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HEAVEN'S PRISON 黒翼のシ者(作者 西東西
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●黒翼のシ者
 ダークセイヴァーにて。
 夜の荒野に、まだおさない少女が倒れていた。
 見るからに痩せ細った手足に、ぼろぼろの衣服。
 ずっと歩いてきたらしい。
 裸足の足裏は血と砂にまみれ、赤黒く染まっている。
 立ちあがろうともがいた爪跡が地を抉ったが、ふたたび立ちあがるだけの気力は、もはや少女には残っていなかった。
 枯れ果てた世界に、ヒトの血の匂いはより鮮明に漂うのだろう。
 さえぎるもののない荒野の地平に、『飢えた狼』の群れが見える。
「……やっと、ここまで……、これたの、に……」
 命からがら、オブリビオンの支配から逃れてきた。
 領地の外へ行けば、生きながらえることができるのだと、信じていた。
 それなのに。
 現実は残酷で、どこまでいっても絶望しかなくて。
 ――死が近づいてくる。
 視界の端で、一斉に『飢えた狼』たちが駆けだした。
 終わりだ。
 そう思った瞬間、少女の胸の内に激しい怒りがわきあがった。
 だれにも届かないかもしれないけれど。
 それでも最期まであがくのだと、叫ぶ。
「いやだ! しにたくない! あたしはまだ、しにたくない……!」
 獣のあぎとが、少女に迫ろうとした、その時だった。
 銀の光が弧を描いたかと思うと、獣の首がごろんと転がる。
「ひっ……!」
 息をのんだ少女の前に、剣持つひとが舞い降りた。
 黒翼の、青年の姿をしたオラトリオ。
 広げた両翼は、身長をも超えるほどに大きくて。
 白と金を基調とした制帽と制服に身を包み、真紅の瞳を獣たちに向けている。
『――民を傷つけたが最後。お前たちの「終焉」は決まっている』
 宣言するなり、黒い翼をはためかせ舞いあがると、一瞬にして、獣たちの群れを蹂躙し尽くした。
 獣たちのすべてが息絶えた後。
 黒翼のオラトリオは返り血を浴びた姿のまま、少女に迫った。
『お前を虐げた者は、どこだ』
 その瞳に狂気を感じ、少女は震えながら、空の果てを指さした。
「あたしがいた領地は、この先よ……! そこに『呪詛天使』がいるわ……!」
『民を虐げし者。滅ぼさなければ――』
 うわごとのように、繰りかえして。
 白金の制服に身を包んだ青年は、一目散に飛び去っていった。

●『天獄』へ
 ――ダークセイヴァーのオブリビオンが最も忌み嫌うのは、猟兵でもなければ、人間でもない。
 なんらかの理由で発狂し、他のオブリビオンを殺しはじめる『同族殺し』。
「娘の遭遇した『同族殺し』を利用し、強大な『オブリビオン領主』を討つ。それが、今回の任務目標の1つとなる」
 グリモア猟兵のヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)が、集まった猟兵たちの顔を見やり、厳かに告げる。
 なお、かの少女は一命をとりとめ、今は『人類砦』の保護下にあると伝えれば、猟兵たちから安堵の息が漏れた。

「『同族殺し』は、娘が元々暮らしていた領地へ向かった。かの地には、『呪詛天使』と呼ばれるオラトリオのオブリビオンが君臨し、恐怖によって領地を支配している」
 そこでは、「死こそが真の救済である」と掲げ、人々の命を理不尽に奪うことが毎日のように行われているという。
「『同族殺し』は、オブリビオンの領主館を強襲する。お前たちは館に押し入る『同族殺し』の動きを利用し、『呪詛天使』を撃破してくれ」
 そして。
 この任務には、続きがある。
「『同族殺し』もオブリビオンだ。過去の残滓であるオブリビオンは、いかなる場合であっても骸の海へ還さねばならない」
 ――たとえ、同情の念を抱こうとも。
 2体のオブリビオンを骸の海に還すことが最終目標であると繰りかえし、ヴォルフラムは言った。
「……娘の話では、『同族殺し』の言葉は一方的に投げかけられていた。そも、『発狂している』のだ。まともな会話は期待できないが……。『声は届く』かもしれん」
 必要であれば試してみるがいいと、静かに告げて。
「武運を祈る」
 ヴォルフラムは手のひらにグリモアを掲げ、転送ゲートを開いた。

