生剝(作者 妄想筆
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●七夕祭に騒乱綺羅星の如く
 サクラミラージュではいつも桜の花が舞う。
 しかしこの日だけは、主役を別に譲っていた。
 街の並木通りには、笹の枝木が両側に広がっている。
 今日は七夕。
 帝都もそれに習い、それを祝う祭りが開催されていた。
 祭りを口実に、屋台をつまむ友人知人。
 子が短冊を笹に結ぶのを、微笑ましく見守る親。
 何を願ったのかと、仲睦まじく教え合う二人連れ。
 そんな祭りの光景に、心なしか桜の花びらはいつもより少ないように見受けられた。
 人々の願いを聞き入れたかのように笹の葉がさらさらと揺れている。
 そんな祭りの中に、珍妙極まる闖入者が現れた。
「いよう、皆の衆! 楽しんでいるようだな! それでこそ良い子ちゃんだぜ!」
 赤ら顔に二つの角を生やした大柄の男。
 黒いコートを羽織りバイクに跨りて、通行止めの立て看板を吹き飛ばしながら祭りの中へとやってくるのだ。
 これはいかなパフォヲマンスか。
 訝しがる人々達。
 しかしすぐにやってくる警備員の姿から、これはイベントの類いではないことが理解出来た。
「きみ、ここは今日は車両は――」
「俺の行動を止めようとは、テメエ悪い奴だなぁ!」
 パチンと男が指を鳴らすと、たちまち周囲に異形の者が現れる。
 男と同じように赤い顔をした悪鬼たち。
 そいつらが警備員にむかって、一斉に襲いかかる。
「悪い子はいねーかーーー!」
 砂糖に群がる蟻の如く、黒づくめの鬼が警備員を取り囲んで殴打する。
 祭り会場はパニックになった。
 逃げ惑う人々を、悪鬼の首魁は静止しようとする。
「おおっと、逃げちゃ駄目だぜ悪い子ちゃん! 俺は良い子にプレゼントしに来たんだからよう!」
 なあ? と呼びかける悪鬼。
 そこには少年の姿があった。
 奇妙なラムプを両手で抱え、ことの成り行きを見守っている。
「うん、おじさん。みんなの願いを叶えてあげて」
「あたぼうよ! 俺は良い子の味方だからな!」
 エンジンのスロットをあげて悪鬼は爆走する。
 この年端もいかない少年が、この鬼たちを従えているのであろうか。
 逃げ惑う人々はそれに気づける余裕はなかった。
 黒光りするラムプが、綺麗に見える天の川の星明りにキラリと光っていた。

●グリモアベースにて
「これが、私の見た予知でございます」
 ここはグリモアベース。
 ライラ・カフラマーンは居並ぶ猟兵たちに深々と頭を下げていた。
 その背後に生じている霧には、さきほどの光景が幻となって現れている。
 頭を上げると幻は雲散霧消していき、周りの霧と溶け込んでいった。
「帝都で開かれる七夕祭り、そこに影朧が現れるという予知を視ました」
 先ほどの光景はその惨状を予見したもの。
 放っておけば、七夕会場は台無しになってしまうだろう。
 ただ、とライラは付け加える。
「この一件には幻朧戦線の影響があります。少年が持っていたあのラムプ。あれは籠絡ラムプといい、影朧を自分の手足のように操れる兵器であります」
 それが市井にばらまかれ、少なからずの手に渡ってしまっているという。
 何の力を持たない人々にとって、力を手に入れられたことは、神になったかのような錯覚に陥るだろう。
 そしてそれは奈落への落とし穴だ。
「人々が力に溺れ、暴走することは幻朧戦線にとって絶好のカモフラァジュになるでしょう。そして影朧は所詮人の手に余る者。軽々しく扱うは身の破滅を招きます」
 そこでライラは猟兵達に籠絡ラムプの破壊を依頼するのであった。
 ライラが杖の先で地面を軽く叩くと、霧が変化し姿を形どる。
 そこは帝都の夜。
 祭り会場を独り歩く少年の姿であった。
「かの少年は人々を幸せにしたいと願っています。そこをテロリスト集団につけ込まれました。どうか皆様につきましては、この少年が悪事に深入りしないようにここでくい止め、祭りを楽しむ人々を守ってください」
 そう言ってライラは、猟兵達に深々と頭を下げたのであった。


妄想筆
 こんにちは妄想筆です。
 今回は祭りで暴れる陽炎の撃破と少年の説得という依頼になっています。
 少年の名は片山 凜吾郎。十歳です。
 身寄り無く、孤児院で暮らしていたところに影朧戦線が接触しました。
 幸せへの憧れがあります。
 どうやら孤児院の人達とはこっそり抜け出してきたようです。

 一章は祭り会場です。まだ影朧の姿はありません。
 祭りを楽しむのも良し、真面目に捜査するも良し。
 孤児院関係者はも祭りに来ていますので、話を聞こうと思えば聞けます。
 二章は現れた影朧との戦闘になります。
 良い子には優しいですが悪い子には厳しいです。
 贈答品を操り攻撃してきます。
 プレイングに『子供の頃欲しかった物』を記載してくださればそのように描写します。
 なければこちらで適当に決めさせていただきます。
 三章は少年との相対です。
 籠絡ラムプは連続して使えないという欠点があります。
 無力な少年をどうするか、それは猟兵の皆様にお任せします。

 参加お待ちしております。
 どうぞよろしくお願いします。
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第1章 日常 『笹にお願い事を』

POW一番上に短冊を飾る
SPDお願い事をたくさん書く
WIZ短冊飾りを作る
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 幸いに今宵は晴れて星空が澄み渡ってよく見える。
 大空に浮かぶ天の川のは、浪漫を解さぬ者でもしばし足を止め眺めるに相応しい光景であった。
 祭りを楽しむ雑踏、その足元を縫うようにしながら、うつむいて凜吾郎は後生大事に品を抱えていた。
 ある日に出会った見知らぬ人達。
 それがこの品を僕に渡してくれた。
 あらわれたおじさんは、少年に願うだけであった物を叶えてくれた。
 これがあれば幸せになる。
 自分も、孤児院のみんなも、世の人々を。
 さいわい今日は七夕である。
 皆が願う望みは、笹に吊り下げられている短冊のあちこちで伺い知ることが出来た。
 叶える、みんなの望みを。
 そうすれば何もない自分でも英雄となることが出来るであろう。
 そうすれば孤児院の大人たちも友人も、鼻が高いに違いない。
 この力で有名になれば、捨てた家族も振り向いてくれるかもしれない。
「僕が、この世の中を変えるんだ……」
 決意に燃える少年の瞳は、思案に沈み夜空を見上げることはなかったのだ。
テイラー・フィードラ
……幸福は求める程逃げゆく。だが、掴まんとする者でなければ得る事は出来ぬ。
幸せにしたいという少年の思いこそ否定せぬが、その果てに招く惨事は防がねばならん。

祭りを楽しむために孤児院の関係者が来ているのならば話を伺わせて貰おう。
引率していた者や同じ机で食を囲んだ孤児たちに、かの少年の姿は何処へという事や行方が知れなくなる前の様子、また少年が抱いていた願望について何かないかという事や出資者で怪しき者はいなかったか等可能な範囲で聞かせてもらおう。
無論、このような人相の男が聞くのだ。孤児達や引率者を怖がらせぬ様膝を曲げて目を合わせるようにし、ある程度雰囲気を緩め圧を弱め礼儀正しく質問させて貰おう。


 路地に置かれた笹の数々。
 短冊を少しでも高いところへ結ぼうと、親に肩車をしてもらった子供が楽しそうに願い事を結ぼうとしていた。
 そんな情景の中を歩きながら、テイラー・フィードラはやるせないため息をついた。
「……幸福は求める程逃げゆく。だが、掴まんとする者でなければ得る事は出来ぬ」
 この祭りのどこかに、かの少年はいるはず。
 行き交う人々の中に、それらしい人物はいまのところ見当たらなかった。
 誰彼も幸せになれる権利はある。それは当然だ。
 だがそれは、他人を押しのけてまでも掴もうとするほどの物なのであろうか。
 若気の至り。
 一言で片付けるのは簡単だ。
 しかしその少年の純粋さが、祭りを楽しんでいるこの人々を混乱に陥れることになってしまう。
「……惨事は防がねばならん」
 大事が起こる前に少年を見つけたかったが、仕方が無い。
 テイラーは少年の関係者、孤児院あたりから跡取りを追うのであった。

「なあ、凜吾郎どこ行ったんだろうな?」
「わかんねえな、アイツ楽しみにしてたのにどうしちゃったんだろうな」
 少し通りを歩けば、関係者と思わしき人達はすぐに見つけることが出来た。
 多くの子供を連れている大人の集団。
 そして子供の口からこぼれる凜吾郎の名。
 騒乱の渦中にある片山 凜吾郎が居た孤児院の団体に違いあるまい。
 話を伺おうと、テイラーは彼女らに接触を試みようとする。
 御免、と声をかける前に、近づいてきたテイラーから遠ざかるように、子供達が大人の後ろへと隠れてしまう。
 この貌にこの巨躯だ。恐がらせてしまうのは無理も無い。
 だがそんなことをどうこうしている暇は無い。
 出来るだけ物腰に気をつけながら、引率にむかって話しかける。
「失礼。私は猟兵のテイラー・フィードラと申す者だ。若干話を伺いたい」
「猟兵さんがいったいどのようなご用件でしょうか」
 足下にたむろする子供達をなだめながら、引率が尋ねる。
 不安にさせてしまうのは宜しくなさそうだ。
 影朧戦線の名を出さずに、凜吾郎に関する情報を得ようと試みる。
「いや、通りがかるとなにやら探し者の様子であったので。迷子かな」
 身分をあかし、捜索に協力するという申し出に、相手は警戒を緩めてくれたようだ。
 少年を探すという名目で、テイラーは凜吾郎に関する情報を得ることが出来た。
 凜吾郎は祭りの前日まではとくに変わった様子はなかったという。
 当日になって急に姿を消したのだという。
「楽しみにしていましたし、もしかしたら独りでと思ったのですが……」
 祭りへと皆でやってきたが、この人の多さだ。
 テイラーの協力を受けるのも仕方が無いであろう。
「ほかに、変わった様子はなかったか。些細なことでもいい。それが探す手がかりになるやもしれぬ」
 その言葉に、もしかしたらと子供がひょっこり顔を出して答えてくれた。
「アイツ、最近塞ぎこんでいたなー」
「そうそう、遊びに誘っても閉じこもってばかりだった」
「ほう? では悩みがあったのかな?」
 しゃがみこんで同じ目線で問いかけるテイラーに、子供はまっすぐ目を返して言った。
「どうだろうなー。でも祭り自体は楽しみにしていたと思うよ」
 七夕祭りの詳細が書かれたチラシを渡してくれる子供達。
 さらりと斜め読むに、特に気になる点はない。
 影朧戦線は別の方から接触したとみるのが妥当であろう。
 それをしまい込み、テイラーはすっくと立ち上がった。
「わかった。では凜吾郎少年はこちらでも探してみることにしよう」
「はい、よろしくおねがいします」
 深々と頭を下げてくれる引率の女性。
 集団からは暖かい雰囲気が感じられた。
 虐めにあっていたという風でもなかろう。
 集団に背を向け、テイラーは歩き出す。
 凜吾郎を見つけるために。
 祭りの雑踏へと、その身を沈み込ませていったのだった。
成功 🔵🔵🔴

音羽・浄雲
※アドリブ、連携関係です。

 誰もが心躍るそんな催しに暗い陰がその帳を降ろそうとしている。
 そんなことは許してはおけない、が。
「英気を養いつつ情報収集、出来る忍の嗜みですね」
 浴衣に装いを変え、祭りのほのかな熱気に包まれつつ……ほろ酔いだった。元来人好き酒好き祭り好きの彼女がこんな機会を逃すはずがない。
 しかし、その一方でその本旨は忘れていない様子で、屋台で買った食べ物を少し与えた【外道】を放っていた。
「今回も頼みましたよ。さてはて、わたくしは何をお願いしましょうか」
 外道の感覚に意識を割きつつ、浄雲の瞳に映るのは笹に飾り付けられた短冊。二度目の人生を手探りする彼女は果たしてどんな願いを抱くのか


