燈火のひとしずく(作者 公塚杏
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●隣
 消え去った。消え果てた。

 大きな月が世界に浮かび上がり、煌々と神秘的な光で地を照らす。
 そよぐ風は心地良く、花々の香りを運び住まう者たちの心を満たす。
 夜長の虫たちが音を奏で、僅かな憩いのひと時を過ごせるはずなのだが――此の世界には、『温度』と云うものが存在しなかった。
 花の香りや虫の音色を運ぶ風が、肌を撫でても何も感じない。本来なら、今の時分ならば温もりと湿気を含んだ風が肌を撫でる筈なのに。触れる風は、ただの風圧でしかない。
 熱が無ければ四季も無く、秋へと移り変わる夜のひと時の風流さは掻き消えるよう。
 僅かに長くなった夜のひと時。
 日中の熱を含む地と、夜の冷ややかさを含んだ風の生み出す不思議な心地の中。
 虫たちの奏でる音色を耳に、安らぐひと時を過ごせるはずなのに。
 此の世界には、『温度』が存在しなかった。

 だから、ほら。
 アナタに手を伸ばしても、その『温度』は分からない。

●一夜限りの燈火
「カクリヨファンタズム、その世界は常に世界の終わりの危機をもっていることは、皆様もご存じかと思います」
 今回は、その世界に訪れる危機を救って欲しいと。杠葉・花凛(華蝶・f14592)は端的に今回の目的を言葉にすると、猟兵に向け詳細を語りだす。
 まず現れるのは、ウィルオウィスプの骸魂によりオブリビオン化した猫。その猫は尻尾が二つに分かれている、所謂猫又と呼ばれる妖怪のようだ。可愛らしい仕草で人々を油断させるが、その尾に灯る鬼火による攻撃は相応の強さを持つ。
 群れて行動する彼等を無事に救い出した後に現れるのは、一体の巨大なてるてる坊主。ずっと軒先に吊るされ、人が近付くのを待っていた。――忘れられてしまった彼は、ただひたすらに人の温もりを求めていたという。
 求めて、求めて――それでも誰も現れなかった寂しさから、彼は全ての温度が無くなってしまえば良いと願った。その願いは此の世界では大きな力となり、世界の温度という存在を全て奪ってしまったと云う。
「このまま放置していては、幽世には数多の骸魂が飛び交い、妖怪たちはオブリビオンと成り世界は消え果ててしまいますわ」
 だから、そうなる前に。
 早急に対処して欲しいと、花凛は冷静に言葉にした。

「全てが終わりましたら、折角ですからこの世界でのひと時を楽しんで来て下さいませ。丁度今宵は一年に一度しかない記念日――ご神木が灯る神秘的な夜のようですわ」
 そのご神木が灯る日だけに、生ると云う不思議な実がある。
 『甘露の実』と呼ばれるその実は、灯る木々と同じように仄かに中身が輝いている。その中身には、名前の通り甘露の蜜が詰まっている。零れる程のその液体を盃へと傾けて注ぎ、水音を響かせ一年の幸せを願い飲み干す――そんな、どこか神秘的な日。
「甘露の実の中身は、名前の通り全て甘いようですわ。けれど、お酒が含まれていたり色が様々だったりと、どうやら実によって中身は違うようですの」
 中は割ってみるまで分からないが、どんな液体が入っているかも含めて楽しむのが良いだろう。――ただし未成年の飲酒は此の世界でも禁止なので、その点は注意が必要。もしもお酒が入っていた場合は、残念ながら他の実を探す必要があるだろう。
 実に詰まった液体は、大体盃一杯分。つまり、一人分になる。しかし少量ずつで良いのならば、他の者と分け合っても良いだろう。
 独りで飲み干せば一年の幸せを。共に分かち合えば、その者たちが幸せに過ごせると云う言い伝えがあるようだ。
「とてもささやかなお祭りです。けれども、温度の戻った秋の夜長を。不思議な木々と共に過ごせることは、此の世界だからこその風流があるかと思いますわ」
 口元に笑みを浮かべ、変わらず凛とした声色で花凛は紡ぐ。
 勿論、此の世界を無事に救えたことが条件だと。最後に言葉を添えた後、彼女は一礼をすると猟兵達を送り出す。

 とぷりと零れる甘い液体。
 灯る光を受けてキラキラと黄金色に輝くその甘露を飲み干せば。
 きっと幸せが運ばれてくる。


公塚杏
 こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
 『カクリヨファンタズム』でのお話をお届け致します。

●シナリオの流れ
 ・1章 集団戦(ねこまたウィスプ)
 ・2章 ボス戦(腹ペコ坊主)
 ・3章 日常(甘露の宴)

●世界について
 『温度』の無くなった世界です。
 大きな月に瞬く星空も、吹く風も、そよぐ花々も。
 全てが普通ですが温度だけありません。
 人に触れても体温を感じることはありません。
 ユーベルコードで温度を感じるもの(炎や氷など)も、温度は感じません。ですがやけどや凍結といった事象は発生します。
 攻撃に関してはフレーバーですので、不利になることはありません。プレイングを書く際の参考程度にお考え下さい。

●3章について
 大きな大きな月の下。1年に1度だけ光が灯るご神木の下の出来事です。
 この樹はかなりの老木です。その為長らく実が生っていませんでしたが、今宵は久々に甘露の実が生りました。

 ・甘露の実
 林檎くらいの大きさの実。形としてはホオズキに近いです。
 かなりの固さがありますが、割ると中には1人分の液体が入っています。
 液体は甘露の実という言葉通り、甘めです。
 微かに炭酸を含んでいるものや、お酒になっているものもあります。色も甘さの程度も実によって様々。
 どのような飲み物かは、『甘い』ということを守って頂ければお好きにご指定頂いて大丈夫です。指定無ければ『琥珀色の少しとろりとした、後に残らない甘さの液体』で描写致します。
 また、未成年(20歳未満)の方はお酒は飲めません。

 用意された盃に液体を注ぎ、飲み干せばこの1年幸せになれるとの言い伝えが。
 誰かと乾杯をして飲めば、そのふたりが幸せに過ごせるとの言い伝えもあります。

●その他
 ・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
 ・途中からの参加も大丈夫です。
 ・1章と2章は4~10名様の少人数を想定しております。
 ・3章は多めに採用出来ると思いますので、3章だけのご参加はお気軽にどうぞ。
 ・受付や締め切り等の連絡は、マスターページにて随時行います。受付前に頂きましたプレイングは、基本的にはお返しさせて頂きますのでご注意下さい。

 以上。
 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ねこまたウィスプ』

POW ●惑わしの鬼火
【二股に分かれた尾の先端に浮かぶ炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【相手を幻惑する効果のある青白い】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD ●顔を洗う
【夢中で顔を洗うことで】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
WIZ ●化け猫の集会
戦闘力のない、レベル×1体の【化け猫達】を召喚する。応援や助言、技能「【『おどろかす』や『化術』】」を使った支援をしてくれる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●手招く熱
 世界を覆いそうな程、大きな月が夜空に浮かんでいる。
 広い夜闇を灯すほどの月明かりが注がれる中。秋風にそよぐは真紅の彼岸花。花弁通しが触れ合えば、さわさわと微かな音色を響かせる。
 月光に照らされた鮮やかな紅。
 その光景は正に秋の美しさを表しているかのようで――此処に秋の澄んだ空気が共に存在すれば、今だけのひと時を楽しむことが出来るのだろう。
 ぽうっと、灯る何かが彼岸花の中に浮かび上がる。
 ぼんやりと光るそれは、火の玉のように。ゆらゆらと揺れ動けば彼岸花の中へと消えていく。灯り、消えて、揺らめいて――どこかへと誘うかのような、不思議な光。
『みゃお』
 彼岸花の中から上がる鳴き声は、猫のような声。
 ガサガサと花が揺れ動いたかと思えば、花の間から猫が姿を現した。
 気付けばあちらからも、こちらからも。猫が姿を現しては、じーっとこちらを見つめていた。逃げる様子もなく、まるで一緒に遊んで欲しいと語っているかのように。
 ゆらり。
 そんな彼等の尾は、皆同じようにふたつに割れ。その先には青い炎が灯っている。
 彼等はその炎に気付いているのか、いないのか。それは全てこの世に『温度』が無くなってしまったからなのか。
 それは分からないけれど、この鬼火に憑かれた彼等を助けなければならない。

 ――この一帯が温度を感じない炎の海へと変わることだってあり得るから。
杣友・椋
リィ(ミンリーシャン/f06716)と

初めての幽世の國
吹く風は冷たくも生温くもなくただ肌を撫でるのみ
不可思議な感覚だ
柔く触れた君の掌
勿論その温度も判らないけれど
心に燈るぬくもりは気のせいでは無いだろう

現れた猫たちに思わず瞳を輝かせ
……可愛い
然しその尾に灯る火は確かに妖怪のもの
ああ。行こう、リィ
彼女の言葉に頷いた

向こうから攻撃してこない限りは共に遊ぶ所存
鬼火には常に注意しよう
じゃれてくるその仔にそっと触れ顎元を擽ってやる
にゃあと鳴く姿に思わず零れる微笑み
なんか、シロたちを思い出すな
隣のリィにそんな言葉を
――想起するのは自分達の在処に住まう猫たち

もし危険が迫った場合は彼女と連携し対応

アドリブ歓迎


ミンリーシャン・ズォートン
椋(f19197)と

此処が幽世…
本当に温度を感じないのかな
愛しい人の指をきゅ、握って確かめる
本当に、感じない
でも彼の温もりはちゃんと覚えてる
心だって、温かい
愛してる

猫又さん達、初めまして
私の名前はミンリーシャン
どうぞお手柔らかにお願いしますね
さぁ、椋
皆を救いに行こうか

可能な限り狙うのは骸魂――青の炎
けれど人懐こい仔がいればゆっくりと鼻先へ手を伸ばし
擦り寄ってくるなら優しく撫でて

じゃれながら炎が彼へ飛ぶかもしれないから
いつでも凍らせ対応出来るように注意しておきます

もしも囲まれ危険を感じた場合は私が動きを止めにいく
――椋
彼に合図し猫又達を氷の世界へ
寒くはない筈
大丈夫、動かないで下さいね

アドリブ歓迎



「此処が幽世……」
 浮かび上がる大きな月に、風に揺れる鮮やかな彼岸花。
 現実とは随分と違うその風景を前に、ミンリーシャン・ズォートン(天涯の瑛・f06716)は思わず言葉を零していた。
 常に世界の危機に包まれた此の世界へと、足を踏み入れるのは初めてのことで。言葉と共に零れた吐息は風に乗り流れていき――その風は、そっと杣友・椋(悠久の燈・f19197)の頬を撫でる。
 冷たくも無く、生温かくも無い。
 頬に触れた風の圧を確かめるかのように、彼は自身の頬を指先で撫でる。その指の温度も無く、ただ何かが触れたという感覚だけが伝わってきた。
(「不可思議な感覚だ」)
 そうっと輝く緑の瞳を細め、椋が心にそう想った時――ふと、垂らした手に触れる何かに彼は視線を落とす。その先には、愛しい人が彼の指先を握り締めていた。
「本当に、感じない」
 それは、本当に温度を感じないのかと確かめたかったから。
 いつもならば、この手には彼の優しい温もりが伝わるはずなのに。彼の大きな手も、男性らしい固い手も、同じなのに。そこから伝わる温もりだけが感じ取れずに、ミンリーシャンは微かに瞳を伏せる。
 何も、感じない。
 けれど――この指から伝わる温もりは、覚えていると。深呼吸をしながらミンリーシャンは追想する。そしてそれは、椋も同じだった。
 判らない。けれど――互いの心に温もりは、確かに今宿ったものだから。
 そんな二人の傍へと、ゆらりと尾の炎を揺らめかせて近寄る影――白と黒の模様が愛らしい、猫又のオブリビオンが彼岸花の影から姿を現した。
 二人の世界だったことに彼なりに気を遣っていたのだろうか。暫しじっと見ていたけれど、構って欲しいと云う気持ちが我慢出来ず此方へと近寄ってくる。
「……可愛い」
 ゆらりゆらり、揺れる鬼火へと視線を移した後。近寄る猫の姿を見て言葉を零す椋の瞳は、いつもの彼とは違いキラキラと輝いていて。そんな彼の様子にミンリーシャンは笑みを零すと、屈み近付いて来た猫へと。
「猫又さん達、初めまして。私の名前はミンリーシャン」
 どうぞお手柔らかにお願いしますねと、笑みと共に挨拶をする。
 すると彼等は『にゃあ!』と返事をするように声を上げ。炎の灯る尻尾をぴんっと立てていた。ご機嫌な様子に椋は嬉しくなるけれど、その炎は確かに妖怪だと云う証。
「さぁ、椋。皆を救いに行こうか」
「ああ。行こう、リィ」
 振り返り、眩しいほどの笑顔と共に紡ぐ少女へと。椋は頷きを返すと共に歩を進める。猫又の彼等と距離を詰めれば、警戒することなく甘えるように彼等は足元へと擦り寄ってきた。ふわふわの毛の心地は気持ちが良いけれど、そこから伝わる温もりは感じられなくて。猫特有のあの温かさが感じられないことは、残念に思う。
 ゆらり、ゆらりと。足元で揺れる鬼火に触れれば、温度は感じなくともきっと火傷をしてしまうのだろう。
 だから、十分に注意をしながら――椋は、甘える彼等に手を伸ばした。
 大きな手が触れるのは、ふわふわと柔らかな心地のアゴ元。優しく撫で上げれば、瞳を細めごろごろと心地良さそうな音を猫又は鳴らす。そんな姿を見て、自分もとアピールするように他の猫又も椋の足元へと近付いてくる。囲まれてしまった椋の姿に微笑みつつ、ミンリーシャンも猫又の鼻先へと手を伸ばすと、そのまま優しく撫でてあげた。
 『にゃあ』と猫又から零れる声は、ご機嫌な色。その声を聴けば、自然と笑みが零れ。
「なんか、シロたちを思い出すな」
 ふと、自分たちの在処に住まう猫たちを思い出し。椋はミンリーシャンへとそう語り掛けていた。その言葉に、彼女は顔を上げこくりと頷くのだが――。
「あ、」
 灯る色が透き通る程の青い瞳に映り、思わず息を飲む。
 相手に、敵意は無い。
 けれどじゃれつく間に、うっかり尾の炎が宿ってしまったのだろう。椋の黒衣に灯る色に気付き、慌ててミンリーシャンは立ち上がると。氷里の刺突剣の構え呪文を唱える。
 ――ふわりと、足元を撫でる風。
 それは本来ならば冷気を含んでいる筈なのだが、今ばかりは感じられない。
「――椋」
 掛けられた言葉にはこくりと頷き、椋も立ち上がる。
 愛らしい彼等は、骸魂に囚われてしまった悲しき妖怪。戯れるだけでは、救えないと分かっているから――世界を包み込む風が、段々と強くなっていく。
「大丈夫、動かないで下さいね」
 風が猫又を包み込めば、その身体は氷の世界へと誘われる。
 此の世界ならば、寒くはないはずだから。
 救いを、彼等へと――願うようにミンリーシャンは、瞳を伏せた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

花澤・まゆ
化け猫、かわいい!
油断しちゃいけないと思いつつも
あたしも三毛猫が使い魔でいるものだから、つい
いいこだねー、と猫じゃらしを持って近づきます

しっぽはこちらに向けないでね、と牽制しつつも
猫じゃらし振り振り
かわいいなあ
【三毛猫のミケ】も一緒にじゃれついて
つい猫の可愛さに見惚れてしまいます、かわいい

