迷宮災厄戦㉔〜たった一つの確かなもの
●宝石の国
「我思う故に我あり。なんたる傲慢な言葉でしょう。『帝国継承規約』。これを記した銀河皇帝に送るに相応しき言葉でしょう」
宝石だけの国において猟書家『プリンセス・エメラルド』はその美しき翠の輝き放つ姿、クリスタリアン最長老である彼女自身の変わらぬ美しさは際立って輝いて見えた。
その手にするのは、嘗て失われた筈の『帝国継承規約』。
それはスペースシップワールドにおいて、かの銀河皇帝が唯一定めた、皇位継承条件。その継承条件は『永遠に不変である事』。
不老不死を達成し、己の血族でさえ邪魔者であると考えていた銀河皇帝にとって、その皇位継承条件は、銀河皇帝以外には誰も成し得ぬ条件であった。
つまるところ、銀河皇帝は誰にも跡目を譲るつもりなどなく、それ故に絶対者として君臨したのだ。
「確かに存在する者。いつの時代も、最後にそれに固執するのが権力者の末路でありましょう。ならば、私はまさしく継承条件を満たした者」
軽やかに笑う姿はまさに乙女の全盛そのもの。見目麗しく、その姿は宝石そのもの。不変たる身体、不変たる意志。
「銀河皇帝、あなたの遺志は私が継いで差し上げましょう。このプリンセス・エメラルドが―――!」
●迷宮災厄戦
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。猟書家『プリンセス・エメラルド』の存在する戦場への道が拓かれました」
スペースシップワールドを狙う猟書家である『プリンセス・エメラルド』。彼女がオブリビオン・フォーミュラ無き世界を狙う理由は未だ定かではない。
けれど、これを捨て置くことはできない。そして、オブリビオン・フォーミュラに成り代わろうとするほどの実力を持つオブリビオンであることは肝に銘じなければならない。
それだけの力を有した存在であるからだ。
「猟書家『プリンセス・エメラルド』。その実力は相当なものであり、必ず皆さんに先制攻撃を与えてきます。さらに手にした侵略蔵書『帝国継承規約』から召喚される『皇帝乗機』―――インペリアル・ヴィーグルに騎乗して戦う姿はまさに蹂躙機。圧倒的な戦闘力を有します」
さらに彼女の乗艦である『宇宙船プリンセス・エメラルド号』が放つエメラルド色の破壊光線の弾幕、砲火はハリネズミの如き隙のなさと強力な火力を惜しげもなく宝石の国へと降り注がせることだろう。
「さらに尤も厄介な能力……それは自身を透明化するだけではなく、皆さんを攻撃する、被害を与える物を透明化させる能力でしょう。物音や体温は消せないとは言え、これによる先制攻撃を防ぐの至難の業でしょう」
ナイアルテは予知した猟書家の能力を読み上げていく。
淡々と、事実だけを述べている。そこに自身の感情は情報として必要ない。けれど、ぐ、と拳を握る。
いつだってそうだ。
大きな戦いは常に大きな困難である。だが、今までだってこれからだって猟兵達は乗り越えていかなければならない。世界に住まう人々、そして世界そのもののために戦うというのならば、どれだけ強大な敵であろうと背をむけることは許されない。
猟兵の敗北即ち、世界の終わりである。
「敵は手強いと言っていいでしょう。私達個人では太刀打ちできないかもしれないほどに。けれど、皆さんはこれまでだって同じように戦ってこられました」
ナイアルテは次々と転移していく猟兵たちを見送る。
いつものように頭を下げることはしない。その背中を見守ることしかできな自分。
けれど、彼女はもう知っている。
「たった一つの確かなものがあります。皆さんは、負けないということです。殺されてしまうかも知れないけれど、負けることはない。そういうふうに猟兵は、できていないのですから」
猟兵達の眼差しにある先の困難。
それを踏破するべき正しき力はすでに、彼ら自身に宿っている。ナイアルテはそれを信じているからこそ、その背中を見送り続けるのだから―――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。
焼け焦げたの森に存在する猟書家『プリンセス・エメラルド』。スペースシップワールドを狙う目論見を打破しましょう。
また猟書家『プリンセス・エメラルド』は必ず先制攻撃を行ってきます。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
それでは、迷宮災厄戦を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『猟書家『プリンセス・エメラルド』』
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POW : プリンセス・エメラルド号
自身の【サイキックエナジー】を代償に、【宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【エメラルド色の破壊光線を放つ多数の砲】で戦う。
SPD : 侵略蔵書「帝国継承規約」
自身の身長の2倍の【皇帝乗騎(インペリアル・ヴィークル)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : クリスタライズ・オリジナル
自身と自身の装備、【敵に被害を与えうる、半径100m以内の】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
イラスト:鶸
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
セレシェイラ・フロレセール
ナイアルテさんの言葉を思い出す
そう、わたしたちは負けない
確固たる信念を今一度、この胸に刻み込もう
ごきげんよう、プリンセス・エメラルド
キミを倒しに来たよ
インペリアル・ヴィーグルには空飛ぶ魔法の箒で応戦しよう
箒に乗ったら風の魔法を詠唱
箒に更なる浮力を、そして加速の魔法と攻撃用の魔法も重ねて詠唱する
空を縦横無尽に、高速で翔る
キミの攻撃にわたしは持てる力のすべてを構築して逃げきってみせよう
距離を離したところで攻撃に転じよう
描いた桜の魔法陣に加速の魔法を乗せて、キミを猛追する
さあ、踊って
ひとつひとつのパーツを綴り合わせて
これはキミのために綴る戯曲
キミを骸の海へと還すための、ね
それは巨人の如き姿であった。『皇帝乗騎』―――それこそが侵略蔵書『皇帝継承規約』の齎す力。
「これが皇帝乗騎―――インペリアル・ヴィーグルの力! 溢れる! これは良いですね。我が玉体を護るに相応しき力。さあ、銀河皇帝よ。御覧なさい。これが貴方の後継者たる私の―――プリンセス・エメラルドの力」
その翡翠の如き宝石の体を持つ猟書家『プリンセス・エメラルド』は、皇帝乗騎によってさらなる戦闘力を得ていた。
溢れ出る力。有り余る力。それに歓喜するように侵略蔵書の頁がめくられていく。
「さあ、参りましょう。蹂躙しましょう。あらゆる障害を滅ぼし、あの銀河の海へ。スペースシップワールドへと、新たなる皇帝の凱歌と共に」
宝石だけで構成される国の中を疾駆する。その瞳に映るのは桜色。
猟書家『エメラルド・プリンセス』を止めるために、この戦場へと転移してきたであろう猟兵の姿を捉え、その身を滅ぼさんと駆ける。
「ごきげんよう、プリンセス・エメラルド。キミを倒しに来たよ」
その声は少女そのもの。
戦場には似つかわしい声色と姿。桜色の髪を宝石だらけの景色に溶かすようになびかせて、レシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)は言う。
奇しくも、どちらも一つの色を身に宿す存在。桜色と翠色。どちらも美しい色だ。けれど、必ずどちらかが滅びなければならない。
相対する猟書家はオブリビオンであり、過去の化身。世界を滅ぼす存在だからだ。
「皇帝たる私に逆らおうというのは猟兵位なものでしょう。いいでしょう、このインペリアル・ヴィーグルの試運転は必要と考えていました。貴方たち猟兵を駆逐できずには、皇帝になることも叶いませんから―――!」
プリンセス・エメラルドが駆ける。
皇帝乗騎がその巨躯で持ってセレシェイラへと肉薄する。それに対し、セレシェイラは空飛ぶ魔法の桜箒に乗って、風の魔法を使い空へと舞い上がる。
「―――空を飛ぼうとも!」
それを追いかけるように跳躍するプリンセス・エメラルド。その跳躍力はさらなる強化を持って、セレシェイラよりも遥か高さへと舞い上がる。
空中戦に置いて決定的な差であった。セレシェイラは風の魔法でさらなる浮力を得ていた。
だが、それを覆すのが加速の魔法。高さで叶わぬのならば、飛翔速度で引き離す。空を縦横無尽に翔る。それに猛追するのが、プリンセス・エメラルドの翠色の眼光。付かず離れずではない。ジリジリと距離を詰められる。
あれが皇帝乗騎―――インペリアル・ヴィーグルの力。圧倒的な跳躍力。飛翔力。速度。ありとあらゆる面でこちらを圧倒する力。
銀河皇帝に成り代わろうとする猟書家の力。圧倒される。肉薄される。このままでは―――。
だが、セレシェイラは思い出す。
『人は殺されてしまうかも知れないが、負けることはない』
あの言葉を。桜の硝子ペンを握る手に力が宿る。
「そう、わたしたちは負けない。確固たる信念を今一度、この胸に―――」
自分を猛追するプリンセス・エメラルドの姿を振り返る。その手に宿るは風の魔法。
もっと高く、もっと早く。力が足りないのであれば、今ここで限界を超える。再びは出力を上げて放たれる魔法。
浮力が増し、さらに空高く舞い上がり、桜色の流星は凄まじい速度で空を飛ぶ。それを追う翠の光。だが、離される。
「何故、出力ではこちらが遥かに上のはず! 何故追いつけないのです!」
それは意志の差であったかもしれないし、再び刻まれたなにかであったかもしれない。
負けない。
例え、その生命が脅かされようとも、猟兵は負けない。負けるようにはできていない。それが生命体の埒外であると同時に世界に選ばれた戦士である所以。
放たれる風の魔法の刃が、追いすがる皇帝乗騎へと放たれる。それは牽制でしかない攻撃であった。
未だその装甲に傷一つ付けることは叶わない。
「この程度の攻撃で、私が墜ちるとでも―――!?」
セレシェイラは、桜色の瞳を輝かせ、空飛ぶ箒の上に立つ。
風が桜色の髪をなびかせ、その瞳の輝きをさらなる高みへと誘う。
「桜の魔法を綴る―――戯桜(ピエス)」
桜の硝子ペンが描くは、桜の魔法陣。幾重にも、多重に展開される魔法陣が空に浮かぶ。青い空を埋め尽くす桜色の魔法陣たち。
「さあ、踊って…これはキミのために綴る戯曲」
魔法陣が輝き、発動された魔法光線の湛える光があまねく物を照らす。それは翡翠の輝き放つ『プリンセス・エメラルド』であっても桜色に染め上げる光だった。
何者も脅かすことの出来ない桜色。
「こ、こんな……馬鹿げた数の魔法陣を展開するなど―――!」
プリンセス・エメラルドの駆る皇帝乗騎の中から鳴り響くは警報音。自身をロックする敵性攻撃の数、およそ900以上。圧倒的な数。それを全て躱すことなどできはしない。
「キミを骸の海へ還すための、ね」
桜の硝子ペンが指揮棒のように振るわれる。放たれる魔法光線が雨のように、あらゆるものを桜色に染め上げていく。
たとえそれが如何に強力なる皇帝乗騎であろうと躱すことのできない超高速連続攻撃。
あらゆるものが砕け、光によって消し飛ばされていく。
息を吐き出す。持てる力を全て出し切って、ひとつひとつのパーツを綴り合せるようにして紡いだ攻撃だった。
プリンセス・エメラルドは大地に失墜していく。渾身の一撃であったが、まだ健在であろう。額から流れ落ちる汗がひとしずく。
宝石の国に落ちていく。
風が頬を撫でる。
その唇が紡ぐ。わたしたちは負けない、と。
それは新たに綴られた言葉。確固たる信念そのものであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
いえ、あなたもオブリビオン。過去の産物ということは一度は滅びたのでしょう? 不変のものなど、ありはしません。
敵はもちろん、回避の際に邪魔になる物体やこちらに倒れてくる物体まで透明に……これは、思ったよりも厄介な……!
