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迷宮災厄戦⑲〜黒翼の勲爵士

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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「とうとうここまで来ましたか」
 その男は落ち着いた様子で、開いていた本を閉じた。
「私が仮に倒れれば、オウガ・オリジンは力の一部を取り戻します。同様に、私を含む六名の猟書家、そして書架の王。全てを倒してしまえば、彼らはオウガ・オリジンに手も足も出なくなるというのに」
 それでも――出来る限りの希望を掴みたい。薄氷の上を歩くかの如く、一歩間違えばこの世界そのものを失いかねない極限の状況で、常に選択をし続ける。それが猟兵というものだ。
「ならばお相手いたしましょう。彼らにはせめて、戦いながら悩み続けて頂くといたしましょう」
 猟書家『サー・ジャバウォック』はそう言って、猟兵達を待ち構えるのであった。

●黒翼の勲爵士
「皆様! とうとう猟書家の一人へと到達いたしましたわよ!」
 エリル・メアリアル(孤城の女王・f03064)が猟兵達へ向かって叫んだ。
 その日、猟兵達は『ハートの女王が住んでいた城』及び『ザ・ゴールデンエッグスワールド』の制圧を完了させた。
 これにより、猟書家『サー・ジャバウォック』へ攻め込むことが可能となったのだ。
「先日から申し上げている通り、猟書家はオウガ・オリジンの力を奪っていますわ。戦力が失われれば、その分オウガ・オリジンの力が増してしまう……それはこの世界を守ることが難しくなっていく、ということですわ」
 エリルが再確認するように猟兵達を見る。確かに、猟書家達を放置すれば、オウガ・オリジンを倒すことは容易となる。だが、そうなればこれまで平和へと導いてきた世界に、新たな敵が侵攻してしまう。
「でも、行きますわよね? オウガ・オリジンがちょっとやそっと強くなったところで、皆様の力でねじ伏せてしまえばいいんですものね!」
 強い信頼を寄せてエリルはそう言った。

「猟書家はオウガ・オリジンの力を取り込んだだけあって、非常に強力になっていますわ。そのうえで、サー・ジャバウォックは猟書家中最強……。少なくとも敵からの先制攻撃は免れないと考えてくださいまし」
 エリルが念押しするかのように告げると、言葉を続ける。
「手に持つのは侵略蔵書『秘密結社スナーク』、そして斬竜剣ヴォーパル・ソード。どちらも強力な武器として行使してくるようですわね」
 『秘密結社スナーク』は、不可視で架空の怪物を呼び出す能力だ。スナークは架空であり、全てが虚構。であるが故に、敵の動きを読み取ることは難しいと考えられる。防御の手段等を考えることが重要だろう。
 続けてヴォーパル・ソードは武器を巨大化させて、戦場内の全員を攻撃する。その剣速は凄まじく、単独で行動するサー・ジャバウォックにとって制約は無意味。一度に3回もの攻撃を仕掛けてくるはずだ。また、戦場ほぼすべてを範囲に収める程巨大化するため、範囲外へ逃げるということも難しいだろう。
「そして最後が、竜人形態への変身ですわ!」
 その名はプロジェクト・ジャバウォック。人間の『黒き悪意』を纏う変身術であり、ヴォーパル・ソードの威力が増強される等、様々な強化が施される。
「けれど、一番注意しなくてはならないのは……その翼ですわ!」
 エリルが警告するかのように告げる。
「竜人形態となったサー・ジャバウォックの黒翼に触れてしまえば、なんと五感全てが奪われてしまうようなんですのよ!」
 五感とは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚のこと。その全てが奪われれば、敵の攻撃を見ることも聞くことも出来ないまま、一方的に攻撃をされてしまうだろう。
「どれも非常に危険な技ですわ。しっかりと対策をして、臨んでくださいまし!」
 そう言って、エリルのグリモアが輝き始めた。

 猟書家との戦いが始まり、いよいよ迷宮災厄戦が正念場を迎える。
 どう戦い、どう守るか。猟兵達は常に選択を続ける――。


G.Y.
 こんにちは。G.Y.です。
 とうとう猟書家との対決です!!

