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植え付けられた愛情

#UDCアース #感染型UDC

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●消えた姉妹
 東京都内の某警察署に、身なりの良いひとりの中年男性が血相を変えて飛び込んできた。

「た、頼むッ! 娘達を、探してくれッ!」

 その人物は蔵田雄造と名乗った。都内某所で不動産業を営んでいるという。
 妻とは三年前に死別しており、以前から子煩悩だったのが、妻の死後は更にその溺愛ぶりが強まったと、近所で噂される人物であった。
 その蔵田が、ふたりの娘が突然、行方不明になったと警察署に駆け込んできたのである。
 余りの慌てぶりに、警察では一応事情聴取という形で蔵田から調書を取った。

 それから二日後。
 担当に当たることなったのは、捜査一課の木塚巡査部長。
 本来ならば殺人や暴行等の強行犯を扱う部署の一員である筈の彼が、何故蔵田の娘達の捜索に乗り出すこととなったのか。
 実は蔵田からの要請を受けて一般の制服署員が蔵田家を検分したところ、娘達の部屋で争った跡が発見され、更には致死量に近い血痕が発見されたのだ。
 この報告を受けた警察署上層部は、急遽この事件を強行犯事案として扱うことを決定し、木塚巡査部長をその主担に充てたのである。
 消えた娘達は、姉の彩佳と妹の晴菜。それぞれ17歳と15歳で、いずれも美人で器量良しと評判の姉妹だった。

「あれだけ盛大に争った跡があるというのに、貴方は何も気づかなかったのですか?」

 取調室にて、蔵田は木塚巡査部長の問いに対し、真っ青な表情で小刻みに震えたまま、弱々しくかぶりを振った。
 曰く、ふたりが消えたと思しき夜は酒を飲んでぐっすり眠っていたから、何も覚えていないし、何も聞いていないのだという。
 この蔵田の証言に眉を顰めつつも、木塚巡査部長は捜索の指揮を執った。既に報道各社がこの事件を取り扱っており、ネット上や新聞でも大々的にひとびとの関心を集めていた。
 果たして、ふたりの姉妹は生きているのか、それとも──。
 その時、警察署内に大音量の警報音が鳴り響いた。突如、不気味な怪物の群れが署内のそこかしこに出現し始めたというのである。
 木塚巡査部長は、青ざめたままぶるぶると震えている蔵田を取調室に残し、廊下へと飛び出していった。

●見え隠れするUDCの闇
 グリモアベースの狭いブリーフィングルーム内で、アルディンツ・セバロス(ダンピールの死霊術士・f21934)は呼び集めた猟兵達の前を行ったり来たりしながら、何度も低く唸っていた。
 今回セバロスは蔵田家の娘ふたりが行方不明となった事件の裏に、UDCの気配を感じ取っていた。だが、その姿ははっきりとは見えず、どこにUDCが潜んでいるのかがよく分からないのだという。

「申し訳ないけど、蔵田家のお嬢さん方を探す傍ら、UDC探しにも注力して欲しいんだ」

 だが、この事件はどうも胡散臭い、とセバロスは頬を歪めた。
 殺人事件なのか誘拐事件なのか、それすらもはっきりとしない。分かっているのは蔵田の娘達が突如、何の前触れも無く行方不明になったことと、ふたりの私室に大量の血痕が残されていたことだけだった。
 UDCを探しながら推理を展開し、娘達の行方を捜す──単純なひと探しではなく、かなり頭を使う任務になりそうであった。

「で、その蔵田氏周辺なんだけど、いきなり妙なUDCの眷属が大量発生し始めたんだ。これじゃあ娘さんの捜索もままならないから、まずはそいつらを排除しないとね。あれもこれも丸投げで、本当申し訳ない」

 セバロスは心底申し訳無さそうな表情で頭を掻いた。
 こんなことじゃあグリモア猟兵なんて失格だなぁ、などとぼやきながらも、その瞳にはある種の鋭さが宿っていた。
 先ずは兎に角、蔵田氏や木塚巡査部長と接触し、謎のUDCの眷属共を排除しなければ話は進まない。
 本格的な捜索に着手するのは、その後の話になるだろう。


革酎
 こんにちは、革酎です。

 今回は行方不明のお嬢さん方の捜索ですが、オープニング直後はいきなり集団戦です。蔵田氏や木塚巡査部長に襲い掛かるUDCの眷属の群れを退治して下さい。
 で、勿論親玉のUDCもどこかに居る訳ですが、そいつが一体何者なのか。
 戦闘しながら推理も同時並行な、かなり面倒臭いシナリオになることでしょう。

 第一章は、襲い来るUDCの眷属との集団戦。
 第二章は、徐々に明らかとなる真相とUDCの正体を突き止めるところまで。
 第三章は、親玉UDCとの対決です。
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第1章 集団戦 『アモルフェス』

POW   :    打ち据え嬲るもの
【触手】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    刺し穿つもの
自身の肉体を【先端が尖った形状】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    侵食するもの
全身を【冒涜的なオーラ】で覆い、自身が敵から受けた【忌避感】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アイ・リスパー
【電脳探偵団】
「UDC絡みの行方不明事件ですか。
ですが、私と理緒さんの電脳探偵団なら、どんな事件でも解決してみせます!」

まずは警察署に現れたUDCの退治からですね。
行きましょう、理緒さんっ!

【ラプラスの悪魔】でUCDの攻撃をシミュレート。
伸縮性による攻撃を予測して回避します。

「その攻撃はシミュレーション済みですっ」

さらに【マックスウェルの悪魔】で氷の弾丸を生成。
不定形なUDCを凍らせて予測不能な動きを封じつつ、一般人も守りましょう。

「理緒さん、今ですっ!」

UDCを撃破したら蔵田氏や木塚巡査部長から情報を聞き出し、パソコンで裏付け調査です。

「本格的な調査の前に情報の裏付けは必須ですからね」


菫宮・理緒
【電脳探偵団】
最強探偵団の実力を見せるときが来たね!

いろいろ気になるけど、
まずはUDCをなんとかしてからかな?

UDCの探索は、
【偵察】や【暗視】も使いながら【E.C.O.M.S】。

戦闘は
半数は防御として、アイさんやわたし、
いるなら木塚さんや蔵田さんの盾にもするね。
残りを突撃させていくよ。

戦闘後は、
今解っている捜査状況を教えてもらおうかな。
娘さんの容姿や、残されていた血液の照合結果とか、
そういうのは必須かなっ。

教えてもらったら、それをもとに【情報収集】
【ハッキング】や【電脳潜行】も使って、
アイさんとも連携しながら、2人の手がかりを探してみよう。
「アイさんとわたしなら、掴めない情報なんてないよ!」



