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HEAVEN'S PRISON 黒翼のシ者

#ダークセイヴァー #同族殺し #挿絵 #宿敵撃破 #黒翼砦

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●黒翼のシ者
 ダークセイヴァーにて。
 夜の荒野に、まだおさない少女が倒れていた。
 見るからに痩せ細った手足に、ぼろぼろの衣服。
 ずっと歩いてきたらしい。
 裸足の足裏は血と砂にまみれ、赤黒く染まっている。
 立ちあがろうともがいた爪跡が地を抉ったが、ふたたび立ちあがるだけの気力は、もはや少女には残っていなかった。
 枯れ果てた世界に、ヒトの血の匂いはより鮮明に漂うのだろう。
 さえぎるもののない荒野の地平に、『飢えた狼』の群れが見える。
「……やっと、ここまで……、これたの、に……」
 命からがら、オブリビオンの支配から逃れてきた。
 領地の外へ行けば、生きながらえることができるのだと、信じていた。
 それなのに。
 現実は残酷で、どこまでいっても絶望しかなくて。
 ――死が近づいてくる。
 視界の端で、一斉に『飢えた狼』たちが駆けだした。
 終わりだ。
 そう思った瞬間、少女の胸の内に激しい怒りがわきあがった。
 だれにも届かないかもしれないけれど。
 それでも最期まであがくのだと、叫ぶ。
「いやだ! しにたくない! あたしはまだ、しにたくない……!」
 獣のあぎとが、少女に迫ろうとした、その時だった。
 銀の光が弧を描いたかと思うと、獣の首がごろんと転がる。
「ひっ……!」
 息をのんだ少女の前に、剣持つひとが舞い降りた。
 黒翼の、青年の姿をしたオラトリオ。
 広げた両翼は、身長をも超えるほどに大きくて。
 白と金を基調とした制帽と制服に身を包み、真紅の瞳を獣たちに向けている。
『――民を傷つけたが最後。お前たちの「終焉」は決まっている』
 宣言するなり、黒い翼をはためかせ舞いあがると、一瞬にして、獣たちの群れを蹂躙し尽くした。
 獣たちのすべてが息絶えた後。
 黒翼のオラトリオは返り血を浴びた姿のまま、少女に迫った。
『お前を虐げた者は、どこだ』
 その瞳に狂気を感じ、少女は震えながら、空の果てを指さした。
「あたしがいた領地は、この先よ……! そこに『呪詛天使』がいるわ……!」
『民を虐げし者。滅ぼさなければ――』
 うわごとのように、繰りかえして。
 白金の制服に身を包んだ青年は、一目散に飛び去っていった。

●『天獄』へ
 ――ダークセイヴァーのオブリビオンが最も忌み嫌うのは、猟兵でもなければ、人間でもない。
 なんらかの理由で発狂し、他のオブリビオンを殺しはじめる『同族殺し』。
「娘の遭遇した『同族殺し』を利用し、強大な『オブリビオン領主』を討つ。それが、今回の任務目標の1つとなる」
 グリモア猟兵のヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)が、集まった猟兵たちの顔を見やり、厳かに告げる。
 なお、かの少女は一命をとりとめ、今は『人類砦』の保護下にあると伝えれば、猟兵たちから安堵の息が漏れた。

「『同族殺し』は、娘が元々暮らしていた領地へ向かった。かの地には、『呪詛天使』と呼ばれるオラトリオのオブリビオンが君臨し、恐怖によって領地を支配している」
 そこでは、「死こそが真の救済である」と掲げ、人々の命を理不尽に奪うことが毎日のように行われているという。
「『同族殺し』は、オブリビオンの領主館を強襲する。お前たちは館に押し入る『同族殺し』の動きを利用し、『呪詛天使』を撃破してくれ」
 そして。
 この任務には、続きがある。
「『同族殺し』もオブリビオンだ。過去の残滓であるオブリビオンは、いかなる場合であっても骸の海へ還さねばならない」
 ――たとえ、同情の念を抱こうとも。
 2体のオブリビオンを骸の海に還すことが最終目標であると繰りかえし、ヴォルフラムは言った。
「……娘の話では、『同族殺し』の言葉は一方的に投げかけられていた。そも、『発狂している』のだ。まともな会話は期待できないが……。『声は届く』かもしれん」
 必要であれば試してみるがいいと、静かに告げて。
「武運を祈る」
 ヴォルフラムは手のひらにグリモアを掲げ、転送ゲートを開いた。

●破滅のシ徒
 黒い、大きな翼をもつ青年が、オブリビオンの領主館前へと舞い降りた。
 扉から窓枠、柱に至るまで精緻な彫刻を施した館の前には、翼もつ者の像がいくつも並んでいる。
 門前には、黒衣に身を包んだ殉教者の女たち――『破滅の使徒』が、それぞれ大鎌を手に待ち構えていた。
『狂気に堕ちた憐れな同胞――「同族殺し」よ』
『わたくしたちの愛する「狼」を殺したのは、貴方ですね』
 荒野で倒れた少女を襲った獣は、この女たちの差し金だったらしい。
 青年は女たちに応えるでなく、憎悪に燃える真紅の瞳を向けたまま、言った。
『民を虐げた者は、どこだ。民を虐げし者は、滅ぼさねばならない』
 銀の剣を突きつければ、女たちは艶然と嗤った。
『憐れなる「同族殺し」よ』
『ヒトであれ同胞であれ、「絶望」から救済するすべは、ただひとつ』
『我ら「天使」の愛をもって、貴方に死をもたらしましょう』
『死を讃えましょう』
『死こそが、至上の「救済」なのです』
『死を』
『死を』
『死を』

 ――同族殺しに、『救済(死)』を。


西東西
 ※ゆっくり執筆予定です。【再送】が発生する可能性があります。
 ※プレイングの締切や執筆状況は、マスターページ冒頭をご確認ください。

 こんにちは、西東西です。
 『ダークセイヴァー』にて。
 「呪詛天使」と「同族殺し」、2体のオブリビオンを骸の海へ還してください。
 「同族殺し」との会話は難しいですが、うまくすれば共闘できる……、かもしれません。

 ●第1章:集団戦『破滅の使徒』
 厳重に警備された領主館を「同族殺し」が強襲します。
 混乱に乗じて、警備のオブリビオン達を蹴散らしてください。

 ●第2章:ボス戦『呪詛天使の残滓』
 猟兵、「同族殺し」、「オブリビオン領主」の三つ巴の戦いです。
 ここでは、「オブリビオン領主『呪詛天使』を撃破」してください。

 ●第3章:ボス戦『???』
 敵は「同族殺し」となります。
 狂気をまとった極めて強大なオブリビオンですが、ここまでの戦いで消耗しています。
 戦闘、または説得など、何らかの方法で「同族殺し」を骸の海へ還してください。

 提示されている行動は一例です。
 どうぞ思うまま、自由な発想でプレイングください。

 それでは、まいりましょう。
 終わることのない、常闇の世界へ――。
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第1章 集団戦 『破滅の使徒』

POW   :    死の抱擁
【魂狩の鎌】が命中した対象を切断する。
SPD   :    滅の壊刃
【魂狩の鎌】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    獣の行進
召喚したレベル×1体の【飢えた狼】に【鬼火】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

貴様らにとって、死は至上の救済か
だが、俺ら人間にとって、死は終焉だ

絶望に足を浸したからこそ、見出せるものもある
少女が絶望から芽吹かせた意志を、勝手な理屈で摘み取るな!

死をもって救済するなら、貴様らも死を持って否定される覚悟はあるということだな?
ならば今、貴様らに死という名の滅びを与えてやる!

【魂魄解放】発動
同族殺しの影に「闇に紛れる」ように隠れながら「ダッシュ」で突撃
接近したら影から飛び出し「範囲攻撃、衝撃波」で一気に「なぎ払い」
滅の壊刃は確りと挙動を観察し「怪力、武器受け」で鎌を受け流す

同族殺しは共闘より利用
奴は民を守ってもオブリビオン
利用しても心は痛まない


ハロ・シエラ
この手の戦いは難しいですね。
ただただ倒せば良い訳ではありません、同族殺しとその敵の被害をコントロールしなければなりません。

とにかく今回は、敵集団も同族殺しに気を取られているでしょう。
私はこの世界の【闇に紛れる】事で敵に不意討ちをかけて行きます。
【敵を盾にする】様に相手取れば、数の差も何とか出来るでしょう。
攻撃される際には敵のユーベルコードは厄介ですが、動きを【見切り】、【カウンター】で対処します。
私のレイピアは鎌にリーチで負けますが【ダッシュ】や【ジャンプ】で鎌の刃がカバーする範囲の内側に飛び込む事は出来ます。
接近し過ぎても、こちらにはダガーがあります。
ユーベルコードで一体ずつ仕留めましょう。


ニール・ブランシャード
死こそ救済、かぁ。
…きっと、お前たちの頭の中は愛情でいっぱいなんだろうね。
怖くて辛くても、それでも生きることを選んだのに
あなたのためだからって欲しがってもいない「救済」を勝手に押しつけてくる。
…お前達みたいなやつらが、
一番嫌いだ。
ぼく、ちょっと怒ってるから、苦しまないようにはしてあげられないかもよ。

…いけない。暴れすぎて「同族殺し」の気を引かないようにしないと。
彼の位置を確認しながら、ある程度距離を取って、間合いに入らないように注意するよ。

でも、彼はどうしてこの館に来たんだろう。
生前に何か因縁があったのかな。
彼の言動から何か分からないかな?

※鎧の中身はタール状の液体
武器は戦斧
連携アドリブ歓迎




『死を讃えましょう』
『死こそが、至上の「救済」なのです』
『死を』
『死を』
『死を』
『――同族殺しに、「救済」を!』
 高らかに声をあげ、殉教者の女たちが手にした【魂狩の鎌】を次々と巨大化させる。
 仲間を巻きこむことさえ厭わぬ刃は怒涛の連撃となり、黒翼の青年に襲い掛かった。
 青年は、迫る巨大刃を一瞥。
 大きく黒翼を広げるやいなや、振りおろされた【魂狩の鎌】のすべてが、青年の眼前で一斉に弾かれた。
『これは……!?』
 まるで、目に見えぬ壁に阻まれたかのごとき手応えに、女たちがうろたえた。
 青年の赤眼が、『破滅の使徒』たちを射抜く。
『「救済」など無い』
 両翼で力強く空を打つと、一瞬にして女たちのはるか頭上へと飛翔している。
 剣持つ手を掲げれば、周囲に無数の羽根が浮かびあがって。
『あるのは、「報い」だ』
 言葉と同時に、敵を自動追尾する鋭利な羽根が雨のごとく降りそそぎ、女たちを斬り裂いた。

 オブリビオン対オブリビオンの攻防が始まるや否や、
(「敵が『同族殺し』に気を取られている、この隙に!」)
 黒い軍服に身を包み、この世界の『闇』に身をひそめていた少年兵ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は、しかと地を蹴り、駆けだしていた。
 視界に捕らえていたのは、黒翼青年の追尾羽根に斬り裂かれ、体勢を崩した女たち。
 ――今なら、気取られていない。
 長い黒髪をなびかせ、『リトルフォックス』と名付けた鋭いレイピアを繰りだしながら、間合いに飛びこむ。
『!』
 背後から胸をひと突きにされた女は、己の胸に生えた血濡れの切っ先を、うっとりと見やって。
 首を巡らせレイピアの主を見やるその顔は、狂喜に満ちていた。
『あああははあ、死よ! 至高なる死よ! 我が身に「救済」あれ!』
 天獄への道連れとばかりに【魂狩の鎌】を振りおろしたが、
「先に謝罪いたします。――ご無礼を」
 ハロはそう告げるなり、半死の女の襟首をぐいと引き寄せ、すばやく反転。
 背後から迫っていた攻撃の『盾』とした。
『ぎゃあああああ!』
 身代わりにされた女は絶叫をあげ、今度こそ絶命。
 上半身のみと化した身体を投げ捨て、紅玉のごとき瞳で次なる標的――奇襲を仕掛けてきた女を見やった。
 長柄の鎌は、ハロの得物よりもはるかに攻撃範囲が広い。
 しかし。
『猟兵が、なぜこの館に……!』
 追撃を狙った女が鎌を振りかぶった、その隙に。
(「この手の戦いは、難しいですね」)
 ハロは蛇の血と毒で鍛えられたダガー『サーペントベイン』を抜き、逆手に構えた。
 ユーベルコード『剣刃一閃』をのせ、女の首筋を、一閃!
 返り血を避けるように後方へと跳躍すれば、ふたたび、その身を闇へと紛れこませる。
 ――どうやら、黒翼の青年には気づかれずに済んでいるらしい。
 先ほどから引き続き、女たちとの戦闘を続けている。
(「ここでは、ただただダークネスを倒すだけでなく。『同族殺し』とその敵の被害を、うまくコントロールするのが得策といえましょう」)
 そうしてハロが、次の得物を見定めようとした時だ。
「貴様らにとって、死は至上の『救済』か。……だが、俺ら人間にとって、死は『終焉』だ」
 声がするなり、一陣の風が吹き過ぎた。
 瞬間、群れをなし黒翼へ斬りかかろうとしていた女たちが、一斉に四方位へと吹き飛ばされた。
 衝撃波の中心に立っていたのは、その眼に抑えきれぬ怒りをたたえた館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)だった。
 手にする黒剣がかつて喰らった魂をその身にまといながら、折り重なるように倒れた女たちの耳にも届くよう、声を張りあげる。
「絶望に足を浸したからこそ、見出せるものもある。少女が絶望から芽吹かせた意志を、貴様らの掲げた勝手な理屈で、摘み取るな!」
『「同族殺し」に続いて、猟兵まで……!』
『何者が現れようと、我ら「天使」の成すべきことは変わりません』
 仲間たちの屍を踏み越えて、敬輔を視認した女たちが、巨大化させた鎌を手に迫る。
『さあ、何度でも繰りかえしましょう』
『死こそが、この世の至上たる「救済」です』
『至福なる、死を!』
『最上なる、死を!』
『崇高なる、死を!』
『絶望の世に「救済」を!!』
 次々と繰りだされる巨大鎌による連撃は、圧倒的な力で敬輔に襲い掛かった。
 しかし、
「これでもなお、死をもって『救済』するというのなら。貴様らも、死をもって否定される覚悟があるということだな? ――ならば今ここで。死という名の『滅び』を与えてやる!!」
 繰りだされた攻撃を、横に構えた黒剣で受けとめると、一気に振りはらう。
 体勢を崩した女たちへ、ふたたびユーベルコード『魂魄解放(コンパクカイホウ)』を展開。
 高速移動から、斬撃による衝撃波を撃ちはなつ。
 見上げれば、視線の先には飛翔する黒翼の青年の姿が見える。
(「『同族殺し』は、共闘よりも利用したいところだ。民を守ったとしても、奴はオブリビオン。利用しても、心は痛みはしない――」)