 今回のプレイングボーナスは、敵の先制攻撃ユーベルコードに対処すること。
 攻撃方法はオープニングに記載していますので、よくご確認いただいた上で対策をプレイングに盛り込んでください。
 猟書家中最強というだけあり、少々判定もハード気味にさせていただきます。

 それでは、皆さんの素晴らしいプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

荒谷・ひかる
とてつもない強敵のようですね……
これは、わたしも覚悟を決めなければいけませんか。
行きましょう、精霊さん達。

先制攻撃に対して、まずは全力で守りを固める
大地、草木、氷の精霊さん達にお願いし、土を隆起させ草木で根を張り、更に氷で補強したシェルターを作成し閉じこもる……と見せかけて、わたし自身は更にその下、地下へ穴を掘ってもらい避難
シェルター部分は事実上の囮です

そして反撃で【風の精霊さん】発動
不可視の風の精霊さん達、総勢415体を召喚
鎌鼬や体内に侵入しての自爆で一気呵成に畳みかけてもらいます
万一わたしが五感を奪われたとしても、精霊さん達は独立した意思があります
ですから、彼らなら問題無く戦闘続行可能です



 サー・ジャバウォックはその場で静かに佇んでいた。
 ぴくりと眉が動き、顔を向ける。目線の先には、猟兵達がいた。
「来ましたか」
 サー・ジャバウォックは一言だけ呟いて構える。それだけで、圧倒されそうなオーラを放っている。
「とてつもない強敵のようですね……」
 荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)はサー・ジャバウォックと対峙して改めてそう認識する。だが、これで引くわけにはいかない。
「これは、わたしも覚悟を決めなければいけませんか……」
 なぜなら、彼女は猟兵なのだから。
「行きましょう、精霊さん達」
 ひかるが杖を掲げる。数々の精霊の力が、彼女を巡りはじめた。

「最初から全力で行かせて頂きますよ。……プロジェクト・ジャバウォック」
 その言葉とともに、サー・ジャバウォックの周囲に黒く澱んだ力が渦巻き始めた。
「あれが、人の悪意……!」
 その『悪意』を身に纏い、サー・ジャバウォック竜人形態へと姿を変えてゆく。さらに、手にした剣がより一層禍々しさを増していることを、ひかるはひしひしと感じていた。
 ばさ、と大きく翼を広げると、ひかるへと狙いを定める。
「お願い、精霊さん達!」
 ひかるが精霊達に願いを籠める。おそらく敵は暴風のような勢いで迫りくる。回避は不可能。防御を固めるほかないと、ひかるは判断した。
 その願いを叶えるべく、ひかるの周囲の地形がこんもりと丘のように盛り上がってゆく。土が隆起し、草木ががっちりと根を張った。さらに氷で硬度を増せば、天然のシェルターの完成だ。
「それで守れるとでも思いましたか」
 サー・ジャバウォックが翼をはためかせた。大地を抉るほどの激しい速度で、シェルターを根こそぎ巻き上げてゆく。さらにダメ押しでヴォーパル・ソードを振れば、土も根も、まるで砂のように細切れに散っていった。だが。
「……いない?」
 そこに、ひかるの姿はなかった。仮に細切れに出来ていたのなら、剣に手ごたえがあったはずだ。
「かき回しちゃおう、精霊さん達!」
 ひかるの声が響く。それは、地下からだ。
「しまった!」
 サー・ジャバウォックが足元に目を落とす。そこにはさらに地中深くまで掘られた避難場所があったのだ。
「あれは囮……! おのれ!」
 だが、距離を取るにも遅い。既に415体もの精霊達にサー・ジャバウォックは取り囲まれていたのだ。
「お願い!」
 不可視の精霊達が逆巻く風で真空を作り出す。それは鋭い刃、すなわち鎌鼬となって翼を引き裂いた。
「ぐぅっ!」
 さらに、精霊はサー・ジャバウォックへの体内へと侵入すると、中で破裂し、体内をズタズタに切り裂いてゆく。
「ごほっ……!!」
 サー・ジャバウォックの口から大量の血が噴き出した。
「このままではいけませんね……!」
 サー・ジャバウォックが精霊を操る本体……すなわちひかるへと目を向けた。
「わたしの五感を奪ったところで、精霊さん達は止まりませんよ。皆さん意志があるんですから」
 ひかるが堂々と言い返す。
「くっ……」
 この場は不利と判断したか、サー・ジャバウォックは剣を収めると、ここからの離脱を最優先に、一気に飛翔する。
「してやられましたね……ごほっ!」
 空中でサー・ジャバウォックが呟いた。
 猟書家との対決は、猟兵達有利で幕を開けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
確かに、倒してしまえばアリスラビリンスを救うのはより困難になるだろう。…だが、ここで見逃せばヒーローズアースへの危険も大きい。

