迷宮災厄戦⑭〜浅からざる夢のパジャマパーティ
「『おやすみなさいの国』で幸せな夢を見せるパジャマパーティ。筋が通ってますね、僕は好きです、こういうの」
緊張感の欠片も感じさせぬ様子で楚良・珠輝は呟いてから、集まった猟兵達に「あ、これ迷宮災厄戦なのでよろしくお願いします」と頭を下げた。浮かび上がったモニターの1つにアリスラビリンス『おやすみなさいの国』の情報と、今回の敵が浮かび上がる。
「『パジャマパーティをしながら戦わないと強烈な睡魔に襲われる戦場』と、『夢を見せる能力に特化した敵』の組み合わせ……つまり服装はパジャマに限定されます。あ、各サイズ適当なものをこちらでも用意していますし、自前で持ち込みもOKです。そこについてはご安心を」
戦場はもっこもこのクッションが敷き詰められた広い一室。
まさに今からパジャマパーティしようねって感じの光景に、オウガ達の用意したごちそうが並んでいる。――ユーベルコードの込められたものは幻覚作用つきだが。
「まぁ、オウガの見せてくる夢に抗うも、逆に利用してみせるも、戦い方はお任せします。ほら、自分語りとかすっごくパジャマパーティじゃないですか。僕好きですよそういうの。いえパジャマパーティとか参加したことないんで前読んだ小説からのイメージですけど」
そう言ってアルダワ学園の寄宿舎もの小説の文庫を示してみせた。寄宿舎ものだと多いよね。パジャマパーティ。
「というわけで一旦解散するので各自パジャマ持ってもう一度集合してください、そしたらアリスラビリンス『おやすみなさいの国』に転移しますので。こちらの支給パジャマ利用者はサイズを教えてくださいね、取ってくるんで」
そう言いつつ珠輝は安楽椅子の側面からプチドローンとコントローラーを引っ張り出している。
どう考えても自分の足で取りに行く気がなかった。
「……大丈夫、転移はちゃんとやります」
誰にともなく言い訳じみた様子で呟くと、珠輝は「ではよろしくお願いします」とドローンを手に持ったまま頭を下げたのだった。
炉端侠庵
こんにちは、炉端侠庵です。
パジャマでパーリーナイト。無論、敵もばっちり勝負パジャマに身を包んでいます。
なおパジャマをアイテムとして装備する必要はありません。着用のしかたも羽織るなり防具の下に着込むなりご自由にどうぞ。
プレイングでパジャマを『着ません』と書いている限りはパジャマ着用のものとして扱います。ただし形状などを説明してくれた場合はリプレイに反映される可能性が高いです。
寝間着だろうとネグリジェだろうとパンツだろうと「これが俺のパジャマだ!!」と言い張ればだいたいパジャマです。
プレイングボーナスは『パジャマパーティーをしながら戦う』です。
あ、気合の入ったパジャマでの参加はパジャマパーティへのやる気が高いと判定します。つまりはプレイングボーナス対象です。
パーティでのドレスは戦装束って誰かが言ってたので、パジャマパーティでのパジャマは戦装束です!
パジャマの話しかしてないですが、戦闘については『こっちからパーティっぽくやる』でも『相手のパーティっぽさにノる』でもお好きな感じでいいと思います。
クッションを敷き詰めているとありますが、基本的に足場に悪影響はありません。
というわけで、よろしくお願いします!
第1章 集団戦
『こどくの国のアリス』
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POW : 【あなたの夢を教えて】
無敵の【対象が望む夢】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : 【わたしが叶えてあげる】
【強力な幻覚作用のあるごちそう】を給仕している間、戦場にいる強力な幻覚作用のあるごちそうを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : 【ねえ、どうして抗うの?】
自身が【不快や憤り】を感じると、レベル×1体の【バロックレギオン】が召喚される。バロックレギオンは不快や憤りを与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:すろ
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鈴木・志乃
せっかくなのでネグリジェを着て行きます。……え? これパジャマでしょ? 一回着て見たかったんですよね。男っぽい見た目してるから、普段どうしても手が出せないけど。
隠しきれない笑みとどこか落ち着かない動き。だって楽しみなんだから仕方ない。みんなしてわーきゃー言ってはっちゃけたい!
