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せせらぎの夜に

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 清らかな空の下を、澄んだ水が流れゆく。
 幅広の水面が穏やかに、きらきらと光を反射している。耳に心地よい水音が静やかに、人々の生活の伴奏となって響き続けていた。
 そこは河沿いの明媚な郷。
 土地に水の流れを引き込んで、要所に水路を巡らせている。作物の運搬や移動にも小舟を使う、人々の暮らしにせせらぎが寄り添う場所だった。
 石造りの水路は綺麗に整えられていて、眺めているだけでもまるで絵画のよう。
 だけでなく、夜になれば無害な妖精達が宙に揺蕩って、幻想の光景を作り上げる。その景色を見るためにわざわざ訪れる冒険者や旅人もいるという、美しき里だった。
 この日も空気が美味しくて、水はどこまでも透明。
 人々は変わらぬ暮らしをできるのだろうと信じていた。
 けれど、その川上で不思議な形に蠢く水の流れがあった。その傍に控えるのは、そんな水の流動をあかあかと照らす焔の塊。
 水の怪生と、炎の精霊。
 自然より生まれいでた者達は──骸の海から還ることで、その全てを破壊するものへと変わってしまっていた。

「差詰め水の都──都会という程の大きさはないようですが、とても美しい郷であることに違いはないようですよ」
 グリモアベース。
 少々瞳を煌めかせて、千堂・レオン(ダンピールの竜騎士・f10428)は猟兵達にその村について話をしていた。
 曰く、アックス&ウィザーズにあるというそこは川沿いの明媚な景色を持つらしい。立地としては田舎といっていい場所だが、これまで魔物に破壊された過去はなく、その眺望を保ってきたという。
 そこに今、オブリビオンの手が迫っているのだとレオンは言った。
「魔物の数は多いようです。美しい郷とせせらぎの時間を護るために──是非、お力添えを願えればと思います」

 レオンは村の地図を用意した。
 村に豊かな水路を作っているのは南北に伸びる河で、川上はその北側にあたる。
「皆さんは村を背にして北に立ち、敵と戦うこととなるでしょう」
 敵の多くを占めるのが、炎の精霊だ。
 眩い焔を湛えて、川沿いを南下するように攻めてくるだろう。一体一体も弱くはないのでご注意を、とレオンは言った。
「敵の勢力を削ることができれば、ボスといえる一体と戦うことが出来るでしょう」
 その個体こそが、大蛇の如き体を持つ水の怪生だ。こちらも変わらず警戒を、とレオンは念を押していた。
「これらの魔物を討伐できれば、景観も護ることが出来るはずです」
 きっとその景色を楽しむ時間もとることができるでしょう、と言った。
「村では小舟を出して水路を巡るという、観光のようなこともやっているようです。ゆったりと過ごしてみるのも良いかも知れませんね」
 だけでなくお祭りのような盛り上がりも生まれるだろう。
 静かに過ごすにしても、明るく過ごすにしても、きっと憩いの時間を楽しめるはずだ。
 グリモアがきらと煌めく。
「何より人々の命の為に。水の郷へと、参りましょう」


崎田航輝
 ご覧頂きありがとうございます。
 アックス&ウィザーズの世界でのオブリビオン討伐となります。

●現場状況
 河沿いの草原。河はそれなりに幅広です。

●リプレイ
 一章は集団戦、二章でボス戦となることと思います。
 三章では景色を楽しんだり、祭りのような催しに参加するなどして過ごせます。
 二章や三章からでもご参加頂ければ幸いです。
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第1章 集団戦 『炎の精霊』

POW   :    炎の身体
【燃え盛る身体】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に炎の傷跡が刻まれ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    空駆け
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    火喰い
予め【炎や高熱を吸収する】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

緋月・透乃
水が綺麗な場所って食べ物も美味しいことが多いよね。
ここもそういう気がするし、頑張って守り抜いて美味しいものを食べよう!

相手は炎の精霊っと。
今回は使わないけれど、私にも炎の技はあるんだよね。その技に負けない炎で楽しませて欲しいよね!

戦う前に持参した食べ物で【色々食べよう!】を攻撃力重視で発動しておくよ。
できるだけ囲まれないように、突出した敵や他の敵と少し離れた位置にいる敵を狙って、一気に接近して怪力を生かした捨て身の一撃を繰り出すよ!
それで倒せたら次の敵、倒せなくても接近したまま攻撃を続けるよ。
とにかく攻撃重視で一体一体を素早く倒していきたいね。


マヤ・ウェストウッド
「アタシ、ちょっと暑苦しいヤツはニガテなんだよね。少し頭冷やして出直しな」
・貧民街育ちのマヤは何より困っている人は放っておかない性分で、水郷を守るのに理由は要らない。
・眼帯をひっぺがし、義眼に仕込んだ重力子加速装置を発動。先手必勝、[先制攻撃]として魔矢眼を手数重視で炎の精霊の群れに向けて掃射。重力塊で[範囲攻撃]を試みる。
・高熱を帯びている様子から熱線銃の使用は控える。
・[騎乗]と[ダッシュ]で宇宙バイクを駆り、敵の攻撃に対し回避行動をとる。回避できない場合衣服の[火炎耐性]が身を守るだろうし、水場に飛び込んで鎮火を検討しよう。
「いくらアタシが犬耳だからって、ホットドッグだけは勘弁だよ……」


アドニード・プラネタリア
面倒な敵だなぁ…。
素直に後衛で邪魔しちゃおう♪
(普段は炎の矢をばら撒くユーベルの使用が多い。)

ユーベルは技能の(全力魔法)を込めて。

通常攻撃も防御も回復も、技能の能力アップ頼みだよ。

(破魔,衝撃波,2回攻撃,生命力吸収)が攻撃のメイン。

(残像,盾受け,見切り)が防御のメイン。

(祈り)が回復。
対象は僕だけじゃなく、他の猟兵もだよ。

他の猟兵さんと組みたいな♪



 陽光が傾き始めつつも、天は未だ抜けるような蒼空。
 その色を映したように、水面は宝石のような美しい煌めきを湛えていた。
 時刻は昼が下がり出して数刻。
 涼やかさと爽やかさを感じさせながら、夕も遠くない。もう少し待てば焼けた空、そして星空と、自然の優美を存分に感じられる──そんな時分だった。
 けれど歪んだ自然の恵みが、それを蹂躙しようと迫っている。
 川上の遠方に現れてきた、魔物の軍勢。
 まるで灯籠のように幽玄な焔を宿しながら──それが安らかな葬送を齎すことはないだろう。
「あれが、炎の精霊かー。あむっ。やっぱり数は多そうだね……はむっ!」
 北方をしかと見つめながら、武器を取る──前に、食べ物を並べる猟兵の姿があった。
 緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)。
 ポニーテールをふりふりと揺らしながら口に運ぶのは大きな骨付き肉。
 肉汁滴る柔らかさながら、表面をかりかりになるまで加熱したもので噛み切るたびに旨味の溢れる一品である。
 合間に手をのばすのは海苔を巻いたおにぎり。肉との相性は言うに及ばず、もぐもぐと食べる速度は落ちることがない。
 人参にブロッコリーを齧ってしっかり野菜も補充すれば、元気は満たん。決して無為な食事ではなく──体に流動する栄養が膂力を飛躍的に高める、戦いの準備行動であった。
 透乃はそこで大斧を手に取り、よしと気合を入れる。
「それじゃあそろそろ、打って出よっか」
「ああ。守るモノもあるし、手早く済ませるとしようか」
 宇宙二輪のステップを踏んで、駆動系を唸らせるのはマヤ・ウェストウッド(宇宙一のお節介焼き・f03710)。
 ちらと後方に向き、水郷の景色へ目をやっていた。
 せせらぐ水は河の美しさを充分に引き込んで、止めどない。
 さりとて河の流れを邪魔している造りではなく、自然と人の共存された形がたしかにそこにはあった。
 そんな眺めに視線を奔らせるマヤは、別段水の郷に馴れ初めがあるわけではない。
 乗りかかった船──それが宇宙であれ、地を流れる河であれ。
 貧民街で育った身でもあるからこそ、苦境の人々がそこにいるなら、護ることに理由を必要としない。
 心を衝き動かすのは義侠。ただ、それだけのこと。
 透乃も改めて郷を見つめていた。
「水が綺麗な場所って食べ物も美味しいことが多いよね。ここもそういう気がするし、頑張って守り抜いて美味しいものを食べようよ!」
「そうだね。そのためにも──行くよ」
 頷くマヤは、視線を戻し前進。バイクを駆って急速に敵陣に向かい始めていた。
 背の低い草が高速の風に揺れ、無数の焔の一体一体を捉えられる距離になる。
 それは獰猛な吐息までもが火の粉を伴う、殺意に満ちた精霊だった。
 獣を象っているのは、或いは“狩り”をし易くする為か。
「──ま、させるつもりはないけどね」
 マヤは敵が攻撃に移るよりも疾く、眼帯を引っ剥がして義眼を顕にしていた。
 一見、遠目には普通の瞳と大差ない。
 だがそれは角膜の奥に極小のレールを奔らせて、重力子加速装置を内在した兵器。
 刹那、虹彩を淡く発光させて重力塊を撃ち放っていた。
 魔矢眼(マヤ・ガン)。
 先手必勝、ばらまくように掃射したそれが空間ごと体をねじ切り、先ずは三体ほどの精霊を粉砕していく。
 手数で押すように掃討を始め、マヤは更に数体を藻屑としていた。
 そこでようやく敵が近づき始めてくる。が、突出して前に出た一体へは、透乃が既に肉迫していた。
 大振りの一閃。
 躊躇わずに踏み込んで放った斬打は、火の粉も残さず精霊を両断していく。
 そのまま守りに重きを置かず、二閃、三閃。まるで業風で吹き飛ばすかのような強烈な連撃で、確実に一体一体を切り伏せていった。
 そんな最中も透乃は余裕を捨てず、敵を見つめてみせる。
「本当に炎の体なんだね。だったら炎の技を持つ私を楽しませるくらいの技を、見せてほしいよね」
 そんなふうに呟けば、精霊達も焔を上げて突撃してきた。だが透乃も迎え撃つように斧を振るい、同時に囲まれないよう後退して対処している。
 マヤにも敵は躍りかかっていた、が、それこそ簡単には捕まらない。
 航宙重型二輪エマニュエル-A3──一流バイク技師の傑作は、マヤの意志を澱み無く挙動に反映させて複雑な機動を取らせる。重力塊で撃退をしながら弧状に加速すれば、焔の群れの殆どを振り払う事が出来ていた。
 尤も完全な無傷ともいかず、僅かにだけ炎が体に触れたが──マヤは焦らず、耐性のある装備が肌を守っている内に河へ。飛び込んで即時に鎮火し事なきを得ていた。
「全く、いくらアタシが犬耳だからって、ホットドッグだけは勘弁だよ」
「──大丈夫? 少しでも傷が残っていたら、すぐに治してあげるからね」
 と、そこへ河辺からひょいっと視線を落とす姿があった。
 アドニード・プラネタリア(天文得業生・f03082)。
 ぱたりと翼をひと揺らぎさせて、向ける深い翠の瞳は目を惹くほどで……容貌は年齢にも見合った愛らしさ。けれど隠せぬ尊大な態度には、“お子様”というに相応しい雰囲気を同居させていた。
 だからこそ、幼くも戦いの手際に曇りはない。
 目を閉じて短く祈りを捧げると──微かにだけ煙を上げていたマヤの衣服をも、その力で回復させてみせていた。
「済まないね」
「ううん、いつでも言ってね」
 マヤが河から上がっていう言葉にも、自信と共に応えつつ。アドニードは敵に視線を向け直している。
 精霊達はこちらを強敵と感じ取ってか、多くの数で纏まるように行動し始めていた。
 アドニードはそれにも少々、眉根を寄せるだけだ。
「面倒な敵だなぁ……まあ、それなら素直に後衛で邪魔しちゃおうっと♪」
 マヤと透乃が再び攻勢に入る、その後ろについてアドニードは護符を手にとる。
 ふふっと不遜に笑んでみせると、それを投げて宙に飛ばし──強い呪を掛けた。
「縛、縛、縛! 不動戒縛! 神勅降臨!」
 声が朗々と響くと、符は光の塊になったように伸びて精霊達を捕縛する。焔の勢いも弱まったところへ、透乃が切り込めば敵は次々に散っていった。
 良い的になりそうな集団が居れば、アドニードは破魔の魔力を飛ばし、衝撃波へ変遷させる。多重の波動となったそれは敵を薙ぐように切り払って消滅させた。
 戦慄く焔達は、それでもマヤの四方を囲んで襲ってくる。だがマヤが同じ轍を踏むことはない。
「アタシ、ちょっと暑苦しいヤツはニガテなんだよね」
 ──だから少し頭冷やして出直しな。
 前後左右の熱気に対して、マヤはその場で旋転。風圧で吹き飛ばすように牽制し、そのまま精霊を重力の餌食にしていった。
 先制と猛攻で、既に前線に位置する敵は殆どが撃破されている。
 河のせせらぎのように、濁り無く。
 猟兵達は攻勢を緩めずに前進し始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロー・オーヴェル
まぁ田舎だから明媚だという等式が成り立つのかもしれん
変に都会になって人の手が入ると台無しになっちまうのが自然の景色ってもんだ

