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迷宮災厄戦②多くのアリスを生み出さない為に

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦

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●檻は破れ、飢餓が謳われ、そして
 アリスラビリンスの一角、書架牢獄。
 つい先日までここに閉じ込められていた"はじまりのアリス"にして"はじまりのオウガ"たるオウガ・オリジンは今や脱獄し、アリスラビリンスの奥深くに位置している。
 脱獄の際にオウガ・オリジンは憤怒と飢餓を叫んだ。
 猟書家に蹂躙され、ユーベルコードを奪われた屈辱と、それにより腸が煮えくり返る度に苛まれるどうしようもない空腹感を。
 腹を満たす為には柔らかき肉と熱き鮮血――アサイラムより呼び込まれしアリスを求めて狂ったように叫んだ。
 それに呼応するかのように、もぬけの殻となった書架牢獄にはオウガたちが次々集う。
 アリスがくるのをまるで雨乞いを願うかのように集ったオウガの群れ、その中心で一体のオウガが今まさに、アリスを召喚せんと儀式を初めていた。

 「アリスをたくさん呼んでごちそうしてあげたら、きっとオリジンさまはわたしを褒めてくれるよね」

 白い髪を青いリボンであしらった子供が大兎と共に陣を描く。

 「きっと凄く褒めてくれるんだろうなあ。うふふ、頑張らなきゃ。たくさん愛してもらえる為なら……何でも頑張らなきゃ……」

 大量のオウガに囲まれる中、子供は一人愛される未来を夢想しながら儀式を始めるのだった。

●アリス召喚阻止作戦、開始
「みんなもう知っているとは思うが、アリスラビリンスで『迷宮災厄戦』が始まった。
 早速ですまないんだが、『砕かれた書架牢獄』へと向かってもらいたい」

 呼びかけに招集した猟兵たちを前に、地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)が告げる。

「"視た"人が多いとは思うが、改めて説明しておこう。『砕かれた書架牢獄』は、オウガ・オリジンが猟書家(ビブリオマニア)によって閉じ込められていた場所……まあ、謂わば跡地だな。
 アリスラビリンスにある"迷宮のような図書館の国"の中にあるんだが、今ここでアリスを大勢召喚しようとオウガが儀式を始めている。
 これを止めなければたくさんの関係ない人々がアリスとして巻き込まれてしまう……それだけは絶対に防がなきゃいけない」

 アリスを呼び出そうとしている理由は簡単だ。オウガ・オリジン――はじまりのオウガにしてアリスラビリンスのフォーミュラ。
 全てのオウガの頂点に立つ者の命に従わないハズはない……オリジンの空腹を満たすベく、彼女が求めるアリスを呼び出そうとしているのだ。
 そして、それを阻止させまいと迷宮中におびただしい数のオウガが集まっている。
 その中でも司令官相当――儀式を行っている張本人は曰く、子供のような姿をしたオウガらしい。

「このオウガは、簡単に言えば「愛情を求める欲望」が実体化したような存在だ。
 儀式を成功させればオウガ・オリジンが褒めてくれる……つまり、愛してくれると思っているんだろうな。
 大兎を召喚するユーベルコードや、こちら側の知識と記憶を直に反映することで強化するユーベルコードといった厄介なものも持っている。
 儀式を邪魔すれば相応の攻撃が飛ぶだろう、くれぐれも油断はしないよう気をつけてくれ」

 書架牢獄自体はアリスラビリンスにある迷宮のような図書館の中にあるが、【Q】が成功している為儀式を行っている張本人の場所は特定できている。
 現在迷宮中の至るところにオウガが溢れていたとしても最高効率で辿り着くことが容易な状態、猟兵たちに非常に有利な状態でここにおける戦いは始まっていると言っても過言ではない。

「俺が行けないのが心苦しいが、みんななら大丈夫だと信じている。儀式を止めて、アリスにされるかもしれない人たちを助けてやって欲しい。
 ――そして、絶対に、生きて帰ってきてくれ。……俺はもう、誰も失いたくないから」

 転移陣が展開される。
 切実な祈りの言葉を受けながら、猟兵たちは戦場へと向かう――。


御巫咲絢
 こんにちはこんばんはあるいはおはようございます!
 初めましての方は初めまして、新米MSの御巫咲絢(みかなぎさーや)です。
 シナリオご閲覧頂きありがとうございます!初めての方はお手数ですがまずMSページをご覧頂きますようお願い致します。
 シナリオは基本一本ずつしか出さないと言ったがアレは嘘じゃない、嘘じゃないんだけど戦争は別だ!!!