孤独の国のアリスさん
そんな怖い顔しないで、せっかくだから楽しもうよ。今日は好きなことばーっかりするの。(毒を仕込んだ)お菓子つまんで(高速詠唱で衝撃波発生させる)枕投げして、そうだ、恋ばなとか聞きたいな!
あー見て見てこれ、これは私の恋人からもらった手紙なんだけどね……?
惚気ながらUC発動。恋愛……いいよね!!()
波山・ヒクイ
要は寝間着姿で戦えばいいっつー事じゃな?
ふっふー…見よ、わっちの雅な浴衣姿!
おうちにカメラが入った時のために用意しておいた甲斐があったのう。これはもう再生数激増間違いなしだなー!
…ん?なんか転送されてきた…あっそうか。キマイラ武装に攻撃用の枕注文してたんだった
ほらパジャマパーティーつーたら枕投げが定番じゃからー
…
…や…野郎…あんだけいらねぇって言うたのにクソダサキャラ柄浴衣も一緒に送ってきおった…!
きょうびこんなの子ども用でもねーじゃん…強いから着るけど…
よせ、そんな目でわっちを見るな。困惑とか哀れみの感情を向けるな!
ちくしょうくらえマグナムまくら!ボンバーまくら!!アトミックまくら!!!
ハルア・ガーラント
【焼鳥】2名
今年の水着と同じ柄の開襟パジャマで参加
【POW】
相馬の作務衣姿につい目が行きますが、まずは敵に集中
わたしの望む夢はあなた達とパジャマパーティすること!
速攻お酒を飲み始める相馬に少し恨み言を
そんなぁ、自分語りなら参加できたでしょう?
気を取り直してUC発動、巨大アヒルへ変身します
ふふ、女の子が好きそうな姿でしょう?
パジャマは襟部分だけになり残念ですがパジャマパーティ開始です!
アリスさん達の恋バナや生い立ちについて聞き役に徹しましょう
いえ、あの、わたしは話せません
だって対象が……
相馬の動きを感じ取ったら飛んで逃げます
この姿、防御力と再生能力には自信ありますけど痛いものは痛いですからね!?
鬼桐・相馬
【焼鳥】
上質な紺色作務衣で参加、パジャマ代わりになるし着心地も良い
【POW】
クッションの上に遠慮なく胡坐をかき、アリス達を手招き
UC発動、成功率を挙げるのは次の俺の言葉に対し敵集団が了承する確率
俺の今の夢は、寝酒を存分に楽しむ事なんだ
酔い潰して後の戦闘で優位に立つって意味でも有効だろ、上質なのを沢山創造してくれ
自分語りや恋愛話はハルアに任せよう
適当に相槌を打ちつつ酒に集中
しかしまあ、どれだけ他人の恋愛事情や背景に一喜一憂するんだか
敵集団+ハルアがいつまでも盛り上がるなら[冥府の槍]を手にひとこと
いつまでやっている、もう消灯時間だ
冥府の炎をのせ横薙ぎ、[恐怖を与えつつ範囲攻撃による焼却]を
村崎・ゆかり
こっちでもパジャマパーティーか。いいでしょ。やってやろうじゃない。
パジャマは支給品をお願いね。
パーティーというからには、紅茶とお茶請けは必須よね。
あたしは魔法瓶にたっぷりのお茶と、パンケーキを用意してきたわ。
さ、皆さんどうぞ。
オウガがパンケーキを口に運ぼうとしたら、「高速詠唱」で不動明王火界咒を起動。パンケーキはパンケーキでも、不動明王の種字を焼き印してあるのよ。
つまりは、これも呪符の一種。どんどん投げつけて、火界咒の炎でオウガを焼き尽くしましょう。
あたしの望む夢? それならもう叶ってるから、あなたたちに用は無いわ。
ん、パンケーキが余った?
