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迷宮災厄戦⑩〜走る走る猟兵たち

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●ながれる汗もそのままに
 朽ち果てた城。もはや誰も住む者もいなくなった廃墟。
 そこはかつてオウガ・オリジンに仕えし者、ハートの女王が君臨していた城であった。
 気まぐれか、それとも粛正か。
 ハートの女王は仕えし主によって討たれてしまう。
 絶望。
 しかし彼女の執念は、地にしがみつき怨念となってこの地に留まることとなった。
 城に固執し、しがみつく女王は、場内に侵入者がいないかと徘徊し、憎悪と嘆きを呻きながら延々と彷徨っていた。
 何十とわかれた己そのもの、自らを象った石像にその妄執を刻み込みながら。
「この地は、この城は私のもの……渡さん、渡さんぞ……」

●グリモアベースにて
「皆様、迷宮災厄戦におきましてはご活躍のことと思われます」
 ここはグリモアベース。
 ライラ・カフラマーンは居並ぶ猟兵たちに深々と頭を下げていた。
 後ろには廃墟の城の光景が、幻となってあらわれていた。
「オウガ・オリジンに相まみえるには、この地を攻略する必要があります。ハートの女王が棲むこの地は、彼女以外に棲息している者はいません」
 では、すぐ進軍出来るかと言えばそうでもない。
「彼女事態はそれほど強いオビリビオンではありません。ですが彼女の怨念は、恐るべき能力を発動させました」
 ハートの女王の能力。
 それは触れた者を場外へと弾き飛ばす能力。
 そして場内にいる限り生き続け、増殖する能力。
 ようするに、城に侵入してきた部外者を城からテレポートさせる厄介な輩が、この城にいっぱいいるのである。
「ですので倒す行動は愚策、延々とこの地で戦わされる結果となってしまうでしょう。なので、それならばいっそのこと、通り過ぎてしまいましょう」
 ライラはハートの女王を相手せずに通り抜けて先を目指すことを提案する。
 調べた所、地下に下水道があるらしい。
 そこを抜ければオウガ・オリジンの地が待つ先へと進めることが出来そうらしいのだ。
「地下にも何体か石像がいますが、城をただ突っ切るよりは可能性が有るでしょう。皆様におきましては地下迷宮を攻略し、この戦争を優位に進めていただくようお願いします」
 そう言ってライラは、猟兵達に深々と頭を下げたのであった。


妄想筆
 みなさん、お疲れさまです。妄想筆です。
 このシナリオは戦争シナリオであり、一章構成となっています。

 猟兵たちが進むのは城の下に建造された地下水道、それの突破となっています。
 改築と改修が何代にもわたって行われた結果、下水道は広大な地下迷宮となっています。
 延々と続く煉瓦の通路、水没した行き止まり、何処へ通じているか分からない上下梯子。
 その複雑怪奇さと追いかける石像とのチェイスは、一種のテーマパークのような錯覚を覚えるかもしれません。
 石像は複数いまして、その身体に触れると生物は城外エリアへとテレポートしてしまいます。
 彼女達の追跡を振り払いつつ、迷宮を攻略してください。

 なお【地形を利用して女王の石像と追いかけっこする】とプレイングボーナスがつきます。
 オープニングを読んで興味が出た方、参加してくださると嬉しいです。
 よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『女王の石像から逃げろ』

POW   :    女王の石像の集団に追いかけられながら、迷宮内をマラソンしつつ迷宮を探索する

SPD   :    女王の石像に見つかる度に、全速力で振り切って安全を確保しつつ迷宮を探索する

WIZ   :    女王の石像に見つからないように隠れ潜みながら迷宮を探索する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 湿気と埃、足下の通路に併走する水路。
 ハートの女王が鎮座する城の下にある地下水道。
 それは幾重にも広がり、曲がりくねって巨大な迷宮の様子を呈していた。
 ちらほらと巡回する女王の石像が見える。
 あれに触れると瞬く間に飛ばされてしまうそうだ。
 迷宮と石像。
 この二つを攻略しなければ先へとは進めないらしい。
 さて、どう進むか。
 猟兵達はラビリンスへと足を踏み入れたのであった。
ノエル・フィッシャー
【WIZ】
今度は鬼ごっこをご所望か。いいだろう。
王子様たるこのボク――の影法師が受けて立とう!

