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首無連続殺妖事件

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●首無し事件――ではない
 カクリヨファンタズム、某所。
 中世の欧州を思わせる石畳の街並がある。東西を問わずにとある種類の妖怪達が暮らしている街である。
 そんな街の一角で、妖怪の死体が発見された。
 発見された死体は胴体がバラバラになっていて、首から上は何処にも見当たらない。
 所謂、バラバラ首無し死体と言う奴である。
 だが――。
『またか……』
『これでもう何人目だ……』
『幻じゃないんだよな……これ』
 そんな首無し死体の発見者達もまた、本来あるべき所に首が無い者達であった。

●探偵は事件を告げる
「諸君! カクリヨファンタズムで事件である!」
 グリモアベースに、何か胡散臭いおっさんがいた。
 銀星・偵(狙撃探偵・f22733)。胡散臭さが溢れているが、探偵である。
「我輩の事は良い。早速本題に入ろう」
 そう言う風に思われるのに慣れているのか、偵は向けられる視線を気にせずに事件の話を切り出した。
「ここの所、カクリヨファンタズムのとある街で妖怪の死体が連続で発見されると言う事件が起きていると判明したのだ」
 連続殺人事件ならぬ、連続殺妖事件である。
「被害者は皆、必ず首から上が無くなっている。だが、死因は爆死だ」
 偵の話に、猟兵達が首を傾げる。
 爆死? 首を斬られたのではなく?
「うむ。その街はデュラハンや飛頭蛮、抜け首と言った首を切られるまでもなく『頭と胴体が分離可能』な妖怪達が暮らしている街なのであるよ!」
 そんな猟兵達の反応に、偵はニマリとした笑みを浮かべて告げる。
 とは言え、そんな首無し妖怪でも死ねば頭は残る――普通ならば。
「首から上が無い、と言う事は、態々持ち去ったのであろう」
 そんな事をする理由は、今もって謎である。
「だが、犯人ならぬ犯妖の目星は『ある程度』ついている」
 爆殺などと言う手段を取れる、犯妖がそういう能力を持っていると言う事だ。
「犯妖は『小玉鼠』の骸魂に飲み込まれた女性のデュラハンであるよ」
 デュラハン小玉鼠。
 小玉鼠と言う、自爆して臓物をぶちまける性質を持っていると言われる妖怪の骸魂に飲み込まれてしまったデュラハンだ。
 オブリビオン化した事で、その頭部を爆弾化する能力を持った上に何度でも再生・複製できると来ている。
「しかも、中々狡猾な輩でな。犯行に及ぶ時だけ宿主の記憶を奪ってオブリビオン化し、それ以外の時間は普通のデュラハンを装っておるようなのだ。お陰で、どのデュラハンがそうなってしまっているのか、という肝心なところが判っておらん」
 頭を胴体から離せる、と言う事は何の証拠にもならない。
 なにせ、ギロチンシティに住む妖怪のほぼ全てがそうなのだから。
「まあ態々害者の首を持ち去っている辺り、何らかの動機に基づく犯行であろう。あとはその辺りを現地で探って貰うしかない」
 とは言え、デュラハンと判っているだけで、ある程度絞り込める――。
「と思うであろう? ところがギロチンシティの首無し妖怪達、揃いも揃って見た目を変える類の幻術使いでな。はっきり言って、見た目は当てにならん」
 何でそんな事になっているのかと言うと、だ。
 デュラハンや飛頭蛮、抜け首達にとって、頭を身体から離すと言うのはごく日常的な当たり前の行為だ。ついカッとなって頭をぶん投げる事も珍しくない。
 とは言え――いくら妖怪世界でも、それには驚く妖怪だっているわけで。
「元々はうっかり取り落とした頭が転がってったりした時に、西瓜なんかに見せてして誤魔化したりする為の技術だったらしいのだが――」
 技術を磨く内に芽生える、悪戯心。
 いつしか街を訪れた者に術をかけ、変身させるのがお決まりとなってしまった。
「つまり街に向かえば、諸君らも強制的に変身させられると言う事である。なに、特に活動に支障が出る術ではないので、気にせず調査に勤しんでくれたまえ!」
 またニマリとした笑みを浮かべた偵の掌から、虫眼鏡型のグリモアが浮かび上がる。
「自分で行けるなら我輩が行きたいくらいの探りがいのありそうな事件であるが、今回は任せるであるよ」
 大きくなった虫眼鏡の中に、虚実入り混じる妖怪の街が映っていた。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 今回はカクリヨファンタズムで連続殺妖事件を解決して頂くシナリオです。
 デュラハンとか飛頭蛮とか抜け首とか、首無し妖怪ばかりが集まっている街が舞台となります。死んだら皆首無し死体になるのでは……?

 1章は日常です。
 街の妖怪に外見変化の術をかけられます。
 どんな外見変化をするかは、ご自由にどうぞ。幻術の類なので、元々の身体のサイズとか気にしない変化も可能です。立体ホロを被ってるイメージ。

 その状態で、街の妖怪と交流したり観光したりつつの推理パートでもあります。
 と言っても『犯人当て』ではありません。
 推理と言う名の、みんなで作ろう犯妖像。
 OPにある通り、判明しているのはデュラハン小玉鼠である事と、デュラハンは女性である事の2点のみです。どんなデュラハンなのか、どんな動機があるのか、等々。好き勝手にぶん投げて下さい。
 流石に全部採用できるとは言えませんが、辻褄が合う範囲で混ぜ合わせて犯妖像を作ります。

 2章はボス戦です。ここでもう犯妖と対決になります。
 2章で犯妖に「犯人はお前だ!」をやる流れになりますので、推理は1章で存分にやっておいてください。

 3章は集団戦です。此処の詳細は開始時に。

 1章は、7/4(土)8:30~の受付とさせて頂きます。
 日常スタートですし変化する姿とか考える事もあると思いますので、1日間を置いておきます。締め切りは、ツイッター、マスターページ等で告知の形となります。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 日常 『妖怪七変化ワールド』

POW   :    変身した姿であっちこっち遊び回ってみる。

SPD   :    行動や話し方など、変身した姿になりきってみる。

WIZ   :    変身した姿を冷静に観察、分析してみる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●街の名はギロチンシティ
 中世の欧州風と言った石畳の街並みは、細い路地や階段が多く、既にちょっとした迷路のような街であった。
 嘗てUDCアースでは、どこか山間の斜面に作られた街だったのだろう。
 態々、斜面の上に作られている。
 とは言え、そこかしこから野鳥の声が聞こえていて、長閑な街だ。
 カクリヨファンタズムの町村に漏れず、どこか郷愁を募らせる雰囲気が満ちている街のそこかしこには、何故か錆びたギロチンが置かれているが。
 ギロチンを除けば、連続殺妖事件が起きているような血生臭さはなさそ――。

 ――てん、てん、てん、と。

 何かが階段を転げ落ちて来た。
『お? おおお?』
 転げ落ちてきたそれは、向けられた視線を感じて声を上げる。
 それは、首だった。青年の生首だった。
『おおおお! もしかして、見える人!?』
 首は猟兵達の視線に、嬉しそうな声を上げ――。
『あ、やっべ。見える人なら幻術かけとかんとな』
 言うが早いか、生首がハロウィンの南瓜になった。
『この方が不気味じゃないだろー? ちょっと待っててくれ』
 少し遅れてやってきた青年の頭が、よっこらしょと南瓜を担ぎ上げ、どうも幻術で身体の上に作ったらしい頭の上から生首だった南瓜を被せる様に乗せたる。
『ここは首無しの街――ギロチンシティだ。または幻惑の街とも呼ばれるぜ。今みたいな見た目を変える幻術を皆が使うからな』
 南瓜が再び生首に――今度は普通に身体の上にあるので違和感はないが――戻った青年は、カラカラと笑って告げる。
『というわけで、どんな姿になりたい? 俺なら、リクエストは聞くぜ? 俺をスルーしてもいいけど、街中のどこで幻術かけられるか判らないぞー』
 変身したくない――という選択肢は無いようである。

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 とまあこんな感じで、生首を南瓜に見せたり首の無い身体に首がある様に見せたりするような幻術で、皆さんにも変身して貰います。

 プレイング受付はMSコメントの通り、7/4(土)8:30~です。
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穂照・朱海
わたくしの世界では、ろくろ首と言ふなる妖怪には、首が伸びるものと首を飛ばすものの二種が存在しています

と、言ふことで
【化術】を用いた演目(=UC)【艶姿百鬼変化】にて、首が外れるろくろ首に自力で変化致しませう

自力で変化していますが
さらに幻術をかけられても善いですよ
存分に属性を盛つて下さいませ

街の妖怪にはこう名乗ります
「わたくしは朱海。人と妖が共存する世界より参りました。
実は人なのですが、訳あつて妖怪の世界に片足が嵌つて居りますのよ。ほほほほほ……」

そんな感じで捜査を開始すると致しませう

首を集めている理由は……
「頭が爆発する」光景に興奮する変質者だから?
ぐらいしか、思い付きませぬね



●演技の域を超えた変化
『何? 見える人ですと?』
『あ、本当だ。視線がこっち見てる』
 自分達が見える人間が来たと聞いた首無妖怪達が、猟兵達の元に集まってくる。

 ――頭と身体が、バラバラで。

「此れは此れは……あちこちで頭が浮いておりますね」
 その光景に、穂照・朱海(妖刃飛翔・f21686)が長い黒髪の向こうで目を瞬かせた。
『フヒヒ、驚いてる驚いてる』
『もっと驚いて貰いましょうか』
『なりたい姿はあるかなー?』
 そんな朱海に幻術をかけようと妖怪達がにじり寄る。
「幻術をかけられても良いのですが……ここは自力で変化致しませう」
 それは役者としての矜持からか。
 朱海は妖怪達が幻術をかけてくるよりも早く、自身の力で変化することを選んだ。
「此度あけみが化けまするは……首長のろくろ首に御座います」
 柄に朱と彫られた妖刀『朱天狗』を掲げて告げた次の瞬間、朱海の首がまるで蛇のようにうねりながら長く伸び出した。
『おお!?』
『伸びる方のろくろ首ですか……久しぶりに見ましたな』
「首が伸びる類のろくろ首がおられぬ様子ですので」
 その変化に驚く妖怪達に、朱海は伸びた首をうねうねさせながら告げる。
 朱海の知る『ろくろ首』なる妖怪には、二つ種類がいる。一つはこの街の妖怪達の様に首が抜けたように頭が浮かぶもの。
 もう一つが、今の朱海の様に首が異様に伸びるものだ。
「わたくしは朱海。人と妖が共存する世界より参りました」
 他の世界の妖を知っているとは言え――知っているだけで化けられるものではない。

 ――艶姿百鬼変化。

 妖は化けるもの。
 その域に達した妖刀を役を演じる事を生業とする朱海が使えば――。
「人の身なのですが、訳あつて妖怪の世界に片足が嵌つて居りますのよ」
 ほほほほ、と笑う朱海の姿は、妖怪達が息を呑む程に妖怪であった。
『こりゃ、幻術かけるまでもないな』
「あら? 幻術をかけられても善いですよ」
 脱帽と言った様子で視線を向けてくる妖怪に、朱海がこともなげに告げる。
「どれだけ属性を盛られても構いません。存分に属性を盛つて下さいませ」
『そこまで堂々とされると、かけにくい』
 演じきれる自信に満ちた朱海の言葉だが、妖怪達はその業に感心しきりだ。
(「まあいいか。変化させられるのが目的じゃないし」)
「ところで……この街に、何某か爆発する光景に興奮する変わり者のデュラハンがいると言ふ噂を耳にしたのですが」
 胸中で溢して、朱海は周りの妖怪達に問いかける。
 連続殺妖事件の犯妖の手口の理由を、朱海は『頭が爆発する光景』に興奮する変質者くらいしか思い浮かばず、それを言葉を濁して聞いてみたのだ。
『爆発に興奮?』
『そんな奴いたっけか?』
 妖怪達の頭が、空中でこてんと傾く。
『デュラハンの変わり者と言ったら、芸術家連中かねぇ?』
「ふむ――その中に女性は?」
『何人もいるよぉ』
 小首を傾げた朱海に、空中に浮かんだ妖怪達の頭がこくりと頷いた。

 デュラハンの芸術家には女性が複数人いると言う情報を得た。

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
おい待て
物凄く身に覚えのある話が聞こえたが
まさか俺を首なし死体にした犯…犯妖…もそいつじゃないだろうな…
真相を究明しないと俺の尊厳に関わる…
こんなオチだったら探偵なんざ廃業だ廃業

元々ゾンビなのに妖怪にする意味…いいだろこのままで
げ…雪女になってる
性別まで変えやがった…
仕方ないので眼鏡美女の雪女として調査開始

貴男…何か隠してる…
吐かないと氷漬けにするわよ…(【第六感/殺気/属性攻撃】)
は?俺は犯人じゃねえ…ないわ
あらそう…犯妖も眼鏡美女なの
首なし眼鏡美女だなんて…随分矛盾した存在ね…
(あー頼むからせめてシリアスな動機があってくれ)

情報が集まったらUCで犯人を指摘
犯妖はあんただ…じゃない
お前よ…!



●元高校生眼鏡雪女探偵はとり
(「首無連続殺妖事件――首無、か」)
 胸中で反芻したその言葉の中に、柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)にとって聞き捨てならない言葉が含まれていた。
 ――かつての高校生探偵として?
 それもあるだろうが、はとりには『物凄く身に覚えのある話』だったのだ。
(「まさか俺を首なし死体にした犯……犯妖……も、今回の奴じゃないだろうな……」)
 殺され、首から上を奪われると言うのは。
(「真相だ。真相を究明しないと、俺の尊厳に関わる……こんなオチだったら探偵なんざ廃業だ廃業」)
 内心とても入れ込んで眉間に皺を寄せるはとりに怯えるでもなく、3つの首無妖怪の頭が空から近づいて来る。
『へい、そこ行く兄さん』
『その首――フランケンシュタインか?』
『よーし! その首、幻術で綺麗になってみよう!』
 気づいた時には、既に幻術をかけられていた。
「おい待て。元々ゾンビなのに妖怪にする意味……いいだろこのままで」
 はとりが零した言葉の後半が、妙にトーンの高い声になる。
「ん?」
『ん』
「げ……」
 自分の掌を見下ろし訝しんでいたはとりが、妖怪の一人が差し出した鏡に映った自分の姿を見るなり、絶句する。
 首の痕が残っている感覚はあるのに、確かに見えなくなっていた。
 痕の消えた肌はいつも以上に白くなり、灰色の髪は長く伸びている。着ていた服はどういう事か、白い着物になっている。どう見ても、女性の姿であった。
「雪女になってる。性別まで変えやがった……」
『氷っぽい感じがしたからさ』
『術の効果はその内消えるから』
 幻術で雪女となったはとりにそんな事を言い残し、首無し妖怪達の頭たちはいずこかへ飛び去っていった。

 ――数分後。
「ねえ、そこの首だけの人」
 気を取り直してギロチンシティを歩いて回っていたはとりは、和服に黒髪と、明らかにデュラハンではなさそうな妖怪を掴まえ訊ねていた。
 聞き込みは、探偵の基本のひとつと言えよう。
「最近この街で起きてる事件について――犯妖に心当たり、ない?」
『な、何で事件の事を……はっ!? まさかあんたが犯妖!?』
 はとりの直球を、妖怪が更にあらぬ方向に誤解する。
「は? 俺は犯人じゃねえ……ないわ」
 流石に少し驚きながらもそれを顔には出さず、はとりはさらりと訊き返した。
「どうしてそんな……貴男……何か隠してる……」
 視線を逸らそうとくるりと回転した妖怪の頭を、はとりの手がむんずと掴む。
「吐かないと氷漬けにするわよ……」
『胴体バラバラって氷漬けにして砕いてもできるし、一番最後の事件でやられた奴はすごい目が良かったのに、現場に眼鏡の破片が落ちてたって噂だから犯妖じゃないかと思いましたすいません凍らせないで!!!!』
 すっかり雪女になり切ったまま、氷の刃の力も使って冷気を放ち脅しかけるはとりに、焦った妖怪の口が軽くなる。
 眼鏡を使わない被害者の現場に、眼鏡の破片が落ちていた。
 ならばそれは、犯妖がかけていた可能性は高い。
「あらそう……犯妖も眼鏡美女なの」
 妖怪の頭を掴んでいた手を離しながら、はとりは呟く。
「首なし眼鏡美女だなんて……随分矛盾した存在ね……」
 慌てて離れていく妖怪の頭と胴体を見送りながら、はとりは、せめてシリアスな動機があってくれ――と、祈らずにはいられなかった。

 犯妖が眼鏡美女らしいと言う情報を得た。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎・うさみっち
【ニコうさ】
ぴぇぇぇ、ホラーだ!スプラッターだ!
お腹痛いんで俺帰りまー…
ぴゃああああ!(強制的に変身

にゃんてこった!
俺の自慢のうさ耳が消えて猫耳に!
真ん丸尻尾も二股に分かれた猫尻尾に!
バッテンのお口も「ω」に!
いわゆる猫又!ねこみっちに改名しないと!
…いや、これはこれで新しいキャラとしてありでは?
ニコ!ねこみっち様だぞ崇め奉れー!

ぬらりひょんー?初めて聞いた!
何をぅ!俺はそんなに図々しくないぜ!

…で、今回の事件についてだが(急に真面目モード
犯人はきっと「顔」に憧れや嫉妬があったのだ
顔の良い奴らを襲い、その首を持ち去り
その日の気分によってアクセサリのように
自分の首を付け替えているのでは!?


ニコ・ベルクシュタイン
【ニコうさ】
うさみよ、現実から目を逸らしてはならぬ
鳴いて逃げようとするうさみをむんずと掴めば諸共に変身
俺は――ヤドリガミも付喪神たる妖怪に通じるものがあるとは言うが
折角なのでぬらりひょんなどになってみようか

適当な家に勝手に上がり込んで、我が物顔で茶を啜ったり
まるで普段のうさみのように気ままに振る舞ってみせよう
…はは、冗談だよ
ねこみっちか、新たなみっちシリーズが増えて良かったな
(内心はちゃめちゃに可愛いと感極まって口を押さえながら)

デュラハンは死を予言する存在と聞いた事がある
若しくは、目撃した者の目を潰すとか
女性であるという事を考えるとうさみの案も筋が通るし
己の顔に劣等感を抱いているのか…?



