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幽世宴々舞

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●カクリヨファンタズム
「さあさ歌え歌え!」
「踊れやいざ踊れ!」
「騒ぎまた騒ごう!」
「「「だって今日は、お祭りだもの!」」」
 どんちゃんぴーひょろ、どんがどんが。
 祭り囃子が鳴り響く。そこかしこで踊るのは、提灯代わりの鬼火たち。
 妖怪たちは浮かれた様子で歌い踊り、酒を呑んではつまみに舌鼓を打っていた。
 実に楽しげな風景だ。誰も彼もが陽気に赤ら顔で笑っている。

 しかし。
「ようし、それじゃあここからが本番だ! みんな、準備はいいね!?」
 キョンシーと思しき妖怪少女が祭りの中心にある大きな舞台に上がると、
 円陣を組んだ妖怪たちは手に手に杯を掲げてご機嫌だ。誰も彼もが舞い踊る。
 ……しかしいささか様子がおかしい。熱気が高すぎないだろうか?
「みんなで踊ろう! 死ぬまで踊ろう! さあさ飲め飲め、踊れや踊れ!」
 キョンシー少女は不穏なことを言う。妖怪たちはなおも熱気を高めていく。
 中には舞踏というより武闘を始め、ほとんど乱闘状態になるものも少なくない。
「さあさ飲め飲め、歌えや踊れ! 死んで骸になるまで騒ごう! だって今日は――」
「「「楽しい楽しい、お祭りだもの!!」」」
 狂った祭りは、どこまでもどこまでも広がっていく。

●グリモアベース
「……なんかすごい既視感あるわね、この風景」
 グリモア猟兵、白鐘・耀は予知の内容を語り終えると、うーんと腕を組んだ。
 なるほどたしかに、陽気さと騒ぎっぷりはキマイラフューチャーのそれによく似る。
 しかし、と耀は頭を振り、嘆息しつつも言った。
「あっちはまだふざけ半分だったし規模も抑制できる範囲だったんだけど、
 この世界のトラブルはあっという間に世界全体に広がる勢いなのよね。
 てなわけで、あんたたちには例の新しい世界に向かってもらうことになるわ」
 カクリヨファンタズム。
 それが、新たに発見された奇妙な世界の名前である。

 UDCアースに隣接したこの世界には、忘れ去られた妖怪たちが棲む。
 陽気な彼らは猟兵たちを歓迎する友好的な存在なのだ――が。
「この世界にもオブリビオンは現れてるわ。ただしちょっと毛色が違うのよね。
 "骸魂"って言って、連中は妖怪を飲み込むことでオブリビオン化しちゃうのよ。
 だからこの世界の住人と戦うことになるわけだけど、もちろん助けることは可能なの」
 骸魂をうまく撃破出来れば、飲み込まれた妖怪たちは助かるのだという。
 そして今回オブリビオンが引き起こしたのは、一言で言うと"祭り"であった。
「呑んで食べて歌って踊って、まあやってることはよくある乱痴気騒ぎみたいね。
 ただこの祭りは妖怪たちが全部オブリビオン化するか、死ぬまで続くことになるわ」
 ゆえに、首魁であるオブリビオンを倒さねばならない。
 耀の背後、グリモアに映し出されたのはキョンシーの姿をした少女である。
「こいつが騒ぎの張本人、「一反木綿」の骸魂に飲み込まれた「キョンシー」だから、
 名前をつけるとしたら「キョンシー木綿」ってとこね。わかりやすいでしょ?」
 見た目はコミカルなオブリビオンだが、実力はかなりのものだ。
 屍人の耐久力と布めいた機敏さ。そこに拳法の動きが加われば一騎当千である。
「祭り会場にいる妖怪たちは、オブリビオンの妖気で祭り騒ぎをし続けてるわ。
 あんたたちも巻き込まれるでしょうけど、いっそ乗ってやるのも手かもね」
 耀曰く、祭り会場では「騒ぎに混じる」ことで妖気の妨害を掻い潜れるという。
 好き勝手飲み食いするなり、踊りに付き合うなり、はたまた音楽でも奏でるなり。
 いかにせよ「祭り騒ぎに付き合う」ような行動を取れば、有利を得られるだろう。
「まだオブリビオン化してない妖怪をそれとなく救出してあげれば、
 そのあとの戦いでも有利に働くかもね。で、呑まれちゃったのは気兼ねなく倒して」
 けろっとした顔で言う。それで割となんとかなるらしい。
「見つけたばかりの世界に崩壊されても困るし、とりあえず気合い入れて行きましょ。
 ……あ、言っとくけど、未成年はお酒呑んじゃだめよ? いくら祭りだからってね」
 耀はそう言うと、何の変哲もない火打ち石をカッカッと鳴らした。
 それが、転移の合図となった。


唐揚げ
 綿あめです。さっそくですが新世界一発目のシナリオです。
 今回は軽めのノリでコミカルにいってみようと思います!

●第一章の概要
 現場となる祭り会場では、妖怪たちが飲めや歌えやの大騒ぎをしています。
 酒を勧められたり踊りに付き合わされたりひたすらもてなされたりするので、
 うまくいなすなり逆に酔い潰すなり、いろんな方法で突破してください。
 ここで出てくる妖怪たちはまだオブリビオン化していないため、
 妖気の影響から助け出すようなプレイングであれば、ボーナスを得られます。

●プレイング受付期間
 頂いた量によりますが、早ければ2020/06/20の夕方には締め切るかもしれません。
 採用はできるだけ多くの方をご案内できればと思っています! お気軽にどうぞ!
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第1章 冒険 『エンドレスおもてなしパーティ』

POW   :    並べられた大量のご馳走を食べ尽くし、宴会を強制的に終わらせる

SPD   :    宴席の主人や他のお客の隙を突き、全速力で逃げ出す

WIZ   :    宴席の主人にあの手この手で酒を飲ませ、酔い潰れさせておいとまする

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

化野・花鵺
「改造せぇらぁ…いい…尊いぃ…ハッ!」
狐、せぇふく萌えに忙しくて今回も話半分だった

「なんかすっごく馴染むぅ。ずっとここに居たいかもぉ」
狐、キョトキョト周囲を見回した

「ねぇねぇ、これなんのお祭りぃ?カヤもまじっていぃ?」
「ほぉん。それじゃカヤも眷属喚んで食べつくすぅ」
「管狐の召喚」し管狐に周囲の食物を食べ尽くさせる
「何かお料理足りない感じぃ?あっちからもらってくるぅ」
あんまり飲み食いせず料理や酒を余らせている相手を探す
そこの料理と酒を強奪する振りをして相手を外に連れ出す
「お腹一杯ならこれあっちに運んでもいぃ?」
「まだ足りなそうだから手伝ってぇ」

「馴染めなくて出たかったんでしょぉ?話聞きたいなぁ」



●狐娘かく語りき
「はぁ~……っ」
 化野・花鵺は、なにやら感慨深げな様子でうっとりと吐息を漏らしていた。
(一応)天狐の生まれとして、このカクリヨに思うところがあるのか。
 はたまた、現世を追われてなお楽しく暮らす妖怪たちに羨望でも抱いたか。
 いや、あるいはそんな彼らを脅かすオブリビオンへの怒りを燃やしたのか……。
「おや狐のお嬢さん、どうしたんだい? そんな顔をして!」
「ひょっとしてお酒が好きだった? ならたくさんあるよ!」
「だって今日はお祭りだもの! さあさ呑もう歌おう騒ごう!」
 さっそく妖怪たちはまわりに集まり、やんややんやと騒ぎ始めた。
 そんな騒ぎにも気付いていないようで、花鵺はにこにこしながら呟いた。
「改造せぇらぁ……いい……尊いぃ……」
「「「は?」」」
 妖怪たちは目を点にして、素っ頓狂な声を出した。
 花鵺がうっとりしていた理由――それは別に妖怪がどうとか、
 お酒が好きとか、なんだったらこの状況にこれっぽっちも関係がなかった。
 あのグリモア猟兵の着ていた制服、そこにエモを見出していたのである!
 妖怪たちがぽかんとするのも無理はない。せぇふく萌えなど予測できるだろうか。
 しかも厄介なことに、そのせいで花鵺は話半分に聞いていたのだ……!
「え? 何ここぉ、なんかすっごく馴染むぅ」
「「「そこから!?」」」
 という具合に、ここがどこかもよく解っていなかったらしい。
 きょときょとと周りを見渡した花鵺、ほっこり笑顔でこう言った。
「カヤ、ずっとここにいたいかもぉ」
 のほほんとした一言であったという。
 あ、あの、オブリビオン退治は……!?

 ともあれ、花鵺が絡むより先に妖怪たちのほうが放っておかない。
 彼らは遠縁とも言うべき妖狐の登場に、いっそう沸き立ち騒ぎ出した。
「ここはお祭り会場だよ! さあ、君も呑んで食べて騒ごうよ!」
「お祭りぃ? なんのお祭りなのぉ?」
「お祭りはお祭りさ!」
「ほぉん……それじゃカヤも眷属(みんな)と一緒に食べ尽くすぅ」
 ぽぽぽんっ! と現れたのは、七十匹以上の管狐たちであった。
 そして周りに用意されたごちそうを、七十五匹の狐たちは食べまくる。
 食べまくる食べまくる……妖怪たちが惚れ惚れするぐらいの食べっぷりだ。
「あれ? 君は食べないの?」
「ん~……カヤはいいかもぉ? カヤ、かわりにお手伝いするよぉ。
 お料理足りない感じでしょお? カヤ、あっちからもらってくるぅ」
 などと言って、ごちそうを余らせたよそから拝借してくる……と、思わせて。
 まだ正気を保っているような妖怪を見つけると、そっと声をかけ外へと連れ出した。
「ねえねえ、お腹いっぱいならこれあっちに運んでもいぃ?」
「え? あ、うん……い、いいよ」
「どうしたのぉ? お祭りなのにあんまり楽しくなさそうだねぇ」
「うーん……なんでだろう、遊んでたらいけない気がして……」
「そ~なのぉ? だったらカヤのこと手伝ってぇ。お話も聞きたいなぁ」
「うん、わかった!」
 幼い女の子の姿をした妖怪はこくりと頷いて、花鵺に付き従った。
 管狐が騒ぎを起こしてくれているおかげで、見咎められることもない。
 どうやら花鵺も、重要なところはきちんと聞いていたらしい。
 少なくともこの女の子妖怪は、骸魂に囚われることはないだろう。
「あ~、なんだかカヤもお腹すいてきちゃったぁ」
 それはそれとして、軽くごちそうをぱくつく狐であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジン・エラー
【甘くない】
ほォ〜〜〜〜!!!
ここがカクリヨ……あァ〜〜なンつったか?オーガズ………なァ〜〜ンだよエリシャその顔は
キレてンのかァ?ウッヒャララァ!!

おォ〜〜〜〜〜〜お前ら気前がい〜〜ィねェ〜〜〜〜〜〜!!!
ほらエリシャァ飲み放題だぜ?
…ってお前はまだ飲めないンだったかッ!?ヒッヒッハァ〜〜〜!!ハッ!!!
そりゃァ〜〜〜〜残念無念!!折角だからオレァ高ェ〜〜〜のでも貰っちィ〜〜〜〜〜まおォ〜〜〜〜!!

舞踊といやァ〜〜この女よ!コイツのは綺麗ェ〜〜〜だぜ
なァ、魅せてやれよ

あ?オレもォ〜〜??
…………フッヒャヒグビャ!!いいぜェ〜〜〜〜!!!
踊ろうや、エリシャ


千桜・エリシャ
【甘くない】
い、いつにも増してテンションが高くてうるさい…!
ちょっとジンさん?もう酔っていらっしゃるの?
おーがz…?げ、下品な言葉は禁止よ!

もう馴染んでいらっしゃるの?
まあ、私もこの世界の住人の方々には親近感を覚えますけれども
未成年にお酒を勧めるなんて悪い大人ですこと
…って、あなたそのお酒…お神酒じゃありませんこと?
もう…なんでもありですわね…

いきなり振ってきますわね…
まあこういう場で芸を披露する心得はありますから
では舞をひとさし、ご照覧あれ
ジンさん?何を呆けていらっしゃるの?
あなたも踊るのよ
それっと舞台に引き上げて
花時雨を開いて閉じてくるくるり

ふふ、なんだかいい気分
私も酔ってしまったかしら?



●酔っぱらいと女将の話
「ウッヒャララァ!! グヒャヘホヒャ、ヘハッヒヒヒホホォ~~~!!」
「……」
「ヒャヒャヒャ! オッホッホ、ウヒッホヒグヒヒヒヒャハッ!!」
「…………」
「ゲッヒッヒッヒッ! ゴハハハハ、ブヘハハハハハハ!!」
「………………い、いつにも増して、笑い声がうるさくて下品ですわ……!!」
 頑張って耐えていた千桜・エリシャも、ついに根負けして頭を抱えた。
 そんな彼女の隣で、ジン・エラーは酒をかっくらいながらご機嫌である。
 ご機嫌すぎる。なので、エリシャはもう開幕早々ぐったりしていた。
「おォ? どうしたエリシャァ、せっかく酒飲み放題なのにテンサゲかァ!?」
「誰のせいだと思ってますの!! というか私、これでもまだ未成年ですわ!」
「あァ~~~~そうだったかァ~~~~ヒヒッハァ~~~ハッ!!」
 明らかに愉しんでいる。こいつ、分かった上で言ってきたのだ。
 エリシャの額にぴくっと怒りマークが浮かび上がるが、女将は深呼吸。
 いけないいけない、ここで怒ったりしたらいよいよペースに乗せられてしまう。
 ビークールビークール、そのへんはどこぞの盗人で学習済みだ……!
「いやァ~~~しッかし、いい世界だよなァ~~~ここはよォ~~~~!!
 あァ~~なンつったか? カクリヨ……カクリヨ、オーガ」
「げ、下品な言葉は禁止よっっっ!!!!!」
 しかし エリシャは ツッコミをがまんできなかった!
「おォ~~~? なンだァ下品って。オレが何言うと思ったンだァ~~~?
 カクリヨオーガニックって言おうとしたンだけどなァ~~? ウヒャヒャ!」
「ぜ、絶対嘘ですわ!! だいたいなんですの幽世有機栽培って!」
「イヤホラァ、まわり自然溢れてるしよォ~~~」
「ファ・ン・タ・ズ・ム、ですわ!!!!」
 顔を赤くしながらばしばし叩くエリシャに、ゲラゲラ笑うジン。
 あきらかにわかってやっている。女将はいっそ斬ろうかと一瞬思うのだった。

 とまあそんなわけで、ジンは完全に祭りの騒ぎを楽しんでいた。
 次々運ばれてくる酒を次から次へと飲み干し、つまみをバンバン食いまくる。
 妖怪たちが逆に呆れ返るほどの、ブルドーザーじみた食べっぷり飲みっぷりだ。
「もう完全に馴染んでいらっしゃいますわね、調子がいい人だこと……はぁ」
 言いつつ、エリシャもエリシャでてきぱき空き容器を片付けていた。
 悲しいかな、こういうところで旅館経営者のくせが出てしまうのである。
「まあ、私もこの世界の住人の方々には親近感を憶えますけれども……。
 だからってあなた、少々ハメを外しすぎではありませんこと? しかもそれ」
「あァ? コレがどうしたァ~?」
「……それ、お神酒じゃないですの! しかもかなり上等な!!」
 ジンは赤い杯になみなみ注がれた液体を見下ろし、けらけらと笑った。
 そしてエリシャが言ったことなど忘れたかのように、一息に飲み干してしまう。
「ちょ……あなた、それいくらするかわかっていますの!?」
「ウルセェ~~~~知らねェ~~~~カクリヨファンタ!!
 ズム!!」
「完全に酔っ払ってますわ……」
 本当にこれから戦えるのか? 少々不安になったエリシャである。
 しかしジンのおかげで、妖怪たちは完全にふたりを受け入れていた。
 この調子であれば、酔い潰れた妖怪たちを避難させるのは難しくないだろう。
「それにしてもこっちの鬼のお嬢さんは綺麗だねぇ!」
「ああ、とっても綺麗な人だや! きっと華麗に舞うのだろうねぇ!」
「踊ってみせておくれよ鬼の方、ぜひとも見てみたい!」
 すると赤ら顔の妖怪たちは、今度はエリシャに矛先を向けだした。
 やんややんやと喝采をあげ、やれ踊れはよ踊れと囃し立て始めたのだ。
「カカカ! そうだなァ~~~舞踊ならこの女よ、コイツのは綺麗だぜェ~~~」
「ちょ、ちょっとジンさん、いきなりそんな乗らなくても……!」
「なンだァ? もともとそういう話だろォが」
 杯を片手にジンはへらへら笑い、わざとらしく片眉を釣り上げてみせる。
「それによォ、オレはウソは言ってるつもりはないぜェ~~~? ホヒャヒャ!」
「……まったくもう。そんな風に女をおだてるなんて、悪い大人ですのね」
 エリシャもエリシャで、こうも褒めそやされては悪い気がしない。
 年頃にそぐわぬ艶やかな笑顔で媚びを振りまくと、手頃な舞台の上へひらり。
「では舞をひとさし、ご照覧あれ」
「「「いいぞいいぞー!!」」」
「いいぞいいぞォ……って、あ? なンでオレも舞台に上がってンだァ?」
「何を呆けていらっしゃるの、あなたも踊るのよっ!」
 こつん、と肘で小突かれて、きょとんとしていたジンはけらけら笑い出した。
「オレもォ~~~~?? フッヒャヒグビャ!! いいぜェ~~~~!!」
 けたけた狂ったように笑ったかと思えば、ぴたりと止まって慇懃に一礼。
 さっきまでの熱狂はどこへやら、醒めた瞳で乙女を見つめる。
「踊ろうや、エリシャ――せいぜい魅せてやろうぜ、オレらでよォ」
「ええ、当然ですわ」
 差し出された手に手を重ね、ふたりはくるりゆらりと舞い始めた。
 花時雨が開かれ閉じるたび、息を合わせた聖者の光が舞台を照らす。
 月明かりの下、胡蝶と桜花が舞い踊るさまはいっそ幽玄ですらあった。
 あれだけ騒いでいた妖怪たちも、言葉を失い見惚れるほどだ。
「ふふ――夜桜のなか光に照らされ舞い踊る。悪くないですわね、こういうの」
「お前にゃ一番似合いだろォ? こういうときが、一番綺麗だもンなァ」
「あら、当然のことを言ってもサービスはしませんわよ?」
「ゲヒャヒャ! いらねェよ鬼の子、代わりにもう少し付き合えや」
 くるり、ゆらり。
 夜桜を纏いながら、穢れた聖者と血塗れの乙女は舞い踊る。
 くるり、ゆらり。
 それはまさしくこの世ならぬ者の舞、幽世の神楽のようだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・絡み大歓迎】

おっ?
なんか不思議な世界だねぇ。
サムライエンパイア……とも違う、
UDCアースともちょっと似てる?
まぁ祭りをやってるんなら混ぜてもらおうか。
これでも賑やかなのは大好きなんでね!

こういう時こそ『コミュ力』が大事だろ!
給仕姿に『変装』し、妖怪たちの間を振る舞いながら歩き回る。
勿論御返杯も受けるよ?だって祭りだしねぇ!

そうして祭り会場の中を『情報収集』し、
妖怪たちを振る舞い料理で妖気が少なめの方へ『おびき寄せ』る。
たまーに【縁手繰る掌】で酔っ払いが食べてる最中の料理を
ちょろまかして、笑いを誘おうじゃないのさ!

祭りは一度は終わらせなきゃな。
そして「また」祭りを開けばいいのさ。


黒城・魅夜
あやかしの世界ですか……
ダンピールという半魔たる私にはむしろ馴染み深い、とも思えそうですね

お祭り騒ぎならば芸でも披露しましょうか
「早業」と「残像」でトランプを操り奇術でもいかがでしょう
時には「投擲」と「スナイパー」でカードを投げて
木の葉や花を撃ち抜いても見せましょう
この芸は「誘惑」、これによって皆さんの意識をこちらへ集中させ
オブリビオンの妖気の影響から逃れさせるのが狙いです

私自身もまた妖気に飲まれないようにしましょう
まあ、狂気や呪詛への「耐性」には自信がありますけれどね
そしてUCも使用します
ふふ、さあ運命を弄びなさい我がカードたちよ
因果を改変して「妖気に侵されないという結果」を作りだすのです


李・桃花
わぁいお祭り、桃花食べ歩きだいすき!

要は宴会をする気を無くせばいいのよね。
何やらお祭りに巻き込みたいみたいだし、ご馳走やお酒を楽しみながらぬるぬる逃げ回って疲れさせましょう。
【青燐功】を放ちつつ残像出しながらぬるぬる動いて捕まりそうで捕まらない感じを出して相手が疲れて諦めたら次に行こうかしらね。
祭り以外の事で疲れたら正気に戻るんじゃないかしら。
楽しんでるところを正気に戻すのもかわいそうな気もするけどね。

それにしても美味しいご馳走をタダで食べられるんだから最高よね……
もっと普通に楽しみたかったものだわ。

(連携・アドリブ歓迎)


御狐・稲見之守
ふふっヒトでも妖怪でも神さまでも、みな酒は好きなもんよナ。

ま、羽目を外し過ぎるのはよろしくないが……ともあれ、さっさと酔い潰してしまおう。あ、ちょっといーとこ見てみたいあそれ。

……あっこら、ワシに酒をすすめるでない。この姿では酒を呑んではいかんのじゃ! いいのかーッ! ワシに酒を呑ませたら最後ッ、このリプレイは何処か上の方からダメよされて骸の海の藻屑と消えてしまうゾ!!!!11

あーもうめんどっちぃ。[UC夢の中へ] お前ら全員寝ろ!!!!



●呑みすぎにはご用心
「……しっかし。ここはなんとも不思議な世界だねえ」
 給仕姿に扮した数宮・多喜は、煌々と輝く満月を見上げてひとりごちた。
「サムライエンパイアと似てるけどちょっと違う、UDCアースとも……。
 なんてえんだろうねえ、懐かしいというかなんというか……妙なところだよ」
 などと言いながら、多喜はてきぱきと配膳をしていた。
 周りの妖怪たちは、明らかに猟兵らしい多喜の呟きを気にする様子もない。
 なにせ誰も彼もが、この場に充満した妖気に酔いしれていたからだ。
「まあ祭り騒ぎなら喜んで混ぜてもらおうかねぇ」
「おお、そこな女中よ。こっちに生肉ひとつ欲しいんじゃナ」
「あいよ、おまちど――って、御狐様ぁ!?」
 ごくごく自然に食事を運んだ多喜は、そこに居た顔なじみに腰を抜かした。
 対するは、くつくつといたずらっぽい笑みを浮かべる童女。
 何食わぬ顔で妖怪たちに紛れ込んでいた、御狐・稲見之守だ。
「なんじゃなんじゃ、鳩がガトリングガンを食らったような顔をしおってからに。
 ワシがおるのがそんなに不思議かのう、ワシこれでも和風キャラなんじゃけどナ」
「いやキャラとか言うなよキャラとか……ていうかむしろ馴染みすぎだって。
 まったく、おかげで驚いちまったよ。……いやホントに自然すぎないかい!?」
 よもや、超一流のサイキッカー兼ツッコミ役の多喜が目くらまされるとは。
 それほど、稲見之守の存在はカクリヨファンタズムに馴染んでいた。
 なんだったらむしろ、最初からこの世界の住人でしたが? みたいな顔である。
 そういうこと、よくありますよね。不思議な話ですよね。
「まあまあ、今日の多喜殿は女中じゃゾ? ほれ、配膳はよう」
「こき使ってくれるねえ。……えーと、お酒もいるかい? お神酒とか?」
 多喜に言われると、生肉(ようは生ハムである)をかじっていた稲見之守は、
 ふむんとわざとらしく顎に手をやり、思案してみせた。
「いやバリバリ呑みたいんじゃけど、ワシこの姿だと酒はちょっとナ」
「え? でもどこぞの賢者サマは同じような姿でバリバリ呑んでたよ?」
「えっ?」
「えっ?」
 そういうことに……いやならない。公序良俗を守る稲見之守は見上げたものだ。
 まあ別に妖怪たちがそういう公序良俗に関して規則正しかったとして、
 そもそも猟兵は見た目で違和感を持たれることがないので問題ないのだが。
 とりあえず、稲見之守の妙な常識人ぶりがここで炸裂した形である。
「それにほら、ワシ呑みすぎると何してしまうかわからんし」
「それはわかる」
 多喜、大いに頷く。なにか思い当たるフシがあるのだろうか。
「じゃが、ワシの代わりにあやつらにどんどん呑ませたいところじゃナ。
 そんでほれ、情報を集めたりうまいこと外にほっぽりだせば完璧じゃゾ」
「アタシもご返杯は頂きたいしねぇ。どら、ちょっくら声をかけて――」
 稲見之守はあくまで事件解決の(と他人をからかって遊ぶ)ために、
 対する多喜は同じく事件解決……と、ご相伴に預かるつもりで、
 そこらへんにいる妖怪たちをへべれけにして酔い潰そうとした、その時!

「はいはーい、どいたどいたー!」
「んぉ?」
「なんだぁ?」
 突然聞こえてきた新たな女の声と、どたどたという騒がしい音に、
 生ハムをかじっていた稲見之守と、多喜は揃って顔を向けた。
 すると見よ、なにやら土煙……いや違う、あれは妖怪たちの怒涛が起こす砂埃だ!
 なにやら数十体もの妖怪たちが、こちらめがけて突進してくる!
 はて、よく見ればその先頭、というか追われているあの唐装の女性は……?
「ほらほら、そう簡単に捕まらないわよ! こっこまでおいで~っと!
 あ、みんなごめんね、ちょっと通るわよ~! 食べ物とかどかしたどかしたぁ!」
 軽気功を巧みに操りぬるぬると120fpsぐらいの滑らかさで走るのは、
 李・桃花であった。どうやら、背後の妖怪集団は彼女を追っているらしい。
「ちょちょちょ、こっち来るよ!?」
「まったく騒がしいことこの上ないの! ワシらも逃げるんじゃゾ!」
「えっ!? あの、酔い潰れさせる作戦は!?」
「それはそれ、これはこれ! こっちのほうが楽しそうじゃからナ!」
 てな具合に、なし崩しに桃花と並んで追われることになる稲見之守と多喜。
 三人は並走しながら顔を見合わせる。桃花ははてなと首を傾げた。
「えっ? ふたりとも何やってるの? これ鬼ごっこじゃないのよ?」
「こっちに集団けしかけといてよく言うねぇ!? 成り行きだよ成り行き!」
「ふーん、まあでもそのほうがいろんな妖怪たちを惹きつけられそうね!」
 桃花は意気揚々と言うと、突然スピードを落としてはまた加速する。
 この幻惑的な軽気功が、うまく捕まりそうで捕まらない感じを出しているのだ。
「フムン、なるほど。こうやって妖怪たちの注目をうまいこと惹きつけ、
 疲れたところで正気に戻す……と、だいたいそんなところと見たのじゃ」
「当たり! ほら、実際効果あるでしょ? どんどんついてきてるよ!」
「ありすぎるような気がするんだけどねぇ……」
 どどどどどどど。
 妖怪の群れは塊なんとかよろしく膨れ上がり、百を越えていた。
 こうなってくると、稲見之守も多喜も桃花についていくので精一杯だ。
「さ、さすがにここで相棒(宇宙カブ)を乗り回すわけにゃいかないし……」
「うむ、ワシも正直こういうスタミナ系のキャラじゃないから疲れてきたのう……」
 ぜえぜえへとへと。段々とふたりのスピードが落ち始める。
 すると行く手を阻むのは、妖気に魅入られた妖怪たちであった!
「なんだい、騒がしいね! まあまあご一献、呑んでいきなよ!」
「こんな走り疲れた状態じゃ酒は嬉しくないよ!?」
「っていうかワシ呑まぬから! 呑んだら青少年のなんかが危険じゃから!!」
「酒に任せて何するつもりなのよ!?」
「しないために酒断っておるんじゃけど!? 風評被害反対じゃー!!」
 猟兵同士でも誤解が誤解を呼び、なにやら喧々諤々となっていた。
 絶対に酒を呑ませようとする妖怪VS絶対に追いつこうとする妖怪VS猟兵。
 三つ巴の戦い(?)はどんどんすったもんだで荒れ狂う……ああ、ALAS!
「あ、いかん。この先行き止まりじゃ」
「「えっ!?」」
 稲見之守の言ったとおり、彼女らが曲がった先は鳥居が壁めいて積み重なっていた。
 ……袋小路! ドドドドドド、と妖怪たちが迫ってくる!
「「「呑んで歌って騒ごうぜ~!!」」」
「とか言ってあんなことやこんなことするんじゃろ、春画本みたいに!!」
「言ってる場合かい御狐様!?」
「この展開は予想してなかったわね、こうなったらいっそ迎撃するしか!?」
 身構える桃花、なにやらいやんいやんと体をくねらせる稲見之守。ツッコミを入れる多喜。
 何もかもグダグダのまま、彼女らは妖怪たちにもみくちゃにされてしまうのか!?

