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迷宮災厄戦㉑〜レディ・ハンプティ、侵略蔵書自筆だってよ

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #レディ・ハンプティ

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「そうこれは非常に重要な事実です。僕も今回の戦争のために資料を丹念にチェックし、猟兵の一部が確認したという予兆をそれぞれ照らし合わせたことで発覚した、とても興味深い――グリモア猟兵としては小さな情報でも、文豪としては壮絶なる大ニュースです」
 長い前置きとさらにやたら長いタメの後、楚良・珠輝は普段ダウナーな瞳を全力で見開いて言い放った。
「今回の戦争に現れた猟書家のうち、『レディ・ハンプティ』の侵略蔵書のみが『彼女の自筆である』ことを確認しました……!」
 謎のガッツポーズ。スピーカーから響く謎のファンファーレ。
 迷宮災厄戦の攻略にはおそらく全く一切これっぽっちも関係なかった。
「あ、というわけで今回はレディ・ハンプティへの対応をお願いします。みなさんの奮戦のおかげで、彼女のいる戦場へと至る道が開かれましたので」
 再び半閉じになった目で珠輝は猟兵達に向き直ると、すっと1つの光景を映し出す。

「イメージ画像ですがレディ・ハンプティのいる『おとぎの国』の風景です。彼女が侵略しようとしているアルダワ魔法学園のイメージが強いですが、さらにそれを大都会化した感じですね。彼女は高い接近戦能力と、この世界を駆け巡る魔導列車内に蒸気機関で武装した災魔の幽霊を召喚する能力を使いこなします。接近戦であれ災魔の幽霊を操っての戦いであれ、魔導列車の線路や密集した建造物、インフラ的に配置されている蒸気機関などを地形として利用してくる可能性が高いでしょう」
 さらにレディ・ハンプティはオウガ・オリジンの戦闘力を奪った猟書家として強大な力を誇り、先制してユーベルコードを使用してくる。先手を打たれる前提での対応が必要になるだろう。

「ちなみに侵略蔵書のタイトルは『蒸気獣の悦び』だそうですね……僕としてはタイトルの官能性に反して血湧き肉躍る『スーパー怪人大全集(全687巻)』もびっくりの設定資料集だと思ってるんですけど。楽しいですよね、設定考えるのって」
 最後にもう一言呟きつつ細やかにモニターの下部にテロップで『※個人の感想です』と映し出してから。
「まぁ僕の感想はともかく、この戦争の一角を支配する強力な敵であることは確実です。レディ・ハンプティの討伐もですが、皆さんが無事に戻ってくることも依頼内容として要請します。よろしくお願いしますね」
 割と珍しく真面目な様子で珠輝は猟兵達に頭を下げたのだった。


炉端侠庵
 こんにちは、炉端侠庵です。
 暑い時に蒸気とか暑いですが!
 アルダワ魔法学園とアリスラビリンスの平和を守るためよろしくお願いします!

 というわけでプレイングボーナス条件は『敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する』です。
 例によって先制攻撃してくる強敵です。
 なお胸の下に口がありますが、水着程度の面積は常に牙とか口とかで隠れているのでセクシーな要素は少なめかと思われます。あと割れて直らなかったりもしないようです。

 それでは対猟書家戦が一角、よろしくお願いします!
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第1章 ボス戦 『猟書家『レディ・ハンプティ』』

POW   :    乳房の下の口で喰らう
【乳房の下の口での噛みつきと丸呑み】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    アンティーカ・フォーマル
【肩の蒸気機関から吹き出す蒸気を纏う】事で【武装楽団形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    侵略蔵書「蒸気獣の悦び」
【黄金色の蒸気機関】で武装した【災魔】の幽霊をレベル×5体乗せた【魔導列車】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アリス・セカンドカラー
お任せプレ。汝が為したいように為すがよい。

列車の脱線事故にはお気をつけくださいませ☆
ギャグ補正結界術にカートゥーンキャラ(式神使い/集団戦術)達の悪戯(神罰)にハンプティの運を略奪。これで魔導列車が事故る確率は高くなる。失敗したらギャグキャラ担当として私が轢かれるけど。
成功したら、事故なら炎上よね、と黄金色の蒸気機関と魔導列車をダークネスフレアに変換するわ。
邪魔者が消えたとこでハンプティをロリ化(化術)ナーフでおっぱい&下の口と力を略奪し、ダークネスフレアから変換した情熱の炎でじっくりと料理して気が狂いそうな程の快楽で蹂躙し、快楽エナジーを捕食するいつものアレね♡


