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天明の魂魄祭(作者 犬塚ひなこ
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●光の祭
 淡く光る竹に囲まれた夜の広場。
 今夜、其処を照らすのは行灯めいた明かりを燈す竹と月光だけ。
 幽世らしい幻想的な雰囲気に包まれた竹林では今晩、妖怪達のお祭りがひらかれる。
 時刻は真夜中。
 奏でられる笛と太鼓の音に合わせて、好き好きに踊るキョンシーや童子妖怪はとても楽しげだ。彼女、或いは彼ら妖怪の中には魂の天麩羅や油揚げ蕎麦、おにぎりや駄菓子の屋台を出しているものもいる。
 祭は一晩中続く。
 そして踊り疲れたものや、屋台で腹ごなしをしたもの、夜を満喫したものは思い思いに竹の元へ行く。其処で光る竹を割っていくのが、この『魂魄祭』の習わし。
 竹が光を放つ理由は、その中で力を蓄えていた霊魂がいるからだ。
 妖怪達は竹から霊魂や幽世蝶などをそっと解放してやり、これから共にカクリヨに住むものとしてやさしく迎え入れる。
 そんな祭の夜は、今晩も賑やかに過ぎていく――はずだった。

●天魂の夜
「でもね、世界は滅亡しちゃうの!」
 さも当たり前のことかのように、花嶌・禰々子(正義の導き手・f28231)は語る。
 グリモア猟兵であり妖怪のひとりでもある少女はふたつに結んだ髪の先を指先で弄りながら、幽世では日常茶飯事である事態について話していく。
「一反木綿の骸魂が飛んできて『暗い夜は嫌だなぁ』って思っちゃったみたいね。世界からは夜が消えて、光の弾幕が飛び交う閃光の世界に大変身! もう大変!」
 そんなわけで、と禰々子は猟兵達に事態の解決を願った。
 辺り一帯は夜を阻むような光に満ちている。
 それに加えて近くにいた妖怪達までもが、飛び交う骸魂によってオブリビオン化している。破茶滅茶な状況である上にこのままでは眩しくてかなわない。
「まずは骸魂に飲まれた童子くん達を倒してから、首魁のキョンシー木綿ちゃんをやっつけて! あの子達は丈夫だから君達が全力を出してもぜんぜん平気よ」
 それゆえに思いきり戦って欲しい。
 そう告げた禰々子は、首魁を倒せば閃光の世界が元に戻ると話した。戦いが無事に終わった後は魂魄祭を楽しむだけ。
 広場には妖怪達が奏でる祭囃子が響く。
 妖怪と踊ったり、のんびり眺めたり、自由に夜の祭りを楽しんで行けばいい。
「お祭り屋台は天ぷらがおすすめよ。テンプラ! あとお蕎麦ね!」
 じゅわっと揚げた美味しいサカナやエビの魂天が絶品だと語る禰々子は、手で何かを掴む仕草をした。どうやら妖怪ゆえに躊躇なく素手で天ぷらを掴む派のようだ。
 おにぎりや駄菓子屋台も色んな種類がある。
「それから、良かったら光の竹の中で休んでいる霊魂を迎えてあげてくれないかな? もしお互いの波長が合ったら君達の相棒になってくれるかもしれないわ。あたしの傍にいる悪霊くんと蝶子ちゃんも、実はこういうお祭りで出会ったの」
 禰々子は自分の後ろに浮かんでいる霊魂達を示す。
 可愛いでしょ、と微笑んだ禰々子は得意気だ。その際に腰に飾られている正義の星飾りがきらりと光った。
「それじゃあ君達、よろしくね!」
 次はお祭り広場で逢おうね、と約束をして――禰々子は猟兵達を明るく見送った。





第2章 ボス戦 『キョンシー木綿』

POW ●キョンシーカンフー
【中国拳法の一撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD ●百反木綿槍
自身が装備する【一反木綿が変形した布槍】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ ●キョンシーパレード
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【キョンシー】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●光を求める闇
 白い布が光の中で揺れていた。
 夜の失くなった世界は未だ続いており、眩い弾幕は収まることはない。
 その中心に佇んでいるのは此度の異変を引き起こした骸魂、一反木綿に取り憑かれたキョンシーの少女だった。
「――ずっと、ずっと明るくあれ」
 抑揚のない声で語る彼女は完全に一反木綿に操られているようだ。
 周囲をふわふわと浮かぶ昏い色の魂はキョンシーに纏わり付いている。骸魂童子達との戦いを見ていたキョンシー木綿は、猟兵達を邪魔な存在だと認識したようだ。
「光は綺麗だヨ。どうして要らないっていうノ?」
 相手は拳法の構えを取る。
 そうして、臨戦態勢を取った相手は問いかけてきた。
「眩しい光があれば導いてくれる。誰も暗い夜や闇の道で迷わないんダヨ?」
 おそらく一反木綿が幽世に辿り着けず死んだ妖怪であるからだろう。道に迷うことを怖れているらしい相手は光を望んだようだ。
 しかし世界から夜がなくなることと、相手の事情はまた別。
「さあ、みんなもオイデ!」
 両手を掲げた骸魂妖怪は先程の戦いで倒れた妖童子に呼びかけた。すると見る間に妖怪達がキョンシーになり、気を失ったまま飛び跳ねはじめる。
「邪魔な奴らをやっつけよう!」
 そして、キョンシー木綿は配下となった妖怪達に呼びかけた。
 其処から始まる攻防。
 それは大切な夜を取り戻し、妖怪達を――更には哀しき骸魂を救う為の戦いだ。
 
