迷宮災厄戦⑪〜夢と現実の狭間を泳ぐ狩猟者
「ミッションの概要を説明する。今回はな……サメだ! いや、サメではないが実質サメだ。しかもサメ映画のサメだ」
ちょっと何を言ってるのかよく分からない自称『大いなる始祖の末裔 レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット』(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)。
「正式名称はクラーケンなんだが、映像で見てくれ」
そう言って表示した立体映像は確かに……サメのように見える。サメでは無い気がするが。
「今回はほぼ情報戦だと思ってくれていい。相手の正確な位置を捕捉して攻撃しろ。これが出来ないと勝てん……相手は、サメ映画のサメだ。何の脈略も無く現れ、一口で丸呑みにするアレなのだ」
どこのB級サメ映画を見たのかな。
「このサメは夢と現実の狭間を泳ぐ……つまり、物理的遮蔽物が意味を成さない。亜空間サメだ。軽率な言動は即亜空間カウンターで喰われる。殺すまでは決して姿を見せる事の無い暗殺者だ」
それが事実なら、確かに防ぐ手段は無い。
「なら、攻撃された瞬間を狙えばいい。それはまあ、確かに一つの手だが……それ以前に何か疑問に思わないか? 夢と現実の狭間を泳いでいる間は一切の攻撃を受け付けず一切認識すらできない……そうだ、認識できないという点では相手も同じなのだ。亜空間の中から通常空間を見る事は出来ない。にも拘らず、猟兵の位置を正確に観測し、その場所に出現する。こんな手品には当然種がある」
レイリスは次の表示物に切り替える。
「オウガ・オリジンに戯れに殺された『鏡の女王』の怨念が籠った『真実の鏡』があちこちに存在する。この不思議の国の中で鏡を見たら真実の鏡だと思え。真実の鏡に何かを聞けば、この不思議の国の中の事なら何でも答える事が出来る。これによって猟兵の位置を特定しているのだ。いいか、この不思議の国の中で起きる事なら何でもだ。現在の位置を教える等という簡単な話では無く、そこまで気付かれない最適なルート、狙うべき場所、未来の情報ですら答える事が出来る」
レイリスは掌でくるくるグリモアを回して弄ぶ。
「場所限定だがコレの未来予知より精度がいい、困った事に。確定した未来は変える事が出来ない……恐らく、単に攻撃された瞬間を狙うというだけでは通らない。常に全方位にカウンターを敷き詰められる奴など居ないのだ。だがな、この鏡別にオウガにしか答えないという訳ではない。つまり、諸君も利用できる」
グリモアを指で弾き、逆回転。
「とは言え、単純にサメが何処から襲って来るかを聞いても無駄だ。その答えは先にサメ、もといオウガが聞いて確定した未来の情報だ。答える事で確定した未来が変わってしまう質問には『あなたが防げない場所から』などと言った抽象的、或いは相対的な答えになってしまう。幸い、サメはサメなので猟兵の襲い方しか聞いてない。それ以外の未来は確定していない……完璧に猟兵を皆殺しにする方法とか聞いてたらアウトだったが、猟兵の存在がこの不思議の世界の外の情報だから、どの道同じ様に抽象的な答えになるんだろうな」
ぴたり、と止めたグリモア執務卓の上に置き、横に手を振り全ての映像を消すと椅子に座って偉そうに腕を組むレイリス。
「元より猟兵は埒外の存在。どんな存在であっても、その全てを予知する事など不可能だ。確定した過去を変えずに、未来を変えろ。下らん手品に頼るオウガを騙せ。この真実を嘯く鏡の世界を騙せ。そう言う事だ……まあ、私は見えた事件を解説するだけ。実際の対処は諸君に任せる」
そして、眼前に転送用のゲートを開く。
「では、往くがよい」
Chirs
ドーモ、Chirs(クリス)です。サメだー! しかも未来予知するサメだ! 亜空間サメだー! いや、未来予知はしてないけどね。後、別にサメ映画に詳しい訳じゃないって言うか、殆ど見てないのでサメ映画ネタは拾えません。でも、ある程度のお約束は知ってます。
今回のプレイングボーナスは『鏡に有効な質問をする』となっております。真実の鏡は何処にでもあるので見つけるのは簡単です。例え未来の出来事だろうと鏡は何でも答えます。この国の中の事ならば。
