迷宮災厄戦③〜カサカサと動くそれはかの天敵の如く~
●神秘的に見せかけて背筋に寒気が走る光景
カサカサカサカサカサ、カサカサカサカサカサ。
アリスラビリンスの一角、"ゆうとろどきの森"にて響き渡る草木が擦れ合う音。
――とは、また色々な意味で違う、何か背筋に寒気を走らせるような足音である。
足音を立てているのは黄金の花。彼(彼女?)らが音を立てて通り過ぎる度に、森に生息する動物たちが黄金に煌めく像と化す。
甘い香りと共に魔力という名の花粉をばら撒いているのだ。
とはいえこれもそれが近くにいる間だけのこと、通り過ぎた後に動物は金の輝きを失い、各々の巣へと戻っていく。
カサカサカサカサカサ、カサカサカサカサカサ……花の群れは夕闇に染まった森の中を縦横無尽に駆け回る。
その根元に生えた足は――具体的に言うとすぐに想像がついてしまって気分の良いものではない奴(※苦手な方がいることも考慮し最大限にオブラートに包んだ表現をしております)、であった。
●それは見てしまって悲鳴を上げたらびびってパニック起こして飛んでくるアレ
「『迷宮災厄戦』の新しい予知がきたぜ!動ける奴は集まって――…………あーいや、うん。
集まっては欲しいんだが実際に行くかどうかは概要を聞いて判断して欲しい」
最初の勢いはどこへやら、地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)は何を躊躇ったのか非常に歯切れが悪い様子を見せた。
どうやらよっぽどのオウガなのか、それとも……ともあれ猟兵たちは彼に説明を促す。
「俺がみんなに行ってもらいたい場所は"ゆうとろどきの森"だ。
そこには『不気味な身体部位』を移植されたオウガの群れがひしめいてる。移植された部位でユーベルコードに加えて追加で行動できる厄介な特性を持ってやがるんだ」
今回の敵であるオウガは『黄金花』という、甘い香りと共に花粉代わりに魔力を放出する植物だ。
甘い香りに引き寄せられ、魔力をその身に浴びたものは皆須らく黄金に輝く像と化すがそれも一時的なこと。距離を取ることができたら黄金化は解除され自由の身になれるのだが、逆に言えば花が近くにある限り動きを封じられ続けるという地味に厄介な性能をしている。
そんなオウガに移植された『不気味な身体部位』、それが凌牙が非常に歯切れを悪くする原因のようで……?
「そのな、めちゃくちゃ苦手な奴多いと思うからすげえ言い辛いんだがな?その黄金花にその……そのな、ご家庭の天敵黒いアイツの……足が……その……えっわかんねえ!?そっかわかんねえ奴はわかんねえよな!?でもめちゃくちゃ言い辛いんだよ!!だってダメな奴ダメじゃねえかよ!!!!」
悲しいかな、その説明でわかるのは恐らく家庭での家事に携わる回数の多い、あるいはそれが出てくるところに住んでいる猟兵だけである。
実際に理解できた猟兵の何人かはうへえ、と声を上げたそうな表情はしているのだが、わからない者ははっきり言えと続きを促すワケで。
「……そ、その…………そのっ!
ゴ、で始まって!!
リ、で終わる!!!