 ――しかし、そうはならなかった。
 妖怪たちと三人の間に、シュピンッ! となにかが突き刺さったからだ。
「「「な、なんだぁ!?」」」
 妖怪たちは手裏剣めいたなにかにたたらを踏み、勢い急ブレーキした。
 地面に突き刺さっているもの……はて、それはトランプ? のようだ。
「老いも若いも男も女も、ヒトもあやかしも関係なしの乱痴気騒ぎ。
 それはそれで悪くはありませんが……ハメの外しすぎはいけませんよ?」
 しゃなり、と降り立ったのは、黒髪黒目の漆黒の乙女であった。
 乙女……黒城・魅夜は背中に回した三人をちらりと振り返り、目線で語りかける。
 ここは自分に任せておけ、というわけだ。三人は頷き、従った。
「追いかけっこもいいでしょう。ですがせっかくの祭りは出し物が一番。
 ひとつ私が芸を披露いたします、ご満足いただけたらどうぞ拍手喝采を」
 道化師めいたきざな仕草で一礼すると、魅夜は新たなトランプを取り出した。
 さながらマジシャンよろしくシャッフルしては、カードが消える奇術をはじめ、
 妖怪たちの間を縫う精密なカード投擲といった、神業じみた曲芸までこなしてみせる。
 まるでトランプの一枚一枚が意思を持って付き従っているかのように、
 彼女の周囲を飛び交い、手元から消えたかと思えば妖怪の懐から現れ、
 はたまた擲てば木の葉や花びらを一切傷つけずにはらり落としてみせる。
「「「おお~!!」」」
 妖怪たちは完全に奇術の虜となって、ぱちぱちと拍手をしていた。
 そして魅夜はまた、ちらりと背後を――稲見之守のほうを見る。
「んむ。ええもん見たんじゃ、そのままいい夢にまどろむとよい。
 ……さすがにウスイホンみたいなことされるの、ワシ勘弁じゃしの!」
「その一言は余計じゃないかしらね……」
 桃花のツッコミもそこそこに、稲見之守の指先から溢れた幻術の霧。
 それは妖怪たちを包み込み、あっという間に眠りの壁の彼方へといざなった。
 百を超える集団が折り重なってぐうぐう眠り、あたりは蛙ならぬいびきの大合唱だ。
「やれやれ、ようやくおねんねかい。じゃ、あとはアタシが請け負おうかね」
「よろしくお願いいたします、多喜さん」
 多喜は魅夜にサムズ・アップし、笑いながらこう言った。
「それにしても、さっきの出し物なかなかだったよ? アタシも見惚れちまった。
 あんなもんをタダで見れるだなんて、祭りってのはやっぱいいねえ!」
 と。
「……手前味噌だったのですが、ご満足いただけたならよかったです」
 そう答える魅夜の口元は、心なしかわずかに笑んでいるようにも見えた。
 ともあれ多喜はサイキックを使い、妖怪たちをまるごとテレポート。
 向かう先は祭り会場の外だ。少なくとも彼らは大丈夫だろう。
「いやはや、軽くからかおうと思ったらとんでもない騒ぎになってしまったナ」
「けど、そのおかげでたくさんの妖怪たちを救出出来たみたいよね!」
「ええ、そうですね。ああ、それともうひとる」
 魅夜はマジシャンめいた手付きでトランプを取り出すと、それを表返してみせた。
 バッドジョーカー――死神の絵柄を持つ、特製のカードである。
「私たちも妖気に呑まれないよう、皆さんにもまじないをかけておきましょう。
 これから骸魂と戦うにあたって、妖気に魅入られたら大変ですからね」
「助かるわね! まあ私、精神も鍛え上げてるんだけどね!」
「むしろワシ妖気出す側じゃけど、心強い護りじゃナ」
 かくして宴の本番への準備は整った。
 ……が、桃花は少々物足りない様子である。彼女はこう言った。
「ところでせっかくだし……ちょっとぐらいごちそうとか食べてかない!?」
「はあ、まあ構いませんが……」
「色気より食い気じゃの。ワシも生ハム食い足りんから賛成じゃよ」
「って、戻ってきた途端にまた給仕の仕事かい? やれやれ忙しいねえ」
 テレポートして帰還した多喜は、花より団子の様子に苦笑した。
 祭りはまだまだ続く。戦いが始まる少しの合間に、舌鼓を打つのも悪くはないだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

鍋島・小百合子
WIZ重視

…よくわからぬ世界に来てしもうたな幽世の世界と言うべきかえ?
されど宴は現世と同じなれば

「これより執り行うは皆の者に捧ぐ舞ぞ。お酌されながら存分に堪能してたもれ」
UC「侍女招集陣」で呼び出した78名の幼侍女にお酌等で妖怪のおもてなし(ついでに妖気の影響から遠ざけるよう誘導も試みさせる)を命じ、わらわはその妖怪達に現世に伝えてきた舞を披露
妖怪達の好みなど知らぬが、人の物が珍しいのであれば観る価値はあるぞ?
わらわが執り行うは人の世のありふれた生気あふるる舞(ダンス、パフォーマンス、誘惑併用)
妖怪達のお眼鏡に叶う全身全霊を込めさせていただきましょう
よければ一緒に踊らぬかえ?こうするのじゃぞ?



●幽世にて
 カクリヨファンタズム。
 新たに発見されたこの世界は、既知の世界と共通点を多く持つ。
 妖怪たちがもともと棲んでいたUDCアースとの位置関係はもちろん、
 鍋島・小百合子の出身である、サムライエンパイアとの共通項が主なものだ。
 なにせサムライエンパイアには、妖怪と呼ばれる存在はほとんどいない。
 いたとしてもそれらは、オブリビオンと化している。
 つまりこの世界にいるような、善良なものどもとは違うのだ。
「なんともよくわからぬ世界に来てしもうたな……ふうむ」
 小百合子は思案しつつ、乱痴気騒ぎに浮かれる周囲を見渡した。
 妖怪たちは誰も彼も、楽しそうに歌い呑み、踊り食べている。
 ……見ようによっては、というか普通に考えれば楽しげな光景だ。
 だがあたりに充満する妖気は、これがただならぬ出来事であることを知らせていた。
「皆のもの!」
 しばしの思案ののち、小百合子は大声で言った。
 乱痴気騒ぎに水を打ったような静寂が訪れる。小百合子は周りを見渡した。
「これより執り行うは、皆の者に捧ぐ舞ぞ。まれびとからの贈り物といったところじゃ。
 どうか皆のもの、お酌をされながら存分に堪能してたもれ。しからば、いざ――」
 ふわりと薙刀を取り出した小百合子の背後に現れる、七十と八名の侍女たち。
 幼い童女たちは、そのあどけない顔立ちに似つかわしからぬ気立てのよさで、
 何事かと集まった妖怪たちに酌をしてやり、あるいは食べ物を勧める。
 はたして小百合子の舞は、サムライエンパイアの古式ゆかしい剣舞であった。
「ははは、こりゃあいい!」
「なんだか懐かしいものを見れた」
「そうら、こっちにも酒をついでくれ!」
 陽気な妖怪たちは手を叩いて拍子を打ち、やんややんやと騒ぎ立てる。
 小百合子の生気あふるる舞は、妖怪たちにとっては珍しいもののようだ。
「うーん、なんだかオイラも踊りたくなってきたぞう」
 と、ある妖怪が言えば、そちらの方を見て艶やかに微笑み、
「ならば一緒に踊らぬかえ? 他のものも、ほれ、よしなに」
 鶴の一声とはまさにこのこと、次々と妖怪たちが舞台に上がる。
 あっという間に大人数の舞が始まり、陽気さが妖気を吹き飛ばしてしまった。
 舞が終わる頃には、妖怪たちはきょとんとしていることだろう。
 なにせ、どんな酒気より妖気よりも楽しげでうずずしてしまう舞が、
 彼らのほだされた心を取り戻し、余韻をもたらしてくれたのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

三咲・織愛
ヨハンくん(f05367)と

わぁー!すごーい!楽しそうですよ、ヨハンくん!
ほらほら、いつもみたいに不貞腐れてないで
一緒に飲んで踊って楽しみましょー!(ぐいぐい)

お酒はもちろん飲みませんってば!
でもなんだかふわふわ楽しい気持ちになってきちゃいますね、えへへ
……楽しいーっ!!(拳を天に突きあげる)
ねぇねぇ、ヨハンくん
せっかくですから踊りましょうよ~!
んもうっ!全然ノってくれないんですから!
それじゃあ、近くにいた妖怪さんと一緒に踊りますね

男性パートみたいなことしてみたかったんですよねー
エスコートしちゃいます
ほら、くるくるーっと回って……じゃーんっ!
……あら?大丈夫ですか?回し過ぎちゃったでしょうか


ヨハン・グレイン
織愛さん/f01585 と

……あなたはいつでも楽しそうですけど
俺がこういう場は得意ではないとそろそろ気付いてもらってもいいですかね
別に不貞腐れている訳ではな……
聞いてませんね、知っていましたよ
はぁーーー……(くそでか溜息吐きながら付き合います)

酒は飲まないように(いの一番に言う)
あなたはいつでもふわふわしてると思いますけど
……いや、急に大声出さないでもらえますか
踊る訳がない。一人で行ってきてくださいよ

はぁ……、別のやつと踊ってるのを遠目で見るのも
これはこれでなんとも複雑な気分というか……、
まるで拷問のような回しっぷりだな
やはり踊りに行かなくてよかった
妖怪には同情しておこう



●火を見るよりも明らかな結末
「お酒は呑まないでくださいね」
「えっ」
「お酒は。絶対に、呑まないでくださいね」
 ヨハン・グレインの目は据わっていた。
 さしもの三咲・織愛ですら、ちょっと気圧されるぐらいの"圧"があった。
 そもそも織愛は19歳。品行方正な猟兵としてはお酒は厳禁である。
 しかしヨハンがここまで言い含めるのは、明らかに別の何かがありそうだ。
「わ、わかりました! 呑みません、もちろん呑みませんってば!
 ……というか、私そんなにお酒呑みそうに見えます……? うーん」
 わかっていない。織愛はわかっているようで、やっぱりわかってない。
 そもそもどうしてこんなに言い含められるのか、なぜなのか。
 自分って案外不良っぽく見えるのかしら? と悩んでいる有様である。
「…………あなたはいつでも楽しそうですよね」
「? はい! 楽しいですよ!(ニコニコ)」
「俺はそういうところを危険視しているんですよ?」
「? どういうことでしょう……???」
 ヨハンは重く重くため息をついて額に手を当てた。
 わかっていない。迂遠な言い回しでは、やっぱり通用しないのか。
「だからですね、そもそも俺はこういう場は得意では」
「あ! わかりました!!」
「……どう考えてもわかっていなさそうですが、まあ聞きましょうか」
「さてはヨハンくん、いつもみたいにふてくされてますね?」
 思わず古典的なズッコケを披露してしまうヨハン。
「期待はしてませんでしたが何をどうしたらそう解釈おい手を離せ」
「まあまあ、一緒に食べて踊って楽しみましょー!」
「だから手を離してくださいやめろぐいぐい引きずるなやめろ!!!!」
 今回も意思疎通は失敗した。しかしこれが織愛の平常運転なのだ……!

 そして五分後。
「たのしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
「はああああ……」
 案の定、織愛は祭り騒ぎの空気に呑まれて場酔いしていた。
 わかっていた。わかっていたはずなのだ。もう何度繰り返したかこの流れ。
 ヨハンは頭を抱えつつ、騒ぎ立てる妖怪たちに紛れてうまく距離を取る。
「ヨハンくん、せっかくですし踊りませんかって遠すぎませんかー!?」
「誰が踊りますか……ひとりでやるか、妖怪を見繕ってくださいよ」
 ヨハンも馬鹿ではない。ここからどうなるかもうわかりきっているからだ。
 しかし織愛の恐ろしさを知らない妖怪たちは、この陽気な娘を暖かく迎え入れた。
 とても楽しそうだ。ヨハンは心のなかで彼らに黙祷を捧げた。
「元気なお嬢さんだねえ、じゃあおいらと踊ろうよ!」
「はい、踊りましょう! そーれ、ぐるぐるぐるー!」
「グワーッ!? ちょ、ま、速度早すぎグワーーーーーッ!?」
「あ、まだまだスピードアップします? わかりました1 ぐるぐるぐるー!!」
「アババババババーッ!?」
 なんだありゃ、拷問かなんかか? と、傍から見ているヨハンは思った。
 織愛は笑顔で回し続ける。カッパの妖怪は完全にグロッキー状態だった。
「ふふふふ、とっても楽しいですね……って、あら? 大丈夫ですか?」
「ア、アバ……アババババ……」
 泡を吹いて倒れるカッパの有様に、織愛は首を傾げた。
「うーん、回しすぎちゃったんでしょうか、まだ最初だったのに……」
(……もしかすると俺は、どんでもないところへとんでもない人を通してしまったのかもしれない)
 ヒューマノイドタイフーンじみた織愛の暴れっぷりに、ヨハンは頭を抱えた。
 しかし、ああ、もはや後の祭りである! 祭りだけに! 祭りだけに!!
 織愛が起こす災害じみたハプニングは、これから続くのだ……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫

宴だね。皆楽しそうだけど、こんなに騒いでは心臓が止まってしまいそうだよ
……妖怪だけどさ
櫻宵!!お酒はダメなんだからな(酒瓶を遠ざける)
ダメだよ、この酔龍にお酒をあげたら!酷い目にあうからね
……八岐大蛇じゃ余計飲んだら駄目なんじゃない?
首をとられてしまうよ!
びしびし尾鰭ビンタをする

もう!ヨルもダメだからね…
またお腹吸われるぞ

歌をおねだりされると弱いのを知ってて言ってるな?
でもいいよ。歌ってあげる
歌って盛り上げて、妖気を撃退するんだから!
歌う、『ヨルの歌』
たくさんのヨル達と歌って踊って盛り上げ―あー!!飲んでるー!
ばかやろ!
ぴゅんと櫻宵の元に駆けつけ、ひょえっ
な、胴上げ?!
後で覚えとけよ!


誘名・櫻宵
🌸櫻沫

宴よー!
私、宴ってだぁい好き
うふふふ!お酒の……みません
飲みませんったら!リル!いやだわ
そんなおっかない顔して
私は八岐大蛇よ?竜神の血もはいってるっぽいのよ?もう第二の故郷みたいなものだわ!
だからちょっとくらい飲んだって飲まないわぁ
いたっ尾鰭ビンタやめて!

ヨル……っ
ヨルまでそんな
もう騙されませんみたいな顔して
傷つくわ

ほらリル歌って盛り上げるの
大丈夫
お酒飲まないから
歌の肴にこっそり飲もうなんてしないから
リルの歌が聴きたいわ
なんておねだり


騒ぐ妖怪達を『睡華』の桜で眠らせて
リルが歌ってヨルが踊ってる隙に
近くの妖怪からお酒もらって一気飲み
うふふいい気分!
可愛い人魚を胴上げしちゃう

あぁ楽しいわ!



●コーラを呑んだらゲップが出るぐらい確実な結末
「お酒はダメだからね」
「えっ、でも宴」
「ダメ、だから、ね」
「はい……」
 リル・ルリは開幕から目が据わっていた。ものすげえ"圧"が出ていた。
 そんなわけで、ウキウキしていた誘名・櫻宵もしおしおと正座している。
 こんな楽しいお祭り騒ぎでお酒が飲めないなんて、生殺しもいいところである。
 しかし、ああ、特に櫻宵を可哀想だと感じる必要はない!
 多分だけどそんな人も(櫻宵を知ってれば)そうそういないだろう。
 だって……これまでのやらかしは、だいたい櫻宵の自業自得だから……!
 毎度毎度押し倒されたりキスされたり後片付けやらされたり、
 そんな目にあっていれば、いくら惚れた弱みでも限度というものがある。
 そんなわけで、リルはもう完全に櫻宵を睨みながら何度も何度も言い含めた。
「いい? 絶対に呑んだらダメだからね。絶対だよ櫻」
「……ねえリル、それひょっとしてフリだったりしない???」
「フリ? よくわかんないけど、ダメったらダメだよ! 絶対だからね!!」
「やっぱりそれフリよねリル! えっ分かってなくて言ってるの!?」
「わけわかんないこと言ってないで、だめったら、だーめ!!」
 長い間水槽の中に居た人魚には、ギャグ的なあれこれも馴染みが薄い。
 いやでも本当にフリだったら? むしろ呑まないと失礼なのでは?
 櫻宵はそんなことを考え始めた。都合のいい曲解とも言えなくもない。
「リルもいやだわ、私がそんなに何度も同じ過ちを繰り返すように」
「繰り返してるから言ってるんだけど????」
「はい……」
「ほんとに分かってるの? ほんと!?(ビビビビビビン)」
「ああっ! 尾びれビンタはやめ、あっ、いたっ」
 どこぞの妖怪漫画風にビビビビビンとビンタされる櫻宵であった。
 なお、ふたりそんなイチャイチャ(?)を見つめるヨルの顔は、
 櫻宵に対する警戒でどこまでも醒めきっていたという。

 そして、五分後。
「きゃー! リルー!! こっち向いてー!!」
 櫻宵は、お手製のリル推しうちわを手に大盛りあがりしていた。
 きっかけはというと、櫻宵の「リル、歌って盛り上げて」という無茶振りだ。
 まあ歌を披露するぶんにはリルは構わない、というかむしろ得意分野なのだが、
 とにかく面白い一発芸をしろ並の唐突さに言われたのである。
 仕方ないと舞台にあがったリルだが、なんやかや歌ってると盛り上がってきた。
「歌って盛り上げて、妖気なんて撃退してあげるよ! さあヨル、おいで!」
 ぺちぺちよたよたと舞台に上がるヨル……ん? ヨル、たち!?
 ヨルが分身している! どうやらなにげにユーベルコードを使ったようだ。
 何体もの子ペンギンたちが、組体操したり曲芸したり一緒に歌ったり。
 実に騒がしく楽しい景色。見守っていた妖怪たちも杯片手に大盛りあがりだ!
「「「イエー!!!」」」
「ふふっ、みんな盛り上がってくれてるみたいだね。どう櫻、これで文句は」
「イエー!! 最高よリル、それにヨルも! いい肴だわー!」
「って呑んでるーーーーーー!?(ガビーン)」
 ウカツ! ここまでが櫻宵の策だったのだ!
 リルはおねだりされるととても弱い……歌となればなおさらのこと。
 バックダンサーとしてヨルまで駆り出されれば、もはや止める者はいない!
 そんなわけで、盛り上がってる妖怪たちからご一献拝借したのである。
 いやもうご一献どころか酒瓶ラッパ飲みしてた。ダメだこいつ!
「こ、このばかやろ! ダメだよ櫻あーっ!?」
「「「わーっしょい! わーっしょい!!」」」
 完全に酔っ払った櫻宵を先頭に、なぜか胴上げを始める妖怪たち。
「ぴゃああああ!? ちょっと下ろして! ヨル! ヨルー!!」
 あなや、ヨルは被害を喰らわないようにこっそりとその場をあとにしていた。
「「「わーっしょい! わーっしょい!!」」」
「あ、あとで、お、憶えてろよ~~~~~!!」
 リルの声は、遠からず悲鳴に代わったという……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
やァ、つながったなァ新たな界路。一度繋がりゃそっちの道具も使えるようになっから便利だ。なんでサクッと消えてもらっちゃ困ンだわ。妖怪も命だしな。いつもどォりやるさ。
権能《毒》で催眠と幻覚を振りまきながら抜ける。こちとら毒の扱いはプロだぜ。悪ィな、俺酒とか飲めねえんだわ。あと妖怪でもじかに触ったら腐っからさ。死にゃしねえだろうが、痛ぇんはやだろ。俺も意味なく痛がらせたかねえし。
や、それにしたっていい空気だねえ。こォいう薄暗い陽気さは大好きさ。明るくったって暗くったって好きだけどな。ひひ。



●光と影
 楽しい楽しい馬鹿騒ぎ。
 しかしその裏に妖気あり。これは尋常の祭りなどではない。
 楽しい楽しい馬鹿騒ぎには、骸魂の邪悪な野望が隠れているのだ。

 ……しかし、もうひとつ。
 光が強くなればなるほど、その影も色濃くなるもの。
 生命が強く活力を得れば得るほど、死もまた色濃くなる。
 こういう場に、朱酉・逢真という不釣り合いな男がいる理由は十分だった。
 なにせ彼は神だ。それも、とびきり凶々しい神である。
 妖怪であろうと腐らせてしまうほどに、その力はすさまじい。
 だから彼は、騒ぎに水を打つように静かに歩き、眠りをもたらした。
 あれだけ楽しく歌い騒いでいた連中が、糸が切れたようにぱたんと寝落ちる。
 ともすれば、心停止でも起こして死んでしまったかのように。
 宴もたけなわ、妖怪たちは眠りこける。物寂しく、前触れもなく。
 死とはそういうものだ。それが、逢真がもたらすものなのである。
「ひひひ、誰も彼も景気よく騒いでるこった。ま、悪いことじゃねえなァ。
 けど残念、宴は此処までだよ。祭りはいつか終わるモンだ、静かに寝ときな」
 逢真の声音は、眠りにつく子供をあやすように優しげなものだった。
 たとえ忘れ去られかけている妖怪たちとて――否、逆に"だからこそ"か、
 あらゆる生命を尊び、愛で、そして許す神の眼差しは、どこまでも優しい。
「俺もあんまり痛ぇ思いも怖ぇ思いもさせたくねェからな、静かに寝とけ。
 ……や、それにしたっていい空気だ。薄暗い陽気さっつーのかねェ、ひひ」
 カクリヨファンタズム。忘れられた者たちの理想郷。
 ノスタルジィを凝り固めたような世界は、殊の外神の性に合った。
 他の世界よりも、"馴染みやすい"のだ。ともすれば居着いてしまいそうなくらいに。

 だが。
「明るくって暗くって、禍がしょっちゅう来やがるくせにみぃんな大騒ぎ、ねぇ。
 まったく、これだから生き物ってのは愛でがいがある。ひひひひ……」
 寝息だけが支配する静寂のなか、酒気の残滓がたゆたうなかを男がひとり。
 伸びる影法師は長く長く。それは宴の終わりを告げていた。
 妖怪たちはすやすや眠る。誰も彼の姿を目の当たりにすることはない。
 死とは、そういうものなのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

メフィス・フェイスレス
・心情
お祭り 宴会 無礼講……そしてなによりタダ飯喰らい!
であるならば乗るしかないわね この熱い荒波に

・行動
食事を敢えてよう手当たり次第に食い散らかす
注目が集まってきて見咎めた奴が絡んできたら
大飯食らってそうな妖怪を多く見繕って大食い勝負を提案しましょう
挑発混じりな態度を含めればノッてくる奴も増えるかな

・救出方法
思いついた手から考えると生命力に溢れた屈強な奴がいいわ
ソイツらが手を付けてる料理に命に別状がない程度の毒血入りの小さな【飢渇】を仕込む
摂食を確認したら毒を滲ませついでに生命力も少しつまませてもらうわ
ダウンした奴を観客に頼んで一緒に祭りの影響が及んでいない範囲に運び出してしまいましょう



●乗るしかない……この熱い荒波に
 むしゃっむしゃっ、がつっがつっ!
 ……と、その女の健啖ぶりには、さしもの妖怪たちも唖然としていた。
 見た目は小柄な女である。だのに、積み上げた食器ときたらまるで塔のようだ。
 はたしてあれだけの量を食って、いったいどこに消えたというのか?
 腹を膨らませたふうもなく、メフィス・フェイスレスはひたすら食ってた。
「す、すげえなあんた、まだ入るのか?」
「ん? そりゃあまあ、これで朝飯前ってところかしらね」
 メフィスは親指で口を拭いつつ、ぽかんとした妖怪に言ってみせた。
 そのけろっとした顔の平然ぶりに、騒ぎ好きの妖怪たちが興味を持たぬはずもなし。
「おいおい見ろよ、なんかすごいやつがいるぜ!」
「あんな量をひとりで食っちまうなんて、すげえなあ!」
「おい、もっと料理もってこい! どこまでやれるか見てみてえや!」
 とばかりに人垣ならぬ妖怪垣が生まれ、やんややんやと野次馬が騒ぎ立てる。
 となれば必然、そこに対抗したい強気な妖怪も集まるのは必然といえる。
「おうおう姉ちゃん、なんだかずいぶん大きな口顔してるみたいじゃのお!」
 だいだらぼっちかはたまた鬼か、ムキムキの東方妖怪が絡んできた。
 メフィスは新たな皿を積み上げると、あえて挑発的に睨み返してみせる。
「何か用? まさか、私と勝負しようってのかしら?」
「アァン? ずいぶん自信がありそうじゃねえか! 人間の分際で」
「むしろ私はアンタを心配してるのよ――倒れちゃいそうだから」
 ビキキッ!! と、東方妖怪の額に青筋が浮かんだ。メフィスは涼しい顔だ。
 妖怪たちは沸き立つ。かくして大食い勝負の快哉と相成った!
「あとで吠え面かいても知らねえぞぉ? 姉ちゃん!」
「ふっ……タダ飯喰らいのチャンスに、私が退くことはないわ」
 そしてメフィスはその言葉通り、東方妖怪を寄せ付けぬほどの食いっぷりを見せつけた。
 相手のペースはだんだんと落ちていく……だが、少々様子がおかしい。
「う、うぐ……!?」
「お、おいどうした!? なんだ、倒れちまったぞ!」
 東方妖怪は顔を青くして胸を抑え、どさりと倒れてしまったのか。
 妖怪たちがどよめく。メフィスは立ち上がり、脈拍を確かめた。
「大丈夫よ、命に別状はないわ。やっぱり喉でも詰まらせたのかしらね。
 とはいえこのまま放ってはおけないし。誰か、手を貸してくれるかしら?」
 メフィスの言葉に力自慢の妖怪が何名か応じて、倒れた妖怪を運ぶことに。
 ……その影で、メフィスは計画通りと言いそうな笑みを浮かべていた。
(さりげなく混ぜ込んでおいた毒血に気づかなかったようね)
 そう! これはすべてメフィスの策だったのだ!
 相手の食べ物に毒血を混ぜ、倒れたところで生命力も少々拝借。
 そして妖怪たちと一緒に、妖気の範囲外へと運んでみせるというわけである。
 このような豪傑妖怪では、コレ以外の方法で誘き出すのは手がかかっただろう。
(私に絡んできたのが運の尽きよ。ま、命までは奪わないからおとなしくしてなさい)
 心のなかでそう思いつつ、メフィスは次に何を喰らうかを考えていた。
 どうやらこの女、まだまだ食い足りないらしい。恐るべき健啖ぶり……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーナ・ユーディコット
呑まれた妖怪は助ける事られるのは今迄とは明らかに違う所だね人間が見当たらない辺りもそうだけど
まあ……暫く騒ぎを楽しんでいてもいいのなら
折角だしこの世界の食事を楽しもうかな

エンパイアやサクラミラージュでも見たような料理がちらほらとある気もするけど
どれも知っているそれとは違う
地域が変われば色々変わるくらいだし、世界を跨げばこういうものなのかな
こういう変化が私にはとても面白くいからついつい箸が伸びて――
知らない料理なんかも味が気になってついつい手を伸びてしまって
え、もう無い?
私が平らげた……?
ごめん、夢中だった
少し気が緩みすぎたかな


水心子・静柄
そろそろ水着の季節ね、いい加減引きこもってないで猟兵らしいことでもしようかしら。それに新世界も見つかったしね。それにしてもこの世界は普通に日本酒があるのね…いい世界だわ。もしかしたら、あの失われた幻の酒造『高〇酒造』がこの世界にあったりしないのかしらね!