デリンジャーを手に氷の弾丸を地面に撃ち、氷が割れるのを見る、あるいは音で敵の位置を判断し攻撃を回避、こちらに倒れこんでくるなどする透明な物は『第六感』で回避。戦闘中に違和感を感じたらその方向にも氷の弾丸を。透明になった物を凍らせることで可視化します。
時間を稼ぎ準備が整ったら【シェイプ・オブ・フリーズ】を。凍らせて動きを鈍らせつつ可視化し、両手のデリンジャーで氷の弾丸を撃ち込みます。
満天を埋め尽くさんばかりの桜色の魔法光線が宝石の国に光の乱反射を生み出す。
あらゆる者が桜色の光に飲み込まれる。それから逃げることは叶わない。それは、猟書家『プリンセス・エメラルド』であっても例外ではない。
皇帝乗騎―――インペリアル・ヴィーグルが失墜し、そのまま『プリンセス・エメラルド』は外へと脱出する。
召喚されたそれは霧散し消えていく。オブリビオンである彼女が呼び出しものもまた過去の化身。ユーベルコードを解除すれば、霧散し消える運命である。
「この私を、墜とした……―――この、私を! 新たなる銀河皇帝たる私を―――!」
許せない。
不変たることが皇帝継承規約であるというのであれば、己こそがそれに相応しい。
変わらない。姿も、形も、何もかも。翡翠の輝きであっても永遠そのものである。だというのに、猟兵はそれを理解しない。
「私は不変たる唯一。無二なる存在なのです。その私を地に墜とすなど、万死に値します。猟兵は、皆、極刑に……」
その言葉は最後まで紡がれることはなかった。
怒りに我を忘れていたとしても、その意識は、あらゆる戦いへと向けられている。彼女を地に叩き落とした猟兵がいるのであれば、この戦場に集った猟兵は一人であるはずがない。
「いえ、あなたもオブリビオン。過去の産物ということは、一度滅びたのでしょう? 不変なものなど、ありはしません」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は宝石の国に降り立ち、そう断言する。
不変たるものはない。それは嘗ての銀河皇帝が記した皇帝継承規約がどれだけの効力を持つのかわからない。けれど、不変はない。どれだけ頑強なるものも、栄えたものも、必ず変わっていく。劣化してくし、滅びていく。
何もかもが時間というものの前には砂上の楼閣そのものである。
「いいえ、ありますとも。たった一つの例外。私こそが不変の象徴。変わらぬもの……滅びを知らぬ者に滅びを語られるなど、不快です」
その翡翠の輝き放つ身体が消えていく。セルマの瞳に映っていたプリンセス・エメラルドの身体が全く視認できなくなる。
銃口を向けていたというのに、まったく反応できぬままに、その姿は完全に彼女の視界から消えていた。
「姿を消すユーベルコード……ッ、これは、思ったより厄介な……!」
ただ姿を消すだけならば、まだよかったのだ。放たれた氷の弾丸が地面へとぶつかり、その宝石だけの大地を凍らせる。薄氷の如き氷であるが、プリンセス・エメラルドが移動する度にひび割れるために、彼女の姿が見えずとも存在を感知できる。
そう踏んでいたのだが、甘かった。
何かが空を切る音がする。セルマがもしも、狩り人でなかったのなら。その身に宿した育ての親―――師匠との記憶がなければ、この時点で詰んでいた。
「―――ッ!」
もともと持っていた素質もあるのだろう。
だが、それは数々の経験、教えによって磨き抜かれていた第六感とも言うべき感覚。今、ここで足を止めては駄目だという直感がセルマを走らせる。次々と氷の弾丸をデリンジャーから大地に放つ。
違和感。
それがセルマの視界に張り付くものだった。宝石だらけの国において、透明な姿になるということがこんなにも恐ろしいものであるとは厄介であるという感覚以上に思わなかった。
だが、それでも彼女は違和感を確信に変える。走る。
彼女がいた場所へと墜ちる何か。それは宝石の塊であった。プリンセス・エメラルドは、大地が凍結されるや否や、その場に留まってセルマを遠距離から宝石の塊の投擲に寄って圧殺する算段だったのだ。
「なんて、脳筋な―――ですが!」
放たれる氷の弾丸。
見えないのであれば聞けばいい。風を斬る音。物体が空気を押し、斬る音。それは彼女の感覚によって捉えられ、放たれた氷の弾丸が凍りつかせることに寄って不可視の物体を可視化させる。
「それはもう見切りました―――ここは、私の領域です」
シェイプ・オブ・フリーズ。それは触れたものを凍りつかせる氷雨を降らせるユーベルコード。
その氷雨が振る戦場は氷点下と同じ環境に変化する。
どれだけプリンセス・エメラルドが不可視なる存在へとなろうとも、触れたものを凍りつかせる雨を避ける術はない。
「凍りつく……! これはユーベルコード……! おのれ、猟兵……!」
未だ姿は見えない。
けれど、雨に触れたプリンセス・エメラルドが凍りつき、軋む音が聞こえる。氷に覆われ、霜が降りる人型が見える。
ならばもう、セルマは己に宿った第六感に頼るべくもない。
なぜなら、もう視えているからだ。
「言ったでしょう。不変なものなどありはしない。何もかも変わって滅びて消えていくからこそ、尊ぶべきものなのです。滅びを知らないといいましたが……」
放たれる氷の弾丸が氷結したプリンセス・エメラルドの体を穿つ。
ひび割れる氷と、砕ける翡翠。ユーベルコードが解除され、その瞳が交錯する。
「滅びであるのならば、何度も見てきましたよ。貴方たちオブリビオンが霧散し、骸の海へと還るという滅びを―――」
デリンジャーの引き金が引かれ、氷の弾丸が再びプリンセス・エメラルドを穿たんと迫る。
だが、その弾丸が全て命中することはなかった。
飛び退り、弾丸に背を向けていくプリンセス・エメラルド。逃げる、ということは、この氷点下の戦場に適応できないのだろう。
無理に追いすがることはしない。今の自分にはそれが無理だとわかる。だが、打撃は与えた。後続の猟兵たちに任せる。それもまた戦術の一つだ。
「たった一つの確かなもの……それは不変ではなく、滅び、です。どんな存在にも必ず訪れるもの」
氷点下の宝石の国にセルマの白い息が、吐き出される。
まだ迷宮災厄戦は終わらない。次なる戦場を目指して、彼女は氷結した大地を踏みしめるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
童話の世界にSFは似合わない。プリンセス・エメラルド――あなたには疾く骸の海へお帰り願う。
敵艦は当然上空から砲撃をしてくるはず。なら「地形の利用」で宝石の木々に身を隠して移動するわ。
その間に「式神使い」で折り鶴の式を飛ばして攪乱狙い。
砲火が一旦止めば、飛鉢法を使って「空中戦」。砲撃の第二波をかわしながら上昇。小回りはこっちが上みたいね。
さあ、こっちの番よ。「全力魔法」雷の「属性攻撃」「衝撃波」「範囲攻撃」を乗せた、九天応元雷声普化天尊玉秘宝経。
宇宙戦艦なんて電子機器の塊みたいなもの。その外壁を打ち抜いて内部に電撃を走らせることが出来れば落とせる!
後はエメラルド姫に急降下から「串刺し」の一撃を。
氷結した大地を踏み砕くようにして疾駆する翡翠の姿があった。
それは猟書家『プリンセス・エメラルド』であった。桜色の魔法光線に失墜させられ、氷点下の中弾丸に寄って、その身を穿たれた。
あの氷点下の氷結戦場に適応した猟兵とことを構えるのは、あまりにも不利な状況であった。駆ける。
だが、あれで猟兵が最後であるとは思えなかった。
「忌々しい……私の不変たる力を理解しないとは度し難い……!」
猟兵個人個人であれば、打ち破るのは容易いだろう。だが、彼等は自分たち猟書家の力を把握した上で立ち向かってくる。
それは強大なる困難たる壁に挑むようなものだ。高さもあれば、厚みもある。凡俗なる者であれば、早々に諦めたであろうし、そもそも立ち向かうという発想にすら至らない。
だが、猟兵は違う。
「童話の世界にSFは似合わない。プリンセス・エメラルド―――あたには疾く骸の海へとお帰り願う」
氷結の戦場から遠ざかろうとするプリンセス・エメラルドを追う、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)の言葉が背中から響く。
振り返って、自身を追う猟兵の姿を視認したプリンセス・エメラルドの瞳が憤怒に燃える。忌々しい。どこからでも湧き上がるようにして出現する猟兵。
あらゆる場所に、あらゆる戦場に現れる彼等猟兵にプリンセス・エメラルドは苛立っていた。
「その不遜なる物言い。後悔しなさい……来なさい、プリンセス・エメラルド号!」
掲げた翡翠たる腕が煌めく。
次の瞬間、直情より放たれるはエメラルド色をした破壊光線。
宝石の国に木々に身を隠しながら、ゆかりは駆け抜けるプリンセス・エメラルドを追う。その頭上より放たれた破壊光線は、ゆかりの直ぐ側へと着弾し宝石の破片を撒き散らす。
爆風と共にゆかりの背に降り注ぐ宝石の破片。
「サイキックエナジーを消耗してしまいますが、致し方ありません。猟兵はやはり徹底的に叩くべし……塵も残らぬと知りなさい、猟兵―――!」
さらに降り注ぐ火砲から放たれる破壊光線の雨。
ゆかりは宝石の木々に身を隠しながら、折り鶴の式神を大量に飛ばし、狙いを定めぬようにと撹乱する。
次々と折り鶴の式神が破壊光線に穿たれていく。だが、ゆかりもまた身動きが取れないほどの砲火は凄まじい。
「いくらなんでも、これは、やりすぎでしょう! なんてデタラメ!」
サイキックエナジーを使っている以上、この砲撃が無限に放たれるということはない。必ずどこかで息切れする。
激しい運動をした人間と同じように、必ず大きく息継ぎをするように砲撃が止まる。その瞬間を見逃さず、ゆかりは鉄鉢に乗って飛翔する。
撹乱するためにはなった式神の尽くは破壊光線に撃ち落とされてしまった。
「ここからはあたし次第ってわけね! いくわよ!」
鉄鉢に乗って飛翔するゆかりを狙うプリンセス・エメラルド号の火砲。
その砲門の数は圧倒的であった。下から見ていただけではわからない、ハリネズミか剣山の如き砲門。
あらゆる角度から放たれる破壊光線は、どこにも逃げ道がないかのように思われた。
だが―――。
「それだけの砲門、一斉に全て放つなんてことはできないでしょう!」
次々と放たれる破壊光線。けれど、その放つタイミングは同一ではない。冷却するため、またはサイキックエナジーを補充するため、タイミングをずらしている。
ならば小回りの効くゆかりに分がある。次々に火線の嵐をかいくぐり、プリンセス・エメラルド号へと肉薄する。
「あの砲撃の数を躱すのですか―――! ならばッ!」
砲門が変形し、巨大な大砲へと変ずる。サイキックエナジーを徒に消耗するのではなく、出力を上げた広範囲の砲撃にして、ゆかりを消し去らんとするのだ。
充填されていく大砲の輝きを見た瞬間、ゆかりは鉄鉢もろとも突っ込むように、プリンセス・エメラルド号へと飛翔する。
「この時を待っていたのよ! さあ、こっちの番よ。九天応元雷声普化天尊! ―――疾っ!」
ゆかりはこの一撃に掛けていた。
砲撃の雨を躱し続ければ、きっと相手は勝負を急くであろうと考えたのだ。それもそうだ。銀河皇帝になろうという者が、一人の猟兵に徒に時間を掛けられない。それは己自身が銀河皇帝に相応しいと自負するのであればなおさらだ。
大砲主義此処に極めりだ。
宇宙戦艦、プリンセス・エメラルド号の直上に飛来する鉄鉢。その上から放つは、ユーベルコード、九天応元雷声普化天尊玉秘宝経(キュウテンオウゲンライセイフカテンソンギョクヒホウキョウ)。
その一撃は、どれだけの大口径の大砲の威力も叶わぬ雷撃。
視界を明滅させるほどの苛烈にして激烈なる落雷の一撃。それは宇宙戦艦の外壁を穿ち、炉を打ち貫いて爆散させることはできないかもしれない。
そもそも、強力な外壁に守られた宇宙戦艦を一撃で破壊できるとは思っていない。だが、ゆかりの狙いは其処ではない。
「宇宙戦艦なんて電子機器の塊みたいなもの。その外壁くらいなら、ぶつ抜くことはできるし、その内部に電撃を走らせることができる! 全部絶縁処理なんて出来てないでしょうし―――」
あたしの雷撃は、そんなに軽いものではない。不敵に笑う紫の瞳が放った雷撃は、宇宙戦艦の硬い外壁を打ち抜き、迸る電撃でもって戦艦内部を蹂躙する。
あらゆる電子計器や、戦艦を航行させるために必要な制御基板を尽くダウンさせる。
そうなれば、後は宇宙戦艦と言えど、墜ちるほかない。
「ばかな、あれだけの外壁を溶解させた―――ハッ!」
驚愕に見開かれたプリンセス・エメラルドを襲うは紫電の如き薙刀の一撃。串刺しにせんと放たれた一撃は、プリンセス・エメラルドの長い髪を砕く。
溢れるサイキックエナジー。髪は乙女の生命であると言えるが、その身に蓄えた膨大なサイキックエナジーを貯蔵するためには、エメラルドで出来た体であるプリンセス・エメラルドにとっては多大な損害を与えたに等しい。
「惜しいッ! もう一撃―――」
ゆかりがさらなる一撃を見舞おうとした瞬間、沈黙させたはずの宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号より砲撃が降り注ぐ。
もう復旧したのかと目をむくが、敵もタダでは転ばないらしい。ゆかりの雷撃をやり過ごした砲門が生きていたのだろう。
これ以上深追いはできない。引き際を誤っては、どちらが滅殺されるかわからない。
だが、サイキックエナジーの大半は奪うことができた。今はこれでいい。
猟兵の戦いは一人の戦いではない。
一人で戦う事のほうが稀である。今倒せなくても、次につなげることができる。それが猟兵の戦いであり、強さ。
それを再確認して、ゆかりは空飛ぶ鉄鉢に乗って、さらなる戦場へと飛び去っていくのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ソナタ・アーティライエ
不変なるものなんて存在しません
貴女を相手に、それを証明してみせます
音を消せないのであれば
この耳と、培ってきた経験を活かした第六感で居場所や攻撃の予兆を察知し
身に纏うオーラでの防御と結界の守りでダメージを軽減します
初撃をしのげましたら
アマデウスの変化した竪琴を手に、命溢れる楽園の歌を歌い奏で
周囲に存在する宝石たちを、3種の属性をそれぞれ付与した光の蝶の群れへと生まれ変わらせます
[結界]の蝶で自身を守り
[探知]の蝶で姿を消した対象の居場所を探り
[衝撃]の蝶で激しく打ち据え打倒します
他の方との共闘・アドリブ歓迎です
墜ちる宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』と砕け散る翡翠の髪。
猟書家『プリンセス・エメラルド』の翡翠で出来た髪が猟兵の一撃に寄って砕け散る音が宝石の国に響き渡る。大地に失墜したとしても、未だ宇宙戦艦は健在。いつまたあの砲火が放たれるやもしれない。
「おのれ……! この私の髪を、よくも!」
砕かれた翡翠の髪を振り乱して、プリンセス・エメラルドは咆哮する。それは、己が簒奪せしめんとする世界、スペースシップワールドへの道行を阻む猟兵という存在に対する憤怒であり、怨嗟であった。
「不変たる私の髪に、玉体に傷を入れるだけでは飽き足らず、あまつさえ私を倒すなどと……!」
その言葉は傲慢そのものであったが、その傲慢を押し通すだけの力を持つのが猟書家というオブリビオンである。オブリビオン・フォーミュラ無きあとの世界を手に入れ、己が支配するという欲望に邁進する姿は、猟兵にとって脅威以外の何者でもない。
「不変なるものなんて存在しません」
それは静かに宝石の国に響き渡った。
ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)の白い髪が風になびき、青い瞳が翡翠の体を持つプリンセス・エメラルドを見据えた。
その姿はどちらも美しいものであったが、決定的な違いがある。猟兵とオブリビオン。互いに姿形は同じ人型のものであったとしても、その生命の有り様は決定的に違う。
「貴女を相手に、それを証明してみせます」
彼女の青き瞳には意志が宿っていた。不変なるものはない。何もかもが変わっていくから、時間は過去を排出して進んでいく。
過去の化身たるオブリビオンであったとしても、それは変わらない。不変であるように見えるだけであって、不変そのものではない。
その意味では銀河皇帝も、プリンセス・エメラルドも例外ではない。だから、滅びた。
「猟兵風情が、知ったような口を―――」
プリンセス・エメラルドの姿が消えていく。猟兵達の攻撃にさらされて消耗しきっている今は姿を隠し、回復に務めることが鮮血であると判断したのだろう。
完全なる姿の隠蔽。それだけではない。彼女が持つユーベルコードの力は、自分自身だけではなく、己の敵に害を為すものまで無色透明にしてしまう。
風を斬る音を効いた。
ソナタのミレナリィドールたる耳が捉えたのは、そんな音だった。何か思い物体が空気の層を押しやって鳴る音を響かせながら自分に迫っている。
「何か、飛んで―――ッ!」
彼女の青い瞳が見開かれる。何か、投擲されている。そう悟ることができたのは、ソナタの持つ第六感と培ってきた経験故であろう。
とっさに飛び退ると、自身がいた場所に重い音を立てて沈み込む透明な何か。それは徐々に透明化を解除され、姿を表す。
投擲されたのは巨大な宝石の塊。この宝石の国にある岩の如き塊の宝石を透明化して投げつけてきたのだ。
次々と響く風切り音。駆け回る。けれど、目に見えぬものを躱し続けることは困難である。けれど、その身に纏うオーラがただの物体の投擲に破られるわけもない。
強固なオーラはソナタを護り、初撃を凌ぐ。
「アマデウス、おねがい!」
ソナタの傍らに飛んでいた銀竜アマデウスが竪琴へと姿を変じる。その白磁の如き指先が奏でるは、神理絃奏『幻創庭園』(イノリエガクハカナキラクエン)。
その旋律を聞くものは無機物であろうと彼女の味方である。
周囲に点在する宝石の塊達が次々と光の蝶へと姿を変えていく。
奏でる度に蝶たちの姿は増えてき、眩い光を放っていく。群れ為す蝶たちはソナタを護るように展開し、包み込む。
「いつかは醒める幻と知りながら、それでも誰もが夢をみる―――」
それは夢見る生命であるからこそ、見果てぬ夢として追い求め続けることができる。立ち止まる者もいるかもしれない。死して尚求める者だっているかもしれない。
不変なるもの。
それを求めるのは、己の未来を見るからだ。変わっていく未来。変わらない未来など、どこにもない。誰も彼もが変わることから逃げられることができないように、未来の先にある絶対的な執着もまた変えることができない。
光の蝶が姿を消したプリンセス・エメラルドを囲い込む。
「この蝶は、一体……何故、私の位置が……まさか、視えているというのか!」
光の蝶たちが、その眩い姿で光を乱反射させ、その光の奥に翡翠の輝きを現出させる。目もくらむような光の中に、その翡翠を見つめる蒼い瞳があった。
「不変を夢見ることは否定いたしません。ですが、不変の先には停滞しかないでしょう。その先で貴女は何をするのでしょう。求めるものは支配しかないでしょう。私はそれを許さない―――蝶よ、光の蝶よ」
放たれるは光の蝶たちの乱舞。衝撃の力籠められた蝶たちが、光によって現出したプリンセス・エメラルドへと殺到し、その衝撃の力で持って次々と打ちのめしていく。
吹き飛ばされ、砕かれ、徐々にソナタから離れていくプリンセス・エメラルド。
その姿を見送るように奏でられる仮初の生命の鼓動。
光の蝶たちが霧散し、元の宝石へと戻るまで、ソナタは見送り続ける。爪弾く竪琴の弦が寂しげな音を立てる。
不変はない。己の心でさえも変わっていく。人と接するのが苦手であった自分でさえ、自分を変えたいと思うのだ。
それを自分が知っている。
ソナタは歩みを止める理由など持っていない。いつだって彼女は自分を変えたいと思っている。再会と歌の出会いを求めて、世界を旅する。
こんなところで止まっていることなどできない。青い瞳は、次なる戦場へと向けられた―――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
厄介な相手だけど気を引き締めて戦うよ
体温と音は消せないから助かったよ
物質は必ず赤外線を発しているはずだから
ゴーグルの熱線映像で対象の位置を把握
イヤホンの集音機能で音の発生位置を把握し
ゴーグルにデータリンクして可視化
どういう攻撃をしてくるかわからないから
念のため煙幕手榴弾を複数持ち込み
煙の動きで可視化する事も考えよう
自分は熱線映像で煙越しに見えるからね
攻撃を凌いだら女神降臨を使用
ガトリングガンの射撃と使い魔の石化で攻撃
ただの石になってみるのもいいんじゃないかな
ところで永遠に年を取らないからといって
あの際どい衣装はどうなんだろう
ええ、少しは年を考えるべきだと思いますの
…このドレスについて言う事は?