空葉・千種
アドリブ歓迎

そっかー…自分で本一冊書き上げたんだねー…
頑張ったねー…
…もうちょっと平和な本を書けなかったのかなぁ…

丸太を振り回しながら敵に突貫
歯に丸太を食い込ませて噛みつきによる攻撃をガード!
そしたら別の丸太で相手の口の中をかき回すよ!
あ、なるほど、舌で引き込んで丸呑みに
ちょ、ちょっと待って、ひゃ、ひゃぁぁぁ…!

…【指定UC】発動!
相手の中で20mに巨大化して中から相手を蹂躙するよ!

はぁ…はぁ…呑み込む相手が悪かったね…
自分で言うのも何だけど、私は丸呑みされるのなれてるから…!
(装備6やUC『鞄から取り出したミミックさん』参照)
はぁ…体液でぬるぬるに…また髪の毛洗い直さなきゃ…



 歯車機構を組み込んだ建造物が密集し、空突く摩天楼が蒸気を吹き上げる。高速の魔導蒸気列車が駆け回り――スチームパンクの大都会を模した世界で。
 空葉・千種はどこか曖昧な笑みを浮かべた。
「そっかー……自分で本一冊書き上げたんだねー……頑張ったねー……」
 おそらくかの侵略蔵書『蒸気獣の悦び』は一点物、内容は無論その装丁も自ら腕を奮ったか、もしくは信頼できるデザイナーや職人に任せたか。レディ・ハンプティの自筆の書物、そしてアルダワ魔法学園への強い拘りが感じられる。
 そっと千種は遠い目をした。
「……もうちょっと平和な本を書けなかったのかなぁ……」
 ある朝目を覚ますとマッドサイエンティストに強化人間にされていた、そんな経歴を持つ千種としてはこういった『物騒な』技術であったり創作であったりにはどうにも遠い目をしてしまうのである。
 ちなみにマッドサイエンティストは同居の叔母であった。親戚だろうが家族だろうが思い立ったら改造しちゃう、だから『マッド』がつくのである。
 アリスラビリンスとアルダワ魔法学園の平和を守るために頑張ろう、と改めて千種は心に誓ったのであった。

「侵略蔵書――世界を侵略しようという本が平和であるべきなんて、面白いことを考えるお嬢さんね?」
 蝶番を背表紙にした金属装丁の本を軽やかに片手で開いたまま、喪服が如き黒いベールと対象的に白いデコルテに剥き出しの牙、そしてその物騒な口とは対象的な小さく艷やかな唇でレディ・ハンプティは皮肉げに微笑んだ。
(侵略しないでほしいんだけどなぁ!)
 ツッコミを入れたい気持ちの代わりに千種はぶんと丸太を振り回した。女性としては高い172センチの身長に対してもあまりに巨大、しかし千種自身にものしかかる得物の重さはかえって足元を安定させていた。
 使い慣れたサイズ感なのもある、本来なら2人や3人がかりで運ぶような丸太だが、彼女にとっては『投げてよし叩いてよし』と言い切れる馴染んだ武器だ。ちなみに建材や薪にも使える良質な木材でもある。
 そしてよく転ぶ人間は!
 意外と!
 重いものやバランスの悪いものを持った時に「気をつけないと」という意識が働きかえって転びにくくなるのだ!
「ええいっ!」
 がっ、と開いた歯列が閉じる直前に丸太を叩き込み!
 さらにその牙が食い込んだ隙に別の丸太(!)を差し込んで!
 胸の下のお口をぐりっぐりにかき回す!

