迷宮災厄戦④〜体が闘争を求めたものたち
●こういう国もあるんですよ
うぃーん、うぃーん。がっしょん。
がっしょんがっしょん、うぃーん。
ごごごご、どんどんどんどん。ぴぴぴぴ。
お気づきだろうか。これらは全て『なんかロボっぽい外見の愉快な仲間』たちの鳴き声である。
●グリモアベースにて
「みなさんご存知のとおり、アリスラビリンスで戦争が始まりました」
グリモア猟兵の少女は、簡易的なアリスラビリンスの地図を指差しながら告げる。
「戦争目標が、オウガ・オリジンと猟書家たちなのはもうご存知ですよね」
彼らのいる不思議の国を目指すのが戦争序盤の目的となる。
「今回みなさんに行って欲しい不思議の国は、こちらになります」
不思議の国『アーマードきぐるみ愉快な仲間の国』。それは、その名の示す通りなんか機械っぽい外見の愉快な仲間たちが暮らす国である。そこの住民は日頃から金のために戦い、あとなんか名声と闘争を求めながら銃弾と硝煙を撒き散らしている。
「まあ、なんかはい。そういう連中なので……戦争しよって言えば快く力を貸してくれると思いますよ」
元から毎日戦争のようなものをしあっている連中には、オウガと猟兵の参戦などスパイスでしかない。……かもしれない。
「それより、大事なことがあります」
グリモア猟兵の少女がピンと人差し指を立てる。
きぐるみ愉快な仲間とは、通常の愉快な仲間の2倍の身長を持ち、さらに背中にチャックが付いているというのだ。
「なんと、乗れます!」
チャックを開いて入り込むことでなんと乗れる。やばい。しかも人の戦闘力が数倍にパワーアップする。もっとやばい。
「しかもオウガが既に乗り込んでます!」
ちょうやばい。
「だからみなさんも乗り込んで対抗しましょう!」
なお、全てのダメージは「着ている人」に通り、きぐるみ愉快な仲間はダメージを受けないらしい。やさしい。
「そんな感じなのでよろしくお願いします!」
鍼々
鍼々です。
今回は第1章の【ボス戦】だけで構成される戦争シナリオです。
『きぐるみ愉快な仲間に乗り込んでオウガと戦う』というのが趣旨となります。オウガも乗り込んでいます。
このシナリオに登場する愉快な仲間は、全体的にメカメカしいロボロボしい外見をしています。全体的にオイルと硝煙の似合いそうな感じだ思ってください。
猟兵の愉快な仲間が参加すると漏れなく国の影響を受けて上記の雰囲気になります。
またこの国のいたるところにはきぐるみ製マシンガンとか、きぐるみ製ライフルとか、ミサイルとか、なんかそういうのがいっぱい落ちてるらしいので自由に拾って構築していいです。
そんな感じの体が闘争を求めるやつです。よろしくお願いします。
プレイングボーナス……「きぐるみ愉快な仲間」の許可を得て、乗り込んで戦う。
第1章 ボス戦
『白のキング』
|
POW : 忠実なる兵士の召喚
【8体のポーンの駒】の霊を召喚する。これは【槍】や【盾】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 有能なる騎士・僧正・城兵の召喚
いま戦っている対象に有効な【ナイト、ビショップ、ルークの駒】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 親愛なる女王の召喚
【クイーンの駒】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠エルシー・ナイン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
【備考と追記】
今回のシナリオは少人数採用でお送りする予定ですので、プレイング採用率が通常より下がります。ご了承ください。
乗り込むアーマードきぐるみ愉快な仲間についてですが、彼らは名前をつけられると喜ぶかもしれません。
逢月・故
あはははははっ、何コレ何コレ!
すっごいねぇ、君たちの中身どうなってんの?
あ、ねぇねぇ、オレも乗りたい!
良いでしょ?ね?
だってカッコいいじゃん
こういう愉快な仲間たちも居るんだねぇ、オレ初めて見たよ!
乗るってどんな感じなのかな?
そのチャック開くの?
愉快な仲間たちに許可を取ったら、意気揚々と乗り込んでデュエルスタンバイ
ミサイルどっかーん!しよう
折角こんな面白いことするんだもん、派手にやろうよ!
あ、着ぐるみ越しでもオレのユーベルコードの力伝わるっぽい?
なら、赤いペンキで地面は真っ赤にしとこうねぇ
ほらほら、アレだよ
バフっとこー、みたいな?
すっごいねぇ、大爆発!
あははっ、最高!