 夜空に煌めく星のごとく、帝都の路には多くの人々。
 それぞれの談笑に満ちていた。
 音羽・浄雲も浴衣へと着替え、市井の民へと紛れ込んでいる。
 姿を変え、情報を集めるのは忍びとしての基本だ。
 その彼女の頬はほんのりと紅い。
 みれば手元には屋台で手に入れた食材の数々。
 吐く息からにはほんのりと酒気の匂いがした。
 この祭りに影朧の気配があるという。
 祭り騒ぎというものは人が甘受すべきもので、妖の類の出る幕ではあるまい。
 そんなことは断じては許しておくべくではない。
 浄雲はそう思っていた。
 が、それはそれ。
 忍務遂行は完遂のために己を閉じている彼女ではあったが、元来祭りは嫌いなほうではない。
 目の前で行われる情景は、故郷の祭りを偲ばせる感情も揺さぶるものがある。
 だからといって、依頼を放棄したわけではない。
 祭りを楽しみ、依頼を果たす。
 一流の忍びであれば、それは難しい仕業ではない。
 皿に残った焼き鳥の串。
 その数本、食べ終わった串を見て浄雲は微笑む。
「今回も頼みましたよ」
 すでに外道を放っている。
 何かあればそれを通じて手がかりが分かるであろう。
「英気を養いつつ情報収集、出来る忍の嗜みですね」
 もっとも、自分だけで楽しむつもりは無い。
 せめてもの手向けと、式には幾ばくかの品をつまませてやった。
 何かを得て戻ってきた場合は、更なる褒美でも差し上げよう。
 群衆を疾走する外道にも意識を向けながら、浄雲はあたりを見回す。
 美味しそうな匂いを漂わせる屋台の並びに、笹の並びはひっそりと佇んでいた。
 今宵は七夕。
 居並ぶ屋台の味に舌鼓を打つのも結構ではあるが、祭りの趣旨を忘れては野暮というものであろう。
 ひとまず品を平らげて、浄雲は道沿いに進んで行った。
 ついた辺りは、長机を繋げた会場。
 入り口には短冊飾りが鈴なりになっている。
 どうやらここは、短冊に願い事を書くように用意された場所のようであった。
 これも一興。
 短冊と筆を借り、そこら辺の椅子に座って頭を働かせる。
 目の前には何も書かれていない色紙。
 一筆をしたためようとする浄雲の指は、そこで止まる。
「さてはて、わたくしは何をお願いしましょうか」
 元来、真面目思考の彼女だ。
 いざ願いを書こうとする段になれば、酔いを覚まして眉を動かしてしまう。
 思えば戦、戦続きの世の中であった。
 平和という宝を享受している自分の願い、それは一体何なのであろうか。
 淡い無地の色紙は、己の心を代弁しているかのようでもあった。
「こういう時、友ならさらりと書けるのでしょうね」
 自嘲し、店の者に銚子を頼む。
 ここはやはり、酒の力を借りねばなるまい。
 ぐいと一呑み、つまみを囓ると、彼女は筆を取った。
 柳眉と同じく達筆が、短冊の上を走って文と為る。
 これで良し、と筆を置く。
 そして浄雲は飾り付けの紐を選びに、席を立ったのだった。

 背伸びをして結びを終わると、その場を離れる。
 遠目から見れば、多くの埋没する短冊のひとつ。
 しかし浄雲にとっては、己の願いを込めたただひとつの短冊。
 それは、はっきりと分かり間違えようが無かった。
 笹の葉が揺れ、短冊たちがざわめく。
 提灯のあかりがそれらを照らすと、色紙たちは淡く輝く。
 あの輝き一つが、ある人の希望。
 そしてその中に、自分の望みもある。
 笹を見つめる浄雲の顔は、忍びではなく、年頃の娘のそれに戻っていた。
 仇を討ち、空虚な体に宿る灯火。
 新しき人生を歩もうと、しばし歩を止め短冊を眺める彼女の背を、天の川はただ黙って見つめていた。
成功 🔵🔵🔴

小雉子・吉備
キビも幽世で桃太郎とかヒーローへの好意の追憶が切欠で、そんな正義の味方になりたいって

人の善意を守りたいって

願って猟兵になったけど

あの子も人の為にって願いは
変わらないんだよね?それを利用した黒い人達も許せないし
看過できないからねっ。

取り敢えずは……

〖POW〗
短冊を飾りつつ、然り気無く
凜吾郎ちゃんに接触して色々と【情報収集】しよう

持ち込んだ〖吉備団子一式セット〗片手に

あっ、キビも願い事書かなきゃ

『桃太郎を始めとするヒーロー達みたいな正義の味方になり、多くの人とあやかしを守りたい』

……かな?

凜吾郎ちゃんは、何か短冊に願いを書くのかな?書くなら良かったら、キビが飾るけど

〖アドリブ絡み掛け合い大歓迎〗


 人のために。
 それはヒーローに欠かすことの出来ない条件だ。
 小雉子・吉備もいつか、そんな存在になりたいと願っていた。
 今回の依頼の重要人物、片山 凜吾郎に対して、少なからず親近感を覚えてしまう。
 だがしかし。
 このままでは祭り会場が大変なことになってしまう。
 少年の願いによはって。
 人の願いを叶えようと頑張る彼が、願いを託すこの祭り会場をうやむやにするなどあってはならないことだ。
 それは正義の味方、ヒーローのやるべきことではない。
 自分が何とかしなければ。
「それを利用した黒い人達も許せないし、看過できないからねっ」
 やるき充分。
 吉備は企みを防ぐために、祭りへと飛び込むのであった。
 行き交う人々。
 祭りの中ですれ違う人の顔をいちいち判別するのは至難の業だ。
 しかし、こちらはすでに手を打っていた。
「ありがとう、狐さん」
 他の猟兵が放った式神、その情報を辿って吉備は一人の人物に辿り着くことが出来ていた。
 祭り会場に独り歩く少年。
 あれだ。あれが凜吾郎に間違いない。
 思わず手に力がこもる。
 だがここで焦る訳にはいかない。
 うかつに取り押さえれば、籠絡ラムプをここで使用されるかもしれないからだ。
「あの子も人の為にって願いは変わらないんだよね?」
 とりあえずその前に、彼の話を聞いてみよう。
 そうしようと吉備は彼の行く方向へと先回りすることにしたのだった。

 通りを歩く凜吾郎。
 その彼の前に、短冊がひらひらと落ちてくる。
「ああ、ゴメン。それ拾ってくれるかな」
 思わず拾って見上げれば、吉備が脚立から下りてきた。
 差し伸べてそれを受け取ると、彼女はにこりと微笑んだ。
「なるべく高い所に結ぼうとしたら、うっかり落としちゃったよ。私キビっていうんだ。キミの名は?」
「え……凜吾郎、です」
 知らない人に声をかけられ、たじろぐ少年。
 そんな彼に吉備はハキハキと言葉をかける」
「そう、凜吾郎ちゃんっていうんだ。調度良かった、脚立支えてくれるかな? なるべく高い所に結びたいんだけど、今みたいに落としそうでさ」
 そういうと返事をまたず、脚立をかけのぼってしまう。
 見過ごすことも出来ず、凜吾郎は下で支え、彼女の作業が終わるのを待っていた。
 結び終えた吉備が、下りてきて誇らしげに指を差す。
 それは苦労しただけあって、ほかの短冊よりひときわ高い所に結びつけられていた。
「どう、いいでしょう? 『桃太郎を始めとするヒーロー達みたいな正義の味方になり、多くの人とあやかしを守りたい』、キビの願いはそれなんだよ」
 胸を張って子供っぽい願いを語る、自分より年上の女性。
 しかし凜吾郎はそれを笑うことはなかった。
 真剣な眼差しで、短冊とキビを見つめていた。
「うん……素敵な願いだね。叶うと、いや、絶対に叶うよ」
「そう言ってくれると嬉しいかな」
 えへへと笑うキビ。そしてその表情はすぐに替わり、今度は凜吾郎にへと尋ねてみる。
「凜吾郎ちゃんは、何か短冊に願いを書くのかな? 書くなら良かったら、キビが飾るけど」
 突然の申し出に、少年は固まる。
 そんな彼に構うことなく、紙と筆が差し出される。
 しばらく迷った凜吾郎がそれを掴むと、やがて意を決して何かを書いた。
 吉備が横からのぞき込めば、短冊にはこう書かれていた。

 ――― じぶんとみんなが幸せになりますように ――

「いい願いだね」
 かけられた声に、凜吾郎は照れくさそうに頷く。
「うん、叶えてみせるんだ」
「叶うよ、絶対。あ、キビが飾ってあげようか?」
 その声に、少年は首を横に振った。
「ごめんなさい。これは、自分で飾りたいんだ」
 そういってお辞儀をすると、少年は駆けだした。
 それを見送る吉備の目は、少年が持つ短冊と、懐にずっと隠していたラムプへと注がれていた。
 屋台の景品にしては酷く場違いだ。
 それに妖気がプンプンと臭う。
 ここでは使用しなかったが、彼はやはり使うつもりなのであろうか。
「人の善意を守りたいって……願って猟兵になったからねっ!」
 少年の行った先。
 そこへと、追いかけるように吉備はまた駆け出すのであった。
成功 🔵🔵🔴

御形・菘
ああまったく、此度の件は思うところが多すぎるのう
祭りを楽しむのは泣く泣く見送り、至って真面目に捜査するとしようか
口調を変えて格好もこの世界に合わせ、近所の一般人のフリをしよう
一方的に孤児院を知っており、祭りという機会に声を掛けた、という設定でな

どうも、皆さん楽しんでいらっしゃいますか?
よければ孤児の皆さんに、祭りを楽しむお小遣いをどうぞ
そういえば、えーと凜吾郎くん?は一緒ではないのですか?

凜吾郎の事情をよく知る近くの人間、孤児院の関係者へ、この件に至る事情を聞くとしよう
それと細かく身なりも確認して、早く発見できるようにせんと
…これだけ愛されている、なんてのは気休めにならんよな、当人にとっては


 祭り、屋台、人々。
 そしてそれに伴う喧噪。
 その様子を黙って撮れば、それなりの視聴数は稼げるテンプレとも言うべき光景だ。
 笹に夜桜、そして星空と月。
 それらが加われば更にバズることは違いないであろう。
 しかし御形・菘は、撮影用のドローンを飛ばす気にはなれなかった。
「……ああまったく」
 いつもの彼女とは全くもって違うダウナーのため息。
 身なりもいつもの奇抜な格好とは打って変わって落ち着いた雰囲気である。
 ハイテンションな彼女は何処へ行ったのであろうか。
 今回の件、御形には思う処があった。
 それゆえに騒ぐ気分にはなれず、居並ぶ屋台の品々も興味を誘うほどではない。
 その落ち込みが、彼女を真面目にへと駆り立てる。
「……さて、孤児院の方々にうかがってみましょうか」
 祭り通りを歩く御形の姿は、落ち着いた雰囲気を醸し出す大人の女性へと変貌を遂げていた。

 ターゲットはすぐに見つかった。
 子供数人に大人連れ。
 凜吾郎が居た孤児院の関係者だ。
 動画を撮るための大げさなパフォーマンスは、一般人を騙る所作にも利用が出来る。
 見知った顔の振りをして、まずは大人の方へと話しかける。
「どうも、皆さん楽しんでいらっしゃいますか?」
「ええ、晴れて本当に祭り日和ですね」
 御形の気さくな挨拶に、向こうも返してくれる。
 しかしその笑顔には疑問符が残っている。
 どちら様だったでしょうか。そんな顔。
 当然だ。
 なにしろ会ったのはこれが最初なのだから。
 御形は知り合い然の態度を崩さずに、財布を取り出して幾ばくかを付き添いに握らせた。
「よければ孤児の皆さんに、祭りを楽しむお小遣いをどうぞ」
 そんな、受け取れないと返す掌を、子供達のためですからと押し返す。
 足下の子供達のはしゃぎよう。
 すでに貰ったかも同然のようであった。
 そんな子たちを窘めて、付き添いの大人は礼を述べてようやく受け取った。
「いつも近所で、孤児院の方から元気を分けて貰っていますので」
「あら、近所の方だったんですか。気づきませんで申し訳ありません」
 社交辞令を二三繰り返し、御形はいよいよ本題に入る。
「そういえば、えーと凜吾郎くん? は一緒ではないのですか?」
 問いかけに、相手は首を傾げる。
「ええ、午前まではいたのですが、見かけなくなりまして……」
 その声からは、彼の身を案じている様子がありありと見てとれた。
 大変ですねと声をかけ、世間話を交えつつ、凜吾郎に関する情報を聞き出していく。
 彼の真意はわからぬが、それなりのことは分かってきた。
 凜吾郎は、両親によって捨てられた。
 あるいは見捨てられたというべきか。
 官憲が通報によりうかがった時、他に誰もいない家で一人、痩せた凜吾郎がいたという。
 衰弱した彼に尋ねるも要領を得ず、身寄りのない彼はそのまま孤児院へと引き取られたのだった。
 孤児院での凜吾郎は大人しく、大人の言いつけを守る良い子であったという。
 そして去年のクリスマスの日。
 子供達はサンタに頼むプレゼントカードを書かされる。
 その書いてある内容を見て大人達は師走の街を走り回るのだ。
 凜吾郎が書いた内容を見て、大人たちは絶句する。