「……これ、物凄くヤバい絵面じゃない?」
 こちら線路沿いにして現在戦闘中の千種とレディ・ハンプティからほど近く、5階建てくらいの屋根の上からお届けしております。
 リポーターはアリス・セカンドカラー。
「あんなに太いものが2本も口の中にだなんて……ね♡」
 本当はまだ結界の仕込み中なのだが、正直このツッコミのためだけに一度出てきてもらったと言っても過言ではない。
「……で、準備に戻ってOK?」
 あ、はいOKです。
 ありがとうございましたー。

 というわけでカメラ戻します。
「あ、なるほど、舌で引き込んで丸呑みに……ちょ、ちょっと待って!」
 というわけで案外器用な舌を持った胸下のお口に引っ張り込まれる千種。こうなってしまえば丸太からも引き剥がされるしかない、空葉・千種大ピンチ!
「ひゃ、ひゃぁぁぁ……!」
 ごっくん☆
「まぁ……呆気なかったこと」
 そう、人間1人呑み込んだばかりとはう思えぬ優雅さで、レディ・ハンプティが『蒸気獣の悦び』を扇代わりに顔の方の口を覆った次の瞬間。
「巨大化装置発動!」 
 くぐもった掛け声がその腹中から聞こえた次の瞬間、レディ・ハンプティの肉体が文字通り弾けた。
 彼女が『いた』跡に立っているのは、20メートルという巨体に変化した千種。『叔母さんに(無理矢理)取り付けられた巨大化装置』の出力の中でも最大、すなわち巨大化の際のエネルギーも最高レベルである。
「はぁ……はぁ……呑み込む相手が悪かったね……」
 ばさりとその身長に見合う長さの黒髪を振るうように首を振り、呼吸を整えつつ千種が言い放つ。
「自分で言うのも何だけど、私は丸呑みされるの慣れてるから……!」
 そう、千種の鞄にはアルダワ魔法学園から付いてきて生体改造による強化を施された野生生物捕獲用ミミックが入っているのだが!
 なぜか制御がとてつもなく甘いため!
 千種も普通によく喰われているのだ!
「まさかそんなマニアックな耐性を持つなんて……猟兵を甘く見ていたわ」
「自分でマニアックとか言うのやめよう!?」
 身体まるごと弾け飛んだとはいえどそこは生物としての構造を無視するオブリビオン、肉体を再構築しつつ呟いたレディ・ハンプティの言葉に思わず全力でツッコミを入れる千種。
 いやまぁ『胸の下の口で』『丸呑み』とかどう考えてもマニアックではあるが。
 しかしそんな風に言われると自分がマニアック扱いされた気がして、認めると何か大事なものを失ってしまう気がする千種である。怪力と巨大化メインで戦う強化人間であると同時に、千種は18歳の乙女でもあるのだ。
「けれど、その手があるならこちらだって……」
 ぱらり、ぱらりと左手の『蒸気獣の悦び』が凄まじいスピードで捲られていく。すっと右手を上げれば汽笛、続いて地面を揺らすかのような勢いで響く列車の走行音――けれど。
 その瞬間。
 全ての風景がカートゥーン調と化した。
「列車の脱線事故にはお気をつけくださいませ☆」
 響き渡る少女の声でのアナウンス。
 顎が落ちたかのような口の開きで唖然とするレディ・ハンプティ。
 その間に後ろをそこはかとなくアリスに似た人形式神達が通っていく。手ぶらで歩いていた式神達はレディ・ハンプティの後ろから出てくる時には、両手に『Lady. Humpty's Lack』と書いた色とりどりのぼーるを持っていた。それをニコニコしながらアリスが籠に回収していく。
 結界範囲全てをカートゥーン絵柄のギャグ空間にすることでレディ・ハンプティの運を略奪、そして魔導列車の操作失敗率をガン上げしつつ結界自体へのアリスの鑑賞力によって魔導列車を盛大に事故らせるという結界術と敵の地形を組み合わせた大作戦――盛大な爆発と共に大成功。
 ぽてっとレディ・ハンプティの手から落ちる侵略蔵書。コマ割りで悪戯を成功させた小動物のような顔でにしししと笑うアリス・セカンドカラー。
「事故といえば炎上よね☆」
 そしてダメ押しとばかりに『全てを焼き尽くす魔界の炎』発動、蒸気機関と魔導列車の無機物部分を一気にダークネスフレアへと変換する。

 最初からダークネスフレアの方使っておけば良かったんじゃないか?
 考えるんじゃない感じるんだ。
 ほら災魔の幽霊とか搭載されてたから先に対処するために不可欠な事故だった。
 そういうことにするんだ。

