物の分際でよくも邪魔をしてくれた!』
 殺す。必ずや殺す。帝国に逆らうものへの見せしめとしてだけではなく、自身をコケにしてくれた礼を必ずや叩き込む。
 怒りに狂うノーザンライトは、千切れかけた右脚を付け根から自切するなり、切り離されたそれの爆発に紛れてサーキットを突き進む、
 さながらその姿は満身創痍で敵の罠を突破してのけた伝説の鎧装騎兵の如く、しかし彼が運ぶのは大勢を救うための情報などでは決してなく、むしろ数多を殺すための殺意と憎悪であった。
 伝説の再現は彼によって為されるべきではない。止めねばならない。
 けれど、それを為すことのできる者は多くない。
 解放軍は既にノーザンライト阻止を図るにはあまりにも離れすぎている。
 猟兵たちはその何れの戦いにおいても極星の輝きを圧倒してみせたが、相応の疲弊を強いられている。
 重傷を負わされながらも執念を頼みに危地を潜り抜けたノーザンライトを止め得る者が在るとすれば、それはやはり猟兵であろう。
「目標を捕捉、彼我相対距離及び射線上の障害物を観測――」
 戦闘機めいた形態に変形したまま後方から急接近したミレアが、その機体に懸架した大型対要塞砲ノヴァ・バスターの照準を先往くノーザンライトにひたりと添える。
 ノーザンライトとの距離はぴったり一定、彼我の速度は全く同一。相対的に停止して見える中破したウォーマシンの背中に砲口を向けた彼女の翼に手を掛け、その速力を借り受けてウタもまた戦場にたどり着く。
 ウタ一人であればノーザンライトには追いつけなかっただろう。あるいは追いついたとして、加速のために疲弊した彼にノーザンライトと戦う余力は残っていただろうか。
 ミレアも同じく、重砲戦装備の彼女単独ではノーザンライトに必殺の砲撃を打ち込むことは至難であったろう。
 何しろ互いに超高速での機動戦となるのだ。連射の効かないノヴァ・バスターでは回避されてしまえばそこで終わり、そうさせないためにも敵を射線上に釘付けにしてくれる仲間の援護が必要だ。
 二人の利が一致したことで、ミレアは脚を、ウタは手を、互いの不足に貸し出すことにした。
 ミレアの持つ強大な推力がウタを共に戦場へと押し上げ、ウタはミレアをその一撃の発射まで守り、ノーザンライトを逃さない。
「俺は皆の未来を守るぜ」
 ノーザンライトが皆殺しを是と言うならば、真っ向から否をぶつけてやる。過去の亡霊に生者の未来を害させるわけには行かない。
「そのために俺はあんたを骸の海に還す!」
『吼えていろ、一人で翔ぶことすらできん地虫風情が!』
 ノーザンライトの背を追うドッグファイトから、敵方が反転迎撃の構えを取って正面からのヘッドオン。その威力故にチャージに時間がかかるミレアより早く、二人を屠るだけの威力さえあればいいノーザンライトの放った閃光が迫る。
「回避機動間に合いません。ウタ様」
「ああ、任せろ!」
 獄炎の盾が二人の前に広がり、星間物質を燃やして生じたガスの膜がレーザーを拡散させて防ぎ切る。
『ちぃッ、カスの小細工で一撃防いだからと!』
 周辺の星間物質を消費して防ぎきったと言うならば、燃えて防御膜を生じさせる物質がなくなるまで手数で押し切ればいい。
 いずれ防御は追いつかなくなり、余計な重石を乗せ機動力を欠いたミレア諸共撃ち落とす。ノーザンライトの判断は誤りではないだろう。
 だが、追い立てる戦いでなくなった時点でウタにはその速度をミレアに依存する理由が無くなっていたことを除けば。
「迦楼羅ッ!」
 ミレアの背から振り落とされるように離れたウタの背から、巨大な炎の翼が噴き出した。
 速度だけならば機械仕掛けに及ばないが、それを補って余りある柔軟な機動がノーザンライトの放つレーザーを尽く紙一重ですり抜ける。
 揺らめく炎が残像をすらアイセンサーに焼き付けるウタの機動に、ノーザンライトはわずかに動揺した。もっと速い者を相手に戦ってきたはずの己が捕捉出来ないなど、
『あり得るものか! この私が、帝国宇宙軍の精兵たるこの私がカス一匹を捉えきれないなんてことがッ!!』
「――確かにあんたは歴戦の兵士で、速度も機動性も俺より数段も上で、その上空間戦闘の専門家だ」
 普通にぶつかっちゃちょっと分が悪いなんてものじゃない。
 でも、あんたは幾ら強くても一人だ。同志になれたかもしれない部下をクズと見切って使い捨てて。
「本当に大事にするべきものが何か、目指すべきものが何かすらわからない位絶望に呑まれたか、可哀想に……」
『黙れッ! 黙れよ炭素生物! 私を憐れむだと!?』
 激怒したノーザンライトの放つ閃光がウタを掠め、そのアームドフォートの装甲を水銀のように溶かし飛び散らせる。
 だがもう遅い。レーザーの射線がまっすぐウタを捉えきれたように、ウタも炎の渦で一本の射線を描いている。
 渦の中心を駆け抜け、ノーザンライトの胸部装甲に巨大な刃で一文字を刻めば、直後――
「ウタ様の援護で十分な時間を稼げました」
 炎の渦を貫いて、一機の宇宙戦闘機がノーザンライトの眼前に躍り出る。
「敵機をこれで撃墜できる可能性はこれでもまだ高いとは言えません。ですが」
 この一撃で、少なくともノーザンライトを勝利から蹴落とすことはできる。
 ここで勝てずとも、勝たせぬことはミレアにもできるのだ。
「ノヴァ・バスター、弾頭縮退」
『貴様……ッ、その兵器は』
 それが放つ異様な重力場を感知して、ノーザンライトはわずかに驚愕しそして嗤った。
『く、くっ……! ははは、貴様らもやはりクズに変わりないようだな! 重力兵器大いに結構、そんなものを持ち出して、もう一度あの戦争の再演をしたいのだろう!?』
 ならば存分にやってみせろ。惑星無き今、次は何を滅ぼしてくれるのか。
 ノーザンライトの哄笑を受け流し、ミレアはトリガーに指を掛ける。
「撃ちます」
 瞬間、極星を中心に光が消えた。文字通り、消滅したのだ。
 超々小型の恒星とでも言うべき弾頭を縮退させ、人為的に発生させたブラックホールが、光をも逃さぬ超重力で極星を捕らえ押し潰す。
 辺りを漂う石塊や残骸をも巻き込み、塵へと帰す異常重力の渦に抗うべく全力で駆けるノーザンライト。その身体から、重力に惹かれ多くの部品が引き剥がされ飲み込まれてゆく。
 極星が事象の地平から抜け出すことが出来たとして、その時にはもはや決起した帝国残党に勝利の目はありはすまい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

