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おねショタは正義 偉大なショッター

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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●嵐が荒れる力よショッター
 島の人々が、宴へと集められていた。
 それは島の支配者を歓迎する酒宴。
 支配者を崇め奉り、力の誇示をする場所であった。
 遠巻きに見つめる島民達は、余興として見世物になっている少年たちを沈痛な表情でみつめていた。
 その痛ましい姿。
 セーラー服。チャイナドレス。メイド姿。
 だが男の子だ。
 着慣れてないのか、恥ずかしそうに目を逸らせながら、少年達は列を作ってポーズを取らされることを強要される。
 それを見て囃し立てる海賊共。
 人魚の姿をした海賊達は、尾をハタハタと打ち鳴らして感嘆の声を上げる。
「良い!」
「イイーーーッ!」
 グリードオーシャンに浮かぶ島々のひとつ。
 そこは、今まさにコンキスタドールによって恐怖へと支配されていた。

●グリモアベースにて
「ショッター海賊団というものを御存知でしょうか」
 ここはグリモアベース。
 ライラ・カフラマーンは居並ぶ猟兵たちに深々と頭を下げていた。
 その背後に生じている霧には、さきほどの光景が幻となって現れている。
 頭を上げると幻は雲散霧消していき、周りの霧と溶け込んでいった。
 ショッター海賊団。
 グリードオーシャンに出没する、金銀財宝と少年達を略奪する恐るべき海賊団だ。
 あの光景に映っている海賊達は、その中でも過激派と知られた一派なのだという。
「はおねショタ、年上女性と未成年の男子のラブロマンスとのことらしいのですが、彼女たちは女装少年達との関係が至高。そのように主張し、団長と対立したそうなのです」
 随分と頭の痛くなる話だが、ことは同士討ちに収まらなかったようだ。
 抗争の結果、本流から追放された彼女たちは漂流し、とある島へと流れ着いたのだった。
 そして武力により島を実行支配する。
 女装少年こそ最高。
 そう海賊の掟を島民たちに押しつけながら。
 ライラは続ける。
「ショッター船長はメガリスを所有し、コンキスタドールと成り果てています。これを撃破し、島を解放することは猟兵の使命と言えましょう」
 ライラが杖の先で地面を軽く叩くと、霧が変化し姿を形どる。
 それは島で行われている宴を中継したものであった。
 海賊達に無理矢理酌をさせられる少年達。
 宴の肴を仕入れるために強制労働させられる島人たち。
 海人を操る海賊たちは、欲望の眼に輝いている。
 コンキスタドールを倒さぬ限り、彼らは飽きるまで絞り尽くされるだろう。
「皆様、宴へと潜入し、敵の本拠地を掴んでください。そしてコンキスタドール、ショッター海賊団を島から追い出してくれるようお願いします」
 そう言ってライラは、猟兵達に深々と頭を下げたのであった。


妄想筆
 こんにちは妄想筆です。
 胸を痛める依頼の次は、頭の悪いシナリオです。
 コメディです。シリアスではありません。
 島を支配するコンキスタドールとその手下たちと戦う依頼となっています。

 一章は宴の最中に潜入し、情報を集めるパートとなっています。
 海賊達から聞き込むなり、島民たちから話を聞くなりなどをして、島に停泊中の敵の本拠を突き止めてください。
 なお海賊たちは全て魚人です。
 上半身が人、下半身は魚の姿をしています。
 おねショタとショタおねは彼女たちの中で明確な線引きがありますので、情報収集の際はお気をつけください。
 OPにもある通り、その中でも女装少年を至高としてますので、彼女たちに近づく際はそれを推していけば簡単に同士と認められるかもしれません。
 二章は停泊中の船に乗り込もうとする猟兵を阻止すべく、迎え撃つ海賊達との戦いとなります。
 普通に戦っても良いのですが、ツボに嵌るおねショタシチュエーションを叩きつけることにより、彼女たちはその尊さに心臓を射貫かれて動けなくなります。
 いわゆる心臓麻痺というものです。
 舌戦に自信があるのなら、おねショタを越える何かを彼女たちにぶつけるのも一興かもしれません。
 三章はボス戦、ショッター海賊団を束ねる貴婦人との戦闘になります。
 勝利すれば島は解放され、島民は猟兵に感謝することでしょう。

 オープニングを読んで興味が出た方、参加してくださると嬉しいです。
 よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『海賊達の宴に潜入せよ』

POW   :    海賊に扮して潜入する

SPD   :    見つからないように隠れて潜入する

WIZ   :    差し入れをする島民に紛れて潜入する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 土が盛り上げられ高台が造られ、その回りに篝火がつけられそこを照らす。
 そしてそれを見つめるは海賊たち。
 少年達を生け贄にした見世物劇場を、いまかいまかと待ちわびていた。
 好奇な視線のまっただ中に、独りの少年が奥からおずおずと出てきてしまった。
 映画の女優が着こなすような大人のドレス。
 ひらひらのスカート姿で現れた少年は、たどたどしくカンペを読み始めた。
「ち、地下鉄の風にあおられて、悲鳴をあげる洋画女優……」
 少年の左右にしゃがんで控える別の少年達が、団扇を勢いよく煽った。
 勢いよくまくれ上がるスカートを押さえ、少年が叫ぶ。
「わ、わぁーーーおぅ!」
 羞恥。赤面。
 その尊みにやられ、審査員スイッチがカチカチと押され始める。
「良い!」
「イイーーーッ!」
「いいや限界だ! 押すね、スイッチを!」
 海賊たちが押したスイッチの数に合わせ、横に設置されたパネルが点灯し、上昇していく。
 テ、テテテテ、テテテ、テテ……テ!
 デテテテーテデテテテーテ、テーーテテ!
 最大までボルテージは上昇し、くす玉が割られ紙テープが少年たちへと降り注いだ。
 戸惑う彼らを海賊達の拍手が包み、会場は興奮状態におかされる。
「ブラボー! おおブラボー、ぶらぼー!」
「やはり男の娘は最高でござるよ~~~!」
 どうやら余興として少年達の衣装を海賊達が審査しているようであった。
 合格した少年は、褒美として彼女たちに強烈なハグを受けていた。
「むふう、少年を肴に飲む酒は美味しいですな!」
「オラァ! 酒が足らんぞ酒が!」
 海賊たちの怒号に、島の人々が怯えながら酒品を抱えてやってくる。
 少年達を矢面に立たせるのは心苦しいが、こうやっていれば彼女たちは乱暴はしてこない。
 どうか許してくれ。
 子供達を見つめる大人の目は、憐憫に満ちていた。
 おお、ブッダよ。なぜ寝ているのですか。
 島は宴の最中、人々はそこに集まっていた。
 潜入を開始しようとする猟兵は、易々と上陸することができたのであった。
レジーナ・ドミナトリクス
おねショタ、ショタおね……理論は知っています。
しかし、分類したところで不毛な争いの種になるだけな気がしますね。
何事にも例外はありますし、突き詰めれば最後は個人の好みの問題に行き着くでしょうから。
結局、最低限の構成要素を考えればどちらも同じでは?

……おっと、口に出てしまっていましたか。
聞かれてしまった以上は仕方ありません。
「どうでもよくなーあれ」
咄嗟だったのでかつてなく雑な【催眠術】ですが、切り抜けられるでしょう……たぶん。
どうでもよくなったついでに情報も訊き出せるかもしれませんし。
うまく掛かっていなかったときは【気絶】させて人気のない場所に連行し、【笑身苦虜】で口を割らせて且つ封じましょう。



 上陸は拍子抜けするほどうまく事が運んだ。
 遠くで聞こえる宴の声を背に、レジーナ・ドミナトリクスは舟を隠して海岸の砂浜へと立ち辺りを見回した。
 人の気配はしない。
 どうやら殆どの人数は宴のほうに取られたようだ。
 無警戒この上ないが、こちらにしては好都合と言えよう。
 それにしても、とレジーナは思った。
 おねショタとショタおね。
 たった二つの単語が入れ替わるだけで、なぜそんなムキになれるのか。
 それが不思議でならない。
 仮に途中で逆転すれば、その時どうするのであろうか。
 手の平を返して立場を逆にするのか。
 まったく持って理解しがたい、不毛な考えである。
「何事にも例外はありますし、突き詰めれば最後は個人の好みの問題に行き着くでしょうから。おねショタ、ショタおね。結局、最低限の構成要素を考えればどちらも同じでは?」
 ため息をつくように呟いてしまう。
 その吐息の先に人の姿が見えた。
 魚人。
 どうやら海賊の一味のようだ。
 あまり友好そうには見えない。
「なんだァ? てめェ……」
 肩をいからせながら、レジーナにむかって悪態をついてくる。
 どうやら先ほどの言葉が癪に障ったようだ。
「……おっと、口に出てしまっていましたか」
 向き直り、臨戦態勢に入るレジーナ。
 聞かれてしまったものは仕方がない。
 どうせこちらから、色々聞こうと考えていた所だ。
 半身魚の格好でありながら、ハンデを覚えさせずにスイスイとやってくる様は、さすが海賊の一派ということであろう。
 殺すのは簡単。
 だが雑魚をいくら処理しようとも、敵の本拠がわからなければ任務は失敗だ。
 羽ペンを胸から取り出し、微笑むレジーナ。
 武器ではなく、筆記。
 それで何をするつもりなのか。
 警戒した海賊の目が、自然と羽ペンに注目する。
 円を描くようにグルグルと、速度を変えながら羽ペンが旋回していく。
「どうでもよくなーあれ」
 意識を集中させることによる催眠術。
 多少雑であったが、うまくいったようだ。
 魚河岸に転がるように、彼女は砂浜へと倒れた。
「なんとか、切り抜けられましたね」
 新手が現れる前に、レジーナは賊をかかえて何処へと姿を消していった。

 海賊が目を覚ますと、自分が逆さまになったまま吊り下げられることに気づいた。
 尾をバタバタと揺らしてはみるが、重力に逆らえず、次第に頭に血が上ってくる。
 両手は縛られ、縄は地面へと楔を打込まれ身動きすることができないでいた。
「目が覚めましたか」
 横をむけば、和やかに微笑むレジーナの姿。
「貴女方はこの島に船で上陸してきたそうですね。その停泊場所を教えてくれませんか」
「な、なんでアンタなんかに」
 教えるわけがない、そう吐き捨てたかった。
 だがその舌は乱痴気に動き、言葉に出来ないでいた。
 あはははっはははははは。
 爆笑。
 レジーナが羽ペンで魚人の脇をくすぐっている。
 その微妙な加減は海賊に笑いを誘い、苦しめを与える。
 ただでさえ逆しまに血が上っているのだ。
 そのうえ呼吸も出来ないでいてはたまらない。
 数刻ののち、海賊は仲間を売ることを決心する。
「あはっ、言う、言います、言わせてあははあはくださいっ! あははあは!」
 ぜーぜーと荒く息を吐く海賊の顔に、レジーナの双眸が近づいた。
「本当ですか」
「ほ、本当です! ボスの居場所教えるから、放して!」
 引きつった笑いで媚びを売る賊に対し、和やかにレジーナは答えた。
「あまりにも簡単に口を割るのは偽情報を掴ませるためかと。念のため、もう一セット試してみましょうか」
「そ、そんあはははははははははははっごふげふっあはははあはっ!」
 結局の所、海賊が解放されたのはそれから随分後のことであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天宮院・雪斗
島民と少年たちを助けるため、魔法少女に女装して潜入。
人魚のお姉ちゃん達に、甘えながら情報を集める。
7才の男の子です。アドリブ・行動OKです。



