それは涙で始まった(作者 土師三良
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#カクリヨファンタズム  #一人称リレー形式  #にゃんこ 


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#カクリヨファンタズム
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#にゃんこ


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●カクリヨファンタズムにて
 湖のほとりで人魚が泣いていた。
 息絶えた老猫を抱きしめて。
 老猫の体には生前の温もりがかろうじて残っていたが、そんなことは人魚にとってはなんの慰めにもならなかった。
 苦しむことなく、眠るようにして逝ったことも。
 目を閉じる前に優しい眼差しを向けてくれたことも。
「愚かよのう。哀れよのう」
 人魚の背後で声がした。
 声の主は、湖面の上でゆらゆらと揺らめく影。
「ヒトの真似をして畜生を可愛がり始めた時から判っていたであろうが。いずれ、死別に涙することになる、と……」
 影はゆっくりと人魚に近づいていく。
「その悲しみ、わらわが癒してやろう。否、忘れさせてやろう。忘れてしまえば、楽になる。もう二度と泣かずに済む」
「いやよ……忘れたくない」
 と、影のほうを振り返りもせずに人魚は呟いた。
 それが彼女にできた精一杯の抵抗。
 次の瞬間には、老猫の骸もろとも飲み込まれていた。
 影に。
 骸魂に。

 カクリヨファンタズム某所の空き家。
 近隣の妖怪たちはそこを猫屋敷と呼んでいた。
 何十匹もの猫が居着いているからだ。
 猫が集まる場所には自然と愛猫家も集まる。
 この猫屋敷にも猫好きの妖怪たちが毎日のように訪れていた。
 しかし……。
「あれれー?」
 と、猫屋敷の庭で声を発したのは一つ目小僧。ただでさえ丸い目を更に丸くして、四方を見回している。
「今日はやけに静かだね」
「うむ」
 西洋妖怪の狼男が頷いた。その手にあるのは、開栓したばかりの猫缶。いつもならば、蓋を開ける音がするやいなや(『ぷしゅっ!』の『ぷ』のあたりで)猫たちが飛んでくるのだが、今日は一匹も姿を現さない。
「みんな、どこに行っちゃったのかにゃ?」
 猫じゃらしを持ったネコマタの少女が首をかしげた。
 そして、その姿勢のまま、凍り付いた。
「……え?」
 突然、恐怖と混乱と喪失感に襲われたのだ。
 心にいくつもの穴が穿たれたかのような感覚。
 それらの穴から次々と疑問が湧き出してきた。
(「このナントカ屋敷に来た理由はなんだったかにゃ? なにかに会いに来たような気がするんだけど……ん? あたし、いつの間にかヘンな棒を持ってるにゃ。これ、なんにゃの? てゆーか、なんで言葉の端々に『にゃ』だの『にゃん』だのが入るかなー。わけ判んないし……あれ? そもそも、あたしはなんの妖怪だったっけ?」)
 ネコマタだけではなく、一つ目小僧や狼男や他の妖怪たちも同じような恐怖と混乱と喪失感に襲われていた。
 皆、忘れてしまったのだ。
 要領がいいくせに不器用で、大胆不敵なのに臆病で、孤高を気取りながらも甘えん坊で、目にも止まらぬ速さで高所に登ったかと思うと、自力で降りられなくなって情けない声で助けを求めたりする、あの愛すべき生き物たちのことを。

●グリモアベースにて
「カクリヨファンタズムの駄菓子ってさ。初めて食べたものでも、なんか懐かしい感じがするんだよな。ふっしぎー」
 伊達姿のケットシーが猟兵たちの前で梅ジャムせんべいをかじっていた。
 グリモア猟兵のJJことジャスパー・ジャンブルジョルトである。
 JJはせんべいを食べ終えると、両手を叩いて食べかすを払い、本題に入った。
「さて、カクリヨファンタズムでカタストロフもかくやという大異変が起きた。なんと、『猫』という概念が消えちまったんだ。どうやら、飼い猫と死別した人魚に骸魂が取り憑き、強力なオブリビオンと化した挙句、そんな悪さをしでかしたらしい。いや、当人は悪さのつもりはないのかもしれないけど……」
 猫がさして好きでない者からすれば、この一件を『カタストロフもかくや』などと評するのは大袈裟であろう(逆に猫好きからすれば、カタストロフどころの騒ぎではないだろうが)。しかし、猫が好きか否かにかかわらず、放っておくわけにはいかない。猫の消失によって世界のバランスが崩れたためか、無数の骸魂が出現し、妖怪たちを次々と飲み込み始めたからだ。
「カクリヨファンタズムの一角に『猫屋敷』と呼ばれてる空き家があってな。俺の予知によると、そこの裏手の湖に問題の骸魂がいるらしい。そいつを倒して、取り込まれていた人魚を解放することができれば、世界は元通りになるはずだ。もっとも、ザコ系の骸魂が周辺にうようよいるから、そいつらを先に排除しなくちゃいけないだろうけどよ」
 JJが言うところの『ザコ系の骸魂』に取り込まれているのは、猫屋敷で猫たちと遊ぶのを日課としていた平和的な妖怪たちだ。ボス格の骸魂の場合と同様、骸魂を倒せば、彼らや彼女らは解放されるだろう。
「注意点が一つ。もう察しのいい奴は判ってるだろうけど……今回の任務地は猫が消えた世界なわけだから、おまえさんたちも猫という概念を忘れちまうんだ。俺みたいなケットシーとか、猫型の賢い動物や愉快な仲間とか、猫の要素のあるキマイラの場合、『猫に似ている』という自覚はなくなるし、他の連中から『猫に似ている』と思われることもないだろう。たぶん、丸っこい変種の犬か未知の動物だと認識されるんじゃないかなー」
『猫』の概念を忘れたところで、任務に大きな支障はない……が、猫好きな猟兵は辛くて切なくてもどかしい思いをするかもしれない。
 深く愛するなにかが世界から消えてしまったことが判っているにもかかわらず、その『なにか』のことを思い出せないのだから。
「話は以上だ。後は頼んだぜ。カクリヨファンタズムで猫の鳴き声がまた聞けるようになるかどうかは――」
 新たなせんべいを取り出し、梅ジャムを塗りたくりながら、JJは転送の準備を始めた。
「――おまえさんたちにかかってるんだ」


土師三良
 土師三良(はじ・さぶろう)です。
 本件は、『猫』という概念が消えたカクリヨファンタズムで骸魂たちと戦うシナリオです。

 第1章は集団戦。猫屋敷の庭や屋内で骸魂の群れ(飲み込まれているのは猫好きの妖怪たち)と戦ってください。

 第2章はボス戦。戦場となるのは屋敷の裏手の湖。敵は人魚を飲み込んだ骸魂であり、言葉や思い出や自己を忘れさせるユーベルコードを使います。

 第3章は日常編。この世界に戻ってきた猫たちと遊ぶことができます。プレイングで言及されれば、JJも顔を出すかもしれませんが、あんなのは放っておいて猫たちだけを相手にすることをお勧めします。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。

 ※章の冒頭にあるPOW/SPD/WIZのプレイングはあくまでも一例です。それ以外の行動が禁止というわけではありません、念のため。

 ※基本的に一度のプレイングにつき一種のユーベルコードしか描写しません。あくまでも『基本的に』であり、例外はありますが。
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第1章 集団戦 『鴉威し』

POW ●烏合
全身を【ぼんやりした銀色の光】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【負傷】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
SPD ●三様
戦闘力が増加する【大弓を持つ狩人】、飛翔力が増加する【風車を大量に背負った姿】、驚かせ力が増加する【巨大な目玉】のいずれかに変身する。
WIZ ●追捕
攻撃が命中した対象に【黒い泥のようなマーキング】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【自動追尾するエネルギー弾】による追加攻撃を与え続ける。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 年季の入った平屋建ての廃屋。
 その縁側に面した広い庭に猟兵たちは転送された。
 赤い光点のごとき目を有したおぼろな影が周囲を飛び交っている。近隣の妖怪たちを飲み込んだ骸魂だろう。
 しかし、猟兵たちの意識は骸魂よりも他のものに向けられていた。
 庭に散乱している謎のアイテム群だ。
 鈴を内包した駕籠のボール、エノコログサ(俗称があったはずだが、思い出せない)のような形状の棒、側面のラベルに動物らしきもの(その部分だけが消失して、輪郭しか判別できない)の写真がある缶詰……いったい、これらはなんだろう?
 縁側の柱にある爪痕らしきものも気になる。
 それに無惨に破れた障子や襖も。
 風雨に晒されたせいで破れたわけでないことは一目で判った。
 何者かが破ったのだ。
 そう、たまらなく愛おしい何者かが……。


========================================
●JJからのお知らせ

 グリモアベースで述べたとおり、おまえさんたちは『猫』の概念を忘れちまってる(『猫』に対する好悪の感情までは消えてないけどな)。ケットシーのような猫系の種族だけじゃなくて、猫のペットや使い魔やぬいぐるみなんかも猫以外の動物として認識されるぞ。アイテムとかに描いてある猫のイラストも同様だ。
 あと、『猫』という字を含んだ単語や慣用句や諺も変わってるかも。たとえば、『猫をかぶる』は『豆柴をかぶる』、『猫目石』は『針目石』、『猫の額』は『鼠の足の裏』、『猫に小判』は『デッドマンにAED』とかー。
========================================
セツ・イサリビ
※相棒の猫は連れてきていません

…グリモアベースで話を聞いた時、言葉にならない危機感を覚えた
神生(じんせい)の約八割程度を喪失する恐怖
心預けたものを喪う痛みを、俺は知っている

(以下モノローグ)
あれと出会ったのはどこの世界だったか
光と闇を、天と地を分け
ひと仕事終えて数百年の短い有給休暇を取れた時だ
世界は若い生命であふれていた
そこにあれがいたのだ
生命は担当外で目にするのは初めてだった
同僚を心から賛美したよ

俺の生は常にあれと共にあるのに
思い出せない
「……つらい」
(モノローグここまで)

※以上、ユーベルコードの竜巻の中心で膝を抱えています
※アイデンティティの崩壊の危機は思いの外ダメージ深かったようです


雨音・玲
【ファブル】
ヘザーは、ヒトとウサギのキマイラだろ?
んん???
可笑しな所、一つもないじゃん?