都槻・綾
ひかりがあれば迷わないのに、と
謳うあなたこそ
未だ、
――もうずっと、
帰れずに居るのですね

煌々たる燈に目が眩んで
道を見失ってしまっているの

斯様に明るいのに
骸魂の想いは暗がりに沈んだまま
まるで其れは
煌かない己の魂を見ない振りしているようで
あなた自身を否定しているかのようで――、

ねぇ
余りに、寂しいでしょう

ひかりがあれば
影も必ず生じるものだから
どちらも大切なものだから
眩いひかりの洪水に
どうぞ飲み込まれないで

迷子のあなたへ
大丈夫
帰れますよ
と告げられたら良いな

さぁ
帰りましょう
妖しさんへ身を返しましょう

つい、と指し示す彼方の海
飛び立つ鳥の翼を道標に
白く耀く玉の緒を引いて
在るべき場所まで
迷わず辿り着けますように


●幽魂の之く先
 ひかりがあれば迷わない。
 そう語った骸魂は今も迷っているように思えた。直ぐ側にひかりがあるというのに。仮初ではあるが妖怪という身体を手に入れたというのに――。
「そう謳うあなたこそ、未だ……」
「ナニ? 邪魔をするなら蹴っ飛ばすヨ!」
 綾が零した言葉を拾い、骸魂妖怪は構えを取った。その周囲には無理矢理に操られている童子妖怪達が控え、今にも綾に襲いかかってくる勢いで跳ねている。
「――もうずっと、帰れずに居るのですね」
 綾は哀しげに眸を眇め、風に揺れる一反木綿を見つめた。
 煌々たる燈に目が眩んで道を見失ってしまっている。それが今のかれだ。
 光は飛び交い、目映い程の白い奇跡が満ちている。斯様に明るいのに、骸魂の想いは暗がりに沈んだまま。
 何だか其れは煌かない己の魂を見ない振りしているようだ。
「みんな、行っテ!」
 骸魂は袖を振り、手下となった者達を綾に嗾けてきた。綾は動じることなく詠唱を紡ぎ、差し伸べた掌から陰陽五行の鳥達を呼び起こす。
「今の状況はまるで、あなた自身を否定しているかのようで――、」
「うるさい! ウルサイ煩いッ!」
 綾が落とした声に反応した骸魂妖怪は喚く。声こそキョンシー少女のものだが、その言葉を操っているのは周りに纏わりつく一反木綿だ。
 たすけて。
 助けてあげて。
 操られている娘の声が奥底から聞こえた気がした。勿論ですよ、と視線で応えた綾は羽撃く鳥達で敵を穿っていく。
「ねぇ。余りに、寂しいでしょう」
 迫りくる配下の一閃を避け、綾は語りかける。
 ひかりがあれば影も必ず生じるもの。光だけ、闇だけで成り立つものはない。どちらも大切なものだから。
「眩いひかりの洪水に、どうぞ飲み込まれないで」
 願うような言の葉と共に疾てなる羽搏きが次々と敵を貫いていく。
 配下と化した妖怪はふたたび倒れ、首魁までの路がひらかれた。綾は疾く駆け、また阻害されぬようキョンシー木綿との距離を詰める。
 かれはただの迷子。
 それならば在るべき場所へ送るのが自分達の役目。
「大丈夫、帰れますよ」
 必ず、と付け加えてながら告げた綾は更に五行の鳥を遣わせていった。骸魂妖怪の身が鋭い一閃によって穿たれる。
「さぁ、帰りましょう」
 妖しさんへ身を返して、と呼びかけた綾は、つい、と彼方の海を指し示す。
 飛び立つ鳥の翼を道標に白く耀く玉の緒を引いて――在るべき場所まで。
 迷わず辿り着けますように。
 綾が願う最中、妖怪は体勢を立て直した。
 戦いは未だ続く。されど綾の示した先は、確かな標となって其処に在り続ける。
 
大成功 🔵🔵🔵

揺・かくり
やあ、君が事の発端かい?
どうやら私と同族の妖のようだ
ああ、君も取り憑かれているのだね

光あれ、と願うのは結構だけれど
常に眩しいだけの世界は参ってしまうね
目が眩んではひとが彷徨うだけさ
仄闇を好ましく思う者だって居るだろう
この身も瞳も、闇に慣れている
私は、暗がりの方が好ましいよ