●破滅のシ徒
 黒い、大きな翼をもつ青年が、オブリビオンの領主館前へと舞い降りた。
 扉から窓枠、柱に至るまで精緻な彫刻を施した館の前には、翼もつ者の像がいくつも並んでいる。
 門前には、黒衣に身を包んだ殉教者の女たち――『破滅の使徒』が、それぞれ大鎌を手に待ち構えていた。
『狂気に堕ちた憐れな同胞――「同族殺し」よ』
『わたくしたちの愛する「狼」を殺したのは、貴方ですね』
 荒野で倒れた少女を襲った獣は、この女たちの差し金だったらしい。
 青年は女たちに応えるでなく、憎悪に燃える真紅の瞳を向けたまま、言った。
『民を虐げた者は、どこだ。民を虐げし者は、滅ぼさねばならない』
 銀の剣を突きつければ、女たちは艶然と嗤った。
『憐れなる「同族殺し」よ』
『ヒトであれ同胞であれ、「絶望」から救済するすべは、ただひとつ』
『我ら「天使」の愛をもって、貴方に死をもたらしましょう』
『死を讃えましょう』
『死こそが、至上の「救済」なのです』
『死を』
『死を』
『死を』

 ――同族殺しに、『救済(死)』を。





第2章 ボス戦 『呪詛天使の残滓』

POW ●呪詛ノ紅剣ハ命ヲ喰ウ
【自身の身体の崩壊】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【呪詛を纏う紅い剣】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD ●我ガ
自身が装備する【剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ ●黒キ薔薇ハ世界を蝕ム
自身の装備武器を無数の【呪詛を纏った黒い薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアンナ・フランツウェイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 
※プレイングは、断章追加後に募集開始します。
 今しばらくお待ちください。
 
 

 押し寄せる『破滅の使徒』を殲滅した猟兵たちは、黒翼の青年の後を追い、館の奥へと駆けていた。
 その、最奥。
 とつじょ視界が開けた先には、高い天井の大広間があった。
 聖堂のごときステンドグラスの壁に、魔法陣を描くかのように配置された数多の蝋燭。
 薄闇に沈んだ空間には、真紅に染まった剣を手に、ひとりの少女が佇んでいる。
 世界を憎み死んでいったオラトリオを素材に、強力なオブリビオンとして生み出された成れの果て――その、失敗作。
 憎しみのまま人間を殺戮するうちに『破滅の使徒』たちに祀りあげられ、黒翼の天使としてこの領地に君臨していたオブリビオン。
 それが、『呪詛天使の残滓』だった。
『――我ガ領地ノ 静寂ヲ破リシ者ハ 誰ダ』
 長い黒髪には、黒薔薇が咲きほこり。
 華奢な背には、青年と同じ、黒き翼を背負っている。
 いびつに響く声が、館への侵入者たちを叱責して。
 問われ応えたのは、同じオブリビオンである『同族殺し』だった。
『民を虐げたのは、お前か。民を虐げし者は、滅ぼさねばならない』
 真紅の剣を手にした少女と、白銀の剣を手にした青年。
 黒い翼をもつオラトリオ同士の戦いが、始まろうとしている――。

 *

 2体のオブリビオンを前にし、猟兵たちは、グリモア猟兵の言葉を思い返していた。
 ――『同族殺し』を利用し、強大な『オブリビオン領主』を討つ。
 まずは、『呪詛天使の残滓』を撃破することが大前提。
 オブリビオン2体を同時に相手取るのは難しいが、1体ずつの撃破なら、集まった猟兵たちの力で達成できるだろう。

 なお、先の道行きで行動を阻害しなかったことから、「猟兵たちは優先排除に値する敵ではない」というのが、今現在の『同族殺し』の認識のようだ。
 よって、この関係性を維持するのであれば、青年が「理由なく猟兵に攻撃を仕掛けることはない」。
 しかし。
 任務を完了するには、いずれ『同族殺し』も殲滅せねばならない。
 先の戦いを見越して、三つ巴の戦いの中で『同族殺し』に攻撃を仕掛ける選択をしたならば。
 その時は、『同族殺し』の青年も、全力をもって猟兵たちを滅ぼしにかかるだろう。

