三色折り紙連続殺妖事件
●色紙
そこは巨大な鳥居のある神社であった。
赤い鳥居はを中心にして緑豊かな森林が広がっており、青い水晶のように透き通る池があるカクリヨファンタズムにおいても風光明媚な村であった。
栄えているわけでもない。かといって決して寂れているわけでもない。
しかし、今、その村において連続殺妖事件が起こっていた。
村の大人の妖怪達はは戸惑いと悲哀に暮れていた。
犠牲者は既に三人。
焼死、溺死、腐死。そのどれもが一定の手口ではないが、共通していることがある。殺妖された妖怪達は皆、子供の妖怪なのである。
村の外部から凶悪な妖怪が入り込んだ痕跡はない。かといって、村の内部の人間にそこまでのことができる力を持つ妖怪もいない。
完全に迷宮入りしてしまうか、はたまたさらなる犠牲者が出てしまうのか。
大人の妖怪達はほとほとに困り果ててしまった。
子供たちにはできるだけ外で遊ばないように、と伝えてあるが子供の妖怪達である……どんなに止めたところで彼等は抜け出して遊びに出かけてしまう。
彼等は毎日が楽しく、騒々しくも元気いっぱいに遊び回っている。その平穏を大人が護るのが役目であるが、それを壊してしまうのは憚られるのだ。
「ああ、本当にどうしてしまったことだろう。誰か、誰かこの事件を解決に導いてくれる者はいないだろうか―――」
嘆く一人の妖怪。
周囲の大人の妖怪達も同じ気持ちであった。どうにかして殺妖事件を止めなければならない。けれど、彼等ではどうしても事件を解決に導けそうにない。
「この力の使い方、きっと犯人はオブリビオンに違いない……だというのに、証拠と言えば、事件現場に残された折り紙だけ……赤色、青色、緑色……これが一体なんだというのだろう……」
事件解決への道程は彼等にとっては遠すぎる。
この事件を解決する探偵―――もとい、猟兵の出番である。
●探偵は遅れてやってくる
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを出迎えたのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)だった。
彼女の微笑みはいつもと変わらないものであった。頭を下げて、猟兵たちへと予知した事件の内容を語る。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はカクリヨファンタズム。妖怪たちの住まう世界……すでに皆さんもご存知かと思われます」
カクリヨファンタズムにて起こる事件には、その殆どが骸魂が妖怪を飲み込むことによってオブリビオンへと変ずることによって引き起こされている。
今回の事件も例外にもれずオブリビオンが引き起こした事件であるようだった。
「はい、ですが今回のオブリビオンは非常に狡猾です。ある村で連続殺妖怪事件が発生しています。犠牲者はすでに3人。いずれも子供の妖怪です。どうやら、このオブリビオン、妖怪を殺す時だけ宿主の記憶を奪ってオブリビオン化し、其れ以外の時間は普通の妖怪を装っているのです」
宿主である妖怪すらも骸魂に取り憑かれているという自覚のないまま村で暮らしている。なるほど、と猟兵達が得心言った顔をする。
「皆さんには綿密な調査でオブリビオンを探し出し、退治して頂きたいのです。まずは村へと向かい、情報を集め、犯人がどんな妖怪かを推理して頂きたいのです」
猟兵が調査し、推理した内容が的を得ていた……もしくはそれに近ければ、妖怪を取り込み宿主としている骸魂は苦し紛れに姿を現すだろう。
そこからは猟兵の本分である戦いがはじまる。これを討ち果たし、連続殺妖怪事件に幕を引くのだ。
「どうやら殺妖現場には常に一枚の折り紙が残されているようです。赤、青、緑。すでに三人の子供の妖怪が犠牲になっています。折り紙の色がかぶったことはなく、3人しか犠牲者が出ておりませんので、この三色だけなのか、それともそれ以上なのかはわかりません」
焼死、溺死、腐死。
そのいずれかの死因で子供の妖怪は殺されている。現場には常に色のついた折り紙が残されている。
「今から村へと転移しますが、その村では子供たちが多く遊んでいます。彼等の中には、犠牲者と仲のよかった子供もいるでしょう。彼等と遊び、交流を交えながら事件の推理を行ってください。大変な事件であることは重々承知しております。ですが、幼い子供たちの生命が危険にさらされることが、これ以上あってはなりません。どうか―――」
どうかお願いします、とナイアルテは頭を下げる。
どんな世界であっても、幼い子供たちの生命は尊いものだ。それを無慈悲に惨殺するオブリビオンを捨て置け無い。
かくして、カクリヨファンタズムにて引き起こされている連続殺妖事件―――後に三色折り紙連続殺妖事件と呼ばれる事件の幕開けであった。
海鶴
マスターの海鶴です。
今回はカクリヨファンタズムでの事件になります。ある村で引き起こされている連続殺妖事件の解決を行うシナリオとなっております。
●第一章
日常です。
転移した村を訪問し、多くいる妖怪の子供たちと交流を図りつつ、彼等と遊びオープニングで提示された情報を元に犯人である妖怪(骸魂)がどのような存在であるかを推理していただきます。
●第二章
ボス戦です。
第一章で皆さんが推理した犯人のどれかが、真犯人として上がります。その妖怪の元へ急行すると犯人であるオブリビオンが種明かしをしながら、悔し紛れに戦いを挑んできます。
●第三章
集団戦です。
真犯人であるオブリビオンが死に際に配下の骸魂をばらまき、村の子供の妖怪達をオブリビオン化してしまいます。
これを倒し、妖怪達を助けてあげてください。
それでは、カクリヨファンタズムにて暗躍する真犯人を推理に寄って追い詰め打倒し、幼い妖怪の子供たちを救い、事件を止める皆さんの物語の一片と成れますようにいっぱがんばります!
第1章 日常
『未知との交流』
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POW : 疲れるまで肉体を使った遊びをする
SPD : 疲れるまで技術の必要な遊びをする
WIZ : 疲れるまで知的な遊びをする
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その村は殺妖事件が起こっているにも拘らず、子供の妖怪達の楽しげに遊ぶ声と姿が見受けられた。
第一印象は、そんな平和な村であった。
だが、この地において、殺妖事件の犠牲者となった子供の妖怪達がいたことは確かである。
妖怪の子供たちが家を抜け出して、外で遊び回ることを止められないと判断した大人の妖怪達は、こっそりとだが彼等の周囲に点在し、見守っている。
これだけの監視の目があってもなお、殺妖は起こってしまう。
今はまだ、犠牲になる子供はいないようだが、時間の経過とともに犠牲者が増えてしまうことは確実であった。
それだけ、今回の事件に関与しているオブリビオンは狡猾である。
事件現場に残されていたのは、三色の折り紙。
赤、青、緑。
赤い折り紙の残されていた事件現場は赤い鳥居。妖怪の子供は焼け焦げた無残な焼死体で発見された。
青い折り紙の残されていた事件現場は青い水晶のように透き通る池。その池に浮かぶ要因溺死体で発見された。
緑の折り紙の残されていた事件現場は緑覆い茂る森林の中で、腐り落ちるように腐敗した姿で発見された。
妖殺事件はこの3つ。
共通するのは折り紙が残されているということ。どれも子供ばかり狙われているということ。色に寄って死因が違う……殺害の方法が違うということ。
猟兵達は己の推理を示しながら、妖怪の子供たちと遊び交流を図らなければならない。それは即ち、子供たちの護衛も兼ねている。
狡猾なる真犯人を推理でもって追い詰め、この事件を解決に導かなければならないのだ―――!
セレシェイラ・フロレセール
折り紙、ね
死因に由来した色の折り紙とは、悪趣味が過ぎるな
まずは犠牲になってしまった子達に手を合わせよう
苦しかったよね、わたし達がきっと解決してみせるからね
子供は元気に遊ぶのがお仕事
わたしの見た目は子供、だから子供達と一緒に元気に遊ぶのよ
なにしようかな?
え、シャボン玉?
いいよ、みんなでシャボン玉作って飛ばしっこしよ
ふーって小さなシャボン玉をいっぱい作って、ふわーって飛ばして喜ばせてみよう
こんなのも出来るよって二重になったシャボン玉を作ったり大きなシャボン玉を作ったり
ふふ、楽しいね
ほんとは殺されちゃった子とも遊びたかったな
……監視の目があるのに事件が起きたってことは、監視の誰かが怪しいってこと?
