思ひ出、雨あられ(作者 みろりじ
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 ちりん、ちりん。
 間延びしたような鈴の音が、森の中に響く。
 物悲しいその音色には不思議と惹きつけられるものがあって、それを追って霧を越えたら、赤い会場が見えてくる。
 何の会場だかわからないが、音の次は匂いがやってくる。
 懐かしい音色と、懐かしい匂い。
 巨大なひな壇じみた会場の上の方からは、ぽろぽろと小さなあられがこぼれて落ちてくる。
「あー、うまい。このあられはうまいな!」
「おお、うまかろ、うまかろ。もっと食え食え」
 見れば、そこらにたむろするは、このこぼれ落ちる音と香りに呼び寄せられた妖怪たちが、競い合うように籠に盛った色とりどりの『ひなあられ』を食らっている。
 それを煽るもまた妖怪。
 黒くカビを帯びた体に沢山の目をくっつけて、あられを貪る妖怪を煽り立てる。
「うぐぐ、もう食えない!」
「そういうな。もっと食え食え」
「な、なんだそれは! やめろ! うぎゃあ!」
 そしてもう食えぬと倒れ込んだ妖怪を目ざとく見つけては、とても食えそうにないカビた餅を無理矢理詰め込もうとして、自分と同じようなカビた餅の妖怪にしてしまう。
 奇妙な祭の高揚につられてやって来る妖怪たちは、ぱらぱらと降り注ぐ『ひなあられ』を食べずにはいられない。
 それを食う度に、会場を覆う霧のようなものが濃くなり、不思議な思い出を見せる。
 そうして腹いっぱいなるまで『ひなあられ』を食い続け、食えなくなると骸魂を帯びた餅を無理矢理食わされてオブリビオンと化してしまう。
 それでも食うのをやめられない。
 懐かしいのだ。
 匂いも、音も、思い出も。
 そして霧が濃く、ひな壇の最奥に丸まって眠り込むは、この奇妙な『あられ食い』の主催と思しき存在であった。
 首の鈴で呼び寄せ、ひなあられで釣って、何を求めているのか。

「皆さんは、カクリヨファンタズムという世界をご存知でしょうか?」
 グリモアベースはその一角にて、羅刹の猟兵、刹羅沢サクラは、資料を片手に居並ぶ猟兵たちに依頼の概要の説明……の前に、新たに発見された世界について簡単に説明する。
 UDCアースにはその昔、人々から向けられる感情を糧とする妖怪と呼ばれる者たちが居た。
 近年、文明の発達につれて彼らは人間たちに認識されなくなり、飢えることとなった。
 危機に瀕した妖怪たちは、人々の世界と骸の海との狭間に逃げ込み、そこに漂う思い出を糧として生きている。
「それがカクリヨファンタズムと呼ばれる世界のようです。妖怪というと、鬼もいるんですかね?」
 話が逸れたところをこほんと咳払いをしていったん区切り、今回の依頼の話へと切り替える。
「かの世界には、多くの方が懐かしいと感じるものが漂っていますが、そんなところに突如として巨大なひな壇のような会場ができたようです。
 ひな人形の居ないひな壇のような会場には、ひなあられが降り注いでくるそうで、それを食べる妖怪たちでちょっとしたお祭りになっているようです」
 どうやらとてもおいしいあられだそうで、一度でも口にしてしまうとついつい次に手が伸びてしまうのだとか。
 誰でも食べられる無害なひなあられではあるようだが、これを食べると奇妙な霧が発生し、思い出を見せるという。
「ただのお祭りならば何も問題はないのですが、主催はオブリビオンです。
 そして厄介なことに、あられを口にした者は、カビたお餅のようなオブリビオンに目を付けられ、あられを食えなくなると、カビた餅を無理矢理食べさせて自分と同類のものにしてしまうようです」
 幸いにして、猟兵にはひなあられの誘因はほとんど効かないため、ひなあられを貪る妖怪たちの行動を引き留めることも可能である。
 敵と化すのを防ぐことも考えれば有効であるかもしれない。
「ただ、気を付けてください。あられを食べることによって生まれた霧は、何も食べた本人に関わらずとも、見る者の思い出を映し出すようです。
 思い出に呑まれぬよう、強い心で臨んでください」
 どうやら、最初に障害となるのは、その霧のようである。
 何が見えるかは、現場に向かう猟兵次第ではあるが、あくまでも思い出は思い出。
 ひなあられを貪る妖怪たちを、どうにか正気に戻す手立てを考えつつ、霧を抜ける事を考える必要があるようだ。
「カビた餅の妖怪の相手も大切ですが、この会場を作り出している主催は、ひな壇の最上に鎮座しているようです。
 それさえ討伐してしまえば、この奇妙なお祭り騒ぎも終息する事でしょう。
 最終的な目的は、この主催を討伐することです。ただ、その本当の目的はまだ判然としません。
 素早い解決が求められますが、相手の狙いに対しても慎重に対応することも……。
 いえ、さすがにそこは、現場の判断にお任せしましょう。あたしは、皆さんを精一杯こちらから支援いたします。
 どうか、ご武運を」
 そうして一通りの説明を終えると、サクラはいつものように恭しく頭を下げるのであった。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文章書き、みろりじと申します。
 新しい世界は妖怪の世界。これってもしかして幻想きょ……とにかく、素敵な世界なようですが、強力なスキマ妖怪や、素敵な巫女さんなどはどうやらまだ発見されていないようです。
 異変が起こったら、猟兵の出番という訳ですね。
 今回は、冒険→集団戦→ボス戦というフレームを使わせていただいております。
 奇妙なお祭りに誘われた妖怪たちは、そのままだと無理矢理オブリビオンにされてしまいますので、なんとか助けたいところです。
 最初の冒険では、濃い霧の中で自分自身の思い出と対面しながら、先を目指すことになります。
 道中であられに夢中な妖怪を助けるような事をすれば、何かいいことがあるかもしれません。
 あられを口にしても猟兵には無害です。場合によっては、それが必要な場面も出てくるかもしれませんね。
 さてさて、あんまり色々語り過ぎるのもあれなので、これくらいで。
 それでは、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作っていきましょう。
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第1章 冒険 『とおりゃんせ、とおりゃんせ』

POW過去の記憶に惑う。
SPD忘れた感情に揺れる。
WIZ誰かの幻が浮かぶ。
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
※アドリブ歓迎

【A&W世界】【ダークセイヴァー世界】には居無い精霊・聖霊・月霊の気配と存在を感じて周囲を見渡します♪
『フェアリーランド』の壺の中から風精霊・聖霊・月霊を呼んで“七色こんぺいとう”を配って「居るか居無いか、別の初世界だから注意・警戒はしても害意は持たないでね☆彡」と言います☆彡
猟兵が居るならホッとして自己紹介をして【カクリヨファンタズム世界】の存在と出逢ったら誠意と聖痕を証して敵意と害意が無い事を示し精霊・聖霊・月霊に“七色こんぺいとう”を運ばせて打ち解け合ってもらいます♪