 猟兵とはいえ、小さい子供が海賊たちに立ち向かうのは無謀かと思われるかもしれない。
 だがこの島を支配するのはショッター海賊団。
 天宮院・雪斗の容姿は、彼女たちにとって天敵といえた。
 堂々と現れた彼の姿は狐耳にフリフリのスカート、白を基調とした少女服。
「魔法少女ユキト、さんじょうだよ♪」
 媚びっこびのポーズを決めて、単身宴の中へと潜入した彼を、疑う者など居はしなかった。
 その可愛らしさに、疑問はぐずぐずに解けて氷解していく。
「キタ! 魔法少女キタコレ!」
「こんな可愛い子が女の子のはずがない!」
 海賊の動機と目眩が激しくなる。
 正常な思考など取れるはずがなかったのだ。
 ショタンチッドという成分がある。
 主に男性から分泌される成分であるが、加齢とともにその分泌量は減少していく。
 したがって少年がこれを良く生成出来る年頃であるのだが、その期間はあまりにも短い。
 これを呼気などで吸い込むことにより体温の上昇、発汗、苦痛の減少、多幸感などが一部の生物で発生することが学会で報告されている。
 少年を至高とするショッター海賊団は、このことを経験で知っていたのかもしれないであろう。
 では、その効果のほどは?
「おねえちゃん、ぎゅ~~」
 無邪気な笑顔と共にみずからハグを求める雪斗。
 その愛らしさが己へと飛び込んできた瞬間、海賊の脳がスパークした。
「ぐあああーーーーーっ!」
「く、クロコ太夫ーーーーっ!」
 吐血! ショッター海賊団吐血!
 純真爛漫なショタンチッドを急激に摂取したことにより中毒症状、アナフィラキシーに近い現象が起こってしまったのだった。
 海賊は恍惚のあまり抱きつかれたまま失神した。
 恐るべきショタの魔力。
 戦わずして彼は海賊に勝利したのである。
「あれれ?」
 しかし雪斗は納得できなかった。
 当然である。
 彼がこんな格好をあえてしているのは、情報を手に入れるためだからだ。
 仕方が無い。
 くるりとむきなおり、恐るべき悪魔は別の標的へと歩を進めた。
「お姉ちゃん、だっこー」
 迫り来る天使の顔をした悪魔に、海賊団は抵抗できる訳も無く、洗いざらい知っていることを話すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
薄い本で事前知識を学習。
ぅわあ…
狂気耐性で自我を死守。
アタシは女の子専門だ!

島娘を装い海賊に銘酒『耽美少年』を注ぎ、生贄の評価ポイントを質問。
共感のフリで好感度を稼ぐ…が

こんなの絶対おかしいよ!

卓袱台返してお説教。
愛でるだけではお姉ちゃん失格だぜ。
最初の少年からやり直しだ

はいそこで海賊少女は男の子を優しく抱く!
男の子も上目遣い!お姉ちゃんって囁くべし!
おね×ショタ×LOVE=JUSTICE

悪ノリで少年への指導が多くなる。
女の子になるんだと何度も要求。
ぶっちゃけ洗脳・催眠術。
島の為なんです! (≧◇≦)

出来上がった男の娘にご満悦。
次はユニット組ませよう。
プロデュースについて船長と話したいと凄むぜ



「よし、こんなもんかな」
 己の服装を確かめ、準備を確認する四王天・燦。
 どこからどうみても島の娘に違いない。
 情報を円滑に入手するための土産の酒を担ぎ、彼女もまた潜入を開始する。
 むかった先は海賊共がいる宴の場所だ。
 とくに探さずとも、あちらから大声が聞こえてくる。
 おねショタというものは島に来る前に知識として調べた。
 正直ぅわあ……としか声が出ないが、ボロがでないように頑張ろう。

 宴はまだ開かれていた。
 酒を恭しく持ってきた燦をさして警戒することもなく、注ごうと差し出すと海賊は盃を差し出して次々と飲んでくる。
 とりあえずは成功、次は奴らをおだてて口を滑らかにしよう。
「みなさんは、少年のどこが萌えポイントなんですか?」
「お、それを聞くでござるか? 長くなるでござるよ」
 彼女たちは上機嫌だ。
 ショタが近くにいるということが、警戒心を薄れさせるのか。
 高台を行き来する少年達にむかって歓声をあげ、いかに女装少年が素晴らしいのかを熱く語ってくれる。
「ぅわあ……」
 嫌悪の表情を押し隠し、燦は取り入ろうと、本心とは逆の行動に打って出る。
「違います! こんなの絶対おかしいよ!」
「なんだァ? てめェ……」
 おねショタを否定されたかと思った海賊の一人が殺意を露わにする。
 その一人に向かって、燦は指を突きつけた。
「愛でるだけではお姉ちゃん失格だと思います!」
 自ら高台へと駆け上がり、大胆にカットされたイブニングドレスを着た少年をお姫様だっこしながら、再び燦が下りてくる。
「なに! 奴が座ったままの姿勢で!?」
「ショタをだっこしてやってきたぁ!?」
 突然の行動におどろく海賊たち。
 次にとった行動で、更に驚くことになる。
 なんと! 燦は! 少年を放りなげたぁーーっ!
「な、なにをするきさまーーーっ!」
 貴重な女装少年を怪我させてはならぬ。
 そう思った海賊が少年を受け止めた。
 そしてそれは、自然と抱きつく格好になってしまう。
「お、お姉ちゃん……ありがとう」
 抱きすくめられた女装少年が!
 上目遣いで!
 感謝の意を囁いてくる!
 おね×ショタ×LOVE=JUSTICE!
 その幸福感が海賊の心を鷲づかみにした!
「ぐあああーーーーーっ!」
 海賊は、女装少年を抱いたまま即死した。
 恐るべき女装少年。
 恐るべき、ショタンチッド。
 再起不能になってしまった海賊をみて、オロオロと立ちすくむ少年。
 そこへ忍びより、燦が次なる作戦を囁く。
「島の為……これは島のためなんだぜ……キミは、可愛い女の子さ」
 催眠術に近い揺さぶりに、少年の眼も危うくなる。
 どちらが悪なのかわかりはしない。
 だが、これが最適解なのは間違いなかった。
 燦にほだされた女装少年が、別の海賊へとしなだれかかる。
「ぐあああーーーーーっ!」
 吐血! 海賊吐血!
「違う! ショタは純粋なんだ! そんな邪なものじゃない!」
 離れようと抗う彼女に、燦は回り込み、耳元で囁き誑かすのであった。
「可愛いですよねぇ……女装少年。両手に花、ユニットを組ませるともっと輝くでしょうねぇ……」
 悪魔の囁き。
 そのプロデュースは上の許可がいる。
 だが、それは絶対に見たい!
 頭の中で、女装少年達がお花畑をグルグルと駆け回る。
 しばらく後、燦は居場所を吐かせるのに成功するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

キング・ノーライフ
異性装の少年偏愛か、相当にこじらせているな。
しかし少年か…とりあえず【鼬川の指輪】で鼬川を呼ぶ。
まあ人を救う為の潜入とはいえそういうのは嫌か。なら我がやるか。

【従者転身】で鼬川に化け、服装はそのまま我のBUの上着をダボッとした状態で着て海賊に接触。

「ウチが貧乏で、母ちゃんもいないから、喜ばす服が無いからボクはこれ着てけって…」と俯き気味で話して【誘惑】。それで沢山服がある所として船まで連れて行ってもらうように頼むか。

鼬川は兄という事で同行、兄弟の性格の差とかで更に惹きつけていく。
鼬川の精神が持つかが心配ではあるが、気弱そうな表情で「兄さん」を連呼するというのでからかうのも面白いかもしれんな。



「異性装の少年偏愛か、相当にこじらせているな」
 キング・ノーライフはうんざりといった面持ちでため息をついた。
 理解しがたい嗜好であるが、それ故に惑うのが人なのであろう。
 ともかく、この依頼成功の鍵は少年にあるようだった。
 ならば一人、適役がいる。
 ノーライフが指輪を光らせると、ひとりの少年が召喚された。
 従者、鼬川である。
「お、出番か?」
 勝ち気そうな顔をノーライフにむけ、早くもうずうずしている。
 自分の腕前を試したくて仕方がないようだった。
 主であるノーライフは、従者に向かって命を下す。
「我、汝鼬川に命ずる。女装少年と化せ」
「……は?」
 何を言ってるんだお前はという鼬川に、噛んで含めるようにもう一度命令を説明する。
 理解した少年の鼬耳が、たちまちぷるぷると小刻みに震えた。
「馬鹿じゃねーのか、なんで俺がそんな真似しないといけないんだよ!」
「島の人々と救うヒーローになれるチャンスだろう?」
「ざっけんな! 女の格好だったらヒーローじゃなくてヒロインじゃねーか!」
 喧々囂々と人気の無い砂浜で口喧嘩が勃発する。
 適任かと思ったが、酷く拒否されるならば仕方が無い。
 再び指輪が煌めくと、今度はノーライフの姿が変化した。
 鼬川とそっくりの、獣人少年へと。
 並べば兄弟に見えなくも無い。
「鼬川がやらぬならば我が行うしかないか。来い、口裏を巧く合わせろよ」
 だぶだぶの上着を引き摺りながら、王と従者は潜入を開始するのであった。

