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黄昏迷宮モノノケ・ノルタルジイ

#カクリヨファンタズム #新世界シナリオ第一作目

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#カクリヨファンタズム
#新世界シナリオ第一作目


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 夜は嫌いだ。
 暗くて寂しくて、心細いから。

 昼は嫌いだ。
 一人ぼっちだと痛感して、息苦しいから。

 だから、夕焼けが好きだ。
 ぼんやりと顔が見えないけど、誰かか底にいるのが分かるから。

 そうだ、夕焼けに満ちた世界を作ろう。
 今の私なら、きっと出来る。
 きっと世界を、化かすこともできるはずだから。

 グリモアベースは、新世界発見の一報によって、にわかに騒然としていた。
「新世界カクリヨファンタズムが見つかったはいいけど、早速、世界が滅亡しそうなんだよっ! 急いで現場に転送するから、手の空いている人は協力してほしいなっ!?」
 蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)が慌ただしく転送の準備に追われていた。いきなり世界滅亡の危機というのも穏やかではない。
「カクリヨファンタズムはUDCアースと隣接する世界で、人々に忘れられた妖怪達がこの世界に逃げ込んだり誘われたりして、生活している世界なんだけど、そこは同時にオブリビオン化に抗う世界でもあるんだよ」
 なんでも、世界を渡ることは本来危険を伴う行為で、妖怪たちの多くが『幽世(カクリヨ)』に辿り着くまで命を落としている。その魂が『骸魂(むくろだま)』と呼ばれる霊魂と化し、生前に縁のあった妖怪を飲み込んでオブリビオン化するのだという。
「今回の黒幕は、夜と昼が嫌いで、黄昏時を愛するがあまり、世界を黄昏で満たしてしまったオブリビオンなんだよっ! このままだと世界はずっと夕暮れのままで、境界線があやふやな世界になっちゃうっ! つまり、『骸魂(むくろだま)』が大量発生する世界の出来上がりっ!」
 やばいじゃん。カタストロフじゃん。
「そう、やばいんだよっ! しかも黒幕は周囲を迷宮のような要塞に作り変えてるから、まずはその迷宮要塞の内部を探索して、最奥部にいる黒幕まで辿り着かなくちゃならないよっ!」
 いきなりハードな展開だが、世界の危機ならばやるしかない。
「黒幕は迷宮内に小型のオブリビオンの群れを放ってるから気を付けてねっ! それと、黒幕はとても寂しがり屋の性格っぽい? 上手く宥めれば、『骸魂(むくろだま)』だけを破壊して、妖怪を救うことも出来るかもっ? みんな、頑張ってねっ!」
 レモンはそう告げると、早速、黄昏に満ちた新世界へと誘うのだった。


七転 十五起
 新世界は毎日が滅亡の危機です。
 やばいじゃん。
 なぎてんはねおきです。

 世界を滅ぼすものが誕生してしまいました。
 猟兵の皆様はこれを撃破して頂き、黄昏に満ちた曖昧な世界を元に戻して下さい。
 新世界の概要などは、是非、ガレージからご参照下さい。

 第一章は冒険、黄昏に満ちた、迷宮と化した路地を進みます。
 逢魔ヶ時へ向かう斜陽へ突き進み、更に奥へと向かいましょう。

 第二章は集団戦、黒幕が解き放ったオブリビオン達との戦闘です。
 第一章で上手く迷宮要塞を突破すれば、広い空間で戦うことが出来ます。

 第三章は黒幕と戦うボス戦です。
 オープニングの通り、黒幕は寂しがり屋な性格です。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
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第1章 冒険 『逢魔ヶ時の迷宮』

POW   :    夕日へ続く道を動き回って見つけ出す。

SPD   :    影の位置を確認しながら突き進む。

WIZ   :    迷宮をマッピング、簡易な地図を作って突破する。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

木常野・都月
なんか、どこかで嗅いだ、懐かしい匂いの気がする。

初めてカクリヨファンタズムに来た。
懐かしいがいっぱいだ。

どこでこの匂いを嗅いだか分からないけど、きっとどこかで似た匂いを嗅いでるに違いない。

カタストロフでピンチと聴いてるけど、興味津々で迷宮を通り抜けたい。

風の精霊様に、出口に繋がる空気の流れを掴んで教えて貰いたい。

あとはそれを頼りに、狐の姿で迷路を通り抜けたい。

敵が作った迷宮だけど、親しみがあるのは、俺が妖狐だからなのかな。

時間帯は夕方で止まってるみたいだけど、俺は元々[暗視]持ちだから、夕暮れの微妙な明るさでも、気にならないかもしれない。

シュタタタタタっと迷路を通り抜けたい。


ケース・バイケース
びっちびっち (鯉はPOWで跳ねながら移動している)

びっちびっち (移動に伴い、水が失くなっていく鯉)

びち びち (なんということでしょう。勝手に死にかけています。なんで来た???)

びちっ びちっ (だがしかし、この畜生は腐っていても猟兵。寂しがりが流す涙の気配を追って、びたんびたんと進みます)

ぴく ぴく……
(だが鯉は無力。死にかけがすごい)

(そんな時、鯉の体を光が包みます。畜生が何故か使える、ユーベルコードです)
(他の猟兵さんの元へ、無駄に神々しく現れる無力な鯉1.5m)

んぱ んぱ (鯉は 助けて欲しそうに 猟兵を 見ている!!)

んぱ (見ている!)


(尚放っておいても、多分なんとかなります)



 茜色の空、昼と夜の曖昧な境界の世界。
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が転送されたカクリヨファンタズムの世界は、全てが橙色に染まる夕暮れの世界だった。
 彼は鼻をスンスンと澄まして、初めて訪れた世界の匂いを嗅ぐ。
「なんか、どこかで嗅いだ、懐かしい匂いの気がする」
 見渡せば、UDCアースの一昔前の古びた町並みや見たこともない建物が立ち並んでいる。
「初めてカクリヨファンタズムに来た。けど、ここは懐かしいがいっぱいだ。どこでこの匂いを嗅いだか分からないけど、きっとどこかで似た匂いを俺は嗅いでるに違いない」
 胸に込み上げる望郷感と懐かしさに浸りきりたい気持ちをグッと抑え、本来の目的を思い出す。
「そうだった。今、この世界はカタストロフでピンチと聞いてるんだ。この路地が迷宮の入り口のようだな……早く駆け抜けないと」
 口ではそういう木常野だが、彼の黒くてふくよかな狐の尻尾は忙しくなく左右へ揺れっぱなしであった。
 新世界の冒険に、好奇心が溢れて止まらないのだ。
 木常野は路地へ足を踏み入れ、その奥へ突き進む。
「すごい。何処までも夕焼けで同じ景色が続いているぞ。これじゃあ、何も考えなく進んだらいつまで経っても突破できないな」
 木常野は一度足を止めると、エレメンタルロッドを振るって風の精霊を呼び出した。
「この世界の風の精霊様は初めてだな。……はじめまして、木常野都月です。この迷宮で迷ってしまったんだ、力を貸してください」
 丁寧に挨拶を行った甲斐があったのか、風の精霊は木常野の願いを叶えるべく飛翔する。
 そして風を巻き起こし、迷宮の路地へ吹き付けてゆく。
「こっちは吹き返しがない、つまり行き止まりじゃないってことだ。風の精霊様、その調子で風の流れを起こし続けて下さい」
 木常野は自身の野生の勘を最大限まで発揮するべく、人の姿から黒狐の姿へ変身した。
(これで全身の毛で風を感じやすくなるぞ。人語を喋りづらいけど、俺だけだし、このままシュタタタと駆け抜けてしまおう)
 四脚移動は人型と違いスピードを出しやすい。
(常に夕闇の世界か。元々、暗視持ちの俺は、夕暮れの微妙な明るさでも気にならない。問題なく迷宮探索ができるな)
 迷宮を駆け抜けてゆく影一匹は、風の流れを敏感に感じつつ、縦横無尽に走る細い路地を右へ左と折れ曲がる。
 と、三度目の角を曲がったその時だった。
 木常野の頭上がにわかに輝いたかと思えば、舞い落ちる羽根と共に、ボトッと何かが地面へ落ちてきた。
(びっちびっち!)
 鯉だ。黒い鯉だ。
 親方ァ! 空から黒い鯉が無駄に神々しく降ってきやがったッ!
 しかも1.5mあるぞこの鯉、デカイな!?
(敵か? 敵なのか?)
 すぐさま狐姿の木常野は警戒態勢を取る。
 狐 vs 鯉。
 無言の対決が今、始まった。
(びっちびっち!)
 黒い鯉の はねる!
 ……しかし、何も起こらなかった!
(もしかしたら餌かもしれない……)
 木常野の噛み付く!
(びち、びち……)
 木常野に咥えられた黒鯉、水分がなくなり、勝手に弱ってゆく上に今にも喰われそうだ!
 ケース・バイケース(鯉・f03188)、無茶しやがって……。
 この黒鯉、実はれっきとした猟兵なのだ。
 その正体はブラックタール。なのに普段はどっかの団地の池で餌付けされている鯉ライフをガチエンジョイしているのだ。
 ……いや、なんでここに来た?
(……鯉って、泥臭くてまずいな)
 運良くペッと吐き出されたケースは九死に一生を得ると、水の気配……すなわち、世界を滅ぼすものが流す涙の気配を鯉の直感で感じ、必死にもがいて地面を飛び跳ねる!
(ぴくぴく……ぴくぴく……)
 だがナムサン! ブッダはやはり寝ていた!
 黒鯉は地上ではあまりにも無力!
 ケースは力なく地面に横たわって動かなくなってしまった。
 最後に黒鯉は、その眼で木常野を見詰める。
(んぱッんぱッ!)
 彼のエラ呼吸は既に限界、むしろ空気中の酸素で過呼吸気味だ!
(んぱァァーッ!)
 目をカッと見開きながら、『いやマジで助けて下さいお願いします何でもしますから!』と懇願する勢いで口を大きく開ける。
 マジで臨終する5秒前。
 次の瞬間、黒鯉の視界がぼやけてゆく。
 ……コレは、水?
「鯉の猟兵なんて、初めて見たぞ……」
 人型に戻った木常野は、水の精霊に頼んで、黒鯉の周囲を水球で包み込んだのだ。
 それを魔力で浮かび上がらせると、木常野はケースに尋ねた。
「さっきは食べてごめんなさい。黒鯉さんは出口が分かるのか?」
(んぱッんぱッ!)
 方位磁石めいて、一定の方角へ口を開け閉めする様を見て、木常野は確信する。
「よし、黒鯉さん。君に決めた!」
(ぴっちぴっち♪)
 言葉がなくても意思疎通出来てしまった2人(?)は、迷宮をスルスルと突破してゆくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