チトセ・シロガネ
デッドヒートを繰り広げるゴール前、油断は禁物ネ。

最後のコーナーでノーザンライトの横を並走。
そんなスピードじゃ銀河最速は語れないネ!
早業でかく乱しつつ乱れ撃ちで軽く挑発して相手の超過駆動を引き出すヨ。

この急なカーブで飛び交うレーザー!
ボクのコースアウトを狙うのは流石帝国のツワモノネ。
でも、忘れてないかい? ボクには急カーブもものともしないマニューバが存在していることを!

コースアウトギリギリでUC【神威乃型】を発動。
念動力で作った磁力の力場を蹴り上げ、プラズマレーザーの乱れ撃ちを交えつつ懐に流星の如く飛び込んでプラズマの刃(属性攻撃)でバッサリスラッシュするネ!


ダビング・レコーズ
機体照合完了
ノーザンライトを確認
彼我共に類似した戦術思想で設計されたウォーマシンですか
要求性能を更に鋭角化させ対応します

オーバードライブギア起動
更にリザーブエネルギーを全開放(真の姿化)し高速近接戦闘を開始
目標の銃身の向きから攻撃軌道を予測
回避運動は前・横・前と速度を落とさず連続で行います
距離を離されるならばソリッドステート形態で追撃
目標の移動先へセントルイスを速射し回避行動を抑制
突進可能な状況が成立した瞬間最大加速しEMフィールドを伴った状態でシールドチャージ
双方共に射撃兵装での対処が困難な相対距離に持ち込みルナティクスとスヴェルによる連続攻撃

