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迷宮災厄戦⑲〜虚構のたわむれ

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #サー・ジャバウォック

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●燎原の果て
 焼け焦げた森の国、捻れし竜角をもつ壮年の紳士は微笑み佇む。
 佩びるは青白き斬竜剣、その手には美しき装丁の書。
 『秘密結社スナーク』――紡ぎ出される完全なる虚構。
 真実では無いがゆえに、真実を超越する。相対するならば、皆、問われる。

 ――スナークは実在するのか、否か。

●挑みし猟兵
 猟書家『サー・ジャバウォック』は、猟書家最強の男。
 侵略蔵書「秘密結社スナーク」と、青白き斬竜剣「ヴォーパル・ソード」を手に、ヒーローズアースを狙うもの。
 微笑とともに、ジャグ・ウォーキー(詩謔・f19528)はそう謡う。
「この二つの説明で事足りてしまうような相手です。勿論、強敵である、ということ。未知であるということは、強さである――それが、まさしく、スナークというものでしょう」
 もっとも、わたくし共が、皆様が、知る『スナーク』とは異なるかもしれない。
 ジャグはそう言って双眸を閉じる。
「確かなことは、ふたつだけ。彼を無傷で置いておくわけにはいかないこと。彼はとても強いこと、です」
 サー・ジャバウォックの苛烈なる先制攻撃を凌ぎ、立っていられたものだけが、反撃の機会を得る――なれば、しにもの狂いの反撃であれ、死より遠い姿の方が優位ではないか。
 或いは命瀕した時の輝きこそ、強靱なる一矢となるか。
「どのような策にせよ、死なぬよう援護いたしますので、転送はお任せください。皆様の武運を祈るばかりではございますが」
 跳ねる兎の輝きを傍らに、挑戦者たちへ、ジャグは恭しく一礼した。


黒塚婁
どうも、黒塚です。
なお、台詞などの版権度合いなどはよくご確認くださいませ。

=============================
プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
=============================
サー・ジャバウォックは必ず先制します。
これを如何に受けて、反撃するか。その工夫がボーナスとなります。

●プレイング
公開された時より、締め切るまで受付しております。
全採用のお約束はいたしません。
ご了承の上、ご参加いただけたら幸いです。

皆様の活躍を楽しみにしております!
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第1章 ボス戦 『猟書家『サー・ジャバウォック』』

POW   :    侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エドガー・ブライトマン
やあ、ごきげんよう。ジャバウォック君
私の名はエドガー。アリスラビリンスの平和を守る王子様さ
キミのおもうようにはしてやらない