●ねこみっちとヌラリシュタイン
『今日、見える人が来てるんだって?』
『あの二人もそうなのかな?』
 榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)とニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)がギロチンシティに入った時には、既に自分たちが見える者が来ていると言う噂は妖怪達の間に広まっていた。
 故に2人の周りには、ちょっとした妖だかりが出来上がっていた。
『本当に見えてるんだ?』
『2人は何処から――』
『何をしにここに――』
 何故か起こる質問攻め。それは、連続殺妖事件などと言う物騒な事が起きているとは悟らせたくない妖怪達の思惑もあっての事だったのだが――。
『っと、悪い』
『あっ』
 妖怪と妖怪の肩がぶつかり、ぶつかられた方の頭がぽろっと落ちる。
「ぴぇぇぇ、ホラーだ! スプラッターだ!」
 目の前で頭ポロリを見てしまったうさみっちの顔色が、さぁっと青くなる。
『あー、しまったー』
 目の前で頭ポロリと言う、幻術が一番役に立たないであろうパターンをやってしまった妖怪の口から、後悔の言葉が零れる。
『だ、大丈夫だよー。怖くないよー。ちょっと首が浮くだけだよー』
「お腹痛いんで俺帰りまー……」
 他の妖怪が何とか誤魔化そうとするも、うさみっちがくるっと向きを変えて――。
「うさみよ、現実から目を逸らしてはならぬ」
 ぶーんっと飛び出す前に、ニコの手が伸びてうさみっちをむんずと掴んだ。
「いやだー! こんなところにいられるかー!」
「ええい、だから落ち着けと!」
 ジタバタともがくうさみっちを落ち着かせながら、ニコは妖怪達に視線を向ける。
「ここの妖怪は他者にも幻術をかけられると聞く。俺達にもさくっとかけてくれ。その方が落ち着くだろう」
『おー、いいよ。何かリクエストある?』
「俺は――折角なのでぬらりひょんなどになってみようか」
 ニコの種族であるヤドリガミ自体が、既に付喪神たる妖怪に通じるものがあると言われているのだが、まあ何と言うかそれはそれ、である。
「うさみは――」
「離せー! ニコのおにー! キチクシュタインー!」
「適当にやってくれ」
『んっ!』
 もがくうさみっちを掴み続けながら蟀谷ピクピクさせるニコに若干引きつつ、妖怪の一人がぱんっと手を叩いた。
 ぼんっとあがった煙に、ニコとうさみっちの姿が包まれる。
 ――ぴゃああああ!
 煙の中から、うさみっちの悲鳴が上がる。
 そして煙が晴れると同時に、妖怪達が慣れた様子で二人の前に鏡を差し出す。
「にゃ――にゃんてこったー!」
 鏡に映った自分の姿に、うさみっちが驚いて声を上げる。
 うさみっちのトレードマークであり、時には武器にもなる垂れウサミミがそこになく、代わりに頭の上に猫耳が生えていた。
 真ん丸尻尾も二股に分かれた猫尻尾になっている。
『動物っぽいから猫又に変化させてみた!』
「猫又か! って、口がバッテンにならねしー!?」
 時々『×』になるうさみっちの口だが、今は何をどうしようと『ω』にしか見えなかった。本人の感覚としては『×』なのだが、鏡に映るのは『ω』なのだ。
 所謂、にゃんこの口である。
 うさぎ要素が猫になってしまい、うさみっちは――。
「……これはこれで新しいキャラとしてありでは?」
 ――あんまり困っていないようだった。
「どうだニコ! ねこみっち様だぞ! 崇め奉れー!」
 むしろ見ている内に段々気に入ってきたようで、ニコに向かってドヤ顔である。
「ねこみっちか、新たなみっちシリーズが増えて良かったな」
 猫耳ぴこぴこしてるうさみっちに、和服姿になっているニコは口元を抑えて――少なくとも表面上は冷静に返していた。
(「かっわっっっ!!!」)
 内心、めっちゃクリティカルヒットしてたけれど。
(「ねこみっち!? はちゃめちゃに可愛い……いい仕事するな、妖怪!」)
「……で、ニコはなんだそれ? 和服になっただけ?」
 緩みそうな口元を必死で抑えて胸中で妖怪にサムズアップするニコの恰好を、うさみっち改めねこみっちが、ぐるぐると全方位から見て回る。
「ん? 後頭部がもっさりしてるな……欠けたアフロ?」
「ぬらりひょんと言う妖怪――の筈だ」
 うさみっちも気づいた様に、ニコは和服姿になった以外にも後頭部が膨らんでいた。
 ぬらりひょんと言う妖怪の姿に諸説あるが、禿げあがった後頭部が膨らんだ老人と言う説が多い。妖怪も、それに倣った幻術をニコにかけたのだろう。
『さすがにハゲ頭にするのは気が引けたので』
 禿げずに髪がそのまま後頭部が膨らむと、今のニコの様に欠けたアフロと言われるような形になると言う事だ。
「ぬらりひょんと言う妖怪は、適当な家に勝手に上がり込んで、我が物顔で茶を啜ったりするらしい。まるで普段のうさみのように気ままに振る舞ってみせようか」
 そんな後頭部を気にせず、ニコは
「何をぅ! 俺はそんなに図々しくないぜ!」
「……はは、冗談だよ」
 うさみっちに頭ぺちぺち叩かれながら、ニコは穏やかに笑って返す。
 やっと、こうした穏やかに笑ってみせられるくらいに、内心も落ち着いていた。

●真面目に推理
「ところでさ。この街で今事件が起きてるんだろ? 殺された妖怪達って、顔が良い奴らじゃなかったか?」
 猫又変化で上がったテンションが最初の恐怖を忘れさせたか、真顔に戻ったうさみっちが妖怪達に問いかける。
『顔……?』
『そう言えば整ってるのばかりだったかも……』
 それを聞いて思案する妖怪達の視線と頭が彷徨い出す。
「どういう事だ、うさみよ」
「おう、ヌラリシュタイン。今回の事件についてだが」
 さらりとニコに新しい呼び名を付けながら、うさみっちが真顔で推理を語り出す。
「俺が思うに、犯妖はきっと『顔』に憧れや嫉妬があったのだ。だから、顔の良い奴らを襲い、その首を持ち去ったんじゃないか?」
 顏だけではなく、うさみっちは真面目に考えていた。
「ふむ……デュラハンは、死を予言する存在と聞いた事がある」
 うさみっちが真面目に考えるならばと、ニコもヌラリシュタインに突っ込みたいのを脇に置いて真顔に戻っていた。
「若しくは、目撃した者の目を潰すとか」
『それは昔の話だねー』
『この世界に入ってからは、そんなことしてるデュラハンいないんじゃないかな。もう妖怪しかいないし』
 ニコの呟きに、妖怪達が反応する。
 この世界に生きている彼らがそう言うのなら、そうなのだろう――オブリビオン化していなければ。
「女性であるという事を考えると、うさみの推理も筋が通るしな。己の顔に劣等感を抱いているのか……?」
「その日の気分で、アクセサリのように自分の首を付け替えているのでは!?」
 ニコとうさみっちは、意見を交わし推理を深めながら、妖怪達に聞き込みをして回り出すのだった。

 連続殺妖事件の被害者は顔が良い妖怪が多いらしい、と言う情報を得た。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

ギロチン…

忌まわしき処刑道具の名を冠しているけれど…
私の生まれた世界よりも穏やかだし長閑な場所だ…
事件を解決して妖怪達を救わないとね…

【変身譚】を用いて骸骨形態に変身、郷に従い首を取り外そう

街中を歩き回り妖怪達と接触し被害者達の[情報を収集]してゆこう

殺した相手の頭を持ち去るなんて随分と物騒な奴だ…
持ち去った首はどこに…
強い怨恨の果てか身を焦がす恋路の果てか…?

原因がなんであれ罪を犯した妖怪を処さないとね…

私は処刑人…


ユディト・イェシュア
なんだかすごい街ですね
置いてあるギロチンは…雰囲気作り?(首傾げ

犯人を探すなら彼女と同じ視点に立ってみる必要がありそうです
デュラハン…首無し騎士にしてもらいましょう
幻影とはいえ何か掴めるかもしれません

推理は人狼ゲームでしかやったことないですが…
必ず手掛かりはあります
自覚がなくとも犯行のために出歩いていると思いますので
積極的に交流してみましょう

首無し死体は首がなくても身元がわかるものですか?
俺には身体だけでは誰か判別できません
頭を持ち去ったのは襲ったのが誰かをわからなくする目的もありそうです
それか首そのものが欲しかった
叶わぬ想いを寄せる相手を永遠に自分のものにしたかった…
そんな可能性もありますね



●平和なギロチンと変化
 ギロチンシティ。
 首無妖怪達の街を歩いていると、街の名前にもなっている古びた処刑道具があちこちに置かれているのが嫌でも目についた。
「なんだかすごい街ですね……」
 自動販売機くらいの感覚でそこら中に置かれているギロチンを見やり、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)が目を丸くする。
「これらのギロチンは……雰囲気作り?」
「多分、そうだと思う」
 ギロチンの前で首を傾げるユディトの後ろから、声がかかった。
 振り向けば、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)がぼんやりと立っている。
「ギロチン……おそらく一度も血を吸っていない」
 それが忌まわしき処刑道具であると、アンナは知っている。
 だが処刑人であるアンナは、この街にあるギロチンには本来ある筈のものがしない事に気づいていた。

 ――血の臭いが。

「錆びてて、さもずっと昔に使われていたような雰囲気を出しているけれど……そういう加工をしているだけだと思う」
 アンナの視線の先にある首を斬り落とすための武骨な刃には、血の痕の様なものが見て取れる。
 だが、それはおそらく、ただの雰囲気出しだ。
 そもそもこの街に住む妖怪達には、斬り落とす首などないのだし。
『すごい。良く判ったね』
『流石、妖怪が見える人達は違うなぁ』
 アンナの言葉を聞いた通りすがりの妖怪達が、それを肯定する。共に和服の出で立ちからして、飛頭蛮か抜け首だろう。
『デュラハンの中に芸術を嗜むのが結構いてね』
『それっぽい感じに加工してくれてんだ。それっぽいギロチンだろ?』
「なんだかすごい街ですね」
 妖怪達のそれっぽいギロチン自慢に、ユディトが感心の呟きを溢す。
「ここは、私の生まれた世界よりも穏やかだし、長閑な場所だ……」
 アンナは生まれた世界との違いをはっきりと感じていた。
 だからこそ――。
「事件を解決して妖怪達を救わないとね」
「そうですね」
 アンナの呟きに、ユディトも頷く。
『ところで、あなた達まだ幻術かかってないよね?』
『しない? 変身? しない?』
 そんな2人の決意に気づいた風もなく、妖怪達は変化しないかと勧めてきた。

「そうですね……」
 妖怪の視線を受けて、ユディトは思案する。
 どうせ幻術をかけられるのなら、何か犯妖探しに役立つようにしたい。
(「同じ視点に立ってみると、幻影とはいえ何か掴めるかもしれません。なら――」)
「デュラハン……首無し騎士にしてもらいましょう」
『あ、それでいいんだ。ほいっ!』
 ぱんっと妖怪が手を叩くと、ユディトの姿が変わった。
 首から上が消えて、頭を小脇に抱えているデュラハン然とした姿に。
「成程。これがデュラハンの視界……え?」
『視点もサービスで変えといた』
 本当に視点が下がっていて驚くユディトに、妖怪がさらりと告げる。
『さて、それじゃそちらの女性は――』
「あ、お構いなく――自分で変化したから」
 次に妖怪の視線を向けられたアンナの姿は、既に変わっていた。
 真っ白な骨――肉が削げ落ちたスケルトンの姿に。
『うおっ、いつの間に』
「この世界の妖怪に教わった化け術」
 変身譚――妖怪をも驚かせたアンナの化け術は、このカクリヨファンタズムの妖怪達から教わった術であった。

 そしてデュラハンになったユディトとスケルトンになったアンナは、二手に分かれて聞き込みを開始する――。

●聞き込み――アンナの場合
「大きな家や別荘を持つデュラハンの女性を、知っているか?」
 スケルトンに化けたアンナは、カラカラと骨の音を立てながら街を歩いて、妖怪から話を聞いて回っていた。
 気にしているのは、現場から持ち去られた首が何処にあるのか、だ。
 まあ何処、というのなら、犯妖の元にあるのだろう。だが頭はポケットに入れて運べるものでもないし、窓際に飾って置けるものでもない。
 だから、人目につかず宿主にも悟らせずに持ち去った頭を隠せる場所がある――そう考えて、アンナは住む家の大きさを聞いて回っていた。
「しかし殺した相手の頭を持ち去るなんて、随分と物騒な奴だ……」
 そも、犯罪現場から何かを持ち去ると言うのはリスクが伴う行為だ。
「強い怨恨の果てか、身を焦がす恋路の果てか……?」
 それでも必ず行う理由は感情にあるではと思いながら、アンナは聞き込みを続けた。

 大きな物件を所有するデュラハンの情報を得た。

●聞き込み――ユディトの場合
「最近、この街で首無し死体が発見される事件が続いているのですよね」
『あ、ああ……まあな』
 ユディトの問いに、訊かれた妖怪が歯切れ悪く返す。
 まあ、自分の街で起きた事件を訊かれて、バツが悪くなるものもいるだろう。
「首無し死体は首がなくても、身元がわかるものですか?」
 それはユディトが抱いていた疑問。
 顏と言うのは、人が人を判別する上で最も大きなウェイトを占めているだろう。
「俺には、身体だけでは誰か判別できないと思います」
 ましてや、発見された遺体はバラバラなのだ。そんな状態で個人を判別するなど、ユディトは出来る気がしなかった。
 指紋やDNAなどの科学技術を使えば話は別だが――そういう技術があるとも思えない。
『ああ……それは、大体事件は夜に起きて、家の中か近くで襲われてるから。で、事件の後からそこに住んでた妖怪が行方不明だから、さ……』
 ユディトの疑問は、妖怪の答えで氷塊した。
 同時に、別の疑問が沸き上がる。
 犯妖が頭を持ち去るのは、誰を襲ったのか判らなくするためだと思っていた。だが、被害者の自宅が現場になっているのなら、その効果は幾らか薄れてしまう。
 だとすると――。
(「首そのものが欲しかった? 叶わぬ想いを寄せる相手を永遠に自分のものにしたかった……そんな可能性もありますね」)
「この街のデュラハンで、誰か最近結婚した方がいたりしませんか?」
 首を持ち去るのは、感情に起因する。
 その考えに思い至ったユディトは、聞き込みの方向性を変えるのだった。

 デュラハンの恋愛事情の情報を得た。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
ヒーローカーBD.13に乗って登場。
ここが妖怪の世界、カクリヨファンタズムか。
連続バラバラ殺人…殺妖とは、随分物騒だな。
さて、早速犯妖を探しにいくか。

太った黒い猫の魔物に変身して行動開始。
取材中の新聞記者という設定で行こう。
先ずは情報収集。住民の憩いの場といえば、パブだな。
ビールとつまみを注文して、まずは店主や常連客と世間話だ。
犯行の時間や現場、被害者の傾向なんかは
一通り聞いてみたいな。
だが何よりも、爆殺という手口のほうが私は気になる。
爆破という行為そのものに興奮を見いだすタイプなんだろうか?
では頭部を持ち去る目的とは…うーむ。

プロファイル:犯妖は内向的で、日常生活に鬱屈している?



●車と黒猫記者
 ギロチンシティの街並みを、一台の車がゆーっくりと走っている。
 ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)の2ドアクーペのヒーローカー『BD.13』である。
 速度を出して車を走らせるには狭い街並みだったので、ガーネットは徐行運転に努めているのだ。
『あれは、車か?』
『見た事ない車だなぁ』
 その速度だからか、首無し妖怪達の視線を集めている。
「連続バラバラ殺人……いや、殺妖か。物騒な事件だと思ったが、妖怪達は怯えているわけではないのだな」
 車の中で視線を感じながら車を走らせる内に、ガーネットは探していた施設を目の前に見つけて車を停めた。

 ――カラン。
 背中にドアベルの音を聞きながら、ガーネットはパブの店内に視線を巡らせる。
 喉の無い首無妖怪が果たして酒を嗜むのかという疑問もあったが、どういう理屈か、妖怪達は頭と胴体が離れたまま、ジョッキでビールを煽っていた。
「ビールと、何かつまみを頼む」
『その姿なら、つまみはこれだろうな』
 カウンターについたガーネットの注文に、まず出てきたのは煮干しの小鉢だった。
「この姿?」
 出てきた煮干しとマスターの言葉に疑問を覚えるガーネットの前に、ビールのジョッキと共に手鏡が置かれた。
 いつの間に幻術をかけられたのか。鏡の中に映ったガーネットの顔はやや丸々とした黒猫になっていた。
「ああ、構わない。こういう街だと言う噂は聞いていた――私は新聞記者でね」
 ぐいっとジョッキを煽って、ガーネットはすっと目を細める。
 傍から見ると、大きな黒猫が目を細めたようになっているのだが。
「この街で起きている、連続バラバラ殺妖事件を調べに来た」
 ガーネットがそう告げた瞬間、店内にいた妖怪達の頭が一斉にぐるんと回って、ガーネットの方に視線を向ける。
「爆破されたような殺され方、と言う手口が気になって調べているだけだ。心配しないでも、悪い噂は広めないぞ? 」
 向けられた視線の中に訝しむ類のものがあるだろうと察したガーネットは、煮干しをポリポリつまみながら妖怪達に返す。
 実際、ガーネットは爆殺という手口が最も気になっていた。
(「爆破という行為そのものに興奮を見いだすタイプなんだろうか? だとしたら、そんなタイプそうそういると思えないから、何か聞けるかもしれない」)
「それに、もし私が犯妖を見つけられたら事件も止まるんじゃないか?」
 胸中で呟きなら、ガーネットは妖怪達にもう一押しで告げる。
『そういう事なら……』
『確かに。見える人間なら、俺達が気付かない事に気づくかも』
 まだ訝しんでいた様子の妖怪達だったが、ガーネットの言葉にひそひそと話し合う。
「ではまずは犯行の時間や現場、被害者の性格や傾向を聞かせて貰いたく――」
『事件は大体、夜に起きていて――』
『自宅かその近くでやられてるんだよなぁ』
『実はここの常連にも1人、被害者がいてねぇ……』
 時間や場所は他の猟兵も得ていた情報であったが、こういった酒場に出入りするタイプの被害者がいると言うのは、新しい情報だ。
(「だとしたら犯妖は逆なのか? 内向的で、日常生活に鬱屈している? では頭部を持ち去る目的とは……うーむ」)
 妖怪達の話のメモを取りながら、幻術の下でガーネットは眉間に皺を寄せていた。

 被害者に外向的な性格が多いと言う情報を得た。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【電脳探偵団】

わたしは幻術で、スケルトンの姿に変化させられるね。

おお……アイさんの中まで丸見え……!