極光は此処で潰える
闇より深い澱みへ沈め




 ――決着は付いた。
 付いたはずだった。
『…………まだだ。まだ私は終わっていないぞ。負けてなど……!』      それはノーザンライトにただひとつ残された執着。銀河に冠たる偉大な帝国の将ならば、その栄光を理解し得ない愚かしい下等民族に敗れるなどあってはならぬ。
 立ち塞がるもの尽くを粉砕し、圧倒し、絶望させ教化してやることこそが優生種たる銀河帝国ウォーマシンの存在意義。
 ならば闘争においても競争においても、それが劣等種に勝利することは当然の事実であるのだ。
『私はそれを証明する。全銀河に散らばった帝国艦隊に、我らが強さを思い出させる為に――』
 光をも逃さぬ重力特異点を切り裂いて、満身創痍の白銀極星が暗黒の宇宙を貫いた。
 左腕と右足を失い、優美ですらあった装甲は見るも無残な有様で。それでもそれはギラギラと殺意にアイセンサーを輝かせ、漂うアームドフォートの残骸――旧大戦期の帝国軍のそれだ――を掴み取ると、まるでフライドチキンから骨を毟り取るような乱雑な手付きでそれを解体して失った四肢の代わりに接続する。
 不格好な姿だ。薄汚れた灰色の義肢は、スラスターこそあれど推進剤など一滴も残っていない。
 動かそうとすれば軋むような不快な摩擦と振動を伴って、辛うじて肩肘膝が僅かに動く程度。
 だがそれでも狂った重心を正す程度はできる。それだけあれば、猟兵などという突然変異の規格外品を――どう加工しても帝国の役に立つことなど出来ない銀河のゴミどもを一掃する為に必要な要素は揃ったと言えるだろう。
『待っていろ、カスども……貴様らの薄汚い細胞を真空に撒き散らして殺菌してくれる……!』
 大型のレーザーキャノンを携えて、ノーザンライトは再び戦場に殺意を振りまくために舞い戻る。

「ワオ、もうみんな追いついてきたノ!?」
 ノーザンライトを迎え撃つため引き返し、あるいは追いついたノーザンライトの対応のため暫しレースを中断していた猟兵たちが後方から猛然と迫るのを見て、チトセは闘志に頬を吊り上げた。
 全員で引き返せばさらなる伏兵が現れた時に対応できる予備戦力すら欠けることになると、ダビングと二人先頭集団に――事実上のトップに君臨する瞬光を護衛する意図を持って残った彼女であったが、やはりそのために上位入賞しても楽しくはない。
 競って、争って、その結果で勝利してこそ。レースを妨害する不逞の輩のせいで已む無くライバルが順位を諦めて――などという結果は認められなかったのだ。
「ネモが居ないのはチョット残念だケド、勝負はこれからだってことネ!」
 ライバルと定めた自律試験機と解放軍の二騎の姿が見えないことに少しだけ残念を覚えながらも、瞬光のすぐ後ろを追いダビング、エクスレイと順位を争う足を止めはしない。
 彼らがリタイアしたならば、その分も走り抜けてこそ。
「――いえ、チトセ様。そうも行かないようです」
「……オット、そうみたいだネ。ホント無粋なんダ」
 コース外、頭上方向から降り注ぐ光の雨。
 瞬時に殺気を感じ取り、あるいはレーダーで熱源を捉えた二人の猟兵は回避機動を取るが、エクスレイはギリギリで推進器をレーザーが掠めてコースを離脱してゆく。
「ちっくしょう! いいかい猟兵、あの野郎にだけは負けるんじゃないよ、アタイの分まできっちり走り抜きな!!」
「アイシー、任せといてヨ!」
「任務を追加します。必ずや!」
 二人の返答に満足したケイコは、砲撃を放った機体――ポラリス/ノーザンライトに中指を立てながら次第に減速し、後続の猟兵によって保護される。
 コースは既に最終局面。トップを独走する瞬光、追う猟兵。そしてその尽くを鏖殺せんと猛るノーザンライト。
 三つ巴の戦いは佳境を迎えていた。