予知能力者同士の未来予知バトルっていいよねって言うのも今回のコンセプトです。別に聞くのは未来の事じゃなくてもいいんですけどね。
今回もいつも通りアドリブも連携もマシマシになります。ある程度の人数が集まってから書き始めます。皆さんのやりたい情報戦のお手伝いが出来れば良いなと思う所存でございます。
第1章 ボス戦
『クラーケン』
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POW : 真夏の夜の夢
非戦闘行為に没頭している間、自身の【見ている夢 】が【現実に置き換わり】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD : 夢と現実の狭間を泳ぐもの
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【亜空間から飛び出しての奇襲 】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ : 夢幻泡影
自身からレベルm半径内の無機物を【現実を溶かし、幻にする無数のシャボン玉 】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:tori
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠渡月・遊姫」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御宮司・幸村
WIZ
質問前にUC発動
そして、何人かの5分後の未来からおじさんが既に集結済み
全員で75人、しかし居るのはその内の「鏡への質問に失敗して命からがら5分前のおじさんの元へ召喚された5分前のおじさん」である
失敗のパターンとさらに相手の出現パターンや攻撃方法を身をもって体験している
言わば負けパターンのおじさんたちだ
つまり、失敗した質問は解っているし、敵の手の内も知り尽くしてる
様々な角度から応援や助言を貰って事前に敵の対策もバッチリって訳
自身の質問は「オウガに勝利した自分が居る場所」を問う
あとは助言や支援を元に戦うよ
可能なら敵UC無機物対策としてSocial-distance発動
電子空間は無機質だからね
アリソン・リンドベルイ
【WIZ庭園守護する蜂軍団】
サメですか、サメですね…! 大丈夫です。僅かな水が存在すればどこへでも出現できる霊体ザメとか、雪や砂の中を自在に潜るサメとか、カルト教団が呼び出した森林を彷徨う幽霊ザメでなければ戦えますから…!
鏡への質問は、「何秒後に私が襲われるか」 【空中浮遊、オーラ防御】で滞空しつつ、全周囲を召喚した巨大蜂に警戒してもらいます。ちょっと前の流行は多頭型や異形型など特徴的な外見を持つサメさんが多かったですが、最近は独自性やオリジナリティを模索するサメさんも多いと聞きます。路面電車と合体して戦闘機と空中戦したり。……そういう意味では、空間跳躍くらい割とありますからね、大丈夫です…!
佐伯・晶
サメ?
冗談みたいな状況だけどかなり厄介だね
鏡に僕が複製創造で創れるもので
あいつが口に入れるのを一瞬でも躊躇う匂いは何か聞こう
匂いならどうあっても全周を覆うからね
できれば人間には気にならない匂いがいいけど
食べるのを躊躇ったら
身を覆う神気と使い魔の麻痺攻撃で動きを止め
口の中にガトリングガンを突っ込んで攻撃しよう
耐えれない匂いの場合は複製創造でガスマスクを創り
女神降臨でドレス姿に変身しておくよ
UCで創る衣装なら匂いがついても消せば良いだけだからね
まあ、見た目がドレスを着てガスマスクをつけ
ガトリングガンを担いでるという
B級映画以下の何かになるのが難点なんだけど
巻き込まれる不運な人な人がいない事を祈ろう
●CASE1 御宮司幸村
「見事に分断されちゃったねー」
鏡の国で呟く御宮司・幸村(いいかげんサマナー・f02948)。
「本当にこれであってるのかな?」
本来後方支援型の幸村は極力孤立を避けるべき役割だ。しかし、鏡に『オウガに勝利した自分が居る場所』を聞いた結果『大体この辺り』という微妙に安心できない情報で返されたので仕方がない。
