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黒い歴史が止まらない(作者 青猫格子
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●寂れた団地
「キャハハハハハ!」
 活気が失われて久しい団地にて、少しふさわしくない笑い声が響く。
「な、なんだ、あいつ……」
 引っ越しのため部屋を片付けていた大学生、黒田・松平は玄関前の通路で声の主を見てつぶやいた。
 声の主の女性はパンクファッションというのだろうか、随分派手な格好だ。所々に包帯を巻いて、さらにマントを羽織っている。
 そして手にはチェーンソーのような刃のついた剣のようなものを持っていた。
「コスプレ? 作り物だとしても危ないだろあれ……」
 と、松平は思うが、どうも彼女のことを見た覚えがあるような気がする。
「何あれウケる~」
 松平の後ろから出てきた妹の玲奈は、通路を歩いている彼女を見かけるや否やスマホで写真を撮った。
「あれお兄ちゃんの彼女? 『殺戮姫』のコスプレしてるし……」
「『殺戮姫』!? お前まだ覚えてたのかよ!」
 松平はようやく記憶を思い出した。中学の頃考えていたキャラクターで、ノートに絵や設定を書いて妹に自慢してたっけ……。
 そして彼女をよく見ると、たしかに自分が描いた絵の面影があった。絵は実物よりずっと拙いものだったが、間違いない。
「殺戮を撒き散らす姫……とかそんなだったか。全くなんでそんなキャラを作ったのか……」
 しかし、それよりも問題は、なぜ彼女が自分と妹しか知らない『殺戮姫』の格好をしているのかということだ。
 松平が彼女を見ながら考えていると、不意に彼女がチェーンソー剣を構える。
 すると、チェーンソーの刃がウィーン……と回転を始め、それを振り回しながら二人に突っ込んできた。
「死ね死ね死ねえええハハハハァー!!」
「きゃあっ! な、なにこいつ!!」
 玲奈が驚いて、ぼんやりしていた兄の腕を掴んで慌てて駆け出す。

「はぁ、はぁ……どうやら追ってこないみたいだな」
 団地の一階の外に出て、松平は上を見上げるが、先程の殺戮姫は追ってこなかった。
「でもあんな不審者いたらしばらく戻れないよ、どうしよう」
 妹がスマホを操作しながらつぶやいた。今日は両親が新居の下見に行っており、帰ってくるまでに部屋を片付ける約束だったのだ。
「うーん、とりあえず警察に……っておい、何してるんだ」
「え、さっきの彼女をトークアプリに上げてるんだけど」
「やめろってば」
 自分の黒歴史が世界に広まってしまうみたいで恥ずかしいじゃないか。いやトークだから知り合いしか見ないよ、と、兄妹が言い合いをしていると、周囲の空気がおかしくなっていることに気がつく。
「な、なんだこいつら……」
 兄妹はいつの間にか奇妙な集団に囲まれていた。

●グリモアベースにて
「小さい頃の空想が実体化したら、恥ずかしいものでしょうか?」
 集まった猟兵たちに対してクロノ・ライム(ブラックタールのクレリック・f15759)が口を開いた。
「いや、変な空気にしてすみません。きっと僕がまだ若いので実感がわかないんでしょうね」
 こほん、と咳のポーズをしてひと息ついた後、説明を始める。
「場所はUDCアース。とある団地で兄妹の前に『感染型UDC』が現れました」
 その感染型UDCは第一目撃者の「過去によく空想した存在」の形を取り、その姿を広めることで他の人の空想存在まで実体化し、次々に増殖してしまうのだという。
「増殖したオブリビオンは兄妹の周辺に集まりますが、危険ですのでまずこれらを退治し、兄妹を助ける必要があります」
 場所は団地の中だが、オブリビオンの力の影響か、今の所兄妹以外の目撃者などはいないようだ。
 なので、多少派手に暴れても問題はないだろう。
「空想の存在というわけで、色々突飛な行動をとってくるかもしれませんが、気をつけてください」
 たとえば、自分が昔考えた最強キャラクターの最強極大呪文……みたいなのを使ってくるわけだ。
 そんなものが実体化したとして、本当に勝てるのだろうか。
「猟兵の皆様ならおそらく大丈夫でしょう!」
 と、自信満々のクロノ。
「その後は……第一発見者の黒田・松平さんから感染型UDCの潜んでいそうな場所を聞く必要がありますね」
 彼の話によると、感染型UDCが姿を元にした空想の記録の近くに潜んでいる可能性が高いという。
 きっとそれは松平のノートなどであると思うが、果たして教えてもらえるだろうか。
「とにかく、それを見つけて感染型UDC『殺戮姫』を倒すことが今回の最終目的です。どうかよろしくお願いします」
 クロノは説明を終えると、猟兵たちの転送を始めるのだった……。