真に狡猾なる者は、時に己すらも欺く。
真実を覆い隠すのが嘘だというのならば、嘘さえ本当にしてしまえばいい。カクリヨファンタズムに起こった連続殺妖事件、その真犯人たるオブリビオンはまさに、それを実行していた。
宿主たる妖怪は日常を送っている。己が骸魂に取り憑かれ、オブリビオンと化していることさえ自覚できぬまま、善意のままに日常生活を送っているのだ。
そこが今回の真犯人の狡猾たる所である。
「折り紙、ね」
セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)は、その事件の起こった村へと訪れていた。
事件の詳細はすでにグリモア猟兵から伝え聞いている。焼死、溺死、腐死。そのどれもが子供の妖怪が犠牲になっているにはあまりにも惨たらしい。
それを思えば胸が痛む。
けれど、失われてしまった生命を戻す術はない。ならば、彼女が出来ることは此れ以上の犠牲を引き起こさぬ事。そして、この事件の犯人を突き止め、打倒することだ。
「死因に由来した色の折り紙とは、悪趣味が過ぎるな……」
セレシェイラは事件の現場、妖怪の子供が犠牲となった場所を順繰りに巡っては手を合わせた。
苦しかったよね、わたし達がきっと解決してみせるからね。そう心の中で誓う。どこで真犯人が見ているかわからない。だから、手を合わせて死者を悼むのだ。
赤い鳥居、水晶のように青い池、緑覆い茂る森林……どこも妖怪の子供たちが必ずいる。この村は子供たちが多い。ともすれば大人の数よりもずっとだ。
子供たちは宝だ。いつか村を巣立っていくのだとしても、帰ってくる故郷は此処である。ならば、賑わいはいつしか豊かさとなって帰ってくる。
この3つの場所は子供たちの常なる遊び場なのだろう。
「子供は元気に遊ぶのがお仕事……さて、なにしようかな?」
いーれーてー、とセレシェイラは子供たちの和に溶け込んでいく。見目は十の程の子供の姿をしている彼女にとって、子供たちと一緒に遊び始めるのは簡単なことだった。
「え、シャボン玉?」
セレシェイラは少し以外に思ったが、妖怪の子供たちが手にシャボン玉液と輪っか、吹き付ける笛のようなものを持っているのを見て納得が行く。
この水晶を溶かしたような青い池のほとりで遊ぶにはとてもいい景色だ。
「いいよ、みんなでシャボン玉飛ばしっこしよ」
優しく微笑んでセレシェイラが器用に小さなシャボン玉をつくって、風に乗せていく。大小様々の細かいシャボン玉が青い空と池の上へと運ばれていく。
その様子に子供の妖怪達は、きゃあきゃあとはしゃいだように喜んでいる。この中には殺されてしまった子供の妖怪の身内や友達も居たことだろう。
いつもどおりの日常を過ごすことこそが、彼等の喪った友人たちへの手向けであるのかもしれない。
「こんなのも出来るよ。ほら!」
大きなシャボン玉の中に小さなシャボン玉が存在するような、二重になったシャボン玉を作ってみせたり、特別大きなシャボン玉を空色のキャンバスに描くようにセレシェイラは作っていく。
子供の妖怪達は、悲しみを忘れたようにはしゃぎ、シャボン玉を追う。
その姿は痛ましい事件から立ち直ろうとしている彼等なりの健気さをセレシェイラに伝えたかもしれない。
「ふふ、楽しいね」
本当は、と心の中で独白する。
ほんとは殺されちゃた子とお遊びたかった、と。そこで傍と気がつく。
今もセレシェイラや子供の妖怪達が遊ぶ場所には大人の妖怪が必ず一人は存在している。きっと大人たちの間で時間を決めて子供たちに害が及ばないように見ているのだ。
それは監視とも言えたが、おかしいと感じる。
「……監視の目があるのに事件が置きたってことは、監視の誰かが怪しいってこと?」
そう、一番最初の事件であれば監視の目が無いのもうなずける。不幸な事件が起こってしまっても対処のしようがない。
さらに言えば、この村で子供たちが遊ぶ場所は大きく分けて3つ。
赤い鳥居、青い池、緑の森林。
1つ目の事件が起きた後、大人たちは皆子供たちを保護しようと遊び場で子供たちを見ていたはずだ。
なのに、2つ、3つと事件は起きた。ならば、セレシェイラの推理は間違いではないのかも知れない。監視の中の誰か。
大人たちの誰かに犯人がいる。
セレシェイラは周囲を見回す。大人。大人の妖怪。シャボン玉を視線で追いかけるふりをして、確認する。
今はまだ捉える事は難しい。
他の猟兵たちもまた推理していくだろう。それが必ず真犯人を追い詰めていく。
だから、セレシェイラはせめて殺されてしまった子供の妖怪の魂が慰められるようにと、シャボン玉をたくさん、たくさん吹き続けるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
シーマリネィア・シーン
子供達も落ち込んでるんでしょうか。せめて沢山遊んで元気を取り戻せればいいですね。
一緒に鬼ごっこで遊びましょう。蝶のようにひらひら飛び回って、捕まえたり逃げ回ったり。
推理ですね。なぜわざわざ折り紙を残したか。
直感的に考えれば、色紙を媒体に三種の攻撃を行う能力を持つ妖怪。でも、折り紙を残すのは自分の正体の手懸かりを残す事。不自然です。
三種の殺害の内、溺死は特殊能力はいりません。水に押し込めばいい。
火、水、腐敗の三種に関わる妖怪と見せかける為に三色の手懸かりを残した。
つまり、犯人の能力は火と腐敗のみ。
例えば、火に包まれ、被害者を腐り殺す妖怪、火車。
その様な類いの妖怪が犯人、という推理はどうでしょう。
狡猾なるオブリビオンは、常に裏をかく。
それが宿主である妖怪の記憶を、妖殺する時だけ奪う所以。それ故にすでに三度、子供の妖怪が殺害されたというのに未だ犯人が捕まっていないのだ。
善人のフリをするのではなく、あくまで善人のままに事をなしていく。己の欲求のままに子供の妖怪を殺す。ただそれだけのために存在していた。
平和な村であっても、この村には子供の妖怪が多いように思える。
それがシーマリネィア・シーン(聖竜騎士・f12208)の感じた印象であった。連続妖殺事件が起こっているというのに、子供たちは外で遊んでいる。
妖怪の子供であるから、彼等をどれだけ言い聞かせようとも抜け出して遊んでしまう。だから、妖怪の大人たちは遠くからでも彼等に異変がないか監視しつつ、日常を取り戻そうとするかのように振る舞っている。
それが痛ましいと思ってしまうのは、もしかしたら友人である妖怪の子供を亡くしてもなお、明るくいつもどおりに振る舞おうとする気丈さだからかもしれなかった。
「……子供たちも落ち込んでいるんでしょうか。せめて沢山遊んで元気を取り戻せれば……」
聖騎士にしてフェアリーであるシーマリネィアの小さな体が宙を舞う。
その蝶のようにひらひらと小さき人が舞い飛ぶ姿は、妖怪の子供たちであっても、歓声が上がるほどだった。
見慣れていないからというのもあるのだろうが、小さな人が空を飛んでいるというのは、彼等にとっても御伽噺のようなものであったのだろう。
次々に子供たちが集まってきて、自己紹介を始める。
「私はシーマリネィア・シーン。皆さん、一緒に鬼ごっこで遊びましょう。私を捕まえられたのならば、今度は私が皆さんを捕まえてみせます」
うやうやしく、騎士の所作でもってシーマリネィアが一礼をする。
子供相手であっても、彼等を守らなければならないという矜持が彼女にはあった。小さき身であれど、彼女は猟兵である。
いざという時、彼等を護るのは自分であるという自負があった。
子供たちの歓声が聞こえる。
わぁ! とあちらこちらに駆けていく子供たち。元気に駆け回る姿は微笑ましくもあり、同時に悲しい出来事から彼等自身が自分たちの足で立ち上がろうとする意志を感じさせられた。
しばらくシーマリネィアは子供たちと鬼ごっこに興じていた。同時に頭の中では、今回の犯人に対する推理が行なわれている。
第一に何故わざわざ折り紙を事件現場に残したのか。
彼女自身の直感を信じるのであれば、色紙を媒体に三種の攻撃を行う能力を持つ妖怪。
だが、折り紙を現場に残す、というのが不可解である。
もしも、見つからないように事をなすのであれば、証拠になりそうなものを残すわけがない。不自然である。
そして、3つの妖殺事件の死因の内、溺死は特殊な能力はいらない。水に押し込めばいいからだ。
だとするのならば、折り紙は見せかけなのかもしれない。
他の妖怪に罪をなすりつけるためのフェイント。だとするならば、犯人の本来の能力は火と腐敗のみではないのだろうかと、シーマリネィアは考えたのだ。
「ですが、火車……そのたぐいの妖怪はいませんでした……」
鬼ごっこに興じながら、シーマリネィアは子供たちを観察していた。
親の妖怪の形質が子供に遺伝するのであれば、炎を扱う妖怪に当たりは突きそうであったが、彼女の見える範囲にはいなかった。
ならば、彼女の推理は穿ちすぎた、というものであったのかもしれない。
けれど、彼女の直感は素晴らしかった。
色紙……それを子供に選ばせたのならば。そして、選ばせた色紙の色に対応する殺し方を選んだのだとしたのならば。
シーマリネィアの推理、色紙を媒体にして三種の攻撃を行う能力を持つ妖怪とは―――。
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
〇心境
どんな種族だろうが子供の犠牲はやるせねーな。
なぜこんなに胸が締め付けられるのやら(記憶が関係してるならそんな過去は嫌だねぇ)
〇疲れるまで肉体を使った遊びをする
はぁ。
とりあえず、子供の遊びと言ったらあれだろ。
かくれんぼやかけっこ。けんけんっぱ…
なあ、何でガキってこんなにパワフルなんだ…はぁはぁはぁ…
寧々交代って…化術で人型になって子供と混ざるなよ…。
〇推理
寧々はどう思う?
大人の監視がいるから外部はなし。
今も折り紙持ってても疑われない人物
居ても疑問に思われない存在が一番怪しい…
って…おぃおぃ。まさかあの中の子供にいるって言いたいのか?
いや、骸魂や妖怪ってこと考えたら可能性はあるのか?
遣る瀬無い。
事件の概要を聞いて、最初に思ったのは、言葉にするならばそういう感情であった。
黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は、連続妖殺事件の渦中にある村を訪れ、不可解な胸の締め付けを感じていた。
何故、こんなに胸が締め付けられるのか。
記憶を喪っている彼に取って、その答えは出ない。出ないのだが、それでも純然たる事実として彼の胸は締め付けられている。
喪った記憶に関連しているのだとしのならば、そんな過去は嫌だと彼は感じていた。
「はぁ、とりあえず、子供の遊びと言ったらあれだろ……」
ぱっと思いつくのはかくれんぼやかけっこ。けんけんっぱ。
早速、名捨は子供たちの輪に入り込んで、共に遊び始める。妖怪の子供たちにとって、猟兵とは己たちの姿の見える得難い存在である。
そんな猟兵たちを前に子供の妖怪たちは無条件に信用をおいてしまうのだ。どこか危なかったしいと感じながらも、全幅の信頼を向けてくれるのは悪い気はしない。
ともに野原を駆け回ったり、想像を絶するかくれんぼに翻弄されてしまったりと、名捨は圧倒的疲労感を感じていた。
もう子供の遊びの範疇を越えた、なにか別の遊びではないかと思うほどにアグレッシブな妖怪の子供たち。
「なぁ、なんでガキってこんなにパワフルなんだ……はぁはぁはぁ……」
あまりの体力の凄まじさに汗以外の何かが出てしまいそうになりながら、名捨は喋る蛙の変じた少女の姿になっている寧々に交代を申し出ようとして、固まる。
「って、化術で人型になって子供に混ざるなよ……」
キョトンとした顔で寧々が少女の顔のまま不思議そうな顔をする。混ざらない理由がないのだが? といった顔をして一斉にまた子供たちと駆けていく。
「お、おお……」
ちょ、待てよ! という制止も虚しく名捨は再び子供たちとのかくれんぼに翻弄されまくるのだった……。
そして、くたくたになって草原に大の字に倒れ込む名捨。
その頭上に蛙へと変じた寧々が悠々と鎮座する。そんな彼女に語りかける。この地に起きた凄惨な事件。その犯人についてだ。
「寧々はどう思う?」
こうして子供たちと遊んでいてわかった。何処に言っても大人の監視の目はある。だから、部外者がいれば、即座にわかるだろう。
だから外部からの侵入による犯行という線はない。
「じゃあ、今も折り紙を持ってても疑われない人物って言えば、どんなやつだ?」
頭を巡らせる。
「居ても疑問に思われない存在が一番怪しい……」
寧々の声が響く。
それはつまるところ、そういうことなのかと名捨は起き上がって首をかしげる。だが、骸魂が子供の妖怪に取り憑いたところで、妖怪を殺せるだけの力を発揮できるだろうか?
