星影のサルコファガス(作者 華房圓
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●星海に眠る
 星の海には涯が無い。
 ゆえにこそ、宙に漂う数多の星々は永遠に、宛ても無く昏い銀河を彷徨っている。されど、星海に揺蕩うのは星だけに在らず。

 例えば、夢を追い掛け浪漫を求めた冒険艦。
 未だ見ぬ世界を目指し、危険を顧みず浪漫の渦に身を投げて。そうして夢半ばに沈んだ船には、クルー達の遺物と、彼らが抱いた夢の残滓が眠っているのだろう。
 例えば、沈んだ戦艦。
 何かを護る為、或いは何かを得る為に、数多の砲弾を其の身で受け止めて。鋼鐵の柩と化した其れは、兵士たちの誇りを乗せて、今も何処かを彷徨っているに違いない。
 例えば、誰かの人生を運んだ遊覧船。
 めくるめく夢のようなひと時を紡いだのは、今はもう昔のこと。人の喜びと幸い、悲しみと妬み、細やかな秘密を抱えた侭で。遊覧船は朽ちて猶、新たな客を待ち兼ねている。

 遍くスペースデブリに詰まっているのは、夢と浪漫と後悔と、――ほんの少しの物語。

●いざ航海へ
「銀河帝国の残党が見つかったんだ」
 グリモアベースに集った猟兵たちを見回して、ヴィルジール・エグマリヌ(アルデバランの死神・f13490)は、緩やかに開いた唇から端的な説明を紡ぐ。
 帝国は既に崩壊しているが、総ての兵が躯の海に還った訳でも無い。辺境に潜んで再起を伺っている残党も少なくは無いのだ。
「世界平和のために、力を貸しておくれ」
 オブリビオンは世界に滅びを齎すもの。漸く平穏を手に入れた世界に芽生えた紛争の芽は、早めに摘んでおくに限る。

「ところで、君達は宝探しとか興味ある?」

 そんな真面目な話から、一転。
 楽し気に微笑む男の口から零された問いは、聊か唐突な物だった。
 蒼い男いわく――。猟兵たちには“ワープドライブ”が搭載された宇宙船に乗って、残党兵が潜む場所へと向かって貰う運びと成っている。
 そして、猟兵たちを今回送ってくれる船というのが、廃船から回収した資源を売り捌くことで生計を立てている『クランカー・カンパニー』である。
 ただ此の船は慢性的な人手不足に悩まされており、本業である資源の回収にも苦労している有様だ。
 そこで、もし良ければ任務の前に、廃船から資源を回収する手伝いをして貰いたい。
「回収品のなかに欲しいものが有れば、持ち帰って良いんだって」
 もしかしたら思わぬ掘り出し物や、素敵な宝物と出逢えるかも知れない。朽ちた船の在りし日の姿に思いを馳せながら、廃船のなかを冒険してみるのも愉しいだろう。

「そうそう、残党はウォーマシンの僧侶だ」
 彼は悪食の大喰いらしく、無機物有機物問わず何でも食べて仕舞う。そのうえ機械らしく、躰を兵器に変形させたりもする中々に厄介な相手である。
 されど、銀河帝国との戦いを制した猟兵たちなら、必ずや勝利を掴み取れるだろう。
「それでは、良い旅を」
 食べられないよう気を付けて。そう冗談めかした男の掌中で、グリモアがきらきらと眩い輝きを放ち始めた。
 向かう先は星海の世界――スペースシップワールド。


華房圓
 OPをご覧くださり、有難う御座います。
 こんにちは、華房圓です。
 今回はスペースシップワールドにて、冒険譚をお届けします。

●一章〈日常〉
 難破した宇宙船を、フクロウ型のドローンと一緒に調査しましょう。
 名目は資源(未だ使える武器やパーツなど)の回収ですが、宝探し感覚でお楽しみください。
 また廃船で見つけた物の中に欲しいものが在れば、報酬として持ち帰りOKです。(※アイテムの発行は有りません)

●二章〈集団戦〉
 蝶の群れとの戦闘です。

●三章〈ボス戦〉
 帝国残党との戦闘です。

●『デルタW』
 資源回収船『クランカー・カンパニー』の船長。
 無機質で少し不気味なフォルムをしていますが、気の良いウォーマシンです。

●ドローン『OWL-0096XS』
 モニターフェイスのフクロウ型ドローン。母艦との通信機能付き。
 掘り出し物や資源の在処をモニターの明滅で教えてくれる、頼もしい探索のお供です。
 ひとりにつき一体ずつ貸し出されます。喋れませんが、命令にはよく従います。

●〈お知らせ〉
 プレイングの募集期間については断章投稿後、MS個人ページ等でご案内させていただきます。
 どの章からでもお気軽にどうぞ。単章のみのご参加も大歓迎です。

 またアドリブや連携の可否について、記号表記を導入しています。
 宜しければMS個人ページをご確認のうえ、字数削減にお役立てください。
 それでは宜しくお願いします。
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第1章 日常 『残骸は残懐と共に』

POW力づくで調査・回収を行う
SPD技術を用いて調査・回収を行う
WIZ知識を用いて調査・回収を行う
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●クランカー・カンパニー
 猟兵たちが転送されたのは、こじんまりとしたスペースシップの中だった。
 用途不明のスイッチも無ければ、安全装置の類も無いつるりとした内壁と云い。薄汚れていても、擦り減った痕の無い床と云い。読書には適さないような薄暗い照明と云い。――凡そ生活感の無い船だ。

「やあ、よく来てくれたね」
 薄暗い船の奥から、聲がする。穏やかだが、少しエコーが掛かった奇妙な聲だ。奥へと視線を向けた猟兵たちの目に飛び込んできたのは、聊か奇妙な男のシルエット。
 男は姿形こそ人間に似ていたが、貌が無かった。
 ただフルフェイスヘルメットのような――つるりとした頭があるだけだ。本来、目や口や鼻があるべき場所には、赤く光るコアがはめ込まれている。また彼の下半身は、電動式のウィールチェアと一体化していた。
 更に奇妙なのは、皴ひとつ無いスーツに包まれた彼の上半身に、無数のコネクターが刺さっている点だ。それらはどれも、船の壁から触手のように伸ばされていた。
 どうやら此処は、この船の操縦席らしい。

 なんとも不思議な光景を前にした猟兵達の胸の裡は、様々だろう。不気味に思った者も、もしかしたら居たかもしれない。
「驚かせたかな、この船はこうやって動いているのさ」
 クルーは私だけなのでね、なんて。悪戯に紡ぐ男の有様は、なかなかにショッキングだが。其の言葉の調子から察するに、過重労働はいつものことらしく、男は呑気に言葉を紡ぎ続ける。
「私が船長のデルタ・W(ウェンズデー)。それから――」
 デルタの指が、カタカタとコンソールを弄ったならば。船の天井がパカっと開き、中から何匹もの梟が羽搏いて来た。しかし、其の躰は機械仕掛けである。
「こちらはフクロウ型のドローン『OWL-0096XS』だ。資源の在処を君達に教えてくれる相棒さ、どうぞ好きに使ってくれ」
 彼等は人懐っこく猟兵たちの元に飛んで行き、まあるいモニターフェイスでそれぞれの貌を眺めて、本日の“ご主人様”の姿を記録する。其の様は聊か機械的であるけれど、確かにフクロウとよく似ていた。
「大事な仕事の前に済まないね。それじゃあ、ひとつ宜しく頼むよ」
 スペースシップと繋がった侭、デルタは芒とコアを輝かせて軽く頭を下げるのだった。

●柩は銀河に抱かれて
 機械仕掛けのフクロウを伴って、猟兵たちは『クランカー・カンパニー』の外へ出る。相変わらず、この世界には涯が無い。見渡す限りに、星と暗闇が広がっている丈けだ。
 其の廃船は、果てしなく広がる星海のなかに漂っていた。
 掠れているものの、辛うじて読むことが出来た船の名前は、『レディー・グローリア』。優美な響きの名前からして、これは遊覧船や豪華客船の類なのだろうか。朽ち果てた外壁には、美しい女性の横顔が描かれている。
 沈む前はきっと、立派な船だったのだろう。先ほど猟兵達が乗っていた船の何倍も大きな船だ。
 入口を求めて廃船の外壁をぐるりと一周すれば、船体に大きな穴が空いていることが分かった。どうやら、ここから出入りすることが出来そうだ。
 果たして此のスペースデブリの中には、なにが眠っているのだろうか。そして、どんな宝物たちが猟兵たちの訪れを待って居るのだろうか。
 猟兵たちの冒険が、いま始まる――。

<補足>
・ワープドライブで移動する前なので、敵への警戒は不要です。
・宇宙服や呼吸対策などの記載も省いて下さって大丈夫です。
・本章のPOW、SPD、WIZは、あくまで一例です。
・探索で何を見つけたのか、是非プレイングにご記載ください。
 →資源や武器の他、色々な宝物があるかもしれません。ご自由な発想でどうぞ。

・アドリブOKな方は、プレイングに「◎」を記載頂けると嬉しいです。
 →また連携OKな方は「☆」を記載頂けると更に嬉しいです。
・性的な要素を含むプレイングは、不採用とさせて頂きます。申し訳ありません。

<受付期間>
 9月5日(土)8時31分 ~ 9月8日(火)23時59分
エンジ・カラカ


宝探し、宝探し。
ハロゥ、ハロゥ、フクロウのドローンと一緒に宝探しダ。
アァ……コレの鼻もよーく効く効く…。

それで。
賢い君、賢い君、ココで何を探す?
アァ……うんうん、ナルホドナルホド…。
武器ー。
武器を探すのカ。

武器ってどんなモノ?
コレの武器は鼻と耳と爪と足とー。
なになに、アレ?

鉄の塊カ。鉄臭い。
アレを集めてまた使うのカ。
知ってる知ってる。コレでドーンって撃つンだ。
知ってる、知ってる。

コレはあまり好きじゃないケドなァ……。
コッチのネジもまだ使えるのカ。
こーんなに小さな部品も?
アッチの鉄も?

オーケー、オーケー
楽しくなってきたなァ……。


●梟と青い鳥
 船体に開いた穴から、ひとたび廃船の中へと足を踏み入れれば、其処には雑然とした光景が広がっていた。
 廃墟らしい其の有様に、エンジ・カラカ(六月・f06959)の双眸は、緩やかな三日月を描く。如何にも、何か隠されて居そうな船だ。
「宝探し、宝探し」
 カツカツと踵を踏み鳴らしながら、活気も生気も失せた船内を往く。先を羽搏く機械仕掛けのフクロウは、其のモニターフェイスから光を放ち、彼の脚元を照らして居た。
「ハロゥ、ハロゥ」
 何も語らぬ機械鳥に、青年は機嫌よくご挨拶。薄暗いこの船のなかは、住み慣れた世界と何処か似ているような気がして。心なしか寛げるような心持ち。
「賢い君も、フクロウのドローンも一緒ダ」
 懐に収めた青い鳥を撫でながら、エンジは抜け目なく視線を周囲に巡らせる。ドローンが照らす脚元以外は見え辛いことこの上ないが、だからといって、宝物を見逃す心配も無い。
 エンジはよく効く鼻を持って居るのだから――。
「賢い君、賢い君、ココで何を探す?」
 そう問いかける傍らで、掌に載せた青い鳥に耳を寄せる。無口な君は、矢張り喋らない。
「アァ……」
 それでも、エンジは相槌を打つように頷いて見せた。傍から見たら戯れの如き仕草だが、彼はいま紛れもなく“伴侶”と話をしているのだ。
「うんうん、ナルホドナルホド……武器を探すのカ」
 彼の双眸が前を飛ぶフクロウをちらり、見遣る。貌代わりのモニターは未だ、明滅して居ない。
「武器ー、武器ってどんなモノ?」
 答えは、ない。
 それでもエンジは気にせずに、まるで森の中を散歩するような気軽さで、朽ちた船のなかを往く。
 人狼である彼の武器と云えば、匂いをようく嗅ぎ分けられる鼻に、音を繊細に聞き分けられる耳。其れから、オオカミらしく鋭い爪に、獲物を追い立てる為の脚。けれど、人の躰は凡そ武器には成らない。
 ならば――。
「なになに、アレ?」
 フクロウがふと宙で静止し、エンジの方を振り返る。ぴこぴこと忙しなく明滅するモニターは、恐らく資源発見の合図。
 聊か眩い其の光に目を細めながら薄闇のなか目を凝らせば、彼の行く先に“何か”の塊が散らばっているのが視えた。今こそ自慢の嗅覚の使い処だろう。漂う匂いに、意識を集中させる。
「――鉄臭い」
 つまり、あれは鉄の塊か。
 宙に浮いたまま光を放ち続けるフクロウの傍らを通り過ぎて、床に転がる其れへ近づいてみる。
 試しに持ち上げれば、ずしりと重い感覚がすらりと伸びた腕へと伝わった。
「コレを集めてまた使うのカ……知ってる知ってる。コレでドーンって撃つンだ」
 鉄を溶かせば、銃が出来る。銃身から放たれる銃弾も、きっと作られるだろう。けれど、エンジは其れが好きでは無い。
 ――銃を使う猟師は、狼の天敵だから。
 掴んだ塊から何となく視線を外す。フクロウのドローンは彼の頭上を通り過ぎ、少し道を進んだ先でまた静止した。モニターは相変わらず、明滅を続けている。
 素直に其方へ近づいてみたところ、床に散らばる細かな資材が視界に入った。傍らの壁が不自然に凹んでいる所を見るに、事故か何かの衝撃で壁の一部が剥がれて仕舞ったらしい。
 壁紙を留めていたらしい螺子に、何かが欠けた痕らしきパーツ。それらは総て、此処で人の営みが紡がれていた証。
「コッチのネジもまだ使えるのカ。こーんなに小さな部品も?」
床に膝を着き小さな螺子を指先で拾い上げながら、感心したような呟きを落とすエンジ。答える者は誰も居ないが、別に今更気にするようなことでも無い。
「オーケー、オーケー。楽しくなってきたなァ……」
 そう独りごちれば、螺子をポケットに入れて立ち上がる。此処に転がっているもの総てが宝物だと云うのだから、いよいよ冒険じみて来た。
 新たな巡り会いに胸躍らせながら、一匹と二体は廃船の奥へ奥へと歩みを進めて行くのだった。
成功 🔵🔵🔴

ネフラ・ノーヴァ
◎☆#

宝探しか、面白そうだな。眠りついた夢の数々。美しい宝石もあるだろうか。
フクロウ型ドローン?いかにも機械だが案外可愛らしいな。ひとまず肩に載せよう。

『レディー・グローリア』に入る前に、描かれた女性の横顔に口付けを。では失礼するよ。
客船であれば客室に個人の所有物が残っているだろうか。開かない扉はUCフェイタルグラップルでこじ開けてみる。ドローンには入り組んだところを撮してもらおう。
宝飾品はいくらかありそうだが、めぼしいものは無さそうかな。
ふむ、隙間にあるのは、人形?子供の持ち物だったのだろうか。どこか郷愁を感じさせる。持って行こうか。


琴平・琴子
◎☆

梟に似てはいますがお前は機械なのですね
…もふっとしていなくとも愛らし…いえ何も
一時のご同伴、お付き合い宜しくお願いしますね

流石廃船と言ったところでしょうか
辺りが埃塗れで何も見えませんし…
梟さんは何も仰らないので此処は何も無いのでしょう

何も見つかりませんでしたね
外に出て船を一望すると掠れた船名と女性の顔
船の名の通りの栄光を願われたのでしょうが
その面影は何処にあるのやら
美しき女性の顔も汚れて勿体無い
汚れを布巾で拭き取るにも少々時間が掛かりそうですが…
あら、お目目の所に宝石があったのですね
夜空に瞬く星の煌めきの様な宝石
何でしょうね、これ
梟のお前、これご存知?


●女神よ、我に微笑み給え
 朽ちた遊覧船『レディー・グローリア』の中は、其の巨大な見た目に違わぬ広さ。幼い脚で幾ら歩いても、終わりが見えそうにない。
 琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)は、其れでも脚を止めず廃船探索に挑んでいた。薄暗い船内は不気味で物寂しいけれど、傍らで羽搏くフクロウがモニターから光を放ち足元を照らしてくれるお蔭か、不思議と恐ろしさを感じることは無かった。
「梟に似てはいますが、お前は機械なのですね」
 少女の聲を捉えたフクロウが、ぎぎぎと頸を傾ける。そういえば、いつか動物番組で見たフクロウもそんな仕草をしていたような――。
「もふっとしていなくとも愛らし……いえ、何も」
 ぽろりと本音が零れかけた花唇を手で覆い隠し、琴子はふいと視線を逸らした。もふもふと柔らかい羽根は無いけれど、この子は紛れもなくフクロウなのだ。きっと。
「一時のご同伴、お付き合い宜しくお願いしますね」
 礼儀正しく頭を下げて見せたなら、フクロウはきゅるるるると稼働音を響かせた。其れはまるで森の賢者の鳴き聲のようで、少女はふふりと笑みを零すのだった。
 この子となら、暗い宇宙船での冒険だって、きっと大丈夫――。

「……何も見つかりませんでしたね」
 しかし、小一時間に渡って探索を続けたところで、琴子の相棒はウンともスンとも言わなかった。試しに、つるりとしたフクロウの貌――モニターを覗き込んでみるけれど、明滅する気配は一向に無い。
「つまりは、なにも無かったということでしょう」
 廃船と云うだけあって、客室などは見事に埃を被っていた。寧ろ、宙に漂う砂埃に視界を覆われて、“全く何も見えなかった”という表現の方が正しいかも知れない。
 一度母艦に戻って形勢を立て直す為、琴子は外へと出ることにした。ほんの少しの失望を抱きながら大きな穴を潜り抜け、先ほどまで居た廃船を振り返る。
 掠れた船名から察するに、この船は末永い栄光を願われていたのだろう。されど、その煌びやかな面影は何処へやら。隣に描かれた女性の横顔も、すっかり汚れている始末。
 なんて勿体ない――。そう思った矢先、恭しげに其の横顔に触れる羊脂玉を、少女の眸がふと捉えた。其れは、ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)の指先だ。
「失礼、レディ」
 凛々しい聲で絵画の淑女と挨拶を交わし、ハンカチで彼女の汚れを拭い取って遣るネフラ。其の様はまるで、憧れの王子様のようで――琴子は思わず其方に見入って仕舞う。
「ほら、綺麗に成った」
 汚れを拭い去られた淑女の横貌に、矢張り美しいと微笑んで。ネフラはそうっと絵画の白い頰に唇を寄せて、口吻をひとつ。
「それでは、失礼させて貰うよ」
 恭しく船体に描かれた彼女へ腰を折り、序に遣り取りをどきどきと見守っていた少女にも手を振って、クリスタリアンの麗人は廃船の中へと姿を消した。
 芒と其の姿を見送っていた琴子も気を取り直し、美しさを幾分取り戻した淑女の元へと泳いで行く。
「あら、――お目目の所に宝石があったのですね」
 先ほどは汚れていた所為で気付かなかったけれど、近くでよく見ると分かる。彼女の眸には、星の如き煌めきの宝石が嵌められて居た。
「梟のお前。これ、ご存知?」
 美しい煌めきを指差しながら、傍らで羽搏くフクロウにそう問うてみる。
 返事こそ戻って来ないが、ドローンはモニターフェイスを船体に寄せて、絵画をじぃっと眺めている。
 その真剣な様子を静かに見守っていれば、軈てフクロウの貌――モニターに波形が表示される。どうやら彼は、母艦と通信をしているようだ。
『おや、これはレモンクォーツだね』
 ふと聴こえたのは、母艦で猟兵たちの戦果を待つデルタWの聲。
 お前はカメラ機能も搭載されていたんですね、とでも言いたげな眼差しをフクロウに向けながら、琴子は星の如き宝石の名を反芻した。
「レモンクォーツ……」
 成る程、確かに果物の檸檬と似た彩をしているような気もする。馴染みのない世界で馴染みのある単語を耳にした少女は、何処か不思議な心地に成りながら、温かみのあるゴールデンアイをそうっと撫でるのだった。
 この煌びやかな宝石を、これからの冒険の伴とするのも良いかも知れない。



 一方でクリスタリアンの麗人――ネフラは、廃船の奥深くを探索していた。彼女の肩の上には、ペットよろしくフクロウ型のドローンがちょこんと座っている。
「いかにも機械らしい見目だが、……案外可愛らしいな」
 健気に足元を照らしてくれるし、暴れたりもせず大人しいので、だんだん愛着が湧いてくるような気もする。しかし、ネフラはペットを求めに来た訳では無いのだ。
「眠りついた夢の数々のなかには、美しい宝石もあるだろうか」
 恐らく此の船は、富裕層向けの遊覧船だ。ゆえに、客が遺した宝石が眠っている可能性も十分に考えられる。となると、――向かうべきは客室だ。
 肩に乗せたフクロウのモニターを注視しながら、ネフラはゆっくりとキャビンの扉が幾つも並ぶ廊下を、奥へ奥へと進んで行く。
 難破した後そのままの船内は、当然掃除などされておらず、何だか埃っぽい匂いがした。されど、フクロウが最奥の部屋の前でモニターを明滅させ始めたら、引き返す訳にも行くまい。麗人はドアノブを確りと握りしめ、いざ開かんと扉へ体重をかける。
「……開かないな」
 しかし、びくともしなかった。
 果たしてドアノブが壊れているのか、それともドアの前に障害物でも置かれているのだろうか。どちらにせよ、こう成れば抉じ開けるしか無さそうだ。
 麗人は其の華奢な指先でドアを掴み、――かと想えば瞬時に掌を硬質化させて、めいっぱい腕に力を籠め始める。ギリギリと軋む音を立てたのは、動く気配の無かったドアだ。ネフラは其の儘、勢いよく扉を剥ぎ取って見せた。
「宝飾品はいくらかありそうだが……」
 先ほどまでドアだった残骸を投げ捨てれば、目の前に広がるのは散らかった部屋。無残に倒れたベッドから仕立ての良いドレスが垂れ下がっていることから、この部屋には女性がいたことが分かる。
 探せばきっと、アクセサリーのひとつやふたつは見つかるだろう。しかしながら、ベッドだけでなくクローゼットやキャビネットなども倒れていて、足の踏み場もない有様だ。
 先ほどのように、グラップルしながら進むほか有るまい。然し、彼女にはいま頼もしいお供が居る。
「先に中を探索してくれ。私は足場を確保しながら進もう」
 肩に乗せたフクロウへそう命じれば、彼は返事の代わりにきゅるるると稼働音を響かせて、部屋の中へと羽搏いて行く。
 何処か微笑ましい気持ちで其れを見送ったネフラは、品の良い見目にそぐわぬ怪力で障害物をグラップルして行くのだった。

「一通り見て回ったが……目ぼしいものは無さそうかな」
 足の踏み場を確保したうえで、改めて部屋の中を探索したものの。宝飾品と云えば、総て硝子製のものばかり。居住可能惑星が枯渇した此の時代、天然石は矢張り貴重らしい。ネフラが探しているような宝石の類は、この部屋に無いようだった。
 溜息を吐く彼女の元へ、モニターを明滅させながらフクロウが飛んでくる。彼はネフラの前に辿り着いた瞬間、モニターの表示を画像表示に切り替えた。
「……机の隙間か?」
 其処に映された明度の低い画像を、しげしげと覗き込む。よくよく目を凝らせば、奥の方に“何か”が転がっているのが見て取れた。
 ドローンはきっと、このことを教えてくれて居るのだろう。よくやったとフクロウの頭を撫でてやった後、ネフラは部屋の隅にある机へと歩みを進めて――再び、グラップル。
「これは……」
 壁から引き剥がした机を床へ乱雑に転がせば、ドローンに映って居た“それ”は容易に取ることが出来た。
「人形だな、郷愁を感じさせる」
 ネフラが見つけたのは、女児がよく好むような可愛いドレスに身を包んだ、愛らしいお人形。されど、すっかり埃を被って仕舞っていて、何だか切ない有様だ。
 こんな人形があるということは、この部屋には子供も居たのだろうか。
 ざっと探索したところ遺体の類は見当たらなかったので、きっと無事に離脱できたのだと信じたい。この人形はその子の身代わりと成って、此処に置き去りとされたのだろう。そう信じたほうが、夢が在って良いような気さえする。
「……持って行こうか」
 ずっと寂しい船のなかに居たのだから、外の世界に連れ出してやりたい。纏わりつく埃を払い除ければ、ネフラはその腕の中に優しく人形を抱き締める。モニターフェイスのフクロウは、其の光景をただ静かに見守っていた――。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

終夜・嵐吾
あや君(f01194)と

何が出てくるか、楽しみじゃの
幽霊!?(尻尾を逆立て)えっ…お、おらんよな、そんなの(強がり
おるわけが、ない…!(弱気な尻尾)

フクロウ型のドローンか…そうじゃな…
では、ふーちゃん、案内を頼む
(お化けのおらなさそうなところで…!(こそこそ

おお、あのあたりの塊、なんかあるみだいじゃよ
あや君、いってみよ

我楽多いっぱいじゃの…
ふふ、こういうのを発掘するのは楽しいの
あや君のほうはどうじゃ?

お、これは円盤…掃除機かの?
…この上にこんこんが乗ったらかわいい…(想像し尻尾を揺らし)
しかし壊れておるな?
そじゃね、きっと直してくれるじゃろ

まだ色々ありそじゃし
ふーちゃん、他にも案内を頼む!