 警察署内は、まさに混乱の極みのひと言に尽きた。
 そこかしこに出現したUDCの眷属はまともな形状を保っているものは皆無で、いずれも黒い粘液が触手状に辛うじて個体としての形態を保ち、手当たり次第に動く者を攻撃している。
 逃げ惑うひとびとは悲鳴と怒号の嵐の中で、行く手を遮る不気味な怪物の前で愕然と立ち尽くしたり、或いは別の逃げ道を求めて踵を返す。
 そんな中にあって、電脳探偵団を名乗るアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)と菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の両名は木塚巡査部長と蔵田氏の姿を探し求めながら、同時にUDCの討伐を進めていた。
「その攻撃は……シミュレーション済みですッ!」
 UDCが放つ刺突攻撃を、アイは紙一重で躱す。見た目は辛うじて回避したようにも感じられるが、実際のところは最小限の無駄の無い動作で確実に敵の一撃を完璧に躱し切っていた。
「最強探偵団の実力を見せる時が来ましたね……でも先ずは、この怪物共ですか」
 理緒もアイ同様、余裕たっぷりの表情で周囲の混乱ぶりを冷静に観察する。ふたりは、このUDCの群れを呼び寄せたのが蔵田氏であろうことを、ほとんど確信に近い思いで分析していた。
「早く木塚巡査部長と蔵田さんと合流しないとね……さぁ、作戦開始ッ!」
 理緒がE.C.O.M.Sを発動し、幾つもの小型戦力を一斉に廊下前方へと放つ。対するUDCはうねうねと気味の悪い動きを見せて迎撃態勢に入っていた。
「液体なら、この攻撃はどうでしょうね?」
 アイが氷の弾丸を生成し、廊下の中央で行く手を遮る敵に叩き込む。アイの予測は的中し、黒い粘液性のUDCは一瞬で凍結し、そのままE.C.O.M.Sで召喚された小型戦力の波状攻撃を浴びて、その場に砕け散った。
 しかし、敵の数はまだまだ多い。アイにしても理緒にしても、早く木塚巡査部長と合流を果たして捜査状況や手がかりなどを得たいところであったが、まだしばらく、お預けを喰らいそうな雰囲気であった。
 だがふたりは、ある疑念を抱いていた。
「倉田氏がこのUDCの群れを呼び寄せているってことは……もしかして、感染型でしょうか?」
「可能性は大いにありますが……でもそれなら、蔵田氏はどこでUDCを目撃したのでしょう?」
 アイと理緒は、手早く黒い粘液性のUDCを討ち倒しながら、互いの顔を見合わせた。
 行方不明となり、UDCと接触している可能性があるのは蔵田氏の行方不明の娘ふたりの方ではないのか。
 何故、蔵田氏が起点となってUDCの群れが出現したのであろう。
 まだまだ、不明点が多い。矢張り謎の鍵を握っているのは、蔵田氏であることは間違いないだろう。
「兎に角……木塚巡査部長と蔵田氏のおふた方と早く合流しましょう」
 アイの表情がいつになく厳しい色に引き締まる。自分達猟兵ならばこの程度のUDCは雑魚に過ぎないが、一般人である蔵田氏にとっては最大の脅威であろう。
 時間が過ぎれば過ぎる程、蔵田氏の身に降りかかる危険は大きい。のんびりしていられる暇は無かった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

勘解由小路・津雲
 ふうむ、それならおれはまず蔵田を探し、安全確保を目指すとするか。

【行動】
【符術・鳥葬】を使用。まずは敵の冒涜的オーラを【破魔】で打ち破りつつ攻撃。

同時に少数の鳥型式神を【偵察】にまわし、蔵田を探すとしよう。取調室にまだいるか、それともどこかに逃げ出したか。

どうも、蔵田が何か隠している気がするが、現状では落着いて話は聞けまい。見つけることが出来れば、【結界術】で守りを固め安全確保。

見つからなければ、行方を【情報収集】しつつ、こちらにはいなかったと他の猟兵と情報共有をしよう。逃げ出していたとしてもこの状況でそう遠くへ動けはしないだろうし、協力すれば見つけるのは難しくないはず。


波狼・拓哉
…色々重なってるんですかね。まあ、UDC関係してるならよくありそうな事ですけど

んじゃまずは制圧ですかね。ミミック!化け綴りな!綴るは現状を崩す威力…攻撃力重視で頼みます

自分は衝撃波込めた弾で制圧射撃。クイックドロウ、早業、2回攻撃も合わせて密度上げましょうか。掠りでも当たった事に変わりはないわけで…燃やして凍らせて痺れて貰いましょう

地形の利用、第六感、足場習熟、戦闘知識で上手く立ち回って、攻撃を見切って行きましょうか

さて、この話にも救いがあればいいんですけど…期待しないで進みましょうか
(アドリブ絡み歓迎)


枸橘・水織
感染型の事件…って仮定するなら、姉妹二人は事件に巻き込まれて、その結果を蔵田さんが見たっていうなら『ある程度は』つじつまが合うんだけど…

『姉妹二人が消えた』…の部分が気になるところ
怪奇性を考えるなら十分、『部屋の状況』を猟奇的なモノと捉えるなら『姉妹の死体があっても』…と考えるが、その結果・内容を頭の中で打ち消して

まずはこの状況をどうにかする方が先だよね…


戦闘
ちょっと厄介な相手ね…
大なり小なり『忌避感』は感じるので、WIZ系のUCは避け、POW系のUCを使用

指定UCを使用後、距離を置いて単純な魔力弾や魔力の刃を放って攻撃

UDCを撃破しつつ、警察署内の人間の安全を確保、蔵田氏や木塚巡査部長を探す



 日本国内の一般的な警察署には、自動小銃等が配備されている筈は無い。
 にも関わらず、UDCが大量に発生した件の警察署内では、弾丸を連続でばら撒くフルオート射撃の如き発射音が鳴り響いていた。
 その種明かしは実に単純だ。波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)が衝撃波を込めた弾丸を、まるで自動小銃の如き速度で撃ちまくっていたからである。
 黒い粘液性の触手型UDCは、拓哉が放つ弾丸の洪水に晒され、次から次へと霧散してゆく。
「はいはい、ミミック、よく出来ましたー」
 妙な台詞を口にしながら、拓哉はUDCを平らげながら署内を徘徊し続ける。まだ大勢の警察官達が化け物の群れ相手に何とか奮戦しているが、正直なところ、拓哉としてはさっさと退避して欲しいというのが本音であった。
「ま、日本の警察官は真面目だしねぇ」
 などと口走りながら、拓哉は後方で別の破壊音が響いたのに気づいた。
 枸橘・水織(オラトリオのウィザード・f11304)であった。水織は自身の魔力を増幅しつつ、極々単純な魔力弾、或いは魔力の刃を放ってUDCの討伐に当たっていた。
「いや、お見事……ところで、蔵田さんってひとを見かけませんでした?」
 拓哉に問いかけられ、水織は意外だといわんばかりに驚きの色を浮かべた。
「あれ……まだ見つかってなかったの?」
 水織は伊達眼鏡のフレームを軽く摘み、くいっと持ち上げて拓哉の面を見上げた。拓哉は、肩透かしを食った様子で小さく肩を竦めた。
 ふたりが居るのは、警察署の二階。取調室もこの階に幾つかあるのだが、そのいずれにも探す相手──蔵田氏はの姿が無かった。
 ならば自分で見つけるしかないか──単純な構造の建物だからすぐに誰かが見つけるだろうと踏んでいた拓哉だったが、見事に当てが外れた格好だった。
「ところで、ちょっと気になることがあるんだけど」
 手近のUDCを魔力の刃で切り刻みながら、水織が拓哉に怪訝な表情を向けた。
 曰く、今回の事件が感染型UDCに起因しているとなると、蔵田氏のふたりの娘達が事件に巻き込まれ、その現場を蔵田氏が目撃した、というのであれば、ある程度の辻褄は合う。
 だが水織としては、姉妹ふたりが綺麗に消え失せたという点に引っかかりを感じていた。
 姉妹が消える瞬間を目にしていないのに、どうやって蔵田氏はUDCと接触を取ったというのだろう。
「その答えなら、私の符が見つけてくれるやも知れん」
 階段を登ってくる足音と同時に、勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)が手にした数枚の符を廊下の宙空へと軽く放り上げた。
 次いで、何もない空間に五芒を描く。
「バン・ウン・タラク・キリク・アクッ!」
 符が全て、鳥の様な形に変じて四方へと飛び去ってゆく。津雲は、一階のどの部屋にも蔵田氏の姿は無かったと残念そうな表情を見せた。
「この警察署は構造自体は単純だが、妙に広い上に三階建てだ。ひとの足だけで探すのは、意外と手間なのかも知れん」
 だが、津雲の式神ならばすぐに見つけてくれるだろう。蔵田氏が単純にどこかへ姿を隠しているだけならば、という条件付きではあろうが。
「木塚巡査部長は?」
「彼ならば、地下の留置場で出会った。後で三階に来るようにと伝えてある」
 既に地下と一階は、猟兵達の活躍でUDCはあらかた討滅されている。残るは三階。木塚巡査部長は蔵田氏に対して取調室から出ないよう指示したのだが、どうやら蔵田氏はその指示を守らなかったようだ。
「ところで先程、面白い推理を口にしておったようだが」
「あぁ、あれね……別に推理って程でもないけど」
 津雲に答えながら、水織はふと内心で嫌な予感を抱いた。
(みおの想像が、外れてくれてたら良いんだけどね)
 この時、水織の脳裏にはふたりの娘の遺体が自室のカーペット上で仲良く並んでいる凄惨な光景が思い描かれていた。
 在り得ない話ではなかった。蔵田氏の証言が余りにも曖昧に過ぎる。しかも、何故かUDCは彼を起点に出現している事実を鑑みれば、水織の想像も決して的外れではないだろう。
「おっと……もうひと頑張り、要るみたいですよぉ」
 幾分面倒臭そうな表情で、拓哉は三階に上る階段の踊り場付近に弾丸を叩き込んだ。拓哉が仕留めたUDCの死骸の傍らを水織が何食わぬ顔で通り過ぎる。
 その水織が三階の段上に別の敵を発見し、淡々と魔力弾を撃ち放った。
 簡単に目の前の敵を屠った時、三階の廊下の向こうで中年男と思しき悲鳴が聞こえてきた。
「当たりだな。蔵田は、三階に居る」
 津雲がやれやれとかぶりを振る傍らで、拓哉と水織は一気に階上へと駆け上った。
「見つけたら、そこに留まらせておいてくれ。結界術で守りを固める」
 踊り場から声をかける津雲に、拓哉と水織は了解とばかりに手を振って応じた。と、そこへ拳銃を構えた木塚巡査部長が二階から駆け上ってきた。
 漸く、蔵田氏を無事に確保することが出来そうだ。猟兵達は何故か、変な疲労感に襲われていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

