●辺境伯
初老の老紳士がパイプを燻らす。
「ふぅ―――」
吐き出される紫煙が老紳士の周囲に漂い、その色濃さから彼の心に溜まった鬱積たる感情が伺えるようだった。
彼の名はジョナサン・ランバート・オルソレグ。
かつて『善人』と呼ばれた辺境の領主であった。元はただの人間である。それは遥か昔のことであり、この時代には知る者は誰ひとりとして存在していない。
「ああ、なんたることだ。人類砦。人間にとって暗黒たる世界において、まだ人間らしく生きることを希望する者たちがいるとは」
感嘆の声であったが、同時にそれは彼の鬱積たる感情の元凶でも合った。
人類砦―――それは『闇の救済者』と呼ばれるようになったヴァンパイア支配から逃れ、虐げられた民衆を救う活動を行う秘密組織が作りあげたヴァンパイア支配の及ばぬ人類の活動圏である。
そこには暗黒の世界において、生きる希望を捨てない者たちの集団である。
「生きる意志は尊い。かつての私もそうであった。生きたい……己の生存本能の高まりこそが、死して我が身をオブリビオンとして蘇らせたもうたのだ。素晴らしい。なんたる素晴らしさか!」
感激に胸が打ち震える。
これほどまでに素晴らしいことがあろうか。解き放たなければならない。生という執着から開放せねばならない。
「そう! 生きているからこそ、苦しみが生まれる! 苦痛が! ならば私は開放しよう! しなければならない! 生きる意志強き者、彼等の魂を生の苦しみから開放し、次なるオブリビオンとして生まれ変わらせるために。諸君、私は決めたよ」
ジョナサンが熱弁を振るうのは、一際高い位置からであった。
それは演説であった。
彼の目の前には、行軍……辺境伯の紋章を額に持つジョナサンが任された『人類砦』の破壊のための一軍があった。
一軍全てがオブリビオンである。彼等は手にした銃剣の装備された銃を手に整列している。
「―――彼等を開放しよう。生の苦しみから」
●人類砦
そこは岩山の上に存在した、堅牢なバリケードに囲われた小さな砦であった。
今は人間たちの手によって修復され、人類砦として存在していた。そこに襲来するオブリビオン―――ヴァンパイア辺境伯の一軍。
一度目は人類砦ができたての頃であった。猟兵たちの活躍によって、ヴァンパイアの蹴撃は退けられたが、再びまたヴァンパイアの軍勢が押し寄せようとしていた。
明日を生きようと懸命なる人々の生命は、今や風前の灯火であった。
●グリモアベース
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件はダークセイヴァー。ヴァンパイアの支配する闇の世界です」
ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)がグリモアベースに集まってきた猟兵たちに頭を下げて出迎えた。
彼女の表情は固い。いつものように微笑みでもって猟兵たちを出迎えることが難しいほどに、今回の事件は切迫したものであるようであった。
「皆さんは辺境伯の紋章という言葉は、幾度か耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません」
辺境伯。それはヴァンパイアの上位存在である何者かが、オブリビオンであるヴァンパイアに与えた『寄生虫型オブリビオン』である。
その寄生された辺境伯は、強力な力を持ち、通常のヴァンパイアよりも数段上の戦闘力を増強させられているのだ。
「はい、ですので、この『辺境伯の紋章』……これを多く手に入れることによって、ヴァンパイアのより上位なる者たちへの足がかりを作りたいのです。幸いに、辺境伯であるヴァンパイアを打倒すれば、活動を停止しますので、これを確保していただきたいのです」
だたでさえ、強力なオブリビオンであるヴァンパイア。
それを強化する『辺境伯の紋章』。これを打倒するにはたしかに骨が折れそうであるが、その情報だけでは猟兵もそこまで逼迫した事態であるとは思えなかった。
「……辺境伯、と名乗るとおり、かのヴァンパイアは軍を率いています。一軍……全てオブリビオンであり、彼等が目指すのは岩山砦の人類砦なのです。幸いに未だ軍が砦へと到達はしていません。岩山にバリケードで囲った簡易な砦ではあるのですが、ヴァンパイアの軍勢の前にはひとたまりもありません」
岩山の上に存在するバリケードで囲った砦。
そこへ至る軍勢を如何に退けるかが猟兵たちに託された使命の一つでもある。
「まずは辺境伯の軍容と進路を観測しつつ、奇襲の準備や、必要であるとみなさんが判断したのであれば、住民の避難などを行って頂きたいのです」
確かに人類砦と言えど、そこに生きる人々はただの一般人である。
ヴァンパイアに叶うことはできないだろう。
「そして、辺境伯の軍を蹴散らし、辺境伯本人を打倒してください。辺境伯の紋章の確保は、それからでも構いません。どうか、人類砦を守って下さい。彼等はよくやくヴァンパイア支配から逃れたのです……私は予知しかできません。一度目も、二度目も……皆さんしか頼ることができないのです。どうか……お願いいたします」
再びナイアルテは頭を下げる。
彼女が出来ることは予知と転移の維持だけだ。戦うことはできない。
その歯がゆさを感じながらも、彼女は猟兵に託す。どうか、明日を生きる事に懸命な彼等を助けてほしいと―――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はダークセイヴァーに存在する秘密組織『闇の救済者』たちの築いた『人類砦』を守るシナリオとなります。
辺境伯の紋章と呼ばれる特別な『寄生虫型オブリビオン』と、それによって強化されたヴァンパイアとの戦いとなります。
●第一章
冒険になります。
皆さんは、まず辺境伯の軍容と進路を観測し、軍に対しての奇襲の準備や、必要であると判断したのであれば、住民の避難などを行って下さい。
●第二章
集団戦です。
辺境伯の軍勢と激突します。第一章の結果を受けて、猟兵の皆さんと軍勢がどこでぶつかるのかを断章でお伝えします。
勿論、第一章の結果を受けてのボーナスも反映されます。
●第三章
ボス戦です。
辺境伯の紋章によってパワーアップした辺境伯『善人』ジョナサン・ランバート・オルソレグとの戦いとなります。
辺境伯の紋章は、宝石の体と不気味な触手を持つブローチ大の寄生虫オブリビオンであり、今回は額に現れています。
それでは、闇に支配された世界、ダークセイヴァーに芽吹いた人類砦という人類の生存圏を守る戦いであり、ヴァンパイア上位のオブリビオンへと至る足がかりを掴むための戦いとなります。
皆様のキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『辺境伯迎撃準備』
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POW : 襲撃を行うポイントに移動し、攻撃の為の準備を整える
SPD : 進軍する辺境伯の偵察を行い、事前に可能な限り情報を得る
WIZ : 進路上の村の村びとなど、戦場に巻き込まれそうな一般人の避難を行う
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
人類砦。
それは常闇の世界であるダークセイヴァーに灯った一つの希望である。ヴァンパイア支配の届かぬ土地、そこに生きる人々は苦しく厳しいながらも支配を逃れて生きていた。
だが、それでもヴァンパイアは己たちの支配体制の綻びとなるものを一切赦さない。
岩山の上に築き上げられた砦。
今はそこが『闇の救済者』……ヴァンパイア支配から逃れた人々を人類砦へと匿う秘密組織の、文字通り砦であった。
しかし、そこに迫る脅威は彼等だけではどうしようもない。
絶望に顔を伏せそうに成る彼等に、朗報がもたらされる。
いつかの時に自分たちを助けてくれた者たちが再び現れてくれたのだと―――。
髪塚・鍬丸
任務了解、だ。昔取った杵柄、偵察を受け持とう。
砦の人々から可能な限りの情報を聞き込み、敵の来る方角を予想し斥候に向かう。
【遁甲の術】を使用。不可視の不定形体に変化。姿を隠したまま、伸縮性を活かした跳躍力で高速移動。敵群が砦に近寄るまでに、迅速に情報を集め持ち帰り、対策を練る必要がある。
地に耳を当て【聞き耳】で軍勢が移動する振動を聞き取る。方角と位置を探り接近。
機械化で強化された【視力】を活かし、遠距離から【情報収集】。敵の数や戦力、進行速度や進路等、迎撃に必要な情報を集める。
持ち帰り仲間に提供。必要なら偵察を繰り返す。
迎撃準備や避難にも情報は必要だ。仲間と連携、協力して準備を進めよう。
常闇の世界ダークセイヴァーに芽吹いた希望の光。
それが人類砦である。そして、それに迫るのが『辺境伯の紋章』と呼ばれる寄生虫型オブリビオンを身に宿したヴァンパイアであるというのであれば、此処より先は猟兵の領分である。
オブリビオンであるヴァンパイアに一般人である人類砦の人間たちは敵わない。それが大軍勢であるというのであれば、尚更である。
「任務了解、だ。昔とった杵柄、偵察を受け持とう」
人類砦に置いて辺境伯の軍勢を迎え撃つためにやらなければならないことは多い。その中で偵察というものは最たる重要な任務であった。
大軍勢に単独で近づかなければならず、情報を素早く持ち帰らなければならない。その危険性は言うまでもない。
だが、髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は事も無げに危険な偵察の任務を請け負った。彼にとって、むしろそのような任務こそが彼にとって慣れ親しんだものであったのかもしれない。
まず鍬丸は砦の人々から可能な限り情報を聴き込む。
彼にとって無闇矢鱈に飛び出すのは得策ではないのだ。この世界の住人である彼等の方が、この周辺の地形に詳しい。
一通り情報を得た鍬丸は早速、砦を飛び出す。辺境伯の軍勢がやってくるとしたのならば、数を頼みに砦を押しつぶそうとするだろう。
そして、オブリビオンである以上、人間を侮る。正面突破を画策するのもうなずける話である。
「ならば―――彼奴らがやってくる方角は」
そのまま彼はユーベルコード、遁甲の術(トンコウノジュツ)によって、音もなく高速移動する透明な体へと変ずる。
さらに強い伸縮性と弾力性を持つ体となった鍬丸は、姿を隠したまま跳躍し、荒野を駆け抜ける。
地に耳を付け、かすかな振動を聞き取る。
規則正しい振動。明らかに自然のものではない。統制が取れた音だ。
「……! あれか……」
彼の瞳が捕らえたのは、銃剣の取り付けられた銃を持つ狼獣人たちが一糸乱れぬ行軍を続ける姿であった。
機械化によって強化された鍬丸の視力がそれらを捉える。数は正直に言って数えるのが億劫になるほどの数である。
だが、人類砦に集まった猟兵たちであれば、倒し切ることができるかもしれない。それに人類砦では、オブリビオンの軍勢を迎え撃とうと準備が進んでいる。
それを加味したとしても、勝算が成さすぎるということはないようだった。
「……数、質、共に申し分なし、か」
その情報を持って、鍬丸は人類砦に戻る。
迅速に戻ることが今は求められていることだ。戦うと決めた以上、人類砦の人間たちも強力するだろう。
一刻も早く、この情報を持ち帰り、共有しなくてはならない。
「昔とった杵柄、か。このように役立てることが―――」
忍びの里より抜けた過去が、今の彼を走らせる。
その過去がなければ、重要な辺境伯の軍容を他者に知らしめることもできなかったかもしれない。
鍬丸の素早い情報共有によって猟兵たちは辺境伯の軍勢の内情を直ぐに知ることができた。
狼の獣人たちで形勢された軍勢。
彼等の連携や、自己の生命を省みない戦いぶりは、対峙する猟兵たちにとって有益な情報であったことだろう。
それを踏まえて戦う戦術を組み立てれば、どれだけの数がいようとも、猟兵たちは遅れを取ることはないだろう。
その情報の有益さは、賞賛に値するのだった。
彼の一歩一歩の積み重ねが、誰かを救う一歩となる。
それはとても誇らしいことではあったけれど、鍬丸は表には出さない。それはそっと心の内に忍ばせるものであるから―――。
成功
🔵🔵🔴
春乃・結希
砦の人達の不安を少しでも取り除けるようにと
行動中は常に明るく振る舞います
ここは、前にも敵と戦って、勝ったって聞きました
なら、今度だって余裕で勝てますねっ
だから私たちを信じてください。この砦は、絶対落とさせません
UC発動し、ひとまず砦の上空に飛び上がって敵を探します
お、あれかな?はー、いっぱい連れてきたなぁ…
あれと接敵する前に数を少しでも数を減らせれば…それなら…
集団戦でのUC『焔の雨』使用に備え、簡単なものでいいので見晴台を作りたいです
今からでも間に合いますか…?力仕事ならお手伝いできますっ【怪力】
高い所にも風の力で浮かび、材料を運びます
ん、よく見えます!ありがとーっ(手を元気よく振りながら
人類砦は慌ただしかった。
転移したてではあるが、その慌ただしさは人類砦に迫る辺境伯の軍勢を迎え撃つために人々が動いているということが、ハッキリとわかる。
この人類砦の人間たちは希望を捨てていない。
絶望的な戦力差であることはわかっているのだろう。けれど、彼等は対峙するヴァンパイアの軍勢にとって何が一番味方するかをよく理解していた。
それは己たちが絶望することである。絶望は足を止める。足が止まれば腕も止まる。抵抗がなくなる。
だからこそ、人類砦の人々は絶望しない。
彼等は知っている。自分たち一人ひとりが人類の希望であるのだと。
春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は人類砦に降り立ち、即座にしたことは明るく振る舞うということだった。
「ここは前に敵と戦って勝ったって聞きました。なら、今度だって余裕で勝てますねっ。だから、私達を信じて下さい。この砦は絶対落とさせません」
彼女の言葉は砦の人々の不安を少しでも取り払おうとした結果だった。
彼等には絶対的な自信があるわけではない。あるのは、かつて猟兵たちに救われたという事実と、彼等が諦めなかったという純然たる結果のみ。
結希の言葉は、彼等の自信を後押しする言葉だった。
彼女の言葉、明るい表情、何も心配することはないという彼女自身の自信が砦の人々の中に伝播していく。
人々の表情が明るくならないまでも、不安は取り除くことができた。
「吹き飛ばされそうなものはしまってくださーい」
よーし飛ぶぞー!とユーベルコードで結希の体が強大なエネルギーを持つ風を纏い、空へと舞い上がる。
その視線の先には、先に偵察に出た猟兵より得た情報からわかる方角ある辺境伯の軍勢の姿。
「お、あれかな? はー、いっぱい連れてきたなぁ……」
正確な数は未だ全容を知ることはできない。けれど、偵察の結果、かの軍勢の装備しているのは銃剣を取り付けた銃。
ならば、と結希は考える。
あれらと接敵する前に数を少しでも減らすことができれば……と。考える。敵の数は多く、飛び道具と統制された行動を行うことが彼等の強みである。
統制が取れているということは、それを乱すことができれば、付け入る隙も生まれるはずだ。
「あの! 簡単なものでいいので、見晴台を作りたいです。今からでも間に合いますか……? 力仕事ならお手伝いできますから!」
結希は砦に降り立ち、人々に声を掛ける。バリケードを補強していた人々が見晴台?という顔をする。
けれど、やれることはなんでもやってやろうという気概が彼等にはあった。簡素なものであるが、即興でできるかもしれないと有志と共に結希は砦のバリケードの近くに見晴台を組み上げていく。
ユーベルコードによって強化された力、そして空を飛ぶ力によって見晴台を組み上げていく。
時間は限られてはいたが、砦の人々と強力することによって、バリケードよりも高い位置で見晴台が組み上げられる。
「ん、よく見えます!」
結希は見晴台の上から人々に手を振って応える。これならば、集団戦になっても彼女のユーベルコードで軍勢をかき乱すことができる。
その一歩を彼女は踏み出したのだ。勇気を出してよかった。その喜びが彼女の胸をいっぱいにし、眼下の人々へと呼びかける。
「ありがとーっ」
元気よく手をふる彼女の姿は、これから大きな戦いがあることを一時であるが、人々の心から拭うには十分な姿なのであった―――。
成功
🔵🔵🔴
黒柳・朔良
生きることは確かに苦痛を生じる
それはたしかにひとつの『真実』だが、だからといって『死が救い』であるとはあまりにも極端すぎるだろう
しかも彼のオブリビオンは次なるオブリビオンを生み出すために『死』をもたらそうとしている
それだけは止めなければ、今後さらなる犠牲を産むことになるだろうな
とはいえ、まずは敵戦力の把握が必要だな
選択UCを発動、自身の存在を消しつつ【目立たない】ように【闇に紛れ】て辺境伯の軍勢の【情報収集】だ
ただし深追いは禁物だ
【第六感】で警戒しつつ危険な場合は【逃げ足】を使って逃げよう
情報を持ち帰ることも大切だが、引き際を誤るなど言語道断だとは思わないか?
