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迷宮災厄戦⑲〜四の手、英雄の世界を狙うもの

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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●グリモアベース:予知者、ムルヘルベル・アーキロギア
「猟書家さー・ジャバウォックを滅殺してほしい」
 少年めいた賢者――グリモア猟兵、ムルヘルベルは猟兵たちに言った。
「このアリスラビリンスを破滅から救うためには、この戦いは"必要ない戦い"だ。
 むしろオウガ・オリジンが強大になることを思えば、不要とすらいっていいだろう」
 が、とムルヘルベルは言葉を切る。
「これから先に起こるであろう他世界の混乱を少しでも抑えるためには、
 猟書家を叩く価値は大いにある。特に、かの老紳士はその中でも"最強"の存在。
 いま、直接叩くことができるタイミングを逃せば、会敵は非常に難しくなるであろう」
 ゆえに、いまここで、猟書家を叩いてほしい。
 ムルヘルベルはそう語った上で、希望者はこの場に残るよう言った。
「さきほども言ったとおり、戦争に勝利するためには不要な戦いであるゆえな。
 ワガハイは強要出来ぬし、相手はすこぶる強い。必ず先制してこちらを攻撃してくる。
 その先制攻撃をいかにかいくぐり、一撃をもたらすか。オヌシらの機転が試されるぞ」
 易くない強敵。戦争を勝ち抜くためには不要な戦い。"だからこそ"価値がある。
 ……その話を聞いた上でその場に残った猟兵たちを見渡し、ムルヘルベルは言った。
「オヌシらの勇気に感謝する。では、転移を開始しよう。健闘と生還を祈るぞ」
 少年めいた賢者は、表情を引き締めてグリモアを浮かび上がらせた。
 それが、激闘に続く道標となった――。


唐揚げ
 バナナです。こちらは戦争シナリオとなっています。やや難です。
 敵の先制攻撃にどう対処するか、ぜひ考えてみてください。

 なお、本シナリオは08/14 23:59前後に締切予定です。
 戦力推移次第では、完結後またシナリオを出すこともある……かも?
 てな具合で、ご参加お待ちしております!
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

清川・シャル
でもね、目の前に強敵が居たら逃せませんよ
1発ちょっと喰らっていって下さいな
まずはオーラ防御と全力魔法で多重障壁を展開、激痛耐性で耐えてみます
障壁で受けてばかりもあれなので見切りと第六感と武器受けも使いましょう
避けつつぐーちゃん零のトリガーを引きます
念動力で確実に当てていきます
弾撃ちきったらそーちゃんを片手にUC起動です、呪詛を帯びたなぎ払い攻撃
櫻鬼の仕込み刃で傷口をえぐる攻撃も加えて連撃を行います
休ませませんよ〜羅刹な上に現役JCはタフですからね、子供の体力なめんなよです!



●ガールズパワー・フルバースト
『AAAARGH!!』
「ひゃああ!!」
 見えざる怪物・スナークの苛烈な攻撃が、清川・シャルを襲う。
 スナークの恐ろしさは、ただ『不可視である』というだけではない。
 架空の怪物であるがゆえに、その姿と力はどこまでも変化し続ける……。
 つまり怪物の姿を思い描いたり、あるいは目をそらそうとしてしまえば、
 "架空の怪物・スナーク"という概念だけが進化を続けてしまうのだ。
 そういう意味で言えば、シャルが真っ向から攻撃を受け止めたのは妙手である。
 問題はふたつ、それでもなお、スナークの攻撃は執拗かつ的確だということ。
 そしてもうひとつは……。
「意気揚々と私の前に現れた割には、防戦一方ですな? どうしましたお嬢さん!」
 スナークと同時に、サー・ジャバウォックもまた攻撃を仕掛けてくることだ!

 致命的攻撃をかろうじて躱し、いなしながら、シャルは考え続けていた。
 どう逃げるか……ではない。どうやって、この強敵を倒すか、だ。
 彼女は諦めることなどない。そもそもここには、自らの意志で来たのである。
(目の前に強敵がいたら逃せません――それに!)
 斬竜剣ヴォーパル・ソードが首元を狙って走る。シャルは屈んで回避した!
「あなたみたいな人は! 一発ぶちのめさないと気がすまないんですっ!!」
「なんと!」
 シャルは回避しながらグレネードランチャーのトリガを引く。KA-BOOOM!!
 放たれた弾丸は、サー・ジャバウォックの恐るべき剣技で切り払われた。
 しかし、そこでわずかな隙が生まれる。スナークだけならば対処は可能!
『AAAARGH!!』
「現役JC! なめんなよ、ですっ!!」
 SMAAASH!! シャルは、全体重を乗せた回し蹴りでスナークを迎撃した!
「その程度の打撃で……何? スナーク。どうしたのです!」
『GRRRR……』
 見えざる怪物は苦しげに呻き、悶えているようだった。シャルがにやりと笑う。
「いくら架空の怪物でも、呪詛を籠めたシャルの一撃には耐えられないですよ?
 さあ、次はあなたですサー・ジャバウォック。休ませませんからねっ!!」
「なるほど、足癖の悪いお嬢さんだ……!」
 シャルはさながら空を舞う天狗めいて、強烈な空中連続攻撃を繰り出した。
 仕込み刃と蹴撃の二連続攻撃は、サー・ジャバウォックをしていなしがたい。
「そっちが最強の猟書家なら、こっちは最強の女の子ですっ!!」
 若き羅刹はその衝動を決意に変えて、悪鬼を打ち砕かんと戦い続ける。
 向こう見ずだが前のめりな力……それはまさしく、未来を守る力なのだ!

成功 🔵​🔵​🔴​

クロエ・ウィンタース
【SPD】アレンジ可
道が拓かれたのならば往くだけだ。
躊躇はしない。一気に踏み込み一合でケリをつける。いくぞ。

妖刀を解放し妖気を迸らせてまっすぐ突っ込んでいく
3回攻撃の巨大ヴォーパルソードには
1刀目はUC【一寸の見切り】で避け、前に進む。
2刀目は横に避けると見せかけた【フェイント】【見切り】でいなし前に進む。
3刀目は黒雷じみた妖気をまとった妖刀を全力で叩きこみ逸らす。
妖刀は手放し、妖気を雷気に変換し【属性攻撃】で雷を纏った刺突剣に持ち替え、【ダッシュ】【ジャンプ】で【斬り込み】、【捨て身の一撃】を叩き込む。

二の太刀は考えない。着地や叩き込んだ後も考えない。
全てはこの一突きに。



●一刀にすべてを賭けて
「――!」
 転移を終えたクロエ・ウィンタースは、張り詰めた殺気に表情を強張らせた。
 妖刀が反応してカタカタと揺れる。その柄に手を置き、静かに重心を落とす。
 ……はたして、張り詰めた殺気の主、サー・ジャバウォックが姿を現した。
「ほう」
 対手もまた、クロエが全身から漲らせる強烈な剣気と妖気に目を細めた。
 斬竜剣の巨大化は『まだ』行わない。剣戟の瞬間に巨大化させることで、
 対手の相対距離感覚を狂わせるためだ。間合いを見誤ることは死に直結する。
 そしてそれを、クロエもまた肌で理解した。両者はにらみ合う。
「……その頸頂戴に参った。一太刀にて決めさせてもらう」
「いい覚悟です。私を相手に二の太刀があるとは思わないほうがいい」
 相対距離は、剣士の間合いとしてははるかに広い。
 クロエはその間合いを踏み込まねばならず、敵は剣を巨大化出来る。
 つまり、動く必要がない。さらに、敵の攻撃は一瞬の間に三度襲いかかる……。
(死地だな)
 クロエは淡々と考え、そしてふっと笑った。
 己の身の裡から湧き上がる、生き延びようとする執念――つまり、逃走欲求。
 この場から逃げねば、という本能的選択肢が浮かんだことを、笑った。
 つまり自分は、それだけ『生きる』ことに執着しているということだ。
 ……帰りを待つひとがいるゆえに。けれども同時に、己は妖剣士。
(我が身よ、今ひとたび付き合ってもらうぞ。俺の我儘に)
 妖刀の柄を握りしめる。その髪は黒く染まり、妖力が波めいて放出された。
「――……征くぞッ!!」
 クロエは跳んだ。その瞬間、青ざめた剣が跳ね上がり、襲いかかる!!

 都合三度の斬撃。
 巨大化によって間合いを誤認させる剣は、疾く、そして鋭い。
 クロエは全神経を集中し、これを躱し・いなし・逸らそうとした。
 だがやんぬるかな、敵は最強の猟書家。竜すらも斬る剣を振るうもの。
 一撃目はクロエの脇腹を裂き、
 二撃目はフェイントを交えたクロエの足を斬り、
 そして三撃目は、妖刀の打ち込みをしてなお押し切られた。
 勝敗で言えば全敗である。けれどもそれは、これが"立ち合いならば"の話。
 真剣勝負の勝敗など、決めるとすればただひとつきりしかありえない。
「黒よ――しばしの別れだ」
「何?」
 サー・ジャバウォックは瞠目した。クロエは、"妖刀を手放した"。
 幼少の頃より肌見放さず握ってきたその剣を、自ら捨てたのである。
 代わりに握るは、密かに仕込んでいた刺突剣。マーナガルム。
 サー・ジャバウォックは対応できない。斬撃予後の隙がどうこうではない。
 これほどの剣士が、半身というべき刀をいともたやすく捨てたことが理解出来ぬ!
(それほどまでの覚悟か……! 私が、見誤っていたとは……!!)
 うめき声は言葉にならず、代わりにクロエの鋭い呼気がかすかに響いた。
 己の体を弾丸めいて撃ち込んでの刺突。たとえ撃ち合いで敗北したとしても!
(すべてはこの一突きに――我が生命をも賭けて!!)
 最後に剣を撃ち込んだ者こそが、真剣勝負の勝者なのである!
「ぐ――おおおおおお……ッ!?」
 刺突剣は狙い過たずサー・ジャバウォックの胸部を貫き、稲妻を迸らせた。
 身を灼く苦痛に老紳士は絶叫する。最強の猟書家が、苦悶している!
 これこそが真の『勝利』だ。クロエは、最強の二つ名に勝ってみせたのだ!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
最強、それも結構。
倒さねばならない、なら斃します。

“見えない”だけで、其処に“在る”。
避けられぬ道理も、討てぬ理由も無い。

架空故に見えずいられるなら…
現実を。
周囲や景色との違和を視る。
触れた地形との音を聞く。
向く敵意、気配を感じる…
五感フルに用い、以て敵の意、狙いを、
存在を見切る材として、回避を試み。
駆けると共に鋼糸を放つ。

攻撃を受ければ血は飛沫く…色が散る。
張る糸は進路を妨げ、己の足場ともなる。
無論、猟書家の動きも捨て置かず。
僕への攻撃、糸への対応…それすら思惑を察する手へと。