会話での終結は不可能だろう
同族を呪うのは気が引けてしまうね
やるべきことは先程と同じさ

ぎこちない指で指環に触れよう
もう一度、君たちの力を拝借する
この身に宿す呪詛の一片を渡す代わり
私の声に応えておくれよ

彼女は私の、この幽世のはらからだ
本来ならば会話も出来るだろう
骸魂だけを上手に切り離しておくれ
君たちならば可能だろう?
よろしく頼むよ


●同胞の聲
 死霊達を従え、光の中心に目を向ける。
 未だ終わらぬ眩さに軽く双眸を緩め、かくりは骸魂妖怪に問いかけた。
「やあ、君が事の発端かい?」
「そうみたいネ。だからどうしたノ?」
 かくりに視線を返したキョンシー娘。その声は纏わりつく一反木綿に操られているようだ。そして、周囲に漂う骸魂の軌跡は怪しい光を宿していた。
 どうにもしない、と云うようにぎこちなく首を傾げたかくりは更に言葉を続ける。
「どうやら私と同族の妖のようだ。ああ、君も取り憑かれているのだね」
「みんな、あのコをやっつけて!」
 しかし相手はかくりの話を聞く心算はないらしく、邪魔者を排除しようと動いた。配下として立ち上がらされた童子は目を瞑っており、まるで傀儡のように操られている。
 かくりは死霊達を遣わせ、操られた童子達に相対させた。
 虚ろな視線なれど、かくりの眼差しはキョンシー木綿に確りと向けられている。
「光あれ、と願うのは結構」
 だけれど、とかくりはちいさく声を紡いだ。
 その間に死霊達は童子妖怪を散らしていく。先程に力を失った者達だけあって余力もないのだろう。蛇竜が尾を振るっただけで童子達はふたたび倒れていく。
 後でちゃんと助けるよ、とそっと告げたかくりは瞼をゆっくり瞬いた。
「常に眩しいだけの世界は参ってしまうね」
 目が眩んではひとが彷徨うだけ。
 ひかりは確かに暗い夜路を照らす道標になるだろう。されど、眩しすぎれば道を惑わせるものに成り果てるだけ。
 それに仄闇を好ましく思う者だって居る。
 現にかくりの自身の瞳も身体も、闇に慣れきっている。
「私は、暗がりの方が好ましいよ」
「ボクは光の方が好きだヨ!」
 かくりがぽつりと落とした言葉に対して骸魂妖怪は語気を強めて反論した。
 これではいつまでも平行線。
 会話での終結は不可能だろうと察したかくりは傾げていた首を戻す。同族を呪うのは気が引けてしまうが、やるべきことは先程と同じ。
 配下だけでは歯が立たないと気付いたキョンシー木綿は直接、此方に向かってきた。
 かくりは危険を察知し、ぎこちない指先で指環に触れる。死霊達とて乱戦で消耗していた。それゆえにかくりは更なる霊力を死霊に分け与えていく。
「もう一度、君たちの力を拝借する」
 この身に宿す呪詛の一片を渡す。その代わりに――私の声に応えておくれよ。
 死霊は刃を振るい、尾を揺らすことで呼び掛けに応えた。首魁に向かっていくかれらを見つめ、かくりは更に思いを伝える。
「彼女は私の、この幽世のはらからだ。上手に切り離しておくれ」
 本来ならば会話も出来る者のはず。
 現に操られた娘の瞳はずっと、かくりにこう語りかけている。
 ――たすけて。救ってあげて。
 それは娘が抱く魂への思いなのだろう。かくりは静かに頷く。
 願い通りに骸魂だけを切り取って、どうか助けてやって欲しい。ゆらり、ゆらりと揺蕩うようなかくりの言の葉は願いとなって戦場に巡る。
「君たちならば可能だろう?」
 かくりの問いかけへの返事は骸魂だけを穿つ死霊の動きで以て答えられた。
 拳法の一撃が死霊を捉えたが、かれらとて刃や尾で反撃に移る。
 そのまま頼むよ、と告げた声には仄かながらも確かな信頼が寄せられていた。そうして、死霊達はかくりの願いの儘に戦ってゆく。
 目の前の者達を救い、在るべきかたちに戻す為に――。
 
大成功 🔵🔵🔵

ユヴェン・ポシェット
導きの光か…
確かに眩しい光は目を引くだろう、綺麗であることもわかるし、不要だとは思わない。
だが真っ暗な闇が道を隠す様に、強過ぎる光は大切なものをまで見えなくしてしまう。
…夜があるから、光が綺麗なのだと俺は思うよ。
考え方はそれぞれだからそれを強要するつもりはないが、だが、この状態のままという訳にはいかないだろう。

拳法か、良い動きだな。
極力、相手の攻撃を見切って回避する。仮に攻撃を受けたとしても俺の体は破壊されればその分、好都合だ。この身を削る。
UC「revontulet」を使用。
光が反射しより眩く迸る宝石の欠片。一反木綿を輝く自身の一部で包み込む様に、覆い貫く。

光を求める者へ、俺の光を贈ろう。


●極光を贈る
 周囲に舞う光は骸魂にとっての導きだという。
 眩しすぎる程の弾幕光を見渡しながら、ユヴェン・ポシェット(ت・f01669)は双眸を細めた。これまでに穏便に童子妖怪から骸魂を切り離していたが、今やかれらが更なる配下として操られてしまっている。
「導きの光か……」
 暗闇が嫌だという気持ちは理解できないこともない。
 確かに眩しい光は目を引く。綺麗であることもわかるし、不要だとは思わない。
 だが――と、考えたユヴェンは一度だけ目を閉じた。
 瞼の裏にも焼き付く光は激しすぎる。真っ暗な闇が道を隠すように、強過ぎる光は大切なものまで見えなくしてしまう。
「……夜があるから、光が綺麗なのだと俺は思うよ」
 猟兵と戦うキョンシー木綿を見つめ、ユヴェンは身構えた。
 昼が好き。夜が好き。
 闇が嫌い。光が嫌い。
 そういった考え方は人でも妖怪であってもそれぞれ。ゆえにユヴェンは好みや理想を否定したり、こうであるべきだと強要するつもりはなかった。
「そんなことナイ! 夜は暗くて怖いだけ!」
「そうか、怖い思いをしてきたんだな」
 されどキョンシー木綿は必死に反論する。其処からユヴェンが感じ取ったのは、幽世に無事に辿り着けなかった骸魂の嘆きだ。
 何かに取り憑かねば自由に動けない魂。その苦しみや苦悩は計り知れない。
 しかし、この状態のままという訳にはいかないのは確かだ。
 今は光を喜んでいるらしい一反木綿も、いずれは眩しさに負けて道を見失うだろう。人一倍、否、妖怪一倍に迷うことを嘆いているならば尚更。
 ユヴェンが相手を見据えていると、キョンシー木綿が地を蹴った。
 ひらひらと揺れる布を纏いながら繰り出される拳。それを布盾で受け止めたユヴェンだったが、すぐに蹴撃が横合いから見舞われた。
「喰らエ!」
「……ッ!」
 片腕で蹴りを受けたユヴェンの身体が僅かに揺らぐ。しかし果敢に耐えてみせた彼は体勢を素早く整えた。
「どうだ! これがぼくの力だヨ!」
「拳法か、良い動きだな」
 胸を張って誇るキョンシー木綿は得意気だが、ユヴェンは次の攻撃は読めるだろうと察していた。それはこれまで培ってきた戦いの経験が為せる技。
 素早い拳や蹴りが更に繰り出されるが、ユヴェンは一撃ずつをしかと見切っていく。
 そして、或る瞬間。
 先ほど受けた腕の痛みと傷を利用したユヴェンは敢えて身を削る。
 刹那、遊色に輝く欠片が彼の傍に浮かんだ。
 極光を放つ欠片に辺りに満ちていた赫きが反射して、より眩く迸っていく。
 輝くユヴェン自身の一部――即ち、宝石の欠片から放たれる光は一反木綿を包み込むように覆い貫いた。
「光を求める者へ、俺の光を贈ろう」
 望むならば存分に。
 欲しかったもので満たしてやろうと決め、ユヴェンは戦い続ける。
 在るべき場所に魂を還す為に。ただひたすら真っ直ぐな意志を向けて――。
 
大成功 🔵🔵🔵

氷守・紗雪
だ、ダメです!
童子さまたちは疲れて、あああーっ!
もうう!一反木綿さまイタズラがすぎますよ!