 いつしかカートゥーン風作画から実写へと戻っている風景の中、ぎりりと歯を食いしばり立ち上がろうとするレディ・ハンプティの後ろにすっと現れる小さな人影。
「つ・か・ま・え・た♡」
「なっ、貴様は……っ、な、何をするの!」
 ダークネスフレアから情熱の炎へと変化した漆黒の火がねっとりとレディ・ハンプティへと絡みつく。悪魔ならぬ悪霊らしい邪気に満ちた笑顔でアリスは微笑んだ。
「気が狂う程の快楽を教えてあげる……♡」
 そして快楽エナジーを捕食☆
 要するにいつものアリスさんの流れである。
 ――その流れをそうっと結界範囲から逃れて見守っていた千種は、アリス・セカンドカラーからも色々とマッドなタイプの雰囲気を感じてどうしようかと一瞬だけ考えた後。
「でもちゃんと少しでも攻撃しておいた方がいいよね。うん」
 結局胸の下のお口に丸太をぶちこみ蹂躙に加わることにしたのだった。
「はぁ、体液でもうぬるぬる……また髪の毛洗い直さなきゃ……」
 片手で丸太でがしがし口の中を殴りつつ、もう片手で髪の毛を一房つまんで溜息をついたのは、もしかしたら千種の精一杯の現実逃避だったのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
自分で書いた侵略蔵書ねぇ。いつか読み返したら、枕に頭を埋めてゴロゴロする類なんじゃないかしら? ねえ、アヤメもそう思わない?

胸の下半分が大きな口になってるとか、ここにも胸の格差社会が!
まずは噛みつかれないようにしないと。薙刀を振るっての「衝撃波」で「なぎ払い」、接近を阻止する。アヤメは分身術で攪乱してちょうだい。「式神使い」、あなたも使っていいわ。

距離を維持出来るなら、決して難しい敵じゃない。
「全力魔法」「範囲攻撃」雷の「属性攻撃」「神罰」の九天応元雷声普化天尊玉秘宝経で攻撃を仕掛ける。蒸気で曇っていようと、空があるならばそこはあたしの戦場よ。
ダメージが通るまで、何度でも神鳴を落としてあげる。


朱酉・逢真
機関車電車ってなぁ不便だなァ。決められたレールの上しか走れねぇンだから。そォいうとこ、カラクリってな融通が効かねえや。規律法則四角四面は俺の宿敵でねェ。ダイヤを乱してやろうかい。
列車がこっちに突っ込んでくるなら、獅子を呼んで俺の前に座らそう。こいつは攻撃できないかわり、どんな攻撃も食らわない。つまりどうなるかってぇと、つっこんだ列車が衝突脱線起こすのさ。アラ大変。乗客巻き込み大事故だ。
あとは眷属ども《虫・鳥・獣》を放って病毒で場を満たそう。神の毒だ。霊も《過去》も逃げられんさ。冒し涜され死に絶えるがいい。観客がわりの獅子が吠えれば、毒疫はさらに濃くなるさ。



