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藁人形は狂気に歪む

#UDCアース

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#UDCアース


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 薄暗い夜の雑木林に、白い影がぼんやりと浮かぶ。一本歯の下駄をカラコロと響かせ、頭部にロウソク明かりの揺らめく外見は、明らかに異質。手にはいくつもの釘が刺さった、藁でできた人形と、木製の木槌を握りしめていた。
 肩まで伸ばした黒壇の髪を揺らし、焦点の定まらない瞳で足元を確認しながら目的地へと向かう。
 ――今日で最後だ。これでアイツを呪い殺すことができるんだ。
 近付けば、ブツブツと繰り返させるその呟きが聞き取れたかもしれない。
 けれど今、そんな声を聞く者は誰一人としていない。
 長かった。一週間もの間、こんな格好で夜中に家を抜け出して、しかも誰にもバレないようになんて。きっと、私じゃなければ失敗してただろう。
 まだ達成はしきっていないが、先んじて顔の緩みを感じた。まだだ、まだ終わってない、と考えれば考える程に、でももうすぐ終わるという気持ちが沸き上がってきて、フヒヒ、と気色の悪い声が漏れた。
 ――殺す。殺せる。私をこんな目に遭わせたアイツを、呪い殺してやる。
 既に、その心は囚えられていた。恨みと殺意、そして、必ず呪い殺すというある種の信念。それ自体が既に呪いであるかのように、女の足は止まる事を許されない。
 そして、その日。一人の女が世界から姿を消した。


「殺したい程に人を憎んだことはあるか?」
 口元に赤色のガスマスクを携えた白いキマイラの青年が、まるで独り言のようにそう口にした。独特の服装は流石キマイラといった所だが、その青年、ルクト・オレイユ(キマイラの妖剣士・f05799)が放つオーラは、普段のおちゃらけたキマイラヒューチャーと異なるものだった。
 彼は、あるのだろうか。人を殺したい程に憎んだ事が。

「UDCアースの事件を予見した」
 先程の問いには触れずに、ルクトは淡々と自分が見た事件の説明を始める。
「他人を呪おうとしていた者達が、いつの間にか洗脳され、自ら進んで邪神復活の生贄になってしまうという事件だ」
 まさに"人を呪わば穴二つ"を体現しているとも言える。しかし、例え自分が死ぬとしても、相手を道連れにしてやりたいという気持ちを持つものは、決して少なくはないのではないだろうか。
 ただ、その強い意志をどこの誰かも分からない邪神に食い物にされるのは、違う気がするのだ。例えその邪神とやらが、何かの拍子に本来の呪い先を殺してくれたとしても、やはりそれは復讐とも、呪い殺すのとも違うと思うのだ。
「人を呪うのをやめさせろ、とは言わない。ただ、邪神の復活は止めて欲しい」

 他人を呪いながらも自ら洗脳された人々は、丑三つ時にとある寂れた神社に集まろうとする。神社では狂信者が邪神召喚の為に生贄を捧げる儀式を行っているので、洗脳された人々が神社にたどり着くのを何とかして阻止して欲しい。
 今日の生贄の儀式が不完全でも、以前行われた儀式で既に何人かの生贄は捧げられているらしく、邪神が不完全な形で召喚される可能性がある。
 もしそうなったら、その邪神討伐も頼みたい。
 要約すると、そういう事だった。

「あぁ、ただその前にもう一つ、頼まれてくれないか」
 手で弄んでいた正方形のグリモアを見つめ、ルクトはその切れ長の瞳をやや伏せた。鋭い赤色の瞳、という印象がやや薄れる。
「事件が起こるのはまさに今夜なのだが、どうやら、新たに人を呪おうと決意した少女が一人、その神社に向かおうとしている様だ」
 少女は現状まだ他人を呪った事のない、いわゆる初心者だ。故に洗脳などはされておらず、洗脳されている人々よりは容易に止める事ができるだろう。
 儀式に巻き込まれればどのみち呪いどころではないし、まずは被害者を一人減らして欲しいという事だった。
「以上だ。よろしく頼む」
 顔を上げたルクトが、猟兵達を見渡しそう締めくくった。


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 こんにちは、56(ごろー)と申します。この度はオープニングの閲覧を有難うございます。
 今回はUDCアースからお送り致します。丑の刻参りって見たことありますか?私はありません。呪いをかけてるうちに自分にも暗示がかかる、というのは本当にありそうですよね。
 どうせならプラスの暗示をかけたい今日この頃です。
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第1章 冒険 『小さな呪い』

POW   :    叱る、脅す、力づくで止める

SPD   :    先回りし障害物を設置する等で妨害する

WIZ   :    説得する、誤情報を与え他の場所に誘導する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 その神社で丑の刻参りをすれば、相手は必ず不幸になる。七日間続ければ、相手を呪い殺すことができる。
 そんな話をしていたのは、部活の先輩だったか。
 そんなの誰でも良い。ただ、私はアイツを許すことができない。親には話すことができないし、一人では解決することもできない。だから、藁にもすがる思いで実行するのだ。
 一人の少女が、目尻にじわりと浮かんだ涙を拭いながら、慣れない下駄をカツカツ鳴らしながら道を歩いていた。白い和装で、その手にはトートバックをぶら下げている。中身は通販で買った丑の刻参りセット。それからスマホ。
 職務質問された時ように学生証もあるし、万が一のために財布だって持って来ている。
 冷静になればなるほどに、今の自分の格好は恥ずかしかった。けれど、恥ずかしさよりは彼氏……だった男、を恨む気持ちの方が強い。
 今日こそは、やってやるんだ。
 少女は、それなりに強い意志を持って、その神社へと向かおうとしていた。
松原・芳典
アドリブ・絡み・改変等歓迎

呪いたいほど憎い……って、どんなきもちなんだろう
きっと、すごくすごくつらくて、くるしくて、やるせないんじゃないかな

少女の説得を試みてみるよ
もしかしたらおれの方が不審者、かもしれないって、ちょっと不安なのだけれど
泣いている彼女に、ハンカチを差し出して

どこかいたいの? それともくるしいの?

彼女が話してくれたなら、黙って聞いていてあげる
もし話してくれないなら、そのときは、買ってきたあっかいココアでも渡してあげようかな

夜は冷えるから、あんまり出歩くのはおすすめしないよ
おうちにかえろう?