 同時刻。
 戦場の別の場所では、
「動かないでね。痛くないように、終わらせてあげたいから」
 体勢を崩していた女めがけ、甲冑に棲み着いた年若い液状生命体――ニール・ブランシャード(うごくよろい・f27668)が、長柄の戦斧をまっすぐに振りおろしていた。
 ――ユーベルコード『断罪(エクスキューション)』。
 体勢を崩していた女に命中した無銘の斧は、頭の先からつま先までを真っ二つに斬り裂いた。
 それは、あまりに一瞬のできごとで。
 斬られた女がこと切れるまでに、己の身に起こったことを察しきれたかどうか。
「死こそ『救済』、かぁ。……きっと、お前たちの頭のなかは、愛情でいっぱいなんだろうね」
 血を流し倒れ伏した女の遺体を見おろしながら、ニールは赤黒く染まった斧に視線を落とした。
 グリモア猟兵が話を聞いたという少女の顛末を思いかえし、鎧の内で、怒りにその身を震わせる。
「……彼らは、怖くても、辛くても。それでも生きることを選んだのに。それなのに、『あなたのためだから』って。お前たちは、欲しがってもいない『救済』を、勝手に押しつけてるんだ」
 勇ましい黒い鎧の内。
 どこか幼さの残るニールの言葉に、黒衣に身を包んだ殉教者の女たち――『破滅の使徒』たちは嗤った。
『憐れなる「猟兵」よ』
『貴方も、絶望の淵で落命した暁には、いずれ知ることになるでしょう』
『あの時の死こそが、真の「救済」であったと』
『これこそが、絶望の世界を救う、唯一の手立てであるのだと』
 言葉にしたところで。
 彼ら――オブリビオンたちには、なにひとつ伝わらぬのだと気づいた時。
 ニールはふたたび、斧の長柄を両の手で握り締めた。
「ぼく、ちょっと怒ってるから。ここからは、苦しまないようにしてあげられない、……かもよ」
 対する女たちは、お構いなしで。
 【魂狩の鎌】を振りあげ、次から次へとニールめがけ襲い掛かった。
 振りおろされる刃を、血濡れの刃で受けとめて。
 ニールは言った。
「お前たちみたいなやつらが。――一番嫌いだ」
 怪力を発揮して鎌を押し返せば、体勢を崩した女たちへ、ふたたび『断罪』を見舞う。
 そうして、女たちの屍があたりに満ちた頃。
 ふいに、ニールの足元に影が落ちた。
 なにごとかと顔をあげれば、黒翼の『咎人殺し』が頭上で羽ばたいている。
『民を虐げた者は、どこだ。民を虐げし者は、滅ぼさねばならない』
 見おろす赤の瞳は、女たちに向けるのと同じくらい、冷ややかだった。
(「――いけない!」)
 派手に暴れたことで、『同族殺し』の気を引いてしまったらしい。
 ニールはとっさに駆けだし、一旦、『同族殺し』の間合いから離れることにする。
 枯れた大地を踏みしめながら、ニールは思った。
(「それにしても……。彼は、どうしてこの館に来たんだろう。生前になにか因縁があったのかな? 彼の言動から、なにか分からないかな?」)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ハルア・ガーラント
分かってる、深入りしちゃだめだ。利用するだけ。

【WIZ】
自分は敵ではないと伝える意味でも、離れた後方から支援。
援護します、と大声で彼に伝えた後は敵に集中します。近寄りすぎないよう注意。

[銀曜銃に魔力を溜めマヒ攻撃を込めた誘導弾]を射出し攻撃。
[第六感]で敵の攻撃を感知したら[咎人の鎖を念動力]で操作、鎖に行き渡らせた[オーラで防御]。
狼の召喚に合わせUC発動、動きを鈍らせたところを他の猟兵さんと協力して殲滅。

彼の迷いなく空を駆り剣を振るう姿に、胸に湧く憧れに似た想いとざわつき。
狂っていても、彼の言葉はこの世界で救いとなる筈のもの。
何故オブリビオンに?

――何故、その姿を見ると悲しくなるんだろう。




 館の門前は、絶命した女たちの血によって赤く染まっていた。
 門番が消えたのを確認し、青年は翼を広げ、門を超えて悠然と中庭へ侵入していく。
 同じく背に翼もつオラトリオの娘――ハルア・ガーラント(歌う宵啼鳥・f23517)は、むせかえる血の臭いから逃れるように上空へと退避していた。
 ――黒と白。
 同じ翼であっても、羽ばたきひとつで進む距離には大きな差がある。
 遠ざかる背中を追いかけようとして。
 迷いなく空を駆り、剣を振るう姿に、憧れのような想いとざわつきがよぎるのをハルアは感じていた。

『民を虐げた者は、どこだ。民を虐げし者は、滅ぼさねばならない』

 ――たとえ狂い、正気を失っていようとも。
 青年の言葉は、この世界にとって『救い』となるはずのものだ。
(「一体、何故オブリビオンに? そして、何故。わたしは、その姿を見ると悲しくなるんだろう――」)
 ふいによぎった寂寞(せきばく)を振りはらうように、頭を振り。
 ハルアは胸に手を置き、己に言い聞かせるよう、胸中で唱えた。
(「彼は、オブリビオン。……わかってる。だから、深入りしちゃだめだ。ただ、利用するだけ」)
 高所から眼下を見やる。
 門を抜けた先には、広大な中庭が広がっている。
 黒翼のオブリビオンの進撃に続き、猟兵たちも庭へなだれ込み始めており、館の中から次々と新たな『破滅の使徒』の増援が現れていた。
『同族殺しに、「救済」を!』
『猟兵たちに、「死」を!』
 『破滅の使徒』たちが声を重ねると、召喚した狼たちの四肢に、次々と鬼火が生じて。
 飛翔能力を得た狼たちが、黒翼の青年めがけ群れを成し、空を駆けあがってくる。
 翼を持たぬ猟兵たちは、地上に残された鎌持つ女たちへ集中攻撃を仕掛けているが、空駆ける狼までは手が回らない。
 ハルアの手のひらに、汗がにじむ。
(「――わたしがやらなきゃ……!」)
 すうと息を吸い、意を決して声を張りあげる。
「あ、あの……! 援護します!」
 大声で伝えた後は、力強く翼を打ち、敵の行軍する方へ飛翔する。
 先ほど彼に声をかけられていた甲冑姿の猟兵(f27668)は、黒翼の近くで動きすぎたのだろう。
 近寄り過ぎぬよう。
 そして、空駆ける狼の群れを臨む空域に滞空すると、ハルアは天使言語による粛静歌を歌いはじめた。
 狼の群れが気づいた時には、空には数多の白梟が飛んでいて。
 円を描くように展開した魔法陣が効果を発揮し、狼たちの動きを鈍らせる。
 異変を察知し、多勢に無勢の襲撃を受けていた黒翼の青年が、動いた。
 防御姿勢を取れぬまま背の翼を広げれば、仄昏く光る黒鷲が、主を護るように群れ成して顕現して。
 まるで泥の中にいるかのように緩慢とした動きをする狼たちは、猛禽の翼にかかれば絶好の得物に過ぎなかった。
 怒涛の滑空で追いすがると、鋭い鍵爪とくちばしで肉を裂き、狼たちを地上へと撃墜していく。
 数匹の狼がハルアの元へも駆け迫ったが、
「……そうは、させない!」
 純白の翼に絡まった咎人の鎖を操り、オーラ防御で飢えた牙を押しとどめる。
 追撃とばかりに銀曜銃の弾丸を撃ちはなてば、マヒを受けたために飛行能力を維持できなくなった狼が、足掻きながら地上へと落ちていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…民を虐げる者を襲う同族殺し…ね
まるでオブリビオンらしからぬ存在だけど…

自らが慈しむ民を虐げられたから狂ったのか、
狂ったからこそ、圧政者を襲うようになったのか…

…私の為すべき事に変わりはないけど、確かめないといけない
あの同族殺しが、ただ狩るべき邪悪なのか、
それとも尊厳を以て相対すべき敵なのかを…

第六感が殺気や危険を感じるまで同族殺しは警戒するに留め、
左眼の聖痕に自身の生命力を吸収させてUCを発動

今までの戦闘知識から敵の乱れ撃ちの軌道を見切り、
残像が生じる早業で懐に切り込み、
黒炎の魔力を溜めた大鎌のカウンターで仕留める

…貴方は何故、民を虐げた者を襲うの?
貴方はかつて、民を護ろうとしていたの?




 上空を駆けあがっていった狼たちが、傷を負い、次々と地上へ落下してくる。
 先ほど、黒翼の青年を追って飛んだオラトリオの娘(f23517)が手を下したのだろうか。
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、墜落する狼を『第六感』で避けながら、上空を舞う黒翼のオブリビオンを視界の端に捕らえていた。
(「……『民を虐げる者』を襲う同族殺し……ね。まるで、オブリビオンらしからぬ存在だけど……」)
 ――自らが慈しむ民を虐げられたから、狂ったのか。
 ――それとも。狂ったからこそ、圧政者を襲うようになったのか。
 己の為すべきことに、変わりはない。
 しかし、いずれにせよ、確かめねばならない。
(「あの同族殺しが、ただ狩るべき邪悪なのか。それとも、尊厳をもって相対すべき敵なのかを……」)
 今のところ、かのオブリビオンからは、殺気や危険は感じられない。
 目下、そういった気配を隠すことなく迫るのは、『破滅の使徒』たちの方だ。
 左眼の聖痕に生命力を吸収させ、唱える。
「……今こそ、我が身を喰らい顕現せよ。黒炎覚醒……!」
 ――ユーベルコード『代行者の羈束・黒炎覚醒(レムナント・ウロボロス)』。
 聖痕の封印を解放し、『時間』を焼却し、停滞させる黒炎――『名も無き神の力』を引き出すことで、スピードと反応速度をも増大させる技だ。
 ――力を使うたびに己の精神が削られ、邪神に染められていく、諸刃の剣。
 しかし、夜と闇を終わらせる誓いを身に刻んだリーヴァルディは、寿命を削りながらも、その身のこなしを鈍らせることはなかった。
 銀の髪をなびかせ、魂狩の鎌を巨大化させた女たちの乱れ撃ちの軌道を、かいくぐるように足場を移して。
 残像が生じるほどの早業で、敵の懐に飛びこみ、黒炎の魔力を溜めた黒の大鎌――『過去を刻むもの』と呼ぶそれを振るう。
 ――死者の想念を吸収し。過去を刻み、未来を閉ざしていく。
 それは、まさしく『死神』にも似て。
 次々と女たちを駆逐していくリーヴァルディに、気づいたのだろう。
『民を虐げた者は、どこだ。民を虐げし者は、滅ぼさねばならない』
 ひとつ覚えのように繰り返す言葉を告げ、黒翼の青年が眼前に舞い降りてきた。
 仕掛けてこないところをみると、まだこちらを、『敵』とは認識していない。
 リーヴァルディは敵意がないことを示すよう、ただし、大鎌を手に携えたまま、問うた。
「……貴方は何故、民を虐げた者を襲うの? 貴方はかつて、民を護ろうとしていたの?」
 黒翼の青年が反応する前に、邪魔が入った。
 横合いから斬りかかってきた『破滅の使徒』の攻撃を黒翼の守りで防御すると、青年は追尾羽根をはなち、牽制。
 手にしていた剣で、素早く斬り捨てた。
 同胞を手に掛ける動きには、微塵のためらいもなく。
『領主は私を、そして何よりも、民を裏切った。護るべき民の、多くが死んだ――』
 語る言葉の内容が、あまりにも『まとも』だったので。
 リーヴァルディは、青年が『発狂』していることを確信した。
 ――この青年は、『駆るべき邪悪』ではない。
 そう判断はついても。
 『尊厳をもって相対すべき敵』と言えるかは、はなはだ疑問だった。
 同じ言葉を、何度も繰り返す。
 それはまるで、壊れた音声再生機器のようでもあったからだ。

 世界を滅ぼすべくうまれ出でた存在が『過去の残滓』――オブリビオンであるならば。
 同位存在を駆るべく立ちまわる、この青年の存在は。
 いったい、なんだと言うのだろう――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヒルデガルト・アオスライセン
生者を穢さず、前に立ち塞がらなければどうでもいいわ。私はね
…でも理性無しを告げられた、彼の方はどうかしら?

