迷宮災厄戦⑥〜消滅した気まぐれ(作者 篁みゆ
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●空に浮かびし城
 そこには城がある。
 洋風めいたその城は、それでもサムライエンパイアの風情を残している。
 虚空に浮かんでいるというのも、このアリスラビリンスでは異常事態とは認識されにくいだろう。
 その一画に集いしは、緑の肌を持つオウガ。
 彼らの手には、サイコロやコインが握られていて。
 彼らの背には、例外なく亡霊のような禍々しいものがうごめいていた。

●城の名は
「来てくれてありがとう。早々に申し訳ないんだけれど、本題に入らせてもらうよ」
 グリモアベースにて、刀を佩いた長身の男性――グリモア猟兵の結布院・時護(時と絆を結び護る者・f11116)は、いつものように穏やかな声色ではあるが、その言葉はどこか急いでいるようにも聞こえた。
 そんな彼の背後に広がるのは、アリスラビリンスの風景。迷宮災厄戦に関する予知であることは間違いないだろう。
「アリスラビリンスのオブリビオン・フォーミュラ『オウガ・オリジン』は『猟書家』と名乗る者たちに殆どの力を奪われてしまっている。今回はオブリビオン・フォーミュラだけでなく『猟書家』の動きも警戒しなければいけない複雑な戦いだけれど……」
 時護は穏やかな表情のまま、集った猟兵たちの顔を見渡して。
「まずは道を切り開かねばならない。これまでの戦争と同じく、ね」
 そうして彼が説明し始めたのは、虚空に浮かぶ城の情報。
「洋風の要素が多く見られるけれど、サムライエンパイアの城である『原城』に行ってもらいたいんだ。そして、そこにいるオウガを倒してほしい」
 時護によれば、城内のオウガたちは『ぱらいそ預言書』という謎の信仰を信奉する狂信者と化しており、その身に謎の亡霊のようなものを纏っているという。
「この亡霊のようなものがオウガたちを変化させているのか、オウガたちは負傷や死を厭わず、捨て身で襲いかかってくる」
 その捨て身を逆に利用することができれば、優位に戦えるだろう。
「君たちに戦ってもらうオウガは『賭博の国の住人』……賭け事が生活の一部に組み込まれた環境で暮らしてきたオウガたちだ」
 元々、生かすも殺すもコインやサイコロの気まぐれで決めるような性分のオウガたちだが、彼らが狂信者と化した結果、どうなったかというと――。

「イカサマを厭わなくなったんだ。つまり、賭けの結果次第とみせかけて、何らかの方法で自分たちに必ず有利な結果が出るようにしているんだよ」
 彼らの矜持のようなものが、纏った亡霊のようなものによって踏みにじられ、改変されている状態である。
 だが。
「そこに同情している余裕はない。むしろ、倒してやるのが救い、かもしれないね」
 どちらにせよ、このオウガたちを倒して道を開かなければならないのだ。
 ならば情けは無用。
「これは言うまでもないと思うけれど、彼らはユーベルコードだけでなく、普通に武器を扱う個体もいる。サイコロだってコインだって、凶器となるように改造されているかもしれない。くれぐれも注意して行ってくれ」
 そう告げると、時護は頼むよ、と笑みを向けた。


篁みゆ
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「迷宮災厄戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 こんにちは、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
 はじめましての方も、すでにお世話になった方も、どうぞよろしくお願いいたします。

 床に落ちたダイスって、十分凶器ですよね。特に4面ダイス。

●採用について
 戦争シナリオであることも鑑みて完結を優先させていただきます。プレイングをお返しすることもございます。
 また、採用についてマスターページを更新しておりますので、目を通していただけると幸いです。

●受付について
 オープニングが公開され次第、プレイング受付を開始します。早期に締め切る可能性は0ではありません。

●お願い
 単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください(今回に限っては、お相手とプレイング送信時間が大幅にずれた場合、プレイング締切になってしまう場合もあるかもしれません)
 また、ご希望されていない方も、他の方と一緒に描写される場合もございます。

 皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 集団戦 『賭博の国の住人』

POW ●君の生き死にはお手軽にコインの裏表で決めようか?
非戦闘行為に没頭している間、自身の【運】が【著しく良くなり】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD ●浪漫はいらない、勝って誰かを負かすのが好きなのさ
【これまで賭け事に費やした】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
WIZ ●さぁ、君の命を掛けるに相応しい遊びは何だい?
無敵の【博打打ち】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


篝・倫太郎
ふぅん……賭けなぁ
切った張ったはイカサマしねぇから意味があるだろよ……
そもそも、元の連中は
そこは矜持つーか美徳として持ってたんだろーにな

ま、いいぜ?
賭け事に勝つ方法って知ってるか?

無敵の博打打ちがなんだって?
そいつは何処に居るってんだ?

天地繋鎖使用
対象は想像された博打打ち
勿論、UC使用と常時に俺もダッシュで接近と同時に華焔刀でなぎ払い
博打打ちも河童もどっちも巻き込んで範囲攻撃
刃先返して2回攻撃
イカサマは念動力でこっちの有利に持ち込んだり
第六感や野生の勘も駆使する
色々武器として使って来るなら見切りと残像で回避

なぁ、さっきの賭け事に勝つ方法ってヤツ
教えてやるよ……
取って置きだぜ?勝つまでやんのさ!


