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迷宮災厄戦⑪〜 世界を渡れ、ボクの狂気(ツキ)

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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「カエリ……タイ」
 そこは地面から鏡が生えている不思議な場所。かつては巨大な都市であっただろう廃墟の大通りを一人の少女がふらふらとした足取りで進んでいる。
「カエラナイト……」
 ただ片言で帰る事を口にしている少女は見た目には人狼の少女のように見える。
 だがしかし。
『貴方の帰る場所はどこにもない』
 地面から生えた鏡の一つが声を発する。この場所の至る所にある鏡は真実の鏡と言われ、この国に在る事で知っている事であればなんでも教えてくれる魔法の鏡だ。
『貴方はオウガだ』
「ウルサイ!ボクハコキョウニカエルンダ!」
『貴方の故郷は存在しない。貴方はアリスではない。もうどこにも行く所はない』
「――ッ!!」
 怒りに任せて真実の鏡へと拳を突き立てたオウガは狂ったように腕を振り回す。廃墟を壊し、道路を抉るその様は内なる怒りと狂気が収まるまで続くのであった。

「元アリスのオウガ……みたいなの」
 やりきれないといった表情をして猟兵達の前に立ったのは日ヶ丘・美奈(リトルマスター・f15758)だ。
「人狼のアリスだったらしいのだけど……何かがあってオウガになっちゃったんだろ思う」
 当然何かアリスにとって耐えがたい事があったのであろう。それこそオウガに変貌するような何だ。
「それでも、今でも故郷に帰りたいって思っているみたいで……自分の事もオウガだってわかってないみたい」
 だが本能はオウガそのものだ。既に幾人かのアリスが彼女の犠牲になっている。そして彼女がそれが元は自分と同じ者であったと認識できない。
「もう元には戻れないの……だから。終わらせてあげて」

 戦いの舞台となるのはかつて鏡の女王が収めていた国。オウガ・オリジンによって戯れに殺された彼女は怨念となってこの国にとどまり続けているという話である。それと関係あるのかはわからないが、この国には真実の鏡という物が存在していると美奈は語る。
「この鏡さんは、鏡さんの国の事で知っている事なら何でも聞けば教えてくれるらしいの。だから、オウガさんがどこにいるかとかも教えてくれるの」
 そしてオウガも当然この鏡を使ってくる。この鏡に善悪の区別はなく、鏡が自身に問いかけたと判断すれば知っている事を教えるというそういう仕組みになっている。
 戦いの場所はかつて鏡の女王が収めた都市の一つ。獣の力を持つオウガにとって建物と飛び越す事など訳がなく、隠れる場所も多い。上手く鏡を使わなければ苦戦は必至だろう。
 すべての情報を伝え終わった美奈は、テレポートの準備を終えると猟兵達へと向き直る。
「……皆、無事に帰ってきてね?」


風狼フー太
 真実とは大体いつも残酷である。風狼フー太でございます。

 プレイングボーナスは鏡に有効な質問をする事となっております。鏡はそこら中に生えているので鏡を探す手間などはございませんし、性能に違いもありません。
 問いかけた。と、鏡が判断すれば勝手に答えが返ってきます。戦場は巨大な都市の廃墟となっており土地勘もない為、分からない事はとりあえず鏡に聞いてよいと思います。

 では、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『アリーチェ・ビアンカ』

POW   :    狂月招来(フルムーン・コネクト)
予め【獣の本能と己の狂気に身を任せる】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    狂気感染(パンデミック・ルナライト)
【あらゆる者を狂わせる月の光】を降らせる事で、戦場全体が【狂気に満ちた満月の下】と同じ環境に変化する。[狂気に満ちた満月の下]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    狂光軍行進曲(ルナティック・マーチ)
【人狼化し、それぞれの武器】で武装した【自身が喰い殺した者達】の幽霊をレベル×5体乗せた【狼の幽霊の群れ】を召喚する。

イラスト:さいばし

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リカルド・マスケラスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

水心子・静柄
先ずは鏡に「アリーチェ・ビアンカのいる方向と距離」を問うわ。その次に「ここからその方向にある鏡で一番近い鏡の位置」を聞いて鏡がある所に行く。それで鏡を見つけたら同じ事を質問して敵との距離を縮めていくわ。最終的に鏡が存在しないという答えが出たら、
「アリーチェ・ビアンカがいる辺りの地形」と「アリーチェ・ビアンカが狂月招来を使った時の動作パターン」を聞いて戦いを挑むわ。敵がいる位置まで行って見当たらなければ、教えて貰った地形情報を元に敵を探す。戦いになったら教えて貰った動作パターンを元に回避行動をして、召喚した本差で斬っていくわ。どんな事情があってもオウガになったら倒すしかないのよ。



