進撃モノクローム(作者 タテガミ
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 その日、全ての色が徐々に消え去り始めた。
 見渡す限りに白か黒。
 それ以外の色が見当たらない。
 カラフルな町並みも、白黒だけで味気なく思う妖怪もあった。
『突然だけど!君は赤い紙が欲しい?青い紙が欲しい?』
 声と共に、頭上から突然ひらひらと落ちてきた二枚の紙。
 拾えと言わんばかりに無造作に、道の上に紙が二枚、示されている。
 見上げてみても人影は、見当たらない。
 問われた妖怪は、返答に困った。
 なにしろ、どちらも黒に見えたのである。
「ええ?……両方ともいらないかなぁ」
『そっかあ!じゃあその体、……貰っちゃうね!』
 喜ぶような声。答えた妖怪の視界はずぉおおと伸び上がった黒で塗り潰される。
 意識があったのは、――そこまでだ。


「……突然だが、滅亡の危機が迫ッている」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)が溜め息混ざりに語りだす。
「カクリヨファンタズムから【色】の概念が"消えた"そうだ」
 まるで世界の終わり(カタストロフ)が来たかのような突然な変貌。
 静かに、世界から色が消え去った。
 白と黒だけが、世界に存在する色である。
「【色】の概念を、奪ッた奴がいるんだ。元凶を倒せば世界の彩りは戻るだろうな?」
 元凶は、幽世に辿り付けずに死んだある骸魂。
 現代地球で朧気になった都市伝説をなぞるように、悪い魂が悪事を働いている。
「世界から色の概念が消えた事で、白と黒以外の色の見分けなんてつかないんだが……ボスはどうやら白黒ハッキリさせたいようでな、曖昧な返答をした妖怪を中心にオブリビオン化が急増してるそうだ」
 ボスオブリビオンは、紙をひらりと落として提示する。
 返答に応じて、オブリビオン化させたり見逃したりをしているようだ。
「目的は仲間集め。寂しい思いを経験した魂、とかなんだろうな?」
 飛び交う骸魂を大量に引き連れているので、姿が全くみえなくとも近くにいることがすぐわかる。
「古ぼけた、木造の学校。その校庭でオブリビオン化が相次いているらしいとの情報だ」
 雑草だらけの廃校。
 誰かが通う場所ではなく、過去の遺物。
 学ぶものがいることはなく、隠れ潜む妖怪のたまり場だった。
「取り憑かれた最初の個体も続々増えた個体も、どちらも狐の妖怪という話。ただの獣ではなく霊獣に近いので、放ッておくには厄介な存在なんだ」
 悪い狐の魂、妖狐の悪事はとめどない。
 仲間が増えに増えたら、次は戯れ混じりに殺戮が始まる可能性がある。
「世界のバランスを壊してまでする仲間集めは止めてやらないとなあ?」
 世界の滅亡まで突き抜けて実行しようとするのが悪い狐であるともいえるだろう。
 幽世にたどり着けなかった無念の魂から、元の狐たちを救出するのが、大きな目的だ。
「元々どんな身分の妖怪や霊獣だとしても、全部が全部悪いわけじャねェからな」
 飲み込まれた妖怪を救出してやることが出来るのは猟兵だけ。
「これ以上大事になる前に、止めてやろうぜ?」
 無事に概念を取り戻した後には、彩り鮮やかな世界でもふもふ時間を一緒に過ごしてくれる事だろう。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 都市伝説の『赤い紙、青い紙』をフレーバーで撫でる系の依頼。

 狐火のように沢山の霊魂が灯る夜の世界。
 この依頼上でボスに消された概念は、OPの通り【色】。
 全ての色が消えた「白黒の世界」。

 カクリヨファンタズムのオブリビオンは、「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」なので、目に見えているオブリビオン姿ではなく、飲み込まれる前の本来の姿が存在します。飲み込まれた妖怪は、オブリビオンを倒せば救出できます。
 この依頼の場合は、霊獣、または妖怪の、狐が大本の存在です。尻尾がいっぱいあったり、巨大だったり、普通サイズだったりなんか一杯いるキツネ村。

 三章は日常、世界の終わりの回避に喜んだもふもふと、もふもふ時間がすごせます。この章でお呼び頂いたときのみフィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)がお話相手を努めます。この地には妖獣、神獣、霊獣なキツネ系しかおりませんが、ご自身が連れている動物はお連れいただいても、構いません。
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第1章 集団戦 『狐魅命婦』

POW ●神隠しの天気雨
【にわか雨】を降らせる事で、戦場全体が【視覚を惑わせるあかやしの森】と同じ環境に変化する。[視覚を惑わせるあかやしの森]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD ●フォックスファイアフィーバー
対象の攻撃を軽減する【九本の尾を持つ黒狐】に変身しつつ、【無数の青い炎の弾幕】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ ●天狐覚醒
【神のごとき神通力】に覚醒して【九本の尾を持つ白狐】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●勧誘に次ぐ勧誘

「ああ!今日を占う手札を落としてしまったわ?どうしましょう」
 古びた校舎の上に気配が生まれ、声が聞こえた。
 君の目の前に、雨でも降るようにハラハラと大量の紙が落ちてくる。
 カードのような紙ではなく、不規則な大きさの和紙。
 目に映る色は、白と黒。それだけだ。
 恐らく本来は、白でも黒でもないだろう。
「ねえ?足元のその紙は、何色かしら」
 相手が妖怪でないことを、オブリビオンは悟っている。妖怪でなければ霊魂を下ろすことはできない――しかし遊びを求めるように、そう問いかけたのだ。
 狐魅命婦(こみみょうぶ)がくすくす笑って、色を問いかける。
 年若い娘のような姿で、尾を揺らしトンと校舎の上から降りてくる。
「もし欲しいならあげるわ?何色でも、幾つでも」
 オブリビオンの周囲に骸魂がひゅうひゅうと音を立てて、飛び交って。
 紙を大量に敷き詰めて、淑女の微笑みを浮かべた。
 獣の耳をバサリと揺らし、首を傾げて答えを聞き落とすまいと君の答えを待っているようだ。顔は確かに笑っているが、目元が不思議と一切笑ってない。
「でもいらないというなら、……そうね?空狐とも呼ばれた事の在る私に容易く遊ばれないようにすることね?」
 神通力を自在に操りに、周囲の空気を怪しく震わせる。
「ほおら、私と遊びましょう?」
 猟兵へと静かに手招きする仕草は、年老いた老婆がするそれに似ていた――。
十津川・悠
白か黒か まぁなんというか極端…というよりかはシンプルというべきかな
どっちにしても略奪はよろしくないね。僕が言うのもアレなんだけどさ

だから~奪い返しに行くというより奪ったならこっちも奪うかな。この場合

で、目の前にいるものに対しての返答はいらないでしょう。
狐火?にわか雨?狐の嫁入り?それが何だってんだ。

そっちがその気ならこっちは嵐じゃ。弾幕張ろうものならこっちも弾幕。キツネ狩りの時間だよ


●ワイルドハントの行進

「ふうん……白か黒か」
 十津川・悠(強化人間のゴーストキャプテン・f26187)の仰ぎ見るカクリヨファンタズムに彩りは無い。
 何もかもが白と黒、それだけだ。
「まぁなんというか極端……というよりかはシンプルというべきかな」
 足元に散らばる紙も、空も、木造の校舎もどちらかの色だ。
 朽ちている様子ことみてとれても、本来が何色なのかは全くわからない。
「綺麗よねぇ?2つの色しか無い風景は」
「趣はあるだろうけど……どっちにしても略奪はよろしくないね」
 ――僕が言うのもアレなんだけどさ。
 海賊業を嗜む身としては、略奪はわりと身近なことだ。
 全否定こそできないが、世界を相手に略奪は少人数の手でも余るだろう。
「だから~奪い返しに行くというより奪ったならこっちも奪うかな。この場合」
「この体の持ち主を、略奪する?そう、そちらがその気なら……」
 狐魅命婦の姿が徐々に黒い色へ代わり、尾の数がゆらりゆらりと揺れる度に増える。ひとつ、ふたつ。揺らす度に、どんどんと深い闇の色へ。
「フォックスファイヤーフィーバァータァーイム!」
 九つの尾を生やし、尾の先に青い炎、狐火を灯す。
 無数の青い炎のぼ、ぼ、と地面に穿つように弾幕を展開し、悠の動きを制限して近づかせない。
 何しろ足元に無数にあるのは紙だ。よく燃える。
 自然発火で火力を上げて、防御用の護符としても効果を齎しているようだ。
「私……あなたの返事を聞いてないわ?足元の、それは何色かしら」
「目の前にいるものに対しての返答はいらないでしょう?」
 青い炎を前にしても、悠はひるまない。
 奪うと宣言した悠は問われた色を答えず、紙をぐしゃりと踏む。
 色を確かめることはない。
 紙があったことすら眼中にないとアピールしてニヤリと笑った。
「狐火?それがなんだってんだ。そっちがその気なら……」
 手を掲げ、呼応する骸魂の群れが悠に導かれ、ゆらりゆらりと朧気な姿を実体化させていく。
 亡霊達の狩猟会の開幕を、その手が告げる。
 ゴーストキャプテンの名に置いて。
「こっちは嵐じゃ。弾幕張ろうものならこっちも弾幕。キツネ狩りの時間だよ」
 幻とも悪夢とも見紛う、オブリビオン化し眷属を率いる死者を率いる亡霊の王、ワイルドハントと化した悠。
 手を下ろすと同時に、亡霊たちの弾幕一斉射撃が始まるのだ。
 敵が防御を取るなら、攻撃で攻めた立てる。それが海賊。
 それが、奪う者の在り方だ。
 王の合図、――嵐の夜が来る。
 狩猟具は牙を向き、傍らに馬と猟犬を連れて。
「終わった頃には全ては夢幻と見間違うほど」
 狐火の弾幕を尽く打ち砕き、問いかけてきた命婦の顔を夢幻の向こう側に置いてきた。抵抗も虚しく、弾幕を躱す術はなく、どさり、と倒れる姿が煙の向こう側に、見えた気がした。骸魂が飲み込んだ妖怪から離れて、逃げるように浮かび上がり、少し離れた辺りで砕けて消える。
「悪い夢でも、夢なら眠ってる間にみるもんさね」
 帽子を指でくい、とあげて。
 嵐の夜を通り過ぎた雨の色すら眺める余裕をなくした妖怪の魂を、ただ見送った。
成功 🔵🔵🔴