光の蝶の放つ衝撃に圧されるようにして、猟書家『プリンセス・エメラルド』は距離を離される。
一人ひとりであれば問題ないはずの実力差である猟兵。けれど、その一人の猟兵によってプリンセス・エメラルドは圧されていた。現にこの自身と敵に害をなす物体を透明解させる能力は初見で見破られるはずがないというのに、すでに2度、それも違う猟兵に破られていた。
「クリスタライズ・オリジナルが破られる……? 何故、私のユーベルコードが破られてしまう?」
考えていた。
確かに透明化しても物音や熱は遮断できない。だからといって、視えない物体に攻撃されて躱すことができるなど、そんな理不尽あっていいはずがない。
「厄介な相手だと思っていたけれど、体温と音は消せないなら助かったよ」
その声は、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)のものであった。彼女は多機能イヤホンと多機能ゴーグルによって、姿を消したプリンセス・エメラルドの姿を完全に捉えていた。
多機能イヤホンは全方位・指向性の集音や音声のフィルタリングを可能にする。さらにそのデータをリンクし、多機能ゴーグルから得られる情報と重ねていけば、如何に姿を消していようとも、その所在は割れる。
「物質は必ず赤外線を発しているからね。ゴーグルの熱線映像と集音機能で音の発生源を把握すれば―――」
そんな彼女へと降り注ぐ巨大な質量を持つ宝石の塊。
ほら、と晶はゴーグルの中で瞳を細め、自分に何が迫っているのかを正確に把握していた。視えなければ対処のしようがない攻撃も、視えているのならば、こんなにも単調な攻撃に当たる猟兵は存在しない。
「如何なるからくりで、我がクリスタライズ・オリジナルを見破った! 猟兵!」
次々と宝石の塊の投擲を躱す晶にプリンセス・エメラルドがじれて咆哮する。
そこへ晶の投擲した煙幕手榴弾が周囲を煙る戦場へと変えていく。こうなれば、晶にはプリンセス・エメラルドの挙動は視えていても、プリンセス・エメラルドからは晶が視認しにくくなる。
どういった攻撃をしてくるかわからないゆえに準備した手段であったが、効果的に戦場をコントロールしはじめていた。
「うぅ……小っ恥ずかしいけど、我慢我慢。いちいち、そんなこと敵に教えるわけないでしょ」
ユーベルコード、女神降臨(ドレスアップ・ガッデス)が発動する。
彼女の体を包む宵闇の衣。それは可憐なる黒のドレス姿。ふわりとスカートが翻り、フリルが揺れる。
さらに使い魔が周囲を飛び回り、晶のもつ携行型ガトリングガンが放つ火線が煙幕の無効にうごめくプリンセス・エメラルドを打つ。
「ただの石になってみるのもいいんじゃないかな。今は宝石の姿をしているかもしれないけれど、不変っていうのにこだわっているのなら、ただの石だって構わないよね」
放たれる使い魔の状態異常……石化の力がプリンセス・エメラルドを襲う。
「我がこの翡翠の輝きをただの石と同じというか!」
使い魔達が次々と叩き落される。けれど、その隙に威力の上がった携行型ガトリングガンの弾丸が、次々とプリンセス・エメラルドの体をうがっていく。
強烈なる弾丸の威力に悲鳴を上げるプリンセス・エメラルドの姿が透明化を解除され、姿を露にする。
「ところで永遠に年を取らないからといって、あの際どい衣装はどうなんだろう」
晶の疑問は尤もであったかもしれない。
しかし、仮にもプリンセスと名乗るのであるから気にする必要もないのかも知れない。だが、年齢を考えればどうなのだろうか。
内なる邪神が『少しは年をかんがえるべきだと思いますの』とささやく。
ガトリングガンの砲火にさらされながら、プリンセス・エメラルドが飛び退っていく。深追いは禁物であると理解している晶は相手に打撃を与えたことを確認して多目的ゴーグルを額へと上げて息をつく。
内なる邪神はプリンセス・エメラルドの格好に年を考えるべきだと言った。
けれど、晶に取ってそれは盛大なるブーメランのごとく返ってくる言葉だった。
「……このドレスについて言うことは?」
ひらひらの可憐なるドレスの裾をつまんで、そう言葉をこぼす。
肉体的性別は女性であっても、中身は男性である晶にとって、この姿は小っ恥ずかしいどころではないのだが、それももう慣れてしまっているような自分がいる。
内なる邪神がてへぺろっとしている姿が見えるような見えないような……そんなやり取りをしながら、晶は次なる戦場へと駆けていくのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
亞東・霧亥
死んだはずの皇帝が現れたら、どんな反応をするだろうか?
・先制対策
【ダッシュ、忍び足、残像、見切り、目立たない】
緩急自在の歩法で数多の残像を作り、的を絞らせない。
また、残像同様に気配を絶ち、反撃の機会が得られる瞬間まで見切る。
【UC】
過去の激闘から「銀河皇帝」に変身し、厳かな声音で話し掛ける。
『其の方、余の顔を見忘れたか?余が死したと嘯き帝位を簒奪せんとした謀、万死に値する。神妙に腹を切れ!』
多分抵抗するので、銀河皇帝のUCマインド・クリエイション(POW)を使用。
宇宙戦艦はマインドに任せる。
・グラップル、部位破壊
残るはエナジー不足のエメラルドのみ。
致命傷を与えるべく襲い掛かる。
「死んだはずの皇帝が現れたら、どんな反応をするだろうか?」
亞東・霧亥(峻刻・f05789)の独白に応える者は宝石の国には存在しなかった。どこを見ても宝石だけで出来上がった国は、ある意味異様なる光景であり、その綺羅びやかな光景は、欲望あるものにとって魅力的に見えたことだろう。
だが、霧亥にはあまり興味のないものであったのかも知れない。彼の興味は、かの独白のみ。
今、まさに宝石の国を掛けている猟書家『プリンセス・エメラルド』を追い、霧亥は駆け抜ける。
彼女が目指す先にあるのは、宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』が失墜した場所。猟兵のユーベルコードの一撃に寄って失墜した宇宙戦艦が、彼の見ている前で浮上していく。その船首の先にプリンセス・エメラルドが立ち、自分を追う猟兵である霧亥を見下ろす。
「私を追うとは不遜。我が『プリンセス・エメラルド号』の砲火の前に屈するがいい、名も知らぬ猟兵よ!」
雷撃のユーベルコードによって機能を停止していた宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』が再び空へと舞い上がり、その多数の砲門を追いすがる猟兵へと向ける。
放たれるエメラルド色の火線が宝石の国を蹂躙する。
絶え間ない砲火を霧亥は独自の歩法でもって、多数の残像を作り出しながら躱す。
残像を追いかける砲門の先。
だが、数が多すぎる。いくら砲身を同時に使うことできないと言えども、その火力の凄まじさはさすがであると言う他無い。
「まるでハリネズミだな……」
エメラルド色のハリネズミ……それを思わせるような弾幕の数は、たしかに圧倒的だった。けれど、宇宙戦艦たる巨大なる『プリンセス・エメラルド号』が狙う猟兵はたった一人。それは過剰とも言える砲火であったが、的を絞らせないように宝石の国を駆け抜ける霧亥には当たらない。
「逃げ惑え、猟兵! 私を此処まで追い詰めたことは褒めてあげましょう、ですが、私は銀河皇帝を継承する者! 容易く倒せるとは思わぬことです!」
プリンセス・エメラルドの声が響く。高らかに、これより相成る絶対者としての自負であろうか。見下ろす眼下にて火線を躱し続ける猟兵の姿を哀れむように見下すのだ。
「穢れをもって穢れを制す。その様な戦い方もあるだろう……」
ユーベルコード、屍山血河(シザンケツガ)。
それは時を遡る力の発露が見せる影法師。過去、彼が対峙した強敵―――即ち、オブリビオン・フォーミュラ……銀河皇帝の姿へと変ずる。
その力は爆発的な上昇を見せ、一瞬であれ、その姿を視認したプリンセス・エメラルドをたじろがせる。
「其の方、余の顔を見忘れたか?余が死したと嘯き帝位を簒奪せんとした謀、万死に値する。神妙に腹を切れ!」
それは荘厳なる声。
威圧感を共なう絶対者としての声であった。銀河皇帝。それこそが、プリンセス・エメラルドの目指す者であり、受け継ぐと決めた者の姿。
だが、オブリビオン・フォーミュラは滅びた。絶対であり不変であると定義した己の帝国継承規約ですら、その滅びを止めることはできなかった。
「ばかな―――、そのようなハッタリで私を停められると思うな!」
滅びた者が再び姿を表す。
それがオブリビオンである。過去の化身、過去より滲み出た怪物。だからこそ、銀河皇帝が自分の前に姿を表すこともあるかもしれないという一分の可能性をプリンセス・エメラルドは捨てきれなかった。
その動揺が、一瞬の隙がすべてを決する。
銀河皇帝の幻影が見せるは、巨大なる思念兵器マインドの影法師。宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』の遜色ない巨体が組み付き、再び宇宙戦艦を大地に失墜させる。
地響きが鳴り響き、その最中、霧亥は船首へと躍り出る。握りしめた拳。その力の籠められた一撃が、プリンセス・エメラルドの胴を薙ぐ。
「サイキックエナジー不足なんだろう。もうわかっている……」
放たれた拳の一撃は、船首よりプリンセス・エメラルドを吹き飛ばす。砕けた髪、ひび割れた体。
そのどれもが先行した猟兵達の攻撃に寄るものであったことだろう。そこへさらなる一撃が襲えば、その身に刻まれた亀裂をさらに深くする。
宇宙戦艦を抑えいてたマインドの姿が消えていく。
ユーベルコードを解除しなければ、彼の寿命が削られていく。プリンセス・エメラルドには致命傷ではないが、手痛い傷を負わせた。
後は後続の猟兵に任せる。自身の寿命を削るユーベルコードであるがゆえに能力は凄まじい。代償に見合ったものであるが……。
「……銀河皇帝を継承する者とは言え、先代は余程恐ろしかったと見える……そういう意味では小物だったな、プリンセス」
それは吹き飛ばされ、退散したプリンセス・エメラルドを評する言葉だった―――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
……銀河帝国、もう滅んでるから継承も何も無いよな……
…跡を継ぐよりもうちょっとやる事あるんじゃないの……?