「胸の下半分が大きな口になってるとか……」
 村崎・ゆかりは思わずうつむいた。
 これは敗北でも降伏でもない。
 単なる現状の確認である。
 ――視線を落としたそこにはすらりとした16歳の健康的な身体がある。薙刀で鍛えた細身ながらもバランス良く筋肉のついた。すっきりと引き締まった。スレンダーな。
 顔を上げる。レディ・ハンプティはまさに卵のような白い艶肌の豊かな胸を剥き出しにし、そしてその下部にはカチカチと歯を鳴らす巨大な口を備えていた。
 なおゆかりの斜め後ろにすっと立っている式神にして恋人のアヤメは、目の前の猟書家ほどではないがしっかりと存在感持つ美乳である。
「ここにも胸の格差社会が……!」
 ゆかりは決意した。
 必ずやかの邪悪な猟書家は斃さねばならぬと誓いを立てた。
 別に胸の恨みではない、この世界とまた侵略されようとする世界の平和を守るため、オブリビオンによって全てを壊されないために他ならない。とはいえその生まれ持った肉体の形状という、自らの意志ではどうにもならぬことによって左右される――『胸囲の格差社会』についても、またゆかりは人一倍敏感であった。
 それに付随する感情の種類はともかく。
 敏感なのは事実。
 つい目が行ってしまうし我が身と引き比べてしまう。そういうものなのである。
「ところで自分で書いた侵略蔵書ねぇ。いつか読み返したら、枕に頭を埋めてゴロゴロする類なんじゃないかしら?」
 とりあえず相手との間合いを維持すべく衝撃波を乗せて薙刀を振るい、同時にその反作用で後ろへと飛びすざる。アヤメがさっと分身を作ってその距離を保つようフォローする。
「ねえ、アヤメもそう思わない?」
「あら、いかに時間が経っても不朽の名作というものはあるでしょう?」
 アヤメにかけた言葉に猟書家がふっと顔の方の唇を艷やかに上げて笑ったことで、ゆかりは若干苛立ったように眉を寄せた。
「書き上げた直後の本人からしたら何でも名作、って思うこともありそうよね、アヤメ」
 あえて愛しい式神兼恋人の名を強調して呼べば、目の前を駆ける『アヤメのうちの1人』が頷いた。それが本物のアヤメなのかはわからないが、アヤメ自身の意志には違いないのでゆかりは満足げに微笑む。
 そう、全て異なる動きをする複数のアヤメ、1人を除けば全てが分身だ。今はゆかりからアヤメに『式神使い』の技能を付与したことで、式神であるアヤメ自身がさらに己の分身を式神として使役する権限を得ている。単純にアヤメの動きを写し追尾するだけでなく、分身それぞれが異なる行動で攪乱することも可能だ。
 例えば――跳躍一脚、距離を詰めようとしたレディ・ハンプティに実体を帯びた分身をぶつけることで勢いを相殺し、さらに時間差で苦無を投げつけることでその場に足止め。ゆかりが下がったのを確認して分身を補充してまた猟書家の視界を塞ぐ。

 ――汽笛が聞こえる。
 同時に恐ろしい程の勢いで、線路を車輪を転がる重い音が大きく速くなってくる。
 その線路を眺めながら、黒髪をゆらり揺らした青年が嗤った。
「機関車電車ってなぁ不便だなァ。決められたレールの上しか走れねぇンだから。そォいうとこ、カラクリってな融通が効かねえや」
 例えば今のアヤメの分身のように、当人と違う行動を臨機応変にできるのならば汎用性は極めて上がる。
 鉄道というのはその逆だ。速度や安定と引き換えに、決められた道だけを同じように走るように作られている。
「規則法律四角四面は俺の宿敵でねェ……ダイヤを乱してやろうかい」
 赤い瞳をすうっと細め、朱酉・逢真はぽんぽんとその手を叩く。すぅっと空から現れた獅子は――まるで狛獅子のようにすっとその場に腰を下ろした。
 軽く線路を足先でとんとんと蹴った逢真の目の前、その線路の真上を塞いで。
 列車の音が大きくなる。踏切なんて安全装置は存在しない、召喚しぶつけることそのものが目的だ。
 けれど。
 線路に石を置いてはいけない、余計なものを紛らせてはいけない、そう鉄道のある世界であれば必ず言われるであろう規範。
 それは、危険であるからだ。
 超高速の電車にあっては、ほんの僅かな不純物すらとてつもなく危険な障害となるからだ。
 まして『不殺の獅子』、己は攻撃をしない代わりにどんな攻撃も通さないそれが石のように座り込んでいたとしたら――。

「私の魔導列車が……!」
「アラ大変。乗客巻き込み衝突脱線大事故だ」
 壮絶な衝突音にレディ・ハンプティの叫び、からかうような逢真の声、それにさらに一声の咒が響く。
「九天応元雷声普化天尊!」
 ただ、神の御名を呼び上げ。
「疾っ!」
 その方向性を定め、落とす。
 道教において最高位の雷神であり、その権能ゆえに雷帝の名をも持つ神格。その力は雷のみならず、人間の生死、吉凶、禍福――すなわち『運命』と言えるもの全てを司るとされる。その具現化としての雷であり、同時にその権能は雷の持つ猛烈なエネルギーの象徴だ。
 ただ空から落ちる。
 それのみで、地形すらも巻き込む単純にして強烈な破壊の力。当たれば命を奪うであろう、けれど凄まじい強運があれば傷すら追わずに生き延びる可能性もある、それが落雷。まさに人間の命運を握る神の力を呼び借りる術。それが『九天応元雷声普化天尊玉秘宝経』だ。
「九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
 雷帝はただ、呼びかけに応えてその力を地上に落とすのみ。道教の神々は清浄を好み、不浄を嫌う。ゆえにこそオブリビオンという存在を狩るために、最強の雷神は応えるのだ。