猟書家最強と言われているのなら、ちょうどいいや
キミに勝てたなら、私たちは猟書家みんなに勝てるってコトでしょ
さあ、試してみようぜ

見えない怪物とやらは手強いなあ
私は目に見えるものしか信じたくないのに

《早業》で足元の砂を投げ上げ、砂埃を起こす
見えなくとも、物体があるのなら空気は震えるハズだろう
方向だけでも把握して身構え、攻撃は《激痛耐性》で耐え

“Hの叡智”攻撃力を重視
私の番だよ、ジャバウォック君
《早業》で駆け抜け間合いを詰め、全力で《捨て身の一撃》

私の前で悪だくみなんてさせないよ



●王子の宿命
 荒涼たる焦げた大地――焼け焦げた森の国は、その通り、焦土である。
 元より滅びし森の中、堂々と待ち受ける、猟書家『サー・ジャバウォック』は対峙する猟兵を値踏みするように見下ろす。
「やあ、ごきげんよう。ジャバウォック君」
 対し――煌めく金髪が軽く上下に揺れた。
 胸に手を当て、エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)は丁寧に名告りを上げる。
 それが王子様としての礼儀だからだ。
「私の名はエドガー。アリスラビリンスの平和を守る王子様さ――キミのおもうようにはしてやらない」
 あかるい碧眼は柔らかに笑んで、然し不敵である。必ず克服できるのだ、という確信を持った眼差しに、ジャバウォックは冷笑を浮かべた。
「迅速なる到着と、丁寧な挨拶の返礼に――歓迎はしませんが、歓待はしましょうか」
 願っても無いと、エドガーは破顔した。
 子供のような無邪気なものだ。
「猟書家最強と言われているのなら、ちょうどいいや――キミに勝てたなら、私たちは猟書家みんなに勝てるってコトでしょ。さあ、試してみようぜ」
「よろしい、さあ『秘密結社スナーク』よ。狂え! ころせ!」
 劇場で歌うように、ジャバウォックは本を手に、それを呼ぶ。
 架空の怪物スナークは――姿を、見せなかった。
 不可視の怪物なのだ。この場に立つエドガーの猜疑を掻き立てる怪物。ひゅうと鳴る音。かちかちとなる顎。長いのか短いのか、尖っているのか丸いのか。
 わからぬものが、エドガーの肩口を突いて、通り抜けていった。
 ――それを知ったのは、彼が痛みを感じたからだ。衝撃に、上半身が蹌踉めいたからである。
「見えない怪物とやらは手強いなあ。私は目に見えるものしか信じたくないのに」
 口元に、苦笑を刷いて、エドガーは素早く前へと傾いだ。
 その手が地に触れ、振り上げられる――小さな砂埃が舞い上がり、空気を震わせる。
「見えなくとも、物体があるのなら空気は震えるハズだろう」
「あなたがそう信じるのならば――そうやもしれません。しかし全貌も見えぬ怪物と、如何に渡り合うおつもりなのです?」
 ジャバウォックはそう告げた。遠くで澄ました男の言う通り、砂は震え、その方角を教えてくれるが、形状の解らぬ怪物の攻撃は躱しきれぬ。
 斬り裂くような攻撃ではない。鈍器による強打に似ていた。骨まで響く痛みを、エドガーは耐えて凌いだ。
 僅かな時間に、反撃のための力を解き放つ。
 ひとつ、深呼吸を。ふたつ、瞬き。みっつ、祖国の名を心の内で唱え――エドガーの全身に、ただならぬ力が巡る。
「私の番だよ、ジャバウォック君」
 地を蹴って素早く間合いを詰める。体重など感じさせぬよう軽やかに、ああ、怪物が阻止せんと恐らく身体をぶつけてくるが、エドガーは一切、無視する。
 だが、彼の躰が揺らぐ事は無かった。凛とした眼差しの儘、真っ直ぐに、静観を決めこむジャバウォックに迫る。
 握りしめる剣の名は、“運命”――深く腕を締めて、繰り出された細剣は、どんな怪物とて怪竜とて、貫く力をもっている。
 お見事、敵である男はエドガーの意志を、小さく讃えた。スナークに噛みつかれたらしい四肢が悲鳴をあげているが、彼の剣は、敵の腹を貫いていた。
「――私の前で悪だくみなんてさせないよ」

成功 🔵​🔵​🔴​

夏目・晴夜
五感を奪われるのは純粋に嫌ですね
暗闇に閉じ込められるようなものではないですか
奪われないよう近付かないで頂きたく

赤い蜘蛛の巣を張り巡らせると共に大量の蓮の花弁を一帯にばら撒きます
表向きは牽制と攻撃の為に、本当のところは目眩しの為に

舞う花弁に隠れて戦闘特化からくり人形を【力溜め】しながら接敵させ、【怪力】での強烈な一撃をお見舞いします
一撃が通らなくても、壊されても構いません
そうなったら即ち人形へ意識が向けられたという事ですから、
その一瞬の隙をついて今度こそ猛毒が込められた花弁をたっぷりと差し上げますよ