 ―― サンタなんていない ――

 なだめ、事の次第を聞き出す大人達に、凜吾郎は答えた。
「僕が欲しいのは物なんかじゃない、幸せなんだ」
 わずか十に満たない子供が発した言葉は、大人の言葉を詰まらせる。
 この子は、いったいその小さな体にどんな辛さを味わってきたのであろうか。
 孤児院のささやかなクリスマスパーティー。
 みんなが楽しむ中、凜吾郎の姿が消える。
 探し出した大人達が発見したのは、明るく満面の笑みを浮かべる彼の姿。
 何処へ行っていたのかと問いただす大人達に、凜吾郎はこう答えたらしい。
「サンタはいた。いたんだよ!」
 それから彼は、ほかの子供達と打ち解け明るく振る舞えるようになったのだという。

「凜吾郎はこの日も楽しみにしていました。だからもしかしたらと思っているのですが……」
「なるほど、それは心配でしょう。私も見つけたら声をかけますね」
 御形は礼をいって集団から離れる。
 大人たち。そして子供たち。
 彼女達の様子から察するに、虐められていたということも無い。
 親に捨てられたという孤独。
 それが凜吾郎を盲目にさせてしまっていたのだ。
「……これだけ愛されている、なんてのは気休めにならんよな、当人にとっては」
 若気の至り。
 そんな言葉では済まされない大それたことがこれから起こるであろう。
 出来れば、馬鹿騒ぎのままで終わらせたいものだ。
 己と凜吾郎を重ね合わせ、御形の歩が速くなる。
 人の興味を惹こうとするのは良い。
 だがそれは、他人を楽しませてのことなのだ。
成功 🔵🔵🔴

エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

おお、賑やかじゃのう、今宵はお祭りじゃったか。
この風習は知っておるぞ。
このお札にお願い事を書いて笹に吊るし星々を讃えるとタナボタサマがお願いを叶えてくれるのじゃ。
どれ、わしもひとつお願い事を奉げてみるかの。騒ぎが起こるまでまだ時間がありそうじゃし、少しくらい楽しんでも構うまい。
(短冊に大きく『お肉!』と書いて吊るす)
うむ、これでよし!マニトゥ、近々美味しいお肉を沢山ご馳走できそうじゃよ。
マニトゥはどんなお願いにするかの?
なんじゃ、子供達が元気に育つようにじゃと?地味じゃのう。
まあよい、その短冊も吊るして祈るか。
タナボタサマー!わしらのお願いを叶えてくだされー!


 満天の星空、あまたの人々、そして満面の笑顔。
 祭りと聞いて、エウトティア・ナトゥアの心は踊らずにいられなかった。
 七夕。
 その風習は聞いたことがある。
 確か願い事を吊るして星々に祈ると、タナボタさまが願いを叶えてくれるとかそんな感じの祭事だったような気がする。
 では早速と短冊と筆をかまえるエウトティアに、うわんと巨狼マニトゥがひと声鳴いた。
 依頼はどうした、そんな感じの顔だ。
 やれやれと振り返り、エウトティアは言い訳する。
「のうマニトゥ、騒ぎが起こるまでまだ時間がありそうじゃし、少しくらい楽しんでも構うまい。それとも札を吊るす時間も余裕がないのかのう?」
 確かに事件が起こる時間まではまだまだ余裕がある。
 他の猟兵もただ過ごしているわけではあるまい。
 まあ、万が一の時は自分が動こう。
 そう考えたマニトゥは、そこへ大人しく腰を落ち着けた。
 それを了承のサインとみたエウトティアは向き直り、短冊とにらめっこを続けると、やがて筆を滑らせた。
 どうやら願い事は決まったようだ。
 書き終えると筆を置き、それを笹へと吊り下げる。
 短冊には、はみ出そうな大きな文字で願い事が書かれてあった。
 
 『お肉!』

「うむ、これで良し!」
 ドヤ顔でマニトゥを見る彼女の顔は、非常に晴れ晴れとしたものであった。
「マニトゥ、近々美味しいお肉を沢山ご馳走できそうじゃよ」
 コロコロと笑うエウトティアは嬉しそうだ。
 自分では無く、まずはマニトゥへの願いを記すは彼女らしいといえよう。
「さて、わしだけ願ってもいかんのう。マニトゥはどんなお願いにするかの?」
 自分が書いてやるぞと、別の短冊を取って問いかける。
 これでは己が二つ願うことにはならないか。
 マニトゥは少し困惑した。
 しかし純粋に願いを尋ねる好意を無碍にする訳にいかない。
 なんだかんだの腐れ縁ではあるが、マニトゥはエウトティアを嫌っている訳ではないのだ。
 のそりのそりと近づくと、何事かを彼女に呟いた。
 あまりご期待に添える願いではなかったのか、エウトティアの眉がハの字に下がる。
「なんじゃ、子供達が元気に育つようにじゃと? 地味じゃのう」
 呆れた口で語るが、筆は素直だ。
 マニトゥのお願いを、紙一面に大きく書いて満足そうに頷いた。
 これで良し。
 吊り下げた自分の短冊の横に、マニトゥの願い事を書いた短冊を吊り下げる。

 『お肉!』
 『子供達が元気に育つように!』

 少し離れた位置からでもわかる大きな願いごとが書かれた短冊が、寄り添うように風に煽られひらひらと揺れる。
 それを満足そうに見上げるエウトティア。
 傍らには同じように見上げるマニトゥもいる。
「うむ、これでよかろう。では儀式を続けるとするかのう」
 柏手を打つように手を鳴らすと、大声で天にむかって叫ぶ。
「タナボタサマー! わしらのお願いを叶えてくだされー!」
 その威勢のよい声に、おもわず周りが振り返る。
 中にはクスクスと笑い出す者もいる。
 だがエウトティアは動じない。
 祖霊を信仰する彼女にとって、タナボタサマに敬意を払うのは当然のことであるし、黙っていては願いは伝わらないからだ。
 人の願いを聞き届けるのが巫女の役目。
 このようなことは生まれ故郷では日常茶飯事だ。
 なにを恥ずかしがることがあろうかと。
「おっ、マニトゥ。よくみればあそこに屋台があるではないか。沢山ではないが、まずは手付けにいただこうとするかのう」
 ひと声かけて走ってみれば、彼女が持ってきたのは焼き鳥の串。
 串からそれをほどくと、皿をひとつマニトゥの元へと置き、自分の膝へもう一皿乗せる。
「これから影朧との戦も始まるじゃろうて。腹が減っては戦えぬぞマニトゥ」
 短冊が吊り下げられた笹の葉群を眺めながら、エウトティアが頬張りはじめる。
 マニトゥも彼女と同じ視線をむけながら、皿にむかって舌を伸ばすのであった。
成功 🔵🔵🔴

御園・桜花
「他者の願いが叶うよう、願う事までは許されても。他者の願いを叶えることは、許されない。百の願いを叶えたら、千の恨みを買うでしょう。多くの恨みを買う前に、彼を見つけて止めなくては」

UC「ノームの召喚」使用
「いつもありがとうございます。好きなおやつやオモチャを買って下さいね。その時、迷子や一人きりの小さな子供を見かけたら、私に教えて下さい」
ノーム達にお駄賃渡し、慰労を兼ねつつの捜索を依頼
自分は短冊を書くコーナーへ
短冊を書くでもなく眺める子供、子供らしい願いを書かず一人でいる子供を探す
自分が書くのは『願いが叶いますように』

「願いはその方が生きる為の道標。他者が力で叶えてはいけないものなのですよ」


 七夕祭りに笹の葉が揺れる。
 しかしここはサクラミラージュ。
 今宵だけは主役を譲ろうとも、やはり桜の花びらは帝都に舞う。
 ひっそりと、だが人々のもとを離れずに。
 御園・桜花が他へとたむける目は優しい。
 ここには幾多の家族がいて、それぞれの願いを七夕の夜に託そうとしているのだ。
 その想いのなんと素晴らしきことか。
 希望を胸に抱きて、明日の活力とするに違いない。
 幻朧桜の神秘が、彼らの願いの導となるように、祈らざるを得なかった。
 だがしかし。
「他者の願いが叶うよう、願う事までは許されても。他者の願いを叶えることは、許されない」
 誰に聞かせるわけでもなく、独り言を呟く御園。
 他人の祈願を果たせるように祈るは優しさ。
 しかし他人の祈願を肩代わりし叶えることは僭越。
 そう御園は考えていた。
 今回の依頼の重要人物である凜吾郎。
 彼はその愚行を為そうとしている。
 それを止めなければ、少年にとって災いとなるであろう。
「百の願いを叶えたら、千の恨みを買うでしょう。多くの恨みを買う前に、彼を見つけて止めなくては」
 自分に言い聞かせるように、頷く御園。
 凜吾郎は、この会場の何処かに居る。
 この広い街路をただ捜索しては無駄足を踏むだけだ。
「おいでおいで、土小人。私の手助けをしておくれ。代わりに石をあげましょう。ざらざら渡す石ビーズ、その分手助けをしておくれ」
 片手には色取り取りのビーズ、もう片手には桜の花びら。
 その掌を合わせ揉み、開いて地に落とす。
 すると零した周囲の土が隆起し、精霊ノームたちが御園の前に姿を現した。
「いつもありがとうございます。好きなおやつやオモチャを買って下さいね。その時、迷子や一人きりの小さな子供を見かけたら、私に教えて下さい」
 ニコニコと、彼らに駄賃を振りまきながら、一緒に捜索してくれるようにお願いする。
 これはねぎらいだ。
 精霊といえども、今日くらいは羽を伸ばしてもバチはあたるまい。
 もっとも、少年を探すことが前提の話ではあるが。
 快く引き受けてくれた精霊達を見送り、御園は自分も場所を変える。
 行き先は短冊を書くコーナーへ。
 捜索と、困っている人を助けるためにへと。

 コーナーにはやはり、多くの家族連れがいた。
 御園はそれらには目をくれず、子供達を注視する。
 独りでいる者。手持ち無沙汰な者。
 それが孤児院の集団から離れた凜吾郎かもしれないからだ。
 しかし残念、あいにく彼の姿は見つけることが出来なかった。
 代わりに一人ぼっちの子供達が見つかった。
 その子の元へと、静かに歩みて近づく御園。
「どうしました? 願いごとが決まらないのですか?」
 メイド姿の大人が声をかけるその様は、会場の係員と見紛うが、あいにく御園は会場とはなんら関係ない。
 ただ善意によって行動しているだけだ。
 子供のもとによりそって、まずは自分が手本を見せようと筆を取る。