傭兵の論理だけじゃない。
…死なぬと、誓ったから。
斃して、還る。

僅かでいい。
痕跡を、先を捉えたなら――
全身全霊のUCを



●夢と現のはざまに
 架空怪物・スナーク。空想であるがゆえに不可視であり不定であるもの。
 恐怖を礎に姿を思い描けば、スナークは"それ"になる。
 ならば見ないようにすれば、スナークは"何か"になる。
 挑むことをやめれば最強に変じ、されど挑むには姿を捉えられぬ。
 この禅問答めいた敵を前に、クロト・ラトキエは少し変わった対処をした。
 すなわち彼は、見えざる怪物の輪郭をなぞるのではなく、
 怪物が触れる現実――つまり周囲の風景や大気の違和を視たのである。
 これは覿面に効いた。なにせ架空の怪物といえど、そこに"存在"するもの。
 不可視とて身動ぎすれば空気は揺らぎ、地に足をつければ砂埃が舞う。
 燃え落ちた森の残骸もまた、クロトが怪物の存在を反証的に視るのに役立った。
「――そこですね」
『AAARRGH!?』
 完全な不意打ち。そのはずが、クロトには一目瞭然であった。
 背後からの爪――あるいは牙――による刺突攻撃を回避したクロトは、
 鋼糸を放つ。それはさながら、折り重なった紙のように多面的に広がっていた。
 怪物はこの『結界』を避けられない。強大であるがゆえに避けることが出来ぬ。
 あるいはクロトが恐怖を抱いていたならば、怪物を無視していたならば、
 架空の怪物は架空ゆえに強大な魔となり、鋼糸を引き裂いていたかもしれぬ。
 されどクロトは挑んでいた。この『敵』を常に意識に捉えていたのだ。
 ぶちぶちと糸に触れた体の一部が引き裂かれ、血が赤を空間に刻んだ。
「世界を視ることでスナークを定義しましたか。見事!」
 サー・ジャバウォックは快哉めいて叫び、クロトに挑みかかった。
 スナークは強敵である。だが、彼奴の攻撃手段は怪物だけではない。
 むしろ見えざる怪物を囮として、最強の老紳士は容赦ない連撃を放つ。
 その斬撃――所詮は奇跡の力なき尋常の剣術。極限の集中あらば見切りは可能。
 クロトは張られた糸を足場に跳躍し、斬竜剣の連続斬撃を華麗に回避。
 怪物が名残惜しげに追いすがる。クロトはさらなる糸を張って壁となした。
「糸をなして空を舞うとは……! 竜たる私に対してなんと挑戦的な」
「使えるものは何でも使いますよ。私は、死にに来たわけではありません」
 凄絶なる笑みを浮かべた老紳士を見下ろし、クロトは淡々と言った。
 胸に抱くは誓い。死ぬためではなく、生き残るために、還るために戦場に赴く。 一見矛盾しているように思えるそれは、まさしく"戦士"の誓いであった。
「竜をも屠る蛇をお見せしましょう。……"開展"」
 たちまち刃はうねる蛇めいた鞭剣と変わり、サー・ジャバウォックを捉えた。
 前から来ると見せかけ、背後より鎌首をもたげる変幻自在の剣である。
 払おうとした斬竜剣は空を切った。そして、刃はサー・ジャバウォックを裂く。
「ぐ……!?」
「架空の怪物よりも恐ろしいものを、お見せしましょう。士爵殿」
 逆光を受けてレンズが白く鈍く輝く。口元の笑みは、どこまでも不敵だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

皐月・灯
「最強」……強い弱いにそこまで興味はねーけどな。
そういうヤツに今の自分がどこまで通じるか、ってのは、試し甲斐があるぜ。

巨大剣による……どうせ敵味方の区別はねーから、3回攻撃か。
オレの対抗策は、【見切り】だ。
横凪ぎなら【スライディング】で、振り下ろしなら【ダッシュ】で範囲を逃れつつ、接近する。
デカい分、かなり早い段階で軌道を読めるはずだ。
1回目を避ければ、そこで即座に《大戦神ノ槍》を発動する。
2回目をその高速移動で避け、3回目を振るう直前に【カウンター】を仕掛けるぜ。

……初撃をしのげるかどうかは、どの段階で見極められるかが勝負だ。
そこが試しどころ、だな。

――付き合えよ猟書家。勝負といこうぜ。



●斬竜剣・対・幻釈顕理
「ぐ……かはっ」
 最強の名をほしいままにする男は、予想だにしない傷を与えられていた。
 猟兵。なるほど、これこそが我らの天敵にして仇敵か。
 ……新たに現れたる少年もまた、"最強"を怖れることなくまっすぐに立っていた。
「構えろよ、猟書家。小細工なしの、真正面からの対決といこーぜ」
 皐月・灯は挑発的にファイティングポーズを取り、フットワークを刻む。
 単独にして最強たるサー・ジャバウォックに対しては、なんとも不遜である。
 しかしそれに足る自信と闘気を、この少年は持ち合わせていた。
 ……騎士としての血がうずく。サー・ジャバウォックは知らず笑っていた。
「いいでしょう。ならば我がヴォーパル・ソードにてお相手いたします」
「……いい殺気放つじゃねーか。"最強"って名乗るだけはあるぜ」
 灯の戦う動機は、義憤や義務感ではない。ある意味、私利私欲である。
『最強の名を持つ猟書家に、この身この技がどこまで通じるか』。
 武術家ならば誰もが持ち得るであろう、己を試したいという原始的欲求。
 その結果で死に瀕しようと構うまい。灯は、修羅めいた達観を得ていた。
「俺の"アザレア・プロトコル"と、てめーの斬竜剣とやら。
 どちらが上で、どちらを砕くか。付き合えよ、勝負といこう……ぜッ!!」
 灯が仕掛けた――否、実際に先に動いたのはサー・ジャバウォックだ!
 彼奴は一瞬にして斬竜剣を超巨大化させ、上から下の振り下ろしで放っていた!
 厄介なのがこの巨大化能力だ。これは、剣だからこそ作用する一種のブラフ。
 一瞬にして伸長した刃は、そのせいで彼我の相対距離を誤認させてしまう。
 真剣勝負において間合いの誤認は死につながる。単独戦力として優秀な特性だ。
 灯は振り下ろしを避けた……"直撃は"避けた。剣はわずかに届いていた。
「っ」
 裂かれた肩口の傷から血が噴き出す。筋肉を緊張させてかりそめの止血を行う。
 二撃目は地を這うような横薙ぎ。灯は構わず走る。走る、走る!
「アザレア・プロトコル・ユニゾン――!!」
 ひとつ、ふたつ、みっつ。四歩目に足首を刈る斬撃が重なった。
 ……かに、思えた。けれども四歩目は、もはや霞んで"消えていた"。
(――疾い!!)
 極度緊張により異常伸長された主観時間の中で、サー・ジャバウォックは見ていた。
 術式を開放した灯が、まさしく韋駄天の速度を得るのを。
 彼は斬撃が来る前に四歩目を終えて五歩目を踏み、そして跳躍した。
 かくして横薙ぎ斬撃は地を虚しく撫でる。灯は振るわれた刃の上に着地!
 なんたる速度。否、それよりも驚嘆すべきはその思いきりのよさ!
 見切れればよし、さもなければ己は死ぬ。その厳然たる事実を受け入れた、
 戦士としての卓越した精神は、このようにして死線の交錯を勝利するものだ。
 三撃目が放たれるより先に、灯は必滅距離に到達していた。魔力拳打、充填!
「てめーの剣、見切ったぜ。さあ、今度はオレの番だッ!!」
 霞んだ拳は超音速を越え、大気を灼きながらプラズマを纏う。
 太陽すらも焦がす大戦神の槍が、燃え上がり……そして、傷ついた胸部を撃った!
「オオオオオオ……ッ!!」
「もう一撃、持っていきやがれ! 《大戦神ノ槍》ッッ!!」
 さらに左拳! 入った! サー・ジャバウォックは地面と平行に吹き飛ぶ!
 燃え落ちた森の残骸がその身を受け止め、そして轟音とともに砕けた!
「……へっ。竜を斬る程度の剣じゃ、オレをぶった斬ることは出来ね―ぞ、オッサン」
 灯の異色の双眸は、不遜かつ勇猛なる闘志に、燃えるように輝いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

地籠・凌牙
【アドリブ連携歓迎】
どの猟書家も危険だが、こいつは何としても倒さねえと……!
虚構で人の心を振り回すなんざさせてたまるか!

俺は死ぬほど運悪いし相手のUCを避けることは絶対にできねえからモロに喰らうだろうな……だがそこで【指定UC】を使ってコピーして【カウンター】を仕掛ければどこかしら相手を突くことができるハズだ。死ぬほど痛いのは【激痛耐性】で我慢だ我慢!
俺の全体重と出せる限りの【怪力】乗せて【鎧砕き】【重量攻撃】【貫通攻撃】の要領でぶっ叩く!
敢えて敵味方を区別せずに攻撃するぜ、相手の思考の隙を突けるかもだし何より俺より何倍も強い連中だ。
俺の動きを上手く利用してくれるだろうって信じてるしな。


レン・ランフォード
最初から最強格が相手とは…
ですが、それを逃せばそれだけ被害は大きくなるというもの
ここで仕留めさせて頂きます

一撃目、第六感に野生の勘も総動員して見切り、回避
二撃目、実現符を使い別人格二人にも出てもらい更に残像で多数を表現
元々範囲攻撃でも目標を一人から多数に切り替えた
思考の変化の隙で回避準備
剣での範囲攻撃ならなぎ払いとみて
終わった方にジャンプ若しくはスライディングで回避
返す刃の三撃目が来る前に煙幕弾投擲
視界を奪いつつゴーグルを装備し接近
この時、闇雲の攻撃が来なかったらカウンターを警戒
実現符で実体化した数珠丸太郎が先攻し襲撃する
攻撃は絶対に回避

降魔化身法発動
短期決戦、全身全霊を持って必ず滅ぼします


カタリナ・エスペランサ
最強格が先鋒とは贅沢な話だ、相手にとって不足は無いね!

巨大化した剣を自在に扱う膂力と技巧は確かに脅威だろう
裏を返せばそこが攻略の鍵だ

まず《封印を解く+限界突破+ドーピング》で自己強化、敵の先制UCに更に先んじて《早業+先制攻撃+クイックドロウ》の羽弾を当てる事に集中するよ
羽に宿す効果は《属性攻撃+ハッキング+催眠術+継続ダメージ》。魔術的な幻影展開・物理的な知覚不全・精神的な思考攪乱の三属性を重ねてUCを十全に扱う力を奪う事で動きを《見切り》、《空中戦》の機動力で攻撃を回避。

発動するUCは【閃紅散華】、この戦争で一段階進化した最新の切り札さ
紅雷を纏い《属性攻撃+早業+怪力》の連撃で畳み掛ける!


アノルルイ・ブラエニオン
ジャバウォック?
詩の素材としては最高ではないか!
それに最強の猟書家を生かしておくのは得策ではないな

敵の先制攻撃を
太刀筋を【見切り】全力で【盾受け】しつつ【ダッシュ】で逃げる!

はぁはぁ…
死んでないな!よし!

「ジャバウォック破れたり!
これから私が呼び出すのは
『剣では決して倒せない怪物』だ!」

(物語と共にUC使用)
無数の首が森を成す
その首猛毒の息を吐き
斬られども尚生え直る
不死身の毒蛇 
かの者の名はヒュドラ!

かの英雄ヘラクレスも『剣では倒せなかった』という
傷口を焼く術は持っていまいな?

一つ言っておく
剣を使うジャバウォックなぞ
「ネコのないニヤニヤ笑い」のようなものだ!
(ナンセンスと言いたい)


天山・朱里鬼
ふうむ…これは厄介な相手じゃな。まともにやり合ったらわしみたいなか弱い乙女はひとたまりもないのう。しかし、避けられるかどうかはわからない…腹くくるかのう!くふふっ!

相手の剣筋を見極めて回避…ができればよいが最低限少しでも意識が残るくらいにはダメージを抑えようと試みよう。相手の剣を念動力でそらせるか試してみようか。避けれればユーベルコードを使い己を強化して相手の懐に飛び込んで拳をお見舞いじゃ、くふふ!わしは呪い師じゃが肉弾戦の方が得意なのじゃよ?攻撃を食らってしまったら死んだふり、少しでも油断が見えたら同じように攻撃をくらわすぞ。

変わった魔術をつかうのじゃな、時間があれば聞いてみたかったのう。


ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・連携・絡みも歓迎!

見えない怪物?見えないってことはつまり見る以外の手段なら察知し放題ってことだね!音とか匂いとか振動とか
任せてよボクそういうの得意!
使うのはずばり……勘!(第六感+α)

どういう怪物なのかは分からないけれどそこら辺は勘で計って……
襲いかかってきたところを餓鬼球くんにぱっくり丸呑みか丸齧りにしてもらおう
もし抑えきれなそうでも、まあボクが一発入れにいくには十分だよね!

さーいっくよー!
キミが最強だって?でもキミがここで一番に負けちゃったらみんなはこう言うだろうね
フフフ……サー・ジャバウォックがやられたか……
だがやつは我らの中でも最弱……
ってねえ!

UCドーンッ!


夜霞・刃櫻
【アドリブ・連係歓迎】SPD
やべぇーっす!?
これホントに三下の出る幕でやんすか!?
しょうがないからやるでやんすけど!

先制攻撃対策は「敵を盾にする」を応用して、超防御を行う味方を盾にする事で回避します
、味方の「影に紛れて」「目立たなく」なるし、先制攻撃の際に『ヘイズ・グレネード』で「目潰し」をしておけば、相手は自分のような三下は見失うだろうし気にも留めないハズ(謎の自信
その後に「忍び足」で近付いて「鎧無視攻撃」「吹き飛ばし」を載せたUC【夜霞の仕手】によるレベル730の超「暗殺」をキメる!
キメた後は「逃げ足」で即座に撤退!また「味方を盾にする」のも忘れない

失敗したら謝ってる暇あるんすかね?