もしも五感を奪われたら【第六感】あとは執念で【捕食】を
このハレルヤは五感を失おうとも至高ですからね



●怪竜と蜘蛛
「さて、あなたは一体、どのような物語を見せてくれるのでしょう?」
 猟書家『サー・ジャバウォック』が、次に姿を現した猟兵へと問いかけた。どちらが怪物か、どちらが狩人なのか。そんな嘯きを聞きつけた夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は、不快そうに耳を伏せた。
「何をいうかと思えば。あなたを楽しませるのではありません、あなたがハレルヤを楽しませるのです」
「左様、左様。ならば、そうしましょうか」
 可笑しそうに、ジャバウォックが肩を揺らすと、その外套がぶわりと躍った――彼の姿は、闇を集めたように凝る。それは『黒き悪意』を纏いし竜人形態。
 黒翼を広げ、ねじくれた剣を手に地を蹴った。
 その速度たるや、瞬きの間に斬撃が走っていた程だ――痛みは不快だ。普通に痛い。
 だがそれ以上に、嫌な事がある。
 腕に走った血を払いながら横に退いて、晴夜は嘆息する。
「五感を奪われるのは純粋に嫌ですね――暗闇に閉じ込められるようなものではないですか」
 今回は巧く翼から逃れた。これは幸いである。
「近付かないで頂きたく」
 放言すると、晴夜は両手より赤を放った――それは、赤い糸。赤い、蜘蛛の巣であった。
「このハレルヤが親でも何でも殺してあげます」
 巣を張り巡らすと共に、彼は蜘蛛のような異形へと変じる。顔立ちこそ、そのままに――目の色は赤く、背には蓮が咲く。
「嗚呼、あなたもまた、スナークでしたか」
 ジャバウォックに動揺はない。
 スナーク、鸚鵡返しに呟いて、首を傾げて莫迦にしたように、晴夜は毒の花を周囲に撒き散らす。
「ハレルヤはハレルヤです。不遜ですよ」
 晴夜を中心にひらひらと宙を舞う毒の蓮を、ジャバウォックは風速で吹き飛ばす。
 青白き斬竜剣を身のうちから、大きく振り薙ぐ。
 距離があろうとも、それは晴夜の身体に並ならぬ衝撃を与えた。皮膚が耐えきれずに裂けて、真白な肌の上、朱の珠が飛沫と躍る。毒の中でも、ジャバウォックの挙動に異変は起こらぬようで、それは虞も無く踏み込んでくる。
「その程度ですか、ハレルヤなるスナークよ」
 最早、訂正するのも莫迦らしいと、晴夜は嘆く。
 その刀身が、いよいよ直接触れる距離まで迫るところまで――彼は、待った。ジャバウォックが彼の目の前で身体を捻り、渾身の一撃を見舞わせようという瞬間。
 全身をバネに跳ね上がった屈強な人形。ニッキーくんは蓮の花々の中に身を潜めて、この瞬間を待っていた。
「この、スナークは」
「ニッキーくんです。良い子ですよ」
 ――壊されてもいい。それくらいの代償は覚悟で、晴夜は人形をジャバウォックに叩きつけた。
 怪力に、怯んだ。晴夜の身体より太そうな腕が、あっさり断たれるのを見た。だが、敵は腕を痛めたようで、軽く身を引いていた。
「今度こそ――猛毒が込められた花弁をたっぷりと差し上げますよ」
 狙い通り――晴夜はその澄ました顔へ、花弁をすかさず叩き込む。さすれば、如何なる怪竜であれ、肺腑に痛みを覚えることだろう。
 羽ばたき一つで手の届かぬところに逃げられる。次の一撃は、どんな駆け引きとなるだろうか。今度こそ、何も聞こえぬ、見えぬ暗闇に叩き込まれるやもしれぬ。
 だとしても、勘と執念で食らいついてやろう。今の晴夜は『夜の蜘蛛』なのだから。
「このハレルヤは五感を失おうとも至高ですからね」