真っ暗が続けば先が見えなくて、ユキもちょっと怖いです
ひとりぼっちに思えてさみしいです

でも暗いときにしか楽しめないことがあるのですよ
例えば花火!夜空に咲くお花です。他にも河原で蛍が灯す光も!
ぜんぶ暗い場所を照らしてくれるから、いっそう輝いてきれいだと思うのです

おおきく息を吸って
ふうっと吐き出せば粉雪が周囲を舞いキョンシーを包み込む
イヤな気持ちはユキがいただいていきます
もうおいたしちゃダメなのですよ

また迷うことがあれば、きらきらの六花を目印にしましょう
そして今度はユキが手をひいて一緒に暗い道を歩いてあげますね


●燦めく氷雪
 ゆらり、ふらり。
 童子達が立ち上がり、首魁の方に引き寄せられていく。
 はたとした紗雪はその背に手を伸ばした。
「だ、ダメです!」
 かれらの歩みは止まらない。倒れていた子達だけではなく、それまで疲れて休んでいた童子までもが骸魂に操られて飛び跳ねていく。
 先程、もう平気だといって紗雪と笑みを交わしあった童子までもが新たな骸魂に囚われてしまっている。
 紗雪はかれらを追いかけた。
 しかし、此度の首魁である一反木綿が猟兵達に童子を嗾けていく。
「童子さまたちは疲れて、あああーっ! 戦っちゃ! ダメですっ!」
 必死に止めようとした紗雪だったが、かれらに言葉は届かなかった。
 気を失っていたり疲れて果てていたというのに、更にその身に鞭を打つようなことはさせたくない。紗雪は両手をぶんぶんと振り回し、一反木綿を強く見つめた。
「もうう! 一反木綿さまイタズラがすぎますよ!」
 その瞳には真剣さと憤りが宿っている。
 周囲の光は相変わらず強くて目が眩んでしまいそうだ。随分と目も慣れたので動き辛いことはないが、紗雪はふと考える。
 まっくらとまぶしい世界。一体どっちが良いものなのだろう、と。
 たとえば闇がずっと続けば先が見えなくて――。
「暗いのは、ユキもちょっと怖いです。ひとりぼっちに思えてさみしいです」
 でも、と紗雪は首を振る。
 ずっとずっと同じ世界が続くのは違う。明るいとき、暗いとき、それぞれに良いところがあるはずだと思えた。
「暗いときにしか楽しめないことだってあるのですよ!」
 紗雪は一反木綿に指先を突きつけながら懸命に宣言する。戦うしかないと解っていても、言葉を交わさないままであるのは我慢できなかった。
「ふん、そんなものないヨ!」
「例えば花火! 夜空に咲くお花です。他にも河原で蛍が灯す光も!」
「花火? ホタル?」
 紗雪に反論しようとした一反木綿がふと首を傾げる。
 そうです、と答えた紗雪は胸を張った。
「ぜんぶ暗い場所を照らしてくれるから、いっそう輝いてきれいだと思うのです」
 光の中では花火も蛍も見えない。
 それらが素敵で綺麗だと思えるのは夜という暗い世界があるから。紗雪は夜を嫌わないでほしいと願い、おおきく息を吸った。
 掌を口許の前でそっとひらいて、ふうっと息を吐き出せば――粉雪が周囲に舞い、キョンシーを包み込んでいく。
 それは身体を害するものではなく悪意ある根源だけを鎮めるもの。
「イヤな気持ちはユキがいただいていきます」
「あれ? え……なんで、コレ――」
 粉雪を受けたキョンシー木綿は不思議そうな表情を浮かべた。嫌だと思う気持ちが和らげられていったことが不思議なのだろう。しかし、これで完璧に戦意を消せたわけではないことは紗雪も解っていた。
 見れば童子達は他の仲間によって抑えられている。それならば後は一反木綿をどうにかすればいいと感じて、紗雪は更に鎮めの雪を舞わせていく。
「まだおいたしちゃうなら、お仕置きです。暴れるのはダメなのですよ!」
 また迷うことがあれば、きらきらの六花を目印に。
 今度は自分が手をひいて一緒に暗い道を歩いてあげたいから――。
 どうか、安らぎを。
 そっと願う紗雪が放つ吹雪は、戦場を燦めきで彩りながら舞い散っていく。
 
大成功 🔵🔵🔵

波紫・焔璃
えー?別にいらないとは言ってないよ
そりゃあ、光がなきゃそこら中ぶつかったり転んだりしちゃうけどさ
ずっと明るいままじゃ疲れちゃうじゃん
暗い夜はゆっくり休むから、お日様が出てくる昼間にまた頑張れるんだよ

もし夜も歩くならさ
小さい灯で十分だよ
夜しか見えない風景とかもあるでしょ?
それも楽しみながら進まなきゃ!