 当シナリオは『戦争シナリオ』でございます。1章で完結し『迷宮災厄戦』の戦況に影響を及ぼすことのできるシナリオとなっています。
 【Q】によって猟兵側有利になっていますのでオウガの群れはある程度スルーできる状態になっています。
 アリス召喚の為儀式を行おうとしている司令官オウガを討伐し、アリスの召喚を阻止してください。
 また、このシナリオには以下のプレイングボーナスが存在しています。

●プレイングボーナス
 オウガの群れを潜り抜け、司令官に素早く接敵する。

●プレイング受付について
 承認が下り次第プレイング受付開始致しますが、大人数はMSのキャパシティ的にお受けし切れない可能性が高いです。
 その為プレイング内容次第によっては不採用の可能性もございますので予めご了承の上プレイングを投げて頂きますようお願い致します。

 それでは、皆様のプレイングをお待ち致しております!
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第1章 ボス戦 『色欲のドッペルゲンガー』

POW   :    楽しいから
【際限なく求める無垢なる愛】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    美味しいから
【直接に触れる方法もしくは大兎】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【経験と知識の記憶】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    温かいから
自身が【全ての性的指向を内包する汎愛性の高い愛】を感じると、レベル×1体の【大兎】が召喚される。大兎は全ての性的指向を内包する汎愛性の高い愛を与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:猫柳つばさ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はオルヒディ・アーデルハイドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

虎鶫・夕映
まずは素早く敵陣に到達するためにUCを使い【ダッシュ】【早業】で一気に駆け抜け、邪魔なオウガは【見切り】で避けきることで無駄な戦闘を避けていきます

そのまま【見切り】で敵の攻撃を読み切った上で【先制攻撃】【怪力】【切り込み】で一発叩き込んだらあとはもう味方に任せてそのまま離脱で



●HIT AND AWAY!
 砕かれた書架牢獄――そこに至る為の迷宮。
 その道のありとあらゆるところをオウガがひしめき蠢いている。
 転移で早速先陣としてやってきた虎鶫・夕映(サルトラヘビ・f28528)は武器を構えながら実際の光景にわあ、と声をあげた。

「聞いた通りのとんでもない量のオウガですね……」

 百聞は一見に如かず、とはまさにこのことかと思い知らされたような気分だ。
 とはいえ、そんな思考をしている暇すら今は惜しい。すぐに気持ちを切り替えるべく一つ深呼吸。

「限られた間だけですが……メガリスの真価、今こそ発揮する時ですからね!」

 そして即座にユーベルコードを発動させた。
【メガリス限定開放・電光石火(メガリス・オーバー・ザ・リミット)】――自らの力と技を爆発的に飛躍向上させる身体強化系のユーベルコード。
 この力により、夕映はどんな歴戦の勇士にも勝るとも劣らぬ技術を一時的に手にすることができる。
 転移先のこの入口が既に司令官たるオウガの元へと最短距離で駆け抜けることのできる一番効率の良い場所。そこにそんな神業の如き技術が加われば、オウガの群れなど車の窓から見える過ぎゆく街並みも同然であった。
 目にも止まらぬ速さで夕映は迷宮を駆ける。
 まるで最初から道ができているかのように、オウガの群れに気取られる――否、気取られたところでどうしようもできない――こともなく。
 最速最短の時間でアリスの召喚儀式を行う司令官オウガの姿をはっきりと肉眼に映しながら、己が拳に宿るメガリス「ティーゲル・ゴーシュ」「ティーゲル・ドロワ」を励起。
 その大きな鉤爪で情報通りの白い髪の子供のような愛らしいすがたのオウガへと迫る。

「っ……誰!?」

 その音にオウガも夕映が迫っていたことに気づき、共に儀式を遂行していた大兎をけしかけるが気づくのがあまりにも遅すぎた。
 大兎がその体躯を持って体当たりをけしかけようとするが、夕映は飛び上がることで回避、大兎の身体は地面を打つだけとなる。
 そして、彼女の拳に携えた鉤爪にてオウガの身体は大きく抉られる。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!!!!!」

 女の子とも男の子とも見紛う幼い声の悲鳴が木霊する。
 身を裂かれたダメージに思わず蹲り、のたうち回る。大兎が慌ててオウガを開放せんと駆け寄り、彼(彼女?)を支えに立ち上がる。