自分から進んでお酒を呑ます方法…それは美味いお酒を用意する事ね!日本酒の中でも最高峰と言われている『壱拾四代竜泉』を用意してきたわ。これにあとは美味しいつまみがあればもう呑兵衛には最高よね。これで妖怪達を酔い潰す!ただアルコールの分解に水が必要だからお酒だけだと脱水症状になりやすいのよね。お酒を飲んだら同じ量の水を飲ませてあげないといけないわ


リア・ファル
アドリブ共闘歓迎

色々学ぶことが多くて刺激的な世界だよ
妖怪に、祭かあ
神器に妖術、大いに参考にしようっと

それじゃあ盛り上げつつ
妖怪さん達と仲良くしようか

祭を盛り上げるなら、ボクならコレさ

出店を一つ借りましてチョイと拡張(取引、メカニック)
祭法被にレイヤ変更(早着替え)

「ヨーヨー釣りにリンゴ飴、イカにモロコシ、綿飴、かき氷!
「Dag's@Cauldron」出張出店、マルチに展開中だよっ!」

お酒も踊りも良いけれど、ちょっとコッチで休んでおいで!
(救助活動)
お代は……まあ、良心的に!

ハレハレ愉快ヨーカイ、嬉々痛快……と、(そろばん弾き中)
うん、毎度あり!


雨宮・いつき
妖や竜神様が住まう世界、ですか
本来であれば御勤めの範疇には入りませんが…だからといって世界の危機を見過ごすわけにはいきません
同じ妖の誼み、僕も助太刀致します

乗れというのであれば、こちらも出し惜しみはしませんよ
【楽器演奏】に【ダンス】、宴を盛り上げる手管なら心得ています
天狐の横笛で音楽を奏で、月光蝶を舞い踊らせ、妖達を注目させましょう
ふふ、幽世の蝶のように綺麗でしょう?
美しい演舞で皆さんの気分を高揚させ、【浄化】の力を込めた月光蝶の光を放ち、
妖気で乱された心を治療致します

呑んで歌って騒いで
心が健全に戻れば、後は身体を休めに眠るだけ
さあ、祭りは身体が資本です
お疲れの方はお家へ帰ってお休みなさいな


オリヴィア・ローゼンタール
常に破滅と隣り合わせだというのに、随分と陽気な世界ですね……

勧められた料理をいただきましょう
首魁が中華妖怪なためか中華料理が多め
場の雰囲気に合わせて、あらかじめ白い中華服の姿に変身しておく
いい匂いですね……ふむふむ、ギョウザというのですね

お酒はまだ飲めないので、逆にお酌する(奉仕)
お酒に【破魔】の力を籠めることで一種の霊薬とし、悪い酔い(妖気の影響)を破る

【ダンス】【パフォーマンス】で中国雑技のような芸で【存在感】を放ち、正気に戻った妖怪たちが脱出する【時間稼ぎ】をする
聖槍を自在に操り、軽業(ジャンプ)を披露する
さぁて、これなるは!
悪を穿ち、邪を破り、魔を切り裂く、至高の聖具!

アドリブOK


祇条・結月
こないだの戦争は、さすがにちょっと無理した
……体の調子、戻ってるのかわからないし
ちょっとずつならしていこう

……にしても、この世界はちょっとだけ。親しみがあるかも

適当に食事とかの卓に紛れるよ
お酒……は勧められても飲めないから、勘弁してね
余興? そんなにいろんな芸はないんだけど…

じゃあ、的当てなんてどうだろ
神話の后羿みたいな百発百中、なんてものじゃないけど

危なくないような鞠をそこら辺から受け取って
【スナイパー】で【投擲】、わざと当てにくい的なんかも【見切り】、【早業】で次々と落としていく

そんな間にも比較的呑まれてなさそうな人のことは確認しておいて、酔いを介抱するみたいなふりでより分けて行こうかな


フェルト・フィルファーデン
愉快な世界なのはいいけれど、何事も加減が必要でしょうに……
ずっとお祭りさせておくわけにはいかないし、なんとかしないとね。


とりあえず踊りに混ざりましょうか。
こちらの世界の踊りの心得は無いのだけれど……まあ、見様見真似でどうにかしましょう。【ダンス】自体は得意だしね。

躍りつつ辺りを見回し、まだ無事な妖怪達を助けましょう。
「新しい踊り、知りたくない?社交ダンスっていうのだけれどね!」
などと手ほどきするフリをして祭りの輪から自然に引き離す。
大丈夫よ。これでも【演技】は得意だもの。敵に気付かれるようなヘマはしないわ。

お祭りって、たまにだから楽しいものだと思うのよ……ずっとお祭りにして何がしたいのかしら?


花邨・八千代
祭りだーーーー!!!
いいなー、にぎやかなのは大好きだぞ!!!

酒もあるな?飯もあるな?
よっしゃーあるだけ持ってこい!
俺を満足させるだけの食い物がここにありゃいいけどなァ!

勧められるまま誘われるまま、本能のままに飲み食いするぞ!
なんてったって祭りだから、無礼講ってやつだ。
『大食い』『二回攻撃』『カウンター』『空中戦』でこの祭りを制するぞ
腹一杯になったら踊って消費してまた食えばいいしな!
俺って頭良い!天才!美女!

ところでマジで死ぬまで騒ぐ気なん?
祭りって終わるから次のが楽しみになんじゃねーの
死んだら「次」はねーぞ、つっても妖怪って死ぬのか?
まぁでも、死んだら今度こそ忘れられちまうかもしんねーぞ


望月・十慈子
妖怪溢れる世界に名探偵の出番はないだろうと思っていましたが……どうやら、そうもいかないようですね(涎)

大量のご馳走……わたし、小食なんですけどこんなに食べれるかしら(わたしの大食いスキルは108ですと書かれたプレートを首から下げる)

あっ、未成年なのでお酒は結構です!ドリンクバーお願いします。無い?そんなー。

両手を合わせて「いただきます!」
ゆっくりと、味わいながら確実に食していきます。
あんまり早いと料理を楽しむ余裕がなくなりますからね。

食べれるだけ食べて、満足したら「ご馳走様でした!」
戦闘は苦手なのでそろそろ帰りますけどおみやとかありません?
笹でつつむアレ。帰り道で食べるので。



●宴もたけなわ、一難去ってまた一難
 猟兵たちの奮闘により、多くの妖怪が妖気から解放されていた。
 しかしどこから湧いて出てきたのか、宴に浮かれる妖怪たちは後をたたない。
 ざっと数えて百以上、こうなってくるともはや宴会を越えて祭りそのものだ。
「飲めや飲め!」
「歌えや歌え!」
「踊れや踊れ!」
「「「今日は楽しいお祭り騒ぎ!!」」」
 とあちこちから唱和が聞こえ、乾杯したり踊ったりと散々である。
 しかも厄介なことに、この妖怪たちは仲間を増やそうとおもてなしをしまくる。
 そんな状況では、猟兵たちが統率の取れた行動を取れるわけもなく。
 ……というか中には、むしろ喜んで祭りに紛れ込んでいるような奴も居た。
「いやー、困りましたね! わたし少食なんだけどなー! 困ったなー!
 でも出されたら食べるしかないですよね! 少食ですけどねーあははー!」
 とかなんとか言いながら、望月・十慈子の両隣には積み上げられた皿の山。
 少食……少食? こいつが少食だったら大食いはどんなことになるというのか。
 多分そいつはブラックホールとか生み出せると思う。自重で。謙遜もいいところだ。
「……うん、なるほど。これがこの世界の料理……ふうん、興味深いね」
 そんな十慈子の対面でぶつぶつなにやら言いながら頷いているのは、
 ルーナ・ユーディコット。彼女はあくまでのんびりと食事を……いや待て。
 積み上げられた食器の量は十慈子に勝るとも劣らない。
 なんだったらわかっててやってる十慈子よりも、こっちのほうがたちが悪い。
 料理を運んでくる妖怪たちも、ふたりの食いっぷりには完全にあっけに取られていた。
「あー美味し! あー美味し!! ほんと最高ですねタダ飯!! いや料理!!
 わたし少食なんですけどこれはぱくぱくいけちゃうなー! ね、そう思いません!?」
「……え? あ、うん。そうだね、世界をまたぐと料理も変わるものだし。
 色々と興味深いよ。……ところで、そっちの料理、私のほうにももらえる?」
「あ、じゃあわたしも新しいお皿追加で~!」
「「「まだ食べるのかあんたらぁ!?」」」
 配膳係を務める妖怪たちも、思わず悲鳴をあげるほどだった。

 ところで、そんな彼女らが食べている料理がどこから来ているかというと。
「はいはーい、おかわりおまちどう! こっちの料理も持ってきたよ!」
 と、甲斐甲斐しく働く、リア・ファルが用意したものであった。
 小間使いなら誰よりも慣れたもの、CEO電脳生命体に不可能はない。
 そんなリア自身も、いかにもそれらしい祭り法被にレイヤを着替え、
 電脳魔術でマテリアライズした出店を構え、東奔西走で働いているのだ。
「ヨーヨー釣りにリンゴ飴、イカにモロコシ、綿飴、かき氷!
 "Dag's@Cauldron"出張出店、マルチに展開中だよっ! よっといでー!」
「あ、それじゃあ私、りんご飴をひとつ……って、リアさん!?」
「ん? あー! オリヴィアさん!!」
 ふら~っと甘い香りにつられて寄ってきたオリヴィア・ローゼンタール。
 見知った顔が呑気に出店なんぞ構えてるもんだから、シスターは大いに驚いた。
「な、何をしていらっしゃるんですか? 完全に祭りに呑まれてますよね!?」
「いやあ、郷に入りてはなんとやらっていうか。でも良いカモフラージュでしょ?」
「ま、まあそれはそうですが……」
 いやそれでいいのか? 割と常識人のオリヴィアは思わず頭を抱えた。
 そもそもこのカクリヨファンタズム自体ちょっと呑気が過ぎるのである。
 今回の事態だって、グリモア猟兵曰く放っておけばカタストロフになるとか。
 一事が万事、仮初の世界であるここでは些細なトラブルが世界を破滅させかねない。
 だのに被害者である妖怪たちはもちろん、猟兵たちもだいぶちゃらんぽらんだ。
 陽気といえば聞こえは良いのだが……オリヴィアはこめかみを抑えた。
「どうしたのさオリヴィアさん、深刻な顔しちゃって」
「深刻な事態なんですが……」
「とか言っちゃって、オリヴィアさんだってそれらしい格好してるよね!」
「こ、これは、その……!」
 リアの指摘通り、いまのオリヴィアの服装はシスター服ではない。
 白を基調とした中華服姿である。オリヴィアはかあっと頬を赤らめた。
「さきほど料理を勧められたのが、その、中華な方々ばかりでしたので……!
 郷に入れば郷に従えとも言いますし、それに倣っていただけですよ、もう」
「それいまボクが使った言い訳なんだけど……ま、いっか」
 やれやれとため息をつきつつ、リアは意味深な笑みを浮かべた。
「それならさ、ボクと一緒にちょっと配達を手伝ってくれないかな?」
「え? 配達、ですか? それが事件解決になるなら、まあ……」
「いやあ、こんなもんじゃない大騒ぎなところがあるからねえ」
 言いつつリアが取り出した荷物は、酒・酒・酒!
 もちろん彼女らが呑むぶんではない。となると、目的地はもしや……!

 ……同時刻、宴会場!
「祭りだーーーーーーー!!」
 どこの海賊かな? みたいな勢いでどんっ!! と大声で鬨を上げる者あり。
 誰であろう、それは花邨・八千代だ。両手にはもちろん酒と杯!
「あっはっは、いいなーにぎやかで、俺こーゆー雰囲気大好き!
 おいみんな、酒はあるな? 飯もあるな? よーし呑みまくれー!!」
 豪放磊落かつうわばみの羅刹だけあって、その呑みっぷりはすさまじい。
 妖怪たちにおもてなしされるどころか、むしろ煽りまくる勢いで呑む呑む呑む!
 祭りとくれば無礼講。しかもただ酒、タダ飯、食いつかぬ理由はない!
「いやあ鬼のあんた、良い飲みっぷりだねえ!」
「だろぉ? アンタも悪くないぜ! はっはっはどうだご一献!」
 筋骨たくましい東方妖怪と即座に打ち解け、陰気な西洋妖怪を騒ぎに誘う。
 ……ん? むしろ妖気を拡散する方に回ってないかこれ?
 気の所為気の所為。祭りに紛れるためには仕方ないこと。だよね、多分。
「しかしよぉ姉御、こんな勢いで食って呑んでほんとに大丈夫かよぉ?」
「あ~ん? 何言ってんだ、腹一杯になったら踊って消費すりゃいいじゃん!
 そしたらまた食い放題飲み放題! いやー、俺って頭いい! 天才! 美女!!」
「「「美女かどうかはともかくなんて冷静で的確な判断なんだ!!」」」
「おいてめぇら一言多いぞー!! うははははは!!」
 ……さながら、大江山の鬼の大将か何か、という勢いである。
 それにしても凄まじい馴染みっぷりだ。ひょっとしてこの世界出身だったのでは?
「盛り上がっているわね……支援物資の投下よ!」
 と、そこで紛れ込んできたのは、ヤドリガミの女こと水心子・静柄。
 なにやらどすんと大きな酒瓶を卓上に置いてみせる。
 きょとんとしていた妖怪たちだが、その銘を見ると沸き立った!
「すげえ! これ、もしかしてとんでもなく高ぇ酒じゃないか!?」
「目が効くわね。そのとおり、日本酒の中でも最高峰と言われる銘酒よ。
 もちろん一本どこじゃないわ。たくさん用意したからどんどん呑んで!」
「「「うおおおおおーっ!!」」」
「え? マジ!? 高い酒呑めんの!? ひゃっほー最高!! アンタ美女!!」
「ええ、どんどん呑んで……って、あなた猟兵でしょ!?」
 当然のようにおこぼれに預かる八千代に思わずツッコミを入れる静柄。
 しかし八千代は聞いていない。ぐいーっと一献呑んでからようやくこっちを見た。
「え? 何? そうだけど?」
「……これ、妖怪を酔い潰れさせるために用意したんだけど……」
「あっはっは! なんでそんなことする必要あんのさもったいない!?」
「目的忘れてる……!?」
 さしもの少々残念系ヤドリガミすら圧倒される"圧"であった。
「しっかし酒があってもつまみが足りねえなあ」
 そんな折、妖怪の誰かがぽつりと言った。
 いや、もしかしたら八千代だったかもしれぬ。まあともあれ。
「飯もいいけど出し物とか見てみたいな!」
 と、また別の妖怪が言った。やっぱり八千代だったかもしれない。
「そうだそうだ、芸が見たい!」
「芸だ芸だ! 踊りもいいけど芸がみたいぞー!!」
「そうだそうだー! 俺も見たいぞー!!」
「……よし、私もノるべきところねこれ! みたいぞー!!」
 やんややんやと騒ぎ出す妖怪たち(と、酔っ払った八千代&色々諦め静柄)
 芸人(ルビ:いけにえ)を求め、妖怪たちはさらに騒ぎ立てる。
 はたして連行……もとい舞台上に押し上げられたのは、三人の猟兵だった。
「ちょ、ちょっと、なんで誰も助けてくれないのかしら!?
 わたし、もっと穏やかにダンスをするつもりだったのだけれど……!?」
 完全に連行状態で引っ張り出され困惑するフェルト・フィルファーデン。
「うん、さすがにあんな戦争の直後で逃げられるわけがなかったよ……。
 っていうか、あっちこっちに酔っ払ってる猟兵がいるの、どうなのこれ」
 舞台上から観客席を見渡し、乱痴気騒ぎに呆れる祇条・結月。
「まあまあ、もともと皆さんを助けるためにここへ来たわけですし。
 むしろこれはチャンスと思いましょう。うまくやれば注目の的ですよ」
 そんなふたりをなだめる少年陰陽師、雨宮・いつきであった。
「おお……楽しそうな気配に釣られてきたら、なんだか騒がしいことに!
 ここにもたくさんご飯がありそうで、わたしワクワクが止まりません!」
「なるほど、中華風の料理もあるんだ……このあたりのは味付けが濃いね」
 あらかた食い尽くして大移動した十慈子とルーナも観客席にやってきた。
「はいはーい、お酒にお弁当、ついでにおつまみの販売はこちらでーす!」
「こ、こちらでー……って、あの、私売り子なんですが!?
 いや「踊りやすそうな服だから」って……あ、あの、リアさん!?」
 野球場の売り子めいて弁当販売するリアと、ついてきたオリヴィア。
 しかしいかにも踊り子らしいチャイナ服を着ていたオリヴィアは、
 妖怪たちに引っ張られてあれよあれよというまに舞台上へ。
 なお、リアはわかっていて止めなかった。商売っ気が友情に勝った瞬間である。
「よっしゃー踊れ踊れー! 脱げ脱げー!!」
「……もしかして私、とんでもないところにお酒持ってきたのかしら」
 完全にフーリガンみたいな勢いの八千代を見て、静柄はひとりごちた。
 たっぷり用意した高級日本酒もバンバン呑み尽くされていく。
 そのおかげで妖怪たちはへべれけだったが、この羅刹もへべれけである。

「……では、僕も出し惜しみせずにやるとしましょう」
 そんな声援を受け、最初に芸を披露し始めたのはいつきだった。
 "天狐の横笛"を口に当て、雅やかながら陽気な音楽を演奏し始める。
 そんな少年陰陽師の舞に呼応して、ちらほらと羽ばたく月光蝶たち。
「「「おお……!」」」
「ふふ、幽世の蝶のように綺麗でしょう? どうぞ御覧ください」
「……ううん、私もっと綺麗な胡蝶を知ってる。もっと綺麗なやつ」
「えっ、なんで猟兵さんからダメ出しが出てくるんですか!?」
 何故か目が据わっているルーナ。彼女の脳裏によぎったのは義姉の姿だ。
 いつきはため息をつくと、更に多くの月光蝶を呼び出して舞い踊らせた。
 妖怪たちはその清廉な輝きに見惚れ、浄化……されない! さらに騒ぐ!
「正直、芸とかあんまりないんだけどな……踊りも出来ないし」
 どうしたものかと思案する結月、そこでオリヴィアとフェルトが言った。
「ならば舞がてら、私たちで舞闘をしてみるというのはどうでしょうか?」
「いいアイデアね……! それなら、わたしの人形たちが役に立つわ!」
 フェルトは電子の繰糸をたぐり、妖精騎士の人形たちをその場に現した。
 そしてフェアリーである彼女自身が舞い踊り、人形騎士らもそれに続く。
 大量の兵士と騎士たちが武器を盾を鳴らして舞い踊るさまは、
 まるで本当に生きているかのよう。それもまたフェルトの業前だ。
「ふふっ、どうかしら? こういう踊りも悪くないでしょう?」
「……なるほど。これなら、体の"慣らし"にもなりそうかな」
「ええ、私も舞台に上がった以上、全力で臨ませていただきますとも!」
 結月は頷き、軽やかに舞台上を翔びながら糸や苦無を放つ。
 忍者さながらの軽業を、まるで示し合わせたように騎士人形たちは防ぎ躱す。
 当然すべてアドリブだ。それでも合わせられるのは、彼らが一流ゆえ。
 そして注目を集めるようにして、オリヴィアはだん!! と震脚した。
「さあて、これなるは! 悪を穿ち、邪を破り、魔を切り裂く至高の聖具!
 遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ――いざいざ、いざッ!」
 聖槍を取り出したオリヴィアは、雑技団めいた軽やかさで槍を振るう。
 結月の投擲した苦無を騎士人形が盾で弾き、跳弾したそれを槍が薙ぐ。
 くるくると舞い踊るそれは月光の蝶の群れの中を吸い寄せられるように飛んで、
 見えないくらいに細い結月の鋼糸の結界に弾かれ、手元に戻るというわけだ。
「「「すっげえや!!」」」
 妖怪たちは大いに沸き立つ。
「いやーいいねえ! 俺も我慢できなくなってきた! 飛び込み参加だー!!」
 居ても立っても居られず八千代が呼び込んだのを皮切りに、
 さながらモッシュアップめいて舞台に飛び乗る妖怪たち。
 あっという間に舞闘は大群が思い思いに舞い踊る舞踏会と化した!
「あっ、ちょっと……ううん、みんな仕事を憶えてるのかしら……?」
「大丈夫大丈夫、ほら見て」
 不安がる静柄の横を通り過ぎようとしたリアは、一点を指差した。
 見ればそこでは、へべれけになって疲れ果てた妖怪たち。
 へたり込んだ彼らを、さりげなく踊りから抜け出した結月が介抱している。
「立てそう? ……無理かな。じゃあ僕に掴まって」
「なるほど、ああやってうまく外に連れ出すための作戦だったのね!」
「ほうほうなるほど、頭いいですねえ。あ、ところでお弁当包んでもらえます?」
「おまちどう! ……うん、まあ皆がそうなわけじゃないみたいだけどね……」
 感心する静柄をよそに、リアに持ち帰りの包みを求める十慈子。
 リアも愛想よく相手しつつ、そのマイペースぶりには呆れていた。
「いやあわたし、戦うのとか苦手なのでこれでおいとましようかなーと」
「完全にお祭り楽しみにきただけだよねそれ!?」
 思わずツッコミを入れるリアだった。
「まあまあ、妖怪さんたちを送り返すぐらいはお手伝いしますよぉ」
「じゃあ私は、酔い潰れた妖怪たちのためにお水を用意してこようかしら。
 さすがに酒だけ飲ませて脱水症状なんて起こされたら、別のピンチだものね」
 と、裏方たちがさりげなく働くのをよそに。
「……あれ? ここどこ? というか、私の食べてたご飯は……?」
 ルーナは空っぽになった食器が積み上げられた卓上で、ようやく我に返った。
 どうも無心で食べていたらしい。恐るべき健啖ぶり、そして集中力……!
「さあさ踊れ踊れ、歌え歌えー! 祭りだ祭りだー!!」
「あ、あの、鎮静させて送り返したほうが……」
「え? あーそうだったそうだった! じゃあとりあえず踊るってことで!!」
 一切疲れる様子のない八千代のペースに、気圧されているいつきである。
 しかし彼の呼び出した月光の蝶は、だんだんと妖怪たちをおとなしくさせていた。
 オリヴィアの大立ち回りのおかげで、それを見咎める者もいない。
「はあ……ようやく落ち着いてきたわ、でも後もう一息かしら」
 周りを見渡し嘆息したフェルトは、ふと妖怪に目星をつけて微笑んだ。
「ねえ、そこのあなた? よければわたしと社交ダンスなんてどうかしら?
 今日は楽しいお祭りでしょう? 終わりまで、どうか踊ってくださいな?」
 見目麗しい妖精の王女の誘いを断れるわけもなく。
 最後のひとりが踊り疲れて眠るまで、喧騒はしばし続いたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『迦陵頻伽』

POW   :    極楽飛翔
【美しい翼を広げた姿】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【誘眠音波】を放ち続ける。
SPD   :    クレイジーマスカレイド
【美しく舞いながらの格闘攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    迦陵頻伽の調べ
【破滅をもたらす美声】を披露した指定の全対象に【迦陵頻伽に従いたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●迦陵頻伽(カラヴィンカ)
 飲めや飲め。
 歌えや歌え。
 踊れや踊れ――。

 猟兵たちの奮闘のかいあって、多くの妖怪たちが妖気から解放された。
 しかしそれよりも先に祭りに参加していた妖怪たちはそうもいかない。
 迷宮じみて――否、実際に迷宮化した祭り会場の奥に進むにつれ、
 やがて現れたもの……それは、骸魂に喰われた妖怪たちの群れである。

 迦陵頻伽と呼ばれる妖しのものがいる。
 上半身は人、下半身は鳥。
 またの名を"妙音鳥"と呼ばれるだけあり、妙なる調べを響かせる妖怪だ。
 その七色の翼は、舞い踊るたびに光を生み出すかのようだった。
 しかし魅入られてはならない。こいつらはれっきとしたオブリビオンである。
『飲めや飲め』
『歌えや歌え』
『踊れや踊れ』
『『『この幽世が滅びるそのときまで!』』』
 邪悪なる、しかし美しい調べに舞い踊り、妙音鳥の群れが立ちはだかる。
 迷宮化によって上下左右も定かならぬ祭り会場で、いま舞踏ならぬ舞闘の始まりだ。
 妖気に呑まれた妖怪たちを、ひとつ救い出してやるとしよう!

●二章の概要
 この章では、「お祭り騒ぎにあえて乗る」ことでプレイングボーナスを得られます。
 冷静に落ち着いて戦おうとすると、このオブリビオンの群れには苦戦を強いられるでしょう。
 そこをあえて冷静にいくか、はたまた調べに乗せて華麗に戦うか。
 どうぞお好きな方をお選びください。プレイングお待ちしています!

●プレイング受付期間
 2020/06/25 23:59前後まで。
朱酉・逢真
楽しく戦えってことかィ。いいぜ、やったろうじゃねえか。
つっても俺ぁ体力がねえんで、このままじゃムリだなぁ。《宿》をちょいといじりまして…っと。おっし、体力のある【壮年期】に変えて。
このナリの俺は自分で戦えんだわ。ありがてぇかぎりだね。んでもって、この《宿》も《服》も病毒のカタマリ。どういう意味かわかんだろ?
お前さんの攻撃が当たれば、俺だけでなくお前さんまでケガするってことさ!
さァさ、舞ったろォじゃねえか。芸術は俺の管轄さ。致命傷だけは避けて、かすめるように受け流し。
ステップ刻んでワンツーワンツー、ワルツのリズムで回避と流し。手首をつかんで一回転。背中に回って膝裏蹴って。腐り落ちるまで踊ろうぜ!