ヘザーの様子に首を傾げながら
屋敷の周りを漂う敵に視線を移し

なんかスッキリしないけど…とりあえずは
こいつ等を倒せば問題無いよな?
ササっと片付けようぜ

UC「陽炎」を開放、対象技能をLv820へ変更
『縮地』で空を駆けるように一気に距離を詰め
「瞬きしてたら見逃すぜ!!しっかり抵抗してくれよな!!」
『早業』と『属性攻撃』の組み合わせで業火を宿した炎の拳でぶん殴り
『手を繋ぐ』の応用で、上手くお互いの位置を入れ替えながら
ダンスを踊るように敵の攻撃を『緊急回避』で避けていきます


ヘザー・デストリュクシオン
【ファブル】

わたしも猫だからほっとけないの!
敵壊して猫助けるの!

…あれ?わたしなんでこの依頼受けたんだっけ?
それに…わたし、兎と…なんのキマイラだっけ?
自分のことなのに思い出せないの…自分が自分じゃなくなるみたいで、きもちわるいの…。
あ、うん、だいじょぶよ玲くん!
敵壊せばよーかいの人たちは助けられるんでしょ?へいきなの!

リボンを解いて速さを上げて素早くダッシュで敵に近づいて爪で攻撃!
…?なんで爪伸びるんだろう?
ううん、今は壊しあうの!
敵の攻撃はジャンプやダッシュ、スライディングで避けるの。
敵がとんだらカベとかを蹴ってジャンプで高く跳び上がって攻撃。
わ、びっくりしたの!…攻撃!


●ヘザー・デストリュクシオン(白猫兎の破壊者・f16748)
 雨漏りとすきま風がひどそうな古い家の庭で、薄黒い影みたいな骸魂が飛び回ってるの。
 赤い目をらんらんと光らせたり、両手(に見えるんだけど、うねうねと揺らめいて形が変わり続けているからよく判らないの)を大きく広げたりして、わたしたちをイカクしてるみたい。
 でも、怯んじゃいられないの! この影たちも親玉の骸魂もみーんな壊して、絶対に■■を助けるの! わたしも■■のキマイラだから、放ってはおけな……あれ?
 ■■って、なんだっけ?
 んー。ちょっと待って。頭がコンランしてきたの。■■のことがよく思い出せないの。てゆーか、自分のことも思い出せないの。自分が自分じゃなくなるみたいでキモチわるい。
「わたし……ウサギとなんのキマイラだっけ?」
 と、思わず呟いたら、黒いジャージを着たお兄さん――玲くんが不思議そうにこっちを見た。
「なに言ってんだ? ヘザーはウサギ要素オンリーのキマイラだろ?」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
 うん、そうだよね。そんな気がしてきた。わたしの持ってる動物的トクチョーはどれもウサギ系だもの。この長い耳も、まん丸い尻尾も、鋭い爪も、縦長の瞳も……ん? なんだか、まだしっくり来ないな。
 でも、悩んだり迷ったりしている暇はなさそう。イカクの効果がないことを悟ったのか、影たちが攻撃体勢に移った感じがするの。
「そうはいかないの!」
 先手必勝。こっちに襲いかかろうとしている影のうちの一体にわたしは狙いをつけた。
 でも、攻撃しようとした途端、その影は――
「クエッ!?」
 ――鳥みたいな声をあげて吹き飛ばされちゃったの。
 庭に転がっていたプラスチック製の駕籠状の小さいボールが弾けて、突風が巻き起こったからよ。
 もちろん、それは自然現象なんかじゃないの。ヒーローズアース由来のユーベルコード『クライシスゾーン』の力で、ボールの中に入ってた鈴(なんで、そんな物が入ってたんだろう?)が竜巻に変わったの。
 鈴だけじゃなくて、そこらじゅうの石だのなんだのが竜巻に変わり、次々と影たちにぶつかっていく。
 それらの竜巻の中心にいるのはセツくん。一見、眼鏡をかけた普通の男の人だけど、実は神サマなんだって。
 そういえば、グリモアベースでJJくんの話を聞いていた時、セツくんは動物を連れていたような気がするの。
 小さくて、黒くて、とても可愛い動物を……。

●雨音・玲(路地裏のカラス・f16697)
 どうやら、『クライシスゾーン』を使ったのはセツらしい。
 神だけあって、いくつもの竜巻で構成された円陣の中央で仁王立ちしている姿は実に威風堂々と……してない。
 そもそも、仁王立ちどころか、立ってさえいない。膝を抱えて座り込んでやがるんだ。部屋の隅でいじけてる子供みたいにな。
「確か、アレと出会ったのは……それらのなかにアレがいたのだ……アレのようなものを目にするのは初めてだった……俺の生は常にアレとともにあったのに……つらい」
 ぶつぶつと呟く声が聞こえてくる。言ってることの真偽のほどは不明(というか、途切れ途切れでよく判らない)だけども、ひどく落ち込んでることだけは間違いないようだ。
 それでも攻撃の手は休めてない。しっかりと竜巻を操り、群がる骸魂どもにダメージを与えてんだから、たいしたもんだ。
 ダメージだけに留まらず、消滅しちまった骸魂もいるぜ。とはいえ、消滅したのはガワだけ。飲み込まれていた妖怪たちは無事だ。消滅する寸前に吐き出されているから。
「やっぱり、敵を壊したら、ヨーカイの人たちは助けられるのね。これなら、後味の悪い思いを――」
 死に際の骸魂から妖怪が吐き出されていく様(どの妖怪も失神している)を確認して、ヘザーが胸元の大きなリボンを解いた。
 そして、そのリボンだけを残して、そこから消えた。
 いや、本当に消えたわけじゃない。猛スピードで走り出したんだ。
 一体の骸魂に向かって。
「――しなくて済むのー!」
 ヘザーは腕を振り下ろした。武器は持っていない。そんなものは必要ないんだ。あいつの手には伸縮自在の爪が備わっているから。
 うんと伸びた爪の斬撃を受けて、骸魂は真っ二つに裂け(その拍子に妖怪が吐き出された)、断末魔の声をあげる間もなく消滅した。
 同時にリボンが地面に落ちた。
 一方、リボンの主のほうは立ち止まらずに――
「次なの!」
 ――別の骸魂を爪で引き裂いている。
 それにしても、強力かつ凶悪な爪だぜ。さすが、ウサギ型のキマイラ……って、待てよ、おい。よく考えたら、ウサギはあんな爪を持ってないぞ。
 ヘザー自身もなにやら違和感を覚えたらしく、動きを止めて、自分の爪を眺め始めた。
「うーん? なんで、爪がこんなに伸びるんだろう?」
「考えるのは後にしようぜ」
 と、俺を気を取り直し、ヘザーに声をかけた。
「とりあえずはこいらをかたづけよう。ササッとな」
「うん! ササッとね!」
 ヘザーは大きく頷くと、新たな獲物に襲いかかった。
 さあて、俺も暴れるとするか。

●セツ・イサリビ(Chat noir・f16632)
 今回の任務についての話をグリモアベースで聞いた時、俺は恐怖を覚えた。
 人生ならぬ神生の八割程度を喪失する恐怖(言っておくが、八割というのは控えめに見積もった値だ。九割五分あたりに達していたとしても驚かない)。
 それは未知なる恐怖じゃない。
 俺は知っている。
 よく知っている。
 心預けたものを失う痛みを……。
 だから、相棒たるアレはグリモアベースに置いてきた。それは正解だったのだろう。
 しかし……アレの姿も名前も思い出せない。

 確か、アレと出会ったのは……光と闇を、天と地を分け、一仕事終えて数百年の短い有給休暇を取った時だったと思う。
 その世界は若い生命で溢れていた。
 そして、それらのなかにアレがいたのだ。
 俺は神だが、生命に関しては担当外なので、アレのようなものを目にするのは初めてだった。生命担当の同僚の仕事を心から賛美したよ。
 以来、俺の生は常にアレとともにあったのに……ダメだ。やはり、姿も名前も思い出せない。
 つらい。

 しかし、つらいからといって、なにもしないわけにはいかない。
 実体なき影のような(それこそ、周囲を飛び交っている骸魂のような)アレの姿を必死に思い出そうとしながら、思い描こうとしながら、俺は竜巻で骸魂たちを攻め続けた。
 他の猟兵たちも戦っている。
 とくに目につくのはヘザーだ。走り回り、滑り込み、飛び跳ねて、敵を爪で切り裂いている。アレもかくやという華麗で素早い動き。
 だが、アレとは色が違うような気がする。ヘザーの髪は白いが、アレは……そう、黒だ。
 それを踏まえた上で改めて戦場を眺めてみると、白髪のヘザーよりも黒髪の玲のほうがアレに近いように思えてくるな。
「瞬きしてたら見逃すぜ! しっかり抵抗してくれよな!」
 ヘザーに勝るとも劣らぬスピードで玲は骸魂の懐に飛び込み、燃える拳をぶつけた。『燃える』というのは比喩じゃない。属性魔法の類でも使ったのか、本当に炎を纏っているんだ。
 熱を帯びた殴打によって、骸魂の体が大きくひしゃげた。だが、まだ死んではいない。手(に相当するであろう部位)を振り上げ、反撃の動きを見せている。『しっかり抵抗してくれ』というリクエストに応じたつもりなのかもしれない。
 しかし、リクエストした当人である玲は骸魂の手(に相当するであろう部位)を掴み、ダンスでもするかのようにくるりと互いの位置を入れ替え、攻撃を躱した。
 そして、炎の拳をまた叩き込んだ。
 見事な戦い振りだな。
 喝采の一つでも送るべきなのかもしれないが、とてもそんな気分にはなれない。
 アレのことが胸から離れないから。
 それでいて、アレのことが思い出せないから。
 ああ、つらい。
 つらい。
 つらい……。
 
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

ペイル・ビビッド
(出発前に書いたメモを見て)
むー…
この絵に描いたものを取り戻せって言われても…
なんですか?このどーぶつ…のようなもの
あたしのこのベレー帽にも関係あるらしいけど
この三角の飾りもなにー?