「精霊とも聖霊とも月霊とも違う“幻”?みたいで綺麗だね☆彡」と素直な気持ちと感想を言う☆


ビスマス・テルマール
●思い出
猟兵になる前の数年前
親からはネグレクトを受け
同級生達からはイジメを受け

追い詰められて絶望の末
行方を眩ました事がありましたが

なめろうを知る切欠になった恩師(ビスマス結晶のガタイの良い男性の同族)に出会ってなかったら

立ち直る事も無く
猟兵になる事も無かったでしょうね

とハワイアンなめろうを見ながら……目の前で再現されてる暗い過去を苦笑いながら『切り払い』

●SPD
アラレを食べようとしてる妖怪の子達にUCを併用しつつ

事前に『料理』し冷凍Boxに積めた

各種なめろう(秋刀魚の蜂蜜味噌、ハワイアンなめろう、アジのトマト味噌の)や
さんが焼き(青魚、海老)を振る舞い

アラレと交換を

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


エミリロット・エカルネージュ
●思い出
爺ちゃん(餃心拳老師:餃子頭のバイオモンスター)や門下生の皆との日々の幻

懐かしさを感じるけど
もう……二度戻れない日々の後

抗争相手の唐揚げの流派の一団に皆が皆殺しにあって

生き残ったボクに爺ちゃんが奥義継承の義を執り行う場面

爺ちゃんの幻が餃牙練空拳を発動させるのに呼応し、ボクもUCを発動させ

このモヤモヤは晴らす様に
爺ちゃんの幻に【島唐辛子餃子のオーラの乱気流と緋色の竜の炎】を足と拳に纏い『グラップル』するよ

●POW
アラレを食べようとする妖怪さん達に割り込んで、事前に『料理』し持ってきたチョコ餃子等のスイーツ餃子をご馳走するよ

アラレと交換でね、序でに食べてみよう。

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


 霧の深い森の中に、ぱらぱらと雨が降るような音が聞こえてくる。
 音につられて歩みを進めれば、うっすらと霧が晴れて、気が付けばフェルトのような赤い絨毯が広がっていた。
 ひな壇のように段々と連なる巨大な台座は、さながらお祭りの囃子台を思わせるが、どうにもそんな雰囲気ではない。
 そしてぱらぱらという音はいよいよ耳障りなほどあちこちで鳴り響き、それに呼応するかのように、周囲から歓喜の声が上がる。
 行燈に目や口がついた者、獣のようだがどこかひょうきんな顔つきの者。それらはどこかの伝承にのみ生きていた妖怪に相違ない。
 彼らは一様に、ぱらぱらと降り注ぐひなあられを、そこらに置いてあるざるに盛って、そしてそしてそこらにでんっと座り込んではぽりぽりとありつく。
「うまい。うまいなぁ……」
 何とも言えない表情であった。
 素朴な味わいのそれを小気味よく咀嚼するたび、灰色の霧がたちこめ、彼らにとって懐かしい幻を見せるのだ。
 或は、ひなあられがそうなのか。それとも、彼らが見ている懐かしきあの頃……人々と共にあったあの日の思い出をそう思っているのか。
 妖怪たちは、あられに夢中であった。
 あの頃はよかった。あの頃に帰りたい。懐かしいあの頃に。
 その気持ちを求めるほどに、あられを口に運ぶ手が止まらない。
 そのたびに霧が生まれ、幻影が懐かしいあの日を想起させる。
 そしてそれは、この異変を解決するためにやってきた猟兵たちもまた、この異質な空間の中に何かを感じ取っていた。
「うーん、うん? 覚えがあるような、無いような?」
 精霊と共にある、森の守護者こと祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)は、妖精の羽をぱたぱたと羽ばたかせながら周囲を見回して小首をかしげる。
 精霊・聖霊・月霊、知っている範囲の気配と似たようなものを感じながら、微妙に異なるような、知らないけどよく似ているというのが正しいのか。それもよくわからない。
 精霊と言うものはきっとどこにでもいる。普段はわかりにくいだけなのだと思うが、ここにきて懐かしいと感じるのは、そういう気持ちを作る精霊なのか、それとも知っている何かを真似ているのか。
 敵意や害意が感じられないためだろうか。ティファーナはぽわんとしたまま、それを特に気に留めない。
 ただ、よそ様の領域に足を踏み入れるには、それなりの礼儀が必要だ。
「みんな、ちょっと手伝って☆」
 癖のある金髪をくりくりとさせて巻き付けたロッドを一振りすれば、友達の風精霊・聖霊・月霊が姿を現す。
 そして取り出したるは、妖精であるティファーナよりもさらに小さな壺。
 フェアリーランドに通じているその中には、秘蔵の七色こんぺいとうが詰まっている。
 友達の精霊たちに色とりどりのこんぺいとうを持たせると、周囲から気配だけを漂わせるこの世界の精霊たちにそれを供える。
「居るか居無いか、別の初世界だから注意・警戒はしても害意は持たないでね☆彡」
 ばちんっとウィンクを交えてそう祈れば、周囲の気配からやや警戒心のようなものが抜けた気がする。
 ただし、この会場を作り出しているのは、あくまでもオブリビオン。それをどうにかしなくては、この場にとどまっている妖怪たちを助け出すのは難しいだろう。
 それにひょっとしたら、別の猟兵もここにきているかもしれない。
 きょろきょろと周囲を見回すティファーナは、はっと目に留まった一角に向かう。
 その霧に映し出された光景は、暗闇だった。
 罵倒も無関心も、おそらくは彼女にしか聞こえていない。
 親は何もしてくれなかった。学校に行っても、悪意しか向けられなかった。
 誰も自分を認めてくれなかった。
 そこに存在する事さえ。
 居場所がそこにないなら、自分一人いなくなったっていい。でも、誰か一人くらいは、自分を探してくれるかもしれない。いや、探されないならそれでも……。
 後ろ向きに暗い暗い闇の中を当てもなく彷徨う彼女は、やがて自分と同じ輝きを見出す。
 虹色の光沢を持つ青い結晶。同族のクリスタリアン。それにしては、ムキムキで荒々しく、優しいようなそうでないような。
 そこでそれを知ったから、絶望の記憶は光の記憶に変わっていった。
 霧が見せた懐かしい記憶。そして手元に視線を落とせば、ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)の手の内には、自慢のハワイアンなめろうがあった。
 そう、同族のあのクリスタリアンに出会ったことで、なめろうを知るきっかけを得たのである。
 不幸などではない。あの暗闇があったからこそ、輝きの尊さを知ったのだ。
「何か見えたの?」
 ティファーナに後ろから声を掛けられ、ビスマスが振り向くと、手元のなめろうを一口。
「ちょっと夢をね」
 降りかかる霧を、余った手で振り払う。
 日々成長を続けるなめろう。今日もおいしい。だが、根幹はあの頃とそれほど変わっちゃいないだろう。
 でも、ちょっとだけ苦い気もする。食べる時の気持ちというのは、やっぱりあるのだろうか。
「それ、ぐちゃぐちゃだけど、おいしいの?」
「初心者にもおすすめだよ!」
 見た目にどうしてもハードルの高いなめろうを訝し気にみつめるティファーナに、ビスマスがぐっとサムズアップして見せると、同じようなタイミングで、やや離れた位置から空気を裂くような音が響いた。
 なめろうセールスのチャンスだったが、それどころではない。二人してその音の震源地へと向かう。
 エミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)は精神を集中していた。
 霧が映し出す光景に、心を揺さぶられぬよう、流されぬよう座禅を組んでいた。
 それはただの記憶だ。覚えている以上のことは映し出さないのだろう。
 だがきっと、知っていても心が落ち着いたままでなんていられない。
「爺ちゃん……」
 懐かしい、餃心拳老師の姿が霧に浮かぶ。相変わらず、なんと見事な焼き目だろうか。
 その域の餃子を作るには、どれだけの修練が必要なのか。いまだに想像がつかない。
 どうみても巨大餃子を被ったコスプレにしか見えないが、その姿はまぎれもなくエミリロットの師であった。
 バイオモンスターのその凄まじい身体能力に依存せず、老若男女を問わぬ技の探求。そして味の探求。
 偉大なる師と多くの門下生に囲まれた、厳しくも暖かい修行の日々。
 そんな日がいつまでも続くと思っていた。
 胸の鼓動が早まるのがわかる。だめだ。それ以上みてはいけない。
 そうだ、あの日、熾烈を争う対抗流派、唐揚げ派の襲撃の日。
 血みどろの抗争。肉汁が飛び交う、夕暮れの回転テーブル。
 死に物狂いで戦ったけれど、自分以外はみんな殺されてしまった。
 疲労困憊、もはや死に体に程近かったエミリロットは、その日、手傷と疲労で鉛のように重たくなった体を無理矢理に鞭打った。
 見なくてもわかる。瞑目するエミリロットが再び瞼を開けると、あの日の情景を映し出していた霧は、いつしか老師そのものを象っていた。
「爺ちゃん……!」
 座禅を解き、立ち上がる。
 あの日、ボロボロの身体で、奥義継承の義を執り行った。
 あの時は、受けるので精いっぱいだった。
 奥義……【餃牙練空拳・緋龍咆】!
「あの時のやり直しをやらせてくれるんだね」
 鏡写しのように、浮かび上がる幻の対となる構えを取ると、エミリロットの手足には、島唐辛子餃子のオーラの乱気流と緋色の竜の炎が生じる。
 餃子を焼く熱気、蒸気の対流……餃子を更に返すが如き挙動の一つ一つが、記憶と身体に染み付いたままに体を突き動かす。
 見えているものは幻に過ぎない。よそから見れば、ただ一人で無意味にユーベルコードを放っているようにしか見えないだろう。
 いや、心得のあるものならば、或は幻視していたかもしれない。
 年老いてなお、鉄の芯を体に入れたかのような餃子頭のバイオモンスターを。
「はああっ!」
 そうして、示し合わせたかのように、お互いの突きが交錯する。
 原点にして頂点。最初に教わる突き。水分を飛ばした焼き餃子に差し込むヘラの如き鋭い突き。
 今ならばわかる。その絶妙の焼き加減。
 師の突きをを完璧に見切り、その手に掴み取った。
 筈だったが、やはりそれは幻。その手には、灰色の霧がわずかに漂うだけであったが、それでも、エミリロットの表情は晴れやかだった。
「なんだ? 何があったんだ?」
 周囲が何やら騒がしい。幻相手にちょっと色々やり過ぎたかもしれない。
「びっくりしたー! でも、いいタイミングじゃない?」
「そうだね! 皆が注目してる今がチャンスだ!」
 燃え上がる演武を見ていたティファーナとビスマスも、この状況をうまく利用すべく行動を開始する。
 そうだ、そういえば、妖怪の皆をひなあられから引き剥がさなきゃいけないんだった。
「みなさーん、ボクわるい妖精じゃないよー! だから、ちょっとお話しよっ☆」
 悪意のない朗らかな笑顔を浮かべ、ティファーナは精霊たちと共に妖怪と話をし始める。
 お近づきのしるしにこんぺいとうをプレゼントし、懐かしい話などをしながら。
 元々妖精もこの世界に居ないわけではない。それに悪意もへったくれもないぽわんとしたティファーナの雰囲気にほだされて、七色のこんぺいとうを一口食べれば、妖怪はまるで憑き物が落ちたかのように、彼女と同じような朗らかな表情を浮かべる。
「なめろう! おいしいなめろうは、どうかな!?」
「おっとぉ、チョコレート入りのスイーツ餃子だって、負けちゃいないよ!」
 そして、猟兵の登場に呆気に取られていた妖怪たちを相手に、ビスマスとエミリロットは、競い合うように事前に持って来ていた料理を披露する。
 ユーベルコード【沖膾全席】を活用して、ありとあらゆるなめろう料理をタッパーから引っ張り出すビスマスの、実に多彩で、しかしながら見事になめろうしか無いラインナップに、物珍しさから妖怪は興味を引かれ始める。
「そこのお子さんもどうかな? お魚が苦手でも、おいしく調理してあるんだよ!」
「なんのなんの、お子様こそ、あまーいチョコ餃子だよ! ね!」
「ちょっと、甘いもので釣ろうなんて、餃子の矜持はないのかな?」
「そっちこそ、傷みやすいなめろうなんて、こんな用意して!」
「残念、生だけじゃなくて、さんが焼きも用意してるんだよ!」
 ちょっぴり競争心が高じてヒートアップし始めているが、そんな様子を妖怪たちやティファーナは、にこにこして眺めていた。
 妖怪たちはどんちゃん騒ぎが大好きなのである。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

パルル・ブラックベリー
そのあられを食べるのをやめるのです!食べたら最後やめられない止まらないで廃人……じゃなくて廃妖怪になっちゃうよ!
なーんて言ってすんなりやめてくれるならパルルちゃんは必要ねぇよなぁ?ということでこちら没収させていただきまーす。パルルちゃんにはあられはサイズ的に問題があるので壺の中に収容すっぞ。あられが抵抗するわけないからな!
掃除してあられが無くなれば流石に……あっ、バカ!やめろ!パルルちゃんの口にあられを押し込むな!あーー!トリップしちゃう幻覚が見える!実家が見えるー!近衛が追ってくるー!嫌だー!パルルちゃんは実家に帰りたくなーい!クソ!このまま奥に逃げ込むぞ!イェーイ!パルルちゃん最強ー!


ティエル・ティエリエル
ミフェット(f09867)と一緒

ここがカクリヨファンタズムなんだね!
ようし、この世界でも頑張って悪いヤツ退治だ♪

ひなあられ、美味しそうだけど食べたら困ったことになるんだよね!
我慢我慢しながら妖怪たちが食べようとするひなあられをミフェットと一緒にインターセプトしちゃうよ!
回収したら【フェアリーランド】の中に放り込んじゃうね♪

霧で浮かぶ思い出は、何か顔がぼんやりして見えない人間のおじさんに頭を撫でられてるところ!
むむー、全然記憶にないよ!でも、なんだかママに撫でられてる時みたいに安心するぞ☆
しばらく撫でられてから向こうに行きなさいって感じで送り出されて先に向かうことになるよ!

※アドリブ/連携も歓迎


ミフェット・マザーグース
ティエル(f01244)と一緒に出発するね
カクリヨ、かくりよ ふしぎな世界
ちょっとだけ、ミフェットが昔いた場所に似てるかも

きりと森、音色、鈴の音、おおきな、おおきな・・・ひな、だん?
ひなだん、ひな壇、しちごさん?
データベースで【情報収集】、オブリビオンの正体を考えてみる

妖怪たちを助けるために、とびだしたティエルを慌てて追いかけて
「見切り・盗み」でいっしょにひなあられを回収しちゃうね
ひなあられ、猟兵は食べて大丈夫、らしいけど
ちょっと怖いから黙ってよう