メルステラ・セレスティアラ
色の無い世界は何処か不気味さを感じる
視界から入ってくる色という名の情報は大切なものなのね
モノクロの世界から必ずや色を取り戻してみせる
本来世界は色溢れた綺麗なものなのだから

私は答えないわ
だってその問いに正解などないのでしょう?
唯一の解答は『貴方を倒す』ことだけかしら

【浄化】の力を乗せて夜色の炎を発動するわ
【全力魔法】で炎を紡ぎ、ばらまかれた紙もろとも延焼させましょう

相手の攻撃は【全力魔法】で防御の魔法陣を展開しましょう
【多重詠唱】で効果を更に重ねるわ


●モノクロ夜想曲

 色の無い世界。
 ふわりと髪を揺らす風にも、何のぬくもりも感じられる気がしなかった。
 メルステラ・セレスティアラ(夢結星・f28228)の見る世界には、郷愁より感じるものがある。
 ――何処と無く、不気味ね。
 目を閉じれば形を取り戻すものか?ものは試しと、空を見上げても星々が広大な黒に細々とした白の点滅を僅かに灯すだけ。
「……視界から入ってくる色という名の情報は、本当に大切なものなのね」
 優しく広がる夜の空も妙に、味気なくしている世界の終わり。
「モノクロの世界では素敵なものに出会えても心から情報として受け取れないわ?」
「どうかしら。白と黒、その魅力に目醒める機会という出会い方もありましてよ」
 ゆら、ゆらと尾を揺らす狐魅命婦がメルステラの言葉に応える。
「こうなったのだから、此れを受け入れて色を忘れるのも一興……ふふふ」
 星を描く様に指を空中で動かし、ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、とそれぞれの頂点に骸魂を配置して、笑う。メルステラと距離を別つように描いたそれは空狐と呼ばれた事のある狐魅命婦に溶け込んで爆発的に尾を増やす。
 ゆらり、ゆらりと別れて増える尾の数は、風が無くとも揺れ動く魔性の九つ。
 ――モノクロの世界から必ずや色を取り戻してみせる。
 目の前で笑うオブリビオンの毛色が物理的に変わったように思うが、色の無い世界では覚醒したその姿に大きな変化を見て取れなかった。
「本来世界は、色溢れた綺麗なものなのだから。その姿ももっともっと鮮やかなのでしょう?」
「天狐たる私の、白狐の白さは……そうね、今の世界では言い表せないわ?」
 質問を質問で返す、狐魅命婦。
 ゆらゆらと、全ての尾を揺らし。
 白色の狐火を絶え間なく燃やして、別の骸魂を引き連れて。
「ねえ?貴方の未来を占って差し上げましょう。どれでもいいわ?教えて頂戴?」
 地を蹴る彼女は足元の和紙を数枚拾って、恐るべき速度でメルステラ迫り、見せつける。
「"これはどんな色かしら"?」
 襲うではなく、問いかけてきた。
 からかっている。遊んでいる。
「私は答えないわ」
 バッサリと、答えを拒否するメルステラ。
「だって、その問いに正解などないのでしょう?」
「あら。どうしてそう思うのかしら。ただの興味の問いかけかも知れないのに」
「唯一の解答は……きっと、『貴方を倒す』ことだけかしら?」
 両の手を広げて揺らめく夜を紡ぐ。
 モノクロ世界に、メルステラの手元に夜色の炎が燃える。
「紙の色を聞いたのだったかしら。なら……」
 全力の魔法で生み出された炎が、紙を撫でた。
 それぞれ60を越えた炎が燃える勢いを紙に移す。
 彼女が瞬時に拾い集められた紙は一部。
 まだまだ足元にばら撒かれた和紙が点在していた。
 黒い黒い色が、白色の天狐にして九尾の周囲を黒々塗りつぶしていく。
「倒すではなく、燃やすの間違いではなくて……ッ!」
 白色の炎を手当たりしだいにメルステラに投げつける。
 このままでは燃やし尽くされるだけ、そう感じたゆえの恨み節だ。
「そうともいうかも知れない」
 狐魅命婦の炎の訪れを、感じていたメルステラの足元で防御の魔法陣が阻む。
 キラキラと輝くそれは、メルステラの魔法の残光か。
「でも。燃やし尽くして"なにもない"にしたのなら。色を答える必要は、無いものね?」
 魔法陣の構築と同時に、多重の詠唱が紡がれる。
 延焼を続ける夜紡。
 それらを一つの場所に合体させて、狐をそのまま業火で飲む。
 十分過ぎる豪炎の中に静かな静かな夜想曲が、聞こえるか。
 立ち塞がった狐は啼く事はない。
 君と遊びを共にした魂は、フッ、……と、世界より零れて消えた。
大成功 🔵🔵🔵

樹神・桜雪
白と黒だけの色彩。
別に嫌いじゃないけど、それだけじゃ味気ないね。
やっぱり色がある方がいいな。きっとここも色がある方がすごく綺麗だ。
ね、お姉さん。ボクとも遊ぼうよ。
……この紙……青いのかなあ。

何して遊ぼうか?追いかけっこ?かくれんぼ?
これでもそれなりにはやれるつもりだよ。何が良い?
弾幕勝負なら弾幕勝負でも良いよ。
弾幕とは少し違うけれどボクの氷、避けられるものなら避けてみなよ。
天狐覚醒が来るなら頑張って避けてUCで反撃するね。

楽しいね。もっとボクと遊ぼうよ。ね、お姉さん。

遊んで遊んで、疲れたらちょっと休みなよ。
ボク?結構元気だよ。なあに、まだ遊ぶ?いいよ。
もっともっと楽しく遊ぼうよ。ね?


エリシャ・パルティエル
白と黒の世界…なんて味気ないのかしら
雨上がりの虹の美しさも
空の青さも夕焼けも
自然の美しさを感じられない世界なんて
猫ちゃんも毛色で判別できないならどの子かわからなくなっちゃう
色を大切な情報として頼っていることが多いって
なくしてから気付くものね

寂しくて仲間が欲しくこんな世界にしたの?
問いかけは答を求めてのことじゃないのでしょう
ただ話しかけるきっかけが欲しかった
色をなくした世界でこの色が何色だったかなんて誰にもわからない
ただあたしが好きなのは深い青よ
夜明け前の空の色
あなたは好きな色をなくして平気なの?

