迷宮災厄戦⑲〜猟書家最強と呼ばれる所以
●グリモアベース
「みんな、招集に応じてくれてありがとう」
集まった猟兵たちを迎えて、田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)はいつものようにクイと伊達メガネを持ち上げた。
「討伐目標は猟書家最強の男、『サー・ジャバウォック』。オウガ・オリジン、ブックドミネーターに次いで、今回の戦争におけるNo.3の実力者になるわ。ユーベルコードはもちろん、能力値や技能レベルでも、猟兵の最高位を軽く凌駕する。戦闘におけるイニシアチブは、常に相手が握るものと考えて」
ユウナは話しながら映写機を操作して、スクリーンに予知された情報を映し出す。
まずは、所持しているユーベルコードについて。
一つ目【侵略蔵書「秘密結社スナーク」】。架空の怪物を召喚するユーベルコード。捉えどころのない不可視の怪物は肉弾戦がメインだが、周りに落ちているものを武器として使用することもある。
二つ目【ヴォーパル・ソード】。超巨大化した剣による斬撃だが、その間合いは戦場全体を間合いに収めるほどに広い。しかも敵は単騎なので、同士討ちを気にせず三連続攻撃を行えるのも厄介だ。
三つ目【プロジェクト・ジャバウォック】。人間の『黒き悪意』を纏うことで、右手の剣を増強するとともに、左側だけに生えた片翼に五感喪失の効果を付与する。また高速飛翔も行えるようになる。
「……以上3種がサー・ジャバウォックの攻撃手段よ。どの能力値の技を何回発動するかは、相対した猟兵が使用したユーベルコードと同じになるわ」
……さて、
資料を眺めながら、猟兵たちは思案する。ユーベルコード、技能、装備アイテム、その他諸々、手段はいくらでもあるが、数や性能をそろえただけで通用するような相手ではないだろう。
重要なのは、どれだけ相手の攻撃に対して適切な作戦を立てることができるか、という点である。
「何度も言うけれど、かなりの強敵よ。正直なところ、勝てるかどうかは五分ってところ。決して油断しないでね」
最後にもう一度念を押してから、ユウナは猟兵たちを戦場へと送り出した。
●焼け焦げた森の国
灰と土の他は、焼け残った樹木の残骸が転がっているだけの世界で、その男は悠然と佇んでいた。
貴族然とした身形の老人である。片方だけの翼や長い尾は黒竜のそれだが、種族はドラゴニアンだろうか。すらりと背筋の伸びた立ち姿なので若く見えるものの、顔に刻まれた皺や白い髪から、それなりに老齢であることが伺える。
『……。……ほほう』
静かな面持ちでモノクルを磨いていた男が、不意に顔を上げた。
一面の焼け野原には何の変化もないように思えるが、男の直感は敵の気配を捉えていた。
『来ましたか、六番目の猟兵よ。いいでしょう、この「サー・ジャバウォック」が全力でお相手つかまつります』
黒姫小旅
どうも、黒姫小旅でございます。
此度は圧倒的な格上が相手となりますので、プレイングや成功度判定の結果によってはヒドイ目に会う可能性が多分にあります。ご注意ください。
また、敵が使用するユーベルコードについてなど、他のシナリオと解釈が異なる場合があります。なるべくオープニングで補足しているつもりですが、こちらもご注意お願いします。
●特殊ルール
『どれだけ下記の条件を満たしているか』に応じて成功度判定のサイコロ振り直しの回数が増加します。
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プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
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第1章 ボス戦
『猟書家『サー・ジャバウォック』』
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POW : 侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
イラスト:カキシバ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アリソン・リンドベルイ
【WIZ 禁樹・黄金の枝】
・・・森を焼くのは仕方の無い事だけれど。けれど、そのあとには草と木が生えて元通りになるのよ。悪で、全てを焼けると思うのかしら?