●神楽、舞いて
「楽しく戰え、ってかィ? "この俺"じゃあ、ちィと難しいなぁ……」
 笛を鳴らし文字通り跳梁する迦陵頻伽の群れを前に、朱酉・逢真はひとりごちた。
 さしもの凶神とて、斯様に騒がしい戦場は少々不得手か……と、思いきや。
 その見た目がぐにゃりと粘土めいて歪み、一瞬にして年格好が変化した。
 若々しい男性のものではなく、ほうれい線の目立つ壮年期の男性のものである。
 ……そもそも、逢真にとってひとの姿はまさしく"化身"でしかない。
 その気になればこのとおり、歳も背丈も自由自在なのだ!
「"このナリの俺"なら十分だろォ。ひひ、さぁ始めようかィ!」
 人間で言えば壮年に当たる見かけの年齢からは想像もできない滑らかな動き。
 地を滑るようにするりと敵の輪の中へ入り込んで、くるくるとステップを踏む。
『踊れや踊れ!』
『舞えや舞え!』
 迦陵頻伽の群れはどこか不規則なリズムで楽音を鳴らしながら、
 そのリズムに合わせて打撃を放つ。この不規則な旋律自体が罠なのだ。
 人間がそれに乗って合わせようとすれば、迦陵頻伽はいくらでも拍子を変える。
 そして動きの精細を欠いたところへ、連続攻撃が襲いかかる――の、だが。
「ひひひ。いいのかィ? "当てちまって"よ」
『!?』
 迦陵頻伽の鎌じみた回し蹴りが、逢真の頸を捉えた。
 しかし頸を刎ね飛ばすと見えたその足は、一瞬で腐り落ちてぼとりと脱落。
 何が起きた? 逢真は何もしていない。"当てに行った"だけである。
 ……その身は病毒(しゅくふく)そのもの。つまりは全身が致命的な毒素。
 彼から触れても、敵が触れても、どちらであれ毒は獲物を襲う。
 攻撃という"接触"を行った時点で、逢真の思うつぼだった……!
「おしまいかい? じゃ、今度は俺の番だな」
 足を失った迦陵頻伽の懐に潜り込み、腹部と胸部へ小刻みなワンツー。
 撃たれた場所が黒くくすんで腐敗が広がる。塵に変わるその身を吹き飛ばし、
 軽くジャンプしながら背後の敵を三連蹴りで刈った。――疾い。
 幻惑的な旋律をワルツのリズムでかき乱し、攻撃を回避あるいは受け流す。
 繰り出された拳撃を躱して手首を掴むと、ダンスパートナーめいて一回転。
 背中を向けた敵の膝裏を叩き、崩れ落ちたうなじを手刀で刈る!
「ひひひ! どォしたよ、どいつもこいつもすーぐに"ばてちまって"さ。
 ダンスパートナーが俺じゃあ厭かィ? 腐り落ちるまで踊ろうぜ、なあ!」
 腐敗した骸魂の残骸は、花びらめいた塵となって舞踏場に舞う。
 くすんだそれは死の輪廻を越えて生にたどり着き、青々とした種子となる。
 螺旋を描くように渦巻くそれらを伴として舞い踊る男のさまは、ああーー。
「舞踊ってのァ神に捧げる贈り物だ。――せいぜい、俺をもてなしてくれよ?」
 この世ならぬ美しさと不気味さを同居させた、神の舞に他ならなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

化野・花鵺
「鳥の足は黒酢煮込みにしたら美味しそーな気がする、黒酢ないけど」
狐、これだけ宴会推しなら大丈夫だろうと食欲に従った

「飲めや歌えや踊れや喰えや、ヒャッホゥ」
狐、ノリノリで身体を動かしながら「フォックスファイア」連射
花火のようにドカドカ打ち上げつつ歌に合わせてキュルキュル狐火を操作しながら迦陵頻伽の脚に着弾させて燃え上がらせる

「飲めや歌えや踊れや喰えや♪カヤはとってもお腹がすいた♪喰りょう喰りょう鳥の脚♪腹を満たそう鳥の脚♪」
狐、顔だけ妖狐に戻し撃ち落とした迦陵頻伽の脚を裂いて食べ始めた

「骸魂の外側全部食べたら中身がコンニチハするって聞いたから?裂いてれば大丈夫だよ、多分」
狐、コテンと首をかしげた



●食べるのはまずいですよ!
 やんややんや、ぴーひょろどんどこ。
 鼓に笛に騒がしい声、迦陵頻伽の奏でる音はどれも魅惑的だ。
 しかし化野・花鵺がぼけーっと彼らを見つめているのは、音のせいではない。
 その目は、どちらかというと……というか誰がどう見ても捕食者のそれである。
「鳥の足って、黒酢煮込みにしたら美味しそーだよねぇ……」
『『『えっ!?』』』
 迦陵頻伽の皆さん、思わず演奏する手を止めるくらいにビビった。
 たらー。花鵺の口元を伝うよだれ一筋……ま、『まさか』! 『こいつ』ッ!!
「これだけ宴会宴会してるなら、カヤもちょっと本能に忠実になってもいいよね!
 飲めや歌えや踊れや喰らえ、ヒャッホゥ!! 調理の時間だぁー!!!!!!」
『『『ワアアアアアーッ!?』』』
 こ、この狐、食べるつもり満々だ! カニバルカーニバル的な意味で!
 いくら相手が骸魂とはいえ、二足歩行してしゃべる存在を喰うのはどうなのか!?
 そんな道義的な話は関係ない。なぜなら花鵺は……狐だから!!(全妖狐に対する風評被害)
「フォックスファイア、いってみよー!」
 どーん!! と舞台花火よろしく勢いよく打ち出された狐火の雨。
 それらはあまりの"圧"に怯える迦陵頻伽たちをじっくりことこと弱火で煮込み、
 妖しの炎が体を燃やす。主に足を。ていうか、鳥足を。
『ま、待て! 歌って踊れとは言ったけど我らを食べるのか!?』
「えー、だってカヤはとってもお腹がすいたもん♪
 飲めや歌えや踊れや喰えや♪喰りょう喰りょう鳥の脚♪」
『だ、だから我々一応これでも骸魂』
「腹を満たそう鳥の脚♪照り焼きもいいし腿も美味しそう♪」
『『『グワーッ!?』』』
 阿鼻叫喚の地獄絵図であった。風雅な踊りの要素どこいった。
 容赦ないフォックスファイアで照り焼きにされた鳥の脚。倒れる迦陵頻伽たち。
 花鵺はにこにこ笑顔で近づく。影が被り、青ざめた顔で震える骸魂たち。
『『『せ、せめてもっと優雅に倒してくれーっ!!』』』
「いただきまーす♪」
『『『ギャアアアアアアッ!!』』』
 ……暗転。

 しばらくあと。
「けぷ」
 ようやく満足したらしい花鵺は、ぽっこり膨らんだお腹を撫でる。
 その周りには、一応骸魂から救助(?)された妖怪たちが転がっていた。
 しかし彼らはのちに、一様に恐るべき存在を震えながら語ったという。
 めちゃめちゃいい笑顔で自分の(骸魂のだけど)足をむしる、狐妖怪の存在を。
 それは妖怪たちをも恐怖させる妖怪として、長く語り継がれたとかなんとか……。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒城・魅夜
やれやれ、私はあくまで殺し屠り滅ぼすもの
歌い手でも踊り手でもないのですけれどね
しかし、いいでしょう、別に歌や踊りが嫌いというわけではありません
あなたたちの舞いに乗って上げましょうか

迷宮という環境にも耐性を示してみせましょう
早業・範囲攻撃で108本の鎖を全方位に射出
第六感で迦陵頻伽たちの舞いのリズムを見切り
攻撃しつつ鎖と鎖を重ね合わせ打ち鳴らす、いわば二回攻撃
舞に合わせた音楽を奏でましょう
いかがですか、私の調べは?

ふふ、この音楽は単に舞に合わせただけではありません
いわば私からの誘惑と精神攻撃
迦陵頻伽たちを酔わせ惑わせ、私の鎖の攻撃範囲内におびき出すためのね

さあ、咲き誇れ鋼の血華
美しき調べを糧に



●迷宮に咲き誇る鋼の血華
 見通すことも出来ないほどに長く長く続く、薄暗い板張りの廊下。
 かと思えば右を見れば、そこには無限めいて積み重なった鳥居がある。
 一方左手には、やはり迷路じみて入り組んだ武家屋敷風の通路。
 これが骸魂が生み出すという"迷宮"か、と黒城・魅夜はひとりごちた。
 そして今このときも、この"迷宮"は拡大を続けている。
 やがてカクリヨファンタズムそのものを侵食するだろう……病巣めいて。
「やれやれ、歌と踊りは遊びであり足止めの手段、といったところでしょうか。
 ……しかし、いいでしょう。あえてそこに乗るというのも一興ですから」
 ぬばたまの黒髪をふぁさりとかきあげ、魅夜は言った。
 彼女を包み込むように奏でられる旋律は、規則的なようで不安定だ。
 急に拍子が早まったかと思ったら出し抜けに途切れ、そしてまた再開する。
 旋律のリズムを読もうとすればするほど、それは幻惑的に形を変える。
 この音楽自体が獲物を惑わす目くらましであり、戦いの調子を狂わせるのだ。
 相手のリズムに合わせて舞おうとするだけでは、この敵は倒せない。
 自分自身のリズムを貫き、音楽を侵略することではじめて戦えるのである。
「私はあくまで殺し屠り滅ぼすもの――ですが」
 じゃらり、と音を立てて、百と八本の鎖が同時に射出された。
 迦陵頻伽の群れは、涼やかな顔でこの不意打ちをも躱してみせる。
 しかし、魅夜の攻撃という不規則な旋律が、奴らのリズムをわずかにかき乱した。
 その一瞬の隙を捉え、魅夜はぐるりと大きく体を回転させることで、
 花びらのように射出された鎖たちをじゃらじゃらと打ち鳴らし、音を鳴らす。
 耳障りな、しかし一定の規則性を持った、彼女らしい"旋律"を。
「私も、歌や踊りを愛でる程度の心はあるのですよ」
 じゃらり、じゃらり。
 ひらり、ひらり。
 迦陵頻伽たちの奏でる蠱惑的な旋律からすれば、鎖の楽音はいかにも無愛想だ。
 鉄と鉄が打ち鳴らすその音は、たとえるならば軍靴の足音にも似る。
 無骨で、不気味で、無秩序。しかしそこには無秩序という秩序がある。
 咎人を捕らえ裁くためだけの、研ぎ澄まされた機能的美と呼ぶべきものだ。
 さながら、極限まで切り詰められた銃器が、官能的なデザインに到達したように。
 死というものは、いつであれ生物を魅了して病まないのである。

 じゃらり、じゃらり。
 その音は、ただの騒音ではなかった。
 迦陵頻伽たちの旋律を、そして意識を魅了し、引き寄せる芳醇な花蜜。
 奴らが、鎖の範囲内に引き寄せられていると気付いたときにはもう遅い。
「あなたたちの調べは、実に美しく魅力的なものでした――ゆえに」
 ――その調べを糧に、鋼の血華を咲き誇らせましょう。
 口訣めいた言葉の直後、鎖はぐんと引っ張られるように急激に動いた。
 それは鎌でありギロチンだ。罪人の頸を刎ね飛ばす、無慈悲なる刃。
 頸を飛ばされた迦陵頻伽たちは、ぶしゅうと血の間欠泉をあげて崩れ落ちる。
 まさしく徒花。――その中心にひとり、黒き乙女は立ち尽くしていた。
 誘蛾を食らって咲き誇る、濃密な毒花のように、ただひとり。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花邨・八千代
※へべれけで大変面倒くさい酔っ払い羅刹です

うぃー…ひっく、なんらぁ?もう酒ねーのかぁ?
まだまだ飲みたンねぇぞー!あるだけ持ってこいや!

ぁーん?なんだ、随分キレーなにーちゃんが居るじゃねーか
まー俺の彼氏の方がキレーなんだけどなー!

いよーし!お前も一杯やれ!ここの酒はうめーぞー!
おん?俺の酒が飲めねーってか?
なんだよーつまんねぇなぁ、この乳首ピンクめ!
飲めや歌えの無礼講じゃねーのかよー!
なーぁー、一緒に飲もうぜー!
なーってば、なー!

にしてもキレーな羽してんなぁ、きらきらしてて
よっし、毟って土産にすっかぁ

ガッと掴んでぶんぶんってしてぶちっとするぞ
さて、お前はどんなキレーな悲鳴を挙げてくれんのかなぁ



●絡み酒はほどほどに(マジで)
「うぃー……ひっく」
 どこの昭和のサラリーマンですか? みたいな千鳥足で、
 えっちらおっちらと揺れながら歩く花邨・八千代。
 その目は完全に据わっており、赤ら顔は茹でダコのようであった。
 誰がどう見ても酔っ払っている。びっくりするぐらいの酔っぱらいだ。
 その手には空っぽになった酒瓶を持ち、口を開けると逆さにして振った。
 が、当然もう何も出てこない。わざわざ片目を瞑って中を覗き込む始末。
 もちろんそんなことをしたところで、酒が湧いて出てくることはないのだが。
「なんらぁ? もう酒ねーのかぁ……まだまだ呑みたンねぇぞコラー!!」
 ふらふら右に左に揺れながら、拳を振り上げてぎゃあぎゃあ騒ぐ。
 さすがの迦陵頻伽たちも、この厄介な酔っ払いにはちょっと距離を取っていた。
 近づいたら握りつぶされる。腕とか頸とか。そういう確信があった。
「ぁーん……?」
 すると八千代は、遠巻きに様子を伺う迦陵頻伽たちを藪睨みした。
 彼女の視界は万華鏡めいてぐるぐると回り、迦陵頻伽が二倍にも三倍にも見える。
 酩酊のせいで視界がブレているのだが、しかしひとつわかったことがある。
 彼らのその美しさである。これが、連中にとっては災いとなった。
「なんだァ……ずいぶんキレーなにーちゃんたちが居るじゃねーかァ……。
 ひい、ふう、みい……やべェ数えらんね! ウケる! ギャハハハハハ!」
 指差し数えようとして、ふらついてけらけら笑う。怖い。
「まー俺の彼氏のほうがキレーなんだけどなー!!」
 誰も聞いてないのにそんなことを言い出す。怖い。
「……なんだァそのツラァ、俺の彼氏がキレーじゃねって言いたいのォ?」
『い、いや我々別にそんなこと一言も』
「俺の彼氏は世界一キレーなんだよォーッ!!」
『グエーッ!?』
 SMASH!! 理不尽すぎるストレートパンチが迦陵頻伽をふっとばした!
 ざわざわ。もしかしてこいついますぐ殺したほうがいいんじゃねーか? となる皆さん。
 八千代は完全に据わった目で迦陵頻伽たちを睨みつけ……急ににこっと笑った。
「ぃよーし! こうなったらアレだ、お前らも一杯やろう! な!!」
『『『えっ』』』
「おん? 俺の酒が呑めねーってか? オォン!?」
 か、絡み酒だ! しかもめちゃくちゃ威圧的で怖いヤツ!!
 逃げようとする迦陵頻伽たちを韋駄天みたいな速度で首根っこ掴んで捕えると、
 八千代はどすんと座り込み、酒もってこーい! と騒ぎ始めた。
 不意打ちして殺すどころの話じゃないその"圧"に負けた迦陵頻伽たち、
 仕方ないので近くの宴会場からお酒を持ってくる。立場が完全に逆転していた。
『あ、あのすいません、一応舞踏場なんでお酒はそこそこに……』
「なんだよぉ、呑めや歌えの無礼講じゃねーのかよー、つまんねぇなあこの乳首ピンク!」
『ち、乳首は関係ないでしょう!?』
 ささっ。なんか急に恥ずかしくなってきたので女の子みたいに隠す。
「ひゃひゃひゃ! おもしれー! なーぁー一緒に呑もうぜ兄ちゃんたちよー!
 その羽ほんとキレーだよなあ、キラキラしててさあ、宝石みたいで……」
 じーっ。孔雀めいた羽を凝視する八千代。沈黙。
 ……………………………ぶちっ(沈黙の果ての突然の蛮行)
『グワーッ!?』
『『『ああっ! は、羽を毟られて戦闘不能にー!?』』』
「よぉし決めた! むしって土産にしーよおっと!」
 こうなるともはや八千代は止まらない。
 その羅刹の腕力をフル活用し、逃げ惑う迦陵頻伽をちぎっては投げちぎっては投げ!
 あ、この場合のちぎるってのは、もちろん羽をちぎるという意味だ。
「ひゃひゃひゃ! そうらそうら、呑まねえなら悲鳴をあげて逃げろ逃げろー!
 キレーな悲鳴をあげて俺を楽しませてくれよぉ! ひゃひゃひゃひゃおえっぷ」
 テンションのあまりにいけないものが戻りかけて、こらえて、飲み込む。
 どっちが悪党なのかわかりゃしない、一方的な暴虐が迦陵頻伽たちを襲う!
 解放された妖怪たちも、わけもわからぬ恐怖を刻まれ身を震わせたという……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鍋島・小百合子
WIZ重視
他の猟兵との絡みアドリブ歓迎

宴はまだまだ続くようじゃのう?
なればもう少しだけ付き合うとしよう

「舞を共にした者からもろうたのじゃ。わらわと踊ぅてたもれ」
魔に奉ずる初手の舞からUC「魔眷属降臨」発動
召喚したキメイエスの眷属に宴の席でもらった甘味を報酬として先払い、共にお祭り騒ぎに乗る
わらわと眷属とで披露するは薙刀と細剣の武舞(ダンス、パフォーマンス、併用)
基本は敵の調べに乗せるようにかつこちらが乗せられない事を意識
祭祀扇を携えつつ我が薙刀の技をこしらえた舞にてこちらを魅せんとする敵すらも誘惑してみせようぞ(なぎ払い、範囲攻撃、鎧砕き、破魔、乱れ撃ち、鼓舞併用)


御狐・稲見之守
さ、呑むか。
[化術]でどろん、大人姿となってさっき呑めんかった酒をいただこう。

神さまが酒を呑むのはハレと決まっているもんだ。
我は今、実に気分がよろしい。
おいそこの半裸で翼生えてる奴、なんか面白いことはできんのか。
そうさな、どじょう掬いのひとつでもやってもらおうか。

なに、できない? うっさい我は神であるぞ口答えするでない尻から手突っ込んで奥歯がたがたいわすぞコラ。
[UC眩惑の術][呪詛][催眠術]――汝、我が云いに抗うこと能わず。なんか面白いことやれ。

アドリブOKというかそれでなくともMS殿の好き放題なことになるがゆえプレ無視可とす。うむ、酒がうまい。


雨宮・いつき
少しは落ち着いて来たかと思いましたが、まだまだ祭りは終わりそうにありませんね
いいでしょう、こちらもまだまだ物足りなかったところ
蝶の舞に引き続き、狐の舞をご覧あれ
蒼扇を広げて水行の舞を演じ、彼らの美声の誘惑を相殺すべく、【誘惑】の術式を籠めた霊力を舞い広げます

調べが美しければ美しいほど、こちらも興が乗るというもの
本来、舞と調べはお互いを引き立て合う調和の関係が良いのですが…
今宵は、僕の舞踏が主役です
このまま彼らを舞の虜にし、奏でる事すら忘れてしまうほどに惚けさせて、他の猟兵の方達を援護致します


李・桃花
あくまでお祭り騒ぎにしたいわけね?なるほど。なら乗ってあげましょう。
……ただしこっちも得意な分野でね。

大声をあげて名を名乗り決闘を叩きつける!見世物にしてしまえばこれもお祭りよね?
天狼拳、李・桃花!勝負を申し込む!【青燐功】を発して見切ってカウンターを叩きこむ!
……少しは舞うように戦ってあげてもいいかしらね。見世物って体だし。

1体倒したらほかの奴らに挑発してお祭りを続けるわよ。あ、そうそう「乱入」も歓迎だから。

なんかこう……じわじわと滅茶苦茶にする感じでいくわよ。祭りに喧嘩はつきものって言うしね。



●神前ハレの日といえば縁起よく聞こえるものですが
「我はいま気分がよろしい。実に!! よろしい!!!!」
 どんっ!
 酒瓶を床に叩きつけ、酔っぱらい特有の大声で御狐・稲見之守は言った。
 その体は普段の童女めいたものから、大人らしい肢体に变化している。
 見た目は子供だが中身は大人、いや名探偵的な意味ではなく年齢的な意味で。
 なので稲見之守はお酒を呑んでも大丈夫なのだ。見た目も変える安心設計。
 ……とはいえ、いささか呑みすぎではないだろうか?
 座り込んだ彼女の周囲には、すでに空き瓶が山と積み重なっている。
 しかもその呑みっぷりと来たら、猪口に注いでぐびりどころの話ではない。
 瓶ごと掴んでラッパ呑みである。アル中のおっさんみたいな勢いであった。
 それでも神らしい荘厳さが……ある、かなあ? どうかなあ……?
「そら、皆のもの、踊れ踊れ。歌え歌え。それがダメならなんか面白いことせよ。
 特にそこの、その半裸で翼生えてる奴ら! お前らはどうなんじゃ、おォん!?」
 と、迦陵頻伽の群れにだる絡みする始末。
 ……だ、誰がどう見ても、厄介なタイプの酔っ払いだこれ!!
「……おかしいのう。わらわたち、オブリビオン退治に来たのじゃよな?
 妖怪を飲み込んだ骸魂を調伏するため、あえて舞踊に乗ったのじゃよな?」
 それがなんでこんな、酔っ払いを満足させるために舞うハメに。
 鍋島・小百合子は天を仰ぎつつ、それでも一応真面目に武闘を舞う。
 薙刀とレイピアを振るい、悪魔キメイエスの眷属たちとともに舞い踊るのだ。
 いやまあ、その召喚された悪魔の皆さん、酒の準備で忙しいんだけど。
 なんでって? そりゃまあ、騒いでるのが一応魂喰らいの神なので……。
「ま、まあまあ。おかげで僕たちは襲われることなく一方的に舞えてますし!
 ……ちょっと迦陵頻伽たちが可哀想になってきますが、これはこれということで」
 と苦笑しつつ、雨宮・いつきもまた水行の舞で涼し気な冷気をさまよわせた。
 本来であれば、その霊力は迦陵頻伽たちの誘惑の美声を振り払い、
 清廉な水気によって場を浄め、以て妖気を退けるかっこいい技のはずなのだ。
 なのだが、そこでぎゃんぎゃん騒いでる酔っぱらいが悪さして、
 溢れ出る水気をお酒に変えてガンガン呑んでいた。どっちが敵だよこれ。
 ともあれそのおかげで、あちらが漂わす妖気だの魅了だの、
 そんな茶々をも覆い飲み込む霊力が、この武闘場を圧倒していたのだが。
 端的に言うと、迦陵頻伽どもをすらひるませる宴のオーラである。
 水気の舞に付き従う狐霊たちも、若干酔っ払ってるきらいがあった。
「本来、舞と調べはお互いを引き立て合う調和の関係がいいのですが……。
 これだともう、完全にこっちがあちらの調べを食ってしまっていますね」
「なあに、どうせ全員ぶっ倒す敵なのよ、細かい過程なんてどっちでもいいわ!
 祭りに喧嘩はつきもの、妖怪を食い物にする連中に付き合う道理はないしね!」
 一方、この乱痴気騒ぎを割とノリノリで楽しんでいる猟兵もいた。
 李・桃花は快活な声でそう言うと、だんっ!! と震脚して敵をにらみつける。
「さあ、次はどいつが相手かしら? 来ないならこちらから行くわよ!
 歌え騒げと誘ってきたのはそちらでしょう? すこしは見世物らしく戦いなさい!」
 天狼拳の使い手としての威風を込めた挑発に、迦陵頻伽たちは震え上がる。
 あそこで絡み酒する酔っ払いのせいで、楽音による魅了もままならない状況だ。
 そこに正面切って啖呵を切られたとあらば、おとなしく付き合うしかない。
 そうして立ち合いに挑めば、たちまち小百合子といつきの舞が彼らを翻弄する。
 つまり、一方的な蹂躙である。まあ日本古来の舞における殺陣とは、
 だいたい悪い連中を善玉がばったばったとなぎ倒すものが主流であるからして、
 むしろ猟兵たちの一方的蹂躙は、ある意味で古式ゆかしいものと言えた。

 しかし、それを上から目線で観覧している酔っぱらい(またの名を稲見之守)はそうもいかぬ。
「なんだその情けないへっぴり腰は、それでもオブリビオンかお前たちは!
 どうせならもっと歯応えのある戦いを見せぃ! 我を楽しませてみせよ!!」
『あ、あの』
「なんじゃコラァ」
 おずおずと歩み出た迦陵頻伽(もうこの時点でだいぶ可哀想だ)を睨む稲見之守。
『わ、我々一応踊り手であるからして、戦うならもうちょっとこう舞とか』
「うっさい我は神であるぞ! 口答えするでない!!」
『ひい!!』
「いいから我を楽しませるよう必死で舞って戦って、そんでやられよ!
 でないとあれじゃぞ、尻から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わすぞコラ!!」
『アイエエエ!!』
(((昭和の不良のようじゃ/ですね/だわ……)))
 壇上で舞を続けつつ、オブリビオンすら震え上がらせる稲見之守の"圧"に、
 自分たちは矛先にならなくてよかったと心底安堵する猟兵たち。
 なんだこの構図。おかしい、猟兵とは協力して戦い合うものでは……?
 いやまあ壇上の三名は協力しているのだが、約一名が幅をきかせすぎている!
「……なんだお前ら、我にも踊って戰えと言うか? ん?」
 じろり。そんなこと言ってたら稲見之守が猟兵たちのほうを睨みつけた。
「無理にとは言わぬが、こ……もうちょっとやりようがあるじゃろ……?」
「そうよそうよ、せっかくの「お祭り」なんだし。ていうかあれよね、
 お酒はいいけど呑みすぎじゃない? ちょっとあいつら可哀想よ?」
 小百合子の言葉に、さすがの桃花もフォローを入れる始末である。
「僕らが舞うように諭すというのも、なんだかへんてこな状況ですが……。
 あの、まさかとは思いますけど、妖気に呑まれちゃってるとかは……」
「我がこんなチンケな妖気に呑まれるわけがなかろう!!(酒瓶どんっ)」
「ひえっ」
 少年妖狐陰陽師、酔っ払いの大声に反射的にびくりと身をすくませた。
 よくない構図だ。いたいけな少年を恫喝する酔っ払いとか、よくない図だ!
 しかし稲見之守、猟兵たちの物言いに、しばし据わった目で考え続ける。
「……ふむ、しかしそうだな。我も観覧してばかりでは少々座りが悪い」
「そうじゃぞ、もう少し真面目に戦……うん? 一体何をやっておるのじゃ?」
 感心感心と頷いていた小百合子、稲見之守の様子に眉根を顰めた。
 稲見之守は立ち上がり戦うかと思いきや、ビビリ散らした迦陵頻伽たちを手招きし、
 従わないと見るや無理やり首根っこ掴んでその場に座らせたのである。
 完全なパワハラだ! 嫌な上司が酒弱い部下に呑ませる時のアレだ!
「ほれ、我の目を見よお前たち」
『『『あ、あの我々舞手なので』』』
「我の目を見ろっつってんだろコラァ!!!!!!」
『『『アイエエエ!!』』』
 ピカーッ。稲見之守の目が妖しく輝く! どっちが敵だよホントこれ!
 ともあれ迦陵頻伽たちはその眼光を浴びると、ふらりと立ち上がった。
「えっ、今何したんです!?」
「"眩惑の術"よ。こやつらを操り人形にしてやったのだ」
「……ん? それってもう戦い終わってない?」
「それじゃ我がつまらん! というわけでお前ら、なんか面白いことやれ。
 どじょうすくいとか、あとはこう……もっとかっこよく戦うとかあろう!」
「「「えーっ!?」」」
 放蕩ここに極まれり。魅了しておきながら敵を猟兵にけしかける神!(妖狐)
『『『ウオオオオオーッ!!』』』
「何もかもおかしくないかのうこの状況は!」
「こ、こうなったら僕たちの舞で、皆さんを正気に戻すしか……! あれ? 何かおかしいような???」
「うん、とにかくぶっ倒せばいいってことね! そう考えればシンプルだわ!」
 首をかしげる小百合子といつきを、桃花が暴力メソッドで丸め込んだ。
 かくて始まる第二ラウンド、美しき舞と玄妙な調べ、そして清廉なる拳。
 三者三様の舞が哀れなオブリビオンどもを斬り捨て、祓い、打ち倒す。
 骸魂は調伏され、可哀想な妖怪たちが次々と救出されていった。
 少なくともこの乱痴気騒ぎのおかげで、敵のペースはめちゃくちゃである。
 いやまあ、敵と味方という概念がだいぶごっちゃになってる気はするが。
「うむ、実によきかな。酒がうまい!」
 そしてひとりご満悦の稲見之守であった。
「じゃから! おぬしも!! 戦わぬかーっ!?」
「むしろ手間が増えてますよねこれ!?」
「酔い醒ましに一発鉄拳が必要かしらね!?」
 頑張って戦う猟兵たちの悲鳴(ルビ:ツッコミ)もどこ吹く風。
 神とは傍若無人なものなのだ……とか言えば収拾つきませんかねこれ。
 つかない? まあ敵は倒せたし、よしとしよう!(強引なまとめ方)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

三咲・織愛
ヨハンくん(f05367)と

えへへへ
今日はなんだかずーっと楽しいです!
わぁー!音楽もすごいし、翼も綺麗ですね!
呑んじゃだめって言われてるから呑むのは無理なんですけど、
歌も踊りも得意ですよー!