 いずれの行動をとるにしても、最優先事項は『呪詛天使の殲滅』だ。
 猟兵たちは様々な思いを胸に、己のなすべきことを決め、動きだした。
ハロ・シエラ
どうやら今の所は作戦も上手く行っている様ですね。
欲を言えば共倒れを狙いたいですが……そこまで上手くは行きませんか。
敵の力も強大です、ここはまず片方から片付けましょう。

先に片付けるべきは呪詛天使の残骸。
同族殺しの邪魔はせず、援護に回りましょう。
戦いを長引かせれば、同族殺しも傷つくでしょうから。
ですが、呪詛天使のユーベルコードで致命傷まで負わせる訳には行きません。
呪詛を纏った薔薇の花びらで攻撃すると言うのであれば、こちらは【破魔】の力を乗せた風のユーベルコードで吹き飛ばします。
呪詛を【浄化】し、邪悪な天使を傷つける事も出来るでしょう。
頃合を見て風に乗り、レイピアで【切り込み】をかけるとします。



 ふたつの黒翼が羽ばたき、それぞれが競うように中空へと舞いあがる。
 一帯に突風が巻き起こったかと思うと、灯されていた炎のいくつかが、かき消えて。
 『呪詛天使』が手にした紅剣を掲げると、一瞬にして、周囲に数十の複製剣が顕現する。
『我ガ剣カラハ 逃レラレヌ』
 声とともに『同族殺し』へと剣先を向ければ、複製された剣という剣が、群れを成して襲いかかった。
 しかし、黒翼を広げ防護を固めた青年の護りは厚く、ただひとつの傷をつけることさえ叶わない。
 攻撃をしのいだ隙に、『同族殺し』は高速移動からの追尾羽根による反撃で、『呪詛天使』へとダメージを与えていく――。

 舞い落ちる黒薔薇と羽根。
 剣と剣、翼と翼が激しく打ち鳴らされ、ぶつかりあっては互いの身を裂いていく。
 ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は上空の2体の動きを注視しながら、胸中でつぶやいた。
(「敵それぞれの力は、強大。2体を一気に仕留めることは難しくとも、いずれ双方傷ついていくでしょう」)
 現在のところは、強固な護りをもつ『同族殺し』が優勢らしい。
 『呪詛天使』は己の身を崩壊させる技を使用する――その身は失敗作であるがゆえに、身体に負荷がかかるのだろう――こともあり、このまま戦いを長引かせれば、『同族殺し』が勝利するのは明白だ。
(「今のところ作戦は順調です。欲を言えば、共倒れを狙いたいですが――」)
 ふいに、『呪詛天使』が手を打ち鳴らした。
 次の瞬間、群れ成していた剣が、空を覆い尽くすような薔薇吹雪と化して。
「さすがに、そこまで上手くはいきませんか」
 ハロはすかさず短剣を構え、迫ってきた花びらを斬り裂いた。
 そのまま軽快な身のこなしで、次々と薔薇吹雪をかいくぐっていく。
(「――万が一にも。『呪詛天使』の勝利が、成立することのないように」)
 ハロはさらに一手、邪悪な天使を傷つけるべく、駆けた。
 ふわり空が動き、うつくしい漆黒の髪をかき乱したが。
 構わず、踏みこんで。
 叫ぶ。
「この風に乗り、音速を超えて……!」
 【破魔】の力を乗せたユーベルコード――『嵐の出撃(ライディングオンザウィンド)』からはなたれた暴風が、黒薔薇の花びらを一気に圧し流す。
 暴風に見舞われ『呪詛天使』が体勢を崩した隙に、ハロは『リトルフォックス』の名を冠するレイピアで、容赦なくその身を貫いた。
 傷口を押さえ、うめいた『呪詛天使』が舞いあがる。
 ふいに強い風が吹いたかと思うと、ハロの前に『同族殺し』が舞い降りた。
 オブリビオンの血に濡れたレイピアへ、鋭い視線を向けている。
 ハロはできるだけ感情を抑え、赤い瞳で睨みつけながら、言った。
「……敵は同じですから、邪魔はしません。私は、このまま援護に回ります」
成功 🔵🔵🔴