それに、幸村は一人じゃなかった。この場には幸村しかいないが、幸村が一人じゃない。
「下からばっくり食べられそうだったよー」
「こっちは頭上からだねー」
「一瞬で喰われたならいいじゃん、こっちは足を一本喰われて嬲り殺しだよ」
幸村がいっぱい。その数、75人。そんなに呼んでどうするんだという感じではあるが。
この召喚された幸村達は5分後の未来から来た幸村達だ。それぞれが鏡に別の質問をし続け、有効な質問と無効な質問を判別した。その結果出た最善の問いが『オウガに勝利した自分が居る場所』だった。幸村はその戦闘スタイル上あまり大きく動く必要が無い。だから、最初からその場所に居るのが最適だ……最適の筈だ。
「大体この辺り、この一本オークの木の下の付近かー」
75回も失敗した結果の回答だ。信憑性は高いような低いような。しかし、勝利するという結果を出した上に、かなり絞り込めた。途中で仲間とはぐれたのは手痛くはあったが、それも一つの要因なのだろう。
●CASE2 アリソン・リンドベルイ
「サメですか、サメですね……! 大丈夫です。僅かな水が存在すればどこへでも出現できる霊体ザメとか、雪や砂の中を自在に潜るサメとか、カルト教団が呼び出した森林を彷徨う幽霊ザメでなければ戦えますから……!」
そう語るアリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)
既に襲われる事を警戒して、空中に浮き、全方位に【庭園守護する蜂軍団(ガーデンソルジャー・レギオンホーネット)】を展開している。この世界に入った瞬間から、既に敵意は感じているのだ。全方位に死角なし。比較的大きめの鏡に寄って、問いかける。
「鏡よ鏡よ鏡さん。私は何秒後に襲われますか?」
「今」
「えっ?」
鏡から、巨大なサメ、もといクラーケンが出現! 亜空間内では物理的障害は関係が無い。どこからでも出現できる。そして、鏡に質問する為に少々正面が手薄になっていた今が正しく襲撃のチャンスだった。
即座に反応して殺到する巨大蜂! しかしクラーケンの方が早い! アリソンの眼前に広がる大きく裂け、丸呑みにする鋸めいた歯。もう駄目なのか、このまま食べられてしまうのだろうか。
「ええ、今よね!」
展開していた蜂は半数だった。前方に手を付き出し、残り半数を散弾銃めいて解き放つ! アリソンを一口で食べるべく大きく口を開いていたクラーケンは突然大量の蜂が出現し針で口内を刺され、アリソンへの攻撃を中断せざるを得なくなる。大きな口がアリソンの眼前で閉じられ、蜂が喰われる。だがもう一度口を開くには距離も時間も足りない。無傷では逃さぬとそのまま体当たりに切り替えるも、アリソンの展開したオーラに勢いを殺され、ギリギリでの回避を許す。
蜂は即座にクラーケンを追跡しようとしたが、まるで床など無かったの様に亜空間へと潜航され標的を見失う。残ったのは僅かなシャボンのみ。
「どこに居ても一瞬にして現れ、一口で丸呑みにして、そのまま居なくなる……この亜空間サメ、どんなサメよりもヤバいのでは?」
●CASE3 佐伯晶
「……コー、シュコー……」
宵闇の衣で仕立てた可憐なドレス、手には携行型ガトリングガン、顔を覆うガスマスク。B級映画の怪人めいた姿で歩くのは佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)
彼女(彼?)が鏡に聞いたのは『口に入れるのを一瞬でも躊躇う匂い』。それはサメらしく、長時間放置されて腐敗したサメの死体の匂いという、それはもう強烈な奴だった。それと、電磁気も効果的らしいので、小型の電磁気シールドも生成して装備している。
「……コー、シュコー……どこだ、何処から来る?」
晶は警戒したまま歩みを進める。どこかで誰かが襲われる音がした気がする。いつどこから来るか分からないサメの恐怖……
どの位の時間が経過したのだろうか。5分か、30分か、1時間か。
「……コー、シュコー……」
この装備で当てもなく歩き続けたら猟兵とて疲れる。あるいはもう誰かが倒してしまったのではないか? そんな事を考え始めた、その時! 地面から巨大が口が現れた!