 破壊の限りを尽くし怒りが収まったオウガは暴れ疲れたとぼとぼと再び歩みを進め、壊れていない家を見つけ軒の下で座り込んでいた。
「カエリ、タイ」
 ただうわ言の様に呟くオウガ。だがその耳が何かを捉えてピクリと動く。
「ナニカクル」
『貴方を殺しにやってきた者達だ』
 再び問いかけられたと判断したのだろう。真実の鏡は残酷な事実をオウガへと告げる。
「ナンデ、ドウシテ!?」
『貴方が世界を破滅させるからである』
「ワタシヲキズツケルヤツハユルサナイ!ドコニイル!!」
『此処からこの道を南に進んだ先にいる』
 鏡の声の返答を聞くや否や、怒りと狂気に身を任せてオウガは獣の力を解放する。
 軽々と屋根を超える獣と狂気の力が、猟兵達へと向けられようとしていた。

「鏡。アリーチェ・ビアンカのいる方向と距離は?」
『此処から北にオウガがいる。此方に向かってきている為、正確な距離を申し上げる事が出来ない』
「だったら、ここからその方向にある鏡で一番近い鏡の位置は?」
『それならばこの道を走れば一分もかからず見えるはずだ』
 至る所に生えた鏡の一つを見つけた水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)は手早く鏡に質問をすると答えに従い行動を始める。
 それを何度か繰り返した所で、鏡の対応が変わる。
「鏡、次は」
『オウガと貴方の間に鏡は存在しない』
 その言葉を聞き、静柄の体に緊張が走る。今いる場所は建物が並ぶ市街地。いついかなる場所から攻撃されるかわからない場所に来ているという事だ。
 だが。常にオウガと自分の中間に位置するであろう鏡までの距離を聞く事によって深入りする事を避けたのが功を奏し、移動中にオウガの襲撃を受けるという事態は回避する事は出来た様だ。
「……鏡。アリーチェ・ビアンカがいる辺りの地形とアリーチェ・ビアンカのユーベルコードについて知りたい」
『彼女は今は家を使い隠れている。ユーベルコードという概念はよくわからない。だが、先ほどの破壊行動の際の攻撃方法であれば教えることができる』
「……わかった」
 周囲を警戒しながら一歩一歩慎重に歩みを進める静柄。鏡から聞いた情報を元にこれからオウガがとる行動はおそらく一つであると推測した静柄はあえオウガが狙いやすいであろう位置に立つとその時を待つ。
 風の流れが草木の匂いを運び、かつて人が暮らしたであろう家々はただ押し黙り沈黙を守る。
「アアアアアッ!!」
 その静寂を破り家と家の隙間から銀色の影が飛び出し空中から静柄へと襲い掛かり――。
「……ッ!」
「ギャン!?」
 勝負は一瞬であった。ユーベルコードを使い召喚した刀を以て居合切りの形で静柄はオウガを切り裂いた。
 どれだけ早かろうと直線的に来る行動は読みやすく、来ると分かっている攻撃は奇襲足り得ない。
 腕から流れる血からして咄嗟に腕を前に出して防いだのであろう。奇襲からの一撃を防がれ狼狽したオウガは家を飛び越し身を隠す。
 そんなオウガを見て、静柄は1人呟く。
「……どんな事情があってもオウガになったら倒すしかないのよ」
 例え貴方が悪くなくても、と。刀を構え静柄は逃げ出したオウガを追いかけるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロム・エルフェルト
アドリブ絡みOK

獣は、隠れる場所があると手強い。
……隠れる場所の無い、戦闘に適した広い場所は何処?
まず[情報収集]。見晴らしの良い戦場を幾つか探す。
もう一つ。弱点の手掛かりになるかもしれない問い。
……鏡よ鏡。アリーチェに何が起きたか教えて。

鏡に聞いた敵の居場所に向かう。
……迷子の迷子のアリスさん。いえ、今はオウガだったね。
挑発して、[ダッシュ]と[ジャンプ]で一番近い戦場まで誘導。

狂った狼じゃ、狐は狩れない。
鏡から弱点が聞けていれば、それを意識して戦う。
敵の攻撃は、[残像]に紛れるようにジグザグに動いて回避。
[カウンター]気味に『仙狐式抜刀術・牡丹』を放つ。
動きが鈍れば、仲間も戦い易くなる筈。


ヴァシリッサ・フロレスク
なんでも歓迎

Hm?鏡よカガミ、ってか?ベンリなもンだねェ。

コッチは逃げも隠れもしないよ。相手の庭だ、追っかけ回したってくたびれ儲けだ。
おびき寄せる為に一等に目立つ適当な待ち合わせ場所の鏡の前で、相手のコトを訊きながら、のんびり待つとするサ。

ヤツは何時の方向だ?距離は?
ヤツの得意なレンジは?
ヤツをおびき寄せるにゃ、どうすりゃいい?
ヤツの弱点は?
……

――ヤツはどうしてオウガになっちまった?