きっと、これだけじゃあ弱いだろうけれど
一歩でも彼女の足を止められたらいいな



●会遇
 日付を超えて、1時間程。シン、と静まり返る薄暗い道に、カランコロンと下駄が響く。平均より身長が低く、小柄なその風貌は、少女と呼んで差し支えないものだろう。
 今年高校を卒業したばかりのその少女は、事前に考えていたようにあえて人気のない道を進みながら、時折人の気配がないかと立ち止まって周囲を見渡す。
 とにかく、下駄の音が気になった。
 途中まで靴で行って履き替えるとか、服も途中まで私服で行くとかは駄目なんだろうかと思って調べはしたものの、文献にはそんな事は一文字も書いていなかった。そんな便利なものがない時代から伝わる呪術なのだから、仕方ないといえば仕方がないのだが……。
 立ち止まる度に、やっぱりやめようか、なんて気持ちが湧いてくる。けれど、それでは何も救われない。
 呪術を実行するきっかけを思い起こし、同時に勝手に頬を伝う涙を拭う。
「あの」
 と、呼び止められるように少女の背後から声がかかった。少女はビクリと肩を震わせ、その場で凍りつく。
 人の気配には気を使っていたはずだった。けれど、涙に気を取られたからだろうか。声をかけられるまで、その存在に少女は全く気がついていなかった。

 肩を大きく震わせたきり固まってしまった少女に、松原・芳典(暁空・f09547)は目線を合わせるように屈み、持っていたハンカチを差し出した。
「どこかいたいの? それともくるしいの?」
 自分と頭一つ分以上背の低い未成年の少女が、何故白装束を身にまといこんな時間にこんな場所を歩いているのか、芳典は知っていた。それでも、あえて問いかけた。
「あっ、いえ、すみません、大丈夫です」
 差し出されたハンカチに、少女は慌てて顔を隠す。顔を隠したところでその姿は隠せないのだが、やはりこんな格好を他人に見られるのは恥ずかしいようだ。外灯が極端に少ないせいで少女の顔色は伺えず、ずず、と鼻を啜る音だけが響く。
「夜は冷えるから、あんまり出歩くのはおすすめしないよ」
 断られたハンカチを引っ込めた芳典が、今度は買ってきたばかりのココアを取り出した。顔を隠す手にコツンと当てると、少女はおずおずとそれを受け取った。
「あ、りがとうございます……。でも、すみません、私、どうしても行かなきゃいけないんです」
 ココアを渡す時に、少女と手が微かに触れた。その手はとても冷たくて、心理的にも切迫しているんだろうかと伺えた。
 呪いたい程に人を憎むというのは、一体どんな気持ちなのだろう。きっと、すごく辛く苦しくて、やるせないものなのではないだろうか。
「すみません、ありがとうございました」
 その言葉を残して、少女は足早に去って行った。神社を目指して。
 手渡したココアが、少しでも彼女の心を温められたらいいのに。芳典は去りゆく少女の背中を見つめていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

テラ・グゥスター
殺したいほど他人を憎む、ねぇ…まぁ気持ちはわかるさ、行動もしたしなぁ。てめぇの命をかけた呪殺ってんなら俺は否定しねぇ、どんな想いだろうが覚悟は覚悟だ。それを踏みにじって命を奪うなら…消えろ、狂信者共。

で、まずは1人止めろってか。どんな人間だろうが俺の思う所は変わらん。ありのままを少女に語って説得、少女にも恨みを吐き出させてやりたいな。呪殺は構わんが、ここではやめておけ。なんなら俺が恨みを晴らしてやってもいい、それも生業のひとつだ、と。俺に依頼するなら、相手の命までは取らんが一生後悔させてやるさ。約束する。
あと一応接触時点でUC発動、ちゃんと帰るかとか他の猟兵との位置情報共有確認に使おう。




 言われて、そして暖を取って初めて、少女は自分の体が冷えている事に気がついた。そういえば、夜の空気はひんやりとしている。気にも止めていなかった。
 先程見知らぬ人に手渡された温かいココアで手を温めながら、それでも少女は目的地へ向かって歩いていた。
 隣を見たのは偶然だった。先程の人が着いて来たか無意識に確認しようとしたのかもしれないし、もしかしたらなんとなく人の気配を感じたのかもしれない。
 少女は、いつの間にかテラ・グゥスター(生存こそ正義・f04573)と並んで歩いていた。
「呪殺は構わんが、あそこではやめておけ」
 少女が何かいうより先に、テラは歩きながら告げた。驚いた少女が足を止めれば、テラも足を止める。
「なんなら俺が恨みを晴らしてやってもいい、それも生業のひとつだ」
 言ってから、少女を見るようにくるりと方向を変えれば、少女は怯えるような、訝しむような、今にも泣きそうな表情をしていた。少女の背はテラよりやや低く、否が応でも見下ろす形になる。
「俺に依頼するなら、相手の命までは取らんが一生後悔させてやるさ。約束する」
 飄々と、躊躇いもなく恨み屋代行を買って出と、少女は何か言いたげにぱくぱくと口を開閉した後で、一度俯いた。
「……ありがとう。でも、ごめんね。これは私が自分でやりたいの。他人にして貰うんじゃ、駄目なんだ」
 ぽつり、と、震える声で喋りだした。
「キミも、こんな時間まで歩き回ってたら駄目だよ。世の中には、変な人がたくさんいるんだから」
 私みたいにさ、と少女は無理やり笑顔を作った顔を上げる。
 テラを自分より年下と思っての気遣いだろうか。はぁ、とため息を漏らしながら、少女は苦笑した。
「見られたの、キミで二人目なんだ。まだセーフかなぁ?」
 無理やり笑顔を作ろうとしているが、笑えていない。完全に失敗している。
「そういうお仕事してるなら、分かってくれると思う。私はここでは止まれない」
ふう、と息を吐きながら、少女はテラにごめんねと告げた。
 無理やり引き止めたところで、彼女は諦めないのだろう。そんな雰囲気があった。
 テラは、UDC・べとべとさんが彼女を追跡していることを確認すると、それ以上彼女と対話する事をやめた。思いの外、彼女の決意は堅い様子だ。他の猟兵は、どう動くのだろうか。