って、あー!
今さっき骸魂剥がしたのに!
なんてことするのさ!
空中浮遊で攻撃回避

…よし、悪い骸魂は焼却しちゃお
で、元に戻ったら、一人じゃなくて皆でお祭り行こう
皆で行けば迷子にならなくて済むんだから!
うん、そうと決まればやることは一つ

骸魂を彼方にごあんなーい!
破魔の焔で焼却し、鎧砕きの勢いで鬼棍棒を振るう


●骸魂一撃ホームラン
 闇は嫌い。それゆえ光だけが欲しい。
 そう望んだ骸魂は今、光の弾幕に包まれながら闇を否定している。
 だからなのか、どうやら相手は此方が光を拒絶していると思い込んでいるようだ。
「えー? 別にいらないとは言ってないよ」
 焔璃は飛び交う光を再び避けながらキョンシー木綿を見遣る。しかし、その間に敵は童子妖怪達を呼び起こした。
「って、あー! 今さっき骸魂剥がしたのに! なんてことするのさ!」
「いけ、みんな!」
 童子達がぴょんぴょんと飛び跳ねながら襲いかかってくる。
 その動きを察知した焔璃は空中に浮遊することで彼らを避けた。焔璃は其処から浮かばせた金貨で以て、キョンシー化させられた童子妖怪達をぺちぺちと穿っていく。
 それによって童子は倒れていった。
 元々が倒されていた子達であった為、耐久力は紙よりも薄かったようだ。そして焔璃は鬼棍棒で弾幕を打ち返し、キョンシー木綿に向き直る。
「そりゃあ、光がなきゃそこら中ぶつかったり転んだりしちゃうけどさ」
 ずっと明るいままでは疲れてしまう。
 今は光が生まれたばかりであるから良いとしても、いつかは一反木綿だって眩しさに嫌気がさしてしまうかもしれない。
 それに、と焔璃は自分の思いを伝えていく。
「暗い夜はゆっくり休むから、お日様が出てくる昼間にまた頑張れるんだよ!」
 どちらだけが良い悪いというものではない。
 そうじゃないかな、と呼び掛けた焔璃は地面を大きく蹴り上げた。跳躍で以て一反木綿との距離を一気に詰めた焔璃は鬼棍棒を振り下ろす。
 だが、骸魂妖怪は素早い身のこなしで一撃を躱した。なかなかやるね、と笑顔を向けた焔璃は敵の強さを認める。
「もし夜も歩くならさ、小さい灯で十分だよ」
「イヤだ! 頼りない明かりだけじゃ、ぼくは……!」
 するとそれまで黙っていたキョンシー木綿が口をひらいた。操られているキョンシー娘ではなく一反木綿の言葉なのだろう。
 その声には闇への恐怖が宿っているように思えた。
「夜しか見えない風景とかもあるでしょ? それも楽しみながら進まなきゃ!」
「できないヨ! 無理だもん!」
 されど一反木綿は反論を続ける。焔璃は話が平行線にしかならないと感じ取り、少しだけ残念そうに肩を竦めた。
 見捨てるわけではないが、やはり此処は力尽くが正攻法となる。
「……よし、悪い骸魂は焼却しちゃお」
 破魔の焔を鬼棍棒に纏わせた焔璃は再び敵との距離を詰めに掛かった。骸魂は正しき海の彼方へ。操られた娘は元の姿に戻すのが自分達の役目。
「で、元に戻ったら、一人じゃなくて皆でお祭り行こう。皆で行けば迷子にならなくて済むんだから! うん!」
 そうと決まればやることはたったひとつ。
 大きく振り被った焔璃は全力を込め、一気に勢いを込めた一撃を振るった。
「骸魂を彼方にごあんなーい!」
 見舞われたのは焔を伴ったフルスイング。一反木綿を貫いた一閃は相手の身体に深くめり込み、そして――キョンシー木綿は後方に吹き飛ばされる。
「よしっ!」
 此処からが更なる勝負時だと察し、焔璃は更に身構え直した。
 
大成功 🔵🔵🔵

オリアナ・フォルケ
可哀想に…夜道でよっぽど酷い目に遭われましたのね。
ねえアナタ。恋って知っていて?
それさえあればどんなにか怖いことだって乗り越えられる。
暗い夜道だって浮足立った心には無関係。
愛しい人の瞳はそれこそどんなにか眩く見えることでしょう!
大丈夫、アナタの恐怖心はすぐになくなりますわ!安心なさって!

ストレッチャーで周囲のキョンシーを遠慮なく轢き倒して
【蹂躙】しながら大本命に接近!
一反木綿部分を踏んづけるかストレッチャーの拘束具で
【捕縛】するかで動きを封じてUC【恋愛式・改心治療】
恋する余裕を失くす原因・記憶を排除しますわ!