浮世・綾華
嵐吾さん(f05366)と

廃船?幽霊、とか出るんかな
って、嵐吾さん…?
(あれ、これは)
ふふ――すみません
俺が変なこと言いました
いないでですよきっと

ふーちゃん
嵐吾さんのねーみんぐが可愛い

こうゆーとこの探検、わくわくしますねえ
塊?ほんとだ、はぁい

なんだろこれ
…耳に掛けるようになってんのかなと装着
触れればカチと音がして
おわっ…なんか画面が出た

嵐吾さんのは円盤型の――掃除機?
画面越しに見れば尻尾の周りにきらきらオーラが…
(楽しいオーラとかが分かるのか…?)
何が見えたかは内緒だけれど
可愛く思え笑って

あれ
俺のも画面映らなくなっちゃいました
あ、彼奴に直してもらいましょうよ
きっと出来る。できなきゃボコる


●ふーちゃんと共に
 朽ち果てた宇宙船は薄暗く、壁も床も、天井すらも襤褸襤褸で。まさしく幽霊船と云った趣。されど、宝探しと意気込む妖狐の青年――終夜・嵐吾(灰青・f05366)の脚取りは羽のように軽い。
「何が出てくるか、楽しみじゃの」
 胸の裡に秘めた幼心が赴く侭に傍らを歩く浮世・綾華(千日紅・f01194)へ、へらりと柔く笑みかけて見せるけれど。当の綾華といえば視線を伏せ、何やら考え込んでいる様子。
「……幽霊、とか出るんかな」
「幽霊!?」
 ぽつり。何気なく零された科白に嵐吾の灰彩尻尾が思わず、ぞわぞわと逆立った。笑みを引き攣らせながらも、友に向けて冗談をと強がって見せた。
「えっ……お、おらんよな、そんなの」
「嵐吾さん……?」
 一方の綾華は、彼の反応に紅の双眸をぱちぱちと瞬かせている。もしや、――嵐吾は意外に怖がりなのだろうか。
「ふふ、――すみません。俺が変なこと言いました」
 いないですよきっと、なんて。先ほどの独り言を打ち消す科白に、微笑まし気な響きが自然と滲む。それでも、彼の否定は嵐吾を安心させるには充分だったらしい。
「うん、おるわけが、ない……!」
 気を取り直して意気揚々と、妖狐の青年は昏い船の中を進んで行く。けれど、すっかり縮こまった弱気な尻尾は隠せていなかった。くすり、彼の後ろ姿に笑み零し、綾華も早足で彼の隣に並び立つ。
 そんなふたりの後を追うのは、フクロウ型のドローンたちだ。彼等はご主人様たちの脚元を照らしつつ、高性能のセンサで常に宝物の在処をサーチしてくれて居るのだ。
「この子達には名前とか無いんじゃろか」
「いっそ、名付けてあげたら喜ぶんじゃ」
 従順に彼らの後ろで羽搏き続けるフクロウを振り返りながら、嵐吾がそんなことをふと零せば、ヤドリガミたる綾華が頸を傾げながらさり気無く命名を提案する。
 ドローンたちは其のどれもが同じ姿ゆえ、個体差など殆ど無いのだろう。差が在ったとしても、せいぜい製造番号位だろうか。ならば此のひと時位は、袖触れ合った彼等に“特別”を与えてやるのも良いかも知れない。
「そうじゃな……では、ふーちゃん」
「……ふーちゃん」
 可愛いネーミングに、綾華の頬が緩む。宛ら、ふーちゃん壱号、弐号と云った所か。妖狐の青年が手招けば、二台のドローンは彼の元へと従順に羽搏いて来た。
「ふーちゃん達、案内を頼む」
 嵐吾の号令に二台のフクロウは、かくり、かくり。本物の鳥の如き動作で頸を傾け、肯定の意を示した。ばさばさと機械仕掛けの翼を大きく動かしながら、ドローンはふたりの横を通り過ぎて行く。
(「出来れば、お化けのおらなさそうなところで……!」)
 擦れ違い様に嵐吾がこそりとそう告げれば、二台は聊か無機質な仕草で再び、かくりと頸を傾けた。きっと通じているのだと、そう思いたい。
 そうして彼らの前へと躍り出たふーちゃん達は、宝物の在処へ導くように、ゆっくりと進み始めた。機械仕掛けの羽搏きが船内に反響しては、響き渡る固い靴音と混じり合い溶けて往く――。

「こうゆーとこの探検、わくわくしますねえ」
「うんうん、童心に帰った心地に成るのー」
 廃船の中は想像以上に乱雑としていて、瓦礫を退けねば通れぬ場所も少なくなかったけれど。“探検”には少しの障害が在った方が、刺激的で楽しいのだ。
 非日常的なシチュエーションに湧き上がる少年心を前に、恐怖心も何時の間にやら何処かへ飛んで行って仕舞った。
 ぶらりぶらりと船内を彷徨っていれば、――ふと。ふーちゃん達のモニターフェイスに赤い彩が燈る。どうやら、この周辺に何か掘り出し物があるらしい。
「おお、あのあたりの塊、なんかあるみたいじゃよ」
「……ほんとだ」
 ドローンの反応に耳をぴこんと立てながら、きょろきょろ周囲を見回した嵐吾は、其の視界に瓦礫の山にも似た塊を捉えた。すかさず友人へと指差して報せれば、綾華も暗闇の中で目を凝らし、彼が示す先に在る“何か”を視界に芒と写す。
「あや君、いってみよ」
「はぁい」
 ばさばさと羽搏くフクロウも伴って、ゆっくりと其の「塊」に近づいてみる。果たして其れは、棄てられた“資源”の山だった。
 壊れて内側が露わに成った通信端末から、罅の入った液晶モニターまで。大小様々な、もう本来の役目が果せない資源たちが、其処には大量に積まれていた。
「我楽多いっぱいじゃの……」
「こーゆーのも、なんかの役に立つんかな」
 資源の山に埋もれる資源をざっと検めて、使えそうな物を探すふたり。件の回収船は屑鉄なども集めているそうなので、此処にある壊れた我楽多たちも回収対象なのだろう。それらがどうやってリサイクルされるのか、想像もつかないけれど――。
「ふふ、こういうのを発掘するのは楽しいの」
 嵐吾はすっかり宝探し気分。軽やかな手つきで廃品の山を掻き分けながら、何か掘り出し物が発掘されないかと、琥珀の眸を煌めかせている。
「あや君のほうはどうじゃ?」
「一応キレイなの見つけましたけど……なんだろこれ」
 不思議そうに頸を傾げる綾華の手に握られて居たのは、四角い近未来的なフォルムの片眼鏡だった。視た所レンズに疵などは無く、使用に支障は無いようだ。
「これは……眼鏡かの」
「耳に掛けるようになってんのかな……」
 嵐吾の興味深げな視線を受けながら、綾華は早速それの装着を試みる。フレームを耳に掛けて、固定して――。そんな動作の最中、彼は何かを触って仕舞ったらしい。唐突に、カチッという音が響いた。
 刹那、レンズに映し出されるのは、コンピュータの起動画面にも似た映像。
「おわっ……なんか画面が出た」
 驚きながらも、片眼鏡越しに周囲を見回してみる。我楽多の山に視線を落とせば、レンズには其れ等ひとつひとつの名称と組成式が、まるでゲーム画面のように映し出された。
 どうやら此れは、アナライザースコープのようだ。ウンともスンとも言わぬ他の我楽多たちを視るに、なかなかの掘り出し物と云えるだろう。
「お、わしも何か見つけた」
 日常ではなかなか経験できないSF体験に、ついつい色々な物を解析して楽しんでいた綾華は、嵐吾が零した弾む聲にふと意識を引き戻された。楽し気に貌を輝かせる彼の手には、何やら丸くて平べったい機械が握られている。
「これは円盤……いや、掃除機かの?」
 手に取った其れを裏返せば、唇のように上下に分かれたエアロブラシが眸に入る。此れは、アース系列の世界でも馴染みが深い“ロボット掃除機”によくある特徴だ。
「この上にこんこんが乗ったらかわいい……」
 まあるい掃除機の上にちょこんと乗っかり、回転しながらお散歩に赴く白狐のバディペットの姿を想像して、嵐吾の頰はほわほわと弛む。彼の灰彩尻尾も嬉しそうに、ふわふわと揺れていた。
 スコープ越しに其の様を見つめる綾華は、ぱちぱちと瞬きを、ひとつ、ふたつ。如何いう訳だか、嵐吾の尻尾の周りにキラキラなオーラが視えるのだ。
 ――楽しいオーラとかが分かるのか……?
 どうやらこのスコープは、想像以上に高性能らしい。けれど、何が視えたか嵐吾には内緒。綾華は眼前の可愛らしい光景に、ただ笑みを零すのみ。
「ああ、しかし壊れておるな?」
 床に置いたロボット掃除機のスイッチを押しながら、嵐吾が小首を傾げる。其の姿をレンズに映した刹那、――ぷつり。
「あれ、俺のも画面映らなくなっちゃいました」
 電池が切れたのだろうか、スコープはもう何も映さない。取り外して試しに振ってみるけれど、アナライズシステムが再起動する様子は全く無かった。どうしたものかと思考する綾華の脳裏に、ふと過ったのは、機械弄りが得意な友人の姿。
「あ、彼奴に直してもらいましょうよ」
「そじゃね、きっと直してくれるじゃろ」
 きっと出来る、寧ろできなきゃボコる――なんて。物騒な科白をさらりと零す綾華に、嵐吾はくつりと笑みながら頷いてみせる。彼が誰の話をしているのか、妖狐の青年は何となく心当たりが在った。ゆえに、気を取り直して先に進むとしよう。
「さて、まだ色々ありそじゃし。ふーちゃん、他にも案内を頼む!」
 ロボット掃除機を小脇に抱えた嵐吾が明るく号令を紡いだなら、明滅を止めたフクロウはきゅるるると稼働音を響かせて。再び彼等を先導するように、廃船の中を羽搏いて行く。
 次なる宝物との出会いに期待を膨らませながら、ふたりは冒険を続けるのだった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

荻原・志桜
◎☆
本当に広い船だね
たくさんの人たちを乗せて宙を泳いできたのかな
ねぇフクロウくん。どんなものがココに眠ってるんだろうね
にひひ、魔法道具に使えそうなものがないかなぁって気になるんだ

ドローン連れて辿り着いた先
失礼しまーす、と声をかけ室内を見回して。目についた机に近寄る

これって……えと、名前なんだっけ?
あ。そうだ、ペンデュラムだ!
鎖が千切れちゃってるけど――うん、大丈夫。本体に大きな傷はなさそう
これもまだ使えるよね……よしっ!

何も込められてない宝石の形をした透明のペンデュラム
祈るように。そっと両手で包む
自分の魔力を静かに込めれば薄紅の灯が宿る

今度はわたしの導として手助けしてね
さあ、次は何があるかな


天音・亮
◎☆

私の周りを浮かぶふたつのマシン
ひとつはデルタ船長が貸してくれたOWLくん
もうひとつは私の愛機、アドくん

ふふ、友達が出来たねアドくん
AI機能搭載のアドくんは初めて見る似た様な存在に興味津々
さっきからOWLくんの周りをくるくると
そんな様子が可愛らしい

ふたりのチームメイトと共にいざお宝探し
OWLくんの指示した場所を漁っては良さげな資材を集めていきながら
進んだ先、辿り着いた船室
見上げれば大きな窓から果ての無い星海が飛び込んできた
散りばめられた星
釘付けになって立ち尽くす

…この星のどれかに、きみもいるのかな

ぽつり呟いた後ろ姿と星海の景色を
カシャリ。シャッターを切るアドくんとOWLくんだけが見つめていた


●過日
 人気も無ければ生気も無い『レディー・グローリア』は、正しく幽霊船の如き有様。されど、うら若き乙女がふたり集えば、どんな場所でも華やぐもの。
 喩え其処が、疾うに朽ち果てた船の中であろうとも――。
「わあ、本当に広い船だね」
「ね、どんな宝物が眠ってるのか楽しみ」
 現代的な世界に暮らしているとなかなか、こういう廃船に足を踏み入れる機会は無い。
 ゆえに荻原・志桜(桜の魔女見習い・f01141)と、天音・亮(手をのばそう・f26138)は、ゆるり並び歩きながら、興味津々といった様子で船内を見回している。
「ステキなものが見つかると良いな」
 今日は宜しくね――。亮がそう微笑み掛ける先には、宙でぱたぱたと羽搏くフクロウ型のドローン“OWL”の姿が在った。その一方で彼女が愛用する球体音響増幅器AI――“アドくん”は、自分と似たような存在のドローンが珍しいらしく、彼の傍らをくるくると回り続けて居る。
「亮ちゃんのマシン、なんだか燥いでるみたい」
「ふふ、友達が出来たねアドくん」
 大人しいOWLと好奇心旺盛なアドくんの取り合わせは、何だかじゃれあうペットを想起させて微笑ましく、乙女達のこころを大層和ませた。
 この子たち可愛いね――。なんて笑い合っているうちに、ふたりは客室が並ぶフロアへと辿り着く。此の光景だけ見ていると“遊覧船”というよりも、何だか高級ホテルのようだ。
「あとは各自で探索、だよね。良いもの見つかりますように……!」
「うん、どんなの見つけたか後で教えてね!」
 夫々の健闘を祈りつつ、亮と志桜は手を振り合って暫しお別れ。互いのお土産話に期待を抱きながら、こうして乙女たちは宝探しに挑むのだった。



 志桜は客室を中心として、探索に勤しんでいた。
 どの部屋も散らかっているけれど、其処に置き去りにされた装飾や日用品たちは、在りし日の此の船の姿を彼女に想像させてくれる。
「たくさんの人たちを乗せて宙を泳いできたのかな……」
 数部屋目の扉を閉めながら、少女はそんなことを物思う。目ぼしいものは未だ見つかっていないけれど――。
 朽ち果てた船で誰かの生活の痕を追うのは、こそりと誰かの秘密を覗いているようで、何だかわくわくする心地。
「ねぇフクロウくん。どんなものがココに眠ってるんだろうね」
 己の肩で羽を休めるドローンに、ふと問い掛けてみる。返事こそなかったが、フクロウはきゅるるると愛らしい稼働音を響かせながら、頸をちょこんと傾げて彼女を見つめてくれた。
「にひひ、魔法道具に使えそうなものがないかなぁって気になるんだ」
 OWLはこころを持たぬ機械の筈なのに、何だかちゃんと話を聞いてくれているように想えたから。志桜はそんな風に、楽し気に言葉を重ねて往く。
 今度の部屋には何が有るかな――。
 そんな風に胸を弾ませながら、少女は次の扉をゆっくりと開く。次の瞬間、視界に入るのは比較的ものが散らばっていない、質素な部屋。
「失礼しまーす……」
 誰も居ないのは分かっているけれど、一応断りを入れながら室内へ脚を踏み入れる。嘗て此の部屋を誰かが使用していたことを想うと、勝手に入るのは少し気が咎めた。
 果たして部屋のなかに在ったのは簡素なベッドと、椅子と、――こじんまりした机だった。何となく気に成って机のほうへ脚を進めれば、肩に乗せたドローンがモニターを赤く明滅させ始めた。此処に何かが、有るのだろうか。
 机の上へと視線を走らせた志桜は、視界に入った“あるもの”に翠の双眸をぱちぱちと瞬かせた。
「これって……」
 そうっと、指を伸ばす。其れは、透明な石が揺れる「振り子」のようなものだった。記憶が確かなら、これも魔法に使う道具だった筈だ。正式な名称は――……。
「あ、そうだ、ペンデュラムだ!」
 銀の鎖は千切れて仕舞っているけれど、視たところ本体に大きな傷は無いようだ。これなら、鎖を取り換えるだけでまた使えるように成るだろう。
「……よしっ!」
 未だ何も込められていない宝石めいた透明の石を、そうっと両の掌で包み込む。そうして、祈るように双眸を閉じたなら、志桜は自分の魔力を静かに其処へ込めて往く。
 ぽう――と、透明な石に燈ったのは、薄紅の灯。桜にも似た其の彩を見降ろして、少女は嬉しそうにペンデュラムへと語り掛けた。
「今度はわたしの導として、手助けしてね」
 喩え道に迷って仕舞ったとしても、暗闇に沈むことがないように。
 漸く見つけた宝物をぎゅっと握り締め、少女はフクロウを伴って此の部屋を後にする。さあ、次は何が待って居るのだろう。
 志桜の冒険は、もう少しだけ続くようだ。



「うん、OWLくんのお蔭で色々と見付けられたね」
 亮はふたりのチームメイトと共に、お宝探しに勤しんでいた。フクロウのドローンは中々に優秀なようで、彼が示した場所を漁れば屑鉄や放棄された銃器が面白い程に見つかった。
「こういう鉄の塊も誰かの役に立つんだ……」
 モデルらしく奇麗に整えられた指先で、武骨な鉄塊をつぅ――となぞる亮。彼女が済む世界とはまた異なる再利用のシステムが、この世界にはきっと有るのだろう。資源が不足しがちな世界には、不要なものなど何ひとつ無いのだ。
「アドくん、OWLくん、そろそろ次に行こっか」
 屑鉄を仕舞い込み、持ち慣れぬ武器を小脇に抱えた亮は、愛機とドローンを優しく手招く。アドくんは相変わらずOWLのことが気に成るようで、モニターフェイスにくっついたり、かと想えば離れてみたり、じゃれるような動作を延々と繰り返していた。
 一方のOWLはあまり感情豊かでは無いらしい。彼はアドくんの不思議な行動に特に反応することもなく、ただじぃっと船の中を観察しているようだった。
 そんな凸凹コンビにくすりと笑みを零しながら、亮は更に歩みを進めて行く。いつしか彼女は、フロアの最奥へと到達していた。
 目の前には今、大きな扉が在る。探索して居ないのは、もう此処だけだった。次は何が有るのかと心を弾ませながら、扉をゆっくり押し開く。
 視界へ飛び込んで来たのは、船室いっぱいに広がる窓。そして其処に映る、涯の無い星海の雄大な景色。
 何処までも伸び往く漆黒の帳には、数多の星々が鏤められていた。この窓から手を伸ばしたなら、どれかひとつ位には手が届くかもしれない。
 ――そう思わせる程、星が近いのだ。
 ヒーローズアースでは見ることの出来ない光景に、双眸が思わず釘付けとなり、亮は暫し芒と其の場で立ち尽くす。
「……この星のどれかに、きみもいるのかな」
 ぽつり。花唇から零れた科白は、薄闇のなかに溶けて往く。何だか“きみ”が遠くに感じられて、少しだけ切ないような、寂しいような、そんな心地。
 満天の星海を眺める亮の儚げな後ろ姿を、アドくんとOWLは靜に見つめていた。

 ――カシャリ。

 そんな時、アドくんが不意にシャッターを切る。彼は自身に搭載された機能をここぞとばかりに活かしたのだ。
 何事かと振り返る亮に、彼は先ほど撮影した光景を映して見せた。その様が何処か得意げで、映し出された映像が絵に成る程うつくしかったから――。
「あはは。ありがと、アドくん」
 亮の貌に、自然と笑顔の華が咲いた。

 ――ほら。“きみ”に見せたい写真が、また一枚。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

朱酉・逢真
◎☆(服・体ともに物理接触不可)
はてさて。ヒトの宝にゃ興味もないが、マシンに関しちゃドシロウト。つったら何を探すのかッたら、残るはひとつ。ヒトそのもンさ。生きていなくとも構いやしない。タマシイがそこに残ってるンなら、俺はそいつを連れてくさ。
未練があるなら聞いてやろう。言葉があンなら届けてやろう。誰かを探してる途中だってンなら、俺がいっしょに探してやろう。遊覧・客船っていうンなら、いろんな客が乗ってただろう。
宇宙のど真ん中で廃船ってンなら、たぶん航海中の事故だろォよ。哀れみゃせんし救いもしねえが、“いのち"はみィんな、いとおしいもンさ。彼岸の渡しが俺のお役目。どいつもこいつもいっしょにおいで。


トリテレイア・ゼロナイン
◎☆

世界間移動が可能となる前は、銀河帝国や宇宙海賊との戦闘以外にもこうした回収作業も収入源の一つでしたね

よろしくお願いします、OWL-0096XS
先ずはこの船の生き残っている電子回線を探しましょうか

ワイヤーアンカーでハッキングし情報収集
制御中枢かブリッジの所在を把握
船の情報が集まる此方で妖精ロボも投入し本格調査を開始

当時の積み荷、乗員の把握
危険物の有無…
有機物か乗員タグを目印に船内検索
開かない隔壁をレーザーで焼き切りつつ移動

(『中身』が入った宇宙服を発見し)
…お迎えに上がりました

あとは付近のもう一つの反応は…

緊急冷凍睡眠装置…電源は…
……!?

デルタ様! 至急救助マニュアルの用意を願います!


●いのちの残滓
 何処までも続きそうな薄暗い廊下を、浮世離れした雰囲気を纏う青年――朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は、淡々と歩き続けていた。
 彼の行く路には、大小様々の瓦礫が散らばっている。所々剥がれた壁は、素人目に見ても劣化が激しい。――此の船は宇宙の真ん中で朽ちていた。
 恐らくは、航海中に事故が起きたのだろう。そして遊覧船というものは得てして、大勢の客を乗せて運航するものだ。
 つまり、事故に寄る犠牲者は決して少なく無かった筈である。
「はてさて、ヒトの宝にゃ興味もないが――」
 おまけにマシンに関してはド素人。ならば、彼が求めるものはひとつ。それは“ヒト”そのもの。
 朱酉・逢真は「神」である。増えすぎたヒトを帳尻合わせで彼岸に送り、時には減り過ぎを防ぐために異形を滅する、“凶星”の神。それが逢真なのだ。
 喩え生きて居なくとも構いはしない。此の船にはきっと、数多の亡霊が眠っている筈だ。ならば、彼らを連れて行こう。
 ゆえに道中で何度かフクロウがモニターを明滅させようとも、逢真は其方に目も呉れず、魂を求めてただ歩みを進めて往く。
「ちぃと待ちなィ、トリ公。鉄屑は後で拾ってやらァ」
 彼の言葉が通じているのだろうか。フクロウは相変わらずモニターを光らせてはいるものの、従順にご主人様の後ろを付いて行く。
 軈て逢真は、大きな瓦礫が積み上げられた一角へと辿り着く。ふと天井を見上げれば、其処だけぽっかりと穴が空いていた。恐らくは事故の衝撃で、崩落して仕舞ったのだろう。
 もしやと想い瓦礫の近くにしゃがみ込めば、何やら白くて細いものが視界に入った。――ヒトの骨だ。これは、指先だろうか。
「哀れみゃせんし、救いもしねえが……」
 彷徨える魂を、此処に置いておく訳にも行かぬ。連れ帰る事こそが、彼の目的なのだから。青年は誰かの遺骨を見降ろして、そうっと語り掛ける。骨に喋る口なんて無いけれど、神である彼には、魂の慟哭が確かに聴こえた。
 亡者は嘆いている。此処に取り残されたことを。
 亡者は悔いている。最期まで妻と娘の傍に居てやれなかったことを。
「遺せなかった言葉があンなら、届けてやろう」

 ――来たれ、汝甘き死の時よ。

 神威を放てば、廃船の濁った空気が瞬く間に澄み渡る。それは、十六の一番。すなわち、遺された未練や呪詛を喰らう術。
 此の地に遺された魂の呪縛を解いてやれば、彼の慨嘆が逢真のなかに染み渡る。ああ、此れに慈しみを覚えずに居られようか。
「妻と娘だな、俺がいっしょに探してやろう」
 彼岸の渡しこそが彼の役目。されど、神は決して非情なばかりでは無い。哀れな魂が輪廻に至るまでの間、探し物に付き合ってやる位は一興として赦されるだろう。
「“いのち”はみィんな、いとおしいもンさ」

 ――どいつもこいつも、いっしょにおいで。



 ちょうど凶星の神が人探しを始めた頃。朽ち果てた船にカツリと、降り立つ影がまたひとつ。鮮やかな白い装甲を纏ったウォーマシン――トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)だ。
 御伽噺の騎士然とした彼は背筋を正した侭、先ずはぐるりと艦内を見まわして状況を把握する。沸々と胸に湧き上がるのは、ほんの僅かな懐かしさ。
 世界間の移動が可能となる以前、トリテレイアは銀河帝国や宇宙海賊との戦闘の他、こうした資源の回収作業にも従事していたのだ。
「よろしくお願いします、OWL-0096XS」
 常に清廉な騎士たらんとする彼は、傍らで翼を羽搏かせるドローンにも礼儀正しく頭を下げる。機械仕掛けのフクロウ――OWLは、そんな彼の言葉に応えるように、きゅるるると稼働音を響かせるのだった。
「先ずは、この船の生き残っている電子回線を探しましょうか」
 分かりますか――。そう翠の眸を向けたなら、OWLは機械仕掛けの翼をばさばさと羽搏かせて、正規のルートを案内するかのように白き騎士の前を往く。
 OWLはウォーマシンのような知能は持たないが、使役者の指示に従う程度の賢さはあるらしい。トリテレイアはそんなドローンを心強く思いながら、鋼鐵の踵を鳴らし後を着いて行くのだった。

 軈てフクロウは小さな部屋の前で動きを止める。モニターフェイスの明滅を見るに、目当ての場所はどうやら此処らしい。ぐいっと、力を籠めて扉を押し開ける。
 部屋の中には大きなモニターと、倒れて埃を被った椅子。それから、コントロールパネルが在った。此処はどうやら、船の制御中枢らしい。
 モニターの前へと歩みを進めたトリテレイアは、機械仕掛けの躰に内蔵したワイヤーアンカーを、背部からパネルに向けてするりと伸ばす。――其れは、物理的なハッキング。
「データは膨大なようですね。心強い味方の手も借りましょう」
 ぱかり――。白き騎士の肩部パーツが、唐突に開く。其処から現れるのは、御伽噺でお馴染みの妖精の容をしたロボットたち。彼等はひらひらと愉し気に主の周辺を飛び回り、トリテレイアのハッキング精度を高めて行く。
「OWL-0096XSは暫く休息を」
 解析に時間が掛かりそうだと判断した白騎士は、電力の消耗を避ける為にとドローンへ指示を出す。彼の言葉に従って、コントロールパネルの隅へ留まり羽を休めるOWL。明滅を止めた其のモニターフェイスが、彼の作業をじぃっと見つめて居た。
「危険物は無し、積み荷は衣類と日用品が主。乗員は――……」
 ワイヤーアンカーを通して、機体の思考回路に情報が伝達されていく。翠彩に輝く彼の眸は、モニターに映された船内地図に注目していた。乗員が持っているであろう電子タグの信号反応が、上のフロアの最奥に、ふたつ。
「……行きましょう」
 ワイヤーアンカーを体内に仕舞い込み、妖精たちも肩の格納スペースに呼び戻して。トリテレイアはOWLを伴い、制御室を後にする。その胸に覚悟を抱きながら――。



 其の巡り会わせは、きっと偶然の賜物だった。
 信号反応を追って上階の最奥へと辿り着いたトリテレイアは、閉ざされた扉の前に佇む逢真の姿を視界に捉え、ふと立ち止まる。
「よォ、開かずの間に用でもあンのかィ」
「そういう朱酉様は、何故こちらに」
 先に口を開いたのは、艦内に響き渡る鋼鐵の脚音にぐるりと頸を巡らせた青年の方だった。
 白い騎士は僅かに頸を傾けて、翠の眸で彼を見つめながら問い返す。姿形こそヒトであるけれど、逢真は普通のヒトとは何か違う。
「なァに、ちょいとした人探しさぁ。――この戸、開けられるかい?」
「承りましょう。私もこの部屋に用がありますので」
 眼前の偉丈夫に路を譲り、逢真は崩れた壁の方へと下がる。彼と入れ替わるように、扉の前に陣取ったトリテレイアの肩が再び開いた。
 ぴょんぴょんと跳ねるように其処から現れた妖精ロボットたちの支援を受けて、機械仕掛けの騎士は頭部から扉へとレーザーを放つ。
 鉄が溶けるような匂いが、辺りに充満する。
 みるみる内に、固い扉は焼き切られていく。軈て白い騎士が通れる程の大きな穴が開いたら、ふたりは躊躇うこと無く開かずの間の中へ――。
 其処は、簡素な部屋だった。
 乱れたベッドと、無残に横たわるクローゼットがあるだけだ。割れた鏡や口紅が床に散らばっていることから、嘗ては女性がこの部屋を使用していたのだろう。ふたりは隈なく、部屋の中へと視線を巡らせる。
 容は違えど、探して居るモノはきっと同じ。
「……お迎えに上がりました」
 果たして“其れ”を見つけたのは、トリテレイアの方だった。囚われの姫に面会を乞う騎士の如く、丁重に聲を掛けて。ベッドの下に転がる宇宙服を、そうっと抱き上げる。――ずしり、重い感触が腕部に伝わった。生命反応は、無い。
「安心しな、こいつも連れて行ってやるよ」
 逢真がそう語り掛けた先は、傍らの騎士に在らず。先ほど見付けた男の魂へ、言葉を紡いでいるのだ。あの宇宙服の中に居るヒトこそ、彼の妻”なのだろう。
「行き着く先ァ、みぃんな一緒だ」
 カンタータ161番、再び神威を放つ。
 遺骸に遺った未練を喰らいながら、逢真は沸々と湧き上がる疑問に内心で頸を捻った。眼前の遺体が己の脳髄へ、どろりと伝えて来る未練は、遺された娘のこと。
 そう、彼らの間には娘がいる筈だ。ならば一体、何処へ――……。
「これは……」
 驚嘆の彩を滲ませたトリテレイアの聲が、逢真の思考を現実へと呼び戻す。視線を其方に向けたなら、紅の双眸に鉄で造られた柩のようなものが映った。
「緊急冷凍睡眠装置――」
 電源は、と白騎士が柩の側面を覗き込む。スイッチは、――ONに成っていた。装置は未だ、動いているのだ。
「……!?」
 トリテレイアの眸が、驚愕で丸くなる。――いや、驚いている場合では無いのだ。傍らを飛び回っていたOWLを呼びつければ、母艦にすぐさま通信を入れる。
「デルタ様! 至急救助マニュアルの用意を願います!」
『おや、生存者が居たのかね。それは喜ばしい。了解だ、救急船も呼んでおこう!』
 フクロウのフェイスモニターに映るデルタの応答はどうも呑気だけれど、鉄の柩で眠るお姫様の命はどうにか救うことが出来そうだ。
「アー……つまり、“これ”は未だ生きてンのか?」
 マシンに関しては素人ゆえに、あの柩がどういう原理なのか分からねど。彼らの口ぶりから、其のことだけは読み取れた。かくりと頸を傾げる逢真へ、白騎士はゆっくりと頷いて見せる。
「ええ、取り敢えず運び出しましょう」
 てきぱきと救助に取り掛かるトリテレイアの働きぶりを眺めながら、故あってヒトに手を出せぬ神は、片頬を上げてゆるり嗤った。
「良かったじゃねェか、なァ?」
 こころ残りはもう失せた。彷徨える魂は直に、輪廻へと戻って往くだろう。死した者、生ける者。この船にはどちらも眠っていたのだ。

 ああ、遍く“いのち”は愛おしい――。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

スピーリ・ウルプタス
◎☆

ドローンを『オウル様』と呼んで、示してくれる道筋が出るたびニッコリついて行く

「この無重力感、ダイ様やフジ様(UC召喚蛇たちの名)にも是非お楽しみいただきたいですが。
 ここは私が頑張らねばならぬところですね。
 ええ、この身、労働に使っていただけて本望です!」
疲労、息切れもご褒美な変人
励む。資源回収に全力で励む

「おや? こちらは…」
細く狭い穴の奥
体押し込んだ先にて、ボロボロになった書物発見
這いつくばったまま表紙を撫でて目を細め
船体の床を次に撫で
「貴方の記憶の一欠片、持ち帰ってもよろしいでしょうか、レディー」

「あ。体が抜けませんね」
ハマッた。紳士台無し
ジタバタ
結局UCの蛇に手伝ってもらったとか


ジェシカ・ドゥ
情報収集、第六感、世界知識で宝探しよー!
体を細くすれば小さな隙間からも入れるし、すっごいお宝見つけちゃうかも?!
フクロウさんにお願いしてまずは資源回収ね。
ん?この優美なバスタブ私のベットにぴったり!もらっても良いのよね。
あら…コレは記録媒体?こっちのコレで中身見られるのかしら。
…これは短編小説?ステキなお話。
あっ!読み耽っちゃった!うん、これももらって良いのかしらね。他にも色々データあるみたい。とりあえず全部持っていっちゃいましょうね、フクロウさん
うん!まだ使えるものも結構拾えたしなかなかいい感じ!
楽しかったわ。フクロウさんありがとね