アームドフォート展開、四方へのミサイル爆撃を行い、範囲攻撃。
不可視なれど、存在しない訳じゃない。なら、爆炎の中を動けば見つけられる…。
周囲へ情報収集を行い、スナークの動きを見切りガントレットで武器受け、カウンターの『鎖縛魂・針金』発動。スナークに対して鎖を突き刺し、生命力吸収、支配。スナークを操縦し、逆にサー・ジャバウォックを襲わせる。

迷うのは後だ。今は、目の前の敵を倒す事だけに、集中すれば良い。
スナークを囮に、爆炎に紛れクイックドロウ、自動拳銃で鎧無視攻撃。



 猟書家達はオウガ・オリジンの力を奪っている。その力をオウガ・オリジンが取り戻せば、それだけ力が増してしまう……。
 テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)はそんな予知の内容を思い出し、ぽつりと呟いた。
「確かに、倒してしまえばアリスラビリンスを救うのはより困難になるだろう……」
 正面には猟書家『サー・ジャバウォック』。彼女を迎え撃つべく、まさに今、その手の本を開こうとしていた。
「だが、ここで見逃せばヒーローズアースへの危険も大きい」
 ならば、テリブルは戦う。アームドフォートを展開し、ミサイルを発射した。
「秘密結社スナーク」
 サー・ジャバウォックの周囲に、異常な気配が蠢いた。それこそが不可視の怪物『スナーク』であろう。スナークはテリブルの放つ爆撃の中をものともせず、まっすぐ、あるいはうねりながらテリブルへと駆けてゆく。
「不可視なれど、存在しないわけじゃない……」
 だが、テリブルの狙いは別にあった。揺らめく爆炎が、歪んだのだ。
「そこかっ!」
 テリブルが腕を差し出す。ガントレッドに斬られたとも殴られたとも違う、激しい衝撃が走る。
「あまり使いたくは無いが……!」
 その衝撃に向け、ガントレッドが鎖を撃ち放つ。鎖は何もないところでぶつかり、先端が魔蟲となって消える。これは、今『そこ』にスナークがいる証拠であった。
「これで……!!」
 魔蟲がスナークの脳を……刺激しているのか?
 手応えがあるようで無く、無いようで、ある。何もかもが未知で虚構の怪物なのだ。それでも通用すると信じ、テリブルは鎖を放つ。
「行けッ!!」
 テリブルの号令にあわせ、何かがサー・ジャバウォックへと向かってゆく。
「迷うのは後だ。今は目の前の敵を倒すだけに集中すれば良い」
 スナークと共にテリブルが駆ける。だが、鎖の反応が消えた。
「……!?」
 テリブルの放った爆炎の奥……サー・ジャバウォックが本を閉じたのだ。スナークが支配されたことに気が付いたのか、それとも偶然か。しかし、テリブルは止まらない。
「だが、やることは一つ決まっていると言った!」
「決まっていようと、やらせはしません」
 再びサー・ジャバウォックが本を開こうとする。距離が縮まった今、再びスナークを呼び出されては避けることも守ることも出来ない。
「ちぃっ!」
「……!!」
 テリブルが走りながら連射した自動拳銃の弾丸が、サー・ジャバウォックの手を貫いたのだ。
「運が、よかったのでしょうな」
 サー・ジャバウォックが冷静な態度で言い放つ。
「だが、勝利は勝利だ」
 テリブルの銃弾が、サー・ジャバウォックに何発も撃ち込まれた。それは、どちらが負けてもおかしくない、紛れもなく薄氷の勝利であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月影・このは
【星氷葉】
最強の猟書家、即ち最強のヴィランが現れるということ…
他の世界の人には申し訳ないですが…
対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号、それを見逃すわけにはいきません!