あの天敵なんだよ!!!!!!!」
ええいままよと覚悟を決めて最初と最後の文字を出した。
今度こそ猟兵の(多分)全員に伝わったのか、間が出来上がる。
――ああ、うん……そら言い出し辛いわ。
そういった雰囲気の視線を凌牙は感じたかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
「……まあ、うん、そういうワケなんだよ。
その足が生えたことでこの黄金花共、めっっっっっっっっっっちゃくちゃかさかさ動いてこっちに近づいてくんだよな。
それこそモノホンと変わらねえスピードだし、それにドン引いて悲鳴を上げたりなんてしてみろ、パニックに陥って飛び込んでくるぞ……いや多分攻撃しただけでびっくりしてこっちにくると思う」
黄金像に変える魔力を浴びせる植物が、かさかさ動いて攻撃すればびっくりしてこっちに向かって突進してくる――何といやらしい仕組みだろうか。
とはいえそれでアリスたちが巻き込まれてもひとたまりもないし対処するしかないのである。
「というワケだから、この戦場に向かう奴はくれぐれもその手の奴に耐性がある奴か対処に慣れている奴だけが向かってくれ。苦手な奴は他のグリモア猟兵が予知した戦場の援護で頼む」
めちゃくちゃ気遣われながら猟兵たちはこの戦場に向かうか否かの判断を迫られることとなる――。
御巫咲絢
こんにちはこんばんはあるいはおはようございます!
初めましての方は初めまして、新米MSの御巫咲絢(みかなぎさーや)です。
シナリオご閲覧頂きありがとうございます!初めての方はお手数ですがまずMSページをご覧頂きますようお願い致します。
戦争シナリオ2本目を投下させて頂きました。
当シナリオは1章で完結し『迷宮災厄戦』の戦況に影響を及ぼすことのできるシナリオとなっています。
こちらは集団戦、『不気味な身体部位』を移植したオウガが猟兵の皆さんに襲いかかります。
当シナリオにおけるオウガはグリモア猟兵が必死に言葉を濁そうとしたあの"ご家庭の天敵黒いアイツ"の足が移植されたことによりユーベルコードに加え「高速移動による突貫」が可能となっています。
OPをご覧頂いたらわかると思いますが身体部位の描写は非常に遠回しになるよう努めております。
MSも直接描写したら脳裏に浮かんで死ぬほどグロッキーになるのでふんわり表現で参りたいと思います(震え)。
また、このシナリオには以下のプレイングボーナスが存在しています。
●プレイングボーナス
『不気味な身体部位』への対抗手段を考える。
●プレイング受付について
承認が下り次第プレイング受付開始致しますが、大人数はMSのキャパシティ的にお受けし切れない可能性が高いです。
その為プレイング内容次第によっては不採用の可能性もございますので予めご了承の上プレイングを投げて頂きますようお願い致します。
それでは、勇気ある皆様のプレイングをお待ち致しております!
第1章 集団戦
『黄金花』
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POW : 金色の誘惑
【めしべ】から【いい香りがする魔力】を放ち、【魔力を浴びた者を黄金に変える事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 金色の誘惑
【めしべ】から【いい香りがする魔力】を放ち、【魔力を浴びた者を黄金に変える】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 金色の誘惑
【めしべ】から【いい香りがする魔力】を放ち、【魔力を浴びた者を黄金に変える】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:相澤つきひ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
ば、ば、ば……
バッカやろぉォぉォ!?
なんてもん予知してくれてるんだよ!?
アレだろ!?要は「G」だろ!?
一匹見たら30匹は覚悟しろってあの!
なんでそれの脚が花に生えてるんだよ!?
ああもう、もうアレしか思いつかねぇじゃねーか!
こんだけ必死になってるから【弱点特攻作成】の精度もばっちりだろ!?
出やがれっ、「『G』ホイホイ(版権に最大限配慮した表現)」!
花が吶喊してくるとしたら、匂いに反応するだろうし。
「おしべの匂い」と「黄金の匂い(?)」を誘引剤にした
特製の粘着シートを敷き詰めてやる!
こっちに漂ってくる魔力は『オーラ防御』で遮り、
『念動力』で潰して回る!
触りたくねぇもん!
チル・スケイル
あー、古い宿屋などにいるあの虫ですね
もっと危険な生物はいくらでもいるのに、何を恐れる事があるのでしょうか…
(※故郷では見かける事はなかったため、よく知らない虫くらいにしか思ってない)
…(普段通り、黙って戦う)
…(例の虫を、故郷で見た事は無い…冷気に弱いのか?)
