1
迷宮災厄戦⑲〜穿て、悪意の虚像

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#戦争
🔒
#迷宮災厄戦
🔒
#猟書家
🔒
#サー・ジャバウォック


0




●悪意の扇動者
「御機嫌よう。今回も集まってくれて感謝するよ」
 グリモアベースにある作戦会議室、招集に応じた猟兵たちに一礼したのはカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)。
 アリスラビリンスで起きている迷宮災厄戦……『ハートの女王が住んでいた城』と『ザ・ゴールデンエッグスワールド』の制圧により交戦可能となった猟書家、サー・ジャバウォックとの戦いを予知したのだと彼女は告げる。

「オウガ・オリジンの力を奪い他世界への侵攻を目論む猟書家の中でも、ヒーローズアースを狙うこの敵は最強と目されるだけの実力者らしい。難敵である事は間違いないけど、撃破が叶えば戦争の流れを大きく傾ける事が出来るだろうね。尤も――戦局全体にしても注意点が一つ」
 猟書家の戦力を削ぐ事は同時にオウガ・オリジンが力を取り戻す事にもなる。その結果オウガ・オリジンを撃破し損ねるような事があればアリスラビリンスはカタストロフに見舞われ滅びの運命を辿るだろう。猟兵と猟書家、そしてオウガ・オリジン……この三陣営の戦力の見極めが今回の戦争の鍵となる。

「その上でサー・ジャバウォックに挑むのなら、この敵も一筋縄ではいかない相手だ。侵略蔵書を使った搦め手だけじゃなく、斬竜剣を操る当人の戦闘力も破格と言っていい。更にはユーベルコードの絶対先制能力のおまけつきと来る」
 特に猟兵のユーベルコードに対し確実に先手を取ってくる性質――これまでの戦争に於ける幹部たちのそれと同等のもの――への対処は戦いの趨勢を左右する最初の関門となるだろう。仲間との連携、或いは装備や技能の活用が鍵だと告げてカタリナはグリモアを淡く輝かせる。
「相手はいきなり最強格。激しい戦いになるだろうけど……どうか、無事の帰還を」
 常より切実な響きを宿した声に送られ、猟兵たちは戦場へと転移していくのだった。


ふーみー
 当シナリオをご覧くださりありがとうございます、ふーみーです。
 遂に始まった猟書家との直接対決、最初の敵はサー・ジャバウォック!
 敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する事が今回のプレイングボーナス条件となります。
 それでは皆様の健闘をお祈りしています。
46




第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Battle Field ― 邪悪は燻り牙を研ぐ ―
「いやはや。よもや本当に私に挑む猟兵が現れようとは……」
 焼け焦げた森の中、立ち上がった男は一見して洒脱な紳士のようでもあった。
 だが相対すれば気付かぬ者は居ないだろう。男の瞳の奥に横たわる底知れぬ悪意に、そしてその身から滲み出す強烈な威圧感に。

「――我が侵略蔵書の司りしは見えざる悪意」
 左手の本を開けば、目に見えぬナニカが獲物の血を求めて唸りを上げ。
「――我が斬竜剣の示すは暴力の理」
 右手の青白い剣を軽く一振りすれば、刃と同色の炎が直線状の木々を灰に変える。
「絶望なさい。貴方たちの嘆きもまた、スナークの糧となるのです」
 猟書家最強を掲げる男はどこまでも傲岸に宣告する。
 戦いの火蓋は切られた。
 ――疑心暗鬼の怪物を操るオウガ、その邪悪の牙を砕け!
カイム・クローバー
随分と紳士然としてやがんな。やってる事はオウガ・オリジンの力をパクった盗人同然のクセによ。ま、別に構わねぇけどな。アンタをヒーローズアースには行かせねぇ。

巨大化した斬竜剣。区別する対象もねぇ。最初から三回攻撃だろ?
一回目は【第六感】で躱し、二回目は【見切り】で躱す。三回目で【残像】を用いて斬られたと思わせる【フェイント】。要するに慢心と油断を誘う訳だ。残像を残して本物の俺は魔剣片手に懐に潜り込むさ。
デカイ剣ってのは範囲と威力はデケェが、懐では思うように振れないモンさ。俺も剣を使ってるからそれぐらいは、な。
UCを交えて【二回攻撃】に【怪力】を用いて、シメに【串刺し】。
まだ踊り足りねぇぜ?来な!