成功 🔵​🔵​🔴​

エルデラント・ズィーマ
【POW】へぇ……貴女人を呪うおつもりなんですね。知ってますか?人を呪うと自分も呪われるんですよ。見てください……ワタシの目、腕、脚、そしてこの尻尾、人のモノじゃないんですよ。これはね、ワタシも呪われたんですよ。とウソで脅しますよ、ウソですとも
それでも曲げるつもりがないなら手荒ですがアームで服の襟を掴んで強引に連行しましょう
ワタシが嫌われるなら結構。ヘイトも向いてくれるなら尚結構


嶋野・輝彦
●POW
脅す
少女の首根っこ捕まえて
ヤクザの振り
存在感、コミュ力、恫喝で
テメェ何やってんだゴラァ!!ってその格好見りゃ一目瞭然か
おじさん神社で取引ある訳よ、行くと怖い思いして貰うよ?
ってもそれだけ気合入った格好、退けないか
ならここで会ったのも何かの縁よ
優しさ、存在感、コミュ、催眠術で
恨んでる相手の写真見せてみ?おじさんが顔の形変わる位撫でてやるから?
丑の刻参りなんて迷信に縋るより確実だろ?
足りない?
ならそいつにゃ車に乗って山の方へ行ってもらうか?
不法投棄にならない様にきっちりやるぜ
おじさんこれでもゴミの分別得意なのよ
UDC職員呼んで
優しさ、コミュ力で
後は任せろ、うちの若いもんに送らせるから帰りな


バッカンボー・パディストロー
ワタシは神社の敷地内、儀式の現場への途中デ待ち伏せしマス。使うのは【巨大藁人形召喚】で、大鎌に変形させた『農業用黒剣』を持ちマス。……ちょっと脅かしテあげまショウ。【POW】

ワタシの姿は帽子の中の『ツチノコ』サンに「目立たない」ようにして貰って、アッアー、ンンッ。

『ウレシヤ アラタナニエガキタ』

『ウレシヤ ノロイ タマシイ アツマッテクル』

『クワセロ オマエノ ノロイ』

『クワセロ オマエノ タマシイ』

『クワセロ クワセロ クワセロ!!!』

バッカンドールの顔を思い切り近付けたり、大鎌を見せつけたりして驚かしマース!暗がりからヌッと出てきたりしテ、頑張ってホラーを演じますヨ!

アドリブ等歓迎デース!


雛菊・璃奈
呪いは決して人を幸せにするものじゃないよ……まぁ、呪いの巫女のわたしが言うのも変だけど…呪いに関しては専門家だしね…。

フォックスファイアを人魂みたく飛ばし、怪我させない様に彼女の周囲を周回させて動揺させ、動きを止める…。
夜中だし、心に余裕のない子なら間違いなく怖くなるだろうし…。

落ち着かせた後、貴女が誰かを呪おうとしてるコトは知ってる…。何故呪おうとしてるのかは解らないが、他者を呪う事は解決にならない…。よければ自分が力になるから、話をして欲しい…、と真摯に語り掛ける。

また、その辺の小石等に実際に【呪詛】を使用し崩れ散る様を見せ、自身はその専門家であり、本当の呪いの怖さを教える…。

アドリブ歓迎



●雑木林にて
 そして、少女は寂れた神社へと続く、雑木林へと差し掛かる。
 ここに来るまでに二人の人間に声をかけられたが、私とあの子の恨みはまだアイツに届くだろうか。考えると、下腹部がズキリと痛む気がした。錯覚だとは理解している。それでも、失われたはずの部位は、トクトクと脈打つことをやめなかった。
 冷ややかな風がざわざわと林を揺らし、少女はごくりと唾を飲み込む。
 周囲には外灯は一切なく、木々に覆われたこの道には月明かりも届かない。気持ちだけでここまで来たが、足を止めるとその静けさと闇に押しつぶされそうになる。
 ドクドクと、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
 スマートフォンの明かりをつけてしまおうか。けれど、それをするとそれだけ人に見つかる可能性が上がる。
 まだやめておこう、と少女は自分の目を頼りにして歩ける道を探した。

「そろそろね……」
 雑木林に隠れていた雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が狐火を放ち、少女の周囲をふわふわと漂わせる。途端、少女は狐火を見つめたまま動かなくなった。狐火を動かせば、それと同じ方向に首が向く。完全に、怯えて目が話せない状態だった。
「ワタシも行きマース!カモン、バッカンドール!」
 共に潜んでいたバッカンボー・パディストロー(麦わらおじさん・f03764)が、バッカンドールと名付けた巨大藁人形を喚び出し、狐火を見つめたまま動かない少女の背後へとそっと近付ける。
――ウレシヤ アラタナニエガキタ。
「……ッ!!?」
 バッカンボーが声を響かせたその瞬間、少女は見事にすっ転んだ。それはもう、見事なまでに尻餅をついて。
 狐火に怯えている時に突然背後からの強襲。振り返ろうとしたものの、慣れない下駄にバランスを崩した、といったところだろうか。
 少女は尻を強かに地面に打ち付けて、ついでにトートバックの中身も周囲にばら撒いた。白装束が一気に土色に染まる。可哀想なまでの転び方だった。
「見てください……ワタシの目……って、ちょっと、もう泣いてるじゃないですか」
 畳み掛けるようにぬっと姿を表したエルデラント・ズィーマ(ロストメモリーズ・f02581)が、少女の惨状に困ったように声を発した。
 少女はしゃくり声を上げながら涙を流し、膝はガクガクと震えていた。立ち上がる様子のないその体は、解析するまでもなく尻が抜けた状態だろう。
「あれ、ワタシ頑張りすぎマシタ?」
 バッカンドールの背後から顔を出し、バッカンボーも少女を覗き込む。
 ガサガサと草をかき分けながら、狐火を携えた璃奈も合流した。
「可哀想に……。本格的すぎたわね」
 狐火によって照らされ、三人の姿をハッキリ目視した少女は、恐怖でも恨みでもない泣き声を上げた。張り詰めていた感情が、少しの安堵で一気に溢れ出す。感情の糸が切れたように、ダムが決壊したかの様に、その涙はしばらく止まらなかった。