もしストレッチャーが拳法で壊されてしまったら
フォルケッタでの接近戦でゴリ押しますわね


●恋は素敵なものだから
 骸魂は泣いている。
 どうしてかそんな風に思え、オリアナはあらあらと首を傾げてみせた。
「可哀想に……夜道でよっぽど酷い目に遭われましたのね」
 恐ろしいと感じたからこそ夜を怖がっている。それゆえに光で満たして闇を消してしまえば良いと思ったのだろうと考え、オリアナはストレッチャーを用意していく。
 それは周囲に集ってきているキョンシー化した童子妖怪を薙ぎ払うため。無理に酷使されているならば早々に休ませてやらなければならない。
「いきますわ!」
 駆けたオリアナは飛び跳ねる童子を巻き込みながら遠慮なく轢き倒していく。
 荒療治だが、これもまた戦略。
 そして、オリアナはキョンシー木綿との距離をひといきに詰めていった。
「ねえアナタ。恋って知っていて?」
「コイ?」
「ええ、それさえあればどんなにか怖いことだって乗り越えられますの」
「……知らナイ! 知りたくもナイ!」
 オリアナからの問いに一反木綿がひらひらと不思議そうに舞った。しかし、此方を敵だと認識している相手は全てを拒絶しようとしているらしい。
 それでもオリアナは怯まない。
 相手が恋を何も知らぬならばそれでもいい。教示してあげるのが自分の役目だと感じて、恋とは何かを語りかけていく。
「暗い夜道だって浮足立った心には無関係。愛しい人の瞳はそれこそどんなにか眩く見えることでしょう!」
「そうなの?」
「大丈夫、アナタの恐怖心はすぐになくなりますわ! 安心なさって!」
 オリアナの勢いと自信満々な言葉にキョンシー木綿が徐々に押され始めた。されど一反木綿とてストレッチャーに轢かれるわけにはいかないと感じ、地を蹴る。
 高く飛び上がったキョンシーは蹴撃で担架を退けた。
 しかし、オリアナだって負けてはいない。
 ひとまずは相手の動きを封じようと狙い、拘束具を投げ放っていった。
「そこですわ!」
 くるくると包帯で巻き取るように一反木綿の一部が絡め取られる。標的が均衡を崩した瞬間を狙い、オリアナは布を一気に踏みつけた。
 それによってキョンシーの方がバランスを取れなくなり、思いっきり転ぶ。
「あうっ!?」
 今こそ最大の好機だとして、オリアナはフォークを大きく掲げた。
 ――恋愛式・改心治療。
 純粋に恋愛を尊ぶ思想を籠めた一撃が振るわれ、恋する余裕を失くす原因となる記憶が見る間に排除されていく。
「心の治療を致しましょう。さあ、そこから踏み出す勇気を持って!」
「う、うう……コイって何……?」
 骸魂妖怪は何やら混乱して戸惑っている様子だ。されどこれは改心治療が効きはじめている証でもあるだろう。
「まだまだ教えて差しあげますわ!」
 恋を知れるように力を尽くすべく、オリアナは更にフォークを強く握った。
 
大成功 🔵🔵🔵

菱川・彌三八
明るい処で光ったって何も見えやしねェ
暗い処で光るから綺麗なんだろうが
黒ばかりも白ばかりも変わらねえよ
間はねェのか間は

周りが邪魔だな
一先ず筆は四、群れを地面と水平に置いて一気にぶつける
人の背程も跳ねにゃあ一先ず頭の高さで狙や好い
外れても身体には当たるだろ
扇状に散らした千鳥は後ァ何時も通り、群れ毎に戦場を縫うが如く奔らせて
一体ずつ潰していく

首魁がちいと速いってんなら動きを絞る
上手く動いていると見せかけて、その実動かされてるのが善いやな
千鳥を一群潜ませて、追い立ててぶつける

浮かばれねえなあ気の毒だが、そいつを返しちくんな
引き離した後の此奴ァ…成仏って云うのかい?
妖が妖に憑りつくてなァ不思議なモンだな


●骸魂と成仏の道
 未だ光は飛び交い、辟易するほどに舞い続けている。
 戦いの中心にいる骸魂を在るべき場所に還すまでは、ずっとこの調子なのだろう。
 筆を手にした彌三八は巡りゆく戦いの行方を見据えている。無論、見ているだけではなく、再び操られた童子妖怪達を破魔の短刀で斬り伏せていた。
 身体を斬るのではなく、骸魂だけを切り離す。
 そうやって周囲の童子を粗方片付けた後、こうして首魁の動きを窺っている訳だ。
「明るい処で光ったって何も見えやしねェ」
 光を求め続ける一反木綿に思うのは極端過ぎるのだということ。
 暗い処で光るから綺麗なものがある。
 そのことがまるで理解できていないらしい骸魂は、ただひたすらに光だけの世界を望んでしまったらしい。
「黒ばかりも白ばかりも変わらねえよ。間はねェのか、間は」
 色のない灰色でも困るが、と付け加えた彌三八は周囲を見渡した。片付けたと思ってはいたが、未だ倒されていない童子妖怪もいる。
「……周りが邪魔だな」
 ならば一先ず、筆は四だと判断した彌三八は宙に線を描いていく。
 筆数に応じて増える千鳥の群れが迸る。
 その群れを地面と水平に置いて一気にぶつければ、ちいさな童子達が次々と穿たれていった。幾つかは外れたように見えたが、相手の身体には当たることで作用していく。
 其処から千鳥は扇状に散らされる。
 そうすれば後は何時も通り。群れ毎に戦場を縫うが如く、翼を広げた鳥模様が一気に飛び交っていく。
 其れは光の弾幕にも負けないほどに舞い、操られた者達を鎮めていった。
 一体ずつ、確実に落としてゆく彌三八はやがて首魁にも意識を向ける。他の猟兵と戦うキョンシー木綿は素早い拳法を用いて暴れていた。
「ちいと速いな。それなら――」
 自分は皆が戦いやすいよう、その動きを絞ってやろう。
 どう攻めるのが良いだろうか。自分は上手く動いていると見せかけて、その実は動かされているという策が善いはず。
 彌三八は千鳥を描き、一群を戦場に潜ませた。
 そして、飛び跳ねて移動するキョンシーに向けて鳥達を追い立ててぶつける。
「わあ! 危なかったネ!」
 一反木綿に操られた娘は既の処で千鳥を避けた。得意気な様子でいるキョンシー木綿だが、彌三八の狙い通りの動きをしてくれている。
 今だ、と彌三八が視線を送れば他の猟兵が敵の反対側に回り込んでいった。
 これで挟撃は完了。
 はたとしたキョンシー木綿は千鳥に誘われたと気付いたらしいが、後の祭だ。
「浮かばれねえなあ気の毒だが、そいつを返しちくんな」
「いやだヨ!」
「我儘を言うモンじゃねぇ。成仏する方が善いだろうに」
「やーだネ! 絶対にイヤだ!」
 押し問答が続いたが、彌三八は怯みなどしなかった。いつまでも幽世に彷徨って光に浮かされているようではいけない。切々と語る彌三八は、ふと思う。
(それにしても、妖が妖に憑りつくてなァ不思議なモンだな)
 これが幽世の理なのか。
 そんなことを考えつつ彼は筆を振るい続けていく。
 此度の騒動が収まるまで己の手は止めない。そう心に決め乍ら――。
 