UC【光と影の王子様】を使用。下水道の暗がりにボクの中の溢れ出る光を放ち、←のアイコンのようなもにゅっとしたボクの影法師を410体作り出し、囮として下水道全体に放つよ。
石像が影法師を相手にしている隙に、ボク自身は下水道の水に身を潜めながら迷宮の脱出を目指すよ。まさか王子様がドブの中に潜んでるだなんて誰も思わないだろうからね。

アドリブ・共闘歓迎だよ。


エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

朽ちてもなお怨念を残すとは凄まじい執念じゃな。
確かにこの手の輩は出来るだけ無視して通過するのがよかろう。
ここはライラ殿の助言通り地下水路へ向かい、石像に出来るだけ見つからないようネズミに姿を変えて物影や石像が入ってこれない狭所に潜みながら進むとするか。

さて、いかに迷宮とは言え出口にはつながっておる以上、経路に水や空気はある筈じゃ。
【精霊術士】の能力を活かして水や風の精霊達の声に【聞き耳】を傾けて、精霊達の声に従い出口へ向かうとするかの。
石像に追われそうな場合は、【ビーストマスター】の力でネズミ達を呼び寄せて石像を引き付けて貰ってから通過するのじゃ。
さてさて出口はまだかいのう?



 じめじめと、湿気深い地下水道。
 前に足を踏み入れたのはいつなのか、それも分からないほどに周囲は苔むし、黒ずんでいた。
 そんな中においても、ノエル・フィッシャーの声は底抜けに明るい。
「女王様との鬼ごっこ。王子としては悪くないね」
 さあ来いと言わんばかりに堂々としている『彼』を、エウトティア・ナトゥアが咎めた。
「相手は何人おるかもわからんぞ? ここは出来るだけ無視して通過するのがよかろう」
「お姫様の申し出とあれば! キミが危ない時は守ってみせるよ!」
 それはどうもとノエルの軽快な声に相槌を打ち、エウトティアは辺りを見回す。
 なるほど、グリモア猟兵から聞いていた通り、地下はまるで迷宮のようだ。
 石像も気になるところではあるが、この先の出口を見つけることも不可欠だ。
「じゃが、繋がっている以上かならず道は掴めるのじゃ」
 水路に流れる水。わずかに感じる風。
 それらの精霊に耳を傾け、エウトティアは集中する。
 彼らの声を頼りに、進もうというのだ。
「案内は十分。あとは石像に見つからぬようにじゃな」
 彼女が印を結ぶ。
 するとするすると身体は小さくなり、エウトティアは一匹の金色鼠へと変化した。
「これは見事だね。戻るには王子様のキスが必要かい?」
「あいにくそれは不要じゃな。わしはともかく、ノエル殿はそのままでよろしいか」
「ボクにも策がないわけじゃ無い。お姫様をまもる手はずは万端さ」
 パチンとノエルが指を鳴らせば、たちまち通路に彼の分身が現れた。
 あまりに大量に出現したせいで、水路に浸かる者も出る始末だ。
「ボクの分身たちに先導と囮をやらせよう。これだけいるなら見張りとしても上出来さ」
「……分身?」
 エウトティアは訝しがった。
 先ほど現れた分身たちは、ノエルの格好をしつつもあまりにも似つかわしくない。
 何というか、もちもちしている。
 着ぐるみ人形といった方が正しい。
 第一、彼はこんなに横幅が広くなくスマートだ。
 だがこれはノエルとエウトティアを隠すのに絶好の目くらましだ。
 木を隠す派は森。
 鼠を隠すのに着ぐるみたちである。
 二人は迷宮を攻略するために、行動を開始した。

