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迷宮災厄戦㉓〜不思議の国の死闘-その687冊の重み‐

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #キング・ブレイン

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●その方向性、一人だけなんか斜め
「プレブレブレ、ブ―――レブレブレ!よくぞここまで辿り着いた猟兵諸君!
 オウガ・オリジンより先にこの我輩と戦おうとは実に愚かな選択をしたものだ……だが吾輩は、敢えてそんな君らに敬意を評すと共に全力で相対しようではないか!どうぞよろしくお願いします!」

 手に書いたメモを実に悪役らしく読み上げる猟書家一名。

「……うーむ、こんな感じでいいかなあ。悪役っぽさ足りない?もうちょっと非道になった方が良いだろうか。
 あとやっぱり「ブレブレブレ」が笑い声だと気づいてもらえるか不安があるな……もっと笑い声っぽく聞こえるようにしてみたんだけどやっぱ心配だなー……」

 メモの内容を適宜修正し、より悪役らしい言動をチョイスしていく。
 高らかに読み上げてはやっぱりこうかな、いやああかな等と独り言をブツブツ呟きながらより良いメモ――というか脚本を作ろうとしているのは猟兵をそれなりの対応で迎え撃ちたいという理由からであった。
 あがり症なのか、根が真っ直ぐすぎるのかはたまた……ともあれ、その見た目には程遠い人間味溢れる猟書家キング・ブレイン。
 猟兵がこちらへと攻め入ろうとしている情報を聞いてから早速始めたことがこれってどうなんですかね。

「とにかく頑張ろう。何しろ猟兵たちはサー・ジャバウォックとレディ・ハンプティを倒したとのことではないか。
 サー・ジャバウォック……悔しいが自負している通り書架の王に次いで強くて……悔しいけど内心憧れだったんだけどな……。
 レディ・ハンプティ……亡くなったお父さんの為に一途に頑張ってるいい子だったんだけどなあ……」

 ずず、と鼻水をすすろうとしてうっかり垂れてきたので慌ててティッシュで拭う。
 猟書家に仲間意識があったのかはわからない、というか多分彼が一方的にそう思っていただけかもしれない。
 が、彼は彼なりに他の猟書家たちに対し思うところはあったようだ。

「頑張ろう、何が何でも頑張ろう!二人の遺志を無駄にしない為にも、書架の王の采配の素晴らしさを証明する為にも……!
 吾輩がコツコツ集めた「スーパー怪人大全集(全687巻)」、その一冊一冊の秘めた力と本の重みを猟兵たちにぶつけるのが吾輩の使命!」
 とはいえいざ戦うにしても失礼のないように練習を続けなくてはな。
 ……ごほん!あ、あー。ブレブレブレ、ブ―――レブレブレ……!」

●その言い様、あまりにも無慈悲。
「皆さん、お疲れ様です。手の空いている方は至急出撃準備をお願いしたく思います」

 『迷宮災厄戦』も佳境に差し掛かろうという中、終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)が猟兵たちを招集する。

「『お菓子の国が多すぎる国』『アップル・バトル・フィールド』の制圧が完了し、猟書家『キング・ブレイン』がアリスラビリンスにおける拠点としている不思議の国への道が開けました」

 モニターにキング・ブレインの姿と彼の持つ侵略蔵書「スーパー怪人大全集」が映る。
 ――多い。この侵略蔵書めちゃくちゃ多い。具体的に言うと3桁は余裕で越えてるというか500越えてません?というぐらい多い。
 多すぎて全部を表示しきれないのか最早ひとつひとつが1ドット単位で表示されているようにすら錯覚できてしまう。

「皆さんにはキング・ブレインの討伐に向かって頂きます。
 予兆でも見た通り、何とも他の猟書家たちとは色々な意味で一線を画する人物ではありますが決して油断なさらぬよう……あの手の者が実は一番厄介ですからね。
 変に人間味がありすぎると逆にこちら側の戦意が削がれてしまいます。逆にそれが奴の作戦なのかもしれませんし素であれば尚更質の悪い相手でしかありません。
 決して心を許さぬようお願い致します」

 その言い様があまりにも無慈悲すぎて色々な意味で猟兵たちは同情を覚えたかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
 流石このグリモア猟兵、敵には容赦がないだけあるわ……とか思ったとか何とか。

「そしてその独特なキャラk……こほん、人間性もですが他の猟書家と同じように予め先制攻撃ができる特殊なフィールドを所有・展開しています。
 戦闘開始と同時に先んじてユーベルコードによる攻撃を仕掛けてきますからまずは敵の猛攻をいかに凌ぎ切るかが肝要……それを凌ぎきってからが本番と思ってください」

 幸い他の猟書家と同じようにキング・ブレインの用いるユーベルコードも判明している。
 一つ、侵略蔵書「スーパー怪人大全集(全687巻)」を用いて巨大な怪人に変身するもの。
 一つ、不意を突いて背中の本棚を投げつけ、相手の反応を覚えて攻撃の確実性を上げるもの。
 一つ、詠唱時間に比例して威力が増大する脳ビーム。
 各々の取る戦法に合わせて対策を講じれば必ず反撃の機会に恵まれるだろう。

「歴戦の猟兵である皆さんです、心配をしすぎるのも野暮とは思っていますがゆめゆめ対策はお忘れなきよう……無事に吉報を持って帰ってきてくださることを祈っています。どうか、ご武運を」

 日明はそう告げ、戦地に向かう猟兵たちへと敬礼を送った。


御巫咲絢
 ブーーーレブレブレ!
「キャラが面白くて長く見てたいから倒したくない」と「キャラが面白いからシナリオ書きたい」は別の感情です。
 こんにちはこんばんはあるいはおはようございます!
 初めましての方は初めまして、新米MSの御巫咲絢(みかなぎさーや)です。
 シナリオご閲覧頂きありがとうございます!初めての方はお手数ですがまずMSページをご覧頂きますようお願い致します。

 猟書家残り全員一気に開くなんてびっくりだよ!
 というワケで戦争シナリオ5本目は幹部シナリオでお送りします。
 このシナリオには以下のプレイングボーナスが存在しています。

●プレイングボーナス
 敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

●このシナリオは判定「やや難」となっております。
 キング・ブレインのユーベルコードに対して何の対策もせずにユーベルコードを使用した場合、"必ずキング・ブレインのユーベルコードが先に発動"します。
 成功判定は厳しいものになるかもしれませんのでご了承ください。
 POWにはPOW、SPDにはSPD、WIZにはWIZのユーベルコードを使用してきますので、それに対する対策をプレイング内に記述をお願い致します。

 あとこのシナリオは他に比べると割とコミカルにお送りしますので対策を忘れずにかつ自由にプレイングしてもらえたらなーと思います。

●プレイング受付について
 承認が下り次第プレイング受付開始致しますが、大人数はMSのキャパシティ的にお受けし切れない可能性が高いです。大体7人前後までが限界です。
 その為プレイング内容次第によっては不採用の可能性もございますので予めご了承の上プレイングを投げて頂きますようお願い致します。

 それでは、皆様のプレイングお待ち致しております!
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第1章 ボス戦 『猟書家『キング・ブレイン』』

POW   :    侵略蔵書「スーパー怪人大全集(全687巻)」
【スーパー怪人大全集の好きな巻】を使用する事で、【そこに載ってる怪人誰かの特徴ひとつ】を生やした、自身の身長の3倍の【スーパーキング・ブレイン】に変身する。
SPD   :    本棚をバーン!
【突然、背中のでかい本棚を投げつけること】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【リアクションをよく見て身体特徴】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    脳ビーム
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【脳(かしこさを暴走させる)】属性の【ビーム】を、レベル×5mの直線上に放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セルマ・エンフィールド
本の重み、ですか。
ぶつけられるものならば……物理的にぶつけるんですか!?