「来たっ!」
即座にガトリングガンを地面に向ける。だが、ここでガトリングガンという武器特有の弱点が発生する。ガトリングガンの銃身は複数の銃身を回転させる事により圧倒的な弾幕を展開する銃器だが、スピンアップと言う撃つ前に一定の回転数に達する動作が必要だ。猟兵の扱うガトリングガンであればその時間は0.1秒にも満たないが、その僅かな時間が命取りであった。
スローモーションめいて鈍化する時間の中で無数の牙が生えたサメの口が晶を呑み込もうとしている。回転数を上げるガトリング。だが、間に合わぬ! しかし、一瞬。それこそ0.1秒程度ではあったが強烈なサメの腐敗臭とちりちりとした不快感を与える電磁気シールドが僅かにクラーケンを躊躇わせた。今からコイツを食べるのか、と。その一瞬があれば十分だった。
スピンアップを終えたガトリングガンは毎秒100発以上という圧倒的連射速度を以ってクラーケンの口内を抉る! たまらず身を引き再び亜空間に逃げ込むクラーケン。
「……コー、シュコー……とりあえずここまでした甲斐はあったけど」
もう、何物の気配も無い。
「……コー、シュコー……次、いつ来るんだよ」
大成功
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木霊・ウタ
心情
鮫を海へ還してやろうぜ
鏡よ鏡
鮫野郎の急所とその狙い方
戦闘
襲われるのは確定ってか
なら全身に獄炎を纏い待ち受ける
鮫攻撃に対し急所だけはガード
纏う炎&返り血の炎でダメージを喰らわせる
この返り血の炎の反撃も
予知されてるかもだけど
…とまあ
こんな風にオウガには思わせとく
最初に纏った獄炎はUCだ
自分に対して使用して
理不尽な「鮫野郎に一方的に襲われる未来」を灰燼にした
だから後はいつも通りにぶっ飛ばすだけだ
亜空間から飛び出した鮫を
爆炎噴射で回避&間合い調整しながら
その反動も相乗し爆炎で加速した刃を叩き込む
鏡を過信し
過去の分際で未来を好きに出来ると勘違いしてた
間抜顔の大口に獄炎をたんまりとくれてやる
事後
鎮魂曲
叢雲・凪
キツネさんチーム
呼び方:ウタくん
とりあえず仲間にアイサツをしつつウタくんと話し合おう。
以前今回のような狡猾な敵にしてやられた事がある…(人狼シナリオ) 正直この手の知略戦は得意じゃない。
「まず 奴がボク達の【襲い方】を鏡に聞くことで襲うのに最適なタイミングと場所が確定してしまう」
「この鏡が答えを出してくれるのなら… こういうのはどうだろう【ヤツを現実に留める方法を教えてくれ】と」
「仮にヤツを現実に留めることができれば空中を泳ぐただのクリーチャーに成り下がるはずだ」
「もちろん ヤツに新たな【未来決定】の時間は与えない。現実に拘束されている間に一気に畳みかける」(夜天九尾+属性攻撃+ダッシュ)
ニィエン・バハムート
※アドリブ歓迎
シャーロットさん/f26268と
サメと言われて…サメですのアレ?
…まあサメも最近は多様性に富んでますし、私以上に詳しいシャーロットさんが言うならそうなのでしょう、ええ。
鏡への質問はシャーロットさんので問題ないと思いますが一応「直近のやり取りを一言一句違えずに」と付け足しておきますの。大雑把に答えられても嫌ですし。
シャーロットさんの策がなれば後は私の仕事!
隙を晒した敵にワイヤーで伸ばしたガントレットを射出し、そのままワイヤーのロープワークで捕縛。亜空間へは逃がしませんの!
そしてワイヤーとガントレットから大地震の衝撃波を叩きこんでその身体を蹂躙してやりますわ!
…フカデミー賞?
シャーロット・クリームアイス
※アドリブ歓迎
ニィエンさん/f26511と
サメと聞いて推参!
専門家です! グリードオーシャンのほうから来ました!
鏡への質問は――[サメオブリビオンと鏡のやりとりを教えてください]!
いえ、ご安心ください、未来が変わる心配はありませんとも
サメ側の計画を聞き出して、それが滞りなく成就する(かのように見える)幻像をUCでつくります
(※解釈お任せ。わたしたちの偽物をつくる、あたりでしょうかね?)
明朗会計をモットーにはしていますが、ここはひとつ、世界を騙させてもらいましょう
計画が完遂された瞬間こそ、相手のアドバンテージが失われるとき
あとは任せました!
面白い演し物でした
来年のフカデミー賞を狙えるかもですね?