 下水道に囮を放ち、その隙に先へと進む。
 この作戦は巧くいっていた。
「ほらほら、鬼さんこちら」
「この城は私のもの……侵入者よ、出て行け!」
 女王の石像が、分身たちを追い払おうと全速で突進してくる。
 分身たちはその攻撃を避けながら、二人とは逆の方向へと誘導していった。
 小さい鼠が先へと進む、それは石像たちには気づかなかった。
 なにしろ大量の人形をこの場所から吹き飛ばすのに懸命であったからだ。
(……良し、うまくいっておるのう)
 壁伝いに走りながら、エウトティアは精霊の声に耳を澄ませていた。
 鬱屈した水の色ではなく、風が濃くなりわずかに草の色も感じはじめてきた。
 それは出口、外があるという証拠である。
 ネズミたちを斥候に、周囲を確認してエウトティアが合図する。
「ぶはあっ!」
 その合図でノエルが水路から勢いよく顔を出し、息を吸い込む。
 囮は分身たちがその役目をしっかり果たしているが、万一ということもある。
 エウトティアのように身を縮めることの出来ない彼は、こうやって水路に身を潜めながら後をついてきているのであった。
 息を整えるノエルに、エウトティアがこたえた。
「もうそろそろで終わりが見えそうじゃぞ。光が近いのじゃ」
「それはありがたいね。外に出たらまず服を乾かそうか」
 ノエルも精神を集中する。
 分身たちが鬼ごっこを楽しんでいるのは、自分たちからかなり離れた場所と確認出来る。
 しかし女王の攻勢はとんでもない。
 数百体あった彼の分身は、もう過半数が飛ばされてしまっていた。
「キミの案内がなければ、まだこの下水道をうろうろしていたのかもね」
「なあにそれはお互い様じゃ。見ろノエル殿、どうやら出口のようじゃぞ」
 行き止まりの先にある縄ばしご。
 その上を見上げていれば、かずかに光が見える。
 どうやら迷宮を通過できたようだ。
 二人は足取りを確かめるように、一歩一歩踏みしめながら登っていった。

 太陽の光。鳥の鳴く声草の揺れ。
 そして遠くに見えるは、女王の城。
「ようやく辛気くさいところからおさらば出来たのう」
 伸びをしながらエウトティアが息をついた。
 この先へとむかえばアリスや猟書家へとつづく場所である。
 ノエルといえば焚き火で服を乾かしている。
「難儀な真似をさせてすまなかったのう」
 自分に仲間を変化させる力があれば、ノエルにこんな目をさせなかったのに。
 悪びれる彼女に対し、彼はいやいやと首を振った。
「気にしなくていいさ、お姫様のために泥を被るのはナイトの役目」
 それに、と続ける。
「昔から良く言うじゃ無いか。水も滴る良い男ってね。王子だろ?」
「ははっ、なるほど確かに。ノエル殿は立派な王子様じゃな」
 いまだ戦況は見定められぬ迷宮災厄戦。
 その戦端を切り開いた彼女達は、ひとまず身を休めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラックラ・ラウンズ
ほうほう!なるほどなるほど!
これは困りました。迷子になりそうですねぇ!

という事でまずは石像から逃げられるよう己の手足に胴体等等出来うる範囲でバネに作り替え、勢いよく地下水道を跳び駆けていきましょう!
ここの水路も城の地下という事で其れなりに頑丈で、広さも其れ相応!つまりはバネの力で蹴り進めても少しは大丈夫!きっと

さて石像達も中々に厄介。増え続ける以上とっとと行きましょうか!とはいえ挟撃は怖いですからねぇ、
という事で此方でもどうぞ!そちらは飛んだ際に落としていった魔法の種!何とビックリ!蹴り砕いた隙間からでもにょきにょき水を吸って生えていき、貴女方を絡み取り道を塞ぐ存在です!
さてさて、ではお先に!



「ほうほう! なるほどなるほど! これは困りました。迷子になりそうですねぇ!」
 全然困った様子も無く、ラックラ・ラウンズは高らかに笑う。
 他の猟兵達はいかにして石像からの目を欺くか、それに頭を悩ませているようであったが、彼の頭に隠れるという選択肢はなかった。
 堂々と通路を駆け抜け、出口を目指す。
 薄暗い迷宮に、カツカツと靴音が鳴り響く。
 それは、ここにいるぞと敵に知らせる愚策。
 当然のように石像に見つかり、盛りのついた犬のようにラックラへと向かって来た。
「侵入者め、出て行け!」
 通路の先から一体出てきたかと思えば、後ろからはまた一体。
 女王の石像が挟み撃ちでやってくる。
 しかしラックラからは笑みが消えない。
「ええ、ええ。出て行きますとも、出口にむかって一直線。レディを袖にして私は息ますよ!」
 愉快そうに走る彼の身長が、ぐんぐんと伸びていく。
 否。
 伸びているのでは無い。
 彼の手足が伸び上がっているのだ。
 ブヨブヨ、グネグネと、相手を挑発するように。
 そして彼は跳んだ。
 斜め前方へ、反対側への壁へと。
 ぶつかり合うのを恐れ急停止した石像たちが見たもの。
 それは、壁から壁へと、天井から床へと、バネの様に手足を伸び縮みさせ奥へと消えていく、ラックラの姿であった。
「ハロー! そしてさようなら! また会う日までホッホーウ! ホッホーウ!」
 高らかに笑い消えて行く彼の姿を、石像は見過ごしかなかったのであった。