まあとにかく向かったにはお玉も杓子もやらねばならないっ!

ダッシュと逃げ足で相手の懐をかすめつつ平筆でなぎ払い
敵の攻撃はオーラ防御や呪詛体制・武器受けで対応
相手の動きもなかなかに素早そうだから
スパッタリングスターは二回攻撃で
広範囲に一斉発射を狙うよ
ひらめけあたしの第六感…そこかっ!
数が減ってきたら串刺しでとどめを

こんなにたくさんの敵を相手するなら
肉球もってるどーぶつの手も借りたい…


木霊・ウタ
心情
…そうJJの任務だ
幽世で何か概念が消えたってハナシ
それを忘れちまうともいってた
これか
確かにもどかしいけど…
ボスを倒せば元に戻る
任務に集中だ

骸魂も哀れだよな
必死でこの世界を目指して辿り着けなかった
さぞ無念だろうぜ

骸魂を海へ還し
呑込まれた妖怪たちを解放するぜ

戦闘
獄炎纏う焔摩天で纏めて薙ぎ払う
炎の輝きで影を消し飛ばす勢いで

防御は火壁を展開し武器受け
仲間も庇う

銀光を紅蓮の輝きが霞ませ
獄炎が侵食し焼き尽くす

例え攻撃回数が増えても
その度に
返り血や火壁の獄炎を喰らわせてやる

事後
骸魂へ鎮魂曲を奏でる
海で安らかにな

取り込まれた妖怪たち>
混乱してると思うけど
これから忘れ物を取り戻すから
ちょいと待っててくれよな


レンディア・バルフォニー
転送先ではクロ(旅団で留守番している猫じゃらし好きの黒猫)の事も忘れてしまうんだろうね
それは……悲しいし寂しいな


謎のアイテム群を見て
これらを見ると、どこか温かい気持ちになると同時に切なくなるのは何故だろう(何か大切なものを失ったような……)
特にエノコログサに似た棒が気になる
よく見覚えがある……? でも、何にどう使うんだ?
うーん、と首を傾げ

さて、骸魂を倒して妖怪たちを解放しないと
雷のMagic Rosesで複数の敵を巻き込み、痺れさせて動きを鈍らせる(属性・範囲・マヒ攻撃)
敵が複数いると死角からの攻撃が怖いね
危険があれば周囲に声掛けするよ
追捕でマーキングされないように回避を心掛けようか(見切り)


●レンディア・バルフォニー(朱龍・f27097)
 影のような骸魂たちが宙を舞い、攻撃を繰り出してくる。
 俺は庭を走り回り、それらをなんとか躱しつつ、反撃のチャンスを窺っていた……と、傍目には見えるかもしれない。
 本当は反撃どころじゃないんだよね。
 視線と意識がついつい地面へと向いてしまうから。
 辺りに転がっている謎のアイテム群が気になってしょうがないんだよ。紐がついた小さなネズミのぬいぐるみとか、なにかで引っかいたような跡があるダンボール板とか、『ナントカちゅーる』と記された細長いパウチとか……。
 いちばん気になるのはエノコログサに似た棒だ。見覚えがあるような気がするんだけど……うーん、思い出せない。
 ただ、この棒だけではなにかが足りないように思えるんだな。あるものと組み合わせた時、これはただの棒じゃなくなって、すごい効果を発揮するんじゃなかろうか? 梅に鴬、鬼に金棒、エノコログサモドキとなにか! その『なにか』のことも思い出せないんだけどね。
 そして、思い出せないという事実がすごく寂しく、悲しい。心にぽっかりと穴があいたようだ。きっと、あっちで落ち込んでいるセツくんも同じ気分なんだろうな。
「ボーッとしてんなよ、レンディア!」
 額に傷のある少年が声をかけてきた。
 彼は木霊くん。俺と同じく猟兵だ。いや、額に傷もつ少年と脛に傷もつ中年を『同じく』と括るのは無理があるかな。
「そうそう! ボーッとしてちゃダメー!」
 元気いっぱいに叫びながら、心身ともに傷がなさそうな女の子が駆けていく。彼女はビビッドちゃん。ドワーフのお子ちゃまなので体はちっちゃいけれど、得物は大きい。なんと一メートルほどもある平筆だ(ちなみにビビットちゃんの背丈もそれくらい)。
 でも、筆よりも目につくのは、頭に乗っかってるベレー帽だな。奇妙な三角形の突起がついているんだ。しかも、二つ。
 その突起に興味を引かれたからかどうかは判らないけど、何体かの骸魂がビビッドちゃんを取り囲んだ。
「もー! どうして、お玉も杓子もあたしのところに寄ってくるのー!」
 ……お玉?
「でも、そうやって沢山で追いつめるのは逆効果だよ! キュウソ、にゃあにゃあ鳴く動物を噛むってね!」
 ……にゃあにゃあ鳴く動物?
「いっくよぉーっ!」
 ビビッドちゃんは走るスピードを上げ、ジグザグの軌跡を描きながら、骸魂たちの間をすり抜けた。
 もちろん、なにもせずにすり抜けたわけじゃない。
 あの大きな平筆で骸魂たちを薙ぎ倒しているよ。

●ペイル・ビビッド(淡色弾ける筆先の軌跡・f01836)
 走りながら、骸魂を筆でバシーンと叩きのめす。
 止まらずに別の骸魂をバシーン!
 また、バシーン! バシーン! バシーン!
「それにしても、数が多いなー。肉球もってる動物の手も借りたい忙しさ!」
 でも、肉球さえあればなんでもいいってわけじゃないよ。さっきも言った『にゃあにゃあ鳴く動物』限定なの。それがどんな動物なのかは自分でもよく判らないけど。
「肉球はないが――」
 あたしの嘆きを聞いて、ウタくんが飛び込んできた。
「――手を貸すぜ!」
 炎を纏った鉄塊剣を一振り。三体くらいの骸魂がまとめて吹き飛ばされた。すごーい。
「ムォーッ!」
 と、怒鳴り声(だと思う、たぶん)をあげて、新たな骸魂がウタくんに向かってきた。他の骸魂たちと違って、その体はうすぼんやりとした銀色の光に包まれている。なにかのユーベルコードを使ったのかな?
 でも、その銀色の光はすぐに塗りつぶされちゃった。
 燃えさかる炎の色に。
 それは地獄の炎。ブレイズキャリバーのウタくんが自分の腕を切り裂いて、そこからドバーって噴出させたの。
「ムォーッ!」
 と、悲鳴を残して(字にするとさっきの怒鳴り声と同じだけど、イントネーションが違うんだよ)骸魂は焼け死んだ。悲鳴だけじゃなくて、中に飲み込んでた妖怪さんも残してくれたけどね。
 体を銀色に光らせて襲いかかってくる骸魂は他にもいたけど――
「そんなもんじゃあ、この壁は破れねえぞ!」
 ――ウタくんは炎で壁を作って、敵の攻撃を防いだ。
「今のうちにやっちまえ、ペイル!」
「うん!」
 あたしは筆を構え直し、体をゆっくりと半回転させた。
「ひらめけ、あたしの第六感……そこか!」
 そして、逆方向に半回転。今度はゆっくりじゃないよ。
 筆の先についてた塗料が四方八方に飛び散り、光の球に変わって、骸魂を次々と撃ち抜いた。全弾、命中! 第六感に狂いなーし!
「いやはや、随分とカラフルな戦場だねえ」
 とっても綺麗な銀色の剣を手にして、セイレーンのレンディアさんも戦いに加わってきた。軽口を叩いてるけれど、薄いサングラスの奥にある目はどこか悲しそうに見える。こういうのを『うれいをおびてる』とか言うんだっけ? たぶん、セツさんと同じように 自分が残してきたもの――忘れてしまったもののことが気になってるんだろうね。
 じゃあ、思い出すためのお手伝いをしてあげようかな。
 こんなこともあろうかと、前もって重要な絵を描いておいたんだよ。

●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
「このカラフルな戦場に――」
 後方から突進してきた骸魂の攻撃をレンディアはサイドステップで躱し、剣を水平に走らせた。
「――もう一色、加えてみようか」
 その動きを終えた時、レンディアの手には剣の柄(鍔のところに有色透明の宝石が嵌め込まれてる)しか残っていなかった。刀身の部分は薙ぎ払われると同時にボロボロと崩れ去ったんだ。いや、無数の花片に変わったんだ。黄色い薔薇の花片。
 その桜吹雪ならぬ薔薇吹雪を浴びると、骸魂たちの動きが鈍った。よく見ると、影みたいな体が小刻みに震えている。薔薇吹雪は、電撃かなにかで痺れさせる効果をもっていたらしい。
「もう一色プラス!」
 ペイルがさっきのユーベルコードをまた使った。飛ばしてる絵の具の色は違うけどな。
 すかさず、俺も追撃した。さすがに炎の色は変えられないが。
 レンディアの薔薇吹雪に痺れさせれ、ペイルの絵の具の礫に撃ち抜かれ、俺の炎に焼かれ、他の猟兵たちの攻撃も受けて、骸魂たちは一匹また一匹と消えてゆく。
 考えてみれば、こいつらも哀れだよな。この世界を必死に目指していたのに辿り着けず、骸魂なんかになっちまって……さぞ無念だろうぜ。