 『願いが叶いますように』

 そう書いた短冊を子供に見せつけて、御園が笑う。
「今夜は七夕、願いごとを書かないと勿体ないですよ。私も応援しますから、お書きなってくださいな」
 筆の穂先を返し、子供にそれを持たせようとむける。
 知らない大人に話しかけられて、困惑する子供ではあったが、やがて御園と同じように笑って筆を取った。
「ありがとう、お姉さん」
 そんなねぎらいを続けていると、やがてノームの一団が戻ってくる。
 それぞれの手には食べ物や景品、どうやら楽しんできたようであった。
 土産のかき氷を受け取り、御園はそれを食しながら精霊の話に耳を傾ける。
 どうやら彼らは、凜吾郎らしき少年を見つけてくれたようだった。
 今、他の一団が跡をつけているのだという。
 満足そうに御園は頷き席を立つ。
 振り返れば、自分の短冊と子供達の短冊。
 それが笹に吊るされさらさらと揺れていた。
「願いはその方が生きる為の道標。他者が力で叶えてはいけないものなのですよ」
 災いの種となる少年を止めなければ。
 その案内を努めていくれているノームの後ろを標としながら、御園はそこへと急ぐのであった。
成功 🔵🔵🔴


第2章 ボス戦 『ブラックサンタライダー』

POW ●プレゼント・デリバリー
【プレゼント袋から無尽蔵にプレゼント】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD ●福引きタイム
いま戦っている対象に有効な【福引き景品】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ ●クランプス・パレヱド
対象への質問と共に、【プレゼント袋】から【レベル×1体のクランプス】を召喚する。満足な答えを得るまで、レベル×1体のクランプスは対象を【精神注入棒】で攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は雷田・龍子です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 凜吾郎が駆けつけた先は、街から少しはずれた竹林の中。
 そこに独り、息を切らしながら辿り着く。
 祭りの喧噪が遠くに聞こえる。
 あそこにいる人は、今日という日を楽しみしている。
 幻想だと分かっていても、望みを星に託すために。
 じっと、手を見つめる。
 
 ――― じぶんとみんなが幸せになりますように ――

 自分がそう書いた短冊と一緒に、街中を歩く過程で引きちぎってきた短冊が手の平に一杯になっていた。
 己の願い。人々の願い。
 かなえてみせる。なぜなら自分にはその力があるのだから。
 あの日、クリスマスの日に、僕は力を貰ったのだから。
 籠絡ラムプの蓋を開けて短冊を放り込むと、マッチに火をつけて口から入れる。
 すぐに煙が立ちのぼり、その黒煙を湧き上がらせるような轟音とともに、一人の悪鬼が姿を現した。
「よお坊主、良い子にしてやがったか?」
 気さくに話しかけてくる異形に、凜吾郎は答える。
「うん、良い子にしていたよ。みんな僕と同じように願いを叶えたがっている。おじさん、その願いを叶えてあげてよ! あの時僕にしてくれてあげたように!」
「ああ、叶えてやるぜ。俺は良い子の味方だからなぁ!」
 だがその前にと、悪鬼は凜吾郎がやってきた方にアクセルを吹かした。
「下がってな坊主、どうやらお客さんの登場だぜ」
 悪鬼が睨むは、追ってきた猟兵達。
 凜吾郎との間に守るよう割って入ると、悪鬼は名乗った。
「誰だった顔をしてるから名乗らせて貰いやすぜ! お控えなすって! さしつけました仁義失礼さんでござんす、手前、生国と発しますは骸の海にござんす、骸の海骸の海と申しましてもあんさん世界はいささか広うござんす。西に過去、東に現在、
あっし、生まれも育ちもオブリビオン、影朧でございやす。渡世上故あって、親、一家持ちやせん。カケダシの身もちまして姓名の儀、一々高声に発します仁義失礼さんでございます。姓は生剝、名は三太、人呼んで生剝のサンタと発します。西に行きましても東に行きましてもとかく土地土地のおあ兄さんおあ姐さんにご厄介をかけがちたる若僧です。以後面体お見しりおかれまして、恐惶万端引き立って、よろしく、おたの申します」
 淀みなく口上を述べ終わると、生剝はブルンとアクセルを吹かした。
「ですが渡世の恩仁義、誠に辛うござんす。兄さん姐さんには恨みはございやせんが、恩義に沿わして刃向かわせていきやんす。良い子悪い子普通の子、まさしく善人の子に呼び出されてみれば、人情が湧くのが常でございやす。義理と人情秤にかければ、どちらを取るかはわかりやせん。恨んで貰ってかまいやせん。せめておあ兄さんおあ姐さんに、あっしの技を披露致しやそう」
 言い放ち、袋を担いでバイクに跨りやってくる。
 言葉の意味はよく分からないが、猟兵を相手にやる気のようだ。

 影朧『ブラックサンタライダー』が、良い子の望みを叶えるべく襲いかかってきた。
 
エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

ご丁寧な名乗りの口上じゃな。こちらもやあやあ我こそはとでも返すべきかな?
もっともらしい事を言っておるようじゃが、頑是無い小僧を免罪符に力を振るっておるだけじゃろう。
薄っぺらい道理を持ち出さぬと言葉を紡げぬ様な三下が義理や人情を語るでないわ。
厄介をかける自覚があるなら手を煩わせる前に骸の海へ還るがよい。
(【巨狼マニトゥ】に【騎乗】し戦闘)
マニトゥ、バイクを追うのじゃ、あの痴れ者をお主の牙で引き裂いてやれ!
(『福引きタイム』に対して)
袋から取り出した物は鷹達に攫わせてしまうのじゃ。
それ余所見をしていていいのかの?鷹達がお主を狙っておるぞ?
鷹で注意を引いたらマニトゥで追撃じゃ。


音羽・浄雲
※アドリブ、連携歓迎です。
数百年くらい前のことなので多分覚えてません。

「良い子悪い子、貴方の杓子定規で測る善悪になど一考の余地もありはしませんが、その少年の心の清さは本物でしょう。なればこそ、他人の手で無理やりに叶う幸せの歪さを説くことこそが人の道ではありませんか?」
 轟。
 その身を青白い焔が包む。
「貴方を悪とは断じません。わたくしを善とも断じません。ですが、何も知らぬ幼子を巻き込む行い一つをもって、わたくしが貴方を裁きましょう」
 傭兵、復讐と血と戦いに塗れた己ができる数少ない善行。それは未来を護ること。
 失ったものは戻らないが、もうこれ以上誰にも何も失わせないために命を燃やし、刃を振るう。


 芝居がかった時代ぶった口調。
 その人をくった態度にエウトティア・ナトゥアは珍しく毒づいた。
「ご丁寧な名乗りの口上じゃな。こちらもやあやあ我こそはとでも返すべきかな?」
 顔はすでに猟兵となり、眼前の敵を見据えていた。
 短弓をかまえるその姿は、敵をいささかも侮ってはいない。
「それは無用かと」
 音羽・浄雲が同じく武器をかまえて横へと並び進み出る。
 その目はやはり相手にむけられていた。
 そして、その更に奥で戦いを見守る少年にも。
 エウトティアを庇うように前へと進み、凜とした声で相手に問う。
「良い子悪い子、貴方の杓子定規で測る善悪になど一考の余地もありはしませんが、その少年の心の清さは本物でしょう。なればこそ、他人の手で無理やりに叶う幸せの歪さを説くことこそが人の道ではありませんか?」
 問答にサンタが応える。
「ああ、そうさ。この坊主の想いは本物。だからこそ叶えてやるのさ、この俺がな! テメエらには出来ねえだろうよ。遠くから可哀想可哀想と憐憫を向けているだけの無能にはなぁ! だが! 俺は出来る! 俺なら望みを叶えてやることが出来る! 俺はサンタ! 子供達の願いをかなえてやれる、ヒーローだからな!」
 時代がかった口調を止めてアクセルを吹かす影朧。
 ずっと後ろで見守る凜吾郎に背中越しで声をかける。
「さあ坊主、願ってくれ! お前の望みを! 俺の勝利を! そうすれば俺は、もっともっと強くなれる!」
「う、うん、おじさん頑張って、僕の、みんなの望みを叶えるために!」
 拝むように少年が目を閉じ、祈る。
 すると影朧が担ぐ袋がむくむくと膨らみ、大きくなっていく。
 もうよい、とエウトティアが浄雲に声をかけた。
 その内には、静かな怒りが篭もっている。
「ジョウウン殿、あれを見るのじゃ。もっともらしい事を言っておるようじゃが、頑是無い小僧を免罪符に力を振るっておるだけじゃろう。アレは唆し人を誑かすモノ。酒や煙草と同じく、度が過ぎれば人を蝕むモノよな」
「御意」
 エウトティアの言葉に浄雲は頷き、印を結ぶ。
 すると青白き焔が彼女を包み、焦がす。
 炎の熱気と鈍痛は、浄雲にあの日の心を呼び覚ます。
 戦火。怨恨。憤激。
 オブリビオンに対する激しい感情は、浄雲の体を薪と化して更なる焔を立ちのぼらせる。
 浄雲の端麗な顔つきは、憤懣に歪みて鬼と化す。
 悪鬼を討つ悪鬼へと。
「やる気十分のようじゃなジョウウン殿。こちらも負けてはおられぬぞマニトゥ!」
 口笛を吹いて巨狼を呼べば、定位置があるかのようにすっぽりとその背に跨るエウトティア。
 二人の猟兵が、戦の火蓋を切ろうと影朧へとむかっていった。

「はっはっあーーーー! 来るかよ! 今日は坊主に免じて特別サービスだ! 俺からのプレゼントだぜぇ!」
 サンタが袋を拡げてやれば、そこから弾丸のように玩具が飛び出して二人へと放出される。
 身体と同じく蒼く染まった刃で、浄雲はそれらをたちまち斬り刻む。
 細切れになった破片の数々に炎がつき、青く燃やしつくした。
 なぜだか心の奥底が痛む。
 それは、斬り伏せた玩具の面影に、郷愁を感じさせる品があるからか。
 自分がとうに忘れていた何か。
 それを生み出せる能力を相手は持っているらしい。
 だが、だからといって彼女が操る太刀筋は揺るぎはしない。
 障害物などないように、疾風のように駆け迫り、影朧へと一太刀を奮う。
「はっはっあーーーー!」
 地に横倒しになるかのようにバイクを傾け、器用に片手でアクセルを握るサンタ。
 スライディングのように遅いかかる黒金の体当たり。
 浄雲はそれを、すれ違うようにして跳んで躱した。
 慣性で滑り流れる影朧の前に、弓をつがえるエウトティアがいた。
「厄介者め、骸の海へ還るがよい」
 矢は、慣性の壁によって押し出させるサンタの元へと正確に放たれた。
 大袋を庇うようにして突き出した、影朧の腕へと突き刺さる。
 鬼の形相から、くぐもった声が漏れた。
「悪い子だな、アンタ!」
「それがどうしたのじゃ!」
「そんな子にはプレゼントだぜ!」
 サンタが袋を担いで薙ぎ払う。
 こちらへと品々が放物線を描いてむかってくる。
「遅いのじゃ!」
 この距離。如何様にしても撃ち落として見せよう。
 エウトティアは弓を引き絞り、狙いを定めた。
 しかし照準を合わせようと対象を確認した少女の目が開かれた。
 跳んでくるは、見知った品々。
 兄妹から賜りし、懐かしい玩具。
 目の良さが逆に仇となる。
 何故ここに!? 
 それらで遊んだ懐かしい記憶が、弓を張る猟兵の腕を止めさせた。
 撃てぬ。
 わしにこの品は射れぬ。
 気丈な小さき猟兵の眼が、年相応の少女のそれへと薄れ変わっていく。
 その眼を逸らした死角から、爆音をあげて影朧が襲いかかってきた。
「はっはっあーーーー!」
 空を駆るバイクの体当たり。
 立ちすくむエウトティアの目鼻に、黒いタイヤのグラインダーが差し迫る。
 ウオゥ!
 マニトゥが竹ひごのように背を曲げて跳ねる。
 するとエウトティアの身体がトランポリンのように投げ出され、宙へと浮かんだ。
 その間をバイクが通り過ぎていく。
 難を逃れた彼女ではあったが、咄嗟のことであったので、受け身を取れずに着地するはめになってしまう。
 浄雲とマニトゥが、すぐに彼女の左右にかけより固めた。
「いたたたた……助かったぞマニトゥ」
「大丈夫ですか?」
 差し伸べられた浄雲の手を取り、エウトティアが起き上がる。
「ジョウウン殿は良いとしても、あの袋がちいとばかし厄介じゃな」
 すぐに冷静さを取り戻し、彼女らに声をかけた。
 浄雲はそれに頷く。
「ではその様に」
 そして、再び影朧のもとへと走る。
 むかってくる浄雲に対し、サンタはハンドルを握った。
 人の足で機械に追いつけはしまい。
 彼女から一定の距離を取るようにアクセルを吹かす。
 だが浄雲の脚力は影朧の想像を超える物だった。
 じわりじわりと、その差を縮めていく。
「厄介だねぇ!」
 袋を担ぐサンタ。
 あまり効果が無いのは先ほどで分かっている。
 だが執拗に追いすがってくる彼女に対し、つぶては速度を緩める一手となろう。
 振りかぶって薙ぎ払う――ようとした。
 すっぽりと、抜けた感触が腕に伝わる。
「はあ!?」
 素っ頓狂な声をあげてみれば、鷹が袋をつまんで空へと浮かぶ去って行くではないか。
「なんじゃあ!?」
 驚愕の声をあげる影朧を、エウトティアは笑う。
「余所見をしていた結果よ。鷹達がお主を狙っておることにも気づかない間抜けが」
 浄雲に注視させて、上空から鷹たちが袋を奪う。
 ただ単に狙わせるだけであったなら、効果は薄れていただろう。
 浄雲の脅威。これが効を制した。
 エウトティアの策は成功し、相手の手段はひとつ潰れた。
 ただただ逃げるだけの獲物を、忍は逃しはしない。
「貴方を悪とは断じません。わたくしを善とも断じません。ですが、何も知らぬ幼子を巻き込む行い一つをもって、わたくしが貴方を裁きましょう」
 蒼白き焔が、バイクを一閃した。
 赤き悪鬼が、蒼く染まって血飛沫をあげる。
「ぐああああーーーっ!」
 余裕の哄笑とは違う、本物の悲鳴。
 悶える悪鬼に、すでに跳んで弧を描くマニトゥが追い打ちをかける。
「薄っぺらい道理を持ち出さぬと言葉を紡げぬ様な三下が義理や人情を語るでないわ!」
 先ほどのお返しとばかりに、エウトティアも杖で一撃を加える。
 そして影朧に、別の朱が加えられたのであった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