ほらほら、さっきは踊ってくれなかったんだから、
今度こそ一緒に踊ってくださいな(ぐいぐい)
ヨハンくん踊れないの?
お姉さんがリードしてあげますよ(えっへん)

回しちゃうとだめみたいだから私がくるくる回りまーす
えいやっ!(ストレートパンチ)
とおっ!(アッパーカット)
そーれっ!(ダブルスレッジハンマー)
音楽に合わせてぼっこぼこにしていきましょう!
え?この鳥さん達オブリビオンですよね?
大丈夫!それくらいわかってますよ!


ヨハン・グレイン
織愛さん/f01585 と

楽しくない時の方が少ないんじゃないか……?
いいか悪いかはともかく
場の雰囲気に飲まれて敵の区別もつかなくなられては、身の危険もありますし
結局世話を焼くしかないんだな……

いやだから俺は踊らないと
何度も言わせないでくださいよ
踊れないんじゃない、踊りたくないんだよ
やっぱり面倒だから帰ってもいいか??

一先ずは付き合いましょう
拷問じみたぶん回しがないなら一緒に踊ってやってもいい
隙を伺いながら蠢暗黒を地に這わせ、呪詛と全力魔法で練り上げた刃を敵に喰らわせよう
……なにやら隣で踊りながら撲殺してる人がいるんだが
ああ、ちゃんとオブリビオンだと分かっていたんですね……



●こうして少年は振り回される
「えへへへ、今日はなんだかずーっと楽しいです! ね、ヨハンくん!!」
「俺の顔を見てそのフリをしようと思ったなら大したものですよあなた」
 にこにこ笑顔の三咲・織愛に対し、げんなり顔のヨハン・グレインは言った。
 おかしい。こういうのが嫌だから再三再四釘を差していたはずなのに、
 これっぽっちも効いていない。なんかこう、オブリビオンの攻撃があったのか?
 でもわかっていた。どんだけ言葉で釘を差したところで無駄なんだって。
 なぜなら織愛はパワー系女子。多分パワーで言い聞かせてもとまらない。
 そんなわけでヨハンは、完全に諦めきった表情でため息をついた。
「……いいですか、敵味方の区別もつかなくなるほど場酔いはやめてくださいよ。
 それで俺がぶっ飛ばされたら、間違ったでは済まない話になりますからね」
「ええーっ! ヨハンくん、そんなことを心配していたんですか!?」
 そう言われると、さすがの織愛も心外そうにぷんぷんと頬を膨らませた。
「そんなことしませんっ、私をなんだと思ってるんです!?」
「いくら言ってもまともに話を聞いてくれない人ですかね……」
「もうっ、今日はお祭りなんですよ? 楽しく騒ぐぐらい誰でも出来ます!」
「騒ぎ過ぎだっていう話をしてるんですが……」
「ああ言えばこう言うですねー、ほらヨハンくん、とにかく踊りましょう!」
「話に脈絡がなさすぎないか???」
 酔っぱらいにありがちな特徴である。いや、織愛酒のんでないのだが。
 ともあれ、迦陵頻伽たちの旋律は心地よく、織愛はふわふわしていた。
 もうだいぶ妖気に呑まれ……いやあえて乗って……? とにかく、そんな感じ。
 そしてヨハンを今度こそ踊らせようと、ぐいぐい腕を引っ張る始末。
 まるで、デパートでほしいおもちゃをおねだりする子供めいた振る舞いだ。
「いやだから俺は踊らないと……何度も言わせないでくださいよ」
「え~? ……あ、わかりましたっ!」
「どう考えてもわかってない気がしますが一応聞いておきましょうか」
「ヨハンくん、ひょっとして……踊れないんですね~?」
 出たよ、みたいな顔で心底から重く長いため息をつくヨハン。
 わかったぞ~、みたいなしたり顔の織愛がなおさらイラッとくる。
 そうじゃねえ。そうじゃねえけど言ったところでわかってもらえる気がしねえ!
「……ですから、俺は踊れないんじゃなく踊りたくないのであって」
「大丈夫ですよヨハンくん、お姉さんがリードしてあげますから!」
「やっぱり面倒だから帰ってもいいか???」
 うんざり顔のヨハン、なぜかえっへんとドヤ顔の織愛。
 そんなふたりを取り囲む迦陵頻伽。……あっ臨戦態勢だこれ!
「さあいきますよヨハンくん! 回したりはしないから安心してください!」
「回したら未来永劫呪いますからね草葉の陰から」
 やれやれといった調子で言うと、ヨハンは観念して織愛の手を取った。
 そしてほとんど織愛に振り回される形で、ぎこちないダンスがスタートする。
 ステップを踏んで攻撃を回避し、タップを刻んで間合いを保ち、
 リズムに乗せて刃を生み出し、特にそういうの関係なくストレートパンチ。
 ……ん? ストレートパンチ???
「えいやっ!(ぶんっ)」
『グワーッ!?』
「とおっ!(しゅばっ)」
『アバーッ!?』
「そーれっ!」
『『『ギャアアアアアアッ!!』』』
 ストレートパンチ、アッパーカット、ダブルスレッジハンマー。
 どこがダンスじゃい! みたいなガチガチの打撃技で消し飛ぶ迦陵頻伽たち。
 一応真面目にリズムを取って魔力を操っていたヨハンは、呆れた。
「……それ、本当に踊ってるって言いますか?」
「えっ? この鳥さんたちがオブリビオンなんですよね??」
「そうではなく……まあ倒せてるからいいんですが」
 ヨハンは思った。
 もしも織愛が酒を呑めるようになったら、どんな地獄が訪れるのかと。
 あの暴威が万が一にも己に向かってくる日を思うと……。
 敵ながら、消し飛ばされるオブリビオンたちに同情せざるを得ないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸櫻沫

あっははは!気分がよいわぁ!
宵に酔い心地、満開の春が咲いたよう
リルったら
お餅みたいに膨れちゃって…かあいい
どれ、ひとくち食べてしまおうか

(ほっぺをつつく)
(尾鰭ビンタされる)

照れちゃって!そんなあなたもかわいいわ!
頬にキスでもしてあげようか?
うふふ!

お祭りなんだから、楽しまなきゃ損よう
桜花絢爛、桜を咲かせて吹雪かせて

綺麗な鳥だわ
リルの歌声のほうがずぅと美しいわ
『酔華』
酔って狂うておしまいな
桜嵐のように舞うように
なぎ払って抉り裂いて
まっかなあかを咲かす
桜と変える龍呪は天罰の如く舞い散らせて
いのちと共に喰らうてしまえ

私の桜宴
もっと楽しませて頂戴よ

まだ足りないわ
宴の〆は鶏鍋なんてどうかしら!


リル・ルリ
🐟櫻沫

あんなに飲んだらダメだっていったのに!
酔っ払い!酔っ払いが!
櫻宵じゃなくて、櫻酔だ!!
ぷんすかぷんしていたらほっぺをつつかれた
尾鰭ビンタを返してやる
もーー!恥ずかしいだろっ!
あとで!!

ヨルは……?アッ!物陰に隠れて警戒してる…
櫻のせいだぞ!
それでも宴を楽しんでる姿は可愛くて、しょうがないなぁって許してしまう
そんな僕もしょうがない人魚だ

でもね、君が踊るのはそんな鳥の奏でる音ではなくて、僕の歌であるべきだ
歌う、櫻への鼓舞としっかりしろよを込めた
『月の歌』
盛り上げてあげるから、綺麗に舞って咲かせて見せて
そしたら酔いも覚めるでしょ
酒癖さえアレじゃなかったらな…

でもあの鳥は不味そうだよ
僕の方が…



●酔いしれさせるっていうか酔ってんだよ
 ヨルは震えていた。
 ぷるぷるとできたてのプリンのように震えながら、物陰に隠れていた。
 なんとも痛ましい姿である。心なしかちょっと膨れているようにも見えた。
 誰のせい? オブリビオンかな? そんなわけないだろ!(反語)
「櫻…………」
 じろり。リル・ルリの責め立てるような眼差しもどこ吹く風。
 大好きなお酒を補給した誘名・櫻宵は、心底楽しそうであった。
 普段ならもう少し反省してしんなりしているところなのだが、
 この迷宮全域に立ち込める妖気のせいか、すこぶる上機嫌のままである。
 そう、これはオブリビオンのせい、櫻宵だけを非難することは出来ない……。
 敵の妖気はそれだけ恐ろしいということなのだ。おお、許すまじオブリビオン!
「あっははは! 気分がよいはぁ! 宵に酔い心地、満開の春ねぇ!」
 いやだめだこれ誰がどう見ても自業自得だわ。
 ともあれ、櫻宵はけらけら笑いながらリルの体を抱きすくめる。
「あんなに呑んじゃだめって言ったのに……って、ちょ、さ、櫻!?」
「うふふふふ。お餅みたいにほっぺた膨らませちゃって、かあいい」
「あーもー、やめてよ絡み酒! 誰かー! 酔っ払い! 酔っ払いがここにー!!」
 助けを呼んでも無駄である。来るのはせいぜい迦陵頻伽どもだけだ。
 そしてとうのオブリビオンたちも、ふたりのイチャイチャオーラに近づきあぐねていた。
 敵をも怯ませるほどのLOVEの濃度……まさに密である。わーお。
「リルったら、照れちゃってるのかしら? うふふふ」
「怒ってるんだよぉ! 見てよあのヨルの生まれたての子鹿みたいな震えっぷり!
 それもこれも櫻がいけないんだぞ! 櫻なんか櫻宵じゃなくて櫻酔だ!!」
「存外上手いこと言うのねリル! 旨いといえばリルのほっぺ食べちゃいたいわ」
「こっちもこっちで手に負えない……!!!!」
 うんざりである。しかも(オブリビオンに)見られてるから恥ずかしい。
 リルはべちんっと尾びれビンタをかました。足りないのでさらにびびびびびん。
「ああっ」
 どこぞの妖怪漫画風にビンタされる櫻宵。はたしてこれで正気に……?
「じゃあ代わりにキスでもどうかしら、うふふ!」
 だめだったこれ。全然反省してねえ。
 しかし責任問題で言えば、そんな櫻宵を許容してしまうリルも大概だ。
 抱きかかえられきゃあきゃあと愛でられ、そんな姿をいとおしく思ってしまう。
 惚れた弱みというやつだ。揃いも揃って相手には弱いのである。
(まったく、僕もだめな人魚だな……ごめんねヨル)
 ぷるぷる震えてるヨルのほうを見て、申し訳無さげにするリルだった。

 さておき、そろそろオブリビオンのほうも本腰を入れてきた。
 見当識を崩す幻惑的な旋律を奏で、心を惑わせて従えようとするのだ。
「あらまあ、私を歌で従えようだなんて。だいそれたことも考えるものね?」
「ほんとにね――櫻には、僕がいるんだから」
 リルはきっと迦陵頻伽たちを睨みつけ、対抗するように歌を口ずさむ。
 それは迦陵頻伽の小夜啼鳥めいた歌声よりも、ずっと蠱惑的で不気味な歌声。
 彼岸の彼方から響き渡るような、幽玄なる月光のごとき歌声であった。
「月は囀り泡沫散らす/壊れた歯車/砕けた硝子――」
「うふふ、うふふふふ! リルの歌のほうがずぅっと美しいわ!」
 紡がれる歌声に寄り添うようにして、櫻宵の桜吹雪が舞い踊る。
 それらは酒精を湿らせた酩酊の桜吹雪。龍神をも蕩かす酔華の群れ。
「酔って、狂うて、おしまいな――」
 心をたぶらかそうとした迦陵頻伽どもは、その報いを受けた。
 桜嵐のなかで舞い踊る竜が、その刃(きば)で獲物を食いちぎる。
 真っ赤な、あかいあかい花が咲く。それは見惚れてしまいそうなほど美しい。
 ――そして震えが来るほどに、おぞましくおそろしの景色であった。
「酒癖さえあれじゃなかったらなあ……」
 そんな恋人の姿に見惚れつつ、リルは心底からため息をついた。
 もっとも、殺戮に酔いしれる大蛇には、とても届きそうにないが。
 そんな不遜な振る舞いもまた、いとおしいと感じてしまうリルなおだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
ふふっ、アナタ達だけ滅べばいいのではなくて?
……なんて、嫌味を言って聞くような相手でも無さそうね。
さっさと大元にたどり着くためにも手早く片付けましょうか。

まずは敵の群れを踊りに誘い人気の無いところへ誘導するわ。
出来れば水辺があるといいかしらね?

充分な数が集まったら、準備完了。
さあ、わたしと一緒に踊りましょう?
この冷気の糸張り巡らせされた氷上の舞台で。
糸に触れちゃダメよ?凍ってしまうから。

踊りってね?ただの馬鹿騒ぎではないの。
可憐で、優雅で、見た者の心を動かすものでもあるのよ。
決して惑わし狂わし滅ぼすものでは無いわ。
ええ、アナタ達にそれを見せてあげる。
騎士人形達よ!剣を手に舞い踊り切り刻んで!



●氷上の舞
 ぱきぱきと音を立てて、静かな水辺に霜が張り、凍りついていく。
 冷気を漂わせる糸の結界の中心に浮かぶのは、フェルト・フィルファーデン。
 やってきた迦陵頻伽どもを睥睨し、麗しき妖精の乙女はにこりと微笑む。
 冷気のせいか、それはいつもよりも酷薄に、そして冷徹に見えた。
「ふふっ、"この幽世が滅びるそのときまで"……だった、かしらね?
 どうせ歌って踊るなら、アナタたちが滅べばいいのではないかしら?」
 迦陵頻伽たちは、そのただならぬ気配に身構える。
 しかしもう遅い――糸の結界は、現在進行形で広がり続けているのだ。
 何か雰囲気が変質したことに気付いた奴らが、振り返ったときにはもう終わっていた。
 ……退路を断つように張り巡らされた、糸の道――否、壁。
「さあ、歌い踊りましょう? アナタたちが望んだ舞を存分に楽しみましょう。
 ああ、けれど――この冷気の糸に触れてはだめよ? 凍りついてしまうから」
 ふわり、とフェルトの体が宙に浮かび、人形たちがそれに続いた。
 迦陵頻伽たちはとっさに左右に分かれ、騎士人形たちの突進を回避する。
 待ち構えているかのように張り巡らされた冷気の糸が、その体を絡め取る。
 おお、見よ……うかつな迦陵頻伽が数体、氷像と化し砕け散った。
 ぱらぱらと透明なかけらが散る。生き残ったオブリビオンどもは戦慄した。
 誘い込まれたのだと気付いたところで、もはや逃げることは出来ぬ。
 ならばと奴らは幻惑的な旋律を奏で、騎士人形たちを蹴散らそうとした。
 繰り出される蹴撃は死神の鎌じみて鋭く、拳撃は氷をも砕くほどに鋭い。
 しかし。ここはフェルトが作り出した舞台、いわば彼女の迷宮。
 注意をよく凝らさないと見えないが、糸は常に蠢き続けている。
 フェルトが舞い踊るたびに、その動きに合わせて揺れ動いているのだ。
 つまり、先ほどまで何もなかったはずの場所に、糸の結界が出来ている。
 ここなら大丈夫だろうと避けた瞬間、意識外から冷気が襲いくるのだ。
 ならば、糸の結界に注意を払えば大丈夫なのかと言えば、無論否。
 それは、襲いかかる騎士人形たちの猛攻の前に、無様を晒すということ。
 まさしく前門の虎、後門の狼。
 攻撃など考える暇もない、ひたすらに全方位に注意を払い避け続けるしかない。
 それはいかにも無様で、とても舞とは呼べないものだった。
 哀れなオブリビオンたちの悪あがきを"舞"の域へと昇華たらしめているのは、
 糸によって舞台そのものを操る、フェルトの指先である。
「踊りってね? ただの馬鹿騒ぎではないの――可憐で優雅で、心動かすもの。
 決して惑わし狂わし、滅ぼすものではない。それを身を以て知りなさい!」
 騎士たちの剣が、槍が、その身を斬り、そして貫く。
 砕け散る氷の結晶は、王女を彩るようにきらきらと光り輝いた。
 ダイヤモンドダストのなか、麗しの乙女は優雅に舞い踊る――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジン・エラー
【甘くない】
よォ~~~~するに救うついで、愉快に踊り狂ってもい~~~~ィぜってことだろ?
余ォ~~裕だなァ~エリシャ?

ヒャヒハハ!!やっぱお前は綺麗ェ~~~だよ
末恐ろしい~~~ィほどになァ
なァ、お前らもそう思うだろ?
───聞いちゃいねェか

あァ~~~~~まッたくまッたく、お前ら如きがコイツの邪魔をするなンざ百万年早ェ~~~ンだよオレに救われて出直しな
……比べるのも酷ってモンか?ウッヒャヒハハ!!!

とォ~~~ころでよォ~~~~エリシャァ~~~~~
さっきから首やらが痒ィ~~ンだよな
は?鱗?目が変?
ン~~~~だそりゃァ~~~~!!お神酒飲ンだ天罰ですってかァ〜〜〜〜〜!!!


千桜・エリシャ
【甘くない】
…これはもう乗った者勝ちですわね
ええ、勿論
私だって愉快なことは好きですもの
それに芸事が得意なのはあなた達だけではなくてよ
私とて妖
惑わし魅せることは得意ですわ
終わらぬ祭がお望みならば
終わらぬ夢を魅せてあげましょう
――桜の妖の舞、とくと御覧あれ

大太刀を抜いて剣舞を演じながら
くるり舞っては斬って斬って
気付いたときには夢の涯
あら、ジンさんもやりますわね
ぴかぴかと景気がいい上に
今日はよく口が滑ること
まだ酔っているのかしら?

…ジンさん?ちょっと
ぐいっと顔を近付けて
これ…鱗…?
私の羅刹紋と似ているような…
それにその瞳
瞳孔が縦に割れて…なんだか竜みたいな…ううん?
もう!心配してるのに呑気ですわね!



●ビタースウィート・ダンス
 終わらぬ祭り。
 終わらぬ夢。
 それはこの世にはありえない、幽世の宴だ。
 しかしこのカクリヨファンタズムですら、それはあってはならない。
 存在すればたちまち、不安定なこの世界の摂理を捻じ曲げてしまうだろう。
 つまりは破滅。かりそめの世界は、何もかも虚無へと没する。
 だからこそオブリビオンどもは歌う。
 だからこそオブリビオンどもは踊る。
 世界が破滅するときまで。
 すべてが虚無に堕ちるまで。
 歌い踊る。幽玄なる楽音とともに歌い踊る――。

「そんなに、終わらぬ祭りが、終わらぬ夢が見たいんですのね」
 千桜・エリシャはにこり、と微笑み、うっとりするような色香を覗かせた。
 見ているだけで吸い込まれてしまいそうなほどに、その瞳は美しい。
 まさしくこの世ならぬ美。――オブリビオンどもですら怖気が立つほどの。
 迦陵頻伽たちは、その瞳を見た瞬間、その声音を聞いた瞬間、理解した。
 "これ"は、自分たちにとっては相容れぬ"もの"だ。
 "これ"は、存在を許容してはならない"もの"なのだと。
「私とて妖――惑わし、魅せることは得意でしてよ」
 指先が空気をなぞり、腰をひねり、くるりと一回転。
 ざん、とぬばたまの髪が広がり、絹糸のような髪が夜霧に煌めいた。
「終わらぬ祭り、終わらぬ夢を魅せてあげましょう」
 齢は千年、
 言祝ぐは万年。
 ひとたび見れば寿命さえ永らえる。
 これは彼岸の舞、千年を越え仙年を刻むが如き、時の力をたたえた舞。
「――仙年桜の舞、どうぞ御覧あれ」
 くるり、くるり。
 舞の中に鋭い刃が隠れていると気付いたときには、もう遅い。
 心を蕩かされた迦陵頻伽たちは、素っ首をあっさりと刎ね飛ばされた。

「――ヒ」
 その幽玄にして不気味なさまを見て、ジン・エラーは喉を引きつらせた。
 恐怖? ……まさか。その二色の双眸は、愉快げに歪んでいる。
 むしろ嗤い愉しむような、どこまでも露悪的で胸のムカつく三日月に。
「ヒ、ヒ、ヒャ、ヒヒャハハヒヒハハハ!!」
 そして背中をそらし、何がおかしいのか、けたけたと笑い声をあげた。
 これが笑わずにいらいでか。あの女の美しくおぞましいこと!
 それに魅入られ、そして頸を刎ねられるあの莫迦どもの呆け面ときたら!
 実に、実に愉快だ。なんとも美しく、おぞましく、そして不気味である。
 ジンはその汚濁を許容する。人を殺すほどの美しさを肯定する。
 ――それは紛れもなく、過去の残骸どもにとっての"救い"であろうから。
「やっぱお前は綺麗ェ~~~~だなァ? エリシャ」
 くつくつと煮えたぎるように笑いながら、舞を終えたエリシャに歩み寄る。
「なァ、お前らもそう――あァ、もう聞いちゃいねェか。ヒッヒヒ」
「うふふ。お褒めの言葉は嬉しいですけれど、ジンさん」
 ちらり、と。
 刃のように薄く細められた桜色の瞳が、ジンを見つめた。
「囃し立て盛り上げるのが、あなたの"踊り"なのかしら?」
「……クッ! ヒヒャハハハ! そォ~~~~ンなわけが、あるかよォ!!」
 ゴッ!! と、衝撃波めいた重圧とともにあふれる聖性。
 それは光だ。どこまでも白く、何者をも飲み込む清廉なる輝き。
 ……だが何者にも染まらぬ白は、何よりも残酷な色なのではないか。
 そこにあらゆる穢れは存在し得ない。
 赤も、黄も、緑も、無論黒ですら。
 であればそれは、美しき救いなどではないのではないか。
 ……そんな疑問を、オブリビオンどもが抱く暇などない。
 輝きは膨れ上がり、逃げ惑う迦陵頻伽どもを飲み込み、そして"救って"みせた。
 あとに残るのは、哀れにも飲まれていた妖怪たちの眠る姿。
 そこに、残骸という過去の遺物は残滓すらも遺せない。
「お前らごときがコイツの邪魔するなンざ、百万年早ェ~~~~ンだよなァ!!
 あァ、比べるのも酷ってモンか? ウッヒャヒハハ!! 嬉しいだろエリシャア?」
「今日はよく口の滑ること。そうやって恩着せがましくなければ――あら?」
 薄く笑っていたエリシャは、しかしジンの異変に気づくと顔を近づけた。
 ぱちくりと意外そうに瞬くジンの瞳を、じぃっと見つめる。
「この瞳孔、まるで蛇のように縦に割れて……それにこれは……?」
「あァ? な~~~~~ンだよブツブツとよォ、オレの顔に惚れ直したかァ?」
「なっ……ち、違いますわ! 心配しているのに、もうっ!」
「ヒヒャハハハ! お前が心配なンざ、それこそ心配になっちまうなァ~~~」
 ジンはけたけたと皮肉めかして笑う。だがエリシャは考え続けていた。
 密かに浮かぶあの、羅刹紋めいた鱗、そして変化した瞳孔。
 ……新たな世界に来たことで、ジンに何か変化が起きているのか?
 それを確かめる暇もなく、新たなオブリビオンどもがやってくる。
 どうやら舞は、まだまだ終わりが見えないようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーナ・ユーディコット
私は相変わらずどんちゃん騒ぎにノるのは得意じゃないつもりだけど
でもこの騒ぎの中で好き勝手食事してた通り
騒ぎ自体は嫌いじゃない
……多分ね

彼方が歌に踊りで魅せようって事なら
花を舞わせ香りで宴席を彩ろう
どちらがより妖怪を虜に出来るかの戦い……かな

刃よ転じて花を成せ――舞えよ桂花
嗅げば陶酔境へと誘う甘い香りで此処を満たそう
胸いっぱいに堪能あれ
あとは香りを吸って動きが鈍った敵から花の嵐で斬り刻む
タネが割れて警戒されたって斬り刻むんだけどね

いつもとは趣の違うこの戦い方
少しはこの騒ぎの彩になれていたかな
気にしても仕方ない気もするけどね

あの歌声はいい芸だったと思う
でも…… 私を魅せるには足りなかったね



●甘やかな香りのなかで
 迷宮のなかには、まだ妖気に取り込まれていない妖怪たちもいた。
「た、助けてー!」
「死ぬまで踊り続けるなんてやだよー!」
 迦陵頻伽の骸魂に呑まれないよう、まだ正気な妖怪たちが逃げ惑う。
 そんな彼らの背中を守る形で遮ったのは、ルーナ・ユーディコットだった。
「……どうせ歌い踊って騒ぐなら、もっと楽しく騒げばいいのに」
 哀れな妖怪たちを一瞥し、ルーナは骸魂の群れを睨んだ。
「誰かを怖がらせるような踊りなんて、踊りとしては不適当だよ?
 ……まあ、私もどんちゃん騒ぎにノるのは得意じゃないけど、ね」
 手に持つ刃が、ぱっと音を立てて無数の花びらに変わった。
 掌のなかで渦巻くその花嵐を、ルーナは解き放つ。
「刃よ――転じて花を成せ!」
 見えない風にさらわれた花の嵐は、たちまち巨大な花弁めいて広がった。
 それは迦陵頻伽の群れを飲み込み、むせ返るような香気で魅了する。
 歌と旋律によって心奪う迦陵頻伽ですら抗えぬ、陶酔境へのいざない。
 甘やかな金桂の香りは、オブリビオンどころか妖怪たちをも包み込む。
 あっという間に骸魂はその表情を蕩けさせ、楽音を奏でることすら忘れてしまった。
「胸一杯に堪能あれ――それが、あなたたちの感じる最後の幸せだから」
 そのなかを、ルーナが跳ぶ。走る。
 竜の相棒を偃月刀へと変じさせ、死神じみて振るうのである。
 まさしく烈風の如き太刀筋。護りをも忘れた迦陵頻伽には避けられない。
 その香気に蕩け心此処にあらぬまま討たれるのは、奴らにとっての幸せか。
 畏れ怯えていた妖怪たちですら、香気に囚われうっとりと陶酔していた。
 ルーナひとりが跳梁する。刃がきらめくたびに頸が飛ぶ。
 甘やかな香りのなか、隠しようのない血臭が立ち込めた。
 はたから見れば、その跳梁はいかにも優雅な舞のように見えたろう。
 鍛え上げられた狩猟動物の姿が、機能的な官能美をたたえるように。

「……あなたたちの歌声、綺麗で、悪いものじゃなかったよ」
 骸という骸を討ち果たし、ルーナは刃の血を拭ってひとりごちた。
「でも――私を魅せるには足りなかったね」
 彼女はもっと、うつくしいものを知っている。
 それが心にある限り、どんな魔性にも揺らぐことはないだろう。
 ただ獣の如く、人らしく、無慈悲に迅速に、ただ討つだけのことなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リア・ファル
SPD
アドリブ共闘歓迎

「それじゃ、派手に空の舞踏と洒落込もうか、イルダーナ!」

機動戦闘なら十八番
イルダーナから光子も尾を引いて幻想的だろう?
(操縦、空中戦)

相手の動きは演算把握し、
時に寄り添い、時に大きく離れ、勢いを増していく
(情報収集、学習力、追跡、逃げ足)

それじゃ花火も上げようか

こちらの回避に合わせて、近距離からカウンターの射撃を狙う
『セブンカラーズ』から、四元素、万色の弾丸を放つ!
(カウンター、属性攻撃、零距離射撃)
UC【必滅を穿つ北斗七星】!