あのサイズの本棚を受け止めるのは私では不可能、跳んで避けるしか手はありませんか。

私にあの本棚を受け止める膂力がなく、防御は回避が中心であることは覚えられ、避けにくいような攻撃をしてくるでしょうが、それならそれでやりようはあります。

敵の攻撃に合わせナイフの『投擲』、デリンジャーの『クイックドロウ』を牽制に使い、思うように攻撃させないようにすることで回避します。

こちらに有効な攻撃を覚えればその分攻撃はワンパターンになる。近接戦闘の中で攻撃を『見切り』、『カウンター』に銃剣で『串刺し』氷の弾丸の『零距離射撃』を撃ち込みます。



●その少女、冷静にして精確。
「ブレブレブレ、ブ―――レブレブレ!よくぞここまで辿り着いた猟兵諸君!
 オウガ・オリジンより先にこの我輩と戦おうとは実に愚かな選択をしたものだ……だが吾輩は、敢えてそんな君らに敬意を評すと共に全力で相対しようではないか!どうぞよろしくお願いします!
 さあ、早速吾輩のこの本の重みを思い知って頂こう!(よしっ、中々いい感じに振る舞えたのではないか!?)」

 早速戦場へと向かえば、キング・ブレインは高らかに笑って迎えてくる――多分内心上手く決まってガッツポーズを取ったのだろう――。

「本の重み、ですか。ぶつけられるものならば……」

 セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)はその啖呵に応じた返しをしようとして――口を開けたまま固まる。
 理由は簡単だ、セルマは本の重みをぶつける――即ち相手の所有している侵略蔵書一冊一冊に秘められた力を解き放とうとしているものだと思っていた。思っていたのだが……

「よっ……こいしょっ」

 その背の本棚をキング・ブレインはひーこら言いながら持ち上げて投げる構えを取ったのである。結構フラフラだが投げられるんですかね?いや、もしかしたらそう思わせる作戦なのかもしれない。

「物理的にぶつけるんですかッ!?」

 本の重みは本の重みでも、物理の方の重さ。
 確かに687冊分の重みが詰まった本棚なんてものをぶつけられたら猟兵だってひとたまりもないのは当然である。
 平気でいられるのは怪力持ちの者かウォーマシンとかぐらいなのではないだろうか。フェアリーとか潰れそうですよ?
 とはいえそれで固まっていたらまんまと敵のユーベルコードを受けてしまうと思考を切り替える。

「どっ……せェ―――――い!!!」

 キング・ブレインが自らの侵略蔵書が詰め込まれたその重たい重たい本棚をセルマ目掛けて投げつけた。
 その本棚がこちらにくるまでの僅かな間、その狙撃手としての広い視野で本棚の射線、範囲、威力、規模を精確に測り、考える――

「(あのサイズの本棚を受け止めるのは私では不可能……飛んで避けるしか手はありませんか)」

 流石に狙撃手とは言え、少女の身でこの本棚を真正面から受け止めるには厳しすぎる……セルマは即座に本棚の射撃範囲から離れて武器を構えた。
 ずうん、と先程彼女がいた付近に本棚が沈み込む。
 超重量級の本棚だ、一度投げつけられれば地面にのめり込んですらいるようにも見えて威力の恐ろしさを痛感せずにはいられない。

「ブ―――レブレブレ!なる程、そのように動くタイプであるか。常に冷静で柔軟な対応ながらも突拍子のないことだと流石に一瞬フリーズするタイプかな~?」

 そして今のセルマの動きを見ただけでキング・ブレインはどうやら彼女が今何を考えてどう動いたのかを把握したようだ。
 もちろん、物理的にぶつけるのかと驚いたのも見逃さなかった様子――いやあんなん誰だって一瞬フリーズしますけどね?

「それなら――これはどうかなッ!?」

 今度は自らの周りに浮かせている本をまるで遠隔操作端末のように動かしセルマへと向かわせる。
 果たして侵略蔵書をそんなに物理的に使っても良いのだろうか。いや、物理攻撃にもある程度耐性があるのかもしれない。
 故にこそ本棚を投げるという物理的攻撃にて敵の動揺を誘おうとした可能性もある。
 人物像の割にはキング・ブレイン、即ち『脳の王』を名乗るだけの思考力と戦闘力を保有しているようだ。
 先程投げつけた本棚からもまるでサイコキネシスで動かしているかのように本が飛び出し、バラバラなタイミングでセルマへと向かっていく。
 一つ一つ確実に回避していくが、それもまたキング・ブレインに動きを把握されると同義……だがそれは彼女の想定の内でもある。
 元々回避が中心であることは先程の本棚投擲でバレているし回避しにくくなるよう時間差攻撃をしてくるのは眼に見えていた。
 敵に有効な動きをすることは戦術の基本中の基本、それに則ることに関しては猟兵や猟書家など所属や立場の違いは関係なく戦場に立つ者皆が平等に所有している"権利"だ。

「(やはりこちらが避けにくい攻撃をしてきますね……それならそれでやりようはあります)」

 キング・ブレインが侵略蔵書を操り、投げつけようとしたその瞬間を狙いながら既に襲いかかってくる侵略蔵書一冊一冊をナイフを投擲して射線をずらして回避を繰り返していくセルマ。
 ナイフの刃がかすめても傷が全くつかない辺り相当硬いのか、特殊な術式を施しているのか――ともあれ、ナイフに弾かれた本はキング・ブレインの手元に返る。

「ブレブレブレ、中々良い技術……うーん、猟兵でなければ怪人としてスカウトしたかったんだけどなあ」
「生憎ですが、猟兵でなかったとしてもそのお誘いはお断りさせて頂きます」
「そうか、残念。ではここで散ってもら――んぎゃっ!?」

 新たに投げつけようとしたところで銃撃が飛び、キング・ブレインは思わず飛び退いた。
 尻餅をつきながら飛んできた先を見ると、セルマの手には小型の銃が握られている。
 セルマはナイフで侵略蔵書を退けながら秘匿携行用小型銃『デリンジャー』を取り出し、すぐにでも撃てるよう構えていたのだ。
 相手がこちらの動きを覚えて有利に動こうというのであればそれに対して牽制を行い、敵の動きを制御するまで。
 再び『デリンジャー』の引鉄を引き、銃撃が飛ぶ。

「あわっわわわ……くっ、おのれめちゃくちゃ射撃が精確ッ!凄いなあ!!だが吾輩も負けていられないのだ!!」

 慌てて銃撃を回避しながらキング・ブレインは引き続き侵略蔵書を物理的にぶつけようと試み続ける。
 その挙動は先程受けた攻撃とパターンが似ている――いや同じに見える。
 やはり、とセルマは思った。

「(こちらに有効な攻撃を覚えればその分攻撃はワンパターンになる……その視野の狭さが私の勝機です)」

 人間――キング・ブレインが本当に人間かどうかは置いておくものとする――、楽なパターンがあればそれにのめり込むもの。
 パターンが一定化されたならば突破口は簡単に開ける。
 セルマは愛用のマスケット銃『フィンブルヴェト』を構え、キング・ブレインの侵略蔵書の弾幕へと飛び込んだ!