幽世にたどり着けなかった無念の魂
安らかに眠りにつきなさい
妖怪たちも世界に必要な色彩も取り戻して見せる


●モノクロのあお

 ほかの猟兵が災害のような現象を起こしても。
 古ぼけた木造の学校の、影を深く長く刻んだに止まる。
「白と黒だけの色彩……」
 樹神・桜雪(己を探すモノ・f01328)は伏し目がちに世界の在り方を眺めていた。
 雑草だらけの校庭の上に散らばる紙、紙、紙。
 モノクロ世界に、微笑むオブリビオンの集団の尾が揺れている。
 その二種のみで、被害の大きさは目に見える情報以外に見当たらない。
「なんて味気ないのかしら」
 エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)が夜の世界に思いを馳せる。
「例えばそうよ、雨上がりの虹の美しさも。空の青さも、夕焼けもないのよね」
 既に概念が消え去っているというのだから、今宵が終わりを告げて太陽が登ったとしても降り注ぐだろう雨に色はなく、見上げた空は黒から白へと色を変えるだけだろう。虹の七色など夢にも遠く、変わっていく景色の間の灰色が存在するか伺わしい。
「無くても困らないでしょう?曇りの認知もなくなるの。いつか過去になって消えるかも知れないものだもの、今消えても順番の問題でしょう」
「そういう……問題じゃないの」
 目を伏せたエリシャが思い描く風景の以外にも、彩り鮮やかである事が普通の情景は多い。
 例えば誰かの瞳のや髪の色。どこか郷愁を抱かせるを越えて、郷愁だけをゴリ押ししてくる世界の終わりなど、ただずっと――胸が痛いだけだ。
「猫ちゃんも毛色で判別できないならどの子かわからなくなっちゃう」
 首輪や鈴、それらでの識別を言い出しそうな狐魅命婦の言葉を遮ってエリシャが続ける。
「色を大切な情報として頼ってることが多いってことなんだわ」
 ――なくしてから、気付くものね。
 無くなって初めて気がつける事がある。
 そういう意味では、色の失われたカクリヨファンタズムは、エリシャに興味深い体験を齎している。これが、世界の終わり(カタストロフ)であるならば終わりの終わりを提示しなければならない。
「ボクは……うん。別に嫌いじゃないけど、これだけじゃ味気ないね。確かに」
 じゅりり、と耳元で主張する肩に止まるシマエナガな相棒も、今日ばかりは囀り以上の声色で応じてくる。
「相棒がこの世界に溶け込み過ぎちゃうし。やっぱり色は色としてある方がいいな」
 桜雪が首を振る。古ぼけた校舎の向こうにあるのは、森や林、そしてやはり古ぼけた町並み。
 UDCアースを少し古くしたような、似て非なる光景が夜の向こうに広がっていた。
「きっと。ここも色がある方がすごく綺麗だ」
 すっ、と得物を握る手に色を取り戻す"遊び"の開始を誘い入れるように、薙刀の先、透き通る薄桃の刃を揺らす。
 狐の、狐魅命婦の尾の揺れ方に合わせるように。わざと、"挑発する"ように。
「ね、お姉さん。ボクとも遊ぼうよ?」
「なんだかんだで応じてくれるのね。――嬉しい」
 オブリビオンが示すのは足元に散らばる無数の紙。
 エリシャと、桜雪が示されたのは同一ではないだろう。どれを答えても答えてくれるなら嬉しいと、狐魅命婦はニコニコ笑って遊びに乗った。
「どれでもいいのそれは、"何色"なのかしら」

「そう、だねえ……」
 じゅりりと鳴く相棒の姿は普段とあまり変わっていない事に安堵する桜雪。
 和紙のどれでもいいと言われては、今度は脈絡なく選ぶほうが大変だ。
「相棒はどれがいい?選んで、いいよ」
 チチチチチ!肩口から羽撃いて、ひとつひとつ見定める相棒の尾羽根の揺れようをのんびりと見守る様はまるで戦闘中ではない。
 遊びに付き合う、ほのぼのとした風景のそれだ。
 頭上も、狐魅命婦の周りにも骸魂がふよふよと飛び交っていることで、全く普通のそれではない。
 敵が"遊ぼう"というのだから、それに存分に応えてもいい気がした。
「……ねえ?寂しくて仲間が欲しくてこんな世界にしたの?」
 紙の色を答える前に、寂しい色彩の世界を現在を壊してでも創り出した狐に問いかけるエリシャ。
 正しくは、狐に誘われた仲間たちに、ではあるが。狐魅命婦は耳と尾をバタッバタッと気を良くして揺らす。
「そうねえそうねえ?限られた魂しか形を持てないなんてあんまりよ。夜はあやかしの時間じゃない?死んだ魂だけ流れ着いても、此処にあるいつか忘れられた子が暮らしているのを眺めるだけよ。そんなの……」
「問いかけは"答"を求めてのことじゃないのでしょう」
 ぽろぽろと本音のような音を零す古き狐の魂を、エリシャが言葉にて誘導する。
「ほんとうは見て取れない"誰か"なのだものね、ただ話しかけるきっかけが欲しかったのでしょう?」
 色の概念をなくしてしまえば、世界でこの色が何色であったかを誰にも知ることが出来ない。
 知っていたとしても、モノクロの二色だけでは、色の詳細を証明できない。
 ――ただ、あたしがすきなのは。
「これの色はきっと深い青。夜明け前の、空の色よ」
「相棒。それがいいんだね?……ええと、…………この紙……青いのかなあ」
 二人の猟兵が、別々に拾い上げた和紙。
 エリシャのは小柄に手元に収まる大きさで、桜雪のは相棒が小さきクチバシに捉えて持ってきた。
「どちらも"あおい"?それが答えね?」
「そう。でもあと一つ教えて。あなたは、好きな色をなくして平気なの?」
 聞いた"答え"の正しさを、狐魅命婦も証明することは出来ない。
 しかし、空狐が更に神が如き覚醒を起こしたならば。
「平気よ勿論。順応して新しい世界を生きればいいだけだもの!さあ今から――答え合わせだわ!」
 ぼ、ぼ、ぼ、と狐の尾に炎が纏われる。
 陽炎が移ろうように白く燃える炎が覆うと、不思議の現象として尾が増える。
 裂けて別れたではなく、蜃気楼のように揺れるリズムが異なる尾が、白炎に包まれて増える。骸魂を僅かに霊力の一部に取り込んで、九尾の魔性と化した命婦がとん、とん、と校庭を軽やかに跳ねる。
 りん、りん、と跳ねる動作に合わせて澄んだ鈴の音が鳴る。
「――占った結果、"視えた"わ?貴方の紙は、確かに空ね。あおいみたい」
 軽い手拍子と同時に群がるエリシャへ和紙の群れ。足元や、胸元に隠し入れていた残りの和紙も神通力に導かれてバサバサと飛び出した。
「そらのいろ、は一枚では至れないでしょう?好きなだけお持ちなさいな!」
「何をして遊ぼうか……聞こうと思ってたけどそれは追いかけっかな」
 ばさぁあああと雪崩れてくる紙は、濁流のように視界を化かして増え続ける。
 水ではないのに、壊れた水道のようにどんどん増える。
「いまから相棒が逃げれば、かくれんぼもいけるね(嘘だけど)」
 紙の弾幕を目の前にして、桜雪はエリシャより前に立つ。
 悪意は確かにあるだろうが、魂は恐らく完全な悪ではない。
「これでもそれなりにはやれるつもりだよ?選ばせてあげる。なにがいい?」
 選ぶ権利を天狐に譲るものの、桜雪の薙刀がいつのまにか手元に握られていない。
「そうね、そうね?どれも楽しそう。小さな貴方もそういうのがお好きなのかしら」
 シマエナガも遊び仲間とでもいうように、妖狐の悪意は増長していく。
 増えていく紙がベタベタと寄り集まって鎌首をもたげる。
 神通力で作り出す、蛇のごときなにか。狐火を纏った物々しさは異常だ。
「楽しそうだね、お姉さん。質問に答えて貰えて嬉しかった?」
「とっても!」
「そう。……ならもっとボクと遊ぼうよ」
 ――お姉さん。
 言いくるめるように巧妙に、薙刀の行方を隠した桜雪のユーベルコードが走り抜ける。どこを?鎌首を擡げた和紙の蛇、その腹を含めた内側から。
 氷の花が倍以上の質量で咲き誇り吹き出すように溢れ出し、紙の群れはたちまち凍りつく。濁流に化ける力も校庭に縫い付けて、氷の庭を広げて天狐の足を物理的に縫い止めた。

「……楽しい気分になれた?大分、力を使ったんじゃない?疲れたらちょっと休みなよ。そういえばボクの紙の色は、どうだったの?」
「質問が沢山。ふふ、貴方の色は不正解よ、それは白。でもよく見たほうがいいわ」
 足元より凍りついている命婦はその場を動けないが、桜雪が持ってる紙をまじまじ覗くとなにかおかしい。
 独特な質感に、ところどころに穴がある。
 つぶらなワンポイント。なにか見たことの在る、配置だ。
「……相棒みたい」
 ピンときたのはシマエナガ。
 相棒に啄まれて、和紙で出来たシマエナガのように、みえる。
「それは私の仕業ではないけれど、答えは一つじゃないとその子が言っているのではないかしら」
 じゅりり、と満足げに返答する桜雪の相棒。
 まだまだ元気と主張するシマエナガに、頷いて。
「ボクはまだまだ元気があるよ?なあに、まだ遊ぶ?」
「……満足したわ大丈夫。そろそろ素直に還らないとね」
 エリシャの右掌、星型の聖痕から聖なる光が昇る。
 夜の終わりを教える、どこまでも白いそれ。
「幽世に無事に辿り着けなかった無念の魂、どうか安らかに眠りにつきなさい?」
 命婦の尾がひとつ、ひとつと光に消えて減っていく。
 元の数に戻った頃には、眠りが命婦の終わりを誘っていた。
 ――妖怪たちも世界に必要な必要な色彩も取り戻して見せる。
 光を浴びた狐魅命婦の膝が崩れて、少女の姿は倒れ込む。
「次に逢ったときは、もっともっと楽しく遊ぼうよ、ね?」
 チチチ、と控えめに鳴くシマエナガの声が、無念の魂に届いたかどうか。
 飲み込んだ身体から離れて、今しがた遊んでいたハズの魂がすぅう、と黒々とした空に溶けて消え去った。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『飯綱多摩緒』

