【旅団】とらぶるビーチ・バケーション
これは旅団シナリオです。
旅団『恋華荘』の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えないショートシナリオです。
●ここではないどこかの温泉郷
「特賞!宿泊券大当たり~~~!」
夏休みに向けた商店街の福引会場で、そんな声が響いていた。
がらんがらんと特賞を祝う鐘が鳴る中、当の特賞を引き当てた彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)は、「は、はぁ……」と呆然としている。
寮の管理人という立場柄、色々商店街で買い物をすることも多く、それで溜まった福引券で、下位の賞品で消耗品の補充でもできればいいかなぁ程度の軽い気持ちで籤をガラガラと回したら、特賞が出たので思考があまり追い付いていないのだ。
それでも、まだ福引券は残っていたのでもう一度回す。
すると、先程と同じ色の玉が出た。すなわち……。
「特賞!宿泊券大当たり~~~!」
……2本目の大当たりであった。
「というわけで、皆さん、旅行とかどうですか?」
寮に戻ったいちごは、とりあえずロビーにいた寮生たちを集めて、宿泊券の話をしてみた。
当たった宿泊券は、とあるリゾートビーチにある旅館の、大部屋宿泊券だった。
10人ほどは泊まれる大部屋の宿泊券が2部屋分。
「日程は、今度の4連休で、3泊4日。大部屋なので、みんなで布団を敷いての雑魚寝になりますけれど、近くの海水浴場とか、旅館の温泉とか楽しめるみたいですし……ちょっとした修学旅行みたいな感じですよね」
恋華荘は寮とはいっても学生寮ではないのだが、いちごを含めて学生世代も多いので、修学旅行といえばいい得て妙かもしれない。
ただ、その場にいるものだけで、旅行のメンバーを決めるわけにはいかない。
その場で話を聞いた寮生の中でも、行きたいという者もいれば、都合がつかなくて残念がる者もいるのだし、せめて寮内全体に通知して、行きたい人は募りたいところ。
もちろん大部屋2つで最大20名くらい……部屋での雑魚寝なので、多少の人数オーバーは旅館も大目に見てくれるという話なのでもう少し増えても大丈夫かもしれないが、とにかく今かなりの人数が暮らす寮の中ではそれでも20名程度では全員が行けるわけではないのだが……。
「行きたい人が人数オーバーするようなら、寮内でくじ引きでもして決めましょうか?」
といういちごの提案で、この場はお開きになり、改めて人員を募ることになった。
なお、大部屋での雑魚寝という事なので、いちごは行く気はなかったのだが、寮生のほぼ満場一致でいちごの参加だけは決定していたという……。
●そしてとある海水浴場
というわけで旅行にやってきた恋華荘御一行様。
これから3泊4日の旅行を楽しむことになるわけだが。
せっかくいちごも一緒なのだし、旅行期間中に一度くらいは2人きりに……などと企む者もいれば。
特に企みはなくても、なんとなく他の面々と離れて2人きりになる……なんて事もあるかもしれない。
もちろん、そんな偶然や企みが重なれば、2人きりを狙っていたのにブッキングしたりとかも……?
みんなで楽しく遊ぶのとは別に、寮生たちの駆け引きの3泊4日も始まるのだった。
雅瑠璃
こんにちは。またはこんばんは。
雅です。
というわけで恋華荘の旅団シナリオになります。
なので当然ですが、参加可能なのは恋華荘の団員だけです。ご了承ください。
今回もゴールデンウィークの時のようなデートシナリオにしてみました。
今回は、海水浴リゾート旅行の最中に抜け駆け企むことになります(笑)
旅行の日程は今度の4連休、つまり7月23日~26日の4日間になります。
もちろん、ただ2人きりで普通にデートなんかさせません!(笑)
半日デートを勝ち取れるかは、他の寮生を出し抜けるかにかかっています!(笑)
では、今回のルールです。
基本的には、半日のデートプランをプレイングに書いていただくことになります。
その際、どこの時間帯・場所なのかを【必ず冒頭に】記載してください。
選べる選択肢は以下の14パターンです。
【23日昼・宿】【23日昼・海】【23日夜・海】【23日夜・宿】
【24日昼・宿】【24日昼・海】【24日夜・海】【24日夜・宿】
【25日昼・宿】【25日昼・海】【25日夜・海】【25日夜・宿】
【26日昼・宿】【26日昼・海】
この中から一つ選んでください。
※最終日の夜はありません。旅行を終えて帰寮するので。
もちろん、寮生同士での談合や相談は禁止です!【重要】
他の参加者の出方を推理して、見事、人のいない選択肢を選ぶことができたら、2人きりのデートリプレイになります。
ただし、他の参加者とかちあった場合は、集団で遊ぶリプレイになるか、いちごが無理矢理お互いの所を行ったり来たりで掛け持ちするリプレイになるでしょう(笑)
今回は基本的に海水浴ですので、海の選択肢の場合は海水浴となります。
泳いでもいいし、水遊びでもいいし、甲羅干ししてもいいし、基本的に海でできそうなことならば何でもOK。
宿の選択肢の場合は、基本的に泊まっている大部屋での出来事か、あるいは食事やお風呂場での出来事か……となるかと。もちろん(?)お風呂は混浴です。
日時は前述の通り今度の4連休を想定。
執筆も連休中に行いますので、プレイングの提出は、7月22日8:31~23日8:30までの間にお願いします。この間に提出していただけると、締め切りが連休最終日の26日の朝になりますので。
質問等があれば旅団のスレでお願いします。
それではプレイングお待ちしています。
第1章 冒険
『ライブ!ライブ!ライブ!』
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POW : 肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!
SPD : 器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!
WIZ : 知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●今回の旅行にはいかない女医の入れ知恵
「ところで、今回の旅行、いちごさんの誕生日から1週間後といういいタイミングですわね?
誕生祝いしたいとか、ふたりきりになる口実やきっかけになったりするんじゃないかしら?」
くすくすと笑いながら呟く女医の言葉に、何人かは聞き耳をたてていたそうな……?
彩波・流江
【23日昼・宿】
気兼ねなく旅行を楽しむ、と言うのも大変ですね…
二人だけになる機会もそうそう無いですし、一つ確かめたい事があります
いちごさんの内に存在する邪神
その性質や経緯など、よければ聞かせてもらいたいです
「もし貴方がそれに呑まれるようであれば…」
と釘を刺すような言葉も
とはいえ、いちごさん自身が邪悪であるワケではない事は分かってるつもりですし、その手綱をしっかりと握れているのであれば、私から言うことはそんなに多くありません
むしろ私に出来る事があれば、力になりたいとも思っていますよ
何事も穏便な解決が望ましいですからね…
え、何で気付いたのか、ですか?
…それ、言わせちゃいます?(顔赤らめつつジト目)
月読・美琴
【23日昼・宿】
「いちごお兄様とは神社同士の付き合いで昔から顔は知っていましたが……
まさか、こんなことになるなんて……」
いちごお兄様と顔を合わせるのが気まずく、宿に着くや温泉に入って気分を落ち着けます。
神様からの指示は、いちごお兄様の中の邪神を鎮めること。
そのためには……その、いちごお兄様にご奉仕しないといけないらしいのです。(赤面してお湯に沈む
「あ、誰か入ってきましたね。
って、ええっ、いちごお兄様っ!?」
慌てて露天風呂の岩陰に隠れますが……
い、今なら、いちごお兄様にご奉仕するという使命を果たす絶好の機会なのではっ!?
で、でも、そんな破廉恥なこと……
悩んでいる内にのぼせて湯船で倒れるのでした。
宮村・若葉
【23日昼・宿】
海や夜…そちらの方が思い出は濃くなるかも知れないけれど
でも私は、彼の空気に…そこにいるのが当り前な存在になりたいの
●
なので初日昼の…チェックイン直後?から会いに行くわ
荷物運びとか、手伝います
それと…ほら、温泉もきっと今なら空いていますよ
いちごさんの体のこと、知らない人もいますよね…?バレないようにするの、協力しますから…
…?一緒に入れば、一回で済むでしょう?それにほら…もたついていたら、他のみんなに気づかれちゃう
(キャーッいつも見守るだけの彼が近くに、近くに!!!(心では小躍り))
ふふ…いえ、いつもと違う体験ができる旅行って、良いなって
そう思って
残りの期間、楽しみましょうね
●旅行の始まり【23日昼・宿】
恋華荘のある龍神温泉郷から離れて、電車に揺られて数時間。
恋華荘御一行様がやってきたのは、海水浴客で賑わうリゾート海岸にあるとあるホテルだった。
最終的に総勢23名の大人数での旅行なので、ちょっとした修学旅行気分である。
もとはといえば、いちごが商店街の夏休み向けの福引で当てた、このホテルにある10人で泊まれる大部屋での宿泊券×2が始まりだったのだが、恋華荘内で旅行の参加者を募集したところ、定員の20名を超える応募があったため、旅行の幹事を引き受けたいちごがホテル側に交渉して1部屋につき追加最大2名まではOKと許可をもらっての旅行となっている。
もちろん、普段から賑やかな女子高状態の恋華荘なので、ここに来るまでの電車の中でもひと騒動くらいはあったと思うが……そこは割愛しておこう。
「つきましたね。皆さんお疲れ様です。私はホテルの人とちょっと打合せしてきますので、皆さんは部屋に荷物を置いたら、着替えて海岸に向かってもいいですし、ホテルの中を探索してもいいですし、ここから自由行動にしましょう」
と、幹事のいちごがホテルのスタッフと食事や布団などの打ち合わせをするので、部屋の鍵を預けられた恋華荘の女性陣は思い思いに行動を開始したのであった。
「……と、注意事項はそれくらいで。それではお楽しみください」
「はい、ありがとうございました」
ホテルのスタッフとの打ち合わせも終えたいちごが、さて自分もいったん部屋に行こうかと振り向くと、やたらと視線を感じた。
それこそ、おはようからおやすみまであなたの暮らしをじっ……っと見つめる的な視線である。
いったいどこから……というのは考えるまでもない。
柱の陰に半身で身体を隠していちごをじっと見つめている宮村・若葉(愛に飢えた脳筋お嬢さん・f27457)がいたからだ。
「……えっと、若葉さん、ずっとそこにいたんですか?」
「ええ、ずっと見てました」
じーっ。
いちごの傍にいるだけでというかいちごの吸う空気になるだけで幸せと力いっぱい物語っている視線で、じーっと。
なにせ本人曰く「海や夜の方が思い出は濃くなるかも知れないけれど、自分は、いちごの空気に……そこにいるのが当り前な存在になりたいの」だそうなので。
「幹事のお仕事あるんでしょう。手伝いますよ?」
「ああ、いえ、あとは食事の時間とか連絡するだけなので、とくには」
「そうなの? それじゃ……あ、ほら、温泉もきっと今なら空いていますよ?」
仕事は特にないと、遠回しにみんなと遊んできていいですよといったつもりのいちごだが、もちろんそんな遠回しな言い方は通じない。
そして若葉がふと思いついて口にした温泉の話、実はいちごにとっても渡りに船ではあったのだ。
……なにせ、いちごを狙う者も多い恋華荘だ。このホテルの団体部屋には、内風呂の温泉もついているのだが……下手に皆で部屋に集まっている時間にいちごが内風呂に行こうものなら、混浴で押しかけて来る人は必ずいる。
なので、皆がもう海水浴場に出かけたであろうこの時間なら、先に頂いてもいいかなと思っても不思議はない。
……その押しかけてくるであろう人の提案に乗るのはどうかとは思うが。
このホテルの大部屋には、ベランダの向こう側に内風呂の露天温泉が用意されている。そこはチェックイン後はいつでも使えるようになっているので、いちごがそうしてみようかと思ったように、海水浴に行く前にまず温泉に浸かることを選択するものがいたところで不思議はないのだ。
そう、彼女、月読・美琴(月読神社の退魔巫女・f28134)がそうだった。
今夏の旅行直前に入寮した彼女は、皆と顔見知りになるきっかけにもなるかと急遽参加を決めてみたのだが、やはりまだ心の準備ができておらず、それでとりあえず1人で入浴をすることにしたのだった。
この場合の心の準備とは、寮の他の人たちの輪に入ることではなく……。
「いちごお兄様とは神社同士の付き合いで昔から顔は知っていましたが……まさか、こんなことになるなんて……」
実はいちごと顔を合わせると意識してしまうから、だったのだ。