ま。聴いたところで、アタシに出来るコトなンて。

接敵後、ノインテーターで挑発しながら出方を見極める。
ヤツがUCで詰めてきたら此方も発動。
見切り、怪力に任せた早業のカウンターで捻じ伏せる。

過去に縋っちゃ、お終いだよ。



「Hm?鏡よカガミ、ってか?ベンリなもンだねェ」
 まるで白雪姫に出てくる鏡のようだと真実の鏡の前に立ちそう評するのはヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)だ。この世で一番美しいのは白雪姫だと答えた鏡の如く、目の前の鏡も問う者の善悪を問わず質問に答えを返すと言うあたりまさにその通りであろう。
「獣は、隠れる場所があると手強い」
 その横で冷静に状況を整理しているクロム・エルフェルト(半熟仙狐の神刀遣い・f09031)は淡々とした口調でそう告げる。
 身を隠し獲物を待ち、そして狩る。それが、肉を食らう獲物の常套手段だ。
「コッチは逃げも隠れもしないよ。相手の庭で追っかけ回したってくたびれ儲けだ」
「……鏡よ鏡。隠れる場所の無い、戦闘に適した広い場所は何処?」
『最短距離で言えば北に在る広場がそれにあたるだろう』
 ヴァシリッサの言葉に首を縦に振ったクロムは鏡から戦闘に適した場所を聞き出すと、更にもう一つ鏡に対して質問をする。
「もう一つ。アリーチェに何が起きたか教えて」
『その問いには答えられない。彼女がオウガに変貌したのはこの国の外での出来事である』
 真実の鏡が伝える事ははこの国で起こった事のみ。別の場所で何かがありオウガへと変貌したアリーチェに起きた事柄を鏡は知らないのだ。
 あくまで弱点を聞き出す為の問い。その答えが返ってこない事に何処か悲しげなクロム。
(……ま。聴いたところで、アタシに出来るコトなンて)
 同じ事を聞こうとしていたヴァシリッサもその答えに思う所はあれど、心の中に押しとどめ代わりの質問を鏡へと問いかける。
「鏡。ヤツは何時の方向だ?距離は?それと、ヤツの得意なレンジは?」
 そしてヴァシリッサの聞いた事は全てこの国で起きた事だと、鏡は全て答える。
 必要な物をそろえた二人は、二人は件の広場へと直行するのであった。

 腕の血が止まるまで休んでいたオウガの鼻が見知らぬ匂いを嗅ぎつけると同時に、恐怖が感情を支配した。
「マタ、アイツラ!」
 家の中へと隠れたオウガ。暫くして彼女の目に移ったのは二人の人物だ。先程の傷から、彼らの力を学んだオウガは隠れる事で二人をやり過ごそうとする。
 自分はただ帰りたいだけなのだと。そう言い聞かせ――。
 心の中で膨れ上がる二人への殺意を抑え込もうとする。
(チガウ!ワタシハカエリタイ……カエリ……?)
 自分の故郷を思い出そうとして、ふと気が付く。
 自分の帰る場所はどこなのか。家族は誰なのか。自分がどうして此処にいるのか。
 それが、分からない。
「ア……あ?」
 何処へ帰ろうとしているのか。誰に会おうとしているのかが分からない。心を塗りつぶしていた恐怖とは別の恐怖が心を締め付け、それが二人への殺意の枷を外し狂気で満たしてゆく。
 空からの奇襲は危険だと本能が判断していたのだろう。家から飛び出したオウガは地面を奔り、赤い髪の女性が放つ銃弾を目にも止まらぬ速さで横に跳びながら前に進んで躱し、狐耳の女性へとその爪を振るう。
 その攻撃を残像が伴う速度で負けずと躱すクロム。そして、その唇は確かに小さな声でこう紡いだ。
「……迷子の迷子のアリスさん。いえ、今はオウガだったね」
 その言葉に、オウガの頭の中が怒りを伴う赤色に染まる。
 言葉にならないほどの狂った絶叫を上げて、クロムを引き裂こうとするオウガ。その動きは速くとも、怒りを伴う攻撃は直線的過ぎる。
(狂った狼じゃ、狐は狩れない)
 今まで回避の為に軽く力を入れていた足をしっかりと地面へとつけ力を込め居合の構えを取るクロム。
(神速剣閃)
 極限まで集中し、相手の呼吸に合わせその隙をついた抜刀術がオウガの体を裂く。
(弐ノ太刀――斬り飛ばす)
 返しの刀は袈裟切りに。そしてそれに合わせるようにヴァシリッサの放った銃弾がオウガの全身を貫いて行く。
「銀の弾じゃなも、効いたろ?」
 言っては見た物の、あくまで牽制目的の攻撃。銃弾の威力よりも動きを止める為の攻撃である。
 距離を取ろうと後ろへ飛んだオウガの動きは遅く、距離を詰める為に動いたヴァシリッサの方が速かった。
(過去に縋っちゃ、お終いだよ)
 もはや彼女はオブリビオン。過去の存在だと真紅の瞳をしたヴァンパイアへと覚醒し、持ち前の怪力を増幅した上で右拳をオウガへと叩きこむ。
 殴られ、吹き飛んだオウガは家の壁を2枚、3枚と抜いた所で家が崩れた所で、土煙が巻き起こり彼女の姿が見えなくなる。
 だが、猟兵達の本能はまだオウガが生きている事を告げているのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アハト・アリスズナンバー
貴方を殺すのは、これで3度目。
それでも私は貴方を忘れてはならない。
もう一度眠りなさいビアンカ。
もう二度と目を覚まさないように。