●刃の嵐を越えて
 がらがらと音を立てて、燃え落ちた森の残骸が吹き飛んだ。
 その中から現れたのは、胸部を中心におびただしい傷を負った老紳士。
 すなわち最強の猟書家――サー・ジャバウォック。
 これまでの猟兵との戦いにより、もはやその身は満身創痍と言えた。
 だが彼奴を目にした猟兵たちは、みな緊張感に身を固めて警戒を新たにする。
 傷を負っていてなお、サー・ジャバウォックの威圧感は強大なものだったのだ!
「……だからって、いまさら退いたりするかよ。サー・ジャバウォック!
 虚構で人の心を振り回す野郎なんざ、何があったって見逃せねえぜ!」
 白き髪に黒の龍鱗を持つ戦士、地籠・凌牙は意を決して構えを取った。
 正直なところ、凌牙に敵の攻撃を避けられる自信はなかった。
 しかし、"喰らうなら喰らうでやり方はある"。ようは耐えればいいのだ。
 それは回避よりも困難な道……だが凌牙は、そこに活を見出す覚悟を決めている。
「やべぇーっす!? これホントに三下の出る幕でやんすか!?」
 ……そんな凌牙とは裏腹に、まったく覚悟の決まってない猟兵もいた。
 一体なぜこんな死地へ来てしまったのか、夜霞・刃櫻がそうである。
 強烈な殺気を受けていよいよ修羅場の実感が高まったのか、震えていた。
 しかし残念ながら、ここで背中を向けて見せようものならばいよいよ死ぬだろう。
 前門の虎、後門の狼……いや、蛇に睨まれた蛙というのが正しいところか。
「なーに、大丈夫大丈夫! だってほら、最強の○○って大抵虚仮威しだし!
 "フフフ、サー・ジャバウォックがやられたか、奴は我らの中でも最強……"みたいなやつ、漫画とかだとよくあるよね!」
「……それ、なんか間違ってない? 逆にフラグな気がするんだけど……?」
 のほほんと呑気なロニ・グィーを、カタリナ・エスペランサは呆れ顔で見やった。
 この状況で冗談を飛ばせるのは、この少年が強大な神の片鱗であるがゆえか。
 ……いや、本当に状況を理解していないだけな気がする。カタリナは訝しむ。
 まあどちらにせよ、底知れぬ力を彼女は感じていた。ゆえに信じることにした。
 ロニもまた、あの"最強の猟書家"を倒すつもりでここに来ているのだと。
「ふーむ……ここは占うも無粋か。天運ではなく天稟に生命を賭けるとするかの」
「賭けなら成立しないね! だって私たちは勝ちに来たのだから!」
 銀髪の羅刹少女――といっても実年齢ははるかに上だが――天山・朱里鬼に、
 エルフの吟遊詩人アノルルイ・ブラエニオンはあくまで爽やかに言った。
 彼もまた、強がりや蛮勇がゆえに平静を取り繕っているわけではない。
 最強の敵……それは決して、生かしておいていい存在ではないと考えていた。
 もしもヒーローズアースに不和がばらまかれてしまえば、
 それはサー・ジャバウォックへの到達をさらに難しくするであろう。
 ゆえにこそ、ここで叩く。そうした戦術的判断と、理由はもうひとつ。
 ――悪竜ジャバウォックとの戦いなんて、叙事詩の題材としては最高だからだ!
「ええ、ここで確実に仕留めるといたしましょう。ゆえに……」
 そしてレン・ランフォードは、レンズの奥の瞳を鋭く細めて影を睨んだ。
 ……傷だらけで立ち上がったサー・ジャバウォックの姿は、まさに壮絶。
 だがその表情は、笑みだ。死地に生命を預けた者が見せる、闘士の笑み。
 己の死の可能性を受け入れ、それでもなお戦うことを選んだ凄絶なものである。
「さて、私はいまだ健在ですよ猟兵たち。そして我が身は王に続く最強の身。
 ――我が剣ヴォーパル・ソードとスナークの力にて、全霊でお相手しましょう。
 私の生命を求めるならば、この刃の嵐を潜り抜けて心臓を取ってみせるがいい!」
 舞台劇めいて朗々と名乗りを上げ、敵はヴォーパル・ソードを超巨大化!
 さらに侵略蔵書『秘密結社スナーク』の力を開放して、現実を局所的に改変。
 見えざる巨大な架空怪物スナークをけしかけ、猟兵に襲いかかったのだ!

 架空怪物スナーク。それは空想の存在であるがゆえに不可視かつ不定。
 大きさも、フォルムも、いかなる武器を備えているのかすらも見当がつかぬ。
 侵略蔵書の力を受けた"それ"は、ゆえに"いかなる怪物にもなり得る"。
 もしも巨大な角を持った恐るべき巨人の姿を想像したならば"そうなる"し、
 無数の爪と棘だらけの尾を持つと想像したのならば、やはり"そうなる"。
 対して猟兵たちは、けして恐れることなく挑んだ。荒れ狂う刃の嵐と怪物へ!
「これがヴォーパル・ソードの斬撃……! わしみたいなか弱い乙女では、
 喰らったらひとたまりもなさそうだのう。さて、どう凌いだものか……!」
 朱里鬼は軽口を交えつつ、すさまじい速度で迫る剣戟への対策を考えた。
 巨大化された剣は間合いが極めて読みづらく、それゆえに不用意な突撃は禁忌。
 加えてサー・ジャバウォックはもはや全身全霊を以て迎撃すると見え、
 目にも留まらぬ斬撃を縦に横にと無数に放ち、猟兵を攻めきろうとしていた。
「私"たち"で狙いを撹乱します! "錬"、そして"れん"! 手を貸して!」
 レンは自らの魂に宿したふたつの別人格、"錬"と"れん"を符の力で具現化。
 さらに忍の秘術と軽業を生かして、無数の残像を生み出しかりそめの大軍をなす。
 そして多段的に飛びかかることで、斬撃の方向と角度を限定せんとした。
「撹乱ならアタシも得意だ。さあ、アタシの羽に惑わされてしまえ!」
 同時にカタリナは、幻影の魔力を宿した無数の羽弾を刃に向けて射出した。
 羽弾は一発一発が術者の意識をハッキングして惑わす魔力を宿している上に、
 その数が大量であるがために弾幕として機能し、突入する猟兵を支援する!
「これならいけるか……? いや、待つんだ!」
 その隙に飛び込もうとした猟兵たちを、アノルルイが制止した。
 吟遊詩人として音を聞き分ける優れた耳を持つアノルルイは、
 不可視の怪物スナークが横合いから襲いかかろうとしていることに気付いたのだ!
「うわぁーっ!! あっちからこっちから攻撃が来るからか、隠れないとでやんすよ!
 そうだ、きっと猟兵さんなら超防御とかで凌ぐ誰かも居るはずでギャーッ!?」
 そして姑息にも味方の影に隠れようとしていた刃櫻は、斬撃を喰らって沈んだ。
 おお、刃櫻よ。三下を名乗るだけあって戦法も三下らしい刃櫻よ。
 残念ながらキミが盾に出来るような猟兵は、此処には居なかったのだ……!
「っておい何いきなりやられてんだー!? くそっ、かばえりゃいいんだが……!
 俺のユーベルコードは超防御ってわけでもねえしな……どうすりゃいいんだ!?」
「んー、ならあの見えない怪物はボクにまかせてもらおっかなー!」
 刃櫻を抱えて状況判断に迷う凌牙、そこで名乗りを上げたのはロニである。
 にやりと笑う少年の周囲に、いくつもの牙持つ不気味な球体が出現した。
 それこそロニが操る『飢鬼球』。撃破は出来ずとも盾には十分な数だ!
『AAAARGH!!』
「お、そっちから来るんだなー? ボクの勘、あったりぃ!」
 しかもロニは五感に頼るのでも霊的な感知術式を用いるのではなく、
 第六感という名のあてずっぽうでスナークを探り当てた。なんたる強運か。
 いや、あるいは神の力で因果律を捻じ曲げたか……真相はまさしく"神のみぞ知る"だ!
 見えざる怪物に食らいついた餓鬼球は、爪か牙のようなもので抉られ裂かれ、
 次々に消滅する。だが、もはや架空の怪物が猟兵を襲う隙はなかった!
「スナークを押さえれば終わりだと思いましたか? 見くびらないでもらいたい!」
 そこへサー・ジャバウォックが来襲する。レンの残像とカタリナの羽弾を一蹴!
 そして今度こそ猟兵どもの首をまとめて刈ろうと、横薙ぎに剣を振り上げる……が!
「……!? なんだ、私のヴォーパル・ソードが、動かない……!?」
「ふっ、わしが小さな乙女じゃからといって、無視は悲しいのう?」
 にたりと人外の笑みを浮かべたのは、刃に向けて両手をかざす朱里鬼である。
 彼女はあらん限りの霊力を練り上げ、意識が逸れる一瞬を待っていた。
 そして全身全霊を籠めた念動力で、ヴォーパル・ソードを堰き止めたのだ。
 見えない力とサー・ジャバウォックの膂力が拮抗する。静止はわずか数秒。
「あの羽弾と、残像で気を乱してくれたおかげじゃ……さあ、行け!」
「言われずとも!」
「短期決戦で滅ぼします――!」
 カタリナは全身を調律の権能宿す紅雷で、レンは降魔化身法によって超強化。
 斬撃が途切れたその一瞬の間隙を縫い、空中と地上から苛烈な攻撃を叩き込む!
「ええい、小賢しいッ!!」
「ぐ……!!」
 念動力を振り払われ、朱里鬼は両手から出血しつつ吹き飛ばされた。
 再び斬撃が荒れ狂う。だがレンとカタリナの攻撃着弾がわずかに疾い!
「目にも留まらぬ連撃はキミだけの持ち味ではないよ、サー・ジャバウォック!」
「忌み嫌われし悪鬼の力、最強を驕るその身に味わわせてあげますっ!!」
「ぐお……ッ!!」
 紅雷をまとったカタリナの連撃、そして研ぎ澄ませたレンの重い一撃。
 速と力それぞれに特化した攻撃は、サー・ジャバウォックに新たな傷を生む。
 斬撃はもはや十全には放たれぬ。凌牙はその嵐に飛び込み、攻撃を受けきった!
「たしかその剣の銘は斬竜剣、だったか? あいにく、俺はまだ斬れてないぜ!
 そして、その力は頂いた――穢れ喰らいし黒竜の爪牙、受けてみやがれ!!」
 ユーベルコードすらも喰らう竜の爪牙が、竜を驕る老紳士を切り裂く!
 斬竜剣の鋭さと速度を得たいま、凌牙の連撃を止められる者は存在しない!
「がは……ッッ!!」
「まだまだだ! よおお前ら、少し暴れさせてもらうぜ! 上手く利用しろよ!!」
「えっ利用ってあっし隠れるところが欲しギャーーーーッ!?」
 敵味方の区別なく力を荒れ狂わせる凌牙、そこに巻き込まれる刃櫻!
 なんとこの三下、まだ誰かを盾にしようと考えていたらしい。
 この乱戦状況でそんなことが出来るはずもなし、ずたずたになって吹っ飛んだ。
「か、彼女は大丈夫なのかな……? まあいい、私は私の詩を紡ぐのみ!」
 一瞬気を取られかけたアノルルイだが、持ち前の飄々さですぐに切り替えた。
 そして愛用の楽器を爪弾き、華麗なる戦慄とともに即興の物語を吟じる。
「ジャバウォック破れたり! もはや不可視の怪物は此処に無し。
 これより私が呼び出すのは、"剣では決して倒せない怪物"だ!!」
「なんだと……!? スナーク、戻りなさいスナーク! 奴を喰ら――」
「残念、もうボクの餓鬼球くんたちが食べちゃったよぉ」
「!!?」
 いつの間に其処にいたのか。目の前に立つロニがにたりと笑った。
 そして思いきり腰をひねり、ただ全力を籠めた神の拳を叩きつける!
「そーれ、ドーンッ!!」
「がはぁああっ!?」
 少年の身から繰り出されたとは思えぬ剛力! 大地が砕けて破片を巻き上げた!
 吹き飛ぶサー・ジャバウォック……その先にはすでにもうひとりの猟兵が!
「さあて、捉えたぞサー・ジャバウォックよ? わしの一撃も受けてたもれ!」
「何……!」
 朱里鬼である。血まみれの拳を握りしめ、鬼の笑みを浮かべた!
 そもそも朱里鬼は、呪い師でありながら徒手空拳を得意とする羅刹。
 間合いに飛び込んでの一撃こそが、彼女の本懐であり"解決方法"であった!
 SMAAAAASH!! これまた、少女の身から放たれたとは思えぬ剛力の拳が炸裂!
 くの字から逆に体を広げさせられたサー・ジャバウォックは、地を嘗めた。
 屈辱と怒りがその拳を震わせた。だが空を見上げ、その表情は驚愕に変わる!
「かの大英雄ヘラクレスすらも、"剣では倒せなかった"という怪物だ。
 傷口を焼く術は持っていまい? 不死身の毒蛇をどういなす、士爵殿よ!」
「なるほど、ヒュドラか……! たしかにこれ以上ない相性の怪物だ!」
 カタリナは快哉めいて叫んだ。然り、アノルルイが呼び出したるは、
 ギリシャ神話に名高き多頭の怪物ヒュドラ。無数の蛇眼が老紳士を睨む!
「ひとつ言っておく――剣を使うジャバウォックなぞ、"ネコのないニヤニヤ笑い"のようなものだ!!」
 そしてヒュドラを背景に背負ったアノルルイは、ビシッとポーズを決めた!
 ……緊迫した戦場に、やや間の抜けた沈黙が訪れる。
「……えーっと? あれって、どういう意味なんでしょう……?」
「さあ……なんかそういうことわざでもあんのか?」
 レンと凌牙は顔を見合わせ、互いに言葉の意味がつかめず首を傾げた。
「あー、なるほど。つまり"なんせんす"というやつじゃな?」
「……そう、それさ! キミは詩を解するセンスがあるようだね!」
「なんじゃわし、妙な気に入られ方をした気がするのう……」
 嬉しそうなアノルルイの様子に、朱里鬼は若干ヒき気味であった。
 そこで再び戦場の緊迫が戻る。ヒュドラの多頭がサー・ジャバウォックを襲った!
「この私が、架空の怪物を操るべき私が、怪物に喰らわれるなど……!?」
 サー・ジャバウォックは立ち上がり逃れようとした……が、出来なかった。
 両足に突き刺さっているナイフと長ドス。いつの間に、いやそもそも誰が!?
「まったくひどい目にあったでやんす……けど、これで仕事は達成でやんす!!」
 刃櫻だ。しぶといことに、どうやらまだ生きていたらしい!
 あるいはそのタフネスがあらばこその三下か? ともあれ、彼女の仕業!
 戦場の混乱に紛れ、サー・ジャバウォックに闇討ちを仕掛けていたのである!
「あ、巻き込まれたくないからあっしは撤退っす! それじゃ!!」
「そんな、莫迦な――最強であるべき私が、こんな幕切れなど……!!」
 ヒュドラの牙が迫る。愕然とするサー・ジャバウォック。
「だからこそアタシたちはキミを倒しに来たのさ。サー・ジャバウォック」
「怪物の力で人の心を惑わせようとした奴には、似合いの最期だな」
 カタリナと凌牙は別れの言葉の代わりに言った。
 サー・ジャバウォックは何かを言い返そうとした。あるいは断末魔か。
 だがその口から声が放たれるより早く――多頭の怪物が、その身を食らった!