…(両手両足に冷気放射用の杖【マルヴァールマ・スロワー】を装備。全方位に冷気を噴射、こちらに来る前に凍結させる)
…(凍りつけば、動かない。そのまま枯らし、粉砕する)
木々水・サライ
[絡み・アドリブ歓迎]
ふーん、黒くてカサカサしたアレ。つまり、こいつだな。
俺の【黒の物真似人形(イミテーション・ブラックドール)】。
テメェと黒人形どっちが素早いか…勝負してやろうじゃねェか!!!
テメェの弱点はその足、ズバリ"洗剤や油をかけられたら滑る"ところ!!
[自主規制]の足とは言えお前がソレそのものじゃねぇんだろうがよ!
俺達の二つの身体に流れるオイルをたっぷり床に流して滑らしてやらァ!!
滑り転んだところで【黒鉄刀】で何も見えない状態にしてから斬るわ。
いや、だって[自主規制]の足持ってるってだけでもヤベェんだもん。見えない状態にするよそりゃ。
「黒いのVS黒いの……うん、なんも問題はねェな!」
アリステル・ブルー
●POW/アドリブ連携おまかせ・歓迎
こんなに気遣われた出撃ははじめてかも。
ああ…うん、それは言い出しにくいね!…僕もこの前『アレ』に遭遇した。しかも逃した…あとで仕留めたけど!
指定UCを使うね!
アイツに対する感情はたくさんあるからね…。どれくらい嫌いかって吸血鬼領主並だよ!
対抗手段は『殺意を高めて速やかに燃やして灰にする』
超短期決戦だよ!1秒足りとも生かしておけない。見失う方が怖いからずっと視認するよ。
炎は人類の武器だからね…!
なるべく目立たないように、けれど速やかに射程内まで近づくよ。
とはいえ森が燃えると後々まずいと思うので『アレ』を念入りに燃やして黄金花もついでに燃やす。
テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可
こ…これは確かに一部の方には精神上よろしくないですね…
相手が突撃するのであれば罠を仕掛けるましょう!
【蝋シャンパン】を道端に置いて、【全てを凍てつかせる小さな妖精】を発動!妖精さん達で黄金花を凍らせる…のではなくおびき寄せるのです!
道端に置いた【蝋シャンパン】の所まで来たら妖精さんが栓を凍らせ砕いて溶けた蝋を噴き出させて一網打尽にするのです!
流石に猛スピードに走ってきているのですから急には止まれない筈なのです♪
(黄金化フラグ回収はお任せします)
フィロメーラ・アステール
「なんだよ、ちょっと早く動くくらいで……!?」
ぴょああああああ■▽●×◎!!!
(想像以上にキモかった)
ぜぜぜ【全力魔法】でさっさと片付けるぞ!
【蒼天まわしむ千変の星冠】をくらえええええ!
とにかく冷気【属性攻撃】で凍らせる!
あと地面がツルツル摩擦ゼロになってうまく走れない!
二重の意味で動けなくしてやる、お前はそこで凍っていけ!
虫も植物も寒いのは苦手だろ!?
それはもう【早業】で有無を言わさず即・氷・殺!
あとこの技は水も操ることができる!
【破魔】の魔力を含ませた水を霧状に散布すれば、敵の放った香りと魔力を吸着して封じる事ができるんじゃないかな!?
いい香りだろうが、アレから出たのは嗅ぎたくないしな!
