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コンテストの予行演習

#スペースシップワールド #戦後

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#スペースシップワールド
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#戦後


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 スペースシップワールドのある宙域。宇宙船の残骸や小惑星の破片などデブリが満たされた場所にて、彼らはいた。
『……帝、国カラノ通信途絶。当機ハセーフモードニ移行。担当者ハ最、寄リノ、帝、帝帝帝国国国国国船舶及ビビ……』
 銀河帝国残党だ。
 機体の中央に籠のようにも檻のようにも見えるパーツを組み込んだロボットは、音声を繰り返し続けている。そして、
「……?」
「――?」
 そんなロボの周囲に異形がいた。
 数は複数で、巨大な頭部から触手を流したシルエットだ。
 異形たちはロボを取り囲むようにしながら、何か会話のようなものをしたかと思うと、「――――」
 その触手をロボットの内部に差し込んだ。そして時には別の触手に持った光線銃を出力調整し、光を当てていく。
 すると、
『――オ、オペ、オペレーショ、ション、再、開。――鉱石及びクリスタリアン捕獲プロトコル“クリスタルマイン”実行シマス』
「……!」
「――!」
 ロボが動き出し、異形たちがその結果に満足するように、瞼や目に当たる部分を明らかに細めた。


「皆様、事件ですわ!」
 猟兵達の拠点であるグリモアベースに、フォルティナ・シエロの声が響き渡る。
「現場はスペースシップワールド。そこで銀河帝国の残党が発見されたようですの」
 銀河帝国。スペースシップワールドを支配していたその帝国は、既に猟兵達の活躍によって壊滅している。2019年2月の事だった。
「しかし残党は今でも活動していますわ。今回私が見た予知では、複数のオブリビオンが一体のロボを修復していたようですの。
 どちらのオブリビオンも未確認で、初見の存在ですわね」
 先の戦争の残存戦力でしょうね、と続けながら、
「皆様にはこれを掃討してほしいのです」
 と、フォルティナが一枚の画像を表示した。
「現場近くまでは現地の宇宙船でワープドライブしてもらうことになりますわ。ちなみに宇宙船では、皆様への歓待として巨大なビーチを船内に用意してくれたようですの。
 宇宙船内部とはいえ本物そっくりの海。来たる水着コンテストに向けてポーズの練習をしたり、泳ぎの練習をしたり、当日の計画を練ったり……とか、予行練習という名の海遊びが出来そうですわね。
 ――それではまとめますわ」
 言って、指先から出した砂状のグリモアで、フォルティナは空中に文字を書いていく。

 ・スペースシップワールドで、銀河帝国残党を退治。
 ・敵は二種類。“光線銃を持った異形”と、“中央部に檻のような部品を有したロボット”。
 ・現場までは現地の宇宙船でワープドライブ。何か水着コンテストの予行演習とか出来るらしいですの。

 書き終え、向き直る。
「それでは銀河帝国の残党掃討作戦……、ご武運をお祈りしますの!」


シミレ
 シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
 今OPで30作目です。
 不慣れなところもあると思いますが、よろしくお願いいたします。

 ●目的
 ・銀河帝国残党の掃討。

 ●説明
 ・スペースシップワールドは2019年の2月に、世界を支配していた銀河帝国との戦争がはじまり、猟兵の勝利に終わりました。
 ・しかし残党が未だにスペースシップワールドの各地(各宙域?)にいるようです。それらを撃破してください。
 ・一章は日常フラグメントで、『水着コンテストの予行練習』です。泳げない人は当日に向けて泳ぎの練習をしたり、“映える”ポーズの練習をしたり、“そもそも水着どうしよっかなー! どれが似合うかなー!”したり、“●●ちゃんの水着可いぃ――!!”って賑やかしに来たり自由だと思います。
 ・二章、三章は戦闘です。私で初採用となるオブリビオンのようですので、詳細は伏せます(実は一章も初採用ですが)。

 ●他
 皆さんの活発な相談や、自由なプレイングを待ってます!!(←毎回これを言ってますが、私からは相談は見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください。勿論相談しなくても構いません!)
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第1章 日常 『水着コンテストの予行練習』

POW   :    当日のために海になれておこう(よって海で遊ぶ)

SPD   :    砂浜で見せるポーズの練習をしておこう(よって砂浜で楽しむ)

WIZ   :    去年の水着コンテスト振り返るように日焼けに注意しつつ思い出してみよう(よってパラソルの下で涼む)

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 宇宙船の内部へ転移した猟兵たちは、早速船員から説明を受けた。
 曰く、銀河帝国の残党がいる宙域まではワープドライブでも時間が掛かるので、その間用意したビーチで余暇を楽しんでほしいと。
「…………」
 猟兵達が周囲を見れば、そこにあるのは水平線や孤島まで見える海、そして砂浜。
 ビーチパラソルにビーチバレーやビーチフラッグなど諸所レジャー。
 更衣室や砂を洗い流すシャワーなども存在しており、果ては海の家まで用意されていた。
 巨大な宇宙船のスペースを存分に利用した、地球を再現したビーチだった。


 猟兵達は考える。さてどうするべきかと。
 泳ぎの練習、遠泳、ダイビング、ビーチレジャー、日光浴、巨大な砂の城建築に、海の家経営シミュレーション。
 またはこの室内……というよりは、施設の設定を操作して星空の下のビーチを散歩したり、はたまた今年の会場はグリードオーシャンなのだ。巨大海獣を再現して大立ち回りと、考えられる方法は様々だった。
 さて、どうするべきか。
木常野・都月
【狐犬兎】

海だー!!

俺が猟兵になって初めての任務が、海だったんだ。

潮の香りとざぶーん!
楽しみだな!

俺はまだ仕立て屋さんに頼んでる最中なんだ。
今回は去年と同じ、レンタル水着!

小林先輩、何で栗花落先輩、男の子なんですかね?
控えめに言って、こんなに可愛いのに……。

しかも小林先輩もカッコいい。
イケメンカッコいい。

栗花落先輩、人魚のお姫様みたいです!
照れなくていいんですよ……

何して遊ぼう!
先輩2人とも、泳げるんですか?
俺、カエル泳ぎならできます!

カエル泳ぎじゃない泳ぎ方!
初めて見ました!

小林先輩、教えてください!

先輩達に習って、泳ぎ方を練習したい。
いつか俺も栗花落先輩みたいに、人魚みたいに泳げるかな。


栗花落・澪
【狐犬兎】

夏輝君の勢いに押し切られて
用意された水着を来たはいいものの
恥ずかしすぎて夏輝君を盾に隠れ…てたのに!
わーん引っ張り出すなぁ!

着せられたのは人魚をイメージした
ドレスのようにヒラヒラした女の子ものの水着
夏輝君いっつも女装させてくるんだもんなぁ、なんでさ(ぷんすこ
とりあえず夏輝君の背中しばいておきます
…木常野さんの言葉は全部正直ってわかってるからたじたじ
褒められなれてないから恥ずかしいんだよばかぁ!
女装だし。ね?女装だし

もー、こうなったら全力で遊んでやるもんね!
水際で踊るようにくるくる回りながら
足先で水を弾いて楽しそうな笑顔を溢す
あ、僕も泳げるよ!
後で皆で競争するのも楽しいかもね♪


小林・夏輝
【狐犬兎】

ついにこの季節かぁ
一年立つのは早いにゃー

コンテスト用の水着はまだ待機中のため
普段使いしている紺の海パンで準備運動しつつ

んで、澪はなーに恥ずかしがってんの
折角俺が選んでやったんだから、観念して出て来なさい!
と意地悪く笑いながら自分の後ろに隠れる澪を都月の前に引っ張り出し
どーよ、澪きゅんこういうのも似合うと思わねぇ?
普段意地でも着てくんねぇんだよなぁ
男にしとくのがもったいね、いってぇ!?(澪にしばかれた

俺は泳げるぜー?
一番得意なのは陸上…あー、自分の足で走る事、なんだけど
運動全般好きなんだよな
カエル泳ぎかぁ…
興味あんなら、先輩が他の泳ぎ方も教えてやろっか
澪に泳ぎ教えたのも俺らだしな!




 都月としてはテンションが上がっていた。
「海だー!!」
 砂浜を蹴って波打ち際へ駆け寄っていく。足の裏に返って来る感触を懐かしいと、そう感じる。感じている。
「初めての任務も海だったんだよなー……」
 己が猟兵になって初めての任務のことだ。あの日も同じように宇宙船の中に再現された海で、やはり今もあの時と同じだ。
「潮の香りと……」
 それが立って嗅覚をくすぐり、
「――ざぶーん!」
「――!」
 押し寄せた波が、散って、やがて引いていく。そんな光景をあの時は不思議に思っていたが、今はそういうものなのだと知っている。そして何より今の自分にはもっと興味が惹かれるものが有るのだ。
「小林先輩! 栗花落先輩! 早く――、あれ?」
 友人だ。自分からは先輩とそう呼ぶが、間柄としては親しい。振り返って、更衣室から出てきたそんな相手に手を振るが、そこで己は首を傾げた。
「栗花落先輩……、なんで小林先輩の後ろに隠れてるんです?」


 普段使いしている紺の海パンに着替えた夏樹は、軽く解すように準備体操を身に入れながら背後に声をかけた。
「ほらバレてるって。なーに恥ずかしがってんの澪」
 苦笑しながらの声は背に隠れている澪に向けたものだ。身長差があるのである程度は隠れているが、それでも見える部分はあるし、何より相手は都月だ。誰がそこに居るかは気配や嗅覚で解る。なのだが、
「な、夏輝君の勢いに押し切られて着たけどさ……!? これは、ちょっと……!?」
 澪がいつまで経っても背から出てこない。柔軟するこちらの身体の捻りに合わせて器用に身体を隠す。
 器用だにゃー……。
 もっと複雑な動きをしたらどんな隠れ方をするか興味も出てきたが、
「???」
 目の前の都月が頭に疑問符を浮かべまくってるのが見えたので、澪の手首を掴むと、
「ちょ……!!」
「折角俺が選んでやったんだから、もう観念して出て来なさい!」
 足を踏ん張る気配があったが、体格差がある。強引に自分の横に引っ張り出しせば、
「――どーよ、澪きゅんこういうのも似合うと思わねぇ?」
「わ、わー! わー!?」
 そこに現れるのは、ドレスのようにヒラヒラした水着を着た澪だ。明らかに女物の水着だった。
 引っ張り出された澪は手を振って慌てているが、その姿を見て、
「わあ! 本当です! 凄い似合ってます栗花落先輩! 可愛いです! それに小林先輩も! クールな感じがしてカッコいいです! イケメンカッコいい……!
 お二人とも水着姿も素敵です!」
「あ、ありが――、い、いや、これ女の子ものの水着だからね!?」
「おー、俺も? サンキューサンキュー。都月だってカッコいいぞー。でもそれ、レンタル水着だよな? 当日楽しみだ」
「はい。今年は仕立て屋さんに頼んだので、俺も楽しみです!」
「ちょっと!? 聞いてる僕の話!?」
 素直な都月の元気な即答と、それに応じかけけて慌てて言いさす澪と、そんな二人の様子にこちらも頷く。
「うんうん、普段意地でも着てくんねぇんだよなぁ。こういうの。男にしとくのがもったいね――、いってぇ!?」
 言葉の途中で平手が背中に飛んで来た、というか振り下ろされた。


 砂浜に蹲る夏樹を半目で見下ろしながら、澪は思う。
 夏輝君いっつも女装させてくるよね……。
 何故か、という思いはあるにはあるが、聞いたら聞いたで熱烈に説明を受けそうな気がする。ともあれこれで当面は静かになると蹲る夏樹を見ていたが、その後が大変だった。
「でも本当に可愛らしいです、栗花落先輩!」
「いや、えっと、その……。う、うん、あ、ありがとう……?」
 目の前、都月が目を輝かせながら自分のことを褒めたたえて来るからだ。
 ……き、木常野さんの言葉は全部正直ってわかってるから……。う、うう……!
 悪気や邪気というものが一切無いのだ。まさか先ほどの夏樹みたいにシバくわけにもいかない。
 い、いやまあ別に、夏樹君も悪気が、有るわけじゃ……、な……。……いや、どうかな……。
 ちょっと自信無い。顎に手を当てて考え込んでしまうと、
「その顎に指を当てたポーズも凄く綺麗です! モデルさんみたいです!」
 正面からストレートにぶち込まれてくる。
「それに、そのヒラヒラして、フワフワした……」
「……パレオ、パレオ……」
「パレオ! それが素敵です!」
 今、途中で足元から何か聞こえた気がする。だが、
「――絵本で見た人魚のお姫様みたいです!」
「うん、だからこれ、女の子向けだからね……!?」
 彼の言う通りだ。今、自分が来ている水着は人魚をモチーフとしているデザインなのだ。
「ヒラヒラとかフワフワしてる部分は“可愛い!”って感じなんですけど、そのパレオで脚が隠れてるのは何か“綺麗!”って感じがあります!」
「き、木常野さん? 木常野さん? あの、その、それくらいで……。女装だし、ね? 女装だし」
「? 何でですか? 照れなくても――、あ、そのパレオの中から爪先が見えるのは凄く“可愛い!”です!」
「そうだにゃー。足回りも可愛いよなー」
 いつの間にか復帰して隣に立った夏樹も含めて、自分の足先に注目を一気に感じたので、慌ててパレオから見えないように隠す。隠した。
「ほ、褒められなれてないから恥ずかしいんだよばかぁ! ――あぁ、もう! 海、海行くよ! そのために来たんでしょ!?」
 これ以上二人に見られるのが我慢ならず、急いでその場を離れて海へ駆け出していく。
「……小林先輩。何で栗花落先輩、男の子なんですかね? 控えめに言って、あんなに可愛いのに……」
「そうだよなー。それは俺も激しく同意するところなんだよにゃー」
 背後から何か聞こえて来るが、敢えて無視する。
「もー、こうなったら全力で遊んでやるもんね!」
 二人がさらに何か言っていたようだが、これ以上耳にしないように目の前に迫った波へ跳ぶように踏み入った。