POW ●飯綱の法
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【風】属性の【真空波】を、レベル✕5mの直線上に放つ。
SPD ●狐憑き
攻撃が命中した対象に【狐の霊】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【発狂状態に陥る精神干渉】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ ●飯綱使い
【かつて自身を使役した飯綱使いの幻影】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナギ・ヌドゥーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●進撃モノクローム

 校庭に生える木の上からざんねん、と言わんばかりの大きな溜め息。
 無数の骸魂がひゅんひゅんと飛び交っていることで、そこにオブリビオンである何者かが居ることは明白だ。手元や傍に身体を持たない死者の魂を浮かべているのに、悲しそうな顔をした誰か。
「あれあれ……ぼくの仲間をみんな還してしまったの?」
 りん、となる鈴を付けていた空狐の姿は何処にも見当たらない。
「折角ぼくみたいな寂しい魂がでないように、骸魂を導いてきたのに」
 白と黒、ただそれだけの世界に変えた元凶はこの狐だ。
 かさりとも音を立てることなく、木の上に立つ。
「死んだ魂が留まってはいけない理由はなにかな」
 何処からともなく取り出すものは、"概念"としか表現できない朧気なナニカ。
 奪った"概念"そのもの、であるのかもしれない。
「まあ重く考えることではないよね。誰かと居たいだけでも死んで身体を無くしたらそこまでなんだし……」
 性別を感じさせない幼い口調。
 仲間としてこの場にあった狐魅命婦と異なり、更に華奢で小柄なその体躯。
 少年よりは子供、なその姿。頭上と周囲を飛び回る無数の骸魂に視線を僅かに向けて、飯綱多摩緒はその言葉を口に出す。
「ところで……"赤い紙、青い紙。どちらがほしい?"」
 白黒ハッキリさせたい悪い魂は、そう問いかけた。
 沢山増やした狐仲間の魂を還されては、遊びだけで問うものではないかもしれない。目の前の狐は、世界の終わり(カタストロフ)をひとりで連れてきた獣。
 猟兵に対する敵意は飛び交う骸魂の集まり具合で明白だ。

 ああ――ひらり、ひらりと何処からともなく二枚の紙が目の前に。
十津川・悠
導いた、ね…
色を奪っておいてそのくせ反省の色なし。いや死んだ魂がまだ残りたいが故ならまだ憐憫からの犯行か。

ま、ゴーストキャプテンとしてはその在り方は理解できる。というよりかは理解しないといけないというべきか

だがまぁしかしだからこその慈悲で殲滅する。
赤い紙、青い紙…どちらが欲しいか。なら答えは簡単だ。
白黒はっきりつけたいんだろ?そしてこっちは海賊…『両方』だ。

さ、海賊らしく行こうか皆
『ひとつ残らず根こそぎ奪い尽くせ』


●似た立場

 顔にかかる髪を無造作に払いながら、獣の問いかけを聞いた。
「"導いた"、ね……」
 十津川・悠が引っかかったのは、その一点。
「色を世界から奪っておいて、そのくせ反省の色なし」
「変なことをいうねえ。どこをどう反省しろっていうんだい?」
 ゆらりと尾を揺らす飯綱多摩緒に、悪意を巻いた意識はない。
 ただ事を成す手段を選ばなかっただけだ。
「世界は煩雑で複雑な色ばかり。醜いったらないよねえ?指の数ですら多いと思うよ、ぼくは」
 世界を二種類の色にして、問いかける色はまた別の色を指定する。
 捻くれた問いかけは、何処までいっても子供心を知る妖怪だとでもいうのか。
「……いや死んだ魂がまだ残りたいが故ならまだ憐憫からの犯行か」
 似た生き方をした縁を辿ってきて周囲の憑依を導いたというならば。
 大きく息を吐きだして、悠は笑い声を零す。
 オブリビオンの在り方を笑いたかったわけではない。
 ただ、不器用なことだと思ったのだ。
「ま。私はこれでもゴーストキャプテンなんでね。その在り方を理解しないでもないんだ」
 ――というか、"理解しないといけない"というべきか。
 海の藻屑となって死んだ死者を従える者としてだけで言えば、死者を連れるという意味で同じだ。死者の声を聞いて導いたかも知れない。そういう意味で、とても重なる相手と言うだろう。
 ――だが、まあ。しかしだからともいうけどね?
 じゃり、と校庭の砂を派手に踏み鳴らし、悠は告げる。
「慈悲で殲滅を此処で宣言するよ」
 挑戦的に睨みつけて、今度は不敵に笑う。
 志を似た者としたとして因縁を残し合う戦い方は、海賊らしくない。
「そうそう、赤い紙、青い紙、そのどちらが欲しいか問い話だったね」
 わざと足元に置かれた黒と白にしか視えない紙。
 答えを聞くまで動かない気配をだす多摩緒。
 これを戦いの開戦を告げるものとするなら、――答えなければならない。
「うん。どちらがいいかな」
「答えは簡単だ。アンタ、白黒はっきりつけたいんだろ?こっちはさっき告げたはずさね。私はキャプテン、『海賊』なんだ」
 悠の腕がゆるりと上がる。
「答えは、――"両方"だよ」
 顔の傍で、指を構えると同時にぱちんと鳴らした。
 ぶわぁああと悠の後方に控え佇むようにカトラスとラッパ銃で武装した海賊を乗せる海賊船が落ちてきた。突然の召喚に驚く多摩緒だが、地獄の雄叫びを盛大に浴びて強敵を相手にしたと察した。
「さ、海賊らしくいこうか皆。一つ残らず、根こそぎ奪い尽くせ!」
 両手で印を組み、ぶつぶつと呪言のように早口で何かを唱えはじめる。
 幽霊海賊の群れが一斉にカトラスを手に自身を弾丸として多摩緒へ突っ込んでくる。錨は降りて、キャプテンの号令を受けた彼らに殲滅以外の目的はありえない。
 ぼぼぼ、と狐火が集まりゆら、と半透明の陰陽師のような風貌の何者かが飯綱多摩緒の後ろに佇む。
「死者を遣うのが君なら、ぼくはぼくを使うだけだよ」
 飯綱使いの幻影が、音を紡いでいる。
 多摩緒を手駒として操ることで戦闘力を強引に引き上げて、亡霊の群れを俊敏な脚力で右に左に、大人数を足技ひとつで蹴散らしていく。
「彼も、先代もその前も。ぼくを置いていったんだけどねぇ……」
 幻影の腕の動きに連動するように、飛び退く多摩緒の足にラッパ銃が炸裂。
 がくん、と膝が砕けオブリビオンが転倒した。
「それが仲間を求める理由かい?」
「ぼくは誰かと常に居られる身ではないからねえ。……十分すぎる理由さあ」
 脚を怪我した多摩緒が自身の脚を撃った幽霊へ強引に迫る。
 力任せに海賊の胸を掌底で貫き――消し飛ばした。
成功 🔵🔵🔴

樹神・桜雪
会えるものなら会いたい人はいるけれど、死者は死者のあるべき場所へ。
たまに出てくるくらいなら良いけれど、ずっとこちら側にいるとどこにも行けなくなっちゃうよ?