アドリブ、絡み大歓迎です


シキ・ジルモント
◎☆
宇宙バイクに乗って移動
OWL-0096XSに資源の位置を確認し、母艦と連絡を取りつつ進む
ドローンの案内は正確だ、なかなか頼りになる

保管庫に当たる区画やシステムを管理していた区画を探す
目当ては主に武器や機械だ
美術品もあるかもしれないが、生憎そちらには疎い
それよりも売れそうだと判断できる物を狙って堅実に回収を行う
舩の情報をシステム管理区画から得られれば探索が楽だが…
情報以外でも、有用な機器が残されている可能性は期待している

発見した物資の中から一つもらっていく
興味をひかれたのは、古いフォースセイバーの発生装置だ
このままでは動かないが、宇宙バイクのエネルギーを供給してやれば使い道はあるかもしれない


●遠き日の物語
 薄暗い船の中、ゆるりと歩く影がふたつ。
 ひとりは、整った貌に柔和な笑みを浮かべた青年――スピーリ・ウルプタス(柔和なヤドリ変態ガミ・f29171)。もうひとりは、女性らしい優美なシルエットのブラックタール――ジェシカ・ドゥ(ブラックタールのクレリック×フォースナイト・f04038)

「さあオウル様、道案内をお願いいたします」
 スピーリが丁寧に頼めば、機械仕掛けのフクロウはばさばさと羽搏いて、センサーが導く儘に、資源の在処へとふたりを誘導してくれる。
 其の様を見て、にっこりと満足げに微笑む青年の傍ら。ジェシカは自身が連れたフクロウのモニターを、のんびりと観察していた。
 あの子が路案内をしてくれるなら、この子には資源の反応を教えて貰おう。何か見付けたら貌が赤く明滅するのだと、機人の船長もそう云っていたし――。
「この無重力感、良いですね」
 カツカツと踵を踏み鳴らしながら、スピーリは上機嫌で船の中を軽やかに歩み往く。地を蹴れば、ふわり浮いて。軈ては緩やかに落ちる躰。
 ――ダイ様やフジ様にも是非、お楽しみいただきたいですが……。
 まるでトランポリンで遊んでいるような心地に心まで弾ませながら、彼は自身が使役する黒と紫の大蛇たちへ想いを馳せる。彼等と無重力を一緒に楽しむひと時も、きっと素敵だろうけれど。
「ここは私が頑張らねばならぬところですね」
 肉体労働は、スピーリにとって“ご褒美”なのだ。ひとり気合を入れる青年を横目に見て、ジェシカはくつりと笑みを零す。
「やる気満々なのね、頼もしいわ」
「ええ! この身、労働に使っていただけて本望です!」
 生き生きと返事をするスピーリは、何処からどう見ても好青年だ。彼が何故そんなに嬉しそうなのか、ジェシカには分かり兼ねたけれど。悪い人には見えないから、気にしないことにした。

 そうして彼らは、梟に導かれる儘に客室が並ぶフロアへと辿り着く。
 このフロアにはたくさんの資源が眠っているようで、ドローンのモニターフェイスは忙しなく明滅を続けて居た。
「先ずは資源を回収しなきゃね。大きいものはお願いしても良いかしら?」
「はい、お任せください!」
 儚げな体躯のジェシカが緩く頸を傾ければ、スピーリから嬉し気な返事が戻って来る。機械仕掛けのフクロウ二体も、きゅるるると鳴き聲めいた稼働音で返事をしてくれた。
 ありがとうと礼を告げるジェシカを先頭に、一行は一部屋ずつ探索を始めて行く。どの部屋も何かの衝撃で荒れ果てていたけれど、嘗ての部屋主が遺したのであろう通信器具や、携帯端末など――細々した無機物の類は、至る所に転がっていた。
 倒れた家具や落ちて来た天井などで塞がれた箇所が在れば、どうにか隙間を探し当て。変幻自在のブラックタールの特質を活かし、ジェシカが躰を細めて潜り込む。
「ん? この優美なバスタブ、私のベットにぴったり!」
 つるりとした猫脚の白いバスタブのなかで、ゆるりと寝そべるジェシカが聲に喜色を滲ませたなら。スピーリが入口を塞ぐ瓦礫を掻き分けて、バスタブを運び出す路を作ってくれた。
 肉体労働は専ら彼の担当ゆえ、スピーリの貌には疲労の色が濃い。息切れまでしているけれど、これも彼にとってはご褒美なので問題ない。青年は兎に角、資源回収に全力で励んでいた。
「細々した資源は、これに入れて運んで行きましょうか」
「そうね。これであなたもフクロウさんも、少しは楽が出来るかしら」
 鉤爪に壊れた通信端末を挟んだフクロウたちが、バスタブから抜け出したジェシカの視線を受けて、かくりと頸を傾ける。
 黒い指先で先ほどまで寝ていた場所を指示せば、彼らも意図を察したらしく其方へ端末をかつりと落としてくれた。

「しかし、隙間に掘り出し物が隠れていることもあるのですね……」
 一方のスピーリは、先ほどのジェシカの行動を思い起こしながら、何やら思案するように、床に空いた穴を見降ろしていた。
 中は昏くて底知れないが、こういうのも面白いかも知れない。意を決して、穴のなかへ上半身を押し込んでみる。
「――おや?」
 細く狭い其の中で腕を伸ばせば、掌にふと触れる“紙”の感触。這い蹲った侭、青年は其れを手に取った。どうやら書物のようだ。顔の方へと引き寄せれば、襤褸襤褸の表紙が目に入った。
「これは……」
 こう成る迄にきっと、何度も読まれていたのだろう。“禁書”のヤドリガミたるスピーリにとって、其の表紙の使い込まれ具合は、まるで勲章のように想えた。
 上半身を穴に突っ込んだ侭、彼は優しい手つきでそうっと表紙を撫でる。掠れたタイトルは、辛うじて「流星群の夜」と読めた。つぅ――と双眸を細めた青年は、穴から片腕を抜き出して、優しく船体の床を撫でる。
「貴方の記憶の一欠片、持ち帰ってもよろしいでしょうか、レディー」
 そうして本を握ったもう片腕も穴から抜け出し、いざ胴体も抜き出そうとして、とある異変に気付く。
「あ、身体が抜けませんね」
 どうやら、ぴたりと穴に嵌って仕舞ったようだ。これではせっかくの紳士ぶりが台無しだと、ジタバタ藻掻いてみるものの――矢張り、抜けない。
「フジ様、お願いします……!」
 スピーリがそう乞うた刹那、船室に淡藤色の大蛇が現れる。守り蛇たる“フジ様”は、彼の躰にぐるりと巻き付いて――ぐいぐい。主を穴から救出しようと懸命に、スピーリを引っ張り始めた。

「大丈夫かしら……」
 そんな大蛇とスピーリを遠目に見守りながら、ジェシカは更に部屋の探索を続けていた。床に散らばった資源を手に取って、何か使えそうな物はないかと検めて行く。
「あら……コレは記録媒体?」
 ふと、ジェシカが視界に捉えたのは、小さなカートリッジのようなもの。これが記録媒体だとすると、再生する機械も近くに在る筈だ。
「あ、こっちのコレで中身見られるのかしら」
 きょろきょろ。頸を巡らせれば、部屋の隅に転がっている掌サイズの端末が目に映った。ゆるゆると其方へ足を運び端末を拾い上げたのち、カートリッジを挿入してみる。
 刹那、掌上に展開されるバーチャルスクリーン。其処には、見覚えのある文字の羅列が並んで居た。一行目には「雨と初恋」と書かれている。見たところ、何かのタイトルだろうか。
「……これは短編小説?」
 ジェシカは頸を傾げながらも、スクリーンに広がる文章をゆっくりと追いかけてゆく。
 其れは、カフェテラスで働く主人公と、雨の日に珈琲を飲みに来た女性客の、細やかな戀物語。優しい雰囲気で綴られた其の文章に、ジェシカの眸は思わず釘付けになる。
「ステキなお話……――あっ、読み耽っちゃった!」
 また読み返したいから、これも持ち帰るとしよう。他にも何かデータは無いかと、床に散らばる残骸を再び漁ってみる。すると、似たようなカートリッジが更に幾つか見つかった。
「うん、うん! まだ使えるものも結構拾えたし、なかなかいい感じ!」
 バスタブのなかに溜め込んだ資源と云い、このカートリッジたちといい、守備は上々と云えるだろう。
「とりあえず全部持っていっちゃいましょうね、フクロウさん」
 ドローンの鉤爪にひとつ、ふたつ。発見したカートリッジを握らせて、満足気にブラックタールの娘は笑う。
「楽しかったわ。フクロウさん、ありがとね」
 礼の言葉をセンサに捉えたドローンは、頸をかくりと傾けながら、きゅるるると何処か嬉しそうに稼働音を響かせたのだった。



「上の階が騒がしいが、何かあったのだろうか……」
 広い船のなか“カスタムバイク・レラ”を走らせながら、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)はふと、天井を見上げる。人狼たる彼の耳は、じたばたと何かが暴れるような音を確りと捉えていた。
 この船に居るのは猟兵だけなので、そう心配も無い筈だが。念の為、あとで様子を見に行ってみよう――。内心でそんなことを考えながら、シキは宇宙バイクを走らせ続ける。
「OWL-0096XS、次はどちらに進めばいいんだ」
 傍らでばさばさと羽搏く機械仕掛けのフクロウに、ちらり。視線を向けたなら、ドローンは羽搏くスピードを上げて彼の前へと躍り出る。そうしてシキを先導するように、ひと足早く曲がり角を曲がってみせた。
 宇宙バイクもフクロウに追従して角を曲がり、その後スピードを上げて勇ましい羽搏きに追いついてみせる。
「デルタ船長――」
 フクロウと並走しながらも、シキは母艦へと通信を試みる。聲を掛けた刹那、フクロウのモニターフェイスに一瞬ノイズが走った。――かと想えば次の瞬間にはもう、無貌の男の貌が映し出されている。
『やあ、OWL-0096XSは役に立てているかな』
「ドローンの案内は正確だ、なかなか頼りになる」
 青年は満足気に首肯しながら、正面を確りと見据えて走る。いつの間にやらフクロウは再び彼の前に躍り出て――。暫く眼前で羽搏いたのち、モニターを明滅させながらぴたり、その動きを止めた。
「目的地に到着したらしい。これより保管庫の探索を開始する」
『ああ、宜しく頼むよ』
 軽やかな身の熟しで青年はバイクから降り、フクロウが止まった場所。――保管庫へと入って行く。念のため、通信は繋いだ侭にしておいた。
 足を踏み入れた瞬間、鼻腔を擽るのは錆と火薬の匂い。どうやら、此処には目当ての“武器”が保管しているらしい。よく探せば、打ち棄てられた機械等も見つかるかも知れない。
『美術品とか、装飾品の類は探さないのかい?』
「生憎だが、そちらには疎い」
 持ち帰るならそういう物が好いだろうに――。そう頸を傾ける男へ、シキは緩く頸を振って見せる。依頼主との信頼関係を重んじ、ストイックに任務を果たさんとする彼は、確実に金に成りそうなものを狙うことに決めていた。
 昏い部屋のなか鋭い視線を巡らせて、バラバラに散らばった銃器を拾って回る。銃の扱いには一家言ある身だ。ひとつひとつ検分すれば、使い物になるものとならない物の区別位はつく。
「此処は主に、武器が保管されているらしいな」
 未だ使い物に成るであろう銃器を小脇に抱えながら、シキは蒼い双眸をモニターへと向ける。まだまだ時間には余裕が在りそうだ。もう少し働いて行くとしよう。
「機械の類も欲しい所だ。船内情報を管理区画から得られれば楽なんだが……」
『確かその部屋は保管庫と云っていたね。壁にパネルのような物はないかい』
 パネル――。
 人狼の青年はモニターから視線を外し、壁を注視しながら室内をぐるりと回り始める。そうして、半分ほど歩いた頃だろうか。壁と一体化したパネルが、ふと視界に入り込んで来た。電源が切れているのだろうか、画面は真っ暗だ。
「あったぞ。これは、タッチパネルか」
『そう、早速押してごらん』
 船長に支持される侭、パネルにそうっと指先を触れさせる。刹那、パネルが明るい光を放ち始めた。画面に映し出されるのは、簡易的な船内地図。
 成る程、有事に備えて武器を補完したり補充する為の場所なら、戦況を把握するために簡易的な地図があっても可笑しくない。
「これで情報が得られるな、感謝する」
 地図に視線を巡らせて、シキは機械が保管されて居そうな場所に当たりを付ける。矢張り、機械整備室が良いだろうか。
「有用な機器が残されている可能性に、期待しよう」
 機械仕掛けのフクロウを伴って、人狼の青年はバイクへと戻る。次の目的地――整備室へと向かう為に。

 再びフクロウに先導されて、バイクは更に下の階層へと辿り着く。はたと動きを止めたドローンのモニターフェイスは、忙しなく明滅していた。
 どうやら彼等は、機械整備室へと到着したらしい。
「無事に稼働するものが在ると良いが……」
 バイクを部屋の前に止め、そう独り言ちながら、人狼の青年はカツリと室内へ脚を踏み入れる。当然ながら、電機は点いていない。暗がりに慣れた双眸を巡らせれば、幾つもの機械が部屋の中、無残にも倒れていた。大きく其の身を凹ませた物もあれば、剥き出しに成った回線が千切れている物もある。
 ふと、部屋の隅に転がっていた円盤型の装置が彼の目を惹いた。近づいて拾い上げれば、其れをまじまじと観察する。
 どうやら、フォースセイバーの発生装置らしい。電源ボタンを押してみても、ウンともスンとも言わないが。見た所、美品ではある。エネルギーが不足しているのだろうか。
「このままでは動かないが……」
 己の宇宙バイクのエネルギーを供給してやれば、使い道はあるかもしれない。とはいえ、帰路にも燃料が必要だ。母艦に戻り次第、試してみるとしよう。
 発生装置を腕に抱き、シキは整備室の探索に戻る。任務の後の楽しみに、想いを馳せながら――。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

レッグ・ワート
ヴォルフ(f09192)と。のってくれて助かるよ。ついこないだまでドンパチだったが元気してた?俺はバイクがぽしゃって今レンタル乗ってる。

グローリアの記録があれば船長にきいとく。とまれ目利きの96XS借りて作業だ。自前のドローンで艦内撮影しつつ、希少か勝手が良いのがあったら上等。回収は怪力任せか、救護パックの中身使って解体するか、隔壁切ってた被膜置換の有効範囲を防具改造で弄って切出すぜ。品は編んだ糸で纏めて持つなりアームに押付けるなりだ。

俺は全部預けるが、持帰りもアリらしいな。狙いある?了解、独学支援できるよう覚えとくぜ。……無メンテで動いてる奴いたら知りたいねえ。
流石に船のコアは死んでんだろ?


ヴォルフガング・ディーツェ
レグ(f02517)と
こういった作業は俺の生業みたいなモンだしね、任せてよ
最近?んー、オリジンをひたすらおちょくってた位かな
…マジで、あの乗せてもらった頑丈なバイクが?何やったのさレグ…?

【指定UC】を使用
強化した「メカニック」「ハッキング」「全力魔法」で電脳魔術を展開
廃船に干渉し、管内の監視カメラと同調して良い廃材の目星を付けてレグに報告しよう
レグの糸、何度見ても便利だよねえ。俺は船の構造改変してアームを無数に作って回収していこうかな!

機械兵士の電脳や四肢があったら欲しいな
俺のこの体が何時腐るか分からないからね、生体義肢も研究しておかないと…レグはメンテしてる?

…意外と動いてたりして、ね?


●求めるモノは
 昏い廃船のなか、ゆるりとふたつの影が往く。
 其れは機人らしいシルエットのウォーマシン――レッグ・ワート(脚・f02517)と、人狼の青年――ヴォルフガング・ディーツェ(誓願の獣・f09192)のふたり。
「のってくれて助かるよ」
「こういった作業は俺の生業みたいなモンだしね、任せてよ」
 軽い調子でそう言葉を交わす彼らの周囲を飛んでいるのは、二体のフクロウ型ドローン“OWL-0096XS”と、レッグが持参したドローンだ。
 前者が艦内に遺された資源をモニターの明滅で報せる一方、レッグのドローンは艦内を飛び回り、『レディー・グローリア』の撮影作業に勤しんでいた。
「ついこないだまでドンパチだったが元気してた?」
 編んだカーボン糸で纏めた大小さまざまな資源を引き摺りながら、機人が軽くそう尋ねれば、人狼の青年は思考するように長い睫を伏せて見せる。
「んー、オリジンをひたすらおちょくってた位かな」
 迷宮災厄戦で何度もオリジンと刃を交わしたことは、まだまだ記憶に新しい。一方のレッグといえば、どうやら環境に変化が在ったようだ。
「俺はバイクがぽしゃって今レンタル乗ってる」
「……マジで、あの乗せてもらった頑丈なバイクが?」
 何やったのさレグ――。紅の双眸を意外そうに瞬かせる彼の科白を躱しながら、機人は調査前にデルタ船長から聞いた“グローリア”の物語を脳内回路で反芻した。

 嘗て『レディー・グローリア』は、星海を巡る遊覧船であった。非日常を感じさせる豪華な内装を売りにしており、予約の絶えない人気の娯楽艦だったそうだ。
 しかし、航海中に事故にあい“栄光”という名を冠した船は、星海の影に沈んで仕舞った。古い船であるため余り記録は残っておらず、正確な犠牲者の数は分かっていない。ただ、数多の命がこの船で散って行ったことは確かだろう――。

「あ、光ったね」
 ヴォルフガングがふと、赤く明滅するフクロウのモニターフェイスを覗き込む。どうやらこの区画に資源が眠っているらしい。彼の呟きを受けて、レッグもはたと立ち止まった。
「それじゃあ、開演と行こうか」
 塗装が剥がれた壁にそうっと指先触れさせて、人狼の青年は電脳魔術を展開させる。

 ――法則を我が意の儘に、戯れの幕を落とさん。

 “調律・機神の偏祝”。
 壁にルーンが芒と浮かび上がった刹那、眩い光が周囲を包み込んだ。ヴォルフガングは廃船のシステムに干渉し、もう動かぬ監視カメラへと干渉を試みる。
「……其処の瓦礫の奥。廃材が色々と落ちてるみたいだ」
 そうしてルーンの力で息を吹き返した監視システムと同調すれば、回収品に目星をつけてレッグへと報せるのが彼の仕事。一方、報告を受けた機人の動きは早かった。

 ――被膜置換、発動。

 機械仕掛けの思考回路は、接触部と延長線の解析を行い、フィルムは組成断の即時演算を続ける状態へと移る。そうして接斬演算を纏わせた外殻は、すぱりと瓦礫を切断し閉ざされていた路を顕にした。
 事故の衝撃で艦から零れ落ちて仕舞ったのだろうか。大小さまざまな鉄の資材が、其処には転がっている。主に大きな鉄を回収して行くのは、怪力を誇るレッグの仕事だ。
 ヴォルフガングは壁に手を当てた侭、廃船のシステムを弄り艦内の構造を改変していく。すると、壁の内部から――にゅるり。機械仕掛けの“アーム”たちが、無数に飛び出してきたでは無いか。
 それらは床に転がる小さな廃材をぽいぽいと拾い上げ、レッグが片付けた大きな廃材の上に回収物を重ねて行った。
 しかし、資源は床だけに在る訳では無い。剥がれかけた壁にも、損傷が観られる通信機やら、回線が剥き出しに成った精密機械の類が取り付けられているのだ。
 レッグは救護パックから道具を取り出し、それらを手早く解体して行く。そうやってある程度の量を収穫できれば、大小さまざまな回収品の近くへと置いておいた。
 また、回収した諸々を纏めるのも、レッグの仕事である。彼は再びカーボン糸を編み、より頑丈に成った其れで回収品をひとつに纏めて行く――。
「レグの糸、何度見ても便利だよねえ」
 彼の仕事ぶりを見守るヴォルフガングから、感嘆の吐息が漏れる。一方のレッグは、己の仕事を続けながら、序にドローンでの撮影も続けながら、貌だけを彼に向けて問いを編んだ。
 ひとつ、気に成っていることが有るのだ。
「コレ、俺は全部預けるが、持帰りもアリらしいな。――狙いある?」 
「……機械兵士の電脳や四肢があったら欲しいな」
 人狼の青年は思案貌で、己の躰へと視線を這わせて往く。
 彼は美しい青年の容をしているけれど、其の実年齢は100歳を超えている。咎と引き換えに不老の躰を得たものの、其れが何時まで保つかは未知数だ。
「俺のこの体が何時腐るか分からないからね、生体義肢も研究しておかないと……」
「了解、独学支援できるよう覚えとくぜ」
 どうやらこの区画には、機械兵士の亡骸は無いようだ。
 しかし、こういう遊覧艦には警備兵も付き物である。ヴォルフガングの調査能力と、レッグの手腕が在れば、動かなくなった機械兵士のひとりやふたり、簡単に見付けられるだろう。

「そういえば、レグはメンテしてる?」
「……無メンテで動いてる奴いたら知りたいねえ」
 心の裡にふと湧き上がった疑問を、ヴォルフガングが何となく零したならば、遠回しな答えが返って来た。それもそうだ、なんて。軽い調子で言葉を交わしながら、ふたりは船の奥へと歩みを進めて行く。
「流石に船のコアは死んでんだろ?」
「……意外と動いてたりして、ね?」
 朽ち果てた船の心臓部へ、思いを馳せるひと時もまた愉しいもの。
 もしも道中にブリッジが在れば、潜り込んで見学してみるのも一興だろうか。ヴォルフガングが操るルーンの力が在れば、コアを一時的に動かすことも可能かもしれない。
 取り敢えずは、またフクロウがモニターフェイスを光らせるのを待つとしよう。
 次の狙いは、この船の何処かに転がっている筈の“機械兵士”だ。未だ見ぬ技術はきっと、人狼の青年にも数多の恩寵を降らせてくれるだろうから――。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ガーネット・グレイローズ
◎☆
【かんにき】
これは…フクロウ型のドローンか。よろしく頼むぞ、OWL。

OWLのナビと、《世界知識》で内部構造を把握しつつ進む。
あっ、まつりん。一人でいくと危ないぞ。こういう古い船の中には、
宇宙生物が住み着いているかもしれないから。
銀河帝国には、略奪を専門に行う部隊もあったという。
物資が残っているといいが…。
ではOWL、《宝探し》機能で船内に残っている物品をサーチしてくれ。

荒れ果てた通路を進み、医務室で応急治療キットを回収する。
まだ使えるみたいだな。ありがたくいただいておこう。
まつりんのは…古い規格の通信ツールだね。杏が持っているのは、貝?
これは驚いたな。本当に、地球の海で採れたものだろうか?


木元・杏
【かんにき】◎☆

ガーネットは宇宙と船に詳しくて頼もしい
とてとてついて歩き迷子対策

フクロウさんもこんにちは
威厳のある凛々しさ、たまこ(飼い鶏)に似てる

昔、この船に乗っていた人達を想像してみる
日常、夢、故郷、憧れ
形にならない沢山の宝物を心に抱くその姿はうねうね足が沢山の宇宙生物……(ガーネットの話と混じった)
!?(ぐるんと見渡し)
…ん、いない(こくり)

あ、まつりん待って
ぱたぱたついていくけど
途中で見失い

…ガーネットの所、戻りたい
ふくろうさんに重めの期待の眼差し寄せて
第六感働かせお宝探しつつ帰路につく

……?
手にしたのは飾られた巻き貝
耳に当てると、漣の音
きっとこれはこの船の人の大切な思い出(もの)


木元・祭莉
【かんにき】◎☆ デス!

ガーネット姉ちゃんに連れられて、宝探しに来たよー。

あ、フクロウさん。
スゴイ。突っつかないし、蹴らないし、叫ばないや。 ←飼い雌鶏と比べ

銀河帝国ってスゴかったんだってねー?
残党さんも強いかなあ?(世間話)

廃品回収。どんなモノが高く売れるんだろ。
高エネルギー塊とか、ジェットな乗り物とかあるといいね♪

ぴこぴこ音?
あっちの方だ、行ってみよう!(宇宙ダッシュ)

はっ、そろそろみんなと合流しないと。
それっ♪(ゆべこ発動)

ん、おいらは宝箱見つけたよー♪
ぴよこ、ひなこ、まっきー、開錠!(破壊)

あ、腕輪?
二個セットだね。金に赤宝玉と、銀に青宝玉。

あ、宝石押すと光った!
通信機だ、カッコイイ!


●廃船さんぽ
 こじんまりした回収船から離れ、廃棄された宇宙船に乗り込めば。硬質な羽搏きを響かせながら、機械仕掛けのフクロウが三体、健気に後をついて来る。
「――あ、フクロウさん」
「フクロウさん、こんにちは」
 双子の兄妹である木元・祭莉(かしこさが暴走したかしこいアホの子・f16554)と、木元・杏(だんごむしサイコー・f16565)がそう挨拶すれば、フクロウは小首を傾けて反応を返してくれた。
「威厳のある凛々しさ、“たまこ”に似てる」
 其の動作は何だか本物の鳥のようで、杏はぱちぱちと金の双眸を瞬かせる。思い起こされるのは、彼女達が飼っている鶏――“たまこ”のこと。
「スゴイ。突っつかないし、蹴らないし、叫ばないや」
 フクロウへきらきらとした視線を向ける祭莉もまた、妹と同じように飼い鶏のことを思い出していた。
 貌全体がモニターと成っているこのフクロウは、鋭い嘴がない所為だろうか。何だかたまこよりも、大人しそうに見える。
「フクロウ型のドローンか。よろしく頼むぞ、OWL」
 一方でふたりの引率役であるガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は、傍らを羽搏くフクロウへと穏やかな眼差しを向けていた。
 彼女もニワトリ型のドローン“メカたまこEX”を所有している為、フクロウの容をしたドローンには、どことなく親近感を感じてしまう。
「――さて、そろそろ進もうか」
 ガーネットが手を鳴らして少年と少女の気を惹けば、明るい返事とお利口な返事がそれぞれ返って来る。ダンピールの麗人は其の様に満足気に頷いて、ふたりを先導して行くのだった。

「銀河帝国ってスゴかったんだってねー?」
 残党さんも強いかなあ、なんて。かくり頸を傾げる祭莉は、昏い廃船のなかでも明るく楽し気だ。
「ああ、最盛期は凄かったが……。私達に倒せない敵など居ないさ」
 先頭を歩くガーネットが「大丈夫だ」と緩やかに笑めば、その後ろをとてとてと着いて行く杏は、ほうっとひとつ息を吐く。いつも胸を張っていて、宇宙や船にも詳しい彼女は、矢張りとても頼もしい。
「廃品回収って、どんなモノが高く売れるんだろ」
「そうだね……エネルギー効率が良いものや、乗り物とか需要が有るんじゃないか」
 祭莉が更に疑問を重ねれば、ガーネットが思案貌で答えを紡ぐ。住み慣れた世界ゆえ、なにが資金源として歓迎されるか彼女はよく分かっていた。
「じゃあ、高エネルギー塊とか、ジェットな乗り物とかあるといいね♪」
 ふたりのそんな遣り取りを耳に捉えながら、杏は在りし日の『レディー・グローリア』に想いを馳せる。
 この船には、どんな人たちが乗っていたのだろう――。
 船を動かすクルーたちの日常や、この船に乗り込んで星海を眺めながら語り明かした人たちの夢や想い。彼らが抱いていたであろう地球への郷愁と憧れ。
 それらへ想いを巡らせるほどに、温かいような、切ないような気持ちが胸の底から湧いて来る。彼等も、杏たちと同じような普通の“人間”だったのだろうか。
「あ、あれ何だろう!」
「あっ、まつりん。一人でいくと危ないぞ」
 脳裏でそんな想像を巡らせる杏の耳朶に、ふと。何か気になるモノを見付けたらしく、反射的に走りだそうとする祭莉を制止する、ガーネットの聲が流れ込んで来る。
「こういう古い船の中には、宇宙生物が住み着いているかもしれないから」
 そう、形にならない沢山の宝物を心に抱く乗客たちの姿は、うねうね足が沢山の宇宙生物――。
「!?」
 其れを想像した刹那、杏の意識は現実へと戻って来る。どうやらガーネットの噺と想像が、見事に混ざって仕舞ったらしい。念のために周囲をぐるんと見渡してみるけれど、其れらしい生物は見当たらない。
「……ん、いない」
 そして祭莉は、此処に居る。
 こくりと満足気に杏は頷いて、頼もしいガーネットの後ろをとことこ着いて行く。当のガーネットといえば、宇宙船所有者としての知識とOWLのナビゲートを活かしつつ、安全に探索できそうなフロアへとふたりを導いて行くのだった。

