迷宮災厄戦⑫~ ザ・ワイルドエッグハントイェーガー~
●繁殖期がきっと頻繁にあると思われる
アリスラビリンスのザ・ゴールデンエッグスワールドには、黄金ガチョウという希少種が生息している。
「グヮー、グヮー」
「ガー!」
「クワーァァァ!」
「グァバーグァバーグァバー」
「ア゛ーーーー!!!!!!ア゛ーーーーーーッ!!!!!!」
「ちくわ大明神」
……前言撤回、希少どころかめちゃくちゃ多かった、ていうか鳴き方おかしくない?
とにかく、そういう種か生息しているということはご理解頂けたことだろう。
そんな中一匹の黄金ガチョウがぶるぶると体を振るわせ大きく鳴き声を上げる。
しばらくするとどこかへと去っていき、卵が一個だけ残される……どうやら産卵していたようだ。
日の光に照り映え輝く黄金色の卵、それから日の光を阻むように人影が忍び寄り、卵を拾い上げる。
そして、その口をあんぐりと開けて――。
●開幕!卵争奪戦!!
「――ってなワケで、黄金ガチョウが産む黄金の卵を可能な限りオウガに取られないようかき集めた上で、オウガ共をぶっ飛ばしてくれ」
『砕かれた書架牢獄』を制圧してからというもの、『遠き日の情景の花園』『ゆうとろどきの森』『魔空原城』『世界征服大図書館』とたったの数日でありながら破竹の勢いで次々と戦場を制圧していっているグリモアベース率いる猟兵一同。
グリモア猟兵の一人である地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)が次に予知したのは『ザ・ゴールデンエッグスワールド』での卵争奪戦であった。
この区域に生息する黄金ガチョウがあちらこちらで産む黄金の卵は所持した数に比例して強力なパワーアップができる。
その玉子を先回りして確保、その上でオウガの集団を殲滅して欲しいとのことだ。
「このザ・ゴールデンエッグスワールドを占拠してんのは『影縫い・シャッテンドルヒ』っつー暗殺者集団のオウガ共だ。
暗殺者なだけあってナイフ捌きはプロ中のプロといったところだが――それよりも注意するべきは影を操る能力の方だと俺は個人的に思ってる。
何せ影ってのは生きている者全部についてくる、その影を利用するってことは俺たちの影を利用しての攻撃にも出てくる可能性もあればそれを使っての先回りもできるかもしれねえからな。必ずしもその手でくるとは限らねえが、警戒しておいてくれ。
あとオウガ共は卵を丸呑みしてっけど絶対真似すんなよ、中身も黄金で出来てっから喉詰まらせるぞ!!これだけは忘れんなよ!!」
オウガの情報についてはすっぽ抜けてもいいんですか??という視線が一部凌牙に集まったかもしれない。
というか、そもそも普通の卵も丸呑みするものではない。いや卵を飲み物のように飲む人もいるのだが、基本丸呑みするものではありません。
中身も殻も黄金のそれを人の姿をしておきながらぺろりと飲み込める辺り、オウガがどれだけ人に親しい姿をしていても人の域を外れた怪物であるということを改めて思い知らされもする。
とにかく卵の量が勝敗を決すると言っても過言ではない、故の卵争奪戦。
「それと、この卵によるパワーアップはその区域限定だから外に持ち出しても意味ねえぞ。
終わったらガチョウのとこに返してやるもよし換金に使えないか鑑定してもらうもよしだがそこだけ注意な」
果たして換金できるのか、それはこの戦場を制して持ち帰ることができた時に明らかになる――かもしれないしそうじゃないかもしれない。
次なる戦場へと猟兵たちは向かい――ゴールデンエッグハントがここに開幕の狼煙を上げたのだった。
御巫咲絢
こんにちはこんばんはあるいはおはようございます!
初めましての方は初めまして、新米MSの御巫咲絢(みかなぎさーや)です。
シナリオご閲覧頂きありがとうございます!初めての方はお手数ですがまずMSページをご覧頂きますようお願い致します。
次々戦場制圧されてってますね!!夏休み+連休パワー凄い!
というワケでこちらも戦争シナリオ4本目にございます。
当シナリオは1章で完結し『迷宮災厄戦』の戦況に影響を及ぼすことのできるシナリオとなっています。
暗殺者集団との仁義なき黄金卵争奪戦です。影を操る暗殺者共を上回り卵を集めてフィーバータイムからのハイパーフルボッコを決めましょう!
