集めましょう。集めましょう。
星屑のような卵を沢山集めましょう。
ガチョウの後追い、一つ二つ。
ころり転がる、三つ四つ。
籠に入れたは、五つ六つ。
気付けば自分も輝いて、星空負けぬ輝きに。
「皆さん、卵はお好きですかぁ?」
戦争の慌ただしさの中、それでも間延びの声は変わらず。
ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)は、ぴょこりと兎耳を揺らしながら、猟兵達の前へ。
「わたしはぁ、オムレツとかにする分には好きですねぇ」
つまるところ、卵料理にするならば、と。
だが、今回、猟兵達に集まってもらったのはそれを伝えるためではない。
「今回はですねぇ、オブリビオンを倒すのもですけれどぉ、同時に卵集めもしてもらいたいのですよぅ」
それこそが本題。
迷宮災厄戦と呼ばれる、アリスラビリンスでの戦争が始まってもう幾日か。
この戦争における各戦場。そこで繰り広げられる戦いについて回る特殊な状況というのは、様々な戦場を経験していればいる程に、理解の及ぶところではあろう。
つまり、今回の戦場での特殊な条件というのが、そうである。ということなのだ。
「皆さんをお送りさせて頂くのはぁ、ザ・ゴールデンエッグスワールドという場所。その名前の通りの場所ですねぇ」
そこでは沢山の黄金のガチョウがいるらしい。そして、それが生み出す黄金の卵こそが、今回の重要な役どころ。
「そこにある黄金の卵はですねぇ、この場所に限ってではあるのですけれどもぉ、所有者の力を増幅させるらしいのですよぅ」
つまり、それをその場所に居るオブリビオンが持てばどうなるであろうか。
それは、この戦場を通り抜ける難易度がより増すということだ。
だが、幸いにも、猟兵達がその戦場へと辿り着いた段階では、オブリビオン達はまだその卵を一つも獲得などしていない。介入の余地がまだあるのだ。
だからこその、卵集めも同時に、という依頼。
「オブリビオン達が拾い集めるより前にぃ、皆さんがそれを集めてしまってくださいなぁ」
オブリビオンが持つと同様、猟兵達が持ってもその力を強化してくれるは同じである。
持てば持つほどに、より容易くとこの戦場を抜けることが出来るだろう。
だが、注意点が一つ、二つ。
「この卵はですねぇ、その卵を所有する人がそれを持てば持つほどにぃ、所有者の身体も黄金色に輝かせるのだとかなんとかぁ?」
黄金の輝きが強い程、この戦場における強さを現すと思えばいいだろう。
それはつまり、強さのバロメーター代わりにも使えるということ。
オブリビオンを発見した際、その身体がどれ程発光しているかも、強さの指標になる。逆もまた然りだ。
「あとですねぇ、ガチョウの卵は鶏の卵より大きいのでぇ、数を集める場合には持ち運びの方法も考えていた方がいいかもしれませんよぅ」
卵を沢山持ったはいいが、それが邪魔で動けないでは意味がないからこその。
「また一風変わった戦場ではありますけれど、これも先に進むため。皆さんなら、無事に進めると信じていますよ」
それでは、いってらっしゃいませ。
翳された銀の鍵が、黄金卵の世界への道を開いていく。
ゆうそう
オープニングへ目を通して頂き、ありがとうございます。
ゆうそうと申します。
黄金の卵の争奪戦。
如何にオウガより先にそれらを拾い集められるかが、今回の鍵となります。
プレイングボーナス……黄金の卵をオウガに取らせず、自分達が取る。
ただ、手だけでは持てる数に限界があるでしょうし、そのまま戦うにしても武器などが振るいにくくなってしまう可能性があります。
ですので、どうやって持ち運ぶかも考えておくと良い事でしょう。
その上で、オブリビオンを打倒してやってください。
なお、黄金の卵のは中身まで黄金ですので、持ち帰っても調理などには向いていないかもしれません。
それでは、皆さんの活躍・プレイングを心よりお待ちしております。
第1章 集団戦
『星屑の魔女』
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POW : イマトイウホウキボシ
【彗星】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【流星】を放ち続ける。
SPD : メテオインパクト
【望遠鏡を通した視線】を向けた対象に、【宇宙からの隕石】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : ホシクズノステージ
戦場全体に、【星空】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:慧那
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アリソン・リンドベルイ
【WIZ 庭園守護する蜂軍団】
ーーーそう。なら、おいで、私の蜂たち。ユーベルコードで召喚した蜂たちに、【失せ物探し】で卵を探してもらうのよ。私はあまり武器を使う必要もありませんから、蜂たちが集めた卵を入れるための、藤の籠でも持っていきましょうか。
私個人としては、【オーラ防御、空中浮遊】で守勢に周り、【動物と話す】で愛鳥のイスカに周囲を飛び回ってもらいます。……どれくらいの数を集めれば良いかは判らないけれど、それは蜂たちに任せるわ。……必要があるなら、強くて戦えそうな猟兵さんに卵を譲渡するのも一手段…でしょうか。蜂たちも、戦うのが好きではありませんからね。適材適所で、卵探しを主眼に考えます。
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
卵集めか…
強欲は駄目だけど今は仕方あるまい…行こうか…
群がる敵には鉄塊剣を振るい[なぎ払って]追っ払ったり
卵を拾おうとする敵には拷問器具を放ち[おどろかせ]て
妨害しよう…
【とても怖いな仲間達】を召喚して
刑吏達に出来る限り卵を持ってもらおう
彼らの放つ[殺気と存在感で恐怖を与え]
敵群を近づけさせないようにしよう…
私は帽子の中に一個だけ入れてそのまま被ろう…
光り輝く刑吏達を引き連れて
卵を落とさぬように星空の迷宮を駆け抜けよう
星空の淡い輝きなんて光で打ち消し[蹂躙]してやろう…!