常闇の世界ダークセイヴァーにおいて人間は生き辛い。
どれだけ善良であったとしても、この世界を支配するヴァンパイアによって気まぐれに生かされ、気まぐれに殺される。
そんな支配されるのが当たり前の世界にあって、人々は団結し、人類砦という人類の生存圏を勝ち取ってきた。
だが、そんな彼等という希望を摘むためにヴァンパイアは辺境伯の軍勢を遣わせた。ありとあらゆる人の希望を踏みにじろうとしているのだ。
「……あれか」
黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)は辺境伯の軍勢を偵察する猟兵の一人である。彼女の瞳が捉えるのは、狼の獣人の姿をしたオブリビオンの軍勢。瞳に映るのは、彼等の装備だ。
銃剣の装着された銃。それに一糸乱れぬ統率の取れた動き。彼等の連携は容易には崩せないと悟ることができる。
ユーベルコード、影に潜む暗殺者(アサシン・イン・シャドウ)によって、極限まで己の存在感を消した彼女は、辺境伯の軍勢の間近まで接近することができていた。
「諸君。かの人類砦までわずかである。各々の装備の点検は、しっかりとな。彼等は生きる希望を忘れない者たちだ。ああ―――なんたることだろう」
その声は思いの外に良く通る声であり、朔良の耳を打つ。
彼女の視線の先には、『辺境伯』―――ジョナサン・ランバート・オルソレグ。
人目でそれとわかる圧倒的な実力。
あれが、この軍勢を率いているヴァンパイア。その姿は初老の老紳士であるが、身に秘めたる力は、並のオブリビオンではない。
「彼等を生の苦しみから救ってやらねばならぬ。開放し、共にオブリビオンとして生きる道を知らしめようではないか」
その言葉は、朔良にとってどのような意味をもたらしただろうか。
生きることは確かに苦痛を生じる。それは確かに一つの『真実』だが、だからといって『死が救い』ではない。極端だ。
彼女の主の顔を思い浮かべる。優しすぎる主。彼ならばなんというだろうか。きっと自分と同じ考えであるかもしれない。
深追いは禁物であると朔良は、その場から離れていく。
これ以上此処にとどまっていては、首魁である辺境伯に感づかれてしまうと、彼女の第六感が言う。
引き際を誤るなど、彼女にとってそれは言語道断なのだ。
彼女は情報を持ち帰る。
辺境伯の姿。額に宝石のような装飾。それが宝石に擬態した寄生虫型オブリビオンであることは間違いない。
荒野に立ち、軍勢の行軍を視界に収めながら朔良はつぶやく。
「彼のオブリビオンは次なるオブリビオンを生み出すために『死』をもたらそうとしている……」
辺境伯の言葉は、一端の真理を語っていたのかも知れない。
だが、それは彼の真理であって、今という現在を生きる人々の真理ではない。だからこそ、朔良は戦うと決めた。
「それだけは止めなければ、今後さらなる犠牲を産むことになるだろうな……」
あの考え方はいつか、唯一無二の主の憂いとなる。だからこそ、それを打ち払わなければならない。
それが『影』としての朔良の戦いなのだから―――。
成功
🔵🔵🔴
大門・有人
不採用含め全て歓迎だ。
SPD対応。
辺境伯、寄生虫型のオブリビオン。
よく分からないが、戦地を引き連れて歩くような災害を野放しにはできねえな。
敵軍に悟られないよう、遠くから監視させて貰うぜ。距離が離れた分はUCで行動範囲を広げておく。
人の生き様を悲嘆するような輩に向けるべき言葉はねえ。
人類砦を守るため、できることをやらせてもらう。
常闇の世界に宇宙バイクが空を飛ぶ。
その眼下に広がるのは、辺境伯が率いる一軍である。彼等は一様に狼の獣人たちばかりであった。手には銃剣の装着された銃を持ち、一糸乱れぬ更新
を続けている。
荒野にあって、あれほど目立つ者たちは、この世界、ダークセイヴァーにおいてたった一つの勢力しか存在しない。
それはオブリビオンであるヴァンパイア勢力である。
ヴァンパイアの支配体制は盤石である。故に彼等は何もしない。だが、今彼等が目指すのは人類砦である。
それは闇の救済者と呼ばれるヴァンパイア支配から逃れた者たちで結成された秘密組織が、人類の生存圏として作りあげた砦の一つである。
辺境伯の軍勢は、人類砦へと迫っていた。
グリモア猟兵の情報通りであるというのならば、かの軍勢が人類砦へと辿り着くのも遠くはない。なにせ彼等はオブリビオンである。疲れもしらなけ
れば、食事も必要としない。
大規模な軍勢を維持するための最大のネックである兵糧も必要としないのだ。
「よくわからないが、戦地を引き連れて歩くような最外を野放しにはできねえな」
大門・有人(ヒーロー・ガンバレイにして怪人・トゲトゲドクロ男・f27748)はユーベルコード、ゴッドスピードライドによって強化された宇宙バイクにまたがり、眼下に広がる軍勢の偵察に出ていた。
彼は辺境伯や寄生虫型オブリビオン……辺境伯の紋章などには興味がなかった。
彼にとっての関心事は、かの軍勢がどれほど規模であるかだけである。他の猟兵たちも偵察に出ている。
上空からさとられぬように敵軍の軍容を観察してるのだが、流石に夜空とは言え、空を飛ぶ宇宙バイクは目立つ。
故に彼は遠く離れた場所から敵軍の動きを観察しているのだ。
「人の生き様を悲嘆するような輩に向けるべき言葉はねえ」
そう彼は己の矜持を綺麗にまとめ上げられたリーゼントに掛けるのだ。
辺境伯の軍勢は一直線に岩山に陣取る人類砦へと向かっている。近くに村々があったとしても寄り道をするだとか、略奪をするだとかはないようであった。
それは不幸中の幸いであった。
これが他のオブリビオン、ヴァンパイアの軍勢であれば、戯れに殺されていてもおかしくなかった。
だが、今回はそれがない。後に控える戦いに備えるために有人は宇宙バイクを駆り、砦へと戻っていく。
「人類砦を守るため、できることをやらせてもらう」
その瞳はこれから起こるであろう、辺境伯の軍勢との激しい戦いを予感し、闘志を滾らせていくのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
アドリブ歓迎
敵も味方も大勢ね
人々に声をかけつつ
出入り口と見張り台の【情報収集】
『三拍子の私』や【空中浮遊】など駆使し
侵入が危ぶまれる低い塀や脆い構造物
死角になる影や窓などを慎重に確認するわ
物資と人数が集められる
堅牢な施設があれば籠ってもらうのも手ね
避難も協力があれば助かるわ
【コミュ力】を生かして指揮が取れる人を尋ね、
得た情報を伝え
敵がせまる前に避難の手はずを整えるようお願いをしてみる
襲来に気づいた時の合図も決めておくといいわ
音か、変わった色の炎や電撃なんてどう?
敵は多い、あなたたちの力が大事なの
あとは【暗視・闇に紛れ】偵察へ
隠れられる高所から敵の影が集まる位置と
別動隊がいないか、しっかり視るわ
闇の救済者とは、ヴァンパイア支配から逃れた人間たちが集まってできたヴァンパイア支配盤石たる世界、ダークセイヴァーに一石を投じる存在とな
っていた。
彼等一人ひとりは猟兵に敵うべくもない。勿論、オブリビオンにもだ。
だが、彼等は一人ひとりが希望の灯火である。彼等は一人では小さな灯火でしかないであろう。
ヴァンパイアが息を吹き付けるだけで消し飛ばされてしまうようなか細い光である。
だが、彼等がいくつも集まることによって生まれるのは篝火である。その篝火すらも消し去ろうとするのがヴァンパイアの辺境伯である。
この軍勢を迎え撃ち、ダークセイヴァーに灯った篝火を消させまいと奮闘するのが猟兵という存在なのだ。
「敵も味方も大勢ね」
ジャム・ジアム(はりの子・f26053)の第一声は、そんな言葉であった。
彼女にとって敵であるオブリビオンの軍勢は大群であることは偵察に出た他の猟兵たちの情報から知っている。だが、それ以上に味方も大勢であると
表現した。
ジアムのまわりには人類砦の人間たち。彼女にとって、彼等もまた心強い味方なのだと表現したのだ。
「どなたか指揮の取れる方はいらっしゃるかしら?」
ジアムは人類砦の中で一際高い指導力を持つ、長とも言うべき人物を探す。
すでに彼女はユーベルコード、三拍子の私(トリプルタクト)によって肉体の一部を30㎝程の自身へと変貌させ、あちらこちらに侵入が危ぶまれる低
い塀や脆い構造物を確認し、人類砦の人々へと告げていた。
大慌てで補修に入る人々と共にジアムは、この人類砦の長と面会を果たす。
「ここにヴァンパイアの軍勢が来ることはわかっているけれど、堅牢な施設があるのなら、籠もってもらうのも手ね。もちろん、ギリギリまで準備はし
たほうがいいから……」
戦いと成れば、オブリビオンの軍勢を彼等が抑えられる可能性は限りなく低い。自分たち猟兵でオブリビオンを相手取らないといけない。
そんな時に彼等が傷つくような事態は極力減らしたいのだ。ジアムの提案によって、人類砦で最も堅牢な建物の中に人々が避難する手はずが整えられ
る。
「それと、敵が迫る前に避難の手はずを整えておきましょう。そうね、敵の襲来のときの合図も決めておくといいわ」
ジアムは考える。
ここはUDCアースやスペースシップワールドではない。スマートフォンや無線があるわけではないのだ。
ならば、と彼女は思いつく。
「音か、変わった色の炎や電撃なんてどう?」
そんな風な合図であれば、人目で気がつくし、音でもわかりやすい。それに、とユーベルコードで変異させた小さなジアムが大きなジアムの肩に乗っ
て、腕を組む。
「この子に合図を任せるから、それを合図にお願いね」
合点承知というように小さなジアムがしゅび!と敬礼する。人類砦の長と綿密に避難誘導の指示を確認しながら、ジアムは言う。
「敵は多い、あなた達の力が大事なの」
それはお願いではなかった。
共に戦おうという意思表示であった。今、どれだけ人類砦のバリケードや防御を固められるかが、この戦いの後にある、さらなる戦いの礎になるか、
その価値は計り知れない。
だからこそ、助けられるではなくて、共にとジアムは言葉を表した。
長たちとのやり取りも終わり、ジアムは常闇の世界に広がる荒野をみつめる。
その瞳には、暗闇を見通し、敵の小さな動きも見逃さないという決意があった。
今、彼女は自分のためではなく、誰かのために戦うことをしている。それはいつだってそうだけれど、誇らしい気持ちで胸がいっぱいになるだろう。
それは正しさというものであるのかもしれない。
「―――大事なものを守る。きっとよ」
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
ようやくこの世界のオブリビオン・フォーミュラに繋がる可能性を見出せた。この機は逃しません。
先行した猟兵によると敵の配下は銃を持った狼の獣人。
今回の辺境伯の目的を考えると身を捨てて仲間に突破させ人類砦にいる人たちを襲う、という戦法は防ぐ必要がありそうです。
【冬の尖兵】を召喚してバリケードの設営を手伝います。敵の素早い動きは厄介ですが、怪物のようなパワーがあるわけでも飛べるわけでもありません。うまく設置すれば進軍経路を限定できるでしょう。
進軍経路を絞ったらバリケードには使えそうにないボロボロなものでいいので、ガラスや金属など無機物をできるだけ多く持ってきましょう。
これで迎撃の準備は整いました。
辺境伯の紋章。
それは未だ存在すら掴めぬヴァンパイアの上位種より与えられるというオブリビオンを強化する寄生虫型オブリビオンである。
ダークセイヴァーはヴァンパイア支配の盤石たる世界である。
故に、オブリビオンであるヴァンパイアは積極的に猟兵と関わろうとしない。わざわざ猟兵を標的にして動くことなどうかつな行為である以外の何者でもないのだから。
だからこそ、猟兵は未だにヴァンパイアの上位なる存在……つまるところ、オブリビオン・フォーミュラの存在を掴むことができないでいたのだ。
「ようやくこの世界のオブリビオン・フォーミュラに繋がる可能性を見出だせた。この機を逃しません」
そう、ようやくである。セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、人類砦へと降り立つと即座に行動を開始し始めた。
時間は一刻でも惜しい。
先行した猟兵たちの情報から敵である辺境伯の軍勢は銃を持った狼の獣人で構成されている。彼等の情報を統合的に判断するに、セルマの頭の中に浮かぶ戦略のビジョン。
彼女が考える戦法。
狼の獣人の特性。辺境伯の目的。それらを省みると、身を捨てて狼の獣人たちにバリケードを突破させ、人類砦にいる人々を襲う……という戦法は防ぐ必要がある。
いくら猟兵たちが辺境伯を討ち取ったとしても、人類砦が無事でなければ、この戦いの意味がない。
もっと言うならば、この人類砦の人々は希望の光だ。常闇の世界においては小さな光であるかも知れない。
「ですが、集まれば大きな光と成ることは間違いありません。ここで彼等を守らねば、ヴァンパイアの上位存在へと繋がるものへ手を伸ばすことも叶わないはず……」
故にセルマはユーベルコードを発動させる。
「ここからは剣の冬、ということで。行きなさい、兵士たち」
冬の尖兵(ウィンター・ソルジャーズ)。それはセルマが召喚する氷の剣を装備した氷の兵士たち。
彼女の力量を考えると80体以上の氷の兵士が召喚されたことになる。彼等は一斉にセルマの指示に従うようにバリケードの設営を手伝い始める。
狼の獣人たちの素早い動きは厄介ではあるが、怪物のようなパワーがあるわけではない。
それに空を飛ぶという行動も考えにくい。
ならば、バリケードを敵の突撃を防ぐ事に使うのではなく、進軍経路を限定させるように設置するのだ。すでに他の猟兵たちの行動に寄ってバリケードは容易く破れないように強化されている。
「ならば、このまま進軍経路を絞らせ……一網打尽にすることも可能というわけです」
セルマは確認を怠らず、敵の軍勢が雪崩込んでくる場所を見定める。
手に弄ぶのはガラスや金属の無機物である。バリケードに使えないものを持ち、彼女は位置につく。
青い瞳がはるか遠くに見据えるのは、辺境伯、ジョナサン・ランバート・オルソレグ。その額に輝く寄生虫型オブリビオンを捕獲し、さらなる上位のオブリビオンへと至る機会を掴むのだ。
「これで迎撃の準備は整いました。後は―――」
後は、人類の希望たる人類砦を守るだけだ―――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
先行した味方によって敵の情報はかなりの量を入手出来ているようです
こちらは迎撃準備を整えましょう
航空戦力がないのは幸いでした
予想進行ルート上にUCを撒き散らし作成した進軍を妨害するスリップ地形を用意
岩山という傾斜した地形ならば最大限に効果を発揮するでしょう
そしてワザとUCが無い『道』を幾つか用意
どれ程大部隊でも『道』を渡る際は数も減りますし、順番待ちの敵軍は範囲攻撃の格好の的となるでしょう
スリップ地形を迂回されない為に周辺地形は●怪力、爆弾の●破壊工作で進軍困難な状態に
人類砦の人々の防衛は騎士として最低条件
この世界の闇を払う為、その紋章を授けた上位存在への手掛かり
確保させてもらいます、『辺境伯』
常闇の世界にあって、人類は未だ希望を喪っていない。
その瞳に希望の輝き有るというのなら、猟兵はどのような場所にでも駆けつけることだろう。
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)のアイセンサーが情報を統合していく。先行した猟兵達によって辺境伯の軍容は知れた。その他にも様々な情報が次々と入ってくる。
それだけこの地に降り立った猟兵が多いということだろう。そして、辺境伯の軍勢は、それに見合っただけの戦力でもあるということだった。
「航空戦力がないのは幸いでした」
味方である猟兵たちの情報から、敵の軍勢は狼の獣人のみ。空を飛べるような個体の存在は確認されておらず、進軍のスピードは早い。一糸乱れぬ行軍を続けているのだ。
正しく軍であるということであるのならば、そこに付け入る隙があるとトリテレイアは踏んでいた。
「御伽噺の魔法の薬ほどではありませんが、色々と応用が効くんですよ」
彼のユーベルコード、対襲撃者行動抑制用薬剤(ノン・フレクション)が撒き散らされた地面は極限まで摩擦抵抗を失う。
そう、このユーベルコードによって辺境伯の軍勢は地に足をつけた進軍を行う以上、この摩擦抵抗を失い、スリップする他ない。
「さらに、彼等が軍であり、なおかつ我等が防衛する人類砦が岩山に座すという地形を最大限に効果を発揮させるならば……」
意図的にトリテレイアは薬剤を噴出させなかった道を幾つか用意した。
完全に彼等が岩山への登坂を諦めきれないように、わざと薬剤噴出を抑えたのだ。こうすることによって、どれほどの大部隊でも登坂ルートを絞れば迎え撃つこちらは、一気に数を相手にしなくてもいい。
さらに言えば、限られたルートを登坂しようとする大軍が控えるのならば、それらは範囲攻撃の格好の的だ。
「そして、スリップ地形を迂回されないために……」
トリテレイアの巨躯が怪力でもって周辺地形を破壊する。それは進軍が不可能に成るほどの工作であり、この荒れた地形を登ろうとする敵は少なくなるだろう。
様々な工夫と知恵でもってトリテレイアは人類砦防衛の基礎を作っていく。
もしも、またこの砦がヴァンパイアの襲撃にあったとしても、闇の救済者たる人類砦の人々は同じ様に知恵でもって戦い抜くこともできるようになるであろう。
「人類砦の人々の防衛は騎士として最低条件。この世界の闇を払う為、その紋章を授けた上位存在への手がかりを確保させてもらいます、『辺境伯』―――」
トリテレイアの出来ることはすべてやった。
辺境伯の軍勢はもうすぐそこまで迫っている。これ以上は時間が足りない。けれど、そのアイセンサーが見据える先にあるのは、『辺境伯』ジョナサン・ランバート・オルソレグ。人々の安寧を脅かそうとするヴァンパイアである。
大軍迫る土煙へとトリテレイアは一歩を踏み出したのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
金櫛・キンコ
えーと、砦の中は大丈夫そうですね!ここだと私がお手伝い出来る事はなさそうですし、ここは外に出て近くの村の人たちに避難を促しましょう。
でも、こんな状態だしマトモに話を聞いてくれるかどうか心配です。逃げたからって、その後の生活の保障も無い訳ですし…
何にも持たない私にも一つだけあるものがあります、金ならあります。
この私の純金の髪から作った、小さいですけど金塊で皆さんを説得します。
避難に協力して頂けるならコレをお渡しして避難費用やその後の生活の足しにして貰いましょう。
この輝きの【誘惑】は強烈ですよ!