このシナリオには以下のプレイングボーナスが存在しています。
●プレイングボーナス
黄金の卵をオウガに取らせず、自分達が取る。
●プレイング受付について
承認が下り次第プレイング受付開始致しますが、大人数はMSのキャパシティ的にお受けし切れない可能性が高いです。大体7人前後までが限界です。
その為プレイング内容次第によっては不採用の可能性もございますので予めご了承の上プレイングを投げて頂きますようお願い致します。
また、プレイングは受け付けておりますが執筆は『迷宮災厄戦⑩~クローゼットで追いかけて~』完結後になりますのでそこもご了承くださいませ。
それでは、皆様のプレイングをお待ち致しております!
第1章 集団戦
『影縫い・シャッテンドルヒ』
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POW : これは君を飲み込む影の群れ
【紐付きのナイフ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【レベル×1の自身の影】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 僕らは影、君の命を刈り取る影
【漆黒の影】に変形し、自身の【意思や心情】を代償に、自身の【攻撃力と影に溶け込み影伝に移動する能力】を強化する。
WIZ : 僕らの狩場、君の墓場
戦場全体に、【影に覆われた暗い街】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:朱夏和
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:アノン
UDCを纏って黒い狼のような姿になる
「ガチョウかー喰いてェけど我慢するか」
野生の勘でガチョウの多い場所を探し、UDCの液体金属で袋みてェの作って卵を放り込む。
敵が取りそうな卵は敢えて取らせて、喰おうとしてる瞬間に命中重視で腕を跳ね上げるように攻撃。卵が飛んだら空中浮遊で飛んでキャッチするぜ
ナイフは野生の勘で回避、カウンターで命中重視で鳩尾を思い切りぶん殴る。吐き出した卵も回収して、敵は攻撃力重視の牙で噛み殺して喰う
影から敵が出そうなら、液体金属を操って手の形にし、光属性に設定した魔銃を撃って影をかき消すぜ
●一人が繰り広げるカルナヴァル
「ガチョウかー……喰いてェけど、我慢するか」
水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)――の、一人格であるアノン――がザ・ゴールデンエッグスワールドに降り立ってからの第一声はそれだった。
とはいえ目的を履き違えるワケにはいかないので、怜悧はぐっと食欲を堪えて依頼の完遂に勤しむこととした。早速ユーベルコードを発動し、UDCを黒狼として身に纏う。
狼と化したことにより獣特有の野生の勘も本物と相違ない程に鋭く研ぎ澄まされ、黄金ガチョウのいる場所へと彼を導いていく。
早速区域の中でも開けた場所に向かえば、黄金ガチョウが次々と身体をぶるぶる震わせて卵を産んでいる姿。産み終えたらすぐにガチョウはどこへとなく立ち去り、辺り一帯には黄金の卵たちだけが残される。
怜悧はUDCの液体金属を用いて袋のような収納スペースを作ると、早速近場の一個を放り込んだ。
すると、それだけで自分の奥底から力が湧き上がるかのような感覚を覚える――まるで、刹那的な高揚感に浸るかのような感覚を。
「(なる程……こいつは中々だな。ここでしか発揮されないのが惜しいぐらいだ)」
一歩歩くだけで普段と劇的に足取りが違う程に身体が軽いと実感を得ながら次々卵を放り込んでいくと、敵の気配を感じて歩みを止める。
影縫い・シャッテンドルヒの一員であろう少年が影から姿を現し、卵を手にしようとしていたのだ。
怜悧は敢えて即座に飛びかかることはせず、気配を殺してにじり寄りながら相手が卵を手にするのを待つ。
今狙うよりもっと良い、確実に卵をこちらが手にできるチャンスがあることを知っている故に――そう、敵が卵をその口を開けて飲み込もうとした瞬間こそ何よりの絶好の機会なのだ。