赤い色、青い色、どちらが良いと問われたならば青が好き。
さっきの子と相棒がね。好きに答えても良いんじゃないかと言ってくれた。
だから、ボクの好きな色。澄み渡る空の色、冷たい氷の色。赤はあまり好きじゃないんだ。

そちらが敵意剥き出しなら、先制攻撃を仕掛けるよ。
さっきの子は遊びたがってたから遊び相手をしたけど君は違うみたいだ。殺意には殺意で返そう。
防御はあまり考えないで捨て身で攻める。懐に飛び込んでUC発動させちゃおうか。
ボクごと吹き飛んじゃえ。


●あおいあおいとおきひに

 何処からともなくじ、っと見ている視線を感じて、飯綱多摩緒が顔を振る。
 問いかけた色に答えるではなく、緑の瞳で静かにただ見つめてくる猟兵。
「ボクも会えるものなら会いたい人はいるけれど……」
 誰かを犠牲にした上で死者が生者の自由を奪う現実。
 樹神・桜雪はゆるりと、飯綱多摩緒から視線を外した。
「此処へ辿り着けなかった死者なんでしょ、君は」
「そうだね。此処に正しく辿り着けなかったよ……悲しいことにさ」
「なら、紛れもなく君は死者だ。死者は死者のあるべき場所へいくべきだね」
 足元の鈴を、りん、と鳴らした多摩緒が表情を険しくする。
「……ぼくに、今すぐ去れというのかな」
「少し違う、かな?たまに出てくるくらいなら良いけれど、ずっとこちら側にいる事が問題なんだよ。どこにも行けなくなっちゃうよ?」
 死者の魂がどこへ行き、どこを行き交うかはさほど考えたことはない。
 此処に死んで渡ってきた魂が何処へ行こうとするのかも。
 悪さをしたあと、死霊が何をしたいのかも。
「何処に行くつもりもないけれど、君はぼくに去るように促したいんだね。よくわかったよ」
 曖昧に頷き、脚をヒョコつかせながら足元に落ちたままになっている紙を拾い上げて、桜雪に問う。
「……じゃあ教えてよ。君は、"赤い紙と青い紙、どちらがいい"?」
 骸魂のように自前の狐火を揺らし、ごおうと燃やして朧気な像を結ぶ。
 多摩緒の背後に、桜雪と同じくらいの背丈の影が召喚された。
 口笛でも吹くように何か、怪しい気配が多摩緒の身体を包んでいく。
「モノクロ世界だと見てわからないんだけど……青が好きだよ」
 桜雪の返事に合わせ、多摩緒の手元で片方の紙がボッ、と燃やされて消失した。
「じゃあ赤い紙はいらないね」
 投げて寄越す紙は桜雪の目には黒く映る。
「うん。いらないよ。これは青いんだね?」
「どんな青だって想像する?」
 多摩緒から溢れ出してくる気配が殺意だと即座に察し、桜雪は殺気で応じる。
「……さっきの子と相棒がね。好きに答えても良いんじゃないかって言ってくれたんだ。だから――」
 その相棒のシマエナガは、事前に上空へ逃していた。チチチチ、と遠き空の上から今もずっと"好きにするように"と促しているのが、桜雪の耳に届いている。
 先程口に出した言葉に嘘はない。死者は死者として、居るべき場所に戻るべきだ。
「ボクの好きな色。澄み渡る空の色、冷たい氷の色。それに通じる青だといいなって。赤はあまり好きじゃないんだ」
「じゃあ君自身もあおーくなっておんなじ色になってみたらいいんじゃないかな?ぼくが協力してあげるよ!」
 瞳孔を細めた多摩緒が死を呼ぶほどに鋭利な爪を片手に構え、背後に召喚した幻影の支援を受けて地面を蹴った。
 真っ直ぐに向かってくるスピードは、一人では到底到達し得ないもの。
 支援を受け、足の痛みを無視して身体を繰る誰かが居て為し得る技。飯綱使いの行動原理は、多摩緒から完全に離れたものであるのだろう。
 ただ敵対するモノを壊す為の素材として使い、慈悲はない。
「……さっきの子は遊びたがっていたから遊び相手をしてあげたけど、君は違うみたい。その問いかけは殺す内容を選ばせるタイプなのかな」
 雪と雹混ざりの暴風が、桜雪を起点にぶわあああっと舞い上がる。
 殺すために懐へ入り込んできた獣も巻き込んで、後退も前進も許さない。
 全てが白に染まり、時折身を叩く礫。
 モノクロ世界ではどれもが白に染まって吹き荒れだすのだ。
「やあいらっしゃい――ボクごと吹き飛んじゃえ」
 防御の事は始めから頭になかった。故に桜雪は全力でこれを選んだ。雪と風が力を与えて生み出した暴風は、制御されるのを拒むように、現れた時点からどんどんと勢いを増していく。
 "暴風"なのだ。制御のことは、元より考えないままに、選択した。
「ボクを青く染められなくて残念だったねぇ?代わりに君を真っ白にしてあげちゃったよ。早いものがちだねぇ?」
 大量の白に巻かれた桜雪と飯綱多摩緒。チチチチチと遠くの囀り。人の姿をしたどちらもが、殺意も遺恨も何もかもを吹き飛ばす白の濁流に容赦なく――呑まれた。
大成功 🔵🔵🔵

セレシェイラ・フロレセール
還したキミの仲間のことを想うのならば、キミも一緒に還るといい
……ああ、キミは寂しいのか
寂しくて寂しくて誰かと一緒に居たい
だから死んだ魂でも留まっていたいと言うのか
死した魂には行くべき場所がある
どんな理由があってもその理から外れるべきではないね

赤か青か、それならわたしは『両方』と答えよう
赤と青を足した『紫』が好きだよ
これでも創作に携わる身なんだ
今あるものではもの足りない、新しいものを生み出したくなるのは己のサガかな

キミには光の魔法を綴ろう
これはキミに送る『慰め』の光
荒ぶる力を静め、災厄を飲み込め
キミの動きを封じさせてもらうよ


エリシャ・パルティエル
あなたがこの世界をこんなにした
寂しがり屋のオブリビオン?
寂しい魂はちゃんと送ってあげる
あなたと一緒にね

好きなのは青よ
でも白黒の世界の青に興味は持てないわ
寂しさを紛らわすなら色鮮やかな世界の方がいいでしょうに
あたしはね大切な人たちと色鮮やかな景色を見て
綺麗だねって思いを分かち合いたいの
奪われた色彩を返してもらうわよ

当たり前の概念すら変えて世界の終わりを導くほどに
あなたたちは傷ついているのでしょうね
色をなくした世界
そこにあなたの望むものは本当にあるの?

それがあなたたちの声なき叫びなのだとしたら
安らかな場所に送ってあげる
それがあたしたちにできることだから

傷ついた魂がどうか安らかに眠れますように…


●おやすみなさい

「あなたがこの世界にこんなことをした――寂しがり屋のオブリビオン?」
 オブリビオンが悲しそうな顔をしている。
 エリシャ・パルティエルはそう思った。
 背後に朧気な幻影の人影召喚し、寄り添うとするが手は透けるだけ。
 使役されていた過去の主人、その幻影は、無慈悲に戦闘させようと飯綱多摩緒の動きを繰る念で覆う。
 戦闘開始の合図は、"あの"文言と問いかけへの返答。
「そちらが……あなたに関係があった、過去の誰かかしら」
「うん。昔、術者に使役されてた事があるよ、何人も何代も。一族の血が途絶えるまでは」
 "縁"途絶えた事で、姿を見るものが絶えはじめ慌ててカクリヨファンタズムへと逃げ出した。
 これは、――忘れられた事で幽世に辿り着く前に死んだ魂。
 悪い魂でもあるが、根底はただ、悲しい魂なのだろう。
 多摩緒の雰囲気は、どこまでも殺伐と孤独の悲しみが同居している。
「寂しいのは悪いことじゃないよ。還したキミの仲間のことを想うのならば、キミも一緒に還るといい」
 セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)が綻ぶ花をふわ、ふわ、ふわと周囲に浮かべる。まるで夢の住人のような暖かな足取りは、エリシャの問いかけを耳にして、ふと意外そうな顔をした。
「……ああ、そうだよね?キミは、――"寂しい"のか」
 人差し指を自身の頬に当てて、トントンと。オブリビオン化した存在を、見る。
「寂しくて寂しくて、誰かと一緒に居たい。だから死んだ魂でも留まっていたいと言うのか」
 終わった自身の物語を更に自分で続けようとする姿。
 その姿勢は、終わっていてこそ意味はあるが、前進する事は出来ないとセレシェイラは知っている。
 目の前にいるのは、既に過去へと死蔵された物語だ。
「……質問が多いね、君たち」
 怪我をした身体を無視して手元に"概念"としか表現できない朧気なそれを浮かべて。取り戻すべきものを目の前に提示してみせる。
「うんそうだよ。ぼくがこの世界をこうしたんだ――混迷極める雑多な色は淘汰されて、こんなに洗礼された色だけが世界にあるんだよ。綺麗でしょう」
 くるくるとその場で回ってみせる。今からでも手にする世界は変えられる証明。
 小柄な一つの存在が"色"という"概念"を奪うだけで、カクリヨファンタズムの様相が世界の終わりのようにもなる。
 幽世世界にある現代地球で失われた"過去の思い出や追憶"を、激しく損傷させて色褪せかねない破滅の前兆。そんな事をしたにも関わらず多摩緒は、セレシェイラにも似た心が此処に無いような足取りだ。
「死んで終わりなんて、誰が決めたのさ?ぼくにも生き方を選ぶ権利こそ在るべきだと思うんだよね。それに、……皆一度死んでしまえば、生死の区別さえもハッキリすることが出来るよ」
 どうかな、と同意を求める。
 多摩緒は戯れるように、死んだ後誰かの犠牲の上で、終わった後の生を続けようというのだ。
 手始めに、仲間を導いた。
 計画は次へと進み、"色"を奪った。本来ならば此処から狐だらけの行脚が始まり、白と黒の狐火は世界自体、全てを無に還したかもしれない。
 ――違う。死した魂には行くべき場所がある。
「……どんな理由があってもその理から外れるべきではないね」
「ええ。寂しいと思える魂はちゃんと送ってあげる。周囲を漂う魂も、あなたと一緒にね」
 二人の返答は、当然否定だ。
 生者を犠牲に留まろうとする悪い魂を許すことはない。
「質問には答えたでしょう?ぼくからの質問にも答えてくれるよね?」
 "赤い紙、青い紙。どちらがほしいか"。
 多摩緒が胸元から提示する。白と黒。
 問いかけ自体に殺意は全く無く、純粋な返答を求めているようだ。