辺境伯の軍勢が迫る人類砦。
そこでは忙しなく迎撃の準備が行なわれていた。猟兵も、人類砦の人々も、誰も彼もが生きるという希望を喪っていなかった。
ダークセイヴァーはヴァンパイア支配盤石たる世界である。常闇の世界において、彼等の力は絶対であり、人類とは領民であり生命与奪はヴァンパイアが握っている玩具であるも同然であるのだ。
そんなヴァンパイア支配から逃れた人々が集まり、希望として輝くのは人類砦である。その砦を、希望を、潰そうとヴァンパイアが動き出したのだ。
「えーと、砦の中は大丈夫そうですね! ここだと私がお手伝いできることはなさそうですし……」
着々と迎撃の準備が整えられていく人類砦を見て、金櫛・キンコ(✨純金髪✨・f27825)はそのような感想を抱いた。
なにか自分にできることを。
そのように思う気持ちは尊いものだ。猟兵にとって戦うことは容易いことであるかもしれない。けれど、それ以上にダークセイヴァーに生きる人々を助けたいという想いはキンコの胸の内で燃え上がっていた。
「……ここは外に出て近くの村の人達に避難を促しましょう」
そこで思い至るのは、近隣に存在する村々である。
辺境伯の軍勢の目的は人類砦である。偵察に出た猟兵たちの情報を見ても、他の村への攻撃はなさそうである。
だが、もしも、彼等が進路を変えたら。
その一抹の不安は残る。それがしこりとなって全体の戦いに影響を及ぼすのであれば、不安要素は取り除くべきだ。
キンコは、その不安要素を取り払うべく近隣の村へと赴く。しかし、彼女の心の中にあるのは、まともに話を聞いてくれるだろうかという不安だった。
「逃げたからって、その後の生活の保証もない訳ですし……」
考える。キンコが何ができるのか。何を持って避難した村々の人々の不安を払拭できるのか。
自分が持てるもの。自分が与えられるもの。
何者かの想像の犠牲により、髪が全て純金になってしまったのがキンコという猟兵である。隠すこともできない。戻すこともできない。
猟兵であるが故に、違和感を感じさせることはないが、それでもこの体を元に戻したいという願いは捨てきれない。
そして、この自身の純金の髪であるのならば―――。
「みなさん! 避難に協力して頂けるなら、これをお渡しします! 避難費用やその後の生活の足しにしてください!」
彼女の言葉以上に、純金の輝きはとてつもない力を持っていた。
キンコにとっては日常そのものの純金の輝きは、この世界……いや、どの世界においても、その人の心を動かす誘惑としては、強烈そのものであった。
もはや、彼女の言葉に首を横に振るものなどいなかった。
この髪を直したいという想いは変わらないし、揺らがない。
けれど、己の体質が誰かの何かの役に立てたという想いは、キンコの中で純金よりも輝かしい何かへと変ずるのだった。
「さて、これで近隣住民の方々の避難も完了しました。後は、戦うだけだね!」
その瞳の輝きは、一層強く。
そして、見据える辺境伯の軍勢を打倒し、人類砦の人々全てを救うという決意に満ち溢れていたのであった―――!
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
“辺境伯”。このような実力者が動くと言う事は、
奴等も我々を無視できなくなったとも取れる。
此の世界の戦いは、更に激しさを増しそうだな……
■行
【WIZ】
俺は【空中戦】技能で空を飛び、敵の進路を確認しておこう。
敵のことも気になるが……やはり人々を巻き込むわけにはいかぬ。
【視力】を用いて周囲を見渡しつつ、集落がないかを確認するぞ。
辺りの見通しが悪い時は獣の【暗視】能力の出番だ。
もし村を見つけた場合はすぐさまそこへ向かい、敵の集団が
此処に攻めてくる旨を伝えて今すぐ避難を促すぞ。
なお避難の際は、勿論俺も同行するぞ。
荷物を自慢の【怪力】で運びつつ、敵の進むルートから
極力離れるのだ。
※アドリブ・連携歓迎
ヴァンパイア支配続く世界、ダークセイヴァーにおいて人類砦は人々の希望足り得るか。その分水嶺が今まさに迫っていた。
眼下に見えるは辺境伯の軍勢。
『辺境伯の紋章』と呼ばれる寄生虫型オブリビオンによって強化されたヴァンパイア率いる軍勢である。
空を飛ぶものにとって、その軍容を見れば人類砦は容易く打ち破られてしまうであろうことは想像に難くなかった。
愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)もまた、その一人であった。
「“辺境伯”。このような実力者が動くということは、奴等も我々を無視できなくなったと取れる」
そう、このヴァンパイア支配盤石たるダークセイヴァーにおいて、ヴァンパイアは余程のことがない限り猟兵に接触を試みることはない。
打って出る必要がないのだ。
故にヴァンパイアを引きずり出す、ということは大いなる意味を見いだせることができるであろう。
今回の事件、寄生虫型オブリビオン『辺境伯の紋章』は、ヴァンパイアの上位なる存在へと手をのばす足がかりになるのだ。
「此の世界の戦いは、更に激しさを増しそうだな……」
猛禽の翼を広げ、清綱は空を飛ぶ。敵の進路を確認するためだ。
すでに偵察に出た猟兵たちによって、辺境伯の軍勢の軍容もわかってきている。人類砦ではちゃくちゃくと迎撃の準備が行なわれている。
だが、清綱もそうであったように近隣の村々の人々の事を気にかける者もいたのだ。
獣の因子をもつ清綱にとって、常闇の世界であっても空から見通す光景に代わりはない。いくつかの集落があり、そこでは別の猟兵の説得に寄って避難を始める人々がいた。
「すでに避難の誘導が出ていたか……ありがたい」
だが、それでも間に合うかどうかは瀬戸際であろう。すぐさま清綱は降り立ち、避難を始めている人々を手伝うのだ。
避難を促す時間が短縮されたことにより、清綱と共に護衛されるように安全圏まで避難する人々。
怪力で持って荷物を持ち上げ、何往復もする清綱の姿は人々にとって救世主のように写ったことだろう。
極力辺境伯の軍勢の進軍ルートから離れた場所まで誘導すると、再び清綱は空へと舞い上がる。
「時間は限られているが、それでも出来得る限りを……ただ戦うだけでは、この世界は救えまい」
そう、清綱にとって戦うことは日常である。
けれど、そうでない者たちにとって、戦いとは非日常である。ならば、己が為すべきことは何か。それはもう清綱の心の内にすでに定まっている。
「激しさを増す戦いに人々を巻き込ませない。それが俺の戦う理由だ……」
清綱の瞳は荒野に土煙を上げる辺境伯の軍勢を見つめ、それがこれより始まる激しい戦いの狼煙のように思えてならなかったのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『蜂起する銀狼軍』
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POW : シルバーバレット
自身の【命】を代償に、【他の構成員を超強化。彼ら】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【銀の弾丸】で戦う。
SPD : 決死の覚悟
【自ら頸動脈を切断する】事で【最終戦闘形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 抹殺の意思
【戦闘後の確実な死】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【高速連射形態】に変化させ、殺傷力を増す。
イラスト:白狼印けい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
辺境伯の軍勢は、人類砦へと到達せんとしていた。
「オオオォォォ―――!」
それは狼の遠吠えのように鳴り響き、人類砦に籠もっている人間たちを震え上がらせるような威嚇の声であった。
狼の獣人たち―――蜂起する銀狼軍。
彼等は非常に統率の取れた群体オブリビオンである。
彼等の突進力、攻撃力、連携、そのどれもが軍として最高のものであると言えたかも知れない。
だが、猟兵たちはそのさきを征く。
強化されたバリケード。
摩擦抵抗を極限まで減らされた地形。
さらに誘導するように作られた岩山に座す人類砦へと至る限定されたルート。
そして、辺境伯の軍勢の動向を容易く見通す見晴台。
そのどれもが猟兵と人類砦の人々による最高の迎撃準備であった。
何も恐れることはない。ここには猟兵と、希望を喪わぬ人々がいる。
オブリビオンがそれを手折るためにいるのだとしたら、猟兵は希望を守る盾である。何一つ喪わせはしないと奮起する。
猟兵を映す人々の瞳に、希望という光が潰えぬ限り。
限定されたルートへと雪崩れるようにして突撃する蜂起する銀狼軍たち。
彼等の運命は今、猟兵たちに握られていた―――。
春乃・結希
砦のみんなと一緒に作った見晴台から
猟兵さんが用意してくれた『道』を見下ろします
すごい…今なら狙い放題ですねっ
みんなのおかげです、無駄にはしません
UC発動
視界に入る狼達へ焔の雨を降らせます【投擲】【範囲攻撃】【焼却】
こちらからよく見えるということは
向こうからも良く見えるということですよね…
飛び道具に狙われやすいかもやけど
防御は最低限で、攻撃を続けます【激痛耐性】
傷が増えても私にとっては好都合です
私の雨は、傷が増えるほど激しくなるから
この砦を守ってるのは私だけや無いから
これで全滅させられるなんて思ってないです
あなたたちの連携を少しでも混乱させるのが私の仕事
何人で来ようと、返り討ちに合うだけですよっ
辺境伯の軍勢は一気呵成に岩山に座す人類砦へと殺到する。
彼等の目的は人類砦に立て籠もる人間の抹殺である。それは『辺境伯』であるジョナサン・ランバート・オルソレグが命じたことである。
群体オブリビオンである蜂起する銀狼軍にとって、それこそが絶対的な命令であり、その命令を遂行するためには自身たちの生命などただの駒でしかない。
岩山を攻略しようと駆けるも猟兵たちと人々の作りあげた迎撃準備の前に思うように進むことができないでいるのだ。
その様子を人類砦にて組み上げられた見晴台の上から見下ろすのは、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)であった。
「すごい……今なら狙い放題ですねっ」
結希だけではない。他の猟兵たちが作りあげたオブリビオンの軍勢を迎え撃つ準備は、ここに功を奏したのだ。
摩擦抵抗を極限まで減らした地形は、そこを進ませずに意図した場所へと誘導するためのもの。故に群体オブリビオンである銀狼軍は高台から容易に狙いをつけられる場所へと誘導されているのだ。
「みんなのおかげです、無駄にはしません」
彼女の瞳が瞑られる。
それは集中であり自己暗示。己の攻撃は『絶対に当たる』。その自己暗示は深く深く彼女の心理へと刻まれていく。
ユーベルコード、焔の雨(ホノオノアメ)。
それは彼女の視界に入る全ての者に焔の雨を降らせるものである。彼女の絶対的な自己暗示に寄って、その攻撃の精度はさらなる高みへと駆け上がる。
「『狙って当てる』んやなくて、『狙わなくても当たる』って思えば大丈夫って、教えて貰いました……!」
彼女の降らす焔の雨は、地形と相まって殲滅戦の様相を呈していた。
しかし、それで終わる銀狼軍ではない。
彼等とてオブリビオン。ユーベルコードによって、自身の首を掻き切ることで不退転の決意と共に最終戦闘形態へと変ずる。
手にした銃の銃口が高台にいる結希に向けられる。
一斉に放たれる銃弾。
そう、結希からよく見えるということは、銀狼軍からもよく見えるということだ。狙われてしまうのは仕方のないことである。
次々と結希の体を貫く銃弾。しかし、彼女はうめき声一つ挙げない。ここで彼女が痛みに囚われていれば、人類砦の人々は不安に陥るだろう。
「―――そんなことは、させません! 私の雨は、傷が増えるほど激しくなるから!」
そう、彼女のユーベルコードは、その傷口からも噴出する焔によって杭の形を取った焔の雨を降らせる。
噴出する焔の出口は、銃弾に寄って開けられた。
その攻撃は自殺行為であったと銀狼軍に知らしめることだろう。
圧倒的な焔の杭が雨のように銀狼軍に降り注ぎ、彼等を骸の海へと還していく。
「この砦を守ってるのは私だけやないから……!」
圧倒的な物量で砦へと殺到する銀狼軍たち。彼女自身、自分だけで彼等を全滅させられるとは思っていない。
彼女の攻撃は最初の一手である。それは銀狼軍を混乱に陥れるための攻撃。
そう、彼女は一人ではない。共に立つ猟兵があり、そしてその背後には守るべき人々がいる。
だからこそ、彼女は傷だらけになりながらも、こう言うのだ。
「何人で来ようと、返り討ちに遭うだけですよっ」
大成功
🔵🔵🔵
大門・有人
不採用含めて全て歓迎だ。
ガンバーバイクで後方から突撃、無理なら崖から飛び降りだ。
バイクで蹴散らして、車体を掴む奴には頭に鉛弾をお見舞いする。
密集地じゃバイクも走れないだろうし味方の邪魔にならないよう程々でストップだ。
櫛で髪を整えつつ迎撃用意。同じように地上戦闘を行う猟兵がいたら連携しよう。硬い体が取り柄だ、防御は任せてくれ。
接近した敵には威力重視でUC始動、カウンター狙いに怪力と吹き飛ばしで一撃必殺や後続の転倒を狙う。有人ストレートを食らいやがれ!
シルバーバレット組には拳銃で対応。ガンバーバイクを盾に接近、ジャンプで射線をかわして体重を活かした有人チョップだ。
脳天から真っ二つにしてやる!
人類砦を巡る戦いは、入念なる猟兵たちの迎撃準備によって滞りなく推移している。
焔の杭が雨のように辺境伯の軍勢である群体オブリビオン、蜂起する銀狼軍を打ち貫き数を減らしていく。
摩擦抵抗を極限まで減らされた地形は、地面を蹴って移動する彼等にとっては混乱の極みに達するほどに不利な状況であった。
しかし、彼等の中に不平不満も漏らすものは一人もいなかった。
ただただ、主命である『人類砦を滅ぼせ』という命令にのみしたがって行動してる。故に彼等の生命は己自身のものではなく、消費されるものでしかないのだ。
「ガ、グルゥォォォ―――!」
その遠吠えのような咆哮が響いた瞬間、一斉に傷を追った銀狼軍の獣人たちが、その口に銃口を突っ込み、引き金を引く。
自害。
それが何を意味するのか、猟兵たちは気がつく。己の生命を代償に、未だ無事である味方を強化したのだ。
それが彼等のユーベルコード。生命など投げ捨てるものであるとばかりに、ないがしろにする戦法であった。
「―――それがオブリビオンっていう奴だっていうんなら、何も言うまいさ。だがよ! 人様の生命を狙っておいて、自分の生命の価値はねぇっていう扱い方はどういうことだよ!」
大門・有人(ヒーロー・ガンバレイにして怪人・トゲトゲドクロ男・f27748)が駆る廃材を利用して作られた頑丈なガンバーバイクと共に岩山の崖から飛び降りる。
頑丈さが取り柄のガンバーバイクで次々と狼の獣人たちを蹴散らしていく。
怒りと共に飛び出したはいいが、強化された獣人たちに囲まれてしまう。ガンバーバイクの突進を止めようと掴みかかる獣人には、回転弾倉式大型拳銃による銃弾の一撃で吹き飛ばした。
バイクのスピンターンで獣人たちを蹴散らし、またがったまま有人は足を止める。吶喊したことによって乱れたリーゼントを櫛で整え、迎撃の用意を整える。
彼にとって、このリーゼントの乱れこそが、己の心の乱れである。
「硬い体が取り柄だがよ……! お前らのやり方にはうんざりするぜ!」
彼の瞳が輝く。
それはユーベルコードの輝き。ガンバレイ・ストライク。それは彼の打つ・投げる・極める……そう言った肉弾戦用技術を高めるものである。
そして彼こそは、ヒーロー・ガンバレイにして怪人・トゲトゲドクロ男である!