眩しい…
空に輝く太陽のような眩しさだ…
仮面を被って[視力]を守ろうね…
編み込み、編み込み藤の籠。
中には何を詰めましょう。
ピクニックのためのお弁当。
いいえ、いいえ、違います。
輝き光る、卵を沢山詰め込むの。
「御願いね、私の蜂達」
ガアガアと響くガチョウの声に、混ざり聞こえる羽音の無数。
それこそは、藤の籠持つアリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)が呼びだした巨大蜂――彼女の庭の警備員。
ぶんぶんと威嚇するように羽音を鳴らし、アリソンを周囲の悪意――星屑の魔女達から守るように。
「あなたには、頼れる仲間が沢山、いるのね」
「あら、そう言うあなたにだって、黒いお友達が沢山いるのよね?」
「いえ、刑吏達は、そういうのでは……」
ふわりふわりと花の如くを宿すがアリソンならば、その隣にてヒトを形作る黒は仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)。
錆の乙女と手と手を取って、引き連れるは黒き仮面の刑吏達。
ずらり居並ぶその姿は、アンナと共々に周囲へと威圧を撒き散らす。
蜂と刑吏達。
見るだけでその脅威が伝わるに分かり易く、星屑の魔女達を近づけさせなどしない。
彼女らは、じりと距離を取るように取り囲むばかり。いや、むしろ――。
「そうよね。そのままで勝てないと思ったのであれば、そうするわよね」
「卵を集めに、いったみたいね」
それはまさしく足止めのための行為。
それぞれでは勝てぬと踏んだからこそ、一部を後方に逃がし、それが黄金の卵を得るまでの時間稼ぎのためにと。
「じゃあ、私達も動かないとね」
ブンと羽音は高らかに。
「ああ、行こうか」
カチリと、心は仮面で切り替わる。
星屑の魔女に黄金の卵を渡さぬために、二人はその一歩を踏み出すのだ。
空気を裂いた、乙女の叫び。
それは鉄塊がアンナの手によって風を薙いだ音でもあり、アンナとアリソンとを取り巻いていた星屑の魔女の一部が悲鳴と共に吹き飛んだ音でもあり。
「進め、刑吏達。制圧するぞ」
星屑を呑み込むように、黒色がじわり。
魔女為す壁を崩して滲み出たそれは、着実に着実にとその間隙を広げ、外へと繋げていく。
そして、その隙間を抜け出るは、無数の影。アリソンの仲間達。
間隙より抜け出したそれが刑吏と共に更にと傷広げんとするのかと、魔女達がさざめき揺れた。
だが――。
「ごめんなさいね。私も、この子達も、戦うのはあまり好きではないの」
蜂達が目指すは外の世界。黄金の卵の在り処を目指すために。
彼らの正体は巨大蜂ではあれども、ミツバチと同じようなハナバチの類。
『家族』を守る為ならその身の犠牲を厭いはしないが、本質的には大人しい者達なのだ。
だからこそ。
「余所見などするものではないな」
炎獄が、そのとてもとても怖い仲間達が、代わりに鋭きを突き立てる。
――また、じわりと黒が広がった。
だが、魔女達とて、ただやられるばかりではない。
己の身一つ、己の身数多でも止められないのであれば、それに代わるものを生み出すのみ。
自分達すらをも巻き込んで、その身より零れる魔力で星空の迷宮を今、此処に。
――じわりと広がった黒を呑み込み返し、左右に広がるは満天の星空。
「ロマンチックな光景ね」
「戦いの場でなければな」
瞬く星空は形なき迷宮。
手を伸ばせども壁はなく、見上げれども天井はない。
本当に、宇宙にでも放り出されたかのような。
「でも、呼吸は出来るし、足が地を踏みしめている感覚はあるわ」
「幻影の類ということか」
「そこまでは……」
ただ、分かるのはただ一つ、このままでは良いように足止めされたままだという事。
それはつまり、魔女達が黄金の卵を得ることを意味する。
では、どうする。ならば、どうする。
当て所もなく歩き回るも意味はあろうが、時間の浪費。
なにか、なにか一筋の光があれば――。
「――あ」
気付いたのは、アリソンであった。
その見上げた先、星空の中からゆるりゆるりと降りきたるは黄金の。この星空の輝きではない、地上で生まれ落ちた輝き。
「そう……そうよね。踏みしめる地があるのなら、振り仰ぐ空だって本当はある筈なのよね」
降りくる黄金を支えるは蜂の群れ。そして、蜂達と共に包囲網を抜けていたもう一匹の仲間――アリソンの愛鳥たる交喙の姿。
だが、その黄金の卵を受け取るべきは――。
「私が持つのか?」
「ええ、私が持っていてもだし、あなたに是非」
「……そうか」
小さな運び屋達はその体でより大きなものを運んだからだろう、少しばかりふらついてはいたけれど、それは確かにアンナの目の前にて浮かぶ。
アンナがそれに手を差し出せば、暖かな温もりが掌の上に。
「――これが、そうか」
暖かきと共に流れ込むは力の脈動。
トクリトクリと鼓動を刻み、アンナの全身へと輝きと共に駆け巡っていく。
アンナは被っていた帽子を脱いで、その中にそっと落とす。そして、再びに頭の上へ。
「手に持ったりはしないのね」
「邪魔になるからな。それに――」
こっちの方が落とさなくて済む。
極真面目なアンナの理由に、思わずアリソンも小さくくすり。
嗚呼、彼女はきっと悪いヒトではないのだろう、と。
――錆色も今は黄金と代わり、握る手の力は十全を越える。
罪という形なきものに判決を下し、刑罰という名の形にてそれを処するがアンナの生業。
ならば、この果てしなきとも思えるかのような、形なき星空の迷宮にも同じこと。
「星空の淡い輝きなど、この光で打ち消し、蹂躙してやろう……!」
星空を裂いて、黄金の輝きが世界を照らす。
それこそが出口。この迷宮の終わりと示すように。
「眩しい……」
「出れたようね」
星空の輝きから、日光の輝きへ。
その眩しさにアンナとアリソンの目が眩む。
だけれど、それも一瞬のこと。すぐさま、それぞれの目は光に慣れて、周囲の状況を把握するのだ。
「あら、全員倒れているのね」
「死力を尽くしてのものだったのだろう」
それこそは、倒れ伏す魔女の群れ。骸の海に還りゆく姿。
かの迷宮は、彼女らが全力で生み出していたものであったのだ。それを討ち破られたのであれば、その反動が返るも必然であろう。
だが、まだ退いた一部が生き残っている筈だ。
「もう暫くは、一緒にお願いしてもいいのよね?」
「ああ、承ろう」
星空の迷宮を抜けられたは、適材適所が故に。
アリソンが始まりに卵探しのためと仲間を飛ばさねば、打開はもっと時間が掛かっただろう。
アンナが刑吏と共に壁を崩し、アリソンの仲間が往く隙間を作らねば、黄金を得ることはなかっただろう。
二人の適材適所。合わさった力があったからこそ、この結果があったのだと言えた。
ならば、それをもう少し続けるのも、悪くはない事であろう。
そして――。
「随分、拾い集めたものだな」
「そうね。もう籠の中にも入り切らないわ」
逃げた魔女を追いかけ、倒したその後に、そんな声が響くのも、もう僅か先のこと。
だけれど、今はまだ現在でしかなく、その未来へと向け、エッグ・ハントの第一歩を二人は刻むのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィーナ・ステラガーデン
(めいいっぱい帽子に詰め)
持ち運びが大変?食べてしまえば良いわね!私の胃袋は宇宙よ!(キリッ)
食べたら効果が現れるか微妙かもしれない?