これは別に恋慕の情というわけでは(多分)ない(はず)。
実をいうと美琴といちごとは、いちごが暮らしていた白銀神社と美琴の実家の月読神社とが同じ神を祀るという事もあって神社同士のつながりがあり、それゆえ盆と正月に顔を合わせる遠くの親戚レベルではあるが幼馴染でもあるのだ。
が、今回美琴が恋華荘に越してきたのは、神託の使命によってである。
つまり、いちごの中に存在している邪神を鎮める月読神社の巫女としての使命。
「……神様が言うには、いちごお兄様にご奉仕しないといけない……とか……」
ご奉仕で一体なにを思い浮かべたのか、巫女とは赤面して鼻の下までお湯に潜ってブクブクと口を動かすばかりだった。
そこに、お風呂の扉が開く音がする。
「あ、誰か入ってきましたね。……って、ええっ、いちごお兄様っ!?」
入ってきたのはいちごであり、美琴は真っ赤になってお湯に頭から沈み、物陰に隠れるのだった。
さて、ここが部屋の内風呂である以上、専用の脱衣所というものはない。
なので部屋の中に脱いだ服があったとしても、それはみんなが水着に着替えて出ていった後だとしか思わないわけで。
つまりいちごは誰もいないと思って入ってきたのだった。
「へぇ……意外と広いんですね」
まずいちごが感心するのは、このうち風呂の広さ。大部屋の内風呂なので、大人数で入れるようになっているのだろう。
「ええ。広いので、一緒に入っても問題ありませんね?」
そして、いちごの背後からは、当たり前のように若葉が付いてきていた。もちろんお風呂なので裸で。
「って、若葉さん!?」
「ええ、私です。どうしました……? 一緒に入れば、1回で済むでしょう? それにほら……もたついていたら、他の誰かが帰って来ちゃうかも」
裸のまま、いちごの背後から抱きつくようにぴとっと。
真っ赤になって慌てるいちごと、余裕の表情でそれを堪能している若葉。……という格好になっているが、実のところ若葉も内心では……。
(「キャーッ! いつも見守るだけの彼が近くに、近くに!!!」)
……と小躍りしていたりはする。
それを表に出さない分、若葉の方が余裕といえるだろう。
(「いちごお兄様にご奉仕、って……私もああやって……?」)
いちごと若葉の状況は、美琴からも見えていた。
いちご達はまだ美琴に気付いてはいないが、美琴はそもそもいちごが来たことで隠れて、そして覗いてみているのだから当然。
(「こ、これは、私も、いちごお兄様にご奉仕するという使命を果たす絶好の機会なのではっ!? で、でも、私あんな破廉恥なことは……」)
そして自分も若葉のように、いちごにご奉仕するべきではと、頭の中でぐるぐると考え出して……そして、美琴は、長時間浸かっていたせいか、考え事のせいなのかは微妙なところだが、とにかく逆上せて顔を真っ赤にしたまま、湯船でぶっ倒れてしまうのだった。
ばっしゃーん。と大きな水音を立てて。
「えっ!? 美琴さんっ!?」
それで美琴の存在に気が付いたいちごが、慌てて駆け寄ってきて。、美琴を抱き上げる。
(「あ……いちごお兄様に、全部、見られて……」)
逆上せた頭でそんなことを考えながら、美琴はいちごの腕の中で意識を落とすのだった。
さて、唐突だが話は変わる。
内風呂で騒ぎになったいちご達3人以外の皆は海水浴場に向かっていったのだが、そこから1人だけ引き返してきていた。
今の時間ならもしかして2人きりで話せるのでは、とそう考えて、彩波・流江(不縛神フルエリュト・f25223)が踵を返して戻ってきていたのだ。
「……今の状態で気兼ねなく旅行を楽しむ、と言うのも大変ですし……こんな機会もそうそう無いですから、一つ確かめておかないと」
先日感じたことを気にしたままでは、せっかくの楽しい旅行も楽しめない。
だから、早いうちにいちごと話をしたいと思ったのだ。
他のみんなは海水浴に向かっているから今なら2人きりで話せるはず。
そう思って部屋に戻ったら、湯船で逆上せてぶっ倒れた美琴を布団に寝かせて介抱しているいちごがいたのだった。ちなみに若葉は、美琴用のおしぼりを濡らしに行っていて不在だ。若葉のことだから、戻ってきてもいちごと流江が話をしていれば、陰でじーっと見ているだけで混ざりはしないだろう。
「あ、いちごさん1人じゃなかったですね。えっと……」
この場合どうしようかと頭を悩ませた流江の様子から、何か話がしたいのだと察したいちごは、手招きで流江を呼ぶ。
「流江さん、どうしました?」
「あ、いえ、……よかったんですか?」
「えっと、美琴さんは逆上せて寝ているだけですし、彼女が目を覚ましたら、みんなで海岸に行こうかと思っていたので……大丈夫ですよ」
安心させるように笑顔でそんなことを言ういちごに、少しだけ赤面しつつ、流江はそれならと思い切って尋ねるのだった。
「えっとですね、いちごさんの内に存在する邪神……その性質や経緯など、よければ聞かせてもらいたいです」
「え? 流江さんに私の中の邪神のこととか話してませんよね……何で知って……?」
「知ってるというか、気付いたんですが……何で気付いたのかは言わせないでくださいよ?」
赤面しつつジト目でいちごを睨む流江である。
その態度で、理由……依頼中の出来事で交わったりしたせいだろうと察したいちごも顔を真っ赤にするのだった。
空気を変えるためにコホンと咳払いして、いちごはとりあえず流江に聞かれたことを答えていく。
といっても、いちご自身にもよくわかっていないので語れることは少ない。
むしろそこで逆上せている美琴の方が詳しいかもしれない。
「そんなわけわからないものにもし貴方がそれに呑まれるようであれば……?」
「んー、私もちょっと不安ですけれど、その力を借りる際、完全に飲み込まれたら、尻尾が九尾になるという話なんです。今は四尾で済んでいるので、大丈夫じゃないかと……」
釘を刺してくる流江に、苦笑しながらいちごは答える。
今のところはいちごもそういうしかないのだから。
流江も、そんないちごの態度に安心したのか、ふぅと気を抜いて笑顔を見せながら言うのだった。
「まぁ、ですね。いちごさん自身が邪悪であるワケではない事は分かってるつもりですし……それに、むしろ私に出来る事があれば、力になりたいとも思っていますよ」
「ありがとうございます」
何事も穏便に済ませられれば……と思って流江はそんなことを言うのだが。
……そこに爆弾が落ちてしまうのだった。
「……いちごお兄様の中の神を鎮めるには、ご奉仕をすればいいんだそうです」
「は?」
「え?」
どこから聞いていたのか、いつの間にか目を覚ました美琴がそんなことを口走ったのだ。
「ちょ、美琴さんっ!?」
「ご奉仕って、何を……!?」
「貴方も一緒にお兄様へのご奉仕をしてくれるんですかっ。私の使命に巻き込むのは恐縮ですけれど、いちごお兄様のために協力してくれるなら嬉しいですっ」
逆上せたからだけだとは思えないほど顔を赤くしてそんなことを口走る美琴の様子から、ご奉仕が何を指しているのかは簡単に察してしまった流江も、顔を赤くしてしまう。
ましてや赤面しながらあんな破廉恥なことひとりでやるのは勇気が出なかったのでとかまで口走るものだから、いちごが慌てて美琴を取り押さえたり、そもそも美琴は風呂場から直接身体を拭いただけで寝かせられていたのでまだ裸だったり、裸なことに気付いた美琴が悲鳴を上げたり、それを見てやっぱり邪悪なのではと流江がいちごにジト目を向けたり、さらに若葉が戻ってきたりと、しばらく騒ぎは収まらなかったそうな……。
最初から前途多難な旅行、かもしれない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
保戸島・まぐろ
【23日昼・海】【SPD】
海! 海水浴! いちごとビーチで遊ぶ!
持っている青系のビキニを着ていくわ。布地が若干少なめだけど、いちごに魅せるためだもの、これくらいは必要よね!
やることは浅瀬の海に入って水遊び。
ふたりでキャッキャウフフしていきたい!
そういうことでビニール製のビーチボールを用意して海へ入るわ。
穏やかな浅瀬だから軽く動いても大丈夫ね!
ボールをいちごにトスしたり、ボールそっちのけで水を掛け合ったり。
なんてやってたら、とらぶるもあったりしてね。
きっちり結んでいたはずの水着の紐が緩んでハラリとか。
いちごに指摘されるまでそれに気づかなかったり。
だって! 楽しくて夢中だったから!!
●海水浴の最中に【23日昼・海】
ホテルでの大騒ぎの後、いちご達は海水浴場へとやってきていた。
総勢20人を超える女性陣は、……先程ホテルでひと騒動を起こした者も含めて、皆思い思いに楽しんでいる。
水着に着替えてこの場にやってきたいちごだが、そんな女性陣を遠くから眺めてのんびりと……なんてできるわけはなかった。
「いちご、今ひとり?」
声をかけてきたのは、布地少なめな青いビキニに身を包み、少しだけ頬を赤く染めている保戸島・まぐろ(無敵艦隊・f03298)だった。
普段はワンピース水着を着るまぐろだが、今日はいちごに魅せたいと思ってわざわざ選んだ水着なので、たまたま2人きりになれそうなチャンスを見かけて、勢い込んでやってきたというわけだ。
「あ、まぐろさん。ええ、今は1人ですよ」
「そう、偶然ね。それなら2人で一緒に遊びましょう!」
もちろん偶然ではない。タイミングを狙っていたまぐろが、幸運にもそのタイミングを射止めたという必然だ。が、いちごは割と天然で偶然だと思った様子。
「今日のまぐろさんはビキニなんですね。可愛らしいですよ」
「そ、そそ、そう? あ、ありがとね」
魅せるためだものこれくらいは必要よねと頑張ってきて着たビキニを、いちごはごく自然体で笑顔で褒めてくれるものだから、恥ずかしさと嬉しさで一気に耳まで赤くなってしまうのだった。
「そ、それじゃ、いきましょう。こういう時は、浅瀬で水遊びよっ」
そんな照れて赤くなった顔は見せたくないまぐろは、ビーツボールを手にくるっといちごに背を向けて、波打ち際まで駆けだしていくのだった。
「あ、待ってくださいよ、まぐろさんっ」
もちろん、後ろから追いかけてくるいちごの足音を聞き逃さない程度のスピードで。
2人きりになったらやりたいことはと問われたら、まぐろはこう答えるだろう。
キャッキャウフフしていきたい!と。
具体的な内容には欠けているのだが、でもだいたいそんなイメージの光景が、今いちごとまぐろの間に存在していた。
太ももくらいまでが浸かる程度の浅瀬で、2人はビーチボールで遊んでいる。
「いくわよ!」
と、まぐろがビーチボールをポーンとあげると……。
「えっと……はいっ! 返しましたっ」
と、いちごもバシャバシャと水をかき分けて飛んできたボールをまぐろの方にトスする。
まぐろもいちごも運動神経はいいので、キャッキャウフフなイチャイチャを破産ながらも、ラリーはしばらく続いていった。2人ともなんだかんだで熱中するたちなので、気が付いたらずいぶんとボールを追いかけていたようだ。
そのうち動き回って海水が跳ねて体中が濡れてしまい、それならと2人はボールそっちのけで水をかけあって遊んでいた。
「はわっ!?」
そのうちいちごの目に水が入り、目を閉じたいちごはおろおろとしつつ、辺りに水をまき散らす。
「残念。いちご、こっちよ!」
そのいちごの攻撃を水の中に入ることで避けたまぐろは、ざばーっといちごのすぐ目の前に浮上するのだった。
そう、抱き着くくらいの至近距離に。
「え、あ、まぐろさん、近いです……」
「そ、そうね……」
目を開けたいちごが、目の前のまぐろの顔を見て赤面すると、まぐろも我に返って慌てて放されていく。
……ただ、こうやって慌ててしまうとよくない事が起きるのはお約束で。
「あ、まぐろさん、ブラが……」
「えっ!? きゃああああっっ!?」
急に水中に潜って急に出てきたからか、そのはずみでビキニのブラを結んでいた紐がほどけ、まぐろは今トップレス状態だった。
いちごに指摘されて初めて気づいて、胸を隠しながら水に潜る。
「まぐろさん、気を付けないと……」
「ごめんなさい、でも、しかたないじゃない。だって! 楽しくて夢中だったから!!」
「私もすごく楽しかったですけどっ!」
真っ赤になりながらそんなことを言いあう2人だったとさ。
結局流されたビキニブラは見つからなかったので、いちごはまぐろをおんぶして、いったんホテルへと戻るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
白銀・ゆのか
【23日夜・海】
じゃーん♪
こんなものを用意してみたのよ。
(予備も含めたダイビング用品に…そっと見せたダイビングのアドバンスライセンス並びにアマチュアだけどインストラクター資格も…)
依頼で皆がいないときに、資格とってみたのです(少し大きくなった胸を張り)
でって…良ければ夜の海の中から、今夜のお月さま…見上げてみない?
