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迷宮災厄戦⑱-8~わがままな美食家~

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン

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●はらぺこさん
 アリス、アリス達よ、わたしの元に集え!
 わたしが、この世界で最も尊いわたしが、腹を減らしているのだ。
 その柔らかい肉と熱い血で、このわたしの腹を満たすのだ……!
 ……何!? アリスを捕まえられなかった、だと!
 使えないオウガたちめ。
 ええい仕方がない、かくなる上は――。

●兎の案内
「アリス……じゃなくて、『オウガ・オリジン』はね、おいしい料理は嫌いなんだって」
 頭上の兎耳を揺らしたフィオレンツァ・トリルビィ(花守兎・f19728)は、おいしい方が絶対いいのに変だよねと不思議そうな顔をする。
「あ、そうだ。あのねあのね、オウガ・オリジンと戦って来てほしいんだ。向かってもらう先は、『大量の食材と厨房のある国』だよ」
 そこは、オウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードで作り上げた、彼女が空腹なのにアリスがいない時、配下に『アリスに負けないほどの美食』を作らせる為の国だ。
 けれどオウガ・オリジンは普通の『安全でおいしい料理』を好まない。毒入りや剣山入りなどの『見た目は美しいが有害な食事』を好み、安全でおいしい料理を食べると弱体化してしまうのだという。
 変だよねとフィオレンツァの耳がもう一度揺れた。
「この国を作るということは、彼女は今ものすごーっくお腹がペコペコのペッコペコ状態ってことだよ。味は食べてみないと判断がつかないから、『見た目が美しければ』なんでも食べちゃうよ」
 だからね、見た目が美しくっておいしい料理を作って、オウガ・オリジンを『おもてなし』しよう!
 けれど彼女は『美食家』だ。味の好みはうるさいし、使用する食材から料理技法の巧みさ火入れの絶妙さまですべて評価してくる。
 食材選びから盛り付けまでを完璧にこなし、綺麗にセッティングしたら食事を開始し、料理は黒い顔へと放り込まれていくことだろう。そうして『おもてなし』をして、弱体したところが攻撃のチャンス!
「おいしさで苦しんでるところを、えいってしよう!」


壱花
 アリス・オリジンが好みでたまりません、壱花です。
 フィオレンツァは美味しくて見た目が可愛い料理を好むので、えーってしています。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。1フラグメントで終了します。

●受付期間
 8/16(日)20:00~
 早めに締切予定です。 締切はMSページまたはTwitterでお知らせします。
 成功度が高い方を採用予定です。

●シナリオについて
 傾向的にはギャグになるかと思います。
 グループでのご参加は【2名まで】。

●プレイングボーナス
 プレイングボーナスは『おいしい料理を作ってオウガ・オリジンに食べさせる』ことです。
 不味かったり有害な食事は彼女を喜ばせ、お腹を満たして元気になってしまうので、『見た目が美しくおいしい料理』でおもてなしをしてください。
 料理が苦手な方も料理上手さんとご一緒して、料理上手な人が料理を作り、料理が下手でも飾り付けに自信があるのでお手伝い! 等の役割を分けてのご参加も歓迎です。(ソロ参加さんもぴったり合わさりそうだと思うと、纏めたりします)
 戦場は厨房。けれど揃っている食材は彼女好みの有毒なもの。美味しい食材や映える食材や食器を持ち込んで、挑みましょう。

 技能等はそれをどう使うか、どう動くかを詳しくお願いします。技能名の羅列ではボーナスは発生しません。上手い感じに調理に取り入れられていてオオッとなったら高評価となります。
 詳しくはMSページの『アイテム/技能』を参照ください。

●迷子防止とお一人様希望の方
 同行者が居る場合は冒頭に、魔法の言葉【団体名】or【名前(ID)】の記載をお願いします。
 お一人での描写を希望される場合は【同行NG】等の記載をお願いします。
 また、文字数軽減用のマークをMSページに用意してありますので、そちらを参照ください。