味に保障が出来ない?
んなこたあ問題じゃないのよ!私は卵が食べたいのよ!ぶっちゃけ強くならなくてもいいわ!私は卵が食べたいのよ!!(二度目)(必死の形相)
というわけでさっそく焼くわ!(フライパンをジャーンと準備)
むっふーーっ!高鳴りが抑えれないわ!これだけでかいのよ?いっぱい食べれるわ!おーぷーーん!
(フライパンにごとんと落とされる黄金、沈黙、怒りに震える身体、巻き上がる火の粉、燃えあげる周囲、八つ当たりのターゲットにされるオウガ)
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
ティラル・サグライド
なるほど、これでは持つのも一苦労だ。
なら頑張って飲み込むとしよう。
戦闘が始まったら火がついたままの煙管を相手に放り投げよう。ちょっと煙たすぎて目が痛くなるけどごめんね。
そしたらそこら辺に転がっている卵を持ち、口を刻印により頬を裂きながらも大口開けて飲み込もう。
うん、いける。でもこの体じゃ、食べてもあと十行けるかどうか。
ならこうしよう。
頬を裂いたまま持っていた鞄も飲み干し、左目の彼にお願いしよう。
さあ行こう、ジャバウォック!
細長く狡猾な竜へとなったならば私以上の大口開いて地面とガチョウごと黄金の卵を飲み干していこう。
ああ、あの隕石も美味しそうだが、君はそれ以上に柔らかそうだ。
それじゃ、頂きます。
もくりもくりと揺蕩う煙。
出所はどこから。地に投げ落とされた煙管から。
もくりもくり。
たちどころに煙は周囲を彩って、星屑の魔女の、それに追われていた黄金のガチョウの、視界を塗りつぶす。
ガーガー、ギャアギャア。
ガチョウも魔女も、一緒になって悲鳴を上げる。
「おやおや。こうなったら、どれが誰の悲鳴だかもわかったもんじゃないね」
気取った台詞はティラル・サグライド(覆水盆に逆集め・f26989)。
自身が生み出した阿鼻叫喚を、晒した緑で眺め見る。
「煙草のポイ捨てなんて、駄目じゃない!」
「煙草と煙管じゃあ、ちょっと違うよ」
「え、そうなの!?」
「ああ、そうさ」
言の葉の煙に巻かれて、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)。最初の注意はどこへやら。
へー、そうなのね。と納得しつつ、
「ちょっと、煩いわよ!」
なんて、阿鼻叫喚に爆発を一つプレゼント。
それで悲鳴は静かになって、ついでに毒煙の名残も綺麗さっぱり。死屍累々の光景が白日の下に。
だが、その光景に今更と引くような者はここにはいない。
むしろ――。
「あ、あれ! あれ、黄金の卵じゃないの!?」
「そうだね。ガチョウ達も沢山いたみたいだし、その置き土産だと思うよ」
二人の視線が集まるは、魔女とガチョウが残した卵。黄金に輝く卵達。
ひとまず手分けでえっちらおっちらとかき集め、数えてみれば7、8個はあるだろう。
「なるほど、これでは持つのも一苦労だ。それに、互いに持って歩くにも、ちょっと邪魔そうかな?」
「……そうねぇ」
「かといって、ここに置いておくのも魔女達に奪われかねないよね」
「……そうねぇ」
「……聞いてる?」
「……そうねぇ」
これは、絶対に聞いていない。
ティラルが片目でフィーナを見れば、彼女の視線は帽子の中。いや、正確に言うならば、帽子の中にある黄金の卵。
ティラルの耳に、ごくり。と唾を呑み込む音が聞こえた。
まさか――。
「ねえ、キミ、もしかして――」
「私に言い考えがあるわ! 持ち運びが大変なら、食べてしまえば良いわよね!」
「――ああ、やっぱりかい?」
だって、卵なんだもの。と、堂々と宣言するはフィーナ。想像通りの言葉に苦笑いを浮かべるのはティラル。
「でも、キミ、これはあんまり食用に向いてなさそうだけれど」
「心配無用! 私の胃袋は宇宙よ!」
「壮大な話だね」
「でしょう? それに、味に保障がなかろうが、食べたら効果が落ちるかもだろうが、いいのよ、そこは、どうでも」
むふー! とフィーナは鼻息も荒く。
実際問題としてはどうでも良くはない気もするが、敢えてと触れない優しさがティラルにはあった。酔狂なのは、自分自身もだ。ならば、他の酔狂とて許容しようというもの。
「私は! 卵が! 食べたいのよ!」
それは渾身の叫び。
聞く者の心を震わせる――ということはなく、ただ、フィーナの食欲だけは確かに伝わるそれ。
「もう一度言うわ! 私は! 卵が! 食べたいのよ!!」
大切なことなので、二回言いました。
そして、そんなフィーナの顔はまさしく必死。
何が彼女をそこまで突き動かすのか。決まっている。食欲だ。
だから――。
「……試してみるのも、いいと思うね」
「本当に!?」
食欲という点においては、ティラルも――常のヒトのそれとは少し趣も違うだろうけれど――多少ではあるが理解も出来る。
だからこそ、フィーナの酔狂を許容すると共に、その提案を呑んだのだ。
そして、許可を得れば――得なくとも――フィーナの動きは早かった。
――さっと組んだは焚火の囲い。
――ぱちりと指鳴り、炎があがる。
――取り出し、掲げるフライパンは使いこまれた鈍色。
――それを炎の上にセットすれば、準備は万端。
「むっふーーっ!」
テンションは火の粉を散らす炎の如くと天井知らず。
何を作ろう。やはり、王道の卵焼き? スクランブル・エッグもいいわね。いやいや、卵の味を楽しむためにオムレツもいいかも。
なんて、フィーナの脳内で会議は踊る。
