迷宮災厄戦⑪〜中に世界はあるかないか~
●ただ映すだけ
「鏡なんてものはね、ただ光を反射しているだけなのだよ」
グリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは、手鏡に自らの顔を映しながら、中に世界などないと否定したとある少年の言を思い出した。
「だから何を思うかは本人次第、良いことも悪いことも、ね……」
飽く迄、鏡に向かい合って何かを思うに至ってもそれは自分が結論を出したこと――どこか物憂げに微笑むと、改めて彼女は猟兵達に向けて語り出した。
「さぁ語ろうか! 舞台はアリスラビリンスは鏡の国、真実を映す世界の大迷宮だ! 君達には鏡に真実を問いながら、待ち受ける鬼を倒して貰いたい!」
真実を告げる鏡の間――嘗てオウガ・オリジンに忠実に仕えながらも、戯れに殺されてしまった臣である【鏡の女王】がいた。
殺されて尚、その怨念は国に満たされ、あちらこちらに【真実の鏡】と呼ばれる文字通りの鏡が生えている。
その鏡は鏡の国の中限定ではあるが、質問に余すところなく全ての真実を答えてくれるのだといい、それは待ち受けるオウガは利用してくる。
「敵は君達が何処にいるのか、とか、何を得意としてくるかとか……そういったものを聞き出し、有効活用してくるだろう」
つまり敵に対して潜んだり、何かを隠したりして騙し討ちを行うなど、そうした類の行動はやり方にも依るだろうが、聞き出されて対策を取られてしまうだろう。
「だが鏡は誰でも使える。それはつまり、君達にも鏡は何でも答えてくれるんだ」
逆に敵の居場所を突き止めたり、敵の弱点などを聞き出したり――上手く此方も利用できれば、条件としては互角になる。
後は個々の戦術や連携、そういった物の勝負に持ち込めるだろうし、それならば心配はいらないとスフィーエは笑いながら告げた。
「ああ、そうそう。なんでも答えてくれるとは言ったが、飽く迄、鏡の国の中だけの話だからね」
オウガ・オリジンや猟書家の情報など、気になることは多いだろうが、そうした類の質問は無駄に終わるだろう。
飽く迄、鏡の国に待ち受けるオウガとの戦いを有利に進める為に使うべきだと釘を刺しつつ。
「勿論、他人のスリーサイズや体重とか、そうしたものも聞かないように……飽く迄、このオウガを料理する為に使ってくれたまえ」
誰誰は誰其れをどう思っているかなど――そうした質問の類も、それに興じれば戦闘中に大きな隙が出来る。
双方同意の上で戦術に組み込むならばともかく、遊び半分で行わないようにとも釘を刺しながら。
「さて、私からは以上だ。君達がオウガに勝てるかどうかは……まあ、【聞くまでもない】だろうね」
手の中に羽根ペンのグリモアが輝けば、鏡の国へ通じる門を作り上げていくのだった。
裏山薬草
どうも、裏山薬草です。
中に世界なんてないと言いながら、その十年後ぐらいに世界を作っちゃった人もいましたよね。
あると思えばある、ないと思えばない、で良いんじゃないでしょうか。個人的に。
さて今回はですね真実を答えてくれる鏡の並ぶ国で、クラーケンなる魚のオウガを倒しに行って貰います。ボス戦です。
OPで示した通り、敵は猟兵の位置や技の特性を聞き、それを元に行動してきます。
なので、こちらも鏡に敵の位置や弱点を聞くなりすればボーナスとなります。
ですが他人の個人情報に関してなど、センシティブなものについては、採用できない可能性があります。ご注意を。
尚、鏡よ鏡よ鏡さんとは言わなくても大丈夫です。ノリで言いたければ構いませんが。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
裏山薬草でした。
第1章 ボス戦
『クラーケン』
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POW : 真夏の夜の夢
非戦闘行為に没頭している間、自身の【見ている夢 】が【現実に置き換わり】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD : 夢と現実の狭間を泳ぐもの
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【亜空間から飛び出しての奇襲 】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ : 夢幻泡影