今を生きる誰かの明日の為に、
いのちの輝きを讃え湛えて、踊るとしようか!


オリヴィア・ローゼンタール
浄土――異教の天国に住むという、天上の歌声を持つ妖鳥ですか

白い中華服のまま
舞いながらの攻撃ならば、リズムもある程度は読める筈(ダンス)
いいでしょう、その舞闘、お受けします

【偽槍展開】で聖槍を80本の複製
【念動力】で地面に突き刺したり、様々な角度で空中に固定したり
先の軽業の続きです、あなた達こそ魅入られぬようにお気をつけくださいね?(存在感・誘惑)

舞いのリズムを【見切って】しまえば、どれだけ速くとも対処は可能
展開した複製槍を鉄棒や足場代わりに、大車輪や飛び跳ねたり派手に立ち回って躱す

中断できず隙を晒したところへ聖槍で【なぎ払ったり】、雷を纏った脚で蹴りつけたり(属性攻撃・踏みつけ)

アドリブOK


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

さぁてこっからが本番かい!
こんだけのギャラリーの中で踊るなんて、
どんな気持ちになるんだろうねぇ。
アタシにゃダンスの心得なんてないけど、
まぁなんとかなるだろ、多分!
……なんとかならなそうだったら、誰かフォロー頼まぁ!

番うような舞いに合わせるように、
身を躍らせて舞い踊る。
周りからの視線を受けて、
新たな感覚に目覚めようじゃないさ!

そう、アタシは鳥。麗に舞う、漆黒の鳥!
一声甲高く鳴き誇り、翼の舞を披露する!
さあ、さあ、さあ。
その艶やかな七色にゃ足らないだろうが、
この【レイブン】のダンスパートナーになってくれるかい?
御礼は骸の海へのチケットなんてどうだい?
安くしとくよ!


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

あら綺麗。そのまんま宴会できてれば気分よく呑めてたんだけど…出てきたならはっ倒さないとねぇ?
(この女、ついさっきまで宴会に混じっていた。
…しかし、めちゃくそ呑みまくっていたにもかかわらず当然のようにシラフである)

伴奏入れてくれるなんて気が利いてるじゃない。ノったほうがいいなら、クロスレンジで踊りましょうか。
あたしの得意なカポエイラは〇ダンスと〇グラップルを合わせた格闘技。音楽に合わせるのは得意なのよぉ?
オブシディアンのガンプレイ〇パフォーマンスも合わせて●射殺を撃ちまくるわぁ。

…あなたも好きに楽しんでいいのよぉ、ゴールドシーン?
同じ阿呆なら踊らにゃ損損、ってね?


メフィス・フェイスレス
【アドリブ連携OK】
【心情】
踊りね しょうがないから付き合ってあげる。
でも私がさつだからさ
足を踏み潰しちゃっても文句は受け付けないからね!
祭りを盛り上げる花火でも上げましょう 汚いけど
でも、アンタ達の羽が爆ぜてるなら見栄えも良くなるわよね!

・行動
心に働きかける類いの干渉には慣れてるのよ
「破魔」「耐性」で誘眠音波を捌くわ
いくら動きが速くても避ける隙間がなければ避けようもない
面制圧を意識するわ
骨刃で自傷を行い 強酸性の【血潮】を撒き散らすわ
動きが止まった奴を「ジャンプ」で「捕食」してUCで飛翔能力を奪ってしまいましょう
奪って生やした羽で空中に飛び上がって【微塵】を複数投げつけて起爆するわ 



●踊れや踊れ、歌えや歌え
 無限じみた迷宮祭り空間から、徐々に妖気が喪われつつあった。
 猟兵たちの活躍が、骸魂の邪悪な影響を退けつつあるのだ。
「すごいや、それにかっこいい!」
「いいなー、猟兵っていいなー!」
「あっちのほうがずっと楽しいや!」
 妖気に囚われ終わらない祭りを続けていた妖怪たちは正気に戻った。
 ……の、だが、やんややんやと騒ぐところは変わっていない。
 なるほどグリモア猟兵の言うとおり、どことなくキマイラフューチャーを思わせる。
 問題はあの世界だと、事態の規模があくまでも事件程度のものだったのだが、
 この世界においては文字通りのカタストロフ――世界の破滅に繋がることだ。
 しかし妖怪たちは、そんなことはどこ吹く風で猟兵たちを応援する。
 その踊りに見惚れ、
 その歌声に聞き惚れ、
 そして酒と飯を片手に騒ぎ立てるのだ。
 まさしく舞台の上、猟兵とオブリビオンの舞闘を楽しむために!
「まったく、陽気なのはいいけど緊張感がちょっと足りやしないかねえ?
 ……ま、いいか。こんだけのギャラリーの中で踊るなんてのはめったにないこった!」
 数宮・多喜は快活に笑い、繰り出された回し蹴りをくぐるように回避。
 そして敵の間合いに飛び込んだ瞬間、倒れ込むように両手を地面に突いた。
 逆立ちめいた姿勢からの逆さ蹴り! アッパーカットじみてつま先が顎を撃つ!
 たたらを踏んだ迦陵頻伽の腹部に、体勢を取り戻した多喜の二連蹴りだ!
 舞い飛ぶさまはまさしく鳥! その背に翼が幻視され……いや待て。
 ん? ほんとに翼が生えてないか? さらにけたたましい怪鳥音!?
「グォカカカカ! グォカカカカカ!! ケオオオオーッ!!」
 なんともうま味のある怪鳥音をあげ、翔びながらの蹴り、蹴り、蹴り!
 この祭りの乱痴気騒ぎのせいか、多喜もかなりハメを外していた。
 ともあれその連続攻撃のまえに、迦陵頻伽は為すすべもなく倒れた!
 着地際の隙を狙い、左右から同時に二体の迦陵頻伽が襲いかかる――が!
「させませんッ!!」
 そこに割り込みインターラプトしたのは、オリヴィア・ローゼンタールだ。
 彼女は白いチャイナドレスの裾をはためかせ、しなやかな槍捌きを披露する。
 束の間そこに生まれたのは竜巻。ぐるりと振るわれた槍による迅風だ。
 旋風じみたその一撃は左右の敵を吹き飛ばし、さらに風は凝縮されていく。
 形を得たその見た目は――複製された八十本の聖槍の雨!
「たとえ相手が浄土の天獣にあろうとも、人に仇なす骸に慈悲はなし!
 この拳と矛を以て、滅びを願う性根もろとも調伏してさしあげましょうっ!」
 地面に突き立った聖槍群を足場として蹴り渡り、頭上から振り下ろしの一撃。
 背後を狙う不届きな輩には、槍を蹴り飛ばすことで遠隔投擲する!
 腹部を貫かれた哀れな迦陵頻伽は、地面に縫い留められ苦悶し霧散した!
「舞を求めたのはあなたたちのほう。ならば私はその流儀に従いましょう。
 ――この軽業、タダで見れるほど安いものではありませんよ?」
 にやりと不敵に微笑み、さらに周囲の聖槍を蹴り上げる。
 空中に固定された槍の柄を使って三角飛びし、華麗なるオーバーヘッドキック!
 まさしく雑技団じみた軽業、三次元的な軌道は美しくも避けがたい!

 一方で、ティオレンシア・シーディアもまた華麗な足技を披露していた。
 ガンナーとして戦うことの多いティオレンシアだが、当然体術も修めている。
 その中で彼女が得意とするのは、意外にもカポエイラなのである。
 手拍子で独特のリズムを奏で、迦陵頻伽の旋律を妨害しながらステップを踏む。
 そして敵が変幻的なリズムに呑まれた瞬間、潜り込んでの蹴り上げ!
 回転回避を兼ねた幻惑的なキック、すなわちメイア・ルーア・ジ・コンパッソだ!
『グワーッ!』
「ふふ、あたしに出来るのが銃撃だと思ったかしらぁ? なら見損なってくれたわねぇ。
 こちとら、魔法も超能力も使えない"ただの人間"なのよ。だから――』
 背後からの攻撃を跳躍回避、空中で身をひねりながらのストンプ攻撃だ!
 これぞカポエイラ秘技フォーリャ・セッカ、恐るべきはその精度!
 踏みつけた足元のもがく敵の頭に銃口を押し当て……BLAMN!!
「こうやって出来ることはちゃんとしないと、生き延びられないでしょお?」
 くすりと挑発的に笑い、威圧的なガンスピンをして硝煙を吹き散らす。
 体術に銃撃を混ぜた変幻自在の立ち回りこそ、ティオレンシアの"踊り"であった。
 煙を纏うその体捌きは、見ているだけでも恐ろしくそして美しい……!
 すると迦陵頻伽たちはばさりと七色の翼を広げて、不気味な旋律を奏でた。
 踊り勝負で敵わないならば、その羽根の輝きと楽音で魅了しようというわけだ。
 心を捉えてしまえば、どれほど鋭い技を持っていようが関係はない。
 傀儡じみて立ち尽くす敵を刈るだけで足る。なんとも邪悪な攻撃……だが!
「その程度の干渉で、私の心を捉えられるつもりだったのかしら?」
 メフィス・フェイスレスは黄金色の瞳をぎらりと煌めかせ、敵を睨みつけた。
 死人である彼女の心には、そんな干渉など毛ほども効果をなさない。
 なおも耳朶から旋律を染み込ませようとする迦陵頻伽の姿に舌打ちすると、
 メフィスはあろうことか骨刃で己の腕を切り裂き、ぼたぼたと血を流す。
 自傷の痛みによって、催眠音波をはねのけようというのか? ……否!
「鉄をも溶かすこの血潮、浴びても踊れるならば舞ってみなさい!」
 おお、見よ。撒き散らされたその血潮は、強酸性を持つ危険な毒!
 デッドマンであるメフィスの血は、それ自体が危険な酸なのである!
 酸を浴びた迦陵頻伽が怯んだ瞬間、メフィスは獣じみて飛びかかる!
 そして……なんたることか、その七色の翼を握力で引き裂いたのだ……!
「お前も"我ら"となるがいい。その翼――頂くわよ」
 がぶり、と引きちぎった翼を咀嚼し、凄絶な相貌でぎしりと笑うメティス。
 するとその羽が彼女の背中から突き出し、ばさりと広がった。
 敵を喰らうことで相手の能力を"捕食"する、それがメティスの力なのだ。
「さあ踊ろうじゃない! 誘ったのはアンタたちのほうなんだから!」
 けらけらと笑いながら、血風逆巻く危険な踊りを舞い飛ぶ死の乙女。
 その姿は恐ろしく、しかし目を離せないほどに美しい。

 それぞれに戦い踊る猟兵たちの間を、きりきり舞でかいくぐる少女が居た。
 リア・ファルの動きは常に敵に付かず離れずで、しかし時には大きく距離を取る。
 彼女の動きは、スタンドアローンな猟兵たちの戦いに一種の統率をもたらし、
 たとえば多喜の蹴りがオリヴィアの敵を吹き飛ばし、
 オリヴィアの放った槍がティオレンシアの移動を助ける足場となる。
「派手に盛り上がってきたね! それじゃあ花火でもあげようか!」
 彼女は魔銃セブンカラーズを空に向け、次々にトリガを引いた。
 北斗七星の輝きは、そのまま舞台上に降り注ぐ魔力の雨となる!
「いまを生きる誰かのために――いのちの輝き、魅せてあげよう!」
 祭りはいまクライマックスへ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『キョンシー木綿』

POW   :    キョンシーカンフー
【中国拳法の一撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    百反木綿槍
自身が装備する【一反木綿が変形した布槍】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    キョンシーパレード
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【キョンシー】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幽世宴々舞
「せっかくの、楽しい楽しい祭りが……台無しじゃあないかぁ~!」
 奇妙に間延びした口調で、『キョンシー木綿』が不満をこぼした。
 猟兵たちの活躍により、せっかく増やした迦陵頻伽はほぼ全滅。
 妖怪たちは解放され、祭り空間も徐々に失われつつある。
「どうして祭りを邪魔するのさぁ、ずっとずっと楽しく騒ぐのが一番なのにぃ!
 お前たちもぉ、楽しい祭りの一部になれぇ~! 世界が滅ぶまで踊り続けろ~!」
 『キョンシー木綿』から妖気が放出される。
 大本だけあって、その圧力たるや戦闘に支障が出かねないほどだ。
 しかし奴の流儀に乗ってやれば、それは逆に猟兵を助ける力となる。
「祭りのクライマックスだ! やあ楽しみだ!」
 で、観客じみた妖怪たちは、酒を片手に盛り上がっている。
 まったく呑気で陽気なことだが、ここまできたら乗らなきゃ損というもの。
 騒がしい楽音とともに、邪悪なオブリビオンを美しく優雅に討ち倒してやろう!

●プレイング受付期間
 2020/06/30 15:59前後まで。
アンジェ・アリスナイト
くすっ、妖怪もお祭り好きというのはやはり親しみが湧いて来るものですね。しかしそれで世界が滅んでは物語の結びとしてよろしくありません。

では、私もお祭りに参加するとしましょうか。

[UC茨の領域]泥酔からキョンシーとして操られている妖怪はスリラーされても困りますし、茨で捕縛して必要以上に傷つけないようにします。

さあ、力を貸して幻想剣。剣を手に舞うようにくるりくるり…相手の攻撃をかわして近づけば、その心だけを貫く刃で骸魂だけを傷付けるようにキョンシー木綿を攻撃。続けて靴を鳴らしポルカやジグのような賑やかな踊りで攻めていきましょう。

ふふっ、一応はこれでも淑女ですのでダンスのお誘いでしたらいつでもどうぞ。



●茨の舞
 ぴーしゃらぴーしゃら、どんどどんどん。
 浮かれ騒ぎの妖怪たちは好き勝手に太鼓を鳴らし笛を吹く。
 無秩序という秩序を持った混沌のメロディは、しかし耳障りには感じない。
 彼らが心からいまを楽しみ、そして陽気に騒いでいるからだろう。
「妖怪もお祭り好きというのは、やはり親しみが湧いてくるものですね」
 アンジェ・アリスナイトはくすりと歳に似合わぬ大人びた笑みを見せる。
 真面目な猟兵なら、この決戦の場で何を乱痴気騒ぎを、と呆れそうなものだが、
 どうやら少女は楽しく感じているらしい。なかなかいい性格をしているようだ。
 ともあれアンジェは、舞台上で相対するキョンシー木綿を挑発的に見つめた。
「しかし、それで世界が滅んでは物語の結びとしてはよろしくありませんよ?
 古今東西、物語はこう締めくくられるものです――めでたしめでたし、とね」
『う~る~さ~い~ぞ~! ずっとずっとお祭りをするんだぁ~!』
 木綿を触手めいてわななかせて、キョンシー木綿はアンジェを威圧する。
『そうだ、お前たち! 立ち上がれ~、そして歌い騒げ~!』
 周りに倒れている妖怪たち……骸魂から救出されたものや酔い潰れたもの……を、
 キョンシー木綿は同じキョンシーに変身させ、しもべとした。
 二昔前の特撮ドラマじみて、キョンシー化した妖怪たちはびくりと跳ね起きる。
 そう、あれだ。両手を前に突き出してぴょんぴょん跳ねる、あれだ。
「まあ、怖い。ですがここで退くわけにもいきませんね」
 さっぱり怖くなさそうな顔で言うと、アンジェは踵を三度打ち鳴らす。
 その手に持った不思議なカードが銀色の光を放つ。これは一体?
「では、お祭りを始めるといたしましょう――幻想剣、イグニッション!」
『『『ウワーッ!?』』』
 アンジェがカードを掲げると、猛烈な銀色の光が周囲を照らした。
 キョンシーたちはあまりの眩さに思わず怯む……やがて光は衰えていく。
 すると見よ。アンジェの姿は、さきほどまでのものと一変していた!
 そして手には、レイピア状の不思議な魔鍵を携えているではないか。
「シャル・ウィ・ダンス? だなんて、ふふ。応えていただけますか?」
『野郎どもー、やっちまえー!!』
 キョンシー木綿の号令に従い、キョンシーたちがぴょんぴょんと挑みかかる。
 アンジェはその攻撃をくるくると舞うように躱し、幻想剣を振るった。
 切っ先ががりがりと舞台上をひっかくと、そこからめきめきと現れる魔法の茨。
 茨はたちまち叢のように舞台を覆い、キョンシーたちを絡め取った!
『『『ウワーッ!』』』
「スリラーされても困りますから。どうかそこでおとなしくしていてください」
 アンジェは涼しげな顔で言うと、ステップを踏みながらキョンシー木綿へ接敵。
 しゅるりと素早く繰り出された木綿布の攻撃を躱し、懐へ潜り込んだ。
 幻想剣が突き出される。しかし同時に、キョンシー木綿はトーキックを放つ!
 切っ先と爪先がぶつかり合い、反響音を立てながら両者は飛び離れる。
「やりますね。なら、少しやり方を変えましょうか」
 アンジェが鞘走るように剣の刃を撫でると、柄に備えられた動力炉が回転。
 刃はにわかに銀色の光を放ち、この世ならぬ色彩を舞台上に放射した。
「これなるは肉ではなく心のみを貫く刃。その骸魂を滅ぼしてあげましょう」
『そんなことが~、出来るか~!!』
 キョンシー木綿が仕掛けた。右に左に跳躍し間合いを詰めてからの回転蹴り!
 アンジェはこれをバックステップで躱し、足を鳴らしながら側面を取る。
 カ、カカッ、カカカッ、と、ジグじみた騒がしい靴音が祭り囃子に混ざった。
 混沌の旋律は不思議と調和して、たちまちひとつの音の濁流と化す!
『このぉ、ちょこまかとぉ!』
 鞭じみてしなる木綿を伏せて回避、再び接近距離へ。
 キョンシー木綿はまたしても蹴り足で刃を弾こうとするが、すり抜けた!?
『ナニッ!?』
「――言ったでしょう? これは、心だけを貫く刃だと」
 稲妻じみた軌道を描き、幻想剣はキョンシー木綿の腰から胸を逆袈裟に裂いた。
 骸魂の持つ瘴気が血のように溢れ出し、骸魂は悶え苦しんでたたらを踏む。
「ふふっ。私、一応はこれでも淑女ですから。女性に痛みは与えませんよ」
 得意げに瞬く瞳は、まるで透き通った海のように煌めいている。
 茨の舞台の中で踊る少女は、寓話から飛び出してきたかのように美しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

三咲・織愛
ヨハンくん(f05367)と

またまたそんなこと言って~!
なんだかんだいつも付き合ってくれるんですから、
今回も最後まで付き合ってくださいね!

という訳でキョンシー木綿さん!
私もずっとずっと楽しく騒ぐのが一番です!
負けませんよ!

私、気付いたんです
ぐるぐる回すのがだめなら一緒に回るのが一番だって!
さっきは一人で回りましたけど、やっぱり二人の方が楽しいですもんね
という訳でヨハンくんと一緒にぐるぐるー!
ねーっ、楽しいでしょうー?

うーん、疲れちゃいましたか?
それじゃあ、私が二人分がんばって踊って戦いますね!
木綿を掴んで【ものすごく痛いこと】をしましょう
リズムに合わせてがっつんがっつん!
楽しいーっ!


ヨハン・グレイン
織愛さん/f01585 と

一人でどうにかしてください
もう一度言います。一人でどうにかしてください
一人でやれって言ってんだろ……!

諦めるのにもそろそろ慣れてきたところですけど、
諦めるから調子に乗らせてる感もあるんですよね
まぁ今回は諦めますけど
どこかで一度わからせてやろう

……何故そうなる???
いや、むしろこの人の思考回路を考えたらその結論が導き出されるのは不思議ではない……?
いや、いや、待て。やめろ
やめろと言っても聞かないとはわかっているがそれでもやめろ

戦える訳がない。結局一人でやるなら最初からそうして欲しい
俺はもうだめなのでまじで何もしませんよ
楽しそうな悪魔の笑い声が聞こえる……気がする



●いったいどっちが敵なのかわかりゃしねえ
 続いて舞台上に上がったのは、三咲・織愛とヨハン・グレインのふたり。
 しかしやる気満々の織愛に対して、ヨハンのほうはげっそりしていた。
 まるでこの世の終わりに三度遭遇したような、絶望的な顔であった。
『な、なんだぁお前……えっ、なんでそんな顔してるの?』
 さすがにキョンシー木綿も不安になった。ていうか、なんだか可哀想だ。
 敵なのだが疑問を投げかけずにはいられない。一体何が起きた。
 一応ここ、楽しい楽しい祭りの会場のはずなんだけど……???
「さあヨハンくん、最後の戦いですよっ! 一緒に戦いましょう!」
「ひとりでどうにかしてください」
「えっ」
「ひとりで、どうにか、してください」
 聞こえませんでしたか、みたいな顔でわざわざゆっくり言い含めるヨハン。
 だが驚いた顔の織愛は、すぐにけろっとした笑顔を浮かべてこう云う。
「またまたそんなこと言って~! わかってますよ、大丈夫大丈夫!」
「なんにもわかってないことをまずわかってほしいんですけどね」
 織愛の中では、ヨハンは照れてるんだろうなぐらいの話になっているらしい。
「でも胸を張ってくださいヨハンくん、ダンスに貴賤はないんですよ!」
「ひとりでやれって言ってんだろ……!!!!」
 渾身の唸り声もこれっぽっちも届いてなかった。ノイズキャンセリングかな?
 ヨハンは遠い目をした。その諦めの眼差しがキョンシー木綿と重なる。
(お前……よくわかんないけど、大変なんだな……)
(諦めるのもそろそろ慣れてきたところですよ)
 そんな魂の会話が、視線を通してあったとかなかったとか。

 まあそこで心が通じ合ったとして、別に戦いがなくなるわけではない。
 そもそも何も知らぬ織愛は、きょとんと首を傾げつつやる気満々であった。
「キョンシー木綿さん!!」
『えっ。あ、はい』
 びしぃ! とオブリビオンを指差し、織愛は胸を張って言った。
「私も、ずっとずっと楽しく騒ぐのが一番です!!!」
「そこ同意してどうするんですか(ヨハン)」
「だから――負けませんよ!!!!」
『"だから"の使い方間違ってないか!?(キョンシー木綿)』
 何から何までツッコミどころ満載である。これも妖気のせいかな?
 そういうことにしておこう。でないと織愛のIQが悲惨なことになってしまう。
「ヨハンくん!」
「……なんですか」
 いきなり振り返られ、完全に蚊帳の外だったヨハンは少し驚いた。
 そして考える。このきらきらした目、なにやら意気込んだ表情、そして流れ。
 どう考えてもろくなことではない。自分は最悪の時を過ごしそうな気がする。
「私、気付いたんです。ぐるぐる回すのはやっぱり駄目なんだって」
 織愛にしては殊勝なことを言っている。
 でもなんでだろう、嫌な予感が強まって仕方ない!
「――だから、一緒に回りましょう!!」
「は??????????????」
 渾身の「は?」であった。だが織愛には届いていなかった。
「ひとりよりもふたりがいいということです! さあ手を!」
「いや、あの。何をどう考えたらそんな結論が導き出されるんですか」
「ほーらー、恥ずかしがらないで! 手をこうやって握って!」
「いや、いや、待て。やめろ」
「さあいきますよー!!」
「やめろ。やめろ!! やめ(ゴ ッ ッ)」
 その瞬間、ヨハンは風となった。
 何者にも遮られず、草原の彼方まで吹き抜ける風そのものに――。

 とか、叙情的な書き方をしても現実が変わるわけではない。
「~~~~~~~~~~~ッッ!?!?!?」
 回っている。
 世界が光の帯になって、ぐるぐると回っている。
 自分が織愛の馬鹿力で振り「回さ」れているのだと気付いたときにはもう遅い。
「ぐるぐるー! ぐるぐるぐるぐるー!」
 回っている。織愛は楽しげに回っている。
 はたからみるとジャイアントスイングにしか見えない。大ピンチだ!(ヨハンが)
『お、おいお前! もうひとりのやつの顔が青いぞ!?』
「きっと楽しすぎてテンション上がっちゃったせいですね、わかります!
 卒業式の予行練習とかで保健室に行く人がいたじゃないですか、あれですよ!」
『ですよ! って言われても全然わけがわかんなグワーーーーーーーッ!?』
 ALAS! キョンシー木綿もぐるぐる回りだした!
 織愛はもう片方の手で木綿の端っこを掴み回転速度を増したのだ!
「みんなでぐるぐるですよー! 楽しいですねー! ねー!!」
「………………ッ」
『………………ッッ』
 ヨハンもキョンシー木綿も、青い顔で泡を吹いていた。
 織愛(ルビ:あくま)の楽しげな笑い声が舞台上にこだまする。
 さしもの妖怪たちも、ドン引きして静まり返っていたという……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
(青年の姿に戻っている)おん、宴もたけなわだねぇ。けど俺はもうムリだ、めっちゃ疲れた。しんどい。なんで隅っこに座ってらぁよ。ああ、大丈夫さ。代わりを呼ぶからさ。
俺の周囲を囲むように結界針を突き刺して、開け【殃禍の工房】。出なァ、かわいい俺の眷属(*ちび)ども。長いやつ、腕っぷしの強いやつ、飛ぶやつ、泳ぐやつ、走るやつ。大食い・暴れん坊・飲兵衛も。宴の席だ、無礼講だとよ。
行きな。そんでパレードを盛り上げてこい。ああ、妖怪は殺すなよ。なかなか死なねえらしいし、ちょっとくれえ囓っても赦してくれっかもだが。中にゃお仲間もいるかもしれねえしな。俺はここでヤジ飛ばしつつ見てっからさ。ひひ。



●神にも限界というものはある
 しゅるしゅると、朱酉・逢真の体が一回り縮んで若返っていく。
 青年というべき張りのある外見を取り戻すと、逢真ははぁーとため息をついた。
「しんどい」
 神とは思えぬ、いやにずっしりくる響きの一言であった。
「な、なんだとぉ!? ここまで来ておいてなんだその台詞はぁ~!?」
 身構えていたキョンシー木綿も、思わずツッコミを入れるほどであった。
 彼女はバリバリやる気であった。だって中国拳法とか、大得意だし。
 それがいきなり見た目が変わったと思ったら、開口一番これである。
「いやァ、俺ぁもうムリだ。疲れちまった。見た目は戻っても、こう、アレだぜ。
 色々残るんだぜ? 関節の痛みとか、筋肉の凝りとか……厄介だよなぁ」
 この体(いれもの)のなんと不便なことか。人間はまこと不器用な生物だ。
 どうせ進化するならば、もっと効率的かつ楽なほうに進めばいいものを。
 二足歩行など選ぶからそうなる。だが、その不合理も愛らしくはあった。
 ……もっとも、今の逢真にとってはたまったものではない。
 ばきばきと嫌な音を立てる肩を回しつつ、よっこいせと舞台を降りる。
「あ、こら、待て!! 逃げる気か~!!」
「ああ、大丈夫さ――"代わり"は呼んであるからよ」
 逢真が言った瞬間、飛びかかろうとしたキョンシー木綿を阻むように、
 どこからともなく無数の結界針が突き刺さる。少女は急ブレーキをかけ身構えた。
 ただならぬ力を感じる。あれは、身を守るための結界か?
「開け、"殃禍の工房"。俺はちぃと疲れた、だから休ませておくれ」
 針は彼方と此方を分かつ。此方には、神を慰撫するための"穏やかな空間"を。
 もっともそれは、人が踏み込むにはあまりに有害で危険な空間だが。
 そして、彼方には――。
「お嬢さんは遊び相手をお探しだ。しぃっかり遊んでやんな、眷属(ちび)ども――」
 言葉にするもおぞましき、異形異貌の怪物の群れを。
「宴の席だ。無礼講でやっちまいなあ!」
 神は哄笑した。妖怪は悲鳴をあげ――しかしそれも、喧騒に呑まれた。

 "長い"ものがいた。
 "獰猛"なものがいた。
 飛ぶもの。
 泳ぐもの。
 走るもの。
 喰らうもの。
 暴れるもの。
 飲み干すもの。
 それは人ではない。いや、そもそも生物と呼ぶべきかもあやふやな"もの"ども。
 流行り病、猛毒、心を病む呪い、そういった諸々を戯画化したような"もの"。
 すなわち、本来的な意味で人々が恐れる"妖怪"とあだなすべきものども。
 それらが外へとなだれ込み、そして"遊び回った"。
「妖怪どもはダメだぞぉ。齧るぐらいなら……いやぁ、やっぱやめとけ。ひひっ」
 取り巻く妖怪たちは、怯えるものもあれば喜ぶものもいた。
 それらは、人ならざる彼らにとってずいぶんと"近く"思えたからだ。
 呑めや歌えやの大騒ぎ。だが人よ、もしもここに居るならばけして顔を覗かすな。
 戸を閉めて息を潜め、ただ百鬼夜行が過ぎ去るのを待つがいい。
「ひひひひ! ちびどもがこんなにはしゃいでるのはいつぶりかねえ!」
 蹂躙される骸魂の悲鳴を肴に、逢真はけらけら笑った。
 それはまさしく、名状しがたき鬼神どもの宴である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花邨・八千代
※引き続きへべれけで大変面倒くさい酔っ払い羅刹でお送りします

あーん?俺と呑む酒が楽しくねェってかァ?
やんのかコラやったんぞコラ!
良い歳した女が全身トイレットペーパー巻いて遊んでんじゃねーぞ!
でもなんか楽しそうだな!あとで俺にもやらして!