SPD判定
霧に浮かぶ思い出は、ずっと昔のミフェットの住処
だれにも気付かれないように、一人ですごしていた頃の
宇宙船の廃棄ブロックの 古い、錆びた匂い


 なんだか、遠くの方で誰かの喚き立てるような声が聞こえる気がする。
 楽しそうな雰囲気だが、それも少し遠めの喧騒にしか感じない。
 あっち側は、別の猟兵が暴れているみたい。
 厳密には暴れているわけではないのだが。それはまぁ前の話。
 少し喧騒を離れれば、そこら中に集まった妖怪たちが、ひな壇の上の方から雨あられと落ちてくる『ひなあられ』を籠にとってぼりぼりと貪り食っている。
 そのたびに溢れ出る灰色の霧が、彼らにとって懐かしく輝かしい日々を映し出しているのだろう。
 尤も、その情景は本人(?)たちにしか見えないもののようだが。
 そんな中、あられに夢中になっている妖怪たちの中心で、必死の形相で訴えかける妖精が一人。
「そのあられを食べるのをやめるのです! 食べたら最後やめられない止まらないで廃人……じゃなくて廃妖怪になっちゃうよ!」
 パルル・ブラックベリー(腹黒フェアリー・f10498)は、いつもよりも2トーンほど高い声で呼びかける。
 しかし、いくら黄色い声を浴びせかけても、妖怪たちは見向きもしない。
 まさにやめられないとまらない様子で、あられに夢中だ。
 そんなにうまいのか。カルシウムとビタミンBが配合されているのだろうか。
 しばらく呼びかけてみても手応えらしいものが感じられないことがわかると、パルルは嘆息して腕を組む。
「やーっぱだめか。まあ、こんな簡単なら、パルルちゃんは必要ねーもんなぁ」
 崩れた口調で眉をぴくぴくとさせるのは、歯牙にもかけない態度が気に喰わないからか。
 大丈夫、パルルちゃんはちょっとやそっとではへこたれない。何の騒動が起きずとも無観客ライブができちゃうくらいの鋼のメンタルでもなけりゃ、アイドルを自称してなどいない。
 とはいえ、対策も無しに妖怪どもをぶん殴って引き剥がすというのも、なんというか、ほら、アレだ。
 ふーむむ、と腕組みして考えるパルルは、ふと視界の端っこに別の猟兵の姿を見つける。
 この状況、浮かびかけた策には、とにかく人員が必要だった。
 こいつは利用……もとい、手を借りないわけにはいかない。
「ふふーん、ここがカクリヨファンタズムなんだね!」
「カクリヨ、かくりよ ふしぎな世界。
 ちょっとだけ、ミフェットが昔いた場所に似てるかも」
 ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)とミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)は、連れ立ってこのお祭り会場に足を踏み入れていた。
 霧の深い森かと思えば、いつの間にか真っ赤なフェルトっぽい地面が段々と積み上がるひな壇のような空間なのだから、それはもう子供二人、きょろきょろと首がもげそうな勢いで周囲を見回していた。
 巨大なひな壇のような謎の空間ではあるが、そこに雛人形はおらず、足元は木目にフェルトを張り付けたような感じで固い感触を奥に感じるが、表面は足音がこもる程度には柔らかい。
 階段状のひな壇は一直線に伸びているが、その先は霧に隠れて見えない。
 また、同様に上の階層も霧で覆われて見えない。
 ここを不思議な空間足らしめているのは、この見通しの利かない霧の存在だろう。
 ひどく殺風景なのに昼間のように明るく、行燈のような明かりがあちこちに置かれているし、あちこちには妖怪がたむろしているのだから、妙なお祭りのような雰囲気があるのだろう。
「ようし、この世界でも頑張って悪いヤツ退治だ♪ あいたっ」
 好きなだけ周囲を見回して、改めて決意を表明するティエルの頭に、ぽこんとひなあられが落っこちてくる。
 人の指先ほどのひなあられとはいえ、20センチちょっとのティエルには小脇に抱えるほどのサイズだ。
 絶え間なくぽろぽろと落ちてくるあられを空中でキャッチするティエルは、おいしそうな匂いをふんわりと醸すそれをじっと見つめる。
「ひなあられ、美味しそうだけど食べたら困ったことになるんだよね!」
 ちょっと残念そうにぺいっと放り投げるティエルに、ミフェットはん? と小首をかしげる。
 猟兵は食べても大丈夫っぽいけど、何かあっても困るし黙っていた方がいいかもしれない。
 だが、降ってくるひなあられを勿体無いといった様子で物欲しげに眺めるティエルの表情は、ちょっと微笑ましい気もする。
 ほっこりする気持ちを抱きつつ、ミフェットは一人考える。
 もとは兵器として製造されたブラックタールであるミフェットは、その記憶媒体に位置する機関にデータベースを備えている。
 とはいえ、普通の11歳の女の子としての感性では、色々と限界はある。
 敵の正体は何だろう。もとは森の中だというし、森に関係ある生物だろうか。
 手がかりといえば、最初の予知で聞いたとされる鈴の音。何よりも、このおおきなおおきな、ひな壇……七五三?
 ひな人形でも出てくるのだろうか。まだ、何かデータが足りない気がする。
 あとはそう、あられ……なんであられが降ってくるんだろう。
 こればかりは、考えても意味が解らない。
 まるで童話の中の話である。
 童話……そういえば、最初に読んだ童話はなんだったろう。
 たしかそう、宇宙船の廃棄ブロックの、古く色んなものが錆びたにおい……。
 ミフェットは、いつの間にかスクラップ施設の光景を、霧の中に見ていた。
 想起されるのは、長い長い孤独。教わった歌と物語が何度も何度も頭の中でループして、時間が同じように輪になってぐるぐるとスクラップ施設の周りを回っているんじゃないかとすら思った。
 物語の先を考えたこともあった。広く遠く、夢の翼を広げてどこまでも行ける様な気がした。
 けれど、いつもこの錆びたにおいが、あの場所に引き戻すのだ。
 いつまでもずっと、ここで円形に回り続ける時間を繰り返すだけなのだと、ずっと思っていた。
 そうだ、ミフェットはずっとひとりだった。
「あれ、ミフェット? どこ行ったの?」
 気が付けばティエルも灰色の霧に周囲を別の何かと見間違えていた。
 いつの記憶だろう。知っている気がする。黄金の日差しは、ティエルの記憶にあるものと相違ない。
 自分の髪の毛がこんなに輝いて見える日を忘れるだろうか。
 だというのに、それがいつだったのかが思い出せない。
 そして、誰かの、大きな手が頭に触れる。人間の手だ。それはわかる。でも誰だろう。顔が靄がかっていて、誰だかわからない。
 人間のおじさん。誰だろう。でも、母親に撫でてもらうときのような安心感がある。
 こんな日が、あったんだ。
 こんな時が、あったんだ。
「むむー! 全然記憶にないよ」
 やがて、おじさんはもう行きなさいとティエルを送り出す。
 寂しいとか、もっと一緒にとか、色んな思いがあった気がする。でも、先に行かなきゃって思ったんだ。
「おーい、聞いてんのか? 二人して、なにボーっとしてんだァ?」
 唐突にティエルたちを包んでいた霧が晴れる。
 そして現れたパルルが空中で仁王立ちして頬を膨らましてぷんすこしている姿を見て、呆気にとられる。
「あん? なんだ、パルルちゃんに逢えて感動しちゃった感じ?」
 ふと顔を見合わせる二人は、お互いに目を赤くしている事に気が付いた。
「ティエル、泣いてたの?」
「そうみたい。でも、哀しくないんだ。なんかね。胸がきゅってなって」
 そういえば何を見たのだったか。
 今となってはうまく思い出せない。
 あまりにも若すぎる9歳の少女が抱くには、懐かしさという感情は、うまいこと処理ができない問題だったのかもしれない。
「はっ、泣くのは大舞台に立ってからってね。んなことよか、ちょっくら手ぇかしてくんないかな?」
「ん、なにする?」
 さらっと子供二人を従えるガキ大将のような態度を取るパルルに、妖精特有のノリの良さでティエルもミフェットも応じる。
「っへへ、あいつらあられに夢中で見向きもしねぇからよ。てめぇもフェアリーやってんなら、持ってんだろぉ……壺をよ!」
「あ、わかった! フェアリーランドでインターセプトだねっ☆」
「えっ、えっ、盗み……回収するの?」
 ばばっとお互いに小さな壺を出すフェアリー二人を交互に見つつ、少し遅れてミフェットも作戦に思い至る。
 フェアリーならばだいたいが持ち歩いている、フェアリーランドに通じる小さな壺。
 やる事は至極シンプルだ。この壺に妖怪たちのあられを詰め込んで回収する。
 ただし、あられの量はかなり多いし、今もなお降ってきている。
 だから最初に思い付いたパルルも、誰かの助けの手を求めていたという訳である。
「そうと決まりゃあ、大急ぎで収容すっぞ!」
「よーし、競争だね! ミフェット、ついて来て! いっくよー!」
「え、え、待ってー!」
 弾丸のように飛び出していく二人の妖精を、ミフェットはとてとて追いかける。
 遅れまいと駆けつつも、髪に擬態した触手を四方八方に伸ばして、あられの入った籠をかすめ取り、妖怪の手の中にあるあられをすぽぽんっと吸い込むのを忘れず。
「うおっ!? あれ、俺のあられが……!?」
「なんだ、子供か? ど、どろぼー!」
 どたどたと小さな妖精二人と一人の少女(ブラックタール)が駆け抜けるたび、大量のあられが姿を消す。
 困惑する妖怪たち。そしてあられを奪われてしまうたびに、はっと何かの鎖から解き放たれるかのような解放感を不思議がる。
 どうしてあられなんて食べていたのだろう。
 奪われた瞬間こそ思わず声を上げるが、不思議と怒りがわいてこない。その代わりに、毒気を抜かれたようにすら思ってしまう。
「ハッハァ! 見たかぁ、あの間抜けヅラァ! はぶっ!?」
 高速で飛び回りながらあられを奪い取ってはフェアリーランドに収容していたパルルは、ポカンと口を開ける妖怪たちを愉快そうに振り返るが、前方不注意が祟ったのか、新たに降ってきたあられが顔面に衝突してしまう。
 フェアリーにはややサイズの大きなあられとはいえ、アイドルとして歌も歌うからにはパルルはお口が大きい。
 意図せず口にくわえたあられを豪快に飲み込んでしまった。
「バカバカ、飲み込んじまった! あーー! トリップしちゃう幻覚が見える! 実家が見えるー!」
 げふーっと下品なげっぷを漏らしつつ、空中でのたうち回るという器用なことをしながら、パルルは幻覚を見る。
 食べなくても見る筈なのだが、プラシーボなのか、なんだかタイミングが良かったらしい。
「近衛が追ってくるー! 嫌だー! パルルちゃんは実家に帰りたくなーい!」
 頭を抱えて、顔色を青くしてぷるぷると震え始めるパルル。
 その設定ホントだったの?
「うーん、何が見えてるのかな」
「ちょっと楽しそう」
 七色に顔色を変じさせるパルルを、ティエルもミフェットも生暖かい視線で見守る。
 そうして何かに怯えている様子をしばらく見せていたパルルだったが、
「クソ! おい、ちびっ子ども! このまま奥に逃げ込むぞ! イェーイ! パルルちゃん最強ー!」
 やけくそ気味に二人を先導するような仕草をしつつ、何事かを叫びつつ、パルルはすごいスピードで霧の中に消えていく。
 口の悪い妖精だが、なんだかんだ言いつつも、ティエルとミフェットの若い二人を気に掛けるだけの余裕はあるらしい。
 お互いに顔を見合わせる二人。そしてティエルは一度、後ろを振り返る。
 あの人の顔は思い出せないが、なんとなく、
「いってきまーす!」
 誰ともなしにそういうと、ミフェットの髪、触手を手に取って、二人でパルルを追いかけるのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ユリウス・リウィウス
過去の記憶か。ろくなものはねぇなあ。なあ、おい。
妖怪どもの足跡にも興味は無い。誰かの記憶が幻影となって現れたら、双剣で切り裂いて先へ進もう。想い出なんてごめんだ、畜生。

さあ、お前達、いつまでそんなものを貪ってる?
話が通じないなら、無理矢理に引き剥がすぞ。
「恐怖を与える」死霊の霧を展開して、食欲を恐怖で押し潰してやる。
さあ、逃げろ逃げろ、妖怪ども。

こうしてあられを喰らっている妖怪どもを追い払っていけば、かびた餅のオブリビオンがやってくるだろう。
それまでは、妖怪達を容赦なく追い立てる。
悪く思うなよ? これもお前らのためだ。

そろそろ祭の主催者側から接触がある頃かね? いつでも戦える準備をしておこう。


 どうにも、来る場所を間違えたろうか。
 無精ひげを蓄えた黒騎士ことユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)は、全身武装でお祭り会場となっている強大なひな壇に上がり込むと、ぼりぼりと頭を掻く。
 猟兵が駆り出される依頼と来れば、だいたいが荒事だ。ともすれば、相応の腕を持つ者が解決に乗り出すこともあるだろう。
 ユリウスもまた、新たに発見されたこの世界に起きた異変を解決すべくやってきたのだが、そこらにあるのは、濃い霧に囲われてぼりぼりとあられを貪る多数の妖怪たちの姿があるのみ。
 もう少し奥まで進めば、予知に見た通りの怪物が幅を利かせているのかもしれないが、さりとてこの妖怪たちをそのままにしておくのも、どうにも気掛かりでならない。
 というのも、こいつらは一様に後ろ向きなのだ。
 見れば懐かしげに頬を緩める妖怪と呼ばれる連中の面持ちには、言い知れぬ影がある。
 そういう顔をする奴らには覚えがあった。
 思えば、ひどい戦地ばかりだった気がする。
 父の罪を雪ぐ為に、自ら危険な戦地へ志願し、時には進んで汚れ仕事も請け負った。
 騎士とは名誉の生物。などというのは、半ばまやかしだ。
 誰が最初に言い始めたか、お貴族を気取る連中というのは、自分より地位が高い奴をあまりよく思わない。
 それらは不思議と、横並びが多いほど追い落としたがる傾向にあるようだ。
 ユリウスが放り込まれた戦場には、そういった闘争から蹴落とされた連中も少なくなかった。
 死んで名誉となせというわけだ。
 そうなるに相応しい連中もいたが、中には似つかわしくないほどのお人好しもいた。
 お人好しが過ぎて嵌められたんだろう。貴族社会の落ちこぼれというやつだ。
 だが、過酷な戦場というのは、どんなクズやお人好しでも、家族のようになれるほどの連帯感を持つこともあった。そうしなければ生きていけなかった。
 いい奴も悪い奴も、みんな名誉の戦死を遂げ、俺は生き残ってしまった。
 ここにいる妖怪連中の顔つきは、かつての戦友が故郷の話をするときの顔に似ていた。
 明日の見えない戦いの中で、過去を振り返るそのひと時だけが、俺たちにとっての安息であり、逃避だったんだろう。
 そんなものくらいでしか、泥のような戦いの日々は薄れてくれなかったのだ。
「チッ、過去の記憶か……。ろくなものはねぇなぁ、おい」
 昔のことを思い出したせいだろうか。ユリウスの周囲に漂っていた霧が、見たくもない幻を映し始めていた。
 だが、生温い。
 それはもう飽きるほどみた光景だ。
 確かに、もう見たくもない光景ではあるが、記憶は所詮記憶に過ぎない。
 いい思い出なんて何もない。それは、最近はそこそこマシなものになったかもしれないが、いい思い出がないからこそ、それがいっそう色褪せて見えるというものだ。
「想い出なんてごめんだ、畜生」
 立ちこめる霧を双剣で切り払えば、浮かび上がった幻も泡と消える。
 忘れもしない。とはいえ、無理矢理目の前に突き付けられるのは、いい気分ではない。
 場合によっては、こんなにもクソなのだ。
 妖怪連中も、こんなものに付き合う事なんてない。
「さあ、お前達、いつまでそんなものを貪ってる?」
 声を張り上げて、そこいらであられを貪る妖怪の手元やあられの盛られた籠を蹴りつける。
 思い出にしか目が行っていなかった妖怪たちは、あられを食うのを邪魔されると、ようやくユリウスの姿に気づいたかのようにハッとして、思わず立ち上がる。
「な、なにすんじゃあ!」
「あ、あられがぁ~! わしらの思い出がぁ~」
「やかましい。祭りは終わりだ。帰れ帰れ!」
 いきり立つ妖怪たちを追い払うため、ユリウスはユーベルコード【死霊の霧】によって死者の怨念を孕む冷たい霧を呼び出し、その恐怖で以て妖怪たちを追い立てようと試みる。
「ここにいてもろくなことにはならんぞ。さあ、逃げろ逃げろ、妖怪ども」
 恐怖のオーラに身を包むユリウスは、さながら悪魔のような姿にも見えただろう。
 だが、ここは妖怪の世界。そんな奴は割とよくいる。
「おお、見事な迫力じゃあ!」
「こりゃたまらん。寒気がしてきたぞい」
「いやぁ~、よそモンもすごいもんじゃのう。久々にいいもの見れたわい……」
 うん? と、なにか様子がおかしいことに気づいてユリウスも首を傾げる。
 ユリウスの恐怖の姿にすっかり感心した妖怪たちは、感服した様子でぞろぞろと祭り会場をあとにしていくようだった。
 ここには彼らのルールでもあるのか。
 より人々をびっくりさせたものが勝ちなのか。
 或は、あられから無理矢理にでも引き剥がした結果なのか。
 思っていたリアクションとは違っていたものの、意外にも妖怪たちには死霊の冷気を纏ったユリウスの姿は好評なようで、そこそこ乱雑にあられから引き剥がしても、どこか嬉しそうに去っていく。
「悪く思うな……と言おうとも思ったんだがな。まあ好都合だ。さて、そろそろ主催者側から何か接触があるかね?」
 妖怪から妖怪っぽいとの妙な賛辞を受けることに奇妙な優越感が無いではなかったが、当初の目的も忘れるわけにはいかない。
 気の抜けたような空気も、今のうちだけかもしれない。
 ここより先は、もっと危険なテリトリーに違いないのだ。
 香ばしいあられのにおいに混じって、饐えたようなカビ臭さが鼻先をかすめていった。
大成功 🔵🔵🔵