って、アイさーん!?
と、とりあえず今のうちに写真は撮っておかないと!
って、これ幻術だよね、カメラには写るのかな?

ま、いいか。とりあえず激写しておこう。
あとでみんなとシェアしないとだしね!

と、それはいいとして、
情報収集ってことなら、ナンパされて……って、わたし骸骨か!
あれ?声かけられた!?シティ怖っ。

なら、いい機会かな。アイさんをなだめつつ、
普段コンプレックスを持ってたりする人とかいないか、聞いてみよう。
気に入ったパーツを集めているとか、ありそうだもんね。

……そいえば、アイさん綺麗だし危なくない?


アイ・リスパー
【電脳探偵団】
「なるほど。連続殺人事件ですか。それは我と理緒さんの電脳探偵団の出番ですね!」

って、はわわっ!?
り、理緒さんが骸骨にーっ!?(幽霊が苦手

そして、理緒さんのタブレットに映ってる私の姿は……

「左半身が内臓まで見えてる、動く人体模型ーっ!?」(ばんたんきゅー

さらに理緒さんに『肋骨が素敵だね』とか、私に『君の内臓を食べたい』とナンパしてくる妖怪たちがーっ!?
お化けは遠慮しますっ!

「って、これでは推理が進みません!」

首を持ち去る殺人犯……

「私の電脳探偵としてのプロファイリングによれば……
犯人は首を必要としている人物!
すなわち、うっかりさんでよく自分の首を置き忘れてしまうデュラハンです!」



●少女たちと骨と内臓
「思ったより平穏ですね」
 首無し妖怪がそこかしこにいるギロチンシティの街並みを眺め、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)がぽつりと零す。
「とても首無しのバラバラ死体が出た街とは思えません」
「多分、意識しないようにしてるんでしょうね」
 理緒の呟きに、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)も一見平穏に見える街並みを見回し返した。
 起きている事件1件2件ではない筈だ。
 だとすれば――彼らは表面上、変わらぬ生活を送ろうとしているのだろう。
「一見平和に見える街の裏で起きている連続殺妖事件ですか。これは我と理緒さんの電脳探偵団の出番ですね!」
 ぐっと拳を握ってアイが振り向くと――。

 そこにいた筈の理緒の姿はなく、スケルトンがいた。

「アイさん?」
「はわわっ!?」
 突然のスケルトンにアイが驚いていると、スケルトンの口から理緒の声が出てくる。
「えっと……理緒さん?」
「はい? ええと、アイさんですよね?」
 目を丸くしたままのアイが訊ねると、やはりスケルトンが理緒の声で、何故か自信なさそうに指さしながら訊き返して来た。
「り、理緒さん! 骸骨になってますよーっ!?」
「ああ、わたしはスケルトンなんですか」
 アイが自分を見て驚いている理由を知って頷きながら、理緒はタブレットモードの『LVTP-X3rd-van』のモニターをアイに向けて、フロントカメラを起動する。
「アイさんはこうなってますが」
 理緒の抱えたモニターには、アイの姿が映っていなかった。
 そこに映っていたのは――。

「左半身が内臓まで見えてる、動く人体模型ーっ!?」

 アイの声が出ているのは、人体模型であった。大体学校の理科室か保健室にあって、時々廊下を爆走したりするあれである。
 いつの間にやら、理緒もアイも妖怪達の幻術にかかっていたのだ。
「……きゅぅ」
 自分の姿を自覚した直後、アイが目を回してぶっ倒れる。
「アイさーん!?」
 慌てて駆け寄りながら、理緒は思い出していた。
「そいえば、アイさん幽霊とか苦手でしたっけ」
 スケルトンの姿になっていた理緒に対するアイのあの反応も、恐怖が混ざった驚きだったのだろう。
 いや、うん。だったら妖怪世界に何故来た?
「う、う~ん」
「まあ大丈夫そうですし……とりあえず今の内に写真は撮っておかないと!」
 アイがちょっと目を回しているだけだと確かめた理緒は、タブレットのリアカメラを向けてまずは一枚、パシャっと撮ってみた。
 撮影画像を確認すると、映っているアイは人体模型のままである。
「おお……アイさんの中まで丸見え……! これはあとでみんなとシェアしないと!」
 幻術はカメラにも作用する――それを確かめた理緒は、色んな角度からパシャパシャと激写し続けた。

●電脳探偵団
 アイの復活を待って、電脳探偵団はその活動を再開していた。
「私の電脳探偵としてのプロファイリングによれば……犯人、もとい犯妖は首を必要としている人物! すなわち、うっかりさんでよく自分の首を置き忘れてしまうデュラハンです!」
「うっかりかどうかはさておき、首を必要としているっていうのはあるかも。気に入ったパーツを集めているとか、ありそうだもんね」
 アイの推理を聞いて、理緒が頷く。
 今の情報では、まだ肯定にも否定にも足りないのだ。
「情報収集ってことなら、歩き回るよりナンパされた方が――」
「でも今の理緒さん、スケルトンですよ?」
 妖怪達に訊いて回るよりも妖怪達の方から集まって貰った方が楽だと考えた理緒に、アイが冷静なツッコミを入れる。
「って、そうだ! わたし骸骨か!」
 まだ幻術解けていないので、傍から見るとスケルトンと人体模型の漫才だった。
 だが――ここはカクリヨファンタズム。
 地球で生きられなくなった妖怪達の集まる世界である。
 この街の住人だって、住人と言うか住妖怪なわけで――。
『あ、いたいたー』
『スケルトンと人体模型の2人組。見える人だよね』
 幻術かけた妖怪が噂をばら撒いたのか、2人の前に金髪の頭を抱えたどうもデュラハンの男性と思しき妖怪達が姿を現す。
『肋骨が素敵だね』
『鎖骨も中々きれいだよ』
「あれ? 声かけられた!?」
 ナンパ作戦ダメじゃんと思ったところに斜め上の方向からの妖怪ナンパを仕掛けられ、流石に理緒が驚き声を上擦らせる。
(「骨を褒められるとか……それとも本体が見えてて? どっちにしてもギロチンシティ怖っ――って、あれ?」)
 そこまで胸中で呟いて、理緒はふと気づいた。
(「……てことは、アイさん綺麗だし危なくない?」)
 気づいた理緒が隣に視線を向けると――。
『いやぁ、綺麗な筋肉だね』
『君の内臓を食べたい』
「おおお、お化けは遠慮しますっ!」
 案の定、やはり斜め上の妖怪ナンパにテンパってるアイがいた。
 幽霊苦手なアイにとっては、理緒以上の衝撃である。
「って、これでは推理が進みません!」
「まあまあ、アイさん。これはいい機会です」
 アイの肩に触れて宥めながら、理緒は声をかけて来たデュラハンに視線を向けた。
「女性のデュラハンでコンプレックスを持ってたりする人とかいません?」
 多少想定から外れているが、理緒はデュラハン達に聞き込みを始めた。
「じゃあ、うっかりの女性デュラハンさんは?」
 アイも自分の推理の裏付けになる情報を集めようと、デュラハン達に声をかける。
『コンプレックス?』
『服装に自信がないから引き籠りたいとかいうのは何人かいなかったっけ?』
『でも幻術で見た目はどうにでも誤魔化せるからなぁ』
『うっかりはなぁ』
『首を落っことすくらいのうっかりなら――』
『多分、この街の誰もが経験ある』
 デュラハン達が口々に告げてくる答えを、理緒とアイはその脳裏に刻み込んだ。

 引き籠り気味のデュラハンの情報と、うっかり者が意外と多いと言う情報を得た。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

空目・キサラ
お小夜(f18236)と
この山伏装束からするに。僕とお小夜は鴉天狗なんじゃないかな
動きやすいならば僕は構わないけれど

ふむ、首無し殺様妖事件か
確か某満開の下では首遊びをする女が出てきたな
お小夜。SFばかりではなく、サクミラ的文学も読むと良い

殺した相手の一部を持ち去るとはよくあることだ
もしかしたら首を持ち去るのはそれの類なのかもしれないが…
僕の見たてはね。これは恋慕からだよ
ええと、最近ではそういう類の恋慕はヤンデレっていうのだってね?

今回は死んだらそのしゃれこうべを頂戴な。そして冥婚しましょ、かな?
共に絶たない辺りはモノ書きとしての僕とは反りが合わないが、探偵としては理解できるトコがあるのさ


小夜啼・ルイ
キサ(f22432)と
うお、何だこのポンポンしたやつ。つか和装すっげぇ違和感…
鴉天狗か。ちょろっと聞きかじった事ある気がする

首無し殺妖事件とか、物騒な事があんのは何処の世界でも変わんねぇんだな
頭だけ持ってくってことは…目星から逆に予想すると、普通に爆弾にして使う気なんじゃねーの?
あとは、ほら。頭の中身取り出して水槽にブチ込むとか

お小夜って呼ぶな。それとSFの方がオレには読みやすいんだよ
…まぁ、その桜の森のは後で読んでやる

あー、ヤンデレね…何か、納得した
でもオレはヤンデレ理解出来ねぇわ
自分だけのものにしたいからって殺すまで行くのは、行き過ぎだと思うんだよ
(そういやキサは心中話書きだったな…)



●言えなかった
 ――どんな姿になりたい?
 首無し妖怪にそう訊ねられた時、小夜啼・ルイ(xeno・f18236)は答えに迷った。
 なりたい姿を思いつかなかったからではない。
 思いついたそれを、口に出すべきか迷ったのだ。
 転がって行った頭を身体にくっついたままに見えるような幻術が出来るのなら、ルイの希望を叶える事も可能だろう。
 1人でここに来ていたのなら、ルイはおそらく迷わずその希望を口にした筈だ。
 だが隣には今日も、空目・キサラ(時雨夜想・f22432)がいる。
「動きやすい姿ならば、僕は何でも構わないけれど」
「……オレも何でもいい」
 結局、ルイはキサラに迎合する形で口を開いた。
 それがキサラでなくても、誰かの前でルイが言える筈もない。

 ――幻でもいいから身長伸ばして欲しい、だなんて。

『そうかぁ……じゃあ、ほいっと』
 ボンッと2人の姿が煙に包まれる。
「うお、何だこのポンポンしたやつ」
 煙の中から、ルイの声が上がる。
 程なく煙が晴れると、ルイとキサラはどちらも黒を基調にした和装になっていた。
 動きやすいようにと言うキサラのリクエストを反映してか、脛で絞る裁付袴の下の足元は、一枚歯の天狗下駄ではなく、二枚歯の駒下駄になっている。
「んー。これは山伏装束だね」
 自分とルイの出で立ちを見比べて、キサラが口を開いた。
「黒い山伏装束と言う事は――僕とお小夜は鴉天狗なんじゃないかな」
『その通り。術はその内解けるから、鴉天狗姿、楽しんで行ってくれ』
 キサラの呟きに正解だと告げて、術者の妖怪は何処かへ去っていった。
「鴉天狗か。ちょろっと聞きかじった事ある気がする。牛若丸……だっけか」
「鞍馬山の鴉天狗の逸話だね」
 遠ざかる妖怪の背中を見やり呟くルイに、キサラが頷く。
「……つか和装すっげぇ違和感……」
 だがルイは、どうも謎のポンポン――おそらく梵天袈裟――が気になるのか、自分の身体をペタペタ触ってみていた。
 ルイの掌に伝わるいつものジャケットの感覚が、ポンポンが幻だと告げていた。

●この街に桜の森は無いけれど
「しかし――首無し連続殺妖事件か」
 カランコロンと下駄を鳴らし、キサラとルイはギロチンシティを歩いていた。
「確か某満開の下では首遊びをする女が出てきたな」
「首遊び? なんだそりゃ」
 行き交う妖怪達に事件を訊ねながら、とある文学作品を思い出したキサラの呟きに、ルイが判ってなさそうに首を傾げる。
「知らないのかい? お小夜。SFばかりではなく、文学も読むと良い」
「お小夜って呼ぶな。それとSFの方がオレには読みやすいんだよ」
 もうすっかりキサラに定着している呼び名に、ルイはささやかな抵抗を試みた。多分無駄だろうと知りながら。
「いつかお小夜が読む時の為に詳細は伏せるけど――首遊びに使う首は、生首さ」
「物騒な事があんのは何処の世界でも変わんねぇんだな」
 物騒なところだけを掻い摘んだキサラの説明を、ルイは軽く肩を竦めて受け流す。
 この世界はかつてUDCアースから逃げ込んできた妖怪達の世界なのだから、キサラが省いた部分を知っている妖怪もどこかにいるのだろうか。
「……まぁ、その桜の森のは後で読んでやる。それはさておきだ」
 ルイは脱線しかけた話を、事件に戻した。
「頭だけ持ってくってことは、目的があんだろ」
「ほう? 例えば?」
 ルイが口走った推測の続きを、キサラが促す。
「……目星から逆に予想すると、普通に爆弾にして使う気なんじゃねーの? あとは、ほら。頭の中身取り出して水槽にブチ込むとか」
「成程。それで、水槽を売っている店が無いか訊いていたのか」
 ルイの推理にこれまでの聞き込みの理由を、キサラは理解し――。
「頭の中身が漂う水槽か……いいね、中々に猟奇的じゃないか!」
 その推理の理解しがたい光景を想像し、喜色を浮かべていた。
「けれどね、殺した相手の一部を持ち去ると言うのは、よくあることだ」
 キサラはすぐに真顔に戻って、自分の推理を語り出す。
「もしかしたら首を持ち去るのはそれの類なのかもしれないが……」
「キサの考えは違うみたいだな?」
「首を持ち去られた被害者には、親しい間柄の異性の者がいたと言うじゃないか。そこから推測した僕の見立てはね。これは恋慕からだよ」
 ルイに向けてぴっと指を立てて、キサラは話を続ける。
「死んだらそのしゃれこうべを頂戴な。そして冥婚しましょ、かな?」
 冥婚。鬼婚、或いは幽婚――様々な呼び名がある。
 主に若くしてこの世を去った死者の霊を慰めるために伴侶を用意する、といった性質のものだとされているが、キサラの推理したそれは、慰めと言うより心中に近い。
「わっかんねぇ……」
「最近ではそういう類の恋慕はヤンデレっていうのだってね?」
 困惑するルイに、キサラがサラリと告げる。
「あー、ヤンデレね……何か、納得した」
 ルイもその言葉は知っていたようで、小さく溜息を吐いて頷いた。
 だが、納得と理解は別物だ。
「でもオレはヤンデレ理解出来ねぇわ。自分だけのものにしたいからって殺すまで行くのは、行き過ぎだと思うんだよ」
「ああ、確かに行き過ぎだ。けれども、行き過ぎていないなら、そもそもヤンデレと呼ばれる類にはならないだろう」
 再び溜息交じりに零すルイに、キサラは肩を竦めて返す。
「ああ……そういやキサは心中話書きだったな……」
「いや、共に絶たない辺りはモノ書きとしての僕とは反りが合わないよ?」
 キサラのヤンデレに対する理解の理由に思い至ったルイだが、当のキサラがそれをあっさりと否定する。
「だが、探偵としては理解できるトコがあるのさ」
「……やっぱオレにはわっかんねぇ……」
 何故か愉しそうなキサラの横で、ルイが盛大な溜息を零した。

 ――水槽の大量購入と、親しい異性の妖怪がいた被害者がいると言う情報を得た。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『デュラハン小玉鼠』

POW   :    大爆破
技能名「【爆撃 】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD   :    多爆破
自身が装備する【爆弾と化した自身の頭部 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    誘爆破
攻撃が命中した対象に【爆弾と化した自身の頭部 】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【他の頭部達が集まってきて誘爆】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピオネルスカヤ・リャザノフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●こうなりました
 聞き込みを終えた猟兵達は、自ずとギロチンシティの一角に集まっていた。
 被害者についての情報は、かなり細かいところまで集まったと言えるだろう。外向的な性格の者が多く、顔が整っている――美男美女と言われる者が多いとか。
 まあそれだけだったならば犯妖に繋がるにはまだ弱いが、被害者全員と関係がある女性デュラハンとなると、絞れてくる。
 更にもう一つ手掛かりとなるのが、デュラハン界隈の恋愛事情。
 最初の被害者の男性デュラハンは婚約したばかりで――しかし婚約した相手は、周りが交際相手だと思っていた妖怪とは違ったと言う。
 更に他の被害者も、異性の妖怪に親しい間柄の者がいた事を踏まえれば、さらに絞り込めると言うものだ。
 そして、最近水槽を大量に購入していて、大きな家を住居としている引き籠り気味の芸術家で、いつも眼鏡をかけている女性デュラハン。
 此処まで条件が一致する者が、何人もいよう筈がない。

 条件に一致するのはただ1人――ユノと言う名のデュラハンである。

 だが、ユノは自分が骸魂につかれていると知らない筈だ。
 家に踏み込んでも、シラを切り通されるだろう。調べれば持ち去った生首が出て来ただろうが、強引に踏み込めば騒ぎにもなろう。
 それより確実なのは――骸魂に乗っ取られている現場を押さえる事だ。

 そして猟兵達は、待った。
 夜になり、目星を付けた屋敷と言っても良さそうな大きな家から、甲冑姿の女性デュラハンが出て来るのを。
 昼間の街では、こんな昔ながらのデュラハン然としたデュラハンはいなかった。
 昼間とは雰囲気が打って変わって街中のギロチンが雰囲気を出しているギロチンシティの中を、猟兵達は甲冑姿の女性デュラハンの後を尾けていく。
 そして――。

『ふふ、ふふふ……! 今夜もこの子の中の嫉妬の恨みを芸術的に晴らしてあげる! 爆発は芸術よ! 臓物ぶちまけろぉぉぉ!』

 月明りの下、本性を現したデュラハン小玉鼠が頭を掲げる。
 今まさに爆弾としてぶん投げられようとしている頭は、瓶底の様に分厚い眼鏡をかけていて、夜風に長い金髪がなびいていた。
 それは昼間、目星を付けた家の窓から見えた、ユノの顔と同じであった。

=================================
 はっはっはっ!
 なるべく拾って混ぜ合わせた結果、拗らせてるリア充爆発しろ案件になりました。

 状況のお浚いです。
 時刻は夜。犯妖をつけて、本性を現した所に介入する形となります。
 場所は街中。そう広くもないですが、戦いに困るほど狭くはないです。
 なお、デュラハン小玉鼠を倒せば飲み込まれているデュラハン、ユノを救出する事が可能です。呼びかけ等では救出は出来ないので、遠慮なくぶっ倒してください。

 プレイングの期間についてですが、当方の都合で数日執筆時間の確保が難しくなりそうなので、7/14(火)8:30~ とさせて下さい。
 締切はツイッター、マスターページ等で別途告知します。
 少し日数空いてしまうので、それだと困ると言う場合は、キャラ宛てのお手紙などでご連絡いただければ調整検討します。
=================================
 うっかり忘れてました。
 1章でかかった幻術の変化ですが、継続しててもしてなくても良いです。かかる時間には個人差があるってことで、好きな様にどうぞ。
 なお、幻術による有利不利は特に発生しません。
=================================
穂照・朱海
〜妖刀捕物帳あけみ〜
犯妖はお前様です
閻魔も恐れぬ狼藉の数々
妖怪総大将が許しても
このあけみが許しはせぬ
いざ――成敗!