「痛い……痛いっ、何てことするの、せっかくオリジン様に愛してもらえるところだったのに邪魔してきて……っ、絶対に許さないんだから……っ!!」

 幸い、先程鉤爪が触れたことにより夕映の持つ知識と記憶は自身の中にインプットした。
 アリス召喚が最優先だが、それを邪魔した奴の排除はもっと最優先だ。反撃をくれてやろうと大兎をけしかけようとするのだが……

「あれ……あれっ!?いない……ど、どこにいったの……!!」

 夕映の姿はもうそこにはなかった。
 最初からあの一発を叩き込むこと"だけ"を考えていた彼女は、目標を達成したことを確認すると即座にその場から離脱したのだ。
 痛めつけられるだけ痛めつけられて、あとは何もなかったかのように帰っていった――その事実がオウガの表情を怒りに染める。
 だが、それと同時にオウガ・オリジンにアリスを献上した時の光景の夢想――否、妄想かもしれない――も頭を過る。

「っ……悔しいけど、今はアリスを呼ばなきゃ……」

 大兎に指示を出し、再びオウガはアリス召喚の儀に戻ろうとする。
 しかしオウガは気づいていなかった。……夕映の行動の意図に。
 まだまだ猟兵は召喚の阻止の為に送り込まれるのだ、自分一人が長く対峙せずとも一撃を加えていれば、あとは仲間がなんとかしてくれる。
 ガラスは一度ヒビを入れておけば簡単に砕けるもの。
 自分の役目は、そのヒビを入れる為の切り込みを担うことなのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アハト・アリスズナンバー
敵の軍団を潜り抜け、接敵……私には出来ません。私は正面を切って戦う個体なので……ならば私じゃない誰かが、空から攻めてみましょうか。

まずはUCを発動。
――オリジナル・アリス。承認します。
では飛翔出来る靴を使って、司令官の所まで束の間の飛行旅としましょ!
最高速度で飛んで、最短距離を維持するわ。そのまま着地し、【ダッシュ】して素早く司令官にヴォーパルソードで【鎧無視攻撃】【貫通攻撃】をしてあげるわ。
時間をかけずに倒したいので、そのままライフルを【一斉発射】しつつ飛行能力で飛び去りましょう。

あの子も大変な戦いに巻き込まれたものね。
さて、後は任せたわ。――オリジナル・アリス。肉体の権限を譲渡します。



●飛翔せしオリジナル・アリス
 迷宮の入り口。ひしめき合うオウガたちの群れを見て、アハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)は少し困ったように頬杖をつく。

「敵の軍団を潜り抜け、接敵……私にはできません」

 アハトはアリスズナンバーの中でも正面突破に特化した個体であった。
 小細工を仕込むとしてもせいぜい現在の自らの躯体を囮にして自爆するというぐらい――いや、その自爆戦法がとても洒落にならない強さであるのだが。
 だがその自爆戦法は今回の任務においては良い結果を齎す確率は実に低いと本人も理解していた……故に。

「……ならば、私じゃない誰かが空から攻めてみましょうか」

 その"私じゃない誰か"を呼び出すべく、アハトはユーベルコードを発動する。

「権限譲渡を申請。『肉体の操作権限を一時的にオリジナル・アリスに移行』」
『――オリジナル・アリス・承認します』
「『同調開始』」

 アリスズナンバーは一人のアリス適合者から複製され、量産されたフラスコチャイルドだ。
 アハト含む全ての個体が、オリジナル・アリス――アリス・グラムベルとの通信及び自身の個体の操作権限を互いに譲渡する機能を備えている。
 それは各個体にはできぬ戦いが必要な時……マザー・アリスたるアリス・グラムベルの力が必要だと判断された時にこそ承認されるのだ。
 今はまさにその時……『迷宮災厄戦』を終わらせる、即ち彼女らの使命である"アリスの物語を幸せにする"為に、オリジナル・アリスが矢面に立つ。

「……では、司令官のところまで束の間の飛行旅としましょ!」

 ふわりとアハト――オリジナル・アリスは宙に浮かぶ。
 権限を移行したことによりアハトではできぬあらゆる行動ができるようになった現在の彼女の靴には飛翔機構が備わっていた。
 地上をひしめくオウガの群れでは到底到達できぬ高度を維持したまま最速最短で一直線に翔ける。
 アリス召喚を阻止させまいと集まったオウガの群れを何も見なかったかのように最高効率で最奥の書架牢獄へと辿り着いた。
 その空を翔ける音が聞こえれば、司令官オウガである白い髪の子供はまたかと歯噛みする。