第2章 集団戦 『カビたモチ目目連』

POW ●キミモクルシムトイイヨ
攻撃が命中した対象に【口と鼻が餅でふさがった状態】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【呼吸困難】による追加攻撃を与え続ける。
SPD ●タベラレルモノナラタベテミテヨ
レベル×5本の【毒】属性の【カビた餅】を放つ。
WIZ ●デキタテダヨ
自身の肉体を【熱々のお餅】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「どうしたことだ! 妖怪たちが帰っていく!」
 下層の方で、なにか賑やかなことがあったらしい。
 ぱちぱちと、真っ黒にカビの生えたお餅の妖怪は、その表面に無数の目を瞬かせる。
 猟兵たちの活躍により、まだそれほどあられ中毒に陥っていない妖怪たちは安全に帰すことができた。
 しかしここは、下層よりもいくらか上ったところにあるひな壇の中層。
 よりあられを求めてやってきた妖怪たちは、ここでカビた餅の妖怪に目を付けられて、最終的にはカビた餅を無理矢理に食わされてオブリビオンにされてしまう。
 しかし、オブリビオンに変じてしまった妖怪は、討伐することで開放することができる。
 彼らは妖怪。その存在は、物理法則とはちょっと異なるようだ。
「うぬぬ、どうやら我々の邪魔をする奴が入ってきたようだな!」
 カビた餅の目目連たちは、警戒を強める。
 仮にこの場に猟兵が戦う姿勢を見せても、それこそ一目散に逃げ回ってまともにやり合うのが困難になる可能性がある。
 ところが、彼らはオブリビオンと言えども元は妖怪である。
 この場に居合わせる妖怪たちと同様に……例えば、あられを食べるような素振りを見せれば、うっかり妖怪を見間違えて、無防備に近づいてくるかもしれない。
 彼らは妖怪。そこには決まりごとがあるのである。
ユリウス・リウィウス
ああ、色々と勝手が違うな、この世界は。だからといって油断はしないが。

来訪者が妖怪である必要があるのなら、血統覚醒で吸血鬼と化そう。
そうして、あられをつまみながら奥へと向かう。
あられが足りんぞ! もっと持ってこい! 塩気で喉が渇く。ワインも用意しろ!
まあ、これくらい横柄に振る舞うのがいいんだろう。

かび餅が近づいてきたら、即座に名もなき暗殺術で踏み殺して「暗殺」。
さあ、ショウタイムだ。
双剣を抜き放ち、「生命力吸収」「精神攻撃」の双剣撃と威力重視の虚空斬で、群がるかび餅どもを切り捨て、逃げていく奴らの後を追う。
そこにこの事件の首謀者がいるはずだ。
このまま一気呵成に終わらせよう。首を洗って待っていろ。


ビスマス・テルマール
カビた餅の妖怪……これは色んな意味で芳しくないですね

●POW
アラレを食べる振りをして敵を誘いだし

襲い来るタイミングを『第六感』で『見切り』『オーラ防御』で覆った実体『残像』で変わり身で敵のUCをスカらせ

『空中戦』で上空から『早業』でUC発動

生成した絶対超硬剣を『大食い』し白金竜装態に変身

す『第六感』で『残像』で『見切り』回避しつつ

お餅と言えば雑煮……ここは
なめろう雑煮にあやかって

【ブリのなめろうの大地の力の絶対超硬剣】の『弾幕』を『範囲攻撃』で振らせ『制圧射撃』を続けつつ

どさくさ紛れに
なめろうフォースセイバーで
『鎧無視攻撃』込みで『料理』し敵を倒し

妖怪さん達の救助を

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
※アドリブ歓迎

『フェアリーランド』の壺の中から風/火の精霊と聖霊と月霊を呼んで「ミンナ♪何か気配が違うから気を付けてね☆彡」といつもよりも多めに“七色金平糖”を配って、『クリスタライズ』で姿を隠しながら目目連を見付けたら『エレメンタル・ピクシィーズ』で風/火属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖攻撃を仕掛けます♪
敵の攻撃は『月世界の英霊』で空間飛翔して避けて『月霊覚醒』でUCを封印/弱体化させます☆彡
猟兵の怪我人には『祝聖嬢なる光輝精』で治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒やします♪

『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』で苛烈な猛攻を仕掛けます!
「猟兵のミンナも頑張ろうね」


 巨大なひな壇に備え付けの階段を昇っていくと、ある階層から空気が淀み始めたのを感じる。
 先ほどまでは、揚げたお餅の香ばしい匂いがしていたはずだが、どうにも妙な連中がここには多いらしい。
 さすがは妖怪たちの世界カクリヨファンタズムといってとこだろうか。
 しかし、
「お前もカビにしてやろうか。フハハハ」
「やめろー、うわっ、カビ臭い!」
 ここにもいっぱいいるあられに夢中な妖怪たちを捕まえては、その真っ黒にカビた餅の妖怪は、骸魂を含んだ餅を無理矢理に食わせて、同胞を増やしていく。
 そう、カビた餅の妖怪、目目連たちはオブリビオンである。
 下層からは考えられない不穏な香りが、この場におぞましい空気を作り出しているが、それでもあられに夢中な妖怪たちはまだ少しいるようだ。
 それほどまでに魅力的なあられなのだろうか。
 そして、あられを食う妖怪だからこそ、オブリビオンはそれを積極的に狙っているようだ。
「なるほどな。来訪者が妖怪である必要があるというなら、吸血鬼と化そう」
 ユリウス・リウィウスはその身に宿る吸血鬼の血脈を活性化させようとする。
「あ、ちょっとまってください。一応、作戦を立てましょう」
 その様子を見て、ビスマス・テルマールは、なめろうをまぜる手を止める。
 いつでもなめろうを手放さない精神は凄まじいこだわりを感じるものがあるが、そこまでする必要はあるのか。
 まあそれは置いておいて。
「ふむ、とはいえな。連中は、あられを食う妖怪に反応するようだし、それで誘い出せば良いんじゃないか?」
「確かに。素振りだけでも見せれば、反応してくれるかもしれません。なので、念のためにどんちゃん騒ぎにしちゃいましょう」
 どんっと、どこからともなく出現したちゃぶ台に、どんぶりいっぱい用意したなめろうを置く。
 むう、と難しい顔をするユリウス。
 なめろう、いるか?
 突っ込むべきか、突っ込まざるべきか。
 そもそも、そんなにいっぱい、食べられないと思うのだが、それはまぁ、いいか。
「うーん、ボクたちは、ちょっと離れて様子を見てるね☆」
 ぱちんとウィンクしつつ、既にたくさんのなめろうを目にしていた祝聖嬢ティファーナは、もう見るだけでお腹いっぱいだったので、別行動をとることにした。
「ミンナ♪何か気配が違うから気を付けてね☆彡」
 と、フェアリーランドから呼び寄せた友人としている数々の精霊、聖霊、月霊たちに七色のこんぺいとうをいつもよりも多めに配る。
 オブリビオンともなれば戦闘は避けられまい。
 ビスマスとユリウスが騒ぎを起こせば、目目連たちは引き寄せられるはずだが、逆に言えば囲まれる状況にも陥る、という解釈もできる。
 しかしティファーナには、手数ともいうべき多数の友がいる。
 少々疲れるが、『クリスタライズ』を用いて姿を隠し、しばし彼らの様子を窺うことにした。
「よし、こんなものでいいかな」
「それ、落ちてたやつですよね。ホントに食べなくっても……」
「まあ俺は気にしない。それに、一人くらいは派手に食って見せねば、場が盛り上がらんだろ」
 ちゃぶ台の向かいにユリウスが、あられを盛ったざるをどっかと乗せる。
 そうして、ユーベルコード【血統覚醒】によって、その目がぎらりと赤く輝くと、ユリウスの体内の血液は沸騰しそうなくらいに熱を持つのに、肌はどんどん血色が悪く見え始める。
 そして、盛られたあられを無造作につかむと、ぐあっと鋭い牙の並ぶ口を開けて放り込む。
 ぼり、ぼり、と確かめるように咀嚼する。
 一応、猟兵にとっては無害な筈だが、また妙な幻覚を見させられては困るし、中毒になるのも御免だ。
 おかしな味はしない。香ばしくちょっと固めだが、程よい塩味が後を引くような……普通のあられのように感じる。
「うむ、うむ……ふっ」
 そうしてひと時それを味わうと、ただ食ってるだけじゃダメかなと、にやっと口元に悪そうな笑み。
「あられが足りんぞ! もっと持ってこい! 塩気で喉が渇く。ワインも用意しろ!」
 だあん、とちゃぶ台を打って立ち上がり、当たりに聞こえよがしに横柄な口ぶりで喚き立てる。
 正面でそれを見ていたビスマスも、なんか悪乗りしてるなぁという雰囲気を悟り、あられを手に取って食べているかのように見かけつつ、自身も勢い良く立ち上がる。
「そうですよー! こんなあられじゃ全然、お腹にたまんないですよ! なめろうです。もっとなめろうを食べましょう!」
 完全に迷惑な客である。
 だが、そんなクレーマー二人の態度が功を奏したのか、周囲のカビたモチ目目連たちがちょこちょこと目を向けて歩み寄ってきた。
 黒いカビに覆われた集団から囲まれるのは、さながら「お客さん、ちょっと……」という光景のようにも見えるが、それはまあさておいて。
「誰か酒でも持ち込んだのか? まったく」
 呆れた様子で目目連がユリウスに近づいたその瞬間、ユリウスはその身を屈ませて背後に立ったオブリビオンの足を払う。
 そして続けざまに転倒したオブリビオンの頭部に甲冑の踵を打ち込むと、あっという間にその丸っこい頭部が砕ける。
「すまんな。そのまま寝てろ」
「むう、こいつ、ただの酔客じゃないな! 取り押さえろ!」
 汚い鏡開きの惨状を目の当たりにして、一斉に飛び込まんとするオブリビオンの集団の中から、青白い輝きが飛び上がり、周囲の者たちはその迸るオーラに圧倒される。
「ふふん、実は、素面です!」
 飛び上がったビスマスがおもむろにその手中に生成したのは、いつしかの帝竜戦役で対決した際にも手にしたプラチナの絶対超硬剣。
 その強力な剣を再現できることこそすさまじいが、まさかそれで目目連たちをばっさばっさと……するわけではなく、作り出したその剣を、なんと食べ始める。
 ユーベルコード【プラチナ、プラス、ナメロウハーツ『沖膾硬剣製雨』】によって、その剣を食したビスマスは、白金竜の装甲を纏って空を飛ぶことが可能となる。
 そして更に、
「此処はプラチナさんの力と、足りない分はわたしの力で!」
 嘗ての帝竜と同じく、いや及ばぬまでもその装甲を放つことで、ブリのなめろうの大地の力の絶対超硬剣と化して攻撃することができるのである。
 その正体は不明だが、とにかく硬質金属を含むなめろうの刃は、周囲を囲むオブリビオン達に降り注いでその身を引き裂いていく。
「う、うぬぅ……こいつらが、侵入者だったか! に、逃げろ~!」
 まんまと呼び寄せられたことにようやく思い至り、オブリビオン達はビスマスの放つ超硬剣と、黒い双剣を抜き放ったユリウス達から逃げようとする。
「よぉーし、ミンナ! 今だよっ!」
 オブリビオン達が反転するタイミングを見逃さず、ティファーナは一気に攻勢に転じるべく、姿を現す。
 そして精霊たちと共に使うユーベルコードは……『エレメンタル・ピクシィーズ』『神罰の聖矢』、それから『叡智富める精霊』『神聖天罰刺突』でさらに激しい猛攻を……そんなにいっぱい使わんでもというくらい、雷光のような光線や精霊たちの属性攻撃の多段攻撃により、ひとたまりもなく倒されてしまう。
「いや、待ってくれ。全滅はさせなくていい。いくつか、逃げる奴らを追いかけるぞ」
「へ? なんでぇ?」
 苛烈な攻撃の中で制止に入るユリウスに、ティファーナは小首をかしげる。
 確かにオブリビオンは最終的に世界を滅ぼす。倒すべき敵だ。
 だが、今回の敵には首謀者がいる筈だ。
「逃げる奴を追って行けば、そこにこの事件の首謀者がいるはずだ」
「ああ、そっかぁ! 頭いいね☆ミ」
 名案とばかりポンと手を打つティファーナにつられて、友人の精霊たちも真似して同じような仕草を取る。
「よし、あいつがいい。追いかけるぞ。このまま一気呵成に終わらせよう」
「終わらせようー☆」
 首を洗って待っていろ。と追いかけるユリウス達の後ろで、
 ビスマスはなめろうフォースセイバーで、カビた餅のオブリビオンを『料理』していた。
 出来上がったのは雑煮。だが……もともとカビていたお餅を使ってどうにかなるものなのだろうか。
 見た目には食べられそうにも見えなくもないが……。
 と矯めつ眇めつしているところ、自分が置いていかれていることに気が付く。
「あー、ま、待ってくださいー!」
 ひとまず、オブリビオンにされてしまった妖怪が無事な姿になったのを確認しつつ、ビスマスもまたユリウス達を追いかけるのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