此方は三人、死角を補うことは可能
来る方向さえ限定すれば、たとえ高速とはいえ『見切る』難易度は下がるでしょう…

両腕のバトルホイール・ソーを回転し武器を『シールドバッシュ』&【盾受け・武器受け】

先手を防いだら月光と合体し『空中戦』、敵を追うことで更に零さんの一撃のための囮となりましょう
もし、ボクの五感が無かろうとロボの月光が敵を補足しオートで追ってくれるでしょう


シャオ・フィルナート
【星氷葉】

ヴィランとか世界とか
俺は正直どうでもいいんだけど…

あらかじめ背に★氷の翼を広げ
敵の攻撃は翼の盾と、間に合うなら★氷麗ノ剣による氷の【属性攻撃】で
壁を精製して防ぐ
最悪ソードの攻撃は受け手でも
敵の翼にだけは触れないように

先手を防いだらいつもなら接近戦に持ち込むところだけど…
剣から放出する水の属性攻撃で敵を狙い
可能なら敵の全身を
それが無理でも地面と敵の足元だけでも凍結させたいね
地に足をつけた瞬間、氷の翼から氷の弾丸を【一斉発射】し
濡れた部位を凍結させる
ダメージ与えられればいいけど
1番の目的は、足止めだから…

【指定UC】を発動
受けた傷全てを力に変え
剣で追撃しながら纏う冷気で氷漬けにしてあげる


天星・零
【戦闘知識+世界知識+情報収集+追跡】をし、戦況、地形、弱点死角を把握し、敵の行動を予測し柔軟に対応

※防御は【オーラ防御】で霊力の壁を作って威力軽減、防御

先制攻撃は上記技能を駆使し、※をしたり
地形を利用して回避
足元からグレイヴ・ロウを出しピストン要領で自分に当て瞬時に距離を取る
万が一の為【第六感】も働かせる

(本当に、あんたみたいな人は嫌いだ)

遠距離は十の死とグレイヴ・ロウで戦況により対応
近接はØ

『ふふ、どこまでも貴方を追い詰めますよ。この霧はね』

指定UCを発動し強化、回復効果のプラス効果を反転し更に霧と武器で攻撃

更に武器で気をさらしてる間に虚鏡霊術で銃を作って急所に撃つ

可能なら味方と連携



「最強の猟書家がヒーローズアースに侵攻する、即ち最強のヴィランが現れるということ……」
 月影・このは(自分をウォーマシーンと思いこんでいる一般ヤドリガミ・f19303)はサー・ジャバウォックと対峙し、その威圧感に戦慄と共に、強い使命感を抱いていた。
「他の世界の人には申し訳ないですが……対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号、それを見逃すわけにはいきません!」
 彼はそう名乗る通り、悪を挫き正義の為に戦う鋼鉄の戦士……という設定で遊ばれていたヤドリガミである。しかし、偽りの記憶であっても、その強い思いに変わりはない。
「ヴィランとか世界とか、俺は正直どうでもいいんだけど……」
 シャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・f00507)は気怠げに言う。だが、共に戦場へと赴くに至ったのは、友の為とも言えるだろうか。
 同じく一緒に立ち向かう天星・零(零と夢幻、真実と虚構・f02413)は黙ってサー・ジャバウォックを思う。
(本当に、あんたみたいな人は嫌いだ)
 三者三様、それぞれの思いを胸にしながらも【星氷葉】としてチームを組んだ3人は、サー・ジャバウォックに勝つ、という一つの目的に向けて動き出した。