「なっ、何ィーッ!?飛び込んでくるとは予想外だぞお嬢さんッ!!」

 射手、即ち遠距離攻撃の使い手という一般的なイメージが離れなかったキング・ブレイン。
 慌てて攻撃を集中させるが、最早セルマはその一冊一冊の挙動を完全に見切っていた。

「――私は、近接戦闘ができないと言った覚えはありません」
「いや確かに聞いてないんだgふぎゃァッ!?」

 銃剣『アルマス』の刃がキング・ブレインを完全に捕らえ、その口から情けない悲鳴を飛び出させる。
 そしてセルマは間髪入れず『フィンブルヴェト』の引鉄を引いた!

「んぎゃぁあああああああああああああああああッッ!!!!」

 銃口から火を噴く蒼白の氷弾に、キング・ブレインは早くも断末魔のような叫びを上げ――何故かその後離れた場所で尻を突き上げた状態で倒れる。

「……あんな倒れ方している辺り、まだ立ち上がってきそうですね……」

 理由はないのだが、直感的にそう思わずにはいられない……とはいえ十分な一撃にはなっただろうしまだまだ猟兵は控えている。
 セルマは踵を返してグリモアベースへと帰還するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルファ・オメガ
がう、キング・ブレインかぁ
確かに悪い人じゃなさそうなんだけど
悲しいけどボクたち不倶戴天の敵同士なんだね

というわけで戦闘
「どうぞよろしくお願いします」

先制攻撃は本棚ごと【れっど・ふぁいあ・まきしまむ】で焼いちゃう…なんてこったい、10秒間チャージが間に合わないよ!

とりあえずチャージ無し『れっど・ふぁいあ』を発射
反動で後ろにころころ転がるよー
「ふはは、こんな使い方も、がうっ?!」
(謎の本棚で頭を打った)
(頭を押さえて10秒ほど動かない)
「がう、この時間を待ってしまうキミの優しさが敗因だよ!」
立ち上がってれっど・ふぁいあ構え
不意打ちは無し!
「しゅーーーーーとっ!!」
どっちの火力が上か、真っ向勝負だ!



●その二人、決して相容れることはできず
「あだだ……流石は猟兵、初っ端からえげつない攻撃をしてくるな……あっヤバい次がくるからキャラをキープしなくては……」

 暫く尻を突き上げたまま倒れ伏して痛みに呻いていたキング・ブレインであるが慌てて立ち上がり本棚もきっちりと背中に戻してから次なる猟兵を迎え撃つ体勢に入る。
 先程の一撃の痛さで時々涙目になるのを慌ててティッシュで拭いながら……

「ブ―――レブレブレ、よくきたな猟兵諸君!吾輩なりの流儀でもてなしてやろう、どうぞよろしくお願いします!」

 と、高笑いを再び上げるキング・ブレインに次に挑むのはアルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)。

「どうぞよろしくお願いします」
「あっこれはどうもご丁寧に、こちらこそ……」
「がう、どうもどうも」

 アルファがぺこ、と頭を下げるとキング・ブレインも慌てて頭を下げる。まあ律儀。
 こういうところが変に人間味があるというか、悪人らしくない。

「(ううむ、素晴らしい毛並み……実にもふもふだ……とても丁寧な人だし猟兵じゃなかったらマスコットポジションで雇いたかったなあ……)」
「(確かに悪い人じゃなさそうなんだけど……悲しいけどボクたち不倶戴天の敵同士なんだね)」

 片や猟兵、片や猟書家……オウガ・フォーミュラとなりフォーミュラ亡き世界を簒奪しようと企む以上、キング・ブレインが敵以外になることはあり得ない。
 例え分かり合うことができたとしても敵として相対し、どちらかが倒れるまで戦い続けるしかないのだ。
 ある意味悲しき運命の下に生まれた(?)二人の戦いが、こうして幕を上げる。

「(相手は先制攻撃をしてくるんだったね……本棚ごと焼いちゃうか)」

 早速第一手から容赦なしの戦術を繰り出そうとするアルファ、ケットシー用に特注された大口径熱線銃『れっど・ふぁいあ』をその肩に構えチャージを開始する。必要時間はたったの10秒――だが。

「はい本棚ド―――――ン!!!!」

 キング・ブレインはその10秒すら与えるつもりはない、と言わんばかりに早速本棚をぶん投げた!
 アルファに迫るまでそれこそ10秒とかからない速度で投げてくる辺り流石猟書家、一発や二発大きなダメージを喰らったところでそう簡単に戦力が衰えるワケではないらしい。

「(なんてこったい、10秒間チャージが間に合わないよ!)」

 アルファは『れっど・ふぁいあ』のチャージを諦めその場で発射。
 どぉんと銃口が火を噴けば、その反動でアルファのもふもふの身体が吹っ飛んで後ろにころころ転がり、本棚に押し潰されることはなかった。

「なっ、何ィーッ!?反動を使っての回避だと!?くっ、おのれ、流石猟兵上手いことをしてくれる!」
「ふはは、こんな使い方も――がうっ?!」
「だがその回避パターンは把握し――あっ」

 ごっち―――――――ん☆
 何ということでしょう、これが漫画であったならそんな感じの擬音が表示されるであろう勢いでアルファは背後にあった謎の本棚で頭を打ってしまった!
 めちゃくちゃ痛そうな音がして思わずキング・ブレインも声を上げた。だってどう見ても痛そうだもん。

「…………がう…………」

 アルファは頭を抑えて蹲り動かない。
 きっと痛かったんだ、相当痛かったんだ……多分。抑えている頭部にはきっと大きなたんこぶができているに違いないとキング・ブレインは確信した。
 そして可愛いもふもふのケットシーが頭を蹲ってぷるぷるしているところに追い打ちをかける気にはどうしてもなれないのかあわあわとした様子で見守っている。

「(うわあ……痛そう、めちゃくちゃ痛そう……吾輩がさっき受けた攻撃もすこぶる痛かったけどあれはそれとは別レベルで死ぬ程痛い奴だ……)あ、あの……大丈夫ですか……」

 ついには心配のあまり思わず声もかけてしまった。
 例えるならこれは――そう、タンスの角に不覚にも小指を打ってしまった時の痛み。
 敵からまともに受ける攻撃もすこぶる痛いが、それとは別に死ぬ程痛くて涙が出る奴だ。
 その痛みに共感するという行為は猟兵と猟書家の垣根を考えずとも許されるだろう……何せキング・ブレイン自身が何度投げつけたその本棚で足の小指を打ったことが何度もあるのだから。
 あれめちゃくちゃ痛いよねマジで。わかる、わかるよ……ホントに痛いよね……

 ――この思考回転に要した時間は凡そ10秒程である。

「がう……やはりキミは悪い人じゃなさそうだ……」

 先程まで動かなかったアルファの口が開く。
 あっよかった大丈夫そうだとキング・ブレインはほっと胸を撫で下ろす――と同時にげ、といった表情を浮かべた。
 そう、アルファの構えている『れっど・ふぁいあ』の銃口に今にも火を吹き上げんばかりの熱が集まっていたのである!
 あまりにも痛そうな光景に思わず戸惑ってしまった結果チャージを許してしまったのだ!