香神乃・饗
(気配を感じた気がしてチラッと雛段を見上げた。向きなおり)
へ?邪魔?なんの話っすか?
俺?小豆洗いの妖怪っす!
持参していた小豆をショキショキ

美味しいものがあるって聞いてきたす!俺にもご馳走してほしいっす!
(ぱりぽり)美味しいっす!あっ、甘酒もあるっすよ!

食べるフリのフェイントをかけながら敵が近づいて来るのを待つっす
こっそり香神写しを使い武器を増やしたり、剛糸で罠をはっておくっす
油断しているところに苦無の雨をお見舞いしてやるっす
逃げる奴らは張り巡らせた剛糸で捕まえるっす

カビた餅は乱戦という地形を利用し、剛糸で敵を盾にしてカビたモチ目目連に食わせてやるっす!
たっぷり味わうと良いっす!残さず食うっす!


ティエル・ティエリエル
ミフェット(f09867)と一緒にひな壇を登っていくよ!

ふむふむ、ボク達ならあられは食べても大丈夫だったんだね!
それで、今度はあられを食べて妖怪さんのフリをしておびき出せばいいんだね!

あられを両手で抱えて一生懸命にもぐもぐするよ!『妖怪あられかじり』の登場だー☆
もぐもぐかじかじしてもあんまり減らないけどミフェットが一緒にいっぱい食べてくれたよ♪

これでカビたモチ達が近寄って来たらやっつけちゃうよ!
飛んでくるカビたお餅は「見切り」で切り払って、ミフェットが捕まえたカビたモチを【ハイパーお姫様斬り】で真っ二つだよ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
あられを食べない妖怪をねらってるなら
あられを食べる妖怪になれば
あっあっ、食べてもだいじょうぶって、ちゃんと教えなきゃ!

ティエル(f01244)と一緒にひな壇の上に!
食べちゃダメと思ってたヒトにも説明して、あられを食べる妖怪のフリ作戦!
ミフェットはちっちゃいティエルの分までカリカリガリガリ食べちゃうよ
もちろん手伝ってくれるヒトは大歓迎!

UC【バウンドボディ】
カビモチのオブリビオンがふらふら近づいてきたら、髪に擬態してる触手をうにゅーっと伸ばして「罠使い・ロープワーク・怪力・手をつなぐ」で捕獲!
ミフェットがしっかり捕まえて攻撃してもらうよ

振りほどこうとしても「怪力・激痛耐性」で逃してあーげない!


 からころからころ、あられが落ちてくる。
 それがひな壇を打つ音に混じって、どこか間延びしたような鈴の音がかすかに聞こえる。
 ……気がした。
「……?」
 香神乃・饗(東風・f00169)は、ふとその気配を感じた気がして、ひな壇の上の方へと目を向ける。
 紅梅を思わせる鮮やかな赤い半纏を着込んだ、なんともいなせな佇まい。
 その横顔には、いつもは快活な笑みが浮かんでいたはずだが、その一瞬だけは引き結んだ口元に渋いものが混じっていたようである。
 が、それもひと時の事。押し黙ったまま見上げた先には灰色の霧がかかっていて、先が見えない。
 嘆息したところで、後ろからどんっと何か軽いものがぶつかった。
 ぼっとし過ぎていたか。妖怪か、オブリビオンにでも絡まれたか。それにしては、軽い感触のような……。
「はうっ、色がおんなじで気づかなった! なんでこんなところに邪魔な壁があるんだよー!」
「へ? 邪魔? 何の話っすか?」
 背中にぽふんっとぶつかってきた小さな存在、20センチ前後の妖精、ティエル・ティエリエルは、なんだか頬を膨らませて喚いている。
 怒っているのかどうなのか。別に怒っていないような気もする。妙にテンションが高いだけのようにも見える。
「ティエル、まってー!」
 ひな壇の下の方から続けてとてとてと走ってくるミフェット・マザーグースは、親友のティエルが足を止めているのを見かけて声を掛けつつ、ようやく追いついてきたようだ。
「それで、おにーさんは誰なの? 他の妖怪さんと違うみたい」
「俺? 小豆洗いの妖怪っす!」
 可愛らしい二人の子供猟兵に対し、饗はにかっと笑って小脇に抱えたざる籠に入れた小豆をしょりしょりとさせる。
 なんとも小気味いい音であるが、それはポーズであり、あくまでも彼の正体はヤドリガミの猟兵なのだが、厳密には妖怪の猟兵としても通らなくはないかもしれない。
 現に、このカクリヨファンタズムの世界が発見されてから妖怪の猟兵も居なくはない。
 まぁ、彼はあくまでもヤドリガミであり小豆洗いでは勿論ないのだが、それでも純真な子供猟兵たちは、目を輝かせる。
「わー、本物の妖怪の猟兵さんだよ!」
「わぁ、初めて見たー!」
「うーん、こんなに喜ばれると、引っ込みがつかなくなるっす」
 まあ、堂に入っているならいいかな。と、深くは考えずに、この場は小豆洗いとして通しても問題はない……と思うことにして、ほんわかする饗であった。
 閑話休題。
 それにしても、と、小豆をしょりしょりしながら周囲を見回してみると、灯りに照らされるひな壇の光景は、なんとも陰気な印象である。
 そこらに座り込んであられをぽりぽり貪る妖怪たち。そして、夢中な妖怪を引っ張り出してはカビた餅と骸魂を無理矢理食べさせるカビたモチ目目連。
 一刻も早く助けてあげたいところだが、オブリビオンの体表に浮いた無数の瞳がちらちらと視線を巡らせる。
 どうやら警戒しているらしい。
「あられを食べる妖怪を狙って襲っているみたい」
「ふむふむ、あられに夢中で気が付かない妖怪と見たっす」
 なら、あられを食べる妖怪を装えば、警戒するオブリビオンをおびき寄せ、不意を突けるかもしれない。
 年若い猟兵ばかりだが、それでも戦場をいくつも駆けてきただけあって、頭の回転は速いらしい。
 いやいや、ちびっ子はこれで案外聡いものだ。
「あっあっ、ティエル、そういえばさ。このあられ、猟兵なら食べても平気みたいだよ」
「ボク達ならあられは食べても大丈夫だったんだね! よーし!」
 あられを食べる妖怪は中毒のように昔の光景を思い出す。
 それを思い出した二人は、はたと小豆洗い(ヤドリガミ)の饗の方を見る。
 いくら猟兵とはいえ、妖怪には毒になりはすまいか。ミフェットとティエルは心配してしまう。そもそも妖怪ではないのだが。
 しまった。思い付きでやったことだが、余計な気を回すこととなってしまったか。
 だが、饗は慌てず別の策を思いつき、おもむろに手元のざるの中にある小豆をつまみ上げる。
「これを使うっす」
 にやっと笑みを浮かべる饗の姿に、二人はポンと納得したように手を打つ。
 しかしながら、心優しい二人の猟兵が体を張ろうというのである。
 事前にもう少しやれることはないだろうか。
「騒ぎを起こす前に、罠を仕掛けるっす。自分たちで引っかからないよう、気を付けるっす」
 するすると鋼糸を足元に伸ばしていく饗のその周囲には、括り罠のように輪を描く模様が浮かび、やがて見えなくなる。
 やがて、それぞれがやる事を示し合わせると、
「あられを食べる妖怪のフリ作戦、はじめるよ!」
「うっす! 美味しいものがあるって聞いてきたす! 俺にもご馳走してほしいっす!」
 ミフェットの合図とともに、饗が大声を出す。
 何事かと衆目を集める中で、よし見られていると確認したかのようにティエルも小さな体で大きく喚き立てる。
「『妖怪あられかじり』の登場だー☆ さあ、いっぱい食べちゃうぞー!」
 そうしてミフェットも同じように、抱えたあられをぽりぽりと食べ始める。
 さすがにフェアリーの体格ではあられは大きいので、齧り付いてもなかなか減らないのだが、普通の人間の少女とほとんど変わらないミフェットは、それを補うかのように一生懸命ぽりぽりぽりぽりと口の中に放り込む。
 あまりにも可愛らしい食べっぷり。いつまでも見ていたくなるものだが、そういう訳にもいかない。
 饗もまた、あられの代わりに小豆をコロコロと口の中で転がす。
 さすがに水分を含ませて長時間煮込む必要がある小豆を噛み砕くのは難しいところだが、煮詰めても皮が破れない大納言小豆は、それはそれでいいものだ。
 やっぱり煮込む必要があるなぁ。噛み砕いてみるとやっぱり粉っぽい。
 それにしても、あられ……あられか。
 なんとなく妙な因縁を感じてしまう饗だったが、考えを巡らせるよりも先に、騒ぎを聞きつけたらしいオブリビオンが近づいてきた。
「おーおー、いい食べっぷりだのう。餅もあるぞ、餅も」
 大きな頭に不釣り合いな手足をぽてぽてと動かしてやって来るカビたモチ目目連の集団は、いずれも体に浮いた多数の目を三人に向けていた。
 目がいっぱいあるのに、他が見えていないかのようだった。
 カビたモチを食わせることで頭がいっぱいの妖怪には、饗が小豆籠の影でユーベルコードを発動している事にも気づかない。
「一つが二つ、二つが四つ、香神に写して数数の……てぇいっ!」
 愛用の苦無、手裏剣ともナイフともスコップとも言われる忍者の武器が【香神写し】によって幾つにも複製され、それらが一斉に放たれる。
 雨あられと降り注ぐそれに完全に不意を突かれた目目連たちのいくつかは、その苦無に目玉を潰され倒れる。
「くっ、侵入者だー! これでもくらえーっ!」
 まんまと誘い出されたのを悟った目目連が、相手は3人、うち二人は子供とばかり、集団で襲い掛かるべくカビた餅を次々と投げつけるが、
「ふふーん、あられかじりがやっつけちゃうよー!」
 いつの間にか抜き放った愛用のレイピア。それを構えたティエルが飛来するカビ餅を斬り払って立ち塞がる。
「く、怯むな。相手はたかだか3人……うわーっ!」
 めげずに餅を投げようとする目目連に、ミフェットの髪が伸びて纏わりつく。
 ブラックタールであるミフェットの髪もまたブラックタールの軟体であるが、【バウンドボディ】によって伸縮性を得たその触手はうにょーんと伸びて、カビたモチ目目連を捕らえて離さない。
「うぬぬ、なんという力だ! まるで、搗き立て餅!」
「逃してあーげない!」
 めきめきと何か砕けるような音すら聞こえる怪力。優しく温和なミフェットと言えど、兵器としての側面は容易に牙を剥く。
 ただし直接的に傷つける方向に向かないのではあるが。
 しかし直接的な牙は、その親友が務める。
「ティエル、捕まえたー!」
「よーし、いっくよーミフェット! ハイパーお姫様斬りだー☆」
 レイピアに生じた、身の丈を超えるオーラの刃が、【ハイパーお姫様斬り】として、捕まえた目目連を切り裂く。
 威力としては、判定がいい加減なせいで大したことはないのだが、オブリビオンとしてはそこまで強力ではない目目連は一刀のもとに切り伏せられる。
「なるほど、いいコンビっす。おっと!」
 ハイタッチを交わす二人の連係プレイを目の当たりにしていた饗は、自分の方にもカビた餅が飛んでくるのを察知し、仕掛けておいた鋼糸を引っ張り寄せる。
 その場から逃げようとしていたオブリビオンを絡めとった鋼糸は、饗の手によって巻取られるように引き寄せられ、それは飛来するカビ餅の盾となる。
 よもや、無理矢理妖怪に食わせるはずのカビ餅を自分で食うことになり、目目連たちは涙目になった。
「うぐぐ! 我ながら、かび臭い!」
「たっぷり味わうと良いっす! 残さず食うっす!」
 説教をくれてやる割に、飲み込む前に苦無でとどめを刺すのだったが……。
 ドロドロとカビが崩れて消え去ると、安らかに寝息を立てる妖怪の姿だけが残った。
「ちゃんと元の妖怪に戻るってのは、不思議なモンっす」
 興味深そうに眺めるのもそこそこに、しかしそれならば容赦も不要とばかり、苦無を投げ、あるいは振るう。
 たった一人のお祭り男と子供二人。そう侮ったばかりに、大量のオブリビオンがその錆と消えることとなった。
 錆ではなくカビではあるのだが。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