ネーヴェ・ノアイユ
知的好奇心を抑えられず来てみましたが……。これは……。地籠様が気を使っていたことにも納得ですね……。
気持ちを切り替えて……。
黄金花様の行動がご家庭の天敵様と似通っているのであれば……。そうですね。
まずはUCを私の少しだけ前方の地面へと放ち氷の結界を展開します。これに反応して飛び込んできた黄金花様たちは氷壁の盾受けで壁にぶつかっていただき……。結界内での勝負に持ち込みます。
お花とご家庭の天敵様……。どちらも寒さは苦手だと仮定して動きが鈍ってくださることを願いつつ……。今度は黄金花様たちへとUCを直撃させていき手早く処理していきます。
正直……。見るに耐えられず今すぐにでも帰りたいほどなので……。
●「俺だってこんなもん予知したくなかったよ!!!!」と本人も申しており
ではまずは実際の討伐光景の前に、先程の空いた間と説明再開の間に挟まった各猟兵の反応をご覧頂こう。
「ば、ば、ば…………っ、バッカやろぉォぉォおオおおおおおおオオオオオオオッッッ!?!?!?」
わなわなとその身を震わせ、耳が劈かんばかりの叫びを上げたのは数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)。
彼女はUDCアース出身の一般人――つまり猟兵の中でも特にそのご家庭のあの天敵が如何なるものかを知っている猟兵の一人であった。叫ばずにはいられないだろう、うん。
「なんっっっってもん予知してくれてるんだよ!?
アレだろ!?要は「G」だろ!?!?一匹見たら30匹は覚悟しろってあの!
なんっっでそれの脚が花に生えてるんだよッッ!?!?!?」
実際予知によると1輪どころか30輪以上は余裕で存在するらしく多喜の背筋をさらなる寒気が駆け抜けていく。
「あー、古い宿屋などにいるあの虫ですね?もっと危険な生物はいくらでもいるのに、何を恐れることがあるのでしょうか……」
そんな多喜の反応を横目に見て小首を傾げるはチル・スケイル(氷鱗・f27327)、氷竜たる彼女の出身は極寒の地――即ちGのほとんど存在しない場所である。
故郷で見たことがない虫よりも雪山に住む熊等の獰猛な肉食動物とかの方が十二分に危険じゃないか、としか思えないのだ。実際熊はきっと竜派ドラゴニアンでもひやっとしそうだし。
「ふーん、黒くてカサカサしたアレ……つまりこいつだな……」
木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)は至って平静を保ち、自身の保有するユーベルコードから効果抜群足り得るものの選出を行っている。
ご家庭の天敵黒いアレ(以降"G"とする)に対する苦手意識がないワケではないが、奴らにこちら側の動揺を見せることは危険だと彼も十二分に理解していた。
「ああ……うん、それは言い出しにくいね!」
アリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)は苦笑いしながら何とかふんわりとした感覚で伝えようとした努力を労った後、前日自身に起こった出来事を思い出して憂鬱そうな表情を浮かべた。
「…………僕もこの前『アレ』に遭遇した。しかも逃した……あ、ちゃんと後で仕留めたよ!?」
耳としっぽをしょぼんと下げて語る内容にに周りの猟兵がざわ……ざわ……と動揺を走らせると焦りに呼応するかのように今度は逆にぴん!と立つ。
本人にこう言うと複雑な気分になると思われるが、その耳としっぽの動きは正直に言って可愛らしいと思った人もきっといるのではないだろうか。
……と、このように多種多様な反応が集まったのでありました。
●黄金花を英訳すると「Gold Flower」、つまり"G"。殲滅すべし慈悲はない(無理のあるこじつけ)
こうしてある者は恐怖を抱きながら、またある者は殺意を胸に抱きながら、あるいはある者は興味本位で転移陣に乗り、ゆうとろどきの森へと向かう。
夕闇にまどろむ森の中、カサカサカサカサカサカサ……と早速駆け回る音が聞こえ、それだけでひっ、と息を呑む者もいる。
決して音を立てぬよう、それぞれが細心の注意を払い森の奥へ、奥へと脚を踏み入れると、すぐに目当ての黄金花はいた。
カサカサカサカサカサカサ、カサカサカサカサカサカサ!!とその"G"の脚で勢いよく駆け回り、枝に止まる鳥が振りまかれた魔力を浴びて金色に輝いてはすぐに戻る光景が繰り広げられている……!