自身からレベルm半径内の無機物を【現実を溶かし、幻にする無数のシャボン玉 】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:tori
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠渡月・遊姫」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
水心子・静柄
亜空間から攻撃してくるなんて厄介ね、これだと鏡の前から離れられないわ。
とりあえず近くにある真実の鏡に「敵との距離と夢と現実の狭間を泳ぐもの有効範囲」を聞くわ。あと敵が来るまで敵との距離を鏡に確認し続けるわ。それで敵との距離が有効範囲に入りそうになったら鏡に「敵の視界を見せて」と言ってみる。映せないなら「敵のいる位置」を聞くわ。あとは鏡からの位置情報を元に錬成カミヤドリで複製した脇差を操作して、敵が存在してる辺りの空間を脇差で埋め尽くすわ。亜空間から出てきたら瞬時にボコって、亜空間に逃げたら鏡に聞きながら脇差を操作してを繰り返して戦うわ。
●それは雲丹のように
「――鏡よ教えよ。我から逃げる迷い子の位置を」
悍ましく低く響くような声を挙げ、クラーケンの名を持つ魚のオウガは悠然と鏡の国を泳ぎ猟兵を探し求めていく。
「厄介ね。これだと、鏡の前から離れられないわ。離れたくても離れようがないけど」
距離と距離の隔てを無視し、亜空間からの不意打ちを躱しつつ距離を取った女が息を吐きながら吐き捨てた。
水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)が愚痴を口に出しながら見渡せば、あちらこちらに立てられた鏡。離れる方が難しいだろうが――
「ねえ鏡さん、あの空間を超えて奇襲してくる攻撃だけれど、どの距離まで有効なのかしら? 大体で良いわ」
――170メートル程度。200まではいかない。
鏡が鏡面に映した文字で答える有効射程は、限られた戦場に於いてほぼ全域といったところか。
それでも今は奇襲の気配が見られない辺り、クラーケン自身が気付いていないか有効射程に入っていないかのどちらかか。
「成程ね。それで、今はどれぐらい離れてる?」
――約210メートル。
成程、ギリギリのところで射程から逃れている、といったところか。
「じゃあもう一つ。クラーケンの視界って、映すことは出来る?」
――鏡は映し出す。烏賊の魔の名を冠する怪魚が、黄金に輝くその瞳で空を泳ぎながら獲物を求めているその光景を。
――そしらぬ振りを確かめなかったのが不幸ね。
距離の隔たりを夢と化し、現世に繋ぐ邪法を以て静柄とクラーケンの距離が詰められたその刹那――
「グガァァアッ!?」
クラーケンの身体に無数に突き立てられる脇差――それはヤドリガミである静柄の嘗ての姿、その複製。
空間を埋め尽くすように敷き詰められたそれは、クラーケンとて回避し切れることなく、怪魚の身体が哀れなハリセンボンと化す。
それでも空間を隔て逃げようとするが――
「逃がさないわよ……何処に行ったか、分かる?」
鏡はどこまでも正直に答える。
決して逃がさない――例え亜空間を潜り、距離の概念を夢と化したとしても。
クラーケンに突き刺さる数多の脇差は、夢ではなくそれを上回る現実の痛みなのだから。
成功
🔵🔵🔴
水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
亜空間…なんとか干渉したいですね
「クラーケンが使う亜空間移動の方法、前兆ならびに対処方法について教えてください」
オウガ側の原理そのものはわからなくても、この国に開いている出入口がどうなっているかは答えられるでしょう
UDCの液体金属を操り、聞いた内容を元に属性を付加した武装を構築
情報収集で前兆を捉え、投網を投げ込みます
捕らえたら雷属性で電気を流してマヒ攻撃
亜空間に逃げ込まれたら、理論を応用して亜空間用のソナーを構築
居場所を探知し、亜空間攻撃出来る銛を投げて攻撃します
「地上で漁師をやることになるとは思いませんでした」
「これが亜空間理論…後々ゆっくり研究してみましょう」
●捉えて逃がさぬ杭を