「ではOWL、船内に残っている物品をサーチしてくれ」
 注意深く辺りを見回し、宇宙生物の類が居ないことを確かめて。漸く辿り着いたフロアで、ドローンに探索を命じるガーネット。
 従順なフクロウは宙に留まり羽搏きながら、内臓センサで資源の在処をじぃっと探している。
 ――なにか、物資が残って居ると良いが……。
 そんな一抹の望みを胸に抱きながら、フクロウの挙動を見守って居た所。唐突にドローンは、或る一転に向かって羽搏き始める。彼のモニターフェイスは、忙しなく明滅していた。
「あっちに何かあるのかな……」
「行ってみよー!」
 フクロウに導かれる侭に、一同は進んで行く。転ばないよう瓦礫をそうっと避けながらも歩みを進めて、なんとか辿りついた場所は――“医務室”。
 がらりと扉を開けたなら、割れた注射器や壊れた医療機器が無残に転がっていて、まるでお化け屋敷のような有様だ。
「私が探索して来よう。ふたりは此処で待っていてくれ」
 灯も付いていない不気味な其の部屋へ、事も無さげに入って行くガーネット。そんな彼女を見送る双子は、遺された二体のフクロウと共に待機しておく予定だったけれど……。

 ぴこん、ぴこん♪

 一体の機械仕掛けのフクロウが、モニターフェイスを赤く明滅させながら、医務室から離れて行く。何やら軽快な音色を響かせながら――。
「え、なんの音……?」
「あっ、あっちの方だ。行ってみよう!」
 あまりの出来事に、ぱちぱちと瞬きを零す杏。一方の祭莉は狼耳をぴんと揺らして、フクロウを追い掛けて往く。
「あ、まつりん待って……」
 もう一体のフクロウを伴いながら、ぱたぱたと兄を追い掛けて往く杏だけれど、祭莉の無重力を活かした軽やかな走りには追い付けない。結局は途中で、彼を見失ってしまった。つまり、――見知らぬ船でひとりぼっち。
「……ガーネットの所、戻りたい」
 こうなれば、頼れるものはひとつだけ。機械仕掛けのフクロウへ寄せる眼差しが自然と重くなるのも、きっと無理は有るまい。
 当のフクロウは小首を傾け杏の貌を見上げた後、きゅるるるると稼働音を響かせて、くるりと踵を返して飛んで行く。どうやら仲間の所まで案内してくれるらしい。
 なんとも仕事ができるフクロウだ。感心しながら杏が暫く歩いていると、ふと。
「――あ、待って。ふくろうさん」
 半開きになった客室の中が気になって、立ち止まる。
 そうっと灯の喪せた室内を覗いてみると、暗闇に芒と光る“何か”が目に入った。散ばる瓦礫を避けながら恐る恐る近寄って、壁に飾られていた其れを、手に取ってみる。
「これって……」
 其れは、白くうつくしい巻貝だった。耳に当てると、ざあ、ざぁ――。漣の音が、遠くから聴こえてくる。
 巻貝をぎゅっと抱きしめた少女は、フクロウにもう大丈夫と告げて、ガーネットの元へ駆けて行く。
 遠い昔、確かに誰かの宝物だった想い出――そのものを、抱きしめながら。

 他方、祭莉はフクロウに導かれるまま辿り着いた最奥の客室で、きらきらと輝く宝箱を見つけていた。宇宙時代にしてはアンティークなそれの中には、如何にも何かお宝が眠っていそうで、少年の頬は期待にふふりと弛む。
「――はっ、そろそろみんなと合流しないと」
 そう、宝探しに夢中に成っていた所為で、うっかり単独行動をしてしまったのだ。早くガーネットと妹の元に戻らなければ、きっと二人を心配させてしまう。
 帰りの路なんて覚えてないけれど、其処は心配無い。機械仕掛けのフクロウを肩に留まらせた祭莉は、ユーベルコードを発動する。
「それっ♪」

 守護神来臨――。

 青銅の雌鶏“ぴよこ”、黄金の向日葵“ひなこ”、白銀の狼“まっきー”のロボット三体を連れて、少年は妹とガーネットの元へ瞬時にテレポート。
 もちろん、宝箱を確りと抱えた侭で。

 その頃、ガーネットは荒れ果てた医務室をひとりで探索していた。一通り見て回ったが、医療器具の類は殆ど壊れて仕舞っており、使えるものは無さそうだ。
 そろそろ引き上げようかと思った、其の刹那。麗人の赤い双眸がふと、十字を刻んだ鞄を捉える。近づいて検めてみたところ、其の中には新品同然の包帯や未使用の消毒液が入っていた。どうやら、応急治療セットのようだ。
「――まだ使えるみたいだな。ありがたくいただいておこう」
 鞄を肩に下げたのち、ガーネットは医務室を後にする。廊下では双子たちが、彼女の帰還をお利口に待って居る筈だ。
「うん? ふたりも何か資源を見つけたのか」
「ん、おいらは宝箱見つけたよー♪」
 予定通り、医務室の前で集合したものの。荷物を増やした彼等を視界に捉え、意外そうに瞬くガーネット。最初に元気よく答えたのは、何やら豪華そうな箱を足元に置いた祭莉の方だった。
「ぴよこ、ひなこ、まっきー、開錠!」
 そうやって指示を飛ばせば、ロボット達は一斉に宝箱へ集い、怪力で以て其れを破壊する。すると中からころり、転がって来たものは――。
「あ、腕輪?」
 金と、銀の腕輪だった。どうやら対に成っているようだ。金の腕輪には赤い宝玉が、銀の腕輪には青い宝玉がそれぞれ嵌め込まれている。
 ガーネットと杏が見守る中、祭莉は其れを拾い上げ腕に嵌めてみる。ふと、自己主張の激しい宝玉が気に成ったので、赤い方をぽちりと押してみれば――。
「わ、光った1」
 金と銀、両方の腕輪が芒と煌めき始める。刹那、機械仕掛けのフクロウも、ぴこん♪ 軽やかな鳴き声を零し始める。此れは、如何いう訳だろう。
「まつりんのは……古い規格の通信ツールだね」
「通信機だ、カッコイイ!」
「ふくろうさん、電波に反応してるみたい」
 なるほど、探索の際に双子が効いた音色の正体は、これだったようだ。ガーネットが腕輪の正体を導けば、杏は納得したような貌でフクロウを見上げ微笑みを零す。其の傍らで、祭莉は無邪気にはしゃいでいた。
「杏が持っているのは、――貝?」
 ガーネットの視線がふと、杏の手に握られている巻貝へと注目する。見た所、レプリカでは無いようだ。
「ん、耳に当てると漣の音がするの」
 ガーネットも聞いてみる――なんて。少女は頸を傾けながら、麗人へと巻貝を差し出した。試しに耳朶へと当ててみれば、遠くから聞こえる細やかな波の音。
「これは驚いたな。本当に、地球の海で採れたものだろうか?」
 赤い双眸を瞬かせる麗人から貝を受け取りながら、杏はこくりと小さく頷いて見せた。
「きっと、誰かの想い出の品なの」
 其れは幾ら年月を重ねようと、決して色褪せることの無い、母なる海からの贈り物。少女はもう一度、耳許へ巻貝を当ててみる。

 ざあ、ざあ――。

 穏やかな漣はきっと、これを持って居た誰かの細やかな記憶。世界が変わろうと、決して変わらぬ想い出を愛おしむように、杏はそうっと瞼を閉じた。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴


第2章 集団戦 『電幻の蝶』

POW ●オプティカル・カモフラージュ
自身と自身の装備、【電幻の蝶が群れで覆っている】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
SPD ●サブリミナル・パーセプション
【翅の光を激しく点滅させること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【幻覚を見せる催眠】で攻撃する。
WIZ ●バタフライ・エフェクト
見えない【クラッキングウイルスの鱗粉】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●希望の船出
 『クランカー・カンパニー』の資源回収任務は、万事上手くいった。猟兵たちの助力のお蔭で、ちっぽけな船は大きな戦利品を手にしたのだ。
 回収された資源や武器は船の保管庫に丁重に詰め込んで、後日交易船へ売り捌きに行くのだと云う。
「ありがとう、君達。いやあ、久々に大きな利益が見込めそうだ」
 相変わらず数多のケーブルに纏わりつかれながらも、猟兵たちに礼を紡ぐウォーマシンのデルタ船長は、無貌だというのに何処となく嬉しげだ。
 因みにコールドスリープ装置から救助された生存者は、無事に救護艦へと引き渡せたらしい。
「回復には時間を要するだろうが、命には別状は無いみたいだよ」
 そう言葉を続けるデルタの聲には、心なしか安堵の彩が滲んでいた。姿容は無機質だが、彼もまた人のような“こころ”を持って居るのだろう。

 さて、それぞれが見つけた宝物も詰め込めば、これでもう憂いは無い。いざ、ワープドライブ――。

●暗雲
 どれ位の間、こじんまりした船に揺られていただろう。
 空気がふと、重々しいものに変わった。安全圏である超空間から、漸く船が抜けだしたのだ。あとは帝国残党の僧侶が潜む拠点の近くまで、この船に送って貰うだけ。
 其れまでは狭苦しくも快適な運航が約束されている――筈だった。

 ――ジジジジ。

 何かがスパークするような音が、唐突に艦内へ響き渡る。どうやら、操縦席から聞こえてくるようだ。何事かと視線を向けても、其処にはコンソールを弄るデルタしかいない。
 ――そう、艦と己を繋ぐケーブルのひとつが帯電し、其れに片腕を感電させられた、デルタしか居ないのだ。
「おや……」
 無貌のウォーマシンは呑気に驚きながら、電気を帯びたケーブルをぶつりと己の腕から引き抜いた。パチパチとスパークするケーブルを覗き込む姿を見るに、どうやら大した損傷ではなさそうだ。
 パチパチと細やかな火花を散らし続ける腕を、自由な方の腕でのんびり撫でながら。デルタはウィール・チェアをぎりぎりと回して、猟兵たちを振り返る。
「トラブルがあったようだ。済まないが、表を見て来てくれるかな?」
 事態を把握する為にOWLも出しておこう――。
 そう呟く機人のつるりとした貌の奥で、嵌め込まれたコアが芒と赤い光を放った。

●蒼き蝶は電幻と踊る
 宇宙空間へと游ぎ出た猟兵たちの目に飛び込んできたのは、うつくしい蝶の群れだった。されど、宇宙に本物の蝶が居る筈も無い。
 ――それは、嘗て銀河帝国で使役されていた蝶型のロボットたち。
 今は“はぐれロボット”と成ったらしい彼らは、蒼い羽根を羽搏かせながら猟兵達を送り届ける筈の船『クランカー・カンパニー』へと群がっていた。鱗粉に潜んだウイルスによるクラッキングで、船を沈めようとしているのだ。

 ふと、フクロウ型のドローンが数体、斥候として艦から外へと射出される。ばさばさと羽搏く其れに興味を惹かれたのか、機械仕掛けの蝶たちは其方の方へ――ひらり。灯に惹かれる蛾の如く、わらわらと群がって往く。

 ――ジジジ、ジジ……。

 軈て切ない稼働音と共にフクロウたちは機能を停止し、星海を力なく漂うのみと成る。星海を舞う蝶たちは、うつくしい其の見目とは裏腹に、船乗りたちにとっては紛れもない脅威であった。
 フクロウを散らした蝶たちは無機質な触角を揺らしながら、新たな獲物の方へと羽搏いて行く。次の獲物は外でも無い、――猟兵たちだ。

 得物を抜き放ち戦闘行為へ移行せんとする猟兵たちの傍で、ふと。見覚えのある、赤い光が明滅し始める。
 『クランカー・カンパニー』のサーチライトが、チカチカと規則的に瞬いているのだ。

『― ―・ ・―・・』

 モールスコードの温かな応援を受けながら、猟兵たちは航路を確保するために、戦いへと挑んで行く――。

<補足>
・引き続き、宇宙服や呼吸対策などの記載は省いて下さって大丈夫です。
・アドリブOKな方は、プレイングに「◎」を記載頂けると嬉しいです。
 →また連携OKな方は「☆」を記載頂けると更に嬉しいです。

<受付期間>
 9月12日(土)8時31分 ~ 9月15日(火)23時59分
琴平・琴子
◎☆

蝶の羽ばたきが竜巻を起こすとは聞いたことがありますが
お前たちのはそれに似てますね

撒かれた鱗粉は息を止めて吸い込まない様にして
微量を吸い込んだとしても毒耐性で凌ぎましょう
…一応人間ですし、くらっきんぐとやらのウィルスは防げるでしょう

撒き散らされた目に見えない鱗粉でも
そこに在るという証明すればいいだけ
粉が細かければ細かい程鱗粉を元にした爆発力は増すだけ

いらっしゃい私の兵隊たち
ブリキの兵隊たちを中心に構成
酸素が無い空間だとしても
火薬を元にした焔を使って粉塵爆発を起こしなさい

宇宙空間に咲く花火みたいに見えるでしょうか
…花火の材料が蝶なのは目を瞑り
真正面から見る花火とはまた綺麗ですね


朱酉・逢真
◎☆
心中)光は天敵なもんで、光信号の意味はわからねェが。マ・好意的なもんと思っとくさ。宇宙空間は暗くって、静かで有害で最高の環境なんだが。ただひとつ、眷属どもを呼びにくいのンが残念なとこさ。あいつら生きモンだから、そのまま喚ぶと死んじまう。
行動)俺はヒトじゃねえンで、その点滅ショックがうまく働くとは思えんが。念には念を入れなきゃな。目の前に結界で覆った空間を作って《虫》の群れを喚び盾にしよう。その後ろでカミナリを溜め込んで、虫の群れごとマシンの蝶たちを落とす。俺の虫どもは焼き尽くすがよぅ。蝶どものかけらも回収するンかね?


●恙とブリキは蝶と踊りて
 昏い星海のなか、赤い光は何時までも何時までも、同じ調子で明滅を繰り返していた。
 長く、長く、短く――。短く、長く、短く、短く――。
「マ、好意的なもんと思っとくさ」
 何方かというと“邪”の側に属する此の神にとって、光というものは天敵だ。そのうえマシンに関しては素人ゆえ、サーチライトから放たれる信号の意味は分かり兼ねる。
 それでも、其処に悪意が無いことは理解できたから。朱酉・逢真は赤い光に背を向けて、青くうつくしい蝶と向かい合う。
 星海は昏く、静寂に満ちている。おまけに宙を漂う塵芥は、ヒトを即座に死に至らしめるような有害なモノばかり。――つまり、病毒に戯ぶ彼にとっては最高の環境なのだ。
 ひとつ残念な点が在るとすれば、鳥や獣だとか云った眷属たちを呼びにくいところか。
「あいつら生きモンだからなァ」
 そのまま喚ぶと死んじまう、なんて。独り言ちる逢真の傍を、黒い髪を揺らした少女が游いで往く。――琴平・琴子だ。
「では、生身では無い子たちに頑張って貰いましょう」
 必ず倒して見せる――。そんな意思を籠めた眼差しを蝶の群れへと向ければ、少女の決意に呼応するように現れる、銃剣で武装したブリキの兵隊たち。
「いらっしゃい、私の兵隊たち」
 彼らを伴い敵の前へと游ぎ出れば、蝶は青い翅を揺らしながら一斉に琴子の元へと向かって来る。そうして彼女の周囲に留まれば、敵の群れは軽やかに羽搏き始めた。
「蝶の羽ばたきが竜巻を起こすとは聞いたことがありますが……」
 彼等が巻き起こす風は、正しく竜巻のような激しさだ。機械仕掛けの翅が羽搏く様は、嘘のように力強い。不可視の鱗粉を吸い込まぬように、琴子はぐっと息を止める。
 ――人間ですし、“くらっきんぐ”とやらのウィルスは防げるでしょうけれど……。
 ウイルスと銘打ってあるものを、好き好んで吸う者はいない。息を止めた侭、少女は兵隊たちへと片手で指示を出す。

 一斉射撃準備良し、――放て!

 兵隊たちが一斉に構えた銃から、どうっと弾が放たれる。されど、彼女の狙いは其れでは無い。
 宇宙空間にはいま、数多の鱗粉が撒き散らされている。
 喩え目に見えなくとも、其れは確かに其処に在るのだ。そして“不可視”ということは、つまり。それだけ、彼らが巻き散らす鱗粉が細かいということ――。
 琴子は両手で耳を塞ぎながら、宙を游ぐ。これから起こることを予見して、蝶の群れから離れる為に。

 どおん――。

 何かが破裂するような轟音と衝撃が、巻き起こった。機械仕掛けの蝶たちが次々と、連鎖的に爆発しているのだ。
 幼いながらも常々、真面目に勉学へ取り組んでいた琴子は知っていた。細かい粉塵が集う場所に火を持ち込めば、爆発が起きるのだということを。そして彼女は、知識を応用できる知恵を持っている。
 喩え酸素が無い空間だとしても。鱗粉が満ち足りた場所で、火薬を元にした焔を使ったなら――、粉塵爆発は起こりえるのだ。
 其の様は宛ら、星海に咲く大輪の花火のよう。燃え尽きて往く蝶たちを振り返りながらも、琴子は其の光景を翠の双眸に確と焼き付ける。
「材料はともかく、間近から見る花火はまた綺麗ですね」
「こいつァ豪勢じゃねえか。玉屋だの鍵屋だの、囃し立てるべきかねェ」
 星海を游ぎ火の手から逃れる少女と入れ替わりに、前へ出るのは逢真だ。
 彼は軽い調子で戯れを紡ぎながら、恙蟲の群れを喚ぶ。雷電を纏った其れらを盾に火の粉を払い除け、粉塵爆発から逃れた敵を追い立てれば、蝶は青い翅を激しく明滅させた。
 其れは、敵に点滅によるショックを与え、幻覚を魅せる惑わしの技。されど、逢真に通用する筈も無い。
「――俺はヒトじゃねえンでな」
 それでも念には念をと、凶星の神は眼前に広がる空間に結界を貼り、蝶の群れを閉じ込める。恙蟲たちといえば蝶の傍らで蠢いて、彼の盾と成ってくれていた。
 これで“サブリミナル・パーセプション”を防ぐことは可能な筈だ。
 安全圏から思い切り雷を溜め込めば、狙いを付けるなんて繊細な真似はせず。纏わりつく恙ごと、機械仕掛けの蝶たちを撃ち落とす――。
 雷電の容をしたそれは、紛れもなく神威である。宛ら、神罰と云ったところか。
「蝶どものかけらも回収するンかね?」
「貴重な資源です、船へ持って帰りましょう」
 燃え尽きて往く恙蟲たちを眺めながら逢真が誰にともなくそう呟けば、もう安全とみて現場まで游ぎ戻って来た少女が問いを拾って答えを返す。彼女の双眸には、煙を上げながらも星海を力なく漂う、うつくしき蝶の姿が映っていた。
 蝶追いが終わったのなら、次は採集の時間。
 毒を齎す青年の手に代わって無垢なる少女のゆびさきが、壊れた蝶の青い翅を、大事に手繰り寄せて往く――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

終夜・嵐吾
あや君(f01194)と

ふーちゃんたちが…!
あのひらひらしとるの倒したら、ふーちゃんたちも助けられよう
よし、あや君いざ参ろう!

あの鱗粉が近づくのは駄目みたいじゃの
機械じゃないわしらに、くらっきんぐ? とやらは効かんじゃろが…
あや君、やはり戦法はあれじゃな
あれしかなかろう(と、狐火ゆらめかせて)

目につくものは燃やしてしまえ
いや、見えんのか
まぁ関係ないの!
二人の炎重ねて広げてしまえば見えんくても燃やすものを捕まえられよう

ううん、このよに炎広げるのならメメも連れてきたらよかったの
いやしかし…飛び出して迷子になって帰ってこれん気も…
土産話にしよ
そうじゃね、また別の場所で
キャンプファイヤーなぞしよか


浮世・綾華
嵐吾さん(f05366)と

はいと嵐吾さんに頷き
ふーちゃん。しっかり助けましょ

(くらっきんぐ。聞き馴染みない言葉だなぁ)
あれと言われればあれしかない
浮かべる鬼火

まぁ効果あったところで
全部が侵されるまでに燃やしちまえばいい
でしょ、嵐吾さん
関係ないと返る言葉には違いねぇと笑って

燃えろよ
浮かべる鬼火を扇で仰ぎ燃え広がらせる
やはり彼と戦うのは楽しくて

ああ、メメもララもはしゃいじゃうからなぁ
ええ。そんでもって、また別の場所で遊ばせてやりましょ
――俺も嵐吾さんと遊びたいですし…?

キャンプファイヤー?
ふふ、いいですネ
メメもララもすげー喜びそうだ

その為にもまずはこいつらを
燃え上がる炎を瞳に映し
舞う様に駆けて


●青翅は焔に撒かれて
 群がる蝶に其の回路を狂わされ、ぴくりとも動かず星海を流れ往く機械仕掛けのフクロウたち。ジジジ、と切なげに響くスパーク音は、厭でも耳にこびりついて――。
「ふーちゃんたちが……!」
 終夜・嵐吾は思わず、見開いた琥珀の眸でフクロウの行方を追い掛ける。彼等は綽名まで付けて可愛がった、宝探しの相棒だ。本当は今すぐ助けに行きたいけれど、うつくしい翅を持つ蝶が、彼の眼前にひらりと躍り出て路を塞ぐ。
「このひらひらしとるの倒したら、ふーちゃんたちも助けられよう」
 遥か広い星海で彼らが迷子とならぬよう、相変わらず視線だけでフクロウを追いながら。嵐吾は傍らで星海を游ぐ友へ、力強く共闘を促すのだった。
「よし、あや君いざ参ろう!」
「ふーちゃん、しっかり助けましょ」
 彼の言葉に頷き返した浮世・綾華は、ひらりひらりと星間を舞う蝶へ視線を向ける。優雅に羽搏くあの青い翅は、機械仕掛けのフクロウたちを機能停止させていた。
 ――恐らくは、其処から零れ落ちた鱗粉が、回路に悪い影響を齎したのだろう。
「あの鱗粉が近づくのは駄目みたいじゃの」
「思考回路を狂わせるみたいですね」
 先ほど目にした光景からそう推論を立てたふたりは、言葉を交わしながらもそっと、蝶の群れから距離を取る。不可視の鱗粉を、吸い込まぬ為に。
「機械じゃないわしらに、“くらっきんぐ”とやらは効かんじゃろが……」
 余り馴染みのない単語に疑問符を浮かべながら、嵐吾はどうしたものかと頸を傾ける。同じく綾華も、聞き馴染みない言葉だなぁ――なんて。内心で首を捻りながらも、蝶を追い払う術を考えていた。
 喩え平気であろうとも、正体の良く分からない粉など吸いたくは無い。ならば、ふたりが取るべき方法は、ひとつ。
「あや君、やはり戦法は“あれ”じゃな」
 あれしかなかろう――と。口端を上げて見せる嵐吾の傍らに、ぽつり、ぽつり。幾つもの狐火がゆらゆらと揺らめき始め、綾華もまた口許を柔く弛ませる。
 あれと言われれば、あれしかない。
「ええ、“あれ”でいきましょ」
 そう楽し気に頷く綾華の腰元では、鍵刀が其のシルエットを静かに崩し始めていた。さらさらと流れ往く鐵は軈て、鮮やかな炎へと其の容を変えて。ゆうらり、ゆらり。緋色の鬼火がぽつぽつと、綾華の傍らで燈って往く。
「まぁ効果あったところで、全部が侵されるまでに燃やしちまえばいい」
 ゆっくりと広がり行く赤が、星海を染めて往く様を横目に捉えながら。綾華は妖狐の青年を振り返り、軽く片目を閉じて笑う。
「――でしょ、嵐吾さん」
「うむ、目につくものは燃やしてしまえ……いや、見えんのか」
 ヤドリガミの青年の言葉に頷きつつも、自らが放った言葉の違和に気付き、嵐吾はひとり頸を振る。
「――まぁ、関係ないの!」
「はは、違いねぇ」
 ふたりの炎が重なり広がれば、不可視の鱗粉だろうと何だろうと、燃やすべきものを炎に巻くことが出来る。
 燃やすの大好きと嵐吾が扇をはらり翻せば、狐火はくるくると愉し気に回りながら青い蝶を取り囲み、機械仕掛けの翅が降らせる鱗粉を炎に包んで行った。
「燃えろよ」
 綾華もまた、緋色の鬼火を黄金の扇で扇いでやる。
 妖しく揺らめく鬼火たちは、風に揺られて遠くへ流れ、ひらりと舞う蝶のもとへ。軈て炎はみるみる内に燃え上がって獲物を包み、其のあえかな躰ごと燃やし尽くす。
 ――ああ、彼と戦うのは矢張り、楽しい。

「ううん、このよに炎広げるのならメメも連れてきたらよかったの」
 きらきらと煌めく星海に、赤い炎が広がって往く様は余りにも壮観だったから。嵐吾の口から思わず、そんな感想がぽつりと漏れた。
「いやしかし……飛び出して迷子になって帰ってこれん気も……」
「ああ、メメもララもはしゃいじゃうからなぁ」
 ふたりが脳裏に思い描くのは、炎を纏う小さな双子の精霊たちの姿。世話焼きな兄のメメは嵐吾の元で、やんちゃな弟のララは綾華の元で、それぞれ暮らしているのだ。
 そして宇宙は涯が無いので、小さな彼等が迷子に成って仕舞うと見付ける術がない。
「……これは土産話にしよ」
「ええ。そんでもって、また別の場所で遊ばせてやりましょ」
 嵐吾から零れた残念そうな呟きに、綾華は笑って提案を重ねた。涯の有る場所ならきっと、双子たちも迷子にならない筈だ。
「そうじゃね、また別の場所で。次は、キャンプファイヤーなぞしよか」
 俺も嵐吾さんと遊びたいですし――。
 そう言葉を続けようとした青年は、彼から返って来たそんな言葉にきょとんと瞬いて。けれども直ぐに、双眸を穏やかに細めて微笑むのだった。
「ふふ、いいですネ。メメもララもすげー喜びそうだ」
 その為にも先ずは、蝶たちを躯の海に還さなくては。囂々と燃え上がる炎を紅の双眸に映し、綾華は舞う様に星間を駆ける。
 黄金に輝く扇がふわりと巻き起こした風は、緋色の鬼火を再び蝶の元へゆうらり誘って。其の青い翅を、跡形も無く焼き尽くして行った――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

スピーリ・ウルプタス
◎☆#(ご無理ない範囲で

「『アナタ方』も長くどなたかと触れ合えばあるいは、お仲間様(ヤドリガミ)に成るのでしょうかね」
返答など無い蝶に当たり前のように話しかけながら

やられてしまったOWLが漂っているのを、例えもう動かないと分かっていても思わず庇い抱き込む
己が破り散らされるような幻覚攻撃を受ければ、幻か分からぬ痛覚にいっそ妖しく微笑んで
「時と場所が違っておりましたらば…とくと堪能していたいところですが」

UC発動
鎖巻き付いた本体を船体守るよう幾数も浮遊させ
「デルタ様やオウル様方への粗相には、お仕置きせねばなりませんね」
どMとは 裏を返せば どS也
本体傷つくのも厭わず、良い笑顔にて容赦なく蝶たち攻撃


ネフラ・ノーヴァ
◎☆
トリテレイア殿(f04141)と合流。

やあ騎士殿。共に戦えて光栄だよ。馬か、お言葉に甘えて乗せていただこう。電幻蝶は初めての相手だ、 頂いた情報を生かして戦おう。あれらは幻覚を用いるようだが貴公には効かなさそうだな。

UCストレリチア・プラチナで装甲を纏って馬から飛翔。見えない攻撃にはランダムなジグザグ機動で撹乱、接近して刺剣で蝶たちの美しい羽を散らそう。トリテレイア殿の支援射撃、さすがの正確さだ。

蝶を仕留めた後はOWLの回収を手伝おう。


トリテレイア・ゼロナイン
◎☆
ネフラ様(f04313)と

お誘いに先ずは感謝を
その返礼として戦場まで送らせてください
其方のスタイルは理解しておりますが、騎士として少々忍びない物ですので

●騎乗した機械馬にネフラ様を同乗させ会敵
彼女が前に出ればUC使用

敵の情報はこちらが把握した物を送ります
存分に楽しまれますよう

センサーでの●情報収集で敵の分布や攻撃を完全に●見切り、前線で踊る彼女の邪魔する蝶を格納銃器●スナイパー射撃で排除

機械馬はワイヤーアンカーで●ハッキング
UC制御下に置くことで●かばいつつ
接近する敵を●怪力で振るうランスで迎撃
漂うOWL達を回収してゆきます

この辺りは一掃出来たようですね
彼らを船に戻す為、一旦帰投しましょう


●星海に蝶は散りて
 麗しき草花も、温かな陽光も、此処には無いと云うのに――青い蝶は、優雅に羽搏いている。
 主を失くし、寄る辺を喪った機械たちは、ただプログラムされた習慣通りに、船乗りたちを襲っていた。
「“アナタ方”も、長くどなたかと触れ合えば――」
 そんな彼らの有様を見て、スピーリ・ウルプタスは口惜し気にそうっと睫を伏せる。嘗て同じように誰かに使われていた“物”として、こころを寄せずには居られない。
「あるいは、“お仲間様(ヤドリガミ)”に成るのでしょうかね」
 ただの無機物である蝶たちは彼のように、言葉もこころも解さないだろうけれど。当たり前のように、スピーリは言葉を投げ掛けた。
 オブリビオンたる彼等は、もうヒトとこころを通わせることは出来ない。それでも有り得たかも知れない未来を思い描いて、にこやかな貌に寂し気な彩を滲ませながら――。
 僅かな感傷を胸に抱いたまま、星海を舞う蝶たちを視線だけで追い掛ければ、ふと。力なく宙を揺蕩う機械仕掛けのフクロウが、視界の端に映る。
「もしかしたら、オウル様も……」
 此の先も長く愛されたなら、彼も仲間と成るかもしれない――。
 そんな予感が脳裏を過った瞬間。思考するよりも先に、躰が動いた。
 すらりと伸びた手脚で星海をひらりと游ぎ、OWLの元へ辿り着いたスピーリは、壊れた彼を庇うように抱き締める。もう動かないことは分かっていた。けれども、護らずには居られなかったのだ。
 果たして彼の動きを敵対行為と捉えたのか、青い蝶たちは其のうつくしい翅を鮮やかに点滅させて、青年の真上に視えざる鱗粉を降らせていく。
 刹那。スピーリの躰は無残に破り散らされて、哀れバラバラに――成りはしない。ヤドリガミたる彼の本体は、人の器ではなく鎖に巻かれた禁書なのだから。
 これは唯の幻覚、すなわち“ファントムペイン”だ。少なくとも、其の筈だった。
「……っ」
 だと云うのに躰の内側が、そして外側が、痛い。これは幻か、それとも現か。虚実の分らぬ痛覚に堪らず、ふ、と吐息めいた微笑が漏れた。
「ああ、時と場所が違っておりましたらば……」
 とくと堪能していたいところでしたのに。
 至極残念そうに語る青年の貌には、いっそ妖しいほどの微笑が貼り付いている。躰中を巡る痛みは心地好いが、いまは壊れたOWLを護ることが先決だ。優雅に羽搏きながら迫り来る蝶からフクロウを庇う為、青年が再び腕へと力を籠めた――其の時。

「間に合いましたね」

 静かな聲と共に振われたランスが大きな弧を描き、獲物へ集る蝶たちを追い払う。フクロウを抱いたスピーリが振り返った先には、機械仕掛けの立派な白馬の姿が在った。
 其れに跨っているのは白き騎士――トリテレイア・ゼロナインと、淡翠の髪を揺らしたクリスタリアン――ネフラ・ノーヴァのふたり。
 馬上の騎士が振った槍の鋭さに、蜘蛛の子を散らすように逃げて行く蝶たち。騎士の躰とワイヤーアンカーで繫がれた、機械白馬の『ロシナンテⅡ』は、勇猛な稼働音の嘶きを響かせながら彼等を追い立てる。
「なかなか壮観な眺めだね、騎士殿。共に戦場を駆けられること、光栄だよ」
「此方こそ、お誘いに先ずは感謝を」
返礼もまた、騎士の嗜みゆえに。せめて送迎はお任せをと、トリテレイアは生真面目に零す。――否、厳密に云うと返礼の為だけではない。
 赤い雨を降らせながら命懸けの舞踏に陶酔するネフラの戦闘スタイルは、重々理解しているけれど。騎士として其れに甘んじるのは、少々忍びないのだ。
 彼の厚意に甘えて白馬に相乗りしたクリスタリアンは、粛々と貫かれる騎士の美学にくつりと微笑を洩らした。翠の双眸が見つめるのは、ひらりひらりと星海を逃げ惑う蝶の姿。
「あれらは幻覚を見せるようだが、貴公には効かなさそうだな」
「……ええ、恐らくは」
「フフ、では――採集の時間といこう」
 真摯な騎士の返事を耳に捉えれば、ネフラのかんばせに不敵な笑みが咲く。其の刹那、彼女の躰は眩いばかりの煌めきに包まれた。

 ストレリチア・プラチナ、――ドレスアップ!

