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エトワールエトワの夜

#グリードオーシャン #お祭り2020 #夏休み

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●星の子
 ティンクル ティンクル
 お月さまが留守にしている日
 星の子たちが あそびにくるよ
 夜闇のカーテンにぶら下がってあそんで
 スケートをするように空を駆けて
 水面をぴょんぴょん跳ねて ステップしたら
 ぽちゃん ぱちぱち ぶくぶく きらきら
 ティンクル ティンクル
 お月さまにはないしょだよ
 一年に一夜だけ 星の子たちが あそびにくるよ
 ティンクル ティンクル リトルスター

●エトワールエトワの夜
 グリードオーシャンのとある島は、一年に一度だけ、夏の朔月の日に決まって流星が見られる。
 この日の流星は、いつもの星とは違う不思議な星。人々に『星の子』と呼ばれ、愛されている星だ。
 月のない黒いキャンパスを、小さな星たちがきらきら輝いて駆けていく。時折跳ねたり滑るように動いたり、不規則な動きをする度、島に住む人々は「星の子たちが元気だね」と笑うのだ。
 空を元気に駆けた星の子たちは、海にぽちゃんと飛び込んで消える。
 ぱちっと光って消えて、ぶくぶく沈んで――そうしてまた、海の中できらきらと輝き始める。ひんやり冷たい水の中に揺蕩って、線香花火のようにぱちぱちきらきら輝くのだ。
 海に沈んだ星の子たちは、人が触れれるくらいの温度になる。けれどギュッと握っては星の子たちはさらりと水に溶けて消えてしまう。人の手の熱が近寄ればぱちぱち輝く火花が小さくなるため、両手で水と一緒にすくいあげて容れ物に移すことができる。これを島の人々は、『星の子すくい』と呼んでいる。
 星の子たちの輝く色は様々だ。空や海中で光って映える明るい色しかないが、気に入る色の星の子を探してみるのも良いだろう。
 太陽の時間になると、星の子たちの時間はおしまい。
 星の子すくいをした容器からも姿が消えているため、翌日は少しだけ寂しくなってしまう。だからこそ人々はこの一夜をめいっぱい楽しみ、そして賑やかに過ごす。
 海に面したオーベルジュのレストランでは、星の子イメージの料理が食べられる。海の幸が使われた料理はどれも美味しいが、おすすめはアクアパッツァだ。大きな魚をメインに海の幸で彩られて、星型の野菜と花が可愛らしく添えられている。アルコールなら甘めのライチリキュールに炭酸がパチリと弾ける『シューティングスター』、スカイブルーと濃紺のグラデーションに溶けたアラザンがキラキラ輝く爽やかな『スターナイト』。飲み物はどちらもノンアルコールのものが用意されており、テイクアウトも可能だ。また、食べれば飴がパチパチと口の中で弾けるパフェ『星の子のいたずら』や、パチパチ火花を散らす花火を挿したアイスクリーム等のデザートもある。レストランで食事を楽しみながら、またはテイクアウト可能なドリンクやスイーツを手に浜辺を散策し、星降る夜を楽しむのも良いだろう。

 元気な星の子たちが遊びに来る夜。
 一年に一度だけの星の子たちと触れ合う夜。
 それが、『エトワールエトワの夜』である。

 ティンクル ティンクル リトルスター
 星の子と君の エトワールエトワ

●尾鰭のいざない
「ん」
 今正にゲートを開いて出掛けんとしていた雅楽代・真珠(水中花・f12752)が、君の気配に振り返る。首後ろで大きなリボンを結んだサマードレス風の服装の真珠は、少しだけ考えるように視線を外してから君を見て。
「エトワールエトワの夜という一夜限りの祭りにいくのだけれど、お前も来る?」
 さらりと説明をし、どうするかと首を傾げた。
 夜と星と海、星の子と星の子すくい。
 オーベルジュに部屋もあるけれど、浜辺に建つヴィラがおすすめだと真珠は微笑む。ひとつのヴィラに6名までなら泊まれるから、星の子を側に置いて眠たくなるまでおしゃべりしてもいいかもね、と。
「準備が必要なら待っていてあげるよ」
 執事人形の腕に抱かれたまま、ゆうらり白い尾鰭を揺らすのだった。


壱花
 金魚すくいだったりスーパーボールすくいだったりが好きなのですが、上手にできない壱花です!
 ヨーヨー釣りだけは取れるので、バインバインして過ごします。

 ありがたくも人数が多い際は、再送が発生する可能性があります。
 締切や再送についてはMSページとTwitterに出ますので、そちらで確認をお願いします。

 このシナリオは【日常】フラグメント一章のみで終了します。
 オブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。

●できること
 時間帯は夜。一夜だけ『星の子』が降る島で過ごします。
 星の子たちが降ってくるので、海で泳ぐことはできません。
 星の子すくいの容器は、オーベルジュで硝子の金魚玉を受け取れます。すくった星の子は金魚玉に入れ、紐で吊るして持ち歩けます。ひとつの金魚玉にひとつ星の子、ひとりひとつです。

・星の子すくいをする
・テイクアウト可能な飲み物や甘味を手に浜を散策(手が塞がっているので星の子はすくえません)
・レストランで食事をしながら景色を楽しむ
・流星を楽しみながらヴィラで宿泊(ひとつにつき6名まで宿泊できます)

 いろいろな事が出来ますが、たくさん行動しようとするとひとつひとつが薄くなってしまいますので、主な行動となるものを『ひとつ』に絞っていただけると幸いです。レストランでの食事やヴィラでの宿泊は、星の子をすくったことを前提として行動可能かと思います。

●グリモア猟兵
 お声掛け頂ければ反応いたします。
 各PC星の子すくいは一度しか行わないため、ありがたくも複数お声掛け頂いた際の後着分は、皆さんがしているところを見ている状態となります。

●おまじない
 同行者が居る場合はプレイングの最初に、魔法の言葉【団体名】or【名前(ID)】の記載と失効日が揃うように送信ください。一方通行の指定は不採用とさせて頂く事があります。
 確実にお一人での描写を希望される場合は【同行NG】を。
 また、文字数軽減用のマークをMSページに用意してありますので、そちらを参照ください。

 プレイングは【8/18(火)8:31~】からの受付です。

 それでは、皆様の楽しいプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りを楽しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


✦.   ✦.       ✦.
 ✦.       ✦.    ✦.
泡沫・うらら
♢♣

暗闇が痛い朔の夜
星の子たちが地上に落ちて遊びに来るなんて
とても、素敵な催しね

ねぇ、真珠さん
見ていて下さる?

うちが、一等綺麗な星の子を手にする所を


自分が忌避した檻に星の子を捕らえるのは少し
――いいえ。とても、とても、心苦しい

あなたが望むなら、どうかこの侭
水と変わらん両手の掬いの中で

問うもあなたは否定するかの様にちかちか瞬いて

それなら
あなたの最期を、うちに下さいな

見届けて下さって、ありがとうございました
折角やもの、うちは今晩この子と過ごしますね
真珠さんも、どうぞ素敵な夜を

びいどろ金魚に別れを告げ
ふたり、向かうは静かな水辺

今日ばかりは、夜更かしも許されるから
うちの陸での想い出を、聞いてくれますか




 暗闇が痛い朔の夜。
 空と海とを暗闇が包んで、星あかりがあっても照らし尽くせない夜。
 けれど今日は、特別な夜だ。星の子たちが元気に駆けて跳ねて、遊びに来る。
 そんな、素敵で特別な夜。
「ねぇ、真珠さん。見ていて下さる?」
 オーベルジュのレストランでいっしょに甘味を口にして、そう口にしたのはきっと複雑な想いがあったせい。きっと目の前で「ぱちぱちする」とパフェを突いていた彼は、己が口を開くのを待っていてくれていたのだろう。
「いいよ」
 何を、なんて返されない。ただ穏やかな瞳で真直ぐに見詰めて、微笑まれた。
「うちが、一等綺麗な星の子を手にする所を」
(どうか、見届けて下さいな)
 見守っていて下さいな。この胸が、揺れてしまうから。
 白い人魚が、先導するように先を行く。
「ほら、星だよ。おいで、うらら」
 海に行くなんて、陸で過ごすよりも当たり前なことなのに。
 躊躇いに、手が差し伸べられる。
 自分が忌避した檻に星の子を捕らえるのは少し――否。とても、とても、心苦しい。
 けれど星の子の傍まで導く手が、手を離しても此処に居るよと告げるから、泡沫・うらら(夢幻トロイカ・f11361)はそっと、海水へと手を浸した。
 掬い上げても、水と変わらないうららの両の手の中で元気にちかちか光る星。
「あなたが望むなら、どうかこの侭、うちの手の中で」
 居心地は決して悪ないはずやけど、どない?
 ――ちか、ちか。
 星の子たちに、意思はない。ただの、星だ。
 けれどその輝きが、うららには問いへの否定のように思えて、そうと吐息のような言葉が溢れた。
「それなら、あなたの最後を、うちに下さいな」
 ――ちか。
 問いに瞬いた時よりも、強い光。
「……そう。ええの」
 望んで、側に居る。そう言われたように、思えた。
「佳い星をすくえたようだね」
「見届けて下さって、ありがとうございました。折角やもの、うちは今晩この子と過ごしますね」
「そう。好き夜となることを祈ってあげる」
「真珠さんも、どうぞ素敵な夜を」
 びいどろ金魚に別れを告げ、ゆうらり揺れる白い尾鰭を見送ってから、うららは星の子とふたり、オーベルジュの灯りも届かず人も来ない静かな水辺へと向かう。
 星たちが賑わう夜だから、夜更しも許される。
「うちの陸での想い出を、聞いてくれますか」
 ――ちか。
 うららの声に、星が瞬く。
 あなたが眠りに落ちる、その時までで良いのなら。

大成功 🔵​🔵​🔵​


✦.   ✦.       ✦.
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ミラ・ホワイト
アディティアさま/f13867

夏の熱を孕んだ指先で引くあなたの手
寄せては返すさざ波の、その汀へ

星ってお空で輝くだけじゃないのね
海の中でも煌き忘れぬ星の子たち
お気に入りをお迎えしましょ!
あなたに選ばれたならきっと嬉しくて
もっとずっと美しく居てくれるわ

ちゃぷ、と海に浸す両手
今日くらいは服の裾を濡らしても良いでしょう
水飛沫跳ねて探って
そつと掬い上げたひとつ

――見て見て!
びいどろ金魚玉の中
皓々とまたたくルビーの煌き
ふふ、アディティアさまのお色!
わたしの好きな綺麗な色

傍で揺れるもひとつの光に
こそばゆくて溢れるはにかみ
ね、私もその星の子のよに輝けているかしら
見上げた先の眸
とびきりまばゆい一等星はすぐ其所に


アディティア・ラート
ミラ君(f27844)と星の子を掬いに

誘う掌の幼さに微笑みながら導かれるままついて行く

僕もこんな星夜は知らなかったよ
世界は広いものだね。そして美しい
いやぁみんな可愛くてお気に入りを決めるのに難儀しそうだ
星の子らも海に降りられたのを喜んでいるのだといいな

僕も召し物のことは考えられないな
今夜はお行儀は横においておくとしようじゃないか
まずはミラ君の探索を見守って――

はは、ミラ君には僕の瞳がこう見えているのか
烏滸がましいがこんなに美しい輝きと並べてもらえて光栄だよ
恭しくお辞儀なんてしてみたら僕も君らしいのを見つけた
あたたかく、やわく輝く金の星の子

金魚玉に移して眺め
僕にはね、なぜだか君がこう見えるんだ




 きらきらきらり、星が降る。空を遊ぶ星の子は光熱で、きっと空気を焼いていることだろう。けれど今はその熱よりも、繋がる掌の熱に惹かれた。
 アディティア・ラート(千夜一夜は夢の夜・f13867)の手を引いて、ミラ・ホワイト(幸福の跫音・f27844)は波打ち際を軽やかに進む。寄せては返すさざ波の音に耳を楽しませながら、ちらりと振り返れば穏やかな笑みで見詰められていて、ミラも嬉しげに瞳を細めた。
「星ってお空で輝くだけじゃないのね」
「僕もこんな星夜は知らなかったよ」
 世界は広くて美しい。まだ知らないだけで、もっとたくさんの美しいもので溢れているのだろう。光に焦がれるようなアディティアの横顔を見上げるミラの視線は柔らかい。
 お気に入りの星の子をお迎えしましょ。誘う声は穏やかに。
 けれども海の中に落ちてパチパチ光る線香花火になった星の子たちの輝きはたくさんで、光る灯りも個性的。どれかひとつだなんて、迷ってしまう。
「これは難儀しそうだ」
「あなたに選ばれたならきっと嬉しくて、もっとずっと美しく居てくれるわ」
「きっとそれは、君に選ばれた星の子だってそうだろう」
 星の子らも今日の日を楽しんで、喜んでくれているといい。
 遠くを見るアディティアに、きっと喜んでいるわとミラは海へと入っていく。両脚に触れる波がちゃぷりちゃぷりと音を立てるも、今日ばかりは服の裾が濡れることなんて気にしない。お行儀が悪くったって此処には二人だけ。眉を顰める人なんて何処にも居ないのだから。
「ほら、だってこんなにも楽しげに輝いているのだもの!」
 水飛沫を跳ねさせながらも探ってすくい上げた星の子は、ミラの両手の中でキラキラと輝いている。彼女の笑顔と星の子の輝きの、説得力。穏やかに見守っていたアディティアはひとつ頷いて、彼女の隣に並ぶべく海へと分け入った。
「――見て見て!」
 アディティアが近付く間に金魚玉へと星の子を移したミアが、まぁるいびいどろの中でキラキラと煌く様を掲げてみせる。
「ふふ、アディティアさまのお色!」
「はは、ミラ君には僕の瞳がこう見えているのか」
 金魚玉の中でパチパチと火花を放ちだした星の子は、ルビーの煌き。煌々と瞬くその色は、ミアの好きな綺麗な色。
 キラキラと輝く瞳で見上げられれば、アディティアも柔らかく瞳を細めて。
「こんなに美しい輝きと並べてもらえて光栄だよ」
 恭しい辞儀とともに「烏滸がましいかな」なんて口にすれば、乳白色の髪が大きく振られる。アディティアさまは美しいわ! と、愛らしい笑顔とともに。
「僕も、君らしい子を見つけたよ」
 お辞儀をした際に見つけた輝きへと両手を伸ばせば、興味を隠さない素直な紅玉が追いかけてくる。
 水底でやわく輝く金の星の子。ぱちぱちと火花を放つ金の花火は、他の星の子よりも暖かく思えて。そっとそっと、慈しむように両手ですくいあげた。
 掌の上では一度穏やかになった煌めきが、金魚玉に移されて煌きを増す。美しい硝子の容器の中で、煌めくお星さま。
「僕にはね、なぜだか君がこう見えるんだ」
 まぶしくて、美しくて、可愛くて。
 つい、手を伸ばしてしまいたくなる煌き。
 傍らで揺れる煌めきと柔らかな声に、ミアはこそばゆくてはにかんで。
「ね、私もその星の子のよに輝けているかしら」
 見上げた先には、とびきりまばゆい一番星。
 彼も、この夜も。
 一層まばゆく輝いて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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ヨシュカ・グナイゼナウ
【きつねこ】

ティンクル、ティンクル
口遊ながら(音が外れている)波打ち際、ロカジさまの少し前を行って
こんなに沢山の流れ星は初めて見ました!
お願いが追いつきませんね。星にお願い事、なさったことありますか?
あ!あっちの方で沢山落ちて来てる!