 俺は庭の中央に立ち、愛用のギター『ワイルドウィンド』を爪弾いた。
 影のような骸魂への鎮魂歌だ。
 そう、骸魂は全滅した(まだ見ぬ親玉は健在だろうけど)。
 飲み込まれていた妖怪たちは無事だ。失神してるけどな。今は隅のほうで寝かされている。
「ねーねー、これ見て」
 鎮魂歌の演奏を終えた時、ペイルがポケットから紙を取り出し、レンディアに見せた。
「出発する前に描いといたんだ。あたしたちが取り戻さなくちゃいけないもの絵をね」
「ほうほう」
 と、絵を眺めるレンディア。
 俺もそれを横から覗いてみた。
「むー」
 自分の絵を見つめながら、ペイルが唸った。絵の出来映えに不満があるわけじゃなくて、描かれているものに困惑しているらしい。
「なんなんだろうね? この動物のようなもの……」
「『ようなもの』じゃなくて、本物の動物だろう」
 そうは言ったものの、俺もちょっと困惑している。その動物は可愛い姿をしていたが、どうにも現実味がなかったから。アックス&ウィザーズの小型モンスターかUDCアースの新手のUDCみたいな印象を受ける。今回の事件が起きる前は、こんなものが普通に存在していたのか……。
「もしかして、あたしのベレー帽はこの動物のここんところをまねっこしたものなのかな?」
 描かれている動物の耳らしき部分をペイルが指さした。
「ベレー帽の三角の飾りがずっと気になってたんだよね」
「うん。俺も気になってた」
 と、頷いたのはレンディア。
「この生き物のことはまだよく思い出せないけど……俺はこれと一緒に暮らしていたような気がする。たぶん、色は黒。性別は女の子。そして、おもちゃで遊ぶのが好きだったんじゃないかな?」
 レンィデアは絵から目を離し、地面を見た。エノコログサみたいな棒が転がってる地面を。
 その時、隅のほうから呻き声と欠伸を合わせたような声が聞こえてきた。失神していた妖怪たちが目を覚ましたんだ。何人かはもう上半身を起こし、きょとんとした顔で周囲を見回している。
「まだ混乱してると思うけど――」
 と、俺は妖怪たちに語りかけた。
「――ちょいと待っててくれよな。これから、おまえらの忘れ物を取り戻すから」
 いや、俺らの忘れ物でもある。
 絶対に取り戻してやるぜ。
 
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴


第2章 ボス戦 『水底のツバキ』

POW ●届かぬ声
【触れると一時的に言葉を忘却させる椿の花弁】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD ●泡沫夢幻
【触れると思い出をひとつ忘却させる泡】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ ●忘却の汀
【次第に自己を忘却させる歌】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠黎・飛藍です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 骸魂から解放された妖怪たちを庭に残して、猟兵たちは家の裏手に回った。
 そこで見たものは小さな湖。
 そして、女の姿をした骸魂。
 湖面から上半身を出して縁石に両手を置き、赤い瞳で猟兵たちを凝視している。JJの言によると人魚を取り込んだ骸魂であるらしいから、水面下の下半身は魚のような形をしているのだろう。
「おぬしらの目的は判っておる。わらわを討ち滅ぼすために来たのであろう?」
 骸魂は微笑を浮かべた。
「じゃが、よう考えてみい。わらわが滅んでしもうたら、この愚かで哀れな人魚の娘子はどうなる? 忘れていたはずの悲しみを思い出し、また涙にくれることじゃろう」
 骸魂の笑顔と声音は妖艶ではあったものの、色香で惑わせて籠絡を試みている悪女といった風情は感じられない。どちらかというと、利かん気な子供を優しく諭している母親に近い。おそらく、彼女は悪意を以て行動しているわけではないのだろう。
「娘子に悲しみを忘れさせたことによって、■■までもがこの世から消えてしまったようじゃが……それも却って良かったとは思わぬか? 愛を注ぐ相手が消えてしまえば、その相手に傷つけられることも、その相手に失望することも、その相手に裏切られることもなくなり、心安らかに生きることができるのじゃからな」
『■■』の部分は聞き取れなかった。いや、聞こえたのだが、言葉として認識することができなかったのだ。
 しかし、だからといって、猟兵たちの誓いは揺らがなかった。
 世界に『■■』を取り戻すという誓い。
「忘却に勝る救済はない。忘れ去ることで、人も妖しも幸せになれる。どうしてもそれが理解できぬというのであれば――」
 悪意なき微笑を浮かべたまま、骸魂は縁石についていた手を上げ、ゆっくりと腕を広げた。
 猟兵たちを抱きしめようとするかのように。
「――おぬしたちにも忘却をくれてやろう」


========================================
●JJからのお知らせ
 第2章はボス戦だぜ。ユーベルコードのリストを見れば判るように、敵はいろんなことを忘れさせる技を使う。忘れないように対策して慎重に挑むもよし。忘れることを承知の上でガンガン攻めるもよし。
 もちろん、戦闘中になにか忘れちまったとしても、敵を倒すことができれば、また思い出すことができるから安心してくれ。
========================================
木霊・ウタ
心情
骸魂を海へ還し
人魚を解放してやりたいぜ

戦闘
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う

椿の花弁は剣風が生んだ炎の竜巻で燃やし尽くす
回避困難時は炎壁&武器受け
仲間も庇う
もし触れちまっても
裡なる炎が忘却を燃やし灰に変える

骸魂
喪失がない替り停滞した世界を肯定とは
オブリビオンらしいぜ

生ある限り別れや喪失は必然だけど
心に思い出や絆がしっかりと紡がれている筈だ
それがあればきっと前へ、未来へ進めるさ

あんたも同じ別れを経験した
幽世に来れず骸魂となった
そして
生前の家族や友達のこと
忘れちまっていいのか?
…涙が出てるぜ

事後
骸魂と老猫へ鎮魂曲を奏でる
骸の海で安らかにな

人魚>
愛猫の想いに応えて
善き妖生を送ってくれよな
…猫じゃん


雨音・玲
【ファブル】

ダチを盾にするのはあんまり好きじゃないが
手数には手数で勝負!!

迫る忘却させる泡を
背後の召喚魔方陣から呼び出した無数の烏の群れで迎撃します
(UCの烏達の能力で忘却能力を無効化)

多少の思い出を消されても
信じられるモノ(仲間への信頼)が消されなければ問題ねぇさ

(ヘザーの背中を見つめ、ギュッと拳を握り気合いを入れ)

俺自身は両手に宿した属性攻撃の業火で
振るい薙ぎ払うように、泡を焼き払います

道は作ってやるよ!露払いは俺たちに任せとけ!!
一発かましてこい!!いけぇヘザー!!


ヘザー・デストリュクシオン
【ファブル】

…流れない水なら、ぎりぎりだいじょぶ、かな?

わたしも、大好きな妹が死んじゃったって思ってたの。
つらくて、悲しくて、死にたかった。
でも、玲くんやみんなに会えた。
もちろんそれで寂しさはなくならなかったけど、死にたいって思うことは少なくなったの。
それに妹のことをわすれたら、あの子が歌ってくれた子守唄も、頭をなでてくれたあったかい手もわすれちゃうでしょ?
そっちのほうが、わたしは嫌なの。
あなたは、それでいいの?

泡はジャンプやダッシュ、スライディングで素早く避けて爪で攻撃!
速さが足りなければ服も脱いでも平気なの。
だって下着きてるの!
避けきれない泡はオーラ防御で防ぐの。
わたしはわすれないの!


●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
「おぬしたちにも忘却をくれてやろう」
 人魚は……いや、人魚を取り込んだ骸魂はにっこり笑ってやがるけど、俺のほうは笑い返すことなんてできなかった。
「忘却なんていらないの」
 長い耳と長い爪を生やした(耳はウサギで、爪も……ウサギだよな?)ヘザーがじりじりと骸魂に近づいていく。
「昔……わたしも、大好きな妹が死んじゃったって思ってたの。つらくて、悲しくて、死にたかった。でも、わすれたいとはおもわなかった」
 後ろにいる俺からはヘザーの背中しか見えないけど、断言できるぜ。
 俺と同様、あいつも人魚に笑い返しちゃいない、と。
「だって、妹のことをわすれたら、あの子が歌ってくれた子守唄も、頭をなでてくれたあったかい手もわすれちゃうでしょ? そっちのほうが、わたしは嫌なの。あなたは――」
 ヘザー、いきなりダッシュ!
「――それでいいの?」
「いいに決まっておろう!」
 骸魂が湖から飛び上がった。予備動作もなしに、めちゃくちゃ高いところまで。イルカショーのイルカもびっくりのジャンプ力だ。
 頭から被っていたヴェール(キヌカヅキとか言うんだっけか?)がはらりはらりと舞い落ちたが、本体のほうは宙に浮いたまま。人魚のくせして飛べるらしい。
「良き日々だけを覚えておくことはできぬ。幸福の記憶は常に不幸の記憶を伴っておるのじゃ。ならば、一緒くたに忘れてしまったほうがいい」
『記憶の断捨離』とでも呼ぶべきものを説きながら、水陸両用ならぬ水空両用の骸魂は空中でくるりと回転した。長い尻尾の先端で円を描くかのように。
 いや、実際に円を描いてみせた。
 尻尾についてた無数の水滴が物理法則を無視して円を形作ったんだ。
 もっとも、円形を留めていたのは一瞬だけ。それらはすぐにバラけて降り注いだ。掌ほどの大きさの泡に変わりながら。
「その泡に触れる度、思い出が一つ消えていくのじゃ」
 骸魂がわざわざ解説してくれた。親切のつもりなのか、脅しのつもりなのか。
 どちらにせよ、ヘザーは動じなかった。まっすぐに骸魂へと突き進んでいる。
 きっと、信頼しているんだろう。俺のすぐ横で――
「道は作ってやるよ、ヘザー! 露払いは俺たちに任せとけ!」
 ――声を張り上げている玲のことを。