私は私の身勝手で弱者を犠牲にした事があります
黒い翼に極力近付かず、手出しもしません

戦士の仕事には敵視の管理も含まれます
同族殺しが猟兵に迫るなら閃光瓶か煙幕瓶で煙に巻き
こちらへの接触難易度を引き上げて優先度を下げ
破滅の使徒側へ誘導

瓶以外にも
身を覆う砂の外套を霧状に拡散
UCで館の骨組みに向けてハイジャンプ、トンネル掘りで突進
破損地形をバラ撒いて都合の良い戦場を作りましょう

滅の壊刃は視界を塞ぎ、館を崩し、巨大鎌を振り回せる範囲を制限
大振りの動作をダンス+カウンターで躱して格闘戦
同士討ちを狙います




 館の門はすでに陥落。
 広大な中庭に展開していた数多の『破滅の使徒』も、すでに猟兵たちが圧倒しつつある。
 じきに、『オブリビオン領主』の居る館への突入が叶うだろう。

 黒翼の青年と対峙する黒騎士の娘(f01841)を横目に、ヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)は、銀髪をなびかせながら戦場を駆けまわっていた。
 可憐な銀靴で地を蹴れば、『跳躍の加護(サドン・リープ)』を受けたしなやかで健やかな肉体は、ぐんと空高く舞いあがる。
(「生者を穢さず、前に立ち塞がらなければどうでもいいわ。私はね。――でも。理性無しを告げられた、彼の方はどうかしら?」)
 ヒルデガルトは、己の『身勝手』によって、弱者を犠牲にした過去がある。
 ――同じ過ちを、繰りかえすわけにはいかない。
 ゆえに、黒い翼には極力近付かず、手出しもしないと決めている。
 もっとも。
 現状、猟兵に危害を加える動きがないとしても。
 万が一を考え、前もって『敵視の管理』を行っておくのが得策だろう。
 それを司るのも、神官戦士たる己の役目だ。
 純白のバトルドレスをひるがえし、ふたたび地を蹴って。
 いまだ黒騎士のそばで浮遊する黒翼の青年へ向け、仕込んだ『煙幕瓶』を投げはなつ。
 煙幕で視界を阻んだところへ。
 念押しで、『破滅の使徒』の群れの中心めがけ、手にしていた『閃光瓶』を投擲した。
 闇に包まれた世界に墜ちる、閃光。
 ――ドォン!
 轟く爆音が加われば、敵も味方も眼耳を奪われ、一斉につま先をこちらへ向けはじめた。
 黒翼の青年も翼を広げ、舞いあがる。
 敵の隙をみてギミックブレードを振るえば、魂狩の鎌を巨大化させた女たちが、戦場を駆けるヒルデガルトを捉えた。
『領主さまの庭を騒がせたのは、あの方のようです』
『「救済」を』
『「救済」を』
『あなたも、「死」に身を委ねましょう』
『死を讃えましょう』
『死こそが、あなたを「絶望」から救うのです』
 イエス、あるいはノーと応える代わりに、黄金を瞳に宿した娘は、まとっていた砂の外套を霧状に拡散させ、女たちをかく乱する。
 四方位から迫る大鎌の三連撃は、銀靴のスラスターで急旋転。
 テンポ早くステップを踏めば、ヒルデガルトに追いつける女はひとりも居なかった。
 足を絡ませ、振るう武器に振り回されて。
 極めつけに蹴りを叩きこめば、あっけないほど簡単に、「救済」しあってくれた。
(「地上は、頃合いかしら」)
 胸中で呟き、回避の果てに館へと迫ると、みたび地を蹴る。
 重力から解放される感覚。
 ぐんと、天上が近づいてくる。
(「闇に蝕まれ暗くとも、空は近い。……故国とは、大違いね」)
 身体が地面に引き戻されるタイミングを見計らい、『アームオブサンライト』の名を冠した天使外骨格を構えて。
 うつくしく整えられた屋根めがけ振りおろせば、衝撃時に強力な力場が展開される。
 ふたたびの閃光――しかも、先ほどよりも大きな、太陽が墜ちたかのような光に、戦場は騒然となった。
 精緻な彫刻を施していた飾りは屋根ごと吹き飛び、損壊。
 破損地形をバラ撒くべく武器を振るったヒルデガルトの目論見で、壁も大きく抉られ、館の中身が丸裸にされていく。
「こうしておけば。だれもかれも、礼儀正しく玄関口から突入する必要はないもの」
 翼もつかの青年も、空から領主オブリビオンの元へ行くことができるだろう。
 そうなれば。
 ――猟兵たちはただ、彼の後を追うだけで良い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルネスト・ポラリス
死は救済、ですか。
全てを否定はできませんね。
少なくとも、私は貴方達を……骸の海から迷い出た貴方達を救う手段を、死を与える以外に持ち合わせていませんから。
そうであるなら……ええ。
単純に行きましょう。どちらが相手を救うか、です。

多勢に無勢、打開するためにも『勇気』をもって敵陣に突っ込みます。
相手のUCは脅威ですが、全力を出すには敵味方の区別もつかないほど振り切る必要がある。
必然的に、速度か精度を妥協した攻撃になるでしょう。
その隙を『見切り』、『野生の勘』も交えながら剣で『武器受け』していきます。

敵陣の中央にたどり着けたなら、長引かせるつもりはありません。
人狼咆哮、一気に片を付けましょう。


ナギ・ヌドゥー
敵の敵は味方
すぐ後で殺し合う事になるが今は利用させてもらうぞ
同族殺しを援護して警備を突破する

同族殺しを攻撃しようとする敵を背後から斬る【暗殺】
生の苦しみから解放される事が死の救済
この世の苦しみの元凶であるオブリビオンが言っていい言葉ではない
愚かなる過去の廃棄物に死の祝福を与えよう

敵UCの鎌は巨大化する分、大振りにならざるを得ない。
そこを狙いこちらもUC発動
禍ツ肉蝕にて敵攻撃を封殺する
そしてそのままこの呪獣ソウルトーチャーの餌になるがいい【捕食】




 神官騎士(f15994)が館を破壊したことによって、戦場は騒然としていた。
 剥きだしとなった館の中から、『オブリビオン領主』の元まで辿りつかせまいと、次々と『破滅の使徒』の増援が現れる。
 仲間たちの屍を踏み越えて、猟兵を視認した女たちが、巨大化させた鎌を手に迫る。
『さあ、さあ! 何度でも繰りかえしましょう』
『何者が現れようと、我ら「天使」の成すべきことは変わりません』
『死こそが、この世の至上たる「救済」です』
『至福なる、死を!』
『最上なる、死を!』
『崇高なる、死を!』
『絶望の世に「救済」を!!』
『同族殺しと猟兵に、「死」を!』
「死は救済、ですか。全てを否定はできませんね」
 赤茶髪に眼鏡を掛けた人狼――エルネスト・ポラリス(たとえ月すら錆びはてるとも・f00066)は、抜き身の仕込み杖を手に、こびりついた血を振り払った。
「少なくとも、私は貴方たちを。――骸の海から迷い出た貴方たちを救う手段を、死を与える以外に持ちあわせていませんから」
 ここへ至るまでに、どれだけの女たちを斬り伏せただろう。
 『死』が救済であるのなら。
 エルネストたち猟兵は、今日だけでおびただしい数のオブリビオンを救ったことになる。
「そうであるなら……ええ。単純にいきましょう。どちらが相手を救うか、です」
 迫りくる女たちを前に、改めて覚悟を決める。
 ――己の胸には、あふれんばかりの『勇気』が在る。
 とはいえ、いかに猟兵仲間がいようとも、数の上ではオブリビオンが圧倒している。
 油断すれば、自分たちが狩られる側になりかねない。
(「相手の技は脅威です。しかし全力を出すには、敵味方の区別もつかないほど振りきる必要があるでしょう」)
 多少の傷は、母譲りの装束に任せる。
 ――攻撃は、速度か精度。どちらを妥協するか。
 思い巡らせる一瞬の間にも、野生の勘で女たちの鎌の軌跡を見切り、その一撃を剣で受けとめる。
 結果。
 エルネストは、速度をとった。
 戦闘が長引けば、増援は増える一方。
 また、猟兵たちの目的は、『オブリビオン領主』と『同族殺し』の殲滅だ。
 ここで、二の足を踏んでいる場合ではない。
 連撃を紙一重で回避し、剣を閃かせながら女たちの真中へ。
「長引かせるつもりはありません。一気に片を付けましょう――」
 世界の敵に『ならざるを得なかった』、過去の迷い子たちへ。
 エルネストは彼らを『救済』するべく、腹の底から声をあげた。

 崩壊した館の眼前。
 『激しい咆哮』が響いたかと思えば、群れ集まっていた『破滅の使徒』たちが円を描くように吹き飛ばされ、折り重なるように倒れた。
(「――人狼(f00066)の高威力攻撃を、間近で喰らったか」)
 『同族殺し』を援護するべく、館近くで交戦中だったナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)が、上空を舞う黒翼の青年をちらと見やる。
 無表情の内に、渦巻く憎悪を抱いたオブリビオンは、黒鷲の群れを召喚し戦っていた。
「すぐ後で殺しあう事になるが。今は、利用させてもらうぞ」
 『同族殺し』めがけ、鎌を投げ放とうとしていた女を見つけ、跳躍。
 おともなく背後に迫れば、鋸の様な刃を持った鉈――『歪な怨刃』と名付けた得物を手に、女の首を背後から斬り裂いて。
 ざりりと、人皮を裂く時の、引きつるような手応え。
 刃を振り抜けば、女は恍惚とした喜びの表情を浮かべ、糸の切れた人形のように地面に横たわり、動かなくなった。
 血の透けるほど白い肌に、返り血が飛んで。
 履き潰したブーツのつま先が、じわり、赤に染まっていく。
 破壊された館から、さらに新手の『破滅の使徒』たちが迫りくる。
 戦闘の様子を見ていたのだろう。
 手にした鎌を巨大化させ、白髪の強化人間を救済しようと、声をあげる。
『お聞きなさい、憐れなる猟兵よ』
『不平等なこの世にあって、「死」は、だれにでも等しく訪れます』
『「救済」の後は、もう二度と「絶望」に胸を痛める必要もないのです』
 思わず、ふ、と息が漏れて。
 ナギは、白髪の間からのぞく銀の瞳を女たちへ向けながら、言った。
「『生の苦しみから解放される事が、死の救済』か。……この世の苦しみの元凶であるオブリビオンが、言っていい言葉ではない」
 戦闘によって生じていた裂傷から、己の血を垂らして。
 咎人の肉と骨で錬成した呪獣へ、命じる。
「我が血を喰らい、禍つ力を示せ。――愚かなる『過去の廃棄物』に。死の祝福を与えよう」
 主の血を受けたそれは、自律駆動で戦う拷問兵器であり。
 命じられるままに、女たちへ向け屍肉の触手と骨針を撃ちはなった。
 巨大化した武器を振るう者は、どうあっても動きが大振りにならざるをえない。
 そこを狙い、地を這う呪獣たちは、次々と女たちを亡き者にしていく。
「そのまま。この呪獣、ソウルトーチャーの餌になるがいい」
 討ち漏らした敵は、ナギが鉈を振るい獣の餌とした。
 そうして、あたりが女たちの屍で満ちたころ。
 黒翼の青年が崩壊した館へと舞い降りるのを見やり、後を追った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルバ・アルフライラ
黙れ悪鬼共
その汚い口で愛を、救済を語るな
天使が聞いて呆れるわ

獣には獣を嗾ければ良い
放ったトランクより【刻薄たる獣】を召喚
泣き喚き、脇目も振らず逃げても構わんぞ?
たとえ何処へ行こうと、この獣は貴様等を喰い殺す
…とは云え、多勢に無勢は変わらぬであろうな
ならば――懐より宝石を取り出し
魔力を込めたそれを用いた属性魔法で敵を攻撃、攪乱を試みる
上手く場を搔き乱せたならば良し
これで私も敵を仕留め易くなる

決して同族殺しの援護をする心算はない
彼奴もオブリビオンならば私の敵だ
…だが、私が好きに暴れる事が
彼奴にとって「援護」になるならば
私に止める謂れはない
ふふん、安心せよ
同族殺しを誤って害する程
私は愚鈍ではないぞ?