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

たとえ世界を憎み死したオラトリオが素材としても
オブリビオン化した時点で、貴様は世界の敵だ
理由がどうであれ、破壊を齎しているのも事実だしな

ならば俺はここで貴様を狩る
…それだけの話だ

念力で操作される剣が厄介だな
「第六感」で俺に向かう剣を察知してその軌道を「見切り」回避
必要あれば「怪力」で黒剣で受け止め「武器落とし」

剣の雨を潜り抜けたら
「2回攻撃、怪力、鎧砕き」+【憎悪と闘争のダンス・マカブル】
黒剣の18連撃で翼ごと叩き斬って落としてやる!
※味方は斬りません

同族殺しは1章同様利用
無暗にこちらが消耗する必要もないから手は出さないが
何れ討つ敵ではあるから好きにさせるさ


パラス・アテナ
呪詛天使
アンタは何を呪う?
自分を憎しみの死へ追いやった誰かか
自分をオブリビオンへと改造した誰かか
使徒共に祭り上げられてその呪詛は消えたのかい?

自身の身体の崩壊を代償にするなら先にUCを使わせる
崩壊した箇所を見極めて重心が狂ったらそこを狙って攻撃
クイックドロウ、一斉発射、2回攻撃、鎧無視攻撃で
ピンポイントに攻撃して体勢を崩させる
できれば剣を持った腕を狙って攻撃
取り落とさせればなお良しだ
そこへ指定UC
眉間を狙って弾丸をくれてやるよ