だが、待とう。ガチョウの卵は鶏のそれに比べて大きく、数も沢山あるのだ。ならば、『全て』を作っても許されるのではないだろうか。いや、許される。むしろ、許す。
「おーぷーーん!!」
彼女の胸の高鳴りを示すかのように、期待を示すかのように、金色の殻が割れて、そして。
――ごとん。
「……?」
フライパンの上には横たわる黄金の塊。
黄身はない。白身もない。
殻の中身を確認し、フライパンの上を見て、もう一度殻の中身を見て、最後にティラルを見た。
「……あれ?」
「――くふっ!」
私の卵料理が迷子なの。そんな、救けを求めるようなフィーナの瞳に、思わずとティラルの口から笑みの欠片の吹きこぼれ。
それで現実を理解したのだろう。フィーナは沈黙のままにその肩をぷるぷると震わせる。怒りか、恥辱か、その両方かによって。
「……ん、残念、だったね」
「――」
「でも、一つの着眼点としては良かったと思うよ。食べる、というのもさ」
そのお陰という訳でもないが、思いついたこともある。
ティラルが卵を一つ掴んで、ひょいと口元へと運ぶ。
ちょいと大きいけれど、やってやれないことはない。
何をか。黄金の卵を呑み込むのを、だ。
――ごく、り。
飲み干す音の響き。
だが、ティラルの慎ましやかな口で、そも卵を呑み込めるのだろうか。呑み込めるのだ。
今の彼女を見たならば、その口の端は両の頬まで引き裂く刻印があれば。
そして、黄金はつるりとティラルの胃の腑の底へ。
同時、彼女の全身へと駆け巡るは力。そして、輝き。
打ちのめされたように見ていたフィーナの瞳が、ティラルの為したことに力を取り戻す。
「……なるほど! 踊り食いという手もある――」
「いや、あんまりお勧めはできないよ」
「――うぬぬぅ!」
呑み込めたのはティラルだからこそなのであって、フィーナであれば、そもそも口の中にそのままは入らない。
痛ましい沈黙が、再びと場を支配しかけ――。
「っと、騒ぎすぎたかな。お客さんだ」
あれだけ騒げば、他の星屑の魔女が駆けつけるも当然であろう。
箒星の尾を引いて、近付く数の二十余り。
――轟!
いや、紅蓮が鮮やかに踊り、数を減らして十余り。
誰がやったかなど問うまでもない。
ティラルはやっていないのだ。ならば――。
「ふっざけんじゃないわよおおおおお!」
それはフィーナの焔に他ならない。
卵料理への期待を、虚しく胸の内に燻る食欲を、その全てを裏切られた怒りを込めて、彼女が振るうそれが魔女達を呑み込んだのだ。実際の所、八つ当たりである。
「おっと、これじゃあ私の方が食いっぱぐれてしまうね」
続けて、急いで、二個三個。踊り食いと黄金の卵を腹の中。全て収めたティラルの姿は、まさしく金色と輝いて。
だが、如何に大食い、如何に大食漢と言えども、卵を七つも収めれば、それ以上は難しい。
だからこそ――。
「ちょっ!? なによその姿!?」
「なあに、ちょっとした手品みたいなものだよ」
さあ行こう、とティラルの変じたは、とにもかくにも細長き、如何なるをも呑み下す悪食の竜。名をして、ジャバウォック!
手始めに自身の鞄をそのままに飲み込んで、轟き叫ぶは意味不明。
耳をかき鳴らす雑音は酷く、されど、それが魔女達に向けらたものだということだけは辛うじて。
だから、紅蓮を躱しながらも、魔女達はティラルを見たのだ。見てしまったのだ。その、手にした望遠鏡で。
――ニタリ。
望遠鏡越しだというのに、誰もが同時に竜を見ているというのに、その誰もが確かにそれと目が合ったと感じていた。
隕石よ、降れ。かの竜を、討て。
魔女達の脳裏でかき鳴らされる警鐘に、知らず、その口が言葉を発していた。
だけれど、それは叶わない。
「あーもう! 食べられないものはこれ以上要らないって言ってんでしょぉぉぉ!」
降る筈だった隕石は、フィーナの大いなる怒りの前に、粉々と砕け散る。
ぱらり、ぱらりと残骸の降りしきる中、駆け抜ける巨影の一つ。
それは地を削りながら――地に残るガチョウを喰らいながら――金色を一層と深めて、瞬く間に魔女の眼前へ。
――バクン。
口を開いて、閉じて。繰り返す度に減っていく魔女の数。
嗚呼、黄金のそれとは違う、柔らかさ。
あちらは咀嚼もできなかったけれど、こちらは違うのだ。
輝く黄金の中に赤を入り混じらせ、満足気に竜が嗤った。
そして、魔女が最後の一人となった時、そこで、はたと竜は気付くのだ。
「ああ、すまない。先に言うべきであったよね」
それじゃ、頂きます。
今更ながらと、食事の前の挨拶を。
――バクリ。
それと、御馳走様でしたは忘れずに。
「ところで」
「なんだい?」
戦闘の静けさが戻った世界。
発散して幾分か気持ちも落ち着いたのだろう、フィーナがヒトの形に戻ったティラルに問いかける。
はてさて、何を問うのか。竜になったことであろうか。それとも、オブリビオンを喰らったことであろうか。
「卵の味って、どうだったのよ?」
「――それを聞のくかい?」
もっと他に聞く事があるのでは。そんな言葉は呑み込まれた。フィーナの目が本気であったからこそ。
「いいじゃない。気になるのよ!」
「キミも大概変わってるね」
どんな説明をするべきか。それこそ、オブリビオンとの戦いよりも、余程頭を悩ませることになりそうなのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
空葉・千種
アドリブ歓迎
ガチョウの卵を運ぶだけなら片っ端からバッグ(装備4)の中に詰めて【運搬】すればいいかな?