それに考えたくはないが……。
「まさかあの中の子供にいるって言いたいのか? いや、骸魂や妖怪ってことを考えたら可能性はあるのか?」
ないわけではないだろう。子供の姿に変じている、という可能性だってある。
大人の監視の目が厳しい中で子供たちだけで連れ立って離れれば、嫌でも目につく。
「……監視?」
そこで逆張りの考えが浮かぶ。
賢しくも狡猾なる真犯人……折り紙を持っていてもおかしくない。ならば、折り紙を渡すのは誰だ?
子供たちが何処からともなく折り紙を持ってくるわけがない。自分たちだけで手に入れるということはできない。
必ず大人が仲介する。
「……居ても疑問に思われない人物」
子供の中心に居ても、何もおかしくない、そんな人物。は、と名捨が気がつく。
自分たちがこうしている間にも犯人の妖怪は、子供を狙っている。駆け出す。
胸が締め付けられる理由はわからない。
わからないが、無辜の子供の妖怪の生命が危険にさらされていい理由にはならない―――!
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
既に犠牲者が三人、許し難い事件。
だが今すべき事はそうじゃない。
冷静に、観察し推理し追い詰める。
鳥居の元で子供たちとどんな遊びをするか
相談をしながら辺りを観察。
警戒している事を子供たちに悟られない様に注意し
事件が起きるなら、あるいは自分が起こすなら
どうするかを想定。
遊びは鬼ごっこ、かくれんぼ等その場を広く使ったものを提案し
遊びながら観察と推理を続ける。
(子供を態々悲惨な方法で、しかも証拠を残して。
その行いを誇示しているのか。
一番効率的に行えるのは。)
「子供、か。」
(守られる立場の筈の子供なら怪しまれずに犯行が可能。
そして被害者も恐らく警戒する事はない。
最悪の想定だが、警戒するに越した事はない。)
この事件に名前をつけるというのであれば、そう、『三色折り紙連続殺妖事件』と名付けるべきなのだろうか。
平和なカクリヨファンタズムの村に起こった惨劇。
子供の妖怪ばかりが殺害されてしまうというだけでもショッキングな事件であるが、その殺害方法がまた残忍である。
ある者は焼死。ある者は溺死。ある者は腐死。
殺された子供たちの恐怖を思えば、良心あるものであれば心を痛めたことだろう。
「既に犠牲者が三人、許し難い事件。だが、今すべきことはそうじゃない」
フォルク・リア(黄泉への導・f05375)の胸の内側が痛む。許し難いと義憤に駆られるのも間違いではない。
けれど、今すべきことはそうではないとフォルクは頭を振る。冷静に、観察し推理し、犯人を追い詰めることだ。
祈ること、悼むこと、それは犯人であるオブリビオンを打倒してからでも遅くはない。その祈りはその後でする。だからこそ、一刻も早くフォルクは犯人を追い詰める推理を開始しようとしたのだ。
赤い鳥居が眼前にそびえている。
立派なものであるな、というの正直な感想であった。様々な世界を渡り歩く猟兵であっても、どこか懐かしさを感じさせる光景であった。
子供の妖怪達は、己たちを見ることが出来る猟兵の存在には敏感だ。フードを目深にかぶったフォルクの周りには子供の妖怪達が何をしなくても集まってきている。
暑くないのー? だとか、ねっちゅーしょーになるからお水飲んでーだとか、そんな風に集まってくるのだ。
「……そうだな。君らも気をつけるといい……さて、何かして遊ぼうか」
自分の警戒が子供たちにさとられぬのようにしながら、彼等と会話するフォルク。その間もつぶさに周囲を観察していく。
開けた場所だ。どこかに犯人が潜んでいる、というよりは、そこかしこに子供たちを監視している大人の妖怪達の存在が見て取れる。
ぱっと見ただけでもすぐに分かるくらいである。これはきっと大人の妖怪達も、わかりやすいくらいに大人の存在を見せていたほうが犯人もうかつには近づいてこないだろうと考えているのだろう。
それもわかる考えであった。
「ふむ……鬼ごっこにしよう。せっかく広い場所があるのだから」
そう提案すると、子供の妖怪達はびっくりするくらい集まってくる。少したじろいでしまうほどの数だ。
物珍しい風貌の猟兵がいれば、ある意味当然であった。
鬼ごっこは、まさに子供たちのパワフルなエネルギーの発露であった。圧倒されるほどに元気な子供たち。
歓声が響き、楽しげな雰囲気が周囲に伝わっていく。
「……―――」
自分ならどうするだろうか。フォルクは鬼ごっこに興じながら考える。もし、事件が起こるなら。もし、自分が犯人であれば―――。
「……(子供を態々悲惨な方法で、しかも証拠を残して。その行いを誇示しているのか。一番効率的に行えるのは)」
考える。
折り紙という証拠を残している不可解さ。これは自身の行いを誇示しているように思える。色が違うという所を考えると殺害の方法に関連付けているのだろう。
そして、一番効率的に犯行に及べ、なおかつ疑われない、と考えるのであれば。
「子供、か」
そこに到達する。
守られる立場、という子供ならばどこにでもいる。とりわけ、この村は子供が多い。紛れ込むことも可能であろう。
そして、被害者もおそらく子供同士であれば警戒することはない。
それはフォルクが考えうる中で最悪であり、己が犯行に及ぶのであれば最高の状況であった。
だが、そこでフォルクはそれに気がつく。
それはフォルク自身が犯人であれば、ということだ。己が犯人であれば、そうする。けれど、犯人はフォルクではない。
そして、一番肝心な推理の要。
「子供が警戒することのない者―――」
子供の中にあっても違和感のない者。子供ではないが、子供とともに居てもなんらおかしくない者。
折り紙。
殺害方法に合わせて色紙を置いたのではなく、折り紙を選ばせたのなら。
その選ばせた折り紙の色によって、殺害方法を変えたのなら―――。
「……最悪より、わずかにマシだったな」
フォルクの視線が向いた先。そこに居たのは―――。
大成功
🔵🔵🔵
天御鏡・百々
よりにもよって子供のみを狙うとは
犯人はよほどの悪党だな
こうしてはおられん
いそぎ犯人を見つけねばならぬ!
それに、神社の村を狙うところも気に入らぬ
(百々はかつてサムライエンパイアの神社に御神体として祀られていた)
殺され方が異なるというのは不思議だな
多様な能力を持つ妖怪の仕業であろうか?
折り紙と対応した力を使う……
場所にも関係していそうとなると、環境にあわせて変化するのか?
この村の子供達に、心当たりを聞いてみるしかなさそうだ
カルタや双六を持ち込み、子供達と遊ぶとしよう
勝敗にはこだわらぬ
楽しめればいいのだ
そして、仲良くなったら情報収集だな
●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎
「よりにもよって子供のみを狙うとは」
天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)の体の芯から湧き上がる感情があった。
猟兵として、何より己がヤドリガミと相成った経緯からすれば、此度の事件―――『三色折り紙連続殺妖事件』は許し難い事件であった。
「半日はよほどの悪党だな。こうしてはおられん。急ぎ犯人を見つけねばならぬ!」
百々の瞳が映すのは、赤い鳥居。
大きくも立派な鳥居である。そこかしこに子供の妖怪達の姿が見受けられる。この村は子供の妖怪がとりわけ多いようだった。
それはむしろ、歓迎すべきことであった。
カクリヨファンタズムに移り住んだ妖怪達は、その道程において多くのものが命を落とすほど険しくも厳しい道程である。
カクリヨファンタズムにおいて、子供の妖怪達が多いということは、それだけ貴重であり、大切なことなのだ。
その宝とも言うべき子供たちを害するのは、百々であっても許し難いことであった。
「それに、神社の村を狙うところも気に入らぬ」
彼女の生まれを考えれば、その言葉の重みも変わってくることだろう。御神体として祀られていた過去。その御神体に捧げられる祈りや願いが今の彼女を形作っている。
だからこそ、犯人の所業は許されるものではないのだ。
とことこと、子供の妖怪と変わらぬ見目の百々は鳥居をくぐり、そこかしこに居る子供の妖怪達に声を掛ける。
そうすると、己たちの姿の見える猟兵だと百々を認めた子供たちは、それこそ雪崩のように彼女に殺到してくる。
それだけ猟兵の人気は凄まじいものであるのだ。百々は多少慌てたものの、カルタや双六など、多人数で遊べる玩具を持ってきてよかったと、内心ホッとするのだった。
「ふふ、双六やカルタの決まり事はわかっているだろうか? 何、そう難しく考えることはない。勝敗にはこだわらず、楽しめればいいのだ」
神社の境内でカルタや双六に興じる百々と子供の妖怪達。歓声が響き渡り、子供の妖怪達は新しい遊びに夢中になっていく。
遊びを通じて、徐々に子供たちも胸襟を開いて接するようになり、百々の放つ御神体としての神々しい雰囲気も受け入れるようになっていた。
「この村の自然は豊かだな。池は見事であるし、緑も豊かだ。近づいてはならぬとか、そういうことはないのか?」
百々の言葉に子供妖怪たちは口々に声を上げていく。
う、と一瞬たじろぐ。ものすごい勢いだ。これはちょっと聞き分けるのに難儀しそうであったが、そこは百々にかかれば何も問題はない。
要約するとこういうことだ。
立ち入ってはならない場所は、そう多くない。池だって危ない場所は少ないし、奥に入り込まなければ大丈夫、ということだ。
学校の先生がそう言っていたんだ、と子供たちは教えてくれる。
犠牲になった子供が発見されたのも、入ってはならない場所ではないということが百々の持つ情報と子供たちからの言質でわかっている。
ならば、殺され方が異なるというのは不思議であるし、不可解である。多様な脳路力を持つ妖怪のしわざと考えるの妥当である。
事件現場に残されていた折り紙と対応した力を使う……場所にも関連してるような気もしてならない。
殺害する現場の環境に合わせて変化するのだろうか?