 楽しそうだにゃー、澪……。
 遅れて波打ち際に到着した夏樹は、踝辺りまで水に浸かった澪が舞うようにステップを踏んでるのを見た。
 足取りは波に捕らわれることなく確かに砂浜を掴み、かと思えば次の瞬間には水を蹴って跳ね上がり、足先で飛沫を散らしていく。
「――――」
 散った飛沫が顔に跳ね返ってきたことに澪は笑顔を零しながら、次は身体にターンを与えて海岸線を回っていった。
「やっぱり綺麗ですねー……」
「そうだにゃー……」
 都月と一緒に小声で囁きながら感想していると、向こうが自分達に気付いたのか手を振ってくる。
「あ、二人とも! ほらほらこっち!」
 跳び跳ねるような澪に苦笑しながら、二人で海へ入っていく。
「冷たくて気持ちいいにゃー」
「キラキラ反射する光が少し暖かくて、気持ちいいです」
 目を瞑って楽しそうに笑う都月に自分も笑いながら、海の中、三人で円を描いて立つ。
「それで……何して遊ぼうか?」
「あの、気になったんですけど、先輩は二人とも泳げるんですか? 俺、カエル泳ぎなら出来ます!」
「僕は泳げるよ。夏樹君も、ね?」
「俺も泳げるぜー? しかしカエル泳ぎか……。都月、ちょっと見ててな?」
 言って、地面を蹴って頭から海に入っていくと、伸ばした身を流すように水の中を進んでいく。やがて身体が水面に浮き上がってくるので、一度、二度腕で掻く。バタ足も忘れない。
「!? カエル泳ぎじゃない泳ぎ方! 初めて見ました!」
「あはは、クロール、って言うんだよ」
 真剣に驚く都月の声とそれに笑顔で答える澪の声を聴きながら、は、と一息をついて立ち上がる。
「まあ、こんな感じだ。一番得意なのは陸上……、あー、自分の足で走る事、なんだけど、運動全般好きなんだよな。――興味あんなら、先輩が他の泳ぎ方も教えてやろっか? 澪に泳ぎ教えたのも俺だしな!」
「本当ですか、小林先輩! 教えてください! 栗花落先輩みたいに、人魚みたいに泳ぎたいです!」
「に、人魚みたいに泳ぐのはいいけど、私は人魚じゃないからね……?」
 元気のいい返事に応えるように、また二人の元へ泳いで戻っていく。
「はぁ……。まあでも、後で皆で競争するのも楽しいかもね♪」
 離れた位置に見えるブイや小島を見ている澪に、そうだなあ、と答えて空を見る。
「ついにこの季節かぁ。一年立つのは早いにゃー」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
おぉ!艦内とは思えないほど広々としてますね!
(水着に着替えた後、入念にストレッチを行い、ひと泳ぎしようと海に向かう)
波もあるなんて本当の海みたい!潮流も作ってるんでしょうか?
そういえば、前に海の中で戦った時に敵の潮流に飲み込まれかけてピンチになったことがあったな...
この潮流を『第六感』で読み取り『念動力』で上手く流れを作れば水中でも自由自在に戦えるのでは?
試してみる価値はありますね!やってみましょう!
(「黒影、訓練するのはいいけど遊びに来ている人たちの迷惑にならないようにね?」と頭の中の教導虫に話しかけられる)
もちろんです!せんせー!むしろ水中『ダンス』で皆さんを楽しませるつもりです!




「おぉ!」
 更衣室から出た兵庫は、まず感嘆した。
「艦内とは思えないほど広々としてますね!」
 視界の中、端から端までが砂浜と水平線が続いている。宇宙船という限られた空間のはずだがそうとは思えない光景だった。
 砂浜をビーチサンダルで踏む。ゴム底を通して返って来る質感も、足裏に流れ込んでくる感触も、やはり本物の砂だ。
「まずは準備運動をして……、と」
 砂浜を踏んでビーチの中頃まで進んだがその辺りで足を止めて、身体へ柔軟を与えていく。腕や首、脚といった部分もそうだが、指先や足先といった部分に至るまで、入念にだ。
 攣ったら危ないですからねー……。
 水中というのは身動きが制限されるシチュエーションだ。足首程度まで浸かったとしても随分動きが違ってくる。特に海や川といった条件であれば、さらに危険だ。
「波もあるなんて本当の海みたいだ……。潮流も作ってるんでしょうか?」
 呟いていると、そういえば、と思い出すことがある。
 前に海の中で戦った時、敵の潮流に飲み込まれかけてピンチになったことがあったな……。
 身動きが取れないまま、外からの力で翻弄されたのだ。
「…………」
 ストレッチを終えて海に近づいて行きながら、顎に手を当てる。
 ……この潮流を第六感で読み取って、念動力で上手く流れを作れば……。
 それは言うなればあの時の敵と逆をするということだ。制限されたフィールドを自分の思う通りに変化させれば、どうなるか。
「水中でも自由自在に戦える……?」
 口にしたが、解らない。それはまだ案というか、思い付きの状態だ。だが、
「試してみる価値はありますね……! やってみましょう!」
 と、その時だった。頭の中に声が響く。
『…………』
 自分の脳内に住まう虫、己が“せんせー”と呼んで慕う教導虫からの声だった。自分以外に聞こえない声はこう言っている。
『黒影、訓練するのはいいけど遊びに来ている人たちの迷惑にならないようにね?』
「もちろんです、せんせー! むしろ水中ダンスで皆さんを楽しませるつもりです!」
 声に答えているうちに足は駆け足となって、海に飛び込んで行った。


 水の中、そこでまず感じるのはやはり冷たさだ。肌を包むようでありながら刺すようでもある冷感が全身に走り、染み入ってくるようにも感じる。
 続いてくぐもった音が聞こえてくる。それは泡の弾ける音だったり、近くを魚が通る音や、遠くから響いてくる振動だった。
「…………」
 やがて海底に足がつく。だが反力と浮力ですぐに身体は浮き上がろうとし、そこを横合いから押すように潮流が身体を緩く流していく。
 これを掌握すれば……!
 なので手を伸ばして念じ、流れを掴むようなイメージで能力を発動していく。すると不意に潮流の勢いが治まり、身体が止まる。
 いける、そう思い、身体をさらに動かしていく。
 腕を伸ばし、足を振り上げる。地上にいるようにしっかりと芯のある動作は水中と言えども叶っていった。そして最後に海底を蹴って跳び上がる。
「――!」
 飛沫を挙げながら海上というか空中を宙返りすると、歓声や拍手がどこからか聞こえてきた。それに回転の最中の手振りで答えながら、また海中へと潜っていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
【FH】
またこの季節がやってきましたね!
船の中なら調整次第なのでしょうけど、それを言っては無粋ですしね

さて、今年の水着はまだ出来ていないので、去年のを引っ張り出してきましょう
ビキニと呼ばれる種類のもので、白色です

ヘスティアさんと、砂浜でコンテストでのポージングを相談しながら実践
……なにやら不思議な圧が……?
槍をどうにか活かせないでしょうか?
それとも今年はビーチボールでも……
去年のに比べて、今年はスポーティーな感じにしようかと思っていまして……

ふむふむ、銃と剣で遠近両用ですね
てれびで見たのですが、二挺拳銃というのも格好いいのではないでしょうか?


ヘスティア・イクテュス
【FH】
未確認の銀河帝国残党オブリビオン…
流石にこの世界の者として見逃せないわね

まぁ、今は現地に着くまでのんびりとさせてもらおうかしら…


ひとまず、去年の競泳水着に着替えて砂浜で今年の予行演習ね
オリヴィアとの胸囲の格差にギリギリ歯ぎしり

わたしは借りてきた水鉄砲を使って色々ポージングを模索ね
今年は格好良さげな感じでいってみようかしら?
う~ん、剣もあった方がいいかしら?

槍…挟む…?
ボール…ビーチボールが3つ…?(目から光を失いつつ)




 去年の水着である白いビキニタイプの水着に着替え、砂浜に立って身体全体に海風を感じていると、やはり、とオリヴィアはある思いを抱いた。
「またこの季節がやってきましたね……!」
 暑い日差しに飛沫く波、そして白い砂浜が今、目の前にあるのだ。
 だけどまあ、この感覚も宇宙船の中なら機械で調整次第なのでしょうけど……。
 それを言っては無粋というものだということは自分も知っている。なので感想としてはやはり、この季節が来た、だ。
 太陽の日差しに目を細め、背後へ振り返り、
「ヘスティアさんは――」
 こういう“宇宙船の夏”はどうですかと、自分と同じく水着に着替えた同行者であり、旅団の団長であり、友人とそう呼べる相手に尋ねたかったのだが、
「…………」
「ヘ、ヘスティアさん? ヘスティアさん? あの、凄い歯ぎしりの音が聞こえているんですけど……?」
 当の彼女が凄い顔でこちらを見ていた。


 ヘスティアはオリヴィアと同じく去年の水着である競泳水着に着替え、己の前に広がる光景を一語で感想した。
 眉間の皺を深くしながら、
「……大きいわね」
「? 何の話ですか?」
 目の前に立ったオリヴィアが疑問に思い、こちらに尋ねてきた。が、
「――――」
 その振り向きや身体の傾きなどといった身じろぐ動作を見て、自分としてはさらに歯の噛みしめを深くなったが、努めて平常心で答える。
「ぐぎぎ……! け、景色の話よ……」
 平常心セーフ。
 今、海が視界の端から端まで広がっている。砂浜と空も同じくだ。水平線が見える光景は屋内とは思えない。
「ああ! さっきから怖い顔してると思ったら景色のことだったんですね? 日差し、眩しいですから。
 でも本当にこういう技術って凄いですよね。季節や天候を創り出せるなんて!」
 そうだ。今、目の前にあるビーチは砂や海水は本物だろうが、日照や潮流などはシミュレーションや演算によって“本物”を出来るだけ再現したものだ。
 別世界の出身のヘスティアはともかく、この世界出身の自分としては既知の光景というか既知の“仕様”だった。
「そ、そうよね、確かに胸囲の技――、違うわよ? 脅威、驚異の技術よね。ええ……」
「……? 今の何か違いました?」
 違うのよー? と曖昧に答えながら、己はオリヴィアから視線を外して景色を見る。
「しかし戦争も終わって一年も経つのに銀河帝国残党オブリビオン……。流石にこの世界の者として見逃せないわよね」
 それも未確認のオブリビオンだ。どういう手合いでどんな戦法を取って来るか、何もかもが未知だった。
「でもまぁ、今は現地に着くまでのんびりとさせてもらおうかしら……」
 だけど本当に出来るかしら……、という思いが一瞬脳裏によぎったが、これは戦闘前の緊張だと思うことにした。


 オリヴィアは、ヘスティアと連れ立って砂浜を歩いていた。
「ここらへんで大丈夫ですかね?」
「んー……、太陽の位置も良いし、良いんじゃないかしら」
 二人で事前に話し合って、このビーチでどう過ごすか考えていたのだ。それは何か。
「――じゃあここで、ポージングの練習しましょうか!」
 水着を全力でアピールするため、二人でポージングの練習をするのだ。
「オッケー……っと」
 彼女がこちらの声に返事をしながら、近くの操作盤や空中に生じた画面に手指を当て、捜査していく。
「設定、設定……」
 小さな彼女の呟きと幾度かの操作によって、周囲に変化が表れ始めた。
「わっ」
 日照の度合いや背景にする海の様子も微妙に変わったが、一番の変化は自分達それぞれの近くの空中に現れた画面だ。
「私たちが映ってますね……。姿見のようです」
「正確には仮想カメラからの映像だけどね。つまりちょっと手元で操作をすると……」
「おお。これなら色々な角度からチェックできますね!」
 空中に生じた画面自体は動かず、移されている映像が動いていき、様々な角度の自分達を映していった。鏡のようだと思っていた先ほどまでの画面は、こちらを正面からレンズに収めていた映像だったのだ。
 彼女が手元の操作で別アングルを次々に切り替えたり、時にはカメラを滑らかに移動させて少し変わった画角を画面に映していくのはこちらに大体の操作方法を教えてるのだろう。
 己の手元にもある操作画面、そこを見てみれば、こういった先進科学技術に親しくない自分でも十分に理解できそうなデザインだった。
「成程……」
「お互いに確認したり、鏡だけだと不便だしね。……それで、オリヴィアはどういうポーズ取る予定? 私はこういうの持ってる感じでいこうかなと思ってるけど」
 頷きながら試しの操作をしていると、隣が手に持ったものを振ってこちらにアピールしてきた。カラフルで軽質な見た目の荷物は、“ぷらすちっく”という素材で出来た水鉄砲だ。
 彼女はそれを片手に構えたり両手に構えたりしながら、
「今回は格好良さげな感じでいってみようかしら……?」
 隣で次々にポーズを取り始めていった。画面に映される映像をこまめに確認しながら模索していっている。
「う~ん、あ、剣もあった方がいいかしら? オリヴィアはどう思う?」
「剣……。ふむふむ、銃と剣で遠近両用ですね。以前“てれび”で見たのですが、二挺拳銃というのはどうでしょう? あれも格好いいのではないでしょうか?」
 ポーズを決めながら首だけこちらに向けた彼女が、おお、と口を緩く尖らせる。
「私が普段持ってるミスティルテインはライフル系だしね、拳銃二丁っていうのも雰囲気違っていいかも。――オリヴィアの方は何か、小道具とか使うの?」
 次はこちらの番だ。問われ、考えてみれば一番に思いつくのはやはり、
「槍、ですかね? 私の場合にアイテムで飾るとなると。去年も持っていましたが、どうにか活かせないでしょうか?」
 白銀と黄金、その色を基調とした一振りを軽いスイングで片手から両手に持ち替えながら、
「あ、それとも今年はビーチボールでも……。実は去年のに比べて、今年はスポーティーな感じにしようかと思っていま――」
 そこまで言ってから何か隣から圧を感じたので、慌てて振り返ると
「――槍……挟む……? ボール……ビーチボールが三つ……?」
「ヘ、ヘスティアさん? ヘスティアさん!? 目に光がありませんけどどうかしましたか……!?」
 彼女がまた凄い顔でこちらを見ていたので、慌てて意識を呼び戻した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『アンノウン』