桜雨・カイ
蔵田さんは三階ですか、すぐ向かいます!

蔵田さんを見つけ次第【錬成カミヤドリ】発動
まずは蔵田さんを守る壁の役割の錬成体を作成
建物内は狭いので、残りは一度に錬成せずに時間差で錬成します。

自分の方へ意識を引きつけながら、敵の背後からも錬成し攻撃します。

そんなに怯えているのは、あの眷属の姿を見た事がある-もしかしてあの日起きていたのではないですか?
落ち着いて下さい、大丈夫ですから。何があったか話してくれませんか
(念のため、錬成体は解除しない。彼の怯えぶりからすると単純に彼が犯人で終わりとも思えないので、不意打ちで彼が攻撃されるのを防ぐ為)


九重・灯
戦闘ってコトで表に出てる人格は「オレ」だ。

あ~あ、こりゃ後始末やらされるUDC組織の連中には同情するぜ。
(「アルバイトのわたし達にその仕事が回されてこなければ、ですけどね……」)
頭の中でもう一人の自分がため息を吐く。

とりあえずは、蔵田の確保が優先だな。
UC【剣劇】。攻撃力重視。剣、アザレアで敵を叩き斬る。
複数同時に掛かってくるなら一気になぎ払ってやる。
『なぎ払い8、怪力7、範囲攻撃5、部位破壊5、体勢を崩す5』

単なる行方不明や殺人じゃなく、謎を含んだ事件だからこそ人はウワサを囁き広め続ける。
このシナリオを仕組んだのが感染型UDCなら、いまごろ笑いが止まらねえだろうよ。



 警察署の三階は、二階以下と比較してUDCの数が段違いであった。
 だが、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は群がるUDCを次々と蹴散らしつつ、廊下の最も奥まった位置にある用具倉庫へと駆けた。
 そこから、蔵田氏のものと思しき悲鳴が聞こえてきたからだ。
 傍らには赤みを帯びた大振りの片刃剣を携えた九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)の姿があった。カイと灯はほとんど同時に三階へと到達し、肩を並べるようにして廊下を駆けた。
 刃を振るいつつ、灯はやれやれとかぶりを振った。
「あ~あ……こりゃあ後始末やらされる組織の連中は大変だろうな。同情するぜ」
(ま……アルバイトのわたし達に、その仕事もついでに……なんて回されてこなければ、ですけど)
 灯の意識の片隅で、別の声が溜息を漏らすのが聞こえてきた。
 違いねぇ、と現在表に出ている方の灯が内心の自分に苦笑で応じる。尤も、今はそのような悠長なことをいっていられる場合でもなかったのだが。
 やがて、カイと灯は用具倉庫へ辿り着いた。勢い良く扉を蹴り開けると、数体のUDCが今にも蔵田に襲い掛かろうとしているところであった。
「させませんッ!」
 カイの両手の指先から、念糸が一斉に波を打った。狭い用具倉庫の中で、UDC共は次々と引きずり倒され、動けなくなったところを灯の振るう刃の餌食となった。
「倉田さん、怪我はありませんかッ!」
 少し遅れて、木塚巡査部長が拳銃片手に追いついてきた。既に蔵田氏は、カイが錬成したもう一体のからくり人形に守られるようにして、ゆっくりと用具倉庫を出ようとしているところであった。
「落ち着いて下さい、大丈夫ですから」
 カイがなだめる様な調子で諭すと、蔵田氏は漸く人心地ついたようにほっと吐息を漏らした。年齢はそれなりに重ねているが、どうにも子供臭い仕草の多い人物であった。
「しかし、このシナリオを組んだのが本当に感染型のUDCなら、今頃笑いが止まらねぇだろうよ」
 蔵田氏と木塚巡査部長を先導しつつ、灯は渋い表情を浮かべた。
 その点については、カイも幾らか疑問を抱いている。錬成したからくり人形に周囲を警戒させつつ、カイは蔵田氏にそっと問いかけた。
「倉田さん、どうか教えて下さい。お嬢さん方が居なくなったあの日……実は蔵田さんは、眠ってはいなかったのではないですか?」
 だが蔵田氏は、弱々しくもはっきりと首を左右に振った。彼は間違いなく、あの日の夜は酒に酔って早い時間から深い眠りの中にあったと主張した。
 木塚巡査部長も、これ以上は同じだといわんばかりに肩を竦めた。
 それならば何故、感染型と思しきUDCの群れがこれ程の数になるまで増殖したのか。
 謎は残されたままであったが、カイと灯は兎に角UDCを放置する訳にはいかない為、三階に居座り残敵の掃討に突入した。

 それから小一時間が経過。
 陽は完全に沈み、警戒線を敷いた警察署周辺にも夜の街並みの光が煌々と勢いを見せ始めていた。
「一旦、ご自宅までお送りしましょう。木塚巡査部長、構いませんよね?」
 木塚巡査部長は自分も同行するといって、カイに頷き返した。警察署はUDCの群れの後始末がある為、これ以上ここで取り調べを行う訳にはいかない。
 続きは、蔵田氏の自宅で、という運びとなった。
 この夜──猟兵達は行方不明となったふたりの娘を探し求めて、本格的な捜索に乗り出すこととなった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 冒険 『探索行【夜】』

POW   :    闇夜を駆け抜けながら、体当たりで探索する。

SPD   :    息を潜んで、闇に紛れながら探索する。

WIZ   :    ネット、噂話等から情報を得ながら、探索を行う。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 蔵田氏のふたりの娘、彩佳と晴菜はどこへ消えたというのか。
 木塚巡査部長は蔵田氏の自宅に足を運び入れながら、しかし、全く別のことを考えていた。
(どこに遺体を隠しているんだ……?)
 その疑念の眼差しは、リビングのソファーに深く腰を下ろし、頭を抱え込んでいる蔵田氏の頭上に向けて冷ややかに叩きつけられている。
 実のところ木塚巡査部長は、この蔵田氏がふたりの娘を殺害したのではないかという疑いを抱いていた。
 アリバイも供述も兎に角あやふやで、蔵田氏の有利になるような点は皆無といって良いのである。
(まずは自宅周辺の聞き込み、そして家宅捜査だな……娘達は絶対、この近くに居る)
 複数名の部下を夜の街に放ったものの、今のところ目ぼしい手掛かりは得られていない。或いは、UDC絡みということで情報収集が思う様に運んでいないのかも知れない。
 ここは矢張り、UDC組織の情報力に頼るしかないか──木塚巡査部長は渋い表情のまま、窓の外の闇をじっと凝視していた。
九重・灯
人格が「わたし」に替わる。
「わたし達は組織と協力関係にある、UDC事件の専門家なんです」
と、刑事さんに調査の許可を求める。