子供たちの言葉と示し合わせて考えていく。
彼等は皆、大人……つまりは、学校の先生の言うことにはしっかり従っているということだ。危ない場所には決して近づかない。子供だけではいかない。
今の現状を考えれば、監視している大人たちもいる。
それでも、事件は起きた。
犯人は外部からという線はない。
監視があるからだ。よそ者であれば、即座に気がつく。ならば、外部ではなく内部の妖怪による犯行。
折り紙。
監視。
子供と一緒に居ても疑われない者。
「―――まさか」
振り返った百々の視線が捉えた。神鏡の輝きが照らし出す真犯人。その姿は―――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『黒マントの怪人』
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POW : 赤が好きな子は…炎に焼かれ爛れて死ぬ
【自身の体を切り裂き噴出する呪縛の炎】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 青が好きな子は…水に溺れ苦しみ死ぬ
戦場全体に、【濁流で溢れる地下水路】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ : 緑が好きな子は…身体がどろどろの溶け腐り死ぬ
攻撃が命中した対象に【膿と蛆が湧く程に急激に腐りゆく傷】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【腐敗が進行し全身が緑色になり溶け腐る事】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:すねいる
👑11
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それは闇を溶かしたような黒色の外套とシルクハット、スーツを身に纏った男だった。
先生、と子供の妖怪達が呟く声が聞こえた。
猟兵達の推理はその全てが、真犯人を追い詰める証拠となって結実する。
「監視の目があるのに事件が起きたのならば、監視の誰かが事を成した」
1つ目の事件が起きた後、即座に大人の妖怪達は対応しただろう。それでも連続して事件は起きた。
「子供の傍に居ても疑問に思われない人物」
「子供が警戒することのない者」
「折り紙を見せかけのように逆張りに誘導する、折り紙を持っていてもおかしくない人」
猟兵達が赤い鳥居の神社の開けた境内に集まってくる。
そこにいた黒いシルクハット、スーツに身を包んだ大人の妖怪を追い詰める。
「犯人はあなたね―――学校の先生……大人であり、子供が警戒しない。折り紙を持っていてもおかしくなくて、それを子供に渡すのが自然。そして、子供たちを監視していても、誰も疑わない。標的の子供を連れ出すことも自然」
どうして、と妖怪の子供たちが涙声で呟く。
「どうして?」
学校の先生―――否。もはや骸魂に取り憑かれ、オブリビオンであることを隠すこともしない大人の妖怪がうつろな声で呟く。
「どうして? だと? ガキは大人のことをなんにも変わっていない。お前たちの世話が、お前たちの声が、どれだけオレを煩わせるのか! この村にはうんざりだ! せっかく取り憑いたというのに、どこもかしこも子供だらけ! 辟易する!」
だから、殺したのだと。
一人殺せばスッキリすると思っていたと。けれど、違った。殺せば殺すほどに、心の奥底から快楽がこみ上げてくる。
1つ目の事件は衝動的だった。
2つ目以降は違う。
己の快楽のみで殺した。気持ちが良かった。
「だから、これからも殺す。幸い、この村は子供だらけだ。随分と長く愉しめる。さあ、君は何色が好きかな―――?」
うつろだった表情が、ぐにゃりと悍ましい笑顔に成り代わる。
―――『黒マントの怪人』。妖怪の学校の先生に取り付き、凶行を重ねた『三色折り紙連続殺妖事件の真犯人が、けたたましくも狂気に彩られた笑い声を、平和な村に響き渡らせた―――!
セレシェイラ・フロレセール
みんな、彼の言うことに耳を傾けてはいけない
今の彼はみんなの知っている先生じゃない
こんな惨いことをしたのは、彼に取り憑いている骸魂だ
そんな身勝手な理由で子供を手に掛けるなんて……わたしはキミを許さない
キミに『これから』なんてありはしない
キミは今からわたし達に在るべき場所へと還されるのだから
子供達にわたしの後ろに来るように声を掛けよう
オブリビオンの攻撃が子供達に届かないよう、子供達に防御の魔法を綴る
【高速詠唱】と【多重詠唱】を駆使して、子供達用の防御の魔法、自分用の防御の魔法、攻撃魔法を同時に詠唱、敵が動くよりも早く発動する
キミに綴るのは光の魔法、キミを拘束する
罪人を白き眩い光が貫こう
闇色をしたシルクハットに隠された、歪んだ笑顔。
それは一瞬であるが、確実に妖怪の子供たちに恐れを抱かせた。恐怖に染まる顔。それが見たかったのだというように、『黒マントの怪人』は三日月のように孤を描く口を歪ませた。
「ああ! ああ! その顔だ! 君は何色が好きだい? 緑色が好きななら、身体がどろどろに溶けて腐り落ちて死ぬ!」
笑い声が響き渡る。
手にしているのは、緑色の色紙。
それは攻撃となって妖怪の子供たちを襲う。しかし、既のところで光の壁が子供と色紙とを隔てる。
焦げるようにして色紙が焼け落ち、妖怪の子供たちと『黒マントの怪人』の間に割って入るようにして、セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)があった。
「みんな、彼の言うことに耳を傾けてはいけない。今の彼はみんなの知っている先生じゃない」
その桜色の瞳が見据えるのは闇色の怪人。骸魂に飲み込まれオブリビオンと化したのは、妖怪の学校に務める先生であった。
子供たちを監視するには当然の役職であり、子供を連れ立ったとしても何の違和感もない。だからこそ、これまで連続して子供の妖怪が殺害されるのを止められなかった。
なぜなら、本来子供たちを害することはなく、保護する立場の者だからだ。
セレシェイラは子供たちを庇うように立つ。
彼女の言葉に従って、子供たちはセレシェイラの背に隠れる。優しい桜色の光がひとりひとりの子供らの身体を覆っていく。
緑色の色紙を防いだ防御の魔法だ。それは高速詠唱と多重詠唱を駆使した、セレシェイラにとって攻撃よりも何よりも優先されるべき行動だった。
「邪魔をするんだねぇ。イケナイ子だね……先生は悲しい。とても悲しい。なんて酷いことをするのだろう。私はただ、たまった鬱憤を晴らしているだけだというのに。ストレス発散くらい誰だってするものだろう?」
怪人の言葉はセレシェイラを逆に攻め立てるものであった。悲しいと言いながら、その顔は嗤ったままだ。何もかも嘲笑う顔だった。
「こんなに惨いことをしたのは、彼に取り憑いている骸魂だ……そんな身勝手な理由で子供に手を掛けるなんて……わたしはキミを許さない」
互いに一瞬の挙動であった。
セレシェイラへと緑の折り紙を投げつけようとした瞬間、怪人の足元から浮かび上がる光の魔法陣。
迸るように魔法陣から放たれる光線が怪人の体を拘束する。何かをしようとしても、腕は、脚は、何一つ動かせない。
「キミに『これから』なんてありはしない。キミは今からわたし達に在るべき場所へと還されるのだから」
そう、4つ目の事件は起きない。起こされることはない。
悲劇はもう十分だ。背後にかばった子供たちが取り戻したかったのは、いつもの日常ではない。平和な日常でもない。
取り戻したかったのは、殺されてしまった友達だ。
だからこそ、彼等はいつもどおりに遊んだ。
遊んでいれば、もしかしたらひょっこり木の陰や、鳥居の影、池の中から顔を出すのではないかと思っていたのだ。
だからいつもどおりに遊んだ。けれど、もう知っている。死んでしまったものは帰ってこない。
「キミに綴るのは光の魔法、キミを拘束する」
ユーベルコード、光綴(ルミエール)。それは彼女の綴る魔法陣。そこから放たれた光線は何者にも引きちぎることは出来ない。
セレシェイラは知っている。
子供たちが悲しいはずなのに笑うのかを。その理由を。
「許せないのは、罪人。だから―――」
迸るように光線が魔法陣から数百もの数を伴って怪人の体を貫く。
「せめて、その罪を貫こう」
凄まじい絶叫が響き渡る。
痛みに震える声。それは怪人から響き渡る。光線に貫かれた傷は癒えない。それが、殺されてしまった子供たちの受けた痛みに届かないと知っている。
それでも、その痛みが少しでも、早く骸魂に飲み込まれた妖怪を救い出せるようにと、セレシェイラは光の魔法を綴るのだった―――。
大成功
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天御鏡・百々
子供達を教え導くはずの教師が犯人とは
本来ならば最も守る立場であろうに
いや、憎むべくはその教師を飲み込んだ骸魂か?
これ以上の狼藉は許さぬ!
汝はここで成敗してくれよう!
腐敗の傷…呪いの類いか?
攻撃を受けるのはまずそうだな
『合わせ鏡の人形部隊』で召喚した人形兵に前衛を任せ
我は後方から援護するとしよう
腐敗の力は単体相手には強くとも、数を相手にするには向いておらぬだろう?