 それでは、皆様のおいしくて素敵な料理のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と美食嫌い厨房』

POW   :    ハングリー・バースト
【飢餓感と、自分を敬わない者達への怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    女王は常に独り食す
非戦闘行為に没頭している間、自身の【肉体】が【虚無を映す漆黒の液体で覆われ】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    炎なくして食事なし
レベル×1個の【美食嫌い厨房にある、無数のかまどから】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ライラック・エアルオウルズ
僕の良く知る『アリス』の見目で
所謂解釈違いな悪態三昧――
そんな君を持て成すとはねえ

眉下げ乍ら、《料理/アート》
御馳走するのは、『アップルパイ』
熟した真赤な林檎を薄うく切って
砂糖やバターに甘く熱く漬けたなら
パイ生地にカスタードを満たしゆき
其処に、ひとひら、ひとひら、丁寧に
林檎を薔薇の花弁のように並べよう

さくっとパイを焼き上げたなら
粉砂糖を降らせミントも飾り付け
皿乗せる時に添えるクリームは
『赤薔薇を塗り潰す』悪戯心だ
『EATME』を皿にチョコで綴れば
――どうぞ召し上がれ

味わって苦しまれるの、傷付くな
まあ良い、と拗ねたように金栞投擲
『御馳走されたら美味しく食べること』
マナー違犯は、御仕置きだよ?



●アップルローズ
 覚えたのは、不快だった。
 彼女――オウガ・オリジンに会えばきっとそうなるだろうと思ってはいたけれど、実際に目の前にすると矢張りふつふつと湧き上がってくる感情(もの)がある。
(僕の良く知る『アリス』の見目で所謂解釈違いな悪態三昧――)
 少女〈アリス〉に聞かせる話はあっても、オウガ・オリジン〈最初のアリス〉に聞かせる話はない。ましてや持て成すだなんて――。
 ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は眼鏡の下の瞳を剣呑に細めた。
 けれど、持て成さねばならない。
 眉を下げながらもライラックは、真っ赤な林檎を取り出した。
「女王の薔薇にも似た色だな」
 興味深げに掛けられる言葉にShhhと人差し指を立ててから、真っ赤な林檎にナイフを当てた。皮は剥かずに半分に切り、芯をくり抜いたら薄うくスライス。
 林檎は勿論、赤の映える紅玉だ。皮を剥かずに赤を残すことで、この『アップルパイ』はより美しくなる。
 砂糖とバターに甘く漬け、優しく熱を通したなら、レモンを少々。
 これから主役となる林檎をゆっくりと休ませている間に、パイ生地の準備をする。綿棒で伸ばしたパイ生地をまぁるい型に敷いたなら、バニラが甘く香るカスタードを取り出して。満たした其処へ、休ませていた主役たちを乗せていく。
「ほう、薔薇か」
 聞こえる声に反応を返さず、集中して林檎を薔薇の花弁のように並べていく。外側から、ぐうるりと。ひとひら、ひとひら、丁寧に。
 そうして熱したオーブンで焼いたなら、甘い良い香りが広がって。
「早く食べさせろ!」
 急かす声に慌てることなく、焼き具合を確かめた。
(うん、良い出来だ)
 ライラックの知る『アリス』に食べてもらいたいくらいだ。
 熱々のアップルパイを皿に乗せ、粉砂糖で雪化粧。
 緑のミントで葉を添えて、『赤薔薇を塗り潰す』クリームもともに。
 仕上げにチョコで『EATME』を綴ったならば、ライラック特製ローズ・アップルパイの完成だ。
「――どうぞ召し上がれ」
 招待状代わりにトランプを模した金の栞を添えて差し出せば、真直ぐに伸ばされた手が栞ごとアップルパイをまるごと掴んで――。
「おや」
 丸ごと目も鼻も見えない真っ暗な顔面へとぽいと放り込まれた。
「んむむ、んむ! 不味い(美味い)!! 見目が美しい薔薇で、実に食欲をそそるものだった! 欠点を言うならば、女王の薔薇のような赤い薔薇にしたければグレナデンシロップに漬け込むべきであったな。この皮を残すことで花弁の端は赤いが、中は林檎の果実の色だ。しかし発想は良い。まさにわたしが食べるに値する美しいパイであった! パイ生地のサクサクとした歯ごたえも実に良いもので――しかしながら実に不味い(美味い)!! グワァーッ!」
 顔を押さえて苦しみながらもペラペラと喋り、そうして――。
「……美味しくないのか美味しいのか、どっちなんだい?」
「不味い(美味い)!」
 課されたルール、『御馳走されたら美味しく食べること』を守れずに更に苦しむオウガ・オリジンを見て、ライラックは複雑な気持ちを抱くのだった。
 折角美味しく作った料理を不味いと言われたり苦しまれたりするのは、誰だって傷つくものなのだ。なんて失礼なんだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ココ・トワイライト
そとさん(f03279)