「ライブラリ照合、該当機種『ノーザンライト』と同定。多少の形状差異はありますが、彼我ともに類似した戦術思想で設計されたウォーマシンですか」
 ダビングが独り言る。どちらも光学兵装主体の高機動射撃機体。外観すらどこか兄弟のように似通うかの機体を相手に、ダビングは遂に変形して人型で挑むことを選択した。
『まずは貴様らからだ! カスはカスらしくしていれば!』
 急接近しながら放射される圧倒的火力のレーザーを、ダビングとチトセはひらりひらりと掻い潜る。
「態度の割に正確な照準……その振る舞いは擬態ですか」
 冷静に分析し、であれば論理的思考に基づき戦術を策定し交戦する強力な戦術単位としてノーザンライトを再評価した彼は背面飛行で荷電粒子スマートガンを速射モードで浴びせ撃つ。
『牽制のつもりか? その程度の兵器ではな!!』
 しかしノーザンライトはそれを容易く回避してのける。超過駆動モードの機体は、損傷をものともせず規格が異なるはずの四肢を用いた見事な姿勢制御でこれをすり抜けた。
「ならば。コードODG承認、全システムリミッター解除」
 あちらが超過駆動を駆使して圧倒するならば、こちらも相応の性能で対抗するまで。彼我の距離を詰める機動を維持したまま、ダビングは急激に加速していく。まるで稲妻の如き鋭角の機動がレーザーを躱し、撃ち出した荷電粒子の柵がノーザンライトの進路を戒める。
 されども互いに射撃戦では互角。当たらず、されど当てることもできないまま戦いは千日手の様相を呈したままコースを先へ先へと進めてゆく。
 けれど、それはダビングとノーザンライトの一騎打ちであったならば、だ。
「ライバル相手に他の選手を忘れちゃダメダヨ! デッドヒートのゴール前、油断は禁物ネ!」
 ダビングがノーザンライトの演算処理能力を消費させるように高機動砲戦を仕掛けたことで、極星のウォーマシンはそちらの処理に思考を割いた。
 その意識の隙間を割り開いて、チトセが懐に入り込む。
「そんなスピードじゃ銀河最速は語れないネ!」
『たかがカスが一匹増えようが無駄だ! このままゴミどもの残骸と寝ているがいい!』
 チトセの放つプラズマレーザーはダビングのそれと比較すれば御しやすい。意気揚々と飛び込んだ割に所詮はこんなものかとノーザンライトは嘲笑い、ほとんど機能しない右の義足を振り回してチトセを蹴飛ばそうとする。
 直撃すれば質量差からただでは済むまい。まして弾き飛ばされた先には旧大戦の残骸が複数。あれに叩きつけられでもしたらダメージは相当のものだろう。
『ボクのコースアウトで勝つつもり? 流石帝国のツワモノネ、でも――』
 サーキットで見せたチトセのマニューバを、ノーザンライト――ポラリスは軽んじている。
『電力開放、フルスロットル――ッ!』
 ばり、と青白の稲妻がチトセを覆う。磁力と念動力が虚空に力場を生み出し、それを蹴り上げたチトセは物理法則を無視するかのような機動でノーザンライトの蹴脚を飛び越え紛い物の脚にプラズマの刃を振り下ろす。
 赤く溶断された義足が宙に舞い、ノーザンライトの驚愕と憎悪の視線がそれを見る。
 その瞬間をダビングは待っていた。
「EMフィールド最大出力! 当機はこれより吶喊する――!」
 シールドを構えた機体が、最大加速のまま一切の減速無くノーザンライトにぶち当たる。
『ぐおおッ、貴様――!! カス同然の屑鉄ごときが!』
「極光はここで潰える。闇より深い澱みへ沈め!」
 激突の衝撃でノーザンライトの全身に亀裂が走る。このままでは粉々に砕け散ってしまう――ノーザンライトは死を予感し、その身を衝撃に委ねて自ら暗黒のデブリ帯に吹き飛ばされていった。
「流石に死んだカナ」
「わかりませんが、あのダメージではこれ以上レースへの干渉は不可能です」
 漂う戦跡がノーザンライトの衝突で砕け圧し折れ爆発するのを見届けて、二人の猟兵は本来の戦いに舞い戻る。
「随分皆に距離を稼がれちゃったからネ! ゴールまであと少し、全力で取り戻すヨ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウォーヘッド・ラムダ
銀河帝国が滅んでから幾星霜。
本機も、貴様も、もはや本来の役目はすでに終わっている。
亡霊として再び駆けると言うのなら、今一度貴様を宇宙のデブリに返してやる。

使用出来る武装は基本的に全て使って奴を追い込む。
速く飛ぶと言うのならそのスピードに追いつくまで。
お互い、今も昔もなにも変わっては居ない。
ユーベルコード『超過駆動λ(オーバードライブラムダ)』は武器『ストライクブレイカー』を接続して使用出来るので、発動に注意。
発動タイミングはいつでも良いが、ユーベルコードの仕様上長期戦は無理なので、決定的にキメられる時に発動。