「また邪魔するの……!?でも、こいつ……」

 オウガが彼女の姿をその目に入れると、何故か脳裏に愛しいオリジンの姿が過る。

「……何で、オリジン様なんかじゃないのに……?」

 それはオウガ・オリジンが"はじまりのアリス"でもある故なのか。
 アリス・グラムベルはマザーにしてオリジナル、アリスズナンバーたちにとっての"はじまりのアリス"であるが、彼女はれっきとした人間でありオウガ等ではない。
 だが愛への渇望の権化たるこのオウガにはその分別すらきっとつかぬのだろう……故にオウガは、彼女に対して"愛"を感じてしまった。
 それが鍵となっておよそ数にして80体近くもの大兎が呼び出されるも、愛を感じたが故に動揺したのが大きな隙となりヴォーパルソードがオウガの肉体を貫いた。
 悲鳴すら上げるという発想もなく、何が起こったのかわからぬままにオウガはその場に蹲る。
 大兎が殺到する前にアハト――オリジナル・アリスはヴォーパルソードを引き抜くとライフルの一斉発射にて大兎の群れを掃討すると踵を返し、迷宮の入り口までと先程と同じ速度と高度で戻っていく。

「……あの子も大変な戦いに巻き込まれたものね」

 アハトの現状を見てオリジナル・アリスは肩を竦めるように笑う。

「さて、後は任せたわ。『――オリジナル・アリス、肉体の権限を譲渡します』」

 それはアハトに向けた言葉でもあり、自らの後にまだ続く猟兵たちにも向けた言葉であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第一『疾き者』のほほん忍者
一人称:私/私たち
対応武器『漆黒風』

生前請け負った任務と似てますしー。犠牲は出したくありませんからー。
大丈夫ですよー、帰ってきます。
そう、生前『鬼』とも言われた私の矜持にかけて、ね。

(口調『複合型悪霊』。語尾伸ばし消滅)
【暗殺】の要領で。【情報収集・地形を利用】駆け抜けられる場所は【ダッシュ】し、慎重に行く場所は【忍び足】。
敵からの攻撃は【見切り】、目標を見つけたのなら【早業】で指定UCと【属性攻撃(風)】を使いつつ武器【投擲】。
長居は無用。仕留められなくても離脱で。

※他三人(全員武士)
『あいつが一番怖い』


リヴィア・ハルフェニア
私達に有利になっている状況で無駄な戦いをする必要はないわ。

まずは小声でUCで隠れるのが得意な闇の精霊達を見付からないように最低数だけ素早く召還し、回りのオウガの場所を正確に把握ね。
そして【目立たない】様に音をたてず避けていき戦闘を回避よ。

あとは対象の敵に【高速詠唱】&【多重詠唱】と【属性攻撃】で練り上げた【全力魔法】を放ち、【第六感】で攻撃は避けるとしましょう。

(この状況下で長居は無用ね。)

囲まれる前に離脱しましょうか。

※アドリブ歓迎



●飛ぶ猟兵跡を濁さず、立つオウガは跡を……?
 時は少しだけ遡り。
 転移陣に乗りながら馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)は今回向かうべき戦場についての概要を脳内で反芻し、過去の経験を照らし合わせる。
 そして「生きて帰るように」という願いに対し、穏やかな笑みを浮かべて言葉を返す。

「生前請け負った任務と似てますしー、犠牲は出したくありませんからー。大丈夫ですよー、帰ってきます」



 ……そして現在。
 戦場に着いた義透、その穏やかな笑みは一瞬にして消え失せる。
 ひしめき蠢くオウガたちを見据え、愛器たる『漆黒風』をその手に携えて。

「――そう、生前『鬼』とも言われた私の矜持にかけて、ね」

 言葉を紡ぎ一気に駆け出した。
 現在の彼――表層に出ている人格『疾き者』は潜入暗殺のエキスパート。
 今回のようにはっきりと敵の居所も討伐すべき対象も把握できている戦いにおいて、彼はまさに適任と言える実力者であった。
 現状からの状況分析、そこから場に適した地形の利用法の選択を瞬時に行い、オウガたちの隙間を縫うように駆け抜けていく。
 攻撃が飛べば壁を伝うことで回避し、または足元を潜り抜けることで標的を困難にし、また気配を気取られぬ必要があるならば足音と共に気配を消し……一切の迷いない足取りでの進行速度はそれこそ正に空中を高速で翔けるのと全く相違ない。
 一切の情を切り捨て、暗殺者は迷宮を駆ける――。