お久しぶりです、元気そうで安心しました
急なメッセージに驚きましたが、食材と道具を持ってきましたよ
見た目が華やかで楽しいパエリアはどうですか?

勝たなくてはいけない戦い……ですから
せめて僕が作れる最高においしいものをオウガさんに――と丁寧に

こうやってそとさんに手伝ってもらうのも懐かしいですね

エビの殻と背ワタをとって味を付け
それぞれの具材をを良い色になるまで炒め一度取り出し
お米からじっくり熱したら

そとさん、こんな感じでどうですか?
具材をお花の形に盛りつけて

馴染むように蒸している間に
もっとおいしくなるように魔法の歌を

さぁ、どうぞ

後はよろしくお願いします、そとさん


深鳥・そと
ココくん(f10421)

ココくんひっさしぶり~!
お料理ちょっとはできるけど、多分ちょっとじゃ満足してくれないんだよね……
じゃあココくんだ!って

パエリア! いいね! わたしシーフードがいいなっ
安心にお料理できるようにひよこさんを呼んでレッツクッキング!

にんにく玉ねぎをみじん切り~
レモンはくし形~
パプリカとピーマン細切り~
全部切り終わったらちゃんと洗い物!

わ、カラフルできれい!
すっごく最高!

一緒においしくなぁれ♪って魔法をかけて

ココくんがオリジンさんのことをたくさん考えて作ってくれたからできたチャンス
絶対掴むんだから!