「この時間を待ってしまうキミの優しさが敗因だよ!」
「し、しまったァーッ!?吾輩としたことがッ、だがまだ負けてはない、負けてはないぞ!!」
「不意打ちはしないよ――どっちの火力が上か、真っ向勝負だ!」
「うおおおお負けるか負けてなるものか、燃え上がれ吾輩のエネルギ――――――!!!」

 キング・ブレインの頭が光り輝き、侵略蔵書たちが魔法陣を描くように彼の周囲を舞う……!
 そしてアルファの『れっど・ふぁいあ』のチャージも完全に完了、いつでもユーベルコード【れっど・ふぁいあ・まきしまむ(レッド・ファイアデ・チャージショット)】を放てる状態だ。
 相手がこちらのチャージを待ったのと同じように、アルファも相手のチャージを待ち――

「喰ゥらァえェ――――――――!!!!」
「しゅ――――――――とっ!!!」

 互いに寸分すら違わぬタイミングでキング・ブレインはビームを、アルファはブーストフレアブラスター弾を発射!
 エネルギーとエネルギーがぶつかり眩い光が生まれる――互いの攻撃も決して一歩も譲らず、真っ向にぶつかりあう!

「ぬおおおおお……!!」
「がううううう……!!」

 互いに絶対に負けぬという意地と共に足を踏ん張り、最高火力をぶつけ合う。
 しかし段々とキング・ブレイン側が押し負けていく……!

「ぐ、ぐぬぬぬぬ!おのれ猟兵っ、だが吾輩はこの一撃だけではまだ沈まん、沈まんぞォォォォ―――――――ッ!!!!」

 そんな負け惜しみのような台詞と共に、キング・ブレインは押し負けたビームのエネルギーとブラスター弾のエネルギーに包まれどごぉん、と派手に爆発する。
 さながら特撮ヒーローモノでよくある巨大化した敵が倒れた後に爆発するお約束の展開のような光景がその場で繰り広げられていた。
 最早手向けの言葉は不要だろう、アルファは踵を返し、ぽてぽてとその場を立ち去っていく。
 ……もし互いに猟兵と猟書家として出会わなければ仲良くなれたかもしれないなあとは、やっぱり思いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

末代之光・九十
【鴉】
藍と一緒に超話しかける。結果的に詠唱の邪魔になれば良いね。

君の口上はなってない!
(精神攻撃Lvの差し出がましさ)
君はキング何だから。最初の掴みで大事なのは悪役らしさより王としての風格だよ!
威厳!カリスマ!荘厳さ!
高笑いに合わせて効果音とか出せない?
欲を言うなら演奏とか…参考に藍の演奏聞く?
て言うか藍ってば本当にい可愛いよね。可愛いよね?(脱線)

あ。それとその詠唱も!堂々とお腹から声出す!
もっと壮大で主語の大きい語句にしてー
暴走した賢さで語彙増やしてー
王器を溢れさせてー

良い感じ!よし発射―!
(スムーズに直撃食らって吹っ飛ぶ)

あ。先生ー後お願いねー
(丸投げされた戦士の霊が名状し難い顔してる)


紫・藍
【鴉】
ブゥウウッレブレブレブレブレ!
どうでっすか、この見事な高笑いっぷりは!
藍ちゃんくん達をすぐ倒してしまうとコツを掴めなくなるのでっは!?
コミュ言いくるめな時間稼ぎ兼コトのおねーさんのお手伝い!
楽器演奏で物々しいBGMや迫力のSEを!
可愛いにはぴすぴすを!
少しでも脳のおじさまが躊躇し―

あやややややー!?
突然の本棚に大慌てで藍ドルオーラ防御や空中浮遊回避での負傷軽減!
吹き飛ぶおねーさんへ「おねーさーん!」
戦士さんには応援ふれふれなのでっす!
反応を覚えてとのことでっすので藍ちゃんくんの賑やかさを印象づけ!
からの本番の二撃目に対し、突如黙るだまし討ち!
飛んでくる本棚ごと吸い込んじゃうのでっすよー!



●その二人、あまりにも自由。
「ブゥウウッレブレブレブレブレ!!!」

 唐突に高らかに笑い出したのは紫・藍(覇戒へと至れ、愚か姫・f01052)、キング・ブレインはびくりと肩を震わせた。

「(なっ、何だこの猟兵……ッ、めちゃくちゃ高笑いが上手いッ!?え、吾輩より上手くないか!?)」

 藍のその高笑いの声の出し方、笑う際の仕草、纏うオーラ……全てがキング・ブレインの脳内でイメージしている悪人らしさと見事に合致している。思わず憧れの目線を向けずにはいられない程。

「どうでっすかこの見事な高笑いっぷり!!藍ちゃんくん達をすぐ倒してしまうとコツを掴めなくなるのでっは!?」
「なっ、何ィーッ!?!?」

 どきーん、とキング・ブレインの心が動揺で跳ねる。
 コツ……悪の怪人を統べる者らしくあるコツ、だと……何それ吾輩とても気になります!!と探求本能(?)が燻ぶらずにはいられなかった。
 何より怪人たちに失礼のないように振る舞うのは大事だしね。
 正直に言うとキング・ブレインは自分で考えた悪人らしい振る舞いには自身がなかったのだ――故に藍、そして彼女と共にやってきた末代之光・九十(何時かまた出会う物語・f27635)にまんまと言いくるめられることとなる。

「はっきり言わせてもらおう――君の口上はなっていない!!」
「うぐゥーッ!!?」

 ぐさっとキング・ブレインのガラスのハートに九十の指摘がCRITICAL HIT!!その場でがくっとうなだれた。

「君はキングなんだから。最初の掴みで大事なのは悪役らしさより王としての風格だよ!威厳!カリスマ!荘厳さ!」
「なっ……なる程……それは盲点だった……!」

 知見を得たかのようにキング・ブレインはメモ帳を取り出して九十からの指摘内容を書き留めていく……ルーズリーフ指揮のメモ帳には思わずドン引きしたくなるレベルに文字がぎっしり詰まっている。
 どれぐらいかというと白い部分が全くないぐらいに小さい文字でみっっっっっっっっっっちりと……いや、それ最早読めなくない?

「高笑いに合わせて効果音とか出せない?」
「効果音……なる程、効果音をつけてよりインパクトを上げるとらしくなると」
「欲を言うなら演奏とか……」
「え、演奏!?スピーカー設置しないとなあ」
「参考に藍の演奏聴く?」
「OKえぶりばでぃ、準備はいいでっすかー!!」

 藍が演奏を始めるとパイプオルガンから始まる荘厳な悪役らしいバックグラウンドミュージックがその場で流れ始める。
 その荘厳さと迫力たるや、まさしく悪役……キング・ブレインはおおと目を輝かせながら聴き入った。
 時に混ざる落雷音のような迫力のあるサウンドエフェクトがより悪役にして王たる者らしさを引き立てるかのよう……

「(す、素晴らしい……この音楽、さながら書架の王の無駄のなく的確な采配と変わらない完璧な構築で楽譜が作られてある……何と素晴らしい悪の王らしい曲か……!)」

 最大の賛辞が書架の王の采配レベル、それほどまでに書架の王に忠誠を誓っているのか。
 とにかく、キング・ブレインは感動に打ち震えその様子に演奏を終えた藍はご機嫌な様子を見せる。

「ご清聴ありがとでっすよー!!」
「流石、見事な音楽だったよ。ていうか藍ってば本当に可愛いよね」
「えへへーぴすぴすーぴすぴすー♪」
「ね。可愛いよね?」
「えっ」

 唐突に話が変わった。
 先程まで口上の改善案について話をしていたのが華麗にスライドするかのように藍の可愛らしさについての話題へと早変わり。
 九十はひたすら藍の可愛さについて語り尽くし、藍はそれにぴすぴすダブルピースをして感謝を示し続ける。
 そして話題を振られるキング・ブレイン。

「(……あれっ、これもしかしなくても吾輩乗せられただけなのでは?)」

 今更気づいたか。
 そう、これは可能な限り喋り尽くすことで攻撃の機会を減らしてやろうという九十と藍の巧みな作戦だったのだ!
 キング・ブレインは悔しさに苦虫を噛み潰す。
 悔しい、とてつもなく悔しい……しかも指摘内容が至極真っ当で的を射ていただけに余計に悔しい。
 複雑な感情と共に本棚を持ち上げ、藍目掛けて思い切り投げつけた!