「こ……これは確かに一部の方には精神上よろしくないですね……」
テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)は"G"を恐れる猟兵たちの慄きぶりに納得を見せながらも鳥が黄金像になる姿に内心心を躍らせる……今何かフラグが立った音がした。
一方フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)はふん、と鼻を鳴らして意気揚々と攻め込もうと試みる。
「なんだよ、ちょっと早く動くくらいで……っ」
と思い切り距離を詰めにかかるが。
\カ―――――――サカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ/
「ぴょあああああああああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああ■▽●×◎■▽●×◎■▽●×◎!!!!!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
想像以上にキモかった。
"G"の脚を生やした黄金花が何匹?何輪?も高速で動き回る様は、それそれはもう、とにかくキモかった。
まさに百聞は一見に如かず、フィロメーラが悲鳴を上げて飛び去ろうとすると黄金花もびっくりしてこちらに高速で駆け寄ってくる。
そして不幸なことに偶然一番近くにいた多喜が巻き込まれて最早断末魔の如き悲鳴を上げながらフィロメーラと二人で黄金花から逃げ回った。
多喜のオーラで膜のようなバリアを形成して魔力が漂うのを防御し、念動力でそれそのものを地面に押し潰して何とか撒くことができたものの、これだけでフィジカル的にもメンタル的にも体力を削られたのは二人が息を切らしている姿からも伝わってくるだろう。
「知的好奇心を抑えられず来てみましたが……これは……」
ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)は二人が逃げ惑う様子とその際に蠢き駆けゆく黄金花の群れを見て背筋に寒気を走らせ興味本位で訪れてしまったことを少しばかり後悔する。
「地籠様が気を遣っていたことにも納得ですね……」
「ぜえ……はあ……ぜー……はー……ホンットもう、なんてもん予知してくれてるんだよマジで……っ」
「ぜぜっぜぜぜぜぜぜ……全力でさっさと片付けるぞ!!」
「そうですね、相手が突撃するのであれば罠を仕掛けましょう!」
テフラがそう言って取り出したのは『蝋シャンパン』の入った瓶。これを黄金花の通りそうな道端に適当なところを見繕って仕掛けていく。その一方でフィロメーラは自らの魔力を全て解き放つ勢いで"G"の脚がついた黄金花――英訳するとGold Flowerなので以降こちらも"G"と呼称することにした――に向けてユーベルコードを発動した。
「"踊れ!青い星の風の中で!"【蒼天まわしむ千変の星冠(ナーサリープライム)】をくらええええええええ!!!!!」
ゆうとろどきの森の中を水と冷気が舞い踊る。
それは"G"の通る道をかちんこちんのつるんつるんに凍らせ地面の摩擦をゼロにした。
"G"はいきなり水と冷気が襲いかかってきたことにパニックを起こして駆け回るが摩擦力の消失した氷の面にすってんころりん。そこを好機とフィロメーラは冷気をさらに凝縮させ、吹雪として吹きかけてやる。
「二重の意味で動けなくしてやる、お前はそこで凍っていけ!虫も植物も寒いのは苦手だろ!?」
即・氷・殺!と言わんばかりの早業で次々と凍らせていく。
しかし、パニックを起こしすぎたことが逆にそれを回避することに繋がった個体も何匹?何輪?か存在する。
そしてそんな"G"に追い打ちをかけるかの如くテフラがユーベルコードにて氷の悪戯妖精を召喚した。
「妖精さん、頼みましたよ♪」
元より不可視かつ感知不可能の特性を備えさせるユーベルコードによる召喚により、一植物程度の頭脳(?)にプラスでパニック状態ともなればその存在に気づく可能性は0%……テフラはその場から動かずに経過を観察する。
悪戯妖精がちょこんと"G"に触れれば、そのグロテスクなおみ脚も金色に輝く花も瞬間凍結、ますます"G"の群れは錯乱状態に陥った。
駆けずりに駆けずり回って仕掛けた蝋シャンパン付近に集まってきたのを確認すると、テフラは妖精たちに合図を送る。
姿の見えない妖精たちが蝋シャンパンの栓を凍らせ……ぱきんと砕けたその刹那、あらゆるモノを塗り固める蝋が爆発するかの如く噴き出した!