第2章 冒険 『硬い口を割らせる手段』

POW死なない程度に力技で情報を吐かせる。
SPDハッタリやカマ掛けで情報を引き摺り出す。
WIZ泣き落とし、良心に訴えかける等。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 黒田兄妹たちを襲った黒歴史は消えた。
 しかし、『殺戮姫』を倒さなくてはまた再び現れるだろう。
 殺戮姫を描いた記録……黒田・松平のノートを探す必要がある。

「黒歴史って言ってもなあ。なにが何だか……」
「というかお兄ちゃん、そろそろ片付けを終わらせないとまずくない?」

 兄の松平も妹の玲奈も、今のところ猟兵たちが助けてくれたことには感謝しているが、気安く協力してくれるという感じではない。
 松平の立場からしたら、自分の黒歴史であるノートを見せなければいけないのだ。抵抗があるだろう。
 それでも、やらなければならない。兄妹を助けるために。

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POW/SPD/WIZの内容は参考程度に、基本的には兄妹から平和裏に情報を引き出すという章です。
あくまでも『兄妹を助ける』が目的です。
兄に聞く、妹に聞く、引っ越しの手伝いなどして情報を得る、自分で部屋を片付けて探すなど……色々考えられますね。他にもなにか思いついたらどうぞ。
黒田家の部屋と団地の共用部はわりと自由に出入りできるので探索などしても良いですが、この章の間は他の住人に会うことはないようです。
まだオブリビオンの影響下にあるのでしょう。
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シン・クレスケンス(サポート)
■アドリブ歓迎

■「大体のことはこなせますので、何でもお申し付けください」
落ち着いた雰囲気を持つ物腰柔らかな青年。
一人称は僕。使役は呼び捨て。

窮地でも動じず冷静に戦況を判断し切り抜ける。
詠唱銃による銃撃と、魔術による属性攻撃を得意としている。
猟兵になる以前の経歴から調査、情報操作、諜報も得意。

■「俺はシンの狗じゃない!というか犬でも狼でもない!」
闇色の狼の姿のUDC「ツキ」は息ピッタリの相棒。

■梟の姿の精霊「ノクス」
賢い精霊で人語を理解するが、言葉は話さない。

■UCはどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
迷惑行為や公序良俗に反する行動はしません。

宜しくお願いします!


暗黒虚無神・パラミトログル
ここは素直に事情を話して必要な物を借り受けよう……
だが、相手が普通の人間である故
合わせて口調を変えた方が良い反応を得られるだろう

「すみませんが、汝、殺戮姫を創造せし者よ。此度の現象は全て汝が有する創造の書(バイブル)より始まりし事……。
其れが故に、再び世に平穏を齎さんが為には書が必要となる。何とぞ我らに書を貸し与え給え。さすれば我ら猟兵(イェーガー)、世を乱す殺戮姫を奈落の底(タルタロス)へと送り返さん。よろしくお願いします」

皆、すまぬ
我にはこれが限界のようだ

人間に接するのは慣れておらぬ
我、忌避される存在であるが故に

部屋を片付けるのであれば喜んで手伝おう
或いは書を見い出せるやもしれぬ


 団地の中に隠れていた松平、玲奈は周りが静かになったことに気づいて外に出てきた。
「よくわからないけど、助けてくれたんだよね? ありがとう」
 玲奈が広場にいた猟兵たちににっこり笑いかけた。
「あんた達、なんで俺たちが襲われたのか、何か知ってるのか? 教えてくれないか?」
 松平は深刻な顔で猟兵たちに問いかける。

「そうだな、ここは素直に話しておくべきであろう」
 と、頷いたのは暗黒虚無神・パラミトログルだ。
 兄妹二人が注目する中、彼は松平に近づいて歩いていく。
(相手は普通の人間である故、口調にも気を使うべきであろう……)

「すみませんが、汝、殺戮姫を創造せし者よ。此度の現象は全て汝が有する創造の書(バイブル)より始まりし事……」
「え、ええと『殺戮姫を創造せし者』って誰? まさか俺……?」
 松平は近づいてくるパラミトログルの言葉に呆気にとられている。

(皆、すまぬ……我にはこれが限界のようだ。こ、これでは話が……)
 パラミトログルは人から恐れられる神である故に、人間と接するのは慣れていなかった。
 このまま説明を続けるには相当な時間がかかるだろう。と彼が頭を抱えていると、背後から声をかける者がいた。

「彼の言いたいことはこうです。あなたの空想から『殺戮姫』が発生しました。そして今起きている現象を止めるには『殺戮姫を描いた記録』を探し出す必要があるのです」
 兄妹とパラミトログルが顔を上げて声の方を見る。
「申し遅れました。僕たちは、とある組織から派遣されてきたものです。詳しくは言えませんが、こうした怪奇現象の専門家と言えるでしょう」
 と、シン・クレスケンス(真実を探求する眼・f09866)が自己紹介をした。
 彼は今は猟兵としてここに来ているが、UDCアース出身のUDCエージェントである。
 UDCに遭遇した一般人に対応するスキルも当然持ち合わせていた。