シャッテンドルヒはにじり寄る脅威に気づくことなく、卵を拾い上げて口を開け……それを合図と怜悧は勢いよく黒狼の前足とかしたその腕を振るう。
「っ……!」
狙いを定めて振るわれた腕は精確に卵を持つ手に命中、それをすぐさま飛び上がってキャッチし、液体金属の袋の中へ。
シャッテンドルヒは苦虫を噛み潰した顔をしながらナイフを投げつけるが、卵を複数手にした今の怜悧がそれを避けられないハズがなく。
軽く首を傾げるかのような仕草でひょい、と回避した後その隙を狙って鳩尾を抉るようにストレートを打ち込んだ。
「ごはっ……!!」
その抉るような一撃が敵の胃を逆流させる。吐き気を催した結果吐き出されたモノの中には黄金に輝く卵が一個。
よろめいている間にささっとそれを回収した後、怜悧は液体金属を操って袋から飛び出すかのような手を作り出し、その手にて銃型の魔導兵器『オムニバス』を構える。
イメージするは光――引鉄を弾けば、そのイメージと相違ない閃光が周囲を照らし、影すらもかき消える光の空間と化した。
ち、とシャッテンドルヒは舌打ちする。
まさに影を用いて増援を呼ぼうとしていたところを先読みされたかのように封じられた上、持っていた卵は全て奪われた――まさに詰み。
そこに畳み掛けるようにさらに怜悧の一撃が飛び、呆気なくその身は地面へと転がる。
そして腕を獰猛な前足で押し付けられ、視界に映るは舌を舐めずる黒狼。
「んじゃ、早速――」
いただきます。
――それが、敵が最後に耳にした言葉であった。
光が消えた頃には目の前には食事を終わらせた"跡"だけがその場に残る。
口を拭う怜悧。中々の味であったが、腹の虫の機嫌が良くなるにはこれだけではとても足りない。
ガチョウを喰らうことを我慢している故なのか、食欲はいつも以上に旺盛さを発揮しているようで。
「……まだまだ喰い足んねェ」
次なる獲物(くいもの)を求めながら、引き続き卵を回収していった――。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・アイオライト
あたしの前で『影縫い』の呼称を名乗るなんて、相当な覚悟みたいね?
まあ良いのよ、暗殺者同士仲良くやろうじゃない。……殺し合いをね。
黄金の卵の回収はまあ、両手で合計2個が限界かしら。それなら『雷竜真銀鋼糸』を周囲に拡散、『罠使い』で卵を絡め取って中空に鋼糸の巣を構築することで回収を試みるわ。
影伝に移動……じゃああたしもそれに倣いましょうか。敵が影から出てきたところで【潜影追躡】を発動、『目立たない・闇に紛れる』で瞬時に敵の背後を取る。
いつの間にか命を掴まれてる感覚はどう?魔刀で『だまし討ち・暗殺』するわ。
アンタが影ならあたしは全ての影の起源のようなもの。勝手に潜影の力を使わないでもらえる?
ポルカ・モトロ
イースターかな?
卵探し楽しそう〜!
あら
なんだか迷路みたい
敵さんのチカラでしょうか?
戦場全体が迷路になるなら
卵も迷路の中にあるはず
急いで出口を探す必要はありません
のんびり卵を探しましょう
UCで紫の毒蛇さんたちを描いて
卵を見つけるのを手伝ってもらいます
【動物と話す】で
「もし卵を見つけたら近くの猟兵さんにお渡ししてね」と毒蛇さんに指示しましょう
蛇さんは視覚に頼らず物を探れるので影でもへっちゃらだと思うのです
蛇さんがんばって〜!
ポルカはその場に留まって
たくさんたくさん絵を描いて
他の猟兵さんたちを支援するのです
もし敵さんに見つかっちゃったら
蛇さんに守ってもらいつつ頑張って逃げるのです
(連携アドリブ歓迎)
●影の起源は影を伝い、紫の蛇は卵を探す
一方ザ・ゴールデンエッグスワールド内の別地点。
レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)は地面に落ちている卵を拾い、鑑定するように眺める。
その後重さを確認するかのようにひょい、と一回お手玉のように軽く放り上げて。
「(まあ、両手で2個が限界かしらね……)」
重量は然程問題ないが、やはり卵のサイズ的に人の手では二つがせいぜい限界なのは間違いなかった。
ならばとレイは愛器の一つである『雷竜真銀鋼糸』を周囲に展開・拡散させる。