 原城へと乗り込んだ篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)はその視線の先に緑色の一角を捉え、目を細める。
(アレ、か……)
 その一角に集うオウガは、服装こそはUDCアースの男性の軽装という感じではあるが緑色の肌をしており、そしてその頭部や顔の特徴を見るとどうしても別の呼び方が浮かんでくる――河童、と。
 グリモア猟兵が『賭博の国の住人』と呼んでいたのは意図して『河童』という呼称を避けたのか、真実はわからないし今はどうでもいいけれど。
(ふぇん……賭けなぁ……)
 かつてサイコロやコインの機嫌で自身の指針を決めていた彼らは、もういない。その身に取り付いた亡霊のようなものによりイカサマを躊躇わなくなり、捨て身で猟兵たちを襲う。
「切った張ったはイカサマしねぇから意味があるだろよ……」
 ぽつり、零した倫太郎は思う。
 そもそも元の彼らは。
(そこは矜持つーか、美徳として持ってたんだろーにな……)
 嗚呼、哀れにも歪められた彼らが倫太郎に気がついた。数体がこちらへと駆けてくる。
「やぁ、命を賭けた遊びをしようか」
「ま、いいぜ?」
 そう告げた彼らの『遊び』がイカサマにまみれていることを知っている倫太郎としては、空々しいような、虚しいような、憐れみさえ覚える言葉に聞こえたけれど。その誘いに乗ってやる。
「なぁ、賭け事に勝つ方法って知っているか?」
「勝っても負けても恨みっこなしだ!!」
 もはや倫太郎の言葉すらも届いていないのか、亡霊纏いし河童三体が、こちらへと接近する勢いを利用して何かを投擲する。
「おっと……」
 ちらっと見えたそれは、サイコロだ。けれども捨て身になるあまり予備動作が見え見えであるからして、己の動体視力と直感を利用すれば、倫太郎がそれを避けることはさほど難しいことではなかった。
 だが、避けられたことに悔しがるより先に、河童たちはそれぞれ『無敵の博打打ち』を出現させてゆく。
 歴戦の猛者感を醸し出す、老齢の河童。
 チャラそうに見えるけれど、目の奥は笑っていない河童。
 外見は子どもにしか見えないけれど、賽を操る手つきに熟練感のある河童。
「……全部河童かよ」
 なんとなく、なんとなくそんな気はしていたけれど。それぞれが呼び出した『無敵の博打打ち』を目にして、思わず呟いた倫太郎。
「河童と呼ばないでくれないか」
「そうだ、我々は博打打ち。そこには種族の壁も」
「貴賤も存在しないのだよ!」
 彼らは『河童』という単語に酷く反応を見せた。かつて何か嫌な目にでもあったのだろうかと考えてしまうレベルではあるが、今はそんなことにかかずらっている暇もないし興味もない。
「で?」
 その手に『華焔刀 [ 凪 ]』を握ったまま、それがどうしたとばかりに聞き返した倫太郎に、河童たちは喚び出した三体の河童をけしかける。

「「「さぁ、無敵の博打打ちの力を見せてくれ!」」」

 老齢の河童がフチが刃のように鋭くなった花札を、チャラそうな河童が害を及ぼす液体を塗ったと思われるダーツを、子どもの河童が手にしていた賽を投げつけてくる!
 だが、彼らがそれらを投擲し終えるより早く。

 ――其処に天地を繋ぐ鎖を穿て――。

 三体を順に指した倫太郎が地を蹴った。
 指をさされた無敵の博打打ちたちはというと、何かにその場に縛り付けられたかのように動きを止めてしまった。投擲の動きの途中で何かに絡め取られたかのように動けなくなった彼らの手から、取り落とした花札やダーツがそれぞれの足に落ちて刺さり。賽に至っては落下と同時に破裂して、小規模ではあるが煙幕のようなものを作り出した。
(イカサマっつーより攻撃寄りなのは、やっぱり取り憑いているアレの影響か?)
 博打に対するイカサマというよりも、この個体たちはイカサマを戦闘に特化した方向へと強化されているようで。

「無敵の博打打ちがなんだって?」

 なら、なおさら。

「そいつは何処に居るってんだ?」

 無敵はおろか、博打打ちすらこの場にいないという事実が浮き彫りになったのみ。
 接敵した倫太郎は『華焔刀 [ 凪 ]』の長い射程を利用して、煙幕ごと無敵の博打打ちたちを薙ぎ払う。

「百歩譲ってこの命のやり取りが博打だとしても」

 そのまま刃を返し、一歩踏み込んで『華焔刀 [ 凪 ]』を振るう。

「俺に攻撃すら当てられなくて、どこが無敵だっていうんだ」

 深く踏み込めば、手応えが増えた。それは博打打ちだけでなく、本体である河童たちも巻き込んだ証左。

「そんっ……」
「無敵……がっ……」

 倫太郎の指摘に、河童たちの中に浮かんだ『疑念』。
 確かに無敵の博打打ちたちは、攻撃動作自体を止められ、刃に凪がれてしまった。
 それは、命のやり取りという博打において、『無敵』とは言えないのでは?

「おらぁっ!」

 河童たちの僅かな逡巡。それを機と見て倫太郎は長柄を取り回す。
 嗚呼、先程よりも手応えが薄いのは、無敵の博打打ちたちが『無敵』でなくなったからだろう。

「なぁ、さっきの賭け事に勝つ方法ってヤツ、教えてやるよ……」

 無敵の博打打ちたちを消し去った倫太郎は、残った河童たちを見据える。
 心なしか、彼らの顔色が悪い……ような気がする。

「取って置きだぜ?」

 そう告げた倫太郎は一歩踏み込むと見せかけて、最初に河童たちが放ったサイコロを念動力で自身の後方から彼らに向けて投擲!