●1st Round ― 死線の剣舞 ―
「随分と紳士然としてやがんな。やってる事はオウガ・オリジンの力をパクった盗人同然のクセによ」
 待ち構えるサー・ジャバウォック、この戦場で最初にその正面へと進み出たカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)が猟書家の斬竜剣とは対照的な黒銀の魔剣を抜き払う。
「ま、別に構わねぇけどな。アンタをヒーローズアースには行かせねぇ」
「物は言いようですな。お望みでしたら貴方の力も前菜代わりに頂くとしましょうか」
「ハ、言ってくれるぜ! やれるもんならやってみな!」
 不敵に笑う便利屋と慇懃な猟書家の軽口の応酬は不思議と噛み合うもので――二人の初動が重なったのも必然と称するべきか。
「その余裕に相応しい実力者である事を願いましょう。強き者である程、敗れた時の混乱と絶望もより深くなるというものです」
 鼓動にも似た魔力の共鳴が空気を震わせた時には既にヴォーパル・ソードは振り被られている。一瞬にして戦場の端まで届く程に斬竜剣が巨大化するのと青白い一閃が木々を斬り裂くのはほぼ同時。
 初太刀、最も情報が少ない段階で仕掛けられた奇襲――直感が警鐘を鳴らすままに姿勢を落とし、地形ごと薙ぎ払う暴虐を紙一重にやり過ごす。
「区別する対象もねぇ。最初から三回攻撃だろ?」
「自明ですな」
 一撃目の勢いに逆らわず自然に一歩を踏み出し、自身の攻撃が生じさせる慣性を受け流すように返す刃が振るわれる――その手は既に読んでいる。既に次の回避行動を始めていたカイムは地を蹴り、速度を衰えさせる事無く空を凪ぐ致命の斬撃を再び掻い潜る。
「分かっちゃいたがこの剣速、マジで目にすると恐れ入るな!」
「貴方こそよく凌いだものです。その強運、冥府で誇るとよろしい」
 二度目の斬撃を躱したカイムの身体は空中。猟兵が次の回避行動を取るに先んじて振るわれた三撃目はあろうことか更に加速する!

 為す術無く両断されたカイムの姿が掻き消える。ヴォーパル・ソードの刃を受けたからには猟兵と言えど最期は呆気ないもの――否。悪鬼の如き剛力を発揮しながらも手応えが“無さ過ぎる”事に気付いたのは猟書家最強と目される技量ゆえか。
「む――」
「――だが残念! あんた分かっちゃいねぇようだな!」
 反射的に視線を走らせる。発見が遅れたのは猟兵が自身の予測より更に内側へ踏み込んでいた為だ。黒銀の炎が描く軌跡に追いすがる視線は今まさに自らを間合いに捉えた猟兵の姿を映す。
「デカイ剣ってのは範囲と威力はデケェが、懐では思うように振れないモンさ。俺も剣を使ってるからそれぐらいは、な」
 三撃目を放った斬竜剣の巨大化を解き、体勢を整えて迎え撃つ。決定的な隙であろうとこのサー・ジャバウォックであれば一秒……いや、その半分もあれば十分に立て直せる。