と、謡いながら舞い踊ります
(【ダンス】+傾城天津狐)
(和風ミュージカル風?)
舞に『首が突然愛しくなり抱きしめたくなる』といふ暗示を込めます

頭、顔、首は大切な部位なのです
爆破させるなど、もつてのほか

あと、爆殺は
美しいとは思いませぬ……
刃によつて命を奪う方が……
いえ、そこは如何でもよいですね

攻撃できぬ間に
速やかにその骸魂を斬り伏せん

飛んでくる敵の頭部は寛永通宝や輪入道をぶつけて軌道を逸らせます


仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

想像以上に嫉妬の炎で心身共々焦げ付いた敵だ…
嫉妬は罪だし何より爆発は芸術じゃない…さっさとぶちのめそう…

鎖の鞭を[ロープワーク]で振るい敵の腕に絡ませる[捕縛によるマヒ攻撃]で凶行を止めよう

敵が複製した頭部には【赤錆びた鉄の爪牙】による追尾する拷問具を放ち頭部をすべて[捕食し武器落とし]しよう

[ダッシュ]で敵の懐に飛び込み
霊剣を抜き[破魔と浄化と除霊]を用いた[属性攻撃]での一太刀を浴びせ彼女に取り憑いた骸魂を切り捨て嫉妬の恨みをさっぱりと晴らしてやろう…

派手な未来世界にりあ充という
選ばれた者を嫉む爆弾頭の怪人がいたな…
どの世界にも嫉妬する者はいるね…万国…いや万界共通か…



●芸術性の違い
『ふふ、ふふふ……! 今夜もこの子の中の嫉妬の恨みを芸術的に晴らしてあげる! 爆発は芸術よ! 臓物ぶちまけろぉぉぉ!』

 夜のギロチンシティに響いた犯妖――デュラハン小玉鼠の声に、穂照・朱海と仇死原・アンナは大体同じことを感じていた。
「爆殺は美しいとは思いませぬ……」
「うん、爆発は芸術じゃない……」
 朱海もアンナも、デュラハン小玉鼠の爆発に抱く芸術性を理解できなかったのだ。
 尤も――。
「爆殺より、刃によつて命を奪う方が……」
「処刑道具は相手に応じて使い分けてこそだ」
 気軽な気持ちで安易に妖刀を手にした朱海と、一族伝来の処刑人の技術を継いでいるアンナとでは、ここでも殺しに対する観念の違いがあるのだが。
「いえ、そこは如何でもよいですね」
「そうだね。嫉妬は罪だし……さっさとぶちのめそう……」
 お互いの意見の相違を飲み込んで、朱海とアンナはデュラハン小玉鼠に向き直った。

●舞と赤錆と爆発と
「犯妖はお前様です」
 妖刀『朱天狗』をスラリを抜きながら、朱海はデュラハン小玉鼠に言い放つ。
「閻魔も恐れぬ狼藉の数々」
 『朱天狗』の刃が伸びでもしない限り、デュラハン小玉鼠に届く距離ではない。だが朱海はそんな間合いを気にせず、妖気漏れる刃を振るい始めた。
「妖怪総大将が許しても このあけみが許しはせぬ」
 謡う様に朗々と声を張り、足の鈴を鳴らしながら舞う様に刃を振るい続ける。
 実際、それは謡であり舞であった。

 ――傾城天津狐。

「いざ――成敗!」
 ざんっと、朱海が『朱天狗』を振り下ろす。
『っ!?』
 ヒュッと刃が風を切る音が響いた直後、デュラハン小玉鼠は咄嗟に自分の頭を抱きかかえていた。
 古来より、剣を用いた舞というものは、妖魔神仏に捧げ、或いは鎮めるためにその技を伝えられているとされるものも多い。
 朱海の舞は、そこに込めた暗示で見た者の感情を操作すると言う、奇跡の域に踏み込だものであった。
 此度の舞に込めた暗示は、『頭が突然愛しくなり抱きしめたくなる』というものだ。
『ああ……どうして、この頭が愛しくて投げたくないなんて』
「頭、顔、首は大切な部位なのです。爆破させるなど、もつてのほか」
 突然湧いた感情に戸惑いながらも頭を抱きかかえ投げられずにいるデュラハン小玉鼠に告げながら、朱海は『朱天狗』で斬りかかる。
『くっ!』
 デュラハン小玉鼠は、朱海が今度こそ届く間合いで振るう刃を、大事に頭を抱えたまま甲冑と片腕の籠手で防いで何とかやり過ごしている。
 だが、甲冑で防げるのも限界がある。『朱天狗』が届くのも、時間の問題――。
『ああ……これはいけない。こんなに愛しくなる頭なんて――爆発させなきゃ』
「え?」
 デュラハン小玉鼠の抱えた頭がうっとりした表情で、朱海が理解しがたい言葉を吐いた直後――その頭が、ドカンッと爆発した。
 抱きかかえたままである。
「っ!」
 思わぬタイミングで起きた爆発から、咄嗟に地を蹴って距離を取る朱海。
 朱海の思惑通り、デュラハン小玉鼠は頭を投げられなくなった。
 だが与えた感情は『愛情』なのだ。
 何があったにせよ――宿主の記憶から嫉妬の情を拗らせ頭を爆弾化という業に至ったデュラハン小玉鼠に愛情なんぞ与えればどうなるか。
 何故か行きついた先は、爆発だった。
 って言うか、ほとんど自爆だった。
『こんなに愛しくなる頭なんていけない。こんな頭だから、この子はこんな嫉妬を抱えるようになったんだ。爆発させなきゃ』
「想像以上に嫉妬の炎で心身共々焦げ付いた敵だ……」
 まさかの自爆で起きた爆煙の中から聞こえるデュラハン小玉鼠の声に、アンナは別の世界で見たとある敵を思い出していた。
(「あれは派手な未来世界だったか」)
 確か『りあ充』という、選ばれた者を嫉んでいた怪人で――そう言えば、あれも頭が爆弾だった。
 どうも嫉妬や嫉みと言った感情にやられすぎた頭は、爆発するのだろうか。
「爆破などもつてのほかと」
『愛は時に爆ぜるもの!』
(「どの世界にも嫉妬する者はいるね……万国、いや万界共通か……」)
 頭を増殖させて襲いかからせるデュラハン小玉鼠と、銅銭の付喪神『寛永通宝』をぶつけて逸らしながら暗示を深めようとする朱海の声を聞きながら、アンナは胸中で呟きと溜息を零して、その手に鎖を構えた。
 ジャラララッと金属がこすれる音を響かせ、棘の生えた鉄球が飛んだ。
「投げさせないよ」
『手が使えなくても!』
 鎖の鞭を腕に巻き付け、爆弾と化した頭を投げるのを阻害してきたアンナに叫んで、デュラハン小玉鼠の周りに抱えているのと同じ頭が増殖していく。
「血肉に飢えた赤錆びた獣達よ、存分に喰らうがいい……」
 それを眺めながら、アンナも赤錆びた拷問器具を増殖させていた。

 赤錆びた鉄の爪牙――ラスティ・ネイル・ファング

 爆ぜる頭の群れを、戦闘用処刑道具が迎え撃つ。
 どちらも普通、増えたり飛んだりしないものだ。常識外れの群れと群れの衝突。処刑道具を砕こうとデュラハンの頭は爆ぜて、処刑道具は爆ぜる前に頭を捕食せんとする。
 数ではデュラハン小玉鼠の頭の方が明らかに勝っている。
 だが――。
『っ!』
 頭の数が多い筈のデュラハン小玉鼠の方が、次第に押されていた。
 デュラハン小玉鼠が頭を操るのは、念力だ。念じる事が必要なのだ。
 一方アンナの処刑道具は、それ自体が狼の群れが如く敵を追尾する性能を持って放たれていた。
 そこにアンナの意思はもう必要ない。
 念力で操らねばならぬデュラハン小玉鼠に比べて、アンナは余裕があった。
 デュラハン小玉鼠の注意が頭上に向いている隙に、一気に間合いを詰められる程に。
「その嫉妬の恨みをさっぱりと晴らしてやろう……」
『っ!? いつの間に!』
 デュラハン小玉鼠が気付いた時には、その懐にアンナが既に飛び込んでいた。
 揺らめく炎の様な刃を持つ霊剣『芙蘭舞珠』に破魔と浄化と除霊の力を込めて、アンナは剣を振り上げた。
「好機でございますね」
 そこを機と見た朱海も妖刀を振り下ろす。
『あぐっ!』
 霊剣と妖刀。二つの刃がデュラハン小玉鼠の甲冑を叩き、霊気と妖気が放たれる。
『こ、この辺にしといてやるー!?』
 2人にほぼ同時に間合いを詰められたデュラハン小玉鼠は、また自爆気味に周囲で頭を爆発させ、爆煙に紛れて離れていく。
 だが――デュラハン小玉鼠は気づいていなかった。
 他にも猟兵がいる事を。
 そして自身の攻撃は、ものすごく派手で判り易いと言う事を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
動機は…顔…
別に殺されるレベルの顔じゃないし
俺を殺した犯人は違う奴だな…
たぶん…

俺に気がある素振りはフラグだ
その女は後で大抵死体か殺人犯になる…
恋愛の話は…つらい…
嫌なこと思い出させるんじゃねえよ

無駄に傷ついたのでUC【第四の殺人】を発動する
どうせ死んでるから寿命はどうでもいい
ヤケクソじゃない

いえ…今は眼鏡雪女探偵はとりだったわね
助手や先輩を死なせた過去は忘れるわ…
私の推理によると…瓶底眼鏡をかけているタイプは
『眼鏡を取ったら美女』の確率が高いのよ…
なぎ払いで頭を割りつつ【部位破壊】で眼鏡を狙うわ

眼鏡のない美女はただの美女…
殺妖の罪を償ってリア充におなりなさい
…俺このまま眼鏡美女でいようかな…


ガーネット・グレイローズ
引き続き、デブ黒猫の姿で登場。
うう、やっぱりいつもより体が重い…気がする
(お腹の肉つまみ)

どうやらプロファイリングは的中したようだな。
見つけたぞユノ…いや、デュラハン小玉鼠!
さて、まずは彼女に取り憑いている、骸魂を倒さないと
いけないんだったな。
スラッシュストリングを<念動力>で操り、もう片手で
クロスグレイブで<砲撃>しながら、接近を試みるぞ。
すると敵は爆弾首を投げつけて攻撃してくるだろうから、
そのタイミングで変身を解き、【サマーソルトブレイク】の
<カウンター>キックで蹴り返す!人の頭を蹴るのは
申し訳ないけど、悪く思うなよ。
距離を詰めたら二刀流による〈二回攻撃〉で締めだ!


空目・キサラ
お小夜(f18236)と

見覚えのあるタイプだ
このタイプは、兎に角物理的に黙らせてしまうのが手っ取り早い
別に他者の腸がぶちまけられる事自体は構わないのだがね?
僕の服が汚れるのは御免被りたいね

首を投げるには必ず動作が必要だ。ならばその動作を封じてしまえば良い
少し骸魂の気を引いてくれ
それで隙が出来たら【其れは風に揺られる白百合にも似ていて】で縛り付けようか
骸魂の芸術的感覚と僕の芸術的感覚は方向が違うようだ
お小夜、懲らしめてやりなさい


そういえばお小夜
術をかけられる際に、僕が何でもいいと言った後僅かな間を置いて迎合したね
おそらく本来は何か頭にあったのだろうが、しかし躊躇われる理由があったのだと推察さ(略


小夜啼・ルイ
キサ(f22432)と

おいおい、何で嫉妬で爆発になるんだよ。オレの知っているヤンデレはこんなんじゃなくてだな…
理解出来ねぇって意味じゃあヤンデレと同じだけどさ…
いや腸ぶち撒けられるのよくねぇよ!キサはヤバイことサラッと零すな!

それよりも首投げられるのどうにかしねぇと
キサ、何か案があるか?
つかお小夜呼ぶな

気ぃ引くっつってもこんな相手…
芸術を盾にして爆破はただの八つ当たりだとか声かけてみる
淑やかさの欠片すらねぇよ

骸魂がキサのユベコで身動き取れない内に【Congelatio】
頭をよく冷やせっつーの


うるせー!何で間があったとか憶えてんだよ!
そこで無駄に探偵らしい観察眼発揮するな!!
…訊くな!



●探偵達(ともう1人)と記者は見ていた
 夜のギロチンシティに、爆音が響く。
 濛々と立ち込める爆煙。
 その中から頭を抱えたデュラハン小玉鼠が駆け出して行く。
 だがその先には、既に4人の猟兵が道を塞ぐように佇んでいた。
「おいおい……何なんだあれ」
 その1人――小夜啼・ルイは、デュラハン小玉鼠に信じられないものを見るような視線を向けている。
「犯妖だろう? どうやらプロファイリングは的中したようだな」
「いやそうじゃなく」
 まだ幻術でデブ黒猫姿のままのガーネット・グレイローズの言葉に、ルイはどこかで聞いた声だと思いながら、首を横に振った。
「何で嫉妬で爆発になるんだよ。何で愛しさ増しても爆発になるんだよ」
 実際、ルイは理解し難かったのだ。
 ここからでも、見えていた。他の猟兵がかけた暗示で己の頭が愛しくなって、それで何故か自爆するのも。
「オレの知っているヤンデレはこんなんじゃなくてだな……理解出来ねぇって意味じゃあヤンデレと同じだけどさ……」
「いやいや。ああ言うのはさほど珍しくはないと思うよ」
 ブツブツと呟くルイの横で、空目・キサラが事も無げに告げる。
「まさか見たことあったり……?」
「ああ。見覚えのあるタイプだ」
 うっそだろ――と言いたげにフリーズしてるルイに、キサラはさらりと返す。
「このタイプは、兎に角物理的に黙らせてしまうのが手っ取り早いんだ」
「それ、大抵の犯人に通じる手段じゃないか」
 説得と言う手段をあっさりと放り投げたキサラに、もう1人の探偵――まだ幻術で雪女姿の柊・はとりが口を挟む。
「まあ、黙らせた方が手っ取り早そうなタイプなのは、同感だが」
 口を挟んだもののあっさりと同意したはとりにも、ルイは何やら何か言いたげな視線をじぃっと向けていた。

 そんな話をしている内に、デュラハン小玉鼠も4人に気づき出していた。
 瓶底眼鏡の向こうで、視線が順番に4人を見比べ――。
『きぃぃっ、顔が良い!!』
「――は?」
 デュラハン小玉鼠から嫉妬に塗れた叫びと視線を向けられて、はとりの口から意外そうな声が漏れる。
『そう言う顔は、この子の記憶で敵だった……! ちょっといいなって思っていた人を横からかっ浚って行くのは大体そう言う顔のいいのだったの!』
「動機は……顔……いや、恋愛? なのか?」
 癇癪起こしたみたいなデュラハン小玉鼠の声に、はとりが溜息を零した。
「まあ、恋愛の話は……つらいな……」
 はとりは恋愛に良い思い出が無い。
 経験がないとか縁がないとか、そういう寂しい話ではない。
 もっと凄惨な話だ。
「俺に気がある素振りはフラグだ。その女は後で大抵、死体か殺人犯になるんだ」
「ほう? 一体、どんな生き方をすればそんな経験ばかりするんだい?」
 物言いからして一度や二度の経験ではなさそうな経験談。はとりの呟いたそれは、キサラの心を大いに刺激していた。
「おい、キサ。気になるとか言うなよ。そんな場合じゃ――」
 キサラの目が輝いている事に気づいたルイが、ストップをかけて指で示す。
『そこの雪女……爆発よ。爆殺して、身体はバラバラにして腸ぶちまけさせて頭だけ持ち帰ってやるわ!』
 デュラハン小玉鼠が、消えかけていた嫉妬の炎をメラメラと燃やしていた。
「ん? 僕は別に他者の腸がぶち撒けられる事自体は構わないのだがね? でも、服が汚れるのは御免被りたいね」
「いや腸ぶち撒けられるのよくねぇよ! ヤバイことサラッと零すな!」
 道徳心なぞ何処かに忘れてきたかのようなキサラの発言に、ルイが溜まらずツッコミの声を上げる。
「まあ大丈夫だろう」
 そんなルイの肩を、ぽんっと黒猫の――もといガーネットの手が叩いた。
「何やら燃えているようだが、私達に現場を押さえられて、逃げるどころか犯行を重ねられるなどと思うなよ、ユノ――いや、デュラハン小玉鼠!」
 言い放ち、ガーネットは石畳を蹴って飛び出した。

●投げて切って投げて凍って投げて蹴って
『黒猫は要らないのよ!』
 突っ込んで来るガーネットに対して、デュラハン小玉鼠は抱えていた頭をズラッ増やして投げつけ出した。
 触れれば当たる爆弾頭。
「っ!」
 だがそれは黒猫のガーネットが片腕を振るった瞬間、空中で真っ二つになる。
『え――?』
 スラッシュストリング――強靭な皮膚を持つ宇宙怪獣の肉体さえ切り裂く戦闘用のブレードワイヤーが、デュラハンの頭程度を斬り裂けない筈も無い。
『だったら増やせるだけ増やして!』
 だが、デュラハン小玉鼠は爆弾頭を増やせるようになっている。
 簡単に斬られてしまうなら、数を増やせば良い。
「うう、やっぱりいつもより体が重い……気がする」
 数が増えた爆弾頭を何とか捌きながら、ガーネットは自身の身体に視線を落とす。
 そこはまだ、黒い毛に覆われたデブ黒猫のぽってり真ん丸ボディであった。丸いお腹を摘まもうとすれば、指には何も触らない。
 幻であるのは判っている――判っていても、動きに合わせて黒いお腹がぽよぽよと揺れるのを見ていると、どうにも身体が重い気がしてきた。
 視覚情報と言うものは、時に意識にも影響するものだ。
 その影響からか、ガーネットの走る速度は、本人も意識しない程度に僅かにいつもより精彩を欠いていた。
(「術が解けている者もいる事を考えると、そろそろ解けてもよさそうだが――」)
 ガーネットが胸中で呟いた矢先、幾つかの爆弾頭が斬り裂かれた。
「……嫌なこと思い出させるんじゃねえよ」
 飛び散った氷の欠片の向こうには、氷の大剣を構えたはとりが立っている。
『飛んで火にいる雪女――!』
「そう言えば……今は眼鏡雪女探偵はとりだったわね」
 デュラハン小玉鼠の言葉に、はとりは自分もまだ幻術にかかったままと思い出す。
「助手や先輩を死なせた過去は忘れるわ……あれは、高校生探偵のものだから」
 言って思い出してしまってまた溜息を吐きながら、はとりは『コキュートスの水槽』を半ば凍りつつある手で構え直した。
 その刃は、冷たい輝きを放っている。