「さあ、白金の輝きに抱かれると良い」
 自身の宝石質と白金を合成させて、一瞬のうちに姫騎士へと姿を転じさせたクリスタリアンは、機械仕掛けの白馬から果敢に飛翔する。翻したプラチナのドレスは恒星の光を受けて、きらきらと煌めいて居た。
 姫騎士の眩き羽搏きに合わせるように、白騎士たるトリテレイアもまた、其の姿を転じさせる。

 ≫ Execute the following command ...
 ≫ Change the Operation Mode Serial Number 09 !

 其れは、式典・要人護衛用の銀河帝国製ウォーマシン“トリテレイアシリーズ”がひとつ、――シリアルナンバー“ゼロナイン”。
 白馬の騎士は全身に搭載されたセンサを研ぎ澄ませ、散ばった蝶たちの位置取りを瞬時に把握する。彼らは四方に存在するが、どうやら形勢は未だ立て直せて居ないようだ。
 つまり、攻めるならば今こそ好機。
「敵の情報はこちらが把握した物を送ります」
 存分に楽しまれますよう――。
 トリテレイアが靜にそう促せば、クリスタリアンの姫騎士はかんばせに喜色を浮かべ、星海にて蝶と舞う。ストレリチアの華めいた棘剣が宙を切れば、哀れ青翅を巻き込まれた蝶が、ぱらぱらと其の容を崩して往った。
 青い瓦礫が降り注ぐ中うっそりと笑うネフラに、敵意を過敏に感じ取った蝶の群れが襲い掛かる――。
「そうはさせません」
 踊る彼女を邪魔する無粋は、トリテレイアが赦さない。彼は格納した銃器を両腕部から放ち、青き蝶の躰へと風穴を空けて往く。
「さすがの正確さだな、トリテレイア殿」
 懲りずに襲い来る蝶へ棘剣による刺突を放ちながら、愉し気な笑みと賛辞を零す姫騎士。死の舞踏に興じる彼女の視界には、未だダンスの相手が一匹、二匹。
「フフ、私のステップに着いて来れるかな」
 彼らが振り撒く不可視の鱗粉を避けるように、華奢な脚はジグザグと出鱈目なステップを刻む。軌道の読めぬ動きは機械仕掛けの彼等を大いに混乱させた。其の隙に高らかに飛翔して、ネフラは宙を舞う蝶たちへ肉薄し刺剣を横薙ぎに払う。
 はらはら、はらはら――。
 青く美しい翅が、星海へ散って往く。血の雨では無いけれど、これはこれで美しい光景だ、なんて。姫騎士はそうっと、双眸を細めるのだった。
 それでも、星海に解き放たれた蝶は次から次へと湧いて来る。
 ネフラに襲い掛かるのは悪手と見做した蝶たちは、次いでトリテレイアへと狙いを定め始めた。蝶たちは白く輝く甲冑に纏わりつくが、最上位機能を開放した彼には小手先の技など通用しない。勿論、騎士の制御下に置かれた白馬さえ、透明にすることは能わない。
「その程度の干渉能力で――」
 まるで宙を裂くような勢いで、白馬の騎士はランスを振るう。ぱりん、と何かが割れるような、切ない音がした。
「護衛用機種の『守り』を、破れるとお思いですか」
 喩え無重力空間に在ろうとも、其の怪力は敵へと容赦の無い鉄槌を下すのだ。重たい其の一撃にあえかな躰を潰された蝶たちは、哀れ星海の塵と化して行く――。

 群れる蝶の大部分は今、ふたりの騎士が惹き付けてくれている。
 されど、資源回収船『クランカー・カンパニー』に集る敵がゼロと成った訳では無い。騎士達が大立ち回りを繰り広げる一方で、猟兵たちを運ぶための船はヤドリガミの青年――スピーリに守られていた。
 小さな船の周りでは、複製された彼の本体である“鎖を巻かれた禁書”が何十冊も漂っている。それらは総て、壊れたフクロウ「OWL」と「船」を護ろうとしているのだ。
 衝撃で表紙が傷付くことも厭わずに、スピーリは船に集う蝶を一匹ずつ重たい禁書で殴り壊して行く。普段の穏やかさがまるで嘘のような、容赦の無い攻撃だ。
 なにせ突き詰めた“被虐”は、裏を返せば“嗜虐”と成るのだから――。
「デルタ様やオウル様方への粗相、お仕置きせねばなりませんね」
 動かぬフクロウを抱きしめた侭、にっこりと笑みを浮かべて。スピーリは船に集る最後の一匹へと、浮遊する禁書を勢いよく嗾ける。果たして、衝撃で回路が狂ったのだろうか。パチパチとスパークを放った蝶は、禁書の写しを巻き込んで派手に爆発した。これで、船の安全は確保できた筈だ。
「オウル様……」
 漸く訪れた静寂に包まれながら、青年の指先が悼むようにフクロウを撫でる。モニターフェイスは、もう何も映さない。
「やあ、お疲れ様」
「この辺りは一掃出来たようですね、お見事でした」
 ふと、後ろから聞き覚えのある聲がした。ゆっくりと振り返ったなら其処には、機械仕掛けの白馬と騎士たちの姿が在る。
 よくよく見れば彼等もまた、小脇に数体ずつ壊れたフクロウを抱えていた。
「貴殿もOWLを回収したのか」
「もし宜しければ、其方のOWLも連れて共に帰投しましょう」
 彼等を船へ戻す為に――。
 そう言葉を紡ぐ騎士の眸は、優しい翠色に輝いていたから。スピーリは頬を弛ませた侭、ゆるりと首肯ひとつ。
「ええ。彼等が帰るべき場所は、あの船ですから」
 青年とふたりの騎士が去った星海には、恒星の煌めきだけが遺されていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

シキ・ジルモント
◎☆
宇宙バイクに騎乗、ユーベルコードを発動
OWLがやられたように、蝶に捕われたら機械である宇宙バイクも危険だ
一撃離脱を狙って速度を上げておく
いざとなれば速度で振り切って包囲を脱出する

増強したバイクの速度で群へ接近、手近な蝶へ零距離射撃を撃ち込んだらその場を離れる
常に移動を続ける事で蝶の群れに取り付かれる事を防ぐ
催眠を警戒、出来るだけ敵を見ない事で幻覚の回避・軽減を試みる
大まかに位置を把握したら注視せず一気に前進、次に敵をしっかり見るのは引き金を引く直前だ

機能停止したOWLは隙を見て回収
船に戻れば修理できるかもしれない
蝶の危険性を確認できたのはOWLの功績だ、それを放置するわけにはいかないだろう


荻原・志桜
◎☆
ひらひら舞う蝶に一瞬目を奪われるが、フクロウたちを無力化したそれに警戒を強めて
サーチライトの灯りに小さく微笑み

この船の航路はしっかりと守ってみせるよ
ありがとう、頑張ってくるねと告げる

手に魔力を集めて桜がひらりと舞う
光を帯びる桜が杖となり、掴んでくるりと回せば陣が浮かび上がる

キミたちの舞う姿はとてもキレイだけど、
わたしの魔法だって負けてないよ

向かってくる攻撃はなるべく回避!
受けてしまうものは魔石を飛ばして結界を張りオーラ防御で備える
口早に慣れた詠唱を紡ぎ、魔法で作り出した数多の矢
それに纏う焔。属性の力を更に込めて焼却の勢いを強めて

――猛き焔よ、
鱗粉すらもその炎で飲み込み焼き尽くさん、穿て!


天音・亮
◎☆

soleilの熱が伝わって
駆動音を響かせる
でも、いつものように駆けようとしても脚が思うように動かせない
この鱗粉…
さっきOWLくんたちを動かなくさせたもの
やっぱり機械はダメなんだ

soleilはヒロアスの技術で稼働力を上げた機械装備
諸に影響を受けてしまうから
戦う手段が見当たらなくて奥歯を食い縛る

諦めたくない、
──私は、諦めない!

ふわり現れたのは幽世で出会った幽世蝶達
…力を、貸してくれるの?
応える様に覆っていくこの身
輝くシューズは形を変えて

新しい力が溢れ出す心地
人工物でない不思議な力
駆ける道にきみたちの光る粒子が舞う
ああ、翅が生えた様に脚が軽い

さあ道を開けて
私はもっと先へ進まなきゃいけないから


●焔ふる海、駆ける双星
 数多の恒星を背に、うつくしい蝶はひらひらと羽搏いている。其の青い翅は昏い宙のなか、冗談のようによく映えた。
 そんな現実感の無い光景に思わず、荻原・志桜の眸が奪われたのは一瞬のこと。
 機械仕掛けのフクロウたちが次々と力尽きて往く光景は、まだまだ記憶に新しい。少女はふるりと頸を振って、蝶の群れへと警戒を滲ませる。
「この船の航路は、しっかりと守ってみせるよ」
 花唇から紡ぐ言の葉に密やかな決意を籠めて、小さな船を振り返る。規則正しい明滅を繰り返すサーチライトを視界に捉えれば、志桜の頰は自然と弛んだ。
「ありがとう、頑張ってくるね」
 赤く煌めくモールスコードは、応援の印。注がれた想いを確りと受け止めて、少女はあえかな掌に魔力を集中させて往けば、ひらり――。
 花の無い世界に、桜の花弁が舞い始める。

「悠長に夜桜見物、とはいかないだろうな」
 昏い星海に舞い散る桜は見応えが有るものの、風雅に酔って任務を疎かにする失態は赦されぬ。
 薄紅の花弁を振り払い、カスタムバイクを只管に飛ばすのは、人狼の青年――シキ・ジルモント。
「其の術が成るまで、時間を稼ごう」
 淡々と独り言ちた青年は、自身が騎乗するバイクを変形させる。ギギギと、鈍い稼働音が響いたのは一瞬のこと。移動速度を更に上げた其れは、ひといきに蝶の群れへと飛び込んでいく。
 鋭い双眸にひとひらの蝶を捉えた瞬間、青年は流れるような動作で銃口を其の翅に押し当てて、同時に引鉄を引いた。
 獲物が壊れる瞬間は、見ない。――その頃にはもう、彼を乗せたバイクは蝶の群れから離れているから。
 宇宙バイクも機械のひとつである以上、OWLの二の舞と成る懸念は在った。あの蝶に捕らわれたら、バイクは一溜りも無い。ゆえに彼が取った作戦は、一撃離脱。ヒット&アウェイで、堅実に敵の数を削る心算なのだ。
 敵と一定の距離を置いたら、ぐるり。星間を旋回して、シキは再び蝶の群れへと突っ込んでいく。
 視界の端で明滅する青い翅から目を逸らして、ひらひらと降り注ぐ桜の花弁に視線を向けた。
 敵が反撃の技を編もうと、ブレーキを掛けることは決してしない。その瞬間、無数の青に群がられることは明白ゆえに。
「――惑わされるものか」
 喩え視線を逸らしていても、索敵に影響は無かった。人狼たる彼の耳はよく音を拾うのだ。稼働音からある程度位置を割り出せば、躊躇う事無く其処へ滑り込み。引鉄に、指を掛ける。――其処で漸く、獲物と視線を合わせた。
 刹那、銃声が響き、蝶は火花を放ちながら星海に散って往く。
 群がる蝶を超スピードで振り切って、再び星間を走る人狼の青年の耳へ、不意に可憐な少女の聲が届いた。

「ありがとう、もう大丈夫!」
 舞い散る桜は光を帯びて少女の掌中に集い、魔法使いの杖らしいシルエットを象って行く。其れを確りと掴んで、くるり。バトントワリングのように回せば、少女の脚元には桜色の魔法陣が芒と浮かび上がる。
「キミたちの舞う姿はとてもキレイだけど――」
 優雅に舞う蝶たちを翠の双眸で確りと見つめながら、志桜は杖に魔力を注ぐ。淡い桜色に光り始めた其れは、昏い星海のなかで可憐に煌めいていた。
「わたしの魔法だって負けてないよ」
 にひひ、なんて悪戯っぽい笑みを零し。双眸を閉じれば、口早に慣れた詠唱を紡ぐ。魔法で生み出した数多の矢が、燃え盛る焔を纏い、蝶たちの真上に降り注ぐ。
 猛き焔よ。鱗粉すらも其の炎で飲み込みて、いま総てを焼き尽くさん。

「――穿て!」

 少女の号令通り、猛き焔は射抜かれた蝶を容赦なく炎に巻いた。星海に広がった青は、みるみる内に赤色へと塗潰されて行く。
 鉄が焦げるような匂いと共に戦場に遺されたのは、数多の蝶の残骸と、矢の雨を運よく逃れることが出来た数匹の蝶々のみ。
 戦いは、まだ終わっていない。志桜は桜色のリボンが揺れる杖を、ぎゅっと握り締めるのだった。

「あの蝶……」
 同じ頃。天音・亮はふたりの戦いを、少し離れた所から見守っていた。すらりと伸びた脚を包み込むレガリアスシューズ“soleil”は、常と同じように熱を放ち、稼働音を響かせている。あとは、思い切り駆けだすだけだ。それなのに、何故だろう。
 脚が、想うように動かないのだ。
「やっぱり、機械は駄目なんだ」
 其の理由は、先ほど目にした光景にこそ有る。――あの蝶に集られて、次々と星海に沈んで行く、機械仕掛けのフクロウたち。彼らの断末魔めいたスパーク音は、娘の耳に深くこびり付いていた。
 亮は視線を己の脚へと注ぐ。太陽の名を冠する此のシューズは、ヒーローズアースの科学技術によって稼働力を上げた、いわゆる機械装備。ウイルスを潜ませた鱗粉の影響を、きっと諸に受けてしまう。
 このままじゃ、戦えない。
 悔しさに俯いて、ぐっと奥歯を噛み締める。困って居る人の為、何処までも駆けてゆくのが“ヒーロー”なのに。そう、どんな時でも前へ進んで往くのが、ヒーローの“天音・亮”だから。絶対に、諦めたくない。

「──私は、諦めない!」

 確りと前を向いて放った決意は、ちゃんと届いていた。ふわり、不意に彼女の傍であえかに羽搏くのは、いつか魂魄祭で出会った幽世蝶たち。花彩の翅をひらりと揺らして、彼等は亮の周囲を靜に飛び回る。
「……力を、貸してくれるの?」
 双眸を円くした彼女から零された問いに、応えるかの如く。幽世蝶たちは、彼女の躰を花彩で優しく覆っていく。
 すると、彼女の脚を包んでいたシューズは鮮やかな光を放ち、優美なシルエットへと其の形を変える。脚元で揺れる小さな蝶のストラップは、きっと彼等が他ならぬ“亮の彩”を灯してくれた証。
「ありがとう、これなら」
 ――何処までも駆けて往ける。
 新しい力が溢れ出すような心地に身を委ね、亮は星が瞬く大海原へと走り出す。シューズから伝わって来るのは、人工物ではない、温かで不思議な力。
 彼女が駆けた軌跡には、蝶たちが零した光る粒子が、きらきらと舞う。其れは青い蝶が放つ鱗粉よりも優しくて、うつくしいもの。
 ああ、翅が生えた様に脚が軽い。大切なひとの元にだって、飛んで行けそう。
 けれど先ずは、仲間に群がろうとする敵の元へ駆けなければ。蝶と直接対峙する桜色の少女は、魔石を放ち結界を作る事で応戦していたけれど。其れが破られないうちに、早く辿り着かないと――。
「さあ、道を開けて」
 軽やかに宙を舞い、星間を駆け抜けて。青い翅を揺らす蝶たちの真上へ、亮は高らかに飛翔した。そうして群がる彼等へと、強かな蹴りを入れる。反撃に放たれた不可視の鱗粉が纏わりつこうと、幽世蝶の加護を得た“soleil”は決して止まらない。
「私はもっと先へ進まなきゃいけないから」

 亮の登場により、蝶たちは散り散りに成った。その瞬間こそ、攻撃のチャンス。志桜は再び術を編んで、矢の雨を戦場に振らせていく。
「戦況は安定したらしいな」
 降り注ぐ焔が星海を赤く染めて往く様を横目に、シキはバイクを走らせていた。この調子なら、バイクが狂う危険を冒してまで戦況に加わる必要もあるまい。
 代わりに彼が狙うのは、壊れて仕舞ったフクロウ――OWLたちの回収だ。蝶の危険性を確認できたのは、そもそも彼等の功績である。それを放置するわけにはいかないと、義理堅い彼は考えていたのだ。
「……船に戻れば修理できるだろうか」
 星海に漂うフクロウを抱き上げたシキは、何も映さぬドローンのモニターフェイスを覗き込む。この世界の技術は進んでいるから、案外なんとか成るかも知れない。
 ささやかな希望を胸に抱いて、人狼の青年は壊れたフクロウを探し続ける。
 遥か向こうの戦場で、炎に包まれ、シューズに蹴散らされた蝶たちが、壊れて往く音を聴きながら――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

木元・杏
【かんにき】◎☆

ガーネットの呟きに、ぴくり
蝶々達は残党?…迷子、なのかな
あ、フクロウさんも…迷子はだめ
救けなきゃ

わたしは皆の補助を
幅広の大剣にした灯る陽光からオーラ放出、蝶々の視認出来る範囲にいる味方全員とフクロウさんに【あたたかな光】でオーラ防御

オーラの光が翅の光の点滅を和らげ、催眠攻撃もかかりにくく、なる
…でも少しだけうとうと

見えるのは…たまこ(飼い鶏)?
あ、まつりんに襲いかかっちゃだめ
うさみん☆、たまこに突撃
ぎゅっとホールドして掴まえて?

ん、たまこ…違う、フクロウさん?
よかった、この調子でフクロウさんを回収してく

蝶々は大剣で羽を斬り動きを封じる
機械でも…望郷の思い、きっとある
さ、帰ろう?


木元・祭莉
【かんにき】◎☆だよー!

わあ、ちょうちょ。
かと思ったら、ロボだー!?

ああ、フクロウさんが……許さない!
行くよ、アンちゃん、ガーネット姉ちゃん!!

光学迷彩?
なんかよくわかんないけど。
見えなくったって、そこにいたら、腕輪からぴこんぴこん気配がする!
猟兵舐めんなー!!

野性の勘で、反響する電波を感じ取って。
見えても見えなくても関係なく、突撃だー!!

疾走発動!
如意な棒を振り回しながら、宇宙空間を飛び回る!
そこっ!
衝撃波の範囲攻撃を繰り出して。
ガーネット姉ちゃんの方へ追い込んでいくよ。

あー、アンちゃん、起きてー!
ん、起きたね。
フクロウさんのコト、ヨロシクね♪

やっぱガーネット姉ちゃんはカッコイイなあー♪


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】◎☆

あれは、帝国のロボット兵器…こういう帝国の残党を処理していくのも、大事な仕事だ。さあ、いこう。
相手がクラッキング能力をもつ以上、機動兵器で挑むのはリスクが高い。ここは生身でいくか…。
「杏、OWLたちを頼む」
「まつりん、早速実戦で腕輪の機能を試すのか?」
【裁断領域】を展開し、《念動力》で操作可能な鋼糸の迷路を戦場に作る。
蝶たちは鋭利な蜘蛛の巣から逃れようとするだろう。一ヶ所しかない出口を通って…。そこを叩く!
宇宙空間を泳ぐように《空中戦》技術で移動し、武器を構えて待ち受ける。クロスグレイブによる熱線の《砲撃》に加え、
ブラックバングルから「重力」属性の弾丸を放つ《属性攻撃》だ。


●銀河の迷い子
 回収船から游ぎ出た先。煌めく星海でひらりと舞い踊る蝶たちの姿に、木元・祭莉の銀の瞳はまあるく開かれる。
「わあ、ちょうちょ……かと思ったら、ロボだー!?」
 遠目に見たら本物と見紛う程のうつくしさ、されどよくよく観察すると、彼らの躰はメタリックな質感に溢れていた。
「あれは、帝国のロボット兵器……」
 宇宙世界に拠点を持つガーネット・グレイローズは、彼らの姿に見覚えが有った。あれもまた、銀河帝国が遺した負の遺産なのだ。彼女が零した重々しい呟きに、木元・杏はびくりと肩を跳ねさせる。
「蝶々達は残党? ……じゃあ、迷子、なのかな」
 帝国の兵器がこんな辺境に居るなんて、きっと彼等は使役者と逸れてしまったのだろう。気の毒そうに眉を下げる彼女の視界の端をふと、壊れたフクロウがふよふよと流れて往く。
「あ、フクロウさんも……迷子はだめ」
「ああ、フクロウさんが……許さない!」
 救けなきゃ、と表情をきりり引き締める杏の傍ら。祭莉も先ほどの無残な光景を思い出し、眸に決意を揺らめかせた。
「行くよ、アンちゃん、ガーネット姉ちゃん!!」
 元気よくふたりを促しながら、真っ先に敵の方へと駆けだして行く祭莉。そんな彼の後を追うのは、保護者として同行しているガーネットだ。
「こういう帝国の残党を処理していくのも、大事な仕事だな」
 雷幻の蝶たちを放置しておけば、多くの船が沈められてしまう。この世界で輸送業も営む彼女にとって、其れは見逃せないことだった。
 しかし、敵は機械を狂わせる力を持っている。愛用のマシンウォーカーで挑むのは、少し厳しいかも知れない。
「ここは生身でいくか……」
「ん、わたしに、任せて」
 思案貌の麗人が零した呟きは、最後尾を游ぐ杏の耳朶へと届いたらしい。少女はふと立ち止まり、掌中に灯る白銀の光を幅広の大剣へと転じさせて往く。そうして容を為した“灯る陽光”から放たれるのは、温かな光のオーラだ。
 其れは杏の前を駆けるガーネットと祭莉だけではなく、蝶の攻撃範囲内に居るフクロウたちにも降り注ぎ、彼らを護る壁と成る。
「わあ、何だかあったかーい♪」
「これで心置きなく戦えるな、杏はOWLたちを頼む」
 少女の援護を受けて、攻撃手ふたりは憂いなく青き蝶に迫って往く。一方の杏は麗人の言葉に頷いて、宙を漂うフクロウたちを回収する為に星海を游ぎ往くのだった。

「さて、この辺りで良さそうか」
 青い蝶を目指し星海を渡っていたガーネットは、不意に歩みを止めて、ぐるりと頸を巡らせる。
 なにごとかと、彼女に釣られて立ち止まる祭莉の前。麗人は鋼糸を念動力でしゅるりと動かし、頑健な迷宮を編み始めた。みるみる内に其れは広さを増して行き、軈ては星海を包み込んで往く――。
 其の“裁断領域”は、まるで鋭利な蜘蛛の巣のよう。
「あ、蜘蛛の巣だ! これでロボを捕まえるのかな?」
「ああ、そうだ。まつりんには、蝶たちの惹きつけを頼みたい」
「こっちに釣れて来れば良いんだね、分かった!」
 元気の良い返事を遺して、祭莉は颯爽と敵の群れへ駆けて往く。そんな少年の後ろ姿を見送ったガーネットもまた、急ぎ迷宮の出口へと向かうのだった。

「さあ、いっくよー!」
 青い群れへと勇ましく飛び込んだ少年が次の瞬間に観たものは、光学迷彩を纏い次から次へと姿を消して行く、雷幻の蝶たちの姿だった。彼らは瞬く間に星海と一体化し、誰の目からも捉えることが出来なくなる。
 どこに消えて仕舞ったのかと、祭莉が頸を左右に巡らせた、其の時。

 ――ぴこん、ぴこん♪

 腕に嵌めたバングルめいた通信機から、軽やかな音がした。そういえば、此の通信機は電波と共鳴するのだったか。音に合わせて明滅する宝玉を見降ろしながら、祭莉はそんなことを物思う。
「難しいコトはよくわかんないけど……」
 喩え姿が見えなくとも、此の腕輪の反応こそが、近くに敵がいると云う証。それに何より、彼の野生の勘が蝶は未だ此処に居ると物語っているのだ。
「猟兵舐めんなー!!」
 見えていようと、見えなかろうと、そんなことは関係ない。うだうだと悩まずに、衝動の侭に突っ走るのが木元・祭莉という少年なのだ。だから――、
「突撃ー!!」
 風輪の疾走、発動。
 全身を燃え上がる白焔で包み込んだ祭莉は、如意(のような)棒を振り回しながら、宇宙空間を飛び回る。機械にとって焔は天敵ゆえに、不可視の蝶たちは少年に近づくことすら能わない。
 不意に、ピコピコピコピコと腕輪の共鳴が一層激しくなる。
「――そこっ!」
 其の刹那、祭莉は傍らに視えざる敵がいることを知り、思い切り棒を振り回して衝撃波を繰り出した。光学迷彩を剥がされた蝶たちは其の姿を顕にしながら、ガーネットが張り巡らせた鋼糸の方へと追い込まれて行く。
 其処は、もう二度と抜け出せない、鋼の蜘蛛の巣だ。念動力で操られた鋼糸は、迷い込んだ蝶を鋭利な其の身で切り裂いて、星海の塵へ変えて行こうとする。
 当然、彼らは其れから逃れようと、出口に向かって飛び続けるけれど――。
「まつりんの腕輪は、早速役に立ったらしいな」
 待ち伏せをするように出口から現れた、蜘蛛の巣の主によって彼等の道行は阻まれた。巨大な十字架にも似たブラスターの照準を合わせながら、ガーネットは薄く笑う。

「お前たちはもう、逃れられないよ」

 銃口から放たれた熱戦が、蝶のあえかな躰をどろりと焼き尽す。慈悲の無い砲撃に一匹、また一匹と、溶けて行くなか。無謀にもガーネットの傍らを通り過ぎ、出口へ向かおうとする蝶が居た。
「逃げられないと、そう言った筈だが」
 麗人は振り返りざま、腕に嵌めた黒いバングルから弾丸を放つ。其れは蝶の青い片翅に掠り疵を刻んだが、――其れだけに留まらぬ。
 翅をスパークさせた蝶は尚も逃げようと羽搏くけれど、何かに押し潰されるように躰を精々広げながら、涯の無い星海の底へと沈んでいく。彼女が撃ち込んだ弾丸には、重力が秘められていたのだ。
「やっぱ、ガーネット姉ちゃんはカッコイイなあー♪」
 重力に耐え切れず破裂した蝶の爆発音を遠くで聴きながら、祭莉はきらきらと双眸を輝かせる。そして、ふと周囲をきょろきょろと見回し始めた。
 そういえば、妹は何処へ行ったのだろう――。

 一方、その頃。
 杏は星海を力なく漂うフクロウを追い掛けて、懸命に星海を游いでいた。あともう少しで手が届きそうだと云うのに、数体の蝶は少女に纏わりつき、青い翅を激しく明滅させる。
 自身にも纏わせた光のオーラは、催眠作用を放つ光を和らげてくれるけれど。其れでも杏は少しだけ、うとうとと瞼が重く成って仕舞う。
「あ……たまこ?」
 微睡む視界のなかで視えるのは、鋭い嘴を持つ飼い鶏の姿。其の傍らには、双子の兄――祭莉の姿も在った。常よりも不機嫌そうな鶏は不意に、少年へ襲い掛かる。
「あ、まつりんに襲いかかっちゃだめ」
 杏は慌てて、絡繰り人形の糸を引いた。メイド服に身を包んだ愛らしい人形は“うさみん☆”、髪に揺れるうさ耳がチャームポイントだ。
「うさみん☆ たまこを掴まえて」
 少女が糸を軽やかに操れば、メイドはくるくると星海に舞う。そのままスカートの裾をふわりと翻し、荒ぶるたまこに接近すればぎゅうっと抱き着いた。
「そう、その調子……」
 メイド人形ががっちりと鶏をホールドしている内に、急いで伸ばした糸を手繰り寄せる。軈て鶏を抱きしめた人形が腕の中に戻ってくれば、杏は安堵の溜息をひとつ零した。
「あー、アンちゃん、起きてー!」
 先ほど鶏から助けた筈の兄の聲が、何処か遠くから聴こえて来る。もしかして、自分はいま夢を見ているのだろうか。少女が寝惚け眼をごしごし擦れば、其の腕のなかに居るのは“たまこ”では無く――。
「……フクロウさん?」
 つるりとしたフォルムの、機械仕掛けのフクロウが其処に居た。金の眸をぱちくりと瞬かせる杏の頭上に、再び不穏な影が差す。未だ、蝶を倒せてはいないのだ。
 再会を喜ぶ前に、此方を片付けなければなるまい。少女は大剣を凛と振りかざす。そうして、眼前の敵に向けて勢いよく、其の切っ先を振り払った。
 翅を裂かれた蝶たちは飛行機能を喪い、バチバチと火花を放ちながら、昏い星海に呑まれて行く。
「ん、起きたね」
 漸く妹の元へと游ぎ着いた祭莉は、明るい其の貌に安堵の笑みを浮かべていた。一方の杏も、フクロウを無事に守れた喜びに頬を弛ませる。
「よかった」
 喩え機械であろうとも、望郷の想いは有る筈だから。迷子の蝶たちは無理でも、せめて機械仕掛けのフクロウだけは、彼らの家に戻してあげたい。
「さ、船に帰ろう?」
 灯の燈らぬモニターフェイスを撫でながら、杏はOWLに優しく微笑みかける。数多の星が煌めく中、母艦のサーチライトは相変わらず、赤い明滅を繰り返し続けて居た。あの灯を目指せば、もう迷子には成らないだろう。
 母艦『クランカー・カンパニー』へと、一行は游いで往く――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ヴォルフガング・ディーツェ

レグ(f02517)と
そうだね…羽ばたきで遥か遠くの都市どころか、近くに磁気嵐すら起こせそうだから案外補食で補ってるかもよ?