微かに雷を纏った鋼の糸がまるでトラバサミで挟み込むかのように卵を次々絡め取り、観測できる範囲内にあるものは全てレイの手中へ。そして卵を絡め取った鋼糸は中空へと卵を運び込むかのように集まり、一つの巣として形を成す。
卵から鋼糸を通して伝わる刹那的な高揚感――レイもまた、この卵の数に比例した能力強化が如何程かを身に沁みて実感することとなった。
「(とてつもない力……敵に取られるワケにはいかないのもよくわかるわ)」
百聞は一見に如かず、改めて卵を先取することの優位性を思い知らされながらレイは口を開く。
「――あたしに対して背後を取れると本気で思ってるのかしら?そこにいるのはわかってんのよ」
敢えて振り向かず、相手に確実に聞こえる用に。
するとち、と舌打ちする音と共に敵――『影縫い・シャッテンドルヒ』の一員であろう少年が姿を現した。
「……思った以上の手練れのようで」
「あんたたちとは踏んできた修羅場の数が違うのよ。……あたしの前で『影縫い』の呼称を名乗るなんて、相当な覚悟みたいね?」
レイから闇が……影が滲み放たれる。『影の傷跡』――全ての影の根源が、目の前の『影縫い』を名乗る者に対して憤っているかのように。
影の根源とは即ち日向あるところに必ず存在するモノ全ての起源、"はじまりの影"……闇そのもの。
その前で影縫いを名乗るシャッテンドルヒの少年は思わず身体を震わせる……生命としての生存本能が防衛を謳う程のオーラが場を包んでいた。
とだが、それで怖気づく程度で暗殺者集団の一味としてアリスラビリンス内を彷徨ってはいないと言わんばかりに少年はナイフを構える。それに対してレイはくすりと微笑み、刀を鞘から引き抜いて。
「まあ良いのよ。暗殺者同士仲良くやろうじゃない。……殺し合いをね」
「……最早言葉は不要。ここから先は己の技にて語り(ころし)合おう」
風が嘶くと共に、暗殺者同士の誇りをかけた戦いの火蓋が切って落とされる――。
◆
一方、別視点にて。
「卵を拾って集めるって、イースターかな?」
早速近場に落ちていた卵を拾いながら呟いたのはポルカ・モトロ(碧海のプリンセス・レイ・f19700)。
確かに卵を拾って集めるのはさながらイースターのエッグハントである、今回拾うのはイースターエッグではなく黄金ガチョウが産む黄金の卵なのだが。
「卵探し、楽しそう~!」
楽しげに卵を探すポルカの姿は、場所が場所でなければとても微笑ましく皆が見守るであろう姿……戦場に置いてもそのような朗らかな行動・言動を貫くということはそう簡単にできることではない。
それを貫けるのは彼女の心に一本通った、とても強い芯があるからなのだろう。
決して焦らず、そして急がずガチョウが産み落としていったであろう軌跡を辿っていくポルカ。
彼女のその背姿を見た一人の暗殺者の瞳が、光る――
「……あら?」
ふと辺りの違和感に気づき、ポルカは辺りをきょろきょろと見回す。
先程までいたザ・ゴールデンエッグスワールドとはかけ離れた影で覆われた暗闇の街並みが周囲には広がっていたのだ。
日の光は影が邪魔して中々差さぬ場所が目立ち、その上街並みはまるで……
「なんだか迷路みたい……敵さんのチカラでしょうか?」
これが敵のユーベルコードであることに気づいたポルカであるが、焦りや不安といった雰囲気は欠片も感じられない。
何せいきなり別世界に誘い込まれたワケではなく、周辺の地域をそういう風に"書き換えただけ"とするなれば別にその地における全ての特徴が消え去ったというワケでもないだろう。
ならばきっと卵もこの街のどこかに落ちているのではないかと思い至ったのだ。
そうであれば出口を急いで探す必要もなく、ポルカは愛用の絵筆とキャンバス、絵の具を取り出して絵を描き始める。
「えーっと……使うのはこの色とこの色と……それからこの色かな!」
混ぜ合わされた絵の具がキャンバス上に広がり、見事な筆さばきにて描かれるは紫色の蛇。
完成すると平面から飛び出すかのように、ユーベルコードによる召喚獣となって200匹以上もの数が地面に降り立った。
蛇たちは皆して用があるのか?と言いたげに視線を向けているので、ポルカは蛇たちに語り聞かせるかのように、視線を合わせる為にしゃがみ込んで告げる。
「えっとね、黄金ガチョウさんが産んだ金色の卵を探して欲しいの!もし卵を見つけたら、近くの猟兵さんにお渡ししてね」
その言いつけを了承した蛇たちは皆一様に頷くと卵を求めて散り散りに。