 だが――黒銀の炎を纏う斬撃は、その0.5秒を許さない。

 ユーベルコード【死の舞踏(ダンス・マカブル)】、並外れた怪力から繰り出される超高速の連撃が刹那に無数の剣閃を刻む!
「グウゥッ……!」
「確かに勝負のツキも自慢だが、あんたを仕留めるのはこの剣の冴えさ!」
 連続攻撃の最後を飾る一撃が猟書家の身体を貫き、その段になってようやく巨大化の解除された斬竜剣の反撃をカイムは軽いステップで躱す。
「些か、見縊っていた事は認めざるを得ませんね。私も本気で臨むとしましょう……!」
「そうかい、こっちもまだ踊り足りねぇぜ? 来な!」
 紳士然とした気配は霧散し、返事代わりにサー・ジャバウォックが浮かべるのは邪竜そのものの獰猛な笑み。此処からこそが本番だと、両者の激突は更に加速していく!

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
特にあなたに恨みがあるわけでも、ましてやオウガ・オリジンに恩があるわけでもありません。
が……これまでの戦いでようやく平和を勝ち取った世界を荒らされる、というのは黙って見てはいられない、それだけです。

一度目は剣の軌道を『見切り』回避、二度目は『第六感』を頼みに回避、回避で耐性が崩れた後の三度目はおそらくあちらとしても本命、回避が難しいよう剣を振るうでしょうが、フィンブルヴェトの銃剣で『武器受け』、銃身に滑らせ受け流すようにして防ぎます。

近接戦闘ができないと言った覚えはありません。
巨大化した剣を振るったなら引き戻すまでに時間がかかる。3度目を防いだら即座に【凍風一陣】の早撃ちで撃ち抜きます。



●2nd Round ― 驕りを裂くは氷の刃、邪悪を穿つは氷の弾丸 ―
「特にあなたに恨みがあるわけでも、ましてやオウガ・オリジンに恩があるわけでもありません」
「ほう。ならば何が貴女をこの死地に立たせたと言うのでしょう?」
 大仰に肩を竦めるサー・ジャバウォックを前にしてもセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)の蒼氷の瞳が揺れる事は無い。
「……これまでの戦いでようやく平和を勝ち取った世界を荒らされる、というのは黙って見てはいられない、それだけです」
「素晴らしい精神性だ。その美しい正義感が踏み躙られる時、人々の心は更なる不安の闇に惑う事でしょう!」
 パチパチと音を鳴らす白々しい拍手が既にフェイク。――敵の持っていた斬竜剣は何処に行った?
「それでは無様に地を這う時間です。覚悟はよろしいですね、レディ?」
「生憎ですが、私は敗れる為に来たのではありませんから」
 黒竜の尾が斬竜剣を振るうというのも安い皮肉だ。最初から敵の一挙手一投足に意識を集中させていた射手の瞳がその奇襲を見逃す事も無い。
 刹那の差に一撃を躱す。巨大化した刃の纏う熱がセルマの肌を刺し、背後に並んでいた木々が薙ぎ払われる轟音が響く。
 ――猟書家の瞳に灯る嗜虐的な炎が見える。反撃の余地も与えず立て続けに放たれる二の太刀に備え、直感のままに身体を投げ出す。
 薄皮一枚。二の腕に付けられた傷が燃え上がる。……まだ腕は動く。問題無い。

 右手に握り直されたヴォーパル・ソードが最大速度で振るわれる。二度の回避で体勢を崩した猟兵は既にそれを躱せる体勢に無い。身を守ろうと構えるマスケット銃は、巨大化した刃の暴力を前にしてはあまりに心もとなく。
「最後まで諦めない姿、敬服に値します。その全てが無為に堕してこそ絶望も引き立つというもの――」
「――近接戦闘ができないと言った覚えは、ありません」
「は……?」
 セルマの愛用するマスケット銃、その先端に誂えられた刃はアックス&ウィザーズで名の知れた名剣を打ち直したもの。華奢な身体を叩き斬る筈だった巨刃は受け止められ、受け流したベクトルそのままに潜り込んだ先は猟書家の懐。
「『寒い』と思う暇も与えません――覚悟はよろしいですね、ジェントルマン?」
 銃剣アルマス、氷の如く研ぎ澄まされた刃が猟書家に突き立てられる。ユーベルコード【凍風一陣(イテカゼイチジン)】――超強化を施された冷気がサー・ジャバウォックの身動きを封じる。