早天花で攻撃を防いでオリジンさんに近づいて
炎をまとったまるちゃんでどーんっ



●具だくさんパエリア
「ココくんひっさしぶり~!」
 こっちこっちと大きく手を振る深鳥・そと(わたし界の王様・f03279)に、ココ・トワイライト(穏やかな日々・f10421)は大きな荷物を背負って駆け寄った。
「お久しぶりです、元気そうで安心しました」
 久方ぶりに会う少女の姿にココはにっこり微笑んで、「ご連絡頂いた通り、食材と道具を持ってきましたよ」と荷物を示す。
 料理は少し出来る方のそとだけれど、美食家たるオウガ・オリジンを唸らせるには技量が足りないかも知れない……と素直に自分の技量を分析し、知りあいの中で料理上手な人~とスマホをスワイプしてアッ! とココの名前を見てビビッとしたのだ。
「わあ、ありがと~! 突然呼び出しちゃってごめんね」
「いえいえ。急で驚きましたが、そとさんからメッセージを頂けて嬉しかったです」
 久方ぶりの再会を喜び合いながら、二人はゲートを潜って厨房へと立った。
 オウガ・オリジンは既に二人に気付いている。けれども何も言わず、早く厨房に立てと言わんばかりに手をしっしと動かした。なにせ彼女は空腹なものだから。
「ココくんシェフ、今日のお料理は?」
「見た目が華やかで楽しいパエリアはどうですか?」
「パエリア! いいね! わたしシーフードがいいなっ」
 そうと決まれば、ひよこさん出ておいで~! レッツクッキング~!
 \ぴよ!/ \ピヨ!/ \ぴよっ/ \チュン/ \ピヨ…/
「なんだ? 食材か?」
「お手伝いさんだよ! オリジンさんはお料理出来るまで黙ってて!」
「すみません、オウガさん。僕が作れる最高の料理を作りますので……」
「ふむ……」
 大人しくオウガ・オリジンが食卓――厨房の作業台――に座るのを横目でチラッと確認したココは、包丁を握る。その隣ではそとがひよこたちに細かく指示を出す。
「にんにく玉ねぎはみじん切り~。細かくお願いね~」
「ぴよ!」
「レモンはクシ型にして~」
「ピヨ!」
「パプリカとピーマンは細切り~」
「ぴよっ」
「チュン」
「使った道具の洗い物もお願い!」
「ピヨ……」
 材料を刻む心地よい音を聞きながら、ココは用意してきた魚介に手を伸ばす。
「なんだか懐かしいですね。こうやってそとさんに手伝ってもらうのも」
「そう?」
「はい、とても楽しいです」
 会話をしながらも、手は休まない。そとは野菜を刻み、ココは海老の殻を剥き、楊枝で背わたを取って塩水につける。海老を塩水につけている間にイカとムール貝の下処理を済ませ、フライパンを熱して炒めていく。
 厨房に魚介の良い香りが満ち、オウガ・オリジンの視線を背に痛いほどに感じる。
 けれど焦りは禁物だ。
 ひとつひとつの工程を丁寧に行ってこそ、おいしい料理が作られる。
 生米と水と魚介から出た旨味を火にかけて、じっくり。
「……まだか?」
「まだです」
 早くしないかと立ち上がりかけたオウガ・オリジンがぐうと唸った。
 良い感じに仕上がったら、具材を花の形に盛り付けていく。
「そとさん、こんな感じでどうですか?」
「わ、カラフルできれい! すっごく最高!」
 わくわくと覗き込んでいたそとがパッと顔を輝かせグッと親指を立てたら、蓋をして暫く蒸す。その間にもっと美味しくなるようにと歌を歌いましょうとそとと一緒に『おいしくなぁれ♪』の歌を歌う。料理が共感出来る訳がないので、戦闘力が上がるのはそとだ。
「かんせ~!」
「早く持ってこい! わたしは空腹だ!」
 早くしろとせっつくオウガ・オリジンの元へと運べば、どうぞの言葉も待たず、一息にフライパンごとぽいっと黒い顔面へと放り込む。本来ならば目や口の在る場所に広がる闇は、しゅるりと出来たてのパエリアを飲み込んで。
「グ――……! 野菜は丁寧に刻まれ、魚介と炒めることによって旨味を閉じ込め良い味になっている! 食材かと思ったひよこもなかなかやるようだな! そして丁寧に下処理をしただけあって、魚介に臭みもなくとても味わい深い! 時間を掛けたた分だけ米に染み込む旨味! 筆舌に尽くしがたい! 一皿でいくつもの味が調和して生まれる海の芸術品パエリア――グワァーッ!」
 パエリアを飲み込んで早口で捲し立て、そして忙しく苦しむオウガ・オリジンの背後に忍び寄る影。メイスの『まるちゃん』に炎を纏わせたそとである!
 どーーーーーんっ!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

八津崎・くくり
私は食べる方が得意だがね!こうなったら仕方があるまい!腕によりをかけて満足させて見せようではないか!

何しろ私は鼻が利く方だからね、美味しそうな肉の塊を探し出して、このナイフで最高の部位を切り出してあげよう
脂の差しが理想的な箇所だけを贅沢に使って、塩コショウをまぶして、準備するのはステーキだよ

オリジン君は焼き加減はどの辺が好みかな?
私としては滴るようなレアがオススメだがね!希望があるならそれ通りに、私の勘と食欲とお腹の虫が囁く最高の状態で皿に乗せてご提供だ!さあ、召し上がれ!