蛇は今いる迷路のような影に覆われた空間においてパートナーとして頼るには間違いなく最適である。
頑張って、と声をかけてからポルカは再び絵を描き始めた。
今自分にできることは、戦場を有利にすべく仲間を支援すること……引き続きユーベルコードでの召喚を続けることにしたのである。
しかし、この場は敵のユーベルコードによる空間である――つまり、敵がこの場に存在しないワケがないのだ。
「きゃっ……!?」
ポルカの真横に何かが突き刺さる。
恐る恐る目を向けるとほんのりと差し込む光に煌く銀色が映る――ナイフだ。
キマイラとしての野生の勘がここに留まるのは危ないと告げ、ポルカは絵を描くのを切り上げて追加で呼び出した蛇たちを連れて逃走を試みた。
もちろん背を向けたことを好機と思わぬ暗殺者はいるまい、ナイフを投げたであろうシャッテンドルヒの一員はそのまままた一つナイフを携えて襲いかかるが――
「ぐっ……!?」
ポルカを護る紫の蛇に噛みつかれ踏みとどまる。何とかその一匹は仕留めたものの、身体が重い――いや、動かない。
持っていたナイフをその場に落とし、シャッテンドルヒはその場に倒れ伏す。
彼女が呼び出した蛇が強力な神経毒を持つ毒蛇であることに気づいたのは、完全に痺れが回りきって瞬きすらもできなくなってからだった。
とはいえ暗殺者集団、この一人だけで終わりではない。複数の少年たちがポルカを仕留めんと追いかけてくる。
彼らは皆一様にある程度の卵を保有しているが、対してポルカの持っている卵は一個だけ、能力の差は歴然だ。
あっという間に追いつかれて気づけば行き止まり。
暗殺者の少年たちは一斉にナイフを構え、影を操り、彼女を仕留めようと飛びかかる――
「ぐは……っ!?」
――しかし、悲鳴を上げたのは彼女ではなく敵の方だった。
全員がたった一人による斬撃により急所を裂かれて絶命した。
術者がやられたのか、先程までの街並みは消えて元の風景が戻ってくる。
その血生臭い光景を見せまいとするかのように、目の前には影を帯びた女性が立っていた。
ポルカは女性を知っていた、何せ彼女は同じ戦艦に集う仲間なのだから。
「レイお姉さん!」
「急に方向を変えて逃げ出したから何かと思ったら……無事でよかったわ、ポルカ」
どうやら先程戦っていた相手が急にそれとは相反する行動を取ったらしく、結果この危機を察知して駆けつけてくれたようだ。
そしてレイの隣には金色の卵を携えた紫色の蛇、どうやらポルカの言いつけを護って卵を渡そうとしている。
「この子がさっきから卵をくれるから、もしかしてポルカじゃないかなって思ったのよ。あなたの描く絵と特徴同じだったし」
「そうだったんですね!ありがとうございます!蛇さんたちもポルカの言いつけ守ってくれてありが――」
言葉を止めてポルカは目を見開く。
レイの背後からシャッテンドルヒの一人がどこからともなく姿を現したのである。ナイフを構え、背後が無防備なのを良いことにその首に突き立てようと――して、動きが止まった。
ユーベルコード【影ノ傷跡・渡:潜影追躡(シャドウ・キリング)】が発動し、影を伝って回り込まれた後に視界を暗闇が覆ったのである。
「ある種の人質作戦から騙し討ちをするつもりだったってワケかしら?……獲物の生命を掴んだつもりで、いつの間にか自分の生命を掴まれてる気分はどう?」
耳元で囁くように、されど氷のように冷たい声色で問いかける。
彼女は目的の為に他人を利用する者を許しはしない――利用されかけたのが己の仲間であるなら尚更だ。
ただでさえ、彼らの名乗る称号が気に食わなかったというのに。
オウガ故に暗殺者としての"誇り"もないのか、そもそも元より結果のみを優先とする暗殺者集団であったのかはわからないが。
「アンタが影なら、あたしは全ての影の起源のようなもの。……勝手に潜影の力を使わないでもらえる?」
その言葉が、少年が最後に聞いた言葉となる。
先程絶命した仲間たちと同じように急所を裂かれ、その生命を散らし――血を吐く代わりに今まで飲み込んだであろう黄金の卵を吐き出してその場に倒れ伏した。
その卵の数はレイが今所有している数とほぼほぼ変わらず……純粋な暗殺者としての技能でシャッテンドルヒは彼女に敗けたということを証明しているかのように日の光に当たって煌めいた。