しっぽが揺れるのもかわいいんだけど
いかんせん鬼火がなあ
熱くはないんだけど、やけどはしっかりしそうで

でも、骸の海に帰らないといけないよね
存分に満足行くまで遊んであげてから
UCをそっと起動します
ゆっくりおやすみ、そしていつかまた遊ぼうね

アドリブ、絡み歓迎です



 ゆらゆらと揺れる、彼岸花の中のふたつの鬼火。
 その持ち主である黒白の猫は、前足で顔をこしこしと洗っている。
「化け猫、かわいい!」
 その姿を一目見て、思わず花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)は大きな青い瞳を輝かせながらそう零していた。
 相手はオブリビオン。救いださなければならない存在で、油断してはいけない危険な相手だとは彼女だってわかっている。けれど、自身にも三毛猫のミケという使い魔がいるから。ついつい猫には甘くなってしまう。
 彼女の足元に擦り寄って来た、同じ二股のミケのいつもならば感じる体温が伝わってこないことに少し眉を寄せた後。まゆはブーツのヒールを響かせて化け猫へと近付く。
「いいこだねー」
 視線を少しでも合わせるかのように、袴の裾が汚れないようにと注意しながらしゃがみ。彼女の黒の手袋覆われた手に握られているのは猫じゃらし。ゆらゆらと、尻尾の鬼火のように揺れるその猫じゃらしを捉えれば、化け猫は警戒すること無く近付いてくる。
『にゃあ!』
 たしり、と捕まえようと伸びる前足。ミケと一緒に遊んでいるまゆは慣れたもので、その足に捕まらないようにと寸でのところで避けてみせる。
 背中に隠して、ちらりと見せて、パタパタと動かして。
 その猫じゃらしの動きは化け猫を惹き付けるには十分な動きだった。気付けばミケも一緒に猫じゃらしにじゃれついていて、四つの尾がまゆの前でゆらゆらと揺れる。
 ――しっぽはこちらに向けないでね、と。願うように紡いだ言葉は伝わったのだろうか。夢中になって猫じゃらしを追い掛ける彼は、相変わらずゆらゆらと尾を揺らすけれどまゆの身にその炎は触れない。
「かわいいなあ」
 猫が大好きなまゆは、その姿に思わず仄かに染めた頬を緩めながら言葉を漏らしていた。ミケはいつだって可愛いけれど、勿論他の子だって可愛いと思う。
 けれど――。
「しっぽが揺れるのもかわいいんだけど、いかんせん鬼火がなあ」
 目の前で蒼い炎が揺れる様子をじっと見て、残念そうにまゆは紡ぐ。
 うっかり一瞬触れてしまっても、熱くはない。けれど、それはこの世界に『温度』というものが無くなってしまったから。むしろ熱くないからこそ、気付かずに火傷をしそうで怖くもある。
 此の世界の為にも。
 そして、骸魂によりオブリビオン化してしまった妖怪の為にも。
 まゆには、やらなくてはいけないことがある。
「ゆっくりおやすみ、そしていつかまた遊ぼうね」
 手にした花色の御札が、まゆが息を吐きだすのに合わせるようにざわりと揺れた。その御札は段々と鈴蘭の純白の花弁へと変わり――くるくると夜闇を舞うと、ふたつの炎を抱く化け猫の身を包み込む。
 消えゆく姿を見ながら、足元のミケが『にゃお』と別れを告げるかのように鳴いた。
大成功 🔵🔵🔵

無銘・サカガミ
【日下部・舞(f25907)と行動】

「愛らしい猫、ね。」
癒される舞を見ながら肩をすくめる。
俺にとっては結局、生き物は触れば死ぬ程度にしかならないというのに。

身に秘めた【呪詛】。
…触れた生き物の命を枯らす八百万の呪いの一つ、触肌蝕呪。
摩擦の抵抗などなくとも、触れられればそれで十分だ。

群れてじゃれつきにくる猫又たちを一匹、また一匹と「枯らし」ながら進む。

「…ああ、大丈夫だよ。」
不安がる舞を余所目に歩いていく。

──本当に、厄介なものだよ。
呪いってやつは。


日下部・舞
サカガミ君(f02636)と参加

「猫、可愛いよね」

愛くるしい姿を見て癒される
でも、これはオブリビオン

「やることに変わりないから」

夜帷を抜いて攻撃開始
命中したら【暗黒】を発動する

彼の放つ呪いとは似て非なるもの
ただ、命を蝕むことに違いはない

群がる化け猫たちを【怪力】で振り解く
そんな彼らの転がる様もまた癒し
【目立たない】ように和みつつ、確実に各個撃破する

「サカガミ君、大丈夫?」

彼に触れると呪いを貰うらしい
それはぬくもりを分かち合うこともできないということ
温度を失ったこの世界でも、それは寂しいだろうと思う

厄介だと肩をすくめる彼を見遣り、今は前に進もう



「愛らしい猫、ね」
 にゃーんと鳴き声をあげつつ、こちらへと甘えるように近付いてくる猫又たち。その姿を見て思わず無銘・サカガミ(「神」に抗うもの・f02636)は言葉を零した。
 その彼の様子を黒い瞳に映しながら、日下部・舞(BansheeII・f25907)はこくりと頷くと、同意の言葉を零す。
 足元へと擦り寄ってくるその姿に癒されたのか、そうっと舞の瞳が細められる。そんな彼女の様子を見ながら、サカガミは小さく肩をすくめた。
 愛らしく無邪気な、敵意の無い彼等。
 けれど――サカガミにとっては触れれば死ぬ生き物であることには変わらない。
 様子を伺うようにサカガミへと近付いてくる猫又。その姿を捉え、彼が瞳を細めた時。
「やることに変わりないから」
 紡がれた覚悟を決めたような舞の言葉に、同意を示すように彼は頷きを返すと――意志を固めた眼差しで、猫又達に向け呪文を紡ぐ。
 それは彼の小さな身に秘められた呪詛を放つ力。彼に宿る数多の呪いは、触れた生き物の命を枯らすという。摩擦の抵抗など無くとも、触れられればそれで十分だという。
 だから甘えるように猫が寄れば、その身に自然と呪いが宿る。
 次々と猫を枯らす彼の姿を見て、舞は自分も続くように長剣を手にすると死の刻印を刻んでいく。『にゃあ』と鳴き声をあげた瞬間、その生命に終わりを告げる力。
 それは、サカガミの放つ呪いとは似て非なるもの。
 けれど、命を蝕むことには違いは無いと。舞は想い瞳を伏せる。
 仲間が倒れても、尚も甘えるように群がる彼等を力任せに振り解き、歩めば彼等は彼岸花の中倒れていく。
 彼等は、憑かれた存在。
 普通の妖怪であった筈の彼等を救うには、これしか方法は無いから――。
「サカガミ君、大丈夫?」
「……ああ、大丈夫だよ」
 不安げに声を掛ける舞の言葉を聞いて、ふるりと首を振りつつサカガミは零す。そのまま彼は気にした様子もなく、他の猫又を探すために歩みを進めた。
 彼の後姿を見遣りながら――舞は、心がざわつくのを感じていた。
 彼に触れると、呪いを貰うという。
 それは誰にも、何にも触れられず。彼が温もりを分かち合うことも出来ないということ。例え温度を失った此の世界でも、それは寂しいだろうと、そう思う。
 先程足元に触れた、猫の温度は感じなかった。
 けれど感触は、此の世界でも確かに感じることは出来たのに――彼には、そういったものも理解出来ないのだろう。
「──本当に、厄介なものだよ」
 呪いってやつは。
 独り言のようにサカガミの口から紡がれた言葉は、温もりも冷たさを感じない秋風に乗り舞の耳へと届く。
 肩をすくめる彼のその後ろ姿を見遣りながら――舞は、前へ進む為に一歩踏み出した。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

御乃森・雪音
アドリブ連携歓迎
温度が消える、と。
中々不思議な感じよねぇ、当たり前にあるものがないなんて。
世界ぎ滅びる時はこうやって一つずつ当たり前のものが消えていくのかしら。

ま、どの世界だろうとやることは変わらないけど。

猫さんは…倒すと考えるとちょっと気が引けるわね、周りの猫率考えると。
解放してあげるのよね、うん。
【La danza della rosa blu】
青薔薇の鎖で鎮魂の花を手向けましょう。
歌もダンスも合わせて、緩やかに静かに…次の生への導きの祈りを。
「…今度は平和な世界に出会えると良いわね」



「温度が消える、と」
 肌を撫でる風から、感じることが出来ぬその温度を確かめながら御乃森・雪音(La diva della rosa blu・f17695)は言葉を零した。
 そこに当たり前にあるはずのものが、無いなんて。不思議な感じだと、煌めく青い瞳を細めながら彼女は想う。
「世界が滅びる時はこうやって一つずつ当たり前のものが消えていくのかしら」
 世界が滅びる姿は、未だ見たことは無い。常に滅びと隣り合わせの此の世界が、そういう意味では一番滅びに近いのかもしれないけれど――雪音がやるべきことは、どの世界だろうと、いつだって変わらない。
 目の前で揺れる鮮やかな彼岸花。
 さわさわと秋風に揺れ、葉音を立てる様子は正に秋らしい光景で。吹く風が夏の温もりから秋の爽やかさに変わっていれば、正に風情溢れる情景なのだろうけれど。今はただ何かを撫でるだけの存在にすぎない。
 彼岸花の中から、顔を覗かせる猫又達は。ゆらゆらと尾を揺らしながらじいっと雪音を見ている。遊んでくれるのかと、期待するような黒い瞳を向けながら。
「猫さんは……倒すと考えるとちょっと気が引けるわね」
 その眼差しがあまりにも純粋で、ついついそんなことを想ってしまう。
 溢れる彼岸花の中に隠れた猫又は、どれほどいるのだろうか。具体的には分からないが、皆同じように骸魂に囚われて、解放してあげなければならないことは確か。
 だから、雪音ひとつ息を吐くと。たんっと軽やかにステップを踏んだ。
 そのまま彼女の色付いた唇から紡がれるのは、美しき歌声。寂しい世界に満ちるその歌声は、そのまま青薔薇の鎖を作り出し――次々と猫又の身を包み込んでいく。
 鮮やかに咲く青の薔薇は、倒れゆく猫への鎮魂の手向け。
 緩やかに、静かに。捧げる歌とダンスは、次の生への導きの祈りを込めたもの。
「……今度は平和な世界に出会えると良いわね」
 倒れていく猫の姿を見遣りながら、静かに雪音はそう紡いでいた。
大成功 🔵🔵🔵

宵雛花・十雉
あっきー(f26138)と

ぽっかり浮かんだお月さんを見上げる
いい月夜だ、後はひやりとした夜風がありゃあ言うことねぇがな

触れられても体温が伝わらないってのは寂しいもんだな
なぁ、と確認しながらお返しで相手の頬に触れてみる

火の玉が見えたかと思えば、その場に現れた猫
か、可愛いなぁ…
思わず率直な感想が漏れる
オレ、猫好きなんだよ

遊んで欲しいのかい?
こりゃあ遊んでやらねぇ訳にゃいかねぇな、へへ
ほぉら、撫でてやるぞー
それとも煮干しでも食うかい?
…って、この白いのは猫じゃらしじゃねぇよ!?
ま、まぁでも喜んでくれてんならいっか

ひとしきり遊んで隙が出来たら
【厄祓い】で憑いた鬼火を祓ってやろ
後は任せたぜ、あっきー


天音・亮
とっきー(f23050)と

風の冷たさも傍らのきみの温度もわからない
頬を両手で挟んでもただ皮膚が触れる感触だけが伝わって
えいっ
きみの首にぴとり両手をあててもほら
やっぱり温度は感じない
お返しと触れる両手も同じで

やだなぁ…なんて掠めた気持ちはぎゅっと握った拳と一緒に隠した
私も好きだよ猫!よーし遊ぼう!

あれ、とっきーの横にいる子がじっと何かを狙って…
もしかしてと肩のもふもふをちょいと持ち上げた
案の定飛び込んできた猫にやっぱり!
あははっ、とっきーの服はひらひらしてる所が多いもんね
猫から見ればうずうずしちゃうのかも?

きみが祓った鬼火を魔法のそよ風で追いやって
撫でた猫の温もりは
やっぱり感じられなかった



 大きな月は幽世の世界を煌々と照らし、美しき光を注いでいる。
「いい月夜だ、後はひやりとした夜風がありゃあ言うことねぇがな」
 その月を見上げながら、宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)は鋭い眼差しを細め言葉を紡ぐ。その言葉は秋風に乗り世界へと広がっていくが――その風に温もりも、冷たさも感じられずに彼は残念そうに息を零した。
 傍らに立てば、ある程度温度が分かるはずなのに。
 それも感じられず、本当に傍らにきみが居るかが分からない。
 天音・亮(手をのばそう・f26138)は傍らの長身の彼を見上げると――そうっとその両頬へと細い手を伸ばし、包み込む。そこには、滑らかだが男性らしい皮膚の感触。けれど、温度が伝わることは無くて。
「えいっ」
 今度は衣服から露出しているその首へと両手を移してみるが、やっぱり温度は感じない。傍に居ても、触れても、感じないその温度。
「触れられても体温が伝わらないってのは寂しいもんだな」
 自身の首に触れている感覚だけを感じていた十雉は、亮に向けてぽつりと紡いだ。
 そのまま彼は、お返しとばかりに長い腕を伸ばし彼女の頬へと両手を添える。手袋で覆われていても、普段ならば確かに温もりが伝わる筈なのに――今此の世界に、温度が消えてしまったということは本当なのだと、実感するしか無かった。
 大きな手に包み込まれたその時間は僅かなもので。ゆらりと揺れる火の玉が視界を横切れば、十雉の意識はそちらへと向く。灯りを追い、探すように視線を揺らせば彼岸花の海の中から白と黒の猫が姿を現していた。
『にゃあー?』
 何をしているの? と言いたげに小首を傾げる猫又。ゆらゆら揺れるふたつの尾と、その先に宿る鬼火は妖怪らしいけれど。その見た目も仕草もごく普通の猫と同じで。
「か、可愛いなぁ……」
 思わず十雉からは率直な感想が零れ落ちていた。
「オレ、猫好きなんだよ」
 身長の高い彼の口許から尚も落ちる言葉は心からのもので。その言葉を耳にしながら、そうっと亮は空いた自身の手を確かめる。
 ――やだなぁ……。
 一瞬だけ、亮の心を掠めた気持ち。けれどその心を、ぎゅっと握った拳と一緒に隠すと。彼女は仄かに頬が緩む十雉を見上げながら。
「私も好きだよ猫! よーし遊ぼう!」
 満面の笑みと共にそう紡ぎ、十雉と共に歩み出す。
 じいっと円らな黒い瞳でこちらを見る猫又達。
「遊んで欲しいのかい? こりゃあ遊んでやらねぇ訳にゃいかねぇな、へへ」
 キラキラしたその眼差しを受ければ、遊んで欲しいとのだと十雉は察する。彼等に触れられるようにその場にしゃがみ込むと、手を伸ばしその頭を撫でてやる。心地良さそうに瞳を細め、もっともっとと甘えるように身を近付けてくる猫又。他の子も自分もとねだるようにその身を擦り付けてくるのが嬉しくて、ついつい頬が緩んでしまう。
 近付けばその身体を撫でて。お腹が空いているのなら煮干しを手にして。
 楽しそうに戯れる十雉を、猫又を抱き上げながら亮は見ていたけれど……。ふと、彼の傍らの猫又がじーっと一点を見つめていることに気付いた。
 そう、それはまるで何かを狙っているかのようで。
 亮はその獲物を探すように、彼の視線の先を見遣る。するとそこには十雉の姿が。
「もしかして」
 ぽつり零れた言葉。その答えを探るように、彼女は十雉の肩回りの尾のような白いもふもふへと手を伸ばし――ちょいっと持ち上げてみれば。
『にゃあ!』
 キラリ瞳を光らせた猫又が、そのもふもふへと飛び込んできた。
「っ!?」
「やっぱり!」
 不意のことに息を飲み、何が起きたのかと探るように不意に触れた重みを確認する十雉。そんな彼の傍らで、亮は楽しげに声を上げた。
 じゃれるように白のもふもふを両手でてしてしとする猫又。何が起きたのかと、少し困惑するように眉を寄せる彼の姿を見て。
「あははっ、とっきーの服はひらひらしてる所が多いもんね。猫から見ればうずうずしちゃうのかも?」
「……って、この白いのは猫じゃらしじゃねぇよ!?」
 笑いながら紡いだ亮の言葉で、そういうことかと十雉は納得する。一応反論もしてみるけれど、肩に乗る彼があまりにも楽しそうだから――。
「ま、まぁでも喜んでくれてんならいっか」
 そうっとその身体を撫でながら、満更でも無さそうに彼は紡いだ。
 そんな、楽しい時間にも終止符を。
 戯れているだけでは、憑かれた彼等を救うことは出来ない。その憑き物を落とす為に十雉が呪文を唱えれば、合わせて亮は憑き物を追いやる為にそよ風を生み出す。

 ――愛しい愛しい彼等。
 ――可愛がったその手に伝わる温もりは、やっぱり感じられなかったけれど。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

千波・せら
温度がない?
おかしいな、私の目には炎が映っているのに。

私が生み出す水や炎も温度が感じられないのかな。
試しに水属性の風を生み出してみるよ。
水の風は浴びたら寒くなっちゃうけど、全然寒くない……。

鬼火はこの水の風で消しちゃいたい!
けど、消えるのかな。
何も感じないから効果も分からないや。

ここにいる鬼火に憑かれた猫たちは大丈夫なのかな。
にゃんって鳴き声が可愛いけど、今はそれどころじゃない……!
危なかった!危うく誘惑される所だった……!