(他のことブッキングしても大丈夫な数も用意してたり…)
水中だから言葉は直接交わせないし、数メートルで近くの人が見えなくなるけれど…
「(こうすれば、二人っきりになれますから)」
だからこそ密着して上を指差してから…ホワイトボードにかきかきと…
『(月が綺麗ですね♪)』
ロザリー・ドゥメルグ
【23日夜・海】
夜空の星を見ながら、ゆったりとした時間を過ごしたいものね。
二人っきりに慣れる場所へいちごさんを誘ったら
今年の水着コンで新調したウェディングドレスな水着を着て
「好きです。私は一生貴方を愛することを誓います。」
って告白するわ。
誰がいようと気にしないもの。
そして、いちごさんに誓いのキスをするの。
キスしてくれたら、ぎゅって抱き返すわ。
「この星空の下で、いっしょの時間を過ごすなんて……幸せ♥︎」
後は流れに任せてきゃっきゃうふふしちゃうのもひとつの手ね。
あとはなるようになるわ。
私の愛を、いちごさんが受け止めてくれるといいな……♥︎
あとはもう……♥︎♥︎♥︎♥︎かしらね。
清里・柚月
【23日夜・海】
いちごくーん…ごめん、ちょっと酔い覚ましの散歩に付き合ってくれるかなー…?
(別所で飲んでたらしく泥酔状態)
…ふー、夜風に当たってたら大分すっきり。
ごめんねー、無理矢理付き合わせちゃって。
お詫びに、お姉ちゃんが何でもしてあげちゃおう♪
…え、別にいい?いやまあ遠慮しなくても。
昔はあんな小さかったいちごくんが、こんなしっかりした子になるなんてねえ…なんか感慨覚えちゃうね。
でも、皆の為に頑張るのはいいけど、あんまり無理しないようにね?わたしとかリンちゃんとか、頼ってくれても良いんだから。
…って、あれ。なんか急に眠く。
ごめんいちごくん、肩貸して…
(その間押し付けられ続けるおっぱい)
●夜の海の告白【23日夜・海】
日が落ちて夜になっても、ビーチにはまだ人影は残っている。
花火をするグループもいれば、月明かりの下でのデートを楽しむカップルもいる。
昼間ビーチで遊んでいた恋華荘の面々は、それぞれ思い思いにホテルへと戻っていったが、全員ではない。まだ一部はビーチに残っていた。
それは、入浴時間をずらそうとして戻るのを後回しにしているいちごと。
そしてそんないちごに用事のある一部の人たちだけ。
その一部の1人、白銀・ゆのか(恋華荘の若女将・f01487)は、いちごを密かに呼び出すことに成功していた。
……のだが。
「えっと、いちごはまだかしら……あ、いた。って、あれ、誰かと一緒?」
声をかけようとしたいちごが、別の人と一緒なのを見て、あげた手を引っ込めることになったのだった。
ではそのいちごが誰と合っていたのかというと……。
「あー、いたー。いちごくーん」
ここでいちごに声をかけていたのは、白い競泳水着姿で、少しだけ顔を赤くしている清里・柚月(N.D.O・f26171)だった。
「……この声、もしかして酔ってます?」
「酔ってませーん」
いえ、完全に酔っ払いの声ですね。
どうやら今回のメンバーの中でも数少ない大人の女性であるところの柚月は、別所で飲んで泥酔中のようだ。
そんな酔っ払いに絡まれたいちごである。
「こんな時間から飲んだりするからですよ?」
「あはは……ごめんねぇ。ちょっと酔い覚ましの散歩に付き合ってくれるかなー……?」
柚月はいちごに寄り掛かるように抱き着くと、そんなお願いをしてくるのだった。
年上の昔馴染みのお姉さんに、胸の柔らかさがむぎゅッと感じられるほど抱きつかれたいちごは、赤面しながらも仕方ないですねと付き合う事にしたのだった。
「昔はあんな小さかったいちごくんが、こんなしっかりした子になるなんてねえ……なんか感慨覚えちゃうね……」
むぎゅむぎゅ。
やたらと主張するお姉さんの双丘を押し付けながら、柚月は少しだけ嬉しそうにそんなことを言う。
「昔は昔ですから、あまり子ども扱いいしないでくださいよー」
「あはは、ごめんねぇ。でもお姉さんにとっては、いつまでも可愛い子だからねぇ」
いちごに寄り掛かって夜風に当たりながら歩いていくうちに、幾分楽になってきたのか、柚月はちょっとだけ真面目に言うのだった。
「でも、皆の為に頑張るのはいいけど、あんまり無理しないようにね? わたしとかリンちゃんとか、頼ってくれても良いんだから?」
リンちゃんというのは柚月の友人にして恋華荘の女医、いちごもいろいろ頭にあがらないりんごのことだ。……なお、いくら柚月がこういおうとも、そのリンちゃんい比べるとだいぶん中身が残念な柚月に、同等の甘えをするわけにはいかない、などとは間違っても口にしないいちごである。
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ?」
「それじゃあ、無理矢理つき合わせたこちらが申し訳ないからー……そうだ、お詫びに、お姉ちゃんが何でもしてあげちゃおう♪」
「しなくていいですってば。っていうか、まだ酔ってますよね?」
むにゅむにゅ。
抱きしめて、無意識に胸を当てながら、いちごにもたれかかる柚月。
その豊かな感触にいちごが理性を戦わせている中で、柚月は静かに寝息をたてはじめるのだった。
「いちご、ちょっといいかしら?」
「あ、はい。どうしました、ゆのかさん」
ゆのかがいちごに声をかけたのは、こんなタイミングだった。もともとゆのかは、いちごなら旅行の幹事として恋華荘のみんながホテルに戻るまではビーチにいるだろうと思っていたから、このタイミングなら2人きりで行けるかもと考えてのことだったのだが、その前に柚月が眠ってしまっているという状態だった。
「えっと、柚月さん、それ大丈夫なの?」
「ええ、まぁ、眠っているだけですし……」
といっても、胸を押し付けられながら抱きしめられた状態で柚月が眠ってしまっているため、何とも締まらない状況ではある。
さらに、もう一つの声もかかる。
「あら、先を越されてしまいましたね」
それは、こちらもこの時間ならいちごと2人っきりになれるかもと思って探していた、ロザリー・ドゥメルグ(無鉄砲なおてんば姫・f26431)であった。
「ロザリーさん?」
「あら、またまたかぶっちゃった」
たははと苦笑しつつも、ゆのかにあまりがっかりとした雰囲気はない。どうやらゆのかは、どうせ誰かと被るだろうなと予感していたらしい。さすがというか手慣れているというか、達観しているというか。
本来、ゆのかは、2人きりをさらに確実にするために考えていたこともあったのだ。なので、他に今できることもないしと、まさにこの時のために準備をしていたものを、悪戯っぽい笑みと共に取り出すのだった。
「まぁ、いいわ。それじゃロザリーさんも一緒にどうかしら?
「どうって、何をです?」
「それは……じゃーん♪ こんなものを用意してみたのよ」
にこにこ笑顔で取り出したそれは、スキューバダイビング用品だった。
実はいちご達が依頼でいない時とかの空き時間にこっそりとアマチュアのインストラクター資格もとっておいたのです、などととここ最近成長著しい胸を張っていうゆのかである。ちなみに最初から予想していたのか、ダイビング用品は2人分以上あった。
「というわけで、ロザリーさんも一緒に、夜の海に行ってみる?」
「あ、いえ、お先にどうぞ」
ロザリーは、柚月は自分が見ているからとゆのかにこの場を譲る。
そもそもロザリーの今着ている水着では、ダイビングには向かないのだから、と。
「ん、了解。それじゃまずいちごは借りていくわね。
というわけで……良ければ夜の海の中から、今夜のお月さま、見上げてみない?」
そして急に甘えるような上目遣いでおねだりしてくる、誰よりも長い間一緒に過ごしていた幼馴染の仕草に、ドキッとさせられてしまういちごであった。
かくしていちごは、ダイビングのインスト資格を取ったというゆのかに支えられ、月明かりに照らされた夜の海の中を遊泳していた。
頭上には満天の星空と、弧を描いて輝く月。満月でもないこの日の光量では、海中に潜ったらほとんど見えやしない。手を繋いでいるゆのかの姿がかろうじてわかる程度だ。互いの手を放してしまったら、この暗闇に一人で取り残されるような不安感。
されど頭上の水面を見れば、その上に広がるのは輝く星の世界。
まるで星空の下、この世界にいるのは2人だけのようだ。
だから、そんな世界でただ一人のパートナーを放すものかと、もの言えぬ水中で、ゆのかはギュッといちごにしがみつく。
(「こうすれば、二人っきりになれますから」)
互いの温もりを感じながら、2人は浮上していった。
そして温かい月の光を浴びながら、ゆのかは言う。
「月が綺麗ですね♪」
「ゆのかさん、それは……。えっと、はい、そうですね」
それは、明治の文豪が行ったとされる有名な意訳。
元の言葉を察したいちごは、赤面しつつ、文字通りの意味に対して、そうですねと頷くのだった。
今更、ゆのかの意訳の方の気持ちは、分かっているのだから……。
「おかえりなさい」
「柚月さんはまだねたまま? それじゃわたしがホテルにつれていくから、あとはいちごちゃんをお願いね」
戻って来たゆのかは、ロザリーと後退して、柚月を背負ってホテルへと向かっていった。
あとに残されたいちごは、ロザリーとしばし見つめ合う。
「あ、あはは……なんだか、いろいろすみません」
「ううん。いいの。なかなか2人きりになれないのはわかってたしね」
そんな事を話しながら、2人は星空を見ながらの散歩を始めるのだった。
「ふふ、でもこれでようやく2人になれた。この星空の下で、いっしょの時間を過ごすなんて……幸せ♥︎」
とても楽しそうに呟くロザリーに、いちごも笑顔を向けていく。
そんな中、ふとロザリーはいちごに尋ねた。
「ねぇ、この水着どうかしら?」
「ええ、とてもきれいですよ。純白のドレスが星の光を浴びて、とてもきれいです」
ロザリーの着ている水着は、まるでウェディングドレスのようで。
それが何よりも雄弁に、ロザリーの気持ちと、これからの展開を物語っていた。
それを察したいちごは、なんとなく口数も減ってしまう。ロザリーも、タイミングを計っているのか、口を閉ざしたまま、人影の少ないあたりまで歩いていった。
「……ロザリーさん?」
そこで足を止めるロザリーに、どうしたのかといちごは振り向いた。
見えたロザリーの表情は、まさにこれから勝負に出るという決意が瞳に宿っていた。
「好きです。私は一生貴方を愛することを誓います」
「あ、えっ……」
ストレート直球ど真中の告白に、いちごも一瞬言葉に詰まる。
「いろいろな人から言われてるだろうけど、私は誰がいようと気にしないわ。ただ、いちごさんに受け入れてほしいだけ……」
そういって、ロザリーはいちごに抱きつくように手を伸ばし、いちごを捕まえると唇を寄せていく。
さすがにいちごも、この状態から拒絶はしない。
その気持ちを受け止めるように、ロザリーの唇を受け止めるのだった。
「ん……ありがとう、私の愛、受け止めて、いちごさん」
そしてまるで誓いの口付けのようだったキスを終えると、ロザリーは更にもう一歩を狙ってか、いちごを岩陰の砂浜に押し倒して……。
「そ、それはダメよ!?」
「いちごくん、また増えたんだ。ほんといつでも相談のるからねぇ?」
……聞こえてきた2人の声に、ギギギギと首をそちらに向けたのだった。
「な、何でいるんですか。っていうかホテルに戻ったんじゃ」
「えとね。戻ろうとしたら柚月さんが気が付いてね」
「いちごくんの行く末が、お姉さんとしては気になるんです」
結局、いつの間にか後をつけて覗きをしていた2人に毒気を抜かれ、この日はここまでとなったのだった。
大成功
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セナ・レッドスピア
【23日夜・宿】
色々あった(はず)の1日目ももうすぐ終わり…
ここまでの移動もあって早くもお疲れ気味な体を
お風呂でリラックスさせていたら
いつの間にかうとうと…
そしてそのまま湯船に沈んで溺れかけちゃう!?
そこに偶然やってきたいちごさん(か、一緒の時間にやって来たみんな)
が慌てて駆け寄って来て助けてもらうけど
(いちごさんだったら)そこで滑って転んで湯船にダイブ!?
そのまま私にダイブされちゃうかも!?
何とか無事に済んだら、助けてもらったお礼をして
改めて一緒にお風呂タイム!
とはいえ、いちごさんと混浴なのでドキドキもじもじしちゃう…
そして、ドキドキが体温アップさせて
そのままのぼせてまた沈んちゃう事に!?