放たれる銃弾などに意を介さない。
まっすぐ突っ込んで、ぶん殴る!
「怒りに燃える正義の心を、その身に刻め! 有人ストレートをくらいやがれ!」
放たれた拳は鋼鉄よりも硬い正義の鉄拳である。その一撃により、獣人が吹き飛び、霧散して消えていく。
銃弾がいくら彼の体を貫こうと放たれたとしても、彼は改造人間である。痛みは感じるが、それは正義の心でねじ伏せる。
「かかってこい……! 脳天から真っ二つにしてやる!」
手にした回転弾倉式大型拳銃による銃撃。ガンバーバイクを盾に力任せの接近。そのどれもが銀狼軍にとっては想定外そのものであった。
あまりにも無謀過ぎる突撃。吶喊。
そのどれもが戦法というには程遠いものであったかもしれない。だが、彼は正義の味方である。
その心に正義の心が燃えがる限り、彼を止められるものなど存在しないのだ。
「―――有人チョップだ!」
放たれた手刀が銀狼軍の脳天から股下まで一気に引き裂く。
その鮮烈なる一撃は、群体オブリビオンたちをどよめかせる。燃える正義の心は、常に邪悪なる過去の化身をひるませる。
「どこからでもかかってこい!」
その声は多くの銀狼軍を引きつけ、有人は獅子奮迅の戦いぶりを大いに見せつけるのであった―――!
大成功
🔵🔵🔵
黒柳・朔良
敵の軍勢は銃剣を装備、遠近両方に対応出来るようだな
統制が取れた動きは、逆をいえば中に入り込んで掻き回すような動きをすれば他の猟兵たちも動きやすくなるというもの
その役目は【闇に紛れる】ことの出来る私が担おう
選択UCを発動、存在を消した状態で【目立たない】ように敵に対し【捨て身の一撃】を与え、【逃げ足】で即離れながらヒット&ランを繰り返して【暗殺】していく
自分の意思死ななければ敵のUC『決死の覚悟』は使えまい
確実に一撃で仕留められる場所を狙い(【鎧無視攻撃】)、既に手負いならば【傷口をえぐり】止めをさそう(【戦闘知識】)
『人類砦』は人々の希望
『光』(希望)に沿う『影』のひとりとして、敵は排除する
「ガ、グルゥォォォ―――!」
その咆哮は断末魔の叫びの如く戦場に響き渡った。
それは群体オブリビオンである、蜂起した銀狼軍のユーベルコード。降りしきる焔の杭の雨のような範囲攻撃に巻き込まれて傷を追った獣人たちが一斉に銃口を口に突っ込み、自害することによって、他の構成員たちを強化したのだ。
憎しみの連鎖の如きユーベルコード。
己たちの生命などあってないものであるように扱うが故に他者の生命を奪うことに躊躇がない。その傲慢さに黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)は嘆息する。
それがオブリビオンというものであるのならば、朔良はそれを振り払わなければならない。いずれ己の主へと牙向く存在であるからだ。
「敵の軍勢は銃剣を装備、遠近両方に対応できる……統制が取れた動きは……」
冷静に分析した朔良が戦場を駆ける。
その瞳に捉えた銀狼軍の構成員たちは、皆一様に血走った瞳をしていた。ユーベルコードによる強化のせいであろう。
理性もなく、ただ命令のままに生命を屠る。
そこに己の姿が重なりそうになる。だが、己の主はきっと、それを命じないであろう。
生命を奪う者を止める。
優しすぎる主だからこその言葉であり、それに従いたいと思う。
「逆を言えば中に潜り込んでかき回すような動きをすれば、皆も動きやすくなるというもの。その役目、私が担おう」
戦場を駆ける影―――朔良の存在感が唐突に消えていく。
それは彼女のユーベルコード、影に潜む暗殺者(アサシン・イン・シャドウ)。
自身の存在感を代償に、装備した武器の封印が解かれる。
それは暗殺に特化した武器へと変貌させるのだ。その一撃は、彼女の技量と相まって、不可避の攻撃となる。
嫌な風が吹く。
銀狼軍の構成員たちは、最初そう感じたかもしれない。
だが、それもすぐに何もかもわからなくなる。次々と戦場で、狼の獣人である銀狼軍が霧散していく。
骸の海へと還せれていっているのだ。それに気がつくには、もはや遅きに失していた。
「さて、『影』(わたし)の獲物は何処にいる? 『影』に殺されるのは誰だ?」
その言葉だけが戦場にこだまする。
姿が見えない。どこにも、影もない。足音すら聞こえない。
瞬きをする間に構成員たちが減っていく。まるで影に潜む暗殺者に、己たちの生命が狙われているような―――。
また一つ狼の獣人が地面へと倒れ伏す。
混乱に陥る銀狼軍の一群。姿もなく、音もなく、ただ次々と構成員たちが倒れて霧散していく光景は、悪夢そのものであったことだろう。
「―――何もかもが影の前には手遅れ。触れることも、追うことも不可能」
ただ戦場に朔良の言葉だけが響く。
その度にまた一つ、また一つ。粛々と仕事を済ませるように朔良の凶刃が闇夜の世界に閃くのだ。
「『人類砦』は人々の希望―――『光』……希望に沿う『影』のひとりとして」
その言葉は玲瓏なる声色で持って、銀狼軍に響いた。
それは逃れ得ぬ美しき影の一撃となって、彼等を骸の海へと還していく。
「―――敵は排除する」
それが銀狼軍の構成んが聞いた最後の言葉であった―――!
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
仲間の設けてくれた見張り台に立ち、敵全体の動きを【視力】を凝らして見極める。
トラップのお陰で動きが制限されている。速度を強化する能力も、これなら活かしきれないと見た。
「風魔手裏剣」を使用。忍法で気を練り上げ、衝撃波の手裏剣を生み出す。更にUC【飯綱の術】。風魔手裏剣を無数に分裂させる。
数枚は見張り台の周囲に配置。風による【盾受け】【拠点防衛】で射撃を反らす。
残りの手裏剣を敵軍に打つ。拡散させ【範囲攻撃】。
敵を薙ぎ払いつつ、衝撃波の生み出す轟音と乱気流で敵の足並みを乱そう。
短期にこれだけの猟兵が集まった天の時、造り上げた地の利、連なる人の和。
勝利の条件は全て俺達にある。後は最善を尽くすのみだ。
人類砦に迫る辺境伯の軍勢である群体オブリビオン、蜂起する銀狼軍。
猟兵たちの築き上げた迎撃準備によって、彼等は進撃ルートを絞らねばならず、そして、それが誘導されているのだと気が付かぬままに攻撃の的にされてしまっていた。
それは猟兵一人の行動によるものではない。他の猟兵たちが集めた細かな情報、そして人類砦に住まう人々の助けもあって実現した圧倒的に有利な戦場であった。
髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は仲間の猟兵が設けてくれた見張り台に立ち、敵全体の動きを機械化することによって強化された視力で見極めていた。
仕掛けたトラップのお陰で、銀狼軍の動きは制限されている。鍬丸や他の猟兵たちが集めてきた情報による銀狼軍の獣人たちが有する能力も、これでは十全に発揮されることはないだろう。
「ガァァァ―――!!」
しかし、それでも人類砦を落とす、という使命の前では、どれだけ不利な状況であっても己の生命を投げ捨てるように行動するのが群体オブリビオンである銀狼軍の獣人達である。
彼等は一斉に己の喉を切り裂いて、決死の覚悟を纏って戦場を疾駆する。
「己たちの強みを活かしきれないとわかっていても、それでもなお吶喊する気概……!」
鍬丸は手にした風魔手裏剣を起動する。忍法によって気を練り替え、不可視の衝撃波の手裏剣を生み出すのだ。
さらに―――。
「霊……宿……動!」
ユーベルコード、飯綱の術(イヅナノジュツ)によって生み出された風魔手裏剣が無数に分裂される。
「ガァァァッ!」
理性を喪ったような銀狼軍たちの射撃攻撃にさらされる見晴台。けれど、その銃撃が鍬丸に届くことはなかった。
展開した不可視の風魔手裏剣が超音速で回転することによって放たれる衝撃波で銃弾をそらしているのだ。
「捨て駒であるという自覚もなく、そのまま朽ちていくというのならば憐憫もあるかもしれないが―――」
だが、彼等はオブリビオンである。
己の生命の使いみちも何もかも主人であるヴァンパイアが決める。それは悲しいことであると思えたかもしれない。だが、それでも、人類砦に集まった人々を傷つけていい理由にはなりはなしないのだ。
鍬丸の手が天に掲げられる。
ユーベルコードによって生み出された不可視の手裏剣、風魔手裏剣が彼の周囲に展開する。それは圧倒的な光景であった。
掲げられた手が眼下に広がる銀狼軍へと向けられる。一斉に放たれた風魔手裏剣が放つ衝撃波は轟音を放ち、突風と風の刃となって彼等を襲う。
散り散りになって霧散していく銀狼軍の獣人たち。
しかし、それでもまだ、全滅さえるには程遠い。霧散し消えていく獣人たちを踏み越えて、さらに殺到する獣人達。
「短期にこれだけの猟兵が集まった天の時、作りあげた地の利、連なる人の和……」
そのどれもが掛けても、この戦場は生み出されることはなかったであろう。
鍬丸にとって、この戦いは得難いものであったのかもしれない。
「勝利の条件は全て俺たちにある。後は―――最善を尽くすのみだ」
どれだけ圧倒的な軍勢でこちらを押し切ろうとしたとしても、鍬丸は己たち猟兵の勝利を疑わなかった。
疑う余地など一分もなかった。故に、鍬丸は、己と仲間たちを信じて、この戦場を戦い抜くのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
アドリブ歓迎
敵が来たわ!
『楔なる鋼』で空に黄金の火球を花火のように打ち上げる
バリケードに罠、なんて頼もしいのかしら
避難も安心そうね
私は陽動に集中よ
集団に銃器で狙われるのはいい気はしないわね
でも飛べない集団なら……角度を限れるわ
『護り現』で自身を強化
【オーラ防御・空中浮遊・空中戦】のスキルを活かし
羽を広げ飛び立って
火球を【念動力】でいくつも派手に散らして
大きな音を立てて注意を引く
敵の集団上空をなるたけ速く【フェイント】で角度をつけ飛び回り
『しっぽの針』で【貫通攻撃】よ
敵も本気を出すはず、痛みは我慢するわ
可能な限り時間は稼ぐけど戦闘可能なうちに【見切り】
敵だけを狙って『万象の刃』発動
あとは任せたわ
群体オブリビオン、蜂起する銀狼軍。
その姿はまるで雪崩のように岩山に座す人類砦を破壊しようと迫っていた。見えぬ衝撃波の刃が散り散りに銀狼軍を蹴散らす。
それでも、同胞の躯を踏み越えて進撃する獣人たちの姿は、如何に強固なバリケードに守られているとは言え、時間の問題でしかないことを自覚させられることであろう。
オブリビオンに飢えはない。故に疲労も己の生命も、何もかもが駒として扱われる。銀狼軍とは、そのような群体オブリビオンであった。
彼等は抹殺の意志でもって、己たちの敵である猟兵を屠らんと装備した武器の封印を解く。それは最後には確実なる自身の死が待つのだとしても、関係のないことであった。
辺境伯より与えられた使命は『人類砦を破壊する』こと。その目的達成のためならば、己の生命など投げ捨てるものであるからだ。
「敵が来たわ!」
掲げた黒褐色の精霊銃の引き金を引くのは、ジャム・ジアム(はりの子・f26053)である。楔石と鋼玉意志が輝き放ち、その銃身に宿した水と炎の獣が咆哮するが如き銃声でもって空中に黄金の火球を花火のように打ち上げる。
それは彼女へと銀狼軍の注意を引かせるためのものであった。
「バリケードに罠、なんて頼もしいのかしら。避難も安心そうね……なら、私は陽動に集中よ」
一斉にジアムへと向けられる血走った銀狼軍の獣人たちの瞳と封印を解かれた銃口。
その銃口にジアムは恐れるでもなく、少しばかり嫌な気分になる。
誰だってそうかもしれない。誰かを傷つける意志を伴った道具を向けられるのは、悪意を向けられるのと同じである。
彼女の身を包むオーラ、護り現に籠められた力が強まる気がした。身構えたと言っても良い。
「空を飛べない集団なら……角度は限られるわ」
ジアムのバイオモンスターとしての体が中に浮かぶ。植物と融合した明色の羽が広げられ、彼女の体を自由に空を舞わせるのだ。
精霊銃から放たれる火球が、空へと盛大に打ち出される。
そんな彼女を狙って、銀狼軍の獣人たちが放つ高速射撃が放たれるも、彼女の体を捉えることはできない。あくまでジアムの目的は陽動である。
彼女が派手に飛び回れば、飛び回るほどに他の猟兵たちは銀狼軍の軍勢を突き崩す機会を得るのだ。
彼女の尻尾に埋め込まれた針が放たれる。それは如何なる防御をも貫通して貫く針であり、その攻撃にまた一人と獣人たちは霧散していく。
「敵も本気……!」
痛みは我慢すればいい。自分の痛みは。
けれど、他人の痛みは我慢できない。自分ではどうしようもない痛みだからだ。だからこそ、ジアムは揺動する。
自分以外の誰かを傷つけさせないように。
「愛しい貴方たちの輝きを」
それは彼女のユーベルコードの輝き。万象の牙(スピリトゥアーレ)と呼ばれる万象の精霊の加護を纏った燦然たる輝きを放つ針がジアムの意志でもって、銀狼軍を幾何学模様を描き複雑に飛翔し、囲い込む。
「生命の重みを知っていないから、己の生命を軽いものだと思うの。己の生命が軽いから、容易く誰かの生命を奪おうとする―――そんなことは、間違ってるって言いたいから、私は生命を愛おしいって思うのよ!」
彼女の瞳が輝く。
それは祈りを込めた一撃であったかも知れない。己の生命を台無しにする行い。それをもはや正すことはできないけれど、誰かの生命を台無しにする前に終わらせる。
放たれた燦然たる輝きの針たちが、一斉に銀狼軍の一群を貫き、霧散させる。
生命の重み知らぬ迷い子たちをジアムの針が骸の海へと還していく。
その輝きは人の生命の輝きのごとく、針が常闇の世界に煌めくのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
登坂ルートの限定は上手く行ったようですね
今回は大軍への範囲攻撃手段は持ち込んでいないので…
(戦場をUCの妖精ロボで●情報収集し)
少人数で荒れた地形を進む奇襲部隊の対処に当たらせてもらいましょう
防御陣地構築の際に入手した地形情報頼りにスラスターでの●スライディング移動で先回り(地形の利用)
そこまでです
これ以上の侵攻は諦めていただきましょう
自害による強化のタイムラグを突き、UCの●スナイパー射撃で銃を●武器落とし
接近戦の態勢整える前に接近し●怪力で●なぎ払う剣で一掃
強化された肉体での攻撃は●盾受け後の盾殴打で迎撃
迎撃は完了、次の敵部隊の元へ急ぎましょう
一人たりとも人類砦に近づけさせはしません
猟兵たちの連携は、誰からともなく言い出したものではないのかも知れない。
しかし、現場で動く彼等は即座に他の猟兵たちが動きやすいように戦い始める。ある者は他のものの攻撃の道筋を見出すために。ある者は敵の目を自身に惹きつけるために。
そのどれもが誰かのための戦いをする者たちの戦いぶりであった。
対する辺境伯の軍勢である蜂起した銀狼軍たちはどうであったであろうか。
彼等は群体オブリビオンである。故に己たちの生命の軽さを知る者たちである。だからこそ、彼等は一個の生命に執着しない。
執着しているのは、己たちの上位である辺境伯の命令のみ。その命令を遂行するための礎となることが、己たちの生命の宿命であると信じているのだ。
「登坂ルートの限定は上手く行ったようですね」
岩山に座した人類砦から見下ろすのは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が他の猟兵たちと共に作りあげた敵の進軍ルートの限定された道であった。
すでに彼は、ユーベルコード、自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)によって情報を収集する複数の偵察用妖精型ロボから得た情報によって己がカバーすべき場所を見出していた。
今回は大軍への範囲攻撃手段を持ち込んでいないがために選択したものであるが、この戦いに馳せ参じたのはトリテレイアだけではない。
他者の存在があるからこそ、自己を確立できるのだとすれば、今トリテレイアの心を締めるのは誇りであったのかもしれない。
「やはり少数精鋭で奇襲部隊を変性しましたか……ならば、その対処に当たらせてもらいましょう」
トリテレイアの巨躯が岩山の急斜面を駆け下りていく。
防御陣地構築の際に、すでに彼の電脳には地形データが取り込まれている。彼のアイセンサーとデータを照らし合わせていけば、こちらを奇襲しようとする別働隊を捉えることなど造作もない。
「―――ッ!」
奇襲部隊が故に少数精鋭で移動していた銀狼軍の獣人たちは突如現れた機械騎士に動揺する。見透かされているのだ。
「そこまでです。これ以上の侵攻は諦めていただきましょう」
その言葉に一人の獣人が銃口を口に突っ込み、引き金を引く。やはり、とトリテレイアは予測されていた彼等の行動に嘆息する。
愚かな。
自害し、他の構成員たちを強化するユーベルコード。
だが、それは明白なタイムラグを産む。一瞬でトリテレイアは格納された銃器によって獣人たちの持つ銃を叩き落とす。
それは一瞬の攻防だった。ただの数瞬。たったそれだけでトリテレイアの電脳は、有効なる戦術プランを練り上げていた。
がしゃん、と音を立てて銃が地面に落ちる。そこで獣人たちは銃を取ろうとかがもうとしなければ、まだ目はあったのかもしれない。
だが、その瞬間トリテレイアの怪力から放たれる剣の一撃で銀狼の構成員たちは薙ぎ払われる。
「強化された瞬間が、あなた達には大いなる隙でしかない。他者のために生命を使う。それはある意味で―――」
剣で薙ぎ払った前衛の獣人たちの背後から飛びかかってくる身体強化の成された獣人達。しかし、それを大盾で防ぎ、強かに打ち据える。
頭蓋がひしゃげる音がして、彼等は骸の海へと返っていく。
「ある意味で、勇猛なる行いであったのかもしれません。しかし、無謀と勇猛を履き違えた者は、常に誰かを窮地に陥らせる……」
トリテレイアの剣と大盾が圧倒的なまでの精密なる動作でもって、残りの銀狼軍の獣人たちを討ち果たす。
それは時間にして数刻であったが、トリテレイアは次なる戦場を素早く妖精型ロボから得た情報によって駆け出していく。