●CASE4 ニィエン・バハムート&シャーロット・クリームアイス
「サメと聞いて推参! 専門家です! グリードオーシャンのほうから来ました!」
「サメと言われて……サメですのアレ? ……まあサメも最近は多様性に富んでますし、私以上に詳しいシャーロットさんが言うならそうなのでしょう、ええ」
サメの本場、グリードオーシャンからのエントリー。ニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)とシャーロット・クリームアイス(Gleam Eyes・f26268)だ。
「通信ログから割り出した出現位置とタイミングはここで合っている筈ですが」
シャーロットは鏡から『サメオブリビオンと鏡のやりとりを教えてください』と聞き出そうとした。そこにニィエンは『直近のやり取りを一言一句違えずに』と付け足した。
その結果聞き出せたのは言語とは呼べない様な音声通信。恐らくは座標やパラメータを意味する数字の羅列。常人であればここから襲撃位置を割り出す事は不可能だ。
「これ、分る言葉に翻訳して貰った方が良いのでは?」
実際ニィエンはシャーロットにそう提案した。
「いいえ、サメオブリビオンはこの情報から位置座標を割り出せています。翻訳の過程で改竄が入る可能性はありますし、結局数値の羅列でしたら情報として意味が無い」
しかし、ここに居るのは独自の通信網を持つ通信のスペシャリスト。
「解析して見せましょう。プロですから」
「さあ、来ますわよ。準備はよろしいですか?」
「ええ、いつでもよろしくてよ!」
背中合わせに立つ二人。襲撃位置が分かっているのにその場所で迎撃を選んだ理由は二つ。
一つはグリモア猟兵の予知と同じで、予知した位置に相手が居なければ襲撃は起きずに襲撃位置が分からなくなる事。
もう一つは、その方が都合がいいから。
ニィエンはバハムート・ガントレットを構える。頑丈なワイヤーを備えたそれは銛めいてサメに突き刺さり、亜空間へと逃がさない。
その筈であった。
シャーロットの背後、即ちニィエンの背中から出現したクラーケンはシャーロットを一口で丸呑みにした。
「えっ?」
自分をすり抜ける様にして、しかも予測とは違う位置の出現。
「シャーロットさん!?」
慌ててガントレットを射出するも既に手遅れ。シャーロットを呑み込んだクラーケンはそのまま亜空間へと逃げ込んでしまった。
「そんな……嘘でしょう!?」
取り残されたニィエンは宙に浮き、地面からの襲撃も警戒する全周囲警戒を取る。しかし、呑み込まれたシャーロットの事が気掛かりでそれもままならない。
無数の鋸状の歯。サメは一瞬で現れて一口で全てを奪ってしまう。恐らくは、もう……
ニィエンは全周囲を警戒しようとするあまりに、正面への注意が一番散漫になっていた。
だから、そこから襲った。
「捕えましたわッ!」
クラーケンの背に取り付いたニィエンは両腕のガントレットを固定する。
一体何が起きたのか。猟兵第六感をお持ちの方ならば即座に理解したはずだ。
「明朗会計をモットーにはしていますが、ここはひとつ、世界を騙させてもらいましょう」
シャーロットの仕込みであった。【シン・気楼(ヴィジュアルエフェクト)】、蜃の幻像形成により作り出された姿形だけを真似たニィエンとシャーロットを襲撃予測位置に置き、襲撃予定の通りに振舞わせた。本物の二人はその上方で待機。仕留めた、と油断させた瞬間にニィエンが背に取り付いて抑える。
「計画が完遂された瞬間こそ、相手のアドバンテージが失われる時。あとは任せました!」
作戦としてはシンプルだ。そして、本来は不可能だった作戦だ。
だが、それを可能にするユーベルコード持つ存在がこの戦場に存在した。
●CASE0 ブレイズアッシュ
「うーん、何度シミュレートしても駄目だねー」
幸村がお手上げと言わんがばかりに首を捻る。
「何を聞いても、どう頑張っても誰かしらは犠牲になる。犠牲者を一人許せば勝率は上がるけど」
「ダメだ」「ありえん」
同時に異を唱えた二人。木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)と叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)。