「3人ですか……これは油断なりませんね」
 サー・ジャバウォックの周囲に、人間の黒い悪意が渦巻く。それをサー・ジャバウォックが吸収すると、その姿を竜人形態へと変えてゆく。
「まとめて片付けて差し上げましょう!」
 そう叫ぶと、サー・ジャバウォックが翼を羽ばたかせ、猟兵達へと一気に突撃する!
「来ました! しかし、此方は三人!」
 このはの言葉に3人が背中を向け合って構える。これでそれぞれの死角を補うことが出来る。
 さらに、シャオが氷の壁を、零が霊力の壁を生み出す。
 そしてこのはは、両手に付けたバトルホイールを回転させ、盾とする。
「その程度」
 サー・ジャバウォックが剣を振う。それぞれの壁は脆くも崩れ、猟兵を薙ぎ払おうともう一度振りかぶる。
 その一撃を盾で受けたこのはは、勢いを殺しきれずに吹き飛ばされてしまう。
「くぅっ!!」
 シャオが氷の翼を広げ、自身を護るように包む。刃が氷を砕き、その衝撃でシャオが吹き飛ばされるが、幸い大きなダメージとはならなかったようで、シャオは反転、砕けた氷の翼を再生させ、氷の弾丸を撃ち出す。
 サー・ジャバウォックが氷の弾丸を切り払う。しかし接近は出来まいと零へと向く。
「今度はこちらですか!」
 零が霊力の壁を再び展開しながら駆ける。この地域の地形は把握した。死角弱点を利用して避け切ってみせると、接近するサー・ジャバウォックとの距離を保ちながら、機会を伺う
「……!?」
 しかし、零の先には切り立った崖があった。零は周囲の地形を把握していた。しかし、この場を本拠地とするサー・ジャバウォックもそれは同様。むしろ地形に関しては一日の長があるといえる。サー・ジャバウォックは零に回避を促しながら、有利な地形へと誘い込んでいたのだ。
「これでお終いですよ」
 サー・ジャバウォックが刃を突き立てようとしたその時……突如零が跳ねた。
「何!?」
 零のいた足元には十字架の墓石。グレイヴ・ロウが出現していた。。これが地面から出現する勢いを利用して、零は跳躍をしたのだ。
「小賢しい真似は、終わりにいたしましょう」
 サー・ジャバウォックが翼を大きくはためかせ、追撃を図ろうとした時であった。
「むっ!?」
 突如突撃してきた真紅の鳥が、その針路を邪魔したのだ。
 その真紅の鳥こそは、このはの戦闘支援戦鳥機・月光。月光はサー・ジャバウォックを牽制した後、吹き飛ばされていたこのはの元と飛び込んでゆく。
「ムーンライト! クローーース!!」
 このはと月光が交わり、光が輝く。その光の中から現れたのは、二人の合体したロボの姿であった。
「ハンマー……アーム!!」
 このはが空中のサー・ジャバウォックへと突っ込み、ハンマーアームをぶち込む。
「なんと無鉄砲な」
 このはを払いのけるべく、サー・ジャバウォックが翼を羽ばたかせる。翼に触れたこのはは急速に視覚・聴覚・触覚……五感全てを失って闇の中へと放り込まれたような感覚に陥る。だが。
「……なに!?」
 このははそのまま直進、翼を強かに打ち付ける。
 何故? そんな顔をしたサー・ジャバウォックのことがまるで見えているかのように、このはが叫ぶ。
「ボクの五感がなかろうと、ロボの月光が追ってくれるはずです!」
 このはには、自分の発した言葉すら聞き取れてはいない。だが、このはと合体した月光がこのはの眼、耳の役割を果たしたのだ。
「なんという……!」
 大地へと落ちてゆくサー・ジャバウォック。それを迎え撃つように、地上からシャオによる氷の弾丸が撃ち込まれる。
「いつもなら接近戦に持ち込むところだけど……!」
 シャオが氷麗ノ剣を抜き、まっすぐ向ける。すると剣の切っ先から水が迸り、激しい勢いとなってサー・ジャバウォックを襲う。
「このような攻撃などで……」
 サー・ジャバウォックは大地に着地すると、剣で氷の弾丸を払い、水流を翼の風圧で弾き飛ばす。。
 だが、シャオの本当の狙いはダメージではない。足元は弾き飛ばされた水流が水たまりを作っている。
「凍れっ!!」
「……しまった!」
 弾かれた氷が、足元の水たまりに触れて凍りだす。氷はみるみる周囲を凍らせてゆき、サー・ジャバウォックの足元を固めてしまった。

 そして、その瞬間を待っていた者がいた。サー・ジャバウォックの周囲が霧に包まれる。
「これは……ぐぅっ……!!」
 その霧の中でサー・ジャバウォックが悶える。竜人形態となったその力が、霧の効果によって反転、弱体化してしまったのだ。
「ふふ、どこまでも貴方を追い詰めますよ。この霧はね」
 それは零の生み出した霧であった。ゆっくりと歩み寄るその手には、鏡のように反射しながら拳銃が生まれてゆく。
「してやられましたね。これが狙いでしたか」
「えぇ」
 短く言って、零が銃弾を放つ。霧の力で弱った身体には、その一撃ですら致命傷にすら匹敵する一撃となった。
 三者三様の考えを持ちながらも一つのチームとなった三人の見事な連携が、一つの目的を達した瞬間であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

春霞・遙
最強を敵にして勝利を信じるってなかなか言えませんよね。
……でも、勝利を信じてくれる人が一人でもいるのなら頑張るしかないと思います。
猟兵の皆さんもお強いですから、きっと大丈夫。

