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【Q】間に合うか? 絶望打ち砕く救済者たち!

#ダークセイヴァー #【Q】 #闇の救済者

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#ダークセイヴァー
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#【Q】
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#闇の救済者


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●ホープレス・ヴィレッジ
「ごめんね……」
 母が涙を流して、謝ってくる。
 父は無言だが、やはり涙を流している。
 そんな二人の様子を視界に収めながら、娘は穏やかな表情をしており、実際に穏やかな心持ちでいた。二人が自分を愛していることについて、娘は一片の疑問も抱いていなかった。
 愛しているからこそ、自分を殺そうとしているのだ。この世界でこれ以上生き長らえても幸せになれないのはわかりきっているのだから、それは当然の帰結である。そして彼らは、自分の死の苦しみが少しでも短くて済むよう、自分の首に掛けた縄を二人がかりで引いている。彼らは二人とも自分と同様の枯れ枝のような細腕であって、そんな彼らが速やかに自分を殺すには、そうするのが最も適していると考えたのだろう。
 ああ、ありがたい。
 二人の愛を感じているがゆえに、娘は両腕をだらりと下げ、全くの無抵抗で最期を迎えた。

●希望の光が射すまでは
「正しく言うなら、そこは村などと呼べるような代物でもないのです」
 苦り切った表情を浮かべつつ、田丸・多摩(謎の裏方お姐さん・f09034)は語る。
「その土地を統治する吸血鬼は、人間を単純に食料としてしか見ていません。そして『食いでがない』と断じられた人間たちは粗悪な環境のコロニーに隔離され、吸血鬼の配下のオブリビオンらに与えられます」
 与えられた後に餌になるのか玩具になるのかは、そのオブリビオンら次第だ。まあ、どちらにせよ碌な末路が待っていないことは確定している。
 今回、猟兵たちが向かうのは、そういった『廃棄場』の一つである。
 そこに集められた人々は、心も体も限界を迎えている。そして、これ以上生き地獄が続くよりはと、集団での心中を試みようとしている。
「まず皆様には、これを阻止していただきたいのです。手段は問いません。少々手荒でも、とにかく迅速に止めることさえできれば、後のことは『彼ら』に任せれば大丈夫なはずなので」
 彼らとは、猟兵の活躍に触発されて吸血鬼への反逆を志す者たち――『闇の救済者(ダークセイヴァー)』である。
 予知によると、救済者たちは避難先の拠点とそこまでの経路を万端整えて『廃棄場』に侵入し、村人たちを助け出すという作戦を立てている。ところが間の悪いことに、彼らが到着するより先に村人たちが全員自殺してしまう、というわけだ――このままでは。
 その運命をねじ曲げるため、彼らに先んじて『廃棄場』に至り、集団自殺を阻止する。それが、猟兵たちの第一の目標となる。
「……不幸中の幸いと言いましょうか、領主の吸血鬼にとって『廃棄場』はさほど重要な拠点ではありませんので、警戒、監視の類は甘めです。配下オブリビオンたちが駐屯してはいますが、指揮官級の強力な個体がいるわけではないので、皆様にとってはそう難しい戦いではないでしょう」
 強いて留意点を挙げるなら、領主吸血鬼への報告を防ぐため、その場にいる配下オブリビオンの全滅を期さなければならないというころだろうか。
「本当なら――」
 うっすらと語気に怒りをにじませつつ、多摩が言う。
「本当なら、胸クソ悪い領主もブッ潰したいところではあります。ですが、今回は村人たちや救済者たちの安全を確保するのが最優先です。禍根を絶つのはまたの機会として、救出活動に全力を注いでくださいますよう、お願いします」
 と、多摩は重々しく頭を下げた。


大神登良
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良(おおかみとら)です。

 ダークセイヴァーに現れ出した吸血鬼への抵抗勢力『闇の救済者』と連携し、絶望のどん底に落とされた人々を救出していただきます。

 第一章は、集団自殺を図る村人たちの説得です。言葉を尽くすもよし、説得(物理)でも構いません。助けた村人たちは救済者たちによって新しい安全な村へ誘導されます。
 第二章は、村に駐留するオブリビオンたちの殲滅です。領主への報告を阻止する必要があるので、討ち漏らしがないように工夫すると良いことがあるかもしれません。
 第三章は、避難した先の村で慰問を行います。劣悪な環境で心身共に弱り切っている村人たちを、何であれ得意な方法で元気づけてください。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 冒険 『希望無き世界で生きる意味とは』

POW   :    力づくで押さえ付け自殺を止める

SPD   :    素早く自殺手段を封じて止める

WIZ   :    生の希望を説いて自殺を止める

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『廃棄場』の人々
 ただ一つ残った命だけは好きにはさせず、自らの手で終わらせることが、彼らに対する唯一の意趣返しになる――などというような、気骨を含んだものでは決してない。
 ただの逃避だ。生を諦め、死に逃げるだけのことだ。死に安息を求めるより他に、永の苦しみから抜け出す手立てがない。ただ、それだけのこと。
 その道を選ぶ上は、誰一人として遺すわけにはいかない。もしも遺る者はいたら、見せしめに、あるいは腹いせに、何をされるかわかったものではないからだ。
 まずは赤子を。
 次に子供を。
 最後に大人が。
 確実に全員が死ねる心中を敢行する。
 長幼男女の別なく絶望に満たされた場所で、最悪にして最哀なる悲劇が幕を開けようとしていた。
レパル・リオン
やばァァーいッ!!
応援ヒーローショーを開催するヒマもないくらい、人々が絶望真っ只中!?
助けられなきゃ…ヒーローじゃない!行くわよあたし、マジカル大分身!

とにかく分身して人手を増やすわ!そして片っ端から人々をハグするわよ!ほーら、もふもふーっ!ぎゅーっ!元気出してー!おねがーい!
そのまま心中に使うロープとか道具は没収しちゃうわねー!

後の事とか気にしてられない!今は強引にでもみんなを元気づけて、全力で助けていくわよ!


ニール・ブランシャード
急がないと…!あまり猶予はないはず!

着いたらすぐに声を掛けて村人たちを止める!
「だめだ!!お願いです、待って!死なないで!!」
ひとまず止められたら説得を始めよう
ごめんなさい…遅くなりました
ぼくらは、あなた達をここから逃すために来ました。
信じてもらえそうになければ…
彼らが死ぬのに使おうとしていた手段を、「怪力」で、なるべく派手に壊す。
もし大木に縄を吊り下げようとしてたんなら
その木を引っこ抜くか切り倒す!

ぼく、言葉で説得するのはあまり上手じゃないから…
力があるところを見せて、村人さんたちに「これなら信じていいかも」って思って欲しいんだ。

死ななくていいんです。
生きてここから出ましょう。
全員で、です。



●望むのは許しか、救いか
 眠っている赤子を抱えた女が、はしごにすがりつくようにしながら樺の木を登っていく。
 梢までいかずとも、中腹ほどの高さから投げ落とせば、赤子は恐らく即死することだろう。苦しむ暇などなく。
 彼女が赤子に施し得る慈悲は、これくらいしかない。だからといって鬼畜の所行に変わりないことは自覚していたし、地獄があるならそこに落ちるに違いないとも思う。それで良い。幼い命を心中に巻き込んでおいてなお、許しなぞは望まない。断罪の炎で焼かれることは、むしろ救いでさえある。
「私も、すぐに後を追うから……」
 乾いた肌に、微かな涙が一筋、流れる。
 それと同時だった。
「だめだ!」
 大砲が鳴ったような喚声が女の耳をつんざく。
 女は反射的にそちらに振り向いた。が、何が現れたと判別する間もなく、全身を不意の浮遊感が襲う。
「え――」
 浮遊感は即ち、足場たるはしごが失われたことによって落下していることを示していた。
 女はとっさに、腕の中に赤子を抱え込んだ。それは、いずれ来る衝撃から赤子を守るべく、己の身を盾にする姿勢だった。
(なぜ?)
 胸中で驚愕する。赤子を殺して自分も死ぬため、はしごを登っていたのだろうに。
(違う、こんなはずじゃ――)
 本当に違うのか。本当は違わないのか。
 何を、どこから『違えて』いるのか。
(誰か――!)
 呼んで、本当に誰かが来たとして、何を願うのか。
 頭の中が真っ白になる。
 次の瞬間、ドスンと背中に伝わった衝撃は、息を呑むほどに――優しかった。
「……!?」
 焦点の合わない目が移ろう。
 ぼんやりと視界に入ってきたのは、漆黒の塊だった。小山ほどもあるヒグマのような巨躯……のように錯覚して一瞬焦るが、目の焦点が合ってしまえば、それは並より気持ち背が高い程度に過ぎない人間だとわかった。全身を隙間なく甲冑で覆っており、中身の容貌はうかがい知れないが。
「ごめんなさい、遅くなりました」
 兜からこぼれ出る声からすると、甲冑の人物は男、それも青年か少年といった程度の年齢のそれと推測できる。
「ぼくらは、この村の皆さんを逃すために来たんです」
「逃す……?」
 甲冑の青年――ニール・ブランシャード(うごくよろい・f27668)の言葉に、女は力なく失笑した。
「……そんな、夢みたいなこと……馬鹿げてる」
「そんなことないよ!」
 ニールの反対側から、明るいピンク色のもふもふした影が不意に割り込んでくる。人狼病に罹患した獣人のようだが、どこかそれとは雰囲気がことなるようにも見える。
「とにかく元気出してー! ほら、もふもふだよ! ぎゅーっ!」
 赤子ごと、強引に抱きすくめられる。
 手入れの行き届いたレパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)の体毛は、上質な毛布のごとき肌触りを誇る。女にとってそれは、生まれてこの方味わったことのない感触だった。
 まあ、だから何だということもない。女にとっては。
 落下の衝撃で目を覚ましていた赤子が、レパルの腕にしがみつく。そして、じゃれるような仕草をしつつ、うー、うー、とか細い声を上げた。
「――……!」
 生の中に喜びを見出そうとしているのか、この子は。こんな地獄の中でも。
 目を大きく見開いた女の背中を、レパルは優しくさすった。
「夢物語でも何でもないよ。もう大丈夫」
「あなたたちは……」
 ふっ、と頭を起こして首を巡らせた拍子に、周囲の光景が目に入る。
 そこで女は、驚きのあまりさらに大きく目を見開くことになる。
 レパルと全く同じ顔、同じ服装、同じ背格好の獣人が、幾人も駆けずり回っている。双子だとか三つ子だとか、そんな話ではあり得ない。ぱっと見えただけでも十人前後、視界の外には恐らくその数倍の『レパル』がいるだろう。
 それがレパルの【分身(ウルブズラッシュ)】によるものであることなどは、女には知る由もない。ただ、それが超常の能力によって成された現象に違いないことはわかる。
 さらに、周囲に目をやったことで気付く。女は、自分が落ちたのは単にはしごを取り払われたせいだと思っていたが、違う。はしごごと樺の木が根元の辺りで断ち切られているのだ。あの、ただの一瞬で。人間業ではない……ということは、ニールもまた超常存在ということ。
(この……この人たちは)
 逃がすと言った、大丈夫だと言ったのは、気安めでもなければ大言壮語でもない。実際に実現可能なこととして口にできるくらい、自身と実力があるからこその言葉なのだ。
 女は無意識に、赤子を抱きしめた。ごく純粋に、守り愛おしむために。
 鬼畜の慈悲など、最早必要なくなったのだ。
 彼らが、来た。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリステル・ブルー
連携アドリブ歓迎
他の猟兵さんが望むなら積極的に協力します!

●行動WIZ
「それは絶対に、絶対に止めなくちゃいけないね。そんな未来なんていらない」
『廃棄場』とは吸血鬼達は一体何様のつもりなんだろうね? 僕も領主は潰したいけど、それはまたの機会だね。

とにかく現地では説得するよ。
「僕も君たちと同じ支配されていた側だから、君たちの絶望はよく分かる。今『闇の救済者』が君たちを救おうとしてるんだ。僕も、彼らの希望と君たちの命、どちらも救いたい」
少しでも鼓舞できればいいな。医術とかで簡単な傷なら手当てするよ。無理に決行するひとたちがいるなら【指定UC】で眠らせる。絶対誰も攻撃しないよ、ただ眠ってもらうだけ。


備傘・剱
人間、追い詰められると碌な事、考えねぇもんだよな
どうした物か…

とりあえず、村についたら、自殺するにも、そんな腹減った状態じゃ、苦しいだけだろうし、せめて、飯ぐらい、食ってから、もうちょいしっかり考えてはどうだと持ちかけよう

ちょっと待ってもらって、食料を、彼方此方の家や素早く周囲の森から、集めて、全員にふるまえる量を確保するぜ
どれだけやせた土地かはわからないが、探せば食べられる木の根や、木の実、茸に動物ぐらい、いるだろうぜ

で、集めたら調理開始、発動
人間、腹減ってると悪い事しか考えられなくなるもんだ

…ま、なんだ
死にたくなるのは解るが、今は、その時じゃねぇ
此処を助けたいって奴らがもうすぐ来るから、よ


リーヴァルディ・カーライル
…こんな世界だもの。己の生死を選ぶ自由すら奪われる前に、
貴方達が自らの意志で死を望むならば止めはしない

…だけどね。死ねば終わりなんて甘い考えを抱いているならば、
そんな幻想は捨てた方が良いと忠告しておくわ?