「……これでひとまず、また一度奴を滅ぼすことが出来ましたね」
 嘆息するレン。だが、それでもまだ彼奴は存在を維持している。
「なあに、ならば何度でも倒せばいいのさ。そう、永遠に繰り返される詩のように」
「その通りだね。これまで何度もそうしてきたんだから、アタシたちは」
 アノルルイとカタリナの言葉に、猟兵たちはコクリと頷いた。
 戦いはひとたびの幕切れを迎える。だがそれは、次の戦いの開幕をも意味するのだ――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

日向・士道
実在しえぬ虚構こそ、我ら學徒兵の敵よ。
元よりありえぬもの、目に見えぬもの、この世にあらざるもの、形なきものを斬る事こそが我が妖刀“酒天童子”の存在意義。
であれば、秘密結社スナーク――――恐るに足らず!

先手にて放たれようと、居合とは後の先を取る技術なれば。
小生のこの身は煙で出来ている、故に、霧散する小生の体を全て捉えることは不可能。
大きく、大きく広がって空間を埋め尽くす。
一瞬の隙さえあれば良い。
伊之型【片葉之葦】にて――――斬り伏せる。

サー・ジャバウォック。
ヒトは虚構には負けぬ。
断じて。



●虚構を斬る者
 古来より、人は闇を恐れ、影を恐れ、そこに有り得ないものを見てきた。
 妖怪、鬼神、悪霊――呼び名は様々。人ならざる妖しのものども。
 それは絵巻物に伝わる姿形を持つものもあれば、不定にして不可視のものもある。
 いずれにしても共通しているのは、それは"畏れ"を抱くということ。
 恐怖とは安寧の対岸にある感情であり、ゆえに魔は永きに渡り調伏されてきた。

 ならば花の帝都を守る學都の兵が、真に斬るべきものは何か。
 叛逆の兵か。
 乱心の士か。
 悪逆の賊か。
 いずれも是、されど否。
 真に斬るべきもの――それは、恐怖という形なきもの。心乱すもの。
 ゆえに日向・士道は、常に魔の大敵として帝都に在り続けた。

「……ほう」
 居合の構えを取る士道を見て、サー・ジャバウォックは嘲笑を浮かべた。
「刀一振りで、我が侵略蔵書が生む"スナーク"を調伏できるとでもお思いですか」
「出来る。――否、"出来ねばならぬ"。なぜならば小生は虚構を斬る者」
 士道は学帽の下から、凛とした瞳で対手を睨んだ。
「もとより在りえぬもの、目に見えぬもの、この世に在らざるもの、形なきもの。
 それこそが我が妖刀の存在意義にして、我らが永遠の仇敵とすべきものなり。
 ゆえに、斬る。出来るかどうかではない、"小生が斬ると決めたから斬る"のだ」
「……たいした自信だ。ならば我が侵略蔵書の力、その身で味わうといいでしょう」
 本が開かれ、そこからこの世ならざる怪物の咆哮が響いた。
 士道は眦を決する。不可視にして不可触の怪物、架空のけもの、スナーク。
 その輪郭をなぞるに能わず。そも、士道は間合いを詰める必要すらない。
「"酒天童子"よ。魔を喰らえ。これより見せるは伊之型――"片葉之葦"」
 像が揺らぐ……否、錯視ではない。そう、士道の身は人に非ず。
 すなわち怪奇人間! その身の本質は夢と現をたゆたう煙であり、
 振るう剣もまた同様。士道は、魔と人の間に在りてその境界を定めるもの。
 彼岸を渡り現し世を守るためには、人の身はあまりにも不器用に過ぎる。
 されど士道は己を人の側と定める。そのためにこそ刃は振るわれる。
「――斬り伏せるッ!!」
 鬨の声……そして、一閃。

 はたして。
「……なんと」
 白々と冴える暁の如き剣閃は、不可視の怪物を一刀のもとに屠り去った。
 サー・ジャバウォックは瞠目した。不可視の怪物が斬られたことに? 是、しかし否。
「この私にまで、剣を届かせてみせたか……ッ!!」
 然り。その身が逆袈裟に斬られ、血が飛沫をあげて散った。
 士道はまっすぐな……刃のような真っ直ぐな目で対手を睨み、言った。
「秘密結社スナーク、恐るるに足らず。そして覚えておけ、サー・ジャバウォック」
 その目はまさしく、現し世を守りし人の眼。
「ヒトは虚構には負けぬ――断じて」
 虚を斬りて実を守護する、花の帝都を背負いし剣士の眼差しであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
心情)ジャバウォックってこたァここは鏡の国なンかね。そのわりにゃ走らずとも同じ場所にいられるが。ジャバウォックの恐ろしさは“道理の通らなさ”だ。ただ強ェだけのてめぇを恐れる理由はねえなァ。
行動)眷属たちをばらまく。地中地上空中すべて《鳥・獣・虫》で埋める。スナークの偵察・本体ともども妨害する。そんで、ああ、ちょっとした茶目っけだ。同名キャラ対決と行こう。眷族をなぎ払ったろう。その攻撃、ぜェんぶ文字ンなってこっちのチカラさ。竜に効く剣は眷族を盾に。その攻撃も文字に変えて攻撃に加えよう。龍特攻斬撃ってなァ。
悪ぃなァ。俺ァいま猟兵なんだ。いつかただの《俺》と会えたら、てめぇの話を聞かせておくれ。



●ひとごろしきの怪物
『AAAARGH!!』
 名状しがたき咆哮をあげ、不可視の怪物スナークが暴れ狂う。
 然り。今や燃え落ちた森は、隅から隅に至るまで《仔》らに覆われていた。
 空には呪われた病の運び手、あるいは《鳥》と呼ばれるものが集い、
 地上には毒を撒き散らし腐敗を伝搬させるもの、あるいは《獣》が蔓延り、
 地中には肢なくして這い進みくねるもの、すなわち《虫》が埋めていた。
 すべて、すべて朱酉・逢真が放ったものども。病の伝搬者。毒の伝道者。
 スナークはそれを喰らう。架空の怪物に毒だの病だのは効かぬのだ。
 そしてサー・ジャバウォックもまた、煩わしげに獣どもを鏖殺していた。
「たかが畜生に小虫を万や億揃えたところで、何が出来るわけでもなし。
 ……そもそも、こんなものはあなたの力量の千分の一にも満たないでしょう?」
「ひ、ひひっ。道理の通らねえ怪物の名を冠してる割にゃ、まともな御仁だねぇ」
 獣どもがうぞうぞと寄り集まり、逢真の姿形を取った。
「なあ兄さんよぅ、その名を使うなら、そンな剣は不似合いじゃあねぇか?
 そいつはお前さんが振るうものじゃあなく、お前さんを斃すモンだろうによ」
 ジャバウォックの詩に曰く、けしにぐの剣によりて怪物は討たれたと云う。
 ヴォーパル・ソードとはゆえにこそ斬竜剣たる。それを竜の名を冠した男が持つ。
 なるほど悪趣味なアイロニーである。サー・ジャバウォックはにたりと笑った。
「あいにくここは鏡の国ではありません。そして我が身も寓話などではない」
「童話の怪物なンぞより恐ろしいンだよってか? ひ、ひひひ!」
 何がおかしいのか、逢真はひきつったような笑いをあげて肩を震わせた。
「だったら"なおさら"、てめぇを恐れる理由はねぇなァ?」
「…………矮小なヒトの身に押し込められながら、よく大口を叩くもの」
 サー・ジャバウォックのその目には、逢真は"逢真"などに見えていない。
 その宿に隠れた"もの"の有様が、片鱗であろうとまざまざ見えていた。
 肯定も否定もせずに逢真はくつくつ笑う。そして赤い目を光らせた。
 不可視の怪物はすぐ上で牙を広げている。いつでも食らいつけるように。
「なァ兄さん、てめぇ、さっきからずうっと眷属どもを薙ぎ払ってるなぁ?」
「何を――」
「せっかくだ。茶目っけ出してやるからよぅ」
「……スナーク! 喰らい尽くせ!!」
 怪物は従い、逢真を食らった。だがそれは物質的媒体を食らったに過ぎぬ。
 逢真の身体はどろどろと溶け崩れ、ひひひ、と笑い声だけが響いた。
『"道理の通らねえ怪物"の恐ろしさを、教えてやるよぅ。言葉遊びの時間だぜ」
 そして現れたるは――これは? 一体!?