「なんだ、足止めできてたのか」
 最後の砦として神社付近に待機していた嶋野・輝彦(人間の戦場傭兵・f04223)が、連絡を受けて合流すると、少女はすっかりへたりこんでいた。溢れる涙と同じ様に、ここに至った経緯が流れ出す。
 一言で言えば痴情のもつれ。男女双方の知識の無さと無責任さから起こった出来事と、言ってしまえば逆恨みだろうか。
「病院は彼の紹介だったんです。親の同意書もいらないって、変だと思ったけど……。でも、その後アイツは音信不通になって。血も止まらなくて……」
 まだ未成年だし、こんな事親に言えないし、と泣きながら離す少女の背を璃奈がそっと撫でる。なんとも言えない空気が、周囲を包み込んでいた。
「どう考えても、慣れてるじゃないですか。アイツ、きっと前にも同じ事してるし、きっとまた繰り返す。だから、」
 ひっく、としゃくりあげる少女の頭に手をポンと置き、輝彦が沈黙を破った。
「恨んでる相手の写真見せてみ?おじさんが顔の形変わる位撫でてやるから」
 当初足止めに使う予定だったヤクザのフリを続ける。実際この子の出来事を裁けるのは、猟兵ではなくこの世界の専門機関なんだろうが、話を聞いてやるだけなら誰でもできる。
「それに、あなたに必要なのは呪いじゃなくて水子の供養……」
 他者を呪う事は解決にならないし、それよりは供養してあげたほうが"あの子"も浮かばれる、と璃奈は続けた。
 少女は、少し考えた後、そうかもしれませんねと漏らした。
「呪いは恐ろしいんです。ワタシも呪われたんですよ。見て下さい、この目、腕、脚、尻尾
……。あなたもこうなりたいですか?」
 エルデラントの言葉に、少女はぱっと顔をあげる。視線が絡み合う。
 手術を経て何かが変わるというのは、どこの世界でもある事なのか。改造手術を経てサイボーグとして生まれ変わったエルデラントは興味深そうに少女を見つめた。
「……まぁ、ウソなんですけど」
 少女からもまじまじと視線を送られ、なんだか気恥ずかしくなって視線を逸した。少女は信じるだろうか。信じるかもしれないな。それが世界の加護なのだから。

「折角だから、もっと驚かしたかったデスネー」
 召喚したバッカンドールと見つめ合いながら、バッカンボーは嘆いた。ノリノリでセリフを考えていただけに、少々寂しいものがあった。
 とはいえ、打ち合わせ無しの共闘により、一瞬で足止めできた成果は大きい。
 クワセロ、クワセロとあの時と同じ声を出すバッカンボーに、驚かされた当の本人はクスリと笑みを浮かべていた。
 今まで誰にも話せず悩んでいた事を、出会ったばかりの者たちに洗いざらい吐き出してスッキリしたのだろう。目元を真っ赤に腫らしながら浮かべた笑みは、作り笑いなどではなく、本日見た彼女の表情で一番明るく見えた。

●ひとつ、完了
 輝彦が呼んだUDC職員によって、少女は帰宅する事となった。輝彦が事前に話しておいた為、泥に塗れたその姿を見ても職員は動揺することもない。ヤクザの演技は続行していたため、どちらかと言うと少女の方が狼狽えていた。
 しかし、報復の手段が呪術とは。まさに藁にすがったんだなぁ、と輝彦は頭をかいた。
 UDCアースには先人の教えというものが数多ある。今回の件は少女にも原因はあるとはいえ、因果応報。身から出た錆。少女を捨て逃げ出した男も、きっと近いうち酷い目に合うに違いない。

 さて、まず一人、儀式によって予期される犠牲者を減らすことができた。ここからが本番だな。
 輝彦は、雑木林が続く先、寂れた神社をじっと見据えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『洗脳された人達』

POW   :    洗脳された人達を気絶させる

SPD   :    洗脳された人の前に回り込み生贄になりに行くのを阻止する

WIZ   :    洗脳を解く

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●人を呪わば
 ぞろぞろと、焦点の合わない目を揺らしながら、人が集まってくる。その中には、先程の少女と同じく、白装束を纏う者もいる。
 その殆どが、ここに来れば人を呪い殺せると信じていた。
 人に恨みを持ち、かつてこの神社でご神木に呪いと共に五寸釘を打ち込んだ者達。それが、ここに集う人々だった。
 人間に忘れられ、信仰をなくした神は世界から消える。そして、いつからかこの神社には、邪神が眠るようになっていた。
 邪神の狂気が、五寸釘を伝って人の心に巣食う。そして今日、狂気に侵された人間が引き寄せられ集うのだ。邪神復活のための、生贄となるために。
松原・芳典
アドリブ・絡み・改変等歓迎

こうなったらもう、力づくで止めるしかないのかな……
もっと早くに気づけていたら、って、思わずにはいられないけれど
今は、このひとたちの過去を憂うよりも、明日を守れるように動きたい

【ブレイズフレイム】を足元に向けて放ち、物理的に足止めするよ

それで止まってくれたら良いけれど
そうじゃないならちょっとの火傷くらいは覚悟してもらう
全身に回ったら、重症にならない程度で解除
そのままパニックで眠ってくれたら、……なんて、楽観しすぎかな

それぞれ階段から落っこちないように気を付けつつ
炎を越えて尚境内へ向かおうとするなら
身体を張って引き留められるだけ引き留めたいな




 深夜の境内に、紅蓮の炎が踊った。
 松原・芳典(暁空・f09547)のその身を切り裂いて体内から溢れ出た地獄の炎が、寂れた神社の地面に走る。
 ゴウ、と立ち上る地獄の炎に、そこに集った人々は歩みを止める素振りはなかった。
 足止めをするかのように放たれた低い炎の壁に向かい、人々は突っ込んでいく。炎は足元から衣類に燃え移り、集った人々の肌を撫でた。
「駄目かっ」
 軽く火傷を負わせる程度ならば仕方なし、だがこれ以上は重症になるかと、芳典が炎を引っ込めた。
 ――殺してやる。
 ――この恨み、晴らさでおくべきか。
 ブツブツと、人々から漏れ聞こえる声。それは完全なる恨みの声だった。
 炎の熱さも届かないほどに、その心は完全に囚われていた。
 こうなったらもう、力づくで止めるしかないのか?
 意を決した芳典が、その身をもって洗脳された人に飛びかかる。その体格を生かして人を押し倒せば、その人は意外と素直に地面に転がった。
 もちろんすぐに身を起こそうとするのだが、何しろその目は虚ろで、自我もほとんど無い様子だ。半分ほど眠りながら歩いているような。そんな印象だった。
 ならば、と芳典はその手に力を込める。そして、押し倒した洗脳者の首元へ、容赦のない手刀一撃。
 その者は、静かに、眠るように落ちていった。
「起きた時、痛いかもしれないけど」
 それでも、邪神の贄となって命を散らせるよりは安いだろう。芳典は、洗脳者の明日を守る為に立ち上がる。後、何人だろうか。