それと同様人の世の営みも
オブリビオンが手を伸ばすと台無しになってしまう
「そんな無粋なことされちゃ、景色を楽しみつつの一服ができなくなる」

集団戦ゆえ確実に数を減らしていきたい
誰かが攻撃している敵
既に弱りつつある敵を優先して攻撃

敵への攻撃は【カウンター】【二回攻撃】【フェイント】等を活用
敵からの攻撃は【見切り】で躱す事が可能なら極力躱す
なお自傷は適宜【生命力吸収】で癒す

名乗りあっての一騎打ちなんざ俺の『役』じゃない
シーフはシーフらしく……
こそこそと、だが確実に『獲物』を狩るさ


アルバ・ファルチェ
自然から生まれたモノだとしても、人に害をなすなら退治しなきゃね。

攻撃が外れても地形に炎の傷跡が刻まれるとか…そんなのは困る気がする。

だから【盾/武器受け】【オーラ防御】【火炎耐性】【激痛耐性】で真っ向から受けて立つ。
仲間が一緒だった場合は【かばう】【挑発】【おびき寄せ】で意識をこちらに向けるのも忘れずにね。
もちろん【戦闘知識】を生かして囲まれないようにも気をつける。

ドラゴンランスのコルノは、もふもふだと燃えそうだし槍の本体状態で【援護射撃】【槍投げ】【串刺し】を頑張って貰おうかな。
敵が空中高くにジャンプしたら【空中戦】で対応して貰うよ。


ヴォルガーレ・マリノ
水の都…きっと絵画のように美しい場所なんでしょうね!
人々の心を虜にするその景観を郷の方々も誇りに思い
大事にされてるのではないでしょうか
私も是非この目に焼き付けたいですっ

敵の【炎の身体】には命中したら【火炎耐性】で耐えツツ
そのまま【捨て身の一撃】を放ちマス
【見切り】で回避出来たら【カウンター】を繰り出しマス
地形に刻まれてしまった【炎の傷跡】はグラウンドクラッシャーで
破壊しておきまショウ
アナタだけ熱くなるなんて…ズルいデス
ワタシにも…もっと身を焦がすような熱をくだサイ…!!

虎の様相をしてるようデスが一体ぐらい
何処かに隠れて隙を狙ってたりしてマス?
かくれんぼではなく鬼ごっこデスヨ
フフ、ミツケタ



 草原を撫でる風が灰交じりになり、剣戟の音が水音に交錯し始める。
 戦火の傍にあって──それでもその郷は未だ優美な景観を保っていた。
 ヴォルガーレ・マリノ(天真なるパッツォ・f03135)は戦線へ向かいながら、一度惹かれたように村へと振り返っている。
「本当に、綺麗な場所ですね」
 河沿いから垣間見るだけも、整えられた水路や家屋が造る景色が美しい。
 水の都──中から見てみてれば、きっと絵画のようであるに違いない。
 自身も画になるレースの裾をふわと揺らし、高貴な佇まいを見せながら……ヴォルガーレは郷に一瞬だけ見惚れていた。
「人々の心を虜にする景観。郷の方々も誇りに思い、大事にされてるのでしょうね」
「実際、田舎だから明媚だという等式は成り立つのかもしれんな」
 並び立つロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)も、無造作な髪を小さく風にそよがせて村へ目をやる。
「変に都会になって人の手が入ると台無しになっちまうのが、自然の景色ってもんだ」
 それは少しのバランスの変化で崩れる、脆い世界。
 そしてローは目線を前に戻した。
「──人の世の営みも同じだな。オブリビオンが手を伸ばすと台無しになっちまう」
 気怠げな瞳が、しかし余さず状況を観察する。
 炎の精霊は前線で苦戦し始めたことで、猟兵達を明確に“殺すべき敵”と認識。後続の個体も加えて大軍で直進し始めていた。
 その様相は宛ら、焔の壁。
 だからローは息をついて歩を踏み出す。
「そんな無粋なことされちゃ、景色を楽しみつつの一服ができなくなる」
「ええ、行きましょうっ。私も郷の眺めを、是非この目に焼き付けたいですからっ」
 人々も自然も護る為。
 自分の手をぎゅっと握り、ヴォルガーレもまたそれに続いて前進を始めた。
 一歩一歩と、近づくごとに熱気が肌を突く。
 未だ大軍を誇る精霊は、敵意の表れのように乱暴な炎を揺らめかせている。
 荒れ狂っている、という表現が正しいであろうか。そこに既に正気はない。
 アメジストの如き澄明な瞳を、眩しそうに細めて──アルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)はほんの少しそれを見つめていた。
「あの敵も元は自然から生まれたモノなんだね。……でも」
 善き精霊は、人にも自然にも寄り添い生きてゆくだろう。だが一度過去に消え、骸の海に沈んだ筈のそれは、もう異質なのだ。
 決して相容れることはない──ならば。
「人に害をなすなら、退治しなきゃね」
 声に迷いなく。
 アルバは地を踏みしめて、真っ向から焔の壁に奔りゆく。
 その盾に強い意志を携えて、逃げずに立ち向かうのは護るべきものがあるからだ。
「全部、防御してみせるよ」
 敢えておびき寄せるように、仲間の前に出てみせる。
 自然、精霊達は群がるように突進してきた。
 炎の奔流を真正面から浴びるようで、その衝撃も熱も決して弱くはない。けれど痛みにも炎にも備えをしていれば、耐えきれる。心の力をオーラにして纏うことで、アルバは傷を最小限にも抑えていた。
 ただそれで満足はしない。
 猟兵だけじゃなく、景色にだって傷がつくのは困る。だから精霊が無闇に攻撃を外すのだって許さない。
「こっちだよ!」
 闇雲に駆けている敵を発見すれば、それすら呼び込むように引き寄せてみせる。獣のように弾かれて跳んできたその一体の攻撃を、アルバはしかと受け止めていた。
 集団と言える量の手数を、アルバはそうして一手に消費させる。
 そこで敵の隙を突くのは、ロー。
 前傾気味に、音を殺して速度を出して。アルバとは好対照に、正面を避けて既に敵の横合いへ位置取っている。
(「元々、名乗りあっての一騎打ちなんざ俺の『役』じゃない」)
 シーフはシーフらしく、こそこそと。
 けれど確実に『獲物』を狩ってやろう。
 眩い焔の景色の中に、きらりと煌めかすのは銀灰色のナイフ。
 その輝きに精霊が気づく頃には既に一閃。集団を掠めるが如く駆け抜けて斬撃を放ち、数体を切り捨ててみせていた。
 遅まきながら反撃してくる個体が居れば、見切って回避する。それでも未だ数多い精霊は、諦め悪くも躍りかかってくる──が。
 そこへ躊躇なく歩み入る影。
 清楚な衣装を熱気に揺らがせるまま、心には獣より鋭い獰猛さを携えて。
 炎を反射して赤々と耀く戦斧を握りしめる、ヴォルガーレ。
「さあ、ワタシとも、楽しみまショウ……!」
 焔を叩き潰すかのように、一切の手加減なく精霊を両断した。
 戦く個体がいれば、そこへ刃を振り上げて切り払う。
 戦いを前にした少女は、美しい景色に瞳を輝かせた令嬢と同じ様に──その目を爛々と光らせていた。
 集団の残りが纏めて跳んでくれば、攻撃を受けながらも捨て身で一撃、大振りに精霊達を薙いでいく。
 炎の傷跡に着地した個体には、歩み寄って直上から斧を掲げた。
「アナタだけ熱くなるなんて……ズルいデス。ワタシにも……もっと身を焦がすような熱をくだサイ…!!」
 振り下ろした刃は精霊を火の粉に散らせ、大地を蝕んでいた炎も喰らいつくしていく。
 それによって集団は全滅。新たな後続が散発的にやってくるも、アルバが守りながら攻撃にも打って出ていた。
 それが傍らにいる小竜のコルノだ。
「敵は火だし……戻ってもらったほうが良さそうかな?」
 アルバが目を向けるコルノは、どこか犬のようなもふもふ毛玉。これが炎にさらされたら何だか嫌だ──というわけでドラゴンランスとしての本体に戻させる。
 鋭利な一振りとなったそれは、射出されたかのように高速で宙を飛来。アルバを斜めから襲おうとしていた精霊を貫き、しかと援護を担ってみせていた。
 その間もヴォルガーレとローが攻め続けることで、敵陣の中枢も瓦解していく。
 軍勢の後部へと前進しながら、ヴォルガーレは同時に残党を逃さぬよう見回していた。
 そこで、岸辺の影に潜む精霊が一体。
「フフ、ミツケタ」
 ──かくれんぼではなく鬼ごっこデスヨ?
 おそらくは隙を狙おうとしていたのだろう。だが今のヴォルガーレの鋭敏な感覚からは逃れ得ない。
 風圧で河に大きな波紋が生まれるほどの斬撃。ヴォルガーレの斧でその精霊が散りゆけば、焔の残滓も残らなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィン・スターニス
平穏な村に迫るオブリビオンですか。
悲劇を生まない為にも、
何としても食い止めなければなりませんね。

戦闘時は、基本的に他の方のサポートを中心に行動です。
弓で狙撃し、援護射撃を行います。
また、七彩の灯火を使い、
負傷者の治療と、WIZをメインにしている人の強化を行います。
この場を抜けられてしまえば、
村に大きな被害が出てしまいます。
そうしない為にも、
一匹残らず殲滅しましょう。


ユア・アラマート
ああ、綺麗な所だな。これは、仕事の後の見物が捗りそうだよ
燃え盛る獣というのも美しいが、人に害を成すというのなら捨て置け無い
粛々と、過去に叩き返すとしよう

【WIZ】
敵の動きを常に観察し、囲まれないように気をつける
一体一体を相手するよう立ち回り、敵をできるだけひきつけ、相手が攻撃を行うタイミングを「見切って」回避
攻撃を行った直後の隙を狙いカウンター攻撃を仕掛ける
唯一の装備武器であるダガーに切断力を高める術式をかけ、攻撃力を増させた一撃を
一度攻撃が外れても「2回攻撃」で追撃を加えるか、あわよくば両方の攻撃を当ててダメージを重ねていく


神宮時・蒼
…相対。…不思議な、光景、ですね。…相反する、モノが、共に、ある、という、のは。…とはいえ、このままでは、村が、燃やされて、しまい、ますし、水も、干上がって、しまいます。
…推奨。…早めの、解決を、しなくては、いけません、ね。

「火炎耐性」があるので多少は平気でしょうけれど、あまり炎に触れたくはありませんね。
突進や近付いてきたら、よく見て回避しましょう。
近くに燃えているものがあれば、吸収されてしまいそうですし、早めの沈下を。
実体はあるか分かりませんが、UCの衝撃波で薙ぎ払いましょう。
…だいじょうぶ、痛いのは、慣れて、います…。



