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囚われし者・抗いし者(作者 きみはる
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 それは一言で表現するならば、“地獄”だろう。
 その地を支配していた狼藉者たちすら、逃げ惑う地獄。
 異形の動物たちが、次々と逃げ惑う者たちを喰らっていく。
 抗うことは困難――であれば出来ることは、一途の願いを込めて逃げることだけ。
 青年もまた、そうすべきなのだ……本来であれば。
「助けなきゃ……」
 己に出来ることなど無い……何故なら彼とて、狼藉者たちに虐げられてきた奴隷の一人だったのだから。
 己の無力など、百も承知。

 それでも尚、青年は止まらない。
 己が心の衝動のままに、危険の中へと飛び込んで行くのであった。


「馬鹿な奴、なんだろうけどねぇ……死なせたくないねぇ」
 そうしみじみと言葉を零すのは、老齢のグリモア猟兵――中御門・千歳(死際の悪魔召喚師・f12285)だ。
 千歳によれば事件はアポカリプスヘルのとある拠点(ベース)で起こるという。
 しかしそこは通常の拠点では無い、アポカリプスヘルの環境に絶望し、力で他者を奴隷とし、虐げる狼藉者たちが支配する拠点だと言うのだ。
 千歳の予知では、その拠点がオブリビオンに襲われ、狼藉者も奴隷も等しく殺されてしまうという。
 千歳が言う馬鹿な奴……とは、そんな中、奴隷の一人が一人でも多くの人々を逃がそうと、孤軍奮闘する者が見受けられたというのだ――それこそ、狼藉者も、奴隷も等しくだ。

「そいつはパッと見は普通の男だけどさ、間違いなくリーダーの器だよ」
 猟兵たちであれば狼藉者たちを倒すことは造作も無いことだ……だがそれでは、彼らはその後自立し、生き延びることは出来ないだろう。
 故に猟兵たちは導く必要があるのだ、その気弱気な青年を。

「まずはその拠点に潜入しておくれよ、いざという時の為にさ」
 今後のことを思えば……青年がリーダーとしてやっていく為には、後のオブリビオンの襲撃は必須。
 だが同時にそれによる被害者を無くす為には、事件が発生したタイミングですぐさま動くことが可能なよう、猟兵たちは拠点へと潜入する必要があるだろう。
 そこでは奴隷たちが虐げられ、そして戦わせられる血濡れた闘技場が開催されている。
 猟兵たちはそこに奴隷として、スタッフとして、はたまた観客として潜入することが可能だ。
 ただし一点、注意が必要なことがある。狼藉者の中でも特に支配層――肩に棘付きパットを付けた者たちには、逆らってはいけないことだ。
 すぐさま騒ぎが拠点全体に広がり、オブリビオンの襲撃時の被害が、むやみに広がる可能性が考えられるのだ。

「オブリビオンが襲撃を開始したらさ、助けてやっておくれよ……皆をさ」
 オブリビオンの被害を防ぐ為、襲撃が開始されたならば猟兵たちは人々を守りながら戦う必要があるだろう。
 そして後のことを考えるならば、件の青年が奮闘する様を支援すべきなのだ。
 幸いなことに予知によればオブリビオンはそこまで強力では無い……もしも猟兵たちが支援をするならば、青年や青年に鼓舞された人々が戦うこととて、可能なのだ。
 予知の中で青年は奴隷も、狼藉者も厭わず助けようと奮闘していた……色々と思うところはあるだろうが、千歳としても出来れば狼藉者も含めて助けて欲しいと願っているようだ。

「オブリビオンを撃退したら、そのままその拠点を支援してやっておくれよ……乱暴やってた馬鹿や、奴隷根性がしみついちまってるやつもいる。少しばかりケツを叩いてやらにゃ、リーダーだって大変さね」
 無事青年と共にオブリビオンを撃退したのならば、青年がリーダーとして認められることは難しくは無い。それでもそれは過半数であり、それなりの数認めない元狼藉者や、何も考えないことに慣れてしまった元奴隷たちがいるだろう。
 猟兵たちには破壊され尽くした拠点の修理を、物資補充を支援しながら、彼らを鼓舞、又は叱咤して欲しいというのだ。

「色々と気を回してもらうことが多いけどさ、宜しく頼むよ」
 老齢のグリモア猟兵は、そう言いながら猟兵たちを送り出す。
 猟兵たちが、人々を上手く導けることを祈りながら。





第3章 日常 『奴隷達に勇気を!』

POW自らの力を誇示・先導し、戦う勇気を与える
SPD戦いの術を教えて、戦う勇気を与える
WIZ武器や知恵を与えて、戦う勇気を与える
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「あたしはこいつをリーダーに立てる……文句があるヤツはかかってきな」
 そう真っ先に口にしたのは、これまで拠点(ベース)を支配していた幹部たちの中でも、一目置かれていたモヒカン頭の女性の姿。
 その真っ赤に染められたモヒカンを左右に振るいながら周りをねめつけ、決して異論は認めないとばかりに威嚇する。
 そう祭り上げられた当の本人は、なんで自分なんだとおどおどと戸惑うばかりだ。

「だ、だってよ姉御……こいつ、奴隷だぜ?」
 モヒカンたちも、青年の活躍は認めている。
 だがそれでも、長くに渡り拠点を支配していた身分制度の感覚は深くに根を張り、その事実を素直に認めることは出来ない。
 それはその意見を口にしたモヒカンだけでは無い……特に共に戦うことが出来なかった者ほど、モヒカンも奴隷であっても、その決定に対し違和感を感じているのだ。

「黙りなっ! 他の誰にだってあの惨状で立ち向かえる奴はいなかった! これから拠点を立て直さなきゃいけない今は、強いリーダーが必要なんだ! そして誰よりも強いのは、あの時真っ先に動けたこいつだろっ!?」
 そう戟を飛ばす女幹部の言葉に、頷く者も存在する。
 それは全体から見れば、三割いるかどうか……その者の多くは、先の戦いで青年に感銘を受け、そして猟兵たちに叱咤激励を受け、戦うことを選択した奴隷やモヒカンたちだ。

「ぼっ、僕に出来るのかは分かりません! でも……それでも、やらせて貰えるなら、頑張るから! 皆が、しっかり暮らせていけるように!」
 そう青年が言葉を返せば、決まりだとばかりに人々は騒ぐ。
 しかし、それは一部の声が大きい者による決定……人々の過半数は、未だ納得がいかないかのような表情を浮かべるのだ。

 支配者として君臨してきた矜持が許せない者。
 己より弱者であるはずの者の活躍が、認められない者。
 隣に立つ者の成功が妬ましい者。
 そして……唯々、変化が受け入れられない者。

 今は良いだろう、だがこのまま放置しておけば、そう遠くない未来にこの拠点は崩壊するだろう……それは外部からの侵略者では無く、内部からの争いによって。

 猟兵たちは難しい判断を迫られる。
 君たちに出来ることは、何だろうか?

 拠点の修理や物資補充といった支援も今を生きる為に必須だろう……だが忘れないで欲しい。
 大切なのは、今後人々が自立してやっていけるかどうかなのだということを。