また今度遊びに来るねぇ
●
「あはははははっ、何コレ何コレ!」
アーマードなるその愉快な仲間を見た逢月・故(ひとりぼっちのワンダーランド・f19541)はまず笑った。大いに笑った。
手を叩き、ぐるぐる回りながら観察して、腹を抱えて蹲り、そしてしばらくの時間を掛けて一息つく。
よし乗ろう。
だって絶対面白いもん。
「オレも乗りたい! 良いでしょ? ね?」
金属製の装甲をこんこんノックしながら頭部のカメラアイを見上げれば、ズァッと背面のチャックが開く。
乗れということらしいがあまりの光景にまた腹筋が痙攣してしまい、搭乗するまでにまた時間を要してしまった。
「すっごいねぇ……これ、楽しいと思わない?」
突然の声にオウガが振り返る。ミサイルポッドで武装したアーマードきぐるみの突進が見え、大慌てで杖を盾とした。
めぎりと響く金属のひしゃげる音。飛び蹴りを受け止めた杖はくの字に曲がり、辛うじてボディを守りきる。
だが、故がたったそれだけの攻撃で満足するものか。
「さあ、派手にやろうよ!」
至近距離。故の駆るきぐるみが両肩の大型ポッドから大量のミサイルを吐き出す。それらは一斉に真上へ跳び上がり、中空で軌道を曲げ、驟雨の如く降り注ぐのだ。
「おまえこの距離で! 正気か!」
突進を受け止められたオウガと言えどこれには堪らない。途切れ目なく降り注ぎすべてを巻き込まんと花を咲かせる暴力の渦から強引に後退。折れ曲がった杖を振るえばたちまち出現するのは僚機のクイーンだった。
クイーンを前衛として足止めさせつつ、オウガ自身はさらに後退。前衛後衛に分かれながら砲弾として駒を撃ち出す手堅い戦法である。かつてオウガは、この戦法でいくつもの国を踏みにじってきたのだ。
だが、それが通じたのは尋常の相手だったからこそ。
「ははっ!」
故が尋常な相手であるなど有り得はしない。
「あははっ! やあ女王様、元気かい?」
彼は己の知る女王とは別のものに形ばかりの敬意を示して砲弾を撃つ。撃ち出されたのは赤いペンキの塊だ、殺傷能力はない。
だが、赤く染まった全てを荊が覆い尽くすのであれば話は別。
「……!?」
ペンキの直撃を受けたクイーンはたちまち全身を荊と赤薔薇に覆われ封じられる。
そして兎は踏み込んだ。
茨と薔薇の道を一息に駆け抜け、そして敬愛すべき見ず知らずの女王様を足場にして跳躍。
「な、なんだオマエ!?」
驚愕に動きを止めたオウガを踏みつけ、さらに。
「ほら、チェックメイト」
両肩のミサイルポッドを前面展開。蹴り飛ばしたオウガへと一斉射撃を果たした。
轟音と爆炎が炸裂する。
本来ならば絨毯爆撃として使用するミサイルを一点集中した威力だ。並のオウガならひとたまりもなく、並でないオウガといえど致命傷である。
一向に消えない爆炎を前に、故は帽子をとる仕草ひとつ。
「ああ、大爆発楽しかったよ。またやろうねぇ」
せせら笑いながら締めくくった。
成功
🔵🔵🔴
ヴォルフガング・ディーツェ
アドリブ歓迎
巨大ロボに乗ってカッコ良く戦うシチュエーションが体験出来るなんて、年甲斐もなく心踊るじゃあないか!
乗せて貰う代わりに悪魔の囁き
普段は出来ない闘争、君と俺とでやってみないかい?お礼は王様の首でね
戦場でマシンガンを確保、併せて持てる技能を【指定UC】で幾つか強化しつつ肉弾戦どん!
うっわ、目線が高い!煙かっこいー!唸れ拳、ってね!
楽しんだならいざ終幕へ
スリサズ(妖精)のルーンを刻んだ魔弾の銃撃を見舞おう
斯くして呼ぶは邪妖精、そして心弄ぶ精神干渉力で…裏切りの悲劇を!
信頼出来る兵士にも、掛け替えのないお妃様も、誰もが操られて君の敵
嗚呼泣かないで、直ぐに楽にしよう
至近距離から別れの弾丸を君に
●
「巨大ロボに乗ってカッコ良く戦うシチュエーションが体験出来るなんて、年甲斐もなく心踊るじゃあないか!」
ヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)は叫んだ。滅茶苦茶大きな声で叫んだ。
老翁のように乾いた内面など嘘やろというレベルではしゃぎ、ロボの前でガッツポーズした。
そうなのだ! 男は何歳になろうと何度転生しようと巨大ロボに乗ってガッションガッションしたいのである!
「さあ俺を乗せてくれ。その対価に王様の首をあげるよ」
これまでにない闘争を、俺たちでやってみないか?