見てください、海の中にも星空があります!
ミルキーウェイに手を入れているみたい
どのお星さまにしましょうか

この、金魚玉、持って帰ろうと思うのです
星の子がいなくなっても、ここに在ったことを思い出せますから

ゆらゆら金魚玉を片手に、波打ち際
足跡をつけながら彼の方を向いて後ろ歩き
拾ってしまった彼の言葉に少し目を丸くして
聞こえていないふりをした
聞いていいのはきっと、海と、星と


ロカジ・ミナイ
【きつねこ】

流れ星を見上げながら
時々外れる音を追っかけて歩く
星に願い事?さぁ、どうだったかな…

ふふ、本当に天の川みたいだねぇ
水中に星がたくさん浮かんでいる、そこに自分の手も浮かべてみる
ちいちゃい頃はまるでこういうものだと思ってたっけ

それじゃあ此奴にしよう
と掬い上げたのは青い星ひとつ
今夜だけでお別れなんだっけ
揺らす金魚玉は、朝起きたら光らなくなってるらしい

星に願いを、なんて言うけど
星の方がヨシュカに何かを託したみたいに思える

そんな事を考えていたら、無意識に口が動いちまった
何かを願うときは大抵目をギュッと瞑っていたから
目を開いて星に縋ったことは、そうだね、一回だけあったかもね




 ティンクル ティンクル リトルスター
 空を見上げながら歩くロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)を先導するのは、何処か調子外れの可愛い歌声。時折音が外れている事に口出したりなんて野暮なことはしない。楽しそうな様子の小さな背中を追いかけるのは、いつだって楽しいのだから。
「こんなに沢山の流れ星は初めて見ました!」
 歌を止めた声が、空をぴょんと跳ねた星の子のように跳ねる。
 くるりと振り返る顔には、星ふたつ。
 お願いが追いつきませんねと明るく瞬いて、ほうき星のように尾を描いて空へと再び向けられる。
「星にお願い事、なさったことありますか?」
「星に願い事? さぁ、ど……」
「あ! あっちの方で沢山落ちて来てる!」
「ってヨシュカ!? 今からすごく訳ありな大人っぽい僕を見せるとこだったのに!」
 天駆ける星の子がたくさん海へと飛び込んだから、ヨシュカ・グナイゼナウ(明星・f10678)はおおはしゃぎ。ロカジさまお早く! と声を掛けて駆けていってしまった。やれやれヨシュカはまだまだお子様だなぁなんて肩をすくめる大人ムーブをするけれど、すごいすごいと聞こえた声に待っておくれよと大きな子供も駆け出した。
「見てください、海の中にも星空があります!」
「ふふ、本当に天の川みたいだねぇ」
 指差す先の昏い海の中には花火が咲いて。ぱちぱち瞬く火花が海を照らし、連なる光を生んでいる。
 どのお星さまにしましょうかとヨシュカが真剣な顔で悩むのを横目に、ロカジはそっと海水に手を浸して浮かべてみる。水中の星に手を伸ばせば、寄せる波と海水でぐんにゃり歪んで見える手は幼子のよう。
「この子に決めました!」
 横から伸びた手が、サッと星をひとつ連れて行く。
「ロカジさまは決まりましたか?」
「それじゃあ此奴にしよう」
 すくいあげた星を見て、青いお星さまですねと笑みが返された。
 貰ってきた金魚玉へ、星の子をぽとり。
 掌で煌きを一度鎮めた星の子は、再度ぱちぱちと線香花火のように煌き出す。
 金魚玉の星あかりを手に浜辺へと上がって、そのままゆらゆらぶらぶら漫ろ歩き。
「この、金魚玉、持って帰ろうと思うのです」
「今夜だけでお別れなんだっけ」
 揺らす金魚玉は、朝起きたら光らなくなっているらしい。
 何だか寂しいねぇなんて口にして見たけれど、此方を見ながら向きながら歩く彼がふんわりと瞳の星を和らげて。
「はい。ですけど――星の子がいなくなっても、ここに在ったことを思い出せますから」
 ああ、なんてまばゆい。
(星に願いを、なんて言うけど――星の方がヨシュカに何かを託したみたいだ)
 星の子がヒトの形を取ったなら、きっと彼のような姿なのかもしれない。
 明るい星を瞳に宿して、無邪気な姿で世界を楽しむんだ。
 だからだろうか、天の邪鬼な唇が勝手に動いたのだ。
「――そうだね、一回だけあったかもね」
 ロカジにしては小さな声が、ぽろりと落ちた。いつもみたいにおちゃらけて、煙に撒いたはずなのに、空から落ちる星みたいにぽろり、と。
 何かを願うときは大抵目をギュッと瞑っていた。星が落ちる間に三度唱えられたかすらも、解らない。ただただ必死で、必死で。握りしめた拳の熱さだけを覚えている。だから、目を開いて星に縋ったことを覚えているのは、一度だけ。
 無意識に口から飛び出た願いの残滓は、夜の闇に小さく飛び跳ねて、消える。
 金が、見開かれる。
 何に対しての言葉か、気付いた。
 気付かれたことに、気付いた。
「お星さま、きれいですね」
「そうだね。僕も連れて帰ろうかな」
 けれどふたり、気付かない振りをして。楽しげな笑みを星空の下に咲かせる。

 ティンクル ティンクル リトルスター
 あの子のもとに 届けておくれ

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


✦.   ✦.       ✦.
 ✦.       ✦.    ✦.
オズ・ケストナー
セロ(f06061)と

セロと裸足になって海の中へ
みず、つめたくないね
ぱしゃぱしゃ水音
たのしい

わあ、きたねっ
おどってるみたいに見えるから
もっとたのしくなって

しほうだいっ
きっとげんきいっぱいにかなえてもらえるよっ

光を追っていけば
ここだよ、といわれてるみたいに輝く
そうっと拾い上げた東雲色
落ちてきた時から目で追っていた色

セロ、すくえた?
いれる?
貰った金魚玉を示して

そっかと頬緩め
それじゃあ、わたしもっ
海に返すみたいに両手を沈めて

見える?
セロみたいな色だって思ったんだ

だから、セロがそういうなら旅の目的地へと見送りたい
隣り合って光る姿に頬緩め
頷く

願いごとに微笑んで
よーにっ
真似して手を合わせ、一緒に願う
またね


セロ・アルコイリス
オズ(f01136)と

ほんとは潜ってぱちぱち弾ける星の子が見てーけど
我慢して裸足で浅瀬へ
足を浸して水蹴り上げて星の子を待つ

来ましたよ、オズ!
不規則な動きを猫みたいに顔で追っかけて
こんだけじっくり見れんなら願い事し放題ですね!
元気いっぱいに叶えてもらえんのは嬉しいなぁ

落ちた星の子探して
見つけたらそっと掬う
きっと隣のお陽さま色みたいな明るいひかり
掌ん中で光る星の子が苦しくないよに
何度か海に下ろしたり

んー、鉢はいいかな
海に落ちんのがこの子達の旅なら邪魔したくねーですし
オズが同意してくれんのがうれしくて
──ありがとです

へへ、おれ達みたいですね!

あんたらはどこに行くんでしょう
楽しい旅路でありますよーにっ




 ぱしゃん。裸足の足が、冷たい海水を蹴り上げる。
 大きく飛んだ飛沫に笑いが起こるけれど、本当は足だけじゃなくて全身で潜ってみたかった。頭の天辺までざぶんと海水に浸かって海に揺蕩えば、波にゆらゆら揺れる星の子たちと一緒になれる。ぱちぱちと弾ける線香花火のような星の子たちを、近くで見たい。
(けれどそうしたら、星の子たちが楽しめねーんでしょうね)
 人の熱が近寄れば、おしゃべりするようにパチパチと火花を散らす星の子たちの輝きは静かになってしまう。一夜限りの遊泳を楽しむ彼らの邪魔をセロ・アルコイリス(花盗人・f06061)はしたくなかった。
 だからぐっと我慢をして、ぱしゃん。もう一度大きく水を蹴り上げた。
「わあ、やったねセロ。えいっ」
 跳ねてぱしゃぱしゃと水遊びをしていたオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)も笑って水を大きく跳ねさせる。
「こんだけじっくり見れんなら願い事し放題ですね!」
「しほうだいっ きっとげんきいっぱいにかなえてもらえるよっ」
「そりゃあいーですね! 元気いっぱいに叶えてもらえんのは嬉しいなぁ」
 いつもなら昏いだろう浜辺は、空を駆ける星の子たちで明るく見える。沢山の星の子たちが跳ねて、駆けて、そうして海へと飛び込んでいく様を二人は眺めながら、待っていた。どうせならすぐ近くに落ちてきたばかりの星の子に逢いたくて。
 元気な星が、くるんと回って、ぴゅん!
 ぐんぐんぐんと灯りが近づいてくる事に気付いたセロはアッと顔を上げた。
「来ましたよ、オズ!」
「わあ、きたねっ」
 尾を引くほうき星を猫の子どもたちのように顔で追いかけて、ふたりは浜辺を駆ける。駆けるたびにぱしゃぱしゃとついてくる水音に、わたしたちも星の子みたいだねとオズが口にして、セロは声をたてて笑った。
 光を追いかけて、駆けて、駆けて。
 ぽちゃん! ぽちゃん! 大きな水飛沫を立ててふたつの星が海へと飛び込んだ。
「セロ、あそこ!」
 ここだよと言っているみたいに海の中でパチパチ光る線香花火を指差して。
 海水が腰まで浸すのも構わず、ふたりはざぶざぶと分け入った。
 お陽さまみたいな明るいひかりと東雲色に穏やかに輝くひかり。
 落ちてきた時からずっと目で追っていたそれぞれの光をそっと掌ですくいあげる。
「セロ、すくえた? いれる?」
「んー、鉢はいいかな」
 示した金魚玉に、ふるりと首を振られる。
「海に落ちんのがこの子達の旅なら邪魔したくねーですし」
「そっか。それじゃあ、わたしもっ」
「──ありがとです」
 ふにゃりと緩んだ優しい笑み。分かってくれる友人。この場に一緒にいるのが、彼で良かった、と。そう、思った。
「へへ、おれ達みたいですね!」
「見える? セロみたいな色だって思ったんだ」
 色のことかなと首を傾げれば、ピンクアイが細められる。きっと意味は、ふたつある。
 何度か掌ごと海へと沈めてみるふたりだが、夜空にも似た冷たい水の中でだけパチパチと火花を放つ星の子は、ふたりが離れない限りパチパチと大きくは輝かない。
「あんたらはどこに行くんでしょう」
 星の子をゆっくりと海水に沈め、別れを惜しむように掌から転がり落とせば、水の浮力でふわりと海へと返っていく。
 波に揺蕩い、ふたりから離れていった星の子が、また、ピカピカと火花を散らしだす。
 まるで、さよならを告げているようで、セロは願掛けをするように手を合わせる。
「楽しい旅路でありますよーにっ」
「よーにっ」
 真似して手を合わせ、一緒に願う。
 また、会おうね。
 出来れば君と来年も、同じ星を見つけよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


✦.   ✦.       ✦.
 ✦.       ✦.    ✦.
花邨・八千代
【徒然】
夜の浜辺、片手には掬っておいた星の子入り金魚玉
海には入れないけど、折角だし水着を着た
テイクアウトしたアイスは飴が弾けるやつ!

あっ、布静これうまいぞ!
花火みたいに口ン中でばちばち言う!
布静もほら、あーん!
な、うまいだろ?

布静のも一口!
んーっ、うまい!

美味いものを分け合ったり、海をのんびり眺めたり
幸せで思わず笑ってしまう
傍らにの恋人にぴったりくっつけば白無垢のパーカーを着せられる
少し冷えた体には丁度いい

海ではきらきら、星の子が光る
まるで海にも夜空があるみたいで、何となく既視感があって

そういや初めてのデートも海だったな
覚えてる?俺、すごく嬉しかったんだぞ

布静となら、俺もう忘れたりしねーよ


薬袋・布静
【徒然】
先程掬っておいた星の子入り金魚玉
それを灯り代わりして

折角の夜の海、互いに水着の格好で
テイアウトしたスターナイトを片手に
寄り添い浜辺を歩く

おー、どれも美味そうやったしな
口に合ったようでよかったなぁ

ん?あー……あー、お前が好きそうなアイスやな…
わたパチ好きやもんな、お前
おんおん、美味い美味い
ええよ、お前好みそうなのしといたから好きなだけ飲み

夏の夜とはいえ
こうも冷たい物を摂取したら
冷えるだろうと白無垢パーカーを羽織らせる

嗚呼、覚えとるよ。忘れる訳ないやん…
遊びやない初デートやもんなー?

白無垢の綿帽子を被せるように
パーカーのフードを被せ笑う

――今回のも忘れんようにしたる、俺の別嬪さん




 花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)と薬袋・布静(毒喰み・f04350)は夜の浜辺をゆっくりと歩く。今日の海は星の子たちの貸し切りだから泳げはしないけれど、せっかく海辺に来たのだからと水着を着て。
 お互いの片手には、先程すくったばかりの星の子を入れた金魚玉。元気にパチパチと輝く灯りは、硝子を通しているせいか拡散されて、海の中で光っていたときよりも明るい気がした。
 ゆうらりゆらりと星灯りを揺らし、ぱくり。残る片手に掴んだアイスへと齧りつけば、八千代の瞳もキラキラと、星の子にも負けないくらいに輝いて。
「あっ、布静これうまいぞ!」
「おー、どれも美味そうやったしな」
 口に合ったようでよかったなぁと布静が視線を向ける八千代の手元のアイスは、店員に特別に作ってもらったものだ。パフェに入ったパチパチ弾ける飴のが食べたい。けれどパフェではスプーンを持つから両手が塞がってしまって、金魚玉を連れて歩けない。
「なぁなぁ布静俺はどうすればいいんだ……!」
「わたパチ好きやもんな、お前……」
 なんて店の前で頭を抱えて真剣に悩むものだから、見かねた店員が眉を下げ「お作りしましょうか」と声を掛けてくれたのだ。
 ぱくりと齧りつけば、口の中で飴がパチパチと弾ける。んーっ、うまい!
「花火みたいに口ン中でばちばち言う! 布静もほら、あーん!」
 差し出された八千代好みのアイスへ口を寄せ、かぷり。
「な、うまいだろ?」
「おんおん、美味い美味い」
 口の中で弾ける飴よりも、目の前でニッと笑うその顔のほうが、刺激的。
「布静のも一口!」
「ええよ、お前好みそうなのしといたから好きなだけ飲み」
 飲食が大好きな八千代のことを、布静は誰よりも理解している。欲しがることを解っていたから、自分の好みよりも八千代の好みを優先した。
 濃紺を伴ったスカイブルーが、キラキラ輝くアラザンとともに八千代の喉に滑り落ちていく。幸せそうな横顔に美味いかと聞けば、うまい! と元気な笑顔が返ってきて、布静は瞳を細めた。その笑顔が見られるから、先回りして選んでしまうのだ。
 食べ終えたら、片手が空く。自然とその手がすくわれるように繋がって、空を見上げたり海を眺めたり、のんびりと星降る浜辺を楽しむ。傍らには愛おしい恋人が居て、肩と手から暖かな熱も感じて――ああ、幸せだな。そんなひとときが愛おしくて幸せで、自然と笑みが溢れた。
「八千代、着とき」
「お? へへ、あんがと」
 夏の夜とは言え、冷たいものを摂取すれば身体は冷える。さり気ない優しさが嬉しくて、羽織らせられた白無垢のパーカーに顔を埋めた。彼の、匂いがする。体温が、残っている。
 海の中で、線香花火が爆ぜている。揺れる波を通して見れば、ゆらゆら揺らめく光はキラキラと輝いて。
(まるで海にも夜空があるみたいだ――)
 ちかり、胸の奥で何かが光る。
 そういえば、以前も――。
「――初めてのデートも海だったな。覚えてる? 俺、すごく嬉しかったんだぞ」
「嗚呼、覚えとるよ。忘れる訳ないやん……。遊びやない初デートやもんなー?」
 友人同士で出掛けるのとは違う、恋人とのデート。
 一度記憶を失ったことのある八千代は、彼との思い出を忘れたくないと願う。
 忘れない。忘れたりなんて、しない。忘れたりなんてしねーよ。
 布静のことだけはこの手から取りこぼしはしないと告げる羅刹の娘にパーカーのフードを被せれば、白無垢の綿帽子を被ったような鬼嫁が腕の中に居る。
「――今回のも忘れんようにしたる、俺の別嬪さん」
 このまま祝言でもあげるか? なんて、笑って囁くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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日東寺・有頂
心結(f04636)と

ん、おうアレが星の子か
駆ける星っ子と心結を交互に眺める
黒い夜空を奔る流星と、地上で輝く一等星だ
海に墜ちたらこん子の手ば引いて迎えにいこう
朝日がくるまでの命を

はしゃぐみゆと並んで
水中の数ある光に見入った
心結が見っけたそん色はもしや…なんてな
俺の気に入りは金色だ やはり
目に飛び込んできたのは金の星
手を伸べて、そっと掬い上げる
こん輝きは穢されない
けれどいたいけな、こわれものの光だ
まるで誰かさんだな

そうなあ、心結
君と一緒に寝れんかわりに
今夜一晩中愛でてやるんだ
金魚玉に囲った、ひと夜のいとし子
俺だけの星の子を


音海・心結
有頂(f22060)と

うちょう、うちょうっ
あれを見てくださいっ!
並ぶように歩き、彼の視界に入ろうとぴょんぴょん
指さす先には海に揺蕩う星の子たち

そっとそぅっと
海の中に入り星の子たちのもとへ
どれも綺麗で見惚れちゃいますが、
一際強く輝く琥珀色の星を見つければ
あれにするっ!