森のあらゆる植物すらも巻き込んでいく蝋シャンパン、猛スピードで駆け回っている"G"はブレーキをかけるどころか逆にその波に突っ込んでまた別の形でかちんこちんに凍りついた。
「ふふっ、トラップ作戦大成功です♪」
首尾は上々でご機嫌なテフラ、甘い香りを堪能しながらふふんと胸を張る。
……待て、甘い香り?
「――あれ、この香」
気づくも既に遅し、言葉を紡ぐ前にテフラの体を黄金の輝きが包み込む。
何ということでしょう、パニック起こしすぎて群れの一部がこちらに近づいていたことに気づかなかったのだ!
これぞまさにフラグ回収である。
「て、テフラ――――――っっ!?!?」
フィロメーラは慌ててユーベルコードで操作する水に破魔の魔力を含ませ、霧状に散布。
おかげでテフラはすぐ元に戻りました。
助かりましたぁ、と告げるのだったが――内心もうちょっとあのままでいたかったなという思いもなきにしもあらず。
●尚、Gの性別次第では燃やしたら特殊な匂いを発して一斉にたかってくるそうなので炎のご利用は計画的に。
こうして群れの一部を撃破した猟兵一行、しかしまだまだ気持ち悪いかのおみ足を備えた"G"の群れは止まらない。
次に彼(彼女?)らに立ち向かうのは多喜とネーヴェの二人。
「気持ちを切り替えて……ご家庭の天敵様と似通っているのであれば……そうですね……」
少しの思考の後、ネーヴェはユーベルコード【ice bomb】を発動。
"G"の進路方向、自身からみて少し前方の部分に生み出した氷の塊を放ち、破裂させることで結界を展開する。
ぴゃっ、と驚いて"G"はこちらに駆け込んでくるのだが……本当、パニックになって方向が判らなくなったからってこっちに駆け込む姿は本当にドン引かずにはいられませんね!
「お花とご家庭の天敵様……どちらも寒さは苦手だと仮定して動きが鈍ってくださることを願います……」
ネーヴェの願い通り、"G"は先程のフィロメーラが放った【蒼天まわしむ千変の星冠】の効果をモロに受けたのもあり、氷の結界が放つ冷気だけで大分弱っていく。
追加で投げ込む氷の塊が直撃し凍結したらあっという間に砕け散った。
「正直……見るに耐えられず今すぐにでも帰りたい……ですので、手早く処理していきましょう……」
好奇心は猫を滅ぼす、の言葉の意味を身に沁みて理解したネーヴェはこれ以上グロッキーな光景が繰り広げられる前にと次々"G"を凍らせては砕いていく。
一方、多喜は。
「ああもう!!こいつらの弱点とかアレしか思いつかねえ!!!こんだけ必死になってんだから精度もばっちりだろ!?
出やがれっ、「『G』ホイホイ(※版権に最大限配慮した表現)」!!!」
ユーベルコード【弱点特効作成(カニングクラフト)】。
これは多喜のテレパスにより感知した"相手が弱点だと思う物"に対して極めて有効かつ精巧な実物の模倣品を作り上げるものだ。
今回相手にするは"G"――言っても花の部分ではなく脚の方に重点を置いてはいるのだが――、それに対して非常に特効を齎す日本でかの有名な害虫駆除アイテム、『G』ホイホイ(※版権に最大限配慮した表現)を今回の戦闘におけるアレンジを加えて精製し設置する……念動力とオーラによる防御を徹底した上で。
まあ、だってそりゃあ……みんな触りたくないよね?