 一方時を同じくして、義透によってオウガたちが翻弄されるのを見ている視線がいくつかあった。
 翻弄された後のオウガたちの位置を把握するかのように飛び回るそれが気づかれることはない。
 彼(彼女?)らの気配は一様によっぽどの技術者であっても感知が困難な程に消されているからだ。
 数匹(もしくは数人)、迷宮の作りを隅々までくまなく見渡し把握した後入り口へと戻り一人の少女へ迷宮内の現状を報告する。

『リヴィア、全部見てきたよ!』
「ありがとう、おかげで効率の良いルートが見つかったわ」

 リヴィア・ハルフェニア(歌紡ぎ精霊と心通わす人形姫・f09686)が微笑みかけると、彼ら――闇の精霊たちは嬉しそうに彼女の周りを飛び回る。
 後から訪れた彼女はまずユーベルコードを用いて友である闇の精霊を召喚、迷宮の構図とオウガの位置を正確な把握を図っていたのだ。

「私達に有利になっている状況で無駄な戦いをする必要はないわ。避けれる戦闘は避けて真っ直ぐに向かいましょう」

 相棒であるルトを抱え、リヴィアは音を殺して迷宮へと足を踏み入れる。
 迷宮に蠢くオウガの位置を把握しておくことで刺激を与えることがない足の踏み場も把握していたリヴィア。
 オウガたちの死角を通っていき、義透の迅速な軌跡に翻弄されたのもあってオウガたちは目立たぬよう気配を隠す彼女に気づく気配はない。
 司令官以外はあまり頭の回らぬ者の集まりなのもあって一切の被弾をすることなく司令官の元まで無傷で辿り着くことができるだろう――こうして、再び儀式を行おうとしていたオウガに2人の猟兵が迫るのだ。
 一人は目にも止まらぬ素早さで、もう一人は一切の音を消して。

「くっ、またなの!?わたしの邪魔をしな――」

 再び大兎を呼び出しけしかけようとしたオウガの肩を義透が投擲した『漆黒風』が掠める。
 風の力を纏った『漆黒風』は義透の優れた技術も相まって神速とも見紛う程の速度で次々にオウガに傷をつけていく。

「くぅ……!」

 オウガの声に呼応し大兎が反撃せんと飛びかかるが、義透はそれをあっさりいなし大兎の眉間にも投擲。
 眉間に突き刺さった大兎はその場に倒れ、ドミノのように他の大兎を巻き込んでは吹き飛ばされる。
 それはあまりにもできすぎた偶然かのように、オウガすらも巻き込み大量の大兎の山に埋もれることとなった。

「お、重た……っ!」

 流石に大兎が何匹何十匹と乗っかかるとただでさえ子供のような身体に多く負傷している状態では抜け出すことはままならないワケ。
 何とかして抜けようとするも、今までの負傷に身体が悲鳴を上げては力が抜け、身体は軋む一方だ。

「ぶっ!?」

 さらに"不幸なことに"眉間を貫かれ死した大兎が顔に激突した。
 ユーベルコードによる呪詛の一端が発動したのである。
 涙目で義透を睨むオウガは、衝撃で鼻が折れるか歯が折れるかしたのか濁ったような声を上げて殺意に顔を歪ませた。

「……ゆ、ゆ゛る゛さ゛な゛い゛ぃ…!!」
「……長居は無用。我らの呪いは既に果たされた」

 しかし義透は一切気に留めずするりと踵を返し、その場を離脱した。まるで役目が終わったと言わんばかりに……
 あいつが一番怖い、と自らの中にいる他3人が慄いているのも気にもとめず去っていく。
 直後、オウガの足元に突如魔法陣が出現する。
 すっかり義透に気を取られていたあまりリヴィアが魔術を詠唱していることにも気づかなかったのだ。
 絶対零度とも見紛う冷気が傷口を蝕んでいく――最早子供とすら思えぬ見にくい慟哭が響く。

「愛されたいという気持ちは理解できなくもないわ。
 けれど――その為に罪のない人々を巻き込もうとしたことを私は許さない!」

 リヴィアが相棒たるルトでかつん、と床を叩けば、足元とはまた別に多重詠唱で練り上げた上空の魔法陣から光が落ちる。
 最早愛らしい子供の皮が剥がれたかのような醜い、不協和音のようなオウガの悲鳴が迷宮中に木霊した。
 しかしまだ生き残った大兎たちが術者であるリヴィアを叩かんと殺到し始めていることから、まだ生きているようだ。