残ったお菓子は、猟兵の皆で美味しくいただきました。
「え? ネグリジェってパジャマでしょ?」
鈴木・志乃は「当然そうだよね?」みたいな顔で首を傾げた。フリルに彩られたネグリジェの裾がふわりと揺れる。黒を基調とした柔らかな生地のネグリジェは、うるさくならない程度に白いレースがあしらわれていて大人びた雰囲気の中にも大変愛らしい。
「一回着てみたかったんですよね。男っぽい見た目してるから、普段どうしても手が出せないけど」
「いいえすっごく似合ってます!」
あ! パジャマ姿のハルア・ガーラントが飛び出してきた!
ちなみに今年の水着と同じ、白地に濃淡の黄色い花を葉っぱと共に散らして襟や裾に黄緑色の縁取りをした開襟パジャマである。つい先程までシンプルながらも上質な麻を使った紺色の作務衣でどっかりあぐらをかく鬼桐・相馬に視線をほぼ奪われていたが、今は志乃の前で思いっきり両手ガッツポーズだ。
「志乃さんは普段マニッシュだけど美人さんですから、こういう大人っぽいネグリジェはむしろ色っぽくてすごく素敵ですよ!」
「わかるわ、身長もあるから手足の長さも魅せられるし、中性的な魅力が女性らしさにぐっと寄る時ってすごく印象的なのよね」
「うむうむ、わっちほどせくすぃーではないが、健康的なお色気というやつじゃの」
さらに支給品の『無難で動きやすく寝心地もいい水色と白のチェックパジャマ』姿で村崎・ゆかりが、さらに浴衣姿で波山・ヒクイがネグリジェの志乃を囲む会に参戦。
「も、もういいもういい! これ以上褒められたらなんか、爆ぜるっ……」
女子3人から褒められ倒した志乃はあっという間に撃沈、真っ赤になった顔をクッションに埋めてジタバタする羽目になった。
なおそんな女の子達のテンションを横目に相馬は。
「俺の今の夢は、寝酒を存分に楽しむことなんだ。上等なのを沢山創造してくれよ」
「そんなぁ、自分語りなら参加できたでしょう?」
ハルアが恨みがましげに振り向くのも気にせずオウガに酒を注文していた。
夢っていえば何でも許されると思ってるだろ。
「酔い潰して後の戦闘で優位に立つって意味でも有効だろ?」
そう付け加えれば相馬の周囲にどんっと現れる各種の酒。
夢っていえば何でも許されていいらしい。
ちなみに相馬はザルである。ちょっと尋常じゃないレベルの。
「ではふっふー……見よ、わっちの雅な浴衣姿!」
くるんとヒクイが裾を翻して回ってみせる。頭上には角、背には翼、そして膝より下は鉤爪、キマイラらしく動物のパーツを組み合わせた身体をさらに見せつけるように着崩した浴衣は流水に鯉や金魚を大胆に配し、ヒクイの豊満なスタイルを引き立てている。
「おうちにカメラが入った時のために用意しておいた甲斐があったのう。これはもう再生数激増間違いなしだなー!」
というわけで下から上にくいっと魅力倍増な感じで上がっていくカメラ(自撮り)。皆さんもヒクイちゃんのチャンネル登録よろしくね! 沢山の『いいね!』お待ちしております!
「……ん? なんか転送されてきた……あっそうか。キマイラ武装に攻撃用の枕注文してたんだった」
攻撃用の。
枕。
「ほらパジャマパーティーつーたら枕投げが定番じゃからー」
そう言いつつカメラを固定し、がさごそと封を切って戦闘用枕を取り出すヒクイ。カメラに向かって説明を繰り広げようとしたところで、その手が止まった。
「や……野郎……あんだけいらねぇって言うたのに……」
ぷるぷる震えるヒクイの視線の先、箱の底にあるものは一体!
続きはCM(収益化用)のあとで!!
「さー孤独の国のアリスさん、そんな怖い顔しないで、せっかくだから楽しもうよ。今日は好きなことばーっかりするの」
復活した志乃がどんっと座ってぱしぱし隣のクッションを叩く。
(毒を仕込んだ)お菓子つまんで!衝撃波を巻き起こす)枕投げして!