成功 🔵​🔵​🔴​

コノハ・ライゼ
触れられなきゃイイ、って言いたいトコだけど
割と苦手な手合いなのよねぇ

即座に*オーラ防御展開
飛翔軌道*見切り攻撃は躱し、削ぎ、*激痛耐性併せ凌ぐ
完全に防げなくてもイイわ、その存在を認め記憶に刻み付けたなら十分
五感を奪われれば宇宙にでも放り出されたような心地でしょうケド
失くしたモノは切り捨て*第六感へ集中
確と認めた敵の気配へ意識だけで【天片】の花を手向けよう
見えないから知り様も無いケド、きっとテメェの気に入らない色で優しく包み刻む*2回攻撃
*傷口を抉ってその*生命力をいただくわ

あ~ナンかそういう哲学的な? 概念的な?
兎に角メンドクサイのよねぇ
オレはオレが見て感じたモノが全て
その問いに、意味はないの



●怪竜の懼れ
 次なる物語――傷付きながらも、不敵で涼しげな態度は変えぬ猟書家『サー・ジャバウォック』を、薄氷の双眸は推し量るように見つめる。
「あなたも、スナークたる存在でしょうか?」
 ジャバウォックの問いかけに、さてネ、とコノハ・ライゼ(空々・f03130)は首を傾げた。
「怪物って言われても、別に大したコトじゃないけどね」
 楽しくも哀しくもナイ。胸の深くに何か思うモノが湧いたとしても、それを表に出すコノハでもない――。
「そのスナークとやら、完全な虚構だっけ? 存在しない怪物だっけ。――あ~ナンかそういう哲学的な? 概念的な? 兎に角メンドクサイのよねぇ」
 心底、興味もないように、彼はわざとらしく頭を振る。
「オレはオレが見て感じたモノが全て――その問いに、意味はないの」
 そうですか、とジャバウォックはただ笑みを深めた。笑っているのに、友好的な、親しみなど一切ない、冷たい印象の男であった。
 そして、ふと思い出す。この一見、紳士風の男は、悪意の存在なのだと。存在しているだけで、相手を煽り、ひとの心に不審の種を植えていく。そういう怪物だ。
 証明するかのように、人の悪意を纏った竜人形態と変じ――ジャバウォックは大きな黒翼を広げた。まっくらな、闇。
 強敵と対峙する程度では臆することもないコノハは、その内側に存在する『悪意』に軽く身震いした。極寒の地に、覚悟も無く突き落とされたような感覚だ。
「触れられなきゃイイ、って言いたいトコだけど。割と苦手な手合いなのよねぇ」
 肩を竦めて溜息ひとつ、笑いながらコノハは身構える。
 その眼差しは真っ直ぐに、飛来するジャバウォックを捉え、その軌道を読まんとする。
 見えない。
 焦る事は無い。見ようとした瞬間に、触れんばかりに接近されていると解っただけだ。斬撃の走り、指先の痛みと、赤い筋。感覚だけを頼りに、横へと跳んだ。
(「完全に防げなくてもイイわ、その存在を認め記憶に刻み付けたなら十分――」)
 すかさず、前へと転がり出る。相手の態勢を崩したわけではない。目の当たりにしたヴォーパル・ソードの威力も侮り難い。予想出来る追撃は、避けねば。
 男は翼を立てるように尖らせ、転回した。薙いだ斬撃の衝撃を受けて、コノハは軽く吹き飛ばされた。無論、それを利用して距離を取ったのである。
「逃げるだけですか」
 問われたが、コノハは何も答えなかった。
 何故ならば届いていない――彼の五感は、奪われた。だが、コノハはじっとジャバウォックを見据えた姿勢で警戒を続けており、戦意を失ってはいない。
(「ナルホドね。五感が奪われるって、こういうコト……宇宙にでも放り出されたような」)
 失ったモノを頼っても仕方がない――。声を奪われた唇が笑みを象ると、彼の手にする武器が、すべて空気に溶けるように消失した。
 刹那、空間を埋めるはクレオメ。
 見えなくとも、聞こえなくとも、命じなくとも――コノハが記憶に刻みつけたジャバウォックを包み、食らいつく。
 無音の暗闇に取り残されたコノハには、どんな色彩の風蝶草が舞う景色か、確かめる術を持たぬ。
 けれど、無数の花弁の形をした牙たちが、歪んだ命を啜ってくれることで、成果は解る。全身に纏わり付く花弁を、膂力で払いながら、それは元を断とうと迫り来る。
「――嗚呼、私もまた、見えぬものを見ることは叶わない」
 ゆえにジャバウォックが自嘲気味にこぼした言葉も、彼は知らぬ。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
◆SPD
ヴォーパル・ソードの攻撃に合わせて、刀身へ向けて発砲(『スナイパー』)
巨大な剣を壊せるとは思わないが、射撃を当てる事で斬撃の軌道を逸らすならどうだろう
完全に避けられなかったとしても、致命的な一撃とならなければ反撃の芽はある
逸らした軌道を隙として三度の斬撃を可能な限り回避しつつ接近、反撃に転じたい