 焔色がゆらゆらと揺らぎ、陽炎が地平線を歪ませる。
 軍勢の果てが見えたとは言え、未だ精霊の数は眼前の大地を埋めるほど。炎の燃やすに任せてしまえば全てが灰に帰する──それだけの勢力が残っていた。
 ただ、そこには今まで見えなかったものも見える。
 炎達に照らされて、妖しく光る水流。
 自然のものでも人の手によるものでもあり得ないそれが、おそらくは目指すべき敵。
「…相対。…不思議な、光景、ですね。…火と、水。…相反する、モノが、共に、ある、という、のは」
 琥珀色の瞳に二色の異形を映して、神宮時・蒼(終わらぬ雨・f03681)は呟いていた。
 煌々と照る炎に水流が陰影を作るようで、どこか圧倒される光景でもある。
「…とはいえ、このままでは、村が、燃やされて、しまい、ますし、水も、干上がって、しまいます」
 と、声と共にそっと足を踏み出している。
 静かでしかし確かな足取り。
「…推奨。…早めの、解決を、しなくては、いけません、ね」
「ええ。平穏な村に悲劇を生まない為にも、確実に食い止めるといたしましょう」
 こくりと頷き、並んで歩む少女の姿があった。
 フィン・スターニス(七彩龍の巫女・f00208)。
 両の瞳を帯で隠しながらも、装束を纏って進む歩速は淀みない。表情は確かに窺えなかったが、その言葉には素直な心も含まれていたろう。
 そっと手を伸ばして喚び出した灯火もまた、心に触れるような優しいぬくもりを宿していたから。
 ──七彩の灯火(シチサイノトモシビ)。
 フィンによって召喚されたその焔は、七色へ変遷する。
 暖かな赤色から、心を鼓舞するような橙へ。
 明朗な黄色から、穏やかな緑──そして涼やかな水色から理知の青色が輝けば、紫の鮮やかさが心を震わせる。
 それは見る者が抱く勇気と希望を明るく照らし、心を強くする祝福の火。
 その光を目にした猟兵達は魂を濯われて、知覚と精神力を大幅に増強させていた。
「これであの数にも立ち向かえるはずです。行きましょう」
「ありがとう。早速、力を振るわせてもらおうか」
 颯爽と駆け抜ける、流麗なる影があった。
 夜に咲く花のような、静やかで鮮やかな声を残して敵へ接近する──ユア・アラマート(セルフケージ・f00261)。
 緑の瞳が宙に残光の線を引く程に、素疾く。
 地を蹴る軽さは舞踏のように美しく。
 裾を僅かにだけはためかせて、麗しき暗殺者は精霊達を引き付けるようにスイングバイの軌道を取っていた。
 そうすれば、星の重力に惹かれるように敵は真っ直ぐ迫ってくる。
 そこにユアはくるりと向き直って見せていた。
 丁度背後に郷を護る形。
 その景色の明媚さの一端を、ユアはここに来るまでに目にしてきている、だからこそ。
「燃え盛る獣というのも美しいが、人に害を成すというのなら捨て置け無い」
 故に、至近へ踊ってきた焔の塊を見据える。
「──粛々と、過去に叩き返すとしよう」
 手にしたのは一振りのダガー。
 命脈を絶つ為の唯一の武器であり、牙。ユアは神象術式回路に魔力を奔らせて、その刃に切断力を高める術式を施していた。
 鋼手(インサイド・ルフタ)──刀身が仄かにきらと耀く。
 同時、精霊の突撃をひらり。まるでステップを踏むように躱してのけていた。
 その流麗さに、焔の獣が見惚れる暇もなかったろう。カウンターで一閃、ユアは研ぎ澄まされた牙で半円を象って、複数体を風に散らしていく。
 致命を逃れた個体には、息つく間も与えず二撃目。とって返す斬閃を見舞って真っ二つにしてみせていた。
 別方向から敵が迫れば、空へ翔けるように跳躍。宙で華麗に翻って着地し、位置を変えて再び敵を惹き付け始めていく。
 その場に取り残された精霊は、無論ユアを追おうとしていた。
 けれど疾風伴う衝撃波が横合いから降りかかり、その躰が吹き飛ばされていく。
 巫覡載霊の舞によって、神霊体へと変じた蒼の攻撃。
 淡い白色の霊気を漂わせ、神々しくも輝かしい見目へとなった蒼は──琥珀色に煌めく薙刀で連撃、衝撃波を重ねた。
 弧状に襲うその風は、吹き付ける吹雪の如く精霊を討っていく。猛烈な速度で軍勢の数が減じ始めると、精霊達は狂乱するように蒼へ突撃してきた。
 が、その一体一体が弾かれるように転げ、斃れていく。後方で宝弓を構えるフィンが、違わぬ矢の腕を見せていたのだ。
「援護しますので、ご心配なく」
「…感謝。…助かり、ます」
 蒼は退かず攻勢を続け、敵を衝撃波で砕いていく。地面に延焼している所があれば、そこも確と風圧で鎮火しながら。
 加速度的に、精霊の軍勢は全滅に近づいていた。
 数が減れば猟兵に反撃が及ばず、力が不足すればまた数が減っていく。
 敵にとってそれは恐るべき悪循環であろう。だがそれを原因に撤退する心を持っているのなら、そもそも荒れ狂う魔の物として在りはしない。
 水の怪生を守っていた個体も含め、精霊は全ての勢力で襲撃する選択肢を取ってきた。
 まるで土石流の如く迫りくる焔に、さしもの猟兵も無傷ではいられない。殆どの個体をいなしながら、それでも蒼は一体から焔を貰った。
「平気ですか──」
「…だいじょうぶ、痛いのは、慣れて、います…」
 フィンの言葉に応えながら、蒼の口ぶりはどこまでも鎮まったものだ。
 だからこそ、フィンはそれを放置はしたりはしない。魔の炎を七彩の焔で塗り替えるように──優しい光を宿させて蒼を治療していた。
 それに礼を言って蒼が反撃すれば、纏まっているだけ敵が一気に撃破されていく。
 軍勢が散るに連れ、段々と静けさが戻ってくるようだった。
 だからユアはちらりと水郷へ視線を流す。
 木々の緑と、空と水の蒼。時間が下ったからだろうか、そこには淡い光を湛えた妖精も訪れ始めている。
 自然の恵みが作り出した、変えがたきもの。
 ──ああ、本当に、綺麗な所だな。
 思うから、目を戻して牙を握り直す。
「きっと、仕事の後の見物も捗るだろうな」
「そうですね。村に大きな被害を出さない為にも、一匹残らず殲滅しましょう」
 フィンが言って矢を放てば、ユアも頷き、劣らぬ速度で風になる。
 大輪の髪飾りを僅かだけそよがせて、剣閃には一切の揺らぎ無く。刃を滑らせ、堕ちた精霊を切り裂いていった。
 最後の一体を討った後、しかしユアは息をついて背を向けはしない。
 滾る焔の代わりに、場を満たす轟音があった。
 水の滴る音と流動音。
 それは猟兵を見下ろすように、水面からせり上がる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『水の大蛇』

POW   :    水の身体
【液体の身体により】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
SPD   :    口からの水弾
レベル×5本の【水】属性の【弾丸】を放つ。
WIZ   :    身体の復元
【周囲の水を体内に取り込み】【自身の身体を再生】【肥大化を行うこと】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●怪生
 美しくも恐ろしい、という形容が似合う魔物だった。
 嘗て伝承の存在として認識されていたその存在は、人々の恐怖の対象でもあった。
 あの水場へ行くと大蛇が出る。
 この洪水は大蛇の祟りに違いない。
 自然の化身でもあったその魔物は、人間の畏怖の中で、或いは安寧の日々を送っていたのかも知れない。
 だが大蛇はもう、自然の化身ではない。
 それは骸の海から這い出た、自らの死を認めぬ獣。過去へ消えることを唾棄して、超常の存在へ堕した異形。
 自分を生んだ自然すら蹂躙せんと、ただ荒れ狂う心のままに暴れる──ただの強大な、オブリビオン。
マヤ・ウェストウッド
「真打ち登場ってところかい? 残念だけど、もう間に合っている」
・何故ならアタシが、アタシたちこそがその『真打ち』なのだから
・身体形状がある程度自由(不定形)な生命体に対し、[スナイパー]としてのスキルを活かし熱線銃で身体のかたちを司るコア的な器官を狙い撃つ([医術]技能で器官を捜す)
・コアが認められなくとも、[属性強化]によって強化された銃の熱線は大水蛇の身体を一部ないし全部を沸き立たせ、文字通り雲散霧消させよう
・熱線銃の熱線は恐らく高エネルギーの電磁波か何かの類なので、滑らかな体表も容易に貫く(はず)
・水の奔流には[水泳]技能で対抗
「知ってるかい? マヤを溺れさすのは、マヤ自身だけだ」


フィン・スターニス
今ある平穏を壊させはしませんん。
災いを招くと言うのなら、
私は、貴方にとっての災いとなりましょう。

接近して近接戦闘に持ち込みます。
敵の動きを見切り、攻撃や回避等の動きに合わせ対処します。

攻撃は槍を使い、突きを中心にし、
十分に近付けたのなら、
第二災禍・橙の消滅を打ち込みます。
その水ごと、消し飛ばしましょう。


緋月・透乃
おおー、でっかい水の蛇!
なんだか神々しい気もするね!
私の故郷(サムライエンパイア)にも水関係の大蛇の話があるし、案外どの世界にもこういう奴はいるのかな?
ま、オブリビオンな時点で元がなんであれ倒すだけだし、その姿に相応しい強さで楽しませて欲しいね!

あいつ、体が水だから武器攻撃は効きにくそうだね。
それでもやるしかないね!
戦い方は接近してグルメツールの大きいスプーンを使って【火迅滅墜衝】をひたすら繰り出すよ!
炎で水を蒸発させ、水を掻き出すようにスプーンを振るってどんどん奴の体から水を減らしていく狙いだね。
水弾もスプーンで弾いてみるよ。


ロー・オーヴェル
過去に消えることを拒否することは
果たして往生際が悪いというべきか
身を堕してでも生を掴もうとする意思を称賛すべきか

もし自分がコイツと同じ立場になったら?

「それはその時考えるさ。今考えるのは、ただ一つ」

『海』と名がつくものを全て自然とするならば
「お前をその……『自然』に還す。もう浮き上がれないほど、深い深い、海の底に」

敵の動きは注意深く観察し
攻撃の挙動が読めるよう留意

【見切り】も含め可能な限り躱し
それが不可でも深手を負わぬよう攻撃を受けるよう極力試みる

仲間の攻撃等で出来た隙を活用し自身の攻撃
【早業】も併用して反撃の暇を与えぬよう迅速に

お前をここに『束縛』しているその執着心
この刃で断ち切ってみせるさ


神宮時・蒼
…警戒。…炎の虎の、次は、水の蛇、ですか。…蛇は、竜を、模した、のでしょうか。…竜虎って言葉、ありました、よね、たしか。
…生き物には、必ず、死が、付きまとい、ます。…人にも、モノにも、…自然にも。
その、摂理を、壊す事は、きっと、許されては、いけない、はず、です。
…なので、此処で、終わりに、しましょう。

大蛇の本体や液体には極力触れないようにしましょう
氷の「属性攻撃」で凍ったりしないでしょうか…。試してみましょう。
相手は蛇ですし、巻き付かれて足元を掬われないよう気を付けます
凍るのでしたら、「属性攻撃」を乗せた「全力魔法」で首を落とします


アルバ・ファルチェ
堕ちた蛇神…とでも言うべき存在なのかな。
人に害なす存在になってしまった以上、狩るしかないよね…。

強化に「状態異常力」があるのが気になるね。
何かしらの状態異常を付与する力があるのなら、ユーベルコードでの治療もしくは【医療】での治療を試みるよ。

攻撃力の強化をするなら【かばう】【見切り】【盾/武器受け】【オーラ防御】【各種耐性】なんかで仲間の盾となる

防御力の強化は【カウンター】からの【鎧砕き】、コルノの【援護射撃】からの【串刺し】で少しは防御力を落とせたりしないかな?