愛しい人に触れるよう
ゆっくりと手を水中へ
……ぇいっ!

これはね、有頂のいろ
誰にも渡さない守りたくなるいろ
今日はね、この光に見守られながら寝るのです
一緒に寝るのはだめでも、せめてこれくらいは

有頂が選んだいろ、は
嬉しくって頬が綻ぶ
もうっ
みゆは強い子ですよ?
……いっぱい愛でてあげてくださいね
有頂だけの星の子を
貴方だけのものにしてください




「うちょう、うちょうっ あれを見てくださいっ!」
 傍らを並ぶように歩いていた日東寺・有頂(ぷてぃんぐ(心結様寄贈)・f22060)の一等星が、彼の視界に入ろうと一歩前に出てぴょんぴょんと跳ねる。
 黒い夜空を奔る星の子が駆けて跳ねる様を見上げていた有頂は、視界に端で主張する榛色に瞳を向けた。空と音海・心結(瞳に移るは・f04636)を交互に眺め、そうして彼女が指をさす先へと視線を向ける。
「ん、おうアレが星の子か」
 海の中に落ちても尚、輝く光。海の中の線香花火が波に揺られて揺蕩い、ぴかぴかと昏い海の中でも存在を主張していた。
 傍らの一等星の手を引いて、有頂は朝日が来るまでの生命の星を迎えにいく。波打ち際に着くまでの間すらも、有頂の一等星はぴかぴかとはしゃいで賑やかだ。
 寄せては返す波へと足を浸す時は、ゆっくりと。
 そっとそぅっと星の子たちの元へと向かって、そぅっと海の中を覗き込む。
「あ! あれにするっ!」
 有頂にパッと明るさを齎す声が、楽しげに響く。
 もしやと期待が滲んでしまう心を宥め、いそいそと目当ての星の子へと近寄っていく背中を見守り、有頂も海中の星を探す。ぱちぱちと火花を散らす海中の線香花火は、どれも目に痛くない優しい色。
(見っけた)
 瞳に飛び込む金の光。いつでも瞳を奪われる、愛しい色。
 そっと手を伸ばせば火花が穏やかになる。それがまた、誰かさんみたいだな、なんて思いながら優しくすくい上げる。
 穢させない、穢したくない、金の星。掌に乗せた光は、海中での元気さを失って弱々しく、いたいけでこわれてしまいそうだった。本当に、誰かさんみたいだ。
「……ぇいっ!」
 傍らで、愛しい少女の声が上がる。
 愛しい人に触れるようにゆっくりと手を伸ばした心結の手にも、優しく光るお星さま。昏い海の中でも一際強く輝いていた、琥珀色の星の子。まるで心結に、ここだよと知らせるかのように。
「これはね、有頂のいろ」
 誰にも渡さない、守りたくなる愛しい愛しいいろ。
 硝子の金魚玉へと移せば、心結が見つけたときと同じ煌きを放つ星の子。愛おしげに見詰め、見てと有頂へ向けて金魚玉を掲げた。
 もしやと思った想いは違わず、数多の星の子たちから自分の色を見つけてくれた。どんな時だってきらきらと輝く一等星がまばゆくて、有頂は瞳を細める。
「今日はね、この光に見守られながら寝るのです」
 一緒に寝るのが駄目でも、眠りに落ちる寸前まで貴方の色を見詰めて、眠りに落ちてからも貴方の色に見守ってもらう。
 ね、良い案でしょう?
 にっこりと微笑む心結に、有頂はそうなあとひとつ頷きながら、己がすくった星の子を心結へと見せる。金魚玉の水の中で、ぱちぱち爆ぜる金色の線香花火。
 考えは、求めるものは、同じだった。
 それが堪らなく嬉しくて、ふにゃりと心結の頬が綻ぶ。
「いたいけな、こわれものの光だ」
「もうっ みゆは強い子ですよ?」
 すくう時にも思ったことを彼女へ告げれば、照れているような、形だけ怒って見せているような、そんな表情になって。
「俺も君と一緒に寝れんかわりに、今夜は俺だけの星の子を一晩中愛でてやるんだ」
「……いっぱい愛でてあげてくださいね」
 はく、と息を飲み込んだ心結は赤くなる。
「有頂だけの星の子を貴方だけのものにしてください」
 愛しい人を思って選んだ、愛しい人の色を宿した星の子を。
 金魚たまに囲ったひと夜のいとし子を傍らに置いて。
 ふたりの夜がゆっくりと過ぎていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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雲烟・叶
【涙雨】

良い夜ですねぇ
この硝子の金魚玉に入れるそうですよ、星の子
……嗚呼、そうだ
今日はちゃんと手袋してますからお手をどうぞ、さゆりのお嬢さん
人が多いですからねぇ、逸れると困っちまいます

色んな色の子が居ますねぇ
両手で掬ってやるそうなんで、袖、捲っておきましょうかね
握っちゃ駄目なんですね、優しく、と

目に付いたのは、銀混じりの紫水晶のような、柔らかな色の星の子
何となく、それをやんわりと拾い上げなくてはいけない気がして、そっと両手で掬って金魚玉に収めた
ぱちぱち、きらきら、火花が散っている

……愛らしいですねぇ、このご縁が今夜だけなのがちと残念ですが
さゆりのお嬢さんは、どんな星の子と巡り逢えましたか?


四・さゆり
【涙雨】
ええ、きらきら星でも聞こえてきそうな、夜ね。

あら お前が迷子になっても 見つけてあげるから平気よ
鼻歌混じりに、先を行くと。
お前が愛らしいから、手を繋ぎましょう。
ちゃんとエスコートなさい

普段露出の少ない叶が、腕まくりする姿をみて。あら。
…叶 ご飯食べて帰りましょうね
折れちゃいそうじゃない。わたしは焼肉の気分。

叶がひとりを選ぶのを横目で眺めて、から
…そうね。

一際、弱弱しい。ぼんやり光る子
掬おうと両手を伸ばすと
ばちりと火花が弾けて 緑が散った
一夜を昇り尽きる、よだかの星を
金魚玉の中で まだ生きていると瞬いている

綺麗な子よ
悲しいほどに 綺麗な子

きゅ、とお前の手を握り直した




 空には沢山の星が輝いて、駆けて、跳ねて、降ってくる。
「良い夜ですねぇ」
「ええ、きらきら星でも聞こえてきそうな、夜ね」
 見上げた星空に目を細めた雲烟・叶(呪物・f07442)は視線を下ろして、手にした硝子の球体を指先で、つ、と撫でる。まぁるい硝子の金魚玉。これに入れるそうですよと言葉を零せば、四・さゆり(夜探し・f00775)に知っているわと返されて。
「……嗚呼、そうだ。お手をどうぞ、さゆりのお嬢さん。人が多いですからねぇ、逸れると困っちまいます」
 今日はちゃんと手袋してますからと差し出せば、あらと笑みを含んだ声は楽しげな鼻歌を連れて先へ行く。お前が迷子になっても見つけてあげる、なんて。年上ぶった様子で。
「お前が愛らしいから、手を繋いであげてもいいわ」
 振り返り、エスコートなさいと差し出される少女の手。
 恭しく受け取れば、気障ねなんてまた軽口を。
 夏の風を感じながら浜辺を、手を引いて歩いて。波打ち際に立てば、近くに遠くに、海の中で爆ぜる火花が見える。遠くから見た時はただの光のようだったのに、浅い足元へと波で押されてきてしまった星の子たちの輝きは、間近で。
「色んな色の子が居ますねぇ」
 波に揺れる星の子を見て、口を開く。
 赤に水色に黄色。元気にパチパチと光る海の中の線香花火は、どれひとつ同じ色が無いのではないかと思えてくる。
 袖が濡れないようにと叶が袖を捲くると、ぱちり。叶の直ぐ側で、灰色の星が瞬いた。
「……叶 ご飯食べて帰りましょうね」
 普段肌の露出が少ない彼が腕まくりをする姿というのも新鮮だったけれど、何よりその細さに視線がいく。齧っても、美味しく無さそう。傘で叩いたら、簡単に折れてしまいそう。
「さゆりのお嬢さんが望むのなら」
「わたしは焼肉の気分」
 さゆりの袖も、濡らしちゃいますよと叶が綺麗に捲くってくれる。世話を焼かれることを当たり前だと少女は受け止め、肉をつけさせようと心に決めるのだった。
「さて、どの子にしましょうかねぇ」
 ふたり分の袖まくりを終えた叶は、そっと手を海水へと浸す。
 目に付いたのは、紫水晶のような柔らかな淡い紫の星の子。ぱちりと爆ぜた火花の先が、僅かに銀混じりのように見えた。一度視界に入ったら、視線を逸らせられない。惹かれている、と感じた。
 呼ばれているような、拾い上げなくてはいけない気がして。そっと優しく両手で掬い上げて、金魚玉へとぽちゃんと落とした。
「さゆりのお嬢さんは、どんな星の子と巡り逢えましたか?」
「……そうね」
 叶がひとりを選ぶのを眺めてから、さゆりも海を覗いて星の子たちの個性的な灯りをその瞳に映す。
 夜空から落ちてくる星の子たちは、決まって一晩火花をちらし続ける熱量を持って落ちてくる。元気に空を駆けて、跳ねて、水の中でもパチパチと爆ぜて光り、朝まで元気に存在し続けるのだ。
 さゆりの瞳に止まったのは、そんな星の子たちの中でも少しだけ散らす火花が少ない子。波によって波打ち際まで上げられて、人の気配が近いせいか火花が穏やかだ。まるで、打ち上げられた瀕死のクラゲみたい。
 緑の小さな火花をぱちぱち散らし、手を伸ばせば勢いが削がれ――けれど、ぱちり。抵抗するように指先で小さな火花が弾けて、緑が散った。なんて素直じゃないのかしら。
 金魚玉の中で一夜限り輝く星の子は、まだ生きていると言っているよう。
「……愛らしいですねぇ、このご縁が今夜だけなのがちと残念ですが」
 金魚玉へと静かに視線を落としていたさゆりが顔を上げる。
 静かな静かな、顔だ。
「さゆりのお嬢さんは、どんな星の子と巡り逢えましたか?」
「綺麗な子よ。悲しいほどに、綺麗な子」
 愛おしげにさえ聞こえる声で小さく口にして、きゅ、と叶の手を握り直す。
 きっとこの子は、わたし以外の誰にも見向きもされない。掬われない、救われない。
 わたしだけの、きれいでみにくい、よだかの星よ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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大紋・狩人
♢【仄か】
(くるくる泳ぐ星の子を連れ)
な、楽しかった!
ラピタの星の子、一際元気だったな
うん、空に帰っても覚えててくれるよう沢山遊ぼう

任せて
えっと──
いいよ、楽しい響きのご飯にしよう!
そうしよっか
どっちの味も知りたいもの

ああ凄い、綺麗
夜空を溶かし込んで甘くした色
ラピタ、なあなあ、交換
僕にも星の火花ちょうだい

玩具箱の貝達に星の野菜
宝島や遊び場みたい
骨、取る?自分でやる?
ああ、その時は頼って
ゆったりした採掘のフォークを見守る
美味しいね、ラピタ

ポルカ?
いいなあ、軽やかに踊るよう!
じゃ、この子はメヌ
楽しい時間がご飯なのかもしれないな
頑張って早起きしたら
仲良く旅立つとこ見送れるかな
頼もしいや、目一杯お願い


ラピタ・カンパネルラ

【仄か】

(興奮さめやらぬ一緒にごはん)

楽しかったね、きらきらすばしっこくって、ね……!
次の君達の旅立ちまで、友達だよ

カロン、カロン、メニュー読んで
わ、ぱっつぁって明るい響き、それがいいな
ノンアルコールにして半分こしよ
ん、ん!ふふ、炭酸って星の子たちの火花だったんだ
はい。甘い夜空も、ひとくちちょうだい

貝殻は玩具箱みたい、大きい骨だって立派
骨やってみる。大変だったらお願いするね、
フォークの先で手さぐり、ゆっくり丁寧に

ポルカはごはん食べるのかな
ポルカは、この子の一夜の名前。いいでしょう
メヌ。ーーメヌエットだ、かわいい!
どうか夜空でも、仲良くね
早起きしたい。カロンのこと頑張って起こすね。揺さぶるね。




 ふたつの笑顔が、ふたつのキラキラを連れてテーブルへとついた。
「楽しかったね、きらきらすばしっこくって、ね……!」
「な、楽しかった!」
 興奮気味に話すのは、今日の空と海のこと。
 キラキラ輝いて空を駆けた星の子はすばしっこく、ラピタ・カンパネルラ(薄荷・f19451)は大紋・狩人(黒鉛・f19359)に手を引かれて浜辺を駆けた。海へとぽちゃんと落ちた星は、大切にすくって今はふたりの目の前、金魚玉の中で大人しく留まって――けれどパチパチと線香花火のような火花を元気に散らして輝いている。
「次の君達の旅立ちまで、友達だよ」
「うん、空に帰っても覚えててくれるよに沢山遊ぼう」
 ラピタの盲いた瞳にも、元気な火花がチラチラ揺れる。それが嬉しくて、眺める度に頬が緩んでしまうのを、傍らの狩人だけが見守っていた。
「カロン、カロン、メニュー読んで」
「任せて、えっと――」
 まずはメインとなるご飯から。上から順番に読み上げる声を、ラピタは両頬に手をついてのんびりと聞く。少し遠くに聞こえる波の音と、すぐ近くに聞こえる大切の君の声が心地好い。
「わ、ぱっつぁって明るい響き、それがいいな」
「いいよ、楽しい響きのご飯にしよう!」
 それじゃあ飲み物のメニューはねと読み上げれば、うんうんと頷きながら耳を傾けたラピタが二種類頼んで半分にしようと提案する。そうしよっかとこっくりと頷いた狩人は手を挙げて店員を呼び、名物のアクアパッツァとノンアルコールドリンクの『スターナイト』と『シューティングスター』を注文した。
 どんな味だろう? ねえ君はどんな味だと思う?
 金魚玉を覗き込んで、星の子へと尋ねてみる。一夜限りの友達の星の子たちはキラキラぴかぴか輝くばかりだけれど、何だか答えてくれているようにも思えて微笑んだ。
「ラピタ、きたよ」
 美味しそうな香りに、くんとラピタの鼻が動いてアクアパッツァの方へと顔が向けられる。
「ああ凄い、綺麗。はい、ラピタ。こっちが星の火花のだよ」
「ん、カロン、ありがと」
 指を伸ばせば届く位置に寄せられたグラスは、触れればひんやりと冷たい。
 顔を寄せればぱちぱちと弾ける炭酸の気配を感じて、ラピタはワクワクしながら口をつける。狩人はラピタの行動を見守ってから、夜空を溶かし込んで甘くした色の飲み物へと顔を寄せて、ひとくち。爽やかな香りと喉越しが心地好い。
「ん、ん!ふふ、炭酸って星の子たちの火花だったんだ」
「ラピタ、なあなあ、交換。僕にも星の火花ちょうだい」
「はい。甘い夜空も、ひとくちちょうだい」
 甘い夜空と星の火花の飲み物を交換して、こくり。
 どっちもおいしいねぇなんて微笑い合う。
 ふんわりと漂う、魚と香草と貝、それからトマトっぽい青い香り。
 ぐうとお腹が主張する前にと手を伸ばした。
「宝島や遊び場みたいだね、ラピタ」
「ん、貝殻は玩具箱みたい、大きい骨だって立派」
 フォークの先でつんつん突いて形を確かめる。この大きなのがお魚で、このカツンとするのが貝殻。それからこれは……あっ、トマト? このサクッとするのはきっとお星さまの野菜。それからこれは――。
「骨、取る? 自分でやる?」
「骨やってみる。大変だったらお願いするね」
 慎重に丁寧に行われる、フォークでの採掘。
 宝箱を見つけて上手に開けたなら、宝物を味わって。
「おいしい!」
「美味しいね、ラピタ」
 パッと咲く笑顔に、笑みが向けられる。
「ポルカはごはん食べるのかな」
「ポルカ?」
「ポルカは、この子の一夜の名前。いいでしょう」
「いいなあ、軽やかに踊るよう!」
 いつの間に素敵な名前を考えたの?
 声を楽しげに弾ませながら、僕も素敵な名前を考えなくちゃと狩人は少しだけ悩む。
 どうせなら、ラピタのポルカと揃いの名前がいい。
「じゃ、この子はメヌ」
「メヌ。――メヌエットだ、かわいい!」
 朝になったら消えてしまうふたつの星の子は、きっと夜空に帰るのだろう。
 見送りたいねとふたりは顔を見合わせて、頑張って早起きをしようと頷き合う。
「カロンのこと頑張って起こすね。揺さぶるね」
「頼もしいや、目一杯お願い」
 ふたりがしっかりと見送れたのか、それともお寝坊さんだったのか。
 メヌとポルカがまた今度の夜空で、ちかちか笑ってお話することだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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 ✦.       ✦.    ✦.
五条・巴
亮と(f26138)