POW   :    高度に発達した頭脳
【あふれる知性で】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    テレキネシス
見えない【念動力】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
WIZ   :    洗脳電波
【怪しい踊り】を披露した指定の全対象に【忠実なしもべになるという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達が思い思いに海を楽しんでいると、艦内放送がビーチ全域に渡った。
『該当宙域が近づいてきました。対処に当たる猟兵の皆様は――』
 銀河帝国残党が隠れる宙域に近づいてきたのだ。それはすなわち戦闘が近いということであった。
「……!」
 猟兵達は急ぎビーチから離れ、準備を始めていった。
 戦闘が始まるのだ。


 宇宙へと飛び出した猟兵達は、前方のデブリ群の中に敵の姿を見た。
「――――」
 一体のロボットを中心に取り囲んだ姿は、異形だ。全体のシルエットとしては頭部が異常に大きく、首すらも存在しない。
「……!?」
「――!!」
触手のような部位を宇宙に流したそんな敵は、猟兵達の存在に気付くと聞いたことも無いような声を挙げ、警戒態勢に入った。
「……エイリアン?」
「古典的な感じだ」
「手に持ってるのは光線銃かな……」
 猟兵の内の誰かが言葉を零した通り、ステレオタイプなエイリアン然とした姿だった。
 と、そこで声が聞こえてきた。
「――エ……リアン……」
 目の前の敵、正体不明の存在“アンノウン”達からだった。
「古典……」
「感じ、エイ、リ、光線……」
「エイリ、アン、古典、感じ、銃。――エイリアンな、感じだ。エイリアン的な、感じだ」
 先ほどまでは理解不能な言語を発していたが、こちらが今放った言葉を聞き取り、それを反復していくのだ。
 高度に発達した頭脳を持っていることは明白であり、
「手に持っている光線銃、光線銃、光線銃光線銃光線――」
 言葉と同じくそれを連射してきた。
「光線銃を手に持っている感じだ。古典的だ」
 デブリのあちこちから現れたアンノウン達は、奇怪な踊りのような動きを見せながら、
「古典的だ古典的かな古典的だ」
 触手を振り上げて念動力を発動し、近くにあったデブリを振り回し始めていった。
琥珀川・れに
【依頼掲示板前広場】ラズと

とてもユニークな顔をした奴だ。

あ、愛嬌…?そうだろうか……
いい刺激にはなりそうだけど…君の絵に変な影響があってはいけない。

ラズ、君は僕のすぐ後ろにいてくれ。
今日は僕が君の騎士(ナイト)だよ。

剣で手を傷つけ、UC「首落とす小指の赤斬糸」
手から流れる僕の血を、物を斬れる糸に変化させた。
これであいつらをスパッと切ってしまおう
ラズの極彩炎をエンチャントしてもらって…

極彩炎の色と僕の血の糸が混ざり合い、
周りはペインティングしたみたいに鮮やかだ。
君の身体も炎を反射して、なんて美しいんだろう…

※アドリブ歓迎・合体追加省略ご自由に
(他にも女性が居たら一言口説きます)


ラズ・ヴェルーリヤ
【依頼掲示板前広場】
わ。大きな頭に、触手なボディ
典型的な、宇宙人
なんだか、愛嬌を感じます、ね?

はい、レニーさん
今は私の騎士
守られる、のも。わくわくします、ね

筆で虚空を一撫で
色とりどりの極彩炎が姿を現す
戦闘は不得手、ですので
レニーさんの、お力に
炎は血液へと燃え移る
血は、燃えません
けれど
レニーさんの武術を彩り
その切れ味を上げ、触れた敵を燃やすのです

怪しい踊りに、美は感じませんし
心も震えません、が
描いてみたい、宇宙人
残りの炎で色違いな宇宙人を描き上げ
攻撃を防御して消えて行く
少し可愛い

お褒めの言葉に微笑
彩を得た鮮血に舞う、レニーさんの方が、美しい…とても
描かずにはいれないくて、私は再度筆を執るのです




 船外に出たれには片眉を上げた。
 ――とてもユニークな姿をした奴だ……。
 自分の視線の先にいるオブリビオン、宇宙人然としたアンノウン達を見たからだ。
「わ。大きな頭に、触手なボディ……」
 そんな敵の外見を言葉とした隣からの声は、同じ旅団のラズだ。藍色の瞳を少し見開いている。
「典型的な、宇宙人。なんだか、愛嬌を感じます、ね?」
「あ、愛嬌? そうだろうか……?」
 彼女からの言葉に上げた眉をひそめながら、
「まあ確かに、君にとってはいい刺激になりそうだけど……、君の絵に変な影響があってはいけない」
 一歩前に進んでラズの前に立ちながら、取り出すのは細剣。エペだ。
「ラズ、君は僕のすぐ後ろにいてくれ。――今日は僕が君の“騎士(ナイト)”だよ」


 ラズは目の前に立ったれにを見て、顔を綻ばせる。
「はい、レニーさん。今は私の騎士。守られる、のも。わくわくします、ね」
「光栄です」
 振り返って恭しく一礼した騎士がその後、オブリビオンに向き直ったかと思うと
「――――」
 次の瞬間には、片手を細剣の刃で傷つけた。刃の動きに迷いは無く、銀閃が過ぎ去った後にはれにの掌の皮膚が裂けていた。
 そこから零れるように現われた紅の色は、血だ。
 血は止まらず、しかしその全てが一つの動きを持っていた。彼女の周囲を渦巻くように旋回しているのだ。それは明らかに指向性を持った動きであり、揺蕩うリボンのようだったが細さはもっと細く、糸状だ。
「――“首落とす小指の赤斬糸(ブラッドフォーディスティニー)”」
 れにのユーべルコードだ。血を斬糸とし、対象を切り裂くものだった。
 そして、
「……!」
 そこに新たな色が加わった。
 紅を上から包むように覆った極彩の色は、焔だ。煽るように身を広げ、踊るように身を揺らす。
「“極彩炎(リッチィカラード)”……。戦闘は不得手、ですので。レニーさんの、お力に」
 突如として現れた火炎もやはりユーべルコードであり、己が空中に筆を振るった結果だった。
 極彩の焔は斬糸を舐め上げるようにしながら、しかし燃やさず、共に在り続けている。これでれにの武術を彩り、斬糸の切れ味を上げ、触れた敵を燃え上がらせるだろう。
「ご助力、痛み入ります」
「お願い、できますか、騎士さん?」
 敵を見ながらのおどけたようにも、真剣なようにも聞こえる声に顔をさらに緩ませながら、そう言うと、
「――!!」
 れにが返事代わりに、剣を薙ぐように振るった。


 それが合図だった。
「……!」
 れには見る。宇宙空間を極彩色の炎を纏った斬糸が行くのをだ。
 正面から一直線、かと思えば斜めから振り下ろすように、または跳ね上がるように。ユーべルコードが残す残像の軌跡は様々だった。
 高速なのだ。斬糸は彼我の間を一瞬にして埋めると、アンノウン達の身体に衝突というより一瞬の内に通り過ぎていった。切り裂いていったのだ。
 そして、
「……!?」
 その触手状の身体をたちまちに炎上させていった。
 ラズの極彩炎をエンチャントしてもらったおかげだね……。
 視界の前方で斬糸が猛威を振るった後、極彩色がどんどんと増えていく。その光景はアンノウン達が接近して来るにしたがって自分達の周囲を彩っていく。
 紅閃が走り、極彩色が舐め上げ、弾けるように熱を持ったそれらの色が広がっていく。
 周囲は光というインクでペインティングしたような光景だった。
 鮮やかだった。
「ああ、君の身体もこの炎を反射して、なんて美しいんだろう……」
 そしてそれはラズもだった。火炎で周囲を囲まれたこの空間において、彼女の藍色の身体が様々に色味を変えていくのだ。
「ふふっ……」
 振り向いた先にいる彼女がこちらの言葉に笑みを零す。嬉しい事だった。もっと彼女の美しさを形容するためにはさらに何と言えばいいだろうかと、脳裏に様々な言葉を巡らせていると、気づいた。
「……ラズ? それは――」
 彼女の手が動いて何かを描いている。それは余った炎を使った手慰みにも似た描きで、すぐに形を出来上がらせていった。
 色違いだが、特徴的な頭部に触手状の身体。
 アンノウン達だった。
「…………」
 炎で空間に描写された数は複数。触手の幾本かを振り上げており、踊っているような姿は、正しく今接近してきているアンノウン達だった。
「怪しい踊りに、美は感じませんし、心も震えません、が……」
「描いてみたかった?」
 炎に照らされながら小さく頷く姿も、やはり可憐だった。
「――――」
 刹那。空間描写されたアンノウン達が光線にかき消された。斬糸に纏う炎から排除しようとラズに踊りを送っていたアンノウン達、彼女が自分達の忠実なしもべにならないことを悟ったがための狙撃だった。
 自分が描いたアンノウン達が散っていくのを、ラズは目で追いながら、
「――少し可愛い、です」
「……!」
 “そうかな……?”という言葉が脳裏に浮かんだが、敵に向けてエペを振るう動作で思考の外に追い出す。光線銃を撃ってきた連中が、極彩色に包まれていった。
 ……ラズは、色々な物事を吸収していくんだね。
 素晴らしい。素晴らしい芸術家だ。そう思いながら、けれど、と。
「ラズ? 世界には美しいものが沢山あるからね。君の絵で描かれたそれらを僕は見てみたいよ」
 振り向かずに背後の彼女へ、そう伝えてみれば、
「――ええ、はい。レニー、おっしゃる通り、ですね」
 上機嫌な彼女の声が聞こえてきて、
「――――」
 また、何かを描き始める音が聞こえた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木常野・都月
【狐犬兎】

宇宙にも、タコがいるのか!
エイリアン?タコですよね?

しかも光線撃ってくる、頭のいいタコだ。

とりあえず、食べてみたら、タコがどうかハッキリしますよね。

栗花落先輩が気を引いてる間に、杖からダガーとエレメンタルダガーに持ち替えて、小林先輩と接敵したい。

小林先輩の攻撃のあと、UC【全力一刀】で攻撃したい。
先輩方に支援して貰っているんだ。
絶対に焼かないと!

エレメンタルダガーが刺さったら、火の精霊様に頼んで、敵に着火したい!
タコは燃えたら、タコ焼きだ!

大抵の生き物は、焼くか切るかすれば、食べられるって聞いた。
多分大丈夫!

先輩達も食べてみます?
ちゃんと焼いてますよ?


栗花落・澪
【狐犬兎】
うん、まぁタコ…というかクラゲっぽくも見えるというか
本物の方が絶対可愛いけどね

え、なに踊り?
僕と音楽勝負でもする?
しもべなんかにさせられたら困るから
それより先に、釘付けにしてあげる♪

【指定UC】を発動し、技能値×10の【誘惑】を乗せた【歌唱】で
敵の足止め、および注意をこちらに引き
木常野さんと夏輝君に攻撃がいかないように
直接攻撃は翼の【空中戦】で身軽にひょいひょい回避
万一念動力がこっちに来た時のために【オーラ防御】も準備しておこう

同時に、この歌に共感した味方は強化出来るからね
2人の攻撃力を嵩増ししてサポートするよ!

あ、いやぁ…僕はちょっと、このタコは…要らないかな(遠い目)


小林・夏輝
【狐犬兎】

都月は好奇心も食欲も旺盛だなぁ
おっしゃ!
んじゃ一緒にあのタコ調理してやるか!
タコ焼きタコ刺し、フルコース行っとくか?

都月の好奇心には兄のようにノッてやりつつ★バットを構え

陸上部で鍛えた【ダッシュ】力で素早く移動
敢えてジャンプしてからバットを振り上げる事で
敵の目線を完全に都月から外させ

殴られると思ったか?
残念、フェイントでしたー♪

都月の切り裂きが命中したところで【指定UC】
はいタコ刺し一丁!
おっと、まだ終わりじゃないぜ?
即接敵し直しながら【クイックドロウ】でバットに★R -Lを取り付け
ロケランに変形
【零距離射撃】で【吹き飛ばし】
後は存分に焼いてやれ

あー、俺も食うのはいいや
感想だけ教えて




 澪は二人と共に船外へ飛び出した。
「見てください!」
 敵勢が待ち構える戦場へと進みながら都月が声を挙げる。
「――タコです!! 宇宙にもいるんだ……!」
「……うん?」
 見る。視線の先にいるオブリビオン、アンノウンをだ。
「大きな頭に、うねうねした触手……。タコですよね?」
「……タコ。タコというか……エイリアンというか……、ああ、クラゲっぽさもあるかなあ……。いやまあ本物の方が絶対可愛いけどね」
 “エイリアン?”と隣で首を傾げてる都月にどう説明したものかなあ、と思っていると、
「とりあえず食べてみたら、タコがどうかハッキリしますよね」
「ははっ。都月は好奇心も食欲も旺盛だなぁ」
 そんなストレートな解決方法に言い出したので、都月を挟んだ反対側にいた夏樹が噴き出す。
「おっしゃ! んじゃ一緒にあのタコ調理してやるか! タコ焼き、タコ刺し……、フルコース行っとくか?」
 と指折っていく夏樹に都月が、おお、と目を輝かせる。
「え!? ほ、本気!? 本気なの!?」
 二人の顔を交互に見ながら慌てて問うが、
「じゃあ行ってくるにゃー?」
 夏樹は答えず笑みのままバットを構えると、次の瞬間には疾走していた。