 宴もたけなわの海賊広場。
 高台から姿を現したのは、二人の美少年兄弟であった。
 しかし惜しいことに、女装はしていない。
「女装はどうしたぁーーーーっ!?」
 思わず声を荒げパニックになる海賊に、少年はうつむき加減で説明したのだ。
「ウチが貧乏で、母ちゃんもいないから、喜ばす服が無いからボクはこれ着てけって……ごめんなさい」
 だぶだぶの上着の袖口から指先が見え隠れし、はわわと口にあててキョドる少年。
 傍らに控えるもう一人の少年は、ぶすっとした顔でこちらを見てくる。
 しょうがねーだろうが。そう言いたげであった。
「ホントは色々と着飾って、お姉さん方を喜ばせたかったんだけど……服が無くて。どうしよう兄さん、お姉さんたち困ってるよね」
 弟にそう尋ねられた兄は、口を真一文字に結んで開かない。
 俺が知るわけねーだろうが。
 そう、言いたげであった。
 静と動。陰と陽の二つの少年が、高台からショタ成分を周りへと降り注ぐ。
「ぐあああーーーーーっ!」
 海賊たちはいてもたっても居られなくなった。
 少年が年上の女性にすがろうとしている。
 是、すなわちおねショタの極意。
 そして二層のベクトル派が色を変えて、淑女たちの視神経から脳へと入り込み、幻想をスパークさせる。
 着せたい! あの服を! 色々な服を!
 なぜならおねショタの頭頂には女装少年がはべるのだから!
「良い!」
「イイーーーッ!」
 いつの間にか兄たちは高台を下り、海賊達へと迫っていた。
 そして彼女たちに懇願する。
 女の子の服を見繕って欲しいと。
 彼女たちの船に案内して欲しいと。
 この要望を、海賊達は一も二もなく受け入れた。
 すでに脳内では女装衣装のパレードが始まっていた。
 脳内メリーゴーランドをウキウキで旋回しながら、海賊達は兄弟たちを喜んで案内していく。
 憮然とする兄の表情と、してやったりとほくそ笑む弟の顔に気づかないまま。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スプラ・プルトーイ
女装する少年……それは王子様である僕とは対に当たる存在かもしれない。その愛らしさには魅力を感じるよ。
海賊たちに【コミュ力】をもって持論を展開しようじゃないか!
王子様のお姉さんが、女装した少年……「お姫様」と呼ぼうか。お姫様と仲を深めていく……そんなお話があったら素敵だとは思わないかい?
そこのドレスを着た少年、僕と【ダンス】でもどうだい?ダンスは初めてかな?大丈夫。僕に従って。さあ、手を取って……(【礼儀作法・優しさ・手をつなぐ】)…………そうだ。なかなか上手いじゃないか。(2人のダンス空間を展開し、シチュの魅力を海賊たちにアピール)
……さて、君達に聞きたいことがある。話してくれるかな?



 宴に盛り上がる海賊達。
 その中に堂々と、単騎で進む男装の麗人。
 威風堂々と姿を現すスプラ・プルトーイには、ある種のカリスマが備わっているようにも見受けられた。
 見慣れぬ不審者に身構える海賊たち。
 スプラは居並ぶ彼女たちに向かって持論を展開するのだった。
「女装する少年……それは王子様である僕とは対に当たる存在かもしれない。その愛らしさには魅力を感じるよ」
 相手の嗜好を否定せず、まずは持ち上げて敵ではないことをアピールする。
「そして、王子様のお姉さんが、女装した少年……『お姫様』と呼ぼうか。お姫様と仲を深めていく……そんなお話があったら素敵だとは思わないかい?」
 スプラはショッター海賊団の中へ、ある問題を提起したのだった。
 お姉さんと少年。
 そしてここに居る者は、そのなかでも女装少年に惹かれるものたちだという。
 ならば自分は?
 姉の部分を変質すれば、新たな局地へとたどり着けるのではないか。
 スプラは海賊たちにそう、問いかけたのである。
 居並ぶものたちに激震が奔った。
 おねショタ、その概念にハンマーが振り下ろされる。
 振り下ろされた亀裂から、男装お姉様と女装少年が姿を現す。
 新嗜好。
 彼女たちはその新しさに、脳をアップデート出来ないでいた。
 ならば。
 スプラが手を伸ばす。見目麗しい少年へと。
「そこのドレスを着た少年、僕とダンスでもどうだい? ダンスは初めてかな?」
 周りの空気など何処吹く風、状況を掴めない少年を優しく抱きかかえ、二人でダンスを踊り始める。
 戸惑いながらもスプラに合わせて脚を動かす女装少年。
 そのすがるように見上げる目は、乙女のそれであった。
「ぐあああーーーーーっ!」
 海賊たちが光景を見て悲鳴をあげる。
 見かけは男女の素敵な抱擁。
 しかし中身は逆と着ている。
 少年をエスコートする年上の女性。
 おねショタの理想が、形を変えてそこに具現していた。
 スプラは追い打ちをかけるように、相方にむかってやさしく囁き語る。
「……そうだ。なかなか上手いじゃないか。大丈夫。僕に従って。さあ、手を取って……」
 追撃のおねショタ空間が、渦を巻きながら増大し、宴席を支配していく。
 こうなれば海賊達はただの路傍の石。
 尊いおねショタの行く末を、ただ見つめることしか出来なかった。
 失神する者、泡を吹いて倒れる者、ただただイイと呟いてガクガクと震える者。
 それらの者の断末魔を聞き届けるかのように、くるくるとスプラと女装少年は二人だけのワルツを踊り、彼女たちに見せつけ、宴の中を踊り巡る。
 一曲終わり、疲れた少年を優しく胸にへとおし抱きながら、スプラは片手をあげて海賊達に尋ねた。
「おや、拍手がないな。男装おねと女装ショタの魅力、わかっては貰えなかったのかな?」
 死屍累々と化した宴席場。
 そのなかで息も絶え絶えな海賊を解放し、スプラは尋ねる。
「……さて、君達に聞きたいことがある。話してくれるかな?」
 王子様の甘い微笑み。
 海賊は涙を流し、うんうんと頷くのみであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

穂照・朱海
ふむ、この世界でも美少年は至高と

解つているではありませぬか


『しよた』なるものと呼ばれる美少年たちと比べられては可愛らしさでは及ばぬかもしれませぬが
総合的に見て最も美少年なのはこのわたくし(※ナルシスト)
いざ……えむぱいあ発美少年あけみが皆様に会いに行きます

少し着物をはだけて徒つぽく海賊達に接触すると致しませう
「ほほほ……あけみも混ぜては頂けませぬか?」
向こうが少年だとわからなければ色んな所を見せたり触らせたりしますよ?
受け入れられれば舞をご覧に入れたり、芝居の台詞(※元の世界では女形役者)を披露したり
他の少年と絡んだりしても良うございますよ

……はて、目的は何でございましたでせうか



 エンパイアの地からはるばる海を渡ってみれば、そこにも少年を求める異端の地。
「ふむ、この世界でも美少年は至高と……解つているではありませぬか」
 砂浜に降り立った一人の女性、いや女形。
 穂照・朱海は意味ありげに頷いた。
 遠くからでもわかる歓声。
 あそこで少年達が己の美を披露しているのだ。
 演劇場、観客、そして自分。
 舞台は揃っているとみて間違いないだろう。
 この地に住まう少年達の容貌がどれほどのものなのか、朱海は知らぬ。
 しかし己の美しさは重々承知している。
「『しよた』なるものと呼ばれる美少年たちと比べられては可愛らしさでは及ばぬかもしれませぬが、総合的に見て最も美少年なのはこのわたくし。いざ……えむぱいあ発美少年あけみが皆様に会いに行きます」
 自負の言葉を空へと投げかけ、朱海はしずしずと海賊達がいる場へと足を運ぶのであった。

 海賊達は目を奪われた。
 独りでこちらへとやってくる無法者に。
 はだけた柔肌とその骨格。
 美しい顔立ちをしてはいるが、相手は紛れもない男子。
 そう、美少年であった。
 ばさりと手がなると、扇が開いてひらひらと揺らめき、朱海の口元を覆い隠して動きが止まる。
「ほほほ……あけみも混ぜては頂けませぬか?」
 そのままふわりと扇を投げ、それは紙飛行機のようにゆったり飛んで海賊の元へと落ちた。
 手付けの土産ということか。
「ぐあああーーーーーっ!」
 海賊達の心臓が鷲づかみにされた。
 女装少年、いやここは女形と表しておこう。
 それから渡された土産は、ショッター海賊団にとっては致命的な投擲となりえた。
 脳内に、ウェディングブーケの幻想がスパークしたからだ。
 がっくりと膝をつく賊徒の群れ。
 その中を割って朱海はしずしずと歩を進めていく。
 それはまるで、花道を歩く役者とそれを見守る観衆のように見えた。
「命を取るのも殺生と、存じたなれどつけあがり、止事を得ず不適もの、刀の穢けがれと存ずれど、往き来の人のためにもと、よんどころなく斯かくの仕合せ、雉子も啼かずば討たれまいに」
 すとん、すとんと扇が朱海の袂よりまろび出て、次々と居並ぶ乙女達の胸へと突き刺さる。
 流し目がすれかい、まるで魂を奪われたかのように海賊達は倒れ伏していく。
 その悪し様を眺めつつ、朱海はくるりと廻って見得を切った。
「益なき殺生致しました」
「ぐあああーーーーーっ!」
 吐血! 海賊団吐血!
 突如として乱入した女装美少年に、ショッター海賊団は崩壊の憂き目にあった。
 もはやここは海賊達が乱痴気騒ぎを楽しむ宴会場ではない。
 朱海がその美貌をもって取り殺す、殺戮の宴であった。
 その光景に、あっけに取られる他の少年達。
 そしてそのあどけない彼らは、第二幕を演じる役者たちとなった。
 和の朱海が、洋の少年達と手をとりあい、舞いを演じ始める。
 和洋折衷の女装少年。
 このビッグウェーブに耐えられるはずもなく。
 その白波を眼孔に焼き付けることもなく、海賊達は砂浜に屍を晒した。
 もはや、ぐあああーーーーーっ、声も聞こえない。
 静まり返った宴の席で、朱海は演目を謳い終えてため息をついた。
「……はて、目的は何でございましたでせうか」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『歌う海賊団『オケアニス・シレーネス』』

POW   :    楽曲番号一番「黒海のネレウス」
【ご機嫌な仲間たちと共に魂へと響き渡る歌】を披露した指定の全対象に【この歌を聴きながらお祭り騒ぎしたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    楽曲番号八番「紅海のアプスー」
戦闘力のない【愉快に歌う海の音楽隊】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【魂へと響き渡る歌を共に楽しく奏でること】によって武器や防具がパワーアップする。
WIZ   :    楽曲番号二四番「死海のエーギル」
【活気ある仲間と魂へと響き渡る歌を奏でた】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 陽は暮れ始め、夕焼けがグリードオーシャンの大海原を紅く染めようとしていた。
 ショッター海賊団の本拠、彼らの本船は入り江に囲まれた場所にあった。
 その周りを魚人たちが徘徊して高らかに戦歌をうたう。

  海原に風が吹く 見よショッター
  嵐が近づくのだ 力よショッター
  海原は我らのもの 偉大なショッター
  海人あやつる 恐怖だショッター
  邪魔する輩 それは愚か者ということかね
  我らの力を見るがいい
  荒波を起こし 嵐を起こす我が力を
  人呼んで ショッター海賊団
  人呼んで ショッター海賊団

 陽気に歌う彼女たちは、島であった者たちとは違って見えた。
 ボスに付き従う親衛隊の部類なのであろう。
 おそらくボスはあの船内にいる。
 しかし陸や海に徘徊する彼女たちの目を盗んで潜入するのは難しそうだ。
 ここは手数を減らすため、攻めに転じることにしよう。

※マスターコメントにある通り、戦闘外の行動でも突破出来ます
スプラ・プルトーイ
魂に響き渡るような良い歌声だ。だがその歌声が命取りとなる!きらびやかな光を降らせつつ【切り込み】だ!彼女達の歌声に合わせて【ダンス】のステップを踏み、敵の攻撃を【見切り】つつレイピアの刺突、斬撃を行うよ。歌声にステップを合わせていることに気づけば、アドリブで変調子してリズムを乱そうとする者もいるかもしれない。だが乱れるのはそちらも同じ!僕の切り込みによって開けられた穴は、少しのアドリブにより広まって回りを飲み込んでいく。乱されたそれは「魂へと響き渡る歌」と言えるかな?さて、この歌に終止符を打とうじゃないか!