星踊る夜、なんて初めてだ
あ、みて亮、いまあそこで星が跳ねたよ

道中からアイスが食べたくなって買い食い
冬もいいけど、やっぱり夏も食べたくなるよね
ペロリと食べきりメインイベント

僕らのもとへ来てくれた星の子に会いに行こうか

近くに落ちてきた星の子をゆっくり両手で掬う

掌でぱちぱちと煌めいてる
今自分が触れているものは本当に星なんだと思うと
特別な気持ちで満たされる

明日までの煌めきと分かっていても、
今この瞬間が忘れられない
最後に掬ってくれる人がいたら、それはきっとすごく幸せな事だと思うなあ。

星の子に照らされた笑顔はいつもとは違って見えた気がした

こちらこそ、ありがとうと共に笑顔を咲かせるよ


天音・亮
巴(f02927)と

星降る夜はよく聞くけど、踊るなんて素敵だね
えっどこどこ!?
また見れなかった、巴ばっかりずるい…

頬膨らますもアイスを貰えたらころり笑顔に
あ、わかる!夏はもちろんなんだけど、冬のアイスも美味しいんだよね
なんでなんだろ?
美味しいものは瞬きの間にお腹の中へ

見上げた夜空、今度は見れた
楽しそうに踊り落ちてきた星の子を
わあ…!
輝く瞳で倣う様に掌に水を掬って
おいで

舞い落ちた火花は橙色
あたたかくて優しい色

…ありがとう
例え一瞬のものだとしても
私の手に舞い降りてきてくれた星の子に心が明るく灯るよう

巴も!素敵な夜に連れてきてくれてありがとう!
弾ける星彩と共に君に向けて咲く笑顔
ありがとう、優しい夜を




 いつもなら、きっと夜空は暗いのだろう。ましてや朔の月。暗く沈む筈の夜空は、今日ばかりはキラキラとたくさんの輝きに溢れていた。
 その星空を、星が踊るように跳ねて、駆けて。また跳ねる。
 てん、とん、きらり。
 星降る夜はよく聞くけれど、元気に踊る夜だなんて初めて。五条・巴(照らす道の先へ・f02927)と天音・亮(手をのばそう・f26138)は初めてを共有して、すごいねと瞳を輝かせて笑いあった。
「あ、みて亮、いまあそこで星が跳ねたよ」
「えっどこどこ!?」
 あっち? こっち? どっち?
 きょとりと視線を彷徨わせている間に、巴が見つけた星の子はお空を滑っていってしまったみたい。巴ばっかり見れてずるい、と亮ががっくりと項垂れた。
 そんな亮を引き連れてオーベルジュのレストランへ寄り、カウンターでアイスをテイクアウトすれば、直前までずるいずるいと膨らませていた頬もみるみる萎んで、にこにこ笑顔。
「冬もいいけど、やっぱり夏も食べたくなるよね」
「あ、わかる! 夏はもちろんなんだけど、冬のアイスも美味しいんだよね」
 お星さまにも負けないくらい、ぴかぴかと明るい笑顔でぱくぱく食べれば、あっという間にアイスはお腹の海へと落っこちた。
「あ、跳ねた!」
 美味しかったと見上げた空で、星が跳ねる。
 すごい、本当に跳ねた!
 はしゃぐ亮を巴が誘う。
「亮、いこう。僕らの元へ来てくれた星の子に会いに」
「うん、いこう。どんな子に会えるのかな」
 ふたりも星の子のように跳ねて、駆けて、星の子に会いに海へと向かう。
 ひんやり気持ち良い海水に足を浸して、近くに星の子が落ちてくるのを待てば――ぽちゃっ、とん、た、た、た。空から落ちてきた星の子が水面を跳ねて、てん、てん、と海面を駆けるように跳ねてくる。
 驚きと感動で目を丸くする亮に、見本を見せるよと言うように巴が先に動いた。ぽちゃんと落ちた星の子の側へと向かい、そっと海水へと両手を浸して、ゆっくりとすくい上げる。
 空や海中にいるよりも静かな煌めきを放つ星の子は、それでもぱちぱちと巴の手で煌めいて。
(本当に星なんだ)
 胸に満ちるのは特別な気持ち。
 巴だけの小さな星が、確かに手の中にある。明日までしか一緒には居られなくとも、今この瞬間のことをきっと巴は忘れないだろう。
(最後に掬ってくれる人がいたら、それはきっとすごく幸せな事だと思うなあ)
 それはきっと、自分も、ひとも。
「わあ……!」
 巴に、すくえた? と問おうと口を開こうとした亮だったが、近付く輝きに気がついて顔を向ける。瞳を輝かせて海水を駆けてきた星の子を見詰め、最後にはぽちゃんと海に落ちた星の子の側へと水を分け入って近寄った。
 そっと昏い海を覗き込めば、海水の中でぴかぴかぱちぱち線香花火のように火花を散らす星の子の姿。
「おいで」
 あたたかくて優しい橙色の火花は、亮の手が近付けば勢いが穏やかになる。水と一緒に掬い上げられ、ぱちり、小さく飛ばした火花に、亮はとても胸がいっぱいになった。この気持をなんて表せば良いのだろう。
「……ありがとう」
 自然に溢れたのは、そんな言葉。
 たとえ一晩だけだとしても、亮のもとに降りてきてくれたお星さま。
 選んでもらえたようにも思えて、嬉しくて嬉しくて、心が明るく灯るよう。
「巴も!」
 星の子の光に照らされる亮の顔がいつもと違うように思え、穏やかに見守っていた巴に声が掛けられる。
「ん?」
「巴も、ありがとう! 素敵な夜に連れてきてくれてありがとう!」
「こちらこそ、ありがとう」
 弾ける星彩にも負けないくらい、明るく咲く笑顔が、ふたつ。
 ふたりの優しい夜に、ちか、ちか、と星の子たちが瞬いた。
 星の子たちを見ていたいし眠れるかなぁ、なんて。
 もうひとつ、笑って。
 夜が明けるまで、優しい優しいひとときを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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ルーチェ・ムート
【彩夜/浜】総勢7人

星の子掬いだって!
みんながどんな星の子を迎えるのか楽しみにしてるね!

ううん、気にしないで
みんなと来られる事が最重要!
何よりも嬉しい事だから
ありがとう、苺

お言葉に甘えさせてもらうね
ボクはこれ!
ユェーはどれにする?
すたーないとっていうのんあるこーるを頼む
綺麗だなぁ
それに美味しい!
わあ!あーんしてる!
ふふ、仲良しだね

苺、どうかした?
これからも楽しい事をしていこう
来年の夏も、その先も
しあわせは巡るから
ね、ユェー、十雉

みんなー!おかえり!
どんな星の子を掬ったの?
わあ…!
未春のは柔くて
七結のは鮮やかで
小鉄のはあったかで
綺麗だね

苺?って寝てる!
星降る夜に流れた笑顔たち
きっとずっと忘れない


蘭・七結
【彩夜/海】

陸に残る皆さんに見送られて海のなかへ
空から海へとやってくる星たち
彼らは如何なる姿をしているのかしら
川にぽちゃん…
問い掛けの言葉を呑み込みましょう

てん、てんと揺蕩う星の子たち
心惹かれたのはあかい子
あかはいのちを燃やしていると聞いたわ
燃ゆる彩へと手のひらを伸ばし
そうっと寄せて、掬いとる

ぱちぱちと鳴る拍手に頬が緩むよう
上手に出来たかしら?
ミハルさんは、なに色の子と出逢うのでしょう

コテツさんは白い子ね
黒い姿とかさなって、まばゆく映るわ
ひとつひとつ、こうして彩が異なるのね

硝子鉢へとあかい子を移して
じいと眺めたなら、ぱちりと瞬く
とてもキレイで、この彩が胸へと滲むよう
陸の皆さんにもお見せしたいわ


歌獣・苺
彩夜/浜

星の子掬い行ってらっしゃい!

…3人とも泳げない私に
付き合わせてごめんね。
でも嬉しい…!ありがとう!
お礼に飲み物かデザート
沢山あるから好きなのどうぞ!
これをお供にみんなの帰りを待とう♪

『スターナイト』の
お酒を取って見つめる
この色は思い出させる
ーーー生き別れた妹の眼の色を
元気にしてるかな…

あ、ごめんね、ぼーっとしてた!
この色、色んな思い出が蘇るなぁって!
ルーチェちゃんと
宙の散歩したこととか、
ゆぇと肝試しに行って見た
夜空とか…!
ときじさんはこれから
目一杯作りましょう♪

幸せは巡る…そうだね。
これからも、ずっと…

3人の落ち着く声を聞いていると
酔いが回ったのか
幸せな気持ちのまま意識を落としていた


志島・小鉄
【彩夜/海】

(人の姿で参加をします。)

空ヲ駆けた星が海ニ飛び込んダ話デスネ。
いやあいやあ、わしの世界デハ良く有ル事デスヨ。
わしも空ヲ駆けてポチャンと川二。ははぁ。お口にチャックデスネ。

お嬢様方ハお気に入りノ星ヲ見つけマシタカ?
両手で優シクデス。そぅと掬って差シ上ゲルのデスヨ。
上手デスネ。(お二人に拍手をします。)
わしは白イ星ヲ見つけマシて。あれヲ掬イたいト思イマス。
白イ星の他二明るい星ガ沢山見えマスネ。優シクそぅと息ヲ止メテ。

ハイ。掬イマシタ。綺麗な星デスネ。
浜辺ニ居る皆様にもお見せ致しまショウ。
エモさも沢山頂きマシタ。今日のわしハお腹一杯デス。
おおぅい皆様!コノ星ヲ見て下サレ。


宵雛花・十雉
【彩夜/浜】

えーなに、苺ちゃん海行かねぇの?
じゃあオレも付き合ってやるよ

へぇ、星にちなんだメニューがあんだな
『スターナイト』と『星の子のいたずら』にしよ
パフェの方は自腹で食うよ
ご馳走さん

お、ルーチェも同じの頼んだんだ
綺麗だよなぁ、夜の空に星が浮かんでるみたいでさ

わ、すげ
このパフェパチパチすんぜ!
ひと口食ってみるかい?
ユェーがパチパチでどんな顔すんのか見てみてぇなァ
って、オレが食わせんの?
しゃあねぁな…アンタいい大人だろ?
ほら、あーん

その楽しいこと、ぜひオレも混ぜて貰いたいもんだね
って寝ちまったのか苺ちゃん
ん、オレはまだまだ平気だぜ

…お、帰って来た
お帰り
さぁさ、待ちに待った土産話を聞かせてくれよ


朧・ユェー
【彩夜/浜】

星掬いの皆さんを待ち

好きで居るので気にしないでくださいね
おや?ありがとうねぇ、苺
じゃ、ルーチェちゃんと同じがいいかな?

皆さんの『スターナイト』とても綺麗で美味しそうですねぇ

苺、どうしましたか?
来年もその夏もまたご一緒出来たら
そんな約束が幸せなのですね。ねぇ、ルーチェちゃん

十雉くんのパフェ美味しそうですね?
おや?一口下さるのですか?
何の躊躇も無く口を開け
パクリ、パチパチとして少し驚くも微笑み
とても美味しいですね、ふふっありがとうねぇ

おやおや、苺。こんな所で寝てはいけませんよ
安全な場所へと移動させて
ルーチェちゃんや十雉くんは疲れてませんか?

幸せな時間
皆さんの素敵なお土産を待ちましょう


晴海・未春
【彩夜/海】

星の子すくい、とてもたのしみ!
浜辺に残るみんなに手を振って海のなかへ
え、すごい!小鉄の世界では空を駆けて川に飛び込むのはよくあるんだ!
ぼくも飛べたらそうして遊びたかったなぁ

空から降り注ぎビロウドの夜でダンスして
海へ舞い落ち水面に煌めく星の子ら
目を惹いたのはあわい桜の彩
小鉄に頷いて、七結に倣って両手を伸ばし
そうっとそうっと、掬ってみよう