はーーここまで食欲を抑えるのは大変だったけどね
上手く行ったなら、今度はこちらから喰らい付いてあげよう

それでは、いただきます


旭・まどか
♢♡

食事なんて別に……、食べられれば何でも良いじゃない
勿論、味が良いに越した事が無い事くらいは解っているけれど

料理だって才能のひとつだよ
生憎、僕は持ち合わせて居ないけれど

調理は得意な者に任せ
代わりに食材の選別と盛り付けを担当しようか

一応旬の果物は用意して来たけれど
使えるかな
飾り切りだって立派な技術のひとつだ
見様見真似で出来る範囲は努力するけれど
あまりに子細な細工はボロが出てしまいそうだ

手持ち部沙汰な隸には
厨房の中から使えそうな物が無いか、探して貰おうか

食材――は、あまり期待できないかもしれないけれど
添え物や食器なんかまでは用意出来なかったからね

ご自慢のその鼻で、無害な物を探してくれるかい



●美ーフステーキ
 旭・まどか(MementoMori・f18469)にとって食事とは、食べられれば何でも良いものだ。勿論、味が良いに越した事が無い事は解っている。が、そのために無駄な労力をするくらいなら適当なものでいい。
 対して八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)にとっての食事とは、無くてはならないものだ。まだ見ぬ眩く美味しいものをお腹いっぱい食べることが、いつだって夢で目標だ。美味しいもののためなら労力は惜しまない。料理だってそうだ。美味しく食べるためにならする。食べるほうが得意だけれど。
「腕によりをかけて満足させて見せようではないか!」
 早く料理をしてくれと言わんばかりのオウガ・オリジンの視線――目がないが顔が向けられている――を真っ向から受けながらも堂々と宣言し、くくりは厨房の中をウロウロと彷徨き始める。くん、と鼻を鳴らし、食欲が赴く食材――と言うよりも肉を探す。
(これは駄目だな、腐ってる)
 ここはオウガ・オリジンの為に作られた場所。有害な食べ物が大好きなオウガ・オリジンの為の場所。即ち、集められている食材も有害なもので溢れている。
 けれど。
(もしかして――)
 低い確率だが、アレがあるかもしれない。あっちへこっちへごそごそと探し回るくくりの手伝いをまどかもし、涼し気な場所から見つけ出したのは、牛の熟成肉。
 片手でくるんと回したナイフで切って肉の状態を確認すれば、外側と違って中からは鮮やかな赤が覗く。いっそ鮮烈と言っても良いほどの、美しい赤だ。
 じゅる……。
 ――私が食べたい。
 口元と腹と後頭部がむずむずするが、いかんいかんとかぶりを振って我慢する。くくりのスペシャルディナーはもう少し後だ。こうして既に仕込みも始めている。
 最高のサシ具合の箇所を選んで切り、丁寧に筋も除いていく。臭み消しになりそうな葉を見つけてきたまどかが肉の上に乗せ、塩コショウをまぶしていく。用意する料理は、シンプルに美味しいステーキだ。少しだけ寝かせている間にフライパンを熱して準備を整えた。
 フライパンへと極上の赤身を乗せれば、じゅうじゅうと肉が歌い出す。
 熱と脂と肉の、心地よいハーモニー。
 料理人と言うよりも、気分は音楽家。
「オリジン君は焼き加減はどの辺が好みかな?」
 くくりのオススメは、赤い肉汁が滴るようなレアだ。肉本来の旨味をダイレクトに伝えてくれる。けれど今日使用しているのは熟成肉だ。熟成肉のレアは食中毒が発生する可能性が高い。有害カビが発生している可能性もある。原始人でも肉に火を通して食べる。何故か。――部位によっては寄生虫等も有り、非常に有害だからだ。そして有害であるものを、オウガ・オリジンは喜んで食べる。
「アリスならばレアが良い。いや、焼かずとも生のままで良い。肉の鮮度は若い方が良いな。赤い血が滴るのを、顔を拭いながら喰らいたいものだ。しかしそれは、アリスではないのだろう?」