蔵田さんを調べる。
UC【血晶の振り子】

「あの怪物から何か悪影響を受けているかも知れません。少し調べさせてください」
という名目で、安心させるように声を掛けながら、手を取って脈を測ったり、目の前で振り子を振ったりします。
念のためですけど……彼、普通の人間ですか?
『医術5、第六感』

娘さん達が居なくなった前後の状況、警察に調査を依頼する前に自分で彼女たちの部屋を調べなかったのか、など順を追って訊いていく。
必要なら催眠術で記憶を遡る。
記憶の改ざんなどの痕跡はありませんか?
『催眠術5』


枸橘・水織
あれだけの目にあって、隠し事をしているなら大したものかも…
少なくとも嘘はついているとは思ってない


行動
とにかく二人を見つけないと…
行方不明という状況が話を拡散(感染)させていると推測

すべての行動に【情報収集】+α

改めて倉田氏に話を聞く
何でもいい…姿を消す前に何か変わった事とか気になる事とかあったら教えて…
姉妹の事ついて何かなかったか?…と、情報収集


その一方で…
指定UCを使い、別の方向で情報収集

創生した妖精の1/3を倉田氏の家を調査
何らかの痕跡(超常的なものも含む)が発見できればそれを【追跡(+失せ物探し)】

残りの妖精は倉田氏の家の近辺・近所の調査…および、倉田家や今回の事件の噂話などを調査



 蔵田氏の自宅は、二階建ての一戸建てで、庭付きの5LDKという広さだった。
「うわぁ……こりゃ大邸宅ですね」
 思わず反り返りそうになりながら、九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)は呆れたような、或いは感心したような声を静かに漏らした。
「ここを家宅捜索するとなると、結構な手間がかかりそうね」
 灯の傍らで、枸橘・水織(オラトリオのウィザード・f11304)が小さく肩を竦める。
 そんなふたりに、木塚巡査部長が背後から声をかけてきた。
「あぁ、どうも。署では大変お世話になりました」
 既に木塚巡査部長はUDC組織のことについては聞き及んでいる様子で、灯が何かいう前に、さっと右掌を掲げて心配御無用と笑いかけた。
「おふた方には、自由に捜査をして頂いて構わないとの通達が届いています。どうか、存分に御力を発揮して下さい」
 いってから、木塚巡査部長はふと小首を傾げて、灯に視線を向けた。
「ところで九重さん……署でお会いした時とは少し、雰囲気が違いますね」
「あ、いやぁ、そのぅ、何といいますか」
 はははと乾いた笑いを残して、灯はそそくさと玄関内へと走り込んだ。
 水織は何事かと不思議そうな視線を残しつつ、矢張り同じく灯に続いて蔵田邸内へと足を踏み入れてゆく。

 灯と水織はリビングに通され、応接テーブルを挟んで蔵田氏と向かい合う形でソファーに腰を下ろした。
(ふたりが行方不明という状況が噂を拡散しているとしたら……早く見つけないとね)
 水織は蔵田氏に、ふたりの娘が姿を消す直前、何か変わった様子や気になることが無かったかと尋ねたが、蔵田氏はただ力無くかぶりを振るばかりであった。
 この反応は、水織にとっては半ば想定内であり、正直なところ、余り期待もしていなかった。
 が、少なくとも蔵田氏が嘘をついているとは思っていない。それだけの度胸がこの人物に具わっているとも思えなかったからだ。
「蔵田さん。あの怪物から何か悪影響を受けているかも知れません。少し、調べさせて頂けますか?」
 懐から振り子を取り出しながら灯が問いかけると、蔵田氏は幾分怯えた様子で木塚巡査部長を見た。木塚巡査部長は神妙な面持ちで、信じて下さって大丈夫ですと低い声音で助け舟を出してくれた。
 水織は灯の邪魔にならぬようリビングを出た。灯の事情聴取の間に、召喚した妖精と共に邸内を捜索しようという訳である。
 一方、灯は血晶の振り子を駆使して蔵田氏から情報を引き出そうとした。
 娘達が居なくなった前後の状況や、警察に通報する前に娘達の部屋を調べたのかどうか等を、順を追って問いかけていった。
(……言葉に淀みは無いし、記憶が書き換えられたということは無さそうですね)
 しかし、妙な違和感を覚える。
 蔵田氏が単なる一般人に過ぎないことは間違い無さそうだが、何かが彼の中に潜んでいるような気がしてならないのだ。

 一方、水織は邸内を軽く捜索してから、ある事実に気づいた。そのことを問い詰める為、妖精には引き続き捜索を実施させながら、自らはリビングに戻った。
「ねぇ蔵田さん。お嬢さん方の写真って持ってる?」
 この水織の問いかけに、蔵田氏は雷に打たれたような衝撃を受けている様子だった。
「そういえば、蔵田さんの携帯電話に保存されている写真を見せて頂いただけでしたね」
 木塚巡査部長も思い出したようにリビング内を見回した。
 幾つかの写真立てや額縁があるのは間違いないが、そこに収められているのはいずれも、亡き妻のものばかりだった。
 蔵田氏は携帯電話を取り出し、水織と灯に娘達の写真を見せたが、それも別々に撮影したものを一枚ずつ保存してあるだけで、他には一切の画像が無かった。
 水織も灯も、流石にこれはおかしいと眉を顰めた。更に水織は、姉妹の部屋がたったひと部屋だけだという事実にも違和感を覚えた。
 年頃の娘ならば、それぞれに自室を与えられても良さそうなものだが、ふたりの娘の部屋はひと部屋のみ。これだけの広さの邸宅だというのに、これはどう考えてもおかしいだろう。
 しかも、ベッドはシングルサイズのものがひとつ据えられているだけであった。
「蔵田さん……この状況って前からなの?」
 水織の問いかけに対し、蔵田氏はこの時初めて気づいたといわんばかりに、呆然と頷き返した。
 灯は振り子を懐に仕舞い込みながら、むっつりとした表情を水織に向けた。
 怪しいのは、蔵田氏ではなく、もしかしたら娘達の方なのではないか。催眠術で聞き出した蔵田氏の証言と、蔵田邸そのものの状況が余りにも食い違い過ぎている。
「蔵田さん、失礼ですが、娘さん方の戸籍とか学生証とか、身分を証明するものはあります?」
 灯の半ばとどめに近しい問いかけを受けて、蔵田氏は愕然とした表情のまま力無くソファーにへたり込んだ。何も持っていない、というのである。
 話が、きな臭い方向に転がり始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

勘解由小路・津雲
ふうむ。怪しいのは娘たち、か。娘たちの話題そのものが、感染型UDCに力を与えている、のか? ただ、部屋がひとつあるならば、ひとりは本当の娘だろうか。写真がないのは二人とものようだが。……まずはそこら辺の裏を取りたいところだ。

木塚巡査部長がいるならちょうどいい、部屋に残っていた血痕におかしなところはなかったか聞いてみよう。致死量に近いとのことだが、一人分なのか、二人分なのか。そして彩佳のものなのか、晴菜のものなのか、あるいはそれ以外?