名乗りが遅れましたね。―――ヒーローズアースにおけるアースクライシス、そのフォーティナイナーズ末席、アリソン・リンドベルイと申します。【礼儀作法、コミュ力、空中浮遊、時間稼ぎ】……口上中に斬られない事と、敵の一撃を上手く挑発する事だけを考えます。
狙うのは、捨て身のカウンターの一撃のみ。【生命力吸収】で、悪意によって元気になるヤドリギの枝を絡ませて、他の猟兵の攻撃のための隙を作る事……それだけを狙います。強くない私を狙ったのが、一手損の失策よ。
●
「初めまして。ヒーローズアースにおけるアースクライシス、そのフォーティナイナーズ末席、アリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)と申します」
『これはこれは、ご丁寧に。ヒーローズアースの次なるオブリビオンフォーミュラを務めさせていただく予定の、ジャバウォックでございます』
アリソンがスカートの裾をつまんでちょこんとお辞儀をすると、サー・ジャバウォックは慇懃に礼を返した。
王宮の大広間であれば手を取り合ってダンスとでも洒落込みたいところだが、生憎ここは焼き尽くされた森の跡。とてもとても、優雅な舞踏会が始まるようには見えない。
痛ましい大地を、アリソンは若草の瞳に憂いをたたえて見渡し、キッとまなじりを上げて破壊の運び手を睨んだ。
「……たとえ森を焼き払っても、いつかは草と木が生えて元通りになるのよ。悪で、全てを焼けると思うのかしら?」
『もちろんですとも。それこそが全オブリビオンの大願であり、フォーミュラたる者の責務、『カタストロフ』なのですから』
対するジャバウォックはあくまでも飄々と受け答え、そしておもむろに、
『ところで、時間は十分に稼げましたかな?』
「ッ!?」
見抜かれていたことに動揺する暇こそあれ。ジャバウォックの老躯をどす黒い『悪意』が包み込んだかと思うと、片翼の竜人は音もなく宙に浮かび上がり、瞬発した。
……消えた!?
と、錯覚するほどの高速飛翔。
足元の灰が巻き上がったのを唯一の痕跡として、ジャバウォックは疾風と化した。ソニックブームを生み出しながら、目にも留まらぬ豪速で殺意の刃がアリソンに迫る。
「くっ……【禁樹・黄金の枝】!」
とっさに、準備していたユーベルコードを開放した。
金色に輝くヤドリギの枝が、一瞬にして全身を覆うほどに急成長。生きた甲冑としてアリソンを包み込んだ。ヤドリギは猟書家が放つ殺気に呼応して強大な力を与えてくれる。
ぐずり、ぐずり。
力を与える代償を求めるように、黄金の枝が皮膚を抉った。術者の血肉を貪り喰らう禁断のヤドリギを身に宿して、アリソンは苦痛に顔を歪めながらも集中力を繋ぎとめる。
多くは望まない。ただ一撃でいい、一撃だけを与えるために、持てるすべてを捧げて――――
……バサッ。
竜翼がひるがえる音がして、すべてが『無』となった。
何も見えない。何も聞こえない、ニオイも味も感じず、金のヤドリギに喰われる痛みすら消えてしまった。
「これ、は……」
声に出したのか、胸の内で思っただけなのかすら分からない。
完全な虚無の世界で、それでも足掻こうとするアリソンに何かの衝撃が伝わる。浮遊感がして、落下。そして……――――激痛。
「はっ――ぐ、あああああっ!?」
五感が戻ると同時、肩から脇腹にかけて灼けつくような痛みに襲われた。袈裟懸けに斬り裂かれた剣傷から溢れる鮮血が、可愛らしい洋服を深紅に染めていく。
痛い、苦しい、敵はどこだ、動けない……。混乱する頭を抱えながら、アリソンはどうにか身を起こした。
……結局、何も分からないまま倒れてしまった。果たして自分は、後続の仲間たちに何かを残すことはできたのだろうか?
●
『口ほどにもない……と言いたいところですが』
アリソンを斬り捨てたジャバウォックは、己の左腕に目をやった。
黒のコートに一点の金色、アリソンのヤドリギが突き刺さっている。よく見なければ気付かないほどの小枝であったが、それはジャバウォックの血肉と彼が纏う『人間の悪意』を餌にして急速に成長していた。
『……腱をやられましたか。賽の目が少し違っていれば、利き腕を取られたやもしれませんな』
モノクルの奥で目を細めてヤドリギを引き抜くと、抉れた傷口から大量の血が零れ落ちた。
苦戦
🔵🔴🔴
シズホ・トヒソズマ
折角ヒーロー的に救った世界を混乱させようとかさせやしませんよ!