●お風呂で寝ると危険です【23日夜・宿】
結局色々あって、夜遅くに返ってきたいちごは、独りで大部屋の内風呂を使う事にした。
一緒に入りたそうにしているものも何名もいたわけなのだが、それは丁重に断って……先ほどまで夜の海でいちごと一緒だった人たちからも止められたという事もあって、何とかいちごは1人での入浴を勝ち取ったのだ。
そして露天の内風呂に足を踏み入れたいちごは、ぶくぶくと溺れかけているセナ・レッドスピア(blood to blood・f03195)を見かけたのだった……。
セナは、この日1人で内風呂を使っていた。
色々あった1日目も終わり、ここまでの移動の疲れなどもあって、お風呂くらいは1人でのんびりとしたいと、皆と時間をずらして入ったのである。
ちなみにこの日のセナは、いちごとは特に関わることなく、仲のいい女の子と一緒にずっと海水浴を堪能していたこともあり、心地よい疲労感に包まれていた。
……それこそ、いつのまにかうとうととしてしまうほどに。
「セナさん、大丈夫ですかっ!?」
慌てて駆け寄ったいちごは、セナを抱きかかえる。
当然どちらも裸なのだが、それを気にしている場合ではない。
そのままいちごは、セナをお姫様抱っこで担ぎ上げて、部屋に戻ろうとする。
「……あ、え……?」
そんなとき、覚醒したセナは、今自分の置かれている状況……全裸でいちごにお姫様抱っこされているという状況に真っ赤になって、あわあわと慌てだした。
当然、脚の滑りやすいこの状況で暴れられては、いちごもたまったものではない。
そのまま足を滑らせたいちごは、セナと共にばしゃーんと湯船にダイビングしてしまうのだった。
……なお、その際に、芸術的なまでのとらぶる体質が発揮されて、背後からセナの胸をがっちり鷲掴みにした挙句、セナの脚を思いっきり広げさせた格好で転んでいたというのは、今更あえて説明する必要はないだろう……。
「す、すみません。助けに来たつもりがあんなことに……」
「い、いえ、お風呂で眠っちゃった私のせいですから……」
結局、セナが覚醒したこともあって部屋に戻る必要は薄く、2人で互いに謝りながらも、なんとなくそのまま混浴することにした2人である。
ドキドキドキドキ……。
混浴自体初めてではないのだし、それ以上のことだって経験はあるのだけど、やはりこの状況、セナは心臓が漠々と脈打ち、顔が赤くなっているのを自覚していた。
何せ、普段いろいろ経験があると言っても、だいたいは先程転んだ時のような、事故によるもので、こうして自分御石で混浴しているという状況は、やはりドキドキが止まらないのだ。
それでも、他の人のいない今が、甘えるチャンスではあるので、セナは赤面しながら、傍らに座って湯に浸かっているいちごに体重を預けるようにして寄り掛かってみたのだった。
「えっと、セナさん……?」
「あ、あの……少しこのままでいさせてください」
赤面してもじもじとしながらも、その言葉だけはしっかりと通る声でいちごにアプローチしてみる。
有言実行で、そのまま身体を寄せる。
恋華荘の中にいると決して特別大きいとはいえず、普通サイズのセナの胸だが、それでも裸のまま横から抱きついたりすれば、ちゃんとした武器となる、
セナも顔が真っ赤だが、その感触を腕から感じるいちごも真っ赤で。
互いが互いを愛おしい気持ちが心臓を早鐘のようにならしていた。
そして、2人きりという状況で、ドキドキな雰囲気に流されたこともあるのだろう、2人はそのままどちらからともなく顔を見合わせ、そして抱き合ったまま唇が近づいていき……。
……ドキドキが最高潮に達したせいか、未遂のまま2人して逆上せてしまうのだった。
その後、いちごがあまりに戻ってくるのが遅いと、中に突入した恋華荘女子が見たものは、顔を真っ赤にして抱き合うように目をぐるぐるさせて気を失っている2人の姿だったそうな……。
大成功
🔵🔵🔵
●小休止【24日昼・宿】
初日からいきなり色々あった旅行も、まだ2日目。
「ふわぁ~あ……」
大きな欠伸と共にいちごが目を覚ますと、周りには布団の中で眠っている女性陣。
結局集団部屋での雑魚寝という事で、いちごも一緒に部屋で寝ることになったわけだが、いちごの隣の布団が誰になるかで争ったり、いちごの布団に潜り込もうとしたりと、寝る前にはいろいろ騒いでいたものの、寝てしまえば結局はみんな大人しかった。
そして、いつも寮で朝の早いいちごは、自然とその時間に目を覚まし、皆がまだ寝ている中、1人で活動を開始する。
「さて、朝食の時間の前に着替えとか済ませて……もう一つの部屋の様子も見に行きましょうかね……?」
まだすやすや眠っている女性陣を見て、いちごは今日も賑やかになりそうだと、柔らかな笑みを見せるのだった。
ネウィラ・カーレンベート
【24日昼・海】
よく晴れたビーチの下、今年の水着姿の上にシャツを着て。
いちごさんに恥ずかしそうに。
『じ、実は私、ずっと憧れていたことがありまして……』
提案したのは、砂浜で追いかけっこ。男女が仲睦まじく行う、あのお約束の。
段取りを説明し、さっそく実践。
『うふふっ、こちらですよいちごさん、捕まえてごらんください♪』
ついに実現した憧れの追いかけっこ。
彼氏いない歴23年。感動。
しかし、ロマンチックな時間も長くは続かず、
つまずいてバランスを崩したいちごさんに後ろから押し倒されるような形に。
『ひゃっ!?』
結局恋華荘らしい展開。それでもちょっと嬉しかったネウィラでした。
*アドリプ・他メンバーとの絡み可
高原・美弥子
【24日昼・海】
砂浜でバーベキュー!海への旅行の定番の一つだね!
最近は禁止のところが多いけど、っていうか基本的には特別に許可取ったりしない限りは禁止が大部分じゃないかな?
だけど、此処は大丈夫みたい。逆に心配になるけど、まぁやっていいなら遠慮なくだね!
と、いうわけで今日のお昼はあたしがやるよ!いちごも、皆も遠慮しないでいいからね!
海らしく魚にホタテやサザエとかの魚介に、バーベキューの基本の肉と野菜!ふふん、こういうの焼くのは大得意だよ!
……各種焼き鳥が混ざってるのは見逃してね!いいじゃん、これが一番得意で美味しく出来るんだから
あ、これ焼き上がったよ、一番美味しく焼けたやつ。いちご、はい、あーん!
織笠・アシュリン
【24日昼・海】
水着は2020水着コン
水着新調したし、いちごと遊びたい……!
前回はバッティングで集団デートだったし、あわよくば(ほわわん)
「いちごー、海行こっ、海!」
腕を抱いて、海に行こうってくいくいと引くよ
あと、胸も押し付けたりして……あたしだって、大きくなってるし
そんなこんなで、波打ち際へ遊びに行くよ!
いちごに向けて……
「油断大敵だよっ、えいっ!」
海水をばしゃぁってかけるよ!
そのまま水かけに持ち込んじゃう!
濡れ鼠になるまで水の掛け合いで楽しんじゃう
水鉄砲とかもあるよ!
ひとしきり遊んだところで、冷えたジュースを差し出すよ
「プレゼントって言うには安いけど……誕生日おめでと!」
にぱって笑うよ!
ヴァージニア・アスパシア
【24日昼・海】
※おっけーだったらタンクトップ&しょーつ姿で泳いじゃうねっ
折角だし、いちごさん(と、かちあっちゃったみんな)を誘って
素潜り体験にチャレンジしちゃうねっ
人気が少ない所で
潜る前にすぅーっと息を吸って…
空気を体にため込んでから潜っていくよ!
潜った後は、わたしが先導したり
何かあった時には手を引いてあげたりしちゃうねっ
そうして触れ合う中、とらぶる発生の可能性も…!?
(かちあっちゃった人も勿論一緒に!
おぼれちゃう人は出さないようにするからねー!)
何度か練習して、余裕がでてきたら
水中散歩を楽しんでいくね
でもそこで、またまたとらぶる発生しちゃうかも!?
そして気が付いたら、タンクトップが…!?
●みんなで遊ぼう【24日昼・海】
旅行2日目のビーチ。
恋華荘の面々は、皆思い思いの水着に着替えて遊んでいた。
当然、いちごもその中にいるわけで……何とかしていちごと2人きりの時間をと考える者たちにはいろいろと難儀な時間ともいえた。
「水着新調したし、いちごと遊びたい……!」
そんなことを考えているのは、スポーティな水着姿の織笠・アシュリン(魔女系ネットラジオパーソナリティ・f14609)だ。
「ゴールデンウィークはバッティングで集団デートだったし、あわよくば……と思ってたんだけど」
一瞬妄想していたのか、ほわわんと緩んだ表情になるが、現実の他の女性と一緒のいちごを見て妄想もしぼんでいく。
アシュリンの視線の先には、仲睦まじく砂浜バーベキューの準備をしているいちごと高原・美弥子(ファイアフォックスのファイアブラッド・f10469)の姿があった。
「砂浜でバーベキューは海への旅行の定番の一つだよね。最近は禁止のところが多いけど……」
「ここはちゃんと許可貰えば大丈夫ですからね」
この日の昼はみんなでバーベキューを楽しみたいという美弥子の案に、いちごが海水浴場側に許可貰って道具を借りてきて、そして2人で準備を始めているという、そんな流れだ。
「いちごも許可貰って来ただけで十分だって。今日のお昼はあたしが作るからさ」
「いえ、むしろ私がやるので、美弥子さんは皆さんと遊んできても……?」
美弥子は、いちごの代わりは任せてとばかりに張り切っているが、むしろ寮の管理人で皆の世話役が板についているいちごは恐縮してしまう。
けれども、美弥子はそんないちごに、遠慮は無用だと背中を押すのだった。
「いいから、遠慮しないで。いちごはほら、一緒に遊びたい人がいっぱいいるんだから、そっち行って来ないと」
そういうと美弥子は、いちごの視線を横に向けさせる。
視線の先には、もじもじと恥ずかしそうに、声をかけるタイミングをうかがっていたネウィラ・カーレンベート(銀糸の術士・f00275)の姿があった。
白い大胆なビキニの上に、恥ずかしそうにTシャツを着て、何とかいちごに声をかけられないかともじもじと。
「ほらほら、あたしはいいから行ってきなって」
「でも……」
「でもはなし。あたしのぶんは、あとで出来立て食べてくれればいいからね」
いちごの恋人の1人を自任する美弥子は、その分余裕があるのか、いちごの背中をバンバンと叩いて送り出すのだった。
「えっと、ネウィラさん、何か用事……でしたか?」
「あ、えっと……」
美弥子に送り出されてきたいちごは、そのままネウィラに声をかける。ネウィラは、いいのかな、申し訳ないなという表情で、いちごと美弥子の顔を見比べるが、美弥子が笑顔でサムズアップなどするものだから、思い切っていちごにお願いをしてみるのだった。
「じ、実は私、ずっと憧れていたことがありまして……」
というネウィラは、耳まで赤くしながら恥ずかしそうに、その憧れの段取りを説明する。
そして数分後、少し人込みから離れた海岸にて、追いかけっこする2人の姿があった。いわゆる「捕まえて御覧なさ~い」的なあれである。
「うふふっ、こちらですよいちごさん、捕まえてごらんください♪」
「待ってください、ネウィラさ~ん」
台詞も割とまんまだった。
要するにネウィラの憧れとはこれだ。男女で仲睦まじく砂浜を追いかけっこする、そんな青春ドラマのワンシーンのような光景。
定番でべたな展開ではあるが、ネウィラは実に楽しそうにいちごから逃げている。
ネウィラ・カーレンベート。彼氏いない歴23年。ついに実現した憧れの光景に、至福の時であった。
……だけど、そんな恋愛映画のワンシーンのまま終わらないのが恋華荘クオリティーである。
「あっ」
あと少しでネウィラを捕まえて、このシーンを終わらせられると思って気が逸ったのか、いちごが砂浜で足を滑らせて、前方のネウィラに向けてダイブすることになってしまった。実はべたな展開にいちごは割と恥ずかしかったりするので、それも気が急いた一因かもしれない。
「きゃっ!?」
そのまま前方で、いちごの声を聴いて振り向いた格好のネウィラに抱きつくようにして押し倒したいちご。
むにゅん。ふにふに。