普通だったら容量が足りなくなるはずだけど…
私には【叔母さんに(無理矢理)取り付けられた巨大化装置】がある!
私と一緒に巨大化したバッグなら容量の心配は必要ないね!
敵が拾おうとしたところを蹴飛ばしながら、味方だけが卵を回収できるように立ち回るよ!
拾うためしゃがんだ体勢をとってるときに接敵したら…中身がもれない程度にバッグでえいっと!
そんなに金の卵がほしいなら、この重みを受け止めてから考えてみなさい!
…それにしてもこれ、純金かぁ…
これを持ち帰れば決戦装備の準備でなくなった貯金、もとに戻るかなぁ…。
御堂・茜
まあ、黄金の卵…持ち帰れば我が藩の民の暮らしも豊かになりましょう…!
もののふ達よ!これは戦です!
UC【風林火山】による人海戦術で参ります!
卵集めには武士の秘密兵器、矢筒を用います
矢を捨て筒の中に卵を押しこみ各自背負うのです
これなら両手が空きますわ!
ある程度集めたら落ちている卵の側に陣取り
卵を奪いに来るオウガを一刀両断、返り討ちになさい!
弱い流星にも同様に対処させます
敵は疾きこと風の如し…命中率重視で参りますわ!
御堂は幟を持ち名馬で戦場を駆け
【気合い】をこめた【鼓舞】で兵の士気を上げていきましょう!
手つかずの卵を回収する事も忘れず
一際光の強い敵は大将首と見ましたわ
皆の者かかりなさい!総攻撃です!
響き渡るはガチョウの声。後に残るはツルリとした黄金色。
それはあちらこちらに散らばって、あちらこちらで輝いて。
その輝きを我が物にせんと星屑の魔女達は手を伸ばす。
自分達自身が、星の如き輝きを宿さんと。
されど、その意思を挫くかのように声は響くのだ。
「もののふ達よ!」
ほら貝、銅鑼音、引き連れて。
遠からんものはその音を聞け、近くば寄って目にも見よ。
揃いも揃いたるは武士の軍団。矢筒、刀を携えて、主たる姫の言の葉を待つ。
「今こそ、正義の戦をお見せいたしましょう!!」
愛馬跨り、幟を立てて、示すは我ぞ大将首。
その威風堂々こそが御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)の戦也、と。
そして、大太刀引き抜き、指し示すは黄金とそれに群がる星屑の。
「突撃でございます!」
下った主命に否と言う武士はなし。
応の声も高らかに、我こそが一番槍の誉れをとばかりに攻めかかっていく。
瞬く間にガチョウの声は呑まれて、消えて、戦場の音に塗り替えられる。
「……これ、私必要だったかな?」
その光景を茜の隣で見守るは、空葉・千種(新聞購読10社達成の改造人間・f16500)。
ぶつかり響く激しさに、生来の弱気が少しばかり顔を出す。
確かに、目の前でぶつかり合う軍と群の戦いは、一人が新たに介入したところでさしたる影響もなさそうには見える。
だけれども。
「千種様、そのようなことはございませぬ!」
「え?」
「人は城、人は石垣、人は掘! 一人一人の力は微力でも、集まり、力を合わせれば、かく語られる程にもなるのです!」
「そう、なのかな?」
「そうですとも! そこに千種様の力が必要ないということはございません!」
「そ、そこまで言われたら、頑張らないとだね!」
それはあくまでも、ただの一人が介入しただけであればこそ。
力を合わせ、方向性を共にとする新たな一人の介入は、その戦の趨勢にとて影響を齎せよう。
まして、千種はただのヒトでなく、猟兵でもあるのだから。
茜の激励に押され、千種の弱気が顔を引っ込め、奮起に変わっていく。
それは茜の熱が伝播したとも言えるし、押しの弱さでセールスを断れない千種であればこそ押し勝てる筈もなかったとも言えた。
「それじゃあ、いくよ!」
うなじのスイッチをかちりとONに。
何故、そんなところにスイッチが。なんて、言う人物はここにはいない。
むしろ、スイッチがONになると同時に、ずもも! と10m程度に大きくなった千種の特撮的光景に、目を輝かせるお姫様がいるばかり。
その視線が千種にはくすぐったくもあり、恥ずかしくもあるけれど、憧憬を向けられうのは悪い気などしないもの。
僅かに朱と染まった頬をたははと掻いて、改めて意識を軍と群とのぶつかり合いへと引き戻す。
大きくなった千種からすれば、それは本当に小人の戦いそのものだ。
――蹴散らすなど、造作もない。
「危ないから、どいててねぇ!」
「皆の者! 千種様の援護を無駄にしてはなりませぬ!」
千種が足を振れば、轟風もかくやと風は鳴く。
それだけでぶつかり合っていた魔女達も、卵を拾い集めようとしていた魔女達も、皆揃って本当のお星様に。
まるで天災のようなそれではあるけれど、それは天災などではなく千種だ。
だからこそ、その被害は魔女のみへと与るように考えられ、動く。
そして、千種の拓いた活路を茜とその家臣団が駆け抜けていくのだ。星屑の忘れ物、黄金の卵を得る為に。
――瞬く間に、黄金の卵の山一つ。
「集めに集めたって感じだね」
「随分と、沢山お生みになられていたようですわ」
家臣団が矢筒に詰めて、集めに集めた卵の山。
それは茜だけでなく、家臣団の全員に持たせてもなお山を築くほど。