◆早業で◆操縦したからくり人形で対策
初撃はデザイアキメラの◆オーラ防御で◆盾受けし
喰いとめた隙に安全位置に滑り込み回避
2撃は炎獣牙剣『王劾』から炎獣78体を召喚
マジェスから放射した◆光熱属性の風で炎獣を強化
受け止めさせ、更に炎獣の◆焼却爆発で剣のコースを変えて回避
3撃は転移時から仕込ませたライアの種を大地活性と水分操作で異常活性させ
直撃直前に足元から生えた植物に乗り上へ移動し回避
元が森なら土壌はあると踏みました!
UCで戦神アシュラの力を使用
戦闘用武器への無敵状態を自身に付与しヴォーパルを無効にし接近
マジェスの光熱喰剣で斬り裂きます
●
「折角ヒーロー的に救った世界を混乱させようとか、させやしませんよ!」
勇ましく啖呵を切って現れたシズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)を見据えて、サー・ジャバウォックはただ静かに一言、右手の得物を呼ぶ。
『……【ヴォーパル・ソード】!』
瞬間、青白い剣身が膨れ上がった。
おおよそ定寸だった剣が、摩天楼と見紛うほどに巨大化した。急激な膨張により押しのけられた大気が暴風となって吹き荒れる中、シズホは三種のカラクリ人形を展開しながらユーベルコード発動。
「人形が吸いし過去の影、我が身に宿り力となれ。応報を持って因果を制す――【幻影装身】戦神アシュラ!」
幻影が、シズホの体を包み込む。
それは三眼六臂の戦女神、ヒーローズアース世界原初の悪神『アシュラ』より強奪した権能を纏いて、人形遣いはカラクリの糸を手繰った。まずは一つ目――三欲の獣、デザイア・キメラ。
「バリア形成、角度調整……!」
『ヌンッ!』
オーラ防御が張られた直後、ジャバウォックの巨大剣が振り下ろされた。
爆音。
超質量を受け止めたことによる衝撃波で揺れる大地を、シズホはまっすぐに駆け抜けて、そして二つ目。
「吹けよ熱風、マグマの焔を燃え上がらせろ。五英雄再現戦闘人形『マジェス』!」
カラクリ人形から吹き上がる風は、かの帝竜ガイオウガの力を宿せし『王劾』の剣身から生まれる炎獣たちの力を限りなく増幅する。
そして強化された獣の群れが、灼熱の爪牙を剥いて使役者の敵へと襲いかかった。
『甘い!』
迎え撃つは、剣の大きさをものともしない鋭い斬り返し。ヴォーパル・ソードの二ノ太刀が群獣を薙ぎ払った瞬間、視界が爆炎に満たされた。
『……ほう、これも防ぎますか』
感心したような笑みを浮かべるジャバウォックの視線の先、煙幕を突き破って走るシズホはいまだに無傷だった。
炎獣もろとも巻き込むつもりで斬ったのだが、直撃寸前で獣たちを自爆させることによって薙ぎ払いの軌道を逸らし回避したのだと、手元に伝わる感触から理解した老剣士は、小さく頷いて斬撃を“中断した”。
『たしかヒーローズアース世界における原初の戦神は、戦いのための道具では傷つけることができなかったとか。なるほど、それが貴女のユーベルコードならば……これならどうです!』
刹那の思考を経て、斬撃再開。怪力に任せて軌道修正し、巨大剣を慣性で軋ませながら無理やり変えた太刀筋が向かう先はシズホではなく、彼女の足元。
地割れ!