 ――引鉄を引く動きは滑らかに。
 絶対零度の弾丸が、猟書家最強と目されるオウガの身体を撃ち貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナギ・ヌドゥー
猟兵として最強の敵に挑むは当然の事
書架の王、オウガ・オリジンをも倒さんとするオレ達がアンタに怖気る訳がなかろう。

武器の一つ『冥き殺戮衝動の波動』による暗黒オーラを纏う
そして周囲に膨大な【呪詛・殺気】を発する
あらゆる者を蝕むこの波動
例え見えない怪物でもこの波動には何らかの反応を起こす筈
【第六感】にて怪物の気配・殺気を感じ取り攻撃を【見切り】回避する

先制攻撃を凌げたら反撃
お返しにオレの呪獣を見せてやろう
UC「禍ツ暴喰」発動
この形態のソウルトーチャーは動く者を感知し喰らい付く
例え見えなくても攻撃の為に動けば【捕食】されるのだ
スナークごとジャバウォックを喰らい尽くしてやるぜ



●3rd Round ― 怪物たちの相剋―
「猟兵として最強の敵に挑むは当然の事。書架の王、オウガ・オリジンをも倒さんとするオレ達がアンタに怖気る訳がなかろう」
「ほう……?」
 言葉通り、ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)の目に猟書家最強を掲げるオウガに対する萎縮や恐怖の色は無い。それを見やるサー・ジャバウォックは却って面白がるように口の端を歪めた。
「成程、貴方の裡には並々ならぬ邪悪が秘められているようだ。――実に好ましい」
「抜かせ!」
 猟書家の一手を察知出来たのは異常の域にまで高められた第六感ゆえか。対するナギは具現するに至った己の殺戮衝動、あらゆる生命を蝕む暗黒の波動をその身に纏う。
(例え見えない怪物でもこの波動には何らかの反応を起こす筈……)
 周囲に放たれるのは絶大な呪詛と殺気。木々すら腐り朽ちる程の悪意が戦場を駆け抜け――不可視の怪物が、歓喜の雄叫びを上げた。
「ッ!」
 それは果たして牙だったのか、それとも爪だったのか。血に飢えた刃の気配は常人であればそれのみで命を奪われる程の狂気を溢れさせ、しかし同時に隠密性の優位を著しく損なわせる。
 見えざる一撃を紙一重に躱し、鋸刃の鉈で迎え撃ち、転がるように距離を取る。
「凌いだ……!」
 スナークの追撃より早く伸ばした左手が掴むのは呪詛包帯、勢いのままに引き千切るようにしてその制御機構を引き剥がす。
「お返しにオレの呪獣を見せてやろう」
「む……貴方が解き放ったソレは――」
 咎人の肉と骨より錬成されし呪獣、名をソウルトーチャー。主の血を啜った忌まわしき拷問兵器は更に悍ましい暴走捕食形態へとカタチを変え、それそのものが凶悪な呪詛と化した咆哮を世界に響かせる。
「さぁ喰らい尽くせ! 魔を、聖を……全てを!」
 ぎょろり、と呪獣の剥き出しの肉から生じた無数の眼球が一点を睨む。悪意の怪物が一直線に飛び掛かるのと、罪業の呪獣が唸りを上げて襲い掛かるのはほぼ同時の事だった。
 背筋の凍てつくような絶叫が重なり、喰らい合う怪物たちの散らすドス黒い体液は呪詛となって地面を穢していく。
「スナークは虚構から生まれた疑心暗鬼の怪物という触れ込みだったな」
「……ええ、その通りですとも」
 ナギの振るう鉈を斬竜剣で受け止めた猟書家の瞳によぎるのは警戒の色。スナークを制御しながらソウルトーチャーとナギ、その両方へ意識を割かねばならないのだ。オウガの動きは守勢に回り、その分だけナギの攻撃は苛烈さを増していく。
「それなら――実在した悪意を煮詰めて生まれた罪業の呪獣と、真に脅威たり得るのは果たしてどちらか。一つ比べてみようじゃないか!」
 一瞬の残像が反応を遅らせ、力任せに叩き込まれるのは怨鉈の一撃。防御の上からサー・ジャバウォックの身体を押しやった先は怪物どもの喰らい合う闘争の只中。
「グ、――ッ!」
 苦鳴を噛み殺したのは矜持ゆえか。呪詛に染まった幾多の爪牙が骨にまで食い込み、猟書家の身体を引き裂いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第一『疾き者』忍者
一人称:私 のほほん
不可視の怪物ですかー。関係ありませんねー。
もとより視覚に頼らぬ私ですからー。見えぬだけで、音や気配、まして動くときの風は消せるものではありません。
【第六感、ダッシュ、見切り、オーラ防御】を使用して、近づきましてー。
あとは、出番ですよ。『侵す者』。