敵の攻撃は第六感と見切りで回避
できなきゃ武器受けで軽減しつつ激痛耐性と継戦能力で戦闘続行

詮無いことを聞いちまったね
答えが何であれアタシはアンタを倒すだけだ
骸の海へお還り



 ハロ(f13966)が『同族殺し』へ援護の意思を告げていた、その時。

 上空へ逃れた『呪詛天使』の動きを、パラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は見逃さなかった。
 先制攻撃を加えようと二丁拳銃を構え。
 そこで、ふいに動きを止める。
 捉えたのだ。
 『呪詛天使』の腕に、ぴしりと、ひと筋の亀裂が入るのを――。
『――喰ラウガイイ 呪詛ノ紅剣ハ 命ヲ喰ウ』
 血紅の剣が呪詛をまとった瞬間、パラスは動いた。
 まっすぐに伸べた両手の内には、鈍色の鋼が光って。
「呪詛天使。アンタは何を呪う?」
 問いに続けた初撃は、IGSーP221A5『アイギス』の麻痺弾を射撃。
 大口径の実弾がオブリビオンの身体に電磁波をはしらせた後、『呪詛天使』の裂傷めがけ、EK-I357N6『ニケ』の連射を叩きこんでいく。
 敵の防具などものともしない。
 眼にもとまらぬ射撃は、空へ逃れていた『呪詛天使』の傷を、翼を、ピンポイントに撃ち抜いていく。
 傷を受け、身体にいくつもの穴を開けながら、オブリビオンは周囲に呪詛をまき散らしていった。
『――我ガ領地ノ 静寂ヲ破リシ者ハ 誰ダ』
 黒の翼で空を打ち、反撃とばかりに血紅色の剣を振りあげる。
 その一撃を第六感と見切りで回避すると、パラスは『呪詛天使』から目を逸らすことなく弾丸を再装填した。
 ――呪うは、己を憎しみの死へ追いやった誰かか。
 ――あるいは、オブリビオンへと改造した誰かか。
「使徒どもに祀りあげられて、その呪詛は消えたのかい?」
 避けた弾丸が、頬を引き裂いて。
 亀裂から覗いたのは、血紅色に染まった虚ろだった。
 できれば剣持つ腕を狙いたいところだが、絶えず動き滑空しながら斬りかかってくる対象に狙いをつけるのは、いかにパラスとはいえ至難の業。
 で、あれば。
『――我ガ呪剣ノ 贄トナレ』
 再度斬りかかってきたタイミングを狙い、大型銃『アイギス』で攻撃を受けとめる。
 ガチリと、鈍い音。
 しかし、敵自ら至近距離に飛びこんできた、この好機を逃しはしまい。
「こいつの前に出たのが、運の尽きだよ」
 問いへの答えが何であれ、己は敵を倒すまで。
 何度も死線を抜けた相棒――『ニケ』を『呪詛天使』の眉間に押しつけ、告げる。
「骸の海へお還り」
 パラスが引鉄を引いたと同時に、『呪詛天使』はパラスへ体当たりを仕掛け、その身を剣で貫いた。
 傷を受けたパラスの銃口が逸れ、オブリビオンのこめかみを銃弾が引き裂く。
 古びたビスク・ドールのように。
 血が流れぬ代わりに、顔中に亀裂がはしる。
 虚ろの身体でも、痛みを感じることはあるのだろうか。
『――アアアアアアア!!』
 ぼろぼろと崩れゆく顔を押さえ、悲鳴をあげる『呪詛天使』の周囲に、おびただしい数の剣が顕現し、雨のごとく戦場に降りそそいだ。
「パラスさん!」
 傷を負ったパラスから敵視を奪おうと、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)が声をはりあげ、迫った。
「たとえ世界を憎み死んだオラトリオが素材だとしても。オブリビオン化した時点で、貴様は『世界の敵』だ。――ならば俺は、ここで貴様を狩る!」
 誰の眼にも明らかな敵意をはなてば、手負いの『呪詛天使』は、簡単に標的を敬輔へと移した。
 問題は、降りそそぐ剣の雨も、敬輔のもとへと集中するようになったことだ。
 いかに第六感を研ぎ澄まそうと、四方位から迫る剣すべてを回避することはできない。
 剣の半分は敬輔を斬りつけた。
 金属鎧をまとっていなければ、全身傷だらけに成り果てていたところだ。
 しかし、敬輔は集中力を切らすことなく剣の軌道を見切り、身をかわすと、間合いに飛びこんできた一部の剣を、振り下ろした黒剣で怪力まかせに叩き折る。
 剣の雨がやんだ。
 見あげれば、聖堂のごときステンドグラスの壁を背景に飛ぶ『呪詛天使』の姿がある。
 剣持つ手を伸べたとて、届かない位置。
 それでも敬輔は諦めず、跳躍から剣を振り払おうと、身構えた時だ。
 ――視界一面に、影が落ちた。
 天上から舞い降りる、黒い大きな翼。
 もう1体のオブリビオン――『同族殺し』が、『呪詛天使』の真上から圧し掛かるように斬りかかったのだ。
『愚かな領主。民を虐げし者は、滅ばねばならない』
 『同族殺し』に比べ小柄な『呪詛天使』は、たまらず地へと堕ちていった。
 2体がぶつかりあうごとに、黒の羽根が宙を舞う。
 地上には、敬輔の姿があって。
 右の青の瞳が、つよく、輝いていく。
 ――身の内で、強い闘争心がふくれあがっていくのがわかる。
 彼は理解している。
 この激情はいずれ、己を傷つけるのだと。
 しかし。
 己が身を地獄にくべてでも、敵は、倒さねばならぬ。
「怒りと憎悪、そして闘争心を力に替えて。……俺は、貴様を斬り刻む!!」
 黒剣の柄を、しかと握りしめ。
 『同族殺し』と組みあうように堕ちてきた『呪詛天使』へ、切っ先を向ける。
 ――ユーベルコード『憎悪と闘争のダンス・マカブル』。
 一撃! 二撃!! 三撃!!! 四撃!!!!
 舞うように剣を返しては、反撃の隙を与えぬ間に、さらに間断なく追撃を重ねていく。
 剣は十八度にわたって『呪詛天使』を斬りつけたが、その黒い翼を斬り落とすことは叶わなかった。
 とはいえ、圧倒的な斬撃によって、その身はズタズタに引き裂かれている。
 青の瞳から光が消えゆくなか、敬輔は抗いがたい衝動が迫るのを感じながら、『同族殺し』を仰ぎ見た。
(「今は手を出さず、好きにさせるさ。いずれ、必ず討つ――!」)
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