小雉子・吉備
現場急行しつつ他の猟兵から
凛吾郎ちゃん回り事情を【情報収集】

凛吾郎ちゃんの願い……キビも願いの為に猟兵になったし、その気持ちは解る

でも、その影朧はその内
凛吾郎ちゃんの善意を大義名分に拡大解釈して大惨事を起こすよっ!

〖POW〗
子供の頃……キビは過去の記憶が無いし、雉鶏精も長生きだし実年齢もどんだけかなぁ

【第六感】で【見切り】【高速詠唱】で〖時の愚鈍「スロウフールハウル」〗の【弾幕】で【盾受け】しつつ

〖なまり〗ちゃんと〖ひいろ〗ちゃんに【動物使い】で撹乱を

【高速詠唱】で【誘導弾】と【貫通攻撃】込めたUCを穿ち

バイクのエンジン爆発で影朧がダメージを喰らう過去を捩じ込むよ

〖アドリブ絡み掛け合い大歓迎〗


テイラー・フィードラ
……生剝三太。悪党であれども実に見上げた漢である。
貴殿のような存在ばかりであれば、まだオブリビオンへの理解も分かろうに。
だが、貴殿も刃を向くように私も理由がある。正々堂々と受けて立つ。

いくぞ。

真の姿と同時に己が血脈を覚醒。二輪を追う為、黒翼を生やし飛び掛からん。
だが、三太の言うプレゼントとやらも数多跳ぶ掛かってくることであろう。
ならば切り結び、弾かん。
長剣を右で抜き瞬断、杖を左で構え弾く。
今の貴殿からのであるならば、それはまこと、幸せを願った物であろう。些か勿体ないであろうが、戦場には似つかわしくない。

そのまま距離を詰められたならば被弾を覚悟し突貫。その身体に喰らい付き、血を寄越して貰おうか。


「……生剝三太。悪党であれども実に見上げた漢である。貴殿のような存在ばかりであれば、まだオブリビオンへの理解も分かろうに」
 吹き飛ばされた影朧に向かってテイラー・フィードラは剣をかまえる。
 志は違えども、人々の願いを叶えようとする思想は、彼にとって好ましく思えた。
 少しばかり時間があれば、わかり合えた線もあったかもしれない。
 だがすでに火蓋は切られた。己も語る舌など持ちあわせてはいない。
 語るすべは、この刃のみ。
「いくぞ」
 せめてもの礼儀。
 おのが焔を燃やし、滾らせると髪が赤く染まっていく。
 背に生えるは両翼の翼。
 ギラギラと紅い瞳を輝かせ、テイラーは魔性へと変貌していった。
「オーケーオーケー。真打ち登場って訳だな! 来なよオッサン!」
 猟兵の攻撃を受けつつも、まだサンタの身体には重さが感じられなかった。
 ふわりと身体を浮かせ、テイラーは突進していく。
 小雉子・吉備は相打つ二人を眺めながら、テイラーとは違う感想を抱いていた。
 目は二人の先、戦いを見守る凛吾郎の両掌。
 力が入っているのか、握りしめられた短冊立ちがクシャクシャになっていた。
 吉備は、首を振って否定する。
「違うよ。全然違う」
 じぶんとみんなが幸せになりますように。
 あの少年はそう願っていた。
 その気持ち、自分にはわかる気がする。
 ここに来るまでの間、彼に関する環境も伝え聞いた。
 凛吾郎は、他人を思いやれる優しい子のはずなのだ。
 では、握りつぶされた短冊は何を意味するか。
「影朧はその内、凛吾郎ちゃんの善意を大義名分に拡大解釈して大惨事を起こすよっ!」
 なぜだか分からないが、そう確信できる。
 人々のために、戦うヒーロー。
 そうありたいと願ってきた。
「なまりちゃん! ひいろちゃん!」
 犬と猿を召喚し、テイラーに加勢するべく吉備もまた戦いに加わった。
 少年を守るのは影朧ではない。
 自分たち、猟兵の役目なのだ。

「悪いが俺の袋は良い子のためでなぁ! オッサンにやるものはねえよ!」
 バイクを駆りて挑発する影朧。
 それを狙うテイラー。
 互いに間合いを測りながら駆け抜けるそのさまは、まるでレースのように。
 しかしこれは競技ではない。
 吉備の援護射撃がサンタに襲いかかる。
「スロウフールハウル!」
 カードを持つ手が輝けば、たちまち魔法の弾幕が降り注ぐ。
 豪雨の中、影朧は器用にスラロームで躱していった。
 そしてその縫うような動きは、はたから見ても速度を緩めていくのがわかる。
 射撃は相手を狙う物ではない。
 スロウフールハウルの魔法弾は時間を歪める
 矢継ぎ早にコース上に放つことにより、影朧の動きを重鈍にするのが狙いだったのだ。
 矢のように飛翔するテイラーが、瞬く間に追いついた。
 斬撃。回避。
 狐撃を受けて、ハンドルを持つ手が離れる。
 しかし敵も然る者。
 事故を起こすスレスレの動きで、横倒しのバイクを膝で押さえつけ無理矢理にターン。
 捻る反動を利用して、サンタが袋を投げつける。
「喰らいなあ!」
 無尽蔵に降り注がれるプレゼントの嵐。
 それにテイラーは見覚えがあった。
 故国で見覚えがある細工物。
 とるに足らぬ子供だましの玩具の数々。
 郷愁を覚えるに、いささかテイラーは歳を取り過ぎた。
 両手に握るは宝物にあらず。
 鼓舞し魔を穿つ、己の獲物であった。
「……幸せか。今の俺には似つかわしくない」
 右手の剣で過去を振り払い、左手の杖で現実を受け止める。
 未来は、己が自身で掴み取る物だ。
「捕らえたぞ」
 速度を緩めぬ、力強い体当たり。
 テイラーの身体に張り付くように吹っ飛ばされ、サンタはバイクと引き剥がされてしまう。
 そしてその肩口に、乱杭歯が突き刺さった。
「ぐああああーーーっ!」
 影が離れ、一つの影が地に叩きつけられる。
 すぐに跳ねあがって間合いを取り、憎々しげに睨む影朧。
 その肩は、獣に引き裂かれたかのように抉り取られていた。
 肉片を口に咥えていたテイラーが、被りを振るうて落とす。
「見事だ」
 あのまま吸血するつもりであったが、すんでの処で逃げられてしまった。
 だが代償は大きい。
 血を滴らせるテイラーの口元と同じく、赤い血を陽炎は傷口から吹き出していたのだった。

「今度はキビが相手だよ!」
 吉備の両翼から、なまりとひいろが飛び出した。
 脚を失った今ならば、自分も何とかなりそうだ。
 三位一体の攻撃に、サンタは防戦一方となってしまう。
 魔法弾を避けようとする影朧の動き。
 そうはさせじと犬と猿が動く。
 さしものオブリビオンも傷ついてきた。
 哀れな声を演出し、吉備に対して誘いをかける。
「こいつは危険なお転婆ガールだ。嬢ちゃん、アンタの欲しいものはあるかなあ?」
「キビの願いは、人々を惑わすキミのようなものから人々をまもる、正義の味方になることだよ!」
「ソイツは残念!」
 どこからか出した袋を振りかぶり、腕を振るう。
 するとたちまち多くの品々が現れ、弾丸のように吉備の元へと降り注いだ。
 生憎と、それらに何の感情を見いだすことも出来ない。
 自分に記憶があれば、贈答品に対してありがとうの一つでも返すことができたのであろうか。
 過去を失っていたことに感謝しつつ、同時に哀しみを覚える。
 礼代わりにカードを煌めかせた。
「……スロウフールハウル」
 すれ違う品と弾丸。ゆっくりと物体が動いて視界を阻む。
 即席で出来た品々の盾。
 そこからなまりとひいろが飛び出して、悪鬼に噛みつき引っ掻いた。
 たまらずに、悲鳴をあげ地面を転がるサンタ。
「ぐあ、ぐああっ、くそっ! なんで俺様が!」
 痛みを堪えながら目を開いてみれば、そこに横たわるはバイクの身柄。
 とりあえず距離を離そうと、それに跨るとする影朧。
 だが、その望みは叶うことはなかった。
 アクセルを吹かした瞬間、エンジンが爆発しサンタが吹き飛ぶ。
「なっ!? がああああああーーーーーーっ!」
 生剥どころか火達磨と化して悶える影朧。
 オブリビオンとしての頑丈さが、なまじ死ねずに苦しみを永らえさせる。
 いったい何が起こったのであろうか。
 吉備がプレゼント攻勢を盾代わりにしようしたのは、犬と猿を奇襲に向かわせるためではない。
 あれは陽動。
 真の目的はバイクの破壊。
 その手には、虹色の雉鶏羽があった。
 これぞとっておき。
 時間を更に歪ませ、過去を改ざんする妖術。
 オルターフェザーブラストによって、バイクが爆発させる事象を発生させたのだ。
 動く標的ならば難しいが、止まっている的にならば容易い。
 テイラーが影朧をバイクから振り落としたのを見て、彼女は仕込むことを閃いたのであった。
 動揺がなければ、影朧もすぐにバイクで逃げようとは思わなかったであろう。
 二人の猟兵は、オブリビオンに大打撃を与えることに成功したのであった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

御園・桜花
「死に瀕して生を願い助けを乞うこと、欲しい物を願うこと、自分の生きざまにかかる願いを叶えようとすること。これは全て違うことです。それを願いと一括りにするから間違える。その間違いを広げようとするから貴方は倒される」

高速・多重詠唱で破魔と炎の属性乗せUC「桜吹雪」
敵も召喚物も全て斬り刻む
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す

「此処に赤い玩具と青い玩具が1つずつあって、赤い玩具を欲しがる子が3人居たら。貴方はどう願いを叶えます?青い玩具の素晴らしさを説いても1人の子には何もない。もし余所から強奪してきら、其方で恨みを買うでしょう。無から有は産み出せない。他者が勝手に願いを叶えるのは、普通は恨みを買うのです」


御形・菘
はっはっは、良い子の望みを叶えようとは実に素晴らしいではないか! ほざけ!
ならば妾は悪い子の極み! お主にとって悪の権化よ!
何一つ志を遂げられぬまま、無様に散るがよい!