そう告げれば、メカきぐるみは雷で撃たれたように震える。カッコいいセリフと差し出された手。そうだ、彼らも男の子なのだ。ロボットアニメにありそうなシチュエーションには弱いのである。
堪らず開いた背中のチャックにヴォルフガングは身を滑り込ませる。かくして同じロマンを持つタッグが成立したのである。
ギュゥゥンと点灯するカメラアイ。普段より圧倒的に高い目線と、歩くたび響く重厚な足音にテンションは爆上がりである。
襲いくるアーマード雑兵をきぐるみスラスターの点火で加速、横移動にてやり過ごし、拾い上げたマシンガンにて無防備な背を晒す一体に撃つ。
「……」
ヴォルフガングは目を瞑って震えた。
腕から伝わる重い振動。マズルフラッシュ。そして立ち上る煙。
「いい……」
最高。このロボロボしい搭乗感。
「よし、いくぞ!」
とはいえいつまでも浸ってはいられない、これは戦争なのだ。思考を切り替えた彼はスラスターを点火する。
突き出されようとする騎士の槍をぎりぎりまで引きつけ、寸前でターン。片足の踵で地をえぐり、強引に稼いだ摩擦を軸にすれば、遠心力を十分に乗せた拳が胴鎧を貫く!
そのままさらに加速。城兵へ騎士の体を叩きつけてやれば瞬く間に雑兵の制圧が完了した。
「さあ、本命と行こうじゃあないか」
振り向いたヴォルフガングの先、慌てて兵を生み出すオウガがいる。兵に女王。どれも制圧こそ簡単だがキリがない。
ゆえに彼は引き金を引いた。マシンガンから迸る銃弾は乱雑に見えて王の増援らにまんべんなく降り注ぐ。
どれも致命傷には至らない豆鉄砲だが、しかし直後異変が起きるのだ。
被弾した箇所にルーンが浮かび、一斉に配下が狂乱し始める。
「な、なんだ!? 何が起きている!」
配下が刻まれたルーンの意味など王は知る由もないだろう。しかし、両手両足を拘束されてしまえば予測は立つ。
「お前、お前の仕業だな! よくも我が臣どもを……!」
「そんなに悲しまなくていい」
気がつけばヴォルフガングは王の眼前にいた。銃口を突きつけ、慈悲と慰めを口にした。
「直ぐに楽にしてあげよう」
発砲音。初めに頭を打たれた王が倒れ、次いで配下たちが糸の切れたように崩れ落ちていった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴェル・フィオーネ
・心情
……えっと、すっごく……個性的な、仲間達ね?
っと、驚いている場合じゃないわ
お願い、オウガ達を倒す為に力を貸して!
えっとその……オウガとの戦争みたいなものだから!
・戦闘
無事にアーマードきぐるみ愉快な仲間達の協力を得られたら、両手に着ぐるみマシンガンと着ぐるみレーザーブレード、肩に着ぐるみレールガンと着ぐるみチェインガンを装備して突撃するわ!
とにかく撃って撃って撃ちまくるわよ!
弾がなくなったら、近接戦闘に移る前にユーベルコード『シャイニング・オーバー・ドライブ』を全力でぶつけてやるわ!
こっちは見た目から想像できないだろうからビックリするでしょ?
・その他
アドリブ等は大歓迎よ!
●
「……」
ヴェル・フィオーネ(ウィザード・オブ・アリスナイト・f19378)はぼんやりとそれを見上げた。全体的に角張った、それでいて関節動かすたびにモーター音でもしそうなデザイン。言葉を選んで申し上げるとするならばとても個性的で、選ばず言うなら世界観を間違ってしまったような愉快な仲間が、片膝つき待機している。
とはいえ驚いてばかりもいられない。ここに来た目的を思い出す。
瞑目して深呼吸を一つ。
「……お願い。力を貸して」
ヴェルの声を受けてなお、アーマードきぐるみは微動だにしない。その代わり頭部のメインモニターが光を宿す。
「オウガと戦争をするから。だから、私と一緒に戦争をして」
「……」
アーマードきぐるみは何も言わない、やはり微動だにしない。ただし全身からモーター音を高ぶらせ、排気口から蒸気を噴き出した。
そして静かにチャックが降ろされていく。
「……ありがとう」
やがてヴェルの姿が中へ飲み込まれれば、鋼の巨人はゆっくりと立ち上がるのだ。
白のキングたるオウガが生み出した手勢はおよそ十。様々な武器種を揃えたポーンに、僧兵や城兵、さらに騎士。己だけでなく配下までアーマードきぐるみに搭乗させることで、強大な戦力を形成していた。