 命運を刈り取るという面では同じ、けれど逢真の力はもっと広く無作為に働く。人間それぞれの生死よりは、全体の『帳尻合わせ』がその役目。
 しかし逢真――その正体たる疫毒の神・凶星は、雷神と同じ側面を持っている。『祟り神』、害為す神。
 そしてやはり、オブリビオンと敵対する理由を持っていた。『減らす側』の調整役である逢真にしてみれば、勝手に減らされたらかえって仕事が増えるのだ。
 ゆえに幽霊とはいえ災魔を見逃す理由は一切ない、眷属の虫、鳥、獣を次々に放ち、その場を病毒で埋め尽くす。凶星が眷属たればその動物達は疫病の仲介に長じた者達。刺して羽ばたいて噛み付いて、そのたびに病が広がっていく。
「神の毒だ、霊も『過去』も逃げられんさ、冒し涜され死に絶えるがいい」
 傷一つないまま不殺の獅子が吼える。その一声、一吠えのたびに病毒の濃度は増していく――。
 レディ・ハンプティの動きが鈍るのを、ゆかりが見逃すはずもない。アヤメの攪乱で一瞬、その動きと咒言のタイミングをずらす。
「応え給え九天応元雷声普化天尊!」
 空を覆う蒸気機関の煙を引き裂く雷霆が、完全に猟書家の背負う蒸気機関から爪先に至るまで、爆音じみた『神鳴り』と共に貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェルト・ユメノアール
綺麗なお姉さん、悪いけどここを通してもらうよ!

相手は強敵、普通に接近戦をしたんじゃ対応される……なら、三次元戦闘しかないね!
ワイヤーフックを建造物に引っ掛けて大ジャンプ!
『パフォーマンス』で披露する軽業みたいに建物から建物に飛び移ってレディ・ハンプティの攻撃を回避するよ!

でも、お楽しみはこれからだ!
ボクは手札からスペシャルゲストをご招待!カモン!【SPアクロバット】!
さらに、おいで『ハートロッド』!
白鳩姿にしたハートロッドとアクロバットを『動物使い』で操り、ダブルダイレクトアタック!
そして、その隙を突いて一気にレディ・ハンプティに接近
『トリックスターでカウンター』の一撃をお見舞いするよ!


ハルア・ガーラント
【焼鳥】2名
と、とんでもない部分がお口に!

【WIZ】
この世界の魔導列車を利用した攻撃というのなら、それを逆手に取ります
線路上に位置しないよう注意しながら速度を付け[空中浮遊]、時に滑空し鳥っぽい[逃げ足]披露

一度に多数を相手にしないのは大事なこと
逃げ回る内に幽霊たちはお互い離れ集団が小分けされていくはず
振り返り[浄化の祈りを込めた]本来防御に使うオーラを[衝撃波]として放ち[吹き飛ばし]ます
視界に魔導列車を捉えたら分岐器を[念動力]で動かし破壊、幽霊達を巻き込み脱線させましょう

その後は即UC発動
こちらも強くなりますよ!
相馬や味方の攻撃に続けて[銀曜銃から誘導弾で援護射撃]、フォローに徹します


鬼桐・相馬
【焼鳥】
敵の胸ばかり見るハルアを小突く
見過ぎだろ

【POW】
開幕、敵は一気に距離を詰めてくるだろう
[結界術]で己からやや離れた外周に障壁を張り敵を迎え撃つ

狙うのは完全な[武器受け]だ
敵の一挙手一投足、これまでの[決闘を想定した戦闘知識、自らの視力と野性の勘]を使い障壁を突破した瞬間を補足
[獄卒の金砕棒]を顕現させ素早く[切り込み]、敵の口に[怪力]でつっかえ棒のように押し込む
閉まらない口へ[冥府の槍によるカウンター]を叩きこもう

その後は魔導列車に注意しつつ槍で攻撃
胸の口は槍の炎で[継続ダメージ]を与え続ける
ハルアの援護射撃の直後に[ダッシュ]で接近しUC発動、その口を[部位破壊、焼却]する