巨大な剣は驚異だが、懐に飛び込んでしまえばその大きさが仇になり即座には対応できない筈だ
そこまで来て、まだ立っていられるのなら
その場でユーベルコードを発動、至近距離から銃弾を叩き込む
この距離なら、確実に届くだろう

妙な書物をばら撒かれる前に元凶を断つ
“スナーク”など存在させない、これまでもこの先もな



●血と火花
 邂逅した猟兵と、剣を交え、疵を負いながら――猟書家『サー・ジャバウォック』は、薄笑いを浮かべる頬を撫でた。無意識に笑っていたようだ。
「驚きました。これで、なかなか楽しんでいるようです」
 ひとりごち、あらぬ方へと視線を向ける。
 無駄か――シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)はすかさず気配を殺して、焦げた木々の狭間に身を潜めてみようかと、銃使いの本能から考えたものの――どうやら、そんな隙すら与えてくれぬ相手であるようだ。
 警戒に、全身の毛が逆立つような不快感がある。
 様々な戦場を渡ってきたシキだからこそ、感覚すべてが警戒を唱える。
「スナークは、謂わば、虚構そのもの。掴めぬもの。用意の無いものは、それと戦うべきではない」
 ジャバウォックは歌うように告げると――或いは告げながら、軽く腕を下げた。
 その辺りはシキにとっては殆ど同時であった。そう動いた、と思った時には、蒼き剣は己の頚を捉えていた。
 殆ど彼は、その場から動いておらぬ。
 巨大と呼ぶのも馬鹿馬鹿しい程に長い刀身が、触れている。熱も、風も、知る前にシキは発砲した。
 無論、破壊など期待していない。
 軌道は逸らせぬが、自分を後ろへと跳ばす反動になった。シキの抵抗に、ジャバウォックは笑みを深める――大剣と呼ぶのも憚られるほど、巨大になったヴォーパル・ソードは信じられぬ速度で切り返し、シキを追った。
 諦めずに、彼は跳ね返すように銃撃を続ける。僅かでも、致命傷を避けられるなら、足掻く。
 常識外れの剣戟は、シキの胸と、足を斜めに裂いた。浅からぬ創として、白銀の髪を赤く濡らし、あまり好きではない尾は濡れそぼち、血液がしたたり落ちた。
(「だが、動ける」)
 激痛が身を苛むが、それがどうした。
 踏み込んで、前へと跳ぶ。巨大化したヴォーパル・ソードの唯一の欠点であろう、懐に潜りこむのは躱しながらも考えていた。ゆえに、ジャバウォックに翻弄されながらも――シキは密かに近づくように意識していた。
 五歩、否、三歩で届かせる――相手が再び、攻撃に転じる前に、シキは息を止め、駆った。
 表情を変えぬジャバウォックの、それでも、その瞳が僅かに大きくなるのを、スナイパーの瞳は確かに捉えた。
「この距離なら、確実に届くだろう」
 真っ直ぐ伸ばした腕の先、特注のハンドガンが鈍く輝く。
「全弾くれてやる」
 弾倉内の弾を全て撃ち切る高速の連射――ユーベルコードによる銃撃は、ジャバウォックの尋常ならぬ躰にも、赤の花を咲かせる。
 巧く取り繕ってはいるが、既に疵だらけなのだから、それはいっそう鮮やかに、爆ぜて、壊して、新たに貫く。
 硝煙の向こうで、くぐもった声をあげたジャバウォックに向け、シキは鼻を鳴らした。
「妙な書物をばら撒かれる前に元凶を断つ――“スナーク”など存在させない、これまでもこの先もな」