僕の役目はあくまでも仲間の支援
状況を見極めて、僕に出来る最善を尽くせたら良いな


ヴォルガーレ・マリノ
さっきの炎の精霊も、今、目の前の水の大蛇も
私達と常に共に在る自然がこんな形で襲い掛かってくるなんて
自然災害とは訳が違います…
私はもっと学んでいかなくて…猟兵として

武器の振りは極力抑えて素早く【二回攻撃】を繰り出しマス
回避には【見切り】と【ダッシュ】を
前方で攻撃を【誘き寄せ】て後方からの攻撃が得意な方の
お手伝いをしまショウカ
どうしても避け切れナイ攻撃は【深紅の楔】(防御力重視)の
使いドコロかもしれまセン
(痛みに薄れユク意識の中…目を閉じレバ…見えル…
ワタシを誘う…深紅の…満月)
そんなものじゃ…ワタシの渇きは潤せナイ
もっとずっと…まだマダ全然…足りナイ…!

暴れ過ぎタラ…どなたか止めて下さいマスカ?


シャルロット・クリスティア
伝承の中で畏敬されていた魔物……幻獣、とでも言うべきでしょうか。
それがこうして実害として形を成すとは……オブリビオンと言うのも面倒なものですね。
あぁ、ユア(f00261)さん。ちょうど今合流したところです。少々出遅れましたが、加勢しますよ。

さて、どうやら周囲の水を吸い上げて回復や強化を行うようですね。
となれば、これを使いましょうか。着弾点を急速冷却する氷結弾です。
水同士ならともあれ、氷の身体で取り込めますか?
その身体、固めさせてもらいますよ!(スナイパー、援護射撃、属性攻撃、時間稼ぎ)
ユアさん、どうぞ!氷程度なら、あなたであれば斬れますよね?
勿論、援護射撃は継続です。存分に暴れてくださいね。


ユア・アラマート
焔の次は水か。どちらも、恵みにもなると同時に災いにもなる
今は、災いの面だけになってしまったけれど
ああ、シャル(f00330)も来たんだね
お前がいるなら心強いよ

【SPD】
シャルが大蛇の強化を妨害した所で行動開始
影の閃赤で喚び出した自身の残像と共に「ダッシュ」で速度を上げながら敵を撹乱
被弾をしないように高速移動を常とする
攻撃の対象を常にブレさせ、同時に「見切り」で攻撃の空振りを誘い
隙を作り出し、その間にこの手が届く間合まで残った残像と共に接近
「2回攻撃」でその体を斬りつける

水でも氷でも、私にとっては変わらないな
背後の守りも万全なら、遠慮なくその柔い体を切り刻ませてもらおうか



 蒼色の揺らめきが地面を照らしていた。
 河そのものが形を持ったかのような異形は、陽光を透かして妖しく大地を翳らせる。
 絶えず流動する体は洪水のように波打ち、鈍く耀く瞳は猛悪な色で猟兵達を睥睨していた。
 ──水の大蛇。
 仰ぐ程の高さにまでせり上がると、零れた水が豪雨のよう降り注ぐ。
 透乃は感心するようにそれを見上げていた。
「おおー、でっかい水の蛇!」
 なんだか神々しい気もするね、と。声音はあくまで明るく、どこか興味深げでもある。
 当然、易い相手ではないとも判っていた。
 だから蒼は静かな様相のまま、素早くそれを観察している。
「…警戒。…炎の虎の、次は、水の蛇、ですか」
 体長は天を衝くほどで、幅はさながら神木の如き太さだ。
 確かにそれは最早獰猛な蛇。それでも嘗ては何か高位の存在であったことも窺える。
「…蛇は、竜を、模した、のでしょうか。…竜虎って言葉、ありました、よね、たしか」
「私の故郷にも水関係の大蛇の話があるし、もしかしたらそういう存在なのかも知れないね!」
 透乃も、牙を咬み鳴らすその顔に少しばかり見入っていた。
 伝承の怪生。
 或いは神か妖怪か。
 確かなのは、それが炎の精霊の軍勢を従えていたということ。即ち、その全てに比して強大ということだ。
「ま、真打ち登場ってところかい?」
 ひらりと二輪から降りたマヤは、一歩近づいて銃を抜いてみせる。
 それは過去、人に畏れられた存在に対し、僅かの恐れも見せないという宣戦だ。
 どれほどそれが強かろうとも。
「残念だけど、もう間に合っているんだよ。──何故ならアタシが、アタシたちこそがその『真打ち』なのだから」
 同時、銃口を向けて先制の引き金を引いた。
 閃光の如きフラッシュが瞬く。
 ぱっ、と、熱の残滓が僅かに漂ったのは、それがM3G-R1 Zm 熱線騎銃──強烈な熱線を放つカービンだからだ。
 微かの間も置かず、放たれた高熱の塊は大蛇の鼻っ柱を穿つ。小さな爆発が起きたかのように水蒸気が爆ぜて、その長い胴体が揺らめいた。
 テクノロジーの集積。未知の武器に対して自然から生まれた存在は一瞬だけでも慄いたろうか。少なくともその間隙に、猟兵達は奔っている。
「とにかく元がなんであれ、オブリビオンな時点で倒すだけだね!」
「ええ。ここに今ある平穏を壊させはしません」
 透乃に並んで駆けるはフィン。
 自身の十倍は超える大きさの怪生へ向けて、一歩も引かない。どころか、速度を落とさず至近にまで迫っていく。
 手元に光が収束されるのは、傍らの小さな龍が槍へと形を変えていくからだ。
「参りますよ、雨月様」
 フィンの手に収まるそれは、応えるかのように七色の光を纏った。
 七彩龍【雨月】。
 紛うことなき龍神であり、フィンにとって共に歩むものでもある。
 草原を踏んで跳んだフィンは、河幅の中腹まで到達。大蛇が一瞬遅れて体を波打たせて払おうとしてくるところへ──七彩描く刺突を繰り出し、腹部を痛烈に穿った。
 水が弾け、激しく蠢く。
 流体とはいえ、形を持つ以上は物理に対して無敵ではありえない。その一撃は確かに痛みを与えて大蛇の感情を揺さぶっていた。
「……とはいえ、簡単ではなさそうですね」
 逆側の岸に着地したフィンは、すぐに見上げる。
 一部を砕けば水流として形が崩れるというわけでもなく、明らかな傷が残るでもない。
 幾分かの生命力を削ったとは言え、その手応えはやはりただの水に似ていた。
「さて、どっかにコアでもあるかね」
 マヤは目を細めて、その巨体を観察する。
 好戦的な視線はどこか妖艶でもあって──同時に迷いがない。一見して判らないのなら撃って探せばいいと、即時に判断していた。
 頭部に首、胴体に足元。器官と思われるところに余さず熱線をプレゼントして、逐一反応を窺っていく──だが。
「簡単には殺させないってわけかい」
 呟きが零れる。確認できるどの部位を撃っても、大蛇が大蛇として揺らぐことはなかった。
 撃ち抜かれた部位は宙に散るが、それがどこであれ周囲の流れがその部分を覆い隠すばかりなのだ。
 ただ、それでも熱線は別の効果を生んでいる。
 マヤが射撃を重ねるたびに、大蛇の体は確実に加熱されていた。沸騰した水はそのたびに蒸気となって散っていき、ただの射撃よりも高速度で水を減じさせていく。
 それにしびれを切らし、大蛇はマヤの体を水流に飲み込んでしまう。零距離からの圧力がマヤを襲った、が。
 マヤは巧みに体を操って内部を泳ぐように移動。すぐに敵の後背に飛び出ていた。
「知ってるかい? マヤを溺れさすのは、マヤ自身だけだ」
 発射される熱が、水流を沸き立たせていく。
「やっぱり、炎は効きそうだね!」
 その頃には、透乃も巨体に迫っていた。
 くるりと回して手に握るのは大きなスプーン。
 過酷なフードファイトにも耐えうる強化の施されたそれに、透乃はめらめらと焔を纏わせ始めていた。
「行くよー! 燃え上がれ私の魂!」
 桃色の揺らめきが一気に立ち昇り、辺りを熱気が満たす。
 火迅滅墜衝。
 横合いから大蛇の胴体にたどりついた透乃は、まるで巨大なケーキに立ち向かうかのように、スプーンを水流に突っ込んだ。
 熱が水を沸騰させ、蒸発する音が響く。同時にスプーンの丸みを使って水を掻き出し、大蛇の体積を減らし始めていた。
 水弾が飛んでくれば、上手くスプーンの腹を使って弾き返す。透乃はそのまま水を払いのけ続けることで、大蛇の体躯を縮めていた。 
 マヤの攻撃も相まって、巨体の端々も高熱に侵され始めている。
 郷を沈めるほどの力を有していようとも、人をたやすく喰らう凶暴さを持っていようとも。水の体という自身を構成する弱点そのものを覆すことは出来ない。
「どうしたの? その姿に相応しい強さでもっと、楽しませて欲しいね!」
 透乃の言葉を、獣と化したそれは理解することは出来たろうか。
 泡立つ体でも荒々しく身じろいでみせた敵は──速度を付けて首を伸ばし、牙を煌めかせてきた。
 だが、相手から距離が詰まってくれば、それこそフィンの狙い通りでもある。
「好機を作ってくれるなら、何よりです」
 岸を跳んで戻っていたフィンは、ちょうどその正面。敵が高速で迫ってくる場で魔力を圧縮していた。
 ──封印解除。
 ──橙色の魔力を糧とし、第二の災い、此処に発現せよ!
 眩い色の光が、矛先から放たれる。
 第二災禍・橙の消滅(ツヴァイト・ユーベル・オランジェ・フェアゲーエン)。触れたものを消滅させるほどの力を有した、苛烈にすぎる一撃。
「貴方が災いを招くと言うのなら、私は、貴方にとっての災いとなりましょう」
 敵の速度も相まって、それは高速で接触。
 巨大な爆発を発生させ、大蛇の半身を吹き飛ばした。