さて…透明化したものが襲ってくるのは厄介だけど…視覚を誤魔化すだけだから…音響・振動センサを起動…
…これにより透明化してるものの位置・形状を把握してそれが何か、当たりを付けておこうかね…
…隠れているものの攻撃方法に応じて箒に乗っての回避か障壁での防御かして凌ぎながら…【縋り弾ける幽か影】を発動…
…後は透明化した「何か」の攻撃を凌ぎながら…この場での一番の脅威、エメラルドに自爆機能付きガジェットが辿り着くまでの時間を稼ぐとしよう…
…見えない攻撃をするのはそちらだけではない……という事だね…
吹き飛ばされる体。
胴へと凄まじい衝撃が走り、その一撃の重さを知らせる。猟書家『プリンセス・エメラルド』はあまりの攻撃の重さに己の身体がひび割れたことを自覚する。
「―――っ、ぐ……たかが猟兵と侮りすぎたか……!」
遠くでは宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』が大地へと失墜する姿があった。何度も叩きつけられた宇宙戦艦の装甲は未だ雷撃に寄って穿たれたものだけ。
まだ勝機はある。こんなところで立ち止まっている暇はないのだ。銀河帝国。その全てを手に入れるためにプリンセス・エメラルドは止まれない。
如何に猟兵の数が多かろうが、フォーミュラ無き世界を統べることができれば、何もかもが帳消しである。
「私は銀河帝国を、銀河皇帝を継承する者……猟兵など何するものぞ……!」
「……銀河帝国、もう滅んでるから継承もなにもないような……跡を継ぐよりもうちょっとやる事あるんじゃないの……?」
その言葉は唐突なる言葉だった。
プリンセス・エメラルドが振り返る。そこにいたのは、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)だった。
「また猟兵……どこにでも湧く。貴様たちは何も理解していない。私の野望も……!」
再びプリンセス・エメラルドの姿が消えていく。
完全なる姿の隠蔽。メンカルの目の前にいた姿が唐突に消えてしまう。それこそが、猟書家『プリンセス・エメラルド』のユーベルコードの力。
「さて……」
だが、メンカルは狼狽えない。そのユーベルコードの情報の仔細はすでに得ている。透明化したものが襲う。その恐ろしさと厄介さを理解しているが、だからといっても何も打つ手がないわけではない。
特にガジェット研究を専攻する彼女にとって、好奇心と知識欲は、その一族の中にあっても更に旺盛である。
電子型解析眼鏡『アルゴスの眼』。
それは様々な情報を収集するセンサーを持つ眼鏡である。メンカルの瞳であり、メンカルの耳であり、メンカルの感覚を拡張するガジェットである。
そのアルゴスの眼が拾い集めるのは音の響き、つまりは跳ね返りと振動の指向性である。
プリンセス・エメラルドの姿を消す能力がどれだけ優れていたとしても、音を消すことまでは出来ない。
物体が空気の中を動き回る時、必ず音が立つ。衣擦れの音、大地を踏みしめる音。そのどれもが微細なる情報であったことだろう。
「けれど、そんな小さな音でも、情報でも……存在するという証……」
手にした飛行式箒『リントブルム』に腰掛けてメンカルは宙へと舞い上がる。先行した猟兵達の戦いを見ればわかる。
プリンセス・エメラルドは透明化したとしても、直接的な戦闘能力に長けた猟書家ではない。
ならば、己の姿と『敵に害する物体』が見えないということを最大限に利用して攻撃してくるだろう。
「導き出される答えは、投擲。人型の生命体は、とにかく、遠くから攻撃することに執心する。己の手から離れれば……離れるほどいい。自分のみを危険に晒すことをしなくていいから……」
飛来する何か。
それを飛行する箒『リントブルム』に腰掛けながらゆうゆうと躱し続けるメンカル。
「何故、見える! 猟兵には何が見えているというのだ!」
苛立つ声が響く。
それは悪手だよ、とメンカルは小さく呟き、ユーベルコードを発動する。
「忍び寄る破滅よ、潜め、追え。汝は炸裂、汝は砕破。魔女が望むは寄り添い爆ぜる破の僕……」
それは、縋り弾ける幽か影(ステルス・ボム)。無数に展開された極めて発見しづらいガジェットの群れであった。
見えない宝石の投擲をアルゴスの眼で捉えながらメンカルは、姿見えぬプリンセス・エメラルドを視る。
「……見えない攻撃をするのはそちらだけではない……」
メンカルが何故、空に舞い、常に姿を晒し続けたのか。その理由をプリンセス・エメラルドはもっと早く考えるべきだった。
空へ舞うということは攻撃の標的にされる続けるということだ。目立つ上に、空からの攻撃を警戒する。
だからこそ、プリンセス・エメラルドは即座に彼女に対して見えぬ物体……宝石の投擲に寄って対処した。
だが、それは遅きに失するものであった。
攻撃することばかりに気を取られ、忍び寄る自爆ガジェットの存在に気がつけなかった。
「この場での一番脅威……それは貴女でもなければ私でもない……『それ』だよ」
瞬間、プリンセス・エメラルドの周囲で起こる爆発。
それはメンカルの放った自爆ガジェットが爆発した瞬間だった。連鎖的に次々と起こり続けるガジェットの爆発。
それは猛烈なる熱と衝撃で持ってプリンセス・エメラルドを襲う。油断していたわけでもなければ、慢心していたわけでもない。
だが、メンカルの一手が透明化という絶対なるユーベルコードを上回っただけである。爆発の連鎖を箒の上から見下ろしながらメンカルは高く、高く舞い上がる。
次なる戦場を目指す。もう、メンカルの瞳、アルゴスの眼にはプリンセス・エメラルドは脅威であると映っていなかった。
後続の猟兵たちも続々と駆けつけてくれている。迷宮災厄戦はまだ続く。後は任せて、自分はさらなる戦場へと駆けなければならない。
爆炎上がるガジェットの爆心地を背に、メンカルは飛翔するのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
椎宮・司
最長老でプリンセス…なるほどな?
それなら34歳のあたいでも小町で通るってことだな?(年齢気にしてる)
安心してお相手しよう
「お互い、年増って言われないようにしないとねえ?」
先制攻撃は侵略蔵書での乗騎召喚で突撃か!
読み切れる速度だってんなら【擬・神懸かり】で対抗するサ!
高速移動で攻撃を回避
すかさずカウンターで攻の剣気を飛ばす
「そらそら! かわしてみな!」
連続攻撃で剣気を飛ばし続けて
プリンセスが焦れた時が勝負だ
相手の突撃に焦った振りをして
あたいの体勢を崩す
そこを狙わせるよ
「逸ったかい?」
こんな演技に騙されるなんて随分と懐が甘いようだ!
その隙逃すと思うな!
力溜めからのなぎ払い、乗騎ごと叩っ斬ってやる!
爆発の連鎖は終わりを見せ、その爆炎が上がる中心地に翡翠陰る身体を持つ猟書家『プリンセス・エメラルド』の姿があった。
髪は砕かれ、体中に穿たれた銃弾の跡、そしてひび割れた身体をもたげさせ、その手にした侵略蔵書『帝国継承規約』が風によって頁を捲くりあげた。
「ハァ―――……ハァ……ッ! おのれ、猟兵……我が玉体に傷を……よくも、よくも―――!」
召喚されるは皇帝乗騎―――インペリアル・ヴィーグル。彼女の2倍はあろうかという巨躯を身に纏い、宝石の国を疾駆する。
未だ後続の猟兵達が集まる戦場にあっても尚、その力、その威容は健在であった。どれだけ攻撃を加えられようとも不変を目指す彼女の野望を止めることは叶わない。
「私は、銀河皇帝を継ぐ者……こんな、こんなところで終われるわけがない。不変を、永遠を私の手中に収める時まで……!」
翡翠の身体が駆け抜ける宝石の森の中に一人の猟兵が立ち向かう。
「最長老でプリンセス……なるほどな? それなら34歳のあたいでも小町で通るってことだな?」
椎宮・司(裏長屋の剣小町・f05659)は、その口上が無ければ年齢のことなど気にならぬほどの美貌を持っているのに、敢えて年齢を口に出してしまうから、少し残念がられるということに気がついているのかいないのか。
きっとそれを口にすれば、『ほっといておくれ!』と一喝されることだろうが、今は誰も周囲にいないが故に司は刀を構える。朱拵えの野太刀。
「お互い、年増って言われないようにしないとねえ?」
それは一瞬の剣閃。交錯する司とプリンセス・エメラルド。互いの攻撃が互いの頬を掠める。
圧倒的スピードと出力。互いの信条は異なれど、その圧倒的な戦闘力差は明白。猟兵個人個人では猟書家には敵わない。
それはこれまでの戦いでも変わらない事実。
けれど、それでも猟兵達は強大なる敵を下してきた。それはなぜか。一人で戦っていないからだ。連綿と紡ぐ戦い。一人が打撃を与え、一人が覆し、一人が決定打を打つ。
そうして、猟兵達は戦いを重ねて強敵を打倒してきた。
「重ねた年月の意味など―――! 不変たる私の前には無意味な数字!」
皇帝乗騎、インペリアル・ヴィーグルの巨躯が反転し、司へと襲いかかる。初撃は躱した。けれど、完全に躱したわけではない。
インペリアル・ヴィーグルの拳の一撃はかすめただけで司の脳を揺らす。くらりと膝が傾ぐ。
「ぐらりとくるねい……けど、読み切れる速度さね。ならッ! 神様、仏様、椎宮様、ってね!」
司の体に纏うは椎宮神社の御守から解き放った神気。背後より迫るインペリアル・ヴィーグルの巨大なる拳。それを既のところで躱す。
空を切る巨拳。
「なっ―――!?」
プリンセス・エメラルドの驚愕の声が響く。確かに捉えたはずだった。だが、その拳は空を切り、司の姿を見失う。否。司は、その拳の上に立って振り返る。
「読み切れる速度……って言っただろう? そらそら! かわしてみな!」
カウンターの如き剣気が放たれる。飛び退りながら、放たれる剣気の数々は、インペリアル・ヴィーグルの装甲に傷をうがっていく。
「我が皇帝乗騎に傷を―――!」
突撃するように宝石の削れる粒子を撒き散らしながら、プリンセス・エメラルドが司へと突撃する。
それを待っていた。ずるり、と司の身体が崩れる。体制を崩したのだとわかると、エメラルドの瞳が歪む。
勝利を確信した顔。己の勝利が揺るぎないものであると信じている顔。
「―――逸ったかい?」
だが、その体制を崩す姿さえも司にとってはブラフ。力を溜める。体制を崩したのではない、前のめりに、それこそクラウチングスタートのように体制を整えたのだ。
こんな演技に騙されるなんて、と笑う。
対象的な笑い顔だった。かたや勝利を確信した顔。かたや、なにか楽しむようないたずらっぽい顔。
対象的でありながら、その両者を分かつのは、司の放った剣気の一撃。
「随分と懐が甘いようだ! その隙逃がすと思うな!」
貯めた力のままに振るわれる朱拵えの野太刀が振るわれる。
薙ぎ払われる剣気に寄って強化された剣閃がインペリアル・ヴィーグルの胴を薙ぎ払う。
司は、その薙ぎ払い真っ二つにしたインペリアル・ヴィーグルを背に鞘へと野太刀を納める。
「まあ、年増っていうのは余計だったねい……ま、ぶった斬った後じゃあ、言ってもしようないか」
司は爆炎吹き荒ぶ戦場を後に、新たなる戦場へと駆ける。
迷宮災厄戦は、オウガ・オリジンが最終目標だ。こんなところで止まってなんかいられない。
目指す先を見据えながら、司は宝石の国を駆け抜けるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ウィルヘルム・スマラクトヴァルト
「盛者必衰――永遠なんて、ありはしません。
クリスタリアンの最長老だろうとも、いや、なればこそ、
同じエメラルドのクリスタリアンとして貴女を討ちます。
そして、迷妄から解放して進ぜましょう!」
先制攻撃は「第六感」を働かせつつ砲撃の軌道を「見切り」、回避します。
避けきれない場合は、エメラルドの大盾で「盾受け」します。
例え盾だけで防ぎきれずとも、「オーラ防御」と「激痛耐性」で耐え抜きます。
「時間稼ぎ」に成功したらユーベルコード発動。
最高速度で飛翔し接敵しつつ、その速度を勢いに乗せて「ランスチャージ」を敢行です!
「世界を護る騎士として、その御身貫かせてもらう!