●雨音・玲(路地裏のカラス・f16697)
「道は作ってやるよ、ヘザー! 露払いは俺たちに任せとけ!」
 俺は拳を握りしめ、力の限りに叫んだ。
 もちろん、叫ぶだけで終わりゃあしねえ。有言実行だぜ。
「ダチを盾にするのはあんまり好きじゃないが――」
 ユーベルコード、発動。
「――手数には手数で勝負!」
 空の彼方から助っ人たちがやってきた。
 それはカラスの大群。いや、『大軍』と呼ぶべきか? めちゃくちゃ頼もしい奴らだからな。
「カァーッ!」
 と、勇ましい声をあげて、カラスたちは泡にぶつかっていく。
 その間も走り続けているヘザー。カラスの体当たりから逃れたいくつかの泡が降りかかったが、素早く躱したり、オーラの障壁で防いだりして、確実に距離を詰めている。
 ヘザーだけじゃなくて、俺のほうにも泡は降ってきたけども、カラスの手を(羽を?)煩わすまでもねえ。庭でザコの骸魂とやりあった時と同じように拳に炎を纏わせて、こうやって思い切りブン回してやれば……ほうら、次々と蒸発していくぜ。
「行けぇ、ヘザー!」
 泡を焼き払いながら、俺はまた叫んだ。
「一発かましてこぉーい!」
「うん!」
 ヘザーがジャンプした。さすが、ウサギの跳躍力を持つキマイラ……いや、今のジャンプはウサギよりもアレのイメージに近いかな? アレだよ、アレ……くそっ! まだ思い出せねえ。
 だが、思い出してみせる!
 そして、二度と忘れねえ!
「わたしはわすれないの!」
 俺の心の声に合わせるかのように雄叫びをあげて、ヘザーが空中で骸魂と交差した。
 そして、白い光(たぶん、ヘザーの爪だ)が閃き、赤い線(たぶん、骸魂の血だ)が走り――
「うっ……!?」
 ――呻き声を漏らして、骸魂が湖に落ちた。水柱がドボーン!
 ヘザーも落ちたが、湖の縁のところに華麗に着地。
「身軽だなぁ。まるでアレみたいだ」
 ウタが感心してるけど……やっぱ、俺と同じようにアレをまだ思い出せないみたいだな。
「よくやった!」
 アレのようなヘザーを褒めながら、俺は炎の拳をブン回し続けた。例の泡がまだ降ってやがるんだ。
 もっとも、泡を食らって、少しばかり思い出を消されたとしても、べつに構いやしねえけどな。
 信じられるものさえ……そう、ヘザーを始めとする仲間への信頼さえ消されなければ、なんの問題もねえ!

●ヘザー・デストリュクシオン(白猫兎の破壊者・f16748)
「妹が死んだと思ってた時、つらくて、悲しくて、死にたくなった――そう言ったよね? それを乗り越えることができたのは、妹との思い出があったからだけじゃない。玲くんやみんなに会えたからなの」
 わたしが湖のほうに振り返ると、人魚の骸魂がまた水面から上半身を出した。
「今は玲くんたちとの思い出もわたしの力になってる。だから、絶対にわすれたくないの。わすれるわけにはいかないの」
「己の心を縛りつけるものを美化しよって……」
 わたしたちを睨みつけて、骸魂は呻くように呟いた。
 睨みつけて?
 そう、彼女はもう笑ってないの。
「わらわが救ってやったこの人魚に負けず劣らず、おぬしらも愚かよう。哀れよのう」
「まだ救ったつもりでいるのかよ!?」
 と、玲くんが吼えたの。
「『つもり』ではなく、本当に救ったのじゃ!」
 負けじと骸魂も大声を出して、またもや湖から飛び出した。
 そして――
「おぬしらも救ってみせよう! すべてを忘れさせることで!」
 ――ユーベルコードを使って、沢山の武器(?)を降らせてきたの。
 でも、今度の武器は泡じゃなくて、真っ赤な椿の花片。
 わたしはすぐさま後ろに飛んで、その花吹雪を避けた。
「喪失がない代わりに停滞しちまった世界を肯定するたぁ、オブリビオンらしいぜ」
 そう言いながら、わたしの横を駆け抜けていったのはウタくん。さっきの戦いでも振るってた鉄塊剣を持ってる。
「生ある限り、別れや喪失は必然。だけど、心に思い出や絆がしっかりと紡がれているはずだ。それがあれば――」
 ウタくんは花吹雪の中に飛び込み、体ごと捻るようにして鉄塊剣をブゥーンとせんかいさせた。
「――きっと! 前へ! 未来へ! 進める!」
 鉄塊剣の表面でゆらめいている業火が椿の花片を焼いていく。赤い花がもっと赤い炎に包まれ、火の粉を散らして灰に変わっていく様は綺麗だけど、ちょっと物悲しい感じもするの。
「あんただって、その人魚と同じように別れを経験したんじゃないのか? そして、幽世に来れず、骸魂になったんじゃないのか?」
 骸魂にそう問いかけるウタくんも悲しそうな感じがするの。
「別れた相手のことを……家族や友達のことを忘れちまっていいのかよ? それとも、もう忘れちまったことさえ忘れちまったのか!?」
 炎の一部が鉄塊剣から離れて、ミサイルみたいに一直線に飛び、骸魂に命中。
 その様子を見上げながら、ウタくんが静かに言ったの。
「……涙が出てるぜ」
「涙など流しておらぬわ!」
 骸魂は否定した。
 今にも泣きそうな顔をして。
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ペイル・ビビッド
失ったことの悲しみや辛さ
忘れたいのはあたしも同じ
だけど…
会えなくなった人やなくなってしまったものとの
繋がりは無くしたくない

本気で忘れたいなら
出発前に描いていたこの絵への興味も無くなってたはず
取り戻すよ、みんなが無くしたモノを!

真の姿を解放
さらにUCも使って飛行能力もつけて
敵がいる水の中に引き込まれたり
泡や花弁にさわらないよう
気をつけながら上空から攻め込もう
敵の攻撃は武器受け・とっさの一撃・オーラ防御で対処
早業と二回攻撃を使って
平筆でなぎ払い
本気で倒してもいいのなら
串刺しにして傷口をえぐる

一つだけなにがあっても
忘れちゃいけないものがある…
自分は自分だってことだ!


ルシュ・ベルノ
レンディアさん(f27097)と

◆心情
私はどんな思い出も忘れたくありません
それが深い悲しみの思い出だとしても
(亡くなった家族を思い出し)
大切な人との記憶は、どんなものでも宝物ですから
喜びも悲しみも全て含めた過去があるから、今の私があるのです

(それに、レンディアさんの力になりたいです)

◆戦闘
私の役目は護る事
前に出ます
すみません、これは譲れません

話しかけたり挑発して隙を作ります
あなたの考えには賛同しかねます
私が相手です、かかってきなさい!

いざという時は、仲間と敵の間に割り込み無敵城塞を発動させて庇いましょう


泡沫夢幻で忘れるのレンディアさんとの記憶
ですが、護るという想いは決して揺るぎません


レンディア・バルフォニー
ルシュちゃん(f28424)と

ルシュちゃんは強いねぇ
俺はどうだろう……
悲しみも苦しみも忘れ去るのは、時に優しいと思う所もあるよ
だからって、それが必ずしも正しいとは言わないし、骸魂に味方するつもりはないけれど
曖昧かな?
ただ、これはハッキリ言える
大切なものが消えてしまった世界なんて、そんなのは御免だ

本音を言えば、ルシュちゃんに無茶はさせたくないけど……
君を信じるよ
俺は隙を突いて刃風で遠距離攻撃
武器を素早く振るって、一度に二回衝撃波を起こそう(2回攻撃)
手数の多い攻撃で早めに決着をつけたいね

ルシュちゃんが攻撃にさらされれば心配するさ
忘れられる事にズキリと胸が痛む
骸魂を倒して君の記憶も取り戻そう、必ず


●ペイル・ビビッド(淡色弾ける筆先の軌跡・f01836)
「なぜ、忘却が救済であるという単純な真理を受け入れることができぬのじゃ。頑迷な連中よのう……」
 あたしたちを空から見下ろしながら、人魚型骸魂が吐き捨てるように言った。『涙が出てる』というウタくんの言葉が本当かどうかは判らないけど(なにせ、湖から飛び出したばかりで顔も体もびしょ濡れだし)、余裕がなくなってるのは間違いないよね。
「ガンメーなのはそっちでしょ!」
 と、あたしは言い返した。
「なにかを失ったことの悲しみや辛さを忘れたい――そういう気持ちが判らないわけじゃないよ。あたしだって『忘れてしまいたい』と思うことがあるもん。だけど……」
 視線を落とし、手の中で紙を広げた。庭での戦いが終わった後でみんなに見せたあの紙だよ。
 そこに描かれているのは不思議な生き物。描いたのはあたし自身。その生き物のことを覚えていた頃の……。
 そして、あたしはまた顔を上げ、わからずやの骸魂に言ってやった。
「会えなくなった人やなくなってしまったものとの繋がりまではなくしたくない!」
「ペイルさんの仰るとおりです」
 と、フード付きのローブを纏ったお姉さんが同意してくれた。アックス&ウィザーズから来たルシュさんだよ。レンディアさんのおともだちなんだって。
「私も思い出を忘れたくありません。たとえ、それが深い悲しみの思い出だとしても……」
 フードから覗くルシュさんの顔はお世辞にも表情豊かって感じじゃないんだけど、ほんの一瞬だけ、とても辛そうに見えた。『深い悲しみの思い出』っていうのはその言葉以上に(もしかしら、ルシュさん自身が思ってる以上に?)悲しいものなのかもしれない。
「大切な人との記憶は、どんなものでも宝物ですから」
「そうそう! 宝物なんだよ!」
 今度はあたしがルシュさんに同意。
 紙を折りたたんで、ポケットに入れた。きっと、あの不思議な生き物についての記憶も宝物。過去のあたしはそれを忘れることを望んでいなかったはず。
 だから――
「――取り戻すよ!」
 ユーベルコードを解放して、真の姿を解放!
 じゃじゃーん!
「えー!?」
 と、素っ頓狂な声をあげたのはレンディアさん。
 あたしの真の姿を見て、度肝を抜かれちゃったみたいねー。