 第四の殺人――切り裂き城。

 霧に囲まれたホテルで起きた切り裂き殺人の模倣するはとりの業。
 掘り起こした心の傷の代償も命を蝕む冷気も、今のはとりは気にしていない。それだけの余裕が生まれていた。
(「俺を殺した犯人は違う奴だな……たぶん……」)
 はとりはデュラハン小玉鼠と、自分の過去に関係がないと確信していたからだ。
(「何か俺の顔がどうとか言ってたけど、あれは幻術のせいだろうし。別に殺されるレベルの顔ではないからな」)
 他者がどう思うかは別にして、はとり自身、自分の顔をそう評価していた。
(「それに、だ。良く考えたら、俺は爆殺されていない気がする」)
 もしもはとりがかつてそんな殺され方をしていたのならば、失っていたのは首から上だけじゃなかった筈だ。
 今頃は身体中継ぎ接ぎだらけになっていてもおかしくない。
 以上の推論から、はとりは確信に至ったのである。

「物理的に黙らせるにしても、首投げられるのどうにかしねぇとな?」
 ガーネットとはとりの2人がかりに、爆弾頭を投げて渡り合うデュラハン小玉鼠の戦い方を見やり、ルイが呟く。
「キサ、何か案があるか?」
「1つあるよ」
 視線を向けてきたルイに、キサラは指を一つ立てて頷いた。
「首を投げるには必ず動作が必要だ。ならばその動作を封じてしまえば良い」
 キサラの言葉に、ルイも成程と頷く。
 念動力でも動かせるが、それでは精度が落ちるのは既に証明されている。
「というわけでお小夜。少し骸魂の気を引いてくれ」
「そこはオレかよ。つかお小夜呼ぶな」
 いつの間にやら無茶ぶりに慣れてきた自分に溜息を零しながら、ルイはキサラにひらひらと手を振って、デュラハン小玉鼠に向かって歩いていく。
(「気ぃ引くっつってもこんな相手……やっぱあれしかないか」)
 歩きながら思案するルイだが、幾ら考えても――1つしか思い浮かばなかった。
「芸術を盾にして爆破はただの八つ当たりだ。淑やかさの欠片すらねぇよ」
『べ、別に淑やかさ何か求めてないし! 嫉妬もしてないし!』
 ルイの一言、効果覿面。
 投げた頭を念動力で操るのも忘れて、デュラハン小玉鼠が叫びを上げる。
「ぎいぎいと揺れていた其れは、僕には俯きがちに咲く白百合の様にも見えたのだ」
 その瞬間、ルイよりも後方で、キサラはデュラハン小玉鼠を指さして告げていた。

 ――其れは風に揺られる白百合にも似ていて。

 その指先に絡めていた鋼糸が解けて放たれる。鋼糸を使ったキサラの捕縛術が、デュラハン小玉鼠の腕を甲冑を着込んだ身体に縛り付けた。
「チャンスだ、お小夜。懲らしめてやりなさい」
「はぁ……頭をよく冷やせっつーの。凍ってろ」

 ――Congelatio。

 もうキサラにお小夜と呼ばれるのにツッコむ気力も無くなったのか、ルイは投げやりに言いながらも絶対零度の冷気で、デュラハン小玉鼠の爆弾頭を凍らせていく。
『なっ……まだ、凍ってない頭を――』
 次々と凍らされていく頭に、デュラハン小玉鼠がまだ凍っていない爆弾頭を掻き集めようとする。
 その瞬間、氷の刃が閃いて、ぱりーんっと眼鏡が割れた。
「私の推理によると……瓶底眼鏡をかけているタイプは、『眼鏡を取ったら美女』の確率が高いのよ……」
 はとりが薙ぎ払った『コキュートスの水槽』は、デュラハン小玉鼠の爆弾頭から、かけている瓶底眼鏡だけを器用に叩き割ってみせる。
『ちょ! 眼鏡取ったら見えないじゃない!!!』
 眼鏡を落とされたデュラハン小玉鼠の頭の動きが、急にフラフラになる。
『この眼鏡じゃなきゃこの子の視力じゃダメなのよ。なのに、この眼鏡が合う顔なんてどこにもないのよ!』
「だからって、何で顔を眼鏡に合わせようとしてるの」
 幾つもの頭で一斉に叫ぶデュラハン小玉鼠に、はとりが冷たく返す。
「貴女が自分に似合って且つ見える眼鏡を探す努力を怠っただけ。眼鏡のない美女はただの美女……殺妖の罪を償ってリア充におなりなさい」
『っ!』
 はとりの説教じみた言葉に、デュラハン小玉鼠がついに抱えていた頭が身体から離れて念力で浮かび上がり――。
「そうはさせない」
 ガーネットはワイヤーを操っていたのとは反対の手でクロスグレイブを構えていた。
 十字架型の砲塔から放たれた光が、爆弾頭を撃って吹っ飛ばす。
『ああっ、しまった! 爆弾頭が無事なら、撃ち合いに負けないのに』
「残念ながら、私の狙いは撃ち合いではなくてな」
 悔し気なデュラハン小玉鼠に返して、ガーネットはクロスグレイブを前方に放り投げると同時に駆け出した。
 地面に立ったと言うより半ば突き刺さった巨大な十字架を足場に、黒猫からいつもの姿に戻ったガーネットが跳び上がる。
「ん? ここで戻ったか……丁度いい!」
 幻術が解けたのを自覚しながら、ガーネットは高く跳躍し――足を振り上げた。
「人の頭を蹴るのは申し訳ないけど、悪く思うなよ!」
 それはグレイローズ家秘伝の足技。

 ――サマーソルトブレイク

 蹴り上げた爪先が空中で弧を描く宙返りキックを、ガーネットはデュラハン小玉鼠に背中を向ける格好で放っていた。
 さっき撃って飛ばした爆弾頭が、オーバーヘッドキックの要領で蹴り飛ばされる。
 取り憑いた小玉鼠の能力で爆弾となっただけあって、ガーネットが蹴り飛ばした頭はまるでサッカーボールの様に真っすぐ飛んで行く。
 どんっ!
 その先でルイの冷気で凍り付いていた頭にぶつかって――。
 どんっ!
 飛んだ先でやはり凍っていた別の頭に更にぶつかって――ガーネットの蹴り飛ばした頭は、凍った頭に次々とぶつかって不規則な軌道を描いていた。
 どんどんどどどどどどどどどどんっ!
 なまじ頭を増やしていただけに発生した、ピンボール現象。
「これは……流石に予想外だな」
『な、な、な――っ』
 それは起点となったガーネットも、デュラハン小玉鼠も予想外。念動力で頭を操つろうにも、反応が追いつかない。
「そういえばお小夜」
 ピンボール現象を眺めながら、キサラは気になっていた事を思い出していた。
「幻術をかけられる際に、僕が何でもいいと言った後、僅かな間を置いて迎合したね」
「うるせー! 何で間があったとか憶えてんだよ!」
 ぽんっと肩を叩いてきたキサラの表情に嫌な予感しか感じられなくて、ルイは思わず視線を逸らす。
「あの時、おそらく本来は何か頭にあったのだろうが、しかし躊躇われる理由があったのだと推察されるわけで、お小夜が言うのを躊躇う変身と言うとだね――」
「そこで無駄に探偵らしい観察眼発揮するな!! ……訊くな!」
『ぎゃんっ!?』
 キサラの追及を何とか躱せないかとルイが声を張り上げる横で、ボールと化した爆弾頭はついにデュラハン小玉鼠に当たって――ドカンッと爆発していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイ・リスパー
【電脳探偵団】
「私のプロファイリングによって絞り込まれた犯人像……
その推理に従えば、今回の事件の犯人はあなたです!」

って、え?
もう犯人だってわかってる?
そんなぁ。

「とにかく、そういうわけで、連続首なし殺人事件の犯人として倒させてもらいます!」

【マックスウェルの悪魔】で炎の矢を生み出して撃ち出します。
敵の反撃は【ラプラスの悪魔】によるシミュレーションで回避です!

「頭部を投げて爆破してくるのはお見通しですっ!
……って、頭部?
きゃっ、きゃあああっ!」

そ、そういえば、相手はお化けなんでしたーっ!
生首が飛んできて破裂する光景とかどんなホラーですかーっ!

あまりの恐怖に理緒さんに泣きながら抱きつくのでした。


菫宮・理緒
【電脳探偵団】

うふふふふふふ……ついに正体を現したね。
雨の日も風の日も張り込んだ甲斐があったというものだよ!
(いや、してないけど)

さぁ、こんなときはあのセリフだよね!
「あなたを犯人で」(言い終わる前に爆発)
せめて言い終わるまで待ってくれてもよくない!?
……まったく、早すぎるのも嫌われるよ?

って……うわぁ。
頭が無限にでてきて爆発するとか、シュールすぎないかな……。
ん?あたま?

そ、そいえば、アイさん、だいじょ……ぶなわけないよね!

アイさんの負担を軽くするためにも。
【虚実置換】で首を消していくことにしよう。

こ。怖かったら抱きついてもよかですよ?(かむかむ)
といいつつ、抱きしめちゃおうかなー。



●電脳探偵団VS犯妖
『はぁっ……はぁっ……』
 デュラハン小玉鼠は蹴り返された頭部の爆発に紛れて、脇道に逃げ込んでいた。
(『駄目……勝てっこない』)
 いくら爆弾頭を増やしても、猟兵相手ではまともに戦っても勝てない。
 そのくらいの判断は嫉妬に狂った爆弾頭でもついていた。
 だが、地力で勝てなくても、土地勘はデュラハン小玉鼠の方が上の筈だ。地の利を活かせばまだ何とかなる――デュラハン小玉鼠はそう思っていた。思いたかった。
 だが、猟兵の探偵はまだいるのだ。
「うふふふふふふ……」
 響いた含み笑いに、デュラハン小玉鼠が足を止める。
 先に続く階段の上。そこに行く手を遮るように2つの人影が立っていた。その片方が、足を止めたデュラハン小玉鼠をびしっと指さす。
「ついに正体を現したね。雨の日も風の日も張り込んだ甲斐があったというものだよ!」
『そ、そんなに前から!?』
 人影――菫宮・理緒のハッタリを真に受けて、デュラハン小玉鼠が抱えた頭を驚きで目を丸くする。
(「張り込んでないけどね。ノリのいい犯妖だなぁ」)
「さぁ、こんなときはあのセリフだよね! アイさん、どうぞ!」
 胸中で呟きながら促す理緒に、アイ・リスパーが無言で頷く。
 一歩前に出たアイは瞳に自信を漲らせ、階段の上からびしっとデュラハン小玉鼠を指さし口を開く。
「私達、電脳探偵団のプロファイリングによって絞り込まれた犯人像……その推理に従えば、今回の事件の犯人はあな――」
 ドカンッ!
 アイが言い終わるのを待たず、爆音が響いた。
『ちっ……不意打ちで先制しても、やっぱり倒せないか』
 立ち込める爆煙の中に変わらず立っている2つの人影を見とめて、デュラハン小玉鼠が舌を打つ。
「まさかの不意打ち!?」
「せめて言い終わるまで待ってくれてもよくない!?」
 問答無用で攻撃してきたデュラハン小玉鼠に、アイと理緒が抗議の声を上げる。
『え、だってもう犯妖だって何度も言われてるし……待つ必要なくない?』
「え? もう犯人だってわかってる? そんなぁ」
 デュラハン小玉鼠から返ってきた答えに、アイが肩を落とす。
「……まったく、早すぎるのも嫌われるよ?」
『なんでこの流れでこっちが悪いみたいになってるの!?』
 しょんぼりしたアイを慰めながら、温度を下げた視線をじとり向けてくる理緒に、デュラハン小玉鼠が言い返す。
「とにかく、そういうわけで、連続首無殺妖事件の犯人として倒させて貰います! そっちがその気ならこっちも遠慮はしません!」
 気を取り直したアイの周りに、電脳のウインドウが幾つも浮かび上がった。
「エントロピー・コントロール・プログラム、起動します」
 まずは熱制御プログラム――マクスウェルの悪魔を起動し、幾つもの炎を生みだす。
「続けて初期パラメータ入力。シミュレーション実行」
 アイは熱制御プログラムを走らせながら、別の電脳ウインドウに次のプログラムを並列実行させていく。
「対象の攻撃軌道、予測完了です」

 ラプラスの悪魔――対象の予測プログラム。

 その予測演算がはじき出した軌道を、炎が矢となって迸った。
『うう……本当に遠慮がない。でも、炎なら!』
 アイが放った炎を浴びたデュラハン小玉鼠が、頭爆弾を増やしていく。炎ならば、先の戦いの様に頭を凍らされたり斬られたりして、不発に終わる事もあるまい。
「うわぁ」
 頭だけがどんどん増えていく光景に、理緒の口から感嘆やら驚きやらが入り混じった声が漏れる。
「頭が無限にでてきて爆発するとか、シュールすぎないかな……」
 デュラハン小玉鼠が何度でも頭を爆弾にできると言うのは聞いている。
 聞いてはいても、理緒はこの光景にシュールさを感じずにはいられなかった。
「ん? あたま? 無限に?」
「頭部を投げて爆破してくるのはお見通しですっ!」
 自分の言葉が引っかかって首を傾げた理緒の耳に、新たな電脳プログラムを走らせるアイの声が届く。
「そ、そいえば、アイさん、だいじょ――」
「いくら頭部を増やしても……って、頭部?」
 理緒が隣に首を向けると、電脳ウインドウから顔を上げたアイが、空中に浮かぶ幾つもの生首を直視してしまって――丁度フリーズしたところだった。
『? 良く判らないけど――今だ!』
 アイの動きが止まった事を疑問に感じながら、デュラハン小玉鼠が頭を一発ドカンッと爆発させる。
 爆風と爆炎と、あと砕け散った瓶底眼鏡の破片とか、色々飛び散った。
 あまり正体を詳しく調べたくない球体なんかが、アイの頬を掠めて飛んで行く。
「きゃっ、きゃあああっ!」
「あー……大丈夫なわけないよね!」
 悲鳴を上げたアイの肩を、理緒の手がそっと叩く。
「そ、そういえば、相手はお化けなんでしたーっ! 生首が飛んできて破裂する光景とかどんなホラーですかーっ!」
『そうか……そう言えば今の私は小玉鼠が取り憑いたデュラハン……そしてデュラハンも妖怪で、首が爆発するのはホラー現象になるんだった!』
「いや。忘れてたアイさんもアイさんですが、自分がホラーになるってことを忘れてるのもどうなんですか?」
 アワアワと肩を震わせるアイを宥めながら、自身のホラーさを忘れかけていたデュラハン小玉鼠に理緒がツッコむ。
『怖がりもしないで頭斬られたり食われたり凍らされたり蹴り飛ばされたりすれば、誰だって忘れると思う……』
 今宵、他の猟兵に合わされた被害を溜息交じりに並べるデュラハン小玉鼠。
 だが次の瞬間――その全ての頭が眼鏡越しにギラリッと目を輝かせた。
『フフフフ……よく見たらあなた達も可愛い顔してるし、いつ爆発するか判らない頭が増える恐怖で泣かせてあげる!』
 デュラハン小玉鼠の口が、ニタァッとした笑みになっていた。
 爆殺からすると大分グレードが下がっているのに、気づいているのだろうか。
「り、理緒さん! 増えた! 増えてます!」
「怖かったら抱きついてもよかですよ?」
 アイもアイでそこに気づいている様子もなく、演算する余裕も失って涙目を向けてくるので、理緒は内心苦笑しつつ腕を広げる。
 ひしっと抱き着いてきたアイを片手で抱きしめながら、理緒は片手でタブレットモードのパソコンを操作した。
「レタッチ、アンド、ペースト――っと」
 タンッと理緒の指がモニターを叩いた直後、忽然と爆弾頭が消える。
 モニタに映っているのは、少し前のこの路地の光景。そして、今まさに撮影したアングルの光景の2つ。
 理緒はデュラハン小玉鼠の頭が写っていない方の画像から一部を切り取って、デュラハン小玉鼠の頭が写っている方の画像の同じ位置に重ねて貼り付けた。
 その度に、爆弾頭が掻き消えていく。

 ――虚実置換。

 画像と現実を入れ替える理緒の電脳魔術。
 二次元で三次元を書き換えるなどと言う、物理法則を無視した奇跡の所業。
『え……な……何が起きているの?』
 デュラハン小玉鼠の目には、爆弾頭が突然消えたと映っていた。
 パソコン自体も恐らく馴染みは無いだろう。デュラハン小玉鼠は理緒が何をしているのかも理解できず、何が起きているのか、まるで判らない。
 感じた事の無い恐怖に急かされるように、デュラハン小玉鼠は踵を返して2人の前から逃げ出していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榎・うさみっち
【ニコうさ】
※幻術は解除
うーむ、妬み恨みが骸魂を引き寄せて
殺人事件まで起こしてしまうとは…
嫉妬の炎、恐るべし!!
若いんだからさぁ~もっと焦らず行こうぜぇ~?
チラッチラッと左手薬指の指輪を見せつけつつ

ってギャー!!頭が増えた!!
しかもこっち来るぅー!
こんな時は!いでよワルみっち軍団!
敵の頭が爆発する前に、こいつらの超早業で次々と狙撃!
ワルみっち軍団の何人かは
ニコの攻撃を掻い潜った奴を狙う担当にして効率良くいくぜ!
空中爆破だー!
…うーん、とても放送出来ない光景だ…

ってぴゃああああ!!1体すり抜けて近づいてきた!
へいニコ!パス!!
思わずうさ耳でスパーンとレシーブして
ニコの方に送るぜ!ついうっかり!


ニコ・ベルクシュタイン
【ニコうさ】
※幻術は解除
己の知らぬ間に好き勝手をされるというのはユノ嬢も困るだろう
疾く解決せねばな
…嫉妬をするのはひとの性と言ってしまえば其れまでだが
殺妖まで犯して良い理由にはなるまいよ

うさみよ、その、何だ……
とても嬉しい事この上ないのだが、敵を煽ってはいかんぞ
かく言う俺も手袋の下に嵌めた指輪に手を触れるが

おいばかやめろ軽率に頭部を増やすな! ゾッとする!
【疾走する炎の精霊】の「範囲攻撃」は散弾銃さながらに
うさみと揃って爆破される前に遠距離から「一斉発射」だ
絵面が酷いな、確かに此れはお茶の間には届けられん

うわあびっくりした!? 何がパスだ馬鹿者!
其の可愛いたれ耳をそんな風に使うんじゃない!!