「勝つまでやんのさ!」

 そして不意を突かれた彼らを纏めて斬るは、『華焔刀 [ 凪 ]』の鋭い刃――。
成功 🔵🔵🔴

ブーツ・ライル
さあ、仕事の時間だ。

_

捨て身で襲い掛かってくるのは、逃げ回られるよりずっと戦いやすい。
亡霊だか何だか知らんが、矜恃が踏み潰されているのなら
俺が、その亡霊とやらごと蹴り払ってやろう。

博打打ちなら、無敵になったとしても面白くなかろうよ。
更にそれがイカサマによってなされるのなら、もはや博打とも呼べまい。
…そう挑発し、疑念を抱かせれば上々。

一瞬の好機も逃さず、ユーベルコードを発動。
赤き宝石が──煌めく。

「"賭け"は、どうやら俺の勝ちのようで」
残念だったな。

_
(アドリブ、マスタリング歓迎
NG:味方を攻撃する)


(捨て身で襲い掛かってくるのは、逃げ回られるよりずっと戦いやすい)
 ブーツ・ライル(時間エゴイスト・f19511)が緑の肌を持つ彼らに気がついた数瞬後、彼らもブーツに気がついて。
(亡霊だか何だか知らんが、矜恃が踏み潰されているのなら――俺が、その亡霊とやらごと蹴り払ってやろう)
 向かってくる二体の賭博の国の住人を、その赤く鋭い瞳で射抜き、ブーツは告げる。

 ――さあ、仕事の時間だ。

 それは敵に告げたわけではなく、かといって近くにいる他の猟兵たちに告げたわけでもなく。あえて誰かに、と対象を明確にするならば、自分の『裡(うち)』に、だろうか。
「敵にその力を見せてやりなよ!」
「ああ、その無敵の力をね!」
 静かに佇む黒衣の男――長身に鍛え上げられた肉体を持つブーツに、彼らはそれぞれ喚び出した『無敵の博打打ち』をけしかける。
 一体は、体のラインが露骨に出る扇情的なドレスに身を包んだ、妖艶な女を。
 もう一体は、曇りなき瞳の、『正統派』と形容されるような博打とは縁遠く見える青年を。
「……、……」
 女の手には、この世界によく似合う瀟洒な絵柄のトランプがあり。青年の手からは、コインの金色が漏れいでていた。
 トランプやコインにどんな仕掛けが施されているかは知らないが、そんなこと、ブーツにとっては些事である。

「博打打ちなら、無敵になったとしても面白くなかろうよ」

 怯むこともなく、微動だにせず、淡々と言葉を紡いだブーツ。『無敵』になるということは、何度賭けても『必ず勝つ』ことを意味する。これは、勝ちも負けもコインやサイコロの気まぐれ、気分次第だと楽しんでいたであろう彼らの在り方に矛盾するのではなかろうか。
「なっ……」
「これは僕たちが考える最強の博打打ちなんだよ」
「そうだ、想像の中でくらい無敵でも問題ないだろう!」
 一瞬息を呑んだ彼らは瞬時に、呈された矛盾を論破するべく理論を紡ぐ。よく口が回ることだ。まあ、頭も口も回れば回るほど、博打を楽しめるのかもしれないが。

「更にそれがイカサマによってなされるのなら、もはや博打とも呼べまい」

 別に賭け事を楽しみたいとも思っていないブーツは、静かにそう告げた。
「イカサマ? 勝てばいいのさ、勝てば!」
「勝ち続ければ……そう、勝ち続ければ……」
 賭博の国の住人たちの主張を耳に入れながら、ブーツは上体を軽く動かす。たったそれだけで女が扇状に開いて所持したトランプによる殴打を避け、青年が両目を狙って投擲してきたコインも続けて避ける。
「イカサマをして勝ち続ける博打打ち。無敵の博打打ち。それは真に『博打』と呼べるのか?」
 彼らの言葉の奥にゆらぎを見て取ったブーツは、追い打ちをかけるように言葉を重ねる。
 同時に彼の懐中時計『《Hope》』にはめ込まれた赤き宝石が煌めいて――。

「きゃっ!?」
「がっ!?」

 瞬時に、二体の『無敵の博打打ち』が吹き飛んだ。彼らも、そして本体である賭博の国の住人たちも、何が起こったのか理解できまい。数度弾んで地に伏した『無敵の博打打ち』たちの身体に、数箇所の殴打痕があることくらいは見て取れたかもしれないが。
 ブーツが追撃を掛ける必要さえなかった。
 伏したままの女と青年が消えてゆくのは、賭博の国の住人たちがその能力に疑念を抱いた証左。そして、ブーツの神速の脚撃の威力に『無敵の博打打ち』たちが耐えられなかった事を示す。
 元より異次元級の威力を誇る脚撃だ。一撃でも相当強烈だろうそれを複数回受けたのだ、並の存在では耐えられるはずもなく。『無敵』のはずだった博打打ちたちも、本体たちが抱いた疑念によって『無敵』でなくなっていたのだろう。
「くっ……こうなったら僕たち自身がやるしかないね」
「そうだね、協力するとしよ――」
 しばし呆けていた賭博の国の住人たちは、ようやく事態を飲み込めたようである。
 しかし、それは遅かった。遅すぎた。

「『賭け』は、どうやら俺の勝ちのようで」

 彼らは、自分たちに起こった事態を把握できただろうか。
 赤き宝石の煌めきくらいは、視界に入ったかもしれない。
 けれど。
 予備動作なく詰められた間合い。目視することの叶わぬ速度で放たれた攻撃。
 重く、重く、重すぎる一撃を重ねて打ち込まれた彼らは、どこまで意識を保っていただろうか。

「――残念だったな」

 どさり……宙を舞ってボロ雑巾のように地に落ちた彼らは、ピクリとも動かない。
 ただその場に響くのは、ブーツの落とした小さな言の葉のみ。
大成功 🔵🔵🔵

神賛・ヴァキア
ここが競馬場なら大興奮させてやれそうなのが残念だな。
もっとも、新聞、鉛筆、マークカード辺りを握りしめるのではなく、ダイズやコインを握りしめてるみたいだが。