 それを形容するならば、『字が形を持ち覆い尽くした竜』といったところか。
 常にうごめく無数の『字』で覆われた竜らしき物体は、ぶーぶーとうなやく。
 はたして切り裂かれた獣や鳥の死骸もまた『字』に変わり、竜に集まる。
 死。毒。怒。刃。痛。怨。牙。爪。尾。魔。滅。怖。爆。炎。灼。裂。
 ありとあらゆる言語、ありとあらゆるかたちで刻まれた文字が竜に集う!
「"鏡言の字竜(ジャバウオック)"……!?」
「ひひひひ! さあどうした、喰ってみなぁ。斬ってみなぁ!」
 スナークが食らいつく。字竜はその身体を引き裂き雪崩を打った!
 斬竜の剣の一撃すらも"文字"に変え、滅殺概念を凝らせた牙が身を裂く!
「この私を、"同じ名を冠するモノ"で傷つける、など……ッ!?」
『悪ぃなァ、俺ァいま猟兵なんだ。が、てめぇもいつかただの《俺》と会うだろう』
 どこかから声がする。形なき死の声が。
『てめぇの話はそこで聞かせてもらうさ――さァ、"うみ"へお帰り』
 その声は暖かく、ゆえにこそおぞましく、そして安らかなものだった。
 サー・ジャバウォックは、何よりもそれをこそ畏れた。己を滅ぼす"かみ"の声を。

成功 🔵​🔵​🔴​

リア・ファル
オリヴィアさんと(f04296)

WIZ

挑もう。人間の悪意に、世の理不尽に
ボクが防御を受け持つから、攻撃は任せたよオリヴィアさん

『アンヴァル』も射出し『イルダーナ』で高速戦闘

奪われる五感

だが、ボクの回避はここからが真骨頂だ
「ディープアイズ起動、ハローワールドとリンク接続!」

アンヴァルやイルダーナから得られる視覚・音声情報や
音波探査での周辺情報、サーモグラフィ、微弱な電磁波、魔力感知を用いて
状況をリアルタイムシミュレーション、更に精度を上げて回避!
(情報収集、偵察、学習力)

切り抜けたら、『メビウス』を展開し、
さらにUC【多元交錯障壁】であらゆる攻撃行動を阻害する!

ここだ! オリヴィアさん!


オリヴィア・ローゼンタール
リアさん(f04685)と

悪意の奔流、ここで塞き止める!
リアさん、後ろ失礼しますね(イルダーナに相乗りする)

黒翼への対処はリアさんにお任せする
切り込んでくるヴォーパル・ソードを【見切り】、槍と剣のリーチ差を活用し、最大威力を発揮できないタイミングで斬り結ぶ(武器受け)
聖槍に宿る神通力(天候操作)で突風を起こし、ジャバウォックの【体勢を崩す】
その間もユーベルコードの詠唱を延々と繰り返し続ける

合図に合わせ、全霊の【至高天極星砲】(全力魔法・属性攻撃・限界突破)
輝ける純白の極光は、悪意の衣を穿ち貫き(貫通攻撃)【蹂躙】する
悪意に塗れし暴虐の竜よ、他世界への跳躍は赦さない!



●マリス・ブレイカー
 傷ついたサー・ジャバウォックの双眸が、ぎらりと不穏に瞬いた。
 リア・ファルとオリヴィア・ローゼンタールは、瞬間的な殺意に身を強張らせる。
 彼奴の纏う悪意の衣……ヒトのあらゆる悪感情を煮詰めた黒の鱗は、
 触れずして空気を汚染し、ヒトの心を惑わせる。まさしく悪意の奔流。
「何があっても、かの世界へ通すわけにはいきません……! リアさん!!」
「うんっ、ここで止めよう。人間の悪意に、世の理不尽に挑戦しよう!」
 リアはオリヴィアの言葉に力強くうなずき、愛機イルダーナを起動させた。
 オリヴィアはその後部座席にタンデムし、自律支援機アンヴァルが先行する。
「健気なお嬢さんがただ――しかし」
 サー・ジャバウォックの背中に広がる、夜の闇を思わせる禍々しき竜翼!
「その意思を穢し挫くことこそが悪意の力。たっぷりと味わわせてあげましょう!」
 そして空を舞う。その速度は、一瞬にして音を越えた!

 竜人形態に変貌したサー・ジャバウォックの武器はふたつ。
 すなわち人の五感を奪う竜の翼と、斬竜剣ヴォーパル・ソードである。
 悪意の力で増強されたその刃は、もはや空間すらも断ち切るほどに凄烈。
 オリヴィアがこの刃を受け持ち、リアが防御と機動を担当する手筈だ。
 しかしリアよ、忘れるなかれ! あの邪悪なる黒翼はその五感を奪い去る!
 見えず、聞こえず、触れず、何も感じない闇の中でキミはどうするというのだ!?
「――ディープアイズ起動、ハローワールトリンク接続……ッ!」
 おお、見よ。リアは暗闇の中で、優雅なまでにマシンを乗りこなした。
 たとえリア個人の五感が失われども、マシンが持つセンサ類は正常なまま。
 彼女はセンサが感知したありとあらゆる観測情報を自らに流し込み、
 見るのでも視るのでもなく、予測と演算によって命懸けのドッグファイトに挑む!
「なるほど、電脳の力を使えばそのような芸当も出来ますか。だがッ!」
「最強の猟書家よ、勝負ッ!!」
 振るわれる斬竜剣は、オリヴィアの縦横無尽の槍捌きによって阻まれる!
 聖槍はその清らかなる法力によって、邪悪なる人の悪意の力を跳ね除けた。
 さらに敵の斬撃予兆を読み、斬撃が最大速度に到達する前に弾くのである。
 ぐるぐると大きく回転した槍からは神風のごとき竜巻が束の間渦を生み出して、
 空を王のごとくに羽ばたく竜の翼を捉えた。サー・ジャバウォックは舌打ち!
「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな……!」
「その聖言、神の極光を生むつもりですか! なおさら見過ごせませんね!!」
 斬撃が苛烈さを増す。オリヴィアの全身はくまなく裂かれ血が舞い散った。
 リアは五感消失中であるがゆえに、オリヴィアの負傷度合いは観測不能。
 されど彼女は信じている。かの聖女ならば、役目を成し遂げることを。
 ガ、ガ、ガッ! と刃と槍とが打ち合う。黒と白とがDNA螺旋じみて交錯。
 亜音速の暴風のなかで、竜人と電脳の翼は混じり合い離れそしてぶつかる――!

 ……そして!
「見えた――ここだ! メビウス、全力展開! 多元干渉、最大出力!!」
「な、に……ッ!?」
 オリヴィアによって弾かれた一瞬の間隙、そこに無限の障壁が生まれた。
 次元を越えて展開された絶対の障壁は、もはや翼羽ばたき舞うことを許さぬ!
 されど敵もまた強大なる最強の猟書家、悪意の奔流は内側で渦を巻き、
 次元すらも分断するシールドを、力技によって突破しようとするのだ!
「――オリヴィアさん!!」
「輝かしきかな極光よ! 無窮の神威を纏い、万象滅尽の一撃となれッ!!」
 オリヴィアはカッと目を見開き、全霊の魔力を籠めた聖槍を投擲した!
 もがくサー・ジャバウォックに突き立った槍は、いわばビーコンである。
 おお、悪意を纏うものよ、空を見よ。そこに現れたる光の柱を見よ!
「――これは……!!」
「至高天の輝きは此処に至れり。悪意に塗れし暴虐の竜よ、滅びなさい!!」
 極星砲、到達――無限詠唱により増幅されし神の裁きが、世界を劈いた!
「お、おおおおお……私の鎧が、鱗が、魂が! 忌々しい白に染まる……ッ!?」
「――サー・ジャバウォック。キミは、人の善性の力を見くびりすぎた」
 白の輝きに飲まれて滅びゆく敵を睨み、リアは決然たる面持ちで言った。
「たとえどれほどの悪意がはびころうと、ボクらは何度でも高らかに歌うのさ。
 今を生きる誰かの明日のために――その祈りは、けして穢れることはないのだと!」
 もはや断末魔すらも極星の彼方に消え、その黒は世界より永遠に失われた。
 サー・ジャバウォック、ここにひとたびの討滅を見る。
 悪意纏いし怪物は、人の善性を信じる少女らの白によって討たれたのだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィオナ・ウンベカント
サー・ジャバウォック……
記憶はなくともわかる、彼は恐るべき強敵だと
だからこそ、彼を制したとなれば他の猟書家へ与える衝撃は大きいだろう

まずは竜人形態となった彼に対し、念動力による【衝撃波】を放つ
これは回避なり防御されるだろうが、承知の上だ
対応に意識を向けた所を【念動力】によって拘束する…これが本当の狙いだ
どれだけ恐ろしい怪物も、檻に入れてしまえばかわいいもの
…とは言え実力を考えれば、この拘束もそう長くは保たないだろう
逃げられる前に『愚者の火』にくべてやる

全てを突破されても、アリスランスを振るう限り負けはしない
例え五感を奪われこの身を斬り裂かれようとも、
ぼくの想像は必ず奴を刺し貫くのだから



●闇に陥れられようとも
 五感を奪う竜の黒翼、そして強化増強された斬竜剣ヴォーパル・ソード。
 人の悪意を鱗に変えて纏うことで、サー・ジャバウォックは力を手に入れる。
 それは空を征するもの――すなわち、竜の力。お伽話の怪物の力だ。
「…………」
 空舞う黒き影を睨めつけながら、フィオナ・ウンベカントは考えていた。
 彼女に過去の記憶はない。だが記憶ではなく、全身の細胞が叫んでいた。
 対手はまさしく『単独にて最強たる存在』であり、このまま戦えば生命はないと。
 フィオナの本能は、逃走を叫んでいた。懇願していた、とすら言ってもいい。
 動物的欲求が生存を選び、すぐにここから逃げ出すべしと命令を降していた。

 だが。
「――だからこそ、あれを制すれば大きなアドバンテージを得る」
 フィオナは理性で本能をねじ伏せた。どこかでも冷静で合理的な判断。
 フィオナに空を飛ぶ力はない。そのための翼もない。
 だが、空を舞おうが海を泳ごうが、それこそ姿を消そうが……"やり方はある"。
「さあ来い、サー・ジャバウォック。ぼくはここだ!」
「よい威勢です。我が恐ろしの剣に斬られ貫かれ死ぬがいい――!」
 サー・ジャバウォックは化け物の笑みを浮かべ、不規則な機動でフィオナに肉薄。
 これこそが彼女の狙い。敵は、"どれほど速かろうと接近せざるを得ない"。
 ならば、わざわざこちらから近づく理由もないというわけだ。
「――ふっ!」
 そしてフィオナは、アリスランスを振るい、穂先から衝撃波を放った。
 カウンターを狙った攻撃。音速にすら達した敵は、当然これを回避する。
 しかし、これはフェイントである。フィオナは念動力で敵を拘束――否!

「私を縛り付け、その間に攻撃しようとしていたのでしょう?」
「……!?」
「いい判断です。ですが私は、"それよりも疾い"」
 声は背後から。振り返ろうとしたフィオナの全身に斬撃が遅れて走る!
 サー・ジャバウォックは急加速し、すれ違いざまに切り捨てていたのだ!
 フィオナの五感は失われ、ただ痛覚と死の気配のみが彼女を蝕んだ。
 人は、恐怖に弱い。だからこそ闇を恐れ、光を求めてきたのである。
 見えもせず聞こえもしないなか、ただ痛みだけが来る恐怖はすさまじいだろう。
 それでもなお、フィオナは諦めなかった。戦うことをやめなかった。
「……ぼくはもう、キミを刺し貫く瞬間を想像し続けている」
「何?」
「ならばぼくのアリスランスは応えてくれる――想像を創造するために!」
 サー・ジャバウォックは振り返り再び斬撃を放とうとした、しかし!
 その身体は見えざる鎖に縛られたかのように、びくりと停止したのである!
(斬られながらも、拘束の魔力を放っていたのか……"斬撃で触れた私の剣に"!)
 然り。だがそれはかそけき拘束。サー・ジャバウォックならば一瞬で断てる。
 その一瞬さえあれば、死地に身を置く戦士にとっては十分なのだ!
「火を貸してあげよう――鬼火に灼かれ、滅びを知れ。サー・ジャバウォック!」
「……!!」
 周囲に生まれた青い鬼火が、渦を巻いてサー・ジャバウォックを包み込んだ。
 そして黒き鱗をトーチめいて燃やす。もはや、斬撃を放つどころではない。
「う、ぐおおおお……!! どこまでも勝利を諦めぬ執念、これこそが……!」
 サー・ジャバウォックは知った。死する前に味わったはずの屈辱を。
 そしてまた彼は理解するのだ――猟兵がなぜ、己らの天敵たるのかを。

成功 🔵​🔵​🔴​

水衛・巽
はじめまして猟書家殿
ああいえ、「妄想を秘密結社と言い張る結社長」殿でしょうか
できればお早めに現実を直視なさるのがよいのでは
いい大人がみっともないと言いますか大変痛々しいと言うか…

――と挑発し猟書家の注意を惹く
結界術で防壁を作成し、
見えない怪物は空気の揺れや風向、土埃等から第六感で予測
致命傷さえ避けられれば御の字です
被弾はまあ、覚悟で耐えきりましょう

見えない怪物の発動を確認次第、
高速詠唱からの式神使いで猟書家の背後に玄武を召喚
暗殺で頸部を狙った尾の一撃ののちUCでの拘束を試みます
棘には鎧無視も乗せましょう よく刺さりそうですし

ところで結社長殿
貴方に現実は見えたでしょうか



●怪物の目に映るもの
「――はじめまして、猟書家殿」
 水衛・巽は、サー・ジャバウォックと正面から相対し慇懃に一礼をした。
 が、その目は明らかな嘲りの色。サー・ジャバウォックは無言である。
「……ああいえ、"妄想を秘密結社と言い張る結社長"殿でしょうか?
 できればお早めに現実を直視なさるのがよいのでは、と私は思いますよ」
「ふ、ふふ、ふ」
 巽の容赦ない挑発に対し、サー・ジャバウォックは肩をすくめた。
「私の気を引こうとなさっているのなら、もう少し言葉を繰るべきですね。
 どうやらあなたは、スナークの真の恐ろしさをよく理解できていないようだ」
(……この程度の挑発で意を逸らせているなら世話はない、ですか)
 巽は即座に意識を切り替え、結果術を用いて怪物の襲撃に備えた。
 印を結び身構える巽……だがサー・ジャバウォックは、また肩をすくめる。
「お気づきでないのですか? "もう怪物は這い寄っていますよ"」
「――!!」
 巽はぞくりと背筋に悪寒を覚え、振り返った。その瞬間、肩口から鮮血!