パルル・ブラックベリー
あの妖怪の見た目は気持ち悪いけどぉ。このあられは普通に食えるよ、美味しいよ!フェアリー的にはちょいデカいけど
あー幻覚が見える見える。あられ怖いわー、ついでにお茶も怖いっすわー誰か持ってきてー

オブリビオンのがやって来たじゃないか!お前は呼んでないしその汚い餅を近づけてくんな!お前はあられだけパルルちゃんに貢いでくれればいいんだよ!
くっそー……やめろって言ってるでしょ!さわんじゃねえ!パルルちゃんのビンタで餅を払い落としてくれるわ!ついでにそのデカい目玉にも一発よぉ!あられだけ残して死んでくれやぁ!


 既に多くのオブリビオンが犠牲になる中で、ひな壇のその上層部分を目指すパルル・ブラックベリーはややゆっくり到着していた。
 妖精の仲間と一緒に、見事な連係プレイを見せつけたはずだが、途中からトリップして嘗ての現実から逃避し始めた辺りからよく覚えていない。
 気が付けば一人になっていた。
 そうさ、いつだって一人だった。誰もお前を愛しはしない。
「なわけねーだろ!」
 何がトリップだよ。幻覚なんて、もうさっぱり見えやしない。
 追いかけてくる身内なんていないし、自分の故郷がこんなところにやってくるなんてそんな悪夢はそうそう無い。
 盛大な家出をかましてきたパルルの実家は、実は……まあその話はいい。
 出てきた家が、向こうの方からやって来るとか、そこまでおうちに好かれていたとは考えていなかった。
 そりゃあ、パルルちゃんは可愛いし愛されても仕方ないところだけど、いやーうちに帰るのは、いやーきついっす。
 幻影を見せる灰色の霧はもう振り払った。謎の思い出はもう彼女を蝕みはしない。
 あられを口にしてしまった拍子に見てしまったものだからすっかり勘違いしてしまったが、どうやらこのあられは猟兵には無害なものらしい。
 むしろこの階層に至っては、あられをボリボリ齧っていたら、オブリビオンを引き寄せる効果があるらしいじゃないか。
 見れば、屯する妖怪たちに近づいては持ち前のカビた餅を無理矢理に食わせてオブリビオンにしてしまうカビたモチ目目連は、あられに夢中な妖怪ばかりを探していた。
「とんでもねー連中だなぁ。まあいいや。ここは一丁、やってみっか」
 いかにもグロテスク系の妖怪のやりそうなことだと思いながら、オブリビオンを引き寄せるべく、パルルも一芝居打ってみることにした。
 そうと決まれば、さっと近くの妖怪がざるに盛るあられを素早くかっぱらって、それをこれ見よがしに抱え上げる。
 フェアリーの体格では一かけらでも大きく見えるあられ。それを一口分、フンっと割ってみると、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。
「うん、美味しい!」
 あのカビ餅妖怪は気持ち悪いが、このあられは普通に食える。もちろん幻覚なんて見えない。
 フェアリー的にはちょいデカいが、軽い口当たりに程よい塩加減が後を引く。
 やっぱこれだよね。
 なによりさ、パルルちゃんのリアクション。たった一言で超かわいくね?
 スナック菓子を食べた後に指ペロする行儀が悪いけどちょいエロイサービスっぷりよ。超かわいくね?
 こりゃあ、企業案件来ちゃいますわ。まいったわー。
 きょとんとした若干あざとい仕草のパルルは、すっかり別の方向に妄想トリップして、いつの間にかドヤッていた。
「あー幻覚が見える見える。あられ怖いわー、ついでにお茶も怖いっすわー誰か持ってきてー」
 気が付けば、あられ食べてるアピールもおざなりに、飲み物の要求まで出てきた。
 だがしかし、アイドルを志すならば、これくらい図太い神経を持っていなければならないとも言える……かもしれない。
 そして、良くも悪くも目立つはしゃぎ方をしていたパルルは、すぐにカビたモチ目目連の目に留まることとなった。
「お茶よりも、いいものをくれてやるぞ。ほれほれ」
 黒くて頭でっかちな身体に無数の目をくっつけたカビた餅の妖怪が、その頭をよりおっきくして取り込まんとしてくるのを、
「おっとぉ、お前は呼んでないしその汚い餅を近づけてくんな! お前はあられだけパルルちゃんに貢いでくれればいいんだよ!」
 べったりしたボディにくるまれるのをサッと躱してから、一転して悪態をつく。
 アイドルの側が剥がれているが、大丈夫だろうか。
 カビた餅をなんとかしようと水につけたかのようなおぞましいべったりボディの目目連は、それでもめげずにそのべたべたした体でパルルを取り込もうとする。
 残念だが、カビの生えたお餅は食用には適さない。水につけておくのはカビが生えないための処置か、或はカピカピに乾いたお餅をどうにかするための予防策に過ぎない。
 それでもカビは繁殖しやすいので、保存するときは冷凍するのが一番いい。
「だー、くっそー……やめろって言ってるでしょ! さわんじゃねえ!」
 それでも食い下がるお餅のオブリビオンに、ついにパルルは怒りのユーベルコード【アイドルの柔肌に触れるのはご法度だゾ☆】による亜音速ビンタをお見舞いする。
 小さな体からは考えられないスナップの利いた平手が鞭のように撓い、目目連の目玉を殴打。
「ぬぐおおっ!」
 肩、肘、手首と実に合理的に筋力の乗ったビンタの先端は音速に到達し、ソニックブームが生じて周囲に風を撒き立て、ついでにオブリビオンのボディを空中で三回転ほど錐揉みさせる。
 ひな壇を転がるオブリビオンのカビが剥がれていき、その中から普通の妖怪だけが残った。
「チッ、カビくせぇ。あられだけ残して死んでくれや」
 アイドルにあるまじき舌打ちを漏らし、パルルはあられを片手にすたすたと先を目指す。
 どうやら近づくカビ餅どもをすぱんすぱんぶん殴っているうちに、カビのオブリビオンの姿は見えなくなっていた。
 しかし、相変わらず周囲はあられであふれており、ひな壇の会場もそのままだ。
 やはりこの先を目指す他ないのだろう。
 ひな壇の上層を見上げるパルル。
 てっぺん、目指したくなる光景である。
大成功 🔵🔵🔵


第3章 ボス戦 『彷徨う白猫『あられ』』

POW ●ずっといっしょに
【理想の世界に対象を閉じ込める肉球】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD ●あなたのいのちをちょうだい
対象への質問と共に、【対象の記憶】から【大事な人】を召喚する。満足な答えを得るまで、大事な人は対象を【命を奪い魂を誰かに与えられるようになるま】で攻撃する。
WIZ ●このいのちをあげる
【死者を生前の姿で蘇生できる魂】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠香神乃・饗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ちりん、ちりん。
 ひな壇のその最上部。周囲の下の景色は、灰色の霧で見えないが、それでも雲海のように広く果てしなく空が続いているようにも見える。
 おそらくそれは幻覚で、今が昼か夜かもわからないまま、不思議な灯りに灯されるままの光量を保っている空間だけがそこに在る。
 ちりん。
 白く、丸まって眠っていた獣が頭を持ち上げると、首に巻いた鈴が甲高い音を立てる。
 何者かがこの領域に足を踏み入れてきた。
 それに気づいたオブリビオンが微睡みから醒めたのだ。
 ゆら、と二本のしっぽが揺れる。
 その猫は、ずっと夢を見ていた。
 或はそれは幸せな幻覚だったのかもしれない。
 その力がただの猫を超え、知らずの内に周囲を侵食してしまっている事にも、おそらくは気づいていない。
 後ろ向きで幸福な夢。
 でも、思い出は思い出に過ぎない。
 大好きな大好きな主人を、その猫は知らずの内に食らってしまった。
 幼い心のままに、飢える心のままに、愛しい人の魂とはなんとも甘やかで魅力的だった。
 ただほんの愛でるつもりで、自分のものにしたい一心で。
 気が付けば失われていた。
 その命が終わってしまったことで、猫は過ちに気づいたが、とうに遅かった。
 ああでもだれか。
 優しい誰かが、わたしのいとしい人を生き返らせてくれないだろうか。
 代わりに、あなたに素敵な思い出をあげるから。
「にぃあ」
 口腔の赤を晒しつつ、化け猫は甘く撫でるような声を上げる。
 その声に反応したように、周囲の灰色の霧がざわざわと立ち昇る。
 おそらくは、この世界を成したのは、この化け猫に違いない。
 希うが故に。
 求めるが故に。
 ここで眠りながら待っていた。
 優しい誰かが、願いを叶えにやって来てくれるまで。
 その誰かがやって来るまで、この霧がこの空の果てまで覆いつくしてしまってもいい。
 だから、だから、
 わたしのだいすきなひとをかえして。
 小さな猫が身を起こすと、おぞましい気配が周囲を覆い始めた。
ユリウス・リウィウス
血統覚醒継続中。

なんだ、こいつは? 化け猫の類か?
喪われたものは戻らない。死者は蘇らない。当たり前の話だ。
その無理を通そうとするからこそのオブリビオンなんだろうがな。なあ、おい。

周囲の霧を「恐怖を与える」死霊の霧で相殺、上書きしておこう。不確定要素は消しておかねば。

肉球攻撃には、黒の双剣で「傷口をえぐる」「カウンター」をかけよう。切り裂いてしまえば、それ以上使う気になるまい?
どうせなら、足ごと切り落とすべきか。
こちらからは「生命力吸収」「精神攻撃」の双剣撃で攻撃する。