『貴様も本機も、所詮は機械。過去から抜け出せぬ遺物だ』

※アドリブ歓迎




 ノイズが走る。
 思考が・定しな――たかがカス共の攻・如きでこの私・損傷を受け――ど、許されることではな――ぜなら私・銀河――の・光ある宇宙軍――

 それは百年か、二百年か、あるいはもっと昔の事であったろうか。
 ノーザンライトと名付けられた栄光ある銀河帝国宇宙軍侵攻艦隊のエース機はこの世に生まれ落ちた。
 帝国こそが至上の統一政体であり、銀河皇帝こそ唯一の支配者である。遍く人類はこれの奉仕存在であるべきであり、それを受け入れぬものは須らく塵芥として処分されるべきだ。
 星々の海に覇を唱えた軍事超大国の傲慢と、それを許す圧倒的な軍事力、技術力の粋を注ぎ込まれ、最初から何者をも寄せ付けぬ絶対の戦場支配者、エースとして製造されたその機体は、しかし今滅びの縁にあった。
 あのときもそうだった。
 たった一騎取り逃がした鎧装騎兵のために、銀河帝国の敷いた罠が反乱軍風情の手で破られたのだ。
 ノーザンライトは帝国宇宙軍のトップエースの一角であり、それは最強無敗の唯一存在でなければならない。
 故に、彼はここに配備されなかったことになった。居なかったのだから反乱軍の鎧装騎兵を取り逃がすこともなく、居なかったのだから兄弟機との交戦で敗退するなどという事も起こりえなかった。エースは無敗のまま、帝国軍幾千万将兵の精神の支柱としてそこに在り続ける。そういう政治の結果、回収され修復されたノーザンライトはその苦渋の記憶を封じられていたのだ。
 それがノイズ混じりに蘇る。
 ――ああ。