そしてもちろんお約束のようにネウィラの宗男上にはいちごの手がしっかりとあったりするのだった。
「す、すみません……」
「い、いえ……」
顔を真っ赤にしながらも、それでも嬉しそうなネウィラは、そのまま自分に覆いかぶさっているいちごに手を伸ばして……。
「なにしてるの、2人ともっ!?」
……聞こえてきた声にびくっとなって、慌てて離れるのだった。
「あ、アシュリンさん、これはですね……」
「まぁ、見てたからだいたいわかるけど……」
慌てて真っ赤になって弁解するネウィラに苦笑するように、実はいちごがネウィラに連れていかれてから追いかけてきていたアシュリンは、ため息をついた。
憧れのシーンだっていうから邪魔はしなかったけど、でもさすがにくっつきすぎだと思うし……と、ぶつぶつ言うあたり、ほぼ最初から見ていた模様。
「次はあたしの番だよ。いちごー、海行こっ、海!」
今度は譲らないといちごの腕にぎゅっと抱き着いたアシュリンは、そのまま波打ち際の浅瀬に引っ張っていく。
ネウィラほどじゃないけど、あたしも大きくなってるんだから、と胸を押し付けるようにして。
「あ、まってください~」
腰くらいまで水に浸かる程度の浅瀬に来たアシュリンといちご、それと流れのまま一緒について来たネウィラの3人は、水の掛け合いをして楽しんでいた。
「油断大敵だよっ、えいっ!」
「ひゃっ!?」
当然というか、アシュリンのターゲットはいちごだ。ネウィラとも組んで積極的にいちごを濡れ鼠にしていった。
「わ、ちょっと、私ばっかり……っ」
いちごも反撃はするのだが、さすがに2人がかりでは分も悪い。かけられる水で視界も効かなくなる中、なんとか逃れようと沖の方に移動していく。
「あ、いちご、そっちは……」
「ひゃっ!?」
そして、いちごは急に足がつかなくなる。遠浅になっている部分に足を踏み入れてしまい、急に水の中に投げ出されてもがいて……慌てて助けようとするアシュリンとネウィラが見ている前で、突然水の中からざばーっと顔を出したジニーことヴァージニア・アスパシア(鳴風のジニーと月影の女神・f26243)に背中から抱きかかえられていたのだった。
「いちごさん、大丈夫っ? このあたり急に深くなるから危ないよっ」
「すみません、ジニーさん……」
セイレーンで水に親しいヴァージニアは、逆に急に深くなるこのあたりから、素潜りを楽しんでいたらしい。水着ではなく普段着ているタンクトップ姿のままでの素潜りなのだが、本人はそれは特に気にしていないようだ。
3人がこのあたりで水遊びをしていると聞いたヴァージニアは、それなら一緒に素潜りしないかといちごたちを誘ってきた。本命はいちごなのだろうが、皆で楽しむのも嬉しいといったヴァージニアの笑顔に誘われて、そのまま皆で水中散歩を楽しむことにする。
大きく息を吸って、ヴァージニアに先導されるまま潜る3人。
不慣れな3人が溺れないように気を付けながら、時には手を引いて3人を海の中へと案内する。
魚群とぶつかり、魚と一緒になって泳ぐなど、海中ならではの光景を堪能するのだった。
……もちろん恋華荘クオリティーは健在で、水中で魚に驚いたいちごが、思わずヴァージニアに抱きついてしまったり、それを見たアシュリンが水中でいちごを引き剥がそうともがいたり、ネウィラが仲裁しようとして巻き込まれたりと、水の中でもとらぶるの種は尽きなかったりするが。
「ぷはぁっ」
「ああ、楽しかった……」
「楽しんでもらえたら私も嬉しいよー」
「ありがとうございます、ジニーさん……あっ」
水中散歩を十二分に堪能して、4人は海岸まで戻ってくる。
そこでいちごがヴァージニアにお礼を言おうとして、ようやくそれに気が付いた。
「? どうしたのいちごさん?」
「ジニーさん、胸、隠してっ」
ヴァージニアは、先程も言ったとおり、水着ではなく普段着ている白いタンクトップのまま素潜りをしていたので……当然水にぬれたタンクトップは、ぴったりと身体に張り付いて胸の形を浮き上がらせ、その先端まできっちりと透けてしまっているのだった……。
「ひゃあああ!?」
いちごにそれを見られて真っ赤になって胸を隠すヴァージニア。見た?と視線が訴えかけているが、いちごはもちろん赤面して視線をそらしながらも、肯定の頷きを返し、ヴァージニアはますます真っ赤になるのだった。
「おかえり。楽しんできた?」
最後に少しだけ騒ぎはあったものの、いちご達4人はそろそろバーベキューもできるだろうと、美弥子のところまで戻ってきた。
送り出したときはネウィラと2人だったのに、いつの間にかアシュリンとヴァージニアまで引き連れていたいちごに苦笑しつつも、いちごが約束通り自分の焼き立てを食べに来てくれたことで嬉しくて尻尾を振る美弥子である。
「ほら、ちょうど焼き上がったよ!」
そういって、美弥子は、上手く焼けたバーベキューの串をいちごに差し出した。
バーベキューの内容は、魚にホタテやサザエとかの魚介に、基本の肉と野菜の串、それに各種焼き鳥。さすがに焼き物得意な美弥子らしく、どれも美味しそうだ。もちろん焼き鳥が混ざっているのは焼き鳥屋のご愛敬。
「一番美味しく焼けたやつ。いちご、はい、あーん!」
「あ、あーん」
いちごは美弥子に促されるまま、あーんと食べさせてもらうのだった。
串焼きだけでなく、ホタテや焼き魚なども次々と、いちごが自分で撮る間もないくらい甲斐甲斐しく。
もちろん食べるのはいちごだけではなく、ネウィラやアシュリンやヴァージニアをはじめ、恋華荘の皆が次々と集まって、食事を楽しんでいる。
「ふふ、どう、美味しい、いちご?」
「えええ、とても。さすがですね、美弥子さん」
「えへへ。まぁね!」
いちごに褒められて、とても嬉しそうな美弥子である。
美弥子にお世話されてお腹いっぱいになって一休みしていたいちごのもとに、背後からアシュリンが近付いてきた。
なかなかここまでチャンスがなかったのだが、ようやくである。
ぴとっ。
「ひゃぁっ!?」
アシュリンは、ここまで苦労したうっぷん晴らしも兼ねて、いちごの頬に不意打ちで冷たいドリンクをくっつける。
そして驚いて振り返るいちごに、そのドリンクをそのまま差し出して。
「いっぱい食べてたし必要かなって思って。……あと、プレゼントって言うには安いけど……誕生日おめでと!」
照れ臭そうに頬を朱に染めながらも、アシュリンはそう言ってにぱっと笑うのだった。
「ありがとうございます」
そして返されるいちごの笑顔に、ようやくの2人きりの時間を喜ぶアシュリン。
……まぁ、どうせすぐにまた別の人が来て賑やかにはなるのだろうけれどと苦笑しつつも、今は2人並んでジュースを飲むのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
刑部・みさき
【24日夜・海】
あはっ、いーちーごくんっ、おーよーごっ♪
ほえ?「もうまっくらだからだめ」?
むー…ちがうもんっ!いいから、ね?(ぐいぐい)
えっとねー…そうだっ、みててー♪(ビキニ&人魚姿で潜水)
…ぷふぁっ!(ユベコも併用して水面から大ジャンプ)
ふふっ…♪
(満月の光を背に輝きつつ回転、飛び込み競技の様に華麗な入水)
(ざぱっ)ほらね、いっぱいキラキラしてたでしょ?
きれいだったから、いちごくんにみせたかったんだよっ
おつきさまも、なみも、おほしさまも…あと、わたしも♪
(何故か幼さ控えめの『恋する人魚姫』に相応しい笑顔)
ほらっ、いっしょにぷかぷかして、おつきさまみようよっ♪
(抱きついて一緒の遊泳を試みる)
月灘・うる
【24日夜・海】
海はうーちゃんのてりとりー!
今回はいちごさんにいままでのお代をいただいちゃうよ!
こーんなかわいいうーちゃんの水着と夜景を楽しめちゃうんだから、
これはもうデートっていっていいよね! と腕を組んで、胸を肘に押し当てます。
さ、いちごさん、遠慮なんてしないで、
うーちゃんに美味しいものと素敵なものを貢い……え?
ほ、ほんとにくれるの?
い、いや、えっと、その……な、なんでもないよ!
ちゃんともらったのが初めてだから、ちょっとびっくりしただけだから!
あ、え、えと、ごはん! ごはん食べに行こう!
うーちゃんお腹空いちゃった!
いちごさんを急かしたらころんでしまって、
胸に顔を埋められてしまうのでした。
●月の海【24日夜・海】
昼食のバーベキューのあとは、旅行に着ていた面々でみんな一緒に遊んでいた。
大人数で泳いだりボール遊ぼしたりスイカ割りをしたり、みんなで楽しんでいたらあっという間に午後の時間も過ぎて日は落ちて、夜がやってくる。
そのあとはホテルに戻る者、まだもう少し夜の海を楽しむものと別れ、各自それぞれに行動をはじめた。
いちごは、そんな面々を見守りつつ、昨日同様に海に残っているメンバーの様子見を兼ねて、まだ海岸を歩いていた。
「あはっ、いーちーごくんっ、おーよーごっ♪」
そんないちごに背後から抱きついてくる者がひとり。
幼さの残る口調と、背中にものすごく主張してくるたわわの柔らかい感触を兼ね備えているその人は、言うまでもなく刑部・みさき(おひさまのゆりかごぷかぷかまぁめいど・f05490)である。
「もう暗くなってますし、こんな時間に泳ぐのは危ないですよ?」
いちご自身は、昨晩誘われるまま夜の海に遊びにはいっていたのだが、だからといって危なくないわけはなく、とくに精神が幼いみさきはそういう危険性を意識していないのではと心配していうのだが……みさきはたちまち不機嫌になった。
「むー……ちがうもんっ! いいから、ね?」
ほっぺをぷくーッと膨らませながら、背中に押し付けていたたわわの感触を離したみさきは、代わりにぐいぐいといちごを海の方へと引っ張っていく。いちごの手を取って引っ張りながら、ぐいぐいと。
もちろん本気になればいちごはそれを振りどけないわけはないのだが、それでもみさきがただ泳ぐだけではなく、別の何かを考えているだろうことはわかったので、押されるまま連れていかれるいちごだった。
そんな2人の様子を眺めて、あとをつけてくる人がいるのには気づかないまま。
「いちごくん、みててー♪」
いちごをビーチの外れに連れてきたみさきは、いちごを浜辺に座らせたまま、両足を人魚モードにして一気に海に飛び込んでいく。
あっという間に海に潜った人魚は、次の瞬間海面から大きく飛びあがって、星明りを浴びながら空中でくるっと宙返り。
「きれい……」
「ふふっ……♪」
宙がえりの最中にいちごが見とれているのを確認して笑顔を見せたみさきは、そのまま華麗な飛込競技のようにきれいに着水して、再び海面下に消えていった。
「さすがですね、みさきさん……ほんと綺麗です」
まだ水中のみさきにはその声は届かないとわかってはいるが、いちごはついつい言葉が漏れてしまう。それくらい夜の海の人魚姫は神秘的な美しさだったのだ。
「ほんと、みさきちきれいだねぇ」
だから、いちごはすぐ傍に月灘・うる(salvage of a treasure・f26690)が近付いてきていたことには気づいていなかった。
「えっ、あ、うるさん!?」
「海はうーちゃんのてりとりー! ……だと思ったんだけど、みさきちには負けるかなぁ」
友人をあだ名で呼ぶうるは、さっそくみさきにもみさきちと名付けたらしい。
それはともかく、うるはいちごが誰かに連れられて人影の少ない所に向かったのを見て、興味本位とついでにいちごへの取り立ての為に追いかけてきていたのだった。
「今日はね、いちごさんにいままでのお代をいただいちゃおうかなって」
「お、お代って……」
うるは、豊かな胸でいちごの腕を挟むようにぎゅっと抱き着いてくる。
ちなみにお代というのは、今までいちごがうるにやらかしたとらぶるの対価のことである。胸を触った分ご飯奢って、とかそういうレベルなので決して深刻な話ではないのだが……いちごが忙しかったのでなかなかここまで機会はなかったのだ。
というわけで、うるが話を切り出そうかと思ったら、ちょうどそこに海から上がって人の脚に戻ったみさきが近付いてくる。
「ほらね、いっぱいキラキラしてたでしょ?