林・水鏡
昼も夜も嫌いじゃから黄昏にしたかったか…。
妖ってのは基本黄昏時が好きじゃしなぁ。
しかたないって言ったらしかたないんじゃが。
さすがに世界を崩壊させられるのは困る。
生きたくて必死にこっちに逃れてきた者もおるからの。
その子らの為にも世界がなくなってしまうのは困るんじゃ。
我は…まぁ、年長な部類じゃからなぁそんなに未練とかはないんじゃが。楽しみはいっぱいあるし積極的に消えたいわけではないしのぅ。

寂しがりやか…助けることが出来たらもうそんな思いをさせんようにしてあげたいかの。


ティエル・ティエリエル
WIZで判定

むぅ、夕焼けは奇麗だけどずっと夕焼けだと飽きちゃうよね!
トモダチと夕焼けでバイバイして、お日様と一緒におはようって再会するのがいいんだよ♪

【妖精姫と子狼の鬼ごっこ】でオオカミくんを呼び出して一緒に迷宮探索を手伝ってもらうよ!
最初はオオカミくんの背に乗りながら「情報収集」を使って迷宮内部をマッピングしていくね♪
途中からは二手に分かれてどんどんマッピングの範囲を広げていくよ!
二つ分のマッピングするのは大変だけどボク頑張るよ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


数宮・多喜(サポート)
『アタシの力が入用かい?』
一人称:アタシ
三人称:通常は「○○さん」、素が出ると「○○(呼び捨て)」

基本は宇宙カブによる機動力を生かして行動します。
誰を同乗させても構いません。
なお、屋内などのカブが同行できない場所では機動力が落ちます。

探索ではテレパスを活用して周囲を探ります。

情報収集および戦闘ではたとえ敵が相手だとしても、
『コミュ力』を活用してコンタクトを取ろうとします。
そうして相手の行動原理を理解してから、
はじめて次の行動に入ります。
行動指針は、「事件を解決する」です。

戦闘では『グラップル』による接近戦も行いますが、
基本的には電撃の『マヒ攻撃』や『衝撃波』による
『援護射撃』を行います。



「昼も夜も嫌いじゃから黄昏にしたかったか……。妖ってのは基本、黄昏時が好きじゃしなぁ」
 溜息を吐く妖怪白澤の少女こと林・水鏡(少女白澤・f27963)。見た目は少女だが、既に長い年月を生きた東方妖怪である。
「しかたないって言ったらしかたないんじゃが……」
 自身もカクリヨファンタズムの出身だ。今回の黒幕の考えに対して理解を示すも、この異常事態に眉尻を下げてしまう。
「さすがに世界を崩壊させられるのは困る。生きたくて必死にこっちに逃れてきた者もおるからの。その子らの為にも世界がなくなってしまうのは困るんじゃ」
「そうだよね~っ! ボク、初めてカクリヨファンタズムに来たけど、ここはとっても懐かしい気持ちになって素敵な世界っ♪」
 フェアリーのティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は、妖精の翅で夕焼けの中を宙返りしてみせる。
「でも、むぅ……夕焼けは奇麗だけどずっと夕焼けだと飽きちゃうよね! トモダチと夕焼けでバイバイして、お日様と一緒におはようって再会するのがいいんだよ♪」
「そうじゃな。停滞すればするほど未来は訪れぬ。我は…まぁ、年長な部類じゃからなぁそんなに未練とかはないんじゃが。楽しみはいっぱいあるし積極的に消えたいわけではないしのぅ」
「それじゃあ、一緒に迷宮を突破しよ☆」
「無論じゃ。じゃが、我は猟兵として初めての任務でのぅ。すまぬが、この老いぼれに猟兵のいろはとやらを叩き込んでくれぬかの?」
 頭を垂れる林に、ティエルは思わずびっくり!
「えっ! つまりボクが先生っ!? わぁ~☆ わかったっ! 色々教えてあげるねっ!」
 やる気に全身を燃やすティエルは、早速、林の目の前でユーベルコードを披露する。
「オオカミくん、ボクと一緒に迷宮を探索だよ!」
 ユーベルコード『妖精姫と子狼の鬼ごっこ(フェアリー・チェイサー)』で呼び出したのは、森の守護者である漆黒の大狼の子供だ。
 ティエルはオオカミくんの背中に飛び乗ると、前方を指差して号令をかける。
「さぁ、この迷宮を隅々まで駆け巡ってマッピングするよっ! ゴーゴー☆」
「がうがうっ!」
「わ、我を置いてゆくでないわっ!」
 慌てて林はティエル達を追いかけるも、どんどんその距離が離れてゆく。
「ぜぇ……はぁ……! これ、年寄りをもっと労らぬか!」
「だったら、後ろに乗ってゆくかい?」
 林の横に二輪バイクが横付けされる。
 ヘルメットを脱いで髪を振り解く数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は、ニヤリと微笑んで林へ手を差し伸べた。
「ほら、置いてゆかれちまうよ? アタシも相棒の宇宙カブの機動力を活かしてマッピングをしていた最中だったのさ。余計なお節介だが、協力しないかい?」
「おお、これはありがたいのぅ!」
 しずしずと後部座席に林が乗ると、数宮はアクセルをフルスロットル!
「さあ! かっ飛ばすよ! しっかり掴まってな!」
「ひゃああああっ! なんじゃこれは速すぎるぅぅ~っ!?」
 時速60kmで宇宙カブをかっ飛ばす数宮は、ティエルを追い越す際に声を掛けた。
「アタシ達は右を潰してゆくから、そっちは左を任せたよ!」
「オッケー☆ 手伝ってくれてありがとう♪」
「そんじゃ、後で合流な?」
 こうして、ティエルと数宮・林は2手に分かれて迷宮内を虱潰しにマッピングしてゆく。
 ……のだが。
「合流どころか迷っちまった!」
 迷宮内は複雑に入り組みすぎていたのだ。
「あああっ! こんな時、都合よく出口が見付かったりしないもんかねぇ~っ?」
「我が白鐸図にも反応がないのぅ、むむむ……」
 一転して万事休す!
 だが、数宮の頭の上から、いや~な気配が出現した。
「多喜ちゃん! ここは変身してマジカルパワーで解決だよっ!」
「出やがったな、うっさんくさい兎野郎!?」
 数宮の顔色が一気に青ざめる。
 だが何も知らない林は、ぱぁっと笑顔を咲かせた。
「なんだこやつ! 可愛いのぅ!」
「いや水鏡さん、こいつは信用しちゃいけねぇ奴だ!」
「酷いなぁ、多喜ちゃん! ほらほら、いつものように、へーんしーんっ!」
「ちょ、今はやめ、って拒否権なしかよォーッ!?」
 数宮の身体をキラキラ☆ピンクなーオーラが包み込んだ次の瞬間、黒のライダースーツがロリィタな魔法少女コスチュームへ早変わり!
「変身完了~っ! もうこれで何も怖くない!」
「やめろっ! アタシの首がもげるようなフラグを立てるな!」
 魔法少女姿になった数宮は大激怒。
 ――その時、不思議なことが起きた。
「おーいっ! マッピング完了したよ~っ♪」
 ティエルが迷宮のマッピングを終えて合流を果たすと、林が何かを発見した。
「見よ! あれは出口ではないか?」
「オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ!?」
 超展開に目眩を覚える数宮。
 兎のマスコットキャラがサムズアップして告げる。
「この愛らしい神獣たる僕がいれば、あらゆる因果を捻じ曲げて都合の良い展開を引き寄せられるんだよっ! すごいでしょっ!」
「だったらアタシの変身する意味はねェだろうがァァアアアアーッ!!」
 理不尽だと嘆く数宮だったが、おかげで一気に万事解決してしまったので、神獣をぶん殴ることをぐっと抑え込んだのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『カビたモチ目目連』