「あやややややー!?」

 慌てて空中浮遊で緊急回避、からの藍ドルオーラをその身に纏うことで負担を軽減。
 間一髪というところで本棚にべしゃりと潰される未来は免れた。
 それに合わせ九十も距離を取り、改めて猟兵と猟書家は相対する。

「くっ、危うく術中に嵌るところだった……おのれ猟兵、正々堂々から搦め手まで何から何までありすぎるぞ!」
「いや、君が素直すぎるだけだと思う」
「うっ、うるさーい!ともかく茶番はここまでだ!吾輩の脳髄の力とくと見せてやろう……!」

 キングブレインの頭に光が集まり、まるで高速回転するかのように中の脳髄が震え始める!
 いやそれ大丈夫なんですかというツッコミは野暮である、何故ならこれは脳ビームだからだ。
 詠唱時間に比例して威力が増大する脳ビーム、それは脳の賢さを司る部分一帯を過剰回転させ暴走の極致にまで至らせるモノ、喰らえばひとたまりもないであろう……!

「我が脳はあらゆるモノを見抜き貫く知識という――」
「その詠唱ももっと堂々とお腹から声出す!」
「はひっ!?」

 また唐突に指摘が入って思わず硬直するキング・ブレイン。

「はい、もっと壮大で主語の大きい語句にしてー、暴走した賢さで語句増やしてー!」
「わ、我が脳髄は全能の叡智、一切を看破し森羅万象を凌駕する知識の結晶なり!」
「王気を溢れさせてー!」
「矮小なる者共よ、原初の闇にすら至らんこの知識の奔流に呑まれ失せるが良い!」

 語彙のバリエーションを増やせば増やす程頭の脳みそが活性化に活性化を繰り返し、強いエネルギーが生まれ始める。
 これぞまさに必殺技、と言わんばかりの様相を見せ始める姿に九十は満足気な顔をして、これでいいのかって不安げな顔をしていたキング・ブレインもほっとした様子を見せた。

「良い感じ!よし発射ー!」
「喰らえ、脳ビィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイム!!!!!!!!」

 そして放たれた渾身の脳ビームが九十に命中、その華奢な身体は華麗に宙を舞う――

「おね―――――さ―――――――――ん!!!!」

 藍が叫ぶ。
 だが、この後どの手を繰り出すかは知っている為内心は全く焦っていなかった……というかそういう目的でこういう動きをしようと打ち合わせをしたのだから知っていて当然とも言う。
 なのに叫んだのは何故かって?それが通過儀礼というものだからさ。

「あ、先生ー後お願いねー」

 九十は地面に叩きつけられる前にユーベルコードを発動する。
【畢竟、死と生命との間に境などは無く(イシカホノリ・アラハバキカムイ)】……これにより呼び出したるは当時自身と良好な関係を築いていた古代の戦士の一人。
 なんとも名状しがたい顔で九十が地に伏すのを見て、「お前いい加減にしろよマジで」と言いながらなんだかんだと彼女から貸与された死と生命が形を成した武具を構えた。

「くっ、またしても……吾輩の攻撃を敢えてその身に受けることで召喚術式のトリガーとするとはこの猟兵たち、できる奴らよ……くーっ!悔しい!!!」

 自分より賢いやり方しやがって、とキング・ブレインはそろそろ腹が立ってきた様子。
 九十はその場から動かないが、藍は九十が呼び出した戦士に向けて「フレー!フレー!なのでっすよー!」とポンポンを手に応援している。
 つまりはそういうリアクションをするのだと把握した。
 ちょっと悔しいのでせめてあと一発はぶん殴りたいところなので反応を把握してしまえばこちらのもの、この召喚された戦士は後からどうにかすればいい。

「ブレブレブレ……だがしかしそのパターンは把握した!もう先程までのようにはいかないと思うがいい!いくぞォォォ――――!!!」

 その重たい重たい本棚を持ち上げ、空中浮遊している藍に向かって全ての膂力を振り絞って投擲する!
 先程の賑やかな反応をするのであればこの攻撃は確実に命中する、そう狙って投げたのだから。
 さあ、これは避けられまい……!とブレブレ笑うキング・ブレイン、対して藍は。

「…………」

 何も言わなかった。
 えっ、とキング・ブレインは声を上げる。
 いやだってさっきまでめっちゃ賑やかだったのに何いきなり黙りこくっちゃってんの?調子狂うじゃんやめてよーと言いたげな目線を向けるが、それでも藍は何も反応しない。
 その沈黙が藍を特異点とし、世界に虚を生じさせる――ユーベルコード【藍ちゃんくんが黙るだなんて世界の終焉なのでは!?(ワールドエンド・サアイレンス)】の発動の瞬間だった。
 沈黙した藍を特異点とした虚はとてつもない引力と重力を発し始め、擬似的なブラックホールとして投擲された本棚を綺麗に飲み込んでいく……!

「わ、吾輩のスーパー怪人大全集(全687巻)―――――――――――!!!!!」

 頑張ってこつこつ集めた侵略蔵書が一瞬にして暗闇に飲み込まれる様を目の当たりにしたキング・ブレイン。
 がくりと膝を尽き、うなだれるその姿はまさに絶望している様を如実に再現しているかのようであった……
 いや、なら最初からそれを入れた本棚を武器にするんじゃねえよって?ご尤もです。
 ともあれ、この後古代の戦士によってボッコボコにされましたとさ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九重・玄音
あっそ、滅ぼす(無慈悲)

・WIZ
脳ビームが見え次第、あえてモロに受け止める。
かしこさを暴走させるのなら、指定UCがちょうどいいわ。継続戦闘と激痛耐性で起き上がりながら詠唱開始。

滅ぼす。滅ぼすために滅ぼす策略。我が知能、我が英才的思考回路に不可能なし滅ぼす。致命的エラー不明な論理演算稼働滅ぼすオウガ滅ぼす滅ぼすべし滅ぼすべく滅殺殲滅死滅消滅滅滅滅滅滅滅滅滅──!!

脳味噌がはち切れんばかりの殺意オーバーフロー状態になりつつ、エーテルジャベリンを手に突撃。相手に全てをぶつけるわ。零距離発射!!