※人格交代※
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
『わしら』の連携は、何も両者とも姿を現すだけに在らず。
最適な者に素早く交代するのもある!
指定UCを、『四天霊障』で発動させる。不可視の意趣返しとなるかの。
絶望などしてやるものか。
ははは、世界を守る悪霊たちがいても、よかろう?



●4th Round ― 怪物たちの相剋―
「息もつかせぬ……と言う訳ですな。ええ、この私を討たんとするなら手段を選べぬも道理でしょう」
「猟書家最強は強がりもお上手なようですねー」
 猟兵たちとの戦いで決して浅くは無い手傷を受けたサー・ジャバウォックの前に回り込んだのは馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)。無造作に放った棒手裏剣で斬竜剣を振るう手元を狂わせ、両者は一度弾かれるように間合いを開ける。
「果たして強がりかどうか、試してみますかな?」
 サー・ジャバウォックが開くは右手の侵略蔵書「秘密結社スナーク」。見えざる怪物がカタチを為し、獲物に襲い掛からんと殺気を滾らせる。

 ――その気配を、義透は明確に感じ取っていた。

 振り下ろされたのは熊の爪か。食いついてくるのは蛇の牙か。幾度となく振り降ろされるのは蛸の八脚か?
(これはー……なまじ全貌を掴もうとすると逆効果の類ですねー)
 常人であれば何に襲われたかも分からぬままに惨殺されていたであろうそれを曲がりなりにも凌げたのは義透の持つ一つの“特色”ゆえか。
「スナークは架空にして見えざる怪物……ですが貴方の動きはまるでスナークを視ているかのようだ」
「不可視の怪物ですかー。関係ありませんねー」
受けた傷は深く、しかし致命傷は避けて敵の眼前まで距離を詰めていく猟兵の姿に掠紫色の瞳が小さく見開かれる。
「もとより視覚に頼らぬ私ですからー。見えぬだけで、音や気配、まして動くときの風は消せるものではありません」
 そんな種明かしも注意を逸らす為のフェイク。気付けば血みどろの猟兵の身体は既に標的を間合いの内に捕えている。

(ここまで来れば上出来でしょうー。……あとは、出番ですよ。『侵す者』)
(応とも!)
 それは多重人格者である“彼ら”の間だけのやり取り。内なる声が応えると同時、義透の存在もまた切り替わる。