 陽は沈み、代わりに月が辺りを照らし始める。
 その輝きが強くなったようだ。
 一筋の光がひときわ強く輝き、海上に居るスプラ・プルトーイを浮きあげるように照らしていた。
 当然、付近の海賊達もそれに気づく。
 スプラを目指して矢継ぎ早に海へとわけ入った。
 海面をすいすいと、陸でと変わらぬ速さでむかってくる乙女達に、スプラは帽子をとって恭しく拝礼した。
 彼女は海に立っているのでは無い。
 よく見れば、サメ型フロートを浮き場にして、悠々と海面に佇んでいたのであった。
 遠目から見れば、二つの足で立っているように思えた。
 自らを目指しやってくる者に礼をし終えると、帽子を被り直してスプラは剣を抜く。
「さあ、乙女達、僕と共に踊りを!」
 とん、とスプラが跳んだ。
 どのような作用であろうか。
 鮫型風船は蹴られた反動で海面を滑り、着地する足場を先の方へと作り出す。
 それはまるで、意志があるかのようだった。
 それを繰り返し、自分も相手方へと接近していくスプラ。
 敵方は食らいついた。
 陸の上にまだ何人いるかはわからないが、ある程度は引き離せたことであろう。
 これもスプラの狙い通り。
 自分の舞台へと敵を引きずり込み、海賊を迎え撃つ。

 四方から海賊達が高らかに戦歌を響かせやってくる。
 その音程に合わせるかのように、ステップを踏む。
 一段と足を強く踏むと、サメが撥ねた。
 二つのアーチが月光に浮かび上がり、そして海面へと消えた。
 再び浮き上がって来るのは、サメ風船ただ一つ。
 ではスプラは?
 海面を警戒し、散開する海賊達。
 気を取られているのか、幾人かの調子がずれていく。
 月明かりに照らし出される海上は、まるで白いステージ。
 足並みを揃えられない不調法な輩は御退場願おう。
 サメが撥ねた。
 いや、海底を蹴ったスプラの勢いで、宙へと投げ出されたのだ。
 そのまま海面を蹴ると、空を泳ぐ風船へと追いつき、再びそれを蹴る。
 海上へと叩きつけられバウンドしたそれを、スプラは足がかりとして落下の軌道を変えた。
 虚をつかれ、一人の海賊が肩口を貫かれた。
 ここが地上なら串刺しになっていたことであろう。
 賊はそのまま水面に沈みゆき、紅い花を拡げ咲かし去っていった。
 スプラとサメは、海上をゆらゆらとただよう。
 あっという間に一人倒されたことに対し、海賊達は絶句した。
「やれやれ、アドリブも出来ないのかな」
 スプラの嘲り。
 だが海賊はすぐに動こうとしなかった。
 彼女を中心にぐるぐると廻って輪を作り、その大きさを狭めていった。
「OK、第二幕だね」
 海に出来あがったリングの中で、スプラは落ち着きを崩さない。
 背後も、左右も見ずに、ただ前方を見据えていた。
 海賊達が逆しまに、今度は自分たちが尾を見せながら水面へと消えていった。
 海底から聞こえてくる輪唱は、足下を掬う錯覚を覚えさせる。
「魂に響き渡るような良い歌声だ。だがその歌声が命取りとなる!」
 海面を蹴破るように上がってきた歌声の一つ。
 それに対してスプラは身を逸らして、方向を逸らす。
 空に舞う魚人のアーチ。
 そしてそれに合わせる、麗人と鮫のアーチ。
 一つが海上に着地し、一つがまた沈んでいった。
 レイピアを振り払って血糊を飛ばし、海に現れた時と同じように、悠然とスプラはフロートの上に立っていた。
「君たちの歌声。来る方向さえわかれば見切るのは容易い。さて、この歌に終止符を打とうじゃないか!」
 踵で静かに韻を踏みながら、スプラは彼女たちに合わせて歌を口ずさむのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

キング・ノーライフ
という訳で船までは着いた訳だが、歌に関してはどこぞのアースから落ちた島から伝わったのだろう。

話の流れそのままに鼬川兄弟に化けたままドレッシングルームに連れて行かれる。嫌がる鼬川を先に女装させるのは気が引けるので我が先に行くか。

適当にワンピースを着ようとするが背中のチャックが鼬尻尾の所為でたわんで中々締められん。一生懸命やっても尻尾が興奮で動くので埒が明かない、仕方なく弟キャラのまま「背中が締まらないんですけど…」と興奮と無意識の【誘惑】で目を潤ませて頼む。

やってもらったら素直にありがとうございますと微笑みトドメ。
狙ってやってるのかと言われてもな…普段無い物が体にある感覚は難しいのだ鼬川。



 高らかに歌う海賊たち。
 それは自らの場所を猟兵達に教えているということである。
 船を囲むその数は、かなり多いと思わざるをえない。
 だがキング・ノーライフは、その中を警戒されずに先を行く事が出来た。
 彼の姿は、少年のままだ。
 ショッター海賊団は少年に対して全くの無抵抗であったからだ。
 追随する鼬川も同じく、周りから熱き視線を送られているが、彼女たちに争う様子は見受けられない。
 拍子抜けするくらいに船内へと入り込むことが出来た。
 木製の木板を踏みながら、ノーライフは辺りを見回す。
 あの歌はどこかUDCアースを思わせるような感じがしたが、この船は中世に出てくる船のような構造だ。
 おそらく海賊達は、どこかの島を襲撃したあとで、当地に伝わる歌も奪っていたのであろう。
「この船、おおきいね兄さん」
 今の自分たちは鼬川兄弟。
 潜入を止めて襲撃するにはまだ早い。
 いまだ機を待て。
 そう従者に言いたかったのであったが、
 上目遣いで見てくる主人を見つめ返す鼬川の顔は、苦虫を潰したかのようであった。

 船の一室へと案内された二人は目を見張った。
 様々な衣装が収められたドレッサー。
 しかも全て子供サイズと着ている。
 島内の少年達が全て女装させられてしまうのではないか。
 そんな気持ちを抱くほどの膨大な量であった。
 案内した海賊達は、鬼気迫る表情でジャンケンを繰り広げていた。
 その様は、給食に余ったデザートをただ一人獲得出来る、そんな必死さを覚える光景であった。
 多くがうなだれ膝をつき、一人がガッツポーズで拳をあげる。
 最初にショタを女装させるのは誰なのか。
 それがようやく決まったようであった。
 さて、とノーライフは横目で従者をうかがった。
 すでに鼬川は歯医者の待合室で大人しくしている少年のように、死んだ目をしていた。
 あまりの落ち込みように、このまま押しつけるのは気が引ける。
 服を着たいと案内させたのは自分の方だ。
 ここは己が進むべきであろう。
 すっ、とノーライフが上着を鼬川に預けて前へと出る。
 わざと薄着になり、自らに注目させようとして。
「じゃあ、お願いしますね。お姉さん」
 鼬川弟(仮)の無邪気な笑顔が、海賊の心を鷲掴む。
「ぐあああーーーーーっ!」
 吐血! お姉さん吐血!
 至近距離でショタが出すフェロモン、ショタンチッドをまともに喰らったのだ。
 穴という穴から血を吹き出して失血死してもおかしくはないのだ。
 悶死したゴミを片付け、二番目に勝利したものがいそいそと衣服を手に持ちやってくる。
 それは弟のサイズに近い、白いワンピース服であった。
 しかしここで問題が起こった。
 鼬尻尾が邪魔になって背中のチャックが閉じられないのだ。
 嬉しさのせいか、パタパタと尾を振るから尚更だ。
 ノーライフが海賊をみつめて懇願する。
「背中が締まらないんですけど…」
 女装少年とは衣服を着こなしてこそ、その名を冠することが出来る。
 いまのままでは中途半端、まだショタと言えよう。
 海賊達に戦慄が走る。
 合法的に、幼き男子の柔肌に触れる展開に。
 良いのか? そんな大それたことを!?
 いや、ここに来ることがそれを予期していた行動だったのかもしれない。
 しかしショタの手ほどきをすること、それはおねショタの理念に適っていよう。
 いや、それでもしかし。
 略奪をほしいままにしてきた海賊たちが、真の財宝を前に、邪知暴虐の気配を萎えさせていた。
「どうしたの? お姉さん」
 ノーライフが蠱惑な表情を浮かべながら、こちらへと近づいてくる。
 まだ着慣れていないために、ひらひらした服から肌がちらちらと見え隠れする。
「ぐあああーーーーーっ!」
 吐血! お姉さんたち吐血!
 ショタという禁断の果実は、密閉した空間では毒素と成り得た。
 息を整えようと呼吸をしても、口元に香るはショタの気配。
 たまらずえずき、呼吸する度に血反吐が辺りにぶち巻かれる。
 小さき王は、崩れ落ちる賊徒たちを、静かに見下ろすだけであった。

 死屍累々と化したドレッシングルーム。
 立っているのは鼬川兄弟だけであった。
 手下は敗走した。残るは首領ただ一人。
「狙ってやってるのか」
 先ほどの行動のことを言っているのであろう。
 ノーライフは首を傾げて答える。
「狙ってやってるのかと言われてもな……普段無い物が体にある感覚は難しいのだ鼬川」
 潜入は巧くいった。
 事はどうであれ、なかなかの興も愉しませてもらった。
「ありがとうございます」
 物言わぬ屍たちに礼を述べ、ノーライフは船内の奥を目指すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
悪戯心が止まらない

精鋭の女装ショタを数名連れて参上。
ショタの前で血生臭いことはできないだろ?

目的はユニットを完成・プロデュースすること。
彼らの将来と島の新産業の為なんです! (≧◇≦)
是非その歌唱力を彼らにお教えください。
衣装選びで自ら着替えさせることもできる、と取引

人ならざる女の子が人間を理想像に染め上げる…良い。イイー!
上目遣い、半べそ、満面の笑顔…ショタの業も深いものだ

キュン死しながらも己の技術を伝える姿に戦慄。
過去に還っても、歌はショタが未来へ継ぐ―
未来を奪うオブリビオンが未来を紡いだ奇跡だ。
愛は世界の理を凌駕できる!