乗馬マロンウィナー号に騎乗して戦闘、機動性生かし接近、敵の攻撃を回避したのちにナタで一撃を加え再び距離をとる一撃離脱で戦う

不正は看過できん、むかっ腹立つので容赦なくぶち殺すからな。
せめて生まれ変わったら、死ぬほど馬券買ってくれ。


(ああ――)
 原城の城内。グリモア猟兵によって送り込まれた、賭博の国の住人たちのいるその場所を見渡した神賛・ヴァキア(鞍上大暴走・f27071)は、心中で小さく息をつく。
(――ここが競馬場なら大興奮させてやれそうなのが残念だな)
 生憎と、競馬場とは似ても似つかない、閉塞感のある場所である。それでも、愛馬のマロンウィナー号に騎乗して動き回るだけの広さがあるのは僥倖だ。
 将来有望とされた元ジョッキーであるヴァキアとしては、存分にマロンウィナー号を走らせる事のできる開けた場所のほうが都合が良くはあったが、自身に都合の良い戦場ばかりでないのが現実。
 だがそれは、競馬場という戦場にあっても同じ。得意とするコースにだけ出走すればよいというものではないのだ。その場で己ができる最善のことをするしかない――それは猟兵として覚醒する前から変わりのない真理。
(もっとも、新聞、鉛筆、マークカードあたりを握りしめるのではなく、ダイスやコインを握りしめているみたいだが……)
 もしもここが競馬場だったとしても、敵が嗜む賭け事がレースや競技のたぐいでなければ、大興奮させてやれるかどうかはわからない。
 否、新しい楽しみを教えるということも――そこまで考えて、考えるのをやめた。無意味だからだ。
「マロンウィナー号、頼むぞ」
 青鹿毛の愛馬に声をかけてひと撫で。賭博の国の住人二体が、こちらに気がついたのだ。
 ヴァキアはこちらへと向かってくる彼らを、待ち構えることはしない。愛馬を駆って、相手がこちらへ接近するよりも早くその距離を詰め――。
「っ――!?」
 振り下ろしたナタによる一撃が、何かによって弾かれた。確かに脳天を狙ったはずなのに。
「――っ」
 そのまま馬首を巡らせて、もう一体の賭博の国の住人を狙う。だが、同じようにナタは弾かれてしまった。
 ヴァキアは手綱を引き、一旦奴らから距離を取る。よく見れば彼らは、いつの間にやらダイスを振っては何か言葉をかわしている。どうやら三つのダイスの出目を予想しあっているようだが、そんな無防備な状態なのにこちらの攻撃を防げるということは。
(――なるほど、確かそんなユーベルコードがあったな)
 非戦闘行為に没頭している間は外部からの攻撃を遮断する――そんな力を持つ猟兵たちを知っている。ということは、彼らもその力を利用しているのだろう。交互に三つダイスを振り、その出目を予想しあっている彼らが、ことごとくその出目を当てているのは異常であるからして、何らかの力が働いているに違いない。
 となると、彼らに非戦闘行為をやめさせる必要があるのだが。
「よし、僕たちの運は上々だね!」
「運を確かめたところで、さあ、行こうか!」
 この城にいるオウガたちは、亡霊のようなものに取り憑かれて、捨て身で襲いかかってくるようになっているという。ならば長いこと守りに徹するはずはなく。
 彼らは手に、どこから取り出したのか山程のダイスを握りしめて、ヴァキアを見据えた。そして投擲されるのは、ダイスダイスダイス――暴風に煽られた無数の雨粒のように数多のダイスがヴァキア襲う。
 古から、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるというが、そうではなく、ダイスが軌道を曲げて迫ってくるように見えるのが『イカサマ』なのだろう。

「――不正は看過できん」

 静かな、怒りを凝らせたかのような声で紡いだヴァキアは、マロンウィナー号の手綱を繰る。ダイスの雨へと自ら突っ込んで、被弾を意に介さずに距離を詰めるのにかかった時間はほんの数瞬。
 至近距離からナタを振り下ろしてまず一体。
 そのまま返すようにして、もう一体。
 脳天を――もちろん金色の皿ごと――かち割られた賭博の国の住人たちは、断末魔の叫びすら上げることを許されずにどさりと伏した。
 彼らがもう二度と動かないことを確認して、ヴァキアとマロンウィナー号は彼らに背を向ける。

「せめて生まれ変わったら、死ぬほど馬券買ってくれ――」

 餞に、彼らが嗜んでいたのとは別の種類の賭け事へのいざないを添えて。
成功 🔵🔵🔴

城島・侑士


やれやれ
そんなに死に急ぎたいか
なら容赦なく行かせてもらう

捨て身でくるなら奴らは超攻撃重視
回復や回避をとることはまず無いとみていいだろう
ボウガンの矢を毒矢に
弾丸をホローポイント弾へと変え継続ダメージが入るようにする
しかし集団戦とはいえ同時に大勢相手にするのは武が悪い
適度な距離を保ち背後を取られ無いようにする
こういう時に単独で戦闘ってのは不便だな
…昔は独りで戦うのが普通だったもんだが
UCはオウガを2体以上巻き込めるように使用し動きが鈍ったら乱れ撃ちで攻撃
毒がいいか?
それとも体内で咲く花の方がいいか?

奴等の成功率の高い攻撃は予備動作で判断できるなら第六感に頼った先行回避か
無理ならばオーラ防御を使用


 グリモア猟兵によって導かれた原城のその区画では、すでに他の猟兵たちが戦っているようだ。
 視覚で捉えるよりも早く聴覚と肌でそれを感じた城島・侑士(怪談文士・f18993)は、『ユービック』と『パーキーパット D1963』の最終調整を始める。
(捨て身でくるなら奴らは超攻撃重視……回復や回避をとることはまず無いとみていいだろう)
 事前情報によれば、『ぱらいそ預言書』を信奉する彼らは亡霊のようなものに取り憑かれ、捨て身で猟兵たちに襲いかかってくるのだとか。
 ならばと、侑士は『ユービック』の弓床には毒矢を、『パーキーパット D1963』の弾丸はハローポイント弾へと変える。一対多の戦いになることと、相手が人体と似た構造を持つオウガであるという事を鑑みて、人体に継続ダメージ・大ダメージを与える攻撃手段への変更というわけだ。
「あっちにもいるぞ!」
「よし、僕と君と君で倒そう!」
 聞こえてきた声に視線を上げれば、三体の賭博の国の住人がこちらへと向かってくるのが見えた。
「やれやれ……そんなに死に急ぎたいか」
 まだ十分に距離はある。侑士は片膝をついて『パーキーパット D1963』を構える。銃を十分に安定させて狙うのは、もちろんこちらへ駆けてくる三体。