POW   :    キミモクルシムトイイヨ
攻撃が命中した対象に【口と鼻が餅でふさがった状態】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【呼吸困難】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    タベラレルモノナラタベテミテヨ
レベル×5本の【毒】属性の【カビた餅】を放つ。
WIZ   :    デキタテダヨ
自身の肉体を【熱々のお餅】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 迷宮を抜けたら、そこは迷宮だった……。
 がっかりする猟兵達。
 しかし、先程の迷宮のように入り組んでおらず、斜陽が正しい道を照らし続けていることから、黒幕からの『お誘い』を受けているようにも思えた。
 だが、橙に照らされた路地の脇から、黒カビで覆われた餅の身体で出来た目目連たち……『カビたモチ目目連』たちが現れ、猟兵達の行く手を阻む。
「ヤメロ、ジャマスルナ」
「アイツノオカゲデ、セカイガホロブ」
「オレタチハ、ソレヲノゾムモノダ」
「イェーガー、コロス」
 黄昏時の曖昧な境界線に紛れ込んだ大量の骸魂が、カビた餅取り込んでオブリビオン化してしまった!
 黒幕の暴走にかこつけて、このままカタストロフを完遂させようとしている!
 猟兵達は邪魔者を廃するべく、容赦なく武器を構えて戦いを挑むのだった!
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……まさかねぇ。
因果律操作がきっちり仕事するとは思わなかったよ。
いやまぁ、なんでアタシを変身させるかも聞きたいけど、
どうせ趣味だからとか当然のように答えられるだろうし聞かねぇよ。

でもってカビた餅かよ!
どうするんだよコレ!
一応アタシもたしなみ程度の『毒耐性』はあるけどさ!
さすがにすすんで食いたくは……あ。

おい珍獣。
喰え。
何をってあの餅をだよ。
ほら、アイツら本当はカビる前に食われたかったんだろうし
喰って浄化してやれよ。
浄化も魔法少女のたしなみだろ?
お供もできなくてどうするんだよ。
ほら、喰った数だけ後で変身するから。

……おーおー張り切ってら。
んじゃ珍獣と纏めて『衝撃波』!


ケース・バイケース
びち びち (鯉は早速死にかけている)
びたびた (何故なら餅がエラに詰まっているからである)

んぱ んぱ (さらに口にも詰まる毒餅。鯉は無力である)

パタリ (鯉は死んだ)

(鯉は死んだ。夜が溶けて広がっていく)
(不定形のブラックタールが、餅たちの足元で広がって)
(ばくり、と全部を呑み込んだ)


(咀嚼 咀嚼 あるいは消化)
(そのどちらでもあるかもしれない動きが止まって、それはいつの間にか1.5m程の、敵の形を取っていた)

(だがこのまま敵の姿ではいられないので、落ち着いたら猟兵の前に出てって殺してもらいます。)
(次は元気にひよこで復活します。ぴよぴよ)


木常野・都月
妖怪!これが妖怪か…!
餅に目ん玉が沢山ある。

骸魂って、カビた餅も食べてオブリビオンにするのか。
逞しいな。

しかし、相手は餅か…カビてなければ骸魂だけ倒して餅を食べようと思ったんだけど……。

俺でも流石にカビた餅は手を出さない。

……仕方ない、焼くか。

UC【狐火】で火力最大、炭になるまで燃えてしまえ。

餅は焼き過ぎれば硬くなって炭になる。
高火力でカビごと焼いてしまいたい。

まあ、食べられないなら燃やすだけだ。

敵の攻撃は[高速詠唱]した風の精霊様の[属性攻撃]の[カウンター]で対処したい。
かまいたちで、伸びてきた餅を細かく切り落としてしまいたい。



「……まさかねぇ。因果律操作がきっちり仕事するとは思わなかったよ」
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は第二の迷宮を探索しながらボヤいていた。
「つーか、さっきの迷宮の出口をくぐった途端、他の同僚さんとはぐれちまったし、これも珍獣の仕業か?」
「違うよ! それは僕の仕業じゃなくて、この迷宮の主の作為だよ!」
 空を漂う兎のような珍獣、もとい神獣が首を大きく振って否定した。
「でも大丈夫! 多喜ちゃんの運命力なら、心強い猟兵さんと絶対に出会えるから!」
「運命力ってなんなのさ……? それってもしかしなくても、アタシは変身するのかい?」
「勿論さ!」
 サムズアップする神獣の顔を鷲掴みする数宮!
「お断りだよ! いやまぁ、なんでアタシを変身させるかも聞きたいけど、どうせ趣味だからとか当然のように答えられるだろうし聞かねぇよ」
「多喜ちゃん……君はまだ自分の運命の行く末を知らないから、そんな事を……モゴゴ」
「デタラメ言いやがって! ああ、もう、進むしかないねぇ!」
 神獣を投げ捨てた数宮は、相棒の宇宙カブに跨ってエンジンを唸らせはじめた。
「ま、待ってよ~多喜ちゃん!」
 その場から走り去ろうとする数宮の後部座席に、間一髪しがみついた神獣。
「あっ! 本当にしつこいやつだね……!」
 呆れながらも、構っている気力がもったいないと感じた彼女は、そのまま斜陽照らす迷路の路地に導かれてゆく。