 ハルア・ガーラントは目が離せない。
 これまで異形めいたオブリビオンとは数多く戦ってきた。人型でなかったことは珍しくなく、不定形であったり、どんな生物とも異なっていたり、また生き物と物体を掛け合わせたような存在だったこともある。
 しかし。
 今回の敵は、それらとはある意味別格のインパクトでハルアの視線を釘付けにしてしまう。
「と、とんでもない部分がお口に!」
 そう、お胸の下の部分。
『水着でも絶対隠すよねって辺り』が、がっぱりと大きな口になっている――実は案外スタイルのいいハルアは、思わず我が身に置き換えた想像を慌てて頭から追い払おうとする。夢に出てきそう。怖い。
「見すぎだろ」
 その側頭部、ふわりと咲いた花とは反対側をこつんと鬼桐・相馬は軽く小突いた。
「ひゃん! な、何するんですかっ」
 つい言い返しながらもハルアは正直ほっとしていた。意識も逸れたし目も逸れたおかげで脳裏にこびりつきかけていた絵面がぽんと離れていったのを感じる。
 ちなみに相馬の方は普段通りの鉄面皮、おそらく特に好印象も悪印象もなく『敵』――あるいは『今日の相手』くらいにしか認識してない顔だった。
 要はいつも通りである。
「綺麗なお姉さん、悪いけどここを通してもらうよ!」
 そこにフェルト・ユメノアールがさらに畳み掛けるようにびしりと指をさす。もう片手にはすぐにでも投擲できるよう準備したワイヤーフック。
「綺麗……」
 確かに嫣然と微笑むその口元だけでも感じさせる美貌、そして抜群のスタイル。
 綺麗と形容されるにふさわしい容姿ではあるのだろう。でも口が。とんでもないところに口が。
 再び自分の想像にうなされかけるハルアをもう一度軽く小突いてから、相馬はすっと前に出ると薄めの障壁結界を張り巡らせて、地を蹴り迫るレディ・ハンプティを迎え撃った。