「――なら、容赦なく行かせてもらう」

 静かな宣告は相手に届かない。否、届けるつもりなどない。侑士が今届けるのは。

「がっ……」
「っ……あぁっ!?」
「うわっ!?」

 連続する銃声。弾丸が命中したかどうかは、賭博の国の住人たちの声を聞くほうが早い。
 膝に銃弾を受けた三体は、足を止めざるを得ず。貫通することなく体内を傷つけ続けるハローポイント弾によるダメージに、体勢を崩したり、しゃがみこみながら苦悶の声を漏らしている。
(しかし集団戦とはいえ、同時に大勢相手にするのは分が悪い)
 加えて侑士の今回の得物は、遠距離からの攻撃に長けたもの。しかしあえてそれを選んだのは、接近されて同時に多数相手にすることを避けるためでもあった。
 素早く『ユービック』へと持ち替えた侑士が狙いを定める。しかし賭博の国の住人たちもその場でうずくまっているままではない。
「くっ……そう来るなら僕たちも容赦なく」
「キミを負かそうじゃないか」
「ああ」
 足を負傷して移動を制限された彼らは、それぞれ振りかぶる。その掌には何かが握られていて――。

 ――ヒュンッ……。
 ――ブンッ……。

 侑士が一本目の矢を放ったのとほぼ同時に、賭博の国の住人たちも何かを投擲してくる。連弩であるユービックで複数の敵を次々と射抜く侑士は、あえて回避行動を取らなかった。
 動けば狙いはブレ、後手に回ることになる。ならば――全身にオーラを纏い、ダメージへの対策を施したまま、毒矢を射った。
「っ……!?」
 矢が賭博の国の住人たちを射る代わりに侑士の元へと飛んできたのは、2cm角よりややふたつの辺が長い、長方形の物体。厚みがそこそこあるそれは、キラキラと煌めきを宿しながら礫のように侑士を打つ。
(これは……麻雀牌、か?)
 自身にぶつかって転がったソレに描かれている模様を見て、侑士が思い当たったのは麻雀牌。嗜むかどうかは別として、一般常識として知っているソレが転がっていた。
 ただし、侑士が知っている麻雀牌とは若干趣が違っていて。
(これ……まさかダイヤで作ってあるのか? しかも角が尖ってる)
 そう、防御のオーラを張り巡らせているにしては痛みを感じると思ったら、ダイヤモンドで作られた、角の尖った麻雀牌だったのである。こんな大きなダイヤ、UDCアースではお目にかかれるものではないが、ここはアリスラビリンス。それに放ってきたのはオウガだ。
(これが『イカサマ』の効果ってわけか)
 なんとなく理解した侑士は、賭博の国の住人たちへと視線を戻す。彼らはこれまで長い時間を賭け事に費やしてきたのだろう。その時間が彼らの力を上げている――だが、追撃の牌が飛んでこなかったという事実に侑士は僅かに安堵していた。
「くっ……視界が揺れる……」
「なんだか苦しくなって……」
「痛い……痛い……」
 侑士が狙ったのは、賭博の国の住人たちが投擲すべく振り上げた腕。そこに刺さった矢から毒が彼らの体内へと、今、まさに巡っているのだ。
(このまま足止めできているうちに――)

 ――ヒュンッ!!

 一気に三体掃討してしまおう、と侑士が思ったその時。嫌な予感に従って立ち位置を変えた侑士の側を、何かが飛んでいった。
「君たち、待たせてしまってすまないね!」
 声とともに三体の後方から駆けてきたのは、一体の賭博の国の住人。恐らく彼が麻雀牌を投げつけてきたのだろう。一瞬でも侑士の気を逸らし、仲間たちと合流するために。
(増援、か?)
 しかし合流したのはその一体だけで。足と腕をやられた三体たちは、喜んで彼を迎えているけれど。
(また、どこから増えるかわからない……こういう時に単独で戦闘ってのは不便だな)
 片手に『パーキーパット D1963』、片手に『ユービック』を持って賭博の国の住人たちを見据える侑士。
 彼はたった今、自身の中に自然と浮かんだ思いに気がついて、口の端を歪める。
(……昔は独りで戦うのが普通だったもんだが)
 そう。かつての侑士はどんな戦場でも、どんな敵相手でもひとりきりで戦ってきた。同じ戦場で戦う者がいても仲間だとは思わなかったし、頼るなんて発想もなかった。彼らがピンチに陥っても助けるなんて発想もなく、ただただ障害物と同じように見えていた。
 仲間なんて邪魔でしかない――そんな風にひとりきりで数多の戦場を渡り歩いてきたというのに。
 今、は。
 仲間と合流して喜ぶ彼らを見て、思ってしまった。
 猟兵として復帰してから誰かと共に、協力して戦うことが増えたからだろうか。
 それは喜ばしい変化なのか、自分では判断しづらいけれど。とりあえず、今、わかるのは。

「お仲間と合流したところ、悪いが」

 合流した一体を中心に三種の拘束具を放ち、彼らの動きを少しでも阻害して。

「――毒がいいか? それとも体内で咲く花の方がいいか?」

 おあつらえ向きにある程度纏まってくれている四体へと、本格的な攻撃を撃ち込むなら今だ、ということ。
 問いの体をした宣告。答えは最初から求めていない。
 本来ならば両手で構え、狙いをつけるふたつの武器を、彼らへと向けて。

「両方ともくれてやろう」

 賭博の国の住人たちへと撃ち込んで、射ち込んで、撃ち込んで――多少ぶれてもいい。対象は多いのだから。
 乱れ撃ち――弾丸と矢の雨に襲われた彼らの叫び声が耳朶を打つ――。