 宇宙という真空の足場、無とも言えるそこを夏樹は確かに“踏んだ”。
 まるで大地を捉えるように足裏でグリップすると、背後で蹴り飛ばしていったのだ。
「――!」
 行く。弾かれるように飛び出した身体が、前へと。
 切るための風など存在しない空間だが、しかし上半身は低く前傾。身体に叩き込まれた疾走の姿勢は、一歩目から全力ということだった。
 跳ねて揺れそうになる上半身を体幹で抑え込み、ストライドを広く取った脚で高速に進んでいけば、敵勢が潜むデブリ群へたどり着く。
「……!」
 視界の中、星の光が背後へと流れていく中、アンノウン達が光線銃を差し向けてくるのが見えた。急激に接近してきたこちらを迎撃しようというのだ。
 引き金を引かれ、あらゆる角度から熱線が放たれる。だが、
「よ、っと!」
「!?」
 その直前に己は足を踏み切って頭上側へ跳躍した。
 足下をいくつもの光線が過ぎ去っていく。
「貰った……!」
 迎撃を回避されたことを察知したアンノウン達が頭上を振り仰ぐのと、己がバットを振り上げるのは同時だった。
 全ての視線が、己に集中する。その瞬間だった。
「――そこ!」
「……!?」
 激突が、一拍遅れてアンノウンの一体を打撃した。
「殴られると思ったか? 残念、フェイントでしたー♪」
 自分の少し後ろを追走していた都月の、ダガーを用いた死角からの一撃だった。


 夏樹が敵の注意を引いた瞬間、今だ、と都月は直感した。
 今、オブリビオン達の殆どが、頭上に跳躍した夏樹に注目している。彼の手に持つバットで何が繰り出されるのか、自分達が行うべきは回避か、反撃か、防御か。対応を迫られ、思考が硬直しているのだ。
 なので己はそこを突いた。
 杖から、ダガーとエレメンタルダガーの二刀に持ち替え、加速の乗った一撃として先頭集団の一体に突き刺したのだ。
「!?」
 新手に気付いた敵勢が警戒の声を挙げ、光線銃や触手を向けて来るが、遅い。
「精霊様、お願い!」
「……!」
 その一言で、ダガーが突き刺さった部分を起点として、敵の全身が火に包まれた。火の精霊によって火炎が付与された結果だった。
 タコは燃えたら、タコ焼き……!
 焼き上がりが楽しみだと、燃え盛るオブリビオンから二刀を引き抜くと、
「やるじゃん、都月! ……っとぉ!」
 炎上に混乱する場に夏樹が降り立ってきた。バットの打撃音を伴ってだ。
 頭上からの打ち下ろし気味のフルスイング。それを頭部に浴びたアンノウンは意識を失い、その場に揺蕩うように浮き上がった。
「刺身は新鮮な方がいいからにゃー。ああ、まだ終わりじゃないぜ?」
 打撃の勢いそのまま、先ほどのように脚力で一気に距離を詰めていく途中で、夏樹が懐からパーツを取り出し、バットに合致させるのが見えた。
 グリップとそしてトリガーのついた部品が発射機構だということを、狐として育った己も今となっては知っていた。
「吹っ飛べ……!」
 今やバットの先端から砲の先端となったそこを敵に突き刺すと、夏樹は迷いなく引き金を引いた。
 零距離射撃の直後、朱と黒の色で出来た花が、敵の一角で咲いた。
 砲を突き込まれた一体だけでなく、その背後や周囲にいるもの達も含めて爆炎や爆風で吹き飛ばされ、
「そっち行ったぞ、あとは存分に焼いてやれ」
「わ……!」
 そんな一体がこちらにも飛んで来た。高速で吹き飛んでくる敵を、ダガーを突き刺すことで受け止め、すぐにまた燃やした。
 そして吹き飛んでくるのはその一体だけでは無い。さらに一体、またさらにもう一体と、飛来が続けていけばその度、周囲に火柱が立ち昇っていった。
 炎の明かりが次々に増える中、だが敵も黙ってやられているわけではなかった。
「お?」
 夏樹の疑問の声は、敵が奇怪な動きをしたからだった。触手を振り上げて踊るように、否、実際本当に踊っているその姿はユーべルコードだ。
 披露した対象を忠実なしもべに仕向けるその踊りをもって、こちらの動きを止めるつもりなのは明白だったが、
「――え、なに踊り? 僕と音楽勝負でもする?」
 自分達の背後からアンノウン達に向けて声は、後方に控えていた澪だ。
 彼女は言葉を続けていく。だが続く言葉は、先ほどまでとは種類が違った。
「――♪」
 音階とリズムを持った言葉を歌という。
 それが今、戦場に響きはじめていた。


 息を吸い込んだ澪は己の胸に手を当て、もう片方の手を誘うように前方の戦場へ向けると、
「――――」
 声を送った。距離は離れているが、歌唱に関しては己はかなりの自信がある。身を立てて身体を一直線に通すと、そこから音に乗せた息と声を放つ。そして何よりこの歌は今、ユーべルコードによる増幅を受けている。その効果は己の歌唱技能を増幅させるものであり、
「……!?」
 およそ視界に映っているアンノウン達全員、それだけの数の踊りを差し止めることに成功した。しかしそれだけではなかった。
 歌は続いていく。
「――!」
 音は波だ。開けた場所であれば放たれた途端に発散する波も、周囲に置かれるデブリ群を反響材として跳ね返っていけば、上下左右前後、様々な方向から響く立体音響として敵勢に歌を届けていく。
 ユーべルコード“戦場の歌姫”。それによって増幅された技能は歌唱だけではなく、敵の注意を引く誘惑技能もだった。全方向からの歌声に意識を奪われ、その声の大元であるこちらへオブリビオン全員が一斉に注目した。
 注目は光だった。一つはアンノウン達の照明のような眼球であり、そしてもう一つは、
「……!」
 彼らが手に持つ光線銃からの熱線だった。こちらに向けて銃口を向けると次々に、ほぼ連射する勢いで熱線を放ってきたのだ。
 一射を正面から見たら光点のようなものも、ほぼ全員から放たれれば光の壁のような勢いで迫ってくる。
「――――」
 しかし歌は止まらない。背の翼を打って飛び上がると、迫る熱線を時には身を回したり、時には速度で振り切ったりして回避していく。
 回避するこちらを撃墜しようと第二、第三の熱線照射が続けられてきたが、やはりそれもことごとくを回避。痺れを切らしたのか、時折念動力で操られたデブリが迫ることもあったが、流石にサイズ比的に回避が難しいので、
「……!!」
 全力のオーラ防御で何とか軌道を反らし、すれ違う。
 そうして敵からの攻撃を防ぎながら、飛翔を円を描くように戦場の上を回っていく軌道に変えていく。敵の注意を頭上にひきつける目的もあるが、何より二人の仲間にも歌声が届くようにだ。
 技能を増幅させることで歌声を届け、敵の注意を引きつけるユーべルコードは、その本質は味方の強化にあった。
「――行くぞ、都月!」
「はい、小林先輩……!」
 頭上からの視点では、歌声を聞いた二人の動きが、特に攻撃力が先ほどまでとは比べ物にならないほどになっているのがよく見えた。
 夏樹のバットによる打撃やランチャーによる爆発はその破壊力を増し、都月の火炎も以前よりもっと大きな火柱を上げるようになっていた。
 オブリビオン達が二人に蹴散らされていく中、歌はやがて、高音域のせがむようなものへと変わっていった。
「……!」
 クライマックスが、近いのだ。


 敵勢の粗方を片付けた後、夏樹は他の二人と共に焼き上がった一体のアンノウンの前にいた。
「あ、ちゃんと焼けてますね。大抵の生き物は焼くか切るかすれば、食べられるって聞きましたから、多分大丈夫です。――先輩たちも食べてみます?」
 理解というか受容のハードルが凄くね? と思いながらも、自分としてはまず澪を見てみた。
「あ、いやぁ……。僕はちょっと、このタコは……要らないかな……」
 明らかに目が遠いというか、目の前のものからピントをズラしてる感があった。
 “そうですか?”と、都月が首を捻りながらこちらを見たので、己も澪に同意するように頷きながら、
「あー、俺も食うのはいいや。感想だけ教えて」
 そう言って、ダガーを構え始めた都月のこれからを見守った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

黒影・兵庫
宇宙人!宇宙人です!せんせー!
(「うん、宇宙人ね。雰囲気はヤバめな感じだけど」と頭の中の教導虫が返事をする)
あんな連中も銀河帝国に在籍していたんでしょうか?
多種多様な人材が揃い過ぎてますね
(『念動力』で{錨虫}を操作して敵を攻撃し、さらに『衝撃波』による追撃とUC【光殺鉄道】を発動し黒影の影から湧き出た芋虫が放つレーザーブレードで殲滅を狙う)
攻撃の多様性なら虫さんたちだって負けていません!
光速の刃、逃れられると思うならやってみな!




「……!」
 船外に出て敵を確認した瞬間、兵庫は息を呑んだ。視界の先にいたオブリビオンがあまりに特徴的だったからだ。
「宇宙人! 宇宙人です! せんせー!」
 言葉の通り、正しく宇宙人然としたオブリビオン、アンノウンがそこにいたのだ。興奮のあまり連呼しながら脳内のせんせーに呼びかけるが、せんせーは至って冷静だった。
『うん、宇宙人ね。雰囲気はヤバめな感じだけど』
「あんな連中も銀河帝国に在籍していたんでしょうか……。多種多様な人材が揃い過ぎてますね」
 残党ということはやはりそういうことなのだろう。帝国内部でどのような活動をしていたのか、そして帝国亡き今、何をするつもりなのか、想像できる範囲はあまりに少ないが、
「あの宇宙人が倒すべき敵なのは、間違いありません!」
 そう言って己は両手を振り、戦場に力を放った。力の正体は自身が持つ念動力であり、掌の向けた先、念動力の最先端とも言える部分に一つの大きな塊があった。
 素材としては金属から成り、一抱え程はありそうな大きさ。そして何より屈折した部分を持つ形状は何か。
「錨蟲さん、お願いします!」
 それは錨だった。船を係留するための設備だが、その正体、というか“元”は寄生虫だ。
 せんせーの細胞を注入し進化を促せた結果、彼の寄生虫は本物の錨となったのだ。
 不可視の念動力を錨を繋ぐ鎖として、それを一気に振り回していく。
「ぉお……!」
 両腕を振り回せば、掌の延長線上で錨が敵に衝突していった。超重量の物体が高速で敵勢の一角に激突したのだ。一体や二体を吹き飛ばしただけでは止まらず、デブリに衝突したとしてもそのデブリごと粉砕し、敵を次々と吹き飛ばしていった。
 そして、攻撃の結果はそれだけではなかった。
「!?」
 錨で吹き飛んでいく最中、アンノウン達が警戒の音声を発したのが聞こえた。
 敵陣の中は錨によって抉るように掘り進められ、そんな通り過ぎた軌跡から衝撃波がまるで爆発するように次々と発生し、追い打ちをかけていったのだ。
 破砕の波は全周囲のアンノウン達を一斉に打撃し、デブリすらも粉々に砕いて散弾のように散らせていく。
「……!」
 直撃を避けたアンノウン達の一部はその結果を見て、自分達の頭脳をフル稼働させる。そうして錨からも衝撃波からも逃れられる空間座標を導き出すと、急ぎの動きで退避していくが、
「――今です、光学兵の皆さん!」
 こちらとしてはその瞬間を待っていた。
 声で呼びかければ、己の影から現れた芋虫状の個体が次々と現れる。数にして四百二十体の軍勢は、光学兵という名称そのままの攻撃方法を直後に放った。
「――――」
 その身体から光線を放ったのだ。一箇所へ固まった敵の元へ四百を超える光が一瞬にして辿り着き、その軟体を貫くばかりか、
「――!」
 光学兵達が照射源を振るったことで、アンノウン達が両断されていった。
 レーザーブレードだ。
「攻撃の多様性なら虫さんたちだって負けていません!」
 デブリの影に隠れていようが光刃はもろともに断ち切り、照射の範囲外から逃れようとしても、
「……!?」
 光線の数が多すぎる。辺り一面を柵や檻のように覆い、逃げ場が無いのだ。錨や衝撃波も未だに猛威を振るっている。
 しかし中にはその類稀なる頭脳によって、辛くも脱出ルートを見つけ出す個体もいた。しかし、
「光速の刃、逃れられると思うならやってみな!」
 言葉通り、正真正銘光の刃なのだ。一瞬にして距離を詰め、逃すことは無かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
【FH】
知能以外を極限まで削ぎ落した生物、という感じでしょうか……?

【転身・炎冠宰相】で白い翼の姿に変身、【空中戦】で飛翔し吶喊する
前衛は私が務めます!

【火炎耐性】の【オーラ防御】を纏い、光線銃を軽減
光線、ということなら恐らく熱による攻撃、これである程度は!

【怪力】を以って灼熱を帯びた聖槍(属性攻撃)を【なぎ払う】
果敢に攻め立てることで注目を集め(存在感・おびき寄せ)、予測回避を自身への対処で手一杯にさせる
大きなデブリを【投擲】することで回避の方向を制限し、ヘスティアさんの攻撃で一網打尽にできるように
――後退します!

ハイタッ――ひゃん!?(反動でくるくる回転)


ヘスティア・イクテュス
【FH】
えっ…あれなに…?この世界出身なのにあんな生物知らないんだけど…
銀河帝国の実験生物とかかしら?


オリヴィアの吶喊時にミスティルテイン&無線誘導端末兵器フェアリー
を使ったビームの『弾幕』で上下左右への回避を狭め敵回避の制限
そのまま、オリヴィアを盾にするかのようにティターニアで追うわ【空中戦】

オリヴィアが槍で敵集団の注目を集めてる間に敵集団をターゲットロック【誘導弾】
ミスティルテイン&フェアリー、そしてマイクロミサイルによる『一斉発射』による『範囲攻撃』で決めるわ!
オリヴィア!下がって!