三ノ太刀が穿ったのは、地面そのもの。地平線まで一直線にぶち割られた大地に、底の見えない割れ目が生じた。
「う……おあっ!?」
たとえアシュラ神の力を纏って武器に対して無敵になっても、足場を崩されては落下するよりほかはない。一矢報いることも叶わず、シズホは地中に飲み込まれていく――――と、誰もが思ったところで最後のカラクリが動き出す。
「元が森なら、土壌はあると踏んでいました。――植物繁殖開墾型人形『ライア』起動!」
はるか後方、スタート地点に仕込んでおいた竜人人形によって大地の生命力を賦活。割られた地底より伸びでる樹根がシズホを受け止め、再び地上へと持ち上げる。
「三連撃、しのぎ切りました。ここからは私の番です!」
強力な手札と、それを活かした策略、そして一抹の幸運。すべてが完璧に噛み合って、ついに己の間合いまでたどり着いた。
シズホは樹木を蹴って飛び出すと、カラクリ人形を突撃させてジャバウォックの土手腹を斬り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵
大豪傑・麗刃
見えない敵が肉弾戦で攻めてくる。じゃあ取るべき手段はひとつ
逃げる
見えない時は目に頼らずフォースの力(意味不明)を信じると昔から決まっている。ということで敵の殺気、息づかい、動きにより起こる空気の流れ等を見切、いや『聞き切』る。そしてわたしのユーベルコードが解禁されるまではひったすらダッシュで逃げまくるのだ!どうしても追いつかれそうならカウンターで吹き飛ばして距離を稼ぎまた逃げる。
ユーベルコード解禁後は
きみの技は確か
増殖スナック菓子
え?違う?ぞうしょですなーく?
それならスナック菓子のがえらいのだ。なぜなら
おいしいから
ということで洪水のごとく増殖しまくったスナック菓子で相手をお(い)し(い)ながす
●
『捉えがたき者、架空の怪物よ。猟書家「サー・ジャバウォック」の名において、汝に姿形を与えん。――【侵略蔵書『秘密結社スナーク』】!』
「増殖スナック菓子?」
『いえ、蔵書「スナーク」ですが……もしや、笑うところでしたかな?』
「そ、そんなこと言うと、れいちゃんぶつじょ!」
わざわざスナック菓子の袋を持参までしたのに、真顔で返された。さっそくダメージ(?)を受ける大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)だったが、それで戦いが終わってくれるわけではない。
完全なフィクションであったはずの見えざる怪物スナークが、実体を持ってこの場に顕現する。
ズゥン――と重低音が響いて、灰が舞い上がった。ズン、ズン、と音を立てて近付いてくるそれは、目には映らなくとも間違いなく実在する質量体の歩みに他ならない。
「む、来たのだな!」
ただならぬ気配を感じて、麗刃は口を引き結んだ。さすがにここからはおふざけは無しと……
「見えない時は目に頼らずフォースの力を信じる、と昔から決まっているのだ!」
『フォースとは、見かけによらずスペースシップワールド世界のお方でしたか』
「マジメに受け取られるとやりづらいのだ……ってなわけで逃げの一手ぇ!」
どんな状況でも変わらない安定の変態テンションで、麗刃はきびすを返すと一目散に駆け出した。
逃走を図ったことで狩猟本能でも刺激されたのか、姿なき足音が歩行から疾走へと変わった。地を抉る足音が、大型恐竜を彷彿とさせる呼吸音が、そして何よりも背筋が凍りつくような殺気が、猛スピードで追いかけてくる。