温度を感じないのも不便だね。
私の身体はいつも冷たいけど、温度が無いのは何だかちょっぴり変な気分。
猫ちゃんにも温度が戻ればいいな。



 ――温度がない?
 此の世界の異変に、千波・せら(Clione・f20106)は不思議そうに瞳を瞬いた。
「おかしいな、私の目には炎が映っているのに」
 彼女の目の前に佇む猫の尾に宿る、ふたつの炎。青白いその炎はゆらゆらと揺れて、せらの宝石の身体に映り込みキラキラと輝く。
 その炎が、本物の炎のように感じられないのなら。
「私が生み出す水や炎も温度が感じられないのかな」
 ふと浮かんだ疑問に興味を持つと、彼女は呪文を唱えると――水の力を帯びた風が、幽世の懐かしき世界に流れていく。
 それは水気を含んだ、涼しき風。
 夏の最中ならば心地が良いのだろうが、秋へと移り変わった夜長には少しの肌寒さを感じてもおかしくはないもの。
 けれど、今はその風に触れても――。
「全然寒くない……」
 何も感じることなく、せらはぽつりと言葉を零した。
 この力を用いれば、鬼火の炎も消え果てる。そう、せらは想っていたのだが。
 本当に消えるのかな?
 彼女の心に湧き上がる疑問、不安、戸惑い。
 何も感じないから、その効果が分からない。本当に私は、いつものように力を使えているのかと湧き上がる気持ちに戸惑いが隠せない。
 けれど――彼女の目の前には、鬼火に憑かれてしまった猫たちがいる。彼等を救うには、骸魂から解放してあげなければいけないと十分分かっているから。
 ちらりと視線を向ければ、ふたつの尾に炎を宿す猫又の姿が。
 大丈夫なのかな……せらの心に宿る不安は彼等へも向く。心優しきその不安を感じ取ったのか、いないのか。彼等はじっとせらを見つめると。
『にゃん!』
 遊ぼう! と無邪気に語り掛けるように声を上げ、せらの足元へと近寄る猫又。ゆらゆら揺れる尾も、ふわふわとした毛並みの心地も、愛らしくて頬が緩んでしまうけれど。
「今はそれどころじゃない……!」
 その誘惑を断ち切るように、首を振るとぱちりと両頬をせらは叩いた。
「危なかった! 危うく誘惑される所だった……!」
 深く深く息を吐きだし、現実へと戻ったことを確認しつつ瞳を瞬くせら。尚も猫又たちはせらに遊んで欲しいとせがむけれど――彼等を救い出すために、彼女は先程作り出した風を彼等の身へと纏わせる。
 その冷たさは、やっぱり感じないけれど。
 その風に宿る力は本物だから。
 ぽうっと灯っていた炎が消えていけば、鮮やかな彼岸花の中に猫又が倒れていく。
 流れる風がせらの足元を撫でたけれど、やっぱり感じないその冷たさに。
「温度を感じないのも不便だね」
 瞳を細めながら、せらは独り言を紡ぐ。
 宝石である彼女の身体はいつだって冷たいけれど、温度が無いのは何だかちょっぴり変な気分だから。
 此の世界にも、猫にも。温度が戻ればいいなと、彼女は祈るように月を見上げた。
大成功 🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『腹ペコ坊主』

POW ●味見させて…
自身の身体部位ひとつを【鋭い牙が並んだ自分】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD ●キミを食べたい
攻撃が命中した対象に【美味しそうな物のしるし】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【捕食者のプレッシャーと紅い雨の弾丸】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ ●今日の予報はヒトの消える日
【飢餓】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠弦月・宵です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●雨中の叫び
 さわさわと揺れる彼岸花。
 鮮やかな赤から顔を覗かせていた猫又達は、皆骸魂から解放された様子。
 けれども、肌を撫でる風の心地は変わらない。肌に伝わる温度も変わらない。
 まだ、此の世界には『温度』と云うものが消え果てていた。
 それは、そう求めた妖怪が。まだこの地に居るから――。
 ゆらりと、いつの間にやら揺れる影が現れる。
 色濃い緑の葉を抱くその大樹から、ぶら下がるのは大きな大きなてるてる坊主。
 
 ――さみしいよ。
 ぴちゃりと、彼の身体から滴る赤が水溜まりを作っていく。
 ――おなかがすいたよ。
 無表情の彼から紡がれるのは、どこか悲痛な叫びのような言葉。
 彼は人喰いてるてる坊主。
 じっと軒先に吊り下がり人が通り掛かるのを待っていた。
 けれども人は誰も来なかった。
 寂しかった。空腹が彼の身体を包み込む。何も考えられなくなる。ただただ、誰かが通り掛かるのを待っていたかったのに、冷たい雨がその身を濡らせば、悲しさが募っていく。涙を流すかのように、身体から滴るのは赤では無く雨の雫。
 雨が濡らす冷たさも。人が近付く温もりも。
 全部全部、無くなってしまえばいい――。

 雨の日に、赤い水溜まりを見たら気をつけて。
 次に食べられるのは、アナタかもしれない――。
 そんな伝承の語られる彼は、ただ寂しかったのかもしれない。
 アナタを食べたいという欲望も、全て。
花澤・まゆ
…思えばてるてる坊主って軒下に吊るしたままだよね
人のために祈って、想って、それなのに
あたしたちは顧みることすらしなかった

さみしかったよね
ごめんね
今の君に謝ってももう遅いとはわかっているけれど

雨の冷たさも日の暑さも
全部独りぼっちで受け止めてきたんだよね
そう思うと本当に申し訳なくて

でも、あたしをあげるとは言えない
我侭でごめんね
食べてしまいたいほど愛してる気持ちは
わからなくともないけど

温度も存在も、まるごと自分のものにしたくなるんだよね

わかるからこそ、君を骸の海へ還すよ
君の寂しさは、あたしが受け止めてあげる

一度だけ、攻撃を喰らってからUCを発動
どうか、よい夢を

アドリブ、絡み歓迎です



 雨よ止んでくれ――その願いの元、冷たい中晒され続けるてるてる坊主。
「……思えばてるてる坊主って軒下に吊るしたままだよね」
 その光景を思い描き、花澤・まゆは悲しげに大きな青い瞳を伏せた。
 人の為に祈って、想って。それなのに、顧みることすらしなかった。
 段々と煌めきを帯びる瞳。それは――まゆの瞳に涙が滲んでいるから。
 ぴちゃりと音を立てるのは、てるてる坊主から零れ落ちる水音。今この場には雨は降っていないのに、冷たい水に混じり赤い鮮血の滴りが落ち水溜まりを作っていく。
 それはまるで、涙を流しているように見えて――。
「さみしかったよね。ごめんね」
 だからまゆは震える声で、そう言葉を紡ぐことしか出来なかった。
 今の彼に、謝ってももう遅いとは分かっている。けれど、言わずにはいられなかった。
 雨の冷たさも、日の暑さも。
 全部全部独りぼっちで受け止めてきた彼の姿が、脳裏にはっきりと浮かぶ。
 ゆらり、木にぶら下がる大きなてるてる坊主が揺れた。それは風になのか、それとも彼の意志なのかは分からない。まゆの頬を撫でる風が温もりも冷たさも存在しないのは、彼が望んだからなのだと思えば、きゅうっと胸が締め付けられるように苦しくなる。
「でも、あたしをあげるとは言えない」
 俯き、ふるりと首を振るとまゆは小さく言葉を落とす。
 ――我侭でごめんね。
 重ねるのは謝罪の言葉。
 ごめんねと、何度言えば彼のここまで積み重なった悲しさは拭えるのだろうか。全ての温度が無くなれば良いと、願ってしまう程の悲しさが。
 食べてしまいたいほど愛してる気持ちは、わからなくともないと想う。
 ――温度も存在も、まるごと自分の者にしたくなるんだよね。
 浮かぶ想いは彼に寄り添っているから。
 ただ独りで、悲しく誰かを待っていた彼のことを分かってくれる人なんて、今まで存在したのだろうか。ぴちゃりと雫を垂らして、揺れる彼は言葉を発さない。
 変わらない表情で、じいっとまゆの様子を伺っている。
 だからまゆは――カツリと靴音を鳴らしたかと思うと、彼の元へと近付いた。
 微かに帯びた瞳の雫を指先で拭った彼女の瞳に宿るのは、強い意志。そんなまゆの姿を捉えると――腹ペコ坊主はぎしりと吊り下がった枝を軋ませて、まゆに目掛けてしるしを刻む。ぽつりとまゆの頬を打つ紅の雨の温度は感じない。
 けれど、この雫もまた。彼の想いの証なのだと想うから――まゆは、避けることなく真っ直ぐに彼の攻撃を受け止める。
「君の寂しさは、あたしが受け止めてあげる」
 だから――どうか、よい夢を。
 ぽつり、ぽつり。落ちる雫がまゆの艶やかな黒髪を濡らし、華やかな模様の袖は重みを増してだらりと垂れ下がる。
 彼の想いを受け止めながら――まゆは深く息を吸い込むと、そのまま霊刀を勢いよく振るい、衝撃波を放つ。
 小鳥のような音が響くと同時、ふわりと世界に幻朧桜の香りが舞った気がした。
大成功 🔵🔵🔵

無銘・サカガミ
【日下部・舞(f25907)と行動】

孤独と餓え…どちらも身に染みるほど分かるからこそ、彼の悲痛なる叫びがより聞こえる。
だが───
「外道に堕ちたならば、同情はしないさ。」

八百万の呪いが一つ、灼髪。
文字通り髪が燃えるが、この世界ならば熱さを感じることはない。

「これはこれで、新鮮なものだ…なっ!」
燃える髪を全力で振り回し、雨の弾丸をてるてる坊主ごと薙ぐ。

突如抱かれると途端に身を震わせ離れようとする。
命を枯らす呪いは、勿論彼女にも効くはずなのに───

「どうして、そこまで…」
相変わらず我が身を顧みない戦いをする舞にわずかに疑問を浮かべながらも、燃える髪が絶えずてるてる坊主を殴る。

「ひとりじゃない、か。」


日下部・舞
サカガミ君(f02636)と参加

「援護は任せて」

彼には敵がどう見えるのだろう?
同情はしないと告げる顔は見えない

影のように疾駆して【先制攻撃】
敵からサカガミ君を【かばう】
攻撃を全て回避するのは不可能

「なら耐えればいい」

私は盾になる
ダメージは【肌】の機能で痛覚遮断

「サカガミ君は無事ね?」

【黄昏】を発動

夜帷が、食べるのは『私』のほうだと禍々しい圧を放つ
夜帷で弾丸を【受け】る
【怪力】任せに【傷をえぐる】斬撃

飢えを彼はどうやって満たしたのだろう?
防ぎ切れない一撃に、サカガミ君を抱いて跳躍する
弾丸と呪詛が私を殺す
でも、殺されない
熱も痛みさえも消えた世界に私は立つ

「ひとりじゃないわ」

今は誰も独りじゃない



 孤独と飢え――。
 悲しきふたつの感情に包まれた目の前の腹ペコ坊主を前にして、無銘・サカガミはその瞳を微かに細める。
 それは、彼が孤独も飢えも。どちらも身に沁みるほど分かるから。だからこそ、彼の悲痛なる叫びがより聞こえる気がする。
 けれど――。
「外道に堕ちたならば、同情はしないさ」
 心は、分かる。
 そんな彼に寄り添い、救うことでは此の世界は戻らない。
 骸魂に囚われてしまった妖怪を助ける為には、それなりの対処が必要だと分かっているから。だから油断無く、真っ直ぐに枝から吊り下がる敵をサカガミは見据える。
「援護は任せて」
 強く言い放つ彼の言葉を耳にし、日下部・舞は静かに零した。
 ――彼には敵がどう見えるのだろう?
 語りつつも彼女の心には疑問が宿る。それはきっと、強く言い放った彼の表情が、この位置からでは見えなかったから。温度の無い夜風に吹かれ、揺れる漆黒の髪。その後ろ姿を見つめ舞が静かに想っていた時。不意に、その髪が燃え上がった。
 大きな月に照らされた世界に咲く、炎の華。
 それは咲き誇る彼岸花よりも赤々しく、鮮明で、ゆらゆらと揺らめく様子はどこか神秘的。――その答えは、サカガミの呪いのひとつ。髪が燃える呪いなのだが、普段ならば感じる炎の熱さも、今此の世界ならば感じることは無い。
「これはこれで、新鮮なものだ……なっ!」
 燃え上がる髪を慣れた様子で振り回し、敵との距離を詰めるサカガミ。対抗するように刻印を刻み、雨を降らせようと揺れる腹ペコ坊主だが――サカガミの身体を庇うように前に出たのは、舞だった。
 彼女は腹ペコ坊主が雨の弾丸を降らせる直前に、長剣の切っ先で敵の身を斬り付ける。その攻撃を追うように、サカガミも敵を薙いだ。
 揺れる白い身体。
 裾が燃え、鮮血では無い赤が腹ペコ坊主へと移っていく。
 熱い――とは言えない。
 だって此の世界には、温度は戻っていないのだから。彼が、そう望んだから。だから炎が広がるのも気にせずに、腹ペコ坊主は雨を降らせ続ける。
 炎にも負けぬ、赤が注ぐ中――この攻撃は、全て回避することは不可能だと舞は悟る。
 けれど彼女は狼狽えるどころか、尚も真っ直ぐに敵を見る。
 避けられない、それならば――。
「なら耐えればいい」
 覚悟を決めるように紡がれた言葉の通り、降りしきる赤が彼女の細い身へと降り注ぐ。爆ぜて赤が舞の身を包むけれど――彼女は顔をしかめること無く、ただ立っていた。
「サカガミ君は無事ね?」
 そのまま彼女は、自分よりも小さな彼の無事を覗き込む。
 彼の細い身体をしっかりと抱え、傷を受けないようにと守る彼女を見上げて――サカガミは、瞳を見開き深く息を吸うのと同時。慌てたように舞から離れようとする。
 ふるふると、小刻みに少年の身体が震えている。
(「命を枯らす呪いは、勿論彼女にも効くはずなのに───」)
 目の前の彼女には、確かに敵の弾丸とサカガミの呪詛が降り注いだ筈。それなのに、顔色ひとつ変えずに立つ彼女へと、サカガミは驚いたように言葉にならない息を吐いた。
 そう、舞は殺されない。
 熱も痛みさえも消えた世界に立つのだから。
 そのまま彼女はそっとサカガミから離れると、覚えた味を確かめるように長剣を振るう。降り注ぐ弾丸を受けながらも舞う剣戟は美しく――迷いの無い様子を表している。
「どうして、そこまで……」
 我が身を顧みない戦いをする舞。そんな彼女の様子を見て、サカガミは思わず言葉を零していた。抱く疑問は拭えないけれど、燃ゆる髪を振り下ろし、腹ペコ坊主の大きな身体を打ち燃やしていく中――。
「ひとりじゃないわ」
 口元に笑みを浮かべ、舞の言葉が戦闘の最中やけに大きく聞こえた気がした。
「ひとりじゃない、か」
 その言葉を確かめるかのように、サカガミは唇から零す。
 独りぼっちを知る者の出逢い。けれど、今は――誰も、独りじゃない。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