(他に増援は来なかったか……)
 その声が聞こえなくなるまで『雨』を降らせ続けた侑士は、倒れ伏している四体の賭博の国の住人達を見て、その理由と思しきものに思い当たる。
(――あぁ、麻雀だからか)
 そういうところは律儀なんだななんて思いつつ、『ユービック』に宿るフクラシバの花を見つめる侑士だった。
大成功 🔵🔵🔵

三上・桧

久し振りに来てみたら、なんだか大変なことになっているようですね
まあ自分、アリスラビリンスに居たのは3日だけですので、思い出とか全然無いんですけど

戦場に『ガラスのラビリンス』を使用して、敵を閉じ込めます
捨て身で向かってくるのなら、迷路から出てくる頃には勝手に疲弊してくれるでしょう
出てきたところをロケットランチャーで攻撃しましょうか

無敵の博打打ちって、無敵なのはあくまでも博打の話ですよね?
とりあえず、まとめてロケランで【吹き飛ばし】ておきましょう
はいドーン!

『これは酷い』
何を言うのです火車さん
これは【除霊】ですよ除霊
あと、勝てばいいのです


吉備・狐珀
イカサマをして勝って楽しいものなのでしょうか?と思いますが…。
そんな問をしても返ってくる答に期待はできそうにないですね。

イカサマにはイカサマを
UC【百鬼夜行】使用
呼び出すのは「利欲の心火」
利を貪ろうとする欲望、激しい嫉妬や怒りの炎を燃やした妖怪。利欲の心火の手にある手目でどれだけ狡賢く稼いでも爪に火を点すほどの金の亡者は貴方の相手に丁度いいでしょう?
イカサマも一つだけじゃない。勝つことに手段を選ばないのは貴方だけではないのですよ。
無敵と思っていた自分以上の博打打がいると(催眠術)をかけながら精神的な(継続ダメージ)を与え弱体化をはかる。
利欲の心火は強欲ゆえ全てを奪う。敗者は骸の海へ還りなさい。


「久し振りに来てみたら、なんだか大変なことになっているようですね」
 グリモア猟兵の導きによって原城の一区画へと転移してきた三上・桧(虫捕り王子・f19736)は、のんびりと辺りを見回して、淡々と感想を漏らした。
 実際は大変なこと、どころではないのだが、まあ、桧としてはそのくらいの感想しかでてこない。
 だって。
(自分、アリスラビリンスに居たのは3日だけですので)
 そう、彼女はこの世界に召喚されている間、虫の姿のオウガをストー……追い回した末に、たった三日で自分の扉を見つけて帰還したのである。ゆえに。
(思い出とか全然無いんですけど)
 あるとすれば、虫のオウガを追いかけ回した思い出だけだ。
 だからこの場所で既に猟兵たちと戦っているオウガの緑色の肌で思い出すのは、アオムシというかイモムシというか(一般的な呼称としては、緑色でないものも含めてイモムシと言うようだ)、その虫のオウガのこと。
 賭博の国の住人とやらが河童に似ているなぁとは思うものの、かの虫オウガと比べれば、桧のマニア心はくすぐられない。
「イカサマをして勝って楽しいものなのでしょうか? と思いますが……私だけでしょうか?」
 無いようでいて意外と濃かった追行の思い出を引っ張り出した桧の横で、吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)が静かにそう零す。
「まぁ……今のあちらさんたちは、少なくとも、勝てばいいと思っているのでしょう」
「そうですね……」
 桧の言葉に狐珀は小さく頷く。『ぱらいそ預言書』によって狂信者化している賭博の国の住人たちは、捨て身で襲いかかってくるという。ということは、イカサマしてでも勝てばいいという思考になっているのだろう。
「今の彼らに問うても、返ってくる答えに期待はできそうにないですね」
 亡霊のようなものに取り憑かれる前の彼らだったら、まともな答えを導き出してくれたかもしれない。
「ああ、新手が来たねぇ」
「僕たちに勝ってごらんよ!」
 と、今はまだ離れた位置にいる賭博の国の住人たちが二人に気がついたようで。数体がこちらに向かって来ようとしている。
「出口までたどり着けたら、相手をしてあげましょう」
 彼らの言葉に応えた桧が喚び出したのは、ガラスでできた迷路だ。こちらとの距離を詰めようとしている賭博の国の住人たちを、内部に巻き込むようにして展開された巨大迷路。彼らがその透明な壁をいくら叩いても壊れることはなく、出口は桧と狐珀の前にあるひとつしかない。
「捨て身で向かってくるのなら、迷路から出てくる頃には勝手に疲弊してくれるでしょう」
「なるほど。では私は、少し発破をかけましょうか――イカサマにはイカサマを」
 賭博の国の住人たちは突然現れた迷路に混乱を見せたものの、目の前にいる桧と狐珀に真っ直ぐ進むだけでは辿り着けないと気が付き、出口を探そうと動き始めている。
 そんな彼らをやや冷たい瞳で見据えた狐珀は、迷路の中にとある妖怪を喚び出した。
 その妖怪とは、目玉のついた手であり、爪からは火が出ているという異形。小型で打たれ弱いが、そんな妖怪が四百体近く――。
「うわぁぁぁぁぁ!?」
「な、なんだぁぁぁぁぁぁ!?」
 迫りくるその異形に、賭博の国の住人たちの混乱がぶり返す。
「あれは『利欲の心火』といって、利を貪ろうとする欲望、激しい嫉妬や怒りの炎を燃やした妖怪です」
 利欲の心火たちは、賭博の国の住人たちを追い立てるように迷路の中を動き回る。
「あの手にある手目で、どれだけ狡賢く稼いでも爪に火を点すほどの金の亡者。貴方たちの相手に丁度いいでしょう?」
 狐珀の言葉は彼らの耳に届いてはいまい。
 手目と詐(てめ(イカサマ))を掛けた存在である利欲の心火に追いかけられるのは、賭博にすべてを捧ぐ者としてどんな心境だろうか――まあ、先の質問と同じく、今の彼らに問うても芳しい返答は得られぬだろう。
「くっ……これは切り札として取っておきたかったが、こうなったら、僕たちで無敵の博打打ちを呼ぶんだ!!」
「ああ!!」
 迷路内で交わされる賭博の国の住人たちの会話は、なんだか追い詰められたヒーローショーの観客のようではあるが。
 ただ、彼らが喚ぶのはヒーローではなく。
 そして彼らは、救われる立場ではない。
「あー……迷路がより、ぎゅうぎゅうになってますね」
「利欲の心火は一撃で倒されてしまいますが、あれだけ数がいれば十分でしょう」
「確かに」
 何体迷路に取り込んだか既にわからない賭博の国の住人たちと、彼らが喚び出した無敵の博打打ち。そして狐珀が喚び出した、四百体近い利欲の心火。彼らがごちゃまぜになり、追いつ追われつ出口へとやってくるのを、ふたりはただ待っていれば良い。
『暇そうだね』
「火車さん」
「あっ……その猫さん、触らせてもらっても……?」
 暇そうな様子の桧の肩にひょいっと乗ったのは、濃い灰色の猫で名を火車という。そのもっふもふの毛並みに、もふもふふわふわしたもの好きの狐珀が興味を持たないはずはなく。
「いいですよね、火車さん。どうぞどうぞ」
『勝手に話を進めない』
「駄目……でしょうか……?」
 ずずいと火車を差し出す桧に対して、不満そうに口を開く火車。その様子を見て狐珀は出そうと手していた手を引っ込めるが。
『……駄目というわけではないよ』
 初対面の善良なニンゲンを悲しませるのもどうか――瞬時にそう判断した火車が自らその身を差し出した。
「ありがとうございますっ……わぁ、もふもふ……もふもふもふもふもふもふもふもふ……」
 幸せそうに火車をもふる狐珀。ちなみに火車はただの猫ではなく、猫又である。桧によれば、近所に住み着いている野良猫又だとか。
「野良猫又……」
 野良じゃない猫又とは――パワーワードの出現に一瞬真剣に考え込みそうになった狐珀だが、ふと迷路の方を見れば、もふもふしている間にだいぶ賭博の住人たちが出口に近づいてきていた。
「さてと」
 そろそろ動くか、とばかりに桧が肩に担いだのは『慈救砲』。不動明王の真言が刻まれているが、これ、ロケットランチャーなのである。
「月代、お願いします」
 狐珀は月白色の仔竜へと声をかけて。