「(仕留めきれなかったけど……どの道状況は私たちに向いている。この状況下で長居は無用ね)」

 このまま留まっていれば囲まれるのも時間の問題。
 風向きはこちら側な上自分以外にも猟兵が向かっているのは確認済であり、相手が力尽きるのも同じく時間の問題だ。
 ならば今最善は撤退し他の戦場の援護へ向かうこと――そう判断したリヴィアは再び音を殺してその場を離れたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水心子・静柄
ここが迷宮なら壁を壊して進めば指揮官の所までショートカット出来るわね。グラウンドクラッシャーと得意の地形破壊で壁をぶち抜くわ。ただ一度でも壁を壊せばオウガに気付かれて殺到されると思うから、壁をぶち抜くのは最小限かつ最短時間でいくわ。警戒は野生の勘で、通路の選択は第六感に従うわ。袋小路の方に進めばオウガも減っていかないかしらね。それで袋小路から一気に壁をぶち抜いていって指揮官を目指すわ。指揮官を見つけたらとりあえず脇差(鈍器)で撲殺よ。


アルフレッド・モトロ
隠密に自信はないが、
スピードなら任せとけ!

現地に着き次第【ヘルカイト】に【騎乗】してUC発動!
風を切る空中【サーフィン】だ
邪魔なオウガたちを【野生の勘】で避けつつ、儀式まで直行だ


愛情を求める少女、か…
この子もオブリビオンなのか
やるせねぇ戦いだ

せめて一撃で
引導を渡してやれるなら……!

よし、ヘルカイトのブレーキはかけない!そのまま突っ込む!
【覚悟】を決めて【捨て身の一撃】を狙う!

攻撃が飛んで来んのは分かってんだ

【ワンダレイアンカー】で攻撃を受けて、ヘルカイトのスピードと俺の【気合】と【怪力】を乗っけて【カウンター】だ!!


これは【優しさ】なんだろうか?
いや、ただの自己満足かも知れねぇなあ……



●真っ直ぐ行ってぶっ飛ばす~優しさの"定義"~
 さて、と水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)は試しに迷宮の入り口付近の壁をこんこんと叩いて確認する。
 
 「……ここが迷宮なら壁を壊して進めば指揮官の所までショートカット出来るわね」

 実に力技な発想である。
 確かに迷宮のような図書館だから壁を壊そうと思えばできる者はできるのだろうが本当にやる奴がおりますか。いやここにいますね?

「ただ一度でも壁を壊せばオウガに気づかれて殺到されると思うから……」

 壁をぶち抜くのは最小限かつ最短時間で行わねばならないとなると、オウガに気づかれにくい場所で行う必要がある。
 となるとまずは……と、静柄は迷宮に足を踏み入れた。
 オウガに可能な限り気づかれないよう、野生の勘が危険を告げる位置を回避しながら第六感が伝えてくる道筋に従い歩を進める。
 すると、眼前に広がる光景に変化が訪れ始めた。

「やっぱり袋小路の方に行くに連れてオウガの数が少ないわね」

 袋小路――即ち行き止まり、ハズレのルートである。
 ハズレの道にまで戦力を割くのはよっぽどの奇策でかつ相手が確実に引っかかる状況でなければ愚行でしかない。
 野生の勘と第六感を駆使し、無事オウガ一匹も存在しない袋小路へと辿り着く静柄。
 最初にした時と同じようにこんこんと叩いてから壁の強度や脆い場所を確認しユーベルコードを発動。
 彼女の本体である脇差がその壁にぶつかった瞬間、ドゴォン――と大きな音を立てて穴が開いた。

 一方、何とかボロボロになりながらも大兎の遺骸の山を脱出したオウガ。
 どがん、どがんと何かが派手に崩れる音に体を震わせる。

「……な、何?何の音……?」

 音は徐々にこちらに近づいている。
 人より聴覚が非常に鋭い大兎たちも自分たちの周りに驚いて集まり縮こまっている中、砕き続ける音はさらに距離を縮め――ついにこの儀式の間の壁すらも崩れ落ちた。

「ふぅ。無事たどり着いたわね……」

 自らの本体である脇差についた土埃を払い、静柄はまずは一仕事終わらせたと言わんばかりに一息をつく。
 そしてオウガの姿を確認するとその綺麗にしたばかりの本体を再び構えるのだ。
 ……嫌な予感がする。めっちゃくちゃ嫌な予感がする!――オウガは大兎を抱えて縮こまりがたがたと震える。
 え、あの壁砕いてきた奴でわたしらボコられるの?ボコられるよねこれ??