『――久しいな、兄弟ッ!』
「あのときぶりか。銀河帝国が滅んでから幾星霜、本機も貴様ももはや本来の役目はすでに終わっている」
 再起動と同時に背にした残骸を蹴飛ばし急加速したノーザンライト。直後に先程まで機能停止した極星がへばり付いていた残骸が爆発四散する。
 砲撃だ。それを放った黒のウォーマシン、ラムダが背負ったグレネードランチャーを投棄して白に追随する。
 止まっているところを爆破できれば僥倖であったが、再起動を許し回避されてしまった以上はもはや命中させることの難しいそれを潔く投げ捨て、ラムダは少しでも身軽になった機体で追い縋る。
『終わってなどいない! 未だ宇宙にはゴミどもが蔓延っている! あの日、あの戦争で私が滅ぼすべきだった間違って知性を得てしまったゴミどもが!』
 その声を聴いて、ラムダは理解した。ノーザンライトの刻は大戦の最中、一度この手で撃破したあの日からわずかにも進んではいないのだ。
 あれの精神は未だに銀河帝国宇宙軍最強という与えられた幻想に囚われている。帝国の栄華が失墜し、時代の主役が移り変わったことを認識していない。
 戦争は終わり、時代が移り変わっていく宇宙において、ノーザンライトはただ一騎銀河帝国残党軍にもなれずに帝国宇宙軍で在り続けているのだ。
 彼は同胞を敗残の兵と軽んじ、見捨て、盤石の帝国宇宙軍という亡霊と共に稼働し続けている。
「そうか、貴様は本当の意味で亡霊となったのだな」
 ならば、仮にも同じ系譜を汲む兄弟機としてしてやれることは唯一つ。
「今一度本機の手で貴様を宇宙のデブリに還してやる……!」
『やってみるがいい! 実験機止まりの失敗作がやれるのなら!』
 蒼白の尾を曳く白銀が駆け、それを紅蓮の残光を靡かせる黒銀が追う。
「HM-4全弾斉射、ランチャーパージ!」
『そんな物が通用した試しがあったか!』
 十二ものミサイルが絡み合うような機動でノーザンライトを追い、しかしそれは尽くレーザーを浴びて空中で爆散する。
『ハッ、学習しないなλ型! コミュニケーション能力などという玩具を乗せた弊害と言うわけだ!』
 だから戦闘効率に劣る無意味な行いをするのだと、だから無駄な攻撃で無様を晒すのだとノーザンライトは嘲笑う。
 だが、ラムダとてノーザンライトの性能は熟知している。かつての交戦で、通常弾頭のミサイルではデコイ程度にしか役立たないことも当然承知の上。
「お互い変わらないな。何も変わってはいない」
 爆散したミサイルの描く炎の花を突き抜けて、黒銀の弾頭/ウォーヘッドが白銀の極光/ノーザンライトに肉薄する。
『そうだな! だが私は違う。敗北したクズどもとも、貴様とも!』
 なぜなら私は、最強無敗のエースなのだ。
  ――であるならば、なぜこの機体が此処にいて、私はこれを破壊したという記憶がない?
 無用な思考だ。戦闘中には殊更不要。構えたレーザーキャノンは既に臨界出力に達し、ギガボルトキャノンは直撃コースの射線でラムダを捉えている。
『跡形も残さず蒸発するがいい、失敗作!』
 閃光は違わずラムダへ突き進み――そして、その眼前で霧散する。
『何!?』
 驚愕するノーザンライトへ、ラムダの放つ対装甲サブマシンガンの砲弾が喰らいつく。既に交戦でひしゃげた装甲ではそれを弾き返す事もできず、貫かれ潰れた装甲パネルが弾けて機体から剥離してゆく。
「対レーザー蒸散弾頭だ。貴様の最大出力に耐えるには十二発分の集中展開が必須だったが――」
 傲る貴様ならばすべてを撃ち落とし、濃密なレーザー拡散幕を展開してくれると信じていた。
『試作品風情が、技術者どもの玩具が謀っただと! この私を!?』
 もはや間合いは射撃の距離ではない。ASM-7短機関銃をパージ、背部の二刀に手を掛けるラムダの眼光がより紅く輝く。
「超過駆動――!」
『――超過駆動!』
 白兵の距離はノーザンライトの間合いではないが、レーザー拡散幕を突破したラムダにもはや加護はない。
 レーザーキャノンを急速チャージしたノーザンライトがその銃口をラムダに突きつける。
『私は銀河帝国の、皇帝陛下の最強の兵器だ! 貴様如き失敗作に、反乱軍のぃクズどもに……!』
「最強であろうと失敗作であろうと、貴様も本機も所詮は機械。過去から抜け出せぬ遺物だ」
 その一点において両者は等しく、しかし未来を見て、己の道を見出したラムダが一歩先にいる。
 奇しくも完成した最強として造られたノーザンライトを、未完成の実験機であるラムダがその不完全性を成長の余地として上回っていたのだ。
 それはきっと、ラムダしか憶えていないあの日の戦いの時からずっと。
『認めん! 認められるか! 帝国は不滅だ! 私は陛下の敵を、宇宙に蔓延るクズどもを殲滅して銀河に秩序と安定を齎す! それがこんな実験機ごときに!』
 発射されようとしたレーザーキャノンが、高速で回転する刀身――チェーンソーの乱杭歯に両断され爆散する。
『私は勝利する為に造られたッ! 勝利して、こんな、ところでッ』
 レーザーキャノンを食い破った刃がノーザンライトの胴体にまで食い込み、火花を散らす。
『まだだッ、まだ、終わってッ、終わらせてなるもの――』
 ぎゃりぎゃりと装甲を噛みちぎった刃が、白銀の機体の中枢にまで達しこれを破砕する。ノーザンライトの目から光が消え、がくんと機体から力が抜けてゆく。
 ラムダは止まらない。停止したノーザンライトに更に深く深く刃を捩じ込み、そしてその身が二つに断ち切られた。
「――深刻なシステムerrorが発生してイマす。直ちにsystemを停止しテくださイ」
 ノーザンライトが完全に破壊されると同時、兄弟機を屠ったラムダもまたその超過駆動を終え全身から放熱しながら沈黙する。
 相容れぬ敵とは言え、同じ過去の遺産であるノーザンライトを今一度永遠の眠りに還したラムダがふと振り返る。
 ――かつてのあの日、たった一人の瀕死の鎧装騎兵がノーザンライトの追撃を逃れることに成功し、ラムダも属する大艦隊が帝国の罠を打ち破り、ノーザンライトを一度は斃したのだ。
 そして今日のこの日、あの時の騎兵が始まりとなった平和の祭典で再びノーザンライトは骸の海へ還る。
 あのときと同じ、ラムダの手によって。
 ゴールに次々飛び込んでいくスラスターの光。此処からでは順位を見ることは難しいけれど。
 それほどに離れた此処にまで届くような人々の熱狂と歓喜は、世界が確実に前に進んでいることの証左に他ならない。
 最強の死と新たなる最速の誕生。
 過去がまた一つ過去に還り、新たな未来が紡がれる。世界はそうやって続いてゆくのだろう。きっと、どこまでも。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月21日
宿敵 『ノーザンライト』 を撃破!


挿絵イラスト