他の猟兵と連携して飴と鞭の鞭役を担い、
左眼の聖痕に自身の生命力を吸収させてUCを発動
全身を今まで取り込んだ死者達の呪詛のオーラで防御して魔力を溜め、
霊魂の残像を暗視できるように存在感を高め、
死に囚われた村人達を脅して心変わりをするように促す

…貴方達が死ねば間違いなく“こう”なる
世を怨み、人を怨み、永遠に安息は訪れない

…それでも死にたいのなら好きにして?
せめて痛みを感じる間もなく殺してあげる



●安息は何処
「……こんな世界だもの。己の生死を選ぶ自由すら奪われる前に、自らの意志で死を望む気持ち、わからなくもないわ」
 無風の下の湖にも似た光を瞳にたたえつつ、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)がうっすらとため息を吐く。
 それを聞いたアリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)は、赤毛で覆われた狼耳をぺたりと寝かせつつ、言う。
「そう、だね。僕も支配されていた経験があるから、その絶望がどれほどのものかは、身に染みてるよ」
 ゆえに、そう、村人たちが今から採ろうとしている選択について、理解はできる。
 できるが、絶対に認めるわけにはいかない。絶対にだ。
 ここに自分たちがいて、後から『闇の救済者』たちが来るとわかっていて、そんな未来を迎えさせるなど、あり得ようはずがない。
 ドアに手を掛ける暇も惜しく、張り手で吹っ飛ばすかのようにして開ける。
 あばら屋の中には、大人と子供が合わせて二十名弱ほどいる。子供らは神妙な顔で寝そべっており、大人らは薪割り用か何かの斧だの鉈だのを、子供らに向かって振り下ろそうとしているところだった。今は、不意の闖入者に驚いて手が止まった状態だが。
「――ふッ!」
 リーヴァルディの手が躍る。得物の形状を柄の長い『明日を祈るもの』とし、精密さと神速ぶりを両立させた刺突によって、村人の体には傷一つ付けず斧や鉈のことごとくを弾き飛ばしてみせる。
「な……」
 予想外に次ぐ予想外の出来事に、村人たちは絶句する。
 そんな村人たちの集団の中に、リーヴァルディはぶっきらぼうな足取りで進み出ていった。
「死ねば終わり、なんていう幻想を抱いているのかもしれないけど……忠告しておくわ。そんな甘い考えは捨てなさい」
 愛想のない口調で言いつつ、己の左目に手を添える。
 途端、リーヴァルディの全身を昏く冷たい何かが覆っていった。
 ただでさえ光量の乏しいダークセイヴァーの中にあって、さらに光をかじり取るような黒影。すすり泣くようにうごめき、もがき苦しむようにわななくそれは、何と看破する力のない者にさえも狂気と恐怖を植え付ける怨霊たちだった。
「ひ――」
「世を怨み、他者を怨みながら死んだ者の末路が、これ。今ここで自ら命を絶てば、間違いなく『こう』なるわよ。永遠に、安息なんて訪れない」
 息を呑んで凍り付く村人たちに、リーヴァルディは淡々と宣告する。
 と、元より碌な体力もないところに【代行者の羈束・断末魔の瞳(レムナント・ゴーストイグニッション)】の邪気に当てられて弱っていた彼らの約半数が、失神してばったりと倒れた。
「あ」
「あ!?」
 リーヴァルディが間抜けな声を上げ、アリステルが焦る。
 医術の心得のあるアリステルは、大急ぎで倒れた村人たちの元へと駆け寄った。手早く彼らの呼吸、脈拍などを確認し……ほっと安堵の吐息をもらす。命に別条のある者はいない。
 無表情のまま、リーヴァルディは頬をかいた。
「……少し、薬が過ぎたかしら」
「いやまあ、やりたかったことはわかりますが」
 絶望の淵にあり、また集団心理にも突き動かされている人々に心変わりをさせることは、容易ではない。リーヴァルディのようなショック療法というか、そういうものも必要ではあるだろう。
 鞭が利いたところで自分は飴の役割を担うか、とアリステルは胸中でつぶやく。
 意識のある――それでも、例外なく腰が抜けている様子の――村人たちに、努めて優しげな声色を作りつつ、語りかける。
「実はもうすぐ、ここに『闇の救済者』が到着するはずなんだ。君たちを救おうとしてる。僕も、彼らの希望と君たちの命、どちらも救いたい」
「……救う、だって?」
 村人の一人が、数度、目を瞬かせる。
「そんなの……どう、やって?」
「まずは、ここよりも安全なところへ避難させるという話だけど……」
 アリステルがそう言った直後、あばら屋にどやどやと新たな闖入者が現れる。
 鉄製とおぼしき飾り気のない鎧兜を身に着けた、三人の男たちである。大げさに見回すまでもなく猟兵の二人と村人たちの姿を認めると、彼らは「あっ」と目を見開いた。
「もしかして、あんたたちは――」
「……噂をすれば何とやら、ね」
 リーヴァルディは微かに笑みを浮かべ、肩をすくめた。

 人間のことごとくが苛烈な圧制下にあるダークセイヴァーにおいて、簡素とはいえ馬車を数台も用意するのは骨が折れたことだろう。
 備傘・剱(絶路・f01759)はそう思いながら、『救済者』たちとともに逃走の最中の村人たちに、串焼きを配って歩いていた。キノコとトマト系の実とウサギの肉を、塩で調味しただけの簡単なものだ。材料は剱自身が森の中やらあちこちを走り回って集めたもので、日照の少なさゆえに実りの乏しい中ではまあこれが精一杯だろう、といった程度であった。
 それでも、劣悪極まる環境にあった村人たちにとっては、いつ以来ともわからないくらいのごちそうと言ってよかった。
「そんな腹減った状態じゃ、苦しいだろう。人間、腹減ってると悪い事しか考えられなくなるもんだ。まずは食え、食え」
「あ、あ……ありがたい……」
 村人は口ごもりながら、剱に礼を言う。ただでさえ充分な栄養が行き届いていないという容態で、状況があまりに急激に変化したため、まだ頭がうまく回っていないような様相である。
 それでも、最悪のコンディション――自殺という目的に突き進むような状態からは脱しているように、剱の目には映った。
 次第によっては道中で村人たちが再び心中を図る可能性があり、それを速やかに阻止できる人材が目を光らせていなければならない。そこで剱が同行しているのだが、どうやら今のところ、その役割が必要になりそうな気配はない。
 さもありなんと剱は思う。『闇の救済者』がいて、猟兵らがいる。助けたいと思い、思うだけでなく行動し、行動するだけでなく成功させるという者たちがいる。それが理解できたならば、今を死ぬ時だなどと定めたりはしないだろう。
(まあ、まだ油断はできないがな。あと二、三往復ってところだが……)
 剱は遠く村のある方に視線を送りつつ、胸中で独りごちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
《白駆》

命が勿体ない
吸血鬼が余興とばかりに悦ぶだけだ

死ぬな!と大声で一喝
漆式で紅狐様を呼んで騎乗し、恰好良く咆哮上げるぜ
神獣と共にする実力者であることをアピール
俯く時間は終わりだ!

説得を聞かない人には紅狐様からジャンプで飛んで凶器を武器落とし
指を針金で縛って猿轡噛ませる
ご飯食べたいってなら猿轡を外してあげよう

手際良いよ盗賊だもん――ルルに裏の顔を告白さ
照れ臭いし利己的な盗賊だと悪党ぶるよ

アタシも食事…いや、先にガキに食わせる
ルル饂飩には油揚げを未練がましく提供するよ

美味いだろ?
生きてりゃもっと食えるんだ

笑顔を見せてアタシも食べるぜ
大人も食え、なくなるぞ

御馳走様
後でシホ特製のボルシチも食べたいな


シホ・エーデルワイス
《白駆》
アドリブ&連携歓迎


ええ
これ以上領主を楽しませる様な事にはさせません!


消化に良いじゃが芋とバターと水を持参

空腹である限り
明るい気持ちにはなれないでしょう
おいしいご飯でお腹が少しでも満たされれば
私達の声は届くはず

火<属性攻撃魔法でじゃがバターを優しさを込めて料理>
旨い匂いで村人を<誘惑しおびき寄せ>て鼓舞しながら振舞う

お粗末様です
おいしいと言って食べてくれる人がいて私も嬉しいです


病や身体の欠損がある人は【祝音】や【復世】で治療

燦は義賊を志した事があったのよね

落ち着いた頃に<コミュ力>で私達猟兵の事を説明


私達は皆さんを助けに来ました
既に安全な避難先も確保しています

もう少し頑張ってみませんか?


ルルチェリア・グレイブキーパー
≪白駆≫

アドリブ歓迎

闇の救済者が来る前に命を絶ってしまうなんて……
そんな事絶対にさせないわ!

私はUC【生ける者全てが孫】でお婆ちゃんの霊達を召喚
アイテムの簡易救急キットと医術の技能で怪我人の治療したり、
心中しそうな村人に説教をして止めたりして貰うわ
「もうすぐ助けが来る、その後で死ぬかどうか考えな。」
ツンツンしてるけど根は優しいお婆ちゃんよ

燦さんは巫女さんで盗賊さんなのね?
義賊!悪人からお金を盗んで皆に分け与える人ね!
格好良いのよ!

シホのじゃがバター私も食べたいわ!
おいしー!皆もあったかい内に食べると良いのよ!

私もアイテムの美味しいうどんをお腹が空いた人に振舞うわ
今なら燦さんの油揚げ付きよ



●駆けるは白銀の絆で結ばれし者たち
「命が勿体ない」
 憮然とした様子で、四王天・燦(月夜の翼・f04448)はつぶやいた。
 それを聞いたシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)が首を傾げた拍子に、彼女の耳元でほころぶエーデルワイスの花が揺れた。
「どういう意味?」
「仮に『廃棄』した人間たちが集団自殺したって話を吸血鬼が聞いたとして、惜しんだり何だりするはずがねえ。あるとしてせいぜい、思いがけない余興だっつって悦ぶだけだ」
「……! 確かに」
 シホが下唇をかむ。
 命あるうちは吸血鬼の領主に虐げられ、命を喪う際にはその無聊の慰めとなる。そんなやるせない理不尽がまかり通るようなことが、許されるだろうか。
 否だ。断じて。
 ゆえに止める。必ず。
「シホはご飯を頼む。ルル、やろう」
「うん!」
 ルルチェリア・グレイブキーパー(墓守のルル・f09202)は白鼠の髪を揺らしてうなずくなり、霊力を練り上げ、研ぎ澄ませる。
「お婆ちゃん、手伝って!」
 直後、小柄な彼女の体からあふれるように、白い餅めいた形状の靄が六、七十ほどの塊を作りつつ飛び出す。
「やれやれ、しかたないねえ」
「あの娘の頼みじゃねえ」
 簡易な図形を貼り付けたような目と口を持つ霊たちは、何やら微妙にツンデレ指数の高い台詞を言い交わしつつ、方々へと散っていった。
 短時間で村の全域にまで手を回そうと思えば、頭数と、そして速さが要る。【生ける者全てが孫(グランマ・テンパメント)】による人海戦術ならぬ霊海戦術は、まさに打って付けだった。
 他方、燦はしなやかに真上に跳躍し、村全体を見渡せるような――逆にいえば村のどこにいる者からも見えるような――高度へと至った。
「紅蓮の鳥居よりおいでませ、紅狐様!」
 【フォックスファイア・漆式(フォックスファイア・セブンス)】により、紅緋色の炎で体を成す巨大な金狐が顕現する。
 晴れざる雲の下に暮らす者たちは知るや知らずや、日輪の威容。それを彷彿とさせる紅蓮の輝きが、村に仮初めの昼をもたらす。 
「死ぬな!」
 続けざまに天の四方まで轟いたのは、燦の大喝。
 目のある者、耳のある者のことごとく、自死のための手を止めて燦に注目する。
 燦はそんな周囲を一瞥するや、不自然な小屋を見つけた。あばら屋ばかりの村内にあって、妙に頑強そうというか、隙間のない造作。内から目張りもされているようで、中の様子は全くうかがえない。
 脳裏に閃きがあり、燦は刀の柄に手を掛けつつ紅狐様の背を蹴って頭から急降下する。
 転瞬、小屋の屋根に向かって雷を帯びた抜き打ち一閃。木っ端をまき散らして生まれた大穴に飛び込み、身を翻して小屋の中に着地する。
 同時に鼻を刺し胸を圧する、毒の空気。
「だよなぁ!」
 逆手で抜き放たれた短剣アークウィンドが爆風を生み出し、小屋の壁の破壊と換気とをいっぺんに成就する。一酸化炭素が押しのけられて酸素濃度の増した空気の中、十数名の村人たちがぐったりと倒れている。
「紅狐様!」
 呼ばれて飛び寄った紅狐様の背中に数名を積み上げ、自らも両脇やら背中やらに持てるだけ持ち上げ、猛然とシホらの元へと駆け戻る。
「頼む!」
「はい!」
 炊事の手を止め、シホが全身を輝かせる。
 と、清浄なる白銀の光に当てられた村人たちが、土気色だった顔色を赤みの戻ったそれへと変化させていく。
「……っ、っ――」
「シホ!」
 ぐらりと前のめりに倒れそうになったシホを、ルルチェリアが抱き留める。
「大丈夫?」
「平気……ちょっと立ちくらみがしただけ」
 毒や病をも癒やす【【祝音】苦難を乗り越えて響く福音(シュクイン・クナンヲノリコエテヒビクゴスペル)】だが、代償に奪われるシホの体力は、決して小さくない。対象が大人数となれば、なおさらだ。
「後はこっちに任せて、あんたは料理に戻りな」
 いつの間にやら、ルルチェリアに喚ばれた霊たちが数名ほど戻っていた。
「毒の空気は、綺麗な空気を取り込むことで追い出されるのさ。ちょいと荒療治だが……」
 言うなり、霊は寝込んだ村人の鼻穴からしゅるんと中に入っていった。
 途端、ビクン、ビクンと村人の体が跳ねる。一瞬心配になる光景ではあるが、しかし、やがて呼吸が安定し始める。どうやら、体を張って酸素吸入器の役割を果たしたらしい。
「――無事っぽいな」
 安堵する燦を横目にして、ふと、ルルチェリアが言う。
「燦さんって、とても足速いのね」
「ん? ああ……盗賊だからな」
「へ?」
 思いも掛けなかった言葉に、ルルチェリアの目が丸くなる。巫女としての燦の姿しか知らないルルチェリアにとっては、意外も意外な情報だった。
 すると、シホが思い出したように言ってくる。
「そういえば、前に燦は義賊を志していたわね」
「ぎぞく……」
 ルルチェリアは手をポンと叩き、目を輝かせた。
「悪人からお金を盗んで、苦しんでいる人たちに配る人ね! 格好良いのよ!」
「そ、そんな良いもんじゃねえよ。ただの悪党だ、悪党」
 頬を微かに赤らめ、燦がプイとそっぽを向く。
 それと前後して、倒れていた村人たちが「ううん……」とうなりつつ目を開けていった。
「気が付いた奴から、飯を食わせな。どいつもこいつも胃腸が弱っているようだから、水分多めで、少しずつだよ」
「うん!」
 お婆ちゃん霊の言葉にうなずいたルルチェリアは、ゆであがったうどんをザルに空けていく。
 そして、はたと思い付いて燦に向き直った。
「燦さん、油揚げ持ってない?」
「――……」
 マイフェイバリットな油揚げを持つというのは、妖狐にとってある種のたしなみともいえ、当然燦も持っている。呼吸一つほど迷ってから、燦は懐から多量の油揚げを取り出し、ルルチェリアに渡した。
「シホのボルシチとトレードだ。後で作ってくれよな」
「え、え? 私の? いや、まあ、いいですけど」
 不意に話に巻き込まれて若干とまどいつつも、シホは了承した。
「それじゃ、アタシはもう一回りしてくる」
 言うが早いか、燦は紅狐様に跳び乗って、紅蓮の疾風と化した。
 残された二人に、目を覚ました村人たちが胡乱げな視線を送ってくる。そして一人の青年が、未だおぼつかぬ口調で問い掛けてきた。
「あ、あの……あなた、がた、は……?」
「皆さんを助けに来た者です。安全な避難先も確保していますから、もう少し頑張りましょう」
「うどんは今なら燦さんの油揚げ付き。シホのじゃがバターもおいしいわよ」
 村人に向かって、二人は優しく微笑した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