これはどうしよう。どうしましょう。
置いていくことも出来るけど、それだと折角集めた意味も無し。
「あ、じゃあ、私が持とうか?」
「ですが、それでは千種様の御手が塞がってしまうのでは?」
「ううん、大丈夫。これがあるからね」
ゴソリと見せたはショルダーバック。されど、そのサイズは大きくなった千種に合わせたそれな訳で。
「これならば全て詰め込むも可能でございますね!」
「任せて。収納は得意なの」
千種の収納術があれば、電柱や丸太を入れることを考えれば、大きなショルダーバックに小さな卵を入れるなど造作もない事。
しゃがみ込み、ひょいひょいと器用に摘まんで黄金をバッグの中。
それに合わせて、金きらりんと千種の姿も輝いていく。
――風が、吹いた。
「え、きゃあ!?」
「! 陣を組み直すのです! 千種様をお守りなさい!」
吹き抜けたそれは星屑数多。
箒星に跨って、流れ星を尾と引いて魔女達の第二波が到来したのである。
きらりきらりと輝く流星。
流れ落ちて、流れ落ちて、流れ落ちて、世界を彩る光景は幻想的。
ただ、それは遠目から眺めたならばこそ。
その渦中にある者達からすれば、降り来たる流星は被害をばら撒く悪魔の星。
くすくすと笑みと共にそれはばら撒かれて、あちらこちらの地面に穴を穿っていく。
だが、猟兵たる二人。それはいつまでもと良いようにされるだけの筈がない。
「疾きこと風の如しではあろうとも、風そのものではありません! よく狙って、撃て!」
走り回り、集め回る最中であればこそ矢筒を運搬にしようするために矢も捨て置いた。
だが、今は完全なる防衛戦。ならば、矢は幾らでも、だ。
纏め、捨て置いた矢を取り持ち、番えて放つは家臣団。
黄金宿す矢は風を裂き、流星を裂いて、空を往く。
駆け抜ける矢が魔女の一つを落とし、二つを落とし、されど全ての魔女は落とせない。
――いや、落とさない。
それは敢えての抜け道で、誘き寄せるは『彼女』の前へ。きらきら輝く、千種の前へ。
「そんなに金の卵が欲しいならね! この重みを受け止めてから考えてみなさい!」
さっきはよくもとやってくれたわね。痛かったんだから。
その意趣返しも籠ったバックの薙ぎ払い。
それはただでさえ大きくなっているというのに、今は黄金でもある卵が山と入っているのだ。その重さは、推して知るべし。
ぶんと風巻き、流星薙いで、哀れ、今宵の空に浮かぶ星がまた増えた。
茜の統率による退路の限定。
そして、唯一の道に待ちかまえる千種という特大の戦力。動作が大振りであったとしても、退路が限られているのならば、その一撃を外す筈などなし。
その二つが合わさり、更には強化もされていればこそ、その見事な撃退へと繋がったのだ。
そして、ようやくと静けさが戦場に舞い戻り、二人は戦の終わりの気配を感じとるのであった。
「それにしてもこれ、純金かぁ……」
「黄金の卵でございますからねぇ」
戦い終わり、不要となった卵をごろりと地面に転がす。
数は、それこそ数多。きらきら輝く黄金の彩が眩しい程に。
「これを持ち帰れば決戦装備の準備でなくなった貯金、もとに戻るかなぁ」
「持ち帰れば我が藩の民の暮らしも豊かになりましょう……!」
「あら?」
「おや?」
だから、考えることは皆きっと同じで、見合わせた二人の顔ににこりと笑みが浮かんだ。
その後の黄金の卵の行方は、きっと二人だけが知っている。
大成功
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シャルロット・クリスティア
【SSFM】
とりあえず……背負い籠でも用意していきましょうか。何はなくとも両手は武器用に空けておきたいですね。
さて……せっかくのチームです。数の利を存分に活かしていきましょう。
私は妨害をメインに。敵が動きづらいよう、仲間が動きやすいよう、ですね。
こちらからマシンガンの弾丸をばら撒いて、相手の足止めをやっていきましょう。
防御、回避の癖はしっかり見て覚え、卵から離れるような回避行動を誘発させる。
上方からの攻撃は、それこそ射撃で砕けばいい。仲間の邪魔をさせないのを第一に。
こっちへの卵は余裕があればで大丈夫です。皆さん、存分にやっちゃってください。
ただ、遊ぶのは程々でお願いしますね!
霄・花雫
【SSFM】
何かイースターみたいだねぇ
ていうか、本物の黄金ってコトは重いんじゃないかな、卵
んー、ユアおねぇさんが地上見てくれるなら、あたしは高いトコ探してみよっかな
お、あったあったー
木の上で見付けたら、抱えられるだけ【空中浮遊】も合わせて抱え込んで皆のトコに戻るよ
灯くーん、あったよー!
彼の背負い籠にぽいぽいっと卵を入れて、ついでに小さめの卵を悪戯心でそーっとフードに入れてみる
何か、ちょっとやってみたくて……
ホントに黄金に光るんだねぇ、灯くん煌めいてる
シャルちゃんが敵の足止めしてくれてるし、卵は1個シャルちゃんにもお裾分けー
シャルちゃんと灯くんが強化されたら、あとはお任せしちゃう!やっちゃえ!
皐月・灯
【SSFM】
この卵を渡さなきゃいいんだろ?