Q. 全速力で逃げる麗刃を、遥かに上回る速度で追う怪物スナーク。両者のスピード差とスタート時点での彼我の距離から考えて、追いつかれるのは何秒後か?
「A. 今なのだっ!」
左へ跳んだ直後、地面が見えざるナニカによって殴り砕かれた。クレーターのような大穴が開いて、周囲に土石が巻き散らされる。人間に直撃すればひとたまりもないであろう凄まじい威力に、麗刃は肝を冷やす。
「……これ、逃げ切るの無理なんじゃなかろうか?」
パワーもスピードも、まるで勝負にならない。このまま走ってもすぐに追いつかれ、その時もちゃんと回避できるという保証は何処にもないのだ。ならば、一か八かで勝負をかけるしかない。
「んっしゃあああああ!」
気合一声、麗刃は足を地面にぶっ刺して急ブレーキをかけると、振り返りざまに拳を振るった。すぐそこから伝わってくる圧倒的な存在感に、カウンター気味の廻し裏拳が命中。肉と肉がぶつかり合う音がして、衝撃に耐えきれずに吹っ飛ばされる……――――麗刃が。
「って、わたしの方が吹っ飛ぶのかぁぁぁっ!?」
山でも殴ったような手応えだった。正面からぶつかり合えば体重の軽い方が押し負けるのは自明の理であり、結果として宙を舞う麗刃である。まあ、距離を広げるという目的は果たしたので良しとするとして、うまい具合に落下地点に積まれていた“クッション”にボスンと受け止められた。
『む、あれは……』
麗刃が着地した“クッション”の山を見て、ジャバウォックは息をのんだ。
それは開口一番、哀しくも笑いを取れなかったダジャレを言いたいがために持ち込んだスナック菓子の袋であった。一つしかなかったはずの菓子袋は、いつの間にか何百個にも数を増やして小山を作っている。
「はっはあ。どうにかなったのだ」
額の汗をぬぐって、麗刃は会心の笑みを浮かべた。
ユーベルコード【鬼殺し】の効果である。「蔵書」と「増殖」、「スナーク」と「スナック」をかけた言葉遊びをトリガーとして、文字通り「増殖」した「スナック」の山はもはや手の付けようがないほどに膨れ上がっていた。
『……なるほど、つまらぬ冗談に見せかけてこのような仕込みをしていたとは。お見逸れしました。大した道化ぶりです』
「つまらないって言うなぁぁぁ!!」
心からの叫びをあげて、麗刃は千にも万にも増殖したスナック菓子を大津波のごとく放ち、ジャバウォックも怪物スナークもまとめて押し流した。
成功
🔵🔵🔴
シル・ウィンディア
テラ(f04499)と共同戦線
最強、かぁ…
今までも同じような人達の相手をしてきた
でも、それも乗り越えてきたんだ、わたし達はっ!
シル・ウィンディア行きますっ!
対UC
速度重視で、さらに厄介な能力が…
完全回避は難しいけどやり方によってはっ!
敵の剣は【第六感】を信じて動きを【見切り】回避
黒翼も同じ動きで回避
被弾時は光の【属性攻撃】を付与した
【オーラ防御】を【高速詠唱】と【多重詠唱】で複数展開
直撃は絶対に避けるよ
五感が使えなくても
【第六感】と信頼している妹を信じて
ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラストを詠唱
【魔力溜め】を【多重詠唱】で並行処理
【全力魔法】で…
わたしの【限界突破】の一撃
あなたにあげるよっ!
テラ・ウィンディア
共闘
シル(f03964
最強か
ならばおれが挑むべき相手だ
対UC
【属性攻撃】
炎属性を全身と武器
そして周囲に無数の攻撃力を持たない小さな火球を展開させる
後は【戦闘知識】から周辺状況と敵の動きの解析
【第六感・残像・空中戦・見切り・盾受け】も含め火の玉の揺らめきからスナークの察知を試み可能な限り回避し致命を避ける!
UC発動!
剣と太刀による猛攻を仕掛けながら
シルが翼を受けたらそのまま抱えて飛ぶ!
見えず感じないならおれがシルの眼となり耳となり手足となる!
シルの標準をおれが合わせ
グラビティバスターを向けて
シルと合わせて【二回攻撃・一斉放射】で重力波砲を打ち込む!
ああ…おれ達の全力…たっぷりと味わえ!!!
●
「さあ、行くぞ!」
テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)が太刀と小剣の刃を擦り合わせると、咲いた火花が戦場全体に拡散した。等間隔に並んだ無数の灯火は、祭り提灯よろしくゆらゆら揺れて――――ボッ!
唐突に、一画の灯火がはじけた。
ボッ、ボッ、ボボボボボボッ! それは立て続けに連鎖して、火を吹き消しながらこちらへ近付いてくる。
透明な、恐ろしく大きなナニカが。
「見えたぞ、怪物スナーク!」
テラの黒瞳が煌めいた。強敵を前にして沸き立つ闘争心が、超重力フィールドを展開して全身を包み込む。
【モード・グランディア】発動!