 蒸気機関の煙を纏ってその身1つで武装楽団としての形態を取ったレディ・ハンプティの動きは、もはや残像が残らんばかりとなっていた。相馬は己の全ての戦闘知識を駆使しつつ目を、五感を、そして勘を総動員し、自分の張った衝撃を破られる瞬間を捕捉――その時には『獄卒の金砕棒』を顕現させていた。レディ・ハンプティがくわっと胸の下の口を開き、閉ざしながら飛びかかろうとしたその瞬間。
 やや斜め下から突き込むように、金砕棒の先端を上の歯列に向けて叩きつける。勢いよく持ち上げられた下顎から生えた牙は棘に食い止められ、鈍い衝撃音とエナメル質の削れる音が響いた。閉じられなくなった口が再び大きく開いて金砕棒から逃れるより先に、紺青の炎を宿した『冥府の槍』がさらにその口内を貫く。
 痛みに怯んだのはほんの一瞬だった。バックステップ、そのまま狙い違わず半回転して侵略蔵書の背表紙をフェルトに叩きつけようとする。その一撃を避けてもさらに一回転しつつ接近して追撃、それが成功するであろう距離と速度。
 覆したのは一本のワイヤーだった。高い位置の窓枠に引っ掛けたフックに向かって、サーカスの曲芸が如き軽やかさで極彩色の衣装とピンクの髪が跳ねる、それを追って地を蹴った単騎にて武装楽団を構成する猟書家を、空中でフックを掛け変えるという荒業で鋭角に方向転換していなす。
「相手は強敵、普通に接近戦をしたんじゃ対応される……なら、三次元戦闘しかないね!」
 勢いのままに高く舞い上がったところでワイヤーを勢いよく引き再び動きを変え、くるりと宙返りして平らな屋根の上に飛び乗る。すっとその手の中に現れたのは一組のカードデッキ――トランプやタロットではなく、いわゆるトレーディングカードゲームのワンセット。
「でも、お楽しみはこれからだ!」
 すっと迷いのない仕草で手を置くと、引き出すは1枚のカード。
「ボクは手札からスペシャルゲストをご招待! カモン! 『SPアクロバット』!」
 ぱっと輝いたその札をソリッドディスクに装填、次の瞬間には輝く星の模様を纏った紫色のコウモリが飛び出した。その時には再びどこからともなく取り出したステッキをフェルトの指が器用にくるりと回す。
「さらに――おいで『ハートロッド』!」
 宙に放り投げた小杖は瞬く間に真っ白な鳩へと変わる。白鳩のハートロッドと紫コウモリのアクロバットは示し合わせたかのようにすっと左右に分かれると、くるくると互いに入れ違うように宙を舞いながらレディ・ハンプティへと素早く近づいていく。
 鳴り響く汽笛。召喚された魔導列車とその煙突から吐き出す蒸気が、レディ・ハンプティを守るように線路を駆け割り込もうとする。けれどカッ、とその列車が突如として車体を揺らがせた。2方向に分かれた線路のうち、レディ・ハンプティを挟んで鳩とコウモリのクロスアタックとは反対側に外れた列車はさらに線路を跳ねると一気に横転、分かれ道にある分岐器は完全にひしゃげ壊されて、それが脱線を呼んだとわかる。
「ふふふ、ここまで幽霊たちに追いかけ回されながらチャンスを狙ってた甲斐がありました!」
 列車の上を滑空しつつ満足げなハルアがそのまま真下に浄化の祈りを籠めたオーラを衝撃波として叩きつける。既に列車から降りて小集団に分かれていた幽霊たちも、おおかた対処済みだった。
 本来は防御に使う浄化を籠めたオーラだが、オブリビオンの幽霊ともあれば溜め込む穢れも相当量、防壁を膨らませる要領で衝撃波にしてぶつけてやれば最低でも吹き飛び、さらにかなりの数が消し飛ばされて骸の海へと還る。
「こちらも強くなりますよ! わたしがついています、どうか負けないで……!」
 衝撃波との相殺で滑空の勢いを緩めホバリング状態になると、すぐさまハルアは声を張った。ユーベルコード『ブレスドソング』、天使言語にて紡がれる歌は言葉として理解はできずとも、籠められた気持ち、応援し背を押す意志は通じる。相馬が増幅された力を生かして即座に地を蹴りながら、槍に絡みつきレディ・ハンプティの胸下の口を燃やし続ける炎を一際大きく色濃く広げ――すっ、とそれを下げた瞬間その左右の目へとハートロッドとアクロバットが見事なダブルダイレクトアタックを決めた。
 パァン、と乾いた音はハルアの銀曜銃、光の精霊がさらに鳩とコウモリの後を負って輝きを顔に叩きつける。
「そんなもので目を奪う? 甘いこと……っ!?」
 永続的に視覚を奪うことはできずとも、一瞬でも『見えない』ことは命取りになる。
 そう、後ろから。
 ハートロッドとアクロバットの攻撃が目を奪ったその後ろの屋根から、フェルトはワイヤーロープを掴んで飛び降り落下エネルギーと遠心力を存分につけて、くるりと反り返る尖った靴の先端で思い切り後頭部を蹴り飛ばしたのだ。
 同時に相馬が勢いを殺さぬまま懐へと飛び込むと、組織ごと、口という臓器ごと破壊せんとばかりに破壊衝動から昇華した純粋な腕力で冥府の槍を叩きつけ、おそらくあるだろう喉の奥の奥まで貫く。そのまま抜かずに柄を掴むと、豪とその悪意を吸い取って炎へと変えた冥府の槍が青黒く燃え上がった。さらに逃げようとした身体を、蹴った瞬間そのままの姿勢でフェルトが逃がさずむしろ押し込むように前に出す。
 空中からの天使の歌――ハルアの歌声が響き続ける中、もはや動く災魔の幽霊はなく。
 燃やされ尽くす前に猟書家レディ・ハンプティも、この戦場ではその姿を保てずに消えていった。

 ひらりと主の元まで飛んでカードとロッドに戻った召喚獣を、にっこり笑ってフェルトが受け止める。
「これにて今日のサーカスは閉幕、ありがとうございました!」
 ふわりと歌を終えたハルアが相馬の隣に降りてくる。槍を覆う炎は今はちろちろと小さく燃えるばかり、視線を交わして安堵したように笑うハルアに、相馬は幾分目元を和らげて頷いた。

 アリスラビリンス『災厄迷宮戦』。
 猟兵達は猟書家達、そしてオウガ・オリジンとの戦場のどちらにも、深く食い込みつつあった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月17日


挿絵イラスト