●レンディア・バルフォニー(朱龍・f27097)
 いやー、吃驚仰天だ。
 身長一メートル足らずのお子ちゃまだったペイルちゃんが年頃のお嬢さんに大変身しちゃった。大人の階段を一気に駆けあがったねぇ。
 しかも、ただ成長しただけじゃなくて、背中にオブションがついてる。光で構成された翼だ。
 その翼で宙に舞い、骸魂と激しい空中戦を開始! ……という展開になるかと思いきや、骸魂のほうはペイルちゃんには目もくれず、ルシュちゃんを睨みつけている。
 それというのも、ルシュちゃんが――
「私が相手です! かかってきなさい!」
 ――ってな具合に大声で挑発しているから。
 この状況だけ見ると誤解するかもしれないけど、ルシュちゃんは好戦的なタイプじゃないよ。きっと、俺や他の皆のために敵の注意を引きつけているんだ。
「ふん!」
 骸魂は苛立たしげに鼻を鳴し、空中で尻尾を一振り。
 途端に椿の花片が舞い散った。さっきも披露したユーベルコードの花吹雪だ。
「おっと!」
 俺は飛び跳ねるようにして、それらを躱した。
 ルシュちゃんは果敢に前進しつつ、それらを躱した。
 そして、オトナ・バージョンのペイルちゃんは玉虫色の翼から燐光を撒き散らして飛び上がり、ジグサグの軌道を描きながら、それらを躱した。
 そのジグザグの行き着く先は骸魂だ。
「とぉーっ!」
 骸魂めがけて武器を繰り出すペイルちゃん。武器っていうのは、例の大きな平筆のこと。オトナ・バージョンでも、そこんところは変わらないらしい。
「……っ!?」
 平筆の一撃を食らうと、骸魂は呻き声だけを空中に残して、また落下した。地上のルシュちゃんに気を取られていたから、回避することができなかったんだろうね。
『また落下』とは言ったけど、ヘザーちゃんに撃墜された時と違って、骸魂は湖には落ちなかった。水面ぎりぎりでなんとか留まったんだ。でも、ダメージはしっかり受けているみたい。
 更なるダメージを与えるべく、ルシュちゃんがじゃぶじゃぶと湖に入っていく。
 俺も後に続いた。水に濡れるのは気にしない。セイレーンだしね。
「思い出を忘れたくはありません」
 骸魂に向かって進みながら、ルシュちゃんが先程の言葉をまた口にした。自分に言い聞かせるように。
「喜びも悲しみも……すべて含めた過去があるからこそ、今の私があるのです」
 ルシュちゃんは強いなぁ。
 俺としては、悲しいことや苦しいことを忘れ去ることが救いになるって考えにちょっとばかり共感できたりもするんだよね。
 でも、だからって、それが必ずしも正しいとは思わないし、骸魂に味方するつもりもないけれど。
 なんにせよ、これだけははっきり言える。
 大切なものが消えてしまった世界なんて――

●ルシュ・ベルノ(紫夜の蝶・f28424)
「――そんなのは御免だ」
 後方からレンディアさんの声が聞こえてきたので、私は振り返らずに問いかけました。
「なにか仰いましたか?」
「ううん。なーんにも」
 とぼけてますね、レンディアさん。
 しかし、それについて追及することはできませんでした(もとより、追及するつもりはありませんでしたが)。
 骸魂が攻撃を仕掛けてきたからです。
「忘れてしまえ! 忘れてしまえ! なにもかも忘れてしまえ!」
 泣き声に聞こえなくもない咆哮とともに放たれたのは幾百もの泡。忘却をもたらすユーベルコード。
 私はそれらを回避しました。
 ただし、数個だけ。
 すべてを躱すわけにはいきません。後ろにいるレンディアさんに命中するかもしれないから。そう、私の役目は盾。レンディアさんを守り抜きます。たとえ、記憶を失っても。
 いくつかの泡が私に命中して弾けました。
 同時に、頭の中(あるいは心の中?)でもなにかが弾けて消えてしまいましたが、その『なにか』がなんのかは判りません。
「大丈夫か、ルシュちゃん?」
 泡の乱舞が収まると、後ろにいた男性が横に並び、声をかけてきました。色眼鏡をかけたセイレーンの男性なのですが……いったい、誰でしょう? 彼は私の名前を口にしましたが、私のほうは彼のことを知りません。
 でも、この人を守らなくてはいけないような気がします。
「ああ……俺のこと、忘れちゃったか」
 悲しげに呟くと(なぜか私も悲しくなりました)、男性は前に向き直り、白銀の剣を素早く振りました。続け様に二度。
 それは近接武器による遠距離攻撃のユーベルコードだったのでしょう。航跡のごとき二条の線が湖の水面を走り――
「……あっ!?」
 ――骸魂がのけぞりました。右肩と左脇が斬り裂かれ、血が噴き出しています。
 彼女が反撃に移るよりも早く、私はまた男性の前に出ました。彼を守るために。
 しかし、その必要はありませんでした。
「ひとつだけ、なにがあっても、忘れちゃいけないことがある! それは……自分は自分だってこと!」
 叫びながら、光の翼を有したペイルさんが急降下し、一メートルほどもある大きな筆を骸魂に叩きつけたのです。色眼鏡の男性がつくった右肩の傷を狙って、抉り込むように、容赦なく。
 それはとどめの一撃。骸魂は黒い靄の塊へと変じ、一体の人魚を吐き出し、蒸発するように消えてしまいました。
 そして、骸魂の死と同時に私は思い出しました。
 レンディアさんのことを。
 もちろん、猫のことも。
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第3章 日常 『猫屋敷』

POW三毛猫を愛でる
SPD黒猫を愛でる
WIZ白猫を愛でる
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 湖のほとりで人魚が泣いていた。
 息絶えた老猫を抱きしめて。
 つい先程まで、その猫の死体はどこにも存在していなかった。人魚を飲み込んでいた骸魂が滅びると同時に忽然と現れたのだ。いや、戻ってきたのだ。
 ただし、戻ってきたのは体だけ。かろうじて残っていたはずの生前の温もりは完全に消えている。
「ごめんね……」
 人魚は深く頭を垂れた。誰に詫びたのだろう。一時とはいえ忘れてしまった老猫か。老猫のことを思い出させてくれた猟兵たちか。あるいは、自分を救おうとしてくれた骸魂か……。
 屋敷のほうから喜びと驚きのどよめきが聞こえてきた。
 庭の隅で寝かされていた妖怪たちの声だ。
 彼らや彼女らの前にも戻ってきたのだろう。
 要領がいいくせに不器用で、大胆不敵なのに臆病で、孤高を気取りながらも甘えん坊で、目にも止まらぬ速さで高所に登ったかと思うと、自力で降りられなくなって情けない声で助けを求めたりする、あの愛すべき生き物たちが。


========================================
●JJからのお知らせ
 第3章は猫たちとのモフモフ触れ合いタイムだ。
 屋敷に居着いていた猫たちはすべて戻ってきたし、猫好き妖怪たちも猫のことを思い出した。自分や仲間だけで猫と遊ぶもよし。妖怪たちと一緒に猫と遊ぶもよし。シリアスなのがお望みなら、人魚のケアをするもよし。
 もちろん、第3章からの参加も大歓迎だぜ!
========================================
木霊・ウタ
目的
人魚の心に寄り添う
猫をモフる

任務完了には
この二つをクリアしないとな

手段
湖畔で骸魂と老猫へ鎮魂曲

家族や友達、大好きな人達と過ごした日々
そんな思い出と一緒なら
きっと眠りは安らかだ

人魚>
存分に泣いて悲しんで死を悼んで
気の済むまで思い出に浸るといいと思うぜ

愛猫がきっと願ってたのは
あんたがこれからも笑顔で
善き妖生を送るってコトだけど
今すぐにって無理する必要はないぜ?
友達妖怪や猫達はいつ迄だって
あんたを待ってるんだから


その後は屋敷で
三毛も黒も白も存分にモフる
体に乗せてぬくぬく昼寝もいいよなぁ

なぁJJあんたは新入りって思われてるみたいだな

もし人魚がやって来たら
きっとこの言葉だな

…涙が出てるぜ

嬉し涙が


ヘザー・デストリュクシオン
【ファブル】

にゃー!
猫なの!わたし、猫と兎のキマイラなの!
ね、玲くん!
はー、思い出せてすっきりしたの!

猫好きだけど、人魚の子と話したいの。おちつくまで待って話しかけるの。
おわかれ、ちゃんとできた?
おはか作るの、てつだおうか?
この子はどんな子だったの?
…そっか。この子のこと、大好きだったのね。
きっとこの子もあなたのこと大好きだったと思うの。
もう、わすれないであげてね?

妹みたいに上手じゃないけど、死んじゃった猫のために子守唄を歌ってあげるの。
おやすみ、おやすみ。いい夢見てね。すやすやねむって、すくすく育って。明日も元気な笑顔で会おうね。おやすみ、おやすみ。いい夢を……。
きっとまた会えるから笑って?