御乃森・雪音
アドリブ連携歓迎

寂しい、か。
寂しいと寒くなるわね、それなら温度なんて無い方が良いのかもしれない。
キミはずっとこうして一人でいたんだものね。
でも……その願いは、叶えちゃいけないから。
次に生まれて来る時は……出会えるように祈っておくわ、お友達になりましょ。

今は……世界を壊しちゃう前に還してあげるわね。

【La danza della rosa blu】
ダンスのパートナーをお願いしたいところだけど、キミの手を取るわけにはいかないから……せめて手向けの花で飾ってあげる。
雨の中での歌……寒さを分かち合えるならまだ良いけど温度を感じられない事に泣きたくなるわね。



 ――寂しい。
 その感情を抱いている目の前の彼を見遣り、御乃森・雪音はひとつ息を零した。
 寂しいと寒くなるのは、分かる。それならば、温度なんて無い方が良いと。そう想う気持ちも分かる気がするのだ。
「キミはずっとこうして一人でいたんだものね」
 冷たさがつらい。温もりが傍に無いことが寂しい。
 そんな、独りゆえの強い強い感情が、此の世界から温度と云うものを奪ってしまった。
 雪音の頬を撫でる風は、相変わらず冷たくも無く温かくも無い。今が何の季節かも分からなくなるようなその風は、ふわりと優しく吹くと彼女の漆黒の髪を夜に揺らす。照らす月明かりが落ちれば、揺らめく漆黒がキラキラとまるで星々のように輝く。
 けれど、気持ちが分かっても――その願いは、叶えてはいけないから。
「次に生まれて来る時は……出会えるように祈っておくわ、お友達になりましょ」
 結んでいた唇を開くと、雪音は蕾のような唇から優しく言葉を紡いだ。
 ギシリと枝を軋ませて、目の前の腹ペコ坊主は揺れる。
 それは風に揺れたのか、彼の意志かは分からない。変わらずぴちゃりと水音を響かせ、彼の身から零れるのは水と鮮血が混じった赤い色。赤の水溜まりが広がっていくのは、彼を解放しなければ止まることは無いだろう。
 だから――。
「今は……世界を壊しちゃう前に還してあげるわね」
 宝石のような青い瞳を細め、優しく笑みを浮かべると彼女は軽やかなステップを踏む。
 月明かりに照らされるは、漆黒の髪と黒衣。闇故に、瞳と所々の青の装飾が一層美しく輝き――そのまま彼女は細い指先を、悲しき妖怪へと向けた。
 孤独な彼に、ダンスのパートナーをお願いしたいところだけれど。彼の手を取るわけにはいかない。ひらひらと雫を垂らしながら、その白の裾が揺れる様はきっと美しいけれど。飢えた彼に触れれば、どうなるかは十分分かっている。
「だから……せめて手向けの花で飾ってあげる」
 ふるふると震える彼は、言葉は発さないが何かに耐えている様子。それはきっと、空腹で空腹で堪らないのだろう。その瞬間からも救い出そうと、雪音は笑いそっと彼へと青薔薇の鎖を添えた。
 汚れてしまった白に咲く青薔薇は瑞々しく。生命を感じさせる鮮やかさ。
 奏でられる音色と共に揺れる彼は、まるで踊っているようにも見えて――。
「雨の中での歌……寒さを分かち合えるならまだ良いけど温度を感じられない事に泣きたくなるわね」
 青薔薇に包まれその身を歪める彼を見て。彼の身から落ちる雫の音色を聴いて。ゆるりと瞳を伏せた雪音は、静かに言葉を零した。
大成功 🔵🔵🔵

天音・亮
とっきー(f23050)と

そうだね、寂しいって心は埋めてあげたいけど
食べられるのは私もいやだな
お腹が空くのは仕方がない
きみのお腹を満たすのが、たまたま人間だったのかもしれない
でも私達は人間だから
ごめんね、きみを止めなきゃいけないの

うん、とっきーに任せるね
行ってくる

視線は泣いてるように叫ぶきみへと真っ直ぐに
上げた速度で紅い雨の只中
避けて避けて距離を縮める
迫る弾丸だって怖くないよ、任せてくれときみが言ったから
作ってくれた隙を逃さぬよう
高めた速度で振り下ろす脚

忘れられてしまったこの子の寂しさにも
きっと心の温度があったんだろうね
私、やっぱり温度が無い世界は嫌だな

浮かべるのは多分
ほんの少しの寂しげな笑顔


宵雛花・十雉
あっきー(f26138)と

寂しかったって?
可哀想だとは思うけどさ…
近くに来て欲しかったら食うのをやめりゃよかったんだ
人間だって食われるのは嫌だよ

アンタ温もりが欲しかったんだろ?
ならもっと違う願い方だってあったはずだぜ
皆が幸せになる願い方がさ

援護はオレに任せてくれよ
あっきーは攻撃を叩き込むことに集中しな
霊符を構えて言う
おう、行ってこい!

『第六感』で攻撃を予測
あっきーが攻撃を受けそうになりゃあ『結界術』で結界を張って守る

隙を見て、てるてる坊主の野郎に霊符を貼り付けて動きを封じてやろ
よし今だ、あっきー!

寂しげな顔してんのを見れば、オレはいつも通りの笑い顔を作って
「頑張ったな」って迎えるよ



「寂しかったって?」
 大きな木にぶら下がり、ゆらゆらと揺れるてるてる坊主。
 浮かべた表情は無表情にも、笑顔にも見えるけれど。そんな彼の発する強い強い想いを心にして、宵雛花・十雉は輝く色を宿す瞳を細めた。
「可哀想だとは思うけどさ……近くに来て欲しかったら食うのをやめりゃよかったんだ」
 零れる言葉は冷静に、事実を語る。
 人を食べるという物語を抱く彼にとっては、それは本能に近い為難しいのかもしれない。けれど、寂しかったことには訳があると。彼がそう望むに至ったのにはしっかりとした理由があるのだと。語るかのように十雉は言葉を零していた。
 そんな彼の言葉に――天音・亮も瞳を細めると、こくりと頷き同意を示す。
「そうだね、寂しいって心は埋めてあげたいけど。食べられるのは私もいやだな」
 食べられても良いと。彼の孤独を救う為に、この身全てを捧げる人間などそうはいない。亮のような反応が、ごく普通だ。
 彼は、空腹だと云う。
 それは仕方が無いこと。そんな彼のお腹を満たすのが、たまたま人間だっただけ。
「でも私達は人間だから。ごめんね、きみを止めなきゃいけないの」
 とんっとつま先で地面を叩きながら、亮は語る。
 このまま放ってはおけないから。肌を撫で、亮の月光に煌めく金髪を泳がす風に温もりも、冷たさも含まれていない此の世界を、元に戻さなければいけないから。
「援護はオレに任せてくれよ。あっきーは攻撃を叩き込むことに集中しな」
 彼女が態勢を整えていることを察し、十雉は破魔の力を宿した符を構えながら紡ぐ。傍らの彼の様子に、亮は安堵したように笑みを零すと。
「うん、とっきーに任せるね」
 信頼を込めた言葉を残し――敵との距離を一気に詰めるように駆け出した。
「おう、行ってこい!」
 その背を見送るように眺めながら、言葉を掛ける十雉の意識は研ぎ澄まされている。敵がどのように動くのか。どんな手段で攻撃を仕掛けてくるのか。戦場の見える後方だからこそ、分かるものもあるのだ。
 ぴちゃりと赤混じりの雫を身体から垂らす腹ペコ坊主は、そのままぎしりと枝を軋ませると迫り来る亮をじっと見た気がした。
 彼が何を狙っているのか。その様子を眺め察した十雉はすぐに符を宙に放つと、そのまま亮へと結界を巡らせていた。刻まれた刻印は防げなかったけれど、彼女へと降り注ぐ赤い雨雫の弾丸はある程度防げるはずだから。
 そんな一連の流れを、亮は静かに見つめていた。
 彼女の澄んだ青い瞳が捉えるのは、泣いているように叫んでいる気がする腹ペコ坊主へと真っ直ぐに注がれる。段々と速度を上げながら、月夜から落つる赤い雫が彼女へと触れる前に弾けることに気付きながらも、彼女は真っ直ぐに敵を見つめる。
 ――そう、弾丸だって元から怖くはない。
 ――任せてくれときみが言ったから。
 だから亮は、安心して敵との距離を詰めるのだ。彼と共ならば、このスピードが緩むことなどあり得ない。
 耳に響くのは風を切る音。
 温度を感じないその風は、ただの音としか認識が出来ない。
 あともう少し。巨大なてるてる坊主の身体を亮が捉え、自身の脚へと力を込めた時。後方から何かが飛んできたかと思うと、目の前の彼の身に数多の符が貼り付いた。
「よし今だ、あっきー!」
 振り返らずとも後方から聞こえる声の主は分かる。
 霊符により拘束された腹ペコ坊主。ぎしりとも音を立てずに、変わらぬ表情で雫を垂らす彼へと向け――亮は、迷うこと無く素早く脚を振り下ろした。
 微かに歪む腹ペコ坊主の身体。変わらぬ表情のままだけれど、その身体から零れ落ちる赤い雫が大きくなったのは気のせいだろうか。
「アンタ温もりが欲しかったんだろ? ならもっと違う願い方だってあったはずだぜ」
 ――皆が幸せになる願い方がさ。
 ぴちゃり、ぴちゃりと零れ落ちる雫の音色を聴きながら、十雉は静かに語る。
 悲しいから、寂しいからと、失くしてしまったものはこれで本当に良かったのかと問い掛けるように。もっともっと、願うべきものがあったのでは無いかと――想ったのだろうか。腹ペコ坊主は微かに頭を垂れたように見えた。
 その表情は、やっぱり分からない。
 けれどそんな彼の姿を見て、亮は唇をきゅっと結ぶと胸元で手を握る。
 忘れられてしまったこの子の寂しさにも、きっと心の温度はあったのだろう。
「私、やっぱり温度が無い世界は嫌だな」
 ぽつりと零れた言葉は夜風に乗り、確かに十雉の耳へと届く。
 ゆるりとした足取りで近付いて来た十雉。傍らに立った彼の気配に気が付くと、亮はほんの少し寂しげな笑顔で十雉を見上げた。
 そんな彼女の表情に、彼は気付かれぬ程浅く息を吐くと――。
「頑張ったな」
 いつも通りの笑みを浮かべて、彼女を迎え入れる。
 すぐ傍らの体温が戻るのはきっと、もう少し――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ミンリーシャン・ズォートン
椋(f19197)と

彼と出逢うまでの私を思い出す
常に空腹で
人が恋しくて
でも怖くて
壁を作っていたのは私だったけれど
本当は寂しかった

けれど私は彼に温もりを教えて貰った

世界から温かさを奪わないで
貴方が次に生まれ来る時
家の中で温かさに包まれながら幸せに暮らせるよう願います

そう、家で私達の帰りを待っているあの子達のように

心に浮かぶのは私達の大切なてるてる

彼と共に武器を構え
氷の刺突剣の剣撃や身軽さを活かした体術で応戦

人喰いてるてるが彼を襲おうとすれば
詠唱し蒼昊の光を纏います
彼を傷つけさせはしない

水晶花のピアスを光らせ
心の痛みは引き受けます
一緒に泣いてあげるから
温もりある世界に戻ろう
おいで
もう、休みましょう


杣友・椋
ミンリーシャン(f06716)と

そうか
世界から温もりを奪っているのは、おまえなんだな
相変わらず感触だけの風に吹かれながら
その子の悲痛な叫びを聞く

想起したのは彼女と同じく
家で俺たちの帰りを待つ、互いを模したてるてるたち
おまえもそんなふうに、人の温もりに囲まれたかったんだな
――ぽたり、滴り落ちる雫に
おまえの痛みが映っている気がした