「そ、そんなの嫌!!わたしはオリジン様に愛してもらうんだっ!!」

 感情を爆発させれば体が著しく変化する。
 なんとしても儀式を成功させるべく、自身の身体を変化させてまで静柄に一撃見舞おうとするのだったが――

「かふっ……」

 その腹に鞘に収められた脇差の一突きを受け、呆気なくふっ飛ばされた。
 静柄のゴッドハンドたる所以の一つでもあるその怪力の一撃は、反対側の壁にオウガをとてつもないスピードで吹き飛ばし叩きつける程の威力を誇る。
 そんな怪力で体を強く打ち付けたオウガは立ち上がろうとするも全く言うことを聞かない。
 そんなオウガに静柄はじりじりと脇差を構え、にじり寄る。

「ひぃ……!!」

 涙目な視線を向けられようと容赦などあるハズがなく、大兎たちは先程の音からずっと怖くて怖くて主を助けに行くのもできない様子。哀れかな。
 護るものも何もなくなった今、ハイパーフルボッコタイムがここに繰り広げられたのであった……



「おらァ!退いた退いたァ!!」

 そして一方、オウガ軍団もびっくりする程の猛スピードで迷宮を駆けるのはアルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)だ。

「行くぜ相棒!フルスロットル!!」

 相棒であるトビエイ型反重力サーファー『ヘルカイト』に乗り、ユーベルコードを用いながらオウガの波を培ったサーフィン技術で難なくいなしていく。
 オウガに気づかれぬよう接敵できないなら、オウガに気づかれても一切対処のしようがない速度で駆け抜ければ何ら問題ないのである。
 エイとしての野生の勘が進むべき道を伝え、アルフレッドは相棒と共に迷宮を爆進。
 その爆速が生み出す突風で時折オウガの群れが吹き飛ばしながら道を切り開き――オウガの姿を捉える。
 猟兵たちによる渾身の一撃を喰らい続けたボロボロの少女――正確な性別は実際にはわからないのだが、少なくとも彼にはそう見えた――が、身体を引きずりながらも儀式を遂行しようとしているのを見てアルフレッドは目を細めた。

「(愛情を求める少女、か……この子もオブリビオンなのか)」

 やるせねえ戦いだ、と独りごちる。
 オブリビオンとは言え、小さな子どもの姿で愛を求めるその姿を見たアルフレッドの心境は何とも言い難い複雑なものだった。
 とはいえ攻撃を躊躇えば、より多くの人々がこの戦場に呼び出されてしまう――迷う時間は残されていない。
 湧き上がる罪悪感を押し殺し、アルフレッドはブレーキをかけることなく真っ直ぐにヘルカイトで突進することにした。

「(せめて……一撃で引導を渡してやれるなら……!)」

 これ以上の苦痛を与えるのは酷だろう、せめて刹那にて眠らせてやった方が良い……そう思い至ったアルフレッドの脳裏にふと、一つの疑問が浮かぶ。

「(……これは、優しさなんだろうか?)」

 苦しまずに済むようにしてやるのは果たして本当に"救い"なのか。
 オブリビオンであるが故に倒すことしかできぬからと、子供に手をかけることは"優しさ"なのか?
 ……いや、一切の"エゴ"が絡まぬとはとても言い難い。
 
 だから今自分が考えたことは、行おうとしていることは、きっと。

「――ただの自己満足、かもしれねぇなあ……」

 自嘲するような笑みを浮かべて呟き捨てることで頭の中を整理する。
 そしてヘルカイトのスピードをより速め、愛用の武器である『ワンダレイアンカー』を構え、突進――!
 もちろんオウガが気づいていないワケがない。怒りに顔を歪ませ、生き残った大兎たちをけしかける。

「攻撃がくるのは……わかってんだッ!!」

 大兎たちの突進を『ワンダレイアンカー』で受け止め、そのまま大きく振り回す。

「なっ……!」

 今の攻撃を受け止められたことにより、オウガはアルフレッドの持つ知識と記憶の吸収には成功した。
 だが捨て身の突貫に対し即座に対策を立てることはできなかった、既に大分体力も消耗している状態では猛スピードで迫る相手に対抗する術もない。
 気合と覚悟の籠った声にならぬ裂帛の咆吼と共に、ヘルカイトのスピードとアルフレッド自身の持ち得る怪力が合わさった強烈な一撃が振るわれ……蒼炎の柱が立ち上った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ描写×
WIZ