あとは、そうだな、警察の力で住民票を見ることは出来ないかな。これでどちらかの名前がない、もしくは両方の名前がない場合は、話は簡単なのだが。


菫宮・理緒
【電脳の箱庭】

状況的にはかなり疑ってかからないといけない感じかな。

蔵田さんの近所の人たちに、このお家のことを聞いてみたいと思うよ。

蔵田さん本人のことや娘さんのこと、
奥様を亡くされる前と亡くされてからの変化、
蔵田さんや娘さんの雰囲気などなど、
集められる情報はなんでも、だね

じつは『娘なんていない』まで視野に入れて聞き込むことにするよ

ほんとうに子煩悩だったのか、とか
奥様が亡くなってから、溺愛が偏愛になっていたりしないかは、
しっかり聞いておきたいかな。

あ、それと、木塚さんには【Gear to Antikythira】で、
ギアちゃん、張り付かせておくことにするね。

なーんか、動きがあやしいんだよね-。


アイ・リスパー
【電脳の箱庭】
「今回の事件は感染型UDC。
噂を媒介に広がるUDCと考えられます」

娘さんたちの行方不明事件が起きてから二日。
その間にネット上や新聞で行方不明事件は大きく話題になりました。
警察署で感染型UDCが発動するには十分な噂だったでしょう。

「ということは今回の事件のUDCは娘さんたちの行方不明事件なのでしょうか?」

いえ、感染型UDCは目撃され、噂されることが条件。

「蔵田さんはUDCを目撃していないので発動条件になり得ません。
このあたりの裏付けは仲間が調べてくれるでしょう」

ということは消去法で目撃者は木塚巡査部長ということになります。

「そして、目撃されているUDCは、蔵田さん、あなたです」


シャルロット・シフファート
【電脳の箱庭】
「やはり、この事件はきな臭いわね」
と、妙に焦燥感のある警察官に注視して警察署内に隠匿性の高いガジェットを放ち、情報が拡散しないように情報操作も兼ねながら今回の事件の資料や木塚の経歴を警視庁から別ルートで取り寄せるわ。

そして感染型UDCの専門家たちに下記の性質に対する処理を施して見解を提出。
「恐らく、この『行方不明事件の捜査』そのものが媒介のための手段ね」
つまり、被害者のいない行方不明事件を捜査させ、その進展により情報を拡散させて感染を広げるUDCだと推測し、その裏付けを取るわ。

それとアイの推理の裏取りとして部屋の血痕が蔵田氏の情報と一致するか別経由で精査させるわね。


波狼・拓哉
わー死ぬほどきなくせェー。…だとしても捜査しないと始まらないので捜査捜査っと

取り敢えず夜の街に放たれてる部下さんたちに手伝って来ようかな。何となくだけど嫌な予感する

部下さんたちと合流してから、コミュ力、言いくるめ使って聴きこみでで情報収集を開始
夜だし一軒一軒回りつつ手短に聞いていきますかね

聞くのは蔵田氏の娘さんを最後に見たのは何時ですかくらいですかね
あんまり深くまでは聞かない方針で…何処そこで何日前に見たくらいの情報の方が変な欺瞞とかなくて良さそうです

後は周囲を警戒しつつふらふらと第六感に任せて行きましょう。

(アドリブ絡み歓迎)



 夜の街並みの中を、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は精力的に走り回っていた。
 木塚巡査部長が放った私服警官達と接触を取り、彼らから行方不明となったふたりの娘達についての情報を聞き出し、その内容を集約しながら、拓哉自身も彩佳と晴菜の目撃情報について、聞き込みを進めていた。
 しかし、聞き込みを進めれば進める程、拓哉の脳裏にはクエスチョンマークの数が次第に増えてゆく。最後に姉妹を見かけたという日時が、余りにもばらけすぎているのだ。
 極端なものでは、最後に見かけたのは一カ月前、という証言が得られるという始末であった。
(状況も状況なら……証言はもっときな臭ぇ~。一体どうなってるんでしょうか、これ)
 街灯の下でメモ帳を繰りながら、拓哉は何度も首を傾げていた。
 と、そこへ同じく聞き込みに出歩いていた菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の姿が闇の向こうからそっと忍ぶような調子で歩を寄せてきた。
「やぁどうも……収穫はありました?」
 拓哉が浮かない顔で理緒に問いかけてみると、理緒も同じように仏頂面を返してきた。
「妙な証言がね、多過ぎるよの」
 曰く、理緒は蔵田邸近所で蔵田氏や娘達のことを聞き込みしてきた。
 確かに蔵田氏は子煩悩ではあったが、それはもう十年も前の話であり、最近は娘達と一緒に行動しているところを見るのは稀だったという。
 更に気になる情報として得られたのが、亡くなった妻のことだ。妻の死因は、誰も知らないというのだ。
「実は娘なんて居なかった、っていうのとは違うんだけど、何ていうのかな……違和感が多過ぎるね」
 理緒の言葉を聞きながら、拓哉は携帯電話の画面を凝視した。そこには、木塚巡査部長の計らいで、蔵田氏の携帯から転送されてきたふたりの娘の画像が表示されている。
 傍らから理緒も覗き込んできた。こうして改めて、彩佳と晴菜の人相を見比べてみて、拓哉と理緒はあることに気づいた。
「この姉妹……全然、似てませんね」
「それにお父さんやお母さんの面影も無い……普通、DNAを継承してるなら、もっと顔つきが似てくるもんだよね?」
 拓哉と理緒は、思わず顔を見合わせた。
 まさか、という推測が同時にふたりの脳裏にむくむくと湧き起こり始めていた。

 蔵田邸では、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)とシャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)が蔵田氏と木塚巡査部長を前にして、自分達の推論を展開しようとしていた。
「今回の事件が感染型UDCの手に依るものであることは間違いないでしょう。そしてこのUDCは、噂を媒介にして広がるタイプです」
 アイの説明に、木塚巡査部長と蔵田氏は驚きの色を浮かべる。
 彩佳と晴菜の行方不明から既に二日が経過している。その間、ネット上や新聞等で事件は幾度も報道され、噂を拡散するには十分な時間と効果があった。
 警察署で感染型UDCが発動するには条件が整い過ぎていたといって良い。
 だが、ひとつ問題がある。
 感染型UDCは目撃されることが絶対条件だ。だが今のところ、誰かがそのUDCを目撃したという情報はどこからも得られていない。
 これは一体、どういうことなのか。
「結論からいいますと、消去法から考えて、目撃者は木塚巡査部長……そして目撃されたUDCは蔵田さん、あなたということになります」
 アイの推論を隣りで聞きながら、シャルロットは木塚巡査部長にそっと視線を這わせた。
 シャルロットが密かに警察署から取り寄せた情報によれば、木塚巡査部長は非常に優秀な捜査官であり、今回の様な事件ならば半日と経たずに有力な手掛かりを得ている筈であった。
 ところが、この蔵田姉妹失踪事件に関していえば、木塚巡査部長の捜査には兎に角、手抜かりが多過ぎる。今までの彼の実績からはとても考えられないようなミスの連続であった。
 実際、娘達の部屋から発見された大量の血痕が誰のものなのか、未だに不明のままだという。鑑識でも、DNA比較が難航しているそうだ。
 理由は単純で、彩佳と晴菜のDNA情報がどこにも存在しないから、比較のしようがない、というのである。ならば父親である蔵田氏のDNAと比較すれば良いのだろうが、木塚巡査部長は何故か、蔵田氏に対してDNAの提供を要求していなかったのだ。
(手抜かりが多ければ多い程、捜査は長引く。その分、噂が広まる時間も長くなる……木塚巡査部長、アンタ本当にこの事件を解決しようと思ってる?)
 シャルロットは不機嫌そうに縦ロールのツインテールを揺らした。アイが蔵田氏を怪しいと睨むなら、シャルロットは木塚巡査部長も十分に怪しいと踏んでいたのである。
 と、そこへ娘達の部屋を検分していた勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)が二階から降りて来てリビングへと足を踏み入れてきた。
 津雲が事前に聞いていた話では、血痕はひとり分の致死量だったということだが、その血痕が誰のものなのかは未だに不明のままだ。
「木塚巡査部長、もう一度訊くが……誰が死んだのか、或いは死んでいないのか、その点もはっきりしない、というのだな?」
「はい。現時点ではまだ何とも」
 津雲は腕を組んで、ふぅむと静かに唸った。だがその瞳には、既に何かを掴んだと匂わせる鋭い光が宿っていた。津雲の手には、蔵田氏とその家族全員分を記した戸籍謄本の写しが携えられていた。木塚巡査部長に要求して取り寄せさせたものであった。
「蔵田さん、あんたの言葉は全て偽りだった。だがあんた自身は、自分の言葉に間違いは絶対に無いと信じ込んでいる。そこがひとつ、厄介なところだ」
 津雲の指摘に蔵田氏のみならず、アイとシャルロットも怪訝な視線を向けた。
 しかし周囲の反応等お構いなしに、津雲は続けた。
「この戸籍謄本に依れば、彩佳と晴菜の姉妹は残念ながら十年前に交通事故で亡くなっている。そして奥方なのだが、死亡していない。今も健在で、この家に住んでいることになっているな」
 リビング内に、例えようもない緊張感が走った。
 では、あの血痕は誰の物なのか?
 だが津雲は自ららが得た情報から、既にその答えを導き出していた。
「あの血痕は奥方のもの。殺されたのは、あんたが三年前に亡くなったと吹聴していた奥方だ」
 とはいえ、犯人は蔵田氏ではない。恐らく、UDCだろう。津雲の観察眼からも、蔵田氏に殺人が可能という結論は見いだせなかった。
 ここ数日内の蔵田氏の記憶には何の淀みも無い。それもその筈で、蔵田氏の記憶は十年以上前から既に書き換えられ続けていたのだ。