「(花が突貫してくるとしたら匂いに反応するだろ……!!)」
『G』ホイホイ(※版権に最大限配慮した表現)は誘引剤も備えていなければ効力は発揮しない。
今回多喜が誘引剤にと用意したのは黄金花の"雄蕊"の匂い、そして"黄金の匂い"の二種だ。
……あの、黄金の匂いって何すか?
ともあれ、黄金花の黄金像に変える甘い香りの形をした魔力が雌蕊から放たれていることを逆に利用した誘引剤と共に特性の粘着シートをぎっちぎちに詰め込んだ『G』ホイホイ(※版権に最大限配慮した表現)はそれはとても効果抜群で。
植物も生物の一種、生存本能には逆らえない……"G"たちが瞬く間に駆け込み『G』ホイホイ(※版権に最大限配慮した表現)は即満室(※具体的に言うととてもグロテスクな為最大限ふんわりとした表現を用いています)。
これで大分仕留めたのだが、入り切らなかった連中はそれにぶつかったパニックで多喜目掛けて一目散に向かってくる――!
「ヒュッ」
思わず変な声が上がり硬直。このままでは激突する――というところで漆黒の炎が多喜と"G"たちを隔てるかのように立ち上る。
「ありがとう、多喜さんのユーベルコードが素晴らしい決定打になったよ」
"G"を焼き尽くす漆黒の炎はアリステルのユーベルコードによるものだった。
極限まで殺意を高めながら、気づかれぬように気配を殺し"G"に一撃を見舞う機会を伺っていたようだ。
見失う方が怖いのか目が血走る程に動きを観察していたようで、多喜に対してにこやかに微笑むのだが声と口は笑っていても目はちっとも笑っていない。
精神感応力が高い故に彼の"G"に対する殺意が如何程を嫌という程感じ取ってしまい、理解はできても多喜の背筋を寒気が走った。
「あ、ああ……あたしの方こそ助かったよ……」
「あとは僕に任せて。……一秒たりとも生かしておけないからね」
多喜に背を向け、満員御礼真っ只中の『G』ホイホイ(※版権に最大限配慮した表現)へとゆっくりにじり寄るアリステル。
決して逃すまいとその姿を瞳に焼き付ける勢いで睨む、何故なら姿が見えない方がもっと怖いからだ。
アリステルの中での"G"に対する嫌悪感はそれこそ吸血鬼領主に抱くそれと何ら変わりない――即ち天敵である。慈悲など与える必要がない。
ダークセイヴァーの民に対しての不倶戴天の敵と同格の憎悪が、アリステルの中で暴れ狂う――!
「炎は人類の武器だからね……念入りに燃やして、燃やして燃やし尽くす……解放せよ……怒りを、憎悪を……憎き敵を――焼き尽くせッッッッッッッッッッ!!!!!!!!」
再び放たれる【アンリーシュ】は"G"への憎悪の感情を灼熱の如き漆黒の炎に変えて『G』ホイホイ(※版権に最大限配慮した表現)ごと一気に群れを焼き尽くす。
これがあったおかげで延焼した時のことを考える必要がなかったのはアリステルにとっては僥倖だったのか、惜しげもなく最大火力を発揮、群れの大部分をさらに削ることに成功する。
森に損害を与えることなく天敵を焼き付くすことのできたアリステルの表情は、それはとても晴れやかなものでありました。
●界面活性剤はGに即死魔法をかけるのと同義であるという話は多分それなりに広まっているハズ
大分減ってきたがそれでも止まることのない"G"の群れ。
猟兵それぞれが多種多様な方法を用いて倒していく中、チルは眼前に広がる群れに対して冷静に分析する。
「……(例の虫を、故郷で見たことはない……冷気に弱いのか?)」
虫はだいたい寒さに弱いからね。
他の猟兵の戦い方を見てその推察は間違いではないと確信したチルは冷気放射杖『マルヴァーマ・スロワー』――火炎放射器とも見紛うそれを両の腕と脚に身に着け、ユーベルコードを用いて全方位に放射する。
それはさながら舞い踊るように、舞い闘う。華麗な踊りと共に披露される冷気の嵐は"G"の群れを瞬時に凍らせると同時に辺りも凍らせ、さながら氷のフィールドが出来上がるかのような様相となった。
かっちんこちんに凍った"G"の群れが一向に動く気配はない。
「(やはり……凍り付けば、動かない)」
一切の動きを見せないそれらを、チルは問答無用にさらに冷気をお見舞いする。
冷気に冷気が重なれば、まさに絶対零度のような生命を奪う凶器と化す……氷の中で枯れていった花々は自然風化するかのようにぱりん、と砕けて風にさらわれていった。
そしてその氷のフィールドの中、サライもまた"G"の群れと真っ向から対峙する。
「黒いのVS黒いの……うん、なんも問題はねェな!