「やっ、と、でぐ、ち……」
「たど、り、つい、た……」

 利欲の心火に追いかけられて疲弊している賭博の国の住人たちが、出口付近に折り重なって倒れ込む。

「イカサマも一つだけじゃない。勝つことに手段を選ばないのは貴方たちだけではないのですよ」

 そんな彼らを見下ろすようにしながら、狐珀は自分たちが『無敵の博打打ち』以上の存在であると催眠術を掛けるように言葉を紡ぎ。
 月代が狐珀の言葉に合わせて効果的に雷を落とせば、彼らは畏怖をいだいた。

「利欲の心火は強欲ゆえ、全てを奪う。敗者は骸の海へ還りなさい」

 まだ残っている利欲の心火たちが後方から迫りくる中、賭博の国の住人たちは動けない。狐珀の『術』によって、心を縫い留められているのだ。
 そして、追い打ちをかけるのは。

「無敵の博打打ちって、無敵なのはあくまでも博打の話ですよね?」
「っ……!!」
「ふぁっ……!?」

 そう言い放つと同時に桧のロケットランチャーが火を吹いた。
「はいドーン」
 迷路の出口に固まっていた賭博の国の住人と無敵の博打打ちもろとも、豪快に吹き飛ばす。
『これは酷い』
 思わずそう漏らしたのは、火車だ。
「何を言うのです火車さん。これは『除霊』ですよ除霊」
 除霊(物理)である。異論は認めない。
「あと、勝てばいいのです」
 賭博の国の住人だけでなく、こちらも『勝てばいい』という思考は同じだった。

 桧の自重心は、少なくとも原城には落ちていないようである。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

御園・桜花
「聞けば聞くほど骸魂のようですが。亡霊を引き剥がせても、オウガしか現れないのですね」

「命を賭けるに相応しい遊びと言ったら殺し合いでしょう?最後に立っていられるのが貴方達か私か…お互い命を賭けましょうか。私は自分と他の猟兵達が立っていて、貴方達が全滅するに賭けます。勿論イカサマ有りですから…貴方達が受けなくても、勝手に始めさせていただきます」
イカサマという言葉を使う方が敵を煽れると考えた

UC「召喚・精霊乱舞」使用
炎の精霊召喚
高速・多重詠唱で炎属性の魔力球に破魔の属性も纏わせ亡霊もオウガも博徒も全て焼き尽くす

「貴方達は生粋のオウガでしょうが…次はただの博徒として、賭けを愉しむ生を得られすよう」


(聞けば聞くほど骸魂のようですが……)
 原城のその区画に降り立った御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は、『亡霊のようなもの』に取り憑かれて猟兵たちと戦っている賭博の国の住人たちを見て、思う。
(これは亡霊を引き剥がせても、オウガしか現れないのですね)
 一体あの亡霊のようなものは何なのだろうか――桜花が考え至ったのは、カクリヨファンタズムの妖怪たちを飲み込んでオブリビオン化してしまう『骸魂』。この骸魂は、幽世に辿り着けずに死んだ妖怪が化したものであるというから業が深く感じられるが。
 骸魂だけ倒すことができれば飲み込まれた妖怪を救うことができる――だが、この賭博の国の住人たちから亡霊を引き剥がすことができたとしても、残るのはオウガである賭博の国の住人たちだけだ。亡霊を引き剥がすこと自体できるかはわからないが、できると仮定しての話。
「新手の猟兵……君の命を賭けるに相応しい遊びは何だろうね?」
「ダーツ? カード? ルーレット? チェス? 花札?」
 桜花に気づいた賭博の国の住人二体が、その手にコインやカードを握ったまま問いかけてくる。
 その問いに応える桜花は、いつものように穏やかな表情ではあるが、声に強い意志を宿して。