人間を食料としてしか見ていない吸血鬼、か。
……ああ、嫌な事を思い出したけど、今はそんな事を考えている場合じゃない
とにかく、目の前に救える命があるなら、やれることをやらないと

下手に騒がれたくはないので【纏いし不可視の影外套】で姿を隠し『闇に紛れる』『忍び足』で気配を消して、周囲を簡単に『偵察』、「闇の救済者」たちの潜入ルートを確認しておく

あとは先んじて廃棄場に潜入、自殺しようとしている人は『殺気』を放って怯ませた上で、手近な所にいる大人から優先して気絶させてまわる

乱暴な手段で申し訳ないけれど……あなた達を助けに来た。
後でちゃんと事情は説明するから、今は、眠っていてほしい


春霞・遙
その選択に対して恵まれた世界に生きる私がどうこう言えることではないですよ。
でも生きたいと願ってそれが叶わなかった人たちのためにも、救いの手が伸ばされると予知されているのなら、止めたい。
救済者たちが導いてくれるとしてもまだ吸血鬼に支配されているこの世界の人たちを救いたいと願うのはただのエゴです。
でも、生きていて欲しい。

【竜巻導眠符】を放って周囲の村人たちを眠らせることで自死を阻みます。
先に見回しておいて、眠ることで転落や縊頸を起こしそうなものは縄を射撃で切ったり抱きとめたりを試みます。
眠っていないものは気絶させたり猿轡を噛ませて拘束したりして、「医術」で一通り体調が問題ないか確認しておきます。



●今は濃き闇の中
 『闇の救済者』が村へ至るより数十分ほど前。
 クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は、グリモアベースで行われた予知を基に『救済者』たちの通る経路を特定し、【纏いし不可視の影外套(シャドウハイド)】で気配を消しつつ進んでいた。予知によれば、避難先にせよ経路にせよ安全は確保できているはずだとのことだったが、実際に自分の目で見極めておかなければ安心できなかった。
 結論だけをいえば、クロスの不安は杞憂に終わった。伏兵、罠、監視など、取り敢えず彼の偵察能力の及ぶ限りの範囲で、脅威は何一つ見出せなかった。
(馬車も通れるようなしっかりした道だというのに……まるで無警戒なのか?)
 拍子抜けする状況に、クロスはかえって呆れというか、薄ら寒いものさえ感じた。
 だが一方で、そういうものかもしれない、とも思う。圧倒的な高みにあり、徹底的に相手を見下している手合いというものは、相手の反抗について頓着しない。反抗するほどの力などないと決めてかかるし、仮に反抗されたところでどうとでも叩き潰せるのだから、気にする価値もないと断じる。
(人間を食料としか見ていない吸血鬼、か)
 嫌な記憶が甦りそうになって、かぶりを振る。
 今は、救える命を救うべく、できることをやるのみだ。

 春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は恵まれている。
 いや、猟兵でありUDC組織の一員であり医師であって、日々オブリビオンだの冒涜的な怪物だの病魔だのと連戦を重ねる彼女のライフスタイルを指して、余人が「恵まれている」と称するのかは微妙なところではある。ただ、少なくとも遙自身の認識としては、彼女は恵まれた環境下にあった。
 それはそれで、おかしな認識でもない。日常的に強大な敵と戦っているには違いないが、それを打ち破るだけの強靱な心身を、遙は持っているのだから。
 恵まれていないのは、相対的な強さはどうであれ、負け戦に次ぐ負け戦を強いられる環境下にある者だ。例えば、加虐的な吸血鬼に支配されつつ、それを討てるだけの力のない人々のような。
(そんな苛烈な環境下にあることを承知していながら、それでも生きていて欲しいと願うのは……私の、エゴ)
 そういう認識は、ある。
 それでも医師として、人として、眼前の命を救わずにはいられない。
 木の枝に並べて吊ったロープで、首をくくろうとしている老夫婦(だろう、恐らく)を見てから拳銃をドロウするまで、遙はコンマ以下の躊躇も挟まなかった。
 神域の精密さでもって放たれた銃弾がロープをちぎる。
 何が起きたのかわからず、二人が顔を見合わせつつあっけにとられているところ。
「さあさ、眠りなさい」
 遙は素速く導眠の術式が練り込まれた呪符を二枚、投げ付けた。
 ホーミングミサイルよろしく両者の額目がけてすっ飛んだ導眠符は、貼り付くなり十全の効果を発揮し、夫婦を一瞬にして眠らせた。
(これで良……――ッ!?)
 落命せずして身をくずおれさせる二人を見やった遙を、唐突に、猛烈な殺気が襲う。
 発生源は近くの小屋。性質からして、並の人間――例えばここの村人たちが発し得る殺気では、絶対にあり得ない。まさか、異変に気付いたオブリビオンたちが動き出してしまったのか。
 うっすら汗ばんだ手で拳銃を握り直して、足音を忍ばせつつドアの前に滑り込むように近付く。と、ドアはすでに開いていた。
 遙は中に銃口を向け――ようとして、その様子が想定していたものと異なることに気付く。
「乱暴な手段で申し訳ないけど……今は、眠っていて」
 中にいた銀灰色の長髪を持つ青年が、独りごちる。その腕には、ぐったりともたれかかるような格好で、中年女性が抱えられている。
 青年の足元にはさらに、村人たちが数名、失神して倒れていた。
 遙に気付いた青年――クロスが振り返る。
「ええと、ご同業……で、お医者さんですか?」
「ええ」
 医者というのは、遙の首に掛かった聴診器で判断したのだろう。
「ちょうど良かった。彼らのこと、お願いします。多分、怪我はないと思いますが」
 覇気に乏しい微笑を浮かべつつ、クロスが言う。
 遙は取り敢えず拳銃をホルスターに納め、倒れた村人たちの元へ駆け寄った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

稲宮・桐葉
この世は地獄とも言うが…
されど…わらわ達ならば、この有り様ひっくり返せる…そうじゃろう?
希望への活路を切り拓き、未来へ繋ぐのじゃ!

機巧大狐ちゃんに乗り現場へ急行じゃ!
今まさに、子供、同胞を手に掛けようとする者、自死を遂げようとする者を【スナイパー】で正確に威嚇して手を止めさせようとするのじゃ。
全てを一人で阻止するのは不可能じゃろう。他の猟兵と的確に連携を試みるぞ。
意表を突いたところで、人々の間に派手に躍り出て【存在感・パフォーマンス】注目を集めつつUCを使用。
複数人を纏めて眠らせ無力化するのじゃ。

効果があるか分からぬが、眠りの間、皆が好き夢を見れるよう精一杯舞うのじゃ!

誰一人犠牲を出すまいぞ!


ナギ・ヌドゥー
この状況で悠長に説得なんてしてられません。
【早業】で瞬時に自殺道具を断ち斬って回り、
有無を言わせず【捕縛】保護します。
この子供達を愛しているなら、まだ生の道を歩んでください。
その絶望と苦しみはぼくが引き受けますので。
後は闇の救済者さん達と共に避難誘導して迅速に脱出させましょう。
避難ルートを確保しつつオブリビオンの襲撃に備えます。

この世界で絶望に抗し続ける事……それは拷問に等しい苦痛
むしろ死こそ安楽たる祝福
それを断ってしまった以上、猟兵として彼らの希望に成らなければならない、か。



●地獄の先に夜明けはあるか
 父が、母が、涙を流している。涙を流しながら、娘の首に縄を掛けている。
 娘は穏やかな表情で、それを粛々と受け入れている。
 愛ゆえに殺し、愛ゆえに死ぬ。そんな道を選んだ者たちの姿である。
「ごめんね……」
 母がそう言って、父は無言のまま、縄を引く――その刹那。
 黒灰色の颶風が躍り、迫り、奏でる。
 金属の音。あるいはそれは錯覚だったかもしれないが。
 鉈とも鋸ともつかぬ刃が奔って縄を断ったのは、錯覚ではない。
 その時、命をとうに棄てていたはずの三人が三人とも、それでもなお恐怖のために喉を引きつらせた。黒灰色の風は、彼らが覚悟していた死よりも数段濃く、『死』の臭いを放っていた。
 ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)は手早く両親を押さえつけて拘束した。押さえつけるまでもなく、抵抗する力など残っていそうにもなかったが。
「この子を愛しているのなら、まだ生の道を歩んでください」
 言われた両親が、ぐにゃりと顔を歪めた。
 できるものなら、そうするに決まっているだろう?
 言葉よりも雄弁な絶望の表情は、ナギにとっては倦むほど見慣れた類の代物ではあった。
「すいません。悠長に説得している暇はないので」
 まとめて抱えるようにしつつ、家の外まで運ぶ。人が三人ともなれば本来はそこそこの重労働であってしかるべきだが、一様にやせ細った彼らを運ぶのは哀しくなるほど楽だった。
 そうして外に放り出された三人は、村の中央辺りに東洋風の装束を纏った獣耳の女性を見た。
 その女性こと稲宮・桐葉(戦狐巫女・f02156)は勇ましく重藤弓を構え、月毛の馬――ではなく、狐のような形状のメカにまたがっていた。そして流鏑馬よろしく矢を放ち、空井戸の縁へと突き立てる。ちょうど、身を投げようとしていた中年女性の身の進むのを阻むような格好に。
 何が起きている?
 その段になって改めて、三人は状況の異様さを思い知る。死神めいた青年、狐じみた女性、彼らは何者で、この『廃棄場』に何をしに来たのか。
「集まってきたか」
 周囲を一瞥した桐葉はつぶやくと、弓を手放した。そして代わりに、千早の袖の下から神楽鈴を取り出す。
「八百万の神たちよ、かの者らに穏やかなる眠りをもたらし賜え」
 呆気にとられる村人たちの注目する中、シャン、と清らかな鈴の音が鳴り渡る。
 湖面を踏むがごとき静かさで足が移ろい、風に遊ぶがごとき軽やかさで腕が巡る。【巫女神楽 ~春眠の舞~(ミコカグラ・シュンミンノマイ)】は、あたかも桐葉の周囲に花弁が舞うかのような優雅さ、華麗さを持っていた――いや、それは「あたかも」ではなく、実際に花弁が吹雪のように舞い踊っていた。
 常ならば、そんな光景を目の当たりにすれば跳ね上がるほど驚くはずだ。しかし、なぜか村人たちはそんな気にならない。むしろあべこべに、心は落ち着き、思考は鈍り、そしてまぶたが重くなる。
 ほんの六、七秒ほども経つか経たないかのうちに、桐葉の舞を見ていた村人のことごとくは眠りに落ちた。
「これで良し……好い夢を見よ」
 桐葉は慈愛に満ちた微笑を浮かべつつ、言う。
 と、呼吸二つの間を置いて、どかどかと多人数、それも重めの装備をした者たちのものとおぼしき足音が聞こえてくる。
「――おお!?」
「ここもあんたらがやってくれたか!」
 簡素な鎧兜に身を包んだ集団が、桐葉とナギに声を掛けてくる。
「ぬ! そなたらは『闇の救済者』かえ?」
「いかにも。そう言うあんたらは猟兵だな。到着してみたら、どこに行っても物騒なもん持った村の連中がぐーすか寝てるもんだから、何事かと思ったんだが」
 四十がらみ、集団の中では最も年長らしき男がそう言いながら、頭を下げた。
「……止めてくれたんだな。礼を言わせてもらう」
「それを言うのは、まだ気が早いでしょう」
 ナギが肩をすくめて言う。
「村の皆さんを避難させ終わってからです」
「ははっ、それはそうだな。まあ、ここらで最後だ。皆、馬車まで運ぶぞ!」
「おう!」
 『救済者』の集団はどやどやと村人たちの元へと駆け寄り、桐葉によって眠らされている彼らを手際よく運び出していった。
 その様を茫洋と見やりつつ、ぽつん、とナギがつぶやく。
「絶望に抗い続けるという、拷問に等しい苦痛が続くか……安楽の祝福を奪ってしまった」
「おい」
 ナギの独白を聞きとがめた桐葉が、紫の双眸に剣呑な光を宿す。
「確かに、このダークセイヴァーの世は地獄のごときかもしれぬ。じゃが、そんな有り様も我ら猟兵ならばひっくり返せるはずじゃ。いや、ひっくり返さねばならぬ。そうじゃろう?」
「猟兵……」
 かみしめるように――というには、まるで淡雪を舐めるような頼りなさげな調子ではあったが――その言葉を繰り返し、ナギは軽く首肯した。
「そう、ですね。彼らに生きろと言ってしまった以上、ぼくらが彼らの希望にならなければ」