きれいだったから、いちごくんにみせたかったんだよっ♪
なみも、おほしさまも……あと、わたしも♪」
「あ、みさきさん。おかえりなさい。本当にきれいでしたよ」
ニコニコと笑顔で、そして最後はちょっとだけ頬を染めて、いちごに語り掛けるみさきの姿は、本当に綺麗なもので。普段の幼さも抜けた年齢相応の表情で、まさに人魚姫といった風情だった。
だから、いちごはお世辞も何もなく素直にきれいだと感想を伝える。
……のだが、このタイミングだと、腕にしがみついているうるは、そりゃあ面白くない。
「いちごさん、こーんなかわいいうーちゃんの水着と夜景を楽しめちゃうデートのチャンスなのに、みさきちばっかり見てると、お代がまた上がっちゃうぞ?」
「あ、いえ、すみません。ええ、うるさんのお代は、このあとちゃんと行かせてもらいますから」
いちごとしては、うるに請求されている分を踏み倒す気はないので……もっとも、うるとしてはデートの口実なのかもしれないけれど、いちごは言葉通りに、今までしてしまったとらぶるのお詫び的なつもりではある。
「さ、いちごさん、遠慮なんてしないで、うーちゃんに美味しいものと素敵なものを貢い……え? ほ、ほんとにくれるの?」
「ええ、もちろんですよ? そりゃ今までなかなか機会なかったので、疑われても仕方ないですけど……」
それでも、うるとしてはこれまで機会がなかったし、今もみさきも一緒にいるので断られるだろうなー的な諦観もあったのだが、いちごが本気で今日これから払ってくれそうな感じにむしろ戸惑ってしまっていた。
「い、いや、えっと、その……な、なんでもないよ! ちゃんと貰えそうなのが初めてだから、ちょっとびっくりしただけだから!」
だから、こんな感じで真っ赤になって照れ隠しのようにまくし立ててしまうのだった。
「むー。うーちゃんばっかりずーるーいー!」
でももちろん、今の状況でこれでは、みさきの方だって収まらない。
せっかくいちごが綺麗だって言ってくれたのだから、これからもっと一緒に泳いで、もっときれいだって言わせたいのに……と、ちょっとだけうーっといちごを睨みつけるようにして、うるとは反対側の腕にしがみつく。もちろん豊かな胸でいちごの腕を挟むのも忘れない。
「ああっ、みさきさんすみません……」
「ほらっ、いっしょにぷかぷかして、おほしさまみようよっ♪」
みさきはこのまま、夜の海でのデートを推してくる。
「むむ……それなら、え、えと、そうだ、ごはん! ごはん食べに行こう! うーちゃんお腹空いちゃった!」
そしてみさきに対抗するように、うるはぎゅむっといちごの腕を捕まえながら、食事に誘ってくる。
「ああ、うるさんもすみません……ちゃんとお支払いしますから……」
2人とも、いちごのことだから結局3人で一緒になるのだろうなというのは察しているし、それはそれで別に嫌ではないのだが……だからといってちょっとした意地の張り合いには負けたくはない。
なので2人してぐいぐいと両側からいちごの腕を引っ張って、自分の方に寄せようとして……。
そんな状態で何も起きないはずはなかった。
結局ぐいぐいと引っ張られたいちごが足を滑らせて、盛大に2人を巻き込む形で転んでしまうのだった。
そしてもちろん、その際にいちごの手はしっかりとみさきの胸を鷲掴みにして、いちごの顔はうるの胸の谷間に埋まっているという、いつものお約束付きで……。
「いちごくぅん、あんまり手をうごかしたら……ひゃぁん♪」
「もー! また高くなるよー!」
なお、そんないつもの光景の後は、3人で仲良く食事に行ったそうな。
もちろんいちごの奢りで、かなり高級なディナーを。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●遊び疲れました【24日夜・宿】
いろいろあって、いちごが戻ってきたのは、かなり遅い時間だった。
先にホテルに戻っていた恋華荘の子たちは、それぞれ思い思いに食事を済ませ、そして就寝時間までみんなで布団の上でトランプをするなりと、まだまだ賑やかに遊んでいる。
いちごももちろんその輪の中に入り、一緒に遊んでいた。
いちごが加わったことで、いろいろあぶない罰ゲームの話が出たり、それで実際いちごが迫られたり、とらぶったりと、それはそれでいつも通りな時間を過ごしていく。
……ちなみに一番盛り上がったのは、2部屋ある大部屋のどちらに行くか、とか、敷いてある布団のうち、いちごの隣の布団は誰が使うのか、とか、そういうものを賭けた勝負であったそうな。
やがて日付が変わる頃、何人かは既にうとうとし始めていたので、今夜はここまでにして、皆で仲良く眠りにつくのだった。
結局この日、いちごの隣の布団を射止めたのが誰かは、想像にお任せしよう。
●旅行3日目の始まり【25日昼・宿】
昨夜はなんだかんだでよく遊んで疲れてぐっすりと眠っていたらしい。
いちごが目覚めたとき、まだ部屋の女の子たちは眠っていた。
いちごの布団に潜り込んでいたものもいるが……それは誰かは想像にお任せする……いちごはその娘を起こさないよう、そっと布団から出ると、まだ皆が眠っている今のうちにと内風呂へと向かう。
……女の子たちが乱入してこない時間帯を狙わないと、いちごもゆっくり入浴できないのだ。
いちごが風呂から戻ってきた時には、ほとんどの者がすでに起きていて、いちごが風呂に入っていたのに突撃しそこなったと残念がる者も一部にはいたが、そのあたりは恋華荘の平常運航なので割愛する。
ともあれ、皆でホテルの朝食をいただき、そして旅行3日目の海へと繰り出すのだった。
言葉・栞
【25日昼・海】
恋華荘の皆さんと遊びに来てよかった…
最初は水着になるのも恥ずかしかったですけど、少しは慣れたかな?
今日も皆さんと一緒に海で遊びましょう♪
すみません…少し離れますね?
と言って…お手洗い済ませましたけど、飲み物飲み過ぎましたね
うぅ…それにしても胸だけじゃなくお尻も大きく…食い込みが…
き、気を取り直して皆さんに海の家の食べ物を買って…あの…どなたですか?
一人じゃないです…友達と一緒に…
も…もしかしてナンパ?
強引でコワイ…
いや、触らないで!
助けて、いちごさん…
あ…ありがとうございます
あんな事初めてで…うぅ安心したらなんだか力が…
うぅ…腰が抜けて…
折角助けて貰ったのに最後に恥ずかしい…
●ナンパにご用心【25日昼・海】
旅行も3日目になり、この日も恋華荘の女性陣は皆でビーチに遊びにきていた。
なんだかんだで気心の知れた寮の仲間たちだ。一緒にいて遊ぶだけで楽しい。時間はいくらあっても足りないというものだ。
それは、寮のメンバーとしては比較的新しい部類の言葉・栞(開巻有益・f14552)であっても同じこと。
(「恋華荘の皆さんと遊びに来てよかった……最初は水着になるのも恥ずかしかったですけど、少しは慣れたかな?」)
恥ずかしがり屋の栞にとっては、昨年よりもさらに大胆に露出している今年の水着は恥ずかしくて仕方ないのだが、それでもそんなことを忘れるくらい、恋華荘の仲間と一緒の時間が楽しいのだ。
それでも少し物足りなく思うのは、新しい水着を見せたいと思った相手と、なかなか時間を一緒にできないからだろうか……本人にはまだあまり自覚はないが。
「あ、すみません……少し離れますね?」
遊びの途中で栞はそういって皆に断ると、独り離脱して海の家へと向かっていく。
本来ならそれは、特筆するような事ではないただの生理現象に過ぎなかったのだが……。
「……飲み物飲み過ぎましたね」
熱中症対策とはいえ少々飲み過ぎたのかもしれない。少しだけお手洗いが近い事を悔やむ栞である。
海の家のお手洗いにて、用を足し終えた栞は、再び皆の所に戻ろうと歩いていた。
「うぅ……それにしても胸だけじゃなくお尻も大きく……食い込みが……」
お手洗いの為に一度脱いだのを、もう一度履いたせいか、改めてお尻の食い込みが気になる。歩きながら栞はくいくいとお尻の食い込みを直していた。
その様子を、ねっとりとした視線が見つめている事には気づかずに。
「さて、せっかくですし、皆さんに何か差し入れの食べものでも買っていきましょうか……はい?」
買い物でもしようかと海の家を覗き込んだ栞は、数人の男たちに声をかけられた。
いかにも地元のナンパ野郎といった風体の男たちに、栞はあっという間に囲まれてしまう。
当たり前といえば当たり前だが、美少女ばかりの恋華荘の面々は、この2日間とても目立っていた。なので、そこからはぐれる人がいれば、狙われてしまうのも仕方ない事だったかもしれない。
「お姉ちゃん、独りなら俺たちと遊ばない?」
グイっと栞の腕を掴み、集団で強引に海の家の裏の人目のつかない場所へと連れ込もうとする男たち。
「ひ、1人じゃないです……友達と一緒に……あの、触らないで……」
強引なやり方に怯える栞は、小声で何とか違うとは口にするものの、男達はまるで取り合わない。
男たちのじろじろとした視線が、自分の胸や腰に注がれていることは感じていても、怖いという想いが先に立って、抵抗する気力も萎えてくる。
(「こ、これ……もしかしてナンパ? 強引でコワイ……助けて……!」)
怯えて声も出せなくなった栞に対し、男達は更に強引な手段に出る。
伊織の豊かな胸に向かって男たちの手が伸び……。
(「助けて、いちごさん……」)
心の中に真っ先に浮かんだ相手に声にならない助けをもとめつつ、栞はギュッと目を閉じた。
そして今にも栞の胸が男たちに捕まれて揉みしだかれようかというその直前、栞の聞きたかった声が聞こえてきた。
「私の連れに乱暴しないでくれます?」
直前で男の手を掴んで止めながら、いちごがそんな言葉で割って入ったのだ。
「なんだ、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんも一緒に遊びたいのか?」
いちごは女物の水着を着ているので、当然のように男達は飛んで火にいるなんとやらだと思い、下卑た笑いを浮かべていた。
だが、いちごが見た目通りの人物でないことは栞はよく知っている。こう見えて歴戦の強者なのだと。安心したような笑みを浮かべていちごを見つめていた。
「いえ、私達は用事がありますので、邪魔しないでもらえます?」
にこっと笑顔でそういったいちごは、強引に栞に掴みかかろうとした男の腕をひねって投げ飛ばすと、すぐさま栞の手を取って駆けだす。
「行きますよ、ついてきてくださいね!」
「は、はいっ」
同じように強引に腕を掴まれて引っ張られているというのに、相手がいちごだと安心したように身を任せる栞。
投げ飛ばされた男が呆気に取られている間に、いちごと栞はさっさとこの場を離れていったのだった。
しばらく走って、男達を撒いたことを確認した後、栞は腰が抜けたようにぺたりと座り込んでしまった。
「いちごさん、ありがとうございます……あの、どうして?」
「帰ってくるのが遅かったので迎えに来たんですけど、間に合ってよかったです。大丈夫でしたか?」
そういいながらいちごは、座り込んでしまった栞を気遣うように手を差し出した。
「は、はい、あんな事初めてで……うぅ安心したらなんだか力が……腰が抜けて……」
いちごの手は取るものの、立てそうにない栞の様子を見て、いちごはおんぶするために背中を向ける。
「怖かったでしょうし、仕方ないですよ。あんなことの後で私の身体に触れるのも嫌かもしれないですけど……少し我慢してくださいね?」
「い、いえ……」
男に触れるのは嫌かなと気遣ういちごだが、栞は顔を真っ赤にして首を横に振る。
そのままいちごの背に乗り、豊満な胸をいちごにぎゅっと押し付けることになる栞だった。
いちごになら触れても、触れられても、いやではない。
(「折角助けて貰ったのに最後に恥ずかしい……でも、いちごさんの背中は温かくて……いちごさんだから……?」)
いちごにおぶさられて皆の所に戻りながら、栞は自分の中の気持ちを色々と自覚するのだった……。
大成功
🔵🔵🔵
サエ・キルフィバオム
【25日夜・海】
◎♥♥
「夜の海、ムーディだよねぇ」
個人的に一番よさそうなタイミングをストレートに指定してみます
同じ場所で被ったら、それはそれで喜んでデバガメします
違う場所で被ったら……、そっちにこっそり見に行くかも……?