わぁ、きれいなのが掬えたよと、小鉄と七結に笑って
七結はいのちのあかだ。あざやかなアネモネのよう
小鉄は真白のいろ。夜の闇を明るく照らすうつくしき星

そしてそうっと、硝子鉢に星の子移し
きらきらひかる、澄んだ春色

浜辺のみんなに見せようね
ぼくたちの選んだ綺羅星を




「えーなに、苺ちゃん海行かねぇの?」
 せっかくの海だけれど、星の子すくいにはいかないでお留守番をすると言い出した歌獣・苺(苺一会・f16654)に、宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)はぱちりと目を瞬いて首を傾げた。もしかして……なんてすぐに思い至るのは、十雉がカナヅチだからだ。泳げないと、海の近くによるの怖いよね。解る、とそっと心の中で激しく親近感を抱いたりなんかした。
 オレも付き合うと十雉が言い出せば、僕もボクもとふたつの手が挙がる。朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)とルーチェ・ムート(十六夜ルミナス・f10134)もその場に残ることにした。
「みんながどんな星の子を迎えるのか楽しみにしてるね!」
「それじゃあ、いってくるね!」
 陸に残ると言う四人へと手を振ってから、晴海・未春(春の仔・f14270)先に歩き出したふたつの背中を追いかける。見送る視線を背に、星を見上げながら浜辺を歩けば、波打ち際まではあっという間。
 夏の気温を感じる肌には心地好い海水へと足を浸して、空から海へとやってくる星たちを蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)は眺めた。空で輝いている時の彼らは如何なる姿をしているのかしら、と。沢山の星の子たちが駆ける空に手を伸ばしても、届かない。
「空ヲ駆けた星が海ニ飛び込んダ話デスネ」
 傍らから聞こえた声に、視線を向ける。
 語る青白い肌の男――志島・小鉄(文具屋シジマ・f29016)の見目は若い。けれども年齢を感じさせぬ語り口調はどこか怪しい雰囲気ながらも楽しげで、ひととき聞き入ってしまう。
「いやあいやあ、わしの世界デハ良く有ル事デスヨ。わしも空ヲ駆けてポチャンと川二。ははぁ。お口にチャックデスネ」
「え、すごい! 小鉄の世界では空を駆けて川に飛び込むのはよくあるんだ!」
「川にぽちゃん……」
 素直に驚く未春と違い、七結の胸にいくつかの言葉が浮かぶ。どういう状況なのか聞いてみたいような気はするものの、『お口にチャック』と彼が口にしたのだ。深くを探るのはよして、口を閉ざして疑問を飲み込んだ。
 空を駆ける星の子たちは天鵞絨のような夜空でダンスをして。
 海面の水を切るように素早くてんてんと跳ねたなら、ぽちゃん。
 昏い海中を覗き込めば、たくさんの星の子たちが線香花火のように輝いている。
「お嬢様方ハお気に入りノ星ヲ見つけマシタカ?」
 小鉄の声には答えずに、心惹かれた子をジッと見る。答えないのが答えなのだ。掬い上げるまでのないしょ。お互いに心惹かれた子を見せ合うひと時がまた、とても楽しいのだから。
「両手で優シクデス。そぅと掬って差シ上ゲルのデスヨ」
 そっと求める星の子へと手を伸ばすふたりへと小鉄が教師のように声を掛ける。頷きを返した未春は、七結に倣って両手を伸ばす。
 パチパチと火花を放つ、あわい桜の彩。円を描くように、横からそうっとそうっと掬えば、穏やかな火花となった星の子が未春の掌の上に。
「わぁ、きれいなのが掬えたよ」
「上手デスネ」
「上手に出来たかしら?」
 掬い上げたと緩むふたりの笑顔に小鉄がパチパチと拍手を送れば、こどものように褒められて、七結の頬が緩んだ。
「七結は何色?」
「わたしはあかい子」
「いのちのあかだ」
 鮮やかなアネモネのようだねと素直に微笑む姿に、ゆるりと笑みを返す。
 あかはいのちを燃やしているのだと聞いたことがある。だからこそ、七結はあかに、燃える彩に、いつだって惹かれてしまうのかも知れない。
「小鉄は?」
「わしは白イ星ヲ見つけマシて」
 あれをすくいたいと指し示す指先を、ふたり分の視線が追う。
 昏い海に、白は目立つ。
 他の星灯りよりも煌々と輝き元気な火花を散らす星の子へと、小鉄はそっと手を伸ばす。優しく優しく、出来るだけ海水も揺らさぬようにと、そうっと息をも止めて。
「ハイ。掬イマシタ。綺麗な星デスネ」
「真白のいろだ。夜の闇を明るく照らすうつくしき星ね」
「コテツさんの黒い姿とかさなって、まばゆく映るわ」
 其々の掌の上で光る、違う色。
 足元へと視線を向ければ、そこにも違う色。
 たくさんの異なる色を灯すさまが、生きているようで。
 硝子の金魚鉢へと星の子を移せば、ぱちり。海の中に浮かんでいた時の元気さを取り戻す。ぱちぱち、ぱちり。元気に線香花火のように火花を散らす様を、七結はじいっと見詰めた。
 その傍らで、未春も金魚玉へと移した星の子を、そっと掲げるようにして覗き込む。きらきらひかる、澄んだ春色。この星の子は、未春だけの星の子だ。たとえそれが、一夜限りだけではあろうとも。
「浜辺ニ居る皆様にもお見せ致しまショウ」
 小鉄が口にすれば、七結と未春はこくりと頷く。
「うん、浜辺のみんなに見せようね」
「そうね、陸の皆さんにもお見せしたいわ」
 戻りましょう。ふたりを促して、ざぶざぶと海を奏でながら浜辺へと向かう。
 其々の手には、ぴかぴかぱちぱち火花を散らすお星さま。
 さて、陸で待つみんなは、綺羅星を見せたらどんな顔をしてくれるのだろう。

 海へと向かう他の皆へといってらっしゃーいと大きく手を振って送り出せば、どうしようかと四人は顔を見合わせる。
 視線が混ざりあったのは一瞬。へろりと下がる苺の視線と頭を、三人の視線も追いかける。
「……三人とも泳げない私に付き合わせてごめんね」
 皆の楽しみを奪っちゃった。皆は大丈夫って言ってくれるけれど、気になるものは気になってしまう。もこもこの耳も力なく垂らしてしょんぼりとしてしまう苺だが、そんな苺を元気づけるようにルーチェが笑った。
「ううん、気にしないで。みんなと来られる事が最重要!」
 それは、今こうして一緒に居られることも含めてだ。
「そうですよ、好きで居るので気にしないでくださいね」
 柔らかくユェーが微笑めば、ルーチェと十雉も大きく頷く。
 大丈夫だよと微笑む優しい仲間たちに、しょんぼりとしていた苺の顔にも穏やかな笑みが戻ってくる。貰った言葉や態度が嬉しくて、ありがとう嬉しいと苺も素直に返すのだった。
「あ、でも。お礼に飲み物かデザートをごちそうさせてくれるとうれしいな♪」
「いいの? それじゃあお言葉に甘えさせてもらうね」
「おや? ありがとうねぇ、苺」
「そういうことならオレも甘えるかなァ」
 三人の笑顔と声に、うん! と大きく頷いて、苺たち四人はオーベルジュのレストランへと向かった。
 テイクアウトのカウンターに着いたら、四人揃って其々張り出されているメニューと立て看板を覗き込む。
「へぇ、星にちなんだメニューがあんだな」
 可愛い名前の甘味と飲み物の名前と簡単な説明を眺めて、十雉は顎を撫でる。
 その隣ではもう決めたのか、ルーチェが明るい声とともに商品名をビシィと指差した。
「ボクはこれ! これののんあるこーる!」
「私もルーチェちゃんと同じ、『スターナイト』にしようかな」
 美味しそうだよね。ね。と顔を合わせて笑い合うルーチェと苺。
 仲良しだねぇなんて微笑ましげに笑って、十雉もオレも決めたと頷いた。
「『スターナイト』と『星の子のいたずら』にしよ。あ、パフェは自腹で食うよ。『スターナイト』だけご馳走になんね」
「ユェーはどれにする?」
「じゃ、ルーチェちゃんや皆と同じがいいかな?」
「わ……、みんなでお揃い嬉しい……♪」
 ひとつだけノンアルコールで頼んだ『スターナイト』を間違えないようにとルーチェに渡してから、全員の手元に同じ見た目のドリンクが握られる。追加で『星の子のいたずら』を注文した十雉が戻ったら、四人はオーベルジュのテラスへと移動した。ここからなら浜辺が見えるため、海へ行った皆が帰ってきても解るだろう。浜辺を散策しながらドリンクを飲んでも良かったが、両手が埋まってしまった十雉にはテーブルが必要だったからだ。
 十雉は早速テーブルに両方置いて、いそいそとスプーンを手に取った。
 ぱく。パチパチパチ!
「わ、すげ。このパフェパチパチすんぜ!」
 クリームの上に掛かっていたカラフルな飴が口の中で弾けて、気分も弾んだ。子供みたいにパッと顔を輝かせて、もう一口。パチパチパチパチ!
「十雉くんのパフェ美味しそうですね?」
「ひと口食ってみるかい?」
「おや? 一口下さるのですか?」
 穏やかに首を傾げるユェーが、このパチパチする飴を口にしてどんな顔をするのか。少しの興味と悪戯心で勧めてみたら、素直に口が開けられる。
(って、オレが食わせんの?)
 パフェの器ごと横にずらし、スプーンを渡すつもりだったのに。
 アンタいい大人だろ? なんて、思わず苦笑も漏れるけれど、親鳥からのご飯を待つ雛鳥状態のユェーへとパフェをすくったスプーンを向けた。
「しゃあねぁな……ほら、あーん」
 ぱく、パチパチパチ。思っていたよりも弾けるものだとユェーは驚くも、すぐに瞳を穏やかに細める。
「とても美味しいですね、ふふっありがとうねぇ」
「わあ! あーんしてる!」
 綺麗だなぁとスカイブルーと濃紺のグラデーションにうっとりしている間に!
 けれど仲良きことは美しきことだ。グラスを揺らして溶けたアラザンの星を揺らしてから、ルーチェはふたりから視線を外してグラスへと口をつける。――と、何やらぼーっとしている苺が視界に入った。
「苺、どうかした?」
「あ、ごめんね、ぼーっとしてた!」
 掛けられた声に、苺はハッとしてルーチェを見る。現実に戻ってきた、そんな感じの瞳で。
(――あの子、元気にしてるかな……)
 『スターナイト』の色に、生き別れになった妹の懐かしい色を思い出していた。けれど思いを馳せていた事を隠し、苺はいつもどおり、明るく取り繕う。
「この色、色んな思い出が蘇るなぁって! ルーチェちゃんと宙の散歩したこととか、ゆぇと肝試しに行って見た夜空とか……!」
「うん、これからも楽しい事をしていこう」
「その楽しいこと、ぜひオレも混ぜて貰いたいもんだね」
「ときじさんはこれから目一杯作りましょう♪」
「来年の夏も、その先も、しあわせは巡るから。ね、ユェー、十雉」
「幸せは巡る……そうだね。これからも、ずっと……」
 そう言ってくれる友人たちが居てくれることが、既に幸せだ。
 楽しげに話をする、友人たちの声。
 少し遠くに聞こえる波の音。
 心地好い酔いに誘われて、苺は気付かぬ内に幸せな夢の扉を開いていた。
「あの時はね、苺――苺?」
 宙の散歩をした時の話をユェーと十雉に話し、相槌を求めるように苺を見たルーチェの髪が揺れる。ルーチェが首を傾げた視線の先で、苺はいつの間にかテラスのテーブルにうつ伏せになってしまっていた。
「って寝てる!」
「寝ちまったのか苺ちゃん」
「おやおや、苺。こんな所で寝てはいけませんよ」
 そっと肩に手をかけても、むにゃーっと幸せそうな顔で眠っている。どうしたものかと考えたが、テーブルに突っ伏しているしそのままにしておくことにした。
 皆も疲れているのならオーベルジュの部屋で休ませてもらおう。海へ行っている人たちへは伝言を残しておけばいい。そう考えて、ルーチェと十雉は疲れていないかとユェーが尋ねれば、ふたり揃って緩やかに首を振る。苺の眠りを護りながら、海へ行った皆の帰りを待とう、と。
 友人たちと語り合う、幸せな時間。
 どんな星の子を連れ帰ってくるんだろうねと口にしていれば、人影に気付いた十雉が椅子から背を浮かせる。
「……お、帰って来た」
 こっちだと示すように大きく手を振れば、気付いたのだろう。近づいてくる人影のひとつが、大きく手を振り返しながら灯りを掲げる。
「おおぅい皆様! コノ星ヲ見て下サレ」
「お帰り。さぁさ、待ちに待った土産話を聞かせてくれよ」
「みんなー! おかえり! どんな星の子を掬ったの?」
 椅子から立ち上がったルーチェが、三人を迎えに行く。
 星の子への感想をはしゃいだ声で告げてから、はたと唇を手で押さえて――しー。
 一本立てた人差し指をそのままに眠っている苺を瞳だけで促せば、帰ってきた三人にも伝わったのだろう。こくりと頷きが返ってくる。
 起こさないように、話をしよう。天に光る星のように小さな声で。
 そうして、忘れない夜にしよう。
 この思い出は、一夜で消えはしないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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灰神楽・綾
【不死蝶】♢
星の子すくいを終えてオーベルジュの部屋で過ごす
ルームライトはつけず、星の子の優しい光だけ

俺と梓の掬った星の子が入った容器を
サイドテーブルに並べて眺め
俺の星の子は綺麗な赤色
ぴかぴか光るこの子を見つけて一目惚れしたんだよねー
梓が紫色を選ぶイメージってあんまり無かったけど
なるほどそういうことかぁと納得
相変わらず仔龍達のことが大好きなんだね

んー?細かいことはいいじゃない
「いつもの星とは違う不思議な星」と言ってたじゃん
つまりそういうことなんだよ
「わぁ不思議だなー綺麗だなー」でいいのいいの
そんなに難しい顔して見つめてたら
梓の星の子だけ早く消えちゃうよ
あははと笑いながら指先で容器をつんつん


乱獅子・梓
【不死蝶】♢
オーベルジュのツインルームを借りて
それぞれのベッドでごろごろしながら
星の子と窓の外の星空を眺める
焔と零は俺の両隣で飛び跳ねて
ベッドの弾力を楽しんでいる

俺の星の子は紫色の光
本当は焔と零の色でもある、
赤色と青色が欲しかったんだけどな
ひとりひとつだけらしいから
どちらか片方だけというのもアレだし
赤と青が混ざった色である紫を選んだという
我ながら妙案(?)だと思う

それにしてもこの星の子達…
正体はいったい何なんだろうか?
まさか本当に本物の星が海に落ちて
手で掬えるわけないし…
うむむと眉間にシワを寄せ
ま、まぁ考えるだけ野暮なのは分かっているが
ついそういう現実的な事を
気にしてしまうのが俺の癖だな




 清潔感のある白い部屋に、優しいあかりが灯る。
 線香花火のようにぱちぱち跳ねるその光は、あかりを入れたまぁるい硝子の容器を通して室内を明るく照らしていた。部屋全体を照らすには物足りないが、ベッド等で過ごす分には問題ないため、ルームライトは必要ない。朝が近付くにつれて光も次第に弱くなるので眠りも妨げませんよ、とオーベルジュのスタッフが部屋を案内する時に教えてくれた。
 今夜の宿となる、オーベルジュのツインルーム。ふたつのベッドの間にあるサイドテーブルにふたつの金魚玉を置き、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は其々のベッドでごろごろ転がって過ごしている。綾はサイドテーブルの星の子たちを眺め、梓は身体を揺らしながら星の子を見たり窓の外を見たり……と、ゆっくりと過ぎていく穏やかなひと時は旅行ならではのものだろう。
 因みに、梓の身体が弾むように揺れているのは、彼の仔竜たちのせいだ。梓が可愛がっている仔竜――『焔』と『零』は、彼の両隣でびょんびょんと跳ね、ベッドの弾力を楽しんでいた。
 サイドテーブルの上に並ぶふたつの金魚玉の中で、ぱち、ぱち。火花が散る。片方は綾がすくった綺麗な赤い星。もう片方は梓がすくった紫の星だ。
「ほんと綺麗な赤だなー。ぴかぴか光るこの子が綺麗で一目惚れしたんだよねー」
 眺めているだけで、小さく笑みが浮かんでしまう。
 うつ伏せに寝っ転がりながらぱたりと足を動かし、赤の隣の紫の星を見て、そうしてこてん。組んだ腕の上で頭を傾げて、テーブルの向こうの梓を見る。
「梓が紫ってちょっと以外だったなぁ」
「本当は焔と零の色でもある赤色と青色が欲しかったんだけどな」
「あー、そっか。ひとりひとつだもんねー」
「どちらか片方だけというのもアレだし……」
 いや、多分というか絶対に二匹が喧嘩をする。どちらかは梓にデレっと擦り寄るだろう。けれど残りの片方が怒り――最終的に二匹が喧嘩をしてしまうだろう。
 だから赤と青が混ざった色である紫を選んだのだ。
「我ながら妙案(?)だと思う」
「なるほどそういうことかぁ」
 好きな子達が喧嘩をしてしまうのは困るし、それ以前にきっと、梓は最後までどちらかひとつの色だなんて選べないだろう。相変わらず仔龍達のことが大好きなんだね、と綾はまた小さく笑った。
「それにしてもこの星の子達……」
 金魚玉の中でぱちりと火花を放つ星の子を見て、梓がふと口を開く。
「正体はいったい何なんだろうか?」
「んー? 細かいことはいいじゃない」
 本当に本物の星が海に落ちたら、すぐに触れるような熱さになるわけがない。況してやこうしてずっと光り輝き続けることはない。纏っていた炎が消え、ただのゴツゴツした石ころになっているだろう。
 真面目に考える梓に対し、綾は気楽にあっけらかんと応える。『いつもの星とは違う不思議な星』だと聞いている。不思議って言うものは、そういうことだ。これまでの島の歴史の内に、調べようとした者もいただろう。けれどきっと、わからなかったのだ。わからないから、不思議は不思議。不思議は不思議なまま、けれど島の人々から愛されて、愛されているからこそ他所から人が来るくらいには噂が広がっている。
「ま、まぁ考えるだけ野暮なのは分かっているが」
 不思議だなー綺麗だなーって見ればいいのにと綾は笑うけれど、生真面目な梓は眉間の皺を深くして金魚玉の中の星の子たちを見つめる。
 そんな梓の眼前で指が伸び、紫の星の子が入った金魚玉をつんつんと突いた。
「そんなに難しい顔して見つめてたら梓の星の子だけ早く消えちゃうよ」
「なっ!? それは困る!」
 この星の子は焔と零の星なのだ。
 慌てた様子でパッと起き上がった梓を見て、綾は楽しげに声を立てて笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


✦.   ✦.       ✦.
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百鳥・円
【揺籃】♢

わーわー本当に!見事ですねえ
こんなに多くの流れ星は
誰かの夢の中でも見たことないですん

まるで星空を泳いでいるようですねえ
こけないよーにお気をつけて!
おやまあ、ふふふ。お帰りなさーい
ぎゅうっと抱きとめましょ
相変わらずひんやり心地よいですん

もっちろん喜んで!
わたしの瞳の色だなんて
嬉しーの極みです、はっぴぃですね
わたしは、そーですね
水面でゆらゆら揺れるピンクの子を!