「誰かを犠牲にして勝つなんてのは猟兵のやり方じゃない」
「たとえそれしか手が無くとも、その未来を破壊する」
「でも、どうやってですか? 精神論でどうにかなる相手でも無いですよ?」
ニィエンも同じ思いではあるが、具体的な方法が出て来ない。とは言え、諦める気もさらさらないが。
「ダミーの私達を喰わせて油断を誘うのは? 襲撃位置は割り出せたのですよ」
「駄目だね、46番目のおじさんはそれが失敗して喰われている」
まあ、喰われる直前で召喚されてこの場に居るのだが。
「……コー、シュコー……全員この装備で行けばいいのでは?」
「嫌よ!」「嫌です」「嫌」
一人だけ離れた所にいる晶の提案には全員即答だった。割とマジで酷い匂いだった。
「いやね、それ一回試したんだけどやっぱり喰われたんだわ」
「試したんだ……」
「所で、5分以上先の未来がみえている気がするのですけれど」
「5分後に5分後のおじさんを呼べばもっと先まで分かるって寸法さ。繰り返せば延々とね。まー、今の所ここから生きて出られたおじさんは居ないんだけどね」
「それ……一体何度試してますの?」
「1400万605通りかな」
「え……それ、マジですの?」
「はっはっはっ、冗談だよー。そもそもおじさん何人居てもそこまで把握できないし」
「だが、現状では生還は出来ないか」
「うん。他の方法で未来が見えるおじさんが一番最初に排除しておきたいらしくてね」
この場に居る未来から来た幸村は既に75人。本人を含めれば76人。その全員がその先まで把握しようとすれば単純計算で5776通り。もう一度繰り返せば438976通り。1400万通りというのも強ち冗談とも言えなくなる数字だ。
「おじさんを犠牲にしなよ。多分勝てるから」
「何度でも言う、駄目だ」
「ああ、そんな事は絶対にさせない」
特にウタとジンライ・フォックスは決断的であった。
「一つ方法が……いや、手段があるんだ」
ウタが手にした刃に焔摩天の梵字を刻まれた巨大剣が燃え上がる。
「これをやると、確定した未来が崩れる。だから」
「いやいやいや、それも試してるよ?」
「そうだろうか? 解釈が違うのではないか?」
幸村が苦言を呈したが、そのユーベルコードの力を良く知るジンライ・フォックスが答えた。
「未来を破壊するユーベルコードであるならば、幸村=サンが生還した未来も破壊しているのではないか?」
「いや、俺が破壊するのは理不尽な未来だけだぜ」
「お待ちください。そもそも未来と言う本来不確定な物を破壊できるのならばそこに歪みが発生する可能性はあります。流通網と同じです。バイパスが幾つあっても、一時的には歪みが生じる」
助け舟を出したのはシャーロット。
「やりましょう。未来なんて、本当は誰にも分からない筈の物。それを本来の形に戻すだけです」
既に蜂を展開し全周囲を警戒していたアリソンが言った。その言葉に、誰もが各々の形で同意を示した。
「じゃあやるぜ。この場に居る全員の……理不尽な未来を灰にして消し飛ばす!」
ウタが手にした焔摩天の炎が、猟兵達全員を包み込んだ。
●CASE5 木霊ウタ&ジンライ・フォックス
「鏡に聞いた『ヤツを現実に留める方法』、シンプルで助かる。現実に留める事さえできれば空中を泳ぐただのクリーチャーに成り下がる」
その答えは『誰か一人でも生きている状態で触れている間』だった。瞬時に出現し、一撃で相手を仕留められるオウガだからこそ生じた欠点。本来問題にすらならない筈の問題。
「そのままだ、バハムート=サン!」
ジンライ・フォックスが黒のマフラーを、黒雷外装【鳴雷】を解く! 黒雷の尻尾が生えた夜天九尾形態へと転じたジンライ・フォックスは文字通りの電撃的速度で踏み込んだ!
「イヤー!」
キツネ・トビケリ! キツネ・ニンジャ・クランに伝承されし伝説のカラテ技だ!
「GRAAAAAAAA!」
「無論、貴様に未来はもう与えぬ! イヤー!」
キツネ・ダブルノボリ・ケリ!
「イヤー!」
キツネ・ヒノクルマ・アシの追撃!
「イヤー!」
キツネ・ウシロ・アシ! 何たる暗黒カラテ足技の怒涛のコンビネーションか!
「そんなに腹が減っているなら、コイツを喰らえ!」
焔摩天を水平に構え、爆炎噴射で己を一本の剣と化したかのように突撃するウタが、おお、なんと! 自ら口の中へと……飛び込もうと言うのか!