「『わしら』の連携は、何も両者とも姿を現すだけに在らず――」
 猟書家最強と目されるオウガはその変化に気付く。だが『疾き者』たる人格の詰めた必殺の間合い、最早逃れる術は無い。
「――わしの一撃、受けきれるか!」
 発動するユーベルコードは『侵す者』に対応する破壊の一撃、【それは火のように(シンリャクスルコトヒノゴトク)】。馬県義透を構成する四人、かつてオブリビオンに生を奪われた亡者の無念の結集たる霊障はいま地形すら砕く破壊力を帯びて叩きつけられる!
「ッ……この、力は……!?」
 負の思念であれど悪意に非ず。悪霊の振るうチカラなれど邪に非ず。或いはその事実こそが存在の根幹を撃ち抜いたように、防いだ筈のオウガの体勢が大きく揺らぐ。
「ちっとは効いたろう? 絶望などしてやるものか」
 死を超え、終わりを越えて猶も歩んできた男は笑う。現在の自らを構成する肉体を刺すような痛みに襲われながら、それでも勝ち誇るように笑ってのける。
「ははは……! 世界を守る悪霊たちがいても、よかろう?」

成功 🔵​🔵​🔴​

楊・宵雪
序盤は回避に徹し好機を伺う
オーラ防御纏い、空中浮遊でランダムな速度と軌道で回避
そのようにして敵の攻撃パターンや動きの癖を分析

敵のUCでの翼攻撃に合わせ残像で回避しこちらもUCで反撃

五感を奪われていた場合に備え
接近しているであろう敵の攻撃タイミングに咄嗟の一撃で合わせることと
範囲攻撃で攻撃範囲拡大し離脱困難にしたうえで
誘導弾で照準をオート化しておく



●5th Round ― 死線上の踊り手たち ―
「ずいぶんとお疲れのようね、サー・ジャバウォック。そろそろ休ませてあげましょうか?」
「まさか、レディに気を遣わせる訳にもいきますまい。此処からが本番であると教えて差し上げましょう」
 楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)の妖艶な流し目を向けられたオウガは、それでもなお猟書家最強は健在であると示すように慇懃に返す。その身が人間の悪意を纏う竜人に姿を変えれば、楊もまた舞うようにふわりと宙へ豊満な肢体を浮かばせた。
「ならば舞踊に興じるとしましょうか」
「望ムトころデす。貴女はどこマでついてこラレますかナ?」
 人外に変じた貌の吐く言葉が金属を擦り合わせるような声と共に響き、次の瞬間には黒き悪意を纏った斬竜剣が楊の眼前に迫る。
 ――その刃が振るわれる初動を抑え込むように阻んだのは瞬間的に拡張されたオーラの障壁。力尽くに破られるまでに一秒、そしてその一秒の間に楊の身は風に揺れる一葉めいて危険域を逃れている。
「力強い殿方も嫌いではないけれど……」
「気ガ合イますねレでィ。狡猾な女性も嫌いではアりマセんよ?」
 剣の間合い、緩急付けた攻撃のリズム、千変万化の太刀筋。細胞を焦がすような読み合いと共に繰り返される攻防は死線上での舞踏にも似て、その全てが敵の命を刈り取る為の布石。
「名残惜しイですが幕ヲ引くとしマシょう、レディ……!」
「ッ――!」
 幾度とない交錯の中で速度を引き上げた竜人が瞬時にして繰り出す無数の斬撃、勝負を決めに掛かったように見えるそれはフェイク。不意を打つように広げられた黒翼は触れたものの五感を奪う呪詛を帯び――直撃を受けたかに見えた楊の姿はそのまま二つに分かれて消える。
(……すこし、奪われたみたいね。でも……!)
 残像を囮に黒翼を躱し、更にはオーラの守りが呪詛を阻む。障壁の先に掠めたような接触でさえ視界が色を喪うのを感じながら、楊は勝利の確信と共に80の狐火を生み出す。
「わたくしたち本当に気が合うのかしら? ええ、フィナーレとしましょうか!」
 己の声もはっきりとは聞こえず、それでも戯れるように微笑を浮かべる。蝕まれた五感が辛うじて敵の接近を感じる。問題無い――既に照準は終えている。
 黒翼が再び楊を捕えるよりも猶速く。花開くように散開した狐火がサー・ジャバウォックを取り囲み、悪意の竜人を焼き焦がす!

