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しろがねの鈴と、忘却の唄(作者 遙月
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 ちりん、と鈴は鳴いて。
 奏でられる音色に、身も心も清められていく。
 悲しい事はあったけれど。
 決して、それが理想ではなかったけれど。
 この世界、幽世はどんなものでも受け入れてくれる。
 辿り着いたひとつの場所。喪ってはならない、大切な居場所。
 だからこそ。

 ちりん、ちりんと鈴は鳴らされて。
 幾度となく、未練と想いを浄化する。

 
 骸魂と呼ばれた魂たちに救いあれと。
 せめて、せめての祈りと共に。
 月のような鈴が、鎮魂の儀式と共に揺れるのだ。
 この世界はとても優しく、大切で、そして儚いのだから。
 壊れることがないように。
 浄化される事を祈って揺れて、鳴り、奏でるの鈴の音色。
 けれど。


――全部、忘れてしまいましょう?


 その骸魂は、忘却の唄を諳んじる。
 全てを忘れてさったとしまえば楽なのだから。
 痛い。悲しい。苦しい。
 ああ、この幽世も楽園ではないのだからと。
 鈴を鳴らす意味を忘れさせて。
 鎮魂の為の清めの鈴はいつの間にか、骸魂たちを呼ぶ音に。
 浄化の儀式はいつの間にか、妖怪たちを呼び起こす、夢として。
 辛いこと、悲しいこと、苦しいこと。
 それらは楽しくて、嬉しくて、幸せな過去と比較するからあるのだから。
 ただ今を、流れて生きればいい。
 忘却こそが救いなのだと人魚は詠う。
 同意するように童が鳴らす掌は、ぽろり、と記憶を取りこぼしていく。
 そう、全てを忘れてしまおう。
 この幽世の世界は、全てを受け入れてくれるから。
 どんな想いを抱いて、骸魂として漂っていたのかさえ忘れても。

 さあ、詠い、踊ろう。

 清めの鈴は、もう止まっている。
 ただ人魚の紡ぐ忘却の唄が、流れ続けていた。









「忘れるということは、時には救いです。でも、痛くて辛くて、悲しい思い出が……痛い程に深いそれが、大切だと想ったことはありませんか?」
 新しい世界、カクリヨファンタズムの事件なのだと。
 告げるのは秋穂・紗織(木花吐息・f18825)だ。
 とても不思議な世界ですよね、と挟みつつ。
 ふんわりとした口調は彼女の常。そのまま続けていく。
「この世界に存在する『骸魂』と呼ばれる霊魂。それらを清める為の鎮魂の儀式があるのです」
 そのままでは『骸魂』は周囲の妖怪を取り込んで、オブリビオン化してしまう。
 だが、鎮魂の儀に成功すれば、それらは周囲の草花や樹、つまりは世界の糧となって浄化されるのだという。
「ただ、その儀式が失敗してしまうようなんです」
 結果として起きてしまうのは、浄化されなかった『骸魂』たちが、儀式を執り行う妖怪たちを取り込んでのオビリビオン化。
 元凶となるオビリビオンは忘却こそが救いだと信じ、人魚の唄を紡ぎ続けているのだという。
 他の場所へと動き始めれば、それこそ記憶を忘れさせる唄が周囲に広がり、沢山の思い出が喪われていくだろう。
 そうなる前に、儀式の行われた場へと挑み、そして元凶を取り除いて欲しいのだ。
 儀式の場はとある海の近くで行われている。
 流れる川を辿っていけば辿り着く筈だが、儀式が失敗したせいで、何が起きるかは判らない。
 が、この世界のオブリビアンは倒すことさえできれば、骸魂に飲み込まれた妖怪を救い出すことだって出来る。
「このままでは、どうしようもない、清めることも、洗い流すこともできない想いばかりを抱えてしまった魂が、このカクリヨの世界を揺れて、流れて、彷徨うばかり」
 だから、それを止めて欲しいのだと。
 紗織はゆっくりとお辞儀をするのだった。





第2章 冒険 『水占の辻』

POWゆめまぼろしを真直ぐ見据えて沈む
SPD目を閉じ耳を塞いで耐える
WIZ過去より未来を信じて身を委ねる
👑7

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●断章 水の辻より、惑わしの霧を


 美しい歌声が聞こえる。
 呼んでいるのか。
 導いているのか。
 遠く、遠く、けれど子供達の唄よりも心を揺らす。
 物静かで、悲しげな少女の歌。
 まるで夢を語るように。
 今というものさえ、忘れてしまおうと。
 忘却をもたらす歌は、聞く者の心と魂にさえ影響を与えるのだ。
 それは世界にさえ影響を与えてしまうのかもしれない。
 川を伝って進めば、その先に儀式の場がある筈だった。


 だというのに。
 ふと、気づけば周囲に満ちるのは霧。

   
歌が聞こえるだけだったのに。
 その霧の中から聞こえるのは、懐かしい過去からの声。
 うっすらと見えるその背中は、かつていた人の輪郭に似て。
 ああ、思い出を映すゆめまぼろしの霧なのだと判るのだ。


 それは幸せの影を映す。
 これは、悲劇の姿を繰り返す。


 迷いの水と、忘却の唄。
 波打つふたつが、聞くものの心にひっそりと忍び込み。
 見たくないものを。
 思い出したくないものを。
 まぼろしとして、映すのだ。

――時には、もう取り戻せない幸せも、苦痛になるの。

 美しい少女の歌声が。
 霧をより一層、深くする。
 全てを忘れて、漂ってしまいましょうと。
 流れる水のように静かに。
 何事も無く。自らの形さえ亡くしてしまっても。
 痛みがなければ、幸せでしょうと。
 立ちこめる霧が、惑わしの夢を見せるのだ。


 この中に潜り、沈み、そして潜り抜けなければ。
 儀式の場に辿り着く事は、決して出来ない。 
 過去との対峙。それはもう昔。
 けれど忘れないのだと、霧の中で見失わずに、進まななければいけないのだ。
 思いこそが、この惑わしの霧を抜ける為に必要なもの。




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※プレイングの受付は、7/14日の朝08:31分よりお願い致します。
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※捕捉


霧の中では過去の幻影が見え続けます。
或いは、忘れたくなるような。
もしくは、振り返ると幸せだけれど、もう取り戻せないものだとか。
あの時、ああしていればという後悔が。
映像として、姿として、声として。
忘却の唄と共に流れてきます。

キャラクターにとって忘れたいもの、もしくは、忘れれないものを。
それとどう向き合うか。もしくは、逃げてしまうか。
心情メインで送って頂けますと、幸いです。

もしくは、優しさや勇気で過去を振り切っても構いません。


心情系となって難しくなるかもしれませんが、どうぞ、宜しくお願い致します。