距離を離し気を張っていても、少し気取られぬ位置を取られれば現世の距離を夢幻と為し、現実を超えて牙を向けてくる。
「亜空間……なんとか干渉したいですね」
それを回避しつつも水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)――正確には内に眠る人格の一人であるロキは、かの敵が扱う空間の隔たりを超えた邪法に興味を示していた。
故に彼が鏡に問うのは、ただ一つ―
「クラーケンが使う亜空間移動の方法、前兆ならびに対処方法について教えてください」
――かの者は夢を操る。現世の距離を夢と化し、時の隔たりを歪める。出でる時は必ず何処かが歪む。何故ならば夢と為せるはかの者の意志のみ。意志の干渉あらばその力は歪む。
「それでは、構築しましょう――歪み捉えるものを」
――気付かれない相手にのみやる以上、発動は防げない。
であれば――来たらそのまま捉えてしまえばいい。来る寸前には必ずどこかに空間が歪む。であれば、その歪みを察知し飛ぶ――名状し難き怪物である液体金属を操り紡ぐ、その網を。
――そして、亜空間に逃げ込んでいたクラーケンが、ロキに改めてその牙を向けんとしたその刹那。
空間の歪みを塞ぎ抑えるように飛んだ網が、その怪魚の巨体を絡め無様に悶えさせ押さえつけながら。
流し込まれた雷の熱と衝撃が怪魚の身に白き煙を噴き上げさせていく――堪らずに怪魚は亜空間へ再び逃げ込むも。
「地上で漁師をやることになるとは思いませんでした」
夢と現の隔たりを歪めた理論を応用したソナー探査を行い、魚を銛で刺し追い詰めることを言うのであれば、紛れもなく漁師のそれか。
同じくして亜空間をも貫く銛を以て、逃げ込んだ先の怪魚の身体を刺し貫き血飛沫を鏡の世界に咲かせた。
「これが亜空間理論……後々ゆっくり研究してみましょう」
空間を歪め、逃げ出す怪魚の姿に笑みを停めず、一度歪めた亜空間移動の法をソナーの響きが彼にそれを知らせるのはまた繰り返されること。
クラーケンの血が滴る銛をその手に、見果てぬ知識欲を求めるように漁師は歩を進めていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
ネーヴェ・ノアイユ
こちらの戦術などはクラーケン様に筒抜け……。で、あるならば……。こちらも真実の鏡様のお力を使わせていただきましょうか。
鏡よ鏡よ鏡様……。今クラーケン様はどちらにいらっしゃいますか?
ふむ……。では、もう一つ質問を。クラーケン様の弱点……。及び動きを鈍らせることが可能な部位はどこでしょうか?
得た情報を元にクラーケン様の元へ。既に戦闘中の猟兵の方がいらっしゃれば氷壁の盾受けにてかばうを行いつつ……。情報を活かしてUCにてクラーケン様の動きを鈍らせることも狙います。
各自の術が筒抜けであるなら……。協力し、連携することで情報はあれど対応しきれない状況を作っていきたい……。ですね。
シーザー・ゴールドマン
大人は嘘つきではないのです。間違いをするだけなのです。
ハハハ、失礼。何となく言わなければいけない気がしてね。
さて、質問だが。
①「真夏の夜の夢」の発動のタイミング
②クラーケンが絶対に無視できない言葉あるいは存在
①の回答から敵POWUCが発動したタイミングを見切り、②の回答で判明した言葉を投げかける、あるいは存在を『創造の魔力』で作り出すことで没頭を阻害する。
おはよう。短い間だったが、良い夢は見れたかね?
続きは骸の海で見たまえ
滅雷の波動をクラーケンに放ちます。
(衝撃波×属性攻撃:雷×範囲攻撃×なぎ払い×破壊の魔力)
●青き氷と赤い雷、現の滅び
――どうせ何もかもを知られているならば、こちらも同じ手で全てを知るまで。
ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)は何処かアンニュイな雰囲気を漂わせながら、辺りの鏡に静かに問うた。
「鏡よ鏡よ鏡様……今クラーケン様はどちらにいらっしゃいますか?」
――あなたの正面を12時として、10時の方向。距離にして100メートルほど先に。
「ふむ……。では、もう一つ質問を。クラーケン様の弱点……及び動きを鈍らせることが可能な部位はどこでしょうか?」
――明確に前者の答えは無い。ただし、後者の意味でいうなれば、ヒレを傷つければ幾許かの動きを封じられる。