【指定UC】を使用
「オーラ防御」「全力魔法」「多重詠唱」「高速詠唱」を流用
宇宙空間でも自在に動ける物理情報を改編した小領域を展開
魔術の維持は持参の高速演算体に押し付け、自分はさくさく動こう
宇宙空間でも尚、軽やかなレグに惜しみ無い称賛を
やるねえ!

貰った情報を元にやりやすい群れを襲撃
死角から踏み込み、雷を纏わせた鞭を振るう
羽は引き裂くが他はなるべく綺麗な形で残す
小癪にも幻影を作るなら「ハッキング」で壊すが

ううん、蝶も良い素材になりそうじゃない?
使えるそうならバイクに積もう!


レッグ・ワート
……こいつらメンテどうしてんだろうな。とまれこの手の野良は俺にも物騒。

宇宙バイクででる。防盾はセットはできるが刃にはできないんだよなコレ。……色んな意味で壁になりゃいいか。はめ込む箇所も無いんで、ドローンは走る邪魔にならない位置に糸で固定。ゴッドスピードライドの逃げ足きかせた運転で立ち回ってる間に、電幻の数やらグループ、動きの情報収集してヴォルフと共有していこう。伸せそうな群れを絞ったら、わざと敵に仕掛け時でも贈ろうか。まあ隙あっても雷が活用させないだろうけどな。

他は余裕だろうし、要れば船の軽い補修手伝おうか。使える物はさっき拾っ……そういう発想する??いいけどクラック絡みは処理してくれよ。


●星影に蝶は舞う
 凡そ宇宙世界にそぐわぬ見目のロボットは、星海をひらりひらりと優雅に舞い踊って居た。其の様を青い瞳で追い掛けて、レッグ・ワートは独り言ちる。
「……こいつらメンテどうしてんだろうな」
「そうだね……」
 傍らのヴォルフガング・ディーツェもまた、興味深げに双眸で蝶の舞を眺めながら首を捻る。オブリビオンとて、不死と云う訳では無いのだ。こんな宇宙の辺境で、彼等は如何にして生き延びて来たのだろうか。
「あの羽搏き、近くに磁気嵐すら起こせそうだから」
 案外補食で補ってるかもよ、なんて。電脳魔術らしい観察眼で以て、ヴォルフガングは私見を述べる。傍から聴くと冗談のような科白だけれど、レッグにとっては何方でも良い。
「――とまれこの手の野良は俺にも物騒」
 ゆえに、速やかに倒さなければ。
 宇宙バイクに騎乗したウォーマシンが、エンジン音を轟かせたなら。星間にひらりと遊んでいた蝶たちが、一斉にふたりの方を向いた。
「じゃあ、情報収集よろしくね、レグ」
 術を編むため軽やかに後退するヴォルフガングに代わって、レッグを乗せたバイクが敵前へと躍り出る。
 後方に縛り付けたドローンを落とさぬように注意を払いながら、宇宙バイクを変形させれば、マシンは眼にも止まらぬ速さで走り始める。
「ふふ、やるねえ!」
 群がって来る蝶を、恐るべきスピードで振り切り続けるレッグ。その走りっぷりは、重力の無い宇宙空間でも軽やかだ。彼の活躍を後ろから見守るヴォルフガングも、惜しみない賞賛を降らせている。
 一方のレッグは、蝶の突撃を防盾で弾きながら敵の動きや数などを観察していた。ひらりと星海を舞う蝶は、全部で十体ほど。特に統率が取れている訳では無く、猛スピードでバイクが走りだせば、音に警戒して散り散りに成って。暫くしたのち、また攻撃を仕掛けて来る。
 ――実に単純で、罠にも嵌めやすい。
 収集した情報をヴォルフガングへ共有する傍ら、レッグは不意にバイクを止める。敢えて隙を作る事によって、今宵の相棒たる花喰ふ狼へと見せ場を譲るために。
 まんまと誘い込まれた蝶たちが、青い翅を明滅させてウォーマシンに襲い掛かろうとした、其の時。
「指令――」

 ≪法則を我が意の儘に、戯れの幕を落とさん≫

 辺り一帯に、電脳魔術の領域が展開される。
 突如として発生した“科学的な現実改変”に、蝶たちは対応することが出来ず、戸惑ったように宙にて動きを止めた。
 ヴォルフガングが生み出した小領域は、宇宙空間でも自在に動けるようにと、物理法則を改変したもの。応用力のない個体が、其れに着いて行ける筈も無い。
「さあ、舞台の幕を開こう」
 領域の維持は持参した“高速演算体”に押し付けて、ヴォルフガングは軽やかに宙を駆け、うつくしい翅を揺らす青い蝶の死角へと滑り込む。
 間髪を入れずに彼が振うのは、雷を纏わせた邪鞭。死者の苦悶を滲ませながら、“葬列の黒”は蝶の翅を無残にも引き裂いて、彼らの機能を次々に停止させて往く。軈て後に残るのは、翅を捥がれた蝶の残骸のみ。
 小癪にも幻影を見せるのなら、ハッキングで壊すつもりだったけれど――。
 ふたりの見事な連係プレーは、そして翅を重点的に狙った鞭の一撃は、敵の催眠を効果的に防いだのだった。
「近くで見ると、こんな風になってるんだ」
 星海に漂う残骸を指でつまみ上げ、紅の双眸で其れを観察するヴォルフガング。斯うして見ると、なんだか玩具のようだ。そうこうしている内に、バイクを減速させながらレッグが近付いて来る。
「他は余裕そうだし、船の軽い補修手伝おうか」
「良いね、俺もメカニックの腕には覚えがあるし」
 ウォーマシンの青年が紡ぐ提案に、人狼の青年は快く頷いて見せた。「使える物はさっき拾ったし……」とレッグが言葉を重ねようとした刹那。ヴォルフガングは残骸を掌中に転がしながら、かくりと頸を傾ける。
「ううん、蝶も良い素材になりそうじゃない?」
「……そういう発想する??」
 さっきまで“其れ”に襲われて居たと云うのに、思い切ったことを考えるものだ。そんなレッグの反応を気にも留めず、ヴォルフガングはからからと笑う。
「使えそうだから、バイクに積もう!」
「いいけど、クラック絡みは処理してくれよ」
 そんな風に軽い調子で語り合いながら、ふたりは残骸をレッグのバイクに固定して行く。これだけ在れば、売り物に手を付けずとも船の補修が出来そうだ。

 遠くの方では、『クランカー・カンパニー』のサーチライトが、赤い明滅を繰り返して居た。其れを便に小さな船へと辿り着いたら、再び出向の準備を始めよう。
 猟兵たちの冒険は、もう少しだけ続くのだから――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第3章 ボス戦 『大賢人『ラゴス・ヴァルカー』』

POW ●旨し。ああ、旨し。
戦闘中に食べた【敵や味方】の量と質に応じて【自身を頭部とした巨大兵器に変形し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD ●先ずは一口。
【舌】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ ●拙僧が救いを与えよう。
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【改造し、生体兵器】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はヴロス・ヴァルカーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●再出航
 航路を塞ぐ蝶を壊滅させた猟兵たちは、こじんまりした宇宙船『クランカー・カンパニー』に再び帰投して、目的地へと向かっていた。
「やあ、船を護ってくれて有難う」
 君達は本当にすごいな――。
 そう零すデルタ船長の聲には、明らかな喜色と興奮が滲んでいた。猟兵たちが速やかに蝶を退治してくれたお蔭で、船に大きな被害は無い。電撃を受けたデルタの躰も特別異常は無いようだ。
 今度こそ安全に、問題なく、帝国残党の元へと船は辿り着くだろう。
「OWLたちの回収にも感謝しよう」
 電動式のウィールチェアに腰かけた彼の膝には、猟兵たちに助けられたフクロウ型のドローン“OWL-0096XS”の姿が在った。
 デルタ曰く、彼らは機能を停止して仕舞って居るが、ちゃんと修理をすれば直るだろうとのこと。まあるい彼らの貌には、未だ灯が燈らないけれど。いつの日かまた、元気にモニターフェイスを明滅させてくれるだろう。

「そうだ、良ければ未だ動く子達を連れて行くかい」
 デルタが鋼鐵の指先でコンソールを弄ったなら、ぱかりと天井の格納が開く。其処から羽搏いて来るのは、蝶と交戦しなかったフクロウたち。
「戦闘の役には立たないが、応援くらいは出来るだろう」
 其れは、後方支援のひとつも出来ない機械が零す、精一杯の厚意の容。
「ああ、もし邪魔なら気にしないでくれ――」
 静かにそう遠慮の科白を付け加えて、機人の船長は運航のスピードを上げて往く。

 どれくらいの時間が経過しただろうか。
 軈て船は、朽ち果てた大きな戦艦の前へと辿り着いた。此処に、倒すべき帝国の残党が潜んでいるのだ。
 ――それぞれの想いを胸に、猟兵たちはいま、朽ちた船へと足を踏み入れる。

●悪食の墓荒らし
 猟兵たちが乗り込んだ船は、遥か昔に沈んだ筈の帝国戦艦だった。
 船体に幾つも空けられた無残な穴は、そして廊下の至る所に散ばった空薬莢や銃火器が、嘗ての帝国と反乱軍の戦いの激しさを物語っている。
 道中には、襤褸襤褸の軍服を纏った骸骨の姿も在った。長銃を抱いて眠る者も居れば、路を塞ぐように倒れ伏す者も居る。避難口の前に転がった侭の者も居た。彼等のぽっかりと空いた眼孔は、もう何も映さない。
 此の船こそ、正しく幽霊船のような有様だ。或いは、船全体が“サルコファガス”其の物なのかも知れぬ。
 更に奥へと進み往けば、何やら開けた所へ出た。部屋の隅から、咀嚼音が聞こえる。

 バリバリ、ボリボリ、バキバキ、――ぐしゃ。

 其処に居るのは、一体の奇妙なウォーマシンだった。襤褸襤褸の布を頭から垂らした其の姿は、徳の高い仙人の様にも視える。然し、其の腹部には端から端まで避けたような、大きな口が在った。
 不意に其処から、機械碗にも似た“舌”が伸びる。其れは、部屋に散らばる薬莢を、銃火器を、ころりと転がる金貨を掴み、腹の口へと仕舞って行く。
 其れだけでは無い。
 がしゃりと伸びた舌は、部屋中に横たわる骸骨すら捕え、躊躇うこと無く大きな口へ運んで行く。
 其れは悍ましい光景だった。物を、ヒトを、彼は喰っているのだ。
「――ああ」
 嘆息が、聴こえた。
 酷く陶酔したような響きだった。然し襤褸布で覆われた男の表情は、誰にも分からない。ただ、腹部に備えられた大きな口だけが、満足そうに開閉を続けて居る。
「旨し、旨し」
 腹の口を鋼鐵の腕で撫でながら、男は猟兵たちの方を振り返る。布の隙間から芒と光る赤い眸は、品定めするように敵の姿を眺めて居た。
「よくぞ参った、イェーガー。汝らも我が胎に収めて呉れよう」 
 彼こそが倒すべき帝国残党、銀河帝国に嘗て使えていた僧侶であり、宇宙の覇権を望む邪な男、大賢人『ラゴス・ヴァルカー』である。
 ヴァルカーは不意に祈りを捧げるかの如く片手を貌の前で固定させ、何やら奇怪な読経を唱え始めた。

 彷徨える仔等よ 哀れな魂よ 灰に還れぬ者どもよ
 我を求めよ 我を讃えよ 我が名を遍く銀河に轟かせよ
 神に棄てられようと 天帝に見放されようと 皇帝に忘れ去られようと
 我が胎に在る限り 我が聲を聴く限り 汝らの生に幕は降りぬ
 大賢人の恩寵に いまこそ喜び 咽ぶが良い
 
「招請、招請――」
 ウォーマシンの僧侶が、奇妙な読経を終えた刹那。床に横たわる髑髏たちが、一斉にカタカタ、カタカタと笑い始めた。彼等のバラバラに成った躰は、みるみるうちにヒトの容を成して行き、軈ては戦場に散らばる銃火器と合体して行く。
「よいか、拙僧が汝らに救いを齎したのだ」
 ゆえに朽ち果てるまで、其の身を捧げよ――。
 そう嘯く男の腹に在る大きな口は、不気味に笑っていた。僧侶の癖にいのちを弄び、暴食の罪を犯す此の大賢人を、誰が放って置けようか。
 廃船に集った猟兵たちの胸に、決意と闘志の炎がゆらり、確かに揺らめいた。

<補足>
・引き続き、宇宙服や呼吸対策などの記載は省いて下さって大丈夫です。
・フレーバーとして「OWL」を同行させることが出来ます。
 →戦闘機能は有りませんが、モニターを明滅させて応援してくれます。
 →勿論、判定には影響ありません。お好みでどうぞ。

・アドリブOKな方は、プレイングに「◎」を記載頂けると嬉しいです。
 →また連携OKな方は「☆」をご記載頂けると嬉しいです。
・性的な要素を含むプレイングは、不採用とさせて頂きます。申し訳ありません。

<受付期間>
 9月18日(金)8時31分 ~ 9月21日(月)23時59分
エンジ・カラカ
◎☆

賢い君、賢い君、アイツ。アイツがいるいる。
フクロウ、フクロウ。
うんうん、そうだそうだ、コレと賢い君を応援してる。

アァ……賢くてイイヤツだなァ……。
で、何するンだっけ……?

アァ、アイツを倒す。
オーケー、あーそーぼ。
コレには自慢の脚があるンだ。
アイツをコッチにおびき寄せて隙を作りたい。

間隔は一定で、時々わざと攻撃を受ける受ける。
そうすれば油断をするカモしれないしれない。

その間に赤い糸を張り巡らせて、敵サンに絡めるンだ。
チャンスが出来たら薬指の傷を噛み切って君に食事を与える。

一気に炎の中サ。
炎にまみれての鬼ごっこダヨー。
たーのしいねェ。
もっとあーそーぼー。


荻原・志桜
◎☆
フクロウくんとのんびり過ごして
目的地へ着いたら危ないから離れていてもらうね
キミたちに何かあったら悲しいから
でも応援してくれる気持ちはちゃんと伝わってるよ

杖を構え乍ら向かった先で聞こえてくる咀嚼音
ヒトを食べる様子に杖を握る手に力が入る
だけどやるべきことは理解してるから一歩踏み出して

それは救いじゃない
死したヒトを安らかに眠らせることもなく、
自分の欲を満たすために弄ぶことを看過できないよ

易々食べられるほどわたしは大人しくないからね
どうしてもと言うならこれでも食べてみる?
――貫け、星の剣!

トントン、杖で床を叩けば薄紅の光を帯びた陣
紡ぐのは凍える冷気を纏う剣の魔法
周囲に浮かぶ数多の剣を敵目掛けて貫く


●穿つ剣星、燃ゆる焔
 朽ちた船のなかは昏く、如何にも亡霊船の如き趣に溢れていた。
 けれども、機械仕掛けのフクロウ――“OWL-0096XS”たちが、灯で路を照らしてくれる。たった其れ丈のことは、怖がりの少女に前へと進む勇気を与えてくれていた。
 ばさばさと宙を舞うフクロウとのんびり船を散策するうちに、荻原・志桜はいつしか船の奥へと辿り着く。
「ありがとう、あとは大丈夫だよ」
 モニターフェイスを赤く明滅させながら、不思議そうに頸を傾げるフクロウを、志桜は優しく撫でてやる。つるりとした頭は、ひんやりとしていて心地いい。
「キミたちに何かあったら悲しいから……」
 だから、此処で待って居て。そう伝えれば、フクロウたちは「きゅるるるる」と稼働音を響かせて返事をした。こうしていると、なんだか意志が疎通できているみたいだ。
「応援してくれる気持ちは、ちゃんと伝わってるよ」
 だからこそ「いってきます」と手を振って、志桜はひとり戦場へと向かう。開けた其処に近づく程に、何かをすりつぶすような、咀嚼音が聞こえる。
 杖を構えながら靜に中を覗いてみれば、仙人のごとき風体のウォーマシンが人骨を貪る様が双眸に映った。余りにも悍ましい光景に、指先へと力が籠る。
 本当は、目を背けたかった。けれど、やるべきことは理解しているから。少女は確りと、一歩前に脚を踏み出した。

「それは、救いじゃない」

 凛と響く彼女の聲に、大賢人『ラゴス・ヴァルカー』は振り返る。芒と輝く赤い眸が、志桜の貌へと集中した。まるで、値踏みをするかの如き視線だ。先ほどの食事風景を思い出し、湧き上がる怖気をぐっと堪えながら、少女は気丈に言葉を紡ぐ。
「死したヒトを安らかに眠らせることもなく、自分の欲を満たすために弄ぶなんて」
 ――そんなこと、看過できない。
 この僧侶は、食事を、死者を支配することを楽しんでいる。それを“救い”だと嘯くような欺瞞を、嘗て誰かにこころを救われたことのある志桜は、認めることなど出来なかった。
「くく。汝も我が胎に呑まれれば、きっと理解できようぞ」
「易々食べられるほど、わたしは大人しくないからね」
 表情を凛と引き締めて、少女は再び杖を握り締める。ひらりと揺れる桜色のリボンは、彼女に勇気を与えてくれた。
「ならば大人しくさせるまでのことよ。――往け」
 大賢人の号令を受け、死した兵士達がカタカタと笑いながら、銃火器と融合した腕を振るう。物騒な発砲音が、船の中に響き渡った。
 少女と死者の軍団のダンス・マカブルが、いま幕を開ける。


 のんびりと戦艦のなかを歩いていたエンジ・カラカは、ふと。見覚えのあるドローンたちの姿を見つけて、思わず脚を止めた。
「賢い君、賢い君、アイツ。アイツがいるいる」
 掌に載せた青い鳥に、“アレ”はなんだっけと問いかける。物言わぬ君の聲に耳を傾ければ、瞬時に青年の記憶は蘇った。
「フクロウ、フクロウ」
 廃船のなかで、鉄屑の場所を教えてくれた“機械の鳥”だ。彼等は船の最奥に留まったまま、モニターフェイスを赤く明滅させている。何かをじっと見つめているようだ。
 不思議に思いながら彼らの元へと歩みを進めれば、その理由に漸く思い至る。視線の先には、戦場が広がっていたのだ。
「アァ、観戦してるのカ?」
 かくりと座らぬ首を傾げてみるものの、フクロウたちは何も答えない。彼等はただ、桜色の髪を揺らす少女と、死者の軍団の死闘を明滅するモニターに映すだけ。
 其の意図は良く分からないけれど、取り敢えず目の前に遊び場が在ることは分かった。混ぜて貰おうと数歩足を踏み出した所で、背中に何故か視線を感じる。
 不思議に思って振り返れば、一体のフクロウがエンジのほうを向いて、一心にモニターを明滅させていた。青年は思わず、青い鳥と貌を見合わせる。
「うんうん、そうだそうだ、コレと賢い君を応援してる」
 青年の月色の眸が、にんまりと愉し気に弧を描く。悪い気はしない。モールスコードをひたすら繰り返すフクロウへ、ひらひらと手を振った。
「アァ……賢くてイイヤツだなァ……」
 のんびりと感心しながらも、エンジは賢い君へと視線をちらり。それで、何するンだっけ――。
「アァ、アイツを倒す。オーケー」
 目的を思い出した青年は、かくんかくんと頸を振り、月色の眸に不気味なウォーマシンの姿を映す。にんまりと笑んだ侭、エンジは戦場へと走り出した。

「あーそーぼ」

 自慢の脚で、少女に襲い掛かる兵士たちの前へと滑り込む。いきなり現れた仲間に、志桜は翠の双眸をぱちくりと瞬かせ、大賢人は躰を揺らし呵呵と不敵に笑った。
「なんと活きの良い獲物か。汝も饗膳にしてやろうぞ」
「コレはオオカミ、食べられる側じゃナイ」
 口許をにんまりと弛ませて、エンジは戦場を駆ける。まるで鬼事にでも興じるかのような、軽やかな足取りで――。
 狼の脚はとても速いから、間に合わせの兵士ではとても追いつけない。宙を狙う発砲音と、空薬莢が転がる音だけが空しく響き渡った。
「余所見は禁物、だよ」
 新たな獲物に兵士達が気を取られている隙に、志桜は再び術を編む。トントン、杖の先で床を叩けば、薄紅の光を帯びた魔法陣が芒と浮かび上がる。其処から紡ぐのは、凛と煌めく剣の魔法。少女の周囲には次々と、青き光を纏う剣が浮かび始めた。
「断罪の星は満ちた。裁きの剣を此処に」
 ――リュミエール!
 冷気を纏う剣が、一斉に飛翔する。其れらは複雑な幾何学模様を描きながら、星のように流れ往き、軈ては兵士たちを次々と貫いて行く。
 凍り付いた骸骨たちといえば、すっかり力を喪って、カラカラと床の上に崩れ落ちた。どうやら耐久性は至極低いようだ。
 哀れな彼等に一瞥をくれたのち、少女は翠の双眸で大賢人の姿を探す。悪食の僧侶といえば、活きの良い獲物にすっかり夢中のようだ。

「むむ、すばしっこい奴め」
「惜しい、惜しい。次はいける?」
 揶揄うような科白を投げながら、薬莢を踏み、屍を超えて、エンジは戦場を駆けまわる。もちろん、敵と一定の間隔を保つことは忘れない。
「笑止、拙僧の食欲を侮ることなかれ」
 大賢人が怪しげな読経を唱えれば、再び骸骨たちがカタカタと笑い立ち上がる。其の内の一体が銃火器を嵌め込んだ腕から、どぅ――と鉛玉を放てば、其れはエンジの貌を掠り、彼の頰に赤い絲を引いた。
「……アァ、鉛は嫌いダ」
 敢えて“掠らせてやった”ものの、オオカミはそもそも銃が嫌いなのだ。少しだけむくれながらも、ちらりと僧侶の姿を盗み見る。大口を開けて呵呵と笑う其の様からは、明らかな油断が見て取れた。
 ――仕掛けるならば、今のうち。
 エンジはふと立ち止まり、指に絡ませた赤い絲をつぃと引く。刹那、数体の兵士がバランスを崩し、床へと崩れ落ちた。
「なんとッ!?」
 思わぬ展開に、眸を明滅させて狼狽える大賢人。エンジはただ策も無く逃げていた訳では無い。戦場に赤い絲を張り巡らせていたのだ。
 気づいた時にはもう、ウォーマシンは雁字搦め。もちろん、死したる兵士たちも巻き添えだ。
「アァ……いと惜しい」
 がり。薬指の疵痕を噛み切れば、赤い血が垂れる。エンジが賢い君に其れを啜らせた――刹那、囂々と赤い絲が燃え盛る。まるで戀の焔のように。
「ぐおぉぉぉッ……!」
 炎に包まれた骸骨の兵士たちは、みるみる内に灰と成り、大賢人も黒い煙を吐き出しながら苦悶の聲を上げる。エンジはゆらゆらと頸を揺らしながら其の様を眺め、月色の眸を細めて見せた。
「炎にまみれての鬼ごっこダヨー。たーのしいねェ」
「ぐッ……汝も火にくべて喰ろうてくれるわ!」
 業火に包まれながらも、執念深く獲物を追わんと口を大きく開ける大賢人。其の隙を、もうひとりの猟兵は見逃さなかった。
「じゃあ、これでも食べてみる?」

 ――貫け、星の剣!