成功 🔵​🔵​🔴​

テラ・グゥスター
神秘が秘匿されてるからなのかねぇ、行き場のない思いを発散する為得体の知れないモノに縋っちまうのは。まぁしかし人を呪わば穴二つとは言うが…望まず邪神の生贄になるってのが因果応報とは思えん。

UDCエージェントに依頼して人を大量に輸送できる体制を整えて近くで待機して貰おう。
自分の意識があるかどうかで対応も難易度も変わってくるしな、まずはそれを見極める。UC発動、鵺を歩いてる人間の目の前で召喚して反応を見る。
これで正気に戻ればよし、そのまま鵺と拷問具を見せびらかして脅しつけて帰す。
戻らなければ強硬手段…とは言えそうなると意識もなさそうか。足を縛って鵺に無理矢理乗せてエージェントの元に運ばせる。




 確かに人を呪わば穴二つとは言うが、それは呪いが返ってきた時の話だ。邪神の生贄になるというのは因果応報とは思えん。
 テラ・グゥスター(生存こそ正義・f04573)はゾロゾロと集ってきた人々を見ながらそう感じた。呼応するように、喚び出したUDC・鵺もグルルと喉を鳴らす。
 洗脳されている人々に意識や自我があるか調べるために、その目の前で鵺を召喚した。が、人々は何事もなかったかのように無反応。ひたすら、目的地を目指して虚ろな目を揺らしながら歩いていた。
 それならば、強硬手段でも仕方がないか、と、テラはロープや足枷を取り出した。
 虚ろにさまよう人々の足を、半ば強引に縛り上げる。
 作業の間も人々には特にこれといった抵抗は見られず、ただずっと、恨み言を呟いていた。
「そんなに恨んでるなら、得体の知れないモノに縋るんじゃなくて俺に依頼してくれよ」
 それを生業にしている以上、そう思わずにはいられない。
「……と、できた」
 足を封じられてもなお、目的地へ進行しようとする人間が、うぞうぞともがく。しかし、テラはそれを無視して、担ぎ上げるように鵺の背中に足を縛った人々を乗せた。
 事前に連絡をとっていたUDCエージェントの元へと向かう。事件が片付くまでの一時保護という形で、人々を収容する為の協力を仰いでいた。
「地道、だな」
 恨みを持った人がこれほどいるとは。未だゆらゆらと歩を進める人々を一瞥しながら、テラは誰にでもなく呟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
洗脳を解こうにも、あの子と違ってまともな方法で解けるのかどうか…わたし、癒しとか聖属性とかの力持って無いしね…。完全に呪い側…。

集団の前に回り込んで一応説得しつつ、聞かなければ早々に気絶させて止める方向に切り替え…。呪いについての説得も邪神の影響から逃れた後の方が聞くだろうしね…。

突風くらいに加減した【衝撃波】で動きを束縛し、【早業】で当て身・峰打ちで一人ずつ気絶させていくよ…。一応、念の為に気絶させた人達はロープで手足を縛って…。
後は軽く【呪詛】で呪いで動きを縛るとかもあるけど…悪影響出そうだし、止めた方が良いかな…?

気絶させた人達はUDC職員に連絡して、保護をお願いするよ…。

※アドリブ歓迎




 洗脳を解こうにも、あの子と違ってまともな方法で解けるのかどうか……。
 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は迷っていた。どちらかというと、自分も呪う方の側であるという自覚がある。故に、いざ同じ様に呪う側に立った時、どの様に足止めをするべきなのであろうか。
 先程出会った少女と違い、洗脳された者達には自我がない。それは、説得を試みた時に判明した。
 近くで同じ様に洗脳者を食い止める為に動く他の猟兵をちらりと見る。そちらでも、説得を諦めた猟兵達が早々に手段を切り替えていた。
 そっちの方法ならば、璃奈も腕に覚えがある。
 意を決して、璃奈も手法を切り替えるのだった。

 素早く振るった呪槍と妖刀で、蠢く人々に衝撃波を打ち付ける。突風ほどに調整された衝撃波は容易に、ふらつく人々のバランスを崩させた。
 続けて、瞬間的に繰り出される当て身と峰打ち。戦場慣れしている璃奈にとっては、やはり感情論を伴う説得よりかは肉体言語の方がやりやすかった。
 綺麗な身の振りで気絶させた人々を、手早くロープで縛り上げる。そして、待機しているUDCに連絡をとった。
 今は境内の外で待機しているUDC職員だが、この場の安全が保証されれば直に出向いて保護して行ってくれるだろう。
 着実に数を減らす洗脳者達に、璃奈は安堵のため息を漏らした。

成功 🔵​🔵​🔴​

エルデラント・ズィーマ
ここまでくるとまともな説得は難しいでしょう……
そういえば咎力封じって手枷とか拘束ロープとか出せましたよね。とりあえず手足を縛ってしまえば儀式は出来なくなりますからやってみましょう
人数が多いので数で押さえ込まれないようには気をつけます
しかし邪神もあれこれやり方考えますね、呆れちゃいますよ




「ここまでくるとまともな説得は難しいでしょうね……」
 先に行動を開始していた猟兵達、そして現状の洗脳された人々を解析しながら、エルデラント・ズィーマ(ロストメモリーズ・f02581)はそう判断した。
 眠っている人と会話できないように、呆けた人との意思疎通が難しいように、そもそも認知が違うのだろう。今のこの人達には、きっとまともな人の声など聞こえていないのだ。
 それにしても、邪神というのもあの手この手でよくもまぁ。呆れるほどに、この世界の邪神事件は多いのだ。そして、その殆どに儀式があり、多くの民間人が利用される。
 それでも尚、この世界の人口が減らないのが不思議である。それだけ猟兵達の活躍によって儀式が未然に防げているということだろう。
「そういえば、便利な能力が有りましたね。試してみましょうか」
 境内を見回し、ひとりひとり手動でもって拘束している仲間の猟兵達を見ながら、エルデラントは思い出したようにその能力を発動させた。
 咎力封じならば、手ずから動かなくても次々と人を拘束できるのでは?しかも、そこまでやれば自ら進んで儀式に参加することは困難となるだろう。
「良さそうですね」
 思い立ったが吉日。エルデラントはすぐにユーベルコードを発動させた。
 世界を転移する様に、どこからともなく拘束器具が放たれる。
 一定の動きばかりで抵抗もない人々に命中させるのはとても容易で、あっという間に人のロープ巻きが出来上がった。
 この調子ならば、全ての洗脳者をどうにかするのに、それほど時間はかからないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バッカンボー・パディストロー
オー、洗脳された方々がこんなニ……。怨み辛みというものハやはり、恐ろしくモ原動力としてはとても強いものですネ。サスガに、この方々にはホラーは効果がなさそうデース!