 玄関の開く音が聞こえた。程無くして、拓哉と理緒が厳しい表情でリビング内に足を踏み入れてくる。
 この時、理緒は秘密裏に潜ませていた光学迷彩を纏った自動人形を、木塚巡査部長と蔵田氏の間へと割り込ませていた。瞬間的な防御が必要かもしれない、と踏んだからである。
 拓哉はおもむろに、携帯を取り出した。そこに、驚くべき画像が映し出されていた。
「さっき、木塚巡査部長の遺体を発見しました。確かにこりゃあ木塚巡査部長です。じゃあ、あなたは一体、どこのどなたさんなんでしょうかねぇ?」
 夜の街を徘徊していた拓哉の第六感が、木塚巡査部長の遺体を発見させたといって良い。
 シャルロットも漸く、合点がいった。今までの木塚巡査部長にはあり得ないミスの連発──それもその筈、この捜査の指揮を執っていたのは、本物の木塚巡査部長ではなかったからだ。
 木塚巡査部長が、低く笑った。だがその声は、女の声音であった。
「成程……そういうことか。蔵田さん、残念だがあんたの娘さん達への愛情というのは、十年前は確かに本物だったのだろう。だが今のあんたの愛情は、UDCによって植え付けられた、偽りの愛情だったという訳だ」
 愛情のみならず、長年かけて体験してきた全ての記憶が偽りだった。
 蔵田氏は、その場にへなへなと座り込んだ。
 同時に、木塚巡査部長の姿が全く別物へと変じた。それは、年若い少女の姿だった。
 拓哉と理緒は、ちらりと視線を交わした。彩佳と晴菜のものとされていたふたりの画像は、全くの別人のものであったことが分かっている。
 そして今、そのふたりの特徴を同時に具えた少女の姿が目の前にあった。
「予想通りだね……面倒な連中が集まってきた。最初にあんた達を始末してから、ゆっくりとあたしの勢力を拡大していくよ」
 UDCの少女は、唇の左右をにぃっと釣り上げた。
 アイはこの時点で己の推理を訂正するに至った。
 目撃者は蔵田氏。そして目撃されたUDCは、ふたりの娘達に扮していたUDCだったのだ。
 つまり蔵田氏は何年もの間、UDCを目撃し続けてきたことになる。だが何が切欠で感染型が発動することになったのか。
「奥様殺害……それを、蔵田氏に見られたんですね」
 三年間、何らかの形で動きを封じていた蔵田夫人を目の前のUDCが殺害した。それが、感染型発動のトリガーとなったのだろう。
 狭い邸内。
 UDCの少女のすぐ近くに、憔悴し切った蔵田氏の姿。
 厳しい戦いになりそうであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

桜雨・カイ
WIZ
蔵田さん、あの日の夜の事は本当に知らない様子ですね…。


当人に覚えがないのなら、近所の人にから話を聞きましょう(聞き込みによる【情報収集】)
蔵田さんの記憶に不安定な所があるので、どこまでが本当でどこまでがUDCの影響なのかを確認する意味も含めて
・家族構成(蔵田さんと二人の姉妹?)
・蔵田さんやふたりの姉妹のひととなり
・親子の仲は良かったか
そして、事件に関して
・あの日何か物音や人の出入りがなかったか
・最近蔵田さん一家に変わった様子が無かったか



 カイが蔵田邸に足を踏み入れた時、邸内には異様な空気が漂い始めていた。
 蔵田氏の記憶が酷く曖昧なこと、そして近隣住民の証言が余りにも食い違い過ぎていること。これらの情報を総合すると、最早蔵田氏自身が信じられないことになる。
(それにあの写真のお嬢さん方は、全くの別人でした……)
 カイは聞き込みの結果、蔵田氏の携帯に保存されていたふたりの娘が、確かに実在していることまでは突き止めた。
 だがそのふたりは、蔵田氏の娘達ではなかった。
 彩佳とされていた娘は、本名は飯田真央。蔵田邸から数キロ離れた隣町に住んでいる、蔵田氏とは縁もゆかりも無い赤の他人だった。
 そして晴菜だが、こちらはとある芸能プロダクションに所属する人物で、蔵田氏が携帯に保存していた画像も番宣用の画像をインターネット上から拾ってきたものに過ぎなかった。
 家族構成も、ふたりの娘も、そして親子仲も、全てが偽り。
 全く出鱈目な記憶を、蔵田氏は植え付けられていたことになる。何とも、気の毒な話であった。
 近隣住民の話によれば、あの夜、蔵田邸で大きな物音が響いてきたことは間違い無さそうであった。それがUDCによるものであるかどうかは判別出来なかったが、カイとしては、そこまで聞ければ十分であった。
 カイは一旦、気を静めるようにして小さく吐息を漏らした。そして、リビングへと踏み込む。
 少女型のUDCが、目の前に居た。そしてそのすぐ近くには、動けない蔵田氏の姿。
 蔵田氏は未だに、目の前のUDCを己の娘と思い込んでいるらしく、恐怖ではなく、絶望と悲しみの表情を浮かべてその場にへたり込んでいた。
「ドッペルゲンガーですか……しかも、ふたりの女性に対するという、極めて特殊な」
 誰かの愛情を得なければ動けないタイプのドッペルゲンガー。その愛情は、蔵田氏から得た。
 後は感染型としての拡散能力を発動すれば、それで良かったのだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『嫉妬のドッペルゲンガー』

POW   :    憑装・蛇神ネノクニ神楽
対象の攻撃を軽減する【漆黒の霊波動を纏った、根の国の巫女】に変身しつつ、【神楽で振るわれる武器から放たれた衝撃波】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    武装神格解放術・邪光蛇神八卦斬
【自身の装備武器から不可視の邪悪なる霊力刃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    滅尽召喚使役術式・大罪司りし蛇神は妬み嫉む
【召喚した巨大な黄金の蛇神が放つ破壊念動波】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠蛇塚・レモンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 パパ、もう大丈夫だよ。
 あたしが、こいつらを蹴散らしてあげる。
 これからも一緒だよ、パパ。

 さぁ、かかってきな。
 あたしとパパを引き離そうってんなら、手加減しないよ。
 パパはあたしが必要。そしてあたしも、パパが必要なんだ。
 もっともっと、拡散しなきゃ。

 ねぇ、パパ。もっと色んな連中に、あたし達の力を思い知らせてやろうよ。
 そしたら世の中、もっと楽しくなるよぉ。
桜雨・カイ
蔵田さんが彼女の傍にいると、こちらの攻撃を巻き込んでしまいそうですね…。
まずは人形で【早業】【先制攻撃】。ただしダメージを与えるのではなく、二人の間に割り込んで引き離したあと、【想撚糸】で蔵田さんを保護します。

まだ彼女(UDC)を娘と思ってるんですよね…
でも思いだして下さい。あなたには本当の娘さんとの思い出があります。
生きている人が忘れてしまっては、娘さんは本当に失われてしまいます