骸の海に……還れっ!」
帝国乗騎―――インペリアル・ヴィークルが両断され、爆炎の中に霧散して消える。それは侵略蔵書『帝国継承規約』の力に寄る召喚。その力の一旦であればこそ、何度でも召喚し、騎乗することができる。
だが、こう何度も打ち破られ続ければ、その持ち主である猟書家『エメラルド・プリンス』とて消耗していく。
爆炎渦巻く中より現れる彼女の姿はひび割れてこそいるが、未だ威容は健在である。その猟書家としての強大なる力の一旦は、些かの陰りもない。
どれだけ猟兵達が攻撃を加えようとも、その普遍を求める意志を削ることはできない。例えそれが金剛石であったとしても、エメラルドの体は砕け散ることを知らない。
「私は、皇帝継承者……スペースシップワールドを統べる存在……! 永遠を手に入れる。不変を手に入れる。変わらないからこそ、世界は私に屈服して然るべきモノであるのだから―――!」
それは傲慢そのものであった。
不変であることが銀河帝国を継承する条件。それに見合うだけの実力も、変わらぬ姿も、あらゆる意味でプリンス・エメラルドは満たしていた。
だが、今まさにそれが崩されようとしている。猟兵たちによって、その玉体という体はひび割れ、消耗していく。
「盛者必衰―――永遠なんて、ありはしません。クリスタリアンの最長老であろうとも、いや、なればこそ」
その前に現れたのは、ウィルヘルム・スマラクトヴァルト(緑の騎士・f15865)。同じ翡翠の輝き放つ姿は、対照的だった。
方やひび割れたプリンス。かたや傷のない緑の騎士。
「同じエメラルドのクリスタリアンとして貴女を討ちます。そして、迷妄から開放して進ぜましょう!」
ウィルヘルムが宝石の大地を蹴る。
だが、その彼を狙うのは大地に失墜させられた宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』の砲門である。放たれたエメラルド色の破壊光線がウィルヘルムを狙う。
砲撃の精度は凄まじい。もしも、ウィルヘルムに第六感が備わっていなかったのならば、その時点で終わっていたことだろ。
大地を穿つ一撃の威力を見れば分かる。
それだけで人が、猟兵が消し飛びかねない威力。それが宇宙戦艦の、『プリンセス・エメラルド号』の放つ破壊光線の力だった。
さらにハリネズミのように備えられた多数の砲門から放たれる破壊光線の数々。雨のように降り注ぐ砲撃の最中を駆けるウィルヘルム。
緑の大盾が破壊光線の一撃を防ぐも、防いだこちらの腕が軋みあげる。それほどの威力。オーラの力も重ねて対抗しても、それを撃ち抜いてくる一撃の重さ。
それがクリスタリアンの最長老たるプリンセス・エメラルドの力。きしむ腕が訴える痛みは、無視した。
「この程度の痛み―――貴女を野放しにすることに寄って虐げられる人々の痛みに比べれば!」
守らなければならない。虐げられる人々を。痛みから。それは己の中にある強迫観念の如き感情であったのかも知れない。
けれど、ウィルヘルムは曲げない。己の意志は誰かを護るために。そのために己は騎士として戦いに赴くのだから。
「この世界も……そこに住まう人々も……私が護るんだ!」
エメラルド色に輝くオーラがウィルヘルムを覆う。それは世界や他人を守ろうとする意志の強さに応じて力がましていく。
いまや彼の心は、その輝きをクリスタリアン最長老のプリンセス・エメラルドを凌ぐほどのものとして輝かせる。
「この光―――不変たる私を上回るだと―――!?」
うろたえるプリンセス・エメラルドへと肉薄するウィルヘルム。その速度は圧倒的だった。瞬時に間合いを詰め、その胴へと突きつけるは緑の斧槍―――ハルバードの穂先。
「硬い……! けれど! 私にも守るべきものがある! 世界を護る騎士として、その御身、貫かせてもらう!」
光の出力が増す。互いに同じエメラルドのクリスタリアン。立場が違えば、産まれが違えば、猟兵とオブリビオンでなければ……そうしたあり得たかも知れない可能性の全ては、詮無きことである。
無辜なる人々を傷つけるだけの存在であるのならば、ウィルヘルムは容赦はしない。槍の穂先が捉えたまま、圧倒的な速度で持ってプリンセス・エメラルドを宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド』の装甲板へと叩きつけ、打ち破るようにして内部へと叩きつける。
「この私が……最長老たる私がっ、一介の騎士ごときに―――!」
「誰かを護るのが騎士であるというのならば、それが貴女であったとしても―――! 骸の海に……還れっ!」
その体は船体の深くまで叩き込まれ、内部で盛大なる爆発と爆炎に巻き込まれる。
ウィルヘルムの身体が、宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』より飛び出す。爆発する内部から間一髪で飛び出すことが出来たのだ。
手応えあった。けれど、まだ彼女は戦うつもりなのだろう。
その爆炎の中であっても、不変を求める気概。そrうぇおウィルヘルムは否定する。永遠なんてない。
生命は永遠に続くことなどない。
だからこそ、愛おしく守らなければならないと彼は思うのだ。その思いが誰かの生命を護り、その誰かの生命がまた別の誰かを護る。
そうしてつながる輪が、いつしか巡って己の力となる。その環の中にオブリビオンは存在しない。
爆炎を背に、ウィルヘルムはさらなる戦場へと向かうのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
姫川・芙美子
永遠不変が理想ですか。
不老不死だからこそ、常に変わっていかないと澱むのです。
見えないものを見る「鬼眼」と【見切り】【第六感】で不可視の攻撃を見極めます。
鬼眼すら眩まされた時の為に全周防御。「黒いセーラー服」を護符に変え【結界術】で防御障壁形成。更に「鬼髪」を全身に纏わせる様に伸ばし【武器受け】で敵の攻撃を絡めとります。
【鬼包み】発動。鬼髪に込められた封印の妖力を増大。敵の能力を封印し、髪で【捕縛】して動けなくさせます。
姿を現し捕縛された敵の隙を狙って「鬼手」での攻撃。腕を非実体化させ鉱石の体を【精神攻撃】【鎧無視攻撃】。肉体が不滅でも精神の不変は不可能です。今、私もそれを学んでいる所なのです。
宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』へと斧槍の一撃に寄って叩き込まれた猟書家『プリンセス・エメラルド』は、爆炎の中から立ち上がり、宇宙戦艦の内部を進む。
所々に白煙があがり、火花が散る。あれだけ壮麗であった宇宙戦艦も、猟兵達の攻撃に寄って大地に失墜されられたままだ。
この屈辱は到底忘れられるものではない。ひび割れた身体、砕けた髪、そのどれもが猟兵に寄るものだ。
「許せるわけがない……私の玉体に傷をつけるとは……許されない。永久不変たる銀河皇帝の継承者たる私が、こんな―――!」
巨大な宇宙戦艦、その装甲を打ち破った穴から再びプリンセス・エメラルドは飛び出そうと構えた。だが、その穴の正面に人影が現れる。
「永久不変が理想ですか。不老不死だからこそ、常に変わっていかないと淀むのです」
そえは姫川・芙美子(鬼子・f28908)の姿であった。古風なる黒い学生服を纏い、襟巻をたなびかせ、黒髪を翻して現れた猟兵に、プリンセス・エメラルドは不可視たるユーベルコード、クリスタライズ・オリジナルを発動させ、姿を消す。
完全なる無色。
それがプリンセス・エメラルドの持つユーベルコードである。侵略蔵書でもなく、巨大なる宇宙戦艦の持つ火力でもない。彼女自身の能力。
「絶対なる不可視……ですが」
彼女の隠された左目が顕現する。その瞳は鬼の封印された瞳。見えぬものを視る瞳。
「なるほど、妖怪の類の瞳か―――だが!」
プリンセス・エメラルドの身体が宇宙戦艦の内部の壁や天上を蹴って、高速で迫る。いくら鬼の眼と言えど、目に見えぬものを視るという事以外は普通の瞳である。迫る猟書家の攻撃全てを見切ることができるわけではない。
「わかっています……貴方たち猟書家の攻撃……そのどれもが一個人、猟兵の力を遥かに凌ぐことは」
黒いセーラー服が護符に変じ、彼女を護る結界術となって展開される。防御障壁となった護符が燃え尽きるほどの一撃を受けながらも、さらに鬼髪が全身を包み込む。
放たれた拳が護符を焼き切り、芙美子へと迫る。鈍い衝撃。
鈍痛が体に走り抜ける。骨がきしむ。だが、目的は達した。
「貴方も一緒に封じます」
彼女の瞳が輝く。それはユーベルコードの輝き。鬼包み(オクルミ)―――それは彼女の髪に宿る妖怪の封印の力でもって、敵を包み込むユーベルコード。
「何―――私の、ユーベルコードが封じられるッ!?」
そう、それこそがこのユーベルコードの真骨頂である。捕縛するだけではない。ユーベルコードをも藤るのだ。
「妖力、最大―――……!肉体が不滅でも精神の不変は不可能です」
芙美子の声が宇宙戦艦の内部で響く。
それは事実だった。変わらないものはない。例え、死なない妖怪だとしても、その内なる精神は変わっていく。
変わらないものはない。
時間の流れがどれだけの力を持つのか、それを知ることすら人の身たる体には過ぎたるものである。
けれど、人の感情を糧とする妖怪は違う。不老不死なのだとしても、彼女のように変わっていく者もいる。
「そうあるべき、という勘定に身を任せて戦ってきました……けれど、それさえも変わっていってしまう。それは恐れるものではない……今、私もそれを学んでいるところなのです」
鬼手が振るわれる。
怪力によって放たれた拳は、鬼髪に捕縛されたプリンセス・エメラルドの体を打つ。吹き飛ばされ、船外へと落ちていくプリンセス・エメラルドを追って芙美子は外へと飛び出す。
見失ってしまったが、あれだけの痛手を追わせたのだ。
他の猟兵たちも集まってくるだろう。今は自分にできることを。『そうあるべき』から変わっていく己の中にあるものが、成長していく。
それを感じながら、芙美子は前を向き、新たなる戦場へと駆け出すのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
雪・兼光
◇SPD
こんにちはプリンセス。狩りに来たぜ?
一戦如何かな?
相手からの先制ユーベルコードは第六感、旅行鞄の盾受けで対処
旅行鞄は一回使えればいいと考えてるので、以降は見切りと併用で第六感で避ける
ふぅ。あれお気に入りのなんだぜ?
さぁ、引き続き戦いましょうか!そっちも乗り物ならこっちも乗り込んでやる!
UCを利用時は変形後のブラスターで体当たりまたは運転を利用しつつ、ロングボウで暗殺、誘導弾、2回攻撃、皇帝乗騎とプリンセス狙いの範囲攻撃で
皇帝乗騎破壊狙いで部位破壊のオマケ付け、部位破壊が無理ならプリンセスだけを狙う
宇宙戦艦の内部より吹き飛ばされた猟書家『プリンセス・エメラルド』の身体が宙に舞う。その体は所々にひび割れが入り、亀裂の深さを物語っている。
それは即ち、強大なる敵であった猟書家のであるプリンセス・エメラルドの消耗を意味している。
「……っ、なんたる、なんたる屈辱……! 我がユーベルコードの尽くが対抗される……! 私の、不変は、まだっ!」
手にした侵略蔵書『帝国継承規約』を開く。ばらりと捲られた頁。その力が溢れるようにして、プリンセス・エメラルドの体を包み込む皇帝乗騎―――インペリアル・ヴィークル。
その巨躯でもって宝石の国を疾駆する。自身を殴り飛ばした猟兵から距離を取らなければならない。あの鬼の眼は危険極まりない。
「こんにちは、プリンセス。狩りに来たぜ? 一戦如何かな?」
それはまるで社交界の壁の花に語りかけるように物腰で持って放たれた言葉であった。
雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)の姿を視認したプリンセス・エメラルドは駆けぬるける勢いのままに拳を振るう。
身長の2倍はある巨躯から放たれる拳は圧倒的な質量を持って、人間である兼光の顔面を狙う。
「退け―――! 猟兵! 私の道を塞ぐなッ!」
だが、その巨塊たる拳を兼光は魔法と科学力で強化したキャリーバックで防ぐ。鈍い音を立てて、キャリーバックがばらりと砕けて落ちる。その一撃の威力は凄まじく、踏ん張った兼光の足元は綺麗な電車道の如く彼の足の幅だけえぐられていた。
「―――ふぅ、あれお気に入りのなんだぜ?」
残念そうに言いながらも兼光は駆ける。初撃を防いでしまえばいい。キャリーバックには悪いが、直せばいいのだ。
掲げるハンドガンサイズのブラスター。それは彼のユーベルコードの輝きを受けて、変形する。
それは到底、既存の法則に則ったものではない。ユーベルコードの輝きの前には、あらゆる法則が無意味になる。
「さぁ、引き続き戦いましょうか! そっちも乗り物ならこっちも乗り込んでやる!」
それこそが、Get on the blaster(ゲットオンザブラスター)。兼光のユーベルコードである。変形したブラスターへと騎乗し、一気にその巨躯へと体当たりを敢行する。
互いの装甲がひしゃげ、砕け散る装甲板が宙を舞う。
「ふざけるな! 貴様、なんだそのデタラメな変形は!」
プリンセス・エメラルドが互いの機体がぶつかり合いながら、兼光のユーベルコードのデタラメさに戸惑うように拳を放つ。
それをブラスターに騎乗したまま華麗にかわし、兼光は言う。
「俺のブラスターは質量無視で変形もできるんだぜ?」
事も無げに言いながら、兼光が構えたのはロングボウ。太ももで体を固定し、続けざまに放たれる矢。
それは過たずに皇帝乗騎のひしゃげ、もろくなった関節分を破壊し、その腕を脱落させる。攻撃力がなくなったのならば、もう恐れることはない。
「ぐっ―――、腕をなくしたからと言って……ッ、がっ!」
さらに騎乗したブラスターを空へと舞い上がらせ、放つロングボウの矢。次々と装甲板を貫いて、本丸であるプリンセス・エメラルドを穿つ。
「どれだけのデカブツだろうが、関節、装甲の隙間、狙うところは、目一杯あるもんだぜ! 勉強になったな、プリンセス!」
最後の連射。
ロングボウより放たれた2射が皇帝乗騎のエンジン分に突き刺さ、誘爆を引き起こし、爆発へと飲み込んでいく。
その光景をブラスターの上から見下ろしながら、兼光は離脱していく。眼下に広がる爆発。あれに巻き込まれるわけにもいかないし、それに迷宮災厄は言わば中盤だ。
最終局面であるオウガ・オリジンとの戦いに備えなければならない。
「まあ、狩りごたえのある大物だったよ、アンタは―――」
大成功
🔵🔵🔵
ユージィーン・ダイオード
◆
新たな敵か…。
これ以上は進ませない。
◆
『怪力』でバギーをひっくり返し、車底で『武器受け』しつつ、アサルトライフルで『弾幕』を貼り牽制する。
もってくれよ僕のバギーッ!!
◆
攻撃も限界のようだ。
反撃開始(カウンタースタート)
―武装展開(オープン・コンバット)咆哮凶虎発動!!
ティガーⅠ(浮遊砲台)ティガーⅡ(列車砲)起動
僕は零式直接支援火砲とビームキャノンを装備。
敵生体に攻撃開始…
バギーだったものから飛び出し、手持ちの火力で全力射撃を行う。
(【一斉発射】【爆撃】【制圧射撃】)
このまま...この戦場で眠れッ!!