ワタシは【汎用型戦場兵装召喚】を状態異常力重視で使用しマス。ちょっと手荒な方法ニなりますガ、『スタン』や『パラライズ』、『スリープ』といった行動封じの状態異常魔法弾を使いましょうカ。本来なら銃で発射しますガ、ちょっと威力強すぎテ危ないのデ、指で弾くか投げつけて使用しまショウ。止まった方々はUDCの職員の方に回収してもらいマス!

……一度、グッスリ睡眠をとるといいデース。これだけのエネルギーを皆さん既にお持ちなんですカラ。きっと、大丈夫。




 怨み辛みというものは、こんなに強い原動力となり得るのか。自我を失って尚動き回る洗脳者達に、逆に感心してしまう。
「サスガに、この方々にはホラーは効果がなさそうデース!」
 先程と同じ方法では効果がなさそうだと、バッカンボー・パディストロー(麦わらおじさん・f03764)は、困った様子で頭をかいた。
 複数の猟兵達が忙しく動き回る中、自分ならばどうするかと考える。そして、しばらくした後に思いついたように声を上げた。
「ユー達にピッタリな武器ガありまシタ!」
 【汎用型戦場兵装召喚】のユーベルコードを発動し、どこからともなくミサイル状の武器やランチャー、そしてそれに使用するであろう弾丸を取り出す。
「アー……」
 そして、洗脳された人々と、ミサイルやランチャーを暫し見比べたかと思うと、ミサイルのみを送還した。
「これデ、足止めできマース!」
 トリモチランチャーを、動き回る人々の足元に目掛けて射出した。
 バシュ、と軽快な音を立てて発射されたトリモチは、対オブリビオン用のため非常に強力で、普通の人間、しかも自我なくフラフラとしているような人達では自力で逃れられないだろう。
 人々の進行方向に張られたトリモチが、そのおぼつかない足元に絡みつき、洗脳者達の動きを止めた。
「……一度、グッスリ睡眠をとるといいデース」
 そして、トリモチに絡んで動けなくなった人達目掛け、バッカンボーが着弾時発動型異世界式状態異常魔法弾を放り投げた。
 こちらも本来ならば対オブリビオン用で、銃から撃ち出すものだったが、今相手にするのは人間だ。極力威力を押さえたうえで投擲された魔法弾が、ポンと弾け、モクモクと煙のような物を周囲に漂わせだした。
 煙を吸った者から、意識を失いその場に倒れ込む。足元に広がったトリモチが、倒れた者達を柔らかく包み込んだ。
「他人を怨んでばっかりモ疲れテしまいマース。笑顔が一番デース!」
 負の感情は、疲れている時・考えすぎている時にこそ溢れてくるものだ。一度ぐっすり睡眠を取れば、今度はきっと、プラスの方にエネルギーを変換することができるに違いない。
 強いエネルギーをもった者達が集まって来ているのだ。目覚めたときにはきっと、考えが変わっている。そう、願っている。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『残響の女神』

POW   :    信者の供物
自身の装備武器に【生贄になった者の身体部位の一部 】を搭載し、破壊力を増加する。
SPD   :    叫ぶ
【絶叫 】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    凝視
小さな【狂気 】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【トラウマに応じてダメージを与える空間】で、いつでも外に出られる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナハト・ダァトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●声にならない叫び
「生贄は何故集まらない?これでは……」
 薄暗い神社の本殿で、炎の灯ったロウソクを振り回し、焦る人影が幾人か。
「いや、ここで儀式を止めるわけにはいかない。我々だけでも、身を捧げるのだ!」
 その声は、既に正気を逸脱していて。
 本殿の中で動いていた影達は、それぞれが身につけていた刃物を取り出し、躊躇いもなく自身の身体を刻んでいった。
 足元に展開された魔法陣が、傷口から滴る血を受けて怪しく揺らめく。
「……"残響の女神"よ、我らを、人類を導き給え……ッ!」
 狂信者達が自らを生贄に捧げ、強引に、召喚の儀は執り行われた。
 その生命が事切れると同時に、その本殿は音を立てて崩れ去る。
 そして、崩れた本殿のその中心に、その"女神"は降臨していた。
 人体のパーツを組み合わせて作り上げられたかのような、歪なシルエット。
 ひと目見ただけで異質と分かるその風貌が、やけに長い手足を揺らめかせながら、吼えた。

 音もなく、けれど嫌でも耳から入り脳を揺さぶるその叫び声は、本殿にいた猟兵達の耳にもすぐ届き、邪神が不完全な復活を遂げた報となった。
 生贄は不足していたはずだ。故に、その姿は完全なものではない。
 不完全な今の状態ならば、きっと倒せるはずだ。
松原・芳典
アドリブ・絡み・改変等歓迎

これで、最後
もういなくなっちゃった人たちを取り戻すことは出来ないけれど、
これのせいで新しく犠牲になってしまうかもしれない人を失くすために、行くよ

まずは、周りに散らばる生け贄の遺体を【ブレイズフレイム】で燃やすよ

相手の武器の一部や障害物になられたら厄介だし、
それに、塵ひとつなく燃やしてあげたら、きっと、……って、思うから

炎はそのまま本体へ
他の仲間たちの邪魔になりそうなら解除して、
【ガチキマイラ】で近接攻撃に移行するよ

近接だと連携がシビアになってくるだろうから、
仲間の動きをしっかりみて攻撃する

かなしいだけのせかいなんて、終わりにしてあげよう


雛菊・璃奈
馬鹿な人達…。復讐心や恨み、呪いで顕現する邪神が人を導くなんてあるわけがないのに…。


他の猟兵と連携して戦闘…。
【unlimited】を展開…。自身の【呪詛】を高め【unlimited】に織り込み、魔剣達を強化…。
凶太刀の【呪詛】【衝撃波】【鎧無視】【2回攻撃】【早業】による攻撃を織り交ぜつつ、【unlimited】を連射…。敵の全身を串刺しにし、呪詛で侵食、殲滅するよ…。