成功 🔵​🔵​🔴​

クロード・クロワール
は、完全なる虚構を紡ぐと?
まぁ—良い

僕は出し惜しみは嫌いだ。だから全力であがく
ナイフを地に穿ち、結界を紡ぐ。紙鳥は壁にするさ

頭数を増やした所で無事とは思わないが
致命傷を避けられればそれで良い
足りない分は《黑》で受ける
僕のために死んでくれ、死神

無事に生きてたら、さぁ反撃の時間だ

言ってやろう。あんたの『スナーク』は実在すると
だからこそ、僕はこれを書く。あんたの本への創作
『スナークの宿敵』としての獣をな

一夜の夢を展開。さぁ盛大な添削の初まりだ

宿敵の匂いを嗅ぎ取った獣は、ジャバウォックへと噛みつくだろう

奴がスナークを出す時に仕掛けられないのは二流だがな
血反吐を吐こうとも書く文豪の舞台、どうぞご堪能あれ



●架空の、架空
 口の中は錆びた鉄の味――人がかく語れど、猟書家『サー・ジャバウォック』に於いては、どんな感慨を憶えたのだろう。
 唇の端より零れた血を指で拭い、モノクルの下、冷めた眼差しで次なる猟兵を見つめた。
 猟兵は、貌の半分の造作は隠されており、その視線が何処を向いているのかも解らぬ。解らぬのだが、間違いなく、じろじろとジャバウォックの持つ本を見ていた。
「は、完全なる虚構を紡ぐと? まぁ――良い」
 ひとりごちるは、クロード・クロワール(朱絽・f19419)――、一作家として、そのフレーズは聞き逃せぬとか何とか、ぶつくさ言っている。
 だが同時に、クロードは紛れもない緊張で、軽く震えた。
「かよわく、小さく見えますが……あなたからもスナークの気配が見えます」
 ジャバウォックの声音は低く、割れたように響いた。度重なる負傷で、余裕めいて見えるその肉体も、綻びが顕れている。
「試してみましょう。あなたの中身を見るために」
 しかし、青白き剣を大きく薙いだ瞬間、空気がざわめく。大きく息を吐いて、クロードは地面へと、ナイフを刺した。
「僕は出し惜しみは嫌いだ。だから全力であがく」
 白銀に緑の走る美しいナイフが輝き、結界を為す――すかさず喚んだ紙鳥が、クロードの周囲を飛び回る。
 烈風が肌を舐める。
 圧に押されて立っていられぬ――結界は玻璃のように砕け、刃を通す。巨大に変じたヴォーパル・ソードは、たった一振りでクロードを真っ二つと断ちそうな威力で迫ってきた。
 結界の補助と、己を守る紙鳥たちが、その未来を示すように切断され、次々と地に落ちるのを眺め、諦めたように息を吐くと、彼は足元に落ちる影へと囁きかけた。
「僕のために死んでくれ、死神」
 最後の砦は、影に潜む黒き流体――獣の骨を被りし黑き死神が身を起こし、剣戟へと身を投じた。死を吼えようが、ジャバウォックは淡淡と斬る。
 だが、クロードに届く刀身の威力を幾分も和らげた。
 ひゅうと突風が駆け抜ける音がして、身体が吹き飛ぶ。肩から腰まで、一筋の深い創が走り、夥しいほどの血が、クロードが突き放された距離を律儀に記録していようとも。
 生きているなら――、さぁ反撃の時間だ。
 ジャバウォックが今度は縦に右腕を振り上げた瞬間に、クロードは言葉を挟む。
「あんたの『スナーク』は実在する」
「ほう」
 ジャバウォックは、彼を値踏みするように見た。
 とはいえ、彼はクロードの真意など、どうでもいいに違いない。スナークが実在するか、否か。その答えなど求めていない。
 勝利を確信する者の傲慢とでも言おうか。皮肉は裡で留め乍ら、ふっと息をこぼし、クロードは続ける。
「だからこそ、僕はこれを書く。あんたの本への創作――『スナークの宿敵』としての獣をな」
 懐から取り出した、クロードの著作。どんな獣が描かれているのかは、真っ赤に染まった本ではわからぬ。もっとも、装丁に絵が描かれているとも限らぬが――。
 その一文を、彼は自ら読み上げる。
「その夜、湖面の月より獣は現れたのです」
 さぁ盛大な添削の初まりだ。
 楽しそうに唱えば、空から跳びだした獣が、ジャバウォックへと食いかかる。
 正確には、その左手に収まる本にだろうか。そこに宿敵がいるのだと、獣は牙を剥く。深々と肩を食い破られ、ジャバウォックは浅く息を吐いた。
「なるほど、そういう解釈も可能なのですね――実在するなら、宿敵も或る、と」
 そのいらえに、くく、とクロードは喉で笑う。
「奴がスナークを出す時に仕掛けられないのは二流だがな」
 自嘲の後、己の血溜まりに膝を着きながら、それでもクロードの唇は変わらず笑みを浮かべていた。
 優れた原作にどうしても挑んでみたい。蛇足と言われようが、構わず紡いでしまう、文豪としての性。それを実体化して眺められるのだ。寝ている暇は無い。
「――血反吐を吐こうとも書く文豪の舞台、どうぞご堪能あれ」
 後は気力の続く限り。次の一刀が振り下ろされるまで。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルバ・アルフライラ
虚構なぞに興味は無い
重要なのは、貴様の首を落とせるか否かよ