戦場となった宝石の国に爆炎が上がる。
それは猟書家『プリンセス・エメラルド』の騎乗した皇帝乗騎―――インペリアル・ヴィークルが爆発した炎だった。
しかし、その爆炎の中から飛び出すのはエメラルドの輝き放つ体のクリスタリアンにして最長老たる猟書家『プリンセス・エメラルド』であった。
その体は度重なる猟兵達の攻撃にさらされ、ひび割れ、穿たれ、視るも無残な姿になりながらも、その瞳は意志を、不変たる銀河皇帝の継承者たらんとすることを微塵も諦めてはいなかった。
「宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド』! 緊急浮上! 砲門へのエネルギー充填を急げ。私が健在である以上、猟兵はまた来る……!」
そう、彼女の判断は正しかった。猟兵とは一人ではない。
個人の猟兵は恐るべき敵ではない。ひとりひとりの力は猟書家たる『プリンセス・エメラルド』に敵う者は居ない。そう、個体としては圧倒的にプリンセス・エメルラルドが上なのだ。
だが、認めざるを得ない。己をここまで追い詰める存在、個としての猟兵ではなく全としての猟兵の存在を。
その爆炎目掛けてユージィーン・ダイオード(1000万Gの鉄面皮・f28841)は使い捨てのバギーを走らせていた。
眼前には浮上した宇宙戦艦。その砲門の数々が宝石の国を疾走するユージィーンの乗るバギーを狙っていることはわかっていた。
「新たな敵か……これ以上は進ませない」
その義眼が捉えるのは、高出力の破壊光線の光。放たれるエメルラルド色の破壊光線がユージィーンの乗るバギーを狙う。宝石の大地に穿たれる破壊光線の痕。
次々に襲いくる砲撃の雨がバギーを捉えることはできなかったが、次々と着弾し大地を揺るがす振動や爆発はバギーの車体の其処から捲くりあげるようにして、吹き飛ばす。
「―――クッ!」
車体から飛び降り、横転したバギの影に身を隠す。幸いに分厚い装甲板を使用しているバギーの車底が砲門の方へと向いてる。その身をバギーの影に隠しながら、アサルトライフルで応戦する。
「アハハハッ! そんな豆鉄砲で何ができる! 放て! 塵一つ残すな!」
プリンセス・エメルラルドの哄笑が響き渡る。
彼女にとってバギーなど取るに足らない存在であったのだろう。だが、それは宇宙戦艦『プリンセス・エメルラルド号』が何の損傷もなく、損害もなければの話だ。
雷撃、内部での爆発、それはどれも猟兵一人で為し得たものではない。
個としての猟兵は猟書家に敵わない。
だが、全としての猟兵は違う。どれほどの強敵であっても関係ない。猟兵が戦いに挑む時、そこに勝算という文字はない。
誰がために戦わなければならないという義憤こそが、彼らの心に宿るのであれば、ひとりひとりの戦いが紡いだ戦果は、大きなものへと変わっていく。
「もってくれよ僕のバギーッ!!」
放たれ続ける破壊光線。エメルラルド色の砲撃は絶え間なく続き、バギーの装甲を、厚い車底をえぐり続ける。
だが、砲撃続けた『プリンセス・エメルラルド号』の砲身が突如として爆ぜる。それは何度も大地へと失墜したことに寄るジェネレーターの不備。さらには内部で爆発が起きたことに寄る冷却部の損傷。
砲撃が止む。
その瞬間をユージィーンは見逃さなかった。
「攻撃も限界のようだな! 反撃開始―――カウンタースタート」
彼の義眼の双眸が赤く輝く。
それはユーベルコードの輝きであり、咆哮凶虎(ティガーロア)であった。響き渡る咆哮は、無敵の浮遊砲台と最強の列車砲を、彼の想像から創造し呼び出す。
そこに一切の疑念は生じない。
それがどんなものであり、どれほど強力であるのかをユージィーン自身が理解している。他の誰がなんと言おうとも、己の産み出した浮遊砲台と列車砲は無敵であり最強なのだ。
「特殊兵装の使用を解禁。ティガーⅠ、ティガーⅡ…火力支援を要請する―――武装展開……オープン・コンバット!」
ユージィーンがバギーの影から零式直接支援火砲とビームキャノンを抱えたまま飛び出す。
採算度外視であることは最早関係ない。
敵を殲滅する。それだけの目的に作られた装備であるのならば、死蔵する意味などどこにもない。使ってこその本来の用途であろう。
ティガーⅠとティガーⅡ、浮遊砲台と列車砲が起動し、一斉に放たれた火力は、宇宙戦艦の火力と何ら遜色のないものであった。
火線が尾を引き、宇宙戦艦に吸い込まれていく。
装甲板が融解し、穿たれた内部から爆発が起こる。砲塔の幾つかを飛ぶし、爆炎が上がる宇宙戦艦が高度を徐々に落とし、失墜していく。
「このまま……この戦場で眠れッ!!」
掛け値なしの大火力を放ち、ユージィーンはまさに個による全力で持って宇宙戦艦とプリンセス・エメルラルドを地に失墜させるのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
メイスン・ドットハック
【SPD】【絆】
ほほう、クリスタリアンで銀河皇帝のー
そんな大層な野望はとっとと叩き潰すのがいいじゃろーのー
先制対策
電脳魔術で自身とエィミーのホログラム幻影を作り出し、的を拡散させるようにする
さらに電脳魔術による空間ハッキングで宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号のシステムに侵入を試み、特に命中精度を司る部分の演算を乱すことに注力する
先制後はUCで自身の分身を作り出し、全員で宇宙戦艦のハッキング・指令系統の強奪へと注力する
最低でも動きが止められるように干渉を続け、エィミーの攻撃へつなげる役割
ハッキングが成功したら破壊光線を敵に放つ
エメラルドよりアメジストの方が優れておるけーのー!
アドリブ絡みOK
エィミー・ロストリンク
【SPD】【絆】
うわー、メイスンお義姉ちゃんが昂ってるー……
アメジストの方がエメラルドより優れているって言ったしなー
先制対策
絆律鍵ロスト・リンクを使いメガリス同時起動
海乙女のワンピースから海水を出し、ラクチェの要石の鉄水へと変化させる
さらにその鉄水にロード・プラチナの宝冠で生み出した超硬装甲を混ぜ合わせることで補強
破壊光線を斜めに受け流すように防御
先制後はUC発動でナノシリアに乗って飛翔
上空からエメラルド・プリンセスを捕捉して、ケルベロスを投擲した後、増幅効果で最大限まで巨大化、一気に圧し潰す
クリスタリアンは誰が優れているかわからないけど、電脳魔術ならメイスンお義姉ちゃんだよ!
アドリブ絡みOK
絶大なる火力砲撃を受けて、宇宙戦艦『プリンセス・エメルラルド号』は大地に墜落する。宝石の大地を抉り、挫傷するように止まった『プリンセス・エメルラルド号』から飛び出したのは、侵略蔵書『帝国継承規約』の力により召喚され、猟書家『プリンセス・エメルラルド』が騎乗する皇帝乗騎―――インペリアル・ヴィークル。
「なんたる失態……! 個人の猟兵があれほどの火力を有するだと―――!」
己の2倍はあろうかという巨躯を駆り、宝石の大地へと降り立つ猟書家『プリンセス・エメルラルド』の前に、二人の猟兵が立ちふさがる。
「ほほう、クリスタリアンで銀河皇帝のー。そんな大層な野望はとっとと叩き潰すのがいいじゃろーのー」
メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)の間延びしたような、のんびりしたような声が戦場である宝石の国に響き渡る。
その背後に控えるようにして隠れるのはエィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)だった。エィミーは密かにメイスンが昂ぶっているのではないかと疑っていたのだが、それでも姉妹の連携は了承していた。
「クリスタリアンの最長老たる私を前にして、その姿を表すか、アメジストのクリスタリアン。いや、猟兵。だが、私の前に姿を現したのは失策だったな!」
巨大なる皇帝乗騎、インペリアル・ヴィークルが駆ける。
その名に恥じぬ駆動性、機動性を誇る戦闘力は、かつての銀河皇帝を思わせたかも知れない。
だが、メイスンにとって、それはハリボテのようなものだった。
電脳魔術によって生み出されたメイスンとエィミーのホログラム幻影が周囲に展開される。
それは時間稼ぎでもあり、メイスン自身が所有する電脳魔術による空間ハッキングに寄って宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』のシステムへの侵入を試みる時間を得るための作戦だった。
「これも幻影……デコイか! 何かしているな、猟兵……姑息な手を!」
猛り狂うように皇帝乗騎の拳が振るわれ、次々とメイスンの産み出した幻影がかき消されていく。圧倒的な蹂躙の如き猛威。
最後の幻影が打ち消され、最後に残ったのはエィミー。
「わっ! でももう、準備できたもんね! お願い!」
それは絆律鍵ロストリンクによって同時発動された力。
複雑な模様が光を放ち、セイレーンの髪で編まれたワンピースから海水が放出される。さらにその海水を鉄のような硬度の水へと変える。
鉄水の如き海水を彼女の頭上に輝く白金の宝冠が超硬装甲と混ざりあい、打ち破ることの敵わない鉄壁たる防御の結界を張り巡らせる。
「どれだけそっちが強い拳を持っていたっとしても、ちょっとやそっとじゃ撃ち抜けないんだから!」
エィミーの微笑みと共に展開された超硬装甲の結界が、インペリアル・ヴィークルの拳を受け止める。
凄まじい轟音が響くが、装甲事態に損壊はない。ともすれば、宇宙戦艦の装甲すらも凌駕する硬さを持つのかもしれない。
「なるほどのー。あれだけの宇宙戦艦、どうやって命中精度を維持しているのかと思っておったんじゃがー……もうすでに猟兵達の攻撃で損壊しておるんじゃな? ならば―――! 迷宮の主として権能で生み出した僕達の電脳魔術、堪能していくといいのー」
メイスンのユーベルコードが輝く。迷宮主の領域に踏み込みし権能(オーバー・ジェネシス・ダンジョンロード)。それはアメジストの力で産み出した己の劣化コピー体による一斉ハッキング。
「エィミーの邪魔はさせない……エメラルドよりアメジストの方が優れておるけーのー!」
次々と劣化コピーのメイスン達と共に宇宙戦艦の司令系統の強奪を開始する。だが、強固なるプロテクトに阻まれた宇宙戦艦の司令系統を完全に奪うことは出来ない。
インペリアル・ヴィークルに騎乗したプリンセス・エメラルドとの連携を阻止することで手一杯であったが、今はそれで十分だった。
「うわー、やっぱりメイスンお義姉ちゃんが昂ぶってるー……アメジストの方がエメラルドより優れているって言ってしなー……」
失われた絆を繋ぐ姫君(プリンセス・オブ・ロストリンク)は、白竜の如きホワイトサーペント、ナノシリアへと騎乗し、飛翔する。
それは巨躯を誇るインペリアル・ヴィークルよりもはるか高みへと飛翔し、直情より狙う。
「クリスタリアンは誰が優れているかわからないけれど、電脳魔術ならメイスンお義姉ちゃんだよ!」
ユーベルコードの輝きが、手にした黒竜大斧ベルセルクの力を増大させていく。その大斧の刃は禍々しく、その幼い体には不釣り合いであった。
けれど、直情より放たれた投擲の一撃は凄まじい速度で持ってインペリアル・ヴィークルの機体を一刀のもとに押しつぶし、巨大化した一撃は、たった一撃で皇帝乗騎の機体を圧潰する。
爆発する機体を尻目にメイスンとエィミーはホワイトサーペントであるナノシリアに騎乗し、その戦場を後にする。
目指す先はさらなる戦場。オウガ・オリジンや未だ拓かれぬ戦場の先にいるであろう猟書家。
「ほらやっぱりエメラルドよりアメジストのほうじゃー」
そんなメイスンの言葉にエィミーは嬉しそうにうなずきながら、姉妹は次なる戦場へと飛ぶのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
アドリブ歓迎
宇宙船にあの間合い。物凄いパワーだわ
彼らは皆、規格外なの?
音や温度が頼りの、不可視の攻撃
何が来るか分からない、その速さも。
【ガラス蜘蛛・護り現の力溜めにより
オーラ防御を固め、第六感と聞き耳を研ぎ澄ます】
小さな物なら、とてつもなく速いでしょう
大きな物は受け切れるか
でもここは宇宙じゃない、実体なら空を切り地を走る
何より貴女の強大な力が宿る
それを見つける。
力と気配を感じた瞬間【見切り、『万象の牙』で貫き、カウンター】を
躱されても追って、針たち。
【ガラス蜘蛛で操る時間稼ぎを。咄嗟の一撃・念動力】で彼女の足を一瞬でも留めたい
私じゃ貴女に遥かに劣る。でもね、私は繋ぐだけ。ここに来たのが間違いよ
宝石の国は、あちらこちらから爆炎の上がる様相であった。
それは挫傷するように墜落した宇宙船『プリンセス・エメラルド号』からであったり、猟兵との戦いによって破壊された皇帝乗騎―――インペリアル・ヴィークルの残骸が燃え盛る炎であった。
その炎の中より現れるのは、猟書家『プリンセス・エメラルド』。その姿は幾度の猟兵の攻撃を受けて、満身創痍であった。
爆発した皇帝乗騎の影響であろう、片腕はすでに砕け散り、大量のサイキックエナジーを溜め込んでいたであろう翡翠の髪は砕け落ちていた。
「まだ、まだ……諦めきれるものではないのです……不変たる者、銀河皇帝を継承する者として……スペースシップワールドは、私の手中に納めるべきものなのです」
果のない欲望は世界そのものを欲するのか、それとも、己の永遠を、不変を確かなものへと変えようとするが故か。
軋む音を立てて宇宙戦艦の砲塔が傾ぐ。まだ宇宙戦艦の機能は生きている。恐るべき耐久性と、頑強さ。
ジャム・ジアム(はりの子・f26053)は素直に恐ろしいと感じた。宇宙戦艦を呼び出す力、破壊光線の穿たれた宝石の大地は大きくえぐられ、その力の凄まじさを物語っている。
「彼等は皆、規格外なの?」
震える唇がこぼす言葉は、猟書家の持つ力への畏怖であったのかもしれない。けれど、ジアムは立ち止まらない。畏怖は恐れを止めるには値しない。
「確かにそうでありましょうね。我ら猟書家は、それぞれがオブリビオン・フォーミュラに成り代わろうとする者。認めましょう。猟兵。あなたたち一人ひとりは私に敵わない。だが、その全てが我らを脅かすのだと」
声がした方角を見やれば、景色に溶け込んでいくひび割れた猟書家『プリンセス・エメラルド』の姿があった。
は、とした瞬間にジアムは、後悔したかもしれない。いや、理解していた。宇宙戦艦は大地に失墜し、自由に動かすことはできない。
皇帝乗騎は今まさに破壊され、再び召喚する時間が稼げない。ならば、残った能力、クリスタライズ・オリジナル。
その身を透明化し、猟兵へ害をなす物体をも透明化させる能力を行使するだろうと。
「お願い、私を護って―――」
水蜘蛛の泡の如き銀の薄布が翻り、空気の層がジアムの体を幾層にも取り囲む。護り現のオーラの力をも張り巡らせ、飛来するであろ透明な物体に備える。
彼女の敏感過ぎる聴覚が捉えるのは、空気の層を引き裂いて飛来する巨大なる宝石の塊。
それがプリンセス・エメラルドの攻撃だと理解するのには、一瞬だった。オーラでは受け止められないほどの質量。下手に受け止めれば、オーラが毎圧潰させられかねない。
その判断は、戦いに慣れていなかった頃のジアムであれば下すことはできなかったことだろう。だが、今は違う。
戦いによって紡がれてきた経験が彼女の体を突き動かす。
「ここは宇宙じゃない。空気もある。透明化していたって実体があるのなら、空を切り地を走る。何より貴女の強大な力が宿る―――」
それを見つける。
宝石の塊がジアムの直ぐ側へと落ち、衝撃と共に轟音が響き渡る。彼女の敏感過ぎる耳には耐え難い轟音であった。
けれど、その耳は捉えていた。大きな音はそれだけ遠くまで、音の波を届ける。ならば、その音の跳ね返ってくる波長もまた捉えやすい。
「そこね、愛おしい貴方たちの輝きを、今―――!」
放たれるは幾何学模様を描き複雑に飛翔する万象の牙(スピリトゥアーレ)。万象の精霊の加護を受け、燦然と輝く針たちが、猛然とプリンセス・エメラルドへと殺到する。
「音で位置を割ったか、猟兵―――だが、数だけが頼りの攻撃など!」
躱す、躱す。燦然と輝く針たちを躱し続けながら、プリンセス・エメラルドが舞い踊るように針の攻撃を躱すのだ。
「私じゃ貴女に遥かに劣る。でもね、私はつなぐだけ」
ジアムが咄嗟にはなった銀色の薄布が念動力に導かれて、プリンセス・エメラルドの足へと枷を嵌めるように動きを止める。
それは幾多もの針の攻撃を目くらましにしたカウンターにして、足止め。プリンセス・エメラルドの足が止まった瞬間、彼女を猛然と襲う万象の牙。穿たれ、翡翠の身体が砕けていく。
胴が、足が、砕かれていく。
「ここに来たのが間違いよ」
自分ならば突破できるであろうと思ったのだろう。猟兵が敷く猟書家への包囲。けれど、それは間違いであった。
ジアムは自覚があったのかもしれないが、彼女とてすでに戦士である。猟兵であるのだ。彼女の働きは誰にも劣るものではない。
足枷のようにつなぎとめたプリンセス・エメラルドの身体を放り投げるようにして吹き飛ばす。
逃さない。ジアムがトドメを指すことができなかったとしても、後続の猟兵が必ずやプリンセス・エメラルドを骸の海へと還すだろう。
ジアムは銀の薄布を身に纏い、敏感な耳を護るようにして戦場を後にする。
戦いはまだまだ続く。
迷宮災厄戦は中盤を乗り越え、終盤へ。この世界を救うためにジアムは次なる戦場へと急ぐのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ヘスティア・イクテュス
スペースシップワールドの者として
再びの支配を許すわけにはいかないわね…
ヘスティア・イクテュス…貴方の命、奪わせて頂くわ
まさか、この世界で対艦戦をすることになるとはね…
といっても経験は十分…
敵の船の形状から弾道予測【情報収集】
ダミーバルーンを展開し、ホログラムで偽装【残像・迷彩】をすることによって、敵の攻撃の集中を避け、ティターニアの飛行で砲撃を掻い潜る…【空中戦&見切り】
ついでにアベルからの『ハッキング』はいかが?