 四方八方から、冷気を纏った青き剣が幾何学模様を描きながら飛んでくる。焔の絲に捕らわれた大賢人が、其れを避けられる筈も無い。
「があッ……!」
 大口のなか何本もの剣が突き刺さり、獰猛な舌を、そして悍ましい口を凍らせた。開閉すら許されぬ腹をどうにか動かそうと藻掻く僧侶を見降ろして、エンジの口許が三日月めいた弧を描く。
「もっとあーそーぼー」
 “口”を凍らされた僧侶からの返事は無い。ふとフクロウたちの存在を思い出して、後ろを振り返る。まだ、見守ってくれていた。
「あ、フクロウくん!」
 釣られて振り返った志桜が手を振れば、フクロウたちは頸を傾げて、赤い明滅を返す。モールスコードの応援は、継戦への気力を与えてくれるから。苦悶に藻掻く敵を見つめながら、少女は再び杖を確りと握りしめたのだった。
 悪しき饗宴は未だ、終わらない――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

スピーリ・ウルプタス
◎☆#
「括目相対していただけるならば、是非!」
とはいえ危険が決して届かぬ位置でお願いしますね、とOWLへ微笑んだり

大賢人の前
「本当に“救って”いるならば、私もお邪魔するつもりは無いのですが」
他の猟兵方やエグマリヌ氏、船長の言葉たちを脳裏で反芻
「どうやら心地よいのは貴方だけのようです。いけませんねぇ同意の無い蹂躙は。
 視姦して下さるモノは須く大事にしなくては」
アウトなのかセーフなのか分からぬ台詞口走る変人

UC発動
攻撃担当は黒蛇、自身は囮役
舌が来れば本体避けつつその肉体で蛇庇う
(ッッ…ダイ様の噛みつきと…どちらが痛いですかねぇ)※余計な思考
隙を蛇が狙い羽交い絞めに(←お仲間様に攻撃してもらって良し


●大蛇は凶舌と踊る
 スピーリ・ウルプタスは今、にこやかな笑みを浮かべた侭、機械仕掛けのフクロウと共に戦場へ足を運んでいた。OWLのモニターフェイスは、只管に同じ調子で赤い明滅を続けて居る。長く、長く、短く――。短く、長く、短く、短く――。
「括目相対していただけること、たいへん光栄です!」
 じぃっと注がれる無貌の視線の、なんと心地好いことか。こころの裡が満たされていくのを感じながら、青年は傍らを飛び回るフクロウへと優しく微笑みかける。
「とはいえ、オウル様。応援は危険が決して届かぬ位置でお願いしますね」
 未来のお仲間候補を、傷つけぬように――。
 果たして彼の意図はちゃんと伝わったらしい。OWLは軽く小首を傾けたのち、開けた部屋の入口でお利口に立ち止まった。其れを見届けた青年は満足気に頷いて、敵地へと足を踏み入れる。
「御機嫌よう、大賢人殿」
 霜の降りた口をぎこちなく開閉させるウォーマシンへ意気揚々と聲を掛けたなら、不気味な赤い視線が、じとりと注がれる。
「汝も拙僧が齎す“救済”の邪魔をしに来たか」
「本当に“救って”いるならば、私もお邪魔するつもりは無いのですが――」
 ちらり、戦場に転がる骨たちへ視線を向ける。彼らは戦禍の中、帝国の為に最期まで戦い抜いた兵士たちだ。そして此の大賢人は、英霊たちを無理やりに戦いへと引き込んでいる。

 これは、果たして救いなのだろうか。

 此の任務は“世界平和”に繋がるのだと、グリモアベースではそう説明を受けた。そして、仲間達はヴァルカーの行いを、“救いではない”と糾弾していた。
「どうやら心地よいのは貴方だけのようです」
 彼を野放しにすることはきっと、この宇宙世界を、そしてOWLと船長たちを危険にさらすことに繋がるのだろう。――ならば、スピーリが下す結論は、ただひとつ。
「いけませんねぇ、同意の無い“蹂躙”は」
 独り善がりな支配には、全力で拒絶を叩きつけるまで。
 薄らと笑みを張り付けたまま頸を振るスピーリへ赤い視線を注ぎながら、大賢人は呵々と笑う。
「なに、汝も直ぐに拙僧の教義を受け入れようぞ」
「試してみます?」
 くつりと微笑を零した青年が、「いらっしゃい」と眷属を招く。刹那、戦場にしゅるりと蜷局を巻いて現れるのは、黒い大蛇の“ダイ様”だ。彼は鋭い牙を剥き、細い舌をちらつかせながら、大賢人へと威嚇を放つ。
「おお! 本物の蛇とは珍味よな、喰らい甲斐もあるというもの」
「おやおや、先に私の方を味見されては如何でしょう?」
 僧侶の恐るべき食欲が大蛇へ向けば、すかさずスピーリが彼の前へと躍り出て、鞭のように禁書の鎖をぴしゃりと振う。本体たる禁書を締め付ける其れは、振う程にじわじわと痛みを齎すが、そんなことは些細な問題だった。
 青年にとって、大蛇はただの眷属では無い。大事な攻撃手であり、守るべき存在なのだ。
「ならば、纏めて喰ろうてやろうぞ!」
 しゅるり――。大賢人の腹に携えられた大きな口から、機械碗めいた舌が青年めがけて伸びる。スピーリは其れをひらりと躱して、鎖で強かに打ち据えた。金属と金属がぶつかりあう軽やかな音が響き渡り、青年の躰には鈍い痛みが走る。
「ぐッ、小癪な!」
 鎖から与えられた痛みに痺れる舌を振り回し、大賢人が次に狙いを定めるのは黒い大蛇だ。機械碗にも似た舌が、今にも蜷局を巻く其の躰に襲い掛かろうとした――刹那。
「ダイ様……!」
 彼を庇うように躍り出たスピーリが、其の舌に打ち据えられる。余りの衝撃に、青年の躰は床へと沈み込む。固い舌に抑えつけられた躰からは、ミシミシと、骨が軋む音がした。
「……ッ」
「くく、汝も拙僧の糧と成るが良い」
 酷く嬉し気な聲に、ちらりと視線だけで後ろを振り返れば。すぐ其処にはもう、機械仕掛けの僧侶の大きな口が在る。
 ――ダイ様の噛みつきと……どちらが痛いですかねぇ。
 呑気な思考が脳裏に過った、其の瞬間。食事に集中するあまり無防備と成った僧侶の躰に、大蛇が重く圧し掛かる。
「なッ……ぐあぁッ……!」
 体勢を崩した僧侶は、あっという間に大蛇に絡め取られてしまった。ギリギリと締め付けられれば、機械仕掛けの躰の彼方此方から火花が散る。
「――さあ、ダイ様」
 自身に纏わりつく埃を払いながら、そろりと立ち上がり、スピーリはうっそりと笑う。喩え満身創痍であったとしても、彼の笑顔は翳らない。
「食事のお時間ですよ」
 ぽつりと優しく放たれた号令に、大口を開けた蛇が、――ぱくり。大賢人の上半身へ躊躇い無く噛みついた。バキバキと、鋼鐵が軋む音が響き渡る。
 彼らが為の饗宴は、未だ始まったばかりなのだ。
大成功 🔵🔵🔵

朱酉・逢真
◎☆
心情)手足の生えたドクロマシンか。おもしれェデザインだねぇ。ウォーマシンもヒトのうち。かみさまごっこに興じてるあたり、かわいいこったよゥ。あんなン100年もすりゃ飽きるだろうに…ああ、《過去》だからずゥっと繰り返してるのかね。楽しんでンならいいことさ。それはそれとして《過去》は殺すぜ。お仕事だ。
行動)カエルみてェな舌は、《獣》を盾にうけとめる。マシンのフクロウでもいいっちゃいいンだが借り物だしなァ。壊さんほうがよかろォよ。獣が食われる前に俺の《毒》で腐り溶かす。それで俺に噛み付いてくるンなら、その大口ン中めがけ、呪殺弾をどっさりブチこんでやらァよ。そのまンま、まっぷたつにちぎれな。


琴平・琴子
◎☆

飢えた知人に差し出す体ならともかく
見知らぬ輩に差し出す体は髪一本すらありません

食われそうな応援の梟は庇い
食べられても激痛耐性で凌ぎ
梟は後ろへ下がらせる
お前たちは食べられない様にそこにいて
私がお前たちを守りますから

巨大化した体はなんて醜いことか
悪食にも程がある
信じて救われるならお前の空腹は何?
身も心も満たされぬ、満たせぬ輩に
救われる安い心身ではなくってよ

巨大化しても足があるのなら
足元を棘で突き刺し体勢を崩させる
その大きな図体はただの飾りですか?ガラクタですか?
騒がしいのも好きじゃないですし
咀嚼音は耳障りであったし、
食べるだけ食べて満たされない貴方に嫌気が増すだけ


●其の咎の名は
 ふたりの猟兵と、フクロウのドローンが開けた戦場に辿り着いた時、帝国の残党――大賢人『ラゴス・ヴァルカー』は疵を負いながらも、腹に備えられた口を休みなく動かしていた。
 ガリガリ、ボリボリ、バキバキ、ぐしゃ――。
 悍ましい咀嚼音が聴こえる。彼が何を食べているのかは、不気味に伸びた其の舌を見れば一目瞭然だ。
「手足の生えたドクロマシンか。おもしれェデザインだねぇ」
 奇妙なシルエットのウォーマシンをそう称し、朱酉・逢真はくつりと笑む。盛り上がった後頭部に、腹を裂く大きな口。成る程、確かに全体像は髑髏に似ていた。
「ええ、――まるで妖怪のよう」
 彼の傍らで大賢人を見つめる琴平・琴子の眼差しは、何処までも冷ややかだ。何時までも鳴りやまぬ咀嚼音に、少女の表情は益々険しくなる。食べているものを考えると、決して心地よいものでは無い。
「おお、次の饗膳が参ったか。さあ、徳を積む為にも、拙僧の胎の足しと成れい」
「お断りします」
 新たなる獲物の姿を視界に捉え聲に喜色を滲ませた僧侶の要求を、きっぱりと撥ね除ける琴子。百歩譲って、飢えた知人に差し出すなら兎も角――。
「見知らぬ輩に差し出す体なんて、髪一本すらありません」
 なにせ彼女の躰は、尊敬する両親から貰った大切なものなのだから。されど、此の僧侶は不気味に体を揺らしながら、呵々と笑うのみ。
「ならば、無理にでも我が胎に詰め込んでやろう」
 大きく開いた口から、しゅるり。凶暴な舌が飛び出した。機械碗に似た其れは、戯れるように宙を舞い――。
「先ずは、その小さき獣から」
「危ない……!」
 モニターフェイスを明滅させるフクロウへ、勢いよく向かって行く。咄嗟に動いたのは琴子の方だった。羽搏くフクロウを押し退けて、強かな一撃を其の身で受け止める。
 ただ舌をぶつけられた丈たと云うのに、思い切り殴られたような衝撃があえかな躰に襲い掛かった。
「……っ。お前たちは食べられない様に、下がっていて」
 唇を噛み締めながら、凛と煌めく翠の双眸でフクロウを振り返る少女。弱きを助け、強気を挫くことこそ、“王子様”の在り方ゆえに。
「私が、お前を守りますから」
 紡ぐ科白に覚悟を滲ませれば、フクロウは稼働音にて了承の返事を奏で、大人しく後方へと下がって行く。相も変わらず、貌を規則正しく赤色に明滅させながら。
「拙僧を拒むとは、愚かな。我が胎に収まれば、憂いも苦しみも無くなると云うに」
「……かみさまごっこに興じてるあたり、かわいいこったよゥ」
 大真面目に憤慨して見せるヴァルカーの科白に耳を傾けて、逢真は思わずくつくつと肩を揺らす。
 正真正銘の“神様”である逢真にとっては、ウォーマシンも“ヒト”のうち。ゆえに、偽りの全能感に陶酔している僧侶の振舞は、極めて幼稚なものであり、可愛げさえ感じられた。
 ――あんなン100年もすりゃ飽きるだろうに……。
 祀り上げられる側として云うならば、神様の仕事なんて面白いものでは無い。帳尻合わせの為に、魔地から宇宙の辺境まで斯うして出向く羽目になるのだから。
「“ごっこ”など、笑止千万! 拙僧は軈て、此の宙を統べる神と成るのだ」
「ああ、――《過去》だからずゥっと繰り返してるのかね」
 躯の海から蘇りし此の残党も、結局は「過去」のリフレインに過ぎないのだ。それは、永遠に一所に留まり続ける地縛霊にも似ていて。逢真はつぅ――と、双眸を細めて笑った。
「楽しんでンならいいことさ」
 カエルみたいな重たい舌が再び宙を舞えば、神は赤い目をした“獣”を喚ぶ。嘶く黒馬は、彼の前へと躍り出て、其の身で以て凶舌を確りと受け止めた。
「それはそれとして《過去》は殺すぜ、お仕事だ」
「くく、拙僧に供物を捧げておいて、未だそんなことを……」
 先ずは此れを喰らってやろうと、獣を締め付ける舌に力を籠めた、其の時。どろり――、鋼鐵の舌からオイルが漏れる。否、これはオイルでは無い。いま将に彼の舌は腐敗して、液状化し始めて居るのだ。
「貴様ッ……」
 大賢人は其の実、大海を知らぬ蛙であった。
 逢真こそ病毒に戯ぶ神であることを、そして其の使い魔たる彼等もまた、疫病や毒を介することを、彼は知らなかったのだ。機械の僧侶は慌てて舌を“獣”から引き剥がすが、蕩けた舌はそう簡単に戻らない。
 ――マシンのフクロウでも、いいっちゃいいンだが……。
 ちらり、後方で応援を続けるフクロウへと一瞥をくれて、神は小さく頸を振る。アレは借物なのだ。それに、幼い少女がアレを庇おうとして居たことは記憶に新しい。
 ――壊さんほうがよかろォよ。
 邪なほうに分類される神といえど、幼子の友を悪戯に奪うような真似はしないのだ。そんな彼の深慮を推し量れぬ僧侶は、悪食を味わう為の舌を傷つけられてご立腹の様子。
「おのれ、我が悪食の恐ろしさ思い知らせてくれる」
 ガシャガシャ、ガシャガシャと、機械のパーツが擦れ合う音を立てて変形して行く大賢人。あっという間にその姿が巨大な兵器へと変形すれば、琴子は思わず息を呑んだ。

「――なんて醜い」

 髑髏のようなシルエットと巨大兵器が合体したような躰からは、辛うじて残って居た人間らしさの欠片も感じることが出来ない。大きな口が開閉して笑う様などは、嗚呼、悍ましいにも程が有る。彼は更なる悪食を求めているのだ。
「信じて救われるなら、お前の空腹は何?」
 気丈にも翠の双眸で大賢人を睨め付ける彼女の脳裏には、あの忌々しい咀嚼音と、貪り食われる人々の姿が、鮮やかに焼き付いて居た。
 あれは、救いなどでは無い。ただの浅ましい餓鬼の饗宴だ。ゆえにこそ、琴子は僧侶が謳う“救い”を拒絶する。
「身も心も満たされぬ、満たせぬ輩に救われる安い心身ではなくってよ」
「小娘が生意気に――」
 気色を損ねたらしい巨大兵器が、其の砲身から銃弾を放つ。其れをレイピアで叩き落しながら、少女は敵の元へと駆けて往く。目指すは、巨大な図体に見合わぬ“脚”だ。
「その大きな図体はただの飾りですか? それとも、ガラクタですか?」
 騒がしいのは好きじゃない。ゆえに、あの咀嚼音は耳障りであった。それに何より、食べるだけ食べて満たされない、貪欲な機人には嫌気が増している。
 胸の内側から湧き上がる有りっ丈の嫌悪感を籠めて、ペリドットの煌めきのレイピアで脚を穿てば、軽やかな金属音が鳴り響いた。――疵は浅い。されど、術は成った。
「ぬうッ……!?」
 大賢人が突如としてバランスを崩し、重たい躰が床へと強かに激突する。彼の脚元にはいま、無数の棘が絡みついていた。自由を取り戻そうと藻掻く程に、其れは鋼鐵の脚にきつく喰い込んでいく。
「その痛みは貴方の自業自得でしょう?」
 己の上に差した小さな影がそう囁けば、機械の僧侶は悔し気な唸りを上げる。その傍らにふと、もうひとつ長い影が差した。
「よォ、“かみさまごっこ”はもう仕舞いかい?」
「未だだ、未だ終わっておらぬ……!」
 にやにやと嗤う青年の白い貌に、解けかけた機械の舌がしゅるりと伸びた。逢真は其れをするりと避けて、逆に自分から、相手の口へと腕を突っ込んでやる。いま彼の掌中には、闇と瘴気を纏った呪殺の弾が蠢いていた。
 奈落の如き口の中に其れを、――解き放つ。

「そのまンま、まっぷたつにちぎれな」

 刹那。呪いは風船のように弾け、大賢人は内側から瘴気に蝕まれていく。ビキビキと、髑髏めいた貌に罅が入る音がした。
 凶星の神に裁かれし僧侶が堕ちる先にはきっと、涯の無い煉獄が広がっている。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ネフラ・ノーヴァ
◎☆
トリテレイア殿(f04141)と。

分け隔て無きその暴食、さぞ人々の身体も無数に食べたのだろうな。(人形を愛でるような年端もいかぬ子もきっと)貴公の欲、咎めはしない。ただ我が刃を食らわすだけだ。

巨大化か、なるほど。ではこちらは羽虫のように小煩く振る舞うとしよう。
トリテレイア殿のUCが実行されればこちらもUC瀉血剣晶を発動。奴の口内に食らわせる。可能なら舌の切り落としを狙う。
さあ、血の刃を食らった味は如何かな?


トリテレイア・ゼロナイン
◎☆
ネフラ様(f04313)と

資源が限られる環境
遺骸を貪るその行いの多少の理は認めましょう

ですが悪名高き銀河皇帝すら凌駕せんとす不遜な私利私欲
それに費やされることは許容いたしかねますね
御覚悟を

ネフラ様、手筈通りに

二手に分かれ
巨大兵器に対し●武器受け●盾受け●怪力での近接攻撃を織り交ぜ接近戦
装甲と出力を恃み常に相手に身を晒すことで此方の脅威度を下げ、ネフラ様に注意を払わせるよう誘導

OWLを連れて来ず正解でした
中々の激戦です

ネフラ様を捉えようと隙を見せた瞬間を●見切りUCで●だまし討ち
ワイヤを巻き取り麻痺した敵に●騎乗
手綱を引くよう頭部を引っ張り無理矢理口をこじ開け

この悪食に最期の晩餐を…ですね


●血彩の晩餐
 戦場には数多の骸骨と薬莢と、敵の躰から零れたパーツ――スクラップが幾つか転がっていた。大賢人『ラゴス・ヴァルカー』は散ばるそれらを、長く伸ばした舌で絡め取り、腹にぽっかり開いた大口へと運んで行く。
「遺骸を貪るその行いの、多少の理は認めましょう。ですが……」
 其処に足を踏み入れた白き騎士――トリテレイア・ゼロナインの翠彩の双眸は、バリバリと歪な咀嚼音を零す、僧侶の大口へと向けられていた。
 資源が限られる環境だ。それが、此の大賢人の“生命維持行為”だと云うのなら、咎めることなんてしないけれど。事態はもっと深刻で、悪質だ。
「悪名高き銀河皇帝すら凌駕せんとす不遜な其の私利私欲に、これらが費やされることは、許容いたしかねますね」
 遺骸を踏まぬよう注意を払いながら、一歩、白騎士は足を踏み出した。その後ろを、クリスタリアンのネフラ・ノーヴァが続く。
「分け隔て無きその暴食、さぞ人々の身体も無数に食べたのだろうな」
 そう、例えば人形を愛でるような、年端のいかぬ少女すらも――。
 廃船にて拾い上げた人形のことを思い起こし、ネフラのこころの裡には、やるせなさと怒りの焔が湧き上がる。されど、彼女は決して断罪人では無い。
「貴公の欲、咎めはしない。ただ、我が刃を食らわすだけだ」
「ええ、お覚悟を」
 得物を凛と構えるふたり。一方、彼らと対峙する大賢人は、髑髏めいた巨体を揺らして呵々と笑う。襤褸布の隙間から視える赤い眸が、芒と不気味に輝いた。
「覚悟を決めるのは汝らの方であろう。纏めて我が胎に放り込んでくれるわ!」
 ガシャガシャと音を立て、僧侶の躰はみるみる内に巨大な兵器へと変形して行く。髑髏の頭と砲台を合体させたような其のシルエットは、不気味な威圧感を放っていた。
「――ネフラ様、手筈通りに」
「ああ、心得た」
 一度だけ視線を交わして、ふたりはそれぞれ別の方向へと駆けて往く。はたして敵の視線を先に惹き付けたのは、長躯を誇るトリテレイアの方だった。
「逃がさん」
 轟音と共に砲筒から続け様に放たれるのは、弾丸の雨。白騎士は其れを大型の盾で受け止めて、時には儀礼用の長剣で其れを叩き落しながら、敵へと肉薄して行く。
「生憎ですが、貴方の餌に成ることは出来ません」
 そうして大きく盾を振りかぶり、有りっ丈の力を籠めて殴りつける。まるで銅鑼のような低く、鈍い音が、戦場全体に響き渡った。
「むむ、なんと小癪な……」
 砲筒がキュルキュルと回転する。其れはトリテレイアの姿を捉え、彼に向けて再び砲弾の雨を降らせて往く。盾と丈夫な装甲で其れを弾きながら、白騎士は内心で安堵の科白を零していた。
 ――OWLを連れて来ず正解でした。
 中々の激戦だ。もし近くに置いて居たら、彼らはこの凶弾に撃ち落とされていたかも知れない。守るべき対象が居ないからこそ、いまは無茶が出来る。降り注ぐ砲弾のなかを突っ走り、盾ごと敵に体当たりすれば、大賢人の巨大な体が大きく揺れた。
「くッ……」
「おや、こちらは見てくれないのか?」
 再び砲筒がトリテレイアの方へと回転した刹那、気を惹くようにネフラが棘剣を振るう。一撃だけでは留まらない。蝶の如く敵の周囲を飛び回り、何度も何度も、棘を突き刺して行く。
「ええい、鬱陶しい!」
 果たして敵は頑丈で実直なトリテレイアの一撃よりも、ネフラの方を脅威と見て取ったらしい。砲筒の狙いがクリスタリアンの乳白に煌めく肌へと向いた、其の刹那。
「少し大人しくして頂きましょう」
「あがッ……!?」
 白い騎士の躰から、隠し腕が勢いよく射出される。ワイヤで制御された其れは、しゅるしゅると敵の元まで伸びて往き、蜘蛛絲のように一気に其の身を絡め取った。其処へ一瞬だけ流れた電流は、機械仕掛けの躰に伝わる電気信号を狂わせる。
「騎士としては、行儀が悪いのですが……」
 敵が動きを止めた其の瞬間、トリテレイアは地を蹴って高らかに飛翔する。そうして着地した先は、巨大兵器の髑髏頭だ。見事に敵へと騎乗した騎士は、大賢人の胎に巻き付いたワイヤを、本来の腕で手綱のようにぐいと引いて見せた。
 ただでさえ大きな口が、此れでもかと云う程に開かれる。

「――さあ、この悪食に最期の晩餐を」

 白い騎士に促され、クリスタリアンは術を編む。自らの腹を刺し貫き、棘剣に鮮血を捧げたのち、其れをそうっと引き抜いて見せる。腹の傷は瞬時に塞がれて、棘剣は何時しか、赤い両刃剣へと其の容を変えていた。
「我が血の刃、受けるがいい」
 助走をつけて、ネフラは駆ける。目指すは大きく開いた状態で固定された、あの口の中だ。大きく腕を突き出せば、血彩に染まった剣を勢いよく突きつけた――。
 哀れ、両刃剣を捻じ込まれた口内はズタズタに裂け、機械仕掛けの舌にはビキビキと罅が入る。口端からボロボロと零れ往くのは、敵の躰を構成するパーツの類だろうか。
「さあ、血の刃を食らった感想は如何かな?」
 いくら悪食であろうとも、自らの口内を破壊されては何も味わうことが出来ぬ。音も無く苦悶するウォーマシンの躰は、少しずつ確実に、壊れ始めていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

浮世・綾華
嵐吾さん(f05366)と

ええ、応援されてんのに負けちまうなんて
男じゃないですしねえ

ううん?機械なのに、僧侶なわけ?随分と変わってんな

うん。嵐吾さんが美味かったとしても
つーかそしたら余計に?髪の毛一本だってあげたくないでしょ

俺は不味くてもいーケド
何にしても、ふーちゃんたちに酷いことしたお前は
ちゃんとぶっ潰さないと?

何か――武器を増やして突っ込む、なんてどうデス?
扇なら…あれは炎を宿すし…
嵐吾さんの炎でほら、ネ?

数多の扇を浮かばせ
攻撃を払いながらも隙をみて口に放り続け

もう無いもんだろう
いのちも、意思も

だからせめて出来ることをしようと
嵐吾さんの言葉に頷く

あんたが使う為だけに
無理やり起こしてやるなよ


終夜・嵐吾
あや君(f01194)と

ふーちゃんの応援じゃと?
それがあれば百人力、負ける気はせんな
なぁ、あや君

わしは喰ったら美味いんじゃろか
不味いよりは美味い方がええが、一口とて齧らせてやるつもりはない
ああいうぱかぱかしておる口には不味いもん突っ込んでやりたくなるの…

不味いものはないが、炎を突っ込むか
あや君、なんかほかに突っ込めそうなええもんあるかの?
扇?なるほど、名案じゃね
あや君が沢山放りこんだら、わしもでかいの一発くれてやろう

読経唱えよるが、それに救いが見えることはなく
おいといてもようないね
では腹の中から燃やして、滅ぼして
逆に汝を救ってあげよ

なんて笑って、炎を集えてその口に放り込むよう動こう


●扇は焔に包まれて
 スクラップと骸骨が転がる戦場にて、機械仕掛けのフクロウは、せっせとモニターフェイスを明滅させ続けて居る。長く、長く、短く――。短く、長く、短く、短く――。
「ふーちゃんの応援じゃと……?」
 其の規則性が何を表すのかは分からねど、伝えたい思いは見て取れるので、終夜・嵐吾は片方の眸をそうっと弛ませた。
「それがあれば百人力、負ける気はせんな」
 なぁ、あや君――。そう同意を求めれば、浮世・綾華もまた、頬を弛ませながら頷いてくれる。
「ええ、応援されてんのに負けちまうなんて、男じゃないですしねえ」
 格好いい所を見せてやろうと頷き合った其の先では、満身創痍と云った様子の大賢人が、傷付いた舌を大口に仕舞い込んでいた。
「おのれ、忌々しい猟兵どもめ。これでは拙僧の身が持たぬわ……」

 招請、招請――!

 どうやら食事の時間は一旦お終いらしい。大賢人は機械仕掛けの手を合わせ、奇妙な念仏を唱え始める。
「――ううん?」
 其の様を見て、怪訝そうに頸を傾げる綾華。帝国の残党ときたら、普通は兵士であったり、工作員であったりするものだが。この敵は、少し毛色が違うようだ。
「機械なのに、僧侶なわけ?」
 随分と変わってんな――。そんな想いを抱きながら、まじまじと敵の動きを注視する彼の赤い双眸に映るのは、カタカタと笑いながら起き上がり始める骸骨たちの姿。敵は傷がいえる迄、彼らに戦わせる心算らしい。
「さあ、拙僧の為に時間を稼げ」
 そう言い捨てた僧侶は痛々しい舌を伸ばし、戦場に散らばるスクラップを、バクバクと大口へ運んで行く。ギリギリ、ぐしゃぐしゃと、厭な咀嚼音が戦場に響き渡った。

「わしは喰ったら美味いんじゃろか……」
 敵の凄まじい喰いっぷりを見て、嵐吾の口からは思わずそんな感想が漏れた。傍らの綾華は思わずぱちりと瞬いて、少しだけ思案貌をする。
「うん。嵐吾さんが美味かったとしても……つーかそしたら余計に? 髪の毛一本だってあげたくないでしょ」
「うむ、不味いよりは美味い方がええが、一口とて齧らせてやるつもりはない」
 あの暴食振りときたら、きっと味すら直ぐ忘れてしまうに決まって居る。互いの見解を擦り合わせた所で、ふたりは緩慢に迫り来る死者の軍団へと向き直った。耐久性に欠けた彼等は捨て置くとして、問題は首領とどう戦うかだ。
「ああいうぱかぱかしておる口には、不味いもん突っ込んでやりたくなるの……」
「あー……」
 分かる気がする。
 なにせ航海の途中、僧侶の配下であろう蝶たちに、フクロウたちは酷いことをされたのだ。ゆえに綾華は「アイツはちゃんとぶっ潰す」と、胸中ひそかに誓って居た。
 しかし、なにが良いだろうか。本体は無機物である此の身は不味いかも知れないが、大事な躰なので粗末にはしたくない。
「不味いものはないが、炎を突っ込むか」
「……序に武器を増やして突っ込む、なんてどうデス?」
 武器? と頸を傾ける嵐吾の前で、綾華はひらひらと黄金の扇を振ってみせる。悪戯に微笑みながら。
「嵐吾さんの炎でほら、ネ?」
「――なるほど、名案じゃね」
 嵐吾もまた、揺れる扇に何かを察した様子。悪戯に笑い合ったふたりは改めて、大賢人たちと対峙する。死者の軍団の凶刃は、すぐ其処まで迫って居た。
「じゃ、宜しく頼みます、嵐吾さん」
 ちらりと妖狐の青年へ視線を向けた綾華の“絡繰ル指”が、数多の扇を宙に遊ばせる。其れは勢いよく戦場を飛び回り、生体兵器に改造された死者たちの躰をバラバラに崩して行った。
 されど、其れらの目的は兵士の殲滅では無い。
「おお、供物か!」
 扇は次々に僧侶の大きな口へと入って行く。最初は喜んで咀嚼していた大賢人だが、激戦で傷付いた口内は物を上手く呑み込めず、段々と扇ばかりが積って行く。
「あ、がッ……」
 碌に口も閉じられぬ有様の僧侶からは、威厳の欠片も感じられぬ。あの読経と云い、悪食への狂いっぷりと云い――。
「おいといてもようないね」
「ええ、……せめて出来ることを」
 アレのやり口からは救いなど視えないと、そう肩を竦める嵐吾の言葉に頷いて、綾華は再び扇を彼の口へと放り込む。其の眼差しは、床に散らばる骸骨たちへと注がれていた。
「もう無いもんだろう。いのちも、意思も」
 其れなのに、彼らは尊厳すら奪われて、無理やり働かされている。鎮魂を願う祈りすら、与えられない侭で。
「あんたが使う為だけに、無理やり起こしてやるなよ」
 眠りを妨げられた彼らのことを想い、綾華はそうっと睫を伏せた。其の傍ら、嵐吾は己の掌中に狐火を集わせる。
「そんな有様じゃ、なにも救えんよ」
 だから。扇を詰め込まれた其の腹の中から燃やして、滅ぼして、
 
「逆に、汝を救ってあげよ」

 いっそ慈悲深いほどにゆるりと笑い掛ければ、嵐吾は閉ざされぬ口の中に狐火を纏めて放り込んだ。綾華が複製した扇は景気良く燃え盛り、ウォーマシンの躰を内側から燃やし尽くして行く。苦し気に黒い煙を吐き続ける大きな其の口は、軈て何も喰らえなく成るだろう。
 滅びの時は、刻一刻と迫り来る――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ヴォルフガング・ディーツェ
◎☆
レグ(f02517)と

〆がこんなに興醒めな相手とはね?
その答えがこの悪食じゃないかな、口上の皮を被った鼻も曲がる様な強欲さ

援護は任せたよ、レグ
俺自身はガジェットを魔爪形態にシフトし己の「限界突破」し接近
「見切り」や「グラップル」を駆使し相手の攻撃を捌き懐に踏み込もう
有効活用出来そうなら、レグがコーティングしてくれたモノすら足場にしよう
清らかでは戦場では生き残れない、済まないね
伸ばされた汚らわしい舌は炎を宿した爪撃で「部位破壊」
その勢いで【指定UC】で解体してやろう

代弁者を騙る愚者に悪意と魔力を込めた囁きで宣告しよう
御前の「神は死んだ」、とね
何時かって?…決まってるさ、此奴が信じたその瞬間さ


レッグ・ワート
◎☆
そんじゃ仕事するか。……物摂って使うのに回りくどいの要る?と思うが、基本生体相手ならまあ口上はいるわな。

任された。迷彩起こしたドローンは天井隅に浮かべて、各立回りの情報収集。さてヴォルフがメイン行くなら、俺は外野の足止めするか。怪力込みの鉄骨でぶん殴って再起不能になってくれるなら楽でいい。
リサイクル避けたいんだよな。網目は抜けるだろうし、複製したフィルム拡げて操作して、表側で包めるか試してみる。できたら敵とは反対の壁際に寄せて、操作で避け易くしとくよ。危ない時は舌前に適当な小片放り込むからそれで我慢して貰うぜ。

UDCアースにそんな言葉があったらしいが、随分はっきり言うもんだ。昔っていつ頃?