大成功 🔵🔵🔵

フルラ・フィル
ああ
眩しい光だ
眩しすぎて眼が潰れてしまいそうだよ
私のような―森の薄闇に慣れたものにとってはね
光は必要なものだ
されど強すぎる光は毒なのだよ
キミもそう思うだろ?
シィがにゃあと同意すれば、口元を三日月のように歪め笑む

ふふ、明るい森もいいが
夜の森はもっとよい
無くなっては困るのだ
光の中では眠れない
ひかりのなかでは安らげない
闇こそが安寧を齎す

キミにも教えてあげないといけないね
歌うように詠唱を口ずさみ
闇色の花咲かせて生命を溶かして
絢爛の花弁のオーラで身を守る
シィ、私を応援してくれるの?
うれしいな

そろそろか
高まる魔力に身を任せて、さぁ
咲かせよう
『蜜の楔』

夜を厭うキミよ
キミは、どんな蜜に変わってくれるだろうか?


●薄闇と蜜色
 光が満ちて、彷徨う魂が揺らめく。
 飛び交っていく弾幕めいた光を見据えようとして、思わず頭を振る。
 フルラ・フィル(ミエルの柩・f28264)は目映すぎる光に対して双眸を閉じたが、瞼の裏にまで揺らぐ軌跡が残っていた。
「ああ、眩しい光だ」
 眼が潰れてしまいそうだと零したフルラは、ゆっくりと瞼をひらく。
 これほどの光ならば闇など消し去ってしまえるだろう。されど、フルラにとってはどちらかと云えば闇の方が好ましい。
「私のような――森の薄闇に慣れたものにとってはね」
 眩しさについて、そっと付け加えたフルラは身構えた。その視線の先には猟兵達を相手にして暴れるキョンシー木綿の姿がある。
 骸魂は光を求めている。その通り、光は必要なものだ。
 されど深い闇が恐ろしいように、強すぎる光とて毒となる。そんな風に語ったフルラは宵闇を纏う黒猫、シィに問いかけた。
「キミもそう思うだろ?」
 にゃあ、とシィが鳴いて同意すれば、フルラは口元を三日月のように歪めて笑む。
 光の弾幕が飛んでくる様を新緑の瞳で捉えたフルラは、一歩後ろに下がった。するとそれまで彼女が居た場所に光弾が通り抜けていく。
「ふふ、明るい森もいいが、夜の森はもっとよい」
 ゆえに闇や夜が無くなっては困る。
 光の中では眠れず、ひかりのなかでは安らげない。
 闇こそが安寧を齎すのだから。
 魔杖を握ったフルラは詠唱を紡ぐ。かぶせて、とかして、と謡うような声に乗せた魔力が解き放たれていった。
「キミにも教えてあげないといけないね」
 闇色の花を咲かせて生命を溶かす。そうすれば絢爛の花弁が広がってゆく。
 魔力の奔流は骸魂に乗り移られている童子を穿ち、地に伏せさせていった。これでいいとフルラがちいさく頷くと、シィが再びにゃあと鳴く。
「シィ、私を応援してくれるの?」
 うれしいな、と淡く口許を緩めたフルラは更に詠唱を謳いあげる。
 戦場には花が舞い、光が揺らめく。
 そして――。
 そろそろだと察したフルラは高まる魔力に身を任せ、胸元に掌を軽く掲げた。
 さぁ、咲かせよう。
 楔めいた力が戦場に打ち放たれる。其処から巡る花嵐は一反木綿の布を捉え、瞬く間に透き通った蜜に変えていった。
「何コレ!? ええい、邪魔だヨ!」
 されど力が及んだのは端の方だけ。身を翻したキョンシー木綿は花嵐から逃れた。
 それでもフルラは標的から目を逸らさない。
「夜を厭うキミよ」
 ――キミは、これからどんな蜜に変わってくれるだろうか?
 透き通る雫が光の中に零れ落ちていく。燦めく光景を見つめながら、フルラはふたたび月のような笑みを浮かべた。
 
大成功 🔵🔵🔵

キャロル・キャロライン
眩しい光があれば導いてくれる
誰も暗い夜や闇の道で迷わない――

あの骸魂は、本当にこの世界に住む皆のことを、そしてこの世界へと向かう皆のことを想い、この騒ぎを起こしたのかもしれません
「そうかもしれないね。だけど……」
そう、皆を救うためならば、皆を使役しても構わない――
その心は、既に壊れてしまっているのでしょう
可哀想ですが、永久の眠りに付いてもらいます

無手で戦うあの素早い動きに、私の武器では届かないかもしれません
それならば……UCで幾多の鎖を召喚!
相手の身体部位の全てを対象とし、絡み取ります
動きを封じられたならば、剣を光の刃へと進化させ、痛みを感じぬようその魂を狙います!