 かくして、誰一人として犠牲になることなく救出劇は幕を閉じる。
 だが、次の劇の幕開けは、すぐそこまで迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『付き従う者共』

POW   :    主の為ならば、この身など惜しくはありません
自身の【心臓】を代償に、【従順な狼の群れ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い牙と爪】で戦う。
SPD   :    主様からのご厚意、ありがたく受け取ってくださいね
【人間から絞った血液を混ぜた紅茶】を給仕している間、戦場にいる人間から絞った血液を混ぜた紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    貴方も、私達と共に仕えませんか?
【蠱惑的な声で、仕える主の素晴らしさ】を披露した指定の全対象に【死ぬまで主に仕えたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●愚忠、盲従、狂気の凶徒
「あら? あらあら?」
 空気にそぐわない、おっとりした声が上がる。
「誰か、もう『お掃除』ってしちゃった?」
「ええ~?」
 応じる声もまた、のんびりとしている。
「まさかでしょう。まだ全然『絞り切って』ないのに」
「そうよねえ。でも、綺麗さっぱりなくなっちゃってるのよ」
「あら~? 本当ねえ」
「誰よう、もったいないことしたの」
「私じゃないわよお」
 次第に、交わされる声が増えていく。コマドリが鳴くように美しく、ドブ水の泡が弾けるように汚らしい声が。
「……じゃあ、誰が悪さをしたのかしらねえ?」
「悪さをしたヒトは、お仕置きしなきゃよねえ」
「当然よねえ」
 嗤いつつ、愉しみつつ、悦びつつ、イカれつつ。
 白磁の肌に人形のような美貌を持ち、仕立てが良く清潔な給仕服を着た集団が、ぞろぞろと姿を現した。『付き従う者共』――それは、吸血鬼でありながら吸血鬼に従属することを選んだ、珍奇な女たちであった。
ニール・ブランシャード
今更お前たちにお説教をする気はないよ
皆が無事に避難できたか心配だ
終わらせて早く会いに行こう

UC【霧】
ほかの人を巻き込まない場所まで敵を引き付けて…
このユーベルコード、実戦で使うのは初めてだ
うまくできるかな…
(毒の小瓶の中身を体内に取り込む)

毒性は「幻覚」「食欲異常」
動くもの、肉の匂いのするものが
どうしようもなく美味しそうな食糧に見える
彼らにはお互いが、ここで食べてきた村の人に見えてるかもね
今までと違って相手は「食い返してくる」けど
ぼくはタールだから肉の匂いはしないし
ちゃんと効けば、彼らは共食いしながら自滅していく

討ち漏らしや最後に残った敵にはぼくがとどめを刺そう

ぼくを食べたらおなか壊すよ。


レパル・リオン
あたしよ!ここの人を助けたのは、あたし達よ!
つまり、このイェーガー・レパルがアンタ達の相手って事!…来いっ!ゲス女ども!

啖呵を切りながら真の姿であるアルティメットな魔法少女に変身!ヘイトを集め、そのまま敵の群れに突っ込むわ!

ビュンビュン飛び回りながら狼やメイドを取り囲むように虹色の炎を放ち、逃げられないようにするわよ!無理に逃げようとする敵には、空中からの急降下キックをお見舞いするわ!

誰かを苦しめる事しか楽しめない奴らは、あたしが許さない!
人々の笑顔のために!全員ぶちのめすっ!



●赤心を尽くして汗血を流す
「あたしよ!」
 咆吼が響き渡る。『廃棄場』の全域に届かんばかりの大音声が。
 その源にいるのはレパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)だった。
「ここの人を助けたのは、このイェーガー・レパルよ!」
 辺りに出現した従属性吸血鬼『付き従う者共』 を圧するような、裂帛の気合い。
 しかし従者らは、小犬が吠えるのを見るような微笑混じりの視線――有り体にいえば、完全に侮りきった視線を送ってきた。
「あらまあ」
「素直に名乗り出るなんて、感心ですこと」
 二重、三重にレパルを包囲しつつ、甘ったるくささやくような声を投げかけてくる。
 彼女らの外見をいえば、服装はクラシカルな給仕服で統一され、体格もどちらかといえば華奢という者ばかりで、戦闘行為というものからはかけ離れた印象がある。が、従属性とはいえそのことごとくは吸血鬼であって、その戦闘力が低いはずもない。
「名乗り出られたからには、相応の覚悟はありますね?」
 舌なめずりの音がした。
 狩られるのを待つばかりの哀れな獲物ならば、その音に萎縮したことだろう――が、ではレパルにとってどうかといえば、そんなものは箸が倒れた音ほどの意味もない。
「来るなら来い、ゲス女ども! 相手になってやるっ!」
 怒号と同時、レパルの服が騎士と姫のデザインを融合させたような衣装に変化する。さらに同時にその全身から湧き出る、虹色の炎の奔流。瞬き半分の間に八方に広がり、降り注ぐようにして包囲する従者たちを打ち据えた。
 炎はその一撃で従者を仕留めるほどの威力はないが、一瞬視界を奪う程度のことはできる。その一瞬の間に彗星の速度で踏み込んだレパルは、最前列にいた従者の一人の脳天に浴びせ蹴りを見舞った。
 轟音とともに頭蓋が胸下までめり込み、従者が悲鳴もなく絶命する。膝が崩れ、仰け反るように背中が落ち、黒い灰となって地面に溶けた。
 その時点でレパルは、蹴りを入れた従者を足場するようにして直角に飛翔していた。
「しゃらくさいこと」
 すぐ横で同胞が討たれたことを気に留めた様子もなく、徒手格闘の範囲外に逃れたレパルを見送った従者がぼやく。
 また、数名がひっそりと言葉を交わす。
「あの子一人で『お片付け』したのかしら?」
「まさか。あの量よ」
「なら『お友達』も探さなきゃよね」
 五人ほどの従者が、自らの胸に右手をあてがった。そして一片の躊躇もなく五指を胸郭にめり込ませ、突き破る。さらに、芋でも掘り出すような気軽さで心臓を取り出すや、やはり一片の躊躇もなく握りつぶした。
 白い指の隙間からえんじ色の肉片が弾けてこぼれ、破裂した水道管よろしく派手に鮮血がまき散らされる。己の心臓を潰しておきながら悠然と微笑を浮かべる従者たちが、全身を真紅に染めていく。血染めの体はそのまま傾ぎ、崩れ、肉塊と化す。
「行きましょう」
 同胞の変わり果てる様に何の感傷も示さず、従者の一人が声を掛ける。と、肉塊は分裂し、乾いた血のような赤黒い体毛を持つ狼の群れになった。
 狼の群れは四方に散って駆け、それを追うようにして従者も二、三名ずつ組になって走り出す。
「このっ!」
 レパルの虹炎の雨は勢いを減じていないものの、完全な足止めまでには至らない。
「あら、見つけたわ」
 数秒後、声が上がった。
 見つかったのは――といって、別に逃げたり隠れたりしていたわけでもないのだが――やや開けた所に立っていた漆黒の全身甲冑、ニール・ブランシャード(うごくよろい・f27668)である。
(――うまくできるか?)
 使うつもりなのは実戦では初となるユーベルコードで、一抹の不安はある。
 が、迷う暇を与えてくれるほど生温い敵ではない。視界いっぱいの狼の群れと、テイマーめいて群れを指揮する従者たち。牙爪がニールに触れるまで、あと一弾指。急がねばならない。
 面金の隙間に小瓶の口を突っ込み、中身を吸う。取り込んだ毒を体内に巡らせ、全身の鎧の隙間から【霧(ミスト)】にして吐き出す。
「!?」
 従者らが一瞬戸惑ったのは、どす黒い霧の広がり具合が予想を超えて爆発的だったからだろう。
 だが、真の予想外はそれではない。目くらましの後にニールが攻撃してくると踏んで彼女らが身構えているところ、襲ってきたのは狼の群れだった。
「な!?」
 腕にかみ付かれた従者が焦った声を上げる。
 その様を認めたニールが宣告した。
「幻覚と飢餓……お互いがここにいた村人にでも見えているか? 共食いで自滅しろ」
「っ!?」
 言われた従者は、自身にかみ付く狼らの顔を見直す。と、歪む視界の中、それはやせ衰えた人間のそれに取って変わっていた。
 だが。
「共食いとは心外な」
 凄絶な笑みを浮かべた従者は、腕を勢いよく地面に叩きつけて狼の頭を破壊した。
 さらに、毒で狂った視界もものかは、ニールのいる位置を正確に捉え、槍のような貫手を放ってくる。
「うわ!?」
 すんでのところで戦斧を割り込ませ、柄で受け止める。変則的なつばぜり合いの形で拮抗するが、しかし、圧力は従者の方が勝る。
「多少空腹を覚えた程度で『拾い食い』するほど、はしたなく見えまして?」
「ち……!」
 押し巻ける寸前、戦斧を旋回させていなす。
 火花の散る中、狂気を孕んだ視線に絡まれたニールは、体の芯に冷たいものを覚えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

春霞・遙
なるほど、領主はそこそこ活きの良い玩具を与えてくれる良い主、といったところですか?いかに素晴らしさを説かれても、人を助けると決めた志に反しますので。反吐が出る。
村人の方と救済者のみなさんが無事逃げることができるよう、後顧の憂いを断ちましょう。

【影の追跡者】を彼らが逃走した方角と領主の居城の方角に放ち、吸血鬼たちが各方面へ向かおうとしたらすぐ把握して他の方に伝えられるようにしておきます。念のためスナイパーライフルも討ち漏らしを狙えるように準備しておきますね。
あとは拳銃での「援護射撃」として狼たちやティーポット等を狙って攻撃します。効くかはわかりませんがもちろん吸血鬼へも銃口を向けます。


アリステル・ブルー
アドリブ連携◎
協力の同意があれば積極的に他の猟兵さんと協力/サポートするね

●行動WIZ
「領主に知られちゃだめだからね、お前たちを生きて逃すわけにはいかない!」
使い魔のユールを呼んで戦況をよく観察してもらうよ。逃げそうなのは追跡して欲しい。最悪僕じゃなくてもいい。だから誰かに教えて、絶対に逃がさないように…。
【指定UC】を使うね、範囲内の敵全てに全力魔法で攻撃するよ。近くにいる敵は黒の細剣を抜いて応戦する。
反撃は狂気耐性で。
「お前たちの主が素晴らしい?死ぬまで仕えたい?悪いけど絶対ごめんだね」
それなら月を見て狂気に身を任せる方がマシだよ。
こんな惨状を招いた領主が素晴らしいなんて絶対にありえないね


クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

本当に掃除されるのは自分たちの側だとは思っても……というのは然程面白くもない話ですが、容赦するつもりはありません。一人も残さず、徹底的に片付けましょう

【闇夜の翼】を発動。空から戦場を俯瞰して猟兵側の戦力が手薄な箇所や、逃げようとしている敵を探して戦闘、その場の敵を倒したら再度飛翔し、索敵の繰り返し
念の為従者だけではなく、狼も逃さないように注意する

戦闘時は低空飛行。鎖で動きを妨害して『体勢を崩す』事で隙を作り、黒剣を大鎌に変形させて薙ぎ払い『範囲攻撃』で纏めて攻撃
機動力を生かして『残像』で撹乱しつつ一撃離脱を繰り返す
攻撃は『オーラ防御』で防ぎ『激痛耐性』と『継戦能力』で戦闘続行