彼らはキングを中心として小高い丘に布陣する。すべては猟兵を迎え撃つために。
そんな彼らにふと影が掛かった。
何かと見上げればヴェルの駆るアーマードきぐるみが見えることだろう。さらには肩の巨大な砲塔をまっすぐ向けている姿さえもが。
「ッ! 敵しゅ……」
直後、レールガンが火を吹く。秒速8キロというとてつもない弾速がポーンの一体を吹き飛ばし、大地に大穴を開けた。
続いてヴェルは着地。きぐるみスラスターを点火しながら弧を描くように横滑りし、チェインガンとマシンガンを起動。一息の間に大量消費される鉛玉が、ポーンどもへ遺憾なく暴力を振るい沈黙させてゆく。
「クソが!」
王の配下のうち一体、おそらく城兵が飛び上がった。空中から襲いかかろうというのだろう、槍を構え、いままさにヴェル目掛けて急加速を開始する。
「その程度!」
ヴェルの対応は冷静だ。機関砲を止めながらスラスターを吹き、大きく後退することでレールガンの冷却時間を確保。
再びレールガンが牙を剥くと、敵軍に城兵の残骸が降り注ぐこととなった。
瞬く間に手勢を減らされた王は撤退を選択する。ヴェルには敵わないと判断したのだろう、騎士に足止めを任せ、自らは残った配下を引き連れ後退してゆく。
「逃さないわよ!」
もちろんそれを許すヴェルではない。
猛烈な速度で突進してきた騎士の剣をレーザーブレードで受け止める。剣の押し付け合いになりながら、彼女は背面スラスターを一斉に点火。
「このまま、全力でぇ!」
果たしてヴェルのアーマードきぐるみは、騎士を押し返した。そして押し返したまま際限なく加速し、後退してゆく王の一団まで追いつくことになる。
その全身に魔力の輝きを灯しながら。
「ふっとべぇぇぇぇ!!」
敵の中心。渦巻く強大な魔力を装甲に走らせ、燐光色の大爆発がオウガどもを打ち砕いた。
大成功
🔵🔵🔵
ラパ・フラギリス
お、おおお…私強そうです…!かっこいいです…!
(強そうなメカメカロボロボ好きな戦車乗り兎)
強そうな武器までいっぱい装備できます…すごい…!
(戦車を整備する気持ちで武器を装備していって)
私が戦車になるみたいで変な気持ちですが…これなら戦えそうです…!
で、でもダメージは受けたくないです。誰か乗ってください…。
操縦もおまかせなんですね…。いつもと逆で…こ、怖いですね。
な、なるべく怖くない感じでお願いしますひいい…!
(テンション上がってたけど実戦は怖い兎)
や、やっぱり戦うの怖いですうう…!操縦側が良かったです…!
(悲鳴を上げつつも体は委ねて)
ひい…すごい…強いです…っ。
●
「お、おおお……!」
ラパ・フラギリス(Wrapped in strong things・f25323)は興奮した。それはもう両手を握りしめながらぴょんぴょん跳ねるレベルで興奮した。彼女は戦車乗りである。巨大戦車を自作してしまうほどにガチである。
であればアーマードきぐるみを見てときめかないわけがなく、気がつけば機関砲を肩部に取り付けていたし、腕の片方を丸々マシンガンと換装してみたし、もう片方は火炎放射器にしてみた。
「ふへ、えへへ……」
いいぞいいぞぉ。マシンガンと火炎放射器はマニピュレーターで掴むのでなく腕に直接接続して頑強さを確保。余ったマニピュレーターは脇の下から伸ばせるようにしよう。
「すごい……惚れちゃいそうです……」
やっぱり予定変更。ノワールの大きな手が恋しくなったので、マニピュレーターへ装甲板とフレームをもりもりに増強して巨大なマシンアームにしてやった。すごい。つよそう。よだれでそう。
あ、総重量が増えちゃった。ブースター増設しとこ。いっぱい。
「ふぅー……」
深い溜息が出た。満足感をたっぷり孕んだものだった。もうお腹いっぱい。傑作が出来た気がする。
そして額を拭いながら達成感に浸るラパは気付くのだった。自らに注がれるアーマードきぐるみの熱い視線に。
「……」
ふとラパの頭が冷える。調子に乗って改造しすぎてしまったがよく考えたらこれに誰かが搭乗しないといけないのだ。
「え、私に乗れってことですか? いやでも、ダメージは受けたくないので……」