せめて最後は光の中で――


●迸る鎖
 眩しい光があれば導いてくれる。
 もう誰も、暗い夜や闇の道で迷わない――。
 キャロルは骸魂の語らんとしてしていたことを思い、ふと考える。今こそああして暴れている者だが、元の心根は悪くないものなのかもしれない。
「あの骸魂は……」
 キャロルは胸に手を当て、言葉を続ける。
 その最中、戦う一反木綿の布が光の中で懸命に揺らめいていた。それは何だか憎めない様子にも思える。
「本当にこの世界に住む皆のことを、そしてこの世界へと向かう皆のことを想い、この騒ぎを起こしたのかもしれません」
『そうかもしれないね。だけど……』
 キャロルの言葉に対してオルキヌスが答えた。
 きっと感じていることは同じ。
「そう、皆を救うためならば、皆を使役しても構わない――その心は、既に壊れてしまっているのでしょう」
 この戦場にいる他の者達も一反木綿にそれぞれの思いを投げ掛けているようだ。
 しかし、相手は聞く耳を持たないでいる。
 対話を諦めるわけではないが、倒すしかないということがよく分かる。意を決したキャロルはアリスランスを構えた。
「可哀想ですが、永久の眠りに付いてもらいます」
 されどこれまで見てきた敵の動きは素早い。
 無手で戦うあの速さに対してランスの突きでは届かないかもしれない。きっと届いたとしても切っ先を逸らされて避けてしまうだろう。
 それならば、とキャロルは幾多の鎖を周囲に召喚していく。槍や剣が届かないなら、この鎖を飛ばして、素早い敵の動きを封じようと狙えばいい。
 しかし、此方の動きを察知したキョンシー木綿も鎖を警戒している。
「これでどうでしょうか」
 キャロルは相手が動く前に鎖を一気に舞い飛ばした。
 幾重もの鎖の軌跡が戦場に迸る。一本、二本、三本、とキョンシー木綿に鎖が迫るが、次々と躱されていった。
 だが、キャロルも更なる鎖で相手の身体部位の全てを絡み取ろうとしていく。
「わっ、うわわ!?」
「逃しません」
 或る瞬間、キョンシー木綿が一本の鎖を避けきれなかった。それを好機だと感じたキャロルは残りの鎖で相手を縛りあげる。
 動きはこれで封じられた。キャロルは瞬時に剣を光の刃へと進化させ、キョンシーに纏わりつく魂だけを狙って振るう。
 一閃が骸魂を斬り裂き、大きなダメージを与えた。
「ぐ、ううっ!!」
 キョンシーは必死に鎖を弾き飛ばして拘束から抜け出す。自分から逃げるように遠ざかっていく相手を追うべく、キャロルは地を蹴った。
 逃走を許してしまったが、今の一撃は確かなものとなって巡っていた。
 この調子で戦えば骸魂を在るべき場所に還せる。
 そして、せめて最後は光の中で――。
 戦いはきっと後少しで終わる。願う思いと共に、キャロルは戦場を駆けていく。
 
大成功 🔵🔵🔵

樹神・桜雪
『WIZ』
その子たち、気絶してるのに…。
そう、キミがこのピカピカの原因なんだ。
眩しくてたまらないし、その子たちを早く解放したいから手荒くいくよ。……ごめんね。

先制攻撃で先に仕掛けに行く。出来るなら2回攻撃したいね。
わあ、キョンシーたくさん。ちょっと数が多いかな?
UCで吹き飛ばしに行こう。一反木綿つきの子の懐に飛び込んでボクごとUC発動だ。
ごめん、痛いの、いくよ。

道を照らす灯りは必要だ。ボクもよく知ってる。
でもね?こんなにド派手な道しるべは勘弁願いたいな。
目がチカチカして痛いんだよ。
明かりも暗闇も適度が一番。
それにね、あまりに明るすぎると闇もまた暗くなりすぎて怖くなるんだ。


●闇が有る意味
 光は依然として眩しく、弾幕は収まることはない。
 そのうえ先程に倒して休ませていたはずの童子妖怪達が操られていく。桜雪は首を振り、なんてことを、と呟いた。
「その子たち、気絶してるのに……」
 いくら光を奪われたくないからといって、疲れた子達を操るなど言語道断。
 そして、桜雪はキョンシー木綿に目を向けた。
「そう、キミがこのピカピカの原因なんだ」
 光の中心にいる骸魂妖怪は猟兵達を相手取りながら飛び跳ねている。闇が怖いと思う気持ちは否定できないが、代わりに目映いほどの光を生むのは違うはずだ。
「眩しくてたまらないし、その子たちを早く解放したいから手荒くいくよ」
 ごめんね。
 そっと告げた言葉と同時に、桜雪は風と雪を巻き起こしていく。
 まずは周囲に集いはじめた童子妖怪から。雪風で撫でるように妖怪達を穿つ桜雪は次々と、確実に妖怪を伏せさせていく。
 元より力を使い果たしていた相手であるゆえ、手数は然程かからなかった。
 弱った身体に鞭を打つようで少し心が痛んだ。しかし、先程も今もこうすることがかれらを救う最良の手となる。
「たくさんいたけれど、ちょっとは数が減らせたかな?」
 他の童子達は別の猟兵の元に向かっている。仲間に任せておいても大丈夫だと感じた桜雪はキョンシー木綿との距離を詰めていった。
 相手はやはり素早い。
 それでも目で捉えられないほどではない。
 桜雪は光の弾幕の間を掻い潜り、他の仲間に気を取られている一反木綿に近付いていった。ふと見れば、仲間が放った鎖が骸魂を捕えている。
 これはチャンスだと感じた桜雪は、鎖を振り払って逃げてくるであろうキョンシー木綿の軌道を予測した。
 素早い相手に小細工は通用しないだろう。
 ならば――。
「ごめん、痛いの、いくよ」
 逃げる相手の前に回り込み、一反木綿の懐に飛び込んだ桜雪は一気に力を解放した。
 零距離からの氷雪と風が骸魂を凍らせていく。
「うぐ、う!」
 苦しげな声をあげた骸魂妖怪は腕を大きく振るった。桜雪は反撃が来ると察して相手から離れる。桜雪をすぐには追えないほど、骸魂はかなり弱ってきているようだ。
 桜雪は次の一手を叩き込む機を見計らう。
「道を照らす灯りは必要だ。ボクもよく知ってる」
「だったら、ナンデ邪魔するの?」
 桜雪とキョンシー木綿の視線が交差した。
「でもね? こんなにド派手な道しるべは勘弁願いたいな。目がチカチカして痛いし、暗闇以上に迷ってしまうよ」
 明かりも暗闇も適度が一番。
 それに――あまりに明るすぎると、闇もまた暗くなりすぎて怖くなるから。
 桜雪は自分が抱く思いを伝え、雪と風を周囲に広げていく。
 戦いの終わりは少しずつ近付いてきている。眩しすぎる光も間もなく消えるのだと感じながら、桜雪は真剣な眼差しを向けた。
 
大成功 🔵🔵🔵