●睨む瞳は醒獅のように
「実は、以前から不可解に思ってはいるのです」
 それと知らずにいればむしろ魅惑的な仕草にさえ見えただろう、付き従う者共の一人が小首を傾げながら言ってくる。
「人という枠の外にある存在であり、人には扱えぬユーベルコードを扱う。あなたたち猟兵は、むしろ我々オブリビオンに近いモノであるはず」
 甘やかな声で語りかけつつ、優雅に洗練された足運びで歩み寄ってくる。
「つまり、あなたたちが本当に手を取り合うべきは、人間などではなくオブリビオンなのです。そうは思いませんか?」
 切なげで愛おしげにさえ見えるような所作で、手を伸ばしてくる。
 そんな一連のあれこれを真正面から見据えながら、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は冷静に拳銃の照準を従者の眉間に合わせた。
「思いませんね。反吐が出る」
 軽やかな発砲が三度。放たれた弾丸は三つともに従者の顔面に炸裂し、頭蓋に、眼球に、脳に、致命的な破壊をもたらす。
 そう、たとえオブリビオンでも絶命必至の、紛れもない致命傷。
 にも関わらず、従者はぶち壊れた顔面で上品な笑顔を浮かべる。
「まあ、残念」
 最期の刹那、神速の貫手を自らの胸に放って心臓を潰す。
 蠢動と膨張を一弾指の間に繰り返し、爆ぜるような分裂とともに赤黒い狼の群れが顕現する。
「さえずりは眠り、翼は翻弄――力を貸して!」
 群狼が遙に襲いかかるより先に、遙の背後から鋭い声が割り込む。
 割り込んだのは声だけでなく、数百にも及ぼうかというナイフの弾幕もであった。奇妙に角張った軌道を描きながら飛来し、多角度から次々と狼に突き立っていく。
 一本や二本ではそれほどのダメージにもならなさそうな小さなナイフだが、一息に十数が殺到するとなると話が変わる。呼吸一つもない間に、狼はもれなくボロ雑巾のように斬り刻まれ、蒸発するように消え去った。
「……助かりました」
「いえ、どういたしまして」
 【小鳥たちの舞(バードダンス)】で援護を行ったアリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)が言う。常は人の好さそうな柔和な顔をしている彼だが、流石に今は険しさが濃い。
 背中合わせに立つ二人は、周囲を見回した。視界に収まっているだけでも、健在な従者は数十、狼はさらにその五、六倍はいるだろうか。
 数が多い。
 予知されていなかったほどというわけではない。が、己の身を犠牲に狼を大量召喚することによって成るべらぼうな人海戦術は、この状況下においては、戦力的なものとはまた別の側面の不安を駆り立てる。
(今のところ、村人と『救済者』に追っ手は掛かっていない……余裕がないのか興味がないのか、わからないけど)
 彼らの使った逃げ道に潜ませておいた【影の追跡者(シャドウチェイサー)】を通し、遙の頭には絶えず情報が流れ込んでいる。
 領主への伝令が飛びそうなルートは遙と同様にアリステルが使い魔を張らせている他、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)も目を光らせている。何かあれば知らせはあるだろうし、クロスほどの手練れが『何か』を許すことなどもあるまいが。
 現時点、付き従う者共の興味はもっぱら猟兵に集中している。オブリビオンには猟兵を敵視するという本能があるため、基本的には猟兵が健在であるうちは猟兵への攻撃を優先する。とはいえ、それは絶対ではない。どんな気紛れを起こさないとも限らないし、その危険性は敵の母数に比例して高まる。
「何のご相談をなさってるんです?」
 薄気味の悪いほど優雅な笑顔を浮かべながら、従者たちがにじり寄ってくる。
「我らが主様に仕えるという相談でしょうか? もちろん、歓迎いたしますよ」
「悪いけど、絶対にごめんだね!」
 トンチンカン極まる従者の台詞に、アリステルは轟然と叫んだ。
「こんな惨状を生むような輩に、仕える価値なんかこれっぽっちも見出せない。月を見て狂気に身を任せている方が何倍もマシだよ!」
「同感です。あなたらにとっては活きの良い玩具を与えてくれる良い主なのでしょうが、私は人を助けると志を立てた身でしてね」
 遙もまた、唾棄するように罵声を返す。
「では、その強がりがいつまで続くか試させていただきますわ。心変わりなさったら、いつでもおっしゃってくださいませ」
 ぱちんと指が鳴る。
 同時、狼たちが二人に向かって押し寄せる。地面を駆けるだけでは飽き足らず、仲間の背中を足場に跳び、さらに跳んだ仲間の背に跳び乗ってさらに跳び……と、赤黒い津波を成しつつの強襲である。
 だからといって、どうということもない。
 遙は冷静に拳銃を構え、アリステルは再びナイフの暴嵐を見舞った。
 
 【闇夜の翼(シュヴァルツェ・フリューゲル)】で空を舞うクロスの眼下を、三匹ほどの狼が駆けている。
「……念を入れておいた甲斐があったか」
 ぽつりと独白を置き去りにして、高速度で急降下する。
 分厚い雲の下、夜にも似た暗さにクロスの体は溶け込んでいる。フクロウのごとき無音の猛襲に、狼らは気付かず、気付かず――ふと頭を上げた際に狼らに見えたのは、クロスの残像だった。
 そのときすでに地面すれすれの低空に至っていたクロスは、腕輪につながっていた鎖を奔らせて狼らの足をまとめて薙ぎ払っていた。足を払われて空中に投げ出され――つまりは回避不能の状況に追いやられた狼らに、間髪入れずに大鎌の一閃が見舞われる。
 しゃん、とあっさりとした音と手応えだけを残し、三匹の胴体が、あるいは首が、断ち切られる。一瞬の後、それらは弾けて砂のようになり、骸の海へと還った。
 クロスは再び急上昇し、戦場を俯瞰できる位置をキープする。
(今のところ、封鎖はうまく行っている、か)
 四方を隙なく見回しつつ、胸中でつぶやく。やや離れたところを青い鴉が飛んでいるが、あれはアリステルの使い魔だ。先刻、従者の一人が領主の城に走ろうとしているのをクロスに知らせてくれたが、アリステル自身に知らせるよりも手っ取り早いと断じたからだろう。頼りになる。
 ふと、皮肉な思いがよぎる。吸血鬼の従者たちは村人の措置を『掃除』と称していたが、今、塵一つの見逃しもなく『掃除』されているのは従者たちの方だ。
(まあ、だからといって容赦するつもりはないけども)
 徹底的に片付ける。誰一人、狼一匹たりと見逃しはしない。
 双眸に力を込めつつ、クロスは空を旋回した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナギ・ヌドゥー
主様からのご厚意?
それはそれは、ありがたく受け取ろう……我が呪獣ソウルトーチャーがな。
紅茶の後は当然夕食もあるのだろう?
メインディッシュはこのメイド共だな、喰い漁れ!【捕食】
アンタ等もたまには餌にされる恐怖を味わった方がよかろう【恐怖を与える】

あぁ、オレに紅茶は必要ないぞ。
例え速度を落とされようがそれ以上に速く動けばよい
UC発動により超スピードで斬りつける【先制攻撃・早業】
離脱しようとする者を優先して攻撃
増援など呼ばせんよ
一人残らずこの地で肉片となれ



●昂歩は前へ
 異様な空間がナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)を包んでいる。
 たとえるなら空気の代わりに刻んだ納豆を隙間なく詰め込んだような、重たさ、粘っこさ、息苦しさに満ちている。
 そんな中にあって、付き従う者共はナギを取り囲みつつ、軽やかに動いている。いつの間に、どこから取り出したものやら、いかにも高級そうなティーセットの載った台車をがらがらと押しながら。
「是非とも召し上がっていただきたいのです。我々からの、ひいては我が主様からの厚意ですわ」
 にこやかに微笑みながら、従者の一人がソーサーに載ったティーカップを差し出してくる。
 カップから漂ってくるのは、馥郁たる紅茶の香り――だけでは、ない。むしろ主たる香りは、紅茶のそれを根こそぎから台無しにしている、生臭く錆臭い悪臭である。
 人間の血。恐らく、グリモア猟兵の予知の力が及ぶより前の時間に、従者たちによって犠牲になった人々から絞り取られたもの。
 さらに何が悪趣味といって、ユーベルコードによってナギの動きを鈍化させたのなら、首を取りに来るなり何なりしてしかるべきはずなのに、わざわざ血の紅茶を飲ませようとすることである。要は、己らと同等の外道に堕としたいということなのだろう。
 ナギの顔がしかめられる。
「オレには必要ない。が……」
 ナギが着込んでいる漆黒のコートの中から、ずるり、と肉色の巨塊が滑り出た。
「我が呪獣ソウルトーチャーが、ありがたく受け取ろう!」
 巨塊は四つ足の獣だった。皮膚がなく骨や肉が露出したそれを、獣と呼んで良いのであればだが。
 むき出しの頭蓋骨が狂乱し、ティーカップごと、いやティーカップを持った従者の腕ごと人血紅茶を喰らう。
「あら?」
 緊張感のない声を上げて、従者が目を丸くする。
 凶猛に紅茶を愉しむソウルトーチャーは、速度低下の制限を受けない。さらに縦横に牙を振り回し、ティーポットを持った従者の胸に牙を突き立てる。
「餌にされる恐怖を味わえ――喰い漁れ、ソウルトーチャー!」
「あら、まあ」
 ティーポットを床に落としつつ、その従者の目は真っ直ぐにナギを捉えていた。その眼光に恐怖の色はなく、むしろ喜色が見えた。
「私たちと同じかそれ以上に血を愉しめるのですねえ」
「――」
 紅茶を給仕する者がいなくなったために本来の速度を取り戻したナギは、【オーバードース・トランス】の一閃をもって従者の首をはねた。

成功 🔵​🔵​🔴​

稲宮・桐葉
※連携、アドリブ歓迎じゃ!

むぅ…彼奴等の会話…イラっとするのう

人を舐めておるようじゃし、挑発の後、怯えて見せれば嗜虐心を煽って釣れないかの?
囮になり敵を味方の包囲内に誘い込んでみるぞ

味方が優勢になり敵に動揺が見えたら、悟られぬよう【目立たない】ように戦線を離脱し想定される退路上に伏せるのじゃ

逃亡の予兆が見られたら包囲網に隙を作り、敵が伏兵方向へ逃げるよう仕向けるのじゃ
潰走する敵を不意打ちし殲滅じゃ!
皆の協力があれば助かるのう

尚も逃げる敵がいたら『機巧大狐ちゃん』は【ダッシュ】で追いかけ追撃、わらわはUC妖刀哭尸で高速移動し追撃じゃ
決して逃しはせぬのじゃ!
人を脅かすものには、キツイお仕置きじゃ!


リーヴァルディ・カーライル
…確かに。不本意極まりないけれど同意するわ

…悪事を冒した者には報いを与えないといけない

…さぁ、人を傷つけ弄んできた罪を償う時よ、吸血鬼


左眼の聖痕に限界突破した魔力を溜めUCを発動
聖痕からの干渉を常以上の殺気と気合いで耐え、
敵のUCを黒炎のオーラで防御して無効化する

…無駄よ。こんな術で私を縛る事はできない
動きを封じるとは…こういう事よ

時間を焼却する黒炎を使い"写し身の呪詛"を武器改造
無数の黒炎の残像を乱れ撃ち懐に切り込む早業で突撃させ、
時間属性攻撃の黒炎で触れた者の時間を止めて行動を封じ、
怪力任せに大鎌をなぎ払う追撃で首を断つ

…お前達の主も直ぐに同じ場所に葬送してあげる
消えなさい、この世界から…


備傘・剱
ほー、こいつらが、ここまで追い込んだ奴の手先か…
おい、ねーちゃん達、親玉の事、キッチリ吐いてから、死んでってくれな
そしたら、ちょっとは優しく止めを刺してやるからよ

青龍撃、発動!
高速移動で間合いを詰めながら水弾と爪で引き裂いてやる

茶を飲み始めたら、その真上に水弾を発射して、誘導弾で破裂させて薄めてやろう
何か、語りだしたら、頭の上の一足りないのダイス攻撃を顔面目掛けて行わせてやる
式神に乗せて別行動をさせておくから、俺が動かなくなっても暗殺可能だろうぜ

此処の人達が流した血と涙の数だけ、悲鳴をあげな
慈悲が欲しいなら、お前らの主人とやらの情報をよこせ
吐いたとしても殺すんだが

アドリブ、絡み、好きにしてくれ



●身命既に盤上にあり
(イラっとするのう……)
 付き従う者共の会話を聞いていた稲宮・桐葉(戦狐巫女・f02156)は、不快さに柳眉を寄せた。
 人を人とも思っていない――より正確にいえば、人と思った上で「人は吸血鬼よりも下等な生物である」と定義している――のは、明らかだ。人の側に立つ猟兵のことも、それに準じた認識であるように思える。
 しかし、考えようによってはそれはつけ込む隙にもなり得る、と桐葉は考えた。
 こちらを蔑み、侮っているならば。
「い、嫌じゃ……!」
 桐葉は聞こえよがしに哀れっぽい悲鳴を張り上げ、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「仕置きなどされとうない……た、助けて……!」
 それからガタガタと震えてみせたかと思うと、いかにもほうほうの体といった不格好さで駆け出す。
「あらあ? 悪い子ちゃんが逃げるわねえ」
 桐葉に目を留めた従者が、愉悦げな声を上げた。
(掛かったな阿呆どもめ!)
 快哉は胸中に留め、桐葉は「ひええ!」と焦ったような演技をしつつなお駆ける。
「逃がさないわよお」
「悪い子ちゃんなんだから、お仕置きされなきゃダメでしょう?」
 完全に馬鹿にした態度で、六、七の従者らが桐葉に追随する。
 あばら屋の並ぶ中を走り、スクラップに囲まれた路地に入り、そして。
「オブリビオンに同意するのは不本意だけど――」
 桐葉ばかりに目を向けていた従者たちの横合いから、冷厳な声が鳴る。
「悪事には報いを。道理よね」
 従者が振り向くより早く、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が大鎌を振る。
「まあ――」
 従者は駆ける勢いそのまま、つんのめるようにしてその一閃を回避した。髪の一部が斬り裂かれて絹糸の束のように散り落ちたが、ダメージはない。
 と、リーヴァルディとは逆側から薄青い手甲に包まれた腕が伸び、従者の首を鷲づかみにした。
「が、は……!」
「お前らが人に強いた血と涙の数だけ痛めつけてやろう。数え切れるのかは知らんが」
 腕の主は備傘・剱(絶路・f01759)だった。両腕に【青龍撃(バレットスピーディング)】による水の爪を纏わらせており、五指に力を入れるに従って従者の首に深い傷がこしらえられていく格好になっている。
「慈悲が欲しかったらお前らの主人とやらの情報を吐け。まあ吐いても殺すんだが、少しは楽に殺してやる」
「あらあら、まあまあ!」
 剱が言った途端、だらだらと首から血を流しながらにして、従者は目を輝かせた。
「我が主の魅力を知りたいとおっしゃるのですね!」
「……は?」
 剱は唖然とした。
「ええ、ええ、もちろん語らせていただきますとも! 主様は偉大にして高貴、気品の高きことは天をも越え、思慮の深きことは海よりも深く、容貌美しきことは花月をも恥じらわせるほどですわ。さらに――」
 なおも従者は、偉大な主様とやらのことについて、べらべらと長広舌を振るって褒め称え続ける。
 それはあまりにも不自然で、異様だった。
 自身の首が今にも落とされそうだという状況を、まるで気にする素振りもないというのも、その一つではある。加えて、並べ立てられた美辞麗句に、妙な薄っぺらさがあった。語彙はまずまず豊富ではあるが、単に耳に心地良い言葉を雑に集めただけで、特定の誰かを想定しているような具体性がない、とでもいおうか。
 剱の質問をはぐらかそうとしているのだろうか。それにしては、狂的すぎるように見受けられる。
 主への心酔が過ぎて盲目的になっているか、単に洗脳されている。どちらもありそうで、そうでもなさそうな。
 いずれであれ確かなのは、従者への訊問で意味のある情報は引き出せそうにないということだった。
「……こんなのをいくら聞いても何にもならないわ」
 剱の意図を汲んで攻撃の手を止めていたリーヴァルディだったが、流石に不機嫌が極まって吐き捨てる。
「まあ、まだまだ語り足りませんのに。でも、そう言えば少し喉が渇きましたわ」
「あら。じゃあちょうど良いのがあるわ」
 首を捕らえられていない従者の一人が、明るく言う。
 そして、手品か何かのようにティーセットの載った台車を出現させる。
 同時。
「――っ!」
 周囲一帯の空間がねじ曲がり、変質する。猟兵らの動きが極度に鈍化する。
「さあ、あなたも」
 従者をつかんでいた剱の手を逆に握られ、軋まされ、剥がされる。振り解こうにも、鈍った体ではそれは適わない。
「どうぞ召し上がってくださいませ」
「ぐ、う……!?」
 血生臭い紅茶の注がれたティーカップが、無理矢理に口に運ばれようとする。
 と。
「ムラマサブレードよ! キリキリ働け!」
 桐葉が怒鳴ると同時、彼女の持っていた妖刀の青白い炎めいた刀身が、一層強く怪しく輝く。桐葉自身はほとんど動かずしても、しかし【妖刀哭尸 ~刀舞・怨反し~(ヨウトウコクシ・トウブ・オンガエシ)】によってムラマサが絶叫音波を放つには支障はなく、また音波の速さにまでは空間の影響は及ばない。
 波状に迸った破壊の音波は、剱に迫っていたティーカップや、台車に乗ったティーセットなどを一瞬のうちに呑み込み、粉砕した。
「あら――」
 従者らが給仕すべき紅茶を失ったことで、空間の歪みが是正される。
 本来の速度を取り戻した刹那、いち早く動いたのはリーヴァルディだった。
「なめた真似をしてくれたものね……本当の動きの封じ方を教えてあげるわ」
 精神が蝕まれるのも厭わずに左眼の聖痕を稼働させ、【代行者の羈束・黒炎覚醒(レムナント・ウロボロス)】の炎を顕現させる。リーヴァルディの身を包むようにして顕現した黒炎は瞬時にして周囲に波及し、従者たちに纏わり付いた。その真価は炎熱でなく、時間を操る性質――ゆえに、従者たちは抗する術もなく、その動きを極度に鈍らせる。
 そうして生まれた隙を突き、剱は水の爪牙を振るって最前の従者を縦横に斬り裂いた。
 さらに、機巧大狐ちゃんに乗った桐葉がムラマサを携え、猛スピードで吶喊する。戦意たっぷりな桐葉の様を目にしつつ、しかし体は動かせず、従者はのんびりと苦笑を浮かべた。
「悪い子ちゃんにまんまと化かされたわねえ」
「やはり仕置きされるのは汝らの方だったのう、人を脅かすモノどもよ!」
 大喝と同時に振るわれた斬撃は、従者を袈裟懸けに両断した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