終わったらハイタッチね!(前章の憎しみから強めに力を入れて)




 オリヴィアはヘスティアと共に船外へ出て戦場へと向かいながら、敵を見た。
 距離は未だ離れているが、その異形の姿は目立つ。
「あのオブリビオン……。先ほど見た様子だと知能以外を極限まで削ぎ落した生物、という感じでしょうか……?」
 自分の故郷の世界は勿論、どこの世界にも不気味な姿の敵というのはいるだろうが、あの敵のような姿のものは珍しかった。
「あの、ヘスティアさん……」
 なので、この世界出身の彼女へ情報を訪ねようと振り返ったのだが、
「???」
 明らかに怪訝そうな顔で、彼女が敵を見ていた。
「えっ……あれなに……? この世界出身なのにあんな生物知らないんだけど……。銀河帝国の実験生物とかかしら……?」
 眉に皺を寄せた眇目の彼女が推測を口にするが、その様子からして本当に初見なのだろう。
「つまりはやはり、初発見のオブリビオン、ということですね」
 攻撃手段については大雑把に解ったが、それでもまだ不明の点は多い。注意が必要だと、そう念頭にしながら、己はヘスティアに声を送る。
「――それでは作戦通りに」
「ええ、気をつけてね」
 彼女の言葉に振り返りの頷き一つで返答とし、己は先ほど撮影にも取り出した聖槍を取り出した。
「――――」
 そして息を吸い込み、
「――天来せよ、我が守護天使。王冠を守護する炎の御柱よ」
 唱えた。
 詠唱だ。宇宙空間の中、槍を構えてユーべルコードの発動をしていく。
「万魔穿つ炎の槍、不滅の聖鎧、そして天翔ける翼を与え賜え――!」
 そしてそれを唱え終えた刹那。身体に変化が生じた。それは詠唱の句の通りのものだった。
「――――」
 構えていた聖槍の穂先が猛火に覆われたかと思うと、身に纏っていた法衣が一瞬の内に聖鎧へと変化したのだ。手足それぞれを白銀のガントレットやグリーブで備え、身を絞るようにして包んだスーツ。
 そして何より、
「……!」
 背中から現れた白の翼がその身を一気に広げた。
 純白の羽根が、周囲に散っていく。
 だがそれも一瞬だった。
 身を抱き隠せるほど大きな翼が一度、震えたかと思うと、
「行きます……!」
 次の瞬間には大きく羽ばたいて、周囲に散っていた羽根を吹き飛ばし、全身を前に送った。
 行くのだ。


 オリヴィアが弾かれるような勢いで前に飛び出していったのを、ヘスティアは背後から見ていた。
 ユーべルコード“転身・炎冠宰相(モード・メタトロン)”。それを発動した彼女がまず突貫して前衛を務め、
「私がそれを後方から援護、と」
 それが自分達が事前に決めた作戦だった。
 猛火を迸らせながら吶喊して行くオリヴィアは、宇宙空間でよく目立つ。加えてその速度はユーべルコードで強化されており、時速にして数百キロメートルを優に超えている。
「!?」
 その激突予想地点にいるアンノウン達は迫る脅威を回避するため、急ぎの動きで周囲へ散ろうとしたが、
「させないわよ!」
 己にとってそれは予想内の動きだった。
 両腕に構えたビームライフルであるミスティルテインから、そして周囲に配置された球体状のドローンであるフェアリーから、一斉という勢いで己は光線を放った。
 銃口から飛沫くような音が迸り、宇宙という黒の空間を光の直線が彩っていく。
「……!」
 それを確認した後、己もすぐに推進器であるティターニアに光を灯らせ、前方を行く彼女の後を追った。
 上下二対の加速の迸りは彼女との間を徐々に詰めていくが、射撃した複数の光条はそんな己よりも、そして前方を行くオリヴィアよりも速かった。
 オリヴィアを中心として放射状に広がって進み、そしてやがて彼女を追い越していく。
 弾幕、そう言える数の光が彼女の周りを追い越していったのだ。
 それは何を意味するか。
「!?」
 上下と左右。回避方向の殆どを断たれたアンノウン達は光線に貫かれるか、そうならないように回避行動を躊躇する。
 残った一部の敵は、突撃の勢いを止めようと考えたのか、ならば、と手に持った光線銃をオリヴィアに向け、引き金を絞った。
 光線銃から放たれた光線が、次々とオリヴィアに飛来し、 直撃した。
「っ……!」
 しかしその光が熱による攻撃、すなわち熱線であると当たりをつけた彼女は、火炎体制のオーラ防御を纏ってそれを軽減。
「ぁあ……!」
 突破する。
 それはすなわち、吶喊が到達したということであり、
「――!!」
 振りかぶった槍を、オリヴィアが突撃の勢いそのままに薙ぎ払った。


 オリヴィアは視界が朱の色に染まったのを知った。
 火炎迸る聖槍を横薙ぎに振り抜いたのだ。視界の端から端まで猛火の棚引きが埋め尽くしている。自分の背後にいるヘスティアからは、敵勢の最前線に横一文字の朱線として見えるのだろう。
 怪力をもって振り回した槍は、敵勢を穂先で切り捨て、柄の打撃によって吹き飛ばし、その範囲にいなかったものを業火に包んだ。
 薙ぎ払いの分だけ、空白が前線に生まれていった。
「……!」
 己はすぐさまその空白へ踏み込んだ。そして槍の振りを利用して押し寄せてきた周囲の敵へ二撃目をぶち込む。
 身を回すように振り回した軌跡は、斜め打ち下ろしの一発だった。
 袈裟斬りに断たれたアンノウン達が発火しながら散っていく。だがそれすらも三撃目の薙ぎ払いで原型を留めない灰と散った。
「まだです……!!」
 連撃を放つ身体は止まらない。四撃、五撃と続き、その度に敵陣の中に赤い軌跡と爆発にも似た炎上が生じる。
 今やアンノウン達は自分達の懐で暴れ回るこちらに釘付けだった。その高度な知性は火炎から逃れることに消費され、時折光線銃で妨害が入るが、やはり己を押し止める障害とはならない。
 ……そして、そろそろですかね。
 そうして暴れ周りながらも、己は敵の様子を観察していた。果敢に攻め立てることで注意を引くのが自分の役割だったからだ。
 やがて、己の予想通りそれが来た。
「――オリヴィア!」
 自分の背後、ヘスティアからの合図だった。
「了解です……!」
 それを聞いた己は、急ぎの動きで側に浮遊していた岩石、デブリ群というこの戦場を構成する要素の一つを掴んだ。
 片手一本。それだけで手繰り寄せて保持すると、身に捻りを入れた投法で敵に放り投げた。
「――!!」
 瞬時に加速した岩石は一瞬でトップスピードに至り、敵勢の一角というか一区画を吹き飛ばし、次々に蹴散らしていった。
 そしてこれは先ほどと、ヘスティアが光線を放った時と同じだった。
 アンノウン達は迫る脅威から逃れようとするが、しかし回避に足止めを受け、動きが制限されているのだ。
「――下がって!」
「!?」
 猟兵達の言葉を理解できるアンノウン達は、今のヘスティアの言葉で何かを悟ったようだが、しかしその時には既に手遅れだった。


 一斉に放たれた射撃が敵勢へ襲い掛かることを、斉射と言う。
 ミスティルテイン、フェアリー、その二つはヘスティアの持つ射撃武装だったが、しかしそれだけではなかった。
「――!」
 ティターニア、己の身体を飛翔させるジェットパックの一部が開放されると、そこに表れたのは内蔵のマイクロミサイルだった。
 オリヴィアが注意を引いている間にロックオンを完了させ、今、その三種の武装が一斉に迸っていく。
 飛沫を挙げて直進する光線と、噴射炎を炸裂させながら飛び立つ多数のミサイル。それらが残ったアンノウン達全ての元へ降り注いでいくのだ。
「……!!」
 着弾は一瞬で、アンノウン達がいた場所に残った結果は二種だ。
 一つは、ミサイルの爆炎だった。密集していた敵に激突したミサイルが、その威力をもって敵を吹き飛ばした痕跡だ。
 そしてもう一つは、光線の残滓だった。個々に散開していた敵が、ミステルティンやフェアリーの光線によって貫かれた痕跡だ。
 戦場の後には、爆炎と光の飛沫。その二つがただ残るだけであった。


 ふぅ……。
 それを見届けたオリヴィアは、一息をついた。宙返りするようなターンでヘスティアの範囲攻撃から逃れた己は、戦場の上方へ身を移していたためその結果が良く見えた。
 アンノウン達が、完全に撃退された結果をだ。
「――ヘスティアさん! やりましたね!」
「そうね、良いコンビネーションだったわオリヴィア!」
 眼下の彼女に笑顔でそう呼びかけると、彼女も答え、お互いに距離を詰めていく。
 と、
「――――」
 彼女が近づきながら、片手を頭の位置くらいに挙げた。
 ああ、ハイタッチですか……。
 相手や互いの成果を労ったり、賞賛したりするジェスチャーだ。なので応じようとこちらも手を挙げて近づけば、何故か近づくにつれて彼女の表情が笑顔からフラットになり、
「い、いぇ――」
「……!!」
「――ひゃん!?」
 打ち鳴らすというか打撃する勢いで向こうの手がやって来たので、受けたこちらは反動で宇宙空間を縦回転。
「ヘ、ヘスティアさん!? ヘスティアさん!? 何か今、力、強くありませんでした!?」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『クリスタル採掘ロボ『クリスタルマイン』』

POW   :    ドリル回転力UP アーム位置前方 目標捕捉
【体内の採掘した鉱物 】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【対人用 殺戮モード】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    素材ニスルタメ生命ヲ停止サセマス
【巨大ペンチ 】から【空中に高圧電流】を放ち、【感電】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    捕獲 動キヲ停止サセマス
命中した【射出型かぎ爪ロープ 】の【先端】が【さらに複雑な鉤爪】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はエスエス・ジーケーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 正体不明のオブリビオン、アンノウン達を撃破した猟兵はそれを見た。
『――――』
 デブリ群の中央、アンノウン達が敷いた陣の最奥にいた一体のロボが、動き出したのをだ。
『オペレーション、再、開……』
 四肢を持ったその姿は、胸部に籠のようなパーツを組み込まれていた。
『――鉱石、及び、クリスタリアン捕獲プロトコル、“クリスタルマイン”、ノ、実行ヲ、再開シマス』
 今までは距離が離れており、シルエットとしては判別し辛かったが、その音声と共にロボットが立ち上がったことで、ロボの具体的な大きさが解った。
『告知シマス。告知シマス。当機体ノ名前ハ、クリスタルマイン、デス』
 目安は胸の籠、否、最早正確には檻と言うのが正しいことは誰の目にも明らかだった。
『――当機体ハ、鉱石資源採取ヲ目的トシテイマス』
 その檻の中に、朽ちたクリスタリアンの残骸があるからだ。
 残った彼らの身体の部位から、ロボの大きさが数メートルを優に越すことは確実だった。
『鉱石資源ニハ、クリスタリアンヲ含ミマス』
 機械音声は続く。
『コレハ、銀河帝国当局ガ掲ゲル合法行為デス。
 クリスタリアンノ所在ヲ隠匿スルコトハ、銀河帝国法ニヨッテ罰セラレル恐レガアリマス。
 マタ、当機ノ採掘行為ヲ妨害シタ場合ハ、当機ノ防衛行動ニヨッテ排除サレマス。
 コレハ身体ノ一部モシクハ全部ニ、一時的マタハ恒久的ナ障害ガ残ル恐レガアリマス』
 その時だった。
「――――」
 猟兵達の元へ長距離通信が来た。
 発信元は、自分達をここまでワープドライブした宇宙船だった。後方に控えている彼らからのメッセージは、以下の通りだった。


《“銀河帝国残党掃討作戦”の参加猟兵へ》
 :そちらの状況は把握しております。
 :当オブリビオンの情報に関して過去の、あのロボットが“現役”だったころのデータを入手したので、これを送付します。

《クリスタル採掘ロボ『クリスタルマイン』》
 :資源採掘を目的とした銀河帝国製ロボット。
 :各惑星へ探索に来ては鉱石資源を、特に希少鉱石や、中でもクリスタリアンを採掘・捕獲し、それを資源として売却するためのロボット。
 :特徴としては、鉱物に強く反応する。
 :この“採掘活動”を邪魔された場合は、戦闘形態に変形して戦う。
 :敵の戦闘方法については、次のメールを――。


 メッセージから顔を上げ、猟兵達はクリスタルマインを見た。
『周辺鉱石サーチ中、周辺鉱石サーチ中……』
 アンノウン達の修理によって蘇った銀河帝国の採掘機械は、周囲を散策していた。
『周辺ノ浮遊体ヲ、デブリ、ト判断。含有鉱石希少度、チェック……。ランク、F。採掘優先順位、F』
 デブリの上を歩き回り、何かを探すように。
『周辺鉱石サーチ中、周辺鉱石サーチ中……』
 猟兵達はこの敵を撃破するため、最後の戦闘に取り掛かっていった。
黒影・兵庫
クリスタリアンの皆さんが資源...!?
残滓とはいえ銀河帝国の非道っぷりが
よくわかる機械ですね
(「もうこの世には不要な存在よ。さっさと骸の海へ捨ててしまいましょう」と頭の中の教導虫が話しかける)
もちろんです!せんせー!
(『第六感』で敵の攻撃を予知し『オーラ防御』壁で感電を防ぎ『衝撃波』でペンチを弾いた後、UC【蟷螂の鋸】を発動し両腕が回転鋸の蟷螂を召喚する)
伐採兵の皆さん!アイツめがけて鋸を投げてください!
(蟷螂が投擲し刺さった鋸を『念動力』で回転させ敵のボディを切り裂く)
これはアンタのペンチだろ?返してやるよ!
(弾いたペンチを『念動力』で操作して切り裂いた部分に突っ込む)