鏡に狼の幽霊の群れ、そしてアリーチェの場所を問います。
居場所を特定出来たら、UCを発動。
あの時と同じように、幽霊をヴォーパルソードにて貫きましょう。
本体には手にした1本のヴォーパルソードで【破魔】の【属性攻撃】による【貫通攻撃】で貫きましょう。

こうして、何度も貴方を殺すのは……忍びないですね。
オウガ・オリジンと早々に決着をつけなくては。


中村・裕美
「……やりきれないものもあるけど……倒さないとね」
世界に絶望していれば、自分も同じような存在になっていたかも

「……アリーチェ・ビアンカの位置……この地点にいる場合の襲撃する方向を教えて」
鏡の使い方は検索エンジンによる【情報収集】と似てるわね。
あとは
「……彼女の本当の名前……それと……出身世界で可能性の高いものを教えて」
異世界の事がわからないのであれば、鏡に【ハッキング】して異世界の情報を流し込んで推測の精度を上げる

戦闘は襲撃方向を警戒して初撃を防ぎ、【邪竜降臨】で強化して槍で【串刺し】、狂気は毒や出血の痛みで紛らわせる
最期に彼女の名前を呼んであげたり遺品を元の世界へ持ってってあげられればいいな


六道銭・千里
自身を失った元アリス…なぁ
元に戻されへんねんやったら、せめて魂だけでも元の世界に…ってな
六道銭家、六道銭・千里…参る!


鏡に聞くことはオウガの向かう方向
それを元に先回りし、俺のやりやすい場所で陣取らせてもらうわ


銭貫文棒を手に待ち受け…いざ!
予め、オウガが来る前にばら撒いてた御縁玉で結界を作り【結界術&オーラ防御】
で敵の攻撃を妨害&防ぐ
こっちは逆に一反木綿を使った『ロープワーク』で回避に縦横無尽に攻めさせてもらうわ


トドメは霊符の大判屠舞…
安らかな眠りを彼女にな



 鏡にオウガの位置を聞くよりも早く爆発の様な建物の崩れる轟音によってオウガの位置を知ったアハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)、六道銭・千里(冥府への水先案内人・f05038)の3人は急がねばならぬと手早く鏡へ質問をしてゆく。
「鏡、オウガはどっちに向かってる!?」
『西へと向かっているようだ。そこの道をまっすぐ行くといい』
「アリーチェは今何かユーベルコードを使用していますか?」
『今の所はそのような現象は確認されていない』
 千里とアハトの言葉に流れるように答えるを返す真実の鏡。その鏡に裕美も言葉を投げかける。
「……彼女の本当の名前……それと……出身世界で可能性の高いものを教えて。私が異世界の情報を教えるから」
『その問いには答えられない。我々はこの国で起こった事を教えるだけの機能しかない』
 オウガと化したといえども元はアリス。せめて彼女の何かだけでも故郷に連れて行きたいという裕美の願いの籠った問い。
 そんな問いをバッサリと切り捨てた鏡は、更に言葉を続ける。
『彼女がこの国でどのような言葉を口にしていたか。どのような行動を取っていたかという事であれば答えられる。我々が判断するより、そちらで判断したほうが情報の精度は上がるだろう』