 黒翼の青年を援護していた少年(f21507)が、崩壊した館へと駆けていく。
 仲間たちに続き、戦場を館内へと移したアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)の眼に飛びこんできたのは、
『天使の愛をもって、迷える者たちに「死」を!』
『あまねくものたちに、「救済」を!』
 なおも救済を叫ぶ『破滅の使徒』たちだった。
 ここは、『オブリビオン領主』の本拠地。
 その中心部とあり、護りはどこよりも強固だ。
 召喚した狼たちに鬼火を宿し飛翔能力を与えると、ひとり残らず侵入者たちを襲うよう命じる。
 杖に擬した剣を閃かせ獣の胴を薙いだアルバは、穢れた血を拭うように武器を振り払い、言った。
「黙れ悪鬼共。その汚い口で愛を、『救済』を語るな。天使が聞いて呆れるわ」
 燃える星を秘めた眼で獣たちを牽制し、手にしていたトランクを、無造作に床へと放り投げる。
 「獣には獣をけしかけるまで」と、魔術師は笑んで。
「泣き喚き、脇目も振らず逃げても構わんぞ?」
 しかし、得体のしれぬ鞄を前にしても、女と獣たちの勢いは止まらなかった。
『そんなものが、いったい何の脅しになりましょう』
『わたくしたちは、「死」の恐怖を克服したのです』
『わたくしたちにとっても、「死」は「救済」に他ならないのです』
 アルバは青の眼を細め、「なるほど」と零した。
「ならば、望み通り終わりをくれてやる。たとえ何処へ行こうと、この獣の眼に留まったが最期、貴様等を喰い殺し『救済』するだろう」
 ふいに、パチンとトランクの鍵が音をたて、外れた。
 キィと金具をきしませながら、自動的にその上蓋がひらいて。
「喰ろうて良いぞ、私が許す」
 アルバがそう命じると、カラッポに見えたトランクから、一気に闇色のもやがあふれ、こぼれた。
 女と狼が近づこうとした、瞬間。
 ――グルルルルルル!
 『憎悪』に反応した獣が続々とトランクから飛びだし、オブリビオンたちに喰らいつく。
 底なし沼のごとく『匣の中に封ずる災厄』を吐きだし続けるトランクは、それなりに役立った。
「とは云え。多勢に無勢は、変わらぬであろうな」
 眼前の敵を倒したとて、尽きることなく後方から増援がやってくる。
「ならば――」
 懐より宝石を取りだし、手のひらに乗せて。
 魔力を込めたそれを用いて、念押しとして、追撃の属性魔法を撃ちはなつ。
 アルバの攻撃を受けた狼や女が翻弄されたところで、横合いから『刻薄たる獣(ヴェスティア)』が喰らいつけば、大方の敵は蹴散らすことができた。
 優勢とみて『同族殺し』へと眼を向ければ、館内へ侵入したことで飛翔を諦めたらしい。
 今は地に足をつけ、猟兵たちと同じように、地上で戦っている。
 いくらか傷を負いつつも、強大な力をもつオブリビオンには違いない。
 領主配下の女たちをものともせず、剣を振るい続けていた。
(「決して、『同族殺し』の援護をする心算はない。彼奴もオブリビオンならば、私の敵だ」)
 ――いかな事情があろうとも。オブリビオンであるならば、その者は『双星の魔術師』の敵となる。
(「……だが、私が好きに暴れる事が、彼奴にとって『援護』になるならば。私に、止める謂れはない」)
 黒い翼を見据え続けていたところ、傍近くを駆けた人狼の青年(f27826)が、不安げな目線を向けたのに気付いた。
 よほど険しい目つきで見ていたのだろうか。
 アルバは青の眼を細め、口の端に笑みを浮かべながら、言った。
「ふふん、安心せよ。『同族殺し』を誤って害する程、私は愚鈍ではないぞ?」
 『オブリビオン領主』を撃破するためにも。
 ここは『同族殺し』とともに、突破しなければならないのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

パラス・アテナ
死こそ救済ね
その理屈は分からなくはない

この世はとかく生きにくい
「苦しみも悲しみもいつかは終わる」
そんな綺麗事
渦中の人間には何にも響きやしないよ
そして生まれたら必ず死ぬ
遅いか早いかの差しかない
この理は犯しちゃいけない

だがね
だからこそ大事なのさ
「死に方」って奴がね
苦しみと絶望の渦中で死ぬか
乗り越えて幸せの中で死ぬか
少なくともアンタ達の一方的な理屈で齎される死は
救済でも何でも無い
アンタ達の自己満足さ
骸の海へお還り

向かってくる敵に対して弾幕を張るよ
2回攻撃、一斉発射、鎧無視攻撃、マヒ攻撃で絶え間なく攻撃
敵からの攻撃は第六感で回避
できなきゃ武器受けと激痛耐性で堪え継戦能力で戦闘続行
一体残らず倒し尽くすよ


アリステル・ブルー
(アドリブ連携◎)

協力の同意があれば積極的に他の猟兵さんと協力/サポートするね!

●行動WIZ
「女の子が無事なのは良かったけれど」
それだけは本当に良かった。
『同族殺し』一体どうして発狂したんだろうか。
しかし吸血鬼側も勝手な言い分だよね、死が救済…そんなわけないのに。死は終わりなんだから。

気に食わないけど『同族殺し』は絶対攻撃せず『同族殺し』に気を取られてるのだけを闇に紛れて【ジャッジメント・クルセイド】で狙い打ちにしていくね。
位置がバレたら黒の細剣を抜いて応戦するよ、生命力吸収でなんとかしのぎたい。バレないのが1番だけどね。
やれる事をやっていこう!




 館に飛びこんだ、黒翼の青年を追い駆ければ。
 アリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)は、オブリビオンを見据え続ける魔術師(f00123)が居ることに気づいた。
 視線に気づいたらしい。
「ふふん、安心せよ。『同族殺し』を誤って害する程、私は愚鈍ではないぞ?」
 魔術師はそう告げるなり、次なる敵を求めて行ってしまった。
 アリステルとしても、『同族殺し』は気に食わない存在だが、攻撃をするつもりはない。
 今かの者を手に掛ければ、グリモア猟兵の依頼を達成することが難しいとわかっているからだ。
 それに。
(「女の子が無事なのは良かった。それだけは、本当に良かった。けれど――」)
 少女の命を繋いだのは、黒翼のオブリビオンが狼を蹴散らしたからであって。
 それは、少女を救ったも同義だ。
 ――彼は一体、どうして発狂したんだろうか。
(「『同族殺し』の存在とは、いかなるものか。他の猟兵も同じように考えているのか、気になって見てしまっただけなんだけど――」)
 そう魔術師へフォローしようにも、この乱戦では難しいだろう。
 アリステルは思考を切り替え、眼前の戦闘へと意識を集中させる。
 『破滅の使徒』たちの唱える言葉は、はじめから一貫しており、今なお変わらない。
『死を讃えましょう』
『死こそが、至上の「救済」なのです』
『絶望は世にはびこり、真理は変わらず』
『なればこそ。この世界に、我らが『呪詛天使』さまの「救済」を!』
 狼を召喚し鬼火を宿せば、飛翔能力を得た獣は、すぐさま『同族殺し』と猟兵たちを狩るべく空を駆けた。
(「なんにしても、勝手な言い分だよね……。死が救済なんて、そんなわけない。死は、終わりなんだから」)
 アリステルは壁沿いに位置取り、できる限り己の死角をなくし、『同族殺し』に気を取られている女と狼に狙いを定めようとした。
 その時だ。
「――死こそ救済ね。その理屈は、分からなくはない」
 ふいに、声が響いた。
 歳と経験を経て深みの増した、勇ましき女の声だ。
「しかしね。この世はとかく生きにくい。『苦しみも悲しみも、いつかは終わる』なんて。そんな綺麗事、渦中の人間には何にも響きやしないよ」
 そう告げ、両手に拳銃を構えたパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)が、魂狩の鎌を振りかぶり迫る女へ向け、引鉄を引く。
 たて続けに、2回。
 1発目は弾かれ、火花を散らしながらあらぬ方向へ飛んでいった。
 2発目は女の胸を貫き、攻撃が通る前に、パラスの眼前で糸が切れたように倒れた。
「そして、生まれたら必ず死ぬ。遅いか早いかの差しかない。この理は、犯しちゃいけないのさ」
 アリステルは、『同族殺し』に気をとられている敵だけを、闇に紛れて狙い撃ちしようとしていた。
 しかし、負傷を恐れず敵に立ち向かっていくパラスが派手に動き回ってくれたため、ほとんどの敵が彼女に気をとられている。
 ――今なら、弱った敵を確実に狙い撃ちにできる!
「討ち漏らしは僕が引き受けます! お好きなように動いてください!」
 狙い定めた敵へ指先を向ければ、天から幾筋もの光が降りそそぎ、次々と狼を屠っていった。
 これなら、敵に位置を気取られることなく、上手くやれそうだ。
 アリステルはぴんと耳を立て、
(「やれる事を、やっていこう!」)
 己を励ましながら、死角からの任務遂行に努めた。
 一方。
 パラスは両手に構えた銃をひと時も休ませることなく、敵を屠り続けた。
 両手に持った銃火器からの、一斉射撃。
 相手取っているのは、鎌を手にした女たちだ。
「弾幕ってのは、こう張るのさ」
 周囲の敵めがけ鉛の雨を降らせた後、足元に転がり二度と起きあがらぬ女たちへ、告げる。
「これで、アンタ達もわかっただろう。生まれたら、必ず死ぬ。だからこそ大事なのさ、『死に方』って奴がね」
 ――苦しみと絶望の渦中で死ぬか。
 ――乗り越えて幸せの中で死ぬか。
 どちらにせよ、確実なことがある。
「少なくとも、オブリビオンの一方的な理屈でもたらされる死は、『救済』でも何でもない。アンタ達の自己満足ってことさ」
 折り重なるように倒れた敵の中で、身じろぎをした女へ向け。
 パラスは、ためらうことなく引鉄に指をかけた。
 生前、この女たちがどれほどの絶望を味わい、死んでいったのかはわからないが。
 今となっては、ただただ、世界を滅亡へと導く存在でしかない。
 となれば、猟兵にできることは、ひとつだ。
「このまま。骸の海へお還り」
 銃声。
 そして。

 オブリビオンの館に、ようやく静寂が訪れた――。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『呪詛天使の残滓』

POW   :    呪詛ノ紅剣ハ命ヲ喰ウ
【自身の身体の崩壊】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【呪詛を纏う紅い剣】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    我ガ
自身が装備する【剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    黒キ薔薇ハ世界を蝕ム
自身の装備武器を無数の【呪詛を纏った黒い薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアンナ・フランツウェイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 
※プレイングは、断章追加後に募集開始します。
 今しばらくお待ちください。
 
 

 押し寄せる『破滅の使徒』を殲滅した猟兵たちは、黒翼の青年の後を追い、館の奥へと駆けていた。
 その、最奥。
 とつじょ視界が開けた先には、高い天井の大広間があった。
 聖堂のごときステンドグラスの壁に、魔法陣を描くかのように配置された数多の蝋燭。
 薄闇に沈んだ空間には、真紅に染まった剣を手に、ひとりの少女が佇んでいる。
 世界を憎み死んでいったオラトリオを素材に、強力なオブリビオンとして生み出された成れの果て――その、失敗作。
 憎しみのまま人間を殺戮するうちに『破滅の使徒』たちに祀りあげられ、黒翼の天使としてこの領地に君臨していたオブリビオン。
 それが、『呪詛天使の残滓』だった。
『――我ガ領地ノ 静寂ヲ破リシ者ハ 誰ダ』
 長い黒髪には、黒薔薇が咲きほこり。
 華奢な背には、青年と同じ、黒き翼を背負っている。
 いびつに響く声が、館への侵入者たちを叱責して。
 問われ応えたのは、同じオブリビオンである『同族殺し』だった。
『民を虐げたのは、お前か。民を虐げし者は、滅ぼさねばならない』
 真紅の剣を手にした少女と、白銀の剣を手にした青年。
 黒い翼をもつオラトリオ同士の戦いが、始まろうとしている――。