…やっぱり倒される姿は蔵田さんに見せません、事故で亡くなった娘さんを見たはずの彼に「娘」が苦しむ姿は見せたくない

終わったら少しでも悲しみが癒えるように、彼に寄り添い【聖痕】のある手でその背をなでます


九重・灯
人格が「オレ」に切り替わる。

「ふざけんなよ。オマエは成り代わって寄生してるだけのバケモノだろうが!」
長期間の記憶操作なんてどれだけ現実と矛盾が出るかもわからない。その都度、本人への影響など考えもせず記憶を上書きし続けたんだろう。

UC【剣劇】。命中重視。
部屋で戦うなら小回りが利いた方がいい。
マフラーとして首にあった呪布、桜花演舞が右腕に巻き付き硬化する。この即席の籠手で殴りに行く。
相手のそのケッタイな武器を封じるように、格闘距離で戦う。
『地形の利用5、怪力7、鎧砕き10、体勢を崩す5』

さらに、足元から黒縄カゲツムギを放ち、敵の神楽を妨害する。
『2回攻撃5、だまし討ち2、ロープワーク6、捕縛5』



 蔵田氏の娘を名乗る少女型のドッペルゲンガーUDCを前にして、一瞬、九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)の動作に妙な空白があった。
 が、次の瞬間には灯は首元から垂らしていた桜柄のマフラーを拳から手首へと巻き付け、鋼をも砕く程の即席の武装籠手へと変貌させた。
「……ふざけんなよ。オマエは成り代わって寄生してるだけの化け物だろうがッ!」
 長期間に亘る記憶操作が如何に危険であるのか──恐らくUDCは、そんなことなど露程も考えていなかっただろう。
 全く都合の良い話だ。この少女姿の化け物は蔵田氏をパパ呼ばわりしているが、結局のところは私利私欲の為に利用しているだけに過ぎない。そう考えると、灯は無性に腹が立った。
 灯はソファーを蹴ってUDCとの間合いを詰める。大振りのフックで敢えて敵の回避運動を誘ってから、腰を落とした低い態勢で肘、裏拳、掌打と流れる様なコンビネーションを叩き込んでゆく。
 UDCは、先程まで見せていた余裕が欠片も無く消え失せた。灯の速い上に重い打撃の連続に、防戦一方に廻らざるを得なかった。
 一方、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は念糸を素早く繰り出し、UDCではなく、蔵田氏の体躯を拘束し、リビングから廊下へと無理矢理引きずり出した。
「蔵田さん、どうか、中には入らないで下さい」
 カイは蔵田氏の切実そうな表情から、彼がまだUDCを娘と思い込んでいる事実を咄嗟に悟った。だからこそ蔵田氏には、リビング内に居て貰っては困るのだ。
「思い出して下さい。あなたの中には、本当の娘さん達との思い出がある筈です。生き残った方が忘れてしまっては、娘さん方は本当に失われてしまうのです」
 カイの言葉を受けても尚、蔵田氏は何をいわれているのか理解出来ない様子だった。それも無理からぬ話だとカイは内心で溜息を漏らしつつ、しかし敢えて厳しい表情を面に張り付かせた。
「我々はこれから、あのUDCを討伐します。その姿をあなたに見せるのは余りに酷だ……既にあなたは一度、最愛の娘さん方を十年前に失う悲しみを味わっています。その同じ悲しみをここで再度、味わいたくはないでしょう」
 蔵田氏は、ただ呻くようにして廊下の隅にしゃがみ込んだ。
 カイの想いが、伝わったのかも知れない。その時、玄関からふたりの制服警官が何事かと飛び込んできた。カイはこれ幸いとばかりに蔵田氏の身柄を彼らに預け、自身は再びリビング内へと飛び込んでゆく。
 そのリビング内では、灯の足元から伸びた影の如き漆黒のワイヤーがUDCの腕や下肢に絡みついていた。
 だがUDCは手にした短刀を軽く振るい、衝撃波を無差別にばら撒いてきた。
 流石に直撃を浴びるのは拙いと、灯は応接テーブルを飛び越えて壁際へと跳ねた。UDCの神楽は辛うじて封じたものの、それもいつまで持つか分からない。
 灯は、空手でいうところの貫手を腰だめに構えて、次なる突撃のタイミングを計った。
 カイが念糸を室内に展開させて更にUDCの行動範囲を狭めようと画策している為、その動きに合わせて間合いを詰める算段だった。
 ところが、UDCはここでは己の力が存分に発揮出来ないと悟ったのか、不意に身を翻し、庭へ続くはきだし窓を突き破って屋外へと飛び出した。
 蔵田邸の庭は、ニ十坪近い広さがある。お互いが全力を尽くして戦う分には、十分な空間だろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

勘解由小路・津雲
なるほど、娘はいなかったのではなく、いれかわっていたわけだ。さらに木塚巡査部長に成りすましてまぎれていたとはな。なかなかやってくれる。

【戦闘】
カイの配慮で、蔵田氏が巻き込まれることはなさそうだ(桜雨カイさんとは同じ旅団で面識有)。しかし庭だと、そのまま逃げられても困るな。閉じ込めさせてもらうぞ。【八陣の迷宮】を使用。迷宮としてというよりは、庭に閉じ込めることを目的とした単純な構造で作成。仲間が少々派手な技を使っても、これなら周囲に被害もでまい。

敵の攻撃は命中しなければユーベルコードを封じられることもない。こちらや仲間を狙ってきたら、結界の壁を動かすことで防がせてもらうぜ。


波狼・拓哉
…ぶっちゃけて言いますけど糞面倒な手順踏んでません?よーやりますねこんなん。まあ、それでボロ出して今こうして追い詰められてるのは笑い話ですが

さて化け刻みましょうか。どうやら長く黒い波動は纏ってられないようですので…なによりばら撒かれる衝撃波と出てくる蛇の前に出たくない

地形の利用、第六感、戦闘知識、足場習熟、目立たない、闇にまぎれるで近づかないように動き回って秒針弾を撃ち込む

その後タイミング見て指パッチン。時間飛ばして自滅狙いましょうか
さて何日くらい飛ばせば足をつきますかね?

…まあ二年も待てる忍耐力の持ち主です。一日くらいどうってことないよなぁ!(煽)

(アドリブ絡み歓迎)


菫宮・理緒
【電脳の箱庭】

まさかUDC本人とは思いませんでしたけど、
やっぱり木塚さんもも関係者だったかっ。

ギアちゃんにはそのまま蔵田さんを、
安全なところまで護衛してもらっていくことにするよ。

これで心置きなく戦えるね。
って。パパ活みたいなこと言ってるよね……。

【多重詠唱】を使いつつ、
アイさんとタイミングをあわせた【Nimrud lens】で、
『ドッペルゲンガー』を焼いていくよ
ついでだから【リミッター解除】も乗っけて、全力でいこう。

『嫉妬』の炎っていうけど、こっちの炎も負けないよ。

いろいろ問題もありそうではあるけど、
心を弄んだことは許さないから、ねー。

愛情は、嫉妬なんかよりずーっと強いんだから!


アイ・リスパー
【電脳の箱庭】

「まさか、木塚巡査部長の方がUDCだったとは……
……蔵田さん、UDC呼ばわりしてしまってすみませんでした」(しゅん

「犯人はあなたです!」をやって外してしまい、穴があったら入りたい心境になりながら、誤魔化すように木塚巡査部長……いえ、UDCを睨みます。

「こほん、電脳探偵である私の目を掻い潜ったことは褒めてあげましょう!
ですが、UDCだと分かった以上、退治させてもらいます!
行きましょう、理緒さん、シャルロットさん!」

【チューリングの神託機械】で情報処理能力を向上。
【アインシュタイン・レンズ】による重力レンズで光線を束ねて、仲間たちとタイミングを合わせて攻撃です!