【アドリブ・絡み歓迎】



●その殺意、最早狂気と何が違う?
「ブレブレブレ、ブ―――レブレブレ!よくぞここまで辿り着いた猟兵諸君!(以下中略)どうぞよろしくお願いします!」
「あっそ、滅ぼす」

 九重・玄音(アルターエリミネーター・f19572)の反応は非常に淡白であった。
 何ひとつとてリアクションも返さず、ただ一言そう告げてエーテルジャベリンを構える。
 まるでそれはこちらを見ているという風には見えないような気がして、キング・ブレインは流石に少し苛立ちを覚えた。

「吾輩をただの通過点とでも思っているようだな、猟兵よ……!
 確かに吾輩は書架の王やサー・ジャバウォックに比べれば実力は劣るだろうが、それでも舐めくさるなら相応の痛い目に遭うぞ」
「たかだか痛みぐらいを気にしている暇なんてないわ。それにあんたの実力とかそんなことはどうでもいい、私の目の前に立ちはだかったんだから滅ぼす。それだけよ」
「ぐ……こ、この……」
「わたしはオウガ・オリジンを滅ぼさなければならないの。邪魔をする者は誰だろうと滅ぼすだけ、だから貴方も滅ぼす」
「別に吾輩放置してオウガ・オリジン倒しにいけばいいではないか!!我々猟書家があいつの力を封じてるって知ってるでしょォ!?わざわざ吾輩倒してパワーアップさせるなんて自殺行為も甚だしいぞ!!」
「とにかく貴方は邪魔」

 ぷつん、とキング・ブレインの堪忍袋の尾が切れる音がした。
 何を言っても話にならないし自分のことをただの通過点扱いされたら流石に彼も怒りに震えずにはいられない。
 ば、とマントを翻して啖呵を切る。
 
「ここまで舐めた扱いされると流石の吾輩も怒髪が天を突くどころか貫くぞ!!ただの通過点扱いしたことを後悔させてやろうではないか……!
 喰らうがいい我がユーベルコード、我が脳髄は全能の叡智にして一切を看破し森羅万象を凌駕する知識の結晶なれば矮小なる者共は我が前に平伏し知恵を乞う、原初の闇にすら至らん知識の奔流にて貴様を一切滅却してやろう!!」

 高速回転する脳から放たれるエネルギーがキング・ブレインの頭から迸るが、それでも玄音は眉一つ動かさない。
 ただ黙ってそれを見ているだけ……端から見ればただ無防備な姿を晒しているに過ぎないが、頭に血の登ったキング・ブレインにはそれすらも挑発に見えて尚更苛立ちと共に脳を高速回転させる。
 そして詠唱文句を十分に謳い上げたところでそのエネルギーをビームとして玄音目掛けて発射した。
 だが玄音はまだ動かない――いや、動く気がない。その迸る脳髄のエネルギーを全身を以て真正面から受け止める!
 華奢な身体に対して飛んでくるエネルギー量が尋常ではなく、踏ん張りも効かずそのまま吹き飛ばされて壁に強く身体を打ち付けた。
 ずるりとそのまま壁伝いに地に伏せる玄音、それを見てキング・ブレインはやってやったと高笑い。

「ブ―――――レブレブレブレ、大口を叩く割に対したことないではないか!吾輩に勝てないようではオウガ・オリジンを倒すなど夢のまた夢だろうなあ!!」

 刹那、ぞわ――と寒気が背筋を駆け抜ける。
 まるで自分よりも強く大きな者が殺意をこちらに向けているかのような威圧感だが、それを放っているのは誰?
 答えは目の前にあった。……玄音だ。
 先程の攻撃を受けながらもふらふらと立ち上がり、ぼそぼそと呟いてこちらに一歩一歩と近づいてくるその様相は明らかに正気ではなく、キング・ブレインは冷や汗を浮かべながら警戒するように後ずさる。

「ま、まだ立っていられるか……頑丈な奴め……!」
「……す……ぼす」
「な、何を言っている……?」

 ぼそぼそと呟く内容が聞き取れず思わず耳を傾ける――が。それが運の尽きだったのかもしれない。

「滅ぼす。滅ぼすために滅ぼす策略。我が知能、我が英才的思考回路に不可能なし滅ぼす致命的エラー不明な論理演算稼働滅ぼすオウガ滅ぼす滅ぼすべし滅ぼすべく滅ぼす滅ぼす滅殺殲滅死滅消滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺――――――――――――――――――――!!!!!」
「ひぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!?!?!」

 その顔は最早正気にあらず。
 玄音は瞳孔の開ききった瞳でうわ言のように滅ぼす、殺すと繰り返しながらエーテルジャベリンを片手に突進!
 先程の脳ビームの効果により彼女の脳もまた高速回転を始め、オーバーフローを起こしているかのような殺意を全面に押し出しているようだ。
 目から血涙――脳の過剰回転により負担がかかった結果の産物――を流しながら狂ったように殺意を仄めかす供述を繰り返している姿にキング・ブレインは思わず悲鳴を上げて逃げ出し始める。
 何とまあ情けない姿にも見えるが、明らかに狂った殺意を向けられて生き物としての生存本能が反応しないワケがないのだ。
 普段の様相とは全く違う最早狂気にしか見えない殺意を謳い叫ぶ姿は最早人にあらず――今ここにいるのは九重・玄音という一人の人間ではなく、目の前に立ちふさがる者を一切合切殲滅しようとする帝竜だ。

「滅ぼす滅ぼす滅ぼす滅ぼす滅ぼす為に収縮し凝縮し濃縮し圧縮する我が王権我が力我が全てをここに集め束ね重ねそしてこの破砲の一撃に平伏し滅べこれぞ帝竜の力なり滅べさあ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べぇええええええええええええええぇええええええええエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!!!!!!!!」

 ユーベルコード【破砲:狂竜咆哮(ベルセルク)】。
 逃げゆくキング・ブレインに肉薄し、エーテルジャベリンを突き刺すと共に最大出力でそれを放つ。
 高速回転からなる詠唱は高速詠唱でありながら最大級の魔術を放つに値するレベルの威力を蓄積させるに至り、人の形をした猟書家一人は簡単に消し炭にしてしまえる程の力へと昇華。
 それを零距離で受けてしまえば五体無事でなど当然いられるワケがなく……キング・ブレインの姿は最早どこにも残されていなかった。
 玄音は仕留めたことを確認すると、血涙の跡を拭う間も惜しいと踵を返してグリモアベースに帰還する。
 ……まだ彼女が滅ぼすべき敵は、残っているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルフレッド・モトロ
グワーッ!?
びっくりさせやがって!!(※リアクション)
何しやがるテメエ!!

この野郎……本は大事にしなさい~って
母ちゃんに教わらなかったのか!?

バーン!されたでかい本棚の勢いを【プロトステガ】の【盾受け】で削いで
【怪力】と【気合い】で受け止めるぞ!
多少のダメージは覚悟の上だ!


そして反撃だ!
受け止めたでかい本棚を担いでヘルカイトに【サーフィン】!
UCでの急加速の勢いに乗せて、このまんまお返ししてやろうじゃないか!

【力溜め】からの本棚【投擲】だー!!

オラァ!俺の「本棚をドーン!」を食らえ!!