 *

 2体のオブリビオンを前にし、猟兵たちは、グリモア猟兵の言葉を思い返していた。
 ――『同族殺し』を利用し、強大な『オブリビオン領主』を討つ。
 まずは、『呪詛天使の残滓』を撃破することが大前提。
 オブリビオン2体を同時に相手取るのは難しいが、1体ずつの撃破なら、集まった猟兵たちの力で達成できるだろう。

 なお、先の道行きで行動を阻害しなかったことから、「猟兵たちは優先排除に値する敵ではない」というのが、今現在の『同族殺し』の認識のようだ。
 よって、この関係性を維持するのであれば、青年が「理由なく猟兵に攻撃を仕掛けることはない」。
 しかし。
 任務を完了するには、いずれ『同族殺し』も殲滅せねばならない。
 先の戦いを見越して、三つ巴の戦いの中で『同族殺し』に攻撃を仕掛ける選択をしたならば。
 その時は、『同族殺し』の青年も、全力をもって猟兵たちを滅ぼしにかかるだろう。

 いずれの行動をとるにしても、最優先事項は『呪詛天使の殲滅』だ。
 猟兵たちは様々な思いを胸に、己のなすべきことを決め、動きだした。
ハロ・シエラ
どうやら今の所は作戦も上手く行っている様ですね。
欲を言えば共倒れを狙いたいですが……そこまで上手くは行きませんか。
敵の力も強大です、ここはまず片方から片付けましょう。

先に片付けるべきは呪詛天使の残骸。
同族殺しの邪魔はせず、援護に回りましょう。
戦いを長引かせれば、同族殺しも傷つくでしょうから。
ですが、呪詛天使のユーベルコードで致命傷まで負わせる訳には行きません。
呪詛を纏った薔薇の花びらで攻撃すると言うのであれば、こちらは【破魔】の力を乗せた風のユーベルコードで吹き飛ばします。
呪詛を【浄化】し、邪悪な天使を傷つける事も出来るでしょう。
頃合を見て風に乗り、レイピアで【切り込み】をかけるとします。




 ふたつの黒翼が羽ばたき、それぞれが競うように中空へと舞いあがる。
 一帯に突風が巻き起こったかと思うと、灯されていた炎のいくつかが、かき消えて。
 『呪詛天使』が手にした紅剣を掲げると、一瞬にして、周囲に数十の複製剣が顕現する。
『我ガ剣カラハ 逃レラレヌ』
 声とともに『同族殺し』へと剣先を向ければ、複製された剣という剣が、群れを成して襲いかかった。
 しかし、黒翼を広げ防護を固めた青年の護りは厚く、ただひとつの傷をつけることさえ叶わない。
 攻撃をしのいだ隙に、『同族殺し』は高速移動からの追尾羽根による反撃で、『呪詛天使』へとダメージを与えていく――。

 舞い落ちる黒薔薇と羽根。
 剣と剣、翼と翼が激しく打ち鳴らされ、ぶつかりあっては互いの身を裂いていく。
 ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は上空の2体の動きを注視しながら、胸中でつぶやいた。
(「敵それぞれの力は、強大。2体を一気に仕留めることは難しくとも、いずれ双方傷ついていくでしょう」)
 現在のところは、強固な護りをもつ『同族殺し』が優勢らしい。
 『呪詛天使』は己の身を崩壊させる技を使用する――その身は失敗作であるがゆえに、身体に負荷がかかるのだろう――こともあり、このまま戦いを長引かせれば、『同族殺し』が勝利するのは明白だ。
(「今のところ作戦は順調です。欲を言えば、共倒れを狙いたいですが――」)
 ふいに、『呪詛天使』が手を打ち鳴らした。
 次の瞬間、群れ成していた剣が、空を覆い尽くすような薔薇吹雪と化して。
「さすがに、そこまで上手くはいきませんか」
 ハロはすかさず短剣を構え、迫ってきた花びらを斬り裂いた。
 そのまま軽快な身のこなしで、次々と薔薇吹雪をかいくぐっていく。
(「――万が一にも。『呪詛天使』の勝利が、成立することのないように」)
 ハロはさらに一手、邪悪な天使を傷つけるべく、駆けた。
 ふわり空が動き、うつくしい漆黒の髪をかき乱したが。
 構わず、踏みこんで。
 叫ぶ。
「この風に乗り、音速を超えて……!」
 【破魔】の力を乗せたユーベルコード――『嵐の出撃(ライディングオンザウィンド)』からはなたれた暴風が、黒薔薇の花びらを一気に圧し流す。
 暴風に見舞われ『呪詛天使』が体勢を崩した隙に、ハロは『リトルフォックス』の名を冠するレイピアで、容赦なくその身を貫いた。
 傷口を押さえ、うめいた『呪詛天使』が舞いあがる。
 ふいに強い風が吹いたかと思うと、ハロの前に『同族殺し』が舞い降りた。
 オブリビオンの血に濡れたレイピアへ、鋭い視線を向けている。
 ハロはできるだけ感情を抑え、赤い瞳で睨みつけながら、言った。
「……敵は同じですから、邪魔はしません。私は、このまま援護に回ります」

成功 🔵​🔵​🔴​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

たとえ世界を憎み死したオラトリオが素材としても
オブリビオン化した時点で、貴様は世界の敵だ
理由がどうであれ、破壊を齎しているのも事実だしな

ならば俺はここで貴様を狩る
…それだけの話だ

念力で操作される剣が厄介だな
「第六感」で俺に向かう剣を察知してその軌道を「見切り」回避
必要あれば「怪力」で黒剣で受け止め「武器落とし」

剣の雨を潜り抜けたら
「2回攻撃、怪力、鎧砕き」+【憎悪と闘争のダンス・マカブル】
黒剣の18連撃で翼ごと叩き斬って落としてやる!
※味方は斬りません

同族殺しは1章同様利用
無暗にこちらが消耗する必要もないから手は出さないが
何れ討つ敵ではあるから好きにさせるさ


パラス・アテナ
呪詛天使
アンタは何を呪う?
自分を憎しみの死へ追いやった誰かか
自分をオブリビオンへと改造した誰かか
使徒共に祭り上げられてその呪詛は消えたのかい?

自身の身体の崩壊を代償にするなら先にUCを使わせる
崩壊した箇所を見極めて重心が狂ったらそこを狙って攻撃
クイックドロウ、一斉発射、2回攻撃、鎧無視攻撃で
ピンポイントに攻撃して体勢を崩させる
できれば剣を持った腕を狙って攻撃
取り落とさせればなお良しだ
そこへ指定UC
眉間を狙って弾丸をくれてやるよ

敵の攻撃は第六感と見切りで回避
できなきゃ武器受けで軽減しつつ激痛耐性と継戦能力で戦闘続行

詮無いことを聞いちまったね
答えが何であれアタシはアンタを倒すだけだ
骸の海へお還り




 ハロ(f13966)が『同族殺し』へ援護の意思を告げていた、その時。

 上空へ逃れた『呪詛天使』の動きを、パラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は見逃さなかった。
 先制攻撃を加えようと二丁拳銃を構え。
 そこで、ふいに動きを止める。
 捉えたのだ。
 『呪詛天使』の腕に、ぴしりと、ひと筋の亀裂が入るのを――。
『――喰ラウガイイ 呪詛ノ紅剣ハ 命ヲ喰ウ』
 血紅の剣が呪詛をまとった瞬間、パラスは動いた。
 まっすぐに伸べた両手の内には、鈍色の鋼が光って。
「呪詛天使。アンタは何を呪う?」
 問いに続けた初撃は、IGSーP221A5『アイギス』の麻痺弾を射撃。
 大口径の実弾がオブリビオンの身体に電磁波をはしらせた後、『呪詛天使』の裂傷めがけ、EK-I357N6『ニケ』の連射を叩きこんでいく。
 敵の防具などものともしない。
 眼にもとまらぬ射撃は、空へ逃れていた『呪詛天使』の傷を、翼を、ピンポイントに撃ち抜いていく。
 傷を受け、身体にいくつもの穴を開けながら、オブリビオンは周囲に呪詛をまき散らしていった。
『――我ガ領地ノ 静寂ヲ破リシ者ハ 誰ダ』
 黒の翼で空を打ち、反撃とばかりに血紅色の剣を振りあげる。
 その一撃を第六感と見切りで回避すると、パラスは『呪詛天使』から目を逸らすことなく弾丸を再装填した。
 ――呪うは、己を憎しみの死へ追いやった誰かか。
 ――あるいは、オブリビオンへと改造した誰かか。
「使徒どもに祀りあげられて、その呪詛は消えたのかい?」
 避けた弾丸が、頬を引き裂いて。
 亀裂から覗いたのは、血紅色に染まった虚ろだった。
 できれば剣持つ腕を狙いたいところだが、絶えず動き滑空しながら斬りかかってくる対象に狙いをつけるのは、いかにパラスとはいえ至難の業。
 で、あれば。
『――我ガ呪剣ノ 贄トナレ』
 再度斬りかかってきたタイミングを狙い、大型銃『アイギス』で攻撃を受けとめる。
 ガチリと、鈍い音。
 しかし、敵自ら至近距離に飛びこんできた、この好機を逃しはしまい。
「こいつの前に出たのが、運の尽きだよ」
 問いへの答えが何であれ、己は敵を倒すまで。
 何度も死線を抜けた相棒――『ニケ』を『呪詛天使』の眉間に押しつけ、告げる。
「骸の海へお還り」
 パラスが引鉄を引いたと同時に、『呪詛天使』はパラスへ体当たりを仕掛け、その身を剣で貫いた。
 傷を受けたパラスの銃口が逸れ、オブリビオンのこめかみを銃弾が引き裂く。
 古びたビスク・ドールのように。
 血が流れぬ代わりに、顔中に亀裂がはしる。
 虚ろの身体でも、痛みを感じることはあるのだろうか。
『――アアアアアアア!!』
 ぼろぼろと崩れゆく顔を押さえ、悲鳴をあげる『呪詛天使』の周囲に、おびただしい数の剣が顕現し、雨のごとく戦場に降りそそいだ。
「パラスさん!」
 傷を負ったパラスから敵視を奪おうと、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)が声をはりあげ、迫った。
「たとえ世界を憎み死んだオラトリオが素材だとしても。オブリビオン化した時点で、貴様は『世界の敵』だ。――ならば俺は、ここで貴様を狩る!」
 誰の眼にも明らかな敵意をはなてば、手負いの『呪詛天使』は、簡単に標的を敬輔へと移した。
 問題は、降りそそぐ剣の雨も、敬輔のもとへと集中するようになったことだ。
 いかに第六感を研ぎ澄まそうと、四方位から迫る剣すべてを回避することはできない。
 剣の半分は敬輔を斬りつけた。
 金属鎧をまとっていなければ、全身傷だらけに成り果てていたところだ。
 しかし、敬輔は集中力を切らすことなく剣の軌道を見切り、身をかわすと、間合いに飛びこんできた一部の剣を、振り下ろした黒剣で怪力まかせに叩き折る。
 剣の雨がやんだ。
 見あげれば、聖堂のごときステンドグラスの壁を背景に飛ぶ『呪詛天使』の姿がある。
 剣持つ手を伸べたとて、届かない位置。
 それでも敬輔は諦めず、跳躍から剣を振り払おうと、身構えた時だ。
 ――視界一面に、影が落ちた。
 天上から舞い降りる、黒い大きな翼。
 もう1体のオブリビオン――『同族殺し』が、『呪詛天使』の真上から圧し掛かるように斬りかかったのだ。
『愚かな領主。民を虐げし者は、滅ばねばならない』
 『同族殺し』に比べ小柄な『呪詛天使』は、たまらず地へと堕ちていった。
 2体がぶつかりあうごとに、黒の羽根が宙を舞う。
 地上には、敬輔の姿があって。
 右の青の瞳が、つよく、輝いていく。
 ――身の内で、強い闘争心がふくれあがっていくのがわかる。
 彼は理解している。
 この激情はいずれ、己を傷つけるのだと。
 しかし。
 己が身を地獄にくべてでも、敵は、倒さねばならぬ。
「怒りと憎悪、そして闘争心を力に替えて。……俺は、貴様を斬り刻む!!」
 黒剣の柄を、しかと握りしめ。
 『同族殺し』と組みあうように堕ちてきた『呪詛天使』へ、切っ先を向ける。
 ――ユーベルコード『憎悪と闘争のダンス・マカブル』。
 一撃! 二撃!! 三撃!!! 四撃!!!!
 舞うように剣を返しては、反撃の隙を与えぬ間に、さらに間断なく追撃を重ねていく。
 剣は十八度にわたって『呪詛天使』を斬りつけたが、その黒い翼を斬り落とすことは叶わなかった。
 とはいえ、圧倒的な斬撃によって、その身はズタズタに引き裂かれている。
 青の瞳から光が消えゆくなか、敬輔は抗いがたい衝動が迫るのを感じながら、『同族殺し』を仰ぎ見た。
(「今は手を出さず、好きにさせるさ。いずれ、必ず討つ――!」)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…狩るべき邪悪ではなく、相対すべき敵てはなく…
ならば、今一時は背を預ける事もできよう

過去の戦闘知識から敵味方の行動を暗視して見切り、
闇に紛れて切り込み大鎌のカウンターで同族殺しの支援を試みる

…手を貸すわ、同族殺し。少なくとも、あの領主を討ち果たすまでは、ね

第六感が好機を捉えたら闇属性攻撃の魔力を溜めUCを発動
大鎌を武器改造した大剣の柄に長大な"闇の結晶"刃を形成

…剣によりて生くる者、剣によりて滅びぬ
せめてもの手向けよ。我が奥義にて骸の海に沈むがいい

残像が生じる早業で怪力任せに大剣をなぎ払って結晶を砕き、
限界突破した呪詛のオーラで防御を無視して生命力を吸収する2回攻撃を行う

…消えなさい。永遠に…


ハルア・ガーラント
狂う程の痛みとは何だったのだろう
領主の裏切り、民の犠牲……その中に、あなたも?