それにほら、追加ブースターの殺人的な加速で絶対酷いことになりそうだし。
「なので……」
誰か他の人を乗せて、などと言うよりも早くきぐるみのチャックが開く。
「あっ」
マシンアーム×2がラパを捉える。
「あっあっ」
そして流れる動作で内部へ放り込み、チャックが閉じられた。カメラアイがビガァァンと煌めいて、ブースターが点火される。
「ああっ、ちょ、待」
全門出力最大。全力加速。
「ひっ! ああ、あ~~~!!」
そしてとんでもねぇことになった。
まずポーンの一団がミサイル群の洗礼を受けて盛大に吹っ飛ばされる。
荒々しく耕された地面から土が舞い、周囲を陽光から覆い隠す。
果たして暗がりの世界で迸るカメラアイの光に気付けたものがどれだけいただろう。二重三重に増設されたブースターで狂ったように駆け回るアーマードきぐるみが一体、今度はマシンアームでクイーンの頭部を掴み、握りつぶす。
「ひい……すごい……」
さてその搭乗者は小さく悲鳴を上げていた。マシンガンと火炎放射器による流し撃ちで敵が次々爆散してゆくが、そんなもの見えても悲鳴はやまない。
「強いです……、けど!」
急加速の連打がつらい。三半規管がしにそう。
あと至近距離で爆発する敵も怖いし、反撃を紙一重で避けようとするのも怖い。
ラパの魔改造によってアーマードきぐるみはテンションが上がりまくり、搭乗者を完全に置いてけぼりにして見事なじゃじゃ馬と化していた。
「ごめんなさいもうちょっと加減を……!?」
搭乗者の苦情を意に介さずアーマードきぐるみはブースターを連続点火。地上を激しく跳び回りながらミサイルやら銃弾やらを放出、やがてそれが尽きる頃、ラパは目をぐるぐるさせながら放心しているのだった。
成功
🔵🔵🔴
鬼桐・相馬
【POW】
ふわもこのシロクマ的愉快な仲間と遭遇
アーマードしろくま。その強靭な身体といいダメージ減衰しそうな毛皮といい最高だ、名前を急ぎ考える
グレッグ、力を貸してくれないか
……角が刺さったら済まない
武器は近くに落ちていたきぐるみ製火炎放射器にしよう、冥府の炎をそのまま放射できそうだ
敵を発見したらグレッグへ言う
グレッグ、どちらが優れた白かはっきりさせよう
呼び出されたポーン達の動きを[戦闘知識と野性の勘]で囲まれぬよう回避と[武器受け]しながら立ち回る
ほぼ一直線になったところで火炎放射器で[焼却]しよう
ポーン処理後[ダッシュ]で敵に肉迫しUC発動
――あの足で搭乗後はどうやって移動していたんだろうか
●
鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)は腕を組みながらその四足を見上げた。
よく膨らんだ毛皮と金属パーツの織りなすコントラスト。いかにもサイボーグ化された白熊といった風体のアーマードきぐるみが目の前にいる。
太く逞しい足腰に、分厚い毛皮の装甲に頷きたくなった。
「グレッグ」
自分が乗り込むならこれしかないという想いを込めて、その名を呼ぶ。
「……お前の名だ」
直後、アーマードきぐるみの目が赤く輝く。尻を地面に付け箕座の姿勢をとれば、降りたチャックが相馬からよく見えた。
名前を気に入ったらしい。
「力を貸してもらうぞ、グレッグ」
果たして主を得たアーマードきぐるみは静かに直立。そして額から一本の赤い角をにゅっと生やすのだった。
それぞれアーマードきぐるみに搭乗した王とポーンの一団が青い炎によって分断される。
全員が振り向けば火炎放射器を構えたアーマードしろくまがひとつ、ブースターの点火でこちらに突っ込んでくるではないか。
「ええい、迎え撃て!」
すぐさま王から指示が飛ぶ。炎によって2つに分けられた集団だが、それぞれが盾と槍を構えて方陣をかたどった。
槍の鋭い切っ先が向きを揃える。
「構わず突っ込むぞ」
対する相馬に臆した様子はない。短い言葉を相棒に掛け、さらに加速。
やがてグレッグは槍の目と鼻の先まで迫る。片腕を振り上げているが、このままでは串刺しは免れない。
だが。
「グレッグ」
ぶぅん。ゴシャア。
激しい熊パンチ! 豪腕が槍を折り曲げポーンの胴を打ち砕く!
熊の拳は凶器なのでこれも立派な武器受けに違いない!