 クリスタリアンの皆さんが資源……!?
 兵庫は敵の音声を聞いて驚きと憤りを感じていた。敵、クリスタルマインはその名称の通り鉱石を採掘するようだが、それにはクリスタリアンが含まれると言うのだ。
 猟兵として世界を飛び回っている自分は、この世界を主とする彼の種族を勿論知っている。宝石の体を持つ鉱石生命体の彼らが、大量の超能力エネルギーを内包する種族だということをだ。
 そして銀河帝国は“それ”を手に入れるために、あのロボットを作ったのだろうということは想像に難くなかった。
「残滓とはいえ、銀河帝国の非道っぷりがよくわかる機械ですね」
 呟きながら、表情が険しくなるのが自分でも解る。
『もうこの世には不要な存在よ。さっさと骸の海へ捨ててしまいましょう』
「もちろんです! せんせー!」
 こちらを落ち着かせるような響きで、だが平坦というほど起伏が無いわけではない。脳内に響いたそんな彼女の声に己は元気良く返事。構えを取る。
『! 不審人物ヲ、確認』
 するとクリスタルマインがこちらを感知し、左腕に持ったペンチから電撃を放ってきた。帯にも似た雷光が一直線にこちらへ走ってくる。だが構うものでは無かった。
「――――」
 防ぐからだ。雷撃の発動タイミングとどこを狙うか、その二つを直感にも似た感覚で瞬間的に察知し、波打つ障壁を身体の前に展開させる。
 させた。
 それはオーラ防御による防御壁だった。
「……!」
 壁面と衝突した雷撃が、爆音と光を周囲に弾けていく。対象を感電させる雷撃はしかし壁の内側であるこちらには届かず、壁面を這うように広がって周囲のデブリを青白く照らしていくだけだった。
『再充填、開始……』
 攻撃の結果を確認したクリスタルマインは再度の雷撃を叩きこむためか、ペンチに雷を蓄え始める。しかしそれが放たれることは無かった。
「そこだ……!」
 自分が破砕警棒で壁を内側から打撃し、衝撃波を放ったからだ。
 防御壁を媒介として生じた衝撃波、それは念動力の操作によって指向性を与えられると、両者の間にある空間を砲弾のように突っ走っていった。不可視の砲撃だったが、着弾の瞬間は誰の目にも明らかだった。
『……!?』
 クリスタルマインが弾かれたように左腕を外へ振ったのだ。同時にその先から吹き飛んでいくものが見えた。ペンチだ。
 未だ雷光蓄えた工具が宙を舞う中、
「伐採兵の皆さん、お願いします!」
 己はユーべルコードを発動した。
「――――」
 周囲に現れたのは、やはり先ほどと同じく虫だ。現れた八十四匹は蟷螂に似ていたが、そのどれもが両手に鎌ではなく回転鋸を構えている。
 名を伐採兵。自分に協力してくれる虫たちの一種だ。
「アイツめがけて鋸を投げてください!」
 破砕警棒の先端を敵に向けてそう願えば、彼らはまず両腕を振りかぶり、
「……!」
 目の前を抱きしめるように、一斉にその腕を振り切った。先端に有った鋸が勢いよく射出されていく。
 都合百六十を超す猛る刃が空間を壁のように押して行き、ペンチを失って虚を突かれていたクリスタルマインに喰い込んだ。連続する弾着の度、鉄の身体が衝撃で揺れ、後退していく。
 だが全てが食い込んだ後、敵は軋みを挙げながらも動き出した。
『装甲損害、軽微』
 違う。
「切り裂け……!」
『……!?』
 装甲板に食い込んだ鋸が一気に動き出し、さらに損害を与えていく。念動力で鋸に動力を与えて回転を再開させたのだ。
 抉るように、千切るように、回る刃が敵の肉を削ぎ落としていく。百六十もの数がそうすれば装甲に生じる亀裂は大きく、その内部構造を見せるほどであった。加えて、己の念動力はまだ余裕が有った。
「――これはアンタのペンチだろ?」
 吹き飛んだペンチを先んじて回収し、敵の前に掲げる。
『――――』
 未だ歯の間に雷光が残っている“それ”を視認したクリスタルマインは、何か言葉を発しようとしたが、
「返してやるよ!」
 自分はそれ以上を聞かず、亀裂にその歯先の奥まで突っ込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
【狐犬兎】

先輩、分かりました!
俺、頑張ります!

ダガーとエレメンタルダガーをそれぞれ持ちたい。

エレメンタルダガーに雷の精霊様を呼んで、磁力を生成、磁力由来の引力を使って、敵に突撃したい。
ロボットは大抵金属で出来てるから、突撃しやすいはず。

そのままの勢いで、UC【全力一刀】を雷の精霊様の[属性攻撃]で、ロボットに叩き込みたい。

後は[野生の勘、第六感]を使って、先輩達が来るまで粘りたい。

敵の攻撃は[カウンター]で対処したい。

先輩達が来たら、邪魔にならないように少し下がり、エレメンタルロッドに持ち替えて、不測の事態に備えたい。

栗花落先輩、急に脱ぐんだから。
一瞬動揺したのは秘密にしたい。
尻尾も落ち着け。


栗花落・澪
【狐犬兎】

宇宙人の次はロボットかぁ…
この世界らしいけど

んー、そうだなぁ…
ちょっとだけ僕の作戦、付き合ってくれる?

僕はロボから少し距離を取りつつ
遠距離から水魔法の【属性攻撃】で
上手い事ショートさせて動作停止を狙えないか試してみる
敢えて煩わしい攻撃を行いヘイトを稼ぐ戦法

チャンスは一瞬
絶対に外さない…!

隙が見えたらパレオを外し【指定UC】
鉤爪が飛んできた瞬間翻す勢いでロープを巻き込み
同時にパレオを広げた事で自分の姿を敵から隠し

僕達の連携を甘く見たね
過電流にご注意ください?

夏輝君の協力を得て、UC強化した雷属性の【全力魔法】を
ほぼゼロ距離でぶち込みますね(いい笑顔)

ちゃんと下履いてたから…!!


小林・夏輝
【狐犬兎】
さてさて、今回の作戦はどうします隊長?
…オッケー、なるべく合わせる
いくぞ都月

作戦開始と同時に俺と都月で接敵
得意の【ダッシュ】力と【逃げ足】で
★バットを用いてのヒット&アウェイ戦法
澪の攻撃も当たるようにフォロー

敵をよく観察
澪に狙いが向いたら敵を都月に任せ
さりげなく澪の元まで下がり
パレオを広げた瞬間澪を抱え【指定UC】
接敵させ続けていた都月の元に瞬間ワープ

おっと、おいたはダメだぜ?
金属バットを空中に投げ避雷針代わりとして感電回避しつつ
まぁ中身は銃器だし…暴発もするよな、そりゃ
澪の技が命中すると同時に爆風を利用して退避
後でまた作りなおそ

パレオ脱いじゃうなんて澪きゅん超大胆ー☆(きゃー)




 起動したクリスタルマインを見て、澪は警戒しながらも夏樹と言葉を交わし合う。
「宇宙人の次はロボットかぁ……。この世界らしいけど」
「さてさて、今回の作戦はどうします隊長?」
 都月も伺うようにこちらへ顔を向けながら、しかし耳はクリスタルマインの方にそばだたせている。
 どうするか。二人から指示を託された。それに対して己は、んー、と少し唸って頬を掻きながら、
「そうだなぁ……。ちょっとだけ僕の作戦、付き合ってくれる?」


 戦闘の始まりは、都月と夏樹の疾走から始まった。
「行くぞ、都月!」
「はい!」
 先駆ける先輩からの声に都月は返事をし、離れぬよう前に進んでいく。
 速い……!
 “陸上”が得意と、彼はビーチで言っていた。“陸上”というのは言葉通りの意味ではなく、自分の足で走ることを指すらしいが、
「――!」
 共に走ることで、彼が得意だと言ったことを実感する。姿勢を低くしてデブリの表面を蹴るごとに、彼の一歩一歩がどんどん加速していくのだ。
「――俺もついていきます!」
 それを見て、己は片手に持ったエレメンタルダガーから力を放った。先ほどの戦闘ではそこから放たれたのは火炎だったが、今は違う。
「雷の精霊様、お願いします!」
 柄に紅石を嵌めた短剣が鋭い光を帯びていく。雷だ。
 雷が生まれた瞬間、そこからクリスタルマインの身体へ向かう引力が生まれ始めた。光の鋭さに比例するような強い磁力が刀身に生じたのだ。
「――!」
 掌にあるその引力に逆らうことなく、引き寄せられて行った。走行に電磁の加速を与え、接敵していくのだ。
『敵対的ナ行動ヲ、感知。無力化サセ――』
 振り向いた敵が武装としてのペンチを向けて来るが、
「遅いよ……!」
『……!?』
 それは突然飛来した水球によって叶わなかった。
 後方から澪が放った水魔法だった。
 歪みを持った電子音声がクリスタルマインから漏れるが、水の濡れ飛沫く音と、ペンチの雷撃に水が触れた炸裂にも似た音でかき消されていった。
 戦闘の、本格的な開始だった。


 澪の水球がクリスタルマインに衝突した瞬間、夏樹は行った。
 ダッシュで接近しながら敵までの距離を目測で測ると、半ばで踏み切って跳躍。
「らぁあ!」
 敵の身体目がけてバットを振り抜き、打撃を与えた。手応えとしては機械や金属のそれだが、中央に檻を有した敵の身体は、突き抜けるような音も返してきた。
『警、告……!』
 水球に続く衝撃に身じろぐ相手だったが、それでもペンチを振って反撃。重量を感じさせる剛腕を、己はすんでのところで見切り、バックステップで離れていく。敵は追って来ようとするが、
「――させない!」
 雷の精霊の力で加速した都月が、そのままの勢いで敵との間に割って入ってきた。エレメンタルダガーの切っ先を激突の最先端とした、ぶち当たるような突撃だった。
「おぉ……!」
「――――」
 バットの打撃で歪んだ装甲の隙間、そこに雷の切っ先が突き刺さった瞬間、先ほどとは比にならないほどの炸裂音が聞こえた。澪の水魔法と都月の雷の精霊による感電攻撃が生じたのだ。
「……っ!」
 目が眩むほどの発光が連続する中、激震する敵の身体を蹴って都月が跳び退るのが見えた。
「バッター代わりまして……!」
 後輩と入れ違うように、次は己が突っかけっていく。


 澪は戦場の少し離れた位置から、前衛の二人が入れ違うように次々と敵へ食らいついていく場面を見ていた。
「……!」
「――!」
 片方が下がればもう片方が食らいつき、片方が狙われればもう片方がそれを阻害する。
「もう一射行くよ、二人とも!」
 そして己がそれを支援するように水魔法を送るのだ。球や矢と形状は様々だが、それらが宇宙空間を走り、敵の元へ飛来していった。
 衝突する。水の質量そのままの打撃に敵は揺れ、そこへすかさず雷刃が突き刺さって光がスパークする。
 雷光の合間に、また二人のコンビネーションが映っていく。
「上手い事ショート出来てるみたいだ……ね、っと!」
 スパークの度、クリスタルマインが感電による動作停止を断続的に起こしているのが、離れた位置からは良く見える。作戦通りだったが、しかし狙いはそれだけでは無かった。
 ……! 来る……!
 感電の原因となる水撃は敵にとって煩わしい攻撃だろう。なのでそれを続けていけば、敵がこちらを排除しに来ると目論んでいたのだが、今、正しくその通りとなった。
「――――」
 二人が一瞬顔を見合わせたかと思うと、すぐに夏樹がこちらへ戻ってきたのだ。
 ……チャンスは一瞬。
 重要なフェーズに作戦が移った瞬間だった。
「絶対に外さない……!」


「――――」
 都月は夏樹と共に異変を察知した。クリスタルマインが動きを変え始めた瞬間をだ。
 自分たち二人を半ば無視して、敵がある方向へ身体を向けようとしている。
 その方向が澪のいる方向だということを、己は野生の感や第六感で、夏樹は終始目を光らせて観察していた結果として知った。
「――都月、しばらく任せた!」
「はい、小林先輩!」
 それだけの会話で自分は敵に向かった。エレメンタルダガーを振り下ろし、再度のスパーク与えていく。狙いは頭部にあるカメラだ。
「……!」
 そうやって敵の視覚や行動を一瞬と言えど奪った瞬間、夏樹が悟られぬように後退し始める。澪の処へ戻るのだ。
「お前の相手は俺だ!」
 先ほどまでだったら夏樹と交代したが、一人となった己は攻撃した後も敵から離れず、注意を引くことに専念する。二刀のダガーを絶えず浴びせて牽制とし、夏樹や澪への注意が向かないようにするのだ。
「……!」
 両手を振るった数だけ、銀閃と雷光がクリスタルマインの身体に走っていった。
 すると、
『――――』
 澪の方へ向こうとしていた敵が動作を取り止め、こちらに向き直った。
 よし……!
 と、そう思ったのもつかの間、
『――ドリル回転力UP。アーム位置前方』
「ッ……!!」
 己は全身の毛が毛羽立つような気配を感じ、すぐさまその場から退避した。直後。
『目標、補足』
 自分が立っていた場所を轟音が通り過ぎた。頭上から振り下ろすように突き込まれたそれは、高速の螺旋によってデブリを砕き進んでいく。
 ドリルだ。ランタンを持っていた右手を変形させて、敵がそれを突き込んで来たのだった。
「あ、危なかった……!」
 本能にも似た直感に従って回避して良かった。そう思いながら急いで敵へ振り返れば、ドリルが地面に突き刺さったことで動きを僅かに止めているのが見えた。
 その隙を逃さず、己はドリルの基部へ何度目かの雷刃をカウンターとして突き込んだ。
 弾けるようなスパークが幾度か炸裂し、ドリルの回転が止まった。感電による運転停止なのは明白だった。
『エラー。エラー。回路ノショート。コレ以上ノ攻撃手段損失ヲ回避シマス』
 感電によってぎこちない機械音声の言葉通り、それ以上の損失を回避することを選択した敵が、どこか慌てた動きで追加の攻撃を放った。
『――捕獲。動キヲ停止サセマス』
 装甲板を開いた中から射出されたのは、かぎ爪付きのロープだ。しかしそれは己に向けられたものではなく、
「二人とも……!」
 澪たちの方へ向かって行った。


「……!」
 来た、と澪はそう思った。。
 鋭利なかぎ爪が今、正面から自分目がけて飛翔してくる。空気抵抗の無い飛翔は見た目以上の速度で、彼我の距離が一瞬にして詰められるが、しかし自分は惑わされることなく、腰の片方に手を当てると、
「せー……、っの!」
 着ていたパレオの結び目を、一気に解いた。
 人魚をモチーフとしたパレオは、長い。足首まで覆う長布を捌くため、布端は指でしっかり掴み、腕は振るような勢いで動かしていく、。
 摩擦の音を立てパレオが走っていき、舞うように翻った。
「――――」
 身体の前までやって来たロープがその翻りに巻き込まれる。狙いをズラされ、鋭利な先端も布に覆われることで無力化されていく。
 今だ。
 なので己はユーべルコードを発動しながら、側に来ていた彼の名前を呼んだ。
「夏樹君……!」
「――ああ、一緒に行くぞ!」
 ユーべルコードによって水着姿からドレス姿に変わった瞬間、彼の腕に抱えられた。そう思ったのも刹那、全身が光に包まれた。