 どのくらい走ったであろうか。
 曲がり角や行き止まりを幾重にくぐり抜けては来たものの、今だ先の見えない血か迷宮。
 それに比例して、ラックラを追いかける石像の数は増えていった。
「なるほどなるほど! これは困りました。困りましたねえ!」
 後ろから押し寄せてくる怨嗟と怒号。
 それを背中に受けながら、彼はひたすらに鬼ごっこを楽しんでいた。
 くの字、への字、つの字になって反対側へ。
 時にはアーチ状に曲がってやり過ごす。
 ひらひらと、赤い服を着て攻撃を躱す彼は、迷宮の闘牛士といったところか。
 そんなラックラを待ち受けるは、T字路になった突き当り。
 彼は足を緩めず走り続ける。
 そのまま壁を駆け上り跳ね上がって右の通路へと。
 それを追いかける石像たち。
 しかしその群れは、壁から突き出し生えた蔦によって絡め取られてしまった。
 跳ね返る直前に、彼は煉瓦の隙間に種を挟んでいたのであった。
 どんな環境でもすぐに生長する、彼の自慢の魔法の種を。
「これぞまさに壁の花! はてさてお嬢様がた、さてさてではお先に!」
 ラックラの高笑いが通路に響く。
 その嘲笑に身もだえしながら、石像たちは怒りに震えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

音羽・浄雲
※アドリブ、連携歓迎です。

「石像相手とはいえ、地の利がない場所での鬼ごっこは不利でしょうね。隠れ鬼といきましょうか」
選んだのは石像とのかくれんぼ。
前後が不覚であることを考慮し、下手に逃げて挟まれたり迷うことを避けての選択だった。【詭り久秀】をアリアドネの糸のように張り巡らせながら、着こんだ忍装束に迷彩を施し、闇に紛れる。
「カフラマーン殿の話では石像は複数。そらばこちらも目を増やしましょう」
【外道】を放ち、自分の行く先を先導するように走らせ、石像を見つけては出会うことを避けるように、避けられなければ壁の少しの凹凸を利用して縦横無尽に監視の目を掻い潜る。
「不謹慎ですが、久しぶりの潜入は昂りますね」



 暗く湿った地下迷宮。
 その中で闇が更に濃くなった気がした。
 闇は人の形をとって、衣を纏って出現する。
「不謹慎ですが、久しぶりの潜入は昂りますね」
 音羽・浄雲。元傭兵の忍。
 敵の目をかいくぐって敵地を進むこの忍務は、昔を思い出せる気がして気分が逸る。
 だからといって焦る彼女でも無い。
 手から蜘蛛糸を張り巡らし、その上へと羽根のように軽やかに飛び乗り、先へと進む。
 足音を立てるという概念は、忍にはない。
 そして浄雲の身体から闇が零れ落ちると、それは一匹の妖狐となって先を急ぐ。
「カフラマーン殿の話では石像は複数。そらばこちらも目を増やしましょう」
 式神の感覚は、己と共有出来る。
 仮に妖狐が手にかけられることがあっても、それは浄雲にとっての糧となる。
「石像相手とはいえ、地の利がない場所での鬼ごっこは不利でしょうね。隠れ鬼といきましょうか」
 人の気配がしない地下迷宮を、二つの影が走るのであった。