「赤か青か、だね?それならわたしは『両方』と答えよう」
「……へえ。本当に?」
「赤と青を足した『紫』が好きなんだよ。これでもわたしは、創作に携わる身なんだ」
 セレシェイラの指が空中に何かを書くように動く。
「今あるものでは物足りないと思ってしまうね?」
 ――新しいものを生み出したくなるのは己のサガかな。
 ふふふ、と笑うセレシェイラに、多摩緒の返答が固まる。
 ぼ、ぼ、ぼと狐火を周囲に激しく燃やして、返答にふさわしい手段で手を出す体制を整える。両手と両足の動きを爆発的に高め、準備完了まで後少し。
 問いかけへの返答が足りないと、エリシャにも重ねて尋ねる。
「ねえ、そちらの君は?」
「わたしが好きなのは青よ」
 エリシャは色を答えたが、どちら、と指差して示さない。
 白と黒だけの空を見上げて、代わり映えのしない景色を残念そうに目を伏せる。
「……白黒の世界の青に興味は持てないわ」
「どうして?」
「あたしはね大切な人たちと色鮮やかな景色を見て、綺麗だねって思いを分かち合いたいのよ」
 空想に夢見る色は虹色の色彩より到底華やかだ。
 本来世界はそう在ることが正しい。
「あなたも寂しさを紛らわしたいなら、……色鮮やかな世界の方がいいでしょうに」
「簡単に気持ちが紛れないから、全てこうして無くしたんだよ。いっそ清々しいでしょう?」
「割り切り方が本当に白黒突き抜けてるのね、あなた。奪われた色彩を返してもらうわよ」
 ごぉ、っと地面を激しく蹴る音。りん、と鳴る控えめな鈴の音は空から。
 速度を跳ね上げた多摩緒が返答通りの殺害をしようとする狙いだ。
「奪い返せたらいいね?概念は返してあげないけれど、君たちが望んだものをあげるよ!」
 飯綱使いが手を揺らせば、繰られた動きで機敏に動く。
 走り回り、飛び跳ねる身軽な動きは、子供のように無邪気なものだった。
「奪う?違うわ。キミへは光の魔法を綴るから」
 雑草だらけの校庭に多摩緒が足をついた瞬間に広がる魔法陣。
 白く眩い光が、獣の足をピタリと封じて縫い止める。
「あ、あしが……!!」
「いくら破壊力を増しても、届かなければ意味がないだろう。これは、キミに送る『慰め』の光」
 コォ、と僅かな音を立て煌々と輝かせる魔法陣から迸る光線の乱舞。
「荒ぶる力を沈め、始まりであり終わりの災厄を此処に飲み込め」
 ――キミの動きを、封じさせてもらうよ。
 動きを封じられ、光の檻に捕らわれた多摩緒は悔しがる。
「こういう遊びに対して君たちは予想外なほどになれてるんだ?……悔しいなあ」
「当たり前の概念すら変えて、世界の終わりを導くほどに、あなたたちは確かに傷ついているのでしょうね……」
 エリシャは真っ直ぐに、多摩緒に対して慈愛を持って接する。
 声色に殺意など全く乗せず、ただ、諭すように。
「色をなくした世界。そこに、あなたの望むものは本当にあるの?」
「さあ……どうだろうね?」
 負け犬だと悟りだしたのか、はぐらかすようにして"遊ぶ"。
「これがあなたたちの、声無き叫びなのだとしたら」
 ――安らかな場所に送ってあげる。
 光の檻の外側。多摩緒に、そっと手を向けて。
 右掌の聖痕から、暖かな輝きを溢れさせる。
「これが、あたしたたいができること。世界を巻き込んだ、遊びの時間はもうおしまい」
 エリシャから溢れる光が、多摩緒を包み込む。幾ら抵抗しても光だ。
 両手の爪も、骸魂も防ぐこともかき消すこともできない。
「傷ついた魂が、どうか安らかに眠れますように……」
 一人心を静める慰めと、一人の眠りを誘う優しい祈り。
 2つが合わさった光は目を焼くほどに輝く。
 色がない世界を"白"が際限なく照らす。
 死した魂が留まっていられぬほどの温かい輝きは、同時に悪い魂を眠りへと誘う。
「……ぼくをひとりで、いかせないでよ?此処に漂う骸魂、みんな一緒に…………」
 暖かな光が収束する頃には、祈りに導かれるように瞳は色を映し、静かな夜空に星々の光が仄かに灯る。
 今、ひとつふたつ、流れ星が通り過ぎた。
 古ぼけた色から順に――白黒以外の"色という存在"を、世界が思い出したのだ。
 奪われた概念は光に呑まれて、世界に無事の帰属を果たすだろう。
 迷える沢山の魂も、眠りについて留まり続ける縁を失って、――すっかり消え去ってしまっていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第3章 日常 『もふもふ天国』

POW全力でもふもふにダイブする
SPD動物達と駆け回って遊ぶ
WIZもふもふの毛皮を撫でさせてもらいながらのんびり過ごす
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ミルキーウェイwithもふもふ天国
 色が回帰し始めた空を見上げれば、夜空を横切る光の帯が一筋。
 あれはそう。現代地球では肉眼にて目視するには難しい、星の河。
『……んあぁ~?』
 気の抜けた狐の声が、足元から聞こえた。
 オブリビオン化から開放された霊獣、または妖怪の狐が目を覚ましたようである。
 大きな体躯に三つの尾を揺らし、猟兵と視線が合うと首を傾げた。
『もしかしなくても、……ぼくらが見えてるんだ?わぁ、じゃあ今日は、良い日だね!みんなもその辺で寝てるんでしょう?ほ~ら起きて起きて!』
 もぞもぞと、近場の雑草の中からばさりと耳がたつ。
 ひとつふたつではない。
 他の狐もまた、オブリビオン化から開放されて、今、気がついたようである。
『此処から見えるお月さまはいいよぉ~、まんまるで美味しそう見えるしぃ~~!』
『丁度ねぇ、今日は天の川が見える日なんだよ~?』
『ねぇ一緒に見ていきいなよぉ~!』
 猟兵たちに窮地を救われたのと、狐たちは状況から察した。
 世界の終わりが、回避され、自分たちは助けて貰ったのだと。聞けば、彼らはみんなでお月見するためにこの場所に集まってきていたのだという。
『モノクロじゃない、綺麗なものを取り返してくれたんだよねぇ?』
『君たちのお話を聞かせてよぉ~ねぇねぇ遊ぼ遊ぼ~?』
 前足でてちてちと、月見の誘いを持ちかけてくる。
 お喋りでいて、気さくで物怖じしない陽気な狐の群れだ。
 歓迎ムードをだだ漏れに、狐が次々と寄ってくる――。
セレシェイラ・フロレセール
やあ、ご機嫌はいかがかな?
痛い思いしている子とかいないかな?
ん、大丈夫そうだね良かった
そう、今日は天の川が見える日だったの
ならば尚更、世界に『色』を取り戻せて良かった
そしてお月見とはなかなか魅力的なお誘いだ
それじゃあ、お呼ばれして……一緒に遊ぼうか

狐さんすごいふわふわだね、触ってもいいかな?
もふもふもふもふもふもふ……こ、これがもふもふ天国というものなのか
……さてはあなた自分の毛並みの良さが自慢だね?
撫でられて気持ち良さそう~
人懐っこい笑顔の狐さんにほっこりして、またもふもふもふもふもふもふ