制御を奪えずとも一時的な停止&艦内の詳細を把握…
弱い土手っ腹にマイクロミサイルの『一斉発射』!【爆撃】
燦然と輝く針に穿たれた手足がひどく痛む気がした。
それは猟書家『プリンセス・エメラルド』にとってひどく懐かしい感覚のように思えた。クリスタリアンの最長老たる身。
それこそがスペースシップワールド出身たる彼女の自負。不変たる者。侵略蔵書『帝国継承規約』に記された継承の条件。
だからこそ、彼女は己の力を過信していたのかもしれない。もしくは、猟兵達の力を侮っていたのかもしれなかった。
猟兵個人での力は猟書家には敵わない。だが、猟兵にとって強大なる敵に立ち向かうということは、何も一人で戦うということを意味しない。
「ぐ……だが、私とて、猟書家の一人……諦めるわけには行かない。宇宙戦艦、プリンセス・エメラルド号、再起動。浮上は……無理か。だが、砲門は生きている。ならば―――!」
そのエメラルドの視線の先にあるのは、宝石の国にあって青色の空を飛ぶ、同じく青き髪をなびかせるヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)の姿だった。
「スペースシップワールドの者として、再びの支配を許すわけにはいかないわね……ヘスティア・イクテュス……貴方の命、奪わせて頂くわ」
妖精の羽を象った白いジェットパックの上下二対の推進器から吹き出す粒子とともにヘスティアは空を駆ける。
そんな彼女に放たれるのはエメラルド色の破壊光線。弾幕のごとく放たれる砲撃は、先行した猟兵たちによっていくつかの砲塔や命中精度を著しく低下させられていた。
それ故に彼女の機動性を持ってすれば、剣山の如き砲撃であっても躱すことは難しくない。
「まさか、この世界で対艦戦をすることになるとはね……といっても経験は十分……」
そう、彼女にとって敵の宇宙戦艦の形状から弾道を予測することや、ダミーバルーンを展開し、ホログラムで偽装するこちによって砲撃の集中を避けることなど、容易なことであった。
しかし、圧倒的な火力の前にダミーバルーンは次々と破壊されていく。
妖精の名を冠するジェットパック、ティターニアによる飛行のままに砲撃の雨をくぐり抜け、宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド』へと肉薄する。
「ついでにアベルからのハッキングはいかが?」
彼女をサポートするサポートAI端末 ティンク・アベル(サポートエーアイタンマツ・ティンク・アベル)によるハッキングが砲撃を司る機能を一時的に停止させる。さらに艦内情報を把握し、その装甲の薄い箇所を見つけるのだ。
「アベル、状況把握。指示、お願いするわ」
かしこまりました、とAIでアベルが執事然とした流暢なる言葉を紡ぎ、瞬時に情報をヘスティアへと送る。
制御を完全に奪うことはできなかったが、管内の状況は把握した。先行した猟兵達が様々な手段、ユーベルコードによって宇宙戦艦はすでに浮上する力は残っていない。
ならば、砲塔へとエネルギーを供給しているジェネレーターの存在する場所へ―――。
「その弱い土手っ腹に―――!」
放たれるマイクロミサイルの一斉発射。それは爆撃の如き威力で持って、その胴の部分である装甲を融解させ、ジェネレーターの一機を完全に破壊する。爆発し誘爆するかに思われたが、さすがはというべきだろうか。
「誘爆対策もきっちりってところね……でも、これで砲撃の威力は下がったでしょう」
ここで仕留めきれなくてもいい。自分がそうであったように、猟兵の戦いは連綿と紡ぐものだ。
自分が倒しきれなくても続く後の者がきっと事をなしてくれる。戦場に集まり、初めて顔を合わす者たちであっても、信頼がおける。
それこそが、個である猟書家になくて、猟兵たちにあるものである。
故にヘスティアはティターニアの噴出する粒子が描き軌跡のまま、次なる戦場へと駆けていくのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
侵略蔵書の定義は不明ですが
「帝国継承規約」は、銀河最強のサイキックを宿している
戯れに遺された権能を手に入れた貴女は、故郷に何を齎すのです
長老の責務は
独り矢面に立たされるだけの孤独な役回りだったのかもしれません
ですが力によってのみの支配に傾倒しては
今も尚、銀河皇帝の思惑に支配されているだけです!
◆
世界知識で対策
皇帝乗騎。伝承通りの偉容ですがそれ故に手の内を晒し過ぎた!
拳が大地を叩いて砕く重量攻撃
突然の悪路に足回りが浮いた瞬間を狙う
サスペンションに大連珠を巻き付ける早業
限界突破の怪力+グラップルで機体を引きずり倒し、空中戦+ジャンプの跳躍
迎撃を残像で躱し
プリンセスをキャノピーごと貫く業蹴撃を放つ!
マイクロミサイルの一斉射は、その巨大なる宇宙戦艦の横っ腹の装甲を大きく損なわせた。露出したジェネレーターは数あるジェネレーターの中の一基であったが、破壊されたが故に砲撃へと回す出力は大きく減ぜられていた。
もしも、再び砲塔を稼働し、砲撃を個なうのだとすれば、今まで通りの数の砲門を開ければ威力の低い砲撃にしかならない。
逆に砲撃の数を狭めれば、弾幕として事足りない。そんな矛盾を抱えた宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』の甲板の上に立つのは、猟書家『プリンセス・エメラルド』と戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)であった。
互いに相まみえるのは初めて出会ったが、決して互いが相容れることのできる存在ではないと確信していた。
それはオブリビオンと猟兵であるのならば、当然の帰結であった。
「その『帝国継承規約』は、銀河最強のサイキックを宿している。戯れに残された権能を手に入れた貴女は、故郷に何を齎すのです」
意味のない問答であったのかも知れない。
何故、と問うたところで納得の行く答えが返ってくるとは思えない。あるのは拒絶だけだ。
「何を、と問いましたか、猟兵。それは不変ですよ。私が求めるのは不変であり、世界であり、全てです。今更、その問は意味が―――」
プリンセス・エメラルドにとって、それは求めるべき当然のものであった。だが、蔵乃祐にとっては違う。
「長老の責務は独り矢面に立たされるだけの孤独な役回りだったのかもしれません。ですが、力によってのみの支配に傾倒しては、今も尚、銀河皇帝の思惑に支配されているだけです!」
それはある意味で逆鱗であったのかも知れない。
人々の寄る辺としての信仰に勇往邁進する蔵乃祐と己によってのみ達成される野望を掲げるプリンセス・エメラルドとでは、その価値観が違う。
己が支配する者であるという自負は、彼の言葉によって散々に傷つけられた。自分ではない誰かによって、己もまた支配される、利用されるだけの存在であるという事実を突きつけられた者が次に行うのは激昂以外の何者でもない。
「知ったような口を聞きましたね、猟兵! 私をッ! 語りましたね!」
その手にあるのは侵略蔵書『帝国継承規約』。その頁が風に捲くりあげられるようにはためく。
その力が顕現する。皇帝乗騎―――インペリアル・ヴィークル。
それはプリンセス・エメラルドの身体をさらに2倍にしたであろう巨躯。
その巨躯からは考えられぬほどの俊敏さでもって、蔵乃祐に肉薄する。その身体を肉塊へと変えんと迫る拳は、しかして彼へと届くことはなかった。
「皇帝乗騎……伝承通りの偉容ですが、それ故に手の内を晒しすぎた!」
蔵乃祐のはなった拳は、その膂力のままに大地を穿ち、砕く。ひび割れる宝石の大地。突如として現れる悪路に、インペリアル・ヴィークルの身体が宙に浮かび上がる。
それを蔵乃祐は見逃さなかった。サスペンションへと身に着けた大連珠を巻きつけ、目にも留まらぬ速さでもって肉体の限界を越えた怪力が、皇帝乗騎の機体を引きずり倒す。
「なっ、に―――!?」
プリンセス・エメラルドにしてみれば、何が起こったのかわからなかったことだろう。大地がひび割れたと思った瞬間に、己の機体は空を見上げるように転倒したのだから。
その仰ぎ見た空に浮かぶは一つの黒点。
否、猟兵、戒道・蔵乃祐が跳躍した姿であった。
「 勧 善 懲 悪 !!」
それはユーベルコード、限界跳躍・業蹴撃(リミットオーバー・ストライダーキック)。人間の肉体の限界を超えた跳躍から放たれる飛び蹴りの一撃は、如何なるものをも打ち砕く鉄槌のごとく。
その一撃で持って、互いの理解は終わりを告げる。
砕かれた皇帝乗騎のキャノピー。爆炎が上がる機体を背に蔵乃祐は戦場を後にする。
この戦いに意味があったのか、救いがあったのかはわからない。
それを決めるのはおのれではない。あるのはただ、この戦いの果に訪れるであろうスペースシップワールドでの余波の如き出来事であろう。
今は、その余波の小ささを願うほか無い。そう願わずにはいられなかった―――。
大成功
🔵🔵🔵
テリブル・カトラリー
不老不死だろうと、結局は滅び、消える。
かの皇帝がそうであったように
ブースターで体を吹き飛ばし、ダッシュ。
情報収集、敵艦の砲向きから射線を見切り、回避
同時に装甲車による砲撃のおびき寄せ。
過去の残骸として、オブリビオンと化して…また滅んだ
早業、『邪神腕・世界矯正』
敵超常能力、ユーベルコードに使われていたサイキックエナジーを吸収。
時間稼ぎ程度でも良い、戦艦を機能不全に陥らせ、その隙にスナイパーライフルを構え、プリンセス・エメラルドに狙いを定める。
超常能力、ユーベルコードによっていかようにもなるこの世界で、
本当の不老不死が、どこにあるというのか。
吸収したサイキックエナジーを込めた弾丸、鎧無視攻撃を放つ
皇帝乗騎―――インペリアル・ヴィークルは再び破壊される。
大地に落ちた宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』の甲板の上で繰り広げられた戦いの軍配は猟兵へと上がっていた。
穿たれたキャノピーが、それを物語っている。
その中より這い出て来る猟書家『プリンセス・エメラルド』の姿は、満身創痍以上のものであった。
猟兵達の度重なる攻撃によって体はひび割れ、片腕は脱落している。さらに顔の半分は砕け散っていた。
その状態で未だ尚、霧散し骸の海へと還らないのは、その身を支える妄執故か。
銀河皇帝を継承し、スペースシップワールドを支配する。己の持つ侵略蔵書『皇帝継承規約』を浸透させ、己を絶対者として君臨させる目論見は、彼女の身を未だアリスラビリンスの宝石の国に顕現點せ続けていた。
「私はまだ終われない……私は、まだ……」
幽鬼の如き姿であっても尚、その気迫は衰えない。ゆらり、ゆらりと歩み出す度に、そのひび割れた身体が軋みを上げる。
その翡翠の瞳に映るのは、一機のウォーマシンにして一人の猟兵―――テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)の姿であった。
「不老不死だろうと、結局は滅び、消える。かの皇帝がそうであったように」
一気に駆け出すテリブルの身体。ブースターで身体を吹き飛ばすが如き猛然なる突進。それはプリンセス・エメラルドの指の切っ先が自分を指し示したことに対する反射行動だった。
おそらく、この失墜した甲板の上で先行した猟兵との戦いがあったのだろう。それ故に、その指先は宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』の砲塔の照準そのもの。
その証拠にテリブルを狙う砲身が鈍くも動く。
本来であれば機敏に動くのだろうが、度重なる猟兵の攻撃の前に機能は十全に果たされているとは言い難い。
だが、それでもなお、己を狙う砲身に油断するつもりはない。
「―――頼んだ」
短く指示を出した装甲車が甲板の上を走り抜ける。大砲の付いた装甲車はAIによる自動操縦で砲塔の放つ砲撃への囮だ。
「過去の残骸として、オブリビオンと化して……また滅んだ」
それが銀河皇帝だ。
それを継承するというのであれば、どうあれ滅びの道を歩むことに他ならない。だというのに、その道を選ぶ。放たれるエメラルド色の破壊光線を邪神腕・世界矯正(ワールド・カウンター)によって、防ぎ、吸収する。
超常の力を無かった事にする力。それこそが邪神の腕。吸収しきれない破壊光線の一撃が火花のようにテリブルの周りに跳ね散っていく。
それは一瞬程度の時間稼ぎであったのかもしれない。
膨大な量のサイキックエナジーを吸収した邪神の腕がきしむ。それは確かに大砲の一撃を吸収するが如く無理な所業であったおかもしれない。
「……随分、言う事を聞くようになったな」
それでも、十分だった。
スナイパーライフルを構える。未だサイキックエナジーを吸収してたわむように暴れまわる邪神の腕から供給されたサイキックエナジーをを弾丸に込める。
構えるスコープに覗くは、クリスタリアンの最長老である『プリンセス・エメラルド』。その姿は最早、滅び以外の道を取れるようには思えなかった。
「超常能力……ユーベルコードによっていかなるようにもなるこの世界で、本当の不老不死が、どこにあるというのか」
その問いかけの代わりにテリブルは引き金を引く。
放たれた弾丸は、サイキックエナジーを撒き散らしながらプリンセスエメラルドへと吸い込まれていく。
弾丸の一撃は、何もテリブルに伝えない。
あるのは引き金を引き、弾丸を当てたという事実のみ。その一撃はプリンセス・エメラルドの胴に風穴を開け、そのサイキックエナジーの奔流は甲板を爆風で包み込む。
そこからテリブルは飛び退る。爆風に煽られながら、宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド』を後にする。
不老不死なんてない。
永遠に思えるであろう己の稼働時間にだって限りはある。
その先に待つのが死であり、機能停止であるというのならば、その残された時間を懸命に生きるからこそ生命の価値を見出すことができるのかもしれない。
「永遠に輝く鈍色の鉄屑よりも……一瞬で燃え尽きる流星の星屑のほうが美しい……そう、思えるようような、そんな生き方こそ……不老不死を探すよりもよほど」
よほど有意義なのではないか、その問いかけは爆風の彼方に消えていく。
テリブルは燃え盛る宇宙戦艦に背を向け、新たなる戦場へと駆け出すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
クリスタリアンの姫君へのお目通り叶い、光栄の至り
ですが、遥かな昔に私を生み出した銀河帝国はもはや無用の存在です
人々の安寧の為、騎士として立ち塞がらせていただきます
マルチセンサーでの●情報収集で砲門の向きを●見切り脚部スラスターでの●スライディング滑走で回避
回避不能の光線は対光線反射処理を●防具改造で施した大盾で●盾受け
儀礼剣での●武器受けで光線を切り裂き防御し火線を突破
UC起動
その苛烈な砲火、封じさせていただきます!