あるかなーあるかなー
あらま、ここにありました!
手袋を外し水面ごと掬いとる
水に溶けるような色はおじょーさんの瞳のよう
金魚鉢へとそうっと移しましょ
儚くうつくしい芸術ですね

んふ、もちろん
日が昇ろうと沈もうと
わたしはちゃーんと居ますよう


ティア・メル
【揺籃】◇

円ちゃん円ちゃんっ
たくさんの流れ星だよ
まるで生きてるみたいだね

仰ぐ夜空の下はしゃぎ回る
でもぼくが帰るのは円ちゃんの所
駆け寄って、ぎゅー

円ちゃん、星の子すくいしない?
ぼくね、円ちゃん色のお星様が欲しいんだよ
綺麗な赤と青
どっちも混ざってるお星様はないかなあ
円ちゃんはどんなお星様が欲しいっていうのはある?

水中できらきら光る星に目を凝らす
明るい赤と青の星ーどこー
んに!あった!
見て見て、円ちゃん
円ちゃんっぽい色だよ
円ちゃんはどの子がいいか決まった?
んに!かぁいいピンクだね

星をそっと掬って金魚玉に入れる
一夜限りだからこそこんなに綺麗なのかな?
儚いのは少し寂しいや
円ちゃんは朝陽が昇っても傍に居てね




「円ちゃん円ちゃんっ たくさんの流れ星だよ」
 いとおしい桃色が呼ぶ声に、百鳥・円(華回帰・f10932)は彼女が指差す先へと視線を向ける。夏らしさを孕んだ海風に遊ばれる髪を片手で押さえ、ティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)の明るい笑顔の背景に映る暗闇は――。
「まるで生きてるみたいだね」
「わーわー本当に! 見事ですねえ」
 こんなに多くの流れ星は、誰かの夢の中でだって見たことはない。もしかしたらこれは夢? なんて思うけれども、きれいだねーと傍らで笑う笑顔が現実だと知らしめている。
 空を彩るぴかぴか輝く星に、海を彩るぱちぱちと線香花火のような星。天と地を星に囲まれたそこは、まるで星空のようで。
(星空を泳いでいるようですねえ)
 星を仰ぎながら歩く眼前のティアを眺め、円は柔らかく眦を下げる。
「こけないよーにお気をつけて!」
 両手を広げて、あっちもこっちもお星さまーと笑顔でくるくる回ってはしゃぐ姿も可愛らしい。けれど転んでしまったら大変だ。
 藤がかったピンクの瞳と目が合えば、細められたそれが近寄ってくる。
 ティアの帰る場所は、円の腕の中だから。
「おやまあ、ふふふ。お帰りなさーい」
 手を伸ばすティアを、腕を広げて抱きとめて。
 甘えてぎゅっと抱きつく背中に腕を回して、ぎゅう。夏でもひんやりと感じる身体が心地好い。
 ぎゅうと胸に抱きついた顔を上げて、ティアは円を上目に見詰める。
「円ちゃん、星の子すくいしない? ぼくね、円ちゃん色のお星様が欲しいんだよ」
「もっちろん喜んで!」
 自分の色をと望んでくれるだなんて、嬉しーの極み。はっぴぃだ。
 手を繋いで海へと足を浸し、海の中でぱちぱちと火花を散らす線香花火のような星の子たちを覗き込む。
 ティアが求める色は、赤と青。けれど、電飾とは違うから、交互に光る星は見つからない。
「んにー、赤と青のお星様、ないなあ。」
「です、ねえ……」
 ティアは、きょとりと視線を動かす円へと視線を移す。
「円ちゃんはどんなお星様が欲しいっていうのはある?」
「わたしは、そーですね……」
 んん、と考えて、矢張り思いつくのは眼前の少女の色。
 ピンクが良いと口にすれば、花が綻ぶような笑みを向けられて。
「あるかなーあるかなー」
「円ちゃん色のお星様、どこー」
 昏い海の中を波に揺蕩う星探し。
 最初に上がったのは、んに! という元気な声。
「見て見て、円ちゃん。円ちゃんっぽい色だよ」
 指を差すのは紫色の星の子。円の瞳の赤と青を足した色を宿した子。
「円ちゃんは見つかった?」
「あらま、ここにありました!」
「んに! かぁいいピンクだね」
 すくう時だって、同じタイミングを望んで。
 円が手袋を外すのを待ってから、ふたりでいっしょに、そっと星の子をすくいあげた。
 ぱちりと火花を小さく散らした星を硝子の金魚玉へと入れれば、海の中に居た時のようにまたぱちぱちと元気に煌めく星の子は、お互いの色。
 手の中にも傍らにも、同じいとおしい色。
「一夜限りだからこそこんなに綺麗なのかな?」
「儚くうつくしい芸術ですね」
 火花を爆ぜさせ、ぴかぴかきらきら輝く星の子は綺麗だけれど、儚いのはやっぱり少し寂しい。
「円ちゃんは朝陽が昇っても傍に居てね」
「んふ、もちろん」
 肩に頭を預けて、再び手を繋ぐ。
 伝わる温度は、ちゃんと此処にいる証。
 日が昇ろうと沈もうと、わたしはちゃーんと居ますよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


✦.   ✦.       ✦.
 ✦.       ✦.    ✦.
フレズローゼ・クォレクロニカ
💎🐰


エトワールはね、星だよ、兎乃くん!
えへんと胸を張って知ったかぶり
へぇ、そうなの?
ボクも初めてなんだ
満天の空へ宣戦布告するのさ!
待ってるんだ!星の子ちゃん!
ボクがガッツリ捕まえちゃうんだからな!
ふふん、ボクだって楽しみなんだ!
だーって、素敵なトモダチと、一緒だから
(わたしの友達。この世界でできた、トモダチ)

どっちが速く捕まえるか、競走さ!
兎は飛び跳ね駆けるものさ!
あっちこっちを跳ねてかけて――そーれ!
ぱちんと捕まえた
美味しそうなニンジン色!

見てよ、兎乃くん!綺麗でしょー!
キミの星の子も綺麗だね
キミみたいにキラキラさ!

瞬くキミとまたたくような一時
消えてないよ
想い出の中で今もまだ光ってるよ


兎乃・零時
💎🐰


エトワールエトワの夜がどんな意味かは分かんねぇけど…楽しい祭りなのは理解した…!
あ、星なのか!フレズは物知りだな!

俺様スぺワ出身だけど星の子掬うってのはやったことがねぇんだよな
だから今すごく楽しみなのさ!
友達と…フレズと一緒なのもあるし!



あ、フレズフレズー!
星の子めっちゃキラキラ輝くらしいじゃん!
絶対捕まえようぜ!
競争だ―!

…あ”!(水に溶けた



その後どうにか捕まえ
よっしゃぁ…!
おー!フレズの星の子もすっげぇ綺麗だな……!

俺様のはこいつ!こいつもすっげぇキラキラだよな!
え、俺様みたいにか…?(無意識に宝石髪や瞳が明滅してた)

翌日星の子が消えたらしょんぼりするけど
想い出はきっと輝いている




 空に輝く星たちが、駆けて跳ねて、落ちてくる。
 月のない昏い空と真っ暗な海のはずなのに、星の子たちが空も海も照らしている。人々は賑わい、星空の下で明るい笑顔を咲かせていた。
「エトワールエトワの夜がどんな意味かは分かんねぇけど……楽しい祭りなのは理解した……!」
「エトワールはね、星だよ、兎乃くん!」
「あ、星なのか!フレズは物知りだな!」
 ここぞとばかりにドヤ顔で告げたフレズローゼ・クォレクロニカ(夜明けの国のクォレジーナ・f01174)に、兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)はキラキラとした視線を向ける。すげー! さすがフレズー!
 まあ、知ったかぶりなんだけどね!
「俺様スぺワ出身だけど星の子掬うってのはやったことがねぇんだよな」
「へぇ、そうなの?」
 零時の言葉に、きょとり。そうなんだとゆるく首を傾げるフレズローゼ。
 スペースワールドシップに星の子をすくうなんてものはないだろうし、通常の星が落ちてきたら隕石だ。海に落ちても高熱で触れたものではないし、触れるようになる頃には輝かない石になっているだろう。
 だからお互いに初めてだ。
「待ってるんだ! 星の子ちゃん! ボクがガッツリ捕まえちゃうんだからな!」
 ビシィ! 満点の空へと指をさして宣戦布告!
「俺様も! 俺様も!」
「兎乃くんのポーズも決まっているね!」
「フレズもな! 今すごく楽しみだし!」
「ふふん、ボクだって楽しみなんだ!」
 友達と、いっしょに初めてのことをする。なんだかそれって、とっても仲良しな友達って感じだ!
(わたしの友達。この世界でできた、トモダチ)
 フレズローゼは星へとキラキラとした瞳を向ける零時の顔をちらりと見て、気付かれない内に視線を戻す。
 特別な、トモダチだ。
「あ、フレズフレズー!」
「なんだい、兎乃くん」
 パッと顔を向けてきた零時についさっき見ていた事を悟られないように、自然だと思える態度で返す。彼に普段見せている、いつものフレズローゼの側面で。
「絶対捕まえようぜ!」
「どっちが速く捕まえるか、競走さ!」
「競争だ―!」
 キラキラの星の子をどっちが早く捕まえられるだろう。と言っても、正確にはすくう、なのだが。落ちてくるところのキャッチは出来ない。
「あ、きた!」
 夜空をとんとん跳ねた星の子が駆けてくる。楽しげに楽しげに空を駆け、そうしてぽちゃんと海面に落ちてから、水を切る石のように海面を跳ねていく。
 てんてん、と、ててん、ぽちゃん。
「いくぞ――……あ゛!」
「ふふ! この星の子ちゃんはボクがいただくよ!」
 浅瀬を駆けた零時がばちゃんと転んで、その頭上をぴょんっとフレズローゼが飛び越える。兎は飛び跳ね駆けるもの。落ちてきた星の子が最後にぽちゃんと海に落ちるところまで駆けて――そうして、そっと両手を海へと浸した。
 海中でパチパチと線香花火のように火花を放つ星の子は、美味しそうなニンジン色。近づいてきたフレズローゼの熱を感知して、その勢いを鎮めて彼女の手中に収まった。
「勝負はボクの勝ちみたいだね!」
 ふふん! っとドヤ顔で振り返れば、ちょうど「よっしゃぁ……!」と響く声。どうやら零時もしっかりと星の子をすくえたようだ。
「見てよ、兎乃くん!綺麗でしょー!」
「おー! フレズの星の子もすっげぇ綺麗だな……! 俺様のもすっげぇキラキラだぞ!」
「うん、キミみたいにキラキラさ!」
「え、俺様みたいにか……?」
「うん!」
 零時の意識とは別にキラキラと輝く宝石髪と眸に、フレズローゼは大きく頷いた。
 煌めくようなひと時は、あっという間。
 硝子の金魚玉へと星の子たちを入れれば、またパチパチキラキラ海の中に居たときと同じように線香花火めいて輝いて、ふたりは暫く星の子たちを見つめる。
 この光は、明日の朝には消えてしまう。
 けれど、ふたりの胸の内に宿った光は消えることはない。
 忘れてしまわない限り、思い出の中で輝き続けることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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薄荷・千夜子
お星様いっぱいですね!
楽しそうにしているシゥ君をニコニコ眺め
エト…?あぁ、もしかしてお星様のことですか!(動物と話せるためふんわり通じる)
えぇ、素敵なお星様掬いましょうね

ふふ、分かりました
まずは私がやってみましょう
優しくそっと海で輝く星の子掬い(色輝きお任せ)
こんな感じで…シゥ君もやってみてくださいな
シゥ君を見守りつつ、そうですそうです上手ですよと褒めながら
素敵な想い出掬えましたね!
とはいえ、お星様は一晩の輝き…
シゥ君、お星様と一緒に砂浜もお散歩しませんか?
今日の想い出をもっと輝かせるように、そして形ある想い出も添えられるように
浜辺で貝殻なども拾いながら夜明けまでの楽しい一時を


シゥ・フリージア
【翠森】

チヨコ!エト!
うみ、エトいっぱい!

貰った容れ物を手にはしゃぎ飛び回りながら
エトはシゥ達の言葉(動物言語
ホシ?…そう、ニンゲン言う、ホシ!
チヨコ、シゥ、ホシ取りたい!

海中に潜って星をキラキラした眼差しで見つめながら
でも勝手に触ると壊してしまいそうで

チヨコー、先取って!

先に掬ってもらいながら
周りを飛び回りじぃっと観察
その後チヨコのマネをするように

えっと…こ、こう?チヨコ、合ってる?
両手で星をそぉっと掬ってみてからゆっくりと容器へ

出来た!チヨコ、シゥにもできたー!
シゥこれダイジするー!
嬉しそうに容器を両手でしっかり抱え

おさんぽ行くー!
綺麗な貝殻チヨコに見せるの!
エトのお友達も見つかるかなぁ?