【迷彩】魔法で姿を消して【怪力】でオウガ同士をぶつけ
喧嘩させる事で騒ぎを起こし
守護霊の憑依【ドーピング】で強化した身体能力と
【第六感・見切り】で危険を回避しつつ【ダッシュ】で通過

貴方が指揮官ね。
こんなに傷ついて可哀想に……

【誘惑・催眠術】で優しく語りかけ
【念動力・マヒ攻撃】で金縛りにして
傷口に包帯を巻いてあげる

困惑しつつも大兎を召喚するだろうけど
こちらも『私達の楽園』で85人の守護霊を召喚。
一人一人が私と同じ強さ。しかも再生能力つき

雷の【属性攻撃】で大兎を倒し
指揮官を怪力で抱きしめ
頭を撫でて【慰め】ながら【生命力吸収】のキス

私が貴方を愛してあげる。
私と一つになりましょう?



●眠るように、終焉を
 ――オウガは、まだ意識があった。
 とはいえ、もう殆ど動けなければ今にも鼓動が止まりかける寸前であり死に至るのも時間の問題である。
 先程受けた攻撃が致命傷になったのは確実であった。
 ぼんやりと喧騒の音が聞こえる……ほとんど霞んだ視界に映ったのは、先程壁に空いた穴の向こうでオウガ同士が争っている姿。
 何故同士討ちのような争いをしているんだろうとは思ったが、思考する程の体力も残されておらずこのまま瞳を閉じようとしたその時。

「貴方が指揮官ね」

 女性の声が響く。再び目を開ければそこには一人の少女が立っていた。

「こんなに傷ついて、可哀想に……」

 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)はオウガに対し心から憐れみ、慈しむように視線を向け甘い声で囁きながら近づいていく。

 ――あなたは誰?敵なの?それとも味方なの?

 そう問おうとするオウガであったが、最早声すらも出せぬ程に衰弱しており実際に言葉としては紡げない。

「大丈夫、無理に喋らなくていいわ」

 ドゥルールはそう言うと包帯を取り出し、オウガの傷口に巻き始めた。
 すると、不思議なことにオウガの体から痛みが消えていく。
 正確には手当をすると同時にドゥルールが自らの力を行使し感覚機能を麻痺させているのだがそんなことに考え到れる程の力は今のオウガにはなかった。

 ――なんで?猟兵なのに、わたしを助けてくれるの?ワケがわからない。……でも、優しい感じがする。

 意識が飛びかける空白とは別のふわふわとした何かがオウガの思考を染めていく。
 それはドゥルールがこの愛の渇望の権化に向ける"愛"そのものなのだと認識すれば、それに呼応するかのように大兎が現れた。
 その数およそ85匹。それら全てが、愛を求めてドゥルールに殺到する――それを見たドゥルールはくすりと笑い、ユーベルコードを行使。
 召喚されるは85人の守護霊……それら全てが無限の再生能力と彼女と同一の強さを持つ。
 一人ひとりが一匹一匹と対峙し、雷を持って屠っていく――しかし、オウガにはそれが兎を慈しみ可愛がっている光景にしか見えなかった。
 最初に声をかけられた時に既にドゥルールの術中に陥っていたが故に。

「だいじょうぶ、私が貴方を愛してあげるわ」

 そして包帯を巻き終えたドゥルールはオウガをそっと抱きしめた。
 力を込めながら、感覚の消失した体をじわりじわりと抱き潰していくかのように……

「だから、私と一つになりましょう?」

 頭を優しく撫でて、そっと唇を重ねる。
 それはとても柔らかく暖かく、優しい感覚がした。

 ――ああ、このひとはわたしを愛してくれるんだ。嬉しいなあ……

 口づけにより僅かに残っていた生命力を奪われたオウガ、その体が少しずつ砂と化していく。
 その表情は幸福感に包まれ、心安らかに眠る子供のそれと変わりなく――愛されているんだという確信を得ながら、ドゥルールの腕の中でオウガは息絶えた。
 体を構成していたものであった砂は、迷宮を吹き抜ける風にさらわれていく。
 その白い髪にあしらわれていた蒼いリボンと共に――

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月03日


挿絵イラスト