ユディト・イェシュア
あの方が犯人…いえ犯妖ですね
何やら事情がありそうですが
これ以上被害者を出すわけにはいきません

倒せば骸魂からは解放されますが
彼女の心にくすぶる感情までなくなるわけではなさそうです
できれば事情を聞いてみたいですね

恋愛を謳歌しているデュラハンを妬んでいた?
あなたも美しい方だと思うのですが…
たまたま縁に恵まれなかっただけではないでしょうか

頭が爆弾…しかもそれがたくさんというのは…
攻撃もしにくいですし爆発されても困ります
出来る限り頭部は避け身体の方を狙いましょう
頭がたくさんだと視界はどうなっているのでしょう
死角がないのか逆に見えすぎてどこの視点の情報かわからなくなりそうなものですが…
弱点を探っていきます



●注がれた2杯の油
 脇道から飛び出したデュラハン小玉鼠が、逃げ道を探して頭をぐるりと回す。
『この際、一度逃げてほとぼりを冷ましてあいつ等がいなくなってから――』
「通行止めだぜ!」
「そう易々と逃がしはせぬよ」
 いっそ逃げると言う考えを口走るデュラハン小玉鼠の前に、榎・うさみっちがぶーんっと飛び出し、ニコ・ベルクシュタインがそのすぐ後ろで睨みを効かせる。
 2人とも、既にいつもの恰好に戻っていた。
『くっ……まだいたのね……』
 ニコの目つきに気圧される様に、デュラハン小玉鼠が後退る。
「いたぜ! 妬み恨みを拗らせてるのも聞かせて貰った!」
 相手がビビッていると気づいてか、うさみっちが強気にびしっと指さし告げる。
「嫉妬を拗らせて骸魂を引き寄せたのか、骸魂のせいで拗らせたのかは判んねえけど、それで殺人事件まで起こしてしまうとは……嫉妬の炎、恐るべし!!」
「嫉妬をするのはひとの性。妖怪とてそうであろう」
 その情念の強さだけは認めるうさみっちに、ニコも頷く。
 とは言え、それは肯定ではない。
「言ってしまえば其れまでだが、殺妖まで犯して良い理由にはなるまいよ」
 淡々と、ニコはデュラハン小玉鼠に告げる。
「しかもその嫉妬は、ユノ嬢の記憶を読み取ったものだろう。己の知らぬ間に好き勝手をされるというのはユノ嬢も困るだろう」
『う、うるさい! 顔が良くて眼鏡も似合ってる日焼け野郎め!』
 だがデュラハン小玉鼠の反論は、ニコの顔立ちに向かって飛んできた。
「いや、この肌は地なのだが……」
『どーせ、顔の良さで寄ってきた女を振ったりしてたんでしょ!』
「おい待て」
 嫉妬で妄想を膨らませ、話を聞かずにあらぬ疑いをかけてくるデュラハン小玉鼠に、ニコがますます眉根を寄せる。
「うさみの前で根も葉もない事を言うのはやめて貰おうか」
 ゴゴゴゴッと音が聞こえてきそうなほどに、ニコの瞳に静かな怒りが燃え上がる。
『うっ……だって……』
 その迫力にデュラハン小玉鼠が後退る。
「まぁまぁ」
 そこに余裕の笑みで割って入るうさみっち。
「若いんだからさぁ~もっと焦らず行こうぜぇ~?」
 宥めるふりして、うさみっちは左手をチラッチラッとデュラハン小玉鼠に向ける。
『そ、それは……!』
 わざとデュラハン小玉鼠の視界に入る様に見せつけるうさみっちの左手薬指には、その小さな指に合わせた指輪が輝いていた。
「うさみよ、その、何だ……」
 自慢気なうさみっちを嗜めるニコだが、先ほどの怒気はすっかり和らいでいた。
「とても嬉しい事この上ないのだが、敵を煽ってはいかんぞ」
 それどころか、左手の手袋の下を気にするように右手を添えていた。その仕草で、その下に同じものがあるであろうことが判る。
 これはもう、リア充の証に他ならない。

 リア充――それは、嫉妬の炎に狂ったものにとって天敵。

 どこまで進んでいるか?そんな事は関係ない。
 指輪を見せただけ?そんな事も関係ない。
 目の前に!リア充が!ペアで!いるのだ!
 それだけで、デュラハン小玉鼠の中で、嫉妬の炎はガソリンで着火したキャンプファイヤーの如く燃え上がってしまっていた。
『よくも……』
『よくも……』
『よくも私の前でそんな指輪を見せつけたなぁ……』
 デュラハン小玉鼠の頭が増えていく。
 しかも長い金髪はゆらゆらと蠢き、表情があった筈の顔は真っ黒に染まって、瞳だけがぎらぎらと輝いている。
「ギャー!! なんかヤバめの頭が増えた!!」
 それを見たうさみっちは、流石に吃驚してニコの背中にぴゃっと回り込んでいた。
「しかもこっち来るぅー!」
「おいばかやめろ軽率に暴走したっぽく頭部を増やすな! ゾッとする!」
 引っ込んだうさみっちを背にかばうように出ながらも、この光景にはニコも流石に背中に嫌な汗をかきそうになっていた。

●そして、3人目も
「あの方が犯妖ですか」
 ユディト・イェシュアが合流したのは、うさみっちとニコに煽られたデュラハン小玉鼠が次々と増やす爆弾頭が真っ黒に染まっていく所だった。
「何やら事情がありそうですが……」
 ユディトには、他人が纏うオーラの色が視えるという能力がある。
 今、ユディトがデュラハン小玉鼠に見えているオーラの色は、黒とも赤とも毒々しい紫とも謎のどどめ色ともつかない、形容しがたい色だった。
 どれほどの情念が燃えれば、こうなるのか。
「これは……どちらの色なのでしょう?」
 全ての爆弾頭に視えているオーラが、宿主のものか、骸魂のものか。最早こうなってしまっては、ユディトにも判らなくなっていた。
 だがどちらにしても、倒して解放したところで、これほどくすぶる感情がそれで消える保証があるとは、ユディトは思えなかったのだ。
 できれば、話をしたいところだ。
 だがすでに、まともに話は出来そうにない。
『おのれ、リア充め……恋愛上手め……』
「ふむ……」
 だからユディトは、デュラハン小玉鼠の頭が吐いた恨み節から推測しようとした。
 そう言えば、ここに着く前には『顔が良くて――』とか、『女を振ってた』とか言う声も聞こえていた。
「恋愛を謳歌しているデュラハンを妬んでいた? ですが、宿主の方も、美しい方だと思うのですが……」
 ユディトは、ただ骸魂から救った後の宿主の事を考えただけだ。
 煽るとか、そんなつもりは毛頭なかった。
 だが――。
「たまたま、縁に恵まれなかっただけではないでしょうか?」
『たま……たま……?』
 もう真っ黒になったデュラハン小玉鼠の頭が、ぎぎぎっとユディトの方を見る。
『何度までならたまたまになると? 一度? 二度? この子の記憶に、振られたり、告る以前に砕けた記憶が何回あるか言ってあげましょうか――!』
「それはやめてあげて下さい」
 2度目の油を注いでしまったと気づいたユディトの前で、デュラハン小玉鼠の爆弾頭は限界まで増えていった。

●ニコうさスナイパーズタイム
『爆発しろ……』『爆発しろ……』『爆発しろ……』
『爆発しろ……』『爆発しろ……』『爆発しろ……』
 デュラハン小玉鼠の全ての爆弾頭が、怨念めいた呪詛を吐きながら飛んで来る。先に別の猟兵達との戦いの中で、自分がホラーな存在である事を思い出したのも拍車をかけているのかもしれない。
「これだけ頭が多いと、視界はどうなっているのでしょう?」
 そんなホラーな光景に、ユディトは警戒を露わにしていた。
「全てが見えているなら死角がなさそうですが、逆に見えすぎてどこの視点の情報かわからなくなりそうなものですが……」
 しかも正気じゃなさそうなのが、また性質が悪い。
「しかも全てが爆弾頭ですし……攻撃しにくいですね。爆発されても困りますし」
 ユディトの得意とする武器は、銀の戦棍だ。
 其れなりの長さはあるが、近接武器の範疇である。
「そういう事なら俺達に任せてくれ。いいな、うさみ」
 攻めあぐねるユディトに告げて、ニコが真紅の銃身を持つ精霊銃『エレメンタル・ワン』を構えた。
「仕方ねえ!」
 それを見たうさみっちも、腹をくくって『うさみっちばずーか』を構えた。
「こんな時は! いでよワルみっち軍団!」
 ドカンッ、ドカンッ
 『うさみっちばずーか』が火を噴く度に、次々と真っ黒な砲弾が放たれる。
 ――否。
 黒い砲弾に見えたのは、マフィア風の黒スーツ&真っ黒グラサンで揃えた何だかワルそうなうさみっち――ワルみっち軍団だ。

「契約の下に疾く来たれ、我が炎の愛し子よ」
「うさみっち様の一撃からは逃げられないぜ! 喰らえー! 空中爆破だー!」

 ニコが精霊銃の引き金を引くと同時に、うさみっちが声を上げた。
 炎模様が描かれた銃身から放たれた散弾の様に弾ける炎弾と、ワルみっち軍団がそれぞれ手にした様々な銃から放たれた弾丸が、爆弾頭を撃ち抜いていく。

 疾走する炎の精霊&でんこうせっかのワルみっちスナイパー!

 ニコとうさみっちが選んだ手段は、射撃型の技で爆弾頭が迫る前に全て撃ち落としてしまおうと言うものだった。
「うさみ、俺は5発目だ」
「おう! ワルみっち! ニコのリロードの穴を埋めろ!」
 ニコとうさみっちの息のあったコンビネーションと、ワルみっち軍団の手数があれば、それは途切れる事なき連続射撃となる。
 結果、空中で次々と撃ち砕かれる爆弾頭。
「……うーん、とても放送出来ない光景だ……」
「うむ。絵面が酷いな、此れはお茶の間には届けられん」
 まあ何と言うか、本来頭部から飛び出したりしない筈のものがボトボト落ちてくるわけで、割とスプラッターな光景であった。
 そんな光景に、思わず半眼になっていたからだろうか。
 ちょーっとだけ銃撃に出来た隙間を縫って、爆弾頭がすぐそこまで迫っていた。
「ってぴゃああああ!! 1体すり抜けて近づいてき――」
『爆発しろぉぉぉぉ』
 とか言ってる間に、爆弾頭はうさみっちのすぐそこまで迫っていて――。
「へいニコ! パス!!」
 スパーンッ!
 反射的に首を振ったうさみっちが、トレードマークの垂れ耳で爆弾頭を吹っ飛ばす。
「うおわっ!」
 射撃体勢を取ったままだったために手が塞がっていたニコは、咄嗟に爆弾頭をキャッチできなかった。
 そうなると、どうなるか。
 嫉妬の狂気で目をギラつかせた爆弾頭が、ニコの目の前を通り過ぎて落っこちていく事になるわけである。
「ふんっ!」
 咄嗟に爆弾頭を蹴り飛ばし、ニコはぐるんっとうさみっちに視線を向けた。
「何がパスだ馬鹿者! 流石に吃驚したぞ!」
「てへ! ついうっかり!」
「うっかりで其の可愛いたれ耳をそんな風に使うんじゃない!!」
 ぎゃいぎゃいと言い合いを始めたニコとうさみっちの頭上では、ワルみっち軍団が残る爆弾頭をせっせと撃ち落としていた。

●光の導き
 絶え間ない射撃でスプラッタが降り注ぐ間も、爆弾頭のうっかりパスの間も、ユディトは微動だにせずデュラハン小玉鼠に視線を向けていた。
「俺には視えます……あなたの強さも弱さも」

 ――黎明の導き。

 ユディトには、相手の纏うオーラが視える。
 オーラがその者の心理状態のみならず――その者の弱点も、オーラの違いとなってユディトに視せるのだ。
 爆弾頭の対処はニコとうさみっちに任せて良いと踏んだユディトは、弱点の見極めに専念していた。
(「骸魂の弱点は――どこに――って、これは」)
 デュラハン小玉鼠の弱点を探している内に、ユディトは気づいた。デュラハン小玉鼠のデュラハンの身体から、全ての爆弾頭へオーラが流れ出ている事に。
 その起点は――。
「成程……視えましたよ」
 ユディトは撃ち砕かれる爆弾頭の残骸を掻い潜り、デュラハンの身体の方に迫る。
『しまっ――』
「頭を全て手放したのは、失敗でしたね!」
 ユディトが振り下ろした銀の戦棍が、デュラハンの首無し部分を叩く。人間で言えば首の付け根に当たる部分である。
『きゅぅ……』
 弱点に強烈な一撃を叩き込まれたデュラハン小玉鼠が目を回し、ぶっ倒れる。
 まだ幾つか残っていた爆弾頭も、1つを残して全て消えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『ごいのひさま』

POW   :    ゆらゆらひのたま
自身が装備する【青と橙の鬼火】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    ごいごいふれいむ
レベル×1個の【青と橙】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ   :    ついてくる
攻撃が命中した対象に【青か橙の炎】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と発生する「青と橙の鬼火」】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●鼬ならぬ鼠の最後っ屁
 ――クワァッ。
 ――クワァッ。
 まだ夜明け前のギロチンシティの空に、鳥の声が響いていた。
『う、ぅぅ……』
 シュゥゥゥゥ――。
 倒れ伏し、呻くだけのデュラハン小玉鼠の頭と身体から、妖気の様な黒いものが昇っていく。それは空中で一つに集まり――真っ黒な塊となった。
 その中心には赤い瞳が二つ輝いていて、よく見れば短い手足とくるんっと真ん中で丸まった短い尻尾が伸びていた。
 小玉鼠。
 デュラハンのユノに取り憑いていた骸魂である。
『ああ……何という事。この子の中の嫉妬が燃え尽きてしまった』
 そりゃあ、あれだけドカンドカンと爆発していれば、積もり積もった嫉妬だって尽きると言うものだろう。まだまだあるとか言われる方が、何と言うか、こわい。
『幽世に辿り着けた妖怪が嫉ましい……だから心の底に違う種類の嫉みをため込んだそのデュラハンに憑いたのに、良くも……』
 小玉鼠がこのデュラハン――ユノを選んだ理由は、嫉み繋がりだったようだ。
『だけど残された力も僅か……私に出来る事はもう何も……』
 ふよん、ふよん、と風船のように浮き上がっていく小玉鼠。
 このまま諦めて成仏していく――のだったら、平和だったのだが。
『なぁんて言うと思ったかぁぁぁぁぁぁ!』
 ですよねー。
 妖怪を乗っ取ろうなんて骸魂が、力尽きたくらいで素直に消えていく筈も無い。
『この子の記憶から知った嫉妬の熱は、この身に残っている! 最後の力で、配下を作る為に残しておいた力で、嫉妬の炎をこの街中にばら撒いてやる!』
 ぷくぅーっと、小玉鼠が膨れていく。
 残る力を振り絞った、これが最後の爆発。

 ――クワァックワァックワァッ。

 夜空に、鳥の声が響いていた。
 鳥の中には、夜行性の種もいる。
 青鷺火――別名を五位の火と言う身体を青白く輝かせる鳥の妖怪の正体とされているゴイサギもまた、夜行性の鳥であった。
 ならばその妖怪――青鷺火もまた、夜行性であってもおかしくはない。
 先ほどからクワクワと夜空に響いている鳥の声は、『ごいのひさま』と言うまるくてもふい青鷺火であった。
 そしてごいのひさまの群れは、クワクワと飛んで行く。
 同じような丸さに引かれたのか、縄張りに侵入されたと思ったのか、単にいつもの様に驚かせようと思ったのか――まん丸く膨れあがった、小玉鼠の方へと。
『え?』
『クワァッ』
 ぱぁんっ!
 小玉鼠が破裂し、黒い靄となって広がっていく。その靄を浴びてしまったのが、ごいのひさま達。
 ごいのひさまたちが身体を光らせるのは、驚かせたいからだと言う。
 だが、鳥が光る程度で、妖怪達がそうそう驚くとも思えない。
 クワーッ! クワーッ! クワーッ!
 驚いてくれないうっ憤を晴らすかの様に、骸魂の残滓を浴びたごいのひさま達は、その周囲に嫉妬の混じった鬼火を燃やし始めていた。
 あの鬼火が消えれば、今回の事件も終わるだろう。

 さあ――夜明け前に、最後の一仕事だ。
=================================
 ゴイサギの鳴き声を検索したら、どこかで聞いた事がある気がしました。
 でもどこで聞いたか思い出せない。どこだろう。

 さておき、3章です。最後の集団戦です。

 小玉鼠の骸魂が最後の力でボンバーしてばら撒いた配下の骸魂を作る筈だった力を浴びたごいのひさまが、鬼火ファイヤーに目覚めてます。
 元々は光って脅かすだけの無害な妖鳥でした。
 やっぱり倒せば骸魂が剥がれて、元のごいのひさまに戻せる展開です。
 1羽1羽はそう強くないですが、数はいっぱいいるので、なるべく夜明けまでに頑張って倒してください。
 もふりたい?徹夜仕事にならないようにどうぞ。なっても良いですけど。

 小玉鼠に取り憑かれていたデュラハンのユノについてですが、特にフォローは無くてもごいのひさまとの戦闘には巻き込まれないものとします。
 その上で、何か言いたい事とかあればプレイングかけて頂くのはご自由にどうぞ。

 プレイングの期間は
 7/21(火)8:30~とさせて下さい。
 今回も締切はツイッター、マスターページ等で別途告知します。
 多分、7/24か25辺りになると思います。
=================================
ガーネット・グレイローズ
そうか、骸魂は幽世にたどり着けなかった妖怪の成れの果て。
『妬み』の感情の正体はお前だったのか。

さて、最後の嫉妬の炎も綺麗に消し去ってやろう。
夜明けまでに片付ける!
クロスグレイブによる<砲撃>で、ごいのひさまをサクサク落としていこう。
敵が「ごいごいふれいむ」を発動させたら、こちらも
【イデア覚醒】で対抗。
炎の数、動き方を的確に把握し、攻撃を掻い潜りながら反撃だ。

他人を妬んだところで、自分が幸せになれるわけじゃないのに…
なぜ皆、それがわからないんだろうな。
ユノについては、殺めた妖怪たちへの償いを
きっちりとやるように言っておくよ。この街に法があればの話だけど。


穂照・朱海
あれは青鷺火……
画集で見たことがあります
あんなに……丸くはなかつたですが……

ならば【化術】を用い変化して対抗しませう
艶姿百鬼変化――此度化けまするは

『火消婆』

灯を消してしまう妖ですが、その名が意味する所は、灯に限らず
火であるのなら、神であろうと消してみせる――

嫉妬の炎ともども……
すべて吹き消してくれよう!