「ありがとうございます……」
それだけ聞ければ十分か。ネーヴェは鏡の映すどういたしましての文字をバックに、鏡立ち並ぶ迷宮を駆け出した。
やがてクラーケンを求め駆け寄ったその場所では、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)が既にクラーケンとの戦いを繰り広げていた。
彼はクラーケンが開けた大口を飄々と、余裕を持って躱しながら唐突に語り出す。
「大人は嘘をつかない。間違いをするだけなのだよ」
「は……?」
「いや、何故かそう言わなければならない気がしてね……ハハハ」
やってきたネーヴェに対し、彼は肩を竦めながらどこか尊大さを感じさせる雰囲気で唐突に語り出した。
この人は何を言っているのだろう――などと思っていたら、その顎門が今にもシーザーの前へと。
「!」
「おっと、すまないね」
ネーヴェが咄嗟に生み出した分厚い氷の壁がクラーケンの牙とシーザーの間に挟まり、彼を守護(まも)ると、そのまま彼女は無数の氷鋏を嗾け、クラーケンの身体を刻む。
四方八方からやってくる凍り付く刃に嫌気が差したか、クラーケンは低く唸るとゆっくりと目を伏せ始めた。
「――付き合いきれぬ。我は眠ろう……」
このまま全てを許せば現世と夢を隔て、自らの身を守りながら攻撃という現実を一方的に叩き込まれるだろう。
しかしシーザーは毛ほども焦る様子を見せず、それを嘲るように鼻を鳴らしてみせた。
「可哀想に。どんなに夢を現実にしたところで、君自身は現実になりえない。いや、正に夢幻泡影というところかね。本当に……空っぽな空想家だ」
――彼は既に鏡に問うていた。
夢に籠り全てを遮断する術法の発動する時期と、彼が最も嫌い心を乱される言葉を。前者は低く唸り目を伏せ始めた刹那。
肝心の後者――それは、夢を見ることを否定し貶める言葉。
泡沫であれど夢を泳ぎ現世を喰らう怪魚にとって、限りなく突かれたくない、空っぽという言葉。そして――
響き渡るは、鶏の鳴き声。
創造の御業を以て解き放つは、夢の終わりを告げる朝告げ鳥の鳴き声――生み出した白色の鳴き声が、怪魚の心を乱し夢と現の隔たりを解く。
そのまま怒りに任せ、触れる者全てを夢に溶かす泡沫を産み出そうと、そのヒレを揺らしてもクラーケンは不意に体勢を崩す。
「っ!?」
「あなたのヒレは、既に裂いています……再び降り注ぐ氷の鋏……避けきれますか?」
――それは、あの時。シーザーに向けた牙より氷の盾で守り、鋏により反撃を齎したその時だった。
その時既に、空を泳ぐ足掛かりとするヒレを傷つけられ、既に満足に空に舞うことは出来ず――生み出された泡沫すらも。
次々と嗾けられていく蒼白い鋏が、まさに夢と現を切り離すように、四方八方の全てより怪魚を取り囲みその身体を氷の中に閉ざす――!
「今です……!」
如何な情報を得ていようと凍り付いた今となっては、知識だけで対処は不能――後は、傍らで激しき雷を迸らせるこの男に託すのみ。
凍てついたクラーケンを前に、悠然と莫大な魔力の奔流を迸らせながら、シーザーが一歩を前に出ると、彼は両手を軽く広げながら語り出した。
「感謝するよ。さぁ良い夢は見れたかね? 続きは骸の海で見たまえ。丁度良い眠気醒ましも頂いたところだ……これが現実だよクラーケン君」
――怪魚の生み出す泡沫が自らの身を縛る氷を溶かし始めても、それよりも早く。
紅く迸る触れる者全て――夢も、うつつも、幻も何もかもを打ち壊す破壊の雷は、氷の生み出した超電導を以てより深く、浅き夢ならぬ深き夢に突き刺さるように。
目も眩むほどに赤く烈しい閃光を伴いながら、クラーケンの巨体を灼き焦がしていく――!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
これはまた大物みたいだね
ウィーリィくんならどう料理する?
って、さすがにオウガは食べられないか
こうやって軽口叩けるのも、キミがそばにいるからだよ
鏡への質問は一人一回だから、ボクは「敵の弱点」を質問するよ
そしてウィーリィくんと一緒に敵の出現を警戒
集中するのは隣のウィーリィくんの息遣い
彼が敵の出現に気づいて攻撃を仕掛け、敵の動きが止まった瞬間に鏡から聞いた敵の弱点を狙って【スナイパー】+【クイックドロウ】でピンポイント攻撃!