過去に囚われしオブリビオン、まさにそのものだな。
介錯してやるから、骸の海へ戻って安らかに眠れ。
素体にされた妖怪はどんなものだか。


 カビた餅の妖怪を追跡し退治した辺りで、ユリウス・リウィウスはひな壇の会場の、その最上段へ続く道を発見する。
 濃い霧に包まれた階段を上り切ると、急に視界が晴れた。
 まるでそこには最上段しかないかのような、見渡す限りの雲海。
 眼下に広がるそれが見通しを悪くしていた霧そのものと気付いて、同時に察する。
 ここより先はきっとない。
 そして、雛人形の座するかのような台座に丸くなって眠っていた白い猫が体を持ち上げたのを見て、その異質にユリウスは身構えた。
 尻尾が二つある以外はただの猫に見えるが、そうではない。
 存在感が異なる。
 梅の花をあしらった首輪。夕陽のような瞳。
 何気ないそれらが、ただの猫を猫以外の何かに思わせる。おそらくは、そこに介在する人に似た意思が。
 見つめるだけでそれが何事かを語り掛けてくるかのような錯覚を覚え、それはおそらく正しい。
 そして猫は云う。
 あなたのいとしい人は誰なのか、と。
「なんだ、こいつは? 化け猫の類か?」
 猫の思念を煩わしげに振り払うかのようにして、ユリウスは自身の血流を沸騰させるかの如く吸血鬼のそれへと変貌させる。
 血潮が滾るかのような感覚とは裏腹に、その肌の血色は薄まり、瞳が爛と赤く染まる。
『いとしい人は? いないの?』
「さあな。燃え滓に、そんなものが残っていると思うのか?」
『もういないの?』
 小首をかしげる猫に応える代わり、ユリウスはその手に持った黒剣を一閃させる。
 泡を断つかのような異質な手ごたえ。
 ぼろぼろと引き千切れてまさしく泡と消えた猫が、別の場所に鈴の音と共に再び降り立つ。
「また幻覚か。どうやら、お前の都合のいいようにできているらしい」
 再び剣を構えるユリウスを阻むかのように、周囲の霧が濃くなり始める。
 この世界を展開した化け猫は、周囲の環境をいじれるらしい。
 だが、そちらがそう来るなら、とユリウスはユーベルコードを発動させる。
「言っておくがな、別にこれが愛しいわけじゃないぞ」
 【死霊の霧】が、化け猫によって縒り集められた霧を押し返し始める。
 死霊術士としての側面によって身に着けた、幾多の戦乱に散った怨念。その霊体をもって作り出される霧は冷たく、この仮初の世界を侵食し始める。
 この舞台に最初から立ちこめていた霧の正体が、この世界そのもの、化け猫の武器になりうるなら、不確定要素は排除しておくべきだろう。
 だが、化け猫も呑気にそれを傍観しているばかりではなかった。
 立ちこめる霧に紛れて、いつのまにかユリウスの眼前にその肉球が迫っていた。
 ただの肉球。爪すら立てず殺意も感じられない。それ故に対応が一瞬遅れてしまったが、霧を薄くしたためにその動作を見ることはできていた。
「っ、嘗めるな……!」
 咄嗟に身を引きつつ双剣を振るうと、化け猫は弾かれたように飛び退いて、離れた位置に着地する。
『いとしい人に、あいたくない?』
『いとしい人の思い出、生き返らせたくない?』
 圧力すら感じさせる思念。
 切り裂かれた肉球で舞台を赤黒く染めつつ、化け猫はなおも穏やかな調子を崩さない。
「喪われたものは戻らない。死者は蘇らない。当たり前の話だ。そうだろう?」
 ざわざわと霧がたちこめる。
 いくら相殺し、上書きしても、あとからあとからやって来る。
 それは苛立つかのようにも感じられた。
 どうせなら、足ごと斬り落としてやるべきだったか。
 霧に乗じて襲い掛かろうとするのを何度か斬り払いながら、僅かだが手ごたえを感じはじめる。
 妖怪にはルールがある。そのルールを守らせているのは、言の葉や思念に依るところの存在だからなのだろう。
 故に、精神に作用する攻撃を双剣を通じて行えば、攻撃は通用するというわけだ。
 おそらくだが、あの化け猫は、自分のいとしい何か。主人か何かだろうか。それを蘇らせたいのだろう。
 おおかた、共感する魂でも呼び寄せるつもりだったのか。
 なるほどオブリビオンらしい。過去に囚われしオブリビオン、まさにそのものだな。
 少なくとも明るく語れるほどの過去を持たないユリウスの結論は出ている。
 死者は蘇らない。
 尤も、死んだまま動いてる奴もいるが、それが何も失っていない筈がないのだ。
「その無理を通そうとするからこそのオブリビオンなんだろうがな。なあ、おい」
 捉えた。と思ったそれが、再び泡と消える。
 まあいい、やり直しがしたいなら、何度でも切り裂いてやろう。
「介錯してやる。骸の海へ戻って安らかに眠れ」
 生憎と、消耗戦は初めてではない。死にたくなるまで殺してやろう。
大成功 🔵🔵🔵

祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ歓迎

「哀しき魂魄…還してあげましょう…」と『フェアリーランド』の壺の中から風の精霊と聖霊と月霊を呼んで『クリスタライズで姿を隠しながら『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖攻撃を仕掛けます♪
敵の攻撃を『月世界の英霊』で空間飛翔して避けて『月霊覚醒』で敵のUCを封印/弱体化させます☆彡
『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』で苛烈な猛攻を仕掛けます!
『月光砲・二重未知数』+『月光夜想曲・希望』で協力した攻撃を『祝聖嬢なる光輝精』で怪我を治して『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒します♪

「魂魄を喰らう味を噛み締めた悲哀は来世に送りましょう…』


 日が傾き始めている。
 果たしてこの空間に時間の概念が生じているとかわからないが、ひな壇の舞台の頂上へと辿り着いた祝聖嬢ティファーナは、この場が黄昏に傾きつつあるのを肌身に感じていた。
 霧の雲海のひたすら続くもの寂しい光景は、茜が差してくるほどに寂寥感のようなものばかりがこみあげてくるような気がした。
 カクリヨファンタズムは、骸の海とUDCアースのその狭間にあるという。
 これはまさに、幽世という空気なのだろうか。
 そうして、おそらくは幽世という世界の中でも限定的な巨大なひな壇という世界を作りだしているらしいオブリビオンは、一匹そこにいた。
 梅の意匠をあしらった首輪がなんとも印象的ではあるが、ただの飼い猫というには、その気配があまりにも尋常から外れていた。
「にぃあ」
 物欲しげに鳴き声を上げる様は、餌をねだるようにも見えるが、世界を構築するほどのオブリビオンのそれは、まぎれもない思念を持っていた。
『いとしい人、しらない?』
「いるよ。いっぱいね」
 圧を覚えるほどの思念。それをものともせずに、ティファーナはあっけらかんと言ってのける。
 フェアリーならば誰もが持っている不思議な壺【フェアリーランド】から、大切な友人たちを呼び出す。
 いくら食べて減らない七色のこんぺいとうを餌に、というとかなり聞こえが悪いが、彼女を慕う風の精や聖霊、月霊の皆は、ティファーナのこんぺいとうが大好きなのである。
『いとしい人、しらない?』
「キミのは、しらないよ」
 輝きを湛える精霊たちが飛び交うのをまぶしげに、同じように、しかし別の意味を持たせた化け猫の問に、ティファーナは目を細める。
 悲しい響きを持たせた問いの答えを持ちうるのは、おそらく本人だけだ。
 大自然の守り人たるティファーナは、命の営み、それが不可逆であることを知っている。
 巡り回りはするものの、決して元には戻らない。
 それでも惑う者はいる。
「哀しき魂魄……還してあげましょう……」
 いつもの快活な印象はなりを潜め、聖者にふさわしい行いをするべく、迷える魂を導く決心をする。
 そしてそんな彼女の健気な姿を助けるべく、精霊たちもまたその意に沿うのであった。
 その指先が化け猫をなぞれば、聖なる光が帯となって降り注ぐ。
『あなたも、くれないのね』
 光に焼かれながらも、化け猫はその周囲に人魂のようなものを呼び出す。
 死者を生前の姿に見せかけて眠りに誘うそれが形を成す前に、月霊が月の欠片を飛ばして牽制すれば、人魂が形を成す前に泡と消える。
 そうして数々のユーベルコードで苛烈な猛攻を加えるも、その姿は泡と消えては、霧の中からまた新たに化け猫の姿をとって生まれ落ちる。
 これは、なかなか一筋縄ではいかないようだ。
 しかし、友人と一緒ならまだまだ戦える。いや、祈り続けられる。
「魂魄を喰らう味を噛み締めた悲哀は来世に送りましょう……」
大成功 🔵🔵🔵

ハルピュイア・フォスター(サポート)
絶望を与えるのがわたしの仕事…。
無表情で口調は事実を淡々と告げます

【暗殺】が得意
また【迷彩】【目立たない】【闇に紛れる】【地形の利用】など使用して隠密にまた撹乱しながらサポート行動

Lost memory…ユーベルコードの弱点を指摘し封じ込む

回避は【残像】で、怪我は厭わず積極的に行動

武器;首にマフラーの様に巻いてある武器『零刀(未完)』は基本は両手ナイフだが鞭や大鎌など状況に合わせて形を変貌させ使用

他猟兵に迷惑をかける行為はしないが、デザートは別問題…奪います

後はおまかせでよろしくおねがいします


 さめざめと、日が暮れていく。
 ぼんぼりの灯りがつらつらと影を揺らすひな壇の頂上では、光源が何一つないのに空の様子だけが暮れていく。
 視界を遮るものがないのに、ぼんぼりの灯りや陽光の様な明るさを覚えるのは奇妙なものだったが、それがオブリビオンの作り出した心象の表れだというのなら、その灯りは確実に弱り始めていることを示しているのだろう。
 暗殺を得意とするハルピュイア・フォスター(天獄の凶鳥・f01741)にとっては、その舞台の上は、視界が広すぎて落ち着かないところがあるが、猟兵は戦場選ばない。
 目の前にいる化け猫のオブリビオンには、どうにも実体が薄いように感じる。
 これまで幾度となく猟兵と戦っておきながら、その身体に傷らしい傷が目立っていないように見える。
 言うなれば、いくら傷を負っても綺麗な身体を維持していることには違和感しかない。
 化け猫にとって都合のいい世界。ここそのものが、理想の世界であるかのように。
『あなたのいとしい人は?』
「……」
 答えない。おそらく、それに答えることが、何かのトリガーになる。
 だが、と、ハルピュイアは奇妙な相互を感じる。
 共感と言ってもいいかもしれない。
 理想的な何かを押し付けてくる化け猫の、その思念の圧の強さを覚えると同時に、それに焦がれる気持ちを覚えずにはいられないのだ。
 妖怪とは精神の生物。
 心の脆いところに滑り込んで、強く出るのがそれだ。
 しかし、得意分野は逆に差し返せるヒントでもある。
 だから逆に問う。
「あなたの前に立ちはだかるのは誰?」
 【Lost memory】その問いは、同時に答えでもあった。
 つまりは、化け猫はもう一度主人に会いたいのだ。
 だから、最も見たい理想的な世界を幻覚として見せてくる。
 それが自分に近いほど、化け猫自身の願いをかなえると信じている。
 そして、ハルピュイアのユーベルコードは、相手の脆い部分に触れることができれば、その意表を突く何かを見せる。それが『会いたい人か…それとも恐怖の記憶か…』は不明だが、果たして化け猫は、その目にのみ映る何かに動きを止めた。
『ああ……そこに、いたんだね』
 しかし、そう思い込んだのも一瞬。
 浮かび上がった幻影が撓み、その背後から飛び出したハルピュイアが、首に巻いたストールを変形させ、ナイフと化した零刀(未完)を一閃させる。
 完全に不意を突いた一撃。脆く弱い猫に過ぎないオブリビオンは、その一撃で容易く真っ二つに。
 その姿がふたたび泡と消える。
『やっぱり……そう簡単には、いかないね』
 音もなく離れた位置に降り立つ化け猫の姿に、ハルピュイアはナイフを構えなおす。
 猫は複数の命を持つというが、あまりにも手応えがない。
 とはいえ、やはり周囲の環境が変化しているのは否定できない。
 化け猫の世界が終わりを告げようとしていすのは明らかだ。
成功 🔵🔵🔴

ティエル・ティエリエル
ミフェット(f09867)と一緒だよ!

あの猫さんがこの事件の元凶?
むむむっ、なんだかすごく悲しそうに鳴いているけど、このまま放ってはおけないよね!