 ならば何でも然程変わらない。そんなことより早くよこせとせっついた。
「まあまあ、待ち給え。もうすぐ出来るから」
 ぱちぱちじゅうじゅう歌う肉の具合はそろそろ良い頃だろう。
 デーン! 焼きたての肉を皿に乗せてみた。
「さあ、召し上がれ!」
 くくりの勘と食欲とお腹の虫が囁く最高の状態での提供だ。どうだ美味そうだろうと言わんばかりの顔で差し出した。
「……食うに値しない」
「な……っ!?」
 ガーン! 解りやすくくくりに衝撃が走る。
 言わば、くくりの最高傑作である! こんなにも美味しそうで、正直くくりが食べたい肉を提供しているのに食べないだなんて! 信じられない!
「美しくない。この世界でもっとも尊いこのわたしが食らうに値しない」
「肉はそのままでも美しいだろう!?」
「食事とは一皿の芸術だ」
 ぐぅうううううう……。
 響いた腹の音は、オウガ・オリジンか、それともくくりか。どちらもかもしれない。
「……仕方がないね。盛りつけば僕が担当しよう」
 肉に合う果物は持ってきていただろうか。まどかは持参した果物を思い浮かべる。
 使えそうだと判断したのはオレンジといちじくだ。どちらも肉に合うことを知っているオウガ・オリジンが「ほう」と感嘆ともとれる溜め息を零した。
 オレンジの半分をスマイルカットにし、切り落とさないように気をつけながら皮と果肉の間にナイフを入れる。ちゃんと繋がっていることを確認したら皮を1/3幅に切り、くるんくるんと内に巻けば完成だ。
 残りの半分は底を切り落とし、中の実をくり抜く。くり抜いた実は半分に切ってからスライスし、落とした底をくり抜いた中に入れて座りの良い底として、その上にスライスした実を外側から実同士が少し重なるように詰めていけば――オレンジの薔薇がまどかの手の中で咲いた。
 簡単な飾り切りだが、オレンジの明るさは肉料理にも映える。肉を中心に皿の周りにオレンジを並べていき、スマイルカットのオレンジの間に、四等分にカットして皮を剥いたいちじくを並べていく。皿の片隅にオレンジの薔薇を添え、切った時に出た果汁を少し掛ければ――。
「出来たよ」
「美しい。これこそが尊いわたしが食らうに値する一皿だ!」
 くくりが何か言いたげな表情をするが、早速皿へと手を伸ばしたオウガ・オリジンは皿ごと掴んで――ぽぉい! ブラックホールのような黒い顔面に全て放り込んでしまう。
 美しくする意味があったのか?
 まどかとくくりの思考がひとつに重なるが、何も言わない。いや、言えなかった。
「グ――」
 苦しげにオウガ・オリジンが顔面を押さえ――。
「よくもわたしにこんなものを食わせてくれたな!」
 勝手に食べたんですけど。
「この肉は何だ! 不味い(美味い)じゃないか! 不味(美味)過ぎるじゃないか! 丁寧に筋は切り取られ、脂のサシ具合が素晴らしい! 熟成されることにより肉の旨味が凝縮し、サシもまた一層深い味わいとなっている! 味付けがシンプルな塩コショウだけというのも良い。欲を言えば、焼いた後の肉はホイルに包んで休ませ、塩コショウを振らずに好みで付けて食べられるように岩塩と茎山葵を辺りを用意してあると並の美食家ならば絶賛していたことだろうな! 尊いわたしは違うがな! そしてオレンジといちじくは肉に合う。合いすぎる! オレンジの酸味がアクセントを加え、いちじくの柔らかな甘さも実に合う! 果実と肉の革命が口内で起き――グアアアアアァアーッ!!」
 安全でおいしい食事なぞ不味過ぎると叫びながら、苦しそうに呻くオウガ・オリジン。
 うるさいな……と目を細めるまどかと違い、くくりは瞳をきらりと輝かせる。
 たくさんたくさん我慢をした。もう食べていいかな? いいよね。
「それでは、いただきます」
 赤くて黒い大きな口が、がばりと大きく開いたのだった。
 オウガ・オリジンのお味はいかほど?