(連携アドリブ歓迎です)



●その説教、至極当然の内容。良い子のみんなは本を大事にするんだぞ!
「ブレブレブレ、ブ―――レブレブレ!よくぞここまで(以下中略)どうぞよろしくお願いします!
 では早速本棚ド――――――ン!!!」
「グワ――――――――ッ!?!?!?」

 猟兵がやってくるのを見るやいなや挨拶も早々と早速本棚を投げつけるキング・ブレイン。
 アルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)は流石にびっくりして悲鳴を上げながらビームシールド『プロトステガ』を展開、その本棚の一撃を受け止めた。

「ぐ、お、重……ッ!!」

 重い。この本棚とにかく重い。687冊分の重みは伊達ではないと言わんばかりに『プロトステガ』で受け止めようとするアルフレッドを押し潰さんとする。
 彼はこれでも怪力には自信のある猟兵であるが、その彼にすらも重いと言わしめるこの本棚、そしてそれに仕舞われた侵略蔵書687冊。
 元々本棚というものはその特性上大きく、それに比例して素の重量もそれなりなのだがさらにそこに687冊分の本の重量が加算されればアルフレッド程の怪力の持ち主であってもそう簡単に退けられるものではない。
 しかしこれぐらいで根を上げる程度の覚悟でこの場に向かってなんかいないと歯を食い縛り、足を踏ん張り……何とか本棚の勢いを殺し切ることに成功した。

「びっくりさせやがって!!何しやがるテメエ!!」
「ブ―――レブレブレ、真正面から受け止めるとは見事!中々タフな猟兵ではないか」

 アルフレッドを見定めるかのような視線を向けながらキング・ブレインは笑う。
 先程の一撃で彼の行動やリアクションはだいたい把握が完了した、受け止めるなら受け止めきれない程の攻撃を以て迎え撃てば良い――と考えている矢先であった。

「この野郎……本は大事にしなさい~って母ちゃんに教わらなかったのか!?
 というかテメエ猟書家ってことは本を扱う奴だろ!?図書館の司書さん的な立場でもあるんだろ!?本のパワーを引き出すんならまだしも本棚を投げつけるんじゃねえよ!!!」
「ブ、ブレッ!?」

 アルフレッドが物凄い剣幕で捲し立てるような勢いで説教を始めた――!
 司書さん的な立場かと言われると違う、間違いなく違うのだが指摘は至極ご尤も。
 一応本のパワーを引き出す技がないわけではない、ないワケではないのだがたまたま猟兵に対して有効であろう攻撃が本棚投擲だったというだけなのだ。
 まあ結果こうして説教を喰らう羽目になっているんですけどね!

「サー・ジャバウォックもレディ・ハンプティも本の力を使って見えない怪物やら列車やら呼び出したりしたけど本を投げたりだのぞんざいな扱いはしなかったぞ!!
 それに比べてお前はこうも安々と本棚ごとぶん投げやがって、この本頑張ってこつこつ集めた奴じゃねえのかよ!?」
「ぎくゥーッ!」

 キング・ブレインの侵略蔵書、「スーパー怪人大全集(全687巻)」。
 他の猟書家たちは一冊ずつ、そして書架の王は侵略蔵書を持っていない中、彼の侵略蔵書だけやけに数が多かった。
 恐らく全巻揃って初めて効力を発揮するモノなのだろう。
 猟兵たちはキング・ブレインがこれをこつこつ集めたと言っていた瞬間を予兆に見ている、つまりその情報は筒抜けなのだ。
 そんなこつこつ頑張って集めた物を入れた本棚を軽々と投擲するとあれば、そりゃあ誰か一人はこういった角度から切り込みにかかるワケであり、たまたまアルフレッドがその一人になったというだけである。
 まあ実際頑張って集めたモノをぞんざいな扱いしちゃあダメですからね!もったいないし!
 元よりアルフレッドは一つ一つ物を大事に扱う優しい男であり、自身が操縦する飛空戦艦ワンダレイも修理を重ねながら大事に扱っている、そんな彼が物をぞんざいにする者を見れば烈火の如く怒るのも当然であった。

「こうなったらこの本棚は没収だ没収、そんな酷い扱いする奴のとこに置いておけません!」
「えっあっちょっ待っ、待って持っていくのは待ってくれェェ―――?!」

 なんとアルフレッドは本棚をひょいと持ち上げるとそのまま相棒であるトビエイ型宇宙バイク『ヘルカイト』に乗り爆走し始める!
 慌ててキング・ブレインは返してもらおうと必死に追いかけるが、その爆発的なスピードに生身の足でついていくのは流石に無理であり、そのまま飛び去っていくのを泣く泣く見送るしかないのか……と諦めかけたその時、アルフレッドは姿が見えなくなるまで遠くへ行ったかと思うと帰ってきた。
 とてつもないスピードで、本棚を抱えたまま……

「な、何!?戻ってくるだと……ま、まさか……」
「はっはっは、さあてどうだろうなあ――行くぜ相棒!フルスロットル!!」

 アルフレッドのユーベルコード【爆走飛鱏ヘルカイト】が発動する。
 加速力が爆発的に増大すればそれは必然的に攻撃の威力をも高めるもの……そしてアルフレッドは猟兵の中でも中々抜きん出た怪力の持ち主だ。
 その二つの要素に加え、今アルフレッドが抱えているキング・ブレインの本棚――
 これらが合わさることで導き出される答え、それは彼自身が同じ攻撃で反撃するということに他ならない。

「オラァ!!俺の「本棚をドーン!」を喰らえキング・ブレインッッ!!!!」
「待ってさっき吾輩にああ言っておいてそうくるのぐはァ――――――ッ!?」

 大きく振り被ったアルフレッドの一撃が突き刺さる!
 爆発的なスピードと怪力が合わさった渾身の本棚投擲にキング・ブレインはなす術もなくぺっちゃんこ。
 手だけがかろうじて出てきてぴく、ぴくとひくついているがまあ動けはしないだろう。

「本の痛みは本の痛みで返す。目には目を、歯には歯をだ!
 まあ、できればそんなことせずに済めばいいんだが――お前はそうじゃなさそうだからなあ……」

 と、去り際に残してアルフレッドはヘルカイトに乗ったまま飛び去っていく。
 またワンダレイの隙間風チェックとか雨漏りチェックとかもしないとなあ――とかそんなことを思いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
本棚を避ける気はない、受けて耐える!
左腕に邪神オーラを集中させ、前方に翳してガードだ!
痛みは我慢、効いてる素振りも見せはせんよ

はーっはっはっは! はじめまして、妾の名は御形・菘!
キマフュを統べる邪神だ、よろしく!
お主の野望は素晴らしい! しかし…分かるであろう?
キマフュ征服を目論む輩は、きっちりシメんとな

と、トークしつつ防御を行いながら突っ込もう
回避で凌ぐなど撮れ高が寂しい、このままカッコ良く突進して攻撃!
…が此度の戦法と思わせる!
至近に迫った最後の一撃のみ、上半身を傾けてスウェー
一気に懐に潜り込み、左腕をブチ込む!
はっはっは、数多の怪人どもをボコってきた妾の渾身の一撃、お主もブッ飛ぶがよい!