【WIZ】
彼には呪詛天使の攻撃を受けて貰わないと
その痛みを思い、恐怖し震える身体を叱咤します

戦闘開始時にUC発動、皆の戦闘力を増強
狂った彼にこの歌は届くのかな

彼の行動を妨害しないよう[銀曜銃の誘導弾にマヒ攻撃]をのせ敵の翼を狙います
敵の攻撃は常時展開した[オーラ防御と呪詛耐性]で耐えます
黒薔薇が見えたら彼女へ滑空し一気に接近、黒翼を[念動力で操作した咎人の鎖]で強く[捕縛]し地へ叩きつけます
翼が折れたら戦闘能力は著しく低下するはず……自分がそうだもの

緋色の瞳を見てこみ上げる悲しみと迷い
――わたしはいつだって、こうだ


アリステル・ブルー
連携アドリブおまかせ
他の猟兵さん積極的に手伝うね

「ともかく呪詛天使を優先、だね」
使い魔ユールを呼んで【指定UC】を使うね。『同族殺し』は狙わない位置を取る。
反撃はユールの援護射撃と激痛耐性でなんとかならないかな。後は黒の細剣で攻撃します。

余裕があればユールか僕で『同族殺し』の事を観察したい、かな。
どうして狂ってしまったのか、何か判断材料になるものはないだろうか?
領主の存在は僕にとって許せる存在ではないけど、もし『良心的な領主』がいるなら狂う前なら停戦交渉も可能かもしれない。
今後の判断材料のためにも、あるいは奴が理性を取り戻せるような、そんな隙はない、かな。
まぁまずは僕にやれる事をやっていこう!




 敬輔(f14505)の攻撃を耐えきり、『呪詛天使』はなおも翼を羽ばたかせ、中空にとどまっていた。
 しかし、その身の随所にぱっくりと亀裂があき、血紅色の虚ろをさらして。
 髪に咲いた黒薔薇は、硝子細工が砕け散るがごとく、ゆっくりと自壊していく。
 ――戦えば戦うほど、己に滅びをもたらすオブリビオン。
 『完全』な状態でうまれることのできなかった、失敗作。
 『呪詛天使』が、これまで領主として君臨し続けることができたのは。
 『呪詛天使』を屋敷の奥に閉じこめ、『破滅の使徒』たちが表だって活動することで、負荷をかけずに来たからかもしれない。
 しかし今となっては、呪詛天使の手足となり率先して民を虐げてきた『破滅の使徒』たちは、どこにも存在しない。
 『同族殺し』が剣を振るい、『呪詛天使』とふたたび切り結ぶ。
 ばさばさと、ふたつの黒い翼が空を打つ音が荒々しく響く。
 抜け落ちた羽根が、あたりへと舞い落ちていく――。

 その姿を、青い鳥の使い魔〈ユール〉を伴ったアリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)が、じっと仰ぎ見ていた。
「とにもかくにも、『呪詛天使』を優先、だね」
 『同族殺し』を狙わぬよう立ち位置を調整し、すいと指先を向ければ。
 天上から一条の光が降りそそぎ、天使の脚を貫いた。
 光に灼かれた『呪詛天使』だったが、致命傷には至っていない。
 『同族殺し』と戦う合間に体勢を立て直し、崩壊していく己の顔を手で押さえながら、うめく。
『同胞モ 猟兵モ 黒キ薔薇ニ蝕バマレ 等シク滅ブガイイ……!』
 呪詛を纏った黒薔薇の花弁が、嵐のごとき勢いで吹き荒れる。
 アリステルは黒の細剣で相殺を試みたが、全てを斬り払うのは不可能だ。
 その時だった。
「わ、わたしがついてます……どうか負けないで!」
 オブリビオンたちから離れた位置で、猟兵の援護にあたっていたハルア(f23517)の声。
 続いて、清浄な歌声が戦場に響き渡る。
 天使言語による祝福の歌は、そのすべての意を理解することはできなかったが。
 場に居合わせていた猟兵たちは、歌によって自らの力がみなぎってくるのを感じていた。
(「――全身の血が、熱く駆けめぐっていく」)
 アリステルは傷の痛みに耐えながらも、力強く輝くオッドアイの瞳を向け、使い魔に命じる。
「ユール、支援をたのむよ……!」
 鳥は青の翼を羽ばたかせ、巧みに花弁を避けて飛翔すると、主に代わって『呪詛天使』へと攻撃を仕掛けはじめた。
 鼓舞の歌声は、闇に身を隠し戦っていたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)にも届いていた。
 黒薔薇の花弁に斬り裂かれた身体に、ふたたび力が巡るのがわかる。
 時を同じくして、至近距離で敵の花弁攻撃を受けた『同族殺し』が、全身に傷を負いながらも仄昏く光る黒鷲を召喚。
 どこまでも敵を追撃するよう命じ、自らもまた剣を振るっている。
 その姿だけを見れば。
 猟兵と何ら変わらないようにも、見えて。
 リーヴァルディは、過去を刻み未来を閉ざす黒い大鎌――『過去を刻むもの』を構え、力強く地を蹴り、跳躍。
 『同族殺し』めがけ剣を振りあげる『呪詛天使』の背後から、躊躇なく大鎌を振りおろす。
 剣持つ天使の肘から先が、すっぱりと斬りおとされ。
 握り締めたままの剣の重みに引っ張られるように、一直線に地へと落ちていく。
 リーヴァルディが着地すると同時に、天使の腕と剣もまた、甲高い金属音をたてながら、地に転がった。
 しかし、敵は武器を手に持たずとも、複製ができる。
『我ガ剣ノ 贄トナレ!』
 激昂した『呪詛天使』が己の剣を幾重にも増殖させ、地上めがけて撃ちはなつ。
『民を傷つけたが最後。お前の「終焉」は、決まっている』
 リーヴァルディの視界を『同族殺し』の背が覆い、攻撃を完全に遮断する黒翼の守りで剣の群れを受けとめる。
 行動から判ずれば、リーヴァルディをかばったようにも見えるが。
 背を向けるオブリビオンから、その表情、意図をうかがい知ることはできなくて。
(「……狩るべき邪悪ではなく、相対すべき敵ではなく……。ならば、今一時は背を預ける事もできよう」)
 ダンピールの少女は胸中でそう呟くと、
「……手を貸すわ、『同族殺し』。少なくとも、あの領主を討ち果たすまでは、ね」
 追尾羽根で反撃にかかる黒翼のオブリビオンと並び立ち、ふたたび大鎌を構え、敵の死角へ向け、走った。


 『呪詛天使』の片腕が落下していくのを、ハルア・ガーラント(歌う宵啼鳥・f23517)は離れた場所から見ていた。
 そうして、『同族殺し』が黒騎士の少女・リーヴァルディ(f01841)の前に翼を広げ、飛来する剣の群れを受けとめる様に、思わず己の身を縮める。
 ここまでの戦闘を見る限り、あの『黒翼の守り』は鉄壁の防護を誇るらしい。
 しかし痛みまでは防げないようで、攻撃を受けた『同族殺し』は、僅かずつだが動きが鈍っていくことに、ハルアは気づいていた。
 ――数多の剣を受けるその痛みは、一体、どれほどのものだろう。
 『同族殺し』を利用し、強大な『オブリビオン領主』を討つのだと、グリモア猟兵は、そう言った。
 だからハルアは、ユーベルコード『ブレスドソング』で仲間たちの支援を行った後、銀曜銃を手に『呪詛天使』への援護射撃に徹していた。
 『呪詛天使』を殲滅した後には、『同族殺し』との戦闘が待っている。
 ――だから彼には、『呪詛天使』の攻撃を受けて貰わないといけない。
 そう、考えていたのに。
 ぼろぼろになっていく姿を見れば見るほど、戦いの中で生じる痛みに恐怖し、銃を握る手の震えが、おさまらない。
 傷を負いながらも果敢に攻めたてる『同族殺し』と連携し、リーヴァルディが大鎌を振るい。
 青い鳥の使い魔〈ユール〉のかく乱を受け、アリステル(f27826)の聖なる光が敵を撃ち貫く。
 『祝福の歌』に共感した猟兵たちは、これまでの疲労を感じさせないほどの目覚ましい動きで、『呪詛天使』へ攻撃を仕掛けていく。
 ふと、脳裏をよぎる。
(「狂った彼に。あの歌は、届いたのかな」)
 実際のところどうであったのかは、もはやわかりはしない。
 けれど、
 ――痛みをものともせず、誰かを護ろうとする、その背中。
 その行動は、ハルア自身の心を、強く叱責した。
 剣と腕を失った『呪詛天使』が、崩壊していく己の身体を、無数の黒薔薇の花びらへと変えていく。
 ハルアは唇を引き結び、純白の翼を大きく広げると、力強く羽ばたいた。
 花吹雪の攻撃線上から逃れるべく上空へ飛翔すると、花弁の展開していない位置――敵の間合いへと一気に滑空し、迫る。
 ――狙うは、己とは正反対の漆黒の翼。
(「翼が折れたら戦闘能力は著しく低下するはず。だって、わたしがそうだもの……!」)
 オーラ防御を展開した状態で、先ほど『同族殺し』がして見せたように、『呪詛天使』へと圧し掛かる。
 華奢な肩を掴めば、ボロボロと崩壊していく顔が、間近に見えて。
 己の両翼に絡んでいた『咎人の鎖』を念動力で操ると、黒翼へと巻きつける。
 必然、ハルアの白翼と『呪詛天使』の黒翼が鎖で繋がれた格好になって。
 羽ばたくことをやめた四枚の翼が、ひとつになって堕ちていく。
『オノレ……!!』
 気づいたオブリビオンが黒薔薇をけしかけるが、ハルアとて覚悟の上の行動だ。
 オーラで防ぎきれなかった花びらが皮膚を裂き、血が流れようとも、もう怯みはしない。
(「このまま、地面に叩きつける!!」)
 かくして、ハルアの狙い通り『呪詛天使』の背は地に打ちつけられ、その衝撃で翼は根元から折れた。
『ギャアアアアァァァアアア!』
 おぞましい絶叫が響き渡る一方、至近距離で花びらを受け続けたハルアの身も、地に伏せたまま動かない。
 横たわったままのハルアの眼前で、『呪詛天使』は呪いを吐きながらも身体を起こした。
 落ちた衝撃でひびだらけになった身体で、這うようにして近づいてくる。
 次の瞬間には、周囲に真紅の剣の群れが現れて。
 切っ先はすべて、ハルアへ向けられていた。
 ――翼をもがれる苦しみは、痛いほど理解できる。
 こうなると知って、動いたのだ。
 己の招いた結果は、引き受けなければならない。
 死を間近に感じハルアの脳裏にうかんだのは、『同族殺し』への疑問だった。
(「彼が狂うほどの『痛み』とは、何だったのだろう」)
 新緑の瞳に、漆黒の天使が映る。
『我ガ呪詛ヲ 喰ライ 死ネ』
「ハルアさん!!」
 オブリビオンが声を発したと同時に、アリステルは指先を『呪詛天使』へと向けていた。
 ――狙え狙え、味方に被害なく、ただ的(まと)だけを射抜け……!
 その願い通り、天の光は『呪詛天使』だけを貫くも、オブリビオンのはなった剣は止まらない。
 ハルアがいのちの終わりを覚悟した、その時。
 視界が黒に染まり、痛みはいつまでも、やってくることはなかった。
 ――舞い降りた『同族殺し』が、黒い翼で己を護ったのだ。
 気づいた瞬間、その背がぐらりと傾いで。
 全身の痛みも忘れて、ハルアは震える手を伸ばした。
 胸の痛みも、悲しみも、迷いも。
 すべてが、胸の内でないまぜになって。
(「――わたしはいつだって、こうだ」)
 惑いを抱える少女の側では、闇に紛れ、凛とした女の声が響いた。
「……限定解放。テンカウント。吸血鬼のオドと精霊のマナ。それを今、一つに……!」
 闇属性攻撃の魔力を糧に、リーヴァルディがユーベルコード『限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)』を発動。
 大剣の柄に、長大な"闇の結晶"刃を形成する。
 全身に呪詛を満たし、もはや言語をも投げうった『呪詛天使』へ切っ先を向け、言いはなつ。
「……剣によりて生くる者、剣によりて滅びぬ。……せめてもの手向けよ。我が奥義にて、骸の海に沈むがいい」
 地を蹴り、銀の髪がなびいて。
 その先は、誰の眼にもとらえきれなかった。
 残像が生じる早業で『呪詛天使』に迫ると、怪力任せに大剣をなぎ払う。
 衝撃で結晶が砕けるも、構いはしない。
 倒れた『呪詛天使』に圧し掛かり、限界突破した呪詛のオーラで連撃をはなてば、『呪詛天使』の生命力は容赦なくリーヴァルディに奪われていった。
 猟兵たちに抗うため、すでに崩壊が広がっていたオブリビオンの身体は、とどめの一撃を受け、一斉に崩壊していく。
『アアアアアアア、アアアア……!』
 夜と闇を終わらせる誓いを装束に刻んだ少女は、紫の瞳で冷ややかに黒翼の天使を見おろしながら、言った。
「……消えなさい。永遠に……」
 『呪詛天使の残滓』が悔し気に伸べた手は、リーヴァルディに届くことはなく。
 瞬く間に、塵と化し。
 その身は、ひとかけらも遺らなかった。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『護衛兵ライブレッド』