 その頃、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)とケース・バイケース(それはそれ・f03188)……黒鯉型のブラックタールの即席コンビは、路地の暮明から飛び出しきた妖怪集団に襲われていた。
「カエレ! カエレ!」
「イェーガー、コロス!」
「セカイハ ホロブゾ!」
 口々に1人と1匹を威嚇する、カビたモチ目目連達。
 木常野は初めて見る妖怪の姿に、目を丸くして興味津々に見つめていた。
「妖怪! これが妖怪か……! 餅に目ん玉が沢山ある。骸魂って、カビた餅も食べてオブリビオンにするのか。逞しいな」
「タベラレルモノナラタベテミテヨ」
 モチ目目連達の1体が木常野を挑発してみせる。
 木常野は眉尻を下げて、これに首を横に振ってみせた。
「相手は餅……カビてなければ骸魂だけ倒して餅を食べようと思ったんだけど……。俺でも流石にカビた餅は手を出さないぞ?」
「「タベロ! タベロ! タベロ!」」
 モチ目目連達が怒りと嘆きの入り混じった声を次々に上げ始める。
 すると、妖怪たちは真っ黒にカビた餅を猟兵達へ投げ付けてきた!
「うわっ!」
 木常野がとっさに横へ飛び退き、大量の餅の投石をかわしてみせた。
 だが、黒鯉はそうはいかない。
 木常野が纏わせた水のベールから飛び出すと、なんと自らカビた毒餅をその身に受けたではないか!
「黒鯉さんっ!? まさか、俺を庇ってっ?」
(びちちちちっ! びちびちっ!)
 地面に落ちては餅に弾かれてゆく黒鯉!
 その動きがだんだんと鈍ってゆく。
(んぱ……んぱ……)
 口とエラに餅がつまり、カビ毒によって全身が侵されてゆく。
(……んぱ)
 ガクッとそのまま力なく頭と尾を地面に付けた黒鯉は、全く微動だにしなくなってしまった。
「……嘘だ、黒鯉さんが、死んだ……?」
 木常野は目の前で起きた出来事に、頭をガツンと金槌で殴られたかのような衝撃を受ける。
「そんな……俺は……守れなかったのか……?」
 その場でへたり込む木常野。
 と、そこへ宇宙カブで偶然通りがかった数宮と合流。
「お? 誰かと思えば都月じゃねぇか! って、敵はカビた餅かよ! どうするんだよコレ!」
「あ、多喜……黒鯉さんが……仲間の猟兵が、殺された……」
 涙を流しながら声を震わせる木常野に、数宮はただならぬ雰囲気を感じ取った。
「なんだって? 餅に殺されたとか笑えない話じゃないか! その殺された奴は何処さね!?」
「何言ってるんだ、ほら……そこに、鯉の猟兵が……」
 木常野が指差した先には……何も、なかった。
「鯉どころか、何もありゃしないね?」
「お、おかしいな? 本当なんだ! さっきまで俺は、黒鯉さんと一緒に迷宮を探索してて、それで急に妖怪に襲われて、黒鯉さんが死んで!」
「落ち着け、都月! 早く身構えな! 奴ら、仕掛けてくるよ!」
「「タベラレルモノナラタベテミテヨォォォッ!」」
 再び一斉にカビた毒餅を掲げる妖怪達。
 流石に2人は食べはしないが、固まった餅がぶつかるのは地味に痛い。
「一応アタシもたしなみ程度の『毒耐性』はあるけどさ! さすがにすすんで食いたくは……あ」
 数宮は、宇宙カブの後部座席にいる神獣の身体を掴んだ!
「わーっ! ちょっと多喜ちゃん! さっきから僕の扱いが雑ゥッ!」
「おい珍獣。喰え」
「何を!?」
「何をってあの餅をだよ。ほら、アイツら本当はカビる前に食われたかったんだろうし、喰って浄化してやれよ」
 その言葉に、神獣はハッと何かに気が付いた。
「多喜ちゃん……やっと魔法少女の使命に目覚めたんだね!」
「いや目覚めてねーよ! つーか、そういうアニメのお約束で、浄化も魔法少女のたしなみだろ? それをお供もできなくてどうするんだよ。ほら、喰った数だけ後で変身するから」
「本当に!? やっぱり使命に目覚めて……」
「グダグダ抜かしてないでさっさと喰ってこいオラアァッ!」
 神獣を掴んだ手を、数宮はオーバースロウで餅の妖怪達へ向けて投擲!
「コウゲキダゾ! ウチオトセ!」
「コイノツギハ、ウサギダ!」
「クワセロ! クワセロ!」
 毒餅弾幕の照準が、神獣へ一点集中!
 身の危険を感じた神獣。だが先程の数宮の言葉に勇気を振り絞る!
「僕だって、やれば出来るってことを多喜ちゃんに認めてもらうんだー!」
 一斉に飛来する毒餅弾幕を、神獣は高速移動しながら拳と蹴りで叩き割り、そのまま破片を口の中へ放り込んでゆく!
「あむ、んぐ、おえぇ、マズ……あぐ……っ、ごっくん、ボぅえエぇー!」
 黒カビ特有の異臭、そして変質した餅の味に嘔吐しながら、神獣は孤軍奮闘してみせる。
 なお、神獣が吐いた餅は虹の粒子になって、しっかりと浄化されているのでモザイク処理は施されておりません。
 キレイだね!
「……おーおー張り切ってら。でも、あの珍獣……実はとんでもなく強いのでは?」
 餅の弾幕を1個も後ろに通すことなく、空中で叩き割れる神獣のポテンシャルに驚く数宮。
 下手な猟兵よりも実力が上かもしれない。
 そのポテンシャルの高さの源を、神獣は心の底から叫んでみせた!
「うわあああああっ! 20代前半女性のロリ可愛系魔法少女が存在してもいいって、僕は心の底から思うんだああああっ!」
「やっぱり趣味じゃねーかァ! このクソ珍獣がーッ!!」
 数宮は宇宙株を踏み台にして跳躍すると、クソ珍獣へ向けてE-terminalライダーブーツで跳び蹴りを見舞った!
「アバーッ感電!?」
 クソ珍獣は数宮のサイキックエナジーから発生した電流キックで帯電しつつ、衝撃波を纏った小惑星めいて妖怪達の群れの中へ墜落!
「「ギャアアアアアアアアーッ!」」
 その電流の強さたるや、周囲の妖怪達を炭化させるほど凄まじかった。
「「サヨナラー!」」
 哀れ妖怪達は爆散!
 だが、黒焦げになりながらも戻ってくる変態神獣。
「……多喜ちゃん。僕、そういう愛情表現も嫌いじゃないよ? えへへ」
 その顔が、ほんのり緩んでいた。
 どうやら新たな扉を開いてしまったようだ。
 耐久力がオブリビオン以上の神獣に、数宮は目眩を覚えた。
「いやいやいやいや……って、熱っ!? なんだい、この熱は……」
 数宮が振り返った先に、怒り狂った木常野がエレメンタルロッドを掲げていた。
 杖先に浮かぶは、空に浮かぶ夕陽のごとく燃え盛る、巨大な狐火だ!
「餅は焼き過ぎれば硬くなって炭になる。食べられないなら燃やすだけだ」
 83個の狐火が徐々に融合してゆき、ひとつの巨大火球へと膨張しているのだ!
「許さないぞ……お前らはまとめて、火力最大で炭になるまで燃えてしまえ!」
 だが、最大火力に達するまでの間、木常野は無防備になってしまう。
 妖怪達はユーベルコードを阻止すべく、その身体を途端に柔らかくして蛇のようにくねりだす!
「ホゥラ、デキタテダヨ」
 熱々の出来たてお餅ボディとなった妖怪達が、自らをスリングショットの弦と球になって、木常野の胴体目掛けて飛び掛かってきた!
「避けろ、都月!」
 数宮の声に、木常野は首を縦に振ることはなかった。
「……高速多重詠唱、風の精霊様!」
 ゴゥッと唸りを上げて、木常野の背後から追い風が発生!
 伸び切った餅は暴風に耐えきれずに引きちぎられつつ飛ばされ、また真空波によって柔らかくなった餅ボディが容易く斬り刻まれてゆく!
 木常野は今や、歴戦の猟兵へと成長しており、襲われることもきちんと想定して策を講じていたのだ。
「……死ね、カビ餅野郎共!」
 怒りで口調が荒くなった木常野は、満を持して巨大火球を妖怪達の頭上へ叩き落とした。
 昇る炎柱は、さながら地獄絵図。
 内包された骸魂もろとも、カビた餅は一瞬で灰舞っていってしまった。
 僅かに生存したカビたモチ目目連達は、恐れをなして逃げ始めた。
「ニゲロニゲロ!」
「イェーガーツヨイ!」
「ナカマニシラセナキャ!」
 とっとこと路地の影に駆け出してゆく妖怪達。
 その足元が不意に、がばっ……と“口開いた”のだ。
 妖怪達は悲鳴を上げる間もなく、その奇妙な影の穴に落ちて、バリボリと『咀嚼』されてゆく。
 次第に黒い闇の水たまりが、斜陽照らす路地へ這い出てくる。
 ――バキボリ、ゴリガキ、コリコリコリ。
 ――ごっくん!
 妖怪達を飲み干した影が、次第に立体へと変化していった。
 その姿は、全長1.5mの、カビたモチ目目連の姿を象っていた。
「あ、あれが妖怪達の頭目ってところかい……?」
 身構えた数宮が、サイキックナックルを装着しようとする。
 だが、それを神獣が腕にしがみついて制止する。
「待って多喜ちゃん! あれはオブリビオンじゃないよ!」
「はぁ? じゃあ、一体なんなのさ?」
「……黒鯉、さん?」
 木常野がポツリと言葉を漏らす。
「俺には分かる。俺の野生の感が、あの妖怪が黒鯉さんだって言ってる気がする……」
 木常野は涙を拭うと、巨大なモチ目目連へ駆け寄る。
「……黒鯉さん、なのか?」
 その問いに、妖怪はコクリと頷いてみせた。
 木常野は、肺の空気を絞り出すかのごとく、安堵の溜息を吐いた。
「良かった……生きてたのか! でもなんで、その姿……?」
 木常野の問いに、妖怪は何も応えない。
 実はこの姿、ケースのユーベルコード『場合に寄り(ケースバイケース)』の効果で変身した姿だ。
 彼は死ぬと、自身のタール状の死骸の近くにある対象一体の姿、頭脳レベル、戦闘スタイルを完全にコピーして、復活することが出来るのだ。だが、これには呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける羽目になり、今回はカビ毒に侵されていた。
 ケースはしゃがむと、足元に手で文字を書いた。
『ケース・バイケース』
『ナマエ』
『オネガイ』
『コロシテ』
『モトニモドル』
「こいつは……もう一度殺されないと、ケースは元の姿に戻れないんじゃないか?」
「そんな事、俺には出来ないよ……」
 ぶんぶんっと首を全力で横に振る木常野。
「友だちになれたと、思ったのに。友だちを殺したくない!」
 木常野の訴えに、ケースは彼の肩を叩いた。
 そして、今度は数宮のほうへ向き直る。
「ア、アタシが殺れって? う~ん……」
 数宮は横目で木常野の悲しむ顔を見てしまうと、どうしても拳を振るうことが出来ない。そして、再び神獣と目が合った。
「……よし、喰え。さっきみたく頑張れ、珍獣」
「ああっ、そんなゴミみたいな目で僕を見ないで! 興奮する!!!」
「うるせぇ、早くこいつを喰らって浄化してやれ!」
「ちょっと、多喜ちゃん頭を持たないでってカビ臭っ! オエエエェェエッ!?」
 この後、しっかりと完食した神獣の口からは、浄化されたケースの新たな姿……可愛らしい真っ黒なヒヨコが吐き出されましたとさ。
 ピヨピヨ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
SPDで判定