天之浄魔弓(武器:弓)より放つ追尾する光の矢で、犯人を射抜いてやろうぞ
(破魔110、誘導弾25、スナイパー10)
防御は神通力(武器)による障壁(オーラ防御103)にて
●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ・連携歓迎
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
光線がオブリビオン黒マントの怪人の体を穿つ。
苦痛に悶える声が響き渡る。その声は、己の思い通りにならぬ事態に苛立つものであった。だというのに、張り付いたような歪な笑みは消えない。
それどころか、益々持ってその笑顔は奇妙なことに心底愉快そうに笑うのだ。
その光景にその場に居た妖怪の子供たちは慄く。恐怖に、というよりも、普段身近に存在していた先生が犯人であったことに心震わせる。
「子供たちを教え導くはずの教師が犯人とは。本来ならば、最も護る立場であろうに……いや、憎むべきは、その教師をに飲み込んだ骸魂か!」
天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)が一気に戦場と化した神社の境内を駆け抜ける。
未だこの場には多くの妖怪の子供達が存在している。これ以上徒に彼等を傷つけさせるのは本意ではない。
「もっともっと殺したい。もっともっと悲鳴を聞きたい。ねえ、君の好きな色は何色かな?」
歪な笑顔を貼り付けたままの怪人が笑う。
問いかける言葉は無視した。けれど、その手から放たれる緑色の色紙が百々へと投げつけられる。
先じて攻撃を仕掛けた猟兵にはなったものと同じ。
その緑の色紙にただならぬ呪いの気配を感じ取った百々がユーベルコードを発動する。
「我が眷属、合わせ鏡に果てなく映りし鏡像兵よ、境界を越え現世へと至れ―――腐敗の傷、呪いの類か! だが!」
召喚されしは合わせ鏡の人形部隊(アワセカガミノニンギョウブタイ)。人形兵を合わせ鏡に写した鏡像人形部隊が境内に展開する。
それは一気に分厚い壁となり、緑の色紙がどれだけ振りまかれようが、百々には届かない。
「どれだけ強力な腐敗の力であっても、数を相手にするには向いておらぬだろう?」
そう、彼女の技量と相まって鏡像人形部隊の数はあまりにも多い。
一撃で消滅してしまう定めではあるが、数で押す以上、一体一体の耐久力は度外視である。
肝要であるべきなのは、腐敗の力を百々まで届かせないということ。
百々の神力が高まっていく。神弓―――天之浄魔弓を構えた百々の瞳に映るのは、かつては先生と呼ばれ子供らから慕われていたであろう幻影。
だが、今はオブリビオンだ。骸魂に飲み込まれ、狡猾なるオブリビオンによって記憶を奪われた憐れなる犠牲者の一人。
奪われた子供らの生命は戻ってこない。
けれど、教師である彼はオブリビオンを打倒すれば骸魂を引き剥がすことによって助け出すことができる。
「それだけが救いではないが……骸魂、汝の穢れた欲望、射抜かせてもらう!」
放たれるは光の矢。
それは一条の光となって空を駆ける。どれだけ躱そうとも、その鏃が目標を射抜くまで追尾し、その固めた防御も無意味と言わんばかりに神通力によって貫通する。
故に、浄魔弓。
その体にまとわりつく骸魂という穢れを打ち払う一撃である。
「私は―――オレはまだ、殺し足りない……! まだ十分に殺してはいないんだぞ!」
その咆哮はあまりにも身勝手だった。
鏡像人形部隊に押し込められて自由にならぬ体を光の矢が打ち貫く。決定打ではない、けれど、その一撃は穢れた魂である骸魂を貫き、確実に消耗させていく。
「その欲望、これ以上の狼藉は許さぬ! 汝はここで成敗してくれる!」
百々の力強い言葉が響き渡る。
それは失われた生命と、子供らへと与えた恐怖、悲しみを打ち払うように高らかに響き渡るのだった―――。
大成功
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黒髪・名捨
〇心境
なる。
文字通り先生の皮被った殺人鬼ってことかい。
(化術で人化した寧々に)子供たちは任せた。
こっちはオレ達に任せろ
〇戦闘
まずは、ぶん殴り『吹き飛ばし』て子供たちから見えない位置までブッ飛ばしたら、『結界術』を展開する。
悪いがてめぇの言い分聞いてからひじょーに虫の居所が悪くてな。
泣いても許さん!!
炎か…。ユーベルコードを封じられるのはまずいな。
『読心術』で心を読んで発射を『見切り』、そして『野生の勘』を信じて回避行動だな。
『覇気』と『破魔』を込めた覇気を纏った『怪力』の一撃必殺の拳でぶん殴る。
これでてめぇのくだらん凶行は終わりだぁぁッ!!
骸魂に飲み込まれオブリビオンと化した妖怪。
それはこの村の学校の先生であった。だが、彼もまた被害者である。己が望まぬ欲求を押し込められ、記憶を奪われる。
己の手によって子供らを殺害したという記憶すら奪い取り、己の体を使って凶行を重ねる手段は狡猾そのものである。
オブリビオン―――『黒マントの怪人』とは、そのような存在であった。
貼り付けたような歪な笑顔。
その笑顔のいびつさを見ればわかる。それが正真正銘、ただの快楽で子供を殺す存在であると。
これを捨て置けば、早かれ遅かれ村の子供達は全員犠牲になってしまうだろう。
「まだだ! まだオレは、殺し足りねぇ! もっと! もっと子供を殺したい!」
咆哮する怪人。
妖怪の子供たちは、怪人の咆哮に怯える。それもそうだろう。普段慕っていた先生が、真犯人であったというのだから。
「なる。文字通り先生の皮かぶった殺人鬼ってことかい」
だが、それも全て骸魂が行ったこと。
このオブリビオンを打ち倒せば、骸魂に飲み込まれた妖怪……先生は助けることができる。
黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)の隣で人の姿に变化した喋る蛙、寧々が子供たちを護るように後ずさる。
「……寧々、子供たちは任せた。こっちはオレ達に任せろ」
名捨が一歩踏み出す。
その赤い瞳が苛立ちに燃え盛っているような気配すらした。踏み出した足が大地を踏みしめた瞬間、凄まじい轟音が重なった。
踏み込んだ足が立てる轟音と瞬時にオブリビオンである怪人との距離を詰めた名捨の腕が振るった拳が叩きつけられた音だった。
一気に子供たちから距離を離す一撃。
子供らの視界に一時も、この怪人を置いてはおけない。ただ、それだけだった。
「悪いが、てめぇの言い分聞いてからひじょーに虫の居所が悪くてな。泣いても許さん!!」
名捨の咆哮が響く。
周囲にはリングのように張り巡らされた結界。ここより先にも後にも活かせぬと張り巡らせたのだ。
「ああ、赤い瞳。燃えるような瞳。綺麗だねぇ! 綺麗だねぇ! 決めたよ、君は―――赤色が好きなんだねぇ!」
己の体を切り裂いて噴出する怪人の血潮―――否、炎。
その炎が名捨に迫る。
「その炎……ユーベルコードを封じようという算段か」
それはまずい。
そう、名捨の読心術によって読み取れた怪人の心の表層。あの炎は触れた者のユーベルコードを封じる。
ユーベルコードは猟兵にとっても切り札である。それを封じられては勝てるものも勝てない。
吹き出す炎を野生の勘じみた動きで名捨は躱していく。
ムカムカと胃の中のものがこみ上げてくる。苛立ちで全身が沸き立つように熱が上がる。虫の居所が悪いと言った。
それは間違いではない。
理由はわからない。わからないが、目の前のオブリビオンを放置していい理由にもならないし―――。
「てめぇをぶっ飛ばなさい理由にもなってねぇ!」
迸る覇気。拳に籠められしは破魔の力。
その拳が放つは、一撃必殺。すでに猟兵たちの攻撃に寄って、怪人のスーツはところどころ穴が空いている。
傷口はふさがっているようだが、それは対面を保つために取り繕ったものに過ぎないだろう。
ならば、さらに一撃を加える。
食わなければ、この腹の虫は収まらない。噴出した炎を紙一重で躱し、踏み込む。裂帛の気合が腹の底から吹き上がり、呼気となって口から吹き出す。
「これで、てめぇのくだらん凶行は終わりだぁぁッ!!」
放つ一撃。
それは失われた生命に対する祈りでもあった。
殺された子供たちは戻らない。決して戻らない。
だからこそ、その無念を晴らさなければならない。そうしなければ、残された子供たちも前に進めない。
だからこそ、この一撃に名捨は己の力の全てを込める。
凄まじい轟音が響き渡り、張り巡らせた結界に怪人の身体がしたたかに打ち据えられ、ずるずると大地へと落ちる。
「まだ力が残っているようだが……まだ終わりじゃあないぞ。言っただろう、『オレ達に任せろ』ってなぁ!」
そう、自分だけではない。
まだ猟兵は控えている。彼等と共に怪人を討つ。それだけが、犠牲と成った子供たちへの手向けとなるのだから―――。
大成功
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荒覇・蛟鬼
あれれ、ホシはもう見つかったようですな。
でしたら、後は処刑だけ行えばば良さそうな。
ではではお仕事行ってみましょう。
■闘
炎で捕まえようとしているようですが、そうはいきません。
【残像】を見せながら辺りを【ダッシュ】し、炎から逃げ
ながら接近を図りましょう。要は鬼ごっこですな。
当たりかけたら軌道を【見切り】つつすっと躱します。
相手の懐に辿り着いたら人差し指で【嘗女の惑乱】を放ち
『暗闇の中で何かに押し潰されている』という情報を流し
【目潰し】しながら【精神攻撃】を仕掛けましょう。
黒がお好きそうなあなたに相応しい刑を御用意致しました。
さあ、気が済んだら一刻でも早く地獄へお帰りなさいませ。
※アドリブ・連携歓迎
凄まじい打撃の轟音が響き渡る。
その一撃は黒マントの怪人の体を強かに打ち据え、その力を大きく削ぎ落とす。けれど、それでも立ち上がってくるオブリビオン。
その過去の化身、欲望の権化は己の欲求を満たすまで止まらない。完全に霧散し、骸の海へと還るその時まで、動きを止めることはない。
「あ、ぁ……ああ、血が一杯出ている。オレの血……なんでオレの血が吹き出ているのかなぁ……なんでだろう、なぁ、なんでだ……!」
ごぽ、と吐血する血は赤い。
今まで見てきた赤い血は自分のものでなく、子供の妖怪達のものだった。
噴出する血。それが炎となって撒き散らされる。ユーベルコードを封じる炎は、色紙の赤よりもさらに赤き血潮を持って燃え盛る。
「あれれ、ホシはもう見つかったようですな。でしたら、後は処刑だけ行えば良さそうな」