 霧散していく水の残滓が、虹を空に描き出して美しかった。
 垣間見えた優美な光景が、或いは過去のそれの崇高さの一端であるのかもしれない。
 けれど大蛇はずっと昔に骸の海に落ちた。
 そして神性も住む場所も、理性も全てを失って、ただ異形として蘇った。だから簡単には死なないのだと、朽ちてたまるものかと、未だ死なずにそこにいる。
 河に大波が立つ。
 大蛇は河にある水量を呼び込んで、失った自身の体を再生し始めていた。
 水ならば無尽蔵にある、と。
 自然を喰らって自身が生きながらえることに、幾ばくの躊躇も無い姿がそこに在る。
「堕ちた蛇神……とでも言うべき存在なのかな」
 きっと、元々はこうでなかったのかも知れないと。
 僅かばかり残る美しさに、アルバはそう感じる。そして同時に、それがもう戻りはしないものなのだとも。
「過去に消えることを拒否することは、果たして往生際が悪いというべきか……身を堕してでも生を掴もうとする意思を称賛すべきか」
 徐々に、徐々に。
 体長を伸ばしながら再生する大蛇を前に、ローは呟く。
 それが醜く唾棄すべきことなのか。賛同すべきことなのか。ローは別に決めつけてやろうなどとは思っていない。
 目の前にあるこの姿が、嘗ての自然の化身が選んだことなのだろう。
 のらりくらりとした表情の中で、自分がそれを上から審判することにローは意義を感じない。
 もしも自分がこの怪生と同じ立場になったら──それはその時に考えればいい。 
「今考えるのは、ただ一つ」
 ──『海』と名がつくものを全て自然とするならば。
「お前をその……『自然』に還す。もう浮き上がれないほど、深い深い、海の底に」
 出来ることはそれだけだ。
 水のゆらめきにも濁らず、陽光を反射するのは鋭利なナイフ。
 大蛇は再生を始めているとは言え、体の半分以上を失っており、それはすぐには戻らない。それでもこちらが攻撃の意志を見せれば放置することもまた出来ないはずだった。
 事実、大蛇は水の弾丸を撃ち出してくる。
 そして万全状態とは言えぬその数弾を、アルバは的確に防御した。
 髪をふわりとしっぽのように揺らしながら、焦らず素早い足取りで。弾道の正面に立つと紫蒼に煌めくオーラを放射状に発散。瞬間的な反発力を高め、無傷で全てを弾き返していく。
 その背から回り込むのがローだ。
 河は超えず、岸沿いにぐるりと旋回する形で敵の斜め後方を取る。そのまま大蛇が後ろを向く素振りも見せぬ間に──一刀、神速の斬撃を叩き込んだ。
 体積の減った大蛇には、その斬閃も平時より大きな物に感じられたろう。身を捩るように苦悶も見せ始めていた。
 それでも、大蛇は敵意を収めはしない。
 滝が流れるかのような轟音を咆哮代わりに、大気が震えるほどの殺意を一帯に響かせていく。
「あれが……元々は、自然の一部だったんですね……」
 ヴォルガーレは鈴の音のような声を僅かに沈ませて、それを見つめていた。
 ほんの少し冷静な心持ちになってしまっているのは、未だにどこか、それが信じられぬ思いでもあるからだ。
 ただの悪意を持った悪者とは違う。
 獣だったものがその狩りの本能のままに魔の物へ堕したのとも違う。
「さっきの炎の精霊も、今、目の前の水の大蛇も──私達と常に共に在る自然がこんな形で襲い掛かってくるなんて」
 隣り合って、生きていくべきもの。
 それが今は、自分達を殺そうと牙を剥いている。
「自然災害とは訳が違います、ね……」
「……うん。だからこそ、人に害なす存在になってしまった以上、狩るしかないよね」
 アルバが仰ぐと、ヴォルガーレは頷く。
 猟兵として、自分はもっと学んでいかなくてはならない。眼前にある現実に、真摯にそう思いながら。 
 そして同時に、沸き立つ戦意も自身の内奥に感じていた。
 ハヤク、ハヤク。
 それを求めるように、それを懇願するように。
「狩るしかないナラ……躊躇う理由はないデスネ……!」
 脈動が高鳴って、表情は上気する。力が漲って、それを振るうことを心が欲する。
 戦うことに焦がれる本能が発露されたように、その手は戦斧を握りしめて、その足は既に疾駆を始めていた。
 接近したのは敵の正面。武器の振りを抑えることで小回りを利かせて、素早く二連の斬撃を叩き込んでいく。
 死戦に快楽を覚える体は、生み出す威力自体もまた苛烈。水を払い飛ばすように弾けさせ、敵の再生を簡単には加速させなかった。
 前方に位置取っているのは仲間に攻撃を繋ぐため。弾丸状の水塊が飛んでくれば、一瞬の間隙で見切って避け──更に一歩ずれる。
 空いた射線から狙うのは、アルバ。
「コルノ、真っ直ぐに行って!」
 アルバの傍から飛翔した小竜のコルノは、風に乗って速度を増しながらドラゴンランスの形態へと戻りゆく。そのまま大蛇の体に突き刺さると、鋭いダメージを齎しながら貫通して後方へと飛び出していた。
 唸るように流動する大蛇も、やられるばかりではなく同一射線へと弾丸を返してくる。
 けれどそれこそ、アルバが黙って受けるはずもない。
 敢えて弾道上に奔ったアルバは、盾で弾を逸しながら前進。逆に敵が隙を作ったところで肉迫してカウンター。表皮を裂くように波を切り裂いて、再生により高まった防御力を削り取っていった。
 けれどこれもまた、仲間への橋渡し。
「次、行けるかな」
「ああ」
 答え、猶予を与えずに次手を打つのは、逆の岸に渡っていたロー。
 全く無防備な状態になった大蛇の後方から、前面へ駆け抜けるように斬撃を与え、一息に広範囲の水を切り払っていた。
 まるで大蛇の皮を剥ぐかのような早業。
「少しは、効いたか」
 呟く言葉に相違なく、大蛇は再生を一時止めていた。 
 だが、あくまで反抗するように、直後には再び肥大化を始める。それは先刻までのように自身を構成する水を増やすのではなく、ただ攻撃力を増すための準備。 
 直後、巨大な砲撃をするように前方へその水量を撃ち出した。
 前面にいたヴォルガーレもそれは避けきれず、膨大な水を浴びる形となる。
 宙へ飛んだ水の中で溺れながら──ヴォルガーレはそれでも明滅する意識の中で、自身の鼓動を感じていた。
(「彼方に見えル……ワタシを誘う……深紅の……満月ガ……」)
 こんなものでは、渇きは潤せない。
 ──もっとずっと……まだマダ全然……足りナイ……!
 水の塊ごと高空を舞っていたヴォルガーレは、その只中で目を見開いた。
 その闘争本能は、目覚めた戦意は、獣そのものと言っていいほどだったろう。
 深紅の楔(クレミージ・カテーナ)。
 吼えたヴォルガーレは水中を蹴って、高速で水塊から脱出。落下するままに大蛇の頭上を取って斧を振り上げた。
「アア……もうダメ……ガマン……できナイ……!!」
 剛烈なまでの縦一閃。凄まじい速度と膂力の相まった斬打は、大蛇の頭部の半分を斬り飛ばしていく。

 水面が揺れていた。
 響くのは悲鳴か怨嗟か、それとも生に縋る欲望の叫声か。
 蒼い流体が掻き混ぜられ、鳴動し、振動する。河に強く波打たせて水を取り込み、大蛇は体を取り戻そうと足掻いていた。
 一つに消えていた眼光は二つに取り戻され、元の大きさに劣ろうとも体は肥大と再生を続ける。
 生命力は目減りしようとも、全霊で目の前の危険を排除しようという凶暴な意志がそこには宿っていた。
「伝承の中で畏敬されていた魔物……ですか」
 水飛沫を含んだ風に、金髪が揺れる。
 暴風のようなその中にあって、澄んだ宝石の如き蒼瞳は透徹に。シャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)はその水の悪魔を怜悧に見つめていた。
 嘗ての自然の化身。
 神性を内包していたらしき怪生。
「幻獣、とでも言うべきでしょうか。それがこうして実害として形を成すとは……オブリビオンと言うのも面倒なものですね」
 無論、だからこそ少女はそれを前にして退くわけもなく。
 年齢相応の体躯は、しかし真っ直ぐに──正義感を宿した立ち居で敵に向いている。
 だからその姿を、ユアはすぐ目に留めた。
「ああ、シャルも来たんだね」
「ユアさん。ちょうど今合流したところです。少々出遅れましたが、加勢しますよ」
「お前がいるなら心強いよ」
 振り返ったシャルロットに、ユアが返す言葉は飾り気無い。
 心強いといえば、その文字通りに違いなく。瞳に浮かぶのはひとつ抱いた、勝利への確信でもあったろうか。
 その視線をユアはついと大蛇へ注ぐ。
「先刻は焔。今度は水。どちらも、恵みにもなると同時に災いにもなるものだ」
 ──尤も、今は災いの面だけになってしまったけれど。
 ユアの呟きに、シャルロットも頷いて目線を戻していた。
 宿すのはやはり、濁りなき意志。
「ならば、倒しましょう」
 同時にシャルロットはつぶさに敵を観察していた。無論、その躰の大半を構成するものが河の水であることも。
「どうやら周囲の水を吸い上げて回復や強化を行うようですね」
 現状でも熱と衝撃によって体積を減らすことに成功している。それでも水を吸い上げ続けられれば厄介なのは確かだ。
「──となれば、これを使いましょうか」
 きらと光るのは蒼に煌めく弾丸。
 美しい飾り物のようでもあるそれは、氷の魔力を封入したもの──マージガンナーたるシャルロット故に扱うことが可能になる氷結弾だった。
 単発式のライフルにそれを籠めると、シャルロットはサイトを大蛇へ定める。
「水同士ならともあれ、氷の身体で取り込めますか?」
 瞬間、引き金を引くとマズルフラッシュがまるで吹雪のように薫った。
「その身体、固めさせてもらいますよ!」
 宙に引かれる冷気の残線。弾丸は吸い込まれるように怪生に命中し、弾ける。
 術式刻印弾・氷結(ルーンバレット・フリーズ)。
 閉じ込められていた凍気は魔力が開放されると共に爆発的に広がり、拡散。周囲を一気に氷晶にして蝕み始めた。
 大蛇が咆哮の如き水音を上げる。体の中央が白色に変化し、侵食するように広がっていく。
 だが未だ膨大と言える体積を身じろがせて、敵も抵抗し始めた。或いは振動によって氷を溶かしてしまおうとするように。
 だがそこへ、蒼が奔っていた。
「…追撃。…凍りつかせる、手段は、用意、してきました」
 水の彩の外套をはためかせ、大蛇へと迫ってゆく。
 元より蒼も、敵が水であればこそ凍結させることが有効と判断していた。
 だから跳ぶと、その勢いのままに巫覡載霊の舞を行使。眩い氷色の光を纏って神霊体へと変身している。
 琥珀耀く薙刀に、込める魔力は氷の属性そのもの。
 烈風の如き衝撃波を放って大蛇の全身に氷気を浴びせると、水の表皮がぱり、ぱり、ぱりと。音を立てて凍りつき始めていた。
 金属音の如き高い音を響かせて、大蛇は苦しみの声を上げる。
 それでも牙を伸ばして蒼を喰らおうとするが──蒼は続けて攻撃。衝撃波の反作用で宙を泳ぎながら、同時に敵の凍結を進めていった。
 大蛇は唸りながら、表面の氷を荒波で、内部の氷を流動で砕こうとする。
 それを黙認しているシャルロットではない。
 かちゃりと小気味いい音を鳴らして次弾を準備。即時に発砲し、敵の胴体を氷結させて大きく動きを鈍らせた。
「ユアさん、どうぞ! 氷程度なら、あなたであれば斬れますよね?」
「ふむ。水でも氷でも、私にとっては変わらないな」
 何より背後をシャルロットが守っているなら万全、と。ユアは既に疾駆している。
 翔けるように、駆ける。
 敵が狙いを定められないのは、ユアの姿がぶれ、複数の姿を伴っているからだ。
 影の閃赤(フォーミュラ・ブレイド)──喚び出した残像はしかしただの残像ではあり得なく、独立した軌道をとってユアと共に大蛇を撹乱していた。
 そうでなくても、水の巨体は氷の巨体となり著しく機動力が落ちている。だから氷の塊となった弾丸がばらまかれても、ユアは見切って当てさせない。
 ほんの数度の呼吸。その内に、手の届く間合いにまで近づいていた。
 背中に憂いがなければ、遠慮もいらない。
「その柔い体を切り刻ませてもらおうか」
 ユアの振るったダガーが、まるで氷花を咲かせるように大蛇を裂き、斬り、落としていく。
 間断ない斬撃は敵を苦しめて止まない。
 それでも大蛇は、表面に纏う水分だけで新たな弾丸を形成し放ってきた。が、ヴォルガーレへと命中した数撃を、アルバは見逃さない。
「──強化のせいか。これもまた、独りでに動くようだね」
 その水弾は、本体や大きな射撃時と同じく、ある程度の形を保つことでこちらを蝕むものになっていたらしい。
 だがそれがヴォルガーレを巻きつける前に、アルバは素早く視線を奔らせていた。
 Amour Gratuit(ムショウノアイ)。
 贈ったウインクが特別な力を齎すように、ヴォルガーレの傷はあっという間に塞がれていた。
 ヴォルガーレ自身も淀まず反撃に出て、大蛇の根元を穿ってぐらつかせる。
 フィンがそこへ魔力を叩きつけると、更に大きな氷塊が散っていった。
「弛まず、続けましょう」
「そうさせてもらおうかね」
 マヤが熱戦を重ねれば、氷は水に戻る間もなく蒸発してゆく。
「ちょっとシャーベットっぽいかも?」
 と、そんな最中にも敵の体を掻き出してゆくのは透乃だった。
 継ぎ目のない攻勢に、大蛇の体が蛇の形状すら保てなくなってゆく。不安定な氷のオブジェのように、それはただ苦悶していた。
 それでも訴えの鳴き声を響かせるのは、どこまでも自身の死を認めないからか。
 蒼は静かに目を伏せていた。
「…生き物には、必ず、死が、付きまとい、ます。…人にも、モノにも、…自然にも。その、摂理を、壊す事は、きっと、許されては、いけない、はず、です」
 薙刀を構え、敵へ与えた氷と同じような白の髪を揺らがせて。
「…なので、此処で、終わりに、しましょう」
「ああ。──お前をここに『束縛』しているその執着心。この刃で断ち切ってみせるさ」
 ローは蹴り上がって上向きの斬撃を加え、その怪生へ縦の切れ目を入れる。
 蒼がそこへ連続の氷風を生み出していた。
 細かな刃を孕んだかのような波動が、大蛇の上部を貫いて──首を落とす。
 どこまでも体を切り裂く冷気。
 それもまた自然の猛威を含んだ攻撃だったろう。
 もう大蛇に体を再生することはできない。
 シャルロットはそこへ狙い違わぬ銃弾を贈り、大蛇の胴体を瓦解させた。
「ユアさん──」
「ああ。仕舞うとしよう」
 ユアは岸から岸へ跳ぶ。
 同時に奔らせた、残像を含んだ二連の牙で──残る氷を切り伏せて跡形もなく消滅させていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『幻想夜景』