いくら現状は攻勢とは言え、それはあまりに無謀な行為。クラーケンは常の通りその大口を閉じ、獲物をすり潰した。
そうなる筈だった。
「お前の弱点、お前の急所。簡単だが突くのはちと大変だぜ」
口内から爆発的に広がる獄炎!
「当り前と言えば当たり前だが、内臓は弱点だろうよ!」
喉奥へと深く突き立てた焔摩天が燃え盛る! 鋸歯はウタをすり潰さんとしているが、傷口からは更なる獄炎が溢れそれを阻む! 咀嚼不可能!
「イィィィヤァァァァァアアアー!」
「これも喰らいやがりませッ! 世界を揺るがす竜王の鉄槌! バハムート・デストラクションッ!」
ジンライ・フォックスのダブル・ポン・パンチとニィエンの【ナマズのグラグラ大地震】が同時に炸裂! クラーケンを地面に縫い止めた!
「作戦通りという訳だね。予知した未来を破壊した上で、ある段階まで予知された通りに動く」
そこにはドレスを着替えた晶が。
「確定した過去を変えずに、結果を変える……と、言えたかどうかは分かりませんが」
無数の蜂を従えたアリソンが。
「またまたやらせていただきましたーってね」
消滅した未来の自分を消して、ただ一人になった幸村が。
「ハイクを詠む知性は無いか」
処刑タイムだ!
●侵略繁茂邪神の長々高々度衛星レーザーブレイズ黒雷竜王の犠牲者の末路
「目を離したら、一瞬で成長しちゃうんだからっ……!」
アリソン・リンドベルイの侵略繁茂する葛蔓(エイリアンプラント・バイオニックインベンション)!
地面を、壁を。周囲の地形を超生命力で急成長する葛の蔓が覆い尽くし、クラーケンを完全拘束する!
「塵も積もれば山となる、ってね」
佐伯晶の邪神の手遊び(スタティック・アクセラレーター)!
毎秒100発以上の銃弾を空中固定する事により10000発以上もの全てを押し潰す弾幕がクラーケンに突き刺さる!
「超小型端末の通信網より衛星へ送信完了、各システムに問題なし。稼働と同時にエネルギー装填を開始。照準諸々微調整良し、発射!」
御宮司幸村の長々高々度衛星レーザーによる精密射撃(インドラノヤ)!
世界をも超える衛星レーザーの一撃がクラーケンを貫く!
「お前の理不尽も灰にして消し飛ばしてやるぜッ!」
木霊ウタのブレイズアッシュ!
猟兵達の理不尽な未来を焼き滅ぼした、生命讃歌を籠めた『地獄の炎』が理不尽その物のクラーケンの未来を焼き滅ぼし、灰塵へと返す!
「お前の魂さえも残さず消し飛ばす……! 黒雷槌ッ!」
ジンライ・フォックスの黒雷槌(クロイカヅチ)!
一点に収束させた黒雷を纏った拳の一撃が振り下ろされ、黒雷が弾け飛ぶ!
「この爪が虚空を切り裂いた時、あなたは微塵切りですの……!」
ニィエン・バハムートの竜王の爪!
両腕のバハムート・ガントレットの爪斬撃に加え、クラーケンを両断できる程の斬撃波が全方位から切り刻む!
「結局の所紛い物のサメ。本物の恐怖を教えてあげましょう!」
シャーロット・クリームアイスの約束された犠牲者の末路(シャークスカリバー)!
無数のネズミザメ目ネズミザメ科ホホジロザメがクラーケンに噛み付き、食い散らかす!
もはやクラーケンは爆発四散も出来ずただただサメの餌と成り果てた。猟兵達の完全勝利だ!
●亜空間サメはフカデミー賞を取れるのか
「面白い演し物でした。来年のフカデミー賞を狙えるかもですね?」
「……フカデミー賞?」
そんな会話をする二人と、ウタの爪弾く鎮魂歌だけがその場に残された。
ここに、一つの戦いが終わった。だが、まだまだ猟兵達の戦いは終わらない。躯の海へと返したサメのようなオブリビオンを越え、その先へと進む。この先に続く道は、『オウガ・オリジン』へと繋がっている。三つ巴の乱戦。その頭の一つへと猟兵達は一歩進んだ。
大成功
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