「せっかくの旅行なのに、逆に疲れちゃってたりしない?」
「こうやって、海を眺めてるだけでも、いいモンじゃないかなーって♪」
浜辺のベンチにでも腰かけて、のんびりと話しかけます
「そうだ、肩でも揉んであげよっか?」
「こういうのは年下がやるもんでしょ~?」
疲れてそうと言い張り、マッサージします
色々当たってますが、確信犯です
●デバガメしようと思ったのに【25日夜・海】
ちょっとした騒動はあったものの、それはそれとして恋華荘の賑やかで華やかな集団は、昼間のビーチを存分に堪能していた。
そして日が落ちて夜の時間になると、各自がそれぞれ思い思いに行動を始める。
夜の時間なら、彼へのアプローチする人も増えるだろうと、サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)は、今日もそんなシーンを見て楽しむために、いちごの後をつけていくのだった。
……ちなみに、前日前々日もきっちりとデバガメしていたのかどうかは……内緒という事で。
「夜の海、ムーディだよねぇ」
こんな雰囲気なら、きっと彼と他の子たちが逢引きとかしてるだろうと思い、サエはあたりをうろついてみる。昨日も一昨日も遅かったのだから、今日もきっと……。
と思ったのだが、その彼……つまりいちごだが、今日はどうも1人らしい。
「……んー。今日は誰もいないのかな? それなら……」
他にいちごに近付く女性がいなさそうなのを見て、サエはちょっとした企みとともにいちごのもとへと向かうのだった。
今日もいちごは、寮の管理人らしく、寮生たちが皆ホテルに戻るまではと1人でビーチを歩いていた。前日までは、そんなときにいちごにアプローチをかけるものがいたわけだが。
「せっかくの旅行なのに、逆に疲れちゃってたりしない?」
「あ、サエさん。いえ、そんなことはないですよ?」
今日声をかけたのはサエである。声をかけられたことが少し意外そうないちごは、一瞬戸惑いを見せるものの、すぐにいつもの柔らかい笑みになった。
「そーぉ? 四六時中女の子に迫られたり、いろいろ裏方もやってたりで、全然休めてないみたいだけど?」
言いながら、サエは手近にあった背のないベンチをぽんぽんと示す。いいから座りなさいという事らしい。いちごは苦笑しつつも、それに従って腰を落ち着けるのだった。
「忙しいのは普段と一緒ですから、逆にそうじゃないと落ち着かないくらいですしね」
「そんなもの? でもさ、たまにはこうやって、のんびり海を眺めてるだけでも、いいモンじゃないかなーって♪」
いちごの隣に腰掛けたサエは、前方に見える星明りを反射してキラキラと輝く水面を指していちごに笑顔を向けるのだった。
そうして少しの間、のんびりと2人は会話を楽しんでいた。
主にサエが覗き見たいろいろな女のことの逢瀬の話だったりするので、はたしていちごがちゃんと休めたのかは少々疑問が残るが、ともあれのんびりとした時間には違いはない。
「ん~~。やっぱり少し疲労溜まってるんですかね。こうしてのんびり話してると、少しだけ方も軽くなってきます」
いちごはそういいながら、身体のコリをほぐすように大きく伸びをする。
そんな様子を見て、サエは悪戯を思いついたように、ニヤァッと笑みを浮かべて言うのだった。
「だいぶん身体もこってるみたいだねー。そうだ、肩でも揉んであげよっか?」
「え? い、いいですよ、そんな」
のんびり話すだけでも助かりましたからと遠慮するいちごに対し、サエはいいからいいからと立ち上がっていちごの背中に回る。
「いちごさんやっぱ疲れてそうだし、こういうのは年下がやるもんでしょ~?」
そういって強引にいちごを頷かせたサエは、そのまま肩もみマッサージを始めたのだった。
「あっ……んっ……」
「へっへっへ。お客さんこってますねぇ♪」
こうして最初は真面目にマッサージをしていたのだが……。
「あ、あの、サエ、さん? 当たってますけど……?」
「ん~? なにが~?」
いつの間にかサエは、いちごの背後に抱きつくくらい接近した状態で、いつ後の腕や足を揉み始めていた。
当然のように背中にはサエのとても豊かなバストが当たっている。
というか当てている。わざとだ。
「わかっててやってますよね?」
「なんのことかな~?」
明らかに確信犯なのだが、わざとらしくすっとぼけるサエ。
かくしてしばらくの間、いちごは年下の女の子に身体で迫られながらからかわれるという情けない状態で過ごすことになったのだった……。
大成功
🔵🔵🔵
如月・水花
【25日夜・宿】
前回のことを考えると、一番前、後ろ、真ん中の三ヶ所を避けて。穴があった部分も注目されてるだろうからこれも避けて…
あまり目立たないであろう選択肢、すなわちここですね!
まずはお風呂にて隠れて待ちましょう。
いちごくんが来たのを見計らって話しかけましょう。
今回水着を用意しなかったのは?
…その、海が、ちょっと、ね。
勿論海自体は綺麗で好きだけど、亡くなっちゃった故郷のことを思い出しちゃって…
あ、ごめんね?暗い話しちゃって。
…その、ちょっとだけ、抱きしめてもいい、かな?
いちごくんの回りには色んな人がいるから、一人占めなんてできないけど、せめて、今だけは…
ミネルバ・パラステール
【25日夜・宿】
年甲斐もなく沢山海を堪能し、お風呂もいただき…何より、お風呂の後に頂いたフルーツ牛乳なるものがとても美味しくてついつい沢山飲んでしまいまして…
不覚でした。
夜更けに催してしまうなんて…っ!
姉様が知ったら笑われてしまうやも…それ以前に…
(安全だと、追っ手はいないとわかっていても…一人で夜のお手洗いは…怖いのです…)
…剣の持ち込みはダメでしたから…とたまたま声をかけれそうなのが…いちご様しか…(かぁあ
「直ぐ終わらせますから…!」
用を足して…こちらにきてから知ったウォシュレットで綺麗にしようとし…
「ぴぅ!?」
水の勢い最大に…変な声がでて。
…何事かと飛び込んできたいちご様と鉢合わせに…
●深夜のお風呂と……【25日夜・宿】
「あ、皆さん。ホテルの人から連絡来まして、この部屋のトイレが故障したので、用を足すときは部屋の外の共用のトイレを使ってください、だそうです」
なんだかんだで、結局今日もホテルに戻ってくるのが遅かったいちごだが、とりあえずは旅行の幹事らしく、部屋で談笑したりゲームをしたりしている皆に連絡事項を伝える。
そして伝え終わったいちごは、皆がお風呂に行く様子もないので今のうちにと、内風呂へと向かっていった。まぁ、誰かしらは後から乱入してくるかもしれないけれども、とりあえず少しくらいは1人でのんびり湯に浸かれるかと期待して。
……期待していたのだが、先客がいることは想定外だった。
「あ、いちごくん、ちょうどよかった」
1人で湯船に浸かったいちごに声をかけたのは、最初からそこにいた(こっそりと隠れていちごを待っていた)如月・水花(輝き秘めし水宝玉の姫・f03483)だった。
「一緒に入っても、いい?」
「え、ええ……いいですよ?」
いいもなにも、これを狙って最初から隠れていたわけなので、いちごも苦笑はするものの拒むことはしない。
そのまま2人で寄り添うように露天の内風呂に浸かるのだった。
……いちごの顔はかなり赤かったが。
「そういえば、今回の旅行はどうでした?」
「うん、旅行は楽しかったよ。いちごくんともみんなともいっぱい遊んだし。2人きりにはなかなかなれなかったけどね」
いちごの振った話に、笑顔で答える水花だが、その笑顔は少しだけ陰りがあった。
言われてみれば、上着を着たままビーチで遊んでいる事ばかりで、水着になって泳ぐという事はしていなかった気がする。
そのことを尋ねてみると……。
「あ、水着……うん、海が、ちょっと、ね」
海を見るとどうしても滅びた故郷のことを思い出してしまうので……と寂しそうな笑顔で語る水花に、いちごはごめんなさいと謝りつつ、慰めるように肩を抱き寄せた。
「あ、ううん、大丈夫だよ。海自体は綺麗で好きだしね」
抱き寄せられて顔を赤くしながら、いちごの胸を借りるように自分からも抱きついて水花は囁く。
「……それより、ごめんね。暗い話をしちゃって」
「いいんですよ」
「うん……ありがとう。ねぇ、いちごくんの回りには色んな人がいるから、一人占めなんてできないけど……今くらいは、もうちょっと抱きしめていていいかな?」
いちごが黙って頷くのを見て、水花は安心したようにそのままいちごを抱きしめて、しばし静かな時を過ごしたのだった。
水花の豊かな胸に埋もれる格好になったいちごは、顔を真っ赤にして落ち着かない時間だったかもしれないが。
そうしてしばらく、水花がいちごを抱きしめて堪能していると、内風呂に新たな人影が入ってきた。
「……あ、お邪魔でしたか?」
その人物、ミネルバ・パラステール(亡国の戦姫・f25785)は、抱き合う水花といちごの姿を見かけて、入浴をやめて引き返そうとする。
「あ、ううん、もう充分だから、邪魔とかじゃないから」
ミネルバに見つかった水花は、顔を赤くしていちごを放し、弁解するようにそういうとミネルバを招き入れる。
「えっと、それでは……」
「ええ、どうぞ」
いちごを挟んで水花と反対側にちゃぽんとミネルバも浸かる。
そのまましばらく3人で混浴しながらのんびりと会話を楽しみ、やがて時間がたつと3人で揃ってお風呂から上がり、風呂上がりのフルーツ牛乳も堪能するのだった。
そんなことがあったあとの深夜。
もういちごも含め皆も眠りに落ちた頃。
いちごの隣の布団をゲットしていたミネルバが、ふと目を覚ましていちごの体をゆすっていた。
「……う、ん、……どうしました、ミネルバさん?」
「あの……すみません、ちょっとお付き合いしていただけますか?」
小声で囁くミネルバのただならぬ様子を見ていちごは承諾の頷きを返す。
そして2人は、周りの者を起こさないようにこっそりと部屋の外へと出ていくのだった。
深夜の逢引きか……というと、そういうわけでは実はない。
(「不覚でした。こんな時間に催してしまうなんて……っ!」)
こんなこと姉様に知られたら笑われてしまう……と真っ赤になるほど恥ずかしい様子の彼女だが、要するにお手洗いに行きたくなったミネルバが、深夜のホテルの中をひとりで行くのが怖いので、いちごを頼ったという話なのだった。
亡国の姫として、いつ命を狙われるかわからない逃避行の末に捕らえられた経験のあるミネルバは、そのトラウマもあって夜中の一人歩きが怖いのだった。
そのあたりの事情もある程度わかっているいちごは、そっとミネルバの手を引いて、部屋の外の共用のトイレへと連れていく。
繋がれた手の温もりが、ミネルバを落ち着けさせていた。
「直ぐ終わらせますから……!」
と個室に入ったミネルバをじっといちごは待っていた。
すると。個室の中からミネルバの「ぴぅ!?」という悲鳴が聞こえてくる。
慌てていちごは、個室の扉(ミネルバがかけ忘れたのか鍵がかかっていなかった)を開けて、中へと飛び込む。
「「あ……」」
そこにはもちろん、下半身丸出しで思わず立ち上がっていたミネルバの姿があったのだった……。
「あ、ああの……ウォシュレットの水量が強くて、それでビックリしちゃって……」
「そ、そうですか、大事なくてよかったです……それじゃっ!」
お互い真っ赤になって、慌てて出ていくいちごだったとさ。
結局2人は、赤面して気まずいまま顔を反らしつつ、無言で手を繋いで部屋まで戻ったのである。
その後、2人は隣同士の布団で、互いに眠れない夜を過ごしたとか何とか……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
詩羽・智悠璃
【26日昼・宿】
黒髪を項で縛り、白いワンピヰスで太陽輝くデッキへ…
そして帰り支度の前にいちごさんを呼び出し、
『本来の目的』も兼ねて冷えた珈琲を一杯奢ります
なお虚弱な私ですので、海は水遊びで素足を晒した程度
近隣の寺社仏閣を回ったり『取材』する方が多かったですね
というわけで…いちごさん、此度のアバンチウルは如何でした?
皆さんとの甘酸っぱくも騒がしい逢瀬
漏れ聞こえる範囲で色々と噂話を集めたんです
お陰様で手帳も随分ペヱジが埋まりました
ただ、最後はいちごさんの率直な感想を是非…
楽しかったか、疲れたか…それとも、ときめいた?
全て受け止めた、あなたの想いを…一言下さいませ
(何故か告白の様なノリで見つめつつ)
菫宮・理緒
【26日昼・宿】
デートっていうよりは、長かった旅行の余韻に浸りながら、
いちごさんといっしょに後片づけとかしたいかな。
4日間もお世話になったところでもあるから、
それなりにごちゃっとしてるだろうから、帰るときにばたばたしないようにしたいよね。
お掃除とかもしたいし、宿の人にお礼とかも言いたいしね。
それと最終日最後のごはんだし、
できれば宿のみんなと恋華荘のみんなに、いちごさんとわたしでごはん作って、
いっしょに食べられたりしたらいいなーって思うよ。
あ、そのときはいちごさんに教えてもらいながら、
ちゃんとみんなで食べられるものを作るからね。辛さは抑えめでいきます。
辛いのは自分の分だけにしておくよ!