POW   :    キャンプファイアーをしたりバーベキューをしたり、盛り上がって過ごす

SPD   :    夜の森や原っぱを駆け回ったり星空を飛んだり、満喫して過ごす

WIZ   :    虫や動物の声を聞いたり星占いをしたり、静かに過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●水郷にて
 炎の精霊と水の怪生は全滅した。
 あとに残ったのは、美しい水のせせらぎばかり。
 戦いを遠巻きに見ていた郷の者は皆で歓喜し、祝福の声を上げる。そうして猟兵達を歓待しようと郷の中に案内し、祭りを開くのだと準備をし始めた。
 祭りは石造りの広場にて火を焚き、料理や音楽、踊りを楽しむのだという。
 水郷を見て回るのも自由だし、遊覧する舟も巡らせるから声をかけてほしいと言った。
 時刻は夕に近い。
 空はまだ青く、今から見て回れば緑と水の風景の色合いを楽しむことが出来るだろう。
 夕刻まで待てば、夕闇に照らされた金色の水面を眺められるという。
 夜になれば妖精の時間。淡い光を湛えて揺蕩う彼女らを標に、ぼうと光る水郷の景色を味わうことが可能だ。
 ゆったりとした自然の中は、戦闘の疲れを癒やすには適しているだろう。
 勿論、宴に参加すれば賑やかな時を過ごせる筈だ。
 だから自然の美しさに溢れるその場所で、猟兵達は歩み出す。
ヴォルガーレ・マリノ
折角ですから、まだ空が青く明るい内に見て回りたいと思いますっ

わぁ…凄い…!
本当に絵画の中みたいな景色です…!
行き交う郷の方々の顔も
皆さん活き活きしてらっしゃいます
守れてよかった…
…わ、私の戦ってる姿はあんまり見られてないと良いんですけど…

あっ!
路上で絵を販売してる方がいらっしゃいますっ
あの、少し見ていってもよろしいですか?
この郷の風景を描かれてるんですね…
とてもお上手…それに温かみを感じます
この郷を愛してらっしゃるという事が凄く伝わってきます
一枚頂こうかな…
…え?新しく描いて下さるんですかっ?
そ、それも私を入れて!?

絵画のような世界の中にいる自分を絵にして頂けるなんて
なんだか不思議な気分ですっ



 拍子のような軽やかな足音が響く。
 明るい陽光が、淑やかなロングスカートの作る影を踊らせる。
 まだ青空の時分。
 清涼な風に髪を撫でさせて、ヴォルガーレは歩んでいた。
「わぁ……凄い……! 本当に絵画の中みたいな景色です……!」 
 瞳がつぶさに風景を映していく。
 草花の豊かな道を進むと、水路に流れる水が煌めいて見える。そこから引き込まれた水の小路は水車を動かして、空を背景にゆっくりと円運動させていた。
 そこは確かに自然と共存する郷。
 見える全てが美しくて、だからうきうきと歩が弾む。
 荷馬車を曳き、籠を持って歩く、そんな行き交う村人達も今では笑顔だ。
「皆さん活き活きしてらっしゃいます──」
 それが嬉しくて、ヴォルガーレも穏やかな表情になった。
 守れてよかった、と。
(「わ、私の戦ってる姿はあんまり見られてないと良いんですけど……」)
 勿論、猟兵は村を救った勇者だから声を掛けられることもゼロではなかったけれど。そうなればヴォルガーレは少し改まってしまいつつも……丁寧に対応はしたのだった。
 そんなこともありながら歩いていく、と。
「あっ!」
 ヴォルガーレは形のいい眉を少しだけぴこりと動かして足を止める。
 そこにキャンバスを立て、画材と共に座る人がいた。
 今も手を動かすその若者は、路上の絵描き。
 ヴォルガーレは少しわくわくして声を掛ける。
「あの、少し見ていってもよろしいですか?」
「ええ、勿論。興味を持ってもらえて嬉しいですよ」
 柔和な芸術家肌、という青年は笑みを返す。そこには描かれた絵がいくつも並び、道端に華やかな彩りを添えている。
 覗き込んで、ヴォルガーレは表情を華やがせた。
「この郷の風景を描かれてるんですね……。とてもお上手……それに温かみを感じます」
 絵の題材は様々で、綺麗な水路、緑に囲まれた家並み、道を歩む物売りに草を干す風景と、景色と人々の生活を垣間見させるものが多かった。
「この郷を愛してらっしゃるという事が凄く伝わってきます……」
「そう言ってもらえるのが、一番うれしいです」
 無邪気に笑う彼は、一枚買おうかと逡巡していたヴォルガーレを見て筆をとった。
「どうせなら、新しく描きますよ」
「え? よろしいんですかっ?」
「はい。折角ですし、貴女を入れた風景を描かせてください」
「わ、私をっ……!?」
 驚いてしまうヴォルガーレだったけれど、青年は乗り気でキャンバスを準備していた。
 そうすると断るのも違うし──何より、それを見てみたいという気がする。
 描き慣れているだけあって、彼の手際は見事なものだ。ヴォルガーレが景色の中に少々佇んでいるだけで、待たせずに描き上げてしまった。
 それは村を眺めるヴォルガーレ、という一枚。
 煌めく水路を横にした場所で、ヴォルガーレは石造りの塀に小さく背を預けている。顔は風景を見つめて笑んでいて、小旅行に来た令嬢という可憐な印象だった。
 足元に咲く数輪の花も清廉な印象を加える、とても彩り鮮やかな絵。
「わぁ、とても素敵ですっ!」
「これを思い出にしてもらえたら、幸いです」
 青年の渡してくれた絵を、ヴォルガーレは頷いて受け取る。
 絵画のような世界の中にいる自分を絵にしてもらう──何だか不思議な気分で、でもきっと良い思い出になると、そう強く思った。
 そして絵を見ると、また改めて郷の風景の美しさが感じられるから。ヴォルガーレはまた少し、眺めて回ろうと歩を踏み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィン・スターニス
無事に退治でき、本当に良かったです。

綺麗な風景だと聞き及んでいますし、
折角なので見て行きましょう。

最初は歩いて、
その後は、龍神天駆で雨月様と空から景色を、楽しみましょう。

世界が違えば、景色も生活も変わる。
それでも人の営みは変わらない。
不思議な物ですが、それが世の理なのですかね?



 夕刻も近くなって、陽光は段々と傾いてきている。
 空は色が変わる前の最後の青みを見せていた。それが一層鮮やかで、水の揺らぎと植物の緑によく合っている。
「なるほど、これは聞き及んだ通りですね」
 花に囲まれた小路を歩みながら、フィンは呟く。
 綺麗だと聞いて郷の景色を見に来ていたのだ。
 果たしてそれは言葉通りで、村は歩むたびに自然の息吹が感じられる。
 郷は要所をレンガと石造りで飾りつつ、河沿いと地続きの風景をそのまま活かした見目になっている。
 だから村の中でも緑の色が濃くて、花々も途切れない。
 その景色が無事であったことに人々の喜びもひとしおのようで、村人には笑顔が絶えなかった。
「やはり、水の流れを一番に置いているようですね」
 そんな中を、フィンは歩み進んでいく。
 郷の中心地は、外から数段低くなっている場所もある。自然の段差を活かした区画で、地面より高い位置にある水路がまた涼やかな眺めだった。
 同じ水路でも退屈しない。自然を活かした場所は尚更二つとして同じものがないから、見ているだけでも飽きなかった。
 だからフィンは呟く。
「空から眺めても、美しそうですね」
 時刻は黄金の水面を見せる夕刻から、夜になろうとしていた。
 妖精が漂ってくると、暗がりが淡い光に照らされて美しい。それを風の中から見下ろせば、また楽しめるという確信があった。
「雨月様、参りましょう」
 水路の一角で、フィンは傍らの龍神に声をかける。
 ふよりと浮いている雨月は、それに応えるようにゆるりと廻る。すると直後、薄い光に包まれたその体が変化した。
 元は凡そ三十センチだったけれど──現れたその姿は二メートルを超える。それは確かに、フィンが乗っても余裕のあるほどの大きさだった。
 ふわ、と風が吹く。
 雨月と共にフィンは高空に昇っていた。
 傍にあった水路やレンガの模様、草花が眼下に下がって全体像が望めるようになる。
 すっかり太陽は落ちていたけれど、郷の灯りと妖精の光、そして星明りでしっかりと郷の隅々まで見ることが出来た。
 水流が宝石のように光っている。
 木々が風にそよいで揺れている。
 人々はその中で自然に寄り添って生きていて、楽しそうだった。
「良い景色ですね」
 フィンは実感して言った。
 敵を無事に退治できてよかったと、改めて思いながら。
 この郷で、人は長く生きていくのだろう。時に苦難があったり、時にお祭り騒ぎがあったりしながら。
「世界が違えば、景色も生活も変わる──それでも人の営みは変わらない。不思議な物ですが、それが世の理なのですかね?」
 フィンは独りごちるように零す。
 龍神はそれに、声を返しはしない。
 けれどゆらりゆらりと宙を泳ぎながら、ゆっくりと見下ろす視線は──どこかそんな人々を見守っているようでもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マヤ・ウェストウッド
「ここの水ならいいお茶が飲めそうだ……」
・マヤは戦闘後の一杯の食事と一杯の紅茶を摂ることを楽しみにしている
・水郷で大量に買ってきた食糧と川から汲み上げてきた水を使い、山ほどの料理と一杯分の紅茶を用意する
・宴を楽しむ人々を眺めながら常人以上の夕飯をとり、真空パックされてたアールグレイを飲んでほっと一息
・住む星を奪われ星船の中で生まれ育ったマヤにとって、自然な重力と土の匂いに憧れを抱いている。そこに住まう人々を護ることができて誇りに思っている
・この世界もまた、自分の故郷のように世の理からかけ離れた奴らに脅かされている事と猟兵の存在意義を再確認する
「ともかく、腹が減ったよ。あとそろそろティータイム」