赤ゑいに乗りて空中戦を挑み、片つ端から敵の出す火を消してしまわんとす
そして輪入道と寛永通宝を飛ばして撃ち落とさん

(ユノに)
「妬みの心は誰にもあるもの
悪いのはすべて骸魂よ
されど、良く見届けませ、お前様の嫉妬が招いたものを、その最後を!」

芸術家である彼女に親近感
刺激になる可能性を感じ促します


柊・はとり
うわこっち来んな
普通に不利属性じゃねえかよ
最後までろくなことしねぇな…

まあ良いわ…
戦いが終われば幻術も解ける頃合いでしょうから
眼鏡雪女探偵はとり最後の事件よ…
UC【第一の殺人】で【氷属性】の【全力魔法】を放ち
【範囲攻撃】で一網打尽にしましょう

雪は溶けると水になるのよ…
その程度の炎でこの猛吹雪に勝てるかしらね
そう…これは凍てついた私の心…
ええまだ少し恋愛の話を引き摺ってるわ
後なんで嫉妬の対象になるのか意味わかんねえ
なんか傷つく

高校生探偵に戻っちまった…
いや雪女のままじゃ困るが
変な事件だったな…

おいユノ
ギロチンシティの眼鏡屋どこだよ
俺が似合う眼鏡探してやるから行くぞ
真犯人は小玉鼠、それでいいだろ?


仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

丸い玉が増えた…火を操る鳥……焼き鳥…
お腹が空いてきた…さっさと倒そう…

[火炎耐性とオーラ防御]を身に纏い戦おう

霊剣を抜いて敵群の操る鬼火を
[破魔と浄化]による[なぎ払い]で斬り捨てて攻撃を凌ごう

鉄塊剣を振るい[力溜め、範囲攻撃、生命力吸収]を用いた
【火車八つ裂きの刑】を放ち敵群を鬼火諸共地獄の炎で焼き討ち
地獄の炎でこびり憑いた骸魂を[焼却し除霊]してやろう…

とりあえず戦い終えたらデュラハンの彼女を
出来る限り優しく起こそうかな

酷い事件だった…芸術紛いの爆発に嫉妬の炎に鳥の鬼火…
最後に残ったのは虚しさと…私の空腹だけだ……


ニコ・ベルクシュタイン
【ニコうさ】
無駄な力を振り絞ってくれたものだ、往生際の悪い
こういうのを化学反応と言うのか? うさみよ

さあ、後片付けと参ろうか
だがうさみよ、せみっちは控えておいた方が良いと思うぞ
自然界の厳しい掟があるだろう、な……?
啄まれて食い散らかされた無残な姿など見たくない

炎を使うか、ならば苦手とは言っていられないな
此方も氷の「属性攻撃」で鎮火に掛かろうか
うさみとの連携を意識して氷の竜巻を「全力魔法」で巻き起こす
一つの竜巻で不足なら「2回攻撃」だ
俺に炎が燃え移ってしまったならば「捨て身の一撃」で
自らの手を氷で包み、押し当て消火を試みる

ああっ、申し訳ない!
悪気は無かったのだ、ただ制御がちと難しくて、その……!


榎・うさみっち
【ニコうさ】
うわー!黒幕を倒したら
一件落着めでたしめでたしだと思ったのに!
余計な土産置いて行きやがって!しかも若干不慮の事故で!

うーむ、やたらと数が多いな
なら、こっちも数で対抗してせみっ……
いや、いつぞやの弱肉強食の悪夢が蘇るからやめとこ
あいつら可愛い顔して恐ろしいんだ、知ってるぞ

気を取り直して、今回も頼むぜワルみっち軍団ー!
第一部隊は水鉄砲や放水砲を構え
ごいのひさまの放つ炎を片っ端から鎮火!
畳み掛けるように第二部隊が色んな銃で
ごいのひさま本体を撃ち落としていく!

フフフ、ニコと俺が本気を出せば殲滅も時間の問題…
あーッ!ワルみっちー!!
(ニコの魔法に巻き込まれて何人か吹っ飛んでいく


小夜啼・ルイ
キサ(f22432)と

だから何でこうなるんだよ。大人しく成仏しろよ
いや…マジでワケわかんねぇな
オレはもうツッコミ疲れてんだ。ぶっちゃけ今すぐにでも不貞寝したい
誰がガキだコラァ!!それとお小夜呼ぶなっての!!

おいキサ面白がるな
ごいのひさま達が群れてる中に突っ込んで【サイキックブラスト】で範囲攻撃。今回は凍らすより痺れさせた方がいい気がする
焦がさない程度にちょーっとばかし加減するケド。そういう気に当てられちまっただけで、元は無害なんだろ?

つーかなんだ、この羽毛対羽毛の戦いは
そういやキサの前では氷結系しか使った事無かったな
一応電撃系も使えるんだよ

おいコラ人の身長事情を言葉にすんな!オレは信じねぇ!!


空目・キサラ
お小夜(f18236)と

僕が以前出会ったのは、荒廃した世界でだった
死してなおその身を焦がす炎であり、同時に原動力は、嫉妬であったのだ
つまり、嫉妬の炎を抱くものは何処の世界にも現れるのさ
おや?そんなに疲れるような事あったかな?
不貞寝だなんて、お小夜はまだお子様なのだなぁ…

いやしかし中々に面白い状況だな。嫉妬感染なぞ誰が予想したか
けれども服を焦がされるのはお断りだ
【量子自殺による証明の欠点】で梟達に襲撃させてしまおう
梟は夜が得意だからね
おやおや。お小夜は凍らせるだけでなく、痺れさせることも出来たのかい

そういえば。前までは微々ではあったが伸びていたお小夜の身長が、ここ最近は一切伸びている様子が(略


ユディト・イェシュア
ユノさんは無事骸魂から解放されたようですね
爆発とともに嫉妬の炎も燃え尽きていればいいのですが…
不安そうにしていたら話しかけて安心させたいところです
殺妖事件の犯人ではありますが彼女は乗っ取られていただけですから

鳥の声…
青と橙の鬼火が嫉妬の炎と合わさって大変なことになっていますね
無害な妖怪たちのためにも
無念を抱いた骸魂のためにも
夜明け前までに終わらせてしまいましょう

妬みの感情に囚われた骸魂
天からの光でその感情から解き放たれるように
数が多そうなので確実に一体一体減らしていきます

ままならない現状に誰かを恨みたくなる時はあります
目の前が真っ暗闇に閉ざされたように感じたとしても
夜明けは誰にも等しく訪れます



●青と橙の――嫉妬の炎
 クワーッ! クワーッ! クワーッ!
 夜空に、けたたましい妖鳥の声が響いている。
「丸い玉が増えた……」
 仇死原・アンナがぽつりと呟いた通り、その鳴き声の主は、丸い玉と形容してもおかしくない程に真ん丸な妖鳥であった。
 ごいのひさま。
 本来は無害な妖鳥である。
「夜に輝く鳥……あれは青鷺火……」
 夜空に鳴き声を響かせる妖鳥を見上げ、穂照・朱海が声を上げる。
「画集で見たことがあります。ただ……」
 朱海は目を閉じて、かつて見た画集の絵を思い出してみる。
「……あんなに……丸くはなかつたですが……」
 どう思い出しても画集の絵とはかけ離れていて、朱海は内心首を傾げた。
「あ! あいつら可愛い顔して恐ろしいんだ、知ってるぞ」
 鬼火に照らされた真ん丸な鳥を見やり、榎・うさみっちが声を上げる。
「そうだな。うさみよ、今回はせみっちは控えておいた方が良いと思うぞ。自然界の厳しい掟が、な……?」
 やはり頭上の鳥に厳しい目を向けるニコ・ベルクシュタインの言葉に、うさみっちがいつになく真剣な顔でこくこく頷いている。
「……そうでございますか……」
 2人の様子に、朱海は気を引き締め直す一方で。
「鳥つっても、妖怪だろ? 食うなよ? キサ」
「判っているよ。食べないさ」
 あれを調理はゴメンだと視線で告げてくる小夜啼・ルイに、空目・キサラは頷き返しながら、胸中で一言、付け足していた。
 ――今回はね、と。
 知らぬが仏と言うものである。

 そうこうしている内に、夜空が大分明るくなっていた。
「青と橙の鬼火が嫉妬の炎と合わさって大変なことになっていますね」
 ユディト・イェシュアの言う通り、青と橙の輝きがメラメラと燃えている。
 今は小玉鼠――骸魂が最後に爆発して拡散した力を浴びてしまった『ごいのひさま』が放った、鬼火だ。
 だが、鬼火とは――こんなにメラメラと燃えるものだろうか。
 ユディトの目には、先ほど、嫉妬に燃えていたデュラハン小玉鼠の頭にも見た色と同じ様な――しかしそれよりも幾分と薄い――色が視えていた。
 そして、その奥に青と橙のオーラが小さく視えているのも。
「骸魂の嫉みの感情に囚われてしまったわけですか」
 『ごいのひさま』の本来の輝きであろうオーラが視えて、ユディトが呟く。
「骸魂は幽世にたどり着けなかった妖怪の成れの果て……だったな」
 青と橙の光点が増えて眩しくなっていく夜空を見上げ、ガーネット・グレイローズが静かに呟く。
「あの強い『妬み』の感情の正体は、あいつだったのか」
 ガーネットが言うあいつは、小玉鼠の方であろう。
「あの鼠、最後までろくなことしねぇな……」
 まだ雪女姿のままの柊・はとりも、青と橙が次第に広がる空に向けて毒づいていた。
 繰り返すが、ごいのひさま、は妖鳥である。
 例え毛玉みたいだろうが鳥であるなら、翼がある。だからこそ、小玉鼠の嫉妬の炎を浴びてしまったのだが――つまりは、飛べるのだ。
 猟兵達は広がっていく鬼火を手分けして消すために、それぞれ駆け出していった。

●解き放つ光――ユディト
「その感情から解き放たれると良いのですが」
 ユディトは短い翼をパタパタと羽搏かせる『ごいのひさま』の一体に指先を向ける。
 その瞬間、ユディトが指した『ごいのひさま』を上空から迸った光が撃ち抜いた。
 ユディトが放った天からの光は、『ごいのひさま』の周囲でメラメラと燃える青と橙の鬼火をものともせずに、『ごいのひさま』を撃ち落とす。
 光に撃たれた『ごいのひさま』は、ぽてんっと落ちていく。
『クワァッ!』
「させません」
 甲高い鳴き声を上げた別の『ごいのひさま』に、ユディトが再び指先を向ける。
 ジャッジメント・クルセイド。
 ユディトが指で示した『ごいのひさま』が攻撃を仕掛けるより早く、天からの光が『ごいのひさま』を撃ち抜いた。
「無害な妖怪たちのためにも、無念を抱いた骸魂のためにも。夜明け前までに終わらせてしまいましょう」
 本来のごいのひさまに戻すため、ユディトは天からの光で『ごいのひさま』を、着実に一体ずつと撃ち落としていった。

●本質を知る――ガーネット
「他人を妬んだところで、自分が幸せになれるわけじゃないのに……なぜ皆、それがわからないんだろうな」
 1人夜道を駆けながら、ガーネットが独り言ちる。
 ガーネットは取り憑かれたユノに、嫉みが無かったとは思っていない。
 嫉みなどと言うものは――人であれ、妖怪であれ――多かれ少なかれ、誰もが持ち得る類のものだから。
 ガーネットは猟兵だが、貴族の娘であり会社と商会の長でもある。そんな世界に生きてきたのだ。人の欲望と言うものは、嫌という程知っているだろう。
 それでも、骸魂に取り憑かれその嫉みと合わさらなければ、連続殺妖事件に至るまでの強い嫉みとはならなかったのではないか――そんな風にも思えていた。
 そして、頭上で揺らめいている鬼火がその残滓と言うのなら――。
「最後の嫉妬の炎も綺麗に消し去ってやらねばな――夜明けまでに片付ける!」
 決意を露わに、ガーネットが十字架の砲塔を夜空に向ける。
 クロスグレイブから放たれた光が、クワァクワァッと鳴いて飛び回る『ごいのひさま』を数羽纏めて撃ち抜いた。
「思いの外、速く飛ぶものだが、問題ない」
 ガーネットが引き金を引いて光を放つ度に、ごいのひさまが撃ち落とされる。
 これが暗闇での射撃ならば話は違うだろうが『ごいのひさま』が放つ鬼火が、その位置を教えてくれている。実に狙い易かった。
『クッワァッ!』
『クワッ!』
 『ごいのひさま』も、やられるばかりではない。
 甲高い鳴き声を上げた直後、その周囲に青と橙の炎が浮かび上がって、炎はガーネットに向けて放たれた。
「数で押すつもりか」
 雨が如く降り注ぐ青と橙の炎を見やり、ガーネットが呟く。
 逃げる隙などなさそうな炎の雨。
 だが――。

「今の私には、この戦場のすべてが視える!」

 イデア覚醒。
 イデア――物事の本質と先行きを瞬時に知る力で、ガーネットは『ごいのひさま』が炎を放つよりも早く、その光景が見えていた。
 来ると判っていれば、どんな攻撃でも対処ができる。
 今回の様に避ける隙間がないのなら、作ればいい。
 ガーネットはクロスグレイブから光を放ち、数個の炎と相殺させる。
 『ごいのひさま』が炎を操作して穴を埋める前に、ガーネットは自ら開けた穴から炎の包囲の外へと飛び出し、再びクロスグレイブを向ける。
 着地したガーネットの後ろには、力尽き鬼火の消えた『ごいのひさま』が、ぽてぽてと落ちて来ていた。

●火消之息吹――朱海
 朱海の見上げる夜空も、青と橙に明るく輝いていた。
 優に数十羽はいるだろう『ごいのひさま』が――全部ではないにせよ――何羽かが一斉に、鬼火を放っていた。
「鬼火の雨でございますか。人の姿のままでは、聊か分が悪い」
 ならば――朱海が取る手段は一つ。
「変化して対抗しませう」
 柄に朱と彫られた妖刀『朱天狗』を、鞘に納めたまま掲げる。
「此度化けまするは――火消婆」
 告げた朱海の艶やかな長い黒髪が、色を失っていく。すっかり白髪と変わる頃には、やや血の気の薄かった肌も、まるで老婆の様な姿になっていた。

 ――艶姿百鬼変化。

 刀の持つ妖としての化ける力と朱海の演者の技術を合わせた、妖怪変化の業。
「行きませい、赤ゑい。空へ――」
 老婆の見た目とは裏腹な身軽さで、朱海は喚び出した巨大な魚の背中にひらりと飛び乗って空へと昇っていく。
 今回、朱海が変化した火消婆とは、灯りを吹き消してしまうと言われる妖怪だ。
「ですが、この名が意味する所は、灯に限りませぬ」
 そもそも妖怪と言うものが、大半は陰気の存在だとされている。性格としては陽気なものもいるだろうが、存在としては陰の者だ。
 ――文明の発展からこの幽世に逃げて来たのだから。
 故に、火消婆の火消とは、妖怪達が苦手とする陽気を放つ火そのもの。
「嫉妬の炎ともども……すべて吹き消してくれよう!」
 ひゅごぅ――。
 朱海の口から放たれた吐息は、一陣の風となって迫る鬼火を吹き消した。
 火であるのなら、神であろうと消してみせる――それが朱海がこの姿に込めた決意。
「輪入道、寛永通宝。青鷺火が空へ逃げぬ様、上を塞ぎませい」
『なんでえ、それだけでいいのか』
 更に朱海は追加で呼び出した輪入道と銅銭の付喪神『寛永通宝』を空に放ち、『ごいのひさま』が更に高くに逃げないように、上を塞がせる。
「もう一度」
 逃げ道を塞いでおいて、朱海は『ごいのひさま』に吐息を浴びせた。
 纏う鬼火が鬼火が消えると言う事は、『ごいのひさま』に憑いた骸魂の残滓を剥がす事にも等しい。
 その力を失った『ごいのひさま』が、ゆっくりと落ちていった。

●人形山荘の吹雪――はとり
(「不利属性じゃねえかよ……」)
 1人になってからそれに気づいて、はとりが胸中で呟いていた。
 はとりは氷には強い耐性を持つが、炎はその限りではない。
 ならば、やられる前にやるのが最適というものだ。
「まあ良いわ……眼鏡雪女探偵はとり最後の事件よ……」
 周りの猟兵達も、幻術が解けている。
 少し前にも、黒猫姿だった猟兵が元の赤髪に戻ったのを見たところだ。
 ならば未だ自分を雪女姿にしている幻術も、この戦いが終わる頃には解けるだろう――そう推察し、はとりは『コキュートスの水槽』を構えた。
 鬼火が揺らめく夜空に向けられた氷の剣から、冷気が溢れ出す。

 ――第一の殺人『人形山荘』、ロード完了しました。
「だから犯人は死体を凍らせて切断した」

 AIの無機質な声に続いて、はとりの口がもう一度答えを告げる。
 瞬間、氷の剣から溢れていた冷気が、吹雪となって夜空に向けて吹き荒れた。
「雪は溶けると水になるのよ……その程度の炎でこの猛吹雪に勝てるかしらね?」
 雪女はとりが告げる通り、『コキュートスの水槽』の水槽から放たれる猛吹雪は、鬼火を消し去り『ごいのひさま』の羽毛を霜塗れにしながら吹き飛ばしていく。
 模倣していたのは、山荘を閉ざした吹雪か、人形に見立てられた被害者たちを凍らせた冷気か――どちらにせよ、はとりの最初の事件の模倣。
 或いは。
 吹雪を放つ剣が名に冠したコキュートスとは、冥府を流れる生者と死者を隔てる川であり、死者を捉える氷の湖とも言われる。
 いずれにせよ、この世ならざる鬼火に対抗するに十分な猛吹雪であった。
「そう……これは凍てついた私の心……ええまだ少し恋愛の話を引き摺ってるわ」
 なんて溜息交じりに言ったところで、相手はクワクワ鳴いてる鳥でしかない。
「鳥相手に……何を言っているのかしら……」
 その現実が、はとりの心をさらに抉る。
 とは言え、今回の代償は、はとりの心ではない。吹雪の冷気はよりダイレクトに、はとり自身の身体に――氷の剣を握る両腕に返って来る。
 それでも、はとりは吹雪を放ち続けた。
 凍り付いた両腕が砕けて、『コキュートスの水槽』がその足元に落ちるまで。