……いまいち気が抜けるが、やるこた単純だぜ。
背負い籠を持ってく。
ユアや花雫が拾った卵をコイツでキャッチする。
中まで黄金なら割れる心配もねーし、敵の動きはシャルが抑える。
オレは飛んできた卵の軌道を【見切り】、取りこぼさねーだけでいい。
そういうわけだ。
受け止めてやる、2人ともこっちによこせ!
ある程度キャッチしたら攻撃に移るぜ。
【全力魔法】を発動、渾身の《猛ル一角》を叩き込むぜ。
迷路で妨害されても、十分に卵集めてさえいりゃ……強引にブチ抜いてやる!
やれやれ、こういう派手さは趣味じゃねーぜ……つーか、ユア、花雫。
どっちだ。ぎっしり入ってんぞ、フードに……!
ユア・アラマート
【SSFM】
両手は使いたいし、籠は必要か
私は動き回るから、腰に小さいのを一つ
入らなくなったら灯にでも持ってもらおう
シャルの妨害を利用しつつ、風の術式をまとって速度強化
【ダッシュ】と【早業】でオウガよりも先に卵を拾って確保
悪いな、そんな拙い隕石で私を捕まえようなんて無理な話だ
花雫、そっちも気をつけて
おっと、そろそろ自分じゃ持ちきれないな。灯!パス!
うまいこと受け取ってくれ!
……あ、こっちに気づいてないな?ここから投げ、……しまったフードに
まあ、いいか
こっちが光って向こうを誘き寄せるでも、その逆でも好都合なことに変わりはない
結局最後は退治するんだ
ただ早いだけじゃないってことを、確り身に刻むんだな
開幕を彩るは銃火の咆哮。
主の指先に撃ち方始めと応え、撒き散らす弾丸がガチョウの声を塗りつぶす。
そして、その弾丸に踊るは星屑の魔女。右往左往と散っては踊り、散っては踊り。
「皆さん、今のうちに!」
魔女への踊りの指導と銃火を撒くは、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)。
彼女の鷹の目前にして、魔女達に勝手の出来る筈もなし。
「背負い籠がなければ、様にもなってるんだろうがな」
「それを今言いますか!? 手を塞がないため、仕方がないんですよ!」
「そうだぜ。それを言われちまったら、オレもってことじゃねえか」
「いいじゃない、いいじゃない。灯くんもシャルちゃんも、皆似合ってるよ!」
「似合ってると言われるのも、それはそれで複雑な気はしますが」
「……まあ、見目より必要だから用意したもんなんだけどな」
「おや、シャル達ばかり褒められてズルいな。私のポーチはどうだい?」
「ユアおねぇさんも、とっても似合ってる!」
「ふふ、ありがとう」
銃火の足止めもそこそこに、紡ぎ合う言葉の彩り豊か。
ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)が揶揄ってみれば、仏頂面にと皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)が返す。そこに続いて、霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)の無垢が添う。
十人十色とは言うけれど、それは正しく誰も彼もが同じ色など持たず、互いに負けず劣らず色の主張の強き事。
だが、それでも彼らは互いを塗り潰しはしない。
それぞれがそれぞれの色を調和させるのだ。一つの方向性――黄金の卵の回収という目的のために。
「ほらほら、もう道は拓いてますから」
「ああ、シャルの腕前を疑う余地などないさ」
「じゃあ、私は高いトコから探そうかな」
「持ち切れなかったらこっちに投げろ。そのための背負い籠だ」
そして、銃火に紛れて風が吹く。
一つは鋭く地を撫でて、一つは軽やか舞って。
花の香りに春風踊り、二つの影が地と空に。
「やっぱり、空を自由に泳げるっていいね」
「花雫、気を付けて」
「うん! ユアおねぇさんもね!」
地を撫でたはユアであり、空を舞ったは花雫。
するりするりと滑るようにユアは地を駆け、瞬く間にと銃火へ踊る魔女が目前に。
本来であれば、刃の一つも馳走するところではあるけれど、今はそれよりするべきことがある。
「悪いな、先に貰っていく」
魔女の伸ばす指の先、輝く宝は誰のモノ。決まっている、ユア達のモノだ。
だから、それを当然の如くと掠め取り、腰のポーチに一つと入れて、他にも御用がありますのでさようなら、と。
後には、宝物を目前で盗られた間抜けが踊る。憎々し気にと艶やかな花の香りを睨みつけて。
「何か、イースターみたいだねぇ」
隠した卵を探し当て、最も集めた者が一等賞。
地はユアにと任せたからと、花雫は風の舞台をつま先で踏み、軽やかにと空を往く。
樹木の豊か。ふさりふさり、風へとさざめく葉の隙間に探し物。黄金色の探し物。
「――お、あったあったー」
身の軽やかにと枝へ降り、花雫の視線の先にツルリと黄金、卵の形。
持ち上げれば、やはりそれはずっしり重い。
「やっぱり、本物の黄金ってコトだよね。結構重いね、この卵」
手に抱えられる数の限りもそうであるが、その重さもネックになりそう。
であるならば――。
「そろそろ持ち切れないな。灯! パス!」
「灯くーん、あったよー!」
その役目を果たす彼へと渡すだけ。
遠間から弾丸の如くとユアの卵。
空からふわりふわりと花雫の卵。
「ああ、こっちによこせ! 受け止めてやるよ!」
やっていることは卵の争奪戦。
なんとも気の抜けることではあるが、大事は大事。それに気を抜く灯ではない。
卵の軌道を見切り読み、的確に動くは卵の着弾点。
――ゴトン!