 夜を迎える郷は、そろそろ宴の始まる時間だった。
 石造りの綺麗な広場に大きな焚き火を作って、人々がそれを囲うのだ。その準備も本格化しだして、俄に広場の周辺は賑わっている。
 マヤはそんな人々を横目にしつつ、水を汲みに向かっていた。
 飲み水や生活用水を補充できるところは無数にある。そこはやはり水郷で、どこに行っても濁りない透明な水が確保できるのだった。
「ここの水ならいいお茶が飲めそうだ……」
 腰の高さに調節された流水から水筒に注ぎつつ、マヤは半ば感心するほどだ。
 ここは宇宙のような超技術は存在しない。けれど暮らすのに不便がないだけの恵みがある──そのことが改めて感じられる。
「さて、と」
 踵を返したマヤは、人が集まり始めている広場を歩む。
 宴に交ざるということでもない──けれど、食糧は準備してきている。それは大量で、肉に魚に野菜など山盛りといって差し支えなかった。
 それを広場の中心から少し離れたところに置いて、自分も座る。汲んできた水は加熱して短時間だけ沸騰させていた。
「ともかく、腹が減ったからね。それに、ティータイムだ」
 戦闘後の一杯の食事と、一杯の紅茶。
 マヤはこれを摂ることを楽しみにしているのだ。
「お湯は……いい感じだね」
 軟らかめの水のようで、丁度紅茶には適している。真空パックされていたアールグレイの茶葉で、手際よく一杯を注いだ。
 ベルガモットの香りが鼻先を擽る。朱色から立ち昇る湯気が、リラックスさせてくれるようだ。
 早速始める食事は勿論、用意した分をたくさん食べる。
 郷は食材にも事欠かないようで、質のいい水と餌で育った牛や豚を焼いたものに干したもの、生魚に焼き魚など、バリエーション豊かなものが方々で手に入った。
 常人以上の量を胃に入れて──紅茶を一口飲んで、マヤはほっと一息。
 犬耳をゆるく動かして、疲れが癒えるのを感じた。
 宴を始めた人々を見やる。
 彼らは故郷が壊されずに済んで、何より嬉しいことだろう。
 住む星を奪われ星船の中で生まれ育ったマヤにとって──自然な重力と土の匂いは、憧れを抱く対象だ。
 だからこそ、そんな人々を守ることが出来たことを誇りに思った。
「ま、平和が戻ったことが何よりだよ」
 それは心からの言葉。
 猟兵がいなければ、きっとこの郷は今の姿のままではいられなかったことだろう。
 そして──そんな人々や村は、ここだけに限った話ではあるまい。
 自分の故郷と同じように。世の理からかけ離れた存在が、この世界全体を脅かしているのだ。
「救えるのは猟兵、か」
 ──戦っていかないとね。
 存在意義を感じるから、そう思う。
 自分の世界も、いつか──そう決めているから思いは尚強く。
 だからこそ今はひとたびの休息を。夜風が柔らかく吹く中で、マヤは白く染まった吐息を空に昇らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
POW

引き続き、ユア(f00261)さんと行動してます。
お祭りですか。恵みに感謝し、日々の命に感謝する……良いですよね。私は好きですよ。
このような大規模で賑やかなのは初めてですけど。
せっかくですし、お邪魔しちゃいましょう。

周りの景色を楽しみつつ、料理に舌鼓。
おすすめの料理とか分け合って楽しく食べたいですね。
……ん、この料理、美味しいですね!ユアさんも、こっちの料理食べてみます?
そちらのお肉も美味しそうですねー……やはり、水が良いからなんでしょうか。

……そうですね。せっかく乗り掛かった舟ですし。
最後まで気持ちよく祭りができるように、もうちょっとお手伝いしていきましょう!


ユア・アラマート
どうにか片付いたな。あとはのんびり過ごせそうだし……うん
シャル(f00330)、お腹が空いたし何か食べようか

一仕事終えた後の食事は格別だからね
あ、シャル私お肉がいいよ。お肉が(くいくいひっぱる)
水が綺麗な所はね、食べ物も美味しくなるんだよ
お肉もだけど、あとは野菜だって瑞々しくなる
この地域で育った食材を焼いて食べるなんて、贅沢なことだ
被害もなかったし、楽しいお祭りになってよかった

とはいえ、食べてばかりじゃなんだし、少しはお手伝いもしようか
焼いて配って、他の人たちにもしっかり美味しいものはおすそ分けしないとね
満足したら、少し散歩にでも行こうか
その前に満腹で動けなくなるかもしれないけど



 わいわいと響く陽気な声。
 焚き火が小気味よく燃える音。
 自然と体を揺らして踊り出す若者達。
 夜の帳が降りるに連れて、熱気は右肩上がりになっていた。
「お祭り、ですか」
 石畳をこつ、と踏んで、立ち寄ったシャルロットはそんな風景に足を止めている。瞳に映すのはゆらめく火に、人々の幸せそうな笑顔だ。
「恵みに感謝し、日々の命に感謝する……良いですよね。私は好きですよ」
「うむ、そうだな」
 相槌を打つユアは、焚き火を眺めながらも段々と視線がずれていく。目を留めたのは近くに点けられた火が調理する、鍋や食材の数々だ。
 敵が片付いて、のんびり過ごせる時間──まずもたげてくる興味と言えば。
「シャル、お腹が空いたし私達も何か食べようか」
「いいですね」
 シャルロットも勿論、こくりと頷く。
 既にいい匂いが漂っていて興味は湧くし、そうでなくても人々は和やかで──ここで過ごすだけでも楽しめそうだ。
 広場はかなりの敷地を取っており、木のテーブルや椅子が置かれる中で村人が談笑し、料理を味わっている。
 籠には食材がいっぱいに積まれていて、調理する人達は忙しくも生き生きしていた。
 このような規模と賑やかさは、シャルロットには初めてだったけれど──せっかくならばと足を踏み出して、お邪魔することにした。
 コートをふわりと揺らして視線を巡らす。
「まずは何から頂きましょうか?」
「一仕事終えた後の食事は格別だからね。何を食べても美味しそうだが──あ」
 ユアは気づいたように、じゅうと焼ける音に振り返っていた。
 シャルロットの裾をくいくい引っ張る。
「シャル、私お肉がいいよ。お肉が」
「なら、見ていきましょう」
 二人で向かうと、若い男性が肉の塊を調理していた。
 立ち昇る煙に、油の飛沫の弾ける音。耳も目も捕らえて離さない光景に、シャルロットは思わず覗き込む。
「わぁ、美味しそうですね──」
「自慢の料理だよ。ぜひ、食べていってください」
 闊達な調子で彼は手を動かし続けていた。
 それは村の草と水で育った牛なのだという。
 大きめに削ぎ落としたという形の肉は、祭りの前から下味の準備はされていたのか、塩と香辛料で揉まれている。
 薫るのは香草。村の近辺で取れるものらしく、セージに似た形と匂いをしていた。
 それらで味付けられた肉を、植物から取った油をひいた鉄板で焼く。
 すると肉の中からもほんのりと油が染み出して、塊が光沢を帯びた。加熱時間は多くなく、中まで火が通り過ぎない段階で皿に載せられ、供された。
「早めに食べると、美味いですよ」
「ありがとう」
 受け取ったユアはいそいそと目をつけておいたテーブルへ向かう。見ているだけでも美味しそうだったので、早めに頂きたかったのだ。
 シャルロットはその途中で別の調理風景に目を留めた。肉に負けず劣らず人気なのか、村人の姿も多くある。
「魚料理と……野菜ですか」
 ふむふむと見つめると、こちらも河の恵みが齎した、白身魚らしい。
 銀の美しい鱗を削いでおろされたそれは、下味を軽めにしてバターでソテーされていった。濃厚な香りと、魚の油も一緒に泡立つ眺めに、人々も魅了されているようだ。
 付け合わせはサラダと煮込み野菜の二種。煮込みの方は鶏出汁でじっくり旨味を加えられた柔らかなもので、生野菜と合わせて彩り豊かだ。
 それを受け取ったシャルロットも、すぐにテーブルについた。
 そして期待感を浮かべるユアと共に、ナイフとフォークを取る。
「では早速頂きましょう」
「ああ」
 頷いたユアはフォークを肉へ。
 刺してから口に運び、噛むまで驚くような柔らかさであった。表面はしっかり焼かれていて香ばしいのだが、中はレアな部分が残っており噛むたびに肉汁が溢れてくる。
 しつこくないのは抜ける香草の薫りが爽やかだからだろう。ぱくぱくぱくと、ユアは食を進めていた。
「これは何とも、美味じゃないか」
「では私も──」
 シャルロットも魚をひとかけ、切って口に運ぶ。するとかりっというほどの歯ごたえがあってから、すぐに身がやわらかく解けた。
 バターと香辛料が旨味を引き立てているので、油まで美味しい。サラダは新鮮で、煮込みは野菜の甘味まで楽しめた。
「……ん、美味しいですね!」
 美しい景色を見ながら料理に舌鼓を打つ時間は、何にも代えがたい。
 暫し堪能して、思いついたように視線を向けた。
「ユアさんも、こっちの料理食べてみます?」
「おや、いいのか?」
「ええ。分け合いっこしましょう」
「ではお言葉に甘えて……」
 ユアも言いつつソテーを一口食べる。すると少し目を見開いて、その美味さを顔に表していた。
 次はシャルロットの番。はむっと噛むと肉の旨味に、シャルロットもまた目を細める。
「お肉も、美味しいですね……やはり、水が良いからなんでしょうか」
「水の良さは環境の良さだ。水が綺麗なら食べ物も美味しくなるんだよ。お肉もだけど、野菜だって瑞々しくなる」
 しゃく、とサラダを貰いながら、ユアはそれを実感する。
 まさに“恵み”といってはばかられない程の味。
「この地域で育った食材を焼いて食べるなんて、贅沢なことだ」
「ええ。無事にこんな時間を迎えることが出来て、良かったです」
 二人は料理を綺麗に完食すると立ち上がる。
「さて、食べてばかりじゃなんだし、少しはお手伝いもしようか」
「……そうですね。せっかく乗り掛かった舟ですし。最後まで気持ちよく祭りができるように、もうちょっとお手伝いしていきましょう!」
 料理しているところは無数にある。沢山の人が種々の料理を作って供しているのだ。
 だから人出がいくらあっても困ることはない。二人はそんな只中に入って助力することにした。
「何か手伝えることはあるかな?」
「じゃあ早速、肉を焼いてください!」
 そういう男性の指示にしたがって、次々に取り出される肉をユアは並べていく。それから、良い所で皿に移して人々へ配っていった。
 シャルロットも皿を手に歩みながら、笑顔だ。
「こうしているとより一層、参加しているという気分になりますね」
「ああ。他の人たちにもしっかり美味しいものをおすそ分けしていこう」
 賑やかな中を暫し手伝って、祭りを盛り上げていく。
 それが一段落つけば──二人は少し夜風に散歩した。
「被害もなかったし、楽しいお祭りになってよかったな」
「ええ。皆さんが笑顔で、何よりでしたね」
 シャルロットはひんやりとした空気に涼みながら頷く。
 誰の命もなくならず、こうして一つ夜を迎えられた。それが一番だろう。
 そして休息があれば、また戦いがある。
 だからこの世界も、そして別の世界も。そう思ってシャルロットは一度だけ、星空を仰いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
お祭りだねー!!
よーし、食べるよー!!
どんな食べ物や料理があるかなー?
お祭りなら色々な食べ物のお店とかありそうだから、片っ端から食べて行って全種類制覇を目指すよ!
それと、水が綺麗なら酒も美味しそうだから、沢山飲みたいね。
食べたり飲んだりしながら、郷の人達にさっきの戦闘の様子とか、他の世界での冒険のこととか話したりして楽しく過ごすよ。