「ええ……」
残ったポーンはいかにもドン引きである。そんな彼らに向けてもう片手で引き金を引き、火炎放射器から迸る冥府の炎で覆い尽くした。
「いいぞ、グレッグ」
相馬とグレッグはただ敵を倒すために炎を放っただけではない。
先の分断と同様に冥府の炎にて新たな炎壁を築いてゆく。それは手勢を減らした王の一団をさらに割り、孤立させるものだった。
哀れなポーンは炎の奥から忍び寄る白い悪魔が見えることだろう。そして為すすべなく焼かれ、あるいは砕かれてゆくのだ。
「バカな……こんなことが……!」
ついに孤独の王となってしまったオウガが後ずさる。しかし四方を炎に囲まれ、もうどこにも行けない。
さらに目の前の壁が割り開かれ、ポーンの体が放り出された。がらがらと破片を撒き散らして転がり、仰向けで虚無の表情を晒す。
ずしん、ずしんと炎から大きな熊が現れた。二本の足で立ち、片手に火炎放射器を持つ白熊だった。
太く強靭な脚がポーンの体を踏み砕く。王はまた一歩下がろうとした。だが、すぐ後ろには冥府の炎があった。
「おお……、おおおおおお!!」
絶望と恐怖。それと強い怒りに支配されて白のキングが飛び出す。
マントを翻し、杖を振りかぶった破れかぶれの突撃だった。
「教えてやれ、グレッグ」
優れた白かを。
相馬の操作のもと、白熊のきぐるみが片腕を大きく握る。
やがて繰り出された破壊の一撃は、杖と王の一切合切を砕き、そして大きく吹き飛ばすのだった。
成功
🔵🔵🔴
キッテン・ニコラウス
良いわね、あなたの操作性とか完全に頭からすっ飛ばしてスピードにステータス全振りしたような感じ!
ハイブーストガン噴きして戦場を端から端まで飛び回りたい「速さ」を身体が求めてるんでしょう?
なら貴方……「ペレグリン・ファルコン」にはこの私が乗ってあげる!
ってなぁに、あなた一回噴いたらエネルギー空になっちゃうの?
ま、良いわ、それなら遭遇した敵にすれ違いざま攻撃を叩き込んで一発で仕留めてやるんだから!
ミサイルが貧弱なのしかなくても安心しなさい、私の【アイス・ランス・ショット】でミサイルを覆って強化してあげる!
爆発しなくなっちゃうけど、質量弾として使うだけでも速度的に十分でしょ!
さあ……蹂躙するわよ!!
●
戦場を一陣の風が走る。
その風には足があった。その風には腕があった。そしてその風はブースターで加速していた。
一秒前より速く。一秒後にはより速く。
どこまでもどこまでも際限なく加速してゆく半人半鷹のアーマードきぐるみが一体。その搭乗者の名はキッテン・ニコラウス(天上天下唯我独尊・f02704)という。
彼らは戦場の端から端までを踏破せんという勢いで加速し続ける。
キッテンの目的はオウガの打倒にある。ゆえにアーマードきぐるみの直線軌道上には白のキングが操る兵の一団がいた。キング含めた全てがきぐるみに搭乗した一大戦力だ。
やがて彼らは恐るべき勢いで接近するキッテンらに気付く。
王の指示の下、兵たちは迎え撃つべく瞬く間に槍衾を形成。王の脇を騎士と城兵で固めた隙のない方陣だった。
前方に布陣した兵の層は厚く、真正面から激突すればキッテンらにはひとたまりもない。
唯一切り抜ける手段があるとすれば、それは遠距離攻撃だろうか。
しかし、無理だ。キッテンの選んだきぐるみは貧弱なミサイルしか搭載されておらず、槍衾の突破などできはしない。
「……」
半人半鷹のきぐるみは心のなかで涙する。彼には戦争など、戦いの勝敗などどうでもよかった。ただ速さだけがあればよかった。限界まで加速して切る風は何にも代えがたいほど気持ちが良かった。
だけどいまは、いまだけは力がほしい。
自身の速さを共有してくれる人の期待を裏切りたくないのに。
これほど自身の非力さを悔しく思ったことはなかった。
「ん……」
そんな折、どこか呑気な声がキッテンから溢れた。
「決めたわ、ペレグリン・ファルコンね」
何をと浮かんだ疑問へ言葉が打つ。
「あなたの名前よ。なにシケた顔してるの? あなたはこの私が選んだのよ」
その後、胸に膨らんだ感情の名を彼は知らない。
キッテンの名付けたペレグリン・ファルコンはとにかく速く、その代わりに脆い。さらに火力に欠け、持続力もない。
それで充分だった。
彼から撃ち出されるミサイルは瞬く間に凍りつき、氷に覆われた。
ただの氷ではない。あちらが槍衾ならこちらも槍衾だ。
ファルコンは前方に氷柱の群れを浮かべながらさらにギアを上げる。
「さあ……蹂躙するわよ!!」
キッテンの声を合図に、ふたつの戦力が真っ向から衝突した。
耳を覆うほどの轟音。続く鉄と氷の破砕音に、雑兵どもの断末魔。