「迎撃は完了。次の敵部隊の元へと急ぎましょう。一人たりとも人類砦には近づけさえはしません」
戦場を駆け抜ける機械騎士の瞳は、未だ予断を許さないのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
……来ましたか。
敵の銃が高速連射形態を取ったとしても射程が変わるわけではありません。マスケットならば射程は100m程度ですが、命中率を考えると50mくらいまでは近づきたいところでしょう。戦闘後に確実に死ぬならば猶更です。
まずはこちらもフィンブルヴェトを手に撃ち合いを。『スナイパー』の技術による正確な狙いで撃ち抜き、遠距離での撃ち合いではこちらが有利と思わせましょう。
敵が高速連射を活かすために接近してきたなら【吹雪の支配者】を。1章で持ち込んでおいた周囲の無機物を吹雪に変化させ、範囲内の敵の視界を奪い銃撃を防ぐと同時に体温を奪い凍てつかせます。
人類砦を巡る猟兵と群体オブリビオンである蜂起した銀狼軍との戦いの推移は、迎撃準備の入念さと人々の強力によって猟兵へと傾いていた。
戦場では猟兵たちが所狭しと駆け抜け、数で圧倒する銀狼軍の獣人たちを次々と骸の海へと還していっていた。
バリケードの強化や進撃するルートを限定するといった要所要所を付いた防衛の準備は数で圧するはずであった銀狼軍に思わぬ苦戦を強いていることは間違いなかった。
しかし、それでも人類砦に到達しようと猟兵たちの防衛を突破しはじめる部隊が現れ始めたのだ。
「……来ましたか」
それを迎え撃つのは、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)である。彼女の周囲にはバリケードを作る際に出た無機物の残骸が積み上げられていた。
たったそれだけでは獣人でありオブリビオンである銀狼軍の進撃を止めることはできないだろう。
手にしたマスケット銃フィンブルヴェトの銃口が銀狼軍を狙う。互いに獲物は銃である。射程距離、命中率。互いに考えることは同じである。
標的を視認した瞬間に引き金を引く。
セルマの放った銃弾は、過たずに獣人の眉間を貫く。
「―――ッ!?」
困惑、当惑、混乱。
彼等の心は手にとるようにわかる。彼等の銃と己の銃は似た武器である。何故、この距離で当たるのだ。そう思っていることがセルマにはよくわかっていた。
彼等は次にこう考えるだろう。
「―――遠距離での打ち合いは不利である、と」
ならば、彼等が次に行う行動もまたセルマの予想の範囲である。彼等の武器である銃の封印を己の生命を代償にして解き放つ。
高速連射形態。
それこそが、数を頼みにした彼等の最大の武器。銃弾の雨を高速で放ち、点ではなく面で猟兵を圧しようとする。
そして、その利点が最大に発揮されるのは近距離。駆け出す獣人達。それは群れを意識した見事な連携であった。
「思い切りも良し……ですが、予想の範囲内です。誤差もありません……」
セルマが息を吸い込む。
青い瞳が輝く。ユーベルコードの輝きに呼応するように、彼女の周囲に山積していた無機物達が一斉に吹雪へと変換される。
その吹雪が一斉に接近してきた獣人達へと襲いかかり、視界と体温を急速に奪い去っていく。凍てつく風は彼等の体を凍りつかせ、氷の彫像へと変えていく。
「この領域に足を踏み入れたが最後です……逃しません」
宣言する。
冷酷なる宣言。彼等の末路は決定したのだというように、吹雪の支配者(ブリザード・ルーラー)は次々と凍てつく吹雪を放ち、バリケードを越えようと迫る銀狼軍たちを尽く討ち果たしていく。
「戦いにおいて常に機先を制することができるのは、相手の情報をより多く手にした者のみ。そういう意味では、私達に分がありましたね」
そう、猟兵たちはこの地に降り立ち、彼等が考える限りの情報や陣地の構築に奔走した。
それがこの結果である。
敵を知り己を知れば百戦殆うからず。セルマは、その言葉を胸に抱きながら、銀狼軍の部隊を尽く凍りつかせる絶対者にして、最終防衛ラインとして戦い続けたのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
金櫛・キンコ
群れには群れをぶつけましょうか。異世界で捕まえたこの虫たちを放つときがきたようですね!
私自身は皆さんが作ってくれたバリケードに身を潜めて、ユーベルコードを使用します。敵集団への攻撃はユーベルコードで放った、黄金蟲達に任せます。
黄金蟲を放った後は集団に見つからないように、黄金蟲の攻撃で弱った敵をこそこそとリボルバー拳銃で射撃で仕留めます。
戦いの趨勢とは数で決まることの方が大半である。
辺境伯の軍勢である蜂起した銀狼軍は、群体オブリビオンであり、一軍と評されるには十分すぎるほどの数であった。
それは数で猟兵を圧殺するには十分な数であり、本来であれば戦いは拮抗するか、猟兵が圧されることが容易に想像できた。
だからこその油断。
猟兵たちは降り立ち即座に行動した。近隣住民たちへの略奪や虐殺の可能性。万難を排して、迎撃の準備を入念に行ったのだ。
バリケードは堅牢に。岩山に座す人類砦へと至る地形、ルートを限定……さらには敵軍である銀狼軍の情報の精緻さ。
故に猟兵たちは圧倒的数を相手取って戦うことができる。これは猟兵たちだけでは成し得ぬことであったことだろう。
人類砦の人間たち、彼等が希望を喪わずに協力してくれたからに他ならない。彼等はやはり希望であった。
一人ひとりが小さな光であっても、いつか束ねれば、常闇の世界であるダークセイヴァーを照らす光に成る。
そんな確信を持ちながら金櫛・キンコ(✨純金髪✨・f27825)はバリケードを盾に手にしたリボルバー拳銃の射撃でもって、迫る銀狼軍を牽制していた。
「やっぱり数が多いですね……!」
圧倒的な数ではあった銀狼軍たちもバリケードや、岩山に座す人類砦へと至る登坂ルートを限定した今は捌けぬ数ではなくなっていた。
それでも数が多いと感じるのは、群体である銀狼軍の強みであったのかもしれない。
「群れには群れをぶつけましょうか。異世界で捕まえたこの虫たちを放つ時がきたようですね!」
キンコはバリケードに身を潜め、ユーベルコード、黄金蟲(オウゴンチュウ)を放つ。それは一斉に数を増やし、黄金の輝きで持って常闇の世界を照らす。
その綺羅びやかな輝きは、まさに太陽のようであった。
だが、その美しさと裏腹なる獰猛さを持っていた。鉄すら食らう黄金の虫。それが黄金蟲である。
一斉に群れでもって、銀狼軍へと襲いかかる黄金蟲たち。
鉄すら食らう鋭い牙で襲いかかられた銀狼軍の獣人たちは、骨も残らぬままに霧散して消えていく。
「そら! ご飯の時間だよ! たっぷりご飯はあるんだから、遠慮せずにやっちゃって!」
キンコの放った黄金蟲の働きは凄まじく。バリケードへと取り付こうとした獣人達全てが、彼女の黄金蟲の餌食となった。
運良く黄金蟲の襲撃を免れた獣人たちも、バリケードから放ったキンコのリボルバー拳銃から放たれた弾丸に寄って仕留められていく。
黄金の髪が風になびく。
煌めく輝きは、その意志を反映するように輝かしい。誰かを助けたいという想いは、黄金のように貴重なものだ。
猟兵であれば誰だって持っている心であるとキンコは言うかもしれない。
けれど、それは誰にでもあったとしても、発露するほどの輝きを放つことのできるものではないのだ。
「誰一人だって、この先には行かせないんだから―――!」
リボルバー拳銃の引き金を引く。
その度に、自分ができることを考える。この世界のこと、人類砦の人々のこと。それを思えば、恐れも疲労も何もかもが吹き飛んでいくのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
キャロル・キャロライン
到着が遅れました。
私も加勢させていただきます。
かつての私の国も、あのような者達に蹂躙されたのでしょう。
そのようなことを再び起こさせるわけにはまいりません。
皆様が作られたバリケードを守り、一匹たりともこの人類砦には近付けさせません。
まずは、白銀馬と白銀弓を召喚。
馬に跨り天を駆け、敵の弾丸が届かぬ上空から分裂する矢を注ぎ、軍勢の数を減らしていきましょう。
軍勢がバリケードに近付いたならば、武具を白銀盾と白銀槍に変更。
馬上でそれらを構えた状態で選択UCを使用し、ランスチャージにより光となって敵を蹴散らします。
それにしましても、武器が銀の弾丸だなんて、この世界の狼男は随分と洒落が利いているのですね。
人類砦を巡るダークセイヴァーでの戦いは予想以上に激しいものであった。
数で圧する辺境伯の軍勢たる蜂起した銀狼軍。彼等は己の生命を省みない戦いぶりに寄って、その使命を果たそうと躍起になっていた。
その瞳は狂気に彩られていたかも知れない。己の生命など投げ捨て、構成員たちの能力を底上げしていく。
自害することによって強化された銀狼軍の獣人たちは、一切の恐怖を感じない狂乱の徒となって人類砦を目指す。
もしも、他の猟兵達によって人類砦の防衛準備が成されていなかったならば―――。それは考えるだけでもおぞましい結果になったであろうことは容易である。
辺境伯の目的は人類砦の破壊。
人類の希望たる人類砦を打ち砕くことこそが、ヴァンパイア支配盤石たる世界への礎であるのだから。
そして、その暴虐を赦さぬと新たに降り立つ猟兵の姿があった。
「到着が遅れました。私も加勢させていただきます」
キャロル・キャロライン(白銀の騎士・f27877)が猟兵達の新たなる加勢として降り立つ。白銀馬エクウスと白銀弓アルクスを携え、天を駆ける。
その姿は白銀の流れ星を思わせる。弓引けば、上空より飛来する弓矢が地上の獣人たちを貫いていく。
空より見下ろす人類砦。
それは彼女に残った僅かな記憶の残滓を思わせる。
「かつての私の国も、あのような者達に蹂躙されたのでしょう……」
多くの記憶を喪った小国の姫。けれど、残る記憶に燦然と輝くのは世界を守るという思い。
「そのようなことを再び起こさせるわけには参りません……!」
白銀馬エクウスが嘶く。それは彼女の思いを受けて、空を駆け抜ける。
銀狼軍の獣人たちが放つ銀の弾丸も、上空を自由に駆けるエクウスには届くはずもない。だが、逆にキャロルの放つ弓矢は雨のごとく降り注ぐ。
一方的な攻撃は、次々と銀狼軍の数を減らしていく。バリケードに取りついた敵も余さず打ち払い、猟兵と人々によって作られたバリケードを抜けさせることをしない。
しかし、それでも数で圧するのが銀狼軍である。
バリケードに取り付き始めたのをみれば、彼女の瞳が輝く。ユーベルコードの輝きは、彼女の体を超防御モードへと変貌させる。無敵城塞として、さらに騎乗しているがゆえに今の彼女は白銀の巨星である。
「人類砦には一匹たりとて近づけさせはしません―――!」
構えるは、白銀の盾と槍。ハスタスとスクトゥス。
天に輝く白銀巨星となったキャロルは、白銀馬エクウスと共に、バリケードに張り付いた銀狼軍へと突撃する。
一条の光となって敵を蹴散らす姿は、まさに流星そのもの。
一撃のもとに次々と銀狼軍の獣人たちは骸の海へと還っていく。
それは人類砦に生きる人々が喪わなかった希望の光のように常闇の世界ダークセイヴァーをまばゆく照らす銀の星であった。
「それにしましても、武器が銀の弾丸だなんて……この世界の狼男は随分と洒落が効いているのですね」
キャロルは、己を狙う銃弾をかわし、さらなる追撃でもって銀狼軍を蹴散らす。
それはいつかあったかもしれない、彼女の故国。
その崩壊の弔いのように、銀の流星は戦場を駆け抜け続けるのであった―――!
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
離れた場所から、うなり声と足音が聞こえる。
奴等は死に物狂いで来るようだな。
だが、無碍な突撃だけでは戦には勝てぬよ。
■闘
中距離戦を挑むぞ。敵と戦う際は常に【視力】を
用いて相手を目視する。
先ずは80m程距離を取り【早業】の抜刀から【空薙】を
放ち、敵の集団目掛けて【範囲攻撃】を仕掛ける。
優先して狙うのは怪しい動き……特に『自身の命』を
絶とうとする者を先に倒すことで超強化を阻止。
これは、相手の習性を利用する作戦だ。
敵の攻撃は銃を持った腕の動きを【見切り】つつ、
撃たれる前に【残像】を見せつけ緊急回避。
自滅した敵が現れた時は特に注意せねばならぬな。
やられる前にやれ、戦場の鉄則でござる。
※アドリブ・連携歓迎
「ガアァァァァ―――!!!」
それは群体オブリビオンである蜂起した銀狼軍の咆哮であった。
最初は圧倒的数で押し切れると判断していた人類砦。如何に猟兵が駆けつけようとも、この数を前にしては濁流を前にするのと同じである。
だが、結果はどうだ。
猟兵たちの迎撃準備と情報収集、そして近隣の避難。彼等は己たちが考えうる全てのことを、限られた時間で行っていた。
それは猟兵達だけでは決して為し得たことではなかった。希望を喪わぬ人々、人類砦の人々の助力があったからこそだ。
どちらかが欠けていては、為し得なかったこと。それを人は奇跡と呼ぶのかも知れない。
「ふむ。離れた場所から、唸り声と足音が聞こえる……」
獣の因子を持つ愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)の耳が捉えたのは、銀狼軍たちの咆哮であった。
劣勢に次ぐ劣勢。銀狼軍にとって、この戦いは誤算だらけであったのだろう。
猟兵がいたこと、人々が希望を喪わなかったこと。
その全てが、銀狼軍の戦いを不利なるものへと変えていったのだ。
「奴等は死にものぐるいで来るようだな……だが、無碍な突撃だけでは戦には勝てぬよ」
清綱の目の前に現れたのは、目の血走った獣人。銀狼軍の獣人である。彼等は一人の生命を代償に、他の者達を強化するユーベルコードを持っていた。
それによる強化なのだろう。その表情を見て、清綱は哀れに思ったかも知れない。
己の命の重さも測れない。
それが群体オブリビオンというものであるのならば、疾く終わらせなければならない。
強化された銃弾が清綱を狙い、放たれる。
一瞬の判断。清綱の瞳は、その挙動をしっかりと捉えていた。残像が残るほどのスピードで躱し、清綱の返す刃で獣人が切り捨てられる。
「突撃だけでは戦には勝てぬと言った―――!」
更に続く集団を睨めつけると、清綱の刀が鞘に収められる。納刀。半身になって、一歩を引く。
それは居合の構え。そして、清綱のユーベルコード、空薙(ソラナギ)を放つ予備動作である。
「……空薙」
放たれたる裂帛の剣閃。居合より放たれる神速の一撃は空間すらも断ち切る斬撃となって一瞬で銀狼軍の獣人たちを両断せしめるのだ。
そのまま清綱は駆ける。
その瞳が捉えるのは、瀕死になりながらも、己の生命を代償に残る銀狼軍を強化しようとする者。
「己の生命を断とうとするのであれば―――俺が介錯つかまつろう!」
一瞬で踏み込み、ユーベルコードによる強化を図ろうとする獣人へととどめを刺す。彼等は皆、己の生命を使って事をなそうとする者たちばかりである。
ならば、それはもはや習性と言っても差し支えないものである。
「ここで止める。これ以上無意味に生命を散らすことなどさせぬ。やられる前にやれ、戦場の鉄則でござる……」
最後の銀狼軍の獣人を切り捨て、骸の海へと返す清綱。
その瞳が次に捉えたのは、この軍勢の首魁。
―――辺境伯にして『善人』と呼ばれた、オブリビオンにしてヴァンパイア……ジョナサン・ランバート・オルソレグ。
その初老の老紳士の鋭き眼光と清綱の瞳が交錯したのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『善人ジョナサン・ランバート・オルソレグ』
|
POW : これでも昔はやんちゃをしていてね。
【拳闘を主とした総合格闘技】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 前途ある君達を断ちたくはないのだよ。
【杖に仕込まれた剣】が命中した対象を切断する。
WIZ : 君もまた、救われるべき未来なのだ。
自身が【哀れみ】を感じると、レベル×1体の【自身に殺害された者達】が召喚される。自身に殺害された者達は哀れみを与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:のはずく
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠バオ・バーンソリッド」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『善人』ジョナサン・ランバート・オルソレグは感嘆していた。
目の前で広がる光景。
それは辺境伯として己が遣わせた軍勢、蜂起した銀狼軍の変わり果てた軍容であった。
狼の獣人で構成されていた銀狼軍は、全滅。一体足りとて残っていない。
「おお―――」
なんたることだ。
震える言葉。それは悔恨ではなかった。己の采配の誤りを悔いたわけではなかった。むしろ、その震えは歓喜の震え。
「なんたる―――なんたることだ! これほどまでに生きる意志に溢れた者たちがいようとは! 救わねばならぬ! 生への執着こそがオブリビオン、何者にも縛られぬ……! それこそ生にすら縛られぬ存在への一歩!」
両手を広げ天を仰ぎ見る老紳士の瞳は、すでに狂気に彩られていた。
その瞳に有るのは悪意ではない。ただの善意。本当に彼の言葉は、そのとおりであると、彼自身が信じるものであり、疑念を挟む余地など一つもなかった。
「素晴らしい! 君達も生の苦しみから救ってあげなければならない! さあ、死して共にオブリビオンとなろう! 何も恐れなくていい。死とはただの結果だ。通過点にしかならない。我々はその先を行くことができる」
ごきん、と老紳士の拳が鳴る。
一歩踏み出す。それだけでその場に居た猟兵たちは感じ取っただろう。その尋常鳴らざる重圧を。
善人ジョナサン・ランバート・オルソレグが、見かけどおりの存在ではないということを。
そして、その額に輝く『辺境伯の紋章』と呼ばれる宝石のような物体。
それこそが、寄生虫型オブリビオン!