成功 🔵​🔵​🔴​

御剣・刀也
遠距離戦もできるのか
遠、近、中と隙は少なさそうだ
こういうオールラウンダーは厄介だな。ま、それでも俺のやることは変わらない
前に出て、斬り捨てるだけだ

侵略蔵書「秘密結社スナーク」による遠距離攻撃が先にやってくるのはわかっているので、勇気で被弾を恐れず、ダッシュで一気に間合いを詰め、避けれるものは第六感、見切り、残像で避けつつ、避けきれないものは武器受けで弾き、一気に距離を詰めて、捨て身の一撃で斬り捨てる
「近付く迄は苦労したが、ここは、俺の距離だ!」



●Final Round ― 見えざる悪意を討つものは ―
(遠距離戦もできるのか……遠、近、中と隙は少なさそうだ)
 煌めく日本刀を手に御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)の見据える先、猟書家最強を掲げるオウガは満身創痍なれど存在感を一切綻びさせる事無く立ち聳える。
「立ち尽くしているだけでは闘争とは言えますまい。迷い込んだのであれば見逃して差し上げてもよろしいですよ?」
「白々しいな。いずれにせよ、そう待たせはしない」
(こういうオールラウンダーは厄介だな。ま、それでも俺のやることは変わらない)
 隠しようもない殺気を滲ませながら嘯くサー・ジャバウォックに憮然と返し、刀也は無造作に一歩を踏み出す。
(――前に出て、斬り捨てるだけだ)

「猪突猛進、勇ましい事です。しかしご存じですかな? 戦場ではそういった勇者から真っ先に散っていくのだと!」
 サー・ジャバウォックが謳えばその手に収まる侵略蔵書「秘密結社スナーク」がひとりでに開き、不可視たる架空の怪物が解き放たれる。
「やれるものならやってみろ!」
 この刃が猟書家を斬り裂くよりもスナークの方が速い。百も承知だ。刀也の疾駆が勢いを緩める事は無い。
 展開した残像を叩き潰したのは鬼腕の一撃か。足元を揺るがす振動を感じながら、更に一歩間合いを殺す。
 間断なく襲い掛かるのは毒蛇の牙か、猛禽の爪か、邪竜の翼か。目に見えぬ攻撃の数々は幾多の怪物に群がられているのかと錯覚する程で、その脅威を振り払うたびに刀也と猟書家の距離は縮まっていく。
 本能がけたたましく警鐘を響かせる。反射的に振るった刀はぶちまけられた毒液を断ち切った。飛沫を浴びた肌が刺すような痛みを訴える。まだ進める。斬るべき敵はもはや目の前に。
「ッ……馬鹿な、速――」
「――侮るなよオブリビオン」
 サー・ジャバウォックが見誤るのも無理は無い。不可視の怪物、見えざる悪意から一方的な攻撃を受けて猶突き進む刀也の脚が一度たりとも止まらないなど、猟書家最強のオウガをして予期できるものではない。
 迎え撃とうと斬竜剣を握る手に力を込める。――遅い。このオウガはまだ、刀也が不可視の怪物を突破した理由に気付いていない。
「近付く迄は苦労したが、ここは、俺の距離だ!」
 ユーベルコード【雲耀の太刀】――ありったけの力を込めた捨て身の一刀が振るわれる。
 理解を拒むように猟書家の瞳が一度瞬いた。防ごうとしたヴォーパル・ソードは一瞬の抵抗を残すのみ。
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せんッ!!」
 獅子の雄叫びが空気を震わせる。
 幕切れは嘘のように呆気なく、斬竜剣同様に両断されたオブリビオンは末期の痙攣を最後に消え失せた。

 その脅威を解し、されど臆する事無く。
 ――立ち向かう人間の勇気こそ、目に見えぬ怪物を討つ最大の武器なのだ。

―― 猟書家サー・ジャバウォック、撃破 ――

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月18日


挿絵イラスト