 ……してやられた。
 自分が相手の注意を惹こうとしていたその時、もう攻撃は始まっていたのだ。
 架空の怪物、スナーク。その姿は不可視であり不定である。
 音もなく、一切の徴候なくして、巽の背後に忍び寄っていた!!
(ですが……まだ、終わりではない)
 巽は歯を食いしばり、牙ないし爪に抉られた傷の痛みを押し殺した。
 全身に脂汗が滲む。食らいつかれたということは、"食らいつかせた"ということ。
 見えない怪物があちらこちらへ逃げ回るのを懸念する必要は……ない!
「そちらも背後にご注意なさるべきでは? サー・ジャバウォック!」
「ほう」
 サー・ジャバウォックは振り返りざま、頸部狙いの尾の一撃を剣で弾いた。
 しかし弾かれたそれは、無数の棘と水の縄に変じ、サー・ジャバウォックを貫く!
「なるほど。怪物を使役するのは私だけではないようだ」
「……そういうことです。縛り穿て、玄武!」
「ですが!!」
 サー・ジャバウォックは無理矢理に棘を引き抜く。だが、巽もそうした!
 彼は食い込んだままの牙ないし爪を、傷が広がるのを承知で振り払ったのだ。
 両者の間合いが縮まる――斬竜剣と、宝刀が真正面から撃ち合った!
「この状況でなお私に向かってくる。実にいいですね、それでこそだ」
「……玄武!」
「!」
 再び襲いかかる玄武の尾。サー・ジャバウォックは貫かれた傷をかばいながら、
 これを回避せざるを得ない。巽はさらに斬撃を放つ。執念の一撃だ。
「油断は出来ませんな……!」
 サー・ジャバウォックは脇腹を裂いた斬撃の傷を抑え、にたりと笑った。
 怪物の目に映るもの。それは、己を討たんとする覚悟の猟兵の姿。
 双方手負いにてなお相対する。いずれも譲らぬ、これこそ真剣勝負……!

苦戦 🔵​🔴​🔴​

月凪・ハルマ
強敵。格上。いつもの事だ
だから、やる事は変わらない

ただ、全力を持って敵を討つ

◆SPD

まず先制対策
といってもそこまで特別なことはない
敵の動き、巨大化した剣の軌道を【見切り】、【第六感】で予測
必要なら【武器受け】で僅かにでも剣筋を逸らし【残像】で躱す
多少の傷は【激痛耐性】で耐える。3回までは回避に集中

凌ぎきったら【迷彩】で姿を消し、【忍び足】で
敵の周囲を駆け回りつつ手裏剣を【投擲】
その内の幾つかは急所狙い(【暗殺】)

同時に【錬成カミヤドリ】で複製した宝珠を
手裏剣とは別方向から撃ち込み続ける

とにかく足も攻撃の手も止めない
同時に敵の様子を伺い(【情報収集】)、隙を見て
破砕錨・天墜で【捨て身の一撃】を


有栖川・夏介
ここで見逃したところで、後に脅威となるなら、今この場で倒す他ないでしょう。
処刑人の剣を構え【覚悟】
「……刑を執行します」

敵が竜人となり空を翔るなら、その羽を焼いて墜落させるまで
【執行者たるトランプ兵】発動
敵の羽を狙い撃ち、地に落とす

もしも五感が奪われていても【第六感】や【野生の勘】でカバー。
処刑対象と定めたモノの首をはねる処刑人の本能のまま攻撃

地に落としきれなかったり、
再び空へと戻るようなら、高く【ジャンプ】し、処刑人の剣を振り下ろし地に落とす。
「大人しく地に伏せていろ」


アリス・レヴェリー
竜……?でも以前戦った帝竜達とはまた強さとは別の所ですごくイヤな感じがするわね、あなた
初動はまず後退して森の中で少しでも拓けた場所へと行きましょう。それまでに襲いかかってくる不可視のスナークについては……【第六感】での察知と、今攻撃されたら嫌なタイミングに『刻命の懐中時計』の結界を張ることで対処
目的の場所まで辿り着いたら、爆ぜる属性結晶【世界の雫】を辺りにばら撒いて、安全地帯をサー・ジャバウォックがいる方角への一本道に制限
残りの結界で身を守りながら【褪せぬ約束】を発動して、星の光を束ねたブレスでスナーク諸共巻き込んで彼に攻撃を行うわ
爆発を強引に突破してきた個体は尾や爪を振り回して仕留めましょう


メイスン・ドットハック
【SPD】
さすが最強だけあってシンプルに強いのー
じゃからこそ、こちらも全力で行かせて貰うのー

先制対策
二足歩行戦車に搭乗して参戦
初手で電脳魔術による戦車のホログラムデコイを大量発生させ、視界を攪乱
なぎ払いで全員消してくるタイミングを計って空中に飛翔して初撃を外す
追撃される前にミサイルや榴弾、LPL砲を撃って牽制し、時間を稼ぐ
どうしても防げない場合は、戦車自体を犠牲にする覚悟も

先制後、UC発動で帝竜ワームを召喚し、ヴォーパル・ソードを払う前に雷と薔薇のブレスを放ち、雷と呪いで足止め
そして予め離脱運用していたレーザー砲ユニットを迂回させて、レーザーブレードモードで敵の身体を貫く

アドリブ絡みOK


緋翠・華乃音
難しい戦いだな。
純粋な戦闘の難易度も勿論だが、戦術レベルの勝利が必ずしも戦略的な勝利には結び付かない……ということを実感するよ。

……いや、全く悪癖だ。
“考え過ぎる”というのも“考えもの”だな。


言葉を遊ばせている余裕は無い。
“必ず先手を打たれる”ということが分かっているのなら、それを基本に対策を立てるだけだ。

――即ち、回避。
防御しても下手に喰らえば追撃で戦闘不能になるのは目に見えている。
だったら躱すことに賭けるだけだ。

見えないといっても存在はする。
存在するのなら知覚ができる。
視覚、嗅覚、聴覚、そして第六感。

不視を『見切る』というのは別に矛盾していない。
全ては回避という最適解、そして反撃へ。



●竜の堕ちるとき
 BRATATATATATAT! BRATATATATATATATAT!!
「ちょこまかと飛び回って鬱陶しいのー、空を翔ぶのはこっちの仕事なんじゃがのー!」
 二足歩行戦車に搭乗したメイスン・ドットハックは、忌々しげに吐き捨てた。
 無数のホログラムデコイが一瞬で消滅、そこへミサイルと榴弾、ライフルを連射。
 だが攻撃目標――すなわち竜の翼を得て飛翔するサー・ジャバウォックは、
 恐ろしいほどに鋭い斬撃で弾幕を一蹴、メイスンが下がるより先に肉薄する!
 まさにその刃が二足歩行戦車の装甲を溶断破砕すると見えた瞬間、
 サー・ジャバウォックは空を見上げて何かを察し、翼はためかせ急カーブした。
 直後、さきほどまでサー・ジャバウォックが居た地点に光の柱が突き立つ。
「……外しましたか。予想以上に疾い」
 それは、地上から対空攻撃のタイミングを狙っていた有栖川・夏介の妨害だ。
 サー・ジャバウォックは狙いを変え、この油断ならぬ処刑人を殺しにかかる。
「こちらへ来ますか。ならば結構、地に落とせればそれでいい……!」
 猛スピードで飛来する黒き悪意の影を前に、夏介は覚悟を決めた。
 交錯――夏介は、まるで電気が落ちたかのように視界を闇に包まれた。
 そして猛烈な痛み。全身を切り裂かれたのだと気付くのには一瞬で十分だった。
(カウンターを、躱された……? だが……!!)
 闇の中では、音も、触覚も、何も感じない。完全な虚無があった。
 与えられるのは斬撃の痛みと死の這い寄る恐怖。人間が本能的に恐れるもの。
 夏介が頑強な精神を持つ猟兵でなければ、とっくに彼は戦意喪失していたろう。
 高速で夏介を切り裂くサー・ジャバウォックも、徐々にそれを理解した。
「闇に包まれなおも剣を構えるとは、見事な精神力。おみそれしました」
 降り注ぐメイスンの妨害射撃を乱暴に薙ぎ払い、サー・ジャバウォックは笑う。
「であれば……我が斬竜剣の本懐を以て、完全に両断するのみです!!」
 見よ。斬竜剣ヴォーパル・ソードがすさまじい速度で巨大化したではないか!
 あれをまともに喰らえば、夏介とて防御しきれずに両断抹殺必至!
「させるか……!」
 不意打ちのチャンスを伺っていた月凪・ハルマは、あえて姿を表した。
 そして嵐の如き斬撃をかいくぐり、さらに空から降り注ぐ弾雨にも紛れて、
 サー・ジャバウォックに肉薄、ほぼゼロ距離から手裏剣を連続投擲する!
「あんたみたいな強敵を、俺たちはもう何度も屠ってきた。今回もそうするだけだ。
 付き合えよサー・ジャバウォック。怪物ならおとなしく討伐されておけ!」
「よく気配を消すものです。だが――見えざる怪物ならば、私の手の内にもある」
「!!」
 侵略蔵書が開かれている。ぞくりと殺気を感じたハルマの背後から咆哮!
 それはまさしく、姿なき架空の怪物、スナークの致死的攻撃の前触れ……!

