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ようこそ■■■ランド(作者 zino
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●一夜の夢と誘蛾灯
 空が暗くなり始めても、お楽しみはまだこれからと誘うように。
 塗装の剥げた観覧車はそれでもカラフルに回り、駆け抜けるコースターはリズミカルにレールを軋ませてゆく。
 息も絶え絶え、ポップなメロディを吐くメリーゴーラウンドが柵の隙間からちらりと窺える。足元に散らばるものは土産屋のレシートであって、仲睦まじい記念写真であって。
 無人のチケット窓口の脇でマスコットが手を振って笑っている。
 其処は多くの人々に愛されたテーマパークであった。
 嘗て、暗黒の竜巻に呑まれる前には。

 ――オオオ、ォォ、ォ。
 アァァァ――――……。

 アトラクションの立てる音に紛れ入園ゲートの奥から響き続けるは風の音ではない。人間、だったものの、呼び声。
 辿り着いた数人の奪還者はそうと知りながら、視線を交わし銃に手を掛けた。
「ちょっと待っててね。チケット買ってくるからさ」
「大所帯だからな、きっと時間がかかる。おしゃべりでも楽しんでいてくれ」
 声を掛ける先、此処へ来ようと決めたきっかけ――道端で拾ったボロボロの雑誌に描かれたテーマパークの光景へ「すごい」と瞳を輝かせていた年少の非戦闘員たちは疑うことなく頷いた。
「まってる」
 いいこ、と頭を撫でて。大人たちが歩み寄るゲートの上部では、欠けた文字がチカチカと疎らな点滅を見せている。
 嵐に攫われたのだろう、此処が何処であるのか、天国か地獄か。一番大事な部分はもう読めはしない。

●ようこそ■■■ランド
 食って、寝て、その繰り返しだけでも人間は生きていけるかもしれないが、何を以て生きていると呼ぶかは人間次第でもある。
 そうして此度。とある拠点から訪れた一団が、ゾンビテーマパークに踏み込まんとしているのだ。
「遊びてーんだってさ。見っけたそこが幸か不幸か、ちゃんと動いて見えるもんだから。つってもこんままじゃ食われておしまい。で、皆の出番って話」
 アビ・ローリイット(献灯・f11247)は未来をざっくりと伝えれば、今なら一団が訪れる数時間前には現地入り出来ると続けた。
 安全でないのなら、先に安全にしてしまえばいい。そんな理屈で。
「動く死体だけじゃなく奥にメカみたいなのも見えたから、ちょい早めに向かってもらえたらなって。多分、他のオブリビオンが資源荒らしに来てんじゃねーかな。電力があるのは本当みてーだし」
 オブリビオン・ストームの発生から、あまり日が経っていないのかもしれない。
 嵐はテーマパークから多くのものを奪っていったが、元々電力の大半を太陽光発電で賄っていたようで、アトラクションは尚も動くことが出来ているようだ。
 とはいえパネルも朽ち落ちた今、それにも限りはある。少なくとも今回の奪還者たちが遊べるか否かはラストチャンスとなるだろう。
「アトラクションとかのレベルは今のUDCアースが近いっぽい。最先端ーってほどでもねーけど、それなりな感じ。パンフレット? どっか落ちてっかもね」
 さて、景色は変わりきった。
 コースターの音に一度声を遮られれば、賑やかなものだと園の方向を振り仰いで耳を押さえたアビが猟兵へ視線を戻す。
「まあなんか、毎日大変みてーだけどこういう一日がまた生きてく気力に繋がったりすんじゃねーかな。よけりゃ叶えてやってよ」
 どうせだしついでに皆も遊んできたら、と。
 列待ちなし、チケットのチェックもされないし?
 ――いえいえ。ともすれば提示を求められそう。なんたって、スタッフたちは今も園内で客を待っているのだから。





第3章 日常 『荒野の日常』

POW廃墟の街を散策する。
SPD周囲の砂漠を散策する。
WIZ星空を眺めて過ごす。
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 降り注ぐ照明の色は相変わらずの黄から青、青から赤。
 素っ頓狂な馬鹿騒ぎの会場はそれでも、もう、誘き寄せたものを傷付けるおそろしい魔窟ではなく。

「わあ……!」
「早くはやく! ぜんぶ回ろう!」
 入園ゲートをくぐりばたばたと駆け出してゆく子どもたち。その手に引かれ、しきりに頭を下げながら奪還者が続いていった。
 氷でできた案内板を覗いて指差してあれ、これ、と作戦を立てるもの。まずは自分の足で確かめてと片っ端からアトラクションに乗り込むもの。手を振る子ども、今だけは武器を脇へ置いて手を振り返す大人。
 そんな光景。
「頑張ってきて、よかった」
 心から零れた誰かの呟きが空気に溶ける。
 それは荒野を走る風とひとつになって、いつか世界の果てまで届くのだろう。

 つい先刻まで激しい戦いが繰り広げられていた園内は、有志の後片づけと弔いとがあって表向き血みどろの状態から脱していた。
 経年劣化でついた傷は傷のまま。キィキィと軋む音こそあるものの、人々の歓声に混ざり込んでささやかな声のひとつとなる。アトラクションたちの声。
『ありがとう』
『よくきてくれたね』
『どうぞたのしんでいって』
 船首で微笑む彫像。
 老馬のやさしい瞳。
 ゴンドラに灯る光。 ようこそ、ようこそ。
 すべてがどこか欠けていたって、亡者の呻きではない、心地好い囁きがあちこちから溢れるようだった。