シホ・エーデルワイス
《白駆》
アドリブ&連携歓迎

吸血鬼らしいありふれた価値観
怒りは感じない
感じるのは相容れない悲しみぐらい

ルルの言に
前世で死ぬと分かって身を差し出し死ぬのも自殺なら
今死ねない体になって罪悪感に苛まれている私もある意味似た物ね…

自虐的な微笑

燦、ルル…そうね…何かが変わり始めている…そんな気がします


【弾葬】で聖銃を<楽器演奏し
敵の口上よりも耳を傾けていたくなる
狂気耐性の籠った誘惑の旋律で
敵の声に負けず
爆音や砲撃音すら旋律の一部に加えて
優しさと祈りを込めて歌唱し皆を鼓舞>

撃った弾は<超音波属性攻撃の誘導弾で敵を妨害しつつ味方の援護射撃>


ええ
盲従では私達のトリオは崩せません

貴女方には弔いの祈りを捧げましょう


ルルチェリア・グレイブキーパー
≪白駆≫
アドリブ歓迎

自殺をした人は悪い霊としてこの世に残ってしまうの
ずっと苦しみから解放されないのよ
村人達を心中するしかない状況にしたオブリビオンを
墓守として絶対に許さない
全員残らずやっつけてやるのよ!

燦さんの言う通りよ
シホを一人で苦しませたりなんかしないわ!

敵の従者が蠱惑的な声で洗脳して来ようと無駄よ
私は【お子様幽霊たちの海賊団】で空飛ぶ海賊船を召喚し
シホの聖銃のリズムに合わせて銃撃・砲撃するわ!
まるで打楽器の様な軽快なリズムで銃と大砲を奏でて
敵の声なんか意識の外に追いやってあげる!

敵の攻撃は呪詛・狂気耐性で凌ぐ
意識を持っていかれそうになったらお互いを鼓舞
私達はこんな所で負けられないでしょ!


四王天・燦
《白駆》

廃棄場でなく血液搾取の人間牧場だわ

墓守ルルは命への冒涜どう思うよ

シホ、アタシ達がいるんだ
苦しみなんて吹き飛ばせるよ

前衛は任せな
殺気で牽制し後ろに行かせねえ

物理は見切りや神鳴で武器受けて回避
近距離から伍式の火矢で葬る…敵でも女の子に苦痛は与えない

誘惑よりシホとルルの銃撃コーラスに耳を傾ける
大声で主自慢されたら爆弾・カウントダウンで爆撃
爆音を大太鼓の如く響かせ自慢話をブチ切りさ

狂気耐性も合わせ馬耳―狐耳東風

『死の先でも』シホといたくてね
僻地左遷連中の『死ぬまで』程度の想いに惑わされるかよ

鼓舞しあい誘惑を返し、徐々に三重奏の如く攻撃リズムを合わせ全滅させるぜ
応よ、三人なら何者にも負けない!



●真誠に意義あり
 廃棄場というより、人間の血を搾取するための牧場のようだと、四王天・燦(月夜の翼・f04448)は思った。牧場であれば行ってしかるべき『家畜の世話』がまるっきりされていないことからすれば、やはり牧場未満なのかもしれないが。
「命への冒涜だよな」
 かたわらに立つルルチェリア・グレイブキーパー(墓守のルル・f09202)に視線を移しつつ、燦が言う。
「墓守としてはどう思うんだ、ルル?」
「絶対に許せないのよ」
 あどけなさの残る眼差しをいっぱいに尖らせつつ、ルルチェリアは言った。
「自分で自分の命を絶つ人は、悪い霊となってこの世に留まり、ずっと苦しみから解放されなくなる。そんな道を選ばせるまでに追い詰めるなんて……!」
 墓守の矜持。猟兵の沽券。人間の尊厳。
 そんな感情がルルチェリアの胸中で渦を巻きつつ、ふつふつと沸騰していた。沸騰する感情は眼光に宿り、対峙している付き従う者共を刺す――が、彼女たちはそんなものはどこ吹く風といった様子である。
「おかしなことをおっしゃいますね。私たちは、彼らに『死ね』と命じたことなど一度もありませんわ」
「命を冒涜しているのは、自分の命を軽んじている彼らの方でしょう? せっかく、我が主に慈悲を与えられたというのに」
「……慈悲、ですって?」
 話題を思えば奇っ怪極まるとしか言いようのない単語に、シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は眉根を寄せた。
 と、従者は泰然とした笑みを浮かべつつ、答えてくる。
「彼らは、主様にとって無価値と判断された存在ですわ。主様は『食通』でいらっしゃるから。本来なら、その時点で命を奪われ、棄てられてしかるべきです」
「しかし、彼らは寛大なる主様のお心によって生き長らえ、我らの役に立つという形で命を使うという機会に恵まれたのですわ」
「こういうの、何て言うんでしたっけ。ええと……リサイクル? リユース?」
「まあ、とにかくエコってことですわよね。流石は主様って感じですわ!」
 きゃいきゃいと盛り上がる従者たちの言葉に、シホは目が回るような感覚を味わった。
 怒りではない。従者や主とやらの価値観は吸血鬼としてはありふれたものであって、今更いちいち怒りを覚えてやるほどのことはない。
 ただ、改めて互いがあまりにも相容れない存在なのだということを思い知らされた。それだけのこと。
「ところで、いかがでしょう。寛大にしてエコロジックな我が主に仕えてみる気など」
 従者の紡ぐ言葉を決然と無視し、シホは右手に白き聖銃ピアを、左手に黒き聖銃トリップを握る。同時に引き絞られたトリガーによって【【弾葬】聖銃二丁で奏でる葬送曲(ダンソウ・セイジュウニチョウデカナデルレクイエム)】が奏でられ、フルオートで吐き出される精霊弾と銀弾が暴雨となって従者らに襲いかかった。
 さらに間を置かずして。
「ロイヤル・ルルチェリア号、発進するのよ!」
 ルルチェリアの呼び声に応じて、【お子様幽霊たちの海賊団(ゴーストキッズパイレーツ)】が召喚される。空に浮かぶ海賊船の横腹にはカルバリン砲の突き出た砲門がずらりと並び、船縁に横並びになってわきゃわきゃと顔を出す子供の幽霊たちの手にはオモチャのラッパ――ではなく、れっきとした船上仕様マスケット銃が握られている。
「てぇーっ!」
 号令一下、それらの砲、銃が一斉に火を噴く。
 シホの銃声の旋律に重なるような轟音の律動が、従者らの声を消し飛ばす。交響する砲弾と弾丸は荘厳かつ物騒なオラトリオめいた様相を呈し、避難すべき人が避難しつくした戦場に遠慮のない破壊をもたらしていった。
「あら――」
「まあ」
 破壊のただ中に置かれた従者らは、態度こそなぜか余裕げではあったが、次第にその数を減じていく。防いで防ぎきれるような威力でなし、回避も容易でない濃密な弾幕ともなれば、それは道理だった。
 それでも、運が良いのか力量が抜きん出ているのか、かいくぐってみせる者もある。
 スカートの裾をちょんと引きつつ、身を低くして滑るように駆ける。
「やらすか!」
 殺気のこもった鋭い怒声に、わずかに従者の足が鈍る。
 その一瞬で従者の前に躍り出た燦が、妖刀神鳴を袈裟に斬りかかった。
「あらあら」
 硬質化した両腕を十字に交差させ、従者は紅雷を纏った斬撃を受け止める。
 発生する拮抗――だが、素手と刀との差か、次第に燦の方が押し勝っていく。
 それでも笑みを浮かべたままに、従者は燦にねっとりとした声を投げかけてくる。
「あなた方も……ご自身のことを棚に上げて、よくも『命を冒涜している』などと私たちに言えましたね」
「――……」
 鉄火の合奏に耳を傾けるようにしつつ、馬耳東風――いや狐耳東風、燦は聞き流す。しかし、構う様子もなく従者は続けてきた。
「人の命を搾取して糧にすることを悪逆と定めておきながら、人が死した後にその霊を現世に留めて酷使するのは肯定されるとおっしゃるのですか? それから、あのオラトリオのお嬢様……」
 言いつつ従者は、何やらうっとりとした眼差しをシホに向けた。
「あの方からは私たちと同じ匂いがいたしますわ。死を経ていながら死を免れている、存在していること自体が現在という時間への、今ある命への冒涜となる、我々と同じ――」
「黙れっ!」
 流石の燦も聞き捨てておくことあたわず、先刻の数倍の殺気を込めた喚声と同時に【フォックスファイア・伍式(フォックスファイア・フィフス)】の至近弾を放つ。
 一個体に向けるには過剰ともいえる、巨木の枝葉のごとき膨大な炎の奔流。
 ――が、至近であったのがかえって災いといおうか、拡がりきる前に身をねじられたために、呑み込みそびれる。それでも、左半身をごっそりと消し炭にせしめたが。
「アタシが――『死の先でも』一緒にいると決めたアタシがいるんだ。独りよがりなだけのあんたらとは、違う」
「ああ、ああ……やはりあなた方は我々の仲間になるべきでした!」
 慮外なる恍惚とした絶叫に耳を貫かれ、燦は息を呑んだ。どう見ても瀕死の様に至った者のすることではないし、意味もわからない。
「死ねば良い! ともに死んで、ともにオブリビオンになれば『死の先』に至っても友愛を結んでいられる――いや、他に方法なんてありません! オブリビオン化こそがあなた方の理想であるはずですわ!」
「黙れっつったろうが!」
 再び放たれた伍式の炎が、今度こそ従者の全身を包む。
 激昂しながらも、『敵でも女の子に苦痛は与えない』というポリシーは曲げず、それゆえに苦痛なき慈悲の炎を使っての介錯だった。
 炎に包まれ炭化しながら、従者は炭より昏い目と口とを、ニイッと三日月型に歪めた。
「また会いましょう」
 不吉に過ぎる台詞を遺し、骸の海へと還っていった。

「私は、悪霊なのかしら」
 敵が壊滅し、戦痕生々しい中につと立っていたシホが、つぶやく。
 自死を選んだ者は、世に留まって苦しみ続けるのだと、ルルチェリアは言った。前世にて自殺同然の暴挙を行い、現世にて贖罪の苦しみに苛まれ続けている己自身は、それにぴったりと符合しているではないか。
 いや、自身が苦しむ分にはこの際どうでも良い。だが、悪霊たる己がもし、大切な人たちにまで苦しみをまき散らすようなことになったら。
「シホ」
 燦が、シホの肩をぐっと抱き寄せる。
「シホは一人じゃない。アタシもルルもいる。どんな苦しみだって吹っ飛ばせる。そうだろ?」
「燦さんの言う通りよ!」
 ぎゅむっとシホを真正面から抱きしめ、ルルティアは言った。
「シホを一人で苦しませたりなんかしないわ! みんな一緒なら、何にだって負けやしない!」
「燦、ルル……そう、そうよね」
 二人を抱き返し、シホはうなずいた。
 何かが、変わり始めている。そんな予感を覚えながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『猟兵慰問団』

POW   :    料理を振る舞う

SPD   :    歌や踊りを披露する

WIZ   :    身体で慰める

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ホープフル・ヴィレッジ
「すまねえなぁ。『闇の救済者』なんて気取っちゃいるが、そんなには余裕があるわけじゃないくてよ。何かと不便は掛けちまうと思う」
 恐縮したような様子で、鉄の鎧兜を着込んだ『救済者』の一人が言う。
 なるほど、吸血鬼の支配を逃れて勢力を成しているとはいえ、ダークセイヴァーのヒエラルキーにおいては下層も下層である人間の力の及ぶ範囲など、高が知れている。精一杯の規模の拠点を造っているとはいえ、広さ、食料や医薬品などの物資、その他様々な面で行き届かない部分があるのは確かである。
 しかし、吸血鬼の苛政の下にあって村ぐるみの心中さえ図ったような人々からすれば、そこはまばゆいばかりに希望に満ちた場所だった。ひとまず、絶対的暴力者の気紛れで命や尊厳を踏みにじられる心配がないという点だけでも、彼らにとっては劇的なものといっていい。
 心配なのはむしろ、『救済者』が彼らを救ったことでこの拠点が吸血鬼の標的になりはしないかということ。領主やその配下がその気になってしまえば、武装した人間たちなどひとたまりもない。自分たちのせいでこの場所まで蹂躙されたら――不安と罪悪感の入り混じった重たい汚泥が、救出された村人たちの胸を圧していた。
 そんな彼らに、従属吸血鬼の集団を殲滅したという知らせがもたらされたのは、ほんの少しだけ後のことである。
レパル・リオン
人々に勇気を与えるのもヒーローのつとめ!よーし、今日も元気にがんばろう!