敵の砲撃なんかは【見切り】【オーラ防御】で防ぎつつ、跳ね返せるものは【呪詛】【カウンター】【武器受け】【早業】アンサラーで跳ね返して反撃するよ…。

「神をも葬る呪いの魔剣…貴女はここで葬り去る…」

※アドリブ、絡み歓迎



●弔いの炎
 声が、音が、空気を切り裂いてビリビリと響き渡る。この声は世界に蘇った歓喜の声か、はたまた生贄とされた死者の絶望か。
 感情を伺えない叫びが、神社の本殿へとたどり着いた猟兵達を迎えた。
「これで最後だ」
 松原・芳典(暁空・f09547)が、呟いた後で両手を握りしめる。
 既にいなくなってしまった人達を取り戻すことはできない。けれど、新たに犠牲になってしまう人は、失くすことができる。
 芳典の気持ちに応えるように、握りしめた両手からは地獄の炎が吹き出した。
 その瞳によく似た色の炎は迷うこと無く"残響の女神"の周囲を取り囲み、"信者だった者達"の肉を焼く。
 その火力は凄まじく、きっと骨すら残らないだろう。
「塵ひとつなく燃やしてあげたら、きっと、……」
 それは、芳典なりの弔いの炎でもあった。
 燃えゆく信者の供物を目にした"残響の女神"は、高音で叫びを上げながら、歪な腕を振り回し、炎へとその腕を突っ込んだ。
 生贄となった者達の一部を探すかのような動きは、酷く愚かで、醜く見えて。完全な復活を遂げた後ならば、"女神"に見えたのだろうか?
 芳典から放たれた紅蓮の炎は、これ幸いとばかりに女神の腕をも燃やした。
 かなしいだけのせかいなんて、終わりにしてあげよう――。

「呪われし剣達……わたしに、力を……『unlimited curse blades』…!!」
 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が魔力で生み出した刃が、炎に飲み込まれる腕を貫いた。声にならない女神の咆哮が、波動となって空気を揺らす。
(馬鹿な人達……。復讐心や恨み、呪いで顕現する邪神が人を導くなんてあるわけがないのに……)
 芳典のブレイズフレイムに葬られる"信者だった者達"を一瞥し、璃奈は微かにため息を吐いた。
 自身が呪われし者であり、元来魔剣や妖刀を祀ってきた璃奈にははっきりと分かるのだ。例えこの"女神"が完全なる復活を遂げようとも、それが人を導けるような"女神"であるはずがないのだと。
 故に、狂気を携えた瞳で凝視されようとも、抗わない理由はないのだと。
「神をも葬る呪いの魔剣……貴女はここで葬り去る……」
 先程よりも入念に呪詛を織り込まれた魔剣が、禍々しいオーラを纏って"残響の女神"を捉えた。
 肉を貫くずぶりという音。
 絶叫。
 呪いを餌にした邪神が、呪いによって攻撃されるとはどの様な気分であろうか?
 120もの魔剣でその身を貫かれた邪神から、肉片が零れ落ちる。
 かつて生贄だった者達のものと思われる身体のパーツが音を立てて地面に転がり、"残響の女神"は怒りの声を上げた。
 先程までと違い、その声色にはハッキリと怒りの感情が伺えた。
 未だ倒れぬその邪神は、その狂気と怒りが混ざり合う瞳孔で、猟兵達を見据えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エルデラント・ズィーマ
相変わらず邪神は見ていて不愉快ですね。生まれて早々ですが消えてもらいますよ

義眼、義手、義足……機械部分をフル活用しましょう。行動を予測して重い鉄の物理攻撃をくれてやります。トドメにユーベルコードで爆破しましょう

致命傷まで与えられはしないと思いますが次に繋がる一手を、さぁ戦いは折り返し地点です



●彷徨う人形
 既に腐ちた神社の境内は、肉の焼けるようなにおいで満ちていた。
 食欲をそそる様な匂いではない。体毛が、血液が、脂肪が焼け焦げ、悪臭ともとれる独特の饐えた臭いを放っていた。まさしく、屍人を焼くにおいがコレなのだろう。
「相変わらず邪神は見ていて不愉快ですね。生まれて早々ですが消えてもらいますよ」
 魔剣によって切り離され、焼け落ちる肉体の炎を振り払い、再び自身に移植しようとあがく"女神"を見据え、エルデラント・ズィーマ(ロストメモリーズ・f02581)はその義足で力強く地を蹴った。
 サイバーアイが標的を捉え、キュルキュルと微かな音を立てながら邪神の肉体を解析していく。相手がどう動くのか、そこを狙えば相手に思い一撃を食らわすことができるのか……。
「――ここ」
 跳躍。からの、ジェットパック噴射。
 自分よりも背の高い相手を狙うために、そして、攻撃に勢いをつけるために自身に備わる能力をフル活用する。
「対象を爆砕します」
 短く事務的にユーベルコードの発動呪文を唱え、そのまま右腕を"女神"の顔面へと叩きつけた。
 跳躍とジェットパックに重力も手伝ってスピードの乗った機械の腕に、ユーベルコードによって更なる重厚が加えられる。
 ただでさえ強烈な一撃がその顔面へと接触した瞬間、接触箇所が大きく爆発した。
 弾けるような轟音とともに、空気が食撃破を伴って一体を揺らす。
 その衝撃に、"女神"はドシャッと音を立てながらその場で転倒した。
 殴られた場所を中心に、その顔面は半分近くが消し飛び、強引に移植されたような皮膚が崩れかけていた。
「――――」
 僅かに残る口元が、まだ叫んでいる。
 長い手足をずるりと揺らし、尚も生贄を探すように地を彷徨わせながら、"それ"は尚も立ち上がる。
 信者が消えた今、最早"それ"はただ生き長らえるばかりに見えた。
 死体を組み合わせ生み出された、恨み辛みを望み、吐き出されただけの人形――そのものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