おまえの寂しさを、悲しみを、痛みを
取り払ってやりたい
黒槍に籠めるのはそんな願い

腹が減っているなら少しくらい食ってもいいさ
それでおまえが満たされるなら
ただリィに手出しはさせない
彼女に攻撃が及ぶならば全力で阻止する

このままではいけない
おまえも解っている筈だ
在るべき場所へ還ろう



 孤独に震え、飢餓に苦しむ大きなてるてる坊主を前にして。ミンリーシャン・ズォートンは杣友・椋と出逢うまでの自分を思い出していた。
 常に空腹で。人が恋しくて。でも、怖くて。
 壁を作っていたのは自分だったのは分かっている。けれど、本当は寂しかった。
 小さな肩が震える。
 あの時の寂しさは、今でも思い出せるようで。温度を感じない世界なのに、何故だかとてもとても寒く感じた。
「そうか。世界から温もりを奪っているのは、おまえなんだな」
 きゅっと自らを抱くように細い腕を抱くミンリーシャンの肩へと手を添えながら、椋は悲しき腹ペコ坊主に向けて言葉を掛ける。
 肌を撫で、髪を泳がせる風には相変わらず温度は無く感触だけが伝わる。
 こんな世界を生み出してしまった程に強く強く願った彼を見て――椋は、思わずその瞳を細めていた。そんな彼の言葉と、肩に伝わる温度を感じるような気がして。ミンリーシャンはほっと安堵の息を零すと、しっかりと前を向き敵へと視線を送り。
「世界から温かさを奪わないで」
 それは必死な願いのように、紡がれる言葉。
 貴方が次に生まれ来る時、家の中で温かさに包まれながら幸せに暮らせるようにと。そんな、彼の幸せを願いながらの、ミンリーシャンの優しき言葉。
「そう、家で私達の帰りを待っているあの子達のように」
 てるてる坊主は、二人にとっては遠い存在では無い。
 家に飾られた、お互いを模したてるてる坊主は二人を繋ぐ大切な存在。瞳を閉じれば、すぐにでも揺れる彼等を思い出せる。お揃いの髪飾りと、角を飾った愛らしき彼等を。
 だから――椋も彼女と同じように、彼のてるてる坊主に想い馳せていた。
 彼等には、自分達が待っている。
 では、目の前の彼には――?
「おまえもそんなふうに、人の温もりに囲まれたかったんだな」
 ぽつり、零れた椋の音に合わせるかのように。腹ペコ坊主の身体から血混じりの雫がぴちゃりと地に落ち、そのまま地面に水溜まりを作る。
 いくら彼が血に濡れて、人を喰らう妖怪だとしても。その外見は人々の晴れへの願いを乗せ、いつまでも雨の中願い続ける優しきてるてる坊主だ。
 けれど、その滴り落ちる雫を見れば――彼の痛みが映っている気がして、思わず椋は眉を寄せ、きゅっと唇を結ぶ。
「おまえの寂しさを、悲しみを、痛みを」
 ――取り払ってやりたい。
 祈るように、願うように。紡がれた想いと溢れる願いを乗せて。椋は黒槍を握り直すと、ゆらゆらと揺れる腹ペコ坊主へと切っ先を向ける。彼の動きを合図にするように、ミンリーシャンも透き通る美しき刺突剣を構えると、ひらり軽い身のこなしで前へと。
 黒槍を振るえば、高い音が椋の耳をかすめた。
「腹が減っているなら少しくらい食ってもいいさ。それでおまえが満たされるなら」
 祈り、願い、寂しさに包まれ、そして飢えに苦しむ彼に向け。椋は近付くとその無表情のような、笑顔のような、感情の読み取りにくい顔を覗き込みながら紡ぐ。
 すると彼は、狙いを定めるように揺れると――その血に濡れた裾の部分を鋭い牙が並んだ自分の頭部へと変形させ、椋へ向け襲い掛かる。月光に照らされる牙は鈍く煌めき、彼の身を引き裂かんとする。
 お腹が空いたのだ。
 だから噛り付きたいのだ。
 強い想いを察し、椋は避けること無くその場に留まりただ黒槍を握るだけ。
(「リィに手出しはさせない」)
 自分の身が傷付くことは厭わずとも、譲れぬ想いだけは確かに宿していた時――鋭い痛みが訪れるより先に、敵の牙が並ぶ頭部が強い光を浴び消え果てていた。
 何があったのか。
 そんなことは思わない。その強く優しい浄化の光は、愛しい人が生み出したものだと、椋はもう分かっている。
 後方にて立ち、前を見据えるミンリーシャン。彼女だって同じように、椋が傷付くことは許せない。だから、例え彼が飢えていようとも。彼を差し出すことは出来ないのだ。
 そのまま彼女は、細い指先を自身の耳元に当てる。添えられた水晶花のピアスが煌めけば、ミンリーシャンは青い瞳を細めて口元に笑みを浮かべた。
 ――心の痛みは引き受けます。
「一緒に泣いてあげるから、温もりある世界に戻ろう」
 笑顔で、手を差し伸べるように前へと差し出して。彼女が紡げば、椋も構えていた槍をだらりと落とし、目の前の彼へと言葉を掛ける。
「このままではいけない。おまえも解っている筈だ、在るべき場所へ還ろう」
 彼は骸魂に飲み込まれてしまった、孤独な妖怪。救える道があるのならば――この先の幸せを願い、共に歩もうと手を差し伸べても良いのだろう。
「おいで。もう、休みましょう」
 柔らかな笑みと共に、ミンリーシャンは想いを込めた刃を振るう。
 ぴちゃりと零れる雫は、もう赤は混じっていない。
 透き通る雫が生み出す水溜まりは、まるで彼が零した涙のようだった。

 ――その身が解放された時。
 ――肌を撫でる風は、日中の温もりと共に秋の空気を含んだ温度を宿していた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第3章 日常 『甘露の宴』

POW妖怪達と共に踊る
SPD次々と実を楽しむ
WIZ音楽や魔法で盛り上げる
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●甘露のひと時
 さわりと吹く風が、人々の肌を撫でる。
 木々の枝葉を揺らし、辺りに咲き誇る彼岸花の紅を揺らし、吹く風に宿るのは秋特有の温もりと冷たさを含んだ心地良い風。
 虫の音色が秋の夜長を告げる中。
 煌々と照らす大きな月は、変わらずそこに浮かんでいるけれど。
 その月の美しさに負けぬ煌めきが、次々と灯りだす。
 彼岸花に囲まれた丘に立つ、一本の大きな樹。立派な幹を持っていることから、一目で相当の老樹だと云うことは分かるだろう。
 その枝に。ひとつ、またひとつと光が灯っていく。
 温かみのあるその色は、ぼんやりと灯り夜の幽世を照らしていく。

 今日は、一年に一度のご神木が灯る神秘的な夜。
 垂れ下がる枝へと手を伸ばせば、ころりと輝く実へと触れることが出来るだろう。少し持ち上げれば簡単に外れるので、収穫に苦労することは無い。ヘタの部分を引っ張れば実に穴が空き。中を覗けばちゃぷりと揺れる液体が見えるだろう。
 此の地に集う妖怪たちによって用意されたのは、朱塗りの盃。両手で持てるほどのその盃へと、甘露を注げば今日の日の準備は出来上がり。
 温もりの戻ったどこか懐かしき幽世の世界で、静かに想いを馳せようか。
 虫たちの音色に耳を傾け。
 秋の風に吹かれる彼岸花と灯るご神木を眺めながら――。
 
 弾ける液体は爽やかな甘みを抱き。
 煌めく金箔を秘めた甘味が強く喉に残るものもあるだろう。
 輝く甘露の実を開き、盃に開けるまで分からない。
 けれどその甘露は、全ての厄を落とし。そして先の一年を幸せに導くと囁かれるもの。
 とぷりと傾け飲み干せば。
 その甘い味わいに、きっとこの日だけの記憶が宿るだろう。
無銘・サカガミ
【日下部・舞(f25907)と行動】

「色んな味、ね」

触肌蝕呪は生あるもの全てに効く。…つまり、植物にもまた。

手袋をはめ、肌が樹に触れぬよう注意しながら実をもぎ、盃に注ぐ。
どろっと濁っているそれを飲めば、語られた通り甘い味わいで。

それは酒は酒でも──
「…甘酒、か」

ふと、舞の方を見る。
あれだけの攻撃に、自らの呪いまで受けてなお確かに生きている。
呪いに耐性があるわけでもないのに。それは、あまりにも不可思議で、未知の事象であった。

「…そうか」
大丈夫そうに振る舞ってはいるが、無理をしているのは俺でも分かった。

彼女はなぜそこまでして戦えるのか。
彼女にとっての幸せとは一体──


日下部・舞
サカガミ君(f02636)と参加

「いろんな味があるんですって」

甘露の実を割って盃に注ぐと豊潤な香りが漂う

「お疲れ様。怪我も大したことなくてよかった」

微笑んで盃を傾ける
最初は冷たさ、次にトロリとした口当たり、甘い味わいが広がる
最後にほんのりと躰が熱を帯びる

「おいしい……」

温度が消えたままなら、今ほどおいしく思えただろうか

ふと彼の視線に、

「大丈夫。痛みはないから」

包帯を巻いた手を動かしてみせる
実のところダメージは深刻だったが、彼に教える必要はない

「キミが怪我するほうが私には痛いわ」

だから気にしないでと微笑む
身をもって、彼の呪いの一端に触れて、その重さと深さに私は思う
彼が幸せになりますように、と



「いろんな味があるんですって」
 大きな月の下、美しく灯る老樹を見上げながら日下部・舞は紡ぐ。
 枝葉に灯る光は温かな色で心地良く、その枝葉にたわわになる実も美しく煌めいている。その光景は肌を撫でる風が、心地良い冷たさを含む秋風だからより美しく映るのだ。
「色んな味、ね」
 風に揺れる小さな果実を大きな黒い瞳に舞が映していた時、彼女の言葉を繰り返すように紡ぐ無銘・サカガミ。――彼の呪いである触肌蝕呪は生あるもの全てに効く。そう、生とはヒトだけでは無い。植物にも、同じように。
 だから彼は落としていた視線をあげると、手袋覆う手を伸ばし木々に生る実へと手を伸ばした。露出した部分が少しでも木々に触れぬようにと、細心の注意を払いながら。いくらご神木と云えど、これだけ立派な幹を持つ老樹ならば抗うことなど難しいだろうから。
 手袋越しに伝わる果実の感触。重み。実を持ち上げれば小さな掌にずっしりとした重みが、その身を預けるかのように乗った。
 そんな彼の様子を見届けるかのように舞は眺めた後、自身の手にしていた盃へと液体を注ぐと――ふわりと、豊潤な香りが夜の幽世へと広がる。
「お疲れ様。怪我も大したことなくてよかった」
 彼女が笑みと共に言葉を零し、そのまま盃へと唇を添え傾ければ――まず、口に広がるのはひんやりと氷のような冷たさだった。こくりと喉を鳴らしその身へと伝わせれば、凍り付くような冷たさと共にトロリとした心地が広がり。後に残るは甘露の名に相応しき甘い味わい。身体の中を伝うその冷たさとは違い、身体は帯びるのはほんのりとした熱で。
「おいしい……」
 次々と変わる心地も、口に残るその味わいも、全てが不思議で素直に美味しいと感じる。けれどこの味わいは、温度が消えたままなら、今ほど美味しいと思えただろうかと疑問も湧く。――あの世界だったならば、きっと口当たりと甘さしか感じなかった。それはご神木の加護を受けた、甘露の実の魅力は大分削がれてしまっていると舞は想う。
 想い耽るように手元の盃を揺らせば。とろみを帯びた液体が揺れている。
「……甘酒、か」
 そんな耽る彼女の傍らで、自身も盃の液体へと口にすれば口に広がる優しい味わいにサカガミは少し驚いたように言葉を紡ぐ。
 それは酒という名だが酒では無い。
 口を離し改めて盃を覗いてみれば、どろっと濁った白い液体。味わってみれば、それは確かに甘酒のそれだと気付き、サカガミは納得したように頷く。
 不意に、こくりと微かな音が鳴った気がした。
 その音に視線を向けてみれば、サカガミの瞳に映るのは甘露を飲む舞の姿。
 いつもと変わらぬように見える、その姿。けれど彼女は、先程の戦いで攻撃と共に彼の呪いまで受けていた。それなのに尚確かに生きて、こうして甘露の恵みまで受けている。
 呪いに耐性があるようには見えない。故にあまりにも不可思議で、サカガミにとっては未知の事象である。
 不思議そうに彼から注がれる視線に気付き、舞は盃から口を離すと――。
「大丈夫。痛みはないから」
 笑みと共に、静かにそう紡ぎながら包帯を巻いた手を動かしてみせる。
 それは、小さな彼を安心させるかのように。
「……そうか」
 しかしそれが無理をしているということは、十分サカガミには分かっていた。けれど、彼女がそう言ってくれるのならば、これ以上問う必要は無いだろう。ひとつ言葉を紡ぎ、頷くとまた彼は盃へと口を付ける。
 ――深刻なダメージだったけれど、彼に教える必要はない。
 そう想う舞の優しさを感じる。
 彼女はなぜそこまでして戦えるのか。
 彼女にとっての幸せとは一体――そんな疑問がサカガミの思考を満たした時。
「キミが怪我するほうが私には痛いわ」
 舞は、静かに言葉を紡ぐ。
 だから気にしないでと、穏やかな笑みと共に。
 そう、先程身をもって彼の呪いの一端に触れて。その重さと深さを舞は知った。だから、思わずにはいられないのだ。
 ――彼が幸せになりますように。
 そう願う気持ちは、世界を照らす月だけが知っていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

壱織・彩灯
煉月(f00719)と

宵に浮ぶ秋月に
さざめく彼岸の花が囲う
老樹の灯りは柔く、柔く
導かれるように

…ほう、
此れは立派な御神木
其方の清らかな実をひとつ
分けて貰うぞ
そうと実を開き、朱盃へ注ぐ

噫、なんと甘やかなこと
芳醇な馨でくらりと酔うてしまいそうだと浸れば
掛けられた聲
おや、月夜に気高き者とは珍しい。
俺で良ければ共に

月の雫を落としたいろの彼の盃に善き風情と目を細め
……俺か?
混じることなき真白よ
乾杯に二人で気持ち良く煽れば美酒に耽溺する

れん、レンか、
ふふ、懐っこい子だなあ
俺は彩灯だ、好きに呼ぶとよい
そうだな、……幸せになった俺の元へまた縁を紡ぎに来ておくれ、という願いは、厭か?

盃を月へ掲げ、ゆらり願い乞う


飛砂・煉月
彩灯(f28003)と

月と狼は相容れぬ物だけど
此処は不思議と昂ぶらぬ故に
ただ秋を招く様に風と幽世を歩みゆく

御神木の輝く実から注がれた朱の盃を両の手に
虫達の音色を耳に歩む先に影ひとつ
――おにーさん、オレと一緒しない?
覗き込んでゆるい誘い
隣、借りるなーってへらりと

琥珀と月雫の彩
畏怖にして焦がれる色
隣を見やれば真白
はは、
すげー綺麗

重なる視線に――乾杯、と
自身の杯が甘い酒だと知れば
潤し、味わい、この夜にさえ浸って
溺れてもいいや

そだ、オレは煉…いやレンだよ
好きにと謂うなら綺麗な名前その侭
彩灯が幸せに過ごせたら嬉しいな
厭なんて事、お酒でも持って会いに行くよ
今度は相棒と一緒に

再度の縁紡ぎ
月へ掲げた杯は繋ぐ為



 ぼんやりと夜空に浮かぶのは大きな月。
 己が光を発することは出来ないとは、思えないほどの煌々とした明かりが世界を照らす。涼やかな秋風に揺れる紅の彼岸花、目の前にそびえ立つ老樹の枝には光が灯り――。
「……ほう、此れは立派な御神木」
 壱織・彩灯(無燭メランコリィ・f28003)はその樹の光に導かれるように近付くと、そっとその太い幹へと手を添えた。その立派な幹は老樹の重ねた年を感じ取れ、彩灯はそうっと赤い瞳を細めるとたわわに生る実へと手を伸ばす。
「其方の清らかな実をひとつ、分けて貰うぞ」
 言葉を掛け、灯る果実を持ち上げれば枝の揺れと共に自身の手に重みが伝わる。
 実を開けば芳しい香りが解き放たれ――そのまま彩灯は、朱盃へと液体を注いでいく。美しき真白の液体は朱色の中に美しく映える。その色の美しさに一瞬見惚れたように瞳を瞬いた後、そうっと口を付ければ広がるのは甘美な心地。芳醇な馨でくらりと酔うてしまいそうだと想い、彩灯が浸るように瞳を閉じた時。
「おにーさん、オレと一緒しない?」
 不意に掛けられた言葉に、彩灯は盃から口を話すと声の方を振り返る。
 そこには、漆黒の髪から覗く鮮やかな紅の瞳があった。どこか興味深げに覗き込みつつ、ゆるい口調で言葉を掛ける青年の姿を捉え。
「おや、月夜に気高き者とは珍しい」
 俺で良ければ共に――彩灯からのその言葉に男、飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)はへらりと嬉しげに笑みを浮かべると、「隣、借りるなー」と声を掛けつつ腰を下ろした。
 そのまま煉月が手元を揺らせば、彼の手にした盃で揺れるのは琥珀色。
 ちゃぷりと微かに鳴る水音が心地良く、その美しき色は老樹の光を浴びて美しい黄金色に輝き――畏怖にして焦がれる、その色に煉月は無意識に瞳を細めていた。
 彼は人狼。故に、月とは相容れぬ存在。
 けれど此処は、あんなにも大きな月が煌々と世界を照らしているのに、不思議と昂らぬと想う。だからだろうか、吹く秋風に身を任せながら、この幽世を歩くのが心地良いと想ったのは。耳に届く虫の音色の中、ひとり盃を口にする彼へと声を掛けたのは。
 ちらりと知らぬ存在である隣へと視線をやれば、彼の手元には真白が揺れていて。
「はは、すげー綺麗」
 思わず、煉月は感嘆の言葉を零していた。
 そして盃の善さに魅入っていたのは彩灯も同じで、月の雫を落としたかのようなその色に吸い込まれていた時、掛けられた声に彼は顔を上げた。
 交わる色は共にあか。
 漆黒の髪から覗くその鮮やかなさが交差した時――ふたりは言葉にせずまま、自然と自身の盃を掲げ互いに合わせていた。
 そのまま液体を口にすれば、煉月の口に広がるのはとろりととろける心地と共に感じるお酒特有の香。それは身も心も溶けて、浸って、溺れるような不思議な味わいで。この月の下でのひと時も合わさり、その身を任せるように彼はこくりと喉を鳴らす。
 そんな彼の傍らで、真白を彩灯が口にすれば。先程口にした甘露とは違う、溺れるような美酒の心地に彩灯が瞳を閉じた時。
「そだ、オレは煉……いやレンだよ」
 思い出したように口を開き――少しの間の後紡がれた名前に、彩灯は笑みを浮かべた。
「れん、レンか、ふふ、懐っこい子だなあ」
 確かめるように名を繰り返し、彼の犬のような笑みを見ていたら自然と笑みが零れている。自分も名を名乗り、好きに呼ぶとよいと紡げば彼はこくりと頷いて。
「彩灯が幸せに過ごせたら嬉しいな」
「そうだな、……幸せになった俺の元へまた縁を紡ぎに来ておくれ、という願いは、厭か?」
 すぐに呼ばれるその名前がどこか心地良い。初めての他人の幸せを願う彼の言葉に耳を傾けながら――月夜に添うように願いを紡いでみれば、煉月は笑みを浮かべた。
「厭なんて事、お酒でも持って会いに行くよ。今度は相棒と一緒に」
 今はいない白銀の竜のことを思い出しながら煉月は語る。
 それは次なる約束の言の葉。不思議な世界で交えた縁が、続くようにとの願いの言葉。