ヴァンパイアの上位存在へと手を伸ばすために捕獲せねばならない。
「さあ―――……生を終わらせよう、諸君」
強大なる重圧を伴ってジョナサンが猟兵達と対峙する。
最後の激闘の幕が今切って落とされたのだった―――。
春乃・結希
あれが『辺境伯』…確かにすごいプレッシャーを感じます…
でも、貴方と一緒なら、なにも怖くない
行こう、『with』
UC発動
見晴台から飛び、正面から敵に突撃
最高速度を保ったまま『with』を叩きつけます【空中戦】【重量攻撃】
…あなた、近接戦が得意なんですか?実は私もなんです
【激痛耐性】と絶対に引かない【覚悟】
傷は焔が塞いでくれます
っ…仕込み杖…?効きました…ちょっとだけですけどね
猟兵として旅をすると決めた時から、いつ骸の海に還ってもいいと思ってるんです
それが、私の運命だったんだなって思えるから
…でも、あなたに救って貰う必要はありません
私の道は、私自身で決めるので
次が来ますよ
『最期』まで頑張って下さい
額に『辺境伯の紋章』輝くオブリビオン、ヴァンパイアである善人ジョナサン・ランバート・オルソレグ。
その重圧の凄まじさは言うまでもない。
これがダークセイヴァーに生きる人類全てを支配するヴァンパイアの力。その力を底上げしているのが、額に宝石のように埋め込まれた寄生虫型オブリビオンである。
底上げしていると言っても元のヴァンパイアとしての力も凄まじいのであろう。
「さあ、生を終わらせよう、諸君」
その初老の老紳士とは思えぬ静かなる気迫は猟兵たちの足を止めさせるか……否である。
この場において足を止める者など誰一人としていない。
「あれが『辺境伯』……確かにすごいプレッシャーを感じます……でも、貴方と一緒なら何も怖くない」
春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)がその手に携えるのは漆黒の大剣with。そのwithに語りかけるように言葉を紡ぐ結希の瞳はまっすぐに辺境伯であるジョナサンへと向けられていた。
「―――行こう『with』」
彼女のユーベルコードが輝く。
自己暗示により、彼女の姿が限りなく真の姿に近づく。燃え盛る焔の翼を広げた姿は、彼女の真なる姿の一歩手前であろうか。
彼女がいた見晴台の上から飛び、一直線にジョナサンへと突撃する。その速度は凄まじく、大剣と杖とが鍔迫り合いを起こす衝撃だけど周囲の地形が変わっていく。
軋む腕。火花を散らす大剣と杖。周囲の地面がひび割れ、衝撃が伝わっていく。
「ほう、娘の姿だと思ってしまうと、これはいかんな―――」
「……あなた、近接戦が得意なんですか?」
「老体に鞭打って……などとは言わんよ。昔はやんちゃだったもので、ね―――!」
ジョナサンの蹴りが結希の体へと放たれるも、彼女はしっかりと蹴りをガードしていた。
「実は私もなんです―――」
重量を増す大剣withの一撃。杖が軋む。むしろ、重量を誇る大剣の一撃を杖で受け止めていること事態が異常な光景なのだ。
拮抗している。そう思えた瞬間、結希の体に走る袈裟懸けの斬撃。
「なっ―――ッ、仕込み杖……?効きました……ちょっとだけですけどね」
だが、結希に放たれた斬撃は彼女の体を引き裂くには足りない。傷は即座に焔が塞ぎ、元通りになる。
彼女にとって、痛みはこらえるものである。覚悟とは絶対に退かないという意志である。
それ故に、ただの斬撃だけで彼女を止めることは不可能である。彼女の瞳が、意志が前を向いている限り、彼女の歩みは、旅は終わらないのだ。
「この一撃を受けても両断されぬとは……相当の覚悟がおありだ。なんと悲しいことであろうか。それほどまでに生に執着するとは」
ジョナサンの言葉は的外れである。
結希の大剣が振るわれる。一撃一撃が重たい。仕込み杖の刀身で受けながら、ジョナサンの足が徐々に後退している。
圧されているのだ。
「猟兵として旅をすると決めたときから、いつ骸の海に還ってもいいと思ってるんです。それが私の運命だったんだなって思えるから」
「―――なんと! その年にして己の運命を悟るか。なんということだ、救わねば! 救わねばならぬ!」
ジョナサンの額に埋め込まれた『辺境伯の紋章』が輝きを増す。
「……でも、あなたに救って貰う必要はありません!」
大きく広がった結希の焔の翼が、常闇の世界を照らす。
その光景は、太陽そのもの。最上段の掲げた漆黒の大剣withが、裂帛の気合と共に放たれる。
「―――なぜだ! 救われるべくして救われる生命があるというのに、何故―――!」
交錯する辺境伯ジョナサンと結希。
互いの剣閃が交錯し、互いの体を切り裂く。互いに膝をつくが、結希はすぐさま立ち上がる。すでに焔で傷はふさがっている。ユーベルコードの限界が来たのだろう。真の姿から、元の姿へと戻る。
自分はここまで。だが―――。
「次が来ますよ。『最期』まで頑張って下さい」
そう、この地に集まった猟兵は彼女だけではない。
辺境伯ジョナサンがどれほど強大なオブリビオンであろうとも、必ず猟兵が彼を討ち果たすだろう。
結希の旅は終わらない。まだまだ彼女の轍は、紡がれていくのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
奴が元凶…ならばこの命に賭けて討ち倒す
御下命如何にしても果たすべし
杖が厄介だ、武器で受ければ武器ごと断たれかねん
得物を封じる。刀を鞘に収め、【早業】で杖の間合い外から左手の「土蜘蛛」に仕込んだ網を投射し【捕縛】
更に右手の「夜刀神」から射出した綱を【ロープワーク】で操り網の上から縛り上げる
刹那の抜き打ちで【変位抜刀術】
間合いの外から「切断された結果」を発射、網と綱の上から【貫通攻撃】
敵の体の内部のみを切断
「変位抜刀…兜貫」
お前さんは勘違いしてる
死んだら終わりだからこそ、全力で生きていられるんだ
その生きる意思を美しいと感じるなら、余計な真似をするな
死して屍拾う者無し
ただ思いのみ伝え続く、それでいい
「奴が元凶……」
辺境伯、善人ジョナサン・ランバート・オルソレグ。
その姿を見た猟兵は瞬時に悟ったことだろう。あの強烈なる重圧を放つオブリビオンこそが、この戦いの元凶であると。
額に埋め込まれるようにして輝くは『辺境伯の紋章』。宝石のような輝きを放っているが、その実、寄生虫型オブリビオンであり、寄生したオブリビオンを強化し脅威的な力を発揮させるのだ。
髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)の瞳が、その姿を捉えた瞬間に別の猟兵が斬りかかる。手にした武器、仕込み杖の刀身は鋭く、その刀身が命中したものは例外なく切断されてしまう。
その能力は凄まじいの一言に尽きる。実際、鍬丸も杖が厄介であると判断していた。
もしも、武器で受ければ武器ごと断たれかねない。
ならば、あとに続く者たちが戦いやすいように、あの獲物を封じなければならない。刀を納める。
ここから先は忍びの戦いである。
「―――ならば、この生命に賭けて打ち倒す。御下命如何にしても果たすべし」
その言葉は己の不退転の決意を示す言葉。
駆け出す。彼の忍びとしての直感が告げる。来る、と。
「なるほど。『最期』まで、とはそういうことか―――」
辺境伯ジョナサンの眼光が鍬丸を捉える。それは次なる猟兵の攻撃を受けて立とうとするのではなく、鍬丸を切り捨てることによって己の矜持を完遂しようとする視線。
「生きるとは! 辛く長い道程であるとは思わないかね! 死の先があると知れば人はそれを欲するだろう!」
ジョナサンの持つ仕込み杖が嫌な音を立てる。抜刀される。あの刀身に当たれば、己の胴は両断されてしまうかも知れない。
だが、それで臆する猟兵は居ない。
己の戦いは誰がためか。鍬丸の心のうちは決まっている。この地に生きる人々のためである。
「お前さんは勘違いしてる。死んだら終わりだからこそ、全力でいきていられるんだ」
鍬丸の目にも留まらぬ早業によって放たれるは、手袋に仕込まれた射出式の単分子繊維製投網―――土蜘蛛。それは名の通り、粘着性を持つ。放たれた網は一瞬でジョナサンの体を捕縛する。
さらに右手の手袋より放たれるは高速伸縮する高強度ワイヤーが放たれ、ジョナサンの体を二重に縛り上げる。網だけでは逃げられる。その確信があった。
「ぬ―――! 全力で生きた先に、オブリビオンという第二の生があるのだ! 生きる意志を喪わぬ! 逆境に遭っても尚生きようとする意志! 美しいではないか! それがあるからこそ、死なねばならない!」
ジョナサンの体は雁字搦めである。
夜刀神たるワイヤーと、土蜘蛛の網。それを二重に受けて逃れられる者など存在しない。
「その生きる意志を美しいと感じるなら、余計な真似をするな」
刹那、鍬丸のユーベルコードが発動する。
納刀した刀が抜き放たれ、『切断された結果』のみを放つ。網と綱の上から、あらゆる防御を貫通する一撃。
それこそが―――変位抜刀術(ヘンイバットウジュツ)!
「変位抜刀……兜貫」
ヴァンパイアたる辺境伯ジョナサンの体の内部を切断する一撃。それは確かな手応えをもたらす。
「グッ、はっ―――!?」
吐血するジョナサン。それは内部を『切断された結果』である。
どれだけ強靭なる防御も、何もかもが、そのユーベルコードの前では無意味。
「死して屍拾う者無し―――」
人は永遠に生きられない。
だからこそ、あとに続く者たちに託せばいい。
その想いはいつか、誰かの助けとなるであろうし、誰かと誰かを繋ぐことであろう。人の人生とはそうやって続いていく。
鍬丸の刀が再び納刀される音が響く。
「ただ思いのみ伝え続く、それでいい」
大成功
🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
アドリブ歓迎
亡者の攻撃を
【ダッシュ】したり【オーラ防御・見切り】ながら
『ガラス蜘蛛・護り現』で受け流すことに注力
『謎のレモン』を辺境伯に放ち、牽制し徐々に近づく
病気や使命、意思だけで逃れられない事は沢山あるわ
……生き延びたい。幸せに生きたいと願うのは当たり前よ。
奪うことが救いになるの?
私には、そう見えない
……貴方はよっぽど長生きするのが好きみたい
そんな紋章で己を守りながら、哀れみ、奪うなんて
他人を馬鹿にしすぎよ
距離を詰めながら【魔力溜め】した『万象の刃』を辺境伯へ囲み放ち
蔦を足へと絡みよせ【怪力】で【体勢を崩し】
空中浮遊から針の追撃
仰ぎ見る空はどう?
少しは踏みつけにされる気持ちが分かったかしら
「あぁ―――なんと愚かしい。人の生はいつだって儚いものだ。いつ終わりを迎えても仕方のない泡沫であるというのに」
辺境伯、善人ジョナサン・ランバート・オルソレグは対峙する猟兵達に哀れみの感情を抱いた。
それはあまりにも独善的な感情であった。傲岸不遜であると言っても良い。己の主観が全て。己の理念こそが至上のものであると語る。
その体を封じていた網と綱が引きちぎられる。
先んじた猟兵たちの攻撃は確かにダメージを蓄積させていっている。その証拠に辺境伯ジョナサンの放つ重圧が弱まっているように思えた。
だが、それはわずかに陰っただけでしかないことを猟兵たちは知るだろう。
「君達、猟兵もまた、救われるべき未来なのだ―――」
哀れみの感情と共に呼び出されるのは、これまで辺境伯ジョナサンが、その観念の元に殺害してきた者たち。
亡者たちが一斉に呼び出される。その姿は圧倒的な数を誇る。荒野に立ち並ぶ姿は、これまでどれだけの人々が辺境伯ジョナサンの観念の犠牲者となったのかを表していた。
「病気や使命、意志だけで逃れられない事は沢山あるわ……生き延びたい。幸せに生きたいと願うのは当たり前よ」
ジャム・ジアム(はりの子・f26053)の明色の羽根が震える。
生とは常に苦しみの連続であるのかもしれない。生きている以上、苦しみはついてまわる。だからこそ、その反対である幸せを望むのが人間である。
だからこそ、ジアムは、辺境伯ジョナサンの言葉を飲み込めないでいた。
「奪うことが救いになるの?」
ジアムが荒野を駆ける。呼び出された亡者たちの攻撃を見切り、銀の薄布―――ガラス蜘蛛が生み出した空気の層で阻む。
護り現のオーラが強化され、亡者たちが掴みかかってきてもジアムに寄せ付けない。
「そうだとも! 生きる意志を持ちながら、生に縋って手を伸ばすことこそがオブリビオンとなる条件! 現に私は、そうやって今の生を謳歌している」
それが正しい言葉であるのかはわからない。本当にそうである保証など何処にもなければ、ジョナサンの妄言である可能性だってある。
しかし、ジアムは言う。
彼女の瞳に映る亡者たち。それは辺境伯ジョナサンが理念の元に殺害してきた者たち。彼等はオブリビオンであろうか?