雨音・玲
【ファブル】

何とか無事に終わったな―…
そうだよ!!ヘザーは猫のキマイラだ!!
やっと喉の奥に魚の骨が引っかかったような感覚が解消されたよ
あーーーっ、すっきりした

もし天寿を全うしたのなら、彼は幸せだったんだと思う
もしかしたらココはあやかしの世界だから
“A cat has nine lives.”「猫は9つの命を持つ」
ことわざ通り生き返ったり、転生したりするかもしれないな

そんなことを思いつつ
人魚とヘザーを手伝います
下を向くより前を向こう気休めの言葉しか掛けれないけどさ
ちゃんと送ってやろうぜ


●雨音・玲(路地裏のカラス・f16697)
 物悲しい音色が流れている。
 ウタが湖の畔でギターを奏でているんだ。
 きっと、人魚が可愛がっていた老猫への鎮魂曲だろう。いや、老猫だけじゃなくて、人魚を飲み込んでいた骸魂にも捧げているのかもしれない。
「にゃあぁぁぁーっ!」
 暗いBGMに似合わない元気な大声が響いた。
「猫なの! わたし、猫と兎のキマイラなのー!」
 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、声の主であるところのヘザーが問いかけてきた。
「ね? そうでしょ、玲くん?」
「そうだよ! ヘザーは猫のキマイラだ!」
 答える俺も自然に大声になる。さすがに飛び跳ねたりはしないけど、興奮は抑えきれない。やっっっとのことで、喉の奥に魚の骨が引っかかってるような感覚から解放されたんだからな。
「あー、すっきりしたー」
「うん! すっきりしたのー!」
 そうやって二人で喜びを分かち合ってる間にウタが鎮魂曲の演奏を終えた。
 例の人魚はまだ俯いてるけれど、もう泣いてはいないみたいだ。ぎゅっと抱きしめていた老猫の死体も湖の縁石に寝かされている。
 俺はヘザーを見た。彼女の考えていることがなんとなく判ったから。
 ヘザーも俺を見た。そして、小声で言った。
「この世界に戻ってきた猫たちと遊びたいけれど、その前に人魚の子と話したいの」
「そう言うだろうと思ったよ」
 ヘザーは優しいな。
 いや、ヘザーだけじゃないらしい。
 人魚のほうに視線を戻すと、彼女に近付いていくウタの姿が見えた。
「そいつはきっと望んでいるだろうよ」
 と、ウタは人魚に言った。『そいつ』ってのは縁石の猫のことだろう。
「あんたが笑顔で善き人生……もとい、妖生を送ることをな。でも、だからといって、無理して今すぐに笑顔になる必要はないぜ。他の猫たちや妖怪の友達はいつまでだって、あんたを待ってるだろうから」
 待っているのは猫や妖怪以外にもいるぞ。
 俺たちだ。

●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
「おはかを作るなら、手伝おうか?」
 ヘザーが傍に寄り、声をかけてきた。その後ろには玲が立っている。
「……うん。ありがとう」
 人魚は小さく頷き、かぼそい声を出した。
 そして、ゆっくりと顔を上げてヘザーたちを見やり、同じ言葉を繰り返した。
「ありがとう」
 じゃあ、俺も手伝うとするか。

 十数分後、猫の墓ができた。
 墓といっても、小さな盛り土に丸っこい石を置いて、そこらに咲いてた花を供えただけの代物だけど……まあ、埋葬されてる当人ならぬ当猫に不満はないだろう。墓の出来がどうであれ、その眠りはきっと安らかなはずだ。誰よりも自分を愛してくれた人魚との思い出が一緒にあるんだから。
 その人魚はといえば、魚型の下半身を『く』の字に曲げて横座りみたいな状態で地面に腰を下ろし、墓をじっと見つめている。
「天寿を全うしたのなら、この猫は幸せだったんだと思う」
 人魚の背後から墓を見下ろしながら、玲が呟いた。人魚じゃなくて、自分自身に語っているのかもしれない。
「天国でゆっくり休んだら、生き返って戻ってくるかもな。『猫に九生あり』っていう諺通りに……なにせ、ここは妖しの世界なんだから、そんなことが起きても不思議じゃない」
 どうでもいいけど、九個ってのはちょっと中途半端な数だよな。どうせなら、十個にしとけばいいのに。
「ねえねえ」
 ヘザーが人魚の隣に座り、横顔を覗き込んだ。
「この子はどんな子だったの? よかったら、聞かせてちょうだい」
「……」
「話すのが辛いなら、べつにいいけど」
「ううん」
 と、人魚はかぶりを振った。
 そして、語り始めた。
 安らかに眠っているであろう猫のことを。

●ヘザー・デストリュクシオン(白猫兎の破壊者・f16748)
 人魚ちゃんは猫のことをいっぱい話してくれたの。
「そっか。この子のこと、大好きだったのね」
 わたしは、おはかの石をなでた。その下で眠っている子をなでるような気持ちで。
 あたりまえのことだけど、石のザラザラした手触りは猫のモフモフ感とは似ても似つかない。
 でも、なぜだか、あったかい気がするの。
「きっと、この子もあなたのことが大好きだったと思うの。もう忘れないであげてね?」
「……うん」
 人魚ちゃんがこくりと頷いたのを確認して、わたしは腰をあげた。
 歌うために。
 おはかの下の猫に送る子守歌。妹みたいに上手に歌うことはできないけど。
「おやすみ、おやすみ、いい夢みてね♪ すやすやねむって、すくすく育って、明日も元気な笑顔で会おうね♪ おやすみ、おやすみ、いい夢を♪」
 ……おやすみ。

 天国に行った猫さんのために歌ってあげた後、わたしたちは人魚ちゃんをその場に残して、表の庭のほうに戻ったの。
 ある意味、そこも天国だったけどね。
 なぜかというと――
「猫がいっぱいなのー!」
 ――ってことなの。
 どっちを向いても、猫だらけ。モフり放題の猫天国。あと、猫だけじゃなくて、その相手をしている妖怪さんも沢山いるの。
「こいつは壮観だな」
 猫天国をぐるっと見回す玲くん。苦笑が浮かんでいるのは、猫たちと遊ぶ妖怪さんたちの姿がちょっとおかしいからかな。
 あ? よく見ると、妖怪さんじゃないヒトもいるの。正確に言うと、ヒトじゃなくて、ケットシーだけど。
 そう、それはグリモア猟兵のJJさん。何匹もの子猫にまとわりつかれてるの。
「こらー! 帽子の上に乗るな! 乗るなってば! 形が崩れんだろぉーっ!」
 怒鳴りながら、腕をぶんぶん振り回してるけど、子猫たちは意に介してないというか、JJさんを完全になめきってるの。猫だけに?
「おいおい、JJ」
 傍にいる猫たちをモフりながら、ウタくんが笑った。
「あんた、猫たちに『チョロい新入りだ』って思われてるんじゃないか……ん?」
 視線を横にやるウタくん。
 つられてわたしもそっちを見たの。
 そこにいたのは人魚ちゃん。あの子とのおわかれは済んだみたいだね。
 彼女に向かって、ウタくんが言葉を投げかけた。
 それは骸魂と戦ってる時に口にしたのと同じ言葉なの。
「涙が出てるぜ」
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ペイル・ビビッド
よかった…
みんな猫のことを思い出したし
屋敷の猫たちも妖怪たちも
楽しそうでなにより
だけど…人魚のお姉さんのことが気がかりだ

(名前を聞けたら名前+さん呼びで)
寂しかったんだね
大好きだった猫さんに先立たれて…
骸魂を呼んでしまったことを責めなくていいんだよ
もしよければ
あたしたちにも猫さんをお見送りさせて

きっと天国に行った猫さんも
向こうでお姉さんのこと思い出してるよ
遠く離れても覚えていたい気持ちは
相手も同じだよ、きっとね

…あ、そうだ!
数十分後、スケッチブックに描き上げたのは
屋敷の猫たちに囲まれて笑っている人魚の絵
この絵、お姉さんにあげるね
これからも猫たちと一緒にいたときの思い出が続いていくように


レンディア・バルフォニー
ルシュちゃん(f28424)と

縁側にでも座って、ちょっとのんびりしようか
ルシュちゃんも良ければ隣どうぞ
そうだねぇ。猫たちも戻って来たし、俺もほっとしたよ

そういえば、ルシュちゃんは猫は好きだっけ?
なるほど。それなら、いっぱいモフったり遊んでみようか

ちょっといいかな。近くにいる猫さんに話しかけて
抱きかかえ、猫で自分の顔を隠すよ
えー、コホン
「気にするニャー」
猫が喋っているように見せかけておどけようか

ところで、抱っこしてみる?
ルシュちゃんの膝に猫を乗せよう
緊張したり感動したり微笑ましいね

そうだ、記念に一枚いいかい?
スマホを取り出して、ルシュちゃんと猫の姿を写真に収める
うん、良い画が撮れた


ルシュ・ベルノ
レンディアさん(f27097)と

では、お隣失礼します
猫と戯れる皆さんを見るとほっとしますね
異変が収まって良かったです

触ったりした事は殆ど無いのですが、可愛いと思います

あの、遊んだりする前に……
先の戦いでレンディアさんの事を忘れてしまってすみません
おどける様子に少しだけ笑みがこぼれます

えっと、膝に乗せて撫でてみたいです
少し緊張しますね
猫さんを優しく撫で撫で
……柔らかいです、さらさらふわふわです
もふもふに感動します
レンディアさんや皆さんが猫を好きになる理由が、少し分かった気がしました


はい(スマートフォンで何をするのでしょう?)
※スマホはまだまだ使いこなせておらず、何をするのかよく分かっていません


アレクサンドラ・ルイス
愛すべき隣人を取り戻した連中の歓声を後ろに
愛すべき隣人を喪った人魚の傍に立つ

※あまり威圧しないように
距離と話し方には気をつける

その猫の名前はなんというのか
どんな猫だったのか
好きな餌は、おもちゃは、遊び方は
甘えるときにはどんな声で鳴いたのか
出会った日から別れの日まで
ロザリオに手を遣り人魚と猫の記憶に耳を傾ける
僧侶の資格があるわけではないが