「だ、大丈夫ですかレイお姉さん!」
「大丈夫よ。……でも、そうね。さっさとここは離れましょうか」
作戦会議にしろ何にしろ、話をするならこんな血生臭い場所でない方が良い。
ポルカを連れてレイはザ・ゴールデンエッグスワールドの奥へと歩を進めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イリス・ノースウィンド
「この先にいる猟書家は危険ですね」
出来ればこの戦争中に倒しておきたい
微力ですが、私も戦場に立ちましょう
黄金の卵、中身まで黄金で出来ているということは生物の卵であっても無機物であるはず。UCを発動して竜巻に変え、手元に引き寄せます。オウガが飲み込もうとしている卵も竜巻に変えて攻撃し、手元に引き寄せましょう。手に入れた卵はマントで包んで持ち運びます
常に周辺を複数の竜巻で囲み、不意打ちを警戒します。足元や付近の影には常に警戒し、相手が出てくるようであれば持ち込んだ懐中電灯で妨害します。投げナイフはUCで竜巻に変えて相手への攻撃とし、ついでに頂いてしまいましょう
戦闘が終わったら卵はガチョウに返却します
●次元を超越する竜巻という名の無機物
イリス・ノースウィンド(とある部隊の元副隊長・f21619)が戦場に出ることは少ない。
普段はグリモアベースにて予知に努めている彼がこの迷宮災厄戦で戦場に立った理由……それは。
「(……この先にいる猟書家は危険ですね)」
此度の迷宮災厄戦において、アリスラビリンスの各区域を外から包囲するように猟書家(ビブリオマニア)たちは各々刃を研いで侵攻を試みている。
この先に陣取っている猟書家はイリスの経験から培われた知識と長年の勘が今回猟兵たち、そしてオウガ・オリジンと相対する猟書家の中でも特に逃してはならぬと警鐘する者たちだ。
――「秘密結社スナーク」を用い、蠱惑の花を咲かせることでヒーローズアースに新たな戦いを呼び込もうとしているサー・ジャバウォック。
――「蒸気銃の悦び」を用い、アルダワ魔法学園・諸王国連合へ蒸気獣を解き放ち混乱に陥れようと企むレディ・ハンプティ。
予兆に見たこの2名は、他の猟書家と比べても一際危険であるとイリスは確信していた。
無論、他の猟書家たちも相応に警戒すべき対象であることに変わりないし、書架の王は特に危険すべき対象である。
しかし、それよりも危険と思わせるのはこの予兆で見えた2名の言動と目的から罪なき人々を大勢巻き込むという意志が他の猟書家と比べて顕著だったのだ。
できることならこの戦争中に倒しておきたい、その為に自らにできることはしなければならない。故に離れて久しい戦場に彼は降り立った。
手数は多ければ多い程良い、例えその一つ一つが微力であろうとも重なれば大きなモノになる――そして自分もその支えの一つとなる為に。
「(さて、この戦場では卵の数が勝敗を分けるのでしたね)」
イリスは早速卵の回収の為散策を開始する。
黄金ガチョウはザ・ゴールデンエッグスワールドのあらゆる場所に卵をたくさん産み落としている為、見つけるのは然程難しくはなかった。
そのまま近くまで寄って拾い上げてもよいのだが、そこを突いた敵の奇襲がないとも言い切れない。
さて、どう回収と警戒を両立させるべきか……と考えてふとある発想に思い至る。
「(黄金の卵……中身まで黄金で出来ているということは、生物の卵であっても無機物であるハズ)」
そう、黄金ガチョウが産み落とす黄金の卵は中まで黄金……それは即ち無機物でできているということに他ならない。
イリスはユーベルコードを使って卵の回収を試みる。
このユーベルコードは無機物を竜巻に変えることができるものであり、それを利用してこちらに引き寄せれば安全に回収ができるのではと考えたのだ。
現在のイリスの技量ではこれを適応できる距離は約半径50m弱といったところであるが、その僅かな範囲の中からそれなりの数の竜巻が巻き起こり、彼の下へと集っていく。
解除すると彼の足元に竜巻であった黄金の卵たちが転がった。そのうちのいくつかはマントで風呂敷のように包み込んで持ち運べる状態にし、残りは再び竜巻と変えて侍らせる。
さらに敵が影縫いの異名を持つ程の影を操る力の使い手であることを懸念し、空いている片手には懐中電灯を。