うー、なんだか色々な人がこっちおいでおいでと手招きしてきて眠くなってきたけど……
ミフェットのお歌が聞こえてきたら気にならなくなってきたぞ☆
【お姫様ペネトレイト】でお姫様オーラを纏って、灰色の霧を振り払いながら猫さんに突撃するよ!
何がそんなに悲しいのかボクには分からないけど……躯の海にお帰りだよ!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
ひなまつり ひなあられ
いったい誰のためのもの?
お内裏さまも おひなさまもいない、ひな飾り

ティエル(f01244)と猫をやっつけるよ!
目目連は、元に戻せたけれど。その中心の子は、やっぱりダメ、だよね

UC【一人ぼっちの影あそびの歌】
魂がミフェットたちを眠りにつかせようとする前に「歌唱」でUCを打ち消すよ
チャンスがあったら、ひなあられを猫の口に投げてみる
思い出して、きっと動きを止めるぐらいの意味しかないかもしれない、けど

♪ぐるぐると、おなじところをめぐる夢
回る灯りに照らされて、あの子の夢を追いかけて
たのしいたのしい追いかけっこ
ぴょんと飛びつき捕まえた、あの子の顔がわからない、あの子の声が聞こえない


パルル・ブラックベリー
TEPPENに着いたぞ!やったー!パルルちゃんが頂点だぁー!……さて、この世に頂点は複数もいらないよね?人だろうと猫だろうと頂点に居座るのであれば倒さねばならない。大事な人を返して欲しい?よろしい、貴様のはらわたぶちまけて引きずり出して返してやるさ!!
ずっといっしょに?うるせー!ずっと一緒にいてやらねーからまず尻尾貸せや!尻尾掴んだらパルルちゃんを中心にグルグル回すぞオラァ!外周に爆弾でもあれば投げてぶつけてやりたいとこだけどそんなもの無さそうなので適当にポイじゃ!
あと頂点にいる奴はどいつだ?パルルちゃんが成敗してくれちゃうゾ☆


 夕暮れが空を赤く染め、雲を青紫に彩っている。
 この世界、この舞台を構成するオブリビオンの化け猫の生命に関連しているというのならば、暮れる事の無かったこの世界の黄昏は、文字通りにその終わりが近づいていることを示しているのだろう。
 最早、舞台を照らすぼんぼりの灯りの方が強く見える。
 肝心のぼんぼりそのものが見当たらないのだが、光源があるかのように照らされるひな壇の最上段は、足場がはっきりとしていた。
 その先に延々と続く、雲海との境をも。
「わあ、きれい」
「うん、でも……ちょっと寂しいかも」
 大自然の造形であるような、そっからちょっと切り取ってきたかのような簡素で不自然な光景を目の当たりにして、ティエル・ティエリエルとミフェット・マザーグースは息を呑むと共に、どうしようもない空虚を覚える。
 自分を小さく追い込むかのような、孤独ばかりを感じさせるその光景は、広大な奥行きを思わせるようで、かえって薄っぺらくも思わせる。
「にぃあ」
 悲しげな鳴き声に二人して振り向くと、お雛様が座りそうな小さな段に座り込む猫の姿を認める。
 いくらでも奇襲する余裕は有ったろう。それならそれで猟兵たる二人が反応しないわけもないのだが、その梅の首輪の化け猫からは、明確な敵意のようなものを感じるのが難しかった。
 野生動物に近い純粋な瞳。狡猾な猫の打算的な色合いは有れど、狩猟生物特有の剣呑さがなかった。
 本当にこれがオブリビオンなのか?
 それに気掛かりなのは、これまでに幾度となく猟兵と交戦したはずだが、傷の一つも見られないという事。
「あの猫さんがこの事件の元凶?」
 思わず問うティエル言葉にも、どこか困惑の色が含まれていた。
 オブリビオンならば、その存在はいずれ世界を滅ぼす。
 確かに、世界を歪めてこんな空間を作るほどの力の持ち主ならば、いずれ世界を侵食してしまうかもしれない。
 そして、その化け猫の持つ異様な圧力、意思の強さを肌で感じるごとに、二人は思い出す。
 この空間、このひな壇の舞台の影響で、沢山の妖怪たちが幻影に囚われて、挙句にオブリビオンにされてしまっていたことに。
「むむむっ、なんだかすごく悲しそうに鳴いているけど、このまま放ってはおけないよね!」
「うん、あの猫をやっつけるよ!」
 敵意の薄い猫。それを前にして、しかし引き起こしている事の大きさを思い出して決意を新たにするティエルとミフェット。
 お互いを観察しあうように見合うところ、緊張が漂い始めたところに広がる雲海をぼふっと突き抜ける影が飛び上がった。
「TEPPENに着いたぞ! やったー! パルルちゃんが頂点だぁー!」
 なんとかは高いところが好きとでもいうかのように、なんだかハイテンションでひな壇の最上段へと到達したパルル・ブラックベリーの登場により、漂い始めていた緊張感はどこかへ行った。
 騒いでいたパルル本人も、すぐにこの場に複数の先客がいる事に気が付き、んん?っと周囲を見回す。
「なんだ、先客アリかぁ。パルルちゃんが、この頂を独り占めしてやろうと思ったのにねぇ……っつーわけで、この世に頂点は複数もいらないよね?」
 片眉を上げて挑戦的に指を突きつけるパルルは、高らかに宣言する。
 ところで、この場には同僚の猟兵も居るわけだが、それはいいのか。
 アイドルは細かいことは気にしない。
『あなたの、いとしい人は?』
 ざわ、と、闖入者の存在など押しのけるかのような圧のある思念が周囲の灰色の霧を波打たせる。
 いつの間にか周囲に漂い始める霧。これが化け猫の思い通りのものだとするなら、またも幻影を見ることになるのか。
「いとしい人……?」
 頭痛すら覚えるほどの化け猫の思念に思わず応じてしまったティエルの視界は、霧の中に漂う魂魄の様な玉がやがて人影を成すのをとらえる。
『あなたの、いとしい人は?』
「うー……」
 大勢の見知った誰かが手招きをしている、ように思う。激しいハウリングの最中にいる様な圧の中で、その手招きに身を任せようとすると、意識が楽になるような感覚があった。
 眠りに落ちるような浮遊感。
「ゲーッ、またこれか! やーめろ、お前!」
 それは周囲にも影響を及ぼすものであるのか、ミフェットやパルルもまた何かを見ていた。
 物理的なものはない。これはきっと精神に作用するものなんだ。
 意識を手放すことが楽なことであるかのように、誘い込まれて徐々に体が脱力し始める。
 痛みを感じないからこそ、危機感を覚えにくい。
 だが、外傷を問題にしづらいブラックタールであるミフェットは、その外部干渉に警鐘を鳴らす。
 これを真に受けてはいけない。
 意識を別の方に向けないとまずい。
 くずれてどろんとなってしまいそうな体に踏ん張りを利かせて、ミフェットは大きく息を吸うと、ユーベルコードで対応する。
「ぐるぐると、おなじところをめぐる夢
 回る灯りに照らされて、あの子の夢を追いかけて
 たのしいたのしい追いかけっこ
 ぴょんと飛びつき捕まえた、あの子の顔がわからない
 あの子の声が聞こえない♪」
 【一人ぼっちの影あそびの歌】を歌唱、その言の葉を連ねるごと、降りかかる思念を相殺し始める。
「ミフェット……ミフェットの歌が聞こえる……!」
 脱力して手放しかけたレイピアを、ティエルは握り直して、涎のこぼれかけた口元を拭うと、その瞳に活力を取り戻す。
「ハッ……歌だ。パルルちゃんも歌が歌える。歌えるのだ」
 よせ!
 パルルもまた、再び妙な幻影を見そうになっていたが、寸前で自身を取り戻す。
 独自のルールのもとで生きる妖怪、その精神の在り様で強大な力を持ちうるならば、その精神でもって打ち勝てば、それを克服することもできる。
 もはや誘う妖怪の声は聞こえず、もはや歌しか聞こえない。
 体勢を取り戻した猟兵たちに対し、ざわざわとさらに強い思念を押し付けようとする化け猫に、ミフェットは不意に手に握っていたあられを投げつけた。
 ぱふっと化け猫の口元に投げつけられたそれの味を、化け猫は不思議そうに見つめ返し、足元に落ちたそれを思わず見つめてしまう。
『あら、れ……?』
 それが致命的な隙になった。
 いつの間にか、接近していたパルルが化け猫のその二本のしっぽをむんずっと掴むのを許していた。
「やってくれたなぁー! ずっと一緒にだとか、早く家に戻れだとか、うるせー物見せやがって!
 ずっと一緒にいてやらねーからまず尻尾貸せや!」
 【箱入りアイドルは重いものを持つ夢を見るか】そのユーベルコードの効果はシンプルである。
 小さなフェアリーでありながらも、パルルは過酷なアイドル活動、いわゆるアイカツで鍛え上げられた力持ちである。
 その無限の根性と膂力で掴み上げた化け猫の尻尾を引っ張ってグルグルと振り回す。
 外周に爆弾でもあればそこに投げつけてやりたいところだが、そんなトゲのついた物は無いし、あんまりやるとアナログスティックが破損しかねない。
 だから、好きなだけ振り回したら適当に投げっぱなす。
 幸いにして、今は放り投げるのにちょうどいいところがある。
「キャー!パルルちゃん箸より重いものは持てないのー! 行ったゾ、ちびっ子ォ!」
 きゃるんっとあざとい調子で放り投げた先には、ティエルがレイピアを構えていた。
 飛んでくる化け猫を迎え撃つティエルの身体の周囲を防御のお姫様オーラが纏う。
 もう、化け猫の声は何も聞かない。
 化け猫もまた灰色の霧を纏って防御しようとするが、それも最早効果を成さないだろう。
 この一撃で決める。そう強い意志を抱き、ティエルは突きの構えを取って加速する。
「何がそんなに悲しいのかボクには分からないけど……躯の海にお帰りだよ!」
 【お姫様ペネトレイト】が灰色の霧を突き破り、そのまま化け猫の身体を抉り抜ける。
 まるで泡を斬ったかのような手ごたえの無さだったが、それが致命的な一撃になったのは感覚で理解できた。
 ひな壇を覆う霧が、周辺の雲海が、急速に蒸発するように消えていく。
『ああ、あられ……ぼくのなまえは、あられだったんだ……』
 ホコリが風に煽られて飛んでいくかのように、霧が晴れていく中で猫の姿をした影が、穏やかに呟く。
 ユーベルコードの力を持たないそれは、もはや誰を害するものでもない。
『きっとこうやって、いとしい人も、忘れていく。忘れられていく……』
 とぼとぼと歩き去る影。
 それを呼び止めるつもりはなかったが、
「忘れないよ。忘れない」
 レイピアを立て、それを見せるかのように掲げて、ティエルは言い聞かせるかのように呟く。
 少なくとも、その手に持った剣で傷つけた者の名は、忘れることはできないだろう。
 共に戦った者の名と同じように。
「にぃあ」
 振り向いた影が、笑ったようにも見えた。
 そして、もう何も見えなくなるほどの闇に包まれた舞台がひび割れて、オブリビオンが骸の海に還ったことを知らせる。
 がらがらと壊れていく空間の欠片が猟兵たちに降りかかるそれが、かの化け猫の名前にもなっていたあられなのは、なんとも妙な気分にさせる。
 しかしそれは、後ろ向きな暗いものではなかった。
 長い長い夕暮れは、ようやく夜を迎えたのだ。

 ここから先は、ちょっとしたおまけである。
 暗闇に落ちた空間が完全に崩壊したあと、気が付けば大勢の妖怪とほんの少しの猟兵たちは、森の中にいた。
 ぽっかりと浮かぶ月明かりが妙に明るく感じるのは、黄昏た世界の闇が長かったせいだろうか。
 夜露がきらめいて見える月明かりは影が落ちるほど明るく、この騒動に巻き込まれた妖怪たちも帰り道に苦労はしないだろう。
「素体はどんな妖怪かと思ったが……なるほど、あれ自体が泡沫の成れの果てだったか……揺蕩わず、逝けたのかな」
 くたびれた甲冑の黒騎士は、無精ひげをざりっとさすりつつ、あまりにも見事な月明かりの下でしばし休んでから帰ることにした。
 久々に昔のことを思い出したりもしたが、あの惨状からすれば、なんと穏やかな光景であろうか。
 否、あの地獄を覚えているからこそ、温かみのある灯りを有難くも思うのだろう。
「綺麗、やっぱり、世界はこんなにも綺麗なんだ☆」
 森の守護者たる妖精は、偽りの空間から解き放たれた世界の美しさを改めて堪能する。
 彼女の友人たちもまた、剥き出しの自然の造形を喜ぶかのようにその周りを飛び交う。
「あられだらけで、しょっぱい……甘い物……」
 助っ人でやってきたダンピールの少女は、不意打ちで降り注いだあられの塩気にあてられて、胸焼けするほどの甘いものを求めて、星空を眺めながら帰ることにしたようだ。
「ひなまつり ひなあられ
 いったい誰のためのもの?
 お内裏さまも おひなさまもいない、ひな飾り」
 月明かりを見上げる三人。
 歌い上げるブラックタールの少女は、あの化け猫を忘れまいと静かに歌う。
「てっぺん、まだまだ、てっぺんなんかじゃなかったな。あと頂点にいる奴はどいつだ? パルルちゃんが成敗してくれちゃうゾ☆」
 ずずい、と胸を張って見上げる先にはぽっかりと浮かぶ月。
 頂に到達すれば、またその先が見える。それが見える限りは、きっと頂点ではない。
 そして、そこに障害があるなら、ぶっとばす!
「あー! そうだ、ちびっ子って言ったぁ!」
 そういえば、と思い出したかのように小さな妖精がぷんすこと頬を膨らませる。
「ちびにちびって言って、何かおかしいかぁ、ちびっ子ォン?」
「そんな変わんないもん! ぜーったい、ボクのほうがおっきくなるんだから」
 小さな争いが始まるのを、のほほんと眺める黒い少女。
 そしてそれを見下ろすかのように、幽世の月はぽっかりと浮かんでいた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年07月08日
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