●イェーガーはかく語りき
 戦場には、焦げ臭い匂いが漂っている。
 腹を裂くように広がった口から黒い煙を吐きながら、大賢人は新たに訪れたふたりの猟兵を不気味な赤い眸で睨め付けた。
「拙僧の饗宴をよくも邪魔してくれたな」
 不快気に科白を吐き捨てれば、機人の僧侶は腕を貌の前で固定して、再び経を唱え始める。招請、招請――。

「締めがこんなに興醒めな相手とはね」
 児戯のような光景を前にして、ヴォルフガング・ディーツェは呆れたように肩を竦める。傍らのウォーマシン――レッグ・ワートも、彼の大賢人の遣り方には疑問を禁じ得ないようだ。
「……物摂って使うのに回りくどいの要る?」
 大層な御託を並べたてるよりも、黙々と骸骨に改造を施した方が効率は良いような気がする。或いは、死体に仮初の命を与えることは“化学”の力だけでは、困難なのかも知れない。
 生体が相手なら、「まあ、口上はいるわな……」と納得しかけたレッグであったけれど――。
「その答えがこの悪食じゃないかな」
 ヴォルフガングは鋭い眼差しで敵を見つめながら、彼の問いに頸を振る。結局は、大賢人の欺瞞に過ぎないのだ。経の皮を被った口上からは、鼻も曲がる様な強欲さが滲んでいる。
「さて、救いを求めし哀れな仔等よ。拙僧の為に踊るがいい」
 大賢人の命を受けて、骸骨たちがカタカタと笑えば、其れが開戦の合図と成った。

「援護は任せたよ、レグ」
「――任された」
 視線をひとつ交わせば、人狼の青年は前へと足を踏み出した。軽く口笛を鳴らせば、彼の双腕に揺れる瀟洒なバングルは魔爪へと其の容を変える。
 一方、その場に留まったレッグは、迷彩を纏わせたドローンを天井へと放った。高い所から、敵の立ち回りを把握する為だ。戦闘準備はこれにて完了。
「じゃ、足止めといくか」
 細腕に鉄骨を抱えれば、レッグは思い切り其れを振り回す。生体兵器と化した兵士たちは、もともと朽ちた骸骨なのだ。当然、其の衝撃には耐え切れず、一撃でほろほろと崩れ落ちて往く。
「楽なのは良いが、リサイクルは避けたいんだよな……」
 淡々と襲い来る兵士たちを鉄骨でぶん殴りながら、そんなことを独り言ちるウォーマシンの青年。
 折角無力化したと云うのに、妙な読経でまた復活されては堪らない。カーボン糸で網を作って、其処に遺骸を捉えてみても良いが。もしも激しく暴れられたら、直ぐに脱出されるだろう。ならば、
「――試してみるか」
 そう零した彼が複製するのは、線維型演算回路で作られた“対外フィルム”だ。其れを大きく拡げたら、念動力で操って、朽ちた骨たちをテキパキと包んでいく。硬度は“強”で出力しているので、滅多なことでは破られ無いだろう。念には念を入れて、敵とは反対側の壁へと運ぶことにした。

「レグ、ちょっと“それ”置いといて!」
 大賢人の口から伸びた舌を魔爪で抑えながら、ヴォルフガングが聲を張り上げる。彼の指す“其れ”が、コーティングした骨だということに気付けば、レッグは大人しく幾つかの遺骸をその場に留まらせた。
 戦場全体を見回してくれて居たドローンのお蔭で、友人の行動予測はある程度ついている。彼の周辺だけ残しておけば、あとは本人が上手く使ってくれるだろう。
「これで良いか?」
「オーケー」
 軽く礼を告げたのち、人狼の青年は限界突破した力で凶舌を押し退けて、近場に転がるコーティングされた遺骸へと飛び移った。
「――済まないね」
 元は“ひと”だと想えば、罪悪感を抱かない訳でも無いが。清らかなだけでは、戦場で生き残れない。静謐な謝罪を短く零せば、青年は其れを蹴り飛ばし、宙を高らかに舞う。
「其の儘、拙僧の口へと堕ちて来るが良い」
「お前にはこっちで我慢して貰うぜ」
 宙に在るヴォルフガングへと舌を伸ばす大賢人へ、空かさずレッグは足許に転がっていた薬莢を放り投げる。条件反射と云うものは、機人にも在るらしい。僧侶は舌前に飛んで来た其れを、咄嗟に掴んで飲み込んだ。
「さあ、そろそろ終幕だ」
 其の一瞬の隙をつき、着地したヴォルフガングは敵の懐へと滑り込む。そして再び開かれた大口から舌が伸びた瞬間、焔を纏わせた魔爪を勢いよく、汚らわしい其れへと突き刺した。

「――御前の“神は死んだ”」

 代弁者を騙る愚者へと、悪意を籠めてそう宣告する。
 青年の腕はいま、魔獣の其れへと変化していた。ガシャガシャと暴れようと、もう逃れることは能わない。
「随分はっきり言うもんだ」
 炎と衝撃に包まれて壊れ往く舌を眺めながら、レッグは小さく首を捻る。今の科白は確か、UDCアースの偉人も自著に記していた筈だ。
「それっていつ頃?」
「……そんなの、決まってる」
 紅の双眸に冷めた彩を浮かべながら、ヴォルフガングはくつりと笑う。其れは銀河帝国が崩壊した時でも無ければ、皇帝が崩御した時でも無い。

 ――此奴が信じた、その瞬間さ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

シキ・ジルモント
◎☆
宇宙バイクに騎乗
OWLを連れて行く

巨大兵器に変形されたら銃で破壊するのは骨が折れるか
…応援してくれるOWLを見て、同じくOWLと一緒に行動した『レディー・グローリア』で手に入れた物を思い出す
OWLのおかげで思い付けた事に感謝しつつ、使ってみる事にする

戦闘力の増強の為ユーベルコードを発動
調整済みのフォースセイバー発生装置…フォースセイバー・レラカスタムを宇宙バイクに装着、
バイクのエネルギーを変換したエナジーの刃で車体を覆って敵へ突進攻撃を仕掛け、すれ違いざまに突進の威力を乗せた刃で切り裂く

本体への攻撃の他に、更に何かを喰らおうとするなら妨害を試みる
これ以上、好き勝手な振る舞いができると思うな


天音・亮
私もよく食べる方だから食べる事の素晴らしさはわかるけど
食べた命を自分のものだって言って働かせるのはちょっと違う気がするな

あ、OWLくんが応援してくれてる!
かわいいな~…っていた!いたいよアドくん!
ごめんっごめんって浮気じゃないから!
一番はアドくんだからー!

うう、たんこぶ出来たらどうするのさぁ…
頭をさすりながらぶつぶつ呟いていると
催促するように周りをぐるぐる

…ふふ、はいはいわかった
じゃあ行こうか
きみがただのマスコットじゃない事を魅せつけよう!

さあ、しかとその目に焼き付けて
今から起こる嵐のパフォーマンスを!
盛大に、大袈裟に敵の注意を向けるように
──ここは今からステージだ

私の相棒もスゴいでしょ?


●Crisis Ride Show!
 愛用の宇宙バイクに乗って、シキ・ジルモントは戦場に辿り着く。フクロウ型のドローン、OWLも一緒だ。
 シキが戦場にて先ず最初に感じたのは、焦げた鉄の匂いだった。
 辺りを見回せば、崩れかけた舌で床に散らばる残骸をどうにか喰らう大賢人の姿が在る。どうやら、形勢は猟兵たちの方へと傾いているようだ。
 カツ、カツ――。
 モデルらしく踵を鳴らしながら、天音・亮もまた、戦場へと足を踏み入れる。其の碧眼に悍ましい光景を移せば、眉を下げながらかくりと頸を傾けた。
「食べる事の素晴らしさはわかるけど――」
 寧ろ、食べることを好む者として、これはちょっと戴けない。機械の僧侶は、物を味わって食べるのではなく、ただ我武者羅に物を口へ詰め込んでいるだけなのだから。
「呵々、喰えば喰うほど拙僧は強大になるのだ」
 ガシャガシャと稼働音を響かせながら、ウォーマシンの躰は更なる異形へと変形して行く。髑髏めいた頭と、戦車が合体したようなフォルムは実に凶悪だ。
「これ以上、汝らの想う通りにはさせぬ。――迷える仔等よ!」
 其れ処か大賢人は経を唱え、床に散らばる遺骸たちへと仮初の命を与えて行く。カタカタと笑う骸骨たちは、皆一様に武器と融合させられていた。

「あの躰を銃で破壊するのは、骨が折れるか」
 ハンドガンへと視線を落としながら、人狼の青年は独り言ちる。時間を掛ければ、やれないことも無いだろうが。敵の、其の素材の数が多すぎるのだ。どうしたものかと、思考を巡らせたところでふと、自身の傍らを飛び回るフクロウの姿が目に入る。
 そういえば、彼と探索した船『レディー・グローリア』では、なにを手に入れたのだったか。確か――。
「感謝しよう、OWL」
 彼のお蔭で大事なことを想い出せたのだ。探索の頼もしい相棒へと優しく聲を掛けたのち、シキは宇宙バイクを軽く叩く。此処からが本番だ。
「少し無理をさせるが、頼むぞ」

 ――ファイタージェットシステム、起動。

 刹那、バイクは眩いばかりの光を放ち、シキの躰を包み込んでいく。光の正体は、防護用のビームシールド。これで防御は万全だが、今は火力も欲しいのだ。そこで青年は、調整済みのフォースセイバー発生装置――“フォースセイバー・レラカスタム”をバイクに取り付け始めた。
 OWLといえば彼の周りを飛び回り、モニターフェイスを赤く明滅させ続けて居る。どうやら応援のつもりらしい。

「あ、OWLくんが応援してくれてる!」
 其れを遠巻きに眺めて居た亮の眸が、きらきらと輝く。こうして視ると、本当にフクロウのようで愛嬌のあるドローンだ。
「かわいいな~……っていた!」
 余所見をして居たら突如コツンと、頭に何かがぶつかった。
 亮がふと視線を上に向けると其処には、不服そうに宙をぷかぷかと漂う、まあるい音響増幅器AI――アドくんの姿が在った。
「いたいよアドくん! あっ、ごめんっごめんって、浮気じゃないから!」
 他の機械に夢中に成って仕舞ったことが、彼は気に入らなかったらしい。コツコツと頭にタックルしてくる姿は可愛いけれど、其れなりに痛かった。
「い、一番はアドくんだからー!」
 そう宣言したところで漸く、AIからのタックル攻撃は、どうにか終わりを迎えた。「たんこぶ出来たらどうするのさぁ……」なんて、ぶつぶつ言いながら頭を擦る亮の傍を、アドくんは催促するようにぐるぐると飛び回っている。
「……ふふ。はいはい、わかった」
 腕を伸ばしてまあるい躰を捕まえて、そうっと指先へ力を籠める。死者たちの軍勢は、緩慢な動作ながらも直ぐ其処まで迫って居た。
「食べた命を自分のものだって言って働かせるのは、ちょっと違う気がするから」
 行こうか、アドくん――。そう促せば、彼は亮の腕から勢いよく飛び出して。宙で激しく回転し始める。まるで、竜巻のように。
「きみがただのマスコットじゃないって、魅せつけよう!」

 ――さあ、しかとその目に焼き付けて。

 今から起こる“嵐”のパフォーマンス、クライシスゾーンを!
 金絲の髪を揺らす娘の号令と共に、竜巻は盛大に戦場を駆け巡る。竜巻は骸骨の兵隊たちを薙ぎ払い、仮初の命を激しく刈り取って行く。
 “戦場”というステージにおいて、アドくん――竜巻は抜群の存在感を放っていた。もはや彼こそが主役と云っても過言では有るまい。大賢人の眼さえ、其の脅威に釘付けであった。
「おのれ、賢しい真似を……!」
「ふふ、私の相棒もスゴいでしょ?」
 そう悪戯に片目を閉じて見せる亮の傍らを、バイクに乗ったシキが通り過ぎて行く。どうやら、時間稼ぎは出来たようだ。
「露払いに礼を云おう。本体は任せてくれ」
 宇宙バイクの車体はいま、エナジーの刃ですっぽりと覆われていた。
 取り付けた装置を通じて、エネルギーを刃へと変換したのだ。これで、彼のバイクは攻撃と守りの双方を兼ね備えた無敵のものと成る――!
「さあ、覚悟は良いか」
 スピードを上げたシキは、敵へと迷いなく突進。そして、すれ違いざま。勢いを其のまま乗せた刃で、ひといきに巨大な兵器を切り裂いた。
「ぐおおぉッ……!」
 苦悶の聲を上げながらも、しぶとく強化を図らんとする大賢人。しゅるりと伸ばされた舌が狙うのは、――OWLだ。
 モニターフェイスを明滅させながら飛び回る彼へといま、凶舌が襲い掛かろうとした、其の時。
「これ以上、好き勝手な振る舞いができると思うな」
 鈍い銃声が轟いた。
 シキがハンドガンで伸ばされた舌を、撃ち抜いたのだ。怯んだ大賢人は、半壊した其れをしゅるしゅると腹に仕舞い込んでいく。其の隙に青年は二輪を走らせる。
「暴食の宴はそろそろ終いだ」
 ――アクセル全開。
 エナジーの刃が弾丸のように、固い機械兵器の躰を穿つ。僧侶は巨大な髑髏めいた頭部をスパークさせながら、床へと倒れ伏したのだった。
 饗宴はそろそろ、終幕を迎えようとしていた――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

木元・杏
【かんにき】◎☆

ん、フクロウさんも行こう
鳥が一緒だとまつりんが気合い入る(ふふ、と笑って)

この音。食べてる…
そして変な歌(読経)に耳を澄ませ、その言葉を確認し眉をひそめ
ぐっと相対する

【Shall we Dance?】
うさみん☆、フクロウさんと踊って皆を鼓舞して?
ガーネットの火球の動きも踊りに取り入れ、まつりんのテンポに合わせ
戦場を巻き込む楽しいダンス

一口、と伸びてきた舌も動きが緩慢
これなら避けられる
野太刀にした灯る陽光フルパワー
ジャンプし、怪力込めて柔らかい舌を叩き斬る

食すという行為は、救う悦びや賞賛の声を貴方が得る為のものでは無い
いただく生命に、貴方が感謝するの
貴方は大食いの風上にも置けない


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】◎☆

変わった風体のウォーマシンだな。特徴的なのは腹部の大きな口。
そしてあの奇妙な読経…標的を配下に加える能力か!

まずは敵の手勢が増えるのを阻止する。
銃撃をブレイドウイングによる《武器受け》でガード後、
【パイロキネシス・α】を発動。火球を《念動力》で操り、
炎《属性攻撃》のサイキックで骸を《焼却》していく。
死者は荼毘に付す…僧侶のくせに、これぐらいのこともやってあげないのか?
救いと言っているが、お前の行いは死者への冒涜にすぎない!
怒りと共にブラッドエーテルの波動が強まる。
杏、まつりん、ナイスアシストだ!
双子の動きに合わせてすべての火球を合体させ、《全力魔法》で炎の塊をラゴスへ!


木元・祭莉
【かんにき】◎☆だー!

フクロウさん、応援してくれるの?
ヨロシクねー♪

ボス、見つけた。コイツが残党だね。
あれ、お念仏? 和尚さん?

違った。
寺子屋の和尚さんは、食べることは感謝だって言ってた。
キミは違うね。ホンモノの破戒僧、ってヤツだね!

最初は、ダンスしながら残骸を集めて回るよ。
ガーネット姉ちゃんのトコに持ってって、焼いてもらおっと。
これ以上、食べさせないんだからね!

うわ。変形した。
でも、残念でしたー。お顔は見えたまんまだよ♪

れっつ・だんしん!

しゃかしゃか踊るヒマワリが登場、ロボを掴んで持ち上げ。
剥き出しの顔を、角っこにぶち当てて。
ラスト、ガーネット姉ちゃんへ、ぽーい。

ファイヤー・アターック!!


●宴の終焉
 バリバリ、ボリボリ、バキバキ、――ぐしゃ。
 幽霊船めいた昏い船のなか、何かが磨り潰されるような音が響き渡る。戦場に足を踏み入れた三人の視界に映ったのは、床に散らばる残骸と、其れを貪る悪食の僧侶の姿。
「この音、食べてる……」
「随分と耳に触るが、あれは咀嚼音らしいな」
 木元・杏が不思議そうに頸を傾ける傍らで、ガーネット・グレイローズが不快気に眉を寄せる。咀嚼音もさることながら、腹の口に何でも放り込む様も、悍ましく不気味に見えた。
「ボス、見つけた。コイツが残党だね」
「それにしても、変わった風体のウォーマシンだな……」
 木元・祭莉の科白を受けて、ガーネットは観察するような眼差しを敵に注ぐ。巨大な髑髏めいた頭、腹部にぽっかりと開いた大口。大賢人『ラゴス・ヴァルカー』は、戦闘用の機械にしては、随分とユニークなシルエットをしていた。
「来たか、猟兵。拙僧の野望は、誰にも邪魔させぬ」

 亡者どもよ、最後の恩寵である。とくと耳を傾けよ。招請、招請――。

 如何にも勿体ぶった調子で僧侶が口上を紡げば、戦場に転がる骸骨たちが、カタカタと愉快気に笑い出す。其の様を見て、杏は一歩後ずさった。それでも耳朶が捉える口上の傲慢さに眉をぐっと顰めて、静かに敵と向かい合う。一方、兄の祭莉は不思議そうに首を捻っていた。
「あれ、お念仏? 和尚さん?」
「あの読経……標的を配下に加える能力か!」
 笑う骸骨を見て、敵の狙いにいち早く気付いたのはガーネットだ。少年少女を素早く背中に庇いながら、みるみる内にひとの容を為してゆく骸骨の兵達へと意識を向ける。死者の兵達は皆一様に銃火器と合体させられていた。
「悪趣味な……」
「否、これは救いである!」
 目の前に広がる光景に、思わず嫌悪感を顕にするガーネット。されど大賢人は呵々と笑い、彼女の言葉を払い除ける。「往け」と一言命じたならば、仮初の命を与えられた兵達は、次々に引鉄を引き三人へと凶弾を降らせて往く。
「そう思っているのは、お前だけだ」
 とろり。ガーネットの背にふと、液体金属の翼が生える。とろとろと伸び往く其れは、軈て大きな羽と成り、降り注ぐ銃弾の雨を総て受け止めた。
「死者は荼毘に付すものだ」
 空かさず“火球”を次々に自身の周囲へと生み出したガーネットは、念動力でそれらを操り、死者の兵達へとぶつけて往く。
 ――灰は灰に、塵は塵に。
 元々が骸骨ゆえに、兵士たちは耐久性に欠けた。骸たちは焔に包まれ、あっという間に灰へと還って行く。
「僧侶のくせに、これぐらいのこともやってあげないのか?」
「笑止! 灰に還ればもう二度と、救いを得られぬであろう」
 聞く耳を持たぬ僧侶がのうのうとそう宣えば、麗人はぐっとこぶしを握り締めた。こころの内側から、沸々と怒りが湧き上がる。
「お前の行いは、死者への冒涜にすぎない!」
 昂る感情に呼応するかの如く、ガーネットの体内に駆け巡る“ブラッドエーテル”の波動は、どんどん高まって往く。再び彼女の周囲には、芒と燃え盛る焔が浮かび上がり、兵士たち目掛けて勢い良く宙を舞う――。

 そんな彼女の大立ち回りを後ろから応援するのは、双子の少年少女だけではない。機械仕掛けのフクロウ“OWL”も一緒だった。
「わ、また逢えたね。フクロウさん」
「応援してくれるの? ヨロシクねー♪」
 赤く明滅し続けるフクロウのモニターを覗き込むふたりの聲には、ほんの少し喜色が滲んでいる。鶏を飼っている所為なのか、どうにも構わずには居られないのだ。
「ふふ、鳥が一緒だと、まつりんが気合い入る」
 冒険に挑んだ面々が揃ったのだ。どうせなら、もっと楽しく賑やかに。
 そう考えた杏は指先でふわりと絲を操って、うさみみメイド人形を戦場と云う名の舞台に上げた。さあ、

 ――Shall we Dance?

 人形がくるくると踊り始めれば、緊張感に満ちた戦場に楽しさが溢れ出す。杏が愉しげに手を叩けば、フクロウも釣られてくるくると其の場で回転した。
「フクロウさんとうさみん☆のダンスだ―♪」
 祭莉も軽やかな足取りで、飛び跳ねたり回転したりして、ダンスの時間を楽しんでいる。遠くのほうでは、ガーネットが操る火球が楽し気に戦場を飛び回っていた。
「あっ、ちょっと手伝って来る!」
 麗人の雄姿を見た祭莉は、相変わらず尻尾と耳を揺らして軽やかに踊りながら、戦場に散らばる残骸たちを回収して行く。
「ガーネット姉ちゃん、これもよろしく!」
「ああ、任された」
 集めた残骸を麗人のもとへ運べば、空かさず火球が飛んで来て、それらを灰に還してくれる。其の様を目の当たりにした大賢人は、赤い眸を不気味に輝かせ、溜息めいたノイズを零した。
「なんと勿体ないことを……」
「寺子屋の和尚さんは、食べることは“感謝”だって言ってた」
 暴食と飽食に明け暮れている癖に、僧侶がそんなことを云うものだから。祭莉は珍しく聲のトーンを落とし、ふるふると頸を振って見せる。勿論、踊りを楽しむことは忘れずに。
「キミは和尚さんと違うね。――ホンモノの“破戒僧”ってヤツだね!」
「なんとでも云うが良い。汝らを喰らい、拙僧は銀河の頂点に立つのだ」
 その為に、先ずはひと口。
 ウォーマシンの大きな口から、機械仕掛けの舌がしゅるりと伸びた。されど、その動きはひどく緩慢だ。
 戦場には相変わらず、火の球が飛び交っているけれど。後方ではうさ耳メイドを筆頭として、わいわいとダンスパーティーが繰り広げられている。人形を操る杏は勿論、祭莉はダンスを心から楽しんでいるし、ガーネットの火球もダンスに合わせてリズミカルに飛び回っている。――つまり、このひと時を楽しんで居ないのは、ウォーマシンの僧侶ひとりだけ。賑わいに呑まれぬ彼は、三人のテンポについて行くことが叶わないのだ。
「“食す”という行為は、救う悦びや賞賛の声を貴方が得る為のものでは無い」
 彼は、大食いの風上にも置けない。
 こころの裡に僅かな怒りの焔を揺らし、杏は握りしめた野太刀へと陽光の力を注ぐ。芒と刀身に灯が燈れば、ざくりと地を蹴り、高らかに飛び上がった。
 空中にて、少女は思い切り刀を振り被る――。
「いただく生命に、貴方が感謝するの」
 着地と同時。其の機械仕掛けの舌を、力の限りに叩き斬った。ぶちり。鈍い音と絶叫が、戦場に響き渡る。
「ガアアッ……!?」
 今こそ暴食の報いを受ける時。舌を切られて“食べる”機能を喪った僧侶は、苦悶の侭に悶え転がる。腹にぽっかりと開いた大きな口から、屑鉄がボロボロと転がり落ちる様は、彼の破滅を何よりも雄弁に暗示していた。
「これ以上、食べさせないんだからね!」
 祭莉がびしりと指を突きつければ、僧侶はぐぬぬと裂けた口を引き結ぶ。食べることは、もう敵わない。ならば、大賢人に遺された手はひとつ――。
「かくなる上は、汝らを星海の藻屑としてくれる!」
 ガシャガシャと関節を鳴らしながら、ウォーマシンは巨大兵器へと姿を変えた。髑髏めいた頭と、戦車が合体したような姿は、何処までも不気味である。
「うわ。変形した」
 巨大な其の姿を仰いで、祭莉はぱちくりと双眸を瞬かせる。奇妙な姿をしているけれど、威圧感はバッチリだし、大きくて強そうだ。
「さあ、我が威光にひれ伏すが良い!」
 巨大兵器は三人を轢き潰さんと、獰猛なエンジン音を轟かせる。されど、祭莉は全く動じていなかった。にんまりと笑った少年は、聲高らかに叫ぶ。

 ――れっつ・だんしん!

 不意に、戦車の前へと立ちはだかるように一輪の花が咲く。其れは、しゃかしゃかと踊る向日葵だった。
「な、なんだこれは……!」
 母の力の具現化でもある其の向日葵は、生き物以外も注目させるのだ。案の定、大賢人も面食らい、思わずその動きを止めて仕舞う。
 其の一瞬が、運の尽き。
 向日葵は徐に其の葉を伸ばして、巨大兵器を掴み上げた。ただの植物と侮ることなかれ。此の向日葵は最大で86tまでの物質を持ち上げることが出来るのだ。母は強し、という所だろうか。
「何をする、ええい、放せ……!」
 逃れようと必死に藻掻くウォーマシンを捉えた侭、向日葵はしゃかしゃか揺れて。其のまま、――ごおん。剥き出しの髑髏頭を角っこに、勢いよくぶち当てた。
「ぐぉぉ……!」
「残念でしたー、お顔は見えたまんまだよ♪」
 自己顕示欲の強いフォルムが、どうやら仇になったらしい。何度かゴンゴンと角にぶつけてやった後、ぽーいっと麗人の元へ投げ飛ばす。
「ガーネット姉ちゃん!」
「ナイスアシスト!」
 双子たちの連携を無駄にする訳にはいかない。ガーネットは総ての火球を合体させて、飛んでくる巨大なウォーマシンへと思い切り焔の塊を投げつけた。

 ――まさに、ファイヤー・アタック!

 轟音と爆風と共に、ウォーマシンの躰は粉々に爆発する。後に残るのは、焦げ臭い匂いと、荼毘に付された数多の灰と、勝利を収めた猟兵たちのみ。
「やった! 勝ったー!」
「ああ、みんなで掴んだ勝利だな」
 嬉しそうに飛び回る祭莉に微笑まし気な眼差しを向けながら、ガーネットも穏やかに首肯する。うさぎのメイド人形を抱きしめる杏も、ほわりと安堵の息を吐く。
「ん、良かった」
 視界の端に、ふと、モニターを赤く明滅させるフクロウの姿が映った。少女は彼を手招きながら、ふわりと笑う。
「帰ろっか。フクロウさんも、一緒に」

 鋼鐵のサルコファガスを荒らす僧侶は、躯の海へと堕ちた。廃船の眠りが妨げられることは、きっともう無いだろう。
 猟兵たちはこうして、朽ちた戦艦を後にする。今度こそ、彼等が安らかに眠れるようにと祈りながら――。
 星海に游ぎ出れば、こじんまりとした船がサーチライトを赤く明滅させながら、温かく出迎えて呉れた。

『―  ・・―』

 長く。短く、短く、長く。
 規則的に明滅を繰り返す其の灯は、星海の平和を守った英雄たちへの細やかな感謝の徴。猟兵たちの冒険譚は、この先も長く語り継がれていくだろう。
 機械仕掛けのフクロウが、そして機械仕掛けの船長が、モニターに其の雄姿を確りと映しているのだから。
 銀河を揺蕩うサルコファガスへ別れを告げて、猟兵たちは平穏なる日常へと戻って往く――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年09月23日
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