 床から少し離れたように宙へと浮きながら、石像が辺りを徘徊する。
 あちらに、そちらに。行ったり来たりと。
 この城へとくる侵入者を排除するためである。
 彼女たちの視線は、薄暗い闇でも敵を感知出来る能力があった。
 しかし、そんな石像でも、影が蠢くのに気づくことはなかったのである。
 ところとどろにかかった蜘蛛の巣。
 その糸が身体に触れようとも、石像たちは気にはしない。
 なぜなら虫の類は、侵入者ではないからだ。
 その驕りが、重要なことを見過ごしてしまうのだ。
(……切られましたか)
 慎重に、縦横に張り巡らした詭り久秀。
 迷うことを警戒して辻辻へと設置してきた浄雲であるが、それは同時に、巡回する石像たちの危険を知らせる役目も果たすこととなっていた。
 息を殺して水路の闇へと身を潜ませれば、通り過ぎたるは女王の石像。
 遠く姿が見えなくなると、水音を立てずに再び姿を現した。
 妖狐を目とすれば、妖糸は耳。
 この二つを駆使して進む忍にとって、迷宮を進む石像たちは、大声をあげて騒ぐ狼藉者に過ぎない。
 その証拠に、彼女は迷宮に足を踏み入れてから、一度たりとも発見されてはいいなかった。
 姿を現した彼女が見上げるのは縄ばしご。
 それには手をかけず、浄雲は壁を蹴って上へと登る。
 遙か遠くに見える城の風景。
 それを一瞥できるような脱出路から闇が飛び出して着地する。
「忍務完了」
 忍と狐が地下迷宮を攻略し終えたことに、遂に石像たちは知ることが出来なかったのであった。
 大きく息を吸い込み、外気を確かめる。
「さて、先へと進みましょうか」
 満足を胸におさめて、浄雲は休むことなどしようとせずに先を急ぐのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
WIZ

屋内の迷宮は厄介です。
太陽も星もない。正確な方向感覚を維持するのが難しい。

迷宮内では同じ道を延々と進むのが一番効率が悪い。
分かれ道では、ダガーでも使って壁に印でもつけ、一度通った道の目印に。
そうするだけでもだいぶ攻略の効率は上がる筈です。

後は……そうですね。石像がどうやって我々を感知しているかも観察していればわかるでしょう。
そうすれば、死角があるか否か、あるならばどこかも判別できる。
ただ逃げるよりも、死角に入ることを意識して動けば、かなり自由度は上がる筈ですから。

さて……忙しい戦いです、早々に抜けさせていただくとしましょう。


ニオ・リュードベリ
怖い女王様だね……
怨念を消してあげるためにも頑張って迷宮を攻略しよう!

世界アイス百科(自作)の使ってないページでマッピングしつつ進んでいくね
【目立たない】ように服装はアリスクロスじゃなくてよくあるセーラー服で
【視力】で先を見通しつつ進んでいくよ

人の手によって改築されてきた場所みたいだし、隠れやすそうな場所も多いかも
時々物陰に身を潜めたり休憩しつつ進むね

石像に見つかったら全力【ダッシュ】しかない!
どうしても追い詰められたら『ガラスのラビリンス』を発動するよ
迷宮の上にさらに迷宮って変な感じだけど……
こっちはあたしの自作だから、走り抜けるにしてもあたしの方が有利なはず
これで足止めしつつ行くね!