 ちゃぷりと音を奏でるふたつの盃。
 その盃を掲げれば――美しき月が水面に映り揺らめいた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

御乃森・雪音
雅一(f19412)と。


浴衣も出来たみたいだし、前に依頼でお世話になっちゃったから誘ってみたの。

落ち合えたらまず実を取りに行くのかしら。
手近な枝へ手を伸ばして、触れた実をそっと収穫。
確保出来たら盃をもらって適当に空いている場所へ腰を下ろして。
中、どんな風なのかしら。ヘタを引いてそっと覗き込んだら琥珀色の僅かに炭酸を帯びた液体が。
……花のような香りのスパークリングワインみたいねぇ、勿論お酒じゃないけど。
雅一の盃を見れば中身は違うみたいね。
シェアするとお互いの幸せを願えるそうよ…じゃ、幸せのおすそ分けをどうぞ、二人の王子様。

顔を上げると僅かに涼しさを帯びた風。
温度があるって良いわねぇ、やっぱり。


双代・雅一
雪音さん(f17695)と

カクリヨ、か
お隣の世界、気にはなっていたし
色んな場所を見て知るのは好きだ
お誘い感謝するよ、雪音さん

雪音さんに倣って両手でそっと実を収穫
甘露って…字の如く甘いんだったか
盃に移せば、甘い香りと少し黄色を帯びた液体
そっと口に含んで味わえば…洋梨にも似た不思議な味がする
ちら、と雪音さんの盃を覗き
――差し支え無ければ、そっちのも味見させて貰って良いかな
彼女の言葉に「あっ」と気付きながら
その、ただの好奇心で言ったんだ
そもそも王子って歳でも無いけど
…ありがとう、惟人の分も込みで分け合おうか

暑さ寒さがあって移りゆくのが季節だ
冷たさを感じるからこそ温もりもまた幸せに感じるんだろうな



「カクリヨ、か」
 ぽつりと零れた声が、流れる風に乗って幽世の世界へと消えていく。
 肌を撫でるは秋の冷たさを感じる夜風。揺れる青い髪の下、青い瞳を細めながら双代・雅一(氷鏡・f19412)は灯る大樹を見上げた。
「浴衣も出来たみたいだし、前に依頼でお世話になっちゃったから誘ってみたの」
 そんな彼の傍へと歩み寄り、御乃森・雪音は笑みを浮かべながらそう紡ぐ。その声へと雅一が視線を落とせば、ふたりの青い瞳に映るは互いの姿。
「お隣の世界、気にはなっていたし。色んな場所を見て知るのは好きだ」
 お誘い感謝するよ、そう雅一が礼を述べれば彼女はいいえ、と首を振った。
 そのまま大樹へと近付けば、灯る光がふたりを照らす。枝葉も、その枝から垂れ下がる実も。不思議な温かさに包まれており、優しく世界を照らしている。それはまるで、世界の狭間であるこの幽世を見守る老樹の優しさのよう。
 口元に笑みを浮かべ、そうっと雪音は細い指を伸ばす。
 鬼灯のようなその実へと触れ、傷付けないようにと持ち上げてみれば不意に伝わるずっしりとした確かな重み。それが収穫出来たことだと気付くと、雪音に倣うように雅一も枝へと手を伸ばしていた。
 涼やかな水色の浴衣の袖を押さえて、雪音の果実のすぐ横の実を彼はひとつ手に取る。
 ふたりは確かに収穫出来たことを示すように掌の中の果実を見せ合うと、そのまま盃片手に腰を下ろし、ヘタへと手を掛け力を込める。
 きゅっと微かな音と共に花開かれれば、その瞬間ふわりと甘い香りが広がった。
「中、どんな風なのかしら」
 不思議そうな声と共に、雪音はそうっと覗き込んでみる。そこには空洞になった果実の中に、満ちる琥珀色の液体がちゃぷりと揺れていた。不思議そうな溜息を零しながら、盃へと液体を零せば香りは一層強くなり――琥珀色が老樹の光を浴びて黄金に輝く。
 その輝きを雪音は瞳に映した後、そうっと盃へと唇を添える。その瞬間、広がるのは花の香。芳しきその香が口いっぱいに広がり、舌の上には花の蜜のような甘さが広がる。微かに舌で弾ける感覚は、炭酸だろか。甘さの上に潜む仄かな苦みも相まって、花の香りを含むスパークリングワインのような、大人な味わい。
 ――これでアルコールが含まれていれば更に大人の味なのだけれど。それならば雪音の舌へと落ちることは無かっただろう。
「甘露って……字の如く甘いんだったか」
 盃の上に雅一が零した液体は、少し黄色を帯びた見るからに甘そうで。世界に落としたことで、広がる香りも一層甘さを増した気がする。
 どんな味だろうと、疑問に思いながら口にすれば――彼の口に広がるのは、果実の甘み。それは洋梨にも似たような、フルーティーで癖の無い甘さだった。
 舌で転がし、その味わいを堪能する雅一。
 ふと、隣の彼女の手元を見れば。その琥珀色は自身の手元とは随分と違う色合いで。
「差し支え無ければ、そっちのも味見させて貰って良いかな」
 不意に、そんな言葉が漏れていた。
 彼の言葉に雪音は顔を上げると、くすりと笑みを零して花弁のような唇を開く。
「シェアするとお互いの幸せを願えるそうよ……じゃ、幸せのおすそ分けをどうぞ、二人の王子様」
 彼女のその言葉には何かを気付いたように雅一は口許に手を添え「あっ」と小さな声を零した。けれど、好奇心から漏れたその言葉に偽りはない。
 彼女の零した王子様と云う言葉も、随分と大人を重ねた自分には何だかくすぐったくて。自然と笑みが零れてしまうけれど、折角彼女が盃を差し出してくれているのだ。
「……ありがとう、惟人の分も込みで分け合おうか」
 自身も大きな手を伸ばし、盃を受け取る。
 液体へと口を付ければ、先程自身が飲んだ果実の甘味とは違う。花のような芳しき甘さと仄かな苦みが口に広がり、その味の違いに彼は驚いたように微かに瞳を開いた。
 そんな微かな動きに、雪音は笑みを落とす。
 そのまま顔を上げれば――ふわりと、僅かに涼しさを帯びた風が肌と髪を撫でた。
「温度があるって良いわねぇ、やっぱり」
 先程までとは違う、季節を感じる風。
 撫でる心地は気持ち良く、同じ世界に居るのに全く別の世界のように感じる。
 ゆらゆら揺れる灯る甘露の実。その情景もまた美しく――この幽世の一夜を彩っている、自身の世界では見ることの出来ない不思議な景色を見て。雅一は瞳を閉じて、そうっと言葉を零す。
「暑さ寒さがあって移りゆくのが季節だ」
 冷たさを感じるからこそ、温もりもまた幸せに感じるのだろう。
 そう紡ぐ彼の手元では、盃の中の甘露がちゃぷりと微かな音を立てていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

黒鵺・瑞樹
アドリブOK
SPD

ろくに働いてない状態でご相伴に預かるのは若干気が引けるが、ご神木の甘露となればぜひとも味わってみたいもの。
軽くあいさつ代わりにご神木に手を合わせ、それから一つの実に手を伸ばす。
…本当に中身が光ってる。
林檎が熟して蜜入り林檎が蜜そのものになった感じなのかなぁ。色味も似てるし。
杯に移してただよう酒精の香りに思わず笑みがこぼれる。
まずは一口。わずかに炭酸の刺激。ほんのりとした甘みと炭酸で思った以上にさらりとした味わい。うん、うまい。

月にご神木と彼岸花、それと虫の音。なかなかのロケーション。
分かち合う人がいないのは少し残念だが、それでもきっと今日というこの日は意味があると思う。



 輝く光を身に纏う、ご神木はすっかり年老いているとは思えないほど美しく。けれど、老樹ゆえの神々しさも纏っているような不思議な存在。
 そんな彼へと、挨拶代わりと黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は手を合わせた。
 瞼を開ければ青い瞳に木々の光が映り込み、キラキラと輝いている。ひとつ息を吐くと、瑞樹は老樹の枝に生る実へと手を伸ばす。
 仄かに輝くその実へと、手が触れれば掌へと光が落ちる。
「……本当に中身が光ってる」
 その美しき輝きに、彼は思わず感嘆の息と共に言葉を零していた。
 この実の中には甘露が詰まっていると云う。
 枝から離せば確かな重みが瑞樹の手に伝わり、微かにちゃぷりと中で水音が立つ。
 林檎ほどの大きさの、鬼灯のような不思議な実。その中に甘味が眠っているのは――林檎が熟して蜜入り林檎が蜜そのものになった感じなのかと、彼は目線の辺りに甘露の実を持ってくると。じっと見つめながら考える。
 よく見れば、色合いも似ている気がする。
 ならば味わいも果実の味わいなのだろうかと。少しの浮き立つ心地のまま、彼はヘタを取ると果実の中身を盃へと移していく。とぽりと微かに奏でられる水音が心地良く、広がる甘い香りは盃へと移すと、微かな酒精の香りが含まれた。
 心地良い香りに包まれれば、自然と零れる笑みも深くなる。そのままそうっと一口含んでみれば――口に広がるのは、ほんのりとした果実の甘味と弾けるような爽やかな炭酸。鼻をくすぐっていた甘味から思っていたよりは、随分とさらりとした味わいで。
「うん、うまい」
 こくりと喉を鳴らし飲み干せば、彼はひとつ頷きそう零していた。
 さわりと秋風が吹けば、瑞樹の銀髪が揺れ動く。
 大きな満月の光が注がれ、風に揺れるは紅の彼岸花。秋の虫音が耳に心地よく、瞳を閉じればこの世界の美しさに浸るよう。
(「分かち合う人がいないのは少し残念だが、」)
 それでもきっと、今日というこの日は意味があると思う。
 瞳を開いた時。
 ふわりと彼の頬を秋の風が優しく撫でた。
大成功 🔵🔵🔵

境・花世
綾(f01786)と

黄金の秋を融かしこんだ杯は、
甘く儚く弾ける金木犀の馨
面影を追うように一口、また一口と
幾らでも喉へと滑り落ちてく

半分こしたら、永遠にだって呑めるかな

くすくすと交わす盃に酔い痴れて
肴が欲しくなるねえと伸ばす手の先には、
つるりと舌触りも滑らかそうな月

どうしたって届かない月の肴の代わり、
ゆっくりと辿る隣のきみの頬は、
白くてひいやりつめたくて

……本当に齧ってしまうよ?

静かに寄せた唇は少しだけ震えて、
その膚をそうっと柔く食んでみせる
ただ芳しいきみの匂いが、笑い声が、
極上の美酒よりもっとわたしを酔わすから

これ以上呑んだら大変と置いた杯は
けれどとっくに空っぽで
眩む視界にきらきらと秋が散る


都槻・綾
f11024/花世

朱塗りの盃に満ちる甘露へ
唇を寄せれば
杏に似た芳香がふわりと漂う

柔らかな気泡が弾ける音は
ひみつを囁く愛らしき内緒話の如く

とぷり揺らぐ水面は燈りを映し
錦秋を思わせる金の波が立つものだから

秋を飲み込んでしまうみたい
――ね
花世のもたいそう馨しいこと
半分こしませんか

二人で居れば
二つ味わえて
二度おいしい

天の月に
己の頬に
繊手を伸ばす花世へふくふく笑んで

私の身も肴になるかしら
何せ元が器だから
噛みつくには冷たすぎるかもしれませんよ
齧ってみます?

なんて戯れと共に
彼女の花唇を指でなぞる

小動物めいた食みあとは
どうにも擽ったくて
ささめく笑い声を零したなら
手にした盃の水面も
くすくす揺れて踊っているみたい



 とぷりと微かな音を立てて、朱盃に落ちるは甘露の雫。
 その音と色、そして香りに満ちた空間を楽しむように眺めれば――境・花世(はなひとや・f11024)はまるで黄金の秋を融かしこんだような盃に、左目を開き輝かせた。
 広がる香りは、甘く儚く弾ける金木犀のよう。よく見ればその黄金のような色合いには、金木犀の花弁のようなものがちらちらと浮いていた。彼女はその面影を追うかのように、そうっとその盃へと唇寄せこくりと音を立て身体へと落としていく。
 そんな彼女の微かな音色を耳にしながら。都槻・綾(糸遊・f01786)が同じように盃へと唇を寄せれば、芳しき果実の香りが胸に広がる。
 これは何だろうかと。一瞬考えるように彼は瞳を瞬くけれど。すぐに記憶が結びつき、笑みを浮かべるとそうっと口へと落としていく。
 芳しき甘さは杏の香。口に落とせば弾ける心地は、柔らかく優しい音色を奏で。まるでひみつを囁く愛らしき内緒話のようだと、彼は笑みを浮かべた。
 手元を揺らせば盃の水面がゆらゆらと揺れ。落ちる大樹の光が歪んでいく。
 それは錦秋を思わせる金の波のようで――。
「秋を飲み込んでしまうみたい」
 ぽつり零れた綾の言葉。
 そのまま彼は傍らへと視線を向けると、穏やかな笑みと共に願いを口にする。
 ――ね、花世のもたいそう馨しいこと。半分こしませんか。
 その願いを耳にすれば、花世はどこかくすぐったそうに笑みを零す。
 二人で居れば、二つ味わえて。二度おいしい。そんな綾の言葉には同意しか無いから。
「半分こしたら、永遠にだって呑めるかな」
 盃を差し出しながら、紡ぐ彼女に頷いて。甘露を口にする彼を見遣れば、交わした盃に酔いしれてしまいそうだと花世は想う。
「肴が欲しくなるねえ」
 不意に零れたその言葉。同時に伸ばした彼女の手の先には――月が浮かんでいた。
 黄金に輝き、世界を照らす大きな月。それはまるでつるりとした舌触りも滑らかそうだと、花世は想う。けれど、どうしたって月へは手が届かないから。花世は月から視線を綾へと移すと、その細い指をそうっと彼の頬へと伸ばした。
 触れればその頬は白くて、ひんやりとした冷たさを宿している。
 その冷たさに一瞬、ぴくりと花世の指先が反応する。その仕草も、伝わるその指先の熱も。どこか心地良くて、綾は拒否すること無く笑みを浮かべながら。
「私の身も肴になるかしら」
 そんなことを紡いでみせた。
 彼はヤドリガミ。その身の本体は青磁の香炉と云う冷たき器。だから、噛みつくには冷たすぎるかもしれない。それでも――。
「齧ってみます?」
 冗談めいて紡ぐ彼は、そうっと自身の指先を花世の唇へとなぞらせる。不意の言葉とその仕草に、花世は自然と瞳を瞬いていた。
 秋風が幽世の世界を流れれば、彼女の右目の八重牡丹がひらひらと泳ぐ。
 それは、一瞬の間。けれども、永遠のようにも感じる間の後で。
「……本当に齧ってしまうよ?」
 紡ぐと同時に、そうっと花世は綾へと顔を近付けた。
 花弁のような唇は微かに震えていて、けれども静かに彼の白き肌へと唇を寄せて――距離が縮まれば、自然と満ちる芳しききみの香り。すぐ傍で聞こえる笑い声。
 嗚呼、これは――。
 極上の美酒よりもっとわたしを酔わす。
 そう想った時、花世は我に返るように綾から距離を取った。
「これ以上呑んだら大変!」
 慌てたような声で、彼女は手にしていた盃を地に置くけれど――その中身はすっかり空っぽになっている。綾から背けたその顔は、ほんのりと赤い気がするけれど。そんな彼女の後姿を眺めながら、くすくすと綾はくすぐったそうに笑っていた。
 一瞬触れた場所を確認するように、左の指先で触れながら。
 右手で持つ盃は、綾の笑い声に合わせて水面が揺れる。
 それはまるで、踊っているように揺らめき、映り込む光がさざ波のように揺れ動く。
 嗚呼、ほら。
 世界を包む温もりの光を見上げれば――眩む視界にきらきらと秋が散る。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

千波・せら
不思議な実だね。これが甘くて美味しい実なんだね。
良く熟れてそうな赤い実を収穫するよ。
思っていたほど大きくないね。

これを割って盃に入れるんだね。
琥珀色の液体はとろりとしていて見るからに甘そうだね。
香りも甘い香りがして美味しそう!
この老木から取れた貴重な飲み物。
いただきます!