「命を賭けるに相応しい遊びと言ったら、殺し合いでしょう?」

 にっこりと、告げる。

「最後に立っていられるのが貴方達か私か……お互い命を賭けましょうか。私は自分と他の猟兵達が立っていて、貴方達が全滅するに賭けます」
「ほう……」
 賭博の国の住人たちは桜花を値踏みするようにして、その真意を計っているのか、それともその態度は余裕からきているのか。
 けれどもその『間』が命取りであることに、彼らはまだ気がついていない。

「勿論イカサマ有りですから……貴方達が受けなくても、勝手に始めさせていただきます」
「!?」
「……!?」

 彼らが『イカサマ』という言葉に反応を見せるより早く、桜花の周囲に炎の精霊が現れる。炎の精霊の力を借りた桜花の素早い詠唱で放たれるのは、四五〇個近い魔を退ける炎の魔力球。
 それが二体の賭博の住人たちへと一斉に飛んでいけば、彼ら自体がひとつの大きな炎のようになって。
「くっ……無敵の博打打ち、ここに!」
「力を借りるよ、無敵の博打打ち!」
 炎の中で彼らは、己の信じる『無敵の博打打ち』を喚び出したようではあるが――時、既に遅し。
 重ねられた詠唱によって既に出現していた桜花の操る火球たちが、ふたたび彼らに襲いかかり、彼らを飲み込み、彼らを燃やし尽くす――……。

 コロコロコロ……パタ……。

 炎の中から転がり来たものが、桜花の足元で倒れて止まった。見れば、やや煤けたコインだ。恐らく、彼らの持ち物だろう。
「貴方達は生粋のオウガでしょうが……」
 屈んでそのコインをつまみ上げた桜花は、まだ燃え続ける巨大な炎を見つめて。
「……次はただの博徒として、賭けを愉しむ生を得られすよう」
 紡いだのは、餞の言葉。
大成功 🔵🔵🔵

ペイン・フィン
……怨霊に憑かれて、矜恃を忘れ
身を捨て、戦う
……まるで、鉄砲玉か何か、だね

扱う武器は"名無しの禍惧枝"
視力、暗視、第六感、聞き耳の感覚強化を行って
早業、見切り、残像で回避に集中
捕食、生命力吸収で、敵の怨念を喰らっていくよ
ただの攻撃程度なら、これで十分
怨念も削れば、少しは能力も下がるかも、ね

敵のコードに対しては、こちらもコードで対応
そちらが、どれだけ賭け事をしてきたのか、分からないけども
こちらも、永い年月を、怨念を喰らって存在してきた
……さて、どちらが、運を引き寄せられるかな?


(……怨霊に憑かれて、矜恃を忘れ……身を捨て、戦う)
 原城における猟兵と賭博の国の住人たちの戦いを目にしたペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)は、思い至る。
(……まるで、鉄砲玉か何か、だね)
 そう、彼らはペイン自身が称したように、『鉄砲玉』であり『捨て駒』であるのだろう。
 憐れに思う? ――何とも言い難い。
 このように扱われていなかったとしても、彼らはこの世界で害をなす存在だからして。
 同情を禁じ得ないオブリビオンが、いないとは言わないけれど。
 彼らがそれに当たるかと言われたら――素直に頷けぬものがある。
(だいぶ、数が、減っているね……)
 明らかに猟兵たちが押している。殲滅完了は近いだろう。
 だからそこそペインは、己の持てる力を駆使して戦場の現状を把握するに務める。
 そして孤立している個体、他の戦いに助力に向かおうとしている個体を発見しては気づかれる前に接近し、『名無しの禍惧枝』で容赦なく仕掛ける。
 ただの攻撃ではない。彼らの生命力や賭け事に関する怨念、可能であれば彼らに憑いている亡霊たちを少しでも喰らえれば――そうして攻撃を仕掛けることでペインを標的に定めて追いかけてくる賭博の国の住人たちは、徐々に増えていった。

「僕たちは君が想像にも及ばないだろう時間を、賭け事に費やしてきた」
「それが無駄な時間でなかったことを、今ここで証明しようじゃないか!」

 賭博の国の住人たちは、その手に様々なアイテムを所持している。サイコロやコインだけでなく、花札、ダーツ、麻雀牌、トランプ、ルーレットの球……賭け事に使うことのできるそれらを武器に、これまでも攻撃して来ていた。
 その一つ一つに様々な仕掛けが施されているのが『イカサマ』の効果なのだろう。けれどもペインは回避つつ次々に賭博の国の住人を攻撃することで、避けきれずに負った傷を癒やしていた。
 そして。

「そちらが、どれだけ賭け事をしてきたのか、分からないけども」

 多数の賭博の国の住人たちを見据え、ペインの仮面の奥の黒曜が鋭く光る。
 彼らは自分たちが『賭け事に費やした』時間の長さを誇っているようだ。
 けれども彼らは、誇る相手を間違えた。

「こちらも、永い年月を、怨念を喰らって存在してきた」

 ペインのこの言葉を、彼らは正確には理解できぬだろう。
 彼、ペイン・フィンはヤドリガミ。『指潰し』という拷問道具の一種を本体とする以上、怨念とは無縁ではなく。
 そして人の身を得るまでに必要とした時間は、果てしない。

「……さて、どちらが、運を引き寄せられるかな?」

 彼が、自身が喰らってきた、負の感情や怨念を代償にして得た力と、賭博の国の住人たちが賭け事に費やした時間に応じて得た力。
 長引けば長引くほどどちらが追い詰められるかは、想像に難くない。


 運を引き寄せたのはペイン――そして猟兵たちだ。
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年08月09日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