で、戦闘ぉ?まーかせとけってェ!
祭りも最高潮!いつもより多めに金棒ぶん回して【羅刹旋風】だ!
オラオラ酔えば酔うほど強くなる羅刹の八千代ちゃんってのは俺のことだぜ!今考えた!
星の果てまてぶっ飛ばしてやrオロロロr(なんか綺麗なエフェクトと流水音をお願いします)

あ、なんかスッキリした
そこらに落ちてた布で口拭いてから改めてぶっ飛ばすぞ!
はー、やっぱ祭りは最高だな!



●酔っぱらいマジ怖い
「ひーん! たーすーけーてぇー!!」
 キョンシー木綿は泣いていた。心の底からのガチ嗚咽であった。
 そんな彼女の首根っこを掴み、花邨・八千代はぐいっと引き戻す。
 これ戦闘っていうか、面倒な老人にお酌させられる可哀想な田舎娘だ!
「あーん? なんだぁそのぴーぴーやかましい泣き言はぁ、祭りなんだろぉ?
 それともアレか? 俺と呑む酒が楽しくねェってかァ? おうコラやんのかコラ!」
「ぴえん!! そういうところだぞぉ~、もう少しまともに戦えよぉ~!」
「ンだよ全身トイレットペーター女がよォ、いい年しやがってコスプレかぁ!?」
「妖怪に歳は関係ないだろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 語気が強い。図星だったらしい。
「あっでもけっこう楽しそう。あとで俺にもやらして」
「あ、うんいいよ。……とでも言うと思ったかこの猟兵がぁ~!!」
 しぱーん! 鞭めいてしなる木綿の端が八千代の頬をおもいっきりひっぱたいた!
「ぶははははは! なんだそれ、サービス!? かゆいかゆい!」
 しかし八千代はピンピンしている! だってほら、頑丈な羅刹だしね!
 おまけに酩酊で痛みすら感じない。こ、こいつ無敵か!?
「ぴえん……!」
「え、なにそれ。チョーいいじゃん。俺もやる。ぴえん! ぶひゃひゃひゃ!!」
「ゲラゲラ笑って酒瓶片手に言う台詞じゃないだろぉそれぇ!!」
「あ? あー、ダメだこの瓶もうカラだ。ねえ次の御酌してくれよぉ~」
「するか!!!!! 敵同士だぞぉ!!!!!!!! このっこのっ!!」
 べちっべちっ。木綿でひっぱたく。だがこれっぽっちも効いてねえ!
「悪かったなぁ、俺は酔えば酔うほど強くなるんだよぉ……!!」
「えっ!? そ、そういうユーベルコードなのか!?」
「うんにゃ。いま思いついた妄言」
「もうこいつの相手やだぁ~~~~~!!!!!」
 泣きじゃくるキョンシー木綿。だが妖怪たちは手を差し伸べてくれなかった。
 だってオブリビオンだし。あと、哀れでそれはそれで酒が進むし。
「っと、しかしいつまっでもトンチキやってるわけにはいかねえなあ!」
 八千代はよっこいせとおっさんくさく立ち上がると、金棒をぶんぶん振り回す。
「オラオラ見せてやるぜ俺の強打! 星の果てまでぶっ飛ばしてやらぁ!!」
「そ、そうだぞ! 最初からそうやってやる気になってれば」
「オボボボボーッ!!」
「アイエエエエ!?」
 ナムサン! 八千代はいきなり口から虹色のなんかを大噴射!
「「「マ……マックシングだッッッ」」」
「誰がどう見ても呑みすぎてゲロ吐いただけだろぉお!?!??!」
 ついに外野にもツッコミを入れ始めた哀れなキョンシーである。
 なお八千代は、仮にも21歳の乙女としてはあってはならぬ有様であった。
 ボトボトとかゲロゲロではなく、シャーッ! という流水音がした。
 これをきれいなエフェクトでごまかせというのは無理な話では!?

 ……しばらくあと。
「あー、スッキリした」
 けろっと爽やかな顔で笑顔を浮かべる八千代。
 その前では、泣きながら木綿を水洗いしているキョンシーがいた。
「それじゃあ続き……おん? どうしためそめそ泣いて」
「ぴえん……ぴえん……」
 八千代は首を傾げた。彼女にはわかるまい。
 色んなものをリバースした彼女が、何で口を拭ったのか。
 必死の制止も効かずに使うだけ使った羅刹には、この悲しみはわかるまい!!
「祭りなんてもうこりごりだよぉ~!」
 泣き叫ぶキョンシーの顔に、こう、黒くワイプしてアレする。
 それはそれとして、あとで盛大にぶっ飛ばされたことはぶっ飛ばされたようです。
 泣きっ面に蜂とはまさにこのこと、ですね!

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
ではあなたの流儀に応じ
ひらひらと、はらはらと、我が紅き胡蝶の舞いをお目に掛けましょうか
鮮やかに艶やかに虚空を埋め尽くして踊る蝶たちに合わせ
私自身もまた自在に変化するこの服を
戦いながらも「早業」で千に変じ万に化して見せましょう
ふふ、そう、これは既に私の「誘惑」
あなたもキョンシーたちも、そしてついでにあやかしのお客様方も
もう私と蝶の舞いから目が離せない

……おや、あなたの廻りには、もう誰もいないのでは?
誰もあなたの祭りに興じていないのでは?
哀しいですね、寂しいですね、あなたの祭りなど所詮その程度

……という悪夢でも見たような顔ですよ、ふふ
あなたの身が崩壊し滅びることだけは、夢ではなく事実ですけれどね



●びっくりするほど誰も乗ってこなかった
 ひらり、ひらり。
 はらり、はらり。
 血で染め上げたような紅い胡蝶が、幽玄に舞台上を埋め尽くす。
「な、なんだこいつら……!? くそっ、何も見えないぞぉ!
 こうなったらキョンシー軍団で対抗だぁ! 妖怪ども、起きろー!!」
 キョンシー木綿が手をかざすと、酔い潰れた妖怪たちがキョンシーに変じる。
 あのぴょんぴょんする特徴的な動きで、黒城・魅夜を襲うのだ!
「ふふ……いかがですか? あなたの流儀に則ってみたのですが」
 そんな敵の大群の攻撃を、魅夜は艶やかな笑みを浮かべて躱す。
 つかもうとすればするりと抜けていく、まるで天女の羽衣めいた舞い。
 ついにはキョンシー木綿も攻撃に参加するが、攻撃がまったく届かない!
「う、うう……な、なんだ? 頭が痛い……!」
「いまさら気付きましたか? ですがもう遅いですよ」
 ひらひらと舞う胡蝶たちの只中で、魅夜の双眸が妖しく輝く。
「あなたも、あなたのキョンシーたちも、もう私と蝶の虜なのですから」
 そして視線は、他人事めいて舞台を観覧する妖怪たちにも向いた。
「あなたたちも、さあ――甘やかな悪夢を、ご覧あれ」
 酩酊と眩惑が混ざり合い、絵の具のように溶けて崩れていく。
 現実と夢の境があやふやになり、全てはどろどろとひとつへ――。

「……はっ!?」
 キョンシー木綿はがばりと立ち上がった。
 目の前には魅夜。どうやら催眠術か何かで意識を奪われたらしい。
「残念だったなぁ~、こっちはまだ無傷だぞぉ!」
「……ふふ。もっとほかに、気になることはありませんか?」
 意味深な言葉に、キョンシー木綿は周囲を見渡した。
 誰も居ない。
 妖怪も、キョンシーも、誰も。そしてなにもない。
 暗闇だ。舞台の外にはただ暗澹たる闇だけがそこにある。
「な」
「もう誰も居ませんよ」
 いつの間にか目の前に近づいていた魅夜は、ひっそりと囁いた。
「ここには誰も居ない。悲しいですね。寂しいですね。もう誰もあなたを見ていない」
「な、なんだ!? やめろ!! お前のせいなんだろぉ!?」
「いいえ? ――あなたの祭りなんて、所詮その程度だったんですよ」
 魅夜の姿すらも消え、キョンシー木綿は暗闇の中に取り残された。
 わめき声はやがて嗚咽に変わり、そしてその体もぼろぼろと崩れていく。
 嗚咽すらも、気付けば悲鳴に変わっていた――。

「……いい、悪夢を見れたようですね」
 狂乱し悶え苦しむ現実のキョンシー木綿を見て、魅夜は笑った。
 それはおよそ、人が浮かべていい笑みではなかった。
 悪夢の滴――そうあだ名された女の心の底は、誰にも見通せない闇めいている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鍋島・小百合子
WIZ重視
他の猟兵との絡みアドリブOK

祭とは一旦終わり、また始まるからこその催し
永遠に終わらぬ祭なぞ興冷めじゃしの

「盛り上がりの絶頂の刻、派手に終幕と参ろうぞ」
真の姿たる黒鋼甲冑を身に纏いつつUC「神鏡浄化光」発動
奥義の詠唱時間を稼ぐために舞踊の動きを取り入れた薙刀捌きで敵と相対す(なぎ払い、鎧砕き、ダンス、パフォーマンス、誘惑併用)
キョンシーの数が増えれば範囲攻撃と吹き飛ばしにて祭の勢いに乗るかの如く薙刀で押し返していく
奥義の詠唱時間が十分に達すれば破魔と聖の祝福の光を両目から放ち敵を射抜く(スナイパー、鎧無視攻撃、属性攻撃併用)

他の猟兵との連携も視野に入れる


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

世界の終わりを祭りで終えりゃ、
確かに楽しく逝けるんだろさ。
けどなぁ、因果は正しくな。
祭りはいつもと違うが祭り。
そのままずっと続いてしまえば、
そいつは新たな日常さ。
此度の祭りは一旦締めよう。
そうして次の祭りを待とう!
しんみり占めるは性に合わねぇ、
ド派手に舞って騒ごうぜ!

周りを固める妖怪たちも、演武をご所望って所だろ。
布槍を『衝撃波』と『念動力』で凌ぎつつ、
カンフーを『グラップル』で迎え撃つ!
怒涛の打撃を『マヒ攻撃』の電撃を込めた手足で往なし、
じわじわとキョンシーの動きを鈍らせる。

さぁさ、最後は決めに行くよ!
カウントダウンは皆でね!
ほら3、2、1。
最後は【暁を拓く脚】!


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

祭の空気に飲まれてるせいなのか、それとも日常茶飯事だからなのかは知らないけど。…なんというか、えらく野次馬のノリが軽いわねぇ。これ一応世界の危機よねぇ…?

あたしができるのはカポエイラの他は社交ダンスちょっと齧った程度だし。引き続き足技でお相手しましょ。…もちろん、それだけじゃないけれど。
ラグ(水)とエオロー(結界)で〇火炎耐性の○オーラ防御を展開。〇ダンス〇パフォーマンスと一緒に●粛殺で強化した焼夷手榴弾バラ撒くわぁ。
布槍って言っても結局は布だし、火には弱いでしょぉ?カノ(炎)のルーンも使って纏めて○範囲攻撃で○焼却しちゃいましょ。


李・桃花
お祭り騒ぎは楽しいけれど世界が滅ぶまで終わらないのは疲れちゃうわね。
それに世界が滅んだらお祭りも終わるわよ?さすがにそれは困るわよね。
だからまた再開できるように祭りはこれでお仕舞い。

相手も功夫を使うのね。しかも布で体勢を崩してくる……うまく見切って避けるしかないわね……
むしろ布を掴んで力任せに引っ張れば逆に体勢を崩せないかしら。
そこを狙って【天狼崩撃拳】を打ち込む!功夫の使い手なら油断はできないわね。全力でいくわよ。
天狼拳に映える魅力は正直無いわ。でも洗練された動きは優雅で息を飲むわよ?
あなたに天狼拳の神髄を見せてあげるわ。


化野・花鵺
「死体や気絶した人は、不幸になっても困らない、よねぇ?」
狐、にやりと笑った

「行っけぇ、管狐!あのキョンシーを不幸にしちゃえ!」
親玉に衝撃波ぶつけて「狐の呪詛」使用
自分も敵に駆け寄り不幸のオンパレードプレゼント
帽子がずれて前が全く見えなくなる
脚を踏み外して木綿がぐるぐる身体に巻き付いて攻撃しにくくなる
地面に落ちて足を捻る
指を指そうとして突き指する、等々不慮の事故による不幸を連続プレゼント
敵の攻撃は野生の勘で回避し衝撃波で弾きオーラ防御で防ぐ

「うふふ~。特等席で眺めるの楽しいぃ」
狐、ニマニマしながら親玉のすぐ脇で不幸オンパレード観察

「いよっ!宴会隠し芸大頭領!憎いねコノコノ~」
狐、合いの手入れた



●祭りはいつか終わるもの
「く、くそぅ……まだだぁ、まだ負けないぞぉ~!」
 猟兵たちの変幻自在の攻撃で苦しめられながらも、キョンシー木綿は立ち上がる。
「祭りは絶対終わらせない! 世界が終わるまでみんなで歌い騒ぐんだぁ!」
「……なんと無粋なことか。祭りのなんたるかをわかっておらぬようじゃのう」
「なんだとぉ!?」
 むきになって食って掛かるキョンシー木綿に、鍋島・小百合子は言い放った。
「祭りとは一旦終わり、また始まるからこその催し。だからこそ楽しいのじゃ。
 永遠に終わらぬ祭りなど退廃と同じ。いずれはどんな美酒すらも醒めようぞ。
 それこそまさしく興醒め。貴様の言っていることは子供のわがままと同じじゃ!」
「うんうん、同感だわ。お祭り騒ぎが楽しいってのは否定しないけどね」
 李・桃花は腕を組み、頷きながら小百合子に同調した。
「それに、世界が滅ぶまでってのが私的にはどうにも許せないのよね。
 あなた、祭りの楽しさよりも"そっち"のほうが重要なんでしょ? だって――」
 桃花は練り上げた気を込め、ずしん!! と舞台床を踏みしめる。
「世界が終わったら、祭りだっておしまいになってしまうものね!」
「ま、世界の終わりをこんな祭りで迎えられリャ楽しく逝けんだろうがねぇ」
 一方の数宮・多喜は、まだ若者とは思えぬ言葉を箴言めいて呟いた。
 刹那的ではあるがけして堕落しているわけでも享楽的なわけでもない彼女は、
 そんな終わりも"悪くない"と思える。そんな強さと明るさを持っているのだ。
「けどもう言われてる通りさ。滅ぼすために祭りを続けるってのは本末転倒。
 因果ってのは正しく巡るもんだよ? 祭りはきちんと終わらせなきゃ、ね!」
「……そのへんの重大さ、妖怪たちはわかってるのかしらねぇ?」
 ティオレンシア・シーディアは、呆れたように舞台周りを見渡した。
 妖怪たちはきゃいきゃいと歌い騒いでおり、実に陽気な調子である。
 それはいい。暗く沈まれるよりは、こちらとしても戦いやすいというもの。
 ……しかしちょっと陽気すぎないだろうか? 事態の重さ、わかってる?
 なんだかキマイラフューチャーと光景が重なる。ティオレンシアは嘆息した。
「これ、一応世界の危機よねぇ? なんだか実感なくすわぁ」
「え、そんな大事だったの!? 知らなかった!!」
 そして猟兵のなかにも、まったく重みを感じていない奴が居た!
 化野・花鵺は完全に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔である。
「いやいや、最初っから説明されてただろう!?」
「カヤ、制服のことしか目に入ってなくて……」
(制服に並々ならぬこだわりがあるのね……)
 多喜のツッコミに困惑する花鵺、そして桃花は心の中で何か納得した。
 まあ、花鵺の趣味嗜好は今は関係がない。天狐はこほん、と咳払いする。
「つまり……キミに不幸を与えても誰も困らない、ってことよねぇ?」
 にやりと意地悪い笑み。キョンシー木綿は、不吉な予感に身を震わせた。
「それじゃあたっぷり不幸にしてあげちゃう。宴会のクライマックスよ!」
「まあそうだね、盛大にいこうや! 最後まで明るくね!」
 多喜はニカッと笑って、掌に拳を打ち付けた。
 キョンシー木綿は身構え、酔い潰れた妖怪たちをキョンシーに変える。
 最後まで乱痴気騒ぎめいた戦いが、いま改めて火蓋を切って落とした!

 キョンシーの群れは周囲を取り囲み、猟兵たちの回避を妨げようとする。
 これを迎撃するのは小百合子。その動きは舞踏を取り入れた優雅なものだ。
「盛り上がりの絶頂のとき、派手に終幕と参ろうぞ!」
「いいねぇ、その意気さ! さあ、妖怪も屍も盛大に踊りな!」
 多喜がその動きに呼応し、演舞じみた動きでキョンシーどもを薙ぎ払う。
 しかしその攻撃の間隙に割り込み、キョンシー木綿が拳法を仕掛けた!
「ハイ! ハイッ! ハイヤーッ!」
「おっと、さすが親玉だけあってなかなかやるわねぇ」
「相手にとって不足なし、だわ。こちとら拳法家よ!」
 ティオレンシアはカポエイラめいた華麗な足技で敵の拳を回避、打ち払う。
 その合間に振るわれる鞭めいた木綿は、桃花が裏拳で迎撃する。
 そしてふたりは調子を合わせ、同時に拳と蹴りを繰り出した!
「ふっふっふ、その程度見切って……ぇえええええっ!?」
 悠然と回避しようとしたキョンシー木綿、だが悲鳴!
 突然被っていた帽子がずり落として、視界が遮られたのだ!
 まんまとふたりの攻撃を受け、キョンシーはワイヤーアクションめいて吹っ飛ぶ!
「ふっふっふ、まだまだ不幸は続くよぉ? いっけぇ、管狐!」
「お、お前の仕業かぁ!? この……っ!」
 花鵺の術だと気づいたキョンシー木綿は彼女を潰そうと床を蹴るが、
 なんと誰かの酒瓶が割れてこぼれた液体に爪先をとられ、盛大にすっ転ぶ。
 おまけに繰り出そうとした木綿が体に絡みついて、ミイラ状態だ!
「モガガ! モガガーッ!?」
「いよっ! 宴会かくし芸大統領! にくいねこのこの~」
「見かけによらずえっぐい技使うわねあなた……!」
「けどチャンスだわぁ。畳み掛けるわよぉ?」
 唖然とする桃花をよそに、ティオレンシアは即座に状況判断した。
 もともとが冷徹なフィクサーである。チャンスを逃す手はない。
 素早くクイック・ドローした愛銃から、ルーンを刻んだ弾丸を叩き込む!
 KBAM!! 叩き込まれた焼夷手榴弾が炸裂し、木綿に引火!!
「ぎゃーっ!? あちちち、熱い熱い~!!」
「へえ、自ら燃え上がって盛り上げるとは見上げたもんだねぇ?」
「そういうことではない気がするのじゃが……まあ、よかろう!」
 小百合子は舞いを終え、がつん! と薙刀を地面に突き立てた。
「我は放つ、輝く水鏡に当てられし聖なる光の柱――さあ、貫くのじゃ!」
「や、やばい……!!」
 キョンシー木綿はとっさに破壊光線を避けようとする。
 だが多喜と桃花がそれを許さぬ。ふたりは側面に回り挟撃!
「残念だがタイムアップだよ――さあ、ここだ!」
「天狼拳の真髄、魅せてあげるわ! 天狼崩撃拳ッ!!」
 多喜は強烈な回し蹴りを、桃花は震脚からの渾身の拳打を繰り出す!
「ぐええっ!?」
「足止め見事。――いざ、盛大に散るがよい!」
 そして小百合子の生み出した破壊の光が、キョンシー木綿を飲み込んだ。
「わー、すごいすごーい! 特等席から眺めるの、楽しい~」
「あたしが言うのも何だけど、いい性格してるわねぇ……」
 きゃっきゃとはしゃく狐を見て、呆れるティオレンシアであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫

こ、ここまでくればもう櫻宵の酔いも覚めっ

悪化している
悪化している

一体、何飲んだの櫻
ご神酒かい?龍に捧ぐお酒かい?
効きすぎだよ

僕まで桜にされてしまいそう
龍の本性のままにそれはもう愉しげに遊ぶ櫻宵に溜息零す
妖気すらも食らって狂咲く、屠桜
嗚呼、けれど
こんなにも美しい
…ずるいよ
もう満足するまで遊ばせることにする
この酔っ払いを満たしておくれよ

歌う
「月の歌」
手伝ってあげる
盛り上げてあげる
君の咲かせる血宴を


眠り落ちる寸前の櫻を水泡のオーラで守り庇うよ

……記憶、ないの?
妖、ねぇ…
そうだねぇ
美しいけど色々と凄まじい大妖怪大蛇がいたねぇ
世が傾くかと思ったよ

ふん!
こうしてやる!
ほっぺつねってやる!
ばかやろ!


誘名・櫻宵
🌸櫻沫

うっふふふ!
愉しい楽しい宴はまだまだこれから
まだ足りない
飲み足りない食べ足りない殺し足りないの
ねぇねぇもっと踊って歌っていい声で鳴いて頂戴よ!
一反木綿?
きれいなあかで染めましょう
うつくしい薄紅を咲かせて散らして

酒をのむなというなら、生命を飲ませて

神罰の如く吹雪かせる生命力吸収の桜花
美しい剣舞を舞ってあげる!
蠱惑的に魅惑するようになぎ払って抉り裂いて

『愚華』
蹂躙しつくして優美に麗しく貪り
噫、宴とはこうでなくては!
あなたが滅ぶまで踊ってあげる!

すやぁ……は?!?
私は一体、何を?!
一杯かっくらってからの記憶がないわ!?
妖の仕業ね…こわいわリルっ

なんでそんな顔するのよ?
つねらないでいたいわ~!



●酔っぱらい、大暴れ
「うっふふふ! うふふふふ!」
「ぎゃー!! なんだこいつ酒臭い!!」
 完全に笑い上戸と化した誘名・櫻宵の剣舞が、キョンシー木綿を圧倒する。
 疾い。なんだったら普段の剣閃よりもちょっと速いかもしれない。
 なんだあれ。もしかしてあれが、噂に聞くSUIKENなの……か?
「まったくもう、なんでまだ酔いが醒めてないんだか……。
 でもまあ、こんなふうに慌ただしく戦ってたらいい加減頭がしゃっきり」
「ああ愉しい楽しい樂しいわ! まだまだ呑み足りない食べたりないのよぉ!」
「あれだけ呑んでおいて!?!?」
 悪化している。
 ……悪化している!!
 リル・ルリは戦慄した。そしてちょっとキョンシー木綿を哀れんだ。
 せっかくの大舞台、せっかくの第三幕(メタ的な意味でも)なのである。
 多分あちら側も、カチコミにきた猟兵を意気揚々と待ち受けていたのだろう。
 それが蓋開いてみたらこれだよ。酔っぱらいにずたずたにされるとかそんなことある?
 いやまあ、祭り開いてるのあっちなんで、自業自得といえばそうなんだけど。
「ねぇねぇもっと歌って踊って! いい声で鳴いてちょうだいよ!
 そのひらひらした木綿を、きれいなあかで染めてあげるからぁ!」
「踊りもするし戦いもするけどもう少し真面目にやれぇー!!」
「お酒が美味しいんだものぉそれに私はいつだって真面目よぉ!」
「後ろのやつが沈痛な面持ちしてるじゃないかギャー!!」
 キョンシー木綿もよう見とった。リルは何も言わず目をそらした。

 ……まあ、じゃあ酔ってなかったらこうなってなかったのかといえば、
 そんなことはない。ようは、櫻宵の程度の問題であった。
 そしてああも己を解き放ち歌い踊る彼の、そのさまのなんと美しきことか。
 優美で、麗しく、そして貪欲で不気味で蠱惑的、浅ましくも高慢なのだ。
 まさしく龍の舞。惚れ惚れとしてしまうほど、狂おしいほどに咲いていた。
「……ずるいよ。仕方ないから、もう満足するまで遊ばせてあげる」
 リルは拗ねたように呟いて、精神を覚醒せしめる"月の歌"を吟じた。
 月は囀り泡沫散らす。
 壊れた歯車が軋むように、
 砕けた硝子が擦れるように。
 おお、龍よ、狂えるほどに美しき龍よ。
 どうか些事に囚われることなく、ただあるがままに踊り続けよ。
 たとえ太陽がその行いに眉根を寄せ、月すらも姿を隠したとしても。
 己がどんな星よりも、その身を照らし言の葉を届けよう――。
「ああ、ああ! 聞こえるわ! 聴こえるわ、愛しい愛しい私だけの歌が!」
「こ、こいつ……ッッ」
「さあさあさあ! 踊りましょう! ――それが、あなたの望みなんでしょ?」
 キョンシー木綿が咄嗟に繰り出した拳は、するりと避けられてしまった。
 櫻宵はぴたりと肌を密着させたまま、まるで粘つくような動きで懐に入る。
 挑発的な眼差し。その幽玄に魅入られかけ、キョンシー木綿は怯んだ。
「足らないのよ」
 剣戟。
「足らないの」
 斬撃。
「もっとちょうだい。御魂の髄まで、殺(あい)してあげるから――!!」
 八首の龍が獲物を喰らうがごとき、牙じみた剣の乱舞。
 それが、キョンシー木綿を容赦なく切り裂いた――。

 ところで、そんな戦いからしばらく。
「…………はっ!!!!」
「起きた」
 昏睡状態から目覚めた櫻宵は、ぶすっとしたリルの顔に驚いた。
「や、やあねえリル、どうしたの? まるで龍が大暴れしたような顔して」
「したんだよ。きみが!! 酔っ払って!!!」
「……よ、妖怪の仕業よぉ。そうなのよっていたたたたた!!」
 ぎゅうううううう。リルは全力で櫻宵の頬をつねる。
「この、ばかやろ! もうしばらく、ていうかずっとお酒はきんし!!!」
「そ、そんなのってないわぁ~~~!!」
 多分これも破られるんだろうな、とヨルは思うのだった。ちゃんちゃん。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーナ・ユーディコット
この際お祭り騒ぎは最後までノるよ
でも世界が滅びるまでなんて付き合ってられない
出来て精々あなたを滅ぼすまで

舞うように、無数の槍の間隙を縫って貴方を仕留める
無謀だと思う?
私はだいぶ無謀だと思う……でもそれが達成されたなら、きっと盛り上がるでしょ?