最後にライブが出来れば上出来。
キュン死した皆に歌を届けてあげるんだ!



 陸の方を警護していた海賊団は驚いた。
 四王天・燦が女装ショタを引き連れてこちらへと向かって来たからだ。
 非戦闘員を戦場へと連れてくるなどと、批判の声があるかもしれない。
 だが燦には確信があった。
 自分たちは攻撃されるはずがないと。
 その証拠に見よ。
 海賊達はこちらを遠巻きに見つめるだけではないか。
「やはりな。ショタの前で血生臭いことはできないだろ?」
 船の前へと近づけるが、そこはやはり護衛。
 止まれと命じ、燦の目的をただす。
「アタシの目的か……いいぜ、教えてやるよ。目的はユニットを完成・プロデュースすること!」
 一歩下がり、女装少年たちを見せつけるように燦は叫んだ。
 プロデュース。
 いったい何を言っているのだろうか。
 自分たちの船に近づく不審人物。
 切り捨てても問題はなかった。
 しかし、後ろに控える女装少年。
 それが海賊達の行動を躊躇わせた。
 燦は続ける。
 力を貸して欲しいと。
「遠くで聞いてもわかったぜ。アンタたちの歌には熱がある! 是非この子たちに歌唱を教えてやってくれ! そして、舞台映えする衣装を選んでくれ!」
 一歩間違うと、島の少年を差し出しての賄賂と思われるような、突飛な要求。
 だが燦は確信していた。
 彼女たちの信念の強さを。
「ぐあああーーーーーっ!」
 その証拠に見よ。
 海賊のひとりが血を吹いて倒れた。
 彼女には見えていた。
 少年達が衣装に身を包み、煌びやかなステージのライトを浴びている光景が。
 そして舞台裏から、彼らの成長を見守る海賊団の姿を。
 一笑に伏すような馬鹿げた提案。
 しかし、ショタを良いように着せ替え出来るような好機は今をおいていつあろう。
 これは見張りを放棄するのではない。
 従順な島民からの願いを聞き届ける、支配者の慈悲であった。
「いいでしょう、私たちが手伝ってあげましょう!」
「そうこなくっちゃな!」
 燦と海賊団。
 二つの淑女がニチャア……とがっつり握手をするのであった。

  男なんだよ!? 可愛いと言うなよ
  胸のエンジン 気をつけろ
  ボクはここだぜ 一足お先
  光の速さで別世界にチェンジさ
  (良い) (良い)
  若さよ若さってなにさ!? 未成年ってことさ
  愛ってなにさ? おねショタのことさ
  女装! あばよ涙 女装! よろしく勇気
  女装少年 ギャーー馬鹿ーーーっ!

 もうどうにでもなーれと、少年達がやけくそになって熱唱する。
 上目遣い、半べそ、満面の笑顔。
 それぞれの反応は違うが、女物の衣装を着させられることに抵抗はなかった。
「これ! 今度はこれを着てもう一曲」
「こ、これでいい?」
「ぐあああーーーーーっ!」
「く、クロコ太夫ーーーーっ!」
 ひとつの試着、ひとつの曲が終わる度に、海賊が一人悶死していく。
 しかし彼女たちは止めようとしない。
 少年達が大人の階段を登る。
 その手ほどき導きこそ、おねショタの理想であるからだ。
「こ、これを……あの子に……」
「ええ、わかったわ。あの子に絶対着させてあげる」
 意志を託し、事切れる海賊達。
 その姿に燦はある種の感動すら覚えていた。
 オブリビオンが過去へと還っていく。
 しかし彼女たちが託した衣装と歌は、少年達に受け継がれていく。
 未来を奪うオブリビオンが未来を紡いだ奇跡。
 その素晴らしい光景に、うんうんと頷いた。
「すごいや……愛は世界の理を凌駕できる!」
 これが終わったら、島でライブでも開きたい。
 平和になったら彼女たちのための鎮魂の歌を聴かせてやりたい。
 そんな考えが燦の脳内をよぎっていた。
 目の前でショタに接触しすぎた海賊達が、あの世へと旅立つ光景に目をそらしながら。
 結果的に、海賊たちは燦の奸計に嵌って一掃されることとなったのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

レジーナ・ドミナトリクス
ああいった種族の方はもっと情趣溢れる歌を口ずさむイメージでしたが……いえ、これは偏見というものですね。
あまり深く考えるのはやめておきましょう。

他の皆さんの話を聞くに、敵は嗜好に付け入られると弱いようですが、かといってわざわざ喜ばせて差し上げる義理もないでしょう。
まあ手札が多いに越したことはありませんから、利用はさせていただきます。
フォースセイバーを片手に斬り込み、敵の反撃があれば【見切って】躱します。
敵の歌はショタで釣ることで注意を逸らして中断させ、その隙を突いて【低頭剄首】で斬り伏せます。
「あっ、空から生き別れた血の繋がっていないケモショタの弟が」
勿論、そんなものはどこにもいませんが。



 海賊船と、それの周囲で歌う魚人たち。
 ファンタジーな世界にぴったりな風景であるが、彼女たちの口から聞こえてきた歌詞は、状況に少々そぐわない気がする。
「ああいった種族の方はもっと情趣溢れる歌を口ずさむイメージでしたが……」
 レジーナ・ドミナトリクスは辺りの様子をうかがいながら、疑問を口にした。
 もっとも、所が変われば風習も変わる物だ。
 この自分の気持ちは単なる偏見というものであろう。
 あまり深く考えるのは止めよう。
「今は、あの賊を倒すのが要ですしね」
 様子を伺えば、洋上で戦っている者、数人を一緒に引き離してくれた者、猟兵達はそれぞれ独自の行動で数を減らしているようであった。
 再度、船へと進む道に待ち受ける海賊たちを、ざっと数えてみる。
 一人、二人、三人……。
 機をつけばやれなくはない数だ。
 フォースセイバーが青く光り、レジーナの顔を下から照らした。
 その顔はすでに、軍人のそれであった。
 砂をかけて、一気に距離をつめる。
 相手が高らかにうたう声が、砂浜を蹴る音を阻害した。
 それはレジーナの奇襲が、成功したことを物語る。
「はっ!」
 気合い一閃。
 先ほどまで気分良く歌っていた仲間が、顔を固まらせてズレ落ち、真っ二つとなってしまった。
 その半身が落ちるより早く、海賊は奇襲してきた輩の先制を受けることになった。
 瞬く間に二人斬り伏せ、レジーナは素早く岩陰へと身を隠す。
「敵襲ーーーーっ!」
 警告の叫び。
 それに応えて、そこかしこから海賊達が集まってくる。
 怒りを表してか、それとも多勢余裕の表われか。
 海賊達は合唱しながら、レジーナを捜索する。
 彼女たちの真ん中へと躍りかかるほど、レジーナは血気に逸ってはいない。
 冷静に、行動の対処を思考する。
 捕らえた海賊から、情報を聞き出したのだ。
 それを巧く使わねば。
 物陰に伏せながら、大きく叫んだ。
「あっ、空から生き別れた血の繋がっていないケモショタの弟が!」
 遮られた視界の先から、海賊達の動揺が伝わってくる。
 そして彼女たちは動く。
 何も見えない、月明かりの夜空を一心不乱に見つめるのだ。
「え、どこどこどこ?」
「ケモショタの弟だと!? 新しすぎる!」
「ちょっと業が深すぎんよ~」
 海賊達はレジーナの姿を追うどころか、ショタの影を懸命に探していた。
 自分でも心配になるくらいの食いつきようである。
 やはり敵は嗜好、ショタに付け入られると弱いようだった。
 籠絡するならば取引の材料として使えたかもしれない。
 だが、奴らがこれまでに行ってきた傍若無人の数々を鑑みれば、わざわざ喜ばせる義理も理屈も無い。
 悪党には悪党に相応しい報酬というものがある。
 完全に背後をとったレジーナは、岩を蹴って海賊達に斬りかかる。
 フォースセイバーが弧を描き、それは月より青く輝いて、後ろを歩いていた海賊の一人に向かって振り下ろされる。
 一刀両断。
 青に負けじと赤を吹き出す海賊の骸。
 しかしその返り血は、レジーナを染めることは出来ない。
 仲間のうめき声に振りかえった輩をひと突き。
 返す刃で剣を薙ぎ払って来た者の攻撃を受け止め、弾いて手首を回し、がら空きになった胴体を逆に薙ぎ払う。
 三つの徒花。
 朱に染まる砂浜に、月明かりに蒼く照らされるレジーナが次なる標的を見定める。
 素早き麗人の猛攻に、海賊達はいつの間にか、歌うことを止めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

穂照・朱海
一番近くにいた美少年の一人に安心させるためにこう言います
「必ずやお助け致します」
そして抱き寄せて接吻し戦いへと向かいます

美しき人ならば老若男女問わず愛するのがわたくし

だから海賊達のお気持ちもよく解ります
されど おねしよた だけといふのは……勿体無い
女装美少年×女装美少年 も
あはれなり

首魁のいる船へ
赤ゑいに乗って参ります
人魚の歌い手達に遭遇するならば空から近づきます
そして扇を手にし舞【ダンス】を披露します

何しようぞ
くすんで
一期は夢よ
ただ狂え――

この舞は『傾城天津狐』
込める暗示は『歌うことに熱狂せよ』

敵が歌っている間に素通りさせていただきます心算



 海賊が待ち受ける船へと一艘の舟、いや一匹のエイが近づく。
 それは月明かりに負けじと紅く染まった赤エイであった。
 海を泳ぐではなく、空を漂いてまっすぐに敵船へと目指す。
 それを見過ごす海賊団では無い。
 次々に得物を取り出し、侵入者を迎撃しようとする。
 だが、撃ち落とそうとする手が止まる。
 エイの上に立つ人影を見たからだ。
 美しい。儚き、物憂げな顔を見せるは女装少年。
 悠然と漂うエイの上に乗っていたのは、穂照・朱海であった。
 朱海の視線は眼下の敵軍では無く、その先、敵首魁が居る本船へと向けられていた。
 そっと、唇に手をやり、ここに来る前の事を思い浮かべる。
 賊徒から救い出した少年達。
 解放された彼らは、猟兵達に賞賛の言葉を送っていた。
 その中の一人と喜びを分かちあうために、抱擁をする朱海。
 馴れぬ衣装を着せられて、内心は羞恥に塗れていたのであろう。
 全身を震わす恐れ、不安。
 それら負の感情をこちらへとしみ込ませ、消し去るように、朱海は抱擁を続け離さなかった。
「必ずやお助け致します」
 たとえ一時救い出そうとしても、こんきすたどぉるが存在する限り、この島に平和は訪れないのだ。
 勇気と、また会う約束の口づけを交わし、朱海と少年の身体が離れたのだ。
 そして今。
 眼下に並ぶは女装少年では無く、魚人海賊の群れ。
 彼女たちがこの島へとやってきたのは、少年を愛するが故に。
 愛。
 その気持ち、わからなくもない。
 されど。
「おねしよただけといふのは……勿体無い」
 女装美少年×女装美少年の可能性。
 それを彼女たちに説いてあげたい。
 しかし残念。
 それを説法するに、今宵は時が短すぎる。
 なれば。
 すっ……と扇を取り出す朱海。
 戦う気は毛頭無い。
 魅せるのだ。
 女装少年の価値を。穂照・朱海という存在の美しさを。
 空に浮かぶエイの背で、彼は重心を崩さずに舞を披露し始める。
 朗々と囀り、手足は夜露をかき混ぜるが如く、月明かりの空にて海賊達へと相対した。