あらゆる不意打ちを警戒しながらイリスは奥へと進む。
ユーベルコードを使用している間はどのような状態であれ、無機物ならば全て竜巻と変えることが可能だ。
――例えば、それが今まさにオウガが丸呑みしようとしているモノであっても。
「なっ!?う、うわぁああ……ッ!」
ユーベルコードの範囲内に知らぬ間に入っていたシャッテンドルヒの一員が竜巻と化した卵に逆に呑まれ、大きく打ち上げられては近くの川へと放られ流されていく。
それを開戦の火蓋とするかのように、目の前に広がる光景が影に覆われた街と化したがイリスは焦ることなく、竜巻を自らの周囲に展開したまま懐中電灯のスイッチを入れ自身の周りを照らした。
するとち、と舌打ちが聞こえてくる。
どうやらイリスの影から姿を現そうとしていたようだが、懐中電灯で照らされたことにより思うように行動できない様子。
影から出てくるのは諦め、竜巻に巻き込まれない程度の距離を取って背後に回り込んでくる。
竜巻がイリスの背後を離れ無防備になるその瞬間を狙ってシャッテンドルヒはナイフを投擲――だが。
「残念ですが……お見通しです」
ナイフが一瞬にして竜巻となって持ち主を飲み込み、吐き出すかのように打ち上げた。
直後、イリスはその竜巻を引き寄せナイフに戻してその手に握る。
まるで相手の心を見透かすかのように一手一手を確実に潰し、自身の攻撃の機会へと塗り替えていくイリス。
元副隊長、されど元副隊長……少年の姿をした影縫いの暗殺者よりも遙かに上回る戦闘経験を経た歴戦の猟兵である。
そんな彼に数に比例して付与される強化などが加われば、並大抵の戦士では太刀打ちできないのも当然の帰結であった。
例え隙をついて影から出てこようとも、手にしたナイフの一閃によって目を潰され、近づくものは竜巻で圧倒される。
そして一つでも無機物を手にしようものならそれを竜巻に変えられ……
シャッテンドルヒが彼の前に完敗を喫するまでそう時間はかからなかった。
――かくして。
暗闇に包まれた街並みから元の風景に戻ったザ・ゴールデンエッグスワールドの開けた水辺にて黄金ガチョウたちが集う場を見つけたイリス。
そっと風呂敷代わりにしたマントを広げて黄金の卵をそっと地面へ。
「卵、ありがとうございました。お返ししますね」
微笑んでその場を後にする。
見送りの挨拶をするかのような、ガチョウたちの鳴き声を背に受けながら。
大成功
🔵🔵🔵
ニール・ブランシャード
黄金のガチョウかー。
黄金って高貴な感じだしきっと気品のある鳥さんで…鳴き声汚っ!!
でもこれだけ汚…よく聞こえる鳴き声なら探知しやすいや。
鉄靴の裏からぼくの体を地面に這わせて、地面伝いに音や振動を探知して鳥さんがたくさんいる所を探すよ。
地籠さんは丸呑みするなって言ってたけど…ぼくタールだし消化しなければ平気だよね。
よいしょ(と兜を外し鎧の中を満たすタール状の体に卵を収納)
影に変形してくる敵の攻撃は、鳥さんを探知するのと同時に地面を警戒することで不意打ちを防ぐよ。
あわよくばUCで敵の中身と一緒に卵を横取りできないかな。ちょっとズルいけど。
あぁっごめん!終わったら卵返すから!つっつかないでぇ!
●何か高貴そうと思ったらそんなことなかった。
ニール・ブランシャード(うごくよろい・f27668)は戦場に降り立ち散策しながら、グリモア猟兵の概要を脳内で反芻してこんなことを考えていた。
「黄金のガチョウかー……黄金って高貴な感じだし、きっと気品のある鳥さん……」
黄金の卵を産む黄金のガチョウ、確かに聞こえはとても高貴であるしそういうイメージを連想するのもおかしくはない。
しかし残酷かな、少年の夢想は散策数歩目で文字通り儚く砕け散る――。
「ア゛ーーーー!!!!!!ア゛ーーーーーーッ!!!!!!」
「ちくわ大明神」
「ア゛ッ---------!!!!ア゛ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「…………鳴き声汚っっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」
ニールは即座に前言撤回した。
高貴だと思ったら全然そんなことなかった、ていうか誰だ今の。何か鳴き声じゃない奴も混ざってませんか?