●チェックアウト【26日昼・宿】
昨夜は、いろんな意味で眠れない夜を過ごしていたいちごだが、それでも身体は普段通り、朝一番で目が覚める。
今日は旅行の最終日、朝食の後ホテルをチェックアウトして、その後最後にもう一度海で遊んでから帰る予定だ。
朝食を済ませて戻ってきた皆に、いちごは声をかける。
「チェックアウトの時間もそろそろです。皆さん、荷物纏め次第ロビーに向かってくださいね」
実際にはまだチェックアウトまで1時間ほどはあるのだが、こういう時は早め早めの行動になるいちごであった。
そして皆は慌ただしく荷物をまとめて部屋を後にする。
最後に残っているのは、いちごと、そしてあと2人。
「いちごさん、お疲れ様です。珈琲などいかがです?」
「あ、すみません」
そのうちの1人は、いちごを労うようによく冷えた缶コーヒーを渡してきた詩羽・智悠璃(湯煙に舞う添桜・f22638)だ。白いワンピース姿が良く似合っている。
「いちごさん、此度のアバンチウルは如何でした?」
「いろいろありましたけど、楽しかったですよ」
智悠璃の問いに、いちごは笑顔で答える。
色々あったのは事実だが、ある意味恋華荘なら普段通りではあったので、そうなるとやはりいちごの感想としては、皆と一緒に過ごす時間は楽しいというしかないのだ。
「智悠璃さんはあまり皆さんと一緒にはいなかったみたいですけど……?」
「ふふ。私は私なりに楽しんでいましたから」
身体の弱い智悠璃は、海水浴といっても足元を水に浸す程度で、だいたいの時間はビーチに腰を下ろしながら皆の色々な騒動を眺めているか、独りで周辺を散歩して取材をしているかだった。とはいえ、智悠璃としては十分その時間を堪能していたらしい。
なにより、智悠璃の取材とは何かというと……。
「皆さんとの甘酸っぱくも騒がしい逢瀬、漏れ聞こえる範囲で色々と噂話を集めたんです。お陰様で手帳も随分ペヱジが埋まりました」
「そ、そうですか……」
真っ直ぐにそんなことを言われて、いちごは一歩引きつつも苦笑する。
……なにせ、智悠璃の手帳の中身が、とても人には見せられないような妄想を書き連ねたものだという事を知っているのだから。
(「な、なにを書かれたんでしょうね……」)
内心では冷や汗のいちごであった。
「ただ、せっかくですから、最後はいちごさんの率直な感想を是非……」
「私の感想って……」
「楽しかったか、疲れたか…それとも、ときめいた? いろいろな想いや出来事を全て受け止めた、あなたの想いを、一言下さいませ?」
笑顔で迫り、まるで告白のようなノリで問い詰めてくる智悠璃に、やはりいちごは気圧されて一歩下がってしまう。
果たして智悠璃はいったいどこまで知って、尋ねてきているのだろうか。それがわからないので、どう答えたらいいのかも戸惑ってしまう。いちごとしてはそんな心境だ。
とはいえ何か答えなければいけないのだが……と逡巡していると、全く別方面からいちごの助けがやってきたのだった。
「ねぇ、いちごさん。お部屋のお片づけとかしていかない?」
「えっ?」
声の主は、もう1人部屋に残っていた菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)だ。理緒は、いちごの返答が途切れて少し間が空いていたので、話は終わったのかなと思って声をかけてきたのだった。
「ほら、4日間もお世話になったところだから、お掃除とかもしたいし、宿の人にお礼とかも言いたいしね」
みんなで大騒ぎしていたからごちゃついているし、買える時バタバタするのもなんだしね、と、理緒はそう提案する。
理緒としては、旅行の余韻に浸りつつ、いちごと一緒の時間を過ごしたいという理由もありそうではあるが。
「ふふ……そうですね。立つ鳥跡を濁さずとも言いますものね」
「ですね。少し片づけていきましょうか」
そして智悠璃も理緒の提案に乗ったことで、いちごも安心して頷くのだった。
……もっとも、答えは後で聞かせてもらいますと、耳元でささやかれてびくっとしていたが。
というわけで、いちごと理緒と智悠璃で部屋の後片付けをする。
もっとも最終的にはホテルのスタッフがやる訳なので、できることと言えば布団をたたんで隅に寄せたり、ゴミをまとめたり、ちゃぶ台の上を整頓したりと、それくらい。なので3人でやればあっという間に終わってしまう。
「こんなところかな?」
「ですね、これ以上はホテルのスタッフにお任せです」
そして3人も部屋を後にする。
あとはロビーでチェックアウトの手続きをするだけ……だが。
「ねぇ、いちごさん。今日のお昼ご飯、作っていこうよ」
そこに、理緒のこんな提案が出た。
「えっ?」
「最終日最後のごはんだし、みんなで一緒に食べられそうなやつ」
「ああ、お願いすれば厨房貸してもらえるかしら……?」
補足するように智悠璃もそういうので、いちごは一応ホテルのスタッフにダメ元で尋ねてみることにした。
聞いてみると意外と簡単に許可は貰えた。
なんでも海水浴客用のホテルなので、海に持っていくお弁当を自分たちで作るというのはよくある事らしい。
「では、みんなを待たせていますし、簡単なおにぎりかサンドイッチでも作っていきますか」
「うん。いちごさん、作り方教えてねっ」
「あらあら……」
というわけで料理名人ないちごの監督のもと、3人で昼食のお弁当を作っていく。
智悠璃はもちろん作業に問題はないので、いちごは主に理緒につきっきりだった。
なぜなら、理緒の場合油断したらとんでもない事態を引き起こすのが目に見えていたから……。
「大丈夫! ちゃんとみんなで食べられるものを作るからね。辛さは抑えめでいきます。辛いのは自分の分だけにしておくよ!」
「……本当ですよ?」
ジト目で釘を刺すいちごに見守られながら、手早くお弁当を作った3人は、皆の待つロビーへと向かうのだった。
「それで、いちごさん。答えは如何です?」
「あ……えっと。もちろん楽しかったですよ。最後まで何が起こるかわかりませんでしたしね?」
向かう最中、智悠璃に先程の問いの答えを改めて聞かれたいちごは、そういって満面の笑みを見せたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アイ・リスパー
【26日昼・海】
水着2020
「いちごさん、楽しい時間はあっという間でしたね。
私、帰りたくありません……」
水着……風の高機動型パワードスーツを身にまとい、いちごさんを海辺に誘いましょう。
え、なんでパワードスーツかって?
新しくできたパワードスーツ姿を見てもらいたい乙女心ですっ!
「いちごさん……
そこの岩陰で二人きりでゆっくりお話しませんか?」
人目のないところにいちごさんを連れ込もうとして……
「あっ、きゃああっ」
躓いた拍子に、いちごさんともつれ合って転んでしまい、胸やお尻を触られて……
『強制パージボタンが押されました』
アーマーがパージされて全裸になってしまい……
そのまま、いちごさんに迫ろうとします。
霧沢・仁美
【26日昼・海】で行動。
色々あったけどあっという間の四日間だったね…
いちごくん、最後にもうひと泳ぎしていこう?
今年買った新しい水着を着て、いちごくんと一緒に海へ。
暫く一緒に泳ぐけど、流石に少し疲れも溜まってるし、のんびり浮かんでる時間が多いかも?
ゆったり波間を漂いながら、今回の旅行の思い出とか、色々とお話したり。
…そこでふと、この間いちごくんが誕生日だったことを思い出して。
遅くなったけど、おめでとうね。…プレゼント、何も用意できてなくて申し訳ないけれども。
この一年もいいこといっぱいあるよう、お祈りさせてもらうよ。
…よし、そろそろ上がろうか…って、きゃー!?
(なんかとらぶる発生する模様)
●最後のひととき。最後の対決?【26日昼・海】
チェックアウトした恋華荘御一行様は、最後にもう一度ビーチへとやってきていた。
今回の旅行の泳ぎ納め。
帰りの電車の時間まで、もう少し楽しんじゃおうという事だ。
着替えやシャワーは海の家を使えるので、最後の時間ギリギリまで遊びつくすつもりなのである。
先程チェックアウト前にホテルの厨房を借りて用意したお弁当を持って、一行はビーチに陣取る。
最後の一時を楽しむために。
「色々あったけどあっという間の4日間だったね……いちごくん、最後にもうひと泳ぎしていこう?」
大胆なビキニ姿の霧沢・仁美(普通でありたい女子高生・f02862)は、そういいながらいちごの右腕を抱き寄せる。
そして。
「いちごさん、楽しい時間はあっという間でしたね。私、帰りたくありません……」
露出度だけは水着っぽいパワードスーツ姿のアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)が、そういいながらいちごの左腕にしがみついた。
「あ、あはは……最後ですからね、3人で遊んでいきましょうか……?」
よりにもよってまたもや、休日の最後の時間は、この2人なのであった。
両側から挟まれたいちごはもう、女の戦いを前に苦笑するしかなかったのである。
もちろん、最初から3人一緒になったわけではない。
仁美もアイもどちらも旅行の最後の時間をいちごと2人でと狙っていたのだろう。いちごがひとりになったタイミングを見計らって、ほぼ同時に左右から声をかけて腕を取った結果、こうなったわけである。なにせゴールデンウィークの時も見事にかち合ったこの2人だ。ある意味実に息ぴったりなのであった。
「ところでアイさん、今日はなんでパワードスーツなんです?」
左腕にしがみつくアイの方を見ていちごはふと疑問に思う。昨日までは普通の水着を着ていたはずなのに、と。
「新しくできたパワードスーツ姿を見てもらいたい乙女心ですっ!」
「な、なるほど……いえ、よくお似合いですよ?」
ある意味勝負服のようなものなのだろうととりあえず納得することにした。
いちごに褒められて嬉しそうに笑うのだから、きっと選択肢としては間違っていないのだろう。
「乙女心、なのかなぁ……。どうせ見てもらうなら、水着姿の方が……」
右側の仁美は、そういっていちごを上目遣いに見上げる。腕には暴力的なまでに柔らかい大質量の感触を押し付けて。
「え、ええ。仁美さんも新しい水着、良く似合ってて可愛いですよ?」
こちら仁美もいちごに褒められて嬉しそうだ。そんな仁美の方を左側からじーっと見ているアイは、ぼそっと呟くのだった。
「……普通に水着だと仁美さんには勝てませんし……」
パワードスーツの下のなだらかな自身の胸を見ながら。
3人はそのまま腕を組みながら、ビーチを歩いていた。
どうしてかというと、女の戦いの結果というか……。
「いちごさん……そこの岩陰で2人きりでゆっくりお話しませんか?」
「え、あの……」
というアイの言葉に、今度はゴールデンウィークの時と違って譲らない仁美はちゃんと反撃したのだ。
「アイさん、今回は譲らないよ? ……ねぇ、いちごくん。ちょっと海に入らない? ぷかぷか浮かんで、のんびりと波に揺られながら、2人でゆっくりお話ししよう?」
「あ、あの……」
左右で視線が火花を上げてぶつかり合っている音が聞こえる気がする。
真っ向からぶつかり合う2人の応酬に、いちごは言葉を挟めないでいた。
曰く。疲労もたまってるのに海は危ないだとか、人気のない岩場で何するつもりなのとか、左右からいちごを取り合っててんやわんや。大岡裁きが必要になりそうな事態に陥ったのだが、さすがに挟まれたいちごのツルの一声で、3人で岩場に行くことに決定したのだった。
ちなみに海でないのは、アイが泳げないからである。
というわけで、3人で岩場に腰掛けてのんびりとお話となった。
3人の位置関係は結局変わっていない。いちごを左右から挟んでいる。
「そういえば、先週いちごくんの誕生日だったよね。遅くなったけど、おめでとう。……プレゼント、何も用意できてなくて申し訳ないけれども、せめてこの1年もいいこといっぱいあるよう、お祈りさせてもらうよ」
「あ、いえ、そんな気を遣わなくても……」
話の中、仁美がふと思い出したように、いちごの誕生日のことを話題にした。
仁美が点数を稼ぐのなら、アイだって黙ってはいられない。
なので勢い余ったアイは、こんなことを口走ってしまう。
「私からも、遅くなりましたけどおめでとうございます。……えっと、プレゼントの用意はないので、私でいいですか……?」
「アイさん!?」
「それはさすがにストレートすぎ!?」
顔を赤くしながらも迫ってくるアイの姿に、いちごは恥ずかしそうに視線をそらし、仁美はさすがにそれはダメと立ち上がって止めにかかる。
その結果、3人の位置関係に突然ずれが生じ、バランスが崩れることになった。
「……って、きゃー!?」
「あっ、きゃああっ!?」
立ち上がろうとした仁美と、いちごに迫ろうとしたアイが同時にバランスを崩して転びかけ、そんな両側の2人を支えようといちごも手を伸ばしたのだが……。
「あわわわっ!?」
結局3人もつれ合うようにして、腰掛けていた岩から転げ落ち、砂浜に倒れこんでしまったのだった。
しかも、この一瞬で一体どうしてこんなことになったのか。
全裸のアイがいちごの顔に跨って座り込んでいて、トップレスになった仁美はいちごの腰に顔を押し付けるように抱き着いていたのだった、
一応説明すると、咄嗟にアイを支えようとしたいちごの手が、パワードスーツの強制パージボタンを押してしまい、一瞬でアイは武装解除されてしまったのと、咄嗟に仁美を支えようとしたいちごの手が、仁美のビキニブラを掴んでそのまま引き剥がしてしまったのが、主な原因ではある。
「ひゃんっ!? いちごさん、口を動かさないでくださいっ!?」
「い、いちごくん、なんだか固くなってきてるよ……」
そして当然ながら、アイも仁美もこの状況に真っ赤になって……さらに2人の下敷きになってもがくいちごの手がいろいろ弄ってくるものだから、いろいろ昂ってきてしまい……。
……3人が岩陰から出て恋華荘の仲間たちの元に戻ったのは、2時間ほど経過して帰りの電車に間に合うギリギリのタイミングだったそうな。
●旅行の終わり
というわけで、最後の最後までとらぶる続きではあったものの、3泊4日の旅行日程も無事終わった。
参加した面々は、それぞれに思い出を抱えて恋華荘へと帰っていく。
お疲れさまでした。
大成功
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