あの頃の私が狂おしいほどに切望した物など、今この場には出てこんよ
信頼、友情、絆、そして友…形は無く、すべて妾が自らの力で掴み得たものだ!
被弾ダメージなど気にせん、覚悟を決めて真っすぐ突っ込む!
此度のバトルにはエモさも動画映えも一切求めんよ
接近したら尾を巻き付けて身動きを封じ、急所を的確に確実に全力でブチ抜く!

褒められるのは、名乗りが文句なしという点だけであろうな
編集動画では頑張って字幕をつけてやる、そこだけは礼儀を尽くしてやろう


 よろよろと起き上がるサンタ。
 手負いは誰の目から見ても明らか。
 御園・桜花と御形・菘が、この機を逃さじと立ち塞がる。
「はっはっは、良い子の望みを叶えようとは実に素晴らしいではないか!」
 腕組みをしながら御形が嗤う。
 腕をほどいて天を仰ぎ、馬鹿めと相手を罵るのだ。
「ほざけ! ならば妾は悪い子の極み! お主にとって悪の権化よ! 保護者気取りの馬鹿野郎! この口を防ぎたくば是非に来い!」
 ふざけやがってと、影朧が御形を睨めつけた。
 バイクがあれば突進してやりたいところだが、生憎手段は先ほど破壊された。
 この傷ついた身体で、どうにか二人を相手しなければならない。
 来ないサンタに近づこうと、御形が拳を構えた。
 それを手で桜花が制す。
 にこにこと笑顔でサンタに語る。
「死に瀕して生を願い助けを乞うこと、欲しい物を願うこと、自分の生きざまにかかる願いを叶えようとすること。これは全て違うことです。それを願いと一括りにするから間違える。その間違いを広げようとするから貴方は倒される」
 懐から紙を取り出して、影朧へとつきつける。
 それは短冊の写し。
 自らの願いを書いたものである。
 願いが叶いますように。
「私たちは貴方を倒すと願いここに集う。では貴方の願いは? もうすでに矛盾が生まれています。ほら、貴方はどちらを叶えます?」
 ほざけ! と影朧は叫ぶ。
「傍観者きどりの高みの見物! さぞや偉かろう! じゃあお前らはコイツになにかしてやれるのか! 何か与えてやれるのか! 俺なら出来る! 人の欲を袋のように膨らませ、力を手に入れる事が出来る! 人の望み! それは俺の望みであり糧! 坊主の願いは他人の幸せを願う美しいことじゃねえか、なぜ邪魔をする? テメエら人間共は自己責任と他人様の背中を突き落として嘲笑うクズ共よ! なぜ素直になれねえ!? 今より幸福を願うことが、なぜいけねえだよダボがぁ!」
 激しい罵倒。
 それを桜花は静かに受け流す。
 胸に手をあて、優しく語る。
 まるで駄々をこねる子供を諭すような、慈母の声で。
「欲しい物を欲しいままに与えてしまっては、人は自分の意志で立つことすら億劫となることでしょう。同じ物を二人が望めば? 願望、それは活力。他人の願いをただ分け与えるのは、甚だ不遜な行為と知るべきです」
「そうよ、われらは悪い子よ」
 諭す桜花に割って入り、御形が己の言葉を突きつける。
「妾は悪い子の極み! お主にとって悪の権化よ! よって貴様の気持ちなど知るよし無し! 悔しいか? 憎いか? ならばかかってこい! 何一つ志を遂げられぬまま、無様に散るがよい!」
 舐めやがって。
 サンタは掴む。ボロボロになった己のプレゼント袋を。
 それを振り回せば、現れるのは玩具ではなく異形たち。
 影朧と同じ姿格好をした、小鬼たちの群れであった。
 その手には袋ではなく、巨大な棒が握られている。
「どうも出来ぬと見て仲間を呼んだか、良いぞ! まとめて相手をしてやろう!」
 ずずいと前に出ようとする御形。
 それに桜花が声をかける。
「あの者達は私が相手をします。御形さんは敵本体を」
「手柄を譲ってくれるとは! 良いだろう、お主の分まで殴って来てやろう!」
 二人の話を遮るように、小鬼たちが襲ってくる。
 それを予期していたかのように、桜花が身体をまわした。
 彼らにむけるはまっすぐに伸ばした己の腕。
 その手に持つ鮮やかな扇。
 はらりとひろげてみれば、桜の柄が顔を見せる。
「此処に赤い玩具と青い玩具が1つずつあって、赤い玩具を欲しがる子が3人居たら。貴方はどう願いを叶えます? 青い玩具の素晴らしさを説いても1人の子には何もない。もし余所から強奪してきら、其方で恨みを買うでしょう。無から有は産み出せない。他者が勝手に願いを叶えるのは、普通は恨みを買うのです」
 述べながら舞を披露するかのように扇を動かす。
 桜の花びらが扇の盆よりこぼれ落ち、桜花の周囲に舞い散った。
「悪い子はいねーかーーー!」
「悪い子はいねーかーーー!」
 幻想的な光景を解さぬ鬼の群れが、桜吹雪を突っ切って、桜花へと棍棒を振り下ろす。
 彼女はそれを屈んでかわす。その先のむこうへと見える、影朧サンタへと礼をするかのように。
「だから、貴方が無から生み出した物を無にへと還しましょう。因果を貴方へと。ほころび届け、桜よ桜」
 ひらひらと扇が舞えば、桜吹雪は紅と化す。
 火に紅く染まり、周囲を焼いて赤く散る。
 範囲の中にい鬼たちを焼き尽くしながら。
 淡い桜色が、篝火のように赤く燃える人型の灯火を、次々に生んで散らしていく。
 一斉に燃えて、夜風に煽られ散っていくその姿は、人の世の業を吸って消えて行く、この世界の理にも見えた。
 幻想的な炎の桜吹雪。
 しかし見惚れている暇は、影朧には用意されてはなかった。
 待ちきれぬとばかりに、御形が間合いを詰めてくる。
「ちいっ!」
 ボロ袋を悔し紛れに振り回す。
 それは簡単に御形にあしらわれ、勢いにまけた袋の中身が、辺りに散乱する。
 彼女は見ようとはしない。
 袋の中身がなんだったのか、それを確認しようとはしない。
 灰色の記憶。遠い過去。
 引き裂かれて飛び散る袋の生地が、季節外れのホワイトスノウを感じさせる。
 寒々とした気配。かじかんだ手。
 いや、それは現実ではない。
 仲間が生んだ熱き焔が、自分の背中を後押してくれている。
 手を伸ばすのは、まどろみ消える夢ではない。
 敵の首、大将首、討ち果たすべき影朧の姿。
 サンタが袋を頭へと叩きつけた。
 袋はバラバラになり、四散する。
 角が飛び出し、顔が出る。
 獲物を見据える、独りの猟兵の姿が。
「見苦しいぞ! 貴様のくれる物など、妾にとって無いものも同じよ!」
 気迫に押され、後ろへと下がろうとする影朧。
 その動きは阻まれる。
 尾を巻きつけ締めつけ逃さじと、御形の下半身が封じたからだ。
 手下を討たれ、袋も失い、影朧サンタに為す術無し。
「ま、待て! あんた、他に欲しい物はあるのか? 俺ならあんたの望みを叶えてたれる! 物じゃないなら名誉か? イケメン彼氏か?」
 それとも、と続けようとして影朧は言いよどむ。
 御形と視線があったからだ。
 彼女の眼は有無を言わせぬ迫力と、そして哀しみがあったのだ。
「信頼、友情、絆、そして友…形は無く、すべて妾が自らの力で掴み得たものだ!」
 御形が拳を握る。
 ぎりりといちだんと締め付けが強くなる。
「せめてもの情け、貴様の口上はしっかりと記録してやろう。そろそろ目障りだ」
 指を伸ばし、親指を曲げて貫手を作る。
 腹をむけるその様は、サヨナラの挨拶に見えた。
 何事かを喋ろうと、サンタが口を開いた。
 しかし御形は、容赦なくその口内へと右手を叩き込んだ。
 頭が吹き飛び、胴が背中側へと真っ二つにへし折れる。
 末期の言葉など聞く気無し。
 此度のバトル、御形は久方ぶりの大真面目であったのだった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴


第3章 日常 『籠絡ラムプの後始末』

POW本物のユベルコヲド使いの矜持を見せつけ、目指すべき正しい道を力強く指し示す
SPD事件の関係者や目撃者、残された証拠品などを上手く利用して、相応しい罰を与える(与えなくても良い)
WIZ偽ユーベルコヲド使いを説得したり、問題を解決するなどして、同じ過ちを繰り返さないように教育する
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 影朧が、最初からそこに居なかったかのように、消失していく。
「おじさん!」
 凜吾郎が叫ぶ。
 しかしその声は空しく虚空に響くだけだ。
 ならばとラムプに火を灯すが、現れる気配などない。
 少年は一人。
 取り囲む猟兵は多数。
 気落ちし、肩を落としてへたり込む凜吾郎。
「なんだよ……どうして皆して……僕はただ、皆を幸せにしたかっただけなのに……」
 落胆し、顔を伏せる凜吾郎。
 影朧退治は終わった。
 しかし騒動は落着してはいない。
 少年のこれからをどうするか。
 傍らに転がる籠絡ラムプ。
 猟兵は、これからその答えを導くのであった。

※三章に参加したキャラの行動の総数により、少年の結末は変わります。
※プレイングは7月31日 8:30~より送信してくださるようお願いします。
エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

うむ、これで一件落着じゃな
小僧については…まあ、他の者から説教をいただくじゃろうし、わしからとやかく言う必要もないな
所詮子供のやった事、英雄願望は男の子のはしかのようなものじゃ、げんこつのひとつも貰っておけばよいじゃろう
しかし『皆を幸せに』という気持ちを無下にするのも不憫かのう? そうじゃ、子供には子供らしい手段があるではないか
先程の短冊が余っておる、タナボタサマにお願いしたらよいのじゃよ
ほれほれ、わしと一緒に短冊にお願い事を書いて笹に吊るすがよいぞ
(精霊により願いが聞き届けられたようなエフェクトを演出)
おお!タナボタサマが聞き届けてくれたようじゃ。よかったのう


御形・菘
皆が凜吾郎を責めるのを止める気は無い、むしろ庇うつもりであるよ
今この瞬間の此奴に必要なのは味方よ、目に見える形でのな
一人ぐらいはそういう者が居てもよかろう

説教が一通り済んだら、孤児院へ送っていこう
二人きりで話したいこともあるのでな

妾が一つだけ咎めるなら、皆を幸せにしたいなどと言ったことぐらいよ
自分が幸せになりたかった、であろう?
お主は今回運が悪かっただけ、挫けず諦めず続ければよかろう
やり方が悪であったなら何度でも叩かれる、それだけの話よ

自分の居場所を作るのは、本当につらく難しいものよ
醜く、ただ頑丈なだけでしかなくて…狂ったような試行錯誤の果てに、邪神を名乗るまで行きついた奴も居るからのう


小雉子・吉備
戦ってる最中、凜吾郎ちゃんが握り潰していた短冊、それとラムプの関連性を【情報収集】

〖WIZ〗

聞いた上で、やっぱりソレを使うのは良くないかな?と

焦る気持ちは解るけど……握られた他の人の短冊も見て、凜吾郎ちゃんらしくも無いと思う


キビも猟兵になる前、自分探しの旅の中、答えを焦る余りに骸魂と言うのに乗っ取られて

あのサンタみたくなっちゃった事があったんだ……それで過ちを犯しかけた

あのサンタも例外じゃないなら

歪んだ存在だろう事は、同じ存在になった事があるキビだから解る

だから、キビも今の矜持があるんだけどね。

焦りはしただろうけど、凜吾郎ちゃんならアレ無しでも願いは叶えられるよ。

〖アドリブ絡み掛け合い大歓迎〗


テイラー・フィードラ
……少年よ、幸福とは何だ?