えええー!また迷宮なの!!
わわっ、と思ったらカビの生えたお餅の妖怪がやってきた!
こいつらをやっつけたら先に進めるんだよね!

飛び回るには十分な広さの迷宮、背中の翅を羽ばたいて頭上からの「空中戦」でどんどんやっつけていくよ♪
飛んでくるカビた餅を「見切り」で回避してヒット&アウェイで攻撃だ!
【妖精の一刺し】でいっぱいある目玉を狙って突撃するぞー☆

それにしてもこんなにいっぱいのお餅、かびるまで誰が置いてたんだろう?もったいないね!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


林・水鏡
次も迷宮のようじゃが先ほどよりはましかの?
なんとなく招こうと言う気も感じるし…。

さてはてまずは目の前のこれじゃが。
うーむ…見事にカビとるのう。
昔ならちょっとカビておるくらいならそこだけ削って食べたりもしたんじゃが。
これは…さすがにむりじゃろ。
それになカビは見える形で現れるときにはもう内部に菌が蔓延しておる…つまり手遅れじゃの。
それになんじ、おぬしらこの期に乗じて世界の破壊をなどとやることがみみっちいのう。

UC【破魔の白剣】
そら、逃げられると思うてか?
餅は…【結界術】と【オーラ防御】でなんとかなるとええのう…。
ダメそうなら【式神使い】で折り紙の式神にかばってもらうか。


ニニニナ・ロイガー(サポート)
ど〜も~
要請を受けて参りました、UDC職員のニニニナとドビーちゃんっす。
よろしくっすよ〜

そんなわけで、どんな触手がご入用っすか?
長い触手に太い触手、幅広触手に細触手。
鋸歯つきのゴリゴリ削れる触手にヒトデみたいな手裏剣触手、
ドリル触手に粘着触手に電撃触手その他色々行けるっすよ。
あるいは溶解液を吐く触手とかご所望っすかね?
麻痺触手に毒触手に石化触手になんなら自白用の催眠触手とか…
後は耐熱耐冷耐衝撃触手に再生触手なんかもOKっす。

マニアックな所だと按摩触手に美肌ローション触手、電脳アクセス触手とかも便利っすね。
あ、触手本体は見えないようになってるので、
一般人が狂気にとか気にしないで大丈夫っすよ~。


高柳・源三郎(サポート)
旅芸人一座の座長、それが高柳源三郎じゃ!!(まだ零細なんじゃがな......)。
性格は酔いどれおやじじゃが旅芸人一座の座長なので本番(戦闘)では酔いが殆ど覚めて戦うことが出来るんじゃ。
武器である【不思議なたぬき人形「はな」】【暗殺用たぬき人形「たろう」】をメインに【名刀・護狸】はサブで使い、まるで踊りや人形劇をするかのう様にユーベルコードを使い戦うのじゃ。
情報収集は芸をして道行く人の足を止めて人達の噂話を聞けば集められると考えています。
口調は(わし、~殿、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)です。