光線を完全に回避、向上した機動力でプリンセスに肉薄
護衛が一人でもいればこの事態は防げた筈
銀河皇帝という孤高の悪しき絶対者とならんとするその野望
断たせて頂きます
●怪力で振るう剣を一閃
風穴の開いた姿になっても尚、その姿は孤高たるものであった。
猟書家『プリンセス・エメラルド』の姿は、すでに現界しているのも信じられぬほどの姿であった。体は所々ひび割れ、顔の半分は穿たれ。胴には風穴、片腕は脱落してもの尚。
「―――皇帝に……不変たる私が、銀河皇帝の後を継承しなければ、支配しなければ……」
その姿は幽鬼の如し。
妄執の彼方にあるがゆえに、今という時間を見ない過去の化身そのものだった。その姿を哀れと思うのであれば、それは正しい認識ではなかった。
そこにあったのはただの執着。誰からも憐れまれることのない、孤高そのもの。己以外の誰も頼らず、己以外の何者も必要としない。
あるのは力だけ。それだけが便りであった。
「クリスタリアンの姫君へのお目通り叶い、光栄の至りですが、はるかな昔に私を産み出した銀河帝国はもはや無用の存在です」
そんな姿になったオブリビオンを前にしても、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の慇懃無礼たる姿勢は崩れることはなかった。彼の持つ矜持が、それを許さなかった。
「むよう……? 銀河帝国が無用ですって? いいえ、いいえっ! 人は支配されなければならない。誰かが頂点に立って人身御供にならなければ、意志の統一すらできぬ愚昧なる生命体であるのならば!」
ぎしぎしときしむ腕を掲げ、トリテレイアのを大地に失墜した宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』の上から見下ろす。
それは宣戦布告であった。
騎士であらんとするトリテレイアに対する、己の最後の矜持を掛けて、その手を振り下ろす。
一斉に放たれるエメラルド色の破壊光線は、もはや出力が上がりきらないのか、稼働する砲門が限られていた。
けれど、その一撃一撃は猟兵の体を射抜くいは十分だった。一度触れてしまえば、トリテレイアの装甲であろうと簡単に融解させられることだろう。
「人々の安寧のため、騎士として立ち塞がらせていただきます」
トリテレイアの脚部スラスターが火を吹き、一気に火線を躱す。次々とトリテレイアを襲う破壊光線の雨。
これでもジェネレーターの一基を喪った出力だとは思えぬほどの威力。
どれもが桁違い。猟書家と呼ばれるオブリビオンがオブリビオン・フォーミュラに成り代わろうとする、その実力に戦慄する。
襲いくる破壊光線を大盾に施された対光線反射処理に任せて受け止め、儀礼剣によって光線を切り裂く。
火花が散り、トリテレイアの周辺の宝石の大地が融解していく。
「重い、一撃……何度も耐えられるものではありませんね。ならば、その苛烈な砲火、封じさせていただきます!」
大盾を投げ捨て、スラスターで突進する。それでも速度が足りない。
もっと速く、もっと、もっと。
次々とパージされていく格納銃器。さらなる身軽さを得るのが、鋼の騎士道(マシンナイツ・シベルリィ)であるのだとすれば、今のトリテレイアは真の機械騎士であった。
あらゆる駆動、回避、防御に優れた近接戦闘形態。
それこそがトリテレイアの真なる機械騎士としての姿。爆発的に増大した戦闘力は炉心を燃やし続ける。出力が上がり、その熱は己の基礎フレームすらも歪ませるほどの熱量を持つ。
圧倒的な速度で甲板の上へと駆け上がり、プリンセス・エメラルドへと肉薄するトリテレイア。
「護衛が一人でもいれば、この事態は防げた筈。銀河皇帝という孤高の悪しき絶対者とならんとするその野望―――立たせていただきます」
その儀礼剣による一撃は、プリンセス・エメラルドの体を袈裟懸けに切り裂く。
そのままプリンセス・エメラルドと交錯するようにトリテレイアは駆け抜ける。宝石の国、戦場を横断し、振り返らない。
騎士として姫を斬る。
その行為は言葉面の上では矛盾していたかも知れない。けれど、すでにトリテレイアは銀河帝国と袂を分かつ存在だ。
己の出自がどうであれ、すでに銀河帝国は滅んだ存在であり、今を生きる人々にとって必要なものではない。
ならば、過去の姫を振り切って、目指す先は迷宮災厄戦の最奥。最大にして最強たる存在、オウガ・オリジンのみ。
別れの言葉は要らない。すでにその剣閃でもって、済ませたのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
ルカ・メグロ
また、女の敵か……強敵、強敵だ!
だけど、俺達は負けない。
死んでやる気だってさらさら無いぜ!
先制攻撃への対処だけど、騎乗はきっぱり諦める。
だけど宝石の影から影へ移動して戦艦の攻撃を躱し、粉砕された宝石を左腕で巻き上げて、透明化してる奴らを見抜いてやる。
多少の攻撃なら【激痛耐性】で堪えて、ギータの炎で焼いて応急処置だ。
先制攻撃を凌いだら、反撃だぜ。
宇宙戦艦だって当然パーツは金属や宝石なんだろ。
全部は無理でも、パーツや周りの宝石を【女王の号令】で炎に変えて、豪炎の嵐に巻き込んでやる。
あんたの野望は叶わない。
そう俺の物語に書いてあるからな!
その姿を見た時、ルカ・メグロ(ヴァージャ・コン・ギータ・f22085)は何を思っただろうか。
倒すべき敵、猟書家『プリンセス・エメラルド』。体はひび割れ、胴には大きな風穴が空く。さらに片腕は脱落し、顔の半分は穿たれていた。
それでも尚、その銀河皇帝へと成り代わらんとする遺志は枯れ果てていなかった。そんな状態になっても尚、己の欲するものを求めるように掲げる手。
「また、女の敵か……強敵、強敵だ!」
自分に言い聞かせる。あれは倒すべき敵だと本能が言っている。
オブリビオンと猟兵。どう合っても相容れぬ存在。そこにあるのは滅ぼし合う関係でしか無い。
如何にルカが女っ気のない生活を送っていたせいで、女性に対して消極的になろうとも、そこに性別の有無は介在しない。
あるのは、敵であるという事実のみ。
すでに失墜した宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』の甲板上へと上り詰めた時、そこにはすでに猟書家『プリンセス・エメラルド』の姿はなかった。
居ない?
否。ルカの鋭敏なる感覚は捉えていた。その姿は見えずとも、気配を感じる。ぎし、と音が鳴って宇宙戦艦の砲塔が動く。
「まだ動くのか……! まだ、やるっていうのか!」
ルカの声が響く。目に見えないユーベルコード。それはルカに対して害を為すものすらも透明化させる。
だが、以外にも直ぐ側から放たれたのは、巨大なる宝石の塊だった。ご、と鈍い音がしてルカの体中の骨がきしむ音がする。
「ぐっ―――っ!」
自身を圧潰させるべく放たれた宝石の塊。それはまるで見えることができなかった。クリスタライズ・オリジナル。
それこそが、猟書家『プリンセス・エメラルド』の持つ能力。激痛にうめきながらも、次々と風を切って落ちてくる宝石の塊。
それを躱し、ギータの炎で捲くりあげ、そこらに転がる宝石の破片を左腕で巻き上げて跳ねる様子を観察する。
「そこか―――! 宇宙戦艦だって当然パーツは金属や宝石なんだろ。全部は無理でも―――!」
ユーベルコード、女王の号令(ディクター・デ・ギータ)。それは自身の周辺の無機物を竜の紫炎へと変換する力。
それこそが左腕に宿りしドラゴンのオウガ、ギータの力。巻き上げられた宝石の破片が紫炎へと変貌し、無色透明になったプリンセス・エメラルドへと迫る。
豪炎の嵐が全てを巻き込み、どれだけ姿を消そうが広範囲で燃え盛る炎の前には意味を為さない。
あらゆるものを飲み込み、炎によって破壊する。それがこの左腕にやどりしオウガ、ギータの力だからだ。
「あんたの野望は叶わない。そう俺の物語に書いてあるからな!」
炎渦巻く中に翡翠が煌めく。
それを背にギータと共にルカは次なる戦場へと駆け出す。戦いはまだ終わっていない。迷宮災厄戦という大きな戦いの中で、戦局は大きく変わろうとしていた―――。
大成功
🔵🔵🔵
チトセ・シロガネ
皇帝にケンカした以来ネ。戦艦ぶった斬るのは……。
あの時とは一味違うボクをお見せするネ!
戦艦の破壊光線は少し厄介ネ。
空中浮遊で距離を詰める間は雷鼓ユニットを展開、念動力を込めたオーラ防御で艦砲を受け止めつつ、エネルギーを捕食して電力を確保。
戦艦への接近に成功したら、EZファントムのリミッター解除、UC【星砕乃型】を発動させ、全電力をプラズマの刃に変換、属性攻撃と鎧砕きで戦艦を圧し折ってやるネ。
それは最期の一撃。
もはや猟書家『プリンセス・エメラルド』は死に体であった。彼女の身を苛む炎は、あまりにも強烈であり、宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』は、大地に失墜していた。
だが、その宇宙戦艦が残っている以上、オブリビオンである猟書家『プリンセス・エメラルド』は未だ健在。
「皇帝とケンカした以来ネ。戦艦ぶった斬るのは……あの時とは一味違うボクをお見せするネ!」
宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド号』の艦首、その直線状に立つのは、チトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)であった。
甲板上に穿たれた姿で立つプリンセス・エメラルドの姿は、遠目に見えても満身創痍であり、骸の海へと還っていないのが不思議なほどであった。
そこにあったのはクリスタリアンの最長老としての矜持ではなく。銀河皇帝の継承者としての矜持だった。
もはや片腕しか残っていない手を掲げる。
その指先が示すのは、チトセの姿。己の敵は如何なる姿になったとしても撃滅せねばならない。
その矜持と真っ向から向かう合うチトセ。空中に浮遊する彼女の傍らの浮遊する円盤型ビット、雷鼓ユニットが展開される。
それは真っ向勝負。
向けられる砲塔、その砲門がチトセを捉える。あの砲身から放たれるエメラルド色の破壊光線の威力は言わずもがな。
だが、チトセは逃げない。
空を舞い、距離を詰め放たれたエメラルド色の破壊光線を念動力を籠めたオーラで受け止める。火花が散り、オーラが次々と剥離し削られていく。
エネルギーを捕食する力が間に合わないかも知れない。そう思わせるほどに苛烈なる砲火。
それはきっとプリンセス・エメラルドにとっても最期の一撃であったのだろう。それを防がれては、もはや勝機はない。
「あのときとはひと味違う……そういったネ!」
雷鼓ユニットが白煙を上げる。過剰エネルギーを捕食しきれなかったのだろう。だが、捕食したエネルギーを電力に変えるのは十分だった。
開放されるEZファントムのリミッター。迸る青電が、その力の強大さを物語っている。
「一刀ッ!両断ッ!」
放たれるは、星砕乃型(スターブレイク・スタイル)。溜め込んだ電力を代償に高出力のプラズマを籠めた必殺なる一撃。
それは極大の刀身となってあらゆるものを砕き、断ち切る刃となる。
その一撃はチトセにとって最初にして最期の一撃。
高出力プラズマの刃は、宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド』ごと、猟書家『プリンセス・エメラルド』を両断した。
その一撃は宝石の国の地表すらも抉り、穿つほどの一撃。
ここに猟書家『プリンセス・エメラルド』の野望は潰えた。
銀河皇帝の継承はならず、無辜の民達が傷つけられる未来は回避された。けれど、戦いはまだまだ続く。
迷宮災厄戦は、ここからが正念場。猟書家は一つの山を超えたに過ぎない。
オウガ・オリジン。その災厄そのものを断ち切るため、チトセは霧散し消えていったプリンセス・エメラルドに背を向け、駆け出すのだった―――。
大成功
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