 その時、ハルマの背後を取った怪物の、そのまた背後に回り込む男がいた。
 不可視であるがゆえに不可知たる怪物を、その経験と感知能で捉えていた男。
「見えないといっても存在はする――なら、知覚も出来る。遅いな」
 緋翠・華乃音である。投擲されたコンバットナイフが怪物の首らしき部分を貫通!
『AAAAARGH!!』
「一度退くぞ。この場所では、相手にアドバンテージがある」
「――……仕方ないな」
 華乃音の言葉を受けたハルマは、舌打ちしながらも再び弾雨に紛れた。
 かろうじて五感の一部を取り戻した夏介もまた、メイスンの援護射撃に乗じる。
 サー・ジャバウォックは強敵。不可視の怪物も合わさればいよいよ難敵である。
 ならば、少しでも地の利を得てアドバンテージを狭めるほかにない。
 一転して、猟兵たちは刃と牙と翼から逃れる死の追いかけっこに囚われた!
「皆さん、こちらへ……!」
 そこで猟兵たちを先導したのは、予め後退していたアリス・レヴェリー。
 アリスは事前に用意していた『刻命の懐中時計』によって堅牢な結界を張る。
 しかしそれは畢竟、ユーベルコードで強化された斬竜剣を留めることはできない。
 たった12回の発動を制限された強固な結界すら、ヴォーパル・ソードは切り裂く!
「ブレスで怪物もろともサー・ジャバウォックを吹き飛ばします!」
「ならばこちらで足止めじゃのー、ドラゴンにはドラゴンじゃ!」
 メイスンは、ユーベルコード"薔薇の魔女よ、雷と共に去れ"を発動。
 かの帝竜ワームの細胞から培養したクローンをぶつけようとする……が!
「オブリビオンのまがい物などで、この最強たる私を止められると思いましたか」
 雷と薔薇のブレスを放つ帝竜ワーム培養体は、巨大剣により一撃で両断!
 しかし、これで時間が稼げた。アリスは竜体に変身し、星のブレスを放つ!
「消えなさい、架空の怪物……そして、悪意を纏う竜人よ!!」
「ぬるいッ!!」
 サー・ジャバウォックはスナークを囮兼肉盾として突貫させた。
 見えざる巨体がブレスを正面から受け止め、減衰されたものを斬竜剣で両断。
 しかしそこで、彼奴は気付いた。なぜならば一流の戦闘者であるがゆえに。
(攻撃を"引き出された"か……猟兵の気配が、消えている)
 然り。先の派手な連続攻撃は、ミスディレクションも兼ねたもの。
 華乃音、ハルマ、そして夏介の三人が、星の輝きに乗じて近づいていたのだ!
「判決は下った。大人しく地に伏せていろ、サー・ジャバウォック!」
「ぬう……!!」
 最初に突き立つは夏介の生み出した天からの光。それは神の振り下ろした槌の如し。
 翼を討たれたサー・ジャバウォックは、もはや回避も防御も出来なかった。
 そして忌々しき地上に引きずり落とされる。土埃が派手に舞い上がった!
「刑を執行します……!」
「私の首を! そう簡単に取れると思うなッ!!」
 土埃が霧散。巨大ヴォーパル・ソードが夏介の処刑剣を弾き、身体を裂く!
 いかに夏介が覚悟と本能で恐怖をねじ伏せているとは言え、物理的限界はある。
 血を撒き散らしながらたたらを踏む夏介。されどその目は死刑囚を睨んでいた!
「不可視の怪物はもう亡(な)い――ならば、捉えるのは容易い」
 BLAMN――華乃音の弾丸がゆっくりと飛来する。極度緊張による主観時間の鈍化。
 夏介への対処に迫られたサー・ジャバウォックは、弾丸の切り払いがコンマ秒遅れる。
 刃の守りをかいくぐった弾丸は、まずサー・ジャバウォックの肩を穿いた。
 そして黒き鱗を貫きカカカカカッ! と突き立つのは、ハルマの手裏剣である!
 同時に複製された宝珠が、なおも足掻こうとする四肢を地面に縫い止める。
「星の光がくれたチャンスだ、もう逃がさない」
(私が、標本のように縫い留められているだと……!?)
 サー・ジャバウォックはもがいた。だがもう脱出は叶わない。
 ならば翼を以て五感を奪うか。それも不可能――アリスの展開した障壁だ。
 白亜の竜は慈悲と憐憫をたたえた瞳で、悪に堕した怪物を見下ろしていた。
 その白こそ怪物が染め上げるべきもの。だがもう、斬竜剣は届かない。
「これで仕上げだのー!」
 メイスン! 空中高くから、ブーストを乗せたレーザーブレードを落下させる!
 まさしくそれは、怪物ジャバウォックを屠ったヴォーパルの剣そのものだ。
 連携によって不可避の間隙を晒した猟書家は、光の刃に貫かれ絶叫した!
「このような形で、最強たる私、が……!!」
「明日死ぬために今日を生きているつもりはない。これは道程だ」
 華乃音が静かに言った。
「これまでの数多の過去と同じように、当然のように滅べ。オブリビオン」
 断末魔――されどその雄叫びも、やがて光に飲まれて消えていく。
 かくしてサー・ジャバウォックに、またひとたびの滅びが訪れた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

レイニィ・レッド
狭筵サン/f15055

自分はヒーローじゃないです
でも そうですね
縄張りを荒されるのは嫌いです

初動、音をよく聞き狭筵サンの勘も頼り
致命傷だけは避けておきましょ
傷を受けるのは構わねェ
受けたら肉体を弾けさせ赤い雨に変化
降り注ぎましょう

…スナークの怪物
不可視といっても実体はある
なら雨が当たれば見える筈です
濡らしておきましたんで任せます
死なない努力はして下さいね

自分は『赤い雨の孤影』
ジャバウォックの背後に降り注ぎ
右手以外の肉体を再構成
そのまま仕掛ける

――、と見せかけ注意を引いたら
頭上に鋏を握った右手を降らせて
頭カチ割ってやりましょ

あの世界に繰り出そうってンなら
覚えておくことです

「赤い雨」には気を付けろよ


狭筵・桜人
赤ずきんさん/f17810

赤ずきんさんにとっては地元を狙う天敵でしたっけ。
だったら不要な戦いではないですね。
だってあなたはヒーローですから。

初動、先制攻撃から赤ずきんさんを【かばう】ことに集中します。
周囲を【呪詛】で覆い不可視でも敵の気配くらいは探りたいところ。
私自身も致命傷を避けるため飛び退くので
突き飛ばす形になっても怒らないでくださいね。

UC発動【電子改竄】。
“標的”へ落ちる雷を標に敵の位置を把握。【逃げ足】【時間稼ぎ】。
見えざる怪物は遠距離の敵を狙うようなので常に距離を取るようにします。
私が死ぬ前にはやく何とか!は・や・く!

彼には恩を売っておきたいんですよ。
無欲な人って扱い辛いんだから。



●その者ら、英雄にあらずして
『AAAAARGH!!』
「うっわ、なんですかいまの雄叫び。あれがスナークってやつです?」
 侵略蔵書より召喚されし不可視の怪物、架空のけもの――スナーク。
 それは不定であり不可視であり、それゆえに研ぎ澄ませねば感知も出来ぬ。
 当然、人並み程度の五感しか持たない狭筵・桜人には気配が読めなかった。
 彼に出来ることと言えば、目に見えない呪いをソナーのようにばらまくこと。
 そこに怪物が踏み込めば即座にわかる。あとは、身体を張るだけだ。
「……どうでもいいんですが」
 後ろに守られる形のレイニィ・レッドは、憮然とした面持ちで言った。
「自分はヒーローじゃねえんで。さっきの台詞は撤回してください」
「ええ~? この状況で何細かいこと言ってんですかあんた」
 桜人は心底うんざりした様子で言った。
「あなたはヒーローで、あいつは地元を狙う天敵。だからこれは必要な戦い。
 それでいいでしょ。だってあなた、"正しくないもの"が嫌いなんでしょ?」
「自分はヒーローじゃねえです」
「んもーヒステリーこじらせた小娘じゃないんだから、っとぉ!!」
 桜人は呪いに触れた気配を感じ、憮然としたレイニィを突き飛ばした。
 倒れ込むふたり。その頭上を、牙ないし爪がぶおんとえぐった気配がある。
「ほらね? ぶーたれてる場合じゃないんですってマジで」
「狭筵サン、アンタ自分に恩を売ろうとしてるでしょ?」
「いやだからそういう状況じゃ」
「いらねえですよ。自分、そんなのなくてもアンタには手を貸します」
 怪物の咆哮。正面から襲いかかってくる気配にレイニィが反応した。
 大鋏を広げ、牙ないし爪による斬撃を受け止める――仕損じれば死だが、成功。
『AAAARRGH!!』
「は?」
「だから、自分はアンタのこと損得勘定とかで見てないっつってんすよ」
 桜人は顔を顰めた。かばわれているこの状況と、レイニィの言葉に。
「細かいこと気にしてんのは自分じゃなくてアンタのほうですよ、狭筵サン」
「……はあ~!! もう厭ですねえ、ヒーローってのはホント!!」
「ヒーローじゃねえです」
「そういうとこですよっ!!」
 さらなる攻撃! 桜人はレイニィを引き戻す――自らは前へ。
 ぞぶりと身体を牙ないし爪が穿いた。血が噴き出す。レイニィは瞠目。
「無欲な人は扱いづらいんですよ。損得勘定で動いてください。さあ早く」
「……アンタのそういうとこは嫌いっすね」
「安心する言葉ですね!」
 レイニィは舌打ちをしつつ桜人と入れ替わり、大鋏で怪物を斬った。
 苦悶の雄叫び。だが浅い。やはり姿を捉えねば撃破は難しいか。
「――時間切れか? いや……まだですね!」
 レイニィは顔を顰める。大鋏が突き出された斬竜剣をかろうじていなした!
「私が棒立ちのまま戦いを眺めているとでもお思いでしたか? それは残念」
「いえ、近づいてきてもらって嬉しいですよ。サー・ジャバウォック」
「!!」
 サー・ジャバウォックは理解した。少年たちは最初からわかっていたのだ。
 怪物などに任せて、この男が高みの見物を決めるような手合でないことを。
 だから待っていた。怪物もろとも、この竜を打ち取れるチャンスを!
「さあ、雷雨が降るぜ。てめぇは正しいか?」
 どろり、とレイニィの姿が溶け崩れた。そして降るのは赤い雨。
 ……だけではない。いつのまにか、周囲をホタルめいた光が包んでいる。
 DOOOOOM!! そして雷! まさしく突然の雷雨が、スコールが降り注いだのだ!
「貴様!」
「そうです私ですよ! まあそうですよね殺しに来ますよねえ私を!」
 桜人は降参のポーズを取りつつバックステップをしようとした。
 だが着地は無様に失敗する。足をヴォーパルソードで駆られたためだ。
 痛みのうめき声はあげない。敵をいい気にしたくないからだ。
「ほらあ赤ずきんさん! 私死にますよ死んじゃいますよ! はやく、は・や・く!!」
『いちいちうるせえ人だなオイ』
「――スナーク!!」
 ジャバウォックは背後から殺気を感じ、不可視の怪物を襲いかからせた。
 だが、これはブラフだ。本命は、頭上から降り注ぐ大鋏を握った右手!
『あの世界に繰り出そうってンなら覚えておくことですよ、クソ野郎』
 大鋏を躱す――躱しきれない。胸部をばっくりと抉られ、鮮血が噴き出した。
 地面に突き刺さった大鋏を、肉体を再構成したレイニィが引き抜く。
 フードの下、ぞっとするように落ち窪んだ瞳がサー・ジャバウォックを睨む。
 たしかに彼はヒーローではない。では、なんだろうか。それは? 怪物? 否……。
「"赤い雨"には、気をつけろよ」
 あるいは怪物よりももっと恐ろしい、死神なのかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ネグル・ギュネス
【アサルト】
好きにやれ、後は何とかしてやる
とは言え隙は一瞬、其処を抑え込むのは俺の役目か

何度も、か──簡単に言ってくれる

巨大化から振り下ろすまでの時間は僅か
ならば【勝利導く黄金の眼】、最大稼働、未来を、1秒でも先を視る
振り上げ手放した瞬間、熱線を放つ銃でクイックドロウから、敵の手を狙い、剣を掴ませない、拾わせない

そして機械体、リミッター解除から最大加速のダッシュで切り込む
兎に角俺がやるのは、再度剣を持たせない事
近距離から剣を振るえ、覚悟を決めろ、勇気を切らすな、火を噴いてでもリミッター解除をし続け、傷を負っても密着し続ける


俺に出来るのは、そんだけだろうが!
死んでも動きを制して、好きにやらせん!


ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】
手段を選べる相手じゃない
相応に無理をするぞ、許せ
剣は俺が止める、あとは任せるぜ
"最強"なんざ、俺達で何度も仕留めたさ
そうだろ?