「わあ、お祭りだねー!」
 郷の人々が時間を追うごとに集まり、楽しさも賑やかさも増していく。そんな中に透乃もまたやってきていた。
 その目的は勿論、食べ物だ。
「どんな料理があるのかなー?」
 端から見ていこうと、上機嫌気味に歩み始めていく。
 今宵は宴。供されている料理はどれも自由にとって食べることが出来ると聞いて、透乃も食べる気満々だ。
 なんと言っても目と鼻を惹き付けるのは肉料理であろうか。人気の香草焼きの他にも、たっぷりのミンチを使ったミートローフ風の燻製もある。
 玉ねぎに香辛料を交えた肉を卵でつなぎ、金属で作った型にいれて香木で燻すのだ。切り揃えられて皿に並べられたそれは肉汁も旨味も全部を閉じ込めたように艷やかだ。
「美味しそうだねー」
 勿論それも頂くことにして、まずは肉を山盛りにしてテーブルで食事。むぐむぐ、もぐもぐと食べ進めるほどに独特の芳ばしさと肉の味が相まって美味だった。
 それを食べ終わると、さらに肉のおかわりを調達しつつ魚料理のところへ。
 魚介はソテーに加え、トマトと植物油で煮込んだスープもあったのでそれも貰う。近くに芋を揚げたポテトを見つければ、勿論ゲットした。
「色んな料理があるねー」
 サラダも交えてテーブルに料理を並べ、実食していく。
 ソテーはバターの風味が強く、スープは抑えめな味付けなだけに素材の味が楽しめた。
 ポテトもまた、土地の良さ故だろう。単純に芋の出来が良くて、塩味だけでほくほくと食べ進められた。
 元気な心に、食事が尚エネルギーを与える。
 透乃がもりもり食べる速度には、一切の減速が無いのだった。
「まあ、戦士様、とても素晴らしいたべっぷりで……!」
 と、驚いているのは純朴そうな村の若い女性だ。自分達の料理を食べてくれることを嬉しく思いつつ、鉄の胃袋っぷりに尊敬してもいるようである。
「やはり、魔物を倒せるほどの方々だと、これほどの量でも食べられるものなのでしょうか……」
「ここの料理が美味しいからっていうのもあるよー」
 そんなふうに透乃が返すと、彼女はまた少し嬉しそうだった。
「お酒、飲まれますか?」
「あ、丁度探そうと思ってたんだ。水が綺麗だからお酒も美味しそうだと思って」
「用意してまいりますわ」
 彼女が言って持ってきたのは琥珀色の一杯。
 自然の里でも、というより自然の中だからこそ麦酒が人気でもあるようだ。透乃は早速その一杯をごくごくと飲んでぷは、と息をついた。
「美味しいー!」
 喉越しが滑らかで、どこかフルーティさも有している。
 女性は微笑みながらそれを見ていた。
「それにしても戦士様が戦っている姿、勇壮でした。あれほどの魔物をやっつけてしまうなんて……」
「仲間がいて、みんなで助け合ったからねー。それに食べ物も楽しみだったから」
「こうして形だけでも恩返しが出来て、私達も嬉しいですわ」
 それから透乃は村人と暫し話した。自分のことや彼らのこと、それに他の世界の冒険の数々を。
 村の女性は瞳を煌めかせて聞き入っている。
「いろいろな世界を、旅されているのですね。戦士様と出会えたことは奇跡でしょうか」
「私もこの村に来られてよかったよー」
 透乃は食べながら言う。
 美味しい食べ物に優しい人々、魔物も倒しがいはあった。だから機会があったらまた、という思いも抱きながら──さらに食べ物を口に運んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・ファルチェ
たまにはのんびり過ごすのも悪くないかな。

喧騒から離れて静かに過ごすよ。
暫くは景色を見て歩こう。

日が暮れて夜になればどこかに腰を落ち着けたいかな。

腰を落ち着けたら、頼りきりになっちゃったしコルノをブラッシングしてあげようかな。
もふもふの毛並みをブラッシングするの、好きなんだよね。

いつもいつもありがとうね。
頼りない僕をいつもフォローしてくれて。
コルノが頑張ってくれるから、僕も頑張れるんだよ。
…これからも、宜しくね?

なんて…改めて言うのもなんか照れちゃうな。
これは2人だけの秘密だからね?

…もし誰いたら誤魔化すように笑って綺麗な星空でも眺めてようかな。



 陽光に銀髪を淡く煌めかせて、穏やかな歩幅が道を進む。
 郷が祭りに賑やかさを得る前の事。
 昼下がりから夕刻にかけて、アルバはゆっくりと景色の中を歩んでいた。
「たまには、こうしてのんびりするのも悪くないね」
 その声に同意するように、愛らしくひと鳴きをするのはコルノ。優しい風に柔らかな毛並みをほわりと靡かせつつ、傍らをぱたりぱたりと飛んでいる。
 そんな小竜に微笑みつつ、アルバは歩を進めた。
 さらさらと流れる水音は穏やかで、心を洗ってくれるかのよう。
 花々は色彩豊かで、木々は美しい木漏れ日を零していた。
 この近辺は広場とは離れていて、長閑な風景が続いている。喧騒から距離を置くと時間がゆったりと進むようで──自然の空気もまた美味しく思えた。
 そのうちに金色の夕刻が過ぎ、夜がやってくる。
 暗くなっても、アルバは自然の中にいた。
 広場とは別に花と木に囲まれた庭園があって、そこに腰を落ち着けることにしたのだ。
 昼間は子供達の遊び場になっているらしいその一角も、今はひとけが殆どない。妖精だけが仄かな光で花々を照らす中、アルバは木で造られたベンチに座った。
「コルノ、おいで」
 少し息をついて休憩した後、コルノを膝に乗せる。
 優しく始めるのはブラッシングだ。
 毛玉のようなもふもふの毛並みを、手入れしてあげるのがアルバは好きだ。
 丸めのシルエットに合わせて、曲面を描くように優しくブラシを動かす。小さめの翼は勿論傷つけないように注意して、流れを整えていった。
 コルノは気持ちよさげに喉を鳴らしている。
 それに笑みを返してアルバは声を掛けた。
「いつもいつもありがとうね。頼りない僕をフォローしてくれて」
 手は緩やかに動かしつつ。
 その声音は心からものだ。
 経験してきた色んな戦いを思い浮かべた。
 このちいさなドラゴンは、ずっとそばにいて助けてくれている。
 難しい戦いもあるし、強敵もいた。それでもコルノはいつも一生懸命だったのだ。
「コルノが頑張ってくれるから、僕も頑張れるんだよ。……これからも、宜しくね?」
 小竜は顔を向けて、子犬がじゃれるように鳴く。
 アルバは少しだけ気恥ずかしくなって、その毛並みをぎゅむっと抱きしめた。
「……改めて言うのもなんか照れちゃうな。これは二人だけの秘密だからね?」
 きゅうと声を返しつつ、コルノもアルバに擦り寄る。
 涼しい風にそれがもっふりと暖かく感じられた。
 アルバはコルノと共に星空を仰ぐ。
 平和な空だ。
 一緒に戦い、一緒に守れたものがあった。だからこれからもきっと──。
 その思いに応えるように、星空は美しく瞬いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神宮時・蒼
【WIZ】
…安堵。…無事に、解決、出来て、良かった、です。
人と関わるのが苦手(怖い)なので、夜の水郷の景色を眺めます。
何の手も加わっていない景色は、やはり綺麗、ですね。
祭りの喧騒に耳を澄ませ、ぼんやりと空を見上げます。

(…この光に、融けてしまえればいいのに。
そうすれば、もう、何も…。)
そっと目を閉じて、転寝するのもいいかもしれません。
幸い、熱さ寒さには鈍いこの身ですし。



 水郷はどこまでも自然と融和していて、外の景色と境目がない。
 夜になるとそれは顕著で、星々に照らされて藍に色づいた草原が、遥かな地平線から村の内部にまで途切れなく続いていた。
 水路の流れも河から自然な形で伸びていて、水の速度が緩やかだ。
 そんな水路に沿うように、蒼は静かに歩んでいる。
「…安堵。…無事に、解決、出来て、良かった、です」
 郷は平和な空気に満ちていて、巡るほどにそれが感じられることは良かった。
 ただ、蒼は積極的に賑わいに参加はしていない。
 人と関わることが苦手なのは今も変わらない。人の業に翻弄されてきたヤドリガミは、その存在と話すことにも触れることにも、怖いという感情があった。
 だから今も一人で歩んでいる。
 眺める景色は、美しかった。
 そこは人が創り出した村というよりも、自然の中に住処を見つけた人々の郷。今も少し視線を巡らすだけで、原色の木々や草花が見える。
「…何の手も加わっていない景色は、やはり綺麗、ですね」
 だからそれを暫し眺めた。
 希薄な感情の中で、それでも無垢な自然には目を惹かれるものがあったのだ。
 遅く歩んでいくと、遠くで祭りを楽しむ人々の声が聞こえる。
 その喧騒に耳を澄ませながら、蒼はぼんやりと空を見上げた。
 天には無数の星々が広がっている。
 時折漂う妖精も薄っすらと耀きを零す、光の響宴。
 琥珀の瞳に宇宙を宿すみたいに、蒼はそれを見つめた。
(「…この光に、融けてしまえればいいのに。そうすれば、もう、何も…」)
 強い願いも、叶うわけではない。
 だから蒼はそっと目を閉じて、転寝する。せめて宵の底に沈んで、静けさに紛れるように。
 幸い熱さ寒さには鈍い身だ。だからほんの少し、微睡むことくらいは出来るだろう。
 星空が闇になる。風の感覚だけを肌に触れさせながら、蒼は意識を昏い場所へと落としていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロー・オーヴェル
【夜】

郷の様子が見える場所かつ
人気のない場所で一服して時を過ごす

やるべきことをやり
そして好きなものを口にし
ご相伴はこの夜景とくれば何物にも替えがたい至福の一時だ

命のやり取りをしていた『現実』と
このような『幻想』への時間を
俺はこれから何度繰り返すのだろう?

猟兵である限りその繰り返しから逃れられはしない
こちらが望んだわけではなく
勝手に選ばれて強引に押し付けられたようなものだが…

「こんな適当な男まで選ぶくらいだ。さぞお困りだったんだな、『世界』とやらは」

そんな困ってる奴の為に何かをする人生も…
「こういう光景と、そこに住む連中を守れるのなら……ま、なんとかなるだろ」

あァ……まったくもって
いい『報酬』だ



 郷には高台もある。
 大きな河の流れとは別に、そこへ繋がる湧き水を流す岩場だ。
 なだらかな傾斜を中心にしながら、ところにより小さな断崖となっているそこは、郷の景観に荘厳な色合いも加えて美しかった。
「へえ、よく見える」
 ローはその天頂に上って郷の姿を眺めていた。
 一望できるという表現がぴったりな風景で、戦いがあった草原や河を見ることができながらも、村の各所の様子をうかがい知ることも可能な場所。
 時間帯によっては、やんちゃな子供のアスレチックとなっているかも知れない。
 けれどそこは今ひとけがなくて、遮るものもない。一服するにはちょうどいい環境だった。
 ローは革の小袋から煙草を取り出し火をつける。
 そうして紫煙をくゆらせて一息ついた。
「いいもんだな」
 やるべきことをやり。好きなものを口にして。
「ご相伴はこの夜景とくれば──何物にも替えがたい至福の一時ってやつだ」
 村の中心には祭りの焚き火が見える。そこ以外に灯りは少ないが、その分妖精達がふわふわと舞って暗がりを照らしているのがよく分かった。
 地平線から更に視線を上げれば満天の星空。お世辞を抜きにしても、端的に美しいと評していい眺めだろう。
 ふう、と真上を仰いで天を見つめる。
(「命のやり取りをしていた『現実』と、このような『幻想』への時間を──俺はこれから何度繰り返すのだろう?」)
 猟兵である限りその繰り返しから逃れられはしないのだろう。
 その運命はこちらが望んだわけではなく、勝手に選ばれて強引に押し付けられたようなものでもあるのだが。
「こんな適当な男まで選ぶくらいだ。さぞお困りだったんだな、『世界』とやらは」
 煙交じりの吐息をしながら、それは悲観ばかりではなかった。
 何故ならば、そんな困っている者の為に何かをする人生も──。
「こういう光景と、そこに住む連中を守れるのなら……ま、なんとかなるだろ」
 そんな思いが心にはあるから。
 ──あァ……まったくもって、いい『報酬』だ。
 風に煙草の香りが流れて消えていく。
 それは次の仕事までの、今暫くの憩い。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月31日


挿絵イラスト