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最後の国の少年アリス(作者 一二三四五六
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●悪性概念
「ああ――こんな事なら」
 世界の中心で、一人の少年が立ち尽くす。その姿は少女のように愛らしい。
「こんな事なら思い出さなければ良かった」
 だが、その瞳に光はなく、虚ろに宙を見つめるばかり。
「ボクのせい……ボクのせいだ……」
『そう、あなたのせい。あなたのせいよ』
 そんな少年の身体に、『何か』が入り込んでくる。少年の記憶を、認識を、身体を書き換えていく。
『ボクのせいで、姉さんは――だから、もう』
 少年の瞳に光が戻る。だがそれは、絶望と言う名の、偽りの光。
 全ての気力を失った少年の身体を、『それ』は無理やりに動かし始める。
『全部、絶望で塗り潰して、壊してしまえばいい』

●グリモアベースにて
「やあやあ猟兵諸君。くるるちゃんの召集に集まってくれて感謝するねっ」
 グリモアベースに集まった猟兵達を前に腕を広げ、鏡繰・くるる(属性過積載型バーチャル男の娘・f00144)は愛らしい笑顔と共に元気よく切り出した。
「今回はアリスラビリンスに飛んで、アリスを救出してもらうよ!」
 アリスの名はリン。水色のエプロンドレスに身を包んだ、少女……のような男の娘だ。毎回危険に陥っては、猟兵達に助けられて来た。
「けど……それも今回で最後になるかもしれない。今回向かう不思議の国は、リンの『自分の扉』が有る国だよ」
 全てのアリスは、広いアリスラビリンスのどこかにひとつだけ、故郷に帰れる『自分の扉』が存在する。その扉を開けば、アリスは自分の世界に帰る事が出来るのだ。
「リンの故郷に繋がる、リンだけの扉。けれど……当然と言うべきかな、その前には障害が立ちはだかるんだ」
 そう言って、くるるは真剣な表情を浮かべて猟兵達を見回す。
「今回の障害は――リン自身だよ」

 『アリスラビリンス症候群』――そう呼ばれる現象がある。
「病なのか、オウガなのか、それとも別の何かなのか……まあ良くわからないんだけど。それは、人間の記憶に、認識に潜む存在なんだ」
 この悪性概念を植え付けられた者は、深層心理を書き換えられ、オウガへと姿を変える。愛らしくも悍ましい、アリスのオウガに。
「リンは今、この『アリスラビリンス症候群』によってオウガに変えられている。今の所は、あくまで一時的な物だけど……それが永続的なものになるのは、そう遠い話じゃあないだろうね」
 そのためには、この『症候群』をリンの身体から引き剥がす必要がある。基本的には、よくあるオブリビオン化と同じで、殴って引き剥がす事になるだろう。
「ただし、オウガ化したリンには、今までの記憶がしっかりと存在するよ。猟兵のみんなに助けられた事があると言う認識もあるし、顔見知りなら友人とも思っている。でも、その上で、敵として攻撃してくるんだ」
 あくまでリンの性格のまま、敵味方の認識だけが丸々書き換えられていると言う事だ。面識のある猟兵にとっては、戦いにくい相手かもしれない。
「ちなみに、倒した後もオウガ化中の記憶が消えたりはしないから……リンにあまり酷い事をしたり、逆にリンの攻撃で手酷い傷を負ったりすると、リンの心の傷になるかもしれない。注意して」
 とは言っても、戦って倒さなければオウガ化を解除出来ないと言うのも事実だ。多少の手荒い真似は必要となるだろう。

「リンを倒してオウガ化を解除したら……そのまま、リンと一緒に、リンの『自分の扉』へと向かってもらう。その扉は遥か空の彼方に有って、けれど空を飛んでも辿り着かない。自分の足で、七色の虹の道を通らないといけないんだ――いや。通っても辿り着かないんだけどね?」
 その虹の道に果てはない。それはリンの、『元の世界を恐れる心』に起因するものだ。『自分の扉』にたどり着きたくない、と言う潜在意識を解消しなければ、虹の道の向こうにたどり着く事は決して出来ない。
「だからキミ達には、リンと話をして欲しい。元の世界を恐れるその心を、解きほぐして欲しいんだ」
 リンはすでに記憶を取り戻している。彼をオウガ化から救出すれば、その時に自分の過去について語ってくれるだろう。その過去のトラウマを解消する事ができれば、虹の向こうにたどり着く事ができる。
「それと、リンの心が揺れている間は、虹の道も大分不安定だから気をつけて。いきなり崩れたり偽の道が出現したりするよ」
 説得に自信がなければ、転落防止の配慮に力を注ぐのもいいだろう。