わぁ、すごく甘い。それに炭酸が入っているのかな?
ビックリしたけどおいしい。
もうね、十分幸せなんだ。だけどこの一年の幸せも願っていいよね。
この一年も幸せに過ごせますようにって心の中で願いながら飲むよ。

こんなに美味しい実が飲めるのもしあわせだよね。
老木にもありがとうって伝えたいな。



 ふわりと撫でる、冷たさを含んだ秋の風。
 温度の戻ったその風に揺れる目の前の大樹を見上げれば、温かな光が灯り千波・せらの海のような宝石の身体を照らしキラキラと輝く。
「不思議な実だね。これが甘くて美味しい実なんだね」
 大きなその瞳に映るのは、ぼんやりと灯る数多の実。枝に吊り下がる鬼灯に似た形をしたそれは、光っているせいか色合いは分かりにくいけれど。せらはひとつひとつ確認して、良く熟れていそうな真っ赤な実をその手に取る。
 片手で持てる程度のその実は、思っていたほどは大きくない。けれど実を持ち上げ、手にしてみればずっしりとした確かな重みがせらの手に伝わった。
 そのまませらは細い指を、そのヘタへと伸ばすと――迷うこと無く、実を開けた。
 開いたと同時、その隙間からふわりと漂うのは不思議な甘い香り。
 せらの鼻をくすぐるその香は、花のように華やかで。甘いけれど胸に残らないような、すうっと身体に沁み込んでいくようなそんな心地良い甘さだった。
 実の中を覗き込むせらの大きな瞳は、好奇心でキラキラと輝いている。どんな味なのだろうと、ワクワクする気持ちで朱色の盃へと果実を傾ければ――見るからに甘そうな少しのとろみを帯びながら、水音を立て盃の中が満たされる。
 灯る光と月光に照らされるのは、琥珀色。
 これは、この老木から取れた貴重な飲み物だという。何年も成っていなかったその恵みを、今こうして手に出来ることは幸せだから――。
「いただきます!」
 目の前の老木に向け、感謝を告げるかのようにせらは盃を掲げ言葉を零し。そのまま甘露を口にする。せらの口に一気に広がる、花の蜜にも似た甘さ。少しの刺激に驚いたようにパチパチと瞳を瞬くと、そうっと盃を口から離す。
「わぁ、すごく甘い。それに炭酸が入っているのかな?」
 少しの刺激の正体は炭酸か。見た目に泡は見えないけれど、再び口に含んでみれば不思議なことに気泡が弾け、せらの口の中でまるで踊るよう。
 ビックリしたけど、おいしい。
 幸せそうに笑みを浮かべ――彼女は光を纏う、神々しい老木を見上げる。
 奇跡の実である甘露の実の、液体を飲み干せばこの一年幸せになれると言うけれど。
「もうね、十分幸せなんだ」
 数多の人に出逢い、もうひとりでは無いから。
 だから、既に幸せなのだけれど。
「だけどこの一年の幸せも願っていいよね」
 くすりと笑みを零しながら、せらは手元の盃をゆらゆらと揺らす。波打ち水音を立てる液体を眺めた後、またそうっとその甘露へと口を付ける。――この一年も幸せに過ごせますようにと、願いを込めながら。
「ありがとう」
 微笑み、せらが老木へと甘露の礼を紡げば――彼が返事をしたかのように、ざわりと枝葉が音を立て揺れ動く。
 温度の戻った幽世の。不思議な一夜の物語。
大成功 🔵🔵🔵

杣友・椋
ミンリーシャン(f06716)と

風が含む涼しさ
彼女の手のぬくもり
此の世界に温度が戻った事を実感する

握ったその手を引き神木の許へ
輝く実へ触れ、そっと枝から取り外し
……これが、甘露の実

精一杯背伸びする彼女を見守りながら
リィも取れたか?
二人の実を交互に見比べ
俺の方がちょっと大きいな、なんて戯けて笑う

盃に注いだ甘露は琥珀の如き彩り
お疲れ様。乾杯
彼女の盃にこつり触れさせたのち、そのまま飲み干した

……ん?
言われるがまま瞼を下ろし僅かに屈む

唇から流れ込むのは先程とは異なる蜜の味
驚きで目を瞬いた
……ったく、おまえなぁ

――予測の出来ない君の行動にいつしか惹かれていたのは
どれほど前の事だったか

ありがとう、愛してる


ミンリーシャン・ズォートン
椋(f19197)

小夜風運ぶ秋の匂い
最愛の人と大切に手を繋ぎ共に温もりを再確認
御神木が灯すは温かな色
綺麗だね
彼が実を採れば私も同じく手を伸ばす

今から採るね……ちょ、ちょっと待ってね

早く採ってというように垂れ下がる枝に背伸びして
漸く手にした甘露の実
彼が俺の方が大きいなんて揶揄うからちょっとだけ拗ねちゃうけど
彼と共に幸せに笑う

こつん
乾杯し煌めく液を飲み干す彼

椋、椋
目を閉じて、少ししゃがんでくれる?

口付けるフリして彼の口元へ運ぶのは私の分の盃

全部、あげる。

――愛しているから、幸せでいて、欲しいから

ずっと、愛してるよ。

貴方と居るから温かい
貴方と居るから幸せ

愛しい貴方と寄り添いながら御神木を心に刻みます



 肌を撫でる風は仄かな冷たさを帯び。
 ふたりを繋ぐ掌からは、確かに互いの熱が伝わってくる。
 それは此の世界に『温度』が戻ったのだという証に違いなく――ミンリーシャン・ズォートンと杣友・椋は、自然と互いの手に力を込めると視線を交わす。
 繋いだ手はそのままに、彼等が歩むは光を纏う神木の元。
 ちかりちかりと、温かな光を纏う姿はとても美しく。灯るように風に揺れる実もまた引き寄せられる程の魅力だった。そうっとその果実へと椋が手を伸ばし、持ち上げれば簡単にその果実は彼の掌へと落ち重みが伝わる。
「……これが、甘露の実」
 不意に零れていた言葉。
 手袋覆う彼の掌の中で、片手で持てるほどの大きさの実はぼんやりと光を放つ。
 その様子がどこか神々しくて、じっと視線を落としたままの彼の隣。繋いだ手の先の彼女は、精一杯背伸びをしていた。
「今から採るね……ちょ、ちょっと待ってね」
 椋が顔を上げ彼女の様子を見遣れば、ミンリーシャンは慌てたように言葉を紡ぐ。精一杯故にかぷるぷると伸ばした腕は震え、なんとか枝に生る甘露の実を採ろうと必死だった。ほんの少しだけ平均より小さな彼女にとっては、届きそうで届きにくい。そんな絶妙な高さだったけれど、椋が手を伸ばすより先、どうにか手が届きその掌に果実が灯る。
 彼女の様子を見届けた後、椋は自身の手と彼女の手の中の果実を交互に見ると。
「俺の方がちょっと大きいな」
 戯けたように笑いながら、そう紡げば。ミンリーシャンも同じようにふたりの果実を交互に見遣り、少し拗ねるようにその柔らかな頬を膨らませる。
 大きさは少し違うかもしれないけれど――揺らせば、その果実の中には確かに液体が込められていることが分かった。視線を交わせば自然と互いに零れる笑み。そのまま彼等はヘタへと手を伸ばし、ぱかりと果実を開け盃へと液体を注ぐ。
 とぷとぷと、響く微かな水音が虫の音色と合わさり音を奏でる。
 満ちる香りは甘やかで、彼と共の幸せを祈れることが嬉しくて。自然とミンリーシャンの頬は薄い薔薇色に染まり、その瞳は微かに潤む。
 ふたつの朱盃に注がれれば。ふたりは自然とその盃を合わせ――椋は、琥珀色のその液体をくいっと自身の身へと落とした。
 そんな彼の姿を見守るように眺めた後、ちょんっと彼の腕を突き。
「椋、椋。目を閉じて、少ししゃがんでくれる?」
「……ん?」
 ミンリーシャンからの願いが紡がれれば、椋は不思議そうにひとつ瞳を瞬いた後。言われるがまま瞼を下ろし、彼女に合わせるように屈みこむ。
 普段は頭一つ分ほど上にある彼の顔が、近くなる。
 手を伸ばせば簡単に触れられる距離。触れれば彼の熱が分かる、近い距離。
 そんな彼の口許へと――ミンリーシャンが触れたのは、彼女の分の盃。
 唇に触れれば、それは一瞬口付けかと想うけれど。すぐに感じる無機質な質感の後、口に落ちるは先程とは違う甘さ。
 驚いたように瞳を瞬時に開けば、そこにはいつもより近いミンリーシャンの顔があり。
「全部、あげる」
 紡がれる言葉の通り、彼女は自身の甘露を全て椋へと捧げていた。
 ――愛しているから、幸せでいて、欲しいから。
 だから自身の幸せの欠片を、全て彼へと彼女は差し出す。
 口に満ちる甘味を確かに感じつつ、こくりと喉を鳴らせば彼は口許を拭い。
「……ったく、おまえなぁ」
 思わず零れる言葉。
 それはいつも通り、予測も出来ない愛しいひとの行動。――予測の出来ない君の行動にいつしか惹かれていたのは、どれほど前の事だったか。
 それはもう思い出せないけれど、目の前の彼女を見ると心に満ちるは溢れる程の愛おしさ。交わる眼差しはいつもより近く、彼は彼女へと顔を寄せるとそっと唇を開く。
「ありがとう、愛してる」
 それは囁くように微かな音で。
 けれどしっかりと、ミンリーシャンの耳には届いた。
 彼女はこくりと頷き、自身の想いを言葉にする。彼の耳にだけ届くようにと、小さな声で。大きな愛を。
 ――貴方と居るから温かい。
 ――貴方と居るから幸せ。
 アナタの熱も、撫でる風の心地良さも。
 改めて感じることが出来るのは、此の世界が普通に戻ったから。
 ふたりは互いの温もりを分け与えるかのように、その身を寄せ合いながら。幻想的なこの情景を心に刻むように、灯る大樹を見上げた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

星野・祐一
【花澤・まゆちゃん(f27638)と一緒】
こりゃまた独特な雰囲気のある世界だな
お、あれが御神木か…光り輝く実なんて、凄いな
こんな神秘的な物、滅多にお目に掛かれないよ

まずはヘタを引っ張って…お、開いた開いた
あとは中身を盃に注いだら準備完了
さて乾杯の前に少しだけ味見をば

…んーこのお米のような甘さと麹の甘い匂い
まるで甘酒みたいな味だな…まゆちゃんはどうだった?

では、お互いの幸せを願って…乾杯!
いいね、一口ずつ飲み合いっこしようぜ
それじゃあ、まゆちゃんの盃から軽く一口…ん、美味い
なんか花の蜜?みたいな優しい甘さだったな

こうしてお互いの甘露を楽しんで笑い合って
御神木を一緒に眺めていくんだ

アドリブ歓迎です


花澤・まゆ
【星野・祐一さん(f17856)とご一緒に】

初秋のカクリヨファンタズムも素敵だねえ
見て見て、祐一さん、あれが御神木!
仄かに甘露の実が灯っていて綺麗
なんだかもいでしまうのが勿体ないな

甘露の実から蜜をお借りした盃に開けて
匂いをくんくん
うん、確かに花の蜜のような甘い香りがする
じゃあ、まずは自分のをいただきます

…花の蜜を清水で溶かしたような、仄かな甘さ
さっぱりしてて美味しいよ
祐一さんはどんな味だった?