何度でも、いつまででも聞こう
その猫を愛した時間が心に深く刻まれるまで
忘れようとも忘れられない深さになるまで

愛されて生きた猫がいたことは俺の心にも刻まれる
俺もいつか誰かに話すだろう
その誰かはまた他の誰かに語り継ぐ
二度と、その猫が忘れられることはない


●レンディア・バルフォニー(朱龍・f27097)
 自分たちが皆の記憶から消えていたことも知らず、せわしなく走り回ったり、丸くなって眠ったり、熱心に毛繕いしたり……と、マイペースに振る舞う猫の群れ。
 世にも幸せそうな顔をして猫撫で声(さっきまでなら『ナントカ撫で声』とでも言ってたんだろうね)を出しながら、その群れの相手をする妖怪たち。
 両種族が織り成す平和な光景を俺は眺めていた。ボロ屋の縁側に腰掛けて、のんびりと。
「あ? よければ、お隣どうぞー」
「では、失礼します」
 と、俺に答えて横に座ったのはルシュちゃん。
「異変が収まって良かったです。こうやって、猫と戯れてる皆さんを見みていると――」
 猫を交えた百鬼夜行ならぬ百鬼昼行に視線を巡らせて、ルシュちゃんは微笑を浮かべた。
「――ほっとしますね」
「そうだねえ。猫たちも戻ってきたし、俺もほっとしたよ」
 ふと横を見ると、縁側の端に人魚ちゃんがちょこなんと腰かけていた。人間みたいな姿勢だね。長い尾鰭が地面に垂れ落ちて土まみれになってるけど、本人は気にしてないみたい。
 人魚ちゃんの隣にはペイルちゃんがいた。
 その二人から少しばかり距離を開けて、スキンヘッドの厳つい大男が立っている。『アーミー入道』だか『坊主ゴーレム』だかいう新しい妖怪かな……と、思ったら、サイボーグのアレクサンドラさんでしたー。失敬、失敬。
「寂しかったんだね。大好きだった猫さんに先立たれて……」
 猫耳付き(そう、猫耳だ! 骸魂と戦ってる時はヘンな突起にしか見えなかったけど!)のベレー帽を頭から取り、胸にあてて、ペイルちゃんが人魚ちゃんに言った。
「骸魂を呼んでしまったことを責めなくていいんだよ」
「……」
 無言で頷く人魚ちゃん。
 ペイルちゃんは子供の姿に戻ってるし、人魚ちゃんの涙はもう乾いているみたいだけれど、泣きじゃくる子供を大人の女性が慰めているような印象を受ける。不思議なもんだね。

●アレクサンドラ・ルイス(サイボーグの戦場傭兵・f05041)
 縁側から垂れ落ち、細長い絨毯のように地面に敷かれた人魚の尾鰭。
 土で汚れても美しさを損なってないそれを間違って踏んだりしないように、そして、相手が怖がったりしないように(自分が威圧的な外見をしていることは重々承知しているさ)距離を取った状態で、俺はささやかな要望を彼女に伝えた。
「猫の話を聞かせてくれないか」
「……え?」
「おまえが飼ってた猫の話だ。他の猟兵に語り尽くしたかもしれんが、俺はまだ聞いてないんでな」
「あたしも聞いてみたーい!」
 ベレー帽を頭に戻して、ペイルがねだった。子供の援護は助かる。俺一人だと、傍目には『悪漢が人魚に絡んでいる』というようなシチュエーションに見えるかもしれないからな。
「うーん……」
 小さく唸りながら、人魚は俯いた。
 話すかどうか迷っているのではなく、どこから話そうか迷っているのだろう。顔を見れば判る。愛してやなまない誰かの話をする時、大抵の奴はこういう顔をするもんだ。どこの世界に行っても、それは同じ。そう、ヒトが生きる世界でも。妖怪が跋扈する世界でも。平和な世界でも。幼い者が銃を手にして戦わなくてはいけない世界でも……。
 やがて、人魚は顔を上げ、今は亡き猫のことを語り始めた。
 その猫の名前はなんというのか。
 どんな猫だったのか。
 どんな餌が好きで、どんなおもちゃが好きで、どんな遊びが好きだったのか。
 どんな声で鳴いて甘えたのか。
 人魚が語っている間、他の妖怪たちは猫たちと戯れて歓声や喜声をあげていたが、それはノイズではなかった。むしろ、最適なBGM。あるいは生前の猫に対して彼女が出していたであろう声を再現したSEか。
 人魚は語り続けた。
 猫と出会った日のこと。
 そして、別れた日――今日のこと。自分の何十倍もの時を生きている妖怪に対して、孫娘を見る祖父のごとき眼差しを向け、猫が静かに逝った時のこと。
 どれも他愛もない話だ。
 どこにでもある話だ。
 しかし、俺は忘れない。
 決して忘れない。

 いつか、人魚が愛した猫の話を俺も誰かに話すだろう。
 その誰かもまた他の誰かに語り継ぐだろう。
 だから、猫が忘れられることは二度とない。
 人々の記憶の中を永遠に生き続けるんだ。

●ペイル・ビビッド(淡色弾ける筆先の軌跡・f01836)
 人魚のお姉さんのお話が終わった。
 他の妖怪さんたち(&猫さんたち)が庭で騒いでいるんだけど、あたしとお姉さんの周りだけが奇妙な静けさに包まれてる感じ。おっと、いけない。アレクサンドラさんもいたね。
 お姉さんが話している間、アレクサンドラさんはずっとロザリオに触れていた。見た目はちょっと怖いんだけど、本物のお坊さんみたいな雰囲気。
 で、アレクサンドラさんはなにも話す気配がないので、あたしが『奇妙な静けさ』ってのを吹き飛ばすことにした。
「天国に行った猫さんもお姉さんのこと思い出してるんじゃないかな。『遠く離れても覚えていたい』という気持ちは相手も同じだよ。きっとね」
「……うん」
 肩をぽんぽん叩いてあげると、お姉さんはあたしのほうを見た。寂しそうな顔をしているけど、さっきまでに比べたら、ちょっぴり元気になってるんじゃないかな。たぶん。
 あ、そうだ! いいこと思いついちゃったー。
 あたしは鞄の中からスケッチブックを取り出した。へへーん、これはどんなに使ってもページが減らない魔法のスケッチブックなんだよ。すごいでしょ?
「ここにいる猫の絵でも描くつもりか?」
 と、アレクサンドラさんが訊いてきた。
「まあね。猫さんだけじゃないけど」
 いいモデルになりそうな猫さんを探して、辺りをぐるっと見回すと……ん? 縁側に座っているレンディアさんとルシュさんが目に入っちゃった。ルシュさんは深刻そうな顔をしてる。
「先程はすみませんでした」
 ぺこりと頭を下げるルシュさん。
 でも、レンディアさんはきょとんとしてるね。
「え? なになに?」
「私、骸魂と戦っている時にレンディアさんのことを忘れてしまって……」
「あー、はいはい。その話か。べつに謝るようなことでもないでしょ」
「でも……」
「まあまあ」
 お詫びを続けようとするルシュさんを制して、レンディアさんは近くにいた猫さん(白黒のぶち猫さんだよ)を抱き上げた。
 その猫さんを自分の顔の前にやり、『こほん』と咳払いを一つ。
 そして、声色を変えて――
「気にするニャー」
 ――だってさ。おっかしー。

●ルシュ・ベルノ(紫夜の蝶・f28424)
「気にするニャー」
 ぶち猫が喋っているように見せかけて、おどけてみせるルシュさん。
 私は思わず吹き出してしまいました。向こうでペイルさんも笑ってます。アレクサンドラさんは……べつに笑ってませんね、はい。
「ルシュちゃんは猫は好きだっりするの?」
 ぶち猫で顔を隠したまま(でも、声は元に戻して)ルシュさんが尋ねました。
「はい。触ったりしたことはほとんどないのですが、可愛いと思います」
「じゃあ、パス!」
 ルシュさんはぶち猫を私の膝に乗せました。
「好きなだけモフっていいのよ、お姉さん」
 私の顔を見上げて、ぶち猫が言いました。いえ、もちろん、本当に喋ったわけではなく、そういう態でルシュさんが(また声を変えて)言ったのですが。
「では、失礼します」
 ぶち猫に手を伸ばし、撫でてみました。おっかなびっくりという感じになってしまうのが我ながら情けないですが……あー、とっても柔らかいですね。さらさら、ふわふわ。そして、もふもふ。もふもふ。もふもふ!
「にゃーん」
 ぶち猫はお腹を見せ、私の手にじゃれつきながら、膝に背中を擦りつけています。可愛いですね。レンディアさんや皆さんが猫を好きになる理由が、少しだけ分かった気がします。
「いい笑顔だね。一枚いいかい?」
 レンディアさんがUDCアースのスマートフォンという小型の通信機器(私も所有していますが、あまり使いこなせてはいません)を取り出して、こちらに向けてきました。『一枚』とはなんのことでしょう?
「……はい?」
 意味がよく判らないまま頷いた直後、パシャリという音がスマートフォンから聞こえました。
「うんうん。いい画が撮れた」
 レンディアさんはスマートフォンを裏返して、画面を見せてくれました。そこに映し出されていたのは、猫を撫でる私の似姿。スマートフォンにはこのような機能もあるのですね。知りませんでした。
「できたー!」
 突然、ペイルさんが叫びました。先程からスケッチブックになにやら描いていましたが、それが完成したようです。
「この絵、お姉さんにあげるね。猫と一緒にいた時の思い出がこれからも続いてくように」
 ペイルさんはスケッチブックのページを切り取り、人魚さんに手渡しました。
 いったい、どんな絵なのでしょう? 私は膝の猫を抱いて立ち上がり、人魚さんの傍に寄って、その絵を見させてもらいました。それにレンディアさんとアレクサンドラさんも。
「ほほう」
 と、真っ先に感嘆の声をあげたのはレンディアさん。
「ルシュちゃんに負けず劣らず、この人魚ちゃんもいい笑顔だ。ねえ、アレクサンドラさん?」
「ああ。よく描けているな」
 そう、そこに描かれていたのは人魚さんです。
 しかし、彼女だけではありません。周囲に沢山の猫がいます。
 それらのうちの一匹――今は亡きあの老猫を撫でながら、人魚さんはぽつりと呟きました。
「……ありがとう」
 そして、微笑みました。
 絵の中の彼女と同じように。
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年07月16日
宿敵 『水底のツバキ』を撃破!
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