そこで項垂れている凜吾郎へ問い掛けよう。
少年の考え自体も理解はできる。己の知る皆が幸福になってほしい。それは万人が持つ願いであろう。
だが、己にとっての皆と、皆の内の一人である存在にとっての『皆』はまた別だ。その繋がり全て救おうとする事は並大抵の事でなく、それだけでは傲慢な思想である。

しかしだ、私はその心意気は否定はせん。むしろその生い立ちでそう至ったことこそが喜ばしい。
もし誰かを、己を幸福にしたいというならば。まずは口を交わしそれを問うてみるが良い。
此処にある短冊にもあるであろう、願いは十人十色と様々だ。真に幸福に至らんとするならば、理解し共感し思索していきたまえ。


御園・桜花
「皆を幸せにしたい、その願いは尊いと思います。でも、命の危機に関わらない願いを他者が叶えるのは傲慢で不遜です。それは、同じ目線で生きる人でないと宣言すること、他者の望みを力で踏み躙ったと思われることに通じるのです」

「お菓子が食べたい。その願いを無条件で叶えたら。以後は財布代わり、カツアゲの対象になるでしょう。相反する願いを叶えようと思ったら。どちらかの願いは叶わない。叶わぬ者は恨むでしょう。それを無理に叶えたら、居ないくて願いが叶わなかった時に貴方が恨まれます。願いの手助けも、し過ぎれば相手のやる気を削いで、友達を喪うことにしかなりません」

「このランプを手放して、お友達の所にお帰りなさい」


音羽・浄雲
※アドリブ、連携歓迎です。
POW

「志は立派です。しかして、他者から一方的に与えられるそれを幸せと呼べるでしょうか?」
同胞達が仇討ちを望んでいるのか自問を続けた日々を少年に重ねる。
しかし、自分とは違う少年の直向きさに、思わず抱き締めそうにもなる気持ちを抑え、頭に手を置き微笑む。
「純粋さは美徳。目的の為ならば手段を選ばぬその姿勢も素晴らしい」
ですが、と発動するのは【九尾狐狸精】。
頭から手を離し、過ぎた力に血反吐を吐き散らす愚かな姿を見せつける。
「一度道を誤れば待っているのは身の破滅。努努忘れぬ事です」
堕ちた己を敢えて見せる。この醜さを戒めに、出来なかった事を少年には成し遂げてほしいと、そう願う。


 影朧は消え去り、ここに残っているのは無力な少年一人。
 猟兵の前にはあまりにも無力な存在だ。
 無力故に、つまずき誤ってしまった。
 御形・菘は凜吾郎を責めるつもりは毛頭無かった。
 むしろ、庇うつもりでいた。
 いざとなったら側にいても護る。
 彼女はそう考えていた。
 仲間の顔色を伺い、いざとなればと辺りを見回すが、どうやら杞憂に終わったようだった。
 猟兵達からは戦いの険が取れている。
 どうやら仲間は自分と同じ、罪人として処罰するつもりは無いらしい。
 安堵して下がると、エウトティア・ナトゥアと目があった。
 一件落着。
 彼女の目はそう語っていた。
 ならば自分も特にどうこう言うつもりはない。
 必要なことは、仲間が代弁してくれるだろう。
 エウトティアと一緒に、成り行きを見守るのであった。

 テイラー・フィードラがまず、凜吾郎へと問いかけた。
「……少年よ、幸福とは何だ?」
 うなだれている彼と目線を合わせるために屈み、のぞき込む。
 そこには全てを失ったかのような、少年の疲弊した眼があった。
 凜吾郎の気持ちは理解出来る。
 彼の願いは私欲では無く、皆を救いたいという願望であったからだ。
 じっと見つめるテイラーに、凜吾郎は答えた。
「願いが、叶うことかな」
 そうか、とテイラーは頷く。
「貴殿が思っている以上に、それは並大抵のことではないぞ」
 己にとっての皆と、皆の内の一人である存在にとっての『皆』はまた別。
 凜吾郎が叶えようとしている『皆の願い』と皆の『願い』は別の物なのだ。
 今のままでは、自らの考えの押しつけようとする傲慢な態度に過ぎない。
「じゃあ、願いを叶えちゃ行けないっていうの? 皆は願いを叶えられなくって満足しないの?」
「いいや」
 問いにテイラーは首を振る。
「私はその心意気は否定はせん。むしろその生い立ちでそう至ったことこそが喜ばしい。もし誰かを、己を幸福にしたいというならば。まずは口を交わしそれを問うてみるが良い。孤児院の皆は心配していたぞ、それが貴殿の願いか?」
 ここに来たことの経緯を説明する。
 彼が抜け出してきたこと。友人や大人が心配していたこと。
 それを告げると凜吾郎の顔が曇った。
「今、願いを尋ねれば彼らは貴殿が見つかることを願うであろうな。しかしそれは幸せによるものか? ただ心配事が解決しただけだ」
 すっくと立ち上がり、遠くを指さす。
 それは七夕祭りの笹の列。
 短冊が風に吹かれ、ゆらゆらと揺れていた。
「此処にある短冊にもあるであろう、願いは十人十色と様々だ。真に幸福に至らんとするならば、理解し共感し思索していきたまえ。まだ祭りの夜は長い。孤児院の皆には凜吾郎が見つかったと伝えておく」
 テイラーの語りかけに、少年はただ黙って耳を傾けていた。
 その姿を見つめ、テイラーは立ち上がる。
 人の心を打つのは、化け物を斬るより難しい。
 テイラーは会話を終えて、凜吾郎の元を離れたのだ。

 大人がよってたかって責め立てるのは、酷く大人げない行為だ。
 だから音羽・浄雲は、テイラーが少年から離れたのを見届けて歩み寄ることにした。
 憔悴している彼の姿に、浄雲は目を細めた。
 志は違えども、彼は信念を突き通そうとした。
 影朧という魔道に身を落としても。
 人々の願い。そして自分の思い。
 同胞達が仇討ちを望んでいるのか自問を続けたあの日々と、少年の姿が重なった。
「志は立派です。しかして、他者から一方的に与えられるそれを幸せと呼べるでしょうか?」
 愛しさに思わず抱きしめたくなりそうな、逸る気持ちをおさえ、凜吾郎の頭に手を置き微笑んだ。
 その手から少年の怯えと憔悴が伝わってくる。
「純粋さは美徳。目的の為ならば手段を選ばぬその姿勢も素晴らしい」
 そう、彼の性根は優しい。
 足りなかったのは知識と経験。
 それが幼かったゆえにつまずいてしまったのだ。
 ならば、それを教え手を差し伸べるのは、我々大人の役割であろう。
 頭から手を離し、距離を取る。
 これからとる行動は、少年をさらに恐がらせることになるかもしれない。
 だが恐れ、痛みを知る経験も成長のために必要。
 浄雲は、目のまで禁術を披露するのであった。
 変わり果てる浄雲の姿。
 血反吐を散らし、唸りをあげる妖狐の姿。
 それを見てしまった凜吾郎が悲鳴を上げた。
 無理もなかろう。禁を犯した外法の姿。
 しかし語りかける化物の声は、優しかった。
「貴方が軽々しく扱ったラムプの威。それは外法よりなるもの。一度道を誤れば待っているのは身の破滅。努努忘れぬ事です。このように、なりたくなければ」
 禁忌が刻まれたこの身体は、二度と元に戻れはしない。
 だが少年は立ち止まり、戻ることが出来るのだ。
 怯え、恐怖。
 自分を見つめる少年の眼が、そう感情を伝えてくる。
 それでいい。そうでなくはならぬ。
 外法に頼ることなく、少年には立ち直って欲しいのだ。
 己の願い。幸せ。
 自分が出来なかった事を少年には成し遂げてほしいと、そう願わざるを得ない。
「貴方の願いは、こうなることなのでしょうか?」
 元の姿に戻り、少年に背をむけて浄雲は離れるのであった。

「今の方は、あなたを踏みにじろうとすれば出来ました。しかしそうはしません。なぜだかわかりますか?」
 御園・桜花が凜吾郎に優しく微笑む。
 ここに居る者は少年を罰そうとは考えてはいない。
 ただ、己の性分にしたがって諭そうとしているだけなのだ。
 そう、自分と同じように。
「あなたは桜より長生きしますか?」
「え?」
 突然の問いかけ。
 先ほどの恐怖に覆われていた顔が、不意をくらい困惑の気持ちを浮かべる。
 発言の真意を測りかねるように、凜吾郎がこちらを見てくる。
 それを真っ直ぐと受け止めて、桜花は語る。
「皆を幸せにしたい、その願いは尊いと思います。でも、命の危機に関わらない願いを他者が叶えるのは傲慢で不遜です。それは、同じ目線で生きる人でないと宣言すること、他者の望みを力で踏み躙ったと思われることに通じるのです」
 人はこの咲き続ける幻朧桜のようにはなれない。
 それはこの少年も同じ。
 仮に生き続けることになろうとしても、願望は人を縛り付ける。
 皆を幸せにしたい。
 少年の望みは呪いとなり、人の生き様、すなわち人生を束縛することになるだろう。
「お菓子が食べたい。その願いを無条件で叶えたら。以後は財布代わり、カツアゲの対象になるでしょう。相反する願いを叶えようと思ったら。どちらかの願いは叶わない。叶わぬ者は恨むでしょう。それを無理に叶えたら、居ないくて願いが叶わなかった時に貴方が恨まれます。願いの手助けも、し過ぎれば相手のやる気を削いで、友達を喪うことにしかなりません」
 人の世は移ろい変わりゆく。
 少年が生きる時間より多く、数多くの人々がこうありたいと望むだろう。
 では、凜吾郎は?
 この帝都に存在する人々の願望を叶えるだけでも多くの時間を要する。
 現に、この短冊の願いを確認するだけでも、少年は時を消費し、自分たちに補足される結果となってしまった。
 叶えられなかった恨みを独り背負い、膨らんだ人々の欲望に押しつぶされてしまうだ。
 幸せになりたい。
 果たしてその時、この少年は幸せなのだろうか。
 いいや。
 今ならまだ引き返せる。
 そっと、手を伸ばす桜花。
「あ……」
 その手を凜吾郎はただ黙って見ていることしか出来なかった。
 桜花の手にかかえられているのはラムプ。
 効力を失い、置物と化している籠絡ラムプであった。
「このランプを手放して、お友達の所にお帰りなさい」
 そこに答えはある。
 そう言い残して、桜花は少年から離れた。

「また会ったね」
 小雉子・吉備が凜吾郎に近寄って声をかけた。
「君か……」
 答える少年の声は昏い。
 無理も無い。少年の願いは自分たちが潰してしまったのだから。
 しかし、と吉備は考える。
 やはりこのような事をするのは間違っているのではないかと思うのだ。
 少年には過ぎた力。
 影朧を操るということ。
 それは、凜吾郎には似つかわしくないと考えるのだ。
「猟兵、だったんだね」
「うん、騙すみたいだったけど、そうなんだ」
 事件を解決するために少年へと近づいた。
 身分を偽っていなかったというのは嘘になる。
 だが、少年を傷つけたいという訳ではなかったのだ。
「猟兵になる前にね、骸魂と言うのに乗っ取られてあのサンタみたくなっちゃった事があったんだ……」
 ぽつりぽつりと、自分語りをする吉備。
 自分という存在。
 その不確かさによる焦燥感から、過ちを犯しそうになったこと。
 そしてその騒動を語りかけた。
 指で短冊を差す。
 それは凜吾郎が握りしめていたもの。
 くしゃくしゃになった紙束は、彼の焦る気持ちの表れだったに違いない。
「キビは間違えちゃったから骨身に染みている。だから凜吾郎ちゃんには気づいて欲しいんだ。こんなのは、キミの本当の願いじゃないって」
 桜花が取りあげたラムプ。あれは人々を惑わせる物。
 好奇心旺盛な子供に差し向けた、其奴らが悪いのだ。
 少年はまだ、やりなおせる。
 再び指を差す。
 それは凜吾郎が書いた、自分の願い。
 ―― じぶんとみんなが幸せになりますように ――
「それ、自分で飾るんでしょ?」
「……え? あ、ああ……うん」
 差し向けられてそれを思いだし、呆けたように首を縦に振る凜吾郎。
「じゃあ、飾ってくるといいよ。祭りはまだ終わってないからみんなと一緒にね!」
 みんな。
 それは吉備と猟兵でないことは明らかだ。
 彼女は言いたいことを言い終えると、すぐに立ってその場を離れたのだから。
 くしゃくしゃになった短冊の束。
 それを少年は、ただ黙って見下ろしていた。