 少し時間は遡る。
「えええー! また迷宮なの!! というか、ひとりどっか行っちゃった!?」
 ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)はびっくりして、夕焼けの空をあちこち飛び回ったが、さっきまで連れ添っていた猟兵の姿がない。
「次も迷宮のようじゃが、先ほどよりはましかの? なんとなく招こうという気も感じるし……。はぐれた彼奴は、また合流するじゃろうて」
 林・水鏡(少女白澤・f27963)は、楽観的に奥へと歩き始めた。
 目の前の斜陽が照らされている道を辿り、右へ左へとずいすいと。
「あ~、待ってよ! 水鏡、そっちはなんか嫌な感じがする!」
 ようやく追い付いたティエルが、向かう先の角……路地の影を指差した。
 そこからポコポコと飛び出すように、カビたモチ目目連達が猟兵達の行く手を阻む!
「わわっ、と思ったらカビの生えたお餅の妖怪がやってきた! こいつらをやっつけたら先に進めるんだよね!」
「どうやらそのようじゃな。さて、はてまずは目の前のこれじゃが」
 林はましまじと敵を眺めた。
「うーむ……見事にカビとるのう。昔ならちょっとカビておるくらいならそこだけ削って食べたりもしたんじゃが。これは……さすがにむりじゃろ」
「なんでこんなにいっぱいのお餅、かびるまで誰が置いてたんだろう? もったいないね!」
 ティエルの疑問に、林がすぐに答えた。
「それはじゃな、ティエル。この餅はおそらくじゃが……道祖神や神社仏閣に祀られていたものではなかろうか? あれらならば、カビるまで誰も手を付けん……まともな考えの持ち主ならば、じゃが」
 林の周りに、オリガミツルの式神が幾つも浮遊し始めた。
 そしてカビたモチ目目連達へ林はビシッと言い付けた。
「それにおぬしら、この期に乗じて世界の破壊をなどと、やることがみみっちいのう」
「ダマレ! ダマレ!」
「オマエカラモチヲ、ノドニツマラセテヤル!」
「デキタテオモチボディダヨ!」
 モチ目目連達が一斉に体を伸ばして、猟兵達へ襲い掛かってきた!
「ふん、所詮は餅じゃ。我の結界術とオーラ障壁を突破することなど出来ぬわ!」
 林の前を、赤いラインの入った淡く光る白い幽世蝶が羽ばたく。
 護符装束に妖力を通せば、彼女の目の前に、不可視の壁が出現!
 熱々のカビ餅が壁に遮られ、空中で餅が四方八方に飛び散っていった。
「すごいすごい! ボクも頑張っちゃうよ☆」
 第2の迷宮は、先程の迷宮と違い、飛び回るには十分な広さの迷宮だ。
「フェアリーお得意の空中戦! その抱えているカビたお餅をぶつけられるものならぶつけてみろー☆」
「ソンナニイウナラ、タベラレルモノナラタベテミテヨ!」
 煽り耐性のない妖怪達は、ティエルへ向かって空中へカビ餅を投げ付け始めた。
 しかし、流石にフェアリー、的が小さい上に素早い!
「当たらないよ~べろべろば~!」
「グヌヌ、コレナラドウダ!」
 更にカビ餅を投げ付ける妖怪達!
 そこへ、救援に駆け付けた猟兵達の不意打ちが撃ち込まれた。
「ど~も~。要請を受けて参りました、UDC職員のニニニナとドビーちゃんっす。早速失礼しま~す」
 ニニニナ・ロイガー(一般UDC職員・f17135)が自身の体の中に棲ませている見えざる触手こと、ソウルフレンドのドビーちゃんをけしかける。
「長い触手に太い触手、幅広触手に細触手。鋸歯つきのゴリゴリ削れる触手にヒトデみたいな手裏剣触手、ドリル触手に粘着触手に電撃触手その他色々行けるっすよ」
 ユーベルコード『見えざるモノ』で、ティエルへ投げ付けられたカビ餅をあっという間にはたき落とすドビーちゃん。ついでに鋸歯やドリルや極太などの多種多様な不可視の触手が、妖怪達を次々に破砕したり裁断してしまう。
「あ、触手本体は見えないようになってるので、一般人が狂気にとか気にしないで大丈夫っすよ~。怖くない怖くない」
「「ギャアアアアアアアア!」」
 ドビーちゃんがどんなに暴力的な触手形態を発揮しても、傍目から見たら勝手に妖怪達が自壊したり破裂しているようにしか見えないので、とっても健全です。
「わしも一仕事するかのう。どれ、酔い潰れるまで呑んで、ひと頑張りするかのう」
 来て早々に酒盛りを始めたのは、旅芸人一座『高柳一座』の座長、高柳・源三郎(零細旅芸人一座の酔いどれ座長・f15710)だ!
「くぅぅぅぅ~っ! 五臓六腑に染み渡るのう! んじゃ、高柳一座の『たぬき人形の舞』の演目、とくとご覧あれ~!」
 源三郎はたぬき人形の『はな』と『たろう』を指先で華麗に操り始めると、まるで生きているかのように踊り始める2体。
 だが、その愉快な踊りは、殺意を誤魔化すための仮の演目。
 出来たてのお餅になって伸びながら襲ってくる妖怪達を、容赦なくたぬき印の扇子の骨で叩き割り、そして広げて掻っ捌く!
「サポートの2人すご~い! ボク全力全開だよ☆ 突撃だーぁっ!」
 上空から風鳴りレイピアを構えた全速力での体当たりを敢行!
 妖怪の目を刺し貫いて再び急上昇の一撃離脱戦術だ!
「よいぞ、ティエル! そのまま奴らの視力を奪うのじゃ」
 林が妖力を練り上げ、腰に差していた天叢雲剣を抜き払う。
「そら、この白剣から逃げられると思うてか?」
 半径44m以内に440本の破魔の光を放つ白い剣が出現!
「これでとどめじゃ! 舞え、破魔の白剣!」
 440本の白剣は、幾何学模様を描き複雑に飛翔すると、射程内のカビたモチ目目連達を包囲して斬り刻み、たちまち浄化してしまった。
 ティエルが妖怪達の目を潰したお陰で、回避することが困難になっていたのだ。
「ふぅ、弱い妖怪共で助かったのう。ティエルのお陰で駆け出し猟兵の我でもとどめを刺せたのじゃ」
「水鏡カッコいい~☆ 救援に来てくれた2人もありがと……って、あれ?」
 ティエルがサポート猟兵にお礼を告げようと下りてくると、源三郎は酔い潰れてその場で熟睡してしまっていた。
「むにゃむにゃ~まだ飲めるぞ~ぐぅ……」
「ありゃりゃ、このおじさんはアタシが様子を見てるんで、おふたりは先に行っててくださいっす」
 ニニニナの言葉を信じたティエルと林は、そのまま斜陽に導かれて出口へと向かっていったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『飯綱多摩緒』

POW   :    飯綱の法
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【風】属性の【真空波】を、レベル×5mの直線上に放つ。
SPD   :    狐憑き
攻撃が命中した対象に【狐の霊】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【発狂状態に陥る精神干渉】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    飯綱使い
【かつて自身を使役した飯綱使いの幻影】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナギ・ヌドゥーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 迷宮をようやく脱出した猟兵達。
 そこには古ぼけた神社の境内が広がっていた。
「あ……やっと来てくれたんだね?」
 青毛の管狐の青年が、寂しそうな表情を浮かべながら、賽銭箱の上に座っていた。
「私は飯綱多摩緒……と言うらしい。骸魂に飲み込まれた際に、頭に浮かんだナマエなんだ。ねぇ、君達は、この世界をどう思う?」
 唐突な質問に、猟兵達は言葉が詰まる。

「私は、この世界を騙し続けたい。寂しいのは嫌、でも明確に踏み込んでこられるのも怖い……。だから、全てが曖昧な夕方の世界になってしまえばいいと思うんだ」

 君達も賛同してくれるか、という言葉に、猟兵達は何を思うのだろうか?
 何れにせよ、猟兵達は使命を忘れてはいない。
 彼に憑依した骸魂を破壊しなければ、カクリヨファンタズムは滅亡してしまう!
 故に、武器を取り、涙を流す飯綱多摩緒と戦わねばならないのだ!
ケース・バイケース
ぴぃ (1.5mのひよこは、てちてちと青年に近づきます。てちてち)

ぴよ (攻撃されれば受ける事になるでしょう。殺そうと思えば殺すことも容易いでしょう)

ぴょ ぴぅ (ひよこは無力な畜生。それ以上でも、以下でもなく)

ぴよぴよ (けれどもひよこも猟兵なので、寂しいとか悲しいとか、そういうのが無ければ良いなと思うのです)

ぴゃ (てちてち、ひよこは一生懸命近寄ります)

ぴよ

ぴよ

(もしもちゃんと近付けたらその時は)(ふかふかただ隣に寄り添って、いつもよりもずっと静かな、無力なりの応援を)


ティエル・ティエリエル
WIZで判定

えいっ!寂しいならもっときちんと寂しいって言わなきゃダメなんだよ!
それにそんなずっと曖昧なままだったら寂しいままなんだから!