●獄炎旋風――アンナ
「炎か……」
 空から迫る鬼火を見上げ、アンナは霊剣『芙蘭舞珠』を落ち着いた様子で構えた。
「この程度の炎なら、問題ない」
 淡々と告げて、アンナは『芙蘭舞珠』を薙ぎ払う。
 炎の様に波打つ刃の切っ先は鬼火に届いてもいないのに、刃に込めた破魔と浄化の力が間合いの外の炎を切り散らす。
 地獄の炎を操るアンナにとって、嫉妬が混ざった鬼火程度は怖れるものではない。
「火を操る鳥……つまり焼き鳥……」
 そんな連想をする程度には、心に余裕があった。
「お腹が空いてきた……さっさと倒そう……」
 『芙蘭舞珠』を地面に突き立てると、アンナは替わりに巨大な剣を手に取った。
 鉄の処女と呼ばれる拷問器具。それに良く似た人の顔を模した鉄仮面の意匠を鍔元に持つ鉄塊剣――『錆色の乙女』。
 自身の腕よりも大きな刃に、アンナは指を這わせて蒼い炎を纏わせる。
「よっと」
 アンナは慣れた様子で持ち上げ、頭上で回し始めた。
 ゆっくりと回り出した『錆色の乙女』の速度が、次第に上がっていく。速度が上がるにつれて、刃が纏う炎も勢いを増していく。
 まるで地獄の炎を纏って燃え盛る車輪の様に。

 ――火車八つ裂きの刑。

 咎人殺しの技に地獄の炎を合わせた、一族でもアンナだけの業。
「地獄の炎は焼くだけでなく、お前の身体を切り刻む……!」
 再び迫る鬼火に対し、アンナは振り回していた『錆色の乙女』を振り下ろした。その刃に纏わせていた地獄の炎が、蒼炎の旋風となって放たれる。
 地獄の炎と鬼火が空中でぶつかり、鬼火があっさりと飲み込まれる。
 鬼火を食らった地獄の炎の旋風は、夜空を舞う『ごいのひさま』をも飲み込んで――アンナが炎に込めた除霊の力は、ごいのひさまから、骸魂の残滓だけを焼き払っていた。

●ゴイサギも虫は食べるって――ニコうさ
「黒幕を倒したら、一件落着めでたしめでたしだと思ったのに!」
「全く、無駄な力を振り絞ってくれたものだ」
 ぶーんと飛びながら頭を抱えるうさみっちの隣を駆けながら、ニコが溜息を吐く。
「こういうのを化学反応と言うのか? うさみよ」
「化学反応って言うか、余計な土産! しかも若干の不慮の事故!」
 並走しながら訊いてくるニコに、うさみっちは若干不満そうに返す。
「おまけに、やたらと数多く置いて行きやがって!」
「言っても仕方ない事だ。最後の後片付けと参ろうか」
 まだ不満げなうさみっちを言葉で宥めながら、ニコが足を止めて拳を構える。
 自分達はこの辺りで良いだろう。
「しゃーねえ。なら、こっちも数で対抗してせみっち――と言いたいがやめとこ」
 ニコとうさみっちの脳裏に浮かんでいたのは、弱肉強食、の四文字と(※都合によりお見せ出来ません)シーンである。
「あれは控えめに言って悪夢だったぜ……」
「いくらせみっちとは言え、啄まれて食い散らかされた無残な姿など見たくない」
 重たい溜息を零すうさみっちに、ニコも頷く。
 ニコとてせみっちには思うところがある。うるさいとか。だからと言って弱肉強食に叩き込もうとは思わなかった。

 ――クワァックワァッ!

 しかし『ごいのひさま』は、待ってくれない。
 喧しく鳴いて、メラメラと鬼火を燃やしている。
「よし! こいつらなら連勤でも呼べる! 今回も頼むぜ、ワルみっち軍団ー! うさみっち様の一撃からは逃げられないぜ!」
 それを見上げて、うさみっちはうさみっちばずーかを構えた。
 ドカンッと放たれたのは黒い弾丸――ではなく黒スーツ姿の、ワルみっち軍団。
 だが、その手に持っている銃器は、先ほど、デュラハン小玉鼠と戦った時とは違う。どれもこれも、黒服に似合わないカラフルな銃なのだ。
 何やらタンクの様なものもついていて、中からちゃぷちゃぷと水音が聞こえてくる。
「まずは第一部隊、撃て撃てー!」
 うさみっちの号令で、ワルみっち達が銃口を向けて――。

 ぶしゃーっ!

 勢い良く、水が放たれた。
「む? うさみよ。アレはまさか、水鉄砲か?」
「おう! 第一部隊は水鉄砲や放水砲でごいのひさまの放つ炎を片っ端から鎮火! 火が消えた所を、第二部隊が色んな銃で畳みかけて、本体を撃ち落としていくのだ!」
 ワルみっち軍団が持っているのが水鉄砲だと気づいたニコにドヤ顔で返しながら、うさみっちが第二部隊をばずーかからドカンッと放つ。
 最近の水鉄砲は容量もあって水の勢いもかなりあるとは言え、水鉄砲で火を消そうだなんて、普通に考えたらまさかな話だ。
 文字通りの焼け石に水――になる筈である。
 だが、これは『でんこうせっかのワルみっちスナイパー』なのだ。ワルみっちは、ユーベルコードの産物なのだ。
 ぴゅーっ!
 ぶしゃっ!
 水鉄砲から放たれた水を浴びた鬼火が、着実に消えていく。
 その隙を縫って、水鉄砲ではない黒光りする銃を持ったワルみっち第二部隊が、ごいのひさまに向けてバンッと銃声を響かせていた。
 絵面は水鉄砲でワルみっちが遊んでるようにしか見えないのに、ちゃんと二段撃ちになっている。
「うさみが水なら――此処は氷か」
 案外ちゃんと作戦になっているうさみっちのワルみっち戦法に感心し、ニコは覚悟を決めてぐっと拳を握った。
 鎮火出来ているとは言え、ワルみっちだけでは消しきれない鬼火も多い。
 単純な物量差の結果であり、水鉄砲の限界とも言える。
「苦手とは言っていられないな。此方も全力で鎮火に掛かろうか」
 だからニコも、頑張る事にした。

「荒れ狂え精霊よ、汝らは今こそ解き放たれん!」

 ニコが拳を掲げて高らかに告げると同時に、氷の竜巻が眼前に巻き起こる。
 氷の竜巻は、ワルみっち第一部隊が放つ水を飲み込み、氷と変えていく。次第に勢いを増しながら渦巻く風と氷の中に、鬼火も『ごいのひさま』も吸い込まれる。
 精霊狂想曲――エレメンタル・カプリッチオ。
 精霊の力で、属性と自然現象を合わせて様々な現象を起こす業で、ニコは氷の竜巻を巻き起こしたのだ。
 つまり、ニコは氷の精霊の力を借りた事になる。
 慣れている炎とは、ある意味、対極の存在――そしてこの類の業は、猟兵であっても制御が難しい事で知られる部類。
「フフフ、ニコと俺が本気を出せば殲滅も時間の問題……ワルみっち、撃て撃てー!」
 うさみっちが、勝ったな、と鼻を高くしている横で、ニコはすごい、しかめっ面をしていた。何とか暴走させないように、必死で制御しているのだが。
「くっ、ダメだ、強すぎる」
「あーッ! ワルみっちー!!」
 ニコが抑えきれなくなった氷の竜巻に、ついに飲み込まれるワルみっち第一部隊。
「ああっ、申し訳ない!」
 ニコが気付いて氷の竜巻を弱めようとするが、既にワルみっちは何体か夜空の彼方に吹っ飛んでいた。
「悪気は無かったのだ、ただ制御がちと難しくて、その……!」
 本当に、ニコに悪気はない。ワルみっちを巻き込むつもりもなかった。
 だが――ワルみっち第一部隊は、確実に当てる為に鬼火に近づきすぎていたのだ。最近の水鉄砲は強力だが、流石にスナイパーライフルの様な射程は無い。
「ワルみっち軍団で良かったな、ニコ。デビみっちだったら、またキチクシュタインって言われてたぜ」
「う、うむ……」
 物理的に頭の上から言ってくるうさみっちと、無言でワルみっち達がサングラス越しに向けてくる視線を浴びて、ニコが珍しくぐうの音も出なくなっていた。

●めらめら嫉妬論――ルイ&キサラ
 『ごいのひさま』だって、ずっと飛んでるものばかりではない。
 至近距離の方が鬼火当たるんじゃね?
 と思ったかどうかは定かではないが、地上近くまで降りてくるものもいた。
「一応、焦がさないように加減はしてやるが――大人しくしとけ」
 バヂィッ!
 雷光が閃き迸ると、感電した『ごいのひさま』が、ぽてんと落ちて転がっていく。『ごいのひさま』の群れの中に飛び込んで、ルイは掌から高圧電流を放っていた。
「おやおや。お小夜は凍らせるだけでなく、痺れさせることも出来たのかい」
「そういやキサの前では氷結系しか使った事無かったか。一応、電撃系も使えるんだよ。あとお小夜呼ぶなっ」
 意外そうに眺めているキサラに返しながら、ルイは手を休めずに次々と高圧電流を放って『ごいのひさま』を痺れさせている。
 サイキックブラスト。
 サイキックの力を電流に変換した業であり、敵を倒さずに止めるだけなら、こちらの方が向いていると考えたのだ。ルイの冷気は――少々強すぎるから。
「今回は凍らすより痺れさせた方がいい気がしたんだよ。そういう気に当てられちまっただけで、元は無害なんだろ?」
「そうだね」
 痺れてぽて落ちて転がっている『ごいのひさま』を踏まないようにしながら電流を放ち続けるルイに、キサラが頷く。
「いや改めて考えると、中々に面白い状況だな。嫉妬感染なぞ誰が予想したか」
「おいキサ面白がるな」
 こんな状況でも好奇心が前に出ているキサラに、ルイがじぃっと視線を向ける。
「ちゃんとやるさ。服を焦がされるのはお断りだからね」
 そんなルイに小さな笑みを返して、キサラはパチンと指を鳴らした。
 キサラとて、悪戯に好奇心を前に出したのではない。
 必要な事だったのだ。

「第三者視点では。それが収束した世界なのか、分岐した世界の内のひとつなのかは判らないのだよ」

 ――量子自殺による証明の欠点。
 それは、キサラが怪しさや好奇心を感じる事で、梟を喚び、梟はキサラが好奇心を感じた対象を襲う業なのだから。
「梟は夜が得意だからね――やってしまえ」
 バサササッ!
 キサラが告げて、夜の街に梟の大きな羽撃きの音が響き出す。
「っと」
 この状況では、『ごいのひさま』だけに電流を当てるのは難しい。ルイはキサラの梟の群れと入れ替わる様にして、『ごいのひさま』の群れから離れて。
 そして始まる、鳥と鳥の戦い。
 ――クワッッ!
 ホーゥッ!
 もふもふバサバサつんつんゲシゲシ。
 梟の登場で鳥の本能が強く出たか、『ごいのひさま』は鬼火を出すのも忘れて、梟と突き叩き合いだした。
「つーか、何だこの羽毛対羽毛の戦いは……」
 ルイはもう、疲れていた。
 物理的にではない。精神的にだ。
「何でこうなるんだよ。大人しく成仏しとけばこんな事には……」
「お小夜。嫉妬の炎とは、そういうものだ」
 小玉鼠が大人しく消えなかったからだと、溜息交じりに零すルイに、キサラがしれっと告げる。
「僕が以前出会ったあのタイプは、荒廃した世界でだった。死してなお、その身を焦がす炎であり、同時に原動力は、嫉妬であったのだ」
「待て。何を言ってるのかさっぱりわからん」
 お小夜にツッコミを入れるのも忘れて、ルイがキサラに視線を向ける。
「つまり、嫉妬の炎を抱くものは何処の世界にも現れるもので、大概しぶといものさ」
「しぶとい、の一言で済ませんなよ。いや……マジでワケわかんねぇな」
 キサラの嫉妬の炎論に、ルイが何度目かになる疲れた溜息を吐いて――。
「もういい。考えねえ」
 考えるのをやめた。
「オレはもうツッコミ疲れてんだ。ぶっちゃけ今すぐにでも不貞寝したい」
 まあ何だかんだで、昼から(ツッコミ役として)働き通しなのだ。
 ルイの目つきが悪くなっているのは、単に眠いと言うのもあるのかもしれない。
「おや? そんなに疲れるような事あったかな?」
 だが、寝ていない事情は同じ筈ながら、キサラはこんな(面白そうな)状況で不貞寝を許すような性格ではなかった。
「不貞寝だなんて、お小夜はまだお子様なのだなぁ……」
 むしろ弄る方である。
「誰がガキだコラァ!! それとお小夜呼ぶなっての!!」
「そうだね。すまない。お小夜はお子様ではないね」
 さっき忘れたお小夜にも今度はキッチリとツッコミを入れてきたルイに、キサラは殊勝な面持ちを作って、謝罪を口にする。
 だが胸中は――多分きっと、笑っていたのだろう。
「だって、前までは微々ではあったが伸びていたお小夜の身長が、ここ最近は一切伸びている様子が――」
「おいコラ人の身長事情を言葉にすんな!」
 矛先を変えたキサラに、ルイは更にツッコミを入れずにはいられない。
「オレは信じねぇ!!」
 羽毛対決が繰り広げられる中、ルイの叫びが悲しく響き渡った。

●結末
「芸術紛いの爆発に、嫉妬の炎に鳥の鬼火……酷い事件だった……」
 静かになった夜明け前の空を見上げ、アンナが呟く。
「最後に残ったのは虚しさと……私の空腹だけだ……」
 呟いた言葉を証明するかの様に、アンナのお腹がきゅぅと空腹を訴えた。
『う…………』
 そのすぐ傍で、デュラハンの頭が呻き声を上げる。
「大丈夫か?」
『う、う……ん……?』
 どちらを揺さぶればいいのか判らず、アンナが結局頭と身体の方と両方を優しく揺さぶると、青い瞳がゆっくりと開いた。
「無事骸魂から解放されたようですね」
 目を覚ましたユノの目が開いて、ユディトが安堵の息を吐いた。
 とは言え、懸念もある。
(「爆発とともに嫉妬の炎も燃え尽きていればいいのですが……」)
『ええと……ここは?』
 胸中で呟くユディトの前で、ユノは頭だけをぐるりと一周させた。

『な、何と言う事を……!』
 事のあらましを猟兵達から聞いたユノが、顔を青くする。
「記憶は全くないのか?」
 全身で後悔している様子のユノにガーネットが訊ねると、しばし考えてから、その頭部がゆっくりと左右に動いた。
『頭を蹴られたり凍らされたり撃たれたりしたのは……何となく』
 小玉鼠が弱って来ていたせいだろうか。
 ごく最近の、わりとショックが大きいであろう記憶が残っている事実に、その記憶を与えた猟兵が視線を逸らす。
『ですが止めて頂きありがとうございます』
「この分なら大丈夫だな」
 ユノの様子に、ガーネットは屈めていた膝を伸ばした。
「殺めた妖怪たちへの償いを、きっちりとやるように」
 生きてきた世界が故か。ガーネットは、それが必要だと、そうするべきであろうと考えていた。
「この街に法があればの話だけど」
 法があるのならば、それに則った対応をされるべきと。
「償いはするべきですが……法の措置が寛大なものだと良いのですが。殺妖事件の犯妖ではありますが、彼女は乗っ取られていただけですから」
 ガーネットの様に厳しい目を向ける猟兵もいる一方で、ユディトの様に乗っ取られていただけだと言うものもいる。
「ままならない現状に誰かを恨みたくなる時はあります。目の前が真っ暗闇に閉ざされたように感じたとしても、夜明けは誰にも等しく訪れます」
 異なる意見に不安そうなユノを安心させようと、ユディトは声をかける。
 ユディトは他者を信じすぎるきらいもあるが、骸魂が悪いと感じている猟兵は彼だけではなかった。
「妬みの心は誰にもあるもの。悪いのはすべて骸魂よ」
 朱海も、罪は骸魂の方であると感じていた。
 とは言え――。
「されど、良く覚えておかれませ。お前様の嫉妬が招いたものを。その最後を」
 忘れろと言う気もない。
 畑は違えども、芸の道に生きる者として、それはユノの刺激になるだろうから。
(「真犯妖は小玉鼠。別にそれでいいと思うがね?」)
 猟兵達が思い思いにユノに告げる後ろで、はとりは胸中で呟いていた。
 探偵の仕事は犯人を見つけるまでだ。
 罪を詳らかにする事はしても、罪を裁くのは探偵の仕事ではない。
 それに――。
「おいユノ、ギロチンシティの眼鏡屋どこだよ」
『はい?』
 突然はとりにぶっきらぼうに告げられて、ユノが驚いた様に首を傾げる。
「どうするにせよ、もっと良く見えた方がいいだろ。俺が似合う眼鏡探してやるから、行くぞ」
『え、え?』
 有無を言わさぬはとりに戸惑いながらも、ユノはその後をついていく。
 その足取りは何処か――何処か嬉しそうだったとか。

●更にその後の話――落とし所
 ユノの家を調べた所、普段使っていない部屋から、現場から持ち去られていた被害者たちの頭部と言う決定的な証拠が見つかった。
 何故か――その全てに、事件前にユノがかけていたとの同じ瓶底眼鏡をかけて。
 もしかしたら、デュラハン小玉鼠の状態で、本当に頭をとっかえひっかえしていたのかもしれない。
 ともあれ、事件は解決した。
 骸魂に憑かれたせいだという猟兵達の報告を、ギロチンシティの妖怪達は疑う事なく受け入れてくれた。
 だが――それと許しとは、また別の話だ。
 猟兵達でも、意見が完全には一致しなかったのだ。
 ユノを許せるか許せないか、首無し妖怪達の意見は割れた。
 憑かれていたのなら仕方がない言うものもいる一方で、被害者に親しかった者は、仕方がないで済ませられる筈もない。
 とは言え、どこかで折り合いは付けねばなるまい。

 結局――そう遠くない未来、ユノはギロチンシティを出る事になる。
 そうしてくれと言われて、二つ返事で頷くのだ。ユノ自身、己の罪悪感と折り合いをつける為にそれを受け入れた。
 けれども。しょっちゅうカタストロフが起こるこの幽世で、何らかの事情で住処を失った妖怪が何処からか流れてくることは、そう珍しい事ではないだろう。
 ユノも、しっかり準備をして街を出たのだ。なにより、以前よりも、世界が良く見える様になったのだ。きっと新たな住処を見つける筈である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月26日


挿絵イラスト