敵の動きをよく見て出来るだけ回避、銃での牽制とかわせない攻撃は杖でいなします。
翼に触れてしまったら「戦闘知識」と「第六感」で動きを予測して回避を試み、「激痛耐性」で戦闘継続します。

遅れてUCが使用できるようになったら【シャドウチェイサー】を呼び出してジャバウォックを追わせます。
いくら速くても見ているものがわかれば動きの予測も立てられるでしょう。
見えていないよう「パフォーマンス」し、近づいたところに「零距離射撃」を狙います。



 猟兵達の攻撃を受け、サー・ジャバウォックは既に満身創痍となっていた。
「やれやれ……これでは猟兵達に悩ませることも出来ませんか……」
 猟兵達の狙いは、確実にサー・ジャバウォックを討つことで意思統一されていた。それでも最後まで立ち向かうのは、最強故。そして、未だ負けないという自信があるからだ。
「最強を敵にして勝利を信じるってなかなか言えませんよね」
 そんな堂々としたサー・ジャバウォックの姿を見て、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が呟いた。
「……でも、勝利を信じてくれる人が一人でもいるのなら……頑張るしかないと思います」
 最強たる存在を討ち果たす。遥はそう決意し、サー・ジャバウォックと対峙する。
「プロジェクト……ジャバウォック」
 サー・ジャバウォックの姿がみるみる変わってゆく。人の悪意を身体に受けて変身した、竜人形態だ。
「素早いですが……よく見ることが出来れば!」
 遥は銃を構え、サー・ジャバウォックを正面に捉える。サー・ジャバウォックは翼を一回羽ばたかせると、爆発的な速度と共に遥へと接近してゆく。
「やはり、速い!」
 銃で牽制をはかる遥だが、その銃弾もことごとくかわされ、二人が肉薄する。サー・ジャバウォックが振う剣を咄嗟に杖で受けると、その攻撃を受けた勢いを駆りながら遥が退いた。
 だが――。
「……!?」
 視界が突如暗闇に囚われた。耳も聞こえない。何も感じられない。自分が今、立っているのかさえ曖昧になる。
(翼に触れてしまった……!)
 さー・ジャバウォックの翼は触れた者の五感を奪う。だが予想は出来たことだ。遥は一旦落ち着き、自らの戦闘知識と第六感を信じ、意識を集中させる。
(……痛い)
 触感はない。だが、痛みが広がってゆく。おそらくサー・ジャバウォックに斬りつけられているのだろう。それでも怯まず、今までの経験で培った動きを、その通り実行する。そして、銃を向けて一発。それは第六感という名の完全な勘ではあった。だが、それはどうやら効果があったようだった。

 感覚が戻って来る。同時に、自分の白衣が血にまみれ、酷い有様であることもわかってきた。それでも痛みに耐え、さー・ジャバウォックを見据える。
 サー・ジャバウォックは頭を押さえていた。どうやら、遥の放った銃撃はそこに命中したらしい。
 なんにしても、自分の状況をつぶさに確認する暇は無い。むしろ、今が好機である。
「今度はこちらからいきますよ」
 遥の足元の影がゆらりと揺れる。それに気が付いたサー・ジャバウォックは翼を広げ、再度速度を上げて羽ばたくと、影もそれを追ってゆく。
「いくら速くても……見ている者がわかれば動きの予測も立てられるでしょう」
 遥が銃を向けた。その眼前には、サー・ジャバウォックの姿があった。
「なにっ……!!?」
 銃弾一発。それが、サー・ジャバウォックの致命傷となった。

「見事……ですが、侵攻は止まりません……。我が配下が必ずや、ヒーローズアースを混乱に陥れましょう」
「それでも、あなたを止められたならば十分です」
 激しい痛みに耐えながら、遥が言う。
「それに、オウガ・オリジンも……私の得た力を取り戻し、強くなります。……私は、骸の海の底からそれを見物すると……しましょうか……」
 そう言って、サー・ジャバウォックは消えていった。

 オウガ・オリジンの力が強まるのを感じる。サー・ジャバウォックが完全に死んだのだ。
「ですが、負けません。猟兵の皆さんはお強いですから」
 その猟兵の一人である遥が呟いた。なにせ、『最強』に勝ったのだ。
 アリスラビリンスは必ず救う、そして、その他の世界も被害を抑える……。
 迷宮災厄戦は佳境を迎えようとしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月16日


挿絵イラスト