 きらきらと輝く空の星と、ぱちぱちと煌めく海の星のはざまを、小さなフェアリーが大事そうに金魚玉を両腕で抱えて飛んでいた。楽しそうにきゃらきゃらと笑って飛ぶシゥ・フリージア(純真無垢な野生姫・f03749)の後を薄荷・千夜子(陽花・f17474)は穏やかに微笑みながらついていく。
 彼が抱える金魚玉は、通常よりも一回り小さい。フェアリーでも抱えられるサイズだ。
「チヨコ! エト!」
「エト……?」
 エトはシゥ達の言葉――シゥを育ててくれた動物たちの言葉で、星を意味する。
 なんだろうと首を傾げる千夜子の顔を見ながら、シゥが海へと指を差す。
「うみ、エトいっぱい!」
「あぁ、もしかしてお星様のことですか!」
「ホシ? ……そう、ニンゲン言う、ホシ! チヨコ、シゥ、ホシ取りたい!」
「えぇ、素敵なお星様掬いましょうね」
 大きくうん! と頷いたシゥはお星さまのようなキラキラの笑顔。
 ほっぺを指先で撫でてから、千夜子はシゥと海に落ちた星の子探し。
 赤に白に黄色に空色。海の中で線香花火のような火花を散らして、ぱちぱち輝くお星さま。海中に潜ってどれにしようかなーっと見つめるシゥの瞳は笑顔と一緒でキラキラ輝いている。
「シゥ君、決まりました?」
 優しく降ってきた声に、シゥはプハッと顔を上げ、プルプルプルッと水飛ばし。
 どの星の子もとってもステキで気になるけれど、勝手に触ると壊してしまいそうだからなかなか手が伸びないシゥはむむむむーっと小さな顔の眉間を寄せた。
 ――そうだ!
 パッと閃いた顔になったと思ったら、千夜子の頭上をくるくる飛んで。 
「チヨコー、先取って!」
「ふふ、分かりました。お手本ですね。まずは私がやってみましょう」
「そう、おテホン! おテホンしてー!」
 どれにしようかなと海の中を覗き込んで、気になる星へと手を伸ばす。
 静かに手を浸したなら、優しくそっと掬い上げてお手本を。
「こんな感じで……シゥ君もやってみてくださいな」
「あ! シゥの色!」
 千夜子がすくい上げた金色の星の子を見て、シゥはキュッと自身のツインテールを両手で掴む。そうですよと返ってくる微笑みに、嬉しくてきゃらきゃら笑ってくるくる飛び回ったら――星の子みたいにぽちゃん。少し泳いで星を探した。
「シゥ、あれにするー!」
 波打ち際まで運ばれた星の子たちは、シゥでもすくえそうな大きさだ。
「えっと……こ、こう? チヨコ、合ってる?」
「そうですそうです、上手ですよ」
 手を寄せればパチパチが鎮まる星をそぉっとすくって、大事に抱えてきた金魚玉へとぽちゃんと落とせば、ぱちり。元気に明るい緑が瞬いた。
「出来た! チヨコ、シゥにもできたー!」
「素敵な想い出掬えましたね!」
「シゥこれダイジするー! これはね、シゥとチヨコのエト!」
 緑に光る星の子が入った金魚玉を、大事に抱えてニッコリ!
 けれどその輝きも一晩だけの輝きで……。
 少し考えた千夜子は提案をする。
「シゥ君、お星様と一緒に砂浜もお散歩しませんか?」
「おさんぽ行くー!」
 今日の想い出をもっと輝かせるように、そして形ある想い出も添えられるように。
 ふたりとふたつの星を連れて散歩を提案すれば、ぴゅーっとシゥが飛んでいく。
「綺麗な貝殻チヨコに見せるの!」
 チヨコより早く見つけるよー! と、小さなフェアリーは忙しい。
 私の方が先にみつけちゃいますよ、なんて笑った千夜子も、小さな背中を追いかける。
 自分だけの星あかりを手に、浜辺を照らして。
 眠たくなってしまうまで、二人は星踊る夜の浜辺を楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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夕時雨・沙羅羅
【樹兎雨】
しんじゅさんにも声を掛けて

きら、きら、ぱち、ぱち
光っている水中を、不思議な眼で見つめる
まるで地にも星空があるみたい
いつまでも見ていられるけれど、さて

ソーダのような水色も、花のような白色も、好む色
なやましい…と悩んでいる間にも、見入ってしまう
るいさんはもう決めた?
目…心の目、的な
めとろさんは、全身で迎えに行ってるが
迷いつつ、掌を水に浸ける
掬おうとしたら、すっと手の中に星の子が入ってきた
びっくり、そういえば、水は水だな
でも、あなたの今宵の宿はこっち
金魚玉に移し替えれば、金の火花散る銀の星
確かに、食べてしまいたい、けど…
しんじゅさんの子は、何色?

星の子ひとつ、一夜の光
みんなで一緒に楽しもう


冴島・類
【樹兎雨】
真珠さんにも声をかけに行こう
ご機嫌よう
ご一緒いいですか?

夜の海がほしの子達で輝いて、星空みたいに歌ってる
ぱちぱち、見惚れている横で
袖の感触に気付く
一緒に泳いじゃえ!と飛び込まないんだね
笑ってえらい、と言いかけて、褒める代わりに頷いて

僕もまだ
これだけいると悩んじゃうし
ぱっと目があったやつが、相性いいかもしれないよ
お、その子は好奇心旺盛だな
メトロ君が口で迎えにいく前に袖を引いて
食べるのは、ほら
溶けちゃったら惜しいだろう

…あれ?
少し他の輝きから離れてるのを見つけそっとすくう
控えめだけど、おぱーる?に似て混ざった色
おいでと金魚玉にうつして
真珠さん、見て

うん、皆の並べてみたいな
一夜だけのひかり


メトロ・トリー
【樹兎雨】
真珠くん~!
みんなで真珠くんにおいでおいでするよ!

みんなでおでかけ!海に沈むくらいうれし!
でも今は星の子くんが海水浴なんだろう?
ぼく我慢できるよえっへん!類くんの着物をぎゅうと掴んで我慢!
もう一回真珠くんにえっへん!
えらい!?褒めておくれよえへへ

ア!しゃららくんの中に入っちゃった!
動くんだすごーいぼくも食べて運ぼ、ん?だめかい?

ばしゃばしゃだめ?キィイ!ムズカシー!
お!およ、およよ?きみはいいの?逃げないね?
ヨい子~ぼくはこの子に決めたよ!

ぱちぱち 目に痛いぐらい元気で でっかい!
ひとりの空も きみぐらい元気ならきっと怖くないね

みんなの子もみせておくれよ!
よっつのお星さま ぴかぴかり




 波打ち際で蹴り上げた海水が、飛沫となって舞って、落ちる。
 悪戯に水を掛け合う度、響くのは楽しげな笑い声。
「あ、しんじゅさんだ」
 白い尾鰭が砂浜を游いで行くのに、夕時雨・沙羅羅(あめだまり・f21090)は気がついた。
 長い耳が言葉を拾い上げれば、すぐに視線は向けられる。
「真珠くん~!」
「ご機嫌よう」
 メトロ・トリー(時間ノイローゼ・f19399)が大きく手を振って、冴島・類(公孫樹・f13398)は会釈をする。
 ゆっくりと振り返った顔と目が合えば、大きく振られた手はおいでの形に変えられて。
 普段だったら「お前がおいで」と言いそうな彼のこと。迎えに行こうと類が足を向けかけた時、尾鰭がゆうらり揺られて近寄ってきた。
「しんじゅさん、星の子はつかまえた? まだ?」
「まだだよ。見守って欲しいって言われたから見てきただけ」
「真珠くん真珠くん、星の子くんをつかまえようよ!」
「僕らも、ご一緒いいですか?」
 いいよと短く声が返れば、四人揃って膝くらいまで海水が浸るところまで進む。内二人は浮かんでいるため、あまり関係はないが。
 昏い海の中で、星の子たちはきらきら、ぱちぱち。
 空を映したもうひとつの星空みたいに、海の中で星が歌う。
 それがとても不思議でじぃっと見つめる沙羅羅の横顔を類は見詰めていたが、くんと引かれた袖に気付いて視線を引かれた袖側へと移動させた。
「あれ。一緒に泳いじゃえ!と飛び込まないんだね」
「今は星の子くんが海水浴なんだろう? ぼく我慢できるよえっへん!」
 飛び込んでしまわないように、類くんの着物を掴んで我慢しているのさ! みんなでのおでかけが海に沈むくらいうれし! けれどバチャバチャもしないように我慢してるのさ! あっ、わわわわわ、類くんってばそんな優しい顔で頷いて……もしかしてぼくに恋とかしちゃってひと夏のアバンチュールだなんてそんな、そんな、ぼくうれし!!
「……メトロ、心の声が全て漏れているよ」
「えっ、やだな恥ずかしいな。ケッコンするかい? しよ!」
「るいさんするの?」
「しないけど……」
「しつ! れん!」
 ひと夏の恋の終わりは早かった。
 けれども我慢したのは偉いねと褒められれば、しょげた兎耳はすぐにピョンっと復活だ。
 海水の中でぱちぱちと線香花火のように火花を散らす星の子は、いつまでも見ていられる。けれどさて、この中からひとつだけ選ぶのなら、どの子にしようか。
 ソーダのような水色も、花のような白色も、沙羅羅の好む色。
「るいさんはもう決めた?」
「僕もまだ」
 これだけとりどりの色があれば悩んでしまうのは類も同じ。
 ぱっと目があったやつが、相性いいかもしれないよと微笑えば、ふむと沙羅羅は悩む顔で頷いた。
 ぱちりと瞬いて、ぱっと目が合った星。
「決めた」
 ぱちりと大きく火花を散らした星の子へと手を伸ばし、すくいあげる。
「わ」
「お、その子は好奇心旺盛だな」
「ア! しゃららくんの中に入っちゃった!」
 両手を下から入れて持ち上げたのに、星の子はそのままするりと水で出来ている沙羅羅の手の中に。腕へと転がって、ぱちぱちと爆ぜる火花がくすぐったい。
「でも、あなたの今宵の宿はこっち」
 金魚玉へとぽちゃんと移し替えれば、星の子は金の火花を散らした。
「ぼくも食べて運ぼ、」
「確かに、食べてしまいたい、けど……」
「食べるのは、ほら。溶けちゃったら惜しいだろう」
「ん? だめかい?」
 口を大きく開けて前に出たメトロの袖を類が引いて、その姿を沙羅羅は金魚玉を揺らしながらじいっと見る。ちらっと視線を向けてきた真珠の瞳もいいこにしていろと言っていそうだ。
「ばしゃばしゃだめ?」
「だめ。沈めるよ」
「恋に?」
 返答はない。完全に無視だ。けれどウサギはそんなことは思わない。
 真珠くんってば照れちゃってるんだね! かわいい!
 けれどぼくは仕える使えるウサギだから、いいところだって見せちゃうのさ。
「お! およ、およよ? きみはいいの? 逃げないね? ヨい子~ぼくはこの子に決めたよ!」
 ほら見て真珠くん! 元気ででっかい!
 両手ですくって掲げて見せるけれど、掌の上での星の子は大人しい。
 あれれと首を傾げながら金魚玉へとぽちゃんと入れれば、またぱちぱちと元気になって、メトロは満足気にえっへん! としながら改めて掲げた。どうだい、どうだい。
「真珠さんはどの子に……あれ?」
 どの子にするのかと声を掛けかけたところで、ゆうらりと波に攫われていく輝きに視線がいった。
 何かの色が控えめに混ざったような色の星の子へと、おいでと手を伸ばして金魚玉へと迎え入れた。
「真珠さん、見て」
「類らしい子だね」
 類の金魚玉をひと撫でした指先が離れると、そのまま真珠は海の上を游いでそっと両手を海水へと浸す。皆がすくうのを見ながら決めていたのだろう。すぐに金魚玉へと入れて戻ってくる。
「しんじゅさんの子は、何色?」
「僕のは白」
「真珠さんも、真珠さんらしい」
「みんなの子もよぉくみせておくれよ!」
「うん、皆の並べてみたいな」
 四人並んで金魚玉を手にした手を前へと出せば、よっつのお星さまが並ぶ。
 同じひとが居ないように、星の子たちもひとつとして同じはない。
 ぴかぴかぴかりと輝く星の子は、君だけのお星さま。
 一夜だけの光は、楽しい記憶の中でいつまでも輝き続けることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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薬師神・悟郎
グレイ(f24892)

俺の大切な彼女の為に綺麗なものを集めたくて
弟を連れて星の子をすくいに

あいつもこの星空には吃驚しているらしい
年相応な様子を見て、連れてきて良かったと思う
星の子はどれでもというわけではなく、自分達がこれだと思う光を探しに行こう

あれでもない、これでもない、と探しているとグレイが笑っていることに気付いて
……そんなに真剣だっただろうか?
ああ、そうだな。彼女なら喜んでくれるはずだ
温かく優しい心の人だから

おや、グレイも星の子すくいに挑戦か?
そうだな。折角の祭りに参加しないのは勿体無い
今度は俺が探すのを手伝おう
任せておけ。お前の宝物にぴったりな星の子を見つけてやろう


グレイ・アイビー
悟郎(f19225)
アニキに誘われて星の子すくいに

夜空を星々が駆けていく様子はぼくの故郷じゃ考えられねぇことです
今住んでるところも街の明かりで星は殆ど隠れてしまいますから
同じ空でも世界によってこんなに違いやがるんですね
猟兵にならなければ、知ることのなかった世界です

海に落ちた星の子を追って海に浸かれば、煌めきを探して
アニキの目的の為にぼくも探すのを手伝いましょう

アニキが真剣に星の子をすくう様子に思わず口が綻びそうに
どの星の子でも喜んでくれるんじゃねぇですか?
会ったことはねぇですけど、話を聞けばそうなんじゃねぇかと思うんですよね

さて、ぼくも挑戦してみましょう
夏の思い出、ぼくの宝物、星の子をすくいに




 夜空を星の子たちが駆けていく。
 楽しそうに弾んで、駆けて、跳んで。
「すげぇです」
 賑やかな夜空に、グレイ・アイビー(寂しがりやの怪物・f24892)の口がぽかんと開いた。その姿が年相応に見え、薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)は彼を連れてきて良かったと心から思った。
「アニキはどんな星を贈るんですか?」
「そうだな……彼女に合うものがいいな」
 大切な恋人の為に綺麗なものを贈りたくて足を運んだ悟郎は、悩むように星空を見上げる。次から次へと空を駆けては海へとぽちゃんと落ちてくる星の子たちの中に、果たして彼女に似合う星はあるのだろうか。どれでもいいというわけではない。これだと思う光を吟味して探し出さねばならないのだ。
 あれでもない、これでもない。
 悟郎は真剣そのものの顔で、海を覗き込みながら歩いていく。
 その後ろを着いて歩くグレイは空を見上げて、のんびりと星の踊る様を楽しんでいた。グレイの故郷でも、今住んでいるところでも、こんな空は見られない。今住んでいるところなんて特に、だ。街の明かりが近いから、小さな星の輝きは隠れて殆ど視界に入らないのだ。
 空はどこまでも繋がっていて、同じ空が見えるのだと幼い頃は思っていたけれど、猟兵となってこうして他所の世界を知って、グレイの世界は広がっていく。世界が違えば空も違う。知らないことに出会う度にたくさん驚いて、色んな事をたくさん知ってきたつもりでいたけれど、まだまだ世界には知らないことがいっぱいだ。
 今日もこうして新しいことを教えてくれた悟郎には、いつも感謝の気持ちでいっぱいだ。
 空へ向けていた視線を海へと下ろし、グレイも悟郎のために星の子探しのお手伝い。
 星と海と、それからアニキと慕う悟郎の姿。
「ふっ」
「……ん、どうした?」
 ばちゃばちゃと海水を掻き分けて、自分に海水の飛沫がかかるのも構わず星の子探しに夢中になる真剣な悟郎の姿が、なんだか微笑ましくて。
 小さく溢れた笑みを隠さずに告げれば、悟郎は顔を上げてぱちりと瞬いた。
「……そんなに真剣だっただろうか?」
「どの星の子でも喜んでくれるんじゃねぇですか?」
「ああ、そうだな。彼女なら喜んでくれるはずだ」
 悟郎の恋人に会ったことはないが、悟郎の普段の口振りからそうでしょうとグレイが口にすれば、悟郎は真剣な顔でこっくりと頷くのだ。温かく、心の優しい人なのだ、と。
 悟郎が無事に星の子すくいを遂げるのを見届けたら、さてぼくもとグレイも自分のための星の子を探し始める。
「おや、グレイも星の子すくいに挑戦か?」
 金魚玉へ星灯りを収めた悟郎も「手伝おう」と海を覗き込む。
 せっかくのお祭りに参加しないのは勿体ない。
「アニキが手伝ってくれるのなら百人力ですね」
「任せておけ。お前の宝物にぴったりな星の子を見つけてやろう」
 笑みを浮かべ合い、星を探す。
 自分だけの、ぴったりの星の子を。
 一晩だけの輝きの、朝には消えてしまう星の子だけれど、この夏の思い出はきっと消えない宝物だ。
 こうして今ふたりで探すひと時も楽しくて、いつまでもこうしていたいような気もするけれど。
「アニキが朝までにお届けできるように、早めに見つけねぇとですね」
 冗談混じりの明るい声に、頼むぞと笑い声が続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


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橙樹・千織
【迎櫻館】
あらあら、凄い景色ですねぇ
星の雨と言ってもいいくらいでは?
ずーっと眺めていられそう…

みなさんの星の子はどんな色ですか?