「私には、そう見えない」
そう、オブリビオンではない。ただの哀れな犠牲者たちだ。
きゅ、と結んだ唇が何か言葉を紡ごうとした。けれど、それは亡者たちを慰める言葉にはなりえない。だからこそ、ジアムは結んだ唇を解く。前を向く。
見据えるのは辺境伯ジョナサン。
「……貴方はよっぽど長生きするのが好きみたい。そんな紋章で己を守りながら、哀れみ、奪うなんて。他人を馬鹿にしすぎよ」
そう、彼の言葉は全て他者を見下す者の言葉だ。
距離を詰める。手にした謎のレモンから伸びる蔦がジョナサンの体に巻き付く。逃れようとした彼の足を掴み、その場に押し止める。
ジアムの体に渦巻く魔力が咆哮する。それはユーベルコードの輝き。
「愛しい貴方たちの輝きを―――」
溜め込んだ魔力が爆発するように、辺境伯ジョナサンの周囲に幾何学模様を描く燦然たる輝き放つ針たちが囲い込む。
隙間なく、逃れるはずのない針たちの一斉射が始まる。
「これは、まずいな。亡者たちよ。私を護れ―――」
だが、その命令は亡者たちに届くことはなかった。謎のレモンから伸びる蔦がジアムの怪力に寄って引き寄せられ、辺境伯ジョナサンは大きく態勢を崩す。
空中に投げ出されるようにして、ジョナサンの体が浮く。
「仰ぎ見る空はどう?」
ジアムの羽根が常闇の荒野の空に咲く。燦然と輝く針のきらめきが、明色の羽根をまばゆく輝かせる。
その中で彼女の瞳が辺境伯ジョナサンの体を射抜く。亡者たちの嘆きを代弁するかのように、彼女の手が示す。
あれが、討つべき敵であると。
一斉に放たれる針たちが万象の牙(スピリトゥアーレ)となって、その敵であるジョナサンの体を穿ち続ける。
針の一斉射の後、ジョナサンの体は強かに荒野に打ち付けられる。
仰ぎ見た空に浮かぶは、羽を広げたジアムの姿。それはどれだけ強大なる力を持つオブリビオンであったとしても怯むことない絶対たる意志を持つ猟兵の姿だった。
「少しは踏みつけにされる気持ちがわかったかしら?」
その言葉は、再び燦然たる輝き放つ針と共にジョナサンの体を穿つのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
金櫛・キンコ
う~ん、わかんないなぁ。このまま生きてるとか辛いから死んでしまえなんて何言ってるかわかんない。遠慮します。
それよりも辛くならないようにしたらいいだけじゃん、ねえ。
それでもそっちが曲げないなら、そっくりそのままお返ししますよ。
そっちも人を殺して助けるのが辛そうだから、私も殺して助けてあげますよ、ってね。遠慮はいりませ~ん(^^)b
じゃあ、どうやって『助けて』あげましょうかね。
ここはとっておきを振る舞いましょう、当たれば弾ける【純金軟頭弾】を撃ちこみます。
とはいえ当たればなので、工夫しましょう。ギリギリまで引きつけ相手の攻撃に合わせて撃ちこみます。こちらも危険ですが、攻撃中なら避けにくいはずです。
燦然と輝く針が『辺境伯』ジョナサン・ランバート・オルソレグの体を打ち貫く。
しかし、それでも立ち上がってくる辺境伯ジョナサンの額に輝く『辺境伯の紋章』、寄生虫型オブリビオンの力は絶大そのものである。
漲る力は未だ衰えを見せず、猟兵たちの攻撃はダメージを蓄積させているはずなのに、それでも立ち上がってくる。
「おお、これが生きる意志。この意志溢れる力があるからこそ、人は死にオブリビオンへとなり、第二の人生を送ることができるのだ」
辺境伯ジョナサンの瞳にはもう正気と呼べるような光はどこにもなかった。あるのは狂気という名の妄執だけが残っている。
生きる意思ある者を殺す。生とは苦しみに塗れたものであるからこそ、それから解放されなければならない。
開放するためには生を終わらせる他ない。
「だからこそ、私は私の使命を全うせねばならない!」
だが、そんな妄執に付き合うほど猟兵は愚かではない。
「う~ん、わかんないなぁ。このまま生きてるとか辛いから死んでしまえなんて、何言ってるかわかんない。遠慮します」
にべにもない言葉。
それは明確なる拒絶であった。
純金の髪が風になびき、金櫛・キンコ(✨純金髪✨・f27825)は言った。その言葉は辺境伯ジョナサンの言葉を真っ向から否定する。理解を示すことも
ない。なぜなら、彼女の心に在る言葉は、すでに答えを見つけているから。
「それよりも辛くならないようにしたらいいだけじゃん、ねえ」
彼女の答え。
その言葉を紡いだ瞬間、辺境伯ジョナサンが神速の踏み込みで持って彼女との距離を詰める。その踏み込みの速さ、力強さ。見た目を初老の紳士と思
っていてはならないほどの圧倒的な速度で持って踏み込んでくる。
打ち込まれる拳。
「ならば、私はその尽くを砕こう!」
しかし、その拳は純金の髪に阻まれ穿つ相手を見失う。そのきらめきは、本来、常闇の世界たるダークセイヴァーにはない輝き。太陽の輝きのようで
あった。
「それでそっちが曲げないなら、そっくりそのままお返ししますよ。そっちも人を殺して助けるのがつらそうだから、私も殺して助けてあげますよって
ね。遠慮はいりませ~ん」
くるりと体を翻し、距離を取るキンコ。
とは言え、どうやってかのオブリビオンを倒すか。彼女にも切り札と呼ぶべき一手がある。しかし、命中しなければ意味がない。
彼女の武器はPitViper .45SoftPoint 4inch。六連装リボルバー。ある特殊な弾丸を放つために作られたリボルバーである。
「ほざいたな、猟兵! 私の救世の道を阻むというのならば、その礎と成れ―――!」
再び踏み込む辺境伯ジョナサン。その瞳が捕らえているのは、キンコのみ。打ち貫く拳が彼女の顔を目掛けて放たれる。
―――ギリギリ。
そう、ギリギリまで引きつけなければならない。彼女の瞳は辺境伯ジョナサンの放つ拳を見つめていた。
強大なるオブリビオンである。放たれる拳は必殺の拳であろう。その拳が当たれば、己とて無事では済まない。
だからこそ、引きつける。ギリギリまで。
「弾けて!」
そえは彼女の放つユーベルコード、純金軟頭弾(ジュンキンナントウダン)の輝き。それは重く軟らかい純金の弾頭を持つ弾丸が放たれた輝き。
その弾速は拳よりも速く辺境伯ジョナサンの胸を打つ。その軟らかい弾頭が強力なオブリビオンの体に当たり、ひしゃげる。
だが、それでいい。ひしゃげた弾頭は散り散りになって威力を点ではなく面で与える。轟音が遅れて響く。
拳はキンコに届かなかった。
代わりに荒野に立つは、辺境伯ジョナサンの胸に大穴の開いた姿。彼女のはなった銃弾によって穿たれた穴である。その穴から覗く純金の髪を荒野に
翻すキンコは不敵に笑うのだ。
「―――『助けて』あげますよ。遠慮はいりませんって、言いましたよね?」
大成功
🔵🔵🔵
大門・有人
不採用含めて全て歓迎だ。
語る事なんてなかったが。先の戦闘で乱れた髪を整えて、櫛で敵を指す。
命を捨てる事を当然とするお前の存在は許しちゃおけねえ。
その行いを善と認められるほど、この世界は無法じゃないのさ。
問答するつもりはないが、相手が口を開いてくれれば好都合だ。
UCを始動命中重視で、顎を狙って有人アッパー炸裂だ。
仲間の攻撃の邪魔にならないよう離れるか、的になって引き付けるかはその場の判断だ。
敵の仕込み杖は拳銃で武器受け、両断されないように打点をずらすか、両断されてもいいように銃筒で受ける。
カウンターにその手へ鉛球を撃ち込む。
動きが止まれば今度は顎を目掛けて上段蹴り。有人キックで月までぶっ飛べ!
銃声が荒野に響き渡る。
胸に大穴を穿たれたオブリビオン―――『辺境伯』ジョナサン・ランバート・オルソレグの姿があった。
猟兵たちの攻撃は確実に辺境伯ジョナサンを追い詰めている。だが、その傷跡がふさがっていく。それは見た目を取り繕っただけに過ぎない。刻まれたダメージは着実に、かのオブリビオンであるヴァンパイアを傷つけているのだから。
「生きる意思がここまで強いとは―――……猟兵、侮っていたな。手に入れた力が大きければ大きいほどに、ここまで増長してしまうとは」
初老の老紳士たる姿のジョナサンは土埃を払う。その言葉とは裏腹に、語気は怒気をはらんでいる。己の救世たる行いを邪魔する者、猟兵への憎しみが満ち溢れている。
そんな辺境伯ジョナサンの前に現れるのは乱れた頭髪を整える者、大門・有人(ヒーロー・ガンバレイにして怪人・トゲトゲドクロ男・f27748)である。
櫛で綺麗にリーゼントを整え、荒野を歩く。特に語ることなどない。そう思っていたが、彼は言葉を発する。
それは自然と心より湧き上がった言葉であったのかもしれない。
「命を捨てることを当然とするお前の存在は許しちゃおけねえ。その行いを善と認められるほど、この世界は無法じゃないのさ」
ゆらり、と有人の体が揺れる。問答するつもりはない。構えるは互いに拳。ステゴロである。
「確かに無法ではなないだろう。律と法は、我等ヴァンパイアにある。故に、我等が行いが全て善―――!」
有人の踏み込みは、辺境伯ジョナサンのものよりも数段早かった。
大地を蹴り、土埃だけが彼の背中にあった。放たれる拳は顎を狙う有人アッパー。対峙する者の死角から放たれる拳は、その顎を狙って放たれる。
それこそが彼のユーベルコード、ガンバレイ・ストライク。
「怒りに燃える正義の心を、その身に刻め!」
裂帛の気合と共に有人の拳が辺境伯ジョナサンの顎を捕らえ、打ち上げられる。辺境ジョナサンの体が浮き上がる。
それほどまでに強烈なる一撃であった。顎の骨が砕ける音。だが、この一撃で全てが終わるとは思えない。
有人の背筋が凍る。ぞわりと込み上げる猛烈なる嫌な予感。怖気が走る。
次の瞬間、有人の整えられたリーゼントの髪を一房切り飛ばすのは、仕込み杖の刃。数瞬、その判断が遅れていれば、両断されていたのは己の首であった。
「―――っ!」
声にならぬ声。互いに一進一退である。返す刃で振り下ろされる仕込み杖の刃。それを手にした銃で受け止める。ず、と全てを両断する刃が銃筒を切り落とす。
だが、それでも弾丸を放つことは出来る。辺境伯ジョナサンの手へと放つ銃弾。動きが止まらない。
暴発する銃が弾け、拳が握れない。
「―――なら、足があるだろうが! 有人キックで、月までぶっ飛べ!」
密着した状態から放たれる有人の蹴撃は、その言葉のごとく辺境伯ジョナサンの顎を再び狙い、その体を吹き飛ばすのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
私には『同型機』がごまんと存在し、その全てがオブリビオンとして故郷を彷徨っています
貴方の仰る『生のその先』も我が身に訪れる未来と言うべきなのでしょう
騎士としては御免被りますが
過去として染み出さず、骸の海で眠る為に何を為すべきか対策する必要もありますし、なにより背後の人々は死を望んではいません
貴方の論理に構う暇はありません、『辺境伯』
懐に入り込む挙動や四肢の動き見切り、怪力で振るう剣盾の武器受け盾受けで拳などの攻め手を機先を制し防御
至近距離で格納銃器を展開、なぎ払い掃射で回避行動を態ととらせその隙に剣で額の皮膚を抉り取り
…流石は辺境伯、紋章を獲るには至りませんでしたか
ですが、力は削げたようですね
猟兵による攻撃は二度も、辺境伯ジョナサン・ランバート・オルソレグの顎を砕いた。その一撃は並のオブリビオンであれば、すでに霧散し骸の海へと還っていったとしてもおかしくないものであった。
だが、その額に輝くは『辺境伯の紋章』。寄生虫型オブリビオンである宝石が輝く度に、その傷を癒やすように修復していく。
砕かれた顎は見た目を取り繕うように元通りになっているが、その体には確実に疲労が蓄積されている。
「―――なんたることだ。ここまで私を追い詰めるとは。老体にむち打ちって、出てきた甲斐があったというものだ!」
それでも辺境伯ジョナサンは笑う。喜ばしいことだと。これほどまでに生きる意志に満ち溢れた者がいるのだと。
「君達のような者がいるのだとすれば、いずれ死せる後も安泰である。必ずオブリビオンとなって蘇ることだろう! なんとすばらしきことか!」
笑う。笑う。それは本当に喜ばしいことだと思っているからであった。
「私には『同型機』がごまんと存在し、その全てがオブリビオンとして故郷をさまよっています……貴方のおっしゃる『生のその先』も我が身に訪れる未来と言うべきなのでしょう」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の機械の体が音を立てて、荒野へと現れる。
彼の故郷……スペースシップワールド。彼の出自を考えると、確かのその言葉は事実であったのだろう。その機械の体もまた必滅の身。かならず訪れる未来。
だからこそ、トリテレイアは理解を示していた。辺境伯ジョナサンの言う言葉に。
「騎士としては御免被りますが」
だが、トリテレイアは、それでも否定する。
どれだけ真理を穿った言葉であろうとも、それを是とするほどトリテレイアの持つ矜持は軟なものではない。
「では、どうするかね、機械の騎士よ」
ごきん、と軽く首の骨を鳴らして骨格を正す辺境伯ジョナサン。その瞳は狂気に彩られている。生ある者に尽く死を与えねばならぬという偽りの使命に燃える瞳であった。ここで彼を止めなければ、無辜なる生命がこれからも脅かされ続けることは間違いない。
その言葉が、どれだけ正しいのかは誰もわからない。トリテレイア自身もまた機能停止という死を迎えた後、同じ様にオブリビオンとして蘇るかもしれない。
「過去として染み出さず、骸の海で眠る為に何を為すべきか対策する必要もありますし、なにより―――」
機械騎士の巨躯が立ちはだかる。それはその背に背負った数多の生命があるからこそ、溢れた言葉であった。
「背後の人々は死を望んでいません。貴方の論理に構う暇はありません、『辺境伯』」
それは一瞬の出来事であった。
アイセンサーは瞬きをしない。だからこそ捉えることのできた光景であった。辺境伯ジョナサンの踏み込みは初老を迎えたとは思えぬ程の踏み込みであった。
放たれる拳は、一撃のもとにトリテレイアの装甲を打ち貫くことは容易に想像できた。
「だが、私が望んでいるのだよ。機械の騎士」
放たれる拳を大盾で受ける。装甲がひしゃげ、拳が盾にめり込む。その膂力の凄まじさこそオブリビオンたる力。
だが、怪力であるというのならばトリテレイアも負けてはいない。次々と放たれる拳を盾で、剣で受け流す。拳と剣がぶつかり、剣が折れる。
「人の望みが死であるはずがない。人はいつか死ぬかも知れない。それでも懸命に生きるからこそ尊いもののはず―――それを、他者が決めつけようなど!」
至近距離で放たれる格納銃器。
薙ぎ払うように放たれた銃弾は、密着状態であった辺境伯ジョナサンの態勢を崩させる。
距離を取ろうと離れた瞬間、トリテレイアが踏み込む。折れた剣。けれど、その意志は折れていない。
一瞬の隙。
狙うは『辺境伯の紋章』。その強大なる力の根源である寄生虫型オブリビオンをどうにか排除しなければとトリテレイアは考えたのだ。
その目的は折れた剣であっても果たすことができる。そう確信があった。蓄積された経験、機械騎士の精密攻撃(マシンナイツ・プリセッションアタック)。
その一撃は辺境伯ジョナサンの額をえぐる。
「ぐぬ―――っ!」
額を抑え、後退する辺境伯ジョナサン。
その額からは赤い血が噴き出し、そのダメージの深刻さを物語っていた。
「……流石は辺境伯、紋章を獲るには至りませんでしたか……ですが、力は削げたようですね」
トリテレイアの一撃は確実に辺境伯ジョナサンの力を削ぎ落とした。
彼の矜持は、決してくじけることはない。折れることはない。なぜなら、彼の背後には守るべき者たちがいて、彼は騎士なのだから―――!
大成功
🔵🔵🔵
キャロル・キャロライン
貴方は、自分のことをジョナサン・ランバート・オルソレグ自身と認識しているのですね
だけど、違います
こちらに来る前にお伺いしました
ジョナサンと名乗るオブリビオンが出たのは、貴方で4人目であると
貴方は私と同じ、過去に存在したものの残滓
ジョナサンという方の身体と心に歪みを加えて生み出された紛い物
その方の名前と姿を貶めるのは、今日で終わりにして貰います
あの敵に重い武具は不利
剣とUCによる光翼鎧のみを纏い、挑みます
威力や間合いなど敵に及ばぬ部分を進化させていき、最後は無限長の光剣で攻撃します!