見えざる怪物の突進が炸裂する寸前で、地面から解き放たれたテラは上空へと逃れた。余波をくらってきりきり舞いしながら、テラは怪物がこちらを仰ぎ見たのを気配で察する。
ドン――! と、地表でこれまでにない衝撃。スナークが跳躍したのだと理解したときには、風の唸り声がすぐそこにまで来ていて、逃げられないと見たテラは重力場を集中させて防御の構えを取った。
「――させないよ!」
白い影の乱入。
風を纏って双子の妹の許に駆け付けたシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は、すばやい詠唱でオーラ防御をテラに飛ばした。
黒き超重力と白き光の守護が重なって、スナークの暴力を受け止める。
地対空ミサイルでも打ち込まれたような轟音と衝撃が生まれた。双子が力を合わせた障壁は粉々に打ち砕かれて、しかしそれによって敵の攻撃は逸れて空を流れた。
「強い! 最強っていうだけのことはあるね」
「ああ。だからこそ、挑む価値がある!」
シルは驚きながらも即座にオーラ防御を張り直し、テラは闘争心を奮い立たせて超重力フィールドを修復する。
着地したスナークが焼け落ちた木々の残骸を持ち上げ、投げつけてくるのを二人で斬り落とし、回避しながら、シルは全方位への警戒も怠らずに意識を張り巡らせていた。
「気をつけて、テラ。スナークも厄介だけど、ジャバウォック本体だっていつ仕掛けてきてもおかしく――――」
すべて言い終える暇もなかった。
漆黒の塊がよぎったかに見えた瞬間、シルが幾重にも張り巡らせた光のオーラが消し飛んだ。
「速い!?」
『一緒に首も落とすつもりだったのですが……躱されましたかな? なかなか勘がいいらしい』
称賛するような声がして、顔を向けるがそこに敵の姿はなく、代わりに背後から殺気。
「くっ、回避……いや間に合わな……」
『遅い!』
避けるか、防ぐか、どちらを選択すべきか迷った一瞬が命取りとなった。肉薄した老人の左背から生える竜翼が、シルの体をはたき落とす。
「シル!」
テラがカバーに入ったのは、その直後だった。落下するシルを抱き留め、炎を纏った刃でジャバウォックの追撃を迎え撃つ。
『美しい助け合いですな。……やはり、殺すよりも五感を消すだけにとどめた方が効果的だ。貴女がたのようなタイプは、足手まといと分かっていても助けずにはいられない』
「足手まとい、だと!」
テラの肩から、怒りの陽炎が立ち上った。
片手が塞がった状態で、ジャバウォックの剣戟とスナークの投擲とを相手取らなければならないからといって、身動きの取れない双子の姉を厭うなどありえないことだった。それどころか、むしろ頼りにしているといってもいい。
「本気でそう思ってるんなら、あんたも大したことないな!」
全幅の信頼をおいたテラの言葉は、当然というべきか何一つ聞こえないシルと想いを同じくするものだった。
(……だいじょうぶ。わたしにはテラがついてる)
シルは五感の消えた虚無の世界に在りながら、必ずや妹が自分を信じてくれていると確信していた。
今の自分がどんな状況なのかは分からない。この手は武器を握っているのか、この舌はきちんと呪文を詠唱できるのか、確かなことなど何もない中で、それでもテラがなんとかしてくれるという一心で、シルは己の全力魔法を発動する。
「どんなに強くて恐ろしい相手だって、わたし達は乗り越えてきたんだ。……行くよ、テラ。【ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト】!!」
「任せろ、シル!」
地水火風光闇の六大属性を複合した魔力砲撃に合わせて、テラのグラビティバスターが火を噴いた。狙いをつけることもできないシルの魔力砲撃は、テラが放った重力波の弾丸に引き寄せられて一点に集中。標的たるサー・ジャバウォックに向けてまっすぐに飛んでいく。
『ぬう……スナークよ!』
とっさに、老竜人は左手の侵略蔵書を掲げた。
見えざる怪物は即応して大ジャンプ。本の所有者を守るように立ち塞がって、双子の砲撃を受け止める。
以心伝心の双子の絆と、最強とうたわれる猟書家の力がぶつかり合った。全力と全力が拮抗し、そしてついに……
――ボキッ!
ジャバウォックの左腕が、限界を迎えたようにあり得ない方向へとねじ曲がった。侵略蔵書の制御が狂い、スナークの力が急激に弱まっていく。
均衡が、崩れた。
「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」
ここが勝機。シルとテラは残りの魔力ありったけを注ぎ込む。限界を越えた一斉放射は怪物スナークを飲み込んで、ジャバウォックを真正面から打ち抜いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フェルト・ユメノアール
どれだけ相手が強大でも猟兵として、エンターテイナーとして引き下がる訳にはいかないね!