「パーティというからには、紅茶とお茶請けは必須よね」
魔法瓶にたっぷりの紅茶と、同じくたっぷり焼いたパンケーキを乗せた大皿を差し入れるゆかり。
「さ、皆さんどうぞ」
「わ、いただきます!」
もっこもこの巨大アヒルに変身したハルアが翼をぱたぱたさせて興味を示す。首の付け根にパジャマの襟が付け襟風になって名残を残している。
ユーベルコード『アーンヴァルの灯』、本来は防御・再生能力に特化した姿だ。今はだいぶふわもこに割り振って(?)いるけれど。
「あ、わたしもいただきます」
ハルアがくちばしでそっとつまみ上げてぱくり、ほわっとつぶらな瞳を細めて美味しいとぱたぱたする横で、志乃も片手でパンケーキを堪能している。
それに誘われたようにこどくのアリス達が手を伸ばしたところで。
「ノウマク サラバタタギャテイビャク――」
高速で唱えられる真言、するとなんということでしょう!
オウガ達が食べようとしたパンケーキだけが凄まじい勢いで燃え上がったのです!
「ふふ、パンケーキはパンケーキでも、不動明王の種字を焼き印してあるのよ」
「あっこれ模様じゃなかったんですね」
感心したようにパンケーキを眺めるハルア。
「ええ、つまりはこれも呪符の一種ってこと」
本来ゆかりは既に呪力を込めてある白紙のトランプを符として使う。それは場合に応じて様々な術に対応できるように力を込めてあるが、このパンケーキはもっと単純だ。種字――密教において一音節、梵字一つのみで特定の仏を象徴するものであり、種子真言とも呼ばれる『力持つ文字』である。不動明王の種字を焼き印したパンケーキは咒の詠唱と組み合わせることで、その力を借りる術たる『不動明王火界咒』専用の符としては充分に機能するのだ。
もちろんオブリビオン以外には、というかゆかりが咒を向けた対象以外には普通のパンケーキとしてもお楽しみいただけます。
「ちなみにあたしの望む夢なら、もう叶ってるからあなたたちに用はないわ」
にっこり満たされた者の余裕を宿し、ゆかりは幸せそうな笑みを浮かべた。
「そうだ、恋ばなとか聞きたいな!」
「いいですねぇぜひぜひ!」
紅茶のカップを傾けパンケーキを食べながらの志乃の提案に、同じくパンケーキをくちばしで引き寄せて上を向きぱくぱくっと食べたハルアが何度も頷く。
「ぜひアリスさん達も!」
そう言われてしまえばオウガとなってしまったこどくの国のアリス達も参加するしかない。
だって!
パジャマパーティだもの!
ちなみに相馬はもふもふアヒルハルアの隣で、適度に相槌を打ちつつ盃を傾けていた。
むしろ彼にとっては酒の方がメインである。
(しかしまあ、どれだけ他人の恋愛事情や背景に一喜一憂するんだか)
アリス達の話にゆかりがアヤメの惚気話を挟んだり(ついでにパンケーキを不動明王火界咒にして飛ばしたり)するそのたびにアヒル姿でもわかるほどに表情をころころ変えて相槌やコメントを入れるハルアに、ちらりと相馬が目をやってまたくいっと盃を傾けた。
「あー見て見てこれ、これは私の恋人からもらった手紙なんだけどね……?」
照れる――というよりは真っ赤にした顔を手紙から逸らしつつの状態で、志乃がそっと自分宛のラブレターを差し出す。
ぱたぱたぱたぱた、軽やかな羽音を立てて現れるのは想いを伝える無数の光の鳩。伝える想いは溢れんばかりの恋愛感情。全身心臓になるんじゃないかってレベルの『I'm crazy for you!!』なラブレターごと大公開。
「あああああ!!」
「むり……とうとい……」
「これが恋……」
「もうだめ……愛よ……」
一気に悶え、ときめき、倒れ伏すオウガアリス達。
「ほわあああ凄いです……こんな、こんなに愛情籠もったラブレター……」
羽根の先で顔を隠すようにぷるぷるするハルア。ユーベルコードの効果かはともかく、ラブレターの効果には完全に巻き込まれていた。
「ハルアさんはなにかないの?」
「えっいえあの、わたしは……だって対象が……」