「みんな優しいのう。げんこつのひとつも貰うかと思いきや、それも無かろうとは」
 それを愚痴るエウトティアの声は明るい。
 猟兵は影朧を討つ存在であって、人の罪を裁けるような仰々しいものでは無い。
 他の皆の行動に、自然と頬が緩まざるを得ないのであった。
「ふむ、しかし『皆を幸せに』という気持ちを無下にするのも不憫かのう?」
 このまま去ってもいいが、それでは手落ちのような気がする。
 物語はやはり、ハッピィエンドといきたいものだ。
 あえて何も言わずにいたエウトティアであったが、自分もまた少年へと近づくことにした。
 うちひしがれている少年に声をかける。
「ほれほれ、そんな処で肩を落としてないで、わしと一緒に短冊にお願い事を書いて笹に吊るすがよいぞ」
 彼女が差し出したのは、まっさらな短冊だった。
「そんなくしゃくしゃになった短冊では、叶うものも叶わんぞ? さあ、わしと一緒に書いてみようぞ」
 押しの強いエウトティアにうながされ、放心状態であった凜吾郎は言われるままに筆を取り、ようやく筆を動かした。
 ―― じぶんとみんなが幸せになりますように ――
「良い願いじゃのう」
 それを受け取り、適当な場所へと吊り下げる。
 少年に聞こえないように、何事かをエウトティアが呟くと、笹の葉が揺れは勢いを増し、周りの枝木は手を広げて星の光を迎え入れる。
 天の川から下りてくる、一筋の光を一身に浴びて。
「おお!タナボタサマが聞き届けてくれたようじゃ。よかったのう」
 予想外のことに目を丸くする少年にむかって、彼女は笑った。
 光は願いを浮かび上がらせ、良く見えるように輝く。
 その隣で結んでいた、エウトティアの願いも分かるように。
 『お肉!』
 力強く、単純明快な望み。
 その二文字をみて、凜吾郎は笑った。
 影朧が倒されてのち、少年は初めて笑顔を見せたのであった。

 御形が前へと歩み出て、凜吾郎の手を取った。
「どうやら言いたいことは皆終わったようだな」
 そのまま少年を立たせ、打ち切りを促す。
 ラムプはすでに失われた。もうこのような事は起こらないだろう。
「他に尋ねたいことは色々とあると思うが、この少年を探す約束をしてたのでな。皆には悪いが、ここいらで引いて貰えると助かるぞ」
 居並ぶ猟兵達の顔に異存はない。
 その言葉は、凜吾郎に今回の件を不問とするのを悟らせるためでもあるからだ。
 本気で処罰しようと考えている輩は、最初からこの場にはいなかった。
「では行こうか」
 御形に手をひかれ、後をついていく凜吾郎。
 ふと気がつけば、彼の耳に楽しそうな声が聞こえてくる。
 騒動で忘れかけてはいたが、今日は祭りの日であった。
 事が終わり、一人ぼっちを自覚した少年の胸に、孤独感がのしかかった。
 その心境を知ってか知らずか、御形が声をかける。
「妾からも一言いわせてもらうとすれば、皆を幸せにしたいなどと言ったことぐらいよ」
 一緒に歩きながら、顔を凜吾郎へとむける。
「自分が幸せになりたかった、であろう? 違うか?」
 その問いに立ち止まる少年。
 歩いていた御形の足も止まる。
「お主は今回運が悪かっただけ、挫けず諦めず続ければよかろう。やり方が悪であったなら何度でも叩かれる、それだけの話よ。幸いお主には、待っててくれる人がいる。その中で笑え、哀しめ、足掻け。幸せを掴むのはそう容易くない。ズルをしようとすれば周りからひっぱたかられるのは当然よ」
 子供が間違えるのは当たり前。
 それを修正するのは大人の義務なのだ。
「今宵は祭り。子供は子供らしく祭りで騒げばよろしかろう。孤児院の連中がお前を待っていたぞ」
 遠くから、呼びかける声がする。
 二人が見れば、それは凜吾郎にむかって手を振る、孤児院のみんなであった。
「ふむ、迎えが来たか。ならば説教はこのくらいにしておくか」
 ああそういえば、と御形は懐に手を伸ばす。
「貴様に駄賃を渡すのを失念していたぞ。奴らが貰ってお主が貰えぬでは、不公平であるからな」
 硬貨を握らせ少年の背を叩く。
 凜吾郎は御形を見て、そして意を決して孤児院のみんなと合流していった。
 少年の背中。
 見えない顔からこぼれ出た言葉を、御形は確かに聞いた。
 ごめんなさい。
 そうハッキリと聞いたのであった。

●それから~

 屋外テラスからは、祭りを楽しみ人々の波がよく見えた。
 吉備と桜花の二人は、依頼が終わった疲れを夕涼みによって癒やしていた。
「結局、それって何なのかな」
 テーブルに置かれた籠絡ラムプを眺めながら、吉備は屋台で買ってきた食べ物に箸をつけた。
「さあ、私にもなんだか……しかし、おいおいと分かることでしょう」
 腰を落ち着けながら、彼女も飲み物をいただいていた。
 目に映るは祭りを楽しむ人々の姿。
 それを肴に口にするフロートは、キンキンに冷えて美味しく、喉を潤す。
「分かることは、それは有ってはならない品物。世間を騒がす厄介物に違いありませんね」
「あ、それはキビもそう思うかな」
 がばりと身を起こし、吉備が同意する。
 今回は未然に防げたから良かったようなものの、もし出来なかったら祭りは台無しになっていただろう。
『桃太郎を始めとするヒーロー達みたいな正義の味方になり、多くの人とあやかしを守りたい』
 祭りの始めにそう書いた、自分の願いが無にされるところであった。
 そういえば、と顔を横にむける。
「桜花ちゃんはどんな願いごとをしたのかな?」
「私ですか?」
 コップを置いて桜花が応える。
「私の願いは『願いが叶いますように』、でしたね」
 そう言って視線を人並みにむける。
 その左右に並ぶは、笹の葉の列。
 居並ぶ短冊ひとつひとつが、参加する人々の願い。
 幻朧桜の化身を自認する桜花は、それが成就出来るようにと願わざるをえない。
 大人の彼女が口を紡げば、自然と吉備の口数も少なくなる。
 彼、凜吾郎は大丈夫だろうか。
 あれだけのことがあったのだ、影響が無いとは言い切れない。
「祭りが終われば、様子を見に行っても良いかな?」
 その時は手土産が必要だろう。
 昨日今日で祭りの食べ物は食い飽きているに違いない。
「じゃあ、やっぱりこれだよね!」
 懐から出したのは吉備団子一式セット。
 吉備もまた、桜花と一緒に微笑むのであった。

「おおジョウウン殿。あれはなんじゃ?」
「あれはくじ紐ですね。引っ張った先に景品があれば手に入れることができます」
「なんと? それは面白そうじゃな。ひとつ試してみるとするかのう」
 エウトティアと浄雲の二人は、一緒になって祭りの夜を歩いていた。
 依頼は終わったのだ。誰彼にも咎められるいわれはない。
 影朧という痼りが無くなった今、これが本番といって良いかもしれない。
 そんなこんなで、二人は再び祭りを楽しんでいたのであった。
「ふうむ、どれにしようかの? これにするか……いやそれともこっちか」
 どの紐を引くか悩むエウトティアの背を見ながら、浄雲の眼が細まる。
 独りで楽しんでいたが、やはり複数で楽しむも良いものだ。
 行き交う人々の笑顔。
 それが皆一様に明るいのは、浄雲と同じ心持ちであるからであろう。
 あの少年も、この祭りの中にいるはず。
 凜吾郎は楽しんでいるであろうか。
「むむむ残念であった。ハズレだったのじゃ」
 眉をへの字に曲げて、エウトティアが戻ってくる。
 やれやれといったような態度で、マニトゥが唸り声をあげた。
 何でも無い、どうといったことは無い仕草。
 その光景に、何故だか浄雲は愉快な気持ちになった。
 態度の変化を目ざとく見つけたエウトティアが声をかけてきた。
「おおジョウウン殿、楽しそうじゃのう。祭りを満喫しているようじゃな!」
 楽しそうな浄雲をみて、エウトティアも笑う。
「ええ、楽しんでいますよ」
 思えば悪鬼羅刹の如く生き急いで来た自分。
 そんな乾いた身体に、友の笑顔は暖かくしみ込む。
 その灯火は、浄雲の心を静かに奮い立たせる。
「なれば良し! それでは今度はむこうに行こうとするかのう!」
 先を急ごうとするエウトティアが浄雲の手を握った。
 その温かみ。
 かつて失い、手放したもの。
 一瞬、過去の出来事が走馬灯の様によぎった。
 二度とは失わない。
 猟兵という仲間を失ってなるものか。
「ええ、では参りましょうか」
 友に笑顔を返し、依頼を終えた猟兵は祭りの夜を楽しむのであった。

 いまだ冷めやらぬ祭りの熱気。
 そこから離れた場所にテイラーはいた。
 あまり騒ぐのは馴れてはいない。
 こうやって、戦のあとの火照りを鎮めている方が性にあう。
 それにしても、と彼は思う。
 今回は色々と考えさせることがありすぎた。
 あの影朧、たしか生剝三太といったか。
 退治するほかなかったが、あの者はあの者なりに少年を救おうとしていた。
 その心構えは見上げたものであるといえよう。
 いまだ志半ばの己に比べれば、少し羨ましいくらいだ。
「こんなことは、他の者の前では言えぬがな」
 『皆の願い』と皆の『願い』。
 仮に自分が王となったとして、はたして民草の望みを全て叶えることが出来るのであろうか。
 それを頭に浮かべると、一瞬邪な気持ちが横切った。
 が、それはすぐに振り払われ、自嘲を生み出した。
「馬鹿なことを。悪魔はもう十分よ」
 真に幸福に至らんとするならば、理解し共感し思索していきたまえ。
 少年に対して、己が吐いた言葉。
「それを破っては、示しがつかんな」
 祭り囃子を背にしながら、独りテイラーは去っていくのであった。

「おーい、待てよ!」
「ははは、こっちこっち」
 子供たちの囃し声。
 それらを注意する大人の声。
 それらを聞きながら、御形は祭りの夜を歩いていた。
 孤児院のひとたちと一緒に、彼女は行動をしていたのだった。
 あれだけのことがあったというのに、凜吾郎の顔は明るい。
 仲間たちと一緒に、楽しんでいるように見えた。
「見つけてくれて、ありがとうございます」
「いえいえ、見つかって良かったですね」
 関係者に『余所行き』の貌で対応しながら、様子を伺う。
 一見、彼が後を引いているようには感じられない。
 このまま帰ってもよいのだが、幻朧戦線の影響も気になり、しばし一緒にいることにした御形。
 彼女の顔は明るい。
 作り笑顔ではない、本物の笑顔であった。
 それは凜吾郎の周囲の空気を感じとっていたから。
 祭りの熱気とは違う人の温かさが、伝わってきているからであった。
 凜吾郎を連れて行った時、孤児院の皆が見せた反応は心配と安堵であった。
 抱きしめられた彼は、その皆に対し言った。
 ごめんなさい、と。
 独り祭りを歩き、下を見ていた少年の姿は此処には無い。
 友と仲間と祭りを楽しむ、年相応の少年の姿があった。
 それをみて、御形は確信する。
 彼の居場所はここなのだということを。
 弱さを見せてもいい。見せかけの強さなど、少年には似合わないのだ。
「凜吾郎さん、あなたの幸せはちゃんとここにあったのですよ」
 ふと、影朧との動画を撮っていたことを思い出した。
 だがそれは今、どうでも良いことに感じた。
 少年が純粋に祭りを楽しんでいる。
 その事実に、誇張や付け加えることなど何も無いのだから。
 誰かに声をかけられて、御形は我を取り戻した。
 差し出されたのは、一枚の短冊。
「願いごと、書かれてないのならどうぞ」
 そう言って渡されたのを受け取って、御形は頭上を見上げた。
 空に浮かぶは天の川。地に泳ぐは人の波。
 凜吾郎少年が歩くは共に生きてきた仲間たち。
 では自分は。
 さてはて困った、願いごとはどうするべきか。
 長い長い祭りの夜。
 居場所はそこだと言うように、御形は暫し祭り囃子に耳を傾けるのであった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年08月02日
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