村人のみんなー!こーんにーちはー!
あたし、レパル!またの名を『魔法猟兵イェーガー・レパル』よ!今日はね、みんなに元気になってほしくてやってきたわ!あたしの魔法を見せてあげる!
はぁぁぁ〜〜……(気合いをためる)
はーっ!(気合いを虹色の炎に変え、小鳥や子猫の形にして放つ)
大丈夫!この炎はね、近づいた人を元気にするの!ほら、触っても熱くないでしょ?

元気になったら、一緒に歌って踊りましょ!大丈夫、初めてでもあたしが教えてあげるわ!
この歌とダンスと奇跡の時間がみんなの希望になったら、あたしも嬉しい!


稲宮・桐葉
・機巧大狐ちゃんに跨り、悠々と凱旋じゃ!
不安と罪悪感に苛まれる様子の人々に、笑顔で語りかけ安心させるぞ

「何を不景気な顔をしておるのじゃ?
心配には及ばぬぞ!
お主たちが避難した後、吸血鬼の下僕どもが押し寄せたが、我らが根こそぎ返り討ちにしてやったわ!

「1体も逃してはおらぬ
お主たちの避難先が暴かれる事もない。安心するのじゃ!


・真の姿を開放し九尾に変身しUCを使用
全身全霊で癒しの舞を披露するのじゃ

「皆さぞ疲れておろう
稚拙なれど舞を披露いたすのじゃ!

・穏やかな表情で舞、皆を元気づけるのじゃ!
されどわらわは妖狐、命に係わるゆえ精を頂くぞ
疲れさせぬよう皆から放たれる陽の気を僅かずつの!

アドリブ・連携歓迎じゃ



●見よ、勇者は帰る
 善は急げという。
 朗報がもたらされるのもまた早い方がよかろうということで、狐型の騎乗機械を駆るため足の速い稲宮・桐葉(戦狐巫女・f02156)は、他の猟兵らに先んじていた。ただし単独ではなく、自分も早く村人を元気づけたいと息巻いていたレパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)を、機巧大狐ちゃんのお尻側座席に二人乗りさせて、である。
「む……? おお、見えたぞ。恐らく、拠点というのはあれであろう」
「あ、そうだね」
 桐葉とレパルの視線の先に、レンガをみっしりと積み上げられて造られた城壁らしきものと、空堀に渡された丸太の橋が見えてきた。
 橋の手前側に立っていた『闇の救済者』の兵士二人が、桐葉らの姿を認める。途端、何やら大きな声を上げながら拠点へ走って行く。
「あれは、わしらのことがわかったのかの?」
「まあ、あそこでちょっとでも見かけてたんなら、覚えてるでしょ」
 桐葉はたっぷりの金髪と大きな狐尻尾に、ダークセイヴァーではまずまずレアな巫女装束という出で立ち。レパルは全体的にはピンク色の狼めいたシルエットで、両腕が虎縞模様というカラフルぶり。世界の加護によって違和感こそ与えてはいないものの、一度見たことがあればそれと識別できる程度の印象はあるだろう。
 拠点に入ると、『救済者』の面々や、救出された村人のうち比較的体力に余裕のあった者たちなどが、わらわらと集まって人垣を作る。
 ふと、彼らの表情が緊張していることに気付く。
 半々かそれ以上で、桐葉やレパルが潰走してきたという可能性も考えているのか。場合によっては、この拠点も放棄して逃げねばならないかもしれない、と。
「何を不景気な顔をしておるのじゃ?」
 苦笑しながら、桐葉は言った。
「心配には及ばぬ。お主たちが避難した後、吸血鬼の下僕どもが押し寄せたが、我らが根こそぎ返り討ちにしてやったわ。使いを走らせるも許しておらぬゆえ、ここの在処が暴かれる事もない。安心するのじゃ!」
 桐葉の堂々たる言葉に、周囲からワッと大歓声が上がった。

「みーんなー!」
 拠点内の、とある広場。
 レパルの虎縞の腕がぶんぶんと振り回され、周囲の人々の目が集まる。
「あたし、レパル! またの名を『魔法猟兵イェーガー・レパル』よ! みんなに元気になってもらえるように、あたしの魔法を見せてあげるね!」
 衣装は黄金色の美しいミニドレスで、声は明朗でよく通り、動作は活力に満ちている。ヒーローショーの司会のお姉さんとヒーローそのものを足して、二で割らずに足しっぱなしにしたかのような空気、とでも称しようか。見る者の心に何やら浮き立つものを植え付けていく、陽のエネルギーが発揮されている。
「それじゃー、いっくよ-! はあぁぁ……」
 両拳を握り、肘と膝をくっつけるような格好で身を縮めつつ、気合いをチャージ。そして。
「はぁーっ!」
 弾けるような伸びと同時、開放されたレパルの手の平から、いくつもの炎の欠片が紙吹雪のようにばらまかれる。炎の欠片は空を舞ううちに形を変え、輝きを変え、瞬き三つもするうちに虹色の小鳥のような姿になった。
 その幻惑的な光景に、おお、と観衆がどよめく。
「この炎はね、人を元気にする力があるの! ほら……」
 中の一羽がふいっと降下して、レパルの手の甲に留まる。
「こんな風に、触れても熱くないのよ」
 レパルがそう言った直後、虹色の小鳥たちは観衆の元に飛来していった。レパルが実践してみせているとはいえ、中にはのけぞったりおびえたりする者もある。
 が、実際に触れてしまえば【聖炎抱翼(フェニックスブレス)】の炎の体力、気力を回復させる効果は抜群である。触れたところから生命力そのものを流し込まれていくかのような暖かさに、自然、人々は笑顔になっていく。
 そこへ、背中を押すようなレパルの声が響く。
「さあ、元気になったら一緒に歌って踊りましょ!」
 見本とばかりに、はつらつと跳んだり跳ねたりするレパル。敢えてかもしれないが、動きは大きくはあっても割合シンプルなもので、見様見真似がしやすいものだった。
 観衆の最前列がおずおずと動き出す。やがてそれは、中列、後列にもゆっくりと、じんわりと伝播していく。
「ふうむ、見事な」
 レパルの舞台を眺めていた桐葉が、感嘆の声を上げる。
「わらわも負けてはおれぬ。稚拙ながら舞を披露しようぞ!」
 桐葉が九十九檜扇をパチンと鳴らすと同時、彼女の尻尾をぶわりと九本に増え、さらに巫女装束が一瞬にして赤を基調とした舞衣装に変化するする。
 わっと人々が沸き立つ中、桐葉はレパルの脇にすいっと並び、【巫女神楽 ~萌春の舞~(ミコカグラ・ホウシュンノマイ)】を舞い始めた。癒やしの力の込められた桜吹雪が舞風に乗って振りまかれ、観衆の熱気がいや増していく。
「八百万の神たちよ、我らに幸をもたらし賜え!」
 虹色の小鳥と桜吹雪、そして人々の乱舞がどんどんと盛り上がり――陽気が高まったところ、その上澄みを桐葉が少しばかり頂戴したのは、秘密である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春霞・遙
暗闇に閉ざされた世界ではささやかな光だって目が眩むようですよね。
ずっと寄り添い続けることはできないけれど、みなさんが少しでもこの先の困難を歩むことができますように。

怪我をした人、体調面で不安のある人の診察をします。
最低限の道具しか持ってきてはいないので手持ちの道具で手当てできるものは処置して、そういうものでないときは助言や【生まれながらの光】での治療を行います。
闇の救済者や村の人に医療関係の役割をしている人がいれば、診た人たちの状態やこの世界でできそうな処置を伝えておきます。



●夜明けは光から暗闇を分かち
 春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は、体調に不安があるという村人たちの元を順繰りに回診していた。
 予想していた通りのことだが、多くの人々の体には、慢性的な栄養失調に端を発する様々な症状が見られた。骨、筋肉、内臓、どこを診ても衰弱している。
 脆くなった皮膚が裂けて出血しているなどであれば、【生まれながらの光】を当てるなどすれば、一時的な治療はできる。だが、根治治療を期するならば、それだけでは意味がない。まず彼らの体に必要最低限の栄養を与えること。そして、そんな栄養の供給を長期的に続けること。これが必須となる。
 要は、新たに増えた村一つ分の食い扶持を、この拠点は長期に渡ってまかなうことができるのか、というのが鍵になる。まあ、ある程度快復した村人は労働力にできるのだし、その辺の算段を何も付けずに救出作戦を実行したわけでもあるまいから、恐らく大丈夫だろうとは思うのだが。
(私は、彼らにずっとは寄り添えない)
 遙はUDCアースの医師でありエージェントであり、猟兵である。ダークセイヴァーの一拠点に留まり続けられる立場ではない。
 ゆえに、歯がゆさは感じる。充分でない時間、充分でない措置のままに切り上げなければならないという事実は、医者としては悔しいものがある。
 それでも、遙の診察を受けた人々は皆一様に深く感謝していた。中には感涙を流したり、あるいは、神にするそれのように何やら祈りの仕草を捧げてくる者さえあった。
(私にできているのは、ささやかなことだけど……この人たちは、ずっと暗闇の世界にいたから)
 わずかな光でもまぶしく見えると、そういうことなのだろう。
 恐縮するやら気恥ずかしいやらといった気分で、遙は祈りを捧げる人たちに対し、ごまかすような微笑を浮かべる。
 とはいえ、村人たちがこの先の困難な生活にあっても歩みを続けられるように、遙は今できることの全てを尽くすつもりではいる。
「栄養が必要といっても、胃袋も萎縮していますから、闇雲に食べようとするのはかえって危険です。まずは……」
 『救済者』のメディックに今後の医療活動について説明しつつ、遙はうっすら浮かんだ額の汗を指で弾いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…本来なら不用意に怯えさせた事を謝りたかったけど…

私が今、姿を現しても無駄に恐怖を与えるだけな気がするし…

UCを発動し"遥かなる血統"の中の記憶を『追跡』して、
全身を血の『力を溜め』た『オーラで防御』して覆い、
自身の『存在感』を改変して別人に『変装』
怯えさせた村人達を探し従者を装って謝罪して回るわ

…すみません!主も悪気があった訳では無いんです!

ただ、ちょっと力加減を間違えたというか、
どう説得すれぱ良いか分からなかったというか…

とにかく、恐がらせてしまい申し訳ありません!
主に変わって謝罪いたします

此処なら安全です。もう貴方達を脅かす者もいません
だから安心して、明日何をするか考えてみてくださいね?


ニール・ブランシャード
親がいない子達を探して一緒に過ごすよ
ぼくじゃ代わりにならないけど…放っておけない

走り回って遊ぶ元気は無いかもしれないけど
ちょっとでも笑ってもらえるように、弟達に身体を使って頑張ってもらうよ

UC使用
数を抑えてボール大の弟達を召喚
色々な小動物に擬態するなどして子供達にもみくちゃにされてもらう

ぼ、ぼくだってもみくちゃにされる覚悟はあるよ!