とにかく攻撃より一撃に耐える事を最優先に行動
剣はともかく黒翼の効果は致命的になる
黒翼に触れないように体を地面スレスレまで低く、クラウチングのような体勢で迎撃
『ハートロッド』で剣撃をガード、それと同時にUCを発動する
その攻撃は通さない!ボクは手札から【SPファントム・マタドール】を召喚!
受けるダメージを半分にする!
そしてここからがボクの策、相手の攻撃でハートロッドが手から弾かれたように『演技』
上手く相手の視界の外に飛ばし、油断させた所で白鳩姿に戻し、相手に纏わりつかせて妨害
その隙を突いてマタドールと一緒に攻撃する
●
『皆お強い。これが幾多のオブリビオンフォーミュラを屠ってきた六番目の猟兵の力ですか。しかし、私もそう易々と倒れるわけにはいきませんのでな』
かなりのダメージが蓄積されているはずだが、サー・ジャバウォックは顔色一つ変えることなくユーベルコードを発動し、『人間の悪意』を纏って宙に浮きあがった。
『いま一太刀、勝負!』
片翼を羽ばたかせて飛翔するジャバウォック。恐らくは最後の一戦となるだろうその相手として舞台に上がったのは、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)。
「ははっ、素敵じゃないか! エンターテイナーとして引き下がる訳にはいかないね!」
フィナーレの予感に武者震いしながら、フェルトは迎撃姿勢を取る。地面スレスレまで前傾した、四足獣のような体勢で待ちかまえる道化少女に、ジャバウォックはヴォーパルソードの切っ先で地面を削りながら斬りかかった。
『オオォォォッ!』
「――今だ! 【<ユニットカード>SPファントム・マタドール】を召喚。ユニットの効果によってこの攻撃によるダメージは半分となり、減少した数値がマタドールの攻撃力となる!」
ガキンッ! 魔法のカードに封じ込めていたガイコツ顔の闘牛士を呼び出すと同時、手の中に現れたステッキと青白い斬竜剣がぶつかり合った。
威力の半分をマタドールに吸収させてもなおジャバウォックの剣圧は凄まじく、フェルトの杖はへし折れんばかりにたわんで、バネを弾くように吹っ飛ばされてしまう。
「うっ、なんて馬鹿力……」
『などと、言っている場合ですかな?』
ただの一合で感覚がなくなった両腕をだらんと垂らすフェルトの頭上に、冷たい影が下りた。片手上段に振り上げられたヴォーパルソードが、悪意の漆黒を纏って落ちてくる。
……この間合いで躱せるか? だが、防御するにも頼みのステッキは上空に弾き飛ばされて、虚しくクルクルと回転しながら――――PON!
可愛らしい音とともにステッキが白鳩に変身した。鳩の姿に転じた使い魔の杖『ハートロッド』は翼を畳んで急降下すると、まさにフェルトを斬り捨てようとしているジャバウォックの顔面を強襲する。
『ぬ、しまっ……!?』
モノクルが割れて、鉄面皮に狼狽が浮かんだ。意識が逸れ、剣気が乱れて、致命的な隙が生まれる。
「もらった!」
すかさず、フェルトは踏み出した。
腕は痺れて動かせないが、そんなことで躊躇していられない。敵の攻撃力の半分を奪ったガイコツ闘牛士とともに懐へ潜り込むと、全身を鞭のようにうねらせて右脚を蹴り上げる。
道化師風の尖った靴先と、闘牛士の刺突剣が、猟書家最強の男を刺し貫いた。
『ご……ほっ!?』
命脈は絶たれた。喀血するジャバウォックの手から、ヴォーパルソードが零れ落ちる。フェルトたちが武器を引くと、支えを失った老人は力なく焼け焦げた大地に倒れ伏した。
『せ、めて……五感を奪うことができていたら……いや、初めからそうさせないように、翼が届きにくい姿勢を取ったのか……いやはや、完全に手の平の上に乗せられていたようですな』
……お見事。
口惜しそうな、それでいて褒め称えるような言葉を遺して、サー・ジャバウォックは目を閉じた。
【END】
大成功
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