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
こっちの居場所や特技は向こうに筒抜けだ。
だから、逃げも隠れもせず正面から戦いを挑む。
攻撃のチャンスは「敵が攻撃を仕掛ける瞬間」。
鏡に「敵がどこから奇襲を仕掛けてくるか」を質問し、少しでも早く動ける様に上着を脱いでシャーリーと一緒に奇襲に備える。
奴が亜空間から姿を現した瞬間を【見切り】、シャーリーを【かばう】と同時に【シーブズ・ギャンビット】の早業で【カウンター】を繰り出し、僅かな差でも奴の攻撃に先んじて【捨て身の一撃】を叩き込む。
もちろん一撃で倒せる相手じゃない。
けど、俺の傍には最高のパートナーがいる。
一瞬でも奴より早く攻撃を当てて、一瞬でも動きを止めればそれで充分だ!
●それは鰻を捌くように
立ち並ぶ鏡の一つに悠然と鏡の世界を泳ぐ怪魚――既に猟兵達の激戦で幾許か傷ついているが――は、新たな獲物を探し求める姿が映る。
それを並び立ち見ながら、少女シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)は少年ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)を見遣り、揶揄うように言葉を投げかけた。
「これまた大物みたいだね。どう料理する? って、流石にこれは出来ないか」
「そうだな……でも仮に食えるなら、刺身……いや、煮つけにしても良いかもな」
流石にオウガを調理するのは憚れるようだったが、ウィーリィは至極大真面目にシャーリーの揶揄いに対して答えて見せる。
彼のその答えに一瞬目を見開くも、シャーリーは改めて言葉を続けた。
「でもクラーケンでイカやタコじゃないって、ちょっと珍しいかも?」
「意外と身はそれ系統の味だったりしてな」
「ふふっ」
「あはっ」
――こうやって軽口を叩けるのはキミがいるからだよ。
言外にそう含ませながらの笑いに、少年もまたそれに答えると、良い意味で緩んだ緊張を冷たく研ぎ澄ましながら言葉を発した。
「さて、向こうにはもう、俺達のことは殆ど知られてるんだったな」
「そうだね。居場所も何もかも知られてる」
技の性質を隠匿し騙し討ちを行えるような相手ではない。その上、こうして語らっていても奇襲を掛けてくるのは十中八九クラーケンの側だろう。
「というわけで、どこから奇襲してくるか教えてくれ」
――彼奴は汝等の意識が向かぬ場所より、距離を幻とし一瞬で詰めて向かってくる。故に背後からやってくる確率が一番高い。
空間転移からの攻撃自体は普通に行えても、攻撃の精度は気付いていない場所から行った方が高くなる――必然的に背後からの奇襲、それで頭部を一思いに喰らうか。
ウィーリィへの答えに頷きながら、シャーリーは新たに鏡へと質問をする。
「じゃあ、敵の弱点は?」
――視界を潰すならば目、攻撃力を削ぐならば牙、機動力を削ぐならばヒレ。
世界を泳ぐクラーケンのヒレは傷ついているように見えた、ならば目を狙ってみるか
「オッケー」
頷いたシャーリーがマスケット銃を取り出して構えれば、ウィーリィが頷き、脱いだ上着を床に落とす。
敢て背だけは晒したまま、二人のマスケット銃と大包丁を握る手に嫌な汗が滲み始めていく。
「……」
「……」
どこまで待てばよいのだろうか。
恐らく確実な奇襲の為に集中が切れる時間を待っているのだろうか。それでも、向こうが痺れを切らし気付かれて尚対応できぬようにと速攻を掛けるか。
猟兵達とクラーケンの間、前者に後者の姿も見えぬまま、されど警戒の怠らぬ姿は、果たしてどう転ぶか。
――その賭けは後者の方へ、見事に成功の様子を見せた。
「っ……!」
痺れを切らし、亜空間より出でたクラーケンがその牙をウィーリィの頭へと届かせようとしたその時。
それは正に寸前のタイミング――牙の尖りが彼の髪に触れたその瞬間だった。
シャーリーを庇うように押し退けながら、振り向き様に振るった大包丁の重厚にして鋭い刃が、クラーケンの腹部を斬り裂きその巨体を引かせていた。
上着を脱ぎ捨てていなければやられていたのは此方の方――僅かな冷や汗を風圧で拭い去るように、ウィーリィは吹き飛ばしたクラーケンの懐へとその身を踊らせて。
「ハァァァアッ!」
――後は、任せた。
叫びの外に含ませた願いを後ろに控える少女に託し、少年の捨て身の一撃が深く深く、クラーケンの身を斬り裂く――!