そんな風に叱ったら飯綱使いの幻影が召喚されるけど、もしかしてあの人がいなくなったから寂しいのかな?
でも、そんなオブリビオンになったままじゃどうしようもないんだよ!
【お姫様ペネトレイト】で憑依した骸魂を狙って突撃するよ!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



 世界を滅ぼすもの――飯綱多摩緒は猟兵達へ問い掛ける。
 その問いに素早く反応したのは、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)であった。
「えいっ!」
 フェアリー特有の小さな身体で多摩緒の頭へ飛び込むと、ぺちんっと平手で彼の額を叩いた。
「もうっ! 寂しいならもっときちんと寂しいって言わなきゃダメなんだよ! それに、そんなずっと曖昧なままだったら寂しいままなんだから!」
「曖昧なままじゃ、駄目なのかな……?」
 ティエルの言葉に、不安そうな表情を浮かべる多摩緒。
 すぐにティエルは言葉を継ぐ。
「駄目に決まってるよっ! 誰かの顔が見えないまま側に居たって、それは不安で悲しくて……相手の顔を見て、笑いあったほうが楽しいよ!」
(ぴよ!)
 ティエルの後ろでヒヨコが鳴いた。
 ひよこ……に、しては巨大なナニカが、ずんぐりむっくりと佇んでいた。
 ケース・バイケース(それはそれ・f03188)、今回は全長1.5mの真っ黒なヒヨコの姿になっている。
 その姿は、タールの身体とは思えないほどフッカフカのモッフモフである。
「ほら! ヒヨコさんも同意してくれてるよ☆」
「そうなの、かな……? 顔が見えたほうが、寂しくない……? うッ!?」
 ティエルに説得され掛かっていた多摩緒の様子が急変する。
 彼の背後に、突然、何者かの影が迫り出すように出現した。
『――ッ!』
 うめき声のような、男とも女とも判別付かない声で影が叫ぶ。
「ああ……あるじ、さま……?」
 多摩緒の意識がプツリと途絶えると、急にティエルへひっかき攻撃を放ってきた!
「わわっ? どうしちゃったのっ!?」
 空中で八の字を描いて緊急回避したティエル。
 多摩緒を操る影を注視すると、その正体を推測する。
「あるじさま、って言ってたよね? つまり、あれは多摩緒を使役していた、かつてのご主人様の幻影なのかな? その人がいなくなったから寂しいのかな?」
『アアアアアア……ッ!』
 悶ながら両腕をブンブン振り回して、ティエルを捕まえようとする多摩緒。その様子は、嘆き、悲しみ、苦しんでいるようにも窺える。
「でも、そんなオブリビオンになったままじゃどうしようもないんだよ! 待ってて! 今、憑依している骸魂をボクがやっつけてあげるね!」
 ティエルの覚悟が、自身のお褒め様としての自覚を呼び起こし、全身に高貴なオーラを纏わせる!
「この風鳴りのレイピアで、多摩緒の骸魂を貫いちゃうよ! 突撃~☆」
 妖精姫が一瞬、上空へ舞い上がると、レイピアの剣先を突き付けながら急降下!
 そこへ振り下ろされる多摩緒の腕の一振り!
「そんな攻撃なんて効かないもんね♪」
 お姫様オーラは、下賤な者の攻撃など弾き返してしまうのだ!
「え~いっ! 突っ込め~っ!」
 レイピアが多摩緒の腹のド真ん中に突き刺さると、衝撃で多摩緒は後ろへ転がってしまった。
「うわ、今、確かに骸魂っぽいナニカに直撃したのに、硬~いっ!」
 痛烈な一撃であったが、完全に骸魂を破壊するには至らなかった。
 腹から大量の血を流して苦しむ多摩緒の元へ、巨大ヒヨコのケースがぽてぽてと歩み寄ってゆく。
(ぴぃぴぃ、ぴょぴょ)
 ヒヨコは攻撃手段を有しない。フッカフカの体を揺らしながら、今だ幻影の支配下にある多摩緒へてちてち歩いてゆく。
 もし、このままケースが攻撃されれば傷を負うだろうし、殺そうと思えば容易く殺せるだろう。
(ぴょ?)
 ぴよこは無力な雛。特殊な能力を有しているわけではない。
 ほんのちょっと大きいだけの、ただのヒヨコなのだ。
 でも、ケースはヒヨコで鯉であると同時に、猟兵なのだ。
 他者の悲しみや寂しさがなくなるように、最善の行動を採るのだ。
(ぴょ、ぴぅ……)
 傷付いた多摩緒を包み込むように、ケースはモフモフな体毛を彼に押し付ける。
(ぴゃっ!)
 一生懸命近寄るヒヨコ。
 そこへ、首を狩るべく振り上げられた多摩緒の右腕が!
「……駄目っ!」
 だが、多摩緒は左腕で、自分の腕を掴み上げた。
「あるじ……さま……この子に……敵意は、ありません。だから……っ!」
 多摩緒は己の自我でユーベルコードを強制解除すると、ケースのヒヨコボディを優しく抱き締めた。
「……心配してくれたんだね。ありがとう……嗚呼、とっても温かいや……」
(ぴょぴょ!)
 ケースは暫く多摩緒の腕の中で微動出せずに抱擁を許していた。
 実は、こっそりケースのユーベルコード『無力の応援』を発動させていた。
 その効果は『癒やし』と『治療』だ。
 多摩緒の心の穴、そして腹に空いた穴を見事に塞いだことにより、骸魂と肉体の結び付きを弱めることに成功した。
 あとは、他の猟兵達に任せれば、きっと完全に骸魂を破壊できるに違いない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

林・水鏡
一人は寂しいが踏み込まれるのも怖い…わがままじゃのぅ。
夕方は曖昧か…そうじゃな魔と人の境が曖昧になる逢魔が時じゃ。
世界を騙し続けば世界は滅ぶ。
それは避けたいしそれが終わっても我はお主に寂しい思いはさせんよ。

UC【陰陽五行の理】
ちと詠唱が長いから誰かしばらく多摩緒の気を引いてくれんかのぅ(ちらちら
援護してくれるものには折り紙の式神をつげるぞ!

寂しいならおぬしが暇な時にでも我に会いに来ておくれ。
年寄りの頼みじゃ聞いてくれんかの?


木常野・都月
貴方は、難しい事を考えるんだな。

1人は寂しい、でも自分の縄張りには入ってきて欲しくない……そんな感じか。

そんな曖昧な状態の方が、俺はよっぽど不安だと思うけど。
いつ天敵が侵入してきたか、分からないからな。

まぁ……どんな理由があるにせよ、貴方と合体してる骸魂を壊さないと、生を望む他の多くの命…世界が滅んじゃうからな。
倒させてもらいたい。

UC【精霊の矢】を氷の精霊様の助力で使用したい。

敵の攻撃は、光の精霊様の[属性攻撃、高速詠唱]の[カウンター]で対処したい。
影は光で決して仕舞えばいい。

無理そうなら[オーラ防御]で凌ぎたい。


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

夕方、黄昏の世界、か。
ま、気持ちは分からなくもねぇよ。
全てがハッキリ白黒ついて、明暗くっきり分かれてさ。
バシッとしてるばかりが世の中じゃない、
その方が心地いい奴も多いだろ。

でもな、それだけで世界を埋め尽くすのは頂けねぇよ。
あんまりぼんやりしすぎると、自分ってモノがなくなっちまう。
境目は、ちょっとはくっきりした方が良いのさ。

そう言いつつも、この黄昏時の『闇に紛れる』ように
『迷彩』を施したカブを纏って『ダッシュ』して、
逃げ回り加速しながら『衝撃波』で牽制する。
ぼんやりした夕方の世界を逆用し、こちらを狙わせない。

……最後に蹴り抜く技の名は、【黄昏砕く脚】って言うんだぜ?