POW   :    癒しの鎖
【剣より放つ第六感で捕捉不能な不可視の魔弾】が命中した対象を爆破し、更に互いを【技能や道具で軽減した痛みの分相手を癒す鎖】で繋ぐ。
SPD   :    報いの刃羽根
自身に【対象の遠隔攻撃を完全に遮断する黒翼の守り】をまとい、高速移動と【これまで受けた苦痛を対象に与える追尾羽根】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    バロック・ハウリング
自身が【人でない事・防御姿勢を取れない危機的状況】を感じると、レベル×1体の【望郷の想いが実体化し、仄昏く光る黒鷲】が召喚される。望郷の想いが実体化し、仄昏く光る黒鷲は人でない事・防御姿勢を取れない危機的状況を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はハルア・ガーラントです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「風よ、友を癒やしておくれ」
 アリステル(f27826)の声に応えるよう清浄なる風が吹きすぎ、ハルア(f23517)の数多の裂傷を癒していく。
 その傍らには、ハルアをかばい『呪詛天使』の剣の群れを受けた『同族殺し』が、膝をつくようにしてしゃがみこんでいた。
 先の戦場から、猟兵たち以上に多くのオブリビオンと相対し、戦い続けてきたのだ。
 その身体はもはや限界に近く、白と金を基調とした制帽と制服は、己の血に赤く染まっている。
 幾度となく羽ばたいてきた黒い大きな翼も、あちこちの羽根が抜け落ち、無残なありさまだ。
 アリステルは猟兵たちが体勢を立て直し、『同族殺し』の周囲に布陣したのを確認すると、苦し気に息をつく『同族殺し』の前に立ち、言った。
「……僕は戦闘中、ずっとあなたを観察していたんだ。どうして狂ってしまったのか、何か判断材料になるものはないだろうか、って」
 アリステルの肩の上で、青い鳥の使い魔〈ユール〉が羽を休めている。
 この使い魔もまた、オブリビオンを探るために戦場を飛び続けていた。
『……』
 『同族殺し』は猟兵たちが己を取り囲んでいるのを察しながら、動くことも語ることもなかった。
 真紅の瞳をアリステルへ向け、その言葉を待っている。
 人狼の青年は気持ちを引き締め、続けた。
「……『領主』の存在は、僕にとって許せる存在ではない。でも、もし『良心的な領主』がいるなら。停戦交渉も可能なのかもしれないと、思っている」
 猟兵たちが、固唾をのんで、答えを待つ。
 すると、オブリビオンは言った。
『……領主は私を、そして何よりも、民を裏切った。護るべき民の、多くが死んだ――』
 先の戦場でリーヴァルディ(f01841)に告げた言葉を、『同族殺し』はふたたび繰り返した。
 緋色の瞳を見やるハルアの胸に、悲しみと迷いがこみあげる。
「領主の裏切り、民の犠牲……。その中に、あなたも?」
 震える声で問いかければ、『同族殺し』は血紅の瞳に娘を映し。
 そうして、携えていた剣を手に、立ちあがる。
 傷口から血が落ちたが、無表情は変わらず、構う様子はない。
『……ああ、そうだ。私は、護衛兵ライブレッド。領主に忠誠を誓い、民を護りし者。――そう、在った者だ』
 はっきりとした声音で、告げた。
 猟兵たちは、その時になって。
 『同族殺し』の耳の後ろに、オラトリオの証――真紅の薊(あざみ)が咲いていることに、気づいた。

 一度狂ったオブリビオンが、『正気』をとり戻すことはありはしない。
 もっともその正気とて、生前をとり戻せるという意味ではない。
 過去の残滓として、我に返るというだけのこと。
 そも未来のない存在は、壊れた再生装置のように、同じ言葉、同じ行動を繰りかえす。
 すでに重傷を負い、多くの血をながした『同族殺し』は、猟兵が手を下さずともいずれ息絶えることだろう。
 あるいは、別のオブリビオン領主の元へ向かい、返り討ちにあうのかもしれない。

 オブリビオンであり。
 『同族殺し』であり。
 黒翼のオラトリオであり。
 『護衛兵ライブレッド』であった青年は、猟兵たちを見やり、言った。
『民を虐げた者は、どこだ。民を虐げし者すべて、この世界から滅ぼさなければならない』
 その眼は、猟兵たちを敵とはみなしておらず。
 刃を向けさえしなければ、戦闘になることはないだろう。
 出発前。
 グリモア猟兵は、『声は届くかもしれない』と言っていた。
 そのすべを試す価値も、あるのかもしれない。

 ただひとつわかっているのは、「『護衛兵ライブレッド』を見逃すことはできない」ということ。
 ゆえに、あなたは選ばねばならない。
 戦うのか。
 説得するのか。
 あるいは別の方法で、違った道を探るのか――。


●マスターより
・オブリビオンを『骸の海へ還すこと』が成功条件です。

・1章、2章の参加者様を優先採用します。

・3章は章クリア冠数が少ないため、3名以上の挑戦で完結を予定しています。
 1人目のプレイング失効日を参考に、締切日を設定予定です。
 ※最新の執筆状況は、マスターページ冒頭をご確認ください。

・多様な行動が集まる可能性があるため、提案内容がそのままリプレイに反映されるとは限りません。
 とはいえ、猟兵それぞれの信念によって、行いたい行動があると思います。
 他の方の行動に遠慮することなく、ぜひ想いの丈をプレイングに詰めてください。
 
 
ハルア・ガーラント
その姿、その瞳に胸がざわめく理由
彼はわたしが世界に絶望してオラトリオになった時、発動したUCで最初に現れ今も助けてくれる白鷲だ
庇われたあの背中の感じでやっと気付くなんて

ヴォルフラムさんは声は届くかもしれないと言っていた
ならば傍に寄り添い[優しさや慰め、祈り]を込め伝えます

庇ってくれてありがとう、そしてごめんなさい

もう解っているよね、自分が人ではない事
わたし達はそんな存在を骸の海へ還す為来ました
あなたを裏切った領主は絶対に見つけ出して報いを受けて貰います

助けたい気持ちを飲み込み続けます

あなたのことを世界が忘れてしまっても
わたしがずっと覚えているから

憎み狂い続けなくていい
その翼、少し休めましょう?


リーヴァルディ・カーライル
…確かに貴方は世界を滅ぼす存在としては狂っている
その傷を癒せば私達は労せず強力な味方を手に入れ、
より多くの人達が助かる未来が訪れるかもしれない


…それが生前のままの貴方ならば、私も助力を願い出た
…だけど歪みに歪み、狂いに狂い果てた結果、
マトモに見えるだけの貴方に、そんな事を頼む気はない


…私が過去より現れるオブリビオンを討つのは、
世界を滅ぼすべく生まれた存在だから…だけではない

…望まぬ眠りから目覚めた者達の生を終わらせて、
彼らの歪められた魂に再び安息を与える為だもの

…だからどうか、共に闘う代わりに託してほしい
歪められてなお、民を護ろうとしたその想いを…

そして安らかに眠ってほしい。それが私の願いよ


館野・敬輔
【POW】
アドリブ連携大歓迎
宿縁主様の意向優先で

領主の裏切りが事のきっかけか
なら、お前がオブリビオンとして蘇った原因は…人間にあるか

答えろ
お前をオブリビオンとして縛っているのは
民を虐げし者への怒りか?

…それが事実なら
お前を見逃した場合
お前の剣が人間に向く可能性は否定できない

俺は最初からオブリビオンを狩りに来ている
その意は貫き通させてもらう
たとえ民を守るものでも、人間を害するならこの場で斬る!

同族殺しの根底にあるのは怒り?
ならば、俺のオブリビオンへの憤怒で同族殺しの怒りを両断する
「早業、怪力、部位破壊」+【憤怒の解放・両断剣】
一気に間合いに踏み込み胴を両断
せめて一息に守るべき民の下へ送ってやろう


パラス・アテナ
『民を虐げし者すべて、この世界から滅ぼさなければならない』ね
そう言うのならアンタはアタシの敵だ

領主に虐げられる人間の村長がいる
村長に虐げられる旦那がいる
旦那に虐げられる妻がいる
妻に虐げられる子が…

アンタの本懐は全ての民を殺すまで遂げられやしない
今回は領主だったけど次は村長に向かうかも知れない
そうすりゃアンタは憎むべき領主と同じに成り下がる

クイックドロウと先制攻撃で先手を取ってマヒ攻撃と鎧無視攻撃の2回攻撃で鈍らせる
マヒで攻撃をわかり易くして敵UCを見切り回避して指定UC

アンタが滅ぼすべきはアンタの領主だ
呪詛天使がアンタの領主だったのかい?
虐げられる民をなくす為にすべきことを
間違うんじゃないよ


アリステル・ブルー
●アドリブおまかせ
必要ならばサポートにまわります

領主の裏切りか…少なくともこのライブレッドという同族殺しは…今は無害だ
「てっきり君が領主だと思ったんだけどそうか…」
あちらからの攻撃に備えていつでも抜刀出来る様にするがこちらからは攻撃しないよ
「僕は君たち『同族殺し』がそうなる前に出会いたかったと心から思う。狂う前の君となら」
話合う事が出来たかもしれない
「戦う事以外で君を骸の海へ還す事はできないかい?僕は君とは出来れば戦いたくないかな。…この世界の民を虐げた者ならば僕が全て討つよ、僕はその為に猟兵になったんだから」
彼を見逃す事は出来ないけれど、何か他の道はないだろうか。
「僕は君を…救いたいと思う」


ハロ・シエラ
こうなるとかえって難しいですね。
戦おうと言う気持ちでもなく、かと言ってこのまま見逃す事も出来はしません。
私は……放っておいても息絶えると言うのなら、せめて我々の手でなるべく苦しまないように葬るべきだと思います。
痛みも無いくらいの【早業】で、ユーベルコードに【浄化】の炎を乗せて【焼却】し、火葬してあげたいと思います。
結局剣を向け、戦う事となるのですが、戦いしか知らない私にはこんな方法しか取れません。
【第六感】で追尾羽根を掻い潜り、【ダッシュ】で接近して、炎を纏った剣で直接斬り付ければ黒翼の守りも貫けるでしょう。
上手く行けば【祈り】くらいは捧げましょう。
誰に対して祈ればいいのかは、分かりませんが。