あの剣の振り回し、まともに許せば味方の被害がデカすぎる
ギリギリの勝負で、止めるっきゃねえな
戦場に入る前にニューロン【ハッキング】、サイバネオーバーロード
【ドーピング】でドラッグを噛み潰す

剣の巨大化を認めた瞬間、こっちも最速で動き始める
Void Link Start
ロックを解除、最速で最高の威力の為に──捧げる
剣の薙ぎ払い、それにぶつけるようにナイフを振るう
──改竄、開始
『サー・ジャバウォックは薙ぎ払う前に。ヴォーパル・ソードを手放した』
そして、過去は変わる


鳴宮・匡
【アサルト】


……手段は選べ、って言いたいところだけど
贅沢は言ってられないか
いいぜ、その代わり確実にやってくれよ
こっちも、確実に仕留めるから

ヴィクティムの動きに合わせて援護射撃
本体を狙ったところでさしてダメージがないか
回避されてヴィクティムのタイミングが合わなくなるだろう
狙うのは剣の切先だ
全長がある分、強い衝撃を与えて切っ先を弾けば
思ったように振り下ろせなくなるはず

……と言ったって、上手く行っても一瞬だ
だけどその一瞬で十分だと信じてるし
ヴィクティムが作った僅かな隙に、ネグルならうまくやるとも信じてる
だから、俺のやることは最後の一撃を
必ず、あいつにくれてやることだ

影を纏わせた魔弾で射抜く
外さないよ



●最強の狩り手

 最強の暗黒剣士。
 最強の殺し屋。
 最強の過去。
 最強の竜。
 最強の欲望。
 最強の魔王。
 最強の――。

 世界の危機が訪れるたび、"最強"は何度となく立ちはだかった。
 猟兵はそれを打ち砕いてきた。最強を討つ、最強の狩り手だ。
 サー・ジャバウォックはそれを知らぬ。
 最強に胸を張って挑む者らを知らぬ。
 ――強襲(アサルト)の名を持つ死神どもを、識らぬ。

「「うおおおおおおおおッッ!!」」
 血反吐を吐くような咆哮がふたつ、燃え落ちた森に響き渡った。
 それは、目を血走らせた ヴィクティム・ウィンターミュートと敵のものである。
 巨大化したヴォーパル・ソードと、漆黒の虚無で覆われたナイフのぶつかり合い。
 打ち合いのたびに過去が改竄され、剣は"手放されたこと"になる。
 だが恐るべきは最強の猟書家、彼奴は改竄の瞬間に"剣に手を伸ばしていた"。
 つまり、改竄される、剣を掴む、再び薙ぎ払う……のスリーアクションを、
 毛細血管がちぎれ筋肉が破裂するのも厭わずに繰り返し、拮抗しているのだ。
 もはや老紳士の余裕も挙措もない、それは生命の削り合いである。
(足りねぇ)
 麻薬のオーバードーズで異常加速したニューロンの中でヴィクティムは呟く。
(まだだ。まだ足りねぇ。もっとだ。俺の生命をくべてやる。もっと!!)
 敵は生命を捨てている。ならばもはや"生命を捨てる程度では足りない"。
 未来をくれてやる。安穏をくれてやる。歓びを、悦びを、喜びをくれてやる。
 ナノ秒ごとに全身を死の苦痛が襲う。視界が明滅し焼き切れそしてまた戻る。
 それでもまだ死ねない。何故だ? 己は許されていないから?
 ……違う。
(それでも死は御免だ。なにせ、"あいつら"がそれを拒んでいる)
 そのギリギリまで生命をくべる。心臓が悲鳴を上げる。目から血が流れる。
「漆黒ノ虚無ヨ!! マダ足リナイナラモット喰ラエ!!」
 不明瞭な音声。過去改変と現実の世界律とがきりきりと軋み合っていた。
「過去ヲ!! 変エロ!! 現在ガ届カヌホドニ!!」
「この、小僧……!! ここで死ぬつもりか!?」
「――"死ネナイ"ンダヨ」
 ヴィクティムは冷ややかな声で言った。幾十度目かに、剣が撃ち合う。
 再び、ヴォーパルソードが手から離れる。サー・ジャバウォックは掴もうとする。
 届かない。生命を削るチキンレースは、ヴィクティムが勝利した。
「死ヌノハ! テメェダ!!」
「うおおおおおッ!!」
 サー・ジャバウォックは悪意の鱗を纏おうとする。遅い! 後手も後手!
「させるか!!」
 狙い澄ませたクイックドロウ、ネグル・ギュネスが斬竜剣を弾いた!
 もはや拾いに行く暇もなし。サー・ジャバウォックは接近戦を強いられる!
「貴様の運命はもう定まっている! 俺たちが此処に来たからには!!」
 爆発的な速度で間合いを詰めたネグル、機構刀二刀による猛烈な斬撃!
 サー・ジャバウォックは徒手空拳。斬竜剣があればこの打ち合いを制したろう。
 竜翼によって五感を奪う暇もなし。血まみれの両手を刀となし撃ち合う!
「おおおおおおおおおッ!!」
 リミッター解除の負荷により、ネグルの片目が、カリキュレイトアイが爆ぜた。
 だが残る右目で、ネグルはしかと見定めている。目の前の敵の滅びの時を。
 もはや振り返らない。血を流し崩折れているであろうヴィクティムは顧みない。

 ――手段を選べる相手じゃない、相応に無理をするぞ、許せ。

 それを許した。受け止めた。そして自分はこの役割を選んだのだ。
「剣を奪えば! 私を殺せると!! 驕ったか!!!」
 サー・ジャバウォックの激憤を籠めた連撃! 拳がネグルの四肢を砕く!
 関節は火を吹き網膜上に無数のエラーメッセージ。すべてを無視する。
「俺に出来るのは、こんだけだ! ヴィクティムは役目を果たした!!
 だから俺も、てめぇには何もさせん! サー・ジャバウォック!!」
 サー・ジャバウォックは畏れた。この若者たちの実力を? 否。
 ならば連携を? それも否。脅威的ではあるがそうではない。
(なぜだ? なぜこの餓鬼どもは、こうまで生命を賭して私に挑む?)
 それは疑問。人類が何も見えぬ闇に魔を見出したような根源的な恐怖。
 "理解できないもの"への恐怖。向こう見ずな戦いへの原始的な疑問。
 理解できない。己らの間には因縁も、恩讐も、何一つとしてありはしない。
「付き合え、サー・ジャバウォック! 今際の際の死の舞踏だッ!!」
 二刀が首を狙い振るわれる。手刀でいなし、返す刀の裏拳を頭部へ。
 ネグルは顎を肩に密着させて打撃衝撃を殺す。同時に腰狙いの横斬撃。
 サー・ジャバウォックはかりそめの黒翼を盾めいて展開。皮膜が裂ける。
 ネグル、押し切る。……押し切る! 翼もろとも脇腹を裂いて刃が駆け抜ける!
「がはっ!!」
 理解できない。なぜだ。どうしてこうもこいつらは私を狙っている?
 戦略的価値? 有り得ない。猟兵の目的はあくまで世界を守ること。
 オウガオリジンこそが至上敵であり、だからこそ世界侵攻の隙があった。
 ならば、義憤か。目の前の男からはそれを感じる。揺るぎなき憤怒と義侠心を。
 だがあの、闇を以て己の剣を奪い去った小僧はどうだ。あれは、違う。
 あれはより虚無的――そう、纏う闇と同じく何もかもを諦めたニヒリズム。
 だとしても、否、だからこそ理解できぬ。なぜそんな敗残者が、ああまでして?

 サー・ジャバウォックは、ネグルの首を刎ねようとした。
 だが不可思議なことに、手刀は己が思った速度で走らなかった。
 何かがおかしい。手首を見る。大きな穴。とめどなく流れる血。
(撃たれていた? いつ?)
 あの小僧――ヴィクティムである――との剣戟合戦を思い返す。
 本来、自らの技量であればあの小僧の斬撃など一蹴できるはずだった。
 だが撃ち合うを余儀なくされた。まるで、"斬撃を誘われたかのように"。
 思い返す。音なくして、殺意すらなくして刹那に煌めいた火花。……弾丸。
(撃たれていた? あの時からすでに?)
 切っ先を包む弾丸の雷光はあまりにも刹那で、垣間見るには疾すぎた。
 何よりも正確すぎた。そしていま、四肢を穿つ穴。通り抜けた弾丸。
 痛みすらもなく。防御すらも出来ず。何も許さぬ無慈悲な――影のように。
 ……影。音もなく姿もなく、それはまるでスナークのように忍び寄っていた。
 サー・ジャバウォックの主観時間が無限に鈍化する。引き伸ばされる。
 走馬灯は極限の集中によって生まれる、最適行動を選ぶための悪足掻きだという。
 主観時間の鈍化はまさにそれ。そして見た。影の魔弾を放つもの。
 剣を撃ち合っている間も、ネグルが切り結んでいる間も、そいつは居た。
 鳴宮・匡。死神。影の使い手。最強の狩り手。ひとでなしの怪物。同類。
 瞳はどこまでも凪いでいる。殺意も憎悪も義憤も義務感も何もありはしない。
 ……まるで鏡のように。サー・ジャバウォックはそこに死相を見た。
 誰の? 己のだ。弾丸によって額を撃ち抜かれ、絶望する己の姿を。


 ――手段は選べ、って言いたいところだけど、贅沢は言ってられないか。

 ネグル、二刀を振るう。狙いは肩口。サー・ジャバウォックはクロスガード。
 だが畳もうとした竜の翼が根本から脱落する。痛みはない。傷口には影の蟠り。
 斬撃到達。肩口から腕が脱落する。掴み縫合しようとする。出来ない。
 つかもうとした指が吹き飛び、もう片方の腕もまた斬撃で斬り落とされた。

 ――いいぜ、その代わり確実にやってくれよ。こっちも、確実に仕留めるから。

 すべてはこの一瞬のために。幾度となく竜を、魔を、怪人を、王を滅ぼしたように。
 その目は数多の死を見てきた。そしてこれからも見ていく。
 匡は志半ばにして斃れる仲間たちの姿を幻視した。弾丸を放たねば"そう"なる。
 だが、"そう"はしない。合理的判断ではなく自らの意思によって。
 己が生き延びるならば、仲間もまたともに。それは子供じみたわがままだ。

 ――"最強"なんざ、俺たちで何度も仕留めてきたさ。そうだろ?

 匡は知っている。あの軽口の裏、少年が抱えた慟哭と恐怖を知っている。
 恐怖は己の裡にもある。死への恐怖。自己であれ他者であれ、喪失の恐怖。
 己は明日を求めていいのかという恐怖。……ねじ伏せる。指先は軽く。
 心は凪いでいる。信頼できる仲間がそこに居た。胸には思い出があった。
 外さない。外すはずがない。技能や状況の話ではない。意思の問題だ。
 己は"外さない"と決めた。『ならばそのようにする』のだ。
 世界も悪意も過去も何も知ったことか。その道を遮るならば、過去よ。退け。
(――あと少しだけ、俺に力をくれ)
 心のなかで願った先は誰に対してだろう?
 倒れかけた相棒か、倒れそうな悪童か、心通じ合わせた親友か、『悪』か。
 想う人か、慕ってくれる人々か、心残りになった人々か。あるいは、己自身か。
 戦いの雌雄を決するのは、技巧でも戦略でも膂力でも天運でもない。
 それらはすべて付け合せに過ぎぬ。勝利を呼び込むのは、すなわち。
(外さない)
 意思(エゴ)である。悪意をも憎悪をも妄執をも貫く、まっすぐな意思。
 影は放たれた。瞳に映った紳士の死相は現実となる。額を貫く弾丸。
「この、私が――!!」
「驕るなよ、最強。俺たちは、何度も狩ってきたさ」
 ダメ押しの斬首。驚愕と絶望に染まった首が、ごとりと地面を転がった。

 ……静寂が訪れる。
 もはや漆黒の虚無も、勝利見据えた眼光も、影もそこにはない。
「……動けねぇ」
「あれだけ無茶したなら、当然だろ」
 大の字に寝転がるヴィクティムを見下ろし、匡は嘆息した。
「終わったよ。お前らのおかげだ。ありがとな、ネグルも」
「……俺にはこれしか出来んからな。各々が全力を尽くしてこそのチーム、だろ?」
 冗談めかす相棒の言葉に、匡はゆるく笑った。笑うしかない。
 相変わらずこいつらはボロボロで、当然のように生命を削っている。
 無傷なのは自分だけ……いや。その目から、どろりとした血が涙めいて溢れた。
「帰ったらシャワーだな、まずは」
「お前はメディカルチェックをするところからだろ」
「全員そうじゃないか? だがまあ、いいじゃないか」
 ネグルは立ち上がり、ヴィクティムに手を差し伸べる。弱々しく握り返す手。
「帰ろう、事務所に。次の戦いが俺たちを待っているからな」
「……次はできれば、もう少し穏便なプランを頼むぜ。プランナー」
「努力はするがよ……」
 男たちは笑いながら森をあとにする。そこに屍はない。
 もしかするとその綱渡りは、明日急にぷっつりと終わるのかもしれない。
 ならばせめて、悔いなく。己の望んだ通りに、歩いていけるように。
 暮れていく陽のほうへ歩いていく彼らの背中は、どこか誇らしげだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月17日


挿絵イラスト