徳川・家光
「残響の女神……不完全でない今のうちに……!」
 一気に勝負を決めるべく、すばやく間合いを詰めます。
 そして
「大伽藍にて、お相手しましょう……!」
 残響の女神の「信者の供物(POW)」に対し、ユーベルコード「羅刹大伽藍(ラセツダイガラン)」によって巨大な鎧巨人と化し、「『強化力』比べ」といきましょう。こちらの鎧による豪腕で、生贄によって強化された肉体の「継ぎ目」を狙って殴りかかります。

 最大の目的は、女神に籠められた狂信者達の呪力を削る事。
 その為なら、ある程度のダメージはやむを得ないものとします。




「残響の女神……不完全でない今のうちに……!」
 尚も立ち上がろうとする歪な肉体。その前へと躍り出る紅の影が一つ。
 徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は、装束で覆い隠した体躯で素早く地を蹴ると、一気に敵との間合いを詰めた。狙いは既に決まっている。
「大伽藍にて、お相手しましょう……!」
 家光の言葉に呼応するかのように、戦闘によって飛散した瓦礫や、かつて神社で使用されていたはずの古びた幕、果にはしめ縄までもが集い、巨大な鎧巨人を形成した。
 生贄を取り込み強化した不完全な女神と、無機物と合体し鎧巨人へと変貌を遂げた家光。方法こそ似ている2つがぶつかりあった時、どちらが勝つのか。
「強化力比べ、といきましょう!」
 動き出すのは家光の方が早かった。しめ縄を纏った鎧の豪腕を、継ぎ接ぎから成るその肉体へと叩きつけた。
 歪なる女神は、生贄を継ぎ足し作られた複数の腕でその攻撃を受け止める。
 しかし。
「縫い目はほつれやすいんですよ」

――オォォォォォ……!!!

 衝撃を受けた継ぎ目が、あっけなく引き剥がされ、地面へ落ちた。落ちた肉塊からは、微かに瘴気のような煙が上がった。
 きっと、あれが狂気にして呪力なのだ。ならば。
「全部、削り取るのみ……!」
 鎧巨人は、再び攻撃の構えをとった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィロメーラ・アステール
「よーし、あと一息だな!」
このまま一気に押し切るぜ!
聖なる光のパワーを受けてみろ!

敵の攻撃は【呪詛耐性】や【狂気耐性】の効果を含ませた、光の【オーラ防御】バリアによって防ぐ!
凝視っていう事はこっち見てるのかな?
オーラの輝きを高めて【目潰し】したらスキができるかな?

攻撃をしのいだら反撃!
【煌天つまびく無窮の星琴】を発動だ!
光の糸を放ち【念動力】で操作して、相手に結びつけることで【グラップル】状態を形成!
糸を通じて【気合い】を入れた【破魔】エネルギーを流し込む!

そこからさらに【全力魔法】だ!
エネルギーを高めて聖なるパワーで攻めるか。
糸を強化して拘束・切断力を高めるか。
効果がありそうな方で攻めるぞ!


アレクシア・アークライト
・UDCからの応援。

自分を崇めさせていたのか、勝手に崇められていただけなのか。
自分を召喚させようとしていたのか、召喚に応じただけなのか。
どっちなのか分からないけど、確実に分かることが一つあるわ。
それは、貴方の居場所はここには存在しないってことよ。

・敵は近接戦主体のように見えるため、力場で敵の四肢を掴み取って動きを阻害。
・周囲に存在する呪力や魔力をUCで吸収し、念動力に転換。
・念動力で敵の四肢を引きちぎり、それらを分解・吸収し、さらに念動力に転換する。

生贄が足りないなら、そもそも出てこないか、召喚者を罰して帰るのが筋ってもんでしょ。
一人じゃ帰れないっていうんなら、手伝ってあげるわ。



●咆哮は谺す
 自発的に神であったのか、神にさせられたのかは分からない。
 召喚"させた"のか、召喚"された"のかも不明。
 だが、唯一つだけはっきりと言えることがある。それは、
「貴方の居場所はここには存在しないってことよ」
 アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)が戦場から集め吸収した呪力や魔力は、念動力となり"残響の女神"の四肢を引きちぎった。
 引きちぎられた肉塊はすぐに分解・吸収。これで生贄の再利用は不可能となるだろう。
 力場と使い掴み取る事で、まだ攻撃してこようとする敵の動きを封じる。
 なんという無様な姿か。これで神を名乗るのか。
「生贄が足りないなら、そもそも出てこないか、召喚者を罰して帰るのが筋ってもんでしょ」
 アレクシアの呟きは、虚空へと消えた。

「よーし、あと一息だな!」
 小さな輝きをキラキラと纏いながら、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は戦場を舞うように移動しながら、戦闘状況を伺った。
 贄もなく、信者すら失い弱る一方の敵と、それを打ち倒すべく招集された仲間達。既に勝利は目前。……なのだが。
 フィロメーラの小さな背中を、ぞくりと悪寒が走った。
 ――見られている……?
 敵を確認すると、UDCから駆けつけたアレクシアに今まさに捕捉され、念動力にて破壊されているところだった。
 敵の顔面は半分なくなっているし、目なんて……と考えた時。"視線が合った"。
「ひっ」
 その瞳は、本来であれば"口"と呼ばれる場所に押し込められていた。
 攻撃による衝撃で、目玉がコロリとこぼれ落ちる。――視線を介した精神攻撃か。
「き、効かないもん!!」
 フィロメーラは、咄嗟に自身を覆う光のオーラを強くし、光のバリアを張った。明るい、というよりは眩いと呼んだほうが近い。それほどに強い輝きだった。
 直視されれば、きっと少しの時間スキが生じる。そう信じて使用したバリアは、その目論見通り敵の瞳孔を閉じさせた。

「成功?今だよ!アレクシアちゃんも!」
「これで最期ね」
 フィロメーラが詠唱と共に【煌天つまびく無窮の星琴】を展開し、かつて神と呼ばれた肉塊へと結びつける。そしてその体躯からは想像できないほどの全力でもって、気合い、そして破魔のエネルギーを打ち込む。
 タイミングを図りながら、アレクシアもその念動力を振るう。戦場に溢れたエネルギーは膨大で、即ち吸収された能力も相応となる。
「一人じゃ帰れないっていうんなら、手伝ってあげるわ」
 断末魔の咆哮が、既に白み始めた空へと谺した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月15日


挿絵イラスト