じゃあ、お互いの幸せを祈って、一口ずつ交換しようか
祐一さんの盃から一口
うん、こちらも美味しい
ちょっぴり大人の甘さ?の気がしたよ

こうやって当たり前に二人で過ごせる日が
増えていくといいな

アドリブ歓迎です



 ふわりと冷たさを含んだ秋風が、白い肌を撫でる。
 大きな月の下、温かな光が枝に灯る光景はどこか温かく神秘的で――。
「見て見て、祐一さん、あれが御神木!」
 花澤・まゆは美しく光る大木を見上げながら声を上げた。輝く光が彼女の大きな青い瞳へと映り込み、まるで宝石のようにキラキラと煌めきを帯びている。
 そんな彼女の少し後ろを歩いていた青年、星野・祐一(スペースノイドのブラスターガンナー・f17856)は物珍しげに辺りを眺めている。現実ではありえないような大きな月は神秘的に輝き、辺りに咲き誇る紅の彼岸花はどこか寂しげな雰囲気を作る。吹く風は秋の心地を感じる冷ややかさを帯び、灯る枝葉を揺らしている。
 独特な雰囲気のある世界――それが、此の世界を肌で感じながらの彼の感想。
 そんな彼がまゆの声に導かれるように視線を前へと向ければ。そびえ立つような大樹を前にして、おっと感嘆の溜息と共に言葉を漏らす。
「あれが御神木か……光り輝く実なんて、凄いな」
 その温かな光はまるで世界を照らすように美しく、思わず彼はぱちぱちと瞳を瞬いた。こんな神秘的な物、滅多にお目に掛かれない――そう想っている彼の横顔をまゆは見つめると、くすりと楽しそうに口元に笑みを浮かべる。
 風に揺れるは仄かに輝く小さな果実。
 灯りがゆらゆらと、揺らめく様子もまた美しく。もいでしまうのは勿体ないとまゆは思うけれど――折角だからと、彼女は前へと一歩踏み出すと甘露の実へと手を伸ばした。
 手が触れれば光がその白い手へと落ち。重みを持ち上げるようにすれば、すぐにずしりと重い感覚がまゆの小さな指へと訪れた。
 彼女と同時に祐一もしっかり自分の果実を手にして。ふたりは腰を下ろすと、果実を開けて盃へと中身を注いでいく。
 とぷとぷと、微かな水音と共に盃は満たされていく。
 ふわりと世界に甘い香りが広がり、ふたりの鼻をくすぐるよう。そっと盃を顔に近付けてみれば、芳しき花の蜜のような香りがまゆの胸を満たしていく。
 そのまま彼女は、どんな味なのだろうかと――自身の盃を少しだけ口にしてみる。
 すぐに口に広がるのは、花の蜜を清水で溶かしたような、仄かな甘さ。口に広がる華やかな香りは花々を纏うかのようで、こくりと喉を鳴らせば身体に融け込んでいく。
 ――彼女と同じように。味見と一口含んだ自身の甘露を飲み干した祐一は、興味深そうに傍らのまゆの手元を見遣ると。
「まゆちゃんはどうだった?」
「さっぱりしてて美味しいよ。祐一さんはどんな味だった?」
 疑問への返答を告げれば、まゆは小首を傾げながら問い掛ける。その眼差しは好奇心に満ちているように真っ直ぐで、注がれた視線を受け止めながら祐一は甘酒みたいな味だったと告げる。そう語る彼の手元の盃には、微かに白く濁った液体で満ちていて。その色合いに、まゆはなるほどと納得したように頷く。
 そのまま彼女は、此処に訪れる前に聞いた言い伝えを思い出し。
「じゃあ、お互いの幸せを祈って、一口ずつ交換しようか」
 ほんの少しだけ高鳴る鼓動を感じながら、彼女が紡いだ言葉。その言葉に祐一は笑みを浮かべると、すぐに頷き自身の盃を差し出した。
 朱色の盃は変わらないけれど。その中に満ちる液体は確かに違っていて――。
「では、お互いの幸せを願って……乾杯!」
 秋夜に響く、祐一の通る声。
 その声に心地よさを感じながら、まゆが手元の白い液体を口元に寄せた時、鼻をくすぐったのは微かな麹の甘い香り。なるほど、と思いながら口にすれば確かに甘酒のような香りが口いっぱいに広がった。
「……ん、美味い」
 隣から聞こえるのは、まゆの盃へと口を付ける祐一の声。
 こくりと飲み、彼は手元の琥珀色の液体を揺らしながら眺めれば――そのまま盃を、まゆの元へと差し出す。
「なんか花の蜜? みたいな優しい甘さだったな」
「こちらも美味しい。ちょっぴり大人の甘さ? の気がしたよ」
 言葉を探すように一瞬首を傾げる祐一。そんな彼と、再び盃を交換しながら彼等は共に互いの感想を述べる。――自らだけの、不思議な甘露のことを。
 甘露といってもその味わいは数多あるのだと、分け合えば実感するようで。新たな発見に、自然と笑みも零れてしまう。
 キラキラと輝くご神木は、穏やかなふたりを見守っているかのように温かく。
(「こうやって当たり前に二人で過ごせる日が、増えていくといいな」)
 そうっと瞳を細め。まゆは祈るように心に想うと、盃へと唇を寄せた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

君影・菫
ちぃ(f00683)と

おとーさんみたいなキミと行くのは御神木のとこ
輝き灯る実は導きの明かりみたいやんね
はら、一緒に飲んだらしあわせを分かち合えるん?
ほんなら飲まん理由は無いなあ

実を割ってちぃと同じ月融かしの色を注げば
鼻を擽るのは甘さ
ふふ、この甘い匂いだけで酔える気せえへん?

盃に映る月と浮かぶ花びら
うちの蜜は蜂蜜みたいに甘いんやけど
なんや花の香もするんよ
お酒やないみたいやから飲んでみる?
ワガママ云うてええなら、ちぃのも分けて

うちらと縁を繋いだ稲荷狐の二匹も傍らで
ふふ、眠いの?と親を真似る子のように撫ぜて

願いごと
ちぃと沢山のものを見られますように
――傍に、て
いつだって単純で一番贅沢な願いを置くんよ


宵鍔・千鶴
菫(f14101)と

今宵は甘やかな実を宿す
神木へとゆるやかに足が向き
幻想高く淡く灯るは魅せられて
菫、共に飲めば
しあわせが分かち合えるらしいよ、
祈れば良いのなら幾らでも

実を割れば
月を溶かした水がちゃぷり
仄かに馨る甘美なもの
酒ならば酔いしれたけど
そうだね、今宵はこれだけで
酔えちゃいそうだ

盃に花弁と空の月さえ浮かべて
菫はどんな甘露を?
きみの蜜の味も教えて
蜂蜜に花の香り…菫の花だったりして
交換してみようか

二人が縁を結んだ傍らの親子狐も月灯りに見守られ微睡む姿をそうと、撫で

願い事は
菫と共に自分が在ることを
赦されますように
彼女がずっと笑える世界のままに

神に祈るなら
簡単なようで、一番難しいことにしなきゃね?



 ぼんやりと灯るご神木は、世界を包むような温かな色を宿し。
「輝き灯る実は導きの明かりみたいやんね」
 秋風に揺れる仄かに灯る果実を見上げながら、君影・菫(ゆびさき・f14101)はそう紡ぐとほうっとひとつ溜息を零す。
「菫、共に飲めば。しあわせが分かち合えるらしいよ」
 果実を見上げる彼女へと、静かに宵鍔・千鶴(nyx・f00683)は言葉を紡ぐ。おとーさんみたいな彼の言葉に、菫は視線を彼へと移すと――。
「はら、一緒に飲んだらしあわせを分かち合えるん? ほんなら飲まん理由は無いなあ」
 笑みと共に紡がれる言葉。
 菫色に映る光は美しく、彼女の瞳を煌めかせる。
 ただ祈り、願い、甘味を口にする――その言い伝えに倣うように彼等は目の前に下がる実へと手を伸ばすと、迷うこと無くヘタを取り中身を盃へと注いでいく。
 朱色に注がれるその液体をじっと見れば、千鶴の手元には月を溶かしたかのような液体が満ちていた。水音と共に仄かに立ち上がる香りは甘美なもので。すんっと鼻を鳴らせば彼の胸に満ちていく。
「ふふ、この甘い匂いだけで酔える気せえへん?」
 自身の手元の盃を揺らしながら、楽しそうに笑いつつ菫は紡ぐ。――彼女の揺らす盃の中には、千鶴のと同じ月融かしの色が揺れている。
 揺れに合わせてさざめくような水面。
 浮かぶ大きな月が写り込み、歪む姿もまた美しく――。
「そうだね、今宵はこれだけで酔えちゃいそうだ」
 彼女の言葉とその楽しげな行動に、千鶴は静かに頷きを返していた。
 彼等の手元の甘露には、お酒は含まれていない。
 けれど芳しき香りと、此の世界の景色に。酔わないと言えば嘘になる気がするから。ふたりは盃に美しき満月を移し、はらりと落ちた花弁が波紋を作る中同時に口へと運んだ。
 口に満ちるは、香りよりも濃厚な甘い味わい。
 こくりと喉を鳴らせば、甘みが伝い身体へと落ちていく。
「菫はどんな甘露を?」
 同じ色合いだけれども、各々違うという話が気になったから。喉を鳴らしてひとつ息を吐いた後、そっと千鶴は問い掛ける。彼の言葉に菫は閉じていた瞳を開くと、少し考えた後花開くように唇を開き。
「うちの蜜は蜂蜜みたいに甘いんやけど。なんや花の香もするんよ」
 濃厚な甘さと共に訪れる華やかな香。言葉では説明出来ないその味わいに、飲んでみる? と菫が差し出せば――千鶴は迷うこと無く、その盃へと手を伸ばす。
 こくりと再び鳴る喉の音。
 確かな甘さと香る花々。これは菫の花だろうかと千鶴が想っていた時。彼等の足元で、真っ白の毛並みをした狐が二匹、ゆるりと尾を揺らした。
 それはふたりが縁を結んだ親子の狐。揃いの紫の瞳を細めて、心地良さそうにゆらゆらと尾を揺らしている姿はとても穏やかで。
「ふふ、眠いの?」
 問い掛けと共に菫がその背を撫でてやれば、彼は心地良さそうに瞳を閉じて――そのまま眠りに落ちるかのように、頭を下ろしていく。
 うつら、うつら。
 そんな微睡みも心地良いような、秋の夜長。
 奏でる虫の鳴き声を耳にしながら、彼等は改めて灯る大樹を見上げ心に想う。
 ――願いごと、ちぃと沢山のものを見られますように。
 傍に、と云う想いを強く強く協調して。祈るように菫は心に刻む。それは単純で、けれど一番贅沢な願い。だからこそ、この節目に心に刻んでおきたいこと。
 そしてその想いは彼女だけでなく、千鶴も同じように願っていた。
 ――菫と共に自分が在ることを、赦されますように。彼女がずっと笑える世界のままに。
 願いを、この先の幸せへの願いを紡ぎ終わると。伏せていた千鶴の瞳が開き、彼の宝石のような紫の瞳が大樹の光を浴びて煌めいた。
 互いに言葉には、しない。先の一年に願う幸せは同じ気持ちを含んでいるけれど、彼等が知るのは自分のことだけ。
「神に祈るなら。簡単なようで、一番難しいことにしなきゃね?」
 口元に指先を当て、紡ぐ千鶴の口許に笑みが浮かんでいる。
 折角の加護に溢れた不思議な一夜。
 年を重ねた老樹の前ならば、きっとこの一年との絆が出来ると、信じて。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

天音・亮
とっきー(f23050)と

自分の頬に触れる
宿る温もり
温度、戻ってよかったね
夜風が冷たくて気持ちいい

盃に注がれた甘露の雫
とぷり仄かに輝く液体に浮かぶまあるい月
ちょっと早い月見酒
それじゃあ、乾杯
きみに幸いが降り注ぎます様にと願いながら

じんわり染み渡る様な優しい甘さ
ん、美味しい
ふふ、とっきーは盃が似合うね
私はやっぱりなんだか違和感湧いちゃうけど
ジョッキが似合う女って女としてどうなんだろ…
なんて黄昏てみたり

見上げるご神木
虫たちの合唱に合わせて零れる鼻歌
雨降れと歌う童歌

どうかあのてるてる坊主がもう紅い涙を流すことなく
誰かの隣に寄り添えてますように、と
とんと背中合わせにきみに寄り添う

──ああ、あったかいや


宵雛花・十雉
あっきー(f26138)と

頬を撫でる夜風の心地よい冷たさを感じながら、一度大きく伸びをして
んー、これこれ
やっぱこれがなきゃあな

注がれていく酒を見つめる
盃の中にぽっかり浮かんだお月さん、風流だねぇ
うし、んじゃあさっそく乾杯だな
オレにもあっきーにも幸いがあるよう願いをかけて

へぇ、甘露っていうだけあってホントに甘いや
けどすっきりして優しい甘さだ
へへ、似合うだろ
男ぶりも益々上がっちまうかい? なんてな
あっきーも盃持ってると大人の女に見えるぜ
ビールジョッキのイメージ強いけどな

鼻歌に耳を傾けながら目を閉じる
そうしていれば背中に感じる体温に安心感を覚え
そうだな、この温かさをあのてるてる坊主にも教えてやりてぇ



 さわりと木々が音を奏でれば、秋の夜風が吹き肌を撫でていく。
「んー、これこれ。やっぱこれがなきゃあな」
 その冷たさに安堵したように息を零した後。宵雛花・十雉は瞳を閉じながらぐぐっと大きく伸びをした。
 ひらひらと揺れる彼の美しき白髪。
 大樹の光に照らされ、仄かに色付くその色を見遣りながら――天音・亮はこくりと静かに頷き同意を示すと、流れゆく冷たい風を感じるように金の髪を押さえる。
「温度、戻ってよかったね」
 全てが戻った世界を感じる。
 撫でる風の温度も、傍らの彼の温もりも。
 世界から消えていたものはひとつな筈なのに。そのひとつのピースが嵌っただけで、こんなにも世界は心地良くなるもの。
 彼等は手にした甘露の実のヘタを引っ張り穴をあけると、とぷとぷと音を立てながら盃へと甘露を落としていく。液体が満ちていけば、そこには浮かぶ大きな月が映り込み。
「盃の中にぽっかり浮かんだお月さん、風流だねぇ」
 覗き込むように十雉は盃を見ると、嬉しそうに声を零し盃を揺らして水面をさざめかせた。水面が揺れれば、映った月も歪んでいき――その様子もまた、美しい。
 これは少し早い月見酒。
 ふたりが盃を掲げ、乾杯の音色を奏でれば。
「きみに幸いが降り注ぎます様に」
 願いを口にした後、亮はくいっと自身の甘露を口にした。そんな彼女の様子を見届けた後、十雉は盃の中の甘露を見つめ。
(「オレにもあっきーにも幸いがあるように」)
 彼は願いを心に残し、そのまま一気に甘露を口にする。
 瞬時に広がるのは、確かな甘み。
 けれど上品な甘さで、後の喉に残ることは無い。喉から身体へと落ちるのに合わせるように、甘さも落ちて消えゆくよう。
「へぇ、甘露っていうだけあってホントに甘いや」
 その味わいに、十雉は驚いたように声を上げる。不思議そうに手元の盃を揺らす彼のその様子を眺めて、亮は。
「ふふ、とっきーは盃が似合うね。私はやっぱりなんだか違和感湧いちゃうけど」
 純粋な感想を、自然と言葉にしていた。
 その言の葉に彼は顔を上げると、照れも嫌な顔もせず笑みを浮かべ。
「へへ、似合うだろ。男ぶりも益々上がっちまうかい? なんてな」
 冗談めかしてそんなことを紡いでみせる、いつもの彼の姿。その姿に自然と亮は笑みを返すけれど、じっと自分の姿を見る十雉に不思議そうに小首を傾げる。
「あっきーも盃持ってると大人の女に見えるぜ。ビールジョッキのイメージ強いけどな」
 最後の言葉は冗談めいたように紡がれる言葉。慣れない様子で盃を手にしていたから、彼の言葉はどこかくすぐったいようだけれど――添えられた言葉は少し引っ掛かる。
「ジョッキが似合う女って女としてどうなんだろ……」
 黄昏るように彼女の唇からぽつりと零れた言葉は、楽しげな十雉の耳には届かないほど小さなものだった。
 彼は慣れた様子で手元の盃を揺らしながら、灯るご神木を見上げる。
 温かな光は此の幽世の世界を灯す光のようで。
 その温もりに包まれているようで――共に見上げた亮からは、自然と鼻歌が零れていた。風に乗り耳に届くのは、数多の虫の鳴き声。その音色に乗せるように亮から奏でられるのは――雨にまつわる童謡を題材にしたもの。
 今は雨など降っていない。美しく浮かぶ月は雨夜とは無縁のもの。
 ではなぜ歌っているのか。
 それは――先程の戦いで出逢った、悲しきてるてる坊主のことを亮が想っていたから。
 奏でられる音色に耳を傾ける十雉の表情は穏やかなもので、自然とその瞳は瞼で隠れる。虫の音色も、奏でられる歌も、肌を撫でる涼しい風も。心が満ちるようで自然と口元に笑みを浮かべていた時――とんっと、十雉の背に掛かる重さと温もりがあった。
 少しだけ驚き、彼は瞳を開くと自身の背に亮が寄り添っていることに気付く。
 伝わる熱は先程までは感じなかった、確かな人の温もり。すぐ傍で聞こえる鼻歌に、心地良さそうに彼が笑みを浮かべた時。
「どうかあのてるてる坊主がもう紅い涙を流すことなく、誰かの隣に寄り添えてますように」
 一瞬歌が止まったかと思うと、彼女は唇を開き願いを口にする。
 その言葉に十雉は少しの間だけ瞳を見開いたけれど――すぐに瞳を伏せ、こくりと頷きを背中越しに返す。
「そうだな、この温かさをあのてるてる坊主にも教えてやりてぇ」
 紡ぐ言葉は心からのもの。瞼を下ろせば、先程出逢った彼の姿が脳裏に浮かぶ。
 鮮血と共に涙を流す悲しきてるてる坊主。
 ひとりぼっちで涙するてるてる坊主。
 温もりを求める彼がどうか、どうか――。
 そんな願いの元、秋の幽世に雨の音色はいつまでもいつまでも奏でられていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年09月22日
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