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴォルフガング・ディーツェ
とんだグルメならぬ愚ルメをお好みのお嬢さんだね?
料理を振るいたい相手ではないが…敵の思惑を覆すのは気分が良いものだ、最善を尽くそうか

一部食べ物を持ち込みしつつ敢えて相手が用意した食材も使おう
毒は有毒成分で出来ている、ならば無毒化も可能だろうよ
所持品の「ヘルメス」を『メカニック』で強化し成分分析
『医術』『全力魔法』を駆使し、血清の要領で毒ある野菜の一部を掛け合わせ、解毒物質を調味料で味付けしたドレッシングを作ろう

淡雪の様に擂り下ろした人参と玉ねぎも合わせ、元毒草達で作ったサラダを君に。骨の髄まで味わい給えよ?

器にも手は抜かないさ
磨かれた銀食器、毒に曇らず綺麗なものだろう
囁きは魔爪の一撃と共に



●サラダ~元毒草たちの華麗なる饗宴~
「やるとするか」
 料理を振る舞いたいと思える相手ではないが、敵の思惑を覆すのは気分が良い。厨房に着いてすぐに《調律・機神の偏祝》を発動させたヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)は、片頬を上げてにやりと笑いながら有毒な食材の山の中から食材探しを開始した。
 求める食材は『毒草』だ。ヴォルフガングが手にした毒草を背後から覗き込んだグルメならぬ愚ルメをお好みのお嬢さんことオウガ・オリジンが「おお」と声をあげる。
「それはなかなか美味い草だ。添え物に良い!」
 食材を選ぶセンスが良いなと嬉しげな声で告げてくるオウガ・オリジンは、既に幾度か猟兵たちから攻撃を受けた後なのだろう。どことなく纏う水色のエプロンドレスや髪をボロボロにしながらも、やっと口に合う食事にありつけそうだ、とテーブル――厨房の作業台だ――に着いた。
 幾つか毒草たちを見繕ったヴォルフガングはシンクで丁寧に毒草を洗うと、キッチンペーパーで水気を取り、まな板の上に毒草たちを寝かせる。そうして《調律・機神の偏祝》でいつもよりも強化した魔導・電子機術製ゴーグル『ヘルメスの双目鏡』を眼前へと下ろすとじっくりと見詰めて成分を分析する。ヴォルフガングの視界であるゴーグル内には成分が細かく映し出され、それがどういう毒性なのかを細かく電子機術で調べ上げていった。
(なるほど、ね)
 この鮮やかな毒草は、根に毒がある。
 この艶々とした毒草は、葉の裏の筋。
 ナイフをメスのように扱って毒のある部分を切り分けると、医療魔法を駆使して血清じみた解毒物質を作成した。それを持ち込んだオリーブオイルとレモン汁と塩とを混ぜ合わせれば、ドレッシングの完成だ。
 続いて、所持品のカバンから人参と玉ねぎ、それから盛り付け用の銀の皿を取り出す。
 皿へとふわりと毒草たちを盛り付けて、淡雪のように摩り下ろした人参と玉葱をその頂へと降らせていく。少量の粉チーズとパセリをはらりと掛け、スプーンですくったドレッシングで美しくデコレーション。
「お待たせしたね。骨の髄まで味わい給えよ?」
「おお、毒草のサラダか! 美味そうだ!」
 やっと美味い食事にありつける。喜びを隠さずに眼前へと置かれた銀食器へと真直ぐに伸ばされる細い少女の腕。
 空腹と喜びで頭の中がいっぱいな彼女は気付いていない。
 その銀の皿が、毒に曇っていないことに――。
「なんと美しい毒草のサラダだ! 尊いわたしが食べるにふさわしい!」
 いそいそと皿を掴み、そのまま黒い顔面へとぽいっと放り込まれていくのを、ヴォルフガングは口角を上げて見守る。
「ああ、矢張り毒は良――毒じゃない、だと!? 何だこの巫山戯たサラダは! わたし好みの毒草を使い、彩りも良い見事な盛り付け。瑞々しい葉から伝わるシャキシャキ具合に、摩り下ろした人参と玉葱がざらりとまた別の食感を与えてくれる。そしてシンプルながらも丁寧な味付けのドレッシングも良――ハッ! ここに解毒成分を混ぜたのだな! なんてことだなんてことだなんてことだ! 素晴らしい毒草になんてことをしてくれたのだ――グハアァァァァアーッ!!!」
 顔面を両手で覆って蹲る背に、魔爪が振り下ろされる。
「最後の晩餐はどうだったかな?」
 オウガ・オリジンが最期に味わったのは、魔爪の『切れ味』だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月19日


挿絵イラスト