ともあれ、事実は小説よりも奇なりとはきっとこういうことなんだろうとニールは学んだ(?)。
これもまた世界の鮮やかさの一つなんだと自分に言い聞かせて卵の散策を再開する。
「……うん、でもこれだけ汚――よく聞こえる声なら探知しやすいや」
静かに鉄靴の裏から自らのブラックタールとしての肉体を地につけ、這わせながら散策する。
地面を伝う振動としてあらゆる音が聞こえてくる――ガチョウの鳴き声も、卵を産み落とす時の震えも……敵のナイフを研ぐ音も。
敵の奇襲を地面の振動を常に探知することで警戒しながら、ガチョウの鳴き声がより伝わってくる方向へ向かう。
「ア゛ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
するとちょうど黄金ガチョウが卵を産む瞬間に遭遇した。
大きな鳴き声と共に産みの苦しみにぶるぶると震わせた後にすぽんと地面に転がる黄金の卵。
それをしゃがみ込んでまじまじと見つめながら、どうやって持ち歩こうかと悩むニール。
「(地籠さんは丸呑みするなって言ってたけど……ぼくタールだし。消化しなければ平気だよね?)」
よいしょ、とニールは兜を外して卵を中に収納する。
液状の身体に収納することで持ち運びを簡単に、種族の特性を利用したブラックタールならではの収納法だ。
「よし、これで一個……ああっごめ、ごめん!終わったら返すから!それまで待ってつっつかないでぇ!!」
拾ったタイミングが悪く、親ガチョウに激しくつっつかれてしまうも何とか説得に成功(?)し、その調子でニールは次々と卵を拾っていく。
時々何故かタイミング悪く産んだ直後に持っていこうとしてつっつかれてを繰り返しながらも、一個一個着実に鎧の中へと収納してパワーアップ。
「凄い、何か最初にきた時とびっくりするぐらい違うってぐらい身体が軽い……!」
数がかさめばより実感も強く湧いてくるし、気配の探知もより行いやすくなった気がした。
今なら何でもできるような気がする、例えば空を飛ぶことだって――そんな刹那的な高揚感に浸りながらも警戒は怠らない。
例え相手が影にまぎれていたとしても、地面の違和感でわかる……それはもしかしたら思い込みかもしれないが、思い込みであったとしてもそれを現実にできる程の力を得たニールはふと足を止め、自らの影を見つめる。
そして静かに自らが纏う甲冑の手を外し、そこから液体を練り上げて異形とした。それは目も鼻もなく、獲物を喰らう口だけがあるただの異形。
その異形と化した腕は影に狙いを定めて伸びる――すると小さな呻き声と共に影に自分の手がすっぽりと入っていく。
「かは……ッ!」
息が掠れた声が聞こえる。恐らく影伝いに移動しようとしたシャッテンドルヒの一員だと理解するに時間はかからず、ニールは直様次の行動に出る。
「ちょっとズルいけど……君の中身、少しもらうよ……!」
ユーベルコード【喰らう腕(ディコンポーザー)】を発動すると、ますます苦痛に呻く敵の声が響く。
相手の生命力を吸収し自らを治療する、攻撃と治癒の両方を兼ね備えたそれは相手を倒すだけでなく、飲み込んだ卵ですらも自らの手中に収めた。
あわよくば横取りできたら良いなと思っていただけにそれが見事作戦成功となったのは僥倖だ。
そうして地道にニールは卵を回収しながら、敵を一人ずつ仕留めていく。
生命を吸収する効果を備えたユーベルコードにより例えいくら傷つこうともニールがそのまま傷まみれになることはなく、さらに卵を集めることによるパワーアップも相まってまさに単独で無双するかのような光景が繰り広げられることとなった。
――そして敵の気配は完全に消失したのである。
一段落してふう、とニールは鎧に浮かんだ冷や汗を拭う……中がブラックタールなのに鎧に冷や汗とはどういう原理なのかとかは気にしてはいけない。
使用したユーベルコードの特性も相まって、一切の消耗をすることなく敵の残りを殲滅できたのであったらまたもややってきた黄金ガチョウにつっつかれる。
「ああっごめん!返す!終わったから今返すから!だからお願いつっつかないでぇー!」
鎧を突かれてもそんなに痛くなさそうだが、多分振動が大変三半規管に悪いのだろう。
ブラックタールの三半規管がどのような形状をしているかは知らないが……
こうして無事ザ・ゴールデンエッグスワールドを占拠する暗殺者集団の殲滅が完了したのであった。
もちろん、取った卵たちはちゃんと全部ガチョウたちに返しました。
きっとこの玉子たちから新しく黄金ガチョウが生まれ、その頃には平和でより賑やかな場所になっているかもしれない。
そしてきっと、その時がくるまではそう遠くないだろう――
大成功
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