 虹の向こうに辿り着ければ、そこにリンの扉がある……だが、そこには最後の障害が存在する。
「『アリスラビリンス症候群』によってオウガ化した者たちの末路――もはや戻れぬ少女のオウガ達が、扉の前を守っている」
 彼女達を元に戻す事はできない。倒して、扉への道を切り開かなくてはならない。少女達を全て倒せば、リンの『自分の扉』にたどり着く事が出来るだろう。
「その扉をくぐれば、リンは元の世界に戻る事が出来る――けど」
 果たして、扉をくぐる事が……トラウマを残す元の世界に戻る事が、リンにとっての幸せと言えるのだろうか。
 一方、アリスラビリンスに残る事も、リンにとっては危険かもしれない。
「リンが元の世界に戻るべきか否か――もしよければキミ達がアドバイスしてあげるといい。最終的に決めるのはもちろん、リン自身だけどね」
 説明を終えたくるるはそう言って猟兵達を見渡し、ビシッとポーズを決める。
「それじゃあ、ばっちり解決してきてね。良い知らせを待ってるよ」

●虹の国の『少女』アリス
「ああ、皆さん。お久しぶりです」
 アリスラビリンスへと転移した猟兵達を、リンは微笑みと共に出迎えた。ちょっと気弱そうな、あどけない微笑みは、彼を知る猟兵達にとっては馴染み深いものだ。
 いや――今は、『彼』ではなく『彼女』と言うべきか。アリスラビリンス症候群によってオウガと化しているリンは、文字通りの『アリス』と言う少女に姿を変えているのだ。
 ……いや、と言ってもまあ、髪型が違うくらいで、あまり違和感がないのだけど。
「またお会い出来て嬉しいです。皆さんのお陰で、全部思い出したんですよ?」
 だがその微笑みには、翳りがある。と言うよりは逆――絶望の表情の上から、無理やり笑みを貼り付けたような、と言うべきか。
「ええ、思い出したんです。だからもう――全部、壊して。この国を絶望で塗り潰して、終わりにしちゃおうと思うんです……」
 そしてハート型の爆弾を手に、リンは不自然な微笑みを浮かべて、猟兵達に敵意を向ける。
「皆さんも一緒に……ボクと絶望で壊れてしまいましょう!」


一二三四五六
 ひとつの物語の、幕が降りる時。

 ごきげんよう。このシナリオのタイトルは最初から決めていた。一二三四五六です。

 第一章のボス戦『『悪性概念』アリスラビリンス症候群』、第三章の集団戦『閉幕のアリス』はアララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)さんの宿敵です。ありがとうございます。
 第二章の冒険『虹の向こうに行きたいな』はトミーウォーカーの公式フラグメントです。

 この依頼に登場するアリスの男の娘『リン』は、連作シナリオ『○○の国の少年アリス』に登場しているアリスです(今回は5回目+クリスマスシナリオに登場)。
 世情への配慮等で前回から結構お待たせしてしまいましたが、いよいよ記憶を取り戻し、自分の扉のある世界へと辿り着きました。
 果たして彼の冒険がどのような結末を辿るのか――それは皆様次第です。
 なお、シナリオ構造は基本的なアリス救出・説得依頼ですので、今回だけの参加も全く問題はありません。遠慮なくどうぞ。

 補足。
 第一章では、リンはオウガのSPDユーベルコード『ミュータント・オウガール』を使用されて変身している状態です。このUCによるハートボムと、WIZの精神攻撃(洗脳や精神破壊)によって攻撃してきます。
 また、追い詰められるとPOWの怪物化をリン自身に使用し、強化されます。

 リンの過去の記憶については、第二章公開時の序文として語られます。それを踏まえて説得していきましょう。
 なお、第二章の不安定な虹の道に関しては、実は誰もプレイングをかけなくても別に転落する事はありません。『説得に自信・興味がない』と言う方がやる事なくならない用の設定ですので、無視して説得に専念して頂いても問題ないです。

 最終的に、自分の扉を前にして、リンがどのような決断を下すかは、猟兵の皆さんのプレイング次第です。多数決ではありません。

 それでは、皆様のプレイングを楽しみにお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『『悪性概念』アリスラビリンス症候群』

POW ●邪歯羽尾ッ駆ノ感染症
【対象の記憶に潜み、干渉する事で対象が怪物】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD ●ミュータント・オウガール
【対象の認識に潜み、干渉する事で対象が少女】に変身し、武器「【ハートボム(投擲爆弾)】」の威力増強と、【アリスに対する強烈な捕食衝動を与え、魔法】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ ●アリス・イン・ワンダーパンデミック
【自身の存在を認識した対象の深層心理に出現】【し、その内面に干渉する事で攻撃を加える。】【また、対象の記憶や認識を喰らう事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。