竜人形態になる敵を警戒しつつ
周囲に宝石をばら撒こう
ふふん、大盤振る舞いだ
たっぷり私の魔力を込めておいたぞ?
触れるだけで爆発するそれは僅かでも貴様の体力を奪う事だろう
序でに麻痺で動きを封じられれば儲けものよ
舞台が整えば、高速詠唱にて【死霊よ、踊れ】
傍らに置いた貴婦人に私を庇わせながら
大鎌を持つ悪魔を嗾け、牽制する事で私への攻撃を減らす
悪魔、貴婦人消失時は高速詠唱で再度召喚
五感がなくとも途絶えた魔力で分る筈
…誰が休みを与えると云った?

光を、音、全ての感覚を奪われようとも億さず
砕かれようと激痛耐性で凌ぐ
貴婦人に身を預け、第六感で回避を試みよう



●悪魔と踊れ
 ――おお、おそるべき虚構の存在よ。
 見えぬが存在するもの、虚構より紡がれるもの、身を以て味わいながら、猟書家『サー・ジャバウォック』は笑った。その肩が食い破られていようと、いよいよ無数の創が滲んで、半身を赤く染めていようとも、彼は冷静であった。
「しかし、ゆえに、この本は正しいということが証明されているかのようです」
 ひとり呟き、徐に振り返る。
 視線の先――何もかもが燻り、彩りの無い世界で、蒼き耀きが灯っていた。
「虚構なぞに興味は無い。重要なのは、貴様の首を落とせるか否かよ」
 冷ややかにアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)が断ずる。
 心躍る魔術書ならば、興味も湧こうが。虚構だと言い切られている書に食指は動かぬ。果たして、それが世界を滅ぼすものであるならば、おいそれと目にすべきものではないだろう。
「さて、現実主義者の傍にも、スナークは存在します。もっとも、お相手するのは私ですが」
 ゆるりとヴォーパル・ソードの鋒を上げ、ジャバウォックは本を血に塗れた胸へと当てた。彼の全身がみるみる内に、黒いもので覆われ、その角が一層まがまがしくねじ曲がり、鋭い猛禽の指が尖る。左右に広がった黒翼は、深淵よりも深い闇を湛えて、何倍もの大きな生き物のように見えた。
「死に体と侮る事なかれ、とだけ言っておきましょう」
 侮るか、と思いつつも――アルバはおくびにも出さぬ。不敵に微笑んで、既に目の前まで飛来した竜人を、いくつか宝石を放って迎え撃つ。
「ふふん、大盤振る舞いだ――たっぷり私の魔力を込めておいたぞ?」
 触れれば爆発する魔力の塊だ。それを、ジャバウォックは悠々と正面から突破してみせた。
 息を呑む間も与えぬ程、早い。宝石を放った傍から爆発が続き、ジャバウォックは既に己へ剣を振り下ろしている。