「うんっ!」
――本当に無茶ばっかりしてくれる。
でも、無駄にしない――クラーケンが再度、その牙をウィーリィに向けようとしたその時。
既にシャーリーのサイバーアイは照準をクラーケンの、その悍ましく輝く眼へと絞り――引かれた引鉄は。
瞬き一つの間に解き放たれた無数の高熱を伴った閃光は、通り過ぎた鏡の破片すらも蒸気と変えながら並んだその眼へと飛び。
「ぐぉぉぉぉお!!?」
並ぶ眼の大半を血の色と変えながら、クラーケンはまな板の上の魚の如く悶えながら去って往く。
後退していくクラーケンを見送りながら、着地しながら呼吸を整えているウィーリィに苦笑しながらシャーリーは声を掛けた。
「いつも思うけど、無茶し過ぎ」
「でもいつもフォローしてくれてる。……ありがとな」
――無茶ができるのも、無茶をフォローするのも全て何より信頼できる相手だから。
夢幻ではなく、無限の信頼で結ばれた二人の絆は、確かに現として強く在った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
四季乃・瑠璃
緋瑪「同条件なら負けないよ!ね、瑠璃」
瑠璃「上手く鏡を使わないとね」
【チェイン】分身
鏡に敵の手と位置、敵が仕掛けてくるまでの時間を質問して確認。
敵の亜空間からの奇襲を警戒し、周囲の床や天井、壁まで感知式ボムを設置して出現次第爆破。
更に互いの背後や足元を警戒し、出現次第、すぐに銃や大鎌で仕掛けられるよう準備するよ。
後はこちらの手の内はバレてるのを前提に、分断による各個撃破は死守しつつ、敵に手の内知られても対応できないような範囲重視のボムと必殺のノヴァによる広域殲滅、広域破壊で敵を殲滅するよ。
緋瑪「逃げ場も無くせば対応しようがないよね♪」
瑠璃「知ってるだけで勝てると思わない方が良いよ」
●知って尚強きは
「同条件なら負けないよ! ね、瑠璃」
「上手く鏡を使わないとね」
一つの身体に眠る二つの魂を、二つの肉体へと分け、四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)と今しがた分けられた魂の緋瑪は鏡並ぶ中に顔を合わせたつつ、緋瑪は勢いよく鏡に問いかけた。
「というわけで早速聞かせて! 敵は何を使ってくる?」
――現の距離を夢と為し、時を飛び越え一瞬にて汝等の下に迫る。汝等が意識を向けぬならば、確実にその首を喰らう。射程は170メートル。
「何処にいて、いつ仕掛けてくる?」
――汝の正面を12時の方向として5時の方向より、220メートル。汝等の意識向かぬところを探った時点で仕掛けてくるだろう。
瑠璃の問いに鏡が答えれば、瑠璃と緋瑪は得た情報を元に頷き合いながら、背中を合わす。
爆弾と大鎌をその手に、例えクラーケンがいつ襲い来ようと互いの背と足元に目を向けたその時――それは、不意に頭上から現れた。
それを殺人姫達は一斉に大型拳銃を解き放ち、鉛玉の噴火を以て制しながら、鎌に仕込まれた炸薬を爆ぜさせ、離脱と同時にその身を斬り裂く。
されどクラーケンは不敵に笑う。
「個々では我に劣るものよ」
「それは」
「やらせないよ!」
クラーケンの言う通り、一対一の状況を強制的に持ち込まれてしまえば、地力でそのまま押し切られてしまうだろう。
共に戦う存在がいるという、圧倒的な優位を越した覇権を潰させる筈もなく、どちらか片方を無理矢理押し切ろうとすれば、もう片方は持てる力の全てを振り絞った爆弾を作り上げ、それを容赦なく背から叩き付ける。
なればともう片方に向いても同じ事、なればとクラーケンが鏡に問いかけようとも、彼女達の放つ爆音はその声を掻き消して制する。
「逃げ場も無くせば対応しようがないよね♪」
「知ってるだけで勝てると思わない方が良いよ」
例え亜空間に逃げられようと、その先を――半径170メートル、その全てを巻き込む勢いの殲滅の光が迸り。
「「それが私達二人で一人の殺人姫、私達の絆の力は絶対負けない!」」
――そこには、何も存在しなかったかのように。全ては現に無かったかのように。
クラーケンの影も形も残らず消えた光景が、鏡の世界に静寂を齎すのであった。
大成功
🔵🔵🔵