貴方の行いに救いなどありません
希望を蹂躙し、自らと同じ紛い物を作り出していただけ
その歪んだ善意ごと、無に還りなさい
オブリビオンとは過去の化身であるというのならば、同じ名を持つオブリビオンが複数現れるのは骸の海が生み出した影法師であるのかもしれない。
辺境伯ジョナサン・ランバート・オルソレグは、額に埋め込まれた宝石のような『辺境伯の紋章』から血を流しながら荒野に立つ。
数多の猟兵たちの攻撃にさらされ、未だ二本の足を大地につけ、立っているという事実だけで、その存在の強大さが伺い知れることだろう。
「報われぬ……! このままでは死した者たちが報われぬではないか! 私は必ずや人類砦を破壊する。希望はまばゆいが、時としてそれは人の道を大きく違えさせる」
その瞳は狂気に彩られていた。
人の生が苦しみにまみれていると。人の苦しみは生より解き放つことによって救われるのだと信じていた。
だからこそ、彼の目的は猟兵にとっては見過ごすことのできないものであった。
「貴方は自分のことをジョナサン・ランバート・オルソレグ自身と認識しているのですね」
その声は玲瓏なる声と共に静かに語られた。
キャロル・キャロライン(白銀の騎士・f27877)が白銀の槍を携え、辺境伯ジョナサンと対峙する。
その瞳が捉えるのは、過去の化身たるオブリビオンの影法師か。
「だけど、違います。こちらに来る前にお伺いしました。ジョナサンと名乗るオブリビオンが出たのは、貴方で4人目であると」
それは他のグリモア猟兵たちからによる報告書であったのだろう。オブリビオンであれば、同一の個体と思われる存在が数多存在する。
それは過去の化身であるがゆえに。同じであって同じではない。
「貴方は私と同じ、過去に存在したものの残滓。ジョナサンという方の体と心に歪みを加えて生み出された紛い物」
それはデッドマンであるキャロルと同じであったのかもしれない。
過去の残滓、と彼女は己を評した。今、目の前にいる辺境伯ジョナサンと何が違うのかと問われた時、彼女はどう応えるだろうか。
歪められた善意。
だからこそ、止めなければならない。
白銀の姫は、その瞳で辺境伯ジョナサンを捉える。
「その方の名前と姿を貶めるのは、今日で終わりにしてもらいます」
それは決意を秘めた瞳の輝きにして、ユーベルコード、アリスナイト・イマジネイションの輝き。無敵の戦闘鎧が彼女の想像から生み出される。
素早く動く辺境伯ジョナサンに重い槍では不利と悟り、剣に持ち替えた。
「私を影法師と謗るか―――!」
その拳はあまりにも悲しい。
かつて在りし拳は、弱者をいたぶるために培われたものではないはずであろうに。そうキャロルは想う。
その想いは、彼女の武器を、鎧を、光り輝く無限の力を蓄える。
アリスナイトである彼女に限界はない。
「貴方の行いに救いなどありません。希望を蹂躙し、自らと同じ紛い物を作り出していただけ―――」
放たれた辺境伯ジョナサンの拳と剣が打ち合う。砕けたのは辺境伯ジョナサンの拳だった。
今やキャロルに己の信念について疑念が生まれる余地はない。
彼女は信じている。いや、理解している。
己を過去の残滓と評するのならば、彼女の体を突き動かすのは、未だ輝き曇ることのない想い。
彼女の中にそれが在る限り、彼女は負けることはない。無限の光の如き輝きを放つ剣が辺境伯ジョナサンの体を討つ。
「その歪んだ善意ごと、無に還りなさい―――!」
そう、彼女と辺境伯ジョナサンの違い。
それは胸抱いた唯一の想い。
―――世界を守護る。
最期に残ったたった一つの想いの違い―――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
現れたか、暗愚なる将よ。誤った采配で率いた軍が
一人残らず全滅、挙げ句の果てには徒らに死を語る……
将の面汚しもいいところだ。
■闘
とは言え、辺境伯の名は決して伊達ではないだろう。
此所は、俺の得意な剣で挑むべきだな。
『空薙』を左手に持ち居合の構えを取り、
彼のもとまで【ダッシュ】で接近。
辿り着いたら真正面から斬り掛かる……と見せかけた
【フェイント】を仕掛けるぞ。
相手が剣を振るう瞬間を【見切り】つつ、【残像】を
見せながら死角に潜り込み、目にも止まらぬ【早業】の
抜刀から【奇刀】を縦に放ち、頭から斬り伏せるのだ。
大業は、生きてこそ果たされるもの……
徒らに死を語るのは兵の名穢しでござる。
※アドリブ・連携歓迎
無限長の光が辺境伯ジョナサン・ランバート・オルソレグの体を討った。
だが、『辺境伯の紋章』は未だ輝き、そのオブリビオンでありヴァンパイアである辺境伯ジョナサンの体を修復していく。
その修復速度は全盛とは程遠い。着実に猟兵たちは辺境伯ジョナサンを追い詰めていた。
「現れたか、暗愚なる将よ。誤った采配で率いた軍が一人残らず全滅、挙句の果てには徒に死を語る……将の面汚しもいいところだ」
猛禽の翼を羽ばたかせて、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)が戦場に舞い降りる。
数多の猟兵の攻撃に晒されて尚、健在であるのは並のオブリビオンではないことを物語っている。
しかし、その力は全て宝石のように輝く額の『辺境伯の紋章』……寄生虫型オブリビオンによる強化あってのもの。
「―――ア、ォ、ア―――ゴホンッ!」
再生された辺境伯ジョナサンの瞳が輝く。その体を一度は光に灼かれた後であるからだろうか、その喉は上手く声を発生できずにいた。
だが、それも数瞬の間だけである。すでに再生した体は清綱と対峙する。
「とは言え、辺境伯の名は決して伊達ではないだろうな―――」
「いかにも……老体ではあるが、未だ君達に引けを取らぬよ―――耐えて、耐えて、君達が息切れしてしまえば、私の勝ちだ」
その言葉は真実であったことだろう。
どれだけの致命傷に近い攻撃を与えても、辺境伯の紋章が輝く限り、かのオブリビオンは滅することができない。
「だからどうした―――」
そう、だからどうしたというのだ。ならば、滅するまで何度でも己たちの全力を叩き込むのみ。そうして猟兵たちはいつだって勝利を掴んできたのだから。
「過去の化身! オブリビオンは滅する! 依然やることに変わりはない―――!」
手にした合金刀、銘を空薙を左手に持ち、居合の構えを取る。
踏み込むは一足にして、敵の間合いへと飛び込む神速の踏み込み。真正面から切り結ぶかと、辺境伯ジョナサンも迎え撃つ。
手にしているのは仕込み杖。
あの仕込み杖の刃の鋭さは、もうすでに見ている。猟兵たちが戦い、その次に繋がるようにと連綿と紡いできたのだ。
だからこそ、真正面から斬りかかると……そう見せかけた。
「若いとは愚直なものだな。直向きさと、まっすぐであるということを履き違えている!」
勝利を確信した辺境伯ジョナサンの顔。
それは己の仕込み杖の刃の鋭さを確信しているからだ。今ならば清綱を両断できる。そう確信していた。
だが、清綱とて戦い慣れた戦巧者である。駆け引きというものが存在するのであれば、くぐってきた修羅場が違う。
「此の太刀、見切れるか?」
それは彼の業。ユーベルコード、奇刀(キトウ)の一撃。
目にも留まらぬ抜刀斬り。その斬撃は辺境伯ジョナサンの直上から頭蓋を割る一刀両断たる一撃。
「大業とは、生きてこそ果たされるもの……徒に死を語るのは兵の名穢しでござる」
刀を納める音が聞こえる。
清綱の背後で辺境伯ジョナサンが両断され、一直線に血がほとばしる。
その一撃では未だ至らぬとわかっていたとしても、清綱は己たちの、猟兵たちの勝利を確信していた。
猟兵の戦いは孤独との戦いではない。次へ託す。連綿と紡ぐからこそ、猟兵たちは常に勝利の錦を飾ってきたのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
私もこの世界で生まれ育った身。言わんとせんことは分かります。
ただ、それでも私が生きようとするのは……「生きたいから」ただこれだけです。今更何を言われたところで揺らぐものはありません。
近接戦が得意な相手、近付かれないようにするのが一番ですが……
フィンブルヴェトを構え、周囲のバリケードを利用して距離を取りつつ氷の弾丸で敵を狙います
敵の剣の切れ味の前ではバリケードもあまり長く持たないでしょうが、バリケード相手に振るう剣筋を見切り、一太刀目だけでも受けられるように
距離を詰められ剣を振るわれたら銃剣で受け流すように『武器受け』、『カウンター』で銃剣による『串刺し』氷の弾丸の『零距離射撃』を撃ち込みます。
猟兵の一撃により頭蓋から唐竹割りのように両断された辺境伯ジョナサン・ランバート・オルソレグ。
しかし、その額には未だ『辺境伯の紋章』が輝いている。寄生虫型オブリビオンの力は強大そのものである。
両手で切り裂かれた己の体を両側から圧し、断面をくっつける。それだけで、ぐるんと眼球が蠢き、未だ健在であると誇るように咆哮するのだ。
「ハハハハ―――ッ! まだだ! 私はまだ終わらぬよ! 救うのだ! 全ての生に苦しむ者たちを!」
その理念はすでに狂っている。正しさはどこにもない。
他者を生の苦しみから開放させる。ただ、それだけのために己の持つ手段を講ずることにしか興味がない。
救うために殺すのではない。殺すために救うのだと言いはるのだ。
「私もこの世界で生まれ育った身。言わんとせんことはわかります」
それは静かなる声だった。一人の猟兵、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、この常闇の世界ダークセイヴァー出身の猟兵である。
彼女にとって、この世界は故郷である。未だ救われぬ人々が居ることなど百も承知なのだ。
「わかるかね! 人は生きる意志があるからこそ、その意志に引きずられて苦しまねばならない! 人は救われたいのだよ!」
辺境伯ジョナサンは狂喜するようにセルマへと迫る。一歩、一歩。
その足取りを見ればわかる。外面は無傷を装っているだけだ。消耗している。
セルマは首を横に振った。救われるために人は生きているのではないと。
「ただ、それでも私が生きようとするのは……『生きたいから』。ただこれだけです。今更何を言われたところで揺らぐものはありません」
それは師の教えか。それともセルマが己の心に生み出した信念であるか。
生きることは戦うことである。
食べることであっても、戦って得なければならない。それを彼女は知っている。だからこそ、彼女は辺境伯ジョナサンと対峙する。
「ならば、私が教えよう! 救いを―――!」
踏み込んでくる辺境伯ジョナサン。セルマの獲物、マスケット銃を見て判断したのだろう。近接戦闘は不慣れであると。仕込み杖の刃が翻る。
あの刃を受けてしまうのは危険極まりない。
距離を取りながら、マスケット銃フィンブルヴェトから放つ氷の弾丸が辺境伯ジョナサンを打つ。
だが、その弾丸全てが仕込み杖によって切り落とされる。バリケードを利用して距離をとっても、即座に両断され、破壊されていく。
「―――あまり長くは持たない……ですが」
そこまでは織り込み済みである。
セルマにとって仕込み杖の刃による太刀筋は、早すぎる。一刀目で、それを見切るにはあまりにも博打が過ぎる。
―――よく視るんだ。
その言葉が脳裏に反芻する。一度で良い。一度切り、あの太刀筋を受けきれればいい。
手にしたフィンブルヴェトに備えられた銃剣アルマス。これが鍵だ。
「逃げてばかりでは、救うことなどできないぞ、猟兵―――!」
来た、と思った。
瞬時にそれがわかった。好機は今しかない。凝らして視た太刀筋。一直線に己へと振るわれる仕込み杖の刃。
煌めく、線。
銃剣アルマスが翻る。受けるのではなく、受け流す。滑らせる。鋭すぎる刃であるというのならば、力を横から加えればいい。破壊できなくても、反らすことはできる。
「近接戦闘ができないと言った覚えはありません」
それは何度も何度も体に染み付くまでに至った、銃剣戦闘術(ジュウケンセントウジュツ)。
受け流し、返す刃による銃剣アルマスが辺境伯ジョナサンの胸を串刺しにする。逃れ得ぬ圧倒的な重圧。
「―――そして、私は『生きます』。ただそれだけのために」
引き金を引く。マスケット銃から放たれる氷の魔弾が零距離で放たれ、辺境伯ジョナサンの体を吹き飛ばす。胸に大穴を開けながら砦から引き離すのだ。
ぼろぼろになったバリケードでは、もはやかのオブリビオンを防ぐ手立てはない。
けれど、セルマは確信していた。
どれだけ強大なる過去の化身がいようとも、この胸に抱いた想い、『生きる』という意志は独善に塗れた死に屈することはないと―――。
大成功
🔵🔵🔵
黒柳・朔良
『生きたい』と思うからこそ『死』を受け入れ、オブリビオンとなるか
矛盾しているが、それもまたひとつの選択なのだろうな
だが、他人にそれを強要するなど、あってはならない
哀れみすら不要だ
だからこそ、私は『影』として貴様らオブリビオンに『死』をもたらそう
選択UCで存在を消して、【目立たない】よう【闇に紛れ】、亡者たちを【暗殺】しながら辺境伯へと迫ろう
他の猟兵の攻撃のおかげで手負いになっている、その【傷口をえぐる】ように攻撃を加える
『あの方』(主)のためにも、私は生きなければならない
それを否定する事は、『あの方』以外許されない
そして『あの方』にそのようなことが出来ない以上、誰にも許されないことなのだからな
氷の魔弾によって穿たれた大穴は、いよいよ持って塞がらなくなっていた。
手にした仕込杖はとっさに防御しようとして氷の魔弾に立ち折られた。『辺境伯の紋章』の輝きが鈍い。猟兵たちの攻撃に晒され、消耗が激しいのだ。
これほどまでに自身を追い詰める者たちがいるとは思いもしかなったのだろう。その表情には初めて焦りが生まれいていた。
「……ならぬ、ならぬ……! ここで終わりなど……! 私は生きねばならぬ! どんなことをしてでも……!」
それはかつて、その体が人間であった時生まれた感情であったのだろう。死ねない。生きたい。その思いがあったからかどうかは定かではないが、過去の化身として生まれ還ったのだ。
「『生きたい』と想うからこそ、『死』を受け入れオブリビオンとなるか。無人しているが、それもまた一つの選択なのだろうな」
黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)の声は常闇の世界にあって姿を捉えることなどできないからこそ、辺境伯ジョナサンの耳に響いた。
それは哀れみの感情もなにもない平坦なる感情。
「矛盾しているが、それもまたひとつの選択なのだろうな」
次々と響く声。
視界を見回しても、捉えることのできない姿。今、まさに己を取り囲む姿なき姿に辺境伯ジョナサンは怯えたのかも知れない。
「ど、どこにいる―――! 私は此処にいるのだぞ!」
それは生の咆哮であったのかもしれない。最後の力を振り絞るように額の『辺境伯の紋章』が輝く。
しかし、その平坦たる感情の声は、ひとつのゆらぎも見せなかった。
「だが、他人にそれを強要するなど、あってはならない。哀れみすら不要だ」
朔良の体が闇に紛れて解けて消えた。
完全なる気配の遮断。世界に彼女の存在を近くするものなど誰一人もいない。故に彼女は、影に潜む暗殺者(アサシン・イン・シャドウ)と呼ばれるのだ。
彼女の生き方を哀れむのならば、その代償は生命である。
自身の存在を代償に封を解かれた暗殺特化型の武器を手に、辺境伯ジョナサンが呼び出した亡者の群れを次々と暗殺していく。
それは辺境伯ジョナサンから見れば、唐突に亡者たちがかき消されていくようなものだった。
気配も、姿も、なにもないのにたちまちに呼び出した亡者たちが消えていくのだ。
「なぜだ! なぜ理解しない! 私のっ! 私の生の苦しみから人々を救おうという思いが―――!」
辺境伯ジョナサンの絶叫が響く。
穿たれた大穴が塞がらない。もう『辺境伯の紋章』の力が尽きているのだ。
いやだ、まだ終わりたくない。まだ追われない。
だが、唐突に終わりはやってくる。
いつだって、そうだ。
誰しもが人生の幕引きを行えるわけではない。唐突に終わりは来る。ひたひたと自身の背後に迫ることなど、そうあることではないのだ。
「『あの方』のためにも、私は生きなければならない。それを否定することは『あの方』以外赦されない」
その声は辺境伯ジョナサンの目の前から響いた。すでに朔良の武器は辺境伯ジョナサンの穿たれた大穴を抉り、致命傷を与えていた。
声を発することもできない。
目の前で起こっていることを理解できない。
あるのは、明確なる死。
「そして、『あの方』にそのようなことができない以上、誰にも許されないことなのだからな」
そう、朔良の主は彼女に死を命じない。
優しい方なのだ。自身の命など、そう使うものであるというのに、それを良しとしない。あまりにも優しすぎる主。
彼女は自分のためだけに生きていなければならないわけではない。
主のために、主の思う理想のために生きて戻らねばならない。すでにその生命は、彼女だけのものではないのだから―――。
「辺境伯、さらばだ」
朔良の武器が引き抜かれた瞬間、辺境伯ジョナサン・ランバート・オルソレグの体が霧散して消えていく。
最期に彼女の手に残ったのは、力なく捕獲された『辺境伯の紋章』たる寄生虫型オブリビオンのみ。
この手に掴んだきっかけ。
これが今後どのような展開を見せるかはわからない。けれど、朔良は一瞥すると足を返す。
戻ろう。
生きてまた、主の元へと―――。
独善たる死が迫ろうとも、どれだけ追いすがろうとも、我が主だけは、この生命に変えても。その誓いが揺るがぬ限り、朔良は己の生命を全うすることだろう。
大成功
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