(「流石に、動きが鈍ることもないか――」)
 だがその爆発が、満身創痍に至っている敵に、それなりの負荷を掛けたと信じるより他に無い。魔力の壁は容易に斬り裂かれ、後ろに退きながらも鋭い斬撃はアルバの玉体を砕いた。
 代償と差し出した指先が、投げつけた宝石とともに蒼き破片となる。
 恐ろしい速度で斬られながらも――すれ違い様に、翼へ触れぬよう、アルバは身を屈めた。これには爆風が役に立った。せめて、術をひとつ完成させるまでは。
「無様に踊り狂え」
 すぐさま整えた魔術にて、彼は二体の死霊を召喚する――華やかに着飾った骸骨の貴婦人、見る者に不安を与える、大鎌持つペストマスクの悪魔。
 空を斬り裂く悪魔の鎌に、ほう、とジャバウォックは感心の声をあげた。
 不意討ちの一刀は懐深くを斬り裂いて、怪竜の身は真紅を吐き出す。
 貴婦人は、アルバの身体を抱いて、軽やかに躍るよう、ジャバウォックから距離を取る――庇うように覆い隠す死霊の在り方に、それはひとつの仕掛けを本能的に理解したようだ。
 黒翼が、大きく羽ばたいた。
 吹きつける風を肌で感じた瞬間、剣を構えて突進してきたジャバウォックに、貴婦人ごと貫かれる――見えぬところが、また砕けた。
 途端、悪魔と貴婦人は忽然と消えた。
「やはり、術者が傷付けば消えるようですね」
 得意げに言いおるわ、アルバは痛みなど感じぬような涼しい貌で、冷ややかに目を細めた。
 仕込み杖の石突きをこつりとひとつ、地面に叩きつければ、刹那ジャバウォックを挟むように死霊たちが蘇る。
「……誰が休みを与えると云った?」
 不遜な声音は、届いただろうか。
 悪魔の鎌がジャバウォックの頚に懸かり、貴婦人はアルバの手を優しく引いた。
 くるり、くるりと。
 立ち位置を入れ替わるようにして、悪魔はジャバウォックの頭を刈った――。
「完全なる虚構と――スナークに快哉あれ」
 ゆえに、その言葉は、最後の不気味な笑い声は、幻聴であったかもしれぬ。
 空気を震わせる哄笑と共に、ジャバウォックの身体は地に落ちた。忘れていたかのように、猟兵たちと渡り合った疵という疵から血を噴き出して、怪物は死んだ。
 侵略蔵書「秘密結社スナーク」も後を追うように炎に包まれ燃えていく。残されたアルバは、深手から死霊に凭れかかりながら、終焉を見届けた。
「架空の怪物、か……」

 そして、焼け焦げた森の国は、静かに――荒廃に似た世界を続けていく。
 それが束の間か、永遠か。今は未だ解らない。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月16日


挿絵イラスト