村に遅れるように到着したのは、荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)であった。なるほど、と頷くような仕草を見せてから目の前のオブリビオンを見据える。
彼にしてみれば、推理を行うまでもなく、この事件の元凶たるオブリビオンがわかっているのだから、やるべきとは以前変わらず、至極シンプルであった。
「ではでは、お仕事行ってみましょう」
怪人化k羅放たれる炎が、蛟鬼を捉えようと蛇のようにうねりながら迫る。
だが、その動きはあまりにもおそすぎる。その程度の速度で彼を捉えようなど、愚の骨頂。
「炎で捕まえようとしている動きが見え見えですよ。そうはいきません」
さらに駆け出す速度が上がる。
残像を生み出すほどの猛スピードで駆け回る彼の姿は、怪人の反射速度を越えていた。
「要は―――鬼ごっこですな。ああ、これはわりと楽しいやもしれません」
童遊び。触れればユーベルコードを封じる恐ろしき炎を前にしても、彼は余裕を崩さない。
炎の機動は変幻自在であるが、見きれないほどではない。
ならば、恐れるに足らない。
「真っ黒な装束を着て、黒がお好きそうな、あなたに相応しい計を御用意いたしました―――」
肉薄する蛟鬼。
その指先が放つは、嘗女の惑乱(ナメオンナノワクラン)。その指の切っ先が触れた瞬間に、怪人の体に起きる異変。
触れた指先から流れ込むのはあらゆる知覚に訴える誤った情報。一瞬で怪人の視界が帳を下ろしたように真っ黒に染まり上がる。
いや、それだけならばまだいい。
「なんだ―――! なんだこれは何も見えない。何も何も何も―――ああ、上から何かが、何かが降りてくる!」
今、黒マントの怪人の視界に見えるのは、ただの黒一色。
そして、己のみを押しつぶさんと何かが上から押さえつけてくる。その感触は、幻覚というにはあまりにも真に迫ったものだった。
潰れる。潰れてしまう。ひしゃげてしまう。
そんな感覚だけが怪人の五感を支配していく。何も見えないのに、確かに何かに圧せられているという感覚だけが伝わってくる恐怖。
それこそが、蛟鬼のユーベルコード。
触れたものの五感全てに偽りの情報を流す恐るべきユーベルコード。
「さあ、気が済んだら一刻も早く地獄へおかえりなさいませ」
平坦で冷淡な言葉が黒一色の世界に響き渡った―――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「正真正銘快楽殺人者か。
お前を倒しても子供たちは帰ってこない。
だがこの憤り、存分にぶつけさせて貰う。」
攻撃を【残像】で躱し
隙を突きレッドシューターの炎。スカイロッドの空圧を撃ち。
その【衝撃波】の反動を使い飛び退いて距離を取り。
「お前の言葉遊び(好きな色)に付き合うつもりはない。
俺はな。」
距離を取ったら不浄なる不死王の軍勢を発動。
死霊と魔物を壁にしながら取り囲み
自分や他の妖怪への攻撃を防ぐ。
「存分に遊んでもらうと良い。
腐敗する身体もない死霊や不死王相手では
分が悪いかも知れないがな。」
今度は鬼ごっこだ。この『鬼』は子供たち程可愛らしくはないが。
死霊や魔物が敵を抑える間に
不死王を向け仕留めにかかる。
「はぁ―――! はぁ―――! はぁ―――!」
どさりとユーベルコードの効果から逃れ出たのは『黒マントの怪人』であった。
猟兵のはなった五感全てに誤情報を流され、傷つきながらも逃れようとしていた。だが、それだけの攻撃を受けてもなお、『黒マントの怪人』の欲求は止まらない。
それこそが己の存在定義であると言わんばかりに、欲求の発露を続ける。
「何が、刑だ―――! オレはまだ十分に殺しちゃいないんだぞ! もっと、まだ、ずっと殺し続けていたいんだ!」
醜く歪んだ笑顔が張り付いた顔は、消耗していてもなお、張り付いたままだ。それ以外の表情を知らないとでもいうかのように。
「正真正銘快楽殺人者か」
静かだが、確かな怒りの色を感じて『黒マントの怪人』が顔を上げる。
そこにいたのは、フードを目深にかぶったフォルク・リア(黄泉への導・f05375)がいた。その表情はフードに隠れたままで伺いしれない。
けれど、その平坦な言葉の裏側には怒りがにじみ出ていた。
「お前を倒しても子供たちは帰ってこない。だが、この憤り……存分にぶつけさせてもらう」
放たれたのは緑の色紙。
それに触れてしまえば、腐食してしまうことはわかっていた。残像を残すほどのスピードでフォルクが躱し、炎の幻獣を封じた魔導書を再構成した黒手袋レッドシューターから放つ炎が吹き出す。
構えたスカイロッドから放たれる空気の圧によって生じた衝撃波が緑の色紙を吹き飛ばしていく。
「オレの邪魔をするな! もっと殺さなきゃ! もっと生きてるのを殺さなきゃ、多すぎるんだよ、ガキどもが―――!」
それでもなおばら撒かれる色紙。
圧倒的な数。空を埋め尽くさんばかりに、ばら撒かれた色紙が緑色に染まる。あれを躱すのは至難の業であるし、未だこの場には妖怪の子供らの姿もある。
彼等を守るためには―――。
「お前の戯言に付き合うつもりはない。俺はな」
フォルクの言葉に違和感を感じた。すでに駆けつけた猟兵達は彼で最後だ。
ならば、これ以上の援軍があるわけもない。ならば―――。
「偉大なる王の降臨である。抗う事なかれ、仇なす事なかれ。生あるものに等しく齎される死と滅びを粛々と享受せよ」
その言葉は圧倒的なプレッシャーを伴って顕現せし、不浄なる不死王の軍勢(デスロード)。
無数の死霊とそれを貪り力を増す魔物の群れ。さらにその全てを凌駕する力をもと骸骨姿の不死王の姿がそこにはあった。
ぐるりと黒マントの怪人を取り囲む魔物群れ。
それは圧倒的な物量で持って包囲網を完成させ、ネズミ一匹であろうと逃す隙間もない。そこにあったのは、圧倒的な死の気配のみ。
「存分に遊んでもらうと良い。腐敗する体もない死霊や不死王相手では、分が悪いかもしれないがな」
一斉に黒マントの怪人へと襲いかかる魔物の群れ。
蹂躙の前に怪人の断末魔は轢き潰された。それは無慈悲にも、何の罪もない子供を殺したオブリビオン『黒マントの怪人』の最期には相応しいものであったかもしれない。
悲鳴も、絶叫も、何もかもが不死王の軍勢の前に飲み込まれ、消えていく。
不死王の振りかざす最期の一撃を見た。
それはあまりにもあっけない一撃。だが、これでいいのだとフォルクは思った。
ただの一撃でも、それは確実に『黒マントの怪人』を打ち払うだろう。
油断も何もいらない。オブリビオンを骸の海へと還す。ただ、その結果さえ残ればいい。だから、フォルクはただ命じればいいのだ。
「―――やれ」
それが徒に殺されてしまった妖怪の子供たちへの手向けであった。
子供らは可能性に満ちていたことだろう。これからどんな生き方をするのかわからない。わからないということは、無限に広がる選択肢が目の前に広がっているということだ。
その中から多くを選ぶ者もいれば、一つを選ぶ者だっている。
けれど、それは生きていればこそだ。
死んでしまえば選ぶこともできない。何もかもが失われてしまった妖怪の子供たちの魂が癒えるかどうかはわからない。
フォルクの心を代弁するかのように不死王の一撃は、確実にオブリビオン『黒マントの怪人』を葬り去る最大の一手となるのだった―――。
大成功
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第3章 集団戦
『ごいのひさま』
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POW : ゆらゆらひのたま
自身が装備する【青と橙の鬼火】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD : ごいごいふれいむ
レベル×1個の【青と橙】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ : ついてくる
攻撃が命中した対象に【青か橙の炎】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と発生する「青と橙の鬼火」】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:橡こりす
👑11
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オブリビオン『黒マントの怪人』の断末魔が不死王の軍勢の前に飲み込まれて消えていく。
だが、本当に狡猾なる者は、真に罪深き者である。
「クソ! クソ! クソ! くそったれが! もっとオレが殺したかったのに! もっと! ああ、もっと悲鳴を聞きたかった―――けど、それはもう他のやつに譲るよ」
その言葉が最期であった。
黒マントの内側に隠された体から吹き上がるようにして、一斉に噴出したのは膨大な数の骸魂たち。
あの黒色の外套の中に潜んでいたのは骸魂だったのだ。それらは枷から開放されたかのように村中に飛び火する。
猟兵達が守っていた子供たちは無事である。
だが、この村はもっと多くの妖怪の子供たちがいる。
ならば、その骸魂たちが狙い、飲み込むのは―――。
村のあちこちから一斉に青と橙の炎が上がる。
子供の妖怪達を飲み込んだ骸魂たちが一斉にオブリビオン『ごいのひさま』へと変わり、炎を撒き散らし始めたのだ。
これが『黒マントの怪人』の最期の断末魔。苦し紛れであり、猟兵達への怨念を籠めた一手。
骸魂に飲み込まれた子供の妖怪達は、オブリビオンとしての『ごいのひさま』を打ち倒せば救出できる。
猟兵達が神社に集まった子供たちを保護していたおかげで、オブリビオンの数は3分の1ほど軽減されている。
それでも数は多い……だが、ここまできて子供たちの犠牲を増やすわけにはいかない。
それがせめてもの、亡くなった子供たちへの弔いなのだから―――!
黒髪・名捨
〇心境
ふざけた奴らだ。もういい何もさえずるな。
今度は子供だと。子供を殴らせるつもりか…くそッ
オレの失った記憶が…心がイラつかせる。
〇戦闘
『オーラ防御』と腕に巻き付けた覇気に『覇気』を込めたた『武器受け』で、鬼火受け止め、殴り壊す。
『火炎耐性』と『激痛耐性』があるからな。この程度の痛み...犠牲者の子供の痛み、友達を失った心の痛み。
くだらない骸魂に囚われた子供たちの苦しみに比べたら全然痛くない。
言ったよな。虫の居所が悪いって。
『破魔』と寧々の『神罰』の力…この一撃(神砕)に乗せてブッ飛ばす。
邪心...骸魂をそのユーベルコードごと消えてなくなれ!!
さあ、次。早く子供たちを解放するぞ!!