 クリスタルマインは己の感知結果を疑問していた。
『――――』
 先ほど、自分は離れた位置にいる猟兵にロープを放って捕獲しようとしたのは、確かだ。
 その猟兵が衣服を脱ぐことで、こちらの攻撃を無効化したのも、確かだ。
 長布が翻り、こちらの視界を遮った。ここまでも、やはり確かだ。
 問題はその翻りが治まった後、そこには誰も存在せず、
「――僕たちの連携を甘く見たね」
 その猟兵が自分の間近にいた。
 何故。


 都月は二人の先輩が自分の側へテレポートしてきたのを確認した後、
「……!」
 二振りのダガーを納めてエレメンタルロッドに持ち帰ると、二人の邪魔にならないように急いで下がった。今、自分が急いで下がったのは戦闘中ということもあるが、
 ……つ、栗花落先輩、急に脱ぐんだから……。
 作戦のために彼の様子を逐次確認していたら、いきなり目に飛び込んできたのだ。それを見て一瞬動揺したことを秘密にしておきたかった。つまり自分の尻尾は落ち着け。
 そうして努めて平静な顔で尻尾を片手で押さえておきながら、クリスタマインにロッドを向け、不測の事態に対応できるようにしていると、
「――――」
 クリスタルマイン、そして夏樹と澪。目の前にいる三者がほぼ同時に動いたのを見た。
『――!』
 まずクリスタルマインが間近の澪の言葉を聞いた後、抜き撃つように左手のペンチの先を彼に向けた。そこに蓄えられた雷光は十分な光量だった。が、
「おっと、おいたはダメだぜ?」
 夏樹が速い。持っていた金属バットを自分達がいない方へ放り投げて避雷針代わりにすると、ペンチからの電撃を誘導して澪に当たらないようにしたのだ。
 そして澪も、向こうがペンチが向けてきたのと同時。自分の武器を相手に向けていた。“Staff of Maria”、彼のユーべルコードはその杖の威力を増強する効果を持っていることを、己は知っている。
『……!!』
 杖から漏れる稲光や周囲に舞い散る花びらから、増幅された杖の威力は誰の目からも明らかだった。杖先端と敵との距離は、ほぼ零距離としながら、彼が良い笑顔を顔に作った。
「――過電流にご注意ください?」
 刹那。爆発にも特大の雷撃が敵の身体を何重にも迸っていった。その余波は周囲にも広がり、
「あ」
 と、夏樹が声を挙げた、視線の先にあるのは彼自身が武器として使うバットだ。
「……あー、まぁアレ、中身は火薬満載だし……」
 巻き込まれた金属バットは中にロケット弾が仕込まれている。つまり、
「暴発するよな、そりゃ。後でまた作りなおそ。――ほら澪きゅん、撤退ー☆」
「え、ちょっ、夏樹君!? 別にもう抱っこする必要無――、わぁ! 爆発した!?」
 だから言ったじゃーん? と爆風に乗りながら、夏樹がこちらへ退避して来たので
「二人とも! 大丈夫でしたか!」
 己も敵への警戒を解いて、共に撤退していく。
「大丈夫大丈夫ー。……いやーしかし、パレオ脱いじゃうなんて、澪きゅんってば超大胆ー☆」
「ちゃんと下履いてたから……!! ――って、思い出そうとしなくていいよ!?」
 二人のそんな風に言い合う声に苦笑しながら、皆で退避していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラズ・ヴェルーリヤ
【依頼掲示板前広場】
こちら、ですよ
ロボットさん
自身を囮に、あえて星の海を湛えるラピスの身を晒します
褒められれば微笑んで
今はレニーさんが、私たち側にいらして下さって、心強い、です
生きる全てが、美しい(頷き
鉱石の身で、受けた生
私も精一杯この絵に乗せて、謳歌させて、頂きます

平気、です
レニーさんと一緒なら

狙いは、私
ならば罠にかけるのは、簡単、です

筆を走らせ描いたなら
足を踏み入れた瞬間ガジェットショータイムの檻がロボを囲う

檻の、使い方は
あなたもよくご存じ、ですね?

大きなロボの動きだけ疎外し
鉱物取り出しの助けにもなれば

高圧電流は檻を伝って大地へ流れる

避雷針でもあるのです、よ
レニーさん
やっちゃって、下さいね


琥珀川・れに
【依頼掲示板前広場】
ついに見つけた、報告書の…

この美しさに惹かれるのはわかるが…(ラズにそっと触れる)
生きている姿が最も美しい。
それに君(敵)は命に対して敬意が足りないようだ。
僕も昔は人間を襲う吸血鬼側の勢力だったが…あいつらと同じく美学が足りないようだね。

ラズに危害が及ぶといけない。
騎士のように【かばう】で前に出る。
平気かい?ラズ

刺突で檻を一部でも壊す。
奴のパワー源でもあるし鉱物を取り返せればいいな

ここぞでUC【血統覚醒】かつ真の姿で殺戮モードに対抗
勇気ある君のおかげで攻撃に集中できる。
もし危機があれば【捨て身の一撃】

僕を電流から救ってくれたラズには投げキッスを

※アドリブ追加省略改変ご自由に




 デブリの上に立ったれには、息を呑んだ。
「ついに見つけた……。報告書の……」
 視界の奥にいるオブリビオンを己は知っているのだ。自分が団長を務める旅団はグリモア猟兵からの依頼、すなわちオブリビオン討伐に関して関係が深い旅団だ。
 自然、様々なオブリビオンの情報を依頼や団員、他の猟兵から知る。そのうちの一つが今回のクリスタルマインだった。
『――――』
 そのクリスタルマインが今、明らかにこちらを視認していた。
 現状、彼我の間には距離が開いているが、それでも相手が身体を微動だにせず、頭部のカメラだけを忙しなく稼働していることは解る。
 ピントを合わせるかのように拡縮するそこは、何を捉えるためか。
「――こちら、ですよ。ロボットさん」
『最優先採掘項目、確認。スキャン結果、ランク、A+++。採掘優先順位、A+++』
 自分の横にいるラズを、星の海を湛えたラピスラズリのクリスタリアンである彼女を最優先対象としているのだ。


 ラズは自身を囮にすれば敵が必ず注目すると予想し、事実そうなった。
 宇宙に浮かぶ敵が頭部のカメラでこちらを捉え、デブリの上に立った己も視線を返す。お互いはそうして対面していたが、
 あ……。
 突然、それがある存在によって塞がれたのを知る。こちらの身体の前に広がったものは大きな布で、タッセルや刺繍の彩りがあった。
「君がこの美しさに惹かれるのは解るが……、生きている姿が最も美しい」
 れにのマントだ。こちらの前に立って振り向くと、そう言葉を送りながら繊細な手付きで身体に触れてきた。
「ふふっ……」
 こちらを褒める彼女の言葉に己は微笑みを返し、
「生きる全てが、美しい……」
 彼女の言葉に頷きをもって同意する。
「鉱石の身で、受けた生。私も精一杯、この絵に乗せて、謳歌させて、頂きます」
 彼女もこちらの言葉に頷いてくれて、言葉を続けていった。
「そうだ。彼女も、他の皆も、生きている姿が最も美しい。」
『警告。当機ノ採掘行為ヲ妨害ヲ確認、防衛行動ニヨッテ排除シマス』
「――けれど君は、命に対して敬意が足りないようだ」
 クリスタルマインが警告の音声を発してこちらに近づいてくるが、彼女は気にせず、触れていた手を触れた時と同じように優しく離していくと、その手に細剣を握って完全に敵へと身体を向けた。
「僕も昔は人間を襲う吸血鬼側の勢力だったが……、あいつらと同じく美学が足りないようだね」
「今はレニーさんが、私たち側にいらして下さって、心強い、です」
 背後からそう言うと、彼女が目を細めて振り向いた。
「平気かい? ラズ」
「平気、です。レニーさんと一緒なら」
 笑みにも似た吐息を、互いに一息。
「――――」
 お互いは行動を開始した。彼女はさらに一歩前へ進み、己は空間に筆を走らせていったのだ。


 ラズの前方が自分のいるべき場所だと、れにはデブリの表面にしっかりとした足取りで立ち、正面からやって来る敵を確認した。
『防衛行動ニヨッテ排除シマス』
 先ほどまでは宇宙空間を浮遊していたクリスタルマインだったが、今はデブリに足を着け、急くような駆け足でこちらに近づいて来ている。
 己と敵、両者の距離が縮まれば、巨大な敵を視界に収めるために視線を上に上げる必要が生まれ、その大きさが実感として押してくる。
 全高にして数メートル。そんな存在が駆けてくれば圧迫感を感じるが、
「…………」
 己は臆することなかった。敵を見ればもっと重要な部分が視界の中心となるからだ。
「――――」
 檻。彼の敵の胸部に有るそこには、最早物言わぬクリスタリアン達が眠っている。そのことを再確認しながら、己は敵が近づいてくるのを待った。
 ……残りは、五歩。
 クリスタルマインの走りのペースは機械的で一定だ。目測は容易い。が、重力の薄いデブリ上では一歩一歩が跳び跳ねるようで速度としては速い。恐らく距離はすぐに詰まる。
 四歩……三歩……。
 詰まった。サイズ比でもはや目前と錯覚してしまうが、まだ一拍ある。
『――!』
 敵も駆動の唸りを挙げ始める。だが細剣を一振り持っただけのこちらの排除には積極的ではない。あの唸りは、もっと優先順位の高い対象であるラズを得るための出力上昇だ。
 そして、
 ……二歩!
 その瞬間だった。己とクリスタルマイン、その間の空間に変化が生じた。
『!?』
 二歩目を踏み切り、残り一歩を跳ぼうとした敵の前に有るものが現れた。


 ラズは筆をおき、前方の空間に現れた結果を見た。残滓として周囲に散る極彩色は、己がインクとして用いた炎だ。
「――――」
 炎が完全に散れば、そこにあるものが完全に露わとなる。
 それは不揃いだったり不規則や不必要な部分が見受けられたりと、奇妙な部分が目立つ代物だったが、造形としては単純なそれが何か、誰の目にも明らかであり、どう使えば良いかも一目瞭然だった。
 金属が格子状に組まれ、内部に空白を置く立体を何と言うか。
「――檻の、使い方は、あなたもよくご存じ、ですね?」
『警、告……! 警告!』
 己のユーべルコード“ガジェット・ショータイム”で召喚された檻だった。現れたそれは、特にクリスタルマインの巨大な四肢を封じるようにデブリ表面から鉄柵を伸ばし、敵を拘束している。
「あなたの、狙いは、私。ならば、罠にかけるのは、簡単、です」
 こちらを狙って至近に足を踏み入れた瞬間、ガジェットショータイムの檻がロボを囲う。それを狙って今まで空間に筆を走らせ
、事実その通りとなった。
「レニーさん」
「――ああ!」
 敵の拘束は完了した。そのことを告げるとこちらを護るように立っていた彼女が駆け出し、デブリの表面を蹴って跳躍。クリスタルマインの装甲や囲う檻に足をかけると、
「はぁ……!」
 そこを足場に敵を駆け上り、敵が持つ檻へ細剣を突き込んだ。ルーンをあしらった刀身の先が狙うのは、檻の留め具だ。そこを正確に刺突したことによって留め具は破壊され、弾かれたように檻が開いた。
「……!」
 すかさずそこへ彼女が腕を差し込み、最早鉱石となったクリスタリアンを抱き抱えるように引き抜いた。四肢を塞がれた敵は、その奪還行為を目の当たりにしながらも阻止することが出来ない。なので全ての鉱石を抱えることが出来た。
 そう思った瞬間、
『――!! ――!!』
 クリスタルマインからけたたましい警報が鳴り響いた。そして暴れるように身を捩ったかと思えば、
『重大ナ違反行為ヲ検知……!』
 左腕のペンチの雷光が大きく膨らんだと同時、そこから電撃が炸裂した。取り付いたれにを排除するために全方位へ稲光が放たれていく。そのはずだった。
 それは通常ではその通りになったのだろうが、今、敵の周囲は金属の檻で囲われ、その下端は植物が地面から生えるように、デブリ表面から直接伸びているのだ。
「つまり、それは、避雷針でもあるのです、よ」
「ふぅ。危ないところだったね……」
 敵の行動を瞬時に悟り、十分に距離を取れば雷撃は届かない。
 装甲を蹴って離れたれにが片手で髪をかき上げながら、取り戻した鉱石をマントの中に収めると、
「ありがとう、ラズ」
『目標健在』
 敵が身体を組み替えて、檻から脱出しようとしている最中だが構わず、軽い手捌きで投げキッスを送ってきた。
「レニーさん。やっちゃって、下さいね」
 そんな様子に、己もまた微笑みと言葉を返す。
「ああ……!」
『ドリル回転力UP。アーム位置前方……!』
 そうして、彼女がユーべルコードを発動するのと、敵が身体を組み替え終えたのは同時だった。


 瞳が紅く染まる。別に視界が変わるわけでは無いが、それをきっかけとする変化が如実に身体へ現われてくることを、れには知っている。
「――!!」
 それは血への渇望だったり、陽光の忌避だったりと様々だが、何より顕著なのは戦闘力の爆発的な増大だ。
 剣を振るえば敵が容易く断たれることも、足を向ければ一瞬で距離を詰められることも、五感や思考も随分と研ぎ澄まされていることも、何もかも把握できている。
 ユーべルコード“血統覚醒”。ダンピールである己の混血の割合を操作し、ヴァンパイアへ変身した結果だった。
『目標補足……!』
 敵がそんなこちらへ、ドリルに変化させて檻を打ち破った右腕を振り下ろしてくる。
 轟音が唸りを挙げ、自分の身体を豪速で貫かんとしているのが、強化された視覚ではよく解った。食らえば強化された身体と言えどただでは済まない。
 しかし己の変化は血統覚醒によるものだけでは無かった。
「――遅い」
 そう言い残して、己は頭上へ飛んだ。飛翔したのだ。
 振り下ろされるドリルを回避し、頭上への跳躍ではなく飛翔を可能としたのは背中から生えた禍々しい翼だった。その翼をはじめとした異変はまだある。
 ヴァンパイアとなった全身が翼と同じく禍々しい甲冑に覆われているのは、“真の姿”だった。血統覚醒をした後、真の姿を加えることでクリスタルマインの殺戮モードへ対抗し、それは実際驚くほど効果が表れていた。
 虚空を突き抜けたドリルをクリスタルマインの頭上から見下ろし、
「れに、勇気ある君に感謝を……!」
 彼女が勇気を出して囮になってくれたおかげで、自分は全力を出せる。そのことに感謝を告げながら、
「ぉお……!」
 全身全霊の捨て身の一撃を頭上から放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
【FH】
時代によって法は変わる……とは言え人を人として扱わないのは間違いなく悪法です!
えぇ、帝国の終焉を教えてあげましょう

白い翼の姿で【空中戦】
囮とトドメの役割を交代、デブリの裏側に隠れて(地形の利用)魔力を練り上げる
接近すれば、ドリルのためにクリスタリアンの方が燃料にされてしまいます
亡骸をそのように扱われるのは偲びありません、遠距離戦闘でいきましょう

ヘスティアさんからの合図でデブリから飛び出して【属性攻撃】【全力魔法】による【紅炎灼滅砲】で【焼却】!
415本の破壊光線で打ち砕き、かぎ爪ロープも残らず焼き尽くす


ヘスティア・イクテュス
【FH】
クリスタリアンを採掘ね…
銀河帝国らしく差別主義的っていうか…

知り合いのクリスタリアンに手出されても面倒だし
ここで潰すわよオリヴィア


帯留め『Psyche Lithos』…脳波に反応する宝玉だとか、なんとか…
希少鉱石に反応するなら、これで囮にならないかしら?