 先を急ぐ猟兵達。
 シャルロット・クリスティアとニオ・リュードベリの二人の少女も、後に追いつくべく迷宮を進んでいた。
 外とは違い、何処まで行っても似たような配置模様。
 その上あちらこちらへと曲がっているとくれば、今現在の自分たちの位置はどこなのかと判断を見失ってしまいそうだ。
「右へ曲がり、1回目」
「うん、1回目だね」
 シャルロットが壁に→1と傷をつける。
 それを受けてニオが手帳にメモをする。
 曲がる度に二人はこうやって記録、マッピングを続けてきた。
 そのため進む速度は遅くなってしまうが、ぐるぐると動き廻ってしまうことは避けられる。
 何しろこの迷宮には侵入者を排除する石像がいるのだ。
 仮に飛ばされるにせよ、元の場所までまで戻ってくることは容易い。
「通路空樽有り、スペースOK」
「スペースOK、と」
 言われるままに書いていたニオの手を、何かを察知したシャルロットが掴んで、今いった死角へと一緒に身を寄せた。
 息を殺して潜む二人の前を、浮遊する石像が通り過ぎいていく。
 やがて完全に見えなくなることを確認し、二人は樽の影から身を起こした。
「これで、ええと……何体目でしたでしょうかニオさん?」
「これで17体目だね、シャルさん」
 敵の文字を丸で囲み、マップに記載する。
 ページのあちこちに敵を示す○が付け加えられてあった。
 ふう、とシャルロットはため息をついた。
 事前の情報通り、石像がたくさんだ。
 ここでは銃声など、増援を呼ぶための警報にしか過ぎない。
 石像の視線に入らなければ、こうやって感知されないだけ幸いと言えた。
 こうやって警戒しながら進むのは、生真面目なシャルロットにとっては余計にストレスがかかるものだ。
 ため息をつく彼女へ、ニオは努めて明るく振る舞う。
「あれって魔力とかじゃなくて、怨念がなせる技なのかな? だったらずっとこのままなのかな……怨念を消してあげるためにも、頑張って迷宮を攻略しよう!」
 セーラー服についた埃を払いながら、ニオは腕をぎゅっとした。
 目立たないからとの理由で、それを着てきた彼女。
 戦場経験があるシャルロットにとっては、それは甚だ疑問な隠密手段と言えるのであるのだが、口にしない優しさが彼女にはあった。
 そして何より、先の見えない迷宮において、ニオの明るさは鬱屈した気分を晴らしてくれて、光明を見いださせてくれる気がするのであった。
「そうですね、これから忙しくなりそうな戦いです、早々に抜けさせていただくとしましょう」
 笑顔でひと息つき、前に進もうとするシャルロットの目が変わった。
 その雰囲気を感じてニオの足も止まる。
 通路の先、これから進もうとする通路に、石像が見えた。
 どうやらやり過ごしたと思ったら、もう一体いたようであった。
 マッピングがまだされていない通路を強引に駆け抜けるか、それとも一端下がって、死角ポイントでやり過ごすか。
 先も言った通り、銃の音を立てるのは非常にまずい。
 取り囲まれ、死角を無くされてしまえば、一巻の終わりだ。

 どう切り抜けようかと考えるシャルロット。
 その腕を、ニオの手が掴んだ。
「ダッシュで逃げようよ! シャルさん! 大丈夫、何とかするから!」
 振り向けば笑顔で提案するニオの顔が。
 しばし見つめ、無言で頷くシャルロット。
 戦いを避ける状況、それが作れるのであればやはり逃げるしか無い。
 腹を括り、ニオの策に乗ってシャルロットは駆けだした。
 前方の通路を塞ぐように鎮座する石像へと。
 同時に二人は走りだす。
 迎えうつは女王の石像。
 立ち塞がるそれが触れようとする刹那、シャルロットとニオは左右へと跳ね飛んだ。
 接触する物を城外へとテレポートさせる能力。
 逆にいえば、それは触れなければ用を為さない。
 別れた彼女達、そのどちらかを狙えばいいか、石像の判断が遅れた。
 その隙に脇をかいくぐり、二人は見事石像を通り抜けて通路の奥へと走りさる。
「待て! 待て待て侵入者!」
「待つのはアイスを注文するときだけだよ!」
 ニオが走りながらシャルロットの手を握る。
 もう片方の手を掲げれば、たちまち広大な迷宮が出現する。
 狭い通路に広大なガラスの壁面群。
 次元と空間を超越した異空間が、二人を中心にして出来上がったのであった。
 石像はといえば、打ち破ろうと体当たりをガンガンと敢行しているのが遠くガラス越しに見えた。
 どうやら見かけによらずかなり頑丈な代物らしい。
 その光景にシャルロットは、はたと気づく。
「そうか……生物でない無機物は飛ばすことが不可能なんでしょうね」
 考えてみれば何でもかんでもテレポートさせてしまったら、城そのものが無くなってしまうに違いない。
 危険を承知でダガーを投げつけてみれば良かったかと、シャルロットの顔が曇る。
「あーーーーっ!」
 素っ頓狂な声をあげてニオが叫んだ。
「ど、どうしましたニオさん?」
 さては何かあったのか?
 不安そうな表情で見守るシャルロットをニオは困った顔で見返した。
「……マッピング、どうしようか」
 今まで迷宮を克明に記録してきた彼女である。
 しかしその迷宮に迷宮を生み出してしまっては、表記をどうすればいいのか困るのも無理はない。
 落ち着きを取り戻し、シャルロットは苦笑する。
「とりあえず、次の頁に書くのはどうでしょう?」
「あ、そうか! そうだね、さすがシャルさん! 頭いい!」
 ニオの笑顔にシャルロットも破顔する。
 二人の少女は追加された迷宮を駆け抜けて、この地の攻略を続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月08日


挿絵イラスト