  梨花一枝
  雨を帯びたるよそほひの
  何しようぞ
  くすんで一期は夢よ
  ただ狂え――

 月より美しく、朱海の姿へと海賊達は吸い込まれる。
 もほや得物は手にしていはいない。
 替わりに動くは自らの口。
 女装少年を称える、爆発的な気持ちであった。
 この思いを、どう表現していいものか。
 そう考える前に、唇が動いていた

  ああ月夜 月よ 輝きよ
  其方はなぜこうも照らすのか
  それは彼の者を見つめているからか
  頬を染め 照れているからなのか
  見よ 月よ 紅月よ
  其方の美しさに月も翳る
  浜の真砂は尽きるとも
  世に海賊の種は尽きまじ
  しかるに月と女装少年は
  この世に合っては足らぬもの
  紅月が月を隠す
  月が恥じて欠けていく
  満月と呼ぶはあの朱に相応しい
  其よ 其よ 其は誰ぞ何処
  月よ 月よ 世は彼ぞ少年ぞ

 ただひたすらに宙の一点、海賊たちは朱海を見続けながら歌い続ける。
 歌うことの素晴らしさ、そして女装少年の素晴らしさを。
 月は青く輝き、海上へと自分を運んでいく。
 そして朱海は空を舞い、海賊船へとむかうのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『寛容なる蛇神』

POW   :    蛇神の抱擁
【蛇体での締め付け】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    縛られた献身
小さな【宝石で抵抗できないように暗示をかけ、口】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【胃。暗示を解ければ抵抗できるようになるの】で、いつでも外に出られる。
WIZ   :    囚われし神僕
【神威の手鎖につながった鎖】で武装した【過去に喰らった人々】の幽霊をレベル×5体乗せた【大蛇】を召喚する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠空葉・千種です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 海賊船へと乗り込んだ猟兵達。
 すると船が動揺する気配を感じた。
 甲板へと出てみれば、いつの間にか、船は海原へとひとりでに漕ぎ出していた。
 月明かりに照らされる船上。
 そこへ、船奥から大きな影が這い出てくる。
 映し出されたのはやはり半人半蛇の異形の物。
 コイツだ。
 コイツがコンキスタドール、敵首領に違いない。
 見かけは慈母、優しそうなお姉さんに見える。
 警戒し様子を伺う猟兵に、コンキスタドールはうっとりと語りかけてきた。
「何やら騒がしいと思えば、久方の珍客。どれも骨のある方ばかりのようですね」
 ベロリ、と舌なめずりをする。
 その舌は恐ろしいほどまでに伸び、自分の鎖骨ほどまでも伸びて猟兵を威嚇した。
「この島、私の所領をご覧になっていかがでしたか? 可愛らしい女装少年たちを。最近では、男の娘と言うんですよ」
 くっくっくっと嗤うコンキスタドールの顎が外れ、自らの首を叩く。
 その様は、まるで大蛇のようであった。
「ええ、ええ。あの子たちは本当に可愛くて可愛くて……もう食べずにはいられないくらいでして。あなた方もそう、感じたことはありませんか?」
 穏やかな表情を浮かべるコンキスタドールに対し、猟兵達はそれぞれの武器を構えた。
 敵だ。
 コイツは紛れもない、世界の敵だ。
 ショッター海賊団。
 少年を愛するがゆえに暴走してしまう集団。
 しかしコイツが追放されたのは、別の意味があったからではないのであろうか?
 船は波間に揺れ、乗組員の身体を左右へと振る。
 その動揺を物ともせず、コンキスタドールはのたのたと巨体を揺らしながら、猟兵達へと迫る。
「たまには口直しに、男の娘以外も召し上がるのも一興ですね」

 コンキスタドール、『寛容なる蛇神』ノドーガ・ガラガンダが猟兵達に襲いかかってきた。

※三章は二章と違ってギミックは無く、純戦となります
※申し訳ありませんがプレイングは7月3日(金)8:30~以降に送信してくださるようお願いします
穂照・朱海
愛には様々な形があつて善い
されど、相手が食べられたいと望むならともかく、かような形は……
この穂照・朱海、否定させていただきます――お覚悟を

妖刀で攻撃し、食べられて仕舞ふたら胃の中より反撃を行います
艶姿百鬼変化、【化術】をご披露
此度、演じまするは――『雪女』

体の中から凍りつかせて差し上げます
蛇であれば、寒いのは苦手なのでは?
食べられて仕舞ふわけにはいきませぬのでね
迎えに行かねばならぬ人達がいますから……そう 囚われた美少年達が
わたくしはかれらと真に愛に満ちた時間を過ごすのです


スプラ・プルトーイ
暗示使いか……厄介な相手だね。【騎乗】する鮫風船に、魔力による予定行動刻み込みを行ってから挑むよ!念のため、脚の表面と鮫風船を同化結合し離れないようにしておこう。
基本はレイピアを用いて、鮫風船の【高速泳法】による【空中戦】。
暗示をかけられ飲み込まれたら、それに反応して鮫風船に刻んでおいた行動が発動!脚から離れて、固い牙で僕に噛み付くことによるショック療法で暗示を解くんだ!自我を持たない鮫風船には暗示も通じないよ。そして敵の体内から、致命的な部位への【サプライズ・バイト】!
勝利を確信した時こそ、一番の隙となるのさ……!


四王天・燦
船長のせいでショッターは外道扱いされたのか
この海賊もコンキスタドールに破壊されてしまった!

違うなァ!
子供を食料にしているだけだ
海賊団の皆ならコレ(薄い本)を見たら即死するぜ
ちうか空気読めよ

説教したら妖狐三変化で獣人に変身し殴る蹴る
暗示は狂気耐性で適当に抵抗

乱戦中、爆弾・カウントダウン起動
変身失敗を装って五歳児にフォームチェンジしおびき寄せて爆破
トドメは天狐形態で上昇、獣人に戻っての妖狐キックだ

ドサクサ紛れメガリスを盗む
お宝は戴いた♪

残る海賊で島をショタアイドルの島に導けるよね?
共存共栄できるよう計らうぜ
薄い本はあげる。死ぬなよ

逝った姉に捧げる鎮魂歌の中、芽生える姉とショタの絆…あれは盗めないな


レジーナ・ドミナトリクス
島から離れたのなら、もう取り繕う必要はないわね。
本気でいくわよ!

【真の姿】
敵に巻きつかれないように、鞭形態のフォースセイバーで距離を保ちながら戦うわ。
食べるというのがどちらの意味かはわからないけど、少年を獲物として見ているのは間違いなさそうね。
そんな相手には【刻苦鞭隷】がお似合いよ。
被虐願望……つまり、おねショタかショタおねかでいうと後者。
本来の自分とは真逆の嗜好に惹かれる屈辱を味わうといいわ!

それにしても、同じおねショタ派同士戦うことになるなんて空しい事件だったわね……。
あら、分類したところで不毛とは言ったけど、理屈と感情は別よ?
相手に主導権を渡すなんてありえないわ!


キング・ノーライフ
素直な疑問として食うのに女装の装飾品や化粧、ひらひらした服飾は喉越しが悪くならんのか?

冗談はこの位にせんと鼬川が本当に食われかねん。
そして相手の得意は密着戦、なら逆に我が食らおう。

【誘導弾】で牽制攻撃しながら【誘惑】してこちらに意識を向け、
奴が遠距離攻撃タイプと思い込み、
接近戦に持ち込もうとした所で【王への供物】で美少年に変えてしまおう。

更に【化術】で蛇神の姿に化け、
「今の貴方は女装少年、そして「私」は貴方…なら美味しく食べてもいいですよね?」とうっとりした【演技】をしながらキスをするようにして王の供物の二撃に入ろう。【誘惑】と強制変身によるショックで自己が曖昧になってる所なら押し切れるだろ。



 巨体の鈍重さを感じさせない速さでガラガンダが迫ってくる。
 その巨体を押し返すように、稲光が甲板の上を奔った。
 有功打とは言えないが、牽制にはなったようだ。
 動きを鈍らせたわずかの間に、猟兵たちは散開し、ひと呑みされることを回避する。
「命を奪うのは流石に無理か。まあ、そうだろうな」
 仲間と一緒に自分も間合いを取ったキング・ノーライフは、射線を確保すべくカバーしながら一定の距離を保ちながら敵の様子を伺った。
 すでに鼬川は下がらせている。
 もしやと思って、ここに従わせることは控えて船の捜索を命じていたが、やはりその考えで正しかったようだ。
 目の前で従者が貪り食われてしまっては王足る者の資格などない。
 障害物から身をいだし、銃口を奴にむかって放つ。
 ぬらぬらとした鱗の体表へ流れるように弾が滑り、尾の先へと滴り落ちる。
「蛇神の名を冠しているだけはある。化け物め」
 蛇の眼孔がこちらを見据える前に、ノーライフは身を沈めてそこから移動した。

 薙ぎ払われた敵の尾撃をひらりとかわすレジーナ・ドミナトリクス。
 ふわりと着地した彼女が見上げるはコンキスタドール、ガラガンダ。
 口元に笑みがほころぶ。
 ここは既に敵と自分たちしかいない。
 島民が居る場所では控えていたが、もう抑える理由はないだろう。
「じゃあ本気でいくわよ!」
 ばさりと制服が脱ぎ払われた。
 そこから現れたのは、清廉な将校ではない。
 相手を屈服させる女王の姿であった。
 巻き髪が緩くなり、下へとさがる。
 それはレジーナの開放された心を示すようであった。
 その気持ちに応えるかのように、フォースセイバーが紅く染まり、ゆるゆらりと垂下がっていく。
 もう一つの形態、鞭の姿へと。
 出力をあげた武器がバチバチと火花を散らし、昂揚をさらに高ぶらせる。
「易々と食べられてあげるほど、私は安くないわよ!」
 相手の尾撃に劣らぬ鞭の一打。
 それが相手の身体をしたたかに打った。
 ガラガンダが、レジーナにくるりと向き直る。
「あらあら、これは粗暴な方ですね」
「食人鬼が偉そうね。お仕置きしてあげるわ」
 女傑の視線が絡み合い、火花を散らす。