一段落したらさっきの親子に話しかけるよ
「赤ちゃん、さわってもいいですか!」
抱っこは怖いから、触る時は甲冑の隙間から体を伸ばして…
うわぁ…ちっちゃい…

この人がしようとしたことに何も思わないわけじゃない
でも、ぼくが言いたいことは一つだけだ

「生まれてきてくれてありがとう」



●子供の情景
 拠点の門前で、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は足を止めた。
 便宜の上のこととはいえ、村人を大いに怯えさせてしまったという引け目が、彼女にはある。気まずい思いがあるのもそうだが、彼女の顔を出した途端、せっかく安息を得た彼らの心に恐怖がぶり返すのではないかという懸念もある。気持ちとしては、直に彼らに会って謝るのが筋であろうとは思っているのだが。
「合わせる顔がないっていうのは、こういうのを言うのかしらね……」
 眉間に力を入れ、考え込む。
 思案の結果、彼女が導き出した一手は、別人になりきることだった。
 【限定解放・血の偽装(リミテッド・ブラッドワークス)】によって、自身の血の中にあるデータをさかのぼる。特に先祖の内の誰それという指定はないが、とにかく穏やかな気性を引きずり出す。
 ざわりと、そよ風がなでるようにオーラがリーヴァルディの体を包む。瞬き一つでリーヴァルディの姿は変わった。顔や体の造作が劇的に変わったわけではないが、常にその身に纏われていた殺伐とした気配が鳴りを潜める。
「……こんなところかしら」
 棘の抜けたような表情で拠点に入る。
 先に到着していた猟兵たちの活躍があったのだろうが、拠点の中は思っていたよりもにぎやかな空気に満ちている。人々の顔には明るさが戻っており、割合、元気に走り回っている子供の姿なども見受けられる。
 と、リーヴァルディはその中に、自分の救出した顔ぶれがあることに気付いた。
 さらに周辺に視線を巡らせてみると、彼らの親たち――先刻、悲壮な顔で自らの子供たちに凶器を振り下ろそうとしていた者たちがいた。今は、呪いから解放されたかのような晴れた眼差しで、子供たちを見守っている。
「あの……!」
 そろそろと彼らの方に歩み寄り、リーヴァルディは声を掛けた。
「先ほどは、我が主が申し訳ないことをしました! 悪気はなかったようですが、その、やり方が不器用というか、力加減が下手な方でして!」
 出し抜けの謝罪に、村人たちは目を丸くして、一瞬ならず絶句する。
 だが、ややあってから一人の中年女性が「ああ」と得心の声を上げた。
「あなたの主というのは、あの――何だか、怖いものに取り憑かれていた方?」
「は、はい、その通りです」
「そんな、謝ってもらうようなことではないです。むしろ私や子供たちの命の恩人なんですから、お礼を言わなければいけないくらい」
 萎縮したような様子で、そう返される。ひとまずは悪感情を持たれてはいなかったことがわかり、リーヴァルディはほっと胸をなで下ろした。
 それから、見るともなしに子供たちの方に視線を移ろわせて、ふと、彼らが何やら小動物たちと一緒になって遊んでいることに気付く。猫だったり、小犬だったり、オウムだったり……と思いきや。
(ん、あれ?)
 なぜかそれらのことごとくが、不自然に真っ黒な毛並みを持っていた。いや、正しくは『毛』並みではなく、つるりとした質感である。
 猟兵ならば一目でわかる。それらは、ブラックタールだった。ブラックタールはダークセイヴァーには存在しないはずのものであるため、つまりそれらは、猟兵の誰かが子供たちをあやすために体を分裂させたか何かしたのだと推測できる。
 リーヴァルディが視線を巡らせると、漆黒の全身甲冑で身を固めた人影を見出すことができた。ニール・ブランシャード(うごくよろい・f27668)である。
「あの……」
 ニールはちょうど、赤子を抱いた女性に声を掛けているところだった。
「赤ちゃん、さわってもいいですか?」
「ああ、あなたは……」
 母親の顔がほころぶ。自身と我が子の命の恩人たる人の顔――フルフェイスの兜に隠れてまるで見えないのだが、まあそれはそれとして――を、見覚えていたようだ。
「もちろんです。どうぞ」
 軽く身を寄せるようにして差し出された赤子に、ニールは甲冑の手首あたりからニュルリと触手を伸ばした。それは本来ならば母親の正気を奪いかねない光景であるはずなのだが、そこは世界の加護に守られた猟兵のこと、誰に見咎められることもない。
 触手の先で赤子の頬に触れ、手に触れる。
 小さな命。
 見通しの暗いままの世界ではあるし、先のそれと同等の苦難や絶望を、再び三たびと味わうことになるかもしれない。それでも未来へつながる命が今、こうして息づいている。
 触手を握り返す赤子の手の感触に、ニールは微かに震えた。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
 じんわりとしみ出すような声で、赤子に語りかける。それを聞いた母親は、感涙を浮かべていた。
 守れてよかった。ニールの胸懐は、安堵と誇らしさに満ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
《白駆》
pow

生きてくれてありがとう
特に女の子は死んじゃ世界の損失だ

芋の皮を剥いて手伝い…上の空で指を切る
従者の言葉を反芻
命の冒涜なものか
ただ死の先を考え表情が険しくなる

ボルシチ…村人は美味しいと言ってもいつもと違うね

オブリビオンとは過去の所業に則り今を壊す者
シホは違うよ
過去のリプレイでなく現在のシホを紡いでいる
救った村人が証拠だぜ
手を繋ぐ
これからも一緒に現在・未来を紡ごう
独りじゃない

アタシ達はオブリビオンにならない
死んだら―

宿す魔物娘は破壊意思は薄らいでいるよ
世界の理に抗っている
彼女達をオブリビオンという枷から救うことが人生の課題さ

皆、現世で一生懸命だ
過去に縛られた吸血鬼とは違う
吹っ切れるぜ


ルルチェリア・グレイブキーパー
≪白駆≫
アドリブ歓迎

幽霊の子達を呼び出し楽器を演奏して貰う
だけど好き勝手やり始め
なんちゃって漫談に
シンバルまだよ!はい、ここ!
って、トランペット吹くなー!

仕事後のシホのボルシチは格別ね!
だけどいつもと違う味
燦さんもそう思ってるみたい
一体どうしたのかしら?

過去から蘇り世界を破滅させるのがオブリビオン
シホの様に罪の償いや
同位体を助ける約束を持って現れる事は無いの
何処が一緒なのよ?

そうよ、独りになんかさせないんだから
三人で手を繋ぐ

子供は楽しむ天才なの
それは幽霊になっても変わらない
マイ達は懸命に今を楽しもうとしているから明るいのよ

シホの想いが消えない限り
世界の敵になる可能性はゼロよ
相変わらず心配性ね


シホ・エーデルワイス
《白駆》

病や身体欠損者を【祝音】や【復世】で治療

一段落したらボルシチを料理
けど

私達と同じ匂い…

従者の眼差しと言葉が心に刺さりモヤモヤ
料理はおいしいけど
普段と微妙に味が違う


3人だけに悩みを吐露

ねえ…オブリビオンって何でしょう?
過去から蘇った存在というなら
私も同じ
私が戦うのは同族殺しと似た事なのかも…

ルル…マイさん達はどうしてあんなに明るいのかしら?

燦…宿している魔物娘さん達に
もう世界を害する意志は無いのかしら?

私も…いつか世界の敵になるのかな?


今を楽しみ紡ぐ…
そうね

過去に囚われず
未来へ進める事が大きな違いね

私の記憶が消されたのは
未来へ目を向けさせる為かも

手を繋ぎ

ありがとう
皆と一緒ならきっと大丈夫



●我が人生は愛と喜び
「や……約束、覚えてるよな、シホ! ボルシチ、よろしくだぜ」
「う、うん。村の皆さんにも食べてもらいたいから、たくさん作らなきゃ。燦も、手伝って」
 そんなやりとりがあって後、チーム≪白駆≫の面々は今、拠点で料理やら何やらの作業を行っているわけだが。
 四王天・燦(月夜の翼・f04448)はボルシチの具になるジャガイモの皮を剥いていた。実は、燦もまた料理の心得があり、包丁の扱いは慣れたものである――はずなのだが。
「ツっ!」
 皮の上を滑った包丁の刃が、左手の親指を浅く切る。
 ぺろりと口に含むと、うっすらと血の味がした。ポテンシャルでいえばオブリビオンの攻撃にさえ耐えうる肉体であるはずなのだが、『気』を張っていなければ、ただの包丁相手でもまあこんなものだ。
(散漫になってんな……)
 声には出さず、胸の中だけで独白する。
 脳裏には、先に倒した敵の最期の顔がちらついていた。物凄まじい笑顔と、そして嗤いながら吐いていた台詞とが。
 ――ともに死んで、ともにオブリビオンになれば『死の先』に至っても友愛を結んでいられる……
 妄言だ。しかし同時に、甘言でもあった。切り捨てても、切り捨てたつもりになっても、なお粘りついてくる毒の水飴のような。
「ちょっとー! 何やってるのよー!?」
 ルルチェリア・グレイブキーパー(墓守のルル・f09202)の声が耳に飛び込んできて、びくりと身を震わせる。
 慌ててそちらに目をやれば、彼女が声を掛けた先は燦ではないと知れる。
 ルルチェリアは料理が出来るまでの間をつなぐように、【お子様幽霊たちのお遊戯(ゴーストキッズコンビネーション)】による楽団に、演奏をしてもらっていた。ところがフリーダムな幽霊の子供たちのこと、指揮者たるルルチェリアも楽譜もそっちのけで、勝手に楽器を鳴らし出したのである。
「シンバルはまだだってば! って、トランペットも吹くなー!」
 子供たちが縦横無尽に遊び回り、演奏はしっちゃかめっちゃかになる。いや、もはや演奏という体は成さず、勢い任せのコントのような様相である。
 しかし、ルルチェリアの目論見とは多少異なる形ではあるかもしれないが、それを見ている観衆は大いに笑い、大いに拍手喝采を贈っていた。盛り上がりという点をいえば、大成功だろう。
 そんな様子を見ていたのは、燦だけでなくシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)もである。幽霊の子供たちに注意が行っているため、バターとオリーブオイルで牛肉を炒める手がやや鈍っている。
「……どうして、あんなに明るいのかしら」
 ぽつんとしたつぶやきは、誰の耳にも届かずに消える。
 最後の敵は、ルルチェリアが幽霊を使役する様を「酷使」と称した。実際に幽霊たちの様子を見れば、それは言いがかりだと知れる。彼らは、今という時を目一杯楽しんでいる。楽しめているのは、彼らが幽霊になってなお子供の心を失っていないからであり、またルルチェリアとの絆が強固だからでもあるだろう。
 ゆえに、その虚妄については、思慮の外にうっちゃるのは簡単だった。
 しかし。
 ――同じ匂いがいたしますわ……
 シホに向けられていた言葉が、心に刺さって抜けない。シホに向けられていた眼差しが、心に遺って消えない。
 ――死を経ていながら死を免れている……命への冒涜――我々と同じ……
 はっ、と。
 肉の微かに焦げる匂いに気付いたシホは、慌てて火を弱めた。

「一仕事終わった後の、シホのボルシチは格別ね!」
 ルルチェリアが上機嫌で言う。
 作りも作ったり、鍋五杯分。ルルチェリアや燦だけでなく、村人や『救済者』にも振る舞われ、皆笑顔で舌鼓を打っている。
 ただ。
(……いつもとは、ちょっと違う味がするわね)
 美味なことは美味なのだが、微妙な違和感があると、ルルチェリアは感じていた。
 燦もまた、食べつつ首を傾げている。
 そしてシホはといえば、自分の分の器に手も付けず、ぼうっと虚空をにらんでいた。
「……シホ、どうかしたの?」
 ルルチェリアが声を掛けると、シホは瞬きを二、三度してからルルの方に向き直った。
「えっと、呼んだ?」
「シホ」
 今度は燦が、じっと真剣な視線をシホに向けつつ言った。
「あいつが言ってたこと、まだ気にしてんのか?」
「そんなこと……」
 シホは手を振って否定しようとして――その手を止める。ごまかしたとて、すぐにばれるだろう。燦にせよルルチェリアにせよ、そう鈍感でもない。
「ええ、その通りよ。あれは、私がオブリビオンと同じだと言っていた。そして……そうかもしれないって、思ってしまったの。私も、過去から蘇った存在だから」
「シホ……」
 得体の知れない危うさを感じた燦が、思わずシホの手を握る。
 その手は微かに震えていた。手を震わせながら、シホはすがるような声で、燦に問う。
「私も、いつか世界の敵になるのかな? ねえ、燦。燦の中にいる魔物娘さん、世界を害する意志って、どうなってるのかしら?」
「それは……薄らいではいる。まだ、完全ではないみたいだけど」
 猟兵の中には、オウガに取り憑かれたオウガブラッドや、オブリビオン・ストームと融合したストームブレイドなど、何らかの形でオブリビオンを取り込んでいる者も数多くいる。燦もまた、身の内にオブリビオン由来の魔物娘たちを取り込んでいる。彼女たちをどうにかオブリビオンというくびきから解放することは、燦の人生を懸けた課題の一つである。
「はあ……相変わらず心配性ね、シホは」
 シホの手を握る燦の手に、さらに手を重ねるようにしつつ、ルルチェリアは言った。シホを見つめる目は真剣で、かつ、少し怒ってもいるような気配も発していた。
「吸血鬼たちは、過去から蘇った上で世界を破滅させようとしてるでしょ。シホみたいに、過去の罪を償おうとしたり、人を助けたり、同位体との約束を守ろうとしたりなんかしないものなの。一緒くたになんてしちゃいけないのよ!」
「ルル……」
 シホの目が、大きく開かれる。
 ルルチェリアの言葉は、ごく真っ直ぐな正論だった。死霊術士――死霊を使役する禁術を扱う彼女にしてみれば、その類の葛藤の経験については一日の長があるのかもしれない。
「あ、ははっ……そうか、単純なことだったな。シホに助けられた村人が、ここにこうしてたくさんいる。これが証拠だ。シホは――シホも、アタシも、オブリビオンにはならない」
「そうよ。想いを忘れない限り、世界の敵になんてなりっこないわ」
 シホの手を握る燦とルルチェリアの手に、力が入る。
 震えは止まっていた。
「ありがとう」
 シホは二人に感謝した。ついでに、運命に感謝した。自分は独りではない。独りにはならない。こんなありがたいことがあるだろうか?
「……さあ、て! ご飯食べたら、帰る前にもう一回り、怪我人や病人がいないか見て回ろうかな」
「おー、ホントぶれずに慎重だな、シホは。まあ、アタシも付き合うよ。特に女の子の無事は念入りに確かめておかなきゃだし」
「燦は燦でぶれないわね」
 現在が紡がれ、未来へつながる。苦難も苦悩も、恐らくいくらでも待っていることだろう。それでも、皆が一緒なら何ほどのこともない。
 三人は三人とも、心底からそう思った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月26日


挿絵イラスト