恐るべき激突は敵の方陣の前半分を引き千切る。
「……よし!」
激突の寸前にファルコンを横へ逸らしたキッテンはそのまま反転を開始。
エアブレーキ展開。二本の脚で地面をえぐり、鋭い轍を弧状に描きながら方向を変える。強大な慣性に引きずられながらも体はオウガへと向いた。
まだキッテンの攻撃は終わっちゃいない。
ブースターがさらに火を吹く。持続力のないファルコンはこれで燃料を使い切るが構わなかった。
ペレグリン・ファルコンはとにかく速く、その代わりに脆い。さらに火力に欠け、持続力もない。
それで充分である。
速さとは力なのだから。
限界まで研ぎ澄まされた力が方陣の後方を狙う。オウガ、白のキングがそこにいた。
「消し飛べ!」
再び氷の槍衾が展開される。
澄んだ切っ先は王の腹を穿ち、戦場の彼方まで吹き飛ばす。
そしてキッテンとファルコンは何もかもを置き去りにして駆け抜けていった。
大成功
🔵🔵🔵
ランガナ・ラマムリタ
オーレリア(f22027)くんと
自覚のない、愉快な仲間
推測として、口にしたことはあったけれど
こんな形で突きつけられてしまうのは、少し、残酷だね
だから、
「手間が省けたのは良いけれど。それにしたって厳ついね。柔らかい膝に抱かれる方が好きだなぁ、私は」
返事はいつものように軽薄に、変わらぬ笑みで
うーん、しかしこんな形で女の子に乗るのは初めてだな……
セオリーは分からないけれど、攻めっけは十分のようだし
「右に屈んでスラスターを展開。2秒後に振り向いて爆撃を。――うん、回避の指示は任せて」
「君は、私が守るから」
まぁ。失敗しても、傷つくのは私みたいだけど
それはそれで、今の君に余計な悩みを抱かせるのは御免だよ
オーレリア・エフェメラス
ランガナ(f21981)くんと
確かにボクが目覚めたのはこの世界で
その時記憶は何もなかった
そういう存在はアリスと呼ばれていると聞いていた――はずなのに
いつも以上に小さなキミを見下ろして
協力を頼む手間が省けたね、なんて強がりを
自身の体を見下ろせば眼鏡の名残のバイザーに白衣を思わせるスカート
相棒のスライムたちも自分の周りを守るように浮遊していて
堅くてごめんよ、ちょっと我慢してね
敵機を捕捉
剣状に変形させたスライム達を消しかけて、敵の周囲から攻撃
回避の範囲を絞ったところにフラスコ型の爆弾を投げてみるね
さすが、こういうところでも先読みはお手の物だね
キミを守る、はボクの台詞な気がするんだけど
信じて、任せるよ
●
不思議の国というのは本当に不思議な場所で、踏み入れたものは何でもかんでも己のルールで絡め取ってしまう。
オーレリア・エフェメラス(ガラスの向こうのメッセージ・f22027)はぼうっと立ったまま、己の手を眺めていた。
普段よりずっと高くなってしまった視点。そしてつるっとした光沢の硬い指先。自身の変化と、国のルールがふたつの衝撃となってオーレリアを揺らした。
自分の扉なんてなかった。いくら探しても見つからなかった。
ボクのルーツは、アリスではなく……。
何の心の準備もできないまま迎えた真実に心をまっすぐ貫かれる。膝から力が抜けてよろめきそうになり、慌てて力を込め直した。
馴染みのない感覚とモーター音が、これは夢ではないと訴えてきてどこか寂しい。
「……」
その一部始終をランガナ・ラマムリタ(本の妖精・f21981)は見ていた。
オーレリアの、己のルーツを知りたいという想いをよく知っていた。共に考え、時には仮説を挙げるなどもした。
だけれども、こんな形で真実を突きつけられてしまうのは。
ランガナは掛ける言葉が見つからず、ただ世の残酷さに歯噛みする。
「オーレリアくん」
妖精は随分高くなった彼女の顔を見上げた。機械の兵士を思わせる威容だが、眼鏡を思わせるバイザーに腰部を覆う白いスカートが普段の彼女を想起させる。
ややあってモーター音とともに彼女の首が動いた。バイザー越しに目が合った気がした。
「……ランガナくん」
普段より硬い声が出てオーレリアは息を飲む。自分が人間でないことを再度突きつけられたようだった。
しかしランガナに心配をかけるのは本意ではない。彼女へのせめてもの気遣いがオーレリアの支えだ。
「協力を頼む手間が省けたね」
それが強がりだとわかるからこそ、ランガナは努めて普段どおりに返した。いつもと同じ軽さで、いつもと同じ笑みで。
「手間が省けたのは良いけれどね」
肩を竦めて見せて。
「それにしたって厳ついね。柔らかい膝に抱かれる方が好きだなぁ、私は」
「残念だったね。ちょっと我慢してね」