ふふ、この世界の天の川はとても綺麗だね狐さん
お月さまもより輝いて見える
『色』はやっぱり大切なものだね


●Eden

 少し視線を獣に合わせて下げる。セレシェイラ・フロレセールの視線に気がついた狐が愛嬌たっぷりにニッコリ笑った。流暢に口を利き表情豊かな、神獣だ。
 大きな目が興味津々に、君を見ている。
 ふかふかの毛並みは灰褐色で、月明かりから見える姿は白い狐。
 小柄なセレシェイラが屈まなくとも、獣達はなかなかに大きい。
「やあ、ご機嫌はいかがかな?」
 先程まで姿が変わっていた彼ら。
『おかげさまで元気いっぱいさんだよ~!』
「うん。どうやらそのようだ。痛い思いしている子とかいないかな?」
 くるりと仲間に振り向く一頭。
 それに反応する狐たちは尾を軽く揺らしてやはりニコニコしている。
 怯えている個体もなければ痛みを感じている個体も、なさそうだ。
 幽世では奇妙なことだがわりとよくあることなのだろう。
「……ん、大丈夫そうだね良かった」
 ふふふ、と照れるように笑う狐たち。
 穏やかな空気が一気に広がっていく。
『今日は天の川が、きっと綺麗に見えるよぉ~』
 狐たちがセレシェイラを特等席に導くように、前足を揺らす。
 特等席は、狐が囲った色とりどりの天国だ。
 夜で密かに寒々しい体感も。もふもふが囲っていたら、感じるものも、温かい。
「……そう。今日は天の川が見える日だったの」
 見上げる空は白い点々が、瞬くように輝いている。落ち着いて郷愁に身を任せるなら、誰かと居たほうがより一層楽しめるような気もした。
「ならば尚更、世界に『色』を取り戻せて良かった……お月見とはなかなか魅力的なお誘いだ」
 一人で見るのもいいだろう。
 しかし、こんなに勧誘されて断るのは忍びない。
「それじゃあ、お呼ばれして……一緒に遊ぼうか」
『やったあ!ありがとう!』
 セレシェイラから見ても小さなもふもふがどどど、と殺到する。
 遊ぶと聞いて、色とりどりの毛並みの狐が身を寄せてきた。
「狐さんすごいふわふわだね、そしてとっても大胆だ……?」
 殺到されては触れてしまうものだが、いいやこれは、触って欲しさに集まってきている。大歓迎だ、遠慮するなと言われているようで。思わず手が伸びる。
 控えめに触れてみると見た目よりもふかふかで、実に良い手触り。もふもふもふもふもふ……思わず考えるのも放棄してしまうくらいの、魅力的な毛並みだった。
「……こ、これがもふもふ天国というものなのか」
『良いでしょう良いでしょう!人々はぼくたちの事も静かに忘れていったようだけど、"もふもふ"は今も現役なんでしょう?』
 朧気な輪郭を持つ妖狐がいれば、影に溶け込みそうな霊獣がいる。そこに確かにいるはずだが、獣の毛並みの手触り以外はどことなく掴みどころがない。
「そうだね。色んな人が好きらしいよ。……ふふふ、さてはあなた自分の毛並みの良さが自慢だね?」
『分かるぅ?嬉しいなあ、ねね!もっと触ってぇ~!』
 もふもふの尻尾が絡みついてくる。
 一つでも魅力的な尾が、この狐は三つだ。
 手触りの良いビーズのクッションでも、この柔らかさは再現できないだろう。
「(撫でられて気持ち良さそう)」
 人懐っこい笑顔の狐に背中を預けて、もふもふに囲まれながもふもふする手は止まらない。
「……ふふ、この世界の天の川はとても綺麗だね狐さん。眺めも良いし、お月さまがより輝いて見える」
『幽世の月は、誰にも忘れられない象徴だからねぇ。不思議な力があるのかも?』
『美味しそうなまんまるにみえるよねぇ~』
 月と星、そして夜空。
 見て楽しむ彼らは、好きなようにもふもふとされている。
 修行を積み、月の力を得て化術を獲得する狐もあるというので、彼らは天の川を見るついでに、視えない力を蓄えに現れたのだろう。
 空の河と、月はこの日によく、映えるから。
 ――キミたちの、個性の『色』もこんなに色とりどりだものね。
 オブリビオン化を解き、救出した彼らの表情の彩りもまた、空の星々に負けない。
 キラキラと、大きな瞳が星のように輝いていた。
「……『色』はやっぱり大切なものだね」
 空を眺め、常に儚いモノを身近に感じる今この状況。
 この物語の有り様を――感じつつ。
 今日は妙に綴るに多い日だったと、流れ星を眺めながら――微笑んだ。
大成功 🔵🔵🔵

樹神・桜雪
色、戻ったね。やっぱりこの方が安心する。
さて何をしようか。

わあ、狐が沢山。もふもふしてる。可愛い。
ね、抱っこしてもいいかな?少しなら肩に乗っても大丈夫。……頭は相棒の特等席だからごめんね。
空がよく見える場所を教えてくれると嬉しい。

良い場所を教えて貰ったら狐を抱っこして空を見上げる。
吸い込まれそうな星空、すごく綺麗。
この景色が戻ってきたなら頑張ったかいはあったかな。
星に願いをかけるならなにを願おうかな。

……くしゅん。
………さっきの氷嵐、少しだけ寒かったんだよね…。
無茶したつもりはなかったのだけど。
狐さん、もう少し抱っこさせて貰っていい?
相棒も背中を押してくれてありがとう。


●ほしにねがいを

 ただでさえ夜の世界。
 暴風雪に呑まれた後に見る夜空には、骸魂が行き交う姿もない。
 奪い取られた概念戻った幽世は、とても静かな世界だった。
 大量の白の中から樹神・桜雪がパチパチとゆっくりと瞬きする度に、モノクロ世界は落ち着いていく。
 もうたった二色の世界ではなくなっていた。
 それを証拠に、衣服の色が白でも黒でもないと、分かる。
 ――さて、この後。なにをしようかな。
 暫く星空を眺めているとバサバサと舞い降りて来る音がする。
 頭上に乗せたままの雹の塊を蹴って、相棒が特等席にちょこんと羽を休めた。
「ああ相棒。無事に色、戻ったね。やっぱりこの方が安心する」
 2つしか無い彩りよりも、言い表せないほどの沢山の彩り。今は密かに息を潜めた色とりどりの色彩が、夜明けと共に更に多くの色を魅せ始めるだろう。
『あ、起きた~?おはよう』
 おはようおはよう、と集まってくる狐の群れ。
 桜雪が広げた雪の世界も相まって、毛並みが冬仕様なくらいにもこもことしている。立派な胸毛も尾も、もふもふの質量が、資格情報としてもなかなか強い。
「うん、おはよう。わぁ……想像してたより随分と狐が沢山」
 声を掛けてきた狐はさてどれだろう。
 大きな体躯の狐もいるが、手元に抱けそうな程とても小柄な狐も居る。
「……ね、不躾にごめんね。抱っこしてもいいかなぁ?」
『いいよぉ~!優しくしてねぇ~!』
 金色毛皮の狐を抱えてみると、見た目より随分と軽い。
 陽気にへらへらを笑うので、案外悪い気もしない。
 妖獣に類する狐は、術を使って重さを化かしているのだろうか。
 よじよじと、身軽に桜雪の肩口にあがり、次には桜雪の頭の上に登ろうとする狐に対して、相棒がスッと行く手を遮る。
「ツリリリリ!」
「……頭は相棒の特等席だからごめんね」
 もふもふと、手触りのいい毛並みを存分に撫でて、一旦狐を足元へ下ろす。
「此処でも十分よく見えるけど、もう少し空がよく見える場所とか、教えてくれる?」
『いいよいいいよぉ~!ぼくのオススメはねぇ、校舎の上だぁ!』
 へらへら笑って、木造校舎の上に掛けていく狐たち。安全な道を案内しようというのだろう。あまりの大歓迎さに、桜雪は思わず目を細める。