戦闘の中で物量に勝る敵の武器の癖を覚えてそれを切り抜けるのを
武器一つのしかも単身でやり切る挑戦なんてだいぶ大きく出てしまった
曲芸だよ
ただ私が目標とする強さにはきっと普通の積み重ねでは生きてる間に届かない
だから身体を軋ませて精も根も振り絞って
疾く、鋭く、限界の先へ、理想へもっと、もっと
手を伸ばす!

踊り狂う刃に槍
最後までその冴えを失わずに舞い続けるのは――



●無槍を越えて無双となれ
 くるくると布が渦を巻き、氷柱めいた円錐状の形をとった。
 あるいはドリルのようだ。そして実際、この布はドリルよりも恐ろしい。
 それが、数えられるだけでも百以上。キョンシー木綿はニヤリと笑う。
「さあ、お前はひとり、こちらは無数。穴だらけにしてやる!」
「……やってごらんよ。出来るものなら」
 ルーナ・ユーディコットは感情を表に出すことなく、淡々と言った。
 その表情は、最初からキョンシー木綿本体しか見ていない。
 自信? ……いいや、違う。これは強がりにも近い。
 これほどの攻撃を、無傷で掻い潜れる確証はどこにもなかったからだ。
 けれども、こんなところで怖気づいているようでは……。
「どうしてそこまで自信満々でいられる~? お前は馬鹿なのかぁ~?」
 嘲るような声音に対し、ルーナは静かに言った。
「――だってこれは、お祭りなんでしょ? なら、ノッてあげなきゃ」
 舞台の上でビクつく役者など、観客にとっては興醒めもいいところだ。
 胸を張り、敵を見下ろし、不遜な態度を崩さないからこそさまになる。
 妖怪たちはこの舌鋒に大いに盛り上がり、ルーナをたたえた。
「……こ、こいつぅ……いい気になるなよぉー!!」
 三下みたいな台詞を吐きながら、キョンシー木綿が仕掛けた。
 合わせて百と五十近くの布槍が、まったく同時にルーナへ襲いかかる!

 まったく、我ながら無謀なことを考えたものだとルーナは思う。
 これだけの攻撃を、この一瞬一瞬で学習し、成長し、かいくぐるなど。
 命をチップにして、生還というリターンを得ようとする。
 そこに、さらに名誉と自負をレイズする。自殺行為にも等しい。
 だが。
(あの人に追いつくには、このぐらいのむちゃはしないとダメなんだ)
 思い描くのは、姉と慕う桜の鬼。胡蝶を纏う蠱惑的な彼女。
 その理想の姿を思い描き、なぞるように体を動かした。
 すると不思議と、出来ないと思えたことが現実になっていく。
 けれども、ダメだ。まだ足りない。
 なぞるのではなく、追い抜き、そして越えねば。
 自分なりの形で――自分に出来る形で。
 疾く。
 鋭く。
 限界を拒絶し、理想へ手をのばす。
 もっと。
 もっと!
「こ、こいつ……ッ!!」
 キョンシー木綿の驚愕の声に、ルーナは自分自身を発見した。
 そう、布槍の攻撃を躱し、ワンインチ距離に踏み込んでいる自分の姿を。
 先の先が手の内にある。祭りの狂乱は春の雷めいて遠くにあった。
 くるくると幻惑的にステップを踏み、速度を増す。
 全身のしなりと関節を連動させて、一撃の冴えを加速させる。
「――私は、私を超える。あなたも超える。祭りは、今日でおしまいだから」
 斬撃は、声より先に放たれていた。
 遠くなっていた喧騒がかえってくる――いや、ルーナが帰ってきたのか。
 割れんばかりの歓声と、背後で絶叫、そして敵が倒れる物音。
 ルーナは残心し、その手応えを忘れぬように掌を握りしめた。
 まだまだ遠いその背中を、いつか追い越してみるという決意を込めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨宮・いつき
楽しい時間はいつまでも続けばいい…確かにそうかもしれません
ですがそれを望まぬ者にまで押し付けるなど、無礼講だとしても限度という物があります
きっちり反省して頂きますよ

敬虔なる水の信徒に、清き祝福を与え給え
水行の舞で広げた水の霊気に、観客となった妖怪達の陽の気配
これだけ揃えば御呼びもし易いというもの
陽気に誘われた九頭龍様が躍り出て、周囲に満たすは神酒の霧
水の息吹で虹を掛け、観客達をほろ酔いさせて、祭りを素敵に盛り上げましょう!

もちろん、無粋な方への仕置きは忘れずに
操られている方達を鉄砲水で押し流して酔い覚まし
キョンシー木綿は強めた神酒の霧で酔っぱらわせて、その隙に骸魂を狙い撃ちます!


リア・ファル
POW
アドリブ共闘歓迎

骸魂たる一反木綿側を引きはがして倒せれば、
キョンシーは救えるんだよね?
「それじゃあ、やろう。今を生きる妖怪達の明日の為に!」

なら、ヌァザの出番だ
「概念設定、一反木綿!」

UC【銀閃・概念分解】で一反木綿とキョンシーを分かつ!

キョンシーや周囲の猟兵の拳法を学習して、
相手の拳法に合わせて、応じて斬る
(カウンター、情報収集、鎧無視攻撃)

楽しいことでも毎日続いたら
それと気付かずに過ぎゆくモノさ

それに、ありふれたと思っている日常にも
気持ち一つで輝くような良さがあるものだよ

さあ、キョンシーよ、この幽世の明日へと還ろう!


オリヴィア・ローゼンタール
彼女が今回の首魁、フォーミュラ相当ですか
本当、悪意らしい悪意はないようですね……少々タガが外れていますが

相変わらず白い中華服のまま
さて、これでも世界の命運を賭けた大一番、思いっきりいきますよ!

【ジャンプ】や【スライディング】と【地形を利用】した、アクロバティックな動きで翻弄
強化された【視力】で拳法の技を【見切り】、手や脚を掴んで投げ飛ばす(グラップル・投擲)
至近距離での拳の高速応酬、蹴りに対して蹴りを叩き込む、いわゆる魅せるアクションも織り交ぜて(パフォーマンス・誘惑)

一反木綿部分を掴んで【体勢を崩す】ことで、よりクリティカルヒットする【属性攻撃】【怪力】【天霆轟雷脚】を叩き込む

アドリブOK



●宴のたけなわ
 もうすでに並のオブリビオンなら十度は滅んでいそうな大攻勢。
 しかしもともと強力なのか、はたまた祭りの主催者としての誇りか。
 ……まあ誇り(プライド)といっても、文字的には傲慢な気がしないでもないが。
 ともあれ、キョンシー木綿はまだその存在を維持していた。
 仮にも世界を滅ぼす災害の出元となると、フォーミュラに近しくなるのだろうか?
 いずれにせよ、相手をする猟兵たちにとっては厄介なことである。

「ぐ、ぐぬぬぬ……まだだぁ~、祭りはやめたりなんてしないぞぉ~!」
 ボロボロになりながらも立ち上がるキョンシー木綿。
 自分たちの世界がピンチだというのに、妖怪たちは大盛りあがりである。
 ベビーフェイスでもヒールでも、ピンチから再起するのは燃えるものなので。
「だいぶしぶといですね、それだけの熱意自体は見上げたものですが……」
「ええ、執念だけは尊敬に値します。悪意らしい悪意もないようですし」
 雨宮・いつきの言葉に、オリヴィア・ローゼンタールが同調した。
 しかし、彼らはけっしてキョンシー木綿を褒め称えているわけではない。
 いやむしろ、悪意がなく執念深いからこそ厄介で見過ごせないのだ。
 まさしくそれは、この不安定なカクリヨファンタズムを滅ぼすに足る災害の種。
 タガが外れた純粋な好奇心や欲望ほど、恐ろしいものはない。
「うーん、さすがに骸魂だけを引っ剥がすってのは厳しそうかなあ……」
 なにやらプランを練っていたらしいリア・ファルは、難しい顔で呟いた。
 彼女の意識は、もっぱら骸魂に飲み込まれたキョンシー少女に向いている。
 グリモア猟兵からのお墨付きで、倒せば救えると言われてはいるが……。
「ボクの"ヌァザ"を使えば、体や心じゃなくてその『概念』を断ち切れるかも。
 問題は、それをどうやって当てるかなんだよね……あの身のこなしじゃなあ」
「力を合わせて、うまく動きを足止めするしかありませんね」
「であれば、前衛は私が務めましょう。おそらく一番身軽ですから」
 オリヴィアはばしん、と自らの掌に拳を打ち付け、不敵に微笑んだ。
 その姿は、普段のシスター服と異なり相変わらず白い中華服のままだ。
 なるほど、もともとのオリヴィアを知らぬものが今の姿を見たのならば、
 異国で拳法を学んだかしまし娘……なんて、早とちりするかもしれない。
「倒せると思っているのかぁ~? 負けるのはお前たちのほうだぞぉ~!
 さあ立ち上がれぇ、祭りに溺れた妖怪たちよ~! 歌って騒げ~!」
 フットワークを刻みながら、キョンシー木綿はなにやら呪文を唱えた。
 すると見よ。酔い潰れ意識を失った妖怪たちが、キョンシー化し跳ね起きる!
「手勢を増やすとは厄介な。ですが、その押し付けこそがあなたの悪性。
 無礼講だとしても、限度というものがあります。反省していただきますよ!」
「うるさいうるさいうるさぁ~い!!」
 いつきの正論にも、キョンシー木綿は耳を貸さない。
「百聞は一見にしかず、ってね。なら百の言葉の代わりに拳で教えてあげよう!」
「望むところ、です。私、そういうの得意ですので!」
 リアの言葉にオリヴィアはふんすと自信満々に頷く。
「ようし――それじゃあ、やろう。今を生きる妖怪たちの明日のために!」
 その声を皮切りに、猟兵たちとキョンシー木綿の戦いが始まった!

「ハイ! ハイ! ハイヤーッ!!」
「ハッ! ヤッ!」
 バッ、ババッ、と、カンフー映画じみた鋭い風切り音が響き渡る。
 舞台の中央で斬り結ぶ(もちろん徒手空拳だが)のは、オリヴィアとキョンシー木綿だ。
 互いの得物は使えない。超接近距離では長柄が逆に不利になるからだ。
 聖槍で中距離を保つことははなから切り捨てていた。賢い選択と言えよう。
「なかなかやるなぁ~、だがまだまだこれからだぁ~!」
「くっ、思った以上に疾い……!」
 数多の強敵を討ち倒してきたオリヴィアをして、敵の功夫は折り紙付きだ。
 かろうじて、攻撃を受けないように凌ぐのが精一杯であった。
 そして当然、リアもいつきも、超高速の攻防に割って入ることは出来ない。
 そんな彼らを取り囲むのは、キョンシー化した妖怪たちである!
「なるほど、二段構えの攻勢で、逃げ場をなくした上で有利を得る、と。
 見事な作戦です。ですが僕には、とっておきの術があるのですよ!」
 いつきは胸を張って言い、先ほどのキョンシーを真似るように祝詞を唱えた。
 すると見よ。いつきを取り囲むように凝縮した水気が螺旋を描き、
 この場に満ちる陽の気が混ざり合って、白く太陽めいた輝きを放つではないか!
「これは……! 龍の御魂を召喚するのかい? 制御出来る?」
「もちろんです。さあ、九頭龍大明神よ、参りませ――!」
 ざばあ!! と津波を砕くようにして現れたるは、神々しき九頭竜の霊!
 派手な助っ人の登場に、浮かれた観客妖怪たちは大いに盛り上がる。
 九頭竜は怯えるキョンシーたちを睥睨し、水の息吹を振りまいた。
 それは敵を押し止める濁流となり、同時に酩酊をもたらす神酒の霧にもなるのだ!
「う……っ!? な、なんだこの水気は、頭が回らないぞぉ……!」
「――! 隙ありです!!」
 キョンシー木綿が酩酊にやられた瞬間を、オリヴィアは見逃さなかった。
 素早い拳打で敵のガードを崩し、震脚からの裏拳! 敵が吹き飛ぶ!
「ぐえーっ!?」
「逃しません!」
 翻る木綿の端っこを掴んで、オリヴィアは無理矢理に敵を引き戻す。
 そしてみぞおちめがけ繰り出されるのは、稲妻じみたすさまじきトラースキック!
「喰らいなさい、天霆轟雷脚(ムジョルニア・インパクト)ッ!!」
「がは……ッッ!!?」
 ドォン!! と、さながら銅鑼じみて稲妻の一撃が鳴り響いた!
 まともに受けたキョンシー木綿は、壁に背を打ち付け悶え苦しむ。
 そして見上げた。頭上を取っていたリアの不敵な笑みを!
「対象概念設定完了――一反木綿! その執念、断ち切らせてもらうよ!」
「き、貴様……」
「この銀の煌めきは、何かを残し何かを壊す。骸魂よ、キョンシーから離れろぉっ!!」
 天から降り落ちる裁きのような兜割り!
 概念を断ち切る銀の剣閃は、キョンシーと骸魂の霊的結合を破壊せしめた!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御狐・稲見之守
楽器の妖怪よ、駄賃だ。
一文銭を投げてやれば、音楽と共に[UC傀儡符]で泥酔している連中を我が傀儡にして引き連れて練り歩く。

キング・オブ・ポップのダンス妖怪さながらに踊りつつ、酔っ払いの妖怪連中に乱暴されている女妖怪(名前:アニー)を助けてやり「大丈夫かい」と声をかけてやり、続けざまに操られている殭屍達をのしていく。

さぁて、スリラーナイトはおしまいだ。失せるがよい。

お祭りの場であるがゆえ無用の流血沙汰はなしとしようか。
踊ると不思議な力で殭屍木綿がなんか吹っ飛ぶ、ダンス妖怪がやってたから出来んことはないだろう。



●なんかこの光景見たことあるぞ
「『う、うぐぐぐ、うぐぐぐぐ……!!』」
 なにやら、頭を抑えて悶え苦しむキョンシー木綿。
 その声は、少女のものと邪悪な骸魂のものが重なり合っていた。
 概念を断つ一撃によって、飲み込まれた妖怪との霊的結合がほぐれつつあるのだ。
 キョンシー少女と、一反木綿の体が、ブレた映像めいてゆらぎ、そして戻る。
「うう……こ、こんなお祭り騒ぎ、もういや……!」
『だ、ダメだ、祭りは終わらせない、終わらせないぞぉ……!』
 逃れようとするキョンシー少女と、妄執じみた一反木綿の声が同時に聴こえる。
 まさかの展開に、観客妖怪たちは大いに息を呑んだ。
 そんな彼らを仲間に引き込もうと、キョンシー化した妖怪たちが舞台から飛び降りる!

 ……しかし、その時!
 ちゃりーん……と、指で弾かれた一文銭がくるくる舞台上を飛んでいった。
 妖怪たちに襲いかかろうとしていたキョンシーたちも、
 そんなキョンシーたちから逃れようとしていた妖怪たちも、
 そして苦しんでいたキョンシー木綿すらも、一文銭の行く先を見守る。
 くるくると飛んでいく一文銭は、やがてちゃりん、と掌に収まった。
 それを受け止めたのは、目隠しをぐるぐると巻いた楽器弾きの妖怪だ。
 楽器妖怪は、その一文銭を投げた当事者を見てこくりと頷く。
 なにやら白スーツにシルクハットを被った、御狐・稲見之守を!

「パンッ!!」
 お前どこからその声出したの? みたいな、いやに耳覚えのあるシャウト。
 その瞬間、金縛りにあっていたすべての人々が同時に動き出した!
 デン、デケデンデン、デケデンデン、デケデンデンンデッデッ。
 これまたやけに聞き覚えのある旋律を楽器妖怪が奏でる。三味線で。
 ……三味線にしてはいやにベースっぽいのだが、まあ置いとこう。
 そして稲見之守がこれまたいやにぬるぬるした動きで踊りだすと、
 逃げようとしていた妖怪たちも、ついでに符で籠絡されたキョンシーたちも、
 みんなしてそのあとに続き、踊り始める。いやなんだこの光景。
「チャッ」
 だからお前その声どこから出してんの? みたいな稲見之守のシャウト。
 すると彼女は舞台上にあったビリヤード台(???)を駆け上り、
 女性妖怪アニー(?????)に乱暴していたキョンシーを華麗に倒す。
「宿直ッ」
 その勢いでどんどんのされていくキョンシー。踊る妖怪たち。
 おお、まるで月面にいるかのような、重力を感じさせないダンス……!!

「『――ってちょっと待てぇええええええ!!』」
 その瞬間、キョンシーと一反木綿はふたたびひとつになった。
 そのぐらい息のあったツッコミであった。さもありなん。
 稲見之守はなぜか床に倒れかけ、それを足の力だけで引き戻すと、言った。
「さぁて、スリラーナイトはおしまいだ。失せるがよい骸魂よ」
『だからあらゆる意味で待て!! ここ祭り会場なんだが!?』
「アーォ!」
『グワーッ!?!?』
 見よ! 稲見之守がポーズを決めたらなんか敵が吹っ飛んだ!
 稲見之守は華麗にターンを決め、そしてビシッとポーズを取る。
「これぞダンス妖怪キング・オブ・ポップ直伝の、ダンス呪術じゃゾ」
『そんなもん聞いたことも見たことないわーーーーーーーっ!!』
 おお、哀れなりキョンシー木綿、そのツッコミは届かない。
 戦いはノリがいいほうが勝つ。
 その点において、マイケル・稲見之守は……強い……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
なんていうか、癇癪をおこした我儘な子供って感じで、気が抜けるわね……
いい?お祭り好きなのは結構だけれど、ちゃんとメリハリを付けないと。
そもそも滅んじゃったらその後お祭り出来ないじゃない……馬鹿じゃないの?
はい、お説教終わり!いい加減このお祭り、終わらせるわよ!

UCによる高速演算で敵の動きを先読みし、舞い踊りつつ布の槍を時に大剣で【薙ぎ払い時に【盾で受け打ち返すわ。最初にやった演舞みたいにね。
後は華麗に騎士人形の一閃で〆ましょう。最後くらいは、華々しく終わらせてあげるわ?……上手いこと乗せられてるみたいでちょっと癪だけれど。

ふう、疲れた……もうしばらく、踊りもお祭りも御免だわ……



●お姫様もお姉さんぶりたいことがある
「……なんなのかしらこれは」
 フェルト・フィルファーデンは、呆れ返った顔で惨状を見渡していた。
 なぜか踊り疲れてへとへとになった妖怪たち。
 みんなして折り重なって、へべれけでぐったりしている。
 どうやら、ちょっと前(具体的に言うと直前のリプレイ)で、
 相当のトンチキ……もとい、乱痴気騒ぎがあったらしい。むべなるかな。
 そんな台風が通り過ぎたあとのような舞台上、ぶっ倒れているキョンシー木綿。
 もしかしてもう、手を出すまでもなく終わったのか?
 フェルトがそう楽観視しかけた矢先――奴は、弾かれたように起き上がった。
『ま、まだだぁ! これで終われるかぁ~~!!』
「アナタ、正座」
『えっ』
「正座!!」
『アッハイ』
 起きた瞬間、すさまじい剣幕のフェルトに叱られる。可哀想な骸魂。
「いい? お祭り好きなのはけっこうだけど、ちゃんとメリハリをつけないと」
『いやでもオブリビ』
「黙って聞く!!」
『アッハイ!!』
「……そもそも世界が滅んじゃったら、そのあとお祭り出来ないでしょう?
 わかっててやってる? どっちにしてもアナタバカじゃないの? てかバカね?」
『あ……はい……』
 ド正論でガチ説教をうけ、さすがのキョンシー木綿もしょんぼりした。
「はい、お説教終わり! それじゃ」
『あ、立っていいですか自分。それじゃ戦いを』
「騎士人形たちよ、反撃など許さずにこいつを斬り裂いて!」
『ちょっと待てそれって不意打ちって言グワーッ!?』
 は、疾い! フェルトは機を見るに敏の素早さで人形たちを繰り出した!
 これも高速演算による力だ。え? 騙し討ち? そんなの違う違う。
 気品を持つ王女様がそんなことするわけないだろ!
「舞い踊りたいのでしょう? ならば舞わせてあげるわ、存分に!」
 フェルトが操る騎士たちの攻撃が、キョンシー木綿を吹き飛ばす。
 斬撃を躱そうとすれば刺突を喰らい、刺突を避けようとすれば斬撃を受ける。
 まさしくきりきり舞いである。キョンシー木綿は泡を食った。
『く、このぉ……! 反撃してやるッ!!』
「――甘いわね」
 見透かしていたように騎士人形が盾で弾く。そして、返しざまの一閃!
「まったくもう、妙に疲れるわこのお祭り……もう踊りもしばらく勘弁ね」
 きれいな放物線を描いて吹っ飛ぶ敵をみやりつつ、フェルトは嘆息した。
 お上品な王女様に、この乱痴気騒ぎは少々堪えたらしい……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ
【甘くない】
そうですわね、ここは景気よく盛り上げ…って
ジンさん!?その姿…
……ふ、ふふ…ふふふふふっ!
もう、あなたってば…何でもありですのね
嗚呼、可笑しい
あなたといると本当に退屈しないこと
(一緒にいて楽しい、なんて言葉は言ってやらない)

己も真の姿へ変じて
同じ鱗を持てど、こうも違うものかしら
…もっと大きな首輪を用意しなければなりませんわね

ちょっと失礼
ジンさんの背中に飛び乗って
綺麗な光の雨ですこと
では私も
さあさ、おいでませ!
胡蝶と桜を降らせれば
ここは私たちの舞台『花の涯』
今日は皆さん纏めてお饗しして差し上げますわ

これで満足していただけたかしら?
宴も酣
御首頂戴致します

ええ、とっても
愉しい宴でしたわ


ジン・エラー
【甘くない】
台無し?
……ハァフヒッヒャ!!
これッからサイコォ〜〜〜〜になるンだろォ〜〜〜がァ〜〜〜!!!!

さァ、『降臨』だ。

泥、涅、射干玉。
この世全ての光を呑み込むような長い胴
万物貫くような鋭い硝子珠。黄金と躑躅の輝き
桜鬼を乗せて、救いの雨を降らせよう
強烈に。熱烈に。鮮烈に。
その節穴に、しかと刻め。

喉から轟かせるは竜の咆哮。
だからこれは、
この聲は、
届くことはない。

『お前はやっぱり、綺麗だよ。』

この身で喰らうは容易、しかし救いではあらず。
なれば、女主人に任せるとしよう。

愉しかったろ?
──なァ、エリシャ。



●祭りの終わり、ふたりの続き
『…………台無しだ』
 キョンシー木綿は、もうめちゃくちゃになった祭り会場を見渡し、呟いた。
『何もかも台無しだ! おのれぇ、猟兵めぇ~~~!!』
「……クッ、ククク! ハァ、ハハハハッ! フヒッヒャハハハハ!!」
 そんなオブリビオンの慟哭を切り裂くように、ジン・エラーが哄笑する。
「違ェ違ェ違ェなァ~~~~!! これッから!! これからだぜェ!?」
『な、なんだとぉ……?』
「これから! サイコォ~~~~になるンだよォ~~~~!!」
「ジンさん? 何を言って――!?」
 隣に立つ千桜・エリシャは、彼の姿を思わず二度見した。
 目を灼くほどの聖性は、いよいよエリシャにすら見通せぬほどに白く輝く。
 そして白一色と化したジンのシルエットはみるみるうちに膨れ上がり、
 けたたましい笑い声はやがてごろごろと雷雲めいた咆哮に変わり、
 ついには天を衝くほどの巨躯に達する。それはまさしく、竜の……。
『ヒヒャハハ――どォだ、度肝を抜かれたかァ~~~?』
 ぎろり、と、黄金に輝く双眸が唖然とする下々の者を見下ろした。
『"これ"が、救いだよ』
 臨鵬輝竜(こうりん)の御魂。
 いま救いのみしるしは、人を越えて龍の域へと至ったのである。
『な、なんだこいつはぁ……!?』
「……ふ、ふふ……ふふふふふっ!」
 しかしてエリシャは、恐れもせず畏れを抱くこともなかった。
 愕然とするキョンシー木綿をよそに、くすくすと楽しそうに笑い出す。
「あなたといると! 本当に退屈しませんわね!!」
 ――一緒に居て樂しいなどとは、口が避けても言ってやるまい。
 エリシャは恋する生娘のように――あるいはそのものか――目を輝かせ、
 真の姿を解き放つとともに、舞台を蹴って聖竜の背へと降り立った。

 もはや、無限じみたこの迷宮も、乱痴気騒ぎも、何もかもが小さい。
 光は闇という闇を駆逐してすべてを照らし、そして敵を圧倒する。
「……同じ鱗を持てど、こうも違うものかしら」
 輝く鱗を撫ぜ、エリシャはぽつりと呟いた。
 龍は言葉を返さぬ。おそらくは、返せないのであろう。
 ごろごろと稲光めいた唸りは、おそらく彼のあの笑い声の代わりなのだろう。
 ――そう、龍の声は届かない。
 天上にめします神の意思が、人にそのままには伝わらないように。
 ふたりの距離は近いけれど、どうしようもなく遠くなっていた。
 "お前はやっぱり、綺麗だよ"。
 ……そんなジンの囁きは、すべて竜の咆哮に変わる。
 届くことはなかったし、届かせる必要もなかった。
 いまはまさしく、鏖殺(すくい)をもたらすときだからだ。

 救いの光が雨のように降り注ぐ。
 キョンシー化させられた妖怪たちを救い、そしてその首魁を救う。
 大顎にて喰らい砕くことは容易。
 しかしそれは救いに非ず。祭りの終焉としてもふさわしくあるまい。
「さあさ、おいでまで! 夢も現も、ひとたび置くといたしましょう!」
 そして見よ。光に混ざり合う桜と胡蝶は、渦を巻いて空間を歪ませた。
 花の涯――この世ならぬ路を開き、いま、幽世と幽世は繋がりあったのだ。
『わ、私の! 俺の! 祭りが、こんな……!!』
「もう宴もたけなわ。お疲れでしょう? 存分に癒やしてあげますわ」
 キョンシー木綿は畏れた。
 竜の光を。
 その背に乗る鬼の双眸を。
 ――己の首を狙って振るわれる、致命の刃を。
 避けられぬ。
 避けようという想いが浮かばない。
 骸魂の恨みを、執着をすら溶かし、癒やす。それがこの宿ゆえに。
「――御首、頂戴いたしますわ」
 すらり、と刃が走り、そして駆け抜けた。
 骸魂は断末魔すらなく、桜のなかにとけて消えた。

 ……そして静寂がやってくる。
 迷宮は救いの光に呑まれて消え、あとには妖怪どもの寝息と酔いの残滓。
「――なァ、エリシャ」
 人の姿に戻ったジンは、こちらを見返す少女を見て目を細めた。
「愉しかったろ?」
 伝えられなかった言葉ではなく、いつものように。
 エリシャもまた蠱惑的に目を細め、答えた。
「ええ、とっても。……ふふふ」
 これにて宴は終焉、幽世にまた日常が戻る。
 それがこの世界の、あるがままの姿であるがゆえに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月04日


挿絵イラスト