 両翼より二刃がガラガンダへと振り下ろされた。
 尻尾で床を叩き、後ろへと飛び退くコンキスタドール。
 レジーナを守るように、穂照・朱海とスプラ・プルトーイが割って入った。
「愛には様々な形があつて善い。されど、相手が食べられたいと望むならともかく、かような形は……」
 刀を握りしめ、朱海が構える。
「この穂照・朱海、否定させていただきます――お覚悟を」
「厄介な相手だね。でも悪党を成敗するのも王子の役目さ」
 踏み込んで斬りつける朱海に合わせ、スプラが跳ぶ。
 そこへ鮫風船が空をきり、スプラの足へと。
 加速し、敵の頭上へと弧を描き、彼女もまたレイピアの一撃をむけた。
 天と地、猟兵二人の剣戟が襲いかかる。
 刃の間合いへと避けようとした敵の側面より、高速弾と光鞭が行く手を塞ぐ壁を作った。
 朱海とスプラ。レジーナとノーライフ。
 二つの連携に、さしものコンキスタドールも手傷を負った。
 畳みかけるように、高速の影がガラガンダへと迫る。
「外道が! アンタがやっていることは子供を食料にしているだけだ!」
 自らに焔を宿した四王天・燦が、肉薄し拳で語る。
 思い切り振りかぶるテレフォンパンチ。
 隙だらけの見え見えの動作だ。
 だがその突き出された拳。
 それにガラガンダは目を奪われた。
 突き出された拳が持っていた物。
 意外! それはおねショタ本!
 カードを切るように相手へと投げ、それと同時に燦が屈み込むように踏みこむ。
「アンタの手下は少年を愛でても食い物にすることはしなかった! 船長失格だよ!」
 万一のことを考えて用意してきた書物を無にされた怒りを籠めて、燦が殴る。
 歪んでも、おねショタは滅びず。
 完全に視線を持って行かれたガラガンダが、怒りの鉄拳をまともに受け、躯がくの字へとのけぞってしまう。
 体制を崩した敵を掬うように、レジーナとノーライフの弾と鞭が浴びせられ、更に身体が泳ぐ。
 その弾幕の波しぶきをかいくぐり、スプラが空を泳いで敵を突く。
 深々と刺し貫いた、満足な手応え。
「がぁっ……
 痛みでのけぞり悲鳴をあげるガラガンダに、朱海が追い打ちを決めた。
 甲板に、血飛沫が飛んだ。
 波では洗い流せないほどの量。
 猟兵たちの連携に、コンキスタドールは追い詰められているようだった。
「ふ、ふふ、ふふふ……」
 だがガラガンダは不敵に嗤う。
 顔をあげて笑みを絶やさず猟兵に語る。
「手弱女にこの仕打ち。酷い方々ばかりですね。やはり、この世はお姉さんと少年の世界であるべき……ねえ、貴方もそう思いますでしょう?」
 語りかけるガラガンダが纏う宝石が綺羅綺羅と、夜空に照らされてまたたいた。
 いや、それはひとりでに妖しく輝いているのだった。
 そして視線は、自らを斬りつけた朱海へと。
 至近距離で見つめられてしまった、朱海の両腕がだらんと下がる。
 カランと乾いた音を立て、持っていた刀が床へと離れてしまう。
「いけない!」
 異常に気づき、近くにいたスプラがレイピアを振るう。
 だがそれは手遅れだったようだ。
 庇うように朱海の前に立つスプラもろとも、両腕を巻き付けながらガラガンダが大きく口を開け、二人を呑み込んだ。
 ごくん。
 如何なるアヤカシの業であろうか。
 二人分の体積で膨らんだ腹が、すぐに元の大きさへと戻った。
 ぺっ。
 口に刺さった小骨を吐き出されるように、レイピアが床へと叩きつけられる。
 朱海とスプラの愛刀が、寒々と月光に映し出されていた。
「まだ、終わってはいないわ!」
 目の前で仲間が失われてしまったことへ、茫然自失する仲間達の心に発破をかけるべく、レジーナが大きく腕を振るって鞭を振るう。
 床板が打ち鳴らされ、猟兵達は現実を直視する。
 仲間がやられた。
 しかしコンキスタドールはまだ倒されてはいない。
 こちらを巻き締めようとする魔の手を避け、冷静になったノーライフが銃弾でそれを押し返した。
 服や装飾があったら丸呑みなど出来るのか?
 素直に抱いていた彼の素朴な疑問は、目の前で仲間をやられたことで解決してしまう。
 そしてそれは、静かな怒りを生み出す結果となった。
 他の二人も同様である。
 普段は律しているが、おねショタは良い物である。
 傷物にしては、おねショタ派を名乗る資格などない。
 目の前で女装少年を丸呑みにされたレジーナは感情を露わに怒る。
 燦も怒っていた。
 この島に来てからというもの、感覚がおかしくはなってはきているが、普段の自分は女の子が好きなのだ。
 目の前でボーイッシュ少女を食われては、怒らない訳がない。
 少女を食べるのは自分だ。
 少年を愛でていいのも自分だ。
 二人の激昂に呼応して赤い焔と紅い雷光がスパークし、甲板を奔る。
 ノーライフは巻き添えを食らわぬよう、一定の距離をとって仲間を援護するのだった。

 スプラは痛みによって目覚めた。
 気がつけばここは先ほどまでとは別の場所。
 昏く広い、よく分からない場所だった。
「万一のことを考え対策してよかったよ」
 自分の腕に噛みつく風船は、本物と同じようにその牙を腕に立てて、主の催眠を解くのに役立っていた。
 己から離れないように術を施し、呑み込まれたときのカウンターを仕込んでおいてよかったと、スプラは安堵する。
 気分を落ち着けた彼女が周りを見渡せば、そこには倒れた朱海の姿があった。
 目は覚まさぬが息はしている。
 自分と同じように呑み込まれ、ここへと運ばされたようだ。
「王子様のキスじゃないけど、我慢してほしいな」
 かぷりと鮫が朱海を噛んだ。
 やがて彼も意識を取り戻し、起きやれて辺りを見回した。
「おやここは……」
「怪物の腹の中さ。どうやら僕たちは呑み込まれてしまったようだね」
「ほう成程、さすれば……反撃の手合いといふわけですな」
「ああ、そういうことだね」
 小首を傾げる朱海にスプラが笑顔で返す。
 得物は失った二人だが、猟兵たるもの手段は一つだけではない。
 スプラが風船にまたがると、それはふわりと浮き上がる、海中を泳ぐがごとき自在に動き回り、辺りを突き進む。
「これが奴の『胃』のなかなら、その壁を食い破るまでさ!」
 終点を探し、獲物を探して鮫が泳ぐ。
 朱海はそこに佇み、ひっそりと目をとじた。
 脳裏によぎるは、島中での出来事。
 昏く寒い胃の光景では無く、明るく楽しかった光景が鼓を打つ。
「食べられて仕舞ふわけにはいきませぬのでね」
 その調子にあわせて彼は舞う。
 この状態を打開するに相応しき姿へと、変貌を開始する。
「此度、演じまするは――『雪女』。悪食足る大蛇を破る、美しき化粧に御座います」
 周囲の温度がひとたび舞うごとに低下していく。
 吐く息が白く、髪に霜がつき始める。
 朱海が白く染まりつつあった。
 美麗を閉じ込める寒さを。
 雪を操る冬のアヤカシへと。
 辺りが吹雪へと覆われる。
 スプラはその中を突き進む。
 それは、白波を操って海に乗るサーファーのようでもあった。
「見えた、執着点」
 行く手を分厚い肉の壁が阻む。
 だが彼女が跨る鮫の勢いは止まらない。
 風雪に押され、その威のままに疾走を止めない。
 獲物を狩る海の猛者。
 その牙は、誰彼であっても逃れられぬことは出来ない。
 敵の内から、朱海とスプラの反撃の芽が腹を破って咲かせようと膨らんだ。

「!?」
 船上で戦っていた三人が訝しがる。
 仲間を呑み込んだガラガンダの様子がおかしかったからだ。
 腹をおさえうずくまり、こちらへむける敵意が薄まる。
 これはもしや。
 猟兵たちは、思い切り大きく間合いをとった。
 そして予想は当たり、腹を喰い破って猟兵が出てくる。
 飛び吹き出す血飛沫は、氷結によってたちまち凍る。
 その即席アーチを滑りおり、スプラは甲板へと着地する。
「英雄、御帰還てところだね」
「ああ、上出来だ」
 素晴らしきヒーローっぷりに、ここに鼬川がいたら臍を噛んでいたのではないか。
 仲間が戻ってきたことに安堵し、ノーライフはスプラにレイピアを投げ渡す。
「心が醜ければ、身体も美しき無き御座候。所詮あけみの業のごうには適いませぬ」
 最初からそこにいたかのように、朱海も刀を持って甲板に立つ。
 これで振り出し。
 そして、コンキスタドールは初手とは違い深手を負っていた。
「お似合いの格好になったわね!」
 もがくガラガンダの首筋に、レジーナの鞭が巻き付いた。
 そして腕を引っ張り、敵の顔面を床へとひきずり叩く。
 血糊が凍り、見るも無惨なガラガンダ。
 息も荒く起き上がる姿は、慈母とは似ても似つかぬ、浅ましい物の怪の正体であった。
「おのれ、おのれ、おのれぇぇぇぇ!」
 雄叫びを上げながら近づいてくる敵に、燦が立ち塞がった。
「アンタの相手はこのアタシだぜ」
 構え、拳をあわせようとする彼女の姿が、歪み縮小していく。
 燦が驚きの声をあげる。
「しまった……活動時間が!」
 見れば妖狐とはまったく違う子供の姿へと。
 勢いを失い、母に飛び込む子のように、ガラガンダへキャッチされてしまう。
「死ね!」
 大きく口をあけるコンキスタドール。
 その口へと、手に持っていた物を放り投げ入れ燦が笑う。
「それは、こっちの台詞だぜ」
 口中が閃いた。
 爆風。轟音。
 あえて敵の好む格好で誘い、至近距離から爆薬を投げたのだ。
 その場で垂直に高く上がり、再び変身を遂げる燦。
「妖狐ーーーキィーーーーック!」
 彗星のような跳び蹴りで吹っ飛ばされるガラガンダ。
 辛うじて船縁を掴み、海に投げ落とされることを堪える。
 満身創痍のコンキスタドール。
 今までのことを省みれば、奴の姿は因果応報といえよう。
 レジーナは嗤う。
「今まで貴方が喰らってきた、その罪の報いを受けなさい」
 クルクルと鞭状であったフォースセイバーが、再び硬質し棒状へと変わる。
 罪人を打ち据える、打擲の鞭へと。
 振り下ろした一撃は、小気味の良い音を立ててガラガンダの身体と脳を揺さぶった。
 その激痛に、息が出来なくなる。
 大きく息をすって目を開いてみれば、船上に多くの人がいた。
 その姿に、ガラガンダは見覚えがある。
 少年の姿。見目麗しき女装少年の姿。
 それは、今までコンキスタドールが喰らってきた子供たちの姿であった。
 万力のような力で、両腕を拘束される。
 振り向けば、やはり多くの少年。
 ひしめきあう彼らの重みで船は揺れているのではないか。
 そう、錯覚させるほどの少年達が、ガラガンダの周りを取り囲んでいた。
 彼らは笑う。最初コンキスタドールが見せたと同じような、優しい笑みで。
 その小さき腕は、ガラガンダの身体の身体をまさぐっていく。
 彼女が望むおねショタの世界ではなく、ショタおね地獄。
 その饗宴が、ガラガンダの躯によって証明されるのだ。