人差し指を口元に添える仕草はオーレリアそのものだ。機械の体で表情はわからないが、きっと笑い返してくれているに違いない。
大丈夫だ、オーレリアはここにいる。
オーレリア・エフェメラスのアイデンティティは記憶のない女子、だけではない。王子様でも錬金術師でもあったではないか。
手の暖かさもしなやかさも、いまの僕にはないというのに。
それでもランガナくんは変わらぬ態度を示してくれている。心を揺らがされたオーレリアにとって、受け入れられている実感は何よりもありがたい。
おかげで、もう戦いへ気持ちを傾けられるようになった。
「さあ、敵が見えてきたよ。さっき言った戦い方は覚えてるね?」
スラスターの加速は十分だ。トップスピードを維持しながら、大きなってくるオウガどもの影を見て頷く。
敵もこちらに気付いている。王はきぐるみに搭乗した兵を大量に動員し、それぞれに盾を構えさせていた。高速で接近するオーレリアに対抗する方陣である。
距離を詰めながらオーレリアはまず液状の物体を展開した。液体はそれぞれ意志を持つかのように蠢き、たちまち先端を刃のごとく鋭利にする。
刃は勢いよく飛び出して樹形図を描くように枝分かれしていった。
「いまだよ」
ランガナの声に頷く。
スラスターの加速は維持。彼我の距離がゼロまで縮まり、すれ違う瞬間に砲塔からフラスコ型のロケットを射出。数はひとつ、ふたつ。
剣の群れが逃げ道を殺していれば、敵軍はロケットの直撃を真正面から受けるしかない。
爆発音。高速で離れるオーレリアの白いスカートは眩い光と熱から僅かに舐められた。
果たして戦果はいかほどだろう。少なくとも相手は戦争で不思議の国のひとつを任せられるオウガだ。
いざ振り返って見れば、黒煙の合間から覗く盾が見つかった。
「なるほどね」
敵軍は整列した盾で四方を覆うファランクス陣形をつくり、爆発を耐えきっていたではないか。
盾の奥。白のキングたるオウガがまっすぐこちらを睨みながら笑うのが見える。
そして王が杖を突きつければ、兵士どもがたちまち一斉に槍を構え、投げつけてくるのが見えた。爆雷を搭載してロケット加速する槍だ。掠るだけでもたちまち炸裂する代物である。
「……大丈夫さ」
戦場にあっても心強い司書の声。
「君は、私が守るから」
オーレリアは再び首肯し、彼女の指示に身を委ねる。
「いいかいオーレリアくん。まずは全身のスラスターを点火しよう。これで君は少しの間だけ重力から解き放たれる」
そしてこれから私の言うスラスターを順番に消すんだ。タイミングはノックのリズム。できるね?
やがて宙に浮き上がった機械の体が唐突に真横へ振れる。直ぐ側をロケットジャベリンが通り過ぎ、後方で爆発を起こすが被害はない。
目まぐるしく点滅を繰り返す全身のスラスターはピンボールめいた軌跡を描くが、そのいずれもが敵の攻撃の抜け道となっている。
投げられた数は十だったか二十だったか。全ては彼方で虚しく炸裂するのみ。
「さすが、とても器用に避けてる」
「まかせてくれ。先を読むのも空を飛ぶのも慣れたものさ」
まさか攻撃を全て回避されるとは思わなかったのだろう、怒りに顔を染めた王が怒声を上げるのが見えた。周囲の兵士は慌てて次の槍を用意し始めているに違いない。
妖精は頭を巡らせる。
「さっきのフラスコ爆撃をもう一度やってみよう」
先程完全に防がれた攻撃を繰り返せという指示だがオーレリアから異論が出ることはない。強い信頼で繋がれているのだ、彼女は躊躇いなく加速し、スライムとフラスコを用意した。
再びスライムが迸る。数多の刃となって敵軍へと降り注ぐが、今度の狙いは違う。
高度な柔軟性と自由度を持つスライムの刃は兵士どもの手元を貫き地面へと縫い止める。その結果引き起こされるのは盾の撹乱である。
秩序を欠いたファランクス陣形へすかさず撃ち出される数多のフラスコロケットが、方陣の隙間へ潜り込み内部から熱と爆風にて破壊を撒き散らす。
「まるでお手本のような見事な指揮だったよ」
爆炎に塗れた王が堪らず方陣から抜け出す。せめて自分だけはと逃走を図るその背へ、オーレリアたちが追いついた。
「だけども、お手本は日頃から浴びるほど読んでいてね」
「これで終わりにしよう」
スライムの刃が王の体を貫く。そのまま先端を地面へ突き立て標本のように飾る。
そして、最後のフラスコが撃ち出された。
「ランガナくん。ありがとう」
「どういたしまして」
炸裂した閃光が王を飲み込む。
こうして、不思議の国からオウガがまた新しく駆逐されるたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