 その目は確かに元より赤かったが、今はまさに血走ったという表現が正しい目をしていた。
 何も信じられる物がなく、よりどころを失い、殺されようとしているこの状況においてオウガからアリスの残滓は消えていた。
 最早一匹の凶暴な獣と化したオウガに対して。
「……やりきれないものもあるけど……倒さないとね」
 鏡からアリスとしての情報の全てを受け取った裕美は彼女への憐憫を胸に、両手で槍を構える。
「貴方を殺すのは、これで3度目」
 世界を守る為、何度も殺してきた。今度も殺すだろうとアハトは告げる。
 だからこそ、私は貴方を忘れてはならないと自分に言い聞かせる。
「もう一度眠りなさいビアンカ。もう二度と目を覚まさないように」
「自身を失った元アリス……なぁ」
 もう元には戻せない。ならばせめて魂は元の世界に還すと祈りを込めて、冥銭を束ねた棍を構える千里。
「いざ。六道銭家、六道銭・千里……参る!」
 千里の掛け声とともに3人はオウガへと戦闘行動を取る。
 それを切っ掛けにオウガも一人でも多く道連れにする為に、その後の事など考えぬ様に自身の全ての力を解き放つ。
 狂気をもたらす月の光が戦場全体に降り注ぎ、様々な武器を手に持つ彼女に殺されたアリス達が人狼と化し狼に乗って猟兵へと襲い掛かる。
 そんな絶え間なく狂気が感情を支配するために襲い掛かる戦場に、無数の剣が人狼と化したアリス達へと降り注ぐ。
「アリスコード……送信!」
 狂気に耐えながらアハトが展開したそれは正体不明な怪物殺しを果たした名付けた者すら仔細を語らぬ剣の名を冠為すユーベルコード。ヴォーパルソードと名付けられたそれは名に違わぬ力を以て狂気を駈ける人狼達を撃ち滅ぼしてゆく。
「……」
 アハトが切り開いた道をドラゴンエナジーというユーベルコードの代償を減らす、謎でどうにも危険な匂いしかしない飲料水を飲みながら進む裕美。邪竜を召喚して自らに取り込むと、自らの体に奔る代償の痛みを以て狂気を緩和し、オウガへと槍を向け突き刺そうと腕を前に出す。深々と脇腹へと刺さった槍のダメージで、狂気をもたらす月の光を維持できなくなったのであろう。真上で猟兵達を照らしていた月は消え、代わりに槍を引き抜こうと暴れるオウガは裕美へと爪を振るいその体を引き裂こうとするが。
「釣りはいらへん!全部もってけ!!」
 あらかじめ千里が辺り一面にばら撒いていた五円玉型の霊符、御縁玉が浮かび上がると御縁玉が光で繋がり結界が展開されオウガの爪を弾き飛ばすと同時に、布の式神である一反木綿を用いて上空へと跳んだ千里は銭貫文棒をオウガへと向けて叩きつける。
 その一撃を回避し、距離を取ったオウガ。その方向には既にアハトと裕美の二人が、逃げ場を防ぐように立ち塞がっていた。
 そして鎮魂歌の代わりに、アハトの剣達が、裕美の邪竜の力を宿した槍が、千里が操る大量の霊符がオウガへと襲い掛かったのであった。

 いつの間にか自分は倒れ伏していた。
 体中が傷だらけで、きっと自分は死ぬのだろうなとなんとなく感じていた。
 そんなボクの周りにいろんな人が立っている。
 誰かが祈りの言葉を呟いて、誰かが私の名前を言って、誰かが悔しそうな顔をしていて。
 そんな中で、なんとなく頭をよぎった事が一つあった。きっとボクは悪い事をしたのだろうなって、そう思った。
「……ご……め、ん……ね」
 ……みんなに謝りたかったけど、そこまで行ってボクの意識は途切れてしまった。
 
 ある日を境に。とある世界のとある見晴らしのいい場所に一つの最近建てられた様子の墓が立っていた。
 聞けばその昔に近くで神隠しに在った少女がおり、墓の名前にはその少女の名が掘られている。
 墓の前にはこの墓を作った者達が供えたであろういくつもの色とりどりの花が輝き、その上には黒いチョーカーが置いてある。

 これは救えなかった者の墓であり、帰ってきた者への墓である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月15日


挿絵イラスト