「そ、そういうことだ……」
 パラミトログルが冷静さを取り戻し、頷いた。
「殺戮姫がこれ以上の悪事を働かないようにするには、汝の協力が必要だ。何とぞ我らに書を貸し与え給え」
 と、比較的自然に話を続けることができた。
「うーん、そりゃもうこんな変な事には巻き込まれたくないけど。記録……? 書……?」
 そんな物を持っていたっけ? と松平は首を傾げている。
「簡単な落書きや設定を書いたノートとか、そういうのでいいんですよ。何かありませんか?」
「ああ! それなら……」
 シンの言葉に松平は思い当たるものがあったようだ。

 しかし、松平の顔はすぐに暗くなってしまう。
「たしかに昔描いたよ。でもどこにあるか……もしかしたら母さんが捨ててしまったかも」
「そんなことないよ。だってお兄ちゃんの部屋、古いノートいっぱいあったもん。わざわざそれだけ捨てるなんてことないでしょ……え、どうしたの?」
 玲奈がシンたちと松平の間に割り込んで話をしようとした所、松平は妹をぐっと睨み、家の方へ黙って歩きだしてしまう。

「……まあ、色々複雑なんでしょう」
 シンは家の方へ行く兄弟たちを見ながらつぶやいた。
「どうしたのだ? 部屋を片付けるのなら手伝うが」
 パラミトログルや他の猟兵たちの何人かは、ノートを見つけるため、兄妹たちを追って団地の中へと向かっていった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

楠葉・狐徹
【SPD】
「あんた達、引越しするのかい?だったら俺が手伝ってやるよ。」

重い荷物や家具を【怪力】を駆使して手伝う。最初に松平に接触する前に妹を遠ざけておく

「可愛いお嬢ちゃん。少し君のお兄さんを借りるよ。大人しく待っててくれるかな?」と【誘惑】も駆使して妹を足止め

「俺も実はガキの頃に創作したモンスターとかの設定を考えるのが好きだったんだ。あんたもそういう時なかったか?」と松平の興味を惹きそうな話を【コミュ力】も使って聞く

「女キャラとかも考えるの楽しかったんだ。あんたは作ったことあるかい?」と殺戮姫の情報を引き出す事も試みる。可能なら弱点を設定していたかも聞き出し、今後の戦闘のために覚えておく


「何しに来たんだよ。ノート探すのか?」
 松平が玄関までついてきた猟兵たちにやる気がなさそうに声をかける。
「それもあるけど、時間がないんだろ? まずは俺たちで家の掃除を手伝ってやるよ」
 楠葉・狐徹の言葉に玲奈が目を輝かせる。
「え、本当!? よろしくお願いします!」
 松平は心配そうだったが、結局妹に押し切られて猟兵たちに手伝いを任せることになった。

 しばらくして。
「あんたたちのおかげで随分片付いたよ。テレビ台をほぼ素手で解体したのは驚いたけどね……」
 松平と狐徹は団地の裏の小さな公園で休んでいた。
 粗大ごみで出す予定だったテレビ台を解体して、ゴミとして出した後のことだった。
 今この公園には二人しかいない。最近では子供の姿をほとんど見かけないという。
「そういうもんか?」
 さっきの戦いでも怪力を発揮しているのにな、と狐徹は平然としている。
「殺戮姫について聞いてもいいか? 俺も実はガキの頃に創作したモンスターとかの設定を考えるのが好きだったんだ」
「そうなのか?」
 狐徹の言葉に松平は意外そうな顔をする。

「俺、小学生の時は友達とヒーローごっことかするのが好きでさ、こういう公園で遊んでたんだよね」
 松平は昔の思い出を語る。彼らの楽しそうに遊ぶ姿を見て玲奈も加わりたかったが、小さいので入れてあげられなかったこと。
 数年後、松平が中学生になった頃、妹が自作の変身ヒロインを落書きしているのを偶然目撃したこと。
「玲奈はまだヒーローごっこがしたかったんだって、当時の俺は考えたんだ。それなら俺はそのヒロインのライバルを作ってあげようって。設定を考えるのは一緒にできるんじゃないかって思ったんだ」
 そこで松平がヒロインのライバルとして新しく考えたのが殺戮姫だった。

「なるほど、妹のために考えたんだな」
「あの、玲奈には言わないでくれよ。多分忘れてるし……」
 松平が若干恥ずかしそうに狐徹に言った。
「もちろんだぜ。ところで、ライバルの設定って、どんな能力とか覚えてるか?」
「うーんと、まず鋸の剣は邪悪な祝福を受けていて……それから……」
 松平との会話で、殺戮姫が生まれたきっかけや大まかな能力の話を狐徹はいくつか聞くことができた。
大成功 🔵🔵🔵