自分の傍には薄桜と山吹が混じり合う星の子
ころりと転がれば二色がゆるりと泳ぎ、時折深紅が見え隠れ

あらあら、ふふふ
櫻宵さんもリルさんも星の子がそれぞれを見守ってくれているような色で…
よすがさんのは、あの時の花の色ですねぇ
千鶴さんと悠里さんのは…二人の瞳に桜が舞っているみたい
どれも綺麗で素敵な思い出の欠片になりますねぇ

ふふ、今日はどんなお話で夜更かししましょう?
並んだ星の子と星降る空にゆうるり尻尾を揺らして微笑んで
リルさんの歌にそっと添えるように音を紡ぎましょうか


誘名・櫻宵
【迎櫻館】
◇6人

ひゃー!圧巻ね!目映い星たちが踊るようだわ!
ヴィラからの光景は圧巻で
桜の双眸いっぱいにうつる星達に笑顔を咲かせて歓声をあげる

うふふ、私の星の子は朱いのよ!
この子をつかまえるの、ほんと〜に大変だったんだから!
そこらじゅう転げ回ったわ
でもみて、綺麗でしょう
朱と桜色に光るのよ
千織の星の子は――ふふ、花綻ぶようなあなたの彩ね

リルの星の子はあら、やさしい彩だこと
頑張って捕まえて偉いわね

ねぇ、よすがどんな子をつかまえたの?
あら!千鶴と悠里の星の子も綺麗ね!
思い入れがある色なのかしら?

まだ夜はこれからよ!
星の子をつつきながら、瞼が重くなるまでお話しましょ
きっと夢の中でも
皆の笑顔が咲き誇るのよ


宵鍔・千鶴
【迎櫻館】


空を駆け流るる星々に
思わずヴィラから身を乗り出して
星が降ってくる、って両手を広げて瞬きを眸に映す

俺が捕まえた星の子はね、
紫苑に薄ら桜色が混ざってる
夜空に翳すと溶けてくみたい
千織のは優しい花色だ、って覗いてみて
櫻宵は捕まえるの苦労したんだね…朱に桜色混じりで君らしく在るし、リルのは白黒、双子みたいで可愛いなあ
よすがと、悠里はどんな星の子?
並べて見たら、どれもちかちか目映くて取っておきの星の子達だ

漣とリルの歌を子守唄に
微睡みながら
みんなと語らいたいな
楽しくて、勿体無いから夜が明けなければいいね、って星の子へ囁いて


夜霞・よすが
【迎櫻館】

星降る海は声を出すのも忘れるほど綺麗で
ヴィラで星の子をいっせいに見せ合えば
外の景色にもにも負けないくらいキラキラしてる

俺はこの色!みっけるまで集中力すごい使った!
一ヶ月分くらい!と大げさに
紅紫色の中央には黄色が光る
秋に咲く桜の名前をもらった花の色
こっそり桜の輪に混ぜちゃおう

千織のあったかい色してる
櫻宵のは櫻宵色だ、合ってる?
リルの二色は仲良しに見えるな
千鶴のはなんか神秘的な色かも
悠里は静かななかに桜が隠れてて
やっぱ桜色、多いな
みんなの綺麗な色がキラキラ並ぶ

今日は夜更ししちゃおうぜ
そんでみんなで一緒に覚えておこうな
これなら寂しいけど寂しくないだろ?
あの話題にこの話題ってたくさん話そうな


リル・ルリ
【迎櫻館】


チカチカ光る星の子入の瓶を抱えて、櫻宵の歓声にひかれるように空を見る
わぁー!本当だ!宝石箱をひっくり返したよう
空の海はまるで、万華鏡のようだから
ヨル、見てみなよと声をかければ、子ペンギンは大喜びでぴょんぴょんしてる!

ふふ、僕は
白と黒の星の子だよ!
じゃーん、寄り添うような二つの星を皆に見せるんだ
櫻宵は翻弄されてかなり苦労してたよね
僕はヨルとの連携ですぐに捕まったんだから!
千織の星の子は星の花のようだね

千鶴と悠里、よすがの星の子も綺麗だね!
お気に入りの色なのかな?って皆のことをまたひとつ知れたよう
皆の星の子、並べてみようよ!

びら、に皆でお泊まりできるのも嬉しくて
自然と歌が溢れてしまう!


水標・悠里
【迎櫻館】◇
まるで夜空が落ちてきたよう
美しい光景にため息が溢れてしまう

金魚玉を受け取ったら
近くに居た子をそっと掬って中へ
ほんのりと桜色を帯びた青い子

掬い上げたら皆さんの所へ
千織さんは優しい花
櫻宵さんは不思議な色ですね、溶け合うような混ざり合うような
リルさんの二色は織女と牽牛のようですね
よすがさんと千鶴さんも、桜色が混じっている子が多いですね

とりどりの彼らを並べ、歌に耳を傾けながら夜更かし
蛍や蝉、朝顔
夏は儚い命が多いですね
一晩で消えてしまうけれど
瞬きの間に消える流星の命と思えば
万倍にも長い時間なのでしょう




 たくさんの星が踊る空の下。上空の星の子たちが見下ろしたら、地上にも星があるねと口にしそうな間隔で浜辺にぽつりぽつりと建ち、中から柔らかな灯りを放つ建物――ヴィラのひとつに新たに明かりが灯った。室内の明かりは点けずに、入り口だけ。室内の明かりを点けないのは、訪れた彼らの手に、其々の灯りがあるからだ。持ち込んだ『星の子』の灯りと、空で踊る星の灯り。ふたつを楽しむのに、人工の明かりを灯すのは野暮のようにも思えて。
「ひゃー! 圧巻ね! 目映い星たちが踊るようだわ!」
「わぁー! 本当だ! 宝石箱をひっくり返したようだね」
 大きな窓へと駆け寄った誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)が声を弾ませれば、彼を追いかけるように泳いで窓から外を覗いたリル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)も大きく口を開ける。桜と薄花桜の眸にはキラキラと輝く空いっぱいの星が映し出され、瞬きする度に万華鏡のように彩りを変えていた。
「ヨル、見てみなよ」
「あらあら、凄い景色ですねぇ」
 リルに声を掛けられた仔ペンギンのヨルがぴょんぴょんと跳ね、もっとよく見たいとアピールするのを、後ろからそっと片手で抱え上げた橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)がふたりと並ぶように窓辺に並ぶ。
「星が降ってくる」
 別の窓では宵鍔・千鶴(nyx・f00683)が身を乗り出して両手を広げ、その傍らでは夜霞・よすが(目眩・f24152)が声を出すのも、瞬きをするのも忘れるほどに星踊る空を見上げている。
 一歩だけ引いて空を見上げる水標・悠里(魂喰らいの鬼・f18274)もまた、まるで夜空が落ちてきたようだと、美しい光景にほうっと溜め息を零して見上げていた。
 このヴィラに集う面々は、櫻宵が営むショコラトリーに集う友人や客人、それから恋人(プラス式神)だ。彼が営むショコラトリーは、妓楼を改築した白い館で、サロンを併設しており、名を『迎櫻館』と云う。今日は其処に集う友人や客人とともに星をすくい、そうして揃ってヴィラへお泊りにやってきていたのだ。
 ヴィラでお披露目会をする約束をして、其々で星の子すくいを楽しんでから合流した。そのため、それぞれの手の金魚玉からの灯りは見えていても、感想を口にしないようにお口をむずむずしてここまできていたりする。
 ずっと星空も見ていたいけれど……もうそろそ自慢しあってもいいよねと目配せをしあったら、ジャーンと金魚玉を皆にお披露目だ。
「みなさんの星の子はどんな色ですか?」
「まずは私から。うふふ、私の星の子は朱いのよ!」
 櫻宵が朱い星の子が入った金魚玉を掲げてから、見て見てと皆によく見えるように、ヴィラの中央にあるテーブルへと金魚玉を置いた。
「この子をつかまえるの、ほんと~に大変だったんだから!」
 落ちてくるところを見つけて、あの子にしようと決めた櫻宵は落ちてくる場所へと向かった。ぽちゃんと落ちれば後はすくうだけ……なぁんて考えていたのに、甘かった。元気な星の子は海面で一度跳ねたかと思うと、ぴょん、とん、たっ! 水切り石のように海面を跳ねて跳ねて跳ねて、「ちょっと待って、どこいくのよ~!」と櫻宵は翻弄されて駆け回る羽目になったのだ。それに櫻宵は、水深が深いところへはいけない。
 けれども一目惚れした色はとても綺麗で、金魚玉でパチパチと線香花火のように火花を散らす姿を見れば満足気に口端が上がる。朱にほんのりと桜色が混ざったような暖かな色は、とても美しいでしょう?
「あらあら、ふふふ」
「ちょっと千織、本当に大変だったんだから!」
「不思議な色ですね、溶け合うような混ざり合うような」
「櫻宵色だ、合ってる?」
「ええ、そうよ」
「君らしい色だね」
「櫻宵は翻弄されてかなり苦労してたよね」
 思い出したように笑ったリルが、次は僕と手を挙げて。
「ふふ、僕は白い星の子だよ!」
 リルの真似してフリッパーを挙げるヨルに微笑んでから、リルは白い星の子が入った金魚玉を掲げて見せる。リルは本当はふたつほしかったけれど、すくうのはひとりひとつがルールだ。それから、色も。星の子が放つ光は、暗い夜空や昏い海でも見える明るい色しか無いとは聞いていたけれど、一応と黒い光を放つ星を探してみたがやっぱり見つからなかったから、一際目に留まった明るく真っ白な星を追いかけた。
「僕はね、ヨルとしっかり連携したからすぐだったよ」
 二手に分かれて落ちるところを予測し、元気に追いかけるのはヨルに任せ、あまり早くは泳げないリルはその中間を彷徨い、落ちた場所を確認してからゆっくりと近寄ってすくいあげた。
「あら、やさしい彩だこと」
「櫻宵さんもリルさんも星の子がそれぞれを見守ってくれているような色ですねぇ」
「本当だ、リルを見守っているみたいだ」
「リルみたいで可愛いなあ」
「ふふー、ヨルの顔の色でもあるんだよ」
「次は誰がいきます?」
 お披露目を終えたリルがテーブルの上に金魚玉を置きにいくと、悠里の声に千鶴が控えめに手を挙げた。
「俺が捕まえた星の子はね、」
 そう口にして掲げた金魚玉の中で火花を爆ぜさせる星の子は、紫苑に桜色が混ざったような、芝桜めいた薄紫色。
 空からではなく、海に沈んでいるのを見つけてそっとすくったから、特に苦労はしなかったよと口にすれば、櫻宵がハッとした顔をした。空ばかりを見上げていて、盲点だったわ、と。
「私も、近くに居た子をすくいましたよ」
 そう言って悠里が金魚玉を掲げて見せる。元気にパチパチと散る火花は、ほんのりと桜色を帯びたような青の、薄花桜色。
「あら。千鶴さんと悠里さんのは……二人の瞳に桜が舞っているみたい」
「神秘的で、桜が混ざったような色は温かみがあるね。……やっぱ桜色、多いな」
「ねぇ、よすがどんな子をつかまえたの?」
 首をゆるく傾げたよすがに、櫻宵があなたのも見せてと促せば、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりのよすがは金魚玉を掲げて見せる。
「俺はこの色! みっけるまで集中力すごい使った!」
「具体的には?」
「一ヶ月分くらい!」
「一ヶ月も!?」
 大げさにこっくりと頷いて。
「あら? よすがさんのは、あの時の花の色ですねぇ」
「そうなんだ。秋に咲く桜の名前をもらった花の色」
 紅紫色の線香花火を咲かせる星の子を千織へと掲げて見せたよすがは、テーブルの上に並ぶ千鶴と悠里の金魚玉の隣に自分の金魚玉を置く。こっそり桜繋がりの輪に、仲間入り。
「最後は私ですねぇ」
 千織がうふふと笑って掲げてみせる金魚玉には、薄桜と山吹が混ざったような、暖かな蜂蜜色にも似た色の星の子がパチパチと元気に光っている。
「千織のあったかい色してる」
「優しい花色だ」
 綺麗だねと零して、千鶴が覗き込んで微笑んだ。
「千織の星の子は星の花のようだね」
 星の子は電飾ではないため様々な色に変わることはないが、人工の光よりも柔らかな灯りで室内を照らしている。金魚玉へと手を近付ければ火花が小さくなるのを見詰めながら、千鶴が最後の金魚玉をテーブルへと置いた。
 中央のテーブルの上で、六人の、それぞれの星あかりが優しく灯る。
 ちかちか、ぱちぱち、優しく室内を照らし、六人の顔にも穏やかに照らした。
 焚き火を眺めているような心地にも近い、穏やかさが心に満ちる。
「どれも綺麗で素敵な思い出の欠片になりますねぇ」
「どれもちかちか目映くて取っておきの星の子達だね」
「でも明日の朝には消えちゃうんだっけ……」
「儚いですねぇ」
「蛍や蝉、朝顔。夏は儚い命が多いですね」
 少しだけ、しんみりと室内が静まり返る。
 けれど、櫻宵が小さく手を叩きながら、「さあ! 夜はまだこれからよ!」と声を掛ければ、
「そうだな、今日は夜更ししちゃおうぜ」
「ふふ、今日はどんなお話で夜更かししましょう?」
 あっという間にいつもの雰囲気。
 ヴィラの室内は、中央にテーブルがあり、其れを囲むように半円にベッドが並んでいる。「僕ここ!」「私はここにします」と早いもの勝ちでベッドに潜り込んだなら、準備万端! 中央のテーブルに置いた星の子たちを眺めながら、眠りにつくまでおしゃべりだ。
「リルはおこちゃまだから、きっと一番に寝てしまうわね」
「む! 僕は寝ないぞ!」
「ふふふ、そう言う櫻宵さんが一番最初かもですねぇ」
「ありえるな」
 くすくす笑みが広がる、楽しいひと時。
 星の子が一晩で儚く消えてしまうのは寂しいような気はするけれど、その分明るく楽しく話をしよう。そうすれば、きっと皆は覚えている。空に星が踊る夜、星の子たちを囲んで、眠りにつくまで語り合ったことを忘れはしない。例え朝に輝きが消えたとしても、星の子の輝きは胸の中に灯り続けることだろう。
(一晩で消えてしまうけれど、瞬きの間に消える流星の命と思えば万倍にも長い時間なのでしょう)
 実際にはひとの寿命の何倍も宙を旅しているのだろうけれど。
 楽しい声に耳を傾けて、星を想って悠里は穏やかに微笑む。
「これはね、皆と星の子と『びら』の歌!」
 皆で泊まれるのも、夜更ししてお話するのも、眠る間際まで皆と一緒にいれるのも、朝起きたら皆が居るのも、全部全部嬉しいから! とリルが歌いだせば、ゆうるり尻尾を揺らして微笑んだ千織が合わせるように音を紡ぎ出す。
 寄せては返す波の音に、リルと千織の子守唄。友人たちのにぎやかな声。
 遠く近くへ意識もゆうらり揺らしながら、千鶴はそっと金魚玉へと手を伸ばす。
 ――楽しくて勿体ないから、夜が明けなければいいね。
 囁いた言葉は、果たして確りと口にできていただろうか。金魚玉へと触れた指が硝子の表面をつるりと滑り、千鶴の意識とともに落ちていく。
 ひとりひとりと瞼が落ちて、気付いた仲間が指をひとつ立て。けれども声を落として、楽しいおしゃべりは続いていく。朝まで寝ないと意気込む者も居たけれど、穏やかな星あかりを見詰めていると心が落ち着いて、瞼はゆっくりと落ちていく。落ちた瞼の向こうでは、ちかちか光って走る星の子が先導して夢の扉を開いてくれる。
 そうして最後のひとりの瞼が落ちたのなら、ヴィラの中は六人の寝息と星の子たちの煌めきだけで満たされる。
 夢の中でも皆の笑顔が咲くように、朝を迎えるまでキラキラと輝いて。
 皆の夢路が幸せでありますようにと、優しく穏やかに見守っていた。
 早起きの誰かが起きる頃、星の子は水にしゅわりと溶けるように消えていく。
 最後チカッと、瞬いて。

 ――因みに、一番最初に眠ったのは良い子のヨルだったし、早起きしたのもヨルだった。
 チカッと瞬いた星の子をキュイッと鳴いて見送った。


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 ティンクル ティンクル
 たくさんあそんだ 星の子たち
 お日さまに見つかる前に お空にかえるよ
 だから夜空を見上げて みつけてね
 ティンクル ティンクル リトルスター
 星の子と君の エトワールエトワ

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月29日


挿絵イラスト