「僕は、てっきり君が『領主』だと思ったんだけど。……そうか」
 アリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)はそううめき、万一に備え細剣の柄に手を掛けながら、考えを巡らせる。
 少なくとも。
 この『同族殺し』――護衛兵ライブレッドと名乗ったオブリビオンは、今は無害だ。
 だからこそ、なにか他の道を探りたい。
「戦うこと以外で、君を骸の海へ還すことはできないかい? 僕は、君とはできれば戦いたくないかな……」
 アリステルには攻撃を仕掛ける意思は、ない。
 しかし。
『私の「死」を願うなら。その剣を向けるがいい』
 すげなく返され、アリステルは驚いたように双眸を見開いた。
 その言葉は、まるで己自身の『覚悟』を問われているかのようで。
 それでも。
 ――『お人好し』と呼ばれてでも、願わずにはいられない。
 人狼の青年は、細剣に掛けていた手をオブリビオンへと伸べ、その『覚悟』を示さんと、言った。
「この世界の民を虐げた者ならば、僕がすべて討つよ。僕は、その為に猟兵になったんだから。――僕は君を……救いたいと思う」
『戯れ言だ』
 血紅の瞳を向け、ライブレッドは一刀両断した。
『お前の言葉は、殉教者の女たちと同じだ』
 領主館へ向かう最中。
 ライブレッドも、猟兵たちも、散々聞いていた。
 ――「死」は、すべての「救済」である。
 アリステルが口をつぐみ、場が静まり返ると、次に別の声があがった。
「こうなると、かえって難しいですが……」
 レイピアを手にしたままの、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)だ。
 ハロ自身は、戦おうという気持ちがあるわけでもなく。
 かと言って、このまま見逃すこともできないことは、重々理解している。
 なによりも、当の本人が言ったのだ。
 『死をもたらすつもりであるなら、剣を取れ』、と。
「このまま放っておいても、息絶えると言うのなら……。せめて我々の手で、なるべく苦しまないように葬るべきだと思います」
 ――痛みも無いくらいの早業で、ユーベルコードに浄化の炎を乗せて。
 それならどの選択をとるよりも、最もうまくやれると、ハロは思った。
 結局は剣を向け、戦うことには違いないが。
 戦うことで生きてきた少女には、この方法を選び取るしかできそうになかったのだ。
 その言葉を耳にして、眉間に皺を寄せた館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)が、告げる。
「領主の裏切りが『こと』のきっかけか。なら、お前がオブリビオンとして蘇った原因は……人間にあるか」
 手にしていた黒剣をオブリビオンに向け、問いただす。
「答えろ。お前をオブリビオンとして縛っているのは、民を虐げし者への怒りか?」
 ライブレッドは、冷ややかな視線を向け、言った。
『私が成すべきは、「民を虐げし者」をすべて、この世界から滅ぼすこと』
 覚えているのは、ただひとつの光景。
 ――領主が民を虐げる。
 ――眼の前で、いのちが喪われていく。
 ――護るべき者たちがしんでいく。
 ヒトとして生きていようと。
 オブリビオンとして蘇ろうと。
『理不尽は繰りかえされる。何度も。何度でも』
 語るうちに、じわり、殺気がにじみ出る。
 オブリビオンと同じくして、敬輔もまた、憤怒を燃えあがらせていた。
「……その言葉を、そのまま受け止めるなら。お前を見逃した場合、お前の剣が人間に向く可能性は否定できない」
 それまで静かに耳を傾けていたパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)も、両手に銃を携えたまま、言った。
「同意見だね」
 パラスの言い分は、こうだ。
 ひとを虐げる者は、オブリビオンだけではない。
 領主に虐げられる、人間の村長がいる。
 村長に虐げられる、旦那がいる。
 旦那に虐げられる、妻がいる。
 妻に虐げられる、子が――。
「要するに、アンタの本懐は、『民を虐げた』とみなした者を殺すまで遂げられやしない。今回は、たまたま標的がオブリビオンの領主だったが、次は人間の村長に向かうかもしれない。そうすりゃアンタは、憎むべき領主と同じに成り下がる」
 ライブレッドは、よく通る声で言った。
『そうだ。民は、護らねばならない。虐げる者は、滅ぼさねばならない』
 答えを聞いて、パラスは決意を固めた。
「そうかい、なら。――アンタは、アタシの敵だ」
 大型銃の引鉄を引き、電磁波を帯びた弾丸を撃ちはなつ。
 続けて、別の銃でもう一撃。
 しかし、ライブレッドとて警戒はしていた。
 手にした剣で空を薙げば、第六感でも捕捉不能な不可視の魔弾がパラスの銃弾を相殺。
 大型銃を手にしたパラスの腕を、放った鎖でがんじがらめにする。

 固く拳を握りしめたまま険しい眼で攻防を見つめるアリステルへ、ハルア・ガーラント(歌う宵啼鳥・f23517)が震える声で言った。
「アリステルさん――」
 「止めないんですか」と言いかけて。
 それが、どれだけ人任せな言葉であるかに気づき、声にする前に、飲みこむ。
 ――ハルアは、気づいたのだ。
 己が世界に絶望し、オラトリオとして覚醒した時。
 発動したユーベルコードによって召喚され、己を助けてくれた白鷲がいた。
 彼は、今もハルアを護り続けていて。
 ――危機を感じた時、迷いなく、まっすぐに飛んできてくれる翼。
 庇われた時の、背中の感覚で、確信した。
 彼は、あの白鷲なのだ。
(「あの姿、あの瞳に、胸がざわめく理由。やっと気付くなんて」)
 どういった理由で、白翼と黒翼に分かたれてしまったのかは、わからない。
 それでも。
 ユーベルコードで召喚した時と、同じように。
 彼は迷いなく、ただ、己の成すべきことを貫いている。
 ――助けたい。
 彼がいつもそうしてくれるように、翼を広げて。
 ――助けたい。
 けれど、彼は言ったのだ。
『私の「死」を願うなら。その剣を向けるがいい』
 死してなお、己の役目を全うせんと羽ばたく翼。
 猟兵たちが、猟兵であることを手放さぬように。
 ライブレッドもまた、姿かたちを変えようと、『護衛兵』としての在り方をやめはしない。
 それがわかったから。
 ハルアは、双眸から流れる涙を拭いながら、ただ、彼の雄姿を見ていた。

 パラスとライブレッドの戦いは、ハロと敬輔も参戦しての乱戦となっていた。
「上手くいけば、祈りくらいは捧げましょう。――誰に対して祈ればいいのかは、わかりませんが」
 第六感ではなたれた追尾羽根をかいくぐり、ハロが死角からレイピアを繰りだす。
「オブリビオン狩りの意は貫き通させてもらう。たとえ民を守るものでも、人間を害するなら――」
 パラスが銃弾による牽制を仕掛けた隙に、敬輔が迫る。
「怒りと憎悪、闘争心に導かれるままに……貴様を両断する!!」
 右目を激しく光らせながら黒剣を振るえば、超高速かつ大威力の一撃がライブレッドの胸を薙いだ。
 初撃こそ防いだが、もとより体力を消耗しているライブレッドは、回避もままならない状態だ。
 白い衣装が、見る間に紅く染まっていく。
 傾いだ頭から、制帽が落ちた。
 大きな隙ができたその瞬間を、見逃すパラスではない。
「アンタが滅ぼすべきは、アンタの領主だ」
 ぴたりと背後につき、その銃口を背の真中――黒翼の付け根へと突きつける。
「虐げられる民をなくす為にすべきことを、間違うんじゃないよ」
 銃声とともに、オブリビオンの胸から血しぶきがあがった。
 うめくでなく、助けを請うでなく、護衛兵ライブレッドはそのまま地に伏せた。
 流れ出た血が、無機質な床に広がっていく。
 止めとばかりに、パラスが二丁拳銃を、敬輔が黒剣を構えて。
 強く地を蹴り、間合いへと迫ったハロが、手にしたレイピアに炎を纏わせ、切っ先を繰りだす。
「痛みも、悔いも、その身体も。塵ひとつ残らぬよう、火葬してあげます……!」
 魂まで焼き尽くす炎が、オブリビオンの身を焼き尽くそうとした、その時だ。
「そこまでよ」
 ハロの細剣を弾き返したのは、大鎌を振るったリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)だった。
 リーヴァルディは、先の戦闘でライブレッドに庇われた――と感じていた。
 今にして思えば、あの行動も、彼の『護衛兵』としての衝動がそうさせたのかもしれない。
 ならば借りを返しておこうと、そう、思っただけのこと。
「……もう、決着はついている」
 大鎌を構えたまま、念を押すよう紫の瞳を向ければ、パラスが先に。
 しばらくの睨みあいの後、ハロと敬輔もまた、ライブレッドから距離をおいた。
 3人は武器を手に警戒を続けたままだが、リーヴァルディは彼らが譲歩してくれたことを理解したうえで、倒れたままのオブリビオンの傍らに膝をつく。
 遅れて、涙を浮かべたままのハルアが、遠慮がちに、その傍に座りこんだ。
 ぴくりとも動かない。
 もう、死んでしまったかと思われたが。
 冷めたままの血紅の瞳が己を見やったのを認め、静かに口をひらいた。
「……確かに貴方は、世界を滅ぼす存在としては狂っている。それでも、貴方の傷を癒せば、私たちは労せず強力な味方を手に入れ、より多くの人たちが助かる未来が訪れるかもしれない」
 リーヴァルディの言葉に、立ち尽くしたままのアリステルが俯いた。
 もしも戦わずに済むのなら、癒やしの風を使うことがあるのではないか。
 そう思い、準備をしていたのだ。
 だがライブレッドは、それを望まなかった。
 歩み寄るばかりが、『救い』ではない。
 彼は、そう示したのだ。
「……生前のままの貴方ならば、きっと、私も助力を願いでた。……だけど」
 これまでの戦場でのやりとりを思い返しながら、リーヴァルディは、言った。
「歪みに歪み、狂いに狂い果てた結果、マトモに見えるだけの貴方に、そんな事を頼む気はない」
 ライブレッドは、何も言わなかった。
 言おうにも、言えなかっただろう。
 その顔色は血の気をうしない、青白く、黒翼を広げた姿からは想像もできないほど儚く見えた。
 ――彼は、オブリビオン。
 ――『過去の残滓』であり、世界を滅ぼすもの。
「……私が過去より現れるオブリビオンを討つのは、世界を滅ぼすべく生まれた存在だから……だけではない。……望まぬ眠りから目覚めた者たちの生を、終わらせて。彼らの歪められた魂に、再び安息を与えるためだもの」
 言葉にしながら。
 オブリビオンと、こうして穏やかに話すこともあるのだと。
 不思議に思いながらも、リーヴァルディは続けた。
「……だからどうか、ともに闘う代わりに託してほしい。歪められてなお、民を護ろうとしたその想いを……。そして安らかに眠ってほしい。それが私の願い――」
『……のぞんだ……のだ』
 リーヴァルディが言い終えるよりも早く、オブリビオンがつぶやいた。
 血紅の瞳から、光がうしなわれていく。
 死の間際にあって、オブリビオンはなおもその志を曲げなかった。
『わたしの、いしは……。だれにも、おわせ…………な……』
 今にもいのちの灯火が消えようとしているその手を、ハルアは握り締めた。
 己の身が血に濡れることも、厭わずに。
 優しさや慰め、祈りをこめて、魂に届くようにと、想いをこめる。
「あなたは、解っていたんですね。自分が、もう、人ではない事を。……わたし達は、そんな存在を、骸の海へ還すために来ました」
 ぬくもりの消えていく手を、ハルアが包み込むように抱いて。
 滑り落ちそうになる手指を、繋ぎとめる。
 いのちがきえていく。
 とおざかっていく。
 ――助けたい。
 ――助けたかった。
 だけどもう、それは二度と叶わないとわかっていたから。
 ハルアは目に見えずとも笑顔で送ろうと、泣きながら笑顔を浮かべた。
「ライブレッドさん。もう、憎み、狂い続けなくていいんです。……その翼、少し休めましょう?」
 その声は、男の耳に届いたかどうか。
 オブリビオン――護衛兵ライブレッドと名乗ったオラトリオの身体は、身体の端から灰と化し、音もなく崩れていった。
 最後に残った薊の花を手のひらに乗せれば、間もなくその花も、砕けて消えて。
 ――だれの手も下さずに還すことができればいいと、思っていた。
 猟兵の手ではなく、彼自身の意思で。
 けれどライブレッドは、最期まで己の意思を曲げることはなかった。
 それは、もしかしたら。
 『狂った己の後始末』をも含めた、彼なりのやり方であったのかもしれないと。
 今更ながらに、気づいて。
「……庇ってくれてありがとう。そして、ごめんなさい……ごめんなさい……」
 嗚咽をあげるハルアの声が、大広間に響き渡る。
 己の不甲斐なさを詫びながら、ハルアは誓った。

 ――もしもあなたのことを、世界が忘れてしまっても。
 ――わたしが、ずっと覚えているから。


 その後。
 『呪詛天使』が支配していた領地は、『人類砦』の協力を得て人間たちの拠点となった。
 その地を訪れたなら、きっと、おしゃべりな少女と出会うことだろう。
 少女は、この領地がまだオブリビオンに支配されていた頃を思い出して、言うのだ。
「あのね、その人は、荒野に倒れたあたしを狼の群れから救ってくれたの! 大人よりも大きな、大きな黒い翼を広げて。まるで、天使様みたいに舞い降りてきたんだから……!」

 人々を虐げていたのも、黒き翼の天使なら。
 少女を救ったのもまた、黒き翼の天使だった。
 ゆえに、人々はこの砦を『黒翼砦』と名付けた。
 ひとを脅かし、救いもした、『黒き翼のオブリビオン』のことを、忘れぬように。
 いのちあるかぎり。
 生まれ落ちたこの世界で、生きていくために――。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月14日
宿敵 『護衛兵ライブレッド』 を撃破!


挿絵イラスト