 骸玉の影響が弱まった多摩緒へ、3人の猟兵達が語り掛ける。
 林・水鏡(少女白澤・f27963)は肩を竦めると、呆れた口調で諭し始めた。
「一人は寂しいが踏み込まれるのも怖い……なんともわがままじゃのぅ。して、夕方は曖昧か……そうじゃな、魔と人の境が曖昧になる逢魔が時じゃ。じゃが、世界を騙し続けばいずれ世界は滅ぶ」
 彼女は多摩緒へ手を差し伸べる。
「それは避けたいし、それは阻止させてもらうぞ? そして、それが終わっても我はお主に寂しい思いはさせんよ」
「本当に……可能なのかな……?」
 多摩緒は喜びと不安が入り混じった表情で、林の言葉に耳を傾けていた。
 次に木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が不思議そうに尋ねた。
「貴方は、難しい事を考えるんだな。寂しいのは嫌、でも明確に踏み込んでこられるのも怖いって……。それって、独りぼっちは嫌うけど、自分の縄張りには入ってきて欲しくない……そんな感じか?」
 野生の狐と化生の狐が言葉をかわした時、木常野の天然っぷりが浮き彫りになってしまった。
 多摩緒が如何に回答するべきか躊躇っていると、木常野は彼自身の言葉で噛み砕いて伝えようと試みた。
「森の中では孤独かもしれないけど、それはキチンと縄張りの棲み分けが出来ているからだ。だから実際は孤独じゃない。棲み分けや境界が曖昧な状態の方が、俺はよっぽど不安だと思うけど。いつ天敵が侵入してきたか、分からないからな」
「……ごめんなさい。私は管狐で、野山で狩りをしたことはないんだ」
「そうなのか……同じ狐なら分かってくれると思ったんだけどな……」
 眉尻を下げる多摩緒に、木常野もちょっと落胆してしまう。
 その横で、腕を組んで考え込んでいるのは数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)だ。奇妙な珍獣はさよならバイバイした彼女は、今、とてつもなくシリアスモードである。
「夕方、黄昏の世界、か。ま、気持ちは分からなくもねぇよ。全てがハッキリ白黒ついて、明暗くっきり分かれてさ。バシッとしてるばかりが世の中じゃない、その方が心地いい奴も多いだろ」
 数宮は多摩緒へ理解を示しつつも、二の句で持論を述べ始める。
「でもな、それだけで世界を埋め尽くすのは頂けねぇよ。あんまりぼんやりしすぎると、自分ってモノがなくなっちまう。逆もまた然りさ。自分以外の存在そのものが曖昧になっちまったら、それこそ世界から取り残されちまうだろ? アンタのやってることは、そういうことだ。境目は、ちょっとはくっきりしてた方が良いのさ」
「まぁ……どんな理由があるにせよ、貴方と合体してる骸魂を壊さないと、生を望む他の多くの命……世界が滅んじゃうからな」
 木常野はエレメンタルロッドをくるくる回転させた後、その杖先を多摩緒へ突き付けた。
「今の貴方は世界を滅ぼすもの、だ。だから、俺は猟兵として、貴方を倒したい」
「そうじゃな。悪さをする骸魂は、寂しがり屋の管狐から取り除かねばならぬのぅ」
 赤と白の折り鶴が林の目の前で壁を形成する。
「さあ、もう御託は十分だろ。アンタの骸魂、砕かせてもらうよ?」
 数宮の全身からサイキック放電が迸れば、それが戦闘開始の合図となった。
 多摩緒の背後に、再びかつて彼を使役した飯綱使いの幻影が召喚される!
「駄目だ……止めてよ。これ以上、私の心に踏み込んでこないで……!」
 多摩緒はその身を幻影に委ねると、ありえない身体能力を発揮し始めた。
 林へ向かって跳び掛かる多摩緒!
 それを林は折り鶴をミサイルのように射出して勢いを削ごうと試みる。
 しかし、尽く折り鶴は憑依状態の多摩緒に叩き落されてしまう。
「危ない! 光の精霊様!」
 木常野はすかさず、光の精霊を林と多摩緒の間に召喚させると、フラッシュバンめいて閃光を放った。
「ぐるるるるるるるっ!?」
 突然の白光に、自我すら幻影に委ねた多摩緒は怯んで、その場に釘付けとなってしまう。
 だが、林も多少影響が出ていた。
「うぐッ! これ! 眩しいではないか! 直前で目を閉じなかったら、我も目を焼かれておったじゃろうが!」
「緊急事態だったんだ、許してほしい、水鏡」
 幻影に対して強い光を当てれば、掻き消されると思っての行動だったが、木常野の思惑は外れてしまった。
 ただ、憑依状態で防御をかなぐり捨てたまま殴ってくる相手に対して、閃光弾はかなりの効果を上げていたので、これはこれで結果オーライである。
「というか、なんで避けなかったんだ?」
 木常野は林にもっともな疑問を投げかけた。
 すると、彼女は苦笑いしながら白鐸図を広げていた。
「我のユーベルコード、ちと詠唱が長いから、誰かしばらく多摩緒の気を引いてくれんかのぅ」
「そういう事か。判った。俺に任せてくれ」
「二つ返事で引き受けてくれるとは、心強いのぅ。ほれ、折り紙の式神を付けてやろう。身代わりや弾除け程度にはなるじゃろうて」
「ありがとう、水鏡。それじゃあ、氷の精霊様。力を貸してください」
 徐々に視力が回復しつつある多摩緒へ向けて、木常野は415本の氷属性の魔法矢を生成。容赦なく多摩緒の両足を狙い、更にその場に縫い付ける。
「氷属性の矢は、射抜いた物をたちまち凍て付かせる。すごく痛いだろうが、貴方の血を少し凍らせて貰ったぞ」
 両足から吹き出た多摩緒の血液が大地と彼を繋ぐ霜柱となり、更に降り注いだ氷属性の魔法矢が格子状に降り注いで、即席の檻を形成したのだ。
 これで多摩緒が抜け出すまで、かなりの時間を稼げるだろう。
 林もこれに乗じて、詠唱を淡々と述べ上げてゆく。
 と、檻に収監された多摩緒へ、突如、サイキック電撃が放たれた!
「ちょっと痺れてな? もうすぐ悪い骸魂を壊せるから、我慢しな!」
 夕陽の逆光を利用しながらカブで走り回り、自身の気配と視認性を低下させた数宮の追撃が直撃!
 サイキック電撃が低周波めいた衝撃波となって、直撃するたびに多摩緒の全身の筋肉がビクビクと痙攣する!
「どうだい? 曖昧な世界じゃ、何処からアタシの攻撃が来るか解らないだろう?」
「うぐ……っ! この……っ!」
 多摩緒は視力を振り絞り、その片腕に狐の霊を憑依させる。
 もしもこの腕が数宮に命中すれば、憑依した狐は彼女の精神を蝕み続けるだろう。
 だが、それをむざむざ食らうほど、数宮は抜けてなどいなかった。
「おっと、怖いねぇ? 距離を取らさせてもらおうか?」
 宇宙カブの機動力は、新世界でも健在であった。
 そして、遂に詠唱を終えた林のユーベルコードが炸裂する!
「万物は陰陽五行に属すものなり。そして五行とは相乗相克のあるものなり。己が相克が力を受けよ!」
 抜き払った天叢雲剣の鋒から放たれるは、多摩緒の相克属性の光線。
 それが真っ直ぐに解き放たれると、多摩緒の胸元を容易く撃ち抜いた!
「ぐは……っ!?」
 口から血を吐き、氷の牢の中で苦悶する多摩緒。
 そこへ、紅く輝く太陽を背に、数宮が宇宙カブで突撃してくる!
「多摩緒! 見ていな? エンジン、サイキック、全開……超・変・身!」
 数宮と宇宙カブが合体すると、そのまま彼女は限界まで加速!
「……最後に蹴り抜く技の名は、【黄昏砕く脚(クリムゾン・トラッシュ・キック)】って言うんだぜ!?」
 天高く跳躍し、夕陽の中から熱と電撃を纏った超高速の飛び蹴りが多摩緒の心臓へ降り注ぐ!
 多摩緒はその蹴りを甘んじて受け止める!
「……さよなら、ありがとう……」
 吹き飛ばされた多摩緒の肉体が爆発!
 着地した数宮が見たのは、黒い人魂が管狐から飛び出し、粉々に砕け散る光景だった。

 夕陽が沈み、辺りは夜になった。
 世界を滅ぼすものが倒されたため、時間が正しく進み出したのだ。
「寂しいならおぬしが暇な時にでも我に会いに来ておくれ。年寄りの頼みじゃ、聞いてくれんかの?」
 林の言葉に、管狐は喜んで頷く。
「ありがとうございます。その時は、お世話になりますね。では……」
 頭を下げる管狐は、いそいそと棲家へ戻っていった。
「これにて一件落着だな。……そういや、多喜。前も共闘したのって、夕陽のオブリビオンだったな?」
 木常野は数宮へふと尋ねれば、数宮も思い出したようでニンマリと笑みを浮かべた。
「そういやそうだったねぇ? 何の因果か知らないけど、今回も助けられたよ」
 数宮と木常野は拳をぶつけて互いの健闘を称え合う。
「なんじゃ? その愉快な仕草は! 我も混ぜるのじゃ!」
 そこへ林が混じれば、わちゃわちゃとした日常が戻ってくる。
 かくして、カクリヨファンタズムの世界滅亡の危機は、ひとまずは去ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月03日


挿絵イラスト