シャルロット・シフファート
【電脳の箱庭】

「助かるわね、蔵田氏に累を及ぼす可能性をわざわざ排除してくれるなんて」
と、瞬時にユーベルコードを起動させて『霊力・呪力両波動相殺波放射兵器アメノウズメ』を展開。
対象のユーベルコードの性質を根本から対処し、攻防一体の相性となる兵器を作成して戦闘に挑む。

波動という性質を利用しての共振効果を利用しての崩壊攻撃やそれを霊力や呪力で行う事による副次現象を更に利用した攻撃や波動相殺による能力相殺による防御で時間を稼ぎながら少しずつ削っていくわ。

そして蔵田氏が完全に巻き込まれない位置取りを確保してから本格的な討滅行動を開始するわ。



 庭に飛び出した少女型UDCは、そのまま塀の向こうの通りへと飛び出そうとした。
 が、出来なかった。
「休、生、傷、杜、景、死、驚、開……今や三吉門は閉ざされ、汝に開かれたるは死門のみ」
 勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)の落ち着いた声。室内から庭先へと姿を現した津雲は、UDCの庭への逃走を逆手に取った。
 津雲が造り出した八陣の迷宮は、今回に限っていえば生成目的が少し異なる。通常であれば敵を迷路内に引きずり込んで閉じ込めることに用いるのだが、津雲はこの庭先での戦闘で周囲に被害が及ばない為の防壁として生成したのである。
 これで、少々派手に暴れても近隣住民には何の損害も出ないであろう。
「おぉっと、こいつぁ都合が良いですねぇ。簡単とはいえ迷路は迷路……少し隠れさせて貰いますよぉ」
 波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)がにやりと笑って、歪められた空間内へと身を潜ませる。津雲の迷宮は蔵田邸の庭を、本来の広さからは有り得ない程の面積へと拡張している為、拓哉が取ろうとしている戦術には絶好の条件を生み出してくれていた。
 一方、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)にとっても津雲の迷宮は有り難かった。
 理緒は自身が使役するギアに蔵田氏の護衛を任せているのだが、この迷宮ならば蔵田氏がうっかり足を踏み入れてくるような不始末も生じないだろう。
「よぉーし、これで心置きなく戦えるね」
 理緒の口元に、我知らず微かな笑みが浮かぶ。
 一方、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)の方は理緒とは正反対の表情が浮かんでいる。つい先程、蔵田氏に対して、
「犯人はあなたですッ!」
 を、盛大にぶちかましてしまったからだ。出来れば穴があったら入りたい気分だったが、幸いなことに穴よりも更に大きな隠れ家である津雲の迷宮がアイの全身を蔵田氏の視線から隠してくれている。
 ここは気分を入れ替えてUDCと正面から組み合うことが出来た。
「こほん……さて、電脳探偵である私の目を掻い潜ったことは褒めて差し上げましょうッ! ですが、UDCだと分かった以上は退治させて貰いますよ」
 きりっと凛々しくUDCを睨みつけつつ、アイは理緒とシャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)に号令をかけた。
「行きましょう、理緒さん、シャルロットさんッ!」
「オーーーッケェイッ!」
 アイの気合たっぷりな声に応じて、シャルロットは霊力・呪力両波動相殺波放射兵器アメノウズメを起動。ほとんど瞬間的に、波動放射砲の不気味な砲口をUDCの真正面へと向けた。
「ふふ……助かるわね。蔵田氏に累を及ぼす可能性を態々排除してくれるなんて」
 シャルロットは挑発半分、本音半分で不敵に笑った。
 だが少女型UDCも負けてはいない。アイと理緒が重力レンズでの超高熱攻撃を仕掛けようとしているところへ先制の霊力刃をばら撒いてきた。
 アイと理緒は慌てて回避運動を取ったが、シャルロットは敵の攻撃に対して仁王立ちのまま、アメノウズメから高威力の波動を叩き出した。
 宙空で霊力刃と波動が激しくぶつかり合い、空間を歪める程の衝撃が四方八方へと斬撃の如く飛び散った。
「おっと……こいつは穏やかじゃないな」
 津雲は自身にも飛来する衝撃に対し、迷宮の一部の防壁を瞬時に動かして盾とした。流石にこの迷宮の生成する壁は非常に硬度が強く、攻撃力が皆無な分、圧倒的な防御力として機能している。
「ふふん……嫉妬の炎ってよくいうけど、こっちの炎も負けてないよッ!」
「さぁ、焼き尽くすですよーッ!」
 理緒とアイが同時に超高熱の光線をUDCに撃ち込んだ。
 UDCは甲高い声で獰猛に吠えた。苦痛ではなく、怒りの咆哮であった。
 だが、猟兵達は至って冷静であった。特に拓哉は迷路の陰から陰へと素早く走り、その間に何発もの秒針弾を死角から叩き込んでいた。
「おぉう……良いね良いね、良いですねぇ。こりゃあ撃ち放題ですぜ」
 闇の中から、嘲笑う声。
 UDCは可愛らしい少女の面に憤怒の形相を浮かべ、神出鬼没の拓哉に対してあからさまな苛立ちを見せる様になっていた。
 しかし、拓哉への警戒心はアイ、理緒、シャルロットらの攻撃によって即座に掻き消されてしまう。彼女らの波状攻撃が、拓哉の死角からの不意打ちを可能にしているのである。
 即席とはいえ、非常に完成された連携であるといって良い。
 やがて、十分な量の秒針弾を撃ち込み切ったと判断した拓哉は、漸くUDCの前に姿を見せた。
 UDCはアイと理緒の超高熱攻撃と、シャルロットの波動攻撃によって相当に体力を削られている。今ならば確実に、拓哉のユーベルコードが100%発動するだろう。
「さて、何日ぐらい飛ばせば足をつきますかね?」
 UDCは、拓哉が何をいっているのか全く理解出来ていない様子だった。
「……まぁ、2年も3年も待てる忍耐力の持ち主なんですから、一日ぐらいどうってこたぁないざんしょ」
 拓哉が指をぱちんと鳴らす。
 その瞬間、少女型UDCは恐怖の形相に美貌を歪めた。拓哉が仕掛けた瞬時の時間移動は、折角時間をかけて積み上げた感染力が無かったことにされてしまったのだ。
 耳障りな甲高い悲鳴が、迷宮内の空気を激しく震動させた。
 更なる反撃があるかと津雲は身構え、アイと理緒は超高熱攻撃の第二波を放つ態勢に入った。拓哉も、確かに手応えはあったものの、これで本当にUDCを倒し切れるという自信は無かった為、いつでも迷宮の陰に飛び込めるよう腰を低く落とした。
 だが、ドッペルゲンガーの少女はただ金切り声だけをあげるばかりで、攻撃に転じる気配は見せない。
 感染型UDCにとって、感染そのものが無かったことにされるのは致命的な打撃に匹敵するのだろう。
 そして──少女の姿は闇の中に消滅した。

 それからしばらくして、蔵田氏はのろのろとした足取りで津雲の迷宮が解除された庭先へと出てきた。
 自身が愛情をかけた筈の娘が、そこにはもう居ない。
 ぽっかりと心に穴が空いたような虚しさだけが、蔵田氏の全身を襲っていた。
 アイも、シャルロットも、かけるべき言葉が思いつかなかった。理緒も、それまで張り付かせていたギアを回収するだけで、それ以上のことは何も出来なかった。
 庭先の縁側に、ぺたりと座り込む蔵田氏。
 その隣に、津雲がのんびりとした調子で腰を下ろした。
「下手なことは、考えなさんなよ」
 津雲の穏やかな声に、蔵田氏は茫漠とした、今にも泣き出しそうな顔を向けた。
「蔵田さん……俺達は猟兵っていう素性だから少々の悲しいことがあってもびぃびぃ泣くこたぁ許されないんですが、蔵田さんは違います。悲しかったら、泣いたって良いんですよ」
 拓哉が、柄でもないことをいっているなぁと己で思いつつも、しかし蔵田氏に声をかけずにはいられないといった調子で津雲に続いた。
 女子供だけが、弱者ではない。最愛の娘と妻を立て続けに失った初老の男。彼はこれから、何を拠り所に生きていけば良いのか。
 恐らく、そう簡単に答えは出ないだろう。
 愛情は矢張り、己の意思で育むべきものだ。決して、他者から無理矢理植え付けられて良いものではない。
 津雲と拓哉の言葉を聞きながら、アイは心底、痛感した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年07月13日


挿絵イラスト