青と橙の鬼火が空を舞う。
その周囲に飛び交う青い鳥。まるまるとしたフォルムは可愛らしさを感じさせるかもしれない。けれど、その本質は妖怪のこどもを取り込んだ骸魂が変じたものである。
オブリビオン、ごいのひさま。
それが『黒マントの怪人』が死に際に残した置き土産である。あの闇色のマントは無数の骸魂の集合体であったのだ。
かのオブリビオンが霧散する一瞬、それを解き放ち、村にいた子供の妖怪達を飲み込んでオブリビオンへと変貌させた。
「ふざけた奴らだ……」
黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は苛立ちを隠せなかった。隠そうともしなかった。
心の中にあったのは理由も由来もわからぬ苛立ちと怒り。
記憶のない自分であっても目の前のオブリビオンが子供を取り込んだということに対する特別な思いがなくしたはずの記憶をささくれ立たせ、自身の心に突き刺さる。
「モエロ! モエロ! モットモヤシテシマオウ!」
ごいのひさまたちが一斉にさえずるように声を張り上げる。
悲しい思い出ばかりになってしまうであろうこの村を、全て焼き払おうと青と橙の炎が周囲に渦巻く。
「―――もういい、何もさえずるな」
名捨は子供の変じたものを殴らねばならぬという心理的負荷にさいなまれる。
苛立ちがさらにひどくなるのを感じた。
けれど、やらなければならない。まだ骸魂は妖怪の子供らを飲み込んだばかりだ。オブリビオンを打ちのめし、霧散させれば救うことができる。
救うことが出来る……。それは名捨にとっても救いであったのかもしれない。
その身に纏う覇気によってオーラが強化される。空を舞う鬼火が名捨を襲おうとも、その尽くを受け止め殴り壊す。
「ガッ―――!」
しかし、それでも雨のように降り注ぐ鬼火の猛攻の前には全てを殴り壊すというには及ばない。
体を強かに打ち据える鬼火。
激痛が走るだろう。炎はその身を焦がすだろう。それはどれほどの苦痛となって彼を襲うのか。
痛みに体は震える。
だが、それでも名捨は前に進む。雨あられと降り注ぐ鬼火の猛攻は以前勢いを変えない。けれど、それでも一歩、一歩と踏み進める。
「この程度の痛み……犠牲者の子供の痛み、友達を喪った心の痛み……くだらない骸魂に囚われた子供たちの苦しみに比べたら全然痛くない」
そう、ささくれた記憶は心を削る。その痛みは耐え難いものである。
けれど、それを無視する。今、己の痛みよりも優先されるべき痛みがある。それを取り除かなければならない。
己の痛みではなく、誰かの痛みをなくさなければならない。
「オレの意志が悪を討つ……」
ぎ、と歯を食いしばる音が響いた。覇気が拳に集中する。それはユーベルコードの輝きとなって名捨の拳に気合が籠められた瞬間だった。
「言ったよな。虫の居所が悪いって」
踏み出す先にあるのは、ごいのひさまたちの姿。破魔の力と寧々の神罰の力も加わって放たれる一撃の名は―――神砕(シンサイ)。
神をも砕く一撃。
「邪心……骸魂、そのユーベルコードごと消えてなくなれ!!」
放たれる一撃は、ごいのひさまをオブリビオンたらしめる邪心……骸魂だけ散々に打ち砕く。ユーベルコードによって生み出された鬼火が次々と消えていく。
「さあ、次。早く子供たちを開放するぞ!!」
拳を振り抜き、振り返ることもせずに戦場を疾駆する名捨。
その心に去来するのは、一体なんであろうか。
記憶はない。
けれど、その心にあるのは美徳である。
何が正しく、何が美しいのか。何が尊くて、何を護らなければならないのか。
たとえ記憶をなくしていたとしても、その心の衝動のままに名捨は戦うだろう。振るう拳は傷つけるためではなく救うため。
駆け抜けざまに、ごいのひさまたちが次々と霧散し、骸の海へと還っていく。
その心に抱えた苛立ちが消えるまで、名捨は拳をふるい続けるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
セレシェイラ・フロレセール
なんてことをしてくれるんだ……!
けれど、これで最後
子供達を助け出してこの惨劇に終止符を打とう
閉じた傘に座り空飛ぶ魔法を唱えて現場に急行するよ
ついでに空から消火するための水の魔法を振り撒いていこうか
『ごいのひさま』が放つ炎には水の魔法を纏った傘を開いて防ごう
オブリビオン化してしまったとはいえ、元は村の子供
子供を傷付けたくはない、だから……
終わらせるための桜の魔法を結ぼう
わたしの桜、この惨劇に終わりを齎せ
水の魔法を纏った傘を桜の花びらへと変えよう
傘に纏わせた水は竜の姿へと変換する
水の竜よ、優しい終わりを齎す桜を子供達に運んで
悲劇で始まった物語を悲劇のまま終わらせはしない
優しい結びをわたしが綴ろう
「なんてことをしてくれるんだ……!」
その叫びは悲痛なるものだった。
オブリビオン『黒マントの怪人』を追い詰め、打倒するまではよかった。
けれど、怪人は死に際に苦し紛れのように膨大な数の骸魂を開放し、村の子供たちをオブリビオンへと変えようと画策した。
その企みは全てではないが、目論見通り事が運んだ。
けれど、声の主、セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)や他の猟兵たちの行動に寄って、神社にて遊んでいた子供たちだけは骸魂に飲み込まれることはなかった。
村の半数以上の子供たちが骸魂に飲み込まれた計算になる。
けれど、もしも全ての子供たちが骸魂に飲み込まれてしまったのであれば、次々と発生する青と橙の鬼火によって村は壊滅に追い込まれてしまっていただろう。
彼女たちの行動が村の運命を変えたと言ってもいい。
鬼火の数は凄まじいが、猟兵の力はこんなものではない。
「けれど、これで最後……子供たちを助け出して、この惨劇に終止符を打とう」
セレシェイラは桜綾なす魔法の傘を閉じ、それに座って空飛ぶ魔法を唱えて鬼火燃え盛り、オブリビオン、ごいのひさまが飛び交う場所へと急行する。
まだ鬼火の延焼は凄まじいとは言えない。これならば、と彼女は水の魔法を振りまいて消化しつつ、オブリビオンと視線を交える。
「モヤシテシマエ! カナシイオモイデモゼンブゼンブ!」
さえずるように骸魂に飲み込まれた子供たちのネガティブな心を反映するように言葉を発する、ごいのひさま。
鬼火の勢いはましていき、セレシェイラを狙って突くように攻撃を加えてくる。
水の魔法をまとった傘が開かれ、その攻撃を防ぐのだが、セレシェイラの心は未だ踏み出せずに居た。
いや、違う。
すでに心は決めていた
「オブリビオン化してしまったとはいえ、元は村の子供。子供を傷つけたくない、だから……」
そう、誰も傷つけたくはない。
オブリビオンと言えど、元は子供。だからこそ、彼女の綴る桜の魔法がある。
傘を広げて、あえて攻撃を受けたのは、周囲に集まってきたオブリビオンを、この場に引き止めるため―――!
「終わらせるための桜の魔法を結ぼう。。わたしの桜、この惨劇に終わりを齎せ」
彼女のユーベルコードが桜色に輝く。
手にしていた水の魔法纏う傘が桜の花びらへと変わっていく。それはまるで桜吹雪のようにセレシェイラを取り囲んだかと思うと、水の魔法が竜の姿へと変ずる。
桜の花びらが龍鱗のようにまとわりつき、一斉に集まったオブリビオンを取り囲む。
「水の竜よ、優しい終わりを齎す桜を子供たちに運んで」
その言葉が号令となって水の魔法が変じた桜色の龍鱗まとう竜が、ごいのひさまたちを包み込んで霧散させていく。
それは優しいユーベルコード。
「悲劇で始まった物語を悲劇のまま終わらせはしない」
犠牲になった子供たちがいた。
友人を喪った子供たちがいた。
子を亡くした親がいた。
きっと、教師であった妖怪は自身を責めるだろう。狡猾なる骸魂に操られていたとはいえ、子供が死んでしまっている遠因が自分にあると。
この事件はどうあがいても誰かの心に影を落とす。
だからせめて。
「優しい結びをわたしが綴ろう」
犠牲になった子供たちの魂が、骸魂にならぬように。祈りを捧げよう。桜の魔法で結ぼう。
慰めの物語は、いつしかその魂を草花育てる大地の力へと還る。そのために彼女は結ぶ。桜の魔法を結ぶ。
手にした桜の硝子ペンが宙に結ぶ。
その名は―――桜結(フィナリス)。
春が来る頃に咲く桜の花と共に痛ましい事件は、いつかのだれか……セレシェイラが願ったように優しい結びとなって終わることだろう―――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
骸魂に取り込まれた子供たちを見て。
「そういう事を悪足搔きと言うのさ。
ただ、厄介な事をしてくれたとは認めるけど。」
それでも、子供たちを助ける。
やる事には変わりはない。
周囲の『ごいのひさま』の数等を確認。
最も近いものに狙いを合わせて、状態を観察。
極力子供に被害を与えない為に骸魂の魂の在処を【見切り】
蒼霊焔視で骸魂のみ焼き切る。
子供が敵に攻撃されそうなら【かばう】
自身は月光のローブから発生させた【オーラ防御】【火炎耐性】
で耐え。
プロテクションフィールドを発動、展開し子供を守るが。
極力【残像】で攪乱しながら攻撃させる暇を与えずに倒していく。
「さあ、悪い夢はもう終わりだ。
早く目を覚まして帰っておいで。」
オブリビオン『黒マントの怪人』の断末魔をフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は最も間近で聞いた猟兵であった。
その度し難い妄執。
己の欲望のためだけに他者を徒に傷つける本質。
それがかつての妖怪、怪談話を元に生まれた骸魂の存在意義であるとするのならば、肯定すべき存在であってはならない。
あふれるようにして飛び散っていった無数の骸魂たち。
神社に居た子供たちは猟兵達がかばっていたおかげで骸魂に飲み込まれることはなかった。
けれど、他の場所で遊んでいた子供たちまでを守ることは叶わかなった。不幸中の幸いであるのは、飲み込まれたとしてもオブリビオンとなった子供たち―――ごいのひさまと呼ばれる青と橙の鬼火を放つオブリビオンを霧散させれば、彼等を救うことができる。
「そういうことを悪足掻きと言うのさ。ただ、厄介な事をしてくれたとは認めるけど」
フォルクにとって、それは潔い行動ではないと断ずる。
他者の生命を奪うこととに躊躇はなくても、己の生命に関しては生き汚い。それこそが、唾棄すべきこと。
「それでも、子供たちを助ける。やることに変わりはない」
周囲を見回す。ごいのひさまたちは空を舞い、鬼火を次々と生み出している。
その炎が村へと落ち、炎を上げている。消火は間に合うだろうが、座して待つほど意味のないことはない。
フォルクの瞳はすでにオブリビオン、ごいのひさまを構成している骸魂と飲み込まれた妖怪の子供たちの融合した魂の状態を見切っている。
あちらこちらを見境なく飛び、その鋭いくちばしで子供たちを付け狙う、ごいのひさま。子供が危ないと見れば、フォルクは庇うようにして子供たちを抱えて駆け抜ける。
「危ないことはない。ここに身を隠していればいい。君たちの友達は―――必ず助け出すから」
フォルクは目深にかぶったフードの奥で子供たちを安心させるように言葉を紡ぐ。隠れて見えないけれど、妖怪の子供たちはそれで安心したようだった。
いい子だ、とフォルクが一瞬微笑んだような気がしたが、それはきっと子供たちしか知らないことだ。
魔法の念糸を幾重にも編み込んだ純白のローブの前には、鬼火の炎は意味をなさない。
子供たちに被害が及ばぬようにとプロテクションフィールドを張り巡らせ、子供を守る。やるべきことは多い。
けれど、やらなければならないことだけをやる。それはフォルクにとって、当然のことであった。
「その魂を焼く青藍の炎。怨霊の如く追い縋れ」
フォルクの瞳が青藍の炎を迸らせる。
その蒼霊焔視(ファントムアイズ)に見つめられたが最後。突如巻き起こる魂を焼く蒼炎が、ごいのひさまの体を包み込み、骸魂だけを焼き尽くしていく。
蒼炎を迸らせ、戦場を駆け抜けるフォルクの残像が次々と生まれ、ごいのひさまたちの行動を混乱へと陥らせる。
撹乱と牽制。
これ以上、鬼火を生み出させない。攻撃の隙を与えれば、数で圧するオブリビオンに利がある。
攻撃の手を止めさせ、なおかつ此方は、飲み込まれた妖怪の子供たちを救う。それができる。できるとフォルクは判断した。
ならば、後はやるだけだ。
「さあ、悪い夢はもう終わりだ。早く目を覚まして帰っておいで」
その蒼炎の視線が次々と骸魂だけを焼き尽くしていく。
底知れぬ悪意が見せた夢は終わりを告げる。いつかまた、思い出させるように悪夢を子供らは見るだろう。
それはトラウマとなって彼等の心を蝕むかもしれない。
誰にだってあることであろうし、乗り越える者もいれば、埋める者もいる。自分でそれが出来るものは幸いである。
けれど、出来ないものだって居る。
それでいいのだとフォルクは、その蒼炎の視線を向ける。
できないのならば、いつだって己の視線を思い出せばいい。悪意ある者だけを焼く蒼い炎。
その炎がいつだって悪夢を、トラウマを焼き払ってくれるのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
天御鏡・百々
往生際の悪い骸魂だな
しかし、斯様な悪あがきなぞ、我ら猟兵で止めて見せよう!