ティターニアで敵攻撃射程ギリギリを飛び回り『おびき寄せ』【空中戦】
攻撃を躱しつつティンク・アベルで『ハッキング』し、鉱石反応を偽造

UCの爆炎&スモークミサイルの煙で視界を遮って【迷彩】
ダミーバルーン【残像】で敵UCを誘発…周辺デブリかなんかに当てさせるわ…

オリヴィア!今よ!




「っ……」
 デブリの上に立ったヘスティアは、隣のオリヴィアが息を飲んだ音を聞いた。
 自分達の前方にいるオブリビオン、クリスタルマインの放った言葉が衝撃的だったからだ。
「クリスタリアンを採掘、ね……」
 自分がその言葉を繰りかえせば、彼女の表情がさらに険しくなったが、己も同じだ。穏やかな感情ではいられない。
「銀河帝国らしく差別主義的っていうか……」
「差別……。ええ、確かに時代によって法は変わります……。とは言え人を人として扱わないのは、間違いなく悪法です!」
 柳眉を逆立てた彼女の槍を握る手は、真っ白だった。
「知り合いのクリスタリアンに手出されても面倒だし。ここで潰すわよオリヴィア」
 鉱石の身体を持つ知己は自分にもいる。ここで取り逃せば、彼らにまで被害が及ぶ可能性があるのだ。
 彼女も確かな頷きを返してくる。
「えぇ、帝国の終焉を教えてあげましょう」


 会話の後、オリヴィアは勢いよく羽ばたいた。
「――!」
 翼を広げ、加速を身に叩き込んでいく。けれどその推進は敵のいる方向へ向かうものではなかった。
『警告。許可無キ移動ハ認メラレテイマセン』
 飛翔するこちらを差し止めようと、警告の後にクリスタルマインが捕獲用のロープを放とうとしたが、
『――――』
 その動作が突然停止した。それが何故かは知っている。
 だが自分も目的を持った飛翔中だ。
 なのでそのことはそれ以上確認せず、
「……!」
 離脱を最優先として、高速でデブリの影に入っていった。


 ヘスティアは敵の様子を見て、目を微かに細めた。今、己の手にはあるものが握られている。
「――――」
 それは自分が身に着けている帯留めだった。蝶型の帯留めの名は、“Psyche Lithos”。中央に付けられた宝玉が目を惹く一品だが、その宝玉は脳波に反応する代物だと己は聞かされている。
 自分の家に伝わるお守りを加工したものなのだ。
「そういう意味でも希少なんだけど……。どう、見える?」
 敵の特性として希少鉱石に反応すると宇宙船からのメッセージで知った。ならばこれが囮にならないかと、そう思って手で掲げるようにしながら敵に見せたが、判断は正解だったようだ。
『――優先採掘項目、確認。スキャン結果、詳細不明。ランク、EX。採掘優先順位、A++』
 飛翔するオリヴィアに今まで意識を割いていたクリスタルマインが、一瞬の動作停止の後、身体をこちらへ向けた。
「――――」
 頭部カメラがこちらの手元にレンズを拡縮しているのは強い興味の証だ。それと同時に視界の奥で、オリヴィアの白い姿がデブリの陰に隠れていったのを確認した。
 これで準備は整った。
「これが欲しかったら、こっちまで来なさい!」
 彼女から引き離し、時間を稼ぐのが己の今回の役割だからだ。立っていたデブリを蹴って背後に飛び退ると、身を反転。
「――!」
 一気にティターニアに光を灯した。
『警告。希少鉱物ノ提出拒否ハ、重罪デス』
 そんな警告は無論無視し、クリスタルマインから離れていく。が、それは逃げるという意味ではない。
 着かず離れず、よね……。
 敵と一定の距離を保っている。その距離のボーダーとなるのは、
『――差シ押サエルタメ、所有者を捕獲。動キヲ停止サセマス』
 敵の遠距離武装の一つである射出型かぎ爪ロープだ。鋭利な先端が飛翔する自分の横や後方、そして、
「……ッ!」
 前方に飛んでくる。
 飛翔の進路を読んだ偏差射撃だ。
 視界の横端にかぎ爪の反射光が映るより速く、身の捻りを入れた。
 前方に進みながら軸を回せば、軌道がバレルロールを描く。それを数発叩き込めば、回る視界の中、かぎ爪が自分の側を通り過ぎていくのが微かに見えた。
 軸転の後、息と姿勢を整えて持ち直そうにも、自分から射程距離のギリギリを保っているのだ。
『捕獲シマス。捕獲シマス』
 ロープの追加射出は絶えず続き、中々そうは言ってられない。
 なので機動による回避と並行し、周囲のデブリを障害物としてロープに捕らわれないように防いでいく。
「ふぅ……。――それじゃ、アベル、お願い」
『承りました。お嬢様』
 そうしてデブリの陰で息を整えながら、己が有するサポートAI端末、ティンク・アベルに声を送ると、そこからいつもの執事然とした言葉が返って来た。
 頼むわよと、それに呟き返した後、
「――!」
 一度フェイントを入れ、デブリの陰から飛び出していった。
『止マリナサイ』
 すると、フェイントをかけた側にかぎ爪が衝突。それを見ながら自分は逆方向へ急いで身を飛ばしていく。
 そうすれば、やはり後は繰り返しだからだ。
 こちらは再度、クリスタルマインの射程距離ギリギリの位置を飛翔していき、
『繰リ返シマス。止マリナサイ』
 敵側はまたすぐに、ロープを放ってくる。
 だがそれはこちらにも、勿論オリヴィアにも向けられていなかった。
『お嬢様。敵システムのハッキングに成功しました』
「ありがとう!」
 飛翔する最中、振り返って見てみれば敵のロープ射出が、先ほどフェイントをかけた側に依然として続いていた。
 それはつまり、
『――“Psyche Lithos”の偽装反応を、敵の鉱石サーチシステムに与えました』
 敵が偽の反応に固執しているということだ。なので視認されていないこちらは、飛翔の速度を抑え気味にして、敵の様子を確認する。
 クリスタルマインは、あるはずのない場所にかぎ爪を叩き込み続けていたが、
『――異変ヲ感知。偽装データノ疑イ、有リ。再サーチヲ――』
 偽装反応による隠匿は銀河帝国側も警戒していたのか、異常を察知し、ロープの発射を停止。
 再サーチを行うとしていたが、もう既にこちらは持ち直すには十分な時間を得られていた。
「……!」
 飛翔しながらクリスタルマインに向き直った。そして、己の手振りに従うようにティターニアが装甲板を開いていく。
 そこに有るのはアンノウン戦と同じマイクロミサイルだったが、一見して種別が二種類に増えている。
「さぁ! 素敵なパーテイーを始めましょうか……!」
 言葉と、二種が一斉発射されたのは同時だった。それぞれのミサイルは、その尻から煙を弧にたなびかせながら飛翔していき、一気に敵との距離を詰めて、行く。
 行った。
 衝突。
『……!?』
 クリスタルマインの装甲上で、爆発の花が咲いた。咲いた花はやはり二種であり、それぞれの内容物を周囲に知らしめた。
 一つは、朱と黒の花だった。火炎と炸薬の化学反応はアンノウン戦と同じ攻撃ミサイルだ。
 そして今回新たに加わったもう一つは、ただ周囲を白や灰の色に染め上げるだけの花だった。それは弾頭に煙幕が積まれたスモークミサイルだ。
 爆炎と煙幕によって、敵の視界が塞がれた。
 その直後、アベルの声が響く。
『――お嬢様が回避中に撒かれたダミーバルーンへ展開指示。その全ての座標へ偽装反応の移動・複製を行います。合わせてハッキングの深度を強化します。
 全て、続かなく完了致しました』
『注、意……! 当機ハ攻撃ノ被弾ヲ確――』
 ミサイルがやってきた方向を確認するため、煙で視界が制限された中でもこちらへ振り向こうとしたクリスタルマインが、またもや一瞬固まった。
『――再サーチ完了。詳細不明希少鉱石ノ反応、再発見。……再発見、再発見、再発見、再発見再発見再発見再発見』
 星空を仰ぐように、周囲を見渡すように、足元を見下ろすように。様々な方向へ、身体の向きを転換し始めた。
『詳細不明希少鉱石、反応ノ増大。破損、モシクハ分裂ノ可能性、有リ……。再発見、再発見……』
 煙の中、右往左往とも言えるような動きは、アベルの再びのハッキングによって、周囲のバルーンを“Psyche Lithos”と誤認させられた証拠だった。
『捕獲。動キヲ停止サセマス。捕獲。動キヲ停止サセマス。捕獲。動キヲ……』
 煙の中からバルーンに向けて次々とロープが射出される。それを見ながら、
「オリヴィア! 今よ!」
 準備が整ったことを、己は仲間へ知らせた。


「……!」
 ヘスティアの声を合図として、オリヴィアはデブリの陰から飛び出した。その姿は依然、白翼を有した姿だったが、
「――――」
 全身に満ちる魔力が戦闘の開始時とは桁違いだった。クリスタルマインから離れ、ヘスティアが戦闘をしている間、デブリの陰で魔力を練り上げていたのだ。
 それはつまり、アンノウン戦とは違ってヘスティアと役割を交代し、自分こそが今回のトドメ役ということだ。
『再発見……再発見、再発見……』
 視界の奥、煙幕の中で敵が感覚を狂わされているのが見えるが、トドメの為に自分が近づくことは無かった。
 近づけば敵はドリルを持ち出して来ます……!
 接近して対人用の殺戮モードを引き出させてしまえば、檻の中で朽ちて最早鉱石となったクリスタリアン達が燃料として扱われてしまう。
 彼らの亡骸をそのようなことに利用されるのは偲びなかった。それはヘスティアも同意してくれて、なので彼女も今まで遠距離戦闘で時間を稼いでくれた。
 そして今、己の手番が来たのだ。
「――猛き炎よ……!」
 なので己は朗々と唱えた。
 練り上げた魔力の全てを、詠唱によってこの世に現出させていくためだ。
「我が掌中に集い、万象を灰燼と化す破壊の奔流となれ――!」
 現出の姿は詠唱の通り、掌に集まっていく光だった。
「――!!」
 その紅の光は瞬く間に輝きを増すと、莫大な光量となって掌上で渦巻く。それは文字通り掌サイズの球状でありながら、こちらの全身を照らす程だった。
 恐らく煙幕を通した向こう側のヘスティアにも、恒星の輝きのようにこの紅光は見えていることだろう。
『再発見。再発――、警告!! 警告!! 異常ナエネルギー波ヲ感知! 異常ナエネルギー波ヲ感――』
 遠く、敵が全身の警告灯を点火しながら緊急行動に移ったのが見えたが、己は構わなかった。
「“紅炎灼滅砲(プロミネンス・キャノン)”……!!」
 煙幕の中の陰を照準として、そこに掌の光球を向けた。
 刹那。
「――!!」
 光球が弾け、吹き荒れるように前方へぶちまけられていった。
 砕かれた光の球は一度、光線というより光の柱のようにその姿を伸ばしたかと思えば、
『超熱源体ガ分裂! 依然、接近中!』
 そこから瞬時に拡散した。しかしそれは巨木から枝葉のように別れるのではなく、別たれた全てが樹幹の太さをしていた。
『熱源体ヲ排除、シマス』
「無駄です!」
 敵が反撃としてユーべルコードを放ってきた。が、別たれた光柱の総数は四百十五。それだけの数があれば、最早彼我の間の空間が、莫大な炎熱に支配された破壊と溶解の空間となることは必至だった。
 反撃のロープもかぎ爪も全てが飲み込まれ、瞬時に蒸発していき、
「終わりです……!!」
 やがて全ての幹が、終着点目がけて一気に集中していった。
 クリスタルマインに衝突していくのだ。否、それは衝突でもあったが、一点に集中したことによって莫大量の光が埋め尽くしたことで、判然としなかった。
 溶解や貫通でもあり、燃焼や爆発による吹き飛ばしなど、およそ炎熱によって生じる全現象の融合だった。
「――――」
 ただその光が失せた後には、灰の一粒すらも残っていなかった。
 銀河帝国の悪しき機械であるオブリビオンが、完全消滅した結果だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月23日


挿絵イラスト