●その動画、きっと今回も視聴率爆高間違いなし!
「ブーレブレブレブレ!ようこそ猟兵諸君ーーうーんそろそろ同パターンを繰り返すのもアレかな……」
「はーっはっはっは!」

 ここで唐突に賢者タイムに陥ったかのようにメモ帳を見直すキング・ブレイン。
 だが猟兵はそんなのを待ってくれなどしないのだ、彼を倒すべく立ち向かおうと訪れた猟兵がまた一人。
 キマイラフューチャーの一番星、国民的人気スタアの御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)だ。
 高笑いを上げながら威風堂々とした振る舞いで一歩一歩を踏みしめ、キング・ブレインと相対する菘。

「(な、何だこの猟兵……カリスマが段違い……ッ、というかそのルックスに今の高笑い、素晴らしく悪役ーー否、邪神と言うべき立ち振る舞い……吾輩はコレを見習わねばならないのでは!?)」

 国民的スタアである菘の圧倒的カリスマにキング・ブレインは思わず跪かなければならない程の感激を覚えた。
 だが相手は猟兵、こちらは猟書家。簡単に膝をついては戦い以前の問題になる。
 ぐっとスカウトしたい欲を堪えて「ブーレブレブレブレ!」と高らかに笑って迎え入れた。

「ようこそ新たな猟兵よ!吾輩の名はキング・ブレイン、もう既に知っているかもしれんが改めて見知り置き願おう。どうぞよろしくお願いします!」
「はじめまして、妾の名は御形・菘!キマフュを統べる邪神だ、よろしく!」
「(やっやっぱり本物の邪神……ッッ!!うわあめちゃくちゃカッコいいではないかっ、スカウトしたい~~~~でも猟兵~~~~!!!)」

 菘の自己紹介に感激しながらも、猟兵であることを踏まえ再びぐっとスカウトしたい欲を涙と共に飲み込む。

「ほう、邪神でありながら猟兵とは面白い。そしてキマイラフューチャーを統べているとな……」
「お主の野望は聴かせてもらった。素晴らしい、実に素晴らしい!」
「おお?吾輩の野望の素晴らしさを理解できるとは、猟兵にしておくには実に惜しいな……(えっマジで!?邪神からお褒めの言葉もらえるとか吾輩も流石に予想外!嬉しいんですが!?)」

 何で敵として出会ってしまったかなあと残念がらずにはいられないキング・ブレインの胸中はそれはもう嬉しさで小躍りを繰り返していた。
 だがしかし、繰り返すがキング・ブレインは猟書家で菘は猟兵……決して道が交わることはない水と油の関係である。

「ーーしかし……分かるであろう?」

 その顔に笑みを湛えたまま菘が問いかければ、キング・ブレインはごくりと唾を飲み込んだ。
 そう、キマフュを統べる邪神がキマフュを征服しようと企む怪人を放っておくワケがない――故に菘はここにきた。
 オウガ・オリジンを倒すことも猟兵の使命であるが、菘は猟兵である以前にキマフュを統べる邪神。
 自らの生まれ故郷であり、庭でもあり、愛すべき民――と書いてしちょうしゃと読む――がいるキマフュに手を出そうと目論む輩がいるなれば、放っておくワケにはいかないのである。

「キマフュ征服を目論む輩は、きっちりシメんとなあ?」
「く、くく……邪神を倒せば吾輩のキマイラフューチャー征服の野望へと大きく近づくワケである!書架の王へも吉報をお届けすることが可能、であればこの戦い、吾輩は負けるワケには行かぬのだ。
 行くぞ猟兵――偉大なる邪神御形・菘!最大限の敬意を表し吾輩と、吾輩の侵略蔵書「スーパー怪人大全集(全687巻)」の重みにて迎え撃ってくれようぞ!」

 キング・ブレインは侵略蔵書が詰まった背の本棚を抱え上げ、菘向けて自らの全膂力を込めてぶん投げるッ!
 それと同時に菘も前方へ突進、本棚を回避せず真っ向から邪神オーラにて迎え撃つ。
 回避が難しいワケではない、避けようとすれば避けられるし敢えて射線外から狙うこともできた。
 ……だが、菘の中にそれを行うという選択肢は一切存在しない。
 例えどのような敵が相手であろうと真っ向から立ち向かい、攻撃を受け止め、痛みを物ともしないかのような振る舞いで敵を翻弄し続ける。
 その理由は何か――簡単だ、回避で凌ぐのでは撮れ高が非常に寂しいのである!!
 菘のファンは皆彼女があらゆる攻撃に真っ向から立ち向かって退けた上でその一撃を敵に見舞う、堂々とした邪神の立ち振る舞いに惚れ込んでいる、勇気を与えられている――その期待に答えられずして何がキマフュの一番星か!

「く……流石は邪神……平然としていようとは見事なり!」
「はっはっは、確かにこれは重い、重いなあ!流石687冊も詰まっているだけあるぞキング・ブレインよ!だがッ!!」

 邪神オーラが本棚を弾き飛ばした!
 綺麗に宙を舞いずううん……と重い音を響かせて地面に沈む本棚。菘は勢いを削ぐことなく真っ直ぐに突進を続ける。
 しかし、キング・ブレインもまだ諦めてはいない。
 手を翳せば本棚の扉がぱかりと開き、侵略蔵書の何冊かが引き寄せらればそれを菘目掛けてけしかけた!
 相手の反応とリアクションは把握した、受け止めるつもりであるならば受け止めきれない程に攻撃を畳み掛ければ良いと次々と侵略蔵書たちを投擲武器のように扱う――もちろん良い子のみんなは決して本や本棚を武器として投げつけてはダメですよ、邪神様との約束だぞ!
 次々と迫りくる侵略蔵書の一撃をオーラ防御と生まれつきの痛みへの耐性で凌ぎ、突進を続ける菘。地道にダメージは蓄積されていく……

「この攻撃の波をよく耐えきる、凄すぎて吾輩の語彙が流石以外の言葉を喪失しているぞ!
 だが……耐えるにも限界というものがあるだろう、この一撃にてそろそろ終わりとしてくれようではないかッ!!」

 侵略蔵書たちを退けた菘に襲いかかる最後の攻撃――それはキング・ブレインの脳髄からエネルギーを放つ超強力な光線だった!
 ユーベルコードは敢えて使わず、詠唱もせず。ただその一瞬目掛けて一撃を放とうと思考をフル回転させて零距離で発射、菘目掛けて一直線に飛んでいく――だが、それは不発に終わる。
 その最後の零距離射撃だけ、菘は華麗に上半身を傾けたスウェーで回避したのだ。
 そう、そのこれを喰らってしまったら流石にただじゃ済まないと思わせるような一撃を回避してこそ撮れ高が上がるというもの。
 菘は突進で真っ向から立ち向かうのみと見せかけることでブラフを撒き、キング・ブレインのユーベルコードによる補足を逃れる術を張り巡らせていたのである――もちろん、カッコ良さも忘れない上で――。
 キング・ブレイン――脳の王と冠された敵の戦術をも退けるその策略、否撮れ高重視の思考恐るべし。

「くっ、土壇場での回避……何と見事な動きよ……!」
「はっはっは、数多の怪人どもをボコってきた妾の渾身の一撃!お主もブッ飛ぶがよい!!!」

 その華麗なスウェーから刳り込むように懐に潜った渾身の左腕がキング・ブレインに命中!

「き、キマフュを統べる邪神、見事なり……ぐはァ―――――――ッ!!!」

 振り抜き終えると同時にキング・ブレインは派手に吹き飛びきらん、と空に消えた……星となったのだ。
 こうして、キマフュを脅かす脅威をまたも退けた邪神様。
 今回の壮絶かつ熱い戦いもきっと、彼女の動画の最高視聴率記録を更新するに違いない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月18日


挿絵イラスト