被害が出る前に『ごいのひさま』を討伐し、子供達を救い出すぞ!
焔を操るか
なれば……これでどうだ!
『神扇花吹雪』にて『神扇天津』を桜の花びらへと変じさせ
敵の放つ炎を迎撃だ
圧倒的な花吹雪の勢いで、炎を吹き散らし
敵を殲滅してくれようぞ
(なぎ払い35、誘導弾25、浄化20、神罰5)
敵を倒して飲み込まれた子供が現れたら
戦闘に巻き込まれぬように保護、介抱するぞ
(オーラ防御103、医術20、救助活動13)
●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ・連携歓迎
溢れ出る無数の骸魂たち。その光景は、あまりにも膨大な数であり、村の子供たちを全て飲み込まんとする勢いであった。
だが、猟兵たちの行動に寄って神社で遊んでいた子供の妖怪達だけは骸魂に飲み込まれるのを阻止することができた。
それによって溢れ出るオブリビオン『ごいのひさま』の数は、当初『黒マントの怪人』が目論んでいた数の3分の1を減らされた状態でしか現れることがなかった。
無数の青と橙の鬼火が村の上空に飛び交う。
あれら全てが村へと降り注げば、燃え盛り損害は計り知れないものと鳴るだろう。
「往生際の悪い骸魂だな。しかし、斯様な悪あがきなぞ、我ら猟兵で止めて見せよう!」
天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)の声が高々と宣言される。彼女の言葉は現実となるだろう。
猟兵たちを前にして、オブリビオンの足掻く行動は全て水泡に帰す。
そうすることこそが、世界を守ることである。だが、それ以上に惨劇の渦中にいた子供らを守る決意に百々は満ち溢れていた。
炎の被害が広がる前に『ごいのひさま』を討伐し、骸魂に飲み込まれた子供たちを救い出さなければならない。
空を舞い飛ぶ『ごいのひさま』たちが操る鬼火。
それは青と橙の火であり、不可思議な力となって周囲を飛び交っている。
「焔を操るか。ならば……これでどうだ!」
百々のユーベルコード、神扇花吹雪(シンセンハナフブキ)によって、神気が宿る扇が無数の桜の花弁へと姿を変えていく。
鬼火を迎え撃ち、圧倒的な花吹雪が炎を吹きちらしていく。薙ぎ払うように放たれた桜の花弁は、鬼火に寄って燃え尽きる暇もなく、逆に鬼火を散り散りにしていく。
「天より伝わりし我が扇よ、桜花となりて舞い踊れ」
百々が舞い踊るように手を振るう度に、桜の花弁が鬼火を浄化し、オブリビオンである『ごいのひさま』を圧倒していく。
その桜の花びらに包まれたオブリビオンは霧散し、骸魂と飲み込んだ妖怪の子供たちを分離させる。
空より落ちてくる子供たちを次々と桜の花びらが抱えるようにして運んでいく。戦闘に巻き込まれないようにと、戦いの場から遠ざけていくのだ。
「この子らは十分にもう悲しんだであろう。これ以上、悲しみを背負わせるわけにはいかない」
友人を失い、己たちもまた標的になった。
恐怖と悲しみは、いつだってそうだ。誰かの人生に影を落とす。触れてほしくない。けれど、触れなければ癒やすこともできない。
時間だけが心を癒やしてくれるというが、それはその人の心が強く育っていればこそだ。
強く育たぬ子供の傷は、誰かに寄り添わなければ癒えることはない。
だからこそ、これ以上の犠牲は出さない。
「子らは可能性。世界を救うのは我らの役目であるが、世界を良きものへと変えていくのは、この世界に生きる子らの役目である」
故に、百々は戦う。
どれだけの悲しみがあったとしても、それを拭うことができるのであれば。
人の願いが己の体に満ちている。
誰だって己の幸福を願う。ならば、その幸福を陰らせるものがあるのならば、それを払う。
それが百々という猟兵の信条であった―――。
大成功
🔵🔵🔵
荒覇・蛟鬼
あらら、塵から更なる塵が生じたようですな。
まあいいですや、残業は慣れっこです。
軽く捻って、ぱっと帰りましょうかな。
■闘
さて、先ずはあの鬼火から逃れましょうか。
【残像】を伴う不規則な動きを見せつつ、相手の目を
惑わしながら敵の集団へ接近しましょう。
向かってきた火は【オーラ防御】で振り払って
しまいましょう。
火を振り切ったら、後は此方のものですな。
敵が密集している場所目がけて【衝撃波】を伴う
【構え太刀】を放ち、すぱっと骸魂を断ちましょう。
攻撃が【範囲攻撃】になるよう、回し蹴り気味に
放ちましょうかな。
今日の報告書は、長文になりそうですな。
この骸魂の罪状だけで数千文字使えそうです。
※アドリブ・連携歓迎
「あらら、塵から更なる塵が生じたようですな」
溢れかえる骸魂を見やり、荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)はやれやれと嘆息する。
散り際の潔さというものをオブリビオンにもとめて居たわけではないが、いささか数が多い。
猟兵たちの行動に寄って子供らは護られていたが、それはこの戦いの場となった神社にいた子供らだけである。
他の村の遊び場にいた子供らは溢れかえった骸魂に飲み込まれてしまった。その結果、村に溢れかえったのは『ごいのひさま』と呼ばれる鳥のオブリビオン。
青と橙の鬼火を操るオブリビオンを見上げながら、蛟鬼は再び吐き出しそうになった嘆息を飲み込んだ。
「まあ、いいですや。残業は慣れっこです。軽く捻って、ぱっと帰りましょうかな」
駆け出す先にいるのは、猟兵たちに追い立てられたオブリビオンの一群。
どうやら、あの一群が最後であるようだった。
ならば、この残業もわずかで済むというもの。迫る青と橙の鬼火を見据え、蛟鬼は戦場となった村を駆け抜ける。
「さて、先ずは―――」
不規則な動きで残像を残しながら疾駆する体。
鬼火の命中精度がどれほどのものであろうとも、彼を捉えるのは至難の業であろう。残像を残すのは相手の目を眩ませる手段である。
放たれた鬼火も、面で圧する数も問題はない。力を込めたオーラによって振り払い、オブリビオンの一群へと突っ込む。
焔を振り払いながら、急接近した『ごいのひさま』の一群へと衝撃波を伴った鋭い蹴撃を見舞う。
その一撃は、構え太刀(カマエタチ)。
彼の蹴りはすでに剣閃の如き冴えを持って放たれ、ごいのひさまたちを一刀両断のごとく切り払う。
「すぱっと断ちましょう。何もかも。未練も、妄執も」
回し蹴りからの上段から振り下ろされる踵落としは、十字にオブリビオンの一群を切り払う。
この蹴撃の前に、断てぬものはなく。
次々と霧散し消えていくオブリビオンから溢れるようにして現れる取り憑かれた妖怪の子供たちを抱えて、村へと降り立つ。
「……しかし」
被害は少ない。けれど、彼の頭の中はこれから行なわれる処理を考えわずかに眉根が寄る。
「今日の報告書は、長文になりそうですな。この骸魂の罪状だけで数千文字使えそうです」
今回の事件は、後に三色折り紙連続殺妖事件として取り上げられることだろう。
その報告書をこれから書き上げなければならないのだが、事のあらましを細かく記述していくのは骨が折れる。
難しい作業ではないが、なにせ量があるのだ。それを思えば、わりと辟易してしまうのも無理なからぬこと。
けれど、それでもこの村の子供たちを救うことは叶った。
犠牲となった子供たちは戻らない。けれど、その魂が骸魂と成り果てぬように、きっと残された子供たちが鎮魂してくれる。
ならば、彼等の魂はきっと草花の栄養となって、春には花を咲かせるだろう。
「塵とならねば、私の出番もありますまい。それを願うばかりですな―――」
大成功
🔵🔵🔵