水を向けるゆかりに、もだもだときめきモードからさっと回復した顔がちらりと相馬へとそのつぶらな緑の目を向ける。
相馬があまりにも平気な顔でまた手酌で酒を飲んでいるので、照れとかいろんな感情でちょっとむっとしたハルアはぷくっと頬を膨らませつつ、酒を注ぐのは邪魔しないように背中側を軽く白い翼でぺしぺししておいたのだった。
さてここで着替えシーンを終えたヒクイさんの登場である。
「絶対いらねぇって言うたのにクソダサキャラ柄浴衣も一緒に送ってきおった……!」
先程までの雅な夏浴衣とは一転。
きらきらって感じにお星様といろんなポーズのキャラクターが散りばめられたちりめん風の浴衣に、おっきなリボン風の作り帯。
「きょうびこんなの子ども用でもねーじゃん……強いから着るけど……」
ちなみに体格は大人なヒクイが着ると目立つ。結構目立つ。
「よせ、そんな目でわっちを見るな。困惑とか哀れみの感情を向けるな!」
「えっ可愛いと思いますよ!」
完全に善意で翼ぱたぱたしつつハルアが言った瞬間、誰かが噴いた。多分アース系世界とかキマイラフィーチャーの知識がある誰かだ。猟兵かオウガかはともかく。
そもそもここで犯人を追求してもヒクイに認識できてないからもう遅い。
「ちくしょうくらえマグナムまくら!」
ぼごん、とやたら硬質な音を立ててオウガの1人の顔面にぶつかる攻撃用枕。
「あっよし枕投げか! よーし本気出しちゃうぞ!」
ノリノリで立ち上がった志乃が両手に持った枕に高速詠唱で衝撃波を添えてぶん投げる。
「おっと、投げるんだったらあたしも参戦しなきゃね」
枕ならぬパンケーキの皿を抱えてゆかりがにっこり微笑んだ。手首のスナップが効いたパンケーキが空を切りぶつかったかと思えば燃え上がる。
「ボンバーまくら! アトミックまくら!!!」
ちなみに攻撃用枕はなんとリターニング機能つき、いくらでも投げられます。
キャラキャラキラキラ浴衣もいくら動いても肌蹴すぎず、それでいて動きやすい構造で生配信にも安心!
お星様に散りばめられたラメとかちょっとやりすぎ感が強いけど!
というわけでヒクイの本気の枕連射が飛び交っていた。何か大事なものが削れていく気がするが、気にしていたら動画配信者なんてやってられないのだ。
大事なのは負けないことと再生数だから!
そんな枕投げが佳境を迎えたところで。
――ゆらり、相馬が冥府の槍を手にたち上がった。その据わった視線にはっとハルアが猟兵達の周囲に退魔・耐火のオーラを分け与える。
そして。
「いつまでやっている、もう消灯時間だ」
額の角、槍の上で燃え上がる炎、冷徹な表情――その全てはまさに。
修学旅行で夜中まで騒ぎすぎた部屋に突如現れた引率の教師と同じオーラを相馬へと与えていた。多分体育教師で生徒指導の担当もしてる。
そんな相馬が黙って冥府の槍を炎燃やして構えたので、ハルアは一気に翼を羽ばたかせて垂直に飛び立った。無論猟兵達の周囲の魔力防壁は維持である。
「この姿、防御力と再生能力には自信ありますけど痛いものは痛いですからね!?」
そうハルアがツッコミを入れたのと同時に、枕とパンケーキの嵐の中でも残っていたオウガ達を相馬の槍が払い焼き尽くしたのであった。
「恋愛、恋バナ……いいよね!!」
すごく清々しい顔で志乃が額の汗を拭う。いい運動だった。アヒルから戻ったハルアもうんうん頷く。
「ん、パンケーキが余ったわね?」
符として使うということでかなり余裕を見て作ったので、ゆかりが持ったままの大皿にはまだ種字つきパンケーキが結構乗っている。
だが心配はない。
ここには戦闘を終えてまたおなか空いたなぁって感じの元気な猟兵達がいるのだ!
残ったお菓子は、猟兵の皆で美味しくいただきましたとさ。
これにてパジャマパーティはおしまい、めでたしめでたし!
大成功
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