 片手を腰にあて、鞭を下ろしたレジーナ。
 その背の後ろには、もがき苦しむガラガンダの姿があった。
 フォースの一撃を受け、赤い閃光を身体のあちこちから噴きだし、苦しんでいた。
 猟兵の優勢は誰の目に見ても明らか。
 トドメを刺すべく、ノーライフが歩を進む。
 苦しみ暴れるガラガンダを抱擁すると、優しく語る。
「ショタおねに苦しめられているのか。ならば思い出すが良い。己の嗜好を、おねショタを」
 地獄に垂らされてきた甘言。
 悪魔の囁きに、苦しむコンキスタドールはそれを容易く掴んでしまう。
 ぐにゃりと、身体が変貌していく。
 蛇人では無く、可愛らしい女装少年の姿に。
 そしてそれを抱きかかえるは、蛇人。
 コンキスタドールである自分の姿であった。
 自分が、自分を見つめている。
 少年になった私を、私が見つめている。
 倒錯混乱するガラガンダにむかって、そいつは優しく微笑んだ。
「今の貴方は女装少年、そして「私」は貴方…なら美味しく食べてもいいですよね?」
 慈母のような、ねっとりとした微笑。
 ガラガンダは思い出す。
 自分がやってきた所業。
 そして、これから行われるであろう悪夢のことを。
「い、いやあああああーーーーっ!」
 絹のような悲鳴をあげて、少年はもがく。
 だが蛇神にまとわりつかれ、がっしりと捕まれたこの状況では、逃れる術などあろうはずがない。
 可愛らしい顔が、絶望で皺を刻むその表情を愉しむかのように、自分がぱっくりと大顎を開く。
 ガラガンダは絶叫した。
 地獄を抜ければ再び地獄。
 ショタおねとおねショタ双方の暴威。
 それがコンキスタドールの精神を崩壊させた。
 ノーライフの姿が離れる。
 蛇神の姿を借りた物ではなく、本来の姿へと。
 目の前には、老いさらばえたガラガンダの姿が。
 彼が喰らったのは肉体ではなく、生命であった。
 己の手をじっと見つめ、それから頬を撫でる。
 老婆になった自分。
 もはやガラガンダをおねショタの化身と呼ぶには無理があろう。
 地獄を抜けてきた彼女の心を、絶望が撃ち砕いた。
 潮風が枯枝のような体を持ち上げ、海へと攫った。
 コンキスタドールは、深き海へと沈んでいく。
 波は静かに揺れて船を運ぶ。
 月明かりが船上を最初から最後まで優しく照らしていた。
 猟兵達は、コンキスタドールに打ち勝ったのである。

●それから~

 悪は倒された。
 囚われていた少年達も解放され、島の人々は元の暮らしを取り戻そうとしていく。
 またいつも通りの、平凡な日常へと。
 ……戻るはずであった。
「良い!」
「イイーーーッ!」
 船長を失ったショッター海賊団の手下たち。
 彼女たちは手を結び、この島へと残ることになった。
 少年達の愛情を、そのままに。
「そうだ、少年は素晴らしい! 観光の目玉としようじゃないか!」
 燦が元海賊達に発破をかけて、櫓を設立している。
 彼女たちの、少年に関する愛。
 それは島を守る防波堤となるのではないか。
 そう燦は考え、共存出来るように折衝したのだ。
「おねショタは素晴らしい! 故に少年は素晴らしい! みんな、その少年達がいるこの島をまもっていこうぜ!」
 その声に応え、歓声があがる。
 船長とは違い、彼女たちは少年愛が暴走していただけだ。
 多少ギクシャクすることがあるかもしれないが、いずれ島民たちと手を取り合える未来がくる。
 燦には見えていた。
 島民たちが彼女たちと一緒に、サイリウムを振る輝かしい未来が。
「頑張ってくれたら、コレもやるぞ!」
 高々と掲げられた薄い本を見て、黄色い声がつんざくように響き渡る。
 元海賊達が、すごくすごくやる気を出して設営を頑張る。
 島民たちと仲良くなれるように。
 再びこの地に少年愛を取り戻すために。
 散っていたおねショタの同士たちが無駄ではなかったこと証明のために。
 いつしか彼女たちは歌っていた。
 自らを昂揚させる、ショタの歌を。
 犠牲に捧げる鎮魂歌。
 それを聞きながら、燦も彼女達を手伝うのだ。
 燦の首から下げてある宝石が日の光を浴びて、キラリと妖しく光っていた。

「なあアイツ、メガリスに憑かれているんじゃないのか?」
 鼬川がむこうの乱痴気騒ぎを冷ややかな目で見つめている。
 ノーライフは我関せずといった面持ちで、トロピカルドリンクを飲みながらビーチチェアーに寝そべっていた。
 コンキスタドールを追い払った猟兵達は、島の人々にいたく感謝された。
 側にあるテーブルに並べられた果物の小山は、その貢ぎ物という訳である。
「その時はその時だな」
 少年という者に惹かれるのは女性のさがなのかもしれない。
 男性である自分が理解出来ぬ領域。
 それにあれこれと惑わされるのは時間の無駄という物であろう。
 王足る者、小事にこだわったりはしないのだ。
「今回は鼬川に随分と助けられたな。大義である」
「べ、別に何もしてねえよ」
 突然のねぎらいに、従者たる鼬川がそっぽを向ける。
 本当に何もしていない。
 変な戯事につき合わされただけだ。
「グリモア猟兵が来るまでまだ日はある。泳いできたらどうだ」
 水着ならあるぞと、と渡された鼬川であったが、それを拡げて砂浜にうち捨てた。
「ふざけんなコレ! 女物じゃねーか!」
「まだ男子用はこの島にはない。裸で泳ぐよりマシじゃないか」
「お前、絶対わかってて言ってるだろ!」
 鼬川が耳元でぎゃんぎゃんと騒ぐ。
 ノーライフはその声に耳を傾けずに、凪いだ海原を眺めるのであった。。

 悪は倒された。
 島に平和が戻り、少年達は別の美を身につけ村へと帰る。
「お姫様を助けた王子様も、何処へと去っていくのさ」
 鮫型フロートの上でスプラは波に揺られながら寝そべっていた。
 耳に聞こえるは楽しそうな歌声と、島民の声。
 コンキスタドールが滅びれば、いがみ合っていた彼らが手を取り合っている。
「実に素晴らしい光景だと思うね」
 女装少年。その愛らしさ。
 それはグリードオーシャンに隠された、ひとつの魅力なのかもしれない。
 だがこの大海原はあまりにも広大だ。
 むくりと起き上がって水平線の先を見る。
 今だ詳細が分からぬ島の数々。
 そこには、今回と同じようにコンキスタドールに苦しめられている人々がいるのであろう。
 だがしかし。
 勢いよくスプラは鮫の上に立つ。
「この僕が、悪を斬り伏せて行こうじゃないか」
 海原を照らす青空と太陽。
 それは小さい頃に見たあの人の背中に重なった。
 それに比べれば、まだまだ自分は未熟。
「おや、いい波が来たようだね」
 サーファーにとっては絶好の高波。
 それをくぐり抜けようとスプラは屈んだ。
 鮫風船の王子様は、悪を断つために、今日も海を征くのであった。

 島の一画で開催される女装少年ライブ。
 そのリハーサルの中に、朱海の姿があった。
 洋装の出で立ちに、ひときわ際立つ和装の女形。
 少年達のバックダンサーを引き連れて、己の世界を繰り広げる。
 流し目を観戦する野次馬に向けると、黄色い声援がその度に上がるのだ。
 そんな観衆を袖にして、朱海は女装少年の手を取った。
 あの時誓った、誰に誓った。
 必ず戻るとその手に誓った。
 約束という概念は、えんぱいやの地では絶対なる物。
 そして朱海という美しさは、この世界でも絶対な美とならなければならぬ。
「共に、そこへと参りましょう」
 しずかに少年を抱きしめて、朱海は再開の喜びを確認した。
 耽美な世界が、この島に芽吹き始める。
「ぐあああーーーーーっ!」
「く、クロコ太夫ーーーーっ!」
 その儚さに耐えきれず、野次馬にいた元海賊たちが吐血し、命の危険に晒された。
 グリードオーシャン。
 その世界は、エンパイアの世界に勝ると劣らない、鮮血の地であったのだ。

 島であった騒動など無かったかのように、空は晴天で海は穏やかであった。
 レジーナは一室から外を眺め、寛いでいた。
 その姿は暑さをはね除けるような、端正な軍服姿。
 船の上で争いを繰り広げたような開放的な姿では無い。
 レジーナの、もう一つの姿であった。
 グラスを揺らせば、カランと氷が音を立てて涼を誘う。
 液体の先には、少年達の催し物。
 その肢体をグラスの中へと溶け込ませ、レジーナは中身を飲み干した。
 今は抑えてはいるが、自分もおなじくおねショタ派。
 同じ思想の同士が戦うなど、なんと空しい事件であっただろうか。
 いや、感情が爆発する前に解決して、良かったと考えるべきであろう。
 元海賊達が島に残留する結果となるが、それを裁くのは自分の役目では無い。
 罪滅ぼしのために奉仕を続ける。
 これも刑期の一つであろう。
 リハーサルが終われば、少年たちの幾人かが御礼を述べにこの部屋へとやってくるらしい。
 それはそれは喜ばしいことだと思う。
 何を聞かれるかはわからないが、年上の余裕を魅せてさしあげよう。
「こちらが主導権を握るのが、おねショタの基本ですからね」
 もしもメガリスを自分が先に手に入れていたらどうなっていただろうか。
 海賊団と同じように、ショタおねに対して敵意をむけていたのであろうか。
 そんな空想を、ノックの音が打ち消した。
「どうぞ、お入りになってくださいな」
 ドアの先の来訪者にむかって、レジーナは優しく語りかけるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月06日


挿絵イラスト