衝撃と共に卵の二つ、三つ。輝いは見事と灯の背負い籠に。
「お見事ですね! 私の背負い籠は出番などなさそうでしょうか」
「さあな。これが一杯になれば、そっちのと交換してもらうかもだ」
話す間もゴトリゴトリ。
次々籠に入りこみ、次第に輝き光るは灯の身体。
「ホントに黄金に光るんだねぇ、灯くん煌いてる」
「あれだけ光れば、注目もされるだろうな」
ユアのその言葉を示すかのように、天より降る来たるは隕石の。
銃弾の届かぬ彼方より、輝くを覗いたは望遠鏡。
それが仲間の魔女でないと知れば、星屑達はその欠片を降らせるも当然のこと。
だが、だからと言って誰も灯を心配はしない。
何故なら――。
「――星であろうと、砕けばいいだけです!」
仲間の援護をする鷹の目が、いつだって彼らを見守っているのだから。
魔女へのダンスの指導をひとまず置いて、シャルロットが見上げるは降りくる隕石。
「はい。一つお届けしとくね」
「ええ、ありがとうございます」
シャルロットの背負い籠にゴトリと重さの一つが増える。
それは花雫から届けられた黄金の卵でもあり、仲間からの信頼そのもの。
花雫の顔にも、卵を探し続けるユアの顔にも、それを受け止め続ける灯の顔にも、脅威来たるが故の心配の二文字など、どこにもない。
嗚呼、ならば、これは確かに応えねばなるまい。
――カチリと連射を単射に変えて、覗き込むはスコープの先。
「終わらせます、これで」
パンと乾いた音を響かせて、飛び出す弾丸の一つだけ。
隕石に比べて、あまりにも小さなそれである筈なのに、ボロリと、隕石が自壊していく。
それは一射にして隕石の核を撃ちぬく、魔弾のそれ。如何なであろうとも撃ち抜く銃撃。
「たーまやー」
「もう一つはかぎやだったか? 何にしても、そんな拙い隕石で私達を捕まえようなんて無理な話だな」
空に咲いた崩壊の花。
それを見送る白と銀は、それに照らされながらも変わらず卵を灯の下へ。
ただ少し――。
「くすくす」
「あー、まあ、いいか」
投げ渡す卵に悪戯を。
そろり忍ばせるは誰かさんのフードの中。
ずしり重くとも、既に籠一杯に入っているのだ。今更一つ二つと増えたところで、そうそう気付くものではない。
悪戯心に笑う花雫に気付きつつ、されどユアも敢えては言わず。
何故なら。
「しーっ、ね!」
「了解だとも」
花咲く笑みを眺めていれば、それもまあ悪くはないと思うからこそ。
「何か面白いもんでもあったか?」
「ううん、なんでも!」
「そうか」
「……ふっ」
さて、知らぬが仏であるのだろう。
だが、隕石崩されようとも、そちらにシャルロットが力を裂いたが故に、魔女も僅かと猶予が出来る。出来たからこそ、黄金をその手へ掴まんと。
「――はっ。星空の迷宮ってつもりかよ」
織り成すは星の瞬き。取り込んだは黄金の輝き――灯の存在。
いや、もしかすればシャルロットも、花雫も、ユアも、全員をその迷宮の内に取り込んでいるのかもしれないけれど、今は灯の周囲に影はなし。
灯が手を伸ばしてみても、前後左右にはなにもなく、壁に触れる気配もなし。ただ、どこまでも広がる星空が瞬くのみだ。
まさしく、彼の言った通り、ここは星空の迷宮なのだろう。
だが、だ。
「迷宮だってんなら、これは一つの囲いなんだろうよ」
如何に無限にも広がるように見える迷宮であろうと、そこには外と内とを隔てるものがなければ成立などし得ない。
ならば、そこに壁が見えるかどうかなど、さしたる問題ではないのだ。
「アザレア・プロトコル1番」
呼び起こすは、貫き砕く一角獣の理。
バチリと力が黄金色に弾けて、常以上の力が灯の全身を駆け巡る。
受け止め続けた黄金の卵。その加護は、確かに灯へと宿っていた。
「――《猛ル一角》! ブチ抜いてやるよ!」
全身を金色に輝かせ、力込めた拳で空を叩く。
それはただの空振りのように見えて、その実、星空の迷宮そのものを叩いていた。
揺れる、揺れる、星空が揺れる。
ぐらりぐらりと揺らいで、境界不安定に揺らいで、そして、世界が元の景色を取り戻す。他の三人も、どうやら無事のようだとその光景の中に認めながら。
力の残滓が、パチリと小さく黄金の色を弾けさせていた。
「……こういう派手さは趣味じゃねーぜ」
やれやれと頭を掻いてみれば、コツリとその手にぶつかる小さなナニカ。
なんだと思って取り出してみれば、それは黄金の。
「ユア、花雫、どっちだ。ぎっしり入ってんぞ、フードに……!」
「あはは、ごめーん。何か、ちょっとやってみたくて……」
「ふふ、ようやく気付いたのか」
ギッと睨めば、にこやか笑顔と涼やかな顔。そのどれもにも反省の色は遠い。
その様子に、灯の口から思わず小言も飛び出そうというもの。
だけれども、それは口から飛び出すことはなかった。
彼女らが灯に黄金の卵を届けてくれていなければ、きっと迷宮の脱出はもっと時間が掛かっていたことだろうから。
彼女らが届けてくれた力があればこそ、早々に迷宮をぶち抜くという荒業も可能であったのだから。
「あ、でも、まだもうちょっと入りそうは入りそうだよね」
「――花雫!」
「きゃー!」
言葉にせぬと思っていたが、結局は言葉となって。
「あー、皆さん。存分にやってくれていいのですが、ただ、遊ぶのは程々でお願いしますね!」」
その光景に、思わず嘆息シャルロット。
変わらずその指先は引き金引いて、魔女にダンスの指導を続けていた。息続かぬ者からバタリバタリと倒れるスパルタで。
「なんだ、シャルも遊んでほしかったのか?」
「ちょっと羨ましくないこともないような……って、揶揄わないで下さい!」
「はは、生真面目だな。そこが可愛くもあるのだが」
魔女の息断つ風が涼やかに銃火の中で吹き踊り、またパタリパタリと脱落者。
だけれど、その風――ユアが言葉向けるはシャルロットへ。花雫が灯へしたように、親愛とちょっとした揶揄いの念を込めて。
二つの二人一組、一つの四人一組は、その賑やかさもそのままに、星屑の欠片を蹂躙していくのだ。
そして、地上から星の輝きが消え果るまで、そう時間は掛からなかった。
大成功
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