俺の【黒の物真似人形(イミテーション・ブラックドール)】……テメェと黒人形(コイツ)どっちが素早いか勝負してやろうじゃねェか!!!」
黒いのと黒いのの戦いといえば確かに問題はない。具体的な内容にさえ触れなければ何の問題もありはしないのだ。
サライはユーベルコードを使用し、その上で向かい来る"G"の群れに高らかに宣言する。
「テメェの弱点は――その足、ズバリ"洗剤や油をかけられたら滑る"ところ!![自主規制]の足とは言え、お前がソレそのものじゃねえんだろうがよォ……?」
そう、G――足がついてる[自主規制]の方。奴の体は油でできている。故に油をかけてやればつるんと滑って転ぶこと間違いなし。
この『不気味な身体部位』によるオウガたちの行動はユーベルコードに加えて追加で何かを起こすというもの……サライはそれを"ユーベルコードに追加効果が加わった"、即ち"ユーベルコードの一部である"と"概念定義"した上で、弱点として宣言することにより自らのユーベルコード【黒の物真似人形】の効果を十全に発揮させるトリガーと変えたのである。
最高効率で発揮されたユーベルコードにより用いられるこの"G"共のユーベルコードを封じる行動、それは。
「俺たちの二つの体に流れるオイル……たぁっぷり床に流して滑らしてやらァ!!!」
サイボーグであるが故の特徴を生かし、二人分のオイルを思い切り氷のフィールド上にぶちまけることであった。
黄金花の部分は確かに[自主規制]ではない為効果をもたらさないだろうが、そのおみ足には非常に効果抜群だ。
チルの放った冷気で地面が凍ったことによりオイルの滑り具合もまた抜群、"G"たちはまともに動けずその場に滑り転ぶ。すってんころころ。
奴らが身動きがロクに取れないのを確認するとサライは自らの愛刀の一つ『黒鉄刀』を構えて"G"に歩み寄り、その真っ黒な刀身で自身の視界を覆い隠した上で勇敢にもその足を引っ掴んだ!
ダメな人は視界を隠そうが絶対に持てないし、ティッシュペーパーを何重に重ねて袋に詰め込んだ状態のものを火鋏に挟ませた状態でじゃないと掴めないぐらいダメである。
つまり視界を隠せばそれを難なくやってのけるサライは、まさにこの戦いにおける勇者の勇姿を見せていたのだ(?)!
その勇者の太刀筋により、その[自主規制]の足も、その上に君臨する綺麗な花も葉も茎も細かくみじん切りになりました。
ひゅぅ、と風が吹けば森の木々を吹き抜けて飛び去っていく。
――そのままアリスラビリンス内のどっか太陽の照りつける場所で灼け落ちてくれと、サライは心から願った。
大成功
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