「よいしょ、と」
 校舎の上から見上げる空は、校庭から見上げるよりも空が近く思えた。
 もふもふとした圧力が周囲にあると、見え方も変わるだろう。多分。
「吸い込まれそうなくらい、深い色なんだね。キミたちの世界の空は」
『うん。強い光があまりないからねぇ。幾らでも眺めていられるよぉ~』
 再び胸に抱えた狐が、そう応える。桜雪よりも大きな狐たちが尾をクッション代わりに差し出してくれているので、とても眺めが良い。
 ひとをだめにするかんじの、とてもいいもふもふだ。
「この景色が戻ってきたなら、頑張ったかいはあったかな」
『あ。流れ星!』
「星に願いをかけるなら……なにを願おうかな」
 まるで落ちてきそうな勢いの白い星。天の川から溢れる星たちが、見上げる者があると知ったのか。とめどなく落ちてくるように、みえた。
 ――ねがいごとかぁ。
『ぼくはねぇ、もっと化術うまくなりたいんだぁ』
『君ってば、化術下手すぎて口は狐のままだからなぁ~』
 狐たちの談笑を聞きながら、桜雪も少し考えている。
 どんなことを願っても良いはずだ。
 願いを乗せて、空に流す。叶うか分からないが、もし願うなら何を願うか。
 ――過去のことや親友のこと?
 いつかと思うこと、これは願うことだろうか。もう少し身近で、もう少し夢や希望があるものがいいのだが思考の迷宮は深まり続ける。
 ――ゆめとかでいいし、欠片(きおく)でも、ヒントでもいいんだけど。
 思い出せたらいいのに。それを願うくらいなら、自由だろうか。
 思考を一つの方向に絞ったあたりで、身体が震えた気がした。
 ……くしゅん。
『……風邪ひいちゃった?寒い?』
 くしゃみの音を聞きつけて、狐たちの耳が一斉に桜雪の方を向いた。
「……うん。さっきの氷荒らし、少しだけ寒かったんだよね」
 無茶したつもりは全く無かった。
 しかし結果的に、氷嵐に飲み込まれていた間大分身体を冷やしてしまったのだ。
「狐さん、もう少し抱っこさせて貰ってていい?」
『いいよ~!』
「そうだ。言わなきゃって思ってたんだ、相棒」
「じゅりり?」
「背中を押してくれて、ありがとう」
 頭上より舞い上がったシマエナガ。
 くるりくるりと回っていたかと思いきや……。
 ぎゅん、と唐突に向きを変えて桜雪の頬をつつき出す。
 わりと容赦ないつつく攻撃だ。ちょっと痛い。沢山の愛嬌のあるもふもふへ桜雪が浮気している様が――そろそろ我慢の限界だったようだ。
大成功 🔵🔵🔵

エリシャ・パルティエル
フィッダを探して声をかけるわ

色を取り戻した世界
こうでなくちゃね
まあ、あれが天の川なの?
あたしこうしていろいろな世界の夜空を見るのが好きなの
白黒の世界じゃお月見も寂しいわよね
妖怪たちも喜んでくれてほんと良かったわ

寄ってきてくれた狐さんたちをもふもふ撫でながら
フィッダももふもふさんが好きなの?
だってなんだか慣れてるし
ねえ、あたしずっとフィッダにバス停のこと聞きたかったの!
見せてもらえる? 触ってもいい?(前のめり)
いろいろ教えてね

新しい世界が見つかってから
バス停持ってる人増えたと思わない?
空前のバス停ブームね!
そっと静かに目印であり続けて待っていてくれる
誰かに必要とされるって素敵なことだと思うのよ


●幽世のバス停

 ――すこしだけ、まって。
 助け出した神獣たちと楽しく月見の前に、探し物をしていた。
 狐たちと一緒に、何かを探すエリシャ・パルティエル。
「んもう、フィッダ!そこにいたのね」
 背の高い雑草に紛れ、歪んだバス停を立てて。
 その下で、のんきに寝そべる狐ではない巨大な体躯の獣の姿。
「……ん?俺様の仕事は、皆を此処へ連れてくることだからなあ」
 くああ、と欠伸しながら話すそれは、でかいハイエナだがバス停当人だ。
 大型の狐の群れに囲まれて、ハイエナ姿が妙に浮いている。
「お疲れ様だ、エリシャ。アンタが応えてくれ助かッたよ」
「うんうん。色のない世界より、色を取り戻した世界のほうがいいわよ」
 隣にしゃがみ込んで、フィッダに話しかけ続ける。
 狐たちも付いてきて、二人の周囲に群れで一斉にくつろぎだした。
「聞いたわよ、あれが幽世世界から見える天の川ね」
 見上げた空は不思議なほどに大きな大きな月と、星々の煌めきが地上からでも見て取れるほど澄んだ闇色で覆われていた。
 手を伸ばして、空を撫でるするようにするエリシャ。
 掌もで掴めるものはないけれど。宝石のような煌めきが、空にあるのだ。
「アンタは、見上げるのが好きなのか?」
「少し違うわね。あたし、こうしていろいろな世界の夜空を見るのが好きなの。丁度此処も夜。白黒の世界でのお月見も、本当に少しだけ……ありかな、って思ったけれど。やっぱり、色がないのは、寂しいわよね」
 見上げる先の"空"の色を、好むというエリシャ。
 世界が違えば、色が違う。様々な青系統の色は、その時しか見れないものだ。
 何度も見れる日がくるならば、それは平和な証拠でも在るだろう。
 だからこそ、この一瞬だけの色を、好む。
『おねーさんツウってやつだねぇ?今日は特に綺麗に視えてるよぉ~』
『ツいてるねぇ~!』
 そんな素敵な夜景を一緒に見れて嬉しいと、狐の妖怪が笑っている。
「妖怪たちも、喜んでくれて本当に良かったわ」
「アンタと、みんなのおかげだからな。コイツらとしては、姿見えてて嬉しいってわりと頭の中ハッピーなだけかもだけど」
 露骨に暴言を吐く鬣犬にもへらへらと"そうだよ"、と返答する狐たち。
 エリシャに代わる代わる絡んでくる狐の尾をもふもふと撫でて、あまりの手触りに思わず笑みが溢れる。
 そして、ふと。もふもふする手を今持ち得ないバス停に、尋ねる。
「フィッダももふもふさんが好きなの?」
「……なんでそう思う」
「だって、なんだか慣れてるし」
 ひとり、もとい。一匹で寝そべっていたハイエナの周囲に狐が群がっている。
 もふもふのサンドイッチにされたり、じゃれつかれて獣な耳を噛まれたり。
 それらに反応を返さないのが、エリシャに不思議な光景に映った。
「嫌いでは、ないな。いつの間にか兎を飼育させられてたんで、生き物のこういう悪戯は叱ッたッて無駄と学んだ」
「兎?今日は連れてないのよね……あ。そうだあたしずっとフィッダに聞きたかったことがあったのよ!」
 周囲を一応見渡して、狐以外がいないことを確認。
 のんびりと周囲でくつろいでいる狐の多さに少し驚いた。
「ほう。何が聞きたい」
「バス停のことよ!見せてもらえる?触ってもいい?ねえ!」
 前のめりに問いかけるエリシャの表情は、興味津々、という顔。
「……"俺"のこと?見せるも何も、そこに置いてるだろ好きにすればいい」
 "それ"のヤドリガミだという彼は、自分に対しても粗暴で働く。
 間近で見ると、とても起立できるようには見えないほど支柱が歪んでいた。
 念動力で空気に働きかけて強引に立たせているようだ。
 古ぼけているようで、……そっと触ってみるとしっかりとしている。
 鋼は十分な強度が在るのにも関わらず、何か強引な力で曲がっていて。
 そう簡単に直るような歪みではないとエリシャは悟った。
「バス停なんて珍しくないだろ。UDCアースとかにもあるし。幽世世界なんかもッと多く点在してる気もするけど」
 ――歪んだバス停を心臓とするヤドリガミが、動いて歩いてる事が珍しいなら、話は別だが。
 特別特殊なものではない、と彼は獣の首を振る。
「そう!新しい世界。此処が見つかってからバス停持ってる人が増えたと思わない?」
「……ヒトに忘れられた標識の、次の雇用先が武器なだけさ。俺様もあんま"ソイツら"と変わらねェよ」
 人々に忘れられたバス停が、点在するのも、裏を返せば人がそうしたことだ。
 仕事として誰かを待てなくなっても。佇むのが、バス停である限り……手頃な鈍器に転身したとしても十分、第二の生を、これまでの郷愁を糧に生きられる。
 バス停がバス停を語ると、どうにやら皮肉に思考がいくらしい。
「世はまさに、空前のバス停ブームね!」
「ヒトに忘れられたバス停がこんなにあるッて思うと、胸?が痛いんだが」
「あたしは少し、フィッダと見方が異なるのだけど……そっと静かに目印であり続けて待っていてくれる。誰かに必要とされるって素敵なことだと思うのよ」
 予知を伝える、目印はそう多くないだろう。
 誰かの足を停める為の、最寄りのそれとなれば、余計に。
「俺様褒められてる?それとも喋るバス停が律儀に仕事してるの面白がられてる?」
「どっちも、かしら。……あ、流れ星!」
 夜のキャンバスを天の川から零れた光の線が泳いでいく。狐たちの談笑は止まらず、エリシャのバス停への質問攻めも止まらない。
 少しの星の動きを眺めてから、エリシャの質問はまだまだ続く。


 モノクロ世界では示せない。
 言葉の色が、今日の夜の色彩を更に鮮やかにしていく。
 わいわいガヤガヤにぎやかな、月見のお供を沢山引き連れて。
 還された魂がどこへ消えたかは、誰にもわからない。楽しそうな雰囲気を、一緒に味わえない事を悔しがるかもしれないが……ただそれとなく気にかけて貰える